| Character | 1話 【1-1 デデッキ森林 入口】 |
| マーク | ……地震か ? |
| ? ? ? | 鏡震だ。どうやら始まったようですね。 |
| マーク | 異世界の魂――アニマをサーチしてこの世界に新大陸として具現化させる。本当にやりやがったのか、あの魔女は。 |
| ? ? ? | ……………………。 |
| イクス | すごいな……。この船。空を飛ぶなんて……。 |
| ミリーナ | 本当よね !世界に一機しかない飛空艇ケリュケイオン……。機体も白くて綺麗だよね。 |
| ガロウズ | 気に入ってくれて嬉しいよ。これからはこいつを足としてどんどん使ってやってくれ。 |
| イクス | ……落ちたりしないんでしょうか。 |
| ガロウズ | ははは ! 今のところ無事故だぜ、安心しな。 |
| ガロウズ | それと俺は単なる機械屋――魔鏡技師だ。そんな堅苦しい口の利き方はよしてくれ。ガロウズでいい。 |
| イクス | は、はい。 |
| ガロウズ | お、二人とも。見えてきたぞ。 |
| イクス | あれが……俺とミリーナがカレイドスコープを使って具現化した、異世界の一部…… ! ? |
| ミリーナ | すごい……。島……ううん、大陸 ! ?あんなものを具現化したの ! ? 私たち ! ? |
| イクス | あの時は実感がなかったけど―― |
| ゲフィオン | ――それではイクス、ミリーナ。早速、最初の異世界の具現化を行ってもらおう。手順は説明した通りだ。 |
| 二人 | はい ! |
| イクス | ……え ! ? 地震 ! ? |
| ゲフィオン | いや【鏡震】だ。本来この世界のものではない魂――アニマを、この世界に写し取って具現化した為に世界が驚いているのだ。 |
| ミリーナ | それじゃあ、もうこれで異世界の具現化は終了したんですか ? |
| ゲフィオン | そうだ。カレイドスコープの照準を異世界に向けその異世界で強きアニマを持つ鏡映点をサーチする。 |
| ゲフィオン | 鏡映点はいわば具現化の起点だ。鏡映点を通じて異世界のアニマを複製し、呼び寄せる。 |
| ゲフィオン | 実際に具現化されるのは異世界の一部でしかないがそれでも確かにこの世界の大陸として実体化した筈だ。 |
| イクス | 大陸…… ?本当にそんなものが創り出されたんですか ? |
| ゲフィオン | それは自分の目で確かめるがいい。 |
| イクス | (わかってたつもりだったけど……やっぱり信じられない……) |
| イクス | 近くに他の島や大陸はなかったのかな。巻き込んで潰したりとかしてないよな……。 |
| イクス | この辺りは世界地図で言うとどの辺りなんです……じゃなくて、どの辺りなんだ、ガロウズ ? |
| ガロウズ | ……アイギス計画がスタートしてから海図も地図もアイギス計画用に作り直されたんだ。何しろセールンド諸島以外は消えちまったからな。 |
| ガロウズ | ここはポイント1001だ。セールンド諸島からは離れてるからな。この辺りにはもう大陸も島も何もなかったよ。 |
| イクス | そう……ですか……。 |
| ガロウズ | よし、あの具現化大陸に着陸するぞ。大陸と一緒に具現化された鏡映点って人間を捜すんだろ ?頑張れよ ! 二人とも ! |
| カーリャ | 到着ー ! |
| イクス | これが異世界を具現化した大陸……。すごい……。全然、普通だ……。 |
| ミリーナ | 本当……。土の匂いも、緑も元から世界にあるものと何も変わらないね。 |
| イクス | 空気もちゃんとある……。 |
| カーリャ | そりゃ、ありますよ……。 |
| イクス | 魔女……か。 |
| ミリーナ | え ? どうしたの急に ? |
| イクス | ……いや、何かちょっと怖くなってきた。でも……こうしないとこの世界を救えないんだよな。迷ってる場合じゃないんだ。 |
| イクス | (迷ってたら……オーデンセみたいに……) |
| イクス | よし、まずは鏡映点って人を捜すんだったな。 |
| カーリャ | ミリーナさまの魔鏡に鏡映点さまのお顔を映しますねー。――ほいっと ! |
| カーリャ | わー、イケメンじゃないですかー !カーリャはもう少し王子様みたいなタイプが好きですけど、これはこれで中々です。 |
| ミリーナ | そうかしら ? イクスの方が可愛くて格好いいわ ! |
| イクス | ……はいはい。二人ともふざけてないでこの黒髪の男の人を捜すぞ。 |
| イクス | ところで……隣の犬は何だろう。この犬も鏡映点……なのかな ? |
| カーリャ | ……多分。 |
| イクス | そ、そうか。犬が鏡映点ってこともあるのか。駄目だな。鏡映点ってのは人間がなるんだと思い込んでた。常識を疑ってかからないとな。 |
| イクス | よし、二人とも、行くぞ ! |
| Character | 2話 【1-2 デデッキ森林 東部】 |
| イクス | すごいな……。この森。ちゃんと本当の森だ。これが具現化か……。 |
| イクス | なぁ、ミリーナ。鏡士の具現化ってそもそも何なんだ ? |
| イクス | あ、もちろん、何もないところから物を創り出すってことは知ってるけどどうしてそんなことができるんだろうな。 |
| イクス | カーリャだってミリーナが具現化しただろ ? |
| ミリーナ | 鏡士のことを勉強するのはいいことだと思う。じゃあ簡単に説明するね。 |
| ミリーナ | 万物の全てには魂――アニマがあるの。万物に宿る、根源の力とも言えるかも。 |
| ミリーナ | 鏡士の具現化というのは、魔鏡を媒介にしてそこに対象物のアニマを写し、複製して実体化する作業のことを言うの。 |
| ミリーナ | そこからさらに力を発展させて、何もないところから作りたいものを想像して生み出したりもできるのよ。この辺りはちょっと高度な技術になるけれど。 |
| ミリーナ | 今回の異世界の具現化もカレイドスコープを使っているけれど基本は同じ。 |
| イクス | つまり……この大陸も鏡映点も、俺たちの世界に連れてきたんじゃなくて、そのアニマを複写して同じ物を作り出したってことだな。 |
| ミリーナ | そうよ。魂の本体はあくまで元の世界にあるの。こっちに作られるのは、かりそめの存在よ。でも、記憶も経験も、そっくりそのまま。 |
| ミリーナ | こちらに具現化した異世界の大陸と鏡映点は異世界のアニマを放出しているの。 |
| ミリーナ | それがアニマが極端に少なくなってしまっているこの世界を満たしてくれる。 |
| イクス | 異世界からのアニマはキラル分子に変換されてアイギスの修復に使われる……んだったな。 |
| イクス | まだ今ひとつ良くわかってないけどこれから頑張って勉強していくよ。 |
| ミリーナ | うん。一緒に頑張ろうね。ちなみに、カーリャは私の心の一部を具現化した存在なのよ。 |
| イクス | ……ミリーナの心の一部――のわりに結構いい性格をしているような……。 |
| カーリャ | どういう意味ですか、イクスさま ? |
| ミリーナ | ふふ♪ 可愛いでしょ ? |
| カーリャ | ねぇねぇ、ミリーナさま。鏡映点らしい人、全然いませんけどー ? |
| ミリーナ | そうね……。確か、鏡映点の人はアニマを放出しているから特別な魔物に狙われやすいんだったよね。 |
| イクス | 光魔……だっけ ?どんな魔物かわからないけど、危険な魔物だそうだから早く見つけないといけないんだけどな。 |
| カーリャ | 二手に分かれたらどうですか ? |
| イクス | それはダメだ。見知らぬ土地で、1人になるなんて危険すぎる。 |
| カーリャ | でも、このままじゃ見つかる前に鏡映点が光魔に食べられちゃうかもですよ。 |
| イクス | うーん……。確かにその方が効率はいいけど……。色々な可能性が考えられるから慎重に判断しないといけない。 |
| イクス | (それでなくても……。こんな具現化なんて大それたこと、本当に引き受けてよかったのか迷ってるし……。それに……) |
| イクス | ――駄目だ駄目だ。今はそんなことを考えてる時じゃない。ちゃんと状況を整理しろ。速度を取るか……安全を取るか……。 |
| イクス | 確かに二手に分かれた方が……。でも……。 |
| ミリーナ | イクス、もし私のことを心配してるなら気にしないで。イクスが決めたことならきっと大丈夫。ねぇ、やってみよう ? |
| イクス | ……うん、わかった。でも、お互い無理はしないこと。 |
| イクス | 俺はここから東の方を回ってみるからミリーナとカーリャは西の方を頼むよ。 |
| イクス | 何かあったら、魔鏡の通信で知らせるってことで。 |
| ミリーナ | うん。わかった。気を付けてね、イクス。 |
| イクス | ミリーナもな。 |
| 魔物の声 | グルルルル……。 |
| イクス | ――魔物か ! |
| イクス | 異世界を具現化するのに魔物まで具現化されるって本当にとんでもない力だな。 |
| イクス | ……待てよ。まさかカレイドスコープは鏡映点以外の【人間】も具現化してる……とか ? |
| 魔物の声 | グルルルル……。 |
| イクス | あれ…… ? 別の方角からも魔物の声が……。 |
| イクス | ──もしかして俺、囲まれてるのか ! ? |
| Character | 3話 【1-3 デデッキ森林 中央部】 |
| ユーリ | 大体片づいたみたいだな。生きてるか ? |
| イクス | はい ! なんとか…… ! ? |
| イクス | あ……あなたは…… ! ? |
| ユーリ | ――ん ? オレに用があるって顔だな。だがここは、とっとと逃げた方がいいぜ。きっと大物が控えてる。 |
| イクス | え ! ? |
| ラピード | ──ウウウウウ ! |
| ユーリ | お出ましか ! |
| イクス | ──魔鏡が反応してる。もしかして、これが、光魔 ! ? |
| ユーリ | へぇ。今度のは骨がありそうだ、なっと ! |
| ユーリ | 今のうちに……って、おいおい ! やる気かよ ? |
| イクス | 俺、あなたを捜してたんです !それに、この魔物――光魔も !だから、俺も戦わなきゃ ! |
| ユーリ | なるほどね、それであんな顔になったのか。けど、別に知り合いって訳じゃないよな。お前は一体……。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| ユーリ | っと、悪ぃラピード !焦らしてヤキモチ焼かれる前にこのデカブツの相手しないとな ! |
| ミリーナ | ――確かこっちから魔物の声が聞こえたはず……。 |
| ユーリ | なんだなんだ、次から次へと。 |
| イクス | ──ミリーナ ! カーリャ !どうしてこっちに……。 |
| ミリーナ | イクスの行った方から魔物の声が聞こえたから心配になって……。無事で良かった…… ! |
| ミリーナ | ――あ、その人……鏡映点ね ? |
| カーリャ | でもって、あれが光魔…… !ううう……震えちゃう……ぶるぶる ! |
| イクス | 話はあとだ ! 今はあいつを ! |
| ユーリ | そういうこった、お嬢さん。下がってな。 |
| ミリーナ | 大丈夫です ! ご心配なく。──ある程度の心得はあります ! |
| ユーリ | なるほど、うちのお姫様といい、飛び入り娘は勇ましいのがお約束ってか。 |
| イクス | ――よし、行くぞ ! |
| Character | 4話 【1-3 デデッキ森林 中央部】 |
| ユーリ | よし、いっちょあがり ! |
| イクス | はあはあはあ……や、やった !光魔を倒せたぞ ! |
| ミリーナ | イクス ! すごい ! |
| イクス | はぁはぁ……これで【鏡映点】の人たちは……護れた──って……凄い、息一つ乱れてない……。 |
| カーリャ | さすがは、鏡映点さまですね。 |
| カーリャ | ミリーナさまが言ってました。鏡映点になる人は、その世界の命運を握るような英雄だったり、世界にとって重要な方なんだって。 |
| ユーリ | 悪いが何のことだかさっぱりだ。説明してもらえるか。色々と。 |
| イクス | あ、はい。すみません。 |
| イクス | 俺たち、あの、ゲフィオン様の命で【鏡映点】を捜していたんです。あ、【鏡映点】の人です。 |
| ユーリ | ……だからわかんねえっての。 |
| ミリーナ | す、すみません !あの、えっと……どこから説明すればいいのか……。 |
| カーリャ | 二人とも、落ち着いて下さいよー !カーリャまで焦ってきちゃいます ! |
| ユーリ | ま、そんな恐縮すんなって。妙な事続きで、ちと気が立ってた。きつい言い方して悪かったな。 |
| ユーリ | オレはユーリ・ローウェル。こっちは相棒のラピードだ。 |
| イクス | あ、俺は、イクス。イクス・ネーヴェです。 |
| ミリーナ | ミリーナです。ミリーナ・ヴァイス。 |
| カーリャ | カーリャです ! |
| ユーリ | よろしくな。それじゃ早速教えてくれるか。お前らの知ってることを、な。 |
| イクス | はい。ですが、ここで長話してるとさっきの魔物が来てしまいます。歩きながらお話しさせて下さい。 |
| ユーリ | あん ? さっき親玉を倒したろ ?しばらく大丈夫だと思うぜ。 |
| ミリーナ | いえ、来てしまうんです。あの魔物――光魔はあなたを追いかけてくるんです。そのことについても説明します。 |
| ユーリ | ……長い話になりそうだな。わかったよ。順を追って説明してくれ。なるべく簡潔に、な。 |
| イクス | はい。 |
| Character | 5話 【1-5 デデッキ森林 出口】 |
| イクス | ――という訳で最初の異世界を具現化したところです。 |
| ユーリ | ………………。 |
| イクス | あの……突拍子もない話なんで嘘みたいなんですけど、でも本当なんです……。 |
| ユーリ | ったく、お偉い連中が人の都合をお構いなしなのはどこの世界でも大差ないってか。 |
| イクス | ユーリさん ? |
| ユーリ | いや、なんでもねぇよ。 |
| ユーリ | ここはテルカ・リュミレースじゃなく、今のオレとラピードはもともとのオレたちから一部を具現化させた存在、ね。 |
| ミリーナ | はい。信じてもらえないかもしれないですけど……。 |
| ユーリ | ま、今のとこ信じるしかないしな。実際、色々思い当たる事があった。 |
| ユーリ | 急に目の前が白くなったと思ったら、ラピード以外、みんな消えちまった。 |
| ユーリ | 一見、元いた場所っぽいがなんか違う。つまりあの時が、この世界にオレたちが具現化した瞬間ってわけだ。 |
| イクス | しばらく具現化させてもらってこの世界の危機を回避できるだけのアニマが満ちれば元の世界に、きちんとお返しします。 |
| ユーリ | そいつを聞いて安心したぜ。ケリつけたい事がまだあるんでね。お前らの言う異世界ってとこでな。 |
| ラピード | ワン ! |
| ユーリ | ま、オレたちの状況は大体わかった。けど、まだ腑に落ちねえことがある。 |
| ユーリ | アニマってのが溜まって終わりなら具現化したオレとラピードを放っておいてもいいはずだ。 |
| ユーリ | けど、わざわざ捜してた。それにも理由があるんだろ ? |
| イクス | はい。鏡映点は、この大規模な具現化の術の核になっている存在なんです。 |
| ミリーナ | カレイドスコープは、異世界の強い力の持ち主を起点にして、異世界をサーチします。そしてその人物の記憶や感情を元に異世界を具現化する。 |
| ミリーナ | 鏡映点は、異世界をこの世界に具現化する為の楔のような存在なんです。 |
| イクス | だから、この具現化大陸が安定するまでにあなたたちの身に、もしもの事が起きてしまうと具現化を保てなくなってしまうんです。 |
| ユーリ | ふーん。んでそれに光魔とやらが絡んでる、と。 |
| ミリーナ | はい。光魔は大きな具現化の術に対するひずみのような存在で具現化世界に現れる特殊な魔物だそうです。 |
| ミリーナ | とても強いアニマに惹かれて現れる魔物で鏡映点のアニマを食べて自分の力に変えようと襲ってくるそうなんです。 |
| ユーリ | なるほどな。だからさっき言ってた『光魔が追ってくる』になる訳だ。 |
| イクス | はい。だから光魔の発生源だっていう【光魔の鏡】を見つけて破壊するまで俺たちの飛空艇に保護させてほしいんです。 |
| ユーリ | ………………。 |
| ユーリ | なぁ、気ぃ悪くしないでもらいたいんだがそんな世界の存亡にかかわる重要な事なんでお前らみたいなガキがやってんだ ? |
| ユーリ | 大人はどうした ? |
| ミリーナ | ……もうこの世界に、具現化を行える鏡士は私たちしかいないんです。 |
| イクス | 何より、もう世界には王都のある島々とそこに暮らす人々しか残されていない……。今、俺たちが頑張らないといけないんです。 |
| ユーリ | なるほどな……ひとつ安心したぜ。偉い連中が腐ってるワケじゃなさそうだってな。けど……。 |
| ユーリ | 世界の運命ってヤツぁ、なんでこう若いもんの肩に乗っかるのが好きなのかね……ったく。 |
| ユーリ | イクス、ミリーナ。悪ぃが飛空艇とやらで保護されてやることはできねえな。 |
| イクス | え ! |
| ユーリ | 光魔の鏡とやらちゃちゃっと壊したいんだろ ?手伝わせろよ。 |
| ミリーナ | どんな危険があるかわからないんですよ ! |
| ユーリ | 生憎、義をもって事を成せ、ってのがうちのモットーなんでね。断られても勝手にやらせてもらうぜ。 |
| イクス | ……わかりました。ユーリさん。ありがとうございます。正直、凄く、心強いです。 |
| ラピード | ワウ ! |
| ユーリ | 任せろ、だとさ。 |
| ミリーナ | ラピードさんも、ありがとうございます ! |
| ユーリ | ……ラピード『さん』ときたか。調子狂うな、どうも。 |
| Character | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
| ミリーナ | ふぅ、何とか倒せたみたい……。イクス、光魔の鏡を── |
| イクス | ああ。やってみる。 |
| カーリャ | やったぁ ! |
| ミリーナ | さすがね ! イクス ! |
| イクス | こ、壊しただけじゃないか。ユーリさんに笑われるだろ ! |
| ユーリ | 別に笑いはしねぇけどな。光魔の鏡ってのは壊すだけで大丈夫なのか ? |
| イクス | はい。そう聞いています。 |
| ユーリ | ……ふーん。 |
| イクス | ふぅ……。これで、まずは一つめの異世界の鏡映点――ユーリさんたちの安全は確保できたんだな。 |
| ミリーナ | うん。ゲフィオン様に言われたことは全てやり遂げた筈よ。 |
| ユーリ | 初仕事は大成功ってところか ?おめでとさん。 |
| イクス | ありがとうございます !ユーリさんたちのおかげです ! |
| ユーリ | オレたちはお前らに付いていっただけだよ。 |
| ユーリ | んじゃ、これでアニマってのが満ちるまでオレたちはここらでブラブラしてればいい訳だな。 |
| イクス | あ、あの、ユーリさん ! |
| イクス | よかったら、俺たちの飛空挺に乗ってもらえませんか ? |
| イクス | 俺、この世界を――ティル・ナ・ノーグを何としても救いたい。でも、まだ全然未熟です。 |
| イクス | だから、力を貸してほしいんです。勝手に具現化して、アニマまでもらってるのに厚かましいと思うかもしれませんけど……。 |
| イクス | 世界にアニマが満ちて、アイギスを修復できるまで俺たちと一緒に戦ってくれませんか ! |
| ユーリ | ……そうこなくっちゃな。 |
| ユーリ | 夜空にまたたく凛々の明星の名に賭けてその仕事、引き受けたぜ。 |
| ラピード | ワン ! |
| イクス | ありがとうございます ! |
| ミリーナ | よかったね。イクス。 |
| イクス | それじゃ、飛空艇に行きましょう ! |
| ユーリ | ああ。 |
| ユーリ | 無断で仕事受けちまったけど構わないよな、ラピード。 |
| ラピード | ワウ ! |
| ユーリ | こちとらじっとしてるのは性に合わないしな。正直、あいつらが誘ってくれて願ったりってとこだ。 |
| イクス | ……これでまずは一つか。どうにか、うまくやれたかな。 |
| ミリーナ | うん ! イクス、凄かったよ !鏡を壊して封印した時なんて、凄くかっこよかったもの。 |
| イクス | でも、まだまだだよ。ユーリさんは、凶暴な光魔相手でも余裕みたいだったし。 |
| イクス | 鏡映点に選ばれるぐらいの力……。きっと、色んな苦難を越えてきたんだろうな。 |
| イクス | ユーリさんにしてみたら訳のわからない状況のはずなのに動じずに、状況を冷静に判断して……。 |
| イクス | あの位の度胸が俺にもあればもっと自信を持って任務に立ち向かえるのに。 |
| ミリーナ | イクスだったら、絶対大丈夫だよ。──うん。絶対。だって、昔から何でもできるもの。 |
| イクス | そんなことないだろ……。ミリーナはいい加減な事を言うよなぁ。 |
| イクス | ──そもそも、どんなに訓練したって戦闘では何が起こるかわからないんだ。 |
| イクス | 目の前の敵と対峙している時に突然の不運が起きたら── |
| イクス | 例えば、ずっと昔にしかけられた落とし穴をそうと気付かずに踏んだり……。 |
| カーリャ | よくそれだけ無駄な想像ができますね、イクスさま。 |
| イクス | 無駄ってことはないだろ ! |
| ミリーナ | カーリャ ! そんなこと言わないの ! |
| ガロウズ | 何だかとぼけた奴らだなぁ、お前らは。さぁ、最初の任務を終えたんだ。ゲフィオン様に報告に戻るぞ。 |
| イクス | そうだな。ガロウズ、ケリュケイオンをセールンドへ。 |
| ガロウズ | よしきた ! 任せとけ ! |
| Character | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
| ミリーナ | ……ゲフィオン様、遅いね。 |
| イクス | ………………。 |
| ミリーナ | イクス ? どうしたの ? |
| イクス | ――なぁ、ミリーナ。異世界の具現化のことなんだけどあそこには光魔だけじゃなくて魔物もいたよな ? |
| イクス | ……ってことは、もしかして動物とか……人間も具現化されてたりするのかな。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| ミリーナ | ……そうね。ユーリさんやラピードさんの記憶や心を通して、異世界を具現化しているから二人の記憶にある異世界の人たちも……。 |
| イクス | これって……まるで天地創造じゃないか ?こんな大それたことをしていいのかな……。 |
| ミリーナ | イクス……。 |
| イクス | ずっと不安だったんだ。大丈夫なのかなって。ゲフィオン様は魔女だって噂もあるし―― |
| カーリャ | イクスさま、ま、まずいですよっ ! |
| イクス | ――え ! ? |
| ゲフィオン | ……そうだ。私は一部の人間から魔女と呼ばれている。 |
| イクス | ゲフィオン様 ! ? す、すみません ! |
| ゲフィオン | いや、いい。イクスの懸念ももっともだ。これは人の身には大それた計画だ。それはよくわかっている。 |
| ゲフィオン | しかし、我々は滅びる訳には行かない。全ての責めと咎は私が負う。お前たちが気にすることはない。 |
| ゲフィオン | そうはいっても気にするのだろうがな。私は魔女だ。それでいい。 |
| イクス | ……は、はい……。 |
| ゲフィオン | さて、報告を受けようか。最初の異世界の具現化。首尾はどうであった ? |
| イクス | 何とか上手くいきました。鏡映点のユーリさんとラピードさんに助けられたおかげでもあるんですけど……。 |
| ゲフィオン | 最初は皆、力が及ばぬもの。異世界の戦士に学び、その力を借りられるのは僥倖だ。 |
| イクス | あの……一つ伺いたいんですが光魔に対する策はないんでしょうか。 |
| イクス | 今回は鏡映点の二人が戦いになれていましたけど今後もそうとは限りません。 |
| ゲフィオン | ……残念だが、迅速に光魔の鏡を封じる以外は無い。 |
| ゲフィオン | ただ……一つ思い当たることがある。具現化された大陸は、ある種、鏡映点によって生み出された小さな世界とも言える。 |
| ゲフィオン | もし、そこで何か災害や事件が起きていればそれは鏡映点とは関係ないひずみ――つまり光魔の鏡が関係しているとみていいだろう。 |
| ゲフィオン | 災いの芽を見つけ、それを摘むように追っていけばより早く、光魔の鏡を見つける事ができるかも知れぬ。 |
| イクス | ありがとうございます。注意して、探索にあたります。 |
| ゲフィオン | では、さっそく次の異世界を具現化してくれ。すでに四つの異世界をリストアップしそれぞれサーチ済だ。 |
| ミリーナ | もう四つも…… ! |
| ゲフィオン | あまり時間がない。多少無理をしてでも急いでこの世界にアニマを満たす必要があるのだ。四つの世界を具現化する順序はお前たちに任せる。 |
| イクス | わかりました。頑張ります。 |
| ゲフィオン | ……ところで、私のことを魔女だと言っていたのは救世軍の連中か ? |
| イクス | え ! ? |
| ゲフィオン | お前たちは救世軍に助けられたと聞いている。 |
| イクス | あ……えっと……。はい。救世軍の人も……言っていたと思います。すみません。 |
| ゲフィオン | いや、お前が謝ることはない。民たちが私を魔女と呼ぶのも問題はない。 |
| ゲフィオン | だが、救世軍には気をつけるのだ。彼らは私のやることを快く思っていない。これまでも、世界中に混乱と不和の種を撒いてきた。 |
| ゲフィオン | 彼らはわかっていないのだ。自分たちがどれほど愚かなことをしているか。 |
| ゲフィオン | いや……それは人のことを言えた義理ではないな。とにかく、救世軍に心を許してはならぬ。しかと気をつけよ。 |
| イクス | ………………。 |
| ミリーナ | わかりました。ゲフィオン様。 |
| ゲフィオン | 頼んだぞ、若き鏡士たちよ。 |
| イクス | ………………。 |
| ミリーナ | ……イクス。救世軍の人たちのこと気にしてるんでしょ ? |
| イクス | ちぇ、ミリーナはお見通しか……。そうだよ。だって……助けてもらった人たちなのに気をつけろとか、心を許すなって……。 |
| ミリーナ | うん。 |
| イクス | そもそもあの人たちには「デミトリアス陛下に会え」って言われたんだぜ。 |
| イクス | でも……ゲフィオン様に確認したら陛下はご病気で会えないって言われちゃったし……。 |
| イクス | なんか……本当にこのまま進んでいいのか心配になって……。 |
| ミリーナ | イクスのそういう慎重なところ、すごくいいと思う。私たち……わからないことだらけだけどだからこそ自分たちの目で見てきた物を信じていこう。 |
| イクス | だけどさっきミリーナ、わかりましたって……。 |
| ミリーナ | ふふ♪ それはそれ、これはこれ。偉い人を怒らせることもないじゃない。 |
| ミリーナ | 今のところゲフィオン様にもよくしてもらっているし救世軍の人たちにも助けてもらったんだからどちらのことも悪く思う必要はないでしょ ? |
| イクス | ……そう、だよな。俺、つい先回りして色々悪いことを想像しちゃうんだよな。 |
| ミリーナ | 大丈夫。その分私が楽天的になるから ! |
| カーリャ | ミリーナさまはイクスさまに甘すぎませんかぁ ? |
| ミリーナ | ふふ♪ いいのよ。さあ、それよりカレイドスコープのところへ行きましょう。 |
| Character | 8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】 |
| マーク | 驚いたな。あんたが何もしないなんて。 |
| ? ? ? | まずはお手並み拝見というところですよ。世界にアニマが満ちる分にはこちらも助かりますからね。 |
| マーク | ……俺は……ゲフィオンを許さねぇ。 |
| ? ? ? | そうでしょうね。まぁ、しばらくは静観していることです。それが――彼の為でもありますよ。 |
| マーク | わかってるってーの。イクスとミリーナを殺すのは――もう少し先の話だ。 |
| ガロウズ | よう。待ってたぜ。 |
| ユーリ | よっ ! |
| ラピード | ワフ ! |
| イクス | ガロウズ ! ? それにユーリさんとラピードさん ! ?どうしてここに ! ? |
| ガロウズ | 俺はゲフィオン様にカレイドスコープの整備を頼まれてな。 |
| イクス | ガロウズはそんなこともできるのか ? |
| ガロウズ | 王宮付きの魔鏡技師をなめんなよ。つまる所は飛空艇と同じ、キラル分子を操る魔鏡技術でできてる物だからな。 |
| ガロウズ | ゲフィオン様に言われた四つの世界に関する設定は入れてあるぜ。 |
| ユーリ | 俺はまぁ、野次馬根性って奴だ。自分がどうやって具現化されたのか見ておきたくてな。構わねぇだろ ? |
| イクス | もちろんです。……ってゲフィオン様に怒られるかな ? |
| ユーリ | バレなきゃ大丈夫だろ。 |
| ミリーナ | ええ、みんなで内緒にしていれば ♪ |
| ユーリ | そういうこった。 |
| イクス | はは……。そうですね。それじゃあ始めます。 |
| ミリーナ | じゃあ、前回と同じように異世界にある強いアニマをサーチしましょう。 |
| イクス | ああ。今度も上手くやらないと……。 |
| ミリーナ | 大丈夫 ! 意識を腕の魔鏡に集中させるの。そこからカレイドスコープに内蔵されている魔鏡に力が伝わるわ。 |
| ミリーナ | そうすればあとはカレイドスコープがやってくれる。前もそうだったでしょう ?イクスなら、絶対できるよ ! |
| イクス | ──よし。やろう、ミリーナ。 |
| ガロウズ | じゃあ、カレイドスコープを起動するぞ。こいつをこうして……。 |
| ガロウズ | さて――どの世界から具現化する ? |
| イクス | 次は――この世界だ ! |
| ルック | おわわわわわ ! ? 地震 ! ? |
| マーク | 慌てんな。この間と同じ鏡震だ。 |
| マーク | 次の具現化を始めやがったな、イクス……。 |
| ? ? ? | 次の大陸を何処に具現化したかはわかっています。早々に、尖兵たちを派遣して調査に当たらせましょう。 |
| マーク | 動くのか ? 俺に静観しろって言っておきながら。 |
| ? ? ? | 情報を収集させるだけですよ。これからの為に、ね。 |
| ? ? ? | ミリーナとイクスに手をつけるのは……その後のお楽しみ、ということですよ。 |
| | To be continued |