Character1話 【1-1 デデッキ森林 入口】
マーク……地震か ?
? ? ?鏡震だ。どうやら始まったようですね。
マーク異世界の魂――アニマをサーチしてこの世界に新大陸として具現化させる。本当にやりやがったのか、あの魔女は。
? ? ?……………………。
イクスすごいな……。この船。空を飛ぶなんて……。
ミリーナ本当よね !世界に一機しかない飛空艇ケリュケイオン……。機体も白くて綺麗だよね。
ガロウズ気に入ってくれて嬉しいよ。これからはこいつを足としてどんどん使ってやってくれ。
イクス……落ちたりしないんでしょうか。
ガロウズははは ! 今のところ無事故だぜ、安心しな。
ガロウズそれと俺は単なる機械屋――魔鏡技師だ。そんな堅苦しい口の利き方はよしてくれ。ガロウズでいい。
イクスは、はい。
ガロウズお、二人とも。見えてきたぞ。
イクスあれが……俺とミリーナがカレイドスコープを使って具現化した、異世界の一部…… ! ?
ミリーナすごい……。島……ううん、大陸 ! ?あんなものを具現化したの ! ? 私たち ! ?
イクスあの時は実感がなかったけど――
ゲフィオン――それではイクス、ミリーナ。早速、最初の異世界の具現化を行ってもらおう。手順は説明した通りだ。
二人はい !
イクス……え ! ? 地震 ! ?
ゲフィオンいや【鏡震】だ。本来この世界のものではない魂――アニマを、この世界に写し取って具現化した為に世界が驚いているのだ。
ミリーナそれじゃあ、もうこれで異世界の具現化は終了したんですか ?
ゲフィオンそうだ。カレイドスコープの照準を異世界に向けその異世界で強きアニマを持つ鏡映点をサーチする。
ゲフィオン鏡映点はいわば具現化の起点だ。鏡映点を通じて異世界のアニマを複製し、呼び寄せる。
ゲフィオン実際に具現化されるのは異世界の一部でしかないがそれでも確かにこの世界の大陸として実体化した筈だ。
イクス大陸…… ?本当にそんなものが創り出されたんですか ?
ゲフィオンそれは自分の目で確かめるがいい。
イクス(わかってたつもりだったけど……やっぱり信じられない……)
イクス近くに他の島や大陸はなかったのかな。巻き込んで潰したりとかしてないよな……。
イクスこの辺りは世界地図で言うとどの辺りなんです……じゃなくて、どの辺りなんだ、ガロウズ ?
ガロウズ……アイギス計画がスタートしてから海図も地図もアイギス計画用に作り直されたんだ。何しろセールンド諸島以外は消えちまったからな。
ガロウズここはポイント1001だ。セールンド諸島からは離れてるからな。この辺りにはもう大陸も島も何もなかったよ。
イクスそう……ですか……。
ガロウズよし、あの具現化大陸に着陸するぞ。大陸と一緒に具現化された鏡映点って人間を捜すんだろ ?頑張れよ ! 二人とも !
カーリャ到着ー !
イクスこれが異世界を具現化した大陸……。すごい……。全然、普通だ……。
ミリーナ本当……。土の匂いも、緑も元から世界にあるものと何も変わらないね。
イクス空気もちゃんとある……。
カーリャそりゃ、ありますよ……。
イクス魔女……か。
ミリーナえ ? どうしたの急に ?
イクス……いや、何かちょっと怖くなってきた。でも……こうしないとこの世界を救えないんだよな。迷ってる場合じゃないんだ。
イクス(迷ってたら……オーデンセみたいに……)
イクスよし、まずは鏡映点って人を捜すんだったな。
カーリャミリーナさまの魔鏡に鏡映点さまのお顔を映しますねー。――ほいっと !
カーリャわー、イケメンじゃないですかー !カーリャはもう少し王子様みたいなタイプが好きですけど、これはこれで中々です。
ミリーナそうかしら ? イクスの方が可愛くて格好いいわ !
イクス……はいはい。二人ともふざけてないでこの黒髪の男の人を捜すぞ。
イクスところで……隣の犬は何だろう。この犬も鏡映点……なのかな ?
カーリャ……多分。
イクスそ、そうか。犬が鏡映点ってこともあるのか。駄目だな。鏡映点ってのは人間がなるんだと思い込んでた。常識を疑ってかからないとな。
イクスよし、二人とも、行くぞ !

Character2話 【1-2 デデッキ森林 東部】
イクスすごいな……。この森。ちゃんと本当の森だ。これが具現化か……。
イクスなぁ、ミリーナ。鏡士の具現化ってそもそも何なんだ ?
イクスあ、もちろん、何もないところから物を創り出すってことは知ってるけどどうしてそんなことができるんだろうな。
イクスカーリャだってミリーナが具現化しただろ ?
ミリーナ鏡士のことを勉強するのはいいことだと思う。じゃあ簡単に説明するね。
ミリーナ万物の全てには魂――アニマがあるの。万物に宿る、根源の力とも言えるかも。
ミリーナ鏡士の具現化というのは、魔鏡を媒介にしてそこに対象物のアニマを写し、複製して実体化する作業のことを言うの。
ミリーナそこからさらに力を発展させて、何もないところから作りたいものを想像して生み出したりもできるのよ。この辺りはちょっと高度な技術になるけれど。
ミリーナ今回の異世界の具現化もカレイドスコープを使っているけれど基本は同じ。
イクスつまり……この大陸も鏡映点も、俺たちの世界に連れてきたんじゃなくて、そのアニマを複写して同じ物を作り出したってことだな。
ミリーナそうよ。魂の本体はあくまで元の世界にあるの。こっちに作られるのは、かりそめの存在よ。でも、記憶も経験も、そっくりそのまま。
ミリーナこちらに具現化した異世界の大陸と鏡映点は異世界のアニマを放出しているの。
ミリーナそれがアニマが極端に少なくなってしまっているこの世界を満たしてくれる。
イクス異世界からのアニマはキラル分子に変換されてアイギスの修復に使われる……んだったな。
イクスまだ今ひとつ良くわかってないけどこれから頑張って勉強していくよ。
ミリーナうん。一緒に頑張ろうね。ちなみに、カーリャは私の心の一部を具現化した存在なのよ。
イクス……ミリーナの心の一部――のわりに結構いい性格をしているような……。
カーリャどういう意味ですか、イクスさま ?
ミリーナふふ♪ 可愛いでしょ ?
カーリャねぇねぇ、ミリーナさま。鏡映点らしい人、全然いませんけどー ?
ミリーナそうね……。確か、鏡映点の人はアニマを放出しているから特別な魔物に狙われやすいんだったよね。
イクス光魔……だっけ ?どんな魔物かわからないけど、危険な魔物だそうだから早く見つけないといけないんだけどな。
カーリャ二手に分かれたらどうですか ?
イクスそれはダメだ。見知らぬ土地で、1人になるなんて危険すぎる。
カーリャでも、このままじゃ見つかる前に鏡映点が光魔に食べられちゃうかもですよ。
イクスうーん……。確かにその方が効率はいいけど……。色々な可能性が考えられるから慎重に判断しないといけない。
イクス(それでなくても……。こんな具現化なんて大それたこと、本当に引き受けてよかったのか迷ってるし……。それに……)
イクス――駄目だ駄目だ。今はそんなことを考えてる時じゃない。ちゃんと状況を整理しろ。速度を取るか……安全を取るか……。
イクス確かに二手に分かれた方が……。でも……。
ミリーナイクス、もし私のことを心配してるなら気にしないで。イクスが決めたことならきっと大丈夫。ねぇ、やってみよう ?
イクス……うん、わかった。でも、お互い無理はしないこと。
イクス俺はここから東の方を回ってみるからミリーナとカーリャは西の方を頼むよ。
イクス何かあったら、魔鏡の通信で知らせるってことで。
ミリーナうん。わかった。気を付けてね、イクス。
イクスミリーナもな。
魔物の声グルルルル……。
イクス――魔物か !
イクス異世界を具現化するのに魔物まで具現化されるって本当にとんでもない力だな。
イクス……待てよ。まさかカレイドスコープは鏡映点以外の【人間】も具現化してる……とか ?
魔物の声グルルルル……。
イクスあれ…… ? 別の方角からも魔物の声が……。
イクス──もしかして俺、囲まれてるのか ! ?

Character3話 【1-3 デデッキ森林 中央部】
ユーリ大体片づいたみたいだな。生きてるか ?
イクスはい ! なんとか…… ! ?
イクスあ……あなたは…… ! ?
ユーリ――ん ? オレに用があるって顔だな。だがここは、とっとと逃げた方がいいぜ。きっと大物が控えてる。
イクスえ ! ?
ラピード──ウウウウウ !
ユーリお出ましか !
イクス──魔鏡が反応してる。もしかして、これが、光魔 ! ?
ユーリへぇ。今度のは骨がありそうだ、なっと !
ユーリ今のうちに……って、おいおい ! やる気かよ ?
イクス俺、あなたを捜してたんです !それに、この魔物――光魔も !だから、俺も戦わなきゃ !
ユーリなるほどね、それであんな顔になったのか。けど、別に知り合いって訳じゃないよな。お前は一体……。
ラピードワンワン !
ユーリっと、悪ぃラピード !焦らしてヤキモチ焼かれる前にこのデカブツの相手しないとな !
ミリーナ――確かこっちから魔物の声が聞こえたはず……。
ユーリなんだなんだ、次から次へと。
イクス──ミリーナ ! カーリャ !どうしてこっちに……。
ミリーナイクスの行った方から魔物の声が聞こえたから心配になって……。無事で良かった…… !
ミリーナ――あ、その人……鏡映点ね ?
カーリャでもって、あれが光魔…… !ううう……震えちゃう……ぶるぶる !
イクス話はあとだ ! 今はあいつを !
ユーリそういうこった、お嬢さん。下がってな。
ミリーナ大丈夫です ! ご心配なく。──ある程度の心得はあります !
ユーリなるほど、うちのお姫様といい、飛び入り娘は勇ましいのがお約束ってか。
イクス――よし、行くぞ !

Character4話 【1-3 デデッキ森林 中央部】
ユーリよし、いっちょあがり !
イクスはあはあはあ……や、やった !光魔を倒せたぞ !
ミリーナイクス ! すごい !
イクスはぁはぁ……これで【鏡映点】の人たちは……護れた──って……凄い、息一つ乱れてない……。
カーリャさすがは、鏡映点さまですね。
カーリャミリーナさまが言ってました。鏡映点になる人は、その世界の命運を握るような英雄だったり、世界にとって重要な方なんだって。
ユーリ悪いが何のことだかさっぱりだ。説明してもらえるか。色々と。
イクスあ、はい。すみません。
イクス俺たち、あの、ゲフィオン様の命で【鏡映点】を捜していたんです。あ、【鏡映点】の人です。
ユーリ……だからわかんねえっての。
ミリーナす、すみません !あの、えっと……どこから説明すればいいのか……。
カーリャ二人とも、落ち着いて下さいよー !カーリャまで焦ってきちゃいます !
ユーリま、そんな恐縮すんなって。妙な事続きで、ちと気が立ってた。きつい言い方して悪かったな。
ユーリオレはユーリ・ローウェル。こっちは相棒のラピードだ。
イクスあ、俺は、イクス。イクス・ネーヴェです。
ミリーナミリーナです。ミリーナ・ヴァイス。
カーリャカーリャです !
ユーリよろしくな。それじゃ早速教えてくれるか。お前らの知ってることを、な。
イクスはい。ですが、ここで長話してるとさっきの魔物が来てしまいます。歩きながらお話しさせて下さい。
ユーリあん ? さっき親玉を倒したろ ?しばらく大丈夫だと思うぜ。
ミリーナいえ、来てしまうんです。あの魔物――光魔はあなたを追いかけてくるんです。そのことについても説明します。
ユーリ……長い話になりそうだな。わかったよ。順を追って説明してくれ。なるべく簡潔に、な。
イクスはい。

Character5話 【1-5 デデッキ森林 出口】
イクス――という訳で最初の異世界を具現化したところです。
ユーリ………………。
イクスあの……突拍子もない話なんで嘘みたいなんですけど、でも本当なんです……。
ユーリったく、お偉い連中が人の都合をお構いなしなのはどこの世界でも大差ないってか。
イクスユーリさん ?
ユーリいや、なんでもねぇよ。
ユーリここはテルカ・リュミレースじゃなく、今のオレとラピードはもともとのオレたちから一部を具現化させた存在、ね。
ミリーナはい。信じてもらえないかもしれないですけど……。
ユーリま、今のとこ信じるしかないしな。実際、色々思い当たる事があった。
ユーリ急に目の前が白くなったと思ったら、ラピード以外、みんな消えちまった。
ユーリ一見、元いた場所っぽいがなんか違う。つまりあの時が、この世界にオレたちが具現化した瞬間ってわけだ。
イクスしばらく具現化させてもらってこの世界の危機を回避できるだけのアニマが満ちれば元の世界に、きちんとお返しします。
ユーリそいつを聞いて安心したぜ。ケリつけたい事がまだあるんでね。お前らの言う異世界ってとこでな。
ラピードワン !
ユーリま、オレたちの状況は大体わかった。けど、まだ腑に落ちねえことがある。
ユーリアニマってのが溜まって終わりなら具現化したオレとラピードを放っておいてもいいはずだ。
ユーリけど、わざわざ捜してた。それにも理由があるんだろ ?
イクスはい。鏡映点は、この大規模な具現化の術の核になっている存在なんです。
ミリーナカレイドスコープは、異世界の強い力の持ち主を起点にして、異世界をサーチします。そしてその人物の記憶や感情を元に異世界を具現化する。
ミリーナ鏡映点は、異世界をこの世界に具現化する為の楔のような存在なんです。
イクスだから、この具現化大陸が安定するまでにあなたたちの身に、もしもの事が起きてしまうと具現化を保てなくなってしまうんです。
ユーリふーん。んでそれに光魔とやらが絡んでる、と。
ミリーナはい。光魔は大きな具現化の術に対するひずみのような存在で具現化世界に現れる特殊な魔物だそうです。
ミリーナとても強いアニマに惹かれて現れる魔物で鏡映点のアニマを食べて自分の力に変えようと襲ってくるそうなんです。
ユーリなるほどな。だからさっき言ってた『光魔が追ってくる』になる訳だ。
イクスはい。だから光魔の発生源だっていう【光魔の鏡】を見つけて破壊するまで俺たちの飛空艇に保護させてほしいんです。
ユーリ………………。
ユーリなぁ、気ぃ悪くしないでもらいたいんだがそんな世界の存亡にかかわる重要な事なんでお前らみたいなガキがやってんだ ?
ユーリ大人はどうした ?
ミリーナ……もうこの世界に、具現化を行える鏡士は私たちしかいないんです。
イクス何より、もう世界には王都のある島々とそこに暮らす人々しか残されていない……。今、俺たちが頑張らないといけないんです。
ユーリなるほどな……ひとつ安心したぜ。偉い連中が腐ってるワケじゃなさそうだってな。けど……。
ユーリ世界の運命ってヤツぁ、なんでこう若いもんの肩に乗っかるのが好きなのかね……ったく。
ユーリイクス、ミリーナ。悪ぃが飛空艇とやらで保護されてやることはできねえな。
イクスえ !
ユーリ光魔の鏡とやらちゃちゃっと壊したいんだろ ?手伝わせろよ。
ミリーナどんな危険があるかわからないんですよ !
ユーリ生憎、義をもって事を成せ、ってのがうちのモットーなんでね。断られても勝手にやらせてもらうぜ。
イクス……わかりました。ユーリさん。ありがとうございます。正直、凄く、心強いです。
ラピードワウ !
ユーリ任せろ、だとさ。
ミリーナラピードさんも、ありがとうございます !
ユーリ……ラピード『さん』ときたか。調子狂うな、どうも。

Character6話 【1-8 ボッコス街道 3】
ミリーナ簡単には見つからないね。光魔の鏡……。
ユーリ光魔の鏡ってのは、どんな代物なんだ ?
イクスそれが……俺たちもまだ見たことがないんです。確かゲフィオン様の話だと鏡精は光魔の鏡を感知できるってことだったよな。
ミリーナカーリャ、何か感じる ?
カーリャきゅう……。残念ながら何も感じないです……。
イクス近くにはないってことなのかな…… ?
ユーリせめて何かヒントみたいな物があればな。匂いもわからねぇからラピードの鼻でも無理みたいだ。
ラピードくぅーん。
イクス光魔は光魔の鏡から生まれるらしいんです。あんまり時間をかけていると、どんどん光魔が生まれて大きな群れで襲ってくるかもしれない……。
ユーリオレは囮でもかまわねえけどな。手っ取り早くていいさ。
ミリーナダメです ! 本末転倒です !
ユーリわかったわかった。そう怒鳴るなって。
イクス考えろ……。何か手が……。
カーリャむほぉぉぉぉ ! ?
イクスうわわ ! ?
ユーリなんだなんだ。
ミリーナどうしたのカーリャ ?突然そんなに震えて !
カーリャわ、わ、わからないです~ !そういえば光魔を初めて見たときもこんな感じでぶるぶると……。
ミリーナあれって、怖くて震えてたんじゃないの ?
イクスもしかして、その震えが光魔を感知してるってことなんじゃないか ?
カーリャマジですか ! ?
ユーリいや、こっちが聞いてんだっての。
カーリャぶるぶる…… !とにかく、あっちの方に何かを感じます~。
イクス行ってみよう !

Character7話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】
カーリャぶるぶるする !あの光ってる鏡みたいのを見ると猛烈にぶるぶるしますよぅ ! !
ユーリ……また露骨に怪しいな。
イクスはい。きっとあれが光魔の鏡なんだ……。
ユーリマジで感知できてたってことか。
カーリャでも、結構近づかないとわからないみたいです。ぶるぶるぶるぶる……。
ミリーナ十分よ。すごいわ、カーリャ !
カーリャえへへ……ぶるぶるぶる……。えへへへ……ぶるぶるぶる……。
ラピードワフ……。
イクスよし。手前にいる光魔を倒して、鏡を封じよう。それでここはひとまず、大丈夫な筈だ。
カーリャはわわわ ! 向こうもこっちに気づいたかも !
イクス──来るぞ !

Character8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】
ミリーナふぅ、何とか倒せたみたい……。イクス、光魔の鏡を──
イクスああ。やってみる。
カーリャやったぁ !
ミリーナさすがね ! イクス !
イクスこ、壊しただけじゃないか。ユーリさんに笑われるだろ !
ユーリ別に笑いはしねぇけどな。光魔の鏡ってのは壊すだけで大丈夫なのか ?
イクスはい。そう聞いています。
ユーリ……ふーん。
イクスふぅ……。これで、まずは一つめの異世界の鏡映点――ユーリさんたちの安全は確保できたんだな。
ミリーナうん。ゲフィオン様に言われたことは全てやり遂げた筈よ。
ユーリ初仕事は大成功ってところか ?おめでとさん。
イクスありがとうございます !ユーリさんたちのおかげです !
ユーリオレたちはお前らに付いていっただけだよ。
ユーリんじゃ、これでアニマってのが満ちるまでオレたちはここらでブラブラしてればいい訳だな。
イクスあ、あの、ユーリさん !
イクスよかったら、俺たちの飛空挺に乗ってもらえませんか ?
イクス俺、この世界を――ティル・ナ・ノーグを何としても救いたい。でも、まだ全然未熟です。
イクスだから、力を貸してほしいんです。勝手に具現化して、アニマまでもらってるのに厚かましいと思うかもしれませんけど……。
イクス世界にアニマが満ちて、アイギスを修復できるまで俺たちと一緒に戦ってくれませんか !
ユーリ……そうこなくっちゃな。
ユーリ夜空にまたたく凛々の明星の名に賭けてその仕事、引き受けたぜ。
ラピードワン !
イクスありがとうございます !
ミリーナよかったね。イクス。
イクスそれじゃ、飛空艇に行きましょう !
ユーリああ。
ユーリ無断で仕事受けちまったけど構わないよな、ラピード。
ラピードワウ !
ユーリこちとらじっとしてるのは性に合わないしな。正直、あいつらが誘ってくれて願ったりってとこだ。
イクス……これでまずは一つか。どうにか、うまくやれたかな。
ミリーナうん ! イクス、凄かったよ !鏡を壊して封印した時なんて、凄くかっこよかったもの。
イクスでも、まだまだだよ。ユーリさんは、凶暴な光魔相手でも余裕みたいだったし。
イクス鏡映点に選ばれるぐらいの力……。きっと、色んな苦難を越えてきたんだろうな。
イクスユーリさんにしてみたら訳のわからない状況のはずなのに動じずに、状況を冷静に判断して……。
イクスあの位の度胸が俺にもあればもっと自信を持って任務に立ち向かえるのに。
ミリーナイクスだったら、絶対大丈夫だよ。──うん。絶対。だって、昔から何でもできるもの。
イクスそんなことないだろ……。ミリーナはいい加減な事を言うよなぁ。
イクス──そもそも、どんなに訓練したって戦闘では何が起こるかわからないんだ。
イクス目の前の敵と対峙している時に突然の不運が起きたら──
イクス例えば、ずっと昔にしかけられた落とし穴をそうと気付かずに踏んだり……。
カーリャよくそれだけ無駄な想像ができますね、イクスさま。
イクス無駄ってことはないだろ !
ミリーナカーリャ ! そんなこと言わないの !
ガロウズ何だかとぼけた奴らだなぁ、お前らは。さぁ、最初の任務を終えたんだ。ゲフィオン様に報告に戻るぞ。
イクスそうだな。ガロウズ、ケリュケイオンをセールンドへ。
ガロウズよしきた ! 任せとけ !

Character8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】
ミリーナ……ゲフィオン様、遅いね。
イクス………………。
ミリーナイクス ? どうしたの ?
イクス――なぁ、ミリーナ。異世界の具現化のことなんだけどあそこには光魔だけじゃなくて魔物もいたよな ?
イクス……ってことは、もしかして動物とか……人間も具現化されてたりするのかな。
ミリーナ………………。
ミリーナ……そうね。ユーリさんやラピードさんの記憶や心を通して、異世界を具現化しているから二人の記憶にある異世界の人たちも……。
イクスこれって……まるで天地創造じゃないか ?こんな大それたことをしていいのかな……。
ミリーナイクス……。
イクスずっと不安だったんだ。大丈夫なのかなって。ゲフィオン様は魔女だって噂もあるし――
カーリャイクスさま、ま、まずいですよっ !
イクス――え ! ?
ゲフィオン……そうだ。私は一部の人間から魔女と呼ばれている。
イクスゲフィオン様 ! ? す、すみません !
ゲフィオンいや、いい。イクスの懸念ももっともだ。これは人の身には大それた計画だ。それはよくわかっている。
ゲフィオンしかし、我々は滅びる訳には行かない。全ての責めと咎は私が負う。お前たちが気にすることはない。
ゲフィオンそうはいっても気にするのだろうがな。私は魔女だ。それでいい。
イクス……は、はい……。
ゲフィオンさて、報告を受けようか。最初の異世界の具現化。首尾はどうであった ?
イクス何とか上手くいきました。鏡映点のユーリさんとラピードさんに助けられたおかげでもあるんですけど……。
ゲフィオン最初は皆、力が及ばぬもの。異世界の戦士に学び、その力を借りられるのは僥倖だ。
イクスあの……一つ伺いたいんですが光魔に対する策はないんでしょうか。
イクス今回は鏡映点の二人が戦いになれていましたけど今後もそうとは限りません。
ゲフィオン……残念だが、迅速に光魔の鏡を封じる以外は無い。
ゲフィオンただ……一つ思い当たることがある。具現化された大陸は、ある種、鏡映点によって生み出された小さな世界とも言える。
ゲフィオンもし、そこで何か災害や事件が起きていればそれは鏡映点とは関係ないひずみ――つまり光魔の鏡が関係しているとみていいだろう。
ゲフィオン災いの芽を見つけ、それを摘むように追っていけばより早く、光魔の鏡を見つける事ができるかも知れぬ。
イクスありがとうございます。注意して、探索にあたります。
ゲフィオンでは、さっそく次の異世界を具現化してくれ。すでに四つの異世界をリストアップしそれぞれサーチ済だ。
ミリーナもう四つも…… !
ゲフィオンあまり時間がない。多少無理をしてでも急いでこの世界にアニマを満たす必要があるのだ。四つの世界を具現化する順序はお前たちに任せる。
イクスわかりました。頑張ります。
ゲフィオン……ところで、私のことを魔女だと言っていたのは救世軍の連中か ?
イクスえ ! ?
ゲフィオンお前たちは救世軍に助けられたと聞いている。
イクスあ……えっと……。はい。救世軍の人も……言っていたと思います。すみません。
ゲフィオンいや、お前が謝ることはない。民たちが私を魔女と呼ぶのも問題はない。
ゲフィオンだが、救世軍には気をつけるのだ。彼らは私のやることを快く思っていない。これまでも、世界中に混乱と不和の種を撒いてきた。
ゲフィオン彼らはわかっていないのだ。自分たちがどれほど愚かなことをしているか。
ゲフィオンいや……それは人のことを言えた義理ではないな。とにかく、救世軍に心を許してはならぬ。しかと気をつけよ。
イクス………………。
ミリーナわかりました。ゲフィオン様。
ゲフィオン頼んだぞ、若き鏡士たちよ。
イクス………………。
ミリーナ……イクス。救世軍の人たちのこと気にしてるんでしょ ?
イクスちぇ、ミリーナはお見通しか……。そうだよ。だって……助けてもらった人たちなのに気をつけろとか、心を許すなって……。
ミリーナうん。
イクスそもそもあの人たちには「デミトリアス陛下に会え」って言われたんだぜ。
イクスでも……ゲフィオン様に確認したら陛下はご病気で会えないって言われちゃったし……。
イクスなんか……本当にこのまま進んでいいのか心配になって……。
ミリーナイクスのそういう慎重なところ、すごくいいと思う。私たち……わからないことだらけだけどだからこそ自分たちの目で見てきた物を信じていこう。
イクスだけどさっきミリーナ、わかりましたって……。
ミリーナふふ♪ それはそれ、これはこれ。偉い人を怒らせることもないじゃない。
ミリーナ今のところゲフィオン様にもよくしてもらっているし救世軍の人たちにも助けてもらったんだからどちらのことも悪く思う必要はないでしょ ?
イクス……そう、だよな。俺、つい先回りして色々悪いことを想像しちゃうんだよな。
ミリーナ大丈夫。その分私が楽天的になるから !
カーリャミリーナさまはイクスさまに甘すぎませんかぁ ?
ミリーナふふ♪ いいのよ。さあ、それよりカレイドスコープのところへ行きましょう。

Character8話 【1-10 ハンクス遺跡 B1F】
マーク驚いたな。あんたが何もしないなんて。
? ? ?まずはお手並み拝見というところですよ。世界にアニマが満ちる分にはこちらも助かりますからね。
マーク……俺は……ゲフィオンを許さねぇ。
? ? ?そうでしょうね。まぁ、しばらくは静観していることです。それが――彼の為でもありますよ。
マークわかってるってーの。イクスとミリーナを殺すのは――もう少し先の話だ。
ガロウズよう。待ってたぜ。
ユーリよっ !
ラピードワフ !
イクスガロウズ ! ? それにユーリさんとラピードさん ! ?どうしてここに ! ?
ガロウズ俺はゲフィオン様にカレイドスコープの整備を頼まれてな。
イクスガロウズはそんなこともできるのか ?
ガロウズ王宮付きの魔鏡技師をなめんなよ。つまる所は飛空艇と同じ、キラル分子を操る魔鏡技術でできてる物だからな。
ガロウズゲフィオン様に言われた四つの世界に関する設定は入れてあるぜ。
ユーリ俺はまぁ、野次馬根性って奴だ。自分がどうやって具現化されたのか見ておきたくてな。構わねぇだろ ?
イクスもちろんです。……ってゲフィオン様に怒られるかな ?
ユーリバレなきゃ大丈夫だろ。
ミリーナええ、みんなで内緒にしていれば ♪
ユーリそういうこった。
イクスはは……。そうですね。それじゃあ始めます。
ミリーナじゃあ、前回と同じように異世界にある強いアニマをサーチしましょう。
イクスああ。今度も上手くやらないと……。
ミリーナ大丈夫 ! 意識を腕の魔鏡に集中させるの。そこからカレイドスコープに内蔵されている魔鏡に力が伝わるわ。
ミリーナそうすればあとはカレイドスコープがやってくれる。前もそうだったでしょう ?イクスなら、絶対できるよ !
イクス──よし。やろう、ミリーナ。
ガロウズじゃあ、カレイドスコープを起動するぞ。こいつをこうして……。
ガロウズさて――どの世界から具現化する ?
イクス次は――この世界だ !
ルックおわわわわわ ! ? 地震 ! ?
マーク慌てんな。この間と同じ鏡震だ。
マーク次の具現化を始めやがったな、イクス……。
? ? ?次の大陸を何処に具現化したかはわかっています。早々に、尖兵たちを派遣して調査に当たらせましょう。
マーク動くのか ? 俺に静観しろって言っておきながら。
? ? ?情報を収集させるだけですよ。これからの為に、ね。
? ? ?ミリーナとイクスに手をつけるのは……その後のお楽しみ、ということですよ。
To be continued