| Character | 1話 【2-1 ポアソン街道 1】 |
| イクス | ………… ? |
| ミリーナ | イクス、どうかしたの ? |
| イクス | いや、なんだかこの大陸は空気が独特なような気がしてさ……。 |
| カーリャ | イクスさま。どれだけ空気のこと気にしてるんですか。 |
| ミリーナ | 独特なのは空気が澄んでるからじゃない ?ここの大陸って自然豊かだもの。 |
| イクス | そういうことか。確かにあちこちに色々な花が咲いてるもんな。 |
| イクス | もしかしてこの大陸を具現化するときに礎になった鏡映点と関係があったりするのかな。確か今回は小さな女の子だったけど……。 |
| ミリーナ | もしかしたら、自然やお花が好きな女の子なのかもしれないわね !とっても可愛いかったし、今から会うのが楽しみ♪ |
| イクス | けど鏡映点ってことは光魔に狙われやすいだろ。おちおち花も見てられないぐらい危ない目にあってるかもしれないぞ。 |
| イクス | いや……待てよ。鏡映点になるくらいだから見た目は小さな女の子だけどユーリさん並に強かったりするのかも……。 |
| イクス | けど普通に考えて小さな女の子がそこまで戦えるわけがないし……。ダメだ、不確定要素が多すぎるっ……。 |
| カーリャ | あぁ。イクスさまがまた深みにハマろうと……。 |
| ミリーナ | 今はとにかく鏡映点を捜すことに集中しましょう。どんな子かは会ってからのお楽しみ。ね ? |
| イクス | そ、そうだな。剣も鏡士の力にも、少しだけ慣れてきたし……よし ! やるぞ ! |
| ミリーナ | ふふっ。イクス、張り切ってるね。 |
| イクス | どこまでできるか自信はないけど……こんな状況だしさ。自分に出来る限りの事はしたいんだ。 |
| ミリーナ | うん ! すごく素敵だと思うよ。私たちも頑張ろうね、カーリャ。 |
| ミリーナ | イクスがうまくできるように、私たちは、何でもするの。──そう……例え火の中……水の中 ! |
| カーリャ | カーリャも頑張りますけど焦げたりびちょ濡れになったりはさすがにちょっと……。 |
| イクス | ミリーナが火傷したり風邪を引いたりしないよう俺も更に頑張らないと……。 |
| ミリーナ | ご、ごめんね、イクス !そんなにプレッシャー感じなくていいからね。さっきのは覚悟みたいなものだから気にしないで。 |
| カーリャ | 覚悟にしたって重すぎますよ……っとうん ? いまわずかにプルッときたような。 |
| ミリーナ | もしかして鏡映点じゃないかな ?レーダーでもこのあたりに反応があったもの。 |
| カーリャ | かもですね !幸先いい感じです♪ |
| 光魔の声 | …ウゥ~…ハルルルルル ! |
| カーリャ | って、そう喜んでもいられなかったですぅ ! |
| イクス | ──光魔か ! ?近くで誰かが襲われてるんじゃ―― |
| ミリーナ | 見て ! 商人の男性と……もう一人いる !光魔に囲まれててよく見えないけどあの背丈、まだ小さい女の子よ ! |
| イクス | くそっ……取り返しがつかないことになる前に急いで助けないと ! ! |
| 商人 | な、なな……何でこんな所に、魔物が ! |
| ソフィ | まだまだいる……この魔物何…… ? 不思議な感じがする…。 |
| イクス | さがって ! ! |
| ミリーナ | もう大丈夫だからね。 |
| ソフィ | えっ ? |
| イクス | くらえっ ! ! |
| ミリーナ | 数が多い……。 |
| イクス | ここは俺が引きつける ! |
| 光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
| イクス | うっ……前に出たもののその次の手が―― |
| ミリーナ | イクス ! 危ない ! |
| イクス | ――えっ ! ? |
| ソフィ | はぁぁぁっ ! |
| 光魔 | ギァァァァァッ…… ! |
| イクス | そ、そんな……。 |
| ミリーナ | い、一撃で……吹き飛ばしちゃった。 |
| ソフィ | 大丈夫 ? |
| イクス | あ、ああ……って、君 !鏡映点の女の子じゃないか ! ? |
| ソフィ | 鏡映点 ? |
| ミリーナ | 私たち、事情があってあなたを探してたの。 |
| ソフィ | わたしを…… ? |
| イクス | って、詳しい話はこいつらを倒してからだ ! |
| ソフィ | 手伝ってくれるの ? |
| イクス | ああ。もしかして……足手まといだったりするかな ? |
| ソフィ | ううん、ありがとう。一緒に戦おう。 |
| イクス | よかった ! じゃあいくぞっ ! |
| Character | 2話 【2-2 ポアソン街道 2】 |
| イクス | ──ってことで……俺たちはソフィを鏡映点としてこの大陸を具現化させてもらったんだ。 |
| ソフィ | 具現化……わたしが、鏡映点…… ?説明されても、よく、わからない。 |
| ミリーナ | ……そうだよね。突然の事でどうしていいか戸惑っちゃうよね。 |
| ソフィ | ううん。考えても、よくわからないときはとりあえず、できることから。 |
| イクス | さっき助けた人をこの先の村まで送るんだよな ? |
| ソフィ | うん。魔物が出てきたら危ないから。 |
| ミリーナ | ……わぁ……小さいのになんてしっかりした子なの……。 |
| カーリャ | ミリーナさま、顔が緩みきってますよ。 |
| イクス | 相変わらず子どもが好きだよな。特に女の子……。村でもよく面倒をみてたけど。 |
| ソフィ | ――じゃあ、わたし、行くね。 |
| ミリーナ | ちょ、ちょっと待って。私たちもソフィと一緒に行くよ。 |
| ソフィ | そうなの ? |
| イクス | ああ。ソフィのことを放ってはおけないし俺たちも村に行って情報収集をしたいからさ。 |
| ソフィ | 情報収集 ? |
| イクス | 光魔の鏡っていう光魔の発生源についてだよ。これを封印――破壊しないと、光魔……さっきみたいな魔物が無限に湧いてきてしまうんだ。 |
| ミリーナ | まずはどのあたりから光魔がやってくるか調査するの。それがわかれば光魔の鏡がどこにあるかもだいたい推測がつくから。 |
| ソフィ | ……光魔の鏡。うん、わかった。それならわたしも協力する。 |
| イクス | いいのか ? 確かにソフィはびっくりするくらい強いけど、危険な目に遭うかもしれないぞ ? |
| ソフィ | さっきみたいにまた誰かが襲われるのはイヤだから。戦うことになっても、わたしは平気。 |
| ミリーナ | ……ソフィ、なんていい子なの。ソフィ自身がいい子なのはもちろんだけれどきっとご両親の育て方もよかったのね。 |
| ソフィ | ご両親って、アスベルとシェリアのこと ? |
| イクス | アスベルさんとシェリアさんって言うのか。ソフィがこれだけしっかりしてるってことはそのお二人もすごい人格者なんだろうな。 |
| 商人 | ……人格者の二人か。 |
| ソフィ | 何か知ってるの ! ? |
| 商人 | 実は、昨日の夜、えらく強い男女二人組に賊から助けてもらったんだ。 |
| 商人 | 夜だったから姿はよく見えなかったんだけどな。あの戦いぶりはそこのお嬢ちゃんにも引けを取らないぐらいだった。 |
| ソフィ | もしかしてアスベルとシェリア ?二人もこの世界にいるかも知れないの ? |
| イクス | いや、それは……どうなんだろう。 |
| イクス | 今回はソフィを鏡映点として具現化したから他の人が鏡映点として具現化されているとしたらカレイドスコープに不具合があるってことだよな。 |
| ミリーナ | イクス……。 |
| イクス | (それか、元の世界の姿だけを借りて具現化されたこの世界の住人――だなんて言ったらこの子、悲しむだろうな……) |
| イクス | (鏡映点は、本人の鏡像を異世界から具現化する。でも鏡映点以外の人間はこの世界の人間として具現化される) |
| イクス | (ソフィの記憶を経由しているから、もしかしたらソフィのご両親も、姿だけ同じだけどソフィのことを知らない存在として、作られている可能性はある) |
| イクス | (姿だけの借り物とはいえ……命を具現化する……。本当にこれでいいんだろうか……) |
| ソフィ | ……………。 |
| イクス | あっ……。 |
| ソフィ | ……わたし、二人を捜したい。 |
| イクス | ……うん、わかった。ソフィのご両親についても街で情報収集してみよう。 |
| ミリーナ | そうだね。それまではソフィのこと私たちが責任をもって預かりましょう。 |
| イクス | えっ……。あ、ああ……そう、だな……。 |
| ソフィ | イクス ? どうかしたの ?顔色、少し悪いよ。 |
| イクス | 実は俺……小さい子はちょっと……\nいや、ソフィみたいな大人しい子なら\nそこまでではないんだけど……。 |
| ソフィ | ごめん。よく聞こえない。 |
| イクス | な、なんでもないよ。とにかく俺は大丈夫だから !えっと……ソフィ、改めて、よろしくな。 |
| ミリーナ | よろしくね、ソフィ。 |
| ソフィ | うん。よろしく。それと、ありがとう。 |
| イクス | ありがとう……って ? |
| ソフィ | わたしのこと心配してくれて。 |
| 二人 | ソフィ……。 |
| カーリャ | みなさーん ! ちょっと見てくださいよ !いいもの見つけました ! |
| ソフィ | あっ。 |
| ミリーナ | とっても綺麗 !紫色の花なんて珍しいね ! |
| イクス | 図鑑でも見たことがない。なんて言う花なんだろう。 |
| ソフィ | クロソフィ。 |
| ミリーナ | クロソフィって言うんだ。花の印象も名前もなんだかソフィにぴったりだね。 |
| ソフィ | うん。クロソフィはね、私の名前の由来になった花なんだ。 |
| イクス | ソフィにとって大切な花なんだな。 |
| カーリャ | ならソフィさまにあげますよ。カーリャはこの花を売ったお金で駄菓子を買おうと思ってただけですから。 |
| イクス | 食べ物目当てだったのかよ……。 |
| ソフィ | ありがとう。カーリャ。 |
| イクス | あれ……でもこのクロソフィって花この辺りでは見かけなかったよな。カーリャ、どこに生えてたんだ ? |
| カーリャ | 生えていたんじゃなくて落ちてたんです。 |
| イクス | ……ってことは何かによって別の場所から運ばれてきたのか。 |
| ソフィ | ……別の場所から。 |
| イクス | 風か……あるいは動物か人か……。落ちていた時の状況を見ないと何とも……。 |
| カーリャ | 別にどうでもいいじゃないですかー。とにかく村に行きましょうよ。 |
| ソフィ | それじゃあ、行こう。村はこっち、ついてきて。 |
| Character | 3話 【2-5 畑のある村】 |
| イクス | まさか村の周りにまで光魔がいるとは思わなかったな。まだまだ準備と予測が足りてないってことか……。 |
| ミリーナ | なんとか村まで辿り着けてよかったよね。 |
| イクス | これもソフィのおかげだな。すごく強くてまた助けられたよ。ありがたいけど……なんか、申し訳ないな。 |
| ソフィ | どうして ?みんなの役に立てるの、嬉しいよ。 |
| イクス | やっぱり世話になりっぱなしなのが気になるっていうか……。 |
| イクス | いや、こう立ち止まってる暇はないな。早く光魔の鏡を破壊しないと。 |
| ミリーナ | さっき助けた人も無事に送り届けたし情報収集、開始だね。 |
| イクス | ああ。さっそく聞き込みを……って、あれ ?ソフィ、どこに行くんだ ? |
| ソフィ | わたしも情報収集。 |
| ミリーナ | ソフィも ? |
| ソフィ | うん。 |
| カーリャ | あ、行っちゃいました。手分けして聞き込みする感じですかね ? |
| ミリーナ | かもしれないね。村の中は安全そうだしそっちの方が効率的だもん。ソフィ、自発的に行動できて偉いなぁ。 |
| イクス | カーリャ。いちおうソフィを見ていてくれないか ?何かあったら俺たちに知らせてくれ。 |
| カーリャ | この村の中くらいならカーリャも自由に動けますし大丈夫ですよ ! |
| イクス | よし。それじゃあ手分けして聞き込み開始だ。 |
| お姉さん | 私が最初に見たのは……あっちの方だったかな。 |
| ミリーナ | ありがとうございます。 |
| イクス | ミリーナ。俺の方は聞き込み終わったよ。 |
| ミリーナ | 私も。これがまとめたメモだよ。 |
| イクス | やっぱりアスベルさんとシェリアさんらしき人については、何も掴めずか……残念だな。 |
| ミリーナ | そうだね……けど光魔の鏡についてはだいぶ絞れてきたよ。 |
| イクス | ──村の人の情報を総合すると、あっちの方から、じわじわって感じだな。 |
| ミリーナ | この方角に向かってみようよ。近づいていったら、カーリャが探知できるかもしれないし。 |
| イクス | そうだな。それじゃあソフィとも合流を……あっ、ちょうどあそこにいた !聞き込み中みたいだな。 |
| ソフィ | 【心が安らぐような場所】……知らない ? |
| おじいさん | 【心が安らぐような場所】って……なんだいそれは ? |
| ソフィ | この花が咲いている場所。 |
| おじいさん | ああ。クロソフィだね。それならたぶん―― |
| ソフィ | みんな。お待たせ。わたしも情報収集、終わったよ。 |
| イクス | ソフィ。さっき話してるのが聞こえたんだけどその……クロソフィが咲いている場所に行きたいのか ? |
| ソフィ | うん。【心が安らぐような場所】。光魔の鏡を壊したあと、行ってもいい ? |
| イクス | あ、ああ。もちろんだけど……。 |
| カーリャ | 光魔の鏡とソフィさまが行きたい場所は同じ方向にあるみたいでしたし、まさに一石二鳥 !はやく光魔の鏡をぶっ壊しちゃいましょう ! |
| ソフィ | うん。イクスもカーリャもありがとう。じゃあ出発。 |
| ミリーナ | クロソフィが咲いている場所かぁ……。とっても綺麗なんだろうな。 |
| イクス | なあ、ミリーナ。【心が安らぐような場所】ってことはソフィは心を安らげたいってことだよな ? |
| ミリーナ | なの……かな ?それがどうかしたの ? |
| イクス | いや。ソフィってまだ小さいのにすごく落ち着いているというかちょっと淡々としているところがあるだろ。 |
| イクス | もしかしたらソフィ、胸の中にすごい闇を抱えているんじゃないかと思って。俺、心配になってきて……。 |
| カーリャ | 発想が飛躍しすぎですよ !イクスさまの方が闇を抱えているんじゃないですか ! ? |
| イクス | 俺の話はいいだろ ! それよりソフィだ ! |
| イクス | ……例えば……山賊に連れ去られて両親と離ればなれになってしまった。拳術を磨き山賊のアジトからなんとか脱出するも―― |
| イクス | 行く先がなく、孤独と寒さに震え続け気がついたら心は傷つき凍りついてしまったんだ。そして人々につけられた名は『悲しみの格闘家』 |
| イクス | くそ、そんな辛い過去を持つソフィに「すごく強い」なんて言って……俺、酷すぎだろ……。 |
| カーリャ | 小説の読みすぎなんじゃないですか ? |
| イクス | けどこう考えればソフィが【心が安らぐような場所】を探している理由も納得できるだろ。 |
| イクス | そんな大変な思いを抱えている中俺たちが具現化したせいで余計に心が疲れてしまったのかも……。 |
| ミリーナ | うーん。私も考えすぎだと思うけど……。心配なら歩きながら聞いてみようよ ! |
| Character | 4話 【2-6 ガウス森林】 |
| カーリャ | ソフィさま。さっき【心が安らぐような場所】を探してるって言ってましたけどどうしてなんですか ? |
| ソフィ | 大切な場所だから。 |
| ミリーナ | クロソフィはソフィの名前の由来みたいだしその場所にも思い入れがあるのね ? |
| ソフィ | うん。友情を誓った思い出の場所。 |
| ソフィ | それに、アスベルたちと離れ離れになっちゃったけどそこでまた会うことができたから。この世界でも、そこに行けば、また会えるかなって。 |
| ミリーナ | ……ソフィ。 |
| イクス | 親御さんだけじゃなく友達との思い出の場所でもあったのか。 |
| ソフィ | わたしにとってすごく大切な場所。だから、イクスたちにも見て欲しいな。 |
| ミリーナ | ううっ……ソフィ ! ちょっと頭、撫でさせて。やっぱり、ソフィはいい子だね……。どうしてこんなにいい子なの。 |
| ソフィ | きっと……友達の、みんなのおかげ。みんなと旅したから、だよ。 |
| イクス | よし ! クロソフィの咲いている場所を一緒に見つけよう。俺たちも手伝うからな ! |
| ソフィ | うん。ありがとう。 |
| カーリャ | にしし。良かったねですね、イクスさま。ソフィさまのあの強さが、深い悲しみから生まれてなくて。 |
| イクス | ほんとよかったよ……。ずっと胸がじくじくしてたんだ。 |
| ミリーナ | でも……私よりずっと小さいのにあんなに強いの、とっても憧れちゃう。私も、ああいうの、やってみたいな。 |
| カーリャ | あの身のこなしと戦い方はどちらかというとイクスさまの方が必要なんじゃないですか~ ? |
| イクス | ……確かに……そうなんだよなぁ。 |
| イクス | よし ! ソフィ、ちょっといいか ? |
| ソフィ | 何 ? |
| イクス | お願いがあるんだけど……。えっと、俺に戦い方を教えてくれないか ?できる範囲で、構わないから。 |
| ソフィ | 戦い方 ? |
| イクス | 俺、もっと上手く戦えるようになりたいんだ。 |
| カーリャ | おお。イクスさまレベルアップ大作戦ですね ! |
| イクス | ああ。戦い方だけじゃなくてソフィの強さの秘訣も知りたい。 |
| イクス | 鏡映点に助けてもらえるのはありがたいことだけどやっぱりそのままじゃダメだと思うし少しでも成長していきたいから。 |
| イクス | だから……いいかな、ソフィ ? |
| ソフィ | ごめん。わたし、教えたことないから、わからない。……教えるのは、教官ならできたのかも。 |
| イクス | そっか……いや、大丈夫だよ。まずはソフィを見習ってみることにする。こういうのは見て覚えるのが大切だって言うしさ。 |
| ソフィ | 見習うってどういうこと ? |
| イクス | えっと……ソフィの良いところを真似するって意味、かな。 |
| ソフィ | わかった。いいよ、真似しても。わたしもアスベルやシェリアたちの真似、よくしてたから。 |
| ミリーナ | ソフィも身近な人たちの背中を見て大きくなっていったのね。 |
| ソフィ | うん。そうかもしれない。 |
| イクス | これはいいことを聞いたな。よし、俺もソフィみたいに頑張るぞ ! |
| ソフィ | わたしにも何かできることがあったらそのとき伝えるね。 |
| イクス | ああ ! ありがとう、ソフィ ! |
| ミリーナ | ふふっ。 |
| カーリャ | ミリーナさま、どうかしました ? |
| ミリーナ | ソフィもいい子で可愛いし張り切るイクスも可愛いなって思って。 |
| イクス | そこは可愛いじゃなく頼もしいとか、格好いいだろ……まったく。子供扱いするなよな。 |
| ミリーナ | うん。けど、何か困ったことがあったら昔みたいに遠慮なく頼っていいんだからね。喉が渇いたとか、お腹が空いたとか |
| カーリャ | はいはーい ! カーリャはお腹すきました ! |
| イクス | おいおい……さっき食べたばっかりだろ。このあたりは光魔も出て危険だし腹ごしらえはもう少し進んでからだ。 |
| カーリャ | そんな……カーリャは今にもお腹と背中がくっついちゃいそうなのに。 |
| ミリーナ | けどお腹が空くとご飯もより美味しくなるわよ。もう少し我慢してね。 |
| カーリャ | くっ……わかりました。ミリーナさまたちにとってもここからは険しい道。カーリャもこの危機を乗り越えてみせます。 |
| ミリーナ | ふふ、次の休憩場所についたらすぐ料理に取り掛かれるよう何を作るか考えておくわね。 |
| ソフィ | 次の……ご飯……。 |
| ミリーナ | ソフィは何か食べたいものはある ? |
| ソフィ | カニタマ。 |
| カーリャ | おっ、即答ですね。 |
| イクス | ソフィのこんな表情はじめてみた。そんなに好きなんだな。 |
| ミリーナ | それじゃあカニタマで決まり。ソフィに喜んでもらえるよう腕によりをかけて作るね。 |
| ソフィ | ありがとう。楽しみ。 |
| イクス | よし、それじゃあ先に進むとするか。 |
| Character | 5話 【2-7 オイゲン氷山地 麓】 |
| イクス | 進んでも進んでも、あたり一面雪で真っ白だな……。 |
| ミリーナ | ソフィ、寒くない ? |
| ソフィ | わたしは大丈夫だよ。 |
| カーリャ | さっきのカニタマのおかげかソフィさまは元気いっぱいって感じですね。 |
| ソフィ | うん。とっても美味しかった。 |
| ミリーナ | ありがとう。喜んでもらえて私も嬉しいよ。また食べたくなったら言ってね。 |
| ソフィ | なら次もカニタマがいい。 |
| イクス | 次もカニタマ ! ? それは栄養が偏るんじゃ……。いや、けどカニタマがソフィの強さの秘訣かも……。 |
| イクス | なら……よし ! 俺もソフィを見習ってどんどんカニタマを食べるぞ ! |
| カーリャ | 見習うところそこですか ! ?ただ好きなだけだと思いますけど ! |
| ソフィ | けど……同じものばかり食べてるとシェリアに怒られる。だからミリーナに任せるね。 |
| ミリーナ | ソフィ……もう本当にいい子なんだからっ。ええ、私に任せて ! 私、カニタマも食事の栄養バランスも両立できるようにがんばってみるね。 |
| イクス | けど今は料理のことより雪原を越えることを一番に考えよう。 |
| イクス | 雪原は同じ景色が続くから迷いやすいうえ寒さ、足場の悪さの影響も加わり体力の消耗も激しい。みんな、くれぐれも油断しないようにな。 |
| ソフィ | わかった。 |
| ミリーナ | カーリャ。光魔の鏡の反応は ? |
| カーリャ | ちゃんと近づいてますよ。進路は間違っていないはずです。 |
| ソフィ | なら……【心が安らぐような場所】にも……。ありがとう、カーリャ。 |
| カーリャ | えへへ。ソフィさまに褒められちゃいました。 |
| イクス | ……きっとまた強い光魔と戦うことになる。作戦を考えたり、武器を手入れしたりしっかり準備しておかないとな。 |
| イクス | ソフィと出会ったときみたいにまた強い敵と正面からやりあわざるを得ないことになったら……。 |
| ミリーナ | ……イクス。 |
| カーリャ | むむっ ! この感じは ! ! |
| ソフィ | ! みんな、構えて ! |
| ミリーナ | 雪の中に潜んでいたのね。イクス、どうしよう ! ? |
| イクス | くそ、囲まれてる…… ! ?こういう自分が不利なときの定石は陣形を崩さず防御に徹して―― |
| 光魔 | ……ウゥ……ハルルルル……。 |
| カーリャ | ちょっ ! 後ろから来ますよ ! |
| イクス | ――なっ ! ! |
| ソフィ | ハァッッ ! ! |
| ミリーナ | ソフィ ! ありがとう ! |
| ソフィ | わたしが光魔を引きつける。 |
| イクス | けどそれじゃあ―― |
| ソフィ | 大丈夫。これくらいならどうってことない。 |
| カーリャ | ソフィさま ! また他にも―― |
| ソフィ | ――ヤァッッ ! |
| カーリャ | って、心配無用でしたね !カニタマもチャージしたソフィさまは無敵です ! |
| イクス | ……さすがソフィだな。俺も引き下がってる場合じゃない。ったく、何やってるんだ、俺は。 |
| ミリーナ | イクス ? |
| イクス | ミリーナ……援護は頼んだ !一体一体なら今の俺たちでも十分倒せるんだ !冷静に、確実に倒していこう ! |
| ミリーナ | うん、わかった ! |
| イクス | よしっ、俺たちもソフィに続くぞ ! |
| Character | 6話 【2-8 オイゲン氷山地 中腹】 |
| 光魔 | ……ウゥ~……ハルルルルル ! |
| イクス | くっ……。 |
| ソフィ | こっちは全部倒した ! |
| ミリーナ | イクス ! この敵が最後だよ ! |
| イクス | あ、ああ ! こっちは任せろ !こいつは……俺が―― ! ! |
| イクス | なっ ! ! しまった ! ?剣が、弾かれ── |
| ミリーナ | 危ない、イクス ! |
| ソフィ | ──はぁぁっ ! |
| ソフィ | しぶとい ! |
| イクス | ……ソフィ ! ? |
| ミリーナ | ソフィ ! 一度さがって ! |
| ソフィ | 大丈夫 ! これで終わり ! |
| イクス | ……さ、さすがだな。 |
| ミリーナ | うん……。今、目で追えなかった。 |
| ソフィ | 二人とも。大丈夫 ? |
| イクス | ああ……。ソフィのおかげでな。ありがとう、助かった。 |
| ミリーナ | ソフィこそ怪我はしてない ? |
| ソフィ | うん。わたしも平気だよ。 |
| カーリャ | みんなが無事でよかったです……。一瞬どうなるかと思っちゃいましたよ。 |
| ミリーナ | うん……今のは私もさすがにヒヤッとしたよ。イクスだけじゃなくソフィにも。もちろんソフィは強いってわかってたけど……。 |
| ソフィ | ミリーナ ? |
| イクス | ……ソフィはすごいな。 |
| ソフィ | わたしが ? |
| イクス | 俺、頭では飛び出してやりたいって思っててもなかなか行動がついていかないんだ。だからやるべきことに真っ直ぐなソフィが羨ましい。 |
| イクス | ソフィみたいにって思ってもどうしても自分の感情に振り回されちゃうんだよな。焦りとか不安とか恐怖とか……色んな気持ちにさ。 |
| ソフィ | ごめん。わたしには、それがよくわからない。 |
| イクス | えっ ? |
| ソフィ | たぶん、わたしがプロトス1だから。ラムダを消すために生まれた戦闘用ヒューマノイドだからだと思う。 |
| ミリーナ | ちょ、ちょっと待って。ラムダっていうのがよくわからないけどソフィが……戦闘用ヒューマノイドって……。 |
| イクス | ウソ、だよな……。それ、ソフィが……兵器って意味にしか聞こえないけど……。 |
| ソフィ | うん。対消滅……自分の命を引き換えにラムダを消し去ることがわたしの使命なの。 |
| ミリーナ | そんな……そんなのあんまりだよ。酷すぎる……。 |
| イクス | だから、ソフィは戦いの時でも……。 |
| イクス | ――ごめんっ !俺、ソフィの事情を全然知らないくせに羨ましいとか言っちゃって ! ! |
| イクス | ごめん……本当に、ごめんっ ! ソフィ ! |
| ソフィ | 大丈夫だよ。ちゃんとわかってるから。イクスたちも、アスベルたちと同じ。わたしをわたしとして見てくれているって。 |
| ミリーナ | もちろんだよ ! 何であろうとソフィが可愛い女の子であることには違いないもの。 |
| カーリャ | カニタマやクロソフィが好きだったり意外と普通ですもんね。イクスさまの方がよっぽど変わってますもん。 |
| イクス | それはソフィに対しても俺に対しても失礼だぞ。まあ、それはともかく―― |
| イクス | 俺たちにとってソフィはソフィだ。今までも、そしてこれからも。 |
| ソフィ | うん。 |
| カーリャ | さあ ! お互い腹を割って話し合い絆も深まったってことで !いざ出発です ! |
| ソフィ | 待って。 |
| イクス | どうかしたのか ? |
| ソフィ | イクス。わたしと戦ってみて。 |
| イクス | えっ……ソフィと ? |
| ソフィ | いまなら何か伝えられると思う。けど、わたし、上手く説明ができそうにないから。──これが今のわたしに出来る、一番の方法。 |
| イクス | ソフィ……。 |
| イクス | ……わかった !それじゃあ、よろしく頼む ! |
| Character | 7話 【2-8 オイゲン氷山地 中腹】 |
| イクス | ……よ、よし。なんとか防ぎきった !これで勝負あったか―― |
| ソフィ | ──そこっ ! |
| イクス | なっ―― ! ? |
| カーリャ | ソフィさまの勝ちです ! |
| イクス | まいった……。 |
| カーリャ | イクスさまは詰めが甘いですね。やっぱりソフィさまの方が数段上――。 |
| ミリーナ | ……カーリャ ?イクスも、すごく、頑張ってたでしょ ? |
| カーリャ | は…… ! そ、そうですね !イクスさまも、互角の戦いでしたよ ! |
| イクス | そういう気遣いが一番傷つくんだけど……。 |
| ソフィ | イクス、どうだった ? |
| イクス | そうだな……。ソフィの強さを実感したよ。あの間合いから飛び込んでくるとは思わなかった。少なくともいまの俺にはできそうにない。 |
| イクス | それと、俺ってさ、一歩下がるクセがあるのかもしれない。危ないかもって思ったときに。 |
| イクス | 頭では攻め込んでも大丈夫なはずってわかってる。けど……胸のあたりが締め付けられるっていうか……やっぱり、感情に振り回されちゃってるんだ。 |
| ソフィ | なら、わたしも感情に振り回されてる。 |
| イクス | えっ……ソフィが ? |
| ミリーナ | 全然そんなふうには見えないけど。 |
| ソフィ | わたしも戦いながら、強さの秘訣を考えてみたの。そしたらアスベルたちみんなのことが思い浮かんで自然と胸のあたりが温かくなった。 |
| ソフィ | 大切なのは気持ち。それがあるから、わたしは一歩踏み出せるんだと思う。何かを感じるのは、きっといいことだよ。 |
| イクス | 何かを感じないからじゃなく感じるから強くなれる……か。 |
| イクス | やっぱりソフィはすごいな。俺にはソフィが持っているようなそういう特別な気持ちがあるかどうか……。 |
| ソフィ | 大丈夫。イクスにもきっとあるよ。だって、それは―― |
| ソフィ | 大切なものを守りたいっていう想いだから。 |
| イクス | 大切なものを……守りたい……。 |
| イクス | そうか……だからソフィはそんなにも強くいられるのか……。 |
| ソフィ | 伝わった ? |
| イクス | ああ、ちゃんと伝わったよ。ありがとう、ソフィ。 |
| ソフィ | うん。よかった。 |
| イクス | よし、それじゃあ行くとするか。 |
| ミリーナ | もう少しで雪原も越えられそうだよ。 |
| カーリャ | そしたらきっと光魔の鏡ももうすぐです ! |
| イクス | つまり……光魔の主もいるはずだ。きっと今まで戦った光魔よりもずっと強い。覚悟していかないと。 |
| ミリーナ | あれ…… ? |
| カーリャ | ミリーナさま。どうかしました ? |
| ミリーナ | 何か落ちてるみたい。 |
| ソフィ | それって……クロソフィ。どうしてここに落ちてるの。 |
| イクス | 待て……そのクロソフィが落ちていたところって確かさっき光魔と戦った場所だよな。 |
| カーリャ | あっ ! カーリャが拾った場所もそういえば光魔と戦った場所でしたよ ! |
| イクス | ならクロソフィは光魔についていた可能性が高い……。となると【心が安らぐような場所】は……。 |
| ソフィ | 大丈夫かな……。 |
| イクス | ……とにかく急ごう。行けばきっとわかる筈だ。 |
| Character | 8話 【2-13 心が安らぐ場所 1】 |
| ミリーナ | わぁ……とっても綺麗。もしかして、ここが── |
| ソフィ | 【心が安らぐような場所】。 |
| ソフィ | 花と、木と……。やっぱり、ラントの裏山によく似てる。 |
| カーリャ | まさか光魔の鏡より先に見つかるとは !よかったですね、ソフィさま ! |
| イクス | けど……誰もいないみたいだな。 |
| ソフィ | わたしやイクスたちがいるよ ? |
| イクス | えっと……そうじゃなくて……。 |
| ソフィ | アスベルたちと会えなかったのは残念。だけど、イクスたちにこの場所を見てもらえて、わたしは嬉しい。 |
| ミリーナ | ……ソフィ。 |
| ソフィ | 光魔にも荒らされてなくてよかった。 |
| イクス | ああ。ちょっと心配しすぎだったみたい―― |
| カーリャ | ──ぶるぶるぶるぶる ! |
| イクス | カーリャ ! その反応 !もしかして――光魔の鏡 ! |
| ソフィ | ハアッ ! |
| ソフィ | ……すごい数。 |
| イクス | それに光魔の主まで。くそ、このまま暴れられたらこの場所が―― |
| ミリーナ | イクス ! 構えて ! |
| ソフィ | ! 間に合わない、クロソフィが―― |
| イクス | うっ……大丈夫だ ! こっちは俺に任せろ ! ! |
| イクス | (俺がこのまま動かなければクロソフィの花がメチャクチャにされてしまう。そんなの……絶対にダメだ) |
| イクス | (この間合いならいけるはず……。けど……もし失敗したら――後ろにいるミリーナが危険に……) |
| イクス | (いや──そうじゃない。俺はミリーナもソフィの大切な場所も守るんだ。だから……それ以外の小さな気持ちなんて――) |
| イクス | 何だって構うもんかぁぁぁぁっ ! |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| イクス | くそっ……初動が遅れたせいで切先が届かなかった……。このままじゃ……競り負け、そう―― |
| ソフィ | ――たぁぁっ ! |
| 光魔の主 | ギャァァァァァッ ! ? |
| イクス | ソフィ ! 助かった、ありがとう ! |
| ソフィ | ううん。助けられたのはわたしの方。時間を稼いでくれてありがとう、イクス。 |
| カーリャ | さあ ! この勢いに乗ってあいつにトドメを刺しちゃって下さい ! |
| ソフィ | いこう、二人とも。 |
| ミリーナ | うん ! |
| イクス | 大切なものを守るために ! |
| Character | 9話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
| イクス | よし……どうにか倒せたぞ。 |
| ミリーナ | あとは光魔の鏡だけ !イクス、お願い ! |
| イクス | わかった。 |
| イクス | 破壊完了 !これで、光魔の出現も止まるはずだ ! |
| ミリーナ | うん ! やったね、イクス !お疲れさま ! ! |
| ソフィ | この場所も……被害は少ないみたい。少しお手入れをすればすぐ元通りにできそう。本当に、よかった……。 |
| ソフィ | イクス、ミリーナ。ありがとう。これも二人のおかげ。 |
| ミリーナ | ううん。こっちこそお礼を言わないと。ソフィが助けてくれたからさっきの光魔の主も倒せたんだもの。 |
| イクス | ああ。それに……俺も、今度はちゃんと一歩踏み出すことができた。ソフィのおかげだ、本当にありがとう。 |
| ソフィ | ううん。それはイクスが頑張ったからだよ。 |
| イクス | いやいや。頑張れたのもやっぱりソフィがいてくれたからこそで―― |
| カーリャ | もう。なんですかその譲り合い。ちょっと他人行儀過ぎですよ。カーリャたちとソフィさまの仲じゃないですか。 |
| ミリーナ | ふふっ。そうだね、カーリャ。お互い助け合ったってこと、だよね。 |
| ソフィ | うん ! だってもうわたしたちは友達だから ! |
| イクス | 友達……。 |
| イクス | ……ああ、俺たちは友達だ !ありがとう、ソフィ !俺、ソフィと友達になれてとっても嬉しいよ。 |
| ミリーナ | うん、私も ! |
| カーリャ | カーリャもです ! |
| ソフィ | わたしも。 |
| ソフィ | アスベルたちにも言いたいな。友達が増えたよって。きっと喜んでくれると思うから……。 |
| イクス | ああ。きっといつか、伝えられるときが来る。俺はそんな気がするよ。 |
| カーリャ | いつもネガティブなイクスさまにしては珍しくポジティブな見解ですね。 |
| イクス | うるさいなぁ。たまにはいいだろ。 |
| ソフィ | イクスたちがこの場所を守ってくれたみたいにわたしもイクスたちの大切な場所を守りたい。 |
| ソフィ | ……アスベルたちを見つけるまでイクスたちと一緒に戦いたい。 |
| ミリーナ | ありがとう、ソフィ。私たちも、アスベルさんとシェリアさんのこと一緒に捜すね。 |
| ソフィ | うん。よろしく、みんな。 |
| イクス | ああ ! こちらこそ、よろしく、ソフィ ! |
| イクス | よし。それじゃあさっそくこの場所の手入れを―― |
| イクス | ! ? な、何だ……今の。 |
| Msc_002_009_speaker01 | 殺されかかったってのにずいぶん呑気なセリフを吐くもんだな。 |
| イクス | マーク…… ?どうしてこんなところに ?それに今の攻撃は…… ? |
| ミリーナ | ――待って、イクス。あの人、『殺されかかった』って言ったわ。つまり―― |
| マーク | はは、そう睨むなよ、怖い怖い。今回はついでだ。 |
| マーク | ちょいと光魔が暴れまわってるって話を聞いてな。救世軍として討伐に来たところにお前らがいたんだ。 |
| マーク | 光魔相手に勝つとはなぁ。鏡士の死体が二つ転がってても不思議じゃないと思ってたが……。 |
| イクス | ……どういう意味ですか。 |
| マーク | そんなこともわからねぇのか。案外察しが悪いんだな、イクス。簡単な話さ。俺はお前に死んでもらいたいんだわ。 |
| ミリーナ | どうして ! ?オーデンセの海で助けてくれたのはあなたなんでしょう ! ? |
| マーク | あの時は、な。 |
| イクス | ……もしかして !俺たちがゲフィオン様についたから ! ? |
| マーク | 悪の宰相ゲフィオンが命じた使命──救世軍がそいつを止めんのは道理だろ ? |
| ソフィ | イクス、ミリーナ ! 気を付けて !この人……凄く、強い ! |
| マーク | おおっと。小さな鏡映点サマにお褒めの言葉を頂けるとは恐悦至極。 |
| マーク | だが、悪いな。ここで全員、死にさらせ。 |
| イクス | マーク ! やめてくれ ! まずは話を―― |
| マーク | うるせぇ、この腰抜けがっ ! !てめぇのそのツラみてるとイライラすんだよ ! |
| ソフィ | イクス ! 構えて ! |
| ミリーナ | くるわ ! |
| イクス | ――くっ ! ! |
| Character | 10話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
| イクス | ──でぇぇぇぇいっ ! ! ! |
| マーク | ……へぇ、飛び込んでくるのか。 |
| イクス | ──はぁはぁ……どうだ ! |
| マーク | どうだ、ねぇ。──だが、いいのか ?俺に気を取られすぎてると……。 |
| ミリーナ | ── ! ? |
| マーク | あいつ、死ぬぜ ? |
| イクス | ミリーナ ! |
| ソフィ | ──させない ! |
| マーク | ──おっと。 |
| ミリーナ | ──ソフィ ! |
| イクス | ありがとう ! 助かった ! |
| マーク | よかったなぁ、イクス。大事な女のツラがグシャグシャにならなくてよ。 |
| イクス | マーク、いい加減にしろ ! 冗談じゃすまないぞ ! |
| マーク | いい加減にしろ、だ ? 戦場で女一人すら自分の力で護れないような奴が、ずいぶん偉そうじゃねぇか。 |
| ソフィ | わたしたちは友達。助け合うことは普通のこと。あなたは……知らないの ? |
| マーク | ああ、知ってるよ。あんたはいいな。まともなオトモダチがいるみたいで。まぁ、そうじゃない奴もいるってことさ。 |
| イクス | ……マーク ? |
| マーク | ……なーんか、冷めちまったな。今日のところは引き上げるか。 |
| ミリーナ | 逃げるつもり ! ? |
| マーク | バカが。俺がお前たちを逃してやるんだよ。光魔がいねぇなら俺がここにいる理由もねぇ。 |
| マーク | それに……これ以上やりあえばうっかりお前を殺しちまうかもしれないからな。 |
| イクス | 今は殺さない理由があるってことか ? |
| マーク | こっちも色々と訳ありでね。またの機会を楽しみにしておいてくれや。 |
| マーク | イクス、ミリーナ。それから鏡映点と鏡精も。次に会う時は、遠慮なく殺し合えることを祈ってるぜ。せいぜい腕を磨いておきな。 |
| ミリーナ | マーク ! |
| ソフィ | ダメ ! 深追いは危険 ! |
| ミリーナ | そ、そうだね。今の私たちじゃ……。 |
| イクス | ……凄い強さだったな。救世軍の……マーク。 |
| ソフィ | あの人……イクスに対してすごく、怒ってるように見えたけど……。 |
| イクス | 俺がゲフィオン様についたから ?でも、そんな理由だけで…… ? |
| ソフィ | 人は悲しくても怒る。シェリアが言ってた。 |
| イクス | ……悲しくても、か。 |
| ミリーナ | イクス、セールンドに戻ったらゲフィオン様に相談してみよう。 |
| イクス | ……そうだな。 |
| イクス | けど王宮に向かう前に、この場所の手入れが先だ。 |
| カーリャ | マークとの戦いは光魔以上に激しかったですからね。さっきより被害が広がってなきゃいいですけど。 |
| ソフィ | あっ……。 |
| カーリャ | ソフィさま ? どうかしました ? |
| ソフィ | さっきの人……少し離れた場所で戦ってくれた。クロソフィ、無事みたいだよ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| イクス | ……何なんだろうな、まったく。 |
| Character | 10話 【2-14 心が安らぐ場所 2】 |
| イクス | ただ今、戻りました。ゲフィオン様。 |
| ゲフィオン | ご苦労。して、状況は ? |
| ミリーナ | 異世界エフィネアの具現化に成功しました。 |
| イクス | 鏡映点も無事確保、光魔の鏡も封印ひとまず大陸の安定化も図れたと思われます。 |
| ゲフィオン | 此度も、光魔に襲われた事であろう。二人とも怪我は無いか ? |
| イクス | 光魔は、大丈夫だったのですが……。 |
| ゲフィオン | …… ? |
| ゲフィオン | ……救世軍――か。最近活動が活発になってきたとは思っていたが……。 |
| ミリーナ | この任務のことを、どうやって知ったのでしょう ? |
| ゲフィオン | この計画は、混乱を避ける為、ごく一部の人間しか真実を知らない筈なのだがな……。 |
| イクス | どこからか、俺たちのことが漏れていたということですね……。 |
| ゲフィオン | その可能性が高い。セールンドの城内であっても油断はできぬな。 |
| ゲフィオン | お前たちにも甘言をもって近づく輩が現れるかもしれぬ。惑わされたり、かどわかされぬよう気をつけよ。 |
| ミリーナ | はい、わかりました。 |
| ゲフィオン | マークという男については私の部下に調べさせ、手を打っておく。心当たりも……ないではない。 |
| ゲフィオン | ──お前たちは、使命に集中せよ。他の些末な問題は、私の方で対処しよう。案ずる必要はない。 |
| イクス | ありがとうございます。ですが、まだ少し気になることが……。 |
| ゲフィオン | 何だ ? |
| イクス | その、マークなんですが……。何故か俺に対して怒りを抱いているような気がするんです。 |
| ゲフィオン | 気がする……か。報告として受け取るには、いささか曖昧だな。 |
| ミリーナ | ですがゲフィオン様 !イクスの命を狙ってくる相手なんです。何か、少しでも情報があれば── |
| ゲフィオン | ――どうであれお前たちが案ずることではない。今は、お前たちにしかできない使命を果たせ。 |
| ゲフィオン | では、謁見はここまでだ。イクス、ミリーナ、頼んだぞ。速やかに、次の世界を具現化させるのだ。 |
| イクス | は、はい……わかりました。 |
| ミリーナ | ……ゲフィオン様。途中からピリピリしてたね。 |
| イクス | さっきのは俺たちが悪いよ。ただの感覚の話をされても……。ゲフィオン様だって困るよな。 |
| イクス | そんなことより、世界の危機のことを考えてくれってそりゃあ、その通りだと思うよ。 |
| イクス | ゲフィオン様が手を打ってくれるって言ってくれたし、この件はもうお任せしよう。 |
| ミリーナ | ……うん。わかった。そうだね……。確かに今は目の前にある私たちにしかできない使命を果たさなくちゃ ! |
| イクス | ああ、カレイドスコープに行こう。次の世界を具現化するぞ。 |