| Character | 1話 【3-1 ディン森林地帯 西部】 |
| カーリャ | はい、到着っと。イヒヒ、イクスさま~ ?空気の心配はしなくてもいいんですかぁ ? |
| イクス | ……まだそれ引っ張るのか ? |
| ミリーナ | カーリャ。次に同じネタでイクスをからかったらおやつは抜きね。 |
| カーリャ | それはカーリャにとって拷問ですぅ~。イクスさまと親交を深めようとしただけなのに~。 |
| イクス | わかったわかった。とりあえず鏡映点を捜そう。確かこの辺りだったよな。 |
| ミリーナ | うん、それと今回は二人だからね。同じ場所にいてくれればいいけど……。 |
| イクス | うーん、偶然には期待しない方が無難だな。ケリュケイオンから見たら、街があったから立ち寄って、地道に聞き込みしてみよう。 |
| イクス | (具現化した大陸に街があるっていうのも凄いよな。カレイドスコープの力……。考えれば考えるほど怖くなってくる……) |
| カーリャ | いっそ向こうから出てきてくれれば捜す手間がはぶけるのになぁ。 |
| カーリャ | 鏡映点になった人この指とーまれ~♪なーんて。 |
| イクス | それで見つけられたら苦労しないって。 |
| Msc_003_001_speaker01 | ――い……。お……。 |
| ミリーナ | あら ?……何か、声みたいなものが聞こえない ? |
| イクス | ああ、かすかにだけど……あっちの方だな。 |
| カーリャ | はわわわわ !なんか赤いのがこっちに近づいてきます ! |
| Msc_003_001_speaker01 | おーい ! そこの人たち ! |
| ミリーナ | 赤い髪の……男の人 ?――って、あの人 ! 鏡映点じゃない ? |
| イクス | そんなまさか !本当にカーリャの指に止まりに来た ! ? |
| カーリャ | よっしゃー、カーリャちゃん天才 !探すどころか、あっちから来るなんて。今回は楽勝―― |
| Msc_003_001_speaker01 | そこ、どいてくれ ! 早く逃げろーっ ! |
| イクス | あれ……なんか……魔物に追われてるぞ ! ? |
| カーリャ | ふぇぇ、全然楽勝じゃなかったですー !誰ですか、そんなこと言ったのは ! |
| イクス | ツッコミは後でゆっくりやるから !今はあの人を助けに行こう ! |
| Msc_003_001_speaker01 | あんたたち逃げろって言ったのに何してんだ ! |
| イクス | 俺たちも加勢する ! |
| Msc_003_001_speaker01 | え……マジかよ ! ? 戦えんのか ? |
| イクス | 大丈夫、やれるさ ! |
| ミリーナ | イクス、魔物が来るわ ! |
| Msc_003_001_speaker01 | くそっ、こうなったらあてにするからな ! |
| Character | 2話 【3-2 ディン森林地帯 東部】 |
| ? ? ? | ありがとな ! おかげで助かったよ。変なバケモノに不意打ちくらってさ。ちょっと危なかったんだ。 |
| ? ? ? | それと悪かった。あんたたちを巻き込んじまって。 |
| イクス | いや、そっちこそ無事でよかったよ。 |
| カーリャ | ……じーっ。 |
| ? ? ? | ……ところでこのちっちゃいのさっきから俺に指つきつけてるけど…………何なんだ ? |
| ミリーナ | カーリャ、その指に鏡映点さんは止まらないからね ? |
| カーリャ | ですよね……。ちょっとだけ可能性があるんじゃないかと思ったんですけど……。残念です。 |
| ? ? ? | きょうえいてん…… ?なんだそりゃ ? |
| ミリーナ | あ、ごめんなさい。鏡映点っていうのはあなたのことなんです。ちょっとお話をさせてもらってもいいですか ? |
| ルーク | そりゃ、別に構わねーけど……だったらまず自己紹介しとかないとな。俺はルークだ。そっちは ? |
| イクス | 俺はイクス。こっちはミリーナとカーリャ。ここからはちょっと込み入った話になるんだけど―― |
| ルーク | へぇ……。 |
| イクス | 突拍子もない話なのにルークは随分落ち着いているんだな。 |
| カーリャ | さっすが鏡映点って感じですね。 |
| ミリーナ | 鏡映点は『時代に影響を及ぼす人物』っていうくらいだからきっと大物なのね。 |
| ルーク | ――って、まったくわかんねえ ! |
| 三人 | ! ? |
| ルーク | ……悪い。俺の仲間ならこういう話が得意な頭のいい奴がいるんだけどさ。俺にはさっぱりだわ。はは……。 |
| ルーク | きっとあいつがここにいれば―― |
| ルーク | 「やれやれ。こんな事も理解できなくてどうやって今まで生きてきたんでしょうね」とかなんとか言ってさ。 |
| ルーク | それでもきっと、知恵を貸してくれて……。――いや、くれねえかもな。ああいう奴だし…。 |
| カーリャ | うはぁ……ルークさま、何だか疲れた顔してますよ。これは闇が深そうな予感です……。 |
| ミリーナ | イクスは辛い事があったら私になんでも言ってね ?頼ってくれていいんだよ ? |
| イクス | 俺は平気だからさ、ミリーナ。頭なでるの、やめてくれないかな……。 |
| ルーク | なあ、光魔の鏡って言ったか ?さっき俺を追いかけてた魔物もその影響で湧いてるんだよな ? |
| ルーク | なら、俺も一緒に探すよ。お前らが目的を達成できれば俺もこの世界も、元に戻るんだろ ? |
| イクス | ああ。助かるよルーク ! ありがとう。 |
| ルーク | いいっていいって。さっき助けてもらった恩もあるし。 |
| ルーク | それにしても……俺も、今いるこの場所も【複製】だなんてなんか、皮肉だよな……。 |
| ミリーナ | ルークさん、どうかしました ? |
| ルーク | ん ? ……いや、なんでもないよ。それより、光魔の鏡ってのはどうやって見つけるんだ ? |
| イクス | その前に、鏡映点がもう一人いるはずなんだ。まずはその人を捜したい。 |
| ルーク | もう一人 ?もしかして俺の知ってる奴かな ! ?ガイとか――……ティ、ティアとか……。 |
| ルーク | そういや、ミュウがいねぇからミュウか。いや、魔物はないか……。 |
| イクス | 犬の鏡映点ならいるけど……。 |
| ルーク | マジかよ ! ?まぁ、でも、ミュウよりはナタリアの方が可能性が高いか……。それかアニスってことも……。 |
| ミリーナ | 顔、見てみますか ?魔鏡に姿が映っているから……。 |
| カーリャ | じゃーん。こんな感じのイケメンです ! |
| ルーク | ――げ。なんだ、こいつかよ。 |
| イクス | え ? 嫌な人なのか ? |
| ルーク | 嫌っつーか、面倒っつーか。……さっき話してた頭のいい奴だよ。ジェイドっていうんだ。 |
| ルーク | まぁ、こういう状況だしジェイドなら頼りにはなる……かなぁ ? |
| ルーク | ま、いいや。ジェイドを捜すんだな。それならもう少し先に街があったからそこで話を聞いてみようぜ ! |
| Character | 3話 【3-8 降雪の街】 |
| イクス | さてと、街についたはいいけど……どこから聞き込みするかな。 |
| ミリーナ | イクス、あれ見て。すごい人だかり。あそこで鏡映点の情報を聞けるんじゃない ? |
| ルーク | あれ ? 中心にいるの、ジェイドじゃないか ! ? |
| イクス | 鏡映点 ! よかった ! すぐに見つかって ! |
| ルーク | つーか、あいつ、あんな大勢に囲まれて……なんかもめ事でも起こしたんじゃないだろうな。 |
| 子供 | ジェイドさん、行っちゃヤダ !もっと一緒にいてよぉ。 |
| Msc_003_003_speaker02 | いや~、アンタに勉強見てもらったらすっかりなついちまったね。次も頼んでいいかい ? |
| ジェイド | もちろんですよ。よろしければ他の子供たちにも声をかけて下さい。学問は大事ですからね。 |
| Msc_003_003_speaker03 | ジェイドさん、先ほどはありがとう。畑を荒らす魔物を退治していただいて……。これは少しばかりのお礼です。 |
| ジェイド | いいえ、それは受け取れません。皆さんの喜ぶ顔が見られただけで私は満足ですから。 |
| Msc_003_004_speaker03 | ――ジェイド様 ! ジェイドさん ! ジェイドさーん ! ― |
| カーリャ | すごーい ! 人気者じゃないですかぁ !今回こそさすが鏡映点って感じですねぇ ! |
| ミリーナ | ルークさんだって鏡映点らしい素敵な人よ。優しくてとってもいい人。 |
| カーリャ | それはわかってますけど。あのメガネの人は大物感もありつつ、キラキラして爽やかで乙女の理想って雰囲気ですよ。ね ? イクスさま。 |
| イクス | なんで俺に話をふったんだよ……。一番乙女から遠いだろ、俺。 |
| カーリャ | だって、ミリーナさまじゃ理想の相手が誰だかわかりすぎて話が終わっちゃうじゃないですか…… |
| ミリーナ | ふふ♪ そうよ、カーリャ♪世界で一番格好良くて優しいのは私の目の前にいる銀髪の王子様だもの ! |
| イクス | ……それはともかく。ジェイドさん、慕われてるな。本当にいい人なんだなぁ。俺もあんな風になりたいよ。 |
| イクス | なぁ、ルーク……。 |
| イクス | ――って、ルーク ! ? どうした ! ? |
| カーリャ | ルークさま、大丈夫ですか ! ?足が生まれたての子鹿みたいにガックガクのふにゃんふにゃんですよぉ ! ? |
| ルーク | あ……頭が……。頭が……。 |
| イクス | おい、しっかりしろルーク !どこか具合が悪いのか ! ? |
| ジェイド | おや ? あそこで騒いでいるのは……ルークじゃないですか。丁度良かっ―― |
| ジェイド | おや、どうしたんですか ? 顔が引きつってますよ。 |
| ルーク | お……お前、ジェイド、だよな ? |
| ジェイド | いやですねえ。私以外の何に見えるというんです。ところで、こちらの方は ? |
| イクス | ……あ、俺はイクスです。今はルークに旅の協力してもらっています。 |
| ジェイド | そうですか。ルークは私の自慢の仲間ですからね。きっとお役に立つと保証しますよ。 |
| ルーク | ! ? |
| ジェイド | 彼は、私の仲間の中でも飛びぬけて秀でた才能の持ち主でしてね。何より義理堅く、信頼のおける人物です。 |
| ルーク | ひいぃ……。かゆ……かゆいぃ……。 |
| ジェイド | おや、じんましんですね。そんなに掻きむしったら肌が傷つきますよ。私が診て差し上げましょう。 |
| ルーク | だーっ ! さわんなーっ !一体何なんだよジェイド。具合でも悪いのか ! ? |
| ジェイド | 具合が悪そうなのはあなたでしょう。本当に大丈夫ですか ?しかしルークがこれでは……困りましたね。 |
| イクス | あの……何かあるんですか ? |
| ジェイド | ええまあ。先ほど、街の皆さんからこの辺りを荒らす盗賊を討伐して欲しいと頼まれましてね。 |
| ミリーナ | そんな危険なことまで引き受けたんですか ? |
| ジェイド | ええ。苦しむ人々の願いは断れませんから。 |
| カーリャ | やだ、かっこいい…… ! |
| ジェイド | ルークがいたので、協力を願おうと考えたのですが……。私だけで行くしかないようですね。 |
| ミリーナ | そんな……危険です !今だって光魔があなたを狙っているのに ! |
| ジェイド | 私を ? 何故でしょう。それに『こうま』とは…… ? |
| イクス | それについて、あなたには色々と伝えなくちゃならないことがあるんです。少しだけでも時間をもらえませんか ? |
| ジェイド | ……それは困りましたね。事は街の安全に関わります。一刻も早く出発したいと思ってましたので。 |
| ジェイド | ――ですが、あなた方の案件も捨て置くという訳にはいかないようです。ですから、一つ提案しましょう。 |
| ジェイド | 盗賊のアジトまで、ご一緒しませんか ? |
| イクス | ……え ? |
| ジェイド | 道すがら、そちらの事情をうかがいます。もちろん、戦わなくて結構です。民間人に危険な真似はさせられませんから。 |
| イクス | そんな……。ジェイドさんにだけ戦わせて俺たちに、ただ見てろって言うんですか。 |
| ジェイド | 民間人であると同時に、ルークの友人です。傷つく姿は見たくないのですよ。 |
| イクス | 俺、戦えます !一緒に連れていって下さい ! |
| ルーク | くそっ、じゃあ俺も行く !こんな変なジェイドと一緒にイクスたちだけを行かせられるかよ ! |
| ミリーナ | イクスが行くなら、私だって ! |
| カーリャ | ミリーナさまが行くならもちろんカーリャもご一緒しますよ。 |
| ジェイド | わかりました。少々想定外のメンバーですが心強い仲間が増えて嬉しい限りです。 |
| ジェイド | 目的地は盗賊のアジト。みなさん、心を一つに頑張りましょう ! |
| ルーク | うぇぇぇ……。一体、どうなってるんだよ……。 |
| Character | 4話 【3-11 アスター砂漠 西部】 |
| ジェイド | ――なるほど、そういう訳でしたか。皆さん大変な使命を帯びているんですねぇ。さぞかし大変でしょう。 |
| イクス | いや大丈夫です。それに俺、もっと戦って経験を積んで強くならないといけないから……。 |
| ジェイド | 頼もしいですね。その強さへの憧れ成長期の少年らしくて実にうらやましい。 |
| イクス | でも、今の俺には憧れだけでどうにかなるほどの力がありません。それを以前、思い知ったんです。 |
| ジェイド | ……確かに、個人の能力や経験、戦略など強くなるには様々な要素が必要です。けれどあなたは何より強い物を持っている。 |
| ジェイド | 力を求めるその心ですよ。今は前だけ向いて進むといい。大丈夫、あなたは必ず強くなります。 |
| イクス | ありがとうございます。ジェイドさん。 |
| ミリーナ | イクス、なんだかいつになく……素直な感じ……だね……。ふぅ……。 |
| カーリャ | ミリーナさま、もしかして疲れてるんじゃ……。 |
| ジェイド | イクス、ちょっと休憩を取りませんか ?歳のせいか、少々疲れてしまいました。ミリーナさんも、ですよね ? |
| イクス | あ、ごめんミリーナ !俺、自分のペースで進んじゃって。 |
| ミリーナ | あ、大丈夫だよ !ちょっと立ち止まればすぐに……。 |
| ジェイド | いえ、急いては事を仕損じます。軍用の携行食ですが、食べ物も飲み物もあります。皆さんも遠慮なくどうぞ。 |
| ジェイド | さあ、ミリーナさん。これを食べると回復が段違いですよ。 |
| カーリャ | ジェイドさまって中々優しいメガネですね !紳士って、ああいう人を言うんでしょうね~。 |
| イクス | うん。その上強くて、うらやましいよ。 |
| カーリャ | でも、少しミリーナさまに近づきすぎですね。ちょっと邪魔してきます。 |
| イクス | やれやれ……。 |
| ルーク | ――やっぱり納得いかねえ。 |
| イクス | うわっ ! 何だよルーク。びっくりした。ジェイドさんのところに行かないのか ? |
| ルーク | あんなジェイド初めてだ。逆に怖くて近寄る気になれねーよ。 |
| イクス | 何が問題なんだ ? そもそも、俺たちには『いつものジェイドさん』ってのがどんな人なのかわからないんだけど……。 |
| ルーク | いつものジェイドか ?説教、イヤミ、説教、悪い冗談をはさんでアドバイス、説教、イヤミ、とどめに皮肉……。 |
| イクス | えっと……仲間、だよな…… ? |
| ルーク | ああ、仲間だぜ ? だからこそさ。ジェイドは本当に大事なことを聞こえのいい言葉で流したりしない。 |
| ルーク | さっきイクスに話していたことだってなんかアイツらしくないっつーか……。 |
| ルーク | でもなー、頭のいい奴ってややこしいこと考えるだろ ?何かアイツなりの作戦って可能性も捨てきれないっていうか……。 |
| ジェイド | イクスー ! 水分をとらないとバテますよ。ほら、ルークも一緒に。 |
| ルーク | 俺はいいや。行ってこいよ、イクス。 |
| ジェイド | 浮かない顔をしてますね。ルークと話をしていたようですが……私のことを何か言っていましたか ? |
| イクス | いや、なんというか……。 |
| ジェイド | おや、図星ですか ?でも、仕方のないことです。私の日頃の行いのせい、といいますか。 |
| ジェイド | ルークと私は考え方や理念に違いが多い。でもそれは人として当然です。ですが、溝はやはりありましてね。 |
| ジェイド | その溝を埋めようと思って色々と心を砕いたつもりなのですが……ごらんの通りです。 |
| ジェイド | お互いのために良かれと思ってしたことがどうも受け入れてもらえなかったようで。……すみませんね。こんな話を。 |
| イクス | そうだったんですか……。それならルークとはちょっと行き違っているだけかもしれませんね。 |
| ジェイド | ええ、ここが頑張りどころですから。彼の不信感は必ず解消してみせますよ。 |
| イクス | そうですね。ルークはジェイドさんの本質をちゃんとわかってるみたいだから。きっと大丈夫ですよ |
| ジェイド | ……本質ですか ?ハハハッ、それはちょっと怖いですねぇ。 |
| ジェイド | さて、そろそろ本格的に盗賊のアジトへ乗り込むとしましょうか ! |
| Character | 6話 【3-13 アスター砂漠 偽アジト】 |
| イクス | ハアッ……ハアッ……。まずいな、囲まれた……。 |
| ルーク | もう少しであいつをぶっ倒せるのに。こう雑魚が多くちゃ……。くそっ ! 何とかならねえのかよ ! |
| Msc_003_006_speaker01 | 何とかして差し上げましょう。 |
| ルーク | ……へ ? |
| Msc_003_006_speaker01 | ――エナジーブラスト ! |
| イクス | すごい。一撃で……魔物が全部……。 |
| Msc_003_006_speaker01 | いやぁ、この状況なんだか懐かしいと思いませんか。……ルーク ? |
| ルーク | ジェイド……。ジェイド――か ! ? |
| イクス | あれが本物のジェイドさん…… ? |
| ジェイド | 随分と苦戦していましたね。私の姿をした魔物につい手加減をしてしまったとか ? |
| ルーク | んな訳あるか !いつも以上に気合い入ってたっつーの ! |
| ジェイド | それは結構。私への日頃のうっぷんを晴らすいい機会だったようですからねぇ。存分に楽しめましたか ? |
| ミリーナ | え ?気のせいか……オーラが黒い… ? |
| カーリャ | あの……ルークさま。この人本当に本物ですか ?こっちも光魔なんじゃ……。 |
| ルーク | いや、このひねくれた態度、本物のジェイドに間違いなさそうだ。でも、どうしてここに……。 |
| ジェイド | 街で『親切なジェイドさん』とかいう愉快な噂を耳にしましてね。高みの見物をしていたんですよ。 |
| ジェイド | そうしたら皆さんが『親切なジェイドさん』と街を出ていくじゃないですか。面白そうだったのでこっそり後をつけちゃいました♪ |
| イクス | あとをつけちゃ……って、え ! ? |
| ルーク | ――お前、まさかこの道のりの間ずっと……。 |
| ジェイド | ええ、どうやらあなたは、私が優しくすると健康に害が及ぶようですね。後なんでしたっけ ? イヤミ説教イヤミ……。 |
| ルーク | あ、あれはしょうがねえだろ ?大体お前な、ついて来てたんなら、すぐ出て来いよ !おかげであの偽物が調子にのって―― |
| Msc_003_006_speaker02 | …… ! |
| イクス | しまった ! まだ生きて―― |
| ジェイド | おや、とどめを刺し損ねたみたいですね。ルーク、あなたが無駄なおしゃべりをしているからですよ ? |
| ルーク | 俺 ! ? 俺が悪いのかよ ! ? |
| ジェイド | まぁ、あの状態ではそう遠くまでは逃げられませんね。じわじわと追い詰めてやりましょう。 |
| イクス | は、はい……。 |
| Character | 7話 【3-15 アスター砂漠 中心地】 |
| ジェイド | ――なるほど。先ほどの道中で耳にしたあなたたちの会話も合わせて、ひと通りの事情は理解できました。 |
| ジェイド | それともう一つ。街の人々の様子ですが老若男女の違いなく記憶にあいまいな部分があるようです。 |
| ジェイド | 忘れているわけではないのに、自分の記憶が絶対だとは信じ切れていないようでした。まるで夢について話しているような……。 |
| ジェイド | この現象もあなたたちに関係があるのでしょう ? |
| ミリーナ | はい……。具現化の影響かもしれません。 |
| ミリーナ | みんなの記憶も、術の力で生み出しているから……。まだそれが安定して馴染んでいないからそんな風になってしまうのかも……。 |
| ミリーナ | でも、具現化が安定すれば問題はない筈です。 |
| ジェイド | ない筈――ですか。まあ、信じるしかないのでしょうね。 |
| ジェイド | それが真実かどうか今の私には確かめる手だてがありませんから。 |
| ルーク | なんだよジェイド、ネチネチ問い詰めて。さっきの偽者の方がよっぽど紳士だったぜ。 |
| ジェイド | そうですか。それならルークには特別に偽者同様の態度で接していきましょう。 |
| ジェイド | そんな風に他人をかばえるところがあなたの美徳であり優しさですから。 |
| ルーク | ――気持ち悪ぃ……けどこれもジェイドなりの嫌みだと思うとなんか今は心地いいぜ ! もっと来いよ ! |
| ジェイド | やれやれ。どうやらおかしな方向にこじらせてしまったようですねえ。 |
| ジェイド | ま、いいでしょう。せっかくの機会です。私もこの世界について研究してみます。 |
| ジェイド | あなたたちのような鏡士や、その術の元となる魔鏡、私たちの世界の譜業にあたる仕組み。興味は尽きませんから。 |
| カーリャ | うう……。なんだか雰囲気が違い過ぎて混乱しちゃいますよぅ……。むしろ偽者が懐かしいような……。 |
| ジェイド | ああ、カーリャ――でしたよね ?あなたのことも色々と知りたいものです。その姿を見ると、胸の鼓動が止まりません…… ! |
| カーリャ | え…… ? うそ…… ! カーリャに恋しちゃった…… ? |
| ジェイド | はい。もう今すぐに解剖したいくらいですよ。 |
| カーリャ | かい……ぼう……。 |
| ジェイド | 鏡精――未知の存在への探求心で胸が高まりますねぇ。 |
| ジェイド | そうだ。ミリーナ。彼女を少しお借りしてもいいですか ?今のうちに体組織の標本採取を―― |
| ミリーナ | だ――め――っ ! !やめて ! やめて下さいっ ! |
| カーリャ | ガタガタブルブルガタガタブルブル……。 |
| イクス | ジェイドさん、さすがに冗談がキツいですよ。二人がおびえちゃってます。 |
| ジェイド | おや、冗談ではなかったのですが仕方ありませんね。これはしまっておきましょう。 |
| ミリーナ | い、今手に持ってたのって……。 |
| イクス | なんかの瓶と小さな刃物…… ? |
| カーリャ | 本気じゃない ! ?この人本気なんじゃないですかぁ ! ? |
| ルーク | うんうん。みんなが本物のジェイドのこと理解してくれたみたいで良かったぜ ! |
| Character | 8話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
| カーリャ | ううっ……。なんかぶるぶるっときた。ミリーナさま、この近くにありますよ !光魔の鏡 ! |
| ミリーナ | 本当 ! ?もしかしたらさっきの偽者もそこにいるのかな。 |
| ルーク | 光魔の鏡って魔物が湧くとか言ってた奴か ? |
| ミリーナ | そう。光魔にとって鏡は巣――みたいなものかな。封印しないと無限に湧き続けるの。 |
| ジェイド | 手負いの魔物が巣に戻る――というのはありえるかもしれませんね。しかも先ほどの場所からも近い。 |
| カーリャ | う~ぶるぶるぶる……。こっちこっち、もうすぐです ! |
| カーリャ | ……あった ! 光魔の鏡――と、予想通り、偽者もいますね。全然動かないですけど。 |
| ルーク | よし、今のうちに一気に叩くか ! |
| イクス | いや、ちょっと……待ってくれ。 |
| ルーク | なんでだ ? 今が好機って奴だろ ? |
| イクス | また騙されるかもしれない。罠とかさ。ジェイドさんにだって化けられるようなずる賢い奴だから、慎重に行かないと……。 |
| ルーク | じゃあ、どうするんだ ? |
| イクス | 俺が飛び込んで――いや、しばらく様子を見るっていう手もあるな……。でもその時間で回復されたら元も子もない……。 |
| イクス | 戦っている間に鏡から光魔が発生する可能性だってあるし……。いっそ俺が忍び寄って鏡を封印してから……。 |
| カーリャ | あー、出ましたね。イクスさまのいつものアレ……。 |
| ミリーナ | ねえイクス、そんなに考えなくても―― |
| イクス | ミリーナ、悪い。ちょっと待ってくれ。最善手を探すから……。 |
| ルーク | ……なあ、さっきから「俺が俺が」ってなんでそんな作戦ばっかなんだ ? |
| イクス | それは……一番いい方法をとるためだよ。みんなを守れるように誰も傷つかないようにってさ。 |
| イクス | こういう場数だって、踏めば踏むほど次に役立つ。もっと強くなれるだろ。 |
| ルーク | それはわかるけどさ、お前の作戦に俺たち、入ってないような気がするんだよ。 |
| イクス | それは……。 |
| ルーク | 強くなって自分が全部何とかしなきゃっていう気持ち俺にもよくわかる。 |
| ルーク | けどさ、それは仲間のことや、周りの状況が見えないのと同じになっちまう時があって……ええっと……。 |
| ジェイド | 説明の要領は得ませんが、そんなことが言えるようになったとは驚きです。ちゃんと頭も成長していたんですね。 |
| ルーク | はいはい。ジェイドせんせーのおかげでーす。 |
| ルーク | ――まあ、要はさ。仲間を頼りにしていいんだよ。ほら、ミリーナもカーリャもあんなに心配そうにお前のこと見てるしな。 |
| ミリーナ | うん……。ルークさんの言う通りだよ。私の「頼りにして」って言葉、軽く聞こえるかもしれないけど、本気でそう思ってるよ。 |
| イクス | ……そうか、そうだよな。みんなのこと考えているようで俺、自分のことだけを―― |
| ルーク | そんな顔するなよイクス !一人でも頑張ろうって意気込み自体は悪いことじゃないんだしさ。 |
| イクス | …………。 |
| ルーク | だから、あんまり気負うなってことで……。――どうしようジェイド。これ伝わってるか ? |
| ジェイド | やれやれ、人に説教など慣れないことをするからですよ。 |
| イクス | いや……。ありがとうルーク !おかげで決心できた。 |
| イクス | あらためて――頼むよ。一緒に光魔の所へ飛び込んでくれるか ? |
| ルーク | おおい、いきなりそれかよ !でもまあ、いいぜ。お前の背中は、俺に任せとけ。 |
| イクス | ミリーナ、援護をよろしく。 |
| ミリーナ | うん、一緒に頑張ろう、イクス ! |
| イクス | よし、行くぞ ! |
| Character | 9話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
| ルーク | やったぜ !あばよ、綺麗な方のジェイド ! |
| ミリーナ | イクス、鏡の封印を―― |
| イクス | ああ、任せろ ! |
| イクス | よしっ――封印完了 ! |
| ルーク | よっしゃあ !無事終わり――で、いいんだよな ? |
| イクス | ああ、この世界もじきに安定すると思う。それにルークやジェイドさんを狙う光魔はもう現れないよ。 |
| ジェイド | それは良かった。これ以上、あんな光魔に私の真似をされるのも迷惑ですから。 |
| ルーク | ははーん、さすがのジェイドも自分の偽者は気持ち悪かったか。 |
| ジェイド | というよりも、偽者がむやみやたらに偽善を行ったおかげで、あの街は今空前のジェイドブームなんですよ。 |
| イクス | ……ジェイドブーム ? |
| ルーク | お前、よく真顔でそういうこと言えるな……。 |
| ジェイド | 私が街を歩けばお年寄りはお菓子をくれ子供たちは歓声をあげて「ジェイドさん大好き」と抱きつきに来る。 |
| ジェイド | ――いやあ、地獄ですね ! |
| カーリャ | それが喜べないとか、どれだけ……。 |
| ミリーナ | ルークさん、凄い人と仲間なのね……。尊敬するわ……。 |
| ジェイド | 本当ですね。さすがルーク ! |
| ルーク | いやあ、それほどでもあるけどな !それとジェイドはその紳士の笑顔をやめろ。 |
| ルーク | ……で、イクスたちはこの後も別の世界の具現化っていうのをやるのか ? |
| イクス | ああ。今はそれが、俺たちにできることだから……。 |
| ルーク | そうか。――もしよければだけどさ。これからも俺に協力させてくれよ。 |
| イクス | ……ルーク、いいのか ? |
| ルーク | 俺なんかでもさ。世界を救う役に立つことができるなら――そう、したいんだ。 |
| ジェイド | …………。 |
| イクス | なんだよルーク。俺なんか、なんて。ルークが協力してくれるなら嬉しいに決まってるじゃないか。 |
| イクス | さっきの助言どおり、頼らせてもらうよ。これからもよろしく、ルーク ! |
| ルーク | ああ、どんどん頼ってくれよ。――ジェイド、お前もいいよな ? |
| ジェイド | ご一緒するのはかまいませんが具現化のお手伝いとやらは遠慮します。 |
| ルーク | ええっ ! 何でだよ。 |
| ジェイド | 先だっても申し上げましたがまずはこの世界を調査したいんですよ。研究材料も山とありますからね。 |
| ルーク | おいおい、マジか……。 |
| ジェイド | それに、この具現化世界が安定したとはいえ長時間にわたり、鏡映点がこの島から出て何も影響がないのか、少々気になります。 |
| ジェイド | ですから、私まで戦いに引っ張りだすような事態が起こらない限り調査に集中させてほしいんですよ。 |
| イクス | あ、はい、それはもちろん……。 |
| ルーク | お、よかったじゃないかイクス。 |
| イクス | ……え、何で ? |
| ルーク | だって要するにジェイドは、自分が出るほどのことがある時には助けるって言ってるんだし。 |
| イクス | ……ルーク、本当にすごいな。あの言葉の裏から、よくそんな意図を……。 |
| ルーク | いやあ、今回の偽ジェイド騒ぎで俺も色々学んだんだよ。 |
| ルーク | ジェイドが皮肉や嫌みを言ってるうちがまだ平和なんだなーって……。 |
| ミリーナ | ルークさん、もうなんか悟ってるって感じ……。 |
| カーリャ | やっぱり、ルークさまも鏡映点なんですね。とんでもない大物です……。 |
| イクス | はは、そうだな。まあ、光魔の鏡も封じたしセールンドに戻ろうか。 |
| Character | 9話 【3-17 アスター砂漠 洞窟】 |
| カーリャ | は~、セールンドの空気です~。なんだか懐かしく感じちゃいます。 |
| イクス | ルークたちとの時間が濃かったからな。特にジェイドさんは……凄かった。 |
| ミリーナ | ふふ……。私たちの周りには中々いないタイプの人だったね。 |
| イクス | それと、ルークのおかげでわかったよ。ミリーナやカーリャがどれだけ俺のことを思ってくれてるのかも。 |
| イクス | 自分でもそれに気が付いていたはずなのに変に考えが固まっちゃってて……。俺、情けなかったよな。 |
| ミリーナ | 何いってるのイクス。私は、強がってるイクスだって頑張ってて、格好いいって思ってたよ。 |
| イクス | ミ、ミリーナ……。 |
| ミリーナ | だけど、色んなことを知って、気が付いて私を素直に頼ってくれるイクスはもっと素敵に見える。 |
| カーリャ | はいはい、よかったですねぇ……。 |
| イクス | な、なんだよカーリャ。 |
| カーリャ | 別にいいんですけどカーリャがいること忘れないでほしいです。 |
| イクス | はは、わかったって。甘い物で許してくれるか ? |
| カーリャ | 許しますー ! イクスさま大好きー ! |
| イクス | 仕方ないな。ちょっとそこの店に―― |
| Msc_003_010_speaker01 | ――もう信じられねえよ俺は ! |
| Msc_003_010_speaker02 | アンタやめてよ ! そんな大声で……。飲みすぎだよ ! |
| Msc_003_010_speaker01 | 俺は救世軍に入った奴に聞いたんだぜ ?ゲフィオンがセールンドを腐らせるってな ! |
| Msc_003_010_speaker02 | そんなの、よその人が聞いたら……。 |
| Msc_003_010_speaker01 | みんな言ってるだろうが ! 政治はガタガタ最近は地面までグラグラ揺れやがる。これなら酒飲んで目が回ってる方がましだ ! |
| ミリーナ | …………。 |
| イクス | ……ミリーナ、行こう。 |
| ミリーナ | ……どうして具現化のこと、秘密にするのかな。みんなに話せば、鏡震の不安も落ち着くのに。 |
| イクス | それは……。大陸が失われたこととか新しく大陸を作ってることとか、突然聞かされてもみんな不安になるだけだからだろ ? |
| ミリーナ | そう……よね……。 |
| イクス | ……わかるよ。ゲフィオン様って何か隠してるみたいな気がして心配になるよな……。 |
| ミリーナ | でも、世界を救う方法がこれしかないなら……私たちはゲフィオン様を信じて具現化を頑張るしかないのよね。 |
| イクス | ……今は俺たちにできることをやろう。一刻も早く具現化を成し遂げてアイギスを造り直してもらうんだ。 |
| カーリャ | でもその前に、まずは甘い物ですよ、イクスさま。 |
| イクス | わかってるわかってる。 |
| Msc_003_010_speaker03 | あそこの旦那、また暴れてるのかい ? |
| Msc_003_010_speaker04 | ああ、荒れるのもわかるがね。国がこんなに落ち着かないんだから。おかげで俺なんか、夢見まで悪い。 |
| Msc_003_010_speaker03 | アンタもかい ? それ【滅びの夢】だろ。アタシも見るんだよ。みんな金色の砂になって死んじまう、嫌な夢をさ。 |
| ミリーナ | 滅びの夢……。 |
| イクス | ――どうしたミリーナ ? |
| ミリーナ | ……ううん。何でもないの。 |