Character1話 【4-1 バルトロ密林 奥地】
カーリャうわ~~ん。カーリャはこんな薄暗い森で死にたくないです~ !
ミリーナカーリャはおおげさね。ちょっと迷っただけだし大丈夫よ。きっとすぐ抜け出せるわ。
イクスごめん……。もっと俺が考えて行動していれば……。
ミリーナイクスは悪くないよ。あんな数の光魔と戦ってたら私たち、危なかったと思う。森に逃げようって判断してくれたイクスのおかげで助かったんだもの。
ミリーナあのときのイクスはすっごく頼もしかったなぁ……。まるで颯爽と現れた騎士様みたいだった。
カーリャミリーナさま……現実に戻ってきて下さい。
イクス……ミリーナだってカーリャに負けないくらい大げさだぞ。
イクスまぁ……とにかく今は先に進もう。周囲に生えている草花から考えるともう少しで森から抜け出せる筈だから。
イクス不安もあるけど……ジッとしていても何も始まらない。俺も少しは積極的に行動していかないと。
ミリーナユーリさんみたいに、ね ?
イクスそういうこと。さぁ、行こう。
ミリーナふふっ♪
カーリャミリーナさま ? どうしたんですか ?
ミリーナイクスってばどんどん逞しくなってるなって思って♪
カーリャあぁ……ミリーナさまがまた現実から離れていく。
イクスおーい、二人とも置いていくぞ。
ミリーナはーい。すぐ追いつくわ。ほら、カーリャも行くわよ。
カーリャ…………っ。
ミリーナカーリャ ?
カーリャぷるぷるぷるぷるっ ! !
ミリーナちょっ。どうしちゃったの ! ?
イクスすごい震えてる……ってことは、まさか !ミリーナ、急ぐぞ ! こっちだ ! !
光魔……ウゥ~……ハルルルルル。
イクスはぁ……はぁ……。くそ、逃げ切れなかったか。
ミリーナ囲まれたわね……。
カーリャどうしましょう。逃げる場所もありませんよ。
イクスどうするって……このままじゃまずいんだ。やるしかないだろ !
イクス――はぁぁぁっ ! !
光魔ギャウゥッ ! !
イクスミリーナ !
ミリーナうん !
Msc_004_001_speaker01ギァァァァァッ… !
Msc_004_001_speaker01……ウゥ~……ハルルルルル。
イクス……やっぱりそう簡単にいかないよな。くそっ……。だけど俺だって……。
? ? ?さがって ! ここはオレが !
イクスえっ ?
Msc_004_001_speaker02てやぁっ !
Msc_004_001_speaker01ギャウゥッ ! !
イクス
Msc_004_001_speaker02たたみ掛ける ! 天滝破 !
Msc_004_001_speaker01ギァァァァァッ… !
ミリーナイクス ! あの人、鏡映点よ !
イクス本当だ ! えっと、あのっ ! !俺は……
Msc_004_001_speaker02自己紹介はあと !今は一気に蹴散らす ! !
イクス! はいっ !なら俺たちも協力します !
スレイありがとう。けど、無茶はしないようにね ?
一同はい !

Character2話 【4-2 バルトロ密林 奥地】
ミリーナ――つまり話をまとめるとここは鏡映点であるスレイさんの心や記憶を元に具現化された大地。
カーリャスレイさまが暮らしてたっていう「グリーンウッド」を写したわけです。
スレイ……そっか。それで、さっきの魔物が光魔。本当に凄いことになってるんだな。
イクスごめん、混乱させちゃうよな。
スレイどうかな。自分でもよくわからないや。でも、イクスたちがやってることの意味はちゃんと理解できたと思う。
スレイみんなはこれから光魔の鏡を探すんだよね ?
イクスそうなるな。放っておくわけにはいかないし。
ミリーナ光魔は普通の人も襲うからなるべく早く封印しないといけないものね。
スレイだったら、光魔の鏡を封印するまでオレも一緒について行っちゃダメかな ?
ミリーナスレイさんが来てくれたら私たちは助かりますけど……。
スレイこれからどうするか決めるにはまずはこの土地がどうなってるかちゃんと知ることが先決だと思うんだ。
スレイ一人じゃないほうがオレも色々助かるしイクスたちの使命をオレも手伝いたい。
イクススレイ……。
スレイ森で迷っていたところを助けてくれたお礼もちゃんとしたいからね。
イクスそんな、お礼だなんて。けど……ありがとう。よろしくお願いするよ。
ミリーナよろしくお願いします。
スレイうん ! 改めてよろしく ! !カーリャもね !
カーリャもちろんですよ !
イクスそれじゃあ光魔の鏡の捜索開始だな。カーリャ、何か反応はあるか ?
カーリャこの先からちょいぷるっと感じます。
イクス光魔がいるってことか。となると、光魔の発生源である光魔の鏡もこの先のはず。
ミリーナけど山の斜面が急すぎて登れないわ。別のルートを探してみる ?
スレイ! いや、ちょっと待って。
イクススレイ、どうかしたのか ?
スレイここ。石像がある。ほら、あっちにも。
イクス本当だ。全然気付かなかった。
スレイわざとわかりにくい場所に置かれているんだと思う。きっと何かあるはずだ。
カーリャ何か、ですか ?
スレイたぶん昔の人が使っていた秘密の通路、地下遺跡だね。まだ断定はできないけどうまくいけば山の反対側にでられるかもしれない。
イクス地下遺跡 ! ? 行ってみる価値はありそうだけど大丈夫かな……。
イクス俺、海や森で遭難したときの知識はあるけど遺跡でのサバイバル術は全然だし……。
スレイそれならオレに任せて。
イクススレイ ?
スレイさあ。出発だ。

Character3話 【4-5 密林の大遺跡 入口】
ミリーナかなり大きい遺跡ね。
イクス見たことない規模だな。一体どこまで広がってるんだ ?
スレイ………。
スレイ(この遺跡の造り……)
イクスん ? スレイ ?
カーリャおっ !
ミリーナカーリャ、どうしたの ?
カーリャブルブルっときました !この遺跡の奥にたくさん光魔が潜んでるっぽいですよ !
イクス光魔が……。となると戦いは避けられない、けど……。
スレイ? あ、ごめんごめん。オレはまた光魔と戦うことになっても大丈夫だよ。イクスはどうしたい ?
イクスありがとう。スレイが大丈夫なら他に迂回ルートもなさそうだし通り抜けて行ったほうがいいと思う。
イクスあっ。でも、遺跡が崩れる可能性も……。
スレイその心配はいらないと思うな。
イクスえ ? そうなのか ?
スレイこの遺跡の石組はかなり丈夫だからほら、ここの壁。ヒビ1つないだろ ?衝撃に強い石を使ってる証拠だよ。
スレイもちろん、地震が起きたりしたらわからないけど。
ミリーナちょっとやそっとじゃ崩れないってことね。
スレイそういうこと。
イクスすごいな。そんなに遺跡に詳しかったのか。
スレイ詳しいって言い切れるかわからないけどグリンウッド大陸には、あちこちに古代の遺跡が沢山残ってたからね。
ミリーナ元の世界での経験や知識が役に立っているのね。
カーリャとにかく、スレイさまが大丈夫って言うなら安心ですね !
カーリャではではー、気を取り直して遺跡探検を再開しましょー !
スレイ遺跡探検。
イクス
スレイ……うん、みんな気を付けて進もう !ここはオレが先導するよ。
ミリーナお願いします、スレイさん。
イクス…… ?

Character4話 【4-6 密林の大遺跡 通路】
ミリーナ……ここ、なんだか変わった造りね。他の場所とは違う印象だわ。
イクス言われてみれば。なにか特別な場所だったのかもな。
スレイ二人とも、気になるの ?
ミリーナあ、はい。遺跡ってあまりじっくり見たことなかったけどここは特に大きいから。
カーリャ異世界のものだとしても「古代の神秘」を感じずにはいられませんね !
イクスちょっとおおげさだけど確かに知的好奇心はくすぐられるよな。俺ももっと遺跡について学んでおくべきだったよ。
スレイ……よし !みんな、ちょっとだけ待ってて。
ミリーナえ ? スレイさん ?
スレイこの辺だけ……間違いないとして……繋ぎ目はしっかりして……。
スレイだとすると……かな……。意匠のモチーフは……。
カーリャなんかすごく熱心に、遺跡を調べてますね。
スレイお待たせ !この辺が他の場所とは違う理由大体わかったよ !
スレイここは他より造られた時代が古いみたいなんだ。
イクス……ここだけ古い ?そんなふうには感じないけど。
スレイたとえば……そうだな。ここの壁を見てみて。
スレイ風化の度合いが他より強いんだよ。あと装飾の題材は同じ「花」なんだけど周りの方が繊細で状態も良いから。
イクス……うわぁ ! ホントだ !よくみたら全然違うな !
スレイ他にも、この辺に合わせて周りを造り足したような痕跡もあったし多分、間違いないんじゃないかな。
カーリャすごいですね、考古学者みたいですよ。
ミリーナスレイさんの遺跡の詳しさには驚かされっぱなしよね。
イクス遺跡に入ってからのスレイはちょっと楽しそうだしな。
スレイえっと、実はオレ……。
スレイこういう遺跡を探検するのがずっと好きだったんだ。
スレイ子供の頃から、いつも親友と二人で里の近くにあった遺跡で遊んだりしてた。
イクス(スレイの親友……)
ミリーナ(どんな人かな……)
スレイいつか世界中の遺跡を探検しようって話してたし、どっちがすごい発見をするかいつも競争してたから、それで自然とね。
イクス世界中の遺跡を……。
スレイオレの話はこんなとこだよ。それより時間取っちゃってごめん。早く先に進もう !
ミリーナスレイさんがあんなに遺跡好きだったなんてね。
カーリャどうりでこんなすごい遺跡が具現化されちゃうわけですよ。
イクス具現化……あっ。
ミリーナイクス ? どうかしたの ?
イクスちょっと確認。遺跡の造りのことだけど、元の世界のものが完璧には具現化されていないなら異なる遺跡が混ざった形で具現化してたりもするのか ?
ミリーナええ。その可能性は、十分に……。
イクス…………。
カーリャなんですか ? 急に黙っちゃって。
イクスカーリャは自分の大好きなお菓子がへんてこな形に改造されて目の前に出されたらどう思う ?
カーリャ穴がないドーナッツみたいなことですか ?カーリャは美味しかったら満足ですけどそんなのドーナッツじゃないって思いますね !
イクスいまのスレイもそんな気持ちなんじゃないかって思ってさ。『元のもの』とは違うんだから。
ミリーナ……スレイさん、やっぱり気にしてるかな。さっき話してくれた遺跡探検や幼馴染みのこともスレイさんにとって凄く大切なことのように感じたし。
イクス……うん。スレイの気持ちは分からないけどでも……申し訳ない気持ちだよ。大切な物を土足で踏みにじったみたいでさ……。

Character5話 【4-7 密林の大遺跡 大広間】
スレイこれで決める ! 氷月翔閃ッ ! !
Msc_004_005_speaker01ギァァァァァッ…… !
イクスふう……。
ミリーナ終わったね。
スレイうん、みんなお疲れ !戦闘も続いたし、少し休まないか ?
ミリーナそうですね、遺跡に入ってから歩きっぱなしだったし。
イクスカーリャ、もう近くに光魔はいないよな ?
カーリャはいー、大丈夫だと思いますー。
イクス光魔の鏡を見つけるまではもう少しかかりそうだな。
カーリャちゃんと近づいてはいますよ。多分ですけど。
ミリーナみんな、おやつよ。また光魔と戦いになるかもしれないしいまのうちに食べちゃいましょう。
カーリャわーい ! おやつです~♪
イクスありがとう、ミリーナ。スレイも一緒に――あれ ? スレイは ?
カーリャあっ ! あっちで一人本を読んでいますよ !おーい、スレイさま~ !
スレイ……うん ?
イクススレイ。ミリーナがおやつを作ってくれたんだ。こっちにきて一緒に食べないか ?
スレイえっ ? オレもいいの ?
ミリーナもちろんですよ。
イクスごめん、本に集中していたかったかな ?
スレイあ、いや。そうじゃなくてほら……光魔って鏡映点に集まってくるだろ。
スレイもしいきなり光魔が襲ってきたらオレの近くにいたイクスたちも巻き添えになっちゃうからさ。
イクススレイ、だから一人離れて……。
ミリーナ……スレイさん、ごめんなさい。
イクスごめん。俺たちの方がスレイを巻き込んでるのに。
スレイあっ。オレの方こそ気を遣わせちゃってごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。
スレイイクスやミリーナが謝ることないよ。オレは全然気にしてないし元の世界でも似たような感じだったから。
イクス元の世界でも ?
ミリーナどういうことですか ?
スレイえーっと、オレがいた世界にも憑魔っていう危険な魔物がいたんだ。オレはその憑魔に狙われやすくて。
カーリャひょうま…… ?
イクス……スレイ、もしよければ詳しく聞かせてくれないか ?
スレイうん。ちょっと長くなっちゃうけど――
イクスなるほど。浄化の力を授かりし導師、か。
カーリャ人でもなんでも魔物になっちゃうなんて怖いですね。
ミリーナそんな世界でスレイさんは人々を救う旅をされてたんですね。
スレイはは、ちょっと大袈裟に言っちゃったかもしれないけどね。まあ、そんな感じなのかな。
イクス旅は、やっぱり大変だったよな ?
スレイもちろん楽じゃなかったよ。導師は世界でオレ一人だったし。
イクススレイだけ ! ?責任重大じゃないか……。俺だったらきっと堪えられない……。
スレイ仲間がいてくれたから、全然辛くはなかったけどね。旅の途中に楽しいことも沢山あったよ。
イクス……戦いの腕前もそうだけどスレイには見習うことが多いな。
スレイはは、ありがとうイクス。でも、みんなだってすごく頑張ってるじゃないか。
スレイ「このままじゃ世界が消えてしまう」そんな危機に立ち向かうなんて誰にでもできることじゃないよ。
スレイだから、むしろオレの方がちゃんと手伝わないといけない。
スレイこの島の光魔の鏡一刻も早く探し出さなきゃな !
カーリャ冒険再開ですか ?
イクス休憩もおやつも十分取れたからな。出発しよう。
スレイうん !

Character6話 【4-10 密林の大遺跡 最深部】
ミリーナかなり歩いてきたはずだけどなかなか出口が見えないね。
カーリャほんとこの遺跡広すぎですー。
スレイうーん……。
スレイあと少しで抜けられると思うからもうひと踏ん張りだよ。
イクスそんなことまでわかるのか。
スレイなんとなくだけど遺跡の通路と部屋の並び的にね。そろそろ一番奥まで来てるんじゃないかな。
ミリーナふふ、スレイさんがそう言うなら頑張らないといけないですね。
カーリャはい ! 光魔の鏡まではまだちょっと距離がありそうなのでみなさんがんばりましょうー。
スレイ…………。
イクススレイ ? どうかしたのか ?
スレイあ、うん。大したことじゃないんだけど――
スレイやっぱりここはオレから生まれた場所なんだなって思って。
イクス……ああ。その通りだ。ごめん、スレイ。
ミリーナ…………。
スレイあ、ごめん今変なこと言っちゃったかも !みんな気にしないで !
イクスいや、でも――
スレイほんと、大したことじゃないんだ。
スレイ……ここまで来る間にさ何カ所か「オレが見たかった遺跡」があるなって思ってて、それでちょっと。
イクススレイが見たかった遺跡 ?
スレイえーっと、「元の世界のオレ」が文献を読んで、いつか見てみたいと思ってた珍しい遺跡のことだよ。
スレイさっき少し話したけど、オレ遺跡探検が好きなんだ。それで色々古い書物も読んだりしてて。
ミリーナじゃあスレイさん、この遺跡には――
スレイうん。いくつかの遺跡が混ざってるんだと思う。
スレイ元のオレが実際に行ったことのある遺跡。いつか見てみたいと思ってた遺跡。色々だね。
スレイそういうことが起こるんだよね ?鏡映点から具現化された大地には。
イクス……ああ。スレイの世界がそっくりそのまま具現化されるわけじゃないから。
スレイやっぱり。あ ! でもあそこはそうじゃないよ ?
イクスえ ?
スレイ最初にミリーナが気にしてた場所 !あっちは別に混ざってなくて本当にちゃんと年代が違ってたから !
ミリーナ遺跡に入ってすぐのところですよね。古い部分と、それよりは新しい部分で遺跡の造りが違っていたところ。
スレイそう ! あそこはちゃんと一つの遺跡でみんなに言ったことは間違いじゃないから。
イクスああ、うん。それは大丈夫なんだけど……。
イクススレイ、俺たちに気を遣って無理してないか ?
スレイ? オレはなんにも !むしろちょっと楽しんじゃってたくらい。
イクスそう、なのか ?
スレイこんな体験、元の世界では絶対にできないからね。正直、遺跡に入ってからワクワクしっぱなしだった。
スレイそれよりごめん、また時間取っちゃって。もうすぐ遺跡を抜けるはずだから。さあ、先へ進もう !
イクスあ、ああ。
ミリーナちょっと意外な反応だったね。
イクス……だよな。けど、すごく自然体だった。
イクススレイは「今の自分」をどう思ってるんだろな。……それだけじゃないんだ。こんな状況でもどうして、あんな風にいられるのか……。
スレイみんな ! 出口だ !外に出られるぞ ! !
カーリャやりましたね !ここまで長かったですよぉ !
ミリーナイクス、私たちも行きましょう。
イクスああ、そうだな。スレイに遅れないように。

Character7話 【4-11 ゼンライ山道 入口】
イクスはぁっ……くっ……。凄くキツい山道だな。
光魔……ウゥ~……ハルルルルル
ミリーナ! ここにも光魔が !
スレイはぁぁっ ! !
光魔ギァァァァァッ… !
スレイ……よし。みんな、怪我はない ?
ミリーナありがとう、スレイさん。私たちはまだ大丈夫よ。
イクススレイはさすがだな。こんな山道での連戦でもまだ余裕がある。
スレイオレって山育ちだから。みんなより少し慣れてるだけだよ。
スレイそうだ。この先に光魔がいないかオレ、ちょっと確認してくるよ。
イクスそれなら俺も……。
スレイすぐ戻るから心配しないで。みんなはここで休んでて。
イクスああ。うん、わかった。

Character8話 【4-13 ゼンライ山道 頂上付近】
ミリーナスレイさんはまだまだ余裕そうだったわね。
イクスすごいよな。強くて、博識で、おまけに優しくて。あれで俺とほとんど同い年なんだぜ ?
イクスあれこそが「世界を救う役目」を担うに相応しい人物だよなって思ったよ。
イクス俺も、スレイみたいになれるかな……。
ミリーナ今のイクスだって十分凄いよ。それこそ「世界を救う役目」を担うに相応しい人物。だからゲフィオン様だって任せてくれたんだと思うな。
イクス俺なんてまだまだだよ。なんていうんだろ……スレイは安定感があるだろ ?
イクススレイを見てると思うんだ。「世界を救う役目」を持つ人間として俺は、器が小さいんじゃないかって――
スレイオレはそんなに大したヤツじゃないよ。
ミリーナスレイさん。
イクスえっ……もしかして。
スレイごめん、聞こえちゃった。
イクスいや……別にいいんだ。ちょっと恥ずかしいけど。
スレイイクス、聞いて。イクスの器は小さくないよ。
スレイイクスはイクス、なんだし。
イクス……俺は俺 ?
イクスそういうものかな。正直俺は、そう簡単に割り切れ――
スレイうん、それならそれで良いと思う。
イクスえ ? けど、こういうのが器の大きさに関係してたりするんじゃ……。
スレイあんまり関係ないと思うな。極端な話、なんだっていいんだよ。
スレイイクスにとって、一番大切で好きなことが何なのかそれを忘れさえしなければ。
イクス一番大切で好きなこと…… ?
スレイオレが導師になって旅に出ようって思ったのは――
スレイ里や仲間のみんなに、平和に仲良く暮らしてほしかったからなんだ。一言でぎゅっとまとめるとね。
イクス……。
スレイでもそのために「憑魔を浄化しよう」とか「もっと強くなろう」って目標に夢中になりすぎると――
スレイ本当に自分がしたかったことが何なのかいつの間にか薄れちゃうんだよね。
ミリーナ何となくですけど、わかります。あくまで手段だったことが目的にすり替わっちゃうってこと……。
スレイうん。そうなると、他にも色んなことが上手くいかなくなっていってすごく悩んで、苦しむことになる。
スレイオレ、そうなりかけたことがあってその時、親友と仲間が言ってくれたんだ。お前がしたいことは何なんだってさ。
ミリーナスレイさんにも、そんなことが……。
スレイイクスが本当にしたいことってさ「世界を救うこと」じゃないよね ?前に、オレもよく考えたらそうだった。
イクスそれはそう……だな。俺にとっての「一番大切で好きなこと」か……。
イクス俺はミリーナが心配で……それにセールンドの人たちも守りたくて普通の日々が失われて欲しくなくて……。
ミリーナ……イクス。
スレイ多分ほとんどの人がそうなんだ。一番大切なことって、大体は自分の身近にいる人のことだから。
二人……身近にいる人。
スレイそれを忘れたり、誤魔化したりしなければ性格とか物事の考え方とかは人それぞれで良いんだと思う。
スレイすっごくエラそうなこと言ってるけど……。
イクスそんなことはない。ありがとう、スレイ。……って、ありがとうって言ってばかりだな。
ミリーナふふ。そうだね。
イクスよし ! 行こう、スレイ。時間を取らせてごめん。
スレイ全然だよ。オレたち、仲間じゃないか。
イクス仲間…… !ああ ! そうだな !
スレイさあ ! 光魔の鏡まであと少しだ !

Character9話 【4-14 ゼンライ山道 頂上】
カーリャぶるぶるぶるぶる !ようやく見つけましたよ !
スレイあれが、光魔の鏡……。
ミリーナいつも通り、すごい数の光魔ね。
イクス戦ってる最中にもわき出て来るだろうな。
Msc_004_009_speaker01……ウゥ~……ハルルルルル。
スレイどう攻める ?
イクスまずは俺が前に――
イクス…………。
イクスいや、いまの俺じゃ厳しい……。それにどれだけ効率よく戦っても長期戦は避けられない。
イクス地の利も得られないこの状況で最短で目的を果たすには……。
イクススレイ ! 一人で突っ込んで、思いっきり暴れてほしい !
スレイ……了解 !光魔たちを、ひたすら引っかき回せばいいんだな !
イクスミリーナはスレイの動きに合わせて援護を !
ミリーナわかった、任せて !
Msc_004_009_speaker01……ウゥ~……ハルルルルル
スレイ追撃はよろしく、イクス !うおぉぉぉぉぉっ ! !
スレイ手加減なしだ !
Msc_004_009_speaker01ギャゥッ !
スレイ次ッ ! !
Msc_004_009_speaker01グギャァッ ! !
ミリーナえいっ ! !
Msc_004_009_speaker01ギァァァァァッ… !
イクス今だ ! !
Msc_004_009_speaker01ギャゥッ !
Msc_004_009_speaker01ギァァァァァッ… !
イクスよし !
スレイどんどん行くよ、ミリーナ !
ミリーナはい ! !
ミリーナはぁぁぁ ! !
Msc_004_009_speaker01グギャァッ ! !
スレイ一気にたたみかける !
Msc_004_009_speaker01ギァァァァァッ… !
イクスいいリズムだ !このまま行こう、スレイ、ミリーナ !
ミリーナうん ! !
スレイ油断せず、どんどん行くぞ !

Character10話 【4-14 ゼンライ山道 頂上】
イクス……よし、終わったよ。
スレイよかった。これで光魔が出てくることはなくなるんだね。
ミリーナありがとうございました。スレイさんのおかげです。
スレイそんなことないよ。みんなで頑張ったから勝てたんだし。
イクスいや、スレイに一番キツイ役目を負ってもらったのは確かだ。
イクスここまでくる間にも、スレイに頼ってた面がかなり大きかったしさ。
カーリャスレイさま、かっこよかったですよね !さすが導師って感じですよ !
スレイえっと、そこまで言われるとちょっと照れ臭いけど――
スレイ役に立てたんならよかったよ。オレもみんなにはすっごく助けてもらったし少しは恩が返せたかな。
イクスえっ……スレイが ?
ミリーナ私たちは助けてもらったけど……。
スレイだって、何も知らなかったオレに色々教えてくれて、親切にしてくれたでしょ。
スレイ森で迷子になってるところも助けてくれたしオレの遺跡話にも付き合ってくれたしあと、おやつだってわけてくれた。
スレイほら。こんなにたくさんある。
ミリーナ言われてみればそうだけど……。
イクスうん。ちょっと変な気がする……。
スレイえ、そうかな ?でも、実際にオレかなり助かったんだけど……。
イクス……ふふ。いや、きっとそういうところがスレイなんだろうな。いかにも導師らしいよ。
スレイむ、それって全然褒めてないだろ、イクス。
イクスそりゃあ、スレイが変わってるからね。元の世界でも言われなかったか ?
スレイ………………。
ミリーナ(言われてたんだ……)
カーリャ(言われてたんですね)
スレイあーもう ! とにかく !お互い助かったんならよかったよ !
イクスははっ ! うん、スレイの言うとおりだ。
イクスそれでスレイ。できたらこれからも俺たちに力を貸してほしいんだ。
イクス一緒に来てくれないか ?
スレイ……うん ! もちろん一緒に行くよ !このティル・ナ・ノーグを全部回ってみたいしね !
イクスありがとう。また一緒に冒険しよう !
スレイだな !
ミリーナよかったね、イクス。また、心強い仲間が増えて。
イクスうん。スレイの傍で色々勉強したいよ。それで……いつか俺もスレイみたいになれるといいなって……。
イクス(はっきりとした『自分の気持ち』を俺にとって『一番大切なもの』を迷いなく定められるように……)
イクスこの旅が終わるまでには、きっと…… !

Character10話 【4-14 ゼンライ山道 頂上】
ゲフィオン今回も無事具現化世界を安定化できたようだな。
イクスはい。光魔との戦いは相変わらずですが何とか。
ゲフィオンふむ……慣れてきた様子ではあるが……やや、疲れがあるように見えるな。
イクスいえ ! そんなことはありません。
ゲフィオン無理をするな。次の具現化の前に少しセールンドで養生していくといい。
ミリーナでも、時間が……。
ゲフィオン確かに猶予は無い。だが、お前たちに倒れられては元も子もない。
ゲフィオンこれも任務の内──そう思え。
イクス……わかりました。お心遣い、ありがとうございます。
イクスふぅ……。ゲフィオン様の言う通り……。確かに立て続けの具現化で落ち着く時間はなかったかもな……。
イクス具現化の旅……か。
イクス少しは鏡士として成長できてるのかな。もっと手ごわい光魔が出てきたとしても俺、うまく戦えるんだろうか……。
ミリーナきゃぁぁぁぁぁぁぁっ ! !
イクス! ?
イクス今のは……ミリーナの悲鳴 ! ?ミリーナ !
イクスミリーナ ! ? どうした ! ?
ミリーナ……あ、イクス……。
ミリーナごめんね、起こしちゃった ?心配して来てくれたんだ……ありがとう。
イクス顔色が悪いけど大丈夫か ?
ミリーナ大丈夫だよ。なんでもないの。ちょっとだけ、変な夢を……見ただけだから。
イクス……あんな悲鳴を聞いてちょっとした夢だなんて、思えないって。
ミリーナ……。
イクスちゃんと、話してくれよ。聞くからさ。
ミリーナイクス……ありがとう……。うん。聞いて……もらおうかな……。
ミリーナ……怖い夢を見たの。ティル・ナ・ノーグが滅びる夢。
ミリーナ大陸や島がキラキラ光って住んでいた人たちも一緒に光る砂になるの。
ミリーナさっきまで笑って話してた人たちが跡形も無く消えてしまって……。
カーリャ……それ【滅びの夢】じゃないですか ?
イクス滅びの夢…… ?なんだ、それ ?
カーリャ昼間、ミリーナさまと買い出しに出たときに市場で聞いたんです。最近みんな、世界が滅びる夢を見てるんだって。
ミリーナあれが……滅びの夢なのかわからないけどでも……悲惨な夢だった……。
ミリーナ触れていたものが砂になって消える感触がまだ手に残ってる……。
ミリーナ……何かの暗示なんじゃないかって凄く怖くて……。
イクス……………………。
イクス……あんまり気にしない方がいいよ。
イクス街の人たちが話してたことが、頭の中に残っててその影響で変な夢を見ただけって可能性もあるんだし。
イクスそれに、疲れも溜まってただろ ?誰だって疲れた時には変な夢を見るさ。
ミリーナそう、かな……。ただの夢だと思っていいのかな……。
イクスそうそう、ただの夢だよ。ミリーナは、心配性だな。
ミリーナふふ……イクスに心配性って言われるなんて思わなかった。
イクスお、俺はそんなに心配性じゃないぞ。慎重に考えることは、そりゃあるけど……。
ミリーナ……イクス。本当は私の話を聞いたとき色々、不安なことを考えたでしょ ?
イクスえっと……それは……。
ミリーナでも、言わないでくれたんだよね。
イクス……そうだよ。……良くないことの暗示とか何かの前触れ、とか……色々考えた。
イクスけど、確証もない話でミリーナを不安にさせてもしょうがないだろ。確かめようもないしさ。
ミリーナ──ありがとう。イクスのその気持ちで元気になれたよ。
ミリーナそうだよね──夢は、夢だよね。気にしすぎてもしょうがないよね !
イクスそっか。それなら、よかったよ。──ゆっくり眠れそうか ?
ミリーナうん。大丈夫。ごめんね。イクス。おやすみ。
イクスああ。おやすみ、ミリーナ。また明日から、頑張ろう。
イクスみんなが見る……滅びの夢、か。一体、何なんだ…… ?