Character1話 【6-1 雪山の村】
ミリーナだいぶ歩き回ったけど鏡映点も光魔の鏡もなかなか見つからないね。
イクス鏡映点は人や動物の筈だからすれ違っているだけなのかもしれないけど光魔の出現地域が点在的なのは気になるな。
ミリーナ光魔は光魔の鏡から出現する。つまり光魔の鏡を中心とした同心円的分布になる筈なのにね。
カーリャ難しいことはよくわかんないですけどなんかいつもと違う感じですよね。
イクスああ。俺もそう―― ! ?
小さな男の子うわーん……おうち、帰りたいよぉ……。
ミリーナあぶない ! 屋台の積み荷が崩れるわ !
イクスこのままじゃ下敷きに――くっ ! 間に合えっ ! !
小さな男の子えっ ! ?
イクス――ッ ! !
ミリーナ二人とも大丈夫 ! ?
小さな男の子ボ、ボクは平気。
イクスふぅ……お、俺もなんとか。――いたっ。
小さな男の子お、お兄ちゃん。大丈夫 ?
イクスえっ……あ、あぁ……。ちょっと積み荷がぶつかっただけ……だよ。へ、へっちゃら……さ。
小さな男の子よかった !ありがとう、お兄ちゃん !すっごく格好良かったよ !
イクスそ、そんな……。俺なんてたいしたこと……いててっ。積み荷の木箱が腕をかすめたみたいだな。
? ? ?あんたも、なかなかのお人好しね。
イクスえっ ?
ルーティファーストエイド !
イクスあっ……傷が……。えっと……あ、ありがとうございます。
ルーティそれじゃあ、まいど。100万ガルドね。
イクスひゃ、100万ガルド ! ?そんな大金、俺もってな――って、あぁっ !
ルーティな、何よ。ただの冗談じゃない。
ミリーナイクス ! この人って !
二人鏡映点 ! !
ルーティきょ、きょうえい……えっ ?
イクス――というわけなんだ。
ルーティなるほどねぇ。具現化やあんたたちの使命についてはだいたい理解したわ。けど――
小さな男の子…………すぅすぅ。
ルーティまず、あんたの背中で眠ってるそのチビ助をなんとかしないとね。
イクス…………うぅ。そ、そうだな……。
カーリャイクスさま、さっきからちょっと顔色が悪いですけどどうかしたんですか ?
イクスえっと……俺実はちょっと子供が苦手というか……。
イクスも、もちろん嫌いなわけじゃ―― ! !
二人しーーーっ。お、き、ちゃ、う……。
イクスご、ごめん……。
ルーティとりあえず、あたしとミリーナでその子について聞き込みしてくるわ。あんたはここで待ってて。
イクス……わかった。
ミリーナカーリャ、一緒にいてあげて。私もそんなに遠くには行かないようにするから。
カーリャそれならカーリャが消えちゃう心配もないですね。了解です。
ルーティそれじゃあ行くわよ。
ミリーナイクス、すぐ戻るから頑張ってね ?困ったらカーリャを頼ってね ?それから無理はしないようにね ?
イクスミリーナ、俺の方が子供みたいじゃないか。とりあえず……大人しく待ってるよ。聞き込み、よろしくな。
イクス……ミリーナたち、遅いな。聞き込みに手間取ってるのか ?
小さな男の子う~ん、よくねたぁ !お兄ちゃん、遊ぼうよ !
イクス……い、今、仲間がいないからもうちょっとだけ大人しく待ってて。
小さな男の子お願い ! ちょっとだけでいいから !ボク、楽しい遊び知ってるんだ !お兄ちゃんもきっと楽しいよ !
イクス……カーリャ、遊んであげてくれ。
カーリャええ ! ? イクスさま子供のお願いをそんな風にごまかしてたら将来、立派なイクメンになれないですよ !
イクスそんな予定はないぞ……。──どうしたらいいかわからないんだよ。島でも接する機会を避けてたから。
小さな男の子……イヤ、なの ?
イクスあぁぁっ……ち、違うんだ。えっと、イヤじゃないんだって。別にそういうわけじゃなくて――
カーリャ遊んであげましょうよ。お兄ちゃん、にしし~♪
イクスカーリャ……。お前、楽しんでるだろ。
イクスそれじゃあ……ミリーナたちが戻るまでなら。えっと、じゃんけん……とかする ?
小さな男の子するっ !
ミリーナお待たせ。──ふふっ。イクス、遠くから見てたらこの子のパパみたいだったよ。
ルーティイクス、チビ助の相手、ありがとね。おかげで大分、聞き込みができたわ。
小さな男の子あーあ。もう戻ってきちゃった。
イクス二人ともおかえり !いやぁ、戻って来てくれてよかったよ。何かこの子の情報はわかったか ?
ルーティあんた……そんなせっぱ詰まった顔しなくても。まぁ、それは置いといて。その子の住んでる場所、検討ついたわよ。
ミリーナこの辺りの子じゃないみたいでちょっと遠い場所みたいなの。歩きながら、話すね。
ルーティというわけで光魔の鏡を捜すのも、あんたたちの船に乗るのもまずはこの子を無事に家に返してから、ね。
イクスもちろん ! じゃあさっそく出発だ !
小さな男の子あっ。まてー ! お兄ちゃーん !
ルーティあ、二人とも。そっちじゃないわよ !逆 ! 逆の方向よ !
ルーティ……あれじゃあ鬼ごっこね。チビは楽しそうだからいいけど。
カーリャミリーナさま。イクスさまってどうして子供が苦手なんですか ?
ミリーナどう接したらいいかわからなくて緊張しちゃうんだって。
ミリーナ何気ない言葉で泣かせちゃうかもとか子供だけがかかる病気をうつしちゃったらどうしようとか、色々考えちゃうのよ。
カーリャなんだか納得しました。イクスさまらしいというか……。相変わらず心配性なんですね。
ミリーナ……それか、私のせいかも。
カーリャ
イクス……あれ ? そういえば。
ミリーナイクス、どうしたの ?何か街で買うものでもある ?
イクスいや……違うんだ。どうしてこの子こんな場所にいるのかなって思って。
イクスこの街に住んでる訳でもないのにこんなところに一人でいるなんて。
小さな男の子……わかんない。ボク、気付いたらここにいたから。
イクス……うーん。これって実は具現化された瞬間からこの子だけがここにいたってことかな ?今までそんなことあったかな ?
イクス単に俺たちが今までこういうケースに気付かなかっただけだとしたら今後の具現化の時に、もっと色々配慮して――
ミリーナ……待って、イクス。
イクス心当たりがあるのか ?
ミリーナ……うん。これも歩きながら話すね。

Character2話 【6-2 バーンハルト街道 1】
イクス――つまり、俺が具現化作業に迷いがあってその影響で、安全な場所に具現化される筈の人や物がおかしな場所に、ずれて具現化された……ってことか。
イクス(確かに……。このところずっと考えてた。こんな人の手に余る力を使っていいのかって。その迷いがあの子を危険な目に……)
ミリーナあくまで想像だけどね。魔鏡を使った具現化でも心の迷いは厳禁なの。だから……。
ルーティへぇ……。具現化って色々と大変そうね。まぁ、でも原因がわかってよかったじゃない。あんたが気を付ければ大丈夫なんでしょ ?
イクスはは……。う、うん。そうかな……。
ミリーナイクス。一人で悩まないでね。私も一緒に考えるから。
ルーティそれにしても、雪原が続くわね。──寒くない ? 大丈夫 ?
小さな男の子うん。大丈夫。
ルーティそう。あんた、強いわね。なかなかやるじゃない。
小さな男の子ううん。お兄ちゃんの方が強いよ。
イクスあ、あはは…………。
カーリャイクスさま。そろそろ慣れたらどうです ?
イクスいや、だって……。とにかくルーティが相手してくれて助かるよ。
ルーティあんたもしっかりしなさいよ。さっきの話を聞いた限り、チビの具現化位置がずれたのって、あんたの責任でもあるんだから。
イクスうっ。そうだよな。俺が鏡士として未熟だから……こんなことに。
ミリーナこれだけ大規模な具現化の術だもの。たまにうまく行かない部分が出るのも仕方がないよ。
イクス大規模な具現化か……。本当にとてつもないよな。物質だけじゃなくて沢山の命を写し出すんだから。
イクス実は、たまに、怖くなるんだ……。カレイドスコープによる具現化のこと。あの装置も元は軍事兵器だったらしいし。
カーリャってことは、今回はこれくらいですんでよかったってことですかね ?
イクス不吉なこと言うなよ !
ミリーナでも、イクスの不安だけで狂いが生じるなんてあの規模の魔鏡機器としては不自然でもあるのよね。
イクスつまり整備不良か、構造的欠陥か何らかの問題があるのかもしれないのか。これはゲフィオン様に報告しないとな……。
ルーティなんにせよ、そのせいでさっきまで家にいたっていう小さな子供が街の真ん中にほっぽり出された事実に変わりないわ。
ルーティだからまずは……忘れてないわよね ?
イクスああ。この子を教会の孤児院まで送り届ける。ちゃんとわかってるよ。
カーリャあとどれくらいで着きそうです ?
ルーティ街の人から聞いた感じだとまだまだ先ね。
イクスならそろそろ休憩を取った方がいいか ?
小さな男の子ボクは大丈夫 !
イクスげ、元気いいな……。
ミリーナふふっ。なんだかんだその子、イクスに懐いてるよね。ぴったり二人くっついてて可愛い。
イクスそうかなぁ……。
ルーティ………イクス。ちょっといい ?
イクスえっ ?
ルーティいつ光魔に襲われるかわからない。もちろん、あたしたちも気をつけるけど――
ルーティそのチビ、あんたにべったりみたいだしあんた……しっかり守りなさいよ。
イクス……っ。
ルーティできる ?
イクスああ……俺だって昔に比べればちょっとは成長したんだ。子供を守りながら戦うことだってできる。
イクスいざとなれば……オーバーレイだって……。いまの俺なら、きっと……。
ミリーナ
ルーティオーバーレイ ?
イクス……あ、いや、何でもない。とにかく先に進もう。

Character3話 【6-6 バティスタ雪山 5合目】
ルーティ山道に入ってきたわね。──周囲に何か見えるかしら……。
イクスあ ! 山の尾根に見える建物……。あれって教会じゃないか ! ?
小さな男の子おうち ! ボクのおうちだよ !
イクスお、おい。あんまり離れると危ないだろ。
小さな男の子じゃあ、お兄ちゃんの側にいるね。
イクスうっ、それはそれで……。
ルーティとにかく、あの教会が孤児院で当たりみたいね。
カーリャ今までもけっこう歩きましたけど教会までまだまだありますねぇ。
イクスよし、急ごう !この子を早く帰してあげないとだからな !
ミリーナ──あ、イクス。……速足で行っちゃった。
小さな男の子お兄ちゃん、鬼ごっこ好きなんだ !ボクもやるよ ! まて~ ! !
ルーティまったく。子供が二人いるみたいね。それも、一人はかなり大きい子供。まぁ……そういうのには慣れっこだけど。
ミリーナえっ。どういう意味 ?
ルーティあたしの周りにいた連中の話。
ルーティ年の割にみんなうちのチビたちみたいにきゃんきゃんしてさー。
ミリーナえっ……ちょっと待って。うちのチビたちって ! ?ルーティ、まさかもう子供が……。
ルーティち、違うわよ ! 別に相手だっていないし……ってそういう話でもないから ! うちのチビたちってのはあたしが育った孤児院の子供たち !
ミリーナあっ。だからルーティは子供の相手に慣れていたのね。
ルーティあれくらい、大きな子供を相手にするのに比べたら全然ラクなものよ。あんたもわかるだろうけど。
ミリーナう~ん。確かにイクスって少し子供っぽい所もあるかも……。
ミリーナでも、いつもしっかりしてるのにそういう一面があるのがまたたまらないのよね♪
ルーティ……まぁ、あんたがそれでいいならいいけど。しめる所はしめなさいね。……って、さすがにお節介だったかしら。
ミリーナううん。アドバイス、ありがとう !私、島で同年代の女の子がいなかったからルーティと念願だったガールズトークができて嬉しい !
ルーティガ、ガールズトーク ! ?
イクスおーい ! 何やってるんだ ?早くしないと日が暮れちゃうぞ !
ミリーナうん ! 行こう、ルーティ。
ルーティはぁ……はいはい。行きましょう──ん ?
ルーティ何よ──……まぁ、あたしにしちゃあ珍しいお節介だったかもね。
ルーティ──あのバカたちと旅してあたしも、少し変わったんだろうな……。
イクス…… ? あれ ?ルーティ、どうしたんだろう……。ひとり言か ?
ミリーナそれにしてはずいぶんはっきり喋ってたような……。
カーリャあのぉ……カーリャ、見ちゃったんですけどルーティさま、一人でいるときとか結構あんな感じで話してますよ……。
イクスそうだったのか ! ?ルーティ……って、ひとり言を言う癖があるのかな ?
ミリーナちょっと聞きづらいよね……。
ルーティあんたたち、どうかしたの ?
二人! ?
ミリーナ――いいえ。何でもないの。気にしないで。
ルーティ? そう。なら口だけじゃなく足も動かしなさいね。
イクスあ、あぁ。教会を目指して進もう。

Character4話 【6-7 バティスタ雪山 8合目】
ミリーナふぅ……結構歩いてきたね……。
ルーティそう言えば、さっき山の上に見えた建物……。
イクス
ルーティ大神殿っぽいと思ったのよね…… ?でも、場所は全然違う……。
ルーティ──ああ。そうよね。子供の具現化する場所がずれちゃうって話だもの。
ルーティあんなでっかい建物なんてきっともっと難しくって位置ぐらいずれるわよね。
イクスルーティ、あの……。だ、大丈夫か ?
ルーティあ、えっ ! ?単なるひとり言よ、ひとり言。気にしないで !
ミリーナそ、そう……わかったわ。ただのひとり言よね、うん、大丈夫よ。
カーリャカーリャたち、ルーティさまが悩んでるなら相談に乗りますよ ?
ルーティ? いったい何の話よ。
ルーティえっ ? ……う~ん。まあ、そうね。あんたたちになら隠さなくてもいいかな。紹介してあげるわ。
ルーティこの剣と話してたのよ。名前は、\"アトワイト\"。
イクス剣と、話す…… ?
アトワイト初めまして、アトワイトよ。皆さん、よろしく。
イクス! ? よくみたらいま……剣が、光った ?
ルーティアトワイトが「よろしく」だってさ。
イクスえっ……あ、ああ。よろしくお願いします……で、いいのか ?
ミリーナそれじゃあ私も。アトワイトさん、よろしくお願いします。
アトワイトふふっ。律儀な子たちね。
イクスあ。また光った。
ルーティけど、やっぱアトワイト――ソーディアンの声は聞こえてないみたいね。
ミリーナソーディアン ?
ルーティアトワイトのように意思を持ってる剣のこと。ソーディアンマスターだけが使いこなせ、声も聞こえる。で、あたしはソーディアンマスターの一人。
ミリーナ喋れる剣…… ? あ、そう言われてみると確かにさっき光ったのって意思表示をしているみたいだったわね。
イクス意思を持つ剣、ソーディアンか !かっこいいな ! 異世界にはそんなものがあるのか !よければもっと詳しく話を聞かせてくれないか ! ?
ルーティそういうの、あんま慣れてないのよね。こういうのはあたしの役目じゃなかったし。
ルーティまぁ、簡単に言うと千年前の\"天地戦争\"って大きな戦争に終止符を打つ為に造られた最終兵器……だったっけな。
ルーティちなみにソーディアンは全部で六本あってどれも凄い力を秘めてるの。で、あたしの仲間もソーディアンを持ってるわ。
カーリャおお ! なんか燃えますね ! !
ミリーナふふっ。興味津々みたいね。
イクス当たり前だろ !だって凄い力を秘めた最終兵器なんだろ !ソーディアン、知れば知るほど憧れるな !
ルーティ興味があるなら触ってみる ?
イクスいいのか ! ?
ルーティあ、でも注意してね。気に入らない人間が触るとガブって噛み付いちゃうから !
三人ええっ ! ?
アトワイトルーティ、悪ふざけはよくないわよ。みんな怖がってるじゃないの !
ルーティあはは、ごめんごめん。冗談よ。怖がらせるなってアトワイトに叱られちゃったわ。
ミリーナ……そ、そうよね。冗談よね……良かった。
カーリャイクスさま、心臓は動いてますか~ ?
イクスあ、あぁ……なんとか。
イクスけど……本当に凄いな……。
ミリーナ
イクスご、ごめん。夢中になりすぎた。そろそろ先に進もう。

Character5話 【6-8 バティスタ雪山 出口付近】
イクス…………はぁ。
ミリーナイクス、何か考え事 ?
イクス……あ、うん。さっきルーティからソーディアンのこと聞いて俺にもそんな凄い力があったらなって思っちゃって。
イクスマークみたいな強い奴がまた現れたらって考えたらソーディアンみたいな凄い力……武器とかがあればより安心して旅が続けられるかもなぁってさ。
ルーティ……凄い力、ねぇ。まぁ確かにそうなんだけど……。
アトワイトルーティ。思うところがあるんでしょう ?あなたの言葉で良いから、伝えてあげて。きっと、とても大事なことよ。
ルーティこういうの柄じゃないけどねぇ。まぁ、わかったわ。
ルーティイクス。えっといまあんたたちが話してたことなんだけど……。
イクスえっ ?
ルーティ確かにソーディアンは凄い剣……凄い力を持ってる。けど、力を悪用する奴がいたからそれに対抗して造られた物なのよ。
カーリャ『悪い奴を倒す、正義の剣』ってことですかっ !
ルーティうーん、ちょっと違うわね。どんなに強い力でも使い方が悪ければ、そうなっちゃうってこと。
ルーティ──あたしだって、全然偉そうに言えたもんじゃないわ。
ルーティ他のソーディアンマスターにも、バカなスタンとか変にスレちゃってるリオンとかもいるけど。それでもみんな、どこかでわかってると思う。
ルーティソーディアンみたいな力を手に入れることができたなら大切なのは、使う人自身なんだって。
イクス──強い力をただ手に入れるだけじゃ足元を見失うこともある、ってことか……。
ルーティイクス自身の強い心こそがどんな武器よりも大事なんじゃないかってあたしは思うわ。
ルーティそれに、あんたたち鏡士の力だってあたしからみたら十分すぎるほど、凄い力よ。
イクス!確かにそうだよな……。──肝に銘じておくよ。
アトワイト──ありがとう、ルーティ。うまく伝わったと思うわ。
ルーティふぅ。こういう話、ほんと柄じゃないわ。さぁ、ちょっと休憩しましょ。休んだら出発ね。
ミリーナ……イクス。
イクスミリーナ、ごめん。ちょっと今は……一人にさせてくれ。すぐ戻るから。
小さな男の子……お兄ちゃん。

Character6話 【6-9 グレバム森林 中央】
イクス……力そのものより使う人の方が大事、か。わかってたつもりなんだけどな。俺はやっぱりまだまだだ。人間としても……鏡士としても……。
小さな男の子そんなことないよ……。自分のこと悪く言わないで。お兄ちゃんはボクの英雄なんだから。
イクスそんな……俺が英雄だなんて大げさだよ。けど、慰めてくれてありがとう。
小さな男の子……慰めた訳じゃないよ。
イクスえっ ?
小さな男の子ううん……何でも無い。それじゃあもう……ボク、あっち行くね。
イクスあっ……ちょっと待って !森には魔物が潜んでいるかも――
イクス!さがって ! !
イクスミリーナもルーティもいない……。俺一人でなんとかしないと……。
イクス(けどこの数……この子をかばいながらじゃ今の俺に勝ち目がない……。もう……あれに頼るしかないのか)
イクス(でも……また【暴走】したら……)
イクスよーし ! やってやる、見てろよ、ミリーナ。凄い術を使ってみせてやる。
イクスそれで、凄い鏡士になって祖父ちゃんを少しでも楽させてやるんだ。
ミリーナうん。──イクスならきっとできるよ !
イクス―― !
ミリーナわぁ…… !凄く強い光…… !
イクス……よし ! いいぞ……。それじゃあ、これを……。
イクス……え……うわぁぁぁぁぁ ! ?
ミリーナイクス ! 危ない…… !
ミリーナ……イクス。無事、だね……。よかっ……た……。
イクスミリーナッ ! !
イクス! !こ、ここは……。
ミリーナイクス ! 目を覚ましたのね !よかった……。二人が倒れていたときは何が起こったのかと思った。
イクス倒れていたって……あれ、あの子は……。ミリーナ ! あの子は無事なのか ! ?もしかして魔物に襲われて――
ミリーナ大丈夫、無事よ。魔物も私たちが倒したから。強い魔鏡の輝きを感じたから、心配になってイクスたちを追いかけたの。間に合ってよかったわ。
イクス……そう、だったのか。ありがとう、ミリーナ…………。またミリーナに助けられちゃったな……。
ミリーナ……イクス。またってことはやっぱりあの魔鏡の輝きは、秘伝魔鏡術だったのね。
ミリーナネーヴェ家の鏡士だけが扱える特殊な魔鏡術オーバーレイ……。魔鏡の光を纏って、一時的に力を増幅させる技……。
イクス……うん。俺さ、ルーティの話を聞いてまずは自分自身が強くならなきゃって思ったんだ。いつまでも……目を背けてちゃダメだって。
イクス色々旅をしてきて、ちょっとは成長したと思ってた。けど……またダメでさ……。凄く焦るし不安になる。……情けないよ。こんな風に考えちゃうことも。
ミリーナううん。そう感じるのは悪いことじゃないよ。むしろいいことだと思う。
イクスえっ…… ?
ミリーナそれは自分の理想に向かって頑張ってる証拠だよ。成し遂げたい。だけど成し遂げられるかわからない。だから不安になるんだと思う。
ミリーナまだ自分の理想には届いてないってことなんだろうけど安心して。ちゃんとイクスは成長してる。誰よりも隣でイクスのことを見てきた私が保証する。
イクス……ミリーナ。
イクスああ──俺、頑張るよ。凄い鏡士になるなんて漠然としてるけど……この気持ちは本気だから。
ミリーナ……うん。
ミリーナ──うん ! 大丈夫 ! 絶対に !イクスがなりたいって思ったなら絶対になれるよ !
イクス……大げさだな、ミリーナ。けど、ありがとう。
ルーティまったく。あんたは心配かけて。あたしたちが駆けつけるのがもう少し遅かったらどうなってたかわかってるの ?
イクスごめん、ルーティ。それから……助けてくれてありがとう。俺だけじゃなく、その子のことも。
小さな男の子……お兄ちゃん。
ルーティまぁいいわ。チビ、行くわよ。あたしについてきなさい。
小さな男の子あっ……う、うん。
イクスルーティ。待ってくれ。
ルーティ……何 ?
イクス俺、ちゃんと最後までその子を、送り届けたいんだ。俺に任せてもらえないかな ?
ルーティできる保証は ?
イクスうっ……。
アトワイトルーティ、言い方があるんじゃないの ?
ルーティ……わ、わかってるわよ。
ルーティその……悪かったわ。別に信用してないわけじゃないのよ。
イクスいや……いいんだ。はっきり言えない俺が悪いんだし。
イクスけど……やらなきゃいけないと思うから。だって俺、その子を助けたんだ。ちゃんと最後まで、その責任を果たしたい。
ルーティ……。
イクス本当にちゃんとできるかはわかんないけど……。
ルーティふっ……もう、あんたは。微妙にしまらないんだから。
ルーティけど、わかったわ。イクス、そのチビは任せる。
イクスああ。ありがとう、ルーティ。
小さな男の子………。
イクス……おいで。俺と一緒に行こう。
小さな男の子うっ……うんっ ! ! ありがとう !
イクスちょ、ちょっと。どうして涙ぐむんだよっ ! ?
ルーティさあ。教会までもう少しよ。最後まで気を引き締めて行きましょう。

Character7話 【6-14 草原の教会】
イクスえっと、そんなわけで──迷子になっていたので連れてきました。
Msc_006_007_speaker01ありがとうございます !どこに行ってしまったのか心配していたんです……。
ミリーナいえ !無事に送り届けられて良かったです。
イクス……迷子……っていうのはちょっと嘘だけど……。
Msc_006_007_speaker01え ?
ルーティ──ううん、何でもないわ !
ルーティイクス ! 説明してもわからないだろうし結果オーライなんだから。ここは、ごまかしときましょ。
イクス──あ。そっか……そうだよな。
カーリャさすがルーティさま !初対面のときから思ってましたけどかなりの世渡り上手ですよね !
ルーティカーリャ ? それどういう意味かしらぁ ?
カーリャな、なんでもありませーん !
ルーティあっ。こら、待ちなさい !
ミリーナふふっ。二人もすっかり仲良しね。
イクス……ちゃんと帰れてよかったな。
小さな男の子うん。お兄ちゃん、ありがとうね。あと……えっと……もし、時間があったら
イクスああ……一緒に遊ぼう。そのときは、オススメの遊びを教えてくれ。
小さな男の子うん ! 約束 !またね ! 格好いいお兄ちゃん !
イクスな、なんだよそれ……。けど……約束だ !それじゃあ、またな !
カーリャ──さて、とにかくこれで子供の件は無事、解決ですね !あとは、光魔の鏡です !
イクス結構いろんな場所に行ったのにやっぱり全然見あたらなかったな。
ミリーナカーリャ、ここまでの道中でも何も感じなかったのよね ?
カーリャはい……。お役に立てなくてごめんなさい……。
カーリャ──けど、何て言うんでしょう。この辺り、何となく違和感があるんですよね。
ミリーナ違和感 ?
カーリャはい。ちょっとだけですが。ぶるぶる、じゃなくて、ぴりぴりみたいな感じだったから、勘違いかも──
Msc_006_007_speaker02……ウゥ~……ハルルルルル !
イクス── ! ?
ミリーナ今の──魔物の声 ! ?教会の外から…… ! ?
カーリャ──な、な、な、な、何で ! ?
イクスカーリャ!? ──その震え……!
カーリャと、と、突、然 ! 来、ま、し、た !ぴりぴりから、ぶるぶるに ! ! !さっき、まで、無かっ、たのに !
イクス何だって ! ?そんなことって……。
ルーティどう考えても、やばい感じね !外に出るわよ !
イクスこ、これは…… !
ミリーナ光魔の鏡 ! ?さっきまで何もなかったのに ! ?
イクスこれじゃまるで待ちかまえていたみたいじゃないか !
ルーティ考えるのは後にしましょ。
ルーティあんたらにしてみたら探していたお宝が向こうから来てくれた。ラッキーってことでいいじゃない。
ルーティけど、お宝を前にしたときが一番危険でもあるわ。──あの中から光魔が無限に湧いてくるっていうならさっさと光魔の鏡を破壊しないと。
ミリーナええ。教会の孤児院だってあるものね。
イクス……確かに。今は、目の前の戦いに集中しなきゃ。
イクスよし。みんな、教会を護りながら戦おう !
ルーティ当たり前でしょ ! 中には随分チビたちもいる !あの子らには、指一本触れさせないわよ !そうでしょ、イクス ! !
イクスああ ! その通りだっ ! !

Character8話 【6-15 草原の教会 外れ】
イクスはぁ……はぁ……──よし !光魔の主を倒したぞ…… !
ルーティ教会も無事みたいね……よかった。
ミリーナイクス、後は光魔の鏡を──
イクスああ !
ルーティ待って ! ? イクス、危ない !
イクス! ?
マーク──また、鏡映点サマに助けられたな。イクス。
イクスマーク ! !
マーク俺がセールンド軍の方を相手してる間に随分調子に乗ってくれたみたいだが……そいつもここで終わりだ。
ミリーナこっちの事情は聞く耳なしなの ! ?
マーク当たり前だろ ?
ミリーナイクス ! ? 光魔が !
ルーティくっ ! これじゃあまた教会が…… !
イクスルーティ、そっちを頼む !
ルーティわかったわ !
マークふっ……そうすると思ったぜ。
イクス── !まさか、これを狙って… ! ?
マークこれで、面倒な邪魔は入らないだろっ !
イクスぐあっ ! ?
ミリーナイクス !
イクス……気を付けろ ! ミリーナ !やっぱりマークは俺たちよりずっと強い。
マーク逃げたっていいんだぜ ?代わりにその女が死ぬだけだ。
イクス何っ ! ?
マークイクス、俺が何も知らないと思ってるのか ?お前が過去に何をやらかしたのかを。
イクス……っ ! !
マークなぁ、ビビりくん ?
イクス…………それは。
小さな男の子お兄ちゃんを悪く言うなっ !
イクス―― ! ?
マークなんだ ?
ルーティバカッ ! なんで出てきたの ! !戻りなさい ! はやくっ ! !
ミリーナルーティ ! その子をお願い !
ルーティ言われなくてもわかってるわ !
イクスこんなときでも、俺のこと……。
マークよかったなぁ、イクス。あのガキには無様な姿を見せずにすんで !
イクス――ぐっ ! !
ミリーナイクス ! !
マークまぁ、ミリーナには見せちまったがな。無様なのは今に始まったことじゃねぇから構いはしねぇか。
イクス……黙れ。
マークあ ?
イクス俺は……確かにビビりでお前よりもまだまだ弱い。何もかも中途半端な……半人前だ。
イクスけど ! 俺は鏡士として生きると決めた ! !もう自分の持つ力にもそして過去にも目を背けはしない ! !
イクスここにいる全員に誓ってやる !俺はマーク……お前にだけは負けない !どんなにお前が強くても ! !
マークそこまで言うなら――
マークやってみせな !
イクスうおぉぉぉっっ ! ! ! !

Character9話 【6-15 草原の教会 外れ】
イクスもうミリーナは狙わせない !
マークはは、頑張るじゃねぇか。
マークなら、こいつはどうだ !
イクス──遅い !
イクスよし、かわせた !
マークああ。かわしちまったな。
イクスなんだと ?
マークまた前と同じだぜ ?俺に気を取られすぎると、ってな。
カーリャイクスさま ! 後ろ !
イクスミリーナ ! !
ミリーナ! ?
ルーティくっ ! ? あたしじゃ間に合わない !
イクス(くそっ……またかよっ ! !また……ミリーナが怖い思いをしてる。俺がよけたから……俺のせいでっ)
イクス(何とかしたい……。いや……何とか、するんだ ! ! )
イクス(いつも俺を信じてくれているミリーナを守る為に俺も自分を信じる ! だから俺は、今度こそ―― ! ! )
イクス──やってみせる ! !
マーク──何っ ! ? その光は ! ?
イクスオーバーレイ ! !
マーク……っ。
イクスミリーナ、大丈夫か ?
ミリーナイクス……その魔鏡術って……。
イクスああ。やっとミリーナに見せることができた。よかったよ……今度は、うまくできて。
イクス……ミリーナを守れて。
ミリーナイクス…… !
イクス俺、ちょっとは前に進めたかな。
ミリーナううん。ちょっとじゃない。その秘伝魔鏡術はイクスにとって――
ミリーナとっても、とっても大きな一歩だよ。
マーク……その程度の力で守った気になるなよ ?
イクスこれなら──どうだっ !
Msc_006_009_speaker01── !
イクス――誰だ ! ?
ルーティあ、あんた……。
マーク何で止めた ?
Msc_006_009_speaker01──わざと受けるつもりだったろう。……今の貴様に万に一つの事態も許されない。
マークははっ。ずいぶん優しいな。あの程度の力どうってことは無かったんだぜ。
Msc_006_009_speaker01……まだ、くだらん茶番を続けるつもりか。手伝えというのは、こんなことか ?
マークわかったわかった。ここは一度、退いてやるよ。
Msc_006_009_speaker01……。
ルーティ──リオン…… !あんた、一体何やってんの ! ?
リオンふん……僕に構うな。
イクスリオンって……ルーティの仲間のソーディアンマスターだよな ! ?
マークこの鏡映点は──俺たちが抑えさせてもらった。
イクス何だと ! ?
マークここは、お前らだけの庭じゃねぇってことだ。
ミリーナ……そんな ! ?救世軍がその人を具現化したっていうの…… ?
イクスそれじゃあまさか救世軍にも鏡士が ! ?
マーク……ゲフィオンにでも聞いてみたらどうだ ?きっと、いい答えをくれるぜ。お前たちにとって、都合のいい答えをな。
光魔……ウゥ~……ハルルルルル !
イクスくそっ……また光魔が !
マークじゃあ、また会おうぜ。イクス。
リオンふんっ……。
ルーティ──あんた ! 待ちなさいよ !どうしてなのよ !どうしてあんたは――このバカッ !

Character9話 【6-15 草原の教会 外れ】
イクス……鏡の封印はできたけど。
カーリャさっきの話……救世軍にも鏡士がいてこっちの邪魔をしてきてるってことですよね ?
ミリーナもしかして……うまく具現化できなかったり光魔が私たちに都合の悪い場所に現れるのは相手の鏡士が干渉してるせいだったのかも。
イクス鏡士はオーデンセ出身のはずだから……。俺たちの知ってる人かもしれない……。何だか混乱してきたよ……。
ルーティこらこら、あんたたち。そんな暗い顔して考え込んでてもしょうがないでしょ。
ルーティとにかくこれで、ここでやることは終わったんでしょ ?──光魔ってのも、もう出ないのよね。
イクス……ああ。この島はもう大丈夫だ。
ルーティそれなら約束通りあたしはあんたたちの飛空艇に乗ることにするわ。
ルーティ一緒に行かなきゃいけない理由もできたしね。
ミリーナあのリオンって人……ルーティと同じソーディアンマスターなのよね ?……仲間、なのよね ?
イクスどうして、俺たちを問答無用で殺そうとしてくる奴らなんかの方に……。
ルーティわからない……。
ルーティでもね。あいつ、ちょっとヒネてるけどスタンに言わせると根はそんなに悪い奴じゃないらしいのよ。
ルーティ──きっと何か、事情があるんだろうってスタンなら言うだろうから。追いかけてみるわ。仲間、だしね。
ルーティ──まぁ、それはそれとしてこれからも、何かあったら声かけてよ。
ルーティあんたら、まだまだ頼りないからさ。──あんたらの旅、手伝ってあげるわ。
ミリーナうん…… ! ありがとう、ルーティ。すごく、心強いわ。これからもよろしくね !
カーリャ──さて、それじゃあどうします ?イクスさま。
イクス次の島の具現化だけど……その前に一度、城に寄ってこの件をゲフィオン様に相談しよう。
イクス今のままじゃ、これから先どんな形で具現化を邪魔されるか想像もつかないし……。
イクス相手がどんな方法でこっちの具現化に干渉しているのかがわかれば何か対策ができるかもしれない。
ミリーナまずは、相手を知ることから、よね ?私もそれがいいと思うわ。
イクス……知ること、か。
イクスゲフィオン様……。信じていいんだよな……。