Character1話 【孤児院付近】
イクスレイヤード処理の影響の調査……。次は孤児院だな。
カーリャ大陸の主要な街や村を見回りましたけど何も影響はなかったじゃないですか。心配し過ぎですよ。
ミリーナこれでいいのよ。こうやって自分たちの目で確かめることが大切なんだから。
イクスカーリャ、光魔の鏡の気配は感じるか ?
カーリャいいえ。これっぽっちもぶるぶるしません。やっぱり光魔の鏡は発生してないっぽいですよ。
イクスそうか。少なくともレイヤード処理による光魔の発生や被害は心配なさそうだな。
ルーティおっ、イクスにミリーナじゃない。
ミリーナルーティ、もしかして孤児院に行ってたの。
ルーティそうよ。久しぶりにね。あんたたちはレイヤード処理の調査 ?
イクスそうだよ。ところで、孤児院はどうだった ?
ルーティそれがもうびっくりよ。いやぁ、ホント具現化って凄いわ。
ミリーナえっと、どうしたの ?
ルーティそれがね、少し前から具現化された各大陸間で交易が行われるようになったらしくてさ。
ルーティ孤児院の食糧、日用品不足なんかもだいぶ解消されてたみたいなのよ。
ルーティこれもあんたたちが地道に具現化の旅を進めてきたおかげね。
イクスそれじゃあ、孤児院ではレイヤード処理による問題や悪影響は何も発生していなかったんだな ?
ルーティないない。むしろチビども全員以前にも増してピンピンしてたわよ。
イクスそうか……。それならよかった……。
ルーティただ、少しだけ気になる情報があって……。
イクス気になる情報 ?
ルーティレイヤード処理が完了してすぐに救世軍があちこち嗅ぎまわりはじめたみたいなのよ。
ミリーナそうなの ! ?
イクス救世軍の動向……。タイミング的に怪しすぎるな。
ルーティ孤児院にも尋ねてきたんですって。金髪の少年を見かけなかったかって。
イクス救世軍が行方を追っているってことはもしかして、その人は鏡映点なんじゃ……。
ルーティあんたもそう思うのね。それなら……多分……。いや……きっと、あいつだわ。
ミリーナルーティ、心当たりがあるのね ?
ルーティええ。金髪っていったらスタンよ。あたしと同じソーディアンマスターのね。
ルーティあいつホントにバカで世間知らずでさ。だから、トラブルに巻き込まれてなきゃいいんだけど……。
ルーティそれに……あいつまで救世軍に押さえられたら……。
ミリーナ……ルーティ。
イクスひとまず救世軍より先にその人を保護しなくちゃいけないな。
ミリーナそうね。救世軍の動向を考えるとレイヤード処理の影響と無関係には思えないわ。
ルーティありがと。正直助かるわ。さすがにあたし一人じゃ手に余ると思ってたのよ。
イクスえっ。ルーティ、もしかして一人で行こうとしてたのか ?
ルーティま、確かな情報じゃないからね。無駄足になる確率も高いし付き合わせるのも悪いと思って。
イクスけど、それでもルーティが行こうと思ったのは仲間のことが心配だったからだろ ?
ミリーナそれなら私たちも協力するのは当然よね。
ルーティまったく……。何も手に入らないかもしれないのによくそんなこと言えるわね。
ミリーナうーん。じゃあ、こう考えるのはどう ?
ミリーナ私たちはルーティが協力してくれてとっても助かってる。だから、ルーティにも協力する。
イクスルーティの言うところのこれで『チャラ』ってやつだな !
ミリーナそうそう、それ !これで貸し借りなしよね !
カーリャお二人とも !むしろ利子つけて返さなきゃですよ !
ルーティちょ、ちょっと。そんな育ちの悪い言葉使うもんじゃないわよ……。
アトワイトふふっ……。この子たちもなかなかのお人好しみたいね。
ルーティまったく……。
イクス……うん ?
ミリーナイクス、どうかした ?
イクス……いや。何でもない。たぶん、気のせいだ。
ミリーナ気のせい ? それって――
ルーティよしっ ! あんたたち、しっかり言質取ったから覚悟しなさい !
イクスああ。望むところだよ。
ルーティそうと決まればさっそく出発よ !行商人から目撃情報を仕入れてきたわ !ついて来なさい !

Character2話 【8-1 バーンハルト街道 1】
スタンはぁ……はぁ……。なんなんだ、さっきの兵士たちは……。いきなり襲いかかってきて……。
ディムロス理由はわからんがお前を狙っていることは確かなようだな。
スタン起きたら知らない場所に飛ばされてるし変な奴らに追いかけ回されるし悪い夢でも見ている気分だよ。
ディムロスだが、これは夢ではないようだぞ。我らがいた世界を礎とした別世界と考えるのが妥当だろう。
スタンそうだな。もし夢だったらそろそろリリスが起こしてくれる頃だし。
ディムロススタン、その発言だけは夢であってほしいと思ってしまったぞ……。
ルーティホント、何バカなこと言ってるのよ。
スタンルーティ !
アトワイトよかった。ディムロスも一緒みたいね。
ディムロスアトワイト ! ?
イクスルーティ、見つかったのか ! ?
ルーティええ。スタンよ。あたしの勘どおりこいつも具現化されてたみたいね。
スタンえっと、ルーティ。この人たちは ?それに……ぐ、具現化 ?
ルーティあたしが説明するよりイクスたちの方が早いわ。二人とも、頼んだわよ。
イクスああ。わかった。
イクス――ということなんです。
スタンうーん、なるほど。
ルーティだいたい事情はわかった ?
スタンいや、全然。俺には難しすぎてさっぱりだよ。
ルーティはぁ……だと思ったわ……。
ルーティとにかく、あんたもこの世界を救うためこの二人に協力しなさい。
スタンそれはもちろん。
ミリーナえっ ! ? スタンさん、いいんですか ! ?
イクスちょ、ちょっと待ってください。えっと……協力してくれるのは嬉しいです……。
イクスだけど、もう少しちゃんと説明させてください……。今のままだと……申し訳ないです……。
スタンそうかなぁ……。よくわからないけど、二人は困っててだから今ここに俺がいるんだろ ?
イクスそうですけど……。他にも色々事情があって……。
スタンいいや。俺にとってはそれだけで十分だよ。二人を放っておくことはできない。
スタンそれに、困っている人を見過ごすなってのがエルロン家の家訓だからな。
イクス……スタンさん。
スタンイクス、これからよろしく。
イクススタンさん、ありがとうございます !
スタンミリーナもよろしく。
ミリーナええ。スタンさん。こちらこそよろしくお願いします。
カーリャルーティさまもスタンさまもとってもいい人ですね。
イクスそうだな。ルーティも俺たちが事情を説明し終わる前に是非協力させてくれって言ってくれたしな。
スタンえっ、ルーティが ?
ルーティちょっと、スタン。なによその反応は。あたしだって人助けぐらいするわよ。
スタンご、ごめん。ちょっと意外だったから。
ディムロスだが立派な心がけだぞ。いついかなるときも世界のために行動する。それがソーディアンマスターだ。
ルーティそうそう !これもソーディアンマスターの使命よ !
ルーティそ、それに……二人は王宮に仕えてるからうまいこといけば国家予算の数割ぐらいもらえたりするかもだし…………。
スタンあっ、よかった。いつものルーティだ。
ディムロスすまないが先ほどの発言は撤回させてくれ。
アトワイトなんだか二人に申し訳なくなってきたわね……。
イクス……やっぱり。
ルーティあっ ! ちょ、ちょっと !今のは冗談よ ! ?
イクスやっぱり……聞こえる。
ルーティえっ…… ?
イクスミリーナも聞こえるだろ ! ?男の人と女の人の声が ! ?
ミリーナええ、聞こえてるわ !もしかして、ディムロスさんとアトワイトさん ! ?
ディムロス我の声が聞こえるのか ! ?
アトワイト私の声も ! ?
イクスはい ! しっかりと !
ルーティちょ、ちょっと待って !なんであんたたち、ソーディアンの声が聞こえるようになってるわけ ! ?
ミリーナもしかして、具現化のレイヤード処理の影響かしら ! ?
イクス……たぶん、その可能性は高いと思う。
イクスほら、この前、ミクリオとエドナ様と出会っただろ。
イクスあの時はスレイの認知する世界像が反映されて本来、俺たちには認識できない天族を認識できるようになった。
イクスあれと同じ理屈だよ。
イクスルーティの認知する世界像から別の誰かの認知する世界像に上書きされたんだと思う。
ミリーナ別の誰かって……スタンさん ?
イクスそうなると、スタンさんにとって剣が生きてることは当たり前だったのか ?
スタンいや、普通剣は生きてないし。
ディムロスその台詞……なんだか出会った当初のことを思い出すな……。
ミリーナスタンさんの世界像じゃないみたいね。でも、それじゃあ……いったい誰の……。
ミリーナレイヤード処理の際に具現化された鏡映点が他にいるのかしら。
イクスそれはわからない……。けど、一つだけわかったことがある。
イクスそれはレイヤード処理による影響は具現化大陸の安定化以外にも確かにあったってことだ。
イクス俺たちがソーディアンの声を認識できるようになっただけなら問題はないのかもしれない。
イクスだけど……それ以外にまだ気づいていない悪影響が発生しているかも……。
救世軍兵士見つけたぞ ! あの男だ ! !
スタンあいつら、こんなところまで追いかけてきたのか ! ?どれだけしつこいんだよ !
イクス救世軍 ! ?
ディムロスイクス、あやつらが敵対勢力なのだな。
イクスそうです。鏡映点であるスタンさんを捕らえようとしてるんだと思います。
ディムロススタン、わかっているな ?
スタンああ ! いくぞ、ディムロス !
ルーティアトワイト !
アトワイトいつでもいいわよ。
イクスミリーナ、俺たちもいくぞ !
ミリーナええ !

Character3話 【8-1 バーンハルト街道 1】
スタンお前たち ! まだやるつもりか ! !
救世軍兵士クッ……なんて強さだ…… !
救世軍兵士だが……ここで逃がすわけには……。
リオン退け。そいつらに用はない。
スタンリオン ! ?
ルーティな、なんであんたがここに……。
リオン…………ふんっ。
救世軍兵士退けと言われても……あいつを捕らえるよう俺たちは――
リオン二度同じことは言わん。犬死にしたければ勝手にしろ。
救世軍兵士……わ、わかりました。
ミリーナリオンさん……まだ救世軍に……。
スタンちょ、ちょっと待ってくれ……。救世軍って敵なんだよな…… ?悪い奴らなんだよな…… ?
スタンなのに……なんで……リオンが救世軍を指揮してるんだよ……。
ディムロスシャルティエ !お前も聞こえているのだろう ! ?何故、黙っている !
リオン…………。
スタンおい ! リオン ! 行くなよ !待ってくれ――
ルーティスタン ! 危ない ! !
スタン――うわっ ! !
イクススタンさん !
スタンくっ…………。
ルーティスタン、大丈夫 ! ?
スタンあ、ああ……。
ルーティあんた……スタンに何してんのよ ! !
リオン敵が近づいてくれば斬る。当然のことだ。
スタンそんな……敵だなんて……。俺たちは……一緒に頑張って……神の眼を取り返した仲間だろ…… !
スタンリオン ! 待ってくれ ! !どうしてなんだよ ! ?
スタンリオン ! リオーーーン ! !

Character4話 【8-2 バーンハルト街道 2】
ミリーナリオンさん……。どうして救世軍に協力してるのかしら……。
イクスわからない……。
ルーティだけど、今。あいつが敵であることは間違いないわ。
スタンいや……リオンは敵じゃない。
ルーティあんた、自分が斬られたこと忘れたの ! ?少しは人を疑うことを覚えなさいよ !
スタンそれでも、リオンは敵じゃない !俺の仲間だ ! ! そして、友達だ ! !
イクス……そうなんですね。
スタンリオンはすごく強くて、俺よりもずっと頭が良くて責任感もあってとっても良い奴なんだよ。
スタンきっと何か事情があるんだ。救世軍と一緒になって世界を滅ぼそうとする奴じゃない。
ルーティそりゃ、そうかもしれないけど……。
イクススタンさん、ルーティ。ごめん……こんな争いに巻き込んで……。
ミリーナ私たちのせいで……仲間と……敵対することになって……。
ルーティあたしはもう……覚悟は決まってる。あんたたちは気にすることないわよ。
スタンそうだよ。それに、イクスとミリーナは何も悪いことはしていないじゃないか。
イクスでも、俺たちと一緒にいたらきっと……リオンさんと戦うことに……。
スタン確かに……俺は……リオンと戦いたくない……。
ディムロススタン ! ?もしや救世軍につくつもりか ! ?
スタン違うって !もちろんイクスとミリーナに協力はする !
イクスだけど……それじゃあ……。
スタンリオンと戦うことになるかもしれないって言ったよな ?
スタンそれってつまり、リオンとまた会うことができるかもしれないってことだろ ?
スタンそのとき、ちゃんとお互い話し合えばきっとなんとかなる。何か事情があるなら助けることもできる。
スタンそうしたらイクスとミリーナも助けられてリオンも助けられる。
スタンだから、二人は気に病むことないよ。そのまままっすぐに自分が正しいと思ったことをすればいい。
イクス……スタンさん。
ルーティまったく……あんたらしいわ。
ディムロス相変わらず考えが甘い。だが、進むべき道は間違っていないぞ。
アトワイトひとまず、今後の方針が固まったみたいね。
イクスはい。俺たちがまずやるべきなのは救世軍の動向の調査です。
ミリーナそうね。救世軍のことを調べていけばリオンさんのこと、レイヤード処理の影響もわかってくる筈よ。
ルーティそれなら街へ向かうわよ。手分けして聞き込みね。
イクス情報収集なら港町が最適だ。この大陸の交易の中心となってるからな。
スタンわかった。さっそく向かおう。

Character5話 【8-5 水路に囲まれた港街 1】
イクスみんな、救世軍について何かわかったか ?
スタンああ。街で聞き込みしてきた。少しだけど情報も手に入ったよ。
ルーティだけど……なーんか釈然としないのよね。
ミリーナスタンさんとルーティもそうだったのね……。
イクスまさか、悪い噂や怪しい話どころかいい奴らだって評価しかないんだもんな……。
スタン街の人たちの安全のために魔物を討伐したり、自警団を組織して街の治安を守ったりとかしてたんだな。
ルーティあたしが仕入れた情報じゃ、交易も実は救世軍が主導になって進めてたみたいなのよね。
ミリーナそうだったの ! ?
イクス救世軍……調べれば調べるほどよくわからないな……。
スタンなんだか……俺もわからなくなってきたよ。
ディムロススタン ! 惑わされるな !襲われたことを忘れたか !
ルーティそうよ。そういう奴らに限って裏でかなり悪いことやってるに決まってるんだから。
アトワイト確かに、私たちを妨害し、鏡映点を押さえ世界を滅びへと誘おうとしているのは紛れもない事実なのだから。
スタンまあ、それはわかってるけど。
イクス肝心の救世軍が何をしようとしてるのか、とかリオンさんの行方、レイヤード処理の影響もわからずじまいだったな……。
ミリーナ大丈夫よ。まだ聞き込みをしていない街や村だってあるじゃない。
ルーティけど、今日のところはこれぐらいにしましょ。さすがに疲れたわ。
スタンそうだな……腹も減ったし……。
イクスそれじゃあ宿に向かおう。さっき予約しておいたから。
ルーティおっ、さすがイクス ! 気が利くわね !行きましょ行きましょ !
? ? ?…………。
ミリーナ…… !
イクスミリーナ ?
ミリーナイクス、ちょっと先に行っててくれる ?
イクスあ、あぁ。けど、どうかしたのか ?
ミリーナううん。何でもないの。かわいい雑貨屋さんがあったから。
ミリーナ無駄遣いはしないから安心して。少し見てくるだけ。
イクス無駄遣いの心配はしてないよ。ミリーナは買い物上手だからな。
イクスこの前もミリーナが買っておいてくれた物のおかげで助かったし。
ミリーナふふっ。そう言ってもらえると嬉しいわ。
イクス少し気分転換でもしてくるといいよ。けど、あまり遅くならないようにな。
ミリーナええ。わかったわ。
イクスそれじゃあ、先に行ってるよ。
ミリーナうん。
ミリーナ……カーリャ、行くわよ。
カーリャいいですけど、雑貨屋さんなんてありましたっけ ?
ミリーナそうじゃないわ。カーリャは気づかなかったの ?
カーリャえっ、何がです ?
ミリーナここに来てからずっとイクスをつけ回してる奴がいるわ。

Character6話 【8-6 水路に囲まれた港街 2】
イクスを尾行していた謎の男。ミリーナはその正体を探るべく男の後を追い人気のない街外れの一角にたどり着く――
ミリーナイクスをつけ回してた男……どこに向かってるのかしら……。
カーリャミリーナさま。これマジでヤバいですって。イクスさまたちも呼んで来ましょうよ。
ミリーナダメよ。今戻ったら見失っちゃうし一人で行動した方が尾行にも気づかれにくいわ。
ミリーナそれに、まだあっちは私に気づいてない。情報を手に入れる絶好のチャンスなのよ。
カーリャですけど……んんんっ~~。
ミリーナ静かに。誰かと接触を始めたわ。
救世軍兵士……つけられてはいないな ?
ああ。大丈夫だ。俺の監視にも気づいてないさ。
ミリーナ(あれは……救世軍の兵士 ! ?ということは……あの男も………… ! )
救世軍兵士それで、あいつらは ?
今は宿だ。俺たち救世軍について調べているようだがまだ何もバレてはいない。
救世軍兵士今後の予想しうる行動は ?
しばらく俺たちについての情報収集だろうな。別の街や村に向かう可能性が高い。
救世軍兵士今この大陸を動き回られると厄介だ。別の大陸に向かわせることはできないか ?
そうだな……偽の情報を流せば可能な筈だ。やってみる。
救世軍兵士頼んだぞ。これで【特異鏡映点】の確保に人員を総動員できる。
ミリーナ(特異鏡映点 ! ? )
なあ。その特異鏡映点ってのは一体何なんだよ ?
救世軍兵士マークさんによるとこの世界を救うことができる存在らしい。
っていうと ?
救世軍兵士俺も小耳に挟んだ程度なんだがなんでも特異鏡映点ってのは――
救世軍兵士っていう存在なんだと。
なるほどな……。そりゃ、意地でもあいつらに渡すわけにはいかないな。
ミリーナ(うそ……。特異鏡映点なんて存在が具現化されてたなんて……。しかも、そんな力が……)
ミリーナ(すぐイクスに知らせないと ! )
マーク盗み聞きたぁ、お育ちがいいことで。
ミリーナマーク ! ?
ん ! ?
救世軍兵士何者だ ! ?
ミリーナくっ……気づかれたわね……。
マークったく、面倒なことになったぜ。まさか特異鏡映点について知られちまうとはな。
マークお嬢ちゃん、さすがに今回ばかりは跳ねっ返りが過ぎてるぜ。ま、らしいと言えばらしいけどな。
ミリーナ……私を始末する気 ?
マーク大切な駒を殺すわけねぇだろ ?
ミリーナ……どういう意味 ?
マーク知りたがりは命を縮めるぜ ?
ミリーナそれじゃあ、失礼させてもらっていいかしら ?イクスが帰りを待ってるから。
マークアハハハッ ! こりゃ傑作だなっ !こんなときでもイクスかよっ ! !
マークじゃじゃ馬もその辺にしときな。
ミリーナ! !
マーク人質を取るなんざ、ホントだせぇがこっちも背に腹は代えられない状況だ。
マーク今、あいつらに特異鏡映点の存在を知られると厄介だからな。
マーク一緒に来てもらうぜ。
ミリーナ………………。
イクス……ミリーナ、遅いな。買い物に時間がかかるタイプなのはわかってるけど……遅すぎる。
イクス……もしかして、何かあったんじゃ。不安になってきたな……。
カーリャイクスさま ! !
イクスカーリャ ! ? なんで一人なんだ ! ?ミリーナはどうした ! ?
カーリャミリーナさまが……救世軍にさらわれてしまいました ! !
イクスなん、だって……。
イクスカ、カーリャ。冗談……だよな ?心配性な俺を……からかってるだけだよな…… ?
カーリャ冗談じゃないですってば ! !ガチなやつですよっ ! !
イクスなっ……何があったんだっ ! ?なんでミリーナはさらわれたっ ! ?無事なのかっ ! ? 今どこにいるっ ! ?
カーリャそ、そんないっぺんには答えられないですってば ! !
イクスわかってるからっ !いいから早く教えてくれっ ! !
カーリャイクスさまを尾行してた奴に気づいて情報を探っていたら、マークが現れてミリーナさまを連れ去ったんです !
カーリャなんでも特異鏡映点っていう存在がいるらしくてイクスさまたちにそのことを知られるとマズいとかで !
イクス特異鏡映点 ! ? なんだそれは ! ?いや、それよりミリーナは ! ?
カーリャミリーナさまは無事だと思いますがどこに連れ去られたかはカーリャもわからなくて――
イクスカーリャ ! !
カーリャあああっ ! !ミリーナさまと離れすぎて力が…… ! !
イクスカーリャ ! 待ってくれ ! !何か、何か他にないか ! ?なんでもいい、教えてくれ ! !
カーリャとにかくミリーナさまは生きてます ! !だから早くミリーナさまを――
イクスカーリャ ! !
ルーティなによ。騒がしいわね。どうかしたの……って、イクス ! ?
スタンイクス ! 何があった ! ?
イクスどうしよう……どうすればいい……。
ルーティ落ち着きなさい !どうしたの ! ? 何があったの ! ?ちゃんと話して !
イクス……ミリーナがさらわれた。
スタンミリーナが ! ? 一体誰に ! ?
イクス……………………。
スタンおいっ ! イクス ! !誰にさらわれたんだよ ! !
ルーティバカ ! 状況からみて救世軍に決まってるでしょ ! !
ルーティくっ……まだ遠くには行ってない筈。あたりを探すわよ。
スタンそうだな ! イクス、行くぞ ! !

Character7話 【8-9 バーンハルト街道 7】
静寂に包まれた一室。そこには気を失いぐったりと横になっている鏡士の少女。そして救世軍の指示により彼女を見張るリオン・マグナスの姿があった――
シャルティエまさかスタンさんとディムロスまで具現化されてるとは思いませんでしたね。
リオンシャル……付き合わせてすまないな。
シャルティエ何言ってるんですか。坊ちゃんは僕のマスターなんです。どこまでもお供しますよ。
シャルティエたとえ、スタンさんたちと敵対しようと。
リオンだが、とんだお笑いぐさだな。今度は救世軍に従ってこうして、女の見張りをしている始末だ。
ミリーナ………………。
リオンこれではあの時と何も変わっていない……。
シャルティエそんなことはありませんよ。必ず好機はやって来ます。
シャルティエそれに、この世界でも僕たちは一緒じゃないですか。
シャルティエ僕たち二人がいればできないことはない。坊ちゃん、そうでしょう ?
リオン……ああ、そうだな。そして……今度こそ助けるんだ。
シャルティエはい ! その意気ですよ ! !
リオンシャル……。ありがとう。
シャルティエいえいえ。坊ちゃんが元気になってくれてよかったです。
シャルティエそれにしても彼女……ミリーナさんでしたっけ ?悪い人には見えませんよね。
シャルティエ救世軍の奴らが言うにはこの世界を滅ぼそうとしている鏡士の一人って話でしたけど。
リオン誰が何を考えてるなどわかったものではない。信じられるのは自分だけだ。
シャルティエそれは……そうですけど……。
ミリーナうっ……ここは……。
シャルティエあっ、目を覚ましたみたいですね。
リオン…………。
ミリーナ……あなた、リオンさん ?どうして……ここに……。
リオンお前が勝手な行動をしないよう監視するためだ。
ミリーナそうじゃないわ。どうして救世軍と一緒にいるのかって聞いてるのよ。
リオンお前には関係のないことだ。黙れ。
ミリーナスタンさんもルーティもあなたのこと心配してたわよ。
リオン聞こえなかったか。僕は黙れと言ったんだ。
ミリーナそれに、スタンさんは言ってたわ。リオンさんは仲間だって。友達なんだって。救世軍に協力するような人じゃないって。
リオン黙れと言っている ! !
ミリーナ…………。
ミリーナ何か事情があるのでしょう ?
リオン人の心配をするより少しは自分の心配をしたらどうだ。
ミリーナいいえ。私は、心配も不安も何一つないもの。
ミリーナ今、イクスは必死になって私を助けようとしてくれているから。
リオンただ助けを待っているだけの奴は能天気なものだな。
ミリーナ助けられる側が能天気でいられるなんて本当は思ってないでしょう ?
リオン…………。
ミリーナイクスと私は一緒に戦おう、頑張ろうって約束した。そして今、イクスは頑張ってる。
ミリーナだから、私はくじけたりしない。私も頑張って、この状況を打破しようと必死に考えているのよ。
ミリーナねぇ、リオンさん。あなたは誰を助けようとしているの ?
リオン……貴様。先ほどの話を聞いていたな ?
シャルティエもしかして、僕の声も聞こえてたりして。
ミリーナええ。聞こえてるわよ。ソーディアンのシャルティエさんよね ?
シャルティエええええっ ! ?まさか本当に聞こえてるなんて――
リオンシャル !
シャルティエあっ……す、すいません……。
リオン貴様が何を考えていようが僕には関係ない。
リオンここから逃がすつもりもない。おとなしくしていろ。
ミリーナリオンさんの覚悟はわかってる。大切な仲間と敵になっても助けたい人がいるんでしょう ?
ミリーナでも、本当に私たちは敵対しなくちゃいけないの ?協力することはできないかしら ?
ミリーナ事情だけでも話してみない ?
リオン……敵に語ることなどない。
シャルティエ坊ちゃん……。
マークははっ。ちょっと見ない間にずいぶんと仲良くなったみたいじゃねぇか。
ミリーナマーク !
マーク俺は構わねぇぜ。いつでも鏡士どもの元に行けばいい。
リオン貴様…… ! よくもぬけぬけと…… ! !
リオンマリアンはどこにいる ! !
ミリーナ(……マリアンさん ! ? )
マークまあ、落ち着け。あのメイドなら今は俺たちが預かっている。どこにいるかは悪いが教えられねぇな。
ミリーナリオンさん…… !マリアンさんって人が人質になってるのね !
ミリーナマーク ! どうしてそんな酷いことするの ! ?
マーク……ははっ ! 聞いてた通りの女だな。どうして酷いことをするのかって ?
マーク強いて言うなら、あいにくと酷いことってのは効果的だからだな。
ミリーナ酷いことだとはわかってるのね ?だったら――
マークおい、お前。この女を例の場所に連れていってくれ。
救世軍兵士了解であります !
? ? ?――待ちなさい。
? ? ?肉体労働は私の仕事ではありませんがあなたでは、彼女に不釣り合いです。私がエスコートしましょう。
マーク……ファントム ! ?
ファントムさあ、来てもらいましょうか。麗しのミリーナ様。
ミリーナくっ…… !
リオン…………。
ファントム……リオン、あなたはこう考えていますね。
ファントム「コイツは彼女の居場所を知っている。コイツを脅せば何か手がかりが掴めるかもしれない」と。
ファントムあなたの考えている通りだ。私は、彼女の居場所を知っています。
リオンほう。そのことを僕に言うのか。
マークはぁ……余計なことを……。
ファントムですが、きみなら私がどんな人間かも見抜いているんじゃありませんか ?フフ……私の口は堅いですよ ?
ファントムそう……彼女を助けるためにも今は救世軍に従うしかない。それが彼女を救う唯一の道です。
ファントム頭の切れるあなたになら理解できると思いますがねぇ ?
リオンずいぶんとおしゃべりが好きなようだな。ならば口の堅さを試してやろう。
リオン貴様が消えても聞き出す手段は他にもある。
マークやめろ。時間の無駄だ。あんたも斬られる前にさっさと行け。
ファントムアハハハハ、怖い怖い。では失礼しますよ。
マークさて。お前にはやってもらうことができた。
リオンいつまでこんな茶番に付き合わせる気だ。はやくマリアンを解放しろ。
マーク次が最後だ。そうしたら解放する。約束だ。
リオン偽れば命で償ってもらう。
マーク男に二言はねぇよ。詳しく話す。ついて来な。

Character8話 【8-10 グレバム森林 1】
ルーティチッ……ここもダメか。なんで何の情報もないのよ。
スタンまだ探していないところはある。次はあっちの方に行ってみよう。
イクス………………。
スタンイクス、元気出せよ。カーリャが無事だって言ってただろ。
イクスだけど、それはさらわれた時の話だ。今がどうなのかはわからない……。
イクスそれに……マークはミリーナを殺そうとしたんだ……。今……本当に生きてるのかも……。
ルーティけど、本気で殺そうと思ってんならその場で始末しちゃってる筈でしょうが。あたしは生きてると思うわよ。
イクスだけど、酷い目にあってるかもしれないだろ……。
ルーティ……あのさ。心配してる暇があったらちょっとは捜すのに集中してくれない ?
ルーティさらわれちゃったもんは仕方ないでしょ。今のあんた、相当役立たずだわ。
スタンルーティ、そこまで言うことないだろ。ずっと一緒だった幼馴染みがさらわれたんだぞ。
イクスいや……いいんだ。ルーティの言う通りだよ……。俺が……役立たずだから……ミリーナはさらわれたんだし……。
イクスそう……俺が……俺があのとき一緒に行ってたら……ミリーナはさらわれたりしなかったんだ……。
イクスそれに……ミリーナの居場所がわかっても救世軍にはマーク、それにリオンさんまでいる……。
イクス少し鏡士の力が使えるようになっただけの、今の俺じゃミリーナを助けられるか……わからない……。
ルーティあんたね……。
ルーティいい加減にしなさいよ ! !
イクスえっ……。
ルーティあんたっていつもそうよね !
ルーティソーディアンの力があったらとかあのとき一緒に行ってればとかないものねだりや仮定の話ばっか ! !
ルーティ今のあんたは役立たず以下 ! !なんの価値もないゴミクズよ !
イクス…………ごめん。
アトワイトちょっと。ルーティ、落ち着きなさいよ。
スタンそうだ。さすがに言い過ぎだぞ。
ルーティ何 ! ? あたしが悪いっての ! ?
ルーティディムロスだって今のこいつ見て何も思わないわけ ! ?心配するだけで何もしないこいつを ! !
ディムロス……ルーティの考えは間違っていない。
スタンディムロス !イクスの気持ちだって考えろよ !
スタン心配で不安になるのは当然のことだ !だから今は俺たちがイクスを支えなきゃなんだろ !
イクススタンさん……。いいんだ……俺は心も弱いから……。
ルーティだからそういうところだって言ってんのよ !孤児院の子たちだって自分の境遇を嘆いたりはしない ! !
ルーティ何かを手に入れたかったら必死こいて頑張るしかないのよ ! !少なくともあたしはそうしてきた ! !
ルーティあんたが今しなくちゃいけない本当のことはなんなのっ ! ?ちっとは根性見せなさいよっ ! !
イクス俺が今しなくちゃいけないことは……。
イクスミリーナを……助けること……。
ルーティわかったでしょ。ったく、こうして話してる時間も惜しいってのに。
イクス……ルーティ。ありがとう……そうだよな……。
イクス俺は今、ミリーナを助けるために頑張らなくちゃいけないんだ……。
イクスそれに……ミリーナと約束した。一緒に戦おう、頑張ろうって……。
イクスきっとミリーナは、捕まってる今でもなんとかしようって頑張ってる……。
イクス頑張らなきゃ……いけないよな……。
スタンイクス、そうだよ。頑張ろう。ミリーナだけじゃなく俺もルーティもディムロスもアトワイトもみんなついてる。
スタンみんなで頑張ってミリーナを助けるんだ ! !
ルーティ当たり前でしょうが。ほら、さっさと行くわよ。まだ何も掴めてないんだから。
イクスいや……ちょっと待ってくれ……。他の場所を調べても何もわからない可能性が高い……。
ルーティあんたねぇ……。まだそういうこと言うの……。
イクスルーティ、違うんだ。もう俺たちはこんなに調べた。なのに何もわからないのはおかしいんだ。
イクスミリーナが言ってた。何もわからないってことも調べたからわかったことだって……。
イクスそう……何も目撃情報がないのはあきらかに不自然だ……。
イクス待てよ…… ? カーリャが消えたとき消失の仕方が一定ペースではなく加速度的だった……。
イクスつまり……移動手段は……少なくとも徒歩や馬車じゃない……。
イクス……海路 !そうだ ! あの時点での風向きと風速からこれしか考えられない !
スタンけど、港町での目撃情報もなかったよな。
イクス救世軍は交易を主導していた。人目に付かないようミリーナを貨物内に閉じ込めて船に運ぶことも容易な筈。
ルーティ確かに……そうかもしれないわ。急いで街に戻ってミリーナが乗せられた船を調べましょ。
イクスいや、その必要はない。船の出入港のスケジュールと仕向港は全部頭に入ってる。
ルーティえっ。どうしてあんたそんなこと知ってるのよ ?
イクス港に着いたら港湾事務所に立ち寄るのが癖になっていてさ。そのときスケジュール表を読んだんだ。
スタンそれを一発で覚えたって言うのか ! ?
ルーティ本だけじゃなくスケジュール表まで一度読んだらすべて記憶できるってわけね。なんて記憶力なのよ……。
イクスあの時刻から、ミリーナが乗せられたと思われる船は一つしか考えられない。
イクスそしてその船が向かった先もちゃんと覚えてる。
スタンってことは、ミリーナがいる場所がだいたいはわかったってことか。
イクスたぶんそこまでいけばミリーナの居場所も特定できる。
ルーティどういうこと ?
イクスはじめて具現化の旅に出るときミリーナとはぐれたりしないか不安でガロウズに頼んだことがあったんだ。
イクス俺はここから東の方を回ってみるからミリーナとカーリャは西の方を頼むよ。
イクス何かあったら魔鏡の通信で知らせるってことで。
イクスミリーナに近づければ、魔鏡で通信が取れる筈だ。結局、全然使ってはいなかったけどミリーナならきっと覚えてる。
イクス俺はミリーナを信じる。
ルーティよし。そうときたらすぐに向かうわよ。
スタンイクス、案内よろしくな。
イクスああ。任せてくれ。

Character9話 【8-13 ロベルト洞窟 1】
リオンはマークから最後の命令を受ける。救世軍に捕らわれた最愛の人を救うため成し遂げねばならない命令とは――
リオン足止めだと ?
マークそうだ。あいつらはあの女を助けにこっちにやって来る。
マークだが、今うろうろされると厄介だ。特異鏡映点を先に押さえられちまうかもしれねぇからな。
マークまっ、キツそうなら断ってくれや。ソーディアンマスター二人に鏡士が一人。返り討ちになるかもしれねぇだろ ?
リオンずいぶんと舐められたものだな。
マークははっ。さすが鏡映点様だ。こっちは人手不足だから助かるぜ。
リオンそんなことよりマリアンは無事なんだろうな ?
マーク殺すわけねぇだろ。もちろん生きてるぜ。お前も知っての通りあのメイドは特異鏡映点。
マークこの世界を救うことができる存在を殺したりなんてしねぇよ。
リオン……マリアンをいつ解放するんだ ?
マークこのゴタゴタが片付いた後ちゃんと解放する。ただし、条件付きになるが。
リオン……条件 ?
マーク救世軍の監視下でならって意味だ。悪いが特異鏡映点は手元に置いておく必要があるからな。
マークだが、救世軍の監視下でなら女の自由、身の安全は保証する。もちろんお前との接触も認める。
マークお前ももう俺たちに協力する必要はない。どこにでもいけばいいさ。
マークこれが最大限の譲歩だ。この条件が飲めるか ?
リオン…………。
マーク……交渉は成立ってことでよさそうだな。つまりあとはお前の腕次第だ。
マーク俺はさっそく特異鏡映点を押さえに向かう。うっかり死ぬんじゃねぇぞ ?
シャルティエ坊ちゃん、あの条件でよかったんですか ?あれでは結局囚われの身に変わりはありませんよ。
リオンあんな条件に従うつもりはない。マリアンと会えればこっちのものだ。救世軍を倒し、共に逃げる。
シャルティエまあ、普通そうしますよね。あのマークって男もそれぐらい想像付く筈なのに何考えてるんだか。
リオン知ったことか。だが……ようやくここまできた。
シャルティエ……ええ。そうですね。
リオン……あと少し。あともう少しで……助けられるんだ…………。
シャルティエ坊ちゃん。
リオン行くぞ、シャル。
シャルティエはい !
リオン……マリアン。待っていてくれ。

Character10話 【8-15 ロベルト洞窟 3】
とある場所に閉じ込められるミリーナ。そこで思わぬ人物と出くわすことになる――
ミリーナ…………。
救世軍兵士ここでおとなしくしていろ。
救世軍兵士じゃあ、俺たちも向かうか。
救世軍兵士ああ。
ミリーナ………………。
ミリーナよし。行ったみたいね。それなら――
カーリャうわ~~っ ! ミリーナさま~~っ ! !ご無事だったんですね~~っ ! !
ミリーナ静かに。
カーリャあ、ああぁ。す、すいません…………。
ミリーナふふっ。けど、心配してくれてありがと。
カーリャ当然ですよぉ……。
ミリーナカーリャ、あなたの身体ならここから抜け出せるわよね ?
カーリャはい。あの隙間からなら。
ミリーナあたりの様子を見てきて欲しいの。兵の数と配置、脱出経路、地形的特徴とか。
カーリャそんなに遠くには行けないですけど大丈夫ですか ?
ミリーナもちろんよ。カーリャができる範囲で。それだけでもすごく助かるわ。
カーリャわかりました。では行ってきますね。
ミリーナ気をつけてね。
ミリーナ……それにしても寒いわね。ずっといたら体調を崩しそう……。
ミリーナけど、カーリャを待っている間にも私ができることをやらないと。
ミリーナまずはイクスに魔鏡の通信を送らなきゃ。届くといいんだけど。
? ? ?こほっ……。
ミリーナそこに誰かいるの ! ?
? ? ?ごめんなさい。驚かせてしまったわね。
ミリーナえっ…… ! ?
ミリーナなんで王宮のメイドさんがここに ! ?
? ? ?あなたは……あの時の。確か……鏡士さまでしたね ?
ミリーナはい。鏡士のミリーナ・ヴァイスです。それより、どうしてあなたが……。
ミリーナ待って……救世軍に捕らわれているってことはもしかして……マリアンさん ! ?
マリアンどうして私の名前を ?
ミリーナやっぱりマリアンさんですね !無事でよかった !リオンさんから聞きましたよ !
マリアンエミリオから……。
ミリーナえっ ?
マリアンいいえ。なんでもありません……。
ミリーナマリアンさん、安心してください。今脱出方法はないか探してるところです。
ミリーナそれに私の仲間も必ず助けに来てくれます。だからもう大丈夫ですよ。
マリアンそうなのですね……よかった……。ありがとうございます。
マリアンあと……。リオン様は……無事でしょうか……。まだ救世軍に……。
ミリーナ……マリアンさん。
ミリーナリオンさんは……無事です。ちゃんと自分の意思で行動しています。
ミリーナだから、今はリオンさんを信じましょう ?
マリアンですが、また……私のせいで…………こほっ……。
ミリーナマリアンさん ? 大丈夫ですか ! ?
マリアンこほっ……えぇ………。ここに……連れてこられてから……少し……体調が…………悪く、て――
ミリーナマリアンさん ! ?
マリアンはぁ……はぁ………………。
ミリーナすごい熱…… !マリアンさん、しっかりしてください !すぐ治療しますから !
ミリーナマリアンさん ! マリアンさん ! ?

Character11話 【8-16 ロベルト洞窟】
スタンイクス、魔鏡の通信はつながったか ?
イクスミリーナからの通信を受け取った !とにかく無事みたいだ !
ルーティふぅ……これで一安心ね。
イクスけど、王宮にいたメイドさんも何故か捕らえられてるみたいなんだ。
イクスミリーナによると、体調があまり良くないみたいで……。
スタンそれならその人を助けるためにも早く行かないとな。
ルーティそれで、ミリーナたちが閉じ込められている場所はどこなの ?
イクス具体的な場所はわからないけどこれだけ情報があれば特定できそうだ。いま考えるから待っててくれ。
アトワイトディムロス。彼、だいぶいい目つきになったわね。
ディムロスああ。そうだな。
アトワイト地上軍最高司令官リトラーとまではいかないけれど、なかなかの切れ者なんじゃないかしら ?
ディムロスだが、まだ未熟すぎる。己への自信のなさ、迷いが強すぎせっかくの知恵を活かしきれていない。
ディムロスそれに、剣の腕もまだまだだ。型から外れることを無意識に恐れている。あれでは地上軍ではやっていけん。
アトワイトふふっ。あなたは相変わらずね。それだけ口うるさく言うってことは少しは見どころがあるって事かしら。
ディムロス素質はある……とだけ言っておこう。我にはスタンがいるからな。これ以上、面倒は見切れん。
ルーティあんたたち、静かにしてなさいよ。イクスが集中してるんだから。
イクス……これはジュードから教えてもらった薬剤としても使える花……。日陰かつ風のあまりない場所で咲く……。
イクスそして、この廃墟……特徴的にスレイなら神殿だったと考えるはず……。次に考えるのは紋様……いや劣化と風化度合いで……。
イクス……巡礼者のために建造されたなら現存する神殿との距離がわかって……そして雪の堆積状態から……方角も……。
イクス……見つけた。
スタンイクス、すごいじゃないか !
ルーティええ ! よくやったわ ! !
イクスこれも二人のおかげだよ。
スタンえっ。ルーティ、俺たち何かしたか ?
ルーティただ黙って見てただけよね。
イクスそうじゃないよ。ルーティはあの時今の俺は何をすべきかって気づかせてくれた。
イクスルーティがちゃんと言ってくれなかったらきっと……俺はあのまま何もできずにいた……。
ルーティ…………。
イクスそれに、スタンさんはずっと俺を励ましてくれただろ。
イクスあのとき……もういいんだ、なんて言っちゃったけど……本当は……すごく嬉しかったんだ……。
イクスちゃんと……自分の気持ちをわかってくれる人がいて……。
スタン……イクス。
イクスだから、ここまで来られたのは二人がいてくれたからなんだ。本当にありがとう。
ルーティまったく、何言ってんのよ。あんたもいなかったらここまで来られなかったでしょうが。
スタン俺とルーティがいたからじゃない。イクスも入れて全員――俺たちがいたからなんだよ。
イクス……俺たちか。
スタンそうだよ。俺たち仲間が。
ルーティさっ、とっとと行くわよ !場所まで突き止めたんだからあともうひとふんばり !
イクスみんな、こっちだ !ついて来てくれ !
スタンわかった ! 今はとにかく前に進むぞ ! !
イクスよしっ ! ミリーナの目印も見つけた !きっとこの先に、ミリーナはいる ! !
リオン……この先にはいかせん。
イクスリオンさん…… !
ルーティチッ……こんなときにあんたなのね……。
スタンリオン ! やっと会えた ! !
リオン目障りだ、さっさと消えろ。
スタンまずはちゃんと話そう !リオン、何があったんだよ !なんで救世軍に協力してるんだ ! !
リオン……黙れ。
ルーティ話す気はないって訳ね……。
イクスリオンさん……そこをどいてくれ。
スタンイクス ! 待て !まだ話は終わってない ! !
イクススタンさん……ごめん !けど、いま足を止めるわけにはいかない !
ルーティバカ ! さがりなさい ! !相手はソーディアンマスターなのよ !
ディムロスいまのお前で適う相手ではない !自分でもわかっているだろう ! !
イクス…………。
リオンふんっ……手が震えているぞ。まったく話にならんな。怖いなら引っ込んでいろ。
イクス……怖い……ああ、そうだよ !怖いに決まってるだろ ! !
イクスけど、俺はミリーナを助けるんだ !そのためには何がなんでも前に進まなきゃいけない ! !
イクスだから……そこをどいてくれ ! !リオンさん……いや、リオン ! !
リオン誰に何を言われようが知ったことか。大切なものを守るためこの先には行かせん !
リオン絶対に……何があってもだっ ! !
ルーティスタン ! 来るわよ ! !
スタンくそっ ! !

Character12話 【8-16 ロベルト洞窟】
イクスくはっ―― ! !
スタンイクス !
リオンくっ……。
シャルティエ坊ちゃん !
リオンシャル……まだだ…… !まだ……僕は、負けてないっ !
ルーティあんた……まだやるつもりなの ! ?
イクスくっ……はぁ……はぁ……。
スタンイクス、無理するな。ボロボロじゃないか。
イクスいいや……まだだ……。スタンさん、ルーティ……ミリーナだって……頑張ってるんだ……。
イクス俺だって諦めるわけにはいかないっ !
イクスだから……そこをどいてくれぇぇっ ! ! ! !
リオン目障りだっ ! ! 消え失せろっ ! ! ! !
スタン……やめろ。
二人――ハァァッ ! ! ! !
スタンやめろぉぉぉっっ―― ! !
スタンくっ―― ! !
イクススタンさん ! ?
リオン邪魔をするな ! !
スタン頼む……リオン ! !もうやめてくれっ ! !
スタンなんで仲間同士で戦わなくちゃいけないんだよっ ! !
スタンどうして仲間同士で傷つけ合わなくちゃいけないんだよ ! !
スタン仲間ってのは困ったときに助け合うものだろっ ! !
スタン俺たち仲間だろ ! 友達だろ ! !まずはちゃんと話してくれよっ ! !
リオンスタン……。この期に及んでまだ僕を……友と呼ぶのか……。
スタン当たり前だっ ! !
ルーティあたしたちはミリーナを助けるためこの先に進まなきゃいけないの。
イクスお願いだ……そこを通してくれ。
リオン……くっ。
ディムロス貴様、自分のやってることがわかっているのか ! ?
アトワイトソーディアンマスターの力はそんなことのためにあるんじゃないのよ。
シャルティエみなさん……坊ちゃんを責めないでください !
ディムロスシャルティエ ! ?
シャルティエみなさんの事情はわかってます !ミリーナさんが人質に取られていることも !
シャルティエけど、坊ちゃんも同じなんです !マリアンを人質に取られているんです !
リオンシャル !
スタンマリアンさん……。確か屋敷でディムロスを持ってきてくれたメイドの人か……。
イクスメイド……。待て。もしかして、ミリーナと一緒に閉じ込められてる人か ! ?
リオンマリアンを知っているのか ! ?
イクスミリーナの通信にメイドさんと一緒に閉じ込められているという情報があった。
イクスそして、俺たちは二人の居場所を知ってる。これから助けに行くところだ。
シャルティエ坊ちゃん ! 聞きましたか ! ?スタンたちと一緒にいけばきっとマリアンを助けられますよ !
リオン……だが、罠の可能性もある。
リオンそれに、この世界を滅ぼそうとしている鏡士の言うことなど信じるに値しない。
ルーティあんた、何言ってるの ?世界を滅ぼそうとしてるのは救世軍の方でしょうが。
リオン……どういう意味だ ?
リオンなん……だと…… ?
イクスこの世界にアニマを満たしアイギス計画を完遂することで滅びの危機から世界を救う。
イクスこれが真実だ。
リオン…………。
シャルティエ坊ちゃん、この話が本当かどうかは置いておくとしても……この話をマリアンが聞いたら……。
リオンマリアンは……自ら命を絶つことを選ぶだろう……。
リオン何故だ……何故こうなるんだ…… !今度こそ……僕の手で救えると思ったのにっ ! !
ルーティちょっと、落ち着きなさいよ。いったいどういうことなの ?
リオンそうか……お前たちは何も知らないのか……。あの後、何が起こったのか……。
スタンリオン ? どうしたんだ ?何かあったのか ?
リオン……この世界では関係のないことだ。
イクスけど、少なくとも今マリアンさんは生きている。
イクス少し体調がよくないみたいだけどミリーナが回復魔法で治療してるから心配はない。
スタンリオン、お前は頭がいいからさきっと色々考えてて、色々知ってるからこそまだ信じられないとこもあるんだと思う。
スタンだけど、マリアンさんを人質に取るような救世軍なんかより俺たち仲間を信じてくれよ !
スタンそして一緒に、マリアンさんを助けよう ! !
リオン……スタン。
スタンほら、まずは仲直りの握手だ。イクスもルーティも、みんなで。
ルーティまったく、仕方ないわね。
イクス一緒に、大切な人を助けよう。
リオン……お前たちも。
救世軍兵士貴様 ! 寝返ったな !
イクス救世軍 ! ?
リオンチッ……思っていたより早かったな。
ルーティこりゃ、厄介なことになったわね。
スタン倒しながら進むぞ !
イクスわかった ! みんな、こっちだ ! !

Character13話 【8-21 ティベリウス雪原 5】
スタンくっ……。救世軍の奴ら、本当にしつこいな。
イクススタンさん、大丈夫か ?
スタンああ、平気平気。
ルーティ……スタン。あんた。
スタンそれにしてもどうすりゃいいんだ。相手にしてたらきりがないぞ。
リオン状況から判断すると、僕が敵対したことマリアンの居場所を特定したことをすでに救世軍は気づいている。
イクスつまり、早く助けに向かわないと二人が別の場所に移動されてしまう可能性が高いってことか。
リオンそれだけではない。たとえ救出しても脱出経路を塞がれてしまっては元も子もないぞ。
イクス……いったい、どうすればいいんだ。
リオン簡単なことだ。
スタンリオン ! どこに行く気だ ! ?
リオン僕が囮になる。
スタン無茶だ ! 危険すぎる ! !お前を置いてはいけない ! !
リオン僕が決めた事だ。さっさと行け !
スタンけど―― !
リオンスタン、お前は僕を友達呼ばわりするがそんなもの受け入れた覚えはない。
リオン僕はお前のように、能天気で、図々しくて、馴れ馴れしい奴が大嫌いだ。
リオンだから……後は任せた。
イクス……そんな。
ルーティあんたって奴は……。
スタンリオン……。
スタンバカ野郎 ! !
リオン…… !
スタンお前はまたそうやって一人で抱え込もうとしてさ、本当にバカ野郎だよ ! !
スタンリオンはずっと一人で頑張ってきたんだろ !もういいんだよ !お前をもう一人にはさせない ! !
スタンだから、俺が残る ! !
リオン……なんだと ?
ルーティスタン、あんた正気なの ! ?いまのあんたじゃそれこそ無茶よ ! !
ルーティそうよ……だったらあたしも残る !
スタンダメだ ! ルーティは潜入に慣れてる !イクスたちと一緒にいくべきだ !
ルーティいい加減にしなさいよ !あたしが気づいてないとでも――
スタンルーティ ! 俺を信じてくれ !
ルーティ……スタン。
ルーティあんた、頑丈なのよね ?
スタンあははっ。それぐらいが取り柄だからな。
ルーティわかったわ……。
リオンお前一人で大丈夫なのか ?
スタンリオン、お前は一人で頑張ってきた。だから次は俺の番だ。
スタンそれに、マリアンさんが待ってるんだろ。きっとリオンのことを心配してる。行って、安心させてやれよ。
リオン……ここは任せたぞ。
救世軍兵士見つけたぞ !
イクスくっ……気づかれた !
スタンイクス ! お前も頼んだぞ !
イクスああ ! ミリーナ、マリアンさん、ルーティ、リオン、俺……全員で必ずここに戻ってくる ! !
ルーティだから、やられんじゃないわよ !約束破ったりしたら承知しないんだから !
スタンわかってる ! 約束だ !俺は、お前たち全員を待ってる ! !
スタンだから、ここは俺に任せろっ ! !
ルーティほら、あんたたち !はやく行くわよ !
イクスああ ! 先に進むぞ ! !
リオン……っ !
スタンさて、行くとするか。
スタンぐ ! いててて……。
ディムロススタン ! ?お前、もしや足を…… ! ?
スタンへへ……ルーティはすごいな……。黙ってたのになんで気づいたんだろ。
ディムロスまったく……お前というやつは。大丈夫なんだろうな ?
スタンちょっと捻ったくらいだよ。これぐらいたいしたことない。
ディムロスふっ……そうか。
スタンなんだよ、ディムロス。珍しく口うるさくないな。
ディムロス何も言うことはない。あのような輩がどれだけ束になろうとお前と我を倒すことはできんのだから。
スタンディムロス……ああ、そうだな !
ディムロスいくぞっ ! スタン ! !
スタン俺とディムロスの力、見せつけてやるっ ! !

Character14話 【8-24 雪積り積る遺跡 廊下】
イクスくっ……なんて頑丈な扉なんだ。
リオンどけ。シャル、いくぞっ !
シャルティエはいっ !
リオン――ハアアァッ ! !
ルーティよしっ、扉が壊れたわ。
イクスミリーナたちはこの先だ !
ミリーナどうして……どうしてなのっ ! !
イクスミリーナ ! 無事か ! ?
ミリーナイクス ! ? よかった !来てくれるって信じてたわ !
ルーティあたしたちも一緒よ !ここまでは計画どおりね。
ミリーナルーティ ! それにリオンさんも ! ?
リオンマリアン ! ?
マリアン……はぁ……はぁ。
リオン女 ! 治癒術はどうした ! ?
ミリーナそんなの……ずっとやってるわよ……。けど……。
ミリーナけど、治癒術が効かないの !何度やっても……何度やっても全然、効いてくれないの ! !
リオン何……っ ! ?
ルーティアトワイト !
アトワイトええ !
マリアンはぁ……はぁ……ぐっ……。
ルーティうそ……どうして……。
アトワイトまったく効いてないわね。何かにすべて吸収されてしまってるように感じるわ。
ミリーナたぶん原因は……このブレスレットよ。これは特別な魔鏡機器だから簡単には外せないの……。
イクス王宮の禁書庫の本で読んだ……。これは【アンチ・ミラージュブレス】。魔鏡戦争時代に開発された魔鏡機器だ。
イクス鏡士の人体実験の際に、被験者への鏡術による肉体と精神に及ぼす影響を緩和するために使用されていたらしい。
イクスなんでマリアンさんがこんなものを……。
リオンそんなことはどうでもいい !外せないなら破壊しろ !
イクスダメだ……。無理に外したり破壊したりしたらマリアンさんは……。
リオン……っ。
アトワイト彼女、酷く衰弱してるわ。はやく治療しないと助からないわよ。
リオンそんなことは見ればわかる !その魔鏡機器とやらを外す方法はないのか ?
イクス……魔鏡機器。ガロウズなら取り外せるはずだ !
ルーティスタンが脱出経路を確保してる。合流して、ケリュケイオンに向かうわよ。
リオンケリュケイオンまで……どれだけの距離があると思っている……。
シャルティエ……坊ちゃん。
ルーティ何弱気になってるのよ !今はとにかく、前に進むしかないのよ ! !
ミリーナリオンさん !私たちでマリアンさんを助けましょう !
イクスまだ助かる可能性はある !だから、今すべきことをするんだ !
リオン…………。
リオンお前たちに言われるまでもない。今はそれしか手段がないんだ。はやく行くぞ !
イクスああ !

Character15話 【8-26 雪積り積る遺跡 入口】
ルーティマズいわね。救世軍に追いつかれてるわ。
イクス戦闘はできるだけ避けたい。あと少しでスタンさんとも合流できるから逃げ切れるといいんだけど……。
ミリーナマリアンさんは ?
アトワイト危険な状態よ。ぐずぐずしていられないわ。
リオン…………。
マリアン……っ……ここは……。
リオンマリアン !意識を取り戻したのか !
マリアンリオン、様…… ?よかった……ご無事でしたか……。
リオンああ……心配をかけたな。
マリアンここは……いったい……。霧が濃くて……お顔が……見えません……。
リオン……何を言ってるんだ……。霧なんて……。
アトワイト……衰弱、及び過度のストレス状態に晒された心因性の突発性視覚障害のようね。いまの彼女には何も見えていないわ。
リオン…………っ。
マリアン……大丈夫です。そばに……いるのでしょう ?声はちゃんと……聞こえています。
ミリーナマリアンさん……きっとすぐに良くなります。ほら、さっきより少しだけ手も温かい……。
マリアンそう……なのですね……。
ミリーナ……もしかして感覚も……。
マリアンごめんなさい……。何も……感じません……。
リオンそんな……。
マリアン……もう、私は……ダメみたいです。だから……ここに置いていってください……。みなさん……だけでも、逃げて……。
イクスそんなことできません !
マリアン鏡士様……。私は、この世界に……いてはならない……存在なのです……。
マリアン私は……特異鏡映点……だから……。
リオン……マリアン、そのことを……知っていたのか。
ミリーナマリアンさんが……そうだったの……。
ルーティちょ、ちょっと待ちなさいよ。
イクス特異鏡映点って……何なんだ ?
ミリーナ特異鏡映点は……。アニマを逆流させる存在よ。
イクスアニマを……逆流……。
ルーティウソでしょ……。
リオンくっ……。
マリアン鏡士様……申し訳、ありません……。私がいては…………この世界が……滅んでしまうのですよね。
ミリーナけど、特異鏡映点の力を抑えることだってできるかもしれません !
イクス俺たちが方法を探します !だから……だから―― ! !
マリアンたとえ……力を抑えても……きっと……私は……救世軍に狙われ続けます……。
ルーティあんた……だからって……。
アトワイトルーティ。やめなさい。彼女の決意の固さ。わかるでしょ ?
ルーティわからないわ !まったく納得できない !
ルーティあたしたちはあんたを助けるためにここに来たの。リオンだってそうよ。
ルーティ問題があるなら、みんなで解決すればいいだけの話。あんた一人で解決しようとしないで。
ルーティそれに、これはあんただけの問題じゃない。あたしたちにも関係することなの。勝手に決められる筋合いはないわ !
マリアンですが……。
イクスルーティの言うとおりです。希望を……捨てないで下さい !
ミリーナマリアンさん、一緒に困難を乗り越えましょう。私たちもいますから。
マリアン…………。
リオンマリアン……僕は……君に生きていて欲しい。
マリアン…………。
マリアン……あなたが……それを望むなら……。
イクスマリアンさん !
マリアンご迷惑を……おかけしますが……私も、連れて行って……いただけますか ?
ミリーナもちろんですよ。最初からそのつもりです。
イクス俺たちで絶対にあなたを助けます。

Character16話 【8-29 ティベリウス雪原 8】
ルーティよっしゃ。なんとか追っ手を振り切れたわね。
ミリーナスタンさんが脱出経路を確保してくれてるのよね ?
イクスああ。もうすぐだ。スタンさんも無事だといいんだけど。
ルーティあいつなら大丈夫よ。心配することないわ。ディムロスだっているんだしさ。
マリアン…………。
リオン…………。
ルーティ見えてきたわ !あの先でスタンが待ってるわよ !
イクスいや……ちょっと……待ってくれ……。
ミリーナイクス、どうしたの ?
イクスそんな……ウソだろ……。
ルーティ何があったの ?
イクス……脱出経路が、封鎖されてる。
リオンなんだと……スタンは何をやっている ! ?
ルーティ……スタン。あいつ……まさか……。
ルーティじょ、冗談じゃ……ないわよ……。
アトワイトルーティ ! しっかりしなさい !
ルーティだって……脱出経路が……。
アトワイトスタンさんが倒されるわけないじゃない !それはあなたが一番わかってることでしょ !
ルーティ……そ、そうね。うん……スタンがやられるわけない。
ルーティそうだわ。あいつなら絶対に大丈夫。アトワイト、ありがとね。
アトワイトもう……ひやひやさせないでちょうだい。
ルーティイクス ! 他に脱出経路はないの ! ?
イクス……ひとつだけある。けど……。
ルーティいいから教えなさい !グズグズしてる暇ないんだから !
イクス…………山越えだ。
リオン……あの雪山を越えるというのか。
イクスそれしか……道はない……。
ルーティ……行くしかないわ。
ミリーナそれが、全員が助かる可能性のあるたった一つの道なら。
リオン……病人を抱えたまま山越えができると思っているのか ?
ファントムフフ……その通りです。山越えは無理でしょうね。
イクス救世軍 ! ?
ミリーナどうしてここに ! ?
ルーティどうでもいいわ !邪魔するなら倒すだけよ ! !
ファントム剣を収めて頂けますか ?我々は戦いに来たのではありません。交渉に来たのですから。
リオン……交渉だと ?
ファントム我々も予想を遙かに超える犠牲がでました。これ以上の争いはこちら側としても避けたいのです。
ファントムそこで一時休戦を申し入れようかと。
ファントム条件は、特異鏡映点の即時返還。
ルーティバカ言ってんじゃないわよ !そんなの交渉でも何でもないわ !あんたたちにしか得がないじゃない !
ファントム特異鏡映点の【アンチ・ミラージュブレス】。これをすぐにでも解除し彼女の治療を約束する。
ファントムつまり特異鏡映点の命を保証する。悪い話ではないと思いますがねぇ。
リオン……マリアンの。
ファントムあなたも救世軍に戻ってきますか ?こちらは歓迎しますよ。
ファントムもっともまた裏切られる恐れがありますからしばらく特異鏡映点との面会は認められませんがね。
ファントムそれでも、特異鏡映点の命は保証しますよ ?
リオン…………。
ルーティちょ、ちょっと。あんた、何考えてるの ?
ミリーナリオンさん…… ?
イクス救世軍に……従うつもりなのか…… ?
ファントム私にはあなたの考えていることがわかる。状況から鑑みてどうするべきかもう気づいているはずですよ。
リオン僕は……。
ルーティあんた……ふざけんじゃないわよ……。
ルーティあたしたちはスタンと約束した。必ず、全員揃って戻ってくるって !
ルーティあいつは絶対に生きてる !あたしたちが戻るのをたった一人で戦いながら待ってるわ ! !
ルーティあたしたちを信じたからあいつは……本当は足をケガしてるの黙ってそれでも一人で残ったのよ ! !
ルーティスタンのことなんだと思ってんのよっ ! !
ミリーナリオンさん、マリアンさんとの約束あなたは覚えているでしょう ?
ミリーナマリアンさんは私たちと一緒に行くとそう、約束したのよ。
イクス確かに山越えは厳しいかも知れない……。けど、俺は……俺たちはマリアンさんを信じてる ! !
シャルティエ坊ちゃん ! 僕は坊ちゃんが選んだ道ならどんな道でもついていきます ! !
シャルティエけど……けどですよっ !絶対に後悔する道は選んで欲しくない ! !それだけはわかってください ! !
リオン……黙れ。お前たちに指図されるいわれはない。
ルーティあんた……。
ファントム…………。
リオン確かに……貴様の言うことはもっともだ。
リオン状況から判断するに……スタンは……もうやられたかもしれない。
リオンマリアンは……山越えに耐えられないかも知れない……。
リオンそう……いまは救世軍に従うべきだ。これがもっとも賢い道だ……。
イクス……そんな。
ミリーナリオンさん……。
ルーティあんた……ここまできて……。
シャルティエ……。
ファントム……わかっていただけましたか。
リオンああ……貴様に言われるまでもない。
リオン……だからどうしたっ ! !
ファントム―― !
リオン僕はマリアンを、スタンを……こいつたちが信じる道を選ぶ !
リオン僕はもう決して迷わない……。
シャルティエ坊ちゃん ! !
ルーティよしっ ! そうこなくっちゃ !
ミリーナ私たちもその道を進むわ !
イクスみんなで一緒に進むんだ ! !
ファントムフフフ、交渉は決裂ですか !そうだろうと思っていました !
イクス魔物を生みだした ! ?

Character17話 【8-30 ティベリウス雪原 9】
スタンはぁ……はぁ……ぐっ !
ディムロススタン ! 大丈夫か ! ?
スタンああ、まだやれる。
ディムロスそれにしても遅い。あの者たちは何をやっているのだ。
スタン心配することないさ。イクス、ルーティ、それにリオン。みんなで戻ってくるって約束しただろ。
スタン俺はみんなを……信じてる。
マークハハッ、今回はまた随分とお気楽な鏡映点サマだな。
スタン誰だ、お前は !
マーク救世軍のリーダーってところかね。
スタンそうか……お前が……。
スタンよくも……リオンを……マリアンさんを……ミリーナを……。
スタン俺の仲間を傷つけてくれたなっ ! !
ディムロススタン ! 落ち着け !こいつは……強いぞ ! !
スタンそんなこと知るか !
マークおーっ ! だいぶ威勢がいいじゃねぇか。俺はそういうの嫌いじゃないぜ。
マークだが……遊んでるヒマはねぇんだ。お前とは互いに万全の状態で戦ってみたかったがな。
マーク……死になっ ! !
マーククッ―― ! !
リオンふんっ……。
スタンリオン !
リオン……待たせたな。
スタン気にするなよ !絶対に戻ってくるって信じてたからな !
マークへぇ……まさか山越えを選ぶとはな。いいねぇ、そういう馬鹿は嫌いじゃないぜ。
マークちょっとばかり鏡映点様を甘く見過ぎてたかな。
イクススタンさん !すまない、遅くなった !
ミリーナよかったわ ! 無事だったのね !
ルーティこのバカ ! 心配させんじゃないわよ ! !
スタンみんな !
マークこりゃまた勢揃いで。
リオン……覚悟はいいか。
マーク言葉を交わすよりもってことか。ああ、いいぜ。悪くねぇ。
マーク全員まとめてかかってきなっ ! !

Character18話 【8-30 ティベリウス雪原 9】
マークへっ……なかなかやるじゃねぇか。さすがソーディアンマスター様は違うな。
スタンくそっ……まだ終わってないぞ !
イクスはぁっ……はぁっ……。ぐっ……マーク !
マークイクス、ちっとは腕を上げたみたいだがまだまだだ。
マークそんなんじゃ、この先また女をさらわれちまうかもな。
イクス黙れ ! よくも……ミリーナを…… ! !
リオン下がっていろ。僕が片をつける。
マークそう来たか。熱いじゃねぇか。
リオンまったくもって救世軍は口ばかり達者な奴が揃っているようだな。
リオンそろそろ消えてもらうぞっ ! !
マーク……まぁ、そうだな。俺もそろそろ消えるとしよう。
ルーティ何よ ! 逃げるつもり ! ?
マーク特異鏡映点サマを見てみろ。これ以上、治療が遅れるとマズいぜ。
マークその女より俺のことが気になるなら付き合ってやってもいいけどな。
リオン…………。
マークそれでいい。じゃあな。
マークそうだ。最後に一つ。
リオン……何だ。
マーク……悪かったな。大切なものを苦しめて。
スタン謝ってすむか ! !待てっ ! !
ルーティスタン。放っておきなさい。いまはケリュケイオンに向かう方が先よ。
スタンくっ……わかった。
リオン行くぞ。

Character18話 【8-30 ティベリウス雪原 9】
イクスガロウズが【アンチ・ミラージュブレス】を外してくれてから数日経ったけど……。マリアンさん……まだ目を覚まさないな。
ミリーナリオンさんも一睡もせずにずっと看病してるし……。あれじゃ身体が持たないわよ……。
イクス二人とも……心配だな……。
ルーティイクス、ミリーナ !あんたたちここにいたのね !
イクスルーティ、スタンさん。どうしたんだ ?
スタンマリアンさんが意識を取り戻したんだ !
ミリーナ本当に ! ? マリアンさんは無事なの ! ?
ルーティええ。感覚も戻ったわ。しばらく休養する必要はあるけど。
イクスよかった……。一時はどうなることかと……。
ミリーナいまマリアンさんはどうしてるの ?
スタンリオンと話してるところ。
ルーティそれでさ……あんたらに、ちょっと頼みがあるのよ。
イクス頼み ?
スタンいまだけ、少しだけでいいんだ。リオンとマリアンさん二人きりにしてもらえないか ?
ルーティあんたたちが二人に聞きたいこと山ほどあるのはわかってるんだけどさ……。
イクスああ。もちろんだよ。
イクス二人が具現化されてからの経緯とか特異鏡映点についてや、救世軍のこと。確かに二人には色々聞いておきたいけど……。
イクスでも、二人はずっと前に進み続けてたくさん傷ついて、いまようやく少しだけ休むことができてるんだと思うから……。
ミリーナそうね……。だから今だけはあの二人のために私たちは待つべきだわ。
スタンイクス、ミリーナ。ありがとう……。
マーク……特異鏡映点を失ったのか。
救世軍幹部失ったところで問題ないでしょう ?彼らにアレを扱える人間がいるとは思えませんし。
マーク……それはどうかな。
救世軍幹部含みのある物言いですねぇ。
マークまぁ、気にするなよ。それに俺たちの本当の目的は無事達成してるわけだしな。
マークあいつらが気づいてないだけで。