| Character | 1話 【ケリュケイオンブリッジ】 |
| ジェイド | ――さて。そろそろ我々はわからないことだらけのこの世界と具現化について知らなければなりません。 |
| ジェイド | とりあえず、現時点での問題点を整理しましょう。キール、説明を。 |
| キール | 任せてくれ ! |
| キール | ブリッジに全員は入れないから艦内通信でみんなに話を聞いてもらう。簡単な概要は渡した資料のとおりだ。 |
| キール | まず、今回の具現化の術式と構造から説明しよう。これはぼくらの世界では―― |
| イクス | ……ご、ごめん。話が難しくて何を言っているのかよくわからなかったんだけど。 |
| キール | な、何故だ ! ?表まで用意して簡潔に伝えたのに ! |
| ジェイド | 私としたことが、人選を間違えたようです。要するに、我々は何も知らないということを知るべきだという話です。 |
| ミリーナ | はしょりすぎじゃありませんか ?せっかくキールが魔鏡技術のことを詳細に話してくれたのに……。 |
| ジェイド | そんなレベルで話しても仕方のないことだと思いますよ。 |
| ジェイド | 問題なのは、現時点で、誰が敵か味方かすらわからないということです。 |
| ジェイド | そしてこの具現化が本当に正しいことなのかどうか――ということもね。 |
| ジェイド | ですから、まずゲフィオン様とやらをここにご招待しましょう。 |
| イクス | え ! ? 宰相の立場にある方をケリュケイオンに ! ? |
| ジェイド | 私にしてみれば知らない世界の宰相です。 |
| ジェイド | 我々を勝手に具現化するぐらい横暴なのですから、それぐらい譲歩してほしいものですよ。 |
| リオン | ……その点は僕も同意だ。勝手な真似をしてくれる。 |
| イクス | す、すみません……。 |
| リオン | ……例のマークという男は王宮ともつながりがある。ゲフィオンも無条件に信じられる存在じゃない。 |
| ジェイド | マリアン――おっと、私が彼女を呼び捨ててもかまいませんか、リオン ? |
| リオン | やめろ。 |
| ジェイド | やめません。単なる確認です。 |
| リオン | ――き、貴様…… ! |
| カーリャ | なんてたちの悪い眼鏡……。 |
| ジェイド | リオンが話を脱線させてしまいましたがマリアンに向こう三ヶ月のゲフィオンのスケジュールを思い出してもらいました。 |
| ジェイド | 行方不明の時期も多いですがちょうど今頃は鏡士の神殿というところにおられるようですよ。 |
| ミリーナ | ……イクス、みんな。ゲフィオン様に会いましょう。それが一番だと思うから。 |
| イクス | ああ、そうするしかないな。ガロウズ。鏡士の神殿というところへ連れて行ってくれ。 |
| ガロウズ | ……あそこか。気は進まねぇが、仕方ないか。 |
| ジェイド | ゲフィオンの元へは私とキールも同行させてもらいます。 |
| ジェイド | ――ああ、別に無理して戦闘メンバーに入れていただかなくて結構ですよ。 |
| ジェイド | 老人ともやし学者はのんびり後ろをついていってもいい訳ですし。 |
| キール | バカにするな ! ぼくだって戦える !イクス、頼ってかまわないぞ ! |
| イクス | …………。 |
| ミリーナ | イクス…… ? |
| イクス | あ、いや、何でもないよ。キールもありがとう。頼りにしてるよ。 |
| ジェイド | …………。 |
| Character | 2話 【9-1 鏡士の神殿】 |
| ゲフィオン | イクス、ミリーナ ! それに鏡映点の方々。何故ここに……。 |
| イクス | ゲフィオン様にお願いがあってきたんです。ゲフィオン様こそ、ここで何を ? |
| ゲフィオン | ……占いに使う魔鏡を作ろうと思ってな。ここにある古い魔鏡のかけらを集めていた。 |
| ミリーナ | では、やはりゲフィオン様も鏡士なんですね ! ? |
| ゲフィオン | そうか……。その話を聞きたかったのか。 |
| ジェイド | ええ。是非とも詳しく聞かせていただきたいですね。 |
| ジェイド | それにアイギス計画の真の目的や救世軍のこと。それに特異鏡映点についても。 |
| ゲフィオン | 特異鏡映点 ! ?まさか特異鏡映点が現れたのか ! ?マリアン以外にも ! ? |
| キール | マリアンのことを知っているんですか ! ? |
| ゲフィオン | もちろんだ。特異鏡映点を放置するわけにはいかないので王宮で保護していた筈だが……。 |
| ミリーナ | ……それを救世軍が連れ去ったってこと ? |
| ゲフィオン | ! ? |
| ジェイド | 特異鏡映点とは何なのです ?アニマを逆流させることで世界を消滅させる可能性を持つとは聞いていますが……。 |
| ゲフィオン | 特異鏡映点はカレイドスコープの構造が生み出すバグだ。 |
| ゲフィオン | カレイドスコープは元々戦争用に開発された大量破壊兵器。あらゆる物質のアニマを抜き取り消滅させる。 |
| ゲフィオン | その機能を反転させて具現化に使っていることを考えれば、普通の鏡映点の方がバグなのかも知れないが。 |
| ジェイド | そのような構造的欠陥を承知でアイギス計画を進めたと ?これはこれは、中々大胆ですねぇ。 |
| ゲフィオン | それだけこの世界が危険で不安定な状態にあるということだ。 |
| ゲフィオン | それに因果律に抵触さえしなければこのバグは発生しないことがわかっていた。 |
| ジェイド | 因果律……ですか。嫌な予感がしてきました。 |
| ミリーナ | どういうことですか ? |
| キール | 因果とは『結果と原因には必ず何らかの関係がある』ということだ。 |
| キール | しかしこの文脈では時間の流れに干渉する……ということだろうな。 |
| ゲフィオン | そうだ。六回目の具現化の際にスキャンした世界には、因果律をねじ曲げる要素つまり時の流れに干渉する力が存在していた。 |
| ゲフィオン | そのためにマリアンが特異鏡映点として具現化されたのだ。 |
| ミリーナ | そんなものがあるなんて、スタンさんたちは言ってなかったけれど……。 |
| ゲフィオン | 彼らの知らない場所あるいは過去か未来にそのような力が発生していたのかも知れぬな。 |
| イクス | ……ゲフィオン様。俺は―― |
| ミリーナ | カーリャ ? どうしたの ? 震えてるわ。近くに新しい鏡映点か光魔の鏡でも……。 |
| カーリャ | ……来る。……何か凄いものが来ます。アニマがぐちゃぐちゃで……吐きそう……。 |
| ミリーナ | カーリャ ! ? 大丈夫 ! ? |
| ゲフィオン | 気絶しているだけのようだな。しかし―― |
| イクス | 鏡震 ! ? |
| キール | 大きいぞ ! ?ここの耐震構造は大丈夫なのか ! ? |
| ゲフィオン | ここが潰れるなら世界中が壊滅する。しかしこの揺れの激しさは―― |
| イクス | ……まずい。ここは海から近いぞ。津波が起きるかも知れない。揺れが収まったらすぐにここを出よう ! |
| Character | 3話 【9-1 鏡士の神殿】 |
| ガロウズ | ――みんな、大変なことになったぞ。 |
| ゲフィオン | 何が起きたというのだ。 |
| ガロウズ | ……島が……オーデンセ海域に新しい島ができたんです。 |
| ミリーナ | どうして ! ? 具現化はイクスと私にしかできない筈よね。ゲフィオン様も鏡士だけどここにおられるのに……。 |
| ゲフィオン | ……宮廷には、私以外にあと数人鏡士の力を持つ者がいる。 |
| ゲフィオン | しかし具現化を行えるほどの力を持つ者は今は一人しかいない。 |
| ゲフィオン | 鏡士の中の鏡士である『ビクエ』の称号を与えられた第103代ビクエならば……。 |
| ジェイド | しかし具現化はイクスの魔鏡がなければ行えないのですよね。 |
| ゲフィオン | その筈だ。しかしビクエならあるいは――。 |
| ミリーナ | 犯人捜しも重要だけど今は新しい島のことが気になるわ。 |
| ミリーナ | 具現化でできた島なら、光魔も光魔の鏡もそれに鏡映点だっている筈だもの。 |
| イクス | ………………。 |
| ジェイド | ……ガロウズ。モニターに新しい島というのを映せますか ? |
| ガロウズ | ……いや……そいつは……。 |
| イクス | ? |
| ジェイド | ――なるほど。そういうことですか。ですが、今イクスやミリーナの心情を慮っている暇はありません。 |
| イクス | ……え ? |
| ガロウズ | ……わかった。 |
| ジェイド | なるほど。新しい島はかなり大きい。島というより大陸だ。それにずいぶん大きな樹がありますねぇ。 |
| リオン | おい、お前。それより他に気にするべきものがあるだろう ! |
| キール | 何だ……あの海に空いた穴は……。まるであそこだけ宇宙につながっているようだぞ。 |
| ミリーナ | あれが……オーデンセのあった場所…… ?アイギスの破片で吹き飛んだとは聞いていたけれど……。 |
| ミリーナ | あれは……生き残りがいるかもとかそんなレベルじゃ……。 |
| ガロウズ | ……今オーデンセ海域周辺は進入禁止だ。島どころか周辺の海域があった空間全てが【消失】した。 |
| ガロウズ | これが俺たちが食い止めようとしている世界の滅びの姿って訳だ。 |
| ゲフィオン | ガロウズを責めないでくれ。 |
| ゲフィオン | お前たちを不安にさせないようオーデンセの情報は極力耳に入れないようにしてきたのだ。 |
| リオン | ……フン。よく言う。イクスたちを都合良く働かせるために、故郷の顛末を知らせなかっただけだろう。 |
| ゲフィオン | 否定はしない。アイギスの修復は全てにおいて最優先させねばならぬ。 |
| ゲフィオン | 具現化によるアニマの流入がアイギスの修復には必要不可欠なのだ。 |
| ジェイド | ……イクス。心ここにあらずといった様子ですがそれでも具現化に関してはあなたが指揮を執る必要があります。 |
| ジェイド | どうしますか ? あの大陸に行きますか ? |
| ジェイド | 変則的に誕生した土地ですから危険が皆無とは言いませんが調査する必要はあるでしょう。 |
| イクス | ……行きます。 |
| ジェイド | 結構。では調査隊を組んで下さい。 |
| ゲフィオン | 私はカレイドスコープを確認してこよう。誰かがあれを私の許可なく動かしたのなら痕跡が残っている筈だ。 |
| ミリーナ | ……ゲフィオン様。失礼かと思いますが信じていいのですか ? |
| ゲフィオン | その判断はお前たちに任せるしかない。しかし私は嘘はつかぬ。 |
| イクス | ………………。 |
| Character | 4話 【9-2 ダイク街道 1】 |
| ミリーナ | ……イクス。オーデンセのことショックだったよね。 |
| ミリーナ | いくらアイギスの破片が降ってきたっていっても、どこかにまだ生き残りがいるんじゃないかって思ってたから……。 |
| ミリーナ | あんな……本当に何も……空間ごと消失してるなんて……。私たちが助かったことの方が奇跡だったのね。 |
| イクス | ………………。 |
| カーリャ | うう……。ここにいるとアニマ酔いしそうです。何かおかしいですよぉ、この……島 ? 大陸 ? |
| ミリーナ | イクス…… ? |
| カーリャ | ……あれ ? イクスさま、ミリーナさま。な、何か、ぶるぶる来てます。来てます。来てますよ ! ? |
| ロイド | くそっ ! ? こんな時にどこ行っちまったんだ、あいつは…… ! |
| カーリャ | 来ーたー ! 鏡映点ですよ ! ? |
| ロイド | うわっ ! ? 天使 ! ? |
| カーリャ | ええ ! ? 初対面からそんな褒め殺し ! ?カーリャ、この人のこと好きになっちゃったかも知れません ! |
| ロイド | ずいぶん小さい天使だなぁ……。 |
| イクス | あ、あの。カーリャは天使じゃなくて鏡精ですよ。 |
| ロイド | きょうせい ? なんだそれ ? |
| イクス | えっと……。あの、待って下さい。カーリャ、この人が鏡映点で間違いないんだな ? |
| カーリャ | カーリャのことを天使って言ってくれるんですから間違いないです。ぶるぶるするし。 |
| カーリャ | これって……恋 ! ? |
| ミリーナ | それはセンサーのせいでしょ ? |
| ミリーナ | あの、私はミリーナ、彼はイクス。この子はカーリャです。 |
| イクス | ――というわけで、おそらく具現化したと思われるこの島……大陸にやってきたんです。鏡映点を捜して。 |
| ロイド | ………………。 |
| イクス | あ、突然で驚かれるのも無理はないんですけど……。 |
| ロイド | 悪い。何言ってるんだかさっぱりだ。 |
| ミリーナ | え ? あの……えっと……。 |
| ロイド | よくわかんないけど俺を捜してたんだよな ? |
| ロイド | じゃあ悪いけど一緒に来てくれないか ?俺も今、人を捜してるんだ。 |
| イクス | あ、はい。えっと――。 |
| ロイド | あ、そっか。俺はロイド、ロイド・アーヴィング。迷子の子供を捜してるんだ。 |
| ロイド | この辺にいると思うから一緒に捜してもらえないかな ? |
| イクス | もちろんです、ロイドさん。 |
| ロイド | あー、何かそういう堅苦しい呼び方しなくていいよ。ロイドでいい。イクス、ミリーナ、カーリャ。よろしくな ! |
| イクス | あ、ああ。よろしく、ロイド。 |
| Character | 5話 【9-5 ケイト森林 林道】 |
| ミリーナ | ロイドが捜してる子供って、どんな子なの ? |
| ロイド | ポールって名前の男の子だよ。まだ四つか五つぐらいだけど、生意気でさ。 |
| ロイド | 大樹の根が暴れ出したのを見て退治しに行くって町を出て行ったらしいんだ。 |
| イクス | 大樹の根が暴れる ? 大樹ってこの大陸に来るときに見えた大きな樹のことかな ? |
| イクス | その根が暴れるってどういうことなんだ ? |
| ロイド | それが、俺にもよくわからないんだよ。ここって、えっと異世界……って奴なんだろ ?ここにも大樹があったのか ? |
| ミリーナ | あんな大きな樹は私たちの世界にはないわ。 |
| ミリーナ | あの樹もこの大陸もここに住む人たちすらも全てはロイドや……もしかしたら他の鏡映点の人たちの「記憶や想い」から創られた物よ。 |
| ロイド | 俺の記憶や想い……。だからポールはイセリアのポールにそっくりなのに俺のことを全然知らないのか ? |
| イクス | うん……そうだと思うよ。 |
| イクス | 鏡映点以外の人たちは、ここに生まれた時に元の世界の記憶を引き継がない『この世界の住人』になるんだ。 |
| イクス | ロイドにとってはショックだと思うけど……。 |
| ロイド | …………。 |
| イクス | ロイド ? どうしたんだ ? |
| ロイド | ……あ、いや。この世界が消滅の危機だから具現化っていうのをやってるって言ってたよな。 |
| イクス | ああ。その証拠に俺たちの故郷は……完全に消滅してたよ。ちり一つも残ってなかった……。 |
| ロイド | 今やってる具現化で、イクスたちの故郷を造ることはできないのか ? |
| ミリーナ | 異世界の力を借りないとこの規模の具現化ができないの。 |
| ミリーナ | でも異世界の力を借りるとどうしても元々あった島と同じ物は造れないみたい。 |
| イクス | 今は鏡映点の人たちの力を借りるしかできないんだ。 |
| ロイド | …………。 |
| カーリャ | あわわわ、待って下さい。何かぶるぶる来ましたよ ?近くに光魔の気配です ! |
| ? ? ? | う、うわぁぁぁぁ ! ? |
| ロイド | ポールの声だ ! ? |
| イクス | 奥から聞こえたぞ !光魔に襲われてるのかも知れない ! 急ごう ! |
| ミリーナ | 子供を襲うなんて許さない ! |
| ロイド | ポール ! 今助けるからな ! |
| イクス | 行くぞ ! |
| Character | 6話 【9-5 ケイト森林 林道】 |
| ポール | ロイド ! 遅いじゃないか ! |
| ロイド | あのなー ! お前が勝手に町の外に出るからだろ !お父さんもお母さんも心配してるぞ ! |
| ミリーナ | 一人で不安だったんだよね ?でもロイドが見つけてくれたんだからお礼は言わないとね。 |
| ポール | ……あ、ありがとう。でもおいら、大樹の化け物を倒そうと思って……。 |
| イクス | 大樹の化け物 ? そういえばさっきも大樹の根が暴れたって……。 |
| ロイド | ああ。大樹の根が暴れて、町を襲ったんだ。町は壊滅状態で……。今、仲間の一人が町に残って、住民の手当てをしてる。 |
| ミリーナ | 大変だわ ! 私たちも行きましょう。できる限り協力しないと ! |
| イクス | ああ。ケリュケイオンに連絡して治癒術を使える仲間を、町に降ろしてもらおう ! |
| ロイド | 治癒術を使える仲間がいるのか ! ? 助かる ! |
| ポール | おいらに感謝しろよ、ロイド !おいらがここに来たからちゆじゅつってのを使える人が見つかったんだぞ ! |
| ロイド | 生意気言うな !リフィル先生に言いつけるぞ ! |
| ポール | や、やめろよ……。お尻叩かれるだろ……。 |
| ミリーナ | リフィル先生 ? 町の学校の人 ? |
| ポール | 鬼だよ。 |
| ロイド | バカ ! 聞かれたら殺されるぞ。 |
| イクス | え ! ? 暴力教師…… ! ? |
| カーリャ | 教育の闇って奴ですかね ? |
| ロイド | ……えっと、まぁそんな感じかな。でも美人だし、優しいところもあるんだぜ。俺の学校の先生で旅の仲間なんだ。 |
| イクス | 暴力教師が仲間…… ! ? だ、大丈夫なのか ! ?竹刀で叩かれたりするんだろ ! ? |
| ロイド | いや……リフィル先生に武器はいらないから……。まぁ、いいや。会えばわかるよ。 |
| ロイド | すっげぇ頭がいい人だからさっき俺にしてくれた話も、先生ならすぐわかると思うよ。町へ戻ろうぜ。 |
| ミリーナ | そうね。さ、ポール。手をつなごう ? |
| ポール | しょうがねぇな。つないでやるよ。 |
| ミリーナ | ふふ、ありがとう ! |
| Character | 7話 【9-8 ケイト森林 湿地部 】 |
| イクス | 建物が潰れて町のあちこちに大穴が空いてる……。 |
| ミリーナ | これが大樹の根が暴れた跡なの…… ? |
| ポール | うわぁ、リフィル先生だ ! |
| リフィル | ロイド ! お帰りなさい !ポールを連れ戻してくれたのね。 |
| ポール | せ、先生、さいならー ! |
| リフィル | まぁ、呆れた。あの子、逃げ方がロイドにそっくりだわ。 |
| リフィル | ――さて、と。ロイド、隣にいるのはどなたかしら ? |
| ロイド | あ、紹介するよ。イクスとミリーナとカーリャ。三人ともポールを捜すのを手伝ってくれたんだ。 |
| リフィル | そうだったの。みんなありがとう。私はリフィル。教師をしています。あなたたちは……この土地の人 ? |
| イクス | あ、いえ。この土地っていうかこの世界の人間です。あの―― |
| リフィル | ――この世界、ね。そう、やっぱりそういうことなのね。 |
| ミリーナ | え ? ここが異世界だってことがわかるんですか ? |
| リフィル | そうね。マナの感じが違うから。それに――いえ、まずはあなたたちの話を聞きましょうか。 |
| イクス | は、はい。説明します。 |
| リフィル | ……そう。これはやっかいね。 |
| ミリーナ | ……すみません。私たち、自分の世界の都合でロイドやリフィルさんたちにご迷惑をおかけしてしまって……。 |
| リフィル | 全くだわ。 |
| ロイド | 先生 ! ? 何を言い出すんだよ ! |
| ロイド | 俺たちだってシルヴァラントを助けたいからコレットを助けたいからって自分の都合を優先してきただろ ! |
| リフィル | そうよ。私たちのしていることと彼らがしていることは本質的には変わらない。 |
| リフィル | でもね、彼らは『これが犠牲を伴って行われている』ということを知らないのよ。 |
| リフィル | いえ、知っていても理解できていないのね。旅を始めたばかりのあなたや私のように。 |
| イクス | あの、この具現化はリフィルさんたちの世界には影響はありません。 |
| リフィル | どうして ? どうしてないと言い切れるの ?イクスだったかしら。あなた、私たちの世界へ行って、影響がないか調べたの ? |
| イクス | そ、それは……ゲフィオン様が……そう言っていたから……。調べてはいないです。 |
| リフィル | それに仮に私たちの世界に影響がなかったとしてもすでにこの世界には私やロイドの記憶を触媒にした新しい生命が誕生した。 |
| リフィル | 世界をクリエイトするということはそこに責任が伴うの。私たちは勝手に鏡映点として選ばれ、責任を負わされた。 |
| リフィル | しかも今回の具現化は何故起きたのかあなたたちすらわかっていないという。無責任だとは思わなくて ? |
| ミリーナ | ――……それは……。それは……その通りです。……申し訳ありません。 |
| リフィル | 本当にこれしか世界を救う道がないのなら……あなたたちがそう決意したのなら。 |
| リフィル | 自分たちがやろうとしていることが本当はどういうことなのかよく理解なさい。 |
| リフィル | それもできないで、協力を求めたり一人前に人助けをしている気持ちになるのは危険よ。 |
| イクス | ……そう……か。そうだったんだ。 |
| ミリーナ | イクス…… ? どうしたの ? |
| イクス | マリアンさんのことがあって俺の中にもやもやした気持ちがずっと燻ってて……。 |
| イクス | その正体が何だかわからなくてずっと考えてたけど多分これが答えなんだ。 |
| イクス | 俺……何も知らないんだって。本当の本当に知らなかったんだって。 |
| イクス | 何が正しくて何が間違ってるのか。そもそも自分の故郷のことすら怖くて本当の状況を見にいけなかった。 |
| イクス | 前を向いているつもりだったけど目の前に起きたことから逃げ続けてたんだ。 |
| ジュード | イクス ! 治癒術を使える仲間を集めて連れてきたんだけど……。――何か、あったの ? |
| ミリーナ | あ、ええ。大丈夫。あの、リフィルさん。私たちもこの町の人たちを助けたいんです。あの……だから……。 |
| リフィル | ……ええ。今は人命救助を優先しましょう。そこのあなた。 |
| ジュード | あ、ああ、はい ! |
| リフィル | 町の広場にこの町の町長がいるからその人に指示を仰いで。 |
| ジュード | わかりました ! |
| リフィル | 私たちも行きましょうか。まずは町の人たちを助けましょう。 |
| ロイド | そうだな。 |
| ロイド | イクス、ミリーナ。気にするなよ。先生は二人のことを心配してあんなことを言ってるだけなんだからさ。 |
| ロイド | 俺は二人がやっていること凄いと思うぜ。世界を造ってまで、誰かや何かを救いたいって気持ち、わかる気がする。 |
| ロイド | 俺の知ってる奴にもそういう奴がいるから。 |
| イクス | あ……ありがとう、ロイド。 |
| カーリャ | ロイドさま……性格イケメン過ぎませんか…… !カーリャ……ゲキカンです ! |
| ミリーナ | …………。 |
| Character | 8話 【9-9 素朴な町】 |
| ? ? ? | う……うぅ……。 |
| イクス | だ、大丈夫ですか ! ? |
| カーリャ | あわわわわ、ひ、ひどい怪我ですよ ? |
| ミリーナ | イクス。私が治療するわ。 |
| ミリーナ | ……これで傷は治ったけれどまだ何だか苦しそう。 |
| カーリャ | 何ですか ?この首の下あたりについてる石は ? |
| ロイド | エクスフィアだ ! ? |
| ミリーナ | エクスフィア ? |
| ロイド | 俺が手につけてる石と同じだよ。エクスフィアをつけられてるってことはまさかこの人は人間牧場の人なのか ! ? |
| イクス | に、人間牧場 ! ? な、何だそれ ! ?人間を飼ってる牧場 ! ?ま、まさか、ロイドたちの世界では人肉を…… ! ? |
| ロイド | すっげー想像力だなぁ、イクス……。 |
| リフィル | どうしたの ? |
| ジェイド | ずいぶん騒がしいようですが何かありましたか ? |
| カーリャ | はわわ、眼鏡大佐も来てたんですか。 |
| ジェイド | 私も死体専門とはいえ、医学の道を志したこともありましたので。 |
| ジェイド | まぁ、ジュードとティアに無理矢理連れてこられただけですが。 |
| ロイド | 先生、この人、人間牧場から来たみたいなんだ。 |
| リフィル | 人間牧場 ! ?ここにも人間牧場があるなんて……。 |
| ジェイド | 人間牧場とは……また興味をそそられる単語ですねぇ。 |
| リフィル | あなたは少し黙っていて。 |
| ジェイド | これは失礼。 |
| カーリャ | 出会ったばかりで眼鏡を御すとは……さすが鬼教師です。 |
| ミリーナ | こら、カーリャ ! あなたも少し黙りなさい ! |
| リフィル | 大丈夫 ? 話せるかしら ?あなたは人間牧場から逃げてきたの ? |
| 脱走者 | ……あ……ああ。木の根みたいな奴が建物を壊してくれたんで、なんとか……。 |
| ロイド | 他の人は ? 他にも牧場に捕らわれてた人がいるんだろう ? |
| 脱走者 | そ、そうだ…… ! 仲間を助けてくれ !ほとんど逃げ出すことができたんだが怪我がひどくて動けない奴らもいるんだ。 |
| ロイド | わかった。任せてくれ。先生、行こう ! |
| リフィル | ……いえ。ここにもこの後、牧場から逃げてきた人が押し寄せてくるでしょうしまだ人手が足りないわ。 |
| リフィル | 私はこの町に残ってトリアージと治療を続けます。 |
| リフィル | ロイド、イクス、ミリーナ、カーリャ。あなたたちで牧場の様子を見てきてくれるかしら。 |
| リフィル | そちらの様子次第で救援隊を向かわせるわ。連絡はケリュケイオンに入れてちょうだい。 |
| リフィル | 魔鏡の通信……というのでケリュケイオンには連絡できるのでしょう ? |
| ロイド | 先生……何かあったのか ? |
| リフィル | え ? ああ、ちょっと疲れただけよ。大丈夫。あなたはまだ大丈夫よね。 |
| ロイド | ああ、俺はまだまだ動けるぜ。でも無理するなよ。先生が倒れたら元も子もないんだからな。 |
| リフィル | フフ、そうね。気をつけるわ。 |
| ロイド | イクス、ミリーナ、カーリャ。人間牧場へ行こうぜ。頼めるか ? |
| イクス | もちろんだよ。 |
| ミリーナ | 私の治癒術でみんなを助けられるならやれるだけのことをやらないと。 |
| カーリャ | ロイドさまの頼みならカーリャも頑張っちゃいますよ。 |
| ロイド | よし、みんな行こう ! |
| ジェイド | おつむの程度はともかく、中々鋭いですねぇあなたの教え子は。で、リフィル。何を隠しているのですか ? |
| リフィル | ロイドを褒めるように見せかけてさりげなく自分の観察力を誇るのはやめてくれるかしら。 |
| リフィル | それに今は治療に専念する方が大事なのではなくて ? |
| リフィル | こちらも後であなたに聞いておきたいことがあるから、話ならそのときでいいでしょう。 |
| ジェイド | これはこれは…… ! 世界の枠を飛び越えればあなたのような人もいるのですね……。 |
| リフィル | どういうこと ? |
| ジェイド | いえ、何でもありません。広場へ戻りましょうか、先生。 |
| リフィル | 私、自分より年上の生徒を持った覚えはなくてよ。 |
| リフィル | それに生徒になるつもりならもっと可愛げを持ってほしいものね。 |
| ジェイド | はい、リフィル先生 ! |
| リフィル | ……もういいわ。黙っててちょうだい。 |
| Character | 9話 【9-13 半壊した人間牧場 入口】 |
| イクス | ここが人間牧場か……。えっと、確かエクスフィアっていう石を物理変化させるための場所だっけ ? |
| ロイド | ぶつりへんか ? それはよくわかんねーけど人間でエクスフィアを目覚めさせる実験を行ってた場所だよ。 |
| ミリーナ | そんな恐ろしい場所まで具現化してしまうなんて……。 |
| ロイド | ……俺のせいかもしれないな。 |
| カーリャ | え ! ? どうしてそうなるんですか ? |
| ロイド | だって具現化ってのは俺の心とか記憶が影響するんだろ ? |
| ロイド | 俺が人間牧場のこと気にしてたから具現化しちまったんじゃないかな。 |
| ロイド | 大樹の根にしてもさ、俺たちの世界で大樹が暴走しちまったことがあって……。 |
| ロイド | その時のことがこの具現化にも影響してるんじゃないかって思うんだよ。 |
| イクス | リフィルさんの言ってた通りなんだな。俺……本当に何もわかってなかったよ。 |
| イクス | ゲフィオン様の言う通り、アニマサーチした異世界にはなんの影響もないって言葉を信じて。 |
| イクス | でもよく考えてみれば、勝手にここに具現化されて、いろいろな枷を背負わせてしまってるんだなって。 |
| イクス | 今まで出会った人たちがみんな好意的だったから深く考えてみようともしなかった……。 |
| ロイド | だったらもういいんじゃないか。気づいたんだろ ?気づいたあと、どうしていくかってことが大事なんだと思うぜ。 |
| ロイド | それにさ、俺にもイクスたちの気持ちがわかるんだ。 |
| イクス | え ? |
| ロイド | 俺の世界も色々やばいことになっててさ。 |
| ロイド | 再生の神子って存在が世界を救ってくれるんだって、俺もみんなも……多分世界中がそう思ってた。 |
| ロイド | でもさ、違ったんだよ。何かをしたいと思うなら、自分が自分の力で立ち向かわなきゃいけないんだ。 |
| ロイド | そうやって初めてつかみ取れる物があるって俺、ある人に教えられて気づいたんだ。 |
| イクス | 自分の力で立ち向かう……。 |
| ロイド | 俺にもそういう瞬間があった。イクスたちは今がそのときなんだと思うぜ。 |
| ロイド | イクスたちがこの世界を救うために立ち向かうなら、俺も協力するよ。 |
| イクス | ロイド……。うん、そうだな。俺……今度は目の前のことから目を背けないよ。 |
| イクス | 知らなくてもいいってごまかし続けてきたことをきちんと知ろうと思う。 |
| イクス | もう【あの時】みたいなことは嫌だ。 |
| ミリーナ | イクス、あれは…… ! |
| カーリャ | んん ? 何のことです、ミリーナさま。 |
| イクス | ……俺が魔鏡術を暴走させた時のことだよ。多分、俺の逃げ癖ってあそこから始まってるんだ。 |
| ロイド | ……イクス。その話、後にしよう。誰か来る。 |
| イクス | 牧場の人かな。 |
| ロイド | いや、殺気がする。ひとまず奥へ進もう。 |
| ミリーナ | そうね。今は牧場の人を捜しましょう。困っているはずだもの。 |
| Character | 11話 【9-15 半壊した人間牧場 深部】 |
| ファントム | まだ終わりではありませんよ。 |
| ロイド | また魔物の召喚を ! ? |
| ミリーナ | きりがないわ。どこか隙を見てファントムの首を取らないと ! |
| ファントム | ミリーナ……。その冷徹な判断力……私はそういうところに惹かれるのですよ……。 |
| イクス | ミリーナに近づくな ! |
| リフィル | 待ちなさい。 |
| ロイド | リフィル先生 ! ? どうしてここに ! ? |
| ファントム | リフィル殿。こんなところに足を運んで下さるとは気が変わったと考えてよろしいかな ? |
| リフィル | あなたたちの狙いはわかっているわ。ロイドたちの後ろにあるエクスフィアね。 |
| ロイド | こんなところにエクスフィアが ! ?俺の知ってる牧場とは雰囲気が違いすぎてわからなかった……。 |
| リフィル | 具現化にあなたの記憶や感情が混ざっているから正確に再現されていないのね……。 |
| ロイド | ……なんか馬鹿にされたよーな気がするぞ ? |
| ファントム | リフィル殿。我らの下に来て下さるのですな。 |
| イクス | え ! ? |
| ロイド | ど、どういうことだよ、先生 ! |
| リフィル | ……条件は2つ。ロイドたちをこのまま見逃すこと。そして、ここにあるエクスフィアはあきらめること。 |
| ファントム | ……結構。あなたという素晴らしい特異鏡映点が手に入るなら我々にはエクスフィア以上の価値がある。 |
| ミリーナ | 特異鏡映点 ! ? リフィルさんが ! ? |
| ロイド | リフィル先生 ! |
| ファントム | ――おっと、動かないでいただきたい。今はリフィル殿に敬意を表し黙って引き下がります。 |
| ファントム | ただし少しでも我らの邪魔をすれば私のペットたちを牧場の人間に向かわせますよ。 |
| イクス | くそっ ! |
| ロイド | リフィル先生……。どうしてこんなまねを……。それに前からファントムを知っていたのか ? |
| ミリーナ | こうしてはいられないわ。ロイドはリフィルさんを追って !私たちは―― |
| イクス | 牧場の人たちを町に送り届けてからみんなでリフィルさんを取り戻す、だろ ? |
| ロイド | わかった ! 牧場の人たちを頼む ! |
| ? ? ? | これは困ったな。リフィルさんを巻き込むのはボクが許さないよ。大切な同族だしね。 |
| マーク | やれやれ、奴に逆らえってのかよ。 |
| ? ? ? | そうだね。どうなるかはリフィルさん次第かな。もう少し見学しておくことにするよ。 |
| ? ? ? | 使えそうな手駒も集めないといけないし。 |
| マーク | あの頭のおかしな博士だけじゃ足りないか ? |
| ? ? ? | あいつ……雑魚臭がするしね。少しはボクに選ばせてよ。 |
| マーク | やれやれ。子供のお守りは大変だわ。 |
| Character | 12話 【9-16 半壊した人間牧場 深部】 |
| ロイド | くそ…… ! あいつら先生をどこへ連れて行ったんだ ! ? |
| ロイド | ――ん ? 今、何か踏んだぞ ? |
| ロイド | これはエクスフィアの欠片だ。どうしてこんなところに……。 |
| ロイド | あっちにも落ちてる……。そうか ! もしかしたらこれは――。 |
| イクス | よし。なんとか人間牧場の人たちを助けられたな。 |
| ミリーナ | 次はリフィルさんの行方を捜しましょう。 |
| イクス | そうだな。まずはロイドと合流しよう。こんな時、魔鏡を使った通信が使えればな……。 |
| ジェイド | なるほど。確かにそれは便利です。ガロウズとキールに話して通信装置を開発してもらいましょう。 |
| イクス | え ! ? ジェイドさん随分簡単に言いますけど魔鏡の通信は鏡士しか……。 |
| ジェイド | だからこそ、普通の人間にも使える通信装置があればいい――という話ですよね。 |
| ジェイド | キールは魔鏡技術を独学で学んでいました。彼が原理を考案しガロウズが作ればできるでしょう。 |
| ジェイド | 足りないところはあなたたちが助ければいい。いやぁ、持つべきものは才能ある仲間ですねぇ。 |
| ミリーナ | 人を便利に使う軍人さんも、ですね ? |
| ユーリ | その人使いの荒い軍人さんに頼まれてこいつを見つけたぜ。 |
| イクス | それは……何かの宝石、ですか ? |
| ユーリ | 見たことがない物だからなんとも。だがラピードがこの宝石の欠片からあのリフィルって先生の匂いをかぎとった。 |
| ラピード | ワフン ! |
| ユーリ | この宝石の欠片が一定の間隔で落ちてたんだよ。 |
| ユーリ | パンくずならぬ石くずを落としていったってことだろうな。 |
| ミリーナ | ということはこの宝石の欠片を拾っていけばリフィルさんがどこに行ったかわかるってことね。凄いわラピードさん ! |
| ラピード | ワン ! |
| イクス | よし。リフィルさんを捜す班とこの街に残って救護を続ける班に分かれよう。 |
| ジェイド | 私はここに残ります。リフィルがいない今町長だけでは住民の混乱を治められない。私が指揮を執りましょう。 |
| ミリーナ | ジェイドさんなら安心ですね。イクス、私たちは急いでリフィルさんを捜しましょう ! |
| イクス | ああ、そうだな ! |
| Character | #N/A |
| ロイド | くそ… ! あいつら先生をどこへ連れて行ったんだ ! ? |
| ロイド | ――ん ? 今、何か踏んだぞ ? |
| ロイド | これはエクスフィアの欠片だ。どうしてこんなところに…。 |
| ロイド | あっちにも落ちてる…。そうか ! もしかしたらこれは――。 |
| イクス | よし。なんとか人間牧場の人たちを助けられたな。 |
| ミリーナ | 次はリフィルさんの行方を捜しましょう。 |
| イクス | そうだな。まずはロイドと合流しよう。こんな時魔鏡を使った通信が使えればな…。 |
| ジェイド | なるほど。確かにそれは便利です。ガロウズとキールに話して通信装置を開発してもらいましょう。 |
| イクス | え ! ? ジェイドさん随分簡単に言いますけど…。 |
| ジェイド | キールは魔鏡技術を独学で学んでいました。彼が原理を考案しガロウズが作ればできるでしょう。 |
| ジェイド | 足りないところはあなたたちが助ければいい。いやぁ、持つべきものは才能ある仲間ですねぇ。 |
| ミリーナ | 人を便利に使う軍人さんも、ですね ? |
| ユーリ | その人使いの荒い軍人さんに頼まれてこいつを見つけたぜ。 |
| イクス | それは…何かの宝石、ですか ? |
| ユーリ | 見たことがない物だからなんとも。だがラピードがこの宝石の欠片からあのリフィルって先生の匂いをかぎとった。 |
| ラピード | ワフン ! |
| ユーリ | この宝石の欠片が一定の間隔で落ちてたんだよ。 |
| ユーリ | パンくずならぬ石くずを落としていったってことだろうな。 |
| ミリーナ | という事はこの宝石の欠片を拾っていけばリフィルさんがどこに行ったかわかるってことね。凄いわラピード ! |
| ラピード | ワン ! |
| イクス | よし。リフィルさんを捜す班とこの街に残って救護を続ける班に分かれよう。 |
| ジェイド | 私はここに残ります。リフィルがいない今町長だけでは住民の混乱を納められない。私が指揮を執りましょう。 |
| ミリーナ | ジェイドさんなら安心ですね。イクス、私たちは急いでリフィルさんを捜しましょう ! |
| イクス | ああ、そうだな ! |
| Character | 13話 【9-17 レミエル街道 1】 |
| カーリャ | むぅぅ。宝石の欠片どこにも見当たりませんね。 |
| ミリーナ | リフィルさんはこの辺りにいるってことかしら ?でも建物も何もない場所だけど……。 |
| イクス | あ ! あそこにいるのはロイドだ !おーい ! ロイド ! |
| ロイド | イクス ! みんな !ちょうどみんなを呼びに街へ戻ろうと思ってたところなんだ。 |
| イクス | リフィルさん見つかったのか ! ? |
| ロイド | いや、その逆だ。先生がエクスフィアの欠片を落として目印にしてくれてたみたいなんだけどここで途切れちまってるんだ。 |
| ミリーナ | 私たちもその宝石の欠片を拾ってここまで来たの。 |
| イクス | ……ここで匂いが途切れるってことは何か乗り物に乗せられたのかも知れないな。 |
| ガロウズ | おい、イクス。ゲフィオン様から連絡だ。カレイドスコープに異変があったらしい。大至急、城に来てくれとのことだ。 |
| ロイド | イクス。カレイドスコープってのはこの世界に重要な物なんだろ。だったら、ここは俺たちに任せてくれていいんだぜ。 |
| ミリーナ | でもイクス。リフィルさんは私たちや牧場の人を助けるために救世軍についていったのよ ? |
| ミリーナ | それにリフィルさんが本当に特異鏡映点ならあいつらに何をされるか……。 |
| イクス | ……ガロウズ。俺たちはこのままリフィルさんを助ける。 |
| ガロウズ | おい !じゃあゲフィオン様の方はどうするんだ。 |
| イクス | ジェイドさんとキールがいる。多分魔鏡術の知識はミリーナと同じぐらいある筈だ。 |
| イクス | 持つべきものは才能ある仲間だからな ! |
| ガロウズ | ――わかったよ。こっちのことは任せとけ。何かあれば連絡する。 |
| イクス | 頼む、ガロウズ。 |
| ガロウズ | イクス。お前、中々いい面構えになってきたぞ。腹、くくったな ? |
| イクス | ……あ、ありがとう。 |
| ロイド | イクス……ありがとう !お前って最高だぜ ! |
| イクス | そ、そんなことないよ……。 |
| ロイド | そんなことあるよ !リフィル先生を助けたら絶対恩返しするからな。 |
| イクス | 何か照れるな。えっと……この後だけどケリュケイオンみたいな飛空艇はそうそうない筈なんだ。 |
| イクス | 地上を走る乗り物なら荒れ地を避ける筈だからある程度方角が絞れると思う。 |
| ロイド | 頭いいなー、イクス !じゃあ、行こうぜ ! |
| Character | 14話 【9-19 レミエル街道 3】 |
| ファントム | こんな物を落としてくるとは。可愛らしい真似をしてくれますねぇ ? |
| リフィル | あら……何のことかしら。 |
| ファントム | あなたが道すがら落としてきたエクスフィアの欠片は回収させています。助けが来るなどとは思わないことですね。 |
| リフィル | 雄弁さは焦りの証かしら ?それとも怖いの ? |
| ファントム | ……私は頭のいい女性は好きですが土足で踏み込んでくる輩は嫌いなんですよ。 |
| ファントム | 小利口なあなたならそのアンチ・ミラージュブレスが体にどんな作用を引き起こすかわかるでしょう。 |
| ファントム | せいぜい楽しんで下さい。 |
| ロイド | ……やっぱりな。 |
| ミリーナ | どうしたの ? |
| ロイド | 何か、しっくりこないと思ってたんだけどこの辺りには大樹の根が暴れた形跡がないんだ。 |
| イクス | 言われてみれば、地面に穴も空いてないし枯れた樹の根も転がってないな……。 |
| カーリャ | 街から離れてるからじゃないですか ? |
| ミリーナ | そうかしら。そんなに遠くないような気もするけど……。 |
| ロイド | 上手く言えないんだけどこの辺りの風景が何かピンとこないんだ。 |
| ロイド | 具現化されたからって、俺たちの世界がそのまま写される訳じゃないんだろ ? |
| ロイド | 俺の記憶とか感情とかが何か関係してるんだよな。 |
| ロイド | だから人間牧場も、俺の知ってるところとは全然雰囲気が違ってた……。 |
| ミリーナ | そうね。私たちは【エンコード】って呼んでるわ。 |
| ミリーナ | 異世界には異世界の化学や物理や魔術法則があるけれど、それをそのまま私たちの世界に持ってきたら |
| ミリーナ | 異質なエネルギーがぶつかって世界が壊れてしまう可能性があるの。 |
| ミリーナ | だから鏡映点の人たちを通すことで一度全ての法則をリセットして、私たちの世界に馴染むように変換しているのよ。 |
| ロイド | あー、そういう難しいことは本当によくわからないんだよ。 |
| ロイド | 要するに、この世界には俺の記憶とか気持ちが混じってるんだよな。 |
| ロイド | だとしたら、何か懐かしいとか、怖いとか見覚えがあるとか何かしら心に引っかかる物があると思うんだ。 |
| イクス | そうだな。他の鏡映点のみんなもそんな感じのことを言ってた。見覚えがあるようなないような、不思議な感覚だって。 |
| ロイド | だけどこの辺りは俺、何も感じない。俺の心からは凄く遠い気がする。 |
| ミリーナ | まさか……キメラ化…… ? |
| イクス | それは ? 俺は初めて聞く言葉だけど……。 |
| ミリーナ | ――ええ、多分そうよ。だからカーリャもアニマ酔いしてしまったんだわ ! |
| ミリーナ | 凄いわ、ロイド !本当に具現化のこと、よくわかってないの ? |
| ロイド | え ? へ……へへ、まぁな ! 全然わからないぜ ! |
| イクス | そこは自慢するところじゃないような……。でもミリーナ、キメラ化ってどういうことなんだ ? |
| 救世軍 | ――あ ! ? お前たちは ! ? |
| ロイド | ちょうどいいぞ ! あいつらを捕まえてリフィル先生の居場所を聞こう ! |
| Character | 16話 【9-21 フォシテス砂漠 中央】 |
| ジェイド | ――キメラ化、ですか。複数の異世界が混ざり合って具現化したのですね。 |
| キール | 具現汚染の一種だな。ミリーナから教えてもらった現代魔鏡論に書いてあった。 |
| ゲフィオン | カレイドスコープを解析したが具現化の使用履歴が削除されていた。だが代わりに、割れた魔鏡の欠片を見つけたのだ。 |
| ゲフィオン | おそらくイクスの魔鏡を何らかの手段で入手、解析して似た力を持つ魔鏡を作ったのだろう。 |
| ゲフィオン | それができるのはビクエしかいない。 |
| キール | ビクエというのは鏡士の最高位に与えられる称号だったな。 |
| キール | そんなに凄いならイクスとミリーナをアイギス計画に巻き込む必要はなかったんじゃないか。 |
| ガロウズ | 当代ビクエ様は、以前から病気で倒れて寝たきりの筈だ。 |
| ジェイド | ……だからイクスたちを巻き込まざるを得なかった。 |
| ジェイド | それなのにビクエを犯人と考えるとはまだ何か隠しておられるようですねぇ。 |
| ゲフィオン | 動けない筈のビクエを見たという者がいる。今までは気にもとめていなかったがこうなってくると疑わざるを得ない。 |
| ゲフィオン | 調査をしてみるが――。 |
| ジェイド | いえ。その調査は我々で行います。この王宮には敵が多すぎる。内通者が複数いると考えるべきでしょう。 |
| ゲフィオン | ……ではこの件の調査はジェイド殿に一任しよう。 |
| ガロウズ | キメラ化した大陸はどうしたらいいんでしょうか。多少の汚染なら問題ないでしょうが、あの規模じゃ……。 |
| ゲフィオン | ああ、非常に危険だ。しかもこの魔鏡の破片をサーチすると、意図的に時の因果律が存在する世界を選んだことが見て取れる。 |
| キール | 今具現化しているロイドたちの世界にも時間に干渉する何かがあるってことか。 |
| ジェイド | だからリフィルが特異鏡映点として現れることになった……。ふむ……。一つ確認してよろしいでしょうか。 |
| ゲフィオン | 何が気になっているのだ ? |
| ジェイド | 簡単な話です。 |
| ジェイド | カレイドスコープと魔鏡が、異世界の因果律に干渉できるということは、恐らく時間の流れを観測して任意の時代を具現化することもできる筈だ。 |
| ジェイド | そもそも異世界は並行世界の一種でもある。時間移動は並行世界移動だという説もありますね。 |
| ゲフィオン | 何が言いたい。 |
| ジェイド | この世界を蘇らせようと思うなら異質な異世界をサーチするより、同じ世界の過去をサーチする方が良かったのでは ? |
| ガロウズ | 過去 ! ? そんなことができるのか ! ? |
| ゲフィオン | そのアプローチはすでに検討実行され――失敗した。 |
| ゲフィオン | だから危険を承知で異世界を頼るしかなかったのだ。 |
| ゲフィオン | この世界を救うためには手段を選んではいられない。 |
| ジェイド | …………そう、でしたか。 |
| Character | 17話 【9-24 アルテスタ街道 2】 |
| マーク | よう、イクス ! また鏡映点をナンパか。毎度毎度上手いことやるな。 |
| イクス | マーク…… ! |
| ロイド | 敵か ! ? |
| マーク | 敵と言えば敵だな。俺は救世軍だから。 |
| ロイド | だったら何をしにここへ現れた !リフィル先生をどこへ連れていったんだ ! |
| マーク | まあまあ、落ち着いてくれよ。取引をしないか。 |
| ミリーナ | ……どういうこと ? 何を企んでいるの ? |
| マーク | お前たちが捕まえた救世軍は俺の部下だ。返してくれないか。もちろんタダとは言わない。 |
| マーク | リフィルが閉じ込められている場所の地図とアンチ・ミラージュブレスを外す鍵を渡す。 |
| イクス | リフィルさんにアンチ・ミラージュブレスを ! ? |
| ロイド | なんだ ? そのあんち……何とかって ? |
| イクス | 人体実験の被験者につける機器なんだ。 |
| ロイド | そんなものを先生につけたのか ! ? |
| マーク | どうする ? アンチ・ミラージュブレスは健康な人間がつけていても害が及ぶ。早く助けてやりたいだろう ? |
| ミリーナ | 罠、じゃないの ? |
| マーク | だとしたらどうする ?仲間を見捨てるのか ? |
| ロイド | イクス、ミリーナ。取引しよう。罠だとしても、そんなもの壊しちまえばいいんだ。 |
| マーク | 単純明快だな。そういうの、意外と嫌いじゃないぜ。ほらよ、鍵と城の地図だ。 |
| イクス | この地図が…… ? |
| マーク | ……ああ、見ての通りリフィルが捕らわれている古城の見取り図だ。 |
| マーク | リー……じゃねぇやファントムか。あいつがその城を実験場として使うつもりらしい。 |
| マーク | まだ準備が整ってないから助け出すなら今のうちだぜ。 |
| ロイド | よし、みんな、急ごう ! |
| マーク | おっと、仲間は返してもらうぞ |
| イクス | もちろんだ。 |
| マーク | いいねぇ、反吐が出るほど青くてまっすぐで。せいぜい頑張れよ。 |
| イクス | マークの奴、いったいどういうつもりだ。 |
| ロイド | 悪いが、今は奴のことよりリフィル先生を助けないと。 |
| ミリーナ | ええ。リフィルさんきっと苦しんでいる筈だわ。急ぎましょう ! |
| Character | 18話 【9-26 封鎖された古城 地下】 |
| ロイド | リフィル先生 ! |
| リフィル | ロイド ! それにイクスたちまで…… !よくここがわかったわね。 |
| イクス | リフィルさんが『パンくず』を落としてくれたので……。 |
| ミリーナ | 待って下さい。今、アンチ・ミラージュブレスを外しますね。 |
| リフィル | みんな、助けに来てくれてありがとう。だけどこの城を出る前にもう少し協力してほしいことがあるの。 |
| ロイド | 先生……まさかここを自爆させようって言い出すんじゃ……。 |
| イクス | え ! ? この城、自爆装置なんてついてるんですか ! ? |
| ミリーナ | なるほど。敵の戦力は徹底的に叩くってことですね。 |
| カーリャ | か、過激です…… ! |
| リフィル | ちょっと待ちなさい !誰もそんなこと言っていないでしょう。 |
| リフィル | それは……壊せるならその方がいいけれど見たところ自爆装置があるような場所とは思えないわ。 |
| リフィル | そうじゃなくて、この城の奥に救世軍が集めてきたエクスフィアがあるの。あれは悪用されると危険だわ。回収したいのよ。 |
| イクス | エクスフィアって一体何なんですか ?確かロイドもつけてるんですよね。 |
| リフィル | そうね……。人間の能力を極限まで高める作用がある宝石とでも言えばいいかしら。 |
| リフィル | ただし、誤った使い方をすれば人体に様々な悪影響を与えるの。 |
| リフィル | 素晴らしい力がある石だから悪用させるわけにはいかないのよ。保管場所なら私が案内できるわ。 |
| ミリーナ | わかりました。すぐにエクスフィアを回収しましょう。 |
| ロイド | 先生が加わってくれるから回復は万全だな ! |
| リフィル | ごめんなさい。私は戦闘には参加できないの。治癒術もあてにしないで。 |
| イクス | え ? まさかアンチ・ミラージュブレスの影響ですか ? |
| リフィル | ……いえ。私が特異鏡映点だからよ。ファントムは特異鏡映点には世界を滅ぼす力があると言っていたわ。 |
| ロイド | そういえば、先生。ファントムと知り合いだったのか ? |
| リフィル | ロイドがポールを捜しに行った後にあの男が私を訪ねてきたの。すぐに追い払ったのだけれど……。 |
| イクス | リフィルさんが特異鏡映点だから連れて行こうとしたのか……。 |
| イクス | マリアンさんといいどうして特異鏡映点がいるってわかったんだ ? |
| リフィル | それは彼らが特異鏡映点の具現化に関わっているから……かも知れないわね。 |
| ミリーナ | それって王宮に救世軍の味方がいるってことですよね。 |
| イクス | …………。 |
| リフィル | ……話がそれたわね。とにかく私が通常とは違う存在である以上、今後力を使うことは避けるべきだと思うの。 |
| リフィル | 少なくとも特異鏡映点について正確なことが分かるまでは魔術も治癒術も封印するしかないわ。 |
| ミリーナ | ……すみません。私たちの考えが至らなくて。 |
| ロイド | そのことならもう気にするなよ。リフィル先生だっていつまでもそのことを責めるつもりはないと思うぜ。 |
| ロイド | それより救世軍の連中に気づかれる前にエクスフィアを回収しよう。 |
| リフィル | そうね。まだこの城は敵のベースとしては機能していないようだから今がチャンスよ。 |
| イクス | はい ! 行きましょう ! |
| Character | 19話 【9-28 封鎖された古城 隠し部屋】 |
| ロイド | もしかして……これ全部エクスフィアか ? |
| リフィル | こんなに集めていたのね。これじゃあ全部運ぶのは難しいかしら。 |
| イクス | 待って下さい。ケリュケイオンに連絡を取って、みんなに手伝ってもらえば運び出せると思います。 |
| ロイド | イクスの魔鏡ってそんなこともできるのか。すげぇ ! なぁなぁ ! 俺にも使わせてくれよ。 |
| イクス | いや、これは鏡士でないと無理だと思うよ。 |
| ロイド | そうなのか。鏡士ってすげぇな ! |
| イクス | そ、そんなことないよ。 |
| ミリーナ | ロイドって感心したり、何でも褒めたり……何だかちょっと照れちゃうね。 |
| イクス | そ、そうだな。どうしていいのかわからなくなっちゃうよ。 |
| ロイド | なんでだ ? 凄いのを凄いって言うのは当たり前だろ ? |
| リフィル | フフ……。ロイドは本当に素直でバカ正直ないい子なの。普通の人間にはちょっとまぶしいぐらいにね。 |
| ロイド | バカ正直ってなんだよ、先生。 |
| リフィル | ごめんなさい。これでも褒めてるのよ。 |
| ミリーナ | ……何だかロイドがうらやましいな。 |
| イクス | うん、俺も……。 |
| ロイド | 何がだ ? |
| イクス | ロイド自身にも憧れるし、それにリフィルさんみたいな大人が傍にいてくれて色々教えてくれたら心強いんだろうなって。 |
| ミリーナ | 私たちの島には学校がなかったから……。 |
| ロイド | なんだ。だったらイクスたちも今からリフィル先生の生徒になればいいじゃん。 |
| イクス | え ! ? |
| リフィル | あら、二人が望むなら喜んで教えるわよ。 |
| ミリーナ | は、はい ! リフィル先生 ! |
| イクス | お、俺もリフィル先生って呼んでもいいですか ? |
| ロイド | そりゃ、先生なんだから先生でいいだろ ! |
| イクス | り……リフィル……せ、せんせい……。は、恥ずかしい…… ! |
| カーリャ | イクスさま何を照れてるんでしょう。 |
| ミリーナ | 言い慣れない言葉だしリフィルさんが美人だからよ。イクスったら可愛い ! |
| イクス | う、う、うるさぁいっ !と、とにかくガロウズに連絡取るよ ! |
| Character | 20話 【9-29 封印されし森 入口】 |
| ガロウズ | エクスフィアの積み込み、完了したぜ。 |
| リフィル | ありがとう。助かったわ。 |
| ジェイド | さて、ではそろそろ今回の具現化における最大の問題点に触れてもよろしいでしょうか ? |
| イクス | さっき報告してくれた「キメラ具現化」の問題ですね。 |
| ジェイド | 調査の結果、現在この大陸は三つの異世界が混ざり合って具現化しています。 |
| ジェイド | 原因は本来の使うべきではない魔鏡を使用したこと。そして時の因果律に干渉したこと。 |
| ジェイド | これらはおそらく意図的なものだったのでしょう。 |
| リフィル | 私――特異鏡映点を生み出すためね。 |
| ジェイド | ええ。キメラ具現化はあの巨大な樹の暴走を引き起こしています。 |
| ジェイド | 樹に向かってアニマが集められその結果、樹の根が大地を引き裂こうとしている。 |
| ジェイド | このままでは、あの樹はますます力をつけてやがて他の島々へ根を伸ばすでしょう。 |
| ロイド | 俺たちの世界と同じことが起きるのか……。何か回避する方法はないのか ? |
| イクス | 暴走の原因は、樹がアニマを集めていることなんですよね。どうしてアニマを集めているんでしょうか。 |
| ジェイド | ロイドたちの世界を構成するアニマとは違う別世界のアニマが流入しているせいでしょう。 |
| ロイド | もっとわかりやすく説明してくれよ。あんた、頭いいんだろ ? |
| ジェイド | そうですね……。血に血液型があるようにアニマにも型があり、違うアニマが混じると病気になる……といったところでしょうか。 |
| ロイド | だったら血を分離すればいいだけだろ。 |
| ジェイド | 簡単に言いますねぇ。 |
| ロイド | 三つの異世界が混じり合ってるのが原因ならテセアラとシルヴァラントみたいに分離すればいいんじゃないかな。 |
| ロイド | 精霊の楔を抜いたときみたいに……ってあれは失敗したからだめか。 |
| リフィル | ――待って。悪くないアイデアだわ。 |
| リフィル | 異なるアニマが流入しあっている場所は何らかの異変が起きている筈。魔鏡で調べることはできないの ? |
| ジェイド | なるほど。複数のアニマが混在している場所が世界が混ざり合っている場所。 |
| ジェイド | コンタミネーションの起きている場所が特定できれば、魔鏡でアニマを動かして分離させることができる。 |
| ジェイド | まぁ、あくまで予測ではありますが。 |
| ミリーナ | 鏡士はアニマを意図的に動かすことに長けています。 |
| ミリーナ | アニマの混ざり合う境界線上を、キラル分子で切り離せば、キメラ具現化した対象物を分離させることができるんじゃないかしら。 |
| ロイド | だめだ。何言ってるのかさっぱりわかんねーよ。人間の言葉でしゃべってくれ ! |
| イクス | 人間の言葉だったと思うけど俺にもよくわからなかった。 |
| イクス | ……要するに魔鏡でロイドたちの大陸を三つの異世界に切り分けるってことですか ? |
| ジェイド | それだけわかっていれば十分です。キメラ具現化の切り分け方法について考えがあります。 |
| ジェイド | リフィル、キール、ガロウズ力を貸して下さい。イクスはこの大陸の光魔の鏡を探して下さい。 |
| イクス | 光魔の鏡、ですか ? |
| ジェイド | ええ。見つけたら封印せずに待機するように。光魔が襲ってきて危険ですから、戦力を整えていって下さい。 |
| ロイド | あーもう、何だか訳わかんねーけどイクスの方の仕事は俺にもできそうだな。イクス、協力するぜ ! |
| イクス | ありがとうロイド。俺も何だかよくわからないけど……とりあえず光魔の鏡を探してきます。 |
| ミリーナ | もちろん私も一緒よね、イクス。 |
| カーリャ | カーリャもお供しますよ。 |
| イクス | うん、みんな頼むよ ! |
| Character | 21話 【9-30 封印されし森 深部】 |
| カーリャ | ぶるぶるします。光魔の鏡が近いですよ ! |
| ミリーナ | 見て、あの奥のところ ! |
| ロイド | あれが光魔の鏡か……。 |
| ガロウズ | イクス。光魔の鏡は見つかったか ? |
| イクス | ああ。今光魔の鏡の前にいる。 |
| ジェイド | 結構。では周囲の光魔を片付けてからイクス一人で光魔の鏡の中に入ってもらいます。 |
| イクス | えっ ! ? |
| リフィル | 光魔の鏡というのは、異世界のアニマがティル・ナ・ノーグへやってくる時のゲートになっているの。 |
| リフィル | 光魔の鏡を通してこの大陸を見ればアニマが結合して混ざり合っているのが見える筈よ。 |
| リフィル | それを、腕の魔鏡からキラル分子を照射することで切り離すの。 |
| キール | ただし光魔の鏡の中に入れば、そのままティル・ナ・ノーグと他の異世界の間にあると思われる【虚無】に引きずり込まれる。 |
| キール | カーリャを連れて行け。カーリャを通じてティル・ナ・ノーグのミリーナとつながることでこちらの世界にイクスをつなぎ止める。 |
| ミリーナ | そんな危険なこと、イクスにさせられません !私が代わりに―― |
| ガロウズ | いや、光魔の鏡の中でアニマを分離するにはイクスの魔鏡が必要なんだ。だからこれはイクスにしかできない。 |
| ミリーナ | でも…… ! |
| ロイド | ミリーナ。ミリーナは自分を信じられないのか ? |
| ミリーナ | え ? 自分を信じる…… ? イクスじゃなくて…… ? |
| ロイド | ああ。今まで一緒にいたんだから俺にもわかるよ。ミリーナがイクスのことを信頼してるのは。 |
| ロイド | でもミリーナはイクスを大切に思いすぎて自分の中の不安までイクスに重ねてるんじゃないかな。 |
| ロイド | ミリーナは自分がイクスをこちらの世界にとどめておけないんじゃないかって心配してるんだと思うんだよ。 |
| ミリーナ | あ…… ! |
| ロイド | 大丈夫。ミリーナならできる。そうだろ、イクス。 |
| イクス | ああ、ミリーナはいつだって俺を助けてくれるから。 |
| ミリーナ | イクス……。だけど【あの時】私のせいで……。 |
| イクス | ミリーナ。違う。【あの時】無理に力を使おうとした俺を助けてくれたのはミリーナとフィルだった。 |
| ミリーナ | …………。 |
| ロイド | 俺には【あの時】のことはわからないけど……お互いが自分の中の不安に囚われてるだけなんじゃないかな。 |
| ロイド | その不安を埋める手伝いを俺にもさせてくれよ。俺だって二人の仲間だろ ? |
| ロイド | いざとなったら俺も鏡の中に飛び込んでイクスを連れ戻すさ ! |
| ミリーナ | わかったわ。私も自分を信じる。私……ここでイクスを守るわ。 |
| ジェイド | 結構。では光魔を片付けたら作戦開始です。頼みましたよ。 |
| Character | 22話 【9-30 封印されし森 深部】 |
| イクス | よし、行くぞ ! |
| カーリャ | はわわ……。綺麗な光です。 |
| リフィル | イクス、聞こえていて ? |
| イクス | は、はい ! |
| リフィル | アニマの色が違う箇所にキラル分子を照射するの。やってみて ! |
| イクス | (ここで失敗したら……具現化した世界はどうなるんだ……) |
| イクス | ――いや、今は目の前のアニマに集中する ! |
| ロイド | 随分時間がたったけどイクスはどうだ ? 何かわかるか ? |
| ミリーナ | 大丈夫。カーリャを通じてイクスを感じるわ。 |
| ロイド | …… ! ? おい、光魔の鏡が光り出したぞ ! ? |
| イクス | ――よし。これでアニマが混ざり合っているところは全部分離できた筈だぞ。 |
| カーリャ | さすがです、イクスさま !これで帰れますね。 |
| イクス | ……あれ ? カーリャの姿が……。 |
| イクス | カーリャ ! ? どうなってるんだ ! ?ミリーナ ! ガロウズ ! ロイド !リフィル先生 ! キール ! ジェイドさん ! ? |
| イクス | な、何だ ? 金色の光の砂が……俺の周りに……。 |
| ? ? ? | 苦シイ……ココハドコダ……。 |
| ? ? ? | 助ケテ……助ケテ……ドウナッテシマッタノ ? |
| イクス | な、何だ ! ? 人の声がする ! ? |
| ? ? ? | タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ |
| ? ? ? | アニマヲヨコセオマエノアニマヲ !アニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲアニマヲ |
| イクス | や、やめろ……俺の中に入ってくるな ! ?消えろ ! ? 消えてくれ ! ? |
| ロイド | イクス ! ! |
| ロイド | イクス ! 手を伸ばせ !それ以上そっちに行くと【虚無】に飲まれるぞ ! |
| イクス | ロイド ! |
| ミリーナ | イクス ! 大丈夫 ! ? |
| イクス | 俺……一体どうなったんだ…… ? |
| ミリーナ | カーリャが鏡の中からはじき飛ばされてきたのっ ! |
| ミリーナ | それで、私が助けに飛び込もうとしたらロイドがカーリャと一緒に……っ ! |
| イクス | ミリーナ……泣いてる ? |
| ミリーナ | ごめんなさい。私がちゃんとつなぎ止めておけなかったから。 |
| ロイド | そんなことないだろ。カーリャは金色の砂にはじき飛ばされたって言ってたんだ。ミリーナのせいじゃない。 |
| カーリャ | そうですよ。それにロイドさまに助けてもらってちゃんとイクスさまを連れ戻せましたからね。 |
| イクス | うん。ありがとう、ロイド。何があるかわからない鏡の中まで助けに来てくれて。 |
| ロイド | 仲間だろ。そんなのお互い様だ。 |
| イクス | ミリーナもありが――。 |
| イクス | ! ? |
| ミリーナ | イクスが……無事で良かった…… ! |
| カーリャ | お二人とも、喜び合うのはいいんですけれど光魔の鏡の封印も忘れないで下さいね。 |
| イクス | (光魔の鏡の中で聞こえたあの声は何だったんだ……。それにあの何もない空間……。虚無……。) |
| イクス | (消失したオーデンセ海域の空間とも似ていた……) |
| イクス | (俺たちの世界に迫っている滅びってのはあの【虚無】のことなのか…… ? ) |
| Character | 22話 【9-30 封印されし森 深部】 |
| ゲフィオン | イクス、ミリーナ。そして鏡映点の方々。そなたたちの活躍で、キメラ具現化していた大陸は、二つの島に分離した。 |
| ゲフィオン | あの巨大な樹も動かなくなったようだ。感謝する。 |
| イクス | 二つ…… ? 三つの異世界が混じり合っていたと聞いていましたが……。 |
| ゲフィオン | 三つのうちの二つはほぼ同質の世界であったために分離できない状態にあったようだ。 |
| ゲフィオン | おそらく同じ世界の過去と未来であったのだろう。 |
| ゲフィオン | 分離したもう一つの異世界もかなり近い性質を持っていたようだな。 |
| ゲフィオン | 何かしら関わりのある異世界同士だったが故に混濁したのだと考えられる。 |
| リフィル | ゲフィオン様。鏡映点は存在するだけでアニマをこの世界に満たすことができると聞いています。 |
| リフィル | では逆の性質を持つ特異鏡映点はこの世界にとって邪魔な存在なのではありませんか ? |
| ミリーナ | リフィルさん…… ! |
| ゲフィオン | アニマの点だけ捉えればそうかも知れぬ。だが同時に鏡映点として、具現化に関与している存在であることは間違いない。 |
| ゲフィオン | 具現化が安定し、アイギスが完成する前に鏡映点が消えては、具現化した島に悪影響が出ることも考えられる。 |
| リフィル | ですがジェイドの調査では、光魔の鏡と特異鏡映点はほぼ同じ性質を持つそうです。 |
| リフィル | 光魔を発生させることこそなくても放置すれば特異鏡映点からアニマが失われ世界が消失するのではありませんか ? |
| ゲフィオン | ……否定はできぬ。 |
| イクス | ゲフィオン様。しばらく具現化を中止しませんか。 |
| イクス | 俺は……あなたを信じていいのかわからなくなってきた。 |
| ミリーナ | イクス…… ! |
| ゲフィオン | …………。 |
| イクス | 先生――リフィルさんに言われて気づきました。俺たちがどれだけ安易に世界を生み出してしまったのか。 |
| イクス | ティル・ナ・ノーグの為に必要なことだったのだと思います。 |
| イクス | けれど俺たちは何も知らなすぎた。そしてあなたは隠しごとが多すぎる。 |
| イクス | 俺は……何も知らないままこの計画を進めたくない。自分たちのしたことに責任を持っていきたいんです。 |
| ゲフィオン | ……そうだな。どちらにしてもカレイドスコープは壊れていて具現化ができない状態だ。 |
| ゲフィオン | 特異鏡映点の件も何らかの解決策を見いださねばならぬ。 |
| ゲフィオン | まずは修理を進める間に、お前たちにアイギス計画を知ってもらうための資料をそろえよう。 |
| ゲフィオン | デミトリアス陛下もお前たちに渡したい資料があると言っておられた。全ては陛下の前で話をすることとしよう。 |
| リフィル | 私も独自に調査をするようにジェイドから依頼されています。権限をいただけますか ? |
| ゲフィオン | 承知した。 |
| イクス | ではカレイドスコープの修理が完成してゲフィオン様の準備が整ったらお話を聞かせて下さい。 |
| イクス | 俺たちに隠しているアイギス計画の詳細を。 |
| マーク | やれやれ。奴らエクスフィアまで盗んでいくとはなぁ。 |
| ミトス | さすがリフィルさん。 |
| マーク | リーパが苛ついてたぜ。 |
| ミトス | 鏡映点殺しに協力してやるんだから文句は言わせないよ。それより約束は守れるの ? |
| リヒター | ……失われた命の復活。本当に可能なんだろうな。 |
| マーク | 具現化の力を見ただろう ?しっかり頼むぜ、反鏡映点サマ ? |
| ディスト | 反鏡映点、では面白くありませんね。何か呼び名を考えましょう。 |
| チェスター | ……そんなものはどうでもいい。俺は……アミィを取り戻す。ただ、それだけだ。 |