| Character | 1話【ケリュケイオンブリッジ】 |
| イクス | 新しい大陸が発見された ! ? |
| ジェイド | ええ。ですから調査を頼みます。 |
| イクス | ちょ、ちょっと待ってください。俺たちは具現化していませんよ ? |
| ジェイド | わかっています。あなたたちではない何者かの仕業。そう考えて間違いないでしょう。 |
| ミリーナ | ゲフィオン様の話だと、私たち以外に具現化を行えるほどの力を持っている鏡士は一人しかいないんでしたよね ? |
| イクス | 第103代ビクエ……。 |
| ジェイド | 可能性はあります。ですが断定はできない。王宮内部については現在探っているところですので。 |
| ジェイド | まぁ、敵ではないといいですがね。鏡士の力において、あなたたちではビクエの足下にも及びませんから。 |
| イクス | それは……ビクエに比べたらそうでしょうけど……。 |
| ミリーナ | イクス。ジェイドさんが言いたいのは精進なさいってことだと思うわよ。 |
| ミリーナ | ジェイドさん。そうですよね ? |
| ジェイド | さあ。どうでしょうね。 |
| イクス | ……精進か。そうだな。俺だって鏡士になるって決めたんだから。 |
| ジェイド | 意気込みすぎてこじらせないでくださいよ。 |
| イクス | はい。大丈夫です。それで、調査っていうのは ? |
| ジェイド | いつも通りですよ。鏡映点を保護し光魔の鏡を封印してきてください。 |
| ミリーナ | それだけですか ? |
| ジェイド | はい。他には特にありません。何が起こるかもわかりませんが。 |
| イクス | 具現化を中止したにもかかわらず具現化の旅は続く……か。 |
| ジェイド | 皮肉なものですねぇ。 |
| ミリーナ | けど立ち止まってはいられないわよね。 |
| イクス | ああ。そうだな。もちろん用心はしつつだけど。 |
| ジェイド | では旅の餞別に資料を贈ります。調査に向かってもらう大陸の情報を簡単にですがまとめましたので。 |
| イクス | ありがとうございます。 |
| ミリーナ | この子が鏡映点なのね。女の子かしら ? 可愛いっ。 |
| イクス | 男の子のようにも思えるけど…………って、待てよ。これは…… ! ? |
| ジェイド | 後はあなたの判断に任せます。私は遺跡オタクではありませんので。それでは、調査頼みましたよ。 |
| ミリーナ | あっ ! ジェイドさん ! |
| イクス | ……やっぱりこの遺跡や街並みは。 |
| ミリーナ | ……イクス ? どうしたの ? |
| イクス | スレイとミクリオ、エドナ様にも一緒に来てもらおう。 |
| イクス | これは俺よりもスレイたちの意見を聞いた方がよさそうだ。 |
| Character | 2話【10-1 ダイル街道 1】 |
| スレイ | イクス。お待たせ。街の様子を見てきたよ。 |
| イクス | それで……どう思った ? |
| スレイ | オレもイクスと同じ見解だよ。 |
| イクス | そうか……。建造物の様式や装飾モチーフが天遺見聞録に記載されていたものに酷似しているからまさかとは思ったけど……。 |
| スレイ | この大陸はオレたちの世界……それも遙か昔の時代の世界が具現化されたと考えて間違いないと思う。 |
| イクス | 遙か昔か。アスガード王家の末流の一つ……ペン=ドラゴニア伯が台頭したと伝えられるアスガード時代の隆盛期ぐらいか ? |
| スレイ | もっと昔だと思うな。過剰な彫刻や動植物を自由に組み合わせたモチーフの建造物もあったし。 |
| イクス | となると少なくとも1000年以上前……。ミクリオはどう思う ? |
| ミクリオ | そうだな……。まず主要な建造物の様式は実用的かつシンプルなデザインだった。それから街の人の服装などからも考えて……。 |
| ミクリオ | アスガード時代の統一期だと思うな。 |
| イクス | グレイトフル・アスガード。100年の平和が続いたのち突然、大規模な地殻変動が発生した時代か。 |
| スレイ | 確かに、そう考えたらアスガード時代初期の文化的特徴が垣間見られるのも納得だ。 |
| イクス | さすがミクリオだな。建造物だけじゃなく文化的な側面も見落とさずに判断できてすごいよ。 |
| ミクリオ | それほどでもないさ。それにイクスだって歴史の流れをしっかり覚えててすごいじゃないか。 |
| スレイ | オレたちで歴史や天遺見聞録の話をしてるとイクスがグリンウッドの考古学者に思えてくるからな。 |
| イクス | いやいや。そんなことないよ。二人に比べたらまだまだだしさ。 |
| エドナ | ちょっと。いつまで歴史座談会してるつもり。 |
| スレイ | あはは……ごめん。具現化された世界とはいえまさか過去の世界に来ることになるとは思ってなかったから夢中になっちゃって。 |
| ミクリオ | うん ? もしここが本当に統一期の世界ならすでにエドナは――いたっ ! ! |
| エドナ | まったく。そんなに刺されたいの ? |
| ミクリオ | もう刺してるじゃないか ! |
| エドナ | 乙女の年齢を考古学的知識を用いて探ろうとした罰よ。 |
| スレイ | こ、この件は触れない方がよさそうだな。 |
| ミリーナ | そうね。それにエドナ様が何歳であろうとこんなに可愛いことに変わりはないもの。 |
| エドナ | そうやって隙あらばワタシを撫でるのね……。もう慣れたから、どうでもいいけど……。 |
| イクス | それじゃあ、ひとまず鏡映点を捜さないと。 |
| カーリャ | おぉっ ! さっそくぶるぶる来ましたよ !あっちです ! |
| イクス | わかった。行ってみよう。 |
| ライフィセット | ジッとしてて。もうすぐ終わるから。 |
| 商人 | ……凄いな。みるみる傷が癒えていく。 |
| イクス | 見つけた。あの子が鏡映点だ。 |
| スレイ | 待って。あれって……天響術 ? |
| ミクリオ | どうやら天族みたいだね。 |
| エドナ | いえ、あれは……。 |
| ライフィセット | はい。これでもう大丈夫だよ。 |
| 商人 | すまないね。助かったよ。 |
| ライフィセット | 気にしないで。それじゃあ僕はもう行かなきゃ。 |
| 商人 | 待ってくれ。 |
| ライフィセット | ……どうしたの ? |
| 商人 | その不思議な力は金になる。俺の商売に協力してくれ。もちろん、報酬は弾むし―― |
| ライフィセット | イヤだ。 |
| 商人 | なっ……少しは考えてくれてもいいだろ。 |
| ライフィセット | イヤだ。僕は商売道具のモノじゃない。それじゃあもう行くから。 |
| 商人 | 待て ! 逃がしはしないぞ ! |
| ライフィセット | 何 ! ? 放してよ ! ! |
| 商人 | うるさい !お前は黙って従っていれば――ッ ! |
| スレイ | ごめん。話に割って入って。けど、イヤだって言ってるんだ。本人の意思も尊重してあげてよ。 |
| ライフィセット | ……。 |
| 商人 | チッ……なんだお前たちは。もしかしてお前たちもこいつを利用して金儲けを―― |
| スレイ | するわけない。天族はモノじゃないんだ。人間と同じようにそれぞれ思いや夢や情熱が……心があるんだから。 |
| ミクリオ | ……スレイ。 |
| ライフィセット | 天族…… ? |
| ミリーナ | さがってて。もう大丈夫だからね。 |
| ライフィセット | あ、ありがとう。 |
| 商人 | 忌々しい…… !何だかわからんが横取りはさせんぞ ! |
| エドナ | スレイ。こいつら……。 |
| スレイ | ああ。穢れを感じる !けど、穢れが増える感じもなければ憑魔化もしない…… ! ? |
| ミクリオ | 考えるのは後だ !みんな ! 構えろ ! |
| イクス | くるぞ ! ! |
| Character | 3話【10-1 ダイル街道 1】 |
| ライフィセット | ……うん。ここが別の世界だっていうのも僕が鏡映点って存在なのもわかった。 |
| ライフィセット | けど、ごめん。僕は保護されるつもりも二人の旅に協力するつもりもないよ。 |
| イクス | ……もちろん無理強いはしないよ。俺たちの都合で迷惑をかけてるわけだし信用できないと思われても仕方がない。 |
| イクス | けど……光魔に襲われたり救世軍に狙われるかもしれないから……。 |
| ライフィセット | わかってる。だけど僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ。 |
| ライフィセット | それに、ようやく……僕の大切な人が平和な暮らしを手に入れることができそうだから……。 |
| ミリーナ | 大切な人 ? |
| ライフィセット | うん。ベルベットって言うんだ。僕が守ると決めた人だから悪いけど二人には―― |
| ミリーナ | そうだったのね !もしかして女の子かしら ? |
| ライフィセット | 女の子 ! ? 確かにベルベットは女の子だけど年齢はミリーナと同じくらいだよ ! ? |
| ミリーナ | ……そうなの ?ライフィセットと同い年くらいのかわいい女の子じゃなくて ? |
| ライフィセット | ベルベットは……綺麗な人だよ……。 |
| カーリャ | あれれ ? ライフィセットさまってば顔が赤くないですか ? |
| ライフィセット | そ、そんなんじゃないってば。 |
| イクス | えっと。ベルベットさんは今どうしてるんだ ? |
| ライフィセット | 街の外であった廃屋で僕の帰りを待ってる筈だよ。 |
| ミリーナ | 年上の綺麗なお姉さんかぁ……。 |
| イクス | その人もきっと鏡映点の筈だ。ジェイドさんの資料に、顔が判別不明の鏡映点がもう一人いるって書いてあったし。 |
| ミリーナ | ええ、そうよね。 |
| イクス | ライフィセット、事情を説明したいから会わせてもらえないかな ? |
| ライフィセット | ベルベットに ? だ、大丈夫かなぁ……。 |
| イクス | 何か問題でもあるのか ? |
| ライフィセット | えーと…………ううん。何でもない。 |
| ライフィセット | 昔のベルベットが具現化のことを聞いたら大変なことになってたかもしれない。 |
| ライフィセット | だけど……きっと今のベルベットなら大丈夫。二人のことを紹介するね。 |
| イクス | ああ。ありがとう。 |
| スレイ | お待たせ。こっちはもう大丈夫だよ。商人たちには帰ってもらったから。 |
| イクス | スレイ、ありがとう。ちょうど俺たちもライフィセットと話が終わったところだ。 |
| エドナ | ……。 |
| スレイ | 天族の力を利用しようとする商人か……。人間が天族を知覚できる世界だとこういうことも起こってしまうんだな……。 |
| ミクリオ | だがイクスとミリーナのような人間もいる。これは事実だろう。だから……。 |
| スレイ | ありがとう、ミクリオ。オレは大丈夫。 |
| スレイ | 人間と天族の共存する世界……。それがオレの夢。だから、それを諦めたりはしないよ。 |
| ライフィセット | 人間と天族の共存……。 |
| ミクリオ | えっと……ライフィセット。さっき天響術を使っていたようだったが君も天族なのかい ? |
| ライフィセット | あ、あの……天響術と天族ってなに ?あの回復魔法は聖隷術。僕は聖隷だよ。 |
| スレイ | 聖隷術 ? 聖隷 ? 聞いたことがないな。天響術と天族を昔はそう呼んでいたのか ? |
| ライフィセット | 昔 ? どういうこと ? |
| スレイ | 実は、オレたちの元いた世界って―― |
| エドナ | それについてはワタシが後でボーヤにもわかりやすく説明してあげるわ。楽しみにしておきなさい。 |
| ライフィセット | う、うん。 |
| エドナ | スレイ、ミボ。ということでこの件はワタシが預かるわ。 |
| ミクリオ | どうしたんだ ?やけに積極的じゃないか。 |
| スレイ | 普段なら説明なんてメンドクサイって言いそうなのにな。 |
| エドナ | あなたたちに任せた方がメンドクサイことになりそうだからよ。 |
| エドナ | ……知らない方が互いに幸せなこともあるの。あなたたちにはわからないかもしれないけど。 |
| ミクリオ | ……何か知ってるのか ? |
| エドナ | さあ。どうかしら。 |
| スレイ | けど……わかった。オレたちから歴史や時代の話はしないようにする。 |
| ミクリオ | そうだね。聞かれたとしても原則として互いに話さないようにした方がよさそうだ。 |
| スレイ | エドナ、頼んだよ。 |
| エドナ | ……ええ。 |
| イクス | えっと……もう大丈夫そうか ?そろそろ出発しようと思うんだけど。 |
| スレイ | ああ。もう話は終わったよ。どこかに向かうの ? |
| イクス | アニマサーチから漏れたはぐれ鏡映点の可能性が高い人をライフィセットが知っているみたいなんだ。 |
| ミリーナ | 一度会って事情を説明しようと思うの。 |
| カーリャ | ついでに光魔の鏡も探さなきゃですよ !みなさま、お忘れなく ! |
| スレイ | わかった。それならオレたちは後から合流でもいいかな ?街で少し気になる噂を聞いたんだ。 |
| イクス | 噂 ? |
| スレイ | 鏡士……たぶんイクスとミリーナを血眼になって捜している人物がいるらしいんだ。 |
| イクス | そうなのか ! ? |
| カーリャ | イクスさまとミリーナさまの命が狙われている感じですか ! ? |
| スレイ | あくまで噂だけど火のない所に煙は立たないとも言うからさ。一応、オレたちはこの件を調べてみるよ。 |
| イクス | けど、深追いしてスレイたちまで狙われることになったら……。 |
| ミクリオ | 大丈夫さ。スレイが無茶しそうになったら僕が止めるよ。 |
| スレイ | なんだよ。オレは大丈夫だって。 |
| ミクリオ | どうだか。 |
| ミリーナ | ふふっ。ミクリオさんがスレイさんについているなら安心ね。 |
| スレイ | ミリーナも ?オレそんなそそっかしくないよ ? |
| ミクリオ | ほら。スレイ、行くよ。 |
| エドナ | ワタシはあなたたちについて行くわ。ちょっと話もあるから。 |
| イクス | そうなのか ? |
| エドナ | 後で話す。 |
| ライフィセット | それじゃあ出発しようか。ベルベットのところに案内するよ。 |
| エドナ | ……ベルベットね。 |
| ライフィセット | …………。 |
| エドナ | なにをジロジロ見ているのかしら。見た目によらずだいぶお盛んなようね。 |
| ライフィセット | ご、ごめん !けどそういうのじゃないって ! |
| ライフィセット | どこかで見かけたような気がしたから……。 |
| ミリーナ | エドナ様を ? |
| ライフィセット | エドナ ! ? 今エドナって言った ! ? |
| ミリーナ | え……、ええ。 |
| ライフィセット | そう……だったんだ……。 |
| エドナ | ワタシのことを知っているのね ? |
| ライフィセット | うん。アイゼンから……。あと手紙でも……。 |
| エドナ | ……そう。わかったわ。とにかくまずベルベットのところまで案内なさい。 |
| ライフィセット | うん。ついてきて。 |
| Character | 4話【10-4 クロガネの森 出口】 |
| ベルベット | …………まだかしら。 |
| ライフィセット | ベルベット。ただいま。 |
| ベルベット | フィー、遅いわよ。何かあったのかもって心配したじゃ―― |
| イクス | ど、どうも。 |
| ミリーナ | 初めまして。 |
| ベルベット | ……誰 ? |
| ライフィセット | イクスとミリーナだよ。街で悪い商人に襲われそうになったところをイクスたちが助けてくれたんだ。 |
| ベルベット | そうだったのね。どうりで遅いと思った。 |
| ライフィセット | ちょっと調べたいことがあったんだ。すぐ帰るつもりだったんだけど心配させちゃってごめん。 |
| ベルベット | 謝ることはないわよ。……まぁ、とにかく無事ならよかったわ。 |
| ベルベット | イクスとミリーナって言ったわね。ライフィセットを助けてくれたことには感謝する。 |
| ベルベット | けど……他に何か用があるんでしょ ?ただライフィセットをここまで送って来たようには思えない。 |
| イクス | はい。ライフィセットには説明しましたがこの世界についてベルベットさんにも話さなきゃいけないことがあるんです。 |
| ベルベット | ……この世界。 |
| エドナ | ワタシもあなたたちに話があるわ。 |
| ベルベット | ……あんたは ? |
| ライフィセット | イクスたちと一緒にいたんだ。名前は……エドナ。 |
| ベルベット | エドナって……。まさかアイゼンの妹……。 |
| エドナ | お兄ちゃんの手紙に書かれていたベルベットとライフィセットっていうのはやっぱり、あなたたちなのね。 |
| エドナ | まさかこんな形で会うことになるとは……。 |
| エドナ | それにしても……。あなた……その穢れ……。 |
| ベルベット | 仕方ないでしょ。喰魔になってから穢れごと業魔を喰らっていたんだから……。 |
| ミリーナ | 喰魔 ? |
| エドナ | 特殊な業魔よ。珍しい憑魔みたいなものと思っておきなさい。 |
| イクス | 憑魔……。スレイの話だと穢れに侵された存在だったよな……。 |
| イクス | ……待ってくれ。それってつまりベルベットさんからも穢れが……。 |
| ベルベット | あたしはもう、穢れを抑えられないのよ……。 |
| ミリーナ | 穢れって……天族にとっては毒みたいなものなのよね ?エドナ様、大丈夫なの ? |
| エドナ | ええ。苦しくもなんともないわ。やっぱり、この世界の穢れは……元の世界の穢れとは違うみたいね。 |
| エドナ | 増加もしなければ人も天族も蝕むことはないわ。 |
| ミリーナ | 穢れもエンコードされていたのね。よかった……。 |
| ライフィセット | そうだね。聖隷が穢れに侵されたら……。 |
| エドナ | ……同感ね。 |
| ベルベット | ……穢れの性質が違うことも含め薄々感づいていたけどやっぱりここは別の世界のようね。 |
| イクス | はい。今からお話しします。 |
| エドナ | ワタシのことも話すわ。ありがたく聞きなさい。 |
| Character | 5話【10-5 クロガネの森 奥地】 |
| ベルベット | ……この世界のことや具現化あたしが鏡映点っていうのはわかったわ。 |
| エドナ | ワタシとあなたたちが具現化された時間差についてはどうかしら ? |
| ベルベット | そっちも理解したわよ。あんたが同じ世界の遠い未来から具現化されたなんて、また途方もない話ね。 |
| エドナ | それはこっちの台詞よ。 |
| ベルベット | あと言っておくことがあるわ。互いの時代についてや知っている歴史については―― |
| エドナ | 話すつもりはない。お互いにこの話はしない。言うまでもないわね。 |
| ベルベット | ……助かるわ。あたしはまだ……成し遂げていないことがあるから……。 |
| ベルベット | あんたの口からあたしがどうなったのかを知るなんてまっぴらごめんよ。 |
| エドナ | ……そうね。 |
| イクス | やっぱり、ベルベットさんにも使命があったんですね……。すいません、巻き込んでしまって……。 |
| ベルベット | ……使命なんて大層なものじゃないわ。あんたたちと違ってね。 |
| ミリーナ | けど、とても大切なことだったんでしょう ? |
| ベルベット | ……ええ。 |
| ベルベット | けど、この世界にあいつはいない。あいつが存在しない世界……。 |
| ベルベット | 復讐を果たしたら今みたいな気持ちになるのかもね……。 |
| ライフィセット | ベルベット、相談があるんだけど。 |
| ベルベット | ……フィー ? どうかしたの ? |
| ライフィセット | よければ、あの村で一緒に暮らさない ? |
| ライフィセット | そうしたらベルベットはやらなくちゃいけないことがいっぱいだよ。 |
| ライフィセット | 買い物をしたり、狩りをしたり裁縫をしたり、掃除をしたり料理をしたり、洗濯したり。 |
| ライフィセット | これからベルベットはもっともっと忙しくなるんだ。 |
| ベルベット | ……。 |
| ライフィセット | どうかな ? |
| ベルベット | ……あの村で。 |
| ミリーナ | あの村っていうのは ? |
| ライフィセット | ベルベットの故郷にそっくりな村がこの世界にもあるんだ。 |
| ベルベット | あたしたちが具現化された場所よ。本当に……そっくりだったわね……。昔のアバルの村に……。 |
| イクス | ……故郷か。そこで暮らしたいならそうした方がいいと思います。 |
| ベルベット | ……どうして ? |
| ミリーナ | 私たちの故郷は……もうなくなっちゃったから。 |
| ベルベット | ……あんたたちも。 |
| イクス | 本物ではないかもしれない……。けど故郷に戻れるものなら戻りたいって気持ちはわかりますから。 |
| ライフィセット | ベルベット。イクスたちもいいって言ってるんだよ。 |
| ベルベット | ……戻っていいのかしら。 |
| ミリーナ | 迷っているならもう一度行ってから決めてみてもいいんじゃないかしら。 |
| エドナ | くすぶっているより……ずっとマシよ。 |
| イクス | それにベルベットさんの故郷も俺たち見てみたいですし。 |
| ライフィセット | ベルベットの故郷はすっごくいいところだよ !自然が豊かでとっても落ち着くんだ ! |
| ベルベット | もう……なんでフィーが得意げなのよ。 |
| ベルベット | けど、もう一度行ってみるのも悪くはないかもしれないわね。 |
| ミリーナ | それじゃあ決定ね ! |
| イクス | スレイとミクリオとも合流してみんなで向かおうか。 |
| カーリャ | ついでに光魔の鏡も探せますからね。 |
| お腹の音 | ぐ~~ |
| ライフィセット | あっ……。 |
| ベルベット | ふふっ……フィーったら。その前に腹ごしらえが必要のようね。 |
| ライフィセット | うん。 |
| ベルベット | それじゃあウリボアを狩ってくるわ。なんだか湿っぽい話しちゃったから気分転換もかねてね。 |
| イクス | 俺も手伝いますよ。 |
| ベルベット | あたし一人で十分なんだけど……。 |
| イクス | 猟師の仲間に狩りのコツを教わったんです。ちょっとは役に立てると思うので。 |
| ミリーナ | うん。イクスなら大丈夫よ。なにかあっても私が守ってあげるからね。 |
| イクス | ミリーナはもう……。俺は子供じゃないんだぞ。 |
| ライフィセット | イクス。わかるよ。どうして女の人って男心がわからないんだろうね。 |
| イクス | ああ。まったくだ。 |
| 二人 | なんでこっちを見るの ? |
| エドナ | ボーヤたちは放っておきなさい。駄々こねてるだけよ。 |
| ライフィセット | むっ……そんなんじゃないのに。 |
| ベルベット | ふっ……それじゃあ頼りになる男のフィーには荷物の整理をお願いしようかしら。 |
| ライフィセット | う、うん ! 出発に備えてまとめておくね ! |
| イクス | ベルベットさん。それで、俺たちはついていってもいいんですか ? |
| ベルベット | ……好きにすれば。 |
| イクス | はい ! それじゃあ好きにします ! |
| ミリーナ | イクス、頑張ろうね。それにエドナ様も。 |
| エドナ | ワタシも行くのは確定なのね……。 |
| ライフィセット | それじゃあ、いってらっしゃい。 |
| ベルベット | ええ。いってきます。 |
| Character | 6話【10-6 商人が集う街】 |
| スレイ | 鏡士を狙っている謎の人物……。噂は本当だったみたいだな。 |
| ミクリオ | 聞き込みをした限りだとその人物は黒髪で長髪の女性……。しかもだいぶ殺気立っていたようだね。 |
| スレイ | そして捜していたのは銀髪で男の鏡士……。狙いはイクスとみて間違いないな。 |
| ミクリオ | 実際、イクスと外見的特徴が似ている人が襲われていたという情報もあった。イクスの命を狙っている可能性が高い。 |
| スレイ | もうちょっと情報があれば対策も立てられそうなんだけどな……。 |
| ミクリオ | スレイ。深追いは禁物だって言っただろ。まずはこのことをイクスたちに伝えるのが先決だ。 |
| スレイ | そうだな。調査はこれぐらいにして合流予定の場所に行こうか。 |
| ミクリオ | ああ。まずは街を出て――ッ ! ! |
| スレイ | なんだ……この感じは…… ! ? |
| ミクリオ | ち、近づいて……きている ! ? |
| ? ? ? | ……鏡士の居場所を知っているな ? |
| ミクリオ | これは……穢れ、なのか…… ? |
| スレイ | ミクリオ ! ? 大丈夫か ! ? |
| ミクリオ | ああ、この世界の穢れは影響がないようだ。だが……どうしてあの女性は……こんなにも穢れを……。 |
| スレイ | あなたは……いったい…… ? |
| ? ? ? | 鏡士はどこだ ! ?はやく質問に答えろっ ! ! |
| スレイ | ……ああ。居場所は知ってるよ。 |
| ミクリオ | スレイ ! |
| スレイ | 大丈夫。オレに任せて。 |
| ? ? ? | どこにいる。 |
| スレイ | あなたには教えられない。 |
| ? ? ? | なんだと…… ? |
| スレイ | イクスの命を狙っているのはあなたなんだよね ? |
| ? ? ? | ……そうか。あたしのことを嗅ぎ回っていたのはあんたたちか……。 |
| スレイ | どうしてイクスの命を狙うの ? |
| ? ? ? | 黙れ。いいからそいつの居場所を吐け。 |
| スレイ | それはできない。理由はわからないけどいまオレがイクスの居場所を言ったらきっとあなたはイクスを殺そうとするだろ。 |
| スレイ | あなたにも事情があるんだと思う。けどその事情は……本当にイクスを殺さないと解決できないのか ? |
| スレイ | 他にもまだ解決の道があるかもしれない。オレも一緒に探すからまずは理由を教えてほしい。 |
| ? ? ? | そんな道はない ! |
| スレイ | えっ……。 |
| ? ? ? | あたしは鏡士を殺す ! !そして必ず……アルトリウスを殺すんだ ! ! |
| ? ? ? | お前が居場所を吐かないならあたしがこの手で吐かせるまでだ ! ! |
| ミクリオ | な、なんだその腕は ! ? |
| スレイ | 待ってくれ ! ここは街中だ !無関係な人を巻き込むことになる ! |
| ? ? ? | だからどうした ! ! |
| スレイ | クッ―― ! |
| ミクリオ | スレイ ! 集中しろ ! |
| スレイ | けど……街の人たちが ! |
| ミクリオ | 応戦して引きつけつつ街の外に出ていったん態勢を立て直そう。そうすれば街の人も巻き込まずにすむ。 |
| スレイ | ああ。わかった ! |
| Character | 8話【10-7 ベンウィックの森】 |
| ベルベット | 一口サイズにしたウリボアの肉をホウレンソウや他の食材と軽く炒めてっと。これでキッシュの下ごしらえはばっちりね。 |
| ミリーナ | ベルベットは料理が得意なのね。とっても手際がよくて尊敬しちゃうわ。 |
| ベルベット | 昔はよく作ってたから……。 |
| ミリーナ | そうだったのね。ずいぶんと慣れた手つきだから料理の名人なのかと思っちゃった。 |
| ベルベット | あたしなんてまだまだよ……。 |
| ミリーナ | そんなことないわ。ベルベットの料理の技は完璧よ。 |
| ベルベット | あたしの技じゃないけどね……。これは教わったものだから。 |
| ミリーナ | それでもベルベットはすごいわよ !強くて綺麗で格好良くてしかも家庭的 !なんだか憧れちゃうわ ! |
| ベルベット | な、何 ? 褒めたって何もでないわよ。 |
| ミリーナ | ちょっと照れてるベルベットも可愛い…… ! |
| ベルベット | なんなのもう……。 |
| ベルベット | けど、あんただって料理はできるみたいじゃない。しれっと前菜は作り終わってるし。 |
| ミリーナ | ベルベットに比べたら全然よ。よければその料理の技教わりたいくらいだもの。 |
| ベルベット | 教わる……ね……。 |
| ミリーナ | どうかしたの ? |
| ベルベット | 昔はあたしも教わる側だったから……。こうして台所に並んではセリカ姉さんに料理の技を教わっていたのよ……。 |
| ミリーナ | ベルベットはお姉さんに家事を習ったのね。 |
| ベルベット | ……とっても厳しかったけどね。だけど、おかげで血肉になってる。 |
| ベルベット | だからあたしも厳しいわよ。 |
| ミリーナ | もしかして教えてくれるの ! ? |
| ベルベット | ……気が向いたときにはね。 |
| ミリーナ | やった ! ありがとう !ベルベットって優しいのね ! |
| ベルベット | ちょっと。抱きつかないでよ。 |
| エドナ | ……ミリーナ。目を離しているとシフォンケーキが黒焦げになるわよ。 |
| ミリーナ | あっ……そろそろ焼き上がる頃ね。エドナ様、教えてくれてありがとう。 |
| エドナ | それじゃあワタシは心置きなくドラゴ鍋風スープの最終仕上げに取りかかるとするわ。 |
| ミリーナ | エドナ様のスープかぁ。私、すごく楽しみ。 |
| エドナ | ヤバい美味しさだから覚悟しておきなさい。 |
| ベルベット | ……うん ? 何この骨 ? |
| ベルベット | ちょっと、エドナ。待ちなさい。 |
| ライフィセット | なんだかあっちは盛り上がってるみたいだね。 |
| イクス | えっ…… ? あぁ……そうなのか。本に夢中で気づかなかったよ。 |
| イクス | 手伝いに行った方がいいかな。でもミリーナに追い出されるだろうしな……。 |
| ライフィセット | ねぇ、それってどんな本なの ? |
| イクス | 魔鏡術についての本だよ。これは魔鏡術の中でも想像の力について書かれているんだ。 |
| ライフィセット | 想像の力 ? |
| イクス | たとえばこのリンゴに……想像の力の魔鏡術を使えば……。 |
| イクス | ――。 |
| ライフィセット | リンゴが増えた ! |
| イクス | 実体のない幻だけどね。それにミリーナからしたらこんなの基礎中の基礎だろうし。 |
| ライフィセット | けどすごいよ !想像の力の魔鏡術はこんなこともできるんだね ! |
| ライフィセット | あれ ? もしかして魔鏡術には他の種類の力があるの ? |
| イクス | そうだよ。そして鏡士はその家系ごとに得意とする力が違うんだ。 |
| イクス | たとえば俺の家系は無から有を具現する【創造の力】。 |
| イクス | ミリーナの家系は有から有を具現する想像の力が得意な魔鏡術なんだよ。 |
| ライフィセット | そうなんだ。聖隷と鏡士聖隷術と魔鏡術は似てるところがあるね。 |
| ライフィセット | けど、どうして【想像の力】の本を読んでたの ?イクスは得意なのは【創造の力】なんだよね。 |
| イクス | 鏡士として上を目指そうと思ったからかな。苦手な【想像の力】とも向き合うことでもっと力がつくと思うんだ。 |
| ライフィセット | そうなんだ。進むべき道が決まったんだね。 |
| イクス | ああ。鏡士の最高位ビクエの称号を持つ者はすべての魔鏡術の力を自在に操ると言われているんだ。 |
| イクス | 俺も少しでも近づけたらなって。 |
| ライフィセット | そういう自分の意思すごく大切だと思うよ。 |
| イクス | 力の暴走も考えられるからまだ実戦では使えないんだけどね。 |
| イクス | あっ……それと、このことミリーナには秘密にしてくれないか ?……色々、変に心配させたくないから。 |
| ライフィセット | うん。わかった。男同士の約束だ。 |
| ベルベット | 何話してるの ? |
| ライフィセット | なんでもないよ。 |
| イクス | あっ……えっと。気にしないで下さい。 |
| ベルベット | ……そう。まぁいいけど。もうすぐ料理ができるからテーブル片付けておいて。 |
| ライフィセット | わかったよ。はやく食べたいな。イクス、行こうか。 |
| イクス | ああ。そうだな。 |
| Character | 9話【10-8 のどかな村】 |
| ベルベット | それじゃあ……。 |
| 一同 | いただきます ! |
| ライフィセット | う~んっ ! おいしい ! !やっぱりベルベットのキッシュは最高だよ ! |
| ベルベット | クラウ家特製キッシュだからね。これなら味見どころか目をつぶってでも作れるわ。 |
| イクス | ミリーナのサラダも美味しいな。このドレッシング好きなんだよ。 |
| ミリーナ | ふふっ……知ってるわよ。 |
| エドナ | あなたたち。いいからワタシのドラゴ鍋風スープをはやく食べなさい。 |
| ベルベット | いや……まずそのスープの中身を教えなさいよ。 |
| ライフィセット | どうしたの ?スープも美味しいよ ? |
| ベルベット | フィー ! 食べたの ! ? |
| エドナ | ふふふっ……。 |
| ベルベット | もういいわ。気にしないことにする。 |
| ミリーナ | ベルベット。ウリボアのミートボールもよかったら食べてね。 |
| イクス | ミリーナが作ったのか ? |
| ミリーナ | ええ。ベルベットからレシピを教わったの。だから一番初めにベルベットの感想が欲しくて。 |
| ベルベット | …………。 |
| ライフィセット | ベルベット……。 |
| ミリーナ | どうかしたの ? |
| イクス | そういえば、まだ何も手をつけてないけど。もしかして体調が悪いとかですか ? |
| ベルベット | 違うのよ……。いまのあたしが……この料理を食べてもきっと……何も―― |
| エドナ | えいっ。 |
| ベルベット | ――はむっ ! ? |
| エドナ | いいから食べなさい。食事は全員でとらないと。 |
| ベルベット | …………。 |
| ミリーナ | どうかな ? ちょっと甘過ぎたかもって思ったんだけど。 |
| ベルベット | …………うっ……うそ。 |
| ミリーナ | ベルベット ! ? どうしたの ! ?そんなに口に合わなかった ! ? |
| ベルベット | ……いいえ。そんな……こと……。 |
| ベルベット | おいしいわ……。ちょっと……甘いけど。 |
| ミリーナ | よかったわ。けどやっぱり甘いわよね。次作るときは気をつけなきゃ―― |
| ライフィセット | ベルベット ! ? 味がわかるの ! ? |
| ベルベット | …………。 |
| イクス | 味…… ? どういうことだ ? |
| ベルベット | ……味覚が……味覚が戻ってるの。 |
| ミリーナ | ベルベット、味がわからなかったの ! ? |
| ベルベット | ……どうして。 |
| ライフィセット | ベルベット。 |
| ベルベット | ……フィー。 |
| ライフィセット | あの村に戻ろう。 |
| ベルベット | ……。 |
| ライフィセット | 僕はあの村で一緒に暮らしたい。ベルベットはどうなの ? |
| ベルベット | あたしは……。 |
| ライフィセット | 決めよう。この世界での生き方を。 |
| ベルベット | あたしは……フィーと一緒に、あの村で―― |
| カーリャ | うわわっ ! ! 鐘の音 ! ? 何事ですか ! ? |
| エドナ | この先にある街で何かあったようね。 |
| イクス | ごめん。ちょっと外の様子を見てくる。 |
| ミリーナ | ……大丈夫かしら。 |
| ベルベット | …………。 |
| ライフィセット | 何があったんだろう。 |
| ベルベット | 嫌な予感がするわ。 |
| イクス | みんな ! 街で火事があったみたいだ ! |
| ベルベット | 火事ですって ? |
| エドナ | 出火の原因は何かしらね。 |
| イクス | 誰かが火を放ったらしい……。俺は街を見てくるよ。 |
| ベルベット | あたしも行くわ。 |
| ライフィセット | ベルベット……待って。さっきの答え……。 |
| ベルベット | 安心して。ちゃんと後で答えるから。 |
| ライフィセット | ……わかった。 |
| ミリーナ | 行きましょう。 |
| Character | 10話【10-9 のどかな村】 |
| イクス | このあたりは……もう大丈夫そうだな。消火も終わってるみたいだ。 |
| スレイ | イクス ! |
| イクス | スレイ ! ミクリオ !どうしてここに ! ? |
| ミクリオ | これでも水の天族だからね。消火活動の手伝いさ。 |
| スレイ | このあたりの街の人は全員避難した。安心してくれ。 |
| ミクリオ | エドナたちは一緒じゃないのか ? |
| イクス | ミリーナ、ライフィセット、エドナ様はけが人を治療しているところだ。全員無事だよ。 |
| スレイ | それならよかった。イクスも襲われていないか心配で―― |
| ミクリオ | スレイ ! この……感じは…… ! ?あの時の……。 |
| スレイ | ……ああ。やっぱり来たか。 |
| イクス | ……二人とも ? |
| ベルベット | イクス。住宅街を見てきたわ。逃げ遅れた人はいないみたい。 |
| イクス | あっ、ベルベットさん。ありがとうございます。こっちも避難は―― |
| スレイ | イクス ! 下がって ! ! |
| イクス | えっ ? |
| ベルベット | あんたたち……どういうつもり ? |
| ミクリオ | それはこちらの台詞だ。どうしてイクスの命を狙う ?なぜ街に火を放った ? |
| ベルベット | あたしが ? |
| イクス | 二人とも、待ってくれ。ベルベットさんがそんなことする筈ない。 |
| スレイ | ……イクス。けど、オレたちは実際に……。 |
| ミクリオ | ああ。人違いである筈がない。 |
| スレイ | 今度こそ、浄化してみせる !それが導師であるオレの使命だから ! |
| ベルベット | ……導師だと ! ? |
| イクス | ベルベットさん ! ? |
| ベルベット | だいたい理解したわ……。穢れを感じているってことはあんたたち対魔士と使役聖隷ね。 |
| ベルベット | しかも導師を名乗るなんて……アルトリウスの狂信者といったところかしら。 |
| ベルベット | 災禍の顕主を退治に来たってことね……。 |
| スレイ | なん……だって……。 |
| ミクリオ | あなたが災禍の顕主だって言うのか ? |
| ベルベット | そのとおりよ。この世界もあんたたちの好きにはさせない。立ちふさがるなら容赦しないわ ! |
| イクス | ちょ、ちょっと !みんな落ち着いてくれ ! |
| ベルベット | 下がってないと怪我するわよ ! |
| ミクリオ | スレイ ! くるぞ ! ! |
| スレイ | くっ……あなたが災禍の顕主ならオレは負けるわけにはいかない…… ! |
| ベルベット | 望むところだ ! ! |
| エドナ | ――はいはい、そこまでよ ! |
| 二人 | エドナ ! ? |
| エドナ | まったく。最悪な出会い方してくれたものね。 |
| ライフィセット | ベルベット ! 大丈夫 ! ? |
| ベルベット | ……ええ。 |
| ミリーナ | イクス、いったい何があったの ? |
| イクス | ……それが俺にもさっぱりで。 |
| エドナ | ベルベット。この二人がさっき話したスレイとミボよ。 |
| ベルベット | こいつらが……。 |
| エドナ | スレイも熱くなりすぎよ。ミボはただのバカなんだろうけど。 |
| ミクリオ | ……どうして僕だけ。 |
| イクス | スレイ、ミクリオ。聞いてくれ。俺たちはずっとベルベットさんと一緒にいたんだ。 |
| イクス | ベルベットさんが……少なくとも街に火を放ったなんてことは絶対にありえない。 |
| エドナ | そうね、それは確かよ。 |
| スレイ | ……じゃあオレたちが見たのは……。 |
| ミクリオ | 僕らはこの目で実際に目撃した。彼女が街の倉庫に火を放ったのを。 |
| ? ? ? | それは……こっちのあたしよ。 |
| ベルベット | なっ…… ! あんた何者よ ! ? |
| ? ? ? | ……あんたが未来のあたしか。まぁ、たとえ自分であろうと邪魔するなら殺すだけだ。 |
| ベルベット | 未来 ? |
| ライフィセット | つまりあのベルベットは過去のベルベットってこと ? |
| イクス | ……そんなこと、ありえるのか。 |
| ? ? ? | あんたが鏡士イクス・ネーヴェ……。ようやく見つけた……。騒ぎを起こして正解だったわ。 |
| ? ? ? | よくも……よくもこんな世界にあたしを具現化してくれたな ! ?こんな牢獄のような世界に ! ! |
| イクス | 牢獄…… ? この世界が…… ? |
| ? ? ? | そうよ ! 牢獄よ ! !地下の特別牢と何も変わらないわ ! ! |
| ? ? ? | あたしの大切なものを奪った……あの憎きアルトリウスに復讐したくてもすることができない……。 |
| ? ? ? | よくも……あたしの生きる意味を奪ってくれたな ! ! |
| イクス | ……ベルベットさん。そう、だったのか…… ? |
| ベルベット | ……そうかもね。 |
| ライフィセット | ベルベット……。 |
| ミリーナ | どんな理由があろうと誰であろうとイクスは殺させない。それだけは許さないわ。 |
| イクス | ……ミリーナ ? |
| ? ? ? | こんな世界に用はない !必ずお前を殺して……あたしは元の世界に戻るんだ ! |
| イクス | 元の世界に戻る ?それは俺を殺したところで―― |
| ? ? ? | 黙れぇっ ! ! ! ! |
| Character | 11話【10-9 のどかな村】 |
| ? ? ? | その力……。お前は何者だ ! ? |
| スレイ | オレは導師、スレイ。この世界の災厄を鎮めたいって思ってる。 |
| ベルベット | 世界の災厄、ね……。 |
| ? ? ? | ファントムの言っていた鏡士の力とはまた違う力か……。 |
| イクス | ファントムだって ! ? |
| ? ? ? | 鏡士。あたしは必ずあんたを殺す……。そして左手首の魔鏡も奪う。……覚えていろ。 |
| スレイ | 待ってくれ !一度ちゃんと話を―― ! ! |
| ベルベット | 無駄よ。やめておきなさい。それに……あたしはバカじゃない。深追いすれば痛い目見るわよ。 |
| スレイ | ……わかったよ。 |
| イクス | 本当に……あのベルベットさんは過去のベルベットさんなのか……。 |
| ミリーナ | 外見は同じだけど……ベルベットとはなんだか違うように感じられて私……信じられないわ……。 |
| ベルベット | あいつは過去のあたし。間違いないわ。フィーもそう思うでしょ ? |
| ライフィセット | ……うん。きっと……真実を知ったときの……。 |
| ベルベット | しかも、あれはもう手遅れね。完全に【絶望】と【憎悪】に支配されているわ。 |
| ミクリオ | 街中でスレイと僕に襲いかかり街を放火し、イクスを殺そうとしているのは過去のあなただったっていうのか……。 |
| ベルベット | あたしならそれぐらいやる。 |
| エドナ | けど、どうして過去のあなたがいるわけ ?ワタシたちの過去の世界が具現化されたと思ったら、さらに過去の存在が現れるなんて。 |
| スレイ | 特殊な光魔や鏡映点みたいなものなのか ? |
| カーリャ | たぶん違いますよ。カーリャ、全然ぶるぶるきませんでしたし。 |
| イクス | いまわかっていることを整理すると……。まず、この大陸は俺たちではなく何者かによって具現化された。 |
| イクス | そしてあのベルベットさんは……ファントムの名を口にした……。 |
| ミリーナ | ファントムは具現化に関する研究もおこなっていたわよね。 |
| イクス | ああ。その研究はすでに鏡魔という鏡映点を元にした意思を持たない魔物を具現化するまでに至っている。 |
| ライフィセット | そのファントムってやつが関係してる可能性が高いんだね ? |
| イクス | 俺の命、そしてこの魔鏡を狙っていることも含めてそう考えるのが妥当だな。 |
| イクス | けど……どういうことなんだ……。俺を殺しても元の世界に戻るのは不可能な筈なのに……。 |
| ミリーナ | 元の世界に戻るということはこの世界から元の世界に影響を及ぼすということだものね……。 |
| ミリーナ | イクスを殺しても元の世界に影響なんて及ぼせないのに……。 |
| イクス | ファントムが何か研究してるのかもしれないけど……。具現化の仕組み的にそんなことはできない筈……。 |
| イクス | けど、もし本当にそれができるならリフィル先生が言っていたように元の世界に悪影響がでることも…… ? |
| ベルベット | 幻のニンジンを吊されて利用されてるようにも思えるけどね。 |
| ベルベット | とにかく、今は目の前のことを片付けるわよ。やるべきことは―― |
| カーリャ | ……ぷるっ……ぷるっ ! ! |
| ミリーナ | カーリャ ? どうしたの ? |
| カーリャ | この先に……たぶん光魔の鏡があります。 |
| ミクリオ | 光魔の鏡か……。そこから光魔が発生するんだったな。 |
| ベルベット | 光魔は鏡映点を襲う習性があるんでしょ ?溢れかえった光魔に群がられるなんてごめん被りたいわ。 |
| イクス | 放置しておくわけにはいかないな。 |
| ライフィセット | だけど、この先って……。ベルベットの故郷の村じゃないか……。 |
| ベルベット | ……向かうわよ。 |
| ミリーナ | でも、過去のベルベットはどうしたら―― |
| ベルベット | 復讐鬼。 |
| ミリーナ | えっ ? |
| ベルベット | 紛らわしいから。あいつのことは今後、復讐鬼と呼ぶ。 |
| ミリーナ | けど……過去のベルベットなんでしょ。そんな呼び方は……。 |
| ベルベット | 復讐鬼よ。いいわね。 |
| ミリーナ | ……わかったわ。 |
| ミリーナ | えっと……その……復讐鬼はどうするの ?こっちも無視してはおけないわよね ? |
| イクス | ……確かにそうだな。 |
| ベルベット | 放っておいても追っかけてくる筈よ。だからまずは急ぎ、光魔の鏡を封印する。そしてその後に―― |
| ベルベット | 復讐鬼を殺す。 |
| スレイ | ……殺すだって ! ?なんでそうなるんだ ! ? |
| ベルベット | こっちにまで被害が出そうなんだから当然でしょ。 |
| ベルベット | それに、【個】よりも【全】。【感情】よりも【理】。導師の思想にも合ってると思うけど。 |
| スレイ | ……導師の思想 ? |
| ベルベット | ……早く行くわよ。 |
| ライフィセット | ベルベット ! 待ってよ ! ! |
| スレイ | ……ベルベット。 |
| ミクリオ | ベルベットは導師についてどう思っているんだろうな……。 |
| エドナ | 時代によっても色々あるのよ。 |
| イクス | 導師と災禍の顕主……。スレイたちの世界では両者は互いに敵対する存在……なんだよな。 |
| スレイ | あぁ。けどベルベットとはそういう関係になりたくないな……。 |
| エドナ | スレイらしくしていればどうとでもなる筈よ。 |
| スレイ | オレらしく……。 |
| エドナ | さぁ。光魔の鏡を封印しに向かうわよ。 |
| Character | 12話【10-11 ニコ街道 2】 |
| スレイ | ベルベット。ちょっといいかな ? |
| ベルベット | …………。 |
| スレイ | あの……話したいことがあるんだけど……。 |
| ベルベット | あたしはない。しつこいわね。 |
| スレイ | ご、ごめん。 |
| ベルベット | …………。 |
| ミクリオ | ……スレイ。 |
| ライフィセット | スレイ。あの……ベルベットも悪気があるわけじゃないんだ……。だから……その……。 |
| スレイ | 大丈夫だよ。導師が嫌いだって言う人にも出会ってきたからさ。 |
| ベルベット | フィー ! 何してるの。 |
| ライフィセット | ……ベルベット。聞いて。スレイは……違うと思うよ……。 |
| ベルベット | 何が違うっていうの。 |
| ライフィセット | ……聖隷の力を利用しようとする商人から真っ先に僕を守ってくれたのはスレイだったんだ。 |
| ライフィセット | それに……人と天族の共存する世界スレイはそれが夢だって……言っていたから……。 |
| スレイ | ああ。それがオレの夢でだからオレは導師になったんだ。 |
| ベルベット | ……。 |
| ライフィセット | だから……話ぐらいは……。 |
| ベルベット | ……わかったわよ。で、話って何 ? |
| スレイ | さっきは……剣を向けてごめん。 |
| ベルベット | 導師が災禍の顕主に剣を向ける。何も間違ってないじゃない。 |
| スレイ | そうじゃない。オレは……ベルベットに剣を向けたことを謝りたかったんだ……。 |
| ベルベット | ……あたしに ? |
| スレイ | ごめん……。 |
| ミクリオ | 僕も……すまなかった……。 |
| ベルベット | …………いいわよ。気にしてないから。 |
| ライフィセット | ベルベット。スレイってちょっと変わった導師だね。 |
| ベルベット | そうね。 |
| エドナ | うちの導師は相当変人だから覚悟なさい。油断してると遺跡オタクにされるわよ。 |
| ベルベット | ……遺跡オタク ? |
| スレイ | ちょ、ちょっと……エドナ。ベルベットとライフィセットに変な奴って思われちゃうだろ。 |
| エドナ | けど、遺跡オタクは事実じゃない。 |
| ミクリオ | 待ってくれ。遺跡オタクは変じゃない。 |
| スレイ | アリーシャだけじゃなくルーティやリフィル先生も遺跡オタクだもんな。 |
| エドナ | いや、ルーティは違うでしょ。 |
| ベルベット | ふっ……確かに相当変人みたいね。 |
| イクス | みんな。お待たせ。光魔の鏡がある場所がわかったよ。 |
| ベルベット | じゃあ、そこに向かうわよ。 |
| スレイ | だな ! |
| イクス | …… ? |
| ミリーナ | ふふっ……よかった。 |
| ミクリオ | ライフィセット。ありがとう。 |
| ライフィセット | 気にしないで。 |
| エドナ | どうしてワタシに対しての感謝がないのかしら。 |
| スレイ | そうだ !エドナもありがとう。 |
| エドナ | まったく。手のかかる子たちね。 |
| ベルベット | 光魔の鏡があるのはあたしの故郷か……。 |
| イクス | ……光魔に襲われてないといいんですが。 |
| ベルベット | 心配してもしょうがないわ。光魔の主ってのも控えてるんでしょ。油断せずに行くわよ。 |
| Character | 13話【10-14 クローディン山岳】 |
| イクス | 光魔の鏡は封印完了。村も無事なようでよかったよ。 |
| ベルベット | 業魔対策のバリケードがこんな形で役に立つとはね……。 |
| ミリーナ | ここがベルベットの故郷……。とってもいい場所じゃない。 |
| スレイ | それに村の人もいい人ばっかりだった。おさげの女の人が親切に村を案内してくれたんだよ。 |
| ミクリオ | 村にいた二匹の犬もおとなしかった。 |
| エドナ | 犬の方がビビってたわよね。もっと吠えまくってくれたらよかったのに。 |
| エドナ | まぁ、ミボのビビる姿が見られなかった点を除けば特に不満はないけれど。 |
| ライフィセット | 本当に……いい村だよ……。 |
| ベルベット | まったく。何浸ってるのよ。復讐鬼の始末がまだ残ってるでしょ。 |
| イクス | そのことなんだけど。俺たちだけで何とかしようと思う。 |
| ベルベット | ……どういうこと ? |
| ミリーナ | そろそろ決めるときよ。 |
| ライフィセット | ベルベット。ここで一緒に暮らそうよ。 |
| ベルベット | ……まだ返事していなかったわね。 |
| ライフィセット | ベルベットはどうしたいの ? |
| ベルベット | そうね……。戻ってきて思ったわ。それも悪くないかもって。 |
| ライフィセット | それじゃあ答えは ! ? |
| ベルベット | できないわ。 |
| ライフィセット | えっ……。 |
| ベルベット | ごめんね。フィー。 |
| ライフィセット | どうして ! ? |
| ベルベット | ……もうすぐわかるわ。 |
| スレイ | っ ! この穢れは ! ? |
| ベルベット | 復讐鬼がこっちに向かってる。 |
| ライフィセット | それもイクスたちが何とかしてくれるって言ってるんだよ ! |
| イクス | ああ。狙いは俺だ。すぐに村をでる。 |
| ベルベット | ダメよ。この村を離れたらさっきの街の二の舞になるわ。 |
| スレイ | けどそれじゃあこの村で戦うことになる。村の人たちを巻き込んでしまうじゃないか。 |
| ミクリオ | 今から事情を説明して全員を避難させる時間もないぞ。 |
| ベルベット | ……説明なんて必要ないわ。 |
| スレイ | えっ……。 |
| 村人 | あの女……隣街に火を放った放火魔の特徴にそっくりじゃないか……。 |
| 村人 | き、きっと別人よ……。 |
| 村人 | けど……万が一ってことも……。 |
| エドナ | あら。有名人じゃない。 |
| ベルベット | まぁね。 |
| ライフィセット | けどベルベットはやっていない ! |
| ベルベット | そうよ。復讐鬼がやった。過去のあたしがやったのよ。 |
| ライフィセット | それは……けど……。 |
| ベルベット | あんたたちは村の人たちの避難誘導を任せたわ。 |
| イクス | ベルベットさん…… ? |
| ベルベット | 導師 ! わかったわね ! ? |
| スレイ | あ、ああ……。わかった。けど……どうするつもりなの ? |
| ベルベット | 決まってるでしょ……。 |
| ライフィセット | まさか……。 |
| ライフィセット | ベルベット ! 待って ! |
| ベルベット | …………。 |
| 村人 | な、なんだあの左腕は ! ? |
| 村人 | や、やっぱり……あいつが放火魔だ ! |
| ベルベット | 今からこの村はあたしのものだ ! !逆らう奴が一人でもいれば村を燃やして全員殺す ! ! |
| 村人 | な、なんでそんなことを…… ! |
| ベルベット | 黙れ ! ! |
| 村人 | ――うわっ !み、みんな逃げろ ! ! |
| ベルベット | 全員出て行け ! !あたしの前から消え失せろ ! |
| ベルベット | 我が名は災禍 !災禍の顕主ベルベットだ ! ! |
| ライフィセット | ……ベルベット。なんで……どうしてだよ……。 |
| ライフィセット | せっかく戻れると思ったのに ! ! |
| エドナ | ……決まってるでしょ。この村を、守るためよ。 |
| ライフィセット | そんなことわかってるよ ! ! |
| エドナ | だったら今すべきことを果たしなさい ! |
| ライフィセット | そんなこと……わかってるってば。 |
| ベルベット | 導師 ! |
| スレイ | ……わかった。 |
| ミクリオ | …………スレイ。 |
| スレイ | みなさん ! こっちに避難を ! !オレについてきて ! |
| ミリーナ | イクス……。私たちも……。 |
| イクス | ああ……。まずは村人の避難誘導。安全のため村周辺の光魔の排除だな。 |
| スレイ | イクス……。こんなことになっちゃったけどオレはまだ……復讐鬼を……いや、過去のベルベットを……。 |
| イクス | ああ。わかってる。俺がちゃんとうまくできるか……まだわからないけど……。 |
| イクス | やってみるよ。作戦通り。 |
| Character | 14話【10-15 故郷によく似た村】 |
| イクス | ……これで準備は完了だな。 |
| ベルベット | …………ここにいたのね。 |
| イクス | ベルベットさん……。 |
| ベルベット | どうかした ? |
| イクス | 本当に……あれでよかったのかと思って……。 |
| ベルベット | ……いいのよ。 |
| イクス | けど……。 |
| ベルベット | そうだ。あんたに言いたいことがあったの。ちょっと耳貸して。 |
| イクス | なんですか ? |
| ベルベット | いいから。一度しか言わないわよ。聞き逃したりしないように。 |
| イクス | はい。わかりました。 |
| ベルベット | 死ね。 |
| イクス | うぐっ……。 |
| 復讐鬼 | はっ……あははは…… !ほんっとうにバカな奴ね ! !まんまと引っかかったわ ! ! |
| 復讐鬼 | ざまあみろ ! !あたしの生きがいを奪ったんだ ! !これは当然の報いだ ! ! |
| イクス | …………。 |
| 復讐鬼 | ……本当にバカな奴。 |
| 復讐鬼 | けどこれであたしは戻れるんだ。この魔鏡があれば―― |
| 復讐鬼 | 何 ! ? |
| スレイ | それは幻だよ。 |
| 復讐鬼 | ……お前たち。 |
| イクス | はぁ……はぁ……。想像の力の魔鏡術だ……。 |
| イクス | なんとか……力の暴走も……回避できた……。 |
| スレイ | 聞いて。あなたは元の世界に戻ることはできないんだ。 |
| 復讐鬼 | …………。 |
| スレイ | もう……わかったと思う。だから終わりにしよう。そしてこの世界での生き方を見つけようよ。 |
| スレイ | オレがちゃんと手伝うから。 |
| イクス | 俺も……できることがあれば……。 |
| 復讐鬼 | …………そうか。あんたたち……。 |
| 復讐鬼 | よくも……よくも騙したな ! ! |
| スレイ | ……。 |
| 復讐鬼 | 殺されたと思ったラフィは……自分の意思で死んだとか……本当は元の世界に戻れないだとか……。 |
| 復讐鬼 | 殺したと思ったお前はただの幻だとか……。 |
| 復讐鬼 | ふざけるなっ ! ! 何が幻だっ ! !どいつもこいつも……どれだけあたしを踏みにじれば気が済むんだっ ! ! |
| スレイ | そうじゃ、ないよ……。 |
| ベルベット | だから言ったでしょ。もう説得なんて無理な状態だって。殺すしかないのよ。 |
| スレイ | …………ベルベット。 |
| 復讐鬼 | なにが未来のあたしだ ! おまえも幻だ ! !あんたがあたしの筈がない ! ! |
| ベルベット | いいえ。あたしは未来のあんたよ。だから……あんたの苦しみだってわかる。 |
| 復讐鬼 | 嘘をつくな ! ! 生きる意味を失ったこの痛みがどれほどのものかお前は何もわかっていないっ ! ! |
| ベルベット | ……痛みなら感じている。【絶望】も【憎悪】もした。 |
| ベルベット | けれどあたしは全てを喰らい前に進むと心に決めた ! |
| ベルベット | たとえ過去の自分であってもその歩みの邪魔はさせない ! |
| 復讐鬼 | ライフィセット !あんたはあたしにつきなさい !そいつこそが幻なのよ ! ! |
| ライフィセット | ……。 |
| 復讐鬼 | 聞こえないの ! ? ライフィセット ! ! |
| ベルベット | フィー、選んでいいわよ。どっちも……あたしなんだから。 |
| 復讐鬼 | あたしにつくのよ ! ! |
| ライフィセット | ……僕には僕の意思がある。それを認めてくれるベルベットに……僕は災禍の顕主についていく。 |
| ベルベット | ……フィー。 |
| 復讐鬼 | この裏切り者っ ! ! |
| ベルベット | フィー、下がってなさい。今度はあんたの力は借りない。 |
| ベルベット | あたし自身がこの手で自分の過去に決着をつける。 |
| ライフィセット | ……わかった。 |
| スレイ | 悪いけどオレはまだ諦められない。だから戦わせてもらうよ。 |
| ベルベット | 勝手にしなさい。あんたの力は役に立つ。利用させてもらうだけよ。 |
| ミクリオ | スレイがいくなら。 |
| エドナ | ワタシたちも混ぜてもらうわ。 |
| イクス | ミリーナ。 |
| ミリーナ | イクスは殺させない。 |
| ベルベット | さぁ。かかってきなさい復讐鬼。災禍の顕主が相手になるわ。 |
| Character | 15話【10-15 故郷によく似た村】 |
| イクス | くっ……強い……。 |
| スレイ | はぁ……はぁ……。やっぱり……浄化しきれない……。 |
| スレイ | けど……オレはまだ諦めたくないんだっ ! ! |
| ベルベット | 邪魔よ ! ! |
| スレイ | ――くっ ! |
| ミクリオ | スレイ ! |
| 復讐鬼 | ぐっ……。 |
| ベルベット | ……捕まえた。 |
| 復讐鬼 | くそっ……。おまえ、なんかに……。 |
| ベルベット | もう……大丈夫だから。ちゃんとあたしはわかってるわ。 |
| 復讐鬼 | ……なんだと。 |
| ベルベット | あんたをなかったことにはしない。あたしはすべてを喰らうから。 |
| ベルベット | だから今は……あたしの中で眠っていて。 |
| 復讐鬼 | …………。 |
| イクス | 金色の砂が……ベルベットさんの中に……。 |
| エドナ | あれはなんなの ? |
| ミリーナ | 何、かしらね……。 |
| ベルベット | さて。これで諸々片がついたわね。 |
| スレイ | ベルベット……ごめん。オレ……結局……。 |
| ベルベット | 気にすることないわ。ちゃんとあいつはあたしの中にいるんだから。 |
| イクス | けど……。 |
| ベルベット | はぁ……。それよりはやくケリュケイオンに案内してもらえないかしら。 |
| イクス | ……いいんですか ? |
| ベルベット | しょうがないでしょ。もうあの村には戻れないんだから。 |
| ベルベット | やっぱり、この世界にあたしの居場所はない。 |
| ベルベット | だから、はやくあんたたちの面倒ごとを全部片付けて、あたしは消える。そのために協力するわ。 |
| イクス | ベルベットさんは……強いですね。どんなこともちゃんと受け止めて前に進んでいけて。 |
| ベルベット | あたしは自分の意思で行動しているだけ。 |
| ベルベット | それに……支えてくれる人がいるから。 |
| ライフィセット | ……ベルベット。 |
| ベルベット | ありがとう。フィー。あんなときでもずっと側にいてくれて。 |
| ライフィセット | ううん。僕も自分の意思で行動しているだけだから。 |
| イクス | 支えてくれる人か……。 |
| イクス | ミリーナ。 |
| ミリーナ | 何 ? |
| イクス | 俺、もっと魔鏡術を極めようと思う。【あの時】のこととかあるけどそれでも頑張ろうと思うんだ。 |
| イクス | けど、まだ吹っ切れてはいなくて……だから、もし俺が迷いそうになったら―― |
| ミリーナ | 私がイクスの支えになるわ。それが私の意思でもあるから。 |
| イクス | ありがとう。ミリーナ。 |
| ミリーナ | ふふっ。イクスなら絶対にもっとすごい鏡士になれるって私、信じてるわ。 |
| ベルベット | また……この村ともお別れね。 |
| スレイ | ベルベット……。オレ、事情を説明してくる。 |
| ベルベット | もう、いいのよ。 |
| ミクリオ | だけど……ベルベットはあの村で暮らしたかったんだろう…… ? |
| スレイ | このままじゃ……。ベルベットが救われないじゃないか……。 |
| ベルベット | ……一つ聞かせて。あんたは【全】か【個】か。どっちを取る ? |
| スレイ | どういう意味 ? |
| ベルベット | いいから。思ったことを答えなさい。 |
| スレイ | 思ったことか……。 |
| スレイ | すべての【個】を取れば【全】になる……かな。 |
| ベルベット | はぁ ? 何それ ? |
| スレイ | あっ……思ったことって言われたから。これじゃあダメかな ? |
| ベルベット | ……いいえ。 |
| ミクリオ | スレイらしいと僕は思うよ。 |
| ライフィセット | やっぱり相当の変人だね。 |
| エドナ | だから言ったでしょ。 |
| スレイ | な、何 ? みんなして。そりゃ、無茶なのかもしれないけど。 |
| ベルベット | けど……あたしはいい答えだと思うわ。 |
| ベルベット | スレイみたいな導師と出会えてよかった……。 |
| スレイ | オレもベルベットと出会えてよかったよ。 |
| イクス | それじゃあ、ベルベットさんをケリュケイオンまで案内するよ。 |
| ベルベット | あたしは行くけど、フィーはどうするの ? |
| ライフィセット | ……僕はまだやることがあるんだ。だからこの大陸にもうしばらく残る。 |
| ベルベット | ……一人で平気なの ? |
| ライフィセット | 大丈夫だよ。それにケリュケイオンにも顔出すようにするからさ。 |
| ベルベット | ……わかったわ。せっかく味覚も戻ったことだし料理を用意して待ってるわね。 |
| ライフィセット | うん ! |
| エドナ | ……で、何を隠してるの ? |
| ライフィセット | ベルベットにはできるだけ普通の生活を送ってほしかったから黙ってたけどエドナには話しておくね。 |
| ライフィセット | 僕は……アイゼンを探してるんだ。 |
| エドナ | …… ! ? |
| ライフィセット | この手袋、拾ったんだ。アイゼンのだよね ? |
| エドナ | ……間違いないわ。これは……お兄ちゃんの……。 |
| ライフィセット | だとしたらたぶんこの大陸にいる筈なんだ。 |
| エドナ | ……わかったわ。ワタシは旅に同行するついでに他の大陸を当たってみる。何か手がかりを見つけたら共有するわ。 |
| ライフィセット | うん。頼んだよ。 |
| エドナ | ……お兄ちゃん。 |