| Character | 1話【救世軍アジト】 |
| マーク | ――お前、何考えてるんだ。俺たちの目的が何かわかってるのかよ。 |
| ファントム | 彼らの計画を邪魔すること。つまり具現化の阻止でしょう ? あなたごときに言われなくても、重々承知していますよ。 |
| マーク | なら、何でお前は勝手に予定外の具現化なんかしてやがるんだ ! |
| ファントム | 計画をより良い方向に進めるためです。それ以上でも以下でもありません。 |
| マーク | それが勝手だって言ってんだよ。そもそもあいつの目的は―― |
| ファントム | こんなくだらない論争をするために私を呼び出したんですか ?あなたは本当に暇なんですねぇ。 |
| ファントム | 私にはやらなければならないことが山ほどあるんです。これで失礼しますよ。 |
| マーク | ……チッ、こうなりゃ決行するしかねえな。 |
| マーク | ――それじゃあフィルの件調査を進めてくれ。ファントムには絶対に気取られるなよ。 |
| ? ? ? | 大丈夫大丈夫、信用しろって。俺はできる男だぜ ?んじゃ、行ってくるわ。 |
| マーク | チェスター。お前には『あっち』を任せるからな。 |
| チェスター | ……。 |
| マーク | なんだよ、不満そうだな。そんなに嫌かね、この仕事は。 |
| チェスター | ……喜んでやるような仕事じゃねえだろ。 |
| マーク | ま、お前の性格じゃそうなるか。曲がったことは嫌いってツラだ。 |
| チェスター | ああ、そうだな。こんな任務、嫌になって途中で放り出すかもしれないぜ ? |
| マーク | 任務を放り出す、ねぇ。そういう無責任なことも嫌がるタイプに見えるけどな。 |
| チェスター | ……うるせぇよ。 |
| マーク | ハハッ、お前のそういう性格を見込んで頼んでるんだ。 |
| マーク | それに、さっきのアイツみたいに「信用しろ」なんて主張する奴よりはよっぽど信用できる。 |
| チェスター | ……こんな面倒な手を使わないでお前が直接やりあったらどうなんだよ ? |
| マーク | それができりゃ……苦労はしねぇんだよな……。 |
| チェスター | …… ? |
| マーク | とにかく、俺たちの計画が上手くいけばお前の望みが叶うのもそう遠い話じゃなくなると思うぜ ? |
| マーク | 会いたいんだろ、妹のアミィに。そのためにここにいる。――違うか ? |
| チェスター | ……約束は守ってくれるんだろうな。 |
| マーク | 当然だ。そもそも俺たちの目的は『そこ』にあるんだからな。 |
| Character | 2話【11-1 モリスン街道1】 |
| リフィル | ――古城……って私が連れていかれた、あの場所 ? |
| イクス | はい。もう一度、あの古城に行ってみるべきだと思うんです。 |
| イクス | マークは、ファントムがあの場所を実験場として使うつもりだと言ってました。 |
| イクス | これ以上、無茶な具現化をさせないためにも手がかりがありそうな場所なら徹底的に探るべきじゃないかと……。 |
| ジェイド | 確かに、救世軍の動きを止めるためにも実験施設となりうる地点を叩くのは有効な手段です。 |
| ジェイド | ですが、すでに私たちに踏み込まれた場所をそのまま呑気に使っていると思いますか ? |
| イクス | ……そうですよね。やっぱり……。 |
| ジェイド | おや、そこで引いてしまうんですね。もっと食いついてくれなくては。 |
| ジェイド | 熱血で押すのか、口八丁で引っかけるのか泣き落としでもするのか、色々と期待していたのですが……いやぁ、残念です。 |
| イクス | ……え ? |
| リフィル | ジェイド、真面目な提案を面白半分に茶化すのは頂けないわね。 |
| ジェイド | 茶化すだなんて。誠実だけが取り柄だった押しの弱いイクスがどれだけ成長したのか見てみたかっただけですよ。 |
| ジェイド | しかしやはり、こういったことは本職にお任せするべきでしたね。申し訳ありません、リフィル先生。 |
| リフィル | ジェイド……その笑顔はなんなのかしら。何をたくらんでるの ? |
| ジェイド | たくらむだなんてとんでもない。やはり『先生』でいるあなたの方が私の精神衛生上良いようでしてね。 |
| リフィル | …… ? |
| イクス | (あ~……遺跡モードのリフィル先生に面くらってたもんな、ジェイドさん……) |
| イクス | あの、それで古城の件は―― |
| ジェイド | ああ、これは失礼。もちろん、調べる価値はあると思います。今は少しでもあちらの動きが知りたい。 |
| ジェイド | 多少は内部を把握している分あの時に城へ踏み込んだメンバーで再度偵察する方が効率が良いでしょう。 |
| リフィル | そうね。あまり大人数でも動きにくいもの。という訳だから――聞いてるかしらロイド ! そしてコレット ! |
| ロイド | うわっ、なんでバレた ! ? |
| コレット | はあ~見つかっちゃった……。 |
| リフィル | 二人とも、立ち聞きなんてお行儀が悪いわよ。 |
| ロイド | だって、さっきイクスが難しい顔でリフィル先生を捜し回ってたからさ。なんか放っとけなくて付いてきちまった。 |
| イクス | そっか。心配してくれたんだな。ありがとうロイド、コレット ! |
| コレット | 邪魔してごめんなさい。リフィル先生。 |
| リフィル | まあ、説明の手間も省けたし今回はよしとしましょう。それじゃロイドはイクスと一緒に出発の準備をしておいて。 |
| リフィル | 何かあったらすぐに援護を送れるようこちらでも態勢を整えておきます。連絡はこまめに入れるのよ。 |
| ロイド | ああ、任せとけって。行こうぜイクス ! |
| コレット | 待ってロイド !……あのリフィル先生私も行っていいですか ? |
| リフィル | コレットも ?そうねえ……コレットが偵察……。 |
| コレット | 私飛べるし、高い壁の向こうを調べたり高い所の荷物とかとったり、後は、後はえっと……とにかく役に立ちます ! だから―― |
| ロイド | 先生、コレットのことは俺が見てるから。いいだろ ? |
| リフィル | ……わかったわ。ロイド、コレットをお願い。コレット、ロイドが無茶しないように見張っておくのよ ? |
| 二人 | はい、先生 ! |
| ジェイド | ――イクス。あなたはもっと自信を持っていいと思いますよ。 |
| イクス | え…… ? |
| ジェイド | 過去に大きな失敗をした人間は、往々にしてそれを取り返そうと焦ったり、あるいは次の一歩を踏み出すことにおびえるものです。 |
| ジェイド | あなたもその迷宮に入り込もうとしている。私はかつて、同じように迷った人間を複数知っています。 |
| ジェイド | 時には手を差し伸べず突き放したりもしました。 |
| ジェイド | まあ、ここであなたに手を差し伸べたからといって過去が変わる訳ではありませんがたまには人助けぐらいしてもいいでしょう。 |
| ロイド | 間違えたら、やり直せばいいもんな !何だ。ジェイドのこと、みんな怖い怖いって言うけど、一言多いだけでいい奴じゃん ! |
| コレット | 私もジェイドさんってやさしいなって思う。だって、誰かが嫌なことを言わないと前に進めないことってあるもの。 |
| ジェイド | はぁ……。人間性がまともなピオニーとサフィールを相手にしているようで疲れますね……。 |
| リフィル | あら、ロイドとコレットみたいな子を知っているの ? |
| ジェイド | 私の幼馴染みと下僕のことです。お気になさらず。こちらの二人の方がよほどしっかりしていますから。 |
| ジェイド | では、イクス。お土産話を期待していますよ ? |
| イクス | は、はい !ありがとうございます、ジェイドさん ! |
| Character | 3話【11-2 モリスン街道2】 |
| カーリャ | お城はこっちの方角ですね。うひゃ~、これは結構歩きそうですよ~。 |
| イクス | 仕方ないさ。ケリュケイオンで近場まで乗りつけたら救世軍に見つかるかもしれないだろ。 |
| コレット | ノイシュがいればよかったのにね。 |
| ロイド | そうだなあ。あいつならこのくらいの距離なんてことないだろうな。 |
| イクス | ノイシュって ? |
| ロイド | 俺の昔っからの相棒でさ風みたいに早く走って―― |
| ? ? ? | ギャアアアアアアッ ! ! |
| イクス | 今のは――魔物の声 ! ? |
| ロイド | 声っていうより、ありゃ断末魔だぜ !誰か戦ってるんだ ! |
| ミリーナ | この先よ、行きましょう ! |
| イクス | あの人、強い…… ! |
| ロイド | すっげえ……あっという間に片付けちまった。 |
| クレス | ――っ、まだいるのかっ ! |
| イクス | うわっ、ち、違います !俺たちは助けに入ろうと―― ! |
| クレス | 人 ! ? ……だったのか。てっきりまだ魔物が残っていたのかと……。 |
| イクス | あ……驚かせてしまってすみません。 |
| クレス | 僕のほうこそ、助けに来てくれた人に剣をむけるなんて……。本当にすまない。 |
| イクス | そんな、謝らないで下さい。それに俺、結局助けも何もしてないし……。 |
| クレス | いや、そんなことは ! |
| イクス | いやいやそんな ! |
| ミリーナ | うふふ、二人とも真面目なのね。 |
| ロイド | 状況がわからなかったんだしここはお互い様ってことでいいんじゃないか ? |
| クレス | そうだね。それにお礼がまだだった。心配して来てくれてありがとう。 |
| クレス | 僕はクレス・アルベイン。君たちはこの辺りの人 ? |
| イクス | いや、旅の途中……かな。俺はイクス。こっちはロイドとコレット。それとミリーナとカーリャ。 |
| クレス | 旅の人……。それじゃ城のことは知らないか……。 |
| イクス | 城って、この先にある古い城のことか ? |
| クレス | 知ってるのか ! ? もしかして君たちはそこの関係者じゃ―― |
| ロイド | いや、えっと……関係者じゃないんだけど関係あるっていうか……。 |
| コレット | 私たち、お城の様子を調べに行くの。 |
| イクス | コレット ! ? |
| ロイド | 駄目だろ、コレット !もしクレスが敵だったらどうするんだよ ! |
| コレット | そうかもだけど謝りあいっこしてすごくいい人みたいだよ ? |
| イクス | それはまぁ、そうかも知れないけど……。 |
| カーリャ | いい人か悪い人かはともかくカーリャはぶるぶる来てますよ ! |
| ミリーナ | あ……もしかしてクレスさんも鏡映点ってこと ! ? |
| ロイド | へ ! ? じゃあまたどこかで島が具現化されたのか ! ? |
| イクス | いや、そういう話は聞かないからはぐれ鏡映点かもしれない。 |
| クレス | はぐれ……きょうえい……え ? |
| クレス | ちょっと待ってくれ。僕には、きょうえいてんとか……よくわからないよ。 |
| クレス | 君たちはあの城と敵対する立場なのかい ?だとしたら少なくとも敵ではないと思うよ。 |
| クレス | 僕があの城に行くのはさらわれたのかもしれない親友がいる可能性があるからなんだ。 |
| イクス | さらわれた ? 詳しく話してくれないか。 |
| クレス | いいけど……今は少しでも早く先に進みたい。目的地が同じなら歩きながら説明してもいいかな。 |
| クレス | それと、君たちの話も聞かせて欲しい。変に思われるかもしれないけど、正直僕はここがどこかもよくわかってないんだ。 |
| クレス | 今の自分の状況を、ちゃんと知りたい。 |
| イクス | ……わかった。俺もクレスに説明――いや言わなきゃいけないことがある。一緒に行こう。 |
| Character | 4話【11-3 モリスン街道3】 |
| クレス | ……異世界か。どうりで、今がアセリア歴何年か街の人に聞いてもわからない訳だ。 |
| クレス | また過去か未来に飛ばされたのかと思ってたけどそうじゃなかったんだな……。 |
| カーリャ | 過去とか未来とか……なんかさらっとすごいこと言ってますね。クレスさま。 |
| ミリーナ | ええ。時間を跳躍して旅をしていたってことだもんね。 |
| クレス | なあイクス、本来の世界での僕は今どうなってるんだろう。 |
| クレス | 僕は仲間と敵の本拠地に乗り込んでいた。でも、その辺りから記憶が曖昧で……。 |
| イクス | 無責任だけど、断定したことはいえない。でも『クレス』は今も仲間たちと戦い続けていると思う。 |
| クレス | そうか……みんなと一緒なんだな。そうだ ! ダオスは――僕の敵もこの世界に来ている可能性はあるのか ? |
| イクス | それもはっきりとはわからないんだ……。今はまだ、それらしい奴はいないとしか……。 |
| クレス | …………。 |
| イクス | ごめん……クレス。不本意だよな。自分の世界を救うために戦っていたのに俺たちの都合で巻き込まれたんだから。 |
| イクス | 俺たちがどんなに傲慢なことをしているか分かってる。具現化された人たちの気持ちやその立場が、とても複雑だってことも。 |
| イクス | そんな当たり前のことに、最近ようやく気が付いたんだ。クレスと同じように具現化された人に諭されてさ。 |
| ロイド | ……。 |
| イクス | その上、協力してくれなんて言われても納得できないかもしれないけど―― |
| クレス | ……イクスたちの具現化は避けられないことなんだろう ? |
| イクス | うん……今は訳あって止めているけど実質的にはこれしかない状況なんだ。 |
| イクス | それに、最初はこの役目を義務みたいに感じてたけど、今は俺自身も世界を救いたいって、強く望んでる。 |
| イクス | クレスや、鏡映点の人たちの想いや存在を無駄にしないためにも、……絶対に成し遂げたいんだ。 |
| クレス | そうか。じゃあ、これからもよろしく ! |
| イクス | え、そんな簡単に……クレス、いいのか ? |
| クレス | うん、イクスの決意が聞けたからね。僕たちがここに具現化されたことが無駄じゃないって思えた。 |
| クレス | それにさ……『――生きてるうちは色々あるさ。あんまり気にすんなよ』 |
| ロイド | お、なんか急にくだけたな。 |
| クレス | 今のは、僕の親友の受け売りなんだ。 |
| イクス | 親友って、もしかしてさっき、さらわれたって言ってた ? |
| クレス | ああ。チェスターって言って同じ村で育った幼馴染みでさ。 |
| クレス | 僕たちの村が襲われて身を寄せた叔父にも裏切られて……そんな時、そう言って慰めてくれた。 |
| ロイド | 村の襲撃に、身内の裏切り……か。それって……辛いよな。 |
| コレット | ……ロイド。うん……そだね。 |
| クレス | ……ロイドもコレットも、色々あったんだね。 |
| ロイド | ……生きてるうちは色々ある、か。うん、なんてことない言葉だけどいいこと言うよな、そいつ ! |
| クレス | ああ。そして、その色々の末に僕はダオスを追い詰める所まで来られた。 |
| クレス | だからさ、気にして立ち止まっているよりは前に進んで、やれることをやらないと。 |
| イクス | ……クレスは本当に強いんだな。力だけじゃなく心も。 |
| ロイド | ああ、色々って……口にするのは簡単だけどそうやって自分で納得できるところまで消化するのって、本当はキツいもんな。 |
| ロイド | それができてるクレスはすげー格好いいし決意したイクスもすげー格好いいぜ。俺も負けてられないな。 |
| イクス | あ、ありがとう……ロイド。 |
| クレス | まいったな。そんな風に言われるとは思わなかったよ。 |
| コレット | ふふ、ロイドっていつもこうなの。 |
| コレット | あ、でも、ロイドだって格好いいよ ? |
| ロイド | へへ、ありがとな、コレット。でもこれからは、いい人だからってすぐ作戦のこと喋っちゃ駄目だぞ。 |
| クレス | なあ、ロイド、イクス。コレットのことあまり怒らないであげてほしい。 |
| クレス | 彼女の言葉がなかったら詳しい話をしないまま君たちと別れていたかも知れない。 |
| イクス | そういえばそうだな。コレット、ありがとう。 |
| コレット | ううん。私こそごめんなさい。これからは気をつけるね ! |
| カーリャ | うっ、まぶしい…… ! ロイドさまもクレスさまもイクスさまもコレットさまも善人オーラがビカビカ出てますよ ! ? |
| ミリーナ | 本当ね。きっとチェスターさんって人も凄くいい人なんでしょうね ! |
| クレス | ああ、チェスターはいい奴だよ。僕が保証する。 |
| カーリャ | 俄然やる気が出てきましたよ。必ずチェスターさまを見つけましょう ! |
| Character | 5話【11-4 モリスン街道4】 |
| イクス | ――金髪の少年と怪し気な男たち……か。そいつらがチェスターさんを連れ去ったっていうのは確かなのか ? |
| クレス | ああ。街の人の話では、長い髪を一つに束ねた弓使いが、そいつらに絡まれてたらしい。……チェスターの特徴と似てるんだ。 |
| クレス | もっともイクスたちの話を聞く限りだとチェスターが具現化されているとは限らないんだよね。 |
| イクス | いや、世界を変える力がある人たちが鏡映点になるんだから、クレスの仲間なら鏡映点として具現化されている可能性は高い筈だよ。 |
| イクス | 特にこの大陸が具現化された時は色々と問題があったからいつもと違うことが起きていたんだ。 |
| イクス | ロイドたちと一緒に、他の世界の鏡映点が具現化されていた可能性は十分考えられる。 |
| ミリーナ | ……ねぇ、チェスターさんがさらわれた後クレスさんも狙われたりしなかったの ? |
| クレス | うーん、ないな。魔物と戦ったくらいだよ。 |
| イクス | 同じ鏡映点であるクレスの存在に気が付かなかったのかそれともチェスターさんを最優先で確保する理由があったのか……。 |
| ミリーナ | とすると、チェスターさんは特異鏡映点なのかもしれないわね。だから有無を言わさずに連れていかれたのかも。 |
| ミリーナ | クレスさんたちは時空転移をしていたみたいだから可能性は高いと思う。 |
| ロイド | もしそうなら、あの妙なのをくっつけられちまうんじゃないか ?アン……ドーナツ、みたいな……。 |
| ミリーナ | ふふ、アンチ・ミラージュブレスよ。だったら確かに急がないといけないわね。 |
| クレス | アンチ・ミラージュブレスっていうのは何かまずいものなのか ? |
| イクス | ……うん、長く身につけていると体に害が及ぶらしい。 |
| クレス | なんだって ?くそっ、チェスターにそんなものつけさせてたまるか ! ! |
| カーリャ | びっ、びっくりしたっ !クレスさまでも、そんな風に怒鳴るんですね。 |
| クレス | あ……ごめんよカーリャ。驚かせちゃって。 |
| ロイド | クレスが熱くなるのも仕方ねえよ。友達がピンチなんだからな。しかも親友で幼馴染みだろ ? |
| コレット | そだね。私もロイドやジーニアスに何かあったらって思うといてもたってもいられないもん。 |
| クレス | ロイドとコレットも幼馴染みなのか。もしかして、イクスとミリーナも ? |
| イクス | ああ。それとフィルって奴を加えて三人で遊んだよな。 |
| ミリーナ | ええ、懐かしいわ。 |
| イクス | フィルは遠くに引っ越したから、一年に一度くらいしか会えなかったけど、大事な幼馴染みなんだ。 |
| イクス | あいつには迷惑もかけたけどまた、みんなで会えたらなって思うよ……。 |
| ミリーナ | ……そうね。 |
| ロイド | みんなで会えたら――か。ジーニアスもどうしてんのかなあ。向こうの俺に、美味い飯作ってくれてるのかな。 |
| コレット | 料理上手だもんね、ジーニアス。誕生日にジーニアスからもらったクッキーもすっごく美味しかったもん。 |
| イクス | へえ、幼馴染みのジーニアスってそんなに器用なのか。 |
| ロイド | ああ、リフィル先生の弟でさ。俺より年下だけど、頭もすげえいいんだぜ。 |
| ミリーナ | リフィルさんに弟 ?うわあ、可愛いんだろうなあ。 |
| カーリャ | ミリーナさま、想像だけでうっとりして……。そういえばクレスさまは、ご兄弟っているんですか ? |
| クレス | 僕はひとりっ子なんだ。けどチェスターにはアミィちゃんっていう妹がいてさ。料理上手で可愛い子だった。 |
| イクス | 【だった】って…… ? |
| クレス | あ……いや、僕の村が襲われた時に……ね……。 |
| イクス | ……そうか。 |
| クレス | あいつの家族は妹だけだったから大事にしてたよ。僕と一緒に戦ってたのもアミィちゃんの仇を討つためだったんだ。 |
| クレス | だから、この世界ではダオスがいないかもしれないと知ったら……そう思うと心配なんだよな。 |
| イクス | ……だとすると、チェスターさんに俺たちの話受け入れてもらえるかな。 |
| クレス | 大丈夫だよ。僕に説明してくれたようにきちんと話せばわかってくれるさ。 |
| ロイド | そうそう。クレスの親友ならチェスターもきっと真面目でいい奴だって ! |
| クレス | ……う~ん真面目……真面目なのかなあ ?あいつ、女風呂を覗こうとしたことあるしそういう所は違うような……。 |
| ロイド | ――え……。 |
| コレット | お風呂を…………。……………………。 |
| ロイド | な、何でこっちを見るんだよ !何度も言うけど、俺のは誤解なんだからな。 |
| クレス | ロイドも覗こうとしてたのか ?チェスターと気が合いそうだな。 |
| コレット | ……ロイド、本当に違うんだよね ? |
| ロイド | 頼むクレス、話題を変えてくれ ! |
| クレス | え、話題っていわれても……よし。もうすぐ城も近いしイクス、張り切ってイクッスよ ! |
| イクス | えっ ? |
| ロイド | ……。 |
| クレス | ……あ、はは。その…… |
| カーリャ | ……やはりクレスさまもただの真面目系爽やか鏡映点じゃなかったんですね……。 |
| ミリーナ | イクス……イクッス……行くっす ? |
| カーリャ | ミリーナさま、まさか今気が付いた…… ? |
| ミリーナ | なるほど ! 凄いわ、クレスさん !もっと言ってクレッス ?な~んちゃって♪ |
| コレット | すごいよ、ミリーナ !そういうのを白いわんちゃんって言うんだよね ? |
| 三人 | 尾も白い ! |
| クレス | 二人ともさすがだね !これは僕も腕を磨かなくちゃ ! |
| カーリャ | も、盛り上がってる…… ?時代は今、親父ギャグウェーブなんですか ? |
| イクス | いや、あれはないと思う……。 |
| ロイド | だよなぁ……。 |
| カーリャ | せっかくの善人オーラがしおしおですよぉ。 |
| Character | 6話【11-7 デミテル洞窟 入口】 |
| コレット | あれが目的地のお城 ?見張りっぽい人がたくさんいるね。 |
| イクス | ……前とは比べものにならないくらい警戒度合が増してるな。やっぱりジェイドさんが言った通りか……。 |
| ロイド | こりゃ偵察するどころか近づくのもヤバそうだぜ。 |
| イクス | チェスターさんのことも捜さなきゃいけないのにこれじゃ……。 |
| クレス | ……やっぱり似てる。 |
| イクス | クレス、どうしたんだ ? |
| クレス | この城、僕たちが踏み込んだ敵の城に似てるんだ。まったく同じって訳じゃないけどね。 |
| イクス | 確か……ダオス城って言ってたっけ ? |
| クレス | ああ。隠し通路があったり鏡の中に入れたり……迷路みたいな所さ。 |
| クレス | もし見た目だけじゃなくて城の造りまで似てるとしたら、隠し通路みたいなものもあるのかもしれない。 |
| イクス | それならこの辺りを探してみよう。目立たないようにな。 |
| イクス | ……はぁ、やっぱ簡単には見つからないか。 |
| ロイド | 前みたいに、コレットのドジで道が開けて……みたいなことないかなぁ。 |
| コレット | 好きで失敗しちゃう訳じゃないんだよ ? |
| ミリーナ | でもその失敗が幸運を呼ぶなんてコレットってきっと幸運の女神様に愛されてるのね。私も愛しちゃう ! |
| コレット | ううん。今日はちゃんと自分の力で役に立ちたいの ! |
| コレット | あ、高いところから見渡したら何かわからないかな ?私、ちょっとやってみるね ! |
| イクス | あ、コレット待っ―― |
| コレット | どこかに……抜け道は……。 |
| 警備兵 | ――おい、あれ ! 人が浮かんでるぞ ! ? |
| 警備兵 | はぁ ? 何言って――あ ! |
| ロイド | やべっ ! コレット下りて来い ! |
| コレット | 待って ! 何かあそこ……岩の隙間に……洞窟――かな ? |
| クレス | 洞窟 ? ……コレット ! どっちの方角だ ! ? |
| コレット | この先まっすぐ ! 大きい岩に突き当たったら右に回り込んで ! |
| イクス | クレス、その洞窟って―― |
| クレス | 見張りがこない内に行くぞ。 |
| イクス | 本当だ、こんな所に洞窟が……。 |
| ミリーナ | 草も茂ってるし、私たちの目線からじゃ穴があるなんてわからないわね。 |
| クレス | それにしてもすごいな。羽なんて……。 |
| コレット | えへへ、役に立ったかな ? |
| ロイド | コレット、ごめんな。幸運とかそんなの関係ないよな。自分ができることをやらなきゃだよな。 |
| コレット | だいじょぶ。ロイドもみんなもいつだってそうやってると思うし、だから私も頑張りたかっただけだから。 |
| カーリャ | おおお、またビッカビカの善人オーラが ! |
| クレス | うん。ありがとう、コレット。僕もチェスターを見つけるために頑張るよ。 |
| イクス | なあクレス、この洞窟が抜け道なのか ? |
| クレス | ……見た感じは違うけどダオスの城に行くときにも、洞窟を通って行ったんだ。もしかしたらと思って。 |
| ロイド | どうせ他に手掛かりはないんだ。行ってみようぜ ! |
| Character | 7話【11-9 デミテル洞窟 深部】 |
| カーリャ | 結構深い洞窟ですねぇ……。そろそろ城の入口的なモノが欲しいところですけど。 |
| ミリーナ | 気をぬいちゃだめよ。それとカーリャは鏡映点――チェスターさんの気配を感じたら教えて。 |
| カーリャ | う~ん、鏡映点の気配っていってもあんまり遠くじゃわからないかもですよ。 |
| カーリャ | まだ鏡映点と光魔の感じ方もそれほど区別できてないですし……。 |
| ミリーナ | そっか……。カーリャも――いえ私もまだまだ修行をしなきゃいけないわね。 |
| カーリャ | そうですね。イクスさまを見習わないと。 |
| イクス | え、なんで…… ? |
| カーリャ | 知ってますよ~ ? 夜な夜な一人で【創造の魔鏡術】を練習していること。 |
| イクス | カーリャが知ってるってことは……ミリーナも ? |
| ミリーナ | のぞき見するつもりじゃなかったんだけどごめんね ? |
| イクス | 謝ることじゃないよ。なかなか上手くいかなくて、人前で修行するのが恥ずかしかっただけだから。 |
| クレス | イクス、創造の魔鏡術ってなんだい ? |
| イクス | 色んな物をゼロから実体化させる術って言えばいいかな。俺の家系が得意とする術なんだ。 |
| イクス | 鏡士として成長するなら使いこなせなきゃいけないんだけど…… |
| イクス | 昔……、術を暴走させたあげくミリーナを傷つけたんだ……それ以来、使うのが怖くなって……。 |
| クレス | それを今、練習してるのか ? |
| イクス | ああ。このままじゃ、大事な人も守れなくなる。実際に戦うようになって思い知ったよ。 |
| イクス | それにさ、鏡映点の人たちと出会って大事なことをたくさん教えられたから。 |
| イクス | だから今、必死で修行してるんだ。ようやく少しだけ使えるようになったよ。まだまだだけどさ。 |
| クレス | 必死に修行か……。イクスのそういう所なんかチェスターと似てるな。 |
| イクス | 俺とチェスターさんが ? |
| クレス | ああ、僕は時間を超えて旅をしたって言っただろ ?その時、チェスターとの力の差が開いてしまったことがあったんだ。 |
| クレス | それを仲間のアーチェって子がズバっと言っちゃってさ。まあ、アーチェとしてはからかっただけなんだろうけどね。 |
| クレス | そうしたらあいつ、夜中に一人で必死に訓練してて。さっきのイクスの話と似てるだろ ? |
| クレス | ……まあ、あいつが夜中に起きてたのは別の理由もあったんだけどさ。とにかく、みるみるうちに強くなった。 |
| クレス | 僕が過去で積み重ねた時間がなければ追い越されてたかもしれないって思うよ。それくらい努力家なんだ、あいつ。 |
| イクス | すごいな。俺もそんな風に、強くなれるといいんだけど。 |
| ロイド | それにしても、すげぇな。クレスの剣――エターナルソード。本当に時間を跳べるんだな。 |
| コレット | でも不思議だね。私たちの世界にも同じ名前の剣があるんだよ。 |
| クレス | え ? ロイドたちの世界のエターナルソードって言うのは…… ? |
| ロイド | 俺たちの世界には精霊がいてオリジンって精霊がハーフエルフのために作った剣なんだよ。 |
| クレス | 僕たちの世界とはちょっと違うんだね。オリジンが作ったって言うのはこっちも同じだけど。 |
| ミリーナ | もしかしたらカレイドスコープが具現化する世界は異世界同士の時空の距離が比較的近いところなのかも知れないわね。 |
| ミリーナ | 確かアイフリードって人も、色んな世界に存在しているみたいだったし。 |
| クレス | アイフリード ? アイフリードなら僕たちの世界にもいるよ ! |
| ロイド | ええ ! ?なんかすげぇな、アイフリードって。 |
| ロイド | 今度クレスたちの世界の話も色々聞かせてくれよ。他にも俺たちの世界と似てるところがあるかも知れないし。 |
| クレス | そうだね。僕もロイドたちの世界のことを聞いてみたいよ。 |
| イクス | ――シッ、静かに。みんな、あれを見てくれ。 |
| クレス | 魔物か……。ダオス城にいた奴とは違うけどでもあいつの後ろに見えるのは……。 |
| ロイド | ああ。城への入り口っぽいよな ! |
| イクス | ……入るためには戦うしかないな。 |
| クレス | ああ。みんな、行こう ! |
| Character | 8話【11-9 デミテル洞窟 深部】 |
| イクス | ハァ……ハァ……。結構やっかいだったな。 |
| ロイド | クレスって見た目よりずっとタフだよな。全然疲れた感じがしねえし。 |
| イクス | そういうロイドもな。 |
| クレス | イクス、聞いてもいいかい ?この城は僕の世界のダオス城を模したものなんだろう ? |
| イクス | クレスが見覚えあるっていうならそうなんだと思う。鏡映点の記憶や感情が具現化に影響するから。 |
| クレス | ……さっきも話した通りダオス城には色んな仕掛けがあるんだ。 |
| クレス | もしここにも同じような仕掛けがあるなら全員で先に進むのは難しいかもしれない。 |
| イクス | なんだよそれ……そんなにやっかいなのか ? |
| クレス | ああ。ダオスの城では、デリスエンブレムがないと踏み込んだ途端、別の場所に転送されて城の奥に入れないんだ。 |
| コレット | 待って。奥から人の声がする。 |
| ? ? ? | 貴様っ、大人しくそれを渡せ ! |
| ? ? ? | 抵抗するなら容赦はしないぞ ! |
| ミリーナ | 本当だわ。この声……城の中からよね ? |
| ? ? ? | 抵抗なんてするに決まってんだろ。黙って捕まるなら最初から逃げねえっての ! |
| クレス | 今の声、チェスターだ ! |
| イクス | 何だって ! ?それじゃやっぱりここに―― |
| ? ? ? | 援軍を呼べ ! 裏切者を取り押さえろ ! |
| チェスター | くそっ、そこどけよ !お前らに用はねえんだ ! |
| クレス | ……僕はチェスターを助けに行く。イクスたちは城の偵察の方に集中してくれ ! |
| イクス | 待ってくれクレス ! |
| ロイド | ……なあイクス偵察はいったん置いといていいよな。あいつ一人で行かせられねぇよ。 |
| イクス | ああ、俺たちも行こう。クレスとチェスターさんを助けないと ! |
| ロイド | ヘヘ、そうこなくっちゃ。 |
| クレス | チェスター ! |
| チェスター | ――クレス ! ? |
| クレス | 大丈夫か、チェスター ! |
| チェスター | お前、なんでここに ! ? |
| クレス | お前を助けに来たに決まってるだろう ! |
| 兵士 | ……面倒だ、一緒にくたばれ ! |
| チェスター | クレス、かがめ ! |
| 兵士 | 何っ ! ? |
| チェスター | いまだ ! |
| クレス | はあああっ ! |
| クレス | チェスター、無事でよかった ! |
| チェスター | それより、どうしてお前がこの世界に…… ! |
| クレス | 僕も具現化されてたんだ。それよりチェスター、さらわれたんだろ ? |
| チェスター | あ……ああ……そ、そうなんだ。もしかして……オレを助けにここへ…… ? |
| クレス | あ……そうだ !変なもの付けられてないか ?アンチ・ミラージュブレスとかいう…… |
| チェスター | ……クレス、お前何いって…… ? |
| イクス | おーい、クレス ! |
| チェスター | ――あいつらは…… ! |
| クレス | イクス、来てくれたのか。僕もチェスターも無事だ ! |
| クレス | チェスター、お前を助けるために協力してくれた人たちだよ。 |
| イクス | よかった。チェスターさんと会えたん―― |
| イクス | ――何だ ! ? |
| クレス | この光はまさか ! ?イクス逃げろ、それは転移の―― ! |
| Character | 9話【11-10 怪しげな古城 通路】 |
| ミリーナ | う……ここは…… ? |
| イクス | ミリーナ、大丈夫か ? カーリャは ? |
| カーリャ | うう……ここにいますよ~。っていうか、何ですか、さっきのぐにゃ~っとした感じ。……目が回りそうでした。 |
| イクス | 光に包まれる直前クレスが転移って言ってた気がするけど……。 |
| ミリーナ | じゃあ、クレスさんが話していた踏み込むと別の場所に転送される仕掛けっていうのがこれなのね。 |
| イクス | ああ、俺たちはまんまと引っかかったって訳だ。あれほどクレスに注意されてたのに……。 |
| ミリーナ | ここには私たちしかいないのね。ロイドさんたちは――他のみんなはどうしたのかしら。 |
| イクス | 他の場所に転移してるのかもな。すぐにでも確かめたいけどこの部屋じゃ……。 |
| カーリャ | 前後左右、どこを見ても壁ですね。出口も入口も隙間もありません。 |
| イクス | 剣でどうにか壊せないかな。 |
| ミリーナ | 私も術でやってみるわ。 |
| イクス | ……駄目か。 |
| カーリャ | え~そんな ! それじゃこの密室でカーリャたちは一生……。 |
| イクス | ……創造の魔鏡術なら出入り口を創り出せるよな。 |
| ミリーナ | それは……そうだけど。でも空間を歪める程の魔鏡術は、今の私たちじゃ難しすぎるわ。 |
| ミリーナ | 大地の具現化はカレイドスコープがあるから私たちでもできるけど……。 |
| イクス | ……確かに、まだ空間を歪めるような物は創れないけど、でも例えば爆薬とかなら……。 |
| ミリーナ | 爆薬……。それは内部構造を知らないと難しいわ。それに私の血筋だと創る方の魔鏡術に関しては、まだ簡単な物しか―― |
| イクス | 俺は創る方――創造の血筋だ。 |
| ミリーナ | ……イクス。今、魔鏡術のステップは何段階目 ? |
| イクス | ……第二段階だ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| チェスター | ――こっちだ ! この辺から音がしてたぜ。 |
| イクス | ……なあ、今の聞こえたか ? |
| ミリーナ | ええ、壁の向こうから音がしたわ ! |
| クレス | おい ! 誰かそこにいるか ! ? |
| イクス | クレス……それにチェスターさんか ! ?俺だよ、イクスだ !壁のこっち側にいる ! |
| クレス | イクスか !ここに転送されていたんだな。どうだ、出られそうか ? |
| イクス | 無理なんだ。四方が壁で囲まれて壊すこともできない。クレスたちは無事なのか ? |
| クレス | 僕たちはデリスエンブレムを持ってるから大丈夫だ。壁を壊すから、ちょっと待っていてくれ。 |
| チェスター | チッ、なんだよこれ、堅すぎんだろ ! |
| クレス | クッ……びくともしない。何か仕掛けがあるのか ? |
| ミリーナ | ……イクス、一か八かやってみない ?創造の魔鏡術。イクスの最初の提案――この壁に出口を創るのよ。 |
| クレス | 創造の魔鏡術ってイクスが修行しているやつか。そうか、使う決心がついたんだな ! |
| イクス | いや、その……。簡単なものならともかく今の状況じゃ難しいと思う。 |
| イクス | 安全かつ確実に具現化するには、魔鏡の力を増幅する装置や準備が必要なんだ。もしくは魔鏡が複数あればどうにかなるけど……。 |
| イクス | 今、手元には魔鏡が一枚。この状態で術を使うと、著しく体力を消耗する。そうすると……制御できない。 |
| クレス | それは、前に話してた暴走が起きるってことか。 |
| イクス | ……ああ。こんな逃げ場のない所で暴走させたら、あの時以上に大変なことになるかもしれない。それだけは……。 |
| ミリーナ | ……ねえイクス、考えたんだけど私が制御のサポートをしつつ、術でイクスの体力を回復し続ければどうかな ? |
| イクス | それは……。確かに一人でやるよりは安定するだろうけど……。それで暴走しないとは限らないよ。 |
| ミリーナ | でも、他に手はないと思う。 |
| イクス | …………。 |
| クレス | ……イクス。ずっと術の修行していたんだろう ?コツコツ努力をして。 |
| クレス | チェスターも同じことをしてたって話したらそんな風に強くなりたいって話してくれた。 |
| チェスター | オ、オレと同じ ?お前、何を話したんだよ |
| クレス | 何って、事実をね。チェスターは努力家で強いっていうことさ。 |
| チェスター | ……事実か。そう言われちゃな。――おい ! イクスっていったっけ。 |
| チェスター | もしも力不足で二の足踏んでるならさオレが保証してやるよ。 |
| チェスター | 訓練した分だけ力はついてる。昔のお前とは違うってさ。 |
| クレス | その通りだよ。イクスは必ずできる !それともチェスターの保証だけじゃやっぱりもの足りないか ? |
| チェスター | そりゃねえだろ。オレの保証だけでも十分、確実に、必ずや、間違いなく、成功するっての ! |
| チェスター | おい聞いてるか、イクス。努力の証、ガツンと見せてやれ !ついでにオレの保証の確かさもな。 |
| イクス | ……そうだな。そこまで言ってもらってやらなかったら修行した意味がないよな ! |
| ミリーナ | イクス、それじゃ……。 |
| イクス | ああ、やるよ。 |
| イクス | それにさ、俺が修行を始めたのもベルベットさんと会って、全てを受け入れる強さを目の当たりにしたからだった。 |
| イクス | 俺も不安や恐怖にとらわれずやるべきことをやらないとな。 |
| ミリーナ | ええ。私がサポートするから、安心して術を使って。あの時約束したでしょ。イクスの支えになるって。 |
| イクス | ああ、頼んだよミリーナ。 |
| イクス | クレス、チェスターさん今から術を行使する !念のため壁から離れててくれ ! |
| イクス | (呼吸を整えて……冷静に……。体が辛くても大丈夫だ。ミリーナが癒してくれる……) |
| イクス | (絶対に――成功する ! ) |
| イクス | ……や、やった……か ? |
| ミリーナ | やったのよ、成功したのよイクス !しかも壁だけが崩れて――他に被害もないわ ! |
| クレス | すごいよイクス !完璧に制御できてるじゃないか ! |
| チェスター | ほら見ろ、オレの保証は完璧なんだって !よくやったな、イクス。 |
| イクス | ありがとう。二人の言葉に励まされたよ。 |
| クレス | 早速だけどすぐに動けるかい ?ロイドたちを捜さないと。 |
| チェスター | 多分、イクスたちと同じようにこの辺りに転送されてるんじゃねえか ?壁の中の音に気を付けながら進もうぜ。 |
| Character | 10話【11-12 怪しげな古城 隠し部屋】 |
| イクス | ――それじゃ、今度も頼んだよミリーナ。 |
| ミリーナ | ええ、任せて ! |
| ロイド | イクス、助かったぜ ! |
| コレット | すごいね ! 私も頑張って壁に体当たりしてみたんだけど、全然壊れなくて……。転んだときと何が違うのかなぁ ? |
| ロイド | いきなり壁に突っ込んでいくから止める間もなかったよ……。 |
| ミリーナ | 体当たりって……怪我してない ?コレットみたいな華奢な体でそんな無茶したらだめだからね。 |
| コレット | うん、心配してくれてありがとミリーナ。なるべく気を付けるね ! |
| ロイド | ……なるべくってところがコレットだよなぁ。 |
| ミリーナ | 限りなく心配だわ……。 |
| クレス | ロイド、コレット、無事でよかった。怪我はないか ? |
| ロイド | ああ、ピンピンしてるぜ !えっと……そっちがチェスターだよな。 |
| チェスター | ああ、クレスが世話に――っていうかオレのことを助けるのに、協力してくれたんだって ? ありがとな。 |
| ロイド | いいっていいって。それにしてもよくあいつらの所から逃げられたな。 |
| クレス | さっき聞いたんだけどチェスターはしばらく救世軍側にいたんだってさ。 |
| チェスター | ああ、無理やりつれてこられて世界を救うから協力しろとか言われてさ。 |
| チェスター | だからこの世界のことや具現化の話も大体は聞いてるよ。ダオスがいないかもってこともな。 |
| チェスター | けどやっぱりなんか……納得できなくてさ。――んで、奴らの目を盗んで逃げて来たって訳だ。 |
| ロイド | だからあいつらに裏切者って言われてたのか。 |
| チェスター | まあ、それもあるけどな。あいつらへの意趣返しってことでこいつを持って来たらバレちまった。 |
| クレス | 何かの……設計図 ? |
| ロイド | うわ~……見てるだけで目が回りそうな細かさだな。 |
| ミリーナ | ちょっと待って、これ……ところどころに具現化の術式が書かれてる。すごい……。 |
| チェスター | なんだよ、そんなに大したもんなのか ?適当に失敬してきただけだぜ ? |
| ミリーナ | イクス、見て。この辺りとか……ほら ! |
| イクス | ……ああ、本当だ。もしかしたら……ファントムが研究してる装置……かも……。 |
| ミリーナ | ……イクス、立て続けの具現化で体力の回復が追いつかないんじゃない ? |
| イクス | いや、少し休めば大丈夫だ。この程度で済んでるのは、ミリーナのおかげだよ。 |
| クレス | ……イクス、一度この城を出よう。どっちにしろ、デリスエンブレムは僕とチェスターしか持ってない。 |
| クレス | あの転移装置が起動している以上、残念だけどイクスたちは城の奥へ入れないよ。 |
| イクス | ……わかった。一旦ケリュケイオンに戻ろう。 |
| イクス | デリス・エンブレムの対策も練りたいしクレスとチェスターさんも、一緒に来てもらっていいかな ? |
| クレス | もちろん !いいよな、チェスター。 |
| チェスター | あ、ああ……。世話になるぜ。 |
| クレス | ………… ? |
| Character | 11話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
| クレス | イクス、体はどうだい ? |
| イクス | ああ、もう大丈夫だ。帰ったらすぐにでも修行したいよ。ミリーナの助けがなくても制御できるようにならないとな。 |
| チェスター | ハハッ、修行大好きかよ。クレスみたいだな。 |
| イクス | クレスには、チェスターさんみたいだって言われたけど。 |
| チェスター | じゃあ、オレとクレスのいいとこ取りってことにしておけ。……そうだな。オレ的にそのいい所ってのを説明すると…… |
| チェスター | ――過去、現代、未来を渡り、勇者はついに異世界へと降り立った。その名はクレス !彼はこの地に至っても未だ努力を怠らない。 |
| チェスター | その英雄の傍らに立つのは、厳しい特訓の末に大いなる弓の力を手に入れた親友。彼の放つ矢は、研鑽の煌めきをまとうのだった ! |
| チェスター | そんな彼らに憧憬のまなざしを送る鏡士の少年は―― |
| クレス | チェスター……その大げさなナレーションまだやってるのか……。イクスが固まってるぞ。 |
| チェスター | なんだよ、せっかく乗って来たのに。 |
| ロイド | ……チェスター、お前すげえ難しい話し方するんだな。途中から何言ってるかわかんなかったぜ……。 |
| チェスター | そうか ? じゃあ、もっとわかりやすく―― |
| ミリーナ | ふふ、一気に賑やかになったわね。でももうすぐ出口よ。そろそろ外の警備兵にも気を付けないと。 |
| ? ? ? | 忠告が遅かったようだな。 |
| イクス | ――誰だ ! |
| リヒター | 今はお前に用はない。……チェスター、人の物をとってはいけないと教育されなかったか ? |
| チェスター | ……チッ。リヒターかよ……。 |
| リヒター | 設計図を返してもらおう。 |
| ロイド | おっと、そうはいかないぜ。お前らがこの設計図でヤバイことしてるならなおさらな ! |
| リヒター | ……ロイド・アーヴィング。それに……神子も一緒か。またお前たちが俺の邪魔をするんだな。 |
| ロイド | 何のことだ ? |
| リヒター | ……別に。未来のお前に借りがあるだけだ。 |
| ロイド | 未来の……俺 ? それは一体……。 |
| リヒター | 鏡映点であるお前たちには関係のない話だ。ましてや、ラタトスクがいないこの世界ではお前と争うこともないと思っていたが……。 |
| チェスター | 隙ありだぜ ! |
| リヒター | くっ…… ! |
| ミリーナ | 今よ ! |
| クレス | くっ ! 待ち伏せされていたのか ! |
| カーリャ | これじゃあ挟み撃ちですよ ! ? |
| イクス | ミリーナ ! 想いの……想像の魔鏡術であの男を―― |
| ミリーナ | 幻で足を止めるのね。任せて ! |
| ロイド | 俺たちは目の前の連中を叩くぞ ! |
| Character | 12話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
| リタ | ……で、この術式を組みこんで……。魔鏡はここに……か。ふ~ん……。 |
| ジェイド | ガロウズにも先ほど見てもらいましたがリタ、あなたはどう思います ? |
| リタ | うっさいな、黙ってて !めんどくさい仕組みと設計なんだから ! |
| ジェイド | これは失礼。どうにも天才の扱いにはなれなくて。 |
| リタ | 決めた。いつかその眼鏡割るわ。――まあ、それはともかく。間違いなく具現化装置の一種だとは思う。 |
| リタ | けど、これを設計した奴、妙なこだわりっていうか趣味みたいなもんが溢れてて……読み解くの……ホント面倒。 |
| ジェイド | そこは同感ですね。その設計図には、どこか執着心さえ感じる。 |
| リタ | ねえこれ、しばらく借りられない ?ていうか借りるから。 |
| ジェイド | ええ、構いませんよ。ただし、他の皆さんの意見も必要ですからちゃんと返して下さいね。 |
| リタ | わかってるっての。集中したいから一人で静かに見たいだけ。 |
| ジェイド | 改めて皆さん、ご苦労様でした。期待以上のお土産でしたよ。やればできる子ですね、イクス ! |
| イクス | いや、それはチェスターさんのおかげですから。 |
| チェスター | ずっと気になってたんだけどよ。そのチェスターさんってのはやめてくれチェスターでいいよ。 |
| イクス | わかった。ありがとう、チェスター ! |
| リフィル | クレス、チェスターあなたたちの協力に感謝します。おかげで重要な情報が手に入ったわ。 |
| クレス | いえ僕の方こそ、イクスたちには友人を助ける手伝いをしてもらったんです。お礼をいうのは僕たちですよ。 |
| リフィル | お互いに助け合えたのなら何よりね。それで、あなたたちはこれからどうするの ? |
| クレス | 鏡映点の人たちはみんな、この世界のために協力してるんですよね。 |
| リフィル | そうだけど、協力するかしないか選ぶのはあなたたちの自由よ。イクスたちも強要はしない筈だわ。 |
| イクス | ああ。もちろんできればお願いしたいけどそれぞれの考え方があるからそれを尊重したいと思ってる。 |
| クレス | ならもう決まってるよ。僕はイクスたちに協力する。 |
| チェスター | ……おいクレス、そんなすぐに決めなくてもいいんじゃないか ? |
| チェスター | 一旦、どこかに落ち着いてさそれからでも遅くないって。 |
| クレス | そういうチェスターはどうするんだよ。 |
| チェスター | 俺はほら、救世軍ともめたわけだし……ここで協力しながら世話になるのがいいかなって考えてるけど……。 |
| チェスター | お前は違うだろ ?俺のせいで巻き込んじまっただけでさ。だから―― |
| クレス | お前がイクスたちに協力する意思があるなら僕だってそうするよ。これからも一緒に戦おう、チェスター ! |
| チェスター | ――そうか。わかったよ。 |
| クレス | イクス、これからもよろしくな。 |
| イクス | ああ、頼りにしてるよ。 |
| リフィル | それじゃイクス二人のことは頼んだわね。 |
| ミリーナ | そういえばうっかり聞きそびれてたんだけど結局チェスターさんは特異鏡映点じゃなかったのよね ? |
| チェスター | え ? ああ、そうらしいな。最初は特異鏡映点だと思われてたみたいだけど、よく調べたら違ってたって言われたからな。 |
| チェスター | まあ、だからこそ監視の目もなかったし簡単にあそこからおさらばできたってわけだ。 |
| ミリーナ | そうだったのね。アンチ・ミラージュブレスのことでクレスさんには余計な心配させちゃったわ。 |
| チェスター | みたいだな。とりあえず何の問題もなしだ。これからもよろしく頼むぜ。イクス、ミリーナ ! |
| イクス | ああ ! よし、それじゃ後で艦内を案内するよ。ここで少し待っててくれ。 |
| チェスター | わかった。楽しみにしてるぜ ! |
| チェスター | ……。 |
| クレス | なあチェスター……。何か悩んでることがあるならちゃんと相談してくれよ。 |
| チェスター | なんだよ、藪から棒に。 |
| クレス | いつもなら率先して「一緒に戦おう」って言ってくれるはずだろ ?さっきのといい、チェスターらしくない。 |
| チェスター | それは……その、ほら、お前があんまりにも簡単に決めたように見えたからさ。ちゃんと考えろって促してやったんだよ。 |
| クレス | ……それだけか ? |
| チェスター | そうだよ。お前って結構、貧乏クジ引くタイプだからな。……ったく、人が心配してやってんのに「らしくない」とはなあ。 |
| クレス | いやだって、お前こそ思い詰めるタイプだからさ……何かあるのかって思ったんだよ。ほら、あの時だってそうだったろ。 |
| クレス | 村の人たちやアミィちゃん村が襲われた時のことを考えると眠れなくなるって……。 |
| チェスター | ……あれは、仕方ないだろ。簡単に忘れられるもんじゃねぇんだし。でも、今は平気だぜ ? 毎晩グッスリだ。 |
| クレス | とにかく、もし何かあるならちゃんと言えよ。 |
| チェスター | はいはい、わかったわかった。 |
| イクス | 待たせたな ! それじゃ部屋のことも含めて艦内を案内するよ。 |
| チェスター | ほら、行こうぜ !さあて、風呂はあるかなぁ ?どんな感じなんだろうな ! |
| クレス | お前、またのぞく気じゃないだろうな……。 |
| チェスター | (すまねぇ、クレス……。お前もこの世界にいるなんて思わなかったんだ……。) |
| チェスター | ――くそっ ! |
| Character | 12話【11-15 デミテル洞窟 深部】 |
| ファントム | 納得のいく説明をして下さい。……それとも言い訳といった方がいいでしょうかね。 |
| マーク | だから何度も言ってるだろ ?あれが今一番有効な作戦なんだって。 |
| ファントム | 私に黙って計画し、私の実験場に潜入させあまつさえ私の設計図を持ちだしたことがですか ? |
| ファントム | あれがどれだけ価値のあるものかあなたはわかっていないようだ。 |
| マーク | ああ、そうみたいだな。すまないね。あんたよりも頭が悪いもんで。 |
| マーク | でもおかげで、手土産つきのチェスターは大歓迎されてるみたいじゃねえか。 |
| マーク | これからはあっちの情報がまるわかりだ。あんたの望んだ通りだろ。 |
| ファントム | ……あんな雑な計画で本当に怪しまれずに送り込めたとでも ? |
| ファントム | ……まあ、あなたにとってはそれでよいのでしょうね。他にも何やら考えておいでのようですから。 |
| マーク | ……。 |
| ファントム | 何にしろ、ことが動いたなら仕方がない。チェスターがどれだけやれるか私も楽しみに待つことにします。 |
| ファントム | 大事な戦力であるリヒターをわざと負傷させてまで奴らの信頼を勝ち取ったのですからね。 |
| ファントム | さぞかしよい情報を流してくれることでしょう。 |
| マーク | ……その情報があんたに行くかはまだわからねえけどな。 |
| ファントム | はぁ……いけませんよマーク。反抗的な態度もほどほどにしないと。あなたもフリーセルのようになってしまう。 |
| マーク | ……どういうことだよ。なんでフリーセルの名前が出てくる。 |
| ファントム | フリーセル……救世軍の創始者にして初代リーダー。有能と言ってもいい人物でしたねえ。 |
| ファントム | その有能さが少々邪魔でしたので始末しましたけど。 |
| マーク | お前が――やったのかよ…… ! |
| ファントム | ええ。トップを挿げ替えるにはこれが一番簡単ですから。 |
| マーク | ……。 |
| ファントム | わかって頂けましたか ? ご自分の立場を。それでは改めて申し上げましょう。 |
| ファントム | ――お前はお飾りの救世軍リーダーだ。そのことを忘れるなよ。 |
| マーク | ……っ。 |
| ファントム | それでは、私は仕事があるのでこれで。あなたのせいで新たな設計図を用意しないといけなくなりましたから。 |
| マーク | くそっ……頼むぜチェスター……。ファントムを追い詰めるためにもお前が働いてくれなきゃ困るんだ……。 |