Character1話【救世軍アジト】
マーク――お前、何考えてるんだ。俺たちの目的が何かわかってるのかよ。
ファントム彼らの計画を邪魔すること。つまり具現化の阻止でしょう ? あなたごときに言われなくても、重々承知していますよ。
マークなら、何でお前は勝手に予定外の具現化なんかしてやがるんだ !
ファントム計画をより良い方向に進めるためです。それ以上でも以下でもありません。
マークそれが勝手だって言ってんだよ。そもそもあいつの目的は――
ファントムこんなくだらない論争をするために私を呼び出したんですか ?あなたは本当に暇なんですねぇ。
ファントム私にはやらなければならないことが山ほどあるんです。これで失礼しますよ。
マーク……チッ、こうなりゃ決行するしかねえな。
マーク――それじゃあフィルの件調査を進めてくれ。ファントムには絶対に気取られるなよ。
? ? ?大丈夫大丈夫、信用しろって。俺はできる男だぜ ?んじゃ、行ってくるわ。
マークチェスター。お前には『あっち』を任せるからな。
チェスター……。
マークなんだよ、不満そうだな。そんなに嫌かね、この仕事は。
チェスター……喜んでやるような仕事じゃねえだろ。
マークま、お前の性格じゃそうなるか。曲がったことは嫌いってツラだ。
チェスターああ、そうだな。こんな任務、嫌になって途中で放り出すかもしれないぜ ?
マーク任務を放り出す、ねぇ。そういう無責任なことも嫌がるタイプに見えるけどな。
チェスター……うるせぇよ。
マークハハッ、お前のそういう性格を見込んで頼んでるんだ。
マークそれに、さっきのアイツみたいに「信用しろ」なんて主張する奴よりはよっぽど信用できる。
チェスター……こんな面倒な手を使わないでお前が直接やりあったらどうなんだよ ?
マークそれができりゃ……苦労はしねぇんだよな……。
チェスター…… ?
マークとにかく、俺たちの計画が上手くいけばお前の望みが叶うのもそう遠い話じゃなくなると思うぜ ?
マーク会いたいんだろ、妹のアミィに。そのためにここにいる。――違うか ?
チェスター……約束は守ってくれるんだろうな。
マーク当然だ。そもそも俺たちの目的は『そこ』にあるんだからな。

Character2話【11-1 モリスン街道1】
リフィル――古城……って私が連れていかれた、あの場所 ?
イクスはい。もう一度、あの古城に行ってみるべきだと思うんです。
イクスマークは、ファントムがあの場所を実験場として使うつもりだと言ってました。
イクスこれ以上、無茶な具現化をさせないためにも手がかりがありそうな場所なら徹底的に探るべきじゃないかと……。
ジェイド確かに、救世軍の動きを止めるためにも実験施設となりうる地点を叩くのは有効な手段です。
ジェイドですが、すでに私たちに踏み込まれた場所をそのまま呑気に使っていると思いますか ?
イクス……そうですよね。やっぱり……。
ジェイドおや、そこで引いてしまうんですね。もっと食いついてくれなくては。
ジェイド熱血で押すのか、口八丁で引っかけるのか泣き落としでもするのか、色々と期待していたのですが……いやぁ、残念です。
イクス……え ?
リフィルジェイド、真面目な提案を面白半分に茶化すのは頂けないわね。
ジェイド茶化すだなんて。誠実だけが取り柄だった押しの弱いイクスがどれだけ成長したのか見てみたかっただけですよ。
ジェイドしかしやはり、こういったことは本職にお任せするべきでしたね。申し訳ありません、リフィル先生。
リフィルジェイド……その笑顔はなんなのかしら。何をたくらんでるの ?
ジェイドたくらむだなんてとんでもない。やはり『先生』でいるあなたの方が私の精神衛生上良いようでしてね。
リフィル…… ?
イクス(あ~……遺跡モードのリフィル先生に面くらってたもんな、ジェイドさん……)
イクスあの、それで古城の件は――
ジェイドああ、これは失礼。もちろん、調べる価値はあると思います。今は少しでもあちらの動きが知りたい。
ジェイド多少は内部を把握している分あの時に城へ踏み込んだメンバーで再度偵察する方が効率が良いでしょう。
リフィルそうね。あまり大人数でも動きにくいもの。という訳だから――聞いてるかしらロイド ! そしてコレット !
ロイドうわっ、なんでバレた ! ?
コレットはあ~見つかっちゃった……。
リフィル二人とも、立ち聞きなんてお行儀が悪いわよ。
ロイドだって、さっきイクスが難しい顔でリフィル先生を捜し回ってたからさ。なんか放っとけなくて付いてきちまった。
イクスそっか。心配してくれたんだな。ありがとうロイド、コレット !
コレット邪魔してごめんなさい。リフィル先生。
リフィルまあ、説明の手間も省けたし今回はよしとしましょう。それじゃロイドはイクスと一緒に出発の準備をしておいて。
リフィル何かあったらすぐに援護を送れるようこちらでも態勢を整えておきます。連絡はこまめに入れるのよ。
ロイドああ、任せとけって。行こうぜイクス !
コレット待ってロイド !……あのリフィル先生私も行っていいですか ?
リフィルコレットも ?そうねえ……コレットが偵察……。
コレット私飛べるし、高い壁の向こうを調べたり高い所の荷物とかとったり、後は、後はえっと……とにかく役に立ちます ! だから――
ロイド先生、コレットのことは俺が見てるから。いいだろ ?
リフィル……わかったわ。ロイド、コレットをお願い。コレット、ロイドが無茶しないように見張っておくのよ ?
二人はい、先生 !
ジェイド――イクス。あなたはもっと自信を持っていいと思いますよ。
イクスえ…… ?
ジェイド過去に大きな失敗をした人間は、往々にしてそれを取り返そうと焦ったり、あるいは次の一歩を踏み出すことにおびえるものです。
ジェイドあなたもその迷宮に入り込もうとしている。私はかつて、同じように迷った人間を複数知っています。
ジェイド時には手を差し伸べず突き放したりもしました。
ジェイドまあ、ここであなたに手を差し伸べたからといって過去が変わる訳ではありませんがたまには人助けぐらいしてもいいでしょう。
ロイド間違えたら、やり直せばいいもんな !何だ。ジェイドのこと、みんな怖い怖いって言うけど、一言多いだけでいい奴じゃん !
コレット私もジェイドさんってやさしいなって思う。だって、誰かが嫌なことを言わないと前に進めないことってあるもの。
ジェイドはぁ……。人間性がまともなピオニーとサフィールを相手にしているようで疲れますね……。
リフィルあら、ロイドとコレットみたいな子を知っているの ?
ジェイド私の幼馴染みと下僕のことです。お気になさらず。こちらの二人の方がよほどしっかりしていますから。
ジェイドでは、イクス。お土産話を期待していますよ ?
イクスは、はい !ありがとうございます、ジェイドさん !

Character3話【11-2 モリスン街道2】
カーリャお城はこっちの方角ですね。うひゃ~、これは結構歩きそうですよ~。
イクス仕方ないさ。ケリュケイオンで近場まで乗りつけたら救世軍に見つかるかもしれないだろ。
コレットノイシュがいればよかったのにね。
ロイドそうだなあ。あいつならこのくらいの距離なんてことないだろうな。
イクスノイシュって ?
ロイド俺の昔っからの相棒でさ風みたいに早く走って――
? ? ?ギャアアアアアアッ ! !
イクス今のは――魔物の声 ! ?
ロイド声っていうより、ありゃ断末魔だぜ !誰か戦ってるんだ !
ミリーナこの先よ、行きましょう !
イクスあの人、強い…… !
ロイドすっげえ……あっという間に片付けちまった。
クレス――っ、まだいるのかっ !
イクスうわっ、ち、違います !俺たちは助けに入ろうと―― !
クレス人 ! ? ……だったのか。てっきりまだ魔物が残っていたのかと……。
イクスあ……驚かせてしまってすみません。
クレス僕のほうこそ、助けに来てくれた人に剣をむけるなんて……。本当にすまない。
イクスそんな、謝らないで下さい。それに俺、結局助けも何もしてないし……。
クレスいや、そんなことは !
イクスいやいやそんな !
ミリーナうふふ、二人とも真面目なのね。
ロイド状況がわからなかったんだしここはお互い様ってことでいいんじゃないか ?
クレスそうだね。それにお礼がまだだった。心配して来てくれてありがとう。
クレス僕はクレス・アルベイン。君たちはこの辺りの人 ?
イクスいや、旅の途中……かな。俺はイクス。こっちはロイドとコレット。それとミリーナとカーリャ。
クレス旅の人……。それじゃ城のことは知らないか……。
イクス城って、この先にある古い城のことか ?
クレス知ってるのか ! ? もしかして君たちはそこの関係者じゃ――
ロイドいや、えっと……関係者じゃないんだけど関係あるっていうか……。
コレット私たち、お城の様子を調べに行くの。
イクスコレット ! ?
ロイド駄目だろ、コレット !もしクレスが敵だったらどうするんだよ !
コレットそうかもだけど謝りあいっこしてすごくいい人みたいだよ ?
イクスそれはまぁ、そうかも知れないけど……。
カーリャいい人か悪い人かはともかくカーリャはぶるぶる来てますよ !
ミリーナあ……もしかしてクレスさんも鏡映点ってこと ! ?
ロイドへ ! ? じゃあまたどこかで島が具現化されたのか ! ?
イクスいや、そういう話は聞かないからはぐれ鏡映点かもしれない。
クレスはぐれ……きょうえい……え ?
クレスちょっと待ってくれ。僕には、きょうえいてんとか……よくわからないよ。
クレス君たちはあの城と敵対する立場なのかい ?だとしたら少なくとも敵ではないと思うよ。
クレス僕があの城に行くのはさらわれたのかもしれない親友がいる可能性があるからなんだ。
イクスさらわれた ? 詳しく話してくれないか。
クレスいいけど……今は少しでも早く先に進みたい。目的地が同じなら歩きながら説明してもいいかな。
クレスそれと、君たちの話も聞かせて欲しい。変に思われるかもしれないけど、正直僕はここがどこかもよくわかってないんだ。
クレス今の自分の状況を、ちゃんと知りたい。
イクス……わかった。俺もクレスに説明――いや言わなきゃいけないことがある。一緒に行こう。

Character4話【11-3 モリスン街道3】
クレス……異世界か。どうりで、今がアセリア歴何年か街の人に聞いてもわからない訳だ。
クレスまた過去か未来に飛ばされたのかと思ってたけどそうじゃなかったんだな……。
カーリャ過去とか未来とか……なんかさらっとすごいこと言ってますね。クレスさま。
ミリーナええ。時間を跳躍して旅をしていたってことだもんね。
クレスなあイクス、本来の世界での僕は今どうなってるんだろう。
クレス僕は仲間と敵の本拠地に乗り込んでいた。でも、その辺りから記憶が曖昧で……。
イクス無責任だけど、断定したことはいえない。でも『クレス』は今も仲間たちと戦い続けていると思う。
クレスそうか……みんなと一緒なんだな。そうだ ! ダオスは――僕の敵もこの世界に来ている可能性はあるのか ?
イクスそれもはっきりとはわからないんだ……。今はまだ、それらしい奴はいないとしか……。
クレス…………。
イクスごめん……クレス。不本意だよな。自分の世界を救うために戦っていたのに俺たちの都合で巻き込まれたんだから。
イクス俺たちがどんなに傲慢なことをしているか分かってる。具現化された人たちの気持ちやその立場が、とても複雑だってことも。
イクスそんな当たり前のことに、最近ようやく気が付いたんだ。クレスと同じように具現化された人に諭されてさ。
ロイド……。
イクスその上、協力してくれなんて言われても納得できないかもしれないけど――
クレス……イクスたちの具現化は避けられないことなんだろう ?
イクスうん……今は訳あって止めているけど実質的にはこれしかない状況なんだ。
イクスそれに、最初はこの役目を義務みたいに感じてたけど、今は俺自身も世界を救いたいって、強く望んでる。
イクスクレスや、鏡映点の人たちの想いや存在を無駄にしないためにも、……絶対に成し遂げたいんだ。
クレスそうか。じゃあ、これからもよろしく !
イクスえ、そんな簡単に……クレス、いいのか ?
クレスうん、イクスの決意が聞けたからね。僕たちがここに具現化されたことが無駄じゃないって思えた。
クレスそれにさ……『――生きてるうちは色々あるさ。あんまり気にすんなよ』
ロイドお、なんか急にくだけたな。
クレス今のは、僕の親友の受け売りなんだ。
イクス親友って、もしかしてさっき、さらわれたって言ってた ?
クレスああ。チェスターって言って同じ村で育った幼馴染みでさ。
クレス僕たちの村が襲われて身を寄せた叔父にも裏切られて……そんな時、そう言って慰めてくれた。
ロイド村の襲撃に、身内の裏切り……か。それって……辛いよな。
コレット……ロイド。うん……そだね。
クレス……ロイドもコレットも、色々あったんだね。
ロイド……生きてるうちは色々ある、か。うん、なんてことない言葉だけどいいこと言うよな、そいつ !
クレスああ。そして、その色々の末に僕はダオスを追い詰める所まで来られた。
クレスだからさ、気にして立ち止まっているよりは前に進んで、やれることをやらないと。
イクス……クレスは本当に強いんだな。力だけじゃなく心も。
ロイドああ、色々って……口にするのは簡単だけどそうやって自分で納得できるところまで消化するのって、本当はキツいもんな。
ロイドそれができてるクレスはすげー格好いいし決意したイクスもすげー格好いいぜ。俺も負けてられないな。
イクスあ、ありがとう……ロイド。
クレスまいったな。そんな風に言われるとは思わなかったよ。
コレットふふ、ロイドっていつもこうなの。
コレットあ、でも、ロイドだって格好いいよ ?
ロイドへへ、ありがとな、コレット。でもこれからは、いい人だからってすぐ作戦のこと喋っちゃ駄目だぞ。
クレスなあ、ロイド、イクス。コレットのことあまり怒らないであげてほしい。
クレス彼女の言葉がなかったら詳しい話をしないまま君たちと別れていたかも知れない。
イクスそういえばそうだな。コレット、ありがとう。
コレットううん。私こそごめんなさい。これからは気をつけるね !
カーリャうっ、まぶしい…… ! ロイドさまもクレスさまもイクスさまもコレットさまも善人オーラがビカビカ出てますよ ! ?
ミリーナ本当ね。きっとチェスターさんって人も凄くいい人なんでしょうね !
クレスああ、チェスターはいい奴だよ。僕が保証する。
カーリャ俄然やる気が出てきましたよ。必ずチェスターさまを見つけましょう !

Character5話【11-4 モリスン街道4】
イクス――金髪の少年と怪し気な男たち……か。そいつらがチェスターさんを連れ去ったっていうのは確かなのか ?
クレスああ。街の人の話では、長い髪を一つに束ねた弓使いが、そいつらに絡まれてたらしい。……チェスターの特徴と似てるんだ。
クレスもっともイクスたちの話を聞く限りだとチェスターが具現化されているとは限らないんだよね。
イクスいや、世界を変える力がある人たちが鏡映点になるんだから、クレスの仲間なら鏡映点として具現化されている可能性は高い筈だよ。
イクス特にこの大陸が具現化された時は色々と問題があったからいつもと違うことが起きていたんだ。
イクスロイドたちと一緒に、他の世界の鏡映点が具現化されていた可能性は十分考えられる。
ミリーナ……ねぇ、チェスターさんがさらわれた後クレスさんも狙われたりしなかったの ?
クレスうーん、ないな。魔物と戦ったくらいだよ。
イクス同じ鏡映点であるクレスの存在に気が付かなかったのかそれともチェスターさんを最優先で確保する理由があったのか……。
ミリーナとすると、チェスターさんは特異鏡映点なのかもしれないわね。だから有無を言わさずに連れていかれたのかも。
ミリーナクレスさんたちは時空転移をしていたみたいだから可能性は高いと思う。
ロイドもしそうなら、あの妙なのをくっつけられちまうんじゃないか ?アン……ドーナツ、みたいな……。
ミリーナふふ、アンチ・ミラージュブレスよ。だったら確かに急がないといけないわね。
クレスアンチ・ミラージュブレスっていうのは何かまずいものなのか ?
イクス……うん、長く身につけていると体に害が及ぶらしい。
クレスなんだって ?くそっ、チェスターにそんなものつけさせてたまるか ! !
カーリャびっ、びっくりしたっ !クレスさまでも、そんな風に怒鳴るんですね。
クレスあ……ごめんよカーリャ。驚かせちゃって。
ロイドクレスが熱くなるのも仕方ねえよ。友達がピンチなんだからな。しかも親友で幼馴染みだろ ?
コレットそだね。私もロイドやジーニアスに何かあったらって思うといてもたってもいられないもん。
クレスロイドとコレットも幼馴染みなのか。もしかして、イクスとミリーナも ?
イクスああ。それとフィルって奴を加えて三人で遊んだよな。
ミリーナええ、懐かしいわ。
イクスフィルは遠くに引っ越したから、一年に一度くらいしか会えなかったけど、大事な幼馴染みなんだ。
イクスあいつには迷惑もかけたけどまた、みんなで会えたらなって思うよ……。
ミリーナ……そうね。
ロイドみんなで会えたら――か。ジーニアスもどうしてんのかなあ。向こうの俺に、美味い飯作ってくれてるのかな。
コレット料理上手だもんね、ジーニアス。誕生日にジーニアスからもらったクッキーもすっごく美味しかったもん。
イクスへえ、幼馴染みのジーニアスってそんなに器用なのか。
ロイドああ、リフィル先生の弟でさ。俺より年下だけど、頭もすげえいいんだぜ。
ミリーナリフィルさんに弟 ?うわあ、可愛いんだろうなあ。
カーリャミリーナさま、想像だけでうっとりして……。そういえばクレスさまは、ご兄弟っているんですか ?
クレス僕はひとりっ子なんだ。けどチェスターにはアミィちゃんっていう妹がいてさ。料理上手で可愛い子だった。
イクス【だった】って…… ?
クレスあ……いや、僕の村が襲われた時に……ね……。
イクス……そうか。
クレスあいつの家族は妹だけだったから大事にしてたよ。僕と一緒に戦ってたのもアミィちゃんの仇を討つためだったんだ。
クレスだから、この世界ではダオスがいないかもしれないと知ったら……そう思うと心配なんだよな。
イクス……だとすると、チェスターさんに俺たちの話受け入れてもらえるかな。
クレス大丈夫だよ。僕に説明してくれたようにきちんと話せばわかってくれるさ。
ロイドそうそう。クレスの親友ならチェスターもきっと真面目でいい奴だって !
クレス……う~ん真面目……真面目なのかなあ ?あいつ、女風呂を覗こうとしたことあるしそういう所は違うような……。
ロイド――え……。
コレットお風呂を…………。……………………。
ロイドな、何でこっちを見るんだよ !何度も言うけど、俺のは誤解なんだからな。
クレスロイドも覗こうとしてたのか ?チェスターと気が合いそうだな。
コレット……ロイド、本当に違うんだよね ?
ロイド頼むクレス、話題を変えてくれ !
クレスえ、話題っていわれても……よし。もうすぐ城も近いしイクス、張り切ってイクッスよ !
イクスえっ ?
ロイド……。
クレス……あ、はは。その……
カーリャ……やはりクレスさまもただの真面目系爽やか鏡映点じゃなかったんですね……。
ミリーナイクス……イクッス……行くっす ?
カーリャミリーナさま、まさか今気が付いた…… ?
ミリーナなるほど ! 凄いわ、クレスさん !もっと言ってクレッス ?な~んちゃって♪
コレットすごいよ、ミリーナ !そういうのを白いわんちゃんって言うんだよね ?
三人尾も白い !
クレス二人ともさすがだね !これは僕も腕を磨かなくちゃ !
カーリャも、盛り上がってる…… ?時代は今、親父ギャグウェーブなんですか ?
イクスいや、あれはないと思う……。
ロイドだよなぁ……。
カーリャせっかくの善人オーラがしおしおですよぉ。

Character6話【11-7 デミテル洞窟 入口】
コレットあれが目的地のお城 ?見張りっぽい人がたくさんいるね。
イクス……前とは比べものにならないくらい警戒度合が増してるな。やっぱりジェイドさんが言った通りか……。
ロイドこりゃ偵察するどころか近づくのもヤバそうだぜ。
イクスチェスターさんのことも捜さなきゃいけないのにこれじゃ……。
クレス……やっぱり似てる。
イクスクレス、どうしたんだ ?
クレスこの城、僕たちが踏み込んだ敵の城に似てるんだ。まったく同じって訳じゃないけどね。
イクス確か……ダオス城って言ってたっけ ?
クレスああ。隠し通路があったり鏡の中に入れたり……迷路みたいな所さ。
クレスもし見た目だけじゃなくて城の造りまで似てるとしたら、隠し通路みたいなものもあるのかもしれない。
イクスそれならこの辺りを探してみよう。目立たないようにな。
イクス……はぁ、やっぱ簡単には見つからないか。
ロイド前みたいに、コレットのドジで道が開けて……みたいなことないかなぁ。
コレット好きで失敗しちゃう訳じゃないんだよ ?
ミリーナでもその失敗が幸運を呼ぶなんてコレットってきっと幸運の女神様に愛されてるのね。私も愛しちゃう !
コレットううん。今日はちゃんと自分の力で役に立ちたいの !
コレットあ、高いところから見渡したら何かわからないかな ?私、ちょっとやってみるね !
イクスあ、コレット待っ――
コレットどこかに……抜け道は……。
警備兵――おい、あれ ! 人が浮かんでるぞ ! ?
警備兵はぁ ? 何言って――あ !
ロイドやべっ ! コレット下りて来い !
コレット待って ! 何かあそこ……岩の隙間に……洞窟――かな ?
クレス洞窟 ? ……コレット ! どっちの方角だ ! ?
コレットこの先まっすぐ ! 大きい岩に突き当たったら右に回り込んで !
イクスクレス、その洞窟って――
クレス見張りがこない内に行くぞ。
イクス本当だ、こんな所に洞窟が……。
ミリーナ草も茂ってるし、私たちの目線からじゃ穴があるなんてわからないわね。
クレスそれにしてもすごいな。羽なんて……。
コレットえへへ、役に立ったかな ?
ロイドコレット、ごめんな。幸運とかそんなの関係ないよな。自分ができることをやらなきゃだよな。
コレットだいじょぶ。ロイドもみんなもいつだってそうやってると思うし、だから私も頑張りたかっただけだから。
カーリャおおお、またビッカビカの善人オーラが !
クレスうん。ありがとう、コレット。僕もチェスターを見つけるために頑張るよ。
イクスなあクレス、この洞窟が抜け道なのか ?
クレス……見た感じは違うけどダオスの城に行くときにも、洞窟を通って行ったんだ。もしかしたらと思って。
ロイドどうせ他に手掛かりはないんだ。行ってみようぜ !

Character7話【11-9 デミテル洞窟 深部】
カーリャ結構深い洞窟ですねぇ……。そろそろ城の入口的なモノが欲しいところですけど。
ミリーナ気をぬいちゃだめよ。それとカーリャは鏡映点――チェスターさんの気配を感じたら教えて。
カーリャう~ん、鏡映点の気配っていってもあんまり遠くじゃわからないかもですよ。
カーリャまだ鏡映点と光魔の感じ方もそれほど区別できてないですし……。
ミリーナそっか……。カーリャも――いえ私もまだまだ修行をしなきゃいけないわね。
カーリャそうですね。イクスさまを見習わないと。
イクスえ、なんで…… ?
カーリャ知ってますよ~ ? 夜な夜な一人で【創造の魔鏡術】を練習していること。
イクスカーリャが知ってるってことは……ミリーナも ?
ミリーナのぞき見するつもりじゃなかったんだけどごめんね ?
イクス謝ることじゃないよ。なかなか上手くいかなくて、人前で修行するのが恥ずかしかっただけだから。
クレスイクス、創造の魔鏡術ってなんだい ?
イクス色んな物をゼロから実体化させる術って言えばいいかな。俺の家系が得意とする術なんだ。
イクス鏡士として成長するなら使いこなせなきゃいけないんだけど……
イクス昔……、術を暴走させたあげくミリーナを傷つけたんだ……それ以来、使うのが怖くなって……。
クレスそれを今、練習してるのか ?
イクスああ。このままじゃ、大事な人も守れなくなる。実際に戦うようになって思い知ったよ。
イクスそれにさ、鏡映点の人たちと出会って大事なことをたくさん教えられたから。
イクスだから今、必死で修行してるんだ。ようやく少しだけ使えるようになったよ。まだまだだけどさ。
クレス必死に修行か……。イクスのそういう所なんかチェスターと似てるな。
イクス俺とチェスターさんが ?
クレスああ、僕は時間を超えて旅をしたって言っただろ ?その時、チェスターとの力の差が開いてしまったことがあったんだ。
クレスそれを仲間のアーチェって子がズバっと言っちゃってさ。まあ、アーチェとしてはからかっただけなんだろうけどね。
クレスそうしたらあいつ、夜中に一人で必死に訓練してて。さっきのイクスの話と似てるだろ ?
クレス……まあ、あいつが夜中に起きてたのは別の理由もあったんだけどさ。とにかく、みるみるうちに強くなった。
クレス僕が過去で積み重ねた時間がなければ追い越されてたかもしれないって思うよ。それくらい努力家なんだ、あいつ。
イクスすごいな。俺もそんな風に、強くなれるといいんだけど。
ロイドそれにしても、すげぇな。クレスの剣――エターナルソード。本当に時間を跳べるんだな。
コレットでも不思議だね。私たちの世界にも同じ名前の剣があるんだよ。
クレスえ ? ロイドたちの世界のエターナルソードって言うのは…… ?
ロイド俺たちの世界には精霊がいてオリジンって精霊がハーフエルフのために作った剣なんだよ。
クレス僕たちの世界とはちょっと違うんだね。オリジンが作ったって言うのはこっちも同じだけど。
ミリーナもしかしたらカレイドスコープが具現化する世界は異世界同士の時空の距離が比較的近いところなのかも知れないわね。
ミリーナ確かアイフリードって人も、色んな世界に存在しているみたいだったし。
クレスアイフリード ? アイフリードなら僕たちの世界にもいるよ !
ロイドええ ! ?なんかすげぇな、アイフリードって。
ロイド今度クレスたちの世界の話も色々聞かせてくれよ。他にも俺たちの世界と似てるところがあるかも知れないし。
クレスそうだね。僕もロイドたちの世界のことを聞いてみたいよ。
イクス――シッ、静かに。みんな、あれを見てくれ。
クレス魔物か……。ダオス城にいた奴とは違うけどでもあいつの後ろに見えるのは……。
ロイドああ。城への入り口っぽいよな !
イクス……入るためには戦うしかないな。
クレスああ。みんな、行こう !

Character8話【11-9 デミテル洞窟 深部】
イクスハァ……ハァ……。結構やっかいだったな。
ロイドクレスって見た目よりずっとタフだよな。全然疲れた感じがしねえし。
イクスそういうロイドもな。
クレスイクス、聞いてもいいかい ?この城は僕の世界のダオス城を模したものなんだろう ?
イクスクレスが見覚えあるっていうならそうなんだと思う。鏡映点の記憶や感情が具現化に影響するから。
クレス……さっきも話した通りダオス城には色んな仕掛けがあるんだ。
クレスもしここにも同じような仕掛けがあるなら全員で先に進むのは難しいかもしれない。
イクスなんだよそれ……そんなにやっかいなのか ?
クレスああ。ダオスの城では、デリスエンブレムがないと踏み込んだ途端、別の場所に転送されて城の奥に入れないんだ。
コレット待って。奥から人の声がする。
? ? ?貴様っ、大人しくそれを渡せ !
? ? ?抵抗するなら容赦はしないぞ !
ミリーナ本当だわ。この声……城の中からよね ?
? ? ?抵抗なんてするに決まってんだろ。黙って捕まるなら最初から逃げねえっての !
クレス今の声、チェスターだ !
イクス何だって ! ?それじゃやっぱりここに――
? ? ?援軍を呼べ ! 裏切者を取り押さえろ !
チェスターくそっ、そこどけよ !お前らに用はねえんだ !
クレス……僕はチェスターを助けに行く。イクスたちは城の偵察の方に集中してくれ !
イクス待ってくれクレス !
ロイド……なあイクス偵察はいったん置いといていいよな。あいつ一人で行かせられねぇよ。
イクスああ、俺たちも行こう。クレスとチェスターさんを助けないと !
ロイドヘヘ、そうこなくっちゃ。
クレスチェスター !
チェスター――クレス ! ?
クレス大丈夫か、チェスター !
チェスターお前、なんでここに ! ?
クレスお前を助けに来たに決まってるだろう !
兵士……面倒だ、一緒にくたばれ !
チェスタークレス、かがめ !
兵士何っ ! ?
チェスターいまだ !
クレスはあああっ !
クレスチェスター、無事でよかった !
チェスターそれより、どうしてお前がこの世界に…… !
クレス僕も具現化されてたんだ。それよりチェスター、さらわれたんだろ ?
チェスターあ……ああ……そ、そうなんだ。もしかして……オレを助けにここへ…… ?
クレスあ……そうだ !変なもの付けられてないか ?アンチ・ミラージュブレスとかいう……
チェスター……クレス、お前何いって…… ?
イクスおーい、クレス !
チェスター――あいつらは…… !
クレスイクス、来てくれたのか。僕もチェスターも無事だ !
クレスチェスター、お前を助けるために協力してくれた人たちだよ。
イクスよかった。チェスターさんと会えたん――
イクス――何だ ! ?
クレスこの光はまさか ! ?イクス逃げろ、それは転移の―― !

Character9話【11-10 怪しげな古城 通路】
ミリーナう……ここは…… ?
イクスミリーナ、大丈夫か ? カーリャは ?
カーリャうう……ここにいますよ~。っていうか、何ですか、さっきのぐにゃ~っとした感じ。……目が回りそうでした。
イクス光に包まれる直前クレスが転移って言ってた気がするけど……。
ミリーナじゃあ、クレスさんが話していた踏み込むと別の場所に転送される仕掛けっていうのがこれなのね。
イクスああ、俺たちはまんまと引っかかったって訳だ。あれほどクレスに注意されてたのに……。
ミリーナここには私たちしかいないのね。ロイドさんたちは――他のみんなはどうしたのかしら。
イクス他の場所に転移してるのかもな。すぐにでも確かめたいけどこの部屋じゃ……。
カーリャ前後左右、どこを見ても壁ですね。出口も入口も隙間もありません。
イクス剣でどうにか壊せないかな。
ミリーナ私も術でやってみるわ。
イクス……駄目か。
カーリャえ~そんな ! それじゃこの密室でカーリャたちは一生……。
イクス……創造の魔鏡術なら出入り口を創り出せるよな。
ミリーナそれは……そうだけど。でも空間を歪める程の魔鏡術は、今の私たちじゃ難しすぎるわ。
ミリーナ大地の具現化はカレイドスコープがあるから私たちでもできるけど……。
イクス……確かに、まだ空間を歪めるような物は創れないけど、でも例えば爆薬とかなら……。
ミリーナ爆薬……。それは内部構造を知らないと難しいわ。それに私の血筋だと創る方の魔鏡術に関しては、まだ簡単な物しか――
イクス俺は創る方――創造の血筋だ。
ミリーナ……イクス。今、魔鏡術のステップは何段階目 ?
イクス……第二段階だ。
ミリーナ…………。
チェスター――こっちだ ! この辺から音がしてたぜ。
イクス……なあ、今の聞こえたか ?
ミリーナええ、壁の向こうから音がしたわ !
クレスおい ! 誰かそこにいるか ! ?
イクスクレス……それにチェスターさんか ! ?俺だよ、イクスだ !壁のこっち側にいる !
クレスイクスか !ここに転送されていたんだな。どうだ、出られそうか ?
イクス無理なんだ。四方が壁で囲まれて壊すこともできない。クレスたちは無事なのか ?
クレス僕たちはデリスエンブレムを持ってるから大丈夫だ。壁を壊すから、ちょっと待っていてくれ。
チェスターチッ、なんだよこれ、堅すぎんだろ !
クレスクッ……びくともしない。何か仕掛けがあるのか ?
ミリーナ……イクス、一か八かやってみない ?創造の魔鏡術。イクスの最初の提案――この壁に出口を創るのよ。
クレス創造の魔鏡術ってイクスが修行しているやつか。そうか、使う決心がついたんだな !
イクスいや、その……。簡単なものならともかく今の状況じゃ難しいと思う。
イクス安全かつ確実に具現化するには、魔鏡の力を増幅する装置や準備が必要なんだ。もしくは魔鏡が複数あればどうにかなるけど……。
イクス今、手元には魔鏡が一枚。この状態で術を使うと、著しく体力を消耗する。そうすると……制御できない。
クレスそれは、前に話してた暴走が起きるってことか。
イクス……ああ。こんな逃げ場のない所で暴走させたら、あの時以上に大変なことになるかもしれない。それだけは……。
ミリーナ……ねえイクス、考えたんだけど私が制御のサポートをしつつ、術でイクスの体力を回復し続ければどうかな ?
イクスそれは……。確かに一人でやるよりは安定するだろうけど……。それで暴走しないとは限らないよ。
ミリーナでも、他に手はないと思う。
イクス…………。
クレス……イクス。ずっと術の修行していたんだろう ?コツコツ努力をして。
クレスチェスターも同じことをしてたって話したらそんな風に強くなりたいって話してくれた。
チェスターオ、オレと同じ ?お前、何を話したんだよ
クレス何って、事実をね。チェスターは努力家で強いっていうことさ。
チェスター……事実か。そう言われちゃな。――おい ! イクスっていったっけ。
チェスターもしも力不足で二の足踏んでるならさオレが保証してやるよ。
チェスター訓練した分だけ力はついてる。昔のお前とは違うってさ。
クレスその通りだよ。イクスは必ずできる !それともチェスターの保証だけじゃやっぱりもの足りないか ?
チェスターそりゃねえだろ。オレの保証だけでも十分、確実に、必ずや、間違いなく、成功するっての !
チェスターおい聞いてるか、イクス。努力の証、ガツンと見せてやれ !ついでにオレの保証の確かさもな。
イクス……そうだな。そこまで言ってもらってやらなかったら修行した意味がないよな !
ミリーナイクス、それじゃ……。
イクスああ、やるよ。
イクスそれにさ、俺が修行を始めたのもベルベットさんと会って、全てを受け入れる強さを目の当たりにしたからだった。
イクス俺も不安や恐怖にとらわれずやるべきことをやらないとな。
ミリーナええ。私がサポートするから、安心して術を使って。あの時約束したでしょ。イクスの支えになるって。
イクスああ、頼んだよミリーナ。
イクスクレス、チェスターさん今から術を行使する !念のため壁から離れててくれ !
イクス(呼吸を整えて……冷静に……。体が辛くても大丈夫だ。ミリーナが癒してくれる……)
イクス(絶対に――成功する ! )
イクス……や、やった……か ?
ミリーナやったのよ、成功したのよイクス !しかも壁だけが崩れて――他に被害もないわ !
クレスすごいよイクス !完璧に制御できてるじゃないか !
チェスターほら見ろ、オレの保証は完璧なんだって !よくやったな、イクス。
イクスありがとう。二人の言葉に励まされたよ。
クレス早速だけどすぐに動けるかい ?ロイドたちを捜さないと。
チェスター多分、イクスたちと同じようにこの辺りに転送されてるんじゃねえか ?壁の中の音に気を付けながら進もうぜ。

Character10話【11-12 怪しげな古城 隠し部屋】
イクス――それじゃ、今度も頼んだよミリーナ。
ミリーナええ、任せて !
ロイドイクス、助かったぜ !
コレットすごいね ! 私も頑張って壁に体当たりしてみたんだけど、全然壊れなくて……。転んだときと何が違うのかなぁ ?
ロイドいきなり壁に突っ込んでいくから止める間もなかったよ……。
ミリーナ体当たりって……怪我してない ?コレットみたいな華奢な体でそんな無茶したらだめだからね。
コレットうん、心配してくれてありがとミリーナ。なるべく気を付けるね !
ロイド……なるべくってところがコレットだよなぁ。
ミリーナ限りなく心配だわ……。
クレスロイド、コレット、無事でよかった。怪我はないか ?
ロイドああ、ピンピンしてるぜ !えっと……そっちがチェスターだよな。
チェスターああ、クレスが世話に――っていうかオレのことを助けるのに、協力してくれたんだって ? ありがとな。
ロイドいいっていいって。それにしてもよくあいつらの所から逃げられたな。
クレスさっき聞いたんだけどチェスターはしばらく救世軍側にいたんだってさ。
チェスターああ、無理やりつれてこられて世界を救うから協力しろとか言われてさ。
チェスターだからこの世界のことや具現化の話も大体は聞いてるよ。ダオスがいないかもってこともな。
チェスターけどやっぱりなんか……納得できなくてさ。――んで、奴らの目を盗んで逃げて来たって訳だ。
ロイドだからあいつらに裏切者って言われてたのか。
チェスターまあ、それもあるけどな。あいつらへの意趣返しってことでこいつを持って来たらバレちまった。
クレス何かの……設計図 ?
ロイドうわ~……見てるだけで目が回りそうな細かさだな。
ミリーナちょっと待って、これ……ところどころに具現化の術式が書かれてる。すごい……。
チェスターなんだよ、そんなに大したもんなのか ?適当に失敬してきただけだぜ ?
ミリーナイクス、見て。この辺りとか……ほら !
イクス……ああ、本当だ。もしかしたら……ファントムが研究してる装置……かも……。
ミリーナ……イクス、立て続けの具現化で体力の回復が追いつかないんじゃない ?
イクスいや、少し休めば大丈夫だ。この程度で済んでるのは、ミリーナのおかげだよ。
クレス……イクス、一度この城を出よう。どっちにしろ、デリスエンブレムは僕とチェスターしか持ってない。
クレスあの転移装置が起動している以上、残念だけどイクスたちは城の奥へ入れないよ。
イクス……わかった。一旦ケリュケイオンに戻ろう。
イクスデリス・エンブレムの対策も練りたいしクレスとチェスターさんも、一緒に来てもらっていいかな ?
クレスもちろん !いいよな、チェスター。
チェスターあ、ああ……。世話になるぜ。
クレス………… ?

Character11話【11-15 デミテル洞窟 深部】
クレスイクス、体はどうだい ?
イクスああ、もう大丈夫だ。帰ったらすぐにでも修行したいよ。ミリーナの助けがなくても制御できるようにならないとな。
チェスターハハッ、修行大好きかよ。クレスみたいだな。
イクスクレスには、チェスターさんみたいだって言われたけど。
チェスターじゃあ、オレとクレスのいいとこ取りってことにしておけ。……そうだな。オレ的にそのいい所ってのを説明すると……
チェスター――過去、現代、未来を渡り、勇者はついに異世界へと降り立った。その名はクレス !彼はこの地に至っても未だ努力を怠らない。
チェスターその英雄の傍らに立つのは、厳しい特訓の末に大いなる弓の力を手に入れた親友。彼の放つ矢は、研鑽の煌めきをまとうのだった !
チェスターそんな彼らに憧憬のまなざしを送る鏡士の少年は――
クレスチェスター……その大げさなナレーションまだやってるのか……。イクスが固まってるぞ。
チェスターなんだよ、せっかく乗って来たのに。
ロイド……チェスター、お前すげえ難しい話し方するんだな。途中から何言ってるかわかんなかったぜ……。
チェスターそうか ? じゃあ、もっとわかりやすく――
ミリーナふふ、一気に賑やかになったわね。でももうすぐ出口よ。そろそろ外の警備兵にも気を付けないと。
? ? ?忠告が遅かったようだな。
イクス――誰だ !
リヒター今はお前に用はない。……チェスター、人の物をとってはいけないと教育されなかったか ?
チェスター……チッ。リヒターかよ……。
リヒター設計図を返してもらおう。
ロイドおっと、そうはいかないぜ。お前らがこの設計図でヤバイことしてるならなおさらな !
リヒター……ロイド・アーヴィング。それに……神子も一緒か。またお前たちが俺の邪魔をするんだな。
ロイド何のことだ ?
リヒター……別に。未来のお前に借りがあるだけだ。
ロイド未来の……俺 ? それは一体……。
リヒター鏡映点であるお前たちには関係のない話だ。ましてや、ラタトスクがいないこの世界ではお前と争うこともないと思っていたが……。
チェスター隙ありだぜ !
リヒターくっ…… !
ミリーナ今よ !
クレスくっ ! 待ち伏せされていたのか !
カーリャこれじゃあ挟み撃ちですよ ! ?
イクスミリーナ ! 想いの……想像の魔鏡術であの男を――
ミリーナ幻で足を止めるのね。任せて !
ロイド俺たちは目の前の連中を叩くぞ !

Character12話【11-15 デミテル洞窟 深部】
リタ……で、この術式を組みこんで……。魔鏡はここに……か。ふ~ん……。
ジェイドガロウズにも先ほど見てもらいましたがリタ、あなたはどう思います ?
リタうっさいな、黙ってて !めんどくさい仕組みと設計なんだから !
ジェイドこれは失礼。どうにも天才の扱いにはなれなくて。
リタ決めた。いつかその眼鏡割るわ。――まあ、それはともかく。間違いなく具現化装置の一種だとは思う。
リタけど、これを設計した奴、妙なこだわりっていうか趣味みたいなもんが溢れてて……読み解くの……ホント面倒。
ジェイドそこは同感ですね。その設計図には、どこか執着心さえ感じる。
リタねえこれ、しばらく借りられない ?ていうか借りるから。
ジェイドええ、構いませんよ。ただし、他の皆さんの意見も必要ですからちゃんと返して下さいね。
リタわかってるっての。集中したいから一人で静かに見たいだけ。
ジェイド改めて皆さん、ご苦労様でした。期待以上のお土産でしたよ。やればできる子ですね、イクス !
イクスいや、それはチェスターさんのおかげですから。
チェスターずっと気になってたんだけどよ。そのチェスターさんってのはやめてくれチェスターでいいよ。
イクスわかった。ありがとう、チェスター !
リフィルクレス、チェスターあなたたちの協力に感謝します。おかげで重要な情報が手に入ったわ。
クレスいえ僕の方こそ、イクスたちには友人を助ける手伝いをしてもらったんです。お礼をいうのは僕たちですよ。
リフィルお互いに助け合えたのなら何よりね。それで、あなたたちはこれからどうするの ?
クレス鏡映点の人たちはみんな、この世界のために協力してるんですよね。
リフィルそうだけど、協力するかしないか選ぶのはあなたたちの自由よ。イクスたちも強要はしない筈だわ。
イクスああ。もちろんできればお願いしたいけどそれぞれの考え方があるからそれを尊重したいと思ってる。
クレスならもう決まってるよ。僕はイクスたちに協力する。
チェスター……おいクレス、そんなすぐに決めなくてもいいんじゃないか ?
チェスター一旦、どこかに落ち着いてさそれからでも遅くないって。
クレスそういうチェスターはどうするんだよ。
チェスター俺はほら、救世軍ともめたわけだし……ここで協力しながら世話になるのがいいかなって考えてるけど……。
チェスターお前は違うだろ ?俺のせいで巻き込んじまっただけでさ。だから――
クレスお前がイクスたちに協力する意思があるなら僕だってそうするよ。これからも一緒に戦おう、チェスター !
チェスター――そうか。わかったよ。
クレスイクス、これからもよろしくな。
イクスああ、頼りにしてるよ。
リフィルそれじゃイクス二人のことは頼んだわね。
ミリーナそういえばうっかり聞きそびれてたんだけど結局チェスターさんは特異鏡映点じゃなかったのよね ?
チェスターえ ? ああ、そうらしいな。最初は特異鏡映点だと思われてたみたいだけど、よく調べたら違ってたって言われたからな。
チェスターまあ、だからこそ監視の目もなかったし簡単にあそこからおさらばできたってわけだ。
ミリーナそうだったのね。アンチ・ミラージュブレスのことでクレスさんには余計な心配させちゃったわ。
チェスターみたいだな。とりあえず何の問題もなしだ。これからもよろしく頼むぜ。イクス、ミリーナ !
イクスああ ! よし、それじゃ後で艦内を案内するよ。ここで少し待っててくれ。
チェスターわかった。楽しみにしてるぜ !
チェスター……。
クレスなあチェスター……。何か悩んでることがあるならちゃんと相談してくれよ。
チェスターなんだよ、藪から棒に。
クレスいつもなら率先して「一緒に戦おう」って言ってくれるはずだろ ?さっきのといい、チェスターらしくない。
チェスターそれは……その、ほら、お前があんまりにも簡単に決めたように見えたからさ。ちゃんと考えろって促してやったんだよ。
クレス……それだけか ?
チェスターそうだよ。お前って結構、貧乏クジ引くタイプだからな。……ったく、人が心配してやってんのに「らしくない」とはなあ。
クレスいやだって、お前こそ思い詰めるタイプだからさ……何かあるのかって思ったんだよ。ほら、あの時だってそうだったろ。
クレス村の人たちやアミィちゃん村が襲われた時のことを考えると眠れなくなるって……。
チェスター……あれは、仕方ないだろ。簡単に忘れられるもんじゃねぇんだし。でも、今は平気だぜ ? 毎晩グッスリだ。
クレスとにかく、もし何かあるならちゃんと言えよ。
チェスターはいはい、わかったわかった。
イクス待たせたな ! それじゃ部屋のことも含めて艦内を案内するよ。
チェスターほら、行こうぜ !さあて、風呂はあるかなぁ ?どんな感じなんだろうな !
クレスお前、またのぞく気じゃないだろうな……。
チェスター(すまねぇ、クレス……。お前もこの世界にいるなんて思わなかったんだ……。)
チェスター――くそっ !

Character12話【11-15 デミテル洞窟 深部】
ファントム納得のいく説明をして下さい。……それとも言い訳といった方がいいでしょうかね。
マークだから何度も言ってるだろ ?あれが今一番有効な作戦なんだって。
ファントム私に黙って計画し、私の実験場に潜入させあまつさえ私の設計図を持ちだしたことがですか ?
ファントムあれがどれだけ価値のあるものかあなたはわかっていないようだ。
マークああ、そうみたいだな。すまないね。あんたよりも頭が悪いもんで。
マークでもおかげで、手土産つきのチェスターは大歓迎されてるみたいじゃねえか。
マークこれからはあっちの情報がまるわかりだ。あんたの望んだ通りだろ。
ファントム……あんな雑な計画で本当に怪しまれずに送り込めたとでも ?
ファントム……まあ、あなたにとってはそれでよいのでしょうね。他にも何やら考えておいでのようですから。
マーク……。
ファントム何にしろ、ことが動いたなら仕方がない。チェスターがどれだけやれるか私も楽しみに待つことにします。
ファントム大事な戦力であるリヒターをわざと負傷させてまで奴らの信頼を勝ち取ったのですからね。
ファントムさぞかしよい情報を流してくれることでしょう。
マーク……その情報があんたに行くかはまだわからねえけどな。
ファントムはぁ……いけませんよマーク。反抗的な態度もほどほどにしないと。あなたもフリーセルのようになってしまう。
マーク……どういうことだよ。なんでフリーセルの名前が出てくる。
ファントムフリーセル……救世軍の創始者にして初代リーダー。有能と言ってもいい人物でしたねえ。
ファントムその有能さが少々邪魔でしたので始末しましたけど。
マークお前が――やったのかよ…… !
ファントムええ。トップを挿げ替えるにはこれが一番簡単ですから。
マーク……。
ファントムわかって頂けましたか ? ご自分の立場を。それでは改めて申し上げましょう。
ファントム――お前はお飾りの救世軍リーダーだ。そのことを忘れるなよ。
マーク……っ。
ファントムそれでは、私は仕事があるのでこれで。あなたのせいで新たな設計図を用意しないといけなくなりましたから。
マークくそっ……頼むぜチェスター……。ファントムを追い詰めるためにもお前が働いてくれなきゃ困るんだ……。