| Character | 2話【12-1 いざないの森】 |
| ミリーナ | あれがビフレストの魔鏡兵器……。あの時と同じだわ。許さない……絶対に……。 |
| シェリア | ……ミリーナ ? ミリーナ、大丈夫 ? |
| ミリーナ | ―― ! ?ゆ、夢…… ? |
| シェリア | ごめんなさい。うなされていたみたいだから起こしちゃったんだけれど……。 |
| ミリーナ | ――や、やだ。私寝ちゃってたのね。ごめんなさい。 |
| シェリア | 魔鏡科学……っていうのを調べてるのよね ?大事なのはわかるけれど少し休んだ方がいいわ。 |
| リタ | そうそう。無理して寝ぼけた頭を動かそうとしてもろくなことにならないしね。 |
| キール | 残りの調べ物はぼくがやる。ミリーナのおかげで魔鏡科学にも随分詳しくなったしな。 |
| ミリーナ | みんな……ありがとう。でも大丈夫。寝落ちしちゃった分今は気力充実してるもの。 |
| ファラ | だったらミリーナも夜食を食べて。シェリアと二人でたくさん作ってきたから。 |
| シェリア | キール研究室が頑張ってるならファラ生活向上委員会も負けないように頑張らないと ! |
| リタ | その名前、ほんとバカっぽいんだけど。 |
| キール | ぼくの名前のついた研究室が不満だって言うのか ? |
| リタ | そっちの話じゃないわよ。まぁ、キール研究室っていうのも微妙な気がするけど。 |
| ミリーナ | ふふ、ディベートが盛んなところもキール研究室のいいところよね。リタもキールも楽しそうで良かった ! |
| 二人 | …… ! ? |
| ミリーナ | せっかくシェリアとファラが夜食を準備してくれたんだし私、イクスたちを呼んでくるわね。 |
| リタ | ……ねぇ。 |
| キール | 研究室の名前の件なら、単にぼくがみんなより早くケリュケイオンに合流したからで―― |
| リタ | うっさい。その話じゃなくてミリーナのことよ。 |
| リタ | 何か……大丈夫なの ?凄くつらそうに見えたけど……。 |
| ファラ | 滅びの夢……っていうのを見てたのかな ? |
| キール | おかしな話だよな。世界中の人間が同じような夢を見るなんて。 |
| シェリア | 何だか気になるわ。調べてみた方がいいんじゃないかしら。 |
| リタ | ……そうね。こっちはこっちでチェスターが救世軍から奪ってきた設計図の解析があるし別に調査隊を出した方がいいかもしれない。 |
| ファラ | 決まりだね。私、ミリーナに話してくる ! |
| ガイ | ――これがチェスターの記憶を元に起こしたファントムの城の見取り図だ。 |
| チェスター | あの城は魔術的な仕掛けが多い。正面から攻めるのは難しいぜ。 |
| ミリーナ | イクス、みんな。ファラたちがお夜食を作ってくれたわよ。 |
| ガロウズ | お、ありがたいな。ちょうど腹が減ってたんだ。 |
| ガイ | さすが、ファラたちは気が利くな――ってミリーナ。何だか顔色が悪いけど大丈夫か ? |
| イクス | 本当だ。このところキールたちと調べ物が続いてるから……。 |
| ミリーナ | 大丈夫よ。 |
| ファラ | 大丈夫じゃないでしょ、ミリーナ。 |
| ミリーナ | ファラ ! |
| ファラ | ミリーナ。さっき滅びの夢を見てうなされていたんでしょ ? |
| イクス | え ! ? そうなのか ! ? |
| ガロウズ | ……滅びの夢、か。 |
| イクス | そういえば、ガロウズは見ないのか ?滅びの夢。 |
| ガロウズ | あ、ああ。俺は、な。 |
| イクス | 俺もそんな夢は見ないからミリーナの苦しさをわかってやれないんだけど……。 |
| ファラ | それそれ。わたしたちも鏡映点だからなのかそういう夢は見ないでしょう ? |
| ファラ | この際、滅びの夢が何なのか調べてみたらどうかと思うの。 |
| イクス | 今はジェイドさんもリフィル先生も出かけてるから、勝手に動いていいのかわからないけど……。 |
| チェスター | 何言ってるんだ。別にあの二人がリーダーって訳じゃない。 |
| チェスター | それにここはイクスとミリーナが生まれた世界だろ。遠慮する方がおかしいんじゃないか。 |
| ガイ | チェスターの言う通りだ。イクス。誰かの力を借りるのは悪いことじゃない。でも最後に決断するのは自分だ。そうだろう ? |
| イクス | そうですね。チェスター、ガイさん、ありがとう。俺、仲間に恵まれてるなって思います。 |
| チェスター | お、おう……。 |
| ガイ | …………。 |
| イクス | それじゃあ、ファラの提案通り滅びの夢の調査をしよう。 |
| ファラ | あ、でも、せっかくだから夜食を食べていってね。 |
| イクス | もちろん、そうさせてもらうよ。それに出かけるのは朝になってからの方がいいし。 |
| ミリーナ | イクス……。ありがとう……。――私、カーリャを起こしてくるわね。 |
| ガロウズ | ケリュケイオンはどこにつける ? |
| イクス | とりあえずセールンドに頼むよ。 |
| ガロウズ | よしきた。任せときな ! |
| Character | 3話【12-2 静かな街道】 |
| カーリャ | ふわわわ……。眠いです。 |
| イクス | ごめんな、カーリャ。一応朝になるまで待ったんだけどまだ眠いか ? |
| ミリーナ | 鏡精は具現化した鏡士の力に依存するから、私の力が足りないせいかもしれない……。 |
| カーリャ | あわわわ、そんなことないですよぅ。ミリーナさまはちゃんと安定した力を供給して下さってます。 |
| ミリーナ | ありがとう、カーリャ。私も疲れをためないように気をつけるわね。 |
| ファラ | さて、これからどうするの ? |
| イクス | 滅びの夢を見たことがある人に話を聞いてみよう。朝だから、夢の記憶も鮮明だと思うし。 |
| リッド | 手分けして聞き込むか ? |
| カーリャ | ん ? あそこにいるのって救世軍じゃありませんか ? |
| リッド | おい、あんた。こんなところで何してるんだ ? |
| 救世軍兵士 | あんたたちか !ちょうどよかった、捜してたんだ ! |
| ミリーナ | ……あら ? あなたは救世軍のルックさん ? |
| イクス | ! ? |
| ファラ | 知り合いなの ? |
| イクス | 俺とミリーナが、オーデンセの消失に巻き込まれた時に助けてくれた人なんだけど……。でも、あなたはマークの部下ですよね ? |
| ルック | ……ああ、そいつは否定しない。ただ、今はあんたたちの敵じゃないんだ。 |
| ルック | あんたたちを捜していたのは引き合わせたい女の子がいるからなんだよ。 |
| イクス | 引き合わせたい女の子 ?それは一体―― |
| ミリーナ | 待って、イクス。罠かもしれない。 |
| ルック | 俺が救世軍の人間だから信用できないって言うなら、安心してくれ。俺は救世軍を辞めた人間だ。 |
| ルック | 指揮官が立て続けに消えちまう集団ってのが薄気味悪くなってきてな。 |
| ファラ | 指揮官が立て続けに消える ?じゃあ今の救世軍は誰が指揮してるの ? |
| ルック | 数日前にマークさんが消えちまってからは四幻将のリヒターさんが代理で指揮を執ってるがどうなっちまってるのかねぇ……。 |
| イクス | マークが消えた ! ?一体何が起こってるんだ ? |
| ルック | それがわからねぇから俺は逃げ出してきたんだよ。 |
| ルック | とにかく宿屋まで一緒に来てくれ。救世軍に追われてる子を保護してほしいんだ。 |
| ファラ | イクス、ミリーナ。行ってみよう。 |
| ファラ | 滅びの夢のことも気になるけど救世軍に追われている人が助けを求めてるなら放っておけないよ。 |
| イクス | そうだな。 |
| Character | 4話【12-3 発展途中の街】 |
| ルック | おい、カノンノ。例の鏡士を見つけてきたぞ。 |
| カノンノ・E | ……あれ ? リッドとファラ ! ? どうして ! ?二人ともどうやってティル・ナ・ノーグに来たの ? |
| ファラ | え ! ? リッド……知ってる ? |
| リッド | いや……覚えがねぇな。オレたちどこかで会ってたか ? |
| カノンノ・E | ――あ、何だ、そうか。リヒターさんと同じ別の世界の人たちなんだ。 |
| カノンノ・E | ごめんなさい、二人が知ってる人にそっくりだったから……。 |
| カーリャ | そっくりって……。顔が似ていて名前まで同じって、それって本当に別人なんですか ? |
| カノンノ・E | 異世界同士の距離が近いとそういうこともあるんだって教えてもらったの。あなたは、鏡精さん ? |
| カーリャ | え、はい、そうですけど……。 |
| カノンノ・E | それじゃあ、横にいる二人がイクスさんとミリーナさんですね。マークとフィリップから話は聞いています。 |
| イクス | フィリップ ! ? フィリップってまさかフィル――フィリップ・レストンのことか ! ? |
| カノンノ・E | そうです。 |
| ミリーナ | フィルが……救世軍に ! ? |
| リッド | フィルって、確かイクスたちの幼なじみだったよな。ええっと……― |
| カノンノ・E | 私はカノンノ・イアハートです。 |
| リッド | カノンノか……あんたは何者なんだ ?フィルって人とはどういう関係なんだ ? |
| ファラ | 待って。宿の外が騒がしいよ。 |
| ルック | ――くそ。追っ手に見つかっちまったな。俺が奴らを引きつけておくからあんたたちは逃げてくれ。 |
| イクス | それじゃあ、あなたが危険なんじゃ……。 |
| ルック | マークさんには恩があるんだ。そのカノンノって子はマークさんの妹だっていうし助けるのは当然だろ。 |
| ルック | まぁ、こちとら逃げるのは上手いんだ。気にせず行ってくれ。 |
| ミリーナ | わかりました。カノンノ、一緒に来てもらえる ? |
| カノンノ・E | もちろんです。マークからミリーナさんを頼るように言われてますから。どうかよろしくお願いします。 |
| イクス | あの―― |
| ルック | 何だよ、ぐずぐずしてると捕まっちまうぞ。 |
| イクス | オーデンセの時といい、今回といい本当にありがとうございます。ルックさん。どうか、気を付けて。 |
| ルック | ……あんたたち、どうみてもビフレストの亡霊と手を組んだ破壊者には見えないな。 |
| ルック | まぁ、いい。早く行け。 |
| リッド | 裏口は廊下を出て左だ、急ぐぞ ! |
| Character | 5話【12-4 静かな街道】 |
| リッド | 追っ手は振り切ったみたいだな。 |
| カノンノ・E | ごめんなさい。皆さんに迷惑をかけてしまって。 |
| イクス | カノンノ。きみはどうして救世軍に追われているんだ ? |
| イクス | マークの妹って、どういうことなんだ ?それにフィルとは一体どういう関係なんだ ? |
| カノンノ・E | わからないことばかりですよね。順を追って説明させて下さい。 |
| カノンノ・E | まず私は、このティル・ナ・ノーグの人間ではありません。 |
| ミリーナ | あなたも鏡映点ってこと ? |
| カノンノ・E | いえ……ストレンジャー、だとフィルは言っていました。 |
| カノンノ・E | 具現化されたことには違いないけれど私は他の鏡映点の方とは違って大陸の具現化には関わっていないんです。 |
| ファラ | つまりカノンノは、カノンノの世界からカノンノの存在だけが具現化したってこと ? |
| リッド | でも具現化っていうのは鏡士じゃないとできないんだろ ? |
| リッド | 異世界からの具現化ができるのはイクスたちぐらいだって聞いてるけどな。 |
| カノンノ・E | 私を具現化したのはフィルです。 |
| カノンノ・E | 私、グラニデ――自分の世界以外の世界も見てみたくて、異世界を旅して回っていたんです。 |
| カノンノ・E | でもこの前の転送の時に妙な力に足を取られてしまって……。 |
| カノンノ・E | 気づいたら真っ暗で何もないところに放り出されていました。 |
| カノンノ・E | 体が金色に光って、苦しくなったときに手が差し伸べられたんです。 |
| カノンノ・E | その手をつかんで、必死に逃げ出した先がこのティル・ナ・ノーグでした。 |
| イクス | 真っ暗な世界……。金色の光……。それってまさか……虚無 ? |
| カノンノ・E | はい。後から、私のいた場所が虚無と呼ばれる滅びの世界だと聞きました。 |
| カノンノ・E | フィルは私を虚無から助け出すために私をスキャンして具現化したんです。 |
| カノンノ・E | そのとき発生したエネルギーのおかげでもう一人の私――元の私は虚無から元いた世界へ引き戻されました。 |
| カノンノ・E | 具現化された私は、こうしてティル・ナ・ノーグに……。 |
| ミリーナ | フィルが、カノンノを具現化した……。カレイドスコープも無しで異世界にアクセスしたなんて……。 |
| カノンノ・E | フィルは滅びから世界を救うための研究をしていると言っていました。 |
| カノンノ・E | それで虚無を観察しているときに私を見つけてくれたんです。 |
| カノンノ・E | 私、行くところもなかったからフィルのお手伝いをすることにしたんです。 |
| カノンノ・E | マークともフィルの研究室で知り合いました。 |
| イクス | でもカノンノはマークの妹なんだよな。 |
| カノンノ・E | あの……マークの妹分ということで救世軍の皆さんに紹介されていたのでいつの間にか間違えられてしまって。 |
| カノンノ・E | 本当の妹って訳ではないんです。ごめんなさい。 |
| ミリーナ | でもその救世軍から今は追われているのよね。何があったの ? |
| カノンノ・E | 私も詳しいことはわからないんです。私はずっとフィルの傍にいたから救世軍のことはあまり詳しくなくて。 |
| カノンノ・E | でも救世軍に何かあったことは間違いありません。 |
| カノンノ・E | そのせいでフィルは救世軍に捕まって私はマークをおびき出すために利用されました。 |
| イクス | え ? フィルは救世軍って訳じゃないのか ? |
| カノンノ・E | 元々救世軍は、フィルとフィルのお友達のフリーセルさんで結成した義勇軍だったそうなんです。 |
| カノンノ・E | フィルは救世軍としての活動をマークに任せて、一人で滅びを食い止める研究をしていたらしいです。 |
| カノンノ・E | でも、突然フリーセルさんが暗殺されてしまったそうで……。 |
| カーリャ | あわわわ……。暗殺……。 |
| リッド | きな臭い話になってきたな。 |
| カノンノ・E | それでマークがフリーセルさんの代わりに指揮を執るようになったと聞いています。 |
| カノンノ・E | でも突然救世軍がフィルの研究室にやってきて、フィルも私も連れさられてしまいました。 |
| カノンノ・E | 私はフィルと引き離されてしまって……。お願いです。フィルとマークを救世軍から助けて下さい ! |
| カノンノ・E | 私、二人を助けるためならどんなことでもします。二人は私の命の恩人なんです。 |
| イクス | わかった。 |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| イクス | ミリーナ。マークは俺たちにとっても命の恩人じゃないか。それにフィルは幼なじみだろ。 |
| ミリーナ | ええ……。でも今までのことを考えると……。 |
| イクス | わかってる。だから、決断する前にみんなの話を聞いておきたい。 |
| リッド | ……でも、もう自分の中では決めてるんだろう、イクス。どこかの誰かと同じ目をしてるからな。 |
| ファラ | イクス、わたしは間違ってないと思う。助けを求めて伸ばしてきた手を振り払うなんてできないよ。 |
| ファラ | 例え敵対していた人でも、話せばわかることだってあるんじゃないかな。 |
| カノンノ・E | マークが皆さんと敵対していたのは救世軍に追われるようになってから初めて知りました。 |
| カノンノ・E | でも少なくとも私の前では、マークは二人のことを「いい奴らだ」って笑って話してくれたから……。だから、お願いします ! |
| ミリーナ | ……カノンノ。そんなに頭を下げないで。ごめんなさい。私も警戒しすぎたのかも知れない。 |
| ミリーナ | でも私たちには協力してくれる仲間がいるの。みんなの話も聞かないと。少しだけ時間をちょうだい。 |
| カノンノ・E | もちろんです。困らせてごめんなさい。 |
| イクス | よし、ケリュケイオンとの合流地点に向かおう。 |
| Character | 6話【12-5 とこしえの森】 |
| リフィル | そう……。こちらへの報告ありがとう。判断はイクスに任せるわ。 |
| リフィル | ただ助けに行くというなら決して無理はしないこと。そして気を抜かないこと。 |
| リフィル | 全てが罠かも知れない。人を信じるのと同じぐらい、情報を精査することも大事よ。 |
| イクス | はい、リフィル先生。そちらの調査はどれくらいかかりそうですか。 |
| リフィル | まだかなりかかりそうなの。後のことはよろしく頼むわね。 |
| リフィル | それからロイドとルークとカイルに宿題を忘れないように伝えてちょうだい。 |
| リフィル | あとそろそろジェイドがそっちに着く頃だからろくでもないことをしないように見張っておいてね。 |
| カイル | えー ! ? もしかして宿題出されたのってオレとルークとロイドだけなの ! ? |
| ロイド | やっべー。先生がいない隙にと思ってクレス道場に入り浸ってた……。 |
| ルーク | てか、何で俺がカイルとロイドと同じ扱いなんだよ ! |
| カノンノ・E | フフ…… ! |
| ミリーナ | どうしたの、カノンノ。 |
| カノンノ・E | ごめんなさい。私の世界にもカイルたちにそっくりな人たちがいるんです。 |
| カノンノ・E | まるで同じ人みたいな反応だから何だか懐かしくて……。 |
| イクス | よし。みんなの意見も大体俺と同じだったしリフィル先生も任せてくれるそうだから……。 |
| ロイド | マークとフィリップって人を助け出すんだな。任せとけ ! |
| カイル | オレ、必ず二人を助け出してみせるよ ! |
| ルーク | まずは二人のいそうな場所のあたりをつけないとな。 |
| ユーリ | おいおい、お前たちは宿題やっとけって釘刺されたばかりだろ。ここはオレに任せて三人はさっさとお勉強に戻るんだな。 |
| ジェイド | そうやって体よく子守から抜け出そうという訳ですか。 |
| ユーリ | 一番の問題児が帰ってきたな……。 |
| ジェイド | 話は聞かせてもらいました。マークにしてもフィリップにしても重要な情報を握っていることには違いない。 |
| ジェイド | カノンノ。二人が囚われている場所に心当たりはありますか ? |
| カノンノ・E | はい。何ヵ所か、救世軍が拠点にしている場所を知っています。 |
| イクス | 手分けして捜すしかないな。カノンノも手伝ってくれるか ? |
| カノンノ・E | もちろんです ! |
| ロイド | そうだ !チェスターなら救世軍のことも詳しいよな。俺、ちょっと捜してくる ! |
| ルーク | あ、俺も行く ! カイルも来いよ。 |
| カイル | うん。ユーリ、抜け駆けは駄目だからな ! |
| カノンノ・E | チェスターさんがここにいるんですか ? |
| ジェイド | ああ、チェスターも救世軍にいましたからねぇ。顔見知りですか ? |
| カノンノ・E | は、はい……。 |
| ジェイド | …………。 |
| ジェイド | 失礼。私もクレスに話があるので後のことはよろしくお願いします。 |
| ユーリ | …………。 |
| イクス | わかりました。それじゃあ、カノンノ。拠点の場所を教えてくれ。 |
| イクス | ユーリさんの意見も聞きたいんでこっちに来てもらえますか。 |
| ユーリ | ……ん ? ああ、わかった。 |
| Character | 7話【12-6 とこしえの森 奥地】 |
| イクス | こちらイクス。A地点が見えてきた。これから潜入する。 |
| マリアン | 了解しました。BからDまでの救世軍拠点に向かった皆さんも、潜入に成功したようです。 |
| イクス | ありがとう。また連絡します。 |
| チェスター | こういうとき、人数が多いのは助かるな。 |
| カーリャ | 数は力ですからね。 |
| カノンノ・E | でも一番可能性が高いのはこの先のA地点にある拠点です。 |
| カノンノ・E | 一番古くから救世軍が使っている拠点なので……。 |
| ミリーナ | ねぇ、カノンノ。よかったら、もっとフランクに話さない ?女の子同士、仲良くしましょう。 |
| カノンノ・E | うん……でも、色々無茶なお願いをしているから……。 |
| ミリーナ | 私……これでも悪かったなって思っているの。イクスみたいにすぐにカノンノの申し出を受けてあげられなかったから。 |
| ミリーナ | 親しい人を案じる気持ちはみんな同じなのに色々なことを考え過ぎちゃって……。 |
| ミリーナ | しかもマークはカノンノに私を頼れって言っていたんでしょう ?せっかく信じて頼ってくれたのに……。 |
| カノンノ・E | ミリーナさん……。 |
| ミリーナ | ミリーナって呼んで。私、カノンノともっと仲良くなりたいわ。 |
| カノンノ・E | ありがとう……ミリーナ ! |
| チェスター | カノンノはイクスとも気が合うと思うぜ。 |
| イクス | 俺と ? |
| カーリャ | カノンノさまも変態的に心配性なんですか ? |
| イクス | ど、どういう意味だよ ! ? |
| チェスター | いや、イクスって読書が趣味なんだろ ? |
| カノンノ・E | え ? イクスさんも本が好きなんですか ? |
| イクス | ああ。本って俺の知らないことがたくさん詰まってるからさ。 |
| イクス | 寝る前に本を読み始めて気づいたら朝だったなんてこともあるよ。 |
| カノンノ・E | わかります。私も本を読んでいるとつい夢中になっちゃうから。 |
| ミリーナ | ふふ、よかったね、イクス。読書友達が増えて ! |
| イクス | うん。カノンノにケリュケイオンの書庫を見せたいよ。 |
| カノンノ・E | うわぁ ! 見てみたい ! |
| ミリーナ | 状況が落ち着いたら、必ず案内するわ。まずはフィルとマークを助けましょう ! |
| カノンノ・E | うん、私も頑張るね ! |
| Character | 8話【12-7 A地点のアジト 入口】 |
| イクス | ……あんまり人がいないな。おかげで侵入するのは簡単だったけど。 |
| チェスター | ここにはいないのかもしれないな。マークなりフィリップなりが捕まってるなら警備が厳重になるんじゃないか ? |
| ミリーナ | そうね。でも、もしもってこともあるし他の班が見つけたって連絡をもらうまではしっかり捜しましょう。 |
| マーク | ――誰だ ? 誰かいるのか ? |
| カノンノ・E | マーク ! ? |
| マーク | カノンノ ! ? どうしてここに ! ? |
| カノンノ・E | 助けに来たの。ミリーナたちも一緒だよ。 |
| マーク | ! ? |
| チェスター | …………。 |
| マーク | ……なんだよ、このメンツは。 |
| チェスター | 悪かったな。【裏切り者】がこんなところにいてよ。 |
| イクス | マーク。今助けるから。 |
| マーク | ……へぇ、この牢の鍵を持ってるってのか ? |
| ミリーナ | イクスは鏡士なのよ ? |
| イクス | 錠前を元に、鍵の形を思い描いて――。 |
| チェスター | はー…… ! 鏡士ってのは便利だな !こんなに簡単に鍵が作れるのか。やりたい放題だな ! |
| イクス | はは……。あんまり複雑だと俺にはまだ無理だけどね。 |
| イクス | ……マーク。早く行こう。 |
| マーク | はっ、かっこわりぃな。でも――ありがとな。 |
| イクス | 前に助けてもらっただろ。そのお礼だよ。 |
| マーク | …………。 |
| カノンノ・E | マーク。フィルはどこ ? |
| マーク | あ、ああ。この拠点にいないなら別の場所だとは思うが……。 |
| カノンノ・E | 場所、わからない ? |
| マーク | わりぃな。どうにもぼやけちまっててよくわからねぇんだ。 |
| ミリーナ | 何 ? どういうこと ? |
| マーク | ……何でもねぇよ。助けてもらったことは感謝してるが俺はフィルを捜す。 |
| イクス | フィルなら俺たちも捜す――いや、もう捜してる。 |
| マーク | は ? |
| カノンノ・E | 今、鏡映点のみんなが手分けして救世軍の拠点を回ってるの。 |
| マーク | ――いや、それは……どうかな。 |
| イクス | どういうことだ ? |
| マーク | フィルは特別なんだ。俺みたいに、こんな辺境の拠点に放置していい存在じゃない。 |
| マーク | 救世軍のアジトを回ったところであいつはいないと思うぜ。 |
| ミリーナ | でもマークを見つけることはできたわ。とりあえずケリュケイオンに行きましょう。 |
| マーク | お前らを殺そうとしていた俺を連れて行くのか ?とんだお人好しだな。 |
| ミリーナ | 殺そうとしていた相手に妹分を任せようとするあなたも相当お人好しだと思うけど ? |
| マーク | ……そりゃそうだ。だせぇが仕方ないか。わかった。一緒に行かせてもらう。 |
| チェスター | …………。 |
| Character | 9話【12-9 A地点のアジト 出口】 |
| イクス | どうした、マーク。 |
| マーク | ……わりぃ。前言撤回だ。俺はここに残る。 |
| チェスター | はぁ ? 今更何言ってるんだお前 ! ? |
| イクス | フィルを捜すなら協力し合った方がいいだろ ? |
| マーク | お前みたいな坊やと協力して何になるって言うんだよ。 |
| イクス | 坊やって言いぐさはないだろ。どうして急にそんなこと言い出すんだよ。 |
| マーク | なんだっていいだろ。とにかく俺はお前らと一緒に行く気はない。戻らせてもらう。 |
| カノンノ・E | 待って、マーク。ちゃんと話した方がいいよ。本当のこと。 |
| マーク | …………。 |
| カノンノ・E | 私、マークがミリーナとイクスにどんなことをしてきたのかよく知らないけど……。 |
| カノンノ・E | でも今は協力してるんだから隠しごとはやめようよ。 |
| イクス | マーク。何か理由があるなら話してくれよ。それに俺たち、フィルのことも聞きたいんだ。 |
| マーク | ……わかったよ。どっちにしても俺はこれ以上お前らと一緒にはいけないんだ。【物理的】にな。 |
| チェスター | どういうことだ ?もっとわかるように話せよ。 |
| マーク | 俺は……フィリップの鏡精なんだ。 |
| カーリャ | え ! ? 私と同じ…… ? |
| イクス | 鏡精 ! ?でもカーリャとマークはまるで違うけど―― |
| ミリーナ | カーリャが小さな妖精の姿をしているのは私の具現化の力がまだこの程度だからなの。 |
| ミリーナ | もしもフィルがカレイドスコープなしで異世界から人を具現化できるほどの力を持っているなら、鏡精だって当然もっと……。 |
| マーク | まぁ、そういうことだ。鏡精はご主人様の傍を離れて行動することができない。 |
| マーク | フィルほどの鏡士になれば俺の行動範囲もかなり広いが、それでも限界はある。 |
| マーク | 感じるんだよ。これ以上進むと俺の存在が保てなくなって消えちまうって。 |
| ミリーナ | つまりフィルはここからかなり離れたところにいて、この拠点のある場所は限界ぎりぎりのところにあるのね。 |
| マーク | ああ。どうりで監視も緩いしろくに飯も出てこない訳だぜ。 |
| マーク | 俺がここから出られないことを計算して閉じ込めてたんだ。 |
| イクス | あ、でも、前にカーリャがミリーナから離れすぎて消えたときはすぐにまた復活できてたけど……。 |
| マーク | フィルの生死がわからないからな。今ここで俺が消えたら二度と復活できるかわからない。 |
| マーク | 仮に復活できたとしてももう姿も記憶も変わっちまってるかも……。 |
| ミリーナ | え ? おかしくない ?フィルが死んでいたらマークだって消えてしまう筈でしょう ? |
| マーク | それは―― |
| 救世軍 | いたぞ ! イクスとミリーナだ ! |
| チェスター | くそ、見つかっちまったか。 |
| マーク | ここは俺が食い止める。お前たちは逃げろ。 |
| カノンノ・E | でも、マークが―― |
| マーク | どうせ鏡精だ。これ以上進めないならせめて壁になってやるさ。早く行け ! |
| イクス | ――わかった。無理するなよ、マーク。 |
| マーク | ふん。馬鹿にするなよ ?鎖に繋がれちゃいるが、雑魚に負けるようなマーク様じゃねぇよ。 |
| ミリーナ | 鏡精は鏡士の心の分身なのよ。フィルのためにも……無茶はしないで。 |
| マーク | はいはい、早く行けって !チェスター、後は頼むぞ ! |
| チェスター | ――わかったよ !行くぞ、イクス、ミリーナ ! |
| Character | 10話【12-10 鏡士の神殿 入口】 |
| リオン | 待っていたぞ、イクス。 |
| クレス | フィリップ・レストンのことで情報が手に入ったんだ。 |
| イクス | フィルの居場所がわかったのか ! ? |
| リオン | いや、各地に調査に出た連中もフィリップの居場所に関する情報は得られなかったようだ。 |
| リオン | これ以上救世軍の拠点を洗っても手がかりは得られないだろう。 |
| カノンノ・E | マークの言ってた通りなのかも。 |
| カノンノ・E | フィルは簡単には見つからないような場所に閉じ込められてるんだって言ってたから。フィルは重要な存在だからって。 |
| クレス | 確かに、重要な存在なんだと思う。僕たちが聞いてきた話が事実なら。 |
| ミリーナ | フィルの情報っていうのは―― |
| リオン | フィリップ・レストンは、第103代――当代ビクエの真名だ。 |
| リオン | つまり、僕たちのあずかり知らないところで大地を具現化していた犯人がフィリップということだな。 |
| イクス | フィルが当代ビクエ ! ? 鏡士の中の鏡士 ! ?そんな馬鹿な ! あいつはまだ15歳ですよ !鏡士としては半人前だって言ってたのに ! |
| リオン | それを僕に言うな。僕は救世軍から聞き出した情報を伝えただけだ。 |
| リオン | フィリップのことを聞きたいならそこの女に聞けばいいんじゃないか ? |
| カノンノ・E | …………。 |
| イクス | カノンノ。教えてくれ、フィルは……俺たちの幼なじみのフィリップ・レストンはビクエの鏡士なのか ? |
| カノンノ・E | そう、だと思う。このティル・ナ・ノーグで最高の鏡士だって言ってたから。 |
| イクス | だとしたら、どうしてフィルはゲフィオン様の意向を無視して勝手に大地の具現化をしたんだ。 |
| リオン | それよりも、フィリップは何故病気だなどと偽っていたんだ。 |
| リオン | 奴がいれば、イクスやミリーナが具現化をおこなう必要などなかったんじゃないか ? |
| リオン | 城の連中も、救世軍も、フィリップも何をしようとしていたんだ ? |
| リオン | 大地の具現化の目的は、本当にこの世界を救うためだったのか ?この状態では何も信じることはできないぞ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| クレス | 勝手な具現化の犯人がフィリップという人だと決めつけるのは早計かも知れない。 |
| クレス | でも、僕たちは少し慎重に動いた方がいいのかも知れないね。 |
| イクス | ……フィルを見つけよう。マークを助けるためにも、こんがらがった状況をはっきりさせるためにも。 |
| ミリーナ | …………。 |
| イクス | ミリーナ ? 顔色が真っ青だぞ。大丈夫か ? |
| ミリーナ | ……え ? ああ、ええ、そうね。 |
| ミリーナ | それよりイクス、私アイデアがあるの。フィルの魔鏡の軌跡をたどればフィルの居場所がわかるんじゃないかしら。 |
| ミリーナ | 鏡士は死ぬまで魔鏡を手放さない。魔鏡の場所がわかればフィルの居場所もきっとわかるわ。 |
| イクス | 本当にそんなことができるなら……。でもミリーナ少し休んだ方がいいんじゃないか ? |
| ミリーナ | ううん。急ぎましょう。今の状況でのんびりする訳にはいかないわ。 |
| リオン | ミリーナの言う通りだ。多少体に負担がかかろうが、フィリップを見つけられるなら無理をしてもらう。 |
| クレス | ……ミリーナ、本当にいいのかい ?休んでもいいんだよ。ここで倒れる方が大変なんだから。 |
| ミリーナ | いえ、私もリオンさんの意見に賛成です。今無理をしてでもフィルを見つけるのは重要なことだと思うから。 |
| クレス | ……わかったよ。イクス、ミリーナを見ていてあげてくれよ。 |
| イクス | もちろんです。 |
| ミリーナ | 魔鏡の軌跡をたどるには集中しなくちゃいけないの。 |
| ミリーナ | 以前ゲフィオン様がいた鏡士の神殿に向かいましょう。 |
| Character | 11話【12-11 鏡士の神殿 最深部】 |
| カーリャ | あの時の鏡震の影響はなかったみたいですね。 |
| カノンノ・E | ここに来たってことはこの場所に何か意味があるんだよね ? |
| ミリーナ | 鏡士の魔鏡はこの神殿で作られることが多いの。フィルの魔鏡もきっとここで作られたものの筈よ。 |
| ミリーナ | だからここでフィルの魔鏡の痕跡を見つけてそれをたどるのよ。 |
| カノンノ・E | 魔鏡の痕跡……。どんなものなのかな。 |
| ミリーナ | 人間には見えないわ。鏡精だけが見える虹色の光なのよ。 |
| イクス | 鏡精しか見えないのか ! じゃあ、俺は……。 |
| カノンノ・E | イクスも鏡精を呼べば ? |
| イクス | え ! ? |
| カノンノ・E | え ? なんで驚くの ?イクスにも鏡精がいるでしょ ? |
| イクス | いや、俺……鏡士としての正式な訓練は受けてないから……。 |
| カノンノ・E | でもイクス、鍵を具現化したよね。あれだけのことができるなら鏡精も呼べるんじゃないかな。 |
| イクス | 俺なんか―― |
| イクス | …………。 |
| ミリーナ | イクス。もしイクスが鏡精を呼びたいなら私手伝うわ。 |
| カノンノ・E | イクスの力、凄く強いよ。フィルだってイクスは凄い才能の持ち主だって褒めてたもの。できるよ、絶対 ! |
| イクス | ……逃げてばかりはいられないよな。俺、やってみる。ミリーナ、教えてくれ。 |
| イクス | アニマを感じろ。俺の中にいるもう一人の自分を。俺の心の現し身―― |
| イクス | 現世に姿を見せろ ! 鏡精コーキス ! |
| コーキス | いやっほーぅっ !ようやく俺の出番って訳か !マスター、ありがとな ! |
| カノンノ・E | す、すごい ! すごいよ、イクス ! 鏡精だよ ! |
| イクス | 俺の鏡精……。コーキス…… ? |
| コーキス | おう、マスター ! |
| イクス | ま、マスター…… ? |
| ミリーナ | ふふ。鏡精の性格は人それぞれだから。 |
| ミリーナ | 心の中の理想とか、抑圧している感情とか色々な物が干渉して鏡精の性格が作られるの。心の半身よ。 |
| イクス | 俺の心の半身……。 |
| カーリャ | むむ、カーリャの後輩爆誕ですね ! |
| コーキス | ちーっす ! カーリャパイセン、よろしく ! |
| イクス | 俺の心の半身と思うとちょっと複雑だな……。 |
| ミリーナ | ふふふ、可愛いじゃない。それじゃあ二人とも、フィルの魔鏡の痕跡を捜してくれるかしら。 |
| ミリーナ | 二人は私たちの心から生まれた鏡精だから私たちの記憶の中にある【フィルの魔鏡】を知っている筈よ。それを追いかけるの。 |
| 二人 | 了解 ! |
| カノンノ・E | 待って ! 魔物の気配がする。 |
| ミリーナ | そんな……。この最深部は神聖な場所の筈なのに。 |
| イクス | 地震で環境が変わったのかも知れない。コーキス、カーリャ。二人はフィルの魔鏡の痕跡を捜してくれ。 |
| イクス | 俺たちは魔物を迎え撃つ。 |
| Character | 12話【12-11 鏡士の神殿 最深部】 |
| イクス | コーキス、カーリャ ! どうだ ? |
| ミリーナ | 二人とも集中してるわ。きっともうすぐ―― |
| カーリャ | 見えました ! |
| コーキス | 俺にも見えたぜ ! |
| 二人 | こっちだ ! |
| カノンノ・E | ……え、えっと。二人とも正反対の方を指さしてるけど。 |
| カーリャ | こっちですよ。こっちからフィルさまの魔鏡の気配をギラギラ感じました ! |
| コーキス | いや、マスター ! こっちだ。こっちにフィルの魔鏡がキラキラしてるのが見えたぜ。 |
| カーリャ | ちょっと、コーキス。何先輩に逆らってくれちゃってるんですか ! |
| コーキス | はぁ ? ちょっと先に生まれたからって先輩風ふかすなよ、ベイビー。 |
| ミリーナ | 二人とも、喧嘩は駄目よ ! |
| カーリャ | だけど、ミリーナさま。本当にこっちに魔鏡の軌跡が見えたんです。 |
| コーキス | マスター。俺、嘘なんか言ってないぞ。 |
| カノンノ・E | もしかしてフィルの魔鏡が二つあるとか割れて二箇所にあるとか ? |
| イクス | うん。俺も同じことを考えてた。俺たちの鏡精が嘘をつく訳ない。二手に分かれて、両方とも確認してみよう。 |
| ミリーナ | 私はカーリャの見つけた軌跡を追うわね。 |
| イクス | 俺はコーキスの軌跡を追う。お互い魔鏡で連絡を取り合おう。 |
| ミリーナ | カノンノはどうする ? ケリュケイオンに戻っていてもいいけれど、もしよかったらイクスと一緒に行ってくれると嬉しいな。 |
| イクス | え ? どうして俺と ? |
| ミリーナ | イクス一人じゃ心配だもの。カノンノは明るくて元気できっとイクスを励ましてくれると思うから。 |
| イクス | ば、馬鹿にするな。俺は一人だって大丈夫だよ。 |
| イクス | それよりミリーナは最近無理してるからカノンノについていってもらって―― |
| カノンノ・E | ふふふ ! 二人とも本当にお互いのことを思い合ってて優しいね。 |
| カノンノ・E | でも今回はミリーナの提案が早かったから私はイクスについていく。それでいいかな ? |
| ミリーナ | んー、もう ! カノンノったらなんて素直で可愛いのかしら。イクスのことお願いね。 |
| イクス | ちぇっ。じゃあカノンノ、よろしく頼むな。 |
| カノンノ・E | ううん。フィルを見つけるためなんだし私、もっともっと頑張るね ! |
| イクス | それじゃあ、行こう |
| Character | 13話【12-12 ビクエの陵】 |
| カノンノ・E | この遺跡、何だか不思議な場所だね。凄く静かで、空気が凛としてる。 |
| イクス | ここは……ビクエの陵、だと思う。本でしか見たことがないけど。 |
| カノンノ・E | ビクエの陵…… ? お墓ってこと ? |
| イクス | うん。歴代のビクエが眠っている場所だって聞いてるけど、こんなところにフィルの魔鏡があるなんて、何だか嫌な予感がするな……。 |
| カノンノ・E | お墓だからって怖いこと考えなくてもいいと思うな。 |
| カノンノ・E | お墓って、亡くしてしまった大切な人に語りかけたりする場所でもあるでしょ ? |
| コーキス | そうそう。マスターは悪い方向に考え過ぎなんだよ。 |
| コーキス | ミリーナさまの心配した通りだったな。カノンノさまに感謝しろよー。 |
| イクス | 本当だな。うん、きっと大丈夫だ。コーキス。フィルの魔鏡はどこだ ? |
| コーキス | こっちだ。この奥だよ。 |
| コーキス | これだ ! マスター、これがフィルさまの魔鏡だ。 |
| イクス | うん、間違いない。フィルが使ってた魔鏡だ。でも……もう一つある魔鏡はなんだろう。 |
| カノンノ・E | そっちはフィルが最近使ってた魔鏡じゃないかな。歴代ビクエが代々受け継いできた古い魔鏡だって教えてくれたことがあるの。 |
| イクス | じゃあどっちもフィルの物で間違いないな。でも肝心のフィルはどこに……。 |
| コーキス | もしかして、ここに鏡をおいてどこかに行ったんじゃないか ? |
| イクス | 鏡士が魔鏡を手放すなんて……。 |
| コーキス | あ、でもマスター。その鏡があればマークって奴も助けられるかも。 |
| イクス | え ? そんなことできるのか ? |
| コーキス | 魔鏡は鏡士のもう一つの心だからな。 |
| コーキス | もしマークって奴がこの魔鏡のどっちかを使って呼び出された鏡精なら、鏡を持っている限り存在が消えちまうことはなくなるよ。 |
| コーキス | もっとも鏡士からのアニマの供給がないから存在を保つのがやっとだと思うけど。 |
| イクス | でもマークをケリュケイオンに連れ帰ることはできるな。 |
| カノンノ・E | うん。すぐにマークのところに行こう。 |
| イクス | よし、ミリーナに連絡しておくよ。 |
| Character | 14話【12-13 王宮への道】 |
| ミリーナ | ……ねぇ、カーリャ。ここ、お城よ ?本当にここにフィルの魔鏡があるの ? |
| カーリャ | ありますよ ! 多分……。 |
| ミリーナ | フィルがここに来てるってことなのかしら……。 |
| カーリャ | ミリーナさま。何だかあんまりフィルさまに会いたくなさそうですね ? |
| チェスター | ん ? 幼なじみなんだろ ? |
| ミリーナ | ええ。イクスとは違って、手の掛からない真面目ないい子よ。凄く可愛い子なの。 |
| チェスター | ……かわ……いい ? そうなのか ?マークから聞いてる話と随分違うな。 |
| カーリャ | ほえ ? どう違うんですか ? |
| チェスター | ええっと……なんて言ってたかな。確か、研究大好きな偏執狂で友達も作らないで研究室に籠ってるって。 |
| チェスター | オレも直接会ったことがある訳じゃないから本当のところはわからないけどな。 |
| ミリーナ | ……そう。 |
| ? ? ? | それは誰の話ですか ? |
| チェスター | ファントム ! ? |
| ミリーナ | ! ? |
| カーリャ | はわわわわ ! ?ミ、ミリーナさま、大変です !あ、あいつの魔鏡がフィルさまの魔鏡で―― |
| ゲフィオン | ビクエ ! ? そこで何をしている ! ? |
| チェスター | な……なんだと ? |
| ファントム? | これはこれはゲフィオン様。ご無沙汰しております。 |
| ファントム? | 国王陛下がこの第103代ビクエをお呼びだと伺いましたので病を押して登城いたしました。 |
| ゲフィオン | ――では、早く陛下の元へ向かうがいい。 |
| ファントム? | それでは失礼致します。 |
| ファントム? | チェスター、ミリーナ。それに小さな鏡精。お話はまたの機会と致しましょう。失礼しますよ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| チェスター | おい、ゲフィオンだったな。あんた、あいつの正体を知ってるのか ! ? |
| ゲフィオン | 正体 ? あれは我が国の鏡士の最高位であるビクエ。……フィリップ・ビクエ・レストンだ。 |
| チェスター | あいつは救世軍の幹部のファントムなんだよ ! |
| ゲフィオン | 救世軍だと ! ? |
| ゲフィオン | ――そうか、あのフィルが救世軍なのか……。 |
| ミリーナ | ――ゲフィオン様。あの【夢】は真実なのですか ? |
| チェスター | ミリーナ ? 一体何の話だ ? |
| ゲフィオン | ……夢の記憶はそこまで進んだのか。ならば今更尋ねるまでもなかろう。全て真実だ。 |
| カーリャ | ミリーナさま…… ? |
| ミリーナ | ――わかりました。もう、迷いません。悩みません。苦しみません。私は――今度こそイクスを守ります。 |
| ゲフィオン | ……それでいい。 |
| イクス | ミリーナ。マークを助けられそうな方法がわかったんだ。カノンノともう一度例の拠点に向かってみる。 |
| ミリーナ | こちらも報告したいことがあるの。拠点で合流しましょう。 |
| ミリーナ | ゲフィオン様。私たちもこれで失礼します。 |
| ゲフィオン | ――待て。戻るのならイクスに伝えてくれ。私も陛下も全てを話す準備ができた、と。 |
| ミリーナ | ! |
| ミリーナ | ――わかりました。 |
| Character | 15話【12-14 A地点のアジト 中核】 |
| マーク | ……おい。性懲りもなくまた来たのか。お前らは。 |
| イクス | お前だって、また捕まってるじゃないか。 |
| マーク | あのなぁ。よく考えてみな。ここに来るまで救世軍の連中には襲われなかっただろう ? |
| マーク | この牢にも鍵は掛かってねぇよ。この拠点は俺が制圧した。まぁ、そのうち救世軍の援軍が来るだろうけどな。 |
| カノンノ・E | じゃあ、どうして牢屋にいたの ? |
| マーク | 暗くて静かなんでな。寝るのにはちょうどいい。どうせこの拠点からは出られないんだしな。 |
| カノンノ・E | ねぇ、マーク。私たち、フィルの魔鏡を見つけたの。 |
| カノンノ・E | これがあればマークもフィルの傍を離れて動けるんでしょう ? |
| マーク | こいつは……確かにフィルが俺を呼び出したときの魔鏡だ。でも何でこれがあって、フィルがいないんだ ? |
| イクス | わからない。ビクエの陵に置いてあったんだ。 |
| マーク | 何…… ! ? この魔鏡、二つともビクエの陵にあったのか ! ? |
| イクス | え ? あ、ああ……。 |
| マーク | ……そんな……馬鹿な……。 |
| カノンノ・E | 何 ? 何か意味があることなの ?マーク、フィルに何か起きたって事 ? |
| マーク | ……いや、それは―― |
| ミリーナ | イクス ! みんな、大変よ !救世軍らしき兵士たちがこの拠点に向かってるの。 |
| チェスター | ちらっと見えた限りじゃ奴らを率いてるのは、ミトス・ユグドラシルだった。 |
| マーク | あの坊やか、こんな時に……。 |
| イクス | ミトス ? ロイドから聞いたことがある。確か、ロイドたちの世界の人で凄く強いって……。 |
| チェスター | ああ。あいつはやばい。大体ハーフエルフってのは色んな意味で規格外の奴が多くてな。 |
| チェスター | ミトスも相当なやり手だ。急いで逃げるぞ。 |
| イクス | よし、マーク。しっかり魔鏡を持ってろよ。 |
| マーク | ああ。わかった。 |
| Character | 16話【12-15 A地点のアジト 出口】 |
| ミトス | お疲れ様。チェスター、カノンノ、マーク。 |
| ミトス | あ、マークはもう返事するどころじゃないみたいだね。鏡精って案外不便なんだ。 |
| マーク | …………っ。 |
| ミトス | こっちに来るとは運がいいね。正面なら100人規模の救世軍兵士が相手だったんだよ ? |
| イクス | ……え ?お前……きみが、ミトス ? |
| ミトス | うん。初めましてだね、イクス。それにミリーナも。噂は色々聞いてるよ。ファントムから。 |
| ミリーナ | ! |
| ミトス | 本音を言うとね僕はマークの方に付きたいんだよ。 |
| ミトス | でも……現時点で僕の願いを叶えてくれるのはファントムの方だから。 |
| カーリャ | ぶるぶるぶる……光魔ですぅ ! |
| コーキス | うわっ、チキン肌になった !これが光魔の感触かよ。気持ち悪い……。 |
| カノンノ・E | 待って ! ミトス。私は――私のことは助けてくれるよね。 |
| コーキス | えぇ ! ? まさかの裏切りフラグ ! ? |
| カノンノ・E | 鏡精さんは黙ってて。 |
| マーク | カノンノ……。お前、まさか……。 |
| カノンノ・E | 私、もっと色んな世界を見てみたい。こんなところで終わりたくないから。 |
| ミトス | カノンノ、本当にいいの ? |
| カノンノ・E | ……ごめんね ! |
| カーリャ | はわわ、カノンノさまのポーチから剣が ! ? |
| コーキス | 仕込み杖ならぬ仕込みポーチかよ ! ? |
| カノンノ・E | 今のうちに逃げよう ! |
| ミトス | ――光魔。こっちの用件は終わった。あとは任せるよ ! |
| イクス | くそっ、光魔たちに追いつかれる。 |
| マーク | 俺を棄てていけ。俺を抱えてなけりゃもっと速く走れるだろう。 |
| ミリーナ | 立っているのもやっとのくせに何言ってるの。そんなことできる訳ないでしょう。 |
| チェスター | ミトスの奴、追ってこないぞ。ここで光魔を片付けちまおう。 |
| イクス | 了解だ ! |
| Character | 17話【12-15 A地点のアジト 出口】 |
| イクス | 何とか帰ってこれたな。 |
| マーク | ……ここがお前たちの船か。 |
| スタン | ……マーク ! |
| リオン | スタン、よせ。イクスがカノンノの頼みを聞き入れて助けると決めたんだ。お前も納得しただろう。 |
| スタン | 納得した訳じゃない。ただ、イクスがそう決めたのならその判断を尊重してやりたかっただけだ。 |
| リオン | だったら我慢しろ。恐らくあいつは黒幕であるファントムに繋がっている。 |
| カノンノ・E | ごめんなさい。みんながマークによくない感情を持っていることはわかっています。 |
| カノンノ・E | いずれ必ずお詫びをしてマークと一緒に出て行きますから。 |
| スタン | いや……。俺の方こそ、かっとなってすまなかった。それに、出て行くなんていうなよ。 |
| リオン | そうだ。お前たちは救世軍とファントムの情報を持っている。だから――目の届く場所にいてもらうぞ。 |
| カノンノ・E | ……ありがとう。リオンさん、スタンさん。これで後はフィルの行方さえわかれば……。 |
| チェスター | そのことなんだが報告しなけりゃならないことが色々あってな。 |
| チェスター | ただ長い話になりそうなんだ。とりあえずマークを休ませてからにしないか。 |
| イクス | ああ、わかった。 |
| ミリーナ | それにしても、カノンノナイス不意打ちだったわよ ! |
| ミリーナ | おかげで本当に助かったわ。ありがとう。いいこいいこ♪ |
| カノンノ・E | ミリーナに頭をなでてもらうとほっとする。 |
| マーク | お前、頭をなでられるの好きだからな。 |
| ミリーナ | もう、それならそうと言ってくれれば !私、いくらでもなでてあげるのに。可愛いなぁ ! |
| カノンノ・E | でも私、謝らないといけないことがあるの。ミトスに不意打ちしたときにビクエの魔鏡を落としたみたい……。 |
| マーク | いや、あれは落としたんじゃない。ミトスはカノンノの不意打ちを見抜いていた。 |
| マーク | カノンノの剣が飛び出してくるのをわかっていて、ぎりぎりまでカノンノを引き寄せて、ビクエの魔鏡を奪ったんだ。 |
| チェスター | じゃああいつの目的はオレたちをどうこうすることじゃなくてビクエの魔鏡を奪うことだったのか。 |
| チェスター | くそっ、してやられたって訳かよ。 |
| ミリーナ | ビクエの魔鏡をどうするつもりなのかしら……。 |
| イクス | 敵の動きが、わからないことばかりで混乱するな。 |
| ミリーナ | そうだわ、イクス。ゲフィオン様が、全てを話すって。 |
| イクス | ! |
| マーク | 全てをねぇ。面白い。俺も同席させてもらいたいな。 |
| ミリーナ | マークはそんな強がりを言っている場合じゃないでしょ。あなたは医務室へ行くの。 |
| マーク | ……はぁ、ホント締まらねぇなぁ。ダサすぎるだろ、俺。 |
| ミリーナ | あなたは病人みたいなものなんだからダサいも何もないでしょ。 |
| マーク | はいはい。――ありがとな、ミリーナ。 |
| イクス | じゃあ、今後のことを話す前にみんないったん休憩にしよう。リタたちの設計図解析がどうなったかも知りたいし。 |
| チェスター | ああ、そいつはいいな。ひとっ風呂浴びて、さっぱりしてぇや。 |
| クレス | チェスター、ちょっといいかな。 |
| チェスター | ん ? どうした、クレス。 |
| クレス | チェスター。僕に隠していることはないか ? |
| チェスター | ……っ ! |
| クレス | もし何かあるなら、話してくれ。 |
| チェスター | はは、何もないって。何でもない。お前、この間から変に勘ぐりすぎだぞ。さーて、少し休ませてもらうぜ。 |
| クレス | ……チェスター。 |
| ガイ | ――やっぱり口を割りそうにないな。 |
| クレス | もう少し時間を下さい。 |
| クレス | チェスターが何をしようとしているのか何を悩んでいるのか、必ず聞き出してあいつを助けたいんです。 |