| Character | 1話【ケリュケイオン】 |
| イクス | ミリーナとゲフィオン様はまだ目を覚まさないのか ? |
| ジュード | うん。鏡士特有のアニマ酔いのせいで昏睡状態に陥ってるみたい。 |
| ジュード | 僕だけじゃ心許ないからガロウズさんの伝手でお医者さんを連れてきてもらったんだ。 |
| ジュード | でもやっぱり目が覚めるにはもう少し時間が掛かるって。 |
| コーキス | もう少しって……あれからもう三日だぞ。カーリャ先輩も消えちまったままだしどうなっちまうんだよ、マスター。 |
| イクス | ……今は俺たちにできることをしないと。 |
| キール | ――それならぼくたちの話を聞いてくれ。 |
| リタ | 以前チェスターが持ってきたファントムの設計図なんだかわかったわよ。 |
| イクス | 何をする装置だったんだ ? |
| キール | あれは時間の流れの不可逆性を無効化したアニマ――つまり負の属性を持つアニマを人為的に操作するものなんだ。 |
| キール | 特異鏡映点が生み出す負のアニマとキラル分子を使って、具現化情報そのものを変質させるための計算装置なんだよ ! |
| イクス | えっと……。言葉はわかるけど意味がよくわからない……。 |
| ガイ | 要約すると、過去の世界から何かを具現化する時に、具現化する対象の情報を自分好みに変えられるってことだ。 |
| イクス | そ、そんなことができるんですか ! ? |
| ガイ | そうみたいだな。相当なエネルギーを必要とするから何でも無制限にという訳じゃないみたいだが。 |
| リタ | どれだけ情報に手を入れるかで必要なエネルギーが違ってくるわね。 |
| リタ | これは仮説だけど、ファントムの奴アイギスで守る世界の範囲を狭める代わりに自分の楽園を作りたいんじゃないの ? |
| イクス | もしそれが本当なら今まで具現化してきた大陸は……。 |
| キール | 見捨てられる。おそらく虚無に飲み込まれるな。 |
| シェリア | 重要なお話のところをごめんなさい。そろそろ食料を補給できないかしら。 |
| シェリア | もう三日もオーデンセ海域の上にいるでしょう ?備蓄が減ってきているの。 |
| イクス | 補給か……。確かにそれは無視できないな。 |
| ガイ | だが、どの大陸の街にも救世軍が待ち構えてるって報告だぞ。 |
| リタ | オーデンセ海域の上空にいるのも救世軍がオーデンセ海域に近づけないからだもんね。 |
| キール | オーデンセ海域はアイギスの盾の効果が弱いからな。薄皮一枚隔てれば虚無だ。どうしてアイギスの修復機能が鈍るのか……。 |
| マギルゥ | おお ! ? レーダーを見るのじゃ !哀れな枯れ葉の小舟が波間に飲み込まれておるぞ ? |
| クラース | あれは魔物――いや光魔に追われているのか ? |
| コーキス | 距離が遠すぎるせいかな。チキン肌にならないぞ。 |
| イクス | クラースさん、マギルゥ船に合図を送れないか ?近くの島に上陸してくれれば助けるって。 |
| マギルゥ | よしよし、任せておけ。伝わるかどうかは知らぬがまぁどうにかなるじゃろう。 |
| ガイ | おいおい、大丈夫なのかよ……。 |
| クラース | イクス。この辺りの小島にはケリュケイオンが着陸できる場所がないがどうするつもりだ ? |
| イクス | 救出隊を組んで、コレットとアーチェに運んでもらいます。 |
| イクス | ジュード、誰か手の空いている人を呼んできてくれ。船の人たちを助けるんだ ! |
| ジュード | わかった ! |
| Character | 2話【14-1 外れにある砂浜】 |
| イクス | ――大丈夫ですか ! ? |
| セネル | ああ。あんたたちのおかげで助かった。 |
| ヴェイグ | 突然、あの大きな乗り物から女の声が聞こえたときは何かと思ったがな。 |
| イクス | (マギルゥマイクで直接呼びかけたのか ! ?すごいな ! ? ) |
| ユーリ | で、あんたたちは何で、大穴があいて見るからにやばい海域をあんな小さな船で横切ろうとしていたんだ ? |
| ヴェイグ | ――その前に一応聞きたい。お前たちは救世軍か ? |
| イクス | 違います。救世軍を捜しているんですか ? |
| ヴェイグ | いや――少し込み入っているんだ。 |
| セネル | 俺はセネル。そっちはヴェイグ。訳あってセールンドって島を目指している。 |
| セネル | だが、安全そうなルートは救世軍って連中が押さえていてさっきの海域を抜けるしかなかった。 |
| コーキス | マスター ! めっちゃチキン肌来てるぜ。この人たちも鏡映点で間違いない。 |
| ヴェイグ | 鏡映点…… ?救世軍も同じことを言っていたが一体何のことなんだ ? |
| セネル | あんたたちは世界がどうなっているかわかってるのか ? |
| イクス | あ、俺に説明させて下さい。少し長い話ですけど、お二人が疑問に思っていることには答えられると思います。 |
| ヴェイグ | ……なるほど。つまりここはオレの世界でもセネルの世界でもなかったんだな。どうりで話がかみ合わない訳だ。 |
| セネル | イクスたちが救世軍と対立しているなら話は早い。 |
| セネル | 俺たちは救世軍に攫われたクレアっていう女性を取り戻すためにセールンドに向かってるんだ。 |
| ヴェイグ | オレたちは具現化されたなんて事情はわからなかったからな。 |
| ヴェイグ | クレアと街に出てみたんだがそこで救世軍に追われていた少年を保護したんだ。 |
| ヴェイグ | だが途中で敵に囲まれてクレアは少年と一緒に―― |
| セネル | 俺も知り合いを捜して客船に密航したんだが最初の寄港地でヴェイグたちの起こした騒ぎに気づいたんだよ。 |
| セネル | それで助太刀したんだが、クレアたちを取り返すことはできなかった。 |
| セネル | だから救世軍が集まっているっていうセールンドに向かうことにしたんだ。 |
| ジュード | ねぇイクス。攫われたクレアさんと少年ってもしかしたら特異鏡映点なんじゃない ? |
| ヴェイグ | 特異鏡映点 ? 確かあのルカ……とか言う少年がそんな風に呼ばれていたな。 |
| ユーリ | 嫌な感じがするな。救世軍の奴らこっちが把握している以上の特異鏡映点を確保してるんじゃねぇか ? |
| イクス | 俺もそう思います。だとしたら放置しておくのは危険だ。 |
| イクス | セネルさん、ヴェイグさん。よかったら俺たちにもクレアさんたちを助け出す手伝いをさせて貰えませんか ? |
| ヴェイグ | ……ヴェイグだ。ヴェイグでいい。 |
| イクス | え ? |
| セネル | これから一緒に戦うんだ。変に気を遣うなってことだろう。 |
| イクス | ――わかった。よろしく頼むよ。 |
| Character | 3話【14-2 開けた街道】 |
| 二人 | …………。 |
| イクス | 二人とも、どうかしたのか ? |
| ヴェイグ | いや、異世界にはほうきに乗った魔女が実在するんだな……。 |
| セネル | それに羽根が生えた……コレット、だったか ?両腕に俺とヴェイグを抱えて飛ぶなんてどれだけ力持ちなんだ……。 |
| イクス | はは……。ですよね……。 |
| ユーリ | けど、あの二人のおかげでケリュケイオンが着陸できないとこでも俺たちは降りられてんだ。 |
| ユーリ | ここんとこ船の中にこもってたんで体がなまってたとこだ。救世軍相手に暴れてやろうぜ。 |
| ? ? ? | そいつは丁度いい。 |
| ジュード | ――アルヴィン ! ? |
| アルヴィン | よう、優等生♪ |
| イクス | え ! ? アルヴィンってマークの手紙に書いてあった―― |
| コーキス | マスター。この人も鏡映点だ。新しい鏡映点が見つかる度にぞわっとするのカンベンして欲しいぜー。 |
| ジュード | ……アルヴィンは救世軍に関わりがあるんだよね。 |
| ジュード | 確かマークのスパイとしてファントムの元にいたのに、僕たちの情報をファントムに流したって聞いたよ。 |
| ユーリ | で、リフィルの見立てじゃ俺たちを北の監獄に遠ざけたのもあんただって話だったな。 |
| アルヴィン | おっと。武器に手をかけるのはやめてくれ。悪かったよ。こっちにも色々と事情があったんだ。 |
| アルヴィン | 急に具現化なんかされて、知らない世界に放り出されたんだぜ。生き延びるために救世軍にしがみつくしかなかったんだよ。 |
| アルヴィン | もっと早くお前らに出会えていれば――なーんて言ってもこうなっちまったことはどうにもならないけどな。 |
| アルヴィン | でも……悪かったよ。 |
| ジュード | だったら、僕たちに力を貸してよ。 |
| アルヴィン | そのつもりでここに来たんだぜ。もっともマークとの約束があるから一緒には行けないけどな。 |
| ジュード | アルヴィン ! ? |
| ユーリ | こりゃまたうさんくさいことで……。 |
| アルヴィン | だよなー ! 自分でもそう思うわ。……それでもな。異世界に来てまで仲間を裏切るのはもう終わりにしたいんだよ。 |
| アルヴィン | ……ってな訳で、これを受け取ってくれ。 |
| イクス | この地図は……何ですか ? |
| アルヴィン | ファントムが集めた特異鏡映点が城の地下牢に移されてきた。その地図は地下牢へ通じる隠しルートだ。 |
| アルヴィン | 今度こそ信用してくれて大丈夫だぜ ? |
| アルヴィン | ……ここに来てジュードたちを裏切ったら俺は本当に居場所を失っちまうからな。 |
| ヴェイグ | アルヴィンと言ったな。クレアは――クレアとルカもここにいるのか ? |
| アルヴィン | 少なくとも俺が得た情報では特異鏡映点がそこに集められているのは間違いない。 |
| アルヴィン | 個々の名前まではさすがに把握できてないんだ。悪いな。 |
| ジュード | ……わかった。アルヴィンを信じるよ。レイアも言ってた。自分を救世軍から逃がしてくれたのはアルヴィンだって。 |
| アルヴィン | ……そうか。じゃあ、俺はここで失礼するぜ。 |
| アルヴィン | そうだ、ジュード。確証はないがローエンが救世軍に囚われたって情報があった。もし地下牢にいるなら―― |
| ジュード | ――助けるよ、必ず。 |
| アルヴィン | さっすが優等生。後は頼むな ! |
| ユーリ | 信用していいもんかねぇ。 |
| セネル | 確かにうさんくさい奴だが人を騙した後ろめたさも感じているようだった。 |
| セネル | その気持ちがあるなら信じてみていいんじゃないか ? |
| ヴェイグ | どのみち他に情報もない。信じて地下牢に向かうしかないだろう。 |
| イクス | ロイドが言ってた。罠なんて壊せばいいって。 |
| ユーリ | ロイドらしいな。だが気に入った。行って一暴れしてやろうぜ。 |
| Character | 4話【14-4 地下の深部】 |
| セネル | あの地図、本物だったみたいだな。 |
| イクス | ああ。でも牢の中には誰も―― |
| ? ? ? | 誰かいるんですか ? |
| ヴェイグ | クレアか ! ? |
| ジュード | こっちだ ! |
| ヴェイグ | クレア ! 待っていろ、今助ける ! |
| クレア | ヴェイグ、それに皆さんありがとうございます。 |
| ヴェイグ | 無事で良かった……。ルカはどうした ?一緒じゃなかったのか ? |
| クレア | それがルカや他に閉じ込められていた人はみんな連れて行かれてしまったの。 |
| クレア | 魔女に壊された世界を取り戻す……とか何とか言っていたわ。 |
| ヴェイグ | 魔女 ? |
| イクス | ゲフィオン様のことか…… ? |
| コーキス | ゲフィオンさまってミリーナさまのことか ? |
| イクス | それは……。 |
| ジュード | その話はいったん置いておこうよ。それより壊された世界を取り戻すって世界の再具現化ってことなんじゃない ? |
| ユーリ | ファントムの目的は、自分の望み通りに造り替えた世界じゃないかって話だったな。 |
| ユーリ | だったら連れて行かれた連中は特異鏡映点だっていう可能性が高い訳か。 |
| イクス | だとしたら、連れて行かれた人たちはカレイドスコープのところにいるんじゃないか ? |
| セネル | 待て。俺はまだこの世界のことがよく把握できてないんだが―― |
| セネル | 特異鏡映点というのが世界の再具現化に使われるのだとしたら、今具現化している俺たちはどうなるんだ ? |
| セネル | それに今既に具現化されている大陸は……。 |
| イクス | ……消えてしまうと思う。 |
| セネル | ――っ ! ? |
| ヴェイグ | ……イクス、このまま敵のところに向かうつもりか ? |
| ヴェイグ | だがクレアには戦う力はない。クレアを連れて行くことはできないぞ。 |
| リフィル | イクス、聞こえていて ?ミリーナとゲフィオン様が目を覚ましたわ。 |
| イクス | ! ? |
| ユーリ | イクス。ヴェイグとクレアを連れてケリュケイオンに戻れ。 |
| イクス | でも―― |
| ユーリ | あっちはあっちで聞かなきゃいけないことは山ほどあるだろうよ。その代わり特異鏡映点の方は俺たちで引き受ける。 |
| ユーリ | 忘れたのか ? イクス。こっちはお前らに力貸すって仕事を引き受けてんだぜ ? |
| ユーリ | 夜空にまたたく凛々の明星の名にかけてな。こういう時こそ俺の出番ってヤツさ。 |
| ジュード | そうだよ。それに僕の方もこの先に仲間がいるかも知れないんだ。 |
| セネル | 俺もだ。 |
| セネル | 特異鏡映点だか何だか知らないが救世軍が具現化した連中を集めているならこの先に俺の仲間もいるかもしれない。 |
| ユーリ | 確かクレスたちも城に潜入してる筈だな。連絡を取って合流する。そっちはミリーナから【真実】を聞け。いいな ? |
| イクス | わかりました。ヴェイグ、行こう。 |
| ヴェイグ | ああ。 |
| Character | 5話【14-5 城へ続く街道1】 |
| ゲフィオン | 全ての始まりは十五年前のビフレスト皇国によるオーデンセ侵攻だった。 |
| イクス | ……くそ。雨か。 |
| ビフレスト皇国軍 | ――見つけたぞ ! 鏡士だ ! |
| ミリーナ | ! ? |
| イクス | ミリーナ、走れ !港まで行けばセールンドへ逃げられる ! |
| ミリーナ | イクス、だけど―― |
| イクス | ミリーナに手を出すな ! |
| ビフレスト皇国軍 | どけ ! |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| ビフレスト皇国軍 | 邪魔だー ! ! |
| イクス | ミリーナは俺が守る ! ! |
| イクス | ぐぅ……やらせ……ない……っ !スタック・オーバーレイ ! ! ! |
| ミリーナ | そんな……うそ…… |
| ミリーナ | イクス……うそ、だよね…… |
| ミリーナ | イクス……目をあけてよ……お願い……お願いだからっ ! ! |
| ミリーナ | やだよ…… |
| ミリーナ | いや…… |
| ミリーナ | いやーーーー ! ! ! ! |
| イクス | ! ? |
| ミリーナ | …………。 |
| ゲフィオン | その後セールンドに逃げたミリーナは幼なじみのフィリップと共に王立魔鏡科学研究所に入った。 |
| ゲフィオン | ビフレストに復讐するために亡くなったイクスの両親がおこなっていた魔鏡兵器の研究を受け継いだのだ。 |
| ゲフィオン | そしてカレイドスコープが誕生した。カレイドスコープの力は絶大だった。 |
| ゲフィオン | ビフレストの大地や人々のアニマを抜き取り残された物質としての存在――アニムスを光の砂へと変えて消滅させた。 |
| ゲフィオン | その力がセールンド王国を勝利に導き同時に、世界を破滅へと追い込んでしまったのだ。 |
| ゲフィオン | かつて世界が存在していた場所に何もない空間――虚無が生まれてしまった。 |
| ゲフィオン | 虚無と世界の欠片である光の砂は暴走し瞬く間に世界を飲み込み、消滅させていった。 |
| ゲフィオン | これがミリーナが――私が魔女と呼ばれる所以だ。 |
| イクス | じゃあ、あなたは本当に……。 |
| ゲフィオン | 私の名はミリーナ・ヴァイス。世界を破滅させた女だ。 |
| イクス | ………… ! |
| リフィル | ――そしてあなたは、アイギスという世界を守る盾を造り出して残されたわずかな世界を守ったのね。 |
| ゲフィオン | そうだ……。しかし世界は既にセールンドとオーデンセの周囲しか残っていなかった。 |
| ゲフィオン | 私は――私とフィリップはカレイドスコープを改良して、過去の時代から世界を具現化しようと考えたのだ。 |
| Character | 6話【14-6 城へ続く街道2】 |
| フィリップ | ……ミリーナ。あきらめてくれ。 |
| フィリップ | イクスの形見の魔鏡に、古のビクエの魔鏡を重ねても一年前が限界だ。これ以上過去へは遡れない。 |
| フィリップ | 仮にできたとしても、現在との距離が遠いほど具現化のダメージが酷くなる。残されたこの世界まで引き裂かれるぞ。 |
| ミリーナ | ――そう……よね。それにこれ以上時間をかけていたら、死の砂嵐で世界は虚無になる。それは避けなくちゃね……。 |
| フィリップ | ……ミリーナ。試してみたいことがあるんだ。過去の【僕】を具現化してみたい。 |
| ミリーナ | フィル ! ? |
| フィリップ | 範囲を狭めれば、十年前からでも具現化できると思うんだ。まずは僕で試して、成功したらイクスとミリーナを…… ! |
| ミリーナ | 駄目よ……。それは……。 |
| フィリップ | 世界は一年前から、オーデンセの住民だけは十年前から具現化すればいい。それにイクスの傍にはミリーナが必要だろう ? |
| ミリーナ | 駄目よ。同一時間に同一存在を具現化すれば、自震で双方のアニマとアニムスがダメージを受けるわ。 |
| フィリップ | 僕の家系は融合の魔鏡術だ。いくつか回避策を考えてある。ミリーナ、やらせて欲しい。 |
| ミリーナ | ……でもそれは、私のエゴなのよ。だから―― |
| フィリップ | だったらこれは僕のエゴだ。僕はミリーナの願いを叶えたい。 |
| フィリップ | イクスを甦らせてあげたいし、その横にはミリーナがいなければ駄目なんだよ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| ゲフィオン | いくつかの実験の後私は……私の歪んだ思いを現実にした。 |
| ゲフィオン | その頃には、過去からの具現化も研究が進み個人レベルまで焦点を絞ればある程度の過去から具現化する手段が見つかっていた。 |
| ゲフィオン | 私は、過去から甦らせた新生ティル・ナ・ノーグに十年前――今現在からはおよそ二十年前の時間軸からイクスやオーデンセの人々を甦らせたのだ。 |
| イクス | それが俺……。 |
| ゲフィオン | ――いや、正確には違う。 |
| イクス | え ! ? |
| ミリーナ | ……違うの、イクス。私は二人目のミリーナだけど、あなたは―― |
| ゲフィオン | 救世軍がアイギスシステムを破壊したのだ。 |
| ゲフィオン | その結果、システムを置いていたオーデンセ上空にアイギスの破片が降り注ぎ具現化したオーデンセも消失してしまった。 |
| イクス | ! ! |
| ゲフィオン | 全ては虚無に漂う死の砂嵐の影響だ。あれは世界の――人々のアニムスの欠片だ。アニムスには人々の記憶が残されている。 |
| ゲフィオン | それが具現化した人々に【滅びの夢】という形で影響してしまった。 |
| ゲフィオン | 彼らはかつて存在していた自分たちの滅びの記憶を夢として見ることになりそれが不安を生んでしまった。 |
| ミリーナ | ゲフィオンは――いえ、私は、オーデンセを守るために、航行権を制限したの。 |
| ミリーナ | 特にオーデンセ海域への立ち入りは厳しくしていた。 |
| ミリーナ | それをビフレストと通じているからではと怪しんだ救世軍が、オーデンセのアイギス装置を破壊してしまったのよ。 |
| イクス | あの時……具現化された俺は死んだのか ! ? |
| ゲフィオン | ミリーナを庇って……命を落とした。それだけではない。過去から具現化した世界も死の砂嵐に飲み込まれてしまった。 |
| ゲフィオン | 全ては水泡に帰した。もはや悠長に過去からの具現化をしていては世界が滅びてしまう。 |
| ゲフィオン | それに過去から具現化した人々は死の砂嵐の存在によって、必ず滅びの夢を見る。過去の記憶がもたらす不安は、また破壊を招くだろう。 |
| ゲフィオン | だから私は最後の手段を講じた。それが異世界からの具現化だ。 |
| ゲフィオン | ティル・ナ・ノーグそのものを甦らせることはできぬが異世界の力を借りることでこの世界を別の形で残すことはできる。 |
| ゲフィオン | どれだけ憎まれようと私はこの世界を残したかった。そうしなければならなかった。 |
| ゲフィオン | ただそのためには、どうしてもイクスの力ともう一枚のイクスの魔鏡が必要だったのだ。 |
| キール | ……一つ、わからないことがある。救世軍を作ったのはフリーセルとフィリップだったと聞いている。 |
| キール | どうしてフィリップは、自らの計画を壊すような真似をしたんだ。 |
| ゲフィオン | それは、私には想像することしかできない。 |
| ゲフィオン | おそらくフィリップは、滅びの夢で動揺する人々の反乱の芽を潰すため、あえて反乱勢力を一つにまとめようとしたのだろう。 |
| ゲフィオン | だが、救世軍の動きを抑えきれなかったのではないか。 |
| カノンノ・E | それは……ファントムのせいですか ? |
| ゲフィオン | そうだろうな。 |
| ゲフィオン | お前たちがファントムと呼んでいるのはフィリップが最初に自らを実験台にして生み出したもう一人のフィルだ。 |
| ゲフィオン | フィリップはリーパと呼んでいた。 |
| ゲフィオン | だがリーパを具現化した影響でリーパもフィリップも肉体と精神にダメージを負ってしまった。 |
| ゲフィオン | フィルは子どもの頃のように病気がちになり城にも登城しなくなってしまった。 |
| ミント | あの……。ユーリさんたちから連絡が入っています。 |
| リタ | あたしが聞いてくる。 |
| リタ | ――イクス、あんた酷い顔色よ。いったん休憩にしましょ。少し休んだ方がいいわ。 |
| イクス | …………。 |
| Character | 7話【14-7 城へ続く街道3】 |
| チェスター | ……どうするんだ ? つけられてるぞ。 |
| マーク | ミリーナから預かった例の魔鏡は持ってるな ? |
| チェスター | 当たり前だ。何のためにケリュケイオンに入り込んだと思ってる。 |
| マーク | いいんだな ? ファントムを消しても。妹を具現化することができなくなるぞ。 |
| チェスター | ……揺れることを言うんじゃねぇよ。迷ってねぇって言ったら嘘になる。もう一度会えるなら……。 |
| チェスター | でもファントムがやろうとしていることは今まで具現化された存在も消し去っちまうんだろう ? |
| チェスター | 勝手に具現化されて勝手に殺されて……そんなのは許せねぇ。 |
| マーク | あんたを選んだ俺の目は正しかったな。――行け、チェスター ! |
| クレス | チェスター ! 待ってくれ ! |
| マーク | おっと。悪いがここから先には行かせないぜ。 |
| リオン | 面白い。ここでお前を消してやる ! |
| クレス | ――リオン、後ろだ ! |
| リオン | ! ? |
| カイウス | お前がマークか。ここは任せろ ! |
| マーク | ――何者だ ? |
| シング | オレはシング。そっちはカイウス。フィリップって人から頼まれたんだ。 |
| マーク | あいつ、やっぱり近くにいるのか ! ? |
| カイウス | 急げ ! こっちにはメルクリアから預かった鏡がある。 |
| マーク | 恩に着る ! |
| クレス | 待て ! ! |
| シング | 2対2か。なら片付けられそうだな。 |
| リオン | ほざくな、雑魚が。 |
| カイウス | 何 ! ? |
| ユーリ | おっと、俺たちも数に入れてもらおうか。 |
| クレス | ユーリ ! ジュード ! |
| リオン | ――それに新入りか。別に助けはいらなかったが合流したからには働いてもらおうか。 |
| セネル | 言われなくてもそうするさ。 |
| カイウス | 数が多いな……。やっぱりメルクリアの鏡を使おう、シング。 |
| シング | ああ。ここでもたついてたらメルクリアとフレンに合流できなくなる。 |
| ユーリ | フレン、だと ? おい、お前ら―― |
| カイウス | 悪いな !縁があったらまた会おうぜ ! |
| セネル | くっ、目くらましか ! ? |
| ユーリ | ちっ ! 逃げ足の速い ! |
| ジェイド | ――今の光は何かと思えば皆さんでしたか。 |
| セネル | ……お前、何者だ。血の匂いがするな。 |
| ジェイド | あー、これは失礼。道中、色々とありまして。 |
| ジェイド | 返り血はなるべく浴びないようにしてきたのですがね。 |
| ユーリ | セネル。こいつは善人面した悪人だが一応俺たちの味方だ。 |
| ジェイド | 傷つきますねぇ。そちらこそ善人の仮面をつけている【だけ】で、こちら寄りの人種だと思っていましたが。 |
| リオン | フン、お前たちはどっちもどっちだろう。それより、どうしてここにいる。カレイドスコープの方はどうした ? |
| ジェイド | 近くまではいけましたが、いくつかあるルートのどれも完全に封鎖されています。 |
| ジェイド | あの封印はパスコードを知っていないと解けないたぐいのものです。 |
| ジェイド | 鏡士なら出入り口を具現化してしまえるのかも知れませんがね。 |
| クレス | こちらもチェスターたちを見失ってしまいました。どうしますか。 |
| セネル | せっかくここまで来たんだ。このまま戻るのは惜しい。 |
| リオン | ジェイド、一番マシな潜入ルートを教えろ。警備体制を確認しておきたい。 |
| ジュード | 待って。一度ケリュケイオンと連絡を取っておいた方がいいと思う。 |
| ジュード | イクスたちが戻っている筈だしゲフィオンから何か聞いているかも知れないよ。 |
| ジュード | それとユーリ、大丈夫 ?何だか浮かない顔してるけど……。 |
| セネル | あの眼鏡の軽口に傷ついた訳でもないだろう ? |
| ユーリ | まさか。――さっきの連中が知り合いと同じ名前を口にしたんでな。ちょっと気になっただけだ。 |
| ユーリ | それよりケリュケイオンに連絡するんだろう。俺がやる。 |
| Character | 8話【14-7 城へ続く街道3】 |
| イクス | ………………。 |
| コーキス | マスター……。つらいんだな。俺すげぇ、胸が苦しい。マスターが苦しいからだろ。 |
| イクス | ……ごめんな。コーキス。わかってるんだ。俺が過去から具現化された存在だから何なんだって。 |
| イクス | 鏡映点のみんなだって具現化された存在だから何も変わらない筈なんだけど……。 |
| イクス | でも……ロイドが言ってたみたいに俺……後ろめたいんだ。きっと。 |
| ヴェイグ | ――イクス。ここにいたか。 |
| イクス | ヴェイグ。何かあったのか ? |
| ヴェイグ | いや……。オレには具現化やこの世界に起きたことに関してまだ簡単な知識しかない。 |
| ヴェイグ | だがそれでも、イクスがイクスとしてこの世界に生まれたことを悔やむ必要はないんじゃないかと思う。 |
| イクス | ……ヴェイグ。 |
| ヴェイグ | イクスがどんな存在であっても楽しい時は笑い悲しい時は涙を流すだろう。 |
| ヴェイグ | 人の心とはそういうものだ。それは具現化された人間でも変わらないと思う。 |
| コーキス | ヴェイグさま……。すげぇよ。そうだよ、その通りだよ。 |
| ヴェイグ | ――いや、これはクレアの受け売りなんだ。だが、オレもクレアと同じように考えている。 |
| ルーク | ――心は同じ、か。そうだな。俺もそう思うよ。 |
| イクス | ルーク……。 |
| ルーク | さっき、カノンノからイクスの話を聞いた。えっと、今までお前にちゃんと話したことなかったと思うけど……。 |
| ルーク | 俺さ、普通の人間じゃない。レプリカなんだ。 |
| ルーク | 被験者(オリジナル)のルークって奴が別にいて、俺はそいつのコピーみたいな感じ……って言えばいいかな。 |
| ルーク | 最初にその話を知ったときはすげぇ混乱して、認めたくなくてさ。でも……今は俺は俺なんだって思える。 |
| ルーク | 色んなことがあって、その体験は俺だけのものなんだって。……って、これはティアの受け売りだけどな。 |
| イクス | ルーク……。ごめん。そんな話をさせて……。 |
| ルーク | いいんだよ。要するに、俺もヴェイグもイクスに言いたいことは同じだと思うんだ。 |
| ヴェイグ | ああ。ここにいるイクスも具現化された他の存在も、みんな同じように心を持つ誰にも代えがたい大切な存在だ。 |
| イクス | ――ありがとう、二人とも。それにコーキスも。 |
| イクス | だけど俺、二人にもみんなにもまだ伝えてないことがあるんだ。――でも、腹は決まった。 |
| イクス | みんなをブリッジに集めて欲しい。 |
| ルーク | わかった。全員は無理だから各部屋に通信が繋がるようにしておくよ。 |
| イクス | みんな、ごめん。こんな時だけど――こんな時だから話を聞いて欲しい。 |
| イクス | 俺はティル・ナ・ノーグを救うために異世界を具現化してきた。 |
| イクス | 最初は何もわからなかったけど、俺なりに魔鏡技術を調べていくうちに、俺が最初に聞いてた話が矛盾してるって気づいたんだ。 |
| イクス | 結論から先に言う。鏡映点として具現化されたみんなは――もう二度と元の世界には戻れない。 |
| イクス | 一生ティル・ナ・ノーグで生きていくしか選択肢がないんだ。 |
| ミリーナ | ! ? |
| カイル | ――……え ? どういうこと ?確かこの世界の具現化が落ち着くまでいて欲しいってことじゃなかったの ? |
| イクス | ゲフィオン……様、俺たちの具現化は異世界に影響しないと言っていましたね。 |
| イクス | ということは、この世界で具現化された鏡映点は戻れないと言っているのと同じですよね ? |
| リッド | そうか……。この世界の記憶を持って元の世界に戻るってことは元の世界に干渉することになるのか。 |
| ミリーナ | ゲフィオン。本当なの ! ? |
| ゲフィオン | ――事実だ。 |
| ガロウズ | 今、ティル・ナ・ノーグはアイギスに守られているがその外には虚無が広がっている。 |
| ガロウズ | 虚無はティル・ナ・ノーグからあらゆるエネルギーが流れ出ることを妨げているんだ。 |
| キール | だから観測者効果を無視して、異世界からの具現化を実現できていたんだな。 |
| ガロウズ | ああ。異世界から具現化することはできても具現化した人々を元の世界に戻すことはできない。 |
| ガロウズ | もしも虚無がなくなれば、そもそも存在する次元の壁によって、具現化の力そのものが跳ね返されちまう。 |
| ミリーナ | それを知っていてイクスに具現化をさせたの ! ? |
| ミリーナ | 鏡映点のみんなをこの世界に閉じ込めるとわかっていて ! ? |
| ゲフィオン | ガロウズを責めるな。決めたのは私だ。私がそういう人間だと言うことはお前が一番よくわかっている筈。 |
| ゲフィオン | 今はまだこの判断をしたときの記憶が共有されていないようだがいずれ全てわかる。 |
| ジェイド | 失礼。カレイドスコープの元へ再潜入する為の手勢が欲しいのですがケリュケイオンを着陸させて貰えますか。 |
| クレス | この辺りの救世軍は追い払った。今なら着陸しても安全だ。 |
| イクス | ……わかりました。ケリュケイオンを降ろします。 |
| Character | 9話【14-8 デレク山 麓】 |
| イクス | みんな、無事で良かった。 |
| リオン | 無事で当然だ。それよりゲフィオンから話は聞けたんだろうな ? |
| イクス | ああ……。ゲフィオンは……その……。 |
| ユーリ | ――おい、ちょっと待った。ゲフィオンはどこだ ?今までゲフィオンと話してたんじゃないのか ? |
| 二人 | ! ? |
| イクス | そういえばガロウズもいなくなってる…… ! ? |
| カーリャ | …………。 |
| ミリーナ | カーリャ ! カーリャならわかるわよね。私とあの人は同じ存在だもの。 |
| ミリーナ | 私の心から生まれたカーリャにはゲフィオンがどこにいるかわかる筈よ。 |
| カーリャ | ……ごめんなさい、ミリーナさま。 |
| カーリャ | ケリュケイオンが着陸したときにゲフィオンさまとガロウズさまがセールンドの街の方へ出ていきました。 |
| ミリーナ | ゲフィオンに口止めされたのね。 |
| カーリャ | はい……。だって、あの人もミリーナさまなんです……。 |
| ベルベット | 何、何の音 ! ? |
| スレイ | 見てくれ ! 空の色が―― |
| イクス | オーロラ、なのか ?それにしては随分毒々しい虹色だけど……。 |
| ミリーナ | 嘘……。 |
| イクス | どうした、ミリーナ ? |
| ミリーナ | あれは【私】がカレイドスコープで世界を滅ぼしかけたときと同じキラル分子の異常収縮現象……。 |
| ミリーナ | きっとカレイドスコープを暴走させようとしているんだわ。 |
| イクス | ――みんな、この世界に呼び寄せて巻き込んでごめん。でもみんなを消させはしないから。 |
| ミリーナ | 待って、イクス ! どこに行くの ! |
| イクス | カレイドスコープのところへ行く。これは俺たちの世界の問題だ。だから俺が解決しないと。 |
| ミリーナ | 私も行くわ ! 私だってこの世界の人間よ。 |
| ベルベット | ――いい加減にしてちょうだい。 |
| ベルベット | 勝手に具現化して、勝手に牢獄みたいなこの世界に閉じ込めて、これは俺たちの世界の問題ってふざけたことを言わないでよ。 |
| イクス | ベルベットさん……。 |
| ベルベット | それにあたしを具現化したのはあんたじゃないわよ。あのファントムとかいうおかしな男じゃない。 |
| ベルベット | だったら奴にあたしの怒りをぶつけてやらなきゃ気が済まないわよ。――だから、あたしを連れて行きなさい。 |
| スレイ | そうだよ、イクス。ミリーナ。オレたちがもう自分の世界に帰れないならここが具現化されたオレたちの世界になる。 |
| スレイ | だったらオレたちもこの世界の人間だろ ?解決に協力したいと思うのは当然じゃないか。 |
| ジュード | それに、カレイドスコープへの潜入ルートをイクスは知ってるの ?それを調べてルートを確保したのは僕たちだよ。 |
| カノンノ・E | 私も連れていってくれるよね。私の知っているフィルはこの世界を壊そうなんてしてなかった。 |
| カノンノ・E | イクスとミリーナが知ってるフィルだってそうでしょう ? |
| メルディ | メルディな、戻れないのたぶんわかってた。寂しいけど、へーき !ここ、みんながいるから。 |
| キール | ぼくも予想はしていた。キール研究室の人間はもちろんそうだろうし、他にもそうだろうと気づいてた奴はいる。馬鹿にするなよ。 |
| リオン | 気づいてなかった奴もいるがな。 |
| ルーティ | 何で私を見るのよ。ここはスタンの方を見る流れでしょ ! |
| スタン | えぇっ ! ? 俺 ! ? |
| スタン | それは……確かに帰れないとまでは考えなかったけど、でもこうなったことはイクスたちのせいじゃないよな。 |
| ルーティ | そうよ。それなのにどうしてイクスとミリーナだけで片をつけようとするの。 |
| リフィル | ごめんなさい。私はイクスたちに責任がないとは言えないわ。でもね、私たちは仲間でしょう ? |
| リフィル | 責任がどうとかじゃなくて仲間なら支えたいって思うのは当然じゃないかしら。 |
| ロイド | そうだよ。二人とも変なところで責任感が強いんだな。もっと頼ってくれていいんだぜ。 |
| ロイド | 間違いは正せるって俺は信じてる。本当はどうにもならないことがあるのもわかってるぜ。 |
| ロイド | それでも希望は捨てたくないし仲間が希望を捨てようとしてるなら拾ってでも押しつけてやるさ。 |
| ルーク | 希望か……。そうだよな。俺はさ希望と可能性をもらったんだって思ってる。イクスたちは俺に未来をくれたんだって。 |
| ルーク | だからさ、感謝してるんだよ。助けさせてくれるよな ? |
| ヴェイグ | オレはクレアを助けるために力を貸してくれたお前たちに協力したい。……ただ、それだけだ。 |
| ソフィ | わたしも。わたしも、イクスとミリーナの力になりたい。それだけじゃ駄目かな ? |
| セネル | ……いい連中じゃないか。みんな抱え込んでることはあるだろうが、それでもお前らを助けたいって言ってるんだ。 |
| セネル | 甘えてもいいんじゃないか ? |
| イクス | みんな……。俺を……俺とミリーナを憎んでないのか ? |
| ラピード | ワフッ ! ワフッ ! ! |
| ユーリ | 今の話を聞いてまだそんなことを言うかねぇ。ラピードも呆れてるぜ。 |
| ユーリ | イクスとミリーナはどうしてこの旅を始めたんだ ? |
| ミリーナ | ……この世界を―― |
| イクス | ――救いたいから。 |
| クレス | それなら、もう何も言う必要はないね。行こう、イクス、ミリーナ。【みんな】でこの世界を守るんだ。 |
| Character | 10話【14-10 デレク山 山頂】 |
| マーク | よぅ、イクス、ミリーナ。 |
| イクス | マーク…… ! ?お前、今までどこに行ってたんだ ! ? |
| マーク | それはわかってるだろ ? 俺とチェスターの後をつけさせてたんだから。まぁ、途中で上手いこと引き剥がせたけどな。 |
| ミリーナ | またそうやって強がって本当のことを隠すのね。 |
| マーク | ミリーナ……。本当にお前は……人の心をえぐってくるな。フィルの奴、ドMだったのかねぇ……。 |
| ミリーナ | イクス……。隠していてごめんなさい。チェスターとマークから取引を持ちかけられていたの。 |
| イクス | え ! ? |
| コーキス | マスター、ミリーナさま。何とかしてくれよ。 |
| カーリャ | マークが俺も連れて行けってうるさくて。 |
| ミリーナ | もう、しょうがないわね。私、ちょっと叱ってくる。 |
| チェスター | ミリーナ。丁度いい。オレもマークに用があるんだ。一緒に行く。 |
| ミリーナ | フィルから預かった鏡片のお守り…… ?どうしてそれをチェスターさんが知ってるの ? |
| チェスター | マークから聞いた。それがあればファントムの動きを封じられるかも知れないんだ。 |
| ミリーナ | ……待って。チェスターさん。あなた、何者なの ? まさか―― |
| チェスター | 違う ! いや、違わないけど、でも違う。俺はクレスがいるこのケリュケイオンを裏切ったりはしない。 |
| チェスター | スパイみたいな真似をするつもりもない。 |
| ミリーナ | 私が、それを信じると思う ?イクスを陥れる可能性があるものは何だって排除できるのよ。 |
| チェスター | 信じざるを得ないさ。ゲフィオンとの面会の時の会話で、合点がいった。ミリーナ。お前はゲフィオンの―― |
| ミリーナ | ――まさか、チェスターさんがそんな手を使ってくるなんてね。まるでジェイドさんかリフィルさんだわ。 |
| チェスター | あの枠と一緒にするな。こっちも必死なんだ。まぁ……マークに入れ知恵されたんだけどな。 |
| イクス | フィルの鏡片 ? それは何だ ? |
| マーク | イクスがオーバーレイ暴走を起こした日……あのピクニックの日にフィルがミリーナに渡していたものだよ。 |
| マーク | お前の知らない話――知らなくていい話だ。 |
| ミリーナ | ファントムを倒すつもりなら私たち、同じ目的の筈よね。 |
| マーク | そいつは違うな。俺たちは違う目的で動いてるんだ。 |
| マーク | さぁーて、話は終わりだ。そろそろ、片付けちまおうぜ。 |
| イクス | 戦うつもりか ! ? |
| マーク | おいおい。そんな意外そうな顔するんじゃねぇよ。俺はお前らや鏡映点の命を狙ってたんだぜ。 |
| マーク | 当たり前の流れだろ。 |
| コーキス | てめぇ、フィルさまの鏡精なんだろ ! ?こんなことしてフィルさまが許すと思ってるのか ! ? |
| カーリャ | そうですよ ! ミリーナさまたちはフィルさまの幼なじみなんですよ ! ? |
| マーク | 知ったことかよ。俺はフィルのためにお前たちを殺すと決めていたんだ。フィルのためにここで消えてくれや。 |
| イクス | …………。 |
| マーク | ……どうしたイクス ?早く構えろよ。 |
| イクス | ……マーク。一体どうして…… ! ?何で、こんな風に戦う必要があるんだよ ! ? |
| マーク | 俺とお前は、敵同士。ずっと、そうだったろ ? |
| ミリーナ | ……だったらどうしてこの間は一緒に戦ってくれたの ? |
| マーク | ただ、気まぐれに道が重なっただけだ。──深い理由なんか、ないさ。 |
| マーク | 構えねぇならそれでもいいぜ。そのまま、死にな。 |
| イクス | ……そういうわけには行かない。俺はこの世界を救ってみせるって誓ったんだ。 |
| イクス | あんたを倒して、この先へ進んで見せる ! |
| ミリーナ | うん……私も──イクスの進む道を、信じてる ! |
| | (俺も、あの人達みたいな強さが欲しい) |
| | そうならなきゃ、いけないんだっ ! |
| Character | 11話【14-10 デレク山 山頂】 |
| マーク | ……マジかよ。俺はお前らをここに留めておくことすらできねぇのか。 |
| イクス | ――留めておく ?殺すつもりじゃなかったのか ? |
| マーク | ……負け犬に根掘り葉掘り聞くなよ。恥ずかしい。 |
| ミリーナ | 今更じゃない ?全て話した方がきっと楽になるわ。 |
| マーク | ……最初はフィルと一緒に救世軍をコントロールする筈だった。世界を虚無から守るためにな。 |
| マーク | だが……フィルが倒れてファントムが実権を握ってから救世軍は制御不能になっちまった。 |
| マーク | ファントムはフィルの願いである世界とミリーナの幸せのためにはゲフィオンを信じるなと言い出したんだ。 |
| マーク | そして俺にこう言った。フィルの本当の幸せの為には何が邪魔だと思うか――ってな。 |
| ミリーナ | それが私とイクスの命……。 |
| マーク | 言っておくが、ファントムに命令されたから命を狙ったんじゃない。俺の意思だ。フィルが苦しむのを見ていられなかった。 |
| マーク | イクスに憧れて、嫉妬して、ミリーナの願いを無条件で叶えようとして……。あいつは望んで奴隷になってたからな。 |
| イクス | もしかして、フィルは―― |
| マーク | ――俺はフィルの鏡精だ。フィルの想いは知ってるし俺の感情はフィルの想いに影響される。 |
| マーク | だから俺はお前たちが憎くて……でも――いや、まぁ、それはいい。 |
| マーク | それより、イクス。カレイドスコープの元に行くなら、これだけは約束しろ。ミリーナを守れ。彼女をサーチさせるな。 |
| イクス | ミリーナも具現化された存在だろ ?具現化された存在をサーチなんてできるのか ? |
| カーリャ | もしかしてゲフィオンさまのことですか ? |
| マーク | ――その内わかる。それともう一つ。イクス、絶対に死ぬな。お前は三人目なんだからな。 |
| ミリーナ | …………。 |
| イクス | え…… ! ?三人目ってことに意味があるのか ? |
| マーク | 具現化には制限がある。アニマサーチは三回を超えるとそれ以上は検出不能になるんだ。 |
| イクス | つまり……俺が死ねば、もう俺という存在は二度と具現化できないってことか。 |
| マーク | ――さすがに察しがいいな。お前が消えればゲフィオンもミリーナも悲しむ。それを見れば傷つくのはフィルだ。 |
| マーク | だから――絶対に死ぬなよ。 |
| イクス | ――わかった。 |
| マーク | それじゃあ、こいつを持っていけ。 |
| ミリーナ | この紋章は、何…… ? |
| 三人 | デリス・エンブレム ! ? |
| マーク | そういう名前らしいな。構造を解析して似た性質のものを作った。それがあればカレイドスコープの封印を突破できる。 |
| セネル | なるほど。その紋章がパスコード代わりなのか。 |
| イクス | マーク。一緒に行ってくれないのか ? |
| マーク | 行けると思うか ? お前らにやられた傷で動けねぇよ。ここで吉報を待つとするさ。……ファントムの好きにさせるなよ。 |
| ヴェイグ | マーク。本当に全てを語ったのか ?これ以上話すことはないのか ? |
| マーク | ――……ねぇよ。 |
| チェスター | (デリス・エンブレムのおかげでカレイドスコープの間には入れたが……。ファントムはどこだ) |
| ファントム | ――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている ! |
| チェスター | (特異鏡映点があんなに ! ? ) |
| チェスター | (クソ、どうする。連絡はまだ来ねぇが、止めるべきか……) |
| チェスター | (アミィ ! ?どうしてアミィがここに―― ! ? ) |
| Character | 12話【14-13 セールンド城内3】 |
| フィリップ | ……やっぱり駄目か。 |
| デミトリアス | フィル……。その症状はアニマ汚染だ。これ以上続けては私のようになってしまうぞ。 |
| フィリップ | ……はい。これ以上は難しい。【狂化止め】の術式を変更する必要があります。 |
| デミトリアス | まだ続けるのか ! ? |
| フィリップ | いえ、その前に、リーパを止めなければなりません。リーパのアニマとアニムスを繋ぐ部分が歪みを引き起こしています。 |
| ファントム | (私を捨てようというのか――。勝手に生み出しておいて感情を与えておいて――) |
| ファントム | (私が歪んでいるから――) |
| ファントム | この数日で、必要なアニマとキラル分子はここに集めました。後は、特異鏡映点たちに働いてもらうだけです。 |
| ルカ | …………。 |
| ファントム | 何を言っても無駄です。その魔鏡陣の中にいる限り動くことも、声をあげることもできないのですから。 |
| ファントム | さぁ、新たな世界を生み出しますよ。歪んだ私の望む、私と彼女のためだけの真に正しく歪んだ新世界を―― |
| ファントム | ――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている ! |
| ファントム | ――ですから、もう何をしても無駄ですよチェスター・バークライト ! |
| チェスター | くっ ! |
| ファントム | あなたが何をしに来たのか当ててあげましょう。 |
| ファントム | 大方マークとフィルに荷担して鏡片をもって私のアニマをフィルに戻すつもりなのでしょう。 |
| ファントム | チェスターを捕らえなさい ! |
| チェスター | 大人しく捕まると思ってるのか ! |
| ファントム | 捕まりますよ。あなたは具現化された妹を裏切れない。 |
| チェスター | ! ! |
| 救世軍兵士 | ファントム様。この男、鏡片を持っていません ! |
| ファントム | 何 ! ? |
| 伝令 | ファントム様 ! イクス・ネーヴェらが城内に侵入してきました ! |
| ディスト | なるほど。謁見の間からのカレイドスコープへ繋がる通路に出るつもりですね。 |
| ミトス | それで、どうするつもり。 |
| ミトス | 僕らをイクスと戦わせるなら当然どこかに配置している筈なのにここに集めるなんて。 |
| リヒター | お前は人を信じない。俺やミトスと同じ生き方をしている。 |
| リヒター | ならばお前は俺たちのことも信じていないだろう。 |
| ファントム | それは心外です。 |
| ファントム | ところで私がミトスに取り戻させたビクエの魔鏡を覚えていますか ? |
| ミトス | ――まさか ! |
| ファントム | ええ、気づくのが遅かったようですね。 |
| ファントム | 魔鏡よ ! ビクエの名の下に四つのアニマを幻体として彼のモノと融合させよ ! ! |
| 救世軍兵士 | ファントム様、四幻将の皆様は―― |
| ファントム | 幻影魔獣と化して、イクスたちを足止めしてくれるでしょう。お前たちも配置につきなさい。 |
| 救世軍兵士 | はっ ! |
| ヴェイグ | ――城内がやけに静かだな。 |
| カーリャ | ……何だかぶるぶるします。 |
| コーキス | 俺もだ。チキン肌がすげぇ……。 |
| ミリーナ | まさか光魔 ! ? |
| カーリャ | 違います……。何だかもっと怖くて悲しい感じがします。 |
| セネル | イクス、気をつけろ。こういう時はこの先に何かとてつもなく強い敵が待ち構えている筈だ。 |
| イクス | そうだな……。 |
| コレット | ……聞こえる。魔物みたいな声。多分四匹。 |
| リッド | イクス、覚悟はいいな。 |
| イクス | ああ。どんな敵が待ち受けていても必ず突破してみせるっ ! |
| Character | 1話【14-15 カレイドスコープ前1】 |
| イクス | え、今から三人でピクニック ! ?俺、ついさっき漁から帰ってきたところだよ。 |
| イクス | 海にとんでもない魔物が出てさ何とか逃げてきたんだ。 |
| ミリーナ | え ! ? イクス、大丈夫 ! ? 怪我は ! ? |
| イクス | いや、俺は平気。でも祖父ちゃんがちょっと足をやられてさ。俺が鏡士の力を使えれば祖父ちゃんに怪我させなくてすんだのに……。 |
| イクス | なんで祖父ちゃん鏡士の仕事を嫌うんだろう……。 |
| ミリーナ | イクスなら素質があるからすぐ鏡士の力を使えると思うってフィルも言ってたわ。 |
| イクス | ……ちょっと試してみようかな ?魔鏡が使えたら、漁に出るのも楽になるし。 |
| イクス | 魔鏡の力を使えるのを見たら祖父ちゃんも鏡士になるのを認めてくれるかも……。 |
| フィリップ | ――二人ともお待たせ……――ミリーナ ! ?イクス ! ? どうしたの ! ? |
| ミリーナ | イクスの力が暴走して……止められないの !私が、私が余計なことを言ったから―― |
| フィリップ | 大丈夫、ミリーナ。僕の守護魔鏡を使えば止められる ! |
| ミリーナ | えっ ! ? |
| フィリップ | 僕の鏡士としての力を弱める封印なんだ。これを使えばきっと―― |
| ミリーナ | 駄目よ、フィルは体が弱いからわざと力を弱めているんでしょう ? |
| フィリップ | でもこのままじゃイクスが死んじゃうよ ! |
| ミリーナ | ――わかった。でも、私にやらせて。バックファイアを受けるのは私だけでいいから ! |
| フィリップ | ミリーナ ! ? |
| ファントム | ……あの時割れた守護魔鏡を使ってくると思っていたがまだミリーナが持っているのか ? |
| イクス | ――やっぱりここにいたか、ファントム ! |
| ファントム | ……遅かったですね、イクス。もう少し頑張るかと思っていましたよ。 |
| ミリーナ | 遅くなんかないわ。ここであなたを仕留めて世界の造り直しを止めてみせる。 |
| ファントム | カレイドスコープがあの状態で ? |
| カーリャ | ミリーナさま ! ?カレイドスコープが壊れてます ! ? |
| ファントム | カレイドスコープにはアニマをかき集めるために無理をしてもらいました。 |
| ファントム | 私が造る新たな世界は私が研究して生み出した新たなカレイドスコープを使います。 |
| イクス | チェスターが持ってきたあの図面の……。 |
| ファントム | 新たなカレイドスコープがどこにあるかあなた方には永遠にわからないでしょう。――ミリーナを捕らえろ ! |
| ミリーナ | ! ? |
| イクス | ――やらせるかっ ! |
| チェスター | ――イクスッ ! どけっ ! |
| 救世軍兵士 | ぐぉっ ! ? |
| クレス | チェスター ! ? |
| ファントム | ――何 ! ?幻影魔獣化されて、まだ動けるのか ! ? |
| チェスター | 色々あったんだよ。お前に説明する義理はねぇがな ! |
| チェスター | クレス、悪かった。後でちゃんと謝らせてくれ。 |
| クレス | 当然だ。でも今は―― |
| チェスター | ああ ! ファントムを仕留めるぞ ! |
| ファントム | くだらないことを !お前たちが守ろうとしているのはつぎはぎの幻。 |
| ファントム | 私と同じ――いやそれより下劣な女の嘘で造り出された砂上の楼閣だ !そんな虚飾を何故守ろうとする ! ? |
| ファントム | 嘘にまみれた世界に無理矢理生み出されたことを憎いとは思わないのか ! ? |
| アスベル | それでも俺たちはここに存在している。存在した以上消えても構わないなんて思えないさ。 |
| エミル | たとえ嘘の存在でもここまで旅をしてきた事実は覆らないよ。 |
| マルタ | そうだよ。あんた、ちょっと女々しいんじゃない ! ? |
| アーチェ | ホントホント。つぎはぎでも何でもいいじゃない。何もかも消えちゃうよりさ。 |
| スタン | 自分が生み出されたことが憎いならどうしてさらに世界を造り替えようなんて考えるんだ。 |
| ファントム | 私は――私は私を私として受け入れる世界を造るだけだ。 |
| ファラ | どうして ? あなたが嘘だと言ったこの世界を壊そうとしなければ誰もあなたを拒絶しないんじゃないの ? |
| ファントム | 異世界の人間に何がわかるか。 |
| エドナ | その態度がいけないんじゃない ?受け入れて欲しいくせに、他人にばかり望みをかけるなんて単なる甘えね。 |
| ファントム | 他人になど期待してはいない。だからこそ私は私の望む世界を造る。 |
| ファントム | どうせこの世界はとうの昔に滅び具現化ではない元の世界などほんの一握りしか残っていない。 |
| ファントム | 幻と幻を重ね合わせたところでミリーナが嘘で覆った世界の本質は何も変わりはしない。 |
| ミリーナ | …………。 |
| イクス | 確かにこの世界はミリーナが造り出したものかも知れない。でもそれはミリーナの贖罪の気持ちだ。 |
| イクス | どんな手段を使ってでもこの世界を残したいと思ったミリーナの気持ちが俺にはわかる。 |
| イクス | 俺のためにミリーナが追い詰められてしまったことも……。 |
| イクス | だから、憎むなら俺を憎め !俺がその嘘を真実に変える ! |
| Character | 2話【14-16 カレイドスコープ前2】 |
| ファントム | ……は……はは。それで勝ったつもりか ! ?同一存在が共有するものが記憶と鏡精だけだとでも思ったか ! ? |
| 二人 | ! ? |
| ミクリオ | まさか、命そのものすら共有するのか ! ? |
| コンウェイ | だとしたらやっかいだね。 |
| エリーゼ | この人を倒すためにもう一人のフィリップさんも倒さなければいけないんですか ? |
| リアラ | ……そうなのかも知れない。同じ魂が同じ時間に存在しているのなら―― |
| リオン | …………。 |
| ジューダス | いや、そんな筈はない。なら【僕】は―― |
| ファントム | 貴様らと私は違う。私は特別なのだ。 |
| ファントム | そして今度こそ、フィルだけを受け入れるゲフィオンと彼女が望む世界をここに―― |
| ? ? ? | そうはいかないよ。 |
| ファントム | ――き、貴様は…… ! ? |
| フィル | 歪みがもたらした副作用―― |
| フィル | ファーストサンプルであるフィリップとリーパの間でだけ起きたアニマ結合現象を断ち切りに来たんだ。 |
| ファントム | そうか、守護魔鏡はお前たちが―― |
| フィル | さよならだよ、二人目の僕 ! |
| 二人 | アニマ・デコード ! |
| ファントム | ぐぅぁあああああああっ ! ? |
| ライフィセット | え ! ? だ、誰 ? 何が起きたの ! ? |
| ユリウス | 今のは魔鏡術か ? |
| フィル | ちょっと予定とは違ったけど何とか上手くいったよ、チェスター。 |
| チェスター | そうみたいだな。オレが鏡片を持っているふりをしてファントムを引きつける手はずだったが……。 |
| イクス | フィル…… ? どういうことだ ?俺が死んでから15年経ってるんだろ ?だったらフィルは35歳の筈なのに……。 |
| フィル | そうだね、イクス。でも僕は三人目だから。 |
| イクス | ! ? |
| ゲフィオン | 同一時間に同一存在を具現化すると具現元と具現化体の間で記憶が共有される。 |
| ゲフィオン | だからビクエ――いやフィリップはファントムと記憶を共有しないもう一人の自分を造り出した。 |
| ゲフィオン | アニマの力を弱める守護魔鏡を使ってファントムのアニマの力を弱めるために。 |
| フィル | これで、ファントムはビクエとのアニマ共有能力が弱まった。もうアニマを回復することはできないよ。 |
| イクス | フィリップは――ビクエの方のフィリップはどこにいるんだ ? |
| フィル | アルヴィンとアルヴィンの仲間が匿ってくれてる。 |
| レイア | アルヴィン ! ? 仲間 ! ?アルヴィンってば、どこで何をしてるの ! ? |
| アリーシャ | ――いや、待て ! ファントムが ! ? |
| ファントム | ……死ぬ……私が…… ?ふ……ふははははは……。 |
| ファントム | 認めてたまるものか !絶望を味わうのは貴様らだ ! ! |
| ファントム | お前たちが守ろうとした嘘の世界は……私が死の砂嵐の向こうに……連れて……行く……。 |
| ティア | カレイドスコープの様子が変だわ ! |
| ミラ=マクスウェル | この世界に満ちるエネルギーがカレイドスコープの元に集まっているのを感じるぞ。 |
| イクス | ファントムが壊れたカレイドスコープに何かしたのか…… ? |
| アイゼン | ――簡単に事が片付く訳がないってことか。死神の呪いは健在だな。 |
| ゲフィオン | ……いや、ここから先は私に任せよ。 |
| ゲフィオン | 確かに手順は狂ったがファントムは結果的に世界中のアニマを集めてくれた。私の望んだ通りに。 |
| ゲフィオン | ――ガロウズ、頼む。 |
| ゲフィオン | 見たところ、壊れて暴走し始めているがまだサーチは可能な筈だ。サーチさえできれば後は私が―― |
| ガロウズ | ――ゲフィオン様……。……わかりました。 |
| ガロウズ | 照準ロック完了。対象ゲフィオン……いや、ミリーナ・ヴァイス。アニマ・サーチ開始 ! |
| 二人 | ! ? |
| エル | 大変だよ、みんな ! ! |
| マリアン | オーデンセ跡から金色の光の粒がそちらに向かって行きます ! |
| クレア | あれは死の砂嵐と呼ばれているものじゃないでしょうか ! ? |
| デミトリアス | ――間に合わなかったか ! |
| イクス | な、何ですか ! ? 陛下 ! ? |
| デミトリアス | 彼女は……世界を虚無から救うために虚無を広げる原因である死の砂嵐を体内に取り込もうとしているのだ。 |
| イクス | そんなことが可能なんですか ! ? |
| ゲフィオン | う……うぅ……ウォォオオォォォ ! ? |
| ルドガー | ゲフィオンの体が変質していく…… ! ? |
| レイヴン | ちょっとちょっとこれはまずいんじゃないの ! ? |
| フィル | イクス ! ミリーナ ! ゲフィオンを……もう一人のミリーナを助けて ! |
| フィル | 死の砂嵐の正体はアニマを失った世界や人々の欠片なんだ。みんな全ての原因であるミリーナを恨んで狂わせようとしている。 |
| フィル | ミリーナのアニマを奪って壊そうとしているんだ ! |
| イクス | 助けるって、どうすれば ! ? |
| フィル | 今のゲフィオンは光魔と同じなんだ。光魔も滅びた世界と人々の欠片がアニマを求めて変質したもの。 |
| フィル | だから暴れる彼らを鎮めればゲフィオンのアニマが力を取り戻す ! |
| ジェイド | つまり、戦えと言うことですね。 |
| イクス | わかった ! |
| Character | 3話【14-16 カレイドスコープ前2】 |
| ミリーナ | ……虚無は消し去りようがありません。虚無こそが二つの島しか残らなかったこの世界をかろうじて守っている鎧です。 |
| デミトリアス | しかしミリーナ。虚無は世界を消滅させようとしているのだろう。 |
| ミリーナ | 正確には、カレイドスコープによって滅びた存在たちの欠片――死の砂嵐が世界を解体し、虚無へ変えているのです。 |
| デミトリアス | あの光る砂のような粒子たちか……。 |
| ミリーナ | ですから、あの死の砂嵐をアイギスの中に閉じ込めようと思います。 |
| デミトリアス | アイギス…… ? 今、虚無から世界を守っている防衛システムのことか ? |
| ミリーナ | ええ。ですがあれは仮の盾に過ぎません。死の砂嵐はアニマに引き寄せられる。 |
| ミリーナ | ですから人の体を魔鏡化してその中に死の砂嵐を閉じ込めます。 |
| ミリーナ | その人体万華鏡こそが真に世界を守るアイギスです。 |
| フィリップ | ――まさか、ミリーナがアイギスになるつもりか ! ? |
| デミトリアス | ! ? |
| ミリーナ | 私は世界を滅ぼした悪魔です。人々と世界の怨嗟を受け入れるのは私の仕事。これをアイギス計画とします。 |
| フィリップ | そんなことは認めない ! |
| ミリーナ | 認めてもらわなくてもいいわ。 |
| フィリップ | 第一アニマもキラル分子も足りないぞ。仮に人間を魔鏡化するとしてもそれなりのエネルギーが必要だ。 |
| ミリーナ | 異世界からの具現化で世界に新しい大陸と命を生み出す。そしてその異世界からの力をカレイドスコープを使って変換する。 |
| フィリップ | それには魔鏡が足りない。イクスの形見の魔鏡と同じ物がもう一枚―― |
| フィリップ | まさか……。 |
| ミリーナ | 巻き込みたくはなかったけれどイクスの力を借りるわ。 |
| フィリップ | 三人目だぞ。 |
| ミリーナ | もう一人の私はまだ生きている。私と記憶を共有する彼女がイクスを守るわ。 |
| ミリーナ | ……今……ゲフィオンの記憶が……。イクス、ゲフィオンは生きながらアイギスになるつもりなのよ……。 |
| イクス | ! ? |
| ゲフィオン | ようやく終わる。これでアイギス計画は完了するのだ。 |
| ゲフィオン | ――さようなら……。大好きだった……イクス……。 |
| イクス | ミリーナ ! ? |
| カーリャ | くぅ……う……。苦しい……。ゲフィオンさまの心が……悲鳴を……上げています……。 |
| セネル | おい、ゲフィオンの体からこぼれてるのは死の砂嵐じゃないのか…… ! ? |
| フィル | ――そうか。ファントムが必要以上の具現化を繰り返したから、死の砂嵐に融合の魔鏡術の性質が付加されてるんだ。 |
| ミリーナ | 私の魔鏡術は想像……。融合の魔鏡術には弱いわ。このままじゃ……。 |
| ヴェイグ | さっきファントムの力を弱めた守護魔鏡なら力を弱められるんじゃないか ? |
| フィル | これを使うとミリーナの力まで弱めてしまうから……。 |
| デミトリアス | 死の砂嵐が封じきれなければ、世界は―― |
| ミリーナ | だったら私がゲフィオンに力を貸すわ ! |
| イクス | いや、ミリーナ。もっといい方法がある。 |
| ミリーナ | え ! ? |
| ミリーナ | ! ? |
| イクス | 俺が、ミリーナの嘘を真実に変える。創造の魔鏡術で。 |
| フィル | 創造の魔鏡術は融合術に勝る……。だけど……。 |
| ミリーナ | 駄目よ ! 私……私たちはイクスとイクスの世界を守りたかったのにそんなの―― |
| イクス | (――あの時暴走させたオーバーレイ。あれを敢えて引き起こす) |
| イクス | (その暴走の力で、魔鏡の檻を造って俺とミリーナごと死の砂嵐を閉じ込める) |
| イクス | 魔鏡技 !スタック・オーバーレイ ! ! |
| イクス | ごめん、ミリーナ。ごめん、みんな。コーキス、後は……頼むぞ……。 |
| コーキス | 嫌だ ! 嫌だ嫌だ嫌だ ! |
| ミリーナ | イクス――――っ ! ! |
| | その日ティル・ナ・ノーグ全土に広がった魔鏡暴走は鏡殻変動と呼ばれ世界の姿を大きく変えてしまったのだった。 |