Character1話【ケリュケイオン】
イクスミリーナとゲフィオン様はまだ目を覚まさないのか ?
ジュードうん。鏡士特有のアニマ酔いのせいで昏睡状態に陥ってるみたい。
ジュード僕だけじゃ心許ないからガロウズさんの伝手でお医者さんを連れてきてもらったんだ。
ジュードでもやっぱり目が覚めるにはもう少し時間が掛かるって。
コーキスもう少しって……あれからもう三日だぞ。カーリャ先輩も消えちまったままだしどうなっちまうんだよ、マスター。
イクス……今は俺たちにできることをしないと。
キール――それならぼくたちの話を聞いてくれ。
リタ以前チェスターが持ってきたファントムの設計図なんだかわかったわよ。
イクス何をする装置だったんだ ?
キールあれは時間の流れの不可逆性を無効化したアニマ――つまり負の属性を持つアニマを人為的に操作するものなんだ。
キール特異鏡映点が生み出す負のアニマとキラル分子を使って、具現化情報そのものを変質させるための計算装置なんだよ !
イクスえっと……。言葉はわかるけど意味がよくわからない……。
ガイ要約すると、過去の世界から何かを具現化する時に、具現化する対象の情報を自分好みに変えられるってことだ。
イクスそ、そんなことができるんですか ! ?
ガイそうみたいだな。相当なエネルギーを必要とするから何でも無制限にという訳じゃないみたいだが。
リタどれだけ情報に手を入れるかで必要なエネルギーが違ってくるわね。
リタこれは仮説だけど、ファントムの奴アイギスで守る世界の範囲を狭める代わりに自分の楽園を作りたいんじゃないの ?
イクスもしそれが本当なら今まで具現化してきた大陸は……。
キール見捨てられる。おそらく虚無に飲み込まれるな。
シェリア重要なお話のところをごめんなさい。そろそろ食料を補給できないかしら。
シェリアもう三日もオーデンセ海域の上にいるでしょう ?備蓄が減ってきているの。
イクス補給か……。確かにそれは無視できないな。
ガイだが、どの大陸の街にも救世軍が待ち構えてるって報告だぞ。
リタオーデンセ海域の上空にいるのも救世軍がオーデンセ海域に近づけないからだもんね。
キールオーデンセ海域はアイギスの盾の効果が弱いからな。薄皮一枚隔てれば虚無だ。どうしてアイギスの修復機能が鈍るのか……。
マギルゥおお ! ? レーダーを見るのじゃ !哀れな枯れ葉の小舟が波間に飲み込まれておるぞ ?
クラースあれは魔物――いや光魔に追われているのか ?
コーキス距離が遠すぎるせいかな。チキン肌にならないぞ。
イクスクラースさん、マギルゥ船に合図を送れないか ?近くの島に上陸してくれれば助けるって。
マギルゥよしよし、任せておけ。伝わるかどうかは知らぬがまぁどうにかなるじゃろう。
ガイおいおい、大丈夫なのかよ……。
クラースイクス。この辺りの小島にはケリュケイオンが着陸できる場所がないがどうするつもりだ ?
イクス救出隊を組んで、コレットとアーチェに運んでもらいます。
イクスジュード、誰か手の空いている人を呼んできてくれ。船の人たちを助けるんだ !
ジュードわかった !

Character2話【14-1 外れにある砂浜】
イクス――大丈夫ですか ! ?
セネルああ。あんたたちのおかげで助かった。
ヴェイグ突然、あの大きな乗り物から女の声が聞こえたときは何かと思ったがな。
イクス(マギルゥマイクで直接呼びかけたのか ! ?すごいな ! ? )
ユーリで、あんたたちは何で、大穴があいて見るからにやばい海域をあんな小さな船で横切ろうとしていたんだ ?
ヴェイグ――その前に一応聞きたい。お前たちは救世軍か ?
イクス違います。救世軍を捜しているんですか ?
ヴェイグいや――少し込み入っているんだ。
セネル俺はセネル。そっちはヴェイグ。訳あってセールンドって島を目指している。
セネルだが、安全そうなルートは救世軍って連中が押さえていてさっきの海域を抜けるしかなかった。
コーキスマスター ! めっちゃチキン肌来てるぜ。この人たちも鏡映点で間違いない。
ヴェイグ鏡映点…… ?救世軍も同じことを言っていたが一体何のことなんだ ?
セネルあんたたちは世界がどうなっているかわかってるのか ?
イクスあ、俺に説明させて下さい。少し長い話ですけど、お二人が疑問に思っていることには答えられると思います。
ヴェイグ……なるほど。つまりここはオレの世界でもセネルの世界でもなかったんだな。どうりで話がかみ合わない訳だ。
セネルイクスたちが救世軍と対立しているなら話は早い。
セネル俺たちは救世軍に攫われたクレアっていう女性を取り戻すためにセールンドに向かってるんだ。
ヴェイグオレたちは具現化されたなんて事情はわからなかったからな。
ヴェイグクレアと街に出てみたんだがそこで救世軍に追われていた少年を保護したんだ。
ヴェイグだが途中で敵に囲まれてクレアは少年と一緒に――
セネル俺も知り合いを捜して客船に密航したんだが最初の寄港地でヴェイグたちの起こした騒ぎに気づいたんだよ。
セネルそれで助太刀したんだが、クレアたちを取り返すことはできなかった。
セネルだから救世軍が集まっているっていうセールンドに向かうことにしたんだ。
ジュードねぇイクス。攫われたクレアさんと少年ってもしかしたら特異鏡映点なんじゃない ?
ヴェイグ特異鏡映点 ? 確かあのルカ……とか言う少年がそんな風に呼ばれていたな。
ユーリ嫌な感じがするな。救世軍の奴らこっちが把握している以上の特異鏡映点を確保してるんじゃねぇか ?
イクス俺もそう思います。だとしたら放置しておくのは危険だ。
イクスセネルさん、ヴェイグさん。よかったら俺たちにもクレアさんたちを助け出す手伝いをさせて貰えませんか ?
ヴェイグ……ヴェイグだ。ヴェイグでいい。
イクスえ ?
セネルこれから一緒に戦うんだ。変に気を遣うなってことだろう。
イクス――わかった。よろしく頼むよ。

Character3話【14-2 開けた街道】
二人…………。
イクス二人とも、どうかしたのか ?
ヴェイグいや、異世界にはほうきに乗った魔女が実在するんだな……。
セネルそれに羽根が生えた……コレット、だったか ?両腕に俺とヴェイグを抱えて飛ぶなんてどれだけ力持ちなんだ……。
イクスはは……。ですよね……。
ユーリけど、あの二人のおかげでケリュケイオンが着陸できないとこでも俺たちは降りられてんだ。
ユーリここんとこ船の中にこもってたんで体がなまってたとこだ。救世軍相手に暴れてやろうぜ。
? ? ?そいつは丁度いい。
ジュード――アルヴィン ! ?
アルヴィンよう、優等生♪
イクスえ ! ? アルヴィンってマークの手紙に書いてあった――
コーキスマスター。この人も鏡映点だ。新しい鏡映点が見つかる度にぞわっとするのカンベンして欲しいぜー。
ジュード……アルヴィンは救世軍に関わりがあるんだよね。
ジュード確かマークのスパイとしてファントムの元にいたのに、僕たちの情報をファントムに流したって聞いたよ。
ユーリで、リフィルの見立てじゃ俺たちを北の監獄に遠ざけたのもあんただって話だったな。
アルヴィンおっと。武器に手をかけるのはやめてくれ。悪かったよ。こっちにも色々と事情があったんだ。
アルヴィン急に具現化なんかされて、知らない世界に放り出されたんだぜ。生き延びるために救世軍にしがみつくしかなかったんだよ。
アルヴィンもっと早くお前らに出会えていれば――なーんて言ってもこうなっちまったことはどうにもならないけどな。
アルヴィンでも……悪かったよ。
ジュードだったら、僕たちに力を貸してよ。
アルヴィンそのつもりでここに来たんだぜ。もっともマークとの約束があるから一緒には行けないけどな。
ジュードアルヴィン ! ?
ユーリこりゃまたうさんくさいことで……。
アルヴィンだよなー ! 自分でもそう思うわ。……それでもな。異世界に来てまで仲間を裏切るのはもう終わりにしたいんだよ。
アルヴィン……ってな訳で、これを受け取ってくれ。
イクスこの地図は……何ですか ?
アルヴィンファントムが集めた特異鏡映点が城の地下牢に移されてきた。その地図は地下牢へ通じる隠しルートだ。
アルヴィン今度こそ信用してくれて大丈夫だぜ ?
アルヴィン……ここに来てジュードたちを裏切ったら俺は本当に居場所を失っちまうからな。
ヴェイグアルヴィンと言ったな。クレアは――クレアとルカもここにいるのか ?
アルヴィン少なくとも俺が得た情報では特異鏡映点がそこに集められているのは間違いない。
アルヴィン個々の名前まではさすがに把握できてないんだ。悪いな。
ジュード……わかった。アルヴィンを信じるよ。レイアも言ってた。自分を救世軍から逃がしてくれたのはアルヴィンだって。
アルヴィン……そうか。じゃあ、俺はここで失礼するぜ。
アルヴィンそうだ、ジュード。確証はないがローエンが救世軍に囚われたって情報があった。もし地下牢にいるなら――
ジュード――助けるよ、必ず。
アルヴィンさっすが優等生。後は頼むな !
ユーリ信用していいもんかねぇ。
セネル確かにうさんくさい奴だが人を騙した後ろめたさも感じているようだった。
セネルその気持ちがあるなら信じてみていいんじゃないか ?
ヴェイグどのみち他に情報もない。信じて地下牢に向かうしかないだろう。
イクスロイドが言ってた。罠なんて壊せばいいって。
ユーリロイドらしいな。だが気に入った。行って一暴れしてやろうぜ。

Character4話【14-4 地下の深部】
セネルあの地図、本物だったみたいだな。
イクスああ。でも牢の中には誰も――
? ? ?誰かいるんですか ?
ヴェイグクレアか ! ?
ジュードこっちだ !
ヴェイグクレア ! 待っていろ、今助ける !
クレアヴェイグ、それに皆さんありがとうございます。
ヴェイグ無事で良かった……。ルカはどうした ?一緒じゃなかったのか ?
クレアそれがルカや他に閉じ込められていた人はみんな連れて行かれてしまったの。
クレア魔女に壊された世界を取り戻す……とか何とか言っていたわ。
ヴェイグ魔女 ?
イクスゲフィオン様のことか…… ?
コーキスゲフィオンさまってミリーナさまのことか ?
イクスそれは……。
ジュードその話はいったん置いておこうよ。それより壊された世界を取り戻すって世界の再具現化ってことなんじゃない ?
ユーリファントムの目的は、自分の望み通りに造り替えた世界じゃないかって話だったな。
ユーリだったら連れて行かれた連中は特異鏡映点だっていう可能性が高い訳か。
イクスだとしたら、連れて行かれた人たちはカレイドスコープのところにいるんじゃないか ?
セネル待て。俺はまだこの世界のことがよく把握できてないんだが――
セネル特異鏡映点というのが世界の再具現化に使われるのだとしたら、今具現化している俺たちはどうなるんだ ?
セネルそれに今既に具現化されている大陸は……。
イクス……消えてしまうと思う。
セネル――っ ! ?
ヴェイグ……イクス、このまま敵のところに向かうつもりか ?
ヴェイグだがクレアには戦う力はない。クレアを連れて行くことはできないぞ。
リフィルイクス、聞こえていて ?ミリーナとゲフィオン様が目を覚ましたわ。
イクス! ?
ユーリイクス。ヴェイグとクレアを連れてケリュケイオンに戻れ。
イクスでも――
ユーリあっちはあっちで聞かなきゃいけないことは山ほどあるだろうよ。その代わり特異鏡映点の方は俺たちで引き受ける。
ユーリ忘れたのか ? イクス。こっちはお前らに力貸すって仕事を引き受けてんだぜ ?
ユーリ夜空にまたたく凛々の明星の名にかけてな。こういう時こそ俺の出番ってヤツさ。
ジュードそうだよ。それに僕の方もこの先に仲間がいるかも知れないんだ。
セネル俺もだ。
セネル特異鏡映点だか何だか知らないが救世軍が具現化した連中を集めているならこの先に俺の仲間もいるかもしれない。
ユーリ確かクレスたちも城に潜入してる筈だな。連絡を取って合流する。そっちはミリーナから【真実】を聞け。いいな ?
イクスわかりました。ヴェイグ、行こう。
ヴェイグああ。

Character5話【14-5 城へ続く街道1】
ゲフィオン全ての始まりは十五年前のビフレスト皇国によるオーデンセ侵攻だった。
イクス……くそ。雨か。
ビフレスト皇国軍――見つけたぞ ! 鏡士だ !
ミリーナ! ?
イクスミリーナ、走れ !港まで行けばセールンドへ逃げられる !
ミリーナイクス、だけど――
イクスミリーナに手を出すな !
ビフレスト皇国軍どけ !
ミリーナイクス ! ?
ビフレスト皇国軍邪魔だー ! !
イクスミリーナは俺が守る ! !
イクスぐぅ……やらせ……ない……っ !スタック・オーバーレイ ! ! !
ミリーナそんな……うそ……
ミリーナイクス……うそ、だよね……
ミリーナイクス……目をあけてよ……お願い……お願いだからっ ! !
ミリーナやだよ……
ミリーナいや……
ミリーナいやーーーー ! ! ! !
イクス! ?
ミリーナ…………。
ゲフィオンその後セールンドに逃げたミリーナは幼なじみのフィリップと共に王立魔鏡科学研究所に入った。
ゲフィオンビフレストに復讐するために亡くなったイクスの両親がおこなっていた魔鏡兵器の研究を受け継いだのだ。
ゲフィオンそしてカレイドスコープが誕生した。カレイドスコープの力は絶大だった。
ゲフィオンビフレストの大地や人々のアニマを抜き取り残された物質としての存在――アニムスを光の砂へと変えて消滅させた。
ゲフィオンその力がセールンド王国を勝利に導き同時に、世界を破滅へと追い込んでしまったのだ。
ゲフィオンかつて世界が存在していた場所に何もない空間――虚無が生まれてしまった。
ゲフィオン虚無と世界の欠片である光の砂は暴走し瞬く間に世界を飲み込み、消滅させていった。
ゲフィオンこれがミリーナが――私が魔女と呼ばれる所以だ。
イクスじゃあ、あなたは本当に……。
ゲフィオン私の名はミリーナ・ヴァイス。世界を破滅させた女だ。
イクス………… !
リフィル――そしてあなたは、アイギスという世界を守る盾を造り出して残されたわずかな世界を守ったのね。
ゲフィオンそうだ……。しかし世界は既にセールンドとオーデンセの周囲しか残っていなかった。
ゲフィオン私は――私とフィリップはカレイドスコープを改良して、過去の時代から世界を具現化しようと考えたのだ。

Character6話【14-6 城へ続く街道2】
フィリップ……ミリーナ。あきらめてくれ。
フィリップイクスの形見の魔鏡に、古のビクエの魔鏡を重ねても一年前が限界だ。これ以上過去へは遡れない。
フィリップ仮にできたとしても、現在との距離が遠いほど具現化のダメージが酷くなる。残されたこの世界まで引き裂かれるぞ。
ミリーナ――そう……よね。それにこれ以上時間をかけていたら、死の砂嵐で世界は虚無になる。それは避けなくちゃね……。
フィリップ……ミリーナ。試してみたいことがあるんだ。過去の【僕】を具現化してみたい。
ミリーナフィル ! ?
フィリップ範囲を狭めれば、十年前からでも具現化できると思うんだ。まずは僕で試して、成功したらイクスとミリーナを…… !
ミリーナ駄目よ……。それは……。
フィリップ世界は一年前から、オーデンセの住民だけは十年前から具現化すればいい。それにイクスの傍にはミリーナが必要だろう ?
ミリーナ駄目よ。同一時間に同一存在を具現化すれば、自震で双方のアニマとアニムスがダメージを受けるわ。
フィリップ僕の家系は融合の魔鏡術だ。いくつか回避策を考えてある。ミリーナ、やらせて欲しい。
ミリーナ……でもそれは、私のエゴなのよ。だから――
フィリップだったらこれは僕のエゴだ。僕はミリーナの願いを叶えたい。
フィリップイクスを甦らせてあげたいし、その横にはミリーナがいなければ駄目なんだよ。
ミリーナ…………。
ゲフィオンいくつかの実験の後私は……私の歪んだ思いを現実にした。
ゲフィオンその頃には、過去からの具現化も研究が進み個人レベルまで焦点を絞ればある程度の過去から具現化する手段が見つかっていた。
ゲフィオン私は、過去から甦らせた新生ティル・ナ・ノーグに十年前――今現在からはおよそ二十年前の時間軸からイクスやオーデンセの人々を甦らせたのだ。
イクスそれが俺……。
ゲフィオン――いや、正確には違う。
イクスえ ! ?
ミリーナ……違うの、イクス。私は二人目のミリーナだけど、あなたは――
ゲフィオン救世軍がアイギスシステムを破壊したのだ。
ゲフィオンその結果、システムを置いていたオーデンセ上空にアイギスの破片が降り注ぎ具現化したオーデンセも消失してしまった。
イクス! !
ゲフィオン全ては虚無に漂う死の砂嵐の影響だ。あれは世界の――人々のアニムスの欠片だ。アニムスには人々の記憶が残されている。
ゲフィオンそれが具現化した人々に【滅びの夢】という形で影響してしまった。
ゲフィオン彼らはかつて存在していた自分たちの滅びの記憶を夢として見ることになりそれが不安を生んでしまった。
ミリーナゲフィオンは――いえ、私は、オーデンセを守るために、航行権を制限したの。
ミリーナ特にオーデンセ海域への立ち入りは厳しくしていた。
ミリーナそれをビフレストと通じているからではと怪しんだ救世軍が、オーデンセのアイギス装置を破壊してしまったのよ。
イクスあの時……具現化された俺は死んだのか ! ?
ゲフィオンミリーナを庇って……命を落とした。それだけではない。過去から具現化した世界も死の砂嵐に飲み込まれてしまった。
ゲフィオン全ては水泡に帰した。もはや悠長に過去からの具現化をしていては世界が滅びてしまう。
ゲフィオンそれに過去から具現化した人々は死の砂嵐の存在によって、必ず滅びの夢を見る。過去の記憶がもたらす不安は、また破壊を招くだろう。
ゲフィオンだから私は最後の手段を講じた。それが異世界からの具現化だ。
ゲフィオンティル・ナ・ノーグそのものを甦らせることはできぬが異世界の力を借りることでこの世界を別の形で残すことはできる。
ゲフィオンどれだけ憎まれようと私はこの世界を残したかった。そうしなければならなかった。
ゲフィオンただそのためには、どうしてもイクスの力ともう一枚のイクスの魔鏡が必要だったのだ。
キール……一つ、わからないことがある。救世軍を作ったのはフリーセルとフィリップだったと聞いている。
キールどうしてフィリップは、自らの計画を壊すような真似をしたんだ。
ゲフィオンそれは、私には想像することしかできない。
ゲフィオンおそらくフィリップは、滅びの夢で動揺する人々の反乱の芽を潰すため、あえて反乱勢力を一つにまとめようとしたのだろう。
ゲフィオンだが、救世軍の動きを抑えきれなかったのではないか。
カノンノ・Eそれは……ファントムのせいですか ?
ゲフィオンそうだろうな。
ゲフィオンお前たちがファントムと呼んでいるのはフィリップが最初に自らを実験台にして生み出したもう一人のフィルだ。
ゲフィオンフィリップはリーパと呼んでいた。
ゲフィオンだがリーパを具現化した影響でリーパもフィリップも肉体と精神にダメージを負ってしまった。
ゲフィオンフィルは子どもの頃のように病気がちになり城にも登城しなくなってしまった。
ミントあの……。ユーリさんたちから連絡が入っています。
リタあたしが聞いてくる。
リタ――イクス、あんた酷い顔色よ。いったん休憩にしましょ。少し休んだ方がいいわ。
イクス…………。

Character7話【14-7 城へ続く街道3】
チェスター……どうするんだ ? つけられてるぞ。
マークミリーナから預かった例の魔鏡は持ってるな ?
チェスター当たり前だ。何のためにケリュケイオンに入り込んだと思ってる。
マークいいんだな ? ファントムを消しても。妹を具現化することができなくなるぞ。
チェスター……揺れることを言うんじゃねぇよ。迷ってねぇって言ったら嘘になる。もう一度会えるなら……。
チェスターでもファントムがやろうとしていることは今まで具現化された存在も消し去っちまうんだろう ?
チェスター勝手に具現化されて勝手に殺されて……そんなのは許せねぇ。
マークあんたを選んだ俺の目は正しかったな。――行け、チェスター !
クレスチェスター ! 待ってくれ !
マークおっと。悪いがここから先には行かせないぜ。
リオン面白い。ここでお前を消してやる !
クレス――リオン、後ろだ !
リオン! ?
カイウスお前がマークか。ここは任せろ !
マーク――何者だ ?
シングオレはシング。そっちはカイウス。フィリップって人から頼まれたんだ。
マークあいつ、やっぱり近くにいるのか ! ?
カイウス急げ ! こっちにはメルクリアから預かった鏡がある。
マーク恩に着る !
クレス待て ! !
シング2対2か。なら片付けられそうだな。
リオンほざくな、雑魚が。
カイウス何 ! ?
ユーリおっと、俺たちも数に入れてもらおうか。
クレスユーリ ! ジュード !
リオン――それに新入りか。別に助けはいらなかったが合流したからには働いてもらおうか。
セネル言われなくてもそうするさ。
カイウス数が多いな……。やっぱりメルクリアの鏡を使おう、シング。
シングああ。ここでもたついてたらメルクリアとフレンに合流できなくなる。
ユーリフレン、だと ? おい、お前ら――
カイウス悪いな !縁があったらまた会おうぜ !
セネルくっ、目くらましか ! ?
ユーリちっ ! 逃げ足の速い !
ジェイド――今の光は何かと思えば皆さんでしたか。
セネル……お前、何者だ。血の匂いがするな。
ジェイドあー、これは失礼。道中、色々とありまして。
ジェイド返り血はなるべく浴びないようにしてきたのですがね。
ユーリセネル。こいつは善人面した悪人だが一応俺たちの味方だ。
ジェイド傷つきますねぇ。そちらこそ善人の仮面をつけている【だけ】で、こちら寄りの人種だと思っていましたが。
リオンフン、お前たちはどっちもどっちだろう。それより、どうしてここにいる。カレイドスコープの方はどうした ?
ジェイド近くまではいけましたが、いくつかあるルートのどれも完全に封鎖されています。
ジェイドあの封印はパスコードを知っていないと解けないたぐいのものです。
ジェイド鏡士なら出入り口を具現化してしまえるのかも知れませんがね。
クレスこちらもチェスターたちを見失ってしまいました。どうしますか。
セネルせっかくここまで来たんだ。このまま戻るのは惜しい。
リオンジェイド、一番マシな潜入ルートを教えろ。警備体制を確認しておきたい。
ジュード待って。一度ケリュケイオンと連絡を取っておいた方がいいと思う。
ジュードイクスたちが戻っている筈だしゲフィオンから何か聞いているかも知れないよ。
ジュードそれとユーリ、大丈夫 ?何だか浮かない顔してるけど……。
セネルあの眼鏡の軽口に傷ついた訳でもないだろう ?
ユーリまさか。――さっきの連中が知り合いと同じ名前を口にしたんでな。ちょっと気になっただけだ。
ユーリそれよりケリュケイオンに連絡するんだろう。俺がやる。

Character8話【14-7 城へ続く街道3】
イクス………………。
コーキスマスター……。つらいんだな。俺すげぇ、胸が苦しい。マスターが苦しいからだろ。
イクス……ごめんな。コーキス。わかってるんだ。俺が過去から具現化された存在だから何なんだって。
イクス鏡映点のみんなだって具現化された存在だから何も変わらない筈なんだけど……。
イクスでも……ロイドが言ってたみたいに俺……後ろめたいんだ。きっと。
ヴェイグ――イクス。ここにいたか。
イクスヴェイグ。何かあったのか ?
ヴェイグいや……。オレには具現化やこの世界に起きたことに関してまだ簡単な知識しかない。
ヴェイグだがそれでも、イクスがイクスとしてこの世界に生まれたことを悔やむ必要はないんじゃないかと思う。
イクス……ヴェイグ。
ヴェイグイクスがどんな存在であっても楽しい時は笑い悲しい時は涙を流すだろう。
ヴェイグ人の心とはそういうものだ。それは具現化された人間でも変わらないと思う。
コーキスヴェイグさま……。すげぇよ。そうだよ、その通りだよ。
ヴェイグ――いや、これはクレアの受け売りなんだ。だが、オレもクレアと同じように考えている。
ルーク――心は同じ、か。そうだな。俺もそう思うよ。
イクスルーク……。
ルークさっき、カノンノからイクスの話を聞いた。えっと、今までお前にちゃんと話したことなかったと思うけど……。
ルーク俺さ、普通の人間じゃない。レプリカなんだ。
ルーク被験者(オリジナル)のルークって奴が別にいて、俺はそいつのコピーみたいな感じ……って言えばいいかな。
ルーク最初にその話を知ったときはすげぇ混乱して、認めたくなくてさ。でも……今は俺は俺なんだって思える。
ルーク色んなことがあって、その体験は俺だけのものなんだって。……って、これはティアの受け売りだけどな。
イクスルーク……。ごめん。そんな話をさせて……。
ルークいいんだよ。要するに、俺もヴェイグもイクスに言いたいことは同じだと思うんだ。
ヴェイグああ。ここにいるイクスも具現化された他の存在も、みんな同じように心を持つ誰にも代えがたい大切な存在だ。
イクス――ありがとう、二人とも。それにコーキスも。
イクスだけど俺、二人にもみんなにもまだ伝えてないことがあるんだ。――でも、腹は決まった。
イクスみんなをブリッジに集めて欲しい。
ルークわかった。全員は無理だから各部屋に通信が繋がるようにしておくよ。
イクスみんな、ごめん。こんな時だけど――こんな時だから話を聞いて欲しい。
イクス俺はティル・ナ・ノーグを救うために異世界を具現化してきた。
イクス最初は何もわからなかったけど、俺なりに魔鏡技術を調べていくうちに、俺が最初に聞いてた話が矛盾してるって気づいたんだ。
イクス結論から先に言う。鏡映点として具現化されたみんなは――もう二度と元の世界には戻れない。
イクス一生ティル・ナ・ノーグで生きていくしか選択肢がないんだ。
ミリーナ! ?
カイル――……え ? どういうこと ?確かこの世界の具現化が落ち着くまでいて欲しいってことじゃなかったの ?
イクスゲフィオン……様、俺たちの具現化は異世界に影響しないと言っていましたね。
イクスということは、この世界で具現化された鏡映点は戻れないと言っているのと同じですよね ?
リッドそうか……。この世界の記憶を持って元の世界に戻るってことは元の世界に干渉することになるのか。
ミリーナゲフィオン。本当なの ! ?
ゲフィオン――事実だ。
ガロウズ今、ティル・ナ・ノーグはアイギスに守られているがその外には虚無が広がっている。
ガロウズ虚無はティル・ナ・ノーグからあらゆるエネルギーが流れ出ることを妨げているんだ。
キールだから観測者効果を無視して、異世界からの具現化を実現できていたんだな。
ガロウズああ。異世界から具現化することはできても具現化した人々を元の世界に戻すことはできない。
ガロウズもしも虚無がなくなれば、そもそも存在する次元の壁によって、具現化の力そのものが跳ね返されちまう。
ミリーナそれを知っていてイクスに具現化をさせたの ! ?
ミリーナ鏡映点のみんなをこの世界に閉じ込めるとわかっていて ! ?
ゲフィオンガロウズを責めるな。決めたのは私だ。私がそういう人間だと言うことはお前が一番よくわかっている筈。
ゲフィオン今はまだこの判断をしたときの記憶が共有されていないようだがいずれ全てわかる。
ジェイド失礼。カレイドスコープの元へ再潜入する為の手勢が欲しいのですがケリュケイオンを着陸させて貰えますか。
クレスこの辺りの救世軍は追い払った。今なら着陸しても安全だ。
イクス……わかりました。ケリュケイオンを降ろします。

Character9話【14-8 デレク山 麓】
イクスみんな、無事で良かった。
リオン無事で当然だ。それよりゲフィオンから話は聞けたんだろうな ?
イクスああ……。ゲフィオンは……その……。
ユーリ――おい、ちょっと待った。ゲフィオンはどこだ ?今までゲフィオンと話してたんじゃないのか ?
二人! ?
イクスそういえばガロウズもいなくなってる…… ! ?
カーリャ…………。
ミリーナカーリャ ! カーリャならわかるわよね。私とあの人は同じ存在だもの。
ミリーナ私の心から生まれたカーリャにはゲフィオンがどこにいるかわかる筈よ。
カーリャ……ごめんなさい、ミリーナさま。
カーリャケリュケイオンが着陸したときにゲフィオンさまとガロウズさまがセールンドの街の方へ出ていきました。
ミリーナゲフィオンに口止めされたのね。
カーリャはい……。だって、あの人もミリーナさまなんです……。
ベルベット何、何の音 ! ?
スレイ見てくれ ! 空の色が――
イクスオーロラ、なのか ?それにしては随分毒々しい虹色だけど……。
ミリーナ嘘……。
イクスどうした、ミリーナ ?
ミリーナあれは【私】がカレイドスコープで世界を滅ぼしかけたときと同じキラル分子の異常収縮現象……。
ミリーナきっとカレイドスコープを暴走させようとしているんだわ。
イクス――みんな、この世界に呼び寄せて巻き込んでごめん。でもみんなを消させはしないから。
ミリーナ待って、イクス ! どこに行くの !
イクスカレイドスコープのところへ行く。これは俺たちの世界の問題だ。だから俺が解決しないと。
ミリーナ私も行くわ ! 私だってこの世界の人間よ。
ベルベット――いい加減にしてちょうだい。
ベルベット勝手に具現化して、勝手に牢獄みたいなこの世界に閉じ込めて、これは俺たちの世界の問題ってふざけたことを言わないでよ。
イクスベルベットさん……。
ベルベットそれにあたしを具現化したのはあんたじゃないわよ。あのファントムとかいうおかしな男じゃない。
ベルベットだったら奴にあたしの怒りをぶつけてやらなきゃ気が済まないわよ。――だから、あたしを連れて行きなさい。
スレイそうだよ、イクス。ミリーナ。オレたちがもう自分の世界に帰れないならここが具現化されたオレたちの世界になる。
スレイだったらオレたちもこの世界の人間だろ ?解決に協力したいと思うのは当然じゃないか。
ジュードそれに、カレイドスコープへの潜入ルートをイクスは知ってるの ?それを調べてルートを確保したのは僕たちだよ。
カノンノ・E私も連れていってくれるよね。私の知っているフィルはこの世界を壊そうなんてしてなかった。
カノンノ・Eイクスとミリーナが知ってるフィルだってそうでしょう ?
メルディメルディな、戻れないのたぶんわかってた。寂しいけど、へーき !ここ、みんながいるから。
キールぼくも予想はしていた。キール研究室の人間はもちろんそうだろうし、他にもそうだろうと気づいてた奴はいる。馬鹿にするなよ。
リオン気づいてなかった奴もいるがな。
ルーティ何で私を見るのよ。ここはスタンの方を見る流れでしょ !
スタンえぇっ ! ? 俺 ! ?
スタンそれは……確かに帰れないとまでは考えなかったけど、でもこうなったことはイクスたちのせいじゃないよな。
ルーティそうよ。それなのにどうしてイクスとミリーナだけで片をつけようとするの。
リフィルごめんなさい。私はイクスたちに責任がないとは言えないわ。でもね、私たちは仲間でしょう ?
リフィル責任がどうとかじゃなくて仲間なら支えたいって思うのは当然じゃないかしら。
ロイドそうだよ。二人とも変なところで責任感が強いんだな。もっと頼ってくれていいんだぜ。
ロイド間違いは正せるって俺は信じてる。本当はどうにもならないことがあるのもわかってるぜ。
ロイドそれでも希望は捨てたくないし仲間が希望を捨てようとしてるなら拾ってでも押しつけてやるさ。
ルーク希望か……。そうだよな。俺はさ希望と可能性をもらったんだって思ってる。イクスたちは俺に未来をくれたんだって。
ルークだからさ、感謝してるんだよ。助けさせてくれるよな ?
ヴェイグオレはクレアを助けるために力を貸してくれたお前たちに協力したい。……ただ、それだけだ。
ソフィわたしも。わたしも、イクスとミリーナの力になりたい。それだけじゃ駄目かな ?
セネル……いい連中じゃないか。みんな抱え込んでることはあるだろうが、それでもお前らを助けたいって言ってるんだ。
セネル甘えてもいいんじゃないか ?
イクスみんな……。俺を……俺とミリーナを憎んでないのか ?
ラピードワフッ ! ワフッ ! !
ユーリ今の話を聞いてまだそんなことを言うかねぇ。ラピードも呆れてるぜ。
ユーリイクスとミリーナはどうしてこの旅を始めたんだ ?
ミリーナ……この世界を――
イクス――救いたいから。
クレスそれなら、もう何も言う必要はないね。行こう、イクス、ミリーナ。【みんな】でこの世界を守るんだ。

Character10話【14-10 デレク山 山頂】
マークよぅ、イクス、ミリーナ。
イクスマーク…… ! ?お前、今までどこに行ってたんだ ! ?
マークそれはわかってるだろ ? 俺とチェスターの後をつけさせてたんだから。まぁ、途中で上手いこと引き剥がせたけどな。
ミリーナまたそうやって強がって本当のことを隠すのね。
マークミリーナ……。本当にお前は……人の心をえぐってくるな。フィルの奴、ドMだったのかねぇ……。
ミリーナイクス……。隠していてごめんなさい。チェスターとマークから取引を持ちかけられていたの。
イクスえ ! ?
コーキスマスター、ミリーナさま。何とかしてくれよ。
カーリャマークが俺も連れて行けってうるさくて。
ミリーナもう、しょうがないわね。私、ちょっと叱ってくる。
チェスターミリーナ。丁度いい。オレもマークに用があるんだ。一緒に行く。
ミリーナフィルから預かった鏡片のお守り…… ?どうしてそれをチェスターさんが知ってるの ?
チェスターマークから聞いた。それがあればファントムの動きを封じられるかも知れないんだ。
ミリーナ……待って。チェスターさん。あなた、何者なの ? まさか――
チェスター違う ! いや、違わないけど、でも違う。俺はクレスがいるこのケリュケイオンを裏切ったりはしない。
チェスタースパイみたいな真似をするつもりもない。
ミリーナ私が、それを信じると思う ?イクスを陥れる可能性があるものは何だって排除できるのよ。
チェスター信じざるを得ないさ。ゲフィオンとの面会の時の会話で、合点がいった。ミリーナ。お前はゲフィオンの――
ミリーナ――まさか、チェスターさんがそんな手を使ってくるなんてね。まるでジェイドさんかリフィルさんだわ。
チェスターあの枠と一緒にするな。こっちも必死なんだ。まぁ……マークに入れ知恵されたんだけどな。
イクスフィルの鏡片 ? それは何だ ?
マークイクスがオーバーレイ暴走を起こした日……あのピクニックの日にフィルがミリーナに渡していたものだよ。
マークお前の知らない話――知らなくていい話だ。
ミリーナファントムを倒すつもりなら私たち、同じ目的の筈よね。
マークそいつは違うな。俺たちは違う目的で動いてるんだ。
マークさぁーて、話は終わりだ。そろそろ、片付けちまおうぜ。
イクス戦うつもりか ! ?
マークおいおい。そんな意外そうな顔するんじゃねぇよ。俺はお前らや鏡映点の命を狙ってたんだぜ。
マーク当たり前の流れだろ。
コーキスてめぇ、フィルさまの鏡精なんだろ ! ?こんなことしてフィルさまが許すと思ってるのか ! ?
カーリャそうですよ ! ミリーナさまたちはフィルさまの幼なじみなんですよ ! ?
マーク知ったことかよ。俺はフィルのためにお前たちを殺すと決めていたんだ。フィルのためにここで消えてくれや。
イクス…………。
マーク……どうしたイクス ?早く構えろよ。
イクス……マーク。一体どうして…… ! ?何で、こんな風に戦う必要があるんだよ ! ?
マーク俺とお前は、敵同士。ずっと、そうだったろ ?
ミリーナ……だったらどうしてこの間は一緒に戦ってくれたの ?
マークただ、気まぐれに道が重なっただけだ。──深い理由なんか、ないさ。
マーク構えねぇならそれでもいいぜ。そのまま、死にな。
イクス……そういうわけには行かない。俺はこの世界を救ってみせるって誓ったんだ。
イクスあんたを倒して、この先へ進んで見せる !
ミリーナうん……私も──イクスの進む道を、信じてる !
(俺も、あの人達みたいな強さが欲しい)
そうならなきゃ、いけないんだっ !

Character11話【14-10 デレク山 山頂】
マーク……マジかよ。俺はお前らをここに留めておくことすらできねぇのか。
イクス――留めておく ?殺すつもりじゃなかったのか ?
マーク……負け犬に根掘り葉掘り聞くなよ。恥ずかしい。
ミリーナ今更じゃない ?全て話した方がきっと楽になるわ。
マーク……最初はフィルと一緒に救世軍をコントロールする筈だった。世界を虚無から守るためにな。
マークだが……フィルが倒れてファントムが実権を握ってから救世軍は制御不能になっちまった。
マークファントムはフィルの願いである世界とミリーナの幸せのためにはゲフィオンを信じるなと言い出したんだ。
マークそして俺にこう言った。フィルの本当の幸せの為には何が邪魔だと思うか――ってな。
ミリーナそれが私とイクスの命……。
マーク言っておくが、ファントムに命令されたから命を狙ったんじゃない。俺の意思だ。フィルが苦しむのを見ていられなかった。
マークイクスに憧れて、嫉妬して、ミリーナの願いを無条件で叶えようとして……。あいつは望んで奴隷になってたからな。
イクスもしかして、フィルは――
マーク――俺はフィルの鏡精だ。フィルの想いは知ってるし俺の感情はフィルの想いに影響される。
マークだから俺はお前たちが憎くて……でも――いや、まぁ、それはいい。
マークそれより、イクス。カレイドスコープの元に行くなら、これだけは約束しろ。ミリーナを守れ。彼女をサーチさせるな。
イクスミリーナも具現化された存在だろ ?具現化された存在をサーチなんてできるのか ?
カーリャもしかしてゲフィオンさまのことですか ?
マーク――その内わかる。それともう一つ。イクス、絶対に死ぬな。お前は三人目なんだからな。
ミリーナ…………。
イクスえ…… ! ?三人目ってことに意味があるのか ?
マーク具現化には制限がある。アニマサーチは三回を超えるとそれ以上は検出不能になるんだ。
イクスつまり……俺が死ねば、もう俺という存在は二度と具現化できないってことか。
マーク――さすがに察しがいいな。お前が消えればゲフィオンもミリーナも悲しむ。それを見れば傷つくのはフィルだ。
マークだから――絶対に死ぬなよ。
イクス――わかった。
マークそれじゃあ、こいつを持っていけ。
ミリーナこの紋章は、何…… ?
三人デリス・エンブレム ! ?
マークそういう名前らしいな。構造を解析して似た性質のものを作った。それがあればカレイドスコープの封印を突破できる。
セネルなるほど。その紋章がパスコード代わりなのか。
イクスマーク。一緒に行ってくれないのか ?
マーク行けると思うか ? お前らにやられた傷で動けねぇよ。ここで吉報を待つとするさ。……ファントムの好きにさせるなよ。
ヴェイグマーク。本当に全てを語ったのか ?これ以上話すことはないのか ?
マーク――……ねぇよ。
チェスター(デリス・エンブレムのおかげでカレイドスコープの間には入れたが……。ファントムはどこだ)
ファントム――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている !
チェスター(特異鏡映点があんなに ! ? )
チェスター(クソ、どうする。連絡はまだ来ねぇが、止めるべきか……)
チェスター(アミィ ! ?どうしてアミィがここに―― ! ? )

Character12話【14-13 セールンド城内3】
フィリップ……やっぱり駄目か。
デミトリアスフィル……。その症状はアニマ汚染だ。これ以上続けては私のようになってしまうぞ。
フィリップ……はい。これ以上は難しい。【狂化止め】の術式を変更する必要があります。
デミトリアスまだ続けるのか ! ?
フィリップいえ、その前に、リーパを止めなければなりません。リーパのアニマとアニムスを繋ぐ部分が歪みを引き起こしています。
ファントム(私を捨てようというのか――。勝手に生み出しておいて感情を与えておいて――)
ファントム(私が歪んでいるから――)
ファントムこの数日で、必要なアニマとキラル分子はここに集めました。後は、特異鏡映点たちに働いてもらうだけです。
ルカ…………。
ファントム何を言っても無駄です。その魔鏡陣の中にいる限り動くことも、声をあげることもできないのですから。
ファントムさぁ、新たな世界を生み出しますよ。歪んだ私の望む、私と彼女のためだけの真に正しく歪んだ新世界を――
ファントム――計算通りだ。特異鏡映点がアニマを集めている !
ファントム――ですから、もう何をしても無駄ですよチェスター・バークライト !
チェスターくっ !
ファントムあなたが何をしに来たのか当ててあげましょう。
ファントム大方マークとフィルに荷担して鏡片をもって私のアニマをフィルに戻すつもりなのでしょう。
ファントムチェスターを捕らえなさい !
チェスター大人しく捕まると思ってるのか !
ファントム捕まりますよ。あなたは具現化された妹を裏切れない。
チェスター! !
救世軍兵士ファントム様。この男、鏡片を持っていません !
ファントム何 ! ?
伝令ファントム様 ! イクス・ネーヴェらが城内に侵入してきました !
ディストなるほど。謁見の間からのカレイドスコープへ繋がる通路に出るつもりですね。
ミトスそれで、どうするつもり。
ミトス僕らをイクスと戦わせるなら当然どこかに配置している筈なのにここに集めるなんて。
リヒターお前は人を信じない。俺やミトスと同じ生き方をしている。
リヒターならばお前は俺たちのことも信じていないだろう。
ファントムそれは心外です。
ファントムところで私がミトスに取り戻させたビクエの魔鏡を覚えていますか ?
ミトス――まさか !
ファントムええ、気づくのが遅かったようですね。
ファントム魔鏡よ ! ビクエの名の下に四つのアニマを幻体として彼のモノと融合させよ ! !
救世軍兵士ファントム様、四幻将の皆様は――
ファントム幻影魔獣と化して、イクスたちを足止めしてくれるでしょう。お前たちも配置につきなさい。
救世軍兵士はっ !
ヴェイグ――城内がやけに静かだな。
カーリャ……何だかぶるぶるします。
コーキス俺もだ。チキン肌がすげぇ……。
ミリーナまさか光魔 ! ?
カーリャ違います……。何だかもっと怖くて悲しい感じがします。
セネルイクス、気をつけろ。こういう時はこの先に何かとてつもなく強い敵が待ち構えている筈だ。
イクスそうだな……。
コレット……聞こえる。魔物みたいな声。多分四匹。
リッドイクス、覚悟はいいな。
イクスああ。どんな敵が待ち受けていても必ず突破してみせるっ !

Character1話【14-15 カレイドスコープ前1】
イクスえ、今から三人でピクニック ! ?俺、ついさっき漁から帰ってきたところだよ。
イクス海にとんでもない魔物が出てさ何とか逃げてきたんだ。
ミリーナえ ! ? イクス、大丈夫 ! ? 怪我は ! ?
イクスいや、俺は平気。でも祖父ちゃんがちょっと足をやられてさ。俺が鏡士の力を使えれば祖父ちゃんに怪我させなくてすんだのに……。
イクスなんで祖父ちゃん鏡士の仕事を嫌うんだろう……。
ミリーナイクスなら素質があるからすぐ鏡士の力を使えると思うってフィルも言ってたわ。
イクス……ちょっと試してみようかな ?魔鏡が使えたら、漁に出るのも楽になるし。
イクス魔鏡の力を使えるのを見たら祖父ちゃんも鏡士になるのを認めてくれるかも……。
フィリップ――二人ともお待たせ……――ミリーナ ! ?イクス ! ? どうしたの ! ?
ミリーナイクスの力が暴走して……止められないの !私が、私が余計なことを言ったから――
フィリップ大丈夫、ミリーナ。僕の守護魔鏡を使えば止められる !
ミリーナえっ ! ?
フィリップ僕の鏡士としての力を弱める封印なんだ。これを使えばきっと――
ミリーナ駄目よ、フィルは体が弱いからわざと力を弱めているんでしょう ?
フィリップでもこのままじゃイクスが死んじゃうよ !
ミリーナ――わかった。でも、私にやらせて。バックファイアを受けるのは私だけでいいから !
フィリップミリーナ ! ?
ファントム……あの時割れた守護魔鏡を使ってくると思っていたがまだミリーナが持っているのか ?
イクス――やっぱりここにいたか、ファントム !
ファントム……遅かったですね、イクス。もう少し頑張るかと思っていましたよ。
ミリーナ遅くなんかないわ。ここであなたを仕留めて世界の造り直しを止めてみせる。
ファントムカレイドスコープがあの状態で ?
カーリャミリーナさま ! ?カレイドスコープが壊れてます ! ?
ファントムカレイドスコープにはアニマをかき集めるために無理をしてもらいました。
ファントム私が造る新たな世界は私が研究して生み出した新たなカレイドスコープを使います。
イクスチェスターが持ってきたあの図面の……。
ファントム新たなカレイドスコープがどこにあるかあなた方には永遠にわからないでしょう。――ミリーナを捕らえろ !
ミリーナ! ?
イクス――やらせるかっ !
チェスター――イクスッ ! どけっ !
救世軍兵士ぐぉっ ! ?
クレスチェスター ! ?
ファントム――何 ! ?幻影魔獣化されて、まだ動けるのか ! ?
チェスター色々あったんだよ。お前に説明する義理はねぇがな !
チェスタークレス、悪かった。後でちゃんと謝らせてくれ。
クレス当然だ。でも今は――
チェスターああ ! ファントムを仕留めるぞ !
ファントムくだらないことを !お前たちが守ろうとしているのはつぎはぎの幻。
ファントム私と同じ――いやそれより下劣な女の嘘で造り出された砂上の楼閣だ !そんな虚飾を何故守ろうとする ! ?
ファントム嘘にまみれた世界に無理矢理生み出されたことを憎いとは思わないのか ! ?
アスベルそれでも俺たちはここに存在している。存在した以上消えても構わないなんて思えないさ。
エミルたとえ嘘の存在でもここまで旅をしてきた事実は覆らないよ。
マルタそうだよ。あんた、ちょっと女々しいんじゃない ! ?
アーチェホントホント。つぎはぎでも何でもいいじゃない。何もかも消えちゃうよりさ。
スタン自分が生み出されたことが憎いならどうしてさらに世界を造り替えようなんて考えるんだ。
ファントム私は――私は私を私として受け入れる世界を造るだけだ。
ファラどうして ? あなたが嘘だと言ったこの世界を壊そうとしなければ誰もあなたを拒絶しないんじゃないの ?
ファントム異世界の人間に何がわかるか。
エドナその態度がいけないんじゃない ?受け入れて欲しいくせに、他人にばかり望みをかけるなんて単なる甘えね。
ファントム他人になど期待してはいない。だからこそ私は私の望む世界を造る。
ファントムどうせこの世界はとうの昔に滅び具現化ではない元の世界などほんの一握りしか残っていない。
ファントム幻と幻を重ね合わせたところでミリーナが嘘で覆った世界の本質は何も変わりはしない。
ミリーナ…………。
イクス確かにこの世界はミリーナが造り出したものかも知れない。でもそれはミリーナの贖罪の気持ちだ。
イクスどんな手段を使ってでもこの世界を残したいと思ったミリーナの気持ちが俺にはわかる。
イクス俺のためにミリーナが追い詰められてしまったことも……。
イクスだから、憎むなら俺を憎め !俺がその嘘を真実に変える !

Character2話【14-16 カレイドスコープ前2】
ファントム……は……はは。それで勝ったつもりか ! ?同一存在が共有するものが記憶と鏡精だけだとでも思ったか ! ?
二人! ?
ミクリオまさか、命そのものすら共有するのか ! ?
コンウェイだとしたらやっかいだね。
エリーゼこの人を倒すためにもう一人のフィリップさんも倒さなければいけないんですか ?
リアラ……そうなのかも知れない。同じ魂が同じ時間に存在しているのなら――
リオン…………。
ジューダスいや、そんな筈はない。なら【僕】は――
ファントム貴様らと私は違う。私は特別なのだ。
ファントムそして今度こそ、フィルだけを受け入れるゲフィオンと彼女が望む世界をここに――
? ? ?そうはいかないよ。
ファントム――き、貴様は…… ! ?
フィル歪みがもたらした副作用――
フィルファーストサンプルであるフィリップとリーパの間でだけ起きたアニマ結合現象を断ち切りに来たんだ。
ファントムそうか、守護魔鏡はお前たちが――
フィルさよならだよ、二人目の僕 !
二人アニマ・デコード !
ファントムぐぅぁあああああああっ ! ?
ライフィセットえ ! ? だ、誰 ? 何が起きたの ! ?
ユリウス今のは魔鏡術か ?
フィルちょっと予定とは違ったけど何とか上手くいったよ、チェスター。
チェスターそうみたいだな。オレが鏡片を持っているふりをしてファントムを引きつける手はずだったが……。
イクスフィル…… ? どういうことだ ?俺が死んでから15年経ってるんだろ ?だったらフィルは35歳の筈なのに……。
フィルそうだね、イクス。でも僕は三人目だから。
イクス! ?
ゲフィオン同一時間に同一存在を具現化すると具現元と具現化体の間で記憶が共有される。
ゲフィオンだからビクエ――いやフィリップはファントムと記憶を共有しないもう一人の自分を造り出した。
ゲフィオンアニマの力を弱める守護魔鏡を使ってファントムのアニマの力を弱めるために。
フィルこれで、ファントムはビクエとのアニマ共有能力が弱まった。もうアニマを回復することはできないよ。
イクスフィリップは――ビクエの方のフィリップはどこにいるんだ ?
フィルアルヴィンとアルヴィンの仲間が匿ってくれてる。
レイアアルヴィン ! ? 仲間 ! ?アルヴィンってば、どこで何をしてるの ! ?
アリーシャ――いや、待て ! ファントムが ! ?
ファントム……死ぬ……私が…… ?ふ……ふははははは……。
ファントム認めてたまるものか !絶望を味わうのは貴様らだ ! !
ファントムお前たちが守ろうとした嘘の世界は……私が死の砂嵐の向こうに……連れて……行く……。
ティアカレイドスコープの様子が変だわ !
ミラ=マクスウェルこの世界に満ちるエネルギーがカレイドスコープの元に集まっているのを感じるぞ。
イクスファントムが壊れたカレイドスコープに何かしたのか…… ?
アイゼン――簡単に事が片付く訳がないってことか。死神の呪いは健在だな。
ゲフィオン……いや、ここから先は私に任せよ。
ゲフィオン確かに手順は狂ったがファントムは結果的に世界中のアニマを集めてくれた。私の望んだ通りに。
ゲフィオン――ガロウズ、頼む。
ゲフィオン見たところ、壊れて暴走し始めているがまだサーチは可能な筈だ。サーチさえできれば後は私が――
ガロウズ――ゲフィオン様……。……わかりました。
ガロウズ照準ロック完了。対象ゲフィオン……いや、ミリーナ・ヴァイス。アニマ・サーチ開始 !
二人! ?
エル大変だよ、みんな ! !
マリアンオーデンセ跡から金色の光の粒がそちらに向かって行きます !
クレアあれは死の砂嵐と呼ばれているものじゃないでしょうか ! ?
デミトリアス――間に合わなかったか !
イクスな、何ですか ! ? 陛下 ! ?
デミトリアス彼女は……世界を虚無から救うために虚無を広げる原因である死の砂嵐を体内に取り込もうとしているのだ。
イクスそんなことが可能なんですか ! ?
ゲフィオンう……うぅ……ウォォオオォォォ ! ?
ルドガーゲフィオンの体が変質していく…… ! ?
レイヴンちょっとちょっとこれはまずいんじゃないの ! ?
フィルイクス ! ミリーナ ! ゲフィオンを……もう一人のミリーナを助けて !
フィル死の砂嵐の正体はアニマを失った世界や人々の欠片なんだ。みんな全ての原因であるミリーナを恨んで狂わせようとしている。
フィルミリーナのアニマを奪って壊そうとしているんだ !
イクス助けるって、どうすれば ! ?
フィル今のゲフィオンは光魔と同じなんだ。光魔も滅びた世界と人々の欠片がアニマを求めて変質したもの。
フィルだから暴れる彼らを鎮めればゲフィオンのアニマが力を取り戻す !
ジェイドつまり、戦えと言うことですね。
イクスわかった !

Character3話【14-16 カレイドスコープ前2】
ミリーナ……虚無は消し去りようがありません。虚無こそが二つの島しか残らなかったこの世界をかろうじて守っている鎧です。
デミトリアスしかしミリーナ。虚無は世界を消滅させようとしているのだろう。
ミリーナ正確には、カレイドスコープによって滅びた存在たちの欠片――死の砂嵐が世界を解体し、虚無へ変えているのです。
デミトリアスあの光る砂のような粒子たちか……。
ミリーナですから、あの死の砂嵐をアイギスの中に閉じ込めようと思います。
デミトリアスアイギス…… ? 今、虚無から世界を守っている防衛システムのことか ?
ミリーナええ。ですがあれは仮の盾に過ぎません。死の砂嵐はアニマに引き寄せられる。
ミリーナですから人の体を魔鏡化してその中に死の砂嵐を閉じ込めます。
ミリーナその人体万華鏡こそが真に世界を守るアイギスです。
フィリップ――まさか、ミリーナがアイギスになるつもりか ! ?
デミトリアス! ?
ミリーナ私は世界を滅ぼした悪魔です。人々と世界の怨嗟を受け入れるのは私の仕事。これをアイギス計画とします。
フィリップそんなことは認めない !
ミリーナ認めてもらわなくてもいいわ。
フィリップ第一アニマもキラル分子も足りないぞ。仮に人間を魔鏡化するとしてもそれなりのエネルギーが必要だ。
ミリーナ異世界からの具現化で世界に新しい大陸と命を生み出す。そしてその異世界からの力をカレイドスコープを使って変換する。
フィリップそれには魔鏡が足りない。イクスの形見の魔鏡と同じ物がもう一枚――
フィリップまさか……。
ミリーナ巻き込みたくはなかったけれどイクスの力を借りるわ。
フィリップ三人目だぞ。
ミリーナもう一人の私はまだ生きている。私と記憶を共有する彼女がイクスを守るわ。
ミリーナ……今……ゲフィオンの記憶が……。イクス、ゲフィオンは生きながらアイギスになるつもりなのよ……。
イクス! ?
ゲフィオンようやく終わる。これでアイギス計画は完了するのだ。
ゲフィオン――さようなら……。大好きだった……イクス……。
イクスミリーナ ! ?
カーリャくぅ……う……。苦しい……。ゲフィオンさまの心が……悲鳴を……上げています……。
セネルおい、ゲフィオンの体からこぼれてるのは死の砂嵐じゃないのか…… ! ?
フィル――そうか。ファントムが必要以上の具現化を繰り返したから、死の砂嵐に融合の魔鏡術の性質が付加されてるんだ。
ミリーナ私の魔鏡術は想像……。融合の魔鏡術には弱いわ。このままじゃ……。
ヴェイグさっきファントムの力を弱めた守護魔鏡なら力を弱められるんじゃないか ?
フィルこれを使うとミリーナの力まで弱めてしまうから……。
デミトリアス死の砂嵐が封じきれなければ、世界は――
ミリーナだったら私がゲフィオンに力を貸すわ !
イクスいや、ミリーナ。もっといい方法がある。
ミリーナえ ! ?
ミリーナ! ?
イクス俺が、ミリーナの嘘を真実に変える。創造の魔鏡術で。
フィル創造の魔鏡術は融合術に勝る……。だけど……。
ミリーナ駄目よ ! 私……私たちはイクスとイクスの世界を守りたかったのにそんなの――
イクス(――あの時暴走させたオーバーレイ。あれを敢えて引き起こす)
イクス(その暴走の力で、魔鏡の檻を造って俺とミリーナごと死の砂嵐を閉じ込める)
イクス魔鏡技 !スタック・オーバーレイ ! !
イクスごめん、ミリーナ。ごめん、みんな。コーキス、後は……頼むぞ……。
コーキス嫌だ ! 嫌だ嫌だ嫌だ !
ミリーナイクス――――っ ! !
その日ティル・ナ・ノーグ全土に広がった魔鏡暴走は鏡殻変動と呼ばれ世界の姿を大きく変えてしまったのだった。