| Character | 1話【囚われの少年】 |
| | アスガルド帝国首都イ・ラプセル戦士の館 |
| ルカ | ……うん、起きていても辛くないし、ずいぶん動けるようになったな。 |
| ルカ | (あの時――、魔法陣の中で、動くことも声を出すこともできなくて、ただ苦しくて……) |
| ルカ | (イリアも目の前で苦しんでいたのに、僕は何もできないまま気を失って、気が付いたらここに……) |
| ルカ | (イリア……あれから一度も会えてないな。この館にいるのは分かっているのに……) |
| ? ? ? | 食事を持ってきたの。ドアを開けて。 |
| アスガルド兵 | ああ、どうぞルビアさん。ですが、今日こそは手みじかに願いますよ。 |
| アスガルド兵 | 中の者とは無駄な会話を避けるようにと、厳しく言われているんですからね。 |
| ルビア | わかってるわ。いつも大した話はしてないでしょ ?ご心配なく。 |
| ルビア | ルカ、お待たせ。食事を持ってきたわ。今日のメインはお肉よ ! |
| ルビア | それと、これはチーズスープ。前に好きだって言ってたでしょ ?お母様の味には、遠いかもしれないけど。 |
| ルカ | ……ありがとうルビア。でも、あんまり食欲がなくて……。 |
| ルビア | 何いってるの ! 体力回復には食べなくちゃ。そうじゃなくたって、ルカは危ない状態だったんだからね ? |
| ルカ | もうかなり良くなったよ。だから、ここから出してくれないかな。 |
| ルビア | それは……何度お願いされても無理なの。 |
| ルカ | ……どうしてって聞いても理由は教えてもらえないんだよね ? |
| ルビア | ……ごめんなさい。 |
| ルカ | だったらせめて、イリアの様子だけでも教えてくれないかな。 |
| ルビア | イリアはこの館にいるわ。言えるのはそれだけ。 |
| ルカ | それはわかってるよ ! もう何度も聞いた ! |
| ルビア | ……。 |
| ルカ | ご、ごめん。大きな声出して。でも、すごく心配で……。 |
| ルカ | 僕でもようやく動けるようになったくらいひどい状態だったんだ。同じ目にあったイリアだって、きっと……。 |
| ルカ | せめて無事かどうかだけでも教えて欲しい。いや、教えてください。お願いします ! |
| ルビア | ……イリアは―― |
| アスガルド兵 | ルビアさん、そろそろ。 |
| ルビア | え、ええ。ちょっと待って。 |
| ルビア | ――いい ? 無理しちゃ駄目よ。あなたの体、まだ本調子じゃないんだから。 |
| ルビア | ほら、ルカの手、こんなに冷たいじゃない。 |
| ルカ | ―― ? |
| ルビア | ……食事、冷めないうちに食べてね。食器はいつもどおり、後で下げに来るから。それじゃ。 |
| アスガルド兵 | いいか、大人しく食うんだぞ。と言っても、お前はいつも大人しいか。 |
| ルカ | ……。 |
| ルカ | (よし、誰もいなくなったな) |
| ルカ | (ルビア、さっき僕の手に何を握らせて――……これ、メモ ? ) |
| ルビアのメモ | 兵士たちが救世軍討伐に出ているため今この館は守りが手薄になっています。 |
| ルビアのメモ | 食事を下げる時に、あたしを人質にして逃げて下さい。 |
| ルカ | ルビア…… ! |
| Character | 2話【2-1 イ・ラプセル 戦士の館】 |
| ルビア | ルカ、入るわよ。食器を下げに―― |
| ルビア | キャッ ! |
| ルカ | う、動くな ! |
| アスガルド兵 | 貴様っ、何を―― ! |
| ルビア | だめ、動かないで ! あたし刺されちゃう ! |
| アスガルド兵 | 食事用のナイフを―― ! ?チッ、いつも大人しいからと油断したか ! |
| ルカ | えっと……、お、お前が動いたら、この子がどうなるか、わっ、わかって、わかって―― ! |
| アスガルド兵 | や、やめろ小僧、落ち着くんだ ! |
| ルビア | お願い、ルカに逆らわないで !大丈夫、あたしが説得するから。あなたは下手に動いて刺激しないで ! |
| アスガルド兵 | し、しかし―― |
| ルビア | ――これでよし。部屋からの脱出は成功ね。見張りは閉じ込めちゃったからしばらく追って来られないはずよ。 |
| ルカ | ハァ……こういうのは苦手だよ……。 |
| ルビア | そんなことない。ルカの演技すごかったわ。『何をするかわからない』って感じがして、見張りの兵も怯んでたじゃない。 |
| ルカ | あ、あはは……。何を言えばいいかわからなかっただけなんだけどね。 |
| ルカ | ありがとうルビア。助けてくれて。でもこれってどういうこと ? |
| ルビア | 詳しい話は後でね。こんな所でぐずぐずしてたらすぐに見つかっちゃう。さ、こっちよ。 |
| ルカ | ここって、物置部屋…… ? |
| ルビア | そうよ。まずは簡単に踏み込まれないように荷物で扉をふさいでおかないとね。……よいしょっと ! |
| ルカ | うわ、なんだか色んな物がたくさん置いてあるなあ。 |
| ルビア | だからこそ色々隠しておけるのよ。――はい、これ。 |
| ルカ | これ、僕の剣じゃないか…… !それにイリアの銃まで ! |
| ルビア | いい、ルカ。これからいうことを落ち着いて聞いて。 |
| ルビア | まず、イリアは無事よ。回復が早かったからあなたよりもずっと元気なくらい。 |
| ルカ | 本当に ! ? 良かった……。イリア、無事だったんだ。 |
| ルビア | でも、今はこの館にはいないわ。 |
| ルビア | 少し前に、四幻将の命令でこことは別の島――セールンドという場所へ連れていかれたの。 |
| ルカ | どうして ! ? |
| ルビア | アニマの観測実験のために必要だからって話だけど、詳しい事まではわからない。 |
| ルビア | ただその実験では、未知のアニマの情報を調べると言ってたわ。ルカとイリアは、その持ち主だって……。 |
| ルカ | 僕とイリアが…… ? |
| ルビア | イリアを助けに行ってあげて。実験なんかで、またこの前のように、死にかけることにでもなったら……。 |
| ルカ | そんなことさせるもんか。必ず助ける ! |
| ルカ | でも、どうして協力してくれるの ?君はあいつらの仲間なんでしょ。 |
| ルビア | ……。 |
| ルカ | ……ねえルビア。もしも無理してここにいるんだったら、僕と一緒に逃げない ? |
| ルビア | それは、できないわ……。 |
| ルカ | だって、すごく辛そうな顔してるよ。だったら―― |
| ルビア | あたしとカイウスは、ここに残らないと。ルキウスのために……。 |
| ルカ | カイウスに、ルキウス ? |
| ルビア | ……とにかく、あたしのことはいいから。それよりも、ルカたちはメルクリアに気を付けて。 |
| アスガルド兵 | ――探せ ! まだ館の中にいるはずだ ! |
| ルビア | いけない、もう見つかっちゃった !ルカ、手伝って。ここの棚をずらせば、後ろにスイッチがあるはずなの。 |
| ルカ | わ、わかった ! |
| ルカ | これ、隠し通路 ! ? |
| ルビア | 館の外に繋がっているわ。気をつけて進んでね。さ、行って ! |
| ルカ | うん。でも、ルビアは―― |
| アスガルド兵1 | ……おい、この部屋から話し声がしなかったか ? |
| アスガルド兵2 | おかしいな、開かないぞ。何かつかえてるのか ? |
| ルカ | だめだ、追っ手が入ってくる !ルビアも早く一緒に ! |
| ルビア | 大丈夫、ここはあたしに任せて。 |
| ルビア | ……大事な人を失うのはとても辛いわ。まだ間に合うんだから、イリアを絶対に助けてあげて。 |
| ルカ | ルビア、扉を開けて ! ルビア ! |
| ルカ | もう……戻れない、か。 |
| ルカ | (……ルビアは大丈夫って言った。今はそれを信じて進もう) |
| ルカ | こんな所にも魔物が ! ?――うわっ ! ! |
| ルカ | だめだ、倒しきれない…… !天術さえ使えていれば……。 |
| ルカ | ―― ! ? この力は ! |
| ルカ | ハアッ、ハアッ……。なんで僕、今でも天術が使えるんだ…… ? |
| Character | 3話【2-6 隠し通路 広場】 |
| ルカ | (よし ! 体の調子もどんどん良くなってる気がする) |
| ルカ | (無くなったはずの天術が使える理由はわからないけど、これなら十分に戦っていけるぞ) |
| ? ? ? | ……けど……じゃないか。 |
| ルカ | (誰かいる ? ) |
| ガイ | だからルーク、なるべく戦闘はさけろよ。俺たちは潜入中なんだからな。 |
| ルーク | へいへい、それは何度も聞いてるって。でも魔物の方からかかってくるんだから仕方ないだろ。 |
| ルーク | こんな所じゃ逃げ場ねえし。それに誰よりも喜んで戦ってる奴が他にいるぞ。なあ、戦闘狂 ? |
| ユーリ | おい、クレス。ルークがなんか言ってるぜ。 |
| クレス | え、ルークは僕をそんな風に思ってたのか。僕……戦闘狂かなあ ? |
| ルーク | おいユーリ、お前なぁ !そういう返し、ジェイドっぽいぞ。 |
| ルーク | クレス。違うって。クレスはまともじゃん。俺はユーリのことを―― |
| リタ | あーもーあんたらうっさい ! !少しは静かにできないの ? |
| セネル | お前が一番うるさくないか ? |
| リタ | ……なんか言った ? |
| ユーリ | おっと、そこまでな。それと――、おい、さっさと出て来い。いつまで隠れてるつもりだ ? |
| ルカ | (も、もしも追っ手なら先に仕掛けないと……) |
| セネル | ――ルカ ! ?お前……、ルカだよな ? 無事だったのか ! |
| ユーリ | ルカ ?確かセネルたちの前でさらわれたっていうあいつか ? |
| ルカ | あなたたちはいったい…… ? |
| セネル | 覚えてないか ? お前、クレアと一緒に救世軍にさらわれただろう。俺はあの場にいたんだ。 |
| ルカ | そう言えばあなたは……、僕たちを助けに入ってくれた人ですね ! |
| ルカ | あの時はありがとうございます。僕、クレアさんとは地下牢で離れてしまって……。 |
| セネル | 大丈夫だ。俺たちが助け出した。お前たち特異鏡映点が、連れていかれた後だったけどな。 |
| セネル | それにしても何でこんな所にいる。あれから何があったんだ ? |
| ルカ | (……信用していいのかな。クレアさんを助け出した人たちだし……) |
| ルカ | ……あの、話を聞いてもらえますか。 |
| ルカ | ――それで僕、セールンドという島に行かなきゃならないんです。 |
| リタ | ……面倒な話になってきたわね。何なのよ、未知のアニマって。 |
| クレス | それにメルクリアって、マークを追ってる時に介入してきた奴らが口にしてたような……。 |
| ユーリ | ああ、オレの知り会いの名前と一緒にな。 |
| ガイ | とにかく、このままじゃ進めない。ルカを入り口の待機組に預けよう。セールンド行きの件もその後だ。 |
| セネル | だったら俺が入り口まで連れていく。……あの時は助け出せなかったんだ。今度は無事に送り届けてやらないと。 |
| リタ | 別に構わないけど、そいつ脱走して追われてるんでしょ ? 魔物も多いしもう何人かいた方が安全じゃない ? |
| クレス | だったら一度、二手に分かれようか。ここにはユーリとルーク、それに僕が残るよ。 |
| クレス | セネル、リタ、ガイはルカを入り口に送っていってくれるかな。 |
| ガイ | 了解だ。それじゃルカ、行こう。 |
| ルカ | ……すみません。迷惑かけて。 |
| ガイ | 迷惑なんかじゃないさ。あと、そんなにかしこまるなよ。もっと気楽に、な ? |
| リタ | それじゃあ行ってくるけど、あんたたち、お目付役がいないからって派手に戦ってんじゃないわよ ? |
| ルーク | だから、喜んで戦ってるのは俺じゃねえし ! こいつの方が―― |
| クレス | いや、僕はそんなつもりじゃ…… |
| ルーク | だーっ、ちげーって !ややこしいんだよクレス ! |
| セネル | ……なあ、ガイ。本当にお前が抜けて大丈夫か ? |
| ガイ | ハハ……しっかり者のクレスがいるしまあ、どうにかなるだろ。ユーリも、後は頼んだからな。 |
| ユーリ | ああ、おかげで退屈しなさそうだぜ。そんじゃルカ、気をつけて行けよ。 |
| ルカ | はい、ありがとうございます ! |
| Character | 4話【2-7 隠し通路 出口】 |
| スレイ | ……う~ん、どうなってるのかなあ。 |
| ミクリオ | スレイ、隠し通路に興味が湧くのはわかるけど、この状況でそれはどうかと思うよ。 |
| ミクリオ | 何かしら異常があったら、入り口待機組の僕らが対処しないといけないんだからね。もっと警戒して―― |
| スレイ | 違うって。気になってるのはクレスたちの様子だよ。 |
| スレイ | ミクリオこそ、そんな風に思うなんて、この隠し通路に興味深々だからじゃないか ? |
| ミクリオ | そ、そんなことは…… ! |
| コンウェイ | 別に否定することはないよ。いつだって好奇心は大事だからね。それに彼らなら、心配ないんじゃないかな。 |
| カロル | そうそう。ユーリもいるし、リタもいる。二人ともすごく頼りになるしね。……たまにおっかないけど。 |
| コンウェイ | そうだね、彼らはとても強い。実際に目にすると驚くばかりだ。 |
| ミクリオ | ……実際 ? |
| スレイ | あ、帰って来たぞ ! |
| カロル | お帰り、リタ !……あれ、ユーリは ? |
| リタ | あいつはまだ中。ちょっと事情が変わってね、あたしたちはこいつの護衛で戻ったの。 |
| リタ | ほら、早くこっち来て、もたもたしない ! |
| ルカ | ご、ごめん ! 今すぐ―― |
| コンウェイ | ……ルカくん ? |
| ルカ | ……コンウェイ ! ?コンウェイもこの世界にいたんだ ! |
| コンウェイ | ああ。よく無事だったね。怪我はないかい ? |
| コンウェイ | セネルくんやヴェイグくんから、ルカくんのことは聞いていたけど、行方がしれなかったから……心配したよ。 |
| ルカ | コンウェイこそ、あの時、黙っていなくなっちゃってさ。……お礼、言いたかったのに。 |
| コンウェイ | 済まなかったね、あのときは急いでいたんだ。 |
| コンウェイ | ところで、キミはどうしてこんなところにいるんだい ? |
| ルカ | あ……そうだ、大変なんだよ !イリアを助け出すために、コンウェイも協力してくれない ? |
| コンウェイ | イリアさんを ?……彼女も具現化されているのか。 |
| コンウェイ | わかった。込み入った話のようだし、一度、仮想鏡界に戻って、他のみんなにも聞いてもらおう。 |
| ルカ | 仮想鏡界 ? |
| コンウェイ | ボクたちのアジトみたいなものさ。ルカくんにも、こちらの事情を知ってもらわないとね。それに―― |
| コンウェイ | ほら、彼らも訳がわからなくて驚いてるだろう ?ちゃんと説明しないと。 |
| 三人 | お、お願いします……。 |
| コンウェイ | ……ルカくんとイリアさんが未知のアニマの持ち主か。イリアさんはそれを理由に連れていかれたんだね。 |
| コンウェイ | 二人に共通してるのは転生者という点だ。未知のアニマというのは、間違いなく転生者のことだろう。 |
| ルカ | うん、僕もそう思う。 |
| ジェイド | 転生者ですか。同じ魂が生まれ変わりを繰り返すとは……何とも興味深い。 |
| リフィル | 話がそれて申し訳ないのだけれど生前の自分と今の自分に同一感というのはあるのかしら。 |
| ルカ | それほどありませんでした。昔の僕と今の僕では性格も全然違いましたし。 |
| ルカ | だから、僕は僕――なんです。 |
| クラース | ルカの話を聞いていると、転生者というのは一つの体に、同じ魂が分裂して存在しているようにも思えてくるよ。不思議な存在だな。 |
| コンウェイ | だからこそ、この世界においてもルカくんたちのアニマは特殊なのかもしれない。 |
| コンウェイ | だとすると、彼らがイリアさんにどんな実験をするのかが問題だな。アニマ――魂に触れる実験だとしたら……。 |
| ルカ | 命に関わるってこと ! ? |
| コンウェイ | ……イリアさんが連れていかれたのはセールンドだったね。 |
| スレイ | セールンド……そうだ、あっちにはミリーナたちがいる ! |
| コンウェイ | まずは彼女に連絡をとって、合流したらどうだろう。何か情報を掴んでいるかもしれないよ。 |
| クラース | ああ、それがいいだろうな。いざという時のためにも戦力は多い方がいい。 |
| ルカ | 戦力って……みなさんもイリアの救出に協力してくれるんですか ? |
| リフィル | ええ。あちら側の思惑を知る必要もあるし転生者のアニマの件は私たちにとっても必要な情報だと思うわ。 |
| ジェイド | そうですね、私も異論はありません。 |
| ルカ | ありがとうございます ! |
| ミクリオ | それなら早速カーリャに連絡を頼まないと。……なんでここにいないんだ ? |
| ジェイド | おかしいですねえ。少し前までは、一緒に楽しくおしゃべりをしていたのですが。 |
| リフィル | ……ジェイドあなたミリーナの行き先を聞き出す時にやりすぎたのではなくて ? |
| ジェイド | そうでしょうか。私は平和を愛するただの紳士です。やり過ぎたのはリオンの方だと思いますが。 |
| リフィル | 随分ツッコミどころの多い発言ね……。 |
| カーリャ | え~と……ルカさま ? |
| ジェイド | おや、カーリャ♪先程から姿が見えないので避けられているのかと思いましたよ。 |
| カーリャ | ……鬼畜眼鏡。 |
| カーリャ | ――あ、それどころじゃなかった。 |
| カーリャ | ルカさまの話ですけどカーリャにも詳しく説明してください。今、ミリーナさまと繋がっていて―― |
| スレイ | すごいよカーリャ、ナイスタイミング ! |
| カーリャ | はい ? |
| リフィル | それではルカ、みんなも気を付けて。ミリーナとの合流場所は大丈夫ね ? |
| ルカ | はい、色々とお世話になります。 |
| リフィル | いいえ、こちらも助かっているのよ。今の私達にとって、外の情報を知るのは大変な作業だから。 |
| コンウェイ | ではルカくん、セールンドへ向かおうか。 |
| ルカ | うん、行こう ! |
| Character | 5話【2-10 セールンドへ3】 |
| スレイ | えっと、ミリーナたちとの合流地点は、街はずれの小屋だったよな。こっちの方角か。 |
| ルカ | あの、僕と一緒で大丈夫なんですか ?二人は他の役目があったんじゃ……。 |
| スレイ | ああ。入り口の見張り役は引き継ぎしたから問題ないよ。 |
| スレイ | それに、同行を申し出たのはオレたちの方だから、気にすることないって。な、ミクリオ。 |
| ミクリオ | 僕たちっていうかスレイだろ。すぐに何にでも首をつっこむんだから。 |
| ミクリオ | まあ、それがスレイの良いところでもあるんだけどね。 |
| ルカ | 仲がいいんですね。スレイさんとミクリオさん。 |
| スレイ | もっと気楽にしゃべってくれていいよ。オレもほら、こんなだし。 |
| ルカ | えと、それじゃあ……一緒に来てくれてありがとう。スレイ、ミクリオ。 |
| スレイ | うん、どういたしまして ! |
| マルタ | ルカ、私たちにもその感じでお願いね。キミの礼儀正しい所は好感度高いけど、ずっとそのままだと他人行儀だし。 |
| マルタ | でも、そういう所、嫌いじゃないな。ちょっとエミルと似てるもん。 |
| エミル | え、ええと……そういうわけだからよろしくね。ルカ。 |
| ルカ | うん、よろしく。エミル、マルタ ! |
| レイヴン | 若者はいいねえ。なんかこうキラッキラしてて。おっさん、疎外感~。 |
| カロル | じゃあなんでレイヴンはついて来たの ? |
| レイヴン | そりゃまあ、飲み友に頼まれちゃったからよ。 |
| カロル | それってクラースのこと ? |
| レイヴン | そそ。協力してやりたいが、今の私では足手まといになるとかなんとか言ってたんで、この俺様がひと肌脱いでやったってわけ。 |
| コンウェイ | レイヴンさんは仲間思いなんですね。それで取り引きの内容は ? |
| レイヴン | あいつからミリーナちゃんに、大人のジュースの仕入れを頼んでもら――ヤバッ……。 |
| カロル | お酒だね……。もう、仕方ないなあ。やっぱりボクがしっかりしないと。 |
| ルカ | この声は…… ? |
| コンウェイ | 光魔だよ。気を付けてルカくん。彼らは通常の魔物よりも性質が悪い。 |
| スレイ | ルカ、危ないから下がっててくれ。 |
| ルカ | 大丈夫、僕もやれるから ! |
| コンウェイ | ルカくん、まさかキミ……天術が ? |
| ルカ | 話は後だよ。今は敵を何とかしなくちゃ ! |
| Character | 6話【2-10 セールンドへ3】 |
| コンウェイ | 驚いたよ。ルカくんは今も天術が使えるんだね。 |
| ルカ | 言い忘れててごめん。僕も不思議なんだ。一度は失ったのに、なぜ天術が使えるようになったのか……コンウェイはわかる ? |
| コンウェイ | いや、ボクにもわからない。どういうことなんだろう。 |
| コンウェイ | 具現化された際に、ルカくんに変化があったのか、それともこの世界の何かが関係しているのか……。 |
| ルカ | そうか……コンウェイにもわからないんだ。でも、イリアを救うために戦えるんだから、悪いことじゃないよね。 |
| コンウェイ | ……そうだね。 |
| ルカ | そう言えばさ、僕、あの時コンウェイが言ってたこと、今ならちょっとだけわかる気がするよ。 |
| コンウェイ | ボクが ? 何を言ったんだっけ。 |
| ルカ | ほら、イリアにどう思われてるか悩んでた時だよ。他にも何度か話してくれたでしょ ? |
| ルカ | 人は失って初めて、自分の気持ちや何が大切だったか気づくって。 |
| コンウェイ | ……そういえば、そんなことを言ったかな。 |
| ルカ | イリアを失うなんて、あの時は思いもしなかったから、わからないって答えたけど。 |
| ルカ | 実際に今、イリアに危険がせまってコンウェイの言葉を思い出したんだ。 |
| コンウェイ | ……そう。 |
| ルカ | ……あの時のコンウェイまるで自分のことみたいに言ってたけどそれって―― |
| カロル | ルカ、強いんだね !すごいや ! |
| ルカ | え ? ああ、ありがとう。カロルも強いね。確かギルドのボスをやってるんだっけ ? |
| カロル | えへへ、まあね。興味あるならいつでも言って ! |
| レイヴン | ……少年、悪いけどスカウトは中断ね。 |
| カロル | どうしたの ? |
| レイヴン | こりゃこっちに来るな……。みんな物陰へ隠れろ。そんでジッとしてて。 |
| マルタ | あれは……アスガルド軍 ?よく気が付いたね。 |
| レイヴン | 軍人が大勢で移動してりゃあね。しかしあの隊列の組み方……誰かを護衛いや、護送かな ? |
| コンウェイ | ―― !ルカくん、あれを見て。 |
| ルカ | イリアだ ! |
| レイヴン | あの子が ? ……いや参ったね。ミリーナちゃんと会う前に当たり引いちゃったわよ。どうする ? |
| ミクリオ | 数で言えばこっちは不利だからな……。このまま後をつけて、様子を見るという手もあるけど。 |
| ラタトスク | ……こうしてウダウダ言ってる間に、機会はどんどん無くなるぞ。いいのか ? |
| ルカ | エミル…… ? 何か雰囲気が……。 |
| マルタ | その話はまた後で。今の彼はラタトスクって名前。 |
| マルタ | で、ラタトスクの言う通りだと思う。ルカ、行くなら今だよ ! |
| ルカ | ……うん。イリアのいる所だけに集中して一気に叩こう ! |
| Character | 8話【2-12 セールンドへ5】 |
| イリア | イタタタ、もうちょっと優しく解けないの ?この、おたんこルカ ! |
| ルカ | ご、ごめん……。でもイリアが動くから、縄が余計に絡んじゃうんだ。もうちょっと大人しくしててくれる ? |
| イリア | わかったわよ。三つ数える間だけね。いーち、にー…… |
| ルカ | あわわわわ、これで……よし ! |
| イリア | はーっ、やっと自由になったーっ !助けてくれてありがと。 |
| ルカ | みんなが協力してくれたおかげだよ。 |
| イリア | そうみたいね。いや~どうも、みなさんお世話になっちゃって ! |
| レイヴン | どういたしまして !や~、こりゃまた元気なお嬢ちゃんで。 |
| マルタ | ……でも、ルカとはもっとこう感動的な恋人同士の再会 ! みたいになるかと思ってたから……ちょっと意外。 |
| イリア | え、なんでよ ?前世では恋人かもしれないけど今のあたしとルカはそんなんじゃないし。 |
| マルタ | そうなの ? 誤解してごめん。ルカってばずっとイリア、イリアって心配してたからてっきりそういう関係なんだと思ってた。 |
| イリア | ちょっとルカ !あんたのせいで妙な誤解うけてるじゃない。 |
| ルカ | そ、そんな……。僕にとってはその……誤解じゃ……。 |
| コンウェイ | フッ、相変わらずのようだね。イリアさんは。 |
| イリア | コンウェイもね。あんたって、いっつも突然なんだから。突然現れて、突然消えちゃってさ。 |
| イリア | 出会った時だって、天術が通用しない敵にコンウェイが……って、そうだ ! |
| イリア | ねえルカ、あんた天術使ってなかった ?どういうことよ。 |
| ルカ | 突然使えるようになったんだ。もしかしたら、イリアも使えるかもしれないね。 |
| イリア | はぁ ? あんたそういうことはさっさと言いなさいよ ! だったらあたしの手であいつらボッコボコにしてやったのに ! |
| マルタ | ねえ、天術が使えるとか使えないとかってどういうこと ? |
| イリア | ああ、それはね―― |
| ルカ | ねえエミル。さっきから別人みたいだけどもしかしてエミル……じゃ、ないの ?まさか君も転生者 ? |
| ラタトスク | ……違う。だが、お前とは後でゆっくり話をしてみたいな。 |
| ルカ | え…… ? |
| ラタトスク | じゃあな。 |
| エミル | ……ん ?もしかして今の僕、別人みたいだった ? |
| ルカ | う、うん。 |
| エミル | そっか。混乱させてごめん。後で色々説明しないといけないね。 |
| エミル | とりあえず、マルタたちの所へ行こう。 |
| ミクリオ | ……さっきのイクス――ナーザ将軍だけど、どう思う ?更なる具現化って可能性はあるのかな。 |
| スレイ | う~ん、ミリーナなら、そのへん詳しいんだろうけど。 |
| カロル | すっごく似てるだけの人ってことは ?ほら、そっくりさんって世界で三人はいるってどっかで聞いたことあるよ。 |
| スレイ | それもあるかもね。でもなあ……。あれは、そっくりの域を越えてるよ。 |
| スレイ | 何かが原因で、成長したイクス本人――いや、でも今のイクスは……。 |
| コンウェイ | キミたち、それ以上の推測は無意味じゃないかな。色々と複雑な事情がありそうだし。 |
| カロル | それってどういうこと ?コンウェイは何か知ってるの ? |
| コンウェイ | いや、この世界のことは全く知らないからね。単なる推測だよ。 |
| コンウェイ | 魔鏡術に疎いボクらがいくらここで議論していても答えはでないってこと。 |
| コンウェイ | だから今はミリーナさんとの合流地点へ向かおう。 |
| Character | 9話【2-15 セールンド 小屋】 |
| ミリーナ | ……そう。そっちにも現れたの。ナーザ将軍って呼ばれていたのね……。 |
| スレイ | ああ、確かナーザというのはこの世界の神の名前と同じだよね。 |
| ミリーナ | ええ……。海の神――漁師の守り神の名前よ。本当の名前ではないのかも……。 |
| スレイ | 具現化のことはよくわからないけどあいつはやっぱり、オレたちの知ってるイクスじゃないんだな ? |
| ミリーナ | イクスはまだ魔鏡結晶の中にいるわ。でも……そっくりな彼に関しては私もまだ何もわからなくて……。 |
| スレイ | 何言ってるんだ。本当のイクスの様子がわかっただけでも十分だって。 |
| コーキス | 本当のマスター……か。 |
| エミル | イクスのことも問題だけどミリーナの話だとマークの動きも探らないといけないよね。 |
| マルタ | それと、ルカがルビアって子から言われたメルクリアの話もあるわよ。 |
| レイヴン | ハァ……あっちもこっちも問題が山積みと来た。こりゃ手分けしてやっつけないとだわ。 |
| ミリーナ | でも、一つは解決よ。イリアさんを無事保護できたもの。大変だったわね、イリアさん。 |
| イリア | ……え ? あ、ありがとう。 |
| コンウェイ | どうしたんだい ?何か気になることでもあったかな。 |
| イリア | 結局、あたしはこれから何をすればいいのかなって。ルカはどうする気 ? |
| ルカ | どうって……ええと……。 |
| イリア | あんた何も考えないで、この人たちに泣きついてたの ?相変わらずのんきねえ。 |
| イリア | 話聞いてると、転生者が重要なんでしょ ?だったら、あたしとルカがこっち側に協力すれば、もう勝ったようなもんじゃない ? |
| ルカ | そこまで簡単な話じゃないと思うけど……。 |
| イリア | 何言ってんの。こういうのは先手必勝 !動いたもん勝ちなの ! |
| イリア | そういうわけで、これからお世話になってもいい ? |
| ミリーナ | もちろんよ、ルカさん、イリアさん。 |
| イリア | あたしのことはイリアでいいってば。初対面で呼び捨てにされるとムカつくけど。あんたは礼儀正しいし。 |
| ミリーナ | ありがとう。じゃあ、私もミリーナって呼んで。これからもよろしくお願いね。 |
| イリア | ラッキー、タダで寝床ゲット !\nいしししし……。 |
| ルカ | イリア……君って人は。 |
| コンウェイ | さすがイリアさん、逞しいね。それでルカくんは ? |
| ルカ | もちろん、僕も協力するよ。それに、ルビアのことも気になるんだ。 |
| ルカ | 僕を逃がしたせいで投獄されたのかもしれないし……。どうにかしてあげられたらって思う。 |
| ルカ | それに03って呼ばれてた人も気になるよ。もし特異鏡映点亜種っていうのが転生者のことなら―― |
| イリア | あたしたちの知ってる誰かがまだ帝国に囚われてるのかも知れないのか……。 |
| コーキス | ――ミリーナ様やることがたくさんありますけどここからどう動きましょうか ? |
| ミリーナ | そうね……今できることからやりましょう。 |
| ミリーナ | 調べるのは、転生者のアニマを使ってアスガルド帝国が何を企んでいるのか。それとメルクリアについて。 |
| ミリーナ | ……そうすることで、きっとイクスのことについても手掛かりが掴めると思うから。 |
| コーキス | ユーリ様たちが帝都に潜入してるんですよね。 |
| コーキス | 今からでも合流した方がいいかもしれません。 |