| Character | 1話【4-1 ひとけのない草原】 |
| マーク | ……おい、シンク。そんなに腹を立てなくてもいいだろうよ。あの場でミリーナを殺させる訳には―― |
| シンク | アンタたちに協力してたのは、ボクをこんな馬鹿げた死者の国に呼びつけた鏡士たちを殺させてくれるって約束だったからだ。 |
| フィリップ | それはマークの独断だね。 |
| マーク | ……悪かったよ。あんたにとってはそれが一番なんじゃないかって……あの時まで――いや、今だって……。 |
| フィリップ | ………………。 |
| フィリップ | ……シンク。全て話しただろう。全ての元凶はゲフィオンと僕だ。 |
| フィリップ | この世界を一度は滅ぼし具現化で甦らせようとして異世界の人々までをも巻き込んだ。 |
| フィリップ | 恨むなら僕とゲフィオンだ。 |
| シンク | 同じことさ。ゲフィオンとあの黒衣の鏡士はお仲間だろ。レプリカとオリジナルみたいなものだ。 |
| フィリップ | ……シンク。具現化した存在は……似て非なる者だ。 |
| フィリップ | 運命の分岐点から違う道を歩む自分の可能性……それが具現化された存在――リアライザーだと僕は思うよ。 |
| シンク | 勝手に分岐点に放り出しておいてよくそんな上から目線で話せるね。さすが鏡士サマはお偉くていらっしゃる。 |
| マーク | なぁ、シンク。お前の前にニンジンぶら下げたのも取り上げたのも俺だ。 |
| マーク | フィルを責めないでくれ。 |
| シンク | ご主人様には忠実なんだね。 |
| マーク | そりゃそうだろ。俺はフィルの鏡精だ。 |
| シンク | …………。 |
| フィリップ | その時が来たら、僕を殺せばいい。でも今は―― |
| シンク | 偽善者だね。まぁ、いいさ。マークに免じてもう少しだけ救世軍に付き合ってやるよ。 |
| シンク | それで、今はどうなってるのさ。 |
| フィリップ | ミリーナの仲間が魔鏡技師のセシリィを助け出したのは知っているね。 |
| マーク | ……そうか。だったら、ガロウズも今度は大人しく言うことを聞きそうだな。 |
| シンク | セシリィがいるから帝国を出られないって言ってたんだっけ ? |
| フィリップ | ああ。ガロウズが戻ってくれればケリュケイオンをもう一度動かすことができるだろう。 |
| シンク | へぇ、あの女のお古なら何でも欲しいんだ ? |
| フィリップ | ミリーナとゲフィオンは違う人間だよ。 |
| シンク | でも、直接会うのが怖いんだろ ?口ではそんな風に言ってても同一視してるんだよ、アンタは。 |
| ゼロス | 何だよ、またやり合ってんの ?つれないねぇ、シンくんは。 |
| シンク | その呼び方やめてくれない、バカ神子。 |
| ゼロス | せめてアホ神子にしといてくれよ。 |
| フィリップ | ゼロスさん。アルヴィンとシャーリィは ? |
| ゼロス | 俺さまたちのアジトに置いてきた。アルヴィンもシャーリィちゃんの護衛役なら丁度いいだろうと思ってな。 |
| シンク | へぇ。あの裏切り者、目を離して大丈夫なの ? |
| ゼロス | ……まぁ、心配するのもわかるが、あいつはあれでも罪悪感でいっぱいいっぱいになってるように見えるけどな。 |
| ゼロス | 苦労はしたんだろうが根はお育ちがいい坊やなんだろ、きっと。 |
| マーク | 元々あんたたちが雇ってこっちに送り込んできた傭兵なんだ。奴を信じようが信じまいが勝手にしてくれ。 |
| マーク | フィルを助けてくれたことには感謝してるけどな。 |
| ゼロス | それよか俺さま、どっちかっていうとシャーリィちゃんの方が気になるけどな。あからさまに何か隠してるし。 |
| フィリップ | きみが女性を敬遠するのは珍しいね。 |
| ゼロス | 嫌って訳じゃねぇよ。ただ、得体が知れねぇっつーの ? |
| ゼロス | あれは鏡映点とかストレンジャーじゃなくてリビングドールなんじゃねぇか ? |
| フィリップ | どうかな。それとも違うように感じるが……。 |
| フィリップ | それよりゼロスさん丁度いいところに来てくれた。 |
| フィリップ | シンクと一緒にアスガルド帝国の帝都に向かってくれないか。一時的にで構わない。手を貸して欲しい。 |
| シンク | 冗談だろ ? バカ神子と一緒に動けっての ? |
| フィリップ | ゼロスさんは僕の命の恩人だよ。そんな風に言うのは感心しないな。 |
| フィリップ | それに単独行動よりは安全だと思うけれどどうだろう。マークが無理なのはわかっているよね ? |
| ゼロス | ……首に縄つけられたワンコロだもんなぁ。 |
| マーク | 悲しき鏡精の身ですから。ご主人様をおいて遠くへは行けませんってね。 |
| フィリップ | シンクとゼロスさんには帝都にいるガロウズを連れてきて欲しい。 |
| フィリップ | 確かクラトスさんがデミトリアス陛下の件で潜入している筈だから、合流するといい。 |
| ゼロス | まーたあのおっさんとかよ。あーあ。綺麗なおねーちゃんの仲間とかできねぇかな。 |
| シンク | ――くだらないね。ボクは一人で行く。ゼロスがついてきたいなら勝手にすれば。 |
| ゼロス | へいへい、勝手にさせて頂きますとも。シンク坊や。 |
| マーク | 大丈夫かね、あの二人は。 |
| フィリップ | ――マーク……自由に動きたいか ? |
| マーク | ……言っても仕方ないことだろ。それが鏡精だ。 |
| フィリップ | ……ごめんよ。 |
| マーク | 何だよ、それ。そんなことより気弱な顔すんなって。ほら、笑えよ。 |
| フィリップ | ………………。 |
| マーク | やれやれ……。 |
| Character | 2話【4-2 地下通路 薄暗い道】 |
| ルーク | ルカたち、無事にアジトへ行けたかな。 |
| クレス | スレイたちも一緒の筈だから大丈夫だと思うよ。 |
| ユーリ | それより自分たちの心配をした方がいいかもな。 |
| ルーク | へ ? なんで ? |
| ユーリ | ルカがどんな立場で戦士の館とやらにいたのか知らねぇが、単なるお客さんだったなんてことはねえだろ ? |
| クレス | 囚われの身だったなら、追っ手がこの通路にまで来ている可能性はあるね。 |
| ルーク | あー、そりゃそうだな。今んとこ魔物以外、特に遭遇してねぇけど帝国の兵士が来る可能性もあるのか……。 |
| クレス | ルークは人間を相手に戦うのはちょっと苦手みたいだね。 |
| ルーク | ん ? まぁな。……足引っ張らないようにしてるつもりだけど、やっぱわかっちまうのか。 |
| クレス | いや、足手まといなんてことはないよ。ただ、無理をする必要はないってことかな。 |
| ユーリ | だな。人間にゃ向き不向きってもんがある。 |
| ルーク | いや……大丈夫。 |
| ルーク | それにしてもアスガルド帝国ってはぐれ鏡映点を集めて何をするつもりなんだろうな。 |
| ユーリ | さーてねぇ。セネルたちが集めてきたのははぐれ鏡映点らしき連中を、帝国が片っ端から捕まえてるって話だけだからな。 |
| クレス | 同じタイミングでチェスターから届いた手紙には、何人かの特異鏡映点が帝都にある【戦士の館】に捕らえられているとあった。 |
| ルーク | ……つまり帝国は、はぐれ鏡映点を集めてその中に特異鏡映点がいないか調べてるってことか ? |
| クレス | 今のところはそう考えるよりなさそうだね。チェスターの手紙にも詳しいことは書いていないし……。 |
| クレス | ただ、本当にそれだけなのかは疑わしいよ。すぐに帝国に囚われた特異鏡映点を助けて欲しいなんて書いてくるなんて。 |
| ユーリ | しかもルドガーたちを帝国に入れるな、ときた。 |
| クレス | ルドガーたちは、同じ鏡映点でも何か僕たちとは違う部分があるのかもしれないね。 |
| ルーク | 違う部分か……。この世界で言うところの【アニマ】ってのに違いがあるのかな。 |
| ユーリ | 珍しく頭使ってるとこ悪いんだがこの辺じゃねえか ? |
| ユーリ | チェスターの手紙にあった秘密の出入り口っての。 |
| クレス | ……そうみたい、だね。 |
| クレス | ――うん。壁に偽装しているけど扉がある。開けてみよう。 |
| ユーリ | 動かねぇみたいだな。 |
| クレス | ルカのことがあってからこの出入り口を封じたのかも知れないね。 |
| ルーク | マジかよ。どうする ?別の出入り口がないか探してみるか ? |
| ユーリ | まぁ、ここで引き返しても仕方ねぇしな。ちょっくらその辺探してみるか。 |
| アスガルド帝国兵A | 特異鏡映点亜種01か ! ? |
| アスガルド帝国兵B | ――違うな。お前たちは何者だ ! ? |
| クレス | まずい……。 |
| アスガルド帝国兵A | 怪しい奴らめ ! 捕まえろ ! |
| Character | 3話【4-2 地下通路 薄暗い道】 |
| ルーク | くそ ! いったん出直すか ? |
| クレス | いや。チェスターがこのタイミングで来いと言っている以上出直すのはチェスターが危険になる。 |
| ユーリ | だが帝国の連中がうろついてるとなると―― |
| クレス | 誰だ ! |
| クラトス | ――敵ではない。こちらへ来い。身を潜める場所がある。 |
| ユーリ | ついていったらブスリ……なんてことはないよな。 |
| クラトス | そのつもりがあれば声をかける前に斬っている。 |
| ルーク | あれ……あんた……。 |
| クレス | ルーク、知り合いか ? |
| ルーク | あ、いや……。そういう訳じゃないけどどこかで見たような……。 |
| ユーリ | それより増援が来るぞ。戦うってなら大歓迎だがそれでいいのか ? |
| クレス | よし、ついていこう。 |
| ユーリ | ……帝国の奴ら、いなくなったみたいだな。 |
| クレス | ありがとうございました。おかげでやり過ごせました。あなたは一体―― |
| クラトス | 私はクラトス。雇われの傭兵だ。 |
| クラトス | 今は雇い主の希望で、アスガルド帝国の皇帝を自称するようになったデミトリアスについて調べている。 |
| ルーク | クラトス ! ?そうか、クラトスってあんたのことか ! |
| クレス | やっぱり知り合いなのかい ? |
| ルーク | ほら、ロイドが言ってた、前に北の監獄で助けてくれたロイドの仲間だよ。ロイドの親父さ―― |
| ユーリ | ……ああそういやそんなことも聞いたかな。 |
| クレス | ロイドのお父さんなら僕らと一緒に来ませんか ? |
| クラトス | いや、私も仕事を請け負っているのでな。遠慮させてもらう。 |
| クレス | そうですか……。 |
| ユーリ | それにしても【傭兵】ね。傭兵って聞くとうさんくさい奴の顔が浮かんでくるけどお仲間かい ? |
| クラトス | 誰のことを言っているかわからぬが現時点ではお前たちと敵対するつもりはない。 |
| ユーリ | へぇ……。だったら当然雇い主の名前も―― |
| クラトス | 言えないな。 |
| ユーリ | 鏡映点の傭兵を雇う奴なんてのは限られてるけどな。 |
| クラトス | お前たちの目的は、戦士の館に潜入することだろう。ならば私の雇い主が誰であろうと問題なかろう。 |
| ユーリ | 随分こっちの情報に詳しいな。 |
| クラトス | 戦士の館に続く隠し通路で騒いでいれば見当はつく。 |
| ユーリ | そうか。そいつは失礼。てっきりこっちの様子が気になって遠回しに調べ回ってるのかと思ってね。 |
| クラトス | 必要とあれば調べるが今はその必要性はない。 |
| クレス | ……あの、デミトリアス陛下が皇帝を自称するようになったというのはどういうことですか。 |
| クレス | あの人はセールンド王国の国王ですよね。 |
| クラトス | ……デミトリアスがアスガルド帝国を復活させると宣下したことは知っているな。しかしアスガルド帝国は滅びて久しい。 |
| クラトス | また帝室に連なる一族は絶えていると聞く。そこでデミトリアス自身が皇帝に名乗りを上げたということだ。 |
| クラトス | 幸か不幸かこの世界は具現化によって再生された。具現化された鏡映点ではない人々の記憶や意思は、曖昧模糊としている。 |
| クラトス | 比較的たやすく帝国への帰属意識に目覚めたのだろう。 |
| クラトス | おそらくファントムによる最後の一斉具現化の際にも何か記憶の操作が行われただろうしな。 |
| クラトス | おかげで、今やこの世界の9割はアスガルド帝国の支配下にある。 |
| ルーク | 鏡殻変動からまだ一ヶ月しか経ってないのにそんなことになってるのかよ ! ? |
| ユーリ | 帝国に皇帝ね……。やっぱりそういうのは好きになれねぇな。 |
| クレス | デミトリアスの目的は何なんだろう……。 |
| クラトス | 私は具現化されたときからデミトリアスの動きが気になり、密かに調査を続けていた。 |
| クラトス | どうもデミトリアスはダーナの予言に関する資料を集めさせているようだ。 |
| ルーク | 予言……って預言(スコア)みたいなもののことだろ……。 |
| クラトス | ……案ずるな。ダーナの予言はお前の世界のように【絶対の未来】として存在するのではない。 |
| クラトス | 可能性の未来視……とでも言えばいいか。それすら私には眉唾のように思えるがデミトリアスは深く傾倒しているらしいな。 |
| クレス | ダーナの予言って確かこの世界の滅びについての予言ですよね。 |
| クラトス | 魔鏡と鏡精が世界の滅亡に関わる……そういう内容のものであるらしい。 |
| クラトス | 予言がどこまでの信憑性を持っているのかデミトリアスは予言をどうしたいのか――私はそれを調べている。 |
| クレス | それが雇い主の目的でもあるんですね。 |
| クラトス | ……そうだな。ところでお前たちの目指す戦士の館だが、この先の道を左に2回曲がるといい。 |
| クラトス | 南棟の地下牢へ続くもう一つの出入り口がある。ではな。 |
| ルーク | あ、ちょっと――って行っちゃったよ……。それにしてもどことなくロイドに似てたな。 |
| ユーリ | そうか ?――それよりどうする ?この先にもう一つ入り口があるって奴。 |
| クレス | 行ってみよう。このままだとチェスターが心配だ。 |
| Character | 4話【4-5 帝都イ・ラプセル 1】 |
| | 帝都イ・ラプセル |
| ゼロス | ――なぁ、ここアレだろ ? もともとオーデンセがあったところだよな ? |
| ゼロス | 具現化ってのはおっそろしいねぇ。島だの建物だの、人まで造っちまうのか。 |
| シンク | ファントムが開発していたもう一つのカレイドスコープの力だろうね。レプリカ以上のレプリカだよ。 |
| シンク | 地獄さ、ここは。 |
| ゼロス | あー、そういやお前の世界にもこういう技術があるんだよな。 |
| ゼロス | ミリーナちゃんのとこにいるジェイドってのが開発したんだろ ?何でもコピーするフォミクリーって技術を。 |
| シンク | あの死霊使いらしいね。鏡士のところに居候するなんて。不気味な力の開発者同士気が合うんだろ。 |
| ゼロス | シンくんは、何にでも当たり散らしたい年頃なんだねぇ。 |
| シンク | うるさいよ。文句があるならついてこなければいい。 |
| ゼロス | いやいや、文句なんてねーよ。むしろ面白い。ただ一つ注文があるとすれば―― |
| シンク | ――何 ? |
| ゼロス | その仮面はちょっとなー。悪目立ちするんじゃねーの ? |
| ゼロス | 俺さまもこの麗しい顔を隠すためのマスクは持ってるが、必要に迫られない限り付けやしないぜ。 |
| シンク | ………………。 |
| ゼロス | うぉっと、仮面越しにも感じる冷たい視線。へいへい、顔も隠したい年頃なんだな。ま、いいけどよ。 |
| ゼロス | で、戦士の館とやらはどの辺りにあるんだ ? |
| シンク | ――一番警備の厳重な中央区画らしいね。元々帝室の離宮だった場所を改装して使ってるって話だ。 |
| ゼロス | 帝室 ? この島はオーデンセのあった海域に新しく具現化された島だろ ?たかだか一ヶ月程度で離宮を手放したのか ? |
| ゼロス | ……いや、この街自体、新しく具現化されたものにしては作りが古めかしいな。使い込まれてるっていうか……。 |
| シンク | アンタ、バカなフリをしてるけど、意外とまともな脳みそ持ってるんだね。 |
| シンク | そうだよ。この島はかつてのアスガルド帝国の帝都をそのまま具現化した島なんだ。 |
| シンク | フィリップの話じゃ、古の時代オーデンセ島にはアスガルド帝国の帝都があったらしい。 |
| ゼロス | つまりここは大昔のオーデンセ島でもあるって訳か。 |
| ゼロス | だが、具現化で遡れる時間には限界があるんじゃなかったか ? |
| ゼロス | それに過去を具現化するってアプローチ自体は失敗したんだろ。 |
| シンク | そう。それは変わっていない筈だ。 |
| シンク | だから考えられるのは、ファントムが開発していたカレイドスコープは、奴が望んだ通りの機能が備わっていたって可能性さ。 |
| ゼロス | 自分の理想を投影して具現化するカレイドスコープ、か。 |
| ゼロス | 創造と想像の融合。フィリップとファントムが得意にしてる具現化技術だな。 |
| シンク | ……バカ神子、兵士が来る。隠れるよ。 |
| ゼロス | わかってる。あとバカ神子呼ばわりはやめろっつーの。 |
| 帝国兵A | ――怪しい奴らがいたようだったが……。 |
| 帝国兵B | 背格好はどうだ ?脱走した特異鏡映点亜種01は銀髪に大剣を持った少年だと言うことだが。 |
| 帝国兵A | いや、赤い髪の男とおかしな仮面を付けた細身の奴の二人組だった。戦士の館の関係者ではなさそうだな。どうする ? |
| 帝国兵B | 上にはあとで報告することにして巫女の隊列へ戻るぞ。 |
| 帝国兵B | 勝手に持ち場を離れたことがバレたら後で焔獄のリヒター様に叱られる。 |
| 帝国兵A | その呼び方もやめた方がいいぞ。お嫌いらしい。 |
| 帝国兵B | いや、しかし、ちゃんと二つ名付きで呼ばないと死神ディストにどやされるぞ。 |
| ゼロス | ……行ったな。 |
| シンク | ………………。 |
| ゼロス | どうやら戦士の館で脱走があったらしいな。こいつはやっかいだ。きっと戦士の館の守りが堅くなってるぜ。 |
| シンク | ……神殿へ行く。 |
| ゼロス | ああ……あいつら巫女の隊列に戻るって言ってたな。ってことは―― |
| ゼロス | 帝国の連中、例の女神ダーナを巫女の体に宿す【神降ろし】とやらをまだ続けてるってことか。 |
| シンク | ああ。巫女は鏡映点の中から適正のある女が選ばれるらしい。鏡映点なら戦士の館に囚われている筈だ。 |
| シンク | 巫女の隊列を利用すれば館の中に入れるかも知れない。 |
| ゼロス | 巫女に女神を降ろす……か。どこの世界も似たようなことをやってやがる。 |
| ゼロス | まぁ、ミトスが帝国側にいるならそういう発想にもなるか。 |
| シンク | ああ、アンタの世界もそうだったね。あのミトスとか言うガキが、姉だか女神だかを神子の体に宿らせようとしてたとか。 |
| シンク | アンタの世界も中々いい地獄加減って訳だ。 |
| ゼロス | 否定はしねぇよ。ただ俺さまはお前と違ってあの世界のことは割と嫌いじゃないけどな。 |
| シンク | ……フン。行くよ、バカ神子。 |
| ゼロス | へいへい、烈風のシンク様。 |
| シンク | ……言っておくけど気に入ってる訳じゃないよ、その呼び名。勝手に広められて、呼ばれ慣れただけでね。 |
| ゼロス | センスの欠片もない仲間を持つと苦労するねぇ……。 |
| シンク | 仲間 ? ボクらは共同体から外れたゴミクズ集団だよ。埃と埃がくっつくみたいに仕方なくつるんでただけだ。 |
| シンク | アンタも似たようなもんだったんでしょ ? |
| ゼロス | はぁ~、きっついこと言うねぇ。 |
| ゼロス | ま、いいわ。さっさとやることやっちまおうや。 |
| シンク | ……ああ。 |
| Character | 5話【4-8 ダーナ神殿 1】 |
| | ダーナ神殿 |
| ゼロス | 簡単に潜入できちまったなぁ。 |
| ゼロス | 前に成り行きでシャーリィちゃんを助け出したことがあったからもっと警戒されてるのかと思ったけどな。 |
| シンク | 代わりの器はいくらでもいるってことなんじゃない。 |
| ゼロス | 嫌だねぇ、そういう考え。 |
| ゼロス | ――おっ、あの祭壇で眠らされてる女の子超可愛いじゃねーの。綺麗な黒髪、綺麗なおみ足 ! |
| シンク | ……静かにしろ。神官が来る。 |
| 神官 | ……駄目だ。ダーナ神は降臨されなかったようだ。 |
| 帝国軍兵士 | また失敗か……。せっかくアニマを受け入れやすい鏡映点が見つかったのに中々上手くいかないな。 |
| 神官 | 焔獄のリヒター様のお怒りを買わなければ良いのですが……。 |
| 帝国軍兵士 | あの方は大丈夫だろう。それより器の鏡映点を館に戻したい。 |
| 神官 | 棺の中にお戻ししておきます。 |
| シンク | ……よし、奴ら祭壇から離れていった。 |
| ゼロス | 棺か……。あの黒髪の美少女を助け出して代わりに棺の中に収まれば戦士の館に入れそうだな。 |
| シンク | ――待った。祭壇の後ろに誰かいる。 |
| クラトス | …………。 |
| ゼロス | ! ! |
| シンク | ……あいつ、アンタの仲間だっけ ? |
| ゼロス | ああ、クラトスだ。目配せしやがった。合流しろってことかよ、くそったれが。 |
| シンク | へぇ、アンタ、あの男が嫌いなんだ。 |
| ゼロス | ――うるせぇな。それよりあいつと合流するぞ。 |
| シンク | ――それで ? ボクたちを招き寄せて何をさせようってのさ。 |
| クラトス | 祭壇にいるコハクという少女を助け出したい。手を貸して欲しい。 |
| ゼロス | へぇ、あの子コハクちゃんって言うのか。 |
| ゼロス | で、なんであんたがあの子を助けるんだよ。デミトリアスのことを調べてたんじゃないのか。 |
| クラトス | デミトリアスの動きを知るためにはあの少女が必要不可欠だ。 |
| クラトス | しかし今の状態では目を覚ますことはないだろう。助け出してフィリップに会わせる必要がある。 |
| シンク | ――なるほどね。動けない空っぽの人形を抱えて戦うのは大変だから力を貸せってことか。 |
| シンク | 丁度いい。ゼロス、アンタがクラトスと一緒にコハクを助けたら ? |
| シンク | どうせアンタたちの体格じゃコハクが入っていた棺には入れないだろ。 |
| クラトス | お前たちは、戦士の館に潜入するつもりだったのか。 |
| ゼロス | ガロウズを助けろって言われてるからな。 |
| クラトス | 先ほど、黒衣の鏡士の仲間が、戦士の館へ侵入しようとしているところに出くわした。彼らを陽動に使えるだろう。 |
| シンク | 誰が潜入してるのさ ? |
| クラトス | クレス、ルーク、ユーリだ。おそらく館の中でチェスターと合流するのだろう。 |
| シンク | ルークがいるのか……。ちょっと面倒だね。まぁ、いざとなったら利用させてもらうよ。 |
| ゼロス | 俺らはコハクちゃんを助け出してから戦士の館に行って、シンクをキャッチアップすればいいんだな。 |
| クラトス | 神子――ゼロスも私も空を飛べる。建物の外にさえ出てくれればお前とガロウズを助けられるだろう。 |
| シンク | へぇ、ホント便利だね、天使って。じゃあさっさとそこの女を連れてってよ。 |
| ゼロス | 無理すんなよ、シンくん ! |
| シンク | 殺すよ、バカ神子。 |
| クラトス | 頼むぞ。 |
| Character | 6話【4-11 戦士の館 広間】 |
| | 戦士の館 |
| 帝国兵 | よし、棺はそこに置け。 |
| シンク | (……上手く潜入できたみたいだな) |
| 帝国兵A | 棺の中から器の鏡映点を出せ。 |
| 帝国兵B | 了解 ! |
| シンク | ――残念だったね。器の鏡映点じゃなくてさ ! |
| シンク | (……この兵士たちは縛り上げておけばいいとしてガロウズの居所を見つけないとね) |
| シンク | (……何だ、今の音は ? ) |
| ルーク | やべ ! ツボ落としちまった ! |
| ユーリ | おいおい、オレたちは敵のアジトに潜入してるっての、忘れないでくれよ。ルーク坊ちゃん。 |
| クレス | いったんそこの部屋に隠れよう ! |
| 三人 | ! ? |
| シンク | ――随分間抜けな侵入者だね。 |
| ルーク | シンク ! ? な、なんでお前がここに―― |
| クレス | ルークの仲間かい ? |
| ユーリ | ……って訳じゃないみたいだぜ。見ろよ、ルークの顔。鏡映点ではあるんだろうがな。 |
| シンク | 察しのいいのがいると助かるね。 |
| ユーリ | 帝国の連中を縛り上げてるんだ。オレたちと立場は同じようなもんだろ ? |
| シンク | ああ。そっちはチェスターを捜してるところでしょ。 |
| シンク | こっちもこの館に詳しい人間を捜してるんだ。ここはいったん手を組むってのはどう ? |
| ルーク | シンク……お前の目的は何だ ? |
| シンク | 一応言っておくけど、今のところ総長が具現化されたって話は聞かないよ。 |
| ルーク | ………………。 |
| シンク | ボクは……そうだな、強いて言うなら救世軍の所属ってところさ。アンタたちとやり合うつもりはない。 |
| クレス | ユーリ、ルーク、どう思う ? |
| ユーリ | 嘘をついてるって感じはしねぇな。もっとも信用できるかってのはまた別の話だ。 |
| ルーク | シンクが俺たちをどうにかするつもりならこの部屋に入った段階で仕掛けてくると思う。 |
| クレス | うん、僕もそう思う。二人が問題ないなら今は彼と手を組むべきじゃないかな。 |
| クレス | この先、どうしたって敵との戦いになる。戦力は多い方がいいからね。 |
| ユーリ | だな。ただその前に一つ確認しておきたいことがある。 |
| ユーリ | お前、クラトスと組んでるんだろ ?あいつはどうした ? |
| ルーク | え ? そうなのか ? |
| シンク | 別に組んでるって訳じゃない。 |
| ユーリ | でも雇い主は同じってことか。 |
| シンク | それを知ってどうするのさ。 |
| ユーリ | フィリップの動きが知りたかったんでね。まぁ、こっちの予想通りみたいだな。 |
| ルーク | え ? どういうことだよ ? |
| クレス | 僕たちが仮想鏡界に隠れている間の世界情勢に関することだね。 |
| クレス | ジェイドさんたちが、ある程度予測をまとめていたみたいだけど……。 |
| ユーリ | まぁな。詳しい話はチェスターの件を片付けてからだ。それにジュードやセネルからも人捜しを頼まれてるしな。 |
| ルーク | ……そうだな。どうせ今話を聞いたって訳わかんねーだろうしまずはチェスターを捜そうぜ。 |
| ルーク | ――あ、シンク。えっと、なんか知ってそうだけどこっちがユーリでこっちがクレス。 |
| シンク | 知ってるよ。ボクはシンク。さっさと行くよ。 |
| クレス | よろしく、シンク。 |
| シンク | ……はいはい、めんどくさ。 |
| Character | 7話【4-12 戦士の館 通路1】 |
| アミィ | ………………。 |
| チェスター | ……アミィ。ごめんな。オレが……オレが馬鹿なことを考えなけりゃ……。お前を巻き込むことはなかったのに……。 |
| 帝国兵 | 大変です ! 魔弓のチェスター様 ! |
| チェスター | ――この部屋にいるときは誰も近寄るなって言っただろうが ! あと変な二つ名もやめろ ! |
| 帝国兵 | し、失礼しました ! ですが―― |
| 帝国兵 | うっ ! ? |
| シンク | ――これで静かになった。 |
| クレス | チェスター ! ! |
| チェスター | クレス ! ! 来てくれたのか ! 色々あって抜け道が使えなくなっちまってたから会えないんじゃないかと思ってたぜ。 |
| クレス | ああ、危ないところだったんだけど……あれ ? そこにいるのは―― |
| チェスター | ……ああ。アミィだ。 |
| クレス | アミィちゃんも具現化されていたのか !でも僕たちと同じタイミングで具現化された訳じゃないよな。 |
| チェスター | ああ……。アミィは……ファントムが後から具現化したんだ。 |
| シンク | ……その子は、アンタの家族 ? |
| チェスター | あ、ああ……。オレの……妹だ。 |
| ユーリ | ――なぁ、気付いてるか ?その子、さっきからずっと表情が変わらない。 |
| クレス | ! ? |
| シンク | リビングドール。それも失敗作だね。 |
| チェスター | お前、知ってるのか ! ? |
| シンク | 救世軍でも調査していたからね。ファントムが具現化したって言ってたけどリビングドールにしたのはメルクリアだろ ? |
| ルーク | リビングドールってなんだよ ?メルクリアってのは ? |
| チェスター | メルクリアはビフレスト皇国の生き残りの皇女だ。リビングドールは……。 |
| シンク | 空っぽの人間に魂を入れるんだよ。アニマを失った人間に、別のアニマを注入してキメラ結合させるんだ。 |
| シンク | すると魂をもった人形が出来上がるって訳。 |
| クレス | アミィちゃんもアニマを失ってるっていうのか ? |
| シンク | いや、アニマを消せなかったんだろ。だから心が壊れてこんな状態になってるんじゃないの。 |
| チェスター | この世界の医者にはさじを投げられた。かといって、アミィを具現化した連中に任せれば、もっと酷い目に遭わされる。 |
| チェスター | だから異世界の知識でなんとかアミィを救えないかって……。 |
| クレス | チェスター……。 |
| クレス | わかった。すぐにアミィちゃんを連れてアジトへ戻ろう。 |
| ユーリ | いいぜって言いたいとこだが……まだ特異鏡映点を助けられてねぇ。それにジュードたちの仲間も捜さねぇと。 |
| チェスター | 特異鏡映点は牢屋に入れられてるんだ。 |
| チェスター | それと亜種って呼ばれてる特異鏡映点もいるんだが、そっちは今帝国の連中に連れてかれちまった。 |
| チェスター | 今回はあきらめるしかないかも知れない。 |
| ルーク | なぁチェスター、ここにローエンって執事の爺さんとシャーリィって金髪の女の子が囚われてないか ? |
| チェスター | シャーリィって名前には聞き覚えがないが、ローエンって爺さんだったら多分牢の中にいる特異鏡映点の一人に―― |
| 帝国兵 | 大変です ! 侵入者がこちらの方へ―― |
| ユーリ | おっと、悪いがお休みの時間だ。 |
| ルーク | やばい、足音がこっちに近づいてくるぞ。ここにいるのがバレるのも時間の問題かも……。 |
| シンク | ……チェスター。その牢屋の場所を教えてよ。ボクが捜してる奴もそこにいそうだ。 |
| チェスター | けど、この状況で牢屋に寄ってたらこの館から逃げられなくなるぞ。 |
| シンク | アンタたちはアミィをつれてさっさと逃げればいい。ボクが牢屋の方を引き受ける。 |
| シンク | 特異鏡映点がいれば一緒に助ければいいんだろ ? |
| ルーク | でも、シンク一人で大丈夫なのか ? |
| シンク | アンタたちが大立ち回りしながら逃げてくれれば、こっちは楽になるからね。 |
| クレス | ……シンク。頼んだよ。 |
| シンク | 乗りかかった船だからね。今回は貸しにしといてやるよ。 |
| ユーリ | おい、チェスター。それにシンクも。フレンってやつ知らないか ?金髪で騎士っぽいナリの。 |
| チェスター | フレン ? お前、フレンを知ってるのか ? |
| ユーリ | ここにいるのか ! ? |
| シンク | フレンって、デミトリアスの側近の騎士団長でしょ ? ここにはいない筈だよ。 |
| ユーリ | デミトリアスの側近だって ! ?ったく、あいつ……。 |
| チェスター | 詳しい話は後でいいか ? |
| ユーリ | あ、悪ぃ。話しこむようなヒマなかったな。 |
| チェスター | シンク、特異鏡映点の牢屋は北棟の地下だ。気をつけろよ。 |
| シンク | はいはい。こっちのことはいいからさっさと消えな。 |
| クレス | ありがとうシンク。また後で ! |
| ルーク | 無理すんなよ ! |
| ユーリ | 特異鏡映点のことは頼むぜ。 |
| シンク | ……さて。こっちも行動開始と行くか。 |
| Character | 8話【4-14 戦士の館 北棟】 |
| シンク | (ルークたちが兵士を引きつけてくれたからここまでは楽に来られたけど……) |
| ガロウズ | …………。 |
| シンク | ――やっと見つけたよ。ガロウズ。 |
| ガロウズ | ……あんたは確か―― |
| シンク | シンク。救世軍の使いだよ。 |
| ガロウズ | ……前にも言った筈だ。セシリィが帝国に囚われた。あいつが帝国にいる限り俺は帝国に従うしかない。 |
| シンク | セシリィなら助け出したよ。 |
| ガロウズ | ! ? |
| シンク | これでアンタを縛るものはなくなった筈だ。こっちはケリュケイオンを修理できる人材が必要なんだよ。 |
| ガロウズ | ……そうか。ありがとう。だったらあんたたちに協力するしかねぇな。 |
| シンク | へぇ、簡単に信じるんだね。 |
| ガロウズ | ――お、おい、どういう意味だ ! ? |
| シンク | お人好し過ぎて呆れただけさ。別に嘘をついた訳じゃない。一応、助け出した証拠も持ってきたからね。 |
| シンク | ほら、セシリィのスペアのメガネだってさ。 |
| ガロウズ | ………… ! |
| シンク | それから特異鏡映点がここに捕まってるって聞いてるんだけど……。 |
| ? ? ? | 特異鏡映点の人たちを助けてくれるの ? |
| シンク | 誰 ? |
| ガロウズ | ……ああ、ルビアだ。鏡映点で、昨日までは俺たちの世話係をしてくれていたんだが―― |
| ルビア | 色々あって、あたしも牢屋に入れられちゃった。 |
| シンク | ……どうする ? 逃げるなら鍵を開けるけど。 |
| ルビア | あたしはいいわ。ここにいなくちゃいけない理由があるの。でも特異鏡映点の人たちは助けてあげて。 |
| ルビア | どんどん衰弱してきているからこのままじゃ命を落としてしまうわ。 |
| シンク | ガロウズ。鍵を開けるから特異鏡映点の牢まで案内してよ。 |
| ガロウズ | ありがとう。助かった。 |
| ガロウズ | ……ルビア、本当にいいのか ? |
| ルビア | ええ、あたしは大丈夫。それよりローエンさんたちを、早く……。 |
| ガロウズ | わかった。――シンクだったな。こっちだ。 |
| ガロウズ | ローエン、リーガル、ジョニー。助けに来たぞ ! |
| リーガル | ガロウズか……。良かった。ローエンを頼む。 |
| シンク | ……一人足りないんじゃない ? |
| リーガル | ジョニーはどこかへ連れて行かれた。今ここにいるのは私とローエンだけだ。 |
| シンク | 二人とも随分衰弱してるね。 |
| リーガル | 私はまだ大丈夫だ。しかしローエンはかなり厳しい状況にある……。もう長い間、意識を失ったままだ。 |
| シンク | ……そう。それじゃ、鍵を開けるよ。 |
| シンク | ガロウズ。ローエンを背負って。 |
| ガロウズ | 了解だ。 |
| シンク | リーガル。アンタは歩けるでしょ。さっさと出てよ。 |
| リーガル | ……いや、私はここに残る。 |
| シンク | ……はぁ。アンタもかい ? |
| リーガル | ここの連中は死者を蘇らせようとしている。その中には私の大切な人もいるのだ。それだけは……阻止しなければならない。 |
| シンク | へぇ……。生き返らせたいとは思わないの。 |
| リーガル | ……その誘惑がないと言えば嘘になるな。しかし奴らの計画は単なる死者の復活ではない。 |
| リーガル | 私は……彼女を……アリシアをリビングドール計画に使わせる訳にはいかないのだ。 |
| シンク | ……ああ。この地獄みたいな世界に復活を強要されるなんて哀れ過ぎて笑えるからね。 |
| リーガル | ……そうだな。 |
| シンク | じゃあ、ローエンだけ連れて行くよ。いいね。 |
| リーガル | 頼む。 |
| ルビア | ローエンさんをお願いします。 |
| シンク | わかったよ。 |
| シンク | ……はぁ、なんだってボクがこんなことをしなきゃいけないんだ。 |
| ガロウズ | なんだ ? 意外と照れ屋なのか ? |
| シンク | はぁ ! ? |
| ガロウズ | いや、仮面で顔を隠して照れ隠しみたいなことを言うから……。 |
| シンク | 照れ隠し ? 冗談じゃない。心底嫌なんだよ。馬鹿なこと言ってないでさっさと歩いたら。 |
| ガロウズ | おー、怖 ! わかったよ。仮面の坊や。 |
| シンク | 殺すよ、死に損ない。 |
| ガロウズ | ははは、死に損ないとは上手いことを言うな。確かに俺は色んな意味で死に損ないだからなぁ……。 |
| シンク | (……死に損ないはボクも同じだけどね) |
| Character | 9話【4-15 戦士の館 中庭】 |
| ガロウズ | やけに人が少ないな……。 |
| シンク | 警備の連中はルークたちを追いかけていったんじゃないかな。 |
| シンク | ――っと、そう呑気なことも言ってられなくなりそうだ。 |
| 帝国兵A | まだ侵入者がいるぞ ! ? |
| 帝国兵B | 捕まえろ ! |
| シンク | ガロウズ ! 逃げるよ ! |
| ガロウズ | はぁっ、はぁっ、ま、待ってくれ !こっちは人一人背負ってるんだぞ…… ! |
| シンク | ……ボクがそのジジイを背負ったら敵を倒せないだろ。泣き言言わないでしっかり運んでよね。 |
| ガロウズ | 人使いの荒い奴だな……。くそ……ここはどこだ ? |
| シンク | ……中庭みたいだね。 |
| ディスト | はーっはっはっはっ ! 袋のネズミとはこのことですねぇ、シンク。 |
| ディスト | 感謝しなさい。私が神降ろしの首尾を聞きに来たことを。異世界でも私に出会えるとは、あなたは幸せ者ですねぇ。 |
| シンク | ……なんだ。目が腐ると思ったら鼻たれの死神じゃない。 |
| シンク | 神降ろしはリヒターの担当かと思ってたけどアンタも首を突っ込んでたのか。 |
| ディスト | 誰が鼻たれの死神ですか ! ?薔薇のディスト様だと言っているでしょう。 |
| シンク | 薔薇っていうより腐ったバラ肉って感じだけど。 |
| ディスト | キィィィィィ ! ! ! 六神将のよしみで優しくしていればつけあがって ! |
| ディスト | いいでしょう。あなたがそういう態度ならまずそこの魔鏡技師と特異鏡映点から始末しましょうか ! |
| ゼロス | おーっと、腐ったバラ肉が人間様の邪魔をするんじゃねーよ ! |
| クラトス | シンク。ガロウズたちは我々が連れて行く。 |
| ディスト | ああっ ! 待ちなさい !空を飛ぶなんて非常識な ! |
| シンク | ――アンタだって椅子で空を飛ぶ非常識なバラ肉だろ。 |
| ディスト | きぃぃぃぃ、まだ言いますか ! ! |
| シンク | それよりわかってるの ? 足を引っ張る連中がいなくなったら、アンタなんてボクの足下にも及ばないってこと。 |
| ディスト | 失敗作が偉そうに ! |
| シンク | ああ、ボクは失敗作さ。でも失敗したのはボクじゃない。ヴァンやモースやアンタだ。 |
| シンク | そうだろう、失敗ばかりのヘボ研究者さん。目障りだからさっさと死にな ! |
| Character | 10話【4-15 戦士の館 中庭】 |
| フィリップ | シンク、ありがとう。おかげで救世軍はケリュケイオンという足を手に入れることができた。 |
| フィリップ | これで帝国から逃れることができるしいずれ時が来れば、このケリュケイオンをミリーナたちに返すこともできる。 |
| シンク | アンタはどこまでも【あの女】に尽くすんだね。 |
| マーク | まぁまぁ、そう言ってやるなよ。それがフィルのいいところなんだ。 |
| シンク | ……アンタも大変だね。ご主人様に気を遣ってさ。 |
| フィリップ | シンクは手厳しいね。 |
| シンク | ……フン。 |
| アルヴィン | で、この後はどうするんだ ?俺としては、早いところジュードたちのところに連れて行って欲しいんだけどな。 |
| マーク | 今ゼロスとクラトスが、帝国へ再調査に行ってるんだ。あいつらが戻ってきたらミリーナたちのところへ送らせるよ。 |
| アルヴィン | まだしばらくかかりそうだな……。 |
| フィリップ | シンク。きみはどうする ? きみさえ良ければこのまま救世軍の力になって欲しいと思っているんだけれど……。 |
| シンク | 救世軍は何をするつもりなのさ。 |
| フィリップ | それはずっと変わっていないよ。このティル・ナ・ノーグを守り甦らせたい。 |
| フィリップ | 世界の具現化は完了したものの死の砂嵐の問題は残ったままだ。 |
| フィリップ | デミトリアス陛下がこの世界をどう導こうとしているのかも気になる。 |
| フィリップ | 異世界からの具現化を続けているのは何故なのかもわからないしね。 |
| フィリップ | 異世界からの具現化が危険であることは陛下もわかっている筈なのに……。 |
| シンク | その目的を果たしたら鏡士を殺させてくれるのかい ? |
| フィリップ | 鏡士を殺したいというなら全てが終わった後に僕を殺せばいい。 |
| シンク | ――へぇ、言ったね。これで二度目だ。だったら構わないよ。アンタたちに協力してやるさ。 |
| ? ? ? | 何だか怖いお話をしてるわね。 |
| マーク | シャーリィか。どうだ、客人の様子は。 |
| シャーリィ ? | コハクさんもローエンさんも眠ったままよ。 |
| アルヴィン | おい、フィリップ。ローエンの奴、本当に大丈夫なんだろうな ? |
| フィリップ | ああ。快復には時間がかかると思うけれど命に別状はないよ。 |
| フィリップ | コハクの方も意識を取り戻せるようこちらで手を打つつもりだ。 |
| フィリップ | 彼女が知っているというデミトリアス陛下の話を知りたいしね。 |
| シャーリィ ? | そうだ。ガロウズさんにコーヒーを頼まれたの。皆さんの分も淹れましょうか ? |
| マーク | お、気が利くねぇ。 |
| シャーリィ ? | ふふ♪そうでしょ ?あ、アルヴィン、手伝ってくれる ? |
| アルヴィン | わかったよ。 |
| シンク | 当面はデミトリアスの動きを調べることになると思うけど、リビングドール計画の方はどうするの。放っておくには不気味すぎる。 |
| マーク | 帝国の連中、なんでリビングドールなんて生み出してるんだろうな。単なる死者の復活とは違うんだろ ? |
| フィリップ | もちろんそちらも調べるつもりではいるけれど、僕はダーナの予言の方が気になるんだ。 |
| フィリップ | それにリビングドールの方は、おそらくミリーナたちが調査に取りかかると思うからあちらに任せた方がいいと思っている。 |
| シンク | そこまで言うなら手を組めばいいのに。 |
| シンク | 現実に向き合うのが怖くてあしながおじさんよろしく陰から助けますって ? |
| フィリップ | ……恥ずかしながらその通りだ。 |
| マーク | もうその辺でいいだろ、シンク。あんまりフィルをいじめるなって。 |
| シンク | ……わかったよ。じゃあ予言とやらの話をしよう。 |
| シンク | この世界の予言は確定した未来を予知するのとは違うんでしょ。 |
| フィリップ | そうだね。確定の未来……ではない筈だ。でも、どうやら本当に精霊はアイフリードによって封じられていた。 |
| フィリップ | 予言が真実かどうかはともかく精霊を封じる必要性はあった訳だ。僕はその点がどうしても気になるんだよ。 |
| フィリップ | 精霊が封じられていたのが事実ならダーナの巫女もどこかで長い眠りについていると考えるべきだろう。 |
| シンク | 了解だ。そこまで言うなら、ダーナの予言とデミトリアスの動きを中心に調べていこう。 |
| シンク | ただ、どこかであの黒衣の鏡士と顔をつきあわせて話す必要が出てくるってこと忘れないでよね。 |
| フィリップ | ……ああ。 |
| ガロウズ | 待たせたな。エンジンが動きそうだ。 |
| マーク | よーし、出発するか。新生救世軍の門出だ ! |
| シンク | 新生……ね。 |
| マーク | なんだよ、渋い顔して。おかしいか ? 新生救世軍って。 |
| シンク | ……別にいいんじゃないの。 |
| | to be continued |