| Character | 1話【アジト】 |
| ミリーナ | 皆さん、集まってくれてありがとうございます。 |
| ミリーナ | 今日は今までに集めた情報の共有と、この前ゼロスさんから聞いた救世軍の情報の精査。 |
| ミリーナ | あと今後の方針についてご相談できればと思っています。 |
| リフィル | それじゃあ、少し前のことから振り返りましょうか。 |
| リフィル | この世界は死の砂嵐によって消滅の危機に瀕しています。 |
| リフィル | 一度はゲフィオンが自分の体を魔鏡にする【人体万華鏡】という方法で、死の砂嵐を自分の中に取り込もうとしたわ。 |
| リフィル | でもそれは叶わなかった。 |
| リフィル | だからゲフィオンの体から溢れる死の砂嵐を食い止めようと、イクスが自分の力を意図的に暴走させた。 |
| リフィル | その結果、彼の力が魔鏡結晶という鏡の石に変質して、この世界全体へと広がったの。これが魔鏡結晶。 |
| リフィル | 今あちこちの地面から露出している水晶のような石よ。この水晶の中に死の砂嵐を封じている訳ね。 |
| ミリーナ | そしてイクスも魔鏡結晶の中に閉じ込められてしまった……。 |
| ジェイド | これが所謂【鏡殻変動】です。鏡震を伴った現象でもあったため各地で被害が出ています。 |
| ジェイド | アスガルド帝国が救済の手を伸ばしているようですが、追いついていないのが実情のようですね。 |
| ジェイド | ――ここまでで、何か質問はありますか ? |
| エル | よく分かんないけど、イクスが鏡の石をいっぱい作って、みんなを守ったってことでしょ ? |
| ジェイド | さすがエル。賢いですねー。エルが理解しているのだから次に進んでもいいでしょう。 |
| キール | 次はぼくだな。キール研究室では、魔鏡結晶の性質について調査を進めた。 |
| キール | その結果わかったのは、今世界中に露出している魔鏡結晶が、地下深くで繋がっている一つの巨大な塊だということ。 |
| キール | もちろんイクスが閉じ込められている石にも繋がっている筈だ。そしてその石は今も広がり続けている。 |
| キール | これはイクスが今も魔鏡術を魔鏡結晶に変質させているということだ。 |
| キール | これを放置すると、イクスは自分の生命エネルギーであるアニマを使い尽くしてしまう恐れがある。 |
| ジュード | もしアニマを使い尽くしたら……。 |
| ミリーナ | ……ええ。命を落とすかも知れない。 |
| ミリーナ | でも魔鏡結晶に包まれている限りアニマを使い尽くしても息絶えることはないの。 |
| ミリーナ | 魔鏡結晶はイクスの命であり力でもある。 |
| ミリーナ | イクスを助け出すときに魔鏡結晶からアニマを取り戻すことができればきっと大丈夫。 |
| クラース | つまり、今はあの魔鏡結晶の檻がイクスを守る防御壁でもある訳だな。 |
| リタ | その通りよ。だからまだ時間はある。イクスを助け出すための確実な方法を見つけることができればね。 |
| コーキス | 俺が必ず見つけ出します。マスターの力が鏡の石になって世界中に広がってるから俺はどこへでも行くことができる。 |
| コーキス | マスターのためなら俺、何でもやれるから。 |
| ミリーナ | コーキス。一緒に頑張りましょう。 |
| リフィル | 次に現在の状況よ。 |
| リフィル | セールンドの国王デミトリアスは1200年以上前の古代国家アスガルド帝国の復活を宣言したわ。 |
| リフィル | これはおそらく彼がセールンド王国の敵対国家であったビフレスト皇国を甦らせようとしているからだと推察できる。 |
| リフィル | かつてはセールンドもビフレストもアスガルド帝国の支配下にあったから古代のそれに倣ったのでしょうね。 |
| スレイ | わざわざアスガルド帝国を甦らせるってことは、そこに伝わる儀式や風習を甦らせたいとも考えられるな。 |
| スレイ | ゼロスさんからの話では、デミトリアスが【神降ろし】という儀式を行っているという話でしたよね。 |
| リフィル | ええ。太陽神ダーナを巫女の体に降ろし託宣を受ける……という儀式のようね。 |
| スレイ | アスガルド帝国時代の資料には【神降ろし】という単語こそ残っていないけど、託宣を受ける巫女の話は頻繁に出てくるんです。 |
| スレイ | もしかしたらここにもアスガルド帝国を甦らせる意味があったのかも知れない。 |
| コレット | 巫女の体に……神様を降ろす……。まるで私たちの世界のお話みたいですね。 |
| リフィル | そうね……。ミトスの発案か……或いは彼の話を聞いたデミトリアスの命令なのかも知れないわね。 |
| ミリーナ | これに関しては、フィリップの方でも調査を進めているみたい。 |
| ミリーナ | 何もかもに手を広げるのは無理だからあちらからの情報を待ちましょう。 |
| ユリウス | フィリップの話題が出たところで帝国以外の勢力の話もしておこう。 |
| ユリウス | まずアスガルド帝国は、この世界のほぼ全土を手中にしていると考えて間違いないな。 |
| ユリウス | 敵対しているのは俺たちと救世軍だけのようだ。 |
| カノンノ・E | ファントムが亡くなってからの救世軍はフィリップとマークが指揮権を取り戻したみたいなの。 |
| カノンノ・E | 今は救世軍がケリュケイオンを使ってるわ。 |
| カノンノ・E | ただ兵士さんたちの半数以上は帝国に付いていったみたいだから昔ほどの力はないかも……。 |
| リフィル | そうそう。救世軍からアルヴィンがこちらに合流したのは、みんな覚えているわよね。 |
| リフィル | 一応他にも新しい仲間を紹介しておいた方がいいかしら。 |
| ミリーナ | そうしましょうか。もう、みんなすっかり馴染んでいるけれど……。 |
| ミリーナ | ――まずロゼとデゼルさん。 |
| ミリーナ | アニスとセルシウス。 |
| ミリーナ | ヒューバートさんとパスカル。 |
| ミリーナ | パスカとカナとロディ。 |
| ミリーナ | 他にも何人かの鏡映点の人たちが救世軍にいるわ。 |
| アルヴィン | ああ。まずは鏡映点じゃないけどガロウズ。それにローエンって俺たちの連れもあっちにいる。 |
| アルヴィン | 帝国に捕まってたのを助けたはいいがまだ眠ったままだ。命には別状がないけどな。 |
| アルヴィン | あとゼロスとクラトス、シンクに、コハクそれにやっぱり鏡映点じゃないけどシャーリィって―― |
| セネル | シャーリィ ! ? おい、アルヴィン !今シャーリィって言ったな ! ? |
| アルヴィン | え……な、何だよ、そんな怖い顔で……。 |
| ミリーナ | 確か……セネルさんの仲間にもシャーリィさんって方いましたよね。 |
| アルヴィン | いや、でも、あの子自分で鏡映点じゃないって言ってたぞ ? |
| セネル | ……な……何だよ……。名前が同じだけの他人か……。 |
| ジェイド | 決めつけるのはどうかと思いますがね。 |
| セネル | 俺の知っているシャーリィかも知れない、ってことか…… ? |
| ジェイド | 直接会ってみるのが一番でしょう。近々救世軍側にコンタクトを取ろうと思っています。 |
| ジェイド | セネル、あなたがその役を請け負ってくれますね。 |
| セネル | ああ、もちろんだ ! |
| リフィル | とはいえ、こちらは救世軍が今どこにいるかもわからないの。しばらく待つことになってしまうわ。 |
| セネル | そんなこと言ってられるか――と言いたいところだが……。今はそうするしかないんだろうな。 |
| リフィル | ありがとう、セネル。でもあちらにいるシャーリィという少女が、本当にあなたの仲間なのかは気になるでしょう。 |
| リフィル | アルヴィンと少し話をして確認してみるといいわ。 |
| リフィル | 判断がつけば何よりだしそうでなかったとしても彼女の状況は知っておきたいでしょう。 |
| セネル | ああ。そうさせてもらう。 |
| リフィル | その間、私たちは少し休憩を取りましょう。 |
| リフィル | クレス、チェスターを連れてきて。次はリビングドールの話をすることになるから。 |
| クレス | ……わかりました。 |
| Character | 2話【5-1 ひとけのない街道 1】 |
| ジェイド | さて、再開といきましょうか。 |
| カーリャ | はー……。お話の続きですね。カーリャには難しすぎます。パッと行くとかスキップ~とかできればいいのに。 |
| カイル | ぱっといく ? すきっぷ ? |
| カーリャ | あわわわ、何でもないです ! |
| クラース | ここからはさらに深刻な話になる。――チェスター、つらいだろうがわかっていることを話してくれないか。 |
| チェスター | ああ……。リビングドール計画のことだな。 |
| チェスター | ……そもそもこの計画を発案したのはビフレスト皇国の皇族の生き残りであるメルクリア皇女だ。 |
| ミリーナ | …………。 |
| リオン | ビフレストは魔鏡戦争でセールンドに負けて滅びたんだったな。 |
| ミリーナ | ええ……。ゲフィオンの記憶によればカレイドスコープによってセールンドは戦争に勝利、ビフレストは征服された筈よ。 |
| チェスター | オレが聞いた話だと、メルクリアは終戦の時に人質としてセールンドに連れてこられたらしいな。 |
| チェスター | それでデミトリアスが親代わりに育てていたって話だ。 |
| ミリーナ | ……デミトリアス様が ? |
| チェスター | メルクリアはそう言ってた。救世軍はファントムを通じてメルクリアと知り合ったらしい。 |
| チェスター | 最初はビフレストの生き残りとは知らなかったから、反ゲフィオン派の貴族の娘だって認識だったみたいだな。 |
| チェスター | それがいつの間にか救世軍を取り込んじまった。 |
| チェスター | 鏡殻変動のとき、オレが城の中に潜入できたのも、メルクリア派の連中の手引きがあったからだ。 |
| チェスター | あの段階でメルクリアはファントムを切り捨ててフィリップと手を組もうとしていたみたいだぜ。 |
| リフィル | 整理させてちょうだい。メルクリアはファントムの仲間として救世軍に接触した。 |
| リフィル | その後、何らかの理由でファントムを切り捨てると決めて、救世軍を掌握し『ファントム封印計画』に荷担した。 |
| チェスター | ああ。その後、メルクリアと後見人のデミトリアスが帝国の復活だのビフレストの再興だの言い出してな。 |
| チェスター | 救世軍をメルクリアの親衛隊として召し抱えるって話になったんだ。 |
| チェスター | その時にフィリップとマークは帝国と対立したって流れだな。帝国を出た後でゼロスたちとつるむようになったんだろう。 |
| チェスター | その辺りはアルヴィンの方が詳しいだろうが今はセネルと話し込んでるみたいだな。 |
| ジュード | フィリップたちが帝国と対立したのはリビングドール計画のせいなの ? |
| チェスター | そいつはわからねぇ……。そうかも知れないし何か別の理由かも知れない。 |
| チェスター | どっちにしてもわかってるのはリビングドールってのが、アニマを―― |
| チェスター | 魂を失った人間に、別の人間の魂を入れるなんて、ひでぇものだってことだけだ。その理由が何なのかすらわからねぇ……。 |
| リフィル | ……ありがとう、チェスター。つらいことを話してくれて。もういいわ。アミィの傍にいてあげて。 |
| チェスター | ……ああ。すまない。 |
| ジェイド | アミィは今、鎮静処置をして眠っています。今は安定していますが、まだ治すための手段は見つかっていません。 |
| ユリウス | 総括すると、俺たちは大きく三つの問題を抱えている。 |
| ユリウス | 一つはオーバーレイ暴走を起こしているイクスの救出。これには死の砂嵐という問題も付随する。 |
| ユリウス | 二つ目はリビングドール計画について。皇女メルクリアが何故こんなことをしているのかを突き止める必要がある。 |
| ユリウス | 無論、アミィの治療方法も探さなければならないだろう。 |
| ユリウス | 三つ目はアスガルド帝国そのものだ。彼らはミリーナやルドガーを狙っているしルカやイリアたちのことも捕らえていた。 |
| ユリウス | 鏡映点が持つ異世界のアニマを利用しようとしているのは間違いない。 |
| ジェイド | そこで我々も勢力を分散して問題を解決しようと思います。――ガイ、説明を。 |
| ガイ | ここまで来て俺に振るかね…… ?仕方がないな……。 |
| ガイ | まず、情報収集のための専門部署を立ち上げることになった。ここはロゼとカロルに頼みたい。 |
| ロゼ | そう来ると思ってた ! |
| カロル | え、ボクも ! ? |
| ガイ | ボクも、じゃなくてカロルが中心になってやるんだよ。【カロル調査室】の室長としてな。 |
| カロル | 室長 ! ? ボクが ! ? |
| ガイ | リフィル先生の見立てだ。期待に応えないとな。 |
| カロル | ……へ……へへ。ま、まぁ、そう言われちゃったら引き受けるしかないよね。 |
| ロゼ | フンフン、いいんじゃない ?リフィルだっけ ? いいチョイスだと思うよ。 |
| ロゼ | で、メンバーはあたしとデゼルと凛々の明星の連中でいいの ? |
| リフィル | 察しが早くて助かるわ。あなたたちは遊撃隊のような立場の方が向いていると思うの。 |
| ジェイド | カロル室長にはそこの癖の強い皆さんをまとめて頂いて、情報収集につとめていただきます。 |
| ジェイド | 必要な人員は適宜補充して下さい。人選はお任せします。 |
| カロル | 責任重大だな……。でも任せてよ。 |
| ユリウス | キール研究室では、異世界の知識を集めてイクスの救出に必要な手段とステップを構築する。 |
| ユリウス | 戦える人員は、はぐれ鏡映点の捜索と救出を進めよう。 |
| ユリウス | ただし、ミリーナとルカとイリアそれにルドガーとエルは―― |
| クラース | きみもだ、ユリウス。 |
| ユリウス | ――俺もだが、とにかくこのメンバーは単独行動を避けてくれ。 |
| リフィル | 話は以上よ。みんな、お疲れ様。 |
| ミリーナ | あ、あの、ちょっといいですか ? |
| リフィル | ミリーナ、どうしたの ? |
| ミリーナ | 後でちょっとお話があるんです。ジェイドさんにも……。あの……ナーザ将軍のことで。 |
| リフィル | ……わかったわ。後で作戦会議室へ来てちょうだい。 |
| Character | 3話【5-2 ひとけのない街道 2】 |
| ロイド | わりぃ。待たせたな ! |
| カロル | リオン、ロイド、いらっしゃい !好きな所に座って。 |
| リオン | ……おい、本当にあいつが仕切るのか ?子供だぞ。 |
| ユーリ | おいおい、オレたち凛々の明星の首領をなめてもらっちゃ困るな。それに今やあいつはカロル室長さまだぜ ? |
| レイヴン | そうそう。あとね、おっさんからすれば、リオンくんだって、いたいけで可愛い、立派なお子様だから。 |
| リオン | ……チッ。さっさと始めろ。 |
| カロル | それじゃ、第一回カロル調査室会合を始めます ! |
| カロル | えっと、それでまずは……何を調べる ? |
| デゼル | おい、そこからなのか……。 |
| カロル | だって、イクスのことや、死の砂嵐とかリビングドールとか……。全部いっぺんに調べるのは無理でしょ ? |
| ユーリ | だったら、今確実にわかってる情報を深掘りしてくのが手っ取り早いんじゃねぇの ? |
| カロル | そっか。いま確実にだと……ゼロスの報告書にあった、帝国にいる特異鏡映点かな。確かリーガルとジョニー。 |
| ロゼ | なるほどね。それでユーリは、ロイドとリオンを呼んだんだ。 |
| ユーリ | まずは捕まってるお仲間の人となりを聞きたくてな。特にリーガルってのは、自分の意思で残ったって話だろ ? |
| カロル | うん。リーガルが残ったのは大事な人を甦らせないために――だよね ?絶対に阻止するって言ってたみたいだけど。 |
| ユーリ | らしいな。捕まってるとはいえ、リーガルがあっちでどんな動きをするのかオレたちじゃ予測がつかねぇ。 |
| ユーリ | で、ロイド。どんな奴なんだ ? |
| ロイド | リーガルは、すげえ強くて優しくて、大きい会社の会長で、落ちついてて、手錠してて―― |
| リオン | なんだその薄っぺらい話は。もっと有益な情報はないのか。 |
| ロイド | こ、これから色々話そうと思ったんだって !だったら、リオンの仲間だっていうジョニーのこと聞かせてくれないか ? |
| リオン | ジョニーか ? そうだな……。ジョニーは…………歌を歌う。 |
| デゼル | ………。 |
| ロゼ | デゼル、肩震えてるけどどうかした ? |
| デゼル | な、なんでもねえ ! 放っておけ ! |
| レイヴン | あのさあリオンくん、おっさんもーちょっと有益な情報が聞きたいわ。 |
| リオン | わ、わかっている !歌のイメージが強烈すぎるんだ、あいつは ! |
| リオン | まあ……能天気に歌っている印象が強いがそれはあの男の一面だ。冷静だし統率力もそれなりにある。 |
| リオン | そして……重い過去もな。 |
| カロル | 重いってどんな ? |
| リオン | ジョニーにはエレノアという片思いの女性がいた。だが、過去に卑劣な男のせいで命を落としている。 |
| リオン | そして、国がらみの争いで僕たちと出会い、結局奴は、その仇を討った。愛する人のために。 |
| リオン | ……少なくとも僕はそう思っている。スタンは違う見方をするかもしれないけどな。 |
| ロイド | そうか……。ジョニーもリーガルと一緒で、大事な人を亡くしてたんだな。 |
| ロゼ | もしかしたら、ジョニーもリーガルと同じかもしれないね。 |
| ロゼ | 愛した人をリビングドール計画に使わせないために、何か考えてるのかも。 |
| デゼル | だがそいつは、牢から連れ出されて行方知れずって話だろう ? |
| デゼル | 何を考えてるかまだわからねえ。信用しすぎると痛い目をみるぜ。誰がどっちについてるかも曖昧だからな。 |
| レイヴン | 確かに、慎重に見分けないとね。帝国側についてる鏡映点にも、こっちに協力的なのがいるって話だし。 |
| ロイド | チェスターの手紙を届けにきたシングとカイウスだろ ?確かルビアって子も捕まってるはずだ。 |
| ユーリ | ……ま、中には目的がわからないままあっちに付いてる奴もいるけどな。 |
| レイヴン | ……フレンちゃんね。デミトリアスの側近やってるっていうけど何か考えてんのかな。 |
| ユーリ | ああ、それも確かめなきゃなんねえ。ってことで――、 |
| ユーリ | カロル先生 ! 情報収集のため、帝国再潜入の許可を願いまーす ! |
| カロル | え ! ? 許可したいけど、潜入しちゃうと他の調査が……。 |
| ユーリ | 心配ねぇよ。その辺は―― |
| ロゼ | こっちで商売のルートたどって、巷の細かい情報さらうんでしょ。セキレイの羽の本領発揮って感じ ? |
| ユーリ | ご明察。あんたらが面倒起こして後々商売に支障がでるのは、オレたちにとっても痛手だからな。 |
| ロゼ | うん、お互いにその方が良さそう。最近は商工ギルドへの出入りも多いしそっちの情報網からもたどってみるわ。 |
| ロゼ | それと、帝都に信頼できる商人がいるから紹介状書いとくよ。 |
| ロゼ | あたしたちと通じるくらいだから、それなりに裏はあるんだけどさ。多分色々と便宜を図ってくれると思う。 |
| ユーリ | そんな大サービスされたんじゃ、それなりのネタ掴んで帰らないといけねぇな。 |
| ロゼ | へへ~、お土産よろしく ! |
| カロル | じゃあカロル調査室の方針はこれで決定 !それと、ボクとレイヴンは潜入班でいいとして…… |
| カロル | あとはリタ――は、キール研究室の方で忙しいし、エステルに声かけてくるよ。 |
| ユーリ | 待った。確かあいつ、アミィをどうにかしてやりたいって言って今も張りついてんだろ ? |
| カロル | うん。ミントやエステルみたいな治癒術を使う人たちが集まって、アミィを治す方法を相談してた。 |
| ユーリ | ならあっちを任せようぜ。適材適所ってことで。 |
| カロル | わかった。それじゃ他の誰かを誘ってみる ! |
| ユーリ | 今回も荒事は避けられねえだろうし、血の気の多そうなのと抑え役、頼むわ。 |
| セシリィ | あれ、会合終わっちゃった ?ごめんなさい。誘われてたのに顔を出せなくて……。 |
| ロゼ | 大丈夫。やることは決まったから。ねえ、そのいっぱい抱えてるのなに ? |
| セシリィ | これね、みんなに渡そうと思ってたら量産に時間がかかっちゃった。 |
| セシリィ | これは新しい魔鏡、【浄玻璃鏡】っていうんだけど是非、みんなに持っていってもらいたいの ! |
| 一同 | ………… ? |
| Character | 4話【5-3 静かな街道 1】 |
| ライフィセット | あ、あの虫、珍しいよ !カロルは名前知ってる ? |
| カロル | む、虫 ! ? ボクはよくわからないから。ルークに聞いたら ? |
| ルーク | 俺もちょっとなー。こういうの得意なヤツっていないか ? |
| ライフィセット | アイゼンやデゼルだったら知ってるかも……持って帰って見せてみるよ。カロル、カバンに入れてもらっても―― |
| カロル | うわーダメダメダメダメダメ ! |
| ライフィセット | カロル、虫嫌いなの ?こんなにカッコいいのに……ほら ! |
| カロル | うわー ! こっち持ってきちゃイヤーッ ! |
| ベルベット | フィー、遊びに来てるわけじゃないでしょ。カロルも大事な手紙落とさないように気を付けなさい。 |
| カロル | だ、大丈夫だよ。ロゼにもらった紹介状ならちゃんとカバンに入れてるから。ほら ! |
| レイヴン | ほほ~う ? そのカバンの隙間、この虫くらいなら入るんじゃない ? |
| ルーク | 本当だな !ここなら安全に連れて帰れそうじゃん。 |
| カロル | ちょ、レイヴン、ルークまで ! |
| ベルベット | まったく……、言っても聞きやしないんだから。 |
| ラピード | ワフ~ン……。 |
| ガイ | ハハッ、けど子供が騒いでるのってなごむじゃないか。 |
| ユーリ | ああ。おっさんが一人混じってるけどな。 |
| ユーリ | ところで、カロルはガイとベルベットに声かけたっつってたけどずいぶんおまけが増えてんのな。 |
| ガイ | あいつ、自分は帝都潜入経験者だっていって駄々こねてさ。それになんか、自分も慣れなきゃいけないとかなんとか。 |
| ユーリ | ……まだそんなこと考えてんのか、あのお坊ちゃんは。向き不向きがあるって言ってんのに。 |
| ガイ | なんのことだ ? |
| ユーリ | いや、なんでもねえよ。こりゃ多分お前さんの領分だ。んで、フィーは ? |
| ベルベット | 潜入の件とこの魔鏡の話をしたら、突然いっしょに行くって言いだしたのよ。どういうつもりなんだか……。 |
| ユーリ | 魔鏡ってセシリィにもらった、この【浄玻璃鏡】のことか。 |
| ユーリ | 浄玻璃鏡……これを持ってけって ? |
| セシリィ | ええ。ルドガーさんのように、元の世界では備わっていた能力が、この世界では使えないっていう人がいるみたいで……。 |
| ロゼ | そうそう ! あたしもスレイもこの世界に来てからは神依が使えなくてさ。 |
| セシリィ | やっぱりね。 |
| セシリィ | 骸殻や神依のようなわかりやすい技じゃなくても、元の世界で使えていた術や技が使えないってことがあるんじゃないかな ? |
| ユーリ | 確かにな。魔導器の問題かとも思ったがオレたちとは違う世界の連中も似たようなことは言ってた。 |
| セシリィ | エンコードの影響を考えれば当然のことなの。 |
| セシリィ | 鏡映点は特殊な存在だから元の世界と全く同じように具現化すると不具合が出てしまう可能性がある。 |
| セシリィ | でもそれはカレイドスコープの照準が大雑把だったせいなの。一人一人のパターンを考慮して馴染ませれば問題はないわ。 |
| セシリィ | この魔鏡はね、鏡映点の中にある能力の滞留をサーチして、力を解放するきっかけとなる触媒を見つけてくれるの。 |
| セシリィ | そして鏡映点のアニマに刻まれた過去や起こりうる未来から、鏡映点の本来の力をふさわしい形に構築してくれる。 |
| セシリィ | ルドガーさんの時みたいに触媒となる事象に出会うと、輝きだしてオーバーレイ状態を引き起こすわ。 |
| セシリィ | その時には、一時的にだけど鏡によって構築された力を引き出して放出することができるの。 |
| セシリィ | 要は、この魔鏡で触媒を見つけられれば鏡士じゃなくてもオーバーレイが使える。元の世界と同じ力を取り戻せる。 |
| セシリィ | これって絶対役に立つと思うんだ。 |
| セシリィ | だから念のため、みんなに持ってもらって、何か変化があったら報告して欲しいの。お願いね。 |
| ユーリ | フィーは何か力の制限を強く感じてるのかもな。 |
| ベルベット | そうね。あの子は聖隷だし、あたしとは違う何かがあるのかも……。 |
| ユーリ | ……いや、案外逆かも知れないな。 |
| ベルベット | ……え ? |
| ライフィセット | ねえ魔鏡の話 ?もしかしてベルベット、魔鏡が光ったの ! ? |
| ベルベット | 何 ? そんなに慌てて。違うわよ。 |
| ライフィセット | そう、よかった……。 |
| ベルベット | よかったって、何よそれ。 |
| ライフィセット | だってその魔鏡、前と同じ能力が戻るって。もしかしたらベルベットも……その……具現化前みたいに……。 |
| ベルベット | ―― ! あんたまさか、あたしの穢れや味覚のことが心配でそれでついてきたの ? |
| ライフィセット | …………。 |
| ベルベット | ……大丈夫よ。それにもしそうなったとしても、あたしは―― |
| カロル | ――エミル ! ?おーいエミルーッ ! |
| ユーリ | どうしたカロル。エミルがなんだって ? |
| カロル | 今、エミルがいたんだよ。あの道を曲がってった。 |
| レイヴン | エミル ? 見間違いじゃないの ?今回のメンバーに入ってないでしょが。 |
| カロル | ううん、この目でちゃんと見たんだ。どうしてもボクたちと行きたくて黙ってついてきちゃったのかも。 |
| ガイ | そ、それは考えにくいと思うけどな……。 |
| ユーリ | ま、とにかく探してみるか。ラピード、エミルのにおい覚えてるか ? |
| ラピード | ワン ! |
| ユーリ | よし、それじゃ頼むぜ。オレたちもその辺見てまわるぞ。 |
| Character | 5話【5-4 静かな街道 2】 |
| ベルベット | ……やっぱりいないわね。そっちはどう ? |
| ユーリ | 駄目だな。ラピードも追えてねぇ。珍しいこともあるもんだ。 |
| ラピード | クゥ~ン……。 |
| ユーリ | つか、どうやらにおい自体が見つからねえって感じだな。 |
| カロル | ……でもボク、本当に見たんだけどなあ。 |
| ラピード | ―― !ワンワンッ ! |
| ユーリ | どうした、見つけたか ? |
| ラピード | グルルルルゥ……。 |
| ユーリ | ―― !隠れろ ! なんか来るぞ ! |
| ディスト | 結果から申し上げましょう。やはりアレに決定しました。すぐに連れてきて下さい。 |
| 神官 | よろしいのですか ? |
| ディスト | 仕方がないでしょう。今の手持ちには、器となり得る鏡映点がいないのですから。 |
| 神官 | ですが、リヒター様は………。 |
| ディスト | 焔獄をつけなさい !私のつけた美しき二つ名を無下にするとは。あなた……すりつぶしますよ ! |
| 神官 | も、申し訳ありません !焔獄のリヒター様はご存じなのですか ? |
| ディスト | 奴は反対しています。ですがそんなことを言っていたら永遠に事は進みませんよ。 |
| 神官 | ……承知しました。それでは至急用意いたします。 |
| ディスト | それから連れてくる時には、くれぐれもあの天使の坊やに見つからないように。いいですね ! |
| ルーク | ……なんだよディストの奴、どこにでも現れやがって。1匹見たら100匹いるってか ? |
| ガイ | ゴキブリかよ。まぁ、似たようなもんか。 |
| ガイ | ――それよりもあいつ器の鏡映点がどうとか言ってたな。 |
| ベルベット | 気分のいい話じゃなさそうね。で、どうすんの。聞き出すなら今のうちだけど。 |
| ライフィセット | でもここで襲ったら、帝都全部が警戒体制に入っちゃうかもしれないよ。 |
| ベルベット | そ、それもそうね。 |
| カロル | エミルも気になるけど……。これ以上探すのは難しいよね。寄り道させちゃってごめん。 |
| カロル | ディストたちに気づかれる前に帝都内に入ろう。ロゼの紹介状、無駄にできないからね。 |
| ベルベット | ……まさか、フィーにいさめられるなんてね。 |
| レイヴン | カロル君といい、少年の成長ってのはあっという間だからさ。おっさんが年とっちゃうわけだわ。 |
| ユーリ | なにおっさん通り越してじいさんみたいなこと言ってんだよ。老けこむには、まだ早いぜ ? |
| レイヴン | おっさんの老化もあっという間なの !だから大事にして ! |
| ベルベット | ……本当、男の子っていつの間にか自分で色々考えて、動いて…… |
| ベルベット | ……ラフィ……。 |
| Character | 6話【5-6 帝都イ・ラプセル 1】 |
| ルーク | マジかよ……。 |
| ガイ | 驚いたな……。 |
| アスター | ようこそいらっしゃいました。ロゼさんの手紙、拝見しましたよ。 |
| アスター | 私も最近帝都に移動してきたもので、セキレイの羽とは持ちつ持たれつやらせてもらってます。イヒヒヒヒ。 |
| ルーク | 名前を聞いてまさかとは思ったけど、ケセドニアの商人のアスターじゃないか。笑いかたまで一緒だぜ。 |
| ルーク | ……でもこの様子だと、俺たちのことは覚えてないみたいだな。 |
| ガイ | ああ、鏡映点じゃない。ロイドの知り合いのポールって子と同じ、俺たちの記憶をもとに具現化された、この世界の住人だ。 |
| ルーク | やっぱこういうのって……複雑だな。 |
| カロル | ね、ねぇ……この人、信用して大丈夫 ? |
| ユーリ | ルーク、ガイ。大丈夫なんだろ ? |
| ルーク | あ、うん。いい人だよ。しゃべり方は怪しいけど。 |
| アスター | それで宮殿内の事情が知りたいそうですね。確かに当方、ありがたいことに、宮殿からの取引を頂いてますよ。なにしろこれから―― |
| ? ? ? | アスター様、少々よろしいでしょうか。 |
| アスター | おや、丁度いい。私の用心棒が戻ったようですね。ヒヒヒ。――どうぞ、お入りなさい。 |
| レイヴン | ―― ! ! これはまたっ ! ! |
| ? ? ? | 失礼します。ただいま戻りました。………彼らはいったい ? |
| アスター | セキレイの羽の紹介でいらっしゃったんですよ。 |
| アスター | 彼女はヒルダ。私の用心棒をお願いしているんです。大した腕でしてね。ヒヒヒヒヒ。 |
| レイヴン | なんちゅーうらやましい……。あんな美人が用心棒だなんて。 |
| レイヴン | ――よろしくヒルダさん。私の名はレイヴン。どうぞお見知りおきを。 |
| ユーリ | 伸びてんぞ。鼻の下。 |
| ヒルダ | ……セキレイの羽。新たな市場の開拓ルートにもひと役買ってるっていう、あの ? |
| アスター | ええ。おかげで仕入れが楽になってます。そのほかにも色々な面でね。ヒヒヒ。それで、その市場の方はどうでした ? |
| ヒルダ | はい。帝国と救世軍との衝突の影響で足止めされた商人たちが多数出ています。 |
| ヒルダ | 新たな輸送路の安全を確保して欲しいと騎士団のフレンに願い出ている商人もいるようです。 |
| ユーリ | フレンだと ? おい、あんた。フレンのことで知ってることがあったら教えてくんねえか。 |
| ヒルダ | 知ってることって言っても、兵士や商人たちの間での評判程度よ。 |
| ユーリ | かまわねえ。なんでもいい。 |
| ヒルダ | フレンは騎士団長という地位にもかかわらず民にも気さくで優しい。だからさっきの話の商人たちも、フレンを名指しで願い出てる。 |
| ヒルダ | もちろん騎士としても有能。再建された帝国内の混乱を抑えて指揮をとってるのも彼のようね。 |
| カロル | なんか、どこにいてもフレンはフレンだね。 |
| ユーリ | ……他には ? |
| ヒルダ | そうね……。兵士たちの話だと、ナーザ将軍とは親友なんですって。二人そろうと阿吽の呼吸だって話よ。 |
| ユーリ | ……へぇ。 |
| ヒルダ | しかも皇女メルクリア様のお気に入りで、暇さえあれば呼び出されてるとか……、 |
| ヒルダ | まあ何にしろ、今の帝国には欠かせない重要人物ってことね。もうこれくらいでいい ? |
| ユーリ | ……ああ、十分だ。 |
| ヒルダ | それでアスター様。本日の芙蓉離宮への納品ですが、自ら出向くのですか ?でしたら私もお供しますが。 |
| カロル | 芙蓉離宮って ? |
| アスター | メルクリア様のいらっしゃる離宮ですよ。これから伺う予定になっておりまして。 |
| ユーリ | ……なあ、その仕事にオレたちを連れてっちゃくれねえか。 |
| ヒルダ | 連れてくって、いきなりなんなの ? |
| ユーリ | なに、ちょいと騎士団長様に会いたくてね。あいつ、離宮にもしょっちゅう出入りしてんだろ ? |
| ヒルダ | ……あんた、それはアスター様に手引きをしろってこと ? |
| アスター | かまいません。協力しましょう。もともとロゼさんの手紙にも、便宜を図ってくれと書いてありましたから。 |
| ベルベット | ずいぶん親切ね。セキレイの羽とどうこうだけで、負えるリスクじゃないと思うけど。何かあんたたちに得でもあるわけ ? |
| アスター | まあ実の所、今回あなた方に協力するのは、我々としても帝国中枢の動きが気になるからでしてね。 |
| アスター | 後でロゼさんを通じてでも情報を頂くつもりでいます。 |
| ベルベット | なるほどね。手引きする代わりに、危ない橋はこっちが渡るってこと。ちゃっかりしてるわ。 |
| アスター | 私は商人です。時勢を見極め、いくつもの道を用意しなければ、大きな仕事はできませんからね。イヒヒヒ。 |
| アスター | そういうわけですから、ヒルダ、彼らを荷運びの使用人として一緒に離宮へ連れていって下さい。 |
| ヒルダ | わかりました。それじゃあんたたち、すぐに準備してちょうだい。 |
| ユーリ | 悪いな、無理言って。代わりといっちゃなんだが、相応の情報はつかんでくるからさ。 |
| ヒルダ | ……雇い主であるアスター様に従ってるだけよ。慣れあう気はないからそのつもりでいて。 |
| Character | 7話【5-8 芙蓉離宮 1】 |
| 兵士 | ――いいぞ、通れ ! |
| ヒルダ | どうも、毎度ご贔屓に。 |
| ヒルダ | ――ここならひと息つけるわよ。とりあえず離宮内に入るだけは入ったから。 |
| カロル | 確かに通用門は通れたけど……ここはどこ ? |
| ヒルダ | 離れの貯蔵庫。離宮の内殿は向かいの建物よ。 |
| ベルベット | ……やっぱり、あっちは見張りがいる。騒がれるとやっかいね。 |
| レイヴン | あ~あ、女の子だったら、おっさんのテクでメロンメロンの一発通過なのに。 |
| カロル | レイヴンが女の人に近寄ったら余計騒がれちゃうんじゃない ?見るからに怪しいし。 |
| レイヴン | にゃにおう ! ?俺様の魅力にかかればだなあ ! |
| ヒルダ | ……まったく、マオとティトレイを見てるみたい。 |
| ヒルダ | 仕方ないわね。私が何とかするから、合図したら向かいの建物に走って。 |
| ユーリ | あんたは大丈夫なのか ? |
| ヒルダ | 適当にやるわよ。それよりも、あんたらがこんな所で騒ぎを起こしたら、アスター様に迷惑がかかる。だからさっさと行って。 |
| ユーリ | そうか、恩に着るよ。頼んだぜ。 |
| ヒルダ | ――ねえ、そこの兵士さん。納品予定のこのカードなんだけど、注文票の数と――あっ、ああぁ ! |
| 兵士 | おい、こんな所に変なカードをばらまくな。さっさと拾え。 |
| ヒルダ | これはメルクリア様へのお届けものよ ?一枚でもなくしたら、一緒にいたあんただって責任が―― |
| 兵士 | チッ……仕方ない。 |
| ヒルダ | ――― ! |
| ユーリ | 今だ、行くぞ ! |
| 兵士 | ほら、これで全部か ? |
| ヒルダ | ええ。ありがとう。……あら、一枚足りない。 |
| 兵士 | ああ、ここにもう一枚あったぞ。……まったく世話かけさせてくれる。納品のことなら担当の奴に聞いてくれ。 |
| ヒルダ | ―― !このカード……月の正位置……。 |
| 兵士 | なにか言ったか ? |
| ヒルダ | いえ、なんでもないわ……。 |
| ガイ | で、ここからどう探りを入れるんだ ? |
| ベルベット | 手っ取り早く、そこらの奴を捕まえて―― |
| ? ? ? | まだ見つからないのか ! ? |
| ルーク | ヤベェ ! もうバレたのか ! ?隠れる所は―― |
| カロル | みんな、この部屋入れるよ !誰もいない ! |
| 兵士 | 申し訳ありません、リヒター様 !いまだ行方が知れないままです。 |
| リヒター | もっと人数を増やして捜せ !カレイドスコープに配備されてる騎士団もアステル捜索に参加するよう伝えろ ! |
| カロル | ……ここの兵士、ボクたちじゃなくてアステルって人を探してるみたいだね。 |
| ルーク | それよりもさ、今の話だとこの離宮にカレイドスコープがあるってことになるんじゃねえか ? |
| ガイ | カレイドスコープ……。セールンドで壊れたものとは別ってことだよな。っていうと……。 |
| ガイ | ファントムの残したカレイドスコープか !チェスターが持ってきた設計図の。 |
| ライフィセット | そうだよ ! ファントムと戦ってる時に、新たな世界は、自分のカレイドスコープで作るって言ってたから。 |
| レイヴン | そうだったそうだった !しかも、俺様たちにはわからない場所にあるって得意気にさ。 |
| カロル | その隠し場所がここだったのか。偶然わかっちゃってボクたちラッキーだね ! |
| ベルベット | ……なによ。何で今さらファントムの……冗談じゃないわ ! |
| ベルベット | そんなものが出て来たら、またあの復讐鬼と出会う可能性だって……。 |
| ライフィセット | ベルベット……大丈夫。どんな時だって、僕は一緒にいるから。 |
| ベルベット | ……フィー。 |
| ユーリ | ま、何にしろこれで土産ができた。それに騎士団がいるってのもわかったしな。後の情報は――やるか ? ベルベット。 |
| ベルベット | あたしは最初からそう言ってるけど。 |
| カロル | え……一体なんのこと ? |
| ユーリ | そこらの兵士をとっ捕まえて、騎士団やカレイドスコープの場所を聞き出すんだよ。ほら、行くぜ ! |
| Character | 8話【5-10 地下研究所 1】 |
| ジェイド | どうしました、ミリーナ。ナーザ将軍の件で、私たちに話があるとのことですが。 |
| リフィル | イクスとそっくりの彼のことね。何か手がかりでもあった ? |
| ミリーナ | はい……。ずっと気になっていたんです。ナーザの……イクスが少し大人びたようなあの顔立ち、どこか懐かしい気がするって。 |
| ミリーナ | それで私の中にある、ゲフィオンの記憶をたどってみました。 |
| ミリーナ | 思い当たったのは、最初のイクスが亡くなった日のことです。 |
| リフィル | 最初のイクス……。一人目、とでも呼べばいいのかしらね。 |
| ミリーナ | イクスは私――ゲフィオンをビフレストの兵士から守って命を落としました。当時のイクスは22才です。 |
| ミリーナ | その時のイクスの顔だちは、ナーザ将軍と……とても良く似ています。 |
| ジェイド | 22才のイクスですか。そう言えば、ナーザ将軍と会った者はみな口々に、イクスよりも少々大人びて見えたと言ってますね。 |
| ミリーナ | はい。私もそう見えました。 |
| リフィル | イクスは既に二回、具現化されているわ。現時点での理論上、三度目の具現化は難しいはず。 |
| リフィル | ……まさかとは思うけど、過去からではなく不確定な未来をアニマサーチして具現化したなんてことは……。 |
| ミリーナ | ごめんなさい。言い遅れました。そのことなんですけど……。 |
| ミリーナ | ゲフィオンを守って死んだイクスはその時に右腕を負傷しました。 |
| ミリーナ | 私の見間違いでなければ、ナーザ将軍の右腕は……義手なんです。 |
| ジェイド | 22才のイクスが、腕に負傷した状態……。 |
| ジェイド | つまり、あのナーザという男は一人目のイクスが死んだ瞬間の状態とほぼ同じである――と。 |
| ミリーナ | ……はい。 |
| ジェイド | ならば可能性として高いのはナーザ将軍は一人目のイクスその人、ということでしょうね。 |
| ジェイド | しかし理論上、具現化ではあり得ない。ならば―― |
| ジェイド | 当時のイクスの遺体を、何らかの理由でビフレストが保存しており、今利用している……そんなところでしょうか。 |
| ミリーナ | ……死体を保存、ですか。 |
| リフィル | ミリーナ、どうかした ? |
| ミリーナ | いえ、その……少し引っかかって……。 |
| ミリーナ | イクスが亡くなった直後のゲフィオンの記憶が、とても曖昧で……。 |
| ミリーナ | 何度思い返しても、イクスの体がまるでカレイドスコープのせいで光の砂になって消えたように見えるんです。 |
| ミリーナ | あの時点で、カレイドスコープは開発されていません。そんなことはありえない。なのに……。 |
| リフィル | 心理的な衝撃が、ゲフィオンの記憶を混乱させてしまったのかしら。 |
| リフィル | 自分をかばったせいで亡くなったイクスと自分が開発したカレイドスコープで多くの人々を殺めた自責の念。 |
| リフィル | それが交錯してしまった結果――というのは考えすぎかしらね。 |
| ミリーナ | ……すみません。大事なことなのにはっきりしなくて。 |
| ジェイド | ……まだ再考の余地があるようですね。ですが、ナーザの件はイクスの死体であることを前提に考えていきましょう。 |
| ジェイド | 正直な所、結論が出ないうちにこういったことを口にするのは少々不本意ですが……。 |
| ジェイド | あなたにとっても、私たちにとってもイクスとナーザの関係に対して心構えはしておかねばなりませんから。 |
| リフィル | ああ……そういうことなのね。可能性の段階で言葉にするなんて珍しいと思ったのだけれど、少し見直したわ。 |
| ジェイド | おやおや、なんのことでしょう。 |
| セシリィ | ミリーナ、ここにいたのね。相談したい事があるんだけど――……お話し中 ? |
| ミリーナ | あ、大丈夫だけど、ちょっとだけ待っててもらえる ? |
| ジェイド | いえ、セシリィにも聞いてもらいましょう。彼女はビフレストの魔鏡技術を研究していたのですから。 |
| セシリィ | え…… ? |
| セシリィ | そう。ナーザ将軍はイクスの……。 |
| リフィル | ええ。現状とミリーナの記憶を比較すると可能性は高いわ。 |
| セシリィ | ……遺体を保存していたことはあり得るかも知れない。 |
| ミリーナ | え ! ? どうしてそう思うの ? |
| セシリィ | ビフレストがオーデンセに攻め入ったのはセールンドにしかない魔鏡技術を奪うためと聞いているから……。 |
| ミリーナ | そうだったの ? ……ごめんなさい。私、ゲフィオンとしての記憶が所々曖昧で。 |
| ミリーナ | ゲフィオンはビフレストが攻め入った理由を知っていそうだと思って、記憶を探ってみたんだけど、よくわからなくて……。 |
| セシリィ | あ、ううん。あの、えっと、私も帝国で研究させられてたときにそんな話をちょっと……。 |
| ジェイド | ………………。 |
| リフィル | ……セシリィが言いたいのは、ビフレストがセールンド側の魔鏡技術を探る手がかりに鏡士であるイクスの遺体を持ち帰った―― |
| リフィル | そういうことよね。 |
| セシリィ | はい。もしイクスの遺体であることが間違いないなら、ナーザはリビングドールの最初の被験者なんじゃないかな。 |
| セシリィ | メルクリアなら……やりそうな気がする。 |
| ミリーナ | リビングドール……。空の体に別のアニマを入れる……。 |
| ジェイド | なるほど。一人目のイクスの死体に別のアニマが入りこんだ存在。それがナーザの正体と見るべきでしょうね。 |
| リフィル | そういえば、あなたは確かメルクリアに会ったことがあるのよね。 |
| セシリィ | はい……。あの方――あの人はとても無邪気な人で、無邪気だから残酷で。それに鏡士のことがとても好きなんです。 |
| セシリィ | ビフレストの皇族はみんな鏡士だし……。 |
| ジェイド | 確か終戦後、死の砂嵐が発生してから二人目のイクスとミリーナを具現化するまで10年ほどの時間を費やしたそうですね。 |
| ジェイド | ということは、メルクリアは現在12、3歳ぐらいでしょうか ? |
| セシリィ | それぐらいだと思います……。 |
| ジェイド | その年齢ではいくら早熟でも、大人を従えるのは難しい。メルクリアの背後にはデミトリアスがいるのは間違いないですね。 |
| ミリーナ | ……メルクリア。終戦後に人質としてセールンドに来たなら、ゲフィオンは知っている筈ですよね。 |
| ミリーナ | でもそれに関しても記憶がないんです。どうしてなのかしら。 |
| リフィル | あなたの中のゲフィオンの記憶に関しても調査が必要なのかも知れないわね。 |
| ミリーナ | ……はい。 |
| Character | 9話【5-12 地下研究室 1】 |
| ユーリ | ――おし、ここだな。確かにでけえ研究施設がある。 |
| ベルベット | あの兵士、嘘は言ってなかったみたいね。 |
| ルーク | そりゃこの二人にあの勢いで凄まれたら誰だって……。 |
| ガイ | ……なあ、少し静かすぎないか ?アステルって奴の捜索でここは手薄になってると考えても……。 |
| ユーリ | だな。カレイドスコープらしきものも見当たらねえし……ちと探ってみるか。できるだけ静かにな。 |
| | ――ッ ! |
| ユーリ | どうした、あっちが気になるか ? |
| ? ? ? | ――ない――それでも――。 |
| ユーリ | 話し声……、この奥だ。 |
| ガイ | 行ってみよう。みんな、見つからないように気を付けろよ。 |
| ユーリ | ―― ! ! |
| カロル | フレンだ…… ! |
| ベルベット | 話をしているのがナーザみたいね。聞いたとおり、イクスそっくり。 |
| ライフィセット | うん。やっぱり少し大人っぽいね。 |
| ナーザ | ――今のままリビングドールを増やしても死んだビフレスト国民を甦らせることは難しいだろうな。 |
| フレン ? | はい。私もそれを懸念しています。 |
| フレン ? | 確かにリチャードとラムダはいいひらめきをくれましたが、ラムダのような特性をアニムス粒子に持たせるのは難しい。 |
| フレン ? | 私はこの鏡映点の体を使うことでしかアニムス粒子を取り込めませんでしたから。 |
| ユーリ | この体…… ? |
| ナーザ | ……俺など、すでに死んだ体だからな。 |
| フレン ? | わかっています。だからこそ、この鏡映点のアニマは―― |
| ユーリ | なるほどね。……ざけやがって。 |
| レイヴン | ……落ち着け青年。らしくないよ。 |
| ユーリ | ……わりぃな、おっさん。そいつぁ無理ってもんだ ! |
| レイヴン | おい、ユーリ !チッ――仕方ねえなぁ、あのあんちゃんは ! |
| | ワウッ ! ! |
| カロル | ちょ、待ってよ ! |
| ガイ | まずい、俺たちも出るぞ ! |
| ルーク | あいつ、なにやってんだよ ! |
| ライフィセット | ユーリ、いつも冷静そうなのにあんなに怒って……。 |
| ベルベット | ……大事な人が踏みにじられれば、ああなるわよ。 |
| ナーザ | ――貴様はっ ! ? |
| フレン ? | あなたは後ろへ―― ! |
| フレン ? | 何者だ ! どこから入った ! |
| ユーリ | てめえこそ何者だよ。少なくともオレのダチのフレンじゃねえな。 |
| フレン ? | ……そうか、お前はこの体の……。 |
| ユーリ | てめえらがなに企んでんのかは後でじっくり教えてもらうが……今はこっちのが先だ。 |
| ユーリ | お前、フレンに取り憑いてんだろ ?とっとと出ていけ。 |
| フレン ? | 取り憑いている ?それは訂正させて欲しいな。私は―― |
| ユーリ | どうでもいいんだよ、んなことは !嫌なら力づくで返してもらうぜ ! |
| フレン ? | くっ…… ! |
| ユーリ | 他人の体乗っ取って好き勝手か ?どんだけ偉いんだよてめえらは。 |
| ユーリ | そいつなら……その体の持ち主ならな、自分の傲慢な鼻っ柱へし折って止めてくれっていうはずだぜ ! |
| フレン ? | 何を…… ! |
| カロル | ユーリの魔鏡が光ってる ! ! |
| ルーク | セシリィが言ってたのってこれのことか ! ? |
| ナーザ | なんだこの異様なアニマは…… !おい、下がれバルド ! |
| バルド | ―― ! ! |
| レイヴン | ……おいおい、なによこの光魔、でかすぎでしょ ! ?んなサービスいらないっての ! |
| ナーザ | 貴様らの相手はこいつだ ! |
| Character | 10話【5-12 地下研究室 1】 |
| カロル | ユーリのあれって、オーバーレイだよね ? |
| ルーク | みたいだな。フレン ? と剣を合わせたらすげえ光が出やがった。 |
| ナーザ | あの力……やはり浄玻璃鏡か。 |
| ユーリ | ……おい、もう一度言うぜ。その体、返せ。 |
| バルド | ……返すことはできない。 |
| バルド | この鏡映点のアニマは渡せない。メルクリア様とウォーデン様をお守りするためにも―― |
| ナーザ | バルド !ウォーデンは死んだ ! その名を呼ぶな ! |
| バルド | …………。 |
| レイヴン | ……へえ、フレンちゃんの皮かぶってるのはバルドさんか。んでそっちがウォーデン様ってことかな ? まーお偉そうなこと。 |
| レイヴン | その割には光魔の後ろにコソコソ隠れて卑怯な戦いかたしてるじゃない。いやはや、ご身分の程が知れるねぇ。 |
| バルド | 不敬な ! ビフレスト皇国皇太子にむかってその口のきき方は―― ! |
| ナーザ | バルド、これは挑発だ。乗るな。 |
| バルド | ……申し訳ありません。 |
| レイヴン | なるほど。そしてお前さんは皇子様の忠実な部下ってわけね。どおりで動きも騎士然としてるわけだわ。 |
| ナーザ | 貴様……大した口の回りようだが、過ぎれば災いを呼ぶぞ。 |
| ユーリ | そりゃ自分らのことだろ ?素直にベラベラしゃべってくれてよ。その調子でフレンのことも―― |
| 兵士 | ナーザ様 ! フレン様 !いったいこの騒ぎは ! ? |
| ナーザ | こいつらは侵入者だ。後は任せる。 |
| 兵士 | はっ ! 貴様ら、大人しくしろ ! |
| ユーリ | おい、てめえ待ちやがれ !話はまだ終わってねぇ ! |
| ナーザ | 来いフレン。ゲートを閉じるぞ。 |
| ルーク | あいつ逃げるぞ !早く――くそっ、お前ら邪魔すんなっての ! |
| ベルベット | この程度、すぐに―― ! |
| ナーザ | ……雑兵では足止めには弱いか。ならば。 |
| カロル | また光魔 ! |
| ナーザ | 物足りないようだからな。置き土産だ。――早くしろ、フレン。 |
| バルド | わかったよナーザ。今行く。 |
| ユーリ | クソッ、逃がすか !さっさと片付けんぞ ! |
| Character | 11話【5-15 地下研究室 4】 |
| 兵士 | もっと援軍を呼べ ! |
| ユーリ | チッ、次から次へと……。てめえら、どきやがれっ ! |
| ガイ | ユーリ、ライフィセットが術で援護する !無茶しないで一旦下がれ ! |
| ユーリ | 無茶なんかしてねえよ。すぐに終わらせるさ ! |
| ガイ | ユーリ ! |
| ユーリ | こいつで――最後だ ! |
| ライフィセット | すごい、本当にすぐ終わっちゃった !……だけど……。 |
| カロル | ……ユーリ、今のは駄目だよ。 |
| ユーリ | 何がだ ?そんなことより、さっさと―― |
| カロル | そんなことよりって……ユーリのバカッ ! |
| ユーリ | カロル…… ? |
| カロル | さっきユーリが飛び出した時、レイヴンは止めたんだよ ! ? |
| カロル | 今だってガイが戦況を見てくれてた。なのに……。ユーリ、なんで一人で戦ってるのさ ! |
| カロル | 一人はギルドのために、ギルドは一人のために――でしょ ?ユーリは今、一人じゃないんだ ! |
| ユーリ | ―――― ! |
| カロル | フレンのことが心配なのもわかってる。でもさ……でも、こんなユーリ……。 |
| ユーリ | ……ったく、情けねぇ。 |
| カロル | ……え ? |
| ユーリ | すまねぇ。頭に血がのぼってた。おかげで目が覚めたぜ。 |
| ユーリ | ありがとな、首領。 |
| カロル | ユーリ…… ! |
| レイヴン | 首領の面目躍如だな。少年 !……ホント、おっさん増々年とっちゃうよ。 |
| ルーク | ……。 |
| ガイ | ルーク、どうした ? |
| ルーク | 俺、イクスと会ったばっかの時に、似たようなこと言ったことがあってさ。 |
| ルーク | 「一人じゃない。仲間を信じろ」って。それ思い出して……少し懐かしくなった。 |
| ガイ | お前が ?そうか……。なんかちょっと感慨深いな。 |
| ルーク | なんだよ、それ。 |
| ガイ | なら、その言葉を裏切らないためにも、早くイクスを助けないとな !――ユーリ、行けるか ? |
| ユーリ | ああ。みんなにも迷惑かけたな。もう大丈夫だ。ラピード、奴らを追ってくれ ! |
| ラピード | ワンッ ! ! |
| ユーリ | ……しかしあの二人、思ったよりもヤバいこと考えてんな。死んだビフレスト国民を甦らせるだとよ。 |
| レイヴン | ったく、お国の再興どころか、過去のビフレスト丸ごとって感じだね。ありゃ。 |
| ガイ | 死者を復活させて、滅びた国を甦らせるか。……バカげてる。 |
| ルーク | ……ガイ。 |
| ユーリ | しかもあいつら、その計画に生きてる人間を使いやがって。……くそっ ! |
| カロル | ……フレン、元にもどるよね ? |
| ユーリ | たりめーだ ! ここでフレンに戻せねえならあいつを捕まえてアジトに連れ帰る。 |
| ユーリ | そこでゆっくり、バルドってのを追い出してやるさ。 |
| レイヴン | 追い出す、か。……なあ青年、あいつらフレンのアニマがどうとか言ってたよね。ちょいと気にならない ? |
| ユーリ | フレンのアニマ……。 |
| ラピード | ―― !グルルルルッ……。 |
| ミトス | ……へぇ、なんでこんな所にいるの ?お前たちが入ってきていい場所じゃないんだけど。 |
| ベルベット | なによあんた。そこどきなさい。怪我してもしらないわよ。 |
| ユーリ | 待て、こいつ……。そうかお前、ミトスだろ ?金髪の妙に落ち着いたガキ。 |
| ミトス | ――だから何 ?黒髪の短気な劣悪種。 |
| ユーリ | ナーザたちはどこに行った。こっちに来たはずだぜ。 |
| ミトス | 追いかけたって無駄だよ。どうせ会えない場所にいるから。それじゃあね。 |
| ルーク | じゃあねって……おい !ナーザの居場所を言ってけよ ! |
| ミトス | ――うるさいよ。出来損ないのお人形さん。こっちは急いでるんだ。見逃してあげるから、後は好きにすれば。 |
| ディスト | おやおやおやおや~ ?今なんと言いましたか ? 飛天のミトス。 |
| ミトス | 空飛ぶゾウリムシか。 |
| ディスト | キィィィィィィィ ! !何なんですか、その言い種は ! |
| ディスト | 大体、忍び込んだ汚らしいドブネズミに、後は好きにしろですって ?偉大なる四幻将の言葉とは思えませんねえ。 |
| ディスト | このことは早速、メルクリアに報告をしなければ。さて、どんなお仕置きが下るでしょうねぇ。 |
| ディスト | あなたの姉上に。 |
| ミトス | ――劣悪種にネズミ退治を命じられるとはね。 |
| ユーリ | ――来るぞ ! |
| Character | 12話【5-15 地下研究室 4】 |
| ミトス | ……あーあ、負けちゃった。強いね君たち。これじゃボクは引き下がるしかないな。 |
| ディスト | お待ちなさい ! あなた手を抜きましたね ? |
| ミトス | 文句があるなら自分でやれば。 |
| ディスト | そういう問題じゃありません ! |
| ミトス | ――そんなことよりさっきお前、劣悪種の分際で姉さまのことを口にしたな。 |
| ディスト | ……はぁ ? |
| ミトス | さっきのが手抜きかどうか――自分で確かめたら。 |
| ディスト | え、ちょ、ミトス――あなた ! ! |
| ミトス | ――次元斬 ! ! |
| ディスト | ピギャアアアアアッ ! ! |
| ミトス | 何なら、永遠に寝てればいいよゾウリムシさん。 |
| ベルベット | どうなってるのよ。仲間割れ ? |
| ミトス | 仲間 ? 冗談でしょ。一緒にしないでくれる ? |
| ユーリ | 仲間じゃないってのは、このイカれた博士のことか ?それともナーザのほうかね。 |
| ユーリ | ……お前もビフレスト国民を甦らせようとしているのか ? |
| ミトス | ビフレストね。興味はないけど邪魔するつもりもなかったよ。……少なくとも今までは。 |
| ユーリ | おまえ……。 |
| ミトス | ボクは急いでるんだって言ったよね。これ以上時間をとるなら今度は――本気でやるよ ? |
| ユーリ | ……わかった、ここで手打ちだ。 |
| カロル | 行っちゃった……。でもこれで自由に捜せるんじゃない ? |
| ユーリ | いや、やめとこう。ミトスの奴、ナーザたちは会えない場所にいるって言ってたからな。 |
| ユーリ | 手がかりは手に入れたんだ。これ以上は無駄足になる。 |
| カロル | 手がかりって、何かあった ? |
| ユーリ | おいおい、カロル先生、ナーザは立ち去る時に「ゲートを閉じる」って言ってたじゃねえか。 |
| ユーリ | 最近のオレたちも、しょっちゅうつかってるよな ?『ゲート』を。 |
| カロル | ――あ ! |
| ライフィセット | 仮想鏡界 !いつもカーリャがゲートを開いてくれてる ! |
| ガイ | そうか。もしも奴らが仮想鏡界を作っていたとしたら、簡単には出入りできない。 |
| カロル | ボクたちがミリーナの仮想鏡界の中で守られてるのと同じことだね。会えない場所にいるってそういう意味か。 |
| ユーリ | ま、そんなとこだろ。 |
| レイヴン | 合点がいったわ。ここまで奴ら追ってきて、どこにもカレイドスコープがないってのはなーんかおかしいと思ってたのよ。 |
| ベルベット | ってことは、カレイドスコープも仮想鏡界の中なのね ? |
| ユーリ | 仮定の話だけどな。とにかく、こうなったらオレたちじゃ手も足も出ねえ。 |
| ルーク | だから撤退……か。 |
| ガイ | 仕方ないさ。今回わかった情報をミリーナたちと共有しないと。ユーリの浄玻璃鏡の報告もあるしな。 |
| カロル | でも、ここのどこかにフレンがいるのに、帰らなきゃいけないなんて……やっぱり悔しいね。 |
| レイヴン | なに、こんだけ情報が集まったんだ。これを元手に、倍増しで取り返してやればいいだけよ。 |
| ユーリ | おっさんにしちゃ謙虚だな。倍程度で満足するとは。 |
| ユーリ | ……オレは倍じゃ足りねぇよ。その何倍、何十倍で取り返してやる。 |
| ミリーナ | …………。 |
| セシリィ | ミリーナ、大丈夫 ?イクスの話は辛かったよね。 |
| ミリーナ | ありがとう。でも大丈夫よ。それよりセシリィも相談があったのよね ?私の話を優先させちゃってごめんなさい。 |
| セシリィ | ううん、ナーザのことも気になるから、話が聞けて良かった。 |
| セシリィ | 私の相談っていうのはね、アミィのこと。なんとか治してあげたくて……。 |
| ミリーナ | ……そうね。 |
| セシリィ | だから、私の分野からも色々考えてみて、それである方法を思いついたの。 |
| ミリーナ | セシリィ、それって…… ! |
| セシリィ | ええ。もしかしたら、アミィの心を取り戻せるかもしれないわ ! |
| | to be continued |