Character1話【6-1 精霊研究所 1】
クラトス(ここは……精霊の研究施設か ? )
クラトス(帝都の芙蓉離宮の近くにこんな研究室を作っていたとは……。)
クラトス(どうりでアスガルド城でデミトリアスの姿を見かけない訳だ)
デミトリアス特異鏡映点亜種03のアニマの調査はどうなっているのかな ?
ジュニア……確かにスパーダさんのアニマには武器として生きていた痕跡が残っていました。
ジュニア前世のアニマが具現化の時のエンコードで現在のアニマと混濁しているみたいです。
リヒターもしかしたらスパーダの前世というのはリオンという奴が持っていたシャルティエと言う剣と似た存在だったのかもしれない。
リヒター正確には違うことはわかっているが武器であり人のような意思を持つという点は近いものとして扱ってもいいだろう。
ジュニアリオンさんたちの世界から、該当の技術を持っている専門家を具現化するという計画が持ち上がっています……。
クラトス(シャルティエと言うのはゼロスが話していた喋る剣のことか。何故命を持つ武器に固執するのだ……)
デミトリアスそうか……。ではリヒターとアステルが進めている精霊の研究の方を報告してもらおうか。
リヒターアステルをここへ連れてくるつもりはない。報告は俺がする。
デミトリアス警戒されているようだが私はアステルに何もしないよ。
デミトリアスどうにかするつもりならとっくに捕らえている。機会はいくらでもあるからね。
デミトリアス何しろ彼はきみの目を盗んでよく出歩いているそうじゃないか。
デミトリアスこの間も大変な剣幕でアステルを捜していたらしいね。
リヒター……お前はそうでもメルクリアは違う。貴様はメルクリアに甘すぎる。
リヒター俺はアステルをアミィのようにしたくはない。
デミトリアスそれを言われると心が痛むよ。まぁ、その話は別の機会にしようか。
デミトリアス虚無の保護のためには太陽神ダーナと精霊の力が必要だ。君たちの研究には期待をしているんだよ。
デミトリアスダーナを降ろす計画にも悉く失敗している。ディストは妙なこだわりも強い。ダーナの巫女を見つけた方が早いと思うんだよ。
デミトリアスダーナの巫女こそダーナの器にもっとも適する筈だからね。
リヒター俺とアステルが見つけた文献にはこう書かれていた。
リヒターアイフリードが精霊の封印地なる場所でオリジンと共にダーナの巫女を守っているのだと。
リヒター場所の特定はまだだが簡単に行ける場所ではないだろう。死の砂嵐で消滅している可能性もある。
デミトリアスいや、精霊のいる場所に限ってそれはない。精霊住まう場所が崩壊すれば、この世界は完全に虚無に飲まれているだろう。
リヒターもしまだ精霊の封印地が存在しているなら貴様がサレとハスタに命じて回収に行かせた例の鏡映点が役に立つだろう。
サレ呼んだかな、リヒター君。
ハスタ見つけたポン。空っぽのマクスウェルちん !
クラトス(空のマクスウェル…… ? この世界のマクスウェルはまだ目覚めていないがロイドたちの元にいたミラのことか ? )
クラトス(いや、しかし『空』というのは……)
リヒター……こいつらが戻ったなら、俺は失礼する。
サレ嫌われたもんだね。僕はジェイドジェイドとうるさいあの鼻たれトカゲよりキミの方がマシだけれど。
アスガルド兵士大変です ! 四幻将のミトス様が死神ディストの研究所で暴れて、手がつけられません !
アスガルド兵士ディストは重傷、シング様も負傷しカイウス様ですら近づけない状態です !
クラトス(――ミトスが暴れている ! ? )
ハスタ何ィ ! 血沸き肉躍る饗宴の宴だと……オレっちも参加させろぃ !
サレ僕が殺してこようか ?
デミトリアスやめておく方がいいね。それに君たちにはマクスウェルの抜け殻の件を聞きたい。リヒターならミトスを止められるだろう ?
リヒター……分からんが、ここにいるよりはマシだ。俺が行く。
クラトス(そろそろマークたちと落ち合う時間だがミトスを放っておくことはできぬな。……リヒターを追跡させてもらおう)

Character2話【6-2 精霊研究所 2】
ゼロスあのおっさんまだ合流地点に戻ってこないのかよ ! ?
マークおいおい、ゼロスさんよ。あんた、クラトスにはあたりがきついな。あの人、いい人じゃねぇか。
ゼロスはー。お前もか、マーくんよ。あいつホント受けがいいな、むかつくわー。
ゼロスク~ル~とか言われてるけどありゃただの人でなしだっつーの !
シンクへぇ……。
ゼロスあ、シンク ! ? てめぇ、笑ったな ! ?
シンクそりゃ嗤うでしょ。アンタのそれは単なる甘えだからね。パパが恋しいのかい、赤毛の神子様。
ゼロス………………。
マークシンク。そうやって的確に人の傷抉っていくのもほどほどにしてくれや。
マークゼロス、悪かったな。子供は加減をしらねぇんだよ。
ゼロス……いや、俺さまもまだまだだわ。殆ど面識のないがきんちょに痛いとこ突かれてマジになっちまうとは。
フィリップ楽しそうなところ失礼するよ。
ゼロス楽しい ! ?俺さまフィル君の感覚疑ってもいい ?
フィリップごめんごめん。病人の経過を共有しようと思って。
シンク死に損ないのジジイとぴくりとも動かない眠り姫のことか。
フィリップジジイなんて言葉は良くないよ、シンク。ローエンさんはだいぶ安定してきた。
フィリップもうすぐ起きられると思うけれど何しろ特異鏡映点だからね。慎重に経過を見る必要がある。
フィリップそれからコハクは……正直かなり危険だね。
ゼロスおいおいおいおい、じーさんはともかく女の子は助けてやってくれよ~ !
マークお前ら、お年寄りは大事にしろって……。で、フィル。どういうことなんだよ。容体は安定してるように見えたけどな。
フィリップ彼女の症状は鏡士にまれに起こるある疾患に似ていてね。気になったから魔鏡学の方向からアプローチしてみたんだ。
フィリップその結果、彼女のアニマとアニムスをつなぐコア――つまり心を失っていることがわかった。
マーク心核喪失状態か !
シンク何それ。心なんてあやふやなものどうやって観測するのさ。
マーク鏡士ってのは、心を魔鏡に映して具現化を行うんだ。そのときに一瞬心を具現化している……らしい。
マークそのあたりの原理は俺もよく分からないが……。
フィリップ鏡士が鏡精を具現化するときも心の一部を魔鏡に映して行ういわば心の具現化だからね。
フィリップでもコハクにはその心に当たる部分が存在しないんだ。
フィリップコアが存在しなければアニマとアニムス……つまり魂と記憶が分離し体が保てなくなる。非常に危険だ。
フィリップ神降ろしには心を消し去る作業が必要なのかもしれないね。
ゼロス……心が消える、か。コレットちゃんのことを思い出すな。
ゼロスマーテルを宿すために人としての感覚を失って、心まで無くしちまったらしくてな。まるで人形みたいで見てられなかったぜ。
シンク――ねぇ、神降ろしはミトスの発案の可能性があるんだったよね。
ゼロスあ ? まぁ、可能性はあるな。発想がマーテル復活にそっくりだ。
シンク――クラトスと合流しよう。次の器の鏡映点が誰かわかった。
マークどういうことだ ?
シンク前に聞いた話だと、コレットってのはミトスの姉のマーテルに近い存在だったんだろ。
ゼロスまさかマーテルが次の器だって言うのか ! ?そりゃ、ファントムが生前マーテルを具現化したらしいとは聞いてるけどよ。
ゼロスただコレットちゃんとマーテルは近い存在かもしれないがマーテルは心を失った訳じゃねぇぞ。
ゼロスむしろ心だけになっちまったからミトスが体を作ろうとしてた訳で……。
フィリップ……いや、なるほど。さすがシンクは目の付け所がいいね。
フィリップマーテルは体を失い、心だけの存在になったことがある……という事実が重要だ。
フィリップかつてのビフレストには、アニマに刻まれた過去や未来――あらゆる可能性を呼び出す浄玻璃鏡という魔鏡があったそうだ。
フィリップつまりマーテルがどの時代から具現化されていたにせよ、体と心が分離しやすい性質を内包していることになる。
フィリップ分離できるなら、話は簡単だ。
ゼロスマジかよ……。念のためクラトスに伝えるか。
ゼロスあいつから聞いた、天使の羽の痕跡を辿る方法ってのを使えば、奴が空を飛んだ時に居所がわかる筈だ。
マーク悪いな。あんたは客分なのに、こき使っちまって。
ゼロスしゃーねぇな。あの我が儘天使がロイド君に合流するのを嫌がるんだもんよ。
シンクでも文句を言いながら、アルヴィンみたいに一人であっちに合流はしないんだね。
マークそりゃ、ゼロスが意外と善人な上に意外と卑怯者だからだな。
ゼロスでひゃひゃ、よくわかってるじゃねーの。
マークとはいえ、あんたが客分なのは変わらないからな。シンク、一緒に行ってくれ。
シンク……はいはい、めんどくさ。
ゼロス何だよ、シンくん冷たいじゃん。
シンク殺すよ、バカ神子。

Character3話【6-3 芙蓉離宮】
ミトス良かった。姉さまのオゼット風邪が快復に向かってて。……姉さまがいなくなったらボク、本当にひとりぼっちになっちゃうから。
クラトス……お前は一人ではない。私もユアンもいる。
ミトスユアンは別にどうでもいいけど……。クラトスは……人間じゃない。人間はボクよりずっと早く死んじゃうんだよ ?
クラトスそうだな。確かに私はお前よりは早く死ぬだろう。だが……私が死んでも私の魂はお前に託すつもりだ。
ミトス魂 ? あはは、それって、クラトスが幽霊になってボクのそばにいてくれるってこと ?
クラトスいや、そうではない。できるものならそうしてやりたいが死後のことなど私にはわからぬ。
クラトスだが、どう生きるのかという指針を……。いや、言葉にすると陳腐だな。やめておこう。
ミトス……ううん。わかったよ。ボクの心にクラトスの生き方が残るってことだよね。
ミトスそんな風にボクを導いてくれるってことでしょ ? そうしたらボクも少しは寂しくなくなるね。
クラトスそのように導けるのかはわからぬが……。
ミトスふふ、期待してます。クラトス先生 !
クラトス(結局私はミトスを導けなかった。だが、せめてこの世界では――)
ゼロスおい、クラトス ! やっと見つけたぞ !なんでこんなところを飛んでたんだよ。捜すの大変だったんだぞ。
シンク迷子のパパを見つけられて良かったねバカ神子。
クラトス……私は神子の父親になった記憶はないが。
ゼロス奇遇だな。俺さまも息子になったおぞましい記憶はねーよ。で、何してんだよ。
クラトスすまない。少し時間をくれ。行かねばならないところがあるのだ。
ミトスそこをどけ ! !
カイウスミトス ! どうしちまったんだよ !いつものお前らしくないぞ !
ミトスいつものボク ?お前にボクの何がわかるって言うんだ !
シング……くっ。カイウス、お前だけでも逃げろ。オレは……足が……。
カイウス逃げられる訳ないだろ !
カイウスなぁ、ミトス。この世界でオレのレイモーン……獣人の姿を認めてくれたのはお前とメルクリアが最初だっただろ ! ?
カイウスそれで十分だ ! 他のことなんか知らないけどお前はいい奴だ !
ミトスいい奴だって言われて喜ぶほど子供じゃない。どかないなら殺す ! !
クラトスやめろ、ミトス !
カイウスえ…… ?
ミトス! ?
クラトスそれは無意味な剣だ。
ミトス――よくも……よくもボクの前に顔を出せたな。裏切り者の薄汚い人間 ! !
クラトスその通りだ。だが、どれだけ恨まれ憎まれても、これ以上お前にこのような愚かな剣を振るわせるつもりはない。
ミトス今更、偉そうに師匠ヅラするな !一度は見逃してあげたのに二回もボクを裏切って !
クラトスそれでも私はやり直すと決めた。それはこの異世界でも変わらぬ。
クラトス私がやるべきだったのは、お前の望みを叶えるために共に墜ちることでもお前を裏切り追い詰めることでもなかった。
クラトスお前を苦しみから救う努力をすることを私は怠っていた。
ミトス………………。
クラトス時を巻き戻せるならと何度も思った。しかしそれはできぬ。そしてここでは私もお前も単なる影にすぎぬ。
クラトスそれでも――いや、だからこそ過ちを正す機会をくれ。
ミトス……ボクは、間違ってなんていない。他人に害を与えた者は、その報いを受ける覚悟をするべきだ。
ミトスクラトスもわかってる筈だよ。自分だって仇を討った。クヴァルを殺したんだから。ロイドと一緒に。
クラトス……そうだな。私は妻を殺された復讐心を抑えられなかった。その結果、私に生まれたのは一瞬の高揚感と達成感だった。
クラトスしかしそれはすぐに消える。消えた後に残るのはむなしさだ。どれだけ手を尽くしてもアンナは……妻は戻らぬ。
ミトス……それで ? 復讐は何も生まないなんて綺麗事を言うの ?
クラトスそうだな。自らの欲望を果たした私には復讐そのものを否定することはできない。
クラトスだが、ミトス。もし復讐が許されるとしてもお前がその気持ちを向けるべき者はすでに死んだ。
クラトスお前は憎しみという感情を、マーテルを救うための免罪符にしてしまった。私もそれを認めてしまった。
クラトスすまなかった。私が間違っていた。
クラトス…………。
二人…………。
ミトス……もういい。気がそがれた。クラトス、シングを回復して。それぐらいはやってくれるでしょう。
ミトスあとゼロス、そこの仮面の奴をつれて飛んで。ボクはカイウスをクラトスはシングをつれて飛ぶ。
ミトス少し先に、帝国の連中が滅多に来ない丘があるからそこへ行く。
シンクへぇ……。案外やるね。アンタたちの痴話喧嘩の間に、帝国の伝令兵がここへ来てたこと、気づいてたんだ。
二人! ?
ゼロスまぁ、気配を消すのが下手くそな兵士だったしな。
クラトスあれはどこの部隊の兵士なのだ ?
ミトス腕章からしてリヒターだ。見逃してくれそうな気もするけど色々面倒だからね。逃げるよ。
カイウスなぁ、兵士なんてきてたか ?
シングいや、突然訳のわからない喧嘩が始まったから、全然気づかなかったよ……。

Character4話【6-3 芙蓉離宮】
シングまず、色々事情を聞く前に――ミトス。さっきのことみんなに謝れよ。
ミトス人間がボクの邪魔をするからいけないんだよ。
シング何だよその態度は !オレだけじゃなく、カイウスも大怪我するところだったんだぞ !
ミトスカイウスには、まだ手を出していなかったけどね。
ミトスそんなに腹が立つなら、その傷が癒えてから特別にボクを殴らせてあげるよ。人間がボクを殴れるなんてありがたく思ってよね。
シングふざけるな !
カイウスミトス……人間人間って差別するような言い方するなよ !
ミトス差別してるんだからいいでしょ。
ゼロスはいはい、また揉めるからそこまでにしようや。で、何があったのよ。
ミトス裏切り者のアホ神子は黙ってて。
シンクフフ……。
ゼロスそこ、笑うとこかよ、シンク ! ?
クラトス話が進まぬな。私はミトスが暴れていると聞いた。何故そんなことになった ?
シングそれはこっちが聞きたいよ。アステル――リヒターの友達にディストの様子を見るように頼まれたんだ。
シングで、カイウスと二人で来てみたらミトスがディストをボコボコに……。
ミトスお前たちが止めに入らなければあいつにとどめを刺せるところだったのに。
シンクへぇ、それは惜しいことをしたな。で、なんであの死神を殺したいのさ。まぁ、殺したくなる気持ちはわかるけど。
ミトス……あのウジ虫が姉さまに手を出したからだ。
ゼロスディストってのは、確か色々やばい研究をしてるイカレ野郎だったよな。……おい、嫌な予感がしてきたぞ。
クラトスミトス、神降ろしはお前の発案か ?
ミトス確かにボクが元の世界で進めていたことは話したよ。でも神降ろしを実行しているのはリヒターとディストだ。
ミトスボクが関わっているならマーテル姉さまを関わらせる訳がない !
シンクおっと、一足遅かったか。こっちもマーテルを次の神降ろしに使う可能性に思い当たったんだけどね。
ミトスあいつはボクを足止めしている間に姉さまを攫ったんだ。だから殺してやろうとしたのに……。
シング……ん ? 神降ろしはコハクの治療のために行ってたんだろ ? どうしてマーテルさんが巻き込まれるの ?
ミトスああ……そうだったね。もう隠すのも馬鹿馬鹿しいから話してあげるよ。シングは騙されてるんだ。
シングど、どういうことだよ。だって神降ろしは虚無に飛ばされたコハクの心を取り戻す儀式なんだろ ! ?
クラトスお前はコハクの知り合いか !
シングコハクを知ってるの ! ?コハクはオレの仲間だ !
シングメルクリアがコハクを助けてくれるって言ったから、オレは気が乗らないことも必死で我慢してきたのに……。
シングメルクリアの言ってたことは全部嘘だったのか…… ?
ミトス全部嘘……とはいえないかもね。あの通りのお嬢様だから。でも隠していることはある。
ミトス……もっともボクも同じことをされた訳だけどね。姉さまには手を出させないって約束だったのに……。
クラトスシングと言ったか。コハクは救世軍が預かっている。彼女は心を失って危険な状態にあると聞いている。
シングスピリアを失って……。そこの部分は本当なの ! ?
カイウスメルクリアの奴、どうしてこんなことを。フレンをリビングドールにしたのも信じられなかったし……。
カイウスあいつ、変わっちまったのかな。
クラトス少し整理しよう。マーテルはディストが攫ったのだったな。ディストはミトスの攻撃を受けて、その後どうした ?
ミトスあいつはカイウスたちに止められている間に変なロボットに運ばれていったよ。追いかけようとしたらこの有様だけどね。
クラトスよし、そちらは救世軍にも応援を要請して捜索にあたろう。シング、コハクは何故心を失うことになったのだ ?
シングリチャードって人が苦しんでたから助けようとしたんだ。
シングソーマでスピルリンクして、ゼロムみたいな奴を倒そうとしたんだけど、スピルリンクに問題があったのか、コハクが突然倒れて――
ゼロスなるほどなるほど……ってその説明訳わかんねーよっ !
ゼロス何も知らない人間にもわかるように説明してくれっかなー。
シングえっと、つまりオレたちはこの武器で人のスピリア――心の中に入れるんだ。
シングリチャードのスピリアの中に魔物みたいな奴がいたから、それを退治しようと思ってコハクと中に入ったんだ。
シングでも、何かがいつもと違っててコハクが倒れちゃったんだよ。
シングそのときにメルクリアが助けてくれてコハクのスピリアを取り戻してくれるって言ったんだ。
シングでもコハクはもう帝国にいないし騙されてたのなら今更ここにとどまる理由はないよ。
クラトス……もし帝国を離れるつもりがあるなら我らと協力しないか ? そしてしばらくの間帝国に留まったままで力を貸してほしい。
シンク敵の懐にいる奴は利用できるからね。
シングお前らまでオレを利用するつもりなのか ! ?
ミトスチェスターの代わりにスパイをしろってことでしょ ?
ゼロスまぁ、チェスターは俺たちじゃなくてミリーナちゃんたちからのスパイだったけどな。
カイウスオレは……力を貸すことはできないけどシングはいいんじゃないか ? シングがスパイとして動くなら、オレも協力するぞ。
カイウスルキウスとルビアのことがあるからばれない範囲でになるけど。
シング本当は今すぐコハクの傍に行きたいんだ。だから……少し考えさせてくれ。
クラトス構わぬ。無理強いするつもりはない。ただ、帝国の内情を知る人間は我らにとって大きな戦力になる。
クラトスだから利用するのではない。お互い同等の立場として協力して欲しい。
シングわかった。その言葉が信じられるのかちゃんと考えてみる。もうメルクリアの時みたいに慌てて飛びつくのは懲りたからさ。
クラトスそれから――カイウス、だったな。立場もあるだろうが、我らのことを見逃してくれるとありがたい。
クラトスそしてもしも我らで力になれることがあれば言ってくれ。どうやらお前も理由があって帝国に従わされているようだ。
カイウス……ありがとう。オレも何もしてない訳じゃないんだ。知り合いと一緒にどうにかしようって動いてる。
カイウス何かの時には……頼むよ。
クラトス……ミトス。我らのところに来ないか ?
ミトス…… !
クラトスマーテルを助けるために協力しよう。今度こそ、私もマーテルを救いたい。
ミトス――そうやっていろんな人の話を聞いて色々指示出して……。そういうとこ、昔と変わらないね。
クラトスそうだろうか……。人は成長する生き物でありながら、凝り固まった自分を捨てられぬ生き物だからな。
ミトスそうだね。だから……ボクは行けない。ボクはクラトスと一緒にはいられない。
ミトスもうクラトスはボクの師匠じゃない。部下でもない。ここは異世界だ。ボクはクラトスの支配者であることをやめたんだ。
ミトスボクに捧げられた騎士の誓いはとっくに無効だよ。それにボクももう昔のボクには戻れない。
ミトスだからボクはボクで姉さまを捜して助ける。もちろん協力はしてもいいよ。

Character5話【6-4 帝都イ・ラプセル】
キールそれじゃあ聞かせて貰おうか。セシリィが思いついたアミィを救う方法について。
セシリィ魔鏡学の方向からアプローチしてみたの。ミリーナも知ってるわよね。鏡士に起きる心核喪失現象のこと。
ミリーナええ。一応習ったことはあるわ。魔鏡によって心がエネルギー不足になって機能しなくなる現象よね。
セシリィええ。心核喪失状態になると鏡士は心の一部に変調を来すんだけど時に感情の一部を喪失したようになるの。
ジュードもしかしたら、アミィの場合は笑顔になるような感情だけが残っているってこと ?
セシリィええ。私は……魔鏡技師でしかないから鏡士のように心を覗き込むことはできないけれど、ミリーナなら……。
ミリーナ心を覗く……。それは私では無理だわ。やり方は知っているけれど人の心を覗くのは、とても高度な技なの。
ミリーナ私は今仮想鏡界を維持するので精一杯でそこまで繊細な力の制御はできないと思う。
セシリィそう……。だったらフィリップさんに協力して貰うのがいいかもしれない。
チェスターフィリップに頼めばアミィは元に戻るのか ! ?
セシリィううん。それはアミィの症状を確認する為の手段なの。治療にはソーマっていう異世界の武器が必要になると思う。
リタ何、ソーマって。武器で治療なんてできんの ?
セシリィ私も聞いた話だけど、ソーマは心の中に入れる機能があるみたいなの。
リタ何それ ! ? どういう理屈な訳 ! ?
チェスター……待てよ。ソーマって確かシングの武器じゃなかったか ?
セシリィうん。だからアミィを助けるためにはシングの力が必要不可欠なのよ。
チェスターだったらオレがシングを連れてくる !ミリーナたちは何とかして救世軍と連絡を取ってくれ。
チェスターセネルもシャーリィのことでジリジリしてるしな。
コーキスけど、救世軍と連絡を取る方法はないんですよね……。
ミリーナええ。世界中に魔鏡結晶があるから魔鏡通信が干渉を受けてしまうのよね……。
リタ通信強度を上げるように改造はしてるんだけど中々上手くいかないのよねー。
キールパスカルとリタが二人がかりでも糸口をつかめないんだ。
リタ悔しいけど、心っていうつかみ所のないものを相手にしてるから勝手が違うのよ。
カーリャミリーナさま ! 大変です !フィリップさまから魔鏡通信が来てますっ !
一同! ?
マーク――OK。ミリーナたちと落ち合う約束を付けたぞ。向こうもこっちに用事があったみたいだから丁度良かった。
フィリップ……ありがとう、マーク。これでコレットや他の鏡映点の器の素養がありそうな人たちに警告することができる。
ガロウズビクエ様……。
フィリップわかってるよ、ガロウズ。僕も気になっている。これは確認しないといけないだろうね。
マークだとよ、シャーリィ。あんた……何者なんだ ?
マークフィルもガロウズも手を焼いていた魔鏡通信の送受信機を直しちまうなんて普通の人間じゃねぇよな ?
シャーリィ ?あー……。やっぱりそうなっちゃうわよね。うん。
マークどうも不自然だったんだよな。
マーク器の鏡映点として、神降ろしの器にされていた筈なのに、自分は鏡映点じゃないなんて言い出すし。
ゼロスおーっと、俺さまたち絶妙なタイミングで戻ってきたみたいね。
ゼロス俺さまも気になってたんだよなぁ。あんた……普通じゃない。
シンクへぇ……。じゃあやっぱりリビングドールなの ? だとしたら帝国側の間者って可能性もあるよね。
クラトスシャーリィ。ここは空の上、逃げ場はない。全て話してはくれぬか ?
シャーリィ ?……色々お世話になったから恩返ししたかったんだけどそれが仇になっちゃったわね。
シャーリィ ?本当はちゃんと説明してあげたいんだけど――ちょっと無理みたい。
ゼロスどういうことだ ?
シャーリィ ?招かれざる客が来ちゃったみたいなの。ちょっと忙しくなるからこれで失礼するわね、お兄様たち♪
マークお、おい ! ? 気を失ったのか ! ?
シンク待って。シャーリィの隣に誰かいる。
? ? ?ごめんなさい。その子の体、ちょっと借りていたわ。
? ? ?心核をいじられていたから治療もしておいたわよ。これは出血大サービス。
フィリップ心核を治療した ! ?
クラトス何者だ ?
? ? ?私はヨウ・ビクエ。まだビクエ制度が続いていたのには驚いちゃったけど当代ビクエはまあまあ優秀ね。
ヨウ・ビクエこれからも頑張って。それじゃあね。
ガロウズ消えた ! ?
シンク……気配もない。転送 ?
クラトスいや、先ほどの姿は何らかの精神体だったのだろう。
クラトス存在を保つため、心をいじられていたシャーリィの体を利用していた……のではないか ?
マーク……もしそうだとしたらえらいことになるんじゃないか ?
ゼロスうん ? どういうことだ ?
フィリップヨウ・ビクエは鏡士の始祖の名前だ。正確にはヨーランド・ビクエ・オーデンセ。
フィリップつまり彼女は精霊が目覚めるためのきっかけである「ダーナの巫女」だ。
シンク……だったら、この世界はもうすぐ滅びるってことだね。
シンクダーナの巫女は、世界が滅びに直面したときに目を覚ますんだろ ?
ガロウズしかし本物……なのか ?
クラトスわからんな。大昔の人間が生きているという事例は……少なくとも私の世界ではあり得たことだ。
シャーリィ……ん……。
ゼロスおっと、シャーリィが目を覚ますぜ。
シャーリィ………… ?
ゼロスお、シャーリィちゃん、おはよう♪
シャーリィ……お、おはよう……ございます。……え ? あの……皆さんはセールンドの方ですか ?
クラトスセールンド、か。この娘が具現化され心核をいじられたのは鏡殻変動の前のことなのかも知れぬな。
シャーリィ………… ?
フィリップ僕から状況を説明しよう。きみの仲間がきみを捜しているそうだからね。

Character6話【6-6 ひとけのない草原】
ゼロス……なぁ、お前のご主人様頭はいいのに、ちょっと腰抜け過ぎない ?
ゼロスミリーナちゃんとの通信だってお前に任せてこの待ち合わせの場所でも姿を隠してよ。
ゼロスガロウズだって気まずいだろうにちゃんとここにいるんだぜ。
ガロウズそりゃまぁ気まずいが……あの時ゲフィオン様を連れ出したのはゲフィオン様との約束だったからな。
ガロウズまぁ、ビクエ様もそろそろミリーナと会った方がいいとは思うけどな。
ゼロスほれ、ガロウズもこう言ってるぜ。
マークじゃあ聞くが、あんたには逃げたくなるものが一つもないのか ?
ゼロスそりゃ逃げたいものだらけよ、俺さまは。けど、ここでミリーナちゃんと対面しないでいつ会うんだよ。
ゼロスその点見てみろクラトスをよ。
ゼロス色々気に入らねぇが、こういう時にロイドを避けないところだけは認めてやってもいいぜ。
クラトス………… !
シンク今度はパパを庇うんだね、バカ神子。
ゼロスはぁ ! ? お前大概にしとけよ ! ?
シャーリィ……あの。わたし……少しだけわかります。会わなければいけない人から逃げてしまう気持ち。
シャーリィフィリップさんもきっと本当はわかっているんじゃないでしょうか。あと少しの勇気さえあれば、きっと……。
クラトス……少しの勇気か。
ゼロスはぁ…… ! シャーリィちゃん、可愛い !健気 ! 一生懸命 !俺さま守ってあげたくなっちゃう !
マークシャーリィ、こっちに来てな。飢えた野獣の近くにいるのは危ないからよ。
ゼロス俺さまが危険な男だって ?フッ、わかってるじゃないの、マーク君。そう、俺さまは危険と色香を――
クラトス――ミリーナたちが来たようだ。
ゼロスえー ! ?俺さまこのメンバーでもこういう扱い ! ?
ミリーナマーク ! ! フィリップは ! ?
マーク察してくれると嬉しいねぇ……。
ミリーナ……そう。
マークで、話の前にこの子を引き渡す。
セネルシャーリィ ! !
シャーリィ……お兄ちゃん !
セネル良かった……無事だったんだな !
シャーリィこの人たちが助けてくれたの。
セネルありがとう。
ゼロスいいってことよ。
ロイド……クラトス。本当にクラトスなんだな。
クラトス……壮健なようだな。
ロイド……そう……け…… ?あ、いや、それよりどうして救世軍にいるんだ ?
クラトス……色々とな。
ロイド…………。
クラトス…………。
クラトス……ところでアミィを預からせてくれ。フィリップに見せる。
チェスターだったらオレも一緒に行く。アミィを一人にはさせられない。
クレス僕も行かせてもらいます。
チェスタークレス……。
クラトス構わぬだろう、マーク。
マークああ、心配するのは当然だろうからな。
ミリーナあら、そういえばセシリィは ?
ガロウズセシリィも来てるのか ! ?
コーキス――あ、隠れてる。ほら、セシリィ何恥ずかしがってるんだよ !
セシリィ……あ……。
ガロウズセシリィ ! 悪かったな、俺のせいで帝国に酷い目に遭わされたみたいで……。
セシリィ……ん、ううん。あの……お久しぶり、師匠。
ガロウズ師匠 ! ? お前いつから俺のことそんな風に呼ぶようになったんだ ! ?
セシリィえ ? あ、だ、だって師匠だから……。でも……ふふ……。ガロウズ……師匠、老けたね。
ガロウズはぁぁぁ ! ?
セシリィご、ごめんなさい。あの、これ、通信でミリーナが話していた、ソーマを利用した心核へのアプローチをまとめたもの。
セシリィ確認してね、師匠。
ガロウズ…… ? お、おう……。
マークそれじゃあ、そろそろ行くか。アミィのことがわかったら魔鏡通信で連絡する。
ロイドあ、ま、待ってくれ。と……クラトス、あの――
クラトス――元気でな、ロイド。
ロイドクラトス ! ! ちゃんと話をさせてくれ !あんた、俺の親父なんだろ ! ?
クラトス……行くぞ。
ゼロス……ハニー。そんなしょげた顔するなって。あのおっさんは俺さまが見張っとくからよ。
ロイド……うん。ゼロス、ありがとう。

Character7話【6-8 帝都イ・ラプセル】
マークどうだ、ガロウズ。セシリィからの資料は。
ガロウズ……シングの持つソーマにセシリィが言うような機能があるなら心核へのアプローチと修復は可能だ。
ガロウズただ――
マークただ ? 何だよ、妙な顔して。
ガロウズ何でセシリィがこんなに魔鏡や魔鏡術に詳しいのかと思ってな。それもビフレストの魔鏡術に……。
マーク何でって、あんたが教えたんじゃないのか ?
ガロウズ弟子にしてくれと押しかけられはしたがまだ子供だぞ。基本的な技術しか教えてない。
ガロウズこんなレベルの研究ができるような奴じゃないんだ。
マークおっと、フィル。アミィはどうだった ?
フィリップ確認できたよ。確かに心核が傷ついていた。何らかの形で心核に接触したんだろう。
フィリップ僕の魔鏡術でも修復可能かも知れないがここは安全第一にチェスターの帰りを待つつもりだ。
クレスチェスターたちは大丈夫でしょうか。
マークいま帝国にあいつが潜入するのは危険かもしれないな。だがシンクもいるしクラトスもゼロスもかなり腕が立つ。
マークきっとシングに接触してくれる筈だ。
クレスそうだね……。チェスター、頑張れ…… !
チェスター……はぁぁぁ。
クラトス……フフッ。
チェスター笑うな ! !
シンクそりゃ、笑うでしょ。野太い悲鳴上げてクラトスにしがみついてたんだから。
チェスターいきなり背負われたと思ったらケリュケイオンのハッチから空にダイブされたんだぞ ! ? 驚くのは当たり前だろ ! ?
ゼロスわりぃなぁ。顔が割れてる奴を連れてるから正面から帝都に入る訳には行かなかったんだよ。四幻将・魔弓のチェスター様。
チェスターその名前で呼ぶな馬鹿野郎っ !
アスター随分と賑やかでございますなぁイヒヒヒヒ !
チェスターあ、悪い……。突然庭に侵入して匿って貰ったのに、騒いだりして。
アスターいえいえ、全てはセキレイの羽の方からご連絡をいただいております。
アスター帝国軍のシング・メテオライト様とつなぎを取りたいとのことでしたね。
クラトスその通りだ。しかし、我らに荷担して大丈夫なのか ?
アスター私どもも慈善事業ではございませんからそれなりの対価を求めるつもりではおりますよ。
クラトス我らに資金がないことは想像が付いていると思うがそれ以外のものを求めると言うことか。
アスター救世軍の方々も補給無しでは苦しゅうございましょう。少なくともその為の資金は残しておられる筈。
アスター私どもはその補給のお手伝いをさせて頂ければと思う次第でございます。イヒヒヒヒヒヒ。
シンク……この世界でもアスターは商魂たくましいってことか。
ヒルダ……この、世界 ?
シンク……何でもないよ。で、シングはどこにいるのさ。
アスターシング様とはヒルダが親しくしております。全てはヒルダにお任せ下さい。私は所用にてこれで失礼致します。
アスターでは、ヒルダ。後は頼みますよ。
ヒルダ……セキレイの羽ってのはアスター様を何だと思ってるのよ。
チェスター悪い。前回はカロルたちが力を借りたんだったな。
ヒルダで、どうしてシングに会いたいのか説明してくれるかしら。それによって引き合わせ方も違ってくるから。
ヒルダ……そう。だとしたら、アステルからミトスに当てた伝言も、あんたたちに伝えておいた方がよさそうね。
シンクアステル ? 確かそれって四幻将のリヒターの知り合いじゃなかった ?
チェスターああ。リヒターが元の世界で亡くしたダチだって言ってたな。
ヒルダええ。色々と自由な子でね。
ヒルダ帝国で精霊の研究をしてるんだけどしょっちゅう抜け出して帝都をふらふらしてるのよ。
ヒルダミトスにマーテルが攫われたことを知らせたのもアステルなの。
クラトス……ヒルダ。アステルからミトスへの伝言というのは ?
ヒルダ――マーテルの居場所よ。
ゼロスマジかよ ! ? どうやって調べたんだ ! ?
ヒルダさぁ。確率がどうとか心理的距離がどうとか色々言ってたけれど……。
ヒルダそれよりあんたたちの話を聞く限りミトスを放っておくのは危険でしょう。
クラトス……そうだな。あれは元の世界でもマーテルを失って、怒りと悲しみが理性を押し流した。
クラトスこの世界でもマーテルを失えばもう誰もミトスを止められぬ。
クラトスそれに私もマーテルを守れなかった。この世界では救ってやりたい。たとえここが影の国であってもな。
ヒルダハーフなんでしょう、あの子。エルフと人間の。
クラトスああ、その為に何度も傷つけられてきた。
ヒルダ……そう。不思議ね。何故か私の周りにはハーフの子たちが集まってくるみたい。
シンクミトスの他にもハーフエルフがいるの ?
ヒルダ……エルフじゃないけどね。異世界のヒトが色々集まると妙なこともあるもんだわ。
ヒルダさて、それじゃあ行きましょうか。シングはいまイ・ラプセル城にいるのよ。
ヒルダ地下通路が使えれば良かったんだけど今は警備が厳しくなってるから多少危険でも街を抜けていくわ。
ヒルダ城にさえ着けば、中に入るのは簡単よ。
シンク城の警備が手薄ってこと ?
ヒルダ警備担当の人間がアスター様の手の者なのよ。
ゼロスよっしゃ、それじゃあ行くとするか。俺さまの華麗な活躍を見て惚れるなよヒルダちゃん !
ヒルダ――ヒルダ、ちゃん…… ?
ゼロスあー、その冷たい目がたまらない。俺さまもだえちゃう !
ヒルダこれといい、前のレイヴンとか言う奴といいあんたたちのところは深刻な人材不足みたいね。
シンクむしろ人材が豊富なんじゃない ?悪い意味で。
クラトス……す、すまぬ。

Character8話【6-10 芙蓉離宮 2】
イ・ラプセル城内武器庫
ゼロスヒルダちゃん、大丈夫かね。やっぱ俺さまも一緒に行ってあげたかったぜ~。
チェスターそりゃ無理だろ。ヒルダは出入りの商人の使いだって顔ができるけど、オレたちは単なる侵入者だぞ。
シンクしかも裏切り者がいるしね。
三人………………。
ヒルダお待たせ――って、何 ?みんな妙な顔してるけど。
シンクさぁね。それよりそこにいるのはシングじゃなくてカイウスだよね ?
カイウスシングならメルクリアに呼び出されたから当分会えないと思う。
チェスターどういうことだ ! ?
カイウスミトスの件で、メルクリアが怒ってるんだ。
カイウスオレは事情を聞かれてすぐに解放されたけどシングはコハクの件で色々文句を言っちまったから……。あの馬鹿……。
チェスターくそっ ! シングがいなきゃアミィはどうなっちまうんだよ !
カイウス確かヒルダの話だとソーマが必要なんだろ ?シングはいないけど、代わりにコハクのソーマを持ってきた。
カイウス勝手に持ってきたから、あとでシングに怒られるかも知れないけど、役に立つか ?
クラトスきっと参考になるだろう。預からせて貰えるだろうか。
カイウスもちろん。壊したりしないでくれよ。
クラトス約束する。
カイウスそれと……前に言ってた力を貸してくれるかも知れないって話。あれ、本気か ?
ゼロスん ? 何かあったのか ?
カイウスまだ何とも……。でもそうなりそうな気がしてる。
ヒルダルビア――この子の仲間が反逆者として戦士の館から連行されちゃったのよ。
ヒルダ何処に収容されているのか私の方で調べてたんだけどようやくいくつか候補が挙がってきたの。
チェスタールビアが……。くそっ !
クラトス……まだルビアの居場所は特定できぬのだな。
ヒルダええ。絞り込みにはもう少しだけ時間がかかりそうなのよ。
クラトスならばカイウス、これを持っておけ。
カイウスこの鏡は…… ?
クラトス通信装置だ。鏡殻変動以降使い物にならなくなっていたがまた使えるようになった。
クラトス必要があればそれを使って我らに声を掛けてくれ。
カイウス……ああ。ありがとう !
シンク……はぁ、お人好しだね。ほんとゴクロウサマ。
カイウスそうだ !みんな、そろそろ城を出た方がいい。ナーザとチーグルがこっちに来るって話だ。
シンクチーグル ?……ああ、あの金髪の妙な男か。ブサイクな魔物のことかと思った。
チェスターナーザと鉢合わせすると面倒だぞ。
ゼロスそうだな。さくっと脱出するか。ヒルダちゃんはどうすんのよ。
ヒルダ――その呼び方、いい加減やめてくれない ?
ゼロスええ~ ! ? じゃあヒルダ様~ !
ヒルダぶつよ !
ゼロスぶつ前に言ってくれるなんて優しすぎるぜ、ヒルダ様~ !
ヒルダあー……。この馬鹿何とかしてくれない ?
クラトスすまぬな。神子……ゼロスはあなたとじゃれ合いたいだけなのだ。
ゼロス真面目な顔でそーゆーこというのやめてくれねーかな ! ?
ヒルダ――とにかく !私はカイウスとルビアの捜索についてもう少し打ち合わせしていくわ。
ヒルダあんたたちは先に逃げなさい。
クラトス……カイウス。ミトスはどこにいる ?
カイウスミトス ? ……多分近くの森に作った避難所にいると思う。
シンク避難所って何。
カイウス……マーテルさんを匿うために準備してたらしいんだ。その前に攫われちゃったけどさ。
クラトス詳しい場所を教えてくれ。
カイウス……まぁ、あんたたちなら大丈夫か。今、地図を書くよ。
クラトスヒルダ。アステルからの伝言は私から伝えておく。それでいいか ?
ヒルダそうね。そうしてくれると助かるわ。
チェスター待った。オレはミトスに会いに行ってる暇なんてないぞ !
シンクだったら、ゼロスがチェスターをケリュケイオンへ送ってやればいい。
クラトスシンクは私と共にくるのか ?
シンクアンタ一人残して帰ったらマークが怒るからね。
シンクまぁ、それでもいいけどしつこくくどくど言われるのも面倒だ。アンタに付き合えば義理は果たせるだろ。
クラトス……フッ。
シンク……チッ。何もかもわかってますって澄まし顔か。ゼロスがアンタを嫌う理由がわかったよ。
ゼロスでひゃひゃひゃひゃ。だろー ? 仲間になれて嬉しいよ、シンくん。
シンクアンタと仲間になるのもお断りだねバカ神子。
チェスター……何でもいいから急ぐぞ !アミィが待ってるんだ。

Character9話【6-12 森にある避難所】
シンク……カイウスの地図によるとこの辺りにミトスの避難所があるんだろ ?それらしいものが見当たらないけど。
クラトス……すんなりと見つかるようには作らないだろう。ミトスと私たちはかつての旅の間ずっと敵に追われていた。
クラトスどのようにすれば身を隠せるかはよく心得ている。
シンク――待った。何かいるよ。
クラトスこの気配は……。
シンク魔物…… ! ?
クラトスノイシュ…… ! ?
ノイシュワォーン……。
シンク……何、この変な生き物。アンタのペット ?
クラトスまぁ……そんなようなものだ。
クラトスノイシュ、お前も具現化されていたのか。何故ここにいる ?ロイドと一緒ではないのか ?
ノイシュキュウーンキュンキュン……。
クラトス……まさか、ミトスと一緒にいるのか ?
シンクは…… ? 何、この変なのと会話できる訳 ?
クラトスノイシュは高度な知能を持つ知的生命体だ。
クラトス付いてこいと言っているようだ。
シンクまぁ、アリエッタみたいなものか……。
ノイシュワォーン !
ミトスノイシュ、大きな声で鳴いちゃ駄目だよ ?
クラトスミトス……。
ミトス……ノイシュが連れてきたのか。お前はお節介だね。
ノイシュワフ !
ミトス何か用 ? 偶然なんてことはないでしょう ?
クラトスアステルという人物からの伝言を預かってきた。マーテルは海鳴りの神殿にいるとのことだ。
ミトス! ?
クラトスお前は海鳴りの神殿の場所を知っているか。
ミトス……知ってるよ。メルクリアの離宮から繋がる神殿だ。
シンク行って暴れてくるつもり ?
ミトス姉さまに何かしていればね。
クラトス私も共に行こう。
ミトス………………。
クラトス戦力が増えて困ることはあるまい。
シンクねぇ、アンタが行くってことは自動的にボクも行かなきゃいけないんだけど。
ミトスこいつも来るの ? 足手まといなんじゃない ?
シンク言ってくれるね。何なら試してみる ?
ミトス身の程知らずも大概にしたら ?お前なんか剣を使わなくてもすぐ殺せるよ。
シンクだったら殺してみせてよ、シスコン坊や。
クラトス――いい加減にしないか。ミトス、シンクは手練れだ。それがわからぬお前ではないだろう。
ミトスボクの力も見誤るような雑魚は邪魔だと思っただけだよ。
シンク――貴様っ !
クラトスミトス ! シンク ! やめなさい。本当に力を持つ者は、むやみにそれを振り回したりはしないものだ。
クラトスそういう意味ではお前たちは二人とも弱者だ。
二人………………。
クラトス――ミトス。一つ尋ねて構わぬか ?ここには随分古い書物も集めているようだが何か調べているのか ?
ミトス精霊について、ちょっとね。
クラトス精霊 ? やはりデミトリアスの計画に関することなのか ?
ミトスあんな死に損ないの考える計画なんてどうでもいい。ただボクは心配してるだけ。精霊マーテルの存在の可能性について。
クラトス精霊マーテル ? 何を言っている。マーテルは精霊ではないだろう。
ミトス――クラトスは知らないんだね。うん……そうだったね。だったら知る必要はないよ。今のところはね。
ミトスそれより海鳴りの神殿へ行こう。ボクが案内する。
シンクこのノイシュとか言う変なのはどうするのさ。
クラトスノイシュは魔物が苦手だ。この家にいた方がいい。あるいは……。
クラトス――いや、いい。ここでミトスの帰りを待っていてくれ。
ノイシュキューン……。
ミトスノイシュ、いい子にしているんだよ。
シンク……変な顔。知恵があるようには見えないな。
ノイシュワフン……。

Character10話【6-15 海鳴りの神殿 3】
シンク……嫌なところだな。じめじめして。
ミトス姉さまは……。
チーグル待っていたよ、ミトス。
ミトスリチャードか……。
チーグルそれはこの体の持ち主の名前だ。僕はチーグル。高貴な北方の虎だよ。いい加減名前で呼んで欲しいなぁ。
チーグルきみだって元の世界でこうやって魂を違う体に移そうとしていたんだろう ?だったら僕は待望の成功例じゃないか。
チーグル仲良くしようよ。
ミトス……姉さまはどこだ。
? ? ?――聞こえるか、ミトス。
クラトス子供の声…… ?
ミトスメルクリアだ。
メルクリアそうじゃ。あはは ! わらわの声忘れたわけではないのだな ! よかったぞ。
ミトスメルクリア ! どこにいる ! ?
メルクリア捜しているのはわらわではないだろう ?
ミトスふざけるなっ !
メルクリアミトス……。わらわを失望させてくれるな。そなたはわらわと同じじゃ。だからこそマーテルを具現化してやったのではないか。
ミトスお前たちのくだらない計画に姉さまを巻き込むなと言っただろう !
メルクリアチーグル。説明してやれ。
チーグルはい、メルクリア様。ミトス、神降ろしはデミトリアス陛下の大願なんだよ。
チーグル何、全て終われば、神はまたいずこかへお戻りになる。
ミトス神降ろしだろうと何だろうとやることはリビングドールと変わらない。姉さまの心を消すなんて許さない !
チーグル消さないよ、ミトス。心核――心の物質化に成功したんだ。壊さずに取り出す。
チーグルでも、もしもここでメルクリア様の意思に背くなら、メルクリア様は今すぐ心核を取り出して壊す……と仰っている。
ミトス! !
シンク……そういうことか。
クラトスミトス……。
チーグル僕が見届けてあげるよ。反逆の意思がないことを見せてくれ。
ミトス――クラトス。
クラトスお前がそうせねばならぬと言うならそれでもいい。だが、それでも私は今度こそお前たち姉弟を守りたい。
ミトス………………っ !
シンクアンタ、馬鹿か ! ?少しは攻撃を避けてよね !
ミトス……邪魔をするな。
シンクこの馬鹿に死なれるとこっちが困るんだよ。
シンククラトス。アンタがここで死んだらロイドはどうすると思う。
クラトスロイドはものの道理がわかる男だ。
シンク歪んだ情報に触れなきゃそうかもね。ボク、そういう操作は得意なんだけど。
シンクこいつとロイドを戦わせたくなかったらしっかり戦ってくれない ?
シンク客分傷つけてうるさく言われるのはボクなんだ。死ぬなら勝手にのたれ死んでよ。
ミトス……クラトスはあの女の子供に弱いからね。いいよ。ボクも本気で殺しにいくから !

Character11話【6-15 海鳴りの神殿 3】
シンク……やったか。
ミトス――残念だったね。
シンク傷が癒えていく…… ! ?
クラトス天使とはそういう体の構造をしている。体につけた輝石を壊さぬ限り死ぬことはない。
シンクちっ。面倒な奴らだ。
チーグルミトス。もっとだよ。きみの本気はこんなものじゃないよね ?
ミトス………………っ !
ゼロス見て行きな !俺の全力 !ディバイン・インペイル ! !
チーグルぐぉぉぉぉぉぉっ ! ?
ゼロス……横から茶々入れて煽ってんじゃねぇよ。
マークお、ゼロス。ナイス働きだな。おい、クラトス、シンク。無事か ?
シンク来るのが遅いね、マーク、ゼロス。
ゼロスお前、もう少し感謝の気持ちを持てない訳 ?
メルクリア……何じゃ。興ざめじゃな。
ゼロス何だ、この声は……。
メルクリアまあいい。ディストからの報告と違ってちゃんと戦ってくれたようじゃな。わらわは満足したぞ。
ミトス姉さまは何処だ。
メルクリアジュニア、ミトスを連れて戻ってまいれ。チーグル、撤退じゃ。よいな。
チーグル……承知しました、メルクリア様。
シンク消えた……。転送か ?
ゼロスそんなものあるのかよ。チートじゃねぇか !
マーク……おっと、小さいフィリップじゃねぇか。何でこんなに可愛かったのにあんなになっちまったかねぇ……。
ジュニアマーク……。
ミトスやぁ、ジュニア。メルクリアの狗になった気分はどう ?
ジュニア……あの、ミトス。ごめん。
ミトス――別に劣悪種の人間には何も期待してない。
クラトスミトス、行くのか。
ミトス………………。
ミトス――……期待してないけど今度は……信じていいの ?
クラトス
ゼロス――そういうときはよ、ミトス。「信じてる」って言うんじゃねぇの ?
ミトスボクはもう……動けない。だから……姉さまを助けて……。
クラトスもちろんだ。約束する。必ずお前たちを救う。
ジュニアあの、フィルに伝えて下さい。「僕らの始まりの場所に行って」って。それでわかるから。
マーク……なぁ、クラトス、ゼロス。この際、はっきりさせないか。
クラトスどういうことだ。
マークあんたたちは、俺たち救世軍の客分だ。
マークだが、本格的に帝国と対立するならいつまでも二人だけで独立部隊気取るのも厳しいだろ。
マークかといって、ミリーナたちのところへ合流する気はない。
ゼロス俺さまは別に合流してもいいんだぜ。つーか、むしろ合流したい。あっち、美人がわんさかいるんだもんよ。
シンクバカ神子、黙って。
マーク正式に救世軍へ来いよ。ミトスの姉ちゃんを助けるなら人手が必要だろ。
マークフィルもそうして欲しいって願ってる。あんたらは頼りになるとさ。
マーク俺はフィルから離れて活動できないから救世軍の指揮を執る人間が必要だ。
シンク……クラトスが指揮官か。現場に出られる分、マークよりは助かるね。
マークだろ ?
ゼロス俺さまは ?
マーク美女手当をつけてやるよ。雑兵には美人もいるぜ。
ゼロス……ま、しゃーねぇかなぁ。
ゼロス冗談はともかく、実際のところ、俺さまロイドたちのところには居づらいんでね。色々影でやらかしてきたからな。
ゼロス今の状態じゃ謝ることもできやしねぇ……。
クラトス……ミトスは現在の新生救世軍にとって裏切り者だ。それを助けるのに協力してくれるというのか。
マークんなこと言ってたら俺はミリーナを殺そうとしてたんだぜ ?昨日の敵は今日の友。ま、そんな感じかね。
クラトスわかった。世話になろう。貴公らには色々と助けられた。私で力になるなら共に戦おう。
ゼロス三食昼寝美女手当尽きで手を打っておくわ。頼むぜ、マーくん。
ゼロスおっと、フィリップから通信だ。どうした ?
フィリップアミィが……――
? ? ?暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。
フィリップ――……だ。
クラトス何だ、今のは ?
シンク混線…… ? そんなことってある ?
ゼロス今の……イクスの声じゃないか ?
フィリップ……てるのかい ?アミィが意識を取り戻したんだ !
三人! !
to be continued