| Character | 1話【7-1 ひとけのない雪山1】 |
| コーキス | アミィ様の治療、進んでるのかな……。 |
| ミリーナ | ソーマ……という装置 ? があるのは帝国側だからまずはそれを奪ってくることに成功しないとね。 |
| ジェイド | その点は大丈夫でしょう。セシリィの言葉を信じるならソーマとやらを持っているシングという人物は、何らかの理由があって帝国に留まっているだけのようです。 |
| ジェイド | 彼の目的が死者の復活でないならこちらに協力してくれる可能性は十二分にある。 |
| セシリィ | シングは、仲間のコハクさんという鏡映点を助けたいだけだと言ってたわ。だから、救世軍がコハクさんを預かっていることを知れば、きっと力を貸してくれる。 |
| ジェイド | ………………。 |
| カーリャ | でもチェスターさまとクレスさまが、アミィさまとケリュケイオンに向かってから結構時間が経ちますよね。やっぱり心配ですよぅ……。 |
| コーキス | そうだな……。やっぱ俺も一緒に行くべきだったかも。そうしたら、魔鏡通信で状況を知らせられたのに。 |
| ミリーナ | 大丈夫よ。何かあればフィルたちが連絡をくれるわ。 |
| ジェイド | ……セシリィ。ちょっと伺いたいことがあるのですがよろしいですか ? |
| セシリィ | 何でしょうか ? 浄玻璃鏡のことですか ? |
| ジェイド | ああ、そちらも興味深いですが、今はカロルたちが持ち帰った情報のことについてお尋ねしたい。 |
| ジェイド | カロルたちが言っていた、もう一つのカレイドスコープとそれを隠している仮想鏡界のことについて。 |
| セシリィ | ……ああ、はい。 |
| ジェイド | 我々のアジトであるこの仮想鏡界は、ミリーナが創りカーリャと二人で維持している特殊な空間です。 |
| ジェイド | あー、まぁ、このような曖昧な定義しかできないことをお許し下さい。原理は理解しましたが、説明が大変なのでね。 |
| ジェイド | 帝国側の仮想鏡界も誰かが創っている空間であることは間違いない。しかしこれは非常に難しい魔鏡術の筈です。 |
| ジェイド | ミリーナもゲフィオンとしての記憶を共有することで初めて成し得たことだと言っていました。 |
| ジェイド | つまり帝国にもゲフィオンクラスの鏡士がいると判断して差し支えないでしょう。それは誰だと思いますか ? |
| コーキス | は ? そんなことセシリィに聞いてわかるのか ? |
| セシリィ | ……わからない。ナーザ将軍がメルクリア様の兄君――ウォーデン様なのだとしたらウォーデン様が鏡士であることは間違いないわ。 |
| セシリィ | でも、イクスさんのご遺体を奪っているのなら本来の力は出せない筈。メルクリア様はまだ仮想鏡界を作れるほどではないと思うし……。 |
| ミリーナ | この世界で生き残っている鏡士の中で仮想鏡界を使えるクラスの人物となると私はフィリップしか思い当たらないわ。 |
| ミリーナ | あとは……シャーリィに宿っていたというヨウ・ビクエが本当にあのヨーランド様なのだとしたら……彼女には簡単なことでしょうね。 |
| ジェイド | やはりそうか……。 |
| コーキス | え ? ま、まさかジェイド様帝国の仮想鏡界を作った人間に心当たりがある……とか ? |
| ジェイド | ええ、まぁ。カロルの報告書を読んだ限りでは一人――いえ、二人の顔が思い浮かびました。 |
| ジェイド | ただ、私は帝国の内部には明るくありません。ですから、二人以外の可能性があるのか排除する必要があったんですよ。 |
| セシリィ | あ、でも、私も帝国のこと何でも知ってる訳じゃないですよ ? |
| セシリィ | 私も突然メルクリア様に呼び出されてビフレスト式の魔鏡術を復活させるように言われただけで……。 |
| ジェイド | つまり、メルクリアはあなた以上の鏡士を知らないと言うことですね。 |
| セシリィ | ……それは、そうかも知れません。 |
| ミリーナ | ――待って。セシリィ、あなた鏡士じゃないわよね ?魔鏡技師でしょう ? |
| セシリィ | ! ! |
| ジェイド | ああ、失礼。言葉のあやですよ。メルクリアは魔鏡技師であるセシリィに頼らざるを得ないぐらい、鏡士のあてがないという意味です。 |
| ジェイド | いやぁ、失礼しました。 |
| コーキス | ――え……、な、何だ、そういうことかよ。びっくりしたぜ ! |
| セシリィ | ………… ! |
| ジェイド | ………………。 |
| カーリャ | うおおおおお、ブルってきたぁ ! ?魔鏡通信です、ミリーナさま ! |
| マーク | カーリャ先輩、邪魔するぜ。 |
| カーリャ | はぁ ! ?私はマークの先輩になった覚えはありませんよ ! |
| コーキス | そうだぞ ! パイセンは俺のパイセンだからな ! |
| マーク | つれないこというなよ。それよりウチの繊細なご主人様がミリーナに助けを求めてるぜ。 |
| ミリーナ | フィルが ? どういうこと ?まさかアミィちゃんに何かあったの ! ? |
| マーク | そういうことだ。あんたの助けが欲しいとさ。魔弓のチェスターくんの為にも一つ力を貸してやってくれ。 |
| ミリーナ | 当然だわ。今、どこにいるの ? |
| マーク | とりあえず、帝国の目を避けるために人気のない雪山で落ち合いたい。詳しい座標は―― |
| ミリーナ | ――ケリュケイオンと落ち合う場所がわかったわ。私、行ってきます。 |
| コーキス | ミリーナ様、俺も行きます。連れて行って下さい。 |
| ミリーナ | ええ、もちろんそのつもりよ。 |
| カーリャ | カーリャも……と言いたいところですが私はここを離れられません。コーキス、ミリーナさまをちゃんとお守りするんですよ ! |
| コーキス | 任せとけって ! |
| ジェイド | 腕の立つのと、頭の回るのを何人か連れていくといいでしょう。それと……セシリィ。あなたも行った方がいい。 |
| セシリィ | え……。でも私はここで、みなさんの武器のお手入れを手伝ったり、キール研究室のお手伝いをしたり……。 |
| ジェイド | 私は……あなたとガロウズの関係を察することしかできません。もしかしたら彼は知らない方が幸せなのかも知れない。 |
| ジェイド | ですが、アミィの症状がリビングドール化の失敗によるものなのだとしたらあなたのことも話しておいた方がいい。 |
| ジェイド | 二人にとってつらい話になるかも知れませんがそれがアミィや他のリビングドール化された人々への救いになる。 |
| ミリーナ | ……ジェイドさん。どういうことですか ?何を知っているんですか ? |
| ジェイド | 知っているのではなく、推察したのです。おそらく正しい……と思いますがセシリィの口から話した方がいい。 |
| ジェイド | ミリーナ、あなたがゲフィオンであったことをリフィルがぎりぎりまで隠したようにね。 |
| ジェイド | 人には暴かれるのではなく自ら告白した方がいいこともある。 |
| セシリィ | ……そうですね。でも……ジェイドさん。あなたは怖い人ですね。 |
| ジェイド | そうでしょうか ? |
| セシリィ | いつからご存じだったんですか ? |
| ジェイド | ……あー、いえ、そういうのはやめておきましょう。さぁ、急いでケリュケイオンに向かって下さい。 |
| ジェイド | 雪山は年寄りには応えますので私はここでお待ちしていますよ。 |
| Character | 2話【7-2 ひとけのない雪山2】 |
| フィリップ | ……久しぶり、だね。 |
| ミリーナ | ……フィル。どうしてずっと会ってくれなかったの ? |
| フィリップ | 今のきみがゲフィオンだった頃の記憶を共有しているミリーナだから、かな。 |
| フィリップ | 見た目は僕が子供の頃と何も変わらないのに、きみは僕がどれだけひどいことをしてきたのか知っている。……正直なところ、それがつらかった。 |
| ミリーナ | フィル……ううん、本当に酷いことをしたのは私よ。この世界を滅ぼしたのは私なの。あなたじゃない。 |
| フィリップ | いや、違うよ。ゲフィオンと僕がやったことだ。きみはあのミリーナとは違うんだ。違う道を歩んで欲しい。 |
| ミリーナ | ……そう思えれば……いいんだけれど……。 |
| ユリウス | 俺たちの世界で言う、分史世界の自分の記憶を内包しているようなものか。 |
| ルドガー | それは……苦しいな。 |
| アーチェ | んー、まぁ、でもそれって、この先を生きていくことで薄れていくんじゃないの ?すごくリアルな夢みたいなもんだって。 |
| アーチェ | 囚われすぎない方がいいんじゃない ? |
| コーキス | ミリーナ様……。アーチェ様の言う通りですよ。 |
| ミリーナ | ――ああ、ごめんなさい。私のことはいいのよ。アーチェの言う通りかも知れないし。そんなことよりアミィちゃんのことよね。何があったの ? |
| フィリップ | それが……あの子は沈静化させたのにずっと涙を流しているんだ。 |
| セシリィ | 感情が一部戻ってきているってこと ! ? |
| フィリップ | ……そうなるね。しかも暴走しているんだと思う。何が原因か突き止めて、早急に対処した方がいい。 |
| エル | 原因……。ずっと涙を流してるって悲しいからじゃないかな ?つらい夢を見てるのかも……。 |
| ルドガー | 大丈夫だ、エル。アミィを助けるためにみんなここに来たんだから。 |
| コーキス | だけど、アミィ様の治療にはソーマってのが必要なんだろ ?チェスター様たちが取りに行ってるんじゃないのか ? |
| フィリップ | ああ。だが、待っている方が危険だと判断した。僕の魔鏡術で心核にアプローチする。 |
| フィリップ | だからミリーナの……ゲフィオンの記憶を持つミリーナに頼る必要があったんだ。 |
| ミント | ……アミィちゃんを助けましょう。ミリーナさん、お願いします ! |
| ミリーナ | ええ。必ずアミィちゃんを助け出してみせるわ。 |
| ガロウズ | ――お、セシリィも来たのか。 |
| セシリィ | 師匠……じゃなくてボスって呼んだ方がいいんだっけ ? |
| ガロウズ | そりゃ、どっちでもいいんだが……。 |
| ユリウス | セシリィ。状況はジェイドから聞いている。まずはアミィを助けてからにしよう。 |
| セシリィ | はい。師匠、アミィちゃんは ? |
| クレス | アミィちゃんはここだよ。さっき医務室のベッドをここに運んできたんだ。 |
| コーキス | ホントだ、涙がずっと溢れてる……。どうして……。 |
| ミント | ……アミィちゃん。 |
| アーチェ | そっか。クレスがアミィちゃんを守ってチェスターが帝国に向かったんだ。 |
| クレス | うん。だけど今このことをチェスターに伝えるとチェスターが動揺する。ここは僕たちでアミィちゃんを助けよう。 |
| フィリップ | 僕が魔鏡術でアミィちゃんの心核を鏡に映す。ミリーナはそれをつなぎ止めて維持してくれ。 |
| ミリーナ | フィリップが鏡越しにアミィちゃんの心核の傷ついた部分を修復するのね。 |
| フィリップ | 繊細な作業になる。治癒の力を持つミントにはここに残ってサポートをお願いしたい。 |
| フィリップ | それと、アミィちゃんのことをよく知っているクレスにもサポートを頼む。 |
| ミント | わかりました。 |
| クレス | 何でもやります。アミィちゃんとチェスターのためにも……。 |
| フィリップ | 他のメンバーは待機していてくれ。 |
| コーキス | わかった。 |
| ユリウス | ……だったら、少し外で話をしないか。セシリィがガロウズに話があるそうだ。 |
| ガロウズ | ! ! |
| フィリップ | ……そうか。やっぱりセシリィもビフレストの関係者なんだね。 |
| ルドガー | え ? どういうことだ ? |
| ユリウス | とにかく場所を移そう。ケリュケイオンの中には救世軍の一般兵がたくさんいる。デリケートな話は外の方がいいだろう。 |
| ユリウス | 少しだけケリュケイオンから離れるがすぐ戻れる場所にいる。何かあったら魔鏡通信をくれ。 |
| フィリップ | 何もないことを祈っていてくれ。 |
| Character | 3話【7-3 ひとけのない雪山3】 |
| ガロウズ | ……それで、俺に話ってのはなんだ ? |
| ガロウズ | ――いや、セシリィ。俺からも聞かせてくれ。お前、いつの間にあんな研究ができるほど魔鏡と魔鏡術に詳しくなったんだ ? |
| セシリィ | ……まず、最初に謝らなければいけません。これは師匠……ガロウズだけじゃなくて他の皆さんにも……。 |
| セシリィ | 私はセシリィではありません。 |
| エル | え ! ? どういうこと ? |
| コーキス | ――も、もしかして、フレン様って人と同じリビングドール……。 |
| セシリィ | はい。リビングドールは、心核を取り外し、そこに人工心核を取り付けて、虚無に漂うアニムス粒子を閉じ込めることでキメラ結合させた存在。 |
| セシリィ | 私はセシリィの体を借りている死者です。 |
| ガロウズ | じゃ、じゃあ、セシリィは ! ?あの子の心核は何処にあるんだ ! ? 無事なのか ! ? |
| セシリィ | ……無事だと思います。心核が壊れたら体は存在を保てない。だからきっと無事です。 |
| ユリウス | 君は誰なんだ、セシリィ。 |
| ユリウス | ジェイドからは敵ではないと言われている。あの男が言うのだから、君が敵である可能性は極めて低いのだろう。だが、もしも敵なのだとしたら―― |
| セシリィ | ……私はビフレスト皇国魔鏡庁の正階鏡士シドニー・ミラー。 |
| ガロウズ | ――う、嘘だ……。 |
| シドニー | ……ごめんなさい、ガロウズ。言えなかった。言えばあなたを苦しめると思ったから。何も言わずにミリーナさんたちに協力すれば、事態は収拾できるって―― |
| ガロウズ | やめろ ! やめてくれ ! どうしてこんな……。 |
| コーキス | な、何だよ ? ガロウズの知り合いなのか ? |
| シドニー | 私とガロウズは結婚の約束をしていたの。もうずっと昔のことだけど……。 |
| 一同 | ! ? |
| シドニー | ガロウズの両親は商人で、ビフレストにも家を持っていたんです。その家が私の家のすぐ近くで……。 |
| シドニー | その頃はまだ戦争も始まっていなかったから敵同士になるなんて思ってもいなかった。 |
| ガロウズ | ……しばらくして魔鏡戦争が始まってな。シドニーは俺との関わりからスパイだと疑われて前線に送り込まれたんだ。 |
| ガロウズ | その時俺はセールンドの志願兵として前線に出ていた。驚いたよ。敵にシドニーがいたんだ。俺はシドニーとは戦えなくてな……。 |
| シドニー | ガロウズは私を助けようとして、腕を失ったの。 |
| ガロウズ | ……でも、助けられなかった。自暴自棄になったところをゲフィオン様に拾われたんだ。 |
| シドニー | ……カレイドスコープに粉々にされた私は虚無をずっと漂っていた。もう何を考えていたのかも思い出せない。 |
| シドニー | でもある時、何かの力に引き寄せられて、気付いたらセシリィの中にいた。リビングドールにされたのよ。……メルクリア様によって。 |
| コーキス | (この場にミリーナ様がいなくてよかった。でも、いずれは説明しないといけないんだよな……。くそ、ミリーナ様がまた傷つくじゃねーかよ ! ) |
| ユリウス | きみはビフレストの人間なんだな。なら、どうして自国の王子や王女のいる帝国側に協力しないんだ。 |
| シドニー | この私の状態……自然なものと言える ? この子はメルクリア様の遊び相手として城に呼ばれていたらしいの。 |
| シドニー | そんな子の体を使って……。その理由が、鏡士が好きだから鏡士の力を学びたいから。ただそれだけ……。 |
| ルドガー | ……前から気になっていたんだが、リビングドールにするための……その……死者の魂みたいなものはどうやって選別して呼び寄せているんだ ? |
| ルドガー | 聞いていると、都合よく、欲しい人材をリビングドールとして復活させているみたいだ。 |
| シドニー | それは……。 |
| チェスター | うおおおおおおおお ! ? |
| アーチェ | ちょっと、何よ、今の野太い悲鳴は ! ? |
| ゼロス | いよっ、アーチェちゃん ! 今日も可愛いねー !ポニーテールがキュート ! うなじがセクシー ! |
| チェスター | お……お前なぁ…… ! ? 急降下するときは声をかけろって……え…… ? アーチェ…… ? |
| アーチェ | お姫様抱っこ ! ? あはははは、随分ふっとい声のお姫様じゃん ! そんなに空を飛ぶのが怖いんだー ? |
| チェスター | ち、違うぞ !こいつが前置きもなく急降下するから―― |
| ゼロス | はいはいはいはい。じゃれ合いは後にしてくれ。俺さま、またクラトスたちのところへ戻るわ。シンクとクラトスだけってのもなーんか心配なんでな。 |
| ゼロス | マーク借りてくぞ。戦力が欲しいからな。 |
| コーキス | マークを借りてくって……フィリップ様は今、動ける状況じゃないぞ ! ? |
| ゼロス | 大丈夫だよ。鏡精が動ける範囲内だ。 |
| ゼロス | それじゃあね、アーチェちゃんとエルちゃんとセシリィちゃんとその他大勢共 ! |
| コーキス | あ……相変わらずやかましい人だな……。 |
| エル | なに、エルちゃんって。エルのこと、子供扱いしないでよね。 |
| ユリウス | あれは危険だ。気をつけろ、ルドガー。 |
| ルドガー | いや、さすがにエルぐらいの歳の子にまで色目を使うってことは……。 |
| チェスター | ――そうだ。そんなことより、ソーマを持ってきたぞ。これでアミィを助けられるんだろ ! ? |
| アーチェ | あー、それなら、もう始まってるよ。クレスたちがアミィちゃんの治療を手伝っててあたしたちは待機中。 |
| シドニー | でも、ソーマがあるならフィリップさんたちの助けになると思う。ケリュケイオンに戻りましょう。 |
| コーキス | でもシドニーの話の続きは…… ? |
| チェスター | シドニー ? |
| セシリィ | ……後にしましょう。今はアミィちゃんが最優先よ。それから、私のことはセシリィって呼んで。その方が……色々と混乱しないと思うから。 |
| Character | 4話【7-3 ひとけのない雪山3】 |
| 救世軍兵士 | ――チェスター様 ! ! |
| チェスター | おい、こいつらに聞いたぞ。アミィは大丈夫なのか ! ? |
| 救世軍兵士 | 丁度よかった ! フィリップ様がチェスター様と連絡を取るように仰っていたんです。こちらへ来て下さい ! |
| ミリーナ | チェスター ! よかった……。アミィちゃんの心があなたとクレスさんを捜しているの。 |
| チェスター | アミィがオレたちを…… ? |
| クレス | アミィちゃんは、チェスターが帝国へ行ったことがわかって、心が不安定になってしまったんだ。それで先に治療を始めるしかなかったんだけど……。 |
| ミント | ……あの、今アミィちゃんの心は、トーティス村が襲われたときのことを思い出しているそうなんです。 |
| チェスター | マルスがオレたちの村を襲ったときの…… ! |
| フィリップ | 僕は詳しいことを知らないが、アミィちゃんは村を襲われたときに亡くなったんだね ? |
| チェスター | ……ああ。だけどファントムの奴が具現化したのはまだ村が襲われる前の時間のアミィだった筈だ。 |
| フィリップ | ……ファントムは恐らく、チェスターの心を通じてカレイドスコープの照準を絞ったんだろう。 |
| フィリップ | これは推測だけれど、彼は無断でアミィちゃんを具現化したんじゃないのかな ? |
| チェスター | どうしてそれを ! ? |
| フィリップ | ……やっぱりね。ファントムは勝手にチェスターの心をサーチしてアミィちゃんを見つけ出し具現化したんだよ。 |
| フィリップ | だからチェスターの中の不安が残ってしまって照準を甘くしたんだと思う。 |
| フィリップ | アミィちゃんは知らない筈の感情に戸惑っているんだ。村が襲撃されたことは知らないのにその時の不安や恐怖だけが心に残っている。 |
| フィリップ | ここで彼女の心を救わないと、彼女は戻ってこない。 |
| チェスター | どうすればいいんだ ! ? |
| ミリーナ | 私がサポートするわ。チェスター、鏡を通じて悪夢から目を覚ますようにアミィちゃんに伝えてあげて。 |
| チェスター | わ、わかった。 |
| チェスター | (アミィ……。帰ろう。オレと一緒に……。オレがお前をこんな目に遭わせちまった) |
| チェスター | (でも……今度こそ、救わせてくれ。影の世界でもいい。お前を守らせてくれ…… ! ) |
| ユリウス | ――おい、ソーマが何か反応しているようだぞ。微かだが光ったような……。 |
| ガロウズ | 魔鏡に反応してる…… ?いや、ビクエ様の魔鏡術に反応してるのか ? |
| シドニー | これは……確かコハクさんのソーマよね。コハクさんにつけてみる。持ち主が身につけることで何か変わるかも知れない。 |
| コーキス | うわ ! ? ソーマがコハク様に触れただけでビカビカ光り出したぞ ! ? |
| ミリーナ | 待って。そのソーマという装置からすごいエネルギーを感じる。これは私たちの魔鏡術がソーマに増幅されている…… ? |
| フィリップ | ソーマというのは魔鏡による具現化に似た機構があるようだ。これなら一気に心核を修復できるぞ ! |
| チェスター | アミィ ! 戻ってこい ! ! |
| アミィ | ……お兄ちゃん…… ? そこにいたの ? |
| アミィ | ――……お兄ちゃん ? |
| チェスター | アミィッ ! ! |
| メルクリア | ……なんじゃ、ミトスの奴め。わらわがこれほどまでに可愛がってやったというのに。 |
| バルド | お言葉ですが、メルクリア様。メルクリア様も兄君を同じようにされたら、お怒りになるのでは ? |
| メルクリア | 何を言うか。心は取り出すのじゃ。そしてよき器をあてがう。 |
| メルクリア | 何、神降ろしとやらが終われば、また体を返して貰えばよいではないか。ミトスも元の世界でそのようなことをしてきたのであろう ? |
| メルクリア | わらわが同じことをして何故怒るのじゃ。体があるだけマシじゃぞ。兄上様は滅びの鏡士の体を間借りしておるのじゃからな。 |
| メルクリア | わらわの力が至らぬばかりに兄上様には申し訳ない限りじゃ……。 |
| バルド | メルクリア様……。 |
| メルクリア | バルド。そなたは、兄上様のために甦らせたのじゃ。兄上様のことを頼むぞ。 |
| メルクリア | さて、わらわはミトスと話をつけねばならぬ。出迎えの準備をするぞ。 |
| メルクリア | ミトスはお気に入りなのじゃ。やっと大人しくなったのだし丁重に迎えてやらぬとな。 |
| バルド | (……やはり、幼い。何故このように歪んでしまわれたのか) |
| バルド | (我々の誰かが生きてお側に仕えることができていれば……このようなことには……) |
| ? ? ? | (それでも、できることはあるんじゃないか) |
| バルド | (……そうですね。あなたの言う通りなのでしょうね) |
| Character | 5話【7-5 ひとけのない雪山5】 |
| ジュード | ……うん。大丈夫。救世軍の医療スタッフと一緒に簡単な検査をしたけれど、アミィちゃんは健康だよ。 |
| ミリーナ | ごめんなさいね、ジュードさん。うちにも医療スタッフがいればジュードさんの負担を少しは減らせるのに……。 |
| ジュード | ううん。みんなができることをやってるだけでしょ。気にしないで。 |
| エル | ねぇ、アミィは ? |
| ルドガー | チェスターとクレスと三人で話してるよ。 |
| ミント | ここは元の世界とは違う場所ですから色々お話ししなければならないこともありますし。 |
| アーチェ | 村が襲われたって事も……話すことになるんだよね。 |
| ミント | ……そうですね。 |
| エル | アミィ、猫好きかな ?ルルのことぎゅっとしたらきっと元気出るのに。 |
| ルドガー | 後で聞いてみよう。 |
| エル | うん。 |
| フィリップ | よし、クラトスさんたちに連絡しておこう。クラトスさんも、アミィちゃんのことを気にしていたみたいだからね。 |
| フィリップ | クラトスさん、ゼロスさん、聞こえるかな ? |
| ゼロス | どうした ? |
| フィリップ | アミィが目を覚ましました。治療が上手くいったんです。 |
| フィリップ | ……あれ ?急に通信の状態が……。 |
| フィリップ | 聞こえるかな、ゼロスさん。アミィの治療が上手くいったんだ。 |
| フィリップ | うーん。聞こえてるのかい ?アミィが意識を取り戻したんだ ! |
| ? ? ? | 暗くて……冷たい……。虚無が近づいてくる……。 |
| フィリップ | ! ? |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| ? ? ? | 万華鏡の裂け目を塞がないと……。……でも、力がどんどん拡散して……。 |
| コーキス | マスター ! ? なぁ、マスターなのか ! ? |
| ジュード | これは……どういうことなの ?どうしてイクスが魔鏡通信に……。 |
| アーチェ | もしかして、イクスの心と繋がっちゃってるとか ? |
| フィリップ | ……ああ、そのようだね。通信が混線してるんだ。魔鏡通信は心と魔鏡を繋いで映像を送る。 |
| フィリップ | ヨウ・ビクエに直してもらうまで使えなかったのはこの世界にイクスの力と心が拡散しきって魔鏡通信の力を遮断していたからなんだ。 |
| フィリップ | でもそこをヨウ・ビクエは、その強烈な力で強引に突き抜けるように改良したんだろう。その結果……イクスの心をキャッチしたんじゃないかな。 |
| ミリーナ | ……待って。だとしたら、コーキスならイクスと会話ができるんじゃないかしら。コーキスはイクスの心の一部なんだもの。 |
| フィリップ | 理論的にはそうなるね。 |
| コーキス | 俺、やってみます ! |
| コーキス | マスター ! 俺です、コーキスです !聞こえたら、返事をして下さい ! マスター ! ! |
| ルドガー | ……駄目か。 |
| コーキス | 何でだよ……。 |
| ガロウズ | なぁ、このコハクのソーマだけど魔鏡器具で解析して見ようと思うんだが―― |
| コーキス | マスターってば ! 返事してくれよ ! 会いたいよ ! ! |
| セシリィ | ソーマがまた光り出したわ ! ? |
| コーキス | な……何だ ! ? 左目の奥が刺すように痛い―― |
| ミリーナ | コーキスが ! ? |
| ジュード | 誰か、担架を ! !頭を打ってはいないみたいだけどすぐに医務室へ運ぼう。 |
| コーキス | ……あれ ? ここはどこだ ?ミリーナ様は…… ? |
| コーキス | ミリーナ様 ! カーリャ先輩 ! |
| ミリーナ | コーキス。落ち着いて聞いてね。ここはあなたとイクスの心の世界。そして私はあなたが生み出したミリーナの影。 |
| コーキス | え ? え ? |
| ミリーナ | 現実のあなたは倒れてしまったの。でもそれは、あなたがイクスの心と繋がったから。 |
| ミリーナ | さぁ、行きましょう。この先にきっとイクスがいるわ。 |
| カーリャ | コーキス。しっかり頑張るんですよ ! |
| Character | 6話【7-6 ひとけのない草原1】 |
| コーキス | これが俺とマスターの心の中…… ?何だか不思議なところだな。 |
| コーキス | ミリーナ様、これはどういう原理なんでしょう ?俺も心の具現化で、この場所も心が具現化したようなものなんでしょう ? |
| ミリーナ | ふふ、それを私に聞かれても困るわ。私はあなたが造り出した幻のミリーナなのよ。あなたが知らないことは私も知らないわ。 |
| コーキス | ……そうか。俺が馬鹿だからこのミリーナ様も頭が悪くなっちゃってるのか……。 |
| コーキス | あれ……ミリーナ様と先輩が…… ! ? |
| ? ? ? | ……あははははっ ! |
| コーキス | ――だ、誰だ ! ? |
| コーキス | マ……マスター ! ? |
| イクス | コーキスは馬鹿じゃないよ。おかしな奴だなぁ。 |
| コーキス | 本当に……マスターなのか ?俺が造り出した幻とかじゃなくて ? |
| イクス | ああ、大丈夫。本物だよ。……って、でも証明する方法がないな。どうすればいいんだろう……。 |
| イクス | 俺とコーキスしか知らない秘密……ってそんなのコーキスが造り出した幻なら当然知ってるもんな。 |
| イクス | 弱ったな……。身分証明書……なんて持ってないし本物である証明って案外難しいな。 |
| イクス | 綺麗なジェイドさんの時はルークが見破ってくれたけどベルベットさんの時はどちらもベルベットさんだったし……。 |
| イクス | そもそも何をもって本物というかって定義も曖昧だ。この場合の本物は心だけの存在ではなく―― |
| コーキス | ……あー、もういいや。そのめんどくささ、本物のマスターだわ。 |
| イクス | え ! ? |
| コーキス | でも……よかった。マスター、ちゃんと生きてるんだな。 |
| コーキス | 俺が消えてないから大丈夫だとはわかっていたけど……寂しかったよ……。 |
| イクス | うん、ごめんな。色々任せきりにしちゃって。それにしても……大きくなったなぁ。 |
| イクス | 最初に見たときは、本当にコーキスなのかちょっと不安だったよ。 |
| イクス | でも格好いいな。俺、そういう服とか眼帯とかちょっと憧れてるんだよなぁ。 |
| コーキス | マジかよ ! ? マスターの趣味、微妙だな ! ?この眼帯、超うぜーのに ! |
| イクス | あはは……ごめん……。それで……えっと……ミリーナたちは元気か ? 鏡映点のみんなは ?俺、迷惑かけちゃったから……。 |
| コーキス | ……はぁ。そういうとこ相変わらずだな。みんな、元気にやってるしマスターを助けようと頑張ってるよ。 |
| コーキス | まぁ……ミリーナ様は元気なふりしてるだけだけどさ。 |
| イクス | ……そうだよな。ごめんな。 |
| コーキス | あああ、そうだった。マスターはこういう奴だった。なんでそんな、いちいち謝るんだよ、もー ! |
| イクス | ごめ……じゃなくて、気をつける。そういえばどうして急にコーキスが俺の心の中に現れたんだ ?何が起きてるのか教えてくれないか。 |
| イクス | ここでは、ずっと虚無から届く悲鳴しか聞こえなかったんだ。 |
| コーキス | えっと……上手く伝えられるかわからないけど今までのことを全部話すよ。 |
| イクス | ……そうか。魔鏡通信の出力が上がったのか……。それで……。 |
| コーキス | なぁ、みんなのことばっか気にしてるけどマスターの方は大丈夫なのかよ ? |
| コーキス | マスターの力がどんどん魔鏡結晶になってるって聞いてるぞ。このままだと……。 |
| イクス | あーうん……。そうみたいだな。俺、干からびちゃうかも、あはは……。 |
| コーキス | はぁぁぁぁぁ ! ?そんな呑気なこと言ってる場合かよ ! ? |
| イクス | でもゲフィオン……様の人体万華鏡から溢れる死の砂嵐を食い止める方法が見つからないんだ。俺もずっと考えてるんだけど……。 |
| イクス | ――いや、もしかしたらこれならって思うことはあるにはあるんだけど……。 |
| コーキス | え ! ? ど、どうすればいいんだ ! ? |
| イクス | いや、まだわからないことが多いんだ。何とかして調べることができればいいんだけど石の中にいるようなものだからなぁ……。 |
| コーキス | 何を調べるんだ ? 俺、マスターの代わりに調べるよ !本読むのは苦手だけど……。 |
| イクス | ……コーキスが読む…… ?そうか……もしかしたら……。 |
| イクス | ――なぁ、コーキス。現実の俺のところへ来てくれないか。俺に考えがあるんだ。 |
| コーキス | 壊れたカレイドスコープのところに行けばいいのか ? |
| イクス | ああ。頼む。そこならソーマって言う機械がなくてもきっと―― |
| コーキス | ――え ! ? マスター ! ? |
| ミリーナ | ――コーキス ! ! よかった……。大丈夫 ?どこか痛いところはない ? |
| コーキス | ……夢……じゃないよな。うん……。あれは夢じゃない。 |
| アーチェ | ちょっと……コーキス、あんた大丈夫 ?やっぱ倒れたときに頭打ったんじゃないの ? |
| コーキス | だ、大丈夫だよ ! それよりマスターが呼んでるんだ !マスターのところへ連れていってくれ ! |
| Character | 7話【7-7 ひとけのない草原2】 |
| メルクリア | よくぞ戻ったな、ミトス。ディストの報告ほどの反抗の意思はないようで安心したぞ。 |
| ミトス | ……出来損ないの食虫植物の話はどうでもいい。 |
| メルクリア | 酷いことを言うな。お前のせいで、あのトカゲ男は死ぬのだぞ。 |
| ミトス | まだ生きてるの。図々しい。 |
| メルクリア | 生命維持装置がなければとうに死んでおる。あれは必要なコマじゃ。ファントム同様、死なれては困る。 |
| ミトス | ………………。 |
| メルクリア | 何じゃ……。そんな顔をするでない。わらわが何をした ? そなたが望むものは何でも与えてきたではないか。 |
| メルクリア | マーテルも取り上げようというのではない。父上もダーナ神の言葉が聞ければすぐに解放してくれようぞ ? |
| ミトス | 姉さまをモノ扱いするな ! |
| メルクリア | ――あまり意地を張るとシングやルビアのようになるぞ。 |
| ミトス | ……逆らいはしないさ。それでいいんだろう ? |
| メルクリア | そなたも自分が住む土地を追われた同志じゃ。 |
| メルクリア | わらわはビフレストを……そこに住む人々を甦らせそなたが異世界で造り出そうとした千年王国をこのティル・ナ・ノーグに興す。 |
| メルクリア | そなたの力が必要なのじゃ。決して裏切ってはならぬぞ。よいな ? |
| ミトス | ………………。 |
| メルクリア | ……わらわより年上であろうに子供のような振る舞いじゃな。 |
| メルクリア | もうよい。わらわはこれからラムダの様子を見に行くがそなたも来るか ? |
| ミトス | ――ルキウスに会うの ? |
| メルクリア | うむ。カイウスも誘ったのじゃがカイウスは渋りおってな。あれもルキウスの扱いが気に入らぬようじゃ。 |
| メルクリア | わからぬのぅ……。命を取った訳でなし。生きているなら問題なかろうに。 |
| ミトス | ……可哀想だね。 |
| メルクリア | うむ。生きていることに価値を見い出せぬとは哀れじゃ。 |
| カイウス | ……ミトス、メルクリアに会ったんだろ ? |
| ミトス | ああ……。ルキウスのこと、大丈夫なの ? |
| カイウス | 大丈夫なもんか ! |
| カイウス | でも……メルクリアには言葉が通じないんだ。何を話しても、穴のあいたバケツに水を汲むみたいで……。 |
| ミトス | ……潮時じゃない ?カイウスまで縛られることはない。 |
| ミトス | 血に縛られて、世界に縛られて言葉の通じないお姫様に縛られるの ? |
| カイウス | オレは血に縛られてなんかいない。これがオレだ。ミトスこそ、このままだと本当に言いなりになるしかないだろ。 |
| カイウス | もし……助けを求めるなら、オレが時間を作る。ルキウスのところに一緒に行くふりをしてメルクリアたちを引きつけておく。 |
| ミトス | 姉さまの居場所がわからないと動けない……。クラトスたちが見つけてくれるなら話は別だけど……。 |
| カイウス | それなんだけどさ……。ヒルダとアステルから情報を貰ったんだ。マーテルさんの居場所について。 |
| ミトス | ! ! |
| カイウス | 確証はない。罠かも知れない。それぐらい精度は低いって、二人は言ってた。でも、知らせた方がいいと思って。 |
| ミトス | ……ありがとう。 |
| カイウス | クラトスさんたちにもオレから連絡しておく。気をつけて行けよ。 |
| ミトス | うん。カイウスもね。 |
| Character | 8話【7-10 カレイドスコープ前】 |
| ロイド | 何とかここまで来られたな。 |
| コーキス | ロイド様、ありがとう。わざわざ一緒に来てくれて……。 |
| ロイド | そりゃ、一緒に行くさ。イクスが呼んでるんだろ ?しかもずっと虚無から聞こえる悲鳴を聞いてたって……。 |
| コーキス | うん……。 |
| ロイド | 俺、イクスを助けようとして、虚無に近づいたことがあるけど、あの時聞こえた声はすげぇ嫌な感じだった。呪われるって言うか……。 |
| ロイド | あの人たちはティル・ナ・ノーグの人間だったんだから嫌な感じとか言っちゃ可哀想なんだけどさ。でも……鳥肌が立ったよ。 |
| ロイド | あんな声をずっと聞いてるんだとしたら……やっぱり心配だよ。 |
| ミリーナ | ……その声を聞くのは【私たち】の仕事だったのに。イクス……ごめんなさい……。 |
| ロイド | そんな仕事誰もしなくていい。イクスだってきっとそう思ってる筈だぜ。 |
| ミリーナ | そうね……。イクスならそうよね。 |
| ロイド | ところで、イクスはまだあの鏡の石の中にいるみたいだけど、ここに来てどうやって話をするんだ ?イクスが石の中から声をかけてくるのか ? |
| コーキス | それは……わからないけど……。 |
| ミトス | ――そんなあやふやな情報を元に、ここへ来たの。 |
| ロイド | ミトス ! ? |
| コーキス | ミリーナ様、下がって下さい。 |
| ミリーナ | 大丈夫。コーキスはイクスの声に集中して。ここは私とロイドで―― |
| ミトス | 見くびられたものだね。まだ世界を滅ぼす力を持つ前の鏡士風情が偉そうに。 |
| ミリーナ | ! |
| ロイド | ミトス……。どうしてここに……。 |
| ミトス | それはどっちの意味かな ? この場所に ?それとも、この世界に ? |
| ロイド | お前……この世界でもマーテルを甦らせるために動いてたんだよな。 |
| ミトス | ――姉さまは生きてる ! ! |
| ロイド | この世界に具現化したんだろ。生きてた頃のマーテルを。本当によかったのか ! ? |
| ミトス | 本当に絶望を知らないお前らしい台詞だねロイド・アーヴィング。 |
| ミトス | お前は傲慢だ。ボクらはこんな影の国ですら居場所を求めちゃいけないとでもいうのか ! |
| ロイド | そんなことは言ってないだろ ! |
| ロイド | ここに具現化されるって事は、マーテルはお前以外の大切な人がいない世界に放り出されたって事だぞ ! ?しかもそれを望んだのが弟のお前だなんて。 |
| ミトス | それがなんだ。ボクはもう四千年以上それを望んできたんだ !大体、ボクと姉さまにはお互いしか―― |
| ミトス | ……少なくとも、元の世界にはもうお互いしか残っていなかった。だからここに具現化されたって何も変わらない。それぐらいボクらは孤独だった。 |
| ロイド | ……俺たちといたときも、孤独だったのかよ。ほんの少しだったけど、お前、俺たちと一緒に旅をしただろ ?ジーニアスやリフィル先生と話してたときも ? |
| ロイド | 俺は確かに人間だし、強すぎるって言われることもあるけど、先生たちはお前に寄り添っていたんじゃないのか ? |
| ミトス | ……ジーニアスなんてどうでもいい。リフィルだって、ボクの邪魔をするなら始末するだけだ。 |
| ロイド | お前……まだそんなことを言うのか ! ?ジーニアスは……俺の親友はお前のことでものすごく傷ついたんだぞ ! ! |
| ロイド | ……お前が俺たちの世界でやったこと俺は許しちゃいけないって思ってる。でも……やり直す機会があってもいい。 |
| ロイド | 元の世界でだって、俺たちと一緒にいていいんだ。居場所なんて何処にでもある。 |
| ロイド | もし本当にないって言うなら、俺たちが作る。俺やジーニアスが居場所になるよ。 |
| ミトス | お前が作る居場所なんて反吐が出る。 |
| ミトス | それにそんなこと、ここで論じても無駄だよ。ボクらは帰れない。ボクよりも手ひどく世界を滅ぼした鏡士のせいでね。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| ロイド | わからないだろ ! ……本当に帰れなかったとしてもそれでも何か伝わるかも知れない。ここと向こうは繋がっているのかも知れない。俺は希望を捨てない。 |
| ミトス | 帰れたとしても……ボクの結論は変わらない。お前とは永遠に交わらない。 |
| ロイド | お前が交わる気がなくても、俺は違うぞ !絶対にあきらめない。 |
| ロイド | なぁ、ミトス。世界は変わらなくても自分は変えられるんだぜ ?自分が変われば、世界は変わるんだ ! |
| ナーザ | ……なるほど。これが鏡映点か。強いな。そして傲慢だ。ミトスのいったようにな。 |
| コーキス | お前は……っ ! |
| ミトス | ! ! |
| ナーザ | この場所に侵入者がいると聞いてきてみれば……またお前たちか。それにミトス。メルクリアが悲しんでいたぞ。 |
| ナーザ | ……やはり裏切るのか、と。 |
| ミトス | ……そう。もうバレたんだ。 |
| ミリーナ | ナーザ、あなたのその姿……。それはイクスの体なのよね。 |
| ナーザ | そうだ。災いを呼ぶ滅びの鏡士の体を借りるとはな。本末転倒な話だ。 |
| コーキス | マスターの体を返せ ! ! |
| ナーザ | ――甘いな、鏡精。なるほど、確かに人のような姿をしているが所詮はまがい物か。 |
| ミトス | …………っ ! |
| コーキス | 何だとっ ! |
| ? ? ? | 『やめるんだ、コーキス ! 』 |
| コーキス | ………… ! ? |
| コーキス | (い、今の声は……マスターか ! ? ) |
| ナーザ | ……来ないのか ? まぁいい。ならばこちらから行くぞ。セールンドの鏡士は生きていてはならないのだ。 |
| ナーザ | 鏡精を生み出すおぞましき悪鬼たち。やはりあの戦いは何としても勝たねばならなかった。父上たちがし損じたセールンドの鏡士を、俺が仕留める ! |
| Character | 9話【7-10 カレイドスコープ前】 |
| コーキス | ……やったか ? |
| ナーザ | ……まだ体が上手く動かないな。だが――準備運動としては十分だった。次は本気で行く ! |
| コーキス | しまった……っ ! ? |
| ロイド | コーキス ! 危ない ! |
| ナーザ | 貰った ! |
| ミトス | 空間翔転移 ! |
| ナーザ | ……くっ ! ? |
| ? ? ? | 魔鏡転送陣 ! |
| ミトス | 転送術――メルクリアか ! |
| ミリーナ | メルクリア ! ? ビフレストの ! ? |
| メルクリア | おお ! バルド ! わらわにもできるようになったぞ ? |
| バルド | はい。お見事です。メルクリア様には鏡士としての才がございますね。 |
| メルクリア | うむ。わらわはビフレストの皇女じゃからな。 |
| コーキス | あいつがメルクリア……。 |
| イクス | 『コーキス。先走るな。ゲフィオンが言ってる。メルクリアは危険だって』 |
| コーキス | ……えっ ! ? |
| メルクリア | ……ん ? 何じゃ ? 鏡精というのは一人で百面相をする生き物か ? |
| メルクリア | まぁ、いい。兄上様を危険な目に遭わせるのは許さぬ。それにミトス。――わらわは裏切るなと言ったぞ ? |
| ミトス | ……お前は、姉さまに手を出した。姉さまの心を抜き出したな ! ! 人間の皇女風情が ! |
| ミトス | 現実を歪んだ像でしか捕らえられない哀れなお姫様。せいぜい死者の国でも妄想して果てるんだな ! |
| メルクリア | ――もう貴様はわらわの人形ではないわ ! !自分がしでかしたことの末路を知って悔やむがいい ! |
| ロイド | ……あいつら、何をしにここへ来たんだ ? |
| ミトス | ……ボクを追ってきたんだ。くそっ ! |
| イクス | 『コーキス、ミトスを引き留めよう ! 』 |
| ロイド | おい、何処に行くんだ、ミトス ! |
| ミトス | ……ボクが何処に行こうと勝手でしょ。 |
| コーキス | か、勝手かも知れねーけどもう帝国にも戻れないんだろ。マスターが……俺たちと来た方がいいって……。 |
| ミリーナ | ――え ! ? イクスの声が聞こえるの ! ? |
| コーキス | はい。さっきから俺の中でマスターの声がするんです。マスターが、ミトス……様は帝国の中枢にいた人だから協力をお願いするべきだって。 |
| ロイド | 俺もそう思う。ミトス、俺たちと来いよ。 |
| ミトス | 断る。 |
| ミリーナ | だったら、せめて話を聞かせて。私たちにはわからないことだらけなの。話をする時間ぐらいは与えてくれてもいいでしょう ? |
| ミトス | ………………。 |
| ロイド | さっきマーテルの心を抜き出したって言ってたよな ?マーテルは神降ろしの器にされちまったのか ! ? |
| ミトス | …………姉さま…………。 |
| ロイド | ……ミトス、教えてくれ。クラトスだって、きっと心配してる。 |
| ミトス | …………姉さまを――……姉さまの体を取り戻すまでだ。 |
| ミリーナ | それでもいいわ。ありがとう。ひとまず私たちのアジトへ行きましょう。 |
| ミトス | ……待って。その前に寄って欲しいところがあるんだ。 |
| ミリーナ | もちろん構わないわ。 |
| ロイド | どこへ行くんだ ? |
| ミトス | ノイシュのところ。 |
| ロイド | ノイシュ ! ? あいつもこの世界にいるのか ! ?……っていうか、何でミトスとノイシュが一緒にいるんだ ! ? |
| ミトス | ……別にいいでしょ、そんなことどうだって。 |
| リフィル | ミリーナ。聞こえるかしら。救世軍から連絡が入ったの。至急アジトへ戻ってもらえないかしら。 |
| ミリーナ | ――あ……。でも……。 |
| ミトス | ……いいよ。だったら一度お前たちのアジトに寄ろう。 |
| リフィル | ――ミトス ! ? |
| ミトス | ………………。 |
| ミリーナ | えっと……詳しいことは戻って説明しますね。 |
| リフィル | ……ええ、わかったわ。気をつけてね。 |
| ロイド | よし、それじゃあ引き上げるか。早くノイシュにも会いたいしさ。 |
| コーキス | (俺……何もできなかった) |
| コーキス | (ミトスに助けられて、どうしてマスターの声が届いたかもわからない。ロイド様みたいに強い信念もないしミリーナ様みたいに冷静でもない……) |
| コーキス | (じゃあ、俺は何をすればいい ?どうしたら……役に立てるんだろう) |
| コーキス | (考えろ、俺。馬鹿でもまがい物でもマスターの鏡精として、恥ずかしくないようにもっと頑張るんだ……) |
| Character | 10話【7-11 ひとけのない草原】 |
| ミリーナ | ――お待たせ。救世軍からソーマの解析に人が欲しいと言われたわ。私も、もう一度ケリュケイオンへ行った方がよさそう。 |
| ミリーナ | コーキスが聞いているイクスの声のことをちゃんと知ってからだけれどね。それに、ミトスのこともあるし……。 |
| ミリーナ | そうそう。リフィルさんたちにも事情を説明したわ。ミトスはリフィルさんと話があるから少し待ってくれって。 |
| ロイド | ミトスか……。何か、不思議な気分だよ。あのミトスが……俺たちと一緒にいるなんて。 |
| ロイド | この気持ちってクレスの世界の話を聞いたときとも似てるな。 |
| ミリーナ | ああ……。とても似ているんですってねロイドの世界とクレスさんの世界って。 |
| ロイド | そうなんだよな。エターナルソードとか、精霊とか、世界樹とか。 |
| ロイド | あとデリスエンブレムも、だな。ミリーナ、覚えてるか ? |
| ミリーナ | ええ。クレスさんたちが元の世界で持っていた物よね。ダオスという人のところに行くのに必要だったとか。チェスターと出会ったときに教えて貰ったわよね。 |
| ミリーナ | カレイドスコープの封印にも使われていたわ。 |
| ロイド | それが俺たちの世界にもあるらしいんだ。ラタトスクの話だと、あいつが作ったものなんだって。 |
| ミリーナ | ラタトスクはロイドたちの世界の未来から来た精霊なんですものね。だったらロイドの世界にもあるってことよね。 |
| ミリーナ | そう……そんなに共通する物が……。 |
| ロイド | デリスエンブレムの話を聞いたとき、なんか……胸がざわっとしたっていうか……。リフィル先生もまずいコーヒー飲んだみたいな顔してたしなぁ……。 |
| コーキス | でもざわっとするのは当然じゃないのか ?確かミトス様って、ロイド様の世界をぐちゃぐちゃにした張本人なんだろ ? |
| ロイド | ぐちゃぐちゃか……。うん……。そうだな。酷いことをたくさんした奴だってことは間違いない。 |
| ロイド | だけど、大昔は勇者って呼ばれてた奴なんだ。俺たちの世界には差別があって……。ミトスはずっと迫害されてきた側だった。 |
| ミリーナ | リフィルさんに聞いたことがあるわ。ハーフエルフが差別されている世界なんだって。 |
| ロイド | ……うん。だからミトスもつらい思いをしてきたんだと思う。 |
| ロイド | 俺には……想像することしかできないけどでもつらかったんだろうなってことはわかる。 |
| ロイド | それでも……やっぱりあいつのやったことは間違ってる……とも思うんだ。 |
| ミリーナ | ……ミトスはわかっているんじゃないかしら。私は――正確には私ではないけれどゲフィオンがしてきたことを知っているわ。 |
| ミリーナ | この世界を滅ぼしてしまった。その時のとてつもない後悔が、ゲフィオンを突き動かしていた。 |
| ミリーナ | その後にやろうとしたことも……褒められたことではないと思うの。間違っていると言われれば否定はできない。 |
| ミリーナ | でも、ゲフィオンは気付いていて飲み込んでいたんじゃないかしら。そうするしかないと。 |
| ミリーナ | ミトスも……まったく同じとは言わないけれど似た感情はあるんじゃないかしら。 |
| ロイド | ……そうだな。あいつさ、コーキスを庇っただろ ? |
| コーキス | ああ……。ミトス様が助けてくれなきゃ、俺……危なかった。 |
| ロイド | あいつ、多分ナーザに怒ったんだ。コーキスのこと、まがい物って言っただろ。そういうとこ……あるんだなって。 |
| ロイド | だから、あいつは平行線だって言ったしきっとそうなんだろうけど……。 |
| ロイド | でも……ここが異世界だからこそ、万に一つの可能性を信じてもいいんじゃないかって思うんだ。 |
| リフィル | ――みんな、ミトスを知らない ? |
| ミリーナ | え ! ? リフィルさんとお話ししていたんじゃないんですか ? |
| リフィル | それが……私が飲み物を取りに行っている間にいなくなってしまったの。 |
| イクス | 『コーキス。ミトスはアジトを抜け出した。――あれは……どこだ ?魔物とカーリャと一緒に森の奥にいるのが見える』 |
| コーキス | 大変です ! マスターがミトス様を見つけました。カーリャ先輩と何かの魔物も一緒みたいです ! |
| ミリーナ | カーリャに無理矢理出口を作らせたのね。 |
| ミリーナ | ……私は追いかけられないわ。カーリャがいないなら私が残らないと、この仮想鏡界は維持できないの。コーキス、追いかけて ! |
| コーキス | もちろんです。 |
| ロイド | ――いや、俺が行く。俺が行かなきゃいけないと思うんだ。 |
| Character | 11話【7-13 森の奥の草原】 |
| マーテル | ……ミトス。 |
| ミトス | 姉さま……。ごめんね、つらい思いをさせて。でももう大丈夫だよ。今度こそ、姉さまを守るから。 |
| マーテル | ミトス……。つらい思いをしたのはあなたでしょう ?ごめんなさいね、ずっと一人にして……。 |
| ノイシュ | ワォーーーン……。 |
| ミトス | (ノイシュの声……。どうしてノイシュの声が…… ?) |
| ミトス | ……あれ ? ここは一体……。 |
| ノイシュ | きゅーん……。ワフッワフッ。 |
| ミトス | ふふ、そうか。お前の不思議な力のせいだね、ノイシュ。 |
| ミトス | お前のプロトゾーンの力が、ボクを一時的に未来に追いやったんだ。違う ? |
| ノイシュ | ワフッワフッ ! |
| ロイド | ……ミトス、それにノイシュも。ここにいたのか。 |
| ミトス | ………………。 |
| ロイド | アジトからいなくなったからみんな心配してるぞ。 |
| ミトス | ……そう。もう少ししたら戻るよ。 |
| ロイド | ……ミトス。 |
| ロイド | お前がマーテルさんを助けるために命を削る覚悟で俺たちのところに来たのはわかってる。 |
| ロイド | でも……俺は、お前の本心が聞きたい。 |
| ミトス | ロイド……。 |
| ミトス | (ああ……そうだ。姉さまを助けるためにボクはまたボクであることをやめようとしたんだ) |
| ミトス | (いや、ボクらしい選択なのか……) |
| ミトス | (どこまでも無駄なあがきをしてあきらめきれない……) |
| ミトス | (あの時だってそうだった。もう四千年以上も前まだ姉さまもクラトスも一緒だった頃……) |
| ミトス | ……どうして。ボクたちの言葉にほんの少しでも耳を貸してくれていればこんなことにはならなかったのに。 |
| マーテル | ミトス……。 |
| ミトス | ヘイムダールでもそうだった。ボクらとは関わり合いのない事件も全部ボクらの責任にされて |
| ミトス | ハーフエルフが厄災の原因だって村を追われて…… ! |
| クラトス | ミトス……。 |
| ミトス | シルヴァラントはハーフエルフを重用していると聞いて行ってみたけど、奴隷同然の扱い…… ! |
| ミトス | テセアラだって、他の国だって、みんなハーフエルフを追い立てる ! |
| クラトス | ミトス……泣くな……。 |
| ミトス | それならボクたちはどこへ行けばいいの ! ? |
| ミトス | (あの時からボクはあきらめないことを選んだ) |
| ミトス | (選んで選んで、選び続けて、いつの間にか――こんなところまで来てしまったんだ) |
| ロイド | なぁ、ミトス。元の世界で俺たちを監視するつもりで近づいたんだよな。 |
| ロイド | だとしても、ジーニアスのことは本当に友達だと思ってたんだろ ?そうだよな ? |
| ミトス | ……さあね。 |
| ロイド | ――ふざけろっ ! 本当にあいつの気持ちを踏みにじったっていうなら俺はお前を許さない ! 許せない ! |
| ミトス | だったら、ボクを追い出すの ? |
| ミトス | メルクリアのことやリビングドールのことお前たちが今一番知りたいであろう情報を持っているのはボクだよ ? |
| ミトス | それとも感情を優先するの ?アハハ、だとしたらとんだ大馬鹿野郎だね。父親そっくりの大馬鹿野郎だ。 |
| ロイド | ――……許さないし、許せない。 |
| ロイド | でも……俺はお前が助けを求めてきたことを知ってる。だからここにいればいい。 |
| ミトス | ………………。 |
| ロイド | 元の世界でお前がしてきたこと俺には理解できない。 |
| ロイド | でも――お前が本心を話してくれれば……。どうしてそうするしかなかったのか話してくれれば……。そうしたら……。 |
| ミトス | ボクが許しを請うと……思っているの ?馬鹿馬鹿しい。 |
| ロイド | 誰もそんなこといってない。 |
| ロイド | お前がやるべきなのはもう一度やり直すことだ。信じることだ。それが償うことになるって俺は思う。 |
| ミトス | ……っ ! |
| ロイド | この世界でお前がやり直しても、元の世界では何も変わらないのかも知れない。 |
| ロイド | でも、この世界でお前がやり直せたら今のお前の未来だって変わるだろ。 |
| ミトス | ボクは……変わらない。 |
| ロイド | だったら変わらなくてもいい。やり直すんだ。 |
| ロイド | 俺は元の世界で勇者ミトスの話を聞いてきた。墜ちた英雄ミトス・ユグドラシルって。 |
| ロイド | でもさ、墜ちたらまた飛べばいいだろ。お前がそうすると決めればまた飛べる。 |
| ミトス | ……そういう綺麗事は大嫌いなんだよ !正義ごっこはうんざりだ。知ってる ?綺麗過ぎる水に魚は棲めないんだ。 |
| ロイド | 忘れるなよ。俺はお前を許さないって言ってるんだ。 |
| ロイド | 俺は正義なんかじゃないし正義って言葉は一番嫌いだ。第一、俺は俺自身が濁ってるって知ってる。 |
| ロイド | でもそれだからお前の言う綺麗事を口にするんだ。 |
| ミトス | ――平行線だね。いいよ、ならこうしよう。ボクを倒して見せてよ。どれだけ魂が薄汚いのか、ボクに見せてよね。 |
| ミトス | それでお前を――お前たちを見定めてやるよ。 |
| Character | 12話【7-13 森の奥の草原】 |
| ミトス | ……フ……フフ……。 |
| ロイド | ミトス…… ? |
| ミトス | ……不思議だね。元の世界でボクたちはこんな風に――戦うのかもしれない。 |
| ミトス | そしてその結果は―― |
| ミトス | (……そうだ。ボクは知ってしまった。遠い故郷でボクが敗れたことを……) |
| ミトス | (その後、ロイドがどう生きようとしたのかを) |
| ミトス | (もし、この世界の記憶を持ってあの大地に戻れるのなら――) |
| ミトス | (ああ……それでもボクは自分を曲げはしないだろう。やり直すには、あまりに遅すぎた) |
| ミトス | (そしてきっとあの世界でもロイドはボクに言うんだろう。やり直せると) |
| ミトス | ……お前は、ボクの影だ。 |
| ロイド | え ? |
| ミトス | あきらめず前を向いて馬鹿みたいにひたすら歩いていく。ボクの選ばなかった道の最果てにいる存在。 |
| ロイド | だったら、ここでは選ばなかった道を選んでみろよ。 |
| ロイド | 一緒に歩こうぜ。 |
| ミトス | ………………はぁ。 |
| ロイド | な、何だよ。 |
| ミトス | ……そういうだろうと思ったよ。お前、つまらないよ。想像通りの言葉しか吐き出さない。 |
| ロイド | な、何だよ ! 仕方ないだろ !俺国語苦手なんだし……。 |
| ロイド | ! ! |
| ミトス | 許してもらおうとは思わない。でもお前なら、メルクリアを止められるかも知れない。 |
| ロイド | 一緒に飛ぶ気になったんだな。 |
| ミトス | 羽根も生えてないくせに偉そうに言わないでよね。 |
| ロイド | 仕方ないだろ。俺は天使じゃないんだから。 |
| ミトス | ……それは、お前が母親の形見の輝石を使いこなせていないだけだよ。何かきっかけがあればきっと飛べる。 |
| ミトス | ……いや、天使になんてならない方がいいのかもね。天使は裏切り者が多いから。 |
| ロイド | え ? |
| ミトス | ――ボクは見ているから。お前が本当に自分が信じる生き方を貫けるのか。 |
| ロイド | ああ、見てろ。俺はあきらめないからな。 |
| ノイシュ | ワフッ ! |
| ? ? ? | むぎゅゅゅゅゅ ! ! ! ! ! |
| ロイド | ……何だ、今の声 ? ノイシュか ? |
| ミトス | ああ……忘れてた。今さるぐつわをほどくよ。 |
| カーリャ | 何なんですか ! ? いくらカーリャが美少女だからって誘拐するのは駄目ですよ ! ? |
| カーリャ | も~ ! ! せっかく外に出られたと思ったらこんなの酷いです~っ ! ! |
| ミトス | ……フフ。ごめんね。 |
| カーリャ | ぐぅぅぅ、素直に謝られると怒れないじゃないですか !それにロイドさまも酷いです !カーリャのこと、心配じゃなかったんですか ! ? |
| ロイド | いや、だって、カーリャは無事だってイクスが言ってたらしいから。 |
| ミトス | ……待って。この場所、どうやって見つけたの ?コーキスを通じてあのイクスって奴が教えたの ? |
| ロイド | ああ、そうだ。何か、世界中の魔鏡結晶を通じて見えるとか感じるとか……。 |
| ミトス | ――ロイド、アジトに戻ろう。イクスに姉さまの体がある場所を見つけてもらう。 |
| ロイド | え ! ? ちょ、ちょっと待ってくれ。一体どういうことだよ。 |
| ミトス | ボクは姉さまがいると聞いてセールンドの城へ行ったんだ。 |
| ミトス | でもそこにいたのは姉さまじゃなくて姉さまの心――心核だった。 |
| ミトス | だから心核は回収したけれど、体を取り戻さないとボクはお前たちを裏切ることになる。 |
| ロイド | そんな正面から裏切るって言われるの裏切りじゃなくて表切りだろ……。 |
| ロイド | それに魔鏡結晶がないところにマーテルさんの体が隠されてたら、イクスでもわからないんじゃ……。 |
| ミトス | どうでもいいことで頭が回るね、お前は。でも、そのどうでもいいことの後の指摘は正しいよ。 |
| ミトス | ただ、魔鏡術や魔鏡技術は、魔鏡結晶の近くで行う方が効率がいいらしい。それに心核を失った体は時間が経つと消滅してしまうそうだ。 |
| ミトス | だから心核を奪った姉さまには、何らかの処置が施してあるはずだし、安全に隠すなら魔鏡結晶の傍に置くはずだ。 |
| カーリャ | 今の話、ミリーナさまにも伝えました ! |
| ミトス | いい子だね、カーリャ。よし、イクスに場所をサーチさせて、ボクらは直接そこへ向かおう。カーリャはノイシュと一緒にアジトに戻って。 |
| カーリャ | りょ、了解です ! |
| ミトス | ロイド、少しは役に立ってくれるんだろうね。 |
| ロイド | 当たり前だ ! |
| Character | 13話【7-15 キラル純結晶精製所】 |
| チェスター | ……おい。本当にここだって、イクスは言ってるのか ? |
| コーキス | ああ。ミトス様から聞いたマーテル様の特徴によく似た人がここにいるってマスターが……。 |
| コレット | マーテル様と会えるんだ……。ドキドキしてきちゃった。私、マーテル様になるかもしれなかったから……。 |
| リフィル | そうね……。信仰の対象だった――神だとされてきた女性に、まさか会うことになるなんてね。 |
| クレス | そちらでは女神と呼ばれていたんですよね。僕らの世界の精霊と同じ名前の女の人か……。 |
| クレス | ロイドたちの世界は僕たちの世界の鏡写しみたいだ。完全に一致する訳じゃないけど、限りなく近い……。 |
| ミント | 不思議ですね。まさか異世界でこんな気持ちになるなんて思いませんでした。 |
| チェスター | それによ。似てるだけに、他人事には思えねぇんだよな。 |
| チェスター | ロイドの世界の奴が困ってるなら助けてやらねぇとってさ。 |
| リフィル | ……ありがとう。そうね。私たちの世界とあなたたちの世界は一種の並行宇宙なのだと思うわ。 |
| リフィル | これだけ様々な世界があるなら、並行宇宙の人々と接触するなんてたいしたことじゃないように思えてしまうもの。 |
| コーキス | でもチェスター様、アミィ様はいいのか ? |
| チェスター | まぁ……アーチェとクラースが見ててくれるって言うしエルも気にかけてくれてるしな。 |
| チェスター | それにアミィをあんな目に遭わせた奴らに一矢報いてやらねぇと気が済まねぇ。 |
| チェスター | ミトスも……まぁ、四幻将としては一応、仲間、だったしよ……。 |
| チェスター | ま、つまりこういうことだ。勇敢にも敵に立ち向かわんとする流浪の戦士たちが今一同に―― |
| ミトス | ……相変わらずその変なナレーション癖が抜けないんだ。 |
| コーキス | うおっ、ミトス様とロイド様。 |
| ロイド | お待たせ、みんな。 |
| コーキス | よし、これで全員そろったな。 |
| イクス | 『――コーキス、気をつけろ。俺……ナーザがいる。なんか、変な気分だよ。あれ……最初の俺の体なんだよな』 |
| イクス | 『自分の死体を見るだけでもあり得ないのに、死体が動いてるって……』 |
| コーキス | マスターが……中にナーザがいるって言ってる。メルクリアに転送された筈なのにまた戻ってきたのかな。 |
| コーキス | もしかして、メルクリアも近くに……。 |
| イクス | 『いや、他に人はいないみたいだよ』 |
| コーキス | ……いや、他に人はいないって、マスターは言ってる。マーテル様とナーザだけみたいだ。 |
| ミトス | ……カレイドスコープの間で、ナーザがタイミングよく現れたのが気にかかるけど。 |
| リフィル | 逆かしら……。ナーザの目的はこちらだった、とか ?だとしたら、転送されようが負傷しようがすぐに引き返して、ここに来るでしょう。 |
| イクス | 『それにしても、あの服と髪型ちょっと格好いいな。俺もあんな格好してみたいよ。顔が同じだからああいう格好も、似合うかも知れないよな』 |
| コーキス | あー、駄目だ。マスター、全然緊張感ねーわ……。 |
| クレス | え ? イクスは何を言ってるんだい ? |
| コーキス | いや、聞いたらみんな怒りそうだから俺の胸の中に留めておく。 |
| イクス | 『ごめん……コーキス。でも今ならいける。マーテルさんを助けてあげてくれ』 |
| コーキス | わかったよ、マスター。 |
| コーキス | ――みんな、行こう ! |
| ナーザ | ……チッ。お前たちか。どうしてここがわかった。 |
| コーキス | 答える義理はない。それよりマーテル様を返せ ! |
| ナーザ | ……返すも何も、元々マーテルはこちらが具現化した鏡映点だ。お前たちに渡す義理はない。それにマーテルに生きていられると迷惑でな。 |
| ミトス | 何…… ! ? |
| ナーザ | 俺がデミトリアスと同じ意思で動いていると思い込んでいたようだな。だがあいにくと俺はセールンド王国の連中に与するつもりはない。 |
| コーキス | お前の目的は何なんだ ! ?ビフレストを甦らせたいんじゃないのか ! ? |
| ナーザ | それは愚かなメルクリアの世迷い言。デミトリアスもそんな戯言を真に受ける愚か者に過ぎない。俺にとっては呆れた大罪人だ。 |
| ナーザ | 多少の遊びには付き合ってもやるが奴らがダーナのゆりかごを壊すなら奴らは俺の敵になる。 |
| リフィル | ダーナのゆりかご ? それは何 ?何を指している言葉なの ? |
| イクス | 『気をつけろ ! ナーザの義手がマーテルさんの方を狙ってるぞ ! 』 |
| コーキス | ――マーテル様が危ない ! |
| ナーザ | 俺の動きを読んだ ! ? お前、一体―― |
| ミトス | やらせるか ! ! |
| Character | 14話【7-15 キラル純結晶精製所】 |
| コーキス | この前と同じだ。あと一歩、攻撃が届かない ! |
| ミトス | ……くっ、これだけ叩けば、普通は崩れる筈なのに―― |
| ナーザ | 死体の便利なところはな。物理的な痛みが鈍く感じられることと力をいくらでもチャージできることだ。 |
| ナーザ | その点はこの体に感謝する。 |
| イクス | 『コーキス。ゲフィオンから伝言だ。俺にはわからないこともあるから、そのまま伝えるぞ』 |
| イクス | 『その目はイクスと繋がっている。自分のアニマとイクスのアニマを重ねて合わせて、死を放て。それこそが鏡精に与えられた禁断の魔眼だ』 |
| コーキス | (俺は……知ってる。魔眼……。俺のアニマがその言葉に反応した。死の魔眼……。決して使ってはいけない力。でも――) |
| ナーザ | ここで、マーテル共々死滅しろ ! ! |
| コーキス | 俺は……みんなを守る ! |
| コーキス | この力を使ってでも !お前を倒す ! |
| ナーザ | 魔眼 ! ? それは―― |
| コーキス | 瞬撃・幻魔真眼 ! ! |
| ナーザ | ぐぉぉぉぉおおおおおっ ! ? |
| コーキス | ……ぐぅ…… ! |
| コレット | コーキス ! ? しっかり ! ! |
| ミント | いけない…… ! セイントエンブレイス ! |
| リフィル | 駄目だわ、まだ足りない。ものすごい勢いで体力が減っていくわ ! |
| リフィル | リカバー ! |
| ロイド | ナーザは―― |
| ナーザ | ……せめて……鏡精を道連れに ! |
| ミトス | ボクがとどめを刺す ! |
| ナーザ | 邪魔だぁっ ! ! ! |
| ? ? ? | ミトス、危ない ! ! |
| ? ? ? | あぁ―――――― ! ! |
| ミトス | 姉さ……ま…… ?うそ……だって……姉さまの心核はボクが……。だから姉さまが動けるはずが……。 |
| ナーザ | く……くく……。メルクリアの言葉を忘れたか……。貴様が盗み出した心核は……前回の器の鏡映点の物…… |
| ナーザ | この【現実】こそが……貴様の末路だ―― |
| マーテル | ……ミトス……。ごめんなさ……い……。あなたを……また一人にしてしま…… |
| ミトス | 嘘……嘘だ……。嫌だよ姉さま……。どうして……こんな……【二度】もこんな…… ! ? |
| マーテル | さよな……―― |
| ミトス | 姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ? |
| | to be continued |