| Character | 1話【8-1 ひとけのない草原1】 |
| ゼロス | …………。 |
| クラトス | 疲れたか ? |
| ゼロス | ちげーよ。アミィちゃんが目覚めたって聞いても俺たちはイクスの混線騒ぎからそのままセールンド行きだぜ ? |
| ゼロス | 一目アミィちゃんに会いたかった~って思ったらため息も出るでしょーよ。 |
| シンク | ふーん。女好きが高じるとあんな子供にも手を出したくなるんだ。変態だね。 |
| ゼロス | はぁ~ ? シンくんはわかってねぇなぁ。俺さま、がきんちょには興味ねーのよ。10年後のロマンチックな再会に期待してるの。 |
| シンク | 期待って裏切られるために存在するものだよね。ご愁傷サマ。 |
| ゼロス | ……色々言いたいことはあるが今は空を飛んでる最中だから、胸に秘めとくわ。 |
| マーク | 大人だねぇ、ゼロスくんは。――それにしても、なんでそんなにアミィを気にするんだ ? |
| ゼロス | ……さーて、何でだろーな。チェスターがアミィちゃんのために必死なのを見て思い入れができちまった……ってところかな。 |
| ゼロス | ……チェスターみたいな兄貴を持った妹は幸せなんだろうな。 |
| クラトス | ………。 |
| ゼロス | ま、可愛いアミィちゃんとのご対面は帰ってからのお楽しみってことで我慢するわ。イクスの呼び出しを放っておくわけにもいかねぇし。 |
| マーク | そうしてくれ。フィルからの通信じゃ、コーキスたちもセールンドへ出発したって話だ。俺たちも早いとこ合流した方がいい。 |
| マーク | ただでさえ魔鏡通信の混線だの、コーキスがぶっ倒れただの、妙なことが続いてる。イクスにも何が起こるかわからないしな。 |
| ? ? ? | ……るか ? ……さん ! |
| ゼロス | おいおい、このタイミングで魔鏡通信って !混線じゃねえよな ? |
| クラトス | いや、これは……。 |
| カイウス | あ、クラトスさん ! これ、繋がってるか ?オレ、使い方間違ってないよな ? |
| クラトス | カイウスか。大丈夫だ。ちゃんと通信できている。 |
| カイウス | 良かった。この鏡すごいな !――っと、そんな場合じゃなかった。 |
| カイウス | マーテルさんについて、新しい情報がある。それと……ミトスを助けて欲しい。 |
| クラトス | ミトスだと ? 何があった。 |
| カイウス | マーテルさんがセールンドにいるってわかったんだ。それでさっきミトスが向かった。 |
| ゼロス | マジかよ ! ? 俺さまたちも今セールンドへ向かってるところだぜ。 |
| カイウス | そうか ! それならミトスと合流できるな。 |
| カイウス | あ、でも……もしかしたら、マーテルさんは心核を抜き出されているかもしれなくて……。 |
| クラトス | ―― !どういうことだ。詳しく聞かせてくれ。 |
| カイウス | あ、ごめん。ちゃんと報告しないとな。 |
| カイウス | 情報だと、セールンドにいるマーテルさんはもう心核を抜きとられているかもしれない。 |
| カイウス | だとしたら、心核は城のカレイドスコープの間にある地下の保管庫に収められてるだろうって話だった。 |
| カイウス | でも、この情報をくれたアステルやヒルダは、情報の精度も低いし、裏付けも弱いから、罠かもしれないって。 |
| ゼロス | おいおいおい、何だよそれは。めちゃめちゃヤバそうじゃねーのよ。 |
| カイウス | うん……正直、オレも罠じゃないかって疑ってる。 |
| マーク | 確かに、海鳴りの神殿で待ち伏せされてたって前例もあるからな。 |
| シンク | ああ。いけ好かない『高貴な虎』サマにね。 |
| クラトス | カイウス、ミトスは罠である可能性を知っているのか ? |
| カイウス | もちろん、ちゃんと話したよ。それをわかってて、あいつはセールンドへ向かった。 |
| カイウス | だから……頼む。助けてやって欲しい。ミトスは、オレがこの世界に来て、最初にできた友達なんだ。 |
| カイウス | 友達が苦しむ姿なんて、これ以上見たくないよ。 |
| クラトス | ……そうだな。ミトスのことは任せてくれ。それで、お前はこれからどうするつもりだ ? |
| カイウス | オレは、ミトスのことがバレないようになるべく時間を稼いでみる。 |
| カイウス | あいつが裏切ろうとしているのは、遅かれ早かれメルクリアに伝わっちまうだろうしさ。 |
| クラトス | そうか、くれぐれも気をつけろ。必要があれば、いつでも連絡をくれ。 |
| カイウス | ああ、ありがとう ! |
| クラトス | それと……、ミトスを友人と言ってくれて感謝する。 |
| カイウス | そんなの当たり前だろ !じゃあ、クラトスさんたちも気を付けて。 |
| カイウス | (……さて、メルクリアはルキウスの所だったな) |
| カイウス | (……ルキウス。いつか絶対に、お前のことも……) |
| Character | 2話【8-2 ひとけのない草原2】 |
| マーク | まずいことになったな。早いとこフィルやミリーナにミトスのことを知らせないと―― |
| クラトス | ……いや、少し待ってもらえるだろうか。考えをまとめたい。 |
| マーク | 考えるって何をだよ。 |
| クラトス | ……セールンドにマーテルの心核があるという話が罠だとしたら、それを仕掛けた奴の意図はなんだ。何故、そのようなことをする必要があるのか――と。 |
| ゼロス | そりゃ……ミトスが裏切ってるか確認するためのエサなんでねーの ?あの、海鳴りの神殿の時と同じでさ。 |
| マーク | ああ。ミトスを試してるってことだな。 |
| クラトス | 試す……。そもそも、そこから腑に落ちない。 |
| マーク | なんだよ、引っかかってることがあるならはっきり言ってくれ。 |
| クラトス | ……一時的とはいえ、何故、ミトスはメルクリアに力を貸したのだろう。 |
| ゼロス | ああん ? どういうことだ ? |
| クラトス | 力を貸すということは、ミトスなりの好意や同情があったはずだ。逆に言えば、そういったものがなければミトスは相手を信じない。 |
| クラトス | ましてや、信じぬ相手が仕掛けた罠に、それと知って飛び込むほど無鉄砲でもない。 |
| クラトス | マーテルを使って自分を試し、更には陥れようと企む相手など、はなから信じて受け入れる筈がないのだ。 |
| ゼロス | あ~……つまり、ミトスが好意だか同情だかを寄せたメルクリアと、今のメルクリアの行動には、矛盾があるっていいたい訳 ? |
| クラトス | 矛盾、というよりは違和感だな。故に、今思いつくのは二つ。 |
| クラトス | メルクリア自身が、ミトスをも懐柔し手のひらで転がすほどの手腕を持っていたか。 |
| クラトス | もしくは幼いメルクリアを、今現在のような行動へと駆り立てる第三者の存在があったか。 |
| ゼロス | まあ、メルクリアの年齢を考えると第三者の方がしっくりくるわな。 |
| クラトス | ここで最初の疑問に戻るぞ。もし第三者の場合、何故マーテルを使ってミトスを罠にはめる必要があったのか、その意図だ。 |
| クラトス | ミトスを裏切らせたいのか。それとも狙いは別に………。 |
| クラトス | ……まさか、な。 |
| ゼロス | どうした、クラトス。 |
| クラトス | いや、考え過ぎかもしれないが、狙いはミトスではなく、マーテルの方なのでは、と……。 |
| マーク | マーテル ? それって何の意味があるんだ ? |
| ゼロス | マーテルは帝国が捕まえてるんだぜ ?なのに、マーテルを狙うためにミトスを裏切らせるって意味わかんねーでしょーよ。 |
| クラトス | そうなのだが……。 |
| マーク | ……よし、わかった。どうしても引っかかるなら、ミリーナたちとは合流しないで独自に動いてみるか。 |
| マーク | ただし、フィルにだけは情報を共有してもらう。その上で、セールンドに潜入して帝国の動きを確認するっていうのはどうだ ? |
| クラトス | ああ。すまないがそうさせてくれ。 |
| ゼロス | とすると、もうしばらくはケリュケイオンに帰れねぇのかよ……。ますますアミィちゃんの笑顔が遠のくぜ。 |
| シンク | あの子にとっては幸せなんじゃない ? 病み上がりに、バカ神子のバカ面を見なくて済んでさ。 |
| ゼロス | かもな。代わりにシンくんのカワイイお顔でも見せてあげたらいいんじゃねーの ?その『謎の美少年拳士』の仮面を外してよ。 |
| シンク | ……いいねぇ。ボクが仮面を外したらボクと同じ世界から来た連中がどんな顔をするか楽しみすぎてゾクゾクするよ。 |
| マーク | シンク、ゼロス。その辺にしておこうぜ。クラトスに雷落とされるのは嫌だろ ? |
| 二人 | …………。 |
| クラトス | 別に雷など落とすつもりはない。これ以上遊びが過ぎるのなら置いていくだけだ。 |
| マーク | ……だとよ。クラトスを単独行動させたらフィルに怒られるからな。シンクもゼロスもお口チャックで頼むぜ ? |
| Character | 3話【8-4 ひとけのない草原4】 |
| カイウス | おーい、メルクリア ! |
| メルクリア | おお、カイウスではないか。 |
| カイウス | フレ――じゃない、バルドも一緒なのか。 |
| バルド | 表向きはフレンで通っているんだ。フレンで構わない。 |
| カイウス | ……オレが構うんだよ。 |
| メルクリア | どうした、カイウス。ここには来ないのではなかったか ? |
| カイウス | あ、いや、そのな……。 |
| メルクリア | うむうむ、言わぬでもよい。やはり弟のことは気になるか。美しき兄弟愛じゃの。なあ、バルド。 |
| バルド | はい。カイウスは情に厚く、メルクリア様にとっても良き臣下かと。 |
| カイウス | …………。 |
| メルクリア | なんじゃ、うつむきおって。照れておるのか ?賛辞は惜しみなく受け取るがよい。それだけの価値が、そなたにはあるのじゃからな。 |
| カイウス | オレに ? |
| メルクリア | うむ。そなたや、ルキウスにミトス。リチャードやラムダにも。 |
| メルクリア | そなたらの存在があったからこそ、リビングドール計画は生まれた。 |
| メルクリア | これが成功すれば、皆が幸せになれる。故に、わらわはそなたらに感謝しておるのじゃ ! |
| メルクリア | まぁ、そなたはルキウスの扱いに思うところがあるようじゃが。 |
| カイウス | ……やっぱり、ルキウスは今も眠らされたままなのか。 |
| メルクリア | 仕方なかろう。そうでなければ、ラムダが暴れて手が付けられぬ。 |
| メルクリア | ゆくゆくはラムダが望む体を用意してやるつもりじゃが父上様はラムダを解き放つことに反対しておるでな。今はルキウスごと封じておかねば。 |
| メルクリア | ことが成就したあかつきには、そなたの大事なルキウスと共に、わらわの下で仲良く暮らすがよい。 |
| カイウス | ――ルビアも一緒に……って訳にはいかないか ? |
| メルクリア | ルビア ?……裏切り者のことなど知らぬわ。 |
| カイウス | ―― ! |
| メルクリア | あやつのせいで、一時的とはいえ大事な計画が滞ってしまったのじゃぞ ! |
| メルクリア | せっかくわらわが良くしてやったのに、勝手な振る舞いをして……。 |
| カイウス | そりゃ、ルビアはじゃじゃ馬だし突っ走りがちなとこがあるけどさ、あいつは、メルクリアやみんなのことを考えて―― |
| メルクリア | 知らぬ、知らぬ !あーあー聞こえんのじゃ ! |
| バルド | メルクリア様……。 |
| メルクリア | 酷いぞカイウス ! 先ほど、わらわの後を追いかけてきた時は、子犬のように愛らしかったのに、いきなり噛みつくようなことを……。 |
| バルド | メルクリア様、カイウスも悪気があったわけではありません。心優しいだけなのですよ。 |
| バルド | ですが、カイウスの話からすると、ルビアはずいぶんと気性が荒い娘のようですね。 |
| バルド | また何かしでかしていなければよいのですが……。 |
| メルクリア | 安心せよ。リヒターからは何の報告もない。ちゃんと研究所に囲っておるわ。 |
| カイウス | ――え ? 研究所って……リヒターがいる精霊研究所か ? |
| メルクリア | ――あ ! ? こら、バルド !余計なことを言うてしまったではないか。 |
| バルド | 申し訳ありません。 |
| カイウス | ……そうか。ルビアはそこにいるんだな。 |
| メルクリア | そうじゃ、もう満足したであろう ?わらわはルキウスの所へ行くぞ ! |
| アスガルド兵 | ――こちらでしたか、メルクリア様。ご報告が ! |
| カイウス | (まさか、もうミトスのことが…… ? ) |
| カイウス | メ、メルクリア ! 早くルキウスの様子を見に行こう。せっかくメルクリアが誘ってくれたんだ。オレ、一緒に行きたい ! |
| メルクリア | わらわと一緒に ?まったく、最初から素直にそう言えば良いものを。 |
| メルクリア | バルド、その兵を下がらせよ。カイウス、ついて参れ。 |
| アスガルド兵 | ご無礼ながら ! 報告は飛天のミトスのことでして― |
| カイウス | ! ! |
| メルクリア | ミトスじゃと ?――聞かせよ。何があった。 |
| アスガルド兵 | 飛天のミトスが離宮より抜け出しました。セールンド方面へ向かった模様です。 |
| カイウス | (くそっ……もうバレちまった ! ) |
| メルクリア | セールンド……。そうか、エサに喰いついたか。兄上様の仰った通りじゃ。 |
| カイウス | 兄上様 ? それにエサって……。どういうことだよ。ミトスが出てったことと関係あるのか ? |
| メルクリア | ふむ、そうじゃな。そなたに理解できるかわからんが教えてやろう。今の素直なカイウスにご褒美じゃ。 |
| メルクリア | おそらくミトスは方々を嗅ぎまわり、心核を抜かれたマーテルの話を仕入れたのじゃろう。 |
| メルクリア | じゃがな、まだマーテルの心核は抜いておらぬのじゃ。 |
| カイウス | ……心核を抜くとか、抜いてないとか、結局それって何が目的なんだよ。 |
| メルクリア | そなたにわからぬのも無理はない。兄上様には深いお考えがあるのじゃ。 |
| カイウス | 何言ってるかわからないよ。オレにも詳しく説明してくれ。 |
| メルクリア | すまぬが、今は時間が惜しい。 |
| カイウス | メルクリア ! もう少しでいいから―― |
| メルクリア | これよりミトスに引導を渡す。行くぞ ! |
| アスガルド兵 | はっ ! |
| カイウス | 引導 ! ? 待ってくれ、メルクリア ! ! |
| カイウス | (……ごめんミトス。時間、かせげなくて……) |
| バルド | カイウス、きみも宮殿に戻ったほうがいい。 |
| カイウス | (……待てよ、もしかしてこの隙に、ルキウスを助けられるんじゃないか ? ) |
| バルド | ――やめたほうがいいね、カイウス。 |
| カイウス | ―― !な……何のことだよ。 |
| バルド | 今、ルキウスを目覚めさせるのは危険だ。 |
| カイウス | オレは別に、そんなこと考えて―― |
| バルド | フレンのようにはしたくないだろう。 |
| カイウス | ! ! |
| バルド | 眠らせておいた方がいいんだ。ルキウスのためにも、今はこのまま……いいね ? |
| カイウス | …………。 |
| Character | 4話【8-6 精霊研究所 牢屋】 |
| シング | ……ハァ、腹へったなぁ……。食事抜かれて、どれくらいたつんだろう……。 |
| シング | (結局、何を話しても、メルクリアにはわかってもらえなかったな。オレも熱くなって、言い過ぎたかもしれないけど……) |
| シング | (カイウスは無事かな。オレみたいに牢に入れられてないよな。ミトスはどうなったんだろう……それに……) |
| シング | (オレが側にいたのに、コハクにまた辛い思いをさせてしまった……。ゴメンよ、コハク……) |
| | ぐうぅ~…… |
| シング | ハァ……。このまま何も食べさせてもらえないと、本当にヤバイかも……。 |
| シング | (……いや、弱気になってちゃダメだ。何とかここを抜け出して、コハクを助けなくちゃ ! ) |
| シング | (でも、ここを出る方法、か。……病気にでもなれば出してもらえるかな) |
| シング | (――誰かくる ! ? ……よし、イチかバチか ! ) |
| シング | あいたたたたたーー ! ! |
| ? ? ? | な、なにっ ! ? |
| シング | そこのひとー、おなかがいたくて……いたくて…… ?……あれ ? |
| ? ? ? | ちょっと、おなかが何 ? 痛いの ? |
| シング | ……きみ……どこかでオレと会った ? |
| ? ? ? | はぁ ? ないわよ。人をからかって、囚人はヒマなのね。 |
| シング | どこだったかなぁ……でもその特徴的な髪型は見た覚えがあるんだよなぁ……。 |
| ? ? ? | 見たって……、ねえ、まさかあなた、もう一人の私を知ってるの ? |
| シング | もう一人 ? ごめん、よくわからないけど。でも見たことあるんだよ……。待ってて、思い出すから。 |
| シング | ……………………………。 |
| ? ? ? | ……長い ! いい加減に―― |
| シング | あ、手配書だ ! 空のマクスウェルだろ ?軍の捜索命令で回って来たんだっけ。きみ、ここにいたのか。 |
| ? ? ? | 軍の……。はぁ、期待して損した。 |
| ? ? ? | しかも何よ、あの下手くそな似顔絵の手配書で、よく私だってわかったわね。 |
| シング | はは、ありがとう ! |
| ? ? ? | 褒めてない……。まったく、素直なんだか抜けてるんだか。脳ミソがプリンで出来てるんじゃない ? |
| ? ? ? | でも、……そうね。さっきの感じだと、あなた、脱獄したいんでしょ。仮病で外に連れ出された隙に――とでも考えてた ? |
| シング | うん……。オレ、どうしてもここを出て仲間を助けなくちゃいけないんだ。だから……。 |
| ? ? ? | わかった。ここから逃がしてあげる。 |
| シング | 本当に ! ? |
| ? ? ? | ええ。その代わり私にも協力して。 |
| シング | 協力 ? 言っとくけどオレ、人を苦しめたり、悲しませることには力を貸さないよ。 |
| ? ? ? | そんなことじゃなくて、私も助けたい人がいるの。……傷ついた私を回復させるために犠牲になった子。ルビアっていうんだけど。 |
| シング | ルビアだって ! ? |
| ? ? ? | 知ってるの ? |
| シング | ああ。オレの友達の大事な仲間なんだ。でも、なんでそんなことに……。 |
| ? ? ? | ……さっき言ったでしょ。私のために犠牲になったって。 |
| ? ? ? | ルビアは、この世界のマクスウェルを『纏わされて』しまったの。 |
| シング | マクスウェル ? きみの名前と同じだね。そういえば、リヒターから精霊にもそんな名前のがいるって聞いたけど。 |
| ? ? ? | 後で詳しく説明してあげる。とにかく、ルビアは傷ついていた私を見て、帝国が施した『精霊装』を使って治療してくれたの。 |
| ? ? ? | でも、あれは危険な技術みたいなのよ。あの子、みるみるうちに衰弱して……。 |
| ? ? ? | だから、ルビアをここから助け出したい。 |
| シング | ……わかった。協力するよ。放っておけないもんな。 |
| シング | (コハク……もう少しだけ待っててくれ。必ず助けるから) |
| ? ? ? | それじゃ契約成立ね。待ってて。鍵を壊すわ。 |
| ? ? ? | ほら、開いたわよ。ここを出たら、この先は見張りが……、って、ちょっとあなた、フラフラじゃない ! |
| シング | うん……、しばらく食べてなくてさ……。逃げようとして、食事の時に何度か暴れたんだよ。そうしたら何も持ってきてくれなくなって……。 |
| ? ? ? | 馬鹿ね。動ける ? |
| シング | ああ、なんとか。気合いでガンドコ行くよ ! |
| ? ? ? | ガンドコ…… ? まあいいわ。脱出できたら、何か作って食べさせてあげるから。 |
| シング | ありがとう、えっと……きみのことはマクスウェルって呼べばいいのかな ?オレはシング。 |
| ミラ | シングね。私のことは……、今は……ミラって呼んでもらえる ? |
| Character | 5話【8-7 セールンドの街】 |
| ゼロス | 遅いな、マークたち。何かあったんじゃねぇの ? |
| クラトス | ここから見る限り、兵士たちに動きはない。偵察はうまくいっていると見ていい。 |
| クラトス | 何かあったとしても、共にいるのはシンクだ。うまく立ち回ってくれるだろう。シンクはマークによく懐いているようだからな。 |
| ゼロス | ……それ、シンくんの前では絶対に言わない方がいいぜ ? |
| カイウス | クラトスさん ! ミトスと合流できたか ? |
| クラトス | カイウスか。済まぬがまだだ。そちらはどうなった ? |
| カイウス | あまり時間は引き延ばせなかったよ。ミトスのことは、もうばれてる。 |
| カイウス | でも、新しい情報があるぞ。マーテルさんの話、やっぱりあれは罠だったんだ。 |
| クラトス | 何だと ? |
| カイウス | ――で、メルクリアは「兄上様の仰った通り」って。 |
| クラトス | ……なるほど。メルクリアを動かした第三者はナーザか。 |
| ゼロス | 当たりだな、クラトス。嬉しくもねぇだろうが。 |
| カイウス | 当たりって ? |
| ゼロス | このおっさん、ミトスを罠にはめようとしているのはメルクリアの裏にいる奴じゃねえかって言ってたんだ。 |
| ゼロス | その罠も、本当の狙いはマーテルの可能性があるってんで俺さまたちは現在進行形で調査中な訳。 |
| カイウス | マーテルさんを…… ?――そうか !なぁ、クラトスさんはリヒターを知ってるか ? |
| クラトス | ああ。精霊の研究施設にいたな。 |
| カイウス | オレ、リヒターから聞いたことがあるんだよ。ナーザは神降ろしの計画に否定的なんだって。 |
| 二人 | ―― ! |
| カイウス | マーテルさんは、その神降ろしの器になるんだろ ?これって……。 |
| ゼロス | ああ、やだねぇ。俺さまわかっちゃった気がするわ。 |
| クラトス | ……ナーザはマーテルを始末する気なのかもしれん。 |
| クラトス | 器がなければ神降ろしはできない。阻止したければ、一番確実な方法だ。 |
| カイウス | やっぱりマーテルさん、危険なんだな。ミトスが知ったら……。 |
| ゼロス | それにしたって、ナーザはなんでこんな面倒くさい方法とってるんだか。 |
| クラトス | デミトリアスを筆頭に、帝国は神降ろしに積極的だ。ナーザにとってはやりにくい状況なのだろうな。 |
| カイウス | うん。神の器に決まってから、マーテルさんの居場所はわからなくなったし、話も聞かない。オレだってアステルやヒルダがいなきゃ情報も手に入らないんだ。 |
| カイウス | マーテルさんを……えっと……始末するなら、その厳重な警備をなんとかしないといけないだろうな。 |
| ゼロス | それでナーザは、ミトスへの制裁だのなんだのでメルクリアを上手く言いくるめて、マーテルを引きずり出すための計画を練ったのか。 |
| クラトス | それもまだ仮説の域だがな。これからはマーテルの安全の確保、それと心核の有無の真偽についても念頭に入れて動かねばなるまい。 |
| マーク | 悪い、待たせたな !――っと、カイウスと通信中だったか。 |
| シンク | いつにもまして辛気くさい顔してるね。あんまりいい報せじゃないってことか。 |
| クラトス | カイウスからの情報については後で説明する。先にお前たちの報告を聞かせてくれ。 |
| マーク | 了解。セールンド城にはナーザの奴がいたぜ。ミトスを待ち伏せしてるのかもな。つまり罠の確率が高くなったってことだ。 |
| ゼロス | ああ。こっちも今カイウスの話でミトスが罠にはめられたってのがわかったところだ。ナーザが黒幕じゃねぇかってのも予想が付いてる。 |
| ゼロス | で、ナーザは何をしてたのよ。 |
| シンク | 部下にキラル純結晶精製所での研究について聞いてたよ。しつこいくらいにね。 |
| ゼロス | 精製所って、セシリィが脱出してきた所だな。 |
| マーク | ああ。あのゴタゴタの後でも帝国の研究施設として稼働してるらしいぜ。 |
| クラトス | ナーザが精製所の研究を気にかけている……。あそこはリビングドールとも関係がありそうだったがもしやマーテルもあそこに囚われているのでは……。 |
| ゼロス | 行ってみる価値はありそうだな。万が一、精製所にマーテルがいたら儲けもんだろ。 |
| クラトス | ならば精製所へは私が向かおう。もしもこちらでナーザが動いたときには連絡をくれ。それと、ミトスを見つけたら手助けを頼む。 |
| ゼロス | 一人で大丈夫か ? |
| クラトス | ああ。一刻も早く向かうには、一人で身軽な方がいい。神子はマークとシンクの機動力として残ってくれ。 |
| クラトス | ではマーク、この場は任せたぞ。カイウスも自分の身を案じて動いてくれ。 |
| カイウス | わかった。 |
| ゼロス | それじゃあ、授業に遅れたマーくんとシンくんにこの俺さまが今までの話を分かりやすく説明し―― |
| シンク | カイウス、説明して。 |
| ゼロス | 俺さま、やっぱりそういう扱いな訳 ! ? |
| マーク | ――なるほど。バルドって奴も何考えてるかわかんねえし。もう帝国はヤバそうなニオイしかしないな。 |
| マーク | なあカイウス、これ以上は危険だ。お前もこっちに来いよ。 |
| マーク | 救世軍じゃなくてもいい。ミリーナたちの所だったらチェスターもいる。どうだ ? |
| カイウス | …………。 |
| ゼロス | ――ルキウスのことが心配なんだろ ?けど、目覚めさせない方がいいってのが本当なら、一旦引いて、他の方法を探すのも手だと思うぜ。 |
| カイウス | ……でも、仲間の――ルビアのいる場所がもっと詳しく絞り込めそうなんだ。 |
| ゼロス | 精霊研究所にいるんだっけか。 |
| カイウス | うん。それに研究所の中にはシングもいるはずだ。メルクリアとやりあった後、そこへ送られたって聞いたから。 |
| カイウス | オレは二人を助けたら、そっちに合流するよ ! |
| ゼロス | 麗しい友情だねぇ……。ま、無理だけはするなよ。 |
| Character | 6話【8-8 精霊研究所 牢屋】 |
| ミラ | この辺りに閉じ込められてるはずなんだけど……。ねえ、そっちはどう ? |
| シング | いや、この部屋にはいなかった。 |
| ミラ | ……もう時間がない。急いで見つけて ! |
| シング | あとはこの一番奥の牢――……いた !いたよ、ミラ ! |
| シング | ルビア、大丈夫 ! ? 返事してくれ ! |
| ミラ | どいて、鍵を壊す ! |
| シング | 開いたぞ ! ルビア ! |
| ルビア | シ……グ…… ? |
| シング | おい、しっかり ! ここから出よう ! |
| ルビア | …………。 |
| シング | どうしよう、こんなにぐったりして……。 |
| ミラ | ルビア、ちょっとごめんなさい。 |
| シング | ミラ、なにを―― |
| ミラ | ない……。マクスウェルの指輪が外されてる……。 |
| シング | マクスウェルの指輪……って何 ?無いとまずいの ? |
| ミラ | ……ルビアを連れて逃げましょう。これ以上ここにいたら危ない。もうすぐ面倒な奴らが戻ってくる頃だから。 |
| シング | え、指輪はいいの ?それに面倒な奴って―― |
| ミラ | 指輪はもういい。面倒な奴らっていうのは嫌味なしゃべり方する奴と、まともな会話ができない変人。これでいい ? |
| ミラ | あいつらに捕まったら本気でまずいのよ ! |
| シング | サレとハスタか…… ! わかった、すぐに出よう。ルビアはオレが背負っていくよ。 |
| ミラ | 私が背負うわ。あなただって体が……。 |
| シング | 平気だよ。それにジィちゃんに言われたんだ。「胸の大きな美人が困ってたら、死んでも助けろ」ってさ。ミラみたいな人なら、なおさら助けなきゃ。 |
| ミラ | む、胸 ! ? あなた一体どこ見て―― |
| シング | ほら、ルビア。背中に乗って。辛いかもしれないけど、一緒に頑張ろう。 |
| ミラ | ……シング。 |
| シング | よし、準備できた。逃げよう、ミラ。力を合わせれば、絶対にここから脱出できるよ ! |
| ミラ | 絶対――ね。その言葉、信じるわよ ? |
| ミラ | 追っ手はないようね。 |
| シング | うん。サレもハスタもいないみたいだ。このまま一気に―― |
| ミラ | 待って、シング ! |
| シング | リヒター…… ! |
| ミラ | 知り合い ? 見逃してくれる感じじゃないけど。 |
| リヒター | ……我ながらつくづく因果だな。また精霊と戦うとは。 |
| ミラ | ―― ! |
| シング | 戦うって……、やめてくれリヒター ! |
| ミラ | いいから、この男の相手は私に任せて。ルビアを連れて先に行きなさい。 |
| シング | 何言ってんだ。ミラを置いていけるもんか ! |
| ミラ | シング、あなた絶対脱出するって言ったでしょ。あれは嘘 ? |
| シング | でも ! |
| ミラ | ルビアまで危険にさらす気 ?どうせフラフラでろくに戦えないんだから早く行って ! |
| リヒター | その通りだ。邪魔をするなシング。空のマクスウェルだけは逃がす訳に行かない。 |
| シング | え……、リヒター…… ? |
| リヒター | お前たちはさっさと行け ! |
| シング | ――っ、わかったよ !ごめん、ミラ ! |
| シング | ――やった、出口だ ! |
| ? ? ? | その声……シングか ! ? |
| シング | ――誰だ ! ! |
| カイウス | シング、無事だったか ! |
| シング | カイウス ! なんでここに ? |
| カイウス | リヒターが連れてきてくれたんだ。上手くいけば、シングたちがいるかもしれないって。 |
| シング | リヒターが……。 |
| カイウス | シング、もしかして背負ってるのは――。 |
| シング | ああ、ルビアだよ。かなり弱ってるんだ……。早くどこかで治療しないと ! |
| カイウス | ルビア、ルビア !……クソッ、こんなことって……。 |
| カイウス | ……ルビアはオレが背負う。シングもかなり辛そうだからな。さあ行こう。こっちだ。 |
| ヒルダ | カイウス、シング、ここよ ! |
| シング | ヒルダも来てたのか ! |
| ヒルダ | 来たわよ。本当にあんたたち、人使いが荒いんだから !ほら、ぐずぐずしないで、この馬車に乗りなさい。 |
| シング | ありがとう、ヒルダ ! |
| ヒルダ | みんな……、気を付けて。 |
| Character | 7話【8-9 キラル純結晶精製所1】 |
| | キラル純結晶精製所 |
| クラトス | (稼働中の研究施設だけあって、やはり人が多いな) |
| クラトス | (仕方がない、まずは人気のない所から見て回り、徐々に捜索場所を狭めていこう) |
| クラトス | (なんだ……この部屋は……) |
| クラトス | (……たくさんの宝石……。こんな場所になんとも不似合いなものを並べて……) |
| クラトス | (一つずつ丁寧にラベリングされている。名前に、身体的特徴 ? まるで人間のように……) |
| クラトス | (―― ! ! まさか、これが心核か ? ) |
| クラトス | (この様々な色や形をした石の全てが、人の心を物質化したものだと…… ? ) |
| クラトス | (……だとすると、もしマーテルの心核が抜かれているのならば、ここにあるはずだが……) |
| クラトス | (……見当たらない。やはりメルクリアの言うとおり、マーテルはまだ心核を抜かれては――) |
| 兵士 | 早く避難しろ !身の周りの物など気にするな ! |
| クラトス | (――何だ ? ) |
| 研究者A | 待って下さい ! この資料を揃えたら避難しますから ! |
| 兵士 | 後にしろ ! 諸君らの避難と、安全の確保を優先せよとナーザ将軍のご命令だ !――あ、お前、戻るな ! |
| 研究者B | この奥には、器の鏡映点が置き去りのままなんです。連れて出ないと ! |
| 兵士 | そのままでいい !一刻も早く、全員この施設から退避だ ! |
| クラトス | (器の鏡映点……。やはりマーテルはここにいたか ! ) |
| クラトス | (…………静かになったな。研究者たちもいなくなったと見える。今のうちに……) |
| クラトス | (マーテルは確か、施設の奥の方に――) |
| クラトス | (誰もいない……。全員避難したのか。ナーザの命令と言っていたが……) |
| クラトス | (……もしや、邪魔な研究者たちを排除して、マーテルに近づくための画策か ? ) |
| クラトス | ! ! |
| クラトス | ――そこにいるのは誰だ。退避命令が出ているはずだが ? |
| ? ? ? | ククク……こそこそと忍び込んでおいてその態度とは。厚顔無恥にも程があるぞ、侵入者。 |
| クラトス | ――っ ! ! |
| ? ? ? | ほう、我が一撃と渡りあうか。久しぶりに面白い戦いが出来そうだ ! ! |
| クラトス | (この男――強い ! !だがこんな所で、足止めを食らっている場合では――) |
| ? ? ? | ――っ、誰だ ! |
| シンク | なに遊んでんのさ、こっちに面倒押し付けて ! |
| クラトス | お前たち―― ! |
| ゼロス | あんたに報告があるんだよ。こいつ、さっさと倒しちまおうぜ ! |
| ? ? ? | さっさと、だと ?貴様ら――――――っ ! ! |
| Character | 8話【8-9 キラル純結晶精製所1】 |
| ? ? ? | くっ、この程度の輩に……やはりまだ馴染まぬのか。――貴様ら、この屈辱は忘れんぞ ! ! |
| シンク | フン、お約束の捨て台詞。脳がないね。アイツのとどめはどうする ? |
| ゼロス | 深追いは面倒だ。クラトスも無事だったしな。 |
| クラトス | ああ、助かった。ところで、そちらは何が起きたんだ ? |
| ゼロス | コーキスたちがここに来ている。ミトスも一緒だ。 |
| クラトス | ミトスがここに ? |
| ゼロス | ああ。あんたが精製所に向かった後、ミトスはセールンドでコーキスたちと合流したんだ。 |
| ゼロス | 今は詳細を省くが、コーキスたちはここにマーテルがいると知って来てるぜ。うまくいきゃ、姉弟の感動のご対面になるかもな。 |
| シンク | ……ところでさ、なんでここには誰もいないの ?研究施設になってるって聞いたけど。 |
| クラトス | まずい…… !急ぐぞ、マーテルを保護せねば ! |
| シング | ここでフィリップさんと待ち合わせなのか。 |
| カイウス | ああ。マークたちを通じて色々助けてくれたんだ。 |
| シング | すごいなカイウス。オレが牢に入ってる間に……。協力できなくてごめん。 |
| カイウス | なに言ってるんだよ。シングが連れ出してくれなかったら、ルビアはどうなってたかわからないよ。ありがとな。 |
| シング | 脱出できたのは、オレだけの力じゃないんだ。ミラっていう協力者がいてさ。それにリヒターも。 |
| シング | あいつ、オレとルビアを見逃がしてくれたんだよ。でもミラとリヒターは戦うことになっちゃって……。もっと話す時間があれば、わかってもらえたのかな。 |
| カイウス | ……今回の作戦、リヒターも誘ったんだ。アステルを連れて帝国を出ようって。 |
| カイウス | でもあいつ、「鏡士たちの所へ行くことは絶対にできない」って言って、オレたちに協力だけしてくれた。 |
| カイウス | リヒターはいい奴だから、あのままじゃ辛いと思うんだけどな……。 |
| フィリップ | やあ、シング、カイウス。無事に脱出できて良かった。 |
| カイウス | フィリップさん ! |
| シング | フィリップさん。ありがとうございます。あのままだったらオレ、飢え死にしちゃってたかも。 |
| フィリップ | いや、お礼を言うのは僕のほうだ。改めて――あの時、マークを助けてくれてありがとう。 |
| シング | あの時…… ?あ ! マークがチェスターを連れて逃げ出した時か。 |
| カイウス | メルクリアからもらった鏡で切り抜けたっけ。……あの頃はまだ、あいつの所を離れるなんて考えてもいなかったな。 |
| シング | うん。メルクリアの所にいればコハクだって元気になると思ってた。なのに、オレたちを騙すなんて…… ! |
| カイウス | ……フィリップさんの言う通りだったよ。メルクリアは歪んでいるんだ。オレたちの言葉が、気持ちが届かない。 |
| カイウス | 結局、ルキウスどころか、ルビアもこんな風にされちまって……。 |
| カイウス | ……頼む。フィリップさん。ルビアを助けてくれ。 |
| フィリップ | もちろん、そのつもりだよ。安心して欲しい。こちらで預かってるコハクも早く治してあげたいと思っているんだ。 |
| シング | やっぱり、コハクはスピリアを失ったまま ? |
| フィリップ | ああ、まだ眠っている。それでシング、君に頼みがあるんだ。マーテルの件は知っているね。 |
| シング | カイウスに聞いたよ。心核の話とか、色々と大変なことになってるんだろ。 |
| フィリップ | ああ。だが今の段階では、本当にマーテルが心核を外されているかは不明で、マークたちが調査中なんだよ。 |
| フィリップ | そして、もしも本当に外されているとしたらセールンド側の鏡士ではどうにもできない。我々は心核を外す技術をもっていないからね。 |
| フィリップ | けれど、君にならできる。心に入り込むソーマという武器、それを操る力があれば恐らくは心核を戻すことも可能だろう。 |
| フィリップ | どうか、協力をお願いできないだろうか。 |
| シング | ……心核っていうのはスピルーンみたいなものなんだよな。みんなが言う『心』がスピリア……。 |
| シング | つまり、これってコハクの時と状況が似てるんだな……。 |
| シング | ――わかった。オレにできることなら、やらせてくれ ! |
| Character | 9話【8-10 キラル純結晶精製所2】 |
| ゼロス | 今の音……コーキスたち戦ってんのか ?何が始まったってんだよ ! |
| クラトス | (頼む……間にあってくれ ! ) |
| クラトス | ―― ! ! |
| ナーザ | この【現実】こそが……貴様の末路だ―― |
| マーテル | ……ミトス……。ごめんなさ……い……。あなたを……また一人にしてしま…… |
| ミトス | 嘘……嘘だ……。嫌だよ姉さま……。どうして……こんな……【二度】もこんな…… ! ? |
| マーテル | さよな……―― |
| ミトス | 姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ ! ? |
| クラトス | マーテル ! ! |
| ロイド | ――クラトス ! ? |
| ミトス | クラ……トス ? |
| クラトス | ……まだだ、諦めるな。私のマナをマーテルに分け与える…… ! |
| ミトス | な……何してるの……。クラトスは人間なんだよ ! ? |
| ミトス | ハーフエルフだって危険が伴うのに人間がそんなことをしたら死ぬってわかってるでしょ ! ? |
| ロイド | ! ? |
| クラトス | ……救うと約束した。今度こそ……お前たち姉弟を……。 |
| マーテル | ――う………ん……。 |
| コレット | マーテルさんが…… ! |
| ミント | ……信じられません。回復術でも間に合わないほど、あの怪我は致命傷でした。命の灯はほとんど消えていたのに、それを――……。 |
| クレス | あれが、マナを分け与えるってことなのか。 |
| リフィル | ……でも、それは代わりに……。 |
| クラトス | ――よか……った……。 |
| ミトス | ―――― ! |
| ロイド | クラトス ! ! |
| ロイド | 嘘だろクラトス ! ? 俺はまだあんたのこと―― |
| チーグル | ナーザ…… !……君たち、これはどういうことかな。 |
| ミトス | ……お前…… ! |
| チーグル | ミトス、メルクリア様のご寵愛を足蹴にするだけじゃ気が済まないようだね。 |
| チーグル | ……この方への無礼は死をもって償ってもらう。 |
| コレット | あの人……前にエルをさらおうとした人 ! |
| チェスター | やばいぞ !あいつが呼ぶ光魔はキリがねぇって話だ。 |
| シンク | あのスカした顔をみたらドジ神子たちの後始末をさせられたってことまで思い出したよ。 |
| コレット | ド……ドジ神子……って私のこと、だよね ?ご、ごめんね、シンク。 |
| チーグル | ん ? ……そこの弓兵、見たことがあるな。 |
| チーグル | ああ、メルクリア様のもとを脱走した――確か魔弓のチェスターだったか。どいつもこいつも不敬な奴らだ。 |
| チーグル | 丁度いい。まとめて光魔共に一掃させよう ! |
| クレス | ――なっ、こんな大量の光魔を…… ! ? |
| チーグル | それじゃ、ナーザは返してもらうよ。本来ならば、こんな地べたに寝かせていいお方じゃないんだ。 |
| ミリーナ | このままじゃ囲まれるわ !コーキスもダメージを負って動けないし布陣を組んで、負傷したみんなを守らないと ! |
| クレス | ロイド、クラトスさんは無事か ! ? |
| ロイド | 息はしてる……と思う……。 |
| クレス | よし、そのままクラトスさんの側にいてくれ !ミトスは、マーテルさんをミリーナはコーキスを頼む ! |
| クレス | ゼロスとシンクはクラトスさんとミトスを守ってくれ !リフィルさんたちは後方支援をお願いします !チェスターはミリーナとコーキスについててくれ ! |
| チェスター | でもクレス、斬り込み役がいなきゃ防戦一方だぜ ! |
| クレス | わかってる……。それは僕が―― ! |
| マーク | 本当にクレスは勇者様って感じだな。けど一人で――なんて格好いい役はこっちにもまわしてくれなきゃな。 |
| ミリーナ | マーク、それにフィリップも !どうしてここに ! ? |
| ゼロス | ようやく追いついたか、遅刻魔のマーくんめ ! |
| マーク | 悪いな。主役は遅れて現れるもんだろ ?それにこっちは、ちゃんと戦力補充してきてるぜ。 |
| カイウス | 久しぶり、チェスター ! |
| チェスター | お前ら、こっちに来たのか !よく無事だったな。 |
| シング | チェスターも――って、挨拶してる状況じゃなさそうだな。 |
| シング | でも、マーテルさんが見つかって良かった。な、ミトス ! |
| ミトス | シング、カイウス……ボクは……。 |
| カイウス | いいから、一緒に戦うぞ !みんなを……マーテルさんを守り抜くんだ ! |
| ミトス | ――うん。 |
| フィリップ | すまなかった、ミリーナ。後でちゃんと話をするよ。 |
| ミリーナ | わかったわ。今はここを乗り切りましょう ! |
| フィリップ | では、僕は光魔の増殖を抑えてみよう。クレス、シング、カイウス、マークを先陣にして、この光魔を全て掃討する ! |
| Character | 10話【8-13 キラル純結晶精製所5】 |
| シング | これがソーマの力だ ! |
| カイウス | 楽勝、楽勝 ! |
| クレス | 強いな、二人とも。 |
| チェスター | だろ ? だからこそ、シングたちにお前への連絡を託せたって訳さ。 |
| チェスター | あの時はオレも立場的に微妙だったからさ、本当に助けられたよ。 |
| カイウス | ミトス。マーテルさん、気を失っているのか ? |
| ミトス | ……ああ。一瞬目を覚ましたんだけど、今は眠ってる。 |
| カイウス | 心核、やっぱり抜かれてなかったのか。 |
| シング | もしもの場合はオレが戻すことになってたんだ。それでフィリップさんたちと、ここに来たんだよ。 |
| ミトス | 心核……、そう言えばこれ――え ? |
| ミリーナ | ――シングさんに反応してる…… !そうだったのね……。その心核コハクさんのものだったんだわ ! |
| シング | コハクの…… ! ? |
| ミリーナ | ナーザはこれを、前回の器のものだと言ってたでしょ。だとしたら……。 |
| シンク | ボクたちがコハクってのを連れ帰ってから神降ろしが行われてないならまぁ、間違いないんじゃない ? |
| シング | ……フィリップさんの話が本当なら、オレはコハクを助けられるはずだ ! |
| シング | 頼む。コハクの所へ連れてってくれ ! |
| ミリーナ | もちろんよ。それにコーキスも、クラトスさんもすぐに治療が必要だわ。マーテルさんも休ませなくちゃいけないし。 |
| ロイド | リフィル先生、クラトスはどうなんだ ! |
| リフィル | わからない……治癒術をかけ続けることで何とか命をつなぎ止めている状態よ。 |
| ロイド | そんな…… ! |
| リフィル | 大丈夫。治癒術を扱えるメンバーで交代しながら、治療を続けるわ。ただ、それでは根本的な解決にならないけれど……。 |
| ミトス | ……クラトスは人間だけど、天使化しているから最悪……体を失っても生き続けることはできる。 |
| ミトス | クルシスの輝石……クラトスがつけているその宝石みたいな石に心を宿してね。 |
| ロイド | そんなの……生きてるって言えるのか ! ? |
| ミトス | ……わかってるよ ! お前に言われなくたってその状況がどれほど苦しいものなのかボクは嫌と言うほど知ってるさ ! |
| コレット | クラトスさんを助ける方法はないの ? |
| チェスター | そうだ !たしかミトスもマナをわけるってのができたよな。それでオレも助けてもらったんだから……。 |
| チェスター | あ、でも、その後倒れちまったんだっけ。やっばり危険を伴うやり方なんだな……。 |
| ミトス | ……試してみてもいいよ。でも……多分……。 |
| ロイド | な、何だよ。多分……何なんだよっ ! ? |
| ミトス | とにかく一度試してみるよ。どこか落ち着ける場所の方がいい。 |
| フィリップ | よし、それじゃあケリュケイオンに行こう。ミリーナも一緒に来てくれ。これまでの救世軍側の動きを説明するよ。 |
| シング | ……コハク、やっと会えたね。絶対にオレが助けるから。 |
| ミリーナ | はい。これがコハクさんの心核。 |
| シング | 心核って……本当にスピルーンみたいだ。これをコハクのスピリアに置いて来ればいいんだね。 |
| ミリーナ | そう。コハクさんの心――シングさんたちの世界で言うスピリアの、一番奥に。 |
| ミリーナ | それ以上の助言ができなくてごめんなさい。今回は、全てシングさんの経験頼りになるわ。 |
| シング | スピルメイズの奥ってことかな。エンコードで勝手が違ってると困るけど――やってみる。 |
| フィリップ | それと、スピリア――いや、スピルメイズかな。とにかく心を具現化したその内部には魔物のようなものがでるみたいだね。 |
| フィリップ | 君一人では危険だ。他にも誰かいた方がいい。 |
| シング | でも、ソーマがないとスピルリンクはできないんだ。 |
| ミリーナ | そのことだけど、アミィちゃんの時には、コハクさんのソーマが魔鏡術の力を増幅してくれたの。 |
| ミリーナ | どちらも心に働きかける力だから影響を与えているんだと思うわ。だから、今回もそれを利用するの。 |
| フィリップ | 今度は僕たちの魔鏡術でシングのソーマの力を増幅し、ソーマを持たない者も一緒に行動できるようにする。 |
| ミリーナ | でも数名が限度よ。特に今回は初めてだし、予測不可能なことが多いわ。絶対に安全とは言いきれない。 |
| シング | そんな危険に、みんなを巻き込めないよ !オレ一人で大丈夫だから。 |
| カイウス | ……オレ、行くよ。ルビアは治療中で、オレは何もしてやれない。じっとしてるのが、もどかしいんだ。 |
| チェスター | だったらオレも行く。二人には世話になったし、一歩間違えば、アミィだってコハクと同じだったかもしれない。協力させてくれ。 |
| クレス | 僕も。アミィちゃんが回復したのはコハクのソーマのおかげなんだ。今度は僕たちが力になる番だよ。 |
| シング | ……みんな、ありがとう ! |
| ミリーナ | それじゃみんな、お願いね。シングさん、準備はいい ? |
| シング | うん。あとさ、ミリーナ、今度からはシングってよんで。コハクのことも「コハクさん」じゃなくてさ。 |
| ミリーナ | ……わかったわ、シング。それにコハクが目覚めるのがとても楽しみ。頑張ってね。 |
| シング | ああ。それじゃ行ってくる。みんな、スピルリンクするぞ ! |
| 三人 | ああ ! |
| クレス | これが人の心の中……。きれいだけど、まるで迷路だ。 |
| シング | うん。オレたちはスピルメイズって言ってる。 |
| シング | さあ、進もう。スピリアの――コハクの心の一番奥深くへ。 |
| Character | 11話【8-15 スピルメイズ2】 |
| カイウス | ここで行き止まりだ。……ここには敵が出てこないな。 |
| クレス | ああ。敵どころか何の気配もない。 |
| チェスター | ……それにしても心の具現化した場所に敵が出てくるってどういう理屈なんだろうな。シングの世界でもそうだったのか ? |
| チェスター | ――シング ? |
| シング | ……きっと、ここだ。コハクの心核は、ここにあったんだ。 |
| カイウス | わかるのか ? |
| シング | なんとなくだけどね。それに、前にコハクの中に入った時とスピルメイズの形が似てるし。 |
| シング | それじゃ心核を置くよ。 |
| シング | ――ようやく戻ってこれたね、コハク。……お帰り。 |
| カイウス | 心核が…… !すげえ、でかい花が咲いたみたいだ ! |
| クレス | なんてきれいなんだろう……。これが、コハクのスピリアなんだね。 |
| チェスター | これ、成功だよな ? な ! ?こんな花咲いたら、そうに決まってる ! |
| シング | まだわからない。でも……。 |
| シング | (……オレは信じてるよ、コハク目を覚ますのを信じて……待ってるから ! ) |
| カイウス | うわ、オレたち、戻って来た…… ! ? |
| チェスター | なんか、すげえ体験したぜ……。 |
| ミリーナ | みんな、無事でよかったわ !心核は置いてきたの ? |
| カイウス | ああ、でかくて立派な花が咲いて――あれ ? もしかしてコハクは……。 |
| フィリップ | ……まだ目覚めないんだよ。 |
| クレス | ……そんな。 |
| シング | ……目覚めるよ。今じゃなくても。 |
| シング | そうさ。コハクは絶対に戻る ! オレは諦めない ! |
| コハク | シン……グ……。 |
| シング | ……コハク ? コハク ! ! |
| ミリーナ | 意識が戻った…… ! |
| チェスター | やっぱり成功してたじゃねぇか !ほら、オレの言った通りだろ ? |
| クレス | ああ、本当だった ! |
| シング | コハク……良かった…… ! |
| シング | でもオレ、またコハクを辛い目に合わせて……なんて言っていいか……本当に……ごめ―― |
| コハク | ……たの。 |
| シング | ……え ? |
| コハク | ……聞こえたの。心の中で……。シングが、「お帰り」って……。 |
| コハク | すごく嬉しくて……安心した……。だから……わたし……それが聞きたい。 |
| コハク | ねえ、もう一度、言って ? |
| シング | ……ああ、何度だって言うよ !お帰り ! コハク ! |
| コハク | うん。ただいま……、シング。 |
| ミリーナ | どう、コハク ? 体に異常はない ? |
| コハク | ずっと寝てたから体は痛いけど、動けば平気だよ。それよりも、わたしのことで色んな人に迷惑かけて……ごめんなさい。 |
| シング | なに言ってるんだよ。コハクは悪い事をした訳じゃないんだ。リチャードを助けようとしただけなんだからさ。 |
| ミリーナ | リチャード……。みんなからの話を総合すると、チーグルと名乗っている、あの人のことよね ? |
| シング | ああ。リチャードもリビングドールにされたんだよ。 |
| フィリップ | ……確か、クラトスさんたちからの報告では、リチャードへのスピルリンクの途中で、意識を失ったという話だったね。 |
| コハク | はい……。 |
| ミリーナ | そのことも含めて、色々と話を聞かせてもらえるかしら。もちろん、ちゃんと体が戻ってからでいいわ。 |
| コハク | 大丈夫。みんなにとって大事な話かもしれないんでしょ ?だったら―― |
| マーテル | ……お取込み中の所、失礼します。 |
| ミトス | …………。 |
| 二人 | マーテルさん ! |
| シング | 一時はどうなるかと思ったよ。傷は平気 ? |
| カイウス | そんな風に歩いてさ、まだ寝てたほうがいいって。 |
| マーテル | 大丈夫よ。相変わらず優しいのね。二人とも。 |
| ミリーナ | マーテルさん。無理はしないで下さいね。それで、どうしてここに―― |
| ロイド | ミリーナ ! またミトスがいないんだ !マーテルさんも―― |
| ロイド | ……なんだここにいたのか。びっくりしたよ。マーテルさんの部屋に行ったら誰もいないからさ。 |
| マーテル | あなたが、ロイド……。クラトスの子供……なのよね。 |
| ロイド | ……あ、ああ。この世界に具現化される直前に聞いた話だから正直……まだピンと来てないけど……。 |
| マーテル | ごめんなさい。あなたにも辛い思いをさせて。……私を助けるためにクラトスが払った代償は大きすぎました。 |
| ロイド | え…… ? |
| ミトス | ……クラトスはボクのマナを拒絶したんだ。このままじゃ助からない……。 |
| ロイド | 何だよ、それ……。 |
| ミトス | クラトスは、ボクと姉さまを必ず救うといった。そして約束を守ってくれた。……自分の命と引き換えに……。 |
| ミトス | ボクはもう嫌だよ。大事な人たちを失いたくない。姉さまを……そして、クラトスを……。 |
| ミトス | だから、シングのところへ来たんだ。 |
| シング | え、オレ ! ? |
| ミトス | まず、謝らせて。……この間はごめんなさい。怪我をさせて、危険な目に遭わせたこと。 |
| ミトス | ボクのことはシングの気が済むようにして構わない。ボクはどうなってもいいから……お願いだよ、クラトスを助けて ! |
| マーテル | 私からもお願いします。シング。 |
| シング | ちょ、ちょっと待って ! |
| ミトス | クラトスは死のうとしてるんだ。だから……マナを受け付けない。 |
| ミトス | 今のクラトスを救えるのはシングとロイドだけなんだ。 |
| ロイド | 俺も ! ? |
| ミトス | だから……お願い……お願い……します……。 |
| | to be continued |