| Character | 1話【10-1 帝都へ続く街道1】 |
| セシリィ | ……よしっと。こっちの探し物も見つかったしそろそろ私もまたケリュケイオンへ行ってくるね。 |
| カーリャ | はい。ゲートはいつでもオッケーですよ。 |
| カーリャ | あっと……。魔鏡通信です。ちょっと待って下さい。これはコーキスですね。 |
| カーリャ | こちらアジトで待ちぼうけのカーリャちゃんです。どーぞ ? |
| コーキス | ――カーリャ先輩か ?スパーダ様を助けるのに、色々と問題が発生してさ。一旦情報を共有しようと思って。 |
| カーリャ | い、色々 ! ? 何があったんですか ! ?まさか、また誰かが怪我とか ! ? |
| コーキス | いや、トラブルとか行き違いはあったけど負傷者はいないよ。 |
| カーリャ | そうですか……良かった。 |
| コーキス | ちょっと動揺しすぎだろ、パイセン。それじゃ、後輩に示しがつかねえぜ ? |
| カーリャ | だって、この前はクラトスさまやマーテルさま、それにコーキスだって倒れたじゃないですか !帰ってくるたびに、誰かが命を落としかけて……。 |
| コーキス | ……そっか。そうだよな。先輩はアジトから出られないから、余計心配だよな。ごめん……からかったりして……。 |
| カーリャ | いいんですよ。この仮想鏡界を維持して守るのがカーリャのお仕事ですから。 |
| カーリャ | ……確かに、コーキスみたいに、もっと力があればって思う時もありますけどね。 |
| セシリィ | …………。 |
| カーリャ | それで、そちらはどうなったんですか ? |
| コーキス | ああ、こっちの状況が変わったんだ。スレイ様たちも神依化できたから―― |
| セシリィ | え、スレイさんたち、神依化できたの ! ? |
| スレイ | セシリィもそこにいるのか ?丁度よかった。聞きたいことがあるんだ ! |
| ミクリオ | スレイ、報告が先だろ。セシリィ、神依のことは順を追って話すよ。まずは今回の目的、スパーダの奪還なんだけど―― |
| カーリャ | ――そうですか。輸送隊はスパーダさまのものじゃなかったんですね。 |
| カーリャ | それに、やっぱりチーグルがリチャードさまだったなんて……。アスベルさまたち……複雑でしょうね。 |
| セシリィ | ……私、アスベルさんたちに謝らないと。チーグルとリチャードの関係をわかってたのにリチャードの仲間を探そうとまでは考えなかった……。 |
| セシリィ | そこに思い当たっていればもっと早くリチャードのことも解決できたかもしれないのに……。 |
| スレイ | 仕方ないさ。誰が誰の知り合いだとか、今まではわからなかったんだから。リストだって、ここ最近でようやく作ったくらいだし。 |
| セシリィ | ……でも、やっぱり責任はあると思う。だから私も、全力でリチャードを助けるために動くわ。 |
| ミラ=マクスウェル | そうだな。後悔よりも、その方が彼らのためになる。 |
| セシリィ | よし、しっかりしないと !それで、アスベルさんたちはルカさんたちと一緒にリチャードを追っていったのね。 |
| コーキス | ああ。スパーダ様のことはバルドに任せてあるから、俺たちはこれから合流するつもりだ。 |
| スレイ | それでセシリィ、ミクリオとの神依だけどどう思う ? 成功したけど、精霊輪具がないままじゃ他の天族とは神依はできないってことだよな。 |
| セシリィ | そうね。そうなると思う。それに……そもそもその精霊輪具、かなり危険なもののような気がする。 |
| セシリィ | 精霊輪具さえあれば他の天族とも神依化できる可能性は高まると思うけれど慎重に調べた方がいいんじゃないかしら。 |
| ライラ | では私とスレイさんが神依できるようになるのにもまだしばらく時間が掛かると言うことですわね……。 |
| セシリィ | 気を落とさないで、ライラさん。精霊装のことを調べてみればきっと神依化への手がかりも見つかると思うから。 |
| セシリィ | ――それとミクリオさん、体の調子はどう ? |
| ミクリオ | ああ、今は平気だよ。神依化直後は疲労が激しかったけどね。 |
| スレイ | ……ミクリオ、無理してないよな ? |
| ミクリオ | してないよ、スレイじゃあるまいし。僕がここで強がったら、精霊輪具の正確な情報をセシリィに伝えられなくなるだろ。 |
| セシリィ | さすがミクリオさん。その通りよ。 |
| セシリィ | 精霊輪具を実際に体験したミクリオさんの感想はとても重要だわ。だから正直な話が聞きたいの。落ち着いたら話を聞かせてね。 |
| カーリャ | カーリャは精霊を殺したって話も気になりますよぅ……。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ……。バルドたちは、この世界のマクスウェルが殺されたと言っていた……。そして私にも「精霊装の道具になるから帝国には近づくな」と。 |
| クレス | あの指輪は、精霊が犠牲になるような危険な技術が使われているってことだね。あの時は、アステルがいたからアドバイスをくれたけど……。 |
| セシリィ | もし精霊輪具が手に入っても、知識のない私じゃ何かあったときに対処できないでしょうね。 |
| セシリィ | そのためにも精霊装のことをもっと知る必要がある。大体、この技術が「どこ」の「誰」からもたらされたものかってことさえ、わからないんだから。 |
| ミラ=マクスウェル | 元々、ティル・ナ・ノーグにあった技術ではないのか。 |
| セシリィ | うーん……。精霊と同化するなんて技術私は初めて聞いたわ……。私の死後に開発されたものかも知れないけれど……。 |
| セシリィ | 私はクロノスの力を魔鏡に落とし込む研究をさせられていたから、そんな技術があればとっくに教えられている筈よ。 |
| セシリィ | 帝国はクルスニク一族を研究対象にしていたし精霊装も、異世界の技術を利用して開発している可能性が高いと思う。 |
| セシリィ | 神依に似た技術だから、スレイさんの世界から来た神依を知る人物の情報が元じゃないかな。 |
| スレイ | オレたち以外に神依を知る人物って……まさか……ザビーダ…… ? |
| ライラ | ……ええ、こちらも調べてみないと。 |
| セシリィ | とりあえず、帝国内部に詳しそうなミトスやシングたちに話を聞いてみるね。 |
| セシリィ | いつかスレイさんが完全な神依を取り戻せるように私の方でも調査を進めておくから。 |
| スレイ | ありがとう。頼んだよ。 |
| コーキス | えーっと……とりあえずこれで報告終了、だよな ? |
| カーリャ | ……コーキス、話についてきてました ? |
| コーキス | も、もちろん !……ってゆーか、カーリャパイセンはどうなんだよ ! |
| カーリャ | ……あーっと、この話をミリーナさまにも伝えないと。それじゃあコーキス、しっかり頑張るんですよ ! |
| コーキス | あー、パイセンも全然わかってねー―― |
| セシリィ | ……あはは、カーリャったら。 |
| カーリャ | こ、これは先輩としての威厳を保つためですから ! |
| Character | 2話【10-2 帝都へ続く街道2】 |
| ヴェイグ | ……ヒルダはこの屋敷で雇われていたのか。 |
| カロル | うん。もっと早く教えてあげられれば良かったね。ボクたち、ヒルダとは前に会ってたのに。 |
| ラピード | クゥ~ン……。 |
| ヴェイグ | ……いいんだ。気にするな。 |
| エミル | さっきから浮かない顔だね、ヴェイグさん。何か気になることでもあるの ? |
| ヴェイグ | いや、そんなことはない……が……。 |
| マルタ | ほら、男ならはっきりする !もしかしてヒルダさんのこと ? |
| ヴェイグ | ……ああ。ヒルダがここで酷い仕打ちを受けていないか、気になっていた。 |
| エミル | 酷いって ? |
| ヴェイグ | 利用されてたり、何か従わざるを得ない条件を出されて無理に仕えているんじゃないかと……。 |
| ユーリ | 別に、いやいやアスターに従ってたようには見えなかったぜ。 |
| カロル | うん。むしろボクたちが潜入するときに、「アスター様に迷惑かけるな」って言われちゃったくらいだよ。ね ? |
| ラピード | ワン ! |
| ヴェイグ | ヒルダがそんなことを…… ! ? |
| マルタ | それって驚くようなこと ?雇われてるなら、雇用主に敬意を払うのは普通でしょ。それになんで虐げられてるなんて思ったの ? |
| ユーリ | 前例があったってことだろ。ヒルダには。 |
| ヴェイグ | ……ああ。器用な奴じゃないから……その分、辛い思いをたくさんしている。 |
| ヴェイグ | それでも、オレたちの世界では、やっと新しい一歩を踏み出すところだったんだ。……なのにここに来て、また同じような苦しみを繰り返していたら……。 |
| カロル | 大丈夫だよ !ヒルダが仕えてるアスターって、結構いい人だから !……うさんくさいけどね。 |
| アスター | 皆さまお待たせしました。ヒルダと、アステル様のことでご用だとか。 |
| エミル | ……はい。 |
| アスター | なるほど……本当にアステル様にそっくりでいらっしゃいますねえ。ヒヒヒ。まずはヒルダのことから参りましょう。 |
| アスター | 大変申し訳ございませんがヒルダはここにはおりません。 |
| ヴェイグ | いない ? それならいつ戻るんだ。 |
| アスター | いえ、もう戻らないかもしれませんよ。場合によってはね。イヒヒヒヒ。 |
| ユーリ | ……そりゃ一体どういうこった。 |
| アスター | ご存じでしょうが、ヒルダは帝国幹部のシング様やカイウス様と親しくしておりました。 |
| アスター | その繋がりが帝国への反乱に関わるものだとわかっても、私は今まで目をつぶってきたのですよ。 |
| アスター | ですが、ここ最近での相次ぐ幹部たちの脱走以降、その周囲にいたヒルダも監視対象になりつつあると情報が入ってまいりました。ですから―― |
| カロル | だから、ヒルダを追い出したの ! ? |
| ヴェイグ | おまえも、やはり…… ! |
| アスター | まあまあ、慌てる何とかは貰いが少ないと申しますよ ?そのような情報がありましたので、ヒルダを遠方へ避難させました。 |
| ヴェイグ | 避難……。 |
| アスター | はい。表向きには仕事と称し、ヒルダに新たな仕入れ先を見つけてきて欲しいと伝え遠方の街に向かってもらいました。 |
| ユーリ | なるほどね。ヒルダは帝国の目から逃れられるし上手く行けば本当に新たな仕入れ先を確保できるって寸法か。ほんと、抜け目のないことで。 |
| アスター | 動くならば相応の利益がありませんと。イヒヒヒヒ。 |
| アスター | ほとぼりが冷めた頃に、こちらに呼び戻すつもりでおりましたが……。お仲間の方が迎えに来たのであれば後はそちらにお任せするとしましょう。 |
| アスター | その方が彼女も幸せでしょうからね。 |
| ヴェイグ | ……ヒルダを、大事にしてくれていたんだな。 |
| アスター | 雇用主ならば、当たり前のことでございます。ヒヒヒ。 |
| ヴェイグ | ありがとう……アスター。 |
| マルタ | 良かったね、ヴェイグ ! それにしてもアスターの説明の仕方、少し意地悪じゃない ? |
| カロル | そうだよ ! ヒルダのこと追い出したのかと思ったじゃないか。 |
| アスター | これは失礼しました。ですがこちらも優秀な人材を放出する以上、少々の意趣返しを、と。イヒヒヒヒヒ。 |
| ラピード | ワフ~……。 |
| アスター | それとアステル様の件ですが、最近はお見えになっていません。 |
| アスター | ヒルダであれば、アステル様とはどこかしらで会っていたかもしれませんがね。 |
| エミル | ……そう、ですか。 |
| アスター | エミル様とおっしゃいましたか。アステル様とはご兄弟ですか ? |
| エミル | え ? ……その……。 |
| ヴェイグ | エミル、ヒルダはアステルの情報を持っているかもしれない。一緒にヒルダの所へ行かないか ? |
| エミル | あ……うん ! そうさせて ! |
| ヴェイグ | わかった。それなら、すぐにでも出発しよう。道中でヒルダに追いつけるかもしれない。 |
| アスター | では、ヴェイグ様たちにはヒルダへの言伝をお願いします。あちらで頼んだ仕事も引き継ぎをしないといけませんのでね。 |
| アスター | 用意してまいりますので、少々お待ちを。 |
| エミル | ……助かったよ、ヴェイグさん。アステルさんとのこと、なんて言っていいか、わからなかったから……。 |
| ヴェイグ | いいんだ。でもアステルに会えなくて残念だったな。 |
| エミル | え ? ……うん。 |
| ユーリ | おい、ヴェイグ。もしこのままヒルダを追うなら、一度アジトに連絡入れとかねえと。 |
| ヴェイグ | ああ、そうだな。 |
| マルタ | ……エミル。もしかして少しほっとしてる ?アステルさんと会わなくて。 |
| エミル | そんなこと……。 |
| マルタ | あのね……私もエミルと同じだよ。だからお願い、無理しないで。 |
| エミル | ……ありがとう、マルタ。 |
| エミル | うん、そうだね。ちょっと怖かった。衝動だけで来ちゃったけど……何を言えばいいのかわからなくて。 |
| マルタ | ……うん、そうだよね。私もエミルも……ラタトスクも心の準備をしておかないとね。 |
| Character | 3話【10-3 ひとけのない山岳1】 |
| カーリャ | ――なるほど。ヒルダさまは安全のために違う街へ行かれたんですね。連絡ありがとうございます、ヴェイグさま。 |
| ヴェイグ | いや……。こっちも他のみんなの状況が聞けてよかった。クラトスが助かったのは吉報だ。 |
| ヴェイグ | それで……ミリーナたちはまだ救世軍にいるのか ? |
| カーリャ | いえ、今こちらに向かってます。 |
| カーリャ | 代わりにジュードさまが向こうに残っているルビアさまやローエンさまの容態を確認しに向かいましたけど……。 |
| ユーリ | 何だかみんなバタバタしてるな。 |
| カーリャ | ですねー。スパーダさまの奪還もグダグダになってますし……。 |
| カロル | チー……じゃなくて、リチャードや、それにアステルまであっちにいたんでしょ ?コーキスたちも大変だよね。 |
| カーリャ | でもコーキスは私の後輩ですから !最終的にはちゃんとスパーダさまを連れて戻ってくる筈です。 |
| カーリャ | で――えっと、皆さんはこのままヒルダさまの捜索に向かうんですよね ? |
| ユーリ | ……カーリャ、悪いが少し待ってくれるか。 |
| カロル | どうしたの、ユーリ ? |
| ユーリ | ……なんか気持ち悪いんだよな。 |
| カロル | 具合悪いの ! ? |
| ユーリ | 違うって。あいつの持ってきた計画がだよ。自信満々で持ち込んだもんが、こんな頭っから崩れるもんかね。 |
| カロル | あいつの計画って……バルドの ? |
| ユーリ | ああ。信じてくれとかほざいてたわりに随分とお粗末だと思わないか ?……不自然なくらいにさ。 |
| カロル | ってことはやっぱり、バルドの計画は罠ってこと ? |
| ヴェイグ | 罠だったら、もっと大きな戦力でコーキスたちを潰しに来てたんじゃないか ? |
| エミル | そうだよね。おとりを使うにしてもあっちで重要視されている空のマクスウェルを使うなんて危険だし……。 |
| エミル | でも、もしそれがバルドの計画を台無しにすることが目的なら……。 |
| ユーリ | だよな……。あんまり認めたくねえがやっぱりここは素直にバルド自身が見張られていたと考えるべきか。 |
| カーリャ | 確かに、コーキスたちもそれっぽいことを話していましたが……。 |
| ユーリ | ……よし !ヴェイグ、悪いがオレはここで別れる。もう少し帝都周りを調べたいんでね。 |
| マルタ | 調べるって、バルドのために ? |
| ユーリ | 別に、あいつがどうとかじゃねえよ。このまま偽情報ばっかり掴まされたらこっちが危険だろ ? |
| カロル | そうだね。それにバルドに何かあったらフレンだって……。 |
| マルタ | ……そっか。 |
| ユーリ | ま、稽古相手が減っちまうのは困るからな。 |
| エミル | でも、ユーリさん一人で行くつもり ?それはちょっと危ないよ。 |
| ラピード | ワオン ! ! |
| エミル | あ、ごめん。頼もしい相棒がいるんだったね。 |
| カロル | ボクも行くからね !ボスとして、ちゃんとメンバーをサポートしないと。 |
| ユーリ | おう、頼むぜ。首領 ! |
| カーリャ | それじゃあ、ユーリさまとカロルさま、ラピードさまは帝都周辺の調査。 |
| カーリャ | ヴェイグさま、エミルさま、マルタさまはヒルダさまの捜索ということで。ミリーナさまに伝えておきますね ! |
| Character | 4話【10-5 ひとけのない山岳3】 |
| ミリーナ | ただいま ! |
| カーリャ | ミリーナさま ! ロイドさま !それにシングさまにマーテルさま !お疲れ様です ! ミトスさまは大丈夫ですか ? |
| マーテル | ありがとう、カーリャ。大丈夫よ。しばらくは安静が必要だけれど、命には別状がないわ。天使体は生命維持機構がしっかりしているの。 |
| カーリャ | よかったです…… !えっと、ミントさまとシェリアさまとルーティさまは……。 |
| ロイド | ジュードが働き過ぎで倒れたら困るから手伝っていくってさ。 |
| カーリャ | ははぁ……。確かにジュードさまの労働環境はブラックですもんねぇ……。 |
| カーリャ | ――あ、そうだ !ヴェイグさまたちの報告をしなきゃ ! |
| ミリーナ | ――そう。ヴェイグさんとユーリさんは、二手に分かれたのね。 |
| カーリャ | はい。ミリーナさまたちのことやコーキスたちの動きも知らせてあります。 |
| マーテル | カーリャは本当に働きものなのね。このアジトも、ミリーナと二人で維持してるんでしょう ? すごいわ。 |
| カーリャ | ふわあ……お褒めの言葉と癒しのオーラがしみわたりますぅ。そういえば、クラトスさまはこちらに来ないんですか ? |
| シング | クラトスさんはケリュケイオンに残ってるんだよ。自分は救世軍の指揮官だからって言ってさ。 |
| シング | ロイドだって、クラトスさんとゆっくり話がしたかっただろ ?もう少しあっちにいてもよかったのに。 |
| ロイド | ありがとなシング。でも俺には俺のやることがあるからさ。クラトスだって同じだ。 |
| マーテル | やっぱり似てるわね、あなたたち親子は。 |
| ロイド | そうかな。俺、あんなに頑固じゃないと思うけど。 |
| マーテル | ふふふ。そういうことにしておきましょう。それでミリーナさん。私やシングに聞きたいのは精霊装のことでしたよね。 |
| ミリーナ | はい。それと空のマクスウェルのことも。 |
| シング | あれ ? マクスウェルって……。もしかしてミラのことかな。 |
| ミリーナ | ミラ…… ? このアジトにいるミラのこと ? |
| シング | ミラがここにいるの ! ? 無事なんだね !良かったぁ……。リヒターに捕まったんじゃないかと思ってたからさ。 |
| ミリーナ | ちょっと待ってシング。話が見えないんだけど―― |
| エル | みんなー、お茶持ってきたよ ! |
| アミィ | エル、もう少しそっと入ろうね。お話の邪魔になっちゃうから。 |
| エル | は~い。 |
| ミリーナ | ありがとう、二人とも。私も手伝うわ。 |
| アミィ | あ、いいんです。そのまま続けてください。 |
| ミリーナ | それじゃお願いするわね。――それでシング、ミラとはどこで会ったの ? |
| エル | ――……ミラ ? |
| シング | 帝国の研究所から脱出する時だよ。オレと同じ場所に捕まってたルビアを助けに来たんだ。 |
| シング | あ、もしかして、あれもミリーナたちの作戦だったの ? |
| ミリーナ | ……いえ、ミラはもちろん、私たちもそんな作戦は知らないわ。研究所って所にも行ってないけれど……。 |
| シング | 変だな……それじゃまるでミラが二人いるみたいじゃないか。 |
| エル | ねえ、ミラが二人って言った ! ? |
| ミリーナ | ――そう言えばエルたちの世界には分史という概念が…… ! |
| ミリーナ | シング、見て欲しいものがあるの !今、鏡映点リストを―― |
| アミィ | 私、持ってきます ! |
| ミリーナ | ありがとうアミィ。それと悪いんだけれどクラースさんも呼んできてもらえると嬉しいわ。 |
| アミィ | わかりました ! |
| ミリーナ | カーリャ、セシリィはまだこっちに残っているかしら ? |
| カーリャ | は、はい。出がけにコーキスたちから連絡があったのでそこで思いついたらしい資料を追加で荷物に入れていらっしゃいます。 |
| ミリーナ | よかった。それじゃあセシリィも大至急ここへ呼んでちょうだい。 |
| カーリャ | はい ! ミリーナさま ! |
| ミリーナ | シング、この写真を見てくれる ?あと、こっちのリストに書いてあるもう一人のミラの特徴も……。 |
| シング | このアジトにいるっていうミラの写真は確かにオレが会ったミラにそっくりだよ。でも……何か足りないって言うか……。 |
| エル | ねえねえ、この辺の髪のピョンっていうのあった ? |
| シング | いや、なかったと思うよ。でも優しくて強い人だったな。腹ペコだったオレに後でなんか作ってあげるって言ってさ。 |
| エル | エルの知ってるミラかも…… ! |
| シング | そういう意味では、このリストの方に書いてあるミラの特徴の方が似てるような気がするなぁ。 |
| セシリィ | その人は確かに、空のマクスウェルって呼ばれてたのね ? |
| シング | ああ。間違いないよ。それに帝国軍内ではミラの似顔絵が出回って、捜索対象になってたんだ。ミラはその似顔絵、下手くそだって怒ってたけど。 |
| エル | うんうん、ますますミラっぽい ! |
| ミリーナ | そうなると、コーキスたちが追ってるのはシングが出会ったミラさんってことになるわね。 |
| セシリィ | でも、いま輸送されている空のマクスウェル――もう一人のミラさんって……。 |
| クラース | この世界のマクスウェルが本当に殺されているならその代わりということだろうな。 |
| クラース | 帝国は、異世界をサーチして、マクスウェルに値する存在をさらっているのかもしれない。だとしたら、なんて冒涜だ…… ! |
| シング | 大変だ、ミラを助けないと !あ、こっちのミラ ? も危ないよな。 |
| セシリィ | どうするミリーナ。今もコーキスたちは空のマクスウェルを追い続けてるわ。 |
| セシリィ | 上手くいけば、空のマクスウェルも、リチャードも助け出せるかもしれない。だけど、もしものことがあったら……。 |
| ミリーナ | ……呼び戻す方がいいわよね。ミラと、精霊輪具を使ったミクリオさんは。 |
| クラース | だが、この状況で、コーキスたちから更に戦力を分散させるとなると……。 |
| コンウェイ | そうだね。今から二人だけを呼び戻すのは逆に危険かもしれない。彼らを守るならあちらに戦力を増やす方が得策じゃないかな。 |
| ミリーナ | コンウェイさん !鏡映点の調査から帰ってたんですね。 |
| コンウェイ | ああ。ボクと一緒に戻ったスタンくんやカイルくんも待機している。すぐに出発できるけど……どうかな ? |
| ミリーナ | ……わかりました。その方向で、ミラたちに連絡をとってみます。 |
| Character | 5話【10-7 静かな森林 中央】 |
| 兵士 | 今日はここまでだ。さっさと入れ ! |
| ジョニー | ……ううっ……。 |
| スパーダ | ジョニー !……てめェ、人を物みたいに投げ込みやがって ! |
| 兵士 | うるさいぞ。これ以上騒ぐ気なら―― |
| スパーダ | ああ ? やんのかコラ !上等だよ、秒で潰してやるぜ ! |
| 兵士 | 好きなだけほざけ。牢の中では何もできまい。 |
| スパーダ | ……クソみてえなそのツラ、覚えたからな。次ここに顔見せた時には―― |
| ジョニー | よせ、スパーダ……俺は大丈夫だ。 |
| 兵士 | ……フン。お前もそろそろ素直にならないと次はこの牢に戻って来られないかもしれないぞ。 |
| スパーダ | ……行ったか。ったく、ひでェ扱いだぜ。しかし、あんたも頑張るな。道化のジョニーさんよ。 |
| ジョニー | ……まあな。俺は……絶対に……奴らに屈するわけには……いかないんでね。 |
| スパーダ | わかってるよ。大事な人のため、ってやつだろ。 |
| ジョニー | ゴホゴホッ……ああ。俺の心が折れれば……あいつは具現化されて……人質として使われるだろう……。 |
| ジョニー | そんなことになったら……俺は俺を許せない……。あいつだけは……もう……辛い思いを……ゴホッ……。 |
| スパーダ | あんたの方が辛そうだぜ。無理しないでもう休めって。 |
| ジョニー | 無理じゃないさ……。おまえさんとこうして話している時が……唯一、気がまぎれるんだよ。 |
| スパーダ | けどよ……。 |
| ジョニー | ……スパーダも……俺と同じなのか ?誰かを具現化させないように……。 |
| スパーダ | いや、オレはちょっと違うんだ。 |
| スパーダ | ……オレには前世ってやつがあってさそれが、剣だったんだ。人間みたいに意思を持った剣さ。 |
| スパーダ | んで、奴らはその前世のオレを、具現化したいらしい。会話を聞いてると、魂を切り分けるだのなんだの……。オレは肉や野菜じゃねーってんだよ。 |
| スパーダ | 多分、前世のオレみたいに意思を持った武器とか人間そのものを武器にするとか……あいつらの研究って、そんなところじゃねェのか。 |
| ジョニー | 驚いたな……。まるでソーディアンだ。 |
| スパーダ | ソーディアン ? |
| ジョニー | 意思を持つ剣……おまえさんの前世みたいな剣が俺の世界にもあったんだよ。 |
| ジョニー | 俺の仲間は、その剣の使い手だったんだ。 |
| スパーダ | マジか ! ! 会ってみたいぜ。 |
| ジョニー | はは……具現化されていれば是非会ってもらいたいよ。でもそれはきっと……彼らにとっては不幸だ……。 |
| スパーダ | ……だな。こんな世界にダチが勝手に連れて来られるなんて冗談じゃねェよ。 |
| ジョニー | でも、なんだか懐かしいぜ……。スタ……、ルー……、リ……オ……みんな……元の世界で元気に……して…………。 |
| スパーダ | ……おい、ジョニー…… ? |
| ジョニー | ……………………。 |
| スパーダ | ジョニー ! しっかりしろって、おい ! |
| スパーダ | んだよ、眠っただけか。驚かせやがって。……しっかし、ひでェ熱だな。 |
| スパーダ | (こいつ、このブレスレットをはめられてから、どんどん弱っていく……。もしかしてこれが原因なのか ? ) |
| スパーダ | (早くここから出してやらねえとマジで死んじまう) |
| スパーダ | (けど脱出なんて、オレ一人だってチャンスがなかったのにこんなボロボロのジョニーを連れていくとなると……) |
| スパーダ | クソッ ! ルカやアンジュがいればなんかいいアイディアを―― |
| ? ? ? | 良かった、まだここにいた……。別棟にでも移されてしまったかと心配していました。 |
| スパーダ | ―― !……誰だよ、お前。 |
| バルド | ……彼はかなり弱っているようですね。急がないと命が危ない。 |
| スパーダ | 誰だって聞いてんだよ ! 答えろ ! ! |
| バルド | 私はバルド。あなたを迎えにきました。急いでここを出ましょう。 |
| スパーダ | は ? 何言ってんだ ? |
| バルド | あなたの仲間が待っているんです。さあ、脱出しますよ。 |
| スパーダ | 仲間…… ? |
| Character | 6話【10-8 静かな森林 道沿い1】 |
| ルカ | 随分スピードが落ちてるみたいだけど……。 |
| ヒューバート | こんな脇道に入れば、どうしても馬車のスピードは落ちる。我々を巻くために選んだんでしょうが、悪手ですよ。 |
| イリア | あいつら、随分と手間取らせてくれたじゃない。跡形もなくぶっつぶしてやるわ ! ! |
| ソフィ | イリア、リチャードは潰しちゃダメ。 |
| イリア | う…… ! |
| ルカ | そうだよ。アスベルたちの仲間なんだから。それに馬車にはスパーダがいるんだよ ? |
| イリア | そ、そんなのわかってるわよ !そのくらいの勢いでやればいいって言ってんの。さっさと行くわよ ! |
| ヒューバート | 待って下さい。また大量の光魔でも出されたら、戦力的にはこちらが不利だ。コーキスたちを待つべきです。 |
| イリア | もう、いちいち水差すんだから !真面目な方々は気にすることが多くてほーんと大変でございますわね~。 |
| アスベル | ……そうだな。イリアの言うとおり、今行こう。 |
| ヒューバート | なにを言ってるんですか、兄さん ! |
| アスベル | ヒューバート。リチャードが光魔を呼ぶところを見たか ? |
| ヒューバート | ええ。ミリーナたちの話では、チーグル――リチャード陛下は、魔鏡結晶のような石で光魔たちを召喚していると。 |
| アスベル | 今までリチャードと戦う時には、あっちからの不意打ちが多かったらしいな。だけど、今は状況が違う。 |
| ヒューバート | ……そうか !こちらがリチャード陛下を標的にできるなら、最初からその石を狙えばいい。 |
| ヒューバート | ですが、チャンスは光魔を呼び出そうとする一瞬だ。近づく間もないでしょう。小さな石を狙えるくらい、緻密で的確な遠距離攻撃が必要です。 |
| ヒューバート | 石を彼の手から排除、その後ならば近接攻撃へと持ち込むことも可能ですが……。 |
| 全員 | 遠距離攻撃……。 |
| イリア | ……ま、待ってよ。その視線、もしかして……。 |
| ヒューバート | ぼくも銃を扱いますからわかります。ここは狙撃に慣れたイリアさんが適任でしょうね。 |
| ルカ | 大丈夫だよイリア。君なら必ずできるよ ! |
| イリア | なに無責任なこと言ってんのよ ! |
| ルカ | ご、ごめん……でも……。 |
| イリア | あたしが失敗したら、また山ほど光魔呼ばれて逃げられちゃうのよ ! ? もしかしたら、リチャードに当てちゃうかもしれないし ! |
| イリア | それにあたしの銃だと、それほど距離はとれない。場合によっては、敵の真っただ中まで入りこまないと……。 |
| ルカ | だったら、イリアが狙える位置まで行けばいいよ。僕が側にいるから。光魔を出すタイミングも僕が見る。命に代えても……君を……その…… |
| イリア | ……バカ。あんたの命に代えていいものなんてどこにもないんだからね ! |
| イリア | けどまぁ……よっしゃわかった ! やってやろうじゃないの ! |
| ソフィ | イリア、頑張って ! |
| イリア | はあー……。狙撃のコツ、リカルドに教わっとくんだったわ。 |
| ヒューバート | それでは、改めて確認します。 |
| ヒューバート | ぼくとソフィで撹乱し、馬車の周囲の敵を封じます。イリアさんは狙える位置にきたら石を撃ってください。ルカさんはイリアさんの援護をお願いします。 |
| ヒューバート | 光魔の召喚を封じたら、兄さんは陛下を確保。ルカさんたちは馬車にいる、スパーダさんを救出。いいですね。 |
| ヒューバート | 言っておきますが、これは酷くおざなりな計画です。誰かが負傷、もしくは大量に光魔を呼ばれた時点で中止、撤退します。……いいですね ? |
| アスベル | わかった。ルカ、イリア、ソフィ、行くぞ ! |
| Character | 7話【10-11 静かな森林 道沿い4】 |
| 帝国軍兵士 | 敵襲 ! 先ほどの奴らが追ってきたようです ! |
| チーグル | チッ、だからこんな悪路じゃスピードが落ちると言っただろう !誰がこのルートへの指示を出したんだ ! |
| 帝国軍兵士 | それは……フレン様からの伝令で……。 |
| チーグル | フレン ! ? バルドにしては酷い命令だな。仕方ない。ここで始末をつける。 |
| ルカ | ――リチャードが馬車から出て来た ! |
| ヒューバート | ここはぼくたちに任せて下さい !二人はそのまま駆け抜けて ! |
| 二人 | 了解 ! |
| ルカ | リチャードとの距離は ? |
| イリア | オッケー、ここからならイケる ! |
| 帝国軍兵士 | くたばれっ ! |
| イリア | ―― ! ! |
| ルカ | こっちは気にしないで ! そのまま狙って ! |
| イリア | ……敵は任せたわよ ! |
| チーグル | すでに兵士もほとんどが使いものにならないか。ならば光魔で―― |
| ルカ | 今だ、イリア ! |
| イリア | この……当たれーーーーっ ! ! |
| チーグル | ――痛っ ! 石が ! |
| イリア | やりぃ ! あたしって天才 ! |
| チーグル | クッ、これでは光魔が…… ! |
| ソフィ | たあっ ! ! |
| チーグル | なめるな ! 小娘一人くらい―― ! |
| ソフィ | アスベル ! |
| アスベル | すまない、リチャード ! |
| チーグル | うっ……。 |
| ソフィ | リチャード、大丈夫かな。 |
| アスベル | ああ。当て身は上手くいった。しばらく目は覚まさないと思う。あとは、光魔を呼んでいた石を見つけないと……。 |
| ソフィ | …………。 |
| ソフィ | (やっぱり、リチャードの中にラムダがいない……) |
| アスベル | ……あった、この石だな。リチャードと魔鏡結晶は確保したぞ !ルカ、馬車へ ! |
| ルカ | わかった ! |
| ルカ | ――スパーダ、助けに来たよ ! |
| サレ | 頑張ってるねえ。好きだよ、そういう人。 |
| ルカ | ――っ ! ? |
| イリア | 何よあんた、邪魔 ! |
| アスベル | 新手か ! ? |
| ソフィ | アスベルは、リチャードの側にいて。わたしが―― ! |
| サレ | ああ、いいねえ。みんな必死でさ。そういうの大好きだけど、その顔が絶望に変わるのは……もっと好きなんだ ! |
| コーキス | ソフィ様、みんな ! ! |
| ヒューバート | コーキスたち、追いついてくれましたか……! |
| サレ | ……チッ、せっかくの楽しみを……。仕方ないね。 |
| クレス | ―― ! 馬車が走り出したぞ ! |
| アスベル | あいつ、いつの間に ! |
| ルカ | まだスパーダが中にいるのに !スパーダーーーーッ ! ! |
| イリア | そんな……、あともう少しだったのに……。 |
| ルカ | ……ごめん……スパーダ……僕……。 |
| ミラ=マクスウェル | 落ち着くんだ、ルカ。あの馬車にスパーダは乗っていない。 |
| ルカ | ……え ? |
| コーキス | 説明するよ。あの馬車には―― |
| ? ? ? | ――……ス、コーキス。 |
| コーキス | なんだよこのタイミングで魔鏡通信――ってバルド ! ? |
| バルド | はい。皆さんに頂いた魔鏡通信装置はきちんと機能しているようですね。 |
| コーキス | そっか、あの時ミリーナ様が渡してたんだっけ。 |
| バルド | 手短に報告します。特異鏡映……いえ、スパーダの救出に成功しました。それと、ジョニーという人物も一緒です。 |
| ルカ | スパーダを救出って…… ? |
| バルド | 彼らを引き渡します。落ち合う場所は―― |
| ルカ | ――それじゃ、あの馬車にはミラさんに似た人……【空のマクスウェル】って人が乗ってたんだね。 |
| ミラ=マクスウェル | そうだ。……助け出したかったが、この状況では仕方がない。 |
| クレス | とにかく今は、スパーダとジョニーさんを迎えに行こう。あ、でもリチャードは……。 |
| アスベル | 俺がアジトに連れて行くよ。ヒューバート、一緒に頼めるか。 |
| ヒューバート | もちろん。途中で目を覚ましたら大変なことになるでしょうからね。 |
| ソフィ | わたしも行く。もしリチャードが暴れてもみんなのことはわたしが守るから。 |
| クレス | 頼むよソフィ。アスベルもヒューバートも気を付けて。 |
| コーキス | それじゃ、オレたちはこのまま待ち合わせ場所に行こう。 |
| イリア | ったく、本当に手間かけさせてくれるわね、あいつ。でも、今度は絶対に……。 |
| ルカ | うん。スパーダを助けよう ! |
| Character | 8話【10-13 ひとけのない街道2】 |
| バルド | ――スパーダとジョニーは先に指定の地点へ向かっています。そちらもどうかご無事で。では後ほど。 |
| バルド | (よし、連絡はついた。私も早くスパーダたちに追いつかないと) |
| ? ? ? | そこにいるのは誰だ。 |
| バルド | ―― ! |
| ナーザ | ……バルド ? |
| バルド | ナーザ……様……。 |
| ナーザ | 何故お前がここにいる。 |
| バルド | ナーザ様こそ、なぜこのような場所に……。お怪我の具合はよろしいのですか ? |
| ナーザ | 仕方ないだろう。空のマクスウェルの輸送隊が襲われたとの連絡が入ったからな。念のため、こちらで確保している鏡映点の所在を確認していた。 |
| ナーザ | ……ところで、これはどういうことなんだ。ここにいた特異鏡映点、特異鏡映点亜種03ともにいなくなっているようだが。 |
| バルド | 彼らは、私が逃がしました。 |
| リヒター | 逃がした…… ? お前、何を考えている。 |
| ナーザ | 話は俺が聞く。リヒターはすぐに逃げた奴らを追え。俺はまだ、思うように動けないからな。 |
| リヒター | ……わかった。 |
| ナーザ | ……さあ、話せ。 |
| バルド | (さすがにまだ、チーグルが捕まったとの報告は上がっていないようだな。ならば……) |
| バルド | 輸送隊襲撃の件は私も報告を受けました。このままでは、空のマクスウェルやチーグルまでも敵の手に落ちる可能性があります。 |
| バルド | ですから、奴らの仲間を一時的に解放することを持ちかけ、今のうちに味方として入り込み後に鏡映点たちを奪還する計画を立てました。 |
| ナーザ | ――……そうか、わかった。正攻法を好むお前らしくない方法に思えるがな。 |
| バルド | 買いかぶり過ぎです。私はそれほど、正しい性根の持ち主ではありません。 |
| バルド | ……何もかも生前と同じという訳ではないのですから。 |
| ナーザ | ………………。 |
| ジョニー | ハァ……ハァ……。 |
| スパーダ | ジョニー、辛れェだろうが、もうひと踏ん張り頼むぜ。合流場所に着きゃ、仲間ってのがいるはずだ。 |
| スパーダ | (……仲間、バルドって奴はオレたちの仲間と言ってた。まさか……) |
| ジョニー | 悪いが……お前さん、先に行ってくれ……。俺は……少し、休んでからにする。 |
| スパーダ | ハァ ? ふざけてんのかよ。そう言われて「はい、そーですか」ってわけに行くか ! |
| スパーダ | オラ、背負ってやるから乗れ。 |
| ジョニー | ……こんなでかい荷物背負ってたら、助かるものも助からないぞ。 |
| スパーダ | うッせーなー ! 引きずられて皮ズルムケになりたくなきゃさっさとしろ ! |
| ジョニー | 強引な男だね、お前さんも……。 |
| 帝国軍兵士 | いました ! 特異鏡映点、特異鏡映点亜種03を確認 ! |
| スパーダ | クソッ、見つかっちまったか。バルドの野郎は何してんだよ ! |
| ジョニー | スパーダ……走れ。俺が奴らの気を引く。今なら、お前だけならきっと…… |
| スパーダ | ハッ、残念ながら染みついちまってんだよなァ。「心に剣を持ち、誰かの楯となれ」って家訓がよ。 |
| リヒター | 追え ! 生かして捕らえろ ! |
| スパーダ | あんな生き地獄、戻ってたまるかよ !絶対に逃げのびて――うわっ ! |
| 帝国軍兵士 | 馬鹿め。人ひとり担いで、逃げきれるものか ! |
| スパーダ | ここまでかよ、っきしょーーーー ! ! |
| 帝国軍兵士 | なんだ ! ? |
| ? ? ? | うおおおおおっ ! ! |
| スパーダ | ―― ! ! |
| 帝国軍兵士 | うっ…… ! きさ……ま……は…… |
| スパーダ | (この太刀筋……忘れねえ、忘れるわけがねえ…… ! ) |
| スパーダ | (あれは……オレの魂に刻み込まれたモノ。オレが守るべき使い手――) |
| ルカ | スパーダ ! 助けに来たよ ! |
| スパーダ | マジでおまえかよ……、ルカ ! ! |
| イリア | 寝ぼけてんじゃないわよ。ホラ、しっかりして ! |
| スパーダ | イリアもか ! ? |
| リヒター | ……黒衣の鏡士側の鏡映点か。その二人を返してもらおう。 |
| スパーダ | ざけんな ! オレはてめェらの持ち物じゃねえ ! |
| コンウェイ | そうだよ、無粋な人。久しぶりの友との再会を邪魔するならボクが相手だ。 |
| スパーダ | コンウェイ ! ? |
| スタン | ジョニーさん ! しっかりして下さい ! |
| ジョニー | はは、夢……じゃないよな……スタン。 |
| カイル | この人がジョニーさん……。英雄たちの仲間……。 |
| スタン | ああ、絶対に助けるぞ ! |
| カイル | はい ! |
| リヒター | ……再会の挨拶とやらは終わったか ?ならば『無粋な敵』と手合わせしてもらおう ! |
| Character | 9話【10-13 ひとけのない街道2】 |
| リヒター | ……多勢に無勢か……。やむを得ん。――全員、引くぞ ! ! |
| コーキス | これだけの鏡映点相手に……なんて強さだよ、あいつ。 |
| ルカ | スパーダ ! ! |
| スパーダ | おいおい、なんだよ。また泣き虫ルカに逆戻りかぁ ? |
| ルカ | だって、やっと……やっとスパーダを助けられたんだ。何度も失敗して……だから……。 |
| スパーダ | そうだったのか。オレがおまえを守るって言ったのに、逆になっちまったな。まったく情けねェぜ。けどよ……。 |
| スパーダ | ……久しぶり。会えて嬉しいぜ、ルカ。 |
| ルカ | うん……僕もだよ。 |
| イリア | うわ~……、また暑っ苦しいもの見せつけて。うっとうしいったらないわ、もう ! |
| スパーダ | おめェも相変わらずの口の悪さじゃねーか、イリア。安心したぜ。 |
| イリア | 口が悪いのは、お互いさまじゃございませんこと~ ?おほほのほ~。 |
| コンウェイ | 二人とも似た物同士ってことだね。口の悪さも、ルカくんが大切なのも。 |
| ルカ | えっ ? |
| イリア | ちょ、ちょっと、いい加減なこと言わないでよね ! |
| スパーダ | コンウェイまで具現化かよ。この調子じゃ、他に知った顔がゾロゾロ出てきてももう驚かねえぜ。 |
| コンウェイ | 残念、これで打ち止めだよ。今後どうなるかはわからないけどね。とりあえず大きな怪我がないようで良かったよ。 |
| スパーダ | 怪我……そうだ ! ジョニーは……ジョニーはどうした ! |
| スタン | ああ、気を失ってるけど大丈夫。でも……顔色がすごく悪いんだ。 |
| スパーダ | なんかその腕輪つけてから、どんどん弱ってんだよ。外してみたらどうだ ? |
| スタン | 腕輪…… ?これ、マリアンさんが付けられていたアンチ・ミラージュブレスじゃないか ! |
| スパーダ | なんだそりゃ ? |
| カイル | これを付けてると、どんどん体が弱っちゃうんだよ。 |
| スパーダ | だったら早く外してやれって ! |
| スタン | 駄目なんだ。下手に外したらジョニーさんは死んでしまう。何か方法は……。 |
| コーキス | すぐにミリーナ様に連絡とるよ ! |
| カイル | ――ミリーナ、どうすればいいって ? |
| コーキス | やっぱり、この場でどうにかするのは無理みたいだ。すぐにケリュケイオンの停泊地へ向かって欲しいってさ。 |
| スタン | わかった。合流地点の待機組にも知らせてケリュケイオンに行こう。 |
| スパーダ | 待機組 ? そういや合流地点はもっと先だったな。なんでこんな場所にいたんだよ。 |
| ルカ | 僕たちは斥候だよ。待ち合わせ場所で二手に分かれたんだ。 |
| スパーダ | なるほどな ! おかげで助かったぜ。 |
| スタン | そうだ。こっちもお礼が遅くなった。ジョニーさんを助けてくれて、ありがとう。スパーダ。 |
| スパーダ | 同じ牢に入ったよしみってヤツさ。気にすんなよ。 |
| ルカ | スパーダ、なんか優しいね。初対面の人には、ナメられないようにガツンといくって言ってなかった ? |
| スパーダ | あいつ、ジョニーのお仲間だろ ?んな必要ねーよ。いいヤツっぽいしな。 |
| ルカ | それって、初対面の僕がいいヤツに見えなかったってことにならない…… ? |
| コンウェイ | フッ、ルカくん、言うじゃないか。 |
| スパーダ | いやおまえ……あの時は……。あ ! そういやおまえ、天術みたいなの使ってたよな。 |
| ルカ | みたいな、じゃなくて天術だよ。スパーダもきっと使えるよ。 |
| スパーダ | マジか ! それ知ってたらおまえを守って戦ったのによ。 |
| イリア | そうそう、ルカってばあたしの時もそうだったのよ。全部終わってから「知らなかったの ? 使えるよ~」って ! |
| イリア | ならさっさと言いなさいっての !ほんっとに気が利かないんだから。だからあんたはおたんこルカなのよ ! |
| ルカ | そ、そんなぁ。八つ当たりしないでよ……。それに僕、そんな言い方してないし……。 |
| スパーダ | あ~、お前らのこの感じ……。なんか懐かしくてホッとするわ。 |
| コンウェイ | ふふふ……。夫婦喧嘩は犬も食わないってね。 |
| Character | 10話【10-14 ひとけのない街道3】 |
| レイア | ……ルビアの治療はまだかかりそうだね。カイウス、心配してるだろうな。 |
| ジュード | うん……。でも運ばれてきた時よりはだいぶ落ち着いてるよ。今は時間が必要なんだと思う。 |
| レイア | しばらくは定期的にこっちに通うの ? |
| ジュード | そのつもり。もしもルビアがアジトに来た場合は僕が責任をもって診ないといけないし患者の状態は把握しておきたいんだ。 |
| レイア | ホント真面目だね、ジュードは。後は、フィリップさんにローエンの様子を確認するだけ ? |
| ジュード | うん。えっと、フィリップさんの部屋は確かこっち……。 |
| ローエン | ――それと、資料等はまとめてありますので、後ほどフィリップさんのお部屋にお持ちします。 |
| 二人 | ロ、ローエン ! ? |
| ローエン | おや、ジュードさんにレイアさん。いやはや、早々に見つかってしまいましたか。ほっほっほ。 |
| ジュード | 目が覚めていたの ! ? |
| フィリップ | フフ、驚いたかい? |
| ジュード | あ、当たり前じゃないですか ! |
| レイア | どういうこと ! ? いつから ! ? |
| フィリップ | 実は、ローエンさんには少し前に無理をして目を覚ましてもらったんだ。 |
| ジュード | 無理って…… ? |
| フィリップ | クラトスさんの治療のためにローエンさんが使っていた重症者用の治療ベッドを空ける必要があったんだよ。 |
| フィリップ | それで、ローエンさんの状態がだいぶ安定していたから覚醒を促してみたら上手くいってね。 |
| ローエン | はい。おかげさまでこのとおりピンシャンしております。 |
| ローエン | しかもフィリップさんが懇切丁寧に説明をして下さったおかげで、すぐに状況も把握できました。具現化とは、実に興味深い現象ですね。 |
| ジュード | さ、さすがローエン……。すごい順応力だね。 |
| フィリップ | そうなんだ。しかも各方面への理解も早い。クラトスさんへのスピルリンクを開始する頃には治療のサポートができるほどでね。驚いたよ。 |
| ローエン | いえ、私の手伝いなど初歩の初歩。フィリップさんの話と、用意してあった資料で彼への施術の段取りを確認したまでです。 |
| フィリップ | いや、それは謙遜ですよ。ミリーナにローエンさんがサポートに入ると知らせた時は、本当に驚いていましたから。 |
| レイア | あ、それならミリーナたちは、ローエンと会ってたんだよね。だったらなんで教えてくれなかったんだろ。 |
| ローエン | 私が頼んだのです。皆さんには、しばらく伏せておいて欲しいと。 |
| レイア | え、なんで ! ? |
| フィリップ | ……実は、ローエンさんの体はまだ回復しきっていないんだ。これは無理に目覚めさせた僕のせいでもある。 |
| フィリップ | 今はこうしていられても、容体によってはまた意識を失うことがあるかもしれない。 |
| ローエン | ようやく目覚めたかと、皆さんにご足労頂いても結局、つまらない老人の寝顔しかみられなかったでは申し訳ありませんからね。 |
| レイア | ……そっか。わたしたちをがっかりさせないように完全に回復するまでは伏せておいたんだね。 |
| ローエン | ぶっちゃけますと、情けない姿を晒したくはないというジジイのワガママなのですよ。ほほほ。 |
| ジュード | ねえローエン、フィリップさんにローエンの治療法を教えてもらうからさこのまま一緒に、アジトへ帰らない ? |
| ローエン | お気持ちは嬉しいのですが……。 |
| フィリップ | ジュード。ローエンさんが特異鏡映点だということは知っているね。 |
| ジュード | ええ、もちろん。でも、ガロウズたちが開発したキラル分子の流出を反転させるブレスレットでその影響を抑えられるんですよね ? |
| フィリップ | いや……。今のローエンさんの体ではそのブレスレットの負荷に耐えられない。 |
| フィリップ | そして君たちのアジトは、ミリーナの作り出した仮想鏡界の中だ。アニマを逆流させる特異鏡映点が及ぼす影響力は未知数なんだよ。 |
| フィリップ | わずかな期間の滞在であれば可能かもしれないがブレスレット無しで長期となると不安があってね。 |
| フィリップ | 今は治療を続けながら、ブレスレットをつけられる状態まで、根気よく待つしか無いんだ。力不足で申し訳ない。 |
| ローエン | ……ケリュケイオンでしたらこのままの状態でおりましても、さほどの影響はないとのことですので、お世話になることにしました。 |
| ジュード | そうだったのか……。無理を言ってごめん、ローエン、フィリップさん。 |
| ローエン | いいえ、そのお気持ちは嬉しいのですよ。ジュードさん。 |
| ローエン | まあ、そんなわけでして、しばらくはリハビリがてら救世軍で執事まがいのことをさせて頂いてました。 |
| フィリップ | ゆっくり休んで欲しいんだけど、聞いてくれないんだ。ジュードやレイアからも説得して―― |
| ミリーナ | フィル ! |
| フィリップ | すまない、ミリーナから通信だ。――どうしたんだ、ミリーナ。 |
| ミリーナ | ルーティとミントとシェリアはまだ残ってる ? |
| フィリップ | ああ、いるよ。もうすぐ帰るようだけど。 |
| ミリーナ | そのままそこで待つように言って。治癒術を使える人が必要なの。 |
| フィリップ | 何があったんだい ? |
| ミリーナ | コーキスたちが、特異鏡映点のジョニーさんを救出したんだけど、アンチ・ミラージュブレスをつけられているわ。 |
| ミリーナ | これからケリュケイオンに運び込むから解除をお願い ! |
| ミント | それでは、交代で治癒術をかける方がいいですね。 |
| シェリア | ええ。強い術よりは弱い術をゆっくり長くかけた方が、体への負担も―― |
| スタン | ジョニーさん、大丈夫かな……。 |
| ルーティ | ガロウズに任せておけば大丈夫よ。マリアンの時だって、ちゃんと外してくれたでしょ。 |
| スタン | でも、あんな弱った姿を見るとさ。もっと早く助け出せたらって……。 |
| ルーティ | あんたは自分のやれることをやった。それでいいじゃない。 |
| ガロウズ | 待たせたな、アンチ・ミラージュブレスは外れたぜ。すぐに治療を始めてくれ。 |
| 二人 | はい ! |
| ルーティ | さ、ここからはあたしたちの出番。自分のやれることをやってくるわ ! |
| スタン | ああ、ジョニーさんのことを頼んだぜ ! |
| Character | 11話【10-15 ひとけのない街道4】 |
| ミリーナ | フィル ! ジョニーさんはどう ? |
| フィリップ | アンチ・ミラージュブレスが解除できたからミントたちが治療に入ったよ。こちらに来ていたジュードも診てくれている。 |
| ミリーナ | 良かった。あれは一刻を争うから……。他のみんなは ? |
| フィリップ | クレスとミラさん、スタンは、ジョニーのところだ。後はみんな、あちらの部屋で待機してるよ。 |
| ミリーナ | そう、待たせちゃったみたいね。それじゃスパーダさんの話を聞きにいきましょう。 |
| スパーダ | ――だから、帝国が興味持ってるのはオレの前世ってわけ。 |
| スパーダ | あの胸クソ悪ィ実験じゃ、魂の分離だの融合だの憑依だの、そんな話ばっかしてたぜ。 |
| スパーダ | 研究者の野郎ども、オレに聞こえないようにコソコソ話してたからそれ以上、詳しいことはわかんねェな。 |
| ルカ | 大変だったんだね。スパーダ。 |
| スパーダ | まあな。けど、おまえやイリアだってヤバかったって話じゃねぇか。 |
| ルカ | うん、危ない状態だったって言われたよ。 |
| スパーダ | チッ、あいつらマジで許せねェ……。 |
| ミリーナ | 剣である前世の具現化……。魂の分離、融合、憑依……。 |
| フィリップ | 意思を持った武器や、武器に意思を宿らせる実験じゃないかというスパーダの予想は確かにありえる話だね。 |
| フィリップ | 事実、異世界にはソーディアンという例もある。ただ気になるのは、『魂』に固執している点だ。 |
| ミリーナ | そうね。あくまでソーディアンは人の記憶や人格を武器に投射したものだから。 |
| ミリーナ | 一つの体、一つの物質に複数の魂を内包している状態を目指しているのかしら。 |
| スレイ | ……なんかそれって、神依に似てるよな。 |
| ミリーナ | ……それよ、スレイさん ! |
| ミリーナ | ルカが転生者の話をしてくれた時にクラースさんが言ってたの。一つの体に、魂が分裂して存在しているみたいだって。 |
| ミリーナ | これって、見方を変えれば、神依と似た状態じゃない ? |
| ミクリオ | そうだね。天族である僕たちは器であるスレイの体なら融合することができる。 |
| ライラ | はい。しかも、個たる意識はきちんとありますから神依に近い形と言えますわ。 |
| ミリーナ | 精霊と融合するなんて神依と似た発想を帝国はどこから得たのか、セシリィも気にしてたけれど……。 |
| ミリーナ | もしかしたら、ルカたち転生者がそのヒントになったのかもしれないわね。 |
| スレイ | う~ん……。単純に、オレたちと同じ世界からきた鏡映点の知識って可能性の方が高くないかな ? |
| スレイ | ほら、古代語の解読なんかでよくあるだろ ?ひっかかったところを裏読みや深読みして結局書いてあるままでしたってことがさ。 |
| ミクリオ | ああ。でも、そうだとすると帝国に僕たちの世界の知識が流れてるっていうのがね……。 |
| ライラ | ええ。つまりそれは、その「誰か」は捕まっているか、敵になっているということですから。 |
| スレイ | ……うん。 |
| ミリーナ | もしかしたらスレイさんたちは、帝国側にも天族がいると考えているの ? |
| スレイ | ……ああ。リストにも載せたザビーダって仲間が捕まってるんじゃないかって……。でも……。 |
| ミリーナ | ――確かザビーダさんって……ベルベットたちが出したリストにも……。 |
| ライラ | ……まぁ、その話は一旦置いておきましょう。 |
| ライラ | あくまで可能性ですが、私たちがこうして具現化されている以上、他の仲間も……と考えるのはおかしくないですよね ? |
| ミリーナ | 確かにそうですね……。 |
| イリア | ……ねえ、この人たち何言ってんの ? |
| スパーダ | バカ、オレに聞くんじゃねェよ !なあル―― |
| ルカ | 話を聞いてて思ったんだけど帝国にいる鏡映点が――とかじゃなくて、こっちの情報が漏れてるってことはない ? |
| 二人 | (参加してる ! ? ) |
| コンウェイ | つまりルカくんはこちらにスパイがいると思うのかい ? |
| ルカ | ううん、そういうわけじゃなくて、わざとじゃなくても、知らず知らずに相手に情報を渡しちゃってることもあるのかなって。 |
| フィリップ | ……そうだね。こちらが帝国側に内通者を置いていたように、こちらの情報も―― |
| コーキス | あ、ちょっと待った、魔鏡通信が……。ミリーナ様、バルドからの通信です ! |
| スパーダ | バルド ! ? あいつ何してんだよ。後から追うって言って、それっきりだったんだぜ ? |
| ミリーナ | バルドさん、今どこにいるの ? |
| バルド | ――お話があります。どこかで落ち合えませんか ? |
| ミリーナ | わかったわ。こちらも聞きたいことがあるし今からそちらに向かいます。 |
| Character | 12話【10-15 ひとけのない街道4】 |
| コーキス | ……なぁ、さっきの話じゃないけどユーリ様たちもスパイの可能性を気にしてたしこれからバルドに会うのも見られてたりしねぇかな。 |
| イクス | 『少なくとも、俺が見える範囲には怪しい奴の姿は無いみたいだけど……』 |
| コーキス | 心配性のマスターがそう言うなら平気か……。 |
| マーク | あ ? イクスの奴なんだって ? |
| コーキス | 周りに怪しい奴はいないって……。 |
| フィリップ | イクスがそう言うならひとまず信じていいとは思うが……。 |
| ミリーナ | 情報漏れが内通者の場合は……ってことね。 |
| マーク | その為に鏡映点サマにはケリュケイオンに残ってもらったんだ。ひとまずは大丈夫だろう。 |
| マーク | これで情報が漏れるなら、鏡士かバルドかセシリィが裏切り者ってこったな。 |
| セシリィ | そうね……。私は一番怪しい立場だから……。 |
| コーキス | おい、マーク。お前、感じ悪いぞ。 |
| マーク | 仕方ねぇだろ。用心するに越したことはないんだから。 |
| バルド | ……お待たせしました。 |
| ミリーナ | 今回は無事に会えたわね。スパーダさんが心配していたわよ。 |
| バルド | そうですか……。私の不手際で落ち合えなかったことを謝っておいて下さい。 |
| ミリーナ | 何があったの ? |
| バルド | ……スパーダさんたちを逃がしたことをウォーデン……ナーザ様に知られてしまいました。それで少々事態の収拾に手間取ってしまったんです。 |
| フィリップ | 今回の救出劇は不測の事態が起きすぎではありませんか ? |
| バルド | ……ええ。私自身も帝国の誰かに疑われているのかも知れません。それでも……私はあなた方に協力するつもりです。 |
| コーキス | リビングドール計画を止めるために、か ? |
| バルド | ええ。リビングドール計画とは、カレイドスコープによって光る砂となって失われたビフレストの民を甦らせるための計画。 |
| バルド | もしもこれが、亡くなった世界中の人々を甦らせる計画だというのなら、私も……もしかしたらメルクリア様にお仕えし続けたかもしれません。 |
| バルド | 現状のリビングドールは酷いものですが研究次第で、犠牲を強いることなく死者の甦りを可能にできるかも知れない。 |
| バルド | でもメルクリア様が救いたいのはビフレストの民だけです。そしてその為の手段としてリビングドールの手段について見直すつもりもない。 |
| フィリップ | ……ああ、そういうことか。彼女に感じた違和感は。これはメルクリア皇女なりの、セールンド――いや、僕やゲフィオンへの復讐でもあるんだね。 |
| バルド | ええ。自分の国を奪った女性が、自分のために世界を甦らせようとして、自分の願いを叶える為だけにもう一人の自分すらも生み出した。 |
| バルド | ゲフィオンがしたことをメルクリアは自分もしようとしているのです。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| イクス | 『それは違う ! ミリーナ……いやゲフィオンは贖罪の気持ちから世界を救おうと思った。最初からエゴだけのメルクリアとは違う』 |
| コーキス | マスターが言ってます。贖罪の気持ちから世界を救おうとしたゲフィオンとエゴだけのメルクリアは違うって。 |
| マーク | そいつはどうかな。結局はどっちもエゴなんだと俺は思うぜ。だが、リビングドールって手段は気に入らねぇ。 |
| マーク | ――今はそういうことにしておこうや。 |
| コーキス | ………………。 |
| バルド | リビングドール計画の阻止には、カレイドスコープで光る砂――アニムス粒子となったビフレストの人々に接触できないようにするしかありません。 |
| バルド | 現状、ゲフィオンとイクスさんが、死の砂嵐の流出を止めていますが、こちら側からアプローチしてアニムス粒子を取り出すことはできるのです。 |
| ミリーナ | つまり、死の砂嵐の完全な消滅――もしくは封印が必要ということね。でもその前にイクスを助け出さないと……。 |
| バルド | ええ。仮に完全に消滅させたり封じることができてもあの場にイクスさんがいる限りイクスさんを失うことになってしまう。 |
| バルド | 何より、そろそろイクスさんがもたないのでは……と考えています。 |
| ミリーナ | ! ! |
| バルド | どうやらコーキスさんはイクスさんと繋がっているようですが……イクスさんは苦しんでいませんか ? |
| コーキス | え ! ? いや、何も……。なぁ、マスター。どこか痛かったり苦しかったりするのか ? |
| イクス | 『い、いや ? 別に特に何も……』 |
| コーキス | ――いてぇっ ! ? 何だ……また左目が……。 |
| バルド | ……やはり。その目の痛みは、イクスさんが感じている痛みをコーキスさんが感じ取っているのだと思います。 |
| フィリップ | 鏡精のリンク機能か !僕も古い書物でしかその理論を確認していないが……。そういえばあれはビフレスト側の禁書だった。 |
| バルド | ビフレストでは鏡精が世界を滅ぼすと信じられていた。ですから、鏡精の研究は禁忌であると同時に皇室の課題でもあったのです。 |
| バルド | 今のコーキスさんは、イクスさんの力が暴走しているために、マスター側で本来独立しているはずの感覚がリンクしてしまっている。 |
| バルド | だから、コーキスさんの目や耳がイクスさんの目や耳ともなり得ている訳です。 |
| バルド | 恐らくイクスさんがここまで自在にコーキスさんの目と耳を利用できるのは、このリンクを意識的に強化したはずですが……。 |
| ミリーナ | イクス ! 本当なの ! ? まさかコーキスをカレイドスコープの間に呼び出したのもリンクを強めるため ! ? |
| イクス | 『……ああ。まだ完全じゃないけど、最終的には俺の力をコーキスに送り込めるようにしようと思って。上手くいくまで黙ってるつもりだったんだ』 |
| コーキス | はぁ ! ? つーか、そっちより体が痛むってのは本当なのかよ ! ? |
| イクス | 『い、痛むこともあるよ。確かにさ。でも今は……我慢できてるんだ。大丈夫だよ』 |
| コーキス | じゃあやっぱり実はずっと痛かったってのか ! ?何でそういうこと隠すんだよ ! ! |
| イクス | 『お、怒るなよコーキス。心配……かけたくなかったんだ』 |
| セシリィ | ……コーキスの様子を見ているとバルドさんの指摘は全てあっているみたいね。だったら一刻も早くイクスさんを助け出さないと。 |
| ミリーナ | 魔鏡結晶に穴をあけてイクスを助け出すという計画を今キール研究室がまとめてくれているわ。 |
| ミリーナ | でも、イクスがいなくなることによって死の砂嵐は外に漏れてしまう。その点だけが、どうしても解決できないの。 |
| バルド | ……私にアイディアがあります。ですが、その為にはいくつかやらなければならないことがある。 |
| バルド | まずは……私をフレンさんから分離すること。 |
| コーキス | フレン様を解放してくれるのか ! ? |
| バルド | ……解放……というか……。実は、私はフレンさんにこの体を借りているのです。 |
| マーク | ん ? 結局は同じことだろう ? |
| バルド | ……いえ、この体の中には、今もフレンさんがいます。私やチーグルは初期のリビングドールなので心核を取り外すというアプローチがなかったんです。 |
| バルド | そしてフレンさんは……敢えて私を受け入れてくれました。 |
| コーキス | 今の話……ユーリ様に聞かせるのが怖いぞ……。 |
| フィリップ | でもどうして今フレンと離れる必要があるのかな ? |
| ミリーナ | ……もしかして、スパイの目を欺くため ? |
| バルド | 仰る通りです。フレンさんと二人で考えました。 |
| バルド | フレンさんはバルドとして帝国に残り私は別の体を一時的に借りてイクスさん救出のための準備を行います。 |
| バルド | それにはセシリィ――いえ、シドニーの力が必要です。 |
| セシリィ | え ? |
| バルド | 危険は承知の上で、私と共に帝国へ来てくれませんか ? |
| フィリップ | しかしそれではガロウズが納得しないだろう。 |
| セシリィ | ……いえ。行きます。 |
| ミリーナ | セシリィ ! ? 危険なのよ ! ? |
| セシリィ | でも、私はもう死んでいますから。 |
| セシリィ | それに私が帝国へ行けば、きっと精霊装の詳しい情報を見ることができます。スレイさんたちの力にもなれるし精霊たちの命を守ることにも繋がる。 |
| セシリィ | だから――行きます。 |
| フィリップ | ……そう、か。 |
| バルド | ありがとう、シドニー。あなたにはいつもつらい思いばかりさせてしまいますね。 |
| セシリィ | ……いえ、いいんです。 |
| ミリーナ | ……一ついいかしら。あなたのしていることはナーザへの裏切りよね。本当に構わないの ? |
| バルド | ナーザ様は……メルクリア様と目指すものが違います。ナーザ様はこの世界を――ダーナの揺り籠を守るために動いておられる。 |
| バルド | ビフレストの復活には否定的です。 |
| フィリップ | ……ダーナの揺り籠。それは創世神話の言葉だね。 |
| フィリップ | この世界はダーナの揺り籠である。罪を背負った人々は、罪を贖い、浄化しダーナの揺り籠に生まれ落ちた。 |
| フィリップ | ……………… ! |
| フィリップ | (ジュニアからの伝言の『僕らの始まりの場所』というのは……あの【石碑】のことか ! ) |
| バルド | あなた方を……特にコーキスさんあなたを見ていると信じられない。 |
| バルド | でもダーナは予言しています。鏡精がこの世界を滅ぼす、と。 |
| バルド | だからビフレストの鏡士は鏡精を復活させたセールンドの鏡士を憎んだ。その行いを止めようとした。 |
| バルド | それが……魔鏡戦争の始まりです。 |
| ミリーナ | そして……オーデンセを襲ってイクスを手にかけた…… ! |
| バルド | ……そうです。世界を滅びから守るため、鏡精と鏡精を生み出す鏡士を殺すこと――それが今も昔もナーザ……いえウォーデン殿下のご意思なのです。 |
| | to be continued |