| Character | 1話【1-1 ひとけのない街道】 |
| ミリーナ | イクス、大丈夫 ?やっぱり私、手伝いましょうか ? |
| イクス | え ! ? こ、子供じゃないんだから、大丈夫だよ !それにもうすぐ着替え終わるから……。 |
| コーキス | へへっ。 |
| カーリャ | どうしたんですか、コーキス。 |
| コーキス | だってさ、マスターとミリーナ様全然変わらねーからさ。 |
| カーリャ | 確かに……。でもミリーナさまが幸せそうで本当によかったです。 |
| イクス | ――よし、お待たせ。 |
| カーリャ | あ、イクスさまのお着替え、終わったみたいですよ ? |
| ミリーナ | ええ。それじゃあ、失礼します……。 |
| イクス | えっと……ど、どうかな ? |
| ミリーナ | イクス ! すごく似合ってるわ ! とっても格好いい ! |
| コーキス | おっ ! マスターの意見を取り入れてもらって黒い布使ってもらったんだな ! |
| カーリャ | イクスさまって、意外とセンス、アレですよねー。 |
| イクス | アレってなんだよ ! カーリャは相変わらずだな……。 |
| ミリーナ | 着心地はどう ? |
| イクス | あ、大丈夫だよ。でも、なんか変な感じでさ……。 |
| ミリーナ | え ? やっぱりその服、気に入らない ?だったら作り直すわ。 |
| イクス | え ! ? ち、違うよ ! 第一、この服具現化じゃなくてミリーナが手縫いしてくれたんだろ ? |
| イクス | その気持ちが嬉しいし、デザインが嫌だとか着心地が変だとか、そういうことじゃないんだ。 |
| イクス | ほら……俺、急に背が伸びただろ ?ミリーナの顔がいつもより下に見えて……なんか落ち着かなくて。 |
| ミリーナ | そうよね……。魔鏡結晶の中でイクスの身体が成長したなんて……。 |
| ミリーナ | ううん、成長じゃないのよねきっと。まだこの現象が何なのかわからないからイクスの身体が心配だけど……。 |
| イクス | ……確かに楽観視はできないよな。でも、今のところ変な自覚症状はないからさ。ただ、急に背とか髪が伸びて驚いたってだけだよ。 |
| コーキス | マスター……。 |
| イクス | あ、この髪の毛どうかな ?本当は長髪のままでもいいなって思ってたけど……。 |
| ミリーナ | ――駄目。長髪は縁起が悪いから。 |
| イクス | 何だよ、それ。まぁ、でも駄目だって言われたからさせめてちょっとセットを変えてみたんだ。 |
| ミリーナ | うん。前の髪型もすっごく可愛くて格好良かったけど今回の髪型もすっごく可愛くて格好いいわ ! |
| イクス | 可愛い……はちょっと嫌だけど気に入ってくれたならよかったよ。 |
| コーキス | へへっ。 |
| イクス | ん ? どうした、コーキス。 |
| コーキス | え、いや、何でもないよ。 |
| カーリャ | コーキスはイクスさまが帰ってきてからずっとこんな風にニヤニヤしてるんですよ。 |
| コーキス | だってさ、マスターがちゃんと目の前にいてミリーナ様が笑ってて……。 |
| コーキス | やっと……俺がずっとこうなったらいいなって思ってたことが現実になったからさ。 |
| イクス | コーキス……。辛い思いをさせてごめんな。 |
| コーキス | 辛かったのはマスターだろ。痛いのとか我慢してたんだから。 |
| イクス | みんな大変だったんだよな……。……っていうか、まだ大変なのか。うん。今日からは、俺もみんなと一緒に頑張るから。 |
| ミリーナ | イクス……。 |
| イクス | でも頑張るって、何から手をつけたらいいんだろう。そもそも俺たち、何をしたらいいのかな。 |
| イクス | 帝国が脅威だってことはわかってるけど相手が何をしようとしているのか、俺たちは何をしたらいいのか、全然整理できてないよな。 |
| イクス | まず目的をはっきりさせる必要があるのか。 |
| ミリーナ | さすがイクス ! 頼りになるわ ! |
| コーキス | あー……懐かしいな。ミリーナ様のマスター全肯定。 |
| カーリャ | ミリーナさまはイクスさまの前に出ると駄目な感じになっちゃいますね。 |
| ミリーナ | そんなことないわ。イクスが頼りになるのは本当だから否定することが何もないのよ。 |
| コーキス | 鏡精だってそこまで全肯定できないけどなぁ。 |
| カーリャ | ですね。 |
| イクス | ははは……。そういえばミリーナはどうして黒い服を着てるんだ ? |
| ミリーナ | え ? |
| イクス | 前に着てた赤い服、似合ってたのに。あ、黒い服も格好いいけどさ。なんか大人っぽくて。 |
| ミリーナ | ……うん、そうね。でも、イクスがこの服を格好いいって言ってくれたからこのままでいるわ。イクスはこういうテイスト、好きだものね ? |
| イクス | え、うん……まぁ……。 |
| ミリーナ | それじゃあ、そろそろ行きましょうか。フィルが待ってるわ。 |
| イクス | ! |
| イクス | ――わかった。行こう。 |
| Character | 2話【1-1 ひとけのない街道】 |
| マーク | お、イクスが来たぜ。 |
| フィリップ | ! ! |
| キール | イクス……久しぶりだな。元気そうで……よかった。 |
| クレス | みんな早くイクスに会いたいって思っていたんだ。何より、ミリーナとコーキスが苦しんでいたからね。 |
| ミリーナとコーキス | ……………… ! |
| イクス | ああ…… ! あの、改めて……待たせてごめん。それからありがとう。 |
| キール | ああ、まったくだ。1年近く待たされたんだからな。 |
| カーリャ | その間に、鏡映点さまも随分増えましたしね。 |
| コーキス | 大丈夫だよ。マスター、頭はいいから、すぐに覚えられるって。 |
| イクス | 頭『は』って……。ひどいな。 |
| イクス | それと、フィル……さん。やっとちゃんと会えましたね。 |
| フィリップ | イクス……やっぱりその姿……。 |
| イクス | ? |
| ミリーナ | フィル。イクスの変化に心当たりがあるの ? |
| フィリップ | あ、いや、違うんだ。ごめん。その……僕が知ってるイクスによく似ていたから……。 |
| イクス | フィルさんの知ってる俺…… ?『最初の俺』ってことですか ? |
| フィリップ | ああ、そうだよ。それとイクス、僕のことはフィルでいい。 |
| イクス | あ……でも……。 |
| マーク | ――なぁ、フィル。このイクスとミリーナは具現化されたもう一つの可能性でリアライザーなんだって言ってなかったか ? |
| マーク | 混同するなって言っておきながら、お前イクスに一人目と同じ対応してくれってのはおかしいんじゃねぇの ? |
| ミリーナ | ………………。 |
| フィリップ | あ……ああ……。そうだね。僕が一番割り切れていなかったのか。すまない。 |
| フィリップ | 君たちにしてみれば僕は単なる中年のおじさんだよね。わかっていた筈なのにな……。 |
| コーキス | フィリップ様……。 |
| イクス | ……あの。俺も……フィルって呼んでいいです――いいかな ?年下だから生意気に聞こえたら悪いんだけど。 |
| フィリップ | も、もちろん ! ……ありがとう、イクス。 |
| キール | ……そろそろいいか ?話さなきゃならないことがたくさんあるんだ。 |
| イクス | あ、そうだよな。いいよ、進めてくれ。 |
| キール | それじゃあ、まずは現状について報告しよう。 |
| クレス | リフィルさんに資料を纏めて貰ったんだ。イクスなら読んだ方が早いだろうって。 |
| イクス | わかった。読んでみるよ。 |
| エドナ | ………………。 |
| アイゼン | ……エドナ。 |
| エドナ | そんな顔しなくても大丈夫よ。わかっていたことだもの。別れの時が近づいているって。 |
| エドナ | それより、ベルベットたちには話したの ?ケリュケイオンに移るって話。 |
| アイゼン | いや、まだだ。それにあいつらは、俺がここを離れようと気にしないだろう。 |
| エドナ | ――そうね。単にケリュケイオンに行くだけですもの。会おうと思えばいつだって会えるわ。 |
| アイゼン | ああ。好きなときにパルミエを届けてやれる。 |
| エドナ | それぐらい自分で持ってきたら ? |
| アイゼン | そうだな。 |
| エドナ | ………………。 |
| エドナ | ……そうよ、自分で届けてちょうだい。必ずね。 |
| アイゼン | そうしよう。 |
| エドナ | 気をつけて。 |
| アイゼン | ああ。 |
| ヴィクトル | ……助かった、のか ? |
| ヴィクトル | (……せめてここでなら、救えると思ったのに) |
| ヴィクトル | ――待っていてくれ、ミラ。 |
| Character | 3話【1-2 アスガルド城1】 |
| リヒター | ……メルクリアの様子はどうだ ? |
| ジュニア | やっと眠ったところ……。無理もないよ。ナーザ将軍を――お兄さんを失ったんだから。 |
| リヒター | ナーザはどうなったんだ ?虚無に引き戻されたのか ? |
| ジュニア | うん……。また永遠の牢獄に閉じ込められたんだ。 |
| リヒター | ……そうか。苦しみを伴わないだけこちらの方がマシだったのかも知れないな。 |
| チーグル | ――鏡映点に何がわかる !虚無の絶望を ! 永遠の苦痛と生を ! |
| チーグル | 死にながら生き続ける終わりのない地獄に私たちは閉じ込められていた。 |
| チーグル | ナーザ……いや、ウォーデン様はまたそこへ戻されてしまったんだ ! |
| リヒター | ああ、わからないさ。だが、大切な人を失った者の気持ちはわかる。 |
| チーグル | ……メルクリア様のことか。 |
| リヒター | 俺は……アステルのためにここに残ると決めていた。だが……。 |
| チーグル | メルクリア様のためにも残るというのかい。ならば自分がどこに『属す』つもりなのかはっきりさせるんだね。 |
| チーグル | 所詮デミトリアスはセールンドの王族だ。ビフレスト皇国にとっては仇の一人。 |
| チーグル | メルクリア様を守ってきたからこそ従ってやってきたが、この後はわからない。 |
| ローゲ | 随分と不穏な話をしているじゃないか。 |
| ジュニア | ! ! |
| ローゲ | 安心しろ、ジュニア。貴様は用済みだ。ファントムが黒衣の鏡士の元に落ちた今貴様は使い道のないゴミクズに過ぎん。 |
| ジュニア | ………………。 |
| チーグル | ローゲ。エルレインは落ち着いたのか ? |
| ローゲ | フン……。もとより取り乱してなどいなかったわ。肝の太い女だ。それにどうやらこの体の持ち主をよく知っているようでな。 |
| チーグル | きみもよくよく考えておくんだね、ローゲ。メルクリア様のご意向次第では我らは帝国を離れることになる。 |
| ローゲ | 知ったことか。 |
| チーグル | 何 ! ? |
| ローゲ | この程度のことで心が折れるような小娘が我らがビフレスト皇国を率いるに値するものか。 |
| ローゲ | それに貴様の考えていることなどデミトリアス帝はとうに気付いているぞ。なぁ、デミトリアス帝 ? |
| チーグル | 精霊の封印地から戻っていたのか、デミトリアス帝。 |
| デミトリアス | ああ。マクスウェルは捕らえられなかったがね。 |
| デミトリアス | ところでチーグル――いや、ビフレストの黒き虎ドンナー卿とお呼びした方がいいかな。 |
| チーグル | ……セールンドに敗北した私に気高きドンナー家の名は似合わないからね。チーグルで結構。 |
| デミトリアス | 失礼した。あなたやビフレストの方々の気持ちはわかっているつもりだ。 |
| デミトリアス | 故に、メルクリアにも自由を与えたしビフレストの皇国の復活も帝国の目的の一つとした。 |
| デミトリアス | だが……コーキスが誕生し、イクスが自由になった今あまり悠長なことも言ってはいられない。 |
| デミトリアス | ティル・ナ・ノーグがニーベルングと同じ過ちを犯さぬように、あらゆる手を尽くす必要がある。それが非道であったとしても。 |
| チーグル | 私たちの望みは、世界の救済を前にしては小さいとでも言いたげだね。 |
| エルレイン | 神の救済の前では、全てが矮小な事柄に違いない。 |
| チーグル | 何…… ! |
| エルレイン | だが、亡国の復活がお前たちの救済に繋がるというなら否定するつもりはない。 |
| エルレイン | むしろ叶えてあげたいとすら思う。だが、この世界で私の力は大きな制限を受けているようだ……。 |
| チーグル | きみは……ベルセリオス博士と一緒に具現化されたというエルレインか。 |
| エルレイン | 具現化か……。私の奇跡の力が弱まっているのはその具現化とやらの影響のようだな。 |
| エルレイン | こんなことは初めてだ。ここでの私の運命……私がここに作り出された意味は……一体……。 |
| デミトリアス | きみの存在の意味はこの世界に救いをもたらすことだよ。いずれわかる。 |
| デミトリアス | エルレインの奇跡の力に関しては新たに研究チームを立ち上げる。ジュニア、彼女を頼むよ。 |
| ジュニア | ……は、はい。 |
| デミトリアス | 精霊装に関してはレイカー博士とベルセリオス博士に一任した。メルクリアに預けていた四幻将とその配下は帝国で吸収しよう。 |
| デミトリアス | 既に黒衣の鏡士の元へ走った者もいるし再編は不可欠だろう。 |
| デミトリアス | 私もようやくこの体が馴染んできた。いや……本来の姿を取り戻したのに馴染んだというのもおかしな話だがね。 |
| デミトリアス | とにかく、これで私も自由に動けるようになった。やっとラグナロクに立ち向かえる。 |
| デミトリアス | 詳しい話は作戦会議室で行おう。サレとハスタも呼んである。 |
| メルクリア | ――お待ち下さい、義父上 ! |
| ジュニア | メルクリア ! ? 起きて大丈夫なの ! ? |
| メルクリア | 大丈夫じゃ。メイドたちが義父上のことを話していたからいても立ってもいられなくなって……。 |
| デミトリアス | メルクリア。無理はしない方がいい。 |
| メルクリア | 義父上……。四幻将を取り上げないで下され。わらわには兵が必要です。兄上様を二度も殺したあの鏡士を倒すために ! |
| チーグル | メルクリア様……。 |
| ローゲ | はーっはっはっはっ !それでこそビフレストの皇族よ !見直しましたぞ、メルクリア様 ! |
| デミトリアス | ……わかった。悪いようにはしない。だが今は部屋で休んでいなさい。いいね、メルクリア。 |
| メルクリア | ……きっと、きっとじゃぞ、義父上 ! |
| Character | 4話【1-7 ひとけのない森林3】 |
| ガイ | ――さて、こちらキール研究室。俺は進行役のガイだ。各自部屋に待機してると思うけど魔鏡通信は届いているか ? |
| エル | はーい ! こちらエルとルドガーの部屋。ちゃーんと届いてるよ。 |
| カロル | カロル調査室とセキレイの羽もばっちり。 |
| クレス | 道場の方も大丈夫だ。 |
| ファラ | ファラ生活向上委員会もね。今、みんなで手分けしてお茶とお菓子配ってるから ! |
| エドナ | あら、気が利くわね。さぁ、ティア、あなたも返事なさい。 |
| ティア | あ、はい ! エドナ様のお茶会の準備は万全よ。 |
| ガイ | その謎の集団で集まってるのかよ……。 |
| エドナ | 何か言ったかしら、給仕。 |
| ガイ | 誰が給仕だ ! えっと後は―― |
| エステル | エステルの読書会も全員揃っています。 |
| ガイ | そんなのまで出来てるのか……。ケリュケイオン組はどうだ ? |
| クラトス | 聞こえている。進めてくれ。 |
| ガイ | わかった。それじゃあ、早速始めようか。まずはイクスが動けるようになったことの報告からだ。 |
| イクス | えっと、イクスです。初めましての人は初めまして。それから俺のために、みんな色々と力を尽くしてくれてありがとう。 |
| イクス | まだ直接顔を合わせられていない人もいるから今ここで、改めて言わせて下さい。 |
| イクス | えっと……。ミリーナ、コーキス……それに、みんな。――ただいま |
| ほぼ全員 | お帰り、イクス ! |
| イクス | ! ! |
| ガイ | 泣くな泣くな。キールが横で目をつり上げてるぞ。 |
| キール | 泣くのはコーキスだけで十分だ。 |
| コーキス | うぅ……マスター……良かった……。 |
| イクス | ご、ごめん ! ほら、コーキスも泣くなって ! |
| コーキス | うん……。悪い……。なんか嬉しくてさ……。 |
| ミリーナ | コーキス……。そうよね……。 |
| カーリャ | カーリャも涙が……うううう ! |
| ガイ | わかったわかった。ミリーナ、鏡精たちを頼む。イクス、進めてくれ。 |
| イクス | わ、わかった。えっと……俺が魔鏡結晶の中に入ってからのことは、リフィル先生たちがまとめてくれた資料で把握した。 |
| イクス | みんな、本当にありがとう。 |
| イクス | それで今日は、この先のことについてみんなと相談していきたいって思ってるんだ。 |
| イクス | ただ、バルドさんやカロル調査室、それに帝国から来てくれた人たちが持ってきてくれた情報もある。 |
| イクス | だからまずは、これまでとこれからのことを新しい情報も交えて整理したいと思う。 |
| イクス | 始めに、みんなが鏡映点としてティル・ナ・ノーグに来ることになってしまった原因から。 |
| イクス | 知っていることもあると思うけど整理する意味で聞いて欲しい。 |
| フィリップ | ここからは僕から話そう。誰よりもこの世界の『終わり』について詳しいからね。 |
| フィリップ | 今はこの世界の暦で3238年だ。 |
| フィリップ | デミトリアス陛下が復興を宣下したアスガルド帝国というのは、今から約1200年前――2010年に成立したと言われる古の帝国だ。 |
| スタン | そんなに古い時代の国だったのか。 |
| スレイ | もしかして今まで見つけた遺跡の中にはアスガルド帝国のものもあったかも知れないな。 |
| ミクリオ | スレイ、やめろ。リフィル先生の目の色が変わった。 |
| スレイ | あっ ! ? |
| ガイ | あー、遺跡マニアはそっちで上手く対応してくれ。フィリップ。続きを頼む。 |
| フィリップ | ああ。シャーリィの体を乗っ取っていたヨウ・ビクエはこのアスガルド帝国の初期に生まれた人物だ。 |
| フィリップ | 彼女と関わりがあるアイフリードも同時期の人間ということになる。 |
| ライラ | そんなに古い時代の人間がまだ生きているなんて……。天族や天使のようですわね。 |
| ミトス | 人ならざる者になったのか人ならざる者の力を借りたのかってことだね。 |
| フィリップ | デミトリアス陛下はアスガルド帝国を復活させヨウ・ビクエの体を確保しているらしい。この時代の何かを陛下は必要としていると言うことだ。 |
| フィリップ | さて、時代はそれからさらに下る。アスガルド帝国が分裂、瓦解して、小国が乱立する時代があった。やがて残ったのがセールンド王国とビフレスト皇国だ。 |
| フィリップ | 二国間で終戦協定が結ばれたのが、3113年。しばらく二国間の関係は平穏だった。 |
| フィリップ | だが、キラル分子と呼ばれるエネルギーの発見と利用法を巡って対立するようになってしまった。 |
| ミリーナ | キラル分子というのは私たちの世界のエネルギーの元になる粒子なの。鏡士も具現化の際にキラル分子を使用しているわ。 |
| ミリーナ | 性質やあり方は違うけれど、ユーリさんたちの世界のエアルや、クレスさん、ロイド、ジュードさんたちの世界のマナ、ルークさんたちの世界の音素(フォニム) |
| ミリーナ | ……のようなものかしら。 |
| フィリップ | そして魔鏡戦争が勃発した。きっかけはビフレスト皇国がセールンド王国のオーデンセ島を襲ったこと。 |
| フィリップ | オーデンセは鏡士の故郷で、セールンドの鏡士と鏡精を忌み嫌っていたビフレストにとっては恰好の目標だった……と聞いている。 |
| フィリップ | この当時、僕もミリ……ゲフィオンもまだ若くて国の上層部で何が行われていたかは知らなかったんだ。 |
| フィリップ | ……そしてこのオーデンセ襲撃で最初のイクスが命を落とした。 |
| イクス | ……その時の俺―― 一人目のイクスの遺体を何故かビフレストは持ち帰り保管していた。それでナーザが使っていたんだな。 |
| カイル | ……あれ ? 揺れてる ? 地震かな ? |
| ジューダス | このアジトで地震が起きる訳がない。アークからの呼び出しか ? |
| ミリーナ | ――いえ、違うわ。何かがおかしい……。私、ちょっとアジトの具現化に支障が出ていないか見てくるわ。 |
| ミリーナ | イクス、コーキスを連れて行ってもいいかしら。 |
| イクス | ああ、もちろん。俺も行こうか ? |
| ミリーナ | いえ、イクスはここで話を進めていて。カーリャもここに残って仮想鏡界を維持していて。 |
| カーリャ | はい ! |
| フィリップ | マーク。きみも一緒に行ってあげてくれ。鏡精の中では一番年長だろう ? |
| マーク | 人を幼稚園児みたいに言うのはやめてくれっつーの。まぁ、いいぜ。アジトの様子がおかしいのは確かだ。 |
| ミトス | ボクも行くよ。ちょっと気になる。クラースならわかるよね。 |
| クラース | ……ああ。精霊……の気配のようなものを感じる。しかしミトス、何故お前にそれがわかったんだ ? |
| ミトス | ……どうやらボクが具現化された時の状況が影響しているみたい。ボクはまだ【オリジン】と契約したままなんだよ。 |
| ロイド | そうか……。そういえばミトスは元の世界でオリジンにエターナルソードを作ってもらったって……。 |
| ミラ=マクスウェル | ……四大からも妙な気配がすると言ってきている。私もミリーナと行こう。エミル、セルシウス、共に来てくれるか ? |
| エミル | わ、わかったよ。 |
| セルシウス | ……何だか嫌な予感がするわ。急ぎましょう。 |
| ミトス | クラースも来て。人間でも召喚士なんだから、役に立つでしょう。 |
| クラース | 当然だ。 |
| イクス | わかった。それじゃあ、みんな、よろしくお願いします。コーキス、気をつけて行けよ。 |
| コーキス | ああ、ミリーナ様もみんなもちゃんと守るからマスターは安心してそこで待ってろよ ! |
| Character | 5話【1-8 ひとけのない街道1】 |
| エルダ | メルクリア。そなたはビフレスト皇国に生まれた知の象徴。ダーナの揺り籠を護るために生まれた知の乙女。 |
| エルダ | セールンドの悪魔共に心を許してはならぬ。 |
| メルクリア | (……母上様…… ? ) |
| エルダ | そなたはいずれビフレスト式魔鏡術を極めビフレスト皇国を繁栄させる筈じゃった……。それこそが知の乙女たるそなたの宿命じゃった……。 |
| メルクリア | (……で、でも、母上様。わらわは――) |
| エルダ | ゲフィオンめ ! 我が皇国を辱め、滅ぼした悪魔 !カレイドスコープを生み出し、私の可愛いウォーデンもあの悪魔が殺した……。 |
| エルダ | おぞましき鏡精を生み出す破戒者共。許さぬ……許さぬぞ…… ! |
| メルクリア | (母上様……わらわは嫌じゃ……。母上様とずっと一緒に……) |
| エルダ | 呪う……呪うてやる…… ! セールンドに滅びを !我が皇国に再び命の光を ! |
| エルダ | 許さぬ……ふふ……許さぬ…… !死の砂嵐はダーナの天罰じゃ。わらわもこの身をダーナに捧げ、奴らに呪いを―― |
| メルクリア | ……ゆ……め………… ? |
| ジュニア | ……大丈夫 ? |
| メルクリア | ……ジュニア、か。 |
| ジュニア | また、あの夢を見たの ? |
| メルクリア | ……そうじゃ。母上様がわらわを置いて逝ってしまった日の夢じゃ。 |
| メルクリア | あの時はまだ母上様が仰ることを何一つ理解していなかったが……。 |
| メルクリア | もしも今ほどの知識があれば……。いや、結局母上様はわらわを置いて逝ってしまわれた。 |
| メルクリア | みんな……わらわを置いていく……。わらわを独りぼっちにする。ジュニアもそうであろう。そなたはビクエの三人目じゃ。 |
| ジュニア | 僕は……――僕も捨てられちゃったから……。 |
| メルクリア | …………そうか。 |
| メルクリア | ――――ん ? 何じゃ、この妙な空気の振動は……。 |
| ジュニア | 仮想鏡界が揺らぎ始めてる…… ? |
| メルクリア | ファントムを連れて行かれたからか ? |
| ジュニア | ううん。僕がいるからそれはない筈だけど……。ちょっと仮想鏡界の様子を見てくる ! |
| フィリップ | ――アジトのことは気になるけれどひとまずミリーナたちに任せて僕たちは話を進めようか。 |
| フィリップ | 魔鏡戦争勃発後のことはみんなもそれなりに知っているね。 |
| フィリップ | ミリーナと僕は最初のイクスの仇を討つために王立魔鏡研究所に入り、イクスの亡くなったご両親の研究を引き継いで、カレイドスコープを開発した。 |
| フィリップ | カレイドスコープは魔鏡戦争の切り札となってビフレスト皇国を壊滅。戦争はセールンド王国の勝利で終わった。 |
| フィリップ | この時終戦協定が結ばれて、ビフレスト皇国の皇后エルダと皇女メルクリアが人質としてセールンドに連れてこられたんだ。 |
| カイウス | メルクリアは人質だったのか ! ?そんな風には見えなかったけど……。 |
| シング | うん、すごく自由にしていたしデミトリアス陛下とも親しそうだったよ。 |
| フィリップ | それは……エルダ皇后が亡くなられた後デミトリアス陛下がメルクリアを義理の娘として育てると仰ったからかも知れないね。 |
| リッド | 皇后が亡くなったって……病気か何かか ? |
| フィリップ | ……自害された。錯乱されて……メルクリアと無理心中をしようとしたんだ。 |
| フィリップ | メルクリアは助かったけれどエルダ皇后はそのまま息を引き取った。 |
| ルーティ | ……なんてことを。 |
| フィリップ | ――きっかけは死の砂嵐だった。終戦後しばらくしてカレイドスコープによる消滅の反動から死の砂嵐が発生したんだ。 |
| フィリップ | 世界の終焉を予測して絶望されたのか……エルダ皇后は自ら命を絶った。 |
| フィリップ | 僕とゲフィオンは、世界の消滅を食い止めるためこの世界を護る防御壁であるアイギスを作ったんだ。 |
| フィリップ | でもその段階で、既にこの世界はセールンドの周辺海域を除いて全てが消滅してしまった。 |
| イクス | それで、大陸の具現化を始めたんだな。 |
| フィリップ | ああ。まずは過去から大陸や人々を具現化していった。少しずつね。世界に全ての大陸と人々を具現化するのに8年を費やしたよ。 |
| フィリップ | ただ過去へのアプローチといっても遡れるのはおよそ1年。範囲を狭めても10年が限界だった。 |
| フィリップ | しかも現在との距離が離れれば離れるほど具現化は困難になる。だから僕らは死の砂嵐が発生する直前の過去から、世界を具現化することにしたんだ。 |
| フィリップ | 世界の方はそれでどうにかなったけれど……。でも僕は――僕とゲフィオンはどうしてもイクスを甦らせたかった。 |
| フィリップ | だから自分たちの記憶を経由する具現化を開発したんだ。これで10年の壁を突破した。 |
| フィリップ | 僕とゲフィオンは3217年から二人目のイクスとミリーナを具現化して3237年のオーデンセに住まわせた。 |
| フィリップ | これが今のミリーナと二人目のイクスだ。 |
| フィリップ | この段階で島の人たちとイクスとミリーナの間に記憶のズレが発生してしまうはずだったけれどエンコードで調整を掛けることになっていた。 |
| イクス | その口ぶりだと……エンコードは出来なかったのか ? |
| フィリップ | 救世軍がアイギスを破壊してしまったからね。あとは……知っての通りだよ。 |
| フィリップ | アイギスが破損して、オーデンセ島も過去から具現化した大陸も全て失ってしまった。二人目のイクスもね。 |
| フィリップ | だから異世界からの具現化という手段に踏み切ったんだ。その為には……イクスの力が必要だった。 |
| イクス | どうしてだ ? これだけのことをゲフィオンとフィルがやってきたなら俺の力なんて必要なかったんじゃ……。 |
| フィリップ | カレイドスコープもアイギスも全てはイクスのご両親が残した魔鏡を元に作られているんだ。 |
| イクス | この……俺が今使っている魔鏡 ? |
| フィリップ | そう。それは三枚目だけれどね。不思議なことにその魔鏡は魔鏡だけを具現化して増やそうと思っても増やせないんだ。 |
| フィリップ | イクスを具現化したときだけ一緒に具現化される。その魔鏡はイクスに合うように造られているんだよ。 |
| フィリップ | そして異世界からの具現化を可能にするにはその魔鏡の力を最大限に引き出す必要があった。だからイクスの力が必要だったんだ。 |
| イクス | それで三人目――今の俺が具現化された……。 |
| フィリップ | ああ。マークがミリーナと二人目のイクスを見つけたときには二人目のイクスは……亡くなっていた。 |
| フィリップ | だからゲフィオンは三人目のイクスを二人目のイクスの遺体とすり替えたんだ。 |
| イクス | ……それで俺はゲフィオンに会いにいって……。大陸の具現化を始めた。ユーリさんたち鏡映点のみんなに出会って……助けられて、ここまで来た。 |
| ガイ | ……これが今俺たちが生きているティル・ナ・ノーグの再誕史って訳だ。 |
| Character | 6話【1-9 ひとけのない街道2】 |
| キール | ――みんなにティル・ナ・ノーグのたどった歴史を共有したのには訳がある。 |
| リオン | 帝国の目的が、ティル・ナ・ノーグの古代史に関わりがあるからだな。 |
| イクス | 俺がスタック・オーバーレイで、魔鏡結晶を世界中に生み出した前後のことをまとめてみた。 |
| イクス | まずセールンド王国は、ゲフィオンの発案による異世界の力を借りた大陸の具現化を進めていた。 |
| イクス | これを阻止しようとしていたのがファントムとあいつが支配していた救世軍だ。 |
| イクス | この当時俺やミリーナは気付いていなかったけどセールンド王国と救世軍以外にさらに二つの勢力が存在していたことになる。 |
| イクス | 一つはフィルやカノンノ――えっとイアハートが属していた勢力。仮にビクエ勢力とする。 |
| イクス | そしてもう一つはメルクリアの勢力だ。彼らはファントムを通して救世軍に通じていた。 |
| シング | ああ。オレやコハクやカイウスたちはメルクリアに……助けられた。まぁ、騙されてたんだけど。 |
| イクス | みんなから聞いた話をとりまとめると、メルクリアは当初ファントムに協力していたのに途中からフィルの方へ鞍替えしたってことになる。 |
| フィリップ | メルクリアにしてみれば、ファントムの目的である理想世界の具現化が、メルクリアの目的であるビフレスト皇国の復活に邪魔だったんだろうね。 |
| フィリップ | ただ、メルクリアとファントムを結びつけたのはデミトリアス陛下の筈なんだ。 |
| フィリップ | つまりデミトリアス陛下も、どこかのタイミングでファントムと協力することをあきらめた。 |
| フィリップ | あの人は、ファントムに同情的だった。それが翻ったのは、何故か―― |
| ヒルダ | ――ナーザが甦ったから、ね。私がアスター様に拾われた頃、ナーザらしき男がセールンドの城に出入りしているって話を聞いたことがある。 |
| ヒルダ | 私が具現化されたのは魔鏡結晶が出現する前だから時期的にほぼ間違いないと思うわ。 |
| フィリップ | ああ、僕もそう思う。ナーザからもたらされた情報によってデミトリアスは方針を転換した。 |
| フィリップ | それまではゲフィオンの大陸具現化に協力しつつもファントムの理想世界の具現化が成功するならそちらの方がいいと考えていたんだと思う。 |
| フィリップ | あの人はゲフィオンが犠牲になる世界の具現化には消極的だった。何か別の方法があるならその方がいいと考えていたようだからね。 |
| イクス | ゲフィオン様が犠牲になることを気にかけていたデミトリアス陛下が、突然リビングドールなんて非道なことを許すようになった。 |
| イクス | それはつまり、ナーザからもたらされた情報が強硬的にならざるを得ないものだったからだと思う。 |
| スタン | 具体的には何だったんだ ? |
| イクス | まだはっきりとはわからない。でもヒントはある。ダーナの予言と精霊だ。 |
| ゼロス | どうよ、ケリュケイオンの状態は。 |
| ガロウズ | ……おい、ミリーナたちとの会議に参加しなくていいのか ? |
| ゼロス | そっちはクラトスとシンクが出てっから。難しい話はあの二人がまとめて教えてくれるだろ。 |
| ガロウズ | 別に、俺に気をつかわなくてもいいぞ。 |
| ゼロス | 俺さま女尊男卑をモットーにしてるからおっさんに気を遣う優しさは持ち合わせてねーけどな。 |
| ガロウズ | ――シドニーはずっと死んでいた。今までのは、たまたま霊界と通信できちまってたってだけだ。 |
| ゼロス | なるほど。 |
| ガロウズ | ……ああ。 |
| ガロウズ | ――で、ケリュケイオンだが、何とか飛ばすことはできそうだ。まぁ、どこかで本格的なメンテが必要になりそうだけどな。 |
| ゼロス | なぁ、アイゼンの奴をこっちに引き込んでいいのか ? |
| ガロウズ | ……まぁな。仲間はミリーナ達の下に残るんだし悩ましいところだが本人が協力するって言ってるからなぁ。 |
| ガロウズ | それに海と空で勝手は違うだろうがでかい船の扱いに慣れてる奴が増えるのは助かる。 |
| ゼロス | アイフリードのことが気になってるのかねぇ、あいつ。 |
| ガロウズ | 俺たちの世界のアイフリードとアイゼンの世界のアイフリードは別人だからな。 |
| ガロウズ | そこにこだわってるとは思えないがもしかしたら興味はあるのかも知れないな。 |
| ガロウズ | 或いは、アイフリードがどうこうより魔の空域にあったあの石碑の件とか……。 |
| ゼロス | その辺に興味示しそうなのってスレイ遺跡探検隊の連中ぐらいじゃねぇの ? |
| ガロウズ | 何だ、そんな集団までできたのか ? |
| ゼロス | いや、俺さまが勝手に呼んでるだけ。遺跡マニア友の会でもいいけど。 |
| ? ? ? | ………………。 |
| ガロウズ | ――ん ? 何か変な音がしないか ? |
| ゼロス | ……音っつーより、息か ? |
| ? ? ? | ……うぅ……。 |
| ゼロス | ――な、何だ ! ? お前、血まみれじゃねぇか ! ? |
| ガロウズ | お、おい……。あんた、大丈夫か ? |
| ? ? ? | ――黒衣の……鏡士に……。 |
| ゼロス | ――何 ? |
| ? ? ? | 仮想鏡界が……危険だ……。 |
| ゼロス | うおっと ! ? 倒れちまった ! ? |
| ガロウズ | ブリッジに知らせる ! |
| ゼロス | ついでに担架と助っ人を寄越してくれ。頭を打ってるとまずい。 |
| Character | 7話【1-10 アスガルド城1】 |
| ジュニア | ――これは……。鏡震…… ? |
| メルクリア | どうなっておるのじゃ ? |
| ジュニア | 仮想鏡界は想像の力で鏡士の心の中を具現化する術だ。心は無意識で世界と繋がっている。 |
| メルクリア | 集合的無意識じゃな。 |
| ジュニア | そう。意識の奥に仮想鏡界で具現化する無意識の領域があり、そのさらに奥に存在する場所だ。だから仮想鏡界は世界と繋がっている。 |
| メルクリア | つまり仮想鏡界はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいのじゃな。 |
| ジュニア | うん。ティル・ナ・ノーグを支えているのはダーナと精霊だと考えると仮想鏡界は精霊の力に影響を受けやすい。 |
| メルクリア | 義父上が精霊の封印地からお戻りになったことと関係があるのか ? |
| ジュニア | デミトリアス陛下は、精霊の封印地へ空のマクスウェルを捕獲しにいった。そこで何かがあったはずだ。 |
| ジュニア | それが仮想鏡界の存在を揺らがせているんだと思う。 |
| メルクリア | ……待て。こちらの仮想鏡界が揺らぎ始めているなら黒衣の鏡士の仮想鏡界も揺らいでいる筈じゃな。 |
| ジュニア | ――メルクリア、駄目だ。 |
| メルクリア | そなたはフィリップの三人目じゃからな。だが、わらわは兄上様を苦しみの場所に追いやったあの者を決して許さぬ ! |
| ジュニア | ミリーナは、そんなつもりじゃ―― |
| メルクリア | だまれ ! |
| メルクリア | ここが崩壊すれば、そなたもただでは済むまい。そなたはここで仮想鏡界を安定させなければならぬ。 |
| メルクリア | わらわはわらわのしたいようにする。そなたはここで成り行きを見ているのじゃ ! |
| ジュニア | メルクリア…… ! |
| ミリーナ | ……みんな、待って。 |
| ミリーナ | これ以上奥には行かない方がいいわ。見た目ではわからないかも知れないけれど仮想鏡界が消えかかってるみたい。 |
| クラース | どういうことだ ?ミリーナの具現化に何か問題でも起きたのか ? |
| ミリーナ | いえ……。私の力が衰えたとかそういうことじゃないみたい。 |
| コーキス | ……なんか、寒気がする。 |
| クラース | セルシウスがいるから……という訳ではなさそうだな。 |
| セルシウス | わたしが普段からコントロールせずに冷気を発していたらこの仮想鏡界ごと氷漬けになってるわよ。 |
| マーク | その寒気は、鏡精だけが感じてるものみたいだな。俺もさっきから震えが止まらねぇ。 |
| マーク | 多分幼体の方がこの変化を感じ取りやすい筈だからカーリャパイセンが心配だな。 |
| コーキス | パイセンのことをパイセンってゆーな !っつーか、何なんだ、これ ! ? |
| マーク | 仮想鏡界のほころびから、何らかのアニマが流入してそいつに反応してるんじゃないかとは思うんだが……。 |
| ミラ=マクスウェル | ……何だ ? 目眩がする……。 |
| ミトス | ミラの顔色が真っ青だ。セルシウスはなんともないのに……。 |
| ラタトスク | ……なるほど。わかったぞ。鏡精共がアニマだと言っているこの妙なエネルギー……。こいつは【マクスウェル】だ。 |
| セルシウス | ――確かに。 |
| セルシウス | ミラが傍にいるから区別が難しかったけれどこれはティル・ナ・ノーグのマクスウェルの……残滓ね。 |
| コーキス | 仮想鏡界の綻びから、この世界のマクスウェルのアニマが流れてきているってことか ? |
| セルシウス | 正確に言うなら、死んだマクスウェルの欠片……のようなものかしら。 |
| ミラ=マクスウェル | ……微精霊……のようなもの……だろうか。そういえば……この世界のマクスウェルは……既に……。 |
| ミリーナ | ミラ、ここはあなたにとって良くない場所なのかも知れないわ。みんなの下へ戻っていて。 |
| ミラ=マクスウェル | しかし……。 |
| ラタトスク | ……いや、ミリーナの言う通りだ。 |
| ラタトスク | この世界のマクスウェルが生きているならともかく死んでいるとなると、同じマクスウェルであるお前はどんな影響を受けるかわからない。 |
| ミラ=マクスウェル | ……わかった。 |
| ? ? ? | ラタトスク様 ! そこは危険です ! |
| クラース | な、何だ ! ? 今の声は ! ? |
| ラタトスク | テネブラエか ! ? |
| ラタトスク | ――ミリーナ ! ゲートを開け ! |
| ミリーナ | ここで ! ?仮想鏡界の状態が不安定なのに危険だわ ! |
| ラタトスク | テネブラエがこの場所を危険だと言ってるんだ。いいから早くしろっ ! |
| ミトス | ……ミリーナ。仮想鏡界を維持したままゲートを開くのはかなりの負担だと思うけれどやった方がいい。 |
| ミトス | 外に出ればマクスウェルのアニマの正体もわかるかも知れない。それにテネブラエは信用できる。 |
| ミリーナ | ――わかったわ。やってみる。でも、どこへ続くゲートを開けばいいの ? |
| ラタトスク | テネブラエ ! どこだ ! |
| テネブラエ | ケリュケイオンなる船の近くです。 |
| ミリーナ | 了解よ。今ケリュケイオンがある場所に一番近いところへゲートを開くわ。 |
| クラース | ミラはイクスたちのところへ戻って状況を説明しておいてくれ。マーク、コーキス、君たちは―― |
| マーク | ――ミラを送っていくんだろ ? 任せとけ。 |
| コーキス | ええ ! ? 俺はミリーナ様を守らないと―― |
| セルシウス | そんなに震えている状態で何を言ってるの。あなたもみんなのところに戻るのよ。 |
| ミリーナ | コーキス。イクスとカーリャをお願い。私はみんながいるから大丈夫よ。 |
| コーキス | ……わかりました。 |
| ミリーナ | さあ、ゲートを開くわ ! |
| クラース | ここは……ケリュケイオンの着陸地点より南の街道かな。 |
| セルシウス | とりあえずケリュケイオンを目指せばいいのよね。行きましょう。 |
| Character | 8話【1-13 静かな街道1】 |
| ミリーナ | ここまで来る間、特に仮想鏡界に影響を与えていそうなものは見当たらなかったわね。 |
| セルシウス | マクスウェルの残滓も感じなかったわ。 |
| ラタトスク | となると、あいつに聞くしかないな。 |
| ラタトスク | ――おい、テネブラエ ! どこだ ! ? |
| テネブラエ | ――こちらです。ラタトスク様。 |
| セルシウス | ……センチュリオン、ね。ミトスの世界に存在する、大樹の精霊の尖兵。 |
| クラース | 精霊、ではないのか ? |
| テネブラエ | はい。我々はラタトスク様の手足となって魔物たちを統べ、マナを循環させる役割を持つ生命体です。 |
| ラタトスク | いつ具現化した ? |
| テネブラエ | ラタトスク様と一緒に。ですが、力が極端に弱まっており、今まで眠りについておりました。 |
| テネブラエ | ある人物の協力で、ようやくラタトスク様の下に戻ることができた次第です。 |
| テネブラエ | それにしても……まさかミトスさんと一緒におられるとは。仲直りなさったのですね。良かったです。 |
| テネブラエ | このテネブラエ、お二人が仲違いされたことを心配して夜も10時間しか眠れぬ日々を過ごしておりました。 |
| クラース | しっかり寝ていたんだな……。 |
| ミリーナ | ふふ♪案外お茶目な性格なのね、テネブラエさんって。 |
| テネブラエ | はい、イケてるお茶目とよく褒められます。いやーまいりますな。はっはっはっ ! |
| ミトス | 相変わらずだね、テネブラエ。 |
| テネブラエ | いえいえ、ミトスさんもお変わりなく。 |
| ラタトスク | そんなことはどうでもいい !さっきの話はどういうことだ。仮想鏡界が危険だとか何とか……。 |
| ミリーナ | そうだわ。私の仮想鏡界は確かに不安定になっているけれど、原因を知っているの ? |
| テネブラエ | はい。この世界の始まりと終わりが混在する場所――精霊の封印地についてご存じでしょうか。 |
| クラース | いや……初耳だが……。 |
| テネブラエ | そうですか。精霊の封印地とは、この世界を生み出した精霊たちが封印されている場所だそうです。 |
| テネブラエ | そこにはこの世界の核であるダーナの心核が収められています。 |
| ミトス | ダーナ……。女神の心核 ?女神の心が具現化されて置かれているってこと ? |
| テネブラエ | ええ。その心核が破損しました。ダーナの心核はこの世界の心そのものです。 |
| クラース | それはこの世界の心核が傷ついたということか。 |
| ミリーナ | それで世界と集合的無意識で繋がる私の心にも影響が出て、私の心の具現化でもある仮想鏡界に不具合が発生した…… ? |
| ミリーナ | ! ? |
| ミリーナ | う……うぅぅぅぅ……。 |
| テネブラエ | まずい !この女性の心が軋んで悲鳴を上げています ! |
| クラース | 仮想鏡界に何かあったのか ! ? |
| ミトス | 待って。今、アジトに連絡を取る。 |
| ミトス | クラース、ケリュケイオンの中に入ってクラトスたちにも話を聞いてみて。魔鏡通信で会議に参加していた筈だから。 |
| クラース | 承知した ! |
| カーリャ | さむぅぅぅぅぅ ! |
| イクス | カーリャ、どうしたんだ ? |
| カーリャ | なんか急に寒気が……。いつものぶるぶるとも違いますし、何なんでしょう。 |
| ガイ | 風邪でもひいたのか ? |
| カーリャ | そうじゃなくて急にぞぞぞって……。 |
| イクス | ミリーナに何かあったのかな ? |
| フィリップ | 連絡してみた方がいいかもしれないね。 |
| キール | また揺れた…… ? 一体何が起きてるんだ……。 |
| フィリップ | ……集合的無意識からの干渉かも知れない。 |
| イクス | え ? |
| フィリップ | 心というのはね、無意識で世界中の人々や世界そのものと繋がっているんだ。 |
| フィリップ | ここはミリーナの無意識の一部を具現化した場所だからね。無意識で繋がった他の人や世界から干渉されやすい。 |
| フィリップ | もっとも、人が人の心に干渉するというのはとても難しいことだから誰かがというより何かがというべきだと思う。 |
| ミラ=マクスウェル | その……通りだ。今回は……精霊の干渉があったらしい……。 |
| イクス | ミラ ! ? 顔色が悪いけど、どうしたんだ ? |
| ミラ=マクスウェル | いや、私のことはいい……。それより……この仮想鏡界そのものが危険な状況だ。 |
| ガイ | どういうことだ ? |
| カーリャ | ふぁ――っ ! ? |
| イクス | カーリャ ! ? |
| コーキス | カーリャ先輩、どうした ! ? |
| カーリャ | 仮想鏡界がほどけてますぅぅぅぅぅ ! ? |
| ジューダス | どういうことだ ! ? |
| マーク | 物置の方の仮想鏡界が不安定になってたんだ。マクスウェルの影響じゃないかって話だったんだがまさかそこから仮想鏡界が消えかかってるのか ? |
| カーリャ | そ、そうです !しかも何かが侵入してきているようなんです ! |
| カーリャ | カーリャはここを維持するのに集中します !侵入者を何とかして下さい ! ! |
| フィリップ | まずい……。このままもし仮想鏡界が崩壊したら僕らはみんなミリーナの深層意識の中に閉じ込められてしまう。 |
| フィリップ | それだけじゃない。僕らという異物のせいで、ミリーナの心が崩壊するぞ。 |
| イクス | えっ ! ?だったら、みんな、アジトから一旦外に出ないと―― |
| ミラ=マクスウェル | ――もう……遅い ! 何かが来る ! |
| Character | 9話【1-14 静かな街道2】 |
| メルクリア | ……見つけたぞ。黒衣の鏡士の仮想鏡界を ! |
| コーキス | メルクリア ! ? どうやってここに ! ? |
| メルクリア | 世界の綻びが仮想鏡界を揺るがせているのじゃ。今ならば、黒衣の鏡士を生きる屍にしてやれる ! |
| コーキス | やらせるかっ ! |
| コーキス | 消えた ! ? |
| イクス | コーキス、そいつはまやかしだ ! |
| コーキス | ! ? |
| メルクリア | ……そなたは冷静なのじゃな。確かにわらわは幻、本体は別の場所にいる。 |
| フィリップ | むしろ、幻体であるからこそ綻びの生じた他人の仮想鏡界に侵入できたんだ。 |
| メルクリア | 心を壊すには心をぶつけるしかない。わらわが内側から、黒衣の鏡士の息の根を止めてやる ! |
| ガイ | 光魔かっ ! ? |
| キール | しかもこの狭い場所に何匹も出してこられると戦うにも戦えないぞ ! |
| マーク | こいつも幻なら、始末のしようがないな。 |
| スタン | おい、俺たちのところにも光魔が現れたぞ ! ? |
| クレア | こちらにも光魔が ! ? |
| ミラ=マクスウェル | アジト中に光魔が出現しているのか……っ ! |
| メルクリア | あははははっ ! 幻の光魔は、仮想鏡界を――黒衣の鏡士の心を傷つけ、破壊できる。しかしそなたたちは幻の光魔に傷一つつけられぬ ! |
| メルクリア | そこで黒衣の鏡士の精神が死ぬところを指をくわえてみているがいい ! |
| シング | みんな、持ちこたえて !オレたちのソーマなら光魔に攻撃が効くみたいだ。ヒスイとコハクと三人で光魔を片付ける ! |
| メルクリア | ……ソーマか。確かにソーマなら幻の光魔を傷つけることができような。じゃが、無駄だ。たった三人でこれだけの数の光魔を始末できるものか ! |
| メルクリア | よしんばできたところで、倒し終わる頃には黒衣の鏡士の心は壊れているだろう !行け ! 光魔 ! |
| コーキス | くそっ ! こっちのダメージが効かない !どうすれば―― |
| フィリップ | イクス ! 具現化だ ! |
| イクス | え ! ? |
| フィリップ | 光魔の幻体に実体を与える。具現化するんだ ! |
| イクス | こ、こんなにたくさん ! ?しかもここからじゃ見えない場所にもいるのに ! ? |
| フィリップ | 僕も協力する。 |
| フィリップ | 仮想鏡界は心の中であり、心の中は概念の世界だ。実体を与えることはそれほど難しくない。光魔が実体化すれば、みんなが光魔を倒してくれる ! |
| イクス | ――わかった ! |
| イクス | (大丈夫。落ち着け。まずはオーバーレイで基礎魔鏡力を上げるっ ! ) |
| メルクリア | な……何じゃ ! ? |
| マーク | お、おい、フィル ! ?こいつはオーバーレイ暴走じゃないのか ! ? |
| フィリップ | いや……違う。暴走じゃない。これはイクスの力が無限増殖している―― |
| メルクリア | ――なっ ! 体が……融ける……っ ! ? |
| ミトス | 駄目だ……。アジトと連絡が取れない。 |
| クラース | 大変だぞ !アジトがメルクリアに襲撃されているらしい ! |
| ガロウズ | クラトスたちの話だと、光魔に襲われたところで通信が完全に遮断されたらしい。 |
| ガロウズ | まずいぞ。もしこのまま仮想鏡界が消滅するとアジトの連中はミリーナの心に閉じ込められたままになっちまう。 |
| ミトス | ゲートに戻ったとしてもミリーナが気を失っていたらゲートは開かない……。シングたちもアジトの中か……。くそ ! |
| テネブラエ | ま、待って下さい。何か得体の知れないものが集まってくるような感覚が……。 |
| クラース | おい ! あれを見ろ ! 空に何かが見える ! |
| ラタトスク | 蜃気楼…… ? いや、違うな。何かが具現化している ? |
| ガロウズ | ……大陸…… ? |
| セルシウス | そうだわ……。空に大陸が出現している…… ! ? |
| ミリーナ | ……うぅ……。 |
| セルシウス | ミリーナ ! 大丈夫 ? |
| ミリーナ | ……え、ええ……。あそこへ……あの大陸へ向かって。あれは……イクスとフィルが創り出した空中大陸よ。 |
| ミリーナ | 私にはわかる。あれは……仮想鏡界のアジトに実体を与えた物なの…… ! |
| Character | 10話【1-15 静かな街道3】 |
| キール | ……死ぬかと思ったが、何とか光魔を倒せたな。 |
| マーク | ああ、これで実体化した光魔共はあらかた片付けた。それにしてもこの状況は……。 |
| マーク | 何がどうなってやがるんだ ?アジトに【外】ができてやがるじゃねぇか……。 |
| フィリップ | ……イクス。大丈夫かい ? |
| イクス | ……あ、ああ。なんか、すごく疲れたけど……何とか大丈夫。 |
| ファラ | ねぇ、何がどうなってるの ?窓の外の景色が一変してて……。外に出られるなんて……。 |
| リッド | ちょっと辺りを見て回ったんだがここは仮想鏡界じゃないよな ?この風の感じは外の世界と同じだ。 |
| スタン | ここは空中にあるみたいだったぞ。 |
| マーク | 空中 ! ? |
| ミラ=マクスウェル | 空に浮かぶ島という感じだろうか。少し先に行くと、崖があって、雲の下に海が見えた。四大もここが空中に浮かぶ島だと告げている。 |
| スタン | どうなってるんだ ? アジトがあったのは現実とは違う空間ってことだったよな。それがどうしてこんな空中に浮かぶ島になってるんだ ? |
| フィリップ | ……多分、イクスの創造の具現化の力の作用だ。力が強すぎて、光魔だけじゃなくてミリーナの仮想鏡界にまで実体を与えてしまったんだよ。 |
| フィリップ | 本来ならカレイドスコープの力を借りないと成し得ない陸地の――島の具現化をイクスは行ったんだ。 |
| イクス | 俺が……島を具現化した…… ? |
| フィリップ | もちろん、代償はあったけれどね。 |
| コーキス | うわぁぁぁぁ ! ? なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ ! ?俺、縮んでる ! ? |
| カーリャ | ど、どういうことですか ! ? |
| キール | イクスの力が弱まったのか ! ? |
| フィリップ | さすがキール。その通りだよ。 |
| フィリップ | イクスが光魔を――いや、実際には島を具現化したんだけれどその時に限界まで力を使い切ったんだ。 |
| フィリップ | それでコーキスを具現化する力が弱まったんだよ。大丈夫。少し休めばコーキスも眼帯姿に戻れる。 |
| コーキス | いや、眼帯は邪魔なんだけど……。 |
| ミリーナ | イクス ! すごいわ ! ケリュケイオンでこの島の上空を飛んでみたの。この島の形……オーデンセにそっくりなのよ ! |
| イクス | え ! ? じゃあ、俺、光魔を具現化しようとしてオーデンセを具現化したのか…… ? |
| フィリップ | いや、オーデンセをモチーフにアジトを具現化したんだと思う。仮想鏡界と違って、現実世界に建物を具現化しようとしたら大地が必要だからね。 |
| フィリップ | 光魔を具現化しようとして、アジトまで具現化しアジトを置く場所が必要だから、オーデンセ島をモチーフに浮島を作りだしたんじゃないかな。 |
| フィリップ | ……脱帽するよ。こんなこと……僕にもできない。 |
| イクス | え、でもフィルが協力してくれたからじゃないのか ?俺一人の力でこんなことできる訳ないし。 |
| フィリップ | いや、僕は少しフォローしただけだよ。 |
| ファラ | ……ねぇ、ミリーナ。どうしたの、その服。泥だらけだよ。 |
| ミリーナ | あ……。ちょっと外に出たときに……。――ごめんなさい、すぐ着替えるわ。 |
| イクス | あ ! |
| ミリーナ | な、何 ? |
| コーキス | あ、そうか。アレだな ! |
| カーリャ | アレですね ! |
| ミリーナ | ――ちょっと待って。コーキス、あなたどうしたの ! ? |
| コーキス | まぁまぁ、俺のことは後で話すから。さ、マスター ! |
| イクス | うん。あ、あの、着替えるなら俺の用意した服に着替えてくれないかな。 |
| ミリーナ | え ? |
| カーリャ | じゃじゃーん。この服でーす ! |
| イクス | その……俺、微妙に背が伸びたりしてミリーナがわざわざこの服を仕立ててくれただろ。 |
| イクス | 実はミリーナが服を仕立ててくれてるって少し前にカーリャたちから聞いててさ。俺も……なんかお返ししたいなって。 |
| イクス | その服、具現化じゃないんだ。ファラたちに協力してもらって、デザイン考えてさみんなで作ったんだよ。 |
| イクス | 俺も下手だけど、ちょっとだけ縫ったりしたんだぜ。 |
| ファラ | うん。みんなで話してたの。ミリーナ、そろそろその黒い服とお別れしてもいいんじゃないかなって。 |
| ミリーナ | ……ありがとう。 |
| イクス | 迷惑だったか ? |
| ミリーナ | ……ううん。そうよね。私……もうこの服にお別れした方がいいのかも知れない。 |
| ミリーナ | イクスやみんなが作ってくれた服だもの。大事に着させてもらうわ ! |
| テネブラエ | ……えー、大変いいお話のところ恐縮なのですが。 |
| ミリーナ | ――あ、そうね。みんなに紹介したい人がいるの。 |
| ミリーナ | 彼はテネブラエさん。そしてこちらに歩いてくるのが――ヴィクトルさん。 |
| スタン | あ、あんたはあの時の !……っていうか、どうしたんだ、その傷は ! ? |
| テネブラエ | ……ヴィクトルさんは私とミラさんを守るために怪我を負われたのです。 |
| ヴィクトル | 私はバルドの協力者として、帝国の動きを調べていた。表に出てくるつもりはなかったが、事情が変わった。 |
| クラトス | ヴィクトルは救世軍への合流と共闘を持ちかけてきた。私は受け入れようと思っている。フィリップ、構わないだろうか。 |
| フィリップ | ええ。あなたたちがそう判断したのなら、僕は構いません。 |
| クラトス | 彼の話はお前たちも聞いておいた方がいい。 |
| イクス | わかりました。 |
| イクス | ――コーキス、カーリャ。悪いけど、二人でアジトのみんながどうなっているか確認してきてくれ。 |
| マーク | 俺も行くわ。ちびっ子二人じゃ心配だからな。 |
| カーリャ | ムムム ! ? 馬鹿にしないで下さい ! |
| コーキス | 自分はでかいままだからって威張るなよな ! |
| マーク | はいはい、悪かった悪かった。それじゃ、行くとしようぜ。 |
| ファラ | わたしはクレアたちと一緒にアジトの片付けをしてくる。リッドも来てくれるよね。 |
| リッド | そう言われると思ったよ。まぁ、ややこしそうな話はキールの方が向いてるだろうしな。 |
| キール | ああ。任されてやる。 |
| クラトス | ヴィクトル、座るか。 |
| ヴィクトル | いや、このままでいい。 |
| ヴィクトル | どこから話せばいいか―― |
| テネブラエ | ここにいるミラさんとは違うもう一人のミラさんのお話からがいいのではないでしょうか。 |
| ミラ=マクスウェル | ! ? |
| ヴィクトル | ……ああ、そうしよう。ミラが……自分の命と引き替えにこの世界を支えてくれているという話から、な。 |
| | to be continued |