| Character | 1話【4-1 閑散とした街道1】 |
| ルカ | カイウス、ルビアの調子はどう ?ケリュケイオンから移って、何か困ってることはない ? |
| カイウス | 今は大丈夫。でも…………なあルビア、もう少しどうだ ?ほとんど食べてないだろ。 |
| ルビア | うん……でも、もういい……。 |
| カイウス | だったら、他に何か欲しいものあるか ? |
| ルビア | ……いらないって言ってるでしょ。もう……食べたくない……。 |
| カイウス | ……そうか。 |
| ルカ | ルビア、無理しなくてもいいよ。でも、以前僕を看病してくれてる時に言ってたよね ?「体力回復には食べなくちゃ」って。 |
| ルビア | ……そうよね。立場が反対になっちゃった。 |
| ルカ | あの時、僕の好きなチーズスープを作ってくれたの、すごく嬉しかったんだ。だから食べたい物があったら、いつでも言って ? |
| カイウス | ああ、オレが必ず手に入れてくるよ。ルビアが早く元気になるようにさ !そうじゃないと、オレ…… |
| ルビア | ……ねえ、カイウス。あたしもう少し、食べてみようかな……。 |
| カイウス | 本当か ! よし、ほらルビア。あーん。 |
| ルビア | …………。 |
| ルカ | え、えっと、じゃあ僕、ジュードの手伝いしてくるよ ! |
| ジュード | 食事は終わった ? もう少ししたら薬を―― |
| ルカ | ジュード、丁度良かった !ちょっと質問があるんだけどいい ? |
| ジュード | いいけど……じゃあ部屋の外で話そうか。 |
| ルカ | ルビアの回復、遅すぎないかな。目が覚めたからアジトに移ってもらったけど、未だに一人で起きあがることもできないなんて……。 |
| ジュード | 僕も気になってるんだ。あの衰弱の仕方は特異鏡映点とも違うみたいだからね。 |
| ジュード | アプローチを変えて治療しようにも原因がわからないままじゃ下手な処置はできない。 |
| ルカ | そうなんだ……。 |
| ジュード | 今のところ、ルビアの体力に頼るしかないのがもどかしいよ。何か手がかりでもあれば…… |
| シング | ねえ、ルビアは起きてる ! ? |
| リタ | 今すぐに聞きたいことがあるんだけど話はできそう ? |
| ルカ | 起きてるけど、もう少し体調が戻ってからの方がゆっくり話せると思うよ。 |
| リタ | 無理にとは言わないわ。けど話によっちゃ回復の手掛かりになるかもしれないの。 |
| ジュード | わかった。二人とも、中に入って。 |
| シング | ルビア、帝国でつけられてた指輪って、これと同じもの ? |
| ルビア | ……宝石の色は違うけど、同じような作りだったわ。 |
| リタ | やっぱりね。シング、あんたの予想どおりよ。 |
| カイウス | それ、何なんだ ?オレたちが帝国にいたころ、そんなの見たっけ ? |
| シング | これは、さっきイクスたちが持ち帰って来た精霊輪具だよ。 |
| シング | オレは、ミラ――空のマクスウェルからルビアが指輪をはめてたって話を聞いてたんだ。それでもしかしたらって思って。 |
| カイウス | あっ、牢から脱出した時の話か !でも、あの時には指輪がはずされてたから―― |
| リタ | その話はあと。長引くとルビアが疲れるでしょ。――ねえルビア、もう少し話せるなら、指輪をはめた経緯を教えてくれない ? |
| ルビア | ええ。……空のマクスウェルは、帝国が捕獲した時に、ひどい傷を負ってしまったらしいの。あたしが見た時には、命を落としかけていたわ。 |
| ルビア | だから、どうしてこんな酷いことになったのか、立ちあってたアステルに聞いてみたの。そうしたら―― |
| ルビア | 「ティル・ナ・ノーグのマクスウェルの残滓を、空のマクスウェルが取り込んだこと」が原因だって言ってた。 |
| ジュード | またマクスウェルの残滓か……。ミラはそのせいで、たまに体調が良くないんだよ。もう一人のミラも、そのせいで……。 |
| リタ | もしかして、異なるマクスウェル同士が互いを異物とみなして反応したのかしら…… ?でも、エンコードされていれば、そんなこと……。 |
| リタ | う~ん、とりあえずこの辺はキールやクラースの分野ね。それで ? |
| ルビア | アステルは対策を考えるって、その場を離れたわ。他の研究者たちは、「またマクスウェルに死なれては困る」って騒いでた。 |
| ルビア | そしてあたしに、指輪をはめるように言って来たの。その指輪――精霊輪具は精霊の力を吸収する力があるんですってね。 |
| ルビア | それを使えばマクスウェルを助けられるって言われて……。 |
| カイウス | バカ ! それで言われるまま使ったのか ! ?怪しいと思わなかったのかよ ! |
| ルビア | 思ったわよ。……元々、反逆罪であの研究所に送られてたんだもの。きっとあたしは、何かの実験台なんだって。 |
| ルビア | でも……目の前で苦しんでるあの人をそのままになんか出来なかった……。 |
| カイウス | ルビア……。 |
| ルビア | だからあたし、精霊装を纏って、この世界のマクスウェルの『残滓』っていうのを……自分を通して、吸収した……の……ハァ……。 |
| リタ | えっ、ちょっと、大丈夫 ? |
| ルビア | 大丈夫……少し……疲れただけ。 |
| シング | ごめん。体が辛い時に無理させて。でもおかげで色々わかったよ。 |
| リタ | そうね。今の話でなんとなく見当はついたわ。ルビアの体調がずっと戻らないのは精霊との相性が原因の一つかもね。 |
| ルビア | 相性…… ? |
| リタ | そう。ちなみにイクスは光、ミリーナは闇との相性がいいそうよ。この精霊輪具で、二人ともすごい力を引き出したらしいわ。 |
| リタ | つまりあんたは、相性の悪いマクスウェルを無理やりに纏って、マクスウェルの力を吸収してしまった。多分、不調はそのせいじゃない ? |
| リタ | とにかく、この推測が当たっていれば精霊輪具の研究を進めることでルビアの体を元に戻せる可能性が高くなるはずよ。 |
| カイウス | 本当か ! ? 良かったな、ルビア ! |
| ルカ | それなら、リタたちの研究結果が出るまで、これ以上体力を落とさないように治療方針を考えよう。 |
| ジュード | ルカも医者の顔になってきたね。 |
| ルカ | そんな……。でも本当にそうなれるように、ジュードにはもっと色々教わらないと。 |
| シング | ルビアが元気になったら、きっとミラも喜ぶだろうな。命がけでルビアとオレを逃がしてくれたんだから。 |
| カイウス | ……ルビアはあの人の命を救ったけど、オレたちだって、あの人に救われたんだよな。 |
| ジュード | ……助けなくちゃね。もう一人のミラを。 |
| Character | 2話【4-2 閑散とした街道2】 |
| テネブラエ | ――なるほど。私の知る姿とは違いますが、その姿もまた、お美しくていらっしゃる。 |
| セルシウス | なによ。見慣れた姿でなければ落ち着かないとでも ? |
| テネブラエ | いえいえ、どうぞそのままで。また変身する際の参考にもなりますから |
| セルシウス | またって……、まさか、わたしに変身したことが―― |
| カーリャ | お待たせしましたー……って、みんなもう集まってますよ ! |
| コーキス | やべっ、俺たちが最後みたいだぞ、マスター ! |
| イクス | ミリーナ、早く早く ! |
| ミリーナ | 少しゆっくりしすぎたみたいね。ごめんなさい。 |
| リフィル | いいのよ。休める時には、しっかり休まないと。 |
| ユリウス | 精霊装を使ったらしいな。その後、なにか問題は出ていないか ? |
| イクス | 大丈夫です。仮眠もとったからむしろ調子がいいくらいですよ。 |
| ジェイド | でしたら、早速始めましょう。ここに来て、だいぶ事情が込み入ってますからね。 |
| ジェイド | さて――我々が今後とるべき方針についてですが、まずは現在の課題を、ひとつずつ整理していきましょう。 |
| ジェイド | 手始めに、精霊研究所から持ち帰って来たクレーメルケイジとそれに付属していた精霊輪具ですがこれらの研究と解析を早急に進めねばなりません。 |
| キール | それはもちろん、キール研究室メンバーが請け負う。特にクレーメルケイジなら、ぼくの専門分野だ。 |
| セルシウス | そうね。わたしもクレーメルケイジの差異が気になるわ。この世界のものは造りが少し違うようだから、中にいる精霊にどんな影響があるか知っておきたい。 |
| クラース | 付け加えると、今回イクスたちが精霊装を纏ったことで精霊装による攻撃が、リビングドールに影響を与えることも分かっている。 |
| クラース | これを突き詰めていけば、アスベルたちの仲間のリチャードを元に戻せる可能性もあるんだ。そのあたりも考慮に入れて研究を進めるといいだろう。 |
| ユリウス | ところで、その精霊輪具の実物は今どこに ? |
| キール | クレーメルケイジはここにあるけど、精霊輪具はリタが無理やり持っていったんだ。会議で使うかもしれないから少し待てって言ったのに ! |
| カロル | それって、ボクがキールを呼びに行った時でしょ ?研究室からリタが飛び出してきたからびっくりしたよ。 |
| カロル | どこ行くのって聞いたら、マクスウェルがどうとか、ルビアの回復が何とか……って。で、その後をシングが慌ててついて行ったんだ。 |
| ミラ=マクスウェル | マクスウェル ? そう言えば、ルビアという娘は精霊装を纏ったことがあるという話だったな。もう一人の私が、それを気に病んでいたとか……。 |
| ユリウス | まあ、リタからは後で話を聞こう。その報告次第では、精霊装の危険性も考慮に入れないとならないからな。 |
| リフィル | ……精霊関係だけでも、やることは山積みね。 |
| カロル | それじゃあ、ボクたちカロル調査室も、精霊のことを調査する ? |
| ジェイド | いいえ、カロルたちには、帝国の目的について調査してもらおうと思っています。 |
| ジェイド | ここにいる皆さんには先ほど一通り説明しましたが帝国の目的は相変わらず謎のままですからね。 |
| ミリーナ | 目的……。ヴィクトルさんの話ではデミトリアスは、ダーナの心核がある精霊の封印地で精霊装の力を解放しようとしたのよね。 |
| テネブラエ | ええ。まるで心核が壊れることなど構わないかのような行いでした。そして実際に、心核の崩壊は始まってしまった。 |
| イクス | それを、もう一人のミラさんが心核に融合して食い止めているんだよな。 |
| ミラ=マクスウェル | …………。 |
| ミリーナ | ダーナの心核の崩壊は世界の崩壊と同じなのに、それを厭わないということは、帝国にとって、この世界は滅びても構わないということになるけれど…… |
| ユリウス | 構わないどころか、むしろ積極的にさえ感じるな。まあ……その情報が本当であればの話だが。 |
| ユリウス | その、ヴィクトルという鏡映点は、本当に信用できるのか ? |
| キール | 信用できるさ。だってあの男は―― |
| イクス | そ、そう ! あの男はバルドさんと行動を共にしてたんですから ! |
| キール | そ、そうだ ! そうだぞー ! |
| ユリウス | しかし、どこの世界から具現化された人物かくらいわからないと―― |
| ジェイド | 残念ですが、彼は重症なので、必要な情報以外は引き出すことができなかったようです。何しろ鏡映点リストにも載っていない人物ですからねぇ。 |
| クラース | まあ、その辺りの調査は引き取った救世軍の方にまかせればいいさ。 |
| テネブラエ | ユリウスさん、私はその現場の当事者です。情報の正確さは私が保証いたしますよ。 |
| テネブラエ | どんな嘘にも塗りつぶされぬのが黒き闇。私の言葉は真実のみです。どうぞご安心を。 |
| ユリウス | ………。そうだな。少し引っかかるが……まあいい。 |
| イクス | (……はぁ、みんな上手くごまかしてくれたな。ヴィクトルさんの正体を知らせるならもう少し落ち着いてからじゃないと……) |
| ユリウス | 話の腰を折って済まなかった。とにかく、帝国のやろうとしていることは自ら積極的に滅びに行くも同義ということだ。 |
| ジェイド | ……そうなのかもしれません。それを踏まえると、帝国はこの世界を滅ぼして新世界を作ろうとしているように思えます。 |
| ミリーナ | ジェイドさん、まさかそれってニーベルングと同じ……。 |
| ジェイド | ティル・ナ・ノーグは、まさに世界が滅びたからこそ生み出された箱庭です。彼らが同じことを考えても、おかしくありませんよ。 |
| ジェイド | 帝国が分史世界の概念を生み出そうとしているという情報も、別の世界を作り出すためとも聞こえますしね。 |
| ジェイド | それに、帝国にはディストがいますから。ありえないとは言えないのですよ。 |
| カロル | なんでディストが関係あるの ? |
| ジェイド | 私の世界では、レプリカというあらゆるものを複製する技術があったんです。 |
| ミラ=マクスウェル | レプリカ……まるで具現化のようだな。 |
| ジェイド | ええ。そして私たちの敵であった人物は、人間すべてをレプリカに置き換えようとしていたのです。 |
| ジェイド | 人と世界、複製を作ろうとしている物に違いはありますが、その発想はよく似ています。 |
| ジェイド | ディストが帝国にいたのですから、この答えにたどりつく可能性は十分に考えられる。 |
| リフィル | ……ちょっといいかしら。 |
| リフィル | あなたが言うように、一度世界を壊して、具現化なり、分史世界なり、レプリカなり、何らかの手で帝国が新世界を生み出すことが目的だと仮定するわね。 |
| リフィル | 過去に、ニーベルングは具現化で新たな世界を造った。そしてティル・ナ・ノーグとして発展し、現在また、死の砂嵐で世界は再び滅びかけている。 |
| リフィル | もしも、帝国が新たな世界を作り、その世界のおかげで、いま滅びかけているティル・ナ・ノーグの人々が救われるのだとしたら―― |
| ミラ=マクスウェル | 帝国が考えていることは、あながち悪とは決めつけられない、とでも ? |
| リフィル | 現状を考えれば、精霊やそれに属する人たちには面白くない話かもしれない。でも、そういう考え方を見落としてはいけないというだけよ。 |
| イクス | ……帝国の考え方……か。 |
| Character | 3話【4-3 閑散とした街道3】 |
| コーキス | 帝国のやっていることが結果的には正しいかもしれないなんて……。 |
| カーリャ | 何だか納得できないですよぉ……。 |
| ミリーナ | それが答えって訳じゃないわ。リフィル先生は、帝国の目的や考えを見極めなければならないって言ってるだけよ。 |
| リフィル | ええ。一方的な物の見方は危険だから。 |
| イクス | わかっています。……でもやっぱり俺もコーキスやカーリャと同じように思えるんです。 |
| リフィル | 理由を聞かせてもらえる ? |
| イクス | 本当に新世界を作ることで救われるなら帝国は、俺たちと対立せずに、協力を持ちかけてもいいはずじゃないですか ? |
| リフィル | そうね。真の救済をかかげて協力を申し出る方が都合がいいかもしれない。 |
| ミリーナ | 以前は、ファントムやナーザのように私たちを敵視する人物がいたけど、今なら手を結ぶことも難しくないわね。 |
| イクス | ああ。だけど協定を申し出るような動きは見えないだろう ? |
| イクス | だからその上でもしかして俺たちを憎むビフレスト勢が異議を唱えて手を組めないんじゃないかって考えた。 |
| イクス | でもそれ以前に、メルクリアたちビフレスト勢が今の帝国のやりかたに賛同してるとは、とても思えなくて……。 |
| ミリーナ | ……ナーザは、この世界の存続と未来のために私たちを殺そうとしていたんだものね。 |
| イクス | ああ。そのナーザがいなくなったからって、いきなり世界を滅ぼして、新世界にしますなんて計画にビフレスト勢が納得するかな。 |
| ユリウス | だとすると、帝国側も一枚岩ではないかもしれないな。 |
| リフィル | 考えてみれば、当初から帝国が行ってきたリビングドール計画や、神降ろしに精霊装――どれも目的がちぐはぐな印象ね。 |
| リフィル | その全てが、そもそも一つの目的に向けた計画ではなかったとしたら……。 |
| ジェイド | ええ。イクスが言ったようにそれぞれの派閥の思惑や方針の変更などがあったのかもしれません。 |
| ジェイド | まずリビングドール計画ですが、これはビフレスト復活のためであることは想像がつきますね。 |
| ジェイド | そして神降ろしは、アステルの話から鑑みるに、ダーナ本人の声を聞こうと、もともと帝国が進めていたものでしょう。 |
| ジェイド | 精霊との接触もその一環かと思われます。 |
| キール | ヴィクトルは、精霊が分史世界の概念を生み出す為に必要なんだと話していたぞ。 |
| ジェイド | そうですね。帝国にとって精霊は複合的に利用価値があるのでしょう。 |
| ジェイド | マクスウェルへのこだわりといい、精霊こそが帝国のあらゆる計画の鍵を握る存在と言ってもいい。 |
| カロル | それなら、精霊からもっと話を聞けないかな。ミラやセルシウスは何か知らないの ? |
| ミラ=マクスウェル | 済まないが、特に情報はない。私はこの世界のマクスウェルではないからな。 |
| クラース | セルシウス、君はエンコードの影響でこの世界の精霊と融合している。何かわかることはないか ? |
| セルシウス | 残念だけど、この世界の精霊としての記憶は封じられた状態よ。 |
| ミリーナ | ……ということは、アイフリードによる精霊の封印はまだ有効ってことなのかしら。 |
| クラース | ……なるほど。そこで精霊装の登場というわけか。封印された状態でも、精霊の力を取り込んで利用するために編み出されたのかも知れんな。 |
| クラース | それにアステルの話では、帝国は精霊装を『精霊の力でしか壊せないものを壊す道具』として想定しているそうだ。 |
| キール | だったら悪用されないうちに、早く精霊たちを味方にしておかないと ! |
| クラース | そうだな。では私が精霊の捜索と保護を担当しよう。やれやれ、体力勝負になりそうだな。キールも一緒にどうだ ? |
| キール | ぼ、ぼくは……その……。 |
| クラース | 冗談だよ。精霊輪具やクレーメルケイジの研究を進めておいてくれ。フィールドワークなら私の出番だ。 |
| キール | ああ、わかった。こっちは任せてくれ ! |
| コーキス | あからさまにホッとした顔してるな、キールさま……。 |
| カーリャ | カーリャは、なに考えてるかわからない人より、よっぽど素直でいいと思いますよ。 |
| ジェイド | おや、何か熱い視線を感じますねぇ♪ |
| テネブラエ | 確かに、メラメラと燃えるような熱視線。カーリャさんはジェイドさんがお好みですか。闇属性を選ぶとは、なかなかにお目が高い。 |
| カーリャ | 怒りで燃えているんですぅ ! |
| カロル | えーっと……精霊輪具の研究はキール研究室で、精霊捜索がクラース精霊研究室っと……。ボクたちは帝国の目的調査と、内部分裂の可能性を…… |
| コーキス | カロルさま、ちゃんと今までの話、整理してるのか。 |
| カロル | うん、でもかなり難しくて……。コーキスはわかった ? |
| コーキス | 俺は……えーっと、つまりその……帝国はこの世界を壊して、新世界を作ろうとしていて、それで俺たちはこの世界を守ればよくて…… |
| コーキス | そのために精霊を捜したり、とにかくなんか色々やるんだろ ? |
| カロル | ざっくりだね……。 |
| カーリャ | ざっくりすぎます。薄味にもほどがありますよ。 |
| ジェイド | いえいえ、上出来上出来。わかりやすくて良い説明ですよ。 |
| コーキス | ジェイドさま、棒読みじゃねーか ! |
| イクス | アハハ、でも本当にわかりやすかったよ。説明ありがとうな、コーキス ! |
| コーキス | へへっ、どういたしまして、マスター ! |
| リフィル | では、一度解散ね。それぞれの仕事を始めましょう。 |
| クラース | イクス、ミリーナ、セルシウス。この後、クラース精霊研究室へ集まってくれ。精霊関係者たちと、今後について話しておきたいんだ。 |
| 二人 | わかりました。 |
| クラース | それと、ミラはミュゼと一緒に。テネブラエも、エミルとラタトスクに声をかけて欲しいんだが、頼まれてくれるか ? |
| テネブラエ | 承りましょう。 |
| ミラ=マクスウェル | ミュゼもか。確かガイアスのところにいたな。すぐに連れてこよう。 |
| Character | 4話【4-4 閑散とした街道4】 |
| テネブラエ | おや、これはこれは…… ! |
| ラタトスク | ミトス…… ? どうしてお前がいるんだよ。今回は精霊関係者だけじゃなかったのか。 |
| ミトス | いいじゃない。見学だよ。 |
| ラタトスク | ……何か余計なこと考えてるわけじゃねえよな。 |
| ミトス | 余計なことってなに ?ボクがまた、精霊を裏切るかもしれないって ? |
| ラタトスク | そうじゃねえよ。お前が妙な動きをする理由なんて見当が付くって言ってんだ。 |
| ミトス | へぇ……さすがだね。 |
| ミトス | ――あれ、テネブラエも一緒なの ?ジーニアスやリフィルさんには会った ? |
| テネブラエ | ええ。先程リフィルさんにご挨拶させて頂きましたよ。残念ながら私のことは知らないようでしたが。 |
| ラタトスク | チッ、ごまかしやがって……。 |
| エミル | テネブラエ、すごく嬉しそうだね。 |
| ラタトスク | あいつは昔からそうなんだよ。ミトスには妙になつきやがって。何をそんなに気に入ったんだか。 |
| ミトス | 何、ラタトスク、やきもち ? |
| ラタトスク | そんなわけあるか ! |
| テネブラエ | モテるセンチュリオンは辛いですねえ。ですがご心配なく。私はラタトスク様の忠実な眷属。ラタトスク様が一番です。 |
| テネブラエ | それに、ミトスさんが我が主を裏切ったこと私は許していませんから。 |
| ミトス | ……うん、良かった。それでいいよ。やっぱりテネブラエは面白いね。 |
| テネブラエ | ありがとうございます。ミトスさんなら、そうおっしゃると思っていました。 |
| クラース | ――さて、挨拶もすんだようだ。そろそろ始めてもいいかね ? |
| ラタトスク | こっちはまだ話が終わってねえ !おい、ミトス。お前がこんな所に来たのはマーテルのことで―― |
| ミラ=マクスウェル | ラタトスク、その話は後でもいいんじゃないか ? |
| ミュゼ | そうよね~。ミラの言うとおりよ。だいたい、部外者云々でミトスのことを言うならそこにいる天族はどうなるの ? |
| ライラ | ど、どうも~、お邪魔してま~す。 |
| クラース | ライラは天族代表として私が招いたんだ。ティル・ナ・ノーグでは、元の世界で精霊ではなかった存在も、精霊としてエンコードされているからな。 |
| テネブラエ | ほう、天族で精霊ですか。そうなると、精霊くくりの者があなた以外にもまだいるのですね。 |
| ライラ | はい。ぞくぞく出てきますよ ! 天「族」だけに ! |
| テネブラエ | ……どういう方か理解しました。ですがそのセンス、嫌いではありません ! |
| クラース | ……ともかく、現時点で精霊と定義されている天族も、精霊捜索と保護には重要な存在だと考えているんだ。――ライラ、よろしく頼むよ。 |
| ライラ | こちらこそ、是非ご一緒させて下さい。この計画に参加することは、私たち天族にとっても有意義なことですから。 |
| ミリーナ | 張り切ってるわね、ライラ。 |
| ライラ | はい。アステルさんという方の伝言によるとスレイさんの神依化が、元の世界のように全ての属性の天族とできるようになる可能性があると。 |
| ライラ | 天族のみんながスレイさんと神依化できれば、同じようにロゼさんとの神依化もできるかも知れません。きっと戦局でお役に立つことも多いかと思います。 |
| ライラ | ミクリオさんに先を越されてしまいましたが、ようやく主神としての務めを果たせそうですわ ! |
| イクス | 火の天族……か。見た目より熱い人なんだな……。 |
| ミリーナ | フフッ、そこがとっても可愛いでしょ ? |
| ミラ=マクスウェル | クラース、聖隷は呼ばないのか ?彼らも元の世界では似たような存在だと聞いているが。 |
| クラース | 天族が精霊と定義されているのは、ほぼ確実なんだがこの世界での聖隷はまだわからなくてね。だから今回は保留としておく。 |
| ミラ=マクスウェル | なるほど、ティル・ナ・ノーグでは元の世界そのままというわけにもいかないからな。 |
| ミュゼ | 私は元の世界そのまま、ミラのことが大好きよ ? |
| ミラ=マクスウェル | 私にとってのミュゼはそのままではないが、今のミュゼは好きだぞ。 |
| ミュゼ | ミラーー ! |
| ミラ=マクスウェル | ではクラース、進めてくれ。 |
| クラース | ようやくだな……。さて、これから我々のやるべきことは二つだ。 |
| クラース | 一つ目は、このアジトでの精霊たちと、精霊装を進める。そのためには、精霊輪具の解析が必要になるが、そう簡単ではないから、これは一旦後回しだ。 |
| クラース | 二つ目は、未発見、未契約の精霊たちを捜し出して保護すること。しかし、この世界にどれだけの精霊がいるかは現在わかっていない。 |
| クラース | 私も、自分の世界の全ての精霊を把握していたわけではないんだ。そこに加えて、天族の例もある。 |
| セルシウス | 具現化のせいで、この世界にはいなかったはずの異世界の精霊も増えているわ。全てを把握するのは途方もない作業になるわね。 |
| ミラ=マクスウェル | ミトスは帝国にいたのだろう ?あちらでは精霊について何か聞いたことはないのか ? |
| ミトス | そうだね。ボクが帝国にいた頃、この世界で認知された精霊なら教えてあげられるよ。 |
| ミトス | 君の従える四大とマクスウェル、セルシウス、シャドウ、アスカ、クロノス、ヴェリウス、ヴォルト、そしてオリジン。 |
| ミトス | あとはジェイドの報告だと、他にもローレライや他の天族が具現化されているんだったよね。 |
| ミラ=マクスウェル | これは助かる情報だ。ありがとう、ミトス。 |
| ミトス | どういたしまして。 |
| ラタトスク | ……お前、ずいぶんと素直じゃねえか。 |
| ミトス | マクスウェルには、元の世界で恩があるから、この程度ならね。でも、これで精霊が全てかはわからないよ。 |
| ミュゼ | それじゃやっぱり地道に捜すしかないの ?いやだわ、気が遠くなっちゃう。 |
| イクス | 手がかりはあるよ。アステルの話じゃフィル……ジュニアが、ファントムのカレイドスコープで精霊の力をみつけて、心核を具現化したって。 |
| ミラ=マクスウェル | それを使えば精霊を捜すことも可能ということか。だが、カレイドスコープは確か、ジュニアとファントムの仮想鏡界の中ではなかったか ? |
| ミトス | もしもジュニアが仮想鏡界を維持できていれば、眠ってるファントムを通じて侵入できるんじゃない ?体はこっちで確保してるんだし、すぐ実行できるよ。 |
| ミラ=マクスウェル | なるほど。シングの力を借りて、ファントムの心の中に入るんだな。 |
| クラース | 心の中か……。これは少々勝手が変わってきたな。まあいい。新たな精霊を発見できるなら、どこにでも行ってやるさ。 |
| Character | 5話【4-5 閑散とした街道5】 |
| ジュード | ――ファントムの心に入るの ?確かに、今のファントムは眠っているけど彼の精神状態がどうなっているか、わからないんだよ ? |
| イクス | ああ。かなり危険だと思う。それでもソーマ使いの力が必要なんだ。頼むよ、シング。 |
| シング | もちろん引き受けるよ。当たり前だろ !それに……。 |
| ミラ=マクスウェル | …… ?どうしたシング。私の顔に何かついているか ? |
| シング | ……ううん、何でもない。オレさ、ジィちゃんから胸の大きな美人が困ってたら、死んでも助けろって言われてるんだ。だから喜んで協力するよ ! |
| ミラ=マクスウェル | 胸か。なるほど……。シングにとって胸の大きさとは、命をかけるに値するのだな。覚えておこう。 |
| シング | ……やっぱり、オレの会ったミラとは違うんだね。分史世界と正史世界って不思議だな。 |
| ミュゼ | でも、どの世界のミラも魅力的なのは変わらないでしょ ? |
| シング | うん。オレもそう思うよ !ところで、今回スピルリンクするメンバーは ? |
| イクス | 俺とミリーナ、それにクラースさんとミトスだ。 |
| コーキス | 俺たちもいくからな、マスター ! |
| カーリャ | 忘れないでくださいよ ! |
| シング | コーキスとカーリャもだね。了解 !ミラやミュゼは行かないの ? |
| ミュゼ | 残念だけど、私たちはお留守番なの。 |
| ミリーナ | ファントムの仮想鏡界に入るということは敵の懐に飛び込むのと同じだから、今回は安全策を取ることにしたのよ。 |
| クラース | 精霊たちを連れて行って、逆に捕獲される可能性もあるからな。 |
| ジュード | それじゃみんな、行こうか。ファントムはこっちの部屋に―― |
| カイウス | ミラさん、ミュゼさん、ルビアが起きたよ。 |
| ミラ=マクスウェル | そうか。今いく。 |
| カーリャ | ミラさま、もしかしてここに来たのって見送りの他に、ルビアさまのお見舞いのためですか ? |
| ミラ=マクスウェル | 目を覚ましているなら会ってみようかと思ってな。そうだ、みんなも会ってから出発したらどうだ ? |
| ミリーナ | あんまり人数が多いと、ルビアが疲れてしまうんじゃ…… |
| カイウス | 大丈夫だよ。最近オレの顔ばっかりで飽きてるだろうしルビアもきっと喜ぶと思う。 |
| カイウス | ルビア、みんながお見舞いに来てくれたぞ ! |
| ミラ=マクスウェル | ……っ ? |
| ミュゼ | ミラ、どうしたの ? |
| ミラ=マクスウェル | ……いや、なんでもない。 |
| ルビア | あなたが……もう一人のマクスウェル ?驚いたわ。本当にそっくりなのね。 |
| ミラ=マクスウェル | 私が礼を言うのもおかしいだろうが、もう一人の私を助けてくれて感謝するよ。ルビア。 |
| ルビア | いいえ、こっちこそ助けてもらったわ。ここで「ありがとう」って言いたいけど、これはあたしを助けたマクスウェルのために取っておくわね。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ。是非そうしてくれ。彼女を助け出した時には、……改めて……話を…… |
| ジュード | ミラ ! ? |
| ミラ=マクスウェル | ……すまない、軽い目眩だ。どうということはない。 |
| ミリーナ | 以前受けた、マクスウェルの残滓の影響が残っているのかしら。 |
| ジュード | (残滓……まさか、ルビアの中のマクスウェルの残滓が……) |
| ルビア | ねえ、あなた大丈夫なの ? |
| ミラ=マクスウェル | すまない、ルビア。見舞うはずの相手に、心配させてしまったな。――もう問題ない。 |
| クラース | だが……。 |
| ミラ=マクスウェル | 私は今回留守番だ。その間に休ませてもらうよ。みんなはファントムの所へ行ってくれ。 |
| イクス | わかった。ジュード、ミラのことを頼む。ファントムはこっちの部屋だったよな ? |
| ジュード | うん。くれぐれも気をつけて。 |
| シング | ――よし、スピルリンク成功だ !みんな、ファントムのスピリアに入ったぞ。 |
| クラース | これが人の心の中なのか。クレスたちから聞いてはいたが……。 |
| シング | ここはまだ、ほんの入り口なんだ。もっと奥へ進んで、仮想鏡界の入り口っていうのを―― |
| ジュード | みんな聞こえる ! ? |
| イクス | ジュード、どうしたんだ ? |
| ジュード | ミラが倒れたんだ !みんながスピルリンクした後、すぐに…… |
| ミリーナ | やっぱり具合が悪いのね ! 症状は目眩 ? |
| ジュード | うん。さっきはふらつく程度だったけど、今は立てないくらい辛そうなんだ。どんどん悪くなってる。 |
| ジュード | ミュゼの話では、みんながスピルリンクした直後からマクスウェルの残滓が流れ込んできてるって。 |
| ジュード | とにかく、一度そこから戻ってきてくれないかな。もしかしたら、症状の悪化を止められるかもしれない。 |
| シング | わかったよ。すぐに解除する。戻ってもいいよね、イクス ! |
| イクス | ああ、頼む ! |
| シング | 戻ったよ、ジュード ! |
| コーキス | うっ……なんか気持ち悪ッ !出発前は、こんな空気じゃなかったよな ! ? |
| カーリャ | 前にマクスウェルの残滓を感じた時と同じですよ。ゾゾゾッていう感じ ! |
| コーキス | 体がでかかった時は寒気くらいだったけど小さいとこんな感じなんだな。う~……。 |
| ミュゼ | ミラ……ミラ ! しっかりして ! |
| イクス | ミラの容体は ! ? |
| ミラ=マクスウェル | ……すまない……みんなの邪魔をしてしまって……。 |
| ジュード | よかった……話せるみたいだね。さっきよりは落ち着いたかな。 |
| ミトス | 顔色が悪いね。仮想鏡界がほどけた、あの時と同じだ。 |
| ミリーナ | やっぱり、ミュゼさんの言うとおりマクスウェルの残滓が影響して……。 |
| シング | オレ、何か失敗したのかな……。ファントムにスピルリンクしただけで、マクスウェルの残滓が流れ込むなんて。 |
| ミリーナ | スピリアは心の中だから、集合的無意識と繋がる場所になるわ。そしてその場所はティル・ナ・ノーグの影響を受けやすいから…… |
| イクス | ティル・ナ・ノーグを支えているダーナの心核が傷ついた影響かもしれない。 |
| イクス | ヴィクトルさんの話では、もう一人のミラさんが戦った場所は精霊の封印地で、ダーナの心核の近くだったはずだ。 |
| イクス | それで、精霊の封印地に溢れたマクスウェルの残滓が心の世界に流れ込んだ……ってことはないかな。それがファントムの心から流れ込んできてるとか。 |
| クラース | もしそうなら、スピルリンクをするたびに、スピルメイズを通じてマクスウェルの残滓が流れてくることに……。 |
| ミュゼ | そんなのダメよ、ミラが死んじゃうわ !スピルリンク禁止 ! |
| クラース | 落ち着くんだ。まだ仮定の話だよ。 |
| ルビア | ……倒れたのは、あたしにも原因があるかも……。 |
| カイウス | なに言ってんだよ。 |
| ルビア | だって、この部屋に入って来た時から、具合が悪そうだったでしょ ? |
| ルビア | 精霊装で吸収したマクスウェルの残滓が原因でこんなことになってるのかもしれないわ。 |
| カイウス | ……でも、それはルビアのせいじゃ……。 |
| クラース | 確かにルビアの所に来てから、ミラは具合が悪かった。だがそれはルビアのせいというわけではなく、精霊の力の特性によるものだろうな。 |
| イクス | そうか ! アステルが言ってましたよね。広がった精霊の力は、その力の源である心核を目指して戻ってくるらしいって。 |
| クラース | マクスウェルの力は、マクスウェルの心核に集うということだろう。 |
| クラース | だからルビアが吸収したものも、ファントムから流れて来たものも、ミラの心核に惹かれて流れ込もうとしているんだ。 |
| ミュゼ | じゃあ、マクスウェルの残滓を取り除けるようになればいいのよね ? |
| クラース | それは……キールたちの研究が進まないと難しいだろう。 |
| シング | やっぱりミュゼの言うとおり、スピルリンクは禁止するしかないのか……。 |
| ミラ=マクスウェル | それでは私のせいでみんなの足を引っ張ることになる。私はまだ耐えられるから大丈夫だ。 |
| ジュード | 危険だよ、ミラ。 |
| イクス | ……精霊輪具のようにマクスウェルの残滓を集められる方法があれば……。 |
| Character | 6話【4-9 迷いの森4】 |
| イクス | ルビアがもう一人のミラさんを助けられたのも、無理に精霊輪具を使った精霊装をさせられたからだよな。今更だけどアステルがこっちにいてくれれば―― |
| クラース | しかし精霊輪具の精霊を吸収する力が解明できてもミラの心核以上の吸引力を担保できるだろうか ?世界は違えど、ミラもマクスウェルだからな。 |
| ミュゼ | 集めるのも取り除くのも難しいなら捨てちゃえばいいのよ。 |
| コーキス | 捨てるってミュゼさま、そんなゴミみたいに……。 |
| カーリャ | その辺のゴミ箱にポイってわけにはいきませんよ ? |
| ミュゼ | わかってるわ。私が言ってるのは、マクスウェルの残滓を次元の彼方に飛ばせばいいってこと。 |
| ジュード | そうか ! 時空を切り裂く剣だね ! |
| イクス | 時空を切り裂くって、どういうことなんだ ? |
| ジュード | ミュゼの力だよ。それを持つ剣を使えば別の次元への入り口を切り開くことができるんだ。 |
| ミュゼ | 一度折れてるから、まずは剣を作るところから始めないといけないけれど試してみる価値はあるでしょう ? |
| ジュード | えっ、あの剣、折れちゃったの ! ? |
| ミュゼ | そうよ ? 誰かさんのせいでね。待ってて。今から作ってみるから。 |
| ミュゼ | …… ?おかしいわ。力が上手くまとまらない。 |
| クラース | まさか、エンコードの影響か ? |
| ミリーナ | そうですね……。もしかしたら次元に干渉できるようなものは作らせないというこの世界の法則があるのかも知れません。 |
| ミリーナ | ミュゼさん自身が、この世界から別次元へ移動することが不可能な状態だと思うから、きっとその力を使う剣も……。 |
| ミュゼ | ……そう。 |
| ミトス | 時空を切り裂く……か。ボクのエターナルソードによく似ているね。 |
| クラース | エターナルソード ! 時間の剣か。 |
| ミトス | へえ、知ってるんだ。 |
| クラース | ああ。敵のダオスを倒すためにオリジンに頼んで作ってもらったんだ。だが、その剣は少々違うようだな。 |
| ミトス | そうだね。この剣は、ボクのために、ボクの世界のオリジンが生み出した、時空を切り裂く剣なんだ。 |
| ミュゼ | ミトスのその剣はどうしてこの世界に存在できるの ?エンコードの影響は ? |
| ミトス | ボクがエターナルソードを手にしているタイミングで具現化されたから――じゃない ? |
| ミトス | もちろん、機能は制限されているよ。元の世界のようには使えない。 |
| ミトス | でも、マクスウェルの残滓を、別の次元に集めることくらいはできるはずだ。 |
| イクス | 本当か ! ? |
| シング | それじゃ、スピルリンクも可能になるんだな ! |
| ミトス | そう簡単な話じゃないけどね。まず、ファントムのスピリアに侵入しないと。そこで残滓を集めて、エターナルソードで封じるんだ。 |
| シング | ……あれ ? それだと結局スピルリンクはしないといけないってことだよな ? |
| ミュゼ | また、ミラが倒れちゃうじゃない ! |
| ミトス | それ以上に過酷だよ。ファントムの中で残滓を集めるには、その残滓が集まる目標が必要だから。 |
| イクス | ……それは、ミラを『おとり』にするってことか。 |
| ミトス | ……そうなるね。 |
| ミュゼ | ダメよ ! 絶対に反対だわ ! |
| ジュード | ……ごめん、ミトス。提案はありがたいけど、僕も賛成できない。 |
| ミトス | 別に強要はしないよ。好きにすればいいさ。ボクもマクスウェルが苦しむところをわざわざ見たくはないからね。 |
| ミラ=マクスウェル | 待ってくれ……。私はこのまま、皆の足手まといになるつもりはない。 |
| ミラ=マクスウェル | ミトス、その提案を受け入れよう。私がおとりになればいいんだな ? |
| ミュゼ | ミラ ! ! |
| ミトス | ……わかった。でも、無理はしなくていいからね。 |
| ミラ=マクスウェル | ジュード、ミュゼ。私は平気だ。ミトスがうまくやってくれるよ。 |
| ジュード | ……でも、今のミラの状態で、そんな賭けみたいなことは……。 |
| イクス | 俺もそう思う。ぶっつけ本番じゃ危険すぎるよ。だからその方法を、ここで試してみないか ? |
| ミラ=マクスウェル | ここで…… ? |
| イクス | まず、ルビアの中のマクスウェルの残滓を取り出してみるんだよ。ミラはルビアの中の残滓に反応していただろ ? |
| ルビア | ……えっ ? |
| イクス | それで、ミトスの提案した方法が成功するかミラの体への負担がどうか、確かめてみればいい。危険な事には変わりないけど、どうかな ? |
| ミラ=マクスウェル | それはいい考えだ。是非やらせてくれ。 |
| カイウス | そんなことして平気なのか ?そりゃ、ルビアが元気になるのは嬉しいけど……。 |
| ミラ=マクスウェル | 君が気に病む必要はない。私が、苦しむ人を救ってやりたいだけだ。 |
| ジュード | …………。 |
| ミラ=マクスウェル | ジュード、ミュゼ。私の身を案じてくれているのはわかる。でもどうか―― |
| ジュード | わかってるよ。ミラがそう言うなら、僕は全力で支える。 |
| ミュゼ | 私もそばにいるわ。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ。頼りにしている。――ミトス、手順は ? |
| ミトス | そうだね。ルビアと接触して、より明確にマクスウェルの残滓に目標はここだとわからせてあげればいいんじゃないかな。 |
| ルビア | ……無理はしないでね。苦しかったら、すぐにあたしから離れて。 |
| ミラ=マクスウェル | 安心しろ。私はかなり頑丈で強いんだ。な、ジュード。 |
| ジュード | うん。僕の世界の仲間全員が保証するよ。 |
| ミラ=マクスウェル | ではルビア、手を。 |
| ミラ=マクスウェル | ――っ…… !(……来い。私は……マクスウェルはここだ) |
| コーキス | ルビアさまから光が……うっ ! ? なんかゾゾッと…… |
| カーリャ | はい、この部屋全体からもマクスウェルの残滓の気配が集まって来ましたね……。 |
| ミトス | ――今だ ! |
| シング | うわっ、空中に小さな穴 ! ? |
| ミュゼ | あれは次元に開けた穴ね。でもとても小さいわ。 |
| カイウス | 光があっという間に吸い込まれた……。 |
| ミトス | さあ――終わったよ。 |
| 二人 | ミラ、大丈夫 ! ? |
| ミラ=マクスウェル | ……ああ。今ので疲労感は増してるが、ルビアの中の残滓が消えたせいか、体に力が戻って来た気がする。 |
| カイウス | ルビアはどうだ ? |
| ルビア | あたしも……体が軽いわ。 |
| クラース | どうやら、成功のようだな。 |
| シング | 良かったな、ルビア ! カイウス ! |
| カイウス | な、なんでオレまで。 |
| ルビア | そうよ、別にあたしたち…… |
| ジュード | ルビア、まだ安静にね。でもきっと、回復は早いと思うよ。 |
| ルビア | ありがとう。みんな。それと――これは正真正銘、あなたへのお礼の言葉よ。助けてくれてありがとう、ミラ ! |
| ミラ=マクスウェル | ああ。喜んで受け取ろう。 |
| イクス | ミトス、助かったよ。ありがとう !これならきっと スピルリンクもうまく行くと思う。 |
| ミトス | ……そうだといいんだけどね。 |
| Character | 7話【4-10 ファントムのスピルメイズ1】 |
| シング | ――よし、ファントムにスピルリンクできたぞ。 |
| ジュード | ミラ、具合はどう ? |
| ミラ=マクスウェル | ああ、まだ平気だよ。マクスウェルの残滓も感じないな。 |
| クラース | この入り口付近に漂ってたマクスウェルの残滓がアジトに流れ込んでいたのかもしれないな。 |
| クラース | さっきのミトスの処置で、アジトに漂ってたものも一緒に封じられたから今はまだ影響が少ないんだろう。 |
| イクス | そうすると、もっと奥へ進まないと、マクスウェルの残滓が集まらないのか。 |
| ミリーナ | 早めにミラさんを帰さないと、ミュゼさんが大変なことになっちゃうわ。 |
| カーリャ | スピルリンクギリギリまでミラさまにくっついてましたからね。 |
| コーキス | 最終的に、カイウスさまが無理やり引きはがしてたもんなぁ。 |
| ミトス | 最初から留守番は決まってたんだから、仕方ないよ。それに妹を大切に思う気持ちは、ボクにもわかる。結局留守番をしているだけ偉いんじゃない ? |
| ミリーナ | そうよね、私が同じ立場でも絶対ついていきたいもの。 |
| 二人 | でしょうね……。 |
| ミトス | それにしても……、あのファントムの心に入るとはね。 |
| クラース | スピリアは迷路のようだと聞いていたが……心の中とは、みんなこうなのか ?この辺りなんて崩れ落ちてるぞ。 |
| シング | スピルメイズは人それぞれだけどでも、こんな風になってるのはきっとファントムのスピリアが壊れかけてるから……。 |
| イクス | ファントム……。野望のために世界を歪めようとした敵だったけど、あいつだって具現化されたもう一人のフィルなんだよな……。 |
| ミリーナ | ……その具現化に関わったのはゲフィオンよ。失われたものを甦らせるというエゴのためにファントムは生み出されて、犠牲になった……。 |
| ミリーナ | 私はゲフィオンとは違う。でも、そう考えてても、やっぱり……。 |
| ミラ=マクスウェル | ミリーナ、これからの君が何を選び、何をするかが問題なんじゃないか ? |
| ミリーナ | ……そうよね。 |
| シング | あのさ、こうしてファントムのスピリアに入れたんだから、もしかしたらファントムの心を取り戻してやることも出来るんじゃないかな。 |
| シング | スピルーン……じゃなくて、心核をとられてたコハクの時とは違うけど、ファントムがデスピル病ならオレたちソーマ使いが治してあげられるかもしれない。 |
| コーキス | デスピル病 ? |
| シング | オレたちの世界で広がっていた、感情が暴走する病気っていえばいいのかな。それで暴れたり、無気力になっちゃったりするんだ。 |
| シング | フィリップさんはあんなに穏やかなんだしファントムだって、もしかしたら―― |
| ミトス | 全てを救おうとして、全てを失うこともある。余計なことはしないほうがいいよ。 |
| シング | ……余計なこと、か。 |
| イクス | ………………。 |
| ミラ=マクスウェル | ……うっ ! |
| ジュード | ミラ、僕につかまって。マクスウェルの残滓が近くにあるんだね ? |
| ミラ=マクスウェル | ああ……呼びかけてみる。ミトス、用意しておいてくれ。 |
| ミトス | いつでもいいよ。 |
| ミラ=マクスウェル | (この世界のマクスウェルの残滓よ……。私のもとへ……) |
| カーリャ | ひぃーーゾゾゾっと来ましたよ ! |
| コーキス | やっぱ慣れねー ! |
| ミトス | 集まって来たね。それじゃ行くよ ! |
| ミトス | …………え ? |
| イクス | ……どうしたんだミトス ? |
| ミトス | エターナルソードが発動しない……… ! |
| シング | なんで――うっ、うわあ !ソーマが光って……震えてる ! ? |
| クラース | シング ! ? 何が起こってるんだ ! |
| シング | オレにもわからないんだ ! ソーマが勝手に力を―― |
| イクス | なんでこんなことに…… ! |
| ミリーナ | まさか、ここがスピリアだから ? |
| イクス | ミリーナ、何か気が付いたのか ? |
| ミリーナ | ここは心の中、ある意味仮想鏡界と近い特殊な空間よ。だからエターナルソードの次元を切り裂く力が、正しく作用していないのかもしれない ! |
| イクス | それじゃミラが……ジュード ! |
| ジュード | わかってる !ミラ、呼ぶのをやめて !マクスウェルの残滓を集めちゃ駄目だ ! |
| ミラ=マクスウェル | 駄目なんだ……ジュード……。呼びかけをやめたのに……次々に……集まって……。 |
| ジュード | ミラ――――っ ! ! |
| Character | 8話【4-14 ファントムのスピルメイズ5】 |
| イクス | ミラ、無事か ! ? 返事をしてくれ ! |
| ミラ=マクスウェル | …………。 |
| クラース | ミラの体が光ってるぞ……。ルビアの時のように、マクスウェルの残滓が集まって取り囲んでいるのか。 |
| ミトス | このままじゃミラが危険だ。シング、すぐにここから脱出して ! |
| シング | それが……出来ないんだよ !さっきからソーマが変なんだ。今までこんなこと無かったのに……。 |
| ミリーナ | ソーマを持たない私たちがスピルリンクするために、シングのソーマの力を魔鏡術で増幅して補ってるわ。 |
| ミリーナ | その二つの力と、エターナルソードが干渉しあって力が上手く使えないのかもしれない。 |
| シング | でも、ミトスは今までだってエターナルソードを使ってたよな。 |
| ミリーナ | 現実世界ならエンコードで力を弱められてるけど、スピリアの中で、エンコードそのものが危うくなってるとしたら……。 |
| イクス | だから力の制御が効かずに、干渉しあって不安定になってるのか。 |
| シング | くそっ、ミラだけでも、ここから出してあげたいのに ! |
| ジュード | ミラ……しっかりして、ミラ ! |
| ミラ=マクスウェル | …………。 |
| ジュード | ――うわっ ! ! |
| コーキス | 大丈夫か、ジュードさま !なんでいきなり吹っ飛んだんだ ? |
| ジュード | 今のは…… ? |
| カーリャ | 見て下さい ! ミラさまを取り囲む光がまるで防御壁みたいになってます ! |
| ミトス | マクスウェルの残滓が実体化してる…… ! ? |
| クラース | これでは近づくことが出来ないぞ。実体化した残滓を破壊しないと。 |
| ジュード | あんなもの―― ! |
| ジュード | 待っててミラ、今助ける ! |
| ミラ=マクスウェル | ここはどこだ……。 |
| ? ? ? | 『世界を守る ! 』 |
| ミラ=マクスウェル | 世界を…… ? 誰だ…… ? |
| ? ? ? | 『――虹の橋を守る』 |
| ミラ=マクスウェル | おまえは誰だ…… |
| ? ? ? | 『…………』 |
| ミラ=マクスウェル | 私は……誰だ…… ? |
| 謎の声 | ――こちらへ。 |
| ミラ | ! ! |
| ? ? ? | 私は心の精霊ヴェリウス。 |
| ミラ=マクスウェル | …… ? |
| ヴェリウス | スピリアと呼ばれている世界は、心の世界です。私が担う場所であるからこそ、この異変に気づくことができました。 |
| ヴェリウス | 今は、もう一人のあなたの姿を借りて、ここにいます。 |
| ミラ=マクスウェル | ……姿…… ? |
| ヴェリウス | そう、この姿はあなたと同じミラ=マクスウェルのもの。 |
| ミラ=マクスウェル | ……私…… |
| ヴェリウス | そうです。あなたは―― |
| ジュード | ――ラ ! 必ず―― ! |
| ミラ=マクスウェル | 誰だ……。 |
| ミラ=マクスウェル | ……あれは……。 |
| ヴェリウス | あなたが覚えていなくともその心には、『彼』や仲間との旅路で得たものが残されているはずですよ。 |
| ジュード | その先は研究所だよね。君は一体―― |
| アルヴィン | おいおい、こんなイイ男と、女、子どもが重罪人に見える ? |
| エリーゼ | あ、あの……え、えと…………なにしてる……んですか ? |
| ローエン | ほっほっほ、面白いですね。四大精霊をまるで知人のように。 |
| レイア | さあ、まだまだだよ ! 行けー ! |
| ミラ=マクスウェル | 私は彼らと一緒に―― |
| ガイアス | 我が字はアジュール王、ガイアス。よく来たな、マクスウェル |
| ミュゼ | 私はあなたの姉です。 |
| ミラ=マクスウェル | 共に旅をして、戦い、人の強さや弱さを知った。私は―― |
| ジュード | 必ず助ける ! ――待ってて、ミラ ! ! |
| ミラ=マクスウェル | そうだ。私は――ミラ ! |
| ジュード | うおおおおっ ! ! |
| ミラ=マクスウェル | 君は―― |
| ジュード | うおおおおっ ! ! |
| イクス | 空破裂光塵 ! |
| ミリーナ | だめ、まだ壁が壊れない ! |
| シング | コハクやヒスイにも応援を頼んでみる !魔鏡通信が上手く繋がればいいけど…… |
| クラース | 私は精霊たちに、ミラ救出の協力を頼んでみよう。――イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム ! |
| シング | なんだ ? 壁の内側が光ってるぞ ! |
| ミリーナ | これは……浄玻璃鏡の光よ ! |
| ミラ | ――ジュード ! ! |
| ジュード | ! ! |
| ミラ | 四大よ ! こい ! |
| イクス | 精霊たちが、マクスウェルの残滓を突き抜けていったぞ ! |
| クラース | まさか、精霊たちは……。 |
| シング | 内側から壁が壊れた ! |
| カーリャ | あれは、ミラさまです ! |
| クラース | やはり、君が命じていたんだな。 |
| ジュード | ミ……。 |
| ミラ=マクスウェル | ミトス、エターナルソードを ! |
| ミトス | うん。……マクスウェルの残滓、これでもう終わりにしよう。 |
| コーキス | マクスウェルの残滓が消えた……成功だ ! |
| ジュード | ミラ……。 |
| ミラ=マクスウェル | ……ジュード。 |
| Character | 9話【4-15 ファントムの仮想鏡界】 |
| イクス | 無事でよかったよ、ミラ。 |
| ミリーナ | 体はなんともない ? 目眩も ? |
| ミラ=マクスウェル | ああ。すまない、心配をかけたな。 |
| シング | どうして、マクスウェルの残滓をはねのけられたんだ ?オレたちじゃ歯が立たなかった、あの壁まで壊すなんて。 |
| ミラ=マクスウェル | ヴェリウスの助力があったんだ。 |
| クラース | ヴェリウス……心の精霊だな。そうか、スピリアは心の世界だから干渉できたということか。 |
| ミラ=マクスウェル | さすがクラース、そのとおりだ。そして何より、ジュードや、元の世界の仲間たちが私を助けてくれたんだよ。 |
| ジュード | 僕たちが ? |
| ミラ=マクスウェル | どうやら私は、この世界のマクスウェルに侵食されかかっていたらしい。 |
| ミラ=マクスウェル | 自分が何者かもわからなくなった時、私の中に、ジュードたちとの記憶がよみがえったんだ。 |
| ミラ=マクスウェル | あれは走馬燈とでもいうべきか……皆と出会った時の記憶が、鮮やかに思い出された。 |
| ジュード | ミラと出会った時か。衝撃だったなぁ……。 |
| コーキス | へえ、衝撃って、どんな ? |
| カーリャ | ヤボですねぇ、コーキスは。ジュードさまとミラさまの、大事な思い出なんですよ ? |
| ミラ=マクスウェル | 大事な思い出……か。そのとおりだよ。 |
| ミラ=マクスウェル | 私を、私たらしめてくれた、その大事な記憶が、マクスウェルの残滓の侵入をはねのける防御壁になってくれたんだ。 |
| シング | ミラたちのスピリアが、それだけ強く繋がってたって証拠だね。 |
| ミリーナ | ええ。きっとそれが、オーバーレイの切っ掛けよ。マクスウェルの残滓が作った壁の向こうから、浄玻璃鏡の光が見えたわ。 |
| ミラ=マクスウェル | 確かに、今思えば、あの走馬燈は浄玻璃鏡が映し出したものだったんだろう。 |
| ミトス | ……その浄玻璃鏡の力がスピリアに影響してエターナルソードも安定したのかな。シングのソーマはどう ? |
| シング | 平気そうだ。元の状態に戻ってるよ。 |
| クラース | 絡み合った力が、ミラのオーバーレイで打ち消されたとか、仮説は色々と考えられるが……。 |
| ミトス | その辺りは研究好きの連中に任せるよ。ミラが無事ならそれでいいから。 |
| シング | そうだね ! 今まで通り元気そうでよかったよ。 |
| ミラ=マクスウェル | ふむ……。今まで通りかというと少々違う気もするが……。 |
| ジュード | どこか違和感があるの ? |
| ミラ=マクスウェル | 違和感といえばそうなのだろう。浄玻璃鏡には、元の世界で君と旅をしていた時とは明らかに違う景色が見えたんだ。 |
| ミラ=マクスウェル | 君をはじめ、皆、今とは違う、まるでエレンピオス人のような服装だったし、ミュゼは……そう、今のミュゼのように穏やかだったよ。 |
| ジュード | それは……もしかして……。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ。恐らく未来の私たちの姿だろう。ルドガーたちの世界なのかもしれない。 |
| ミリーナ | 浄玻璃鏡は、その人の過去だけじゃなくて未来の可能性も映し出すわ。だから未来という推測は正しいんじゃないかしら。 |
| ミラ=マクスウェル | ……そうか。すると、異世界の精霊と融合している四大はルドガーたちの時代の記憶も持っているんだな。 |
| ミラ=マクスウェル | 私たちは鏡映点としてここに呼ばれ、リアライザーとなって元の世界とは違う道を歩き始めてしまったが…… |
| ミラ=マクスウェル | ……なるほど。私たちには、あんな未来がありえたんだな。 |
| ジュード | 僕は……どんな風になって、どんな道を選んだのかな。ルドガーたちに聞けばわかるんだろうけど……。 |
| ミラ=マクスウェル | 聞かなくても問題はない。ジュードはジュードだ。何も変わっていなかったぞ。ああ、髪型は変わっていたが。 |
| ジュード | そ、そうなんだ。へえ……。 |
| コーキス | イメチェンってやつか、ジュードさま ! |
| イクス | うん、わかる。髪型で印象って変わるもんな。俺もそれに気がついてから、日々勉強中だよ。 |
| ミリーナ | ふふ♪ 何だって似合うわよ、イクスなら。 |
| クラース | さあ、おしゃべりはそれまでだ。本来の目的を忘れるなよ ? |
| ミトス | マクスウェルの残滓の脅威はひとまず落ち着いたからね。ただ、ミラは精霊だから―― |
| ミラ=マクスウェル | いや、ここまで来たんだ。私も共に行かせてくれ。 |
| クラース | わかった。今回は同行してもらおう。だが、ミラは精霊……しかもマクスウェルだ。くれぐれも気を付けてくれよ。 |
| シング | それじゃあ、スピルメイズのどこかにある、仮想鏡界への入り口を探そう。 |
| シング | ここ……なんか変だ。これが仮想鏡界の入り口じゃないか ? |
| ミリーナ | ええ。間違いないわ。何があるかわからないから、慎重に入って。 |
| シング | これは―― ! |
| イクス | 魔物が、こんなに…… ! |
| ミトス | やっぱり、そう簡単には行かなかったね。こっちの侵入を予期してたんだ。 |
| カーリャ | この魔物だらけの中を抜けていくんですか ? |
| コーキス | カレイドスコープだって、とっくに運び出されてるかも……。 |
| ジュード | だけど、ここで引き下がっても状況は何も変わらないよ。 |
| ミラ=マクスウェル | そうだな。カレイドスコープが見つからなかったとしてもその所在くらいは掴まないと、次につながらない。 |
| イクス | ……その通りだ。とにかく進んでみよう。みんな、気を付けて ! |
| Character | 10話【4-15 ファントムの仮想鏡界】 |
| イクス | 広いんだな。下手したら迷いそうだよ。 |
| ミリーナ | ええ。仮想鏡界の規模が大きい。さすがフィル……。いえ、ジュニアとファントムよね。 |
| シング | ミトス、確かこっちに大きな部屋がなかったっけ ? |
| ミトス | そっちは封鎖されてるみたいだね。ボクたちがいた頃とは、だいぶ造りも変わってるからあまり当てにはしない方がいいよ。 |
| ミリーナ | それでも、予想がつくのはありがたいわ。 |
| コーキス | ――あれ ? あっちの通路、広くて大きいな。 |
| イクス | 本当だ。何か大きいものの搬入口とか……。行ってみよう。 |
| イクス | あった…… ! カレイドスコープだ ! |
| ミリーナ | 見た目はセールンドのものと似てるけど……。 |
| イクス | ファントムが作ったものだから、よく調べないとな。ミリーナ、手伝ってくれ。 |
| ミリーナ | ええ ! |
| カーリャ | イクスさま、頼もしくなりましたね。魔鏡術はミリーナさまの方が詳しかったのに、あんな風に調べられるまでになるなんて。 |
| コーキス | うん。その代わりすげえ努力してるよ。本読んで調べたり、みんなから話を聞いたり……。 |
| クラース | ああ。まだ魔鏡結晶から出たばかりだというのにキール研究室にもよく顔を出しているようだ。 |
| ジュード | イクス、ミリーナ、どんな感じ ? |
| イクス | お持たせ。だいたい分かったよ。ファントムのカレイドスコープは、セールンドのものと内部構造がかなり違うんだ。 |
| ミリーナ | 前にチェスターが持ってきた設計図と比べても、さらに改良されてるわね。 |
| クラース | それで、動かせそうなのか ? |
| イクス | はい。精霊の心核がサーチできるか試しにやってみます。 |
| ミリーナ | 待ってイクス、どの精霊をサーチするの ?手掛かりになるものが何もないわ。 |
| クラース | それなら、ヴォルトをサーチしてみよう。私が契約したことのある精霊だ。 |
| クラース | この世界でも同じ形態をとっているかはわからないが何もないよりはマシだろう ? |
| ミラ=マクスウェル | ヴォルトか……。私たちの世界では、雷を操る精霊だったな。 |
| クラース | 我々の世界でも雷の精霊だった。 |
| ミトス | どの世界でもヴォルトは雷の精霊なんだね。だったら、ボクたちが知っている限りのヴォルトの情報もインプットしてみたら ? |
| イクス | そうだな。みんな、それぞれの世界のヴォルトの特徴を教えてくれ。 |
| ミリーナ | これでデータは全部ですね。 |
| クラース | ああ。それで試してみてくれ。……まあ、上手くサーチできて会えたとしても、まともに会話が成り立つかはわからん奴だがな。 |
| ミトス | ああ、そっちのヴォルトも話が通じないんだね。でもボクとリフィルさんはヴォルトと会話できたんだ。もしかしたらこの世界でも会話できるかも知れないよ。 |
| ミリーナ | ――準備、整ったわ。始めましょうか。 |
| イクス | カレイドスコープを使うなんて久しぶりだ。なんだか緊張するよ。――それじゃ、サーチ開始。 |
| イクス | ……何も、見つからなかったな。 |
| クラース | やはり駄目か。もっと具体的に、精霊と繋がっているものでサーチできれば結果は違うのかもしれないが……。 |
| ミラ=マクスウェル | だったら、ヴォルトではなく、オリジンを捜してみたらどうだ。 |
| ミラ=マクスウェル | 異世界の物だが、ミトスのエターナルソードはオリジンが作った剣なのだろう ?この世界のオリジン捜しに役立つかもしれない。 |
| クラース | あーーっ ! そうだ、それがあったじゃないか……。 |
| ミラ=マクスウェル | オリジンについては、他にも気になることがあるんだ。ミトスがマクスウェルの残滓を封じた直後、私の心に、ヴェリウスが話しかけてきたんだが―― |
| ヴェリウス | ミラ……、ミトスのエターナルソードによってマクスウェルの残滓は、次元の穴に封じられました。 |
| ヴェリウス | ですが、今後も気を付けなければなりません。帝国が、マクスウェルを精霊装として利用するたびにマクスウェルの残滓は、心の世界に四散します。 |
| ヴェリウス | ですが、この四散した残滓が、再び精霊輪具に還る前に回収できれば帝国の精霊装の力を削げるでしょう。 |
| ヴェリウス | そして、覚えておいてください。マクスウェルの残滓は、あなたにとっては危険ですがこの世界を存続させるためには大切なものです。 |
| ヴェリウス | この世界のマクスウェルは、ニーベルングとティル・ナ・ノーグを繋ぐ虹の橋をオリジンから託された守護者なのです。 |
| ミラ=マクスウェル | ――私にはいまひとつ、理解できなかったんだが君たちは何か知っているか ? |
| イクス | 虹の橋だって…… ! ?それが本当にあるっていうのか ! |
| ミリーナ | 伝説だとばかり思ってたわ……。私たちが知ってるものと同じなのかしら。 |
| シング | 伝説って、どんな ? |
| ミリーナ | 虹の橋っていうのは、オーデンセに伝わる伝説のひとつなの。水鏡の森の奥で見られる、幻影だっていわれているわ。 |
| ミリーナ | ヴェリウスが言う虹の橋が、それと同じものだとしたら―― |
| ? ? ? | ――なるほど。ヴェリウスと接触していたか。 |
| 全員 | ! ! |
| シング | 敵か ! ? 今の、どこから聞こえた ? |
| ミトス | ボクにもわからない。 |
| カーリャ | 誰もいないのに、声が聞こえるなんてまるで魔鏡通信みたいですね。 |
| ミリーナ | まさか、私たちのほかにも、似た仕組みを開発して―― |
| 帝国軍兵士 | グラスティン様、いました ! 鏡士の一団です ! |
| グラスティン | よし、捕らえろ ! マクスウェル以外は――いや、その黒髪の坊やはコレクションに加えよう。 |
| グラスティン | 坊やとマクスウェル以外は殺しても構わん。 |
| ジュード | ! ! |
| ミラ=マクスウェル | 貴様……何を ! ! |
| シング | 兵士が集まってきてる !これじゃもう、戦って突破するしかないよ。 |
| クラース | ああ。こうなるのは覚悟の上だ。ミラ、絶対に捕まるなよ ! |
| イクス | 行くぞ、みんな ! |
| コーキス | ……いっ……。 |
| カーリャ | コーキス ? |
| コーキス | う……うああっ ! 目が、目の奥が……痛っ…… ! ? |
| イクス | コーキス、どうしたんだ ! コーキス ! ! |
| | to be continued |