Character1話【6-1 閑散とした街道】
帝都・アスガルド城
帝国軍兵士陛下、グラスティン様がお見えです。
デミトリアス通してくれ。お前たちは下がっていい。
帝国軍兵士はっ。
グラスティンこれはデミトリアス陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう……。
デミトリアスそんな他人行儀な言い方はやめてくれ。それより、よく来てくれた。最近、体調はどうだい ?
グラスティン目覚めた時と変わらないな。すこぶる好調だよ。おかげで毎日新鮮な【肉】に囲まれて楽しい研究三昧さ。フフフフ……。
デミトリアス……そうか。君が、アニマ汚染による長い植物状態から復帰してすでに三ヶ月が経つ。
デミトリアス私と同じ治療を施して、ようやく目覚めはしたがその後の経過が心配だったんだ。何もないようで安心したよ。
デミトリアスそれで、研究の進捗はどうだ ?
グラスティンすでに具現化世界の技術には全て目を通してある。その中でも、特に有用な物を特定した。
グラスティンまずは、我々がリーゼ・マクシアと名付けた大陸【リーゼ・マクシア領】。その元となった世界に存在する【分史概念】
グラスティン同じく、オールドラント領の【レプリカ】レグヌム領の【前世】そしてファンダリア領の【ソーディアン】
グラスティンこの四つを組み合わせることで、お前の悲願を果たすことができるだろう。
グラスティンこれが具体的な案をまとめた計画書だ。目を通してくれ。
デミトリアスなるほど……よくぞここまで。さすがグラスティン、セールンド一の魔鏡技師だ。君を友人に持った私は幸運だよ !
デミトリアス……だが、この計画を実行すればメルクリアは絶望するかもしれないな。
デミトリアスあれほどまでに故郷を望んでいるあの子を……私は……。
グラスティンこの期に及んで敵国の娘の心配か ?その甘さがお前の弱さだ。デミトリアス。
デミトリアス……弱さ、か。
グラスティンそれと、その計画について提案がある。ディストを目覚めさせたい。
デミトリアスディスト ? そういえば治療を終えた後も眠らせていたが、彼が必要かね ?
グラスティン俺もレプリカ技術に関して独自に研究を進めている。そのための人員も、ジュニアに何度か具現化させた。
グラスティンだが、レプリカがオリジナルよりも劣化する点において奴からも意見を聞かねばならない。
デミトリアスそうか。彼は色々とトラブルが多かったから覚醒を先延ばしにするようメルクリアに指示していたんだが……。
デミトリアスわかった、許可しよう。
デミトリアスそれにしても、君が目覚めてからの成果は素晴らしいよ。何か褒美を取らせたいところだが、望みはあるか ?
グラスティン望み ? ヒヒッ……そんなもの決まっているだろ。フィリップだよ…… !フィリップ・ビクエ・レストンが欲しい !
グラスティンこの間やっとフィリップに会えたんだ……。テセアラ領でね……。彼は変わらず完璧で美しかったよ。ヒヒ……ヒヒヒ……。
デミトリアス……私の答えは分かっているだろう、グラスティン。せめて私の手の届く範囲にしてくれないか。
グラスティン……だったらジュニアとファントムならどうだ。あれは帝国に所属しているだろう。
デミトリアス済まないが、それも難しいな。ファントムはミリーナたちに奪われているしジュニアはメルクリアが気に入っているんだ。
グラスティンメルクリア ? まだそんなことを……。だったらジュニアを奪うのを黙認してくれるだけでいい。
グラスティンジュニアさえ手に入れば現在は封じている仮想鏡界を再び開かせてファントムを奪い返すことも出来る。
デミトリアスファントムを奪還……か。しかしファントムは……。
グラスティン……そういえば、俺が植物状態だった間お前はファントムに肩入れしてアレを救おうとしていたそうだな。
グラスティンフィリップという、完璧な存在が近くにいたのにどうして不完全な具現化によるフィリップのなれの果てを救おうとした ?
デミトリアスそんな言い方はやめてくれ。彼は……可哀想な生まれ方をした。救えるなら救ってやりたかったんだよ……。
グラスティンふ……ふふ……。そうか。少しガタが来ている方がお好みなのか。ならばいいさ。俺はジュニアで手を打つ。
グラスティンまぁ、待っていろ。いずれファントムも取り返してやるさ。ヒヒ……ヒヒヒ……。
グラスティンだが、ジュニアを手に入れるにはリヒターが邪魔だな。いつもジュニアの周りをチョロチョロしやがって……。
グラスティンなあ、デミトリアス奴を処分してもいいだろう ?
デミトリアスリヒターは精霊研究者としての能力も高い。彼を失うのはかなりの痛手だ。何よりリヒターとアステルの関係を考えると同意はできん。
グラスティンリヒターがいなければ、アステルが帝国を離れる可能性を危惧しているのか ?それなら問題ない。
グラスティンリヒターは【リビングドールβ】として生かしておく。ちょうど被験者を増やしたいと思っていたからな。
デミトリアスあれをリヒターに施すのか ? それは……。
デミトリアス――……いや、わかった。好きにしていい。
グラスティンヒヒ……感謝するよデミトリアス。

Character2話【6-1 閑散とした街道】
イクス――それじゃ、そろそろ班長会議を始めるけどもう全員そろってるかな。
ミリーナええ。具現元となった各世界からの代表者を一人班長として選出してもらったわ。一応、名簿も作ってあるけど……。
カーリャカーリャが確認しますね !チェスターさま、ジョニーさま、リッドさま、ジューダスさま、ジーニアスさま、ヴェイグさま
カーリャセネルさま、ガイさま、カイウスさま、スパーダさまマルタさま、フレンさま、シングさま、アスベルさま
カーリャレイアさま、ガイアスさま、スレイさまベルベットさま、最後は救世軍のクラトスさま !……ぜーはー……全員そろってますぅ……。
コーキスやるじゃんパイセン、ひと息で読み上げた !あんま意味はねぇけどな……。
イクスよし、じゃあ始めよう。これからみんなに報告するのはカロル調査室のみんなが、ここ数カ月間に渡ってティル・ナ・ノーグを調査した結果だ。
イクスまず、具現化大陸全体の状況だけど具現化当初のような違和感を持つ住人はもういないみたいだな。
ミリーナみんな、自分は元からティル・ナ・ノーグの人間だと思いこんでいるのね。
イクスああ。ゲフィオンの思い描いていたアイギス計画の大陸具現化に関する部分はほぼ完成したとみていい状態だと思う。
イクスそして帝国は具現化した各大陸に異世界由来の名前をつけて領土化しているらしいんだ。
カーリャじゃあ、一番最初に具現化したユーリさまやラピードさまがいた所は ?
イクスその大陸は今【テルカ・リュミレース領】と呼ばれているよ。
フレンテルカ・リュミレースは、僕たちの世界を表す名称だ。話には聞いていたけどそうか……帝国は正式に命名したのか。
チェスターフレンはもう知ってると思ってたぜ。カロル調査室と一緒に動いているんじゃないのか ?
フレンユーリやカロルたちの調査は、臨機応変が過ぎてね。だから僕は待機しつつ、彼らのバックアップが多いんだよ。
ジーニアスそういえば、カロルたちって調査に出るとなかなか予定通りに帰って来ないよね。フレンも大変でしょ ?
フレンあれがカロルたちのやり方だからね。そもそもユーリが昔からあんな感じだから、慣れているんだ。
フレンそれに自由だからこそ思いがけない成果を得ることもある。
フレンむしろカロル調査室がよりよく機能するために僕ができることをしているだけなんだ。こういう場に出るのも含めてね。
レイアま、真面目……。班長選出で、そこまで考えてんだ。
リッドオレなんか「イケる、イケる ! 」っつってわけわからないうちに班長にされてたのにさ。
チェスターなあイクス、その資料、見せてくれないか。オレたちの世界が元になってる大陸ってのは……
イクスチェスターと会った大陸はここ、【アセリア領】だ。みんなも確認してくれ。
チェスターアセリア……アセリア歴からか。なるほどね。
ジョニーどれどれ、俺たちは【ファンダリア領】だな。ウッドロウがいたらどんな顔をしただろうな。ジューダス、お前さんのところも同じでいいんだろ ?
ジューダス……そうだ。だからこそ班長会議には僕が代表して出ると言ったのに。だいたい、今のおまえは戦えないだろう。
ジョニー確かに、特異鏡映点用のブレスレットが上手く働かないから、まだ、みんなと行動はできない。せいぜい応援がてら、歌う程度が関の山さ。
ジョニーだからこそ、こういう所で役に立っておきたいんだよ。
スパーダいいじゃねえか。ジョニーのその心意気 !好きにさせてやれって、お面野郎ォ。
ジューダスお面じゃない ! 仮面だ !
スパーダ細けぇヤツだな。で、オレんとこはどこだ ?あー……【レグヌム領】ね。王都レグヌムか。ルカとオレの地元の名だな。
リッドこの【オルバース領】っていうのは、オレの世界が元になってる大陸か ? オルバース界面……。インフェリアでもセレスティアでもないのか。へえ……。
セネル【ウェルテス領】……灯台の街ウェルテスか……。懐かしいな。ヴェイグのところは ?
ヴェイグオレのところは【カレギア領】だ。元の世界では王国名だった。覚えやすくていい。
カイウスオレのところもわかりやすいぜ !この【アレウーラ領】って名前はオレの世界の大陸の名前だったんだ。
ガイさて、ウチは……【オールドラント領】ね。ま、惑星名だし妥当な命名だな。マルクトなんて名付けられてたら、どんな奴が出てくるか……。
アスベルガイのところも惑星名か。俺のところも同じだよ。【エフィネア領】の、エフィネアっていうのは俺たちが住んでいた星の名前なんだ。
シングオレの世界が元になった大陸は【原界(セルランド)領】か。もう一つの世界の要素って、この大陸に含まれてるのかな……。
ジーニアスもう一つの世界 ? シングの世界も複雑そうだね。ボクたちの世界も、シルヴァラントとテセアラの二つだったけど、名前はどうなってるんだろう。
クラトス我々の世界は……【テセアラ領】だ。
マルタじゃあ、私やエミルたちもそこなんだね。未来とはいえ、同じ世界だし。
レイア未来かぁ。だったら、わたしたちの未来だっていうルドガーたちの世界も含めてこの【リーゼ・マクシア領】になるのかな。
ガイアスエレンピオスと思われる名称のついた大陸は見当たらないな。だとすれば同じだろう。
スレイ……あれ ? おかしいな。オレの世界は、この【グリンウッド領】だけど……ベルベットは ?
ベルベットあたしのところは【ミッドガンド領】よ。別におかしいところなんて見当たらないけど。
スレイだって、オレたちって過去と未来の関係なんだろう ?マルタや、ガイアスさんたちは同じ大陸なのに何でオレたち分けられてるんだろう。
ベルベットそれはファントムが、あんたの世界とは別にあたしたちを具現化したからでしょ。
スレイそうか。そのせいで別の大陸名になってるんだな。スッキリしたよ !
イクスよし。現時点で他の世界の具現化大陸はないようだな。今、みんなに確認してもらった各大陸には帝国から領主の派遣が進んでいるらしいんだ。
イクスこの状況を継続して調査するためにもカロル調査室メンバーの他に、各大陸の元の世界の関係者にも手伝ってもらいたいと思ってる。
ガイアスそれでは各地に戦力を分散させることになるぞ。ここの守りはもちろん現地に赴く者も危険ではないか ?
セネル確かに、簡単に行き来ができるわけじゃないんだ。いざという時にも集まりにくいぞ。
ミリーナそれは大丈夫。ジェイドさんが、帝国の転送魔法陣と仮想鏡界の時からあったゲートを解析して組み合わせた新たな転送ゲートを完成させたの。
ガイああ。俺も転送ゲートを維持する装置を作るのを色々と手伝わされたよ。音機関……機械いじりは好きだからいいんだけどな。
ミリーナガイさん、エドナ様のお茶会も休んで頑張ってくれたのよ。この転送ゲートを使えばアジトからの移動も比較的自由になるわ。
イクス実は、みんなに各地の調査をお願いするのは他にも気になる点があるからなんだ。
イクス最近、【聖アタモニ教団】という宗教組織が台頭してきたって報告があったんだよ。
ジューダスアタモニだと ?まさか、エルレインが動き出したのか ! ?

Character3話【6-2 閑散とした街道】
ジューダスエルレインが具現化されたと聞いたときから嫌な予感はしていたが……。
ヴェイグ確か、現在帝国にいる鏡映点の一人だったな。聖アタモニ教団というのはエルレインに関係しているのか。
ジューダスああ。僕たちの世界にも、アタモニ神団という似た名前の組織があった。エルレインはその組織で聖女と呼ばれていた女……僕たちの敵だ。
ジューダスもし、この世界でも奴が教団の指導者だとしたらやっかいなことになるぞ。
イクスジューダスの言う通りだ。こういうケースを想定して元の世界での経験を元に、みんなにも――あっ……ちょっとごめん、魔鏡通信だ。
シャルティエイクスくんかい ?
イクスえっ、シャルティエさん ?
シャルティエこの魔鏡通信って便利だね。この世界に来てから連絡手段が不便で仕方なかったから助かったよ。今、話してもよかったかな ?
イクスええ。大丈夫ですけど、何かあったんですか ?
セネルなあ、シャルティエって誰だ ?リオンのしゃべる剣と同じ名前だけど……。
ジューダス聞いていないか ?最近、対帝国部隊と同盟の協定を結んだだろう。そこに所属している、鏡映点の一人だ。
アスベルソーディアンの人格の元となった人物か。鏡映点として具現化されていたって話だったな。
ガイアスその中でも、ディムロスという男は有能な指揮官であり、部下からの信頼も厚いと聞いている。
コーキスそうそう、マスターが言ってたぜ。そのディムロス様のところの人だよな ?
シャルティエはいはい。ディムロスのところのシャルティエですよ。どうせ僕だけじゃ印象が薄いですよー……。
イクスいや、シャルティエさんの印象が薄いんじゃなくてディムロスさんの印象が強いだけで……。
シャルティエそれ、全然フォローになってないからね ! ?……はぁ、もう用件を伝えてもいいかな。
イクスあっ、すみません。どうぞ !
シャルティエ別の街を拠点にしているレジスタンスから「同盟を結びたい」っていう手紙が届いたんだよ。差出人は、ナナリー・フレッチ。
ジューダスナナリー…… !
シャルティエあ、ジューダスくんもそこにいたんだね。君たちの仲間に、同じ名前の子がいた筈だよね。それで連絡をとったんだよ。
シャルティエレジスタンスと会う前に、カイルくんたちに確認をとれって、ディムロスに言われてさ……。なんで僕がこんなこと……。
ジューダスよく知らせてくれた、シャル、……ティエ。イクス、僕はカイルたちを連れてファンダリア領へ向かう。構わないな ?
イクスもちろん。俺とミリーナも一緒に行くよ。
シャルティエ了解。それじゃ、こっちに合流してくれ。
イクスみんな、すまないけど、ここはひとまず解散しよう。各地の調査に関しては、ユリウスさんとリフィル先生に方針を聞いてくれ。きっと俺より説明上手いし……。
コーキスあー、マスターは話が長いからなぁ。
イクスそ、そんなことないよ !コーキスが単純化しすぎなんだよ。
ミリーナあら♪ イクスの説明は丁寧でわかりやすいしコーキスも端的でイクスの次にわかりやすいわよ。
イクスはは……。
カーリャそれじゃあ、皆さま。ひとまずお疲れ様でした~ !
イクス――あの、待ってください、クラトスさん。ヴィクトルさんの容体はどうですか ?
クラトスヴィクトルか。安心しろ。かなり回復してきた。最近では、精霊の封印地に近づくための調査にも協力してもらっている。
イクスそうですか。だったら、もうそろそろ平気かな……。
イクスクラトスさんは、以前、俺がヴィクトルさんから手紙を預かったのを覚えていますか ?
クラトスああ。エルへの手紙だな。
イクスあの手紙、まだ渡していなかったんです。タイミングを見ているうちに先延ばしになっちゃって……。
イクスだから、今回の件が落ち着いたらエルに手紙を渡して話をするつもりだとヴィクトルさんに伝えてもらいたいんです。
クラトスエルに……。そうか、わかった。
イクスあと……あの……フィルにも……。
クラトス……どうした ? 言いにくいことか ?
イクス……いえ、あの……。フィルにそろそろ話を聞かせて欲しい……と。
クラトス伝えておこう。……私からも、構わないか ?
イクスは、はい。もちろんです。
クラトスロイドは……壮健だろうか。
イクスはい。あの……直接話をしていったらどうですか ?
クラトスそう……なのだろうが。どう振る舞ったらいいのか……よくわからないのだ。
クラトス父親として向き合う、とは決めたものの私がロイドと別れたのはあれが三つの時だ。知らない時間が多すぎる。
クラトスロイドはそんなことなど気にしないともわかってはいるのだが……。妻が生きていれば……また違ったのだろうな。
イクス若輩者が、何を言うと思われるかも知れませんけどヴィクトルさんなら何かヒントをくれるんじゃないでしょうか。
クラトス……かも知れぬな。ありがとう、イクス。

Character4話【6-3 対帝国部隊の村】
ディムロス――皆、よく来てくれた。先日は世話になったな。
カイルこちらこそ、また会えて嬉しいです !
リアラカイルったら、またディムロスさんたちに会えるってすごく喜んでいたんですよ。
ディムロスそれは光栄だな。今回はジューダスくんも一緒か。よろしく頼む。
ジューダスああ。……シャルティエの姿が見えないようだが……。
シャルティエみなさん、お待たせしました。まずはお茶をどうぞ。
ディムロスシャルティエ、気が利くじゃないか。
シャルティエこういう役回りも、なんか慣れちゃいましたから。
ジューダスふっ……。
シャルティエ……何だい、ジューダスくん。
ジューダスいや、なんだかんだ言いつつ世話焼きな奴だと思っただけだ。
シャルティエどうせ僕は、こういう目立たない仕事がお似合いですよ。
コーキスなぁパイセンジューダス様、ちょっと笑ってなかったか ?
カーリャええ。珍しいですねぇ。
イクスディムロスさん。早速ですけど手紙の件を聞かせてもらえますか。
ディムロスそうだな。これがレジスタンスから送られてきた手紙だ。
カイル本当だ……。ナナリー・フレッチって署名してある。やっぱりナナリーもこの世界にいるんだよ !
ジューダスまだ名前が一致しただけだろう。もっとも同姓同名の別人の可能性は極めて低いと思うが……。
リアラそうね。他に特定できそうなことが書いてあればいいんだけど……。
ミリーナこの手紙だと、ファンダリア領の領都と定められたダリルシェイドってところで面会することになってるわね。
カイルダリルシェイドが都って、なんか変な感じだな。領土名はファンダリアなのに。
カーリャ変って、何がですか ?
ジューダス元の世界では、ファンダリアの首都はハイデルベルグでセインガルド王国の首都がダリルシェイドだったんだ。カイルが違和感を覚えても仕方ない。
カイルこの世界って、見覚えのある景色や名前があってもやっぱり偽物なんだよな……。
カイル――あ、ご、ごめん !
ミリーナいいえ、いいのよ。本当のことだもの。
ジューダスそれよりも、都というくらいだからダリルシェイドはこの村よりも発展しているんだろう ?
ジューダス反体制派であるレジスタンスと、対帝国部隊がそんな大都市で会うなどと危険な計画を立てるとは……いったいどういうつもりだ。
ディムロスその懸念はもっともだがこれはレジスタンス側の提案だ。
ディムロスナナリーくんのこともある。まずは確認のためにもあちらの要望を飲むことにした。もちろん、重々警戒はしている。
ディムロスとはいえ、君たちの安全が保障できないのも事実だ。危険と判断するならば、君たちは戻って我々の報告を待ってくれてもいい。
リアラわたしたちも一緒に行きましょう。ナナリーのこともあるし、大都市なら聖アタモニ教団の情報が手に入るかもしれないわ。
イクスダリルシェイドで聞き込みをするのか。人が多いのなら、何かしら教団の話が聞けるかもしれないな。
シャルティエ聖アタモニ教団って……。
ディムロスああ。我々も探りを入れている宗教団体だな。最近では、ストレイライズ大神殿を建設してさらに勢力を拡大している。
3人えっ ! ?
カイルストレイライズ大神殿ってこっちの世界でも建ててるんだ。それって、どこにあるんですか ?
シャルティエ君たちは運がいいよね。これから行くところ、ダリルシェイドだよ。
ジューダスどうやら、このファンダリア大陸に聖アタモニ教団の中枢勢力が集められているようだな。
リアラだったら、もう決まりよね、カイル !
カイルああ。みんなでダリルシェイドへ行こう !

Character5話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】
コーキス領都ダリルシェイドかぁ。カイル様たちの世界でも首都だったって話だからやっぱり賑やかな所なんだろうな !
カイルいや、オレが知ってるダリルシェイドはものすごく寂れた街だったんだよ。
ジューダス首都として機能していたのはカイルたちが生まれる前の話だからな。
シャルティエ僕たちはわからないけど、今の領都はそのカイルくんたちが生まれる前のダリルシェイドっていうのに近いのかもしれないね。
ジューダス…………。
ディムロスむ……あれは…… ? 皆、身を隠せ。シャルティエ、彼らを安全な所へ誘導をしろ !
シャルティエ了解。みんな、こっちの繁みへ。
帝国軍兵士1早くしろ ! 急げ !
イクス……帝国兵たちだ。
ミリーナこの方向だと、ダリルシェイドよね。
帝国軍兵士1まずいぞ……。少しでも遅れたらサレ様にどんなお叱りを受けるか。
帝国軍兵士2いや、エルレイン様が一緒におられるんだ。サレ様も、そう酷いことはなさるまい。――とにかく、一刻も早くダリルシェイドに入るぞ。
コーキス……行ったみたいだな。
コーキス……あれ ? サレって……聞き覚えが……。
イクスヴェイグたちの敵だった男だ。割と綺麗な顔の……。鏡映点リストにもあったしコーキスはスパーダを助けるときに会ってるよ。
コーキスさすがマスター ! 細かいことよく覚えてるよな !
リアラそれに……エルレインって言ってたわよね。やっぱり、ダリルシェイドにいるんだわ。
ジューダスすぐに出発したいところだが……このままだと、今の奴らの後を追うことになる。下手をすると見つかるぞ。
カーリャだったら街道へ出ないでこの森を進んだらどうですか ?ほらこっち、少し開けたところがありますよ。
ディムロス待て ! そこは獣道――
オウルベアグルルルルルッ…… !
カーリャキャアーーーッ !
ミリーナカーリャ ! ?
カイル危ないカーリャ !
カーリャあわわわ……た、助かりました、カイルさま……。
カイルいや、まだだ……。色んなところからオウルベアの気配がする !
コーキスうわっ、こっちにも ! 何匹出てくんだよ !
ジューダスまさか……ここはオウルベアの巣か ! ?
ディムロス私とシャルティエがここを預かる。カイルくんたちは、そのまま森を抜けろ !
カイルでも…… !
カーリャカイルさま、後ろ !
カイル! !
? ? ?お前ら、危ないところだったな――って……お前、カイル…… ? カイルじゃねえか ! ?
カイルロニ ! ? なんで ! ?
ロニ……話はあとだまずはこいつらをなんとかするぞ !

Character6話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】
イクスはぁ……どうにか逃げ切ったな。
ミリーナねえ、イクス。あの人って……。
ロニカイル ! 俺の可愛いカイル~ !大丈夫か ! ? 怪我してねえか ! ?
カイルうん、何ともないよ。本当にロニなんだね !
ロニそうだぜ、よく見ろ。こんないい男ほかにいるか ?ロニ=デュナミス、ただいま参上……ってな !
ジューダスこの頭の悪い発言、間違いないようだ。
リアラ良かった。ロニが何も変わってなくて。
ロニどういう意味だよ !
カイルでも驚いた。もう会えないかもって思ってたからさ。
ロニそりゃこっちのセリフだぜ。俺とナナリーが、どんだけお前らを捜したか !ったく、心配させやがって……。
カイルよかった、ナナリーも一緒なんだね。
ロニああ。毎日うるせーのなんの。そんなことより、ディムロスさんたちまでいるのかよ。ナナリーの予想が当たってたって訳か。
ロニしかしまあ、どこの時代に飛ばされたか知んねえがリアラがいるならもう安心だぜ。それとも、戻るにはまたレンズが足りないとか ?
カイルえっと……イクス、ロニに説明してもらえる ?
イクスああ。……ロニさん。俺はイクス・ネーヴェといいます。この世界のことなんですが――
ロニ……はぁ。めちゃくちゃだな。なんつーことしてくれてんだよ。こんな話、あいつが聞いたら……。
イクスすみません……。何を言われても仕方ないと思ってます。
ロニああ。正直、言いたいことは山ほどあるぜ。けどな、今はカイルに免じて引き下がってやるよ。何より――
ロニミリーナが美人だからなあ。特別サービスだ !
ミリーナえ ? あ、ありがとうございます。ロニさん。
ロニそれに今はここでやらなきゃならねえことがあるしな。
ディムロスレジスタンスの指揮、か ?
ロニそりゃナナリーの仕事だよ。俺はあいつの補佐だ。帝国の進出に反対するレジスタンスと会ってたらいつの間にかそうなっちまってね。
リアラなんとなく想像がつくわ。ナナリーって面倒見がいいから。
ロニここに居合わせたのも、ナナリーが対帝国部隊と会うってんで、前もって様子を見に来たからさ。ま、おかげでこうして出会えた訳だけど。
ロニそうだ。カイル、あとでいいからミリーナやイクス以外の仲間も紹介してくれよ。どんな奴らと一緒にいたのか会ってみてえし。
カイルあ……うん。そのことだけど……。ロニ、ちょっとこっちで話さない ?リアラとジューダスも来て。
ロニなんだよ。こういう所で内緒話ってのは感じ悪くみえるぞ ?
イクスそれぞれの世界ごとに事情があるのはわかってますから。気にしないで下さい。
カイルあのさ……オレたちは今若い頃の父さんや母さんと一緒にいるんだ。それに、リオンさんも。
ロニ……スタンさんや、ルーティさんと ! ?リオンってことは、ジューダスお前……。
ジューダスそうだ。もう一人の僕が同時に存在している。
カイルでもオレたちのことは、みんなに詳しく話してない。オレが二人の子供だってことも知らないんだ。だからロニも……。
ロニ言うな……ってか。スタンさんのことも何もかも……知らないふりをしろって ?
リアラずっとじゃないわ。今はまだ様子を見てるだけ。何より、スタンさんやルーティさんやリオンさんを考えてのことだから。
ロニ……わかったよ。俺だってスタンさんたちを悩ませたくないからな。
シャルティエ戻ってきたね。存分に内緒話はできたかい ?
ロニああ、おかげ様で。こっちは、したくてしてるわけじゃねぇけどな。
ディムロスそのことだが、我々はもうこの世界からは逃れらないのだろう ? ならば、話せる範囲のことは話した方がいいのではないか ?
シャルティエ確かに、何がきっかけで不信を招くかわかりませんからね。僕たちと会った時のリオンくんのように。
カイルでも……どうしようジューダス……。
ジューダス……以前からジェイドには出来るだけ情報は開示していく方向へシフトしたいと話をされているんだ。
ジューダスあの秘密主義の男がそう切り出すんだからそれだけの事態が起きている……という事なんだろう。
ジューダスだが、「それ」を告げることが本当に正しいのかは……僕にはまだわからない。
ロニ……その話、今は置いとこうぜ。それより帝国兵の少ないルートを知ってるからそこを使ってダリルシェイドへ行くぞ。

Character7話【6-6 ダリルシェイド】
イクスへえ…… ! 賑やかな街だな。以前のセールンドみたいに人が多いよ。
ミリーナディムロスさんが言っていた通り活気があるわね。これって、帝国が介入しているせいもあるのかしら。
街の女ねえ、見た ? エルレイン様の騎士 !
街の女2見た見た ! 素敵よねぇ、サレ様 !きれいな顔してるし、理想の騎士様って感じ !
カイルサレって、さっき話してた帝国の奴だよね。
ロニお前ら、サレを知ってるのか。あいつ、最近この辺りでよく見かけるようになったんだ。
ロニしっかしまあ、あんなキザったらしい男のどこがいいのかねぇ。俺の方がよっぽど――
? ? ?いた ! どこでアブラ売ってたんだい。このスカタン !
ロニナナリー ! なんでここにいるんだよ。お前は隠れ家で待ってる筈だろうが。
ナナリー状況が変わったんだよ。それにみんな、あんたのこと心配して――
ロニまあまあ、俺に文句言う前に周りをみろよ。ほら、ほらほら !
カイルナナリー ! やっと会えたね !
ナナリーウソ……カイルじゃない ! リアラにジューダスも ! ?あ、やっぱりディムロスさんたちもいたね。こっちは予想通りだ。
ディムロスどういうことだ ?
ナナリー話はあと。もうすぐエルレインがここを通るんだ。このままじゃ鉢合わせだよ。
ナナリーとりあえずこっちに隠れて。……ほら、もう来たよ ! 早く !
サレ――それで、今日はこれからどちらに ?
エルレイン監獄塔へ。バルバトスに会いに行く。
サレでは、お供いたしますよ。
エルレインここを空けてもよいのか ?
サレええ。この後は【β(ベータ)】が来ることになっていますから。もう、こちらが領都に目配りをする必要はありません。
サレそれに、グラスティンからも新しい【肉】の調達をと急かされてまして。いや、困ったものですよ。
エルレインそうか ? さして困ったようには聞こえぬがな。
サレフフフ……。さあ、参りましょうか。
コーキス……なにを話してたかは、わかんねえけど顔はバッチリ確認できたぜ。サレって、やっぱりあのサレだったな !
リアラエルレイン……本当に具現化されてたのね。わかってはいたけど……。
ナナリー具現化って何 ? エルレインも時間を移動してここにいるんじゃないの ?
リアラあのね、ナナリー……。
ロニいいか、ナナリー。落ちついて聞けよ。凶暴なお前はす~ぐ口や手や足や関節技が出る……
ロニぎゃーーーーっ !
コーキスす、すげえ、ナナリー様 !流れるようなサブミッション !
カーリャこれは完全にキマってますよぉ !
ナナリーあんたたち、なんか訳ありなんだね。まずはそっちの話を聞かせてよ。
イクスえ、えっと……このままで ?
ナナリーこのままで。ほら、早く。
ロニて、手短に……頼むぅぅ……。
ナナリー――いいかい。今はとりあえず飲みこむよ。けど、完全に納得したわけじゃない。あんたらのこれからの行い次第ってことで、いいね ?
ミリーナはい、わかりました。ナナリーさん。
ナナリーあとそれ、やめてくんない ?そんな他人行儀じゃ、ますます溝が深まっちまうよ。
ミリーナ……それじゃあ。――ありがとう、ナナリー !
カイル……よかった。ナナリーが怒り出した時はどうなるかと思ったよ。ロニもお疲れ様。
ロニ……技かけられ過ぎて、手足が伸びた気がするぜ……。
ジューダス良かったじゃないか。随分と見てくれもよくなっただろう。モテるぞ。
ロニやったぜ ! ……とでも言うと思ったか !
リアラでも、ナナリーは本当に大丈夫かしら。
カイルそうだね……。エルレインが世界を作り変えようとしたときだってすごく怒ってたし。
ジューダス弟を失うとわかっても、神の力に頼らず自分たちの力で生きて行くと決めた奴だからな。
リアラなのに、このティル・ナ・ノーグは具現化や、世界の創造に、死者の復活が行われていてしかも、もう帰れないなんて……。
ロニ平気だよ。あいつは強い。それに、いざと言う時は……。
ナナリーねえ、ロニ !カイルたちも、こっち来てくれる ?
カイルロニ、いざと言う時は、何 ?
ロニあ ? 俺があいつを支えるってだけさ。今の俺はナナリーの補佐だからな。仕事じゃ仕方ねぇ。――ほら、行くぞ。
ロニ待たせたな。
ナナリーもう、こっちは大事な話してんのに。
ロニはいはい。で、ディムロスさんにはこっちの状況を伝えたのか ?
ディムロス今、報告を受けていたところだ。レジスタンスも、最近の帝国にはかなり苦慮しているようだな。
ナナリーあんたたちが来てくれて心強いよ。やっぱり、ディムロスさんたちが西の対帝国部隊をまとめてたんだね。
シャルティエよく僕たちのことがわかったね。
ナナリー最近、あっちの活動が活発になったって話だったから色々さぐりを入れてたんだ。
ナナリーそうしたら、新しく来たディムロスって優秀な奴が指揮を取ってるっていうじゃないか。それで手紙を出したのさ。
シャルティエ……ああ、そう。やっぱり凄いですね。ディムロスは。ははは。
ロニなあ、こんな所で立ち話もねえだろ。とりあえず俺たちの隠れ家に行こうぜ。
ナナリー待って。状況が変わったって言ったろ ?ついさっき報せがあったんだよ。もうすぐ【領主】が街に入るって。
ロニ本当か ! ? 予定よりも早いじゃねえか。
ナナリーそうなんだ。だから今すぐ領主の館へ行かないと。
コーキスそれって偵察ってことか ?
ナナリー……まぁ、それもあるんだけどね。
ディムロス…………。
カイルはぁ……せっかくナナリーと会えたのに、ゆっくり話もできないのか。
ナナリーごめんよ。けど、後でたっぷり時間をとるからさ。あたしの手料理つきでね !さ、行くよ。

Character8話【6-9 ダリルシェイド】
カーリャうわっ、なんですかこれ。すごい人だかりですよ !
ジューダス新しい領主を見にきた野次馬だな。
警備兵おい、そこ、道を開けてくれ。領主様の馬車が通るんだ。
ミリーナ警備の兵士も多いわね。
イクスダリルシェイドに来るときに見た兵士はこのために駆り出されたのかもしれないな。――おっと、コーキス、はぐれるなよ !
コーキス危ねぇ……うっかりしてたら迷子だぜ。こんなんで偵察なんてできんのか ? ナナリー様。
ナナリーむしろ好都合さ。これなら人込みに紛れて安全に領主の顔を拝めるだろ ?
リアラあっ、馬車が来たわよ。
警備兵長旅、お疲れ様でございました !
領主…………。
? ? ?…………。
ジューダスあれは……ウッドロウ !
カイルえ、ウッドロウさん ! ?
ディムロスアトワイト…… ! ?
シャルティエ一体、どうなってるんだ……。
イクスあの二人と知り合いなのか ?
カイルうん。ウッドロウさんは俺の知ってる姿とちょっと違うけどね。でも、どうして帝国の領主なんて……。
ロニなあ……あの二人、様子が変じゃないか ?
警備兵すぐにお部屋へご案内いたします。広間には宴の準備も整っておりますので――
領主余計なことはするな。私はすぐに休む。
警備兵も、申し訳ありません。ではご案内します。そちらの奥様のお部屋ですが……
護衛騎士訂正を求める。私は彼の護衛騎士だ。
警備兵これは失礼いたしました ! では、こちらへ。
ディムロス……あれはアトワイトではない。私にはわかる。
カイルウッドロウさんも雰囲気が全然違う。もしかしたら……。
ミリーナええ。リビングドールにされているのかもしれないわ。
ロニ魂だか心だかを入れ替えるって言うアレか !
ナナリー……一旦引き上げだね。あたしたちの隠れ家へ行こう。
ジョニーそいつ、本当にウッドロウだったのか ?
イクスはい。リビングドールにされてるようでここの領主になっています。
ジョニーダリルシェイドの領主がウッドロウねえ……。帝国もセンスがないな。完全に配置ミスだぜ ?
カイルですよね ! ウッドロウさんにはハイデルベルグですよ !
イクスえっと……とにかく、こういう状況なのでファンダリア領の元となった世界のスタンさんたちにも応援を要請したいんです。
ジョニーわかった。すぐにそっちへ派遣するよ。しばらく待っててくれ。
ロニスタンさんたちが来るのか !すげえな ! いや、やっぱりどうしよう……。
ナナリー喜ぶのか動揺するのか、どっちかにしなって。
ディムロス……ナナリーくん。君たちの様子から察するにウッドロウが領主としてここに来ることを知っていたのではないか ?
ナナリー……まあね。情報だけだったから実際に顔を見るまでは確信できなかったんだよ。
ナナリーでも、本当に本人だと確認できたらどうにか繋ぎをつけて、レジスタンスの活動を助けてもらおうと思ってたんだ。
ロニけど、中身が別人じゃなぁ……。
? ? ?おい、開けろ。
一同! !
ナナリーシッ……。あんたたちは黙って。――誰だい ?
? ? ?愛の使者だ。
ナナリー間に合ってます。帰んな。
? ? ?おかしい……ジェイドやカロルにはこれで通じてるのに……。
イクスあっ、もしかしてデクス……さん、ですか ?ジェイドさんに協力してるっていう。
デクスそうだよ。早く入れろ。見つかったらオレだって危ないんだ。
ナナリー知り合いかい。悪かったね。ほら、入っとくれ。
デクスまったく……。領主の護衛をしてるときにお前たちを見かけたから苦労して後をつけて来たってのに。
ミリーナありがとうございます。ところでさっき、カロルって言ってましたよね ?
デクスジェイドからの指示で繋ぎが変わったんだよ。カロルたちの方が連絡とりやすいだろうってな。
コーキスそっか。カロル様たちは外回りが多いもんな。
イクスそれで、何か情報があるんですか ?
デクスああ。手短に言うぞ。帝国では、人工知能を人工心核に宿したβ(ベータ)版の【リビングドールβ】が投入された。
デクスその第一弾となる四名の【β】のうちの二名がさっき着任した領主、ウッドロウとその護衛騎士となったアトワイトなんだ。
イクス人工知能……ってことはあの二人は、誰かの人格でも魂でもないってことか ?
デクスさあな。オレも詳しいことは知らないが魔鏡結晶から死の砂嵐にアクセスできなくなったから代替えだとか何とか……。
デクスデミトリアス付きの宮廷学者たちが開発したらしい。
ミリーナでも、リビングドールであることには変わりがないのよね ? それなら、心核さえあれば今までの方法で二人を戻せるはずだわ。
カーリャ前に、たくさん心核を持って帰りましたよね。あの中にお二人の心核があるかもしれませんよ !
イクスそうなると、二人をアジトに連れていかないとな。でも、どうすれば……。
ディムロス潜入し、あわよくば制圧、といったところか。かなり無理のある作戦だな。……デクスくんこれには君の協力が不可欠となるが、どうだろう?
デクスアリスちゃんを見つけるまでは協力すると約束したからな。愛の使者、デクス様に任せておけ !

Character9話【6-10 芙蓉離宮】
アスガルド帝国 芙蓉離宮
メルクリア……さても頭の痛い……。
チーグルご気分がすぐれませんか ?でしたら、お休みになられてはいかがでしょう。
メルクリアいや、わらわの配下の戦力のことじゃ。
メルクリア四幻将も今や、お前たち二人のみ。ディストは義父上の言いつけで眠らせたまま。ローゲは消え、器だったバルバトスは監獄塔の中じゃ。
メルクリアシドニーも兄上もバルドもいなくなった。セシリィはあの憎い鏡士に連れ去られたまま……。
メルクリアこうして、側近くに仕える臣下はもうお前たちしかおらぬ。……寂しくなった。
リヒター…………。
衛兵メルクリア様。デミトリアス陛下の使者がお着きです。お通ししてもよろしいでしょうか。
メルクリア義父上の ? よい、通せ。
? ? ?お目通りをお許し頂き感謝する。
メルクリアそなた……ティルキスか ?
ティルキス ?そうだ。私はティルキスだ。
メルクリア…… ? まあよい。それで用向きはなんじゃ。
ティルキス ?グラスティンがディストを所望している。すぐに引き取りの準備を進めてもらいたい。
メルクリアなんじゃと ! ?あれは四幻将、わらわの臣下じゃぞ !それを差し出せとは無礼にもほどがある !
ティルキス ?これはデミトリアス陛下直々の命である。あなたに拒否権はない。
メルクリア義父上が…… ? そんなはず――
衛兵お待ちください !今、メルクリア様は使者と謁見を――
? ? ?その使者に用があると言っているんだ。通してもらう !
リヒターどうしたんだルキウス、お前はまだ療養中だろう。
ルキウスティルキスと名乗る使者が来たと聞いたんだ。だから――
ティルキス ?ティルキスは私だ。何か用か ?
ルキウスティルキス…… ! 無事だったのか。ボクだ、ルキウスだ !
ティルキス ?誰だ、お前は。
ルキウスえっ…… ?
ティルキス ?こちらの話はまだ終わっていない。出て行け。
ルキウス……そうか。これが噂のリビングドールか。君はティルキスまで、こんな風にしてしまったんだな。メルクリア !
メルクリアわ、わらわは知らぬ ! 確かにティルキスは兄上様が具現化した。だが、リビングドールにする前に兄上様はお倒れになったのじゃぞ !
メルクリアその時に、全ての計画は中断しているはずじゃ。リビングドールである訳が……。
ティルキス ?私が問題なのか ?ならば早急に解決して話を進めよう。
ティルキスβ私は【リビングドールβ】クンツァイトという機械人を解析して生み出された人工心核型リビングドールだ。
メルクリア新しいリビングドールじゃと…… ! ?
チーグルデミトリアスは我々の技術を盗んだというのか !……なんと狡猾な !
ティルキスβ解決したようだな。ならば次の話にうつる。
ルキウスこっちの話はまだ――
ティルキスβリヒター、アステルのことでサレが話したいことがあるらしい。一緒に来てくれ。
リヒターアステルだと ? サレの奴、一体何を……。
ティルキスβ表で待っている。なんでもリヒターだけに伝えねばならない話だそうだ。
リヒター……メルクリア、俺が戻ったらディストの件も含めて、今後の方針を考えるぞ。
メルクリアリ、リヒター……。
リヒターすぐ戻る。待っていろ。
ティルキスβディストは生命維持装置ごと運び出す。
ティルキスβ用件は以上だ。これで失礼する。行くぞ、リヒター。
ルキウスティルキス ! 待って――あっ !
メルクリアルキウス ! 大事ないか ? 無茶をするから――
ルキウス触るなっ !
メルクリアっ ! ! 何をする。ティルキスのことは知らぬと――
ルキウス君は、ボクを利用しただろう……。兄さんを繋ぎ止めるために……自分のためだけに !
メルクリア………………。
チーグルルキウス、言葉が過ぎるぞ !
メルクリア――いや…………その通りじゃ。わらわは…………。
ティルキスβリヒター、こっちだ。
リヒター(アステルに何かあったら、今度こそ――)
ティルキスβ連れて来ました。――グラスティン様。
リヒターグラスティン ?
グラスティンご苦労。
リヒターなっ ! ? ――うっ !
グラスティンアステルは本当にいいエサだな。こんな簡単に釣れるとは。
リヒター貴様……何をした……。
グラスティンお前は働き過ぎだ。ゆっくり眠るといい。これで俺も安心してジュニアに近づける。ヒヒヒ……ッ。
リヒターくっ…………意識…………が…………。
グラスティン……やっと静かになったか。さて、リヒターを運ぶぞ。
ティルキスβ承知しました。グラスティン様。

Character10話【6-11 領主の館】
イクス――スタンさんとルーティが到着したよ。
ルーティおっつかれー !
スタン待たせたな、みんな !
ロニ……スタンさん。それにルーティさん…… ?……はは……すげえ。俺より年下かよ……。
ルーティあんたたちが、カイルの元の世界のお仲間 ?
ロニはい、そうです……ルーティさん……。俺、ロニです……。
スタン俺はスタンだ。カイルたちを助けてくれてたんだって ?俺がいうのも変だけど、ありがとう、ロニさん。
ロニロ、ロニでいいです! 俺のほうこそ……スタンさんには……スタンさんには……っ……。
スタンどうしたんだロニ ?……泣いてんのか ?
ロニい、いやいやいや ! ルーティさんが美人だからさ !きっと将来はきれいな花嫁になるんだろうなーなんて想像したら色々こみあげて ? みたいな――
ルーティは ! ? ちょっと、こいつなに言ってんの ! ?
ナナリー済まないね。なんか悪い物でも食べたみたいで。あたしはナナリー。こいつにはよーく言って聞かせるから。
ロニいででででででっ !お前、言ってることと、やってることがーーーーっ ! !
スタンカイルの仲間は賑やかだな !けど、ロニってなんか俺たちのこと……。
カイルあー、スタンさん !リオンさんは来ないんですか ?
スタンああ。リオンのやつ、ジューダスがいるなら自分は行く必要ないって言って、来なかったんだよ。
ルーティまったくあいつったら……。いくらジューダスとそっくりだからって片っぽがいりゃいいって訳じゃないのにさ。
一同! !
カイルまさか、リオンさんは全部……。
リアラええ、多分。……いいえ、きっとそうよ。
ロニおいジューダス。このままでいいのか ?
ナナリー……ジューダスに言ったって仕方ないだろ。気づいちまったもんはさ。それともあんたたち、もしかしてお互い、もう……。
ジューダス…………。
リアラ……そう、だったの。
イクス……ごめん。俺も何となくそうじゃないかと思ってたんだ……。ってことはカイルは……。
ミリーナええ。今までも言葉の端々から感じてはいたけど……。どうりで似ているはずよね。髪も、目の色も……。
ルーティ……何よ、この空気。カイルが何 ? リオンとジューダスがなんだって――
ルーティというか……あの剣捌き……。何もかもが……あいつに似すぎてるわよ……。
ルーティ! !
ルーティ……ジューダス、まさかあんたは……。
ジューダス…………。
ルーティえ……何、なんで否定しないのよ……。
ルーティそれって、つまりコレットとマルタの世界とかベルベットとロゼの世界とか……。ミラとエルの世界とかみたいな……。
ルーティ――嘘。待って。じゃあ、カイルが似てるってのは……。
スタン…… ?
カイルウソでしょ ! ? 母さんまで ! ?
ルーティ誰があんたの母さんよ。失礼しちゃうわね。
ルーティ…………まさか。
スタンなんだよ、ルーティ。そんなに俺の事を睨みつけて。
ルーティちょっと待って、来ないで !ああああああああっ ! ちょっと待ってーーーー !
ソーディアン・アトワイトルーティ、落ち着いて。理由はわかるけど。
ルーティわからないでいいわよ !うう、胸が……頭がクラクラする……。
スタン大丈夫か、ルーティ。顔が真っ赤だぞ !
ルーティダメ、あんたが来たら悪化する !
スタンなんだよ、心配してやってるのに……。
ソーディアン・ディムロススタンよ、今は逆効果だ。
ミリーナルーティ、落ち着いて ?多分、デリケートな問題だし今の勢いで話したら、色々と誤解が生じるわ。
ルーティそ、そうよね。誤解って線もあるじゃない !あたしったら。アッハハハ !気のせいよ、気のせい。気のせいだから。
ソーディアン・アトワイト……道のりは長そうね。
ミリーナこの件は後日、改めて話し合いましょう ?みんな、それでいいですよね。
ジューダス……ああ。そうしてくれ。
ディムロスはっきりさせた方がいいと思うが……。この後の作戦に影響を及ぼすようなら致し方あるまい。
コーキスなんか俺たち……色々とおいてけぼりな感じだな。カイル様たちとスタン様たち、何かあったのか ?
イクスはは……。いいんだよ。それはまたその内にな。
シャルティエその内に、か。僕なんて、ディムロスたちといるときはいつもこうやって蚊帳の外で……。
カーリャシャルティエさま、頑張ってたんですねぇ……。
イクス――いけない、そろそろ時間だ。みんな、出発の準備をしよう。
イクス……ええと、デクスさんが見張りを担当している通用門っていうのは……。
デクスおいこっちだ ! 今のうちに通れ。
イクスデクスさん ! ありがとうございます。
デクス領主の部屋の場所は知らせた通りだ。オレが出来るのはここまでだからな。後は自分たちでなんとかしてくれよ。
ディムロス君の尽力に感謝する。では、これより作戦開始だ。――全員、必ず生きて帰るぞ !
デクス格好いい台詞だな ! それ !いずれ、アリスちゃんと再会したらオレも言いたいぞ。
デクス――アリスちゃん、必ず生きて帰るぞ !……なんて――あ、もう誰もいない……。

Character11話【6-15 領主の館】
ディムロス……この部屋だ。私が中を確認する。シャルティエはもう一名と扉の周囲を警戒。他の者は私が合図をしたら踏み込め。
シャルティエ了解。えっと……。
ジューダス僕が残る。行くぞシャルティエ。
カイル……中はどうですか、ディムロスさん。
ディムロス……鏡士の二人、来てくれ。あの装置はなんだ ?
ミリーナあれは魔鏡装置だわ。でも何のための……。
イクス装置に繋がってるの……ウッドロウさんだ…… !
ミリーナアトワイトさんはウッドロウさんの治療をしているのかしら。あの装置で脈を診ているみたいだけど……。
アトワイトβ……誰だ。
ディムロス気づかれた、行くぞ !
アトワイトβなんだ、お前たちは。
ディムロスアトワイト……。
ルーティあれがアトワイト……。あんたの姿なのね。
ソーディアン・アトワイトええ。でも肉体だけよ。「私」じゃない。ディムロスも、わかってるわね。
ディムロスくっ…… !
カイルウッドロウさん !
ウッドロウβ…………。
リアラなんの反応もないわ……。
ナナリーなんだいありゃ、まるで抜け殻じゃないか。あんな風にしちまうなんて !
アトワイトβ出ていけ。心核のメンテナンス中だ。
ルーティ……アトワイト、あたし本気で行くけど、いいわね。
ソーディアン・アトワイトええ、ルーティ。全力でやりなさい。ディムロス、あなたたちもよ !
ディムロス & ソーディアン・ディムロス承知した !
ソーディアン・ディムロス行くぞ、スタン !
スタンうおぉぉぉおっ !
アトワイトβ……これが多勢に無勢というものか。なるほど。
ロニなんだよ、観念したか ?
アトワイトああ。
ロニマジかよ ! ? ま、まあこっちだってこれ以上その体を傷つけるつもりは――
アトワイト……人工心核データ抽出完了。撤退する。
コーキス窓の向こうに……消えた ! ?
イクスしまった、窓の下に転送魔法陣を仕込んでたのか…… !
ウッドロウβうっ………。
スタンウッドロウさん ! しっかり !
ミリーナこのままじゃ危ないわ。早く心核の治療をしないと。
イクスみんな集まってくれ。転送ゲートで、一旦アジトへ戻るぞ !
ジュニア――リヒターは、僕のところには来ていないよ。
ルキウスボクも、あれから見ていない。
メルクリアそんな……本当にリヒターはどこにもおらぬのか ! ?すぐに戻ると言うたのに……。
チーグル……やはり、ティルキスがそのままデミトリアス帝の元へ連れていったのかと。
メルクリア義父上……。わらわからリヒターまで取りあげるのか !
ジュニアメルクリア……。
メルクリア……嫌じゃ。渡さぬぞ。今よりわらわは、ティルキスを追う !
チーグルでは、私もお供いたします。
ジュニア僕も一緒に行くよ。メルクリア。
メルクリアチーグル、ジュニア……。わらわは義父上に利用されているだけかもしれぬのにこうも尽くしてくれるのか。
メルクリアならば、尽くされる者は応えねばならぬな。……わらわの臣下は、この手で守る。
ルキウスメルクリア……ボクは……。
メルクリア……ルキウス。お前にはだまし討ちのようにしてラムダを背負わせ、苦しめた。……本当に済まなかった。
メルクリアわらわはまだわかっていなかった。道具として使われることがどれほど心を傷つけるのか。義父上は……恐らくわらわを……。
メルクリア………………。
メルクリア……自らが体験せねばわからぬのは愚か者。なれど、愚かと知って振る舞いを変えられぬは恥知らず故、そなたにも頭を下げねばならぬ。
メルクリアカイウスの元へ行くのなら止めはしない。二人が共にあるのが、本来の姿じゃ。……お前にも……寂しい思いをさせたな。
ルキウスかつてのボクも、そうだった……。ただ盲目に信じ続けて道を誤った……。
メルクリアルキウス……?
ルキウス行き倒れていたボクやカイウス兄さんやルビアを助けてくれたのはきみだ。その分の恩は返しておく。
ルキウスだから、必ずリヒターを取り戻すんだ。……ボクも協力する。
メルクリアルキウス………… !………………ありがとう。
イクス……光った ! これがウッドロウさんの心核だ !
ミリーナよかった……手持ちの中にあって。
カイルさすが王様、運が強いなぁ。
シングそれじゃオレ、スピルリンクで心核を戻してくるよ。あと三人入れるけど、誰が来る ?
スタンそれじゃ、俺とカイルとルーティで――
ルーティあ、あたし、ちょっと用があったんだ !そっちで何とかしてくんない ? じゃあね !
ミリーナルーティったら……。
イクスそれじゃ、スタンさんとカイルとシングでお願いできるかな。
ロニ待ってくれ、俺が行く ! 絶対行く ! 死んでも行く !
イクスロ、ロニさん…… ?
ロニなあ、いいだろう ? カイル、スタンさん。
スタン別に、駄目なんて言ってないさ。一緒に行こうぜ、ロニ !

Character12話【6-15 領主の館】
ロニ……驚いたぜ。人の心に入れるなんてよ。でもどうせだったら、美女の心の中に入ってみたかったぜ。さぞかし綺麗なんだろうなぁ。
シング美人だからスピリアがきれいってわけじゃないよ。あ、でもコハクは、スピルーンも綺麗だったなぁ。
ロニなに ! ? コハクさんという美女がいるのか !なるほどなるほどぉ ? 後で紹介しろよ !
カイルロニ、ダメだよ。コハクにはシングがいるんだから。
ロニなんだ、タダの彼女自慢か……。お幸せそうで何よりだな。
シングありがとう、ロニ !
ロニくっ……まっすぐな目で見やがって……。
スタンシング、あそこに見えるのが人工心核か ?
シングそうだよ。あの人工心核とこのウッドロウさんの心核を入れ替えるんだ。
シングこれで完了っと。……このスピルメイズかなり狭くなって荒れてる感じがするな。
スタンウッドロウさんの精神にかなり負担がかかってたってことか……。
カイルアトワイトさんも同じなんですよね。早く元に戻してあげないと……。
ロニなあシング、疑うわけじゃねえけどさこれで本当にウッドロウさんは元に戻るのか ?
シングバルバトスの時も成功してるし大丈夫さ。
ロニバルバトス ! ? あいつもこの世界にいるのかよ ! ?……こんな所まで、くそっ…… !
ロニシング ! なんであんな奴、助けたんだ !
シングそれが正しいと思ったからだよ。
ロニお前は知らないからだ !あいつはな ! あいつのせいで…… !
スタンロニ ! シングが悪いわけじゃないだろう。その場にいた、みんなが選んだことだ。
ロニ……悪かったな、シング。つい……。
シングいいんだ。ロニたちの敵なんだろう ?それを助けちゃったら、怒るのは当然だ。
カイル大丈夫だよ、ロニ。確かにこの世界でもバルバトスが暴れたって話も聞いた。
カイルけど、あいつが次に何かしようとした時にはオレが全力で倒す ! 絶対に !
カイルそのために、スタンさんにも稽古をつけてもらってるんだ。
スタンああ。すごいぞカイルは。どんどん強くなるんだぜ !そのうち俺が相手じゃ、もの足りなくなるかもな。
カイルそんなことないです ! でも……へへへ。スタンさんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ。
ロニ……そうか。良かったな、カイル。俺はずっと、お前とスタンさんのこんな姿を……。
カイルロ、ロニ ! スタンさん、あのね――
スタンもういいって、カイル。
カイル……え ?
スタン二人はさ、俺たちの世界の未来から来たんだろう ?
二人! !
スタンあの時ルーティも言ってたけど、ロイドやエミルとかスレイとベルベットとか、ジュードとルドガーたちも。あんなのが周りにゴロゴロいるんだぜ ?
スタンだから……カイルたちを見ててもしかしたらって、ずっと思ってたんだ。
シングスタンって、勘がいいんだな。そういうの気にしてないと思ってたからちょっと意外だったよ。
スタン俺だってバカじゃないって。これだけ色々と重なったら、そりゃ気がつくよ !
スタンそれにさ……ジューダスだって……。…………………。
カイルスタンさん……。
スタンいや……、今日はここまでにしよう。
スタンもうちょっと聞きたいこともあったんだけどさ。それについてはルーティが嫌がってるみたいだし今はやめとくよ。――さ、戻ろうぜ !
カイルスタンさん……もしかして……。
ロニカイル、このまま帰っちまっていいのかよ。
カイル……スタンさん !
スタン何だ、カイル ?
カイルいつか……ロイドがクラトスさんのことを呼ぶみたいにスタンさんのことも呼んでいいですか ?
ミリーナお帰りなさい。みんな !
カイルただいま ! ウッドロウさんの心核、戻してきたよ。
イクス良かった。後は、ウッドロウさんの回復を待つばかりだな。
ナナリーご苦労さん ! どうだった ? 心の中ってやつは。
ロニいやあ、中々衝撃的な経験ができたぜ。な !
カイルうん !
ナナリーなんだい、嬉しそうだね。こっちもいい報せがあるよ。ね、ディムロスさん !
ディムロスああ。我々、対帝国部隊とレジスタンスは正式に同盟を結ぶことになった。
カイルそうなんだ ! これでナナリーたちの活動も、やりやすくなったね !
ナナリーそれなんだけどさ、レジスタンスも含めた総指揮をディムロスさんが引き受けてくれることになったんだよ。
ロニすげえじゃねえか。天地戦争の英雄が指揮をとるなんてよ !
ディムロスその代わりといってはなんだが君たちは、イクスくんたちに協力をしてやって欲しい。カイルくんのためにもな。
ロニ元からそのつもりだぜ。だろ、ナナリー。
ナナリー奇遇だね。あんたと気が合うとは。ま、そんなわけだからさ。これからもよろしく頼むよ、イクス、ミリーナ。
イクスああ、大歓迎だよ。改めてよろしく、ロニさん、ナナリー !
ミリーナナナリーみたいな可愛い人が力を貸してくれるなんて心強いわ !

Character12話【6-15 領主の館】
カーリャルドガーさま、エルさま、いらっしゃいますかー ?
エルあ、カーリャ、いらっしゃい !ルドガー、イクスたちが来たよ。
ルドガーどうぞ入ってくれ。今、お茶をいれるから。
ミリーナいえ、気を使わないでください。
イクスはい、これ。エルに渡してくれって頼まれたんだ。
エル手紙…… ? 開けていいよね ?えっと……「エルへ。元気ですか。パパは……」これ、パパ ! ? パパからの手紙 ! ?
ルドガーエルの父親 ! ? この世界にいるのか ! ?
イクスそうです。その手紙は、救世軍にいるヴィクトルという人から預かりました。
ルドガーヴィクトル……。エル、俺も一緒に読んでいいか ?
エルうん。ルドガーはアイボーだから、特別 !
ルドガー…………。
エルねえルドガー、これ、本当かな。パパ、本当に来てくれるかな ?
コーキスエル様、手紙には何て書いてあったんだ ?
カーリャコーキス、それ聞いちゃうんですか ?確かに気になりますけど。
エルいいよ。教えてあげる。
エルあのね、パパは、エルの大切なともだちを助けたりエルと【本物の家族】として暮らすために頑張ってるから、まだ会えないんだって。
エルでも、今は離れていても必ず迎えに来るって、書いてあったんだ。
コーキスそうか。良かったな、エル様。
エルうん。……でも、本当はすぐに会いたい。ねえ、ちょっとだけでも会いにいっちゃダメかな。キューセーグンにいるんでしょ ?
カーリャそれは……。
ミリーナエルのお父さんが助けようとしている「エルの友達」はエルの知ってるミラさんのことなんですって。二人が会えるようにって、頑張ってるのよ ?
エル本当 ! ? だったら待ってる !パパとミラが、いつ帰ってきてもいいように。
イクスああ。エルがここで待ってるってだけでヴィクトルさんは心強いと思うよ。
エルうん ! でもさー、パパももう少しわかりやすく書けばいいのに。そしたらエルも会いに行くなんていわなかったよ。
エルここの「本物の家族として暮らす」っていうのも訳わかんない。これじゃエルとパパが本物じゃないみたいだし。
ルドガー…………。
イクスどうしたんですか、ルドガーさん。
ルドガーあ、いや……。ちょっと、びっくりしたんだ。いきなりエルの父親が出てきたから……。
エル大丈夫。パパはすっごく優しいから。パパが来たら、ルドガーのことショーカイするね。エルのアイボーですって。
ルドガーああ、楽しみにしてるよ。
ルドガー(【本物の家族】……本物として暮らす…… ?まさかエルは、分史世界の……)
? ? ?――あ、タルロウ ! そこ汚れてるから拭いておいて。それからお茶をお願い。あと洗濯とトイレ掃除と……。
? ? ?ハロルド、そんな一気に命令したらタルロウが混乱しますよ。
ハロルドへーきへーき ! 私が改造したのよ ?この程度、ちゃちゃっとやってくれるわよ。ほら、もうお茶が出て来たわ。
? ? ?本当だ。ありがとうございます。あ、美味しい……。
ハロルドそのタルロウにはね、クンツァイトっていう機械人の機能の一部をコピーして組み込んであるの。あれはすごいわよ ? 家事全般において万能だから。
ティルキスβハロルド、グラスティン様から支給された次のリビングドールβの被験者、リヒターだ。
? ? ?……また犠牲者を増やすつもりですか ?こんなことはもうやめるべきです。
ハロルドはいはい。イオンは黙ってて。ティルキス、そいつ、そこに寝かせておいて。
イオンハロルド……この実験を続ければ悲しむ人が増えるだけですよ ?
ハロルドふうん……レプリカと言っても性格はあの被験者イオンの方と全然違うんだ。不思議よねぇ……。
イオン…………。
セールンド カレイドスコープの間
? ? ?ゲフィオン……。この状態では話をすることもままならぬか。
? ? ?これは……魔鏡の護符か ?
? ? ?…………そこの人ならざる者よ。封印が弱まっている。この世界に残された時間は、あまりないぞ。
? ? ?やはり、そうですか……。
? ? ?貴様は知っているか。この閉じた世界から脱出する術を。
? ? ?それは……どれだけ足掻こうとも不可能です。人体万華鏡となったミリーナ様なら何かご存じだったかも知れませんが。
? ? ?人ならざる者。貴様の名は ?
? ? ?……カーリャ。ミリーナ様の鏡精だった者、です。
to be continued