| Character | 1話【6-1 閑散とした街道】 |
| | 帝都・アスガルド城 |
| 帝国軍兵士 | 陛下、グラスティン様がお見えです。 |
| デミトリアス | 通してくれ。お前たちは下がっていい。 |
| 帝国軍兵士 | はっ。 |
| グラスティン | これはデミトリアス陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう……。 |
| デミトリアス | そんな他人行儀な言い方はやめてくれ。それより、よく来てくれた。最近、体調はどうだい ? |
| グラスティン | 目覚めた時と変わらないな。すこぶる好調だよ。おかげで毎日新鮮な【肉】に囲まれて楽しい研究三昧さ。フフフフ……。 |
| デミトリアス | ……そうか。君が、アニマ汚染による長い植物状態から復帰してすでに三ヶ月が経つ。 |
| デミトリアス | 私と同じ治療を施して、ようやく目覚めはしたがその後の経過が心配だったんだ。何もないようで安心したよ。 |
| デミトリアス | それで、研究の進捗はどうだ ? |
| グラスティン | すでに具現化世界の技術には全て目を通してある。その中でも、特に有用な物を特定した。 |
| グラスティン | まずは、我々がリーゼ・マクシアと名付けた大陸【リーゼ・マクシア領】。その元となった世界に存在する【分史概念】 |
| グラスティン | 同じく、オールドラント領の【レプリカ】レグヌム領の【前世】そしてファンダリア領の【ソーディアン】 |
| グラスティン | この四つを組み合わせることで、お前の悲願を果たすことができるだろう。 |
| グラスティン | これが具体的な案をまとめた計画書だ。目を通してくれ。 |
| デミトリアス | なるほど……よくぞここまで。さすがグラスティン、セールンド一の魔鏡技師だ。君を友人に持った私は幸運だよ ! |
| デミトリアス | ……だが、この計画を実行すればメルクリアは絶望するかもしれないな。 |
| デミトリアス | あれほどまでに故郷を望んでいるあの子を……私は……。 |
| グラスティン | この期に及んで敵国の娘の心配か ?その甘さがお前の弱さだ。デミトリアス。 |
| デミトリアス | ……弱さ、か。 |
| グラスティン | それと、その計画について提案がある。ディストを目覚めさせたい。 |
| デミトリアス | ディスト ? そういえば治療を終えた後も眠らせていたが、彼が必要かね ? |
| グラスティン | 俺もレプリカ技術に関して独自に研究を進めている。そのための人員も、ジュニアに何度か具現化させた。 |
| グラスティン | だが、レプリカがオリジナルよりも劣化する点において奴からも意見を聞かねばならない。 |
| デミトリアス | そうか。彼は色々とトラブルが多かったから覚醒を先延ばしにするようメルクリアに指示していたんだが……。 |
| デミトリアス | わかった、許可しよう。 |
| デミトリアス | それにしても、君が目覚めてからの成果は素晴らしいよ。何か褒美を取らせたいところだが、望みはあるか ? |
| グラスティン | 望み ? ヒヒッ……そんなもの決まっているだろ。フィリップだよ…… !フィリップ・ビクエ・レストンが欲しい ! |
| グラスティン | この間やっとフィリップに会えたんだ……。テセアラ領でね……。彼は変わらず完璧で美しかったよ。ヒヒ……ヒヒヒ……。 |
| デミトリアス | ……私の答えは分かっているだろう、グラスティン。せめて私の手の届く範囲にしてくれないか。 |
| グラスティン | ……だったらジュニアとファントムならどうだ。あれは帝国に所属しているだろう。 |
| デミトリアス | 済まないが、それも難しいな。ファントムはミリーナたちに奪われているしジュニアはメルクリアが気に入っているんだ。 |
| グラスティン | メルクリア ? まだそんなことを……。だったらジュニアを奪うのを黙認してくれるだけでいい。 |
| グラスティン | ジュニアさえ手に入れば現在は封じている仮想鏡界を再び開かせてファントムを奪い返すことも出来る。 |
| デミトリアス | ファントムを奪還……か。しかしファントムは……。 |
| グラスティン | ……そういえば、俺が植物状態だった間お前はファントムに肩入れしてアレを救おうとしていたそうだな。 |
| グラスティン | フィリップという、完璧な存在が近くにいたのにどうして不完全な具現化によるフィリップのなれの果てを救おうとした ? |
| デミトリアス | そんな言い方はやめてくれ。彼は……可哀想な生まれ方をした。救えるなら救ってやりたかったんだよ……。 |
| グラスティン | ふ……ふふ……。そうか。少しガタが来ている方がお好みなのか。ならばいいさ。俺はジュニアで手を打つ。 |
| グラスティン | まぁ、待っていろ。いずれファントムも取り返してやるさ。ヒヒ……ヒヒヒ……。 |
| グラスティン | だが、ジュニアを手に入れるにはリヒターが邪魔だな。いつもジュニアの周りをチョロチョロしやがって……。 |
| グラスティン | なあ、デミトリアス奴を処分してもいいだろう ? |
| デミトリアス | リヒターは精霊研究者としての能力も高い。彼を失うのはかなりの痛手だ。何よりリヒターとアステルの関係を考えると同意はできん。 |
| グラスティン | リヒターがいなければ、アステルが帝国を離れる可能性を危惧しているのか ?それなら問題ない。 |
| グラスティン | リヒターは【リビングドールβ】として生かしておく。ちょうど被験者を増やしたいと思っていたからな。 |
| デミトリアス | あれをリヒターに施すのか ? それは……。 |
| デミトリアス | ――……いや、わかった。好きにしていい。 |
| グラスティン | ヒヒ……感謝するよデミトリアス。 |
| Character | 2話【6-1 閑散とした街道】 |
| イクス | ――それじゃ、そろそろ班長会議を始めるけどもう全員そろってるかな。 |
| ミリーナ | ええ。具現元となった各世界からの代表者を一人班長として選出してもらったわ。一応、名簿も作ってあるけど……。 |
| カーリャ | カーリャが確認しますね !チェスターさま、ジョニーさま、リッドさま、ジューダスさま、ジーニアスさま、ヴェイグさま |
| カーリャ | セネルさま、ガイさま、カイウスさま、スパーダさまマルタさま、フレンさま、シングさま、アスベルさま |
| カーリャ | レイアさま、ガイアスさま、スレイさまベルベットさま、最後は救世軍のクラトスさま !……ぜーはー……全員そろってますぅ……。 |
| コーキス | やるじゃんパイセン、ひと息で読み上げた !あんま意味はねぇけどな……。 |
| イクス | よし、じゃあ始めよう。これからみんなに報告するのはカロル調査室のみんなが、ここ数カ月間に渡ってティル・ナ・ノーグを調査した結果だ。 |
| イクス | まず、具現化大陸全体の状況だけど具現化当初のような違和感を持つ住人はもういないみたいだな。 |
| ミリーナ | みんな、自分は元からティル・ナ・ノーグの人間だと思いこんでいるのね。 |
| イクス | ああ。ゲフィオンの思い描いていたアイギス計画の大陸具現化に関する部分はほぼ完成したとみていい状態だと思う。 |
| イクス | そして帝国は具現化した各大陸に異世界由来の名前をつけて領土化しているらしいんだ。 |
| カーリャ | じゃあ、一番最初に具現化したユーリさまやラピードさまがいた所は ? |
| イクス | その大陸は今【テルカ・リュミレース領】と呼ばれているよ。 |
| フレン | テルカ・リュミレースは、僕たちの世界を表す名称だ。話には聞いていたけどそうか……帝国は正式に命名したのか。 |
| チェスター | フレンはもう知ってると思ってたぜ。カロル調査室と一緒に動いているんじゃないのか ? |
| フレン | ユーリやカロルたちの調査は、臨機応変が過ぎてね。だから僕は待機しつつ、彼らのバックアップが多いんだよ。 |
| ジーニアス | そういえば、カロルたちって調査に出るとなかなか予定通りに帰って来ないよね。フレンも大変でしょ ? |
| フレン | あれがカロルたちのやり方だからね。そもそもユーリが昔からあんな感じだから、慣れているんだ。 |
| フレン | それに自由だからこそ思いがけない成果を得ることもある。 |
| フレン | むしろカロル調査室がよりよく機能するために僕ができることをしているだけなんだ。こういう場に出るのも含めてね。 |
| レイア | ま、真面目……。班長選出で、そこまで考えてんだ。 |
| リッド | オレなんか「イケる、イケる ! 」っつってわけわからないうちに班長にされてたのにさ。 |
| チェスター | なあイクス、その資料、見せてくれないか。オレたちの世界が元になってる大陸ってのは…… |
| イクス | チェスターと会った大陸はここ、【アセリア領】だ。みんなも確認してくれ。 |
| チェスター | アセリア……アセリア歴からか。なるほどね。 |
| ジョニー | どれどれ、俺たちは【ファンダリア領】だな。ウッドロウがいたらどんな顔をしただろうな。ジューダス、お前さんのところも同じでいいんだろ ? |
| ジューダス | ……そうだ。だからこそ班長会議には僕が代表して出ると言ったのに。だいたい、今のおまえは戦えないだろう。 |
| ジョニー | 確かに、特異鏡映点用のブレスレットが上手く働かないから、まだ、みんなと行動はできない。せいぜい応援がてら、歌う程度が関の山さ。 |
| ジョニー | だからこそ、こういう所で役に立っておきたいんだよ。 |
| スパーダ | いいじゃねえか。ジョニーのその心意気 !好きにさせてやれって、お面野郎ォ。 |
| ジューダス | お面じゃない ! 仮面だ ! |
| スパーダ | 細けぇヤツだな。で、オレんとこはどこだ ?あー……【レグヌム領】ね。王都レグヌムか。ルカとオレの地元の名だな。 |
| リッド | この【オルバース領】っていうのは、オレの世界が元になってる大陸か ? オルバース界面……。インフェリアでもセレスティアでもないのか。へえ……。 |
| セネル | 【ウェルテス領】……灯台の街ウェルテスか……。懐かしいな。ヴェイグのところは ? |
| ヴェイグ | オレのところは【カレギア領】だ。元の世界では王国名だった。覚えやすくていい。 |
| カイウス | オレのところもわかりやすいぜ !この【アレウーラ領】って名前はオレの世界の大陸の名前だったんだ。 |
| ガイ | さて、ウチは……【オールドラント領】ね。ま、惑星名だし妥当な命名だな。マルクトなんて名付けられてたら、どんな奴が出てくるか……。 |
| アスベル | ガイのところも惑星名か。俺のところも同じだよ。【エフィネア領】の、エフィネアっていうのは俺たちが住んでいた星の名前なんだ。 |
| シング | オレの世界が元になった大陸は【原界(セルランド)領】か。もう一つの世界の要素って、この大陸に含まれてるのかな……。 |
| ジーニアス | もう一つの世界 ? シングの世界も複雑そうだね。ボクたちの世界も、シルヴァラントとテセアラの二つだったけど、名前はどうなってるんだろう。 |
| クラトス | 我々の世界は……【テセアラ領】だ。 |
| マルタ | じゃあ、私やエミルたちもそこなんだね。未来とはいえ、同じ世界だし。 |
| レイア | 未来かぁ。だったら、わたしたちの未来だっていうルドガーたちの世界も含めてこの【リーゼ・マクシア領】になるのかな。 |
| ガイアス | エレンピオスと思われる名称のついた大陸は見当たらないな。だとすれば同じだろう。 |
| スレイ | ……あれ ? おかしいな。オレの世界は、この【グリンウッド領】だけど……ベルベットは ? |
| ベルベット | あたしのところは【ミッドガンド領】よ。別におかしいところなんて見当たらないけど。 |
| スレイ | だって、オレたちって過去と未来の関係なんだろう ?マルタや、ガイアスさんたちは同じ大陸なのに何でオレたち分けられてるんだろう。 |
| ベルベット | それはファントムが、あんたの世界とは別にあたしたちを具現化したからでしょ。 |
| スレイ | そうか。そのせいで別の大陸名になってるんだな。スッキリしたよ ! |
| イクス | よし。現時点で他の世界の具現化大陸はないようだな。今、みんなに確認してもらった各大陸には帝国から領主の派遣が進んでいるらしいんだ。 |
| イクス | この状況を継続して調査するためにもカロル調査室メンバーの他に、各大陸の元の世界の関係者にも手伝ってもらいたいと思ってる。 |
| ガイアス | それでは各地に戦力を分散させることになるぞ。ここの守りはもちろん現地に赴く者も危険ではないか ? |
| セネル | 確かに、簡単に行き来ができるわけじゃないんだ。いざという時にも集まりにくいぞ。 |
| ミリーナ | それは大丈夫。ジェイドさんが、帝国の転送魔法陣と仮想鏡界の時からあったゲートを解析して組み合わせた新たな転送ゲートを完成させたの。 |
| ガイ | ああ。俺も転送ゲートを維持する装置を作るのを色々と手伝わされたよ。音機関……機械いじりは好きだからいいんだけどな。 |
| ミリーナ | ガイさん、エドナ様のお茶会も休んで頑張ってくれたのよ。この転送ゲートを使えばアジトからの移動も比較的自由になるわ。 |
| イクス | 実は、みんなに各地の調査をお願いするのは他にも気になる点があるからなんだ。 |
| イクス | 最近、【聖アタモニ教団】という宗教組織が台頭してきたって報告があったんだよ。 |
| ジューダス | アタモニだと ?まさか、エルレインが動き出したのか ! ? |
| Character | 3話【6-2 閑散とした街道】 |
| ジューダス | エルレインが具現化されたと聞いたときから嫌な予感はしていたが……。 |
| ヴェイグ | 確か、現在帝国にいる鏡映点の一人だったな。聖アタモニ教団というのはエルレインに関係しているのか。 |
| ジューダス | ああ。僕たちの世界にも、アタモニ神団という似た名前の組織があった。エルレインはその組織で聖女と呼ばれていた女……僕たちの敵だ。 |
| ジューダス | もし、この世界でも奴が教団の指導者だとしたらやっかいなことになるぞ。 |
| イクス | ジューダスの言う通りだ。こういうケースを想定して元の世界での経験を元に、みんなにも――あっ……ちょっとごめん、魔鏡通信だ。 |
| シャルティエ | イクスくんかい ? |
| イクス | えっ、シャルティエさん ? |
| シャルティエ | この魔鏡通信って便利だね。この世界に来てから連絡手段が不便で仕方なかったから助かったよ。今、話してもよかったかな ? |
| イクス | ええ。大丈夫ですけど、何かあったんですか ? |
| セネル | なあ、シャルティエって誰だ ?リオンのしゃべる剣と同じ名前だけど……。 |
| ジューダス | 聞いていないか ?最近、対帝国部隊と同盟の協定を結んだだろう。そこに所属している、鏡映点の一人だ。 |
| アスベル | ソーディアンの人格の元となった人物か。鏡映点として具現化されていたって話だったな。 |
| ガイアス | その中でも、ディムロスという男は有能な指揮官であり、部下からの信頼も厚いと聞いている。 |
| コーキス | そうそう、マスターが言ってたぜ。そのディムロス様のところの人だよな ? |
| シャルティエ | はいはい。ディムロスのところのシャルティエですよ。どうせ僕だけじゃ印象が薄いですよー……。 |
| イクス | いや、シャルティエさんの印象が薄いんじゃなくてディムロスさんの印象が強いだけで……。 |
| シャルティエ | それ、全然フォローになってないからね ! ?……はぁ、もう用件を伝えてもいいかな。 |
| イクス | あっ、すみません。どうぞ ! |
| シャルティエ | 別の街を拠点にしているレジスタンスから「同盟を結びたい」っていう手紙が届いたんだよ。差出人は、ナナリー・フレッチ。 |
| ジューダス | ナナリー…… ! |
| シャルティエ | あ、ジューダスくんもそこにいたんだね。君たちの仲間に、同じ名前の子がいた筈だよね。それで連絡をとったんだよ。 |
| シャルティエ | レジスタンスと会う前に、カイルくんたちに確認をとれって、ディムロスに言われてさ……。なんで僕がこんなこと……。 |
| ジューダス | よく知らせてくれた、シャル、……ティエ。イクス、僕はカイルたちを連れてファンダリア領へ向かう。構わないな ? |
| イクス | もちろん。俺とミリーナも一緒に行くよ。 |
| シャルティエ | 了解。それじゃ、こっちに合流してくれ。 |
| イクス | みんな、すまないけど、ここはひとまず解散しよう。各地の調査に関しては、ユリウスさんとリフィル先生に方針を聞いてくれ。きっと俺より説明上手いし……。 |
| コーキス | あー、マスターは話が長いからなぁ。 |
| イクス | そ、そんなことないよ !コーキスが単純化しすぎなんだよ。 |
| ミリーナ | あら♪ イクスの説明は丁寧でわかりやすいしコーキスも端的でイクスの次にわかりやすいわよ。 |
| イクス | はは……。 |
| カーリャ | それじゃあ、皆さま。ひとまずお疲れ様でした~ ! |
| イクス | ――あの、待ってください、クラトスさん。ヴィクトルさんの容体はどうですか ? |
| クラトス | ヴィクトルか。安心しろ。かなり回復してきた。最近では、精霊の封印地に近づくための調査にも協力してもらっている。 |
| イクス | そうですか。だったら、もうそろそろ平気かな……。 |
| イクス | クラトスさんは、以前、俺がヴィクトルさんから手紙を預かったのを覚えていますか ? |
| クラトス | ああ。エルへの手紙だな。 |
| イクス | あの手紙、まだ渡していなかったんです。タイミングを見ているうちに先延ばしになっちゃって……。 |
| イクス | だから、今回の件が落ち着いたらエルに手紙を渡して話をするつもりだとヴィクトルさんに伝えてもらいたいんです。 |
| クラトス | エルに……。そうか、わかった。 |
| イクス | あと……あの……フィルにも……。 |
| クラトス | ……どうした ? 言いにくいことか ? |
| イクス | ……いえ、あの……。フィルにそろそろ話を聞かせて欲しい……と。 |
| クラトス | 伝えておこう。……私からも、構わないか ? |
| イクス | は、はい。もちろんです。 |
| クラトス | ロイドは……壮健だろうか。 |
| イクス | はい。あの……直接話をしていったらどうですか ? |
| クラトス | そう……なのだろうが。どう振る舞ったらいいのか……よくわからないのだ。 |
| クラトス | 父親として向き合う、とは決めたものの私がロイドと別れたのはあれが三つの時だ。知らない時間が多すぎる。 |
| クラトス | ロイドはそんなことなど気にしないともわかってはいるのだが……。妻が生きていれば……また違ったのだろうな。 |
| イクス | 若輩者が、何を言うと思われるかも知れませんけどヴィクトルさんなら何かヒントをくれるんじゃないでしょうか。 |
| クラトス | ……かも知れぬな。ありがとう、イクス。 |
| Character | 4話【6-3 対帝国部隊の村】 |
| ディムロス | ――皆、よく来てくれた。先日は世話になったな。 |
| カイル | こちらこそ、また会えて嬉しいです ! |
| リアラ | カイルったら、またディムロスさんたちに会えるってすごく喜んでいたんですよ。 |
| ディムロス | それは光栄だな。今回はジューダスくんも一緒か。よろしく頼む。 |
| ジューダス | ああ。……シャルティエの姿が見えないようだが……。 |
| シャルティエ | みなさん、お待たせしました。まずはお茶をどうぞ。 |
| ディムロス | シャルティエ、気が利くじゃないか。 |
| シャルティエ | こういう役回りも、なんか慣れちゃいましたから。 |
| ジューダス | ふっ……。 |
| シャルティエ | ……何だい、ジューダスくん。 |
| ジューダス | いや、なんだかんだ言いつつ世話焼きな奴だと思っただけだ。 |
| シャルティエ | どうせ僕は、こういう目立たない仕事がお似合いですよ。 |
| コーキス | なぁパイセンジューダス様、ちょっと笑ってなかったか ? |
| カーリャ | ええ。珍しいですねぇ。 |
| イクス | ディムロスさん。早速ですけど手紙の件を聞かせてもらえますか。 |
| ディムロス | そうだな。これがレジスタンスから送られてきた手紙だ。 |
| カイル | 本当だ……。ナナリー・フレッチって署名してある。やっぱりナナリーもこの世界にいるんだよ ! |
| ジューダス | まだ名前が一致しただけだろう。もっとも同姓同名の別人の可能性は極めて低いと思うが……。 |
| リアラ | そうね。他に特定できそうなことが書いてあればいいんだけど……。 |
| ミリーナ | この手紙だと、ファンダリア領の領都と定められたダリルシェイドってところで面会することになってるわね。 |
| カイル | ダリルシェイドが都って、なんか変な感じだな。領土名はファンダリアなのに。 |
| カーリャ | 変って、何がですか ? |
| ジューダス | 元の世界では、ファンダリアの首都はハイデルベルグでセインガルド王国の首都がダリルシェイドだったんだ。カイルが違和感を覚えても仕方ない。 |
| カイル | この世界って、見覚えのある景色や名前があってもやっぱり偽物なんだよな……。 |
| カイル | ――あ、ご、ごめん ! |
| ミリーナ | いいえ、いいのよ。本当のことだもの。 |
| ジューダス | それよりも、都というくらいだからダリルシェイドはこの村よりも発展しているんだろう ? |
| ジューダス | 反体制派であるレジスタンスと、対帝国部隊がそんな大都市で会うなどと危険な計画を立てるとは……いったいどういうつもりだ。 |
| ディムロス | その懸念はもっともだがこれはレジスタンス側の提案だ。 |
| ディムロス | ナナリーくんのこともある。まずは確認のためにもあちらの要望を飲むことにした。もちろん、重々警戒はしている。 |
| ディムロス | とはいえ、君たちの安全が保障できないのも事実だ。危険と判断するならば、君たちは戻って我々の報告を待ってくれてもいい。 |
| リアラ | わたしたちも一緒に行きましょう。ナナリーのこともあるし、大都市なら聖アタモニ教団の情報が手に入るかもしれないわ。 |
| イクス | ダリルシェイドで聞き込みをするのか。人が多いのなら、何かしら教団の話が聞けるかもしれないな。 |
| シャルティエ | 聖アタモニ教団って……。 |
| ディムロス | ああ。我々も探りを入れている宗教団体だな。最近では、ストレイライズ大神殿を建設してさらに勢力を拡大している。 |
| 3人 | えっ ! ? |
| カイル | ストレイライズ大神殿ってこっちの世界でも建ててるんだ。それって、どこにあるんですか ? |
| シャルティエ | 君たちは運がいいよね。これから行くところ、ダリルシェイドだよ。 |
| ジューダス | どうやら、このファンダリア大陸に聖アタモニ教団の中枢勢力が集められているようだな。 |
| リアラ | だったら、もう決まりよね、カイル ! |
| カイル | ああ。みんなでダリルシェイドへ行こう ! |
| Character | 5話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】 |
| コーキス | 領都ダリルシェイドかぁ。カイル様たちの世界でも首都だったって話だからやっぱり賑やかな所なんだろうな ! |
| カイル | いや、オレが知ってるダリルシェイドはものすごく寂れた街だったんだよ。 |
| ジューダス | 首都として機能していたのはカイルたちが生まれる前の話だからな。 |
| シャルティエ | 僕たちはわからないけど、今の領都はそのカイルくんたちが生まれる前のダリルシェイドっていうのに近いのかもしれないね。 |
| ジューダス | …………。 |
| ディムロス | む……あれは…… ? 皆、身を隠せ。シャルティエ、彼らを安全な所へ誘導をしろ ! |
| シャルティエ | 了解。みんな、こっちの繁みへ。 |
| 帝国軍兵士1 | 早くしろ ! 急げ ! |
| イクス | ……帝国兵たちだ。 |
| ミリーナ | この方向だと、ダリルシェイドよね。 |
| 帝国軍兵士1 | まずいぞ……。少しでも遅れたらサレ様にどんなお叱りを受けるか。 |
| 帝国軍兵士2 | いや、エルレイン様が一緒におられるんだ。サレ様も、そう酷いことはなさるまい。――とにかく、一刻も早くダリルシェイドに入るぞ。 |
| コーキス | ……行ったみたいだな。 |
| コーキス | ……あれ ? サレって……聞き覚えが……。 |
| イクス | ヴェイグたちの敵だった男だ。割と綺麗な顔の……。鏡映点リストにもあったしコーキスはスパーダを助けるときに会ってるよ。 |
| コーキス | さすがマスター ! 細かいことよく覚えてるよな ! |
| リアラ | それに……エルレインって言ってたわよね。やっぱり、ダリルシェイドにいるんだわ。 |
| ジューダス | すぐに出発したいところだが……このままだと、今の奴らの後を追うことになる。下手をすると見つかるぞ。 |
| カーリャ | だったら街道へ出ないでこの森を進んだらどうですか ?ほらこっち、少し開けたところがありますよ。 |
| ディムロス | 待て ! そこは獣道―― |
| オウルベア | グルルルルルッ…… ! |
| カーリャ | キャアーーーッ ! |
| ミリーナ | カーリャ ! ? |
| カイル | 危ないカーリャ ! |
| カーリャ | あわわわ……た、助かりました、カイルさま……。 |
| カイル | いや、まだだ……。色んなところからオウルベアの気配がする ! |
| コーキス | うわっ、こっちにも ! 何匹出てくんだよ ! |
| ジューダス | まさか……ここはオウルベアの巣か ! ? |
| ディムロス | 私とシャルティエがここを預かる。カイルくんたちは、そのまま森を抜けろ ! |
| カイル | でも…… ! |
| カーリャ | カイルさま、後ろ ! |
| カイル | ! ! |
| ? ? ? | お前ら、危ないところだったな――って……お前、カイル…… ? カイルじゃねえか ! ? |
| カイル | ロニ ! ? なんで ! ? |
| ロニ | ……話はあとだまずはこいつらをなんとかするぞ ! |
| Character | 6話【6-4 ダリルシェイドへ続く道】 |
| イクス | はぁ……どうにか逃げ切ったな。 |
| ミリーナ | ねえ、イクス。あの人って……。 |
| ロニ | カイル ! 俺の可愛いカイル~ !大丈夫か ! ? 怪我してねえか ! ? |
| カイル | うん、何ともないよ。本当にロニなんだね ! |
| ロニ | そうだぜ、よく見ろ。こんないい男ほかにいるか ?ロニ=デュナミス、ただいま参上……ってな ! |
| ジューダス | この頭の悪い発言、間違いないようだ。 |
| リアラ | 良かった。ロニが何も変わってなくて。 |
| ロニ | どういう意味だよ ! |
| カイル | でも驚いた。もう会えないかもって思ってたからさ。 |
| ロニ | そりゃこっちのセリフだぜ。俺とナナリーが、どんだけお前らを捜したか !ったく、心配させやがって……。 |
| カイル | よかった、ナナリーも一緒なんだね。 |
| ロニ | ああ。毎日うるせーのなんの。そんなことより、ディムロスさんたちまでいるのかよ。ナナリーの予想が当たってたって訳か。 |
| ロニ | しかしまあ、どこの時代に飛ばされたか知んねえがリアラがいるならもう安心だぜ。それとも、戻るにはまたレンズが足りないとか ? |
| カイル | えっと……イクス、ロニに説明してもらえる ? |
| イクス | ああ。……ロニさん。俺はイクス・ネーヴェといいます。この世界のことなんですが―― |
| ロニ | ……はぁ。めちゃくちゃだな。なんつーことしてくれてんだよ。こんな話、あいつが聞いたら……。 |
| イクス | すみません……。何を言われても仕方ないと思ってます。 |
| ロニ | ああ。正直、言いたいことは山ほどあるぜ。けどな、今はカイルに免じて引き下がってやるよ。何より―― |
| ロニ | ミリーナが美人だからなあ。特別サービスだ ! |
| ミリーナ | え ? あ、ありがとうございます。ロニさん。 |
| ロニ | それに今はここでやらなきゃならねえことがあるしな。 |
| ディムロス | レジスタンスの指揮、か ? |
| ロニ | そりゃナナリーの仕事だよ。俺はあいつの補佐だ。帝国の進出に反対するレジスタンスと会ってたらいつの間にかそうなっちまってね。 |
| リアラ | なんとなく想像がつくわ。ナナリーって面倒見がいいから。 |
| ロニ | ここに居合わせたのも、ナナリーが対帝国部隊と会うってんで、前もって様子を見に来たからさ。ま、おかげでこうして出会えた訳だけど。 |
| ロニ | そうだ。カイル、あとでいいからミリーナやイクス以外の仲間も紹介してくれよ。どんな奴らと一緒にいたのか会ってみてえし。 |
| カイル | あ……うん。そのことだけど……。ロニ、ちょっとこっちで話さない ?リアラとジューダスも来て。 |
| ロニ | なんだよ。こういう所で内緒話ってのは感じ悪くみえるぞ ? |
| イクス | それぞれの世界ごとに事情があるのはわかってますから。気にしないで下さい。 |
| カイル | あのさ……オレたちは今若い頃の父さんや母さんと一緒にいるんだ。それに、リオンさんも。 |
| ロニ | ……スタンさんや、ルーティさんと ! ?リオンってことは、ジューダスお前……。 |
| ジューダス | そうだ。もう一人の僕が同時に存在している。 |
| カイル | でもオレたちのことは、みんなに詳しく話してない。オレが二人の子供だってことも知らないんだ。だからロニも……。 |
| ロニ | 言うな……ってか。スタンさんのことも何もかも……知らないふりをしろって ? |
| リアラ | ずっとじゃないわ。今はまだ様子を見てるだけ。何より、スタンさんやルーティさんやリオンさんを考えてのことだから。 |
| ロニ | ……わかったよ。俺だってスタンさんたちを悩ませたくないからな。 |
| シャルティエ | 戻ってきたね。存分に内緒話はできたかい ? |
| ロニ | ああ、おかげ様で。こっちは、したくてしてるわけじゃねぇけどな。 |
| ディムロス | そのことだが、我々はもうこの世界からは逃れらないのだろう ? ならば、話せる範囲のことは話した方がいいのではないか ? |
| シャルティエ | 確かに、何がきっかけで不信を招くかわかりませんからね。僕たちと会った時のリオンくんのように。 |
| カイル | でも……どうしようジューダス……。 |
| ジューダス | ……以前からジェイドには出来るだけ情報は開示していく方向へシフトしたいと話をされているんだ。 |
| ジューダス | あの秘密主義の男がそう切り出すんだからそれだけの事態が起きている……という事なんだろう。 |
| ジューダス | だが、「それ」を告げることが本当に正しいのかは……僕にはまだわからない。 |
| ロニ | ……その話、今は置いとこうぜ。それより帝国兵の少ないルートを知ってるからそこを使ってダリルシェイドへ行くぞ。 |
| Character | 7話【6-6 ダリルシェイド】 |
| イクス | へえ…… ! 賑やかな街だな。以前のセールンドみたいに人が多いよ。 |
| ミリーナ | ディムロスさんが言っていた通り活気があるわね。これって、帝国が介入しているせいもあるのかしら。 |
| 街の女 | ねえ、見た ? エルレイン様の騎士 ! |
| 街の女2 | 見た見た ! 素敵よねぇ、サレ様 !きれいな顔してるし、理想の騎士様って感じ ! |
| カイル | サレって、さっき話してた帝国の奴だよね。 |
| ロニ | お前ら、サレを知ってるのか。あいつ、最近この辺りでよく見かけるようになったんだ。 |
| ロニ | しっかしまあ、あんなキザったらしい男のどこがいいのかねぇ。俺の方がよっぽど―― |
| ? ? ? | いた ! どこでアブラ売ってたんだい。このスカタン ! |
| ロニ | ナナリー ! なんでここにいるんだよ。お前は隠れ家で待ってる筈だろうが。 |
| ナナリー | 状況が変わったんだよ。それにみんな、あんたのこと心配して―― |
| ロニ | まあまあ、俺に文句言う前に周りをみろよ。ほら、ほらほら ! |
| カイル | ナナリー ! やっと会えたね ! |
| ナナリー | ウソ……カイルじゃない ! リアラにジューダスも ! ?あ、やっぱりディムロスさんたちもいたね。こっちは予想通りだ。 |
| ディムロス | どういうことだ ? |
| ナナリー | 話はあと。もうすぐエルレインがここを通るんだ。このままじゃ鉢合わせだよ。 |
| ナナリー | とりあえずこっちに隠れて。……ほら、もう来たよ ! 早く ! |
| サレ | ――それで、今日はこれからどちらに ? |
| エルレイン | 監獄塔へ。バルバトスに会いに行く。 |
| サレ | では、お供いたしますよ。 |
| エルレイン | ここを空けてもよいのか ? |
| サレ | ええ。この後は【β(ベータ)】が来ることになっていますから。もう、こちらが領都に目配りをする必要はありません。 |
| サレ | それに、グラスティンからも新しい【肉】の調達をと急かされてまして。いや、困ったものですよ。 |
| エルレイン | そうか ? さして困ったようには聞こえぬがな。 |
| サレ | フフフ……。さあ、参りましょうか。 |
| コーキス | ……なにを話してたかは、わかんねえけど顔はバッチリ確認できたぜ。サレって、やっぱりあのサレだったな ! |
| リアラ | エルレイン……本当に具現化されてたのね。わかってはいたけど……。 |
| ナナリー | 具現化って何 ? エルレインも時間を移動してここにいるんじゃないの ? |
| リアラ | あのね、ナナリー……。 |
| ロニ | いいか、ナナリー。落ちついて聞けよ。凶暴なお前はす~ぐ口や手や足や関節技が出る…… |
| ロニ | ぎゃーーーーっ ! |
| コーキス | す、すげえ、ナナリー様 !流れるようなサブミッション ! |
| カーリャ | これは完全にキマってますよぉ ! |
| ナナリー | あんたたち、なんか訳ありなんだね。まずはそっちの話を聞かせてよ。 |
| イクス | え、えっと……このままで ? |
| ナナリー | このままで。ほら、早く。 |
| ロニ | て、手短に……頼むぅぅ……。 |
| ナナリー | ――いいかい。今はとりあえず飲みこむよ。けど、完全に納得したわけじゃない。あんたらのこれからの行い次第ってことで、いいね ? |
| ミリーナ | はい、わかりました。ナナリーさん。 |
| ナナリー | あとそれ、やめてくんない ?そんな他人行儀じゃ、ますます溝が深まっちまうよ。 |
| ミリーナ | ……それじゃあ。――ありがとう、ナナリー ! |
| カイル | ……よかった。ナナリーが怒り出した時はどうなるかと思ったよ。ロニもお疲れ様。 |
| ロニ | ……技かけられ過ぎて、手足が伸びた気がするぜ……。 |
| ジューダス | 良かったじゃないか。随分と見てくれもよくなっただろう。モテるぞ。 |
| ロニ | やったぜ ! ……とでも言うと思ったか ! |
| リアラ | でも、ナナリーは本当に大丈夫かしら。 |
| カイル | そうだね……。エルレインが世界を作り変えようとしたときだってすごく怒ってたし。 |
| ジューダス | 弟を失うとわかっても、神の力に頼らず自分たちの力で生きて行くと決めた奴だからな。 |
| リアラ | なのに、このティル・ナ・ノーグは具現化や、世界の創造に、死者の復活が行われていてしかも、もう帰れないなんて……。 |
| ロニ | 平気だよ。あいつは強い。それに、いざと言う時は……。 |
| ナナリー | ねえ、ロニ !カイルたちも、こっち来てくれる ? |
| カイル | ロニ、いざと言う時は、何 ? |
| ロニ | あ ? 俺があいつを支えるってだけさ。今の俺はナナリーの補佐だからな。仕事じゃ仕方ねぇ。――ほら、行くぞ。 |
| ロニ | 待たせたな。 |
| ナナリー | もう、こっちは大事な話してんのに。 |
| ロニ | はいはい。で、ディムロスさんにはこっちの状況を伝えたのか ? |
| ディムロス | 今、報告を受けていたところだ。レジスタンスも、最近の帝国にはかなり苦慮しているようだな。 |
| ナナリー | あんたたちが来てくれて心強いよ。やっぱり、ディムロスさんたちが西の対帝国部隊をまとめてたんだね。 |
| シャルティエ | よく僕たちのことがわかったね。 |
| ナナリー | 最近、あっちの活動が活発になったって話だったから色々さぐりを入れてたんだ。 |
| ナナリー | そうしたら、新しく来たディムロスって優秀な奴が指揮を取ってるっていうじゃないか。それで手紙を出したのさ。 |
| シャルティエ | ……ああ、そう。やっぱり凄いですね。ディムロスは。ははは。 |
| ロニ | なあ、こんな所で立ち話もねえだろ。とりあえず俺たちの隠れ家に行こうぜ。 |
| ナナリー | 待って。状況が変わったって言ったろ ?ついさっき報せがあったんだよ。もうすぐ【領主】が街に入るって。 |
| ロニ | 本当か ! ? 予定よりも早いじゃねえか。 |
| ナナリー | そうなんだ。だから今すぐ領主の館へ行かないと。 |
| コーキス | それって偵察ってことか ? |
| ナナリー | ……まぁ、それもあるんだけどね。 |
| ディムロス | …………。 |
| カイル | はぁ……せっかくナナリーと会えたのに、ゆっくり話もできないのか。 |
| ナナリー | ごめんよ。けど、後でたっぷり時間をとるからさ。あたしの手料理つきでね !さ、行くよ。 |
| Character | 8話【6-9 ダリルシェイド】 |
| カーリャ | うわっ、なんですかこれ。すごい人だかりですよ ! |
| ジューダス | 新しい領主を見にきた野次馬だな。 |
| 警備兵 | おい、そこ、道を開けてくれ。領主様の馬車が通るんだ。 |
| ミリーナ | 警備の兵士も多いわね。 |
| イクス | ダリルシェイドに来るときに見た兵士はこのために駆り出されたのかもしれないな。――おっと、コーキス、はぐれるなよ ! |
| コーキス | 危ねぇ……うっかりしてたら迷子だぜ。こんなんで偵察なんてできんのか ? ナナリー様。 |
| ナナリー | むしろ好都合さ。これなら人込みに紛れて安全に領主の顔を拝めるだろ ? |
| リアラ | あっ、馬車が来たわよ。 |
| 警備兵 | 長旅、お疲れ様でございました ! |
| 領主 | …………。 |
| ? ? ? | …………。 |
| ジューダス | あれは……ウッドロウ ! |
| カイル | え、ウッドロウさん ! ? |
| ディムロス | アトワイト…… ! ? |
| シャルティエ | 一体、どうなってるんだ……。 |
| イクス | あの二人と知り合いなのか ? |
| カイル | うん。ウッドロウさんは俺の知ってる姿とちょっと違うけどね。でも、どうして帝国の領主なんて……。 |
| ロニ | なあ……あの二人、様子が変じゃないか ? |
| 警備兵 | すぐにお部屋へご案内いたします。広間には宴の準備も整っておりますので―― |
| 領主 | 余計なことはするな。私はすぐに休む。 |
| 警備兵 | も、申し訳ありません。ではご案内します。そちらの奥様のお部屋ですが…… |
| 護衛騎士 | 訂正を求める。私は彼の護衛騎士だ。 |
| 警備兵 | これは失礼いたしました ! では、こちらへ。 |
| ディムロス | ……あれはアトワイトではない。私にはわかる。 |
| カイル | ウッドロウさんも雰囲気が全然違う。もしかしたら……。 |
| ミリーナ | ええ。リビングドールにされているのかもしれないわ。 |
| ロニ | 魂だか心だかを入れ替えるって言うアレか ! |
| ナナリー | ……一旦引き上げだね。あたしたちの隠れ家へ行こう。 |
| ジョニー | そいつ、本当にウッドロウだったのか ? |
| イクス | はい。リビングドールにされてるようでここの領主になっています。 |
| ジョニー | ダリルシェイドの領主がウッドロウねえ……。帝国もセンスがないな。完全に配置ミスだぜ ? |
| カイル | ですよね ! ウッドロウさんにはハイデルベルグですよ ! |
| イクス | えっと……とにかく、こういう状況なのでファンダリア領の元となった世界のスタンさんたちにも応援を要請したいんです。 |
| ジョニー | わかった。すぐにそっちへ派遣するよ。しばらく待っててくれ。 |
| ロニ | スタンさんたちが来るのか !すげえな ! いや、やっぱりどうしよう……。 |
| ナナリー | 喜ぶのか動揺するのか、どっちかにしなって。 |
| ディムロス | ……ナナリーくん。君たちの様子から察するにウッドロウが領主としてここに来ることを知っていたのではないか ? |
| ナナリー | ……まあね。情報だけだったから実際に顔を見るまでは確信できなかったんだよ。 |
| ナナリー | でも、本当に本人だと確認できたらどうにか繋ぎをつけて、レジスタンスの活動を助けてもらおうと思ってたんだ。 |
| ロニ | けど、中身が別人じゃなぁ……。 |
| ? ? ? | おい、開けろ。 |
| 一同 | ! ! |
| ナナリー | シッ……。あんたたちは黙って。――誰だい ? |
| ? ? ? | 愛の使者だ。 |
| ナナリー | 間に合ってます。帰んな。 |
| ? ? ? | おかしい……ジェイドやカロルにはこれで通じてるのに……。 |
| イクス | あっ、もしかしてデクス……さん、ですか ?ジェイドさんに協力してるっていう。 |
| デクス | そうだよ。早く入れろ。見つかったらオレだって危ないんだ。 |
| ナナリー | 知り合いかい。悪かったね。ほら、入っとくれ。 |
| デクス | まったく……。領主の護衛をしてるときにお前たちを見かけたから苦労して後をつけて来たってのに。 |
| ミリーナ | ありがとうございます。ところでさっき、カロルって言ってましたよね ? |
| デクス | ジェイドからの指示で繋ぎが変わったんだよ。カロルたちの方が連絡とりやすいだろうってな。 |
| コーキス | そっか。カロル様たちは外回りが多いもんな。 |
| イクス | それで、何か情報があるんですか ? |
| デクス | ああ。手短に言うぞ。帝国では、人工知能を人工心核に宿したβ(ベータ)版の【リビングドールβ】が投入された。 |
| デクス | その第一弾となる四名の【β】のうちの二名がさっき着任した領主、ウッドロウとその護衛騎士となったアトワイトなんだ。 |
| イクス | 人工知能……ってことはあの二人は、誰かの人格でも魂でもないってことか ? |
| デクス | さあな。オレも詳しいことは知らないが魔鏡結晶から死の砂嵐にアクセスできなくなったから代替えだとか何とか……。 |
| デクス | デミトリアス付きの宮廷学者たちが開発したらしい。 |
| ミリーナ | でも、リビングドールであることには変わりがないのよね ? それなら、心核さえあれば今までの方法で二人を戻せるはずだわ。 |
| カーリャ | 前に、たくさん心核を持って帰りましたよね。あの中にお二人の心核があるかもしれませんよ ! |
| イクス | そうなると、二人をアジトに連れていかないとな。でも、どうすれば……。 |
| ディムロス | 潜入し、あわよくば制圧、といったところか。かなり無理のある作戦だな。……デクスくんこれには君の協力が不可欠となるが、どうだろう? |
| デクス | アリスちゃんを見つけるまでは協力すると約束したからな。愛の使者、デクス様に任せておけ ! |
| Character | 9話【6-10 芙蓉離宮】 |
| | アスガルド帝国 芙蓉離宮 |
| メルクリア | ……さても頭の痛い……。 |
| チーグル | ご気分がすぐれませんか ?でしたら、お休みになられてはいかがでしょう。 |
| メルクリア | いや、わらわの配下の戦力のことじゃ。 |
| メルクリア | 四幻将も今や、お前たち二人のみ。ディストは義父上の言いつけで眠らせたまま。ローゲは消え、器だったバルバトスは監獄塔の中じゃ。 |
| メルクリア | シドニーも兄上もバルドもいなくなった。セシリィはあの憎い鏡士に連れ去られたまま……。 |
| メルクリア | こうして、側近くに仕える臣下はもうお前たちしかおらぬ。……寂しくなった。 |
| リヒター | …………。 |
| 衛兵 | メルクリア様。デミトリアス陛下の使者がお着きです。お通ししてもよろしいでしょうか。 |
| メルクリア | 義父上の ? よい、通せ。 |
| ? ? ? | お目通りをお許し頂き感謝する。 |
| メルクリア | そなた……ティルキスか ? |
| ティルキス ? | そうだ。私はティルキスだ。 |
| メルクリア | …… ? まあよい。それで用向きはなんじゃ。 |
| ティルキス ? | グラスティンがディストを所望している。すぐに引き取りの準備を進めてもらいたい。 |
| メルクリア | なんじゃと ! ?あれは四幻将、わらわの臣下じゃぞ !それを差し出せとは無礼にもほどがある ! |
| ティルキス ? | これはデミトリアス陛下直々の命である。あなたに拒否権はない。 |
| メルクリア | 義父上が…… ? そんなはず―― |
| 衛兵 | お待ちください !今、メルクリア様は使者と謁見を―― |
| ? ? ? | その使者に用があると言っているんだ。通してもらう ! |
| リヒター | どうしたんだルキウス、お前はまだ療養中だろう。 |
| ルキウス | ティルキスと名乗る使者が来たと聞いたんだ。だから―― |
| ティルキス ? | ティルキスは私だ。何か用か ? |
| ルキウス | ティルキス…… ! 無事だったのか。ボクだ、ルキウスだ ! |
| ティルキス ? | 誰だ、お前は。 |
| ルキウス | えっ…… ? |
| ティルキス ? | こちらの話はまだ終わっていない。出て行け。 |
| ルキウス | ……そうか。これが噂のリビングドールか。君はティルキスまで、こんな風にしてしまったんだな。メルクリア ! |
| メルクリア | わ、わらわは知らぬ ! 確かにティルキスは兄上様が具現化した。だが、リビングドールにする前に兄上様はお倒れになったのじゃぞ ! |
| メルクリア | その時に、全ての計画は中断しているはずじゃ。リビングドールである訳が……。 |
| ティルキス ? | 私が問題なのか ?ならば早急に解決して話を進めよう。 |
| ティルキスβ | 私は【リビングドールβ】クンツァイトという機械人を解析して生み出された人工心核型リビングドールだ。 |
| メルクリア | 新しいリビングドールじゃと…… ! ? |
| チーグル | デミトリアスは我々の技術を盗んだというのか !……なんと狡猾な ! |
| ティルキスβ | 解決したようだな。ならば次の話にうつる。 |
| ルキウス | こっちの話はまだ―― |
| ティルキスβ | リヒター、アステルのことでサレが話したいことがあるらしい。一緒に来てくれ。 |
| リヒター | アステルだと ? サレの奴、一体何を……。 |
| ティルキスβ | 表で待っている。なんでもリヒターだけに伝えねばならない話だそうだ。 |
| リヒター | ……メルクリア、俺が戻ったらディストの件も含めて、今後の方針を考えるぞ。 |
| メルクリア | リ、リヒター……。 |
| リヒター | すぐ戻る。待っていろ。 |
| ティルキスβ | ディストは生命維持装置ごと運び出す。 |
| ティルキスβ | 用件は以上だ。これで失礼する。行くぞ、リヒター。 |
| ルキウス | ティルキス ! 待って――あっ ! |
| メルクリア | ルキウス ! 大事ないか ? 無茶をするから―― |
| ルキウス | 触るなっ ! |
| メルクリア | っ ! ! 何をする。ティルキスのことは知らぬと―― |
| ルキウス | 君は、ボクを利用しただろう……。兄さんを繋ぎ止めるために……自分のためだけに ! |
| メルクリア | ………………。 |
| チーグル | ルキウス、言葉が過ぎるぞ ! |
| メルクリア | ――いや…………その通りじゃ。わらわは…………。 |
| ティルキスβ | リヒター、こっちだ。 |
| リヒター | (アステルに何かあったら、今度こそ――) |
| ティルキスβ | 連れて来ました。――グラスティン様。 |
| リヒター | グラスティン ? |
| グラスティン | ご苦労。 |
| リヒター | なっ ! ? ――うっ ! |
| グラスティン | アステルは本当にいいエサだな。こんな簡単に釣れるとは。 |
| リヒター | 貴様……何をした……。 |
| グラスティン | お前は働き過ぎだ。ゆっくり眠るといい。これで俺も安心してジュニアに近づける。ヒヒヒ……ッ。 |
| リヒター | くっ…………意識…………が…………。 |
| グラスティン | ……やっと静かになったか。さて、リヒターを運ぶぞ。 |
| ティルキスβ | 承知しました。グラスティン様。 |
| Character | 10話【6-11 領主の館】 |
| イクス | ――スタンさんとルーティが到着したよ。 |
| ルーティ | おっつかれー ! |
| スタン | 待たせたな、みんな ! |
| ロニ | ……スタンさん。それにルーティさん…… ?……はは……すげえ。俺より年下かよ……。 |
| ルーティ | あんたたちが、カイルの元の世界のお仲間 ? |
| ロニ | はい、そうです……ルーティさん……。俺、ロニです……。 |
| スタン | 俺はスタンだ。カイルたちを助けてくれてたんだって ?俺がいうのも変だけど、ありがとう、ロニさん。 |
| ロニ | ロ、ロニでいいです! 俺のほうこそ……スタンさんには……スタンさんには……っ……。 |
| スタン | どうしたんだロニ ?……泣いてんのか ? |
| ロニ | い、いやいやいや ! ルーティさんが美人だからさ !きっと将来はきれいな花嫁になるんだろうなーなんて想像したら色々こみあげて ? みたいな―― |
| ルーティ | は ! ? ちょっと、こいつなに言ってんの ! ? |
| ナナリー | 済まないね。なんか悪い物でも食べたみたいで。あたしはナナリー。こいつにはよーく言って聞かせるから。 |
| ロニ | いででででででっ !お前、言ってることと、やってることがーーーーっ ! ! |
| スタン | カイルの仲間は賑やかだな !けど、ロニってなんか俺たちのこと……。 |
| カイル | あー、スタンさん !リオンさんは来ないんですか ? |
| スタン | ああ。リオンのやつ、ジューダスがいるなら自分は行く必要ないって言って、来なかったんだよ。 |
| ルーティ | まったくあいつったら……。いくらジューダスとそっくりだからって片っぽがいりゃいいって訳じゃないのにさ。 |
| 一同 | ! ! |
| カイル | まさか、リオンさんは全部……。 |
| リアラ | ええ、多分。……いいえ、きっとそうよ。 |
| ロニ | おいジューダス。このままでいいのか ? |
| ナナリー | ……ジューダスに言ったって仕方ないだろ。気づいちまったもんはさ。それともあんたたち、もしかしてお互い、もう……。 |
| ジューダス | …………。 |
| リアラ | ……そう、だったの。 |
| イクス | ……ごめん。俺も何となくそうじゃないかと思ってたんだ……。ってことはカイルは……。 |
| ミリーナ | ええ。今までも言葉の端々から感じてはいたけど……。どうりで似ているはずよね。髪も、目の色も……。 |
| ルーティ | ……何よ、この空気。カイルが何 ? リオンとジューダスがなんだって―― |
| ルーティ | というか……あの剣捌き……。何もかもが……あいつに似すぎてるわよ……。 |
| ルーティ | ! ! |
| ルーティ | ……ジューダス、まさかあんたは……。 |
| ジューダス | …………。 |
| ルーティ | え……何、なんで否定しないのよ……。 |
| ルーティ | それって、つまりコレットとマルタの世界とかベルベットとロゼの世界とか……。ミラとエルの世界とかみたいな……。 |
| ルーティ | ――嘘。待って。じゃあ、カイルが似てるってのは……。 |
| スタン | …… ? |
| カイル | ウソでしょ ! ? 母さんまで ! ? |
| ルーティ | 誰があんたの母さんよ。失礼しちゃうわね。 |
| ルーティ | …………まさか。 |
| スタン | なんだよ、ルーティ。そんなに俺の事を睨みつけて。 |
| ルーティ | ちょっと待って、来ないで !ああああああああっ ! ちょっと待ってーーーー ! |
| ソーディアン・アトワイト | ルーティ、落ち着いて。理由はわかるけど。 |
| ルーティ | わからないでいいわよ !うう、胸が……頭がクラクラする……。 |
| スタン | 大丈夫か、ルーティ。顔が真っ赤だぞ ! |
| ルーティ | ダメ、あんたが来たら悪化する ! |
| スタン | なんだよ、心配してやってるのに……。 |
| ソーディアン・ディムロス | スタンよ、今は逆効果だ。 |
| ミリーナ | ルーティ、落ち着いて ?多分、デリケートな問題だし今の勢いで話したら、色々と誤解が生じるわ。 |
| ルーティ | そ、そうよね。誤解って線もあるじゃない !あたしったら。アッハハハ !気のせいよ、気のせい。気のせいだから。 |
| ソーディアン・アトワイト | ……道のりは長そうね。 |
| ミリーナ | この件は後日、改めて話し合いましょう ?みんな、それでいいですよね。 |
| ジューダス | ……ああ。そうしてくれ。 |
| ディムロス | はっきりさせた方がいいと思うが……。この後の作戦に影響を及ぼすようなら致し方あるまい。 |
| コーキス | なんか俺たち……色々とおいてけぼりな感じだな。カイル様たちとスタン様たち、何かあったのか ? |
| イクス | はは……。いいんだよ。それはまたその内にな。 |
| シャルティエ | その内に、か。僕なんて、ディムロスたちといるときはいつもこうやって蚊帳の外で……。 |
| カーリャ | シャルティエさま、頑張ってたんですねぇ……。 |
| イクス | ――いけない、そろそろ時間だ。みんな、出発の準備をしよう。 |
| イクス | ……ええと、デクスさんが見張りを担当している通用門っていうのは……。 |
| デクス | おいこっちだ ! 今のうちに通れ。 |
| イクス | デクスさん ! ありがとうございます。 |
| デクス | 領主の部屋の場所は知らせた通りだ。オレが出来るのはここまでだからな。後は自分たちでなんとかしてくれよ。 |
| ディムロス | 君の尽力に感謝する。では、これより作戦開始だ。――全員、必ず生きて帰るぞ ! |
| デクス | 格好いい台詞だな ! それ !いずれ、アリスちゃんと再会したらオレも言いたいぞ。 |
| デクス | ――アリスちゃん、必ず生きて帰るぞ !……なんて――あ、もう誰もいない……。 |
| Character | 11話【6-15 領主の館】 |
| ディムロス | ……この部屋だ。私が中を確認する。シャルティエはもう一名と扉の周囲を警戒。他の者は私が合図をしたら踏み込め。 |
| シャルティエ | 了解。えっと……。 |
| ジューダス | 僕が残る。行くぞシャルティエ。 |
| カイル | ……中はどうですか、ディムロスさん。 |
| ディムロス | ……鏡士の二人、来てくれ。あの装置はなんだ ? |
| ミリーナ | あれは魔鏡装置だわ。でも何のための……。 |
| イクス | 装置に繋がってるの……ウッドロウさんだ…… ! |
| ミリーナ | アトワイトさんはウッドロウさんの治療をしているのかしら。あの装置で脈を診ているみたいだけど……。 |
| アトワイトβ | ……誰だ。 |
| ディムロス | 気づかれた、行くぞ ! |
| アトワイトβ | なんだ、お前たちは。 |
| ディムロス | アトワイト……。 |
| ルーティ | あれがアトワイト……。あんたの姿なのね。 |
| ソーディアン・アトワイト | ええ。でも肉体だけよ。「私」じゃない。ディムロスも、わかってるわね。 |
| ディムロス | くっ…… ! |
| カイル | ウッドロウさん ! |
| ウッドロウβ | …………。 |
| リアラ | なんの反応もないわ……。 |
| ナナリー | なんだいありゃ、まるで抜け殻じゃないか。あんな風にしちまうなんて ! |
| アトワイトβ | 出ていけ。心核のメンテナンス中だ。 |
| ルーティ | ……アトワイト、あたし本気で行くけど、いいわね。 |
| ソーディアン・アトワイト | ええ、ルーティ。全力でやりなさい。ディムロス、あなたたちもよ ! |
| ディムロス & ソーディアン・ディムロス | 承知した ! |
| ソーディアン・ディムロス | 行くぞ、スタン ! |
| スタン | うおぉぉぉおっ ! |
| アトワイトβ | ……これが多勢に無勢というものか。なるほど。 |
| ロニ | なんだよ、観念したか ? |
| アトワイト | ああ。 |
| ロニ | マジかよ ! ? ま、まあこっちだってこれ以上その体を傷つけるつもりは―― |
| アトワイト | ……人工心核データ抽出完了。撤退する。 |
| コーキス | 窓の向こうに……消えた ! ? |
| イクス | しまった、窓の下に転送魔法陣を仕込んでたのか…… ! |
| ウッドロウβ | うっ………。 |
| スタン | ウッドロウさん ! しっかり ! |
| ミリーナ | このままじゃ危ないわ。早く心核の治療をしないと。 |
| イクス | みんな集まってくれ。転送ゲートで、一旦アジトへ戻るぞ ! |
| ジュニア | ――リヒターは、僕のところには来ていないよ。 |
| ルキウス | ボクも、あれから見ていない。 |
| メルクリア | そんな……本当にリヒターはどこにもおらぬのか ! ?すぐに戻ると言うたのに……。 |
| チーグル | ……やはり、ティルキスがそのままデミトリアス帝の元へ連れていったのかと。 |
| メルクリア | 義父上……。わらわからリヒターまで取りあげるのか ! |
| ジュニア | メルクリア……。 |
| メルクリア | ……嫌じゃ。渡さぬぞ。今よりわらわは、ティルキスを追う ! |
| チーグル | では、私もお供いたします。 |
| ジュニア | 僕も一緒に行くよ。メルクリア。 |
| メルクリア | チーグル、ジュニア……。わらわは義父上に利用されているだけかもしれぬのにこうも尽くしてくれるのか。 |
| メルクリア | ならば、尽くされる者は応えねばならぬな。……わらわの臣下は、この手で守る。 |
| ルキウス | メルクリア……ボクは……。 |
| メルクリア | ……ルキウス。お前にはだまし討ちのようにしてラムダを背負わせ、苦しめた。……本当に済まなかった。 |
| メルクリア | わらわはまだわかっていなかった。道具として使われることがどれほど心を傷つけるのか。義父上は……恐らくわらわを……。 |
| メルクリア | ………………。 |
| メルクリア | ……自らが体験せねばわからぬのは愚か者。なれど、愚かと知って振る舞いを変えられぬは恥知らず故、そなたにも頭を下げねばならぬ。 |
| メルクリア | カイウスの元へ行くのなら止めはしない。二人が共にあるのが、本来の姿じゃ。……お前にも……寂しい思いをさせたな。 |
| ルキウス | かつてのボクも、そうだった……。ただ盲目に信じ続けて道を誤った……。 |
| メルクリア | ルキウス……? |
| ルキウス | 行き倒れていたボクやカイウス兄さんやルビアを助けてくれたのはきみだ。その分の恩は返しておく。 |
| ルキウス | だから、必ずリヒターを取り戻すんだ。……ボクも協力する。 |
| メルクリア | ルキウス………… !………………ありがとう。 |
| イクス | ……光った ! これがウッドロウさんの心核だ ! |
| ミリーナ | よかった……手持ちの中にあって。 |
| カイル | さすが王様、運が強いなぁ。 |
| シング | それじゃオレ、スピルリンクで心核を戻してくるよ。あと三人入れるけど、誰が来る ? |
| スタン | それじゃ、俺とカイルとルーティで―― |
| ルーティ | あ、あたし、ちょっと用があったんだ !そっちで何とかしてくんない ? じゃあね ! |
| ミリーナ | ルーティったら……。 |
| イクス | それじゃ、スタンさんとカイルとシングでお願いできるかな。 |
| ロニ | 待ってくれ、俺が行く ! 絶対行く ! 死んでも行く ! |
| イクス | ロ、ロニさん…… ? |
| ロニ | なあ、いいだろう ? カイル、スタンさん。 |
| スタン | 別に、駄目なんて言ってないさ。一緒に行こうぜ、ロニ ! |
| Character | 12話【6-15 領主の館】 |
| ロニ | ……驚いたぜ。人の心に入れるなんてよ。でもどうせだったら、美女の心の中に入ってみたかったぜ。さぞかし綺麗なんだろうなぁ。 |
| シング | 美人だからスピリアがきれいってわけじゃないよ。あ、でもコハクは、スピルーンも綺麗だったなぁ。 |
| ロニ | なに ! ? コハクさんという美女がいるのか !なるほどなるほどぉ ? 後で紹介しろよ ! |
| カイル | ロニ、ダメだよ。コハクにはシングがいるんだから。 |
| ロニ | なんだ、タダの彼女自慢か……。お幸せそうで何よりだな。 |
| シング | ありがとう、ロニ ! |
| ロニ | くっ……まっすぐな目で見やがって……。 |
| スタン | シング、あそこに見えるのが人工心核か ? |
| シング | そうだよ。あの人工心核とこのウッドロウさんの心核を入れ替えるんだ。 |
| シング | これで完了っと。……このスピルメイズかなり狭くなって荒れてる感じがするな。 |
| スタン | ウッドロウさんの精神にかなり負担がかかってたってことか……。 |
| カイル | アトワイトさんも同じなんですよね。早く元に戻してあげないと……。 |
| ロニ | なあシング、疑うわけじゃねえけどさこれで本当にウッドロウさんは元に戻るのか ? |
| シング | バルバトスの時も成功してるし大丈夫さ。 |
| ロニ | バルバトス ! ? あいつもこの世界にいるのかよ ! ?……こんな所まで、くそっ…… ! |
| ロニ | シング ! なんであんな奴、助けたんだ ! |
| シング | それが正しいと思ったからだよ。 |
| ロニ | お前は知らないからだ !あいつはな ! あいつのせいで…… ! |
| スタン | ロニ ! シングが悪いわけじゃないだろう。その場にいた、みんなが選んだことだ。 |
| ロニ | ……悪かったな、シング。つい……。 |
| シング | いいんだ。ロニたちの敵なんだろう ?それを助けちゃったら、怒るのは当然だ。 |
| カイル | 大丈夫だよ、ロニ。確かにこの世界でもバルバトスが暴れたって話も聞いた。 |
| カイル | けど、あいつが次に何かしようとした時にはオレが全力で倒す ! 絶対に ! |
| カイル | そのために、スタンさんにも稽古をつけてもらってるんだ。 |
| スタン | ああ。すごいぞカイルは。どんどん強くなるんだぜ !そのうち俺が相手じゃ、もの足りなくなるかもな。 |
| カイル | そんなことないです ! でも……へへへ。スタンさんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ。 |
| ロニ | ……そうか。良かったな、カイル。俺はずっと、お前とスタンさんのこんな姿を……。 |
| カイル | ロ、ロニ ! スタンさん、あのね―― |
| スタン | もういいって、カイル。 |
| カイル | ……え ? |
| スタン | 二人はさ、俺たちの世界の未来から来たんだろう ? |
| 二人 | ! ! |
| スタン | あの時ルーティも言ってたけど、ロイドやエミルとかスレイとベルベットとか、ジュードとルドガーたちも。あんなのが周りにゴロゴロいるんだぜ ? |
| スタン | だから……カイルたちを見ててもしかしたらって、ずっと思ってたんだ。 |
| シング | スタンって、勘がいいんだな。そういうの気にしてないと思ってたからちょっと意外だったよ。 |
| スタン | 俺だってバカじゃないって。これだけ色々と重なったら、そりゃ気がつくよ ! |
| スタン | それにさ……ジューダスだって……。…………………。 |
| カイル | スタンさん……。 |
| スタン | いや……、今日はここまでにしよう。 |
| スタン | もうちょっと聞きたいこともあったんだけどさ。それについてはルーティが嫌がってるみたいだし今はやめとくよ。――さ、戻ろうぜ ! |
| カイル | スタンさん……もしかして……。 |
| ロニ | カイル、このまま帰っちまっていいのかよ。 |
| カイル | ……スタンさん ! |
| スタン | 何だ、カイル ? |
| カイル | いつか……ロイドがクラトスさんのことを呼ぶみたいにスタンさんのことも呼んでいいですか ? |
| ミリーナ | お帰りなさい。みんな ! |
| カイル | ただいま ! ウッドロウさんの心核、戻してきたよ。 |
| イクス | 良かった。後は、ウッドロウさんの回復を待つばかりだな。 |
| ナナリー | ご苦労さん ! どうだった ? 心の中ってやつは。 |
| ロニ | いやあ、中々衝撃的な経験ができたぜ。な ! |
| カイル | うん ! |
| ナナリー | なんだい、嬉しそうだね。こっちもいい報せがあるよ。ね、ディムロスさん ! |
| ディムロス | ああ。我々、対帝国部隊とレジスタンスは正式に同盟を結ぶことになった。 |
| カイル | そうなんだ ! これでナナリーたちの活動も、やりやすくなったね ! |
| ナナリー | それなんだけどさ、レジスタンスも含めた総指揮をディムロスさんが引き受けてくれることになったんだよ。 |
| ロニ | すげえじゃねえか。天地戦争の英雄が指揮をとるなんてよ ! |
| ディムロス | その代わりといってはなんだが君たちは、イクスくんたちに協力をしてやって欲しい。カイルくんのためにもな。 |
| ロニ | 元からそのつもりだぜ。だろ、ナナリー。 |
| ナナリー | 奇遇だね。あんたと気が合うとは。ま、そんなわけだからさ。これからもよろしく頼むよ、イクス、ミリーナ。 |
| イクス | ああ、大歓迎だよ。改めてよろしく、ロニさん、ナナリー ! |
| ミリーナ | ナナリーみたいな可愛い人が力を貸してくれるなんて心強いわ ! |
| Character | 12話【6-15 領主の館】 |
| カーリャ | ルドガーさま、エルさま、いらっしゃいますかー ? |
| エル | あ、カーリャ、いらっしゃい !ルドガー、イクスたちが来たよ。 |
| ルドガー | どうぞ入ってくれ。今、お茶をいれるから。 |
| ミリーナ | いえ、気を使わないでください。 |
| イクス | はい、これ。エルに渡してくれって頼まれたんだ。 |
| エル | 手紙…… ? 開けていいよね ?えっと……「エルへ。元気ですか。パパは……」これ、パパ ! ? パパからの手紙 ! ? |
| ルドガー | エルの父親 ! ? この世界にいるのか ! ? |
| イクス | そうです。その手紙は、救世軍にいるヴィクトルという人から預かりました。 |
| ルドガー | ヴィクトル……。エル、俺も一緒に読んでいいか ? |
| エル | うん。ルドガーはアイボーだから、特別 ! |
| ルドガー | …………。 |
| エル | ねえルドガー、これ、本当かな。パパ、本当に来てくれるかな ? |
| コーキス | エル様、手紙には何て書いてあったんだ ? |
| カーリャ | コーキス、それ聞いちゃうんですか ?確かに気になりますけど。 |
| エル | いいよ。教えてあげる。 |
| エル | あのね、パパは、エルの大切なともだちを助けたりエルと【本物の家族】として暮らすために頑張ってるから、まだ会えないんだって。 |
| エル | でも、今は離れていても必ず迎えに来るって、書いてあったんだ。 |
| コーキス | そうか。良かったな、エル様。 |
| エル | うん。……でも、本当はすぐに会いたい。ねえ、ちょっとだけでも会いにいっちゃダメかな。キューセーグンにいるんでしょ ? |
| カーリャ | それは……。 |
| ミリーナ | エルのお父さんが助けようとしている「エルの友達」はエルの知ってるミラさんのことなんですって。二人が会えるようにって、頑張ってるのよ ? |
| エル | 本当 ! ? だったら待ってる !パパとミラが、いつ帰ってきてもいいように。 |
| イクス | ああ。エルがここで待ってるってだけでヴィクトルさんは心強いと思うよ。 |
| エル | うん ! でもさー、パパももう少しわかりやすく書けばいいのに。そしたらエルも会いに行くなんていわなかったよ。 |
| エル | ここの「本物の家族として暮らす」っていうのも訳わかんない。これじゃエルとパパが本物じゃないみたいだし。 |
| ルドガー | …………。 |
| イクス | どうしたんですか、ルドガーさん。 |
| ルドガー | あ、いや……。ちょっと、びっくりしたんだ。いきなりエルの父親が出てきたから……。 |
| エル | 大丈夫。パパはすっごく優しいから。パパが来たら、ルドガーのことショーカイするね。エルのアイボーですって。 |
| ルドガー | ああ、楽しみにしてるよ。 |
| ルドガー | (【本物の家族】……本物として暮らす…… ?まさかエルは、分史世界の……) |
| ? ? ? | ――あ、タルロウ ! そこ汚れてるから拭いておいて。それからお茶をお願い。あと洗濯とトイレ掃除と……。 |
| ? ? ? | ハロルド、そんな一気に命令したらタルロウが混乱しますよ。 |
| ハロルド | へーきへーき ! 私が改造したのよ ?この程度、ちゃちゃっとやってくれるわよ。ほら、もうお茶が出て来たわ。 |
| ? ? ? | 本当だ。ありがとうございます。あ、美味しい……。 |
| ハロルド | そのタルロウにはね、クンツァイトっていう機械人の機能の一部をコピーして組み込んであるの。あれはすごいわよ ? 家事全般において万能だから。 |
| ティルキスβ | ハロルド、グラスティン様から支給された次のリビングドールβの被験者、リヒターだ。 |
| ? ? ? | ……また犠牲者を増やすつもりですか ?こんなことはもうやめるべきです。 |
| ハロルド | はいはい。イオンは黙ってて。ティルキス、そいつ、そこに寝かせておいて。 |
| イオン | ハロルド……この実験を続ければ悲しむ人が増えるだけですよ ? |
| ハロルド | ふうん……レプリカと言っても性格はあの被験者イオンの方と全然違うんだ。不思議よねぇ……。 |
| イオン | …………。 |
| | セールンド カレイドスコープの間 |
| ? ? ? | ゲフィオン……。この状態では話をすることもままならぬか。 |
| ? ? ? | これは……魔鏡の護符か ? |
| ? ? ? | …………そこの人ならざる者よ。封印が弱まっている。この世界に残された時間は、あまりないぞ。 |
| ? ? ? | やはり、そうですか……。 |
| ? ? ? | 貴様は知っているか。この閉じた世界から脱出する術を。 |
| ? ? ? | それは……どれだけ足掻こうとも不可能です。人体万華鏡となったミリーナ様なら何かご存じだったかも知れませんが。 |
| ? ? ? | 人ならざる者。貴様の名は ? |
| ? ? ? | ……カーリャ。ミリーナ様の鏡精だった者、です。 |
| | to be continued |