| Character | 1話【7-1 閑散とした街道】 |
| ティア | ……それじゃあ、まだ、ルークの体に悪い影響は出ていないんですね。 |
| ミュウ | みゅうぅぅ ! ご主人様大丈夫ですの ?よかったですの ! |
| ジェイド | ええ。ですが―― |
| ルーク | ……うん。わかってる。ローレライがこの世界に具現化されたなら、第七音素も具現化されてる可能性があるもんな。 |
| ジェイド | やれやれ。あれほど説明したのに相変わらずその程度の理解ですか。第七音素そのものが具現化されることは、ほぼありません。 |
| ジェイド | エンコードの性質上、この世界の法則に合うよう置き換えられる筈です。 |
| ジェイド | そして、あなたがこの世界に具現化されている以上第七音素はすでに何らかのエンコードを施された上でこの世界に具現化されているんです。 |
| ルーク | ……またわからなくなってきたぞ。要するに俺が第七音素で構成されたレプリカだから、第七音素的な奴が具現化されてる事は確か……ってことだっけ。 |
| ティア | ……大佐。 |
| ジェイド | ……ええ。 |
| ジェイド | ルーク。この話はまた―― |
| ルーク | わかってるよ。どうせ俺はバカだから、また今度説明するって言うんだろ。 |
| ルーク | でもローレライが具現化されたから、すぐ俺の音素が乖離する……って訳じゃないのは、ちょっと安心した。俺……まだ消えないんだって……。 |
| ティア | ルーク ! 後ろ…… ! |
| ガイ | ……へぇ。やっぱりそういうことか。 |
| ルーク | うぇ ! ? みんな ! ? |
| アニス | ……嘘でしょ ? ルークも消えちゃうの…… ? |
| ルーク | あ……あの……。 |
| ナタリア | 隠そうとしても無駄ですわ。ローレライが具現化されたと聞いてから、ルークはずっとふさぎ込んでいるようでしたもの。 |
| ナタリア | 何かあったんだと……すぐわかりましたのよ。 |
| アッシュ | ジェイド。話せ。 |
| ルーク | ま、待ってくれ。俺が……話す。ちゃんと話すから。 |
| アッシュ | つまり貴様は、元の世界で音素乖離を引き起こし消えかけていた。それがこの世界に具現化された時環境の変化によって止まっていた。そういうことだな。 |
| ルーク | ……うん。まぁ、そういうこと……だよな ?ジェイド ? |
| ジェイド | ええ。ですが、今は違います。ローレライが具現化されたのなら、ティル・ナ・ノーグの環境はオールドラントに近づいた。 |
| ジェイド | まだ音素乖離は始まっていませんが注意深く観察する必要があります。 |
| アッシュ | ……ちっ。どこまでも手のかかるレプリカだ。 |
| ルーク | ……ごめん。 |
| アッシュ | 誰が謝れと言った ! |
| ナタリア | アッシュ ! あなたもおかしいですわよ。ローレライの具現化のことを聞いてから、この世界に具現化されたばかりの頃のあなたに戻ってしまったみたいで……。 |
| アッシュ | ………… ! |
| ジェイド | それはそうでしょうねぇ。アッシュはアッシュで自分が消えると思い込んでいるようですから。 |
| アッシュ | ………………。 |
| ナタリア | え ? どういうことですの、アッシュ ! ? |
| アッシュ | ――死霊使い(ネクロマンサー)、俺は消えるのか。 |
| ジェイド | この世界はオールドラントの条件とあまりに違います。まして未来のことは、何も断定出来ません。 |
| ジェイド | ですが、現時点において、被験者であるあなたの生命が脅かされることはないでしょう。 |
| ジェイド | ローレライは精霊として具現化された。もはやオールドラントでの第七音素研究は参考資料でしかなくなりました。 |
| ジェイド | あなたが元の世界で抱いた焦りは少なくともここでは杞憂と言える。 |
| ジェイド | 詳しい説明は省いて構いませんね ?どうせ話したところで私以上にフォミクリーに詳しくはなれないのですから。 |
| アッシュ | 相変わらず、いちいち癪に障る言い方をする奴だな。だが、まだ生きられるというならそれでいい。お前が俺を安心させるために嘘をつくとも思えないしな。 |
| ガイ | なぁ、ルークが消えることを心配していたのはわかったが、アッシュはどうして自分が消えると思ったんだ ? |
| アッシュ | ……話せば長くなる。現状が変わらないなら説明しなくてもいいだろう。 |
| ナタリア | アッシュ……。 |
| アッシュ | 大丈夫だ、ナタリア。苛ついてすまなかった。……ルークも。 |
| ルーク | えぇ…… ? 槍でも降ってくるんじゃないか ? |
| アッシュ | ……フン。それより、ジェイドの口ぶりだとルークの方は楽観視できない、という風に聞こえたが。 |
| ジェイド | ええ。否定はしません。だからこそ何とかして精霊ローレライと接触したい。 |
| ジェイド | この世界では、音素はキラル分子に置き換えられたと考えられます。これは譜術が魔術として定義されたことからも明らかだ。 |
| ジェイド | 問題は音素――特に第七音素が持っていた性質や属性はどうなったのか……ということです。 |
| アニス | 第七音素はこの世界だと治癒術の性質に似てますよね ? |
| ジェイド | ええ。ですが、音素の性質はそれだけではない。キラル分子が持つ属性の一つとなったのかこの世界独特の概念であるアニマに取り込まれたのか。 |
| ティア | ローレライが精霊として具現化されたと言うことはその際にレイヤード処理がされて、今までの法則が変わっている可能性があるらしいの。 |
| ガイ | レイヤード処理って言うのは、具現化の上書き処理……だったか。ややこしい……。 |
| ガイ | つまり、ルークの今後を調べるためには第七音素の性質がどう変わったか調べる必要があってその為にはローレライに会うのが手っ取り早いのか。 |
| イクス | ルーク ! あの……大変なんだ。すぐに作戦会議室に来てくれ。 |
| ルーク | イクス。大変って……何があったんだ ? |
| イクス | オールドラント領に領主が到着したってカロルたちから報告があって。それが、はぐれ鏡映点リストに名前のある人なんだ。 |
| イクス | 【イオン】って名前の……。 |
| アニス | ! ? |
| Character | 2話【7-1 閑散とした街道】 |
| メルクリア | ――遅い !義父上はいつまで待たせるおつもりなのじゃ ! |
| チーグル | メルクリア様。このままデミトリアス帝を信じてよいものでしょうか。 |
| メルクリア | わかっている。確かに近頃の義父上はわらわへの隠し事が多い……。 |
| 二人 | ………………。 |
| メルクリア | しかし、生死の境をさまよっていたわらわを助けたのは義父上じゃ。それはわらわも覚えている。 |
| メルクリア | わらわの傷口を押さえながら、死んではならぬと何度も声を張り上げておられた。義父上は心優しき方だ。ビフレスト皇国にとって仇には違いないが……。 |
| チーグル | いえ、その優しさが問題です。確かにデミトリアス帝が優しさを持ち合わせていることは事実なのでしょう。ですが、優しい人間が善人であるとは限りません。 |
| チーグル | ナーザ様も、デミトリアス帝を「優しい毒」と仰っていました。 |
| メルクリア | 優しい……毒 ? どういう意味じゃ。 |
| アスガルド兵 | 失礼致します。デミトリアス陛下がお呼びです。謁見の間へどうぞ。 |
| メルクリア | ! |
| デミトリアス | 待たせたね、メルクリア。急ぎの用だと言っていたが……。 |
| メルクリア | リヒターをわらわに返して下され。 |
| デミトリアス | ……やはりその話か。 |
| メルクリア | 何故じゃ。四幻将はわらわの元に残して下さる約束じゃ !ディストを連れて行くなら、せめてリヒターは……。 |
| デミトリアス | すまない。テセアラ領へ領主を派遣するにあたって付き人を用意する必要があったんだよ。 |
| デミトリアス | 必ずしも同じ世界の人間を……と決まっている訳ではないんだが……。 |
| メルクリア | ならば、リヒターでなくてもいいではありませぬか ! |
| リヒター ? | 私を呼んだか ? |
| メルクリア | おお、リヒター ! 無事であったか ! |
| リーガル ? | 知り合いか、リヒター。 |
| リヒター ? | いや、初めて会う子供だ。 |
| メルクリア | リヒター…… ? |
| ジュニア | ――まさか、リヒターさんをリビングドールβに ! ? |
| メルクリア | ! ? |
| チーグル | ………………。 |
| リヒターβ | そうだ。私は領主として調整されたリーガルの付き人として調整されたリビングドールβだ。 |
| メルクリア | ……な……。 |
| リヒターβ | どうした ? 何か問題でもあるか ?お前の後ろにいるのも旧式だがリビングドールだろう ? |
| メルクリア | ……あ。……チーグル……。 |
| チーグル | ……メルクリア様。その者の言う通りです。私は―― |
| グラスティン | ――失礼。やはりデミトリアス陛下は甘すぎるようだ。 |
| デミトリアス | グラスティン ! 私は……。 |
| グラスティン | チーグルとジュニアを確保しろ ! |
| メルクリア | 何をする ! ? |
| リヒターβ | 動くな、子供よ。 |
| リーガルβ | グラスティンの指示だ。 |
| メルクリア | リヒター ! |
| ルキウス | メルクリア。無駄だ。ティルキスと同じなんだとしたらどんな言葉もあいつには届かない。 |
| メルクリア | 義父上 ! チーグルとジュニアまでわらわから奪うおつもりか ! |
| グラスティン | ヒヒヒ……。大義のためだ、皇女よ。チーグルはエフィネア領の領主の体として使う。 |
| グラスティン | 心配しなくても、チーグルはリチャードの心核に寄生しているから、心核を保管しておけば消えることはないさ。 |
| グラスティン | それにジュニアは元から帝国のために具現化を請け負っていたんだ。政治の中心であるアスガルド城にいるのが道理だろう ? |
| グラスティン | 連れて行け ! |
| メルクリア | チーグル ! ジュニア ! ! |
| チーグル | メルクリア様 ! 私のことはご心配なく !必ず、メルクリア様の元に戻ります ! |
| ジュニア | 僕も ! メルクリア、待ってて ! |
| デミトリアス | グラスティン……。もっと違うやり方はなかったのか ?メルクリアはいい子だ。話せばきっとわかってくれる。それをわざわざこんな風に傷つけるような……。 |
| メルクリア | ……優しい……毒。 |
| デミトリアス | ……ん ? どうしたんだい ? メルクリア。 |
| メルクリア | ………………。 |
| ルキウス | メルクリア。ひとまずここを出よう。いいな ? |
| グラスティン | ……おやぁ ! これは驚いた。ここにもこんなに綺麗な黒髪の坊やが……。ヒヒヒヒ ! |
| メルクリア | 貴様……。その汚らわしい目をこの者に向けるな !ルキウスにまで手を出すというなら、わらわが―― |
| デミトリアス | グラスティン ! 欲しいものは与えたはずだ。 |
| グラスティン | ヒヒ……。ああ、限りなく本物に近いフィリップを手に入れたんだ……。他の代用品はいらないよ。今は、ね……。 |
| メルクリア | ――義父上。わらわはこれで失礼致します。 |
| デミトリアス | メルクリア、すまない。この埋め合わせは必ずするよ。 |
| メルクリア | 結構じゃ。義父上がそのおつもりなら……わらわも自由にやらせてもらう。帰るぞ、ルキウス。 |
| ルキウス | メルクリア。どうするつもりだ。 |
| メルクリア | ……リビングドールは、ビフレスト復活のための技術研究に過ぎないのじゃ。そのことは義父上もご存じない。 |
| メルクリア | 知っているのはわらわとシドニーと……。 |
| メルクリア | ………………。 |
| ルキウス | メルクリア ? |
| メルクリア | ……わらわは知らなかった。親しい者がわらわを忘れ別人となる事が、これほど悲しいものだと。度し難い未熟さよ。 |
| メルクリア | なれど、未熟故にできることもあると気付いた。 |
| メルクリア | リヒター、ジュニア、チーグルとリチャードそれにティルキスとあのリーガルなる者も。わらわが必ず取り戻す。どんな手段を用いてもな。 |
| ルキウス | 何をするつもりなんだ ? |
| メルクリア | リビングドールならぬリビングシティじゃ。具現化した街に……ビフレストを宿らせる。 |
| メルクリア | さすればビフレストの兵力が甦り、義父上やあの忌々しいグラスティンとやらに対抗できよう。 |
| ルキウス | まさか、この帝都をリビングシティにするつもりか ?だとしたら、それは間違っている。大規模なリビングドールを作ってどうするんだ。 |
| メルクリア | ……うむ。帝都や既に存在する街を使ってはリチャードやティルキス、リヒターらの尊厳を奪ったことと何も変わらぬ。 |
| メルクリア | そこまで愚かなことはせぬつもりじゃ。ひとまず芙蓉離宮で計画を話す。共に来てくれるか ? |
| ルキウス | そうだな。……君は誰かがみていないと暴走するかも知れないからね。 |
| メルクリア | うむ。わらわは未熟じゃからな。世話をかける。 |
| Character | 3話【7-2 ダアト1】 |
| コーキス | おっ。なんか、遠くに見えてきた。あそこにダアトって街があるのかな ? |
| ティア | 何だか不思議な気分ね。ダアトという名前の街がオールドラント領の領都だなんて……。 |
| ミリーナ | 確かダアトというのはティアたちの世界の宗教都市……だったわよね ? |
| ティア | ええ。私やアニスが所属しているローレライ教団の総本山がある街なの。ここでは違うのでしょうけど。 |
| ガイ | ついこの間のウッドロウのことといい今回のことといい、帝国は領土の支配力を強めることに躍起になってるみたいだな。 |
| ナタリア | ウッドロウさん……まだ目が覚めないそうですわ。ルーティたち、心配でしょうね。 |
| アッシュ | スピルメイズの中がかなり荒れていたらしいからな。悪い影響がないといいんだが……。 |
| コーキス | つーか、マスターもルーク様もさっきから、何をきょろきょろしてるんだ ? |
| イクス | いや……。俺の記憶が確かなら、今からいくダアトってジェイドさんの偽者が出た街じゃないかなって。 |
| ルーク | あ ! やっぱりそうか !だからさっき通った道に覚えがあったんだ ! |
| カーリャ | 懐かしいですね。優しくて紳士なジェイドさま……。どうしてあっちが本物じゃなかったんでしょう……。 |
| ジェイド | 悲しいですねぇ。私は心からカーリャを大切に思っているというのに♪ |
| カーリャ | ひぃぃぃぃ……。心がこもってなさ過ぎて怖いですぅぅぅぅ。 |
| ルーク | ……アニス。大丈夫か ? |
| アニス | ――な、何が ? |
| ルーク | 何がって……。イオンのことだよ。 |
| イクス | なぁ、みんなそのイオンさんの名前を出す時すごく悲しそうだけど……何があったのか聞いてもいいかな ? |
| イクス | もちろん、俺たちが知らなくていいことだとルークたちが判断したなら強制はできないんだけど……。 |
| ジェイド | いえ、強制してでも情報はとりまとめるべきですよ。あなたとミリーナはね。自分の世界の存続が掛かっているのですから。 |
| ミリーナ | ジェイドさん……。 |
| カーリャ | ――ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ ! ? ! ? ! ? |
| ミリーナ | カーリャ ! ? どうしたの ! ?ひきつけでも起こしたみたいな声を出して ! ? |
| カーリャ | あ、あれ…… ! あの街の中心……。なんか背の高い建物があると思ったら……。 |
| カーリャ | ジェイドさまの銅像ですぅぅぅぅぅぅ ! ? ! ? ! ? |
| コーキス | うわ……。どういうことだ、これ……。 |
| アッシュ | 何でこいつの銅像がこんなところに……。 |
| アニス | マ、マジか……。 |
| ガイ | こいつは傑作だな、旦那 !ミリーナに記念写真でも撮ってもらうか ! |
| ジェイド | 殺しますよ、ガイ。 |
| 街の住人 | お、あんたたち。ダアトは初めてかい ? |
| 街の住人 | この銅像は聖人ジェイド様。以前ジェイド様ってお方がこの広場で、人に優しさを分け与えることの尊さを街のみんなに教え、導いて下さったんだ。 |
| 街の住人 | それ以来、ここはジェイド広場と呼ばれていてね。この街では一年中ジェイド様ブームが……って、あれ ? |
| 街の住人 | ――あ、あなたはまさかジェイド様では ! ? |
| ジェイド | 違います。よく似ていると言われますが、赤の他人です。 |
| 街の住人 | そ、そうかい ? ……まぁ、以前ジェイド様の悪質な偽者が出たこともあるらしいからまぁ似ている人もいるんだろうけど……。 |
| ? ? ? | えぇい ! 責任者を呼びなさい ! 責任者を ! |
| イクス | ……え ? もしかして、この声は……。 |
| ジェイド | おや ? イクスの知り合いですか ? |
| イクス | え ! ? いや、だって、あの声は―― |
| 街の住人 | おっと、死神ディストだ。あんたたちもさっさと逃げた方がいい。 |
| 街の住人 | あいつ、昨日この街に来たばかりなんだがどうもジェイド様に張り合ってるらしくてくだらない自慢話を聞かされるんだよ。 |
| ルーク | あー……。最近姿が見えなくて安心してたのに。 |
| アッシュ | ………………。 |
| ナタリア | アッシュ…… ? |
| ミリーナ | みんな、ディストさんには悪いけどそこの植え込みに隠れてやり過ごしましょう。面倒だわ。 |
| ジェイド | 遠慮することはありません。誰だって壊れた下水管からは距離をとるものですよ。 |
| ディスト | 何なんです、この街は !さっきまで大勢人がいたのにもう誰もいないじゃありませんか ! |
| 帝国兵A | しにが……薔薇のディスト様。銅像の件ですがイオン様に願い出てはいかがでしょうか。 |
| ディスト | ふん。機械仕掛けのつまらない心核を入れられたリビングドールに、美しい私の銅像の価値がわかる筈もありませんよ。 |
| ディスト | このジェイド像の隣にはディスト像が並んでこそ――いえ、もうこの際、ジェイドの銅像を壊して私の銅像に置き換えましょう。その方が喜ばれます。 |
| コーキス | あんなこと言われてる。いいのかよ、ジェイド様 ! |
| ジェイド | 珍しくディストと意見が一致しそうです。是非あの銅像は壊して頂きたい。虫酸が走ります。 |
| 帝国兵B | ――イオン様がお戻りです ! |
| アニス | ! ! |
| イオンβ | 死神ディスト。また騒いでいるのか。 |
| ディスト | これはこれは領主様。お元気そうで何より。 |
| アッシュ | ……おい、ジェイド。仕掛けるぞ。 |
| ジェイド | おや……。 |
| ルーク | イオンを連れてくるのか ? ウッドロウみたいに。 |
| ナタリア | 先ほどの話を聞く限り、イオンもリビングドールβにされている様子でしたわね。 |
| ティア | だとしたら、このまま放置しておけば導師イオンの心身に悪影響が出かねないわ。 |
| ジェイド | ……アッシュがねぇ。まぁ、いいでしょう。イクス、何が起きるかわかりませんが、構いませんか ? |
| イクス | わかりました。一気に飛び出して、イオンさんを助け出しましょう ! |
| Character | 4話【7-3 ダアト2】 |
| ガイ | ……勝負あったな。領主様を渡してもらおうか。 |
| イオンβ | 死神ディスト。どうするのだ ?お前自ら、私の付き人に志願してきたのだ。何とかして見せろ。 |
| アニス | イオン……様……。 |
| ディスト | なるほど……。導師イオンが領主になるという噂を聞きつけてきたのですね。フフフフ……。 |
| ディスト | ですが、ここで導師イオンを連れ帰っても彼の心核はあなた方の元にはありませんよ。 |
| アニス | こっちが取り囲んでるのに随分余裕ぶっこいてるじゃん、ディスト。 |
| ディスト | あなたは平静を保とうと必死ですねぇ、アニス。どうです ? 自分が殺したご主人様と再会する気分は ? |
| コーキス | え…… ! ? |
| アニス | その程度で揺れるアニスちゃんだと思わないでよね。でも……ぶっ潰す ! ! |
| アッシュ | ――そうはさせるか ! |
| アニス | ちょっ ! ? アッシュ ! ?攻撃する方間違えてるんだけど ! ? |
| アッシュ | 間違えてなどいない。 |
| ルーク | アッシュ ! ? |
| ディスト | どういうつもりです、アッシュ。 |
| アッシュ | ローレライが具現化されたと聞いた。俺は奴に用がある。 |
| ディスト | ローレライに会うためにジェイドたちを裏切る、という事ですか。 |
| アッシュ | 裏切る…… ? 面白いことを言うな、鼻たれ。お前のお得意の奴だろう。自分の目的のために全ての物を利用するってのはな。 |
| ディスト | 誰が鼻たれですか ! ? ですが、まぁ、いいでしょう。私も別に帝国のことなどどうでもいいんですから。 |
| ディスト | それよりアッシュ、あなたが来るならこの世界でのフォミクリー研究が捗ります。 |
| ジェイド | ………………。 |
| ナタリア | アッシュ ! ? 本気ですの ! ? |
| ティア | ……待って。何の音 ? |
| ガイ | 駆動音……。それも大量だ。 |
| ジェイド | なるほど。街の外にタルロウを伏せていたようですね。 |
| ディスト | フッフッフッ。その通り。あなたたちは袋のネズミですよ。 |
| イクス | ……みんな、撤退する ! |
| ミリーナ | イクスの傍へ ! |
| ディスト | 何を……―― |
| アッシュ | おい、鼻たれの死神 ! 奴らを止めろ ! |
| ディスト | え ! ? な、何なんですさっきから人のことを鼻たれ鼻たれって―― |
| イクス | 転送ゲート、展開 ! |
| ディスト | キィィィィィ ! どういうことです、アッシュ ! |
| アッシュ | 転送魔法陣とやらの改造版だ。それより俺をローレライのところへ連れて行け。 |
| ディスト | どうして私があなたに命令されなければならないんですか ! そもそも、どうしてあなたまで私のことを鼻たれと呼ぶんです ! |
| アッシュ | 鼻たれでも死神でもひしゃげたダンゴムシでも構わん。早くローレライの元へ案内しろ ! |
| ディスト | そうはいきませんよ。あなたが本当にジェイドたちを裏切ったのか確かめなければいけませんからねぇ……。 |
| イクス | ……く……。 |
| コーキス | マ、マスター ! ? どうしたんだ ! ? |
| ジェイド | ……これは……。転送ゲート展開の際の副作用か……。 |
| ミリーナ | え ! ? どういうことですか、ジェイドさん ! |
| ジェイド | 医務室で説明します。ガイ、イクスを運ぶのを手伝って下さい。 |
| ルーク | 俺も手伝う ! |
| ジェイド | ティア、カーリャ。ナタリアとアニスを頼みましたよ。落ち着かせてから、医務室へ連れてきて下さい。 |
| ティア | 了解です。 |
| カーリャ | が、頑張ります ! |
| Character | 5話【7-4 静寂の森1】 |
| マーク | 今日、みんなに集まってもらったのは配置換えを行うためだ。 |
| ルック | 配置換え……ですか ? |
| マーク | イクス救出作戦の時に、多くの同志が負傷した。他にも帝国との小競り合いやら病気やらで前線で戦うのは厳しい状況の奴も多い。 |
| マーク | フィルとも相談したんだがテセアラ領のアルタミラ近郊の地上基地を本格的に運用しようと思っている。 |
| 救世軍A | まさか、俺たちをそこに厄介払いしようって言うんですか ! ? |
| 救世軍B | そりゃないぜ、マークさん !ビクエ様に掛け合ってくれよ ! 俺たちはまだ戦える ! |
| 救世軍B | 相手が魔女だろうと帝国だろうとセールンドを取り戻して守るのが俺たちの使命なんだ ! |
| 救世軍A | そうですよ。アルタミラの地上基地なんて使命を捨てて帝国に日和った裏切り者たちが、今更助けてくれって駆け込んできて、集まってる場所じゃないですか ! |
| 救世軍B | 俺らはまだ戦える !手足を失っても、捨て石ぐらいにはなれるんだ ! |
| マーク | 馬鹿野郎 ! そんな使い方できる訳ねぇだろ ! |
| マーク | それに、勘違いすんなよ。お前らを降ろすと決めたのはフィルじゃねぇ。このマーク様だ。 |
| マーク | それにこの方針に従えねぇって奴は捨て石にする価値もねぇよ。出て行ってくれても構わないんだぜ。 |
| ルック | マークさん、待って下さい !みんなの気持ちがわからないあなたじゃないでしょう。それにケリュケイオンにも後方支援の人員が必要だ。 |
| ルック | ここに集まってる同志の中には、バックアップなら十分できるって連中も大勢います。 |
| マーク | ルック。他人事みたいにいってるんじゃねぇぞ。今回の配置換えで、お前も地上任務になるんだからな。 |
| ルック | ! ? |
| マーク | ――とにかく、荷物をまとめておけ。いいな ! |
| フィリップ | ……マーク。大丈夫だったかい ?みんな、ショックを受けていたんじゃ……。 |
| マーク | まぁ、不満は色々あるみたいだが……大丈夫だよ。 |
| シンク | 足手まといだから降ろすなんて言われればまぁ、不満も出るでしょ。 |
| フィリップ | そんなつもりじゃないんだ。本当に……。この先は、ケリュケイオンにいる方が危険になる。なるべくみんなを巻き込みたくないんだよ。 |
| フィリップ | ……やっぱり、僕からみんなに説明を―― |
| マーク | 駄目だ。フィルじゃ、奴らの剣幕に押されて結局ケリュケイオンへの残留を許しちまう。 |
| フィリップ | ば、馬鹿にするなよ。僕だってビクエとして王宮の狐や狸相手に渡り合ってきたんだ。はっきり言わなきゃいけない時には、僕だって……。 |
| シンク | だったら、さっさとイクスに真実を話したら ?クラトスにも言われてたでしょ ?先延ばしにすればするほどつらくなるって。 |
| シンク | まぁ、こっちはその方が面白いけど。 |
| フィリップ | ……それは…………精霊の封印地に……入れたら……。 |
| マーク | はぁ……。じゃあ、フィルは引き続き精霊の封印地へのアプローチ方法を探してくれ。俺とシンクは負傷兵達を地上の拠点まで送ってくる。 |
| シンク | せいぜい頑張ってね、ビクエ様。 |
| ルック | ……マークさん。せめて自分には本当の事を聞かせて下さい。 |
| ルック | 今までビクエ様とマークさんに付いてきた連中は自分も含めて、最期の瞬間まで行動を共にしたいと願っている奴らばかりです。 |
| ルック | 確かに、酷い怪我を負った奴もいる。俺だって、この間の戦いで片足を失いました。それでもちゃんとやれていたでしょう ? |
| ルック | どうして今になってケリュケイオンから降ろすんですか。 |
| マーク | ……希望の芽ってのは潰えちゃいけねぇんだよ。それだけだ。 |
| ルック | ………………。 |
| シンク | ちょっと ! 隊列止めて。 |
| マーク | どうした ? |
| シンク | そこに、人間が倒れてる。あいつ、バルバトスって奴じゃない ?帝国に捕まってリビングドールにされてたマヌケのさ。 |
| マーク | ……マジかよ。血まみれじゃねぇか。なんでこんなところに……。 |
| ルック | この先の北の岬に、帝国が監獄を作ったらしいんです。そこから逃げてきたんじゃないですかね。 |
| 救世軍A | マークさん、どうするんですか。この人。移動の『足手まといになる』からここに置いていくんですか ? |
| ルック | おい、その言い方はないだろ ! |
| マーク | ……しっ。大声出すな。ルック、荷物の軽い連中集めて、あの男を運べ。俺とシンクは―― |
| 救世軍A | 帝国兵 ! ? |
| 帝国兵 | ――くっ、バルバトスの奴ここで仲間と合流するつもりで脱獄したのか。 |
| マーク | おいおい、仲間扱いかよ。こっちは通りすがりだっての。 |
| 帝国兵 | 何でもいい ! バルバトスを――その大男を渡せ ! |
| マーク | ルック、みんなを連れて逃げろ !ここは俺とシンクで片付ける ! |
| ルック | わ、わかりました ! |
| Character | 6話【7-6 ダアト付近の平原】 |
| ミリーナ | ……どう、イクス ? 少しは落ち着いた ? |
| イクス | ああ……。ごめん。何か急に全身の力が抜けて……。痛いとか苦しいとかじゃなくて、だるいって言うか。 |
| イクス | 前に使った時は、少し疲れたなって感じたぐらいだったんだけど。 |
| コーキス | 本当か ! ? また痛いの隠してるとかそういうことないか ! ? |
| イクス | コーキス、心配性なのは俺一人で十分だよ。ありがとう。大丈夫だから。 |
| ジェイド | 転送ゲートは、ミリーナの仮想鏡界のゲートが具現化した物を転用していますから、イクスが使うと適性の問題で負担が大きいのかも知れません。 |
| ジェイド | 前回の使用からそう間も空いていませんし実験データも足りないままの運用ですので頻繁に利用することは避けた方がよさそうですね。 |
| ミリーナ | 私なら、イクスほどのダメージはないんですよね ?転送ゲートは鏡士にしか使えない……。だったらこれから緊急避難として使う場合は、私がやります。 |
| ジェイド | ……ふむ。あなたが自ら実験に参加してくれるというなら止めはしませんが、それでも回数は制限した方がいいと思いますよ。 |
| ジェイド | あなたとイクスでは魔鏡術の潜在能力に隔たりがある。イクスでこの負担なら、たとえ適性のあるミリーナでも危険であることには変わりありません。 |
| イクス | あの……俺のことより、アッシュさんのことは……。アッシュさん、どうして急にディストさんの方へ付いたんでしょうか ? |
| ナタリア | ……やはり、まだ焦りがあったのでしょうか。その……ローレライが具現化されたことで……。 |
| ミリーナ | ローレライが具現化されたことがそんなに問題なんですか ? |
| ルーク | ――なぁ、みんな。イクスたちに俺とアッシュの話をしてもいいか ? イクスには前に少し話したことがあるけど、俺の体のこととか、全部。 |
| ガイ | ルークが話すと決めたなら、誰も反対はしないさ。そうだろ ? |
| アニス | だったら、私のことも一緒に話していい ?イオン様が具現化されたなら話さなきゃいけないでしょ ? |
| ルーク | アニス……。うん、一緒に話そう。 |
| イクス | つまり、ルークはアッシュのレプリカ――同一人物の具現化みたいな存在なんだな。記憶は受け継がないけど。 |
| イクス | それで、ローレライが具現化されたことでルークと……もしかしたらアッシュにも音素乖離……細胞崩壊みたいなことが起きるかも知れない。 |
| ミリーナ | そしてリビングドールβにされたイオンさんは……ルークさんたちの世界では既に亡くなっているのね。 |
| ミリーナ | イオンさんが具現化されたのは、恐らくルークさんたちの時間より前の時間から。 |
| カーリャ | コーキス……。何泣いてるんです ! |
| コーキス | パイセンこそ鼻水出てるぞ ! |
| カーリャ | で、出てませんよ ! グスン……。 |
| ルーク | ……ごめん。コーキス、カーリャ。そんな顔させちゃって。 |
| コーキス | 謝るなよ、ルーク様 ! ずっと怖かっただろ……。消えるかもって思うの。 |
| ミリーナ | ……そうよね。ごめんなさい。私たち、何も知らなかった。具現化の力……複雑だったでしょう ? |
| ルーク | 大丈夫だよ。そんな風に気を遣わないでくれ。イクスには話したけど、俺、感謝してるんだ。命の猶予をもらったから。 |
| ルーク | それに、どっちかっていうとジェイドの方がつらいのかなって。 |
| ルーク | だって……レプリカを作る技術はジェイドが考えた物で……ジェイド、後悔してるみたいだったから。 |
| アニス | それは違うよ、ルーク。大佐は……もう一度ちゃんとフォミクリーと向き合おうって決めてるんだよ。 |
| ジェイド | アニス。おしゃべりな口は縫い付けますよ ? |
| コーキス | アニス様だって……。 |
| アニス | それもいいの。大丈夫。私は……酷いことをした。それはずっと消えない。それでいいんだよ。この気持ちと責任は、私が背負わなきゃいけないんだ。 |
| ミリーナ | ……アニス。 |
| ガイ | ルークの話で、俺たちの状況は何となくわかってもらえたと思う。アッシュのことも……。 |
| ガイ | だけど、アッシュの体に関しては、ジェイドが問題ないって伝えたんだがなぁ。普段のあいつならその辺りはちゃんと理解できてる筈なんだが……。 |
| イクス | 何か考えがあるんじゃないかな。 |
| ジェイド | ……アッシュの話はいったん置いておきましょう。私としては、一刻も早くリビングドール化したイオンをこちらに連れていきたいと考えています。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| ティア | でも、仮に助け出せたとして、イオン様の心核が―― |
| ルーク | あ……いっ……痛ぇ…… ! ? 頭が……。 |
| ティア | ルーク ! ? |
| ガイ | おい、まさか……その頭痛は ! |
| ローレライ | ルーク……アッシュ……。私の声が……るか……。ダアトの……森の……。急いで来て……しい……。導師の……―― |
| ナタリア | ルーク ! 凄い汗ですわ。大丈夫ですの ? |
| ルーク | ……ああ、大丈夫。痛みは引いてきたよ。具現化されてから初めての例のアレだったからちょっと驚いたけど。 |
| ジェイド | 連絡してきたのはアッシュですか ?それともローレライですか ? |
| ルーク | ローレライだ。ダアトの……森がどうとかって。で、急いで来てくれって。 |
| コーキス | え ! ? 精霊の声が聞こえたのか ! ? |
| ルーク | うん。元の世界では、ローレライの声とアッシュの声が聞こえることがあったんだよ。こっちからは連絡を取れなかったけど……。 |
| ミュウ | 便利連絡網ですの ! |
| コーキス | マスターの声が聞こえたみたいな奴だな。確かに便利だったよな、アレ !魔鏡通信機無しで話ができるんだもんな。 |
| ジェイド | ダアトの森……ですか。 |
| ティア | ミュウが巨大化したあの森かも知れません。 |
| ジェイド | ええ、可能性はありますね。向かってみましょう。 |
| イクス | わかりました。 |
| ミリーナ | 駄目よ、イクス。あなたはここに残って、体を休めて。私とコーキスとカーリャで向かうわ。 |
| イクス | え、だけど―― |
| ジェイド | イクス、そうして下さい。ミリーナに暴走されたくありませんから。 |
| イクス | え……。はは……。えっと……。 |
| ルーク | いいからいいから。何かあったら連絡するよ。 |
| アニス | モテる男はつらいね、イクス♪ |
| ミリーナ | あの……ジェイドさん。もしかしてリビングドールβにされたイオンさんは被験者のイオンさんだと思っているんですか ? |
| ジェイド | ……どうしてそう思ったんです ? |
| ミリーナ | 仲間のイオンさんの事を話す時はイオン様と呼んでいたのに、さっきはイオンと……。 |
| ジェイド | なるほど。これはうっかりしました。 |
| ミリーナ | だとしたら、アニスに先に伝えてあげた方がいいんじゃないでしょうか。 |
| ミリーナ | レプリカというのは記憶を継承しない。なら、姿は同じでも、アニスの知っているイオンさんではないんですよね。 |
| ジェイド | ミリーナ。記憶を継承していてもゲフィオンとあなたは違いますよね。 |
| ミリーナ | あ……。ええ、それはそうですけど……。 |
| ジェイド | 混同してしまう気持ちは……まぁ、察することはできますよ。でもアニスを案ずる前にあなたが覚悟をしておいた方がいい。 |
| ジェイド | イクスのことも、自分自身のことも、ね。 |
| ミリーナ | ……………… ! |
| Character | 7話【7-10 イオンのいる森】 |
| アニス | それにしても、ローレライも毎度唐突だよね。 |
| アニス | いつ具現化されたのか知らないけどこっちがローレライに気付いた途端また一方的に連絡してきた訳でしょ。 |
| アニス | 面倒な彼氏みたいじゃん ?性別知らないけどさ。 |
| ガイ | お、アニス。調子出てきたじゃないか。 |
| アニス | アニスちゃんはいつでも絶好調でーす。ガイこそ、ルークのこと心配して取り乱してたじゃん。 |
| ガイ | え ! ? |
| ルーク | そうなのか ? |
| ナタリア | そうですわよ。 |
| ティア | ガイはルークの親友ですものね。 |
| ミリーナ | ふふ、ガイさん。顔が赤いわ。 |
| ガイ | はは……。それより、奥の方から何か聞こえないか ? |
| ジェイド | よかったですね、ガイ。都合のいいことに、本当にあちらに魔物が集まっているようです。 |
| ガイ | あのな ! 俺が気を逸らそうとしてるみたいな言い方はやめてくれ ! |
| ミュウ | みゅみゅみゅ ! ! |
| ルーク | ミュウ ! ? 気を付けろそっちは魔物がいるかも知れないんだぞ ! ? |
| ティア | 待って、ルーク。一人じゃ危ないわ ! |
| ルーク | え ! ? イオン ! ? |
| ティア | 危ない…… ! |
| イオン | ………… ! |
| ミュウ | イオン様ですの ! イオン様ですの ! |
| ルーク | おい、大丈夫か ! ? 今のダアト式譜術だろ ! ?倒れちまうんじゃ……。 |
| イオン | ……ちょっと疲れましたけど、大丈夫です。ルーク、久しぶりですね。ティアもミュウも……。 |
| ルーク | イオン……。本当にイオンなんだよな…… ?俺の知ってる……。 |
| ジェイド | ええ、ルーク。どうやら、我々の知るイオン様で間違いないようですよ。 |
| コーキス | この人がイオン……様 ?あれ ? でもあのリビングドールβの人は ?あの人もイオン様なんだろ ? |
| ナタリア | あら、そうですわよね。何かのきっかけで心を取り戻したのでしょうか ? |
| イオン | それは……―― |
| イオン | ――あ ! アニス ! ! |
| アニス | ! |
| イオン | あなたもこちらに具現化されていたんですね。心強いです ! |
| アニス | ……イオン……様……。 |
| イオン | アニス…… ? どうかしたんですか ? |
| アニス | ――っ ! |
| アニス | 何でも……――何でもないです。イオン様にまた会えて……会えると思ってなくて……嬉しくて……。 |
| イオン | アニス。泣かないで下さい。何だかいつものアニスではないみたいですね。こちらでつらいことでもあったのでしょうか……。 |
| アニス | 違います。……違います。イオン様……会いたかった…… ! |
| イオン | アニス……。ええ、僕もあなたに会いたかったですよ。 |
| ルーク | ……なぁ、ここで話すのも何だし俺たちのアジトで話さないか ? |
| ミリーナ | ええ。そうしましょう。イオンさん、私は鏡士のミリーナ・ヴァイスです。よかったら―― |
| イオン | ありがとうございます。でも……僕にはやることがあるんです。 |
| イオン | その為に精霊のローレライの力を借りてルークに連絡を取ってもらいました。 |
| ルーク | じゃあ、あのローレライの声はイオンが ! ? |
| イオン | はい。僕……僕らは、こちらの世界風に言うと精霊ローレライに対してだけの召喚……のようなことができるそうなんです。 |
| イオン | それでローレライに頼みました。 |
| コーキス | 召喚……。クラース様とかしいな様みたいなことができるのか。 |
| イオン | 研究者によると、召喚とはちょっと違うようですがその辺りのことはよくわかりません。ある装置を使うと声が聞こえることがある……という感じです。 |
| アニス | オールドラントでも理論上は意識集合体を操れるって勉強はしたけど……。 |
| ジェイド | 今のお話を聞く限りでは、操れるというところまでは達していないようですね。それではローレライに質問するのは難しいか……。 |
| ガイ | なぁ、イオン。やることっていうのは一体何なんだ ? |
| ルーク | あ、そうだよ。俺を呼び出したって事は、俺に関わることなのか ? |
| イオン | いえ……。ルークに、というより黒衣の鏡士の陣営にいる皆さんへのお願いです。 |
| イオン | アステルが来ると言っていたのですが今、彼はちょっと色々あって動けないので僕が代わりにここへ来ました。 |
| ミリーナ | お話、聞かせて下さい。 |
| イオン | はい。今、僕ら――帝国の中で、様々な実験に関わっている鏡映点は、内部から少しずつ帝国を切り崩せないかと動いています。 |
| イオン | その為の作戦を実行するためにアトワイトさんの心核を必要としています。 |
| ルーク | アトワイトって確かディムロスさんたちの仲間だよな。 |
| ミリーナ | ええ。ウッドロウさんと一緒にいた女の人よね。リビングドールβにされていた……。 |
| イオン | はい。彼女の心核は皆さんのところにある筈なんです。それを僕に預けて頂けませんか。アトワイトさんを元に戻してあげたいんです。 |
| カーリャ | 本当ですか ! ? |
| コーキス | アトワイト様を助けてくれるなら問題ありませんよねミリーナ様 ! |
| ジェイド | いえ、イオン様。あなたを信用しない訳ではありませんが、そう簡単に頷くこともできません。おわかりですよね。 |
| ルーク | ジェイド ! どうしてだよ ! |
| イオン | ルーク、ジェイドは正しいですよ。 |
| イオン | 僕はいま帝国に属する立場です。もし仮に僕が本気でアトワイトさんを助けようとしていてもその先で邪魔をされるだけかも知れません。 |
| イオン | 大切な心核を預かるのならその見返りを求めることがあってもおかしくはありません。 |
| ルーク | そ、それはそうかも知れないけれど……。 |
| イオン | ジェイド。僕はあなたと交渉するためにいくつかの情報と、ある人物の心核を持ってきました。取引ではいかがでしょう。 |
| イオン | この書類をお渡しします。この世界における第七音素のあり方の考察がまとめられています。被験者のイオンと帝国の研究者がまとめ、ディストが確認した物です。 |
| イオン | まだ研究途中の段階ですが、参考になると思いますよ。カレイドスコープを使って観測した情報ですから。 |
| ティア | 被験者の導師イオン……。そちらのイオン様も具現化されていたんですね。 |
| ジェイド | なるほど、それは確かに有益な情報です。ところで、一つ質問をさせて下さい。 |
| ジェイド | イオン様が持ってきた別の人物の心核……というのはリビングドールβにされたイオンの心核でしょうか。 |
| イオン | はい、その通りです。領主として派遣されたあのイオンも、僕とは別のイオンなんです。 |
| ルーク | それって誰だ ! ? フローリアン ?それとも被験者か ! ? |
| ジェイド | 研究に関わっている以上、被験者をリビングドールにはしないでしょう。第七音素のあり方の考察が進みローレライも具現化している。 |
| ジェイド | その上でアレがリビングドールβの側にいるのですからあの領主は、フローリアンや被験者ではなく導師イオンの新しいレプリカだ。違いますか ? |
| 一同 | ! ? |
| イオン | ……さすがジェイドですね。帝国はローレライを使ってこの世界でのフォミクリーに成功しました。彼は八番目のイオンです。 |
| イオン | 僕は彼を助けたい。生まれてすぐ、全ての自由を奪われ本当に代用品として扱われてしまったあのイオンに心を戻してあげたいんです。 |
| アニス | ルーク、大佐、ミリーナ !イオン様の願いを叶えて ! お願い ! |
| ルーク | ジェイド ! この世界でもジェイドの技術が悪用されるのは嫌だろ ! ? |
| ミリーナ | ジェイドさん。アトワイトさんの心核を渡します。そして私たちの手でもう一人のイオンさんを助けましょう。 |
| ジェイド | ――これも因果なのでしょうかね。元々そのつもりでしたし、領主のイオンを助けましょう。 |
| ティア | でも、どの心核がアトワイトさんの心核なのかわからないですよね……。 |
| ジェイド | イオン様は判別の手段をご存じの筈です。そうでなければわざわざここへは来ない筈だ。 |
| イオン | 相変わらず何でもお見通しですね、ジェイド。 |
| イオン | この魔鏡を使って下さい。ミリーナさん。鏡士の方なら心核の主が判別できるそうです。 |
| ミリーナ | わかりました。私が、一度アジトに戻ってアトワイトさんの心核をとってきます。カーリャ、いらっしゃい。 |
| カーリャ | はい ! |
| ミリーナ | コーキス。みんなをお願いね。 |
| コーキス | 任せて下さい ! |
| Character | 8話【7-14 ダアトへ続く道4】 |
| イクス | なぁ、ルカ ? もう起きてもいいかな。俺すっかり元気だよ。 |
| ルカ | ……うん。点滴も終わったみたいだし大丈夫じゃないかな。今、念のためジュードに聞いてくるよ。 |
| ジュード | ルカ ! 急いでスタンたちを呼んで ! |
| ルカ | え ! ? どうしたのジュード。そんな驚いた様子で。 |
| ジュード | ウッドロウさんが目を覚ましたんだ ! |
| 二人 | ! ! |
| ウッドロウ | ……色々と迷惑をかけてしまったようだ。イクスくん、だったかな。私の心を取り戻してくれて感謝する。 |
| イクス | いえ、俺の力じゃないです。スタンさんやみんながウッドロウさんを助けてくれたんですよ。 |
| イクス | それに目覚めるなり、色々とお話してしまって……。きっと混乱したと思うんですけど……。 |
| ウッドロウ | ありがとう。しかし、具現化されてしばらくはアスガルド帝国に囚われていたので予備知識はあった。今の状況を確認できてよかったよ。 |
| スタン | ウッドロウさん ! |
| リオン | 目が覚めたそうだな。 |
| ウッドロウ | スタン君、……それにリオン君も。心配をかけてすまない。 |
| スタン | そんな……。よかったです、無事に目が覚めて……。 |
| イクス | あれ、ルーティとジョニーさんは ? |
| スタン | カイルたちを捜してもらってる。カイルたちも心配してたからさ。 |
| イクス | ああ……。そうだよな。 |
| ウッドロウ | スタン君、それにイクス君にジュード君にルカ君も。すまないが、リオン君と二人で話をさせてもらえないか。何、すぐに終わる。 |
| スタン | は、はぁ……。 |
| ジュード | わかりました。僕たちは廊下に出ていますから何かあれば呼んで下さい。 |
| リオン | 話というのは何だ。 |
| ウッドロウ | リオン君は……元の世界では何をしているところで具現化されたんだ ? |
| リオン | ! |
| リオン | ………………。 |
| ウッドロウ | どうやらイクス君の話を聞くと私は……スタン君たちより少し先の時間から具現化されたようだ。 |
| ウッドロウ | リオン君が私を知っているということは神の眼を回収して以降であることは間違いなさそうだが……。 |
| リオン | ………………。 |
| ウッドロウ | ……そうか。いや、答えたくなければ構わない。 |
| リオン | ……イクティノスはどうしたんだ。 |
| ウッドロウ | 帝国に取り上げられてしまってね。何とか回収できればいいんだが……。この体では、私もしばらくは動けないだろうな。 |
| イクス | あれ ? 魔鏡通信だ。 |
| マーク | イクスか。妙なことになっちまったぞ。 |
| イクス | マーク ? どうしたんだ ? |
| マーク | バルバトスを拾っちまった……。 |
| スタン | バルバトス ? それって―― |
| ジュード | カイルたちを呼んだ方がいいかな。 |
| マーク | あ、いや。そっちとは色々因縁がある奴なんだろ。大怪我してるんで、とりあえずうちで回収しておく。ただ、情報は共有した方がいいと思ってな。 |
| ミリーナ | イクス ! 起きていて大丈夫なの ! ? |
| イクス | ミリーナ ! ? ルークたちとローレライを捜しに行ったんじゃないのか ! ? |
| シンク | ローレライ ! ? 第七音素の意識集合体の ! ? |
| イクス | あ、うん。精霊として具現化されたってことはそっちにも共有していたと思うけどルークがローレライの声を聞いたんだ。 |
| イクス | 導師を助けて欲しいとか何とか……。 |
| シンク | ! ? |
| ミリーナ | イオンさんには会えたのよ。だけど、八番目……八人目……とにかく、新しくイオンさんのレプリカが作られたらしくて―― |
| シンク | ……鏡士。何が起きてるのさ。詳しい話を聞かせてもらいたいね。 |
| Character | 9話【7-15 ダアト】 |
| ジュニア | アスガルド城にカレイドスコープを移したのか……。 |
| グラスティン | いや、ここは仮の置き場だよ、小さなフィリップ。 |
| ジュニア | ……仮の ? |
| グラスティン | ヒヒヒ。仮想鏡界を閉じた以上、別の安全な場所に隠さなければいけないからな。 |
| グラスティン | ただ、急いで鏡映点を具現化してもらう必要があるから一時的にここに置いているんだ。 |
| ジュニア | まだ具現化をするの ! ? もう十分でしょう ? |
| グラスティン | 仕方ないだろう。俺も無駄なことだと思っているがデミトリアスはあの性格だ。ティル・ナ・ノーグを正しく治めたいのさ。どうせ最後には捨てるのに。 |
| ジュニア | 捨てる ? 何、どういうこと ? |
| グラスティン | ヒヒ……。興味があるのか。小さなフィリップも好奇心が強いんだなぁ。ヒヒヒ……。 |
| ジュニア | ………………。 |
| 帝国兵 | グラスティン様 ! |
| グラスティン | どうした ? 俺はこの小さなフィリップと大事な話をしているところだ。くだらない用事なら、ミンチにするぞ ? |
| 帝国兵 | はっ ! それがイ・ラプセル城からの伝令でリビングドールβへの処理中に鏡映点が一人逃げ出したとのことです ! |
| グラスティン | ……まったく、無能な奴らだ。大方、ディストの奴が管理をしくじったんだろう。 |
| 帝国兵 | は……。その死神ディストなのですが勝手に、領主として派遣したイオンβの付き人になって一緒にダアトへ向かったようで……。 |
| グラスティン | ヒヒヒ、なるほど。目覚めてすぐに俺の作品を見て刺激されたのかも知れないな。しかしそこまで自分の欲望に忠実とは…… ! 面白いじゃないか ! |
| グラスティン | いいよ、実にいい……。奴がいればますますフォミクリーの完成度は高まる。無限にフィリップの代用品を増やせるようになるぞ ! |
| ジュニア | ! ? |
| グラスティン | ヒヒヒ、練習が捗るよ……。限りなくフィリップに近い玩具だなんて…… !最高じゃないかぁ ! ! イヒヒヒヒヒ ! |
| グラスティン | ああ……楽しみだよ ! 興奮が収まらない !早くフィリップのレプリカを作って綺麗に並べたいなぁ…… ! |
| 帝国兵 | あ……あの、グラスティン様……。逃げ出した鏡映点はどうしますか。 |
| グラスティン | もちろん捕まえる。一度具現化したモノは大切に使わないとなぁ。で、誰が逃げ出した ? |
| 帝国兵 | マリク・シザースであります ! |
| グラスティン | そいつは厄介だ。リチャードとセットで使うつもりだったのに計算が狂うな。 |
| グラスティン | よし、小さなフィリップ。ここで待っていろよ。仕事を済ませたらすぐに戻ってくる。 |
| グラスティン | 逃げようとしても無駄だぞ。その綺麗な体に刻み込んでやった呪いのことを忘れるなよ……。お前は俺のコレクションになるんだ。ヒヒヒヒヒ ! |
| ジュニア | ………………。 |
| ジュニア | (鏡映点が逃げ出したなら、少し時間がかかるな。……カレイドスコープがここにあるならナーザの体もきっとこの部屋にある筈だ) |
| ジュニア | (待ってて、メルクリア。僕が今できるのは……目を覚まそうとしている君の味方を増やすこと。例え大人の僕やミリーナに……軽蔑されたとしても ! ) |
| ミリーナ | みんな、お待たせ。 |
| カーリャ | アトワイトさまの心核、持ってきましたよ。 |
| ガイ | 二人とも、お疲れ様。 |
| イオン | ありがとうございます。ミリーナさん。 |
| ルーク | 領主の方のイオンの心核はジェイドに預かってもらってる。 |
| ミリーナ | 了解よ。ところで、ルークさんのところにローレライから連絡が来たって本当 ? |
| アニス | うん、便利連絡網でね。 |
| ルーク | 相変わらず、いまいち何言ってるのかわかんねー感じだったけど、どうも領主のイオンがどこかに出かけるみたいなんだ。 |
| イオン | ふふ、僕も何度かローレライと話しましたが確かに、少し回りくどいしゃべり方をしますよね。 |
| ジェイド | うらやましいですね。私もローレライと話してみたいものです。 |
| ジェイド | 意識集合体――いや、ここでは精霊ですか。とにかく第七音素と話せる機会なんてそうはありませんから。 |
| ルーク | ……ん ? あれ、雨が降ってきたぞ。 |
| ガイ | ……結構強いな。これじゃあすぐびしょ濡れになるぞ。雨宿りしたいところだが、いつ領主の方のイオンが出てくるかわからないか……。 |
| ナタリア | 仕方ありませんわ。今はここを離れる訳にはいきませんもの。 |
| ティア | ……しっ ! 街から馬車が出てくるわ。 |
| ミリーナ | 霧を出すわね。それで馬車のスピードが止まるはず。 |
| ジェイド | なるほど。それなら馬車が止まったら馬を放して下さい。それから霧を解いて―― |
| ルーク | 襲撃するんだな。 |
| ガイ | ……襲撃ねぇ。毎度の事ながら俺たちろくな事をしてないよなぁ。 |
| アニス | イオン様。危険ですから、私の側を離れないで下さいね。 |
| イオン | はい !……何だか懐かしいです。こういうの。 |
| アニス | ………そう、ですね……。 |
| イオン | ……………… ? |
| ミリーナ | 馬車が来る…… ! 行くわよ ! |
| 御者 | な、何だ ! ? 急に霧が…… ! ?くそ、前が全く見えない ! ? |
| ティア | 馬車が止まったわ ! |
| コーキス | よし ! 馬を放したぞ ! |
| アッシュ | 何だ…… ! ? 急に霧が晴れた…… ! ? |
| イオンβ | 馬がいない……。どうなっている ? |
| ルーク | そのイオンを渡せ――っ ! |
| アッシュ | ! |
| アッシュ | お前か ! |
| ルーク | アッシュ ! どうして―― |
| 二人 | 何 ! ? |
| ミリーナ | ルークさんとアッシュさんの浄玻璃鏡が……同時に輝いた ! ? |
| ルーク | これがオーバーレイ ! ? |
| アッシュ | お前と同時に反応するとはな。面白い。どちらの力が上か、勝負だ ! |
| Character | 10話【7-15 ダアト】 |
| ルーク | よし ! これでイオンを―― |
| ? ? ? | みんな ! ニセモノを捕まえて ! |
| アッシュ | ……アリエッタか。 |
| アニス | ! ? |
| アリエッタ | ……アッシュ ? どうして ?アッシュのことも……イオン様が呼んだの ? |
| アッシュ | 後で説明してやる。どうせディストに言われてお前を迎えに行くところだった。 |
| アリエッタ | ううん。もう、ダアトに行く必要……ないから。アリエッタが捜してたニセモノ……見つけた。 |
| アリエッタ | アリエッタ、イオン様に頼まれて、イオン様のニセモノを連れ戻しに来ただけだから。 |
| アニス | アリエッタ……。あんたも……ここに……。 |
| アリエッタ | アニスまでここにいるなんて……。ニセモノがアニスを呼んだんでしょ ! |
| イオン | アリエッタ。僕は偽者ではありません。あなたのイオンではありませんが僕もイオンなんです。 |
| アリエッタ | 違うもん ! レプリカはニセモノだもん ! |
| アニス | イオン様を偽者なんて言うな ! |
| アリエッタ | ニセモノはニセモノだもん !アニスの馬鹿 ! アリエッタが導師守護役に戻ったから意地悪して、ニセモノの味方をするんでしょ ! |
| アニス | アリエッタ ! 違うよ !イオン様のこと……私のイオン様のこと偽者なんて言ったら―― |
| シンク | あー、うるさい。うるさいから、撤退してくれる ?アリエッタ。 |
| アリエッタ | うっ、い、痛い……。シンク…… ?シンクもいたの ? 痛いぃぃっ ! ? |
| シンク | オトモダチの魔物を撤退させるんだ。さもないと、この腕、そのままへし折るよ。 |
| アリエッタ | うぅ……。で、でも……。 |
| シンク | やるんだよ ! |
| アリエッタ | ……みんな……。離れて……。 |
| コーキス | すげぇ……。魔物があんな小さな子の言うことを聞くなんて……。 |
| イオン | ……シンク。アリエッタを放してあげて下さい。 |
| シンク | へぇ……。本当にいいの ?ボクがアリエッタを解放したらまた魔物を使って取り囲んで来ると思うけど。 |
| イオン | アリエッタは、僕を帝都へ連れて帰るためにここへ来たんですよね。だったら、僕はアリエッタと一緒に帝都へ戻ります。 |
| ルーク | イオン ! ? |
| イオン | 元からそのつもりだったんです。その代わり、リビングドール化されたイオンはルークたちに預けてもらえませんか。 |
| アッシュ | 何を勝手なことを言ってやがる。 |
| イオン | 被験者なら構わないと言う筈ですよ。……彼は、代用品ならまた作ればいいという考え方ですからね。 |
| シンク | ……反吐が出るね。 |
| アッシュ | ――アリエッタ。それでいいな。ディストには俺から説明しておく。 |
| アリエッタ | ……わかった、です。 |
| イオン | ルーク、アニス……。それに皆さん。すみません。でも久々にお目にかかれて嬉しかったです。 |
| アニス | イオン様……。 |
| イオン | アニス。そちらのイオンを……よろしくお願いします。僕らの弟みたいなものですから。 |
| シンク | ……フン。代用品同士の傷の舐め合いなんて、惨めだね。 |
| イオン | シンク……。いつか、あなたともちゃんと話をさせて下さい。……あなたがこの世界にいると聞いて、僕は―― |
| シンク | うるさいよ。さっさと行けば、ニセモノイオンサマ。 |
| シンク | ……で ?こっちの裏切り者はどうするの ? 始末する ? |
| アッシュ | 面白い。やるってのか、シンク。 |
| シンク | レプリカに負けたくせに、随分強気じゃない。傷だらけだよ。見逃してやるからさっさとしっぽを巻いて逃げるんだね。 |
| シンク | あの鼻たれのドクダミ博士のところにサ ! |
| アッシュ | ………………。 |
| ナタリア | アッシュ ! どうしてですの ! ?訳があるなら教えて下さいませ ! |
| アッシュ | ……その指輪。無くすなよ。 |
| ナタリア | ! |
| ガイ | それにしても、どうしてシンクがここに ? |
| ミリーナ | 私たちがアジトに戻った時に丁度マークたちから連絡が来ていたの。 |
| ミリーナ | それでイオンさんのことを話したらシンクがこっちに来るって……。 |
| シンク | ……ギリギリだったけどね。何とか間に合った。 |
| ルーク | やっぱりイオンが具現化されてたこと気になったのか ? |
| シンク | はぁ ? 馬鹿じゃないの ?ボクはディストを殺しに来たんだよ。 |
| ジェイド | ……この世界でもレプリカを作ったから、ですか。だとしたら、待った方がいい。恐らくこのイオンを作ったのはディストではないでしょうから。 |
| 全員 | ! ? |
| シンク | ………………。 |
| ルーク | ……何か、いっぺんに色んな事があって凄く疲れたよ。ローレライ、ディスト、イオンにアリエッタアッシュが裏切って、最後はシンクまで出てきてさ。 |
| ナタリア | ルーク。アッシュは裏切ってなどいませんわ。 |
| ルーク | へ ? だってあいつ、ディストについていっただろ。 |
| ナタリア | それは……。でも違います。あの方は、指輪を無くさないように仰いましたわ。ホワイトデーに私のために作って下さった指輪を……。 |
| ミリーナ | そうね。アッシュさん、きっと何か考えがあるのよ。でなければ、ナタリアを置いていったりしないわ。 |
| ティア | ……アニスたちは大丈夫かしら。 |
| ミリーナ | きっと領主の方のイオンさんの心核を元に戻してくれるわ。シングも一緒だし。 |
| ガイ | それにしても、アニスとジェイドはともかくまさかシンクまでスピルメイズに入るなんて言い出すとはねぇ……。 |
| ティア | ……そうね。やっぱり心配なのかしら。領主のイオンのことが……。 |
| ガイ | よせよせ。その言葉シンクに聞かれたら、面倒なことになるぞ。 |
| ルーク | 痛ぇ……。また……ローレライ、かよ……。 |
| アッシュ | 誰がローレライだ。 |
| ルーク | あ……アッシュ ! ? |
| アッシュ | ……お前がうまく騙されてくれたおかげでディストの目をごまかすことができた。 |
| ルーク | は ! ? |
| アッシュ | ローレライの声は俺にも届いていた。ということは俺からお前にも連絡ができる筈だと思っていたがやはり正解だったな。 |
| ルーク | おい、アッシュ ! どういうことなんだ ! |
| アッシュ | 俺はこのまま帝国の懐に潜り込み、内部の様子を調べる。何かあればこの回線を使ってお前に報告するつもりだ。 |
| ルーク | 間者になるって事か ! ?だったらどうしてそれを先に言わないんだよ ! |
| アッシュ | お前が演技をできないからだ。ジェイド辺りは俺の思惑に気付いている筈だぞ。何か言ってなかったのか ? |
| ルーク | いや、何も……。 |
| アッシュ | ちっ。死霊使い(ネクロマンサー)め。面倒がって説明しなかったな。 |
| ルーク | だけど、大丈夫なのかよ。帝国で何かあったら……。 |
| アッシュ | お前じゃあるまいし、大丈夫だ。 |
| ルーク | 一言多いな ! ? ジェイドかよ ! ? |
| アッシュ | あいつと一緒にするな。 |
| アッシュ | ……とにかく、デクス……だったか。あのくねくねした変な奴と接触して情報を集めるつもりでいる。 |
| アッシュ | お前は……ナタリアのことを頼む。 |
| ルーク | ――ああ、わかった。でも助けが必要なら、すぐ連絡してくれよ。 |
| アッシュ | ……フン。……その言葉、まぁ、覚えておいてやるさ。 |
| | to be continued |