| Character | 1話【9-1スピルメイズ】 |
| アニス | ここが、あの八番目のイオン様の心の中、なんだよね。スピルメイズだっけ ?人の心の中に入るって、おとぎ話もびっくりだよ。 |
| シング | オレにとっては当たり前のことだけど他の世界の人から見たらそう感じるんだろうね。 |
| シング | ……っていうか、八番目のイオン様ってどういう意味 ? |
| アニス | ……あ。えっと、それは……。 |
| ジェイド | 我々の世界にはイオンという名前の人物が複数いましてね。まぁ、便宜上の呼び方だとでも思って下さい。 |
| ジェイド | さて、このスピルメイズの奥に、心核がある訳ですね。今回は、帝国が八番目のイオンを領主にするために人工心核が植え付けられている筈ですが……。 |
| シンク | ――そんな話、時間の無駄だね。先に行くよ。 |
| ジェイド | おっと。ここは普通の場所ではありません。和を乱すような行動はいただけませんねぇ。シンくん ? |
| シンク | ! ? |
| アニス | さっすが大佐 ! 呼び方に悪意を感じますね ! |
| ジェイド | 悪意だなんてとんでもない。同じ世界から具現化された者同士是非親交を深めたいと思いましてね。 |
| シンク | 虫酸が走るね。 |
| ジェイド | それは良かった。では、今後は『烈風のシンくん』と名乗ってみてはいかがでしょう ? |
| アニス | 烈風のシンくん♪ |
| シンク | ……くだらないね。それともボクに殺されたい訳 ? |
| ジェイド | またまたご冗談を。アニスはともかく私があなたに負けるとでもお思いですか ? |
| シンク | 面白い。八番目の生ゴミのスピルメイズをお前の墓穴にしてやるよ ! |
| シング | やめなよ三人とも !今は喧嘩なんてしてる場合じゃないだろ ? |
| アニス | え ! ? 今の流れでアニスちゃんまで被弾 ! ? |
| シング | シンくんって呼ばれるの、シンクが嫌がってたのにアニスも一緒になってからかっただろ。そういうのは良くないと思う。 |
| ジェイド | おや、怒られてしまいましたね、アニス。反省して下さい。 |
| アニス | いっときますけど、大佐も怒られてますからね ! |
| シンク | 時間が惜しいって言ったよね。さっさと行くよ。 |
| シング | あっ、待ってよシンク !ジェイドさんの言い方はともかく単独行動が危険なのは確かだよ。 |
| シング | それに、一緒にスピルリンクしたんだからもっと仲良くやっていこうよ。 |
| シンク | ……うるさいな。アンタまでボクに構ってくる気 ? |
| シング | う~ん、構うっていうか単にシンクと仲良くなりたいって思ったんだけど。 |
| シング | それにほら ! オレとシンクって名前も似てるし。二人合わせて『シンシンコンビ』なんてどうかな ! |
| シンク | 馬鹿じゃないの ? |
| シング | ええっ、いいコンビ名だと思ったんだけどな……。 |
| シンク | どうでもいいからさっさと人工心核の場所まで案内してよね。 |
| ジェイド | ――だ、そうですよ。素直な方のシンくん♪ |
| ジェイド | どうやら、ここが最深部のようですね。 |
| アニス | うわぁ……。なんかここ……荒れてる ? |
| シング | うん。こんなにボロボロになってるスピルメイズを見るのはオレも初めてだよ……。 |
| ジェイド | これは、報告に上がっていたウッドロウやファントムのケースと同じですね。 |
| ジェイド | 心核の取り外しの際、被験体の精神に深刻な負担が掛かっており、それがこのようなスピルメイズの破損に繋がっているのでしょう |
| ジェイド | 帝国ではかなり強引な心核へのアプローチが行われているとみて間違いありません。 |
| シンク | 生ゴミにふさわしい扱いって訳だ。 |
| シング | くそっ ! 帝国軍の奴ら……。人を何だと思ってるんだ ! ! |
| ジェイド | 使い捨ての駒、といったところでしょうね。 |
| アニス | そんなの……酷すぎるよ……。 |
| シンク | そう ? これぞ正しいレプリカの使われ方でしょ ? |
| アニス | そんな言い方…… ! |
| シンク | 何感情的になってるのさ。このイオンのことは何も知らない筈だろ ? アンタはこのイオンと導師のイオンを混同してるんだよ。 |
| アニス | ……違うよ ! 何も知らなくても勝手に心を奪われることが酷いことだって思うのは当たり前でしょ ! |
| アニス | あんただって、この八番目のイオン様のことを心配して、ここまで一緒に来たんじゃないの ! ? |
| シンク | おめでたいね。ボクはただ、この世界で作られたレプリカのなれの果てを見たかっただけさ。 |
| シング | ……ねえ、さっきからシンクが言ってるレプリカって何のこと ? |
| シンク | へぇ……。話してないの、死霊使い。 |
| ジェイド | ええ。必要の無い情報でしたから。――今までは。 |
| シンク | レプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。 |
| シンク | フォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。 |
| シンク | この八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。 |
| シング | 複製って……コピーってこと ?人間をコピーして作るなんて……。 |
| シング | ――あ、待って。じゃあ、もしかしてルークとアッシュって双子じゃなくて……。 |
| シンク | 詳しいことは、そこのメガネにでも聞いてよね。フォミクリーを開発したのはそいつなんだから。 |
| シング | え ! ? |
| ジェイド | ええ。その通りです。ルークの件については……そろそろ皆さんにご説明するつもりでいました。 |
| ジェイド | 詳細はスピルメイズを出てからにしましょう。 |
| シング | ……あの、シンク。ごめん、オレ、何も知らなくて……。 |
| シンク | 知ってたらどうだっていうのさ。どうでもいいだろ。 |
| シング | どうでもよくないよ !それに、オレはシンクがレプリカだからって偽者だなんて思わない。 |
| シンク | はぁ ? |
| シング | だってシンクにもちゃんとスピリアがあるじゃないか。そのスピリアは、コピーでも偽物でもないシンク本人だけのものだと……オレは思う。 |
| アニス | ……シングの言う通りだよ。シンクの心は、シンクだけのものだよ。それは、この八番目のイオン様も一緒だから……。 |
| シンク | 安い同情だね。ゴシンセツニドウモ。それとも、いつかみたいにこの仮面を取ってお礼を言ってあげようか ? |
| シンク | ありがとう、アニス――ってさ。ああ、この世界の導師イオンは生きてるからボクがあいつの真似をしても意味は無かったね。 |
| アニス | シンク……。 |
| ジェイド | シンク。ことさらに自分とイオン様を重ねることで自分を代用品ではないと主張するのも結構ですが時間が惜しいと言ったのはあなたでしたよね。 |
| シンク | 何…… ! |
| ジェイド | 死にたかろうと殺したかろうと結構ですから全てはスピルメイズを出てからにして下さい。 |
| ジェイド | シング。心核を元に戻してもらえますか ? |
| シング | ……わかった。 |
| Character | 2話【9-2 閑散とした街道】 |
| カーリャ | あっ、皆さま ! ! 無事に帰って来たんですね ! ! |
| ミリーナ | おかえりなさい。その……彼の容態はどうですか ? |
| シング | それが、心核は元に戻したんだけどまだ目を覚まさなくて……。 |
| ジェイド | 八番目のイオンの心の中――スピルメイズはファントムたちと同じようにかなり荒れていました。まして、彼は色々と特殊な生まれですから。 |
| ジェイド | 目を覚ますまでにはまだしばらく時間がかかると思いますよ。 |
| ミリーナ | そうですか……。早く元気になってくれればいいんですけど。 |
| ジェイド | ところで八番目のイオンが目を覚ます前に彼をどう呼ぶのか決めておきたいのですが。 |
| ミリーナ | ああ……。そうですよね。まさか本人に『八番目のイオン』さんなんて呼びかける訳にはいきませんよね。 |
| カーリャ | う~ん、でも、どんな名前がいいんですかね ?こういう時にパッと名前を付けられるカイルさまやコレットさまがいたらよかったんですけど……。 |
| ジェイド | では、ここはアニスに任せましょう。 |
| アニス | えっ ? 私ですか ? |
| ジェイド | ええ。あなたなら彼にぴったりの名前を思いついてくれるはずです。 |
| アニス | ……大佐って人の心が読めるんじゃないですか ? |
| ジェイド | とんでもない。顔に書いてあっただけですよ。それで、どう呼ぶつもりなのですか ? |
| アニス | ……えっと。あの人のこと【リベラ】って呼んであげたいなって思ってます……。 |
| シンク | …………。 |
| ミリーナ | リベラ……。それって、どういう意味なの ? |
| ジェイド | 古代イスパニア語――私たちの世界の古い言葉で【自由】という意味です。 |
| アニス | ……自由でいて欲しいんだ。しがらみとか縛り付けるものなんかはねのけて。 |
| シング | 自由かぁ。うん ! ぴったりだと思うよ !きっと喜んでくれるんじゃないかな ! |
| アニス | えへへ、そうだと嬉しいんだけどね……。 |
| ヒスイ | おい、シング ! ! ここにいたのか ! ? |
| シング | ヒスイ ? どうしたのさ、そんなに慌てて ? |
| ヒスイ | どうしたもこうしたもあるか ! !あいつが……リチアが帝国軍の奴らのところにいるってわかったんだよ ! ! |
| シング | えっ ! ? リチアが ! ? |
| ミリーナ | リチアさんって……鏡映点リストにもあったシングたちの仲間よね。 |
| ヒスイ | ああ、さっきアスベルたちが戻ってきたときに言ってやがったんだ。リチアはテセアラ領の監獄にいるらしい。 |
| ジェイド | ヒスイ、それは間違いありませんか ? |
| ヒスイ | マリクっつう、帝国軍から逃げて来た奴からの情報だ。帝国内部の動きも相当詳しかったぜ。 |
| ジェイド | ……マリクという名前は鏡映点リストにあったアスベルたちの仲間ですね。 |
| ジェイド | 無条件に信じていいかはともかく話を聞いておく必要はありそうだ。そちらはシングとヒスイにお任せしていいですか ? |
| ヒスイ | お任せされなくても聞きに行くぜ !おい、行くぞ ! シング ! |
| シング | ああ、わかった ! |
| カーリャ | あわわ、何だか慌ただしくなってきましたね。 |
| ミリーナ | そうね。みんな、無理をしないといいんだけど……。 |
| ジーニアス | ねぇ、シングは戻ってきた ? |
| ミトス | ……ジェイドとアニスとシンクがいてシングがいないってことは入れ違いになったみたいだね。 |
| ミリーナ | ええ。シングたちの仲間の居場所がわかったの。今はヒスイさんと一緒に対処してもらっているわ。 |
| エミル | そうなると、こっちの調査に協力してもらうのは難しそうだね。 |
| ジェイド | ミトスやエミルが関わっているということは世界樹の調査……でしょうか。 |
| ジェイド | しかもシングを連れていこうと考えるとは……中々面白い。目の付け所がいいですね。 |
| ミトス | 人間に褒められてもちっとも嬉しくないけどね。 |
| ミリーナ | え ? どういうことですか ? |
| ジーニアス | えっとね、簡単に言うと世界樹と精霊は繋がっている可能性が高いんだ。 |
| ラタトスク | ……元の世界と同じなら、大樹――世界樹は俺のモノだからな。 |
| ラタトスク | ミトスが、ソーマ使いなら、樹を通じて精霊の心にアクセスできるかも知れないと言い出してな。 |
| ミトス | テセアラ領の大樹カーラーンとアセリア領の世界樹ユグドラシルを調べればこの世界の精霊のことも分かるんじゃないかと思って。 |
| ミリーナ | 確かに、それは面白い着眼点だわ……。ありがとう、みんな。 |
| ミトス | 別におま……君たちのためじゃないけどね。そうだ、ミリーナ。君が撮った写真の中に世界樹が写っているものはあるかな ? |
| ミリーナ | うーん、どうだったかしら…… ?でも、写真は部屋で保管してあるから探しておくわ。 |
| ミトス | ……ありがとう。それじゃあボクたちはテセアラ領の世界樹の調査に行ってくる。 |
| ミトス | そっちならソーマ使いはいなくてもラタトスクがいるから。 |
| エミル | 待って、ミトス。戦力的にも、もう一人欲しいって言ってたけど、どうするの ? |
| ミトス | ああ、それはもう見つけたから平気。 |
| シンク | ………なんでこっちを見るのさ。 |
| ミトス | 話は聞いてたでしょ ?ボクは君の友達になってあげたんだから友達のことは助けてくれないと。 |
| ジェイド | おや ? あの烈風のシンクにお友達……。それはそれは…… ! |
| アニス | なんとなんと…… ! |
| カーリャ | よかったですねぇぇぇぇぇぇ ! ! ! |
| シンク | ――シークレット…… |
| エミル | 待って待って ! ?魔鏡技は待って ! ? |
| ジーニアス | そうだよ。いい機会だからシンクも一緒に行こうよ。ボク、ミトスの新しい友達がどんな人なのかずっと気になってたんだ。 |
| ラタトスク | ああ、俺もだ。さあ、ぐだぐた言ってないでさっさとこい。 |
| シンク | おいやめろ ! 服を引っ張るな ! ! |
| ジェイド | いやぁ、これは面白いものを見せて頂きました。当分はいじって遊べますね。 |
| Character | 3話【9-3 閑散とした街道】 |
| マリク | すでにイクスたちには伝えたが、ハロルドは内部から帝国を崩すために情報を集めている。 |
| マリク | だが、彼女自身が動きにくくなっているのが現状だ。下手に動けば、こっちの計画がバレてしまうからな。 |
| イクス | それで……マリクさんやリチアさんのような何らかの理由で帝国にいる鏡映点に協力してもらっている状況らしいんだ。 |
| ヒスイ | 俺が知りてえのはそんなことじゃねぇ !あいつは……リチアはちゃんと無事なんだろうな ! ! |
| マリク | すまないが無事だと断言はできん。帝国側もリチアの力を必要としている以上手荒な真似はしていないと思うが……。 |
| ヒスイ | クソッ ! ! だったら早く助けに行くぞ ! ! |
| シング | イクス、テセアラ領の監獄にはオレたちが行ってくるよ。 |
| シング | コハクも一緒に行きたいだろうけど、今はリチャードの心核を治してる途中だからさ。コハクには戻ってきたらリチアのことを伝えてくれないかな ? |
| イクス | わかった。俺も一緒に行ければいいんだけど……今の状態だと足手まといに……なるから…………コーキスに…………。 |
| コーキス | マスター ! ? 大丈夫か ! ?真っ青だぞ ! ? |
| イクス | はは……ごめ……ん……。ちょっと眩暈がしただけだよ。大したことは……。 |
| コーキス | そんなわけないだろ ! |
| コーキス | (やっぱり、マスターの様子がおかしい。いくらゲートを何度も使ったからってこんなになっちまうもんなのかよ…… ? ) |
| コーキス | ごめん、シング様、ヒスイ様。俺も一緒には行けないよ。こんな状態のマスターをほっとけないし。 |
| コーキス | それに、鏡精はマスターの影響を受けるんだ。世界中にある魔鏡結晶のおかげで俺はあんまり制限はないけど……。 |
| シング | ううん、気にしないでコーキス。それにイクスも。今回はオレたちでちゃんとリチアを助けてくるよ。ね、ヒスイ。 |
| ヒスイ | 当たり前だ !帝国軍の連中なんざぁ、俺が一発で仕留めてやんよ。 |
| イクス | ……うん。ありがとう、二人とも。 |
| マリク | だが、そうなると監獄に向かうための戦力に少し不安が出てくるか……。 |
| マリク | 俺が行ってやれればいいんだが情報共有のために残る必要があってな。 |
| レイア | ねえねえ、しいな。白米が好きならサイダー飯も食べてみなよ !絶対美味しいからさ ! |
| しいな | 本当に美味しいのかい、その料理 ?そんなヘンテコな組み合わせ、聞いたこともないよ。 |
| レイア | 大丈夫大丈夫♪って、あれ ? みんな、どうしたの ?なんか、深刻そうな感じだけど……。 |
| しいな | それにイクス。あんた随分顔色が悪いね。知らない顔も増えてるみたいだし……。 |
| コーキス | えっと、色々あってメチャクチャ人手が足りないんだ。 |
| イクス | コーキス……。相変わらず説明が雑すぎるぞ……。 |
| シング | えっと、これからヒスイとテセアラ領の監獄に行こうとしてたんだけど、戦力が足りなくてさ。誰か探しにいこうかと思ってたんだ。 |
| レイア | えっ、そうなの ? だったら任せて !事情はよくわかってないけど、助っ人が欲しいならわたしがシングたちと一緒に行くよっ ! |
| シング | ホントに ! ? 助かるよ、レイア ! |
| レイア | あっ !でもしいなにサイダー飯作ってあげる約束が……。 |
| しいな | 何言ってんだい。そんなのいつでもいいだろ。それより、あたしも一緒に連れてっとくれよ。 |
| しいな | 大人しくしてるっていうのはどうも性に合わなくてね。それに潜入調査ってのはあたしの育った里の得意分野サ。 |
| ヒスイ | へっ、頼もしいじゃねーか !なら、俺たちで監獄に乗り込むぞ ! |
| ミリーナ | う~ん、やっぱりないわね。 |
| カーリャ | ミリーナさま~。只今戻りました~。 |
| ミリーナ | おかえりなさい、カーリャ。リベラの様子はどうだった ? |
| カーリャ | はい、顔色もよくなっていましたよ。リベラさま、早く目を覚ますといいですね。 |
| ミリーナ | ジュードたちに任せておけば安心だと思うわ。それに、アニスも傍にいてくれてるし。 |
| カーリャ | そうですね ! それじゃあ、カーリャはリベラさまが目を覚ましたときの為にいっぱいお菓子を用意しておきます ! |
| ミリーナ | ふふっ、カーリャらしいわね。医療チームの許可が出たら差し入れしてあげましょう。 |
| カーリャ | はい ! ところでミリーナさま。写真なんか並べてどうしたんですか ? |
| ミリーナ | さっきミトスが言ってたでしょ ?世界樹の写真があれば渡してほしいって。 |
| カーリャ | なるほど ! それで早速ミトスさまの為に写真を探しているんですね。 |
| ミリーナ | ええ。最近はミトスもコレットやアーチェと一緒に物資の調達を手伝ってくれてるの。だから、私も力になってあげたかったんだけど……。 |
| ミリーナ | 駄目ね。やっぱりアセリア領の世界樹の写真は撮ってなかったみたい。 |
| カーリャ | う~ん、写真を撮れるのはミリーナさまだけですし他の人が持ってることもないですよね、きっと。 |
| ミリーナ | ……ねえ、カーリャ。私、今からアセリア領へ行ってみようと思うの。 |
| カーリャ | ええっ ! ? 今からですか ? |
| ミリーナ | 善は急げって言うじゃない。それに、私もみんなの為に何かしたいの。 |
| カーリャ | それならカーリャも一緒に行きます !そこまで離れちゃうと存在が保てるとも思えないですし……。 |
| ミリーナ | ありがとう、カーリャ。それじゃあ、準備をしてから向かいましょう。 |
| ロンドリーネ | あれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ? |
| ミリーナ | ロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。 |
| ミリーナ | あっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。 |
| ロンドリーネ | うん、わかった。気を付けて行ってきてね。 |
| カーリャ | ご安心を ! ミリーナさまはカーリャが全力でお守りしますので ! |
| ロンドリーネ | あはは、それは頼もしいね。それじゃあ、ミリーナのことは頼んだよ、カーリャ。 |
| カーリャ | はい ! では、行ってきますね ! |
| Character | 4話【9-4 イ・ラプセル城】 |
| クンツァイト | ――スピルリンク終了。戦闘モードを解除する。 |
| ハロルド | あら、思ったよりも早かったわね。どう、予定通り上手くいった ? |
| クンツァイト | 肯定。対象者アトワイトの心核の入れ替えは成功。これで目を覚ますはずだ。 |
| アトワイト | ――ん、んん……。 |
| ハロルド | おや、言ってるそばからお目覚めみたいね。 |
| アトワイト | ……驚いたわ。本当にあなたのおかげだったのね、ハロルド。 |
| ハロルド | その様子だと、事情はもうわかってるって感じかしら? |
| アトワイト | ええ、私のスピルメイズ――心の中で聞いたわ。そこにいるクンツァイトさんそれに、ヨーランドさんからもね。 |
| アトワイト | 改めて、助けてもらったことを感謝するわ。自分の身体を勝手に使われるなんてあまり気分がいいものじゃないもの。 |
| ハロルド | お礼なんてお門違いもいいとこよ。あんたの心核と人工心核を入れ替えたのはこの私。恨み言ならたっぷり聞いてあげるわ。 |
| イオン | すみません、アトワイトさん。お叱りなら僕も一緒にお願いします。僕たちはどうしても帝国の目を欺く必要があったんです。 |
| アトワイト | わかってるわ。ハロルドのことはよく知ってるし私も軍に所属していた人間だもの。ちゃんと理解はしているつもりよ。 |
| ハロルド | ところでアトワイト。あんた、違和感とかない ?シドニーが残していった心核除去装置には副作用があった筈なんだけど。 |
| アトワイト | 大丈夫よ。ヨーランドさんが修復してくれたわ。それに、彼女はちゃんと私の心の中に宿っていて今も私たちの話を一緒に聞いているわよ。 |
| クンツァイト | アトワイトのスピルメイズの破損状況は自分でも修復不可能であった。だが、全て彼女が元に戻してみせたのだ。 |
| イオン | ヨーランドさんは、鏡士の始祖――初代ビクエ、でしたよね。とてつもない力を持っているんですね。 |
| ヨウ・ビクエ | (あら、照れちゃうわね。でもこれは別に私が特別優れている……というのとは違うの。詳しい話はいずれするけれど) |
| ヨウ・ビクエ | (アトワイト。申し訳ないけどしばらく心の中にお邪魔させてもらうわね) |
| アトワイト | ヨーランドさんが、力のことはいずれ説明してくれると言っているわ。暫くは一緒に私と行動してくれるみたい。 |
| ハロルド | ここまでは、私たちの計画通りね。他にも色々話したいところなんだけどそうのんびりもしていられないわ。 |
| ハロルド | いい、アトワイト。あんたはこの後、クンツァイトと一緒にここから脱出しなさい。 |
| アトワイト | 脱出って……いきなり突拍子もない話ね。 |
| ハロルド | それがさ、グラスティンとかいう帝国側に厄介な奴がいんのよ。 |
| ハロルド | そいつにあんたを利用されないためにもヨーランドのことを隠すためにもここにいない方がいいの。 |
| アトワイト | 大事なカードはこっちで取っておくってところかしら。 |
| ハロルド | そういうこと。あと、念のために聞いておくんだけどヨーランドから何か言ってきたりしてる? |
| ヨウ・ビクエ | (私もハロルドに賛成よ。あの趣味の悪い男には会いたくないわ) |
| アトワイト | ヨーランドさんも賛成だそうよ。でも不思議ね、自分の中に別の人の意識があるなんて。 |
| クンツァイト | 意識と体を分離した存在。今のヨーランドはリチアさまがコハクの中にスピリアを宿していた状態と酷似している。 |
| ヨウ・ビクエ | (だって、こうしていないとこの世界が崩壊しちゃうきっかけを与えちゃうもの) |
| アトワイト | ヨーランドさんが意識だけになっているのもこの世界の崩壊と関係があるようね。 |
| イオン | 確か、帝国が精霊の力を利用しているせいでヨーランドの封印が解けそうになってしまったので心を分離した、と言っていましたよね ? |
| ヨウ・ビクエ | (その通りよ。歪められた目覚めは世界に悪影響を起こすの) |
| ヨウ・ビクエ | (だから、ハロルドたちに協力してもらって私と相性のいい鏡映点を捜してもらってたのよね。まぁ、本人は色々実験できて楽しそうだったけど) |
| アトワイト | ……その様子がはっきりと目に浮かぶわ。でも、その寄生しやすい鏡映点っていうのが私だったってことでいいのかしら ? |
| イオン | ええ。おかげで今後はヨーランドが自由に動けます。誰かの心に寄生していないと、自分の体から遠くへは行けないということでしたから……。 |
| 帝国軍兵士 | ——ハロルド様。只今グラスティン様がお見えになられました。至急お話を伺いたいとのことですが……。 |
| ハロルド | はいはい、ほんっとせっかちな奴ね。部屋で待ってるって伝えなさい。 |
| イオン | ……時間稼ぎは難しそうですね。 |
| ハロルド | クンツァイト。予定通りアトワイトと一緒に精霊の封印地へ向かいなさい。そこでヨーランドにダーナの意志っていうのを聞いてもらうのよ。 |
| クンツァイト | 了承。これより作戦を実行する。行くぞ、アトワイト。 |
| アトワイト | ええ。ハロルド、あなたも気を付けてね。 |
| ハロルド | この私がヘマなんてすると思う ?人の心配より自分の心配をしなさい。 |
| アトワイト | ふふっ、あなたらしい返答ね。 |
| Character | 5話【9-7 テセアラ領の森】 |
| ヒスイ | やっと見えたぜ。監獄だ ! |
| シング | うん、マリクが教えてくれたルートのおかげで帝国兵とも鉢合わせにならずに済んだね。 |
| レイア | よ~し ! みんな、このままガンドコ行くよっ ! ! |
| シング | ああっ、レイア ! オレのセリフ取らないでよ ! ? |
| レイア | いいじゃん♪ 一回言ってみたかったんだよね~。 |
| しいな | あんたたち、もうちょっと緊張感ってのを持ったらどうなんだい ?ここからは見張りも厳しくなってるはずサ。 |
| ヒスイ | …………。 |
| しいな | ――ヒスイ、大丈夫かい ? |
| ヒスイ | あっ ? ああ、わりぃ。ちっと考え事をしてただけだ。 |
| レイア | やっぱりリチアさんのこと、心配だよね……。 |
| ヒスイ | ああ。あいつ、たまにとんでもねぇ無茶しやがる時があるからよ。厄介なことに巻き込まれてなきゃいいんだが……。 |
| しいな | ……だったら尚更、あたしたちが迎えにいってあげなきゃいけないね。 |
| ヒスイ | ……だな。待ってろよ、リチア……。俺が必ず助けてやるからなッ ! ! |
| シング | う~ん、やっぱり変だよね……。 |
| レイア | ん ? どうしたのシング ? |
| シング | なんかさ、この監獄の周りって他の場所と比べて魔鏡結晶がいっぱいあると思わない ? |
| レイア | そういわれてみれば……。ここまで来る間もかなり沢山あったよね。 |
| しいな | 確か魔鏡結晶ってのは、イクスがでっかい魔鏡結晶に閉じ込められたんだか閉じこもったんだかの時世界中にできたものなんだろ ? |
| しいな | たまたまこの辺に多かったってだけじゃないのかい ? |
| シング | でも、この監獄、結構最近建てられたものだと思うよ。 |
| シング | もしこの監獄が、イクスがスタックオーバーレイした後に建てられたなら、監獄の建物にまで結晶が侵蝕してるのはおかしくない ? |
| ヒスイ | ……確か魔鏡結晶ってのはイクスの力の具現化だったか ? |
| ヒスイ | よくわからないがイクスの様子がおかしいのはこの魔鏡結晶が原因……かもしれねぇな。 |
| しいな | はぁ……。こういうときにリフィルがいれば何か意見が聞けたんだけど……―― |
| しいな | ――っと、誰かいるね。 |
| レイア | あれは、帝国兵 ! ? |
| ヒスイ | こんなところで見つかったら厄介だ。おめぇら、一旦隠れるぞ。 |
| 帝国軍兵士A | おい ! お前たちも早く来い ! ! |
| 帝国軍兵士B | なんだ ? 中で何かあったのか ? |
| 帝国軍兵士A | リチア様が急に倒れたんだ !その後すぐに監獄の中にまで魔鏡結晶が発生して囚人たちを捕えていた檻も壊れちまった ! ! |
| シング | そんな ! リチアが倒れただって ! ? |
| 帝国軍兵士A | 待てっ ! そこに誰かいるのか ! ? |
| しいな | マズい。気づかれちまったよ ! |
| ヒスイ | ――槍鴎ッ ! ! |
| 帝国軍兵士A・B | ぐはああっ ! ! |
| レイア | 凄いよヒスイ !離れてる見張りを一瞬で倒しちゃった ! |
| シング | ありがとう、ヒスイ。……ごめん。オレのせいで見つかっちゃって。 |
| ヒスイ | んなことはいいんだよ !それよりお前も聞いたろ ! ? リチアが倒れたって !コソコソ潜入なんざしてられっか ! ! |
| ヒスイ | 警備兵が何人いようが俺が全員ぶっ倒す ! !行くぞ、おめぇら ! ! |
| レイア | あっ ! ? ちょっとヒスイ ! ?一人で先に行ったら危ないよ ! ! |
| しいな | いや、場が混乱している今なら……。シング、レイア !あたしたちもヒスイの後に続くよ ! |
| クンツァイト | ……ここは ? |
| アトワイト | ヨーランドの話だと、精霊の封印地への転送魔法陣を展開した筈なんだけど……。 |
| ヨウ・ビクエ | (いえ、どうやら私たちは……アイフリードのお墓がある場所に飛ばされちゃったみたいね) |
| アトワイト | アイフリード ? |
| クンツァイト | 警告。前方に生体反応を確認。何者かがこちらに近づいてきている。 |
| ヴィクトル | ――誰だ、お前たちは ?まさか、帝国の人間なのか ? |
| クンツァイト | 対象、敵対行動に移る可能性あり。こちらも戦闘モードに移行する。 |
| アトワイト | 待って。私たちは……。 |
| ヨウ・ビクエ | (アトワイト、よかったら代わってもらえないかしら?私、この人のこと、少しだけ知っているのよ) |
| アトワイト | そうなの ? だったらここはあなたに任せたほうがいいみたいね。 |
| ヴィクトル | ん ? 女、今なにか言ったか ? |
| ヨウ・ビクエ | ――ヴィクトル、元気そうで何よりだわ。 |
| ヴィクトル | ……何を言っている ? |
| ヨウ・ビクエ | ごめんなさい。この体の持ち主――アトワイトに頼んで意識を譲ってもらったの。 |
| ヨウ・ビクエ | あなたも、もう一度精霊の封印地に向かおうとしてここへ来てしまった……んじゃないかしら ? |
| ヴィクトル | 貴様、何者だ ? |
| ヨウ・ビクエ | 私はヨーランド。ダーナの巫女よ。ヨウ・ビクエの方が通りがいいかしら。 |
| ヴィクトル | ダーナの巫女、だと ? |
| ヴィクトル | ……そうか、お前がバルドの言っていた【眠りの巫女】というわけか。 |
| Character | 6話【9-8 テセアラ領の森】 |
| ゼロス | ったくよー ! なんで俺さま、毎回毎回こいつと組まされなきゃいけないわけ ! ? |
| クラトス | ここは帝国領の上空だ。その上で我々が呼ばれたのだから空からの奇襲を考えているのだろう。 |
| ゼロス | んなことたぁ、言われなくてもわかってるっつーの !はぁ~、いいよなあんたは。班長会議だとかいってアジトの美女軍団に会えるんだからよ……。 |
| マーク | よう。相変わらず仲良しこよしってとこか? |
| ゼロス | 本気でそう見えるなら早いとこ目医者でも紹介してもらえよな。 |
| ゼロス | ……で、なんだ ? その後ろにいる大男は。また性懲りも無く男の仲間を増やしたのかよ。 |
| マーク | 仲間、ねぇ……。ま、色々訳ありでな。こちらの『偉丈夫』はバルバトス『さん』だ。 |
| マーク | これからクラトスと二人でこいつを芙蓉離宮に下ろしてやってくれないか。 |
| ゼロス | 芙蓉離宮 ? 何でそんなとこに……。 |
| バルバトス | ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと俺を運べ。文句がある奴は、顎を切り落としてやる。 |
| ゼロス | ちょ ! ? 何だよこいつ ! ?完全にやべー奴でしょーよ ! |
| マーク | 頼むぜ、バルバトスの旦那。ここでやり合ったところでお前の目的が果たせなくなっちまうだけだぞ。 |
| バルバトス | ……フンッ。 |
| ゼロス | なぁ、マーくんよ。俺さまが言うのもなんだが仲良くする相手は選んだほうがいいぜ ? |
| マーク | 俺もそろそろ自分で呆れてるところだよ。ともかく、今回は手伝ってやってくれ。 |
| ゼロス | へいへい、わーったよ。 |
| クラトス | では、行くぞ。上空とはいえ、敵地に長居するのは得策ではないからな。 |
| バルバトス | 急げ ! 飛ばせ !俺はいつまでも紳士的じゃないぞ ! !……待っていろよメルクリア。くくく……。 |
| マーク | ……やれやれ。ようやく厄介払いができたな。これで少しは落ち着けそうだ。 |
| ローエン | マークさん、ここにいましたか。 |
| マーク | ……っと、そうでもなかったか。ローエン、どうかしたか ? |
| ローエン | 先ほど、精霊の封印地へ向かったヴィクトルさんから連絡がありました。何でも、ヨウ・ビクエという人物と遭遇したとか……。 |
| マーク | ヨウ・ビクエ ! ? シャーリィに取り憑いてたいかにもフィル好みのあの姐さんか。 |
| ローエン | ほっほっほ。それを聞いたらフィリップさんがどんな顔をすることか。 |
| マーク | 顔を真っ赤にして全否定する様が目に浮かぶぜ。 |
| ローエン | その、バリボーな美女が好きなフィリップさんがマークさんを呼んでいますよ。ヨウ・ビクエとの通信に同席して欲しいそうです。 |
| ヨウ・ビクエ | 久しぶりね、フィリップ。マーク。それに、知らない顔が増えてるみたい。 |
| ヨウ・ビクエ | 私の隣にいるイケメンはクンツァイト。帝国にいた鏡映点よ。 |
| ローエン | 確かシングさんたちのお仲間でしたね。 |
| クンツァイト | シングを知っているのか ?帝国を離反したとは聞いていたが。 |
| マーク | ああ。黒衣の鏡士達のところで元気にやってるぜ。 |
| フィリップ | ――あの、一つ確認ですがあなたは本当に初代ビクエなんですか ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ。今はアトワイトの体を一瞬借りているのよ。もちろん同意の上でね。 |
| ヨウ・ビクエ | まぁ、だから初代ビクエだと信じろと言われても難しいでしょうけれど、今は信じたフリだけでいいから話を聞いてもらえると助かるわ。 |
| フィリップ | は、はぁ……。でも、イクスたちからは初代ビクエがイ・ラプセル城にいたと報告受けていましたが……。 |
| ヨウ・ビクエ | ダーナの心核がある精霊の封印地へ行こうとしたらここ――魔の空域に飛ばされちゃったみたいなの。 |
| ヴィクトル | 私も同じだ。バルドから聞いていた精霊の封印地へ続く転移の呪文を用いたが、何度転送魔法陣を作り出しても魔法陣の先には精霊の封印地とは違う景色が見えた。 |
| ヴィクトル | そのたびに転移をキャンセルしたが結果は同じ——。だが、転移の呪文以外で封印地に辿り着く方法はない。そこで、調査のためにも飛び込んでみたのだが……。 |
| マーク | 魔の空域の島に辿り着いて初代ビクエと鉢合わせって訳か。 |
| フィリップ | 待って下さい。そこが魔の空域だというのなら魔鏡通信が使えない筈では――。 |
| フィリップ | ……いや、これも初代ビクエの力か。 |
| ヨウ・ビクエ | ええ。私、ティル・ナ・ノーグではとっても便利な存在なの。 |
| ヨウ・ビクエ | だから、自分を卑下しないでちょうだいね。私は特別。不自然な存在。そこにはそれなりの理由がある。 |
| ヨウ・ビクエ | でも、そんな私でもこの場所にいるのはちょっと厄介でね。 |
| ローエン | まるで神の如き力を持つあなたでもそこからは抜け出せないと ? |
| ヨウ・ビクエ | ご明察よ。素敵なおじいちゃま。ヴィクトルから聞いたけれど、心の精霊の封印の影響で転移の呪文が通じなくなってしまったのだと思うわ。 |
| ヨウ・ビクエ | 端的に言えば、私たちは今この島に閉じ込められている状態なの。 |
| マーク | そいつは笑えない話だな。何とかならないのか ? |
| ヨウ・ビクエ | 『私だけ』の力じゃ無理ね。だから、当代ビクエの力を貸してほしいの。 |
| フィリップ | 僕の力 ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ、ひとまずここを脱出するために魔鏡通信機を利用して、あなたの心にスピルリンクするわ。 |
| フィリップ | スピルリンク ! ?ですが、それはソーマを使わなくては……。 |
| クンツァイト | 問題ない。自分の腕型ソーマ「ヴェックス」とヨーランドの力を合わせれば、この場にいる全員でのスピルリンクは可能だ。 |
| ヨウ・ビクエ | そこから、私の力であなたがいる飛空艇……ケリュケイオンって言ったかしら ?そっちに皆で行くことにするわ。 |
| フィリップ | 僕の心を通じてここへ移動するというのか ! ? |
| フィリップ | ヨウ・ビクエ……。同じビクエだというのに僕とはレベルが違いすぎる……。 |
| ヨウ・ビクエ | だから言ったでしょ。私は不自然な存在だって。私がこんなことをできるのは私が【ダーナの巫女】だから。 |
| ヨウ・ビクエ | 人間にこんなことをできる方が――おかしいのよ。 |
| Character | 7話【9-10 テセアラ領の森】 |
| レイア | うわ……脱走した囚人と兵士たちでメチャクチャだね……。 |
| シング | うん。巻き込まれないようにオレたちも早くリチアを見つけてここを出よう。 |
| ヒスイ | リチア……どこにいるッ ! ? |
| しいな | ヒスイ、落ち着きなって。聞いた話だとリチアは帝国の客人として迎えられている筈だろ。監獄にいるってことはないはずサ。 |
| ヒスイ | あぁ ? ここじゃないならどこにいるっつーんだよ ! ! |
| しいな | 怒鳴ってないで頭使っとくれよ !あたしゃ、そういうのは苦手なんだ ! |
| ヒスイ | 俺だって―― |
| ヒスイ | ……そうか。リチアが客分扱いならあいつがいるのはこんな檻の近くじゃねぇ。お前ら、ついてこい ! |
| シング | ここが看守棟か。こっちも魔鏡結晶の被害が酷いみたいだね……。 |
| ヒスイ | ああ。だが客分なら応接室とかそういうところに案内するだろ。だからきっとリチアも―― |
| レイア | ねえ ! あそこの壊れた扉の先 !誰か倒れてない ! ? |
| ヒスイ | あれは……リチアッ ! ! おいっ、リチアッ ! ! |
| リチア | …………その、声は。 |
| ヒスイ | リチアッ ! ! 俺だ ! !待ってろよ ! ! すぐに助けてやっからな ! ! |
| リチア | ヒ……スイ……。 |
| ヒスイ | リチアッ ! ? クソッ ! !魔鏡結晶が邪魔で先に進めねぇ ! ! |
| レイア | マズいよ ! リチア、すっごく苦しそうだよ ! ? |
| ヒスイ | 何で壊れねえんだよ、この結晶 ! !オラッ ! ! オラァッ ! ! |
| しいな | ちょっと、ヒスイ ! ?そんなに術を使ったらあんたの身体が持たないよ ! ? |
| ヒスイ | 俺の身体なんてどうだっていい ! !あいつが苦しんでる姿はもう見たくねぇんだよ ! ! |
| ヒスイ | 俺が……俺があいつを守るって決めたんだ ! ! |
| シング | くっ、リチアが目の前にいるのに、どうしたら……。 |
| ? ? ? | ――ま、すか ?――マを、――し、者たちよ。 |
| シング | えっ ? な、何だ ? この声……。 |
| ヒスイ | まさか、ソーマから聞こえてきてんのか ! ? |
| ? ? ? | ――はい、あなたたちのソーマを通じて私の声を届けています。 |
| ヴェリウス | 私は心の精霊ヴェリウスです。シング、ヒスイ。あなたたちのソーマの力でリチアのスピリアを守って下さい。 |
| レイア | ちょっと、どうしたの二人とも ? |
| シング | ヴェリウスって精霊がオレたちに話し掛けてきてるんだ。オレたちの力でリチアを守れって……。 |
| ヴェリウス | 魔鏡結晶に宿るイクスの力が彼女に干渉しデスピル病を発症しています。事態は急を要する。早くリチアにスピルリンクを ! |
| ヒスイ | ――シング ! リチアにスピルリンクするぞッ ! ! |
| レイア | ――え ! ? 何 ! ? ここ、どこ ! ? |
| しいな | ど、どうなってるんだい ! ? |
| シング | え ! ? レイアとしいなもスピルメイズに来てるの ! ?どうして ! ? スピルリンクする魔鏡もないのに……。 |
| しいな | スピルメイズって……。それじゃあ、ここはリチアって人の心の中なのかい ! ? |
| ヴェリウス | ――しいな。今のあなたは知らないでしょうけれどあなたと私には確かな繋がりがあります。それを使って、私があなたとレイアを招きました。 |
| ヴェリウス | ソーマ使いの二人を助けてあげて下さい。 |
| レイア | うわ ! ? わたしにも声が聞こえた……。今のがヴェリウスの声…… ? |
| しいな | ………………。 |
| しいな | ヴェリウスの声が聞こえなくなっちまった……。 |
| レイア | ヴェリウスは心の精霊だって言ってたんだよね ?わたしの世界では聞いたことがない精霊だけど……。 |
| しいな | ……そいつはあたしもサ。まあ、会ったことがないだけであたしの世界にいたのかも知れないけどね。 |
| レイア | ミラなら何か知ってたかも……。 |
| ヒスイ | だが、今はヴェリウスのことよりリチアのことだ。デスピル病になったってのが本当ならすぐに何とかしないとッ ! |
| レイア | デスピル病って何 ? |
| シング | ゼロムっていう思念体が、スピリア――こっちで言う心に取り憑く病気、かな。そうなるとスピルーン――心核を喰い尽くされて……。 |
| ヒスイ | ……死んじまう。そんなことさせてたまるかッ ! |
| アトワイト | あら ? あなたたちは……。 |
| クンツァイト | シング ! それにヒスイか ! ? |
| ヒスイ | クンツァイト ! ?お前、何でリチアのスピルメイズの中にいるんだ ! ? |
| クンツァイト | リチアさまの…… ?ヒスイ、一体何のことだ ?ここはフィリップという人物のスピルメイズだ。 |
| シング | そんな筈ないよ。オレたち、ヴェリウスっていう心の精霊にリチアがデスピル病だって言われてスピルリンクした――筈だから……。 |
| クンツァイト | リチアさまがデスピル病だと ! ?シング、それは本当なのか ! ? |
| ヴィクトル | ヨウ・ビクエ。これはどういうことだ ? |
| ヨウ・ビクエ | ……そうね。おそらくイクスの魔鏡結晶を通じてフィリップの心とリチアの心が混ざりあっている状態なんだわ。 |
| ヨウ・ビクエ | ねえ、イクスがリチアから物理的に近い場所で転移術のようなものを発動させたってことはない ? |
| シング | ……あっ。そういえば、リチャードを助ける時に転送ゲートを使ったって言ってた。 |
| ヨウ・ビクエ | やっぱりね。それが心――スピルメイズが混ざった原因よ。 |
| レイア | ごめん。全然わからないんだけど……。 |
| ヨウ・ビクエ | ああ、だったら、これだけ理解してちょうだい。あなたたちはこのままリチアの心核を目指せば大丈夫ってこと。 |
| ヨウ・ビクエ | あとは――クンツァイト。あなたはシングたちと一緒にいったほうがいいわね。あなたにとってもリチアは大切なんでしょう ? |
| クンツァイト | しかし、自分が離れてしまうとヴィクトルがこのスピルメイズ内から出られなくなるのではないか ? |
| ヨウ・ビクエ | その点は問題ないわ。スピルリンクの解除だけならソーマがなくても私の力だけで可能よ。いざとなったら、優秀な当代ビクエもいるしね。 |
| クンツァイト | ならば、シングたちと行かせてもらう。自分はリチアさまの守護機士。我が主の窮地となれば、動かないわけにはいかない。 |
| しいな | ちょっと待っとくれよ。あんたたちはどうするんだい ? |
| ヨウ・ビクエ | 私とヴィクトルはフィリップのところへ向かうわ。残念だけど、あなたたちとはここでお別れね。 |
| ヨウ・ビクエ | そうだ。もしここまであなたたちを導いたっていう心の精霊が、もう一度コンタクトを取ってきたら精霊の封印地の状況を聞いておいてくれないかしら ? |
| ヨウ・ビクエ | それじゃあ、またね。 |
| レイア | 行っちゃった……。 |
| クンツァイト | 彼女たちならば問題はないだろう。シング、ヒスイ。自分はこれよりリチアさまの救出を最優先とする。力を貸して欲しい。 |
| ヒスイ | んなもん当たり前だッ !頼むぜ、クンツァイト ! ! |
| シング | よし、リチアのスピリアがある場所まで行こう ! |
| Character | 8話【9-13 スピルメイズ】 |
| シング | みんな、もうすぐ最深部のはずだよ。きっとリチアのスピリアもここに…… ! ! |
| ヒスイ | こいつはッ…… ! ! |
| クンツァイト | 間違いない。これは我が主のスピリアの反応だ。 |
| レイア | じゃあ、リチアは近くにいるんだね ! ? |
| しいな | みんな ! あっちに見える人影って……。 |
| ヒスイ | あの髪の色……間違いねぇっ ! !おい、リチア ! ! |
| リチア | その声は……ヒスイなのですか ! ? |
| シング | よかった ! 無事だったんだね、リチア。 |
| リチア | シング……それにクンツァイトまで……。 |
| ヒスイ | お前、大丈夫なのか ! ?そうだ ! デスピル病は ! ? 帝国の奴らに何かひでぇことされたんじゃねえだろうな ! ! |
| しいな | ヒスイ、そんないっぺんに聞いたら答えられるもんも答えられないだろ ?一旦落ち着きなよ。 |
| ヒスイ | お、おう……そうだな、わりぃ。 |
| リチア | いえ、わたくしを助けるために来てくれたのですよね ?ありがとう、ヒスイ。 |
| リチア | ですが、またわたくしはあなたたちを危険な目に遭わせてしまったのですね……。 |
| ヒスイ | ああ ? 何言ってやがんだおめぇは ? |
| リチア | ……えっ ? |
| ヒスイ | お前はな、そうやっていっつも自分だけで背負いこみすぎなんだよ。 |
| ヒスイ | お前はずっと、俺たちを守ってくれてたじゃねえか。それに、俺にはお前に返しきれねぇ程の借りがあるんだよ。 |
| ヒスイ | ……だからよ、リチア。俺は、お前がどこにいようが絶対に助けに行く。これからも、ずっと一緒にいるためにな。 |
| リチア | ヒスイ……。 |
| ヒスイ | あっ、いや ! ? へっ、変な勘違いすんなよっ ! !お前はずっとコハクと一緒だから家族みてぇな存在って言いたかっただけだからな ! ! |
| レイア | もう、ほんっと男の子って素直じゃないよね。 |
| しいな | はは……。まぁ、男ばかりとは限らないけどね。素直になれないのは……。 |
| レイア | ………………。 |
| シング | リチア、一体何があったの。オレたちが駆け付けたときにはリチアが急に倒れたって聞いたんだけど……。 |
| リチア | ここへはリチャードという人物のスピリアからチーグルという人物のスピリアを分離するように言われてきたのです。 |
| リチア | ですが、何か騒ぎがあったようでしばらくこの看守棟で待つように命じられました。 |
| リチア | しばらく待っていると突然、何者かの不安が、わたくしのスピリアの中に紛れ込んできたのです。 |
| リチア | それを退けようとしているうちに、わたくしと不安を生み出す何者かのスピリアが同調して制御不能となってしまいました。 |
| クンツァイト | リチアさまが気を失われるほどの力……。 |
| シング | まさかそれがゼロムなんじゃあ……。 |
| クンツァイト | ――警告 ! ! 前方からの攻撃反応を確認 ! ! |
| ヒスイ | 早速現れやがったな ! !リチアのスピリアに勝手に混ざりやがって ! !痛ぇじゃすまさねぇぞ、ゼロムッ ! ! |
| しいな | ――いや、ちょっと待っとくれよ ! !あれは……。 |
| ゼロム ? | ………………。 |
| レイア | イクス ! ? 何でイクスがここにいるの ? |
| リチア | いえ、あれは人の形を模したゼロムです。そして、わたくしのスピリアに入ってきた不安の正体でもあります ! |
| イクス型ゼロム | ——全部、嘘だったんだ。 |
| シング | 嘘 ? |
| イクス型ゼロム | そうさ……。俺も、ミリーナも、この世界さえも全て作り物だ。 |
| ヒスイ | 作り物だぁ ?こいつ、何言ってやがる ? |
| リチア | このゼロムは彼――イクスという人の不安そのもの。ずっと押し込もうとした想いがゼロムとなってしまったのでしょう。 |
| しいな | それじゃあ、こいつの言ってることはイクスが抱えている感情だっていうのかい ? |
| クンツァイト | 肯定。魔鏡結晶を通じてイクス・ネーヴェの思念がゼロム化したと推測。排除対象と判断する。 |
| シング | これが……イクスの思念……。 |
| イクス型ゼロム | 俺は……偽物なんだ……。ただの、代用品でしかないんだ……。 |
| シング | ! ? |
| シンク | レプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。 |
| シンク | フォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。 |
| シンク | この八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。 |
| シング | ……違う……そんなはずない ! ! |
| シング | 誰かに造られた存在でも ! !世界に生まれた瞬間、イクスはイクスじゃないか ! !そのスピリアもイクスだけのものなんだ ! ! |
| イクス型ゼロム | そのスピリア——心だって嘘かもしれないんだぞ !俺から生まれる感情がクリエイトされてないって誰が証明してくれるんだ ? |
| イクス型ゼロム | 世界を守りたい気持ちも、ミリーナを守りたい気持ちもそれに、ミリーナから向けられた信頼や愛情すらも作り物だったとしたら、俺は何を信じればいい ? |
| イクス型ゼロム | 一体……俺は【誰】なんだ……。 |
| レイア | イクス……。 |
| ヒスイ | ……んなこと知ったことかよッ ! ! |
| イクス型ゼロム | ! ? |
| ヒスイ | 感情が造られたものとかんなもん誰にもわかる訳ねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! ! |
| ヒスイ | だがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! ! |
| ゼロム型イクス | 俺の、覚悟…… ? |
| ヒスイ | お前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! ! |
| ヒスイ | その感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! ! |
| ヒスイ | お前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ? |
| ヒスイ | それが覚悟ってもんだろうがよッ ! |
| イクス型ゼロム | そうだ。俺は……俺は……。 |
| ヴェリウス | ——ソーマを受け継ぎし者たちよ。ゼロムの力が弱まっています。 |
| シング | この声は、ヴェリウス ? |
| ヴェリウス | シング、今ならこのゼロムをリチアの心から追い払うことが可能です。 |
| クンツァイト | シング ? これは……。 |
| シング | ヴェリウスの声だ。みんな ! ゼロムを倒してリチアのスピリアを守るんだ ! ! |
| Character | 9話【9-14 閑散とした街道】 |
| ルカ | あれ…… ? イクス、どうしたの ?なんだか顔色が……。 |
| イクス | ……あ、ああ。ごめん。大丈夫だよ。それより、今さっきリチャードさんが目を覚ましたんだ。アスベルたちが心核を戻してくれて……。 |
| イクス | だから念のため、医療班に診てもらおうと思って。お願いできるかな ? |
| ルカ | もちろんだよ。――ジュード、ちょっといいかな ! |
| イクス | ごめんな。医療班のみんなは働きづめだから…………うぅ……ぐっ…… ! ? |
| ルカ | イクス ! ? イクス、大丈夫 ! ? |
| イクス | はぁ……はぁ……。胸が……くるしい…… ! ! |
| ジュード | ――イクス ! ?待ってて、すぐに原因を突き止めるから。まずは呼吸をゆっくりすることを意識して。 |
| イクス | ……はぁはぁ、うぅ…… ! |
| ルカ | イクス ! ? |
| ジュード | ルカ、イクスをベッドまで運ぶのを手伝って。アニーは鎮痛剤の準備をお願い ! |
| アニー | わかりました ! |
| クンツァイト | ――魔鏡結晶の破壊に成功。リチアさまの生命反応に異常がないことを確認。 |
| ヒスイ | リチア ! ! おい、聞こえるかリチア ! ! |
| リチア | ……ちゃんと聞こえていますわ、ヒスイ。 |
| ヒスイ | ……ったく、心配かけさせんじゃねぇよ。 |
| リチア | ごめんなさい。ですが、あなたが助けに来てくれたときわたくしは、本当に嬉しかったのです。 |
| リチア | 愛おしい、わたくしの大切な『家族』にこの世界でも出会えたのですから……。 |
| ヒスイ | ……ああ、また一緒だな。 |
| リチア | ……ええ。 |
| クンツァイト | リチアさま、申し訳ございません。シングたちがいなければ、自分はリチアさまの危機に駆け付けることができませんでした。 |
| リチア | いいえ。貴方はこの世界でもわたくしを守ろうとしてくれました。――ですから今度は、わたくしがみんなを守ります。 |
| ヒスイ | お前、また無茶しようとしてんじゃねぇだろうな ?今は大人しくしてろ。それに、思念術を使っちまったらお前は……。 |
| クンツァイト | ヒスイ、その点に関しては問題ない。驚くべきことだが、この世界に来てからリチアさまの白化の進行は停止している。 |
| ヒスイ | なんだとッ ! ? |
| レイア | 白化……って何のこと ? |
| クンツァイト | ゼロムによるスピリアの消失、または精神が寿命に達することにより、肉体が白い結晶へと変化してしまう現象のことだ。 |
| クンツァイト | リチアさまの肉体は思念術を使用すると白化の進行を促進させてしまっていたが現在その傾向は感知されていない。 |
| クンツァイト | ハロルドによれば、この世界のエンコードという力がリチアさまの肉体にも影響を与えていると言っていた。 |
| ヒスイ | それじゃあ、おめぇ……。 |
| リチア | ええ、わたくしもみんなと一緒に戦います。ここから立ち去るくらいの余力も残っています。 |
| ヒスイ | バカ野郎……俺は……そんな心配をしてんじゃねぇ。白化が止まってるってことは、これからもお前は……。 |
| シング | ……よかったね、ヒスイ。それに、リチアも。コハクもきっと喜ぶよ ! |
| クンツァイト | シング、ヒスイ。こちらの情報も共有したいところだがリチアさまの仰った通り、まずはこの場所からの撤退を推奨する。 |
| ヒスイ | この足音……マズいな。帝国軍かもしれねぇ。ひとまず、適当なところに隠れんぞ。 |
| 帝国軍兵士A | くそっ、囚人たちどころか妙な連中まで攻め込んで来やがって。何者だ、あいつらは ? |
| 帝国軍兵士B | 救世軍の奴らだ。このタイミングで襲撃……。まさか、この変な結晶が異常繁殖したのもそいつらの仕業じゃねえだろうな。 |
| 帝国軍兵士A | ともかく、周辺の陸路は封鎖したらしいからあとは袋のネズミだ。俺たちはこの看守棟にいるリチア様の保護を優先するんだ。 |
| レイア | まずいよ ! 陸路が塞がれちゃったらわたしたちが使うゲートまで行けなくなっちゃう ! ? |
| リチア | ……では、船を使ってはどうでしょうか ?この監獄と直結している港にいけばまだ残っている船が見つかるかもしれません。 |
| レイア | なるほど ! そこで密航して脱出するんだね !任せて ! わたし、経験者だから皆にもやり方教えてあげる ! |
| ヒスイ | おい、自慢げに言うことじゃねぇぞ、それ……。 |
| シング | とにかく、港を目指せばいいってことだね。 |
| クンツァイト | ――シング。複数の生命反応を感知。この看守棟を目指して来ていると予測する。急いでここを離れた方がいい。 |
| しいな | さっきの奴らが言ってたように、狙いはリチアだね。よし、港へ急ぐよ ! |
| リチア | ありましたわ ! 船です ! |
| レイア | でも、あの一隻しか残ってないみたいだよ。 |
| リチア | ヒスイ、大丈夫ですか ?確か、あなたは船が苦手では……。 |
| ヒスイ | んなこと気にしてられる場面じゃねぇだろ。気合いで何とかしてやるよ ! ! |
| 救世軍 | 待ちな ! ! この船は俺たちが使わせてもらう。 |
| シング | お前たちは、救世軍 ! ? |
| 救世軍 | 囚人のくせによく知ってるじゃないか。帝国に向かうためにこの船が必要なんだ。お前たちは大人しく牢屋に戻ってろ ! |
| クンツァイト | 敵か ?必要とあれば自分は戦闘モードへと移行するが ? |
| しいな | 救世軍ってゼロスのいるとこだろ ?戦う必要は無いんじゃないのか ? |
| レイア | ちょ、ちょっと、誤解しないでよ。わたしたち囚人じゃなくて―― |
| ルック | やめろ ! その人たちは俺たちの敵じゃない ! |
| 救世軍 | ルックさん……。 |
| ルック | すまないな。こっちも色々訳ありで気が立っててさ。実は俺たち、バルバトスさんを追って帝都へ向かうつもりだったんだ。 |
| シング | バルバトス…… ?なんか、よくわからないけどケリュケイオンで行けばいいんじゃないの ? |
| ルック | ……いや、そいつはちょっと難しくてな。 |
| 救世軍 | ルックさん ! マズいですよ ! !監獄から本物の囚人連中が港に集まってきてます ! ! |
| しいな | あー、まぁ、考えることはみんな同じか。 |
| ルック | 悪いが一旦話は中断だ。まずはここに来る囚人たちを迎え撃つ。お前たちも手を貸してくれ。 |
| リチア | わかりました。いきますわよ、クンツァイト。 |
| クンツァイト | リチアさまの命によりこれより敵対する勢力の完全排除を実行する。 |
| Character | 10話【9-15 リチア】 |
| リチア | ――先ほどの人たちが最後だったようですね。 |
| ルック | ……結果的に、あんたたちに助けられちまったな。 |
| しいな | 結局どうするんだい。囚人たちは追い返したけど船が一隻しかない状況は変わんないよ。 |
| ルック | あんたたちの目的はアジトに帰ることだろ ?だったら確か、セールンドにもゲートは存在してるってマークさんが言ってたが……。 |
| シング | うん、イクスも班長会議で言ってたよ。ゲートは色んな場所にあるって。 |
| ルック | なら、まずはお前たちと一緒にセールンドへ向かってその後に俺たちは帝都を目指す。――これでどうだ ? |
| レイア | あっ、それならわたしたちが船を取り合う必要もないね。 |
| ルック | 決まりだな。よし、船出の準備は俺たちでやっておく。あんたたちは先に乗っててくれ。 |
| シング | わかったよ。ありがとうルックさん ! |
| カーリャ | ふえええ ! ? 近くで見るとますます大きく見えますね、この樹。 |
| ミリーナ | ええ。こっちはアセリア大陸――クレスさんたちの世界のアニマを元に具現化した大陸にある方の世界樹だから確か……ユグドラシルと言う名前だそうよ。 |
| カーリャ | ミリーナさま。写真、撮り終わりましたか ? |
| ミリーナ | ええ、ばっちり♪ |
| カーリャ | ミトスさまはどうしてこの樹の写真が欲しいんですかね ? |
| ミリーナ | 名前が同じだからかも知れないわね。 |
| ミリーナ | ミトスには色々お願いしてしまっているからちょっと遠出して写真撮るくらいは私たちでやってあげないと。 |
| カーリャ | サプライズですもんね !ミトスさま喜んでくれるといいですね ! |
| ? ? ? | 貴様が黒衣の鏡士、か。 |
| ミリーナ | え…… ? |
| カーリャ | ミリーナさまっ ! ? ミリーナさまーっ ! ? |
| イクス | ――あれ……ここは ? |
| ジュード | イクス ! ? よかった、目を覚ましたんだね。 |
| イクス | 俺、どうしちゃったんだ……。 |
| アニー | 胸を押さえて、うなされていたんです。顔色はよくなってきていますがどこか身体に違和感はありませんか ? |
| イクス | いや……もう何ともないよ。胸の痛みも……なくなってる。 |
| ルカ | 僕、ミリーナを呼んでくるよ。さっきは何処かに行ってたみたいだけどもしかしたら、もう帰って来てるかもしれないし。 |
| ジュード | そうだね。ミリーナもイクスの体調を気にしていたから……――イクス ? |
| イクス | ……えっ……ああ、ごめん。まだ少し寝ぼけてるのかな、ははっ……。 |
| イクス | (……あの光景は、本当に夢だったのか ? ) |
| ヒスイ | ……んなこと知ったことかよッ ! ! |
| イクス型ゼロム | ! ? |
| ヒスイ | 感情が造られたものとかんなもん誰にもわかるわけねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! ! |
| ヒスイ | だがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! ! |
| ゼロム型イクス | 俺の、覚悟…… ? |
| ヒスイ | お前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! ! |
| ヒスイ | その感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! ! |
| ヒスイ | お前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ? |
| ヒスイ | それが覚悟ってもんだろうがよッ ! |
| イクス | (覚悟……か……。覚悟ならしてきたつもりだったよ。) |
| イクス | (でも……俺の予想が正しければ感情すら……心すら造れるんだ。鏡士の望む通りに。だからファントムだって――) |
| イクス | ……ん ? これは、魔鏡通信 ? |
| フィリップ | ……イクス。きみに大切な話があるんだ。 |
| イクス | ―― ! |
| フィリップ | 今、君たちのアジトがある浮遊島に向かっているところだ。……きみとの約束を果たすためにね。 |
| イクス | ……やっと話してくれるんだな。 |
| フィリップ | ああ。待たせてごめん。今がその時だと思うんだ。だから――直接会って二人だけで話がしたい。 |
| イクス | わかった。待ってるよ、フィル。正直……ちょっと怖いけどでも、俺、ずっと知りたかったんだ。 |
| イクス | 俺やミリーナは『誰』なのか。 |
| | to be continued |