Character1話【9-1スピルメイズ】
アニスここが、あの八番目のイオン様の心の中、なんだよね。スピルメイズだっけ ?人の心の中に入るって、おとぎ話もびっくりだよ。
シングオレにとっては当たり前のことだけど他の世界の人から見たらそう感じるんだろうね。
シング……っていうか、八番目のイオン様ってどういう意味 ?
アニス……あ。えっと、それは……。
ジェイド我々の世界にはイオンという名前の人物が複数いましてね。まぁ、便宜上の呼び方だとでも思って下さい。
ジェイドさて、このスピルメイズの奥に、心核がある訳ですね。今回は、帝国が八番目のイオンを領主にするために人工心核が植え付けられている筈ですが……。
シンク――そんな話、時間の無駄だね。先に行くよ。
ジェイドおっと。ここは普通の場所ではありません。和を乱すような行動はいただけませんねぇ。シンくん ?
シンク! ?
アニスさっすが大佐 ! 呼び方に悪意を感じますね !
ジェイド悪意だなんてとんでもない。同じ世界から具現化された者同士是非親交を深めたいと思いましてね。
シンク虫酸が走るね。
ジェイドそれは良かった。では、今後は『烈風のシンくん』と名乗ってみてはいかがでしょう ?
アニス烈風のシンくん♪
シンク……くだらないね。それともボクに殺されたい訳 ?
ジェイドまたまたご冗談を。アニスはともかく私があなたに負けるとでもお思いですか ?
シンク面白い。八番目の生ゴミのスピルメイズをお前の墓穴にしてやるよ !
シングやめなよ三人とも !今は喧嘩なんてしてる場合じゃないだろ ?
アニスえ ! ? 今の流れでアニスちゃんまで被弾 ! ?
シングシンくんって呼ばれるの、シンクが嫌がってたのにアニスも一緒になってからかっただろ。そういうのは良くないと思う。
ジェイドおや、怒られてしまいましたね、アニス。反省して下さい。
アニスいっときますけど、大佐も怒られてますからね !
シンク時間が惜しいって言ったよね。さっさと行くよ。
シングあっ、待ってよシンク !ジェイドさんの言い方はともかく単独行動が危険なのは確かだよ。
シングそれに、一緒にスピルリンクしたんだからもっと仲良くやっていこうよ。
シンク……うるさいな。アンタまでボクに構ってくる気 ?
シングう~ん、構うっていうか単にシンクと仲良くなりたいって思ったんだけど。
シングそれにほら ! オレとシンクって名前も似てるし。二人合わせて『シンシンコンビ』なんてどうかな !
シンク馬鹿じゃないの ?
シングええっ、いいコンビ名だと思ったんだけどな……。
シンクどうでもいいからさっさと人工心核の場所まで案内してよね。
ジェイド――だ、そうですよ。素直な方のシンくん♪
ジェイドどうやら、ここが最深部のようですね。
アニスうわぁ……。なんかここ……荒れてる ?
シングうん。こんなにボロボロになってるスピルメイズを見るのはオレも初めてだよ……。
ジェイドこれは、報告に上がっていたウッドロウやファントムのケースと同じですね。
ジェイド心核の取り外しの際、被験体の精神に深刻な負担が掛かっており、それがこのようなスピルメイズの破損に繋がっているのでしょう
ジェイド帝国ではかなり強引な心核へのアプローチが行われているとみて間違いありません。
シンク生ゴミにふさわしい扱いって訳だ。
シングくそっ ! 帝国軍の奴ら……。人を何だと思ってるんだ ! !
ジェイド使い捨ての駒、といったところでしょうね。
アニスそんなの……酷すぎるよ……。
シンクそう ? これぞ正しいレプリカの使われ方でしょ ?
アニスそんな言い方…… !
シンク何感情的になってるのさ。このイオンのことは何も知らない筈だろ ? アンタはこのイオンと導師のイオンを混同してるんだよ。
アニス……違うよ ! 何も知らなくても勝手に心を奪われることが酷いことだって思うのは当たり前でしょ !
アニスあんただって、この八番目のイオン様のことを心配して、ここまで一緒に来たんじゃないの ! ?
シンクおめでたいね。ボクはただ、この世界で作られたレプリカのなれの果てを見たかっただけさ。
シング……ねえ、さっきからシンクが言ってるレプリカって何のこと ?
シンクへぇ……。話してないの、死霊使い。
ジェイドええ。必要の無い情報でしたから。――今までは。
シンクレプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。
シンクフォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。
シンクこの八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。
シング複製って……コピーってこと ?人間をコピーして作るなんて……。
シング――あ、待って。じゃあ、もしかしてルークとアッシュって双子じゃなくて……。
シンク詳しいことは、そこのメガネにでも聞いてよね。フォミクリーを開発したのはそいつなんだから。
シングえ ! ?
ジェイドええ。その通りです。ルークの件については……そろそろ皆さんにご説明するつもりでいました。
ジェイド詳細はスピルメイズを出てからにしましょう。
シング……あの、シンク。ごめん、オレ、何も知らなくて……。
シンク知ってたらどうだっていうのさ。どうでもいいだろ。
シングどうでもよくないよ !それに、オレはシンクがレプリカだからって偽者だなんて思わない。
シンクはぁ ?
シングだってシンクにもちゃんとスピリアがあるじゃないか。そのスピリアは、コピーでも偽物でもないシンク本人だけのものだと……オレは思う。
アニス……シングの言う通りだよ。シンクの心は、シンクだけのものだよ。それは、この八番目のイオン様も一緒だから……。
シンク安い同情だね。ゴシンセツニドウモ。それとも、いつかみたいにこの仮面を取ってお礼を言ってあげようか ?
シンクありがとう、アニス――ってさ。ああ、この世界の導師イオンは生きてるからボクがあいつの真似をしても意味は無かったね。
アニスシンク……。
ジェイドシンク。ことさらに自分とイオン様を重ねることで自分を代用品ではないと主張するのも結構ですが時間が惜しいと言ったのはあなたでしたよね。
シンク何…… !
ジェイド死にたかろうと殺したかろうと結構ですから全てはスピルメイズを出てからにして下さい。
ジェイドシング。心核を元に戻してもらえますか ?
シング……わかった。

Character2話【9-2 閑散とした街道】
カーリャあっ、皆さま ! ! 無事に帰って来たんですね ! !
ミリーナおかえりなさい。その……彼の容態はどうですか ?
シングそれが、心核は元に戻したんだけどまだ目を覚まさなくて……。
ジェイド八番目のイオンの心の中――スピルメイズはファントムたちと同じようにかなり荒れていました。まして、彼は色々と特殊な生まれですから。
ジェイド目を覚ますまでにはまだしばらく時間がかかると思いますよ。
ミリーナそうですか……。早く元気になってくれればいいんですけど。
ジェイドところで八番目のイオンが目を覚ます前に彼をどう呼ぶのか決めておきたいのですが。
ミリーナああ……。そうですよね。まさか本人に『八番目のイオン』さんなんて呼びかける訳にはいきませんよね。
カーリャう~ん、でも、どんな名前がいいんですかね ?こういう時にパッと名前を付けられるカイルさまやコレットさまがいたらよかったんですけど……。
ジェイドでは、ここはアニスに任せましょう。
アニスえっ ? 私ですか ?
ジェイドええ。あなたなら彼にぴったりの名前を思いついてくれるはずです。
アニス……大佐って人の心が読めるんじゃないですか ?
ジェイドとんでもない。顔に書いてあっただけですよ。それで、どう呼ぶつもりなのですか ?
アニス……えっと。あの人のこと【リベラ】って呼んであげたいなって思ってます……。
シンク…………。
ミリーナリベラ……。それって、どういう意味なの ?
ジェイド古代イスパニア語――私たちの世界の古い言葉で【自由】という意味です。
アニス……自由でいて欲しいんだ。しがらみとか縛り付けるものなんかはねのけて。
シング自由かぁ。うん ! ぴったりだと思うよ !きっと喜んでくれるんじゃないかな !
アニスえへへ、そうだと嬉しいんだけどね……。
ヒスイおい、シング ! ! ここにいたのか ! ?
シングヒスイ ? どうしたのさ、そんなに慌てて ?
ヒスイどうしたもこうしたもあるか ! !あいつが……リチアが帝国軍の奴らのところにいるってわかったんだよ ! !
シングえっ ! ? リチアが ! ?
ミリーナリチアさんって……鏡映点リストにもあったシングたちの仲間よね。
ヒスイああ、さっきアスベルたちが戻ってきたときに言ってやがったんだ。リチアはテセアラ領の監獄にいるらしい。
ジェイドヒスイ、それは間違いありませんか ?
ヒスイマリクっつう、帝国軍から逃げて来た奴からの情報だ。帝国内部の動きも相当詳しかったぜ。
ジェイド……マリクという名前は鏡映点リストにあったアスベルたちの仲間ですね。
ジェイド無条件に信じていいかはともかく話を聞いておく必要はありそうだ。そちらはシングとヒスイにお任せしていいですか ?
ヒスイお任せされなくても聞きに行くぜ !おい、行くぞ ! シング !
シングああ、わかった !
カーリャあわわ、何だか慌ただしくなってきましたね。
ミリーナそうね。みんな、無理をしないといいんだけど……。
ジーニアスねぇ、シングは戻ってきた ?
ミトス……ジェイドとアニスとシンクがいてシングがいないってことは入れ違いになったみたいだね。
ミリーナええ。シングたちの仲間の居場所がわかったの。今はヒスイさんと一緒に対処してもらっているわ。
エミルそうなると、こっちの調査に協力してもらうのは難しそうだね。
ジェイドミトスやエミルが関わっているということは世界樹の調査……でしょうか。
ジェイドしかもシングを連れていこうと考えるとは……中々面白い。目の付け所がいいですね。
ミトス人間に褒められてもちっとも嬉しくないけどね。
ミリーナえ ? どういうことですか ?
ジーニアスえっとね、簡単に言うと世界樹と精霊は繋がっている可能性が高いんだ。
ラタトスク……元の世界と同じなら、大樹――世界樹は俺のモノだからな。
ラタトスクミトスが、ソーマ使いなら、樹を通じて精霊の心にアクセスできるかも知れないと言い出してな。
ミトステセアラ領の大樹カーラーンとアセリア領の世界樹ユグドラシルを調べればこの世界の精霊のことも分かるんじゃないかと思って。
ミリーナ確かに、それは面白い着眼点だわ……。ありがとう、みんな。
ミトス別におま……君たちのためじゃないけどね。そうだ、ミリーナ。君が撮った写真の中に世界樹が写っているものはあるかな ?
ミリーナうーん、どうだったかしら…… ?でも、写真は部屋で保管してあるから探しておくわ。
ミトス……ありがとう。それじゃあボクたちはテセアラ領の世界樹の調査に行ってくる。
ミトスそっちならソーマ使いはいなくてもラタトスクがいるから。
エミル待って、ミトス。戦力的にも、もう一人欲しいって言ってたけど、どうするの ?
ミトスああ、それはもう見つけたから平気。
シンク………なんでこっちを見るのさ。
ミトス話は聞いてたでしょ ?ボクは君の友達になってあげたんだから友達のことは助けてくれないと。
ジェイドおや ? あの烈風のシンクにお友達……。それはそれは…… !
アニスなんとなんと…… !
カーリャよかったですねぇぇぇぇぇぇ ! ! !
シンク――シークレット……
エミル待って待って ! ?魔鏡技は待って ! ?
ジーニアスそうだよ。いい機会だからシンクも一緒に行こうよ。ボク、ミトスの新しい友達がどんな人なのかずっと気になってたんだ。
ラタトスクああ、俺もだ。さあ、ぐだぐた言ってないでさっさとこい。
シンクおいやめろ ! 服を引っ張るな ! !
ジェイドいやぁ、これは面白いものを見せて頂きました。当分はいじって遊べますね。

Character3話【9-3 閑散とした街道】
マリクすでにイクスたちには伝えたが、ハロルドは内部から帝国を崩すために情報を集めている。
マリクだが、彼女自身が動きにくくなっているのが現状だ。下手に動けば、こっちの計画がバレてしまうからな。
イクスそれで……マリクさんやリチアさんのような何らかの理由で帝国にいる鏡映点に協力してもらっている状況らしいんだ。
ヒスイ俺が知りてえのはそんなことじゃねぇ !あいつは……リチアはちゃんと無事なんだろうな ! !
マリクすまないが無事だと断言はできん。帝国側もリチアの力を必要としている以上手荒な真似はしていないと思うが……。
ヒスイクソッ ! ! だったら早く助けに行くぞ ! !
シングイクス、テセアラ領の監獄にはオレたちが行ってくるよ。
シングコハクも一緒に行きたいだろうけど、今はリチャードの心核を治してる途中だからさ。コハクには戻ってきたらリチアのことを伝えてくれないかな ?
イクスわかった。俺も一緒に行ければいいんだけど……今の状態だと足手まといに……なるから…………コーキスに…………。
コーキスマスター ! ? 大丈夫か ! ?真っ青だぞ ! ?
イクスはは……ごめ……ん……。ちょっと眩暈がしただけだよ。大したことは……。
コーキスそんなわけないだろ !
コーキス(やっぱり、マスターの様子がおかしい。いくらゲートを何度も使ったからってこんなになっちまうもんなのかよ…… ? )
コーキスごめん、シング様、ヒスイ様。俺も一緒には行けないよ。こんな状態のマスターをほっとけないし。
コーキスそれに、鏡精はマスターの影響を受けるんだ。世界中にある魔鏡結晶のおかげで俺はあんまり制限はないけど……。
シングううん、気にしないでコーキス。それにイクスも。今回はオレたちでちゃんとリチアを助けてくるよ。ね、ヒスイ。
ヒスイ当たり前だ !帝国軍の連中なんざぁ、俺が一発で仕留めてやんよ。
イクス……うん。ありがとう、二人とも。
マリクだが、そうなると監獄に向かうための戦力に少し不安が出てくるか……。
マリク俺が行ってやれればいいんだが情報共有のために残る必要があってな。
レイアねえねえ、しいな。白米が好きならサイダー飯も食べてみなよ !絶対美味しいからさ !
しいな本当に美味しいのかい、その料理 ?そんなヘンテコな組み合わせ、聞いたこともないよ。
レイア大丈夫大丈夫♪って、あれ ? みんな、どうしたの ?なんか、深刻そうな感じだけど……。
しいなそれにイクス。あんた随分顔色が悪いね。知らない顔も増えてるみたいだし……。
コーキスえっと、色々あってメチャクチャ人手が足りないんだ。
イクスコーキス……。相変わらず説明が雑すぎるぞ……。
シングえっと、これからヒスイとテセアラ領の監獄に行こうとしてたんだけど、戦力が足りなくてさ。誰か探しにいこうかと思ってたんだ。
レイアえっ、そうなの ? だったら任せて !事情はよくわかってないけど、助っ人が欲しいならわたしがシングたちと一緒に行くよっ !
シングホントに ! ? 助かるよ、レイア !
レイアあっ !でもしいなにサイダー飯作ってあげる約束が……。
しいな何言ってんだい。そんなのいつでもいいだろ。それより、あたしも一緒に連れてっとくれよ。
しいな大人しくしてるっていうのはどうも性に合わなくてね。それに潜入調査ってのはあたしの育った里の得意分野サ。
ヒスイへっ、頼もしいじゃねーか !なら、俺たちで監獄に乗り込むぞ !
ミリーナう~ん、やっぱりないわね。
カーリャミリーナさま~。只今戻りました~。
ミリーナおかえりなさい、カーリャ。リベラの様子はどうだった ?
カーリャはい、顔色もよくなっていましたよ。リベラさま、早く目を覚ますといいですね。
ミリーナジュードたちに任せておけば安心だと思うわ。それに、アニスも傍にいてくれてるし。
カーリャそうですね ! それじゃあ、カーリャはリベラさまが目を覚ましたときの為にいっぱいお菓子を用意しておきます !
ミリーナふふっ、カーリャらしいわね。医療チームの許可が出たら差し入れしてあげましょう。
カーリャはい ! ところでミリーナさま。写真なんか並べてどうしたんですか ?
ミリーナさっきミトスが言ってたでしょ ?世界樹の写真があれば渡してほしいって。
カーリャなるほど ! それで早速ミトスさまの為に写真を探しているんですね。
ミリーナええ。最近はミトスもコレットやアーチェと一緒に物資の調達を手伝ってくれてるの。だから、私も力になってあげたかったんだけど……。
ミリーナ駄目ね。やっぱりアセリア領の世界樹の写真は撮ってなかったみたい。
カーリャう~ん、写真を撮れるのはミリーナさまだけですし他の人が持ってることもないですよね、きっと。
ミリーナ……ねえ、カーリャ。私、今からアセリア領へ行ってみようと思うの。
カーリャええっ ! ? 今からですか ?
ミリーナ善は急げって言うじゃない。それに、私もみんなの為に何かしたいの。
カーリャそれならカーリャも一緒に行きます !そこまで離れちゃうと存在が保てるとも思えないですし……。
ミリーナありがとう、カーリャ。それじゃあ、準備をしてから向かいましょう。
ロンドリーネあれ ? ミリーナ。どこかに出掛けるの ?
ミリーナロディ !ええ、ちょっとやることができちゃって。でもすぐに戻るわ。
ミリーナあっ、それと、このことはみんなに内緒にしててね。特にミトスには、絶対よ。ちょっとしたサプライズの仕込みだから。
ロンドリーネうん、わかった。気を付けて行ってきてね。
カーリャご安心を ! ミリーナさまはカーリャが全力でお守りしますので !
ロンドリーネあはは、それは頼もしいね。それじゃあ、ミリーナのことは頼んだよ、カーリャ。
カーリャはい ! では、行ってきますね !

Character4話【9-4 イ・ラプセル城】
クンツァイト――スピルリンク終了。戦闘モードを解除する。
ハロルドあら、思ったよりも早かったわね。どう、予定通り上手くいった ?
クンツァイト肯定。対象者アトワイトの心核の入れ替えは成功。これで目を覚ますはずだ。
アトワイト――ん、んん……。
ハロルドおや、言ってるそばからお目覚めみたいね。
アトワイト……驚いたわ。本当にあなたのおかげだったのね、ハロルド。
ハロルドその様子だと、事情はもうわかってるって感じかしら?
アトワイトええ、私のスピルメイズ――心の中で聞いたわ。そこにいるクンツァイトさんそれに、ヨーランドさんからもね。
アトワイト改めて、助けてもらったことを感謝するわ。自分の身体を勝手に使われるなんてあまり気分がいいものじゃないもの。
ハロルドお礼なんてお門違いもいいとこよ。あんたの心核と人工心核を入れ替えたのはこの私。恨み言ならたっぷり聞いてあげるわ。
イオンすみません、アトワイトさん。お叱りなら僕も一緒にお願いします。僕たちはどうしても帝国の目を欺く必要があったんです。
アトワイトわかってるわ。ハロルドのことはよく知ってるし私も軍に所属していた人間だもの。ちゃんと理解はしているつもりよ。
ハロルドところでアトワイト。あんた、違和感とかない ?シドニーが残していった心核除去装置には副作用があった筈なんだけど。
アトワイト大丈夫よ。ヨーランドさんが修復してくれたわ。それに、彼女はちゃんと私の心の中に宿っていて今も私たちの話を一緒に聞いているわよ。
クンツァイトアトワイトのスピルメイズの破損状況は自分でも修復不可能であった。だが、全て彼女が元に戻してみせたのだ。
イオンヨーランドさんは、鏡士の始祖――初代ビクエ、でしたよね。とてつもない力を持っているんですね。
ヨウ・ビクエ(あら、照れちゃうわね。でもこれは別に私が特別優れている……というのとは違うの。詳しい話はいずれするけれど)
ヨウ・ビクエ(アトワイト。申し訳ないけどしばらく心の中にお邪魔させてもらうわね)
アトワイトヨーランドさんが、力のことはいずれ説明してくれると言っているわ。暫くは一緒に私と行動してくれるみたい。
ハロルドここまでは、私たちの計画通りね。他にも色々話したいところなんだけどそうのんびりもしていられないわ。
ハロルドいい、アトワイト。あんたはこの後、クンツァイトと一緒にここから脱出しなさい。
アトワイト脱出って……いきなり突拍子もない話ね。
ハロルドそれがさ、グラスティンとかいう帝国側に厄介な奴がいんのよ。
ハロルドそいつにあんたを利用されないためにもヨーランドのことを隠すためにもここにいない方がいいの。
アトワイト大事なカードはこっちで取っておくってところかしら。
ハロルドそういうこと。あと、念のために聞いておくんだけどヨーランドから何か言ってきたりしてる?
ヨウ・ビクエ(私もハロルドに賛成よ。あの趣味の悪い男には会いたくないわ)
アトワイトヨーランドさんも賛成だそうよ。でも不思議ね、自分の中に別の人の意識があるなんて。
クンツァイト意識と体を分離した存在。今のヨーランドはリチアさまがコハクの中にスピリアを宿していた状態と酷似している。
ヨウ・ビクエ(だって、こうしていないとこの世界が崩壊しちゃうきっかけを与えちゃうもの)
アトワイトヨーランドさんが意識だけになっているのもこの世界の崩壊と関係があるようね。
イオン確か、帝国が精霊の力を利用しているせいでヨーランドの封印が解けそうになってしまったので心を分離した、と言っていましたよね ?
ヨウ・ビクエ(その通りよ。歪められた目覚めは世界に悪影響を起こすの)
ヨウ・ビクエ(だから、ハロルドたちに協力してもらって私と相性のいい鏡映点を捜してもらってたのよね。まぁ、本人は色々実験できて楽しそうだったけど)
アトワイト……その様子がはっきりと目に浮かぶわ。でも、その寄生しやすい鏡映点っていうのが私だったってことでいいのかしら ?
イオンええ。おかげで今後はヨーランドが自由に動けます。誰かの心に寄生していないと、自分の体から遠くへは行けないということでしたから……。
帝国軍兵士——ハロルド様。只今グラスティン様がお見えになられました。至急お話を伺いたいとのことですが……。
ハロルドはいはい、ほんっとせっかちな奴ね。部屋で待ってるって伝えなさい。
イオン……時間稼ぎは難しそうですね。
ハロルドクンツァイト。予定通りアトワイトと一緒に精霊の封印地へ向かいなさい。そこでヨーランドにダーナの意志っていうのを聞いてもらうのよ。
クンツァイト了承。これより作戦を実行する。行くぞ、アトワイト。
アトワイトええ。ハロルド、あなたも気を付けてね。
ハロルドこの私がヘマなんてすると思う ?人の心配より自分の心配をしなさい。
アトワイトふふっ、あなたらしい返答ね。

Character5話【9-7 テセアラ領の森】
ヒスイやっと見えたぜ。監獄だ !
シングうん、マリクが教えてくれたルートのおかげで帝国兵とも鉢合わせにならずに済んだね。
レイアよ~し ! みんな、このままガンドコ行くよっ ! !
シングああっ、レイア ! オレのセリフ取らないでよ ! ?
レイアいいじゃん♪ 一回言ってみたかったんだよね~。
しいなあんたたち、もうちょっと緊張感ってのを持ったらどうなんだい ?ここからは見張りも厳しくなってるはずサ。
ヒスイ…………。
しいな――ヒスイ、大丈夫かい ?
ヒスイあっ ? ああ、わりぃ。ちっと考え事をしてただけだ。
レイアやっぱりリチアさんのこと、心配だよね……。
ヒスイああ。あいつ、たまにとんでもねぇ無茶しやがる時があるからよ。厄介なことに巻き込まれてなきゃいいんだが……。
しいな……だったら尚更、あたしたちが迎えにいってあげなきゃいけないね。
ヒスイ……だな。待ってろよ、リチア……。俺が必ず助けてやるからなッ ! !
シングう~ん、やっぱり変だよね……。
レイアん ? どうしたのシング ?
シングなんかさ、この監獄の周りって他の場所と比べて魔鏡結晶がいっぱいあると思わない ?
レイアそういわれてみれば……。ここまで来る間もかなり沢山あったよね。
しいな確か魔鏡結晶ってのは、イクスがでっかい魔鏡結晶に閉じ込められたんだか閉じこもったんだかの時世界中にできたものなんだろ ?
しいなたまたまこの辺に多かったってだけじゃないのかい ?
シングでも、この監獄、結構最近建てられたものだと思うよ。
シングもしこの監獄が、イクスがスタックオーバーレイした後に建てられたなら、監獄の建物にまで結晶が侵蝕してるのはおかしくない ?
ヒスイ……確か魔鏡結晶ってのはイクスの力の具現化だったか ?
ヒスイよくわからないがイクスの様子がおかしいのはこの魔鏡結晶が原因……かもしれねぇな。
しいなはぁ……。こういうときにリフィルがいれば何か意見が聞けたんだけど……――
しいな――っと、誰かいるね。
レイアあれは、帝国兵 ! ?
ヒスイこんなところで見つかったら厄介だ。おめぇら、一旦隠れるぞ。
帝国軍兵士Aおい ! お前たちも早く来い ! !
帝国軍兵士Bなんだ ? 中で何かあったのか ?
帝国軍兵士Aリチア様が急に倒れたんだ !その後すぐに監獄の中にまで魔鏡結晶が発生して囚人たちを捕えていた檻も壊れちまった ! !
シングそんな ! リチアが倒れただって ! ?
帝国軍兵士A待てっ ! そこに誰かいるのか ! ?
しいなマズい。気づかれちまったよ !
ヒスイ――槍鴎ッ ! !
帝国軍兵士A・Bぐはああっ ! !
レイア凄いよヒスイ !離れてる見張りを一瞬で倒しちゃった !
シングありがとう、ヒスイ。……ごめん。オレのせいで見つかっちゃって。
ヒスイんなことはいいんだよ !それよりお前も聞いたろ ! ? リチアが倒れたって !コソコソ潜入なんざしてられっか ! !
ヒスイ警備兵が何人いようが俺が全員ぶっ倒す ! !行くぞ、おめぇら ! !
レイアあっ ! ? ちょっとヒスイ ! ?一人で先に行ったら危ないよ ! !
しいないや、場が混乱している今なら……。シング、レイア !あたしたちもヒスイの後に続くよ !
クンツァイト……ここは ?
アトワイトヨーランドの話だと、精霊の封印地への転送魔法陣を展開した筈なんだけど……。
ヨウ・ビクエ(いえ、どうやら私たちは……アイフリードのお墓がある場所に飛ばされちゃったみたいね)
アトワイトアイフリード ?
クンツァイト警告。前方に生体反応を確認。何者かがこちらに近づいてきている。
ヴィクトル――誰だ、お前たちは ?まさか、帝国の人間なのか ?
クンツァイト対象、敵対行動に移る可能性あり。こちらも戦闘モードに移行する。
アトワイト待って。私たちは……。
ヨウ・ビクエ(アトワイト、よかったら代わってもらえないかしら?私、この人のこと、少しだけ知っているのよ)
アトワイトそうなの ? だったらここはあなたに任せたほうがいいみたいね。
ヴィクトルん ? 女、今なにか言ったか ?
ヨウ・ビクエ――ヴィクトル、元気そうで何よりだわ。
ヴィクトル……何を言っている ?
ヨウ・ビクエごめんなさい。この体の持ち主――アトワイトに頼んで意識を譲ってもらったの。
ヨウ・ビクエあなたも、もう一度精霊の封印地に向かおうとしてここへ来てしまった……んじゃないかしら ?
ヴィクトル貴様、何者だ ?
ヨウ・ビクエ私はヨーランド。ダーナの巫女よ。ヨウ・ビクエの方が通りがいいかしら。
ヴィクトルダーナの巫女、だと ?
ヴィクトル……そうか、お前がバルドの言っていた【眠りの巫女】というわけか。

Character6話【9-8 テセアラ領の森】
ゼロスったくよー ! なんで俺さま、毎回毎回こいつと組まされなきゃいけないわけ ! ?
クラトスここは帝国領の上空だ。その上で我々が呼ばれたのだから空からの奇襲を考えているのだろう。
ゼロスんなことたぁ、言われなくてもわかってるっつーの !はぁ~、いいよなあんたは。班長会議だとかいってアジトの美女軍団に会えるんだからよ……。
マークよう。相変わらず仲良しこよしってとこか?
ゼロス本気でそう見えるなら早いとこ目医者でも紹介してもらえよな。
ゼロス……で、なんだ ? その後ろにいる大男は。また性懲りも無く男の仲間を増やしたのかよ。
マーク仲間、ねぇ……。ま、色々訳ありでな。こちらの『偉丈夫』はバルバトス『さん』だ。
マークこれからクラトスと二人でこいつを芙蓉離宮に下ろしてやってくれないか。
ゼロス芙蓉離宮 ? 何でそんなとこに……。
バルバトスごちゃごちゃ言ってないで、さっさと俺を運べ。文句がある奴は、顎を切り落としてやる。
ゼロスちょ ! ? 何だよこいつ ! ?完全にやべー奴でしょーよ !
マーク頼むぜ、バルバトスの旦那。ここでやり合ったところでお前の目的が果たせなくなっちまうだけだぞ。
バルバトス……フンッ。
ゼロスなぁ、マーくんよ。俺さまが言うのもなんだが仲良くする相手は選んだほうがいいぜ ?
マーク俺もそろそろ自分で呆れてるところだよ。ともかく、今回は手伝ってやってくれ。
ゼロスへいへい、わーったよ。
クラトスでは、行くぞ。上空とはいえ、敵地に長居するのは得策ではないからな。
バルバトス急げ ! 飛ばせ !俺はいつまでも紳士的じゃないぞ ! !……待っていろよメルクリア。くくく……。
マーク……やれやれ。ようやく厄介払いができたな。これで少しは落ち着けそうだ。
ローエンマークさん、ここにいましたか。
マーク……っと、そうでもなかったか。ローエン、どうかしたか ?
ローエン先ほど、精霊の封印地へ向かったヴィクトルさんから連絡がありました。何でも、ヨウ・ビクエという人物と遭遇したとか……。
マークヨウ・ビクエ ! ? シャーリィに取り憑いてたいかにもフィル好みのあの姐さんか。
ローエンほっほっほ。それを聞いたらフィリップさんがどんな顔をすることか。
マーク顔を真っ赤にして全否定する様が目に浮かぶぜ。
ローエンその、バリボーな美女が好きなフィリップさんがマークさんを呼んでいますよ。ヨウ・ビクエとの通信に同席して欲しいそうです。
ヨウ・ビクエ久しぶりね、フィリップ。マーク。それに、知らない顔が増えてるみたい。
ヨウ・ビクエ私の隣にいるイケメンはクンツァイト。帝国にいた鏡映点よ。
ローエン確かシングさんたちのお仲間でしたね。
クンツァイトシングを知っているのか ?帝国を離反したとは聞いていたが。
マークああ。黒衣の鏡士達のところで元気にやってるぜ。
フィリップ――あの、一つ確認ですがあなたは本当に初代ビクエなんですか ?
ヨウ・ビクエええ。今はアトワイトの体を一瞬借りているのよ。もちろん同意の上でね。
ヨウ・ビクエまぁ、だから初代ビクエだと信じろと言われても難しいでしょうけれど、今は信じたフリだけでいいから話を聞いてもらえると助かるわ。
フィリップは、はぁ……。でも、イクスたちからは初代ビクエがイ・ラプセル城にいたと報告受けていましたが……。
ヨウ・ビクエダーナの心核がある精霊の封印地へ行こうとしたらここ――魔の空域に飛ばされちゃったみたいなの。
ヴィクトル私も同じだ。バルドから聞いていた精霊の封印地へ続く転移の呪文を用いたが、何度転送魔法陣を作り出しても魔法陣の先には精霊の封印地とは違う景色が見えた。
ヴィクトルそのたびに転移をキャンセルしたが結果は同じ——。だが、転移の呪文以外で封印地に辿り着く方法はない。そこで、調査のためにも飛び込んでみたのだが……。
マーク魔の空域の島に辿り着いて初代ビクエと鉢合わせって訳か。
フィリップ待って下さい。そこが魔の空域だというのなら魔鏡通信が使えない筈では――。
フィリップ……いや、これも初代ビクエの力か。
ヨウ・ビクエええ。私、ティル・ナ・ノーグではとっても便利な存在なの。
ヨウ・ビクエだから、自分を卑下しないでちょうだいね。私は特別。不自然な存在。そこにはそれなりの理由がある。
ヨウ・ビクエでも、そんな私でもこの場所にいるのはちょっと厄介でね。
ローエンまるで神の如き力を持つあなたでもそこからは抜け出せないと ?
ヨウ・ビクエご明察よ。素敵なおじいちゃま。ヴィクトルから聞いたけれど、心の精霊の封印の影響で転移の呪文が通じなくなってしまったのだと思うわ。
ヨウ・ビクエ端的に言えば、私たちは今この島に閉じ込められている状態なの。
マークそいつは笑えない話だな。何とかならないのか ?
ヨウ・ビクエ『私だけ』の力じゃ無理ね。だから、当代ビクエの力を貸してほしいの。
フィリップ僕の力 ?
ヨウ・ビクエええ、ひとまずここを脱出するために魔鏡通信機を利用して、あなたの心にスピルリンクするわ。
フィリップスピルリンク ! ?ですが、それはソーマを使わなくては……。
クンツァイト問題ない。自分の腕型ソーマ「ヴェックス」とヨーランドの力を合わせれば、この場にいる全員でのスピルリンクは可能だ。
ヨウ・ビクエそこから、私の力であなたがいる飛空艇……ケリュケイオンって言ったかしら ?そっちに皆で行くことにするわ。
フィリップ僕の心を通じてここへ移動するというのか ! ?
フィリップヨウ・ビクエ……。同じビクエだというのに僕とはレベルが違いすぎる……。
ヨウ・ビクエだから言ったでしょ。私は不自然な存在だって。私がこんなことをできるのは私が【ダーナの巫女】だから。
ヨウ・ビクエ人間にこんなことをできる方が――おかしいのよ。

Character7話【9-10 テセアラ領の森】
レイアうわ……脱走した囚人と兵士たちでメチャクチャだね……。
シングうん。巻き込まれないようにオレたちも早くリチアを見つけてここを出よう。
ヒスイリチア……どこにいるッ ! ?
しいなヒスイ、落ち着きなって。聞いた話だとリチアは帝国の客人として迎えられている筈だろ。監獄にいるってことはないはずサ。
ヒスイあぁ ? ここじゃないならどこにいるっつーんだよ ! !
しいな怒鳴ってないで頭使っとくれよ !あたしゃ、そういうのは苦手なんだ !
ヒスイ俺だって――
ヒスイ……そうか。リチアが客分扱いならあいつがいるのはこんな檻の近くじゃねぇ。お前ら、ついてこい !
シングここが看守棟か。こっちも魔鏡結晶の被害が酷いみたいだね……。
ヒスイああ。だが客分なら応接室とかそういうところに案内するだろ。だからきっとリチアも――
レイアねえ ! あそこの壊れた扉の先 !誰か倒れてない ! ?
ヒスイあれは……リチアッ ! ! おいっ、リチアッ ! !
リチア…………その、声は。
ヒスイリチアッ ! ! 俺だ ! !待ってろよ ! ! すぐに助けてやっからな ! !
リチアヒ……スイ……。
ヒスイリチアッ ! ? クソッ ! !魔鏡結晶が邪魔で先に進めねぇ ! !
レイアマズいよ ! リチア、すっごく苦しそうだよ ! ?
ヒスイ何で壊れねえんだよ、この結晶 ! !オラッ ! ! オラァッ ! !
しいなちょっと、ヒスイ ! ?そんなに術を使ったらあんたの身体が持たないよ ! ?
ヒスイ俺の身体なんてどうだっていい ! !あいつが苦しんでる姿はもう見たくねぇんだよ ! !
ヒスイ俺が……俺があいつを守るって決めたんだ ! !
シングくっ、リチアが目の前にいるのに、どうしたら……。
? ? ?――ま、すか ?――マを、――し、者たちよ。
シングえっ ? な、何だ ? この声……。
ヒスイまさか、ソーマから聞こえてきてんのか ! ?
? ? ?――はい、あなたたちのソーマを通じて私の声を届けています。
ヴェリウス私は心の精霊ヴェリウスです。シング、ヒスイ。あなたたちのソーマの力でリチアのスピリアを守って下さい。
レイアちょっと、どうしたの二人とも ?
シングヴェリウスって精霊がオレたちに話し掛けてきてるんだ。オレたちの力でリチアを守れって……。
ヴェリウス魔鏡結晶に宿るイクスの力が彼女に干渉しデスピル病を発症しています。事態は急を要する。早くリチアにスピルリンクを !
ヒスイ――シング ! リチアにスピルリンクするぞッ ! !
レイア――え ! ? 何 ! ? ここ、どこ ! ?
しいなど、どうなってるんだい ! ?
シングえ ! ? レイアとしいなもスピルメイズに来てるの ! ?どうして ! ? スピルリンクする魔鏡もないのに……。
しいなスピルメイズって……。それじゃあ、ここはリチアって人の心の中なのかい ! ?
ヴェリウス――しいな。今のあなたは知らないでしょうけれどあなたと私には確かな繋がりがあります。それを使って、私があなたとレイアを招きました。
ヴェリウスソーマ使いの二人を助けてあげて下さい。
レイアうわ ! ? わたしにも声が聞こえた……。今のがヴェリウスの声…… ?
しいな………………。
しいなヴェリウスの声が聞こえなくなっちまった……。
レイアヴェリウスは心の精霊だって言ってたんだよね ?わたしの世界では聞いたことがない精霊だけど……。
しいな……そいつはあたしもサ。まあ、会ったことがないだけであたしの世界にいたのかも知れないけどね。
レイアミラなら何か知ってたかも……。
ヒスイだが、今はヴェリウスのことよりリチアのことだ。デスピル病になったってのが本当ならすぐに何とかしないとッ !
レイアデスピル病って何 ?
シングゼロムっていう思念体が、スピリア――こっちで言う心に取り憑く病気、かな。そうなるとスピルーン――心核を喰い尽くされて……。
ヒスイ……死んじまう。そんなことさせてたまるかッ !
アトワイトあら ? あなたたちは……。
クンツァイトシング ! それにヒスイか ! ?
ヒスイクンツァイト ! ?お前、何でリチアのスピルメイズの中にいるんだ ! ?
クンツァイトリチアさまの…… ?ヒスイ、一体何のことだ ?ここはフィリップという人物のスピルメイズだ。
シングそんな筈ないよ。オレたち、ヴェリウスっていう心の精霊にリチアがデスピル病だって言われてスピルリンクした――筈だから……。
クンツァイトリチアさまがデスピル病だと ! ?シング、それは本当なのか ! ?
ヴィクトルヨウ・ビクエ。これはどういうことだ ?
ヨウ・ビクエ……そうね。おそらくイクスの魔鏡結晶を通じてフィリップの心とリチアの心が混ざりあっている状態なんだわ。
ヨウ・ビクエねえ、イクスがリチアから物理的に近い場所で転移術のようなものを発動させたってことはない ?
シング……あっ。そういえば、リチャードを助ける時に転送ゲートを使ったって言ってた。
ヨウ・ビクエやっぱりね。それが心――スピルメイズが混ざった原因よ。
レイアごめん。全然わからないんだけど……。
ヨウ・ビクエああ、だったら、これだけ理解してちょうだい。あなたたちはこのままリチアの心核を目指せば大丈夫ってこと。
ヨウ・ビクエあとは――クンツァイト。あなたはシングたちと一緒にいったほうがいいわね。あなたにとってもリチアは大切なんでしょう ?
クンツァイトしかし、自分が離れてしまうとヴィクトルがこのスピルメイズ内から出られなくなるのではないか ?
ヨウ・ビクエその点は問題ないわ。スピルリンクの解除だけならソーマがなくても私の力だけで可能よ。いざとなったら、優秀な当代ビクエもいるしね。
クンツァイトならば、シングたちと行かせてもらう。自分はリチアさまの守護機士。我が主の窮地となれば、動かないわけにはいかない。
しいなちょっと待っとくれよ。あんたたちはどうするんだい ?
ヨウ・ビクエ私とヴィクトルはフィリップのところへ向かうわ。残念だけど、あなたたちとはここでお別れね。
ヨウ・ビクエそうだ。もしここまであなたたちを導いたっていう心の精霊が、もう一度コンタクトを取ってきたら精霊の封印地の状況を聞いておいてくれないかしら ?
ヨウ・ビクエそれじゃあ、またね。
レイア行っちゃった……。
クンツァイト彼女たちならば問題はないだろう。シング、ヒスイ。自分はこれよりリチアさまの救出を最優先とする。力を貸して欲しい。
ヒスイんなもん当たり前だッ !頼むぜ、クンツァイト ! !
シングよし、リチアのスピリアがある場所まで行こう !

Character8話【9-13 スピルメイズ】
シングみんな、もうすぐ最深部のはずだよ。きっとリチアのスピリアもここに…… ! !
ヒスイこいつはッ…… ! !
クンツァイト間違いない。これは我が主のスピリアの反応だ。
レイアじゃあ、リチアは近くにいるんだね ! ?
しいなみんな ! あっちに見える人影って……。
ヒスイあの髪の色……間違いねぇっ ! !おい、リチア ! !
リチアその声は……ヒスイなのですか ! ?
シングよかった ! 無事だったんだね、リチア。
リチアシング……それにクンツァイトまで……。
ヒスイお前、大丈夫なのか ! ?そうだ ! デスピル病は ! ? 帝国の奴らに何かひでぇことされたんじゃねえだろうな ! !
しいなヒスイ、そんないっぺんに聞いたら答えられるもんも答えられないだろ ?一旦落ち着きなよ。
ヒスイお、おう……そうだな、わりぃ。
リチアいえ、わたくしを助けるために来てくれたのですよね ?ありがとう、ヒスイ。
リチアですが、またわたくしはあなたたちを危険な目に遭わせてしまったのですね……。
ヒスイああ ? 何言ってやがんだおめぇは ?
リチア……えっ ?
ヒスイお前はな、そうやっていっつも自分だけで背負いこみすぎなんだよ。
ヒスイお前はずっと、俺たちを守ってくれてたじゃねえか。それに、俺にはお前に返しきれねぇ程の借りがあるんだよ。
ヒスイ……だからよ、リチア。俺は、お前がどこにいようが絶対に助けに行く。これからも、ずっと一緒にいるためにな。
リチアヒスイ……。
ヒスイあっ、いや ! ? へっ、変な勘違いすんなよっ ! !お前はずっとコハクと一緒だから家族みてぇな存在って言いたかっただけだからな ! !
レイアもう、ほんっと男の子って素直じゃないよね。
しいなはは……。まぁ、男ばかりとは限らないけどね。素直になれないのは……。
レイア………………。
シングリチア、一体何があったの。オレたちが駆け付けたときにはリチアが急に倒れたって聞いたんだけど……。
リチアここへはリチャードという人物のスピリアからチーグルという人物のスピリアを分離するように言われてきたのです。
リチアですが、何か騒ぎがあったようでしばらくこの看守棟で待つように命じられました。
リチアしばらく待っていると突然、何者かの不安が、わたくしのスピリアの中に紛れ込んできたのです。
リチアそれを退けようとしているうちに、わたくしと不安を生み出す何者かのスピリアが同調して制御不能となってしまいました。
クンツァイトリチアさまが気を失われるほどの力……。
シングまさかそれがゼロムなんじゃあ……。
クンツァイト――警告 ! ! 前方からの攻撃反応を確認 ! !
ヒスイ早速現れやがったな ! !リチアのスピリアに勝手に混ざりやがって ! !痛ぇじゃすまさねぇぞ、ゼロムッ ! !
しいな――いや、ちょっと待っとくれよ ! !あれは……。
ゼロム ?………………。
レイアイクス ! ? 何でイクスがここにいるの ?
リチアいえ、あれは人の形を模したゼロムです。そして、わたくしのスピリアに入ってきた不安の正体でもあります !
イクス型ゼロム——全部、嘘だったんだ。
シング嘘 ?
イクス型ゼロムそうさ……。俺も、ミリーナも、この世界さえも全て作り物だ。
ヒスイ作り物だぁ ?こいつ、何言ってやがる ?
リチアこのゼロムは彼――イクスという人の不安そのもの。ずっと押し込もうとした想いがゼロムとなってしまったのでしょう。
しいなそれじゃあ、こいつの言ってることはイクスが抱えている感情だっていうのかい ?
クンツァイト肯定。魔鏡結晶を通じてイクス・ネーヴェの思念がゼロム化したと推測。排除対象と判断する。
シングこれが……イクスの思念……。
イクス型ゼロム俺は……偽物なんだ……。ただの、代用品でしかないんだ……。
シング! ?
シンクレプリカはレプリカ。ニセモノの複製品のことさ。
シンクフォミクリーっていう、あらゆるモノの複製を作る技術があってね。レプリカってのはその技術で作られた複製品のこと。
シンクこの八番目のイオンも、ボクも、ルークも被験者(オリジナル)から作られた複製品――レプリカなんだよ。
シング……違う……そんなはずない ! !
シング誰かに造られた存在でも ! !世界に生まれた瞬間、イクスはイクスじゃないか ! !そのスピリアもイクスだけのものなんだ ! !
イクス型ゼロムそのスピリア——心だって嘘かもしれないんだぞ !俺から生まれる感情がクリエイトされてないって誰が証明してくれるんだ ?
イクス型ゼロム世界を守りたい気持ちも、ミリーナを守りたい気持ちもそれに、ミリーナから向けられた信頼や愛情すらも作り物だったとしたら、俺は何を信じればいい ?
イクス型ゼロム一体……俺は【誰】なんだ……。
レイアイクス……。
ヒスイ……んなこと知ったことかよッ ! !
イクス型ゼロム! ?
ヒスイ感情が造られたものとかんなもん誰にもわかる訳ねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! !
ヒスイだがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! !
ゼロム型イクス俺の、覚悟…… ?
ヒスイお前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! !
ヒスイその感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! !
ヒスイお前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ?
ヒスイそれが覚悟ってもんだろうがよッ !
イクス型ゼロムそうだ。俺は……俺は……。
ヴェリウス——ソーマを受け継ぎし者たちよ。ゼロムの力が弱まっています。
シングこの声は、ヴェリウス ?
ヴェリウスシング、今ならこのゼロムをリチアの心から追い払うことが可能です。
クンツァイトシング ? これは……。
シングヴェリウスの声だ。みんな ! ゼロムを倒してリチアのスピリアを守るんだ ! !

Character9話【9-14 閑散とした街道】
ルカあれ…… ? イクス、どうしたの ?なんだか顔色が……。
イクス……あ、ああ。ごめん。大丈夫だよ。それより、今さっきリチャードさんが目を覚ましたんだ。アスベルたちが心核を戻してくれて……。
イクスだから念のため、医療班に診てもらおうと思って。お願いできるかな ?
ルカもちろんだよ。――ジュード、ちょっといいかな !
イクスごめんな。医療班のみんなは働きづめだから…………うぅ……ぐっ…… ! ?
ルカイクス ! ? イクス、大丈夫 ! ?
イクスはぁ……はぁ……。胸が……くるしい…… ! !
ジュード――イクス ! ?待ってて、すぐに原因を突き止めるから。まずは呼吸をゆっくりすることを意識して。
イクス……はぁはぁ、うぅ…… !
ルカイクス ! ?
ジュードルカ、イクスをベッドまで運ぶのを手伝って。アニーは鎮痛剤の準備をお願い !
アニーわかりました !
クンツァイト――魔鏡結晶の破壊に成功。リチアさまの生命反応に異常がないことを確認。
ヒスイリチア ! ! おい、聞こえるかリチア ! !
リチア……ちゃんと聞こえていますわ、ヒスイ。
ヒスイ……ったく、心配かけさせんじゃねぇよ。
リチアごめんなさい。ですが、あなたが助けに来てくれたときわたくしは、本当に嬉しかったのです。
リチア愛おしい、わたくしの大切な『家族』にこの世界でも出会えたのですから……。
ヒスイ……ああ、また一緒だな。
リチア……ええ。
クンツァイトリチアさま、申し訳ございません。シングたちがいなければ、自分はリチアさまの危機に駆け付けることができませんでした。
リチアいいえ。貴方はこの世界でもわたくしを守ろうとしてくれました。――ですから今度は、わたくしがみんなを守ります。
ヒスイお前、また無茶しようとしてんじゃねぇだろうな ?今は大人しくしてろ。それに、思念術を使っちまったらお前は……。
クンツァイトヒスイ、その点に関しては問題ない。驚くべきことだが、この世界に来てからリチアさまの白化の進行は停止している。
ヒスイなんだとッ ! ?
レイア白化……って何のこと ?
クンツァイトゼロムによるスピリアの消失、または精神が寿命に達することにより、肉体が白い結晶へと変化してしまう現象のことだ。
クンツァイトリチアさまの肉体は思念術を使用すると白化の進行を促進させてしまっていたが現在その傾向は感知されていない。
クンツァイトハロルドによれば、この世界のエンコードという力がリチアさまの肉体にも影響を与えていると言っていた。
ヒスイそれじゃあ、おめぇ……。
リチアええ、わたくしもみんなと一緒に戦います。ここから立ち去るくらいの余力も残っています。
ヒスイバカ野郎……俺は……そんな心配をしてんじゃねぇ。白化が止まってるってことは、これからもお前は……。
シング……よかったね、ヒスイ。それに、リチアも。コハクもきっと喜ぶよ !
クンツァイトシング、ヒスイ。こちらの情報も共有したいところだがリチアさまの仰った通り、まずはこの場所からの撤退を推奨する。
ヒスイこの足音……マズいな。帝国軍かもしれねぇ。ひとまず、適当なところに隠れんぞ。
帝国軍兵士Aくそっ、囚人たちどころか妙な連中まで攻め込んで来やがって。何者だ、あいつらは ?
帝国軍兵士B救世軍の奴らだ。このタイミングで襲撃……。まさか、この変な結晶が異常繁殖したのもそいつらの仕業じゃねえだろうな。
帝国軍兵士Aともかく、周辺の陸路は封鎖したらしいからあとは袋のネズミだ。俺たちはこの看守棟にいるリチア様の保護を優先するんだ。
レイアまずいよ ! 陸路が塞がれちゃったらわたしたちが使うゲートまで行けなくなっちゃう ! ?
リチア……では、船を使ってはどうでしょうか ?この監獄と直結している港にいけばまだ残っている船が見つかるかもしれません。
レイアなるほど ! そこで密航して脱出するんだね !任せて ! わたし、経験者だから皆にもやり方教えてあげる !
ヒスイおい、自慢げに言うことじゃねぇぞ、それ……。
シングとにかく、港を目指せばいいってことだね。
クンツァイト――シング。複数の生命反応を感知。この看守棟を目指して来ていると予測する。急いでここを離れた方がいい。
しいなさっきの奴らが言ってたように、狙いはリチアだね。よし、港へ急ぐよ !
リチアありましたわ ! 船です !
レイアでも、あの一隻しか残ってないみたいだよ。
リチアヒスイ、大丈夫ですか ?確か、あなたは船が苦手では……。
ヒスイんなこと気にしてられる場面じゃねぇだろ。気合いで何とかしてやるよ ! !
救世軍待ちな ! ! この船は俺たちが使わせてもらう。
シングお前たちは、救世軍 ! ?
救世軍囚人のくせによく知ってるじゃないか。帝国に向かうためにこの船が必要なんだ。お前たちは大人しく牢屋に戻ってろ !
クンツァイト敵か ?必要とあれば自分は戦闘モードへと移行するが ?
しいな救世軍ってゼロスのいるとこだろ ?戦う必要は無いんじゃないのか ?
レイアちょ、ちょっと、誤解しないでよ。わたしたち囚人じゃなくて――
ルックやめろ ! その人たちは俺たちの敵じゃない !
救世軍ルックさん……。
ルックすまないな。こっちも色々訳ありで気が立っててさ。実は俺たち、バルバトスさんを追って帝都へ向かうつもりだったんだ。
シングバルバトス…… ?なんか、よくわからないけどケリュケイオンで行けばいいんじゃないの ?
ルック……いや、そいつはちょっと難しくてな。
救世軍ルックさん ! マズいですよ ! !監獄から本物の囚人連中が港に集まってきてます ! !
しいなあー、まぁ、考えることはみんな同じか。
ルック悪いが一旦話は中断だ。まずはここに来る囚人たちを迎え撃つ。お前たちも手を貸してくれ。
リチアわかりました。いきますわよ、クンツァイト。
クンツァイトリチアさまの命によりこれより敵対する勢力の完全排除を実行する。

Character10話【9-15 リチア】
リチア――先ほどの人たちが最後だったようですね。
ルック……結果的に、あんたたちに助けられちまったな。
しいな結局どうするんだい。囚人たちは追い返したけど船が一隻しかない状況は変わんないよ。
ルックあんたたちの目的はアジトに帰ることだろ ?だったら確か、セールンドにもゲートは存在してるってマークさんが言ってたが……。
シングうん、イクスも班長会議で言ってたよ。ゲートは色んな場所にあるって。
ルックなら、まずはお前たちと一緒にセールンドへ向かってその後に俺たちは帝都を目指す。――これでどうだ ?
レイアあっ、それならわたしたちが船を取り合う必要もないね。
ルック決まりだな。よし、船出の準備は俺たちでやっておく。あんたたちは先に乗っててくれ。
シングわかったよ。ありがとうルックさん !
カーリャふえええ ! ? 近くで見るとますます大きく見えますね、この樹。
ミリーナええ。こっちはアセリア大陸――クレスさんたちの世界のアニマを元に具現化した大陸にある方の世界樹だから確か……ユグドラシルと言う名前だそうよ。
カーリャミリーナさま。写真、撮り終わりましたか ?
ミリーナええ、ばっちり♪
カーリャミトスさまはどうしてこの樹の写真が欲しいんですかね ?
ミリーナ名前が同じだからかも知れないわね。
ミリーナミトスには色々お願いしてしまっているからちょっと遠出して写真撮るくらいは私たちでやってあげないと。
カーリャサプライズですもんね !ミトスさま喜んでくれるといいですね !
? ? ?貴様が黒衣の鏡士、か。
ミリーナえ…… ?
カーリャミリーナさまっ ! ? ミリーナさまーっ ! ?
イクス――あれ……ここは ?
ジュードイクス ! ? よかった、目を覚ましたんだね。
イクス俺、どうしちゃったんだ……。
アニー胸を押さえて、うなされていたんです。顔色はよくなってきていますがどこか身体に違和感はありませんか ?
イクスいや……もう何ともないよ。胸の痛みも……なくなってる。
ルカ僕、ミリーナを呼んでくるよ。さっきは何処かに行ってたみたいだけどもしかしたら、もう帰って来てるかもしれないし。
ジュードそうだね。ミリーナもイクスの体調を気にしていたから……――イクス ?
イクス……えっ……ああ、ごめん。まだ少し寝ぼけてるのかな、ははっ……。
イクス(……あの光景は、本当に夢だったのか ? )
ヒスイ……んなこと知ったことかよッ ! !
イクス型ゼロム! ?
ヒスイ感情が造られたものとかんなもん誰にもわかるわけねぇだろうがッ ! !そんなものは俺だって知らねえよ ! !
ヒスイだがな ! そんなことより肝心なのはてめぇの覚悟だろうがッ ! !
ゼロム型イクス俺の、覚悟…… ?
ヒスイお前は今まで何の為に戦って来たんだ ! !世界を……ミリーナたちを守るために戦ってきたんだろうがッ ! !
ヒスイその感情まで疑っちまうっていうのかよ ! !てめぇにはもう、一番大事なもんが自分のスピリアにあるだろう ! !
ヒスイお前がいつ造られたとか、んなこたぁ知らねぇが今この瞬間、お前の守りたいもんが壊されようとしたらそいつを守りたいとは思わねぇのか ! ?
ヒスイそれが覚悟ってもんだろうがよッ !
イクス(覚悟……か……。覚悟ならしてきたつもりだったよ。)
イクス(でも……俺の予想が正しければ感情すら……心すら造れるんだ。鏡士の望む通りに。だからファントムだって――)
イクス……ん ? これは、魔鏡通信 ?
フィリップ……イクス。きみに大切な話があるんだ。
イクス―― !
フィリップ今、君たちのアジトがある浮遊島に向かっているところだ。……きみとの約束を果たすためにね。
イクス……やっと話してくれるんだな。
フィリップああ。待たせてごめん。今がその時だと思うんだ。だから――直接会って二人だけで話がしたい。
イクスわかった。待ってるよ、フィル。正直……ちょっと怖いけどでも、俺、ずっと知りたかったんだ。
イクス俺やミリーナは『誰』なのか。
to be continued