| Character | 1話【13-1 船上】 |
| バルバトス | どうしたアトワイト ?先ほどまでの威勢が嘘のようではないか ? |
| アトワイト | ……くっ、何とでも言いなさい。あなたが聞きたかったことは全部話したつもりよ。 |
| バルバトス派救世軍兵士 | あの、バルバトスさん……。この女の人、誰なんですか…… ?バルバトスさんは知り合いだったみたいですけど……。 |
| バルバトス | 貴様らのような死にぞこないが知ってどうするっ !つべこべ言わずに、この女をどこかの部屋に閉じこめておけ ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | はっ、はい ! |
| バルバトス | マークの腰巾着 ! この女の話は聞いていただろう。すぐにメルクリアたちが逃げた大陸に船を向かわせろ ! 今すぐだ ! |
| ルック | わ、わかりました。ただ、ここからメルクリアたちが逃げたっていうファンダリア領まで向かうとなるとそれなりに時間がかかります……。 |
| バルバトス | ふん、まあよかろう。 |
| バルバトス | 転送魔法陣なぞ使って船から逃げ出したようだがディムロスたちがいる大陸を選ぶとはなかなか気が利くではないか。 |
| バルバトス | メルクリア ! ! そしてディムロスっ ! !待っていろ、すぐにまとめて俺が殺してやる ! ! |
| バルバトス | クク、クククククッ !アーッハッハッハッハッ ! ! |
| カーリャ・N | ――お待たせしました。見回りの兵たちはここから離れたようですが念のため、しばらくは大人しくしていてください。 |
| ルキウス | ありがとう。きみが手を貸してくれなければボクたちも今頃、乗っていた船と一緒に海の底に沈んでいたかもしれない。 |
| ルキウス | でも、ボクたちをかばって戦った兵たちの中には……。 |
| カーリャ・N | ……今は考えないことです。まずは現在の状況をお伝えしておきます。 |
| カーリャ・N | この船は、アトワイト様が流した嘘の情報によりあなた方が逃げたことになっているファンダリア大陸に向かっています。 |
| カーリャ・N | なので私たちは港に着き次第タイミングを見計らって次の行動に移ります。いいですね ? |
| ルキウス | ああ。今はきみの指示に従うよ。 |
| メルクリア | ……何故じゃ。 |
| ルキウス | メルクリア ? |
| メルクリア | 何故わらわたちを助けるような真似をするッ ! !貴様らにとって、わらわは敵ではなかったのか ! ! |
| カーリャ・N | それは……。 |
| メルクリア | 答えろっ ! ! さもなくば、わらわはすぐにでも貴様をここで八つ裂きにしてくれるぞ ! ! |
| カーリャ・N | ……そうですね。私には、あなたを助ける義理などありません。 |
| メルクリア | ! ? |
| カーリャ・N | ですが、あなたを助けることはミ……ゲフィオン様の望みなのです。 |
| メルクリア | ゲフィオン……じゃと ? |
| ルキウス | ゲフィオン……ビフレストを滅ぼした鏡士……。 |
| メルクリア | 戯言を抜かすでないッ ! ! ゲフィオンがビフレストの皇女であるわらわを助けようなどと思うはずがなかろう ! ! |
| メルクリア | あやつはわらわの大切なものを全て奪っていったのだ !故郷も、民も、母上様や兄上様さえも…… !そのような者に慈悲の心があるとでも言うのかっ ! |
| カーリャ・N | あなたに話しても理解してもらえるとは思いませんしゲフィオン様も理解されたいとは思わないでしょう。 |
| メルクリア | 何じゃと…ッ ! ? |
| ルキウス | 落ち着くんだ、メルクリア。こんなところで争っている場合じゃない。 |
| ルキウス | ボクたちの置かれている状況がわからないメルクリアじゃないだろう ? |
| メルクリア | ……う……しかし……。 |
| カーリャ・N | それに、今回あなたを助けようと決めたのは私だけではありません。 |
| カーリャ・N | 捕まったアトワイト様は、私のように私情ではなく人としてあなたたちを見捨てるわけにはいかないと自ら囮となってくださいました。 |
| カーリャ・N | あなたは、そのアトワイト様の行動さえ無駄にしようというのですか ? |
| メルクリア | …………ッ ! |
| カーリャ・N | それでも私に刃を向けたいというのならあなたもそれまでの人間ということ。私も全力で相手をしましょう。 |
| メルクリア | …………今回だけじゃ。今回だけは、貴様らに従ってやる……。 |
| Character | 2話【13-1 船上】 |
| イクス | 水鏡の森……。具現化に必要な仕掛けがありそうな場所で調べていないのは、ここだけだ。 |
| ミリーナ | 当たり前だけど、やっぱりこの森の景色も同じなのね。歩いてるとイクスやフィルと一緒にピクニックへ行ったりしたことを思い出すわ。 |
| フィリップ | あ、ああ……懐かしいね……。 |
| ミリーナ | 確か、魔物が出るからって言われて、それ以来あまり水鏡の森には近づかなくなったのよね ? |
| フィリップ | ミリーナ、それは……。 |
| イクス | ……ミリーナ、その話は後でゆっくりしよう。今は一刻も早く仕掛けを見つけるんだ。 |
| ミリーナ | そうね。ごめんなさい、懐かしくてつい……。 |
| コーキス | ん ? なぁマスター。あっちのほう、何かチカチカ光ってないか ? |
| イクス | あれは……魔鏡が反射する光だ !ということは……。 |
| マーク | ようやく見つかったか。 |
| フィリップ | ああ、間違いない。ここに設置された魔鏡は具現化の魔鏡陣の力を増幅させるためのものだ。 |
| カーリャ | やりましたね ! では、ちゃちゃっとこの魔鏡陣を何とかしちゃいましょう ! |
| フィリップ | ……いや、どうやらそう簡単にはいかないみたいだ。 |
| コーキス | まさか、フィル様でも解除できない術式なのか ! ? |
| フィリップ | いや、正確には術式自体はなんとかできると思う。ただ、それを実行するために必要な段取りが少々厄介なんだ。 |
| イクス | 教えてくれ、フィル。どうすればビフレストの具現化を止められるんだ ? |
| フィリップ | まず、この魔鏡陣を書き換えたり消しただけではビフレストの具現化とキメラ結合は止まらない。 |
| フィリップ | 魔鏡陣の構成を考えるに、オーデンセの具現化とビフレストとのキメラ結合は各具現化大陸からキラル分子を吸い上げて行われている。 |
| フィリップ | おそらく、ビフレストの具現化を止めるには各具現化大陸に仕掛けられた魔鏡を破壊する必要がある。 |
| フィリップ | それも、一つだけじゃない。各大陸に数ヵ所、必要な数の魔鏡を設置しているはずだ。 |
| マーク | 面倒くせえやり方しやがって。こりゃ人海戦術で挑むしかねえな。 |
| イクス | フィル、ビフレストの具現化が完了するまで、あとどれくらいなんだ ? |
| フィリップ | ……時間的猶予はない。具現化は今も少しずつ進行しているんだ。すぐにでも各大陸とのリンクを切らないと……。 |
| コーキス | なるはや……って奴だな ! |
| ミリーナ | イクス、急いでアジトのみんなに連絡して協力してもらいましょう ! |
| イクス | ああ ! |
| ユリウス | わかった。すぐに人員を手配する。何かあればこちらからも連絡をするようみんなには伝えておこう。 |
| イクス | ありがとうございます。俺たちは具現化を止める準備をしておきますからみんなによろしく伝えてください。 |
| リッド | 大陸ごとにある魔鏡の破壊ねえ。こりゃあ、骨が折れそうな仕事だぜ。 |
| ガイアス | 魔鏡があると思われる場所は既にイクスたちが見当をつけてくれている。だが……。 |
| セネル | 問題は時間だな。この浮遊島からケリュケイオンとゲートを使うにしても全部の場所を回るとなると、かなり厳しいぞ。 |
| リッド | ああ、ゲートで各大陸に行けたとしてもそっから魔鏡の場所まで遠いとこだってあるしな。 |
| ガイアス | 俺だけならミュゼに運んでもらうという方法も可能かもしれんが、それだけでは足りんだろう。 |
| リッド | あんたが運ばれてるとこ想像するとすげーシュールだな。 |
| フィリップ | いや、もっといい方法がある。 |
| リッド | フィリップにマーク ! ?お前ら、イクスたちと一緒じゃなかったのかよ ? |
| フィリップ | ついさっきまではね。きみたちがイクスから連絡を受けている間に僕たちは鏡士が使う転送ゲートでここに来たんだ。 |
| セネル | それって……かなり体力を消耗するから緊急時以外は使うなって言われてるやつだろ。大丈夫……なのか ? |
| フィリップ | 緊急事態だからね。それにこれでも僕はこの世界で一番の鏡士だよ。大丈夫さ。 |
| マーク | …………。 |
| フィリップ | 時間が惜しいから手短に話すよ。きみたちをこれから、僕の転送魔鏡術で各地の魔鏡設置ポイントに送り込む。 |
| セネル | 帝国の連中が使ってる魔鏡術か。確かに、それなら時間はかなり短縮できるな。あんたがそれを使えるとは思わなかった。 |
| フィリップ | あれはビフレスト式の魔鏡術でね。本来は事前準備が必要なんだが今回はそれを飛ばして行う。 |
| フィリップ | だから片道切符になってしまうしもしかしたら危険な場所に転送されるかも知れない。それに、帰りは自力で帰ってきてもらうことになる。 |
| リッド | いや、十分だぜフィリップ。それなら何とかなるんじゃねえか ? |
| ガイアス | ……お前は、本当にそれでいいのだな ? |
| フィリップ | これでもビクエだからね。たまには年配者の威厳ってものを見せておかないと。 |
| ガイアス | ……わかった。では俺たちも仲間を集めて準備に取り掛かろう。 |
| ガイアス | ユリウス、お前はアジトに残り全体の指揮を頼む。ジェイドは色々と忙しそうだからな。 |
| ユリウス | 了解だ。では、各大陸への転送は五分後。その間に出来る限りアジトのみんなに情報を共有しておこう。 |
| フィリップ | ――マーク。 |
| マーク | ……何だよ。 |
| フィリップ | ありがとう、何も言わないでいてくれて。 |
| マーク | …………この馬鹿マスターが。 |
| Character | 3話【13-2 テセアラ領 領主の館1】 |
| | テセアラ領・領都アルタミラ |
| イオン ? | リヒター、なぜ僕が領主と面談が許されないのか詳しく教えてもらえないかな ? |
| リヒターβ | 現在、各大陸の領主が次々と襲われていると報告を受けている。同時に、帝都で保管されていた心核もいくつか持ち去られたという話だ。 |
| イオン ? | その犯人が僕だとでも言いたげな態度だね。そんなことをするのは、出来損ないの【レプリカ】のほうじゃないのかな。 |
| リヒターβ | ああ、我々もその線で動いている。だからこそお前が『あの』イオンだと証明できない限り領主であるリーガルの元へは行かせられん。 |
| イオン ? | ……つまり、この僕が【被験者】ではない、と言いたいのか。 |
| リヒターβ | その通りだ。 |
| イオン ? | 困ったね。信じてもらえないとなるとお前を力尽くでどかすしかないってことだから。 |
| イオン ? | まあ、どうせ、リビングドールβなんて汎用型のオモチャだし、壊してもかまわないか。 |
| リヒターβ | ……待て。わかった。俺から話をつけてこよう。 |
| イオン ? | ふうん。出来損ないのオモチャでも恐怖心があるんだ。面白いね。 |
| リヒターβ | ……但し、一つ聞いておくことがある。お前は自分がいつ頃この世界に具現化されたか覚えているか ? |
| イオン ? | ……おかしなことを聞くね。僕が具現化されたのはハロルドと同じ頃だったはずだけど。 |
| リヒターβ | ……そうか。 |
| イオン ? | 無駄口を叩いている暇があったら早く領主であるリーガルに―― |
| リヒターβ | ――はああっ ! |
| イオン ? | なっ ! ? |
| リヒターβ | ……上手く避けるじゃないか。身体が弱いと聞いていたのだがな。レプリカイオン。 |
| イオン | どうして……僕が【被験者】じゃないとわかったのですか ? |
| リヒターβ | お前たちに伝わっていた情報には齟齬がある。被験者と呼ばれた方は、もっと前に具現化された。あのディストによってな。 |
| イオン | ……なるほど、迂闊でした。 |
| リヒターβ | さて、大人しく捕まってもらおうか。 |
| イオン | ……そうはさせません ! |
| リヒターβ | なにっ ! ? これは…… ! !ぐううううっっ…… ! ! |
| イオン | ――ダアト式譜術。万が一の為あなたが来るまでの間に準備をしておきました。少しの間だけ、眠っていてもらいますよ。 |
| イオン | (……心核を入れ替えて……) |
| イオン | ――よし、これで大丈夫なはずです。あとは……。 |
| 帝国軍兵士 | おい、どうした ! ?物騒な物音がしたようだが……。 |
| イオン | ! ! |
| リーガルβ | 貴様……リヒターに何をした ? |
| イオン | (……この人数相手にもう一度ダアト式譜術を使う……か ?) |
| リーガルβ | そいつを捕らえろ。詳しい話を聞く必要がある。 |
| イオン | (上手くいけばリーガルの心核も戻せるかもしれない。でも僕の体力が持つか……) |
| ? ? ? | 助けが来る……。 |
| イオン | ……なるほど、そうですか。 |
| リーガルβ | お前、何を笑っている ? |
| イオン | いえ。どうやら助けが来てくれるようなので。 |
| ロイド | うおっ ! ? すげーな ! !本当にパッとついちまったぜ ! ? |
| 帝国軍兵士 | なっ、なんだ ! ?転送魔法陣 ! ? こんな所に ! ? |
| マルタ | ちょっと ! 周りが帝国兵だらけじゃない ! ? |
| エミル | な、なんでこんな状況になってるの ! ? |
| リーガルβ | なるほど、仲間がいたのか。 |
| エミル | ――え ! ? リーガルさん ! ? |
| ロイド | リーガル ! ! どうしてこんな所に……ってそもそもここはどこなんだ ?アルタミラ付近に飛ばすって話だったけど。 |
| ミトス | 領主の館……じゃないかな。だとしたら、テセアラ領の領主はリーガルでリビングドールβにされてるってことになるけど。 |
| ロイド | ……そういうことかよ。だったらここでとっ捕まえてアジトに連れて帰ればリーガルを助けられるってことだな ! |
| 帝国軍兵士 | リーガル様 ! ここは我々が ! |
| リーガルβ | わかった。後は任せるぞ ! |
| ロイド | あっ、おい ! ! 待てよ ! ! |
| ミトス | ロイド、深追いは禁物だよ。ボクらの目的は―― |
| ロイド | ……ビフレストの具現化を食い止める。分かってるさ。 |
| 帝国軍兵士 | 侵入者共が何をガタガタと !みんな、かかれ ! |
| Character | 4話【13-5 テセアラ領 領主の館4】 |
| ロイド | よし、これで片付いたな。 |
| ラタトスク | ……ちっ。数が多すぎて時間がかかっちまった。 |
| ミトス | ――ねぇ、その顔……。もしかしてイオン ?鏡映点リストで見たよ。被験者かレプリカの方かは分からないけど。 |
| イオン | ああ……。はい、レプリカの方……です。証明できるものはありませんが……。 |
| ロイド | レプリカ…… ?てか、お前、顔が青いの通り越して白いぞ ! ?大丈夫か ! ? |
| イオン | ……すみま……せん。少し休めば大丈夫……。それより、あちらの彼を……。 |
| マルタ | エミル、見て ! ? あそこで倒れてる人って ! ? |
| エミル | リヒターさん ! ? どうして ! ? |
| イオン | 彼は……気を失っているだけです。リビングドールβに……されていたので心核を……戻しま…… |
| マルタ | ちょっと ! 全然大丈夫じゃないじゃない ! ?顔も真っ青だよ ! ?待ってて、すぐに治癒術を……。 |
| イオン | はぁはぁ……申し訳、ありません……。少し無理をしてしまったようです。 |
| イオン | あなた方は……ジェイドたちの……仲間ですよね。どうか、リヒターをあなたたちのアジトまで送り届けてくだ……さ―― |
| ロイド | おい ! しっかりしろ ! ! |
| ミトス | 気絶しただけだよ。命に別状はない。とはいえ、このままって訳にもいかないね。 |
| エミル | 魔鏡陣の仕掛けを壊すんだよね。でもリヒターさんが……。 |
| ラタトスク | リヒターなんざ、どうでもいいだろ。 |
| 二人 | よくないだろ ! |
| エミル | ――え ? ミトス ? |
| ミトス | ……何 ? リヒターはハーフエルフなんだから心配して当然でしょ。それにイオンもボクらと似たようなものだし。 |
| ロイド | ………………。 |
| ラタトスク | だが、どうする ? アジトに帰るゲートは魔鏡が設置されている場所とは逆方向だぞ。 |
| マルタ | 手分けしたらどうかな。リヒターたちをアジトに連れて帰る組と魔鏡陣の仕掛けを壊す組と。 |
| ロイド | ミトス。お前がエミルとマルタと一緒にこのイオンって人とリヒターを運んでやってくれよ。 |
| エミル | それじゃあロイドが一人になっちゃうよ ! ? |
| ミトス | ……本当に、嫌なやつ。 |
| ロイド | な、なんだよ ? 俺、そんな嫌なこと言ったか ?だってミトスはイオンのことなんかわかってるみたいだったし。 |
| ロイド | リヒターのことはエミルとマルタが知ってるだろうし。それに、この二人を運びながら戦うとなると人数は多い方がいいだろ。 |
| ラタトスク | ――テネブラエ。 |
| テネブラエ | はい、お側に。 |
| ラタトスク | お前、ロイドについていってサポートしてやれ。俺たちは急いでこの足手まとい共をアジトに運ぶ。 |
| ロイド | よし、決まりだな。テネブラエ、頼むぜ ! |
| テネブラエ | ノイシュさんからいつもロイドさんのことは聞いていますからね。おまかせ下さい。 |
| マルタ | じゃあ私、ジーニアスたちにも一応連絡しておくね。いざという時にロイドのサポートができないか確認してみる。 |
| ロイド | ああ、頼む。それじゃあ、俺は例の仕掛けってやつを探しにいくか ! |
| ミトス | ロイド……。 |
| ロイド | ん ? 何だ ? |
| ミトス | ……せいぜい必死であがくといいよ。疲れ切って帰ってくるのを楽しみにしてるから。 |
| ロイド | おう。あがくのは得意だからな。 |
| バルバトス | ようやく着いたか。もうすぐだ、もうすぐでお前に会えるぞ……。 |
| バルバトス | おいっ ! お前たち ! ! ディムロスだ ! !まずはディムロスという男がどこにいるのか捜し出せ ! ! |
| バルバトス派救世軍 | はいっ ! |
| バルバトス | おっと、あの女も連れてくることを忘れるなよ ?ディムロスへの大切な手土産だからな。 |
| ルック | (いいのか……俺は本当にこのままバルバトスさんに従い続けて……) |
| バルバトス | どうした、マークの腰巾着。まさか、今さら怖気づいた……などということはあるまいな ? |
| バルバトス派救世軍 | そんなことはありません !なあ、ルック ! 俺たちは戦うためにバルバトスさんに付いてきたんですから ! |
| バルバトス | ならば、最後まで俺のためにその命を使え。戦場で死ぬのがお前たちの本望だろう ? |
| バルバトス派救世軍 | はい、その通りです ! ! |
| バルバトス | クックックッ、それでこそ戦士の証だ。救世軍から捨てられたお前たちでも死に場所くらいはこの俺が与えてやろう。 |
| ルック | ………………。 |
| カーリャ・N | 船が停泊したようですね。では、私たちも行動を開始しましょう。 |
| カーリャ・N | 帝国軍の主力が上陸したら、船を奪取します。捕まった帝国兵を解放してそのまま沖へ出てください。 |
| ルキウス | きみはどうするつもりなんだ ? |
| カーリャ・N | 私はあなたたちの乗った船が沖に出たのを見届けたのち、アトワイト様の救出に向かいます。 |
| ルキウス | それじゃあ、ここからは別行動だね。色々とありがとう。でも……。 |
| カーリャ・N | はい、私たちは敵同士です。次に会うときは戦いの場かもしれません。 |
| ルキウス | ……残念だね。 |
| メルクリア | …………。 |
| カーリャ・N | では、私は船に残っている見張り兵を一掃しますのであとは、あなたたちにお任せします。 |
| ルキウス | ああ、こっちは上手くやってみせるよ。 |
| カーリャ・N | それでは、ご武運を。 |
| ルキウス | メルクリア、ボクたちもいつでも動けるようにしておこう。 |
| メルクリア | ルキウスよ……わらわは、本当にこのままでよいと思うか ? 何もせず、鏡士たちの仲間に助けられるだけでよいのか ? |
| ルキウス | ……それは、きみの中にしか答えがない問いかけだよ。 |
| メルクリア | わらわは……。 |
| ルキウス | メルクリア。きみはどうしたいんだい ? |
| メルクリア | わらわは……本当は……。 |
| Character | 5話【13-6 ファンダリア領 村】 |
| スタン | お待たせ、ディムロス ! |
| ディムロス | よく来てくれた、スタン。すまない、我々も協力は惜しまないが、こちらも日夜帝国軍との戦闘で動かせる兵が限られていてな。 |
| スタン | いや、ディムロスたちが協力してくれて本当に助かったよ。この大陸の地形なら俺たちより対帝国軍部隊の人たちのほうが詳しいだろうし。 |
| シャルティエ | それで、大陸のキラル分子を吸収してるっていう魔鏡はどこにあるんですか ? |
| スタン | イクスたちが言うにはこのファンダリア大陸には全部で三つの魔鏡が設置されているそうなんだ。 |
| ソーディアン・ディムロス | 二つの魔鏡は、それぞれリオンとルーティウッドロウとフィリアが破壊に向かってくれている。 |
| ディムロス | なるほど、つまり、残る一つを我々が破壊すればよいのだな。 |
| ソーディアン・ディムロス | ただ、一つ問題があってな。その魔鏡が集めたキラル分子を求めて、魔物まで集まってくるのだ。 |
| シャルティエ | 危険が伴う任務ってことですね。 |
| スタン | カイルたちも手伝うって言ってくれたけどハロルドさんを助けにいったばかりで無理をさせるわけにはいかなくて……。 |
| ディムロス | それで、我々に白羽の矢が立ったというわけか。 |
| スタン | ごめん、俺たちだけでなんとかしたかったんだけど。 |
| ディムロス | 何を言っている ? こういう不測の事態の時こそ互いに協力する為の同盟ではなかったのか ?そうだろう、シャルティエ ? |
| シャルティエ | ええ、ええ、わかってますよ。ディムロスが引き受けたのなら初めから僕に拒否権なんてありませんからね。 |
| スタン | 二人とも……ありがとう ! |
| ディムロス | よし、では早速その魔鏡がある場所へ向かおう。シャルティエ、念のため我々の本部にはピエール部隊を待機させておいてくれ。 |
| シャルティエ | ええ~、あいつらですか ?別にいいですけど、大丈夫ですかね……。ちゃんとみんなに指揮とかできるかな……。 |
| ソーディアン・ディムロス | 大丈夫か、スタン ? |
| スタン | えっ ! ? な、なんだよ急に……。 |
| ソーディアン・ディムロス | なに、珍しく考え事をしているような顔をしていたのでな。 |
| スタン | ……なんか馬鹿にされたような気がするぞ。でも、やっぱりディムロスにはバレてたのか。 |
| ソーディアン・ディムロス | ルーティのことか ? |
| スタン | ……ああ。ルーティ、ずっと様子が変だろ ?俺やカイルとのこともあったし色々悩んでいるんだと思う。 |
| スタン | だから、そんな状態で魔物に襲われたりでもしたらって考えちゃってさ……。 |
| ソーディアン・ディムロス | こればかりは、お前たちの問題だからな。 |
| ソーディアン・ディムロス | しかし、だからといって目の前の問題を蔑ろにしていいわけではない。ルーティもそれがわからぬ未熟者ではあるまい。 |
| スタン | ……そうだな。それに、リオンも一緒だし、きっと大丈夫だよな。 |
| フィリップ | ――これで……全員の転送は……完了だ。 |
| ユリウス | あとは、みんなからの報告を待つだけか。フィリップ、きみはゆっくり休んでいてくれ。 |
| フィリップ | ああ……、そうさせてもらうよ。 |
| カノンノ・G | あの、私、何か飲み物持ってきましょうか ? |
| フィリップ | そう……だね。少しだけ水を貰えるかな ? |
| マーク | おい、フィル。身体は……。 |
| フィリップ | ……大丈夫。ただ、やっぱり歳……かな。つか……れ……。 |
| マーク | フィル ! ? |
| カノンノ・E | フィリップ ! ? そんな、すごい熱…… ! ! |
| P・カノンノ | わ、私、すぐ医療班の人たちを呼んでくる ! ! |
| ユリウス | マーク、これは一体どういうことだ ? |
| マーク | ……まあ、見ての通りだ。転送魔鏡術ってのは負担が大きすぎる術式でな。だから事前に仕掛けをしておかないとヤバいんだ。 |
| マーク | なのにこの馬鹿は、緊急事態だからって……。ビクエだろうと、こんなにポンポン飛ばしてりゃ倒れるに決まってんだよ ! |
| マーク | ああっ ! ! 誰だ、こんなときに魔鏡通信なんぞかけてくる奴はっ ! ! |
| ルック | …………マークさん、俺です。 |
| マーク | ルック ! ? お前、今どこにいるんだ ! ? |
| ルック | すみません。今はバルバトスさんと一緒にファンダリア領にいます……。 |
| マーク | バルバトスだと ! ?あいつ、なんでファンダリア領なんかに……。 |
| ルック | メルクリアがファンダリア領にいるって情報を手に入れて……それに、ディムロスって人も捜してるみたいなんです。 |
| ルック | でも、途中で帝国軍の艦隊も追いついてきて……。バルバトスさんが帝国の船を奪ったんで追われてるんです。 |
| ルック | で、その帝国軍を押しやるために動けない仲間を使って足止めしろって命令されて……。 |
| マーク | ちょっと待て ! ? そんなことしたらあいつらは確実に……。 |
| ルック | マークさん ! ! こんなこと頼めた義理じゃないのは百も承知です ! ! でも、このままじゃあいつら全員、死んじまう……っ ! ! |
| ルック | おねがいです、マークさん。俺、何とかあがいて時間を稼いでみますからあいつらを助けて下さい ! |
| マーク | ……くっ。 |
| カノンノ・E | マーク ! どうして黙ってるの ! ?このままじゃ本当にルックさんたちが ! ! |
| マーク | わかってる ! だが、ビフレストの具現化を阻止するのに、救世軍の兵力も割いてるんだ。 |
| マーク | 俺が兵力かき集めて行くにしてもアジトからファンダリア領じゃ距離がありすぎて、存在が消えちまう……。 |
| フィリップ | 僕も一緒に行けばその点は解消されるね。ルック。僕らが行くよ。だから、それまで何とか耐えてくれ……。 |
| マーク | フィル ! ? お前……。 |
| フィリップ | マーク……ケリュケイオンのみんなに連絡だ。僕たちを迎えに来たあと、すぐにファンダリア領へ向かう旨を伝えてくれ。 |
| マーク | 何言ってんだ ! ?こんな状態のお前を連れていくことなんて……。 |
| フィリップ | 頼む、行かせてくれ……。イクスなら……例えどんなときでも……大切な仲間のために戦うはずだ。 |
| マーク | こんなときでもイクスかよ。久々にあいつにムカついてきたぜ。 |
| マーク | ……くそっ、どうなっても知らねえからな ! !おい、ルック ! !俺たちが行くまで、絶対死ぬんじゃねえぞ。 |
| ルック | はっ、はい ! ! |
| Character | 6話【13-7 ファンダリア領 平原1】 |
| リオン | 魔鏡の仕掛けがあるというのはこの辺りで間違いないんだな。 |
| ルーティ | そのはずよ。だから、ここからは一層気を引き締めていかないとね。 |
| リオン | それは僕に言ってるのか ? |
| ルーティ | 誰もあんたなんかの心配なんてしてないわよ。魔鏡につられて、魔物が集まるって話だったのを思い出しただけ。 |
| リオン | なら、僕の足手まといにならないように。気を付けるんだな。 |
| ルーティ | わかってるわよ、いちいちうるさいわね !大体、あんたはいっつもそうやって偉そうに―― |
| リオン | ……ふっ、やっと調子が出てきたようだな。 |
| ルーティ | ……はあ ? |
| ソーディアン・アトワイト | ルーティ。リオンさんはあなたのことを心配してくれて言ってくれてるんじゃないかしら ? |
| リオン | おいっ ! 勝手なことを言うのは止めろ ! |
| ソーディアン・シャルティエ | すみません、坊ちゃんは誰かを励ましたりするのが絶望的に苦手ですから。 |
| リオン | シャル ! お前まで…… ! ? |
| リオン | ――待て、あれは何だ ? |
| ルーティ | あんたねぇ、話を逸らしたいからってそんな古典的な方法で誤魔化さなくても……。 |
| リオン | 違う ! よく見ろ ! |
| 帝国軍兵士 | ウオオオオオオオッ ! ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | ――まだだぁ ! ! 俺たちはまだ戦えるんだッ ! ! |
| ルーティ | ちょっと……何なの、あの兵士の数…… ! ! |
| リオン | 戦っているのは帝国軍と救世軍の兵士か。 |
| ソーディアン・アトワイト | ……まるで戦争だわ。 |
| ソーディアン・シャルティエ | どうしますか、坊ちゃん。魔鏡がある場所はこの先ですよ ? |
| リオン | ……巻き込まれると面倒だ。時間は掛かるが迂回するぞ。 |
| バルバトス派救世軍兵士 | バルバトスさん ! このままではすぐに帝国軍の連中に追いつかれます ! ! |
| バルバトス | 帝国の虫ケラ共め…… !この俺の邪魔をしたことを後悔させてやる ! !来い、アトワイト ! ! |
| アトワイト | ……ッッ ! ! |
| ルーティ | アトワイト ! ! |
| アトワイト | ルーティさん ! ? どうしてここに……。 |
| バルバトス | ――何だ ?貴様ら、この女のことを知っているのか ? |
| バルバトス | ……ククク、そうか。アトワイトを知っているということは、さては貴様ら、ディムロスが率いる対帝国軍部隊の兵か ! ! |
| アトワイト | まずいわ…… ! 二人とも、すぐに逃げるのよ ! |
| バルバトス | いけぇぇぇ、救世軍どもよ ! !あいつらを捕らえてディムロスの居場所を吐かせろおぉぉ ! ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | ――うおおおおおっ ! ! |
| リオン | マズい ! 退け ! ルーティ ! ! |
| ルーティ | ……くっ、こいつら、なんて気迫なのっ ! ? |
| ソーディアン・シャルティエ | ど、どうしましょう ! 坊ちゃん ! ? |
| リオン | ……くそっ、兵の数が多すぎる。このままでは僕たちが……。 |
| ルーティ | ……仕方ないわね。 |
| ルーティ | リオン ! あんただけでも逃げなさいッ !こいつらはあたしが足止めするわ !その代わり、あんたは絶対に魔鏡を壊してきなさいよ ! |
| リオン | 馬鹿を言うな !それじゃあお前が――。 |
| ルーティ | あたしがこんなところでくたばる訳ないでしょ !その代わり、あんたにはでっかい貸しを作るんだから覚悟しときなさいよ ! |
| ソーディアン・シャルティエ | ……坊ちゃん。 |
| リオン | ……シャル、僕たちは魔鏡がある目的地まで向かう。一気に切り抜けるぞ ! |
| ソーディアン・シャルティエ | りょ、了解です ! ! |
| ルーティ | ……ほんと、世話が焼けるんだから。それじゃあ、アトワイト……って今二人この場にいるからややこしいわね。 |
| ソーディアン・アトワイト | そうね。でも、あなたをマスターに選んだアトワイトは私一人だけよ、ルーティ。 |
| ルーティ | あー、そういう話は、この場を切り抜けてから聞きたかったわ。でも、ちょっとだけやる気は出たかも。 |
| ルーティ | さあ、来なさい !あんたたちの相手はこのあたしよ ! |
| フィリア | ……遅いですね、ルーティさんたち。 |
| スタン | 駄目だ。さっきから魔鏡通信で連絡してるけど二人とも出てくれない……。 |
| ウッドロウ | 何か問題が発生したのかもしれない。私たちも動く準備をしておいたほうがいいのかもしれないね。 |
| シャルティエ | で、でも。あのリオン君たちに限って……。 |
| 対帝国軍部隊伝令 | ディムロスさん ! 先ほど、伝令部隊から緊急の報告が上がってきました ! |
| ディムロス | 何があった ? |
| 対帝国軍部隊伝令 | それが、近くで大規模な戦闘が始まったと……。これが詳しい場所が記載された報告書です。 |
| フィリア | これは…… ! ? |
| スタン | ルーティたちが向かった場所じゃないか ! ? |
| ウッドロウ | となると、二人がこの戦闘に巻き込まれている可能性もある。どうする、スタン君 ? |
| スタン | 決まってます !ルーティとリオンを助けに行かなきゃ ! |
| ディムロス | スタン、私たちも同行しよう。何やら嫌な予感がする……。 |
| Character | 7話【13-10 ファンダリア領 街道3】 |
| ロイド | イクス ! 設置されてた魔鏡は壊したぜ ! |
| イクス | ありがとう、ロイド。テセアラ領の魔鏡はこれで全部破壊完了だ。 |
| ロイド | 了解。それじゃあ、あとはよろしく頼むぜ。 |
| ミリーナ | これで残りの魔鏡の仕掛けはファンダリア領だけね。 |
| カーリャ | はわわ……待ってるだけっていうのは落ち着かないですね。 |
| コーキス | マスター……。フィル様が言ってた時間もそろそろじゃないか ?このままじゃ……。 |
| イクス | ……一度、アジトにいるユリウスさんに連絡してみる。何か報告が入っているかもしれない。 |
| ユリウス | イクスか。すまない、色々あってこちらの連絡が滞ってしまっていた。 |
| イクス | 色々って、もしかして何か問題が起こったんですか ? |
| ユリウス | いや、少し話が入り組んでいてな。この作戦が終わってから報告しようと思ったのだがそちらも何かあったのか ? |
| ミリーナ | それが、魔鏡の破壊は順調に進んでいるんですがファンダリア領のキラル分子リンクだけまだ切れていないんです。 |
| ユリウス | ファンダリア領だと ? まさか……。 |
| イクス | ユリウスさん ? |
| ユリウス | イクス、こちらにファンダリア領で救世軍を巻き込んだ大規模な戦闘が発生したという報告があったんだ。もしかしたら、それが影響しているのかもしれない。 |
| コーキス | 救世軍が ! ? ユリウス様、そっちにフィル様とマークがいるだろ ? 二人は何て言ってんだ ? |
| ユリウス | ……いや、二人は事態の収拾のため現場に向かった。そのあとの報告は、我々のところにも届いていない。 |
| ユリウス | ともかく、何か動きがあればすぐに報告する。不安だろうが、イクスたちはそのまま現場で待機しておいてくれ。 |
| コーキス | どうするんだよ。マスター !もし、ファンダリア領の魔鏡が壊せなかったらここにいる俺たちも具現化に巻き込まれちまうんだろ ! ? |
| カーリャ | あわわ !これって大ピンチってやつじゃないですか ! ? |
| ミリーナ | いざとなったらキラル分子リンクを解除しないまま具現化停止処理を行う方法もあるけど……。 |
| カーリャ | 駄目ですよ、ミリーナさま !フィリップさまがその方法は危険だって仰ってたじゃないですか ! ? |
| ミリーナ | そうだけど……。イクスはどう思う ? |
| イクス | …………。 |
| ミリーナ | イクス ? |
| イクス | えっ ? あ、ああ……。ごめん、もう一回言ってくれないか ? |
| カーリャ | もう、しっかりしてくださいよイクスさま !いつもならここでイクスさまの心配性が出て色々言ってくれるところじゃないですか ! ? |
| イクス | さ、最近はそうでもないだろ !でも、そうだよな……。この状況でどう行動するのが最適か考えないと……。 |
| ミリーナ | ……イクス、ちょっと二人だけで話をしない ? |
| イクス | ミリーナ…… ? |
| ミリーナ | イクス、単刀直入に聞くわ。フィルと何があったのか教えて。 |
| イクス | ! ? ど、どうしたんだよ急に……。 |
| ミリーナ | 急なんかじゃないわ。フィルと何かあったんでしょう ? |
| ミリーナ | 私、イクスから話してくれるのを待っていたの。でも、ここに来てからのイクス……なんだかいつもとは違っていたから……。 |
| イクス | 俺は……いつも通りだよ。 |
| ミリーナ | ううん。普段のイクスならフィルが危険を承知で転送ゲートを使おうとしたときに止めたはずよ。 |
| ミリーナ | だから、フィルを止めなかったイクスを見てきちんと話を聞くべきだと思ったの。 |
| ミリーナ | お願い、イクス。私にもちゃんと話して。一体、フィルと何があったの ? |
| イクス | ……ミリーナ。ミリーナは、自分の感情を疑ったことはないか ? |
| ミリーナ | ……自分の、感情を ? |
| イクス | ああ。答えてくれ、ミリーナ。 |
| ミリーナ | ――あるわ。 |
| イクス | ! ? |
| ミリーナ | 私にはゲフィオンの記憶が受け継がれているから。『最初の私』と『今の私』の記憶と感情が同居しているんだもの。 |
| ミリーナ | 影響だって……受けているでしょうね。 |
| イクス | あ……。なら……ミリーナはどうやって自分の気持ちが自分だけのものだって……。 |
| ミリーナ | ……感情って何なのかしらね。 |
| イクス | え ? |
| ミリーナ | 全然興味のなかったもの――そうね、例えばハーブがあまり好きじゃなかったとして、でも好きな人がハーブが好きだから、一生懸命好きになろうとする。 |
| ミリーナ | そして気付いたら嫌いじゃなくなってる……なんてこともあるかも知れないわよね。 |
| イクス | そういうことも……あるかもな。 |
| ミリーナ | それは私の感情なのかしら?好きな人に影響された感情は私だけの感情? |
| イクス | それは……自分の感情だよ。だって自分でハーブを好きになろうとして選んだんだから。 |
| ミリーナ | ええ。誰かに影響を受けたとしても、選ぶのは私。 |
| ミリーナ | ゲフィオンの記憶や感情に影響を受けても私は今目の前にいるイクスを見てイクスを好きになることを選んだの。 |
| イクス | ! ! |
| イクス | け、けど……それが、そうなるようにあらかじめインプットされていたものだとしたら……。或いは暗示をかけられているとしたら……。 |
| ミリーナ | ゲフィオンが、私を造る時にそうなるように仕向けていたらってことよね。ありそうな話だわ。だって、ゲフィオンはイクスを守りたかったんだから。 |
| イクス | ミリーナ……。気付いてたのか? |
| ミリーナ | 気付いていた ? どういうこと ?私は……単に私が二人目を造るならそうすると思ったの。酷い女だもの、私。 |
| イクス | (ゲフィオンから受け継いだ記憶に具現化された時のことはないのか……) |
| ミリーナ | でも……もしイクスが私を傷つけたり、幻滅させることがあったら、きっとインプットされた気持ちだって消えていってしまうと思う。 |
| ミリーナ | 暗示だってそう。どんなに強固なものでも打ち破れるものだと思うわ。人の心は脆くて崩れやすいから。 |
| ミリーナ | 私たちが具現化されてもう二年以上経ってるのよ ?もう具現化前のイクスより目の前のイクスの方がずっと鮮やかだわ。 |
| ミリーナ | イクスは違うの? 記憶の中のミリーナと『私』とどっちの方が鮮明? |
| イクス | それは目の前のミリーナだよ。記憶は……風化していくから。 |
| ミリーナ | 感情もよ。時間はかかるかも知れないけれど。 |
| イクス | 感情も……風化する……。 |
| ミリーナ | 私は、ずっと『今』のイクスの傍にいた。みんなと出会って、ゲフィオンが抱えてきた嘘を真実にしようと戦ってくれたイクスを見てきた。 |
| ミリーナ | 私は、色んなことに怯えて、悩んで、それでも最終的には前を向いて頑張ってるイクスが好き。今のあなたが好き。 |
| ミリーナ | それはゲフィオンの感情じゃない。私が自分で生みだした感情。 |
| イクス | ミリーナ……。 |
| ミリーナ | 私は、イクスのことが大好きよ。 |
| Character | 8話【13-11 アジト】 |
| イオン | ……うっ……。ここ、は…… ? |
| イオン | そうだ、彼は…… ! |
| リヒター | …………。 |
| イオン | よかった……。 |
| ジェイド | お目覚めのようですね、イオン様。 |
| イオン | ジェイド ! それにハロルドも !では、ここは皆さんのアジトなんですね ? |
| ハロルド | まあね。ってことで、早速だけどちょ~っとあんたの身体を見させてもらうわよ。 |
| マルタ | ええっ ! ? 何やってるのハロルド ! ?いきなり男の子の服を捲し上げるなんて ! ? |
| ミトス | ……胸に何か埋め込まれている。あれは、鏡……魔鏡の破片 ? |
| ハロルド | おっ、あったあった。ってことはあんたは正真正銘レプリカイオンの方ってことね。 |
| マルタ | えっと、どういうこと ? |
| ハロルド | そっか。まだあんたたちには言ってなかったわね。まぁ、ちゃちゃっと説明すると、この鏡の破片がこの子がレプリカイオンである証拠なの。 |
| イオン | 僕たちの計画を進めるには、僕の身体が虚弱すぎました。いざというとき、ハロルドの足手まといにならないよう僕は自分で自分の身を守れなければなりませんでした。 |
| ハロルド | そう。元々身体の弱いイオンの体力を補うためには親和性の高い精霊ローレライとキメラ結合させてローレライのアニマを共有させる必要があったって訳。 |
| ハロルド | そこで、レプリカイオンには鏡の破片を埋め込んだのよ。どう ? これで少しはわかってきたでしょ ? |
| ジェイド | なるほど……。イオン様にローレライの第七音素――ここではアニマとキラル分子ですが、とにかくそれを供給する形で、体力を底上げしているわけですか。 |
| マルタ | えっと……私は全然わからなかったんだけど……。 |
| ミトス | 精霊輪具を使った精霊装の応用だよ。ボクたちの世界のエクスフィア、他には天族と人間が融合する神依とかも参考にしたんだろうね。 |
| ミトス | それらを複合させ、魔鏡片を使ってイオンと精霊ローレライを擬似的に結合させた。 |
| ミトス | 要するに、イオンは常時精霊ローレライとごく微弱な精霊装状態にあって、ローレライのマナ――生命エネルギーを借り受けているんだ。 |
| イオン | はい……。そこまでしてもらっても少し戦うとこの通りですが……。 |
| ジェイド | ハロルド、念のためにお聞きしますが精霊装状態によるイオン様への悪影響は ? |
| ハロルド | ないわね。精霊輪具の使用だと負担も大きいけどこの魔鏡片はエネルギーの吸収を弱めているわ。 |
| ハロルド | 何よりイオンはレプリカだからローレライとは構成が驚く程似ているの。他の人間じゃ拒絶反応で倒れるでしょうね。 |
| ジェイド | ………………。 |
| マルタ | 要するに、イオンは体が弱くて戦える体じゃないのにハロルドが戦えるようにしたってことだよね ? |
| マルタ | レプリカってのがよく分からないけど……でも、なんだか凄いね。 |
| ハロルド | 当たり前でしょ。なんたって私、天才だから。 |
| ジェイド | イオン様……相変わらずあなたは無茶をしますね。こんなことをハロルドが勝手にやるとは思えない。あなたが頼んだのですね? |
| イオン | ……ええ。僕たちには味方がいなかったんです。僕も戦わざるを得なかった。 |
| イオン | どんな手段でもかまわないから、足手まといにならない最低限の力が欲しいとハロルドにお願いしました。元の世界で、僕は守られるばかりで無力でしたから。 |
| イオン | ……今も無力なのは変わらないかも知れません。僕はリーガルをリビングドール状態から救うことができませんでした。申し訳ありません。 |
| ハロルド | 仕方ないわよ。むしろ、リヒターだけでもリビングドール状態から解放できたんだから上出来よ。 |
| ハロルド | それにあんたは無力なんかじゃないわよ。ちゃんと約束を果たそうとしてくれたんだもの。ありがとう、イオン。 |
| ジェイド | ……色々と言いたいことはありますが今はこれだけにしておきます。元の世界でもあなたは無力ではなかった。 |
| ジェイド | 無力などと言ったら、ルークもアニスも悲しみますよ。 |
| イオン | ……ありがとう、ジェイド。 |
| ジェイド | さて、イオン様。今、あなたが把握している各大陸の領主の状況を教えていただけませんか ? |
| イオン | はい、そのことなのですが—— |
| イオン | ! ?これ、は……。 |
| ジェイド | イオン様 ? どうされたのですか ? |
| イオン | ローレライの、声です……。 |
| ジェイド | ……やはりそうか。イオン様はローレライを召喚できると言っていましたね。それは魔鏡片を埋め込まれる前からですか ? |
| ハロルド | そうよ。被験者にはできなかったけどイオンとこの世界で造られた新しいレプリカイオン――リベラだっけ ? その二人はローレライを呼べた。 |
| ジェイド | だとすれば、今のイオン様は常にローレライを召喚しているのと同じだ。 |
| イオン | そうです。さすがジェイドですね。魔鏡片を埋め込まれてから、僕は折に触れてローレライの声を受け取っています。 |
| ジェイド | それは預言(スコア)ですか? |
| イオン | いえ、この世界に預言(スコア)は存在しないようです。 |
| イオン | その代わりローレライは時の流れの音を聞くことができるそうなのです。 |
| ハロルド | そのせいで、イオンも自分の意志とは関係なく過去や未来の音を聞いてしまうそうよ。 |
| ハロルド | これから起きるかも知れないことやかつて起きてしまったことなんかをね。 |
| ハロルド | でも、イオンだけズルいわよね。私だって精霊と話してみたいのに ! |
| マルタ | ハロルドさんって、やっぱ変……。 |
| イオン | …… ! ? そんな……。 |
| ジェイド | イオン様、ローレライは何と ? |
| イオン | ジェイド、イクスたちに一刻も早く今いる島から離れるように伝えてください。 |
| イオン | ローレライが言うには、このままでは【バロールの眼】が開いてしまうと……。 |
| ミトス | 【バロールの眼】 ?それは、一体何のこと ? |
| イオン | 僕にもそれがどういうものなのかまではわかりませんが、危険なものであることは間違いないとローレライは言っています。 |
| Character | 9話【13-12 ファンダリア領 平原2】 |
| シャルティエ | ……酷い状況ですね、これは。あちこちに死体が……。 |
| ウッドロウ | 大規模な抗争だと聞いてはいたがまさか、ここまでのものだったとは。それに、この戦いは……。 |
| フィリア | ええ……帝国軍に立ち向かっている救世軍の方々は殆どが負傷兵です。 |
| ディムロス | 自軍の負傷兵すら戦わせようとするなどこの軍の指揮官は何を考えているんだ ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | ……ううっ ! |
| フィリア | 大丈夫ですか ! ? しっかりしてください ! !今手当てを ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | ——どけっ ! ! |
| フィリア | きゃぁ ! ! |
| スタン | フィリア ! ! お前、何するんだ ! ?フィリアに謝れ ! ! |
| バルバトス派救世軍兵士 | 俺たちは——俺たちは戦えるっ ! !たとえ手足が失われようともっ ! ! |
| スタン | おいっ ! 待て ! ! |
| ソーディアン・ディムロス | 止めろ、スタン !あの者には、すでに我らの声は届いていない。 |
| フィリア | あの人の眼……何かにとり憑かれているようでした……。 |
| スタン | ……こんな戦い、絶対に間違ってる ! !早く止めないと ! ! |
| ディムロス | 方法なら一つだけある。この部隊を指揮する者を討ち倒すのだ ! ! |
| シャルティエ | で、でも僕たちは魔鏡を壊しに行かないといけませんしルーティさんやリオンくんも捜さないといけないんですよ ! ? |
| シャルティエ | せめて、両軍を相手にできる兵がいないと……。 |
| ローエン | では、私たちが助太刀致しましょう。 |
| スタン | ローエンさんにヴィクトルさん ! ?二人がどうしてここに ? |
| ローエン | フィリップさんからの指示です。一刻も早く、この戦いを止めるために我々が派遣されました。 |
| ディムロス | しかし、何故このような場所で救世軍と帝国軍が争っているのだ ? |
| ローエン | 帝国軍の目的はバルバトスさんです。どうやら帝国軍籍の艦を奪ってこの地にやってきたという情報がありました。 |
| ディムロス | バルバトスだと ! ?奴もこの世界に来ていたのか ! ? |
| シャルティエ | どおりで戦い方が無茶苦茶な訳だ。無理やりこんなことをやらされている兵たちもたまったもんじゃないですよ。 |
| ヴィクトル | いや、厄介なことに救世軍の兵たちはバルバトスに心酔してしまっている。 |
| ヴィクトル | 彼らは自ら志願して肉の壁となり帝国軍の侵攻を妨害しているのだ。 |
| ローエン | このままでは犠牲者が増える一方です。しかし、すぐにでも魔鏡を破壊しなくてはイクスさんたちが危険なのも事実。 |
| ローエン | そこで、皆さんには今から二手に分かれて行動して頂きます。 |
| ローエン | 一方は救世軍の鎮静化。もう一方は魔鏡の破壊へと向かいましょう。 |
| ウッドロウ | 戦力が分散されるのは痛いが時間がない以上それが得策か。 |
| ディムロス | では、私とスタンは当初の予定通り魔鏡の破壊に向かう。シャルティエ、お前は対帝国軍部隊と共に、この戦いを止めるのだ。 |
| シャルティエ | はい、わかりました。 |
| ディムロス | スタン、お前も異論はないな。 |
| スタン | ああ、魔鏡は俺とディムロスで何とかします。 |
| フィリア | スタンさん……気を付けてくださいね。 |
| スタン | ありがとう、フィリア。それじゃあ、行ってくる ! |
| ディムロス | スタン、魔鏡がある場所まではもうすぐだ。ここからは魔物の気配にも気を配っておこう。 |
| スタン | ああ。それにルーティたちも近くにいるかもしれない。合流できたらいいんだけど……。 |
| ソーディアン・ディムロス | スタン、気持ちはわかるが今は集中するんだ。なに、彼らならば機転を利かせて行動しているはずだ。 |
| スタン | ……そうだよな。リオンは俺なんかよりよっぽど頭がいいし、ルーティだって……。 |
| バルバトス | みつけたぞぉぉぉぉぉぉぉ ! ! ! !ディィィィィィムロォォォォスッッッッ ! ! ! ! |
| ディムロス | なにっ ! ? 後ろか ! ? |
| スタン | ディムロス ! ! 危ない ! ? |
| バルバトス | ぶるるるるああああっっっっ ! ! |
| スタン | ——くっ、うわああああっ ! ! |
| ディムロス | スタン ! ! |
| バルバトス | 俺の邪魔をしおって……。まあいい。これで貴様とゆっくり殺し合いができるというものだ。そうだろう、ディムロス ! |
| ディムロス | バルバトス ! お前の目的はなんだ ?なぜ、兵たちにあのような真似をさせる ! ? |
| バルバトス | ふっはっはっ ! !決まっているだろ、貴様をこの手で殺すためだ ! ! |
| バルバトス | 俺がどれほど、この日を待ち望んでいたか……。それを貴様の身体を切り刻んで味合わせてやるっ ! ! |
| ディムロス | ……ならば、望み通り相手をしてやろう。但し、地に伏せるのは貴様のほうだ ! ! |
| バルバトス | ほほぅ、では、これを見ても同じことが吐けるか ? |
| アトワイト | ディムロス ! ! |
| ディムロス | アトワイト ! ?……バルバトス、貴様はまた同じ過ちを繰り返そうというのか ! ! |
| バルバトス | ……過ちだと ?俺はずっとこの日を待ち望んでいたのだ ! ! |
| バルバトス | 英雄と呼ばれた貴様をこの手で殺す瞬間を味わう日をなぁぁ ! ! |
| Character | 10話【13-13 ファンダリア領 森】 |
| バルバトス | ふはははっ……たまらんな !貴様の女の命は今この俺が握っている。 |
| バルバトス | どうだ ? ディムロス中将。今の心中を教えてはくれまいか。憎いか ? 俺を殺したいか ? |
| ディムロス | ……貴様っ。 |
| アトワイト | ディムロス。挑発に乗ってはいけないわ。 |
| バルバトス | つまらん。なら手始めに……おいっ。あの女を連れてこい。 |
| バルバトス派救世軍兵士 | ハッ ! こちらに ! |
| ルーティ | ……くっ。 |
| 二人 | ルーティ ! ? |
| スタン | ルーティ……だと。 |
| ディムロス | スタン ! 目を覚ましたのか ! ? |
| スタン | あぁ……なんとかっ。それより、ルーティを助けなくちゃ。 |
| バルバトス | ほう。死にぞこないの分際で。まだ俺とやり合おうというのか。 |
| バルバトス | 面白い。やはりこの女から殺すとしよう。腕か脚か……どこから切り落とすべきか。 |
| ルーティ | やれるものならやってみなさ―― |
| ルーティ | ぐっ ! |
| スタン | ルーティ ! ! やめろっ、バルバトス ! ! |
| バルバトス | その目だ。貴様のような目をした輩がいつも俺の邪魔をするために群がってくるのだ……。 |
| バルバトス | アトワイト、スタン・エルロン。それにディムロス。貴様ら全員、同じ目をしやがる ! ! |
| バルバトス | その目を潰し、舌を切り裂きじっくり苦しみ悶えながら殺してやるっ ! !まずは、この女からだっ ! |
| リオン | そうはさせるかっ ! |
| バルバトス | なにっ ! ? |
| バルバトス | ——うぐっ。 |
| リオン | 僕の手を煩わすな。 |
| アトワイト | ありがとう。おかげで助かったわ。 |
| ルーティ | まったく。遅いわよ。 |
| リオン | ふん。お前まで助けたつもりはない。 |
| シャルティエ | 二人とも無事救出完了ですね。 |
| バルバトス | ちっ ! ……シャルティエか !小虫ごときが俺の視界に入るんじゃねえ ! |
| シャルティエ | 正直、貴方とは関わりたくありませんでしたがそうも言ってられない状況だったもので。 |
| ディムロス | バルバトス。今すぐ部下と共に戦場から撤退しろ。 |
| バルバトス | 黙れ ! 軟弱が ! !すぐに引き裂いてやる ! ! |
| ディムロス | 今貴様らが勝手な行動を取ればイクス率いる先行部隊の作戦遂行に多大なる支障が発生する。 |
| ディムロス | 我らに争ってる時間はない。今にも皇女メルクリアは亡国ビフレストを復活させようとしてい── |
| バルバトス | その名を口にするな ! !あの女も貴様らも皆殺しにしてやる ! ! |
| バルバトス | メルクリアは俺をリビングドールに……操り人形にしやがった !俺の尊厳を踏みにじりやがった ! |
| バルバトス | あのガキめ ! 今殺す ! すぐ殺す ! !抹殺してやる ! 貴様らはそれを見ていろ ! !殺した後に全員すり潰してやる ! ! |
| ディムロス | 私怨か。相変わらず貴様の戦いには信念も大義もないようだな。 |
| アトワイト | 部下を道具としか思わない残虐なところもね。 |
| バルバトス | メルクリアを殺すまで屍の山を築いてやる !みんな使い捨ての駒どもだ ! !どうなろうと知ったことか ! ! |
| ディムロス | 貴様とてかつては軍人のはず。大義と、部下を生かして帰してこその誇り。それを失った貴様はただの狂犬だ ! |
| バルバトス | 俺に向かってしゃべってんじゃねえ !何が大義だ、何が部下を生かしてだ ! ?てめえはいつも偉そうにぬかしやがるっ ! |
| バルバトス | まずは力で示せっ ! この腰抜け野郎がっ ! ! |
| ディムロス | 何を話そうと貴様には届かぬか。ならば仕方がない。憎しみに囚われた愚か者―― |
| ディムロス | 我が誇りに懸けて貴様をとめるっ ! ! |
| バルバトス | 足掻き苦しめ ! 俺を楽しませろっ ! !俺の餓えを満たせ ! ! ディムロスっ ! ! |
| Character | 11話【13-13 ファンダリア領 森】 |
| バルバトス | ——まだだ、まだ俺の飢えは満たされん ! !こいっ ! ディムロス ! ! |
| ルーティ | はぁはぁ……まだ戦おうっての ?勘弁しなさいよ……。 |
| リオン | こいつ……本当に人間か ? |
| ディムロス | いや、奴も限界が近いはずだ。スタン ! ! |
| スタン | ああ ! このまま一気に決めるぞ ! |
| バルバトス | 無駄だ ! その程度でこの俺を止めようなどと—— ! ! |
| ? ? ? | 天光満つる処に我は在り黄泉の門開く処に汝在り出でよ神の雷 ! |
| リオン | この声は—— ! ? |
| メルクリア | これで終わりじゃ !インディグネイション ! ! |
| バルバトス | ぐあああああああああっっっっ ! ! |
| メルクリア | わらわの術を受けて、まだ意識があるとは噂通りの化け物ぶりじゃな、バルバトスよ。 |
| バルバトス | な……、き……さまは…… ! ? |
| メルクリア | わらわがメルクリアじゃ。ローゲ程の品格もない男に名乗るのも口惜しいがの。 |
| メルクリア | じゃが、貴様が場をかき回してくれたお陰でビフレストを復活させるという我が悲願が成就する。化け物も人の役に立つとは驚きじゃ。 |
| バルバトス | 黙れ…… !きさ、まは……ここで俺が……ころ、して……。 |
| メルクリア | ……わらわを猪のように追い回すだけしか能のない単細胞では何もできぬ。頭の足りぬ力任せの単細胞など恐るるに足らぬわ。 |
| バルバトス | ……ころ……し……。 |
| スタン | バルバトスが、止まった……。 |
| メルクリア | ——わらわの用は済んだ。その男の処理は貴様らに任せる。好きにするがよい。 |
| リオン | 待て。どういうつもりだ。キラル分子を送り込む最後の魔鏡は、僕が破壊した。ビフレストの具現化も失敗したはずだ。 |
| メルクリア | そんなことはわかっておる。わらわはただあの猪のような大男に、狙うは貴様らではなくわらわであると教え直してやったまでのことじゃ。 |
| リオン | その行動に何の意味がある ?下手をすれば、本当にバルバトスに殺されていたかもしれないんだぞ ? |
| メルクリア | ……この程度では借りを返すにもあたらぬが命の恩人を見捨てるような外道ではない。 |
| アトワイト | メルクリア、あなた……。 |
| 帝国兵 | メルクリア様 ! ここは危険です !すぐに我々と共に避難を ! |
| メルクリア | わかっておる。 |
| メルクリア | ――黒衣の鏡士の仲間共よ !わらわはまだ諦めてなどおらぬぞ。次は必ず我がビフレストを復活させてみせる ! |
| ルーティ | 何だったわけ ?まさか、あたしたちを助けてくれたの ? |
| リオン | 理由などどうでもいい。このままメルクリアを野放しにするのは危険だ。僕たちも追いかけるぞ。 |
| カーリャ・N | お待ち下さい。メルクリアの追跡は引き続き私に任せて頂けませんか ? |
| アトワイト | ネヴァンさん。メルクリアを尾行していたのね。 |
| カーリャ・N | はい。彼女が皆様に危害を加えるようなことがあれば出て来ざるを得ませんでしたが……。 |
| ディムロス | 結果的に、我々は彼女に助けられたという訳か。 |
| アトワイト | リオンさん。ネヴァンさんの言う通りメルクリアの追跡は彼女に任せましょう。私たちもさっきの戦いで、かなり疲弊しているわ。 |
| リオン | ……ネヴァン、何かあったらすぐに連絡しろ。僕たちも動けるように待機しておく。 |
| カーリャ・N | ありがとうございます。では、皆様もお気をつけて。 |
| イクス | ——よし ! 各大陸とのリンクは全部切れたぞ ! |
| ミリーナ | イクス、すぐに私たちも始めましょう ! |
| イクス | ああ、フィルが書き換えた魔鏡陣を作動してビフレストの具現化を止めるっ ! |
| コーキス | マスター、頼んだぜ ! |
| イクス | ————いくぞ ! ! |
| カーリャ | な、なんですか ! ?急に目の前が真っ白になりましたよっ ! ! |
| ミリーナ | これは……光がオーデンセ中を包み込んでいるんだわ ! |
| コーキス | マスター ! ! ミリーナ様 ! !くそっ、前が……見えない…… ! ! |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| コーキス | マスター ! 大丈夫か ! ?身体とかどこか痛かったりしないか ! ? |
| イクス | ……大丈夫、俺は何ともないよ。それに、ビフレストの具現化も止まったみたいだ。 |
| カーリャ | ということは、無事成功したんですねっ ! |
| コーキス | やったな、マスター ! |
| イクス | ……ただ、魔鏡陣を作動させたことでキラル分子の供給がなくなったから—— |
| カーリャ | はわわわわわっ ! !凄い揺れです~~ ! ! |
| コーキス | どうなってるんだ、マスター ! |
| イクス | 島が消滅しようとしてるんだ !すぐに転送ゲートを使ってアジトに戻るぞ ! |
| Character | 12話【13-14 ファンダリア領 街道4】 |
| 救世軍兵士 | マークさん、帝国軍の兵が撤退しているとの報告が上がってきました。 |
| マーク | ローエンの作戦通りだな。お前たちもよくやった。すぐに引き上げる準備をしておけ。 |
| 救世軍兵士 | 了解です ! |
| マーク | はぁ。今度こそマジでヤバイかと思ったが何とかなるもんだな。 |
| フィリップ | お疲れ様、マーク。見事だったよ。 |
| マーク | いや、指示を出していたのは殆どローエンだよ。あの爺さん、普段は飄々としてる癖してなかなかの策士だぜ。 |
| フィリップ | ヴィクトルが言うには、元の世界では「指揮者(コンダクター)イルベルト」として名を馳せていたそうだよ。 |
| マーク | 人は見かけに寄らねえってことか。それで、イクスたちの方はどうなったんだ ? |
| フィリップ | 無事、ビフレストの具現化は阻止されて具現化したオーデンセも消失した。 |
| フィリップ | キラル分子のリンクを切ったことでオーゼンセは存在を保てなくなったんだと思う。 |
| マーク | そうか……。 |
| マーク | それにしてもあの島のおかげで残酷な真実ってやつを知っちまったな。 |
| フィリップ | ……あの島は、僕が目を背けていた現実だったんだよ。本当はもっと早く向き合わなきゃいけなかったんだ。 |
| フィリップ | イクスを刺したあの日から僕はオーデンセへの里帰りもやめてしまったしイクスからの手紙も読もうとはしなかった。 |
| フィリップ | そうして逃げ続けて、果ての果てまで来てしまった。僕にはもう逃げるところがない。全て壊してしまったからね。 |
| フィリップ | だったら、いい加減向き合うしかない。現実と。 |
| マーク | ……命の期限と競争だな。 |
| フィリップ | ……ああ、それまでに、必ず決着は付けるよ。今度こそ世界の為、イクスやミリーナの為それから……僕自身の為にも。 |
| マーク | 自分の為にと言えるようになったならちったあマシだな。 |
| フィリップ | マーク。僕はね、いつだって本当は自分自身のためだけにしか動いてなかったんだよ。 |
| マーク | 誰だってそんなもんだろ。ただ、そうだと認められずに言い訳ばかりするやつは駄目だってだけさ。 |
| フィリップ | そうだね……。 |
| マーク | んじゃ、まずは目先の問題から片付けるとしようぜ。バルバトスの奴はどうする ?放っておいたらまた暴れだすぜ、あいつ。 |
| フィリップ | そうだね、厄介者を引き取るのは厄介者が一番だろう。 |
| マーク | はあ……。厄介者、ねえ。まあ、否定はしねぇが……。 |
| フィリップ | バルバトスに付いていったみんなのことも本人たちの希望を聞かずに地上軍へ追いやった僕の責任だ。 |
| フィリップ | 傷つけないように守るつもりがもっとひどい傷をつけることになってしまった。 |
| フィリップ | 僕は昔からそうなんだ。守るつもりで傷つけて、守るつもりで壊してしまう。もうこれ以上、彼らを傷つけるわけにはいかない。 |
| フィリップ | バルバトスがこちらにつけば彼に付いていった救世軍も戻ってきてくれるんじゃないかな ? |
| マーク | ……言ってることはさぞ立派だが説得するのは俺なんだよなあ、ったく。 |
| 救世軍兵士 | 失礼します ! マークさん、バルバトスの下で働いていた兵たちのことですが、想像以上に負傷者が多く、現場も混乱しているようです。 |
| マーク | はいはい、わかったわかった。すぐに行くから、まずは重症の奴から手当てしろと伝えておけ。そのあとのことは直接指示を出す。 |
| フィリップ | マーク。きみは先に救世軍のみんなのところへ行ってくれ。僕は先にバルバトスが向かったという場所まで行っておく。 |
| マーク | おいおい、だからバルバトスの説得は俺が……。 |
| フィリップ | いや、事情を話さないといけないのはバルバトスだけじゃない。 |
| フィリップ | 彼の処遇については鏡映点の人たちにも納得してもらうつもりさ。 |
| マーク | ……わかったよ。その代わり、バルバトスと話すときは絶対一人になるなよ。 |
| フィリップ | そこまで無茶をするつもりはないよ。マーク、救世軍のことは頼んだよ。出来るだけ彼らのことは優しく迎えてやってくれ。 |
| マーク | ……優しくねぇ。悪いな、フィル。あいつらにはキツめのお灸を据えてやるつもりだよ。 |
| Character | 13話【13-15 イオン】 |
| リオン | さて、僕たちも戻るぞ。ビフレストの具現化を阻止した以上もうここに用はない。 |
| スタン | リオン、遅くなったけど、さっきはありがとう。リオンがいなきゃ、ルーティもアトワイトさんも助けれられなかったかもしれない。 |
| リオン | ……ふん、僕はただ借りを作らせたままにしておくのが嫌だっただけさ。 |
| ルーティ | ちょ、あんた ! ?まさかさっきので、あたしがあんたを逃がしたのをチャラにしようって訳じゃないわよね ? |
| リオン | そのつもりだが ? |
| ルーティ | 何言ってんのよ ! こっちは人質にまでなったのよ !すこ~しいいところで出てきたからってそれで済むと思ったら——。 |
| リオン | ……それで、この男はどうするつもりなんだ ? |
| ルーティ | こら ! 無視すんじゃないわよ ! |
| アトワイト | ルーティさん……悪いけれどその話は後にしましょう……。 |
| ソーディアン・アトワイト | そうね、人間の私が言う通りよルーティ。今はバルバトスの処遇を決めるほうが先よ。 |
| ルーティ | うっ。わ、わかったわよ……。 |
| スタン | そっか、さすがのルーティも二人のアトワイトさんの意見ならちゃんと言うこと聞くんだな。 |
| ルーティ | スタン、あんた今なんか言った ? |
| スタン | い、いや ! 何にも言ってないって !あはは……。 |
| ソーディアン・ディムロス | スタン……お前はルーティ一人でも充分そうだな。 |
| アトワイト | ディムロス、あなたの意見を聞かせて頂戴。 |
| ディムロス | バルバトス……やはりあいつを自由にしておくのは危険だ。今ここで捕らえておかねばなるまい。 |
| フィリップ | ——待ってくれ。彼のことは僕たちに任せて欲しい。 |
| ディムロス | フィリップ ! ? |
| フィリップ | 君たちは先に行ってくれ。帝国側が動き始めた。 |
| ディムロス | だがお前たちだけでバルバトスをとめられるのか ? |
| フィリップ | 僕では無理かも知れないね。だが、君たちよりは僕らの方が奴に近い。——色々な意味で、ね。 |
| フィリップ | それにマークがいる。マークを信じて欲しい。 |
| ディムロス | ……いいだろう。では、奴の処遇はお前に委ねる。みんな、それでいいな ? |
| スタン | ああ、ディムロスが決めたことなら誰も文句は言わないさ。 |
| フィリップ | ありがとう。必ず、悪い方向へ事が進まないようにしてみせるよ。 |
| マーク | あいつらがいないってことは上手く説得できたみたいだな。 |
| フィリップ | ああ。だけど、肝心のバルバトスはまだ目を覚ましていない。 |
| マーク | 丁度いい、フィル。お前は戻ってろ。あとは俺が何とかする。元々、そういう手筈だっただろ ? |
| フィリップ | マーク……だけど……。 |
| マーク | いいから、お前は戻ってバルバトスに付いていった連中に何か言ってやってくれ。あいつら、俺の顔を見た途端、謝るばかりで話にすらならねえんだわ。 |
| フィリップ | ……わかった。それじゃあ、後は頼んだよ、マーク。 |
| マーク | はいよ。このマーク様に任せときな。 |
| マーク | さて、大見得切ったのはいいがどうしたもんかねえ。まぁ、暫くは様子見でもさせてもらうか。 |
| バルバトス | ——ぐううっ……。メルクリアめ……。小癪な真似をしおって……。 |
| バルバトス | 奴らはどこだ ?まさか、俺を置いて立ち去ったとでもいうのか……。 |
| バルバトス | ——いや、命知らずの馬鹿がまだ残っているようだな。 |
| バルバトス | こそこそ隠れてんじゃねぇ。出てきやがれ。 |
| マーク | 久しぶりだな。 |
| バルバトス | マーク・グランプ……か。 |
| マーク | ディムロスじゃなくて悪かったな。けど名前を覚えてもらえてたのは光栄だ。 |
| バルバトス | 貴様の差し金か。 |
| マーク | そんなところだ。 |
| バルバトス | ふんっ。 |
| マーク | おっと。どこに行く気だ ? |
| バルバトス | わかっているだろう。 |
| マーク | メルクリアのところだよな。だったらやめとけ。 |
| バルバトス | ……邪魔する気か ?ならば—— |
| マーク | 殺すってか。いいぜ、好きにしろよ。お前なら俺を殺すくらい楽勝だろ。 |
| マーク | だが、『事情』が変わったと言ったら ? |
| バルバトス | なにっ。 |
| マーク | バルバトス。俺たちと来いよ。 |
| バルバトス | 雑魚と群れるつもりはない。それに—— |
| バルバトス | 俺は貴様の手下であってもためらいなく殺すぜ ?今までも、これからも。 |
| マーク | あんたが俺のどうしても奪われたくない物に手をかけるってんなら、その時は全力で阻止するさ。 |
| マーク | あんた同様『どんな手』を使ってでもな。それに—— |
| マーク | あいつらはお前を慕って救世軍を辞め自分の意思でお前についていった。ただそれだけのことだ。 |
| バルバトス | あんなゴミくず共に意志があったとは驚きだ。 |
| マーク | あんたらしい、クソみたいな言い草だな。 |
| マーク | だが、あいつらがなぜディムロスじゃなくお前を選んだのかわかったぜ。 |
| バルバトス | なんだと ? |
| マーク | ——あんた、気づいてたんだろ ?あいつらは全員、怪我や病気でまともに戦える奴らじゃなかった。 |
| マーク | 本当は戦いたくても腹の中に恨み辛みを押し込めてずっと生きてきたんだ。 |
| マーク | だが、理屈も現実も全部受け止めて自分の醜い気持ちも自分のものとして逆境にも挑んでいくお前に希望を見た。 |
| バルバトス | そして犬死にしていったと。欺瞞に満ちた美談には反吐がでる。あいつらは俺に利用されただけだ。 |
| マーク | それでもだ。きっとお前は世界いや自分自身すら救うことはできない奴だ。けどな—— |
| マーク | あんたは間違いなくあいつらを救った。 |
| マーク | 手段を選ばないという手段を選ぶこと。是非はともかく、中々できることじゃない。 |
| マーク | 実際、俺もそこまで割り切るのは難しいだろうな。 |
| マーク | だから、死んでいったあいつらにとってはディムロスよりもあんたこそが英雄なんだ。 |
| マーク | ……俺から見てもその傲慢さはある意味で英雄的かもな。 |
| バルバトス | ……英雄だと ? |
| マーク | ああ。 |
| バルバトス | ふっ、ふははははっ ! !その言葉、よくぞ俺に吐いたわ ! ! |
| マーク | さて、そろそろ返事を聞かせてくれよ。 |
| バルバトス | メルクリアは俺が殺す。そのために救世軍を利用させてもらうぜ。 |
| マーク | 十分だ。 |
| バルバトス | メルクリア、待っていろよ。そしてディムロス……貴様も。 |
| Character | 14話【13-15 イオン】 |
| イクス | 俺たちは無事帰ってこられたけど他の人たちは、もうアジトに戻ってきてるのかな ? |
| ミリーナ | そうね、先に魔鏡通信で連絡を取り合ったほうがいいかもしれないわね。 |
| イクス | あっ、待ってくれ。丁度ジェイドさんから連絡だ。 |
| カーリャ | げっ、ジェイドさまからですか……。カーリャは近くにいないとお伝えください……。 |
| コーキス | パイセン……ジェイド様に対する反応が他の鏡映点の人たちと違いすぎねーか ? |
| ミリーナ | 大丈夫よ、カーリャ。いくらジェイドさんでも、魔鏡通信越しで酷いことなんてできっこないわ。 |
| ジェイド | おや~、でしたら試してみましょうか ?面白い実験になりそうです♪ |
| カーリャ | ギャー ! ! でたー ! ! |
| ミリーナ | ジェイドさん !これ以上カーリャを怖がらせないでください !私、本気で怒りますよ ! |
| ジェイド | これは失礼。その様子だとビフレストの具現化は無事止められたようですね。それで、今はどちらにいますか ? |
| イクス | えっと、もう浮遊島に戻って来ていますけど……。 |
| ジェイド | それは結構。でしたら、そのままアジトの医務室に来てください。イオン様があなたたちにお話したいことがあるそうです。 |
| ミリーナ | イオンさん ! ? 帝国から戻ってきたのね。 |
| イクス | わかりました、すぐに向かいます。 |
| イオン | ——これが、ローレライが僕に伝えてきたことの全てです。 |
| イクス | 【バロールの眼】……、一体何のことなんだ……。ミリーナは聞いたことがあるか ? |
| ミリーナ | ……いいえ。私も今初めて聞いたわ。 |
| イクス | そうか……けど、眼と言えばコーキスが使う【魔眼】が関係してるのかもしれない。それに、何だか嫌な予感がするんだ。 |
| ジェイド | ローレライは、この【バロールの眼】が危険なものだと言ったそうです。詳しい情報を集めておいたほうがいいでしょうね。 |
| コーキス | (もしかして、俺のこの【魔眼】のせいでマスターたちが危険な目に遭うんじゃ……。いや、そんなことは絶対に……) |
| ジェイド | しかし、今は一旦置いておきましょう。少ない情報だけで憶測を立てるのは危険です。 |
| ジェイド | イオン様には引き続きローレライとの接触を行ってもらいます。 |
| ジェイド | 次に、そのイオン様のことについてお話があります。 |
| ハロルド | その点については私から話すわ。あんたたちも知ってると思うけどこの世界には三人のイオンが存在してる。 |
| ミリーナ | 今、目の前にいるイオンさんと私たちが保護している【リベラ】そして、【被験者】と呼ばれているイオンね。 |
| ハロルド | その通り。そして、私が助けられた戦士の館には『イオンの死体』があった……。 |
| ハロルド | ——これ以上は、何も言わなくてもわかるわね ? |
| イクス | ……死んだのは『被験者のイオン』さんなんですね。 |
| イオン | ……そういうことになりますね。 |
| ジェイド | 念のためにお聞きしますが他のレプリカを製作、もしくは新たに具現化したという可能性はありませんか ? |
| ハロルド | ありえないわね。帝国を出るときに被験者のデータはきれいサッパリ消去しておいたからもう一度レプリカを作るには時間が足りないわ。 |
| ハロルド | もう一つ、具現化の線だけど、こっちも無理ね。異世界からの再度の具現化は、過去からの具現化以上に厳しい制約があるみたいだから。 |
| ハロルド | 帝国は既にローレライを確保してる。他のレプリカイオンを具現化することに意味はない。だから新たに具現化をしたとは考えにくいわね。 |
| ハロルド | 以上のことから、あれが被験者のイオンでない可能性は限りなくゼロに近いってこと。この天才科学者の名に懸けてね。 |
| イオン | 僕が具現化されたのも、あくまでフォミクリーというレプリカ技術をこの異世界で完成させるための実験だったに過ぎません。 |
| ミリーナ | フォミクリー……。まるで鏡士の具現化みたい……。 |
| ジェイド | ………………。 |
| イクス | ごめん……イオン。俺たちのせいで、こんなことに巻き込まれて……。 |
| イオン | いいえ、あなたたちが謝ることではありません。ですが、これ以上帝国軍の思い通りにさせない為に協力していただけませんか ? |
| イオン | ――いえ、違いますね。僕を皆さんの仲間に加えて下さい。僕も協力したいんです。 |
| ジェイド | イオン様。あなたはローレライと接触できる。それで十分役に立っていますし協力してくれていますよ。 |
| イオン | ジェイド。僕は元の世界の僕より少しだけ……ほんの少しだけ体力があります。より導師としての力を発揮できる。 |
| イオン | それに……僕、何となく分かっているんです。前にアニスたちに会った時に気付いてしまいました。僕はみんなと具現化された時間が違う。それは―― |
| ジェイド | ――イオン様。 |
| イオン | 止めないで下さい、ジェイド。 |
| イオン | 僕が初めてあなたと会った時もあなたは僕を諫めることはあっても頭ごなしに言うことを聞かせようとはしなかった。 |
| イオン | ここでなら、僕のやりたかったことができる。そして、元の世界でやり残したこともできると思うんです。 |
| イオン | 無理はしません。約束します。みんなより弱いことは分かっていますから。 |
| ジェイド | ……いいえ。あなたは十分に強いですよ。初めて出会った時からあなたは唯一無二の導師でした。 |
| ルーク | おいっ ! イオンがいるって本当なのか ! ? |
| ティア | 導師イオン ! 良かった、ご無事だったのですね……。 |
| ナタリア | 何やら大変な目に遭ったとお聞きしたのですがお元気そうで安心しましたわ。 |
| ミュウ | イオン様が来てくれてボクも嬉しいですのっ ! |
| ジェイド | やれやれ。皆さん、ここは医務室ですよ。お静かに願います。 |
| ガイ | まあまあ、固いこと言うなよ。こっちは一仕事終えて急いで駆けつけて来たんだぜ。なあ、アニス ? |
| アニス | えっ ! ? あ、えっと……。 |
| イオン | ……アニス ? |
| アニス | …………てへっ !いやぁ~、もう ! イオン様ってば無茶しすぎですよ !すっごく心配したんですからね ! ? |
| アニス | あっ、いっけな~い !アニスちゃん大事な用事を思い出しちゃった !それじゃあイオン様、今はゆっくり休んでください~。 |
| ルーク | はぁ ! ? おいっ、どこ行くんだよ、アニス ! ! |
| イオン | 待ってください、アニス ! |
| アニス | はうわっ ! な、何ですか ? |
| イオン | ……アニス、僕の傍に来てくれませんか ? |
| アニス | ど、どうしたんですか急に……。 |
| イオン | お願いします。さあ、アニス、こちらへ。 |
| アニス | ……もう、イオン様ってば本当にどうしちゃったんですか ? |
| アニス | あっ ! わかっちゃいましたよ~。さてはさっきまで大佐に虐められてましたね ?もう、駄目ですよ大佐、イオン様を虐めちゃ——。 |
| イオン | アニス……泣かないでください。 |
| アニス | ……えっ ? や、やだなぁ、イオン様。私、泣いてなんかいませんよ ? |
| イオン | でも、涙が……。 |
| アニス | ……えっ ? あれ ? ホントだ……。なんで……私……。 |
| イオン | 僕のせいで、アニスが悲しい思いをしているのですね。 |
| アニス | ち、違いますっ ! !イオン様は、何も悪くありませんっ…… ! !悪いのは、私……なんですっ ! ! |
| イオン | ……アニス。僕から一つ、あなたにお願いがあります。聞いてくれますか ? |
| アニス | お願い…… ? |
| イオン | はい、僕からの大切なお願いです。 |
| イオン | アニス、僕の導師守護役はアニスだけです。 |
| アニス | ! ? イオン……様 ! ! |
| イオン | また、僕の傍にいてくれますか ? |
| アニス | ……イオン……様…… !イオン様ぁぁぁぁ ! ! |
| イオン | アニス、この世界でもよろしくお願いしますね。……僕の一番、大切な—— |
| | to be continued |