| Character | 1話【15-1 集合的無意識1】 |
| メルクリア | ここは……どこじゃ…… ? |
| メルクリア | そこで倒れているのは……兄上様か ! ? |
| メルクリア | 兄上様 ! 兄上様 ! どうなさったのです ! ? |
| ? ? ? | ……誰…… ? |
| メルクリア | わらわじゃ ! メルクリアじゃ ! 兄上様 ! |
| ? ? ? | ……メルクリア ?島にそんな子はいなかった筈だけど。 |
| ? ? ? | え ? 何だこの格好……。随分ビフレスト風だな。 |
| ? ? ? | 君のせいか……。君は『今の俺の身体』を知ってるんだな ?その記憶が俺をこんな格好にしているのか。 |
| メルクリア | な、何を言っているのじゃ……。 |
| ? ? ? | あー、悪い悪い。わからないよな。こんな話をしても。そういえば……君もビフレスト風の服を着てるけどビフレストの人 ? |
| メルクリア | ……兄上様、ではないのか ? |
| イクス ? | 俺はイクス。イクス・ネーヴェ。 |
| メルクリア | セールンドの鏡士 ! ? |
| イクス ? | よく知ってるな。 |
| イクス ? | そうか……。君がビフレストの人ならやっぱりビフレスト側は俺が鏡士になったことに気付いていたんだな。 |
| メルクリア | イクス・ネーヴェ…… ? わらわのことを忘れたのか ?いや、そもそもここはどこじゃ ! ? |
| イクス ? | ここは【アニマのるつぼ】。集合的無意識の底だよ。世界中の人々の心が繋がる場所の最下層だ。俺の姿に気付いたと言うことは……君も鏡士なのかな。 |
| メルクリア | 正確にはわらわはまだ鏡士ではない。力は使えるがな。 |
| メルクリア | しかし……【アニマのるつぼ】 ?セシ……シドニーからはそんなもの聞いたことがなかったが……。 |
| イクス ? | そうだろうな。俺がそう名付けたんだ。ここは死んだ人間のアニマが、消滅しきれず行き場をなくして閉じ込められている場所、だと思う。 |
| イクス ? | メルクリア、だったな。君みたいな小さな子までこんなところに来るなんて外ではまだ戦争が続いているのか ? |
| メルクリア | 戦争…… ? 死んだ人間のアニマ……。まさか……そなた、一人目のイクス・ネーヴェか ! ? |
| イクス ? | 一人目 ? それは一体どういう意味だ ? |
| イクス | ――それは『こういう』意味です。イクス……さん。初めまして。俺は三番目に具現化されたあなたです。 |
| イクス ? | ! ? |
| メルクリア | そちらがわらわの知るイクスであったか……。しかしこれはどういうことじゃ…… ? |
| イクス1st | 同じ顔が二人……。ややこしいな。まあ、その話は一旦置いておこう。二人にはこの場所のことを説明した方がよさそうだ。 |
| イクス | はい、お願いします。俺もどうしてこんなところにいるのか……。 |
| イクス | 仲間と一緒に、セールンド山のアイギス制御施設へ向かって、そこで気を失って……。俺の知らない俺――多分あなたの記憶を一瞬垣間見て……。 |
| イクス1st | 混乱してるみたいだな……。ここは生き物が死んだ後、そのアニマが消滅するまでの待機場所のようなところだ。 |
| イクス1st | 一般的には死ぬこととアニマの消滅は同義なんだが何らかの原因で、死んだのにアニムス――つまり肉体は死ななかったというケースがある。 |
| イクス1st | そういう場合は、こうして【アニマのるつぼ】で肉体の死を待つことになる……んだと思う。 |
| イクス1st | ということは、メルクリアも三番目だっていう君も死んだか、死にかけていると考えられる。 |
| 二人 | ! ? |
| イクス1st | 何があったんだ ? 外で何が起きている ?君たちはどうしてここに来てしまったんだ ? |
| イクス | あの……少し長い話になりますが聞いてもらえますか ? |
| イクス1st | もちろん。どうせ時間だけは無限にあるからな。じっくり聞かせてくれ。君たちのことをさ。 |
| イクス1st | ………………。 |
| イクス1st | ……そうか。ミリーナとフィルが……。二人とも変なところで真面目だったからな。それにしたって、止める奴がいないとあの二人は……。 |
| イクス1st | ――イクス……って、自分に呼びかけてるみたいで変な感じだな。まあ、とにかくそっちのイクスの話は一旦後回しにしよう。長くなりそうだ。 |
| イクス1st | まずはメルクリアの方からだ。 |
| メルクリア | わ、わらわ ? わらわがなんじゃというのだ ? |
| イクス1st | メルクリア、君は今とても危険な状況だ。君のアニマの損傷が激しいのは鏡精ごと心を潰されたせいだろう。 |
| イクス1st | このままだとメルクリアは植物状態になってしまう。そうなると後は衰弱して、その内本当に死んでしまう。 |
| メルクリア | わらわが……死ぬ…… ? |
| イクス | スピルリンクという、心を具現化して内部に入る手段があります。それで心を内側から修復することはできませんか ? |
| イクス1st | 心を具現化して中に入る……。それがどんなものなのか、俺は実際に見ていないから断言はできないけど、恐らく無理なんじゃないかな。 |
| イクス1st | メルクリアの心は具現化しても崩壊した状態だと思う。例えるなら地震で潰れた家のようなもんだ。中に入るのは難しい。 |
| メルクリア | ……知らなかったこととはいえわらわは鏡精モリアンを見殺しにしたも同然じゃ。その罰なのかも知れぬな。 |
| イクス1st | いやいや、そいつは違うな。誰が罰を与えたって言うんだ ? |
| イクス1st | 仮にそれが女神ダーナの与えた罰だとしても筋違いにも程があるだろ。物わかりがよすぎるのもどうかと思うぞ。 |
| イクス | そうだよ。悪いのはデミトリアス陛下とグラスティンだろ ? |
| メルクリア | ……同じ顔で立て続けにうるさいわ。 |
| イクス1st | はは、そりゃそうだ。悪かった。 |
| イクス | けど、何かメルクリアを助ける方法はないんでしょうか……。 |
| メルクリア | き、貴様に助けられる謂われはない !そも、セールンドの鏡士はこの世を滅ぼす鏡士じゃぞ ! |
| イクス1st | ………………。メルクリアの傍にはビフレストの鏡士がいるんだったよな。 |
| イクス1st | だったら……多分、俺を殺した時と同じ方法を使えば何とかなるんじゃないかと思う。 |
| メルクリア | 離魂術か ? 何故それでわらわが助かるというのじゃ。 |
| イクス1st | 離魂術っていうのか。名前は知らなかったけど俺の身体がいつまでも朽ちないのはその術のせいだと思う。 |
| イクス1st | カレイドスコープもそうだけどアニマを切り離せるなら元に戻す手段もある筈だ。 |
| メルクリア | ま、まことか ! ? |
| イクス1st | ただ、その為には、メルクリアはこの【アニマのるつぼ】に居続けては駄目だ。ここは死者のアニマが消滅を待つだけの場所だからな。 |
| イクス1st | 恐らく君のアニマは、俺の身体の近くにいてその影響を受けてここに辿り着いてしまったんだ。誰かが君を迎えに来てくれれば……。 |
| メルクリア | こんな場所に誰が迎えに来てくれるというのじゃ……。 |
| イクス1st | 二人の話を聞く限りだと、心当たりはあるよ。メルクリアの兄さんは俺の身体の中にいるから難しいか……。 |
| イクス1st | そうだな……。メルクリアの兄さんの部下たちならこのるつぼにアニマが眠っているかも知れない。 |
| イクス | バルドさんとかチーグルさんとか ? |
| メルクリア | ! ? |
| Character | 2話【15-2 アジト1】 |
| ジョニー | クレア、マリアン。通信番、交代するぜ。そっちはそろそろ食事の準備があるだろ ? |
| クレア | ジョニーさん ! |
| マリアン | お体は大丈夫ですか ? |
| ジョニー | ああ。前線に立てないから、後方支援ぐらいはな。まったく、なんで俺はリビングドールから解放された他の連中より、治りが遅いんだろうな。 |
| アルヴィン | ――よう、通信番の交代に来たぜっと……あれ、今日の当番は俺とエミルじゃなかったか ? |
| ジョニー | ああ、エミルはイクスたちと外に出ていっちまってな。暇を持て余してるジョニー様が代わりを買って出たんだ。 |
| アルヴィン | ……イクスの奴、また外に出たのか ?大丈夫なのかね。色々と。 |
| クレア | それが、色々とあって……。今、申し送りをしますね。 |
| パスカル | ねえねえ ! なんかこっちの索敵装置に真っ黒いのがどっぱーんって湧いてきてるよ ! |
| マリアン | 真っ黒いの……ですか ? |
| ヒューバート | それじゃあ伝わりませんよ、パスカルさん ! |
| ヒューバート | 浮遊島索敵カメラの三番と四番を確認して下さい。まだかなり小さいですが、何かがセールンド方面から発生して、こちらに向かっています ! |
| ジョニー | 何だ…… ? この黒い塊は…… ? 虫の集団か ? |
| アルヴィン | 虫だとしたらかなりの大群だぞ ?しかも海から発生するなんてのは……。 |
| ヒューバート | 何にしても、あれがこの浮遊島を目指していることは間違いありません。もし危険なものなら迎え撃つ準備が必要です。 |
| アルヴィン | クレア、マリアン。アジト全体に緊急警報を発令してくれ。俺は戦えないチビ共が外をうろついてないか調べてくる。 |
| ジョニー | 俺も行こう。ヒューバートの方は、今アジトに残ってる連中で迎撃準備を進めてくれ ! |
| アミィ | え ! ? 何 ! ? |
| エリーゼ | 警報……。アミィ、建物の中に避難しましょう。 |
| アミィ | う、うん。 |
| ルーク | 警報 ! ? これって、なんかやべー時になる奴だよな。 |
| ティア | ルーク、アッシュたちへの指示は任せるわ。私は通信室に連絡をとってみるから。 |
| ルーク | ああ、わかった。アッシュ ! 聞こえるか ! ? |
| アッシュ | がなり立てるな ! 聞こえている。何があった ? |
| アステル | 魔鏡通信機がなくても連絡が取れるなんて便利だなあ ! |
| ディスト | はーっはっはっはっ !この私が、故郷にいた頃に連絡が取れるようにしてあげたのですよ。この私が ! |
| アステル | 完全同位体……でしたっけ。どうしてそんなことができるんだろう。 |
| ディスト | この世界と我々の世界では、完全同位体同士が連絡を取り合える仕組みに違いがあります。聞きたいですか ? |
| アステル | はい ! 薔薇のディスト博士 ! |
| ディスト | 仕方がありませんねぇ……。これは第七音素の存在の有無が―― |
| アッシュ | ――ええい、黙れ、お前たち ! うるさくてレ……ルークの声が聞こえないだろうが ! |
| 二人 | ! ! |
| アッシュ | もう一度言え、ルーク。黒い虫 ? それがセールンド方面から発生してアジトに向かっているのか ? |
| 二人 | ! ! |
| ディスト | 黒い虫……。まさか、死鏡精ですか ? |
| ジョニー | この辺りだって話だったよな。エリーゼとアミィが遊んでたって場所は……。 |
| アルヴィン | くそっ ! ……二人ともどこに行っちまったんだ。 |
| アミィ | だ……誰か ! ! 助けて ! ! |
| ジョニー | アミィの声だ ! |
| 死鏡精A | カガミシ……カガミシ……。 |
| アミィ | 私たちは鏡士じゃないよ……。 |
| エリーゼ | 大丈夫ですよ、アミィ。わたしがあなたを守りますから ! |
| アミィ | エリーゼ……。 |
| アルヴィン | 俺も協力するぜ、お姫様。 |
| ティポ | アルヴィン ! ナイスタイミング ! |
| アルヴィン | ジョニー、アミィを頼む ! |
| エリーゼ | アルヴィン、やりましょう ! |
| Character | 3話【15-5 アジト4】 |
| アルヴィン | 倒しても倒しても湧いてくるな ! ? |
| エリーゼ | キリがないです……。 |
| ティポ | 流石に疲れて来ちゃったよー ! |
| ジョニー | 二人とも、ここは任せていいか ?このまま手をこまねいてるとこの黒い虫どもが増える一方だ。 |
| ジョニー | 俺はアミィを建物の中に避難させてそのまま助けを呼んでこようかと思うんだが。 |
| アルヴィン | ああ、そうしてくれ ! 監視装置の映像から考えると今来てるのは虫共の先遣隊みたいなもんだ。本隊が来る前に、こっちの戦力を整えないとな。 |
| ジョニー | よし、悪いが後は頼む。 |
| ジョニー | アミィ、走れるか ?チェスターのところへ逃げるぞ ! |
| アミィ | はい、ジョニーさん ! |
| アッシュ | ルークの話だと、この辺りにアジトに繋がる転送ゲートがある筈なんだが……。 |
| ディスト | ――おや、アッシュ。あなたの左手側の空間妙に歪んでいるように見えますが。 |
| アッシュ | ……これか。あったぞ、ルーク。転送ゲートだ。 |
| ルーク | よし、今、ゲートのロックを解除するよ。えーっと……これでいい筈……。 |
| アッシュ | 開いたか ? |
| ルーク | うん、開いた ! |
| アッシュ | おい、鼻たれの死神。 |
| ディスト | な ! ?あなたに鼻たれなどと言われる筋合いはありませんよ ! ? |
| アッシュ | いいからお前から行け ! ! |
| アステル | 蹴った ! ? |
| ディスト | ギャ―――― ! ? |
| アステル | あの、よかったんですか、アッシュさん ! ? |
| アッシュ | これくらいでくたばるような繊細な奴じゃないだろう。 |
| ルーク | ――うわ ! ? アッシュ ! ?なんでお前じゃなくてディストが転送ゲートから出てきたんだよ ! ? |
| ルーク | 帝国から脱走するのに、こいつも連れてきたのか ! ?ジェイドに殺されるぞ ! ? |
| アッシュ | 行きがかり上、仕方がなかったんだ。これから俺とアステルもそっちに行く ! |
| ジョニー | アミィ、あと少しだ。 |
| アミィ | はい ! |
| 死鏡精 | カガミシ……カガミシ……。 |
| アミィ | きゃあ ! ? |
| ジョニー | 囲まれたか ! |
| ジョニー | いいか、アミィ。俺が敵の真ん中に突破口を作る。俺が合図したら、アミィは振り返らずに走り抜けて建物の中に逃げ込むんだ。 |
| アミィ | でも、ジョニーさんは ?ジョニーさん、まだ身体が治っていないってジュードさんが……。 |
| ジョニー | 本調子じゃなくたって、こんな虫の化け物ぐらいは余裕で片付けられるさ。行くぞ ! |
| ジョニー | ソニックレイブ ! |
| 死鏡精 | ウアァァッ ! ? |
| ジョニー | 今だ ! アミィ ! |
| アミィ | は、はいっ ! |
| ジョニー | よし、いいぞ。そのまま逃げるんだ ! |
| 死鏡精 | ……シネ……セカイゴト……シネ…… ! |
| ジョニー | ……おいおい、倒したそばから増えるってのは勘弁してくれよ。まさか本隊とやらが到着しちまったのか…… ? |
| ジョニー | 仕方ねぇな !ビートヘヴン ! |
| 死鏡精 | アアァァッ…… ! |
| ジョニー | ……く…… ! |
| ジョニー | (まずいな……。だんだん視界がぼやけて来やがった。道化のジョニーもここまでか…… ? ) |
| ジョニー | ――いいや、最後の最後まで足掻いてみせるさ。 |
| ジョニー | ミ・ラ・ク・ル~ぅわあぁぁぁぁぁおぅ ! |
| ルーク | アッシュ ! おかえり !みんな、お前のこと心配してたんだぞ。無事に戻ってこれて良かった ! |
| アッシュ | フン……。貴様に心配されるとは俺も落ちぶれたな。 |
| ルーク | 口が減らないのは変わってないなー……。 |
| アッシュ | 何 ! ? |
| ティア | アッシュ、今は我慢して。アジトが大変なの。ええっと、そちらは―― |
| アステル | アステルです。ここにお邪魔するのは二度目です ! |
| ティア | ――ああ、あなたが。話は聞いているわ。その……大佐――ジェイド大佐から。 |
| ティア | どうしてあなたたち三人が一緒にいるのか聞きたいところだけれど今ここは敵襲を受けていて……。 |
| アステル | もしかして、死鏡精ですか ? |
| ティア | 死鏡精 ! ?あれが……ミリーナたちの言っていた……。 |
| ティア | いえ、それは実際に見てもらった方がいいかもしれないわね。アジトのセールンド側から見たことのない敵が襲ってきているの。 |
| ルーク | 敵襲を受けてるのはこっちだ ! 一緒に来てくれ ! |
| ディスト | ちょ、ちょっと待ちなさい !アッシュやレイカー博士はともかく、何故私があなたたちに協力しなければならないのですか。 |
| ルーク | 一緒に来ればジェイドも喜ぶんじゃねーかな。ディストに会いたがってたし。 |
| ディスト | ! ? |
| ティア | ルーク ! ? |
| ルーク | ティア。言いたいことはわかる。けど、ジェイドに押しつけちまえば後はどうとでもなるだろ ? |
| ティア | え、ええ……。そ、それはそうね……。 |
| ディスト | ――ふふふ、そうでしょうそうでしょう。やはりジェイドには私が必要なのですよ。やっとわかったのですね、ジェイド。 |
| ディスト | ええ、仕方ありませんね。この私のたぐいまれなる頭脳が必要だというのなら特別に力を貸してあげましょう。 |
| アッシュ | ……俺は知らんぞ。後でどうなっても。 |
| Character | 4話【15-6 集合的無意識2】 |
| イクス1st | ……さて。メルクリアに関しての俺の見解はこんなところかな。 |
| イクス1st | メルクリアはここで、るつぼの外からの声に耳を澄ませているといい。 |
| イクス1st | 絶対に自分を失うなよ。それからどんなに眠くなっても絶体に眠っちゃ駄目だ。眠ったら存在が融けて本当に死んでしまう。 |
| メルクリア | ……わかったような、わからぬような……。 |
| イクス1st | 俺も死んだ存在だからな。これ以上助けてあげられなくてごめん。 |
| メルクリア | ……べ、別にセールンドの人間に助けてもらおうなどとは思わぬ。 |
| イクス1st | はは、そうだよな。敵国だもんな。 |
| イクス1st | さて、次は三番目だって言う君の番だ。 |
| イクス1st | 多分、俺がるつぼの中でこうして自我のようなものを取り戻して話しているのは三番目だっていう君の存在の影響だと思う。 |
| イクス1st | メルクリアに声をかけられるまで俺はるつぼの中に融けていた……んだろうな。 |
| イクス | 俺はどうしてここにいるんでしょう。 |
| イクス1st | 俺の死体が何かに使われているんじゃないかな。その、メルクリアのお兄さんの身体としてだけじゃなくて……。 |
| メルクリア | ……わらわが……おぬしのアニムスを利用してオーデンセを具現化しようとしたことは関係あるか ? |
| イクス1st | ……なるほど。保存された死体の記憶を使って具現化か……。そんなことができるなんて凄いな。 |
| イクス1st | 確かにそれは関係あるかも知れない。ただ、それだけじゃない気もするけどさ。 |
| イクス1st | まあ、外で何が起きているのかはわからないけど俺のアニムスと三番目の君のアニマが一時的にキメラ結合して―― |
| イクス1st | 細かいことはいいか。限りなく似た存在同士で磁石みたいにひっついたって感じだろうな。 |
| イクス | 俺は……あなたですからね。 |
| イクス1st | 俺……にしては、控えめでしっかりしてるように見えるけど。君は『いくつの俺』を具現化されたんだ ? |
| イクス | 17歳じゃないでしょうか。 |
| イクス | フィル……フィリップさんの話だと、ゲフィオン……ミリーナさんは、初めて長期の漁に出る直前の具現化を希望したみたいです。 |
| イクス1st | それって、プロポーズの夜か ! ? |
| メルクリア | プロポーズとな ! ? |
| イクス | あ、いえ、俺にはその時の記憶はないので実際はプロポーズのタイミングより少し前の時間軸から具現化されたんだと思います。 |
| イクス | そもそも……その俺の中ではミリーナにプロポーズする程気持ちも盛り上がってなくて……。 |
| イクス1st | やめろ……やめてくれ……。自分の顔でプロポーズだの盛り上がっただの言われたくは……。 |
| イクス1st | ――うん ? 盛り上がってない ? |
| イクス | あ、さっきざっくり話しましたけど、俺は……その、過去の記憶や感情を改ざんされてるみたいで……。 |
| イクス1st | そうか……。そうだったよな。フィルの奴、手紙読んでくれなかったのかな。 |
| イクス | 手紙…… ? |
| イクス1st | ……いや、いいんだ。俺が自信過剰だったのかもな。フィルは俺のことが好きだから必ず手紙を読んでくれるって思い込んでたんだ。 |
| イクス | (す、すごい自己肯定感だな……。俺、絶対そんな風には思えないよ……。だって刺された相手だぞ ! ?) |
| イクス | その……好きだから、嫌われたことを確認したくなくて手紙を読めなかった……とか ?あ、いえ、読んでるかも知れないですけど。 |
| メルクリア | 何が書いてあるかわからぬままの方が恐ろしいではないか。ビクエも不思議な奴じゃの……。 |
| イクス | はは……。なんて言うか、二人ともすごいな。俺、あんまり自分に自信が持てない方で……。 |
| イクス | あ、いや、このままじゃいけないなって思ってはいるんです。だから努力して、自信を持てる自分になるって……。 |
| イクス1st | えー、すごいな ! ? 君、本当に俺の具現化なのか ?俺、そんなに努力家じゃないよ。見た目はそっくりだけど、やっぱり違うんだな。 |
| イクス | そう……かもしれませんね。俺はあなたの17歳までの記憶を受け継いで作られた存在で……でも過去を改ざんされていて……。 |
| イクス | どちらかというと枝分かれしたあなたの可能性の一つ……なのかも知れない。 |
| イクス1st | でも17歳の俺にしては、随分背が高いな。 |
| イクス | あ、それは、魔鏡結晶の中に閉じ込められている時に急激に成長したみたいで……。実感はないんですけど。 |
| イクス1st | その辺の理屈はよくわからないな。俺は鏡士になりたてだし……。鏡士歴で言えば、君の方が先輩だ。 |
| イクス1st | ……色々総合すると、君は理想のイクスなのかもな。 |
| イクス | ! ? |
| イクス1st | 鏡士を目指さず、漁師として生きようとした俺。俺が鏡士にならなければ――俺は死ななかったし多分戦争も起きなかった。 |
| イクス1st | いや、起きたのかも知れないけど君たちから聞いたような歴史にはならなかったんだろうな。 |
| イクス | 俺があなたの理想なんですか ! ? |
| イクス | そんな筈ない。あなたはミリーナ――ゲフィオンから愛されて、フィルに尊敬されてあなたを失いたくなかったからみんなが……。 |
| イクス1st | 俺の理想って意味じゃないよ。俺は……俺の理想は――いや、その話は置いておくか。 |
| イクス1st | 俺じゃなくて、『世界』にとっての理想だよ。俺が君みたいだったら、世界は話に聞くような絶望に陥らなかっただろうって。 |
| イクス | 俺が『世界』の理想…… ? |
| メルクリア | 世界の理想だから何じゃ。そんなこと、おぬしにとってはどうでもいいことではないか。 |
| イクス | ! ? |
| イクス1st | ああ、そうだな。確かにメルクリアの言う通りだ。誰かの理想とか、想いとかそんなもの、本当はどうでもいいもんな。 |
| イクス1st | 君だって三番目だなんて名乗る必要もない。っていうか、俺の具現化だからって俺に縛られることもないんだぜ。 |
| イクス | え ! ? けど、自分の具現化に託したい想いとかそういうのは……。 |
| イクス1st | 託されたいのか ? |
| イクス | ………………。 |
| イクス1st | ああ……でも、託したいって訳じゃないけど伝えておかなきゃって思うことはあったな。 |
| イクス | 何ですか ? |
| イクス1st | どうして俺がビフレストに殺されたのか、だよ。メルクリアはどうして俺が殺されたか聞いてるか ? |
| メルクリア | セールンドの鏡士は悪だからじゃ。 |
| イクス1st | はははは、ビフレストから見ればそうだろうな。じゃあ、どうして悪なのか知ってるか ? |
| メルクリア | そ、それは鏡精を作るからじゃ。 |
| イクス1st | どうして鏡精を作ったら悪なんだ ? |
| メルクリア | それは……………………何故じゃ ? |
| イクス1st | 俺も知らない。 |
| メルクリア | 何じゃと ! ? |
| イクス1st | 怒った顔も可愛いな、ビフレストのお姫様は。 |
| メルクリア | ! ? |
| イクス | (す、すごい……。変な言い方だけどこの人は俺じゃないんだな。記憶を弄られなかったとしてもこうなったとは思えない……) |
| イクス1st | ごめんごめん。鏡精を作っちゃいけない本当の理由は俺も知らないよ。 |
| イクス1st | でも俺が殺された理由と鏡精を作っちゃいけない理由は……多分関係があるんだと思う。 |
| イクス1st | 俺がビフレストに命を狙われたのは俺がバロールの魔眼を持つ鏡精を生み出せるからだって祖父ちゃんが言ってたから。 |
| イクス | ! ? |
| イクスの祖父 | そうだな。そろそろちゃんと話して聞かせる時が来たのかも知れないな。 |
| イクスの祖父 | イクス。お前は特別なんだ。お前が鏡士になるということは世界の理を変えることになるかも知れない。 |
| イクスの祖父 | 私はお前を亡くしたくない。お前の父も母も同じだ。それでも鏡士になるというなら、一つ約束してくれ。けっして鏡精を生み出さないと。 |
| イクス | どういうことだ ? |
| イクスの祖父 | お前は私と同じバロールの魔眼を受け継いだ。ネーヴェの家系に生まれる破戒者の証だ。 |
| イクス | バロールの魔眼 ?何だか禍々しい名前だけど……それって何なんだ ? |
| イクスの祖父 | バロールの魔眼は女神ダーナの作ったこの揺り籠を解く力だ。世界に『死』を放つ。 |
| イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
| イクス | 俺が鏡精を作ると世界を滅ぼすことになる…… ? |
| イクスの祖父 | そうだ。お前が鏡士になればビフレストが黙っていないだろう。命を狙われることになる。世界を守るという名目でな。 |
| イクス | ビフレストに命を狙われることをわかっていて鏡士になったんですか ! ? |
| イクス1st | ああ。少し悩んだけどそれが父さんたちの遺言でもあったから。 |
| イクス | 父さんたちの遺言 ? |
| イクス1st | ああ、そうか。17歳の俺じゃ、まだ見つけてないな。父さんと母さんの形見の魔鏡に遺言が記録されてるんだ。戻ったら見てみるといいよ。 |
| イクス1st | まあ、親の記憶なんてほとんどないけどな。二人が王都に行ったのは、俺がまだ赤ん坊の頃だし。そのまま二度と会えなかったから。 |
| イクス1st | それでも……背中を押してくれるきっかけにはなった。 |
| メルクリア | ………………。 |
| Character | 5話【15-7 集合的無意識3】 |
| ルーク | こっちだ ! |
| ティア | ルーク ? そっちは畑がある方よね ? |
| ルーク | こっちからの方が近道になるんだ。 |
| ティア | 詳しいのね。意外だわ。 |
| ルーク | アジトのガキはみんなここらで遊ぶんだよ。そしたらメシの時間に早く帰れるし。 |
| アッシュ | お前もガキ共と戯れているって訳か。精神年齢が合っていて良かったな。 |
| ルーク | はあ ! ? 違うっつーの !この間エリーゼに聞いたんだよ ! |
| ジョニー | ……うっ ! ? |
| ディスト | ……何です ?今のプレス機で熨されたイカのような声は ? |
| アッシュ | タコの貴様にそんなことを言われたくはないだろうよ。 |
| アステル | あ ! ? あっちの建物の方に倒れてる人が……。あれってジョニーさんじゃ…… ? |
| ルーク | ジョニー ! ? 何でジョニーが ! ? |
| ディスト | 周りの黒い集団は……やはり死鏡精ですね。 |
| ティア | とにかく、ジョニーを助けましょう ! |
| ジョニー | おいおい……ここは一体どこだ ? |
| イクス1st | おっと、また誰か来たな。どうしていきなりアニマとアニムスの状況が乖離した死者が増えたんだ ? |
| メルクリア | 何者じゃ ? この男は……。 |
| イクス | ――え ! ?ジョニーさん ! ? 死んじゃったんですか ! ? |
| ジョニー | イクス、会うなりその言い種は―― |
| ジョニー | いや、イクスはそういう冗談を言うタイプじゃなかったな。待ってくれ、つまり俺は死んだ……ってことか ? |
| イクス1st | いや、どうだろう。ここに来る直前に何があったかにもよると思うからな……。 |
| イクス1st | メルクリアやイクスのことを考えると、あなたもアニマに何か深刻なダメージがあっただけで生きているのかも知れない。 |
| ジョニー | ……あんた、ナーザ将軍か ? |
| メルクリア | 兄上様を知っておるのか ! ? |
| ジョニー | ということは、お嬢ちゃんがメルクリアか。 |
| イクス | ジョニーさん、彼女はメルクリアだけどあっちはナーザ将軍じゃありません。最初のイクス・ネーヴェ、だそうです。 |
| ジョニー | ! ? |
| ディスト | キィィィィィ ! 早く死鏡精を何とかしなさい ! ? |
| ルーク | だったらあんたも戦えよ ! |
| アッシュ | 諦めろ。奴は譜業がなければ単なる生ゴミだ。墨でも吐ける分、タコの方が役に立つ。 |
| ディスト | 何なんです ! ? 一々私をタコ呼ばわりして ! ? |
| ティア | 駄目だわ。敵の数が多すぎる。それに死鏡精たちがみんなジョニーを狙ってくるから守りながら戦うにはもっと戦力が―― |
| ガイ | そういうことなら、協力するぜ ! |
| 二人 | ガイ ! ! |
| ティア | アニス、ナタリア、大佐 ! それにイオン様まで ! ? |
| イオン | 微力ですが、非戦闘員の保護ぐらいなら僕でもお役に立てると思います。 |
| アニス | イオン様、絶対無茶しないで下さいね ! |
| アッシュ | ナタリア……。 |
| ナタリア | お話は後ですわ。今は敵を迎撃しなければ ! |
| チェスター | おっと、オレたちがいることも忘れるなよ。 |
| ルーク | クレスたちも来てくれたのか ! ? |
| クレス | ああ。もっと奥でアルヴィンとエリーゼも取り残されているらしいんだ。 |
| チェスター | アミィを助けてくれたって聞いてな。礼はきっちり返さねえと。 |
| ジェイド | ジョニーのことはこちらにおまかせを。 |
| アーチェ | あたしたちはアルヴィンとエリーゼを助ければいいのよね。 |
| すず | 皆さん、急ぎましょう。 |
| クラース | 他に死鏡精が取り憑いた地点もそれぞれ迎撃隊が向かっている。みんな、何とか乗り越えよう ! |
| ジョニー | なるほど、行き場を失った心の墓場……みたいな場所ってことか。 |
| イクス | でもジョニーさんの場合はどうしてここに……。話を聞く限りでは、アジトを襲っている敵は死鏡精だと思うんですが、それと関係あるのかな……。 |
| イクス1st | 死鏡精…… ? |
| イクス | あなたも知らないんですか ! ? |
| イクス1st | 俺は鏡士になったばかりだったからな……。 |
| メルクリア | 死鏡精……。兄上様が何か仰っていたような……。 |
| イクス | 死鏡精は……キラル分子を生成するために殺された鏡精の怨嗟が形になったものだってネヴァン――カーリャが言ってた。 |
| イクス1st | カーリャ ? ミリーナの鏡精の ? |
| ジョニー | そうか……。あれが前にイクスたちが話していた死鏡精か……。 |
| メルクリア | 待て。キラル分子を鏡精で作っていた……じゃと ?何と言うことを……。セールンドの鏡士は悪魔か ! ? |
| イクス1st | ……………………。だから、父さんと母さんは……。 |
| イクス1st | ――いや、それよりジョニーさんのことだ。俺の乏しい知識で予測するに、恐らく死鏡精というのは鏡精に残された最後の原始的なアニマだと思う。 |
| イクス1st | アニマはアニムスを求める。わかりやすく言えば身体を失った鏡精の心は、新しい身体を求めるってことだ。 |
| イクス1st | ジョニーさん、意識をしっかり保って下さい。死鏡精があなたの身体を奪おうとしている。だからあなたの心がこのるつぼに来てしまったんだ。 |
| 三人 | ! ? |
| Character | 6話【15-10 救世軍のアジト1】 |
| ナーザ | ……ここか。かつて救世軍が使っていた根城というのは。 |
| ジュニア | ……周りが雪山だから……冷えますね。 |
| リヒター | 雨風しのげるだけマシだろう。転送魔法陣が使えて、帝国がいない場所と言えばここぐらいしか思いつかなかった。 |
| リヒター | 今、火をおこす。メルクリアを火にあたらせよう。 |
| ナーザ | ……リヒター。何故メルクリアにここまで肩入れする ? |
| ナーザ | 四幻将だったとはいえ、お前を帝国に縛り付けていたのはレイカー博士が人質だったからに過ぎぬだろう。 |
| リヒター | メルクリアは……元の世界の俺だ。それよりはずっと幼いが、同じように愚かだ。 |
| リヒター | だがメルクリアは少しずつその愚かさから脱却しようとしている。 |
| リヒター | 元の世界で俺は生き方を変えられなかった――変える気もなかったが、こんな幼い子供が俺と同じような生き方をする必要はない。 |
| ナーザ | 失った者を取り戻すための復讐か……。 |
| ナーザ | わかった。ならば俺はもう何も言うまい。 |
| ナーザ | リヒター。それにジュニア。俺はアスガルド帝国皇帝を自称するデミトリアスを討つ。 |
| ナーザ | しかしその為には、もっと力が必要だ。お前たちの力を貸してくれまいか。 |
| ナーザ | 俺のためなどではない。メルクリアが『呪い』に打ち勝ち平穏に暮らすための世界を取り戻すためだ。 |
| リヒター | ……そのつもりでここへきた。 |
| ジュニア | 僕もです。それに……僕のマークも。 |
| ナーザ | 鏡精か……。背に腹は代えられぬか。マークは今どこにいる。 |
| ジュニア | さっき合流して、この周辺の様子を見てくれてます。 |
| ナーザ | わかった。後は……メルクリア、か。鏡精ごと心を潰された。何とかしてメルクリアの心を修復せねば……。 |
| ? ? ? | ウォーデン様。 |
| ナーザ | ナーザと呼べ、バルド。 |
| リヒター | バルド ! ? 奴もいるのか ! ? |
| ジュニア | はい。あの……少しでもメルクリアの助けになる人を増やしたくて……。僕が無理矢理こちらに呼び寄せました。 |
| ナーザ | セールンドの鏡士は、平気で死者に手を伸ばす。外道ではあるが、今回はそれに助けられた。今バルドは人工心核に宿っている状態だ。 |
| バルド | リヒター、ご無沙汰しています。 |
| リヒター | ……ああ。姿が見えないから妙な感じだな。 |
| バルド | ご容赦下さい。これから我らは、ナーザ様の元で共に戦う者。ビフレスト聖騎士団の仲間です。 |
| リヒター | ……四幻将だの聖騎士団だの俺にはどうでもいいことだ。 |
| バルド | その通りですね。すみません。 |
| ナーザ | バルド。何の用だ ? |
| バルド | メルクリア様ですが人工心核を利用してはどうでしょうか。 |
| バルド | メルクリア様の心が消えてしまう前に人工心核に移し、それから治療を施せば時間が稼げるのでは。 |
| ジュニア | そうだ……。シドニーの分に使うつもりだった人工心核があります。 |
| ジュニア | でも、ソーマか特別な魔鏡でもなければ心の中に入ることは……。 |
| リヒター | イクスたちに助けを求めるか ? |
| ナーザ | ……いや。ビフレスト式で行く。幸いこの身体は鏡士の身体だ。バロールの血を引くだけに、力は申し分ない。 |
| リヒター | バロールの血 ? |
| ナーザ | 女神ダーナを殺そうとした悪しき男の名だ。オーデンセのネーヴェ家はバロールの末裔と聞いている。 |
| ジュニア | ! ? |
| ジュニア | ――待って !マークが……マークの気配が弱まってる ! ? |
| リヒター | な、何だ ! ? |
| ナーザ | 死鏡精か。何故ここに…… ! |
| 死鏡精 | ミツケタ……ワタシノマスタア……。 |
| リヒター | 狙いはメルクリアか ! ? |
| 死鏡精 | カワイソウナマスタア……。タスケテアゲル……ワタシガ……。 |
| メルクリア | ! ? |
| イクス | どうした ? メルクリア ? |
| メルクリア | あ……苦し……わらわ……が……―― |
| イクス1st | まずい ! ? メルクリアの心が消える ! ?何とかつなぎ止めるんだ ! |
| イクス | メルクリア ! 消えるな ! |
| ジョニー | ――お姫様 !このジョニー様の歌声を頼りに戻ってくるんだ ! |
| メルクリア | 何じゃ、その歌は……。ふふ……楽しくなるでは……ないか……。 |
| ? ? ? | ウルサイオト…… ! ? ジャマシナイデ…… ! |
| 二人 | 危ない ! ! |
| ジョニー | くっ、あいつだ。浮遊島を襲ってきたのは……。 |
| イクス | 死鏡精か ! |
| 死鏡精 | マスタアヲカエシテ ! |
| 一同 | ! ? |
| メルクリア ? | フ、フハハハ ! ようやく身体を得たぞ ! |
| ジュニア | メル……クリア ? |
| メルクリア ? | メルクリアさまはわらわの中で眠っておる。わらわはもう誰にもメルクリアさまを傷つけさせぬ。 |
| メルクリア ? | わらわとメルクリアさまを絶望に追いやる全てに復讐してやる ! |
| ナーザ | ……貴様、死鏡精か。メルクリアの身体を奪ったな ? |
| メルクリア ? | 奪ったのではない。戻ってきたのじゃ。ここがわらわのいるべき場所だからな ! |
| モリアン | わらわはモリアン !メルクリアさまを守る鏡精であった者。そしてメルクリアさまを永遠に守る者じゃ。 |
| モリアン | わらわはもう鏡精ではない。わらわとメルクリアさまは一つに戻ったのじゃ !集え、我が仲間たちよ ! |
| モリアン | さらばじゃ、メルクリアさまとわらわを守れなかった鏡士共 ! |
| モリアン | わらわはメルクリアさまの望み通りビフレストへ行く ! |
| Character | 7話【15-12 アジト5】 |
| カーリャ・N | イクス様……大丈夫でしょうか。 |
| コーキス | マスター……。 |
| ミリーナ | 呼吸はしているから……。多分……。 |
| エミル | 駄目だ。みんな通信に出ないや。 |
| マルタ | 何かあったんじゃ……。 |
| ミリーナ | 気になるわね。転送ゲートでアジトに戻りましょう。私が開くわ。 |
| テネブラエ | その方法は身体に負担が掛かるのでは ? |
| ミリーナ | 緊急事態だもの。大丈夫。さあ、みんな、集まって ! |
| イクス | え……あれ…… ? |
| ジョニー | おい、メルクリアの次はイクスもか ! ?よし、もう一度俺の歌で―― |
| イクス1st | ……いや、これは違うよ、ジョニーさん。イクスが俺の死体のそばから離れてるんだ。 |
| イクス1st | 物理的に距離が離れれば、俺に引かれてるつぼに来ていたイクスの心もキメラ結合が解けて離れていく。 |
| イクス | あ、じゃあ、ミリーナたちが俺をセールンド山から運び出してるのかな ? |
| イクス1st | ……お別れだな。イクス。 |
| イクス | あなたは……どうなるんですか ? |
| イクス1st | 融けてるつぼの一部になる。そして死ぬ。 |
| イクス1st | いや、もう死んでるんだからメルクリアのお兄さんが死体を返してくれるまでここで眠るんだろうな。 |
| イクス1st | まあ、そのまま目覚めることもないからこれが本当のお別れだ。 |
| ジョニー | 訳がわからないな。あんたは生きてるようにしか見えないが。 |
| イクス1st | 死んでますって。離魂術……だったかな。そのせいでこんな状況になってるだけで本来なら、二人と出会うこともなかった。 |
| イクス1st | 幽霊みたいなものです。でも会えてよかった。俺の幼なじみのやらかしをフォローできそうだ。 |
| イクス | え……。それはどういう……。 |
| イクス1st | フィルに伝えてくれ。手紙、ちゃんと読んでくれたかって。もし読んでたら……もう一度思い出してくれって。 |
| イクス | ミリーナさんには ? |
| イクス1st | ミリーナに声が届けられるのか ? |
| イクス | わからないですけど、可能性はあります。 |
| イクス1st | ……じゃあ―― |
| ジョニー | おい、イクス ! ? |
| イクス | イクスさん ! |
| イクス1st | ――やっぱりいいよ。ミリーナを惑わせたくない。それにミリーナに届ける声は俺自身の声でありたいからな。 |
| イクス1st | なあ、イクス。全部捨てていいんだ。俺のことも世界だって、ミリーナの愛情だってな。 |
| イクス | ! ? |
| イクス1st | イクスは自由だ。俺もお前も自由だ。忘れるなよ。 |
| イクス | イクスさ―― |
| ジョニー | 行っちまったな……。 |
| イクス1st | ジョニーさんも、呼ばれているみたいですよ。 |
| ジョニー | え ? |
| ルーク | ……よし、第三波も片付けたぞ。 |
| ナタリア | 油断はできませんわ。すぐにまた現れるかもしれません。 |
| ジェイド | ええ、ナタリアの言う通りでしょうね。このままではこちらが消耗してしまう。 |
| ディスト | 死鏡精は無尽蔵に出現する訳ではありません。虚無との接触手段が限られている以上どこかで途切れる筈ですよ。 |
| ジェイド | ……なるほど。流石詳しいですね、サフィール。 |
| ディスト | 私のことをサフィール……と ! ?そ、そうですか ! 私の古い名を呼ぶ程私に会いたかったのですね、ジェイド。 |
| イオン | ――ディスト。少し黙って下さい。 |
| ディスト | ! ? |
| イオン | ジョニーが、わずかですがこちらに反応しています。これはもしや……。 |
| アッシュ | ――な、何だ。何故俺とルークを見ている。 |
| ルーク | え ! ? 俺たちに何かできることがあるのか ! ? |
| アニー | 皆さん ! ? 戻られたんですね ! ?連絡が途絶えたと聞いていましたから心配していました。 |
| ミリーナ | ごめんなさい。でも大変なの。イクスがまた倒れて―― |
| マルタ | 待って、ミリーナ。イクスが目を覚ましたみたい。 |
| 二人 | ! ? |
| イクス | ……う……ここは……。 |
| アニー | ここはアジトです。今、脈を診ますね。 |
| イクス | ……アジト…………。 |
| コーキス | マスター、大丈夫か ! ? |
| イクス | コーキス……。 |
| イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
| イクス | ………………。 |
| コーキス | マスター…… ? |
| アニー | 少し脈が速いですね。 |
| イクス | ――そうだ !アジトが死鏡精に襲われてるんだよな ! ? |
| アニー | え、ええ……。誰かがイクスさんたちに連絡してくれたんですね。 |
| ミリーナ | え ! ? いえ、私たちは初耳だけど……。イクス、どういうこと ? |
| イクス | 後で話す !アニー、ジョニーさんが危険なんだ ! どこにいる ! ? |
| アニー | ジョニーさんの救出ならナタリアさんたちが向かいました。 |
| イクス | 案内してくれ ! |
| アニー | わ、わかりました。 |
| ミリーナ | ……イクス…… ? |
| カーリャ・N | 小さいミリーナ様 ? |
| カーリャ | みんな、行っちゃいましたよ ! ? |
| ミリーナ | え、ええ ! すぐ行くわ ! |
| Character | 8話【15-14 アジト7】 |
| イオン | ジョニーが反応しているのは僕の中のローレライの気配なのではと思うんです。 |
| イオン | ジョニーは特異鏡映点として過去のティル・ナ・ノーグの具現化そして精霊ローレライの研究に利用されていた。 |
| イオン | 元々負のアニマを持ち、過去の具現化の実験をさせられていた段階で、彼は時間の概念を帯びている……のではないでしょうか。 |
| ジェイド | イオン様……。あなたはこの世界の――鏡映点の時の流れが異質であることに気付いているのですね。 |
| イオン | やはりジェイドもですか。僕はディストやハロルドから聞いただけですが……。 |
| ルーク | 鏡映点の時間の流れ…… ? 何だそりゃ ? |
| イクス | ……それは、鏡映点の人たちの時間が止まっているということですか ? |
| 十四人 | ! ? |
| ジェイド | なるほど、イクスも気付いていましたか。 |
| ガイ | ちょっと待ってくれ……。意味がわからないんだが……。時間が止まってる ? |
| アステル | 正確には、時間がループしているんです。だって、皆さん、お腹はすくでしょう ? |
| ディスト | この世界の鏡映点は、時間の流れが止まっていることに対してもある種の生体恒常性を保っています。 |
| ディスト | 肉体の老化現象だけが停止している……と考えればいいでしょう。 |
| イオン | 今は、皆さんの理解を待つ余裕はありません。ジョニーを助けなければいけませんから。 |
| イオン | とにかく、鏡映点は何らかの理由で時間の流れが止まっている。にもかかわらずジョニーの恒常性に狂いが生じている。 |
| ジェイド | だから、ジョニーの容体だけがいつまでも安定しなかった――か。ええ、辻褄は合います。 |
| ジェイド | ……そうか。ローレライはこの世界では音の精霊として認識されているが本来は時の精霊に似た性質を持っている。 |
| ジェイド | ローレライの力を研究する際ジョニーは本来相性がいい訳ではないローレライに干渉させられた。 |
| ジェイド | それが恒常性が安定しない原因か。 |
| ディスト | アッシュ、あなたには一度ローレライをまとわせてあげましたね。 |
| ルーク | え ! ? 精霊装みたいなことか ! ? |
| アッシュ | ……精霊装とは違うがな。俺はローレライに接触するためディストを利用したんだ。 |
| ディスト | ……やはりここの鏡士との縁は切れていなかったのですねえ。帝国の調査もいい加減なものです。 |
| ディスト | まあ、私には大した問題ではありませんが。あなたが間者かどうか調べることで、デミトリアスを安心させて資金を引き出せればよかったので。 |
| イオン | アッシュ、では僕と協力してローレライを呼んでみて下さい。 |
| イオン | ローレライが狂わせたジョニーの恒常性を取り戻してもらいましょう。 |
| ルーク | 俺は ? 俺も協力しなくていいのか ? |
| ジェイド | いえ、あなたは関わらない方がいい。前にも説明したとおり、この世界における第七音素の性質はまだはっきりしていません。 |
| ジェイド | あなたを失う訳には行かないのです。あなたは……レプリカなのですから。 |
| ディスト | ………………。 |
| ジョニー | ……なんだ ? 戻ってきたのかと思ったがここは……るつぼなのか ? |
| アッシュ ? | ジョニーか。久しいな。 |
| ジョニー | アッシュか ? どうしてお前がここにいるんだ ?お前もるつぼに来ちまったのかい ? |
| ローレライ | 私はローレライ。今はルーク……いやアッシュの姿を借りている。 |
| ジョニー | 精霊ローレライ、か……。なんて夢を見てるんだ。 |
| ジョニー | あんたのおかげで、俺は苦労させられたよ。あんたを呼び出せだの、降ろせだのと。 |
| ローレライ | すまなかった。お前が奏でる負のアニマを帯びた音と星の記憶を視る時に発する私の音が重なってしまった。 |
| ローレライ | そのせいで、お前だけがクロノスの理から外れてしまったようだ。 |
| ジョニー | 難しいことを言われても困るんだがつまりどういうことだ ? |
| ローレライ | 私の因子を返してもらう。それでお前は皆と同じ時間に生き――戦う度に身体を蝕む傷みからも解放されるだろう。 |
| ジョニー | 要するに俺を治療してくれるってことか。そいつはありがたいね。 |
| ローレライ | ジョニー。私には視える。お前の歌は負のアニマを帯びている。 |
| ローレライ | そしてその力が、取り残された鏡精たちの時間を巻き戻すだろう。 |
| ジョニー | 何だって ? それは一体―― |
| ジョニー | …………今度こそ……現実、か ? |
| イクス | ジョニーさん ! はい、ここは俺たちのアジトです ! |
| ジョニー | イクス ! ?そうか……。お互いるつぼから生還できたんだな。 |
| ジョニー | しかし、何だって俺の隣でアッシュとイオンが寝てるんだ ? |
| ジョニー | 今まで見てたローレライの夢と関係があるのか ?ローレライがアッシュの姿をして出てきたんだが……。 |
| ジェイド | この二人がローレライを召喚してジョニーの身体に残されていたローレライの力を回収したんですよ。 |
| ジョニー | なるほど。あれはただの夢じゃなかったんだな。……じゃあ、ローレライが言ってたあの言葉も……。 |
| ジェイド | ローレライの言葉……というのは大いに気になりますがどうやら話を聞いている時間はなさそうです。 |
| ガイ | ――おっと、また死鏡精共が湧いてきたのか。しかしアッシュたちがこの状態じゃ……。 |
| ルーク | 俺が二人の分まで戦う ! |
| ガイ | ルーク……。 |
| ジョニー | ……なあ、俺に考えがあるんだ。少しだけ時間を稼いでもらえるかい ? |
| ジョニー | ローレライの言葉を信じるなら俺にもできることがある。 |
| ジェイド | ――わかりました。あてにしますよ。 |
| アニス | ナタリア ! 二人でイオン様とアッシュを守ろう ! |
| ナタリア | ええ ! |
| ガイ | はは、頼もしいな。女性陣は。アステルとディストも下がってろ。庇いながら戦うには戦力が足りないからな。 |
| カーリャ・N | 戦えない方は、私がフォローします ! |
| イクス | 俺たちのことも忘れないでくれ。みんなと一緒に戦うよ ! |
| ミリーナ | ええ、当然よね。エミル、マルタ、アニー。力を貸してくれる ? |
| エミル | もちろんだよ。 |
| アニー | 任せて下さい。 |
| マルタ | 死鏡精だか何だか知らないけど、ぶっ潰す ! |
| イクス | よし――行くぞ ! |
| Character | 9話【15-15 ジョニー】 |
| ルーク | おい、ジョニー ! まだかよ ! ? |
| ジョニー | ――よし。どうやら本気で歌っても大丈夫みたいだ。マイクはないが、ここは一発、声を張り上げるか。 |
| ジョニー | イエスッ ! 盛り上がっていくぜ !ジョニー・シデン作詞作曲ティル・ナ・ノーグナンバーエイト ! |
| ジョニー | イクスに捧げるレクイエム ! |
| イクス | なっ、何ですか、それは ! ? |
| ミリーナ | まさか、歌うの ! ? |
| アニー | この状況で、ですか ! ? |
| ジョニー | ♪るつぼの~奥で~眠るのは~探し~求めた~自分自身~ ! |
| アニス | レクイエム ! ? メチャクチャ激しいんですけど ! ? |
| カーリャ | ロックじゃないですか ! ? |
| ジョニー | 知らぬ間に~がんじがらめの俺~解き~ ! 放つ~ ! のは~ !影であることを認める、勇気~ ! |
| 死鏡精 | ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛…… ! ? |
| ジョニー | ――道化のジョニーならぬ浄化のジョニーってな !俺の歌に痺れて消えな ! ! |
| ジョニー | ……本当に死鏡精が消えちまった。 |
| ミリーナ | ジョニーさん、すごいわ ! ?でも身体は大丈夫なんですか ?いきなりあんな大声張り上げてしまって……。 |
| ジョニー | いや、久々に腹の底から歌えて最高の気分だ。 |
| コーキス | すげえ ! ? ジョニー様の歌つえー ! ? |
| カーリャ | でもあれ、レクイエムではなかったですよね…… ? |
| ジョニー | そうかな ? 俺としては最高の鎮魂歌が出来上がったと思ってるけどな。 |
| イクス | ジョニーさん……。あの歌……。 |
| ジョニー | 歌は歌だ。イクス。 |
| イクス | ……フフ……。 |
| ジョニー | うん ? |
| イクス | 俺、わかりました。とりあえず後で考えよう、今はやれることをやらなきゃって思ってましたけど……そうですよね。 |
| イクス | 俺は……ただの影で……過去なんて全部ねつ造でもう、気持ちも記憶も、何もかも嘘だらけだけど……。そんなの……俺のせいじゃないですよね。 |
| イクス | ――俺のせいじゃない。全部……全部知ったことか ! |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| コーキス | マスター ! ? どうしちまったんだ ? |
| イクス | ――ここからやり直す。もう抱え込むのはやめる。俺が何者なのかってのは全然わからないけどもう疲れた。 |
| イクス | 全部取っ払って、残ったものだけを俺だと思う。 |
| ジョニー | で ? 何が残ったんだ ? |
| イクス | この身体。それだけです。ここから手に入れます。イクス・ネーヴェの影だった俺が本当に欲しいと思うものを。 |
| イクス | その為には……まずこの世界を何とか延命しないとならないですけどね。 |
| ジョニー | ああ。これから欲しいと思うものは誰にも干渉されてない、お前さんだけの欲求だからな。それだけは間違いない。 |
| ミリーナ | イクス……。あれからずっと悩んでたのね。 |
| イクス | うん……。性格だからな。この性格も作られたものだから……とかうじうじ悩んでたけど、わからないよな。 |
| イクス | どこまでがフィルに弄られたせいでどこまでが自分のせいかなんて。考えても意味がない。 |
| イクス | それでも考えちゃうんだろうけど意味がないって思えるようになっただけマシだ。 |
| ジェイド | ――いやー、青春ですね。実に美しい。ところでイクスが何やら吹っ切ったところでジョニーにお願いがあります。 |
| ジョニー | いい性格してるね、ジェイドは……。 |
| ジェイド | 褒められると照れるのですが他の区画ではまだ死鏡精の襲撃が続いています。 |
| ジェイド | 魔鏡通信を使って、浮遊島全域にあなたの歌声を響かせて頂けるとありがたいのですが。 |
| ジョニー | アンコールってことか。任せとけ ! 何曲でも歌ってやるさ ! |
| ジェイド | アニー。ジョニーと一緒に通信室へ行ってあげて下さい。まだ病み上がりには違いありませんからね。 |
| アニー | そうですね。ジョニーさん、大丈夫ですか ? |
| ジョニー | ああ、大丈夫。それじゃあ、ジョニー・オン・ステージのアンコール公演に向かおうか。 |
| ジェイド | テネブラエ。あなたはどんなものにも姿を変えることができましたね。 |
| テネブラエ | ええ。闇のセンチュリオンですから ! |
| エミル | 闇は関係ないような……。 |
| ジェイド | では、手錠になって頂けますか ? |
| テネブラエ | かまいませんとも。 |
| ジェイド | ――ガイ ! |
| ガイ | はいよっと。――ディスト、悪いな。 |
| ディスト | は ! ? どうして私に手錠をかけるのですか ! ? |
| ジェイド | あなたに聞きたいことがあるのですよ。……色々とね。連行して下さい。 |
| ジェイド | 残りの皆さんはアッシュとイオン様を医務室へ運んで下さい。 |
| ジェイド | ――それと、ルーク。 |
| ルーク | へ ? 何だ ? |
| ジェイド | ディストをここに連れてきたのはあなたですね。 |
| ルーク | は ! ? いやいや、それはアッシュが――って、まさかあの時の会話を…… ?まさか、ティア ! ? |
| ティア | ええ ! ? 私は何も言ってないわよ ! ? |
| ジェイド | ――おや、カマをかけただけなのですがやはりディストがここにいる理由に一枚噛んでいるようですね。 |
| ルーク | しまった……。 |
| ジェイド | 後でじっくり話を聞かせてもらいましょう。 |
| Character | 10話【15-15 ジョニー】 |
| イクス | ……ひとまず死鏡精の襲撃は食い止められたみたいだな。 |
| ミリーナ | ジョニーさんの歌声が効果てきめんだったわ。どういう仕組みなのかしら……。 |
| カーリャ・N | 今後の対策として、ジョニー様の歌を録音しこの浮遊島に流しておくことにしました。これで死鏡精が近づいてくることはないでしょう。 |
| コーキス | ルーティ様がもの凄く嫌な顔してたけどな……。 |
| カーリャ | でもカーリャはけっこう好きですよ。ジョニーさまの歌。 |
| コーキス | 気が合うな、パイセン。俺もだぜ ! |
| イクス | (コーキス……。俺はコーキスを作っちゃいけなかった…… ?) |
| イクス | (コーキスのあの左眼がバロールの魔眼ってことなんだろうか……) |
| コーキス | そういえばマスター、どうしてアジトが死鏡精に襲われてるってわかったんだ ? |
| イクス | あ、ああ……。不思議な話なんだけど俺……最初のイクスに会ったんだ。 |
| 四人 | ! ? |
| イクス | 気を失っている時の夢かも知れないと思ったんだけどジョニーさんもその場にいて……。 |
| イクス | ジョニーさんも覚えていたみたいだから……夢じゃなかったんだろうな。 |
| カーリャ・N | ――イクス様は、生きておられるのですか ! ? |
| イクス | ネヴァン……。 |
| イクス | いや、死んだっていってた。集合的無意識の底にいて幽霊みたいな存在だって……。 |
| カーリャ・N | ……そう、ですか……。 |
| イクス | そういえば……メルクリアはどうなったんだろう。 |
| ミリーナ | メルクリア ? メルクリアもそこにいたの ? |
| イクス | ああ。心が壊れてるって……。それから……モリアンっていう死鏡精がメルクリアに乗り移って、消えてしまって。 |
| カーリャ | どういうことなんでしょう ? |
| イクス | よくわからないんだ。あれも実際に起きたことならジュニアに連絡をしたら何かわかるのかな。 |
| ジェイド | 失礼しますよ。 |
| ミリーナ | ジェイドさん、ガイさん。アッシュさんとイオンさんは無事ですか ? |
| ガイ | ああ、さっき目を覚ましたよ。身体に異常もないみたいだし、一安心だ。 |
| イクス | よかった……。 |
| ジェイド | 私の方は、空いた時間を利用してディストに話を聞いてみました。 |
| ガイ | ……ディストの奴、悲鳴上げてたけどな。 |
| コーキス | な、何したんですか ! ?まさかリオン様みたいに……。 |
| ジェイド | いやですねえ。私は平和を愛するただの軍人ですので丁重に話を聞きましたよ。 |
| カーリャ | がたがたぶるぶるがたがたぶるぶる……。 |
| ジェイド | 帝国の目的がニーベルングの復活であろう事は目星がついていましたが、どうやらビフレストの具現化は、その為の実験の一環だったようです。 |
| ジェイド | メルクリアの仕掛けた具現化の術式を再利用して行ったようですね。 |
| ミリーナ | 実験 ? ビフレストの具現化が…… ?ビフレストとニーベルングに関係が…… ? |
| ミリーナ | いえ、どちらかというと具現化のさせ方に意味があるのかしら……。 |
| ジェイド | それともう一つ。キールたちが死鏡精の動きを追跡してくれました。死鏡精の発生源の一つはセールンド山です。 |
| ミリーナ | え ! ?大樹カーラーンじゃなかったんですか ! ? |
| コーキス | そうだよ。あそこを住処にして増殖してるかもって話だったのに……。 |
| ジェイド | 報告はまだ途中ですよ。セールンド山からきた死鏡精はこの浮遊島を襲撃しました。 |
| ジェイド | そして大樹カーラーンからも死鏡精の群れが出現した。そちらは具現化したビフレストに向かったようです。 |
| ジェイド | 今、セールンド山の方は調査隊を向かわせています。具現化されたビフレストの方も注視した方がいい。 |
| カーリャ・N | 帝国は……イクス様の遺体をレプリカで増やし、その身体を利用して人体万華鏡を作ったと言っていました。 |
| カーリャ・N | それに……あの光魔……。私が帝国で発見した資料と照らし合わせると、あの光魔は人工心核を移植されたリビングドールなのでしょう。 |
| カーリャ・N | 恐らくその二つを利用して、虚無への道を開き死鏡精を呼び込んでいるのでは……。 |
| ジェイド | セールンド山の方の発生源はそれかも知れません。ただ、死鏡精そのものは帝国の目的ではないのではと推察します。 |
| ジェイド | 恐らく副産物なのでしょう。ディストの話では、帝国側は虚無と死の砂嵐の方に強い興味を持っているようですから。 |
| ガイ | ちなみに、こいつがケリュケイオンから送られてきた例の具現化ビフレストだ。 |
| カーリャ・N | なんて禍々しい……。 |
| ミリーナ | 本当だわ。本で読んだビフレストとは全然違う……。 |
| ガイ | 魔都、だな。とんでもないものが具現化されちまった……。 |
| ジェイド | 私はビフレストへの潜入と偵察を提案します。死鏡精がここに集まっているなら放置するのは危険だ。 |
| ジェイド | ジョニーがいれば死鏡精はある程度無効化できるでしょう。 |
| ジョニー | おっと、こっちでも同じ話が出て来てるらしいな。 |
| イクス | ジョニーさん ! |
| ジョニー | リオンにユーリにクレスにユリウス。みんなその『魔都ビフレスト』に行こうって言い出してる。 |
| ジョニー | 俺の歌が必要なら、いくらでも協力するぜ ? |
| ミリーナ | 救世軍にも声をかけてみましょう。 |
| イクス | そうだな。調査に出てるセネルやロゼたちにも連絡を取ろう。 |
| ジェイド | 大所帯になりましたからね。また魔鏡通信を繋ぎましょう。 |
| ジェイド | 帝国が用意した新しい領主のことや、今の状況ビフレスト潜入隊の選抜……。長い会議になりますよ。 |
| コーキス | そういう頭使いそうなことはマスターがいれば大丈夫だよな ! |
| イクスの祖父 | その力は生み出した鏡精に宿り鏡精を通じて鏡士にも宿る。だからお前は鏡精を生み出してはならないんだ。 |
| イクス | (――例えそうだったとしても俺はコーキスに救われた。俺は……コーキスを信じる) |
| イクス | ああ。俺は頭脳労働で、コーキスは肉体労働だもんな ? |
| コーキス | 何だよそれ ! ?まあ、でも、マスターがそうして欲しいって言うなら俺はそれでいいぜ ! |
| カーリャ | コーキスはイクスさまが大好きですねえ。 |
| コーキス | へへっ ! まーなっ ! |
| イクス1st | ……みんな、いなくなっちゃったな。 |
| イクス1st | 静かだ……。何だか……俺も……眠くなってきた……。 |
| イクス1st | そろそろ融けるんだな……。死んだ後の世界の話を聞けるなんて……わからないもんだなあ……。 |
| イクス1st | ……ミリーナ、フィル。ごめんな……直接助けてやれなくて……。 |
| イクス1st | 二人のこと……愛してるから……な……。 |