| Character | 1話【3-1 仮想鏡界1】 |
| ナーザ | ……駄目だな。リヒター、そっちの資料はどうだ ? |
| リヒター | 一通り目を通したがバロールに関する記述は見当たらなかった。 |
| ジュニア | こちらも預かった分を見終わりましたけど伝承に繋がりそうなものはありません。 |
| マークⅡ | 伝承ねえ……。ビフレストのご先祖様がもっとわかりやすく伝えてくれてりゃなぁ。 |
| マークⅡ | 『バロールの滅びの力は脅威だが失ってはいけない力』なんて言われてもその力が何か分からないんじゃ、どうしようもねえ。 |
| ナーザ | 長い歴史の中では様々な理由で情報が消えていくものだ。過去の人間にあたったところでどうにもなるまい。 |
| マークⅡ | そりゃそうだ。つっても文句の一つも言いたくなるけどな。 |
| ジュニア | 伝承どおりなら、バロールの滅びの力には世界にとって重要な役割があると思うんだけど力の詳細どころか、名前もみつからないなんて……。 |
| ナーザ | ……再調査だな。レイカー博士、こちらの資料は返しておこう。 |
| アステル | 残念だけど、僕が帝国から持ち出した資料は役に立たなかったみたいだね。 |
| ナーザ | いや、先の混乱の中では相当に無茶な脱出を図ったと聞いている。これだけの資料を持ち出しただけでも大した功績だ。 |
| リヒター | ……確かディストの奴アステルの研究室の壁をぶち抜いたんだったな。 |
| アステル | あれは流石にびっくりしたなあ !でも、おかげで帝国から脱出できたから今度会ったらリヒターからもお礼を言ってね。 |
| リヒター | いや、もう会うこともないだろう。奴は例の浮遊島で捕まっているんだろう ? |
| アステル | 案外、今頃脱走してたりして♪ |
| マークⅡ | やめとけやめとけ。縁起でもない。イカレた博士の話もいいけどよ。バロールはどうするんだ。当てはあるのか ? |
| ジュニア | う~ん……思い当たりそうな所は調べたし……。 |
| バルド | 失礼します。皆さん、少し休まれてはいかがですか ? |
| ナーザ | バルド、どこへ行っていた。それにメルクリアとコーキスはどうした ? |
| バルド | ええ、こちらに。さあ、メルクリア様。 |
| メルクリア | う、うむ……。兄上様、お茶などいかがでしょうか。 |
| ナーザ | お茶…… ? |
| コーキス | おっと、危ね ! こぼすところだったぜ。 |
| メルクリア | コーキス、気をつけよ ! 給仕も満足にできぬのか ? |
| コーキス | 慣れてないんだから仕方ないだろう。メルクリアだって、お茶を淹れるのに苦労してたくせに。 |
| メルクリア | な、慣れてないのだから仕方ないじゃろう。 |
| マークⅡ | ははっ、何だよ、お前ら気が合うじゃないか。仲良くお茶汲み係とはな。 |
| コーキス | 俺は真面目に資料調べしてたんだぜ。それをメルクリアが……。 |
| メルクリア | 何を言うか。飽きて欠伸をしておったくせに。気分転換にと連れ出してやったのだから感謝せよ。 |
| ナーザ | メルクリア……これはお前が淹れたのか ? |
| メルクリア | はい、バルドに教わりました。今の兄上様のお体ではあまり必要のないものかもしれませんが気が休まればと思って。 |
| バルド | ええ。僭越ながら手ほどきを。さあ、皆さんもどうぞ。 |
| ナーザ | この香りは……。 |
| バルド | お好きでしたよね。このお茶。 |
| ナーザ | ……そうだったな。忘れていた。何しろ、食事をしなくても問題ない身体だからな。 |
| メルクリア | あの ! もしも昔と感覚が違うようであれば無理をしなくても―― |
| ナーザ | いや、……うん、美味い。ありがとう、メルクリア。 |
| メルクリア | 兄上様…… ! この程度、造作もありませぬ。お望みであれば毎日でも。 |
| メルクリア | もちろん、リヒター、ジュニア、アステルにも振る舞ってやろうぞ ! |
| リヒター | ……フッ。では、遠慮せずこれからも頼もうか。 |
| ジュニア | 驚いたよ。メルクリアがこんなことをするなんて。お茶、すごく美味しいよ ! ありがとう ! |
| メルクリア | 皆が疲れているようだったのでな。何かできぬものかと考えていたらバルドが相談に乗ってくれたのじゃ。 |
| メルクリア | しかし、兄上様の……皆の喜ぶ顔がこれほどまでに嬉しいものとはおもわなかった……。 |
| バルド | そうおっしゃるメルクリア様の笑顔も尊く、美しく眩いばかりに輝いておられますよ。そのようなお姿を拝見できて、私も―― |
| 二人 | バルド ! |
| バルド | おや、お二人とも息がぴったりですね。 |
| メルクリア | めげぬ奴め……。とにかく、わらわはこれからも皆の笑顔を見るために励むぞ。のう、コーキス ! |
| コーキス | 俺も ! ? |
| マークⅡ | ここにいるうちに上達するんじゃねえか ?そうだと助かるぜ。コーキス先輩。 |
| マークⅡ | 何しろこのメンツだろ ? 衣食住の世話なんて俺くらいしかできないと思ってたからな。皇女様でも鏡精でも、助っ人は大歓迎だ。 |
| ジュニア | いつもごめんね、マーク。僕も、もっと自分のことは自分でできるようにならないといけないよね。メルクリアと一緒に勉強しようかな……。 |
| メルクリア | 何を言う。そなたはそなたのやるべきことをやればよいのだ。 |
| ジュニア | ありがとう、メルクリア。――よし、メルクリアのおかげでいい息抜きになったし改めて調査の方針を考えましょう。 |
| アステル | けど、調査って言っても……。バロールについての文献ってビフレストにはどのくらいあったんですか ? |
| ナーザ | ビフレスト皇国のみに伝わる神話に名前があるだけでそれ以上詳しい記述はないはずだ。 |
| バルド | その神話に関する文献も、カレイドスコープによって、国ごと消滅してしまいましたからね。今ではもう、現物を手に入れる手段はないでしょう。 |
| リヒター | 鏡士側や救世軍から、新たな情報は入らないのか ? |
| バルド | 救世軍のフィリップさんがダーナとの接触に成功したという連絡が最後ですね。今のところは、これが一番の成果になるでしょう。 |
| アステル | でも、核心に迫る前に邪魔されたんですよね ?バロールの情報、もっと知りたかったなぁ。 |
| コーキス | マジで手掛かりなしかよ……。いっそダーナみたいにバロールも直接話してくれたらいいのにさ。 |
| メルクリア | 突拍子もないことを。それが出来れば、こんな苦労はせぬわ。 |
| ジュニア | ……バロールと話す……。そうか、直接……いや直接じゃなくても、ミリーナとゲフィオンの為に考えてたアプローチを使えば―― |
| ジュニア | アステルさん ! アステルさんが持ってきた資料のええと、どこだっけ、フォミクリー実験の項目は……。 |
| アステル | ああ、これかな ?精霊ローレライとクロノスを使ったレプリカの遡行実験の―― |
| ジュニア | それです ! もう一度見せてください ! |
| アステル | その資料、持ち出したはいいけどレプリカが絡んでいるから僕の管轄外だったんだよね。ディスト博士の方が詳しいと思うけど、連絡取る ? |
| ジュニア | いいえ、今は大丈夫です。……やっぱり、精霊を使ったレプリカ遡行実験に最初のイクスのレプリカを使ったデータがある……。 |
| アステル | それ、ディスト博士のファイルとは別になってるから帝国の誰かが独自に進めたものかもしれない。 |
| リヒター | 遡行実験ということはレプリカの時間を巻き戻すつもりだったのか。何のために ? |
| ジュニア | ディストさんの目的は不明ですね。でも、イクスの方は……。 |
| ジュニア | ……うん。やっぱりこのデータはそうだ。ってことは、イクスの遺体のレプリカを増やして人体万華鏡に改造する他にも、何か別の目的で……。 |
| ジュニア | (帝国が、イクスのレプリカを実験に使っているのは『最初のイクスという存在』が必要になったから ?) |
| ジュニア | (だとすると、最初のイクスだけが持つもの……。記憶……かな。過去にセールンドがバロールの力を欲していたのなら、今の帝国もバロールを……) |
| メルクリア | ジュニア。ブツブツ言っていないで説明せよ。……聞こえておらぬのか ? |
| マークⅡ | 没頭するとこれだからなぁ。どうした、マスター。……フィル ? …………おい、フィリップ ! |
| ジュニア | あっ、ごめん。色々考え始めたら止まらなくなっちゃって……。 |
| マークⅡ | それで ? 何か思いついたんだろう。 |
| ジュニア | うん。最初のイクスの遺体……ナーザ将軍の体を使ってバロールの記憶を探ることができるかもしれない。 |
| Character | 2話【3-2 仮想鏡界2】 |
| コーキス | バロールの記憶を探るってナーザ将軍の体でそんなことができるのか ? |
| ナーザ | ジュニア、詳しく説明しろ。 |
| ジュニア | はい。バロールの血を引くその体には何かしらの『記憶』として、バロールの情報が残っている可能性があるのではないかと思うんです。 |
| ジュニア | 最初のイクスの体は、具現化されたものとは違い最初のフィルから受けた記憶操作のノイズもない。 |
| ジュニア | 本来のイクスが持っている情報を引き出しやすい状態にある筈です。 |
| ナーザ | なるほど。それで、どういった方法で探るつもりだ ? |
| ジュニア | それは、コーキスにお願いするつもりです。 |
| コーキス | え、俺 ! ? |
| ジュニア | コーキスは具現化イクスの鏡精だけど『イクスの鏡精』であることには違いない。だから最初のイクスにも入り込みやすい存在なんだよ。 |
| ジュニア | コーキスならば、最初のイクスの体に残っているバロールの記憶を探せるかもしれない。 |
| コーキス | ええと、それってシング様たちのスピルリンクみたいなやつってことか ? |
| ジュニア | 似てはいるけどちょっと違う。今回は『心』じゃなくて『体』に残る記憶を探るから。 |
| メルクリア | なるほど。アニマとアニムスの違いじゃな。命の設計図を調べるというわけか。 |
| コーキス | あ~……、ええと、つまりどういうこと ? |
| マークⅡ | 大まかにいえば、お前がいてくれたお陰でバロールについて何か分かるかもしれねえってことさ。 |
| コーキス | 俺がいたおかげで…… ? そうか……へへっ。 |
| メルクリア | 何をにやけておる。理解したのか ? |
| コーキス | いや、まだよく分かんねえけど手掛かりになるなら良かったなって。 |
| コーキス | よし ! そのバロールの記憶だか情報を探るってやつすぐに始めようぜ。俺は何をすればいい ? |
| ジュニア | この方法だと、最初のイクスのアニマサーチデータが必要になるんだ。バロールの末裔である、『イクス』の生前のデータを取り込む必要があるから。 |
| マークⅡ | ん ? 待てよ。そのデータがある場所ってのは……。 |
| ジュニア | ……最初のイクスのデータが残っているのはセールンドにある壊れたカレイドスコープだよ。だから、セールンドに潜入しないといけない。 |
| リヒター | 厄介だな。あの場所は帝国が目を光らせているぞ。 |
| ジュニア | はい……。それに、コーキスにはその場で最初のイクスの体にリンクしてもらうことになります。 |
| ジュニア | それを考えると、かなり危険なんです。提案しておいてなんですが本当に決行していいものか……。 |
| ナーザ | 迷うことはない。バロールに繋がる可能性がある以上は危険を承知でもやる価値はあるだろう。 |
| ジュニア | ……そうですね。このままじゃ何も進まない。 |
| リヒター | 俺も賛成だ。 |
| アステル | 僕も賛成 ! みんなで行けばきっと―― |
| リヒター | アステル、お前は留守番だ。 |
| アステル | わかってるよ。凄く興味深いけどみんなの足は引っ張りたくないからね。 |
| ナーザ | では、コーキス、ジュニア、リヒター。準備をしろ。すぐに出発する。 |
| メルクリア | え…… ? お待ちください、兄上様 !わらわは……。 |
| ナーザ | お前はここで待っていろ。 |
| メルクリア | そんな、わらわも参ります ! |
| ナーザ | 勝手は許さない。危険だと話したばかりだろう。 |
| バルド | お気持ちはわかりますがどうかご理解ください、メルクリア様。兄君は御身を案じておられるのですよ。 |
| メルクリア | それこそ、兄上様の勝手なのではありませぬか ? |
| ナーザ | ! ! |
| メルクリア | ジュニアの計画が危険なことは承知しております。ですが、敵地の只中で、ジュニアは手筈を整えコーキスがバロールの記憶を探らねばならない。 |
| メルクリア | こうしてアジトを作った以上、マークも仮想鏡界の維持の為に残らざるを得ぬ状況です。今までのようには頼れませぬ。 |
| メルクリア | 戦えるのがリヒターだけではセールンドでの守りは手薄になるでしょう。 |
| メルクリア | 兄上様、わらわも戦えるのです。使える戦力を、私情で切り捨てるおつもりですか ? |
| ナーザ | …………。 |
| メルクリア | 待つのが最良の策であれば、そういたします。ですが今は違うように思えるのです。 |
| メルクリア | お願いにございます。わらわは、兄上様たちの力になりたい。……皆を助けたい。 |
| メルクリア | そうあらねば、わらわの手でルキウスらを救うことなど叶いませぬ ! |
| メルクリア | 未熟なまま守られるだけでは申し訳が立たぬのじゃ。ルキウスにも、これまで尽くしてくれた者にも。 |
| リヒター | メルクリア……。 |
| メルクリア | 兄上様、どうかご一考を ! |
| バルド | ……ナーザ様、私たちは感謝せねばなりませんね。これまでメルクリア様を諫め、助言をくれた方々に。 |
| ナーザ | ……そうだな。 |
| リヒター | ………………。 |
| ナーザ | ……メルクリア、俺の私情であったことを認めよう。済まなかったな。 |
| メルクリア | 兄上様……それでは ! |
| ナーザ | ああ。改めて頼む。セールンドへ共に来てくれ。 |
| メルクリア | はい、喜んで ! |
| Character | 3話【3-3 アスガルド城】 |
| デミトリアス | よく来てくれたね、エルレイン。 |
| グラスティン | ……なぜサレが一緒なんだ ?新しい従騎士はどうした。 |
| エルレイン | イレーヌには領都で執務を任せている。それにサレは元々私の部下だ。従者として連れてくることに何ら問題はないだろう。 |
| サレ | ……ええ。まったくもってそのとおり。 |
| グラスティン | なるほどな……。ヒヒヒッ。 |
| エルレイン | 火急の用と聞いて応じたのだ。早々に要件を聞かせてもらおうか。 |
| デミトリアス | きみの望みを叶える準備ができた。ようやく奇跡の力の復活だ。 |
| エルレイン | 何と…… ? それはまことか ? |
| デミトリアス | このティル・ナ・ノーグに異世界の神フォルトゥナを顕現することになった。きみにも手伝って欲しい。 |
| エルレイン | フォルトゥナを……。しかし、異世界の神の具現化は不可能に近いと聞き及んでいる。 |
| グラスティン | 小さなフィリップの研究資料が役に立った。お前はあいつから、実験は失敗だったと報告を受けていたんだろう ? |
| グラスティン | だが、あれは実のある失敗だった。おかげで神の具現化理論が構築できたんだ。ヒヒヒ。 |
| エルレイン | …………。 |
| デミトリアス | これらの結果を受けて、帝国が行う世界救済にはフォルトゥナの力が必要だと判断した。 |
| デミトリアス | そして、奇跡の力を使いこなせるきみという存在もね。エルレイン。 |
| エルレイン | 再び、奇跡の力が我が手に……。 |
| デミトリアス | きみの望んだフォルトゥナ神の降臨と世界の救済が同時に行える。この好機を逃さぬためにも、力を貸してほしい。 |
| エルレイン | ……なるほど。よくわかった。 |
| エルレイン | 世界の救済がフォルトゥナによるものならばこれほど喜ばしいことはない。もちろん協力を約束しよう。 |
| デミトリアス | 感謝するよ、エルレイン。 |
| エルレイン | であれば、今後は私が帝都へ滞在することも増えるであろうな。 |
| エルレイン | 他の者に領都を任せるには何かと準備がいる。私はこれで帰らせてもらうぞ。 |
| デミトリアス | 忙しい思いをさせてすまないね。共に世界を救う日を楽しみにしているよ。 |
| サレ | …………。 |
| サレ | ――フォルトゥナ神の顕現か。さて、あなたは本当にあいつらの話を信じたのかな ? |
| エルレイン | 随分と持って回った言い方をする。ならばお前は嘘だと思うのか ? |
| サレ | 嘘か本当かなんて僕には興味がないね。今、興味があるというなら、あなたの方だよ。 |
| エルレイン | どういう意味だ。 |
| サレ | もう色々とわかってるんでしょ ?僕のことも、グラスティンのことも。 |
| サレ | ここのところ、イレーヌじゃなくて僕を連れ回すのは動きを封じておきたいからじゃない ? |
| エルレイン | …………。 |
| サレ | フフ、まあいいさ。あの男と僕は『同族』だ。 |
| サレ | それをわかっていながらなおも救済しようとしている聖女様はこれからどんな行動をとるのかな。いやあ、見物だね。 |
| エルレイン | サレ、これは命令だ。今すぐ領都へ戻るがいい。 |
| サレ | ははっ、聖女様はご機嫌ななめか。それでは、お言葉に甘えて退散いたしましょう。 |
| エルレイン | ……哀れな男よ。 |
| エルレイン | (……だがこれで身軽になった。今であれば――) |
| デミトリアス | ――エルレインは納得したと思うか ? |
| グラスティン | まあ、半信半疑だろうよ。だがあの様子じゃ、奇跡の力への期待も残っている。そこをくすぐってやるさ。 |
| グラスティン | ともあれ、話は通した。これでナーザ神を呼び出すことができる。 |
| デミトリアス | ならば次の準備にかかるぞ。 |
| グラスティン | ああ。俺はこれからセールンド山の研究施設に行く。お前も一緒に来てくれ。 |
| 伝令兵 | 失礼いたします ! 急ぎ、グラスティン様にご報告したいことが……。 |
| Character | 4話【3-4 セールンド 街中】 |
| コーキス | 結構あっさり入れちまったな。セールンドにつくまでは警備兵がウロウロしてたけど街の中はそうでもねえじゃん。 |
| メルクリア | そうじゃな。だがカレイドスコープの間にたどり着くまでは油断するでないぞ。ですよね、兄上様。 |
| ナーザ | ……ああ。 |
| バルド | …………。 |
| リヒター | 二人とも難しい顔をしているな。 |
| バルド | ええ。何というか……あまりにも容易すぎると。 |
| ナーザ | バルドもそう感じたか。 |
| コーキス | 警備のきつい所を突破しただけじゃないのか ? |
| ナーザ | いや、今のセールンドには違和感がある。普段よりも兵が少なく、警戒が薄い。俺たちにとって都合が良すぎる状況だ。 |
| ジュニア | どうしましょう。引き返しますか ? |
| ナーザ | いや、帝国が動き出している以上こちらも猶予はない。用心は怠らず、このまま進む。 |
| ナーザ | いいか、周囲全てに警戒しろ。俺は先行して様子を見ながら、お前たちを誘導する。 |
| バルド | お待ちを。私も参ります。幻体ならば危険もありませんしメルクリア様にもすぐに報告ができますので。 |
| ナーザ | ……そうだな。ついて来い。 |
| ナーザ | この辺りまでは問題ないようだ。真っすぐカレイドスコープの間へ行けるだろう。バルド、メルクリアへ伝えろ。 |
| バルド | 承知しました。 |
| ナーザ | それと、お前に少し話がある。 |
| バルド | 何でしょう。 |
| ナーザ | もし、俺に何かあった場合はメルクリアを頼む。 |
| バルド | ……何を言い出すかと思えば。 |
| ナーザ | 念のためだ。イクスの体を探る過程で何かあれば俺はこの体に戻れなくなるかもしれないからな。 |
| バルド | それは……。確かに今回の作戦ではナーザ様の意識がノイズにならぬよういったん心核を抜く手筈ですが……。 |
| ナーザ | 杞憂とでも思うか ? |
| バルド | ……いえ。仰る通りかと思います。 |
| ナーザ | ジュニアの才覚は認めているが万が一ということもある。しかもこの状況だ。帝国の妨害が入る可能性も否めん。 |
| ナーザ | そうなった場合は俺にかまうな。メルクリアを守ることを優先して―― |
| バルド | お断りします。あなたも、そしてメルクリア様もお守りするのが私の使命です。例え幻体であっても。 |
| ナーザ | ……俺の頼みでもか。 |
| バルド | 頼みと言うなら、なおさらだよ。何より、その言葉は義兄として受け入れ難い。 |
| バルド | 今の話を聞いたら、メルクリア様も同じことを言うんじゃないかな。 |
| ナーザ | …………。 |
| バルド | 僕もメルクリア様もきみを失うようなことはしないし、したくない。 |
| ナーザ | ……そうか。お前の気持ちはよくわかった。 |
| ナーザ | だが、嫌でも選ばねばならぬこともある。その時に、生者のメルクリアと死者の俺どちらを優先すべきか考えておけ。 |
| ナーザ | バルドなら、間違うことはないと信じている。 |
| バルド | ……僕を困らせるのが得意だね、きみは。 |
| | セールンド カレイドスコープの間 |
| ナーザ | 俺とジュニアは、カレイドスコープからデータを回収する。見張りは頼んだぞ。 |
| バルド | お任せを。 |
| メルクリア | …………。 |
| リヒター | どうした。不機嫌そうな顔をして。……ああ、ゲフィオンの鏡像を見ていたのか。 |
| メルクリア | ……わらわにとっては真の仇である女じゃぞ。不機嫌にもなるわ。 |
| コーキス | (マスターもこの魔鏡結晶に閉じ込められていたんだよな。……マスター、今頃どうしてるだろう……) |
| ジュニア | 良かった……。カレイドスコープ本体の破損は酷いけどデータは無事だ。 |
| ジュニア | すぐに始めます。コーキス、ナーザ将軍、こちらへ。 |
| コーキス | ……いよいよか。 |
| ナーザ | 頼むぞ、コーキス。ではジュニア、始めてくれ。 |
| ジュニア | はい。ではまず、ナーザ将軍の心核を外しますね。 |
| メルクリア | …………。 |
| リヒター | ……様子を見に行くか ? |
| メルクリア | ……よい。わらわは、兄上様やコーキスたちを守るためについて来たのだからな。わらわもわらわにできることをするまでじゃ。 |
| リヒター | それでいい。 |
| ジュニア | よし、上手くいってる……。 |
| ジュニア | コーキス、ナーザ将軍の心核を外したから今度はきみの意識と、イクスの体をリンクさせる。いくよ ? |
| コーキス | う、うん。やってくれ ! |
| コーキス | ……うわっ ! |
| ジュニア | リンクできた ! どうコーキス、きみの意識は―― |
| コーキス | ……いっ ! 痛ぇ……。 |
| ジュニア | えっ、コーキス ? |
| コーキス | なんか痛いんだよ……左目が……これ……前といっしょ……うあああああああああっ ! |
| ジュニア | コーキス ! コーキスッ ! ? |
| Character | 5話【3-5 ???】 |
| コーキス | (…………音がする…………) |
| コーキス | (何だろう……時計の音 ? だんだん大きく………) |
| コーキス | ……うるせっ !……………………あれ ? |
| コーキス | ここ、魔都ビフレストか ?いつの間に……。 |
| ? ? ? | それは魔眼に対する『滅び』の意識が投影されたものだ、鏡精。 |
| コーキス | 誰だ ! |
| コーキス | ……マスター……いや、ナーザ将軍 ? |
| ? ? ? | ……俺は……言うなればバロールの記憶の欠片。バロールの残滓が形となった存在だ。 |
| コーキス | バロール ! ? ってことは俺、ちゃんと成功したのか。よっしゃー ! |
| コーキス | けどその恰好、驚いたぜ。体と同じ姿なんだな。一瞬マスターがいるのかと思った。 |
| バロールの残滓 | …………。 |
| コーキス | おい、聞いてるか ? 俺はあんたに会いに―― |
| バロールの残滓 | ……貴様、その目は……。 |
| コーキス | ああ、うん。バロール……いや、その記憶の欠片か。とりあえずバロールでいいよな。俺はこの魔眼のことが聞きたくて来たんだ。 |
| コーキス | それとバロールのこと、何でもいいから教えてくれ。どんな奴で、何の力を持ってて―― |
| バロールの残滓 | 鏡精よ、どうやらお前は魔眼の力を使いこなせていないようだ。 |
| コーキス | ああ、わかってるよ。だからそれを……痛てっ !また左目が……。 |
| バロールの残滓 | ……痛みから逃れるため、痛覚を切り離していたか。なるほどな……。その痛みは貴様の未熟さゆえだ。 |
| コーキス | んなこと言っても……どうすりゃ……うあああっ ! |
| バロールの残滓 | 暴走しつつあるな。 |
| コーキス | これ、どうすれば……痛みと……何かが……体の中から溢れて……。 |
| バロールの残滓 | 魔眼を制御しろ。力の使い方を知れ。 |
| コーキス | 駄目だ ! 何も考えられ……ううううっ ! !誰か……この痛みを消してくれ ! ! |
| バロールの残滓 | 無理だ。その暴走は自分自身で抑えこむしかない。鏡精、己を見つめ、己を知れ。 |
| コーキス | 目の奥が、疼く……。ぐ……うぁああああ ! ! |
| バロールの残滓 | ……正気を失ったか。 |
| コーキス | 消エロ……、オマエモ消エロ…… ! |
| Character | 6話【3-5 ???】 |
| コーキス | (……変だな。なんでバロールと戦ってるんだろう。それにこの光景、どこかで……) |
| コーキス | (そうか、モリアンに操られた時と似てるんだ) |
| コーキス | (あの時はマスターと戦って……マスターの声が聞こえて、戻れたんだ) |
| コーキス | (……なんだっけ、魔眼……、制御…… ?くそっ、意識がぼやけて、体がいうこと聞かねえ) |
| コーキス | (俺はあれから何も変わってないのか。……情けねえ、一人じゃ何も……) |
| バロールの残滓 | 鏡精、俺――言葉も――か ? |
| コーキス | (誰だ……何を言ってる ? よく聞こえねえよ……) |
| コーキス | (やっぱり、俺がマスターの側にいたら危険だ。いつこうなるか、わかんないもんな) |
| コーキス | (ごめん、マスター。俺、きっともう帰れな――) |
| イクス | ちゃんと帰ってくるって、約束してくれ。 |
| イクス | 俺は信じて待ってるからさ、コーキス |
| コーキス | ……マス……タ……。 |
| バロールの残滓 | ! ! |
| コーキス | (帰れないって、なに言ってんだ俺……。マスターが待ってるのに ! 信じてくれてるのに !) |
| コーキス | (あの言葉に応えたい……。応えるために、俺はここにいる !) |
| コーキス | っ……マスタ――――ッ ! |
| バロールの残滓 | ……ようやくか。 |
| コーキス | はあっ……はあっ……。俺、戻った…… ? |
| バロールの残滓 | 暴走の制御に成功したな。どうやら魔眼の力を使いこなしつつあるようだ。鏡士との間に結ばれた信頼を忘れるな。 |
| コーキス | バロール……。 |
| バロールの残滓 | バロールの魔眼は、死を呼ぶ時は毒を放ち命を生む時は炎を燃やす。 |
| バロールの残滓 | 鏡精よ、その力を使いこなせ。 |
| コーキス | 待ってくれ ! まだ消えないでくれ !もっと聞きたいことが―― |
| バロールの残滓 | お前に――バロール……あ……ける……。 |
| コーキス | …………あ。 |
| ナーザ | 目が覚めたか ? |
| コーキス | バロール ! よかった、消えてなかったのか ! |
| ナーザ | ……何を言ってるんだ、貴様は。 |
| コーキス | …………何だ、ナーザ将軍か。 |
| メルクリア | 何だとは何じゃ ! ? 失礼な奴め ! |
| ジュニア | コーキス ! 良かった、目が覚めて……。目の痛みは ? 体は何ともない ? |
| コーキス | あ、ああ。大丈夫。そうか、俺、突然目が痛みだして……。 |
| リヒター | 酷い悲鳴を上げていたが……今は落ち着いているようだな。 |
| コーキス | ああ……うん。大丈夫みたいだ。そういえばナーザ将軍は平気なのか ? 心核を外してただろ。 |
| ナーザ | このとおりだ。今のところ異常は見られない。 |
| バルド | ナーザ様も、コーキスも、無事で何よりです。しかし、これからどうしますか ? |
| バルド | コーキスの苦しみ方を見る限りもう一度同じ手法でバロールを探らせるのは……。 |
| メルクリア | ……無理であろうな。 |
| コーキス | あ、ごめん。報告が遅れたけどバロール……みたいな人には会えたんだ。 |
| 全員 | ! ! |
| メルクリア | なんと、成功しておったか ! それで何がわかった ? |
| コーキス | ええと……。 |
| バルド | 死を呼ぶ時は毒を放ち命を生む時は炎を燃やす……とは、意味深ですね。 |
| メルクリア | 何のことやらさっぱりじゃ。ほかにバロールは何か言っておらぬのか ? |
| コーキス | さっき話したので全部だよ。あー、消える前に、俺にバロールの……なんとかって言いかけてたけど、よく聞こえなかった。 |
| コーキス | もしかして……あんま役に立たなかったか ? |
| ジュニア | ……ううん、バロールの残滓はとても重要なことを伝えてくれたと思う。 |
| バルド | そうですね。何かの比喩という可能性もありますが我々が伝え聞く『滅びの力』といわれるものが『毒を放ち』に相当するのだとすると……。 |
| ナーザ | 言葉どおりに受け取るならばバロールの魔眼は、我々の知らない『命を生む』力も秘めているということだ。 |
| ナーザ | それこそが、バロールの『失ってはいけない力』なのかもしれない。 |
| ジュニア | それじゃ、イクスの遺体を失ってはいけないのもそれが理由ってことなのかな……。 |
| リヒター | 興味深いが、いったん議論は打ち止めだ。この場所に長居をしない方がいい。 |
| メルクリア | リヒターの言う通りじゃ。特にこの場所は落ちつかぬ。すぐに脱出するぞ。 |
| ? ? ? | いや、もっとゆっくりしておいで。メルクリア。 |
| 全員 | ! ! |
| メルクリア | まさか……。 |
| デミトリアス | 会えてうれしいよ、メルクリア。元気そうで何よりだ。 |
| メルクリア | ……ち……義父上っ…… ! |
| ナーザ | デミトリアス…… ! |
| Character | 7話【3-6 カレイドスコープの間】 |
| 帝国兵 | 動くな。大人しくしろ。 |
| コーキス | くそっ、気が付かなかった…… ! |
| デミトリアス | ナーザ将軍、いや……ウォーデン殿。イクスの遺体の紛失から予想はしていたがその姿で再び相まみえるとは。 |
| デミトリアス | ジュニアには、してやられたよ。 |
| ジュニア | …………。 |
| デミトリアス | メルクリア、よく顔を見せておくれ。心配していたんだ。 |
| メルクリア | 義父上……あなたという人は…… ! |
| バルド | メルクリア様、どうかお心を鎮めて下さい。 |
| デミトリアス | 話を聞くに、きみがバルドのようだね。私の側近の『フレン』でいた頃とはだいぶ姿も在り方も違うようだ。 |
| デミトリアス | やはりジュニアの仕業かい ?それともウォーデン殿かな。とかく鏡士とは想像もつかぬことをする。 |
| ナーザ | ……襲撃は予想していたが貴殿自らこの場に現れるとはな。 |
| デミトリアス | あなた方がセールンドへ侵入したと報告を受けた。 |
| デミトリアス | 危険を冒してまでこの場に来るとなればさぞかし重要な情報を得るためだろうと思ってね。それに、メルクリアの様子も気になっていた。 |
| コーキス | くそっ……それじゃあやっぱり警備が手薄だったのもわざとかよ。 |
| デミトリアス | きみたちが無事に目的を果たせて何よりだ。おめでとう。流石だよ。 |
| デミトリアス | おかげで私も、最も必要としていたバロールの根源に近づく方法を知ることができた。心から感謝する。 |
| リヒター | 泳がせて覗き見か。いい趣味をしているな。 |
| デミトリアス | 確かにぶしつけだったね。失礼したよ。私は争うために来たのではない。きみたちと話し合いに来たんだ。 |
| ナーザ | 今更何を話し合う。 |
| デミトリアス | それでも――私はきみたちに同盟を申し込みたい。皇太子ウォーデン・ロート・ニーベルング殿。 |
| ナーザ | 同盟だと ? 何のために。 |
| デミトリアス | 貴君が受け継ぐその名にもあるニーベルングへの回帰を果たすためだ。 |
| デミトリアス | これまではお互いの理解が及ばず相容れぬこともあっただろう。あなたが我らに不信を抱かれるのも当然だ。 |
| デミトリアス | だが以前に申し上げたとおり、私の成すことはあなたが成し得なかったときの安全弁であった。ゆくゆくの目的は同じと考えている。 |
| デミトリアス | どうか今一度我らと手を結んではくれぬだろうか。 |
| ナーザ | ふっ……。 |
| デミトリアス | ……ウォーデン殿 ? |
| ナーザ | 滑稽だな。死人に同盟を申し入れるとは。俺も以前に言った筈だ。我が名はナーザ。ウォーデンは死んだ。 |
| ナーザ | それでも返答を求めるならば、あえて言おう。貴殿の申し出は断る ! |
| ナーザ | 我らはビフレスト聖騎士団。今やアスガルド帝国を打倒せんとする者だ。 |
| デミトリアス | ……なるほど。ナーザ殿のお考えはわかった。メルクリア、お前もかい ? |
| メルクリア | ……無論じゃ。 |
| デミトリアス | 私が無体を強いたことは自覚している。幼いきみを悩ませぬためにと黙って計画を進めたことは間違いだった。謝罪しよう。 |
| デミトリアス | だからもう一度、私の手を取っておくれ、メルクリア。昔のように、私の側で共に暮らそう。 |
| メルクリア | ……義父上、わらわはあなたの優しさが毒じゃと気づいた。 |
| メルクリア | 気づきながら、その毒を食らう者がいるとお思いか ? |
| デミトリアス | 私の優しさが毒 ? 何を言っているんだい ? |
| メルクリア | モリアンのこと、ルキウスのこと !わらわは、義父上の全てが許せぬと言っておるのじゃ ! |
| デミトリアス | ……すまなかった。きみには、その辛さを忘れるほどの幸せを約束しよう。 |
| メルクリア | 違う……違うのじゃ、義父上……。 |
| デミトリアス | だったら何が違うのか、よく話し合おう。私はきみを本当の娘と思って愛している。 |
| デミトリアス | だが、このまま交渉が決裂すればきみたちを無事に帰すわけにはいかなくなってしまう。 |
| ナーザ | 脅しか ? |
| デミトリアス | ……私は話し合いで終わらせたい。手荒な真似はしたく―― |
| メルクリア | ミゼラブル・トーチャー ! ! |
| デミトリアス | ――っ ! ! |
| メルクリア | 今じゃ、皆、逃げよ ! ! |
| デミトリアス | 待ちなさい、メルクリア ! |
| メルクリア | ……さらばじゃ、デミトリアス。 |
| デミトリアス | ! ! |
| デミトリアス | メルクリア……本気で私から離れるのか……。 |
| 帝国兵 | 陛下。いかがいたしましょう。 |
| デミトリアス | ……残念だが、見ての通りだ。これより彼らを、帝国の敵対勢力と見なす。ビフレスト聖騎士団一行を捕らえよ ! |
| Character | 8話【3-8 セールンド城内2】 |
| 帝国兵A | ――ビフレスト聖騎士団を発見。捕縛せよ。 |
| 帝国兵B | 了解。捕縛開始。 |
| コーキス | また来た ! こいつらどんだけ隠れてたんだよ ! |
| メルクリア | ええい、きりのない !命が惜しいものは道を開けよ ! さもなくば―― |
| ジュニア | 逃げて、メルクリア !その兵士には無駄――うわっ ! |
| リヒター | 危ないぞ、ジュニア ! |
| ジュニア | あ、ありがとうございます……リヒターさん ! |
| メルクリア | す、すまぬ。だが、この兵士たちは一体……。 |
| バルド | 脅しも説得も無駄です。この兵士たちはリビングドールβの処置を施されています。 |
| メルクリア | このところ感情の見えぬ兵が多いのはそういうことであったか……。リビングドールを、このような者にまで……。 |
| ナーザ | 気を抜くな、まだ来るぞ ! |
| 帝国兵C | ビフレスト聖騎士団を発見。 |
| 魔物 | ウォオオオオオン ! |
| コーキス | 魔物 ! ? なんでここに ! |
| アリエッタ | 見つけた……。 |
| コーキス | アリエッタ ! じゃあこの魔物も全部…… ! |
| バルド | 確か、彼女は魔物を自在に扱えるのでしたね。帝国内では、あまり会ったことはありませんでしたが……。 |
| ナーザ | 相変わらず、女のことはよく覚えているな。 |
| アリエッタ | 裏切者、見つけた ! 早く来てください……です ! |
| ルキウス ? | …………。 |
| メルクリア | ルキウス…… ? ルキウスか ! 無事であったか ! |
| ジュニア | 待って、メルクリア ! あの様子だとルキウスは……。 |
| ルキウス ? | 死にたくなければ全員動かないで。 |
| メルクリア | ! ! |
| ジュニア | ……リビングドールβ ? でもそれにしては……。 |
| アリエッタ | もう逃げられません。大人しく捕まる……です。 |
| コーキス | くそっ、どうする ? 魔物に囲まれちまってるけど突っ切るか ? |
| ナーザ | 難しいな。突破できても、魔獣の速さではほどなく追い付かれるのは目に見えている。 |
| バルド | (……ナーザ様、ナーザ様私の心核の声に耳を済ませてください) |
| ナーザ | ! ! |
| バルド | (あなたには申し訳ないことを提案いたします。屈辱ではありましょうが――) |
| ナーザ | …………。 |
| コーキス | なあ、どうする ? ここで捕まる気かよ。 |
| ナーザ | ……………………。…………わかった。そうしよう。 |
| リヒター | 何を言っている ! ? 降伏するつもりか ! ? |
| ルキウス ? | 賢明だね。アリエッタ、兵士が近づけるよう魔物を退かせて―― |
| ナーザ | 魔神皇剣 ! |
| アリエッタ | きゃああっ ! ! |
| ナーザ | 走れ ! 俺に続け ! |
| コーキス | へ…… ? ど、どこへ ! ? |
| ナーザ | 後で説明する ! ついて来い ! |
| ジュニア | メルクリア、早く !今ルキウスを助け出すのは無理だ ! |
| メルクリア | くっ……済まぬ……ルキウス ! |
| ルキウス ? | 魔物の統率を乱して逃げる気か。無駄なことを。アリエッタ。彼らを追え ! |
| アリエッタ | わかってる。絶対に逃がしません…… !裏切者を捕まえて……イオン様に会うんだから…… ! |
| ナーザ | この部屋に入れ。扉を閉めろ ! |
| バルド | ナーザ様……申し訳ありません。あなたにこのようなことを押し付けるなど……。 |
| コーキス | おい、何のことだよ ! |
| ナーザ | よく聞け。この先、立ち止まることは許されんぞ。あの魔物たちから逃げ切るために、俺を―― |
| Character | 9話【3-9 セールンド城内3】 |
| ルキウス ? | どこかに隠れているかもしれない。片っ端から部屋を開けろ ! |
| 帝国兵 | はっ ! |
| アリエッタ | 絶対逃がさない……絶対……あっ ! |
| ナーザ | …………。 |
| アリエッタ | いた ! みんな、来て ! |
| アリエッタ | 他の人……どこ、です ? あなただけ…… ? |
| ナーザ | そうだ。 |
| ルキウス ? | 自分を犠牲に仲間を逃がしたのか。自己犠牲なんて愚かだね。でもまあ、いいよ。一人でもいいから捕まえろとの指示だから。 |
| アリエッタ | お願いです。このまま捕まってください。そうすればアリエッタの仕事は終わり。今度こそ、イオン様に会える筈……です。 |
| ナーザ | 貴様はリビングドールにされていないようだな。なぜ帝国に従う。 |
| アリエッタ | それが……イオン様のためだって。 |
| ナーザ | その言葉が真実だと、嘘ではないと言い切れるか ? |
| アリエッタ | 嘘じゃない ! グラスティンが言ったもん !イオン様は生きてるっ !だから……だからアリエッタは…… ! |
| ナーザ | グラスティン…… ? あの男を信用するのか。イオンが本当にグラスティンの所にいると実際に確認はしたのか ? |
| アリエッタ | っ…… ! もう、やめて ! なんで意地悪言うの…… ? |
| ナーザ | ……辛くても考えろ、アリエッタ。 |
| ルキウス ? | そこまでだよ。この男を拘束するんだ。 |
| 魔物 | …………。 |
| アリエッタ | 待って、みんなが困ってる……。なにか変……です。 |
| ルキウス ? | これ以上は待たない。やれ ! |
| 帝国兵β | はっ ! |
| ルキウス ? | ! ? |
| 帝国兵β | …… ? この男に触れません。 |
| アリエッタ | みんなが、その人から生き物の匂いがしないって……。 |
| ナーザ | そう……。この身はまぼろし。悲しみに震えるあなたに手を差し伸べても触れることすら叶わない存在です。 |
| ルキウス ? | 姿が消える…… ! ? |
| ナーザ | アリエッタ、あなたはそこにいるべきではない。どうか、真実を知る勇気を――………………。 |
| ルキウス ? | 消えた。……捕獲失敗か。アリエッタ、報告に戻るよ。 |
| アリエッタ | …………。 |
| ジュニア | はぁ……はぁ……。 |
| リヒター | 疲れたか ? |
| ジュニア | 大丈夫 ! まだ走れるよ。メルクリアだって平気なんだから。 |
| リヒター | ――おい、ナーザ。このままだとジュニアとメルクリアが遅れる。 |
| ナーザ | わかった。少し速度を落とす。 |
| メルクリア | ……あっ ! 兄上様、バルドが ! |
| バルド | ――ただいま戻りました。 |
| ナーザ | 残してきた幻体が消えたか。 |
| ジュニア | メルクリアの力が届かなくなったんだね。バルドの幻体を保つには、この距離が限界なのか。 |
| メルクリア | ……わらわの力はこの程度なのじゃな。 |
| ナーザ | いや、十分な距離を稼いだ。このまま逃げ切れるだろう。よくやった。バルド、メルクリア。 |
| コーキス | 驚いたなぁ。ナーザ将軍そっくりに化けて敵を引き付けるなんてさ。 |
| ナーザ | バルドの幻体のイメージを、俺の姿にしただけだ。考えたのはバルドだがな。 |
| バルド | 申し訳ありません。私ごときがナーザ様を真似るなど屈辱以外の何ものでもないでしょう。 |
| バルド | あなたという高貴なる存在を汚してしまったこと本当に心苦しいばかりです。 |
| ナーザ | ……わかった。もういい。お前はもう少しフレンの中にあったときのように慎ましくできないのか。 |
| バルド | すみません、ナーザ様。 |
| メルクリア | バルド、ルキウスはどんな様子であった ? |
| バルド | リビングドールであることは間違いなさそうですが詳細はわかりませんでした。ただ、怪我などはしていないようです。 |
| メルクリア | そうか。無事……ではないが生きていてくれて良かった……。 |
| バルド | そういえば、アリエッタの方はリビングドールにはされていませんでした。おそらく、帝国に利用されているのでしょう。 |
| バルド | 彼女は心から苦しんでいます。どうにか救ってあげたいとも思いますが何もできぬこの身が口惜しくて……。 |
| ナーザ | バルド ! 余計なことを考えるな。人にはわきまえるべき分というものがある。全てを救いたいと思うのは思い上がりだ。 |
| ナーザ | 貴様はそうやっていらぬ苦しみを背負いたがる。……やめておけ。 |
| バルド | ……はい。 |
| ナーザ | 拠点へ戻るぞ。 |
| コーキス | 厳しいな、ナーザ将軍って。 |
| バルド | そう見えるのでしょうね。まったく……不器用な方です。 |
| バルド | あの方はとても厳しくて、不器用でそして優しい方なのですよ。 |
| Character | 10話【3-10 アジト1】 |
| ミリーナ | イクス、会議の時間が……あっ、みんなもう集まってたのね。 |
| カーリャ・N | 小さいミリーナ様、お待ちしていました。 |
| ミリーナ | 私が一番遅かったみたい。ごめんなさいね。 |
| カロル | 大丈夫、ボクたちもさっき来たところ。 |
| ラピード | ワオン ! |
| イクス | セシリィの引っ越し準備どうなってた ?もうすぐフィルさんたちが来るぞ。 |
| ミリーナ | もう荷物はまとまっていたから大丈夫。今、みんなにお別れの挨拶をしているところよ。 |
| イクス | 色々あったけど、セシリィがここにいる間にいい友達ができて良かったよな。 |
| カーリャ | 前にチャットさまと盛り上がってるのを見ましたよ !機械の崇高さがどうとか。何言ってるのかさぱらんでしたけど。 |
| ユーリ | そういや、キール研究室にも顔出してたって ? |
| カロル | うん。セシリィは魔鏡技師見習いだからリタやパスカルに色々と聞いてたみたい。 |
| ユーリ | 技術はともかく、妙な影響うけてなきゃいいけどな。あいつら性格がぶっとんでるから。 |
| ミリーナ | あら、リタならガロウズさんのお気に入りだもの。逆に喜ばれるんじゃないかしら。 |
| カーリャ・N | あの……そろそろ会議を始めないと本当に時間がなくなってしまうのでは……。 |
| ユーリ | っと、そうだった。じゃあ、さっさと報告しちまうか。カロル先生、頼んだぜ。 |
| カロル | うん。ええと、各大陸で帝国が管理する領主の館を調べていたんだ。 |
| カロル | でも、ここ最近ですごく警備が厳しくなってる。配備される兵士もかなり増えたよ。 |
| ユーリ | ああ。これから領主の館に潜入することも増えるだろ ?今までと同じだと思うと痛い目みるぜ。 |
| カロル | あ、そうだ。オールドラント領でもグラスティンが関わってそうな事件が起きてたからリオ……浮遊島警備部に伝えておいたよ。 |
| カロル | こっちで調査しようかと思ってたけどガイがルークたちを誘って調べてみるって。 |
| イクス | じゃあ、ルークたちもオールドラント領に向かうかもしれないんだな。 |
| カーリャ・N | すみません。その話で思い出したのですが確か少し前から、シング様たちが原界(セルランド)領に向かわれていましたよね。 |
| イクス | ああ。カロルたちの調査で領主の名前がわかったからな。 |
| カーリャ | パライバさまと、カルセドニーさまですよね。 |
| カーリャ | クリードさまの件が何とかなった途端今度は領主の救出に向かわなきゃいけなくなって……。シングさまたち大丈夫でしょうか。 |
| カーリャ・N | 何か連絡は入っていますか ? |
| イクス | 潜入調査だから、こちらからの連絡は控えてるんだ。……けど、向こうからの定時報告も遅れてる。 |
| カーリャ | え……大丈夫なんですか、シングさまたち。 |
| ミリーナ | そうね。信じてないわけじゃないけどカロルたちの報告を聞くと……。 |
| ユーリ | 嫌な予感がするな……。わかった、ちっと様子見に行ってくるわ。 |
| イクス | いいんですか ?調査から帰ってきたばかりなのに。 |
| ユーリ | ここであーだこーだ言ってても仕方ねえだろ。カロルもいくか ? |
| カロル | 当然 ! もうこんなの慣れっこだよ。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| ミリーナ | ええ。お願いするわね、ラピードさん。 |
| イクス | それじゃゲートであっちに降りたら一度連絡を――っと……ごめん、通信が入った。 |
| カーリャ | シングさまたちですかね ! ? |
| イクス | ……えっ ? あ、あなたは…… ! |
| Character | 11話【3-11 原界領 領主の館1】 |
| 帝国兵β | 侵入者を発見。侵入者を発見。排除せよ。 |
| クンツァイト | 敵勢力を視認。排除を開始。 |
| クンツァイト | 排除を確認。他に敵影なし。リチアさま、こちらへ。 |
| リチア | ええ。コハク、わたくしとクンツァイトが周囲を見張ります。今のうちに出口へ。 |
| コハク | ありがとう。リチア、クンツァイト。みんな、敵が来る前に早く ! |
| ベリル | あ~も~、この館、なんでこんなに兵士がいるのさ !過保護 ! 過剰警護 ! 何様だよー ! |
| クンツァイト | 回答する。領主様だ。 |
| ベリル | 知ってるよ ! |
| ヒスイ | くっちゃべってねえで行け !おい、シング、モタモタすんじゃねえぞ ! |
| シング | わかってる。けど、どこかにカルやマリンさんがいるかもしれないと思うと……。 |
| ヒスイ | 今日はもう無理だっつってんだろ !オラ、さっさと行け ! |
| コハク | あそこ、出口が見えたよ ! 兵士もいない ! |
| ベリル | やった ! 助かった―― ! |
| ? ? ? | と、思う子豚のあわれなるかな~。 |
| コハク | 誰 ! ? 外から ? |
| シング | あの声…… ! 出るな、コハク、ベリル !そいつは―― |
| ハスタ | 解体ショーだヨ ! 善人集合 ! |
| 二人 | ! ? |
| シング | くそっ ! 間に合えっ ! |
| シング | かはっ……ごふっ……。 |
| ハスタ | ん~、いい声、いい音、夢気分 !ハスタ選手、やりました !ありがとう……、お母さんのおかげデス ! |
| コハク | うそ……シング ! しっかりして ! |
| ベリル | ボクたちをかばって…… ! |
| クンツァイト | 警告。バイタルの異常を検知。かなりの深手だ。動かさないほうがいい。 |
| コハク | シング……シング ! すぐに治すから ! |
| リチア | わたくしも一緒に回復術を ! |
| ヒスイ | てめえ…… ! よくもやりやがったな ! |
| ハスタ | う~ん、見た目どおりのハジケる弾力。ちょうどリビングドールで聖核を増やすのに飽きていたところだったにょん。 |
| ハスタ | そんな時です !なんということでしょう、お城で素敵な舞踏会が !ハスタ姫は槍を片手に乗り込んだのでした~。 |
| ヒスイ | ああそうかよ、イカレ野郎が !その気色悪ぃクチ、きけなくしてやる ! |
| シング | 駄目だヒスイ……。みんな、逃げ……ゴホッ…… !ハスタは……ダメ……だ……。 |
| リチア | しゃべってはいけません ! |
| コハク | シングはわたしが…わたしたちが絶対に守るから ! |
| 帝国兵β隊 | 侵入者を確認。 |
| ハスタ | おかわりだぷー ! さあさあ遠慮せず腹一杯かっさばいて、召されませいっ ! |
| ベリル | な、なに ! ? いきなりみんな吹っ飛んじゃった ! |
| リチア | この術は―― ! |
| リチア | クリード兄さま ! なぜここに……。 |
| クリード | 好きで来たわけではない。 |
| フローラ | あなた方が領主の館に潜入すると知ってクリードに助けを頼んだのです。きっと、力になれることがあるからと。 |
| リチア | ありがとうございます。フローラ姉さま、クリード兄さま。 |
| クリード | ……帝国の輩に、私の残した研究資料を利用されるのは気にいらんのでな。潰しておこうと思っただけだ。 |
| クリード | イクスたちには、お前が押し付けてきた魔鏡通信機で状況を伝えてやった。すぐに援軍がくるだろう。 |
| ハスタ | ふぅ、すがすがしい目覚めだ……。そして一杯の『紅血ゃ』を飲むオレ。 |
| ベリル | ヤバイよ ! アイツ復活した ! |
| クリード | 聞こえるか、シング・メテオライト。私に偉そうな口を聞いておいて貴様はこんなところでくたばるつもりか ? |
| クリード | フッ、所詮は脆い原界人ということか。 |
| シング | クリ……ド……。 |
| フローラ | リチア、シングに回復術が効いているようであれば今すぐ連れて逃げなさい。 |
| リチア | ……わかりました。ありがとうございます、フローラ姉さま。 |
| リチア | 行きましょう、みんな。クンツァイト、シングをお願いします。 |
| クンツァイト | 承知しました。シングの生命維持を最優先しこの場を離脱します。 |
| コハク | クリード、ありがとう ! |
| ヒスイ | ……死ぬんじゃねえぞ。 |
| クリード | さっさと行け。目障りだ。 |
| ハスタ | ああ……いっちまった。据え敵喰えぬは男の恥。しかし次の日には元気に殺戮にまい進するハスタくんなのでした。 |
| フローラ | ……クリード、私たちの常識が通用する相手ではないようです。十分に気をつけてください。 |
| クリード | 心配するなフローラ。私の思念術の前では塵一つ残ってられんさ。 |
| Character | 12話【3-13 アジト2】 |
| フィリップ | そうか。各地の警備がそれほどまで……。 |
| マーク | 原界(セルランド)領の方も心配だな。救世軍の地上部隊にも一報入れとくか。何かあったら協力するよう言っておく。 |
| カーリャ・N | ありがとう、マーク。気が利きますね。……なんです、そのゆるんだ顔は。 |
| マーク | いや、ネヴァンパイセンに褒められるなんて珍しいからさ。嬉しくてねぇ。 |
| カーリャ | ふざけてる場合じゃありませんよ、マーク !シングさまたちがピンチなんですからね。 |
| マーク | 今度はちっこいパイセンに怒られるのかよ……。 |
| イクス | 大丈夫だよ、カーリャ。クリードさんもいるしユーリさんたちも応援に向かった。何かあれば報告が入る手筈だから。 |
| マーク | しかし参ったぜ……。そんなに帝国兵の監視が厳しくなったんじゃうちの地上部隊の連中にも警戒させないといけねえな。 |
| イクス | それと、これはシャーリィたちが付けられた【贄の紋章】と呼ばれるものの解析結果です。 |
| フィリップ | ありがとう。確認させてもらうよ。 |
| フィリップ | …………なるほど。 |
| イクス | そこにあるとおり、現段階でですが贄の紋章は、対象者に身体的影響は与えていないようです。 |
| イクス | それと、特殊な術式が組み込まれていることをジェイドさんとハロルドさんが発見しました。 |
| フィリップ | 術式……。その術式がどういう方向性のものかは判明してるかい ? |
| イクス | いいえ。何のためにつけたのかその意図までは、まだ……。 |
| イクス | ただ、領主だったフォッグさんやレイスさんにも付けられているので、帝国がその紋章を重要視しているのは間違いありません。引き続き調べるつもりです。 |
| フィリップ | わかった。その検証には僕も協力させて欲しい。 |
| イクス | 是非、お願いします。 |
| ガロウズ | ビクエ様、お待たせしました。 |
| フィリップ | ああ、ガロウズ。準備はできたかい ? |
| ガロウズ | おかげさまで。ほらセシリィ、ビクエ様に挨拶しろ。 |
| セシリィ | あ、あの ! これからよろしくお願いします。 |
| フィリップ | ああ。ガロウズの下でしっかり学ぶんだよ。 |
| マーク | おい、荷物ってのはそのおもちゃ箱みたいなやつか ? |
| ガロウズ | ああ。こいつときたら色んな部品を集めちゃ何か作ってたみたいでさ。このおもちゃを全部ケリュケイオンに持ってくんだと。 |
| セシリィ | ボス酷い ! すごいのもあるんだから。これなんかチャカチャカっとやってピューっとすると……あれ ? 動かないな……。 |
| ガロウズ | お前……随分と変わった物言いするようになったな。 |
| カーリャ | パスカルさまの影がチラつきます……。 |
| ミリーナ | ふふっ、ユーリさんの言ったとおりね。 |
| エル | あ、セシリィいた ! ほらアミィ、早く ! |
| アミィ | セシリィ、間に合って良かった。これ、渡すの忘れてたから。 |
| セシリィ | これって、アミィのマーボーカレーのレシピ……。ありがとう。私も頑張って作れるようになるね ! |
| エル | ねえねえ、もうガロウズには怒られたの ?ハモンされなかった ? |
| セシリィ | あ……ええと……。なんとか……。 |
| ガロウズ | はははっ ! そりゃもう、こってりしぼってやったぜ。魔鏡技術知りたさに、自分からリビングドールに志願したバカ弟子だからな。 |
| ガロウズ | これに懲りたんなら、俺のところで真面目に魔鏡技師の勉強をすることだ。 |
| セシリィ | は~い……。 |
| アスベル | イクス、会議中に済まない。ちょっと話がしたいんだ。フィリップさんも交えて。 |
| イクス | アスベル ? いいよ、どうしたんだ ? |
| アスベル | 俺たちが預かっているチーグルの心核をビフレスト側に返しに行きたいんだ。 |
| リチャード | 彼に……チーグルに約束したんだよ。必ずメルクリア皇女のもとへ届けるとね。その約束を果たしたい。 |
| リチャード | だがそれは、ビフレスト陣営の仲間を増やす行為でもある。僕たちの一存で決めていいものか考えていた。 |
| リチャード | 君たちと、そして救世軍の意見を聞かせてもらえないかな。 |
| ソフィ | イクス、ミリーナ、どう思う ?メルクリアたちは、まだ敵 ? それとも味方 ? |
| イクス | ……正直に言うと、味方……ではないと思う。そうなって欲しいけど、今はまだ利害が一致しただけの共闘みたいなものだ。 |
| イクス | だけど、心核を返すのは賛成する。何となく、今のメルクリアなら大丈夫だと思うんだ。 |
| ミリーナ | ええ。私もそう思う。フィルはどう ? |
| フィリップ | 僕も賛成しよう。それに、約束を果たそうとする彼らの意志を尊重したい。 |
| イクス | それじゃ、キール研究室で保管されているローゲの心核も一緒に返そうか。そっちは少し……心配だけど。 |
| イクス | とにかくナーザ将軍とメルクリアには俺から連絡を入れておくから、後は任せるよ。 |
| アスベル | わかった。みんな、承諾してくれてありがとう。キール研究室へ行って来るよ。 |
| セシリィ | あ、あの ! ちょっといいですか ? |
| ソフィ | なに ? |
| セシリィ | メルクリア様に会ったら、伝えてもらえますか ?いつか会いに行くから、その時にはいっぱいお話しましょうって。 |
| ソフィ | わかった。セシリィが……友達が会いたがってるって、伝えるね。 |
| セシリィ | はい、お願いします ! |
| ソフィ | 行こう、アスベル、リチャード。 |
| 二人 | ああ。 |
| マーク | さて、セシリィも回収したし、一度戻るか ? |
| フィリップ | そうだね。それじゃイクス、僕たちは―― |
| アニー | イクスさん ! イクスさんはいますか ! ? |
| マーク | なんだよさっきから。賑やかなアジトだなぁ。 |
| ミリーナ | どうしたの二人とも、そんなに慌てて。 |
| ジュード | 落ち着いて聞いて。――ファントムの意識が戻った。 |
| 一同 | ええっ ! ? |
| アニー | 今、アトワイトさんが診ています。一緒に来てください。 |
| ファントム | ……イク……ス……、ミリ……ナ……。 |
| イクス | 本当に目が覚めたのか……。 |
| アトワイト | あなたたちを見てしゃべっているわけではないの。さっきから同じことを呟いているから明確な意識はないと思うわ。 |
| ミリーナ | どうして目覚めたのかしら……。何かきっかけでもあったんですか ? |
| アトワイト | いいえ。わからないの。突然目覚めた……それだけよ。 |
| フィリップ | これは……そんな……。 |
| マーク | どうした、フィル。 |
| フィリップ | リーパ……ファントムからダーナの力を感じるんだ……。 |
| Character | 13話【3-14 仮想鏡界3】 |
| マークⅡ | 何が同盟だ。デミトリアスめ、アタマ沸いてんな ! ? |
| アステル | まあまあ。何にしろ、全員無事で何よりだよ。 |
| メルクリア | ……のう、リヒターわらわは義父上と話していて恐ろしくなった。まるで話が通じぬ気がしたのじゃ。 |
| メルクリア | もしや、わらわも以前は義父上と同じだったのか ? |
| リヒター | ……お前はもう違う。気づいたんだからな。 |
| メルクリア | やはりそうか……。皆がわらわから離れていったのもよくわかる。 |
| メルクリア | しかし、いつから義父上はあのように……。 |
| バルド | メルクリア様、少し休まれては。デミトリアス陛下やルキウスのことで酷くお疲れになったでしょう。 |
| メルクリア | いや、心配は無用じゃ。話の腰を折ってすまなかった。バロールの話を進めてくれ。 |
| ジュニア | うん。今回のコーキスとバロールの記憶との接触は一応成功といっていいと思う。コーキスの魔眼も落ち着いてるみたいだしね。 |
| コーキス | ああ。制御できそうだって言われた。けど、あれがもう一度できるかな……。 |
| アステル | 大丈夫。コーキスの魔眼の力については僕も研究を進めておくから。何でも話して ! |
| コーキス | ありがとな、アステル様。 |
| リヒター | しかし……今回の潜入で思い知らされたな。俺たちは圧倒的な戦力不足だ。 |
| ナーザ | そうだな。デミトリアスとは完全に決別した。今後は更に厳しい戦いになる。 |
| バルド | 協力者が必要、ということですね。 |
| コーキス | あのさ……俺が言うのもあれだけどマスターや救世軍とは仲間になれないのか ? |
| ナーザ | 我々は、セールンドの鏡士とも救世軍とも思想が違う。 |
| ナーザ | 時に共闘もあるだろうが決して同志ではない。境界を見誤ると後悔することになる。鏡精、お前自身もな。 |
| コーキス | う……わかったよ。とにかく、即戦力になる協力者を見つけないといけないんだよな。 |
| ジュニア | うん。やっぱり強さで言うと鏡映点の人たちだろうけど、そう簡単には見つからないよね。 |
| マークⅡ | お、それなら俺、鏡映点っぽい奴がいるって噂を調査中に聞いてるぜ。 |
| ナーザ | どんな奴だ、詳しく聞かせろ。 |
| マークⅡ | 確かテセアラ領の救世軍の地上部隊にいるのがどうも鏡映点らしいってさ。 |
| バルド | それは、すでに救世軍のお仲間なのでは ? |
| マークⅡ | それが違うらしいんだよな。俺も詳しくは聞いてねえからちょっと確認に行ってくるわ。 |
| コーキス | あのさ、その仕事、俺にやらせてくれないか ? |
| マークⅡ | お前が ? |
| コーキス | ここでアステル様やジュニア様の難しい話聞いてても俺じゃあんまり役に立ちそうにないし。手伝うったって、何していいか、わかんねえからさ。 |
| コーキス | 頭使うより、外で仲間集めの方が俺には向いてると思うんだけど。 |
| ナーザ | なるほど……。方々へ行くのなら落ち着かない貴様向きの仕事かもしれん。 |
| ナーザ | ではコーキス、お前には鏡映点捜索の任務を与える。 |
| ナーザ | ただし、くれぐれも帝国の監視には気をつけろ。いいな。 |
| コーキス | わかったよ。ボス。 |
| メルクリア | ボス ? なんじゃ、その呼び方は。 |
| コーキス | 任務を与えられたからさ。今の俺は、仮だけどナーザ将軍の部下みたいなものってことだろ ? |
| メルクリア | ふむ……。なれど兄上様は高貴な御方故―― |
| コーキス | それに、マスターと同じ顔だからなんか間違えて呼びそうなんだよ。俺のマスターはマスターだけだ。 |
| コーキス | だからナーザ将軍のことは、ボスって呼ぶ。 |
| メルクリア | 鏡精とはそういうものなのかのう……。よいのですか、兄上様。 |
| ナーザ | ……好きにしろ。 |
| コーキス | よっし。了解、ボス ! |
| Character | 14話【3-15 セールンド山 調整施設】 |
| グラスティン | そうか、交渉は決裂したか。 |
| デミトリアス | ああ……残念だよ。 |
| デミトリアス | ナーザ将軍とコーキスがこちらにつけばすぐにでもバロールの根源に到達できただろうに……。上手くはいかないものだ。 |
| グラスティン | どうでもいいだろう、そんなこと。だいたい、奴らと手を組むなんて最初から計算には入れていない。 |
| グラスティン | むしろ決裂したのならこちらにとって都合がいいじゃないか。ヒヒヒヒッ。 |
| デミトリアス | どういう意味だ。 |
| グラスティン | ……そもそもこの計画では、最初のイクスのレプリカを使って、バロールを甦らせる手筈だった。 |
| グラスティン | だが、バロールの根源に近づくとローレライの存在とクロノスの力にぶつかって根源まではたどり着けなかった。 |
| グラスティン | やはり最初のイクスの死体が必要だとはわかったがナーザに味方でいられたら、お優しい陛下は非情な手段をとりきれなかっただろう ? |
| グラスティン | ナーザと敵対した今なら遠慮なく奴らを叩いて死体を回収できるよなぁ ? |
| デミトリアス | だが…………、いやそれもやむなし、か。 |
| グラスティン | ヒヒヒヒ、よし、決まりだな。 |
| グラスティン | となると、こちらの情報を渡した連中にもそろそろ成果を出してもらわないとなぁ。 |
| デミトリアス | 心配せずとも、彼らは非常に優秀だ。もうすぐ吉報が届くだろう。 |
| グラスティン | そうあって欲しいねぇ。ヒヒヒッ……。 |
| テレサ | テレサ・リナレスです。アルトリウス様の召喚に応じ参上いたしました。 |
| 帝国兵β | 奥へ。アルトリウス様がお待ちだ。 |
| テレサ | ……はい。 |
| 帝国兵β | アルトリウス様。テレサ・リナレスが参りました。 |
| アルトリウス | 通せ。 |
| テレサ | お呼びでしょうか。アルトリウス様。 |
| アルトリウス | ……表情が硬いな。何があった。 |
| テレサ | ……申し訳ありません。アルトリウス様に命じられたオリジンの捜索が難航しております。 |
| テレサ | 何ひとつ良い報せが出来ぬままこの館に足を踏み入れるのが心苦しく……。 |
| アルトリウス | そんなことか。生真面目なやつだ。 |
| アルトリウス | では、この情報はお前のためになるだろう。オリジンを引きずり出す方法がようやく判明した。それを伝えるために、今日は呼び寄せたのだ。 |
| テレサ | アルトリウス様…… ! 感謝いたします。それで、その方法とは。 |
| アルトリウス | オリジンを呼び出すにはナーザ、ダーナ、バロールの三柱の神の力が必要だ。 |
| アルトリウス | さらに、それらの神の力を内包する器も用意しなければならない。 |
| テレサ | 器、ですか。 |
| アルトリウス | その神々の力に適した人物がいる。アイフリードの関係者だ。 |
| テレサ | あの野蛮な海賊ではなく、このティル・ナ・ノーグのアイフリードのことですか ? |
| アルトリウス | そうだ。 |
| テレサ | しかし、私の知る限り、この世界のアイフリードははるか遠い過去の人物です。その子孫や血族をたどるということでしょうか。 |
| アルトリウス | そう難しく考えなくていい。 |
| アルトリウス | 情報によれば、鏡映点の中にも異世界のアイフリードの関係者がいる。それらが具現化された際の傾向も調査した。 |
| アルトリウス | 結果、その者たちはエンコードの影響を受けこの世界のアイフリードとしての性質を持つ可能性が高いという結論に至った。 |
| テレサ | では、その器となる鏡映点がいればオリジンは現れるのですね。 |
| アルトリウス | テレサ、お前はこれから鏡映点の中にいるアイフリードの関係者を捕らえよ。よい報告を期待している。 |
| テレサ | はい ! この任務、必ず遂行してご覧にいれます。 |
| テレサ | (確実にやり遂げなければ。オスカー……あなたのためにも…… !) |
| | to be continued |