| Character | 1話【4-1 アジト1】 |
| | 浮遊島アジト |
| ファントム | ……イ……クス……ミリーナ……。 |
| ミリーナ | ファントム……。 |
| フィリップ | 間違いない。やはりこの気配はダーナの力だ。どうしてファントムから……。 |
| マーク | どういうことだよ。こいつが目覚めたのと関係があるのか ? |
| フィリップ | わからない。心当たりもないし、理由だって……。 |
| ファントム | うっ…… ! |
| 全員 | ! ! |
| カーリャ・N | どうしたのでしょう。今までよりも苦しそうです。 |
| アトワイト | バイタルに異常が出てるわ。ファントムさん、わかりますか ? ファントムさん ! |
| ファントム | ……………………。 |
| アニー | 駄目です、反応がありません。このままでは、また昏睡状態に戻ってしまいます。 |
| イクス | フィルさん、まだダーナの力を感じますか ? |
| フィリップ | ああ。むしろさっきよりも強くなってる。 |
| ジュード | アニー、ちょっとごめん。瞳孔を診るからライトを―― |
| ファントム ? | …………あら、カワイイお顔。 |
| ジュード | ひっ ! |
| 全員 | ! ! |
| カーリャ | お、起きた ! ファントムが起きましたよ ! |
| ファントム ? | よかった、上手くいったみたい。悪くない目覚めね。 |
| フィリップ | リーパ…… ? |
| イクス | ……ジュード、離れて。何かおかしい。 |
| ジュード | わかってる。あなたは誰 ? |
| ファントム ? | お久しぶりね。可愛い坊や。確か、ジュードだったかしら。グラスティンの研究所を逃げ出した時以来 ? |
| ジュード | グラスティンの ? |
| ファントム ? | 忘れちゃったの ? 寂しいわ。 アトワイトもお久しぶり。 |
| アトワイト | あなた、もしかして……。 |
| フィリップ | ヨーランド……ですか ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ。騒がせてごめんなさいね。 |
| イクス | ヨウ・ビクエ !?それじゃ、ファントムが目覚めたのはあなたが身体を使っているからですか ? |
| ヨウ・ビクエ | そうみたい。 |
| アトワイト | みたいって、どういうこと ? |
| ヨウ・ビクエ | フィリップに連絡を取るためには魔の空域から精神体を飛ばして乗り移れる身体が必要だったのよ。 |
| ヨウ・ビクエ | 今回はダーナ様のお力を借りて身体を探したんだけどそのせいでダーナ様に近しい存在の彼に引き寄せられたみたい。 |
| フィリップ | そうでしたか……。 |
| アニー | ファントムさんが回復したわけじゃなかったんですね……。残念です……。 |
| マーク | それ、本気で言ってるのか ? |
| アニー | どういう意味ですか ? |
| マーク | こいつが何をしたか知ってるだろう。目覚めない方が都合がいいと思わねえのか ? |
| アニー | ……話は聞いています。でもわたしは、助けられる命は助けたい。 |
| アニー | それに、命に色はありませんから。 |
| フィリップ | …………。 |
| マーク | ……そうか。そいつは綺麗で正しい理屈だ。けど、俺はまだそこまで人間――いや、鏡精ができてないんでな。 |
| マーク | で、ヨウ・ビクエ。フィルに連絡ってのは ? |
| イクス | あの……俺たちは席を外したほうがいいかな。 |
| ヨウ・ビクエ | いいえ、むしろ居てくれて好都合よ。話が早く済むから一緒に聞いてちょうだい。 |
| ヨウ・ビクエ | あなたたち全員ティル・ナ・ノーグの三柱の神の話は聞いてるわね。 |
| イクス | はい。ダーナ神と、ナーザ神、バロール神ですね。 |
| ヨウ・ビクエ | 帝国が、その神の一人であるナーザ神の復活を進めているわ。 |
| 全員 | ! ! |
| ヨウ・ビクエ | あなたたちには、その阻止をお願いに来たの。 |
| Character | 2話【4-2 アジト2】 |
| イクス | ナーザ神の復活って……それが帝国の目的だったんですか ? |
| ヨウ・ビクエ | それだけではないわ。まずは順を追って話しましょう。 |
| ヨウ・ビクエ | 帝国は今、ナーザ神、ダーナ神、バロール神の『三柱の復活』を目論んでいるわ。 |
| ヨウ・ビクエ | そのために、神に繋がるものを手に入れようとしている。 |
| ヨウ・ビクエ | まずはダーナ様に関してだけど以前の精霊の封印地での戦いでダーナ様の心核の欠片が奪われてしまったわ。 |
| カーリャ | 欠片とはいえ、神様本人の心核なんて一番大事なものを持っていかれちゃったんですね。 |
| ヨウ・ビクエ | そうなのよ。そして次にバロール神。バロールの力は―― |
| イクス | もしかして俺……ですか ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ。彼らはバロール神の力を手に入れるためにその血を引き継ぐ、あなたを狙ってくる可能性が高い。 |
| カーリャ・N | 冗談ではありません !また『イクス様』を利用するなんて ! |
| ミリーナ | そんなことさせない。イクス、絶対に……絶対にあなたを守って見せるから。 |
| イクス | ありがとな、二人とも。 |
| イクス | けど……帝国には元々最初の俺の遺体があったんだからすでにバロール復活に繋がる何かを持っていそうな気もするけど……。 |
| ヨウ・ビクエ | ええ。その可能性もあるわ。けれど、あなた自身のことも警戒しておくに越したことはないと思うのよ。 |
| イクス | これは……ナーザ将軍にも知らせた方がいいのか……。 |
| イクス | ――あ、いや。そうか。ナーザ将軍で思い出した。神様の方のナーザに繋がる人も俺みたいに狙われるんじゃありませんか ? |
| ヨウ・ビクエ | その通りよ。これがまた厄介なところなんだけど……。 |
| ヨウ・ビクエ | フィリップ、ナーザ神がアイフリードだということはイクスたちに伝えてあるわね ? |
| フィリップ | はい。あっ……そうか ! 帝国は鏡映点を…… ! |
| ヨウ・ビクエ | 気づいたみたいね。帝国は、この世界のアイフリードと近しい性質を持った、『異世界のアイフリード』の血族を使うんじゃないかと思うの。 |
| ミリーナ | だとすれば、狙われるのはチャットとパティだわ。早く知らせなくちゃ。 |
| フィリップ | 今はどこに ? |
| イクス | 確認します。それといつでも会議が開けるようにみんなに連絡もしないとな。 |
| アニー | イクスさんたちはこのまま話を続けてください。わたしが二人の安否確認の手配をしますから。 |
| ジュード | 僕は、今の話を共有できるようみんなに通達するよ。会議の準備も進めておくね。 |
| イクス | ありがとう、助かるよ。こっちが長引きそうだったら連絡するからその時は各班のリーダーたちで先に始めてくれ。 |
| ジュード | わかった。それじゃアトワイトさん、医務室をお願いします。 |
| アトワイト | ええ、任せて。 |
| ヨウ・ビクエ | アイフリードの件は、もっと早く知らせてあげられたら良かったんだけど……。 |
| ヨウ・ビクエ | 魔の空域にいると、なかなか今までどおりには動けないのよ。ごめんなさいね。 |
| イクス | いいえ。俺たちだけじゃ、ここまでの情報を掴むことはできませんでした。感謝しています。 |
| ヨウ・ビクエ | ふふっ、こうして改めて話すのは初めてね、イクス。なかなかの好青年じゃない。 |
| イクス | そ、そうですか ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ。素朴そうなところも可愛いし何だか頭をなでたくなっちゃう。 |
| ミリーナ | さすがヨウ・ビクエですね。イクスの魅力をお見通しだなんて。 |
| イクス | ミリーナ、真顔で言うことじゃないぞ……。 |
| ヨウ・ビクエ | そういえばこの身体……ファントムのことだけど彼を精霊の封印地まで連れてきてくれない ?治療を施すから。 |
| フィリップ | 治療 ? できるんですか ! ? |
| ヨウ・ビクエ | 多分ね。それに、今後もあなたたちと連絡を取るためには『ファントム』の存在が役に立ってくれるはずよ。 |
| マーク | ……それは、こいつがフィルと繋がっている存在だからか ? |
| ヨウ・ビクエ | さすが、よくわかっているわね。魔の空域から連絡を取るには、ダーナ様に近しいフィリップを経由するのが一番なの。 |
| ヨウ・ビクエ | そのフィリップと繋がっている存在が魔の空域にいてくれれば、こちらも助かるのよね。 |
| フィリップ | ……イクス、ファントムは救世軍で預かるよ。これから彼を連れて、精霊の封印地に行ってくる。 |
| イクス | わかりました。それじゃ俺たちはアイフリードの件も含めて今後の動きを詰めておきます。 |
| フィリップ | マーク、ケリュケイオンへ連絡を入れて受け入れ態勢を整えておいてくれ。 |
| マーク | ……了解。搬送準備は頼んだぜ。 |
| アトワイト | ところで、ヨーランドさんはこの身体に入ったまま ?それなら搬送の仕方を変えるけど。 |
| ヨウ・ビクエ | いいえ、私はファントムに身体を返して先に精霊の封印地に行くわ。 |
| アトワイト | そう。いつかあなた自身の身体でゆっくり話ができるといいわね。 |
| ヨウ・ビクエ | そうできたら楽しいでしょうね。そんな日が来たら、一晩中おしゃべりにつきあってもらうわよ ? |
| アトワイト | ええ、喜んで。 |
| ヨウ・ビクエ | それじゃフィリップ、待ってるわね。 |
| カーリャ | あ……ファントムが眠りました。 |
| アトワイト | ヨーランドさんが出ていったのよ。大丈夫、容体は落ち着いているから。それでは準備を始めましょう。 |
| フィリップ | リーパ……。 |
| Character | 3話【4-3 アジト3】 |
| カーリャ・N | (良かった、このゲート周辺には誰もいない。これなら気づかれないうちに浮遊島を出られる) |
| カーリャ・N | (今ならまだ、イクス様も小さいミリーナ様もフィリップ様の見送りをしているはず……) |
| カーリャ | 先輩、どこに行くんですか。 |
| カーリャ・N | ! !カーリャ ! ? 小さいミリーナ様まで…… ! |
| ミリーナ | ネヴァン……。 |
| カーリャ・N | ……フィリップ様の見送りはどうしたのですか ?早くしないと行ってしまわれますよ。 |
| ミリーナ | いいの。今はネヴァンと話がしたいから。 |
| カーリャ・N | すみませんが、できれば後にしてください。今は調査に向かわなければなりませんので。 |
| ミリーナ | 何の調査 ? |
| カーリャ・N | それは……先ほどのヨウ・ビクエ様の話の裏付けも兼ねて帝国の動向を調べるため……です。 |
| カーリャ・N | アイフリードの血族の方々や、イクス様の安全にも関わります。ですから、そこを通していただけますか ? |
| ミリーナ | 理由はわかったけど、少しだけ私につきあって。最近のネヴァンは調査を理由にすぐにいなくなってしまうんだもの。 |
| カーリャ・N | ……すみませんが、急ぎますので。 |
| カーリャ | おーっと、他のゲートには行かせませんよネヴァン先輩っ ! |
| カーリャ・N | どきなさい、小さいカーリャ。 |
| カーリャ | どきません ! いいかげん先輩も『ミリーナ様』とちゃんと向き合ったらどうですか ! |
| カーリャ・N | ! ! |
| ミリーナ | ネヴァン、言ったでしょ。私たちはゲフィオンに……最初のミリーナに向き合わなきゃいけないって。 |
| カーリャ・N | ……はい。 |
| ミリーナ | あなたの知っていることを聞かせて。話したくない訳があるなら、ちゃんと言って欲しいの。 |
| カーリャ・N | …………。 |
| ミリーナ | 前に、ゲフィオンにはイクスに関する記憶を託されたと言っていたわね。 |
| ミリーナ | もしかしたらそこにティル・ナ・ノーグを救う手掛かりがあるかもしれない。 |
| ミリーナ | なぜ、ゲフィオンがあなたを切り離したのかそうしてまで託された記憶が何なのか私には知る必要があるんじゃないかしら。 |
| ミリーナ | ミリーナの記憶を見られるのはミリーナだけなんでしょう ? |
| カーリャ | 先輩、観念しちゃったらどうですか ?こうなったミリーナさまは引き下がりませんよ。 |
| カーリャ・N | ……そうですね。よく知っています。それでも今はまだ……。 |
| リヒター | 伝えたいことがあるなら、伝えておけ。 |
| カーリャ・N | ……いえ、わかりました。お話ししましょう。 |
| ミリーナ | ありがとう、ネヴァン ! |
| カーリャ・N | ここで話さなければ、怒られてしまいそうですから。 |
| カーリャ | え ? 誰にですか ? |
| ミリーナ | カーリャ、いいから。――それじゃネヴァン、お願い。 |
| カーリャ・N | これからお話しするのは私がまだミリーナ様――ゲフィオン様の鏡精だった時のことです。 |
| カーリャ・N | ゲフィオン様、こちらにいらしたのですね。大事な用件があるとのことですが何でしょう。 |
| ゲフィオン | ごめんなさい、ちょっと待っててね。すぐに終わらせるから。 |
| ゲフィオン | それと、今はミリーナでいいわよ。ここには誰もいないから。 |
| カーリャ・N | またカレイドスコープのチェックですか ? |
| ゲフィオン | もうすぐアイギス計画が本格的に始動するでしょう ?なるべく調整は丁寧にしておきたいの。 |
| カーリャ・N | ……本当にアイギス計画を行うのですね。 |
| ゲフィオン | ええ。それがこのティル・ナ・ノーグを救う唯一の方法だもの。 |
| カーリャ・N | 私は……まだ納得していません。 |
| ゲフィオン | ふふっ、せっかく世界が救われるというのにそんな顔されたら困ってしまうわ。 |
| ゲフィオン | 美味しいお菓子をごちそうしたら納得してもらえる ? |
| カーリャ・N | 冗談はやめてください ! この計画は最終的にミリーナ様が人体万華鏡に……世界のために犠牲になるものでしょう ? 喜べるはずがありません ! |
| カーリャ・N | それに、イクス様を具現化させるという話は今もどうかと思っています。 |
| ゲフィオン | …………。 |
| カーリャ・N | イクス様は、亡くなったイクス様ただ一人です。失礼ですが、あの方を具現化するのは、ミリーナ様やフィリップ様の感傷に過ぎないのではありませんか ? |
| ゲフィオン | …………そうね。あなたの言うとおりだわ。 |
| カーリャ・N | だったら―― |
| ゲフィオン | だけどもう決めたことなの。私は私のエゴを貫き通すわ。 |
| ゲフィオン | 相手の気持ちなんて振り返ろうともしない。そういう、ズルくて嫌な人間なの。 |
| カーリャ・N | そんなことありません! ミリーナ様は魔鏡戦争のことを心から悔いておいででした。私はそれをずっと横で―― |
| カーリャ・N | ――え、ミリーナ様…… ? まさか、この術は ! |
| ゲフィオン | もう少しだけ、もう少しだけと思いながら先延ばしにしてしまった。あなたと一緒にいたくて……。 |
| カーリャ・N | まさか、用件って……待ってください、ミリーナ様 ! |
| ゲフィオン | あなたには、私に何かあった時のために『記憶』を託しておくわ。だけど、それを見られるのは『ミリーナ』だけ。 |
| カーリャ・N | 嫌です、ミリーナ様 !お願いですから術を止めてください ! |
| カーリャ・N | 私を……カーリャを切り離さないで ! |
| ゲフィオン | 責任を負うのも、死の砂嵐で苦しむのも私一人でいい。あなたを巻き込みたくはないの。 |
| ゲフィオン | 今までありがとう、私の鏡精、カーリャ。あなたは生きて…… !ずっと大好きよ……。 |
| カーリャ・N | ミリーナ様――――っ ! |
| Character | 4話【4-4 アジト4】 |
| ミリーナ | …………。 |
| カーリャ | 辛かったですよね、先輩……。 |
| カーリャ・N | ……ゲフィオン様が私を切り離したのは人体万華鏡になる際に、鏡精である私を巻き込まないようにするためだと思います。 |
| ミリーナ | そうね……。私だってそうすると思う。 |
| カーリャ | やめてください ! ミリーナさまから切り離されたらと思うと、怖くて悲しくてどうにかなっちゃいそうです……。 |
| カーリャ・N | ほとんどの鏡精はそうですよ。私たちはマスターの心から生まれたのですから。 |
| カーリャ・N | でも、そんな存在だからこそ私はゲフィオン様の記憶を預かることができたのです。 |
| カーリャ・N | そして、ゲフィオン様の言葉どおりなら小さいミリーナ様であれば私の中から記憶を引き出すことができるはずです。 |
| ミリーナ | だったら、私はいつでも―― |
| カーリャ・N | ですが、私は記憶を引き出すことには反対です。 |
| ミリーナ | どうして ? |
| カーリャ・N | ゲフィオン様の記憶を見るためには、私と小さいミリーナ様の心を繋ぐ必要があります。 |
| カーリャ・N | けれど、それを行ってしまうとゲフィオン様の心が、小さいミリーナ様の心に影響を及ぼす恐れがあるのです。 |
| カーリャ | どうなっちゃうんですか ? |
| カーリャ・N | お互いの心が作用しあって小さいミリーナ様か、あるいはゲフィオン様の心が消えてしまうかもしれません。 |
| ミリーナ | 心が消える…… ? |
| カーリャ | そ、そんなの絶対に駄目ですっ !反対 ! 断固反対っ ! |
| ミリーナ | 落ち着いて、カーリャ。 |
| カーリャ | ネヴァン先輩だって、ゲフィオンさまの心が消えたら嫌でしょう ! ? |
| カーリャ・N | もちろんです。そうさせないために別の手段で記憶を見る方法を探していたのです。 |
| カーリャ・N | 解決策がみつかるまで小さいミリーナ様とは、ゲフィオン様の話をしないつもりでいました。 |
| ミリーナ | 何故なの ? ちゃんと話してくれれば私だって……。 |
| カーリャ・N | あなたは『ミリーナ』様です。ご自身を犠牲にしてでも記憶を引き出そうと考えるでしょう。 |
| ミリーナ | …………。 |
| カーリャ・N | 私はもう、『ミリーナ』様が苦しむ姿は見たくありません。 |
| カーリャ | 先輩……、だからずっと話し合いを避けていたんですね。 |
| カーリャ・N | すみません。私が至らないばかりにあなた方を煩わせることになって……。 |
| ミリーナ | いいえ、謝るのは私の方よ。ネヴァンはずっと私たちのために頑張ってくれていたのね。 |
| ミリーナ | ありがとう。そして『ミリーナ』のこと一人で抱えさせてごめんなさい。 |
| カーリャ・N | そんな……私は……。 |
| ミリーナ | でも、もういいの。これからはみんなで一緒にどうすればいいのか考えましょう。 |
| ミリーナ | あなたは一人じゃないわ、ネヴァン。ほら、こんなふうに―― |
| カーリャ・N | あ……。 |
| ミリーナ | あなたの手を取る人がここにはたくさんいるんだから。 |
| カーリャ・N | (温かい手……私のミリーナ様と同じ……) |
| カーリャ・N | ……わかりました。改めてお願いします。 |
| カーリャ・N | 私と一緒に記憶を取り出す手段を探してください。 |
| Character | 5話【4-5 アジト5】 |
| イクス | ……そうだったのか。話してくれてありがとな、ネヴァン。 |
| カーリャ・N | イクス様にまでご心配をおかけしてすみません。 |
| イクス | でも難しいよなぁ。ネヴァンの中にあるゲフィオンの記憶を安全に引き出す方法か……。 |
| イクス | ミリーナがゲフィオンの影響を受けないようにすればいいんだよな ? |
| カーリャ・N | ええ。でもお二人は同一人物ですし水と水を混ぜるようなもので……。 |
| イクス | 最悪、心を失う……か。 |
| ミリーナ | でも、何事もなく成功する可能性だってあるのよね ? |
| カーリャ・N | 否定はしませんが、リスクの方が高いかと。 |
| カーリャ | あっ ! 心の中なら、シングさまたちの力を借りるのはどうですか ! ? |
| イクス | ソーマ使いの力か。心には入れるけど異物を排除したり治したりするわけじゃないからなぁ。 |
| カーリャ | むむむ……そうですか。難しいですね……。 |
| カーリャ | はぁ、カーリャもミリーナさまのお力になりたいのに……。 |
| ミリーナ | 何言ってるの。こうして考えてくれているじゃない。カーリャは十分、私の力になってくれているわ。 |
| カーリャ・N | 小さいカーリャ、自信を持ちなさい。あなたは小さいミリーナ様の心の一部なのですから。 |
| イクス | うーん……。ネヴァンとカーリャは二人のミリーナの心の具現化なんだから、二人の力があれば何とかなりそうなのにな……。 |
| イクス | 心の一部が具現化されてるんだから心が混ざり合ったり、消えてしまうこともなくなりそうな気もするんだけど。 |
| イクス | カーリャっていう存在が二人のミリーナの心の防護壁になるっていうか……。 |
| カーリャ・N | ……そうですね。一時的に小さいミリーナ様の中にカーリャを戻し、ミリーナ様の中でカーリャが意識を持てば……心を守れるかも知れません。 |
| カーリャ | 本当ですか ! ? だったらカーリャも頑張りますよ !ミリーナさまの心は絶対に守ります ! |
| ミリーナ | ありがとう、カーリャ。ネヴァンもありがとう ! |
| カーリャ・N | いえ……。もちろん、検証は必要ですが。 |
| イクス | ひとまずとっかかりが見つかって良かったよ。けど、本当にこの案で大丈夫かな。何か引っかかる気も……。 |
| カーリャ・N | 方向性は間違っていません。鏡精を使うのはいい案だと思います。 |
| ミリーナ | でも、カーリャを私の中に戻すって聞いた時にイクスは渋い顔をするかと思ってたわ。 |
| カーリャ | ですね。コーキスを心の中には戻したくないってこだわりがあったみたいですし。 |
| イクス | あれは……俺自身鏡士の常識をよくわかってないから何となくああ感じただけなんだよ……。 |
| イクス | ミリーナやカーリャみたいな関係が普通の鏡士と鏡精なんだってことはちゃんと理解してるよ。 |
| カーリャ | それなら、このアイディアには文句なしですね ! |
| カーリャ・N | (……確かにこの方法ならば、小さいミリーナ様の心は小さいカーリャが守れる) |
| カーリャ・N | (けれど、鏡精だった私を切り離したゲフィオン様には守る者がいない。もしも想定以上の強い影響が及べば心が消えてしまう) |
| カーリャ・N | (そもそも、何故ゲフィオン様ほどの力を持ちながらこんなリスクのある方法をとったのだろう) |
| カーリャ・N | (…… !まさか、それこそがゲフィオン様の望み…… ?) |
| カーリャ | 先輩、どうしたんですか ?何か気になります ? |
| カーリャ・N | ……いいえ、その方法でやってみましょう。 |
| カーリャ | …………。 |
| ミリーナ | ええ。ここから先はフィルが帰って来てからね。 |
| イクス | それにアイフリードの件もみんなと話し合わないと―― |
| イクス | ――っと、ジェイドさんから通信だ。ジェイドさん、どうしました ? |
| ジェイド | あなたとミリーナに話があります。今はどちらに ? |
| イクス | 俺の部屋ですけど。あ、ミリーナも一緒です。 |
| ジェイド | それは丁度よかった。今からアッシュと向かいたいのですが都合はいかがですか ? |
| イクス | アッシュさんと ? あの、何かあったんですか ?確かディストさんの取り調べ中ですよね。 |
| ジェイド | おや、今ここで聞いてしまいますか ?後悔しても知りませんよ ? |
| イクス | ど、どういう意味ですかそれ……。 |
| ジェイド | はっはっは、冗談はさておき。私は伺ってもいいのでしょうか。 |
| イクス | あ、はい。もちろんです。 |
| ジェイド | ありがとうございます。では後程。 |
| イクス | なんか、用件をはぐらかされたような……。 |
| カーリャ | ただイジワルしたいだけじゃないですか ?悪いメガネだし。 |
| イクス | はは……、カーリャ、ジェイドさんとは相性が悪いな。 |
| ミリーナ | 私は、カーリャとジェイドさんの相性はいいと思うんだけど。だってカーリャは私が好きでしょう ? |
| カーリャ | 大好きですけど、なんでそれがジェイドさまと関係あるんですか ! まったくさぱらんです ! |
| イクス | まあまあ。とりあえずジェイドさん待ちだな。 |
| カーリャ・N | …………。 |
| ミリーナ | ネヴァン、大丈夫 ? 顔色が悪いけど。 |
| カーリャ・N | え……そうですか ? |
| ミリーナ | ええ。少し休んだら ? |
| カーリャ・N | でも、ジェイド様のことも気になりますし。 |
| カーリャ | メガネの相手はカーリャたちで十分ですよ。こう来たら ! こうして ! こうです ! |
| イクス | やる気満々だな……。ジェイドさん、話しに来るだけなのに……。 |
| ミリーナ | あれじゃ逆に喜ばせてしまいそうね。 |
| イクス | とにかく、本当に無理するなよ、ネヴァン。その……ゲフィオンのこととか色々と辛い話をさせたからさ。 |
| カーリャ・N | お気遣いありがとうございます。では、アジトの見回りも兼ねて少し気分転換をしてきますね。 |
| ミリーナ | ネヴァン……少しでも息抜きができるといいんだけど。 |
| イクス | そうだな。それにしてもジェイドさんの話ってなんだろう。 |
| Character | 6話【4-6 アジト6】 |
| リフィル | ――みんな、今の説明でナーザ神とアイフリードの話は理解できて ? |
| リフィル | リーダーが不在で代理の人もいるでしょうけれどここに出席してる者が自分の班のメンバーに伝えるのだから、いい加減では駄目よ。 |
| ライフィセット | 大丈夫。すごくわかりやすかったから。 |
| レイア | うん。さすがリフィル先生だね。スパーダはどう ? |
| スパーダ | ギ、ギリギリだな……。つまり、ユーリんとこのチビとリッドのとこのチビを敵に渡さなきゃいいんだろ ? |
| チャット | チビチビ言わないでください ! |
| リッド | ったく、やっとフォッグやレイスを取り戻したってのに、今度はチャットかよ……。 |
| チャット | ボクだって不本意です。誇り高きアイフリードの子孫がこそこそ隠れなければいけないなんて。 |
| チャット | ですが、状況は理解しました。しばらくは浮遊島にこもってキール研究室のサポートにでも回ります。 |
| アリーシャ | 念のため島の警備を強化しておこう。万が一、アジト内で襲われたとあっては浮遊島警備部の名折れだ。 |
| エレノア | そうですね。しばらくはチャットに護衛を付けるのもいいかもしれません。 |
| ヴェイグ | 後はパティか。今はどこにいるんだ ? |
| リフィル | 彼女はカロル調査室だから、魔核の調査よ。フレンたちが同行していると聞いているわ。 |
| ジーニアス | ねえ、さっき姉さんたち、ユーリやパティと魔鏡通信が繋がらないって話してたよね。あれ本当 ? |
| リフィル | ええ。実験的に導入している魔鏡通信文も送ったけれど、その返信もないの。 |
| リフィル | まあ、通信文に関しては通知音を切っていたらわからないだろうけれど……。 |
| マルタ | 後は定時連絡を待つしかないのかな。ちょっと不安だね。 |
| ヒューバート | 魔核の調査ならば、領主の館周辺は確実に彼らの調査対象になりますよね。 |
| ヒューバート | 地上に降りているメンバーに周辺の捜索を任せてはどうでしょう。 |
| リフィル | ええ。丁度、ルークたちがオールドラント領へ向かっていたからパティと出会ったら保護してくれと伝えたわ。 |
| リフィル | それと、反帝国組織との情報交換に行ったカイルたちとも連絡が取れたからそちらにも捜索を頼んであります。 |
| チェスター | オールドラント領と、ファンダリア領か。他の領地でも、近くにいる奴に頼まねえとな。 |
| ヒューバート | でしたら、こちらで捜索隊を派遣した方が早いかもしれませんね。 |
| リフィル | そうね。異論がある人は挙手を。 |
| リフィル | なし……と。では決定します。 |
| ユリウス | 俺の方からもひとつ。領主と従騎士についてだ。 |
| ユリウス | 現在、領主と従騎士が不明なのはアレウーラ領、リーゼ・マクシア領ミッドガンド領。 |
| ユリウス | 従騎士が不明なのはテルカ・リュミレース領。 |
| ユリウス | グリンウッド領は領主が不明。訂正はあるか ? |
| マルタ | ……訂正じゃないけど、テセアラ領は従騎士だったパパ……ブルートが領主代理で執務を行っているそうです。 |
| チェスター | 家族が利用されてる状態はたまらねぇよな……。気をしっかり持てよ、マルタ。 |
| マルタ | ありがとう。でも大丈夫。この間リーガルさんを助け出したときにパパの心核も取り戻したし。 |
| マルタ | それに、みんなそれぞれ縁のある人たちが巻き込まれてるから、大変だと思う。 |
| ユリウス | ……その通りだな。 |
| ユリウス | ところで領主と従騎士が不明な領地は該当する人物を調査してもらっているはずだがしばらくは控えたほうがいいかもしれない。 |
| カイウス | えっ ! ? |
| ユリウス | 贄の紋章の件もあるし、危険性も増しているからな。 |
| セネル | ……そうだな。 |
| カイウス | そんな……。 |
| ユリウス | カイウス、そう気を落とすな。君たちの安全のためでもあるんだ。 |
| レイア | 仕方ないよ。カイウスのところは領主か従騎士かもって人にたどり着いてたんでしょ ?フォレストさんだっけ ? |
| カイウス | ああ。帝国にいるらしいんだ……。 |
| レイア | あと一歩って思ってたら、そりゃガックリくるよね。 |
| ガイアス | そうだな。未だに両方とも判明しない俺たちの方が幾分諦めもつくというものだ。 |
| カイウス | 危険でも、出来れば早く助けたかったよ……。ルキウスも帝国に捕まったままだし……。 |
| スレイ | そうだよな……。大事な人が苦しんでるって思ったら少しくらい無茶してもって気持ちになるの、わかるよ。 |
| ミクリオ | スレイ……。今は無茶するときじゃない。 |
| スレイ | うん、それもちゃんとわかってるから、大丈夫。カイウス、みんなで協力して頑張ろう ! |
| カイウス | ああ。ありがとな、スレイ。 |
| ベルベット | ……判明した領主や従騎士が『助けるべき相手』だったらいいけど。 |
| ライフィセット | ベルベット、それって……。 |
| ベルベット | 何 ? |
| ライフィセット | あ……ううん、何でもない……。 |
| ユリウス | 納得してもらえたようだな。では、捜索隊の派遣メンバーを決めよう。決まったら、イクスたちに報告する。 |
| Character | 7話【4-7 ファンダリア領 森】 |
| フレン | ――この辺りなら、もう大丈夫か………。 |
| エステル | はあ……はあ……フレン、帝国の兵士は ? |
| フレン | ご安心を。今のところは追ってきていません。 |
| エステル | 驚きました。こんな森の中にまで兵がいるなんて。 |
| パティ | どこからともなく出てきおって。フナムシみたいな奴らなのじゃ。 |
| フレン | それにしても妙だな。どこも警戒が厳しくなってはいるけど今のファンダリア領は異常だ。 |
| エステル | 何か理由がありそうですけどこの状況で調査の続行は無理でしょうね。 |
| フレン | ええ。ユーリには今の件だけ報告して一旦、引き揚げましょう。どうせあいつも浮遊島に戻っているはずですから。 |
| エステル | そういえば、イクスに報告があると言ってましたね。 |
| パティ | ではうちがユーリに連絡するのじゃ。先刻のユーリへの通信はエステルに譲ったからの。 |
| エステル | 譲ったって、パティが連絡しろって言ったんですよ ? |
| パティ | それは作戦じゃ。会えない時間が長いとさらに思いを募らせるじゃろ ?今頃ユーリの頭は、うちのことでいっぱいなのじゃ。 |
| フレン | はは、そんな可愛げはないと思うよ……。 |
| パティ | フッ、まだまだじゃのうフレン。ならばしかと目に焼き付けるといいのじゃ。フレンもびっくりのラブラブ通信を…………ん ? |
| フレン | どうしたんだい ? |
| パティ | 魔鏡通信に通信文が来ているのじゃ。追われていて気づかんかったの。 |
| エステル | 通信文なんて珍しいですね。いったい何の連絡です ? |
| フレン | ――静かに、誰か来ます ! |
| テレサ | そこにいるのはわかっています。出てきなさい。 |
| エステル | 女性…… ? 一人のようですね。 |
| テレサ | そのまま隠れているのなら敵意があるとみなし攻撃します。 |
| パティ | 少なくとも味方ではないようじゃの。敵意がハリセンボン以上にチクチクなのじゃ。 |
| パティ | どうする。相手は一人、制圧も可能じゃが。 |
| フレン | いや……二人はそのままで。僕が彼女の気をそらすから、その隙に逃げるんだ。エステリーゼ様も、いいですね ? |
| テレサ | やっと出てきましたね。 |
| フレン | ……君は帝国の人間か ? |
| テレサ | 他にもいますね。出てきなさい。 |
| フレン | 話を聞いてくれ。そちらが危害を加えなければ、僕は一切手を出さない。 |
| テレサ | 交渉の余地はありません。言うとおりになさい。あと二人いるはずです。 |
| フレン | ……君は、何を焦っている ? |
| テレサ | っ ! ! ――かかりなさい ! |
| フレン | なにっ ! ? |
| 帝国兵β | はっ ! ! |
| フレン | 帝国兵 ! やはり君は―― ! |
| エステル | フレン ! わたしたちも戦います ! |
| パティ | こっちは任せるのじゃ ! |
| テレサ | …… ! |
| フレン | くっ ! 今までの兵士よりも強い…… ! |
| エステル | 倒しても起き上がってきます ! このままじゃ…… ! |
| テレサ | …………。 |
| パティ | せいっ ! ! |
| テレサ | ! ! |
| パティ | 高みの見物を決め込んで安心してたか ?油断大敵なのじゃ。 |
| テレサ | あなたもですよ。アイフリード。私を狙うのを待っていました。 |
| パティ | なんじゃと…… ! ? |
| テレサ | その子をこちらへ ! 早く ! |
| エステル | フレン ! あの人、撤退して行きま――……あっ ! |
| フレン | あれは、パティ ! ? |
| テレサ | 目標の少女は確保しました。残党が追跡できぬよう足止めなさい ! |
| 帝国兵β | はっ ! |
| フレン | 初めからパティを狙ってたのか ! ? |
| エステル | パティ、今いきます ! |
| エステル | きゃあっ ! |
| フレン | エステリーゼ様 ! くっ、これじゃ追うどころか……。 |
| カイル | ――爆炎剣 ! |
| ナナリー | 龍炎閃 ! |
| 帝国兵β | ぎゃああああっ ! |
| カイル | フレンさん、大丈夫 ! ? |
| ナナリー | 何の騒ぎかと思ってきてみりゃ……。あんたたち、ファンダリア領にいたんだね。 |
| ロニ | しかしなんだよ、この兵士の数は。よく二人だけで耐えてたな ! |
| リアラ | ええ、無事でよかったわ。 |
| エステル | いいえ、たった今、パティがさらわれたんです !追いかけないと ! |
| カイル | パティがここにいたの ! ? |
| ジューダス | しまった、遅かったか ! |
| ハロルド | なるほど、それでリビングドールβの兵士が大量投入されてんのね。ったく、用意周到だわ。 |
| フレン | 一体何の話を……。 |
| ジューダス | ここを突破するのが先だ。――行くぞ ! |
| Character | 8話【4-8 静かな平原】 |
| ナーザ | メルクリア、先を急ぎすぎだ。あまり離れるな。 |
| メルクリア | ですが兄上様、早く心核を受け取りに行かねばアスベルとやらの気が変わってしまうやもしれませぬ ! |
| バルド | 大丈夫です。敵対していたチーグルとローゲの心核をずっと大事に保管していた方々ですよ。今更そんなことは言い出しません。 |
| メルクリア | なんじゃ、お前は随分とセールンドの鏡士たちに肩入れするのう。 |
| バルド | やきもちですか ? ふふ、光栄ですね。 |
| メルクリア | うむ、やいておる。 |
| バルド | ! |
| メルクリア | ……なるほど、こう返せばお前の軽口を塞げるわけじゃな。兄上様のご助言どおりじゃ。 |
| ナーザ | よくやった、メルクリア。 |
| バルド | まったく、あなた方は……。 |
| ナーザ | だが、今のような戯言でなくお前のそうした発言を、本気で嫌悪する者もいる。今後は気を付けることだ。 |
| バルド | ……ローゲたちですね。 |
| メルクリア | そういえば、バルドとローゲは犬猿の仲と聞いた。また一緒になるが、よいのか。 |
| バルド | 慣れていますので。それに私は、ローゲを嫌ってはおりません。 |
| メルクリア | そうなのか ? |
| バルド | 私も、ローゲも、チーグルもあなた方を誇りに思い、仕える気持ちは同じですから。 |
| バルド | 中でも、ことさらローゲは愛国心が強かった。生前は、ビフレストを強き国たらしめんと尽力していたことも知っています。 |
| バルド | 彼のそんな所を、私は好ましく思っていました。……残念ながら、なかなか伝わりませんでしたが。 |
| メルクリア | そうか……。まあ、わらわに任せておけ。心核を受け取ったあかつきにはローゲたちによく言い含めてやろう ! |
| ソフィ | あ、来たよ。 |
| メルクリア | お前は、チーグル…… ! |
| リチャード | ……お初にお目にかかる。メルクリア皇女殿下。僕はリチャード。こちらはアスベル、そしてソフィだ。 |
| メルクリア | そうか……そうであったな。 |
| アスベル | それじゃ、用件を済ませよう。これがチーグルの心核、こっちがローゲだ。 |
| メルクリア | この心核が……。チーグル、ローゲ、二人とも虚無へと帰ったものとばかり……。 |
| アスベル | 受け取ってくれ、メルクリア。 |
| ナーザ | 待て。その前に聞かせてもらおうか。 |
| ナーザ | この心核を返しても、お前たちには何の利益にもならないはずだ。何故このようなことをする。 |
| アスベル | 利益は関係ない。俺たちはチーグルとの約束を果たしたいだけだ。 |
| メルクリア | 約束じゃと ? 貴様、あやつと何があった。 |
| アスベル | チーグルは、メルクリアが望んでいるはずだと言って自分からリチャードを解放してくれたんだ。そして人工心核に移った。 |
| メルクリア | ! ! |
| ソフィ | その時に、いつかローゲと一緒にメルクリアのところに返してくれってチーグルが言ってたの。 |
| メルクリア | それが約束……。 |
| アスベル | ああ。俺とチーグル……トルステン・ドンナーとの約束だ。 |
| ナーザ | そうか……、チーグルは貴様に名を教えたのか。 |
| バルド | ナーザ様、それほどチーグル――トルステンが信頼した相手です。十分な理由ではありませんか。 |
| ナーザ | そうだな。わかった。その厚意、ありがたく受け取ろう。 |
| アスベル | よかった ! これでやっと約束が果たせる。 |
| メルクリア | 受け取る前に、わらわも言わねばならぬことがあった。――ありがとう、アスベル。ソフィ。 |
| メルクリア | そして、リチャード。そなたには本当に済まぬことをした。ラムダのこともじゃ……。 |
| リチャード | ……アスベル、ラムダは何か言ってるかい ? |
| アスベル | いや……何の反応もない。 |
| リチャード | ……そうか。メルクリア皇女、君の気持ちはわかった。それだけ言っておこう。 |
| メルクリア | ……承知した。 |
| アスベル | それじゃ、手を出して、メルクリア。……確かに返したぞ。 |
| メルクリア | チーグル、ローゲ……よく戻って来たな。大儀であった。 |
| メルクリア | …………………… ?おかしいのう……。 |
| バルド | どうしました ? |
| メルクリア | 心核から二人の声がせんのじゃ。チーグル、ローゲ、返事をせぬか ! |
| ソフィ | メルクリアは心核の声が聞こえるの ? |
| メルクリア | 鏡士の技を使えばな。だが、この心核からは何の反応もない。兄上様、どういうことでしょう。 |
| ナーザ | ……恐らく、人工心核として肉体から離れた時間が長すぎたのかもしれない。 |
| ナーザ | 虚無にいた俺やバルドと違って人工心核から意志を伝える力も弱まっているようだ。 |
| メルクリア | では、もう二人とは話せぬのですか ? |
| ソフィ | それじゃメルクリアがかわいそう。何か方法はないの ? |
| メルクリア | ソフィ……。 |
| ナーザ | しばらく休ませつつ人工心核に魔鏡術でアニマを供給する必要がある。 |
| ナーザ | ただ、そのためには術者もかなりの力が必要となるが……。 |
| メルクリア | ならばその役目、わらわにお任せください ! |
| ナーザ | ……お前がやるならばビフレスト式魔鏡術をさらに磨かねばならない。それに人工心核の回復は負担が大きいぞ。 |
| メルクリア | 覚悟の上です。チーグルも、ローゲもわらわを見守り助けてくれた大切な臣下じゃ。 |
| メルクリア | 今度こそ、わらわの手で助けたいのです。 |
| ナーザ | そうか。ではお前に任せよう。 |
| メルクリア | はい ! 必ずや成し遂げてご覧にいれます。 |
| ソフィ | よかったね。頑張って、メルクリア。 |
| リチャード | もしも人工心核が回復したら僕もチーグルと話がしてみたいよ。 |
| メルクリア | ……承知した。 |
| バルド | では、我々はそろそろ参りましょうか。 |
| メルクリア | そうじゃな。吹雪にでもなったら厄介じゃ。 |
| アスベル | 吹雪 ? 雪なんて降りそうにないぞ。 |
| メルクリア | これからオールドラントの雪山へ行くのじゃ。救世軍からの援助物資を回収せねばならぬからな。 |
| ナーザ | メルクリア、おしゃべりが過ぎるぞ。 |
| メルクリア | あっ…… ! い、今のは忘れるのじゃ……。 |
| バルド | フフ……。まあ、このくらいは問題ないでしょう。 |
| ソフィ | そうだ。メルクリアのともだちから伝言。 |
| メルクリア | わらわの、友達…… ? |
| ソフィ | うん。セシリィが、いつか会いにいくからいっぱい話そうって。 |
| メルクリア | セシリィは、わらわを友達だと言ったのか ? |
| ソフィ | そうだけど、違った ? |
| メルクリア | いや……もうそのようには思ってもらえぬものと……。わらわはセシリィにも酷いことをした故……。 |
| バルド | よかったですね、メルクリア様。 |
| メルクリア | ……うむ。皆、世話になったな。 |
| ソフィ | うん、またね。 |
| リチャード | いい報せを待っている。 |
| アスベル | 気を付けて。 |
| ナーザ | アスベル、リチャード、ソフィ。メルクリアのことそして我が臣下たちを届けてくれたこと、感謝する。 |
| ソフィ | 心核、返してよかったね。 |
| リチャード | そうだね。また彼らと戦う日が来るとしても後悔はないよ。 |
| アスベル | ああ。だけど……いつかメルクリアたちとも手を取り合える日が来るといいな。 |
| Character | 9話【4-9 オールドラント領 雪山1】 |
| メルクリア | ……なんじゃ、これは。 |
| バルド | これは雪だるまです。 |
| メルクリア | 知っておる ! 何故に救世軍の援助物資が雪だるまなのかと言っておるのじゃ。 |
| ナーザ | 随分と大きいな。中に何か入れてあるのかもしれん。 |
| バルド | ということは生ものでしょうか。 |
| メルクリア | なるほど ! であれば、ジュニアたちに美味なるものを食させてやれるな。どれどれ―― |
| メルクリア | ひいぃっ、ディスト ! ? |
| ナーザ | 何故、この男がここに…… ! |
| バルド | 氷漬けですが生きています。恐ろしい生命力です。 |
| メルクリア | 早う助けねば ! |
| ナーザ | しかし、この状況はあまりに不自然だ。何かの罠かもしれん。改めて救世軍を呼んで―― |
| メルクリア | その間に死んで……いや、多分死にませんがともかく、こやつは元々わらわに仕えていた者です。せめて一度、連れ帰ることをお許しください。 |
| バルド | そうですね。それにディストの知識は我々にも有益なものかと。 |
| メルクリア | お願いです。わらわが面倒を見ますから ! |
| バルド | 確かに、生き物を育てるのは情操教育の一環でもありますね。 |
| ナーザ | 仕方がない。ちゃんと責任は持つんだぞ。 |
| ディスト | ヘークショッ ! ヘークショーイ ! !ジェ、ジェ……ジェイドめぇ……。 |
| ナーザ | なるほど。事の経緯はわかった。しかし、よく生きているな貴様……。 |
| メルクリア | ジェイド……何と恐ろしい……。その者は悪魔か……。 |
| バルド | 多分、彼に対してだけなのでは ?本人に会ったことがありますが理性的な人物と見受けましたよ。 |
| ディスト | ああああなたにジェイドの何がわかるといいいい言うんです !あれを理解するのは、わわ私だけ―― |
| バルド | ええ、そうですね。それよりも、もっと火にあたるといいですよ。震えがとまりますからね。 |
| ディスト | 幻体ごときが余計なお世話ですよ !どうせ魔鏡術あたりで思念映像を投影してるのでしょうが。 |
| バルド | ……驚きました。さすが研究者だ。一目で私の状態を見抜くとは。 |
| ナーザ | それで結局のところこいつが援助物資ということなのか ? |
| バルド | おそらく救世軍としては、この者を引き取る代わりに資金を提供するという腹づもりなのでは……。 |
| メルクリア | おぬし……、えらく嫌われたものじゃな。 |
| ディスト | 愚か者どもには私の価値がわからな……は……ハークショーイ ! |
| メルクリア | わかったわかった。鼻水をふけ、垂れておるぞ。 |
| ナーザ | こいつの価値云々はどうでもいいが俺たちに押し付けられたのは都合が良かったかもしれん。 |
| ナーザ | ディスト、貴様に聞きたいことがある。 |
| ナーザ | 今のデミトリアスは、本当に『デミトリアス』なのか ? |
| ディスト | はぁ ? 知るわけないでしょう。くだらない話で私の体力を消耗させる気ですか ? |
| ディスト | だいたい、本当のデミトリアスなどと言われても比較対象が不明瞭すぎます。その『本当』とやらが私には何かもわからないというのに、愚問ですよ。 |
| メルクリア | 兄上様、火を消しましょう。 |
| ディスト | ま、待ちなさい ! 私が知っているのはデミトリアスがアニマ汚染に冒された体を若返らせたことくらいです。 |
| ディスト | ですが、その反動で何かしらのダメージを負っている可能性はありえるでしょう。 |
| メルクリア | ダメージ ? じゃが、若返る以前はともかく今の義父上が苦しそうな様子など見たことがないぞ。 |
| ディスト | これ以上は知りませんよ。私には興味がありませんから。後は自分たちで勝手に調べなさい。 |
| ナーザ | ……なるほど。 |
| バルド | どうしますか ? 気になるようであれば探ってみる価値はあると思いますが。 |
| ナーザ | そうだな。セールンドに行って、王宮内を調査してみよう。 |
| バルド | 私たちが騒ぎを起こしたばかりですから逆に盲点かもしれませんね。 |
| メルクリア | では兄上様、すぐにここを発ちましょう。寒くてかないませぬ。 |
| メルクリア | ディスト、貴様も行くのだぞ。 |
| ディスト | なぜ私が ? あなた方とは関係ないでしょう。 |
| メルクリア | わらわが世話をすると言ってしまったからな。責任をもって面倒をみるのは、主たる者の務めじゃ。 |
| メルクリア | それに、さすがの貴様もこのままでは凍死するぞ。寒いのは嫌じゃろう ? |
| バルド | ディスト博士。あなたの知識と力を是非ともお借りしたいのです。いかがでしょうか ? |
| ディスト | ……まあ、そこまでいうのであれば特別に力を貸してあげましょう。いいですか ? 特別ですからね ! |
| Character | 10話【4-11 精霊の封印地1】 |
| フィリップ | マーク、ヴィクトルファントムをここへ寝かせてくれ。 |
| ヴィクトル | 承知した。 |
| マーク | ったく……この厄介な場所にとんぼ返りとはな。 |
| ヨウ・ビクエ | あまり嫌わないで欲しいわ。大切な場所なんだから。 |
| フィリップ | ヨーランド、おまたせしました。 |
| ヨウ・ビクエ | いいえ。ここまでファントムを運んでくれてありがとう。 |
| シンク | そういう挨拶はいらないからさっさと用件を済ませてよね。 |
| ヨウ・ビクエ | あら、元気がいいのね。 |
| シンク | それが余計なんだよ。無駄話してる余裕があるの ? |
| マーク | まあ、シンクの言い方はアレだけどな。確かに精霊の封印地周辺は帝国軍の巡視船も待機していた。 |
| マーク | 俺たちがここに来たことはそのうちデミトリアスに知られるだろうよ。 |
| ヨウ・ビクエ | まあ、彼らはここへ近づけない筈だけれど時間を無駄にするのもよくないわよね。ファントムの治療に取りかかりましょうか。 |
| マーク | 俺たちは、治療中のあんたらを護衛してればいいんだよな ? |
| ヨウ・ビクエ | ええ。その間は魔の空域との通路が開くわ。そこから発生する光魔も、あなたたちにお願いしてしまうことになるけれどいいかしら。 |
| ヴィクトル | 承知の上だ。前回の件で要領は得ている。 |
| マーク | 今回は助っ人も連れてきたからな。頼りにしてるぜ、シンク。 |
| シンク | あんたも大変だね。あっちだこっちだと、機嫌をとってさ。 |
| マーク | お気遣いどうも。 |
| マーク | ってわけだから、こっちはいつでもいいぜ。始めてくれ。 |
| フィリップ | ごめん、ちょっとだけ待ってくれるかい ? |
| マーク | ……さっさと済ませろよ。 |
| フィリップ | ヨーランド、ファントムを……リーパをよろしく頼みます。 |
| ヨウ・ビクエ | どうしたのフィリップ。深刻な顔しちゃって。 |
| フィリップ | ……リーパは許されないことをしました。今のような状態もある意味自業自得だと思います。 |
| フィリップ | 彼が目覚めることを懸念する者も大勢いるでしょう。 |
| フィリップ | ですがリーパは僕のエゴの犠牲者です。だからこそ彼のことも救いたい。……最近、ようやくそう思えるようになりました。 |
| フィリップ | この考えもまた、僕のエゴかもしれませんが……。 |
| ヨウ・ビクエ | ……ふふっ、当代ビクエは本当にふてぶてしいわね。いいわ、あなたのお望み通りの言葉を言ってあげる。 |
| ヨウ・ビクエ | 誰かを助けたいと思う気持ちはエゴなんかじゃないわ。あなたは素直に、彼の回復を願っていいのよ。 |
| フィリップ | ヨーランド……。リーパを助けてください。お願いします。 |
| ヨウ・ビクエ | 任せなさい。 |
| Character | 11話【4-13 ファンダリア領 領都1】 |
| エステル | どうです ? 館の様子は見えますか ? |
| フレン | ええ、警戒が強まっています。こちらの襲撃を予測してのことでしょう。 |
| ロニ | くそっ、領主の館なんて面倒な場所に逃げ込みやがって。 |
| ナナリー | ああ、もう ! もどかしいったらないね。こうして隠れて見てるだけじゃパティは助けられないってのに。 |
| カイル | ここにいる全員で一気に攻め込んだら何とかなんないかな。 |
| ジューダス | やめておけ。さっき戦った兵士たちは並みの強さじゃなかった。 |
| ハロルド | あれは精霊装を扱えるリビングドールβ兵よ。きっとこの館にも、同等の兵士が配備されてるわね。闇雲に攻め入ると返り討ちよ。 |
| カイル | そうか……。その中でパティを捜すならもっと人数が必要だよね。 |
| フレン | カイル、イクスたちとの通信は繋がらないままかい ? |
| カイル | うん。何かあったのかも……。でも通信文で状況は伝えたから読んでいればすぐに来てくれるはずだよ。 |
| イクス | みんな、ここにいたのか ! |
| カイル | 噂をすれば、イクス、ミリーナ !通信が繋がらないから心配してたんだ。 |
| ミリーナ | ごめんなさい。問題が発生してオールドラント領へ行ってたの。 |
| フレン | そっちはもういいのかい ? |
| イクス | はい、解決しました。それでさっき通信文を見て急いで来たんですけど……どんな状況ですか ? |
| エステル | パティは領主の館に拉致されたままです……。 |
| フレン | 突入には戦力を増やす必要があったから二人が来てくれて助かったよ。 |
| ユーリ | 戦力ね。じゃあオレたちはいいタイミングで到着したってわけだ。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| フレン | ユーリ、ラピード ! みんなも来てくれたのか。 |
| リタ | 当たり前でしょ。さっさとあいつ助けて帰るわよ。 |
| カイル | リタ、なんか怒ってる ? |
| レイヴン | 違う違う。ありゃ動揺を隠してんの。パティちゃんたちが襲われたって聞いてさっきまで青ざめてたからね。 |
| エステル | ごめんなさい……心配させて。 |
| リタ | 違っ、エステルのせいじゃ……おっさんが悪い ! |
| レイヴン | いてっ、リタっち横暴 !ナナリーちゃん、かわいそーなおっさんを助け……。 |
| レイヴン | ぐはあっ ! |
| ナナリー | へえ、結構体が柔らかいね。もうちょっと締め上げてもよさそうだ。 |
| ロニ | レイヴン、逃げ込む先を間違えやがって……。 |
| ジューダス | まったく、一気に緊張感が失せたな。 |
| ジュディス | 肩の力が抜けて丁度いいわね。 |
| イクス | あの、ユーリさんシングたちは無事だったんですよね ? |
| ユーリ | まあ、一応はな。全員アジトへ戻ってる。 |
| ミリーナ | 一応って、何かあったんですか。 |
| カロル | シングが大怪我しちゃったんだ。ハスタって奴にやられて……。 |
| エステル | 大丈夫なんです ! ? |
| カロル | すぐに治癒術をかけたから命に別状ないって。領主の館は、今までよりもずっと危険みたいだね。 |
| エステル | それじゃパティは……。 |
| リタ | ちょっと、ガキんちょまで不安にさせるようなこと言わないでよ。 |
| カロル | ご、ごめん ! |
| リタ | エステルもしっかりしなさい !あいつ、魔物のお腹の中にいたってピンピンしてたような奴よ ? |
| エステル | でも、もっと早く通信に気づいてパティを避難させていたらと思うと……。 |
| フレン | エステリーゼ様に責任はありません。敵を甘く見た、私の慢心が原因です。 |
| ジュディス | そこまでにしたら ? 反省もいいけど今はやることがあるでしょ。 |
| ユーリ | だな。過ぎたことは仕方ねえ。パティを取り戻せばいいだけの話だ。 |
| ハロルド | この人数なら、リビングドールβ兵も何とかなりそうね。あとはまあ……入ってから確かめなきゃいけないことが、一つ二つってとこね。 |
| リタ | ……嫌なこと考えてるでしょ。 |
| ハロルド | あんたもね。だから慌てたんでしょ ?優しいのね~リタっち♪ |
| リタ | うっさい、リタっち言うな ! |
| エステル | なんのことです ? |
| ハロルド | パティの心核をいじられる可能性があるって話。まあ、この館に魔鏡技師が詰めてなきゃできないはずだけど。 |
| エステル | そんな…… ! |
| ユーリ | またかよ……。いい加減にしろってんだ。 |
| フレン | ユーリ ? |
| ユーリ | 帝国の奴ら、人なんて便利な道具かなんかだと思ってんだろ。んで邪魔なら殺す。 |
| レイヴン | …………。 |
| ユーリ | シングの傷もひでえもんだったぜ。あれをやった奴は躊躇もなんもねえ。確実に殺すつもりで刺した傷だ。 |
| ユーリ | ああいう奴らを止めるなら大本の頭を潰しちまうのが一番手っ取り早いんだろうな。 |
| フレン | ……ユーリ、おかしなこと考えるなよ。 |
| ユーリ | 安心しな。お前ほどじゃねえさ。 |
| フレン | 本当に ? |
| ユーリ | ……おい、イクス。人数はこれで十分だろ。そろそろ行こうぜ。 |
| イクス | はい。潜入の手筈はジューダスとハロルドさんが考えて……。 |
| ? ? ? | (聞こえ……バロー……末裔……) |
| イクス | なんだ ? |
| ミリーナ | どうしたの、イクス。 |
| イクス | 今誰か、俺に話しかけたよな ? |
| ミリーナ | いいえ、誰も。 |
| イクス | そうか……。ごめん、気のせいだ。集中しないと。 |
| フレン | 疲れてるならバックアップに回るかい ? |
| イクス | いいえ、大丈夫です。それで、潜入の方法ですけど―― |
| ミリーナ | …………。 |
| Character | 12話【4-15 ファンダリア領 領主の館】 |
| パティ | …………。 |
| 魔鏡技師A | 心核除去終了。心拍は ? |
| 魔鏡技師B | 正常値です。このまま人工心核の埋め込みを開始します。 |
| エルレイン | これでフォルトゥナが復活するのだな ? |
| 魔鏡技師B | はい。この聖核で造った人工心核にフォルトゥナ神を宿すことで神の具現化が可能になります。 |
| エルレイン | 神の具現化、か。 |
| エルレイン | (この話が真実であれば、何故この娘を……) |
| 伝令兵 | エルレイン様、敵襲です !この場所に向かっています ! |
| エルレイン | ! ! |
| ラピード | ウーッ……ワフ。 |
| フレン | そうか、いないんだね。ユーリ、次だ。 |
| ユーリ | はいよ。カイル、こっちの部屋にパティはいねえ。一番奥を目指すぞ。 |
| カイル | わかった ! じゃあ、この廊下を真っすぐ進んで。 |
| エステル | カイルたちがいてくれて助かりましたね。以前、潜入した時と造りは同じです ? |
| カイル | うん。変わってなくて良かったよ。 |
| リアラ | 他のチームも調べ終わってるかもしれないわ。早く合流しましょう。 |
| 帝国兵 | 侵入者発見、排除する。 |
| リアラ | ! ! |
| カイル | リアラ ! |
| 帝国兵 | ぐあっ ! ! |
| リアラ | え…… ? |
| ジュディス | 遅かったのね。この辺の警備兵はみんな片づけておいたわ。 |
| ユーリ | そりゃご苦労さん。 |
| ロニ | こっちにパティはいなかったぜ。 |
| ナナリー | イクスたちの方でみつかってりゃいいけど。 |
| レイヴン | そん時は魔鏡通信が入る予定でしょ。この分じゃおそらく……。 |
| カロル | あっ、イクスたち来たよ ! |
| イクス | こっちは駄目だった ! |
| ジューダス | 領主の部屋も空だ。エルレインもいない。 |
| カロル | じゃあ、残るはあの奥の部屋だけだね。そこにパティがいる ! |
| リアラ | エルレインも一緒かもしれないわ。 |
| 二人 | …………。 |
| ミリーナ | すぐに他の兵士が来るはずよ。今のうちに踏み込みましょう。 |
| エステル | パティを見つけたら、すぐに撤退でいいんです ? |
| ジューダス | ああ、上手く行けばな。時と場合によっては臨機応変だ。 |
| レイヴン | ま、そん時の采配は騎士団長代行に任せましょ。頼むぜ、大将。 |
| フレン | レイヴンさんに言われると緊張しますね。では、みんな準備を。行きますよ ! |
| 帝国兵β | うおおおっ ! |
| ユーリ | おっと ! 手荒な歓迎だな。 |
| ロニ | こっちは任せろ ! パティを捜せ ! |
| エステル | パティ ! パティ、どこです ! ? |
| カロル | 変だよ、部屋のどこにもいない !もう捜せそうな場所なんて……。 |
| リタ | ……やっぱり。 |
| カイル | やっぱり ? どういうこと ? |
| 2人 | まさか ! |
| ユーリ | もう別の場所につれてかれちまったってことか。 |
| ハロルド | そういうこと。その可能性もあるとは思ってたけど実際そうだと厄介よね。 |
| カロル | でも、どこへ――うわっ!? |
| イレーヌ ? | ……避けられたか。 |
| イクス | ! ! |
| ジューダス | お前は……イレーヌ ! |
| ナナリー | イレーヌ ? ってことは従騎士だね。 |
| イレーヌ ? | 貴様らはここで始末する。 |
| カイル | あれがイレーヌ……さん ? |
| ジューダス | いや、違うな。『中身』はイレーヌじゃない。 |
| ナナリー | リビングドールβだね。 |
| ユーリ | だったら話は早え。ぶっ倒してパティの居場所吐かせて、それから戻す。行くぞ ! |
| ? ? ? | (我が末裔よ……) |
| イクス | ……え…… ? |
| ラピード | ワウッ ! ワンワンワン ! |
| カイル | 何してんだ、イクス ! 危ないよ ! |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| イクス | 頭の中……声がして……。 |
| ミリーナ | 声 ? 声ってなに ! ? |
| イクス | うううっ、目、目が……痛っ……うううっ ! |
| ミリーナ | イクス ! |
| フレン | カイル、ナナリー、ジュディス ! イクスを守れ ! |
| ジュディス | わかったわ ! |
| ナナリー | いったいどうしたってんだい ! |
| ミリーナ | わからない。声が聞こえるって言って倒れたの。 |
| イクス | …………。 |
| ミリーナ | イクス、良かった、気が付いた ! ? |
| イクス ? | やはり、あの者が宿すルグの槍に反応したか……。 |
| 全員 | ! ? |
| ミリーナ | あなた……イクスじゃない。誰なの ! ? |
| イクス ? | ……バロール。 |