Character1話【5-1 ファンダリア領 領主の館】
ミリーナバロール……そんな……だって、バロールは……。
カイルバロール ? バロールって確か……。
ハロルドニーベルングを滅ぼした張本人よ。まさか、そっちから出てきてくれるなんてとんだサプライズだわ。
ミリーナでも、どうしてイクスの身体に……。
バロールこの者は俺の力を受け継ぐ者。流れる血に……そしてアニマに、俺の残滓は溶けている。魔眼を持つ鏡精が、俺を俺たらしめた。
ロニな、何言ってやがるんだ、こいつは…… ?
ナナリーあたしも、あんたと同じ意見だけどそんなことより……。
ミリーナイクスは無事なの ! ?もしイクスに何かをしたのなら私はあなたを許さない。
バロール心配するな、鏡精の末裔。すぐに終わらせる。
イレーヌβぐっ ! ! か、身体が…… ! ?
レイヴンちょっとちょっと !あちらさん、どうしちゃったのよ ! ?
ジュディス随分と苦しそうにしているわね。
フレンまさか、イクス……バロールの力なのか ?
バロールあの者に刻まれた【ルグの槍】を利用する。これで、お前たちが知りたかったことがわかるはずだ。
イレーヌβ……ンダ………にある、けん……つ。
カロル待って ! 何か言ってるよ !
イレーヌβ……ファンダリア領……南西にある……研究施設。……そこに、アイフリードの器を……連れていった。
ユーリ……アイフリードの器。パティのことだな。
イレーヌβ……エルレインは……アイフリードの器を使い異世界の神の具現化を行う……つもりだ……。
ナナリー異世界の神……。それって……。
リアラ……その話が本当ならエルレインは、この世界にフォルトゥナを具現化させるつもりなのかもしれない。
三人! ?
バロール異世界の神、か。ならば奴らの狙いは……そういうことか。
バロール聞け。お前たちは、すぐにアイフリードの器を追え。
ユーリバロールだかなんだか知らねえが言われなくても、こっちは最初からそのつもりだ。
ラピードワンッ !
バロールそれから鏡精の末裔よ。俺の意識は長くはもたない。だが、俺は――とつな――者を――。
イクス……ぐっ ! ! ミ、ミリー……ナ…… ! !
ミリーナイクス ! ?
エステルいけません ! ! すぐに回復を…… ! !
イレーヌβ――敵に不確定要素の存在を確認。これ以上の足止めは危険と判断、撤退する。
カイルしまった !
リアライクスが倒れて動けるようになったんだわ…… !
ジューダス追うぞ、カイル !まだ間に合うはずだ。
ロニ俺たちも行くぜ !美女を追いかけるのは、美男の役目だからな !
ナナリー馬鹿なこと言ってないで、さっさと追いかけるよ !
ハロルドこりゃ、流れ的に私も行かないと駄目っぽいわね。そんじゃ、そっちは任せるわよ。
フレンユーリ、僕たちは……。
ユーリあっちはあいつらに任せて大丈夫だろ。だが、イクスをこのままって訳にはいかねえ。
エステルミリーナ、イクスは大丈夫ですか ?
ミリーナ……ええ。意識はまだないみたいだけど呼吸も安定しているし、脈拍も正常よ。
リタでも、すぐ目が覚める保証もないし一度安全な場所にイクスを連れて行ったほうがいいんじゃない ?
ミリーナええ。だから、私がイクスと一緒にアジトまで戻るわ。みんなはそのままパティがいる場所に向かって。
リタちょ、待ちなさいよ !一人でどうやって…… !あんた、まさか……。
ミリーナ……転送ゲートを使うわ。それなら、私一人だけでもすぐにイクスを連れてアジトに帰還できるから。
エステルでも、確か転送ゲートの使用は使用者の負担が著しいはずでは……。
レイヴンおっさんは反対よ。ミリーナちゃんにそんなことさせちゃイクスくんに合わせる顔ないわ。
ミリーナ……ありがとうございます、レイヴンさん。でも、今は一刻の猶予もありません。
ユーリオレたち全員で止めてもか ?
ミリーナ……はい。例え、この場にいる全員に反対されても私はやります。きっと、イクスなら同じ判断をすると思います。
エステル……ミリーナ。
ユーリ……カロル。さっき言ってたファンダリア領の施設場所心当たりあるか ?
カロルユーリ……いいの ?
ユーリここまで言われちゃ、オレたちにミリーナを止める権利なんてねえよ。だろ ?
ラピードワフッ ! ワフッ !
ジュディスそうね。今はミリーナの覚悟に私たちも応えるべきじゃないかしら ?
エステル……。
エステルリタ。ミリーナはパティのことを……。いいえ、わたしたちみんなのことを心配して言ってくれているんだと思います。
エステルだったらわたしは、その想いを尊重したいです。
レイヴン……リタっち。こりゃおっさんたちに分が悪いわ。
リタだぁー、もう、わかったわよ !ほんっと、無茶ばっかりする奴が周りにいるとろくなことにならないんだからっ !
エステルリタ、落ち着いてくださいっ !
リタ言っとくけど、あたしはあんたのことも言ってんだからね !
エステルええっ ! ?
ミリーナふふっ、ありがとう、リタ。でも、私は大丈夫だから。だからみんな、パティのことはお願いね。
ユーリああ、任せとけ。ミリーナ、イクスのことは頼んだぞ。
ミリーナええ。それじゃあ、みんなも気を付けて。――転送ゲート、展開 !
ユーリ……オレたちも急がねえとな。カロル、道案内は任せたぜ。
カロルうん、了解 !
フレン…………。
レイヴンど~しちゃったの、フレンちゃん ?ミリーナちゃんならきっと大丈夫よ。もちろん、パティちゃんもね。
フレンレイヴン、さん……。いえ、僕は……。
レイヴン青年のことかい ?
フレン! ?……やはり、気づいてたんですね。
レイヴンまぁ、この館に入る前にあんなこと言われちゃ気になるでしょーよ。本人はあれでも相当我慢してるみたいだけどさ。
レイヴン……けど、仲間が傷つけられた上にパティちゃんまで利用されようもんなら青年だって黙っちゃいない。
レイヴンフレン。いざとなったらユーリを止められるのはお前さんだけだ。頼んだぞ。
フレン! ?
リタちょっと、おっさん !さっきから何コソコソ話してるわけ ?来ないなら置いてくわよ。
レイヴンはいはい~。……んじゃ、青年のことは宜しくね、フレンちゃん。
フレンはい。騎士として……いいえ、あいつの友としてもう二度と、手を汚すようなことはさせません。

Character2話【5-4 仮想鏡界】
ジュニアコーキス、定時連絡ありがとう。どう、鏡映点捜しは順調に進んでる ?
コーキスああ、マークが教えてくれた通り救世軍の地上部隊の中に鏡映点っぽい人を見つけたぜ。
マークⅡそいつは良かった。んで、そいつとの交渉は上手くいったのか ?
コーキスそれが、そのアリスって人取り巻きが何人もいて、なかなか近づけなくてさ。結局、会えないまま別のところに行っちまったんだ。
コーキスあっ ! でも他の鏡映点の情報はゲットできたぜ !えっと、その人はデカい刀みたいなのを持ってて猫と一緒にいるんだってさ。
マークⅡ猫と一緒ねえ……。随分と悠長な旅をしてる鏡映点もいたもんだな。
コーキス俺、その人のことも捜してみようと思ってボスに相談したかったんだけどアジトにはいないのか ?
ジュニアうん、今はメルクリアたちと一緒に外に出てるよ。あっ、でもちょっと待って。コーキスって、今テセアラ領にいるんだよね ?
コーキスああ、今は港で鏡映点の情報を集めてるところだけど、どうかしたのか ?
ジュニア実は、ナーザ将軍たちもセールンドに向かうためにその港に向かっているんだ。もしかしたら、もう港に着いてるかも。
コーキスん ? なんでボスたちセールンドに行こうとしてんだ ?この間行ったばかりじゃん。
ジュニアそれが、僕たちも詳しい事はまだ教えてもらってないんだ。気になることができたからとしか……。
コーキスでも、セールンドって俺たちが潜入したせいでまた帝国の警備が厳しくなったんだろ ?ボスたち、大丈夫なのか ?
マークⅡそれがわかってて行くんだからよっぽどのことなんだろ。
コーキスわかった。俺、ボスに連絡取ってみるよ。それで合流したほうがいいのか聞いて……ぐうっ ! !
ジュニアコーキス ! ? どうしたの ! ?
コーキスいてぇ…… ! また、左目が急に…… ! !
ジュニアコーキス ! ? コーキス ! ?
マークⅡおい、一体何があったんだ ?
ジュニアわからない……けど、左目が痛むって……。
マークⅡってことは、また【魔眼】絡みかよ。どうする、フィル。助けに行くか ?
ジュニアそうしたいけど……テセアラ領の港までは一番近いゲートを使っても時間がかかるから……。
ジュニアあ、そうか ! ナーザ将軍たちが近くにいるんだ !連絡してみよう !
ナーザ――どうした、ジュニア ?
メルクリアおおっ、ジュニアからの連絡ですか、兄上様。さてはジュニアよ、わらわたちがいなくて寂しがっておるな。
メルクリアよかろう。わらわがジュニアの話し相手に……。
ジュニアナーザ将軍、大変ですっ !コーキスが……連絡の途中で通信が途絶えました。
メルクリアなんじゃと ! ?
ナーザ……詳しく話せ。
ジュニアそれが……突然苦しそうな声がして……。あと、左目のことを言ってたので、バロールの魔眼が関係していると思います。
バルド魔眼がらみなら危険かもしれませんね。コーキスと通信が途絶えた場所はわかりますか ?
ジュニアテセアラ領の港です。
メルクリアもしや、わらわたちが向かっている港か ! ?
ナーザなるほど、そういうことか。コーキスのことはこちらに任せろ。見つけ次第、連絡する。
ジュニアはい、宜しくお願いします。
ジュニアコーキス……無事だといいんだけど……。
マークⅡ俺たちは連絡を待つしかねえな……。ん ? どうした ?
ジュニア……うん。前にコーキスが目の痛みを訴えた時はバロールの記憶に触れようとしたときだった。
ジュニアもしかしたら、今回もバロールの力と何か関係があるんじゃないかって……。
マークⅡああ、それはそうだろうな。その辺りはじきにわかるだろ。
マークⅡつーか、何か他に気になることがあるんじゃないのか ?いつにも増して、不安そうな顔してるぜ。
ジュニアうん……でも上手く言葉にできないんだ。コーキスとバロール……。二人が接触すると……よくないことが起きるんじゃないかって。
マークⅡ……なあ、グラスティンの『仕掛け』はどうした ?
ジュニア……まだ大丈夫。ありがとう、マーク。
マークⅡそう、か……。

Character3話【5-7 ???】
イクス(……あれ、ここはどこだ ?確か俺……みんなと一緒に……)
? ? ?なるほど。お前が目覚めたから俺がはじき飛ばされたのか。
イクスえっ、ナーザ将軍 ? いや、前にも同じことが……。もしかしてここって【アニマの坩堝】 ?だとしたら、あなたはイクスさん ?
? ? ?俺は……そうだな、バロールの記憶。お前の身体に受け継がれてきたバロールの記憶の残滓だ。
イクスバロールの記憶……?俺の体にバロールの記憶が……?
バロールの残滓そうだ。もっとも俺が目覚めることができたのはお前の鏡精が、本来のお前の中から俺を見つけた為だがな。
イクス本来の俺…… ?もしかして、それってナーザ将軍の体のことですか ?
バロールの残滓そうだ。お前は本来のイクス・ネーヴェとはあり方が異なるようだからな。俺の声が聞こえないだろうと思っていたが……。
バロールの残滓僅かな時間とはいえ、こちらからの呼びかけにも反応しているところをみると、お前の中に残っている私の力も目覚めつつあるようだ。
イクス呼びかけ……。そうか、ずっと俺が聞いていた声はあなただったのか……。
イクスいや、待てよ。俺がこうして自分の意識の中にいるってことは、また現実の俺は意識を失っているんじゃ…… !
イクスあの、バロールさん ! ミリーナは…… !俺の仲間たちは大丈夫なんですか ! ?
バロールの残滓案ずるな。お前の仲間たちは皆無事だ。お前自身も、今は安全な場所にいる。
イクスそうですか……良かった……。
バロールの残滓だが、いずれお前たちは……。いや、この世界は再び滅びの道を歩むことになる。それも、近いうちにな。
イクスえっ ! ?
バロールの残滓ネーヴェの血を継ぎし者、我が末裔よ。今からお前の中に刻まれた我が記憶を授ける。
イクス記憶……うっ ! ?な、なんだ…… ! ! 目がッ…… ! !
ビクトリエバロール様、死鏡精がすぐそこまで迫っています !
イクス(え ! ? ヨウ・ビクエ ! ? 何だ、これは…… ?これがバロールの記憶 ? )
バロールやはり浄化しきれなかったか。ビクエ、ダーナはこれを知っているのか ?
ビクトリエもちろんです。
バロールそうだったな……。お前は俺の死を見届けるために残ったんだったな。
ビクトリエまだそんなことを……。ダーナ様はあなたにも生きて欲しいと仰っていたではありませんか。
ビクトリエあなたは鏡精のために立ち上がった。ただその行動が……結果的にニーベルングという星を枯れさせた。
バロールそうだ。だから俺は箱船にはふさわしくない。
ビクトリエそう言うだろうと思っていました。ですが新しい世界ティル・ナ・ノーグのためにもニーベルングのためにも、あなたの力が必要なんです。
ビクトリエふさわしいとかふさわしくないなんてこの際どうでもいいこと。
バロール俺が死なねば、フィンブルヴェトルは消えないぞ。
ビクトリエ死んでも消える保証はありません。だから今は、時間を稼ぐんです。箱船に乗って。
バロールルグの槍を起動させるのか。
ビクトリエそうです。いつか、ニーベルングも死鏡精も救うために。
バロールその為に……新しい世界の礎石になれと言うんだな。ダーナと共に。
ビクトリエ急ぎましょう。死鏡精がフィンブルヴェトルを呼び寄せる前に命を生む炎を燃やして下さい。
イクス………………い、今のは……。
バロールニーベルングが死の砂嵐――フィンブルヴェトルによって滅びる直前の記憶だ。
バロールの残滓この後、ダーナやアイフリードと共にティル・ナ・ノーグという箱船を作り生き残った人々を移住させた。
イクスそれが……【ダーナの揺り籠】。この世界か……。
バロールの残滓俺はニーベルングと共に滅ぶはずであったが生かされることになった。フィンブルヴェトルを鎮めるためにな。
イクス死の砂嵐を鎮める ! ?それは死の砂嵐を消すということですか ! ?
バロールの残滓何を驚く。一度はフィンブルヴェトルを鎮めたからこそこの世界はここまで生き存えてきたのだ。
バロールの残滓それをビクトリエの末裔が、再びフィンブルヴェトルを発生させてしまった。
イクスビクトリエの末裔…… ?
バロールの残滓ダーナの鏡精の末裔だ。今、自らを鏡として虚無を封じている。
イクスゲフィオンのことか !
バロールの残滓あの者を利用して、フィンブルヴェトルを我らが手に取り戻す。
イクス取り戻す ? それは一体――
バロールの残滓フィンブルヴェトルは我が鏡精の力。そこに鏡精ではない者たちが紛れたせいで我が制御をはねのけている。
バロールネーヴェの末裔。お前の鏡精を借り受ける。本来のお前には不要な者が宿り力が歪められてしまう。
バロールお前を通じて、フィンブルヴェトルの異物を取り除くための尖兵を造る。
イクス……えっ ?
バロールの残滓『鏡精コーキス』よ。命の炎を燃やせ !虚無とこの世界に通じる存在を呼び起こせ !

Character4話【5-7 ???】
イクス死の砂嵐を鎮める ! ?それは死の砂嵐を消すということですか ! ?
バロールの残滓ネーヴェの末裔。お前の鏡精を借り受ける。本来のお前には不要な者が宿り力が歪められてしまう。
バロールの残滓お前を通じて、フィンブルヴェトルの異物を取り除くための尖兵を造る。
イクス……えっ ?
コーキス(バロールが俺を、見てる…… ? )
バロールの残滓『鏡精コーキス』よ。命の炎を燃やせ !虚無とこの世界に通じる存在を呼び起こせ !
コーキスはぁ ! ? 何言ってんだよ ! ?さっぱり意味がわかんねーよ !
? ? ?――キ――。コ――スッ ! !
コーキス今度は誰だよ…… !
? ? ?起きろ、コーキス ! ! しっかりするのじゃ ! !
コーキス……あ……メル……クリア…… ?
メルクリアコーキス ! ! 兄上様 ! !コーキスが目を覚ましました !
ナーザ起きたか。
コーキスボス ! ? いや、バロール ! ?あ、いや、やっぱボスか。ボスたちがこの辺りにいるってジュニアが言ってたもんな……。
バルド目覚めたばかりのところをすみません。コーキス、やはりあなたが倒れた原因はバロールなのですか ?
コーキスえっ、いや……バロールは見たんだけど会ってたのはマスターというか……。いや、でも最後は俺に話しかけていたような……。
メルクリア何を言っておるのじゃ ?
コーキスだから、俺にもよくわかんねーんだよ。ゲフィオンがどうとか、死の砂嵐がどうとかって……。そんで、最後は……誰かを呼べ……とか何とか。
ナーザ……まったく要領を得ないな。
ディストふん、これだから凡人は困るのですよ。自分に起きたことすら説明できないとはどうしようもありませんねえ。
コーキスうわっ、ディスト様いたのかよ !
ディスト私は最初からいましたよ ! !この華麗で美しい私に気付かないとは節穴にもほどがありますね !
コーキスでも、ディスト様ってアジトで捕まってたんだよな ?まさか、ジェイド様に捨てられたのか ?
ディスト誰が捨てられたですって ! ?
メルクリア止めよ、ディスト。これ以上騒いでは、兄上様の気に障るぞ。また雪山に戻りたくなければ大人しくしておるのじゃ。
ディスト無理矢理連れてきたのはあなたたちでしょう ! ?
バルド気高いディスト博士が苛立つのもわかりますがこらえて頂けませんか。あなたは私たちに必要な存在なのです。
ディスト……私が……必要…… ! ?そ、そうでしょうとも。凡夫が私に憧れ、欲するのは仕方のないことですからねえ。
ディストですが ! 私は断じてジェイドに捨てられたわけではありませんからね ! !
ナーザコーキス、お前はジュニアたちの通信中に意識を失ったそうだが、その時のことは憶えているか ?
コーキスえっと……確かジュニア様に定期連絡を入れてその途中でまた左目が痛くなって……。
コーキス――あ、そうだ。ボスたちこれからセールンドに行くんだろ ?俺も付いていったほうがいいのか ?
メルクリアコーキス、お主、身体は大丈夫なのか ?
コーキスああ、左目も今は全然痛くねえし敵陣に乗り込むなら、戦力が必要だろ ?
バルドナーザ様。我々の戦力を考えるとコーキスの言う通り、彼を連れていったほうがいいかと思います。
ナーザそうだな。それに、お前の身に何が起こったのかもう少しわかるように聞きたい。セールンドへ向かう道中で話せ。
コーキスえー、俺、あれ以上ちゃんと説明できるかな……。
ディスト主人の方はもう少し頭が回りそうなのに鏡精というのは不思議なものですねえ。
メルクリアコーキスを悪く言うでない。人には――まあ、鏡精じゃがとにかく人には向き不向きがあるというものじゃ。
バルドコーキス。無理に説明しようとしないで起きたことを順番に話していってごらん。そうすれば、こちらにも伝わるものがあると思うよ。
ディストそうですね。馬鹿は馬鹿なりに事実を淡々と伝えればいいのです。馬鹿の解釈など意味がありません。
コーキス馬鹿馬鹿いうなよ ! 馬鹿だけど……。
コーキスつーか、ディスト様もアドバイスしてくれるならバルドみたいにもっと素直に優しくしてくれよ。そんなんだと、ずっとジェイド様に嫌われたままだぜ ?
ディスト誰が嫌われているもんですかっ !ジェイドにとっていかに私が特別な存在であるかをみっちり教えて差し上げますよっ ! !
メルクリアええい、うるさいわ ! 二人とも !
コーキス俺はうるさくないだろっ ! 第一、ディスト様が――。
ナーザ…………。
バルド立派に成長しておいでですね、メルクリア様は。
ナーザなんのことだ ?
バルドそれはあなたが一番よくおわかりでしょう。臣下や仲間を大切にするのは、皇族の人間として必要不可欠な素養ですよ。あなたのように。
ナーザコーキスは鏡精で、ディストは補給の担保だ。今は俺たちの下に置いてはいるが臣下でもなければ、仲間でもない。
バルドフフ……。それでもメルクリア様なりに少しずつ学んでおられることナーザ様も好ましく思われているのでは ?
ナーザ……さあ、どうだろうな。

Character5話【5-8 アジト】
イクス……あれ、ここは ?
ミリーナイクス ! 良かった…… ! 目が覚めたのね !
カーリャ・Nイクス様…… !あの、どこか痛むところなどはありませんか ?
イクスう、うん……、今はなんともないよ。俺……また倒れたんだよな……。みんな、心配かけてごめん……。
カーリャもうっ、ホントですよっ !ミリーナさまと一緒に帰ってきたときにカーリャたちがどれだけ心配したと思ってるんですか !
カーリャイクスさまはもう少しお菓子を食べて体力をつけた方がいいと思いますよ。
カーリャ・Nそうですね。お菓子で体力をつけるのはいいと思います。
イクスいや、お菓子で体力がつくかは……。
イクス……そうだ、ミリーナ !他のみんなは ! ? パティは見つかったのか ! ?
ミリーナそれは……。
ジェイドそちらについては、私たちから説明しますよ。
イクスジェイドさん。それに、ユリウスさんも……。
ユリウスすまない、イクス。目が覚めてすぐのところ申し訳ないが俺たちも今回の事態を把握しておきたくてね。
イクスいえ、俺は構いません。それで、パティの件はどうしたんですか ?
ユリウス残念だが、まだ救出には至っていない。だがユーリたちからは、パティが連れて行かれたファンダリア領の研究施設に到着したと連絡があった。
イクスファンダリア領の研究施設 ?
ジェイド記憶にありませんか ?あなたがファンダリア領の従騎士から聞き出した情報だと伺っていますが ?
イクスいえ……。
ジェイドやはり、バロールの意識が出ていたときの記憶はないようですね。
イクスバロール…… ! そうだ、俺、バロールと話しました !えっと、正確には俺の身体に残っていたバロールの記憶……って言ってましたけど……。
カーリャええええっ ! ?イクスさままで神さまに会っちゃったんですか ! ?神さまたち、気軽すぎませんか ! ?
ジェイドはっはっはっ。まあ、神とは名ばかりの人間ですからね。さて、イクス。詳しく教えて頂けますか ?
イクスは、はい。勿論です。
ジェイド成程。つまり、バロールは死の砂嵐を鎮めるために尖兵を造ると言ったのですね ?
イクスはい。でも、それが何なのか俺にはわからなくて……。最後にコーキスに言っていた言葉からしてコーキスが尖兵を造るってことなんでしょうか。
ユリウスどう思う、ジェイド ?
ジェイドまだ情報が不足しているので私の嫌いな憶測になってしまいますが……。
ジェイドイクスの説明をそのまま理解するならバロールらしき存在が、コーキスを自分の鏡精として使役する、ということなのでしょう。
ジェイドコーキスに尖兵を『造らせる』というのが……。まさか……。
ユリウスしかし、イクスがバロールの末裔だとしてもバロールそのものではないだろう。バロールとコーキスが繋がるのは危険じゃないのか ?
カーリャ・N本来鏡精は、マスターにしか使役できない存在です。
カーリャ・Nただ、コーキスの場合、複数のイクス様の存在があることが前提で生まれていますから……。一般的な鏡精とは何か違うのかもしれません。
ミリーナ確か、マークもそうだったわね。フィルとファントム、両方と繋がっていた。
ミリーナファントムはテストケースだったから特殊だったけれどもしかしたらイクスとバロールも、フィルたちと同じような繋がりができているのかもしれません。
ミリーナだとすれば、コーキスが何かのきっかけでイクスの鏡精ではなく、バロールの鏡精として具現化される可能性もありますよね……。
イクスそんな…… !
ジェイド……色々と気になることもありますしビフレスト側とも連絡を取ったほうが賢明でしょうね。
ジェイドさて、それはそれとして。何が起きてここにいるのかあなたはわかっていますか ?
イクス確か……ファンダリア領の領主の館に潜入する途中だったと思います。そこで気を失ってからのことは……。
ユリウス君が意識を失ったので、安全を確保するためミリーナが転送ゲートを使用して戻ってきたんだ。
イクス転送ゲート ! ? ミリーナ、大丈夫だったのか ! ?
ミリーナええ、問題ないわよ。使ったときは少し疲れたけど……。ほら、今はこの通りなんともないから平気よ。
ジェイドこの件については、イクスの代わりに私がミリーナにきつく言っておいたのでご安心を。
二人…………。
イクス(カ……カーリャたちのジェイドさんを見る目が怖い……。ミリーナ、相当ジェイドさんに怒られたんだな、きっと……)
イクスありがとう、ミリーナ。それに……ごめんな。俺のせいでミリーナに負担をかけちゃって……。
ミリーナいいのよ、イクス。イクスはいつも頑張ってくれてるんだから私だって頑張らないと。
カーリャ・N……ですが、小さいミリーナ様。今後は無理をなさらないでください。何かあれば、私がすぐに駆け付けます。
カーリャもちろん、カーリャだってミリーナさまを助けます !
ミリーナふふっ、ありがとう、二人とも。頼りにしてるわね。
ユリウス反省もちゃんと頭に入ったところで、話を続けようか。先ほども言ったが、ユーリたちは引き続きパティの救出に向かっている。
ユリウスそれと、ファンダリア領の従騎士、イレーヌの追跡もカイルたちが行っている。
イクスそうですか……。従騎士の人たちも早く解放してあげられるといいんだけど……。
ユリウスその件については、先ほどのリーダー会議でも議題にあげておいた。助けたいのは山々だがみんなにはあまり無理はしないようにと通達してある。
ユリウスユーリたちとカイルたちにも、そのことは伝えてある。シングのこともあるので、こちらへの連絡もこまめにしてもらっているが……。
ユリウス……と、言ってるそばから魔鏡通信だ。こちら、アジトのユリウスだ。
ディムロスユリウスくん。こちら、対帝国部隊のディムロスだ。
イクスディムロスさん ?
ディムロスイクスくんも一緒か。丁度いい。きみたちに伝えておきたいことがあるんだ。
ディムロスきみたちに共有してもらった魔核についてだが帝国が各地で生産された魔核をファンダリア領に運び込んでいるという情報が入った。
全員! ?
ジェイドこのタイミングでファンダリア領に魔核の運搬ですか。偶然とは思えませんね。
イクス帝国は一体何をしようとしているんだ……。

Character6話【5-9 ファンダリア領 研究施設1】
サレこっちは無事、施設に到着したよ。
グラスティンヒヒヒ……。そうか、よくやった。お前は引き続き、エルレインに同行しろ。
サレわかったよ。それで、僕たちを襲ってきた男はこのまま放っておいていいのかい ?どうやら、聖核を狙っているみたいだったけど。
グラスティンまた邪魔をしにくるようなら始末すればいい。黒髪なら多少は興味をそそられたんだがなぁ。
サレ良かったよ。またキミの悪趣味なコレクション集めに付き合わされることはなさそうだ。
グラスティンその割には、よく働いてくれているじゃないか。まあいい、今はアイフリードの器だ。これで次の段階へ進める。
サレもういいかい ? そろそろ戻らないと聖女様の機嫌を損ねてしまうからね。
グラスティンああ。何か動きがあればまた報告してくれ。じゃあな。
エルレインサレ、誰と話していた ?
サレこれはこれは、聖女様ともあろうお方が盗み聞きですか。
エルレイン私の質問に答えろ。
サレ最近導入された通信装置の実験をかねてグラスティンへの報告ですよ。それが何か ?
エルレインやはり、お前はあの男の指示で動いていたようだな。
サレまさか。僕はただ自分が面白くなるように動いているだけですよ。
エルレインならば、余計なことはするな。今は私の指示に従え。
サレ分かりましたよ、聖女様。
エルレイン……では、私はあの器の少女の元へ戻る。サレ、施設の警備は任せたぞ。
サレええ、承知しました。彼女は大事な器ですからね。
エルレイン…………。
ユーリ……くそっ、どこもかしこも警備兵だらけだぜ。
フレンそれに、おそらく全員が精霊輪具を装備したリビングドールβだ。
エステル……わたしたちを襲ってきた兵と同じですね。
カロルこれじゃあ、施設に近づくことも一苦労だよ。
ジュディスけど、これではっきりしたんじゃないかしら ?
ユーリああ、これだけ警備を厳しくしてりゃあ、この中に大事なもんがあるって言ってるようなもんだぜ。
ラピードワンッ ! ワンッ !
リタ今度こそ、パティを取り返すわよ !
レイヴンさてと。リタっちも気合十分みたいだしおっさんも、ちと本気を出しましょうかね。
カロルあっ、待って。魔鏡通信だ。きっとアジトからだよ。
イクス――カロル、今、大丈夫か ?
カロルイクス ! 目が覚めたんだね !
イクスああ、心配かけてごめん。それより、こっちにディムロスさんから連絡があったから、みんなにも先に伝えておく。
イクス帝国軍が各地で生産した魔核をファンダリア領に運んでいるそうなんだ。
全員! ?
レイヴン……こりゃ、パティちゃんの件と関係がないって言うほうが無理な話だわ。
リタ魔核が集められてるってことは当然、聖核も運んでるわよね……。でも、どうして……。
ユーリんなもん、直接帝国の奴らに聞きゃいいだけの話だ。
イクスそれで、俺たちもすぐにファンダリア領に向かうことにしたけど、先にディムロスさんたちが到着すると思うから、しばらく待機しておいてくれ。
カロル了解。イクス、無理しないでね。
イクスありがとう。それじゃあ、また連絡する。
エステル……イクス、休まなくて平気なんでしょうか ?
リタあっちにはジェイドやユリウスもいるんだから止めなかったってことは、大丈夫な証拠よ。
レイヴンそれに、ぶっちゃけ増援に来てくれるのは願ったり叶ったりだわ。
カロルそうだね。みんな、パティを助けるために動いてくれてるんだよ。絶対に失敗できない。
ユーリああ、帝国の連中……今度こそ逃がさねえからな。

Character7話【5-10 精霊の封印地】
ヨウ・ビクエ――終わったわ。これで、しばらくすればファントムは目を覚ますはずよ。
フィリップ……ありがとうございます。これで僕も、少しは自分と向き合えるかもしれません。
ヨウ・ビクエ本当に真面目ね、あなたは。でも、そういうところが気に入ってるんだけど♪
マーク悪りぃが、ウチのマスターをナンパするのはまた今度にしてくれ。こっちは光魔の相手すんのにそろそろ飽きてきたところだ。
ヨウ・ビクエそうね、それじゃあ―― ! ?
ヴィクトルどうした ?
ヨウ・ビクエ……ダーナ様からの言伝よ。バロールが目を覚ましたって……。
フィリップバロールだって ! ?
ヨウ・ビクエフィリップ。私はファントムと一緒に魔の空域に戻るわ。あなたたちも、すぐにここから離れなさい。
シンク来いって言ったり、離れろって言ったり随分と勝手な奴なんだね、ビクエっていうのはさ。
マークシンク、小言は後で俺が聞いてやるから今は言うことを聞いてやってくれ。フィル、それでいいんだろ ?
フィリップああ、だけど……。
ヨウ・ビクエ詳しい状況は、後でちゃんと説明するわ。ファントムの身体がこちらにあればあなたへの通信も可能になるから。
ヨウ・ビクエそれに……狂化止めを施したから彼……きっと自分のしたことを思い出して混乱すると思うわ。
ヨウ・ビクエまずは私たちからこれまでの話をして落ち着かせたいの。
フィリップ……そう、ですか。わかりました。みんな、一度ケリュケイオンに戻ろう。
アイゼン……そうか。ファントムは預けてきたんだな。それで、これからどうするつもりだ。
フィリップそうだね、ひとまずイクスたちに連絡をとって……。すまない、誰かからの魔鏡通信だ。
ローエンどうやら、あちらから先に連絡が来たようですね。
ミリーナフィル、今、どこにいるの ?
フィリップミリーナかい。良かった、丁度きみたちに連絡を入れようとしていてね。僕たちは今、精霊の封印地から離れたところだ。
ミリーナごめんなさい……こっちも色々起こっていて大変なの。長くなるかもしれないけど……。
フィリップ大丈夫、ミリーナ、話してくれ。
ミリーナええ。それが――。
マーク――バロールが目覚めたってのはヨーランドが言ってた通りだがまさかイクスが先に会ってるなんてな。
フィリップイクスはバロールの血族だ。ダーナ神が僕に接触してきたように、バロールがイクスに接触してきたとしても不思議じゃない。
フィリップただ、バロールに関してはまだ分からないことのほうが多い。ヨーランドからの連絡が欲しいところだけど……。
マークあっちから連絡するって言われてるしこっちは待つしかねえな。そんで、もう一つの問題はどうするつもりだ ?
フィリップもちろん、僕たち救世軍も手助けしよう。ファンダリア領にいる地上部隊にも手配を掛けてくれ。
シンク都合のいい男だね、フィリップ・レストン。救世軍はアンタがミリーナにアピールするための駒ってわけかい?
フィリップこれはミリーナのためじゃない。巻き込んでしまった鏡映点の人たちに報いるためだよ。
ゼロスシンくんはケリュケイオンで昼寝でもしてれば ?ついでにバルバトスが余計なことをしないか見張っておいてくれても――
シンク冗談でしょ ? あいつの相手ができるのなんてマークかあんたかヴィクトルぐらいじゃない ?
ゼロスえええええ ! ? 俺さまだってバルバトスの相手なんざごめんだっつーの !
ヴィクトル別に私も好き好んで相手をしているわけではない。
クラトスしかし、手助けすると言っても何か具体的な策でもあるのか ?
マークイクスたちの方で、算段はつけてあるらしい。計画書をユリウスから転送してもらうことになってる。
ヴィクトル……ユリウス……。
クラトスでは、フィリップよ。我々も戦うための準備をしておこう。
フィリップありがとう、みんな。ガロウズ、ケリュケイオンの操縦は任せたよ。
ガロウズ了解です、ビクエ様。目的地はファンダリア領ですよね。まくりますよっ !

Character8話【5-11 ファンダリア領 研究施設2】
イクスごめん、みんな。遅くなった !
ディムロスいや、我々も先ほど合流したばかりだ。
ジュディス思ったよりも元気そうねイクス。それにミリーナも。安心したわ。
ミリーナええ、次はあまり無茶をしないようにするから心配しないで。
カーリャご安心を ! カーリャも一緒ですから !
ジュディスそう、頑張ってね、小さなナイトさん。
レイヴンジュディスちゃん。俺様もジュディスちゃんのナイトにな~りた~いな~。
ジュディスふふっ、頼りにしてるわよ、おじさま。
レイヴンうっひゃ~ !ジュディスちゃんに頼られるなんてサイコー !おじさま、張り切っちゃうわよ !
リタうっさい ! 今すぐ黙らないと燃やすわよっ !
レイヴンリタっち、ストップストップ !潜入前に大怪我とか洒落になんないから !
カーリャ・N……こほんっ !それで、こちらの状況に何か進展はありましたか ?
カロルいや、誰かが出入りしている様子はなかったよ。
シャルティエですが、僕たちが掴んだ情報によるとファンダリア領に運ばれた魔核がこの施設に集められているみたいです。
リタパティのこともあるけど、魔核も回収しておきたいわ。帝国の奴らがふざけた使い方をする前にね。
エステルリタ……。
ディムロスそれだけではない。この施設には帝国が所持する大量のレンズが保管されていることがわかった。
フレンレンズ……ディムロスさんたちの世界では資源エネルギーとして使用されていたものですね。
ディムロスそうだ。使い方次第では強力な兵器のエネルギー源にもなってしまう代物だ。
ディムロスエンコードの特性を考えれば、レンズはキラル分子を大量に生み出す……ということになるのだろう。こちらもろくな使われ方はするまい。
シャルティエ僕たちとしては、今回の潜入でレンズの回収も同時におこなうつもりです。
ディムロスすでにアジト側と連絡を取って計画は纏めてある。基本的には陽動作戦をとる。
ディムロス現在、反帝国組織の部隊を待機させている。こちらを攻め込ませ、施設への警備を手薄にする。
カロルってことは、ボクたちでパティを助けて魔核とレンズを回収するってこと ! ?
イクスいや、陽動部隊は俺が指揮する。ディムロスさんたちには、魔核とレンズの回収を担当してもらう手筈だ。
フレンイクス、いいのかい ?かなり危険な役目だよ。
イクスはい。それに自分で言うのもおかしいですけど俺と……俺の魔鏡は特別だって話ですから。
イクスそんな俺が出て行ったら、帝国側も絶対に無視はしないはずなので、警備が手薄になる確率が上がると思うんです。
ミリーナもちろん、私もイクスと一緒に行くわ。
カーリャ・N私もイクス様と小さいミリーナ様に同行します。
カーリャカーリャもですっ !
ディムロス……ということだ。他の者も異論はないか ?
ユーリああ。イクス、ありがとな。ちとキツイかも知れねえが、そっちは任せたぜ。
ラピードワフッ !
ディムロスでは、私とシャルティエは途中までユーリくんたちと共に行動させてもらおう。
ユーリ決まりだな。そんじゃ、派手に暴れてやろうぜ。
エルレインサレは警備に出ているな ?
帝国兵βはい。
エルレインでは私が指示をするまで、ここから先は誰も通すな。
帝国兵β了解。
パティ……………………。
エルレイン必要なレンズは用意してある。グラスティンの言うことが本当なのであればこの娘を使いフォルトゥナを降臨させることができる。
エルレイン(……あの者どもの話は未だ疑わしいが万に一つでも可能性があるのならば――)
エルレイン――始めよう。人々の救済を。
パティ………… !
エルレイン大いなる神の御魂を、ここに !そして、人々に永遠の幸福を !
エルレイン――出でよ、フォルトゥナ !

Character9話【5-12 ファンダリア領 研究施設3】
パティ ?…………………… ! ?
エルレイン成功……したのか ?
パティ ?ここは……。私は何故……目を覚ました ?
エルレインフォルトゥナではない…… !お前は、何者だ ?
アイフリード私は……アイフリード……。
エルレインアイフリード、だと ?
アイフリード精霊たちの楔が解け始めている…… !まさか……私だけでなく、目覚めているのか……ヨーランド !
エルレインこの力は…… !
アイフリード我、アイフリードの名において命ずる。集え、我が精霊たちよ ! !
エルレインくっ…… ! !
アイフリード精霊たちが……こない、だと ! ?馬鹿な。いや、そうか……これが狙いか !
アイフリード行かねば。我が精霊たちの下に !
エルレイン待てっ !
帝国兵βエルレイン様。先ほどの少女は。
エルレインあなたたちも、今すぐあの少女を追いなさい。決して逃がしてはなりません。
帝国兵β了解。施設内の全警備兵たちに伝達。逃走中の少女の確保にあたれ。
エルレイン何故……フォルトゥナではなく、アイフリードが……。まさか初めから……。いや、まずはあの少女を捕らえなくては !
サレふふっ、どうやらあいつの筋書き通りの展開になったみたいだね。
サレさあ、もっと僕を楽しませてくれよ、聖女様。
クラース――というわけでイクスたちはパティの救出に向かった。随時連絡が来るだろう。
クラースまあ、我々は我々の成すべきことをするしかない。報告は以上だ。各自、引き続き精霊の調査にあたってくれ。
テネブラエしかし、短期間で精霊との契約がこれほど順調に進むとは、いやはや素晴らしい限りです。
キールだが、まだ契約できていない精霊たちも残っている。それに、領主たちに付けられた贄の紋章についても分からない点が多い。課題は山積みさ。
しいな確かに、贄の紋章は身体には影響がないみたいだけど放っておくわけにもいかないからね。
クラース贄の紋章については、引き続きハロルドたち解析班が動いてくれている。結果を待つしかない。
しいなけど、あたしは心配だよ……。コレットのときもそうだったけど何も知らなかった、なんてことは嫌だからサ。
エミルしいな……。
ミラ=マクスウェル……そうだな。だが、私たちには私たちが為すべきことがある。今は彼女たちのことを信じよう。
ライラはい、皆さん頼りになる方たちばかりですし。
テネブラエええ、特にジェイドさんは私と同じ闇属性ですからねえ。
エミルそれは関係ないと思うけど……。
シャーリィあの、皆さん。失礼します。
キールシャーリィにセネル。どうしたんだ ?
シャーリィえっと、パンが焼きあがったので持ってきました。
セネル良かったら、みんなで食べてくれ。忙しくて、まだ飯も食べてないだろ ?
クラースおっ、差し入れか。助かるよ。
ライラまぁ ! どのパンの焼き加減もバッチリ !まさに職人技ですね。
ミラ=マクスウェルパンは焼き立てを食べるのが一番だからな。ありがとう、二人とも。では、早速頂くと……くっ ! !
キールミラ ?
シャーリィううっ……この……声……もし……か……。
セネルシャーリィ ! おい、しっかりしろ、シャーリィ !
しいなミラ ! それにシャーリィまでどうしちまったんだい ! ?
ラタトスクテネブラエ !
テネブラエええ、私にも感じます !これは…… ! !
しいな何だい ! ? 分かることがあるならあたしたちにも説明しとくれよ !
ラタトスクこの世界の精霊の力が急激に動き出しやがった !
3人! ?
ミラ=マクスウェルああ……。私もその力の影響を受けてしまっているようだ……。
ミラ=マクスウェル四大は……駄目だ、何も反応がない……。
ライラ私も感じます……。影響は少ないかもしれませんが天族もこの世界では精霊としてエンコードされていますから……。
セネル待ってくれ ! それならどうしてシャーリィまで…… !
シャーリィ…………。
セネルシャーリィ ! その髪の光は…… !
シャーリィ……滄我の声が……聞こえる。
セネルなんだって ! ? どうしてそんなことが……。
シャーリィこの世界で滄我の力を宿す海神アイフリードの言葉を伝えたいそうです……。
クラースアイフリードだと !まさか、精霊の力が活発化したことにアイフリードが関係しているのか ! ?
シャーリィはい。アイフリードが目覚めたことで同じ力を持つ滄我も共鳴した、と。
ミラ=マクスウェルあの時……聖核を見つけた時にウンディーネが話していたことか。
シャーリィ急がないと。このままだと精霊たちが暴走してこの世界がどんどん滅亡に近づいていくって…… !その前に……精霊たちを――
セネルシャーリィ ! ?
シャーリィ……滄我の声が、聞こえなくなった……。
しいなあんた、なんともないのかい ?
シャーリィは、はい……。
キールどういうことだ。これも帝国の仕業なのか ! ?
クラース至急、アジトにいる全員を集めてくれ !外に出ているイクスたちへの連絡は私がおこなう。
ライラはい ! すぐにお呼び致しますわ !
テネブラエ私たちは引き続き、精霊の動向を探ってみましょう。
クラース頼む。もし、先ほどのシャーリィの言葉が本当ならば、アイフリードの目覚めと同時に各地に封印された精霊たちが目覚めたことになる。
クラースそれが帝国の目的だったのならば……やはり帝国の狙いは、精霊たちなのか ?精霊で何をしようとしている…… ?

Character10話【5-13 セールンド 街中】
メルクリア……相変わらず、この辺りは寂しいのう。
ナーザアスガルド帝国を復興したときにセールンドの住民も帝都へ移したからな。この辺りに残っているのは一部の関係者だけだ。
バルドとはいえ、兵士や研究者たちの姿もないというのは……。
バルド――ああ、コーキスが戻ってきたようです。
コーキスただいま。街の周りを一通り見て来たけどやっぱり警備兵どころか、ネズミ一匹いなかったぜ。
ナーザこれもデミトリアスの指示なのか……。だが、何故このタイミングで…… ! ?
コーキスうわっ、なんだ、あの光の柱 ! ?
メルクリアこっちもじゃ ! ? あちこちで光の柱が発生しておる !
バルドまるで、この街を囲んでいるようですね。
ディストこれは…… ! そうですか……。あなたたち、今すぐここから撤退しますよ !
メルクリアディスト ! お主、あの光が何なのか分かっておるのか ! ?
ディストあれはこの街を巨大なクレーメルケイジにするための術式ですよ。私が帝国にいた頃から研究を進めていたようですが、完成させていましたか。
コーキスクレーメルケイジって、キール様やメルディ様たちが持ってるやつだよな ?
ディストええ、それを応用した拡張版と考えればいいでしょう。私からすれば、模倣しただけの芸のない代物ですがね。
ナーザお前の主観などどうでもいい。ディスト、帝国は何をする気だ ?
ディスト簡単ですよ。この巨大なクレーメルケイジを使って精霊たちを捕らえるつもりなのでしょう。
ナーザなんだと ! ?
メルクリアん ? 兄上様 ! ジュニアからの通信です !
ジュニアメルクリア ! 大変だ !
メルクリアジュニア、どうしたのじゃ ! ?まさか、アジトで何かあったのか ! ?
ジュニアいや、僕たちは大丈夫。それより聞いて。さっきクラースさんから連絡があって精霊たちの力が活性化しているんだ !
三人! ?
ジュニアそれで、アステルさんとリヒターさんが調べた結果精霊たちの力が、セールンドに集まってる !
ジュニアメルクリア、もうセールンドに着いているなら今すぐそこから離れて ! 精霊の力が暴走して巻き込まれるかもしれないってアステルさんが……。
メルクリアう、うむ……わかったのじゃ !
ジュニアそれじゃあ、気を付けてね、みんな……。
ディストふっ、どうやら私の判断が正しかったようですね。
バルド……どうしますか、ナーザ様。ジュニアやディストの言う通り一度ここから離れるべきでは……。
ナーザいや、連中は精霊を目覚めさせることに執着していた。それが果たされた今、精霊を帝国の手に委ねることはティル・ナ・ノーグを危機に陥れる可能性が高い。
メルクリア義父上……。
ナーザディスト。この術式を解除する方法を話せ。
ディスト無駄ですよ。術式の解除は街の周囲に設置されている十八箇所もの魔法陣を無効化しなくてはなりません。
メルクリアあの光の柱が発生しているところじゃな。
ディストまぁ、無効化自体は魔法陣を維持する装置を壊せばいいだけでしょうが、数が多すぎます。時間を掛けるわけにはいきませんからね。
コーキスは ? 十八箇所なら……えっと一人……四つ……いや、五つぐらい壊せばいいだけだしそんなに時間はかからないだろ ?
ディスト精霊を捕らえるのに、クレーメルケイジを使ったということは、目的はフリンジでしょう。
ディストフリンジにはあまり時間がかからないはず。この人数では間に合うはずがありません。
コーキスそんなの、やってみなきゃわかんねえだろ!せめてギリギリまでチャレンジしてみようぜ。
ナーザ……ならば、ディストはメルクリアと南西を。俺と鏡精は北東を担当する。
ナーザ撤退のタイミングはディストに見極めを頼む。その時が来たら、合図と共にメルクリアを連れて避難しろ。
ディストなるほど。あなたは死者、鏡精は死んでも甦る。だからギリギリまで作業するというのですね。
バルド……私が……幻体などでなければ…… !
? ? ?『……こちらの方か……。力を求めたのは』
コーキスえ ? 誰だ ?
メルクリアコーキス ! 何を寝ぼけておる !兄上様を死なせるなど、わらわは納得せぬぞ !
コーキスでも、今、声が――
? ? ?『魔眼の力を――、鏡精。虚無に――者――い――をあた――』
コーキスこの声……まさか、バロールか ! ?って、うわああああああっ ! !
ナーザコーキス ! ? これは…… ! ?
メルクリアひ、左目が燃えておるぞっ ! !
コーキスあっっっつつつつ……くねえっ ! ?ど、どうなってんだ、コレ ! ?
バロールの残滓『フィンブルヴェトルに取り込まれたアニムス粒子を呼び寄せる。コーキス、命の炎を燃やせ ! 』
コーキス! !
ディスト――な ! ? 王宮の方から金色の砂が ! ?
バルド死の砂嵐 ! ? しかし……あれは……。
メルクリアこちらに来ます ! 兄上様 !
メルクリアきゃっ ! ? 何じゃ ! ? 懐のバルドの心核が熱くなっております ! ?
コーキス心核はもらい受けるぞ、娘。
メルクリアな、何じゃ ? コーキス ! ?それはバルドの――
ナーザ死の砂嵐がバルドの人工心核に引き寄せられているのか ! ?
コーキス我が魔鏡によって散りし者よ。我の炎を持って具現化せよ !
バルドコーキスの炎が私の心核に ! ?
メルクリアバルド ! !
バルドそんな……私の身体が……実体化している ! ?
メルクリアバルド…… ! ?一体何が起きたのじゃ ! ?
メルクリアコーキス、これはお主がやったことなのか ?
コーキス――え ! ? な、何だ ! ?何が起きた ! ? 何かバロールの声が聞こえて……命の炎がどうとか……。
ナーザバロールか……。バロールの魔眼は、死を呼ぶ時は毒を放ち命を生む時は炎を燃やす。
ナーザまさか、バロールがバルドの『命を生み出した』のか ?バロールには死んだ人間を甦らせる力があるとでもいうのか…… ?
ナーザそれにあの金色の砂……。あれは死の砂嵐に取り込まれ、虚無に漂うアニムスの欠片。だが、虚無への道はゲフィオンが封じていた筈だ。
バルドナーザ様。詮索は後にしましょう。私が実体を得られたのは好機です。これを生かさなくては。
バルドディスト博士、私が動けるようになったことで装置の破壊の実現性は増しましたよね ?
ディストあなた一人が増えたところでさして変わりませんがそれでもいないよりはマシでしょうね。あなたが人並み以上の働きをするのなら、ですが。
バルド約束しますよ。私が二、三人……いや、五人分は働く、とね。
ディスト随分と大口を叩きますね。
ナーザこいつは、やると言ったらやる男だ。それに、己の力を過信するようなマヌケでもない。
バルド光栄です。ナーザ様。
コーキスよし。何が起きたかわかんねーけどとにかく装置を壊そうぜ !
バルドそうですね。ですが、その前に少しだけ失礼します。……メルクリア様。
メルクリアな、なんじゃ、バルドよ ! ?わらわの手を取って…… !
バルド生前、私は祖国を守ることができませんでした。騎士としてこれ以上の屈辱はありません。しかし、こうして実体を得ました。
バルドビフレストは失いましたが、せめてメルクリア様――知の乙女たるあなた様のことは全力でお守りします。我が誇りにかけて。

Character11話【5-14 ファンダリア領 研究施設4】
帝国兵β施設近辺にて、鏡士イクス・ネーヴェ及び黒衣の鏡士ミリーナ・ヴァイス以下数名の存在を確認。現場の各隊と合流し、捕獲の任務にあたれ。
帝国兵β隊了解。
カロルイクスたち、上手くやってるみたいだね。お陰で警備が薄くなってきたよ。
ユーリんじゃ、そろそろオレたちも行くか。
ディムロスここからは別行動になるが何かあれば、すぐに魔鏡通信に連絡をしてくれ。
シャルティエ僕たちも、あなたたちの仲間を見つけたら連絡します。
ユーリああ。けど、気を付けてくれ。パティがいるってことは他の従騎士や帝国側の人間がいるかもしれねえからな。
ディムロス我々も無茶をするつもりはない。厳しい戦場ほど、全員無事に帰還しなくてはな。
シャルティエそれでは、また後程。
ジュディスあの二人、随分慣れた様子だったわね。
フレン彼らは元軍人だと聞いている。元の世界でもかなりの場数を踏んできたんだろう。
レイヴンそうそう。おまけにアトワイトちゃんみたいな可愛い子ちゃんも一緒だったっていうんだから羨ましい限りだわ。
リタ結局あんたが気になるのはそこかっ !
ユーリオレたちだって負けちゃいねえだろ。散々好き勝手やらせてもらってたからな。
エステルはいっ ! わたしたちも敵のアジトに潜入なんて慣れっ子です。
リタエステル……あんた完全にユーリに毒されてるわよ。見なさいよあのフレンの顔。思いっ切り引きつってるじゃない。
エステルフレン、そうなんです ?
フレンい、いえ……決してそのようなことは……。
ジュディスエステルも逞しくなった証拠ね。
ユーリそんじゃ、いつも通りってことで軽く一暴れしてやるか。
ラピードワオーン ! !
エルレインサレ ! どこにいる ! ?
サレおやおや、どうされましたか聖女様 ?
エルレイン貴様……始めからこうなることを知っていたな。
サレさて、何のことでしょう ?
エルレインとぼけるな。フォルトゥナの降臨は私を協力させる餌に過ぎず、本当の目的はアイフリードを呼ぶことだったのかと聞いているのだ。
サレだとしたら、どうなんです ?僕には全く関係のない話ですよ。
エルレインなに ?
帝国兵βエルレイン様、サレ様。先ほど、施設内にて何者かの侵入がありました。
エルレイン白髪の男か ?
帝国兵βいえ、対帝国軍組織の者と黒衣の鏡士の仲間たちと思われます。
サレどうやら、大事な仲間の救出に来たようだね。美しい助け合いの精神じゃないか。気持ち悪くて不愉快だよ。
エルレインサレ、どこに行くつもりだ ?
サレもうここには用はない。僕は一足先に撤退させてもらいますよ。
エルレイン待て ! まだ私からの話は終わっていないぞ。
サレ僕とお喋りするのは勝手だけどあなたの大事な器が逃げてしまいますよ ?
エルレインくっ……。
サレそれじゃあ、僕はこれで。また会えることを楽しみにしていますよ、聖女様。
帝国兵βエルレイン様、我々に指示を。
エルレイン……止むをえん。各隊、侵入者の対応にあたりなさい。あの少女の捜索は私が引き受けます。
帝国兵β了解。
ユーリカロル ! 次はどっちだ !
カロルこの先を右だよ ! そこに部屋があるはず !
ラピードウウッ……ワオン ! !
ユーリどうした、ラピード ! ?な…… ! ?
アイフリード……………………。
エステルパティ !
リタ待って、エステル ! 近づいちゃ駄目 ! !
エステルえっ ! ? どうして……。
フレンリタの言う通りです、エステリーゼ様……。彼女がリビングドールにされている可能性があります。
エステルそんな…… !
ユーリお前……パティなのか ?
アイフリード退け……。私は行かねばならぬ。
ユーリ! ?
レイヴンこりゃ、悪い方の予想が当たっちまったみたいね。
ユーリ……ざけやがって。何回おんなじことすりゃ気が済むんだ、あいつらはよ…… !
カロルでも、なんだか様子が変じゃない ?領主の館で会った従騎士の人と雰囲気が全然違うような……。
アイフリード……邪魔をするな。
ジュディス来るわ !
フレンみんな、構えろ !
ユーリ上等だ ! その身体、力ずくでも返してもらうぜ !

Character12話【5-15 ファンダリア領 研究施設5】
アイフリード……手強いな。
ユーリこっちはいつまでも付き合ってらんねえんだよ。これで決めさせてもらうぜっ !
アイフリードくっ ! !
帝国兵β目標、確認。総員、侵入者及び実験体の確保に移れ。
帝国兵β隊了解。
フレン帝国兵か ! ? ユーリ、一旦下がるんだ ! !
アイフリード――行かねば。精霊たちを解放するために……。
ユーリおい、待ちやがれっ !
エステル精霊を、解放…… ?
リタエステル ! 何ぼぉーっとしてるの !帝国兵の奴ら、こっちにも来るわよ !
エステルは、はいっ !
ジュディス一通り片付いたかしら。
レイヴンけど、その間にパティちゃんは完全に逃げちゃったみたいね。
ユーリ……また追いかけっこの再開かよ。
ラピードクゥーン……。
フレンこの音…… ! みんな、また帝国兵だ !
リタこれ以上相手するのも面倒だわ。こうなったら……。ガキんちょ ! これ被って適当に追っ払って !それ以外の全員は近くの部屋に隠れるわよ !
カロルえっ、ちょっとリタ ?なんで兵士の兜なんて拾って……ってうわああああああっ !
ジュディス大丈夫。あなたならやれるわ。
カロルえっ ! ? なになに ! ?ちょっとみんな ! どこに行ったの ! ?暗くてよく見えないんだけど…… !
帝国兵βおい、侵入者たちはどうした。
カロルえ、え…… !あ、あっち ! あっちのほうに凄い速さで逃げていったよ ! !
帝国兵β了解。追跡を開始する。
カロル…………。
カロルひ、ひどいよリタ ! 急にあんなことさせるなんて !
レイヴンけど、お陰でこっちも余計な戦いせずに済んだじゃないの。
ユーリそうだぜ、カロル先生。お手柄だ。
カロルえっ ? そ、そうかなぁ~。って、リタ。さっきから何してるの ?
リタちょっと黙ってて ! 今大事なところだから…… !
エステル部屋で見つけた資料を読み始めてからずっとあの調子で……。
リタ……嘘。もし本当にこんなことをするつもりなら……。冗談じゃないわ ! !
エステルどうしたんです、リタ ! ?
リタどうしたもこうしたもないわよ !ここに置いてあった研究資料を読んでわかったわ !あいつら聖核を使って新しい精霊を創り出すつもりよ !
ユーリ精霊を創るだと ?
ジュディス…………。
フレン! すまない、みんな。アジトから連絡が入った。繋げるよ。
クラースフレン、至急伝えたいことがある。他のみんなは ?
フレン大丈夫です。全員一緒にいます。
クラースそうか。では、早速本題に入るが今、ティル・ナ・ノーグにいる精霊たちの力が活性化している。原因はアイフリードの覚醒だ。
リタアイフリードですって ! ? まさか…… !
エステルそういえば、先ほどパティが言ってました !精霊たちを解放する……と。
カロルってことは、もしかしてパティの身体の中にいたのはアイフリードだったってこと ! ?
クラース……やはり、帝国側の仕業か。聞いてくれ。こちらでも分かったことがいくつかある。
クラースまず、アイフリードには滄我の力が宿っているそうだ。それが原因で、シャーリィを通じて我々も情報を入手することができた。
エステル滄我の力……。もしかして、以前ウンディーネが言っていたことでしょうか…… ?シャーリィにはこの世界の海神と同じ力があると……。
クラースその通りだ。そして、このままでは精霊たちが暴走し世界は滅亡の危機に瀕することになる。この事態はなんとしても止めなくてはいけない。
クラースいずれにせよ、精霊だけでなくアイフリードの力も帝国は利用しようとしている可能性が極めて高い。パティ……アイフリードは帝国側にいるのか ?
フレンいえ……。帝国側の監視をすり抜けて逃走しています。
クラースそうか……わかった。きみたちは引き続きパティ……アイフリードの行方を追ってくれ。何か分かればこちらからも連絡を入れる。
フレンはい、了解しました。
ユーリ中身が誰だろうと関係ねえ。パティはオレたちの仲間だ。これ以上、勝手なことはさせてたまるか……。
エステル……ユーリ。
ジュディス行きましょう。このままだと、追い付けなくなるわ。
ユーリ……ああ。
バルド――これで最後です。はああっ ! !
コーキスすげえ ! ?
コーキスおおーい ! こっちは終わったぞ !
バルド――それはよかった。私も今担当分の装置を全て壊したところです。
メルクリアな、なんじゃと ?バルドはわらわたちより二つも多く担当していたではないか ! ?
ディストなるほど。大口を叩いただけあってとりあえず二人分程度の仕事はこなしてくれたようですね。
バルドナーザ様 !
ナーザ相変わらず荒事は得意だな、バルド。見ろ。光の柱が消えていく。
ディスト……何とかフリンジは阻止できましたか。まあ、私にかかればこんなものですよ!
コーキスえ? ディスト様は特に何も――
バルドいいえ、コーキス。フリンジ完成のタイミングを読めたのはディスト博士のおかげですよ。
コーキスそれもそっか! 案外やるじゃん、ディスト様!
コーキスな ! ? 今度はなんだ ! ? 地面が……揺れる ! ?
メルクリア突風まで吹き荒れてきたぞ ! !なんじゃ……これは…… ! !
バルド! ? ナーザ様 ! ! 上です ! !
ナーザなにっ ! ? あの火球は…… !
バルド伏せてください ! !あれは私が引き受けます !
ナーザよせっ、バルド ! !
バルド風刃・峰牙 ! !
メルクリアバルド ! !
バルドくっ…… ! ! はあああああっ ! ! ! !
ディスト消えた ! ? あの巨大な火の玉をあの男が相殺したというんですか ! ?
メルクリアじゃが、このままではバルドが地面に落下するぞッ ! !
コーキス俺に任せろ ! !
コーキスギリギリ間に合った ! おい、大丈夫か ! ?
バルド……コーキス。助かりました。ありがとう。
ナーザバルド ! !
メルクリア何という無茶をするのじゃ ! ?
バルド……着地する余力を残せなかったとは無様ですね。ナーザ様、メルクリア様……。不甲斐ないところをお見せして申し訳ありません。
ナーザ愚か者が ! 魔鏡戦争の時と同じではないか ! しかも俺はあの時とは違う。死者だ !俺がメルクリアを庇えばそれで事は済んだ !
バルド……フフ、愚か者はどちらかな、ウォーデン。きみがメルクリア様を庇って死ねばメルクリア様が心に傷を負う。
バルド僕はメルクリア様を守ると誓いを立てた。メルクリア様を守るということはきみを守るということでもあるんだよ。
バルド今度こそ……僕はきみたち兄妹を守る。必ずね。
メルクリアバルド……そなたは……。
ナーザ……うつけめ。
コーキスえ ! ? その光……メルクリアとボスのそれって……浄玻璃鏡か ! ?
ナーザシドニーから渡されていたサンプルか……。しかし何故今これが光る ?
コーキスそれはオーバーレイだよ !えっと……マスターがやってたオーバーレイの――
ナーザ元々我が国の技術だ。説明はいらぬ。しかし……今光ったということは……。
バルド……フフ。浄玻璃鏡が光るほどに私を案じて下さった。私の存在も、お役に立つということでしょうか。
ナーザ相変わらずふてぶてしい奴だ。
イフリート―――― ! !
メルクリア兄上様 ! あれは…… ! !
コーキス精霊 ! ? けど、なんか様子がおかしいぞ ! ?
ディストおそらく、暴走しているのでしょう。あのクレーメルケイジに何か仕掛けがあったのかも知れません。
ディストさっさと逃げるに限るのですがどうも簡単には見逃してくれないようですねえ……。
メルクリア兄上様 ! バルドから託されたわらわたちの秘められし力で――
ナーザよかろう。俺たちの手で精霊の暴走を食い止める !
メルクリアはい、兄上様 ! ! たとえ精霊であろうと我が臣下を傷つけた罪は重いぞ ! !
バルド……コーキス。我々も戦いましょう。
コーキス戦うって、火球を消したときの怪我は大丈夫なのか ! ?
バルドこの程度の傷、造作もありません。ディスト博士も、お力をお借りできますね ?
ディストまあ、いいでしょう。せいぜい足を引っ張らないことですね。
ナーザ死神――いや、薔薇殿もとんだお人好しのようだ。ならば、遠慮なく行かせてもらう !
ナーザ鎮まれ、荒ぶる精霊たちよ ! !

Character13話【5-15 ファンダリア領 研究施設5】
ウンディーネ……ありが……とう……――。
コーキス精霊たちが……消えた ! ?
ディスト心配いりません。正気を取り戻したのですよ。暴走で力を使った分、休息をとっているのでしょう。
ナーザしかし……立て続けに無理をしたな。だが、肝心のデミトリアスの調査が終わっていない。メルクリア、動けるか ?
メルクリアわ、わらわは、大丈夫です !
ナーザ……とてもそうは見えぬな。
コーキスディスト様の椅子にメルクリアを乗せてやればいいじゃん。
ディストお断りです !
バルドメルクリア様は私が背負いましょう。
メルクリアそのようなこと、怪我人には頼めぬ !
コーキスだったら俺が――
コーキスうわ ! ? 静電気 ! ?バルド、痛くなかったか ?――あれ ? バルド ?
バルド……これは…… ?コーキスに触れた瞬間何かが……。
? ? ?尖兵よ。ようやく捕らえた。
バルド尖兵――この声は、バロールか ?
バロールの残滓察しがいい。それにしても、俺の尖兵となるのはあのナーザと名乗る男だと思っていたがな。
バロールの残滓頑ななまでに自らを死者と律しこちらに応えなかった。だがお前は違う。生きることに執着している。
バルド私が命を惜しんでいると ?
バロールの残滓心残りとでも言えばいいか……。喜べ尖兵。俺の魔鏡で滅びた命は俺の炎で具現化できる。
バルドそれは……まさかビフレストの民を甦らせることができるということか ! ?
バロールの残滓さあな。俺の魔鏡で失われたものにビフレストの民とやらが入っているならそうなのだろう。
バルドどうすればいい ! ?
バロールの残滓そう急くな。時間が必要だ。二枚目の俺の魔鏡を捜せ……――
メルクリア――バルド ! ? 大丈夫か ! ?
バルド……今のは……。
ナーザ何かあったようだな、バルド。詳しく話せ。
バルドは、はい。ですが、場所を移した方がいいかと。
ナーザそうだな……。ならば王宮へ向かうぞ。荒れていても休める場所ぐらいはあるだろう。メルクリアは私が背負う。
メルクリアあ、兄上様…… !
カーリャ・Nイクス様、小さいミリーナ様。陽動作戦は無事、順調に進んでいるようです。
イクスありがとう、ネヴァン。あとは、ユーリさんやディムロスさんたちがちゃんと施設内に侵入できたかどうかだな……。
カーリャまだ連絡は来ていませんしカーリャは少し心配です……。
ミリーナ大丈夫よ、カーリャ。ユーリさんたちなら、きっと上手くやってるわ。
イクスそうだな。よし、俺たちも次のポイントへ向かおう。
ミリーナええ、そうね……――……く…………っ。
イクスミリーナ ?
ミリーナご、ごめんなさい。少し立ち眩みしたみたい……。
イクス大丈夫か ? やっぱり、まだ転送ゲートを使った影響が残ってるんじゃないか ?
ミリーナううん、違うの……。なんだか……さっきから変な……あ……っ ! !
イクスミリーナ ! ?気を失ってる……。
カーリャミ……ミリーナ……さま……。
カーリャ・Nカーリャ ! ? もしかして、あなたにも何か影響が…… !
カーリャわ、わかりません…… !で、でも……カーリャもなんだか変な感じがするんです…… !
イクスカーリャが何か感じるってことは……ミリーナの心で、何かが起こっているのか ?
カーリャ・N……可能性は高いと思います。ですが、一体何が原因で……。
カーリャあの……ネヴァン先輩 !カーリャ、一度ミリーナさまの心の中に戻って原因を調べてきますっ !
イクスそうか ! カーリャならミリーナの心の中に入れるから……。
カーリャ・Nそれだけではありません。もし小さいミリーナ様の心に異変が起こっているのなら、カーリャの力で小さいミリーナ様の心を守ることができます。
カーリャだったら、尚更カーリャがミリーナさまを助けなきゃいけないじゃないですか !
カーリャ・Nそうですね……。今、小さいミリーナ様を助けられるのはカーリャだけです。
イクス頼む、カーリャ !ミリーナのこと、守ってやってくれ !
カーリャはいっ ! !
カーリャここがミリーナさまの心の中……。具現化した状態で入るのは初めてです。なんだか落ち着きます……。
カーリャって、落ち着いてる場合じゃありませんっ !早くミリーナさまが倒れた原因を調べないと…… !
ミリーナ……えっ、カーリャ ?
カーリャミリーナさま ! !うわああああ~ん ! ! ミリーナさまぁ~ ! !
ミリーナど、どうしたのカーリャ ?
カーリャだ、だって ! ミリーナさまが急に倒れるから……。そうだ、ミリーナさま ! ! 何ともないんですか ! ?
ミリーナえ、ええ……。私、目が覚めたらここにいて……。カーリャ、一体ここはどこなの ?イクスとネヴァンは一緒じゃないの ?
カーリャここはミリーナさまの心の中です !それで、ミリーナさまが倒れた原因が心の中で何か異変があったんじゃないかって……。
ミリーナ異変…… ?
? ? ?カーリャの言う通りだ。そして、その原因は私にある。
ミリーナ誰 ! ?
ゲフィオン久しいな、ミリーナ。こうして素顔を晒して喋るのは初めてか。
カーリャあわわわわ、あ、あなたは…… !
ミリーナ…………ゲフィオン ! ?
to be continued