Character1話【6-1 アジト】
リフィル――イクス、イクス、聞こえて ?
リフィル………………駄目ね。あなたの魔鏡通信はどう ?
ユリウスこっちも繋がらない。イクスだけじゃなくカイルやユーリたちにもだ。
ジェイドどうやら魔鏡通信そのものが使えないようですね。他の計器にも異常が出ています。観測装置も役に立たない。
リフィルいったい何が起きているのかしら。さっきの通信では、ミリーナが突然倒れたと言っていたわよね。
ジェイドとにかく、通信が途絶える直前までの状況を整理しましょう。
ユリウスそうだな。まずイクスたちだ。
ユリウスパティ救出のために陽動部隊として動いているがミリーナが倒れたことで体制が崩れている。
ユリウスそのために、現在はおびき出した敵を相手に持ちこたえるのが精一杯で、今後立て直しが必要――とさっきの通信で聞けたのはここまでだった。
ユリウスレンズと魔核回収班のディムロスたちは突入後連絡なし。パティ救出班のユーリたちもクラースが精霊の件で連絡を取ったきりだ。
リフィル精霊ね……。まさかアイフリードが目覚めるなんて。
ジェイドそのことですが、計器類が止まる直前に精霊たちがセールンドに集まって大きな力になろうとしていたのを観測しています。
ジェイド精霊研究室のメンバーは、アイフリードの覚醒による暴走を疑っているようですが、果たしてそれだけなのか気になるところです。
リフィルそうね。もしかして魔鏡通信や計器の不調は精霊が原因なのかしら。
ジェイド可能性は高いでしょうが――
ジェイド……まあ、今は精霊専門家たちが検討しているところです。見解を待ちましょう。
リフィルジェイド、また悪い癖が出てるわよ。何か言いかけたでしょう。
ジェイドおや、そうでしたか ?改めようと努力はしているのですが。不出来な生徒ですみません、リフィル先生♪
リフィル誤魔化さないでちょうだい。それと何度も言うけどあなたを生徒に持った覚えはありません。
ジェイド手厳しいですねぇ。今は推測よりも、確実な情報だけを追った方がいいと思いますよ。
ユリウス現状把握とは別にして考える。聞かせてくれ。
ジェイドユリウスもですか。二人が相手ではさすがに分が悪い。仕方ありません。
ジェイド以前にも同じように魔鏡通信が繋がらなくなった時のことを覚えているでしょう。
ユリウスああ。あれはイクスからあふれた力が結晶化してノイズになったことが原因……。
二人……あっ ! !
ジェイドそういうことです。もしかすると今回のノイズは――
アニスお邪魔しまーす。大佐、ちょっといいですか ?
ジェイドアニス、イオン様。どうしました ?
イオン取り込み中のところをすみません。ついさっき、ローレライの声を聞いたのですが内容が不穏なものなので報告に来たんです。
ジェイド……詳しく聞かせてください。
イオンはい。イクスたちがパティを救出している土地の周辺にクロノスの力が集まりつつあるというんです。
ユリウスクロノスだと ! ?
イオンええ。しかもその場に近づけるのは精霊かもしくは、近しい力を持つ者だけのようです。
イオンそしてそこでは、何か『恐ろしいモノ』が生まれようとしていると……。
ユリウス確かに不穏だな。イクスたちがいるなら間違いなくファンダリア領だろう。
ジェイドええ。ですがもう少し場所を絞りたい。イオン様、他に何か分かりますか ?
イオン周囲は平原らしいのですが、僕には土地勘がないもので正確な場所までは……すみません。
アニスイオン様が謝ることないですよぉ。どう考えてもローレライの説明不足ですって。
イオンそれだけならいいのですが。ローレライの様子がいつもと違う気がして……。
ミラ=マクスウェルローレライも精霊だ。暴走の影響を受けているのかもしれないな。
ユリウス君たちか。丁度いいところに来てくれた。
ユリウス計器類がやられてしまってね。全体への通達もままならないところだよ。
クラースやっぱりな。イクスたちに連絡しようとしたら魔鏡通信が使えなくなっていた。
リフィル観測機器も役に立たないからあなたたちの感覚が頼りよ。何か感じた ?
ライラ先ほどよりは少し落ち着いたように思えますが異様な気配は変わりません。
ライラ私だけではなく、ラタトスクさんや、ミラさんのようにこの世界の精霊と同一化していない精霊や天族は皆さん同じ気配を感じています。
ミラ=マクスウェルああ。それに四大も消えたまま戻らない。
クラースセルシウスもだ。アイフリードの覚醒の他にも何か要因があるのかもしれん。
ジェイドその件と関わりのありそうな報告を受けたところです。どうやらファンダリア領で――
ミラ=マクスウェルなるほど。恐ろしいモノ、か……。
クラース確かめに行きたいところだが精霊か、それに近しい者しか近づけないとなるとな。
ミラ=マクスウェル何を悩む必要がある。私たちが行けばいい。精霊の気配を辿れば場所もわかるだろう。
ライラそうですね。それにイクスさんたちも苦戦しているようですから、いざとなれば援軍にもなれます。
クラース馬鹿を言うな。魔鏡通信が使えない中で精霊の君たちが帝国に向かうのは危険だ。
クラース……と、言いたいところだが今回ばかりは仕方がないか。四大のことも心配だろう。
クラースそれに、精霊の力による『恐ろしいモノ』の誕生など何より君たちが望んでいないはずだからな。
ミラ=マクスウェルさすがクラースだ。私たちのことをよくわかっているな。
クラースおかげで振り回されっぱなしだよ。
リフィルでは、ライラたち天族とミラを中心に仲間を募ってファンダリアへ向かってもらいましょう。それでよくて ?
クラースああ。それとセネルたちにも話をしてくる。シャーリィからの話だと滄我はアイフリードと共鳴しているようだからな。
リフィルそうね。もし彼らも動いてくれるなら心強いわ。それとセールンドの調査も必要ね。そちらへは……。
ユリウス待ってくれ。俺もファンダリアへ行かせてくれないか。
リフィルユリウスも ?
ユリウスみんなには行動を控えろと言っておいて何だが今回はクロノス絡みだ。
ユリウス何か起きるというなら……取り返しがつかなくなる前に阻止したい。
イオンだったら僕も同行しましょう。ローレライが何か伝えてくるかもしれませんし。
ジェイドいいえ、イオン様には留守番をお願いします。
アニスですね。そうじゃなくてもオールドラント領に行ったばっかりなんですよ。……無理してほしくありません。
イオン……わかりました。では大人しくしています。僕もアニスが悲しむ顔は見たくありませんから。
アニスはぅあ ! ちょっと何言い出すんですかぁ ! ?
ジェイド闇属性には眩しすぎる笑顔でしたねぇ。アニス。
アニス誰が闇属性か ! バリバリの光属性ですよ !
ジェイドそんなことを言うと、テネブラエが出てきて凄まじい勢いで闇属性の押し売りをされますよ ?
リフィル……テネブラエ、ね。丁度いいわ。セールンドの方も精霊絡みだし、あちらの調査にはテネブラエやラタトスクたちに行ってもらいましょう。
リフィルでは各々準備をして。魔鏡通信が回復する見込みが立たないからみんな無理はせず、気を付けて行動するのよ。

Character2話【6-2 ケリュケイオン】
マークよし、ファンダリア領上空だ。なんとか待機ポイントまで無事到着したな。
マークアイゼン、地上の様子を確認したい。少しづつ高度を下げられるか ?
アイゼンああ。ガロウズ並みとまではいかないが手動操縦にもだいぶ慣れてきた。
マーク無茶言って悪いな。計器類が死んじまってんのに。
マークせめて、魔の空域に入った時みたいに自動操縦が少しでも生きてりゃサポートに使えたんだけどな。
シンクああ、あのサイアクな胴体着陸をやらかした時か。今回は絶対やめてよね。
アイゼン何を言う。あれは最高の結果だった。死人もでなかったしな。この際だ。胴体着陸を究めるのもいいかもしれん。
ゼロスなに言ってんの ! ?妙なところで凝り性発揮すんなって !
アイゼン心配するな。冗談だ。
シンクアンタって、笑いのセンスがないって言われたことあるんじゃない。
マークははっ、 みんながいつも通りで安心するぜ。ケリュケイオンがシステムダウンした時にはさすがに焦ったからな。
クラトス先ほど様子を見てきたが、艦内の混乱はローエンが上手く収めてくれている。こちらも問題ないだろう。
ヴィクトルふっ、ローエンなら朝飯前だろう。後はフィリップとガロウズが原因を究明してくれれば――
フィリップすまない、待たせたね。
マーク噂をすれば、だ。どうだ、原因はわかったか ?
ガロウズいや、機器類に物理的な問題はなかった。ビクエ様にも確認してもらったから間違いない。
フィリップ多分、何か大きなエネルギーが干渉しているんだ。それも複数の要素が絡み合っている。この状況だし、今すぐに解析するのは難しいね。
マークじゃあ、魔鏡通信も使えないままか。参ったな。
ゼロスどうするよ、マーくん。ユリウスが送ってきた計画書どおりには動けねえぞ ?
ヴィクトル潜入したディムロスたちからの合図で共にレンズと魔核を回収する手筈だったな。
マーク……仕方ねえ。こっちが独自で動くことも考えて準備するか。
アイゼン! !おい、お前ら、下を見ろ !
マーク帝国兵と反帝国組織の連中……陽動部隊だな。……っておいおい、帝国側に押されてんじゃねえか !陽動どころか、あのままじゃ攻め込まれて全滅だぜ ! ?
クラトスイクスたちが指揮をしている筈だが二人に何かあったのだろうか。
フィリップ陽動部隊を助けに行く。マーク、降下準備を !
マーク了解 ! どっちにしろ、このまま空にいたってディムロスたちとは連絡がとれねえしな !
ディムロスここにもない、か……。
シャルティエあちらの保管庫も同じでしたよ。レンズは僅かしか残っていません。
ディムロス恐らくほとんど使われてしまったのだろう。
シャルティエあんな大量のレンズを何に使ったんでしょうね。嫌な予感がするなぁ……。
ディムロスそれにしても妙だ。先ほどから魔核がまったく見当たらない。使い残したレンズはあるのに、おかしくはないか ?
シャルティエかけらも残さず使い切った……というのは少々無理がありますよね。他の場所に運ばれているんでしょうか。
ディムロスそうだな……よし、探すぞ。
シャルティエ待ってください。今からまた他の場所を探すんですか ?時間がかかりすぎなんじゃ……。ずっと救世軍を待機させとくつもりですか ?
ディムロスやむをえまい。私たちが敵陣で自由に動けるのは陽動部隊が兵を引き付けている今しかないのだからな。
シャルティエそれはそうですけど……。
ディムロスでは救世軍への連絡を頼んだぞ。私は先行して探索を進めておく。
シャルティエ……別の場所だなんて余計なこと言っちゃったかなぁ。連絡もな……計画変更して文句言われないかなぁ……。あっちにはバルバトスもいるし……。
シャルティエあれ ? 魔鏡通信が通じない……。
? ? ?グルルルルル !
ディムロス待て ! それは――
シャルティエどうしたんです、ディムロス !
ルキウス ?なんだ、他にも仲間がいたんだね。
アリエッタ誰……ですか ? 仕事の邪魔、しないで !
シャルティエ魔物 ! ? それにあれは……魔核 ! ?
ディムロスシャルティエ、お前の言ったとおりだった。彼らが魔核を運び出していた !
陽動部隊本陣 仮設砦
カーリャ・Nイクス様、小さいミリーナ様をこちらへ !
イクスありがとう、ネヴァン !
カーリャ・Nまだお目覚めになりませんね。小さいカーリャはどうしているのでしょう……。
イクス信じて待つしかないよ。今のうちに陽動部隊の立て直しを考える。
カーリャ・Nでしたら、私は前線に戻ってイクス様の指示が出るまで時間を稼ぎます。
カーリャ・Nこの砦はしばらく安全かと思いますがくれぐれも気をつけてください。今は魔鏡通信も使えませんので。では、私は――
イクスちょっと待ってくれ。気になったんだけどミリーナのことが切っ掛けとはいえ戦況の覆り方が異様に早くないか ?
イクス敵の数が、あの研究所に配備されていた人数よりも増えている気がするんだ。
カーリャ・Nそう言われてみると……。
陽動部隊隊員伝令 ! 皆さんが探していたパティという少女がこの先の森で目撃されたそうです !
イクスパティが ! ? なんでこんな所に…… !
カーリャ・Nどうしましょう、私が追いますか ?
イクス(……ここでネヴァンを行かせたら、戦力が分散して立て直しどころじゃなくなる。でも……)
ミリーナ……うっ……。
カーリャ・Nミリーナ様 ! ?イクス様 ! ミリーナ様の様子が !
イクスミリーナ !くっ……せめて応援を呼べたら…… !
フィリップイクス、ここにいたのか。みんな無事かい ! ?
イクスフィル……さん ? どうしてここに…… !
マークどうしてって、助けにきたんだよ。なんだ、呆けたツラして。
イクスいや……まるで俺の声が届いたみたいで……驚いた。
カーリャ・Nマーク、よく来てくれましたね。
マークパイセン、ミリーナはどうしたんだよ。誰かにやられたのか ?
フィリップ状況を聞かせてくれ。僕たちが協力する。
イクスは、はい ! さっき突然、ミリーナが倒れて――
フィリップ……わかった。救世軍の戦力を一部こちらに回そう。マークはイクスに協力して。
マーク了解。イクス、采配はどうするよ。今回はお前に従ってやるぜ ?
イクス俺とマークでパティを追いかけよう。軍隊を動かすのは正直俺よりネヴァンの方が信頼できる。
イクスネヴァンには、戦線を維持しながら陽動部隊の指揮をして欲しい。当初の目的どおり敵を引き付けられればそれでいいから。
カーリャ・N承知しました。あの、小さいミリーナ様のことは……。
イクスあの、フィルさん、お願いがあるんですけど。
フィリップわかっているよ。ミリーナのことは僕が請け負う。魔鏡術でミリーナの心の中にアクセスしてみよう。
イクスありがとうございます。魔鏡術のことはビクエであるフィルさんが一番信頼できます。ミリーナのこと、お願いします !
フィリップ……信頼してくれるんだね。こちらこそ、ありがとう。
イクスよし、行こう、マーク。

Character3話【6-3 ファンダリア領 森1】
フィリップさて……始めようか。ミリーナ、カーリャ、聞こえるかい ?
フィリップっ ! ? 術が拒絶された…… ?これほどの力がミリーナに……そんな筈は……。
フィリップ――まさか !
カーリャふえ~ゲフィオンさまの顔本当にミリーナさまとそっくりです。
ミリーナ……ずっとあなたと話がしたいと思っていたわ。ゲフィオン。
ゲフィオン……そうであろうな。
ミリーナゲフィオン、どうして私はこんなことになっているの ?さっき、原因はあなたにあるって――
ミリーナ今のは ! ?
カーリャきゃああああっ ! !
二人カーリャ ! ?
ミリーナカーリャ、どこに行ったの、カーリャ !
ゲフィオンこれは……。
ミリーナゲフィオン、カーリャが消えてしまったわ。どうして ! ?
ゲフィオン恐らく『ミリーナ』が『ミリーナ』だけではなくなったせいかもしれない。
ゲフィオン何らかの外的要因でミリーナとゲフィオンの境界が徐々に曖昧になっているのだろう。
ゲフィオンお前が倒れたのも、私がここにいるせいだ。
ミリーナそれじゃ『私のカーリャ』はもう私の中にはいられないの ! ?
カーリャいたたた……。なんですか、今の……。
カーリャへ…… ? ここってセールンド…… ?もしかして、ミリーナさまの心の中から追い出されちゃったんですか ! ?
カーリャあわわわわ……どうしよう……。ミリーナさまー ! カーリャの声、聞こえますかー ! ?
コーキスパイセン ? やっぱパイセンじゃねーか !
カーリャコーキス ! ? なんでここにいるんですか ! ?
コーキスそりゃこっちのセリフだぜ。休憩場所探してたら、パイセンの声が聞こえてさ。
メルクリアコーキス、どうしたのじゃ。誰ぞそこにいるのか ?
バルドおや、その可愛らしい姿、カーリャではありませんか。もしやミリーナさんもここにいるのですか ?
カーリャバルドさま~~~っ !違うんです ! カーリャだけここに飛ばされてしまったんです……。
ナーザ飛ばされた ? 鏡精、何があったのか話してみろ。
コーキス――なんだよそれ !めちゃくちゃ大変なことになってんじゃねーか !
バルドナーザ様、確認しました。やはり魔鏡通信は使えません。
バルド残念ですがカーリャ、イクスさんたちに連絡を取るには直接向かうしかないようです。どうか、気を落とさずに。
カーリャバルドさま、イケメンな上に優しいです……。手も温かくて……――え ! ?なんでカーリャの手を握れてるんです ! ? 生身 ! ?
バルドええ。これからは文字通り、この体を張ってあなたを守ることもできますよ。可愛い人。
カーリャ……あわわわわわ ?色々起こりすぎて、頭がついていきません……。
コーキスつーか、バルドもいつまでパイセンの手握ってんだよ !
バルドこれは失礼。カーリャを元気づけようとしただけですよ。他意はありません。
ナーザはぁ……。鏡精、お前がここに飛ばされたのはミリーナがゲフィオンに近づいた瞬間で間違いないのだな ?
カーリャそうですけど……それが何か ?
ナーザ二人が近づくほど、片方が作った鏡精が異物として扱われている。ということは……。
ディスト同化している可能性がありますね。経年による肉体的な差異はあれど存在は完全同位体のようなものですから。
カーリャ同化って、つまりミリーナさまとゲフィオンさまが一つになっちゃうってことですかあ ! ?そんなのダメですよう !
カーリャ早くミリーナさまの中に戻ってミリーナさまを守らないと !
コーキスなあ、どうにかパイセンをミリーナ様の中に戻せないのか ! ?みんな、俺より頭いいじゃんか !
メルクリア落ち着かぬか、コーキス。むしろ、同じ鏡精であるお前でこそわかることがあるのではないのか ?
コーキスそりゃそうだけど、俺はパイセンと少し違う……ってあれ ? そういやパイセン、なんで消えないんだ ?ミリーナ様はファンダリア領にいるんだろ ?
カーリャはっ、そういえば !いつもこれだけ離れたら消えちゃう距離なのに。
ディスト鏡精には間抜けが多いのですねぇ。ここにゲフィオンがいるからですよ。
カーリャへ…… ?
ナーザそうか。お前は今、このカレイドスコープの間にいる人体万華鏡になったゲフィオンの力で存在しているのだろう。
ナーザゲフィオンとミリーナの力は混じっているようだからな。
ディストそれを踏まえれば、その小さなおつむでもあなたがセールンドに飛ばされた理由がわかるでしょう。
カーリャゲフィオンさまを通じてここに出た…… ?じゃあ、反対に戻れるかもしれませんよね ! ?
コーキスよーし ! 試してみようぜ、パイセン !
カーリャむむむむむ~……。
コーキスどうだ、いけそうか ?
カーリャ……だめでした。やっぱり入れません。もうこうなったら自力で飛んで帰ります !
ディストさて、その小さな体で、どれほど時間がかかるやら。
カーリャう……。
ラタトスクチッ……妙な面子が揃ってるな。ここで何をしている。
マルタコーキスにカーリャまでいるじゃない。驚いた !
メルクリアアステル ! ? 何故アステルが鏡士の郎党と共に……。
エミルあ、ええと……それはね……。
メルクリアいや、待て。そうか……。リヒターが話していたエミルとラタトスクとやらか……。
エミルそうか……。リヒターさん……僕らのこと話してくれてるんだ……。
コレットねえ、カーリャ、どうしてここにいるの ?ミリーナが大変だって聞いてたけどもしかして、ミリーナもセールンドに来てるの ?
カーリャコレットさま……。
カーリャ――ああああああ ! !そうだ ! そうですよ ! コレットさまなら !
コレット

Character4話【6-4 ファンダリア領 森2】
マークいたぞ ! あいつで間違いねえよな !
イクスああ !――パティ、俺だよ、イクスだ ! 助けに来た !
アイフリード来るな !
マーク危ねえ、イクス !
マークうわっ ! !
イクスマーク ! ?
マークっ……大丈夫だ……いいからパティを追え !すぐに追いつく !
イクスわかった !
アイフリード……まだ追ってくるか ! 仕方がない。
アイフリード私は捕まるわけにはいかぬ。確実に足止めさせてもらうぞ。
アイフリード檻から解き放たれたばかりですまない。四大よ ! ここへ !
イクスなにっ ! ?
イクスうわああああっ ! !
アイフリード……なるほど、四大ほどの力を持つ精霊たちでもこの程度の威力か。まだ回復しきれぬのだな……可哀想に。
アイフリード精霊たちに、負担をかける訳にはいかない。これ以上、私に力を使わせるな。
イクスくっ……。四大精霊を操っていた…… ?それじゃパティはもう、心核を……。
イクスだったら、絶対に……連れ戻す…… !
アイフリード動くな ! 本当に命を落とすことに――
? ? ?シャイニングスピア。
アイフリードっ ! ノーム !
エルレイン……精霊で防いだか。アイフリードであれば当然だな。なるほど、では貴様はこの世界の海神ナーザ・アイフリードか。
イクスなんでここにエルレインが…… ?
エルレイン異世界の神よ。その体を渡すことはできぬ。返しなさい。
マークイクス、無事か ! ? って、エルレイン ! ?
アイフリードウンディーネ ! イフリート !
全員! !
マーク逃げられたか ! ……くそっ。
エルレイン邪魔をしてくれたな。ジュニアの鏡精。
マークジュニア ? 期待にそえなくて悪いな。俺はおっさんフィリップの方の、鏡精マークだよ。
イクスエルレイン……さん。助けてくれてありがとうございます。
エルレインお前が鏡士イクスか。
エルレインその傷は浅くはない。鏡精共々、ここで大人しくしているがよい。
イクス待ってください ! パティの中にいるのはアイフリード――ナーザ神なんですね ?
エルレインそうだ。このようなことにならなければこの世界は今頃、あの娘に降臨するはずであった我が神フォルトゥナによって救われていたであろう。
イクスあなたが、パティを ! ?
マークイクス。
イクス……ああ、わかってる。聞いてください、エルレインさん。
イクスもし、帝国がフォルトゥナ降臨を計画したのなら帝国はエルレインさんを、その……利用しているだけ……だと思う。
イクス神降ろしが失敗したのはわざとそうさせられたんじゃないでしょうか。
エルレイン……なぜそう思う。
イクスエルレインさんは、この世界を救うと言いました。でも俺たちの知っている帝国の計画は正反対だ。
イクス帝国の真の目的は、ティル・ナ・ノーグ以前にあったニーベルングという世界の復活です。
イクス滅んだニーベルングのレプリカを造り今の世界と置き換える。つまり――ティル・ナ・ノーグは滅ぼされます。
エルレイン……そうか。やはりな。
イクスってことは、信じてくれるんですね。だったら、俺たちと一緒に――
エルレインいや、私にはすべきことがある。お前たちには、これを預けておこう。
イクス……心核 ?
エルレインあの娘のものだ。今は休眠状態にある。しかし鏡士ならばその心核を目覚めさせ、娘の中に戻すこともできよう。
イクスもしかして、あなたはパティを救おうとしていたんですか ?
エルレイン救済は全てに等しく与えられるもの。その一つだと思いなさい。
イクス待ってください、エルレインさん !……痛っ !
マークここまでだ、イクス。今の俺たちにはあいつらを追う力も余裕もねえ。砦に帰るのが精一杯だ。
イクス……ああ。
ディムロス――その魔核をどこに運ぶつもりだ。
ルキウス ?困ったな。事を荒立てたくないんだけど。
アリエッタ早くしないと、敵の陽動作戦、終わっちゃう……です。
ディムロスなんだと ! ?
ルキウス ?アリエッタ、余計なことを言うな。
アリエッタご、ごめんなさい……。
ルキウス ?まあいいよ。こっちも鏡士たちの陽動を逆手にとってずいぶん楽に魔核を運ばせてもらったからね。
シャルティエ知ってたっていうのか……全部。
ルキウス ?そうだよ。お前たちが仲間の救出に集中していたから邪魔をされずに済んだ。
ディムロスだが今は違う。魔核はこちらに渡してもらうぞ。行くぞ、シャルティエ !
シャルティエ了解 !
アリエッタ絶対に渡さない……です !みんな、やっつけて !
シャルティエくっ、どこからこんなに魔物が…… !これじゃ魔核に近づけない !
ディムロス魔物を操っている少女を先に抑えろ !
ルキウス ?……これだけ魔物を出しても、まだやる気なんだ。仕方ないな。
ルキウス ?お前たち、ここまで楽に魔核を運ばせてもらったお礼にいいことを教えてあげるよ。
ルキウス ?お前たちの陽動はバレている。だから今、帝国は次々に兵士を増員しているんだ。
ルキウス ?想定以上の敵が現れたら、お友達は驚くだろうね。もしかしたら、もう配備されているかもしれない。
二人! !
ルキウス ?それでもこのまま魔核を追うのかな ?それとも今の情報を持って仲間を救いに行く ?好きな方を選ぶといいよ。
ディムロス…………シャルティエ、行け。
シャルティエディムロス ! ? 信じるんですか ! ?
ディムロス嘘だと言い切れまい。
ディムロス救世軍でも、イクスくんたちでもいい。お前はとにかく情報を広めろ。私は魔核を追う。
シャルティエでも…… !……いえ、了解です。無事でいてくださいよ !
ルキウス ?どっちも選ぶなんて欲張りだね。それが命とりになるかもしれないよ。
ディムロス生憎だが、全員生きて帰るのが信条だ。――行くぞ !

Character5話【6-5 ファンダリア領 研究施設】
ディムロス炎牙昇脚 !
魔物グルルルル……。
ディムロス(どうしたことだ、魔物が引いて行く…… ?)
ディムロス――っ !あの少女たちはどこに行った ! ?
ディムロス(転送魔法陣か。まだ完全に消えてはいないな。ならば――)
ディムロス逃しはせん !
シャルティエやっぱり魔鏡通信が通じない……。なんでこんな時に !
シャルティエ……考えている暇はない。砦へ向かおう。
ヴィクトルいたぞ、シャルティエだ。
クラトスすまぬ、待たせたようだな。
シャルティエ救世軍の皆さん ! 連絡が取れなくて困ってたんです !
ゼロス今は魔鏡通信が使えないんだよ。つーわけで、直接出向いてきぜ。
シャルティエよかった ! 各陣営に伝えてください。今回の作戦、帝国側にばれているんです。
ヴィクトルなんだと ?
シャルティエ今も兵を増員して送り込んでいるとの話もあります。そうなるとこちらは数で敵いません。
ゼロスマジかよ ! 陽動部隊が押されてたのもそれが理由かもしれねえな。
シャルティエ陽動部隊が ! ?あいつの話は嘘じゃなかったのか……。
クラトスわかった。イクスたちには私が報せに行こう。ゼロス、お前はケリュケイオンへの連絡を頼む。
クラトスそれで、レンズと魔核は見つかったのか ?ディムロスがいないようだが。
シャルティエすみません、報告が遅れました。レンズはほぼ使用されていて、魔核は別の場所へ運び込まれている最中です。ディムロスが奪還に当たっています。
ヴィクトル一人でか。
シャルティエええ。僕は増員の情報を皆さんに伝えるために一時離脱しました。すぐにディムロスの所へ戻るつもりです。
ヴィクトルそうか。ならば私も共に行こう。
シャルティエお願いします !
アイフリード精霊たちは幾分か落ち着いたようだが……。この辺り……気配が……。
グラスティンヒヒッ、何かお探しかな ?
アイフリード……誰だ。貴様も私の邪魔をするのか。
グラスティンとんでもない。これを渡そうと思ってな。
アイフリードそれは……ダーナの心核 !
グラスティンそう、その欠片だ。大事なものだろう ?
アイフリードなぜそんなものを !ダーナは心核を傷つけられているのか !
グラスティンまあまあ、まずはこれを返そう。ほら。
アイフリード…………。
グラスティンなんだ、いらないのか ?
アイフリード……何を企んでいる。
グラスティンそうだよなぁ。疑うのも無理はない。特別サービスだ。説明してやろう。話せば長くなるんだが――……っと、ここで終わりだ。
グラスティンもう、準備が整ったからなぁ ! !
アイフリードなっ ! うああああっ ! ?
グラスティンお前のために作ったクロノスの【魔鏡陣】さ。よく味わってくれよ ?
グラスティン発動までに少々時間はかかったが……ダーナの心核の欠片がいい足止めになったな、ヒヒヒッ。
ライラあれは……パティさん ! ?
グラスティンあぁ ? なんだお前たちは ?
エドナ答える必要あるのかしら。
グラスティンああ、お前たちは天族か。この一帯は精霊しか入れないようにした筈だがお前たちは精霊みたいなものだったなあ。
ミラ=マクスウェルグラスティン、何をするつもりだ !
グラスティンほう ! これはこれは、異世界のマクスウェル。
ミュゼなんなの、あなた。ミラに近づかないで !
グラスティンしかも、そこにいるのは『あの時』のお嬢さんじゃないかあ。ヒヒヒ、大盤振る舞いだな。
シャーリィっ !
グラスティン人間のお兄ちゃんは一緒に入れなかっただろう ?だが寂しがることはない。俺が相手をしてやる。
ザビーダ俺の後ろに下がってな、お嬢ちゃん。こんなゲス野郎のツラ見てると目が腐っちまうぜ ?
シャーリィありがとうございます。でも、それよりパティさんを !
ルドガー兄さん、パティを捕らえている魔鏡陣……あの中に集まっている力は――
ユリウスああ、感じる。クロノスの力だ。
シャーリィそれに、あの陣に配置されているのは聖核です。間違いありません。
ユリウスグラスティンは、ただアイフリードを捕らえているだけではないようだ。
ミクリオだったら、あいつを倒すより魔鏡陣を消すのが先だな。解除するには――
エドナぐだぐだ言ってないで、ぶっ壊せばいいでしょ。――ロックランス !
ミクリオ効いてない…… ?
グラスティンこの魔鏡陣はな、その程度の術でどうにかなるものじゃないんだよ。ヒヒヒ。
グラスティンさて、そろそろ頃合いのようだ。今回は特別に見物を許してやろう。
ルドガークロノスの力が凝縮していく !
ユリウスこれほどの力が集まるだと…… ! ?ルドガー、今は骸殻を使うなよ !……念のためだ。
ルドガー兄さん ?
グラスティンくくく、今までとは段違いの速さで吸収できるはずだ。いいぞ、どんどん食って成長しろ。
ミクリオクロノスの力が聖核を包み込んでいるのか ! ?
ライラ『成長』と言っていました。もしこれが、これから生まれようとしている『恐ろしいモノ』なのだとしたら…… !
ザビーダ冗談じゃねえ。んなもんお出しされたって受け取り拒否だっての !――おりゃあっ !
グラスティンくっ、ヒヒヒ……。いいぜ、今のうちだ。こいつが完全に完成したらそんな風に抵抗することもできなくなるだろうよ。
グラスティン大人しくなった頃にお前たち全員『材料』として持ち帰ってやるよ。
ミュゼ本当に嫌な人。あなたにだけは、死んでも使役されたくないわね。
グラスティンヒヒヒ。さあ、一緒に祝ってくれ。【鏡の精霊】の誕生をなぁ !

Character6話【6-6 ファンダリア領 街道1】
セネル……まだか。遅いな。
スレイシャーリィのこと、心配だよな。贄の紋章もあるし……。
アルヴィン精霊様たちが勢ぞろいでご出陣なんだ。何かあったって、どうにかしてくれるだろ。
ティポアルヴィンはイイカゲンだな~。
アルヴィン『いい加減』か。お褒めの言葉、ありがとよ。
エリーゼアルヴィン、自分に都合よく受け取りすぎです !
アルヴィンうは、おっかねぇ。とにかく、それくらいでいた方が落ち着いて行動できるぜ、セネル。
セネルそうだな。ありがとう、アルヴィン。
スレイけどさ、クラースさんは、無理に出陣しないでアジトでサポートしてくれればいいって言ってたんだろ ? なのにシャーリィはなんで……。
セネルいつ滄我の声が聞こえるかわからないからなるべく精霊のみんなと一緒にいてすぐに言葉を伝えたいんだってさ。
エリーゼシャーリィは責任感の強い人ですね。
ティポマジメすぎて、ユーヅーきかないね~。
セネルははっ、そうだよな。意外と頑固なんだよ。グリューネさんは、ちゃんと待機してくれてるのにさ。
レイアそういえば、エルは今回大人しかったね。いつもはルドガーにお留守番って言われると少し拗ねてたじゃない ?
ジュードミラさんが一緒に留守番してるからね。エルも安心できるんだと思う。
ジュードそれよりも妙なのはユリウスさんだよ。ルドガーが一緒に行くことを渋ってたから。
ガイアス……ユリウスにはクロノス絡みで気掛かりなことがあるのだろう。
レイアなんかルドガーたちって、ちょっと特別っぽいよね。わたしたちはこの先から入れなかったけどミラたちと一緒に進めちゃったし。
全員! !
ジュード今、何か変な感じが……。
レイアねえ、みんな ! この先に進めるようになってるよ !
スレイオレたちも近づけるようなったのか ! 行こう !
スレイこれ……どうなってるんだ ! ?
ミクリオスレイ ! 入れたのか !
グラスティンはぁ……はぁ……、結界が……弱まっちまったか……。だいぶやられたからな………。
セネルグラスティン ! 貴様 !
グラスティンだが……ここからだ……ヒヒヒ……。
ルドガークロノスで回復する気だ !
セネルさせるか ! うおぉおおおっ ! !
グラスティンぐはっっ……、はは、これは効いた……。けどな……もうすぐ……もうすぐ……………… ?
全員
グラスティンなんでだ……クロノス……… !早くしないと…………本当に………… !
ガイアスもしや、クロノスの精霊装が作用してないのか ?
ユリウスだとすれば回復はできない。こいつはこのまま――
グラスティンなぜ戻らない……いや………もう、いい……。これくらいの痛みならまだ………………。
ジュード無理だよ。その傷ではもう……。
グラスティン黒髪…… ! ? 俺のだ……俺のもの…… !
ミラ=マクスウェルお前のものじゃない。この世界の誰もがな。
グラスティンどけよぉ…………俺の……黒…………俺の……フィ……………………………。
ユリウス……こいつも終わりか。
ザビーダちっ、しつっけえ奴だったぜ。
シャーリィパティさん ! しっかりしてください !
ジュードあ、待って ! 今はそのままにして。目が覚めた時に、どうなるかわからないから。
ラピードワン、ワンワン !
ユーリおい、お前ら !
ルドガーユーリたちだ ! みんな、早くこっちへ !
ユーリ一体何を――って、こいつは…… ?
セネルグラスティンだ。……死んだよ。
フレンどうなってるんだい ? ここで何があったんだ。
カロルねえ、こっちにパティが来なかっ………パティ ! ?
エステルパティ ! 良かった、無事だったんですね !
フレンエステリーゼ様、用心を。今のパティはアイフリードですから。
ユリウスそのことだが――
シャーリィあっ、パティさんが目を開けました !
ラピードグルルルル……。
? ? ?――出でよ。
全員! ?
カロル今地面から出てきたあれ……魔鏡 ! ? 凄くでっかい !
ミラ=マクスウェルなんだ……この感覚は…… !
ミュゼ意識を強くもたないと……、頭が……。
シャーリィあっ、パティさん !
エステル待ってください、行っちゃ駄目です !パティー ! !

Character7話【6-7 ファンダリア領 街道2】
エリーゼ今の……何なんですか……。
ティポパティがおっきな魔鏡を作ってその中に入って消えちゃったよー !
アルヴィンおい ! 精霊のお歴々、大丈夫か !
エドナええ……もう何ともないわ。あいつが消えたせいかも。
ミクリオ嫌な感覚だったな……。心も体も囚われてしまうような……。
ライラパティさんはどこへ消えたのでしょう。
カロルさっきの巨大魔鏡に景色が映ってたよ。あれは、ファンダリア領の帝国軍基地だったと思う。
ジュディス単純に考えれば、そこに行ったんでしょうね。
レイヴンしかし何よあれ、アイフリードってのはあんなことまで出来ちゃうわけ ?
ルドガー……パティは今、アイフリードじゃないと思う。
レイヴンえ ? んじゃ、どうなっちゃってんのよ !
ユリウスグラスティンは【鏡の精霊】と言っていたな。
フレン鏡の精霊 ? 聞いたことがないな。
リタ……ちょっと、この術式の跡なによ。
ユリウスあの男曰く【魔鏡陣】だそうだ。陣の中には聖核がいくつも配置されて、クロノスの力が集まっていた。パティ――アイフリードは、そこに囚われていたんだ。
ユーリ聖核と精霊っていや……おいリタ。
リタ……聖核が複数で、となるとこの術式は……。…………嘘でしょ、なんでこんなのが成立するのよ。
リタだとしたら、この世界ではエンコードに関わらずマナもエアルも区別がないってことになるじゃない !循環がないから法則が無視できるっての ?
カロルちょ、リタ ! なに言ってるかわかんないよ。
リタさっきの施設で研究資料を見つけたでしょ。パティは新たな精霊として創られたのよ。あいつのいう【鏡の精霊】にね。
全員っ ! !
エステルで、でも戻せますよね ?リタなら何か方法を見つけられるはずです !
リタ何となくあたりはつくけど……。
リタ多分、アイフリードの魂をベースに複数の聖核をキメラ結合させてるのよ。
リタざっと見たけど、精霊として生み出すためにリゾマータの公式も利用されてたわ。こんな使い方、メチャクチャよ !
カロルまさか不機嫌の理由って……。
リタうっさい、黙ってて !多分、今パティに入っているのは、心核じゃなくて聖核なんだと思う。そこに色々くっついてんの。
リタだから、パティの心核と、聖核を元の状態に戻せば状況は変わるはずよ。
カロルキメラ結合しちゃったのを戻すの ?
リタその方法も、この術式の跡を調べればわかるわ。
リタあんたたちはそこで待ってて。今から全部解析するから。
ラピードワウッ ! ワオーン !
アーチェいたー ! みんなー、伝令ー !
カロルアーチェ ! どうしたの ? 伝令って、魔鏡通信使えばいいのに。
アーチェうそ、カロルたちまだ気づいてないの ?魔鏡通信が使えないから空を飛べる組は伝令になってんの。
ユーリマジかよ。原因はわかってんのか ?
アーチェえっと、複数の要素が絡んでるとか何とか ?とにかく、今はこの上のケリュケイオンを臨時拠点にして、情報集めてるところ。
ユリウスご苦労さま。それで、伝令っていうのは ?
アーチェ陽動部隊がかなり押されちゃっててこの辺りも戦いに巻き込まれるみたい。今すぐ退避するようにって。
フレン陽動って、イクスたちが ! ?
リタあっそ。じゃあこの術式の解析が終わったら行くわ。
アーチェえー ! ? 今すぐって言ってるでしょ。ほら、早く~ !
リタ術式が残っている今を逃したらパティは助けられない。――あんたらは先に行きなさい。
ユーリはいはい。ってことだ。アーチェ、何かあったら伝令飛ばしてくれ。
アーチェは ! ?
ミクリオはぁ……スレイもだよな。
スレイもちろん !
ミラ=マクスウェル恐らく、ここにいる全員、同じ答えだと思うぞ。
アーチェもー……、わかったわよ ! みんなのことは報告しておくから。
アーチェただ、他のところの状況を聞いてると今はこっちを手伝える余裕はないと思う。だから、ぜーったい無理しないでよね !
ユーリおう ! んじゃ耐久戦といくか。へばるんじゃねえぞ。
フレン誰に言ってるんだい ?
ジュディスふふっ、面白くなってきたわ。不謹慎だけど。
レイヴンかーっ、これだから血の気の多い若者は。
ルドガー――みんな、リタを囲め。来るぞ !

Character8話【6-8 ファンダリア領 森3】
イクスはあっ……、はあっ……。
マークイクス、一回、止まって休むか ?
イクス大丈夫。四大の攻撃を受けてこの程度で済んでるんだからまだマシだよ。
マークまあな。アイフリードが万全じゃなくて助かった。
イクスそれもあるだろうけど精霊が弱ってるようなことも言ってたよな。……どこかで何か起きてるのかもしれない。
マークとにかく砦に帰るのが優先だ。……ふうっ。
イクスマークこそ平気なのか ?俺をかばったせいでモロに攻撃くらっただろ ?……ごめんな。
マーク俺は鏡精だからいいんだよ。それにお前に何かあったらフィルが悲しむ。
イクスフィルさんが……。
クラトスイクス、マーク !
イクスクラトスさん !
マーク連絡役お疲れさん。何かあったか ?
クラトスああ、問題が起きてな。お前たちの砦に行くところだった。……どうしたのだ、ひどい傷ではないか。
イクスさっきパティを――いえ、後で説明します。問題ってなんですか ?
クラトス今回の作戦だが、帝国側に知られているようだ。当初、我々が想定した以上の兵が投入されているらしい。早急に対策が必要だ。
イクスやっぱり !途中から帝国兵が増えてる気がしてたんです。
クラトス他にもこちらの動きを想定して裏で事を進めているようだ。魔核も運び出されているらしい。
イクスわかりました。すぐに砦に戻って、対応策を取ります。
クラトス無理をするな。臨時拠点のケリュケイオンでローエンが情報収集しながら指揮を執っている。今は任せておいていい。
イクスそうですか……。ローエンさんなら安心です。しばらく戦線は維持できそうですね。
クラトスああ。そこから少しずつ撤退へと持ち込むといい。それにしても随分と酷くやられているな。何があった。
イクスパティ……いえ、アイフリードです。パティは心核を抜き取られ、体にはアイフリードが入っています。連れ戻そうとしたんですけど……。
クラトスアイフリードの件は承知している。なるほど、相手が悪かったようだな。
クラトスアイフリードのことは今もユーリたちが追っているはずだ。任せておけ。
イクスだったら、ユーリさんたちに伝えてもらえますか。パティの心核を手に入れたって。
クラトス心核だと ? どういうことだ ?
イクスエルレインさんが渡してくれました。ただ、今は休眠状態にあるとかで鏡士の力がないと心核を目覚めさせられないそうです。
クラトスエルレイン……。なるほど、帝国でもひずみが生じているようだな。
イクス今、フィルさんがミリーナを治療してくれています。それが終わったら、すぐパティの心核を持ってユーリさんたちの下に向かいますから。
クラトス……お前たちは無茶ばかりするな。伝言は確かに伝える。しかし無理をするなよ。
ロミー――セールンドにおいて発動させた、フリンジによる転送魔法の生成は失敗。でも、エネルギーは十分に抽出できたそうよ。
デミトリアスそうか。残念だが、得たものがあるのなら十分だ。
ロミーそうかしら。あれだけ準備をしておいて術の一つも作れなかったなんて無駄な労力だったんじゃない ?
ロミー一番肝心なオリジンも捕獲できなかったんだから。
デミトリアス確かにオリジンの件は残念だったがまだ機会はある。何しろ召喚士アイフリードの始祖でもあるナーザ神が目覚めたのだからね。
デミトリアスそれにフリンジは、精霊同士を干渉させ新たな術を作り出すことができる素晴らしい技術だ。失敗とはいえ、試す価値はあったと思うよ。
ロミーふうん、のんきな皇帝様なのね。それじゃ、私はこれで失礼するわ。
デミトリアスもうアレウーラに帰るのかい ?
ロミーいいえ、ルキウスからの報告が途絶えているの。確認のために現地へ調査に向かうつもりよ。
デミトリアス待て。きみにはアレウーラ領の領主としての仕事があるはずだ。
ロミー領主の仕事なんて後回しでいいでしょ ?
デミトリアスそれはいけない。従騎士のフォレストも聖核の捜索に出ているのだろう ?鏡映点たちの襲撃も頻繁に起きている。
デミトリアス私はアレウーラ領の治安が心配なのだよ。
ロミー今さら治安の話 ? とんだ偽善者ね。
デミトリアス愛する自国を心配することの、何が偽善なのかね ?
ロミーあなたと問答する気はないわ。
デミトリアスロミー、待て。
ロミーお断り。だいたい、なんでフォレストを聖核探しに派遣したと思っているの ?
ロミー聖核を使った人工精霊を創る計画は上手くいったのにあなたたちが欲張って、予備の聖核まで欲しがったからでしょ ?
ロミーこれ以上文句は聞かないわ。やることはやっているんだから。それじゃあね。
デミトリアス……なるほど。適材適所とは中々に難しい。彼女は扱いを考えねばならないな。

Character9話【6-9 ファンダリア領 街道3】
フレンみんな、大丈夫か !
アルヴィンこっちは順調 ! これ以上、敵が増えなきゃな。
ザビーダとは言え、そろそろ見通しくらいは知りたいねぇ。
ルドガーリタ ! あとどれくらいだ ! ?
リタ邪魔 !
ルドガーわ、悪い !
エステル気にしないでください。ルドガーは悪くありません。リタは今、必死なんです。
ガイアス口を動かす前に手を動かせということだ。リタの方から声がかかるまで放っておけ。
エドナ邪魔なルドガー、略してジャガー。……ちょっとカッコいいから却下ね。
カロル良かったね、ルドガー……って !そっちから敵が来るよ ! 気を付けて !
ユーリ余裕あんじゃねえか、エドナ。
エドナそんなことないわ。その証拠にミボクラスの略し方が出てこないもの。
ミクリオどういう基準なんだ !
スレイいいからほら、集中集中 !
ミラ=マクスウェル………… ?
ミュゼミラ ! ? そっちに行ってはダメよ、敵が !
アルヴィンおいおい !
ミラ=マクスウェル―― ! !アルヴィンか。すまない、助かった。
アルヴィンお仕事中にぼんやりしちゃダメだぜ。
セネルこっちは俺たちが引き受ける。シャーリィ、ミラの側に行って必要なら回復してやってくれ。
シャーリィわかった !
ジュード突然どうしたの、ミラ。
ミラ=マクスウェルたった今、四大が戻った。
ジュードえっ !
セルシウス……どうにか抜け出せたわ……。
シャーリィセルシウスさん !
ミラ=マクスウェル何があった。四大もお前もかなり弱っているぞ。
セルシウスええ。フリンジで力を奪われたから……。
シャーリィフリンジ…… ?とにかく無事でよかったです。
セルシウス無事かどうか、まだわからないわ。
セルシウスアイフリード……と言っていいのかしら。新しい精霊……あの存在が近くに来ると精霊は意識を支配されそうになるみたい。
ジュード鏡の精霊だね。さっきミラたちにも同じような症状が出ていたよ。
? ? ?――え――ます――。聞こえ――か ?
ライラ魔鏡通信です !まだノイズ混じりですけど、誰かの声が聞こえます !
ユリウスそのまま繋げておいてくれ。はっきり聞こえるようになるかもしれない。
エステルセルシウス、鏡の精霊が使っている体は――パティは無事なんです ?
セルシウス……あの子は、何か恐ろしいものになりかけているわ。一刻も早く助けないと大変なことになる。パティも――私たち精霊も。
エステルそんな…… !
リタ――そう、その通りよ !『なりかけている』だけなんだわ。
ライラえ ? ど、どうしたんですか ?
リタだからこの術式は……うん、間違いないわね。パティは、まだ鏡の精霊になりきっていないのよ。状態としてはリビングドールβだと思っていい。
エステルそれってつまり――
リタまだ間に合うってこと。今ならまだパティが恐ろしいモノ――鏡の精霊になる前に助けられる。
エステルリタ !
リタさあ、終わったわ ! 大事なことは写したしデータも十分 !パティを助けに行くわよ。
ミラ=マクスウェルみな、聞こえたな。解析は終わった。撤退しよう !
ユーリそうしたいところだが、ちっと、難しくなりそうだ。
ジュードどうしました ! ?
レイヴンあれを見な。この距離で見積もっても今までの倍の兵士が来る。
レイアこっちからも ! もう囲まれちゃうよ !
ガイアス今、我々が陣形を崩せばそのまま一気に畳みかけられるだろう。
ローエン聞こえますか ? 応答して……さい。
ガイアスその声、ローエンか !
ローエンガイアスさん、ご無事で何よりです。まだノイズは交じ……すがこの通り、魔鏡通信は回復しつつあります。
ローエン皆さんの状況は確認しています。救世軍の兵をそちらへ向かわせているところです。もう少しだけ耐えてください。
リタ少しってどれくらいよ !早くパティを追わないと間に合わなくなるわ !
スレイ……わかった。ユーリたちは先に行ってくれ。今ならまだ、オレたちで退路を確保できる。
フレンスレイ ! でも今だって――
セネル時間がないんだ。急げ !
ルドガー心配するな。これだけ揃っているんだ。そうそうやられないよ。
ジュードうん、僕たちの力を信じて。行って !
ミラ=マクスウェルパティのあのような姿精霊としても仲間としても見るに堪えない。早く助けてやって欲しい。
ユーリ……おう。んじゃ、頼むわ !
フレン……ありがとう、みんな。
フレン――行こう。手薄なところを突っ切って何があっても構わず走り抜く !
全員了解 !

Character10話【6-11 ファンダリア領 街道5】
カロルはぁ……何とか突破できた……。スレイやみんなのおかげだね。
ジュディス彼らのところにも早く援軍が来てくれるといいのだけど。
フレン大丈夫。ローエンさんの采配があるんだ。僕たちはパティを助けることに専念しよう。
エステル鏡の精霊の魔鏡に映っていた帝国の基地ってこの先なんです ?
ユーリああ、この森を突っ切るのが最短距離のはずだ。だよな、カロル。
カロルうん、ばっちり調べてあるよ !調査しながら、各地の地図を作ったりしてるからね。
ラピードグルルルル……。
レイヴンちょい待ち ! あれって……。
ジュディス増援の兵士が待機しているみたいね。このまま進むなら、戦わないといけなくなるわ。
リタそれじゃ最短距離の意味がないじゃない。別ルートは ?
ユーリここまで来て迂回となると、相当時間がかかる。何とかすり抜けちまおうぜ。
ジュディスそれもいいけど、彼らが何のためにいるのか調べておいた方がいいんじゃないかしら。
フレンそうだね。ユーリ。あそこに集められている兵士ってリビングドール兵じゃないよね ?
ユーリああ。好き勝手にくっちゃべってるからな。リビングドール兵は人間味っつーのがねえから見てりゃわかる。
フレンなるほど。だったら情報収集しておこうか。
ユーリへえ、お前から言い出すとは思わなかったぜ。
レイヴンんじゃ、早速お話しちゃいましょ。無理やり。
帝国兵くっ……くるし……。
ユーリ大人しくしてろって。悪いようにはしねえよ。
レイヴンほらほら、リラーックス。あんまり動くと、もっと締まっちゃうわよ ?
エステルあの、ほどほどにしないとこの人もしゃべれませんから、ね ?
カロルユーリの締め技、エグいなぁ……。
リタ絵面だけ見てると悪人そのものね……。
ラピードグルルルルルルゥ……。
ジュディスあら、ラピードもやる気満々ね。
帝国兵待ってくれ ! 何でも話すから !
フレンそうか。では、まずは兵の手薄な箇所と――
フレン――魔導砲 ? その兵器の最終テストというのはこの近くで行われるのか ?
帝国兵は、はいっ ! そちらにも兵を割くことになるのでこの辺りの兵数も減るはずです……。
二人魔導砲……。
リタマナを高出力で撃ち出す、とんでもない威力の兵器よ。クラースたちから聞いたことがあるわ。
エステルマナというと、私たちの世界ではエアルと物質の間のようなものでしたよね ?
リタそうよ。これでわかったわね。帝国が魔核を集めていた理由が。
エステル魔核はエアルが凝縮したものだから、ですね。
フレン魔導砲のために、魔核は集められていたのか。
カロル……ねえ、ユーリ。その魔導砲と似た話、どっかで聞いたよね。
ユーリああ、異世界の兵器を使って精霊を実弾に使用するって計画だろう ?オレもそれを思い出していたところだ。
レイヴンおいおい、それが魔導砲と同じ話なら、パティちゃんはその実弾として使われるんじゃ…… !
ユーリおい ! 他に何か聞いてねえか ?
帝国兵他には――ぐはっ ! !
全員! !
ロミーおしゃべりが過ぎると死んじゃうわよ ?そいつみたいに。
ユーリお前がやったのか ! ?
ロミーええ、そうよ。仕事だもの。それともう一つ。
ロミー――ここにネズミがいるわ ! 早く駆除しなさい !さて、これであなたたち、逃げられないわね。
リタちょっ、なにしてくれんのよ、あんた !
ロミーうふふ、仕事を楽しんでいるだけよ。
ルキウス ?ロミー、ここにいたのか。
全員! !
カロルあの顔……カイウスとそっくりだ。
エステルじゃあ、あの人がルキウス ! ?
ロミールキウス ! 連絡がないからわざわざ出向いてあげたのよ。
ルキウス ?ふーん、そう。そんなことよりこれからもっと面白いものが見られる。ついて来るといいよ。
ロミーなによ、いいところなのに。仕方ないわね。
ロミーああ、そうそう。ネズミさんたちのことは雑兵共が相手をしてくれるから安心して。――ほら、もう来たわ。
帝国兵いたぞ ! こっちだ !
ロミーふふふ、あなたたちも楽しんで。
ユーリおい、待ちやがれ !

Character11話【6-12 ファンダリア領 街道6】
ユーリったく ! これじゃ、あいつら追うどころじゃねえ。
ジュディスせめて意表をつく手があればこの場から抜け出せそうだけど。
レイヴン意表ってったって、そうそう簡単には――
? ? ?ジャッジメント・トライ !
帝国兵たちぎゃああああっ !
エステルクラトス ! ?
クラトスこの先へ向かって走れ ! 兵が少ないはずだ !
ユーリ助かったぜ ! 行くぞ。
レイヴンはー、やれやれ。今日は逃げて走っての繰り返し !忙しいったらもう。
クラトスローエンからお前たちの話を聞いてきた。こちらも苦戦を強いられているようだな。
フレンお陰で助かりました。ありがとうございます。
レイヴンそれで何、そっちは何か連絡あって来たんでしょ ?
クラトスああ。イクスからお前たちに伝言がある。パティの心核を回収したそうだ。
全員! !
リタ驚いた……。いつの間に手に入れたのよ。
エステルありがとうございます !これで一歩、パティを取り戻すのに近づきました !
カロルそれで、パティの心核は ! ?
クラトス心核は休眠状態にあるという。それがどのような状態かはわからぬが、鏡士の力で目覚めさせることができるようだ。
クラトスイクスはあとで心核を持ってお前たちと合流すると言っていた。
ユーリ大丈夫なのか ?陽動部隊が苦戦しているってのは聞いてるが。
クラトス陽動部隊は救世軍が介入したことで徐々に立て直しに入っている。そちらは何とかなるだろう。
クラトスただ、ミリーナが倒れて意識不明の状態だ。イクスはフィリップが治療していると言っていたがどうも、簡単にはいかないようだ。
クラトス先程、魔鏡通信が回復した際にローエンから聞いた話ではカーリャの存在も観測できないらしい。
エステルええっ、そんなことになっているんですか ! ?
ジュディスそれじゃあこっちに来るどころの話じゃなさそうね。
クラトスかもしれん。実際カーリャがいないことがミリーナを救うための弊害になっているようだ。
レイヴンそれってつまり、カーリャちゃんが見つかればミリーナちゃんは目を覚ますってこと ?
クラトスどうもそのようだな。ただ、事態がどのような形になるにせよイクスは約束を果たそうとする筈だ。
カロル確かにそうかも……。イクスって真面目だし頑張り過ぎちゃうから心配だよ。
フレン思っていたよりも状況は深刻ですね。
クラトスああ、しかも魔鏡通信が使えなかったせいで皆、上手く連携がとれなかったからな。
カロル魔鏡通信が直ったなら、クラトスも連絡役はおしまい ?
クラトスいや、まだ通信が安定したわけではない。私はこのまま各陣営への連絡を続ける。
クラトス先ほどのお前たちのように魔鏡通信が使えない状況に陥った者たちへの助けになることもあるからな。
カロル本当だね。さっきみたいに敵がいっぱいだと通信なんてしてられないもん。
クラトスそれともうひとつ、この先の丘に大規模な陣が張ってあった。お前たちが戦っていたのはそこへ投入される兵だったのだろう。
クラトス気になるのは、その軍隊の側に、我々の世界にあった魔導砲によく似た塔が立っていたことだ。本物だとは思いたくないが……。
リタ本物 ! それ、本物よ !
クラトスなんだと ! ?
ユーリしかもその魔導砲、精霊を使って撃ち出すもっとヤバイもんになってるかもしれねえ。
フレンパティを保護して魔導砲に近づけないようにしないと。
カロルちょっと待って ! 地図地図…… !
クラトス地図 ?
ユーリカロル調査室で独自に調べて作った地図さ。
カロルえっと……ここがパティが行ったはずの基地でこの丘が魔導砲があるっていう本陣。で、ボクたちはここ。
カロル基地から魔導砲へパティが移動するとして……。この森に行けば、パティが本陣と合流する前に先回りして押さえられないかな ?
クラトスなるほど……さすがカロル調査室の室長だな。この位置関係なら、十分間に合うだろう。ただし、相手が徒歩ならば、だが。
リタ知ってるのね、あの鏡を使ったワープのこと。
クラトスジュードたちから報告が入ったそうだ。話が事実なら、距離など何の意味もない。
リタそれなら問題ないわよ。
リタ魔鏡陣に残ってた術式を見る限り精霊になりきれてない今のパティに同じ事をやってのける力は残ってない筈だから。
クラトスなるほど。ならばお前たちの方は時間の余裕が生まれそうだな。
レイヴンここから逆転といきたいところよね。
ユーリよし、んじゃカロル先生の案を採用だ。オレたちは森へ先回りしてパティを待ち伏せる。
クラトスでは、私は魔導砲の偵察に向かおう。
マークおいフィル、戻ったぞ !イクスに治療を――……。
マーク……おい、なんだよこれ。
イクスミリーナの周りに魔鏡結晶が…… ! ?どうしたんだよ、ミリーナ !
カーリャ・Nイクス様、落ち着いてください。それに酷い傷です。無理をしては――
イクスフィルさん、何が起きたんですか ! ?
フィリップミリーナの魔鏡の力がスタックされているんだ。魔鏡結晶も徐々に大きくなり始めている。
イクスそれって、俺の時と同じ……。
フィリップああ。ミリーナの場合はゲフィオンの影響だ。この力のせいで、ミリーナの心にアクセスしようとしたら弾かれてしまった。
イクスカーリャは ! ?
カーリャ・Nいいえ、戻りません……。フィル様の話では、消えたか、どこかへ飛ばされたのか判断がつかないとかで。
イクスそんな……。まさか、このままじゃ俺と同じように魔鏡結晶に閉じ込められるんじゃないですか ! ?
イクス俺はミリーナにあんな辛い思いをさせたくない !
フィリップイクス、まず治療を受けてくれ。きみが万全でなければ、ミリーナは救えない。
イクスえ…… ?
カーリャ・N治癒術をかけます。その間に説明を。マークもこちらへ来て下さい。
フィリップ聞いてくれ、イクス。確かに僕一人ではアクセスできなかった。
フィリップだけどイクス、きみとなら……。ミリーナの心に触れられるかもしれない。
イクス俺とフィルさんで、ですか ?
フィリップああ。一緒にミリーナの心へアクセスするんだ。

Character12話【6-13 ファンダリア領 街道7】
スレイみんな無事 ! ? まだいけそう ! ?
ルドガーああ ! けど少しキツくなってきたな。
セネル確かに。だが援軍が来るまでの我慢だ !
ジュード…………。
ミラ=マクスウェルどうしたジュード、疲れたか ?
ジュード……みんな、聞いて。このままじゃ持たない。方針を変えよう。
アルヴィンそうだな。こんな防戦一方じゃジリ貧間違いなしだ。
エリーゼ援軍、待たないんですか ?
レイア待って、ローエンに連絡するね !
ライラではレイアさんの守りは私が。
レイアありがとう、ライラ !――ローエン ? 急いでるの ! ジュードの話を聞いて。
ジュード敵は今、僕たちが防戦一方だと思っているはずだ。だからこそ、こちらから攻撃に転じる。不意をついて怯んだところを突破。これ、どうかな ?
ザビーダ一点突破か。いいね、嫌いじゃないぜ。
ローエン承知しました。援軍の到着にもまだかかります。危険は伴いますが、皆さんの呼吸さえ合えば可能でしょう。
ユリウスでは、実行はこちらのタイミングで進める。問題はないな ?
ローエンええ。それと、近くに大きな川の堰があります。それを切ってください。
ローエン皆さんへの追っ手を止められますし、救世軍としても敵を追い込めるので動きやすくなりますから。
スレイわかった。その辺はオレたちで上手くやるよ。
ルドガーけど兄さん、タイミングって言っても今は――
? ? ?ぁぁあああああああああっ !
ユリウス何か落ちてくる ! 避けろ、ルドガー !
ルドガーいや、あれは――――痛いっ !
カーリャきゅぅ……。
全員カーリャ ! ?
カーリャはっ ! ここは…… ?
ジュードちょっ、どうしたのカーリャ !ミリーナのところに居なくてていいの ?
カーリャそ、そうなんです !ミリーナさまを助けに行く途中なんです !カーリャは、コレットさまに運んでもらってて !
カーリャでも、コレットさまの手がすべってカーリャは真っ逆さまに――
ジュードま、待って、よくわからないよ !ここを抜けたら、ちゃんと聞くから。
カーリャは……ミリーナさま…… ?
セネルどうした、カーリャ。目の焦点が合ってないぞ ?
ルドガー俺の頭に落ちてきたときの影響か ?
カーリャち、違うんです。今までミリーナさまの心からはじかれていたのに、急に声が聞こえて……。
カーリャ――ミリーナさまが呼んでる…… !今なら、心の中に戻れます !ミリーナさま、今カーリャが助けに行きますからねっ !
ジュードカーリャ ! ? 消えちゃった……。
エドナ考えても仕方ないでしょ。敵は休まず来てるのよ。こっちを手伝いなさい !
コレットえ ! ? う、うん、わかったよ !ごめんね、エドナ。えっと――ジャッジメント ! !
帝国兵なっ、上 ! ? うわあああっ ! !
ルドガー今度は空からコレットが ! ?けど、このタイミングなら !
ユリウスああ。――全員、コレットと同じ場所を狙って攻撃だ !そのまま突破するぞ !
カロルねえ、ユーリ。パティと会う前にみんなの状況を確認しておかない ?今、どうなってるか心配だし……。
ユーリそうだな。イクスもこっちに来るとは言ってるが状況によっちゃ難しいかもしれねぇし。んじゃ…………。
ユーリ――…………駄目だ、出ねぇ。
カロルそれじゃ、スレイたちは ?駄目ならジュードかとにかく他にも連絡してみようよ。
ユーリああ。今、やってる…………やっぱ繋がらねえな。
レイヴン魔鏡通信が不安定なのかそれとも出られない状況なのか……。
エステルどうなっているんでしょう。心配です……。
ジュディス人の心配もいいけれど、もう目的地の森よ。
フレンそうだね。気を引き締めて――
ラピードグルルルルル……。
フレンどうしたんだい、ラピード。
ラピードワンワンワン !
全員! !
リタなに、これ……。
カロル倒れているの、みんな帝国兵だ。こんなにたくさん。
帝国兵Aううっ……。
全員! !
帝国兵A貴様らは……絶対に、逃がさん……。
フレン警笛だ ! 兵士が来るぞ !
カロルこれ、ボクたちがやったんじゃないのに !
ユーリ今更通じねぇよ。逃げんぞ !
フレンこのまま森の中に入って潜もう !
フレンみんな走れ ! 帝国兵を巻かなきゃパティの待ち伏せどころじゃない !
ラピードワンワンワン !
ユーリあ ? この先に誰かいるってのか ?
カロルねえ、あれって――
全員! !
デュークお前たちか……。
ユーリデューク !
レイヴン具現化されてたのか……。
ジュディスさっき倒れていた兵士もあなたの仕業ね ?
帝国兵Bいたぞ ! 銀髪の男だ !
ユーリおいおい、お前も追われてるのかよ。
デュークいや、私は追っているのだ。
エステル追っている…… ?あっ、待ってください ! デューク !
帝国兵Bあっちにいったぞ !
リタまさかあいつ、敵を連れてってくれた ?
ジュディス彼、そこまで甘くないわよ。自分の敵は自分でってことじゃないかしら。
レイヴンだわな。らしいっちゃらしいけど。
帝国兵Cいました !
カロルこっちも来た !
ユーリよし、だったらオレたちも自分で自分のケツをふくか !
フレンもう、追って来る兵士はいないな。
ラピードワン、ワンワン !
ユーリまだその辺にいるってよ。様子見に……お、イクスから魔鏡通信文が来てるぞ。
カロル見せて見せて !
イクスイクスです。声が届けられないから通信文を送ります。パティの心核の休眠状態を解除できました。
イクス事情はあとで説明します。場所は把握しているので三十分程度でそちらに着くと思います。
エステルイクス、やっぱり来てくれるんですね !心核の休眠状態も解除できたって !
ジュディスだったら私たちもパティを確実に連れ戻さないと。
フレンユーリ、僕はこの辺りを偵察してくる。この先は見晴らしがよさそうだから、平原に残っているスレイたちの状況も確認できるかもしれない。
カロルあ、ボクも行く !イクスが来てるかもしれないしね。
ユーリああ、頼むわ。こっちは先に陣取りしとくぜ。……恐らく戦うことになるだろうからな。

Character13話【6-14 ファンダリア領 森4】
ジュディスこの辺、いいんじゃないかしら。
ユーリああ。隠れ場所もあるしそこそこ開けてて戦いやすそうだ。
エステルそれじゃ、この場所のことフレンたちに連絡しておきますね。
リタガキんちょの思い付き、結構当たってたみたいね。これだけ兵士が多いってことは、パティが確実にここを通るってことだし……なかなかの読みだわ。
ユーリそれ、カロルに直接言ってやったらどうだ ?喜ぶぜ。
レイヴンいや~、珍しすぎて逆に怯えちゃうんじゃないの ?
リタそうね。あんたも怯えさせてあげましょうか ?
レイヴンちょっ、術の無駄撃ち禁止 !
ジュディス静かに。誰か来るわ。
サレ……本当にしつこいね。
デューク友を取り返すまで私はどこまでもお前たちを追う。
ユーリあいつ、鏡映点名簿で見た顔だな。
レイヴン確かサレだったかね。ヴェイグの世界の奴だ。
ユーリああ。シングやカイウスは帝国で一緒だったらしいな。悪い噂しか聞かなかったらしいぜ。
レイヴンとりあえず加勢しとく ?恩を売るのも悪くないでしょ。
デューク……。
エステル今、デュークに睨まれました !こっちに気づいてます !
ユーリ今のは出てくんなって意味か ? ったく……。
サレそこ、出ておいでよ。不意打ちなんて無駄なこと考えてないでさ。
ジュディス……あっちも気づいたみたいね。
サレ……へえ、あいつが大喜びしそうな上玉の黒髪がいるじゃないか。まあ、別に持って帰ってやる義理もないけど。
ユーリグラスティンか ? あいつは死んだぜ。
サレ死んだ、ねえ……。そうなんだ。そういうことか。ははは……。
サレまあ、どうでもいいけどね。
リタずいぶん余裕じゃない。けどこの辺の兵士、ほとんどいないわよ。
ユーリどうやらデュークに倒されちまったみたいだな。今の戦力じゃ、オレらが上じゃねえの ?
サレ……なんだ、こいつのお仲間か。こいつ変だよねぇ。あんな石ころがお友達なんだって ?随分とご執心なことで。
ユーリおいデューク、まさかあんたが追ってるのは……。
デューク…………。
サレもう僕を追うのは無駄だから諦めてくれない ?だって、あの子に入っている聖核はもう元の状態じゃないんだよ ?
デュークなんだと ?
サレ色々いじくりまわされてさぁ。いろんな物が混じって、くっついて。しかも今は精霊様になりつつある。もう戻らないね、あれは。
デューク人間っ ! !
サレっ ! ! ぐあああっっ !
デューク……っ。致命傷ではないはずだ。答えろ。聖核を持ったあの娘は今どこにいる。
サレははっ……、思ったより手が早いね……。
サレでも、これでどうにか操れそうだ。
デューク! !
リタちょっと、何やってるのエステル !
ユーリおい、エステル ! お前――
デューク離れろ !
ユーリデューク ! ?
レイヴンちょっと今の ! デュークが防がなきゃ青年の首がやばかったわよ !
エステル……あなたたちは、敵……。
サレ面白くなってきた……だろう……。
ユーリてめぇ、エステルに何しやがった !
サレちょっとした暗示をかけたのさ。この子、色んな不安を抱えているみたいだからそこそこ簡単だったよ。
リタやめてよ……これじゃあの時と同じじゃない !あんなのもう…… !
レイヴン……嫌なこと思い出させてくれるじゃないの。
サレそうか、嫌か ! はは、嬉しいなぁ !さあ、お嬢さん、僕のかわりに相手を頼むよ !
ユーリてめぇ ! どこに行く !
デューク待て !
ユーリエステル、しっかりしろ !
エステルデューク……、ユーリ……、貴方たちを……。
ユーリまたお前と戦うのかよ……くそっ !
エステル…………。
デューク! ! そうか、お前はまだ完全には……。魔物とは勝手が違うが……試す価値はあるか。
リタなんなの、あんた ! エステルに何を―― !
レイヴン待て、リタっち。
デューク…………。
エステルえ……今の声……デューク…… ? わたし……。
リタエステル ! ! 戻った、良かった…… !
デューク暗示が浅かったようだ。あの男も焦っていたのだろう。
エステルあ、ありがとうございます……。わたし、操られていたんですね。
ユーリあんた、さっき何したんだ ?エステルの前に手をかざしただけなのにさ。
デューク…………。
ラピードグルルル、ワンワンワン !
レイヴンおいおい、団体様が押し寄せてるわよ !
ジュディスあの男が呼んだのね。
ユーリ礼は後でな、デューク。こっちを先に片付ける !

Character14話【6-15 ファンダリア領 森5】
ユーリデューク。またあんたに命、救われるとはな。さっきは助かった、礼を言わせてくれ。
デューク私は友を救うため動いたまでだ。
ユーリやっぱりダチの……エルシフルの聖核が目的だったか。
レイヴンつまりうちらと目的は同じ、と。
リタ帝国はエルシフルの聖核から新たな精霊を生み出そうとしている。あたしたちとしても帝国に聖核を渡すわけにはいかない。
デューク世界の危機……か。
エステルそれだけじゃなくリビングドールβにされてしまったパティも今度こそ助けてあげないと……。
ジュディスもちろんよ。そのためにも私たちはここにいるのだから。
レイヴンカロル調査室の情報によるともう少ししたらパティちゃんは本陣と合流するためにこの先の森を抜ける。
レイヴンそこをうちらが抑えて、パティちゃんとパティちゃんが持ってるエルシフルの聖核も回収っと。
リタけど、失敗すればどちらも失うことになる。それにリビングドールβにされたパティを連れ戻すには鏡士の力が必要不可欠なのよ。
ジュディス戦力はこちらに分がある。けど私たちだけでは目的を完遂できない。
レイヴン油断できないことに変わりはない、と。一石二鳥と簡単に片付きそうにはないわね。
エステルイクスたちも大丈夫でしょうか。まだ時間があるとはいえもう到着してもいい頃だと思いますが……。
ユーリイクスたちだけじゃなくジュード、スレイたちとも魔鏡通信が繋がらねぇ。やっぱ何かあったんじゃ……。
デューク…………。
カロルみんな ! フレンと丘に登ってあたりの様子を見てきたよ !
フレンジュードとスレイたちがいる方へ帝国兵たちが進行していた。敵本陣の一部が差し向けられたみたいだ。
ユーリそれじゃあジュードとスレイたちが危ねぇぞ。
フレンあっちは少人数……。僕たちと戦うことになった際に足元をすくわれないよう先に倒しておくのが帝国の考えなんじゃないかな。
ユーリくそっ。ここは任せてくれって言葉に甘えてパティを追わせてもらったけどやっぱ何人か残るべきだったか。
レイヴン兵が向かってるってことはこりゃイクスくんたちも巻き込まれてるな。
エステル助けに行きましょう !まだパティが森を通るまで時間があります !
ジュディス気が合うわね。パパっと片付けてこっちに戻ってきましょう。
カロルうん。いまのボクたちならできるよ。もちろんちょっと頑張る必要はありそうだけど。
ラピードワオーン !
ユーリさすがラピード。イクスたちの場所までしっかり案内してくれるみたいだぜ。
リタちょっと待ちなさいよ。もし何かあって戻ってこられなかったらどうするの ?パティも聖核も帝国に持っていかれることになるのよ。
デュークそれは起こりえない事象だ。
ユーリ……デューク。
デューク友の聖核は、この私が必ず回収する。
レイヴンま、あんたはうちらがどう動こうが関係ない。ここに残ってそうするわな。
フレンですが今はとても心強い。
ユーリデューク、1つだけいいか ?
デューク聞こう。
ユーリオレたちは必ずここに戻ってくる。けど……もし遅れちまった場合あんたにパティのことを頼みたい。
フレン……ユーリ。
カロルボクからもお願い。少しでいいから戦いを引き伸ばして欲しいんだ。
エステル図々しいかもしれませんが……どうかわたしからもお願いします !
デューク…………。
ユーリ頼む。
デューク戦いになろうともあの娘の命を取るつもりはない。
デュークだが、私があの娘を救う道理もない。甘えるな。
エステルそれはわかります。ですが今、わたしたちと貴方は――
ユーリもういい、エステル。こいつの言ってることは筋が通ってる。
ジュディスそうね。それにいまはこの時間さえ惜しいわ。ここまでにしておきましょう。
ユーリデューク、悪かった。さっきの言葉は忘れてくれ。
フレンそれじゃあ僕たちは急ぎ出発を――
デュークまたそれも見過ごせん。
リタちょっと。どきなさいよ。あたしたちが行こうとそれこそあんたには関係ないじゃない。
ユーリさっきの話、聞こえてただろ。オレたちは仲間を助けに行かなくちゃならない。
デューク……もしそれでも間違ったら。
ユーリ
デュークやはり記憶にないか。
リタ何がいいたいのよ。言いたいことがあればハッキリ言ってくれる ?
デュークお前たちとどれだけ言葉を重ねようと螺旋のように交わらぬまま虚ろに時が過ぎてゆくのみ。
レイヴンおいおい、どういうつもり。まさかやるっていうんじゃないでしょうね。
ユーリ…………。
デューク…………。
ユーリわかった。あんたなりにオレたちに伝えたいことがあるわけだな。
フレンなら無下にはできないね。
ジュディスそうね。それに私こういう会話の仕方も好きよ。
リタまったく……あんたたち戦闘バカは。
エステルけどせっかくデュークが話しかけてくれたんです。
カロルちゃんと、わかりあいたいよね。
ワンワン !
レイヴン若人だけじゃ物足りないっしょ。人魔戦争のよしみでおっさんも混ぜてよ。
デュークひとりではなくひとつの強さ。それはひとつになる者たちによって変わりそして未来も変えてゆく……か。
デューク…………。
ユーリデューク。あんた…………。
ユーリいや。何でもねぇ。こいつで語り合うとしようぜ。
デュークいくぞ。
ユーリおう ! 受けて立つぜ、デューク !

Character15話【6-15 ファンダリア領 森5】
ユーリまだ全然余裕みたいだな。さすがだぜ、デューク。
デューク…………。
カロルけどボクたちだってまだ大丈夫だよ。
ユーリああ、わかってるよ。
デューク……やはり、か。
デュークお前たちが見るべきは私ではない。
ユーリなに ?
デューク……未来は創り出すもの。
ユーリ
カロルえっと……どういう意味 ?
ジュディス自分で選び、歩んでいく。それが大切ということじゃないかしら。
デュークそれはお前たちに限った話だけではないはず。遥か彼方に双眸を向けねば暗闇を一人往くと同義だ。
エステル遥か彼方に……双眸を……。
レイヴンもっと遠くを見ろ。そうしないと周りも見えなくなる……と。ご尤もな意見だわ。
ユーリああ。こりゃ痛いとこ突かれたな。
エステル痛いとこ……です ?
ラピードワン !
ユーリ来たみたいだな。
ジュードよかった ! みんな、無事だったんだね !
カロルえっ ! ? みんな、どうしてここに ! ?
スレイもちろん、助けにきたんだよ。な、ミクリオ ?
ミクリオまさか帝国軍を強行突破するとジュードが言い出したときは驚いたけどね。
ミラ=マクスウェル敵は私たちが防戦にまわると考えていた。そこを逆に打って出ることで敵の不意を突く。私は見事な策だったと思っている。
ミクリオああ。敵は僕たちを逃さないように包囲してくる。だからこそ陣形が整う前に一点突破で切り抜ける。そんな咄嗟に出てくる策じゃない。
スレイミクリオが川の堰を切ってくれたから敵が追ってくる心配もないしな。ジュードのおかげで何とかなったよ。
ジュードそんな……僕は提案しただけだよ。みんながいてくれたから乗り越えられたんだ。
ミラ=マクスウェル謙遜することはないと思うがな。君らしいといえばそうではあるが。
フレンみんな……自分たちも大変だったのに僕たちのことを助けに来てくれてたんだね。本当に感謝するよ。
ジュード当然だよ。僕たちは仲間なんだから。
スレイそれに、先にパティを追ってくれって言ったのはオレたちなんだしさ。
ジュードイクスとミリーナももうじき到着するはずだよ。いまカーリャが助けに向かっているからね。
エステルカーリャが ! ?
ジュディスなら心配することもなさそうね。
カロル……ユーリ。
ユーリうん ?
カロルボクもわかったよ。ボクたちは互いのことをわかっているし信じ合える。けれどそれだけでは足りないんだ。
カロルこっちには新しくできた仲間が大勢いてボクたちはその仲間と未来に向かって歩んでいる。その仲間、みんなのことをちゃんと信じないとだよね。
エステルそのために遠くを見る。そうしたら視野も広がってみんなとも足並みを揃えることができますしね。
リタま、言いたいことはわかるわ。当然の理屈よね。
レイヴンそれが意外と難しいってことよ。
エステルですね。今回のわたしたちがいい例です。
ユーリデュークのおかげで頭冷やせたみたいだな。オレだけじゃなく、全員。
カロルうん ! ありがとう、デューク !またひとつ勉強になったよ !
エステルわたしもです !
デューク私は役目を果たしたまで。
ユーリ……未来は創り出すものってなかなかいい言葉だったな。
デュークふっ……私の言葉ではないがな。
スレイあれ ? そういえばその人は ?
ジュード鏡映点リストで見かけた気がする。確か元の世界ではユーリさんたちと――
ユーリこいつはデューク。オレたちの、新しい仲間だ。
デューク……・。
ジュード……うん、わかった。よろしくお願いします、デュークさん。
スレイよろしくね、デュークさん !
デューク構えろ。
ジュードえっ ! ?
ラピードワン ! ワンワン !
フレン来たみたいだね。
ユーリ予定時刻より早い……。やっぱ残って正解だったみたいだ。
パティ…………。
エステルパティ ! !
デューク……。
ユーリいくぞ。
to be continued