| Character | 1話【6-1 アジト】 |
| リフィル | ――イクス、イクス、聞こえて ? |
| リフィル | ………………駄目ね。あなたの魔鏡通信はどう ? |
| ユリウス | こっちも繋がらない。イクスだけじゃなくカイルやユーリたちにもだ。 |
| ジェイド | どうやら魔鏡通信そのものが使えないようですね。他の計器にも異常が出ています。観測装置も役に立たない。 |
| リフィル | いったい何が起きているのかしら。さっきの通信では、ミリーナが突然倒れたと言っていたわよね。 |
| ジェイド | とにかく、通信が途絶える直前までの状況を整理しましょう。 |
| ユリウス | そうだな。まずイクスたちだ。 |
| ユリウス | パティ救出のために陽動部隊として動いているがミリーナが倒れたことで体制が崩れている。 |
| ユリウス | そのために、現在はおびき出した敵を相手に持ちこたえるのが精一杯で、今後立て直しが必要――とさっきの通信で聞けたのはここまでだった。 |
| ユリウス | レンズと魔核回収班のディムロスたちは突入後連絡なし。パティ救出班のユーリたちもクラースが精霊の件で連絡を取ったきりだ。 |
| リフィル | 精霊ね……。まさかアイフリードが目覚めるなんて。 |
| ジェイド | そのことですが、計器類が止まる直前に精霊たちがセールンドに集まって大きな力になろうとしていたのを観測しています。 |
| ジェイド | 精霊研究室のメンバーは、アイフリードの覚醒による暴走を疑っているようですが、果たしてそれだけなのか気になるところです。 |
| リフィル | そうね。もしかして魔鏡通信や計器の不調は精霊が原因なのかしら。 |
| ジェイド | 可能性は高いでしょうが―― |
| ジェイド | ……まあ、今は精霊専門家たちが検討しているところです。見解を待ちましょう。 |
| リフィル | ジェイド、また悪い癖が出てるわよ。何か言いかけたでしょう。 |
| ジェイド | おや、そうでしたか ?改めようと努力はしているのですが。不出来な生徒ですみません、リフィル先生♪ |
| リフィル | 誤魔化さないでちょうだい。それと何度も言うけどあなたを生徒に持った覚えはありません。 |
| ジェイド | 手厳しいですねぇ。今は推測よりも、確実な情報だけを追った方がいいと思いますよ。 |
| ユリウス | 現状把握とは別にして考える。聞かせてくれ。 |
| ジェイド | ユリウスもですか。二人が相手ではさすがに分が悪い。仕方ありません。 |
| ジェイド | 以前にも同じように魔鏡通信が繋がらなくなった時のことを覚えているでしょう。 |
| ユリウス | ああ。あれはイクスからあふれた力が結晶化してノイズになったことが原因……。 |
| 二人 | ……あっ ! ! |
| ジェイド | そういうことです。もしかすると今回のノイズは―― |
| アニス | お邪魔しまーす。大佐、ちょっといいですか ? |
| ジェイド | アニス、イオン様。どうしました ? |
| イオン | 取り込み中のところをすみません。ついさっき、ローレライの声を聞いたのですが内容が不穏なものなので報告に来たんです。 |
| ジェイド | ……詳しく聞かせてください。 |
| イオン | はい。イクスたちがパティを救出している土地の周辺にクロノスの力が集まりつつあるというんです。 |
| ユリウス | クロノスだと ! ? |
| イオン | ええ。しかもその場に近づけるのは精霊かもしくは、近しい力を持つ者だけのようです。 |
| イオン | そしてそこでは、何か『恐ろしいモノ』が生まれようとしていると……。 |
| ユリウス | 確かに不穏だな。イクスたちがいるなら間違いなくファンダリア領だろう。 |
| ジェイド | ええ。ですがもう少し場所を絞りたい。イオン様、他に何か分かりますか ? |
| イオン | 周囲は平原らしいのですが、僕には土地勘がないもので正確な場所までは……すみません。 |
| アニス | イオン様が謝ることないですよぉ。どう考えてもローレライの説明不足ですって。 |
| イオン | それだけならいいのですが。ローレライの様子がいつもと違う気がして……。 |
| ミラ=マクスウェル | ローレライも精霊だ。暴走の影響を受けているのかもしれないな。 |
| ユリウス | 君たちか。丁度いいところに来てくれた。 |
| ユリウス | 計器類がやられてしまってね。全体への通達もままならないところだよ。 |
| クラース | やっぱりな。イクスたちに連絡しようとしたら魔鏡通信が使えなくなっていた。 |
| リフィル | 観測機器も役に立たないからあなたたちの感覚が頼りよ。何か感じた ? |
| ライラ | 先ほどよりは少し落ち着いたように思えますが異様な気配は変わりません。 |
| ライラ | 私だけではなく、ラタトスクさんや、ミラさんのようにこの世界の精霊と同一化していない精霊や天族は皆さん同じ気配を感じています。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ。それに四大も消えたまま戻らない。 |
| クラース | セルシウスもだ。アイフリードの覚醒の他にも何か要因があるのかもしれん。 |
| ジェイド | その件と関わりのありそうな報告を受けたところです。どうやらファンダリア領で―― |
| ミラ=マクスウェル | なるほど。恐ろしいモノ、か……。 |
| クラース | 確かめに行きたいところだが精霊か、それに近しい者しか近づけないとなるとな。 |
| ミラ=マクスウェル | 何を悩む必要がある。私たちが行けばいい。精霊の気配を辿れば場所もわかるだろう。 |
| ライラ | そうですね。それにイクスさんたちも苦戦しているようですから、いざとなれば援軍にもなれます。 |
| クラース | 馬鹿を言うな。魔鏡通信が使えない中で精霊の君たちが帝国に向かうのは危険だ。 |
| クラース | ……と、言いたいところだが今回ばかりは仕方がないか。四大のことも心配だろう。 |
| クラース | それに、精霊の力による『恐ろしいモノ』の誕生など何より君たちが望んでいないはずだからな。 |
| ミラ=マクスウェル | さすがクラースだ。私たちのことをよくわかっているな。 |
| クラース | おかげで振り回されっぱなしだよ。 |
| リフィル | では、ライラたち天族とミラを中心に仲間を募ってファンダリアへ向かってもらいましょう。それでよくて ? |
| クラース | ああ。それとセネルたちにも話をしてくる。シャーリィからの話だと滄我はアイフリードと共鳴しているようだからな。 |
| リフィル | そうね。もし彼らも動いてくれるなら心強いわ。それとセールンドの調査も必要ね。そちらへは……。 |
| ユリウス | 待ってくれ。俺もファンダリアへ行かせてくれないか。 |
| リフィル | ユリウスも ? |
| ユリウス | みんなには行動を控えろと言っておいて何だが今回はクロノス絡みだ。 |
| ユリウス | 何か起きるというなら……取り返しがつかなくなる前に阻止したい。 |
| イオン | だったら僕も同行しましょう。ローレライが何か伝えてくるかもしれませんし。 |
| ジェイド | いいえ、イオン様には留守番をお願いします。 |
| アニス | ですね。そうじゃなくてもオールドラント領に行ったばっかりなんですよ。……無理してほしくありません。 |
| イオン | ……わかりました。では大人しくしています。僕もアニスが悲しむ顔は見たくありませんから。 |
| アニス | はぅあ ! ちょっと何言い出すんですかぁ ! ? |
| ジェイド | 闇属性には眩しすぎる笑顔でしたねぇ。アニス。 |
| アニス | 誰が闇属性か ! バリバリの光属性ですよ ! |
| ジェイド | そんなことを言うと、テネブラエが出てきて凄まじい勢いで闇属性の押し売りをされますよ ? |
| リフィル | ……テネブラエ、ね。丁度いいわ。セールンドの方も精霊絡みだし、あちらの調査にはテネブラエやラタトスクたちに行ってもらいましょう。 |
| リフィル | では各々準備をして。魔鏡通信が回復する見込みが立たないからみんな無理はせず、気を付けて行動するのよ。 |
| Character | 2話【6-2 ケリュケイオン】 |
| マーク | よし、ファンダリア領上空だ。なんとか待機ポイントまで無事到着したな。 |
| マーク | アイゼン、地上の様子を確認したい。少しづつ高度を下げられるか ? |
| アイゼン | ああ。ガロウズ並みとまではいかないが手動操縦にもだいぶ慣れてきた。 |
| マーク | 無茶言って悪いな。計器類が死んじまってんのに。 |
| マーク | せめて、魔の空域に入った時みたいに自動操縦が少しでも生きてりゃサポートに使えたんだけどな。 |
| シンク | ああ、あのサイアクな胴体着陸をやらかした時か。今回は絶対やめてよね。 |
| アイゼン | 何を言う。あれは最高の結果だった。死人もでなかったしな。この際だ。胴体着陸を究めるのもいいかもしれん。 |
| ゼロス | なに言ってんの ! ?妙なところで凝り性発揮すんなって ! |
| アイゼン | 心配するな。冗談だ。 |
| シンク | アンタって、笑いのセンスがないって言われたことあるんじゃない。 |
| マーク | ははっ、 みんながいつも通りで安心するぜ。ケリュケイオンがシステムダウンした時にはさすがに焦ったからな。 |
| クラトス | 先ほど様子を見てきたが、艦内の混乱はローエンが上手く収めてくれている。こちらも問題ないだろう。 |
| ヴィクトル | ふっ、ローエンなら朝飯前だろう。後はフィリップとガロウズが原因を究明してくれれば―― |
| フィリップ | すまない、待たせたね。 |
| マーク | 噂をすれば、だ。どうだ、原因はわかったか ? |
| ガロウズ | いや、機器類に物理的な問題はなかった。ビクエ様にも確認してもらったから間違いない。 |
| フィリップ | 多分、何か大きなエネルギーが干渉しているんだ。それも複数の要素が絡み合っている。この状況だし、今すぐに解析するのは難しいね。 |
| マーク | じゃあ、魔鏡通信も使えないままか。参ったな。 |
| ゼロス | どうするよ、マーくん。ユリウスが送ってきた計画書どおりには動けねえぞ ? |
| ヴィクトル | 潜入したディムロスたちからの合図で共にレンズと魔核を回収する手筈だったな。 |
| マーク | ……仕方ねえ。こっちが独自で動くことも考えて準備するか。 |
| アイゼン | ! !おい、お前ら、下を見ろ ! |
| マーク | 帝国兵と反帝国組織の連中……陽動部隊だな。……っておいおい、帝国側に押されてんじゃねえか !陽動どころか、あのままじゃ攻め込まれて全滅だぜ ! ? |
| クラトス | イクスたちが指揮をしている筈だが二人に何かあったのだろうか。 |
| フィリップ | 陽動部隊を助けに行く。マーク、降下準備を ! |
| マーク | 了解 ! どっちにしろ、このまま空にいたってディムロスたちとは連絡がとれねえしな ! |
| ディムロス | ここにもない、か……。 |
| シャルティエ | あちらの保管庫も同じでしたよ。レンズは僅かしか残っていません。 |
| ディムロス | 恐らくほとんど使われてしまったのだろう。 |
| シャルティエ | あんな大量のレンズを何に使ったんでしょうね。嫌な予感がするなぁ……。 |
| ディムロス | それにしても妙だ。先ほどから魔核がまったく見当たらない。使い残したレンズはあるのに、おかしくはないか ? |
| シャルティエ | かけらも残さず使い切った……というのは少々無理がありますよね。他の場所に運ばれているんでしょうか。 |
| ディムロス | そうだな……よし、探すぞ。 |
| シャルティエ | 待ってください。今からまた他の場所を探すんですか ?時間がかかりすぎなんじゃ……。ずっと救世軍を待機させとくつもりですか ? |
| ディムロス | やむをえまい。私たちが敵陣で自由に動けるのは陽動部隊が兵を引き付けている今しかないのだからな。 |
| シャルティエ | それはそうですけど……。 |
| ディムロス | では救世軍への連絡を頼んだぞ。私は先行して探索を進めておく。 |
| シャルティエ | ……別の場所だなんて余計なこと言っちゃったかなぁ。連絡もな……計画変更して文句言われないかなぁ……。あっちにはバルバトスもいるし……。 |
| シャルティエ | あれ ? 魔鏡通信が通じない……。 |
| ? ? ? | グルルルルル ! |
| ディムロス | 待て ! それは―― |
| シャルティエ | どうしたんです、ディムロス ! |
| ルキウス ? | なんだ、他にも仲間がいたんだね。 |
| アリエッタ | 誰……ですか ? 仕事の邪魔、しないで ! |
| シャルティエ | 魔物 ! ? それにあれは……魔核 ! ? |
| ディムロス | シャルティエ、お前の言ったとおりだった。彼らが魔核を運び出していた ! |
| | 陽動部隊本陣 仮設砦 |
| カーリャ・N | イクス様、小さいミリーナ様をこちらへ ! |
| イクス | ありがとう、ネヴァン ! |
| カーリャ・N | まだお目覚めになりませんね。小さいカーリャはどうしているのでしょう……。 |
| イクス | 信じて待つしかないよ。今のうちに陽動部隊の立て直しを考える。 |
| カーリャ・N | でしたら、私は前線に戻ってイクス様の指示が出るまで時間を稼ぎます。 |
| カーリャ・N | この砦はしばらく安全かと思いますがくれぐれも気をつけてください。今は魔鏡通信も使えませんので。では、私は―― |
| イクス | ちょっと待ってくれ。気になったんだけどミリーナのことが切っ掛けとはいえ戦況の覆り方が異様に早くないか ? |
| イクス | 敵の数が、あの研究所に配備されていた人数よりも増えている気がするんだ。 |
| カーリャ・N | そう言われてみると……。 |
| 陽動部隊隊員 | 伝令 ! 皆さんが探していたパティという少女がこの先の森で目撃されたそうです ! |
| イクス | パティが ! ? なんでこんな所に…… ! |
| カーリャ・N | どうしましょう、私が追いますか ? |
| イクス | (……ここでネヴァンを行かせたら、戦力が分散して立て直しどころじゃなくなる。でも……) |
| ミリーナ | ……うっ……。 |
| カーリャ・N | ミリーナ様 ! ?イクス様 ! ミリーナ様の様子が ! |
| イクス | ミリーナ !くっ……せめて応援を呼べたら…… ! |
| フィリップ | イクス、ここにいたのか。みんな無事かい ! ? |
| イクス | フィル……さん ? どうしてここに…… ! |
| マーク | どうしてって、助けにきたんだよ。なんだ、呆けたツラして。 |
| イクス | いや……まるで俺の声が届いたみたいで……驚いた。 |
| カーリャ・N | マーク、よく来てくれましたね。 |
| マーク | パイセン、ミリーナはどうしたんだよ。誰かにやられたのか ? |
| フィリップ | 状況を聞かせてくれ。僕たちが協力する。 |
| イクス | は、はい ! さっき突然、ミリーナが倒れて―― |
| フィリップ | ……わかった。救世軍の戦力を一部こちらに回そう。マークはイクスに協力して。 |
| マーク | 了解。イクス、采配はどうするよ。今回はお前に従ってやるぜ ? |
| イクス | 俺とマークでパティを追いかけよう。軍隊を動かすのは正直俺よりネヴァンの方が信頼できる。 |
| イクス | ネヴァンには、戦線を維持しながら陽動部隊の指揮をして欲しい。当初の目的どおり敵を引き付けられればそれでいいから。 |
| カーリャ・N | 承知しました。あの、小さいミリーナ様のことは……。 |
| イクス | あの、フィルさん、お願いがあるんですけど。 |
| フィリップ | わかっているよ。ミリーナのことは僕が請け負う。魔鏡術でミリーナの心の中にアクセスしてみよう。 |
| イクス | ありがとうございます。魔鏡術のことはビクエであるフィルさんが一番信頼できます。ミリーナのこと、お願いします ! |
| フィリップ | ……信頼してくれるんだね。こちらこそ、ありがとう。 |
| イクス | よし、行こう、マーク。 |
| Character | 3話【6-3 ファンダリア領 森1】 |
| フィリップ | さて……始めようか。ミリーナ、カーリャ、聞こえるかい ? |
| フィリップ | っ ! ? 術が拒絶された…… ?これほどの力がミリーナに……そんな筈は……。 |
| フィリップ | ――まさか ! |
| カーリャ | ふえ~ゲフィオンさまの顔本当にミリーナさまとそっくりです。 |
| ミリーナ | ……ずっとあなたと話がしたいと思っていたわ。ゲフィオン。 |
| ゲフィオン | ……そうであろうな。 |
| ミリーナ | ゲフィオン、どうして私はこんなことになっているの ?さっき、原因はあなたにあるって―― |
| ミリーナ | 今のは ! ? |
| カーリャ | きゃああああっ ! ! |
| 二人 | カーリャ ! ? |
| ミリーナ | カーリャ、どこに行ったの、カーリャ ! |
| ゲフィオン | これは……。 |
| ミリーナ | ゲフィオン、カーリャが消えてしまったわ。どうして ! ? |
| ゲフィオン | 恐らく『ミリーナ』が『ミリーナ』だけではなくなったせいかもしれない。 |
| ゲフィオン | 何らかの外的要因でミリーナとゲフィオンの境界が徐々に曖昧になっているのだろう。 |
| ゲフィオン | お前が倒れたのも、私がここにいるせいだ。 |
| ミリーナ | それじゃ『私のカーリャ』はもう私の中にはいられないの ! ? |
| カーリャ | いたたた……。なんですか、今の……。 |
| カーリャ | へ…… ? ここってセールンド…… ?もしかして、ミリーナさまの心の中から追い出されちゃったんですか ! ? |
| カーリャ | あわわわわ……どうしよう……。ミリーナさまー ! カーリャの声、聞こえますかー ! ? |
| コーキス | パイセン ? やっぱパイセンじゃねーか ! |
| カーリャ | コーキス ! ? なんでここにいるんですか ! ? |
| コーキス | そりゃこっちのセリフだぜ。休憩場所探してたら、パイセンの声が聞こえてさ。 |
| メルクリア | コーキス、どうしたのじゃ。誰ぞそこにいるのか ? |
| バルド | おや、その可愛らしい姿、カーリャではありませんか。もしやミリーナさんもここにいるのですか ? |
| カーリャ | バルドさま~~~っ !違うんです ! カーリャだけここに飛ばされてしまったんです……。 |
| ナーザ | 飛ばされた ? 鏡精、何があったのか話してみろ。 |
| コーキス | ――なんだよそれ !めちゃくちゃ大変なことになってんじゃねーか ! |
| バルド | ナーザ様、確認しました。やはり魔鏡通信は使えません。 |
| バルド | 残念ですがカーリャ、イクスさんたちに連絡を取るには直接向かうしかないようです。どうか、気を落とさずに。 |
| カーリャ | バルドさま、イケメンな上に優しいです……。手も温かくて……――え ! ?なんでカーリャの手を握れてるんです ! ? 生身 ! ? |
| バルド | ええ。これからは文字通り、この体を張ってあなたを守ることもできますよ。可愛い人。 |
| カーリャ | ……あわわわわわ ?色々起こりすぎて、頭がついていきません……。 |
| コーキス | つーか、バルドもいつまでパイセンの手握ってんだよ ! |
| バルド | これは失礼。カーリャを元気づけようとしただけですよ。他意はありません。 |
| ナーザ | はぁ……。鏡精、お前がここに飛ばされたのはミリーナがゲフィオンに近づいた瞬間で間違いないのだな ? |
| カーリャ | そうですけど……それが何か ? |
| ナーザ | 二人が近づくほど、片方が作った鏡精が異物として扱われている。ということは……。 |
| ディスト | 同化している可能性がありますね。経年による肉体的な差異はあれど存在は完全同位体のようなものですから。 |
| カーリャ | 同化って、つまりミリーナさまとゲフィオンさまが一つになっちゃうってことですかあ ! ?そんなのダメですよう ! |
| カーリャ | 早くミリーナさまの中に戻ってミリーナさまを守らないと ! |
| コーキス | なあ、どうにかパイセンをミリーナ様の中に戻せないのか ! ?みんな、俺より頭いいじゃんか ! |
| メルクリア | 落ち着かぬか、コーキス。むしろ、同じ鏡精であるお前でこそわかることがあるのではないのか ? |
| コーキス | そりゃそうだけど、俺はパイセンと少し違う……ってあれ ? そういやパイセン、なんで消えないんだ ?ミリーナ様はファンダリア領にいるんだろ ? |
| カーリャ | はっ、そういえば !いつもこれだけ離れたら消えちゃう距離なのに。 |
| ディスト | 鏡精には間抜けが多いのですねぇ。ここにゲフィオンがいるからですよ。 |
| カーリャ | へ…… ? |
| ナーザ | そうか。お前は今、このカレイドスコープの間にいる人体万華鏡になったゲフィオンの力で存在しているのだろう。 |
| ナーザ | ゲフィオンとミリーナの力は混じっているようだからな。 |
| ディスト | それを踏まえれば、その小さなおつむでもあなたがセールンドに飛ばされた理由がわかるでしょう。 |
| カーリャ | ゲフィオンさまを通じてここに出た…… ?じゃあ、反対に戻れるかもしれませんよね ! ? |
| コーキス | よーし ! 試してみようぜ、パイセン ! |
| カーリャ | むむむむむ~……。 |
| コーキス | どうだ、いけそうか ? |
| カーリャ | ……だめでした。やっぱり入れません。もうこうなったら自力で飛んで帰ります ! |
| ディスト | さて、その小さな体で、どれほど時間がかかるやら。 |
| カーリャ | う……。 |
| ラタトスク | チッ……妙な面子が揃ってるな。ここで何をしている。 |
| マルタ | コーキスにカーリャまでいるじゃない。驚いた ! |
| メルクリア | アステル ! ? 何故アステルが鏡士の郎党と共に……。 |
| エミル | あ、ええと……それはね……。 |
| メルクリア | いや、待て。そうか……。リヒターが話していたエミルとラタトスクとやらか……。 |
| エミル | そうか……。リヒターさん……僕らのこと話してくれてるんだ……。 |
| コレット | ねえ、カーリャ、どうしてここにいるの ?ミリーナが大変だって聞いてたけどもしかして、ミリーナもセールンドに来てるの ? |
| カーリャ | コレットさま……。 |
| カーリャ | ――ああああああ ! !そうだ ! そうですよ ! コレットさまなら ! |
| コレット | ? |
| Character | 4話【6-4 ファンダリア領 森2】 |
| マーク | いたぞ ! あいつで間違いねえよな ! |
| イクス | ああ !――パティ、俺だよ、イクスだ ! 助けに来た ! |
| アイフリード | 来るな ! |
| マーク | 危ねえ、イクス ! |
| マーク | うわっ ! ! |
| イクス | マーク ! ? |
| マーク | っ……大丈夫だ……いいからパティを追え !すぐに追いつく ! |
| イクス | わかった ! |
| アイフリード | ……まだ追ってくるか ! 仕方がない。 |
| アイフリード | 私は捕まるわけにはいかぬ。確実に足止めさせてもらうぞ。 |
| アイフリード | 檻から解き放たれたばかりですまない。四大よ ! ここへ ! |
| イクス | なにっ ! ? |
| イクス | うわああああっ ! ! |
| アイフリード | ……なるほど、四大ほどの力を持つ精霊たちでもこの程度の威力か。まだ回復しきれぬのだな……可哀想に。 |
| アイフリード | 精霊たちに、負担をかける訳にはいかない。これ以上、私に力を使わせるな。 |
| イクス | くっ……。四大精霊を操っていた…… ?それじゃパティはもう、心核を……。 |
| イクス | だったら、絶対に……連れ戻す…… ! |
| アイフリード | 動くな ! 本当に命を落とすことに―― |
| ? ? ? | シャイニングスピア。 |
| アイフリード | っ ! ノーム ! |
| エルレイン | ……精霊で防いだか。アイフリードであれば当然だな。なるほど、では貴様はこの世界の海神ナーザ・アイフリードか。 |
| イクス | なんでここにエルレインが…… ? |
| エルレイン | 異世界の神よ。その体を渡すことはできぬ。返しなさい。 |
| マーク | イクス、無事か ! ? って、エルレイン ! ? |
| アイフリード | ウンディーネ ! イフリート ! |
| 全員 | ! ! |
| マーク | 逃げられたか ! ……くそっ。 |
| エルレイン | 邪魔をしてくれたな。ジュニアの鏡精。 |
| マーク | ジュニア ? 期待にそえなくて悪いな。俺はおっさんフィリップの方の、鏡精マークだよ。 |
| イクス | エルレイン……さん。助けてくれてありがとうございます。 |
| エルレイン | お前が鏡士イクスか。 |
| エルレイン | その傷は浅くはない。鏡精共々、ここで大人しくしているがよい。 |
| イクス | 待ってください ! パティの中にいるのはアイフリード――ナーザ神なんですね ? |
| エルレイン | そうだ。このようなことにならなければこの世界は今頃、あの娘に降臨するはずであった我が神フォルトゥナによって救われていたであろう。 |
| イクス | あなたが、パティを ! ? |
| マーク | イクス。 |
| イクス | ……ああ、わかってる。聞いてください、エルレインさん。 |
| イクス | もし、帝国がフォルトゥナ降臨を計画したのなら帝国はエルレインさんを、その……利用しているだけ……だと思う。 |
| イクス | 神降ろしが失敗したのはわざとそうさせられたんじゃないでしょうか。 |
| エルレイン | ……なぜそう思う。 |
| イクス | エルレインさんは、この世界を救うと言いました。でも俺たちの知っている帝国の計画は正反対だ。 |
| イクス | 帝国の真の目的は、ティル・ナ・ノーグ以前にあったニーベルングという世界の復活です。 |
| イクス | 滅んだニーベルングのレプリカを造り今の世界と置き換える。つまり――ティル・ナ・ノーグは滅ぼされます。 |
| エルレイン | ……そうか。やはりな。 |
| イクス | ってことは、信じてくれるんですね。だったら、俺たちと一緒に―― |
| エルレイン | いや、私にはすべきことがある。お前たちには、これを預けておこう。 |
| イクス | ……心核 ? |
| エルレイン | あの娘のものだ。今は休眠状態にある。しかし鏡士ならばその心核を目覚めさせ、娘の中に戻すこともできよう。 |
| イクス | もしかして、あなたはパティを救おうとしていたんですか ? |
| エルレイン | 救済は全てに等しく与えられるもの。その一つだと思いなさい。 |
| イクス | 待ってください、エルレインさん !……痛っ ! |
| マーク | ここまでだ、イクス。今の俺たちにはあいつらを追う力も余裕もねえ。砦に帰るのが精一杯だ。 |
| イクス | ……ああ。 |
| ディムロス | ――その魔核をどこに運ぶつもりだ。 |
| ルキウス ? | 困ったな。事を荒立てたくないんだけど。 |
| アリエッタ | 早くしないと、敵の陽動作戦、終わっちゃう……です。 |
| ディムロス | なんだと ! ? |
| ルキウス ? | アリエッタ、余計なことを言うな。 |
| アリエッタ | ご、ごめんなさい……。 |
| ルキウス ? | まあいいよ。こっちも鏡士たちの陽動を逆手にとってずいぶん楽に魔核を運ばせてもらったからね。 |
| シャルティエ | 知ってたっていうのか……全部。 |
| ルキウス ? | そうだよ。お前たちが仲間の救出に集中していたから邪魔をされずに済んだ。 |
| ディムロス | だが今は違う。魔核はこちらに渡してもらうぞ。行くぞ、シャルティエ ! |
| シャルティエ | 了解 ! |
| アリエッタ | 絶対に渡さない……です !みんな、やっつけて ! |
| シャルティエ | くっ、どこからこんなに魔物が…… !これじゃ魔核に近づけない ! |
| ディムロス | 魔物を操っている少女を先に抑えろ ! |
| ルキウス ? | ……これだけ魔物を出しても、まだやる気なんだ。仕方ないな。 |
| ルキウス ? | お前たち、ここまで楽に魔核を運ばせてもらったお礼にいいことを教えてあげるよ。 |
| ルキウス ? | お前たちの陽動はバレている。だから今、帝国は次々に兵士を増員しているんだ。 |
| ルキウス ? | 想定以上の敵が現れたら、お友達は驚くだろうね。もしかしたら、もう配備されているかもしれない。 |
| 二人 | ! ! |
| ルキウス ? | それでもこのまま魔核を追うのかな ?それとも今の情報を持って仲間を救いに行く ?好きな方を選ぶといいよ。 |
| ディムロス | …………シャルティエ、行け。 |
| シャルティエ | ディムロス ! ? 信じるんですか ! ? |
| ディムロス | 嘘だと言い切れまい。 |
| ディムロス | 救世軍でも、イクスくんたちでもいい。お前はとにかく情報を広めろ。私は魔核を追う。 |
| シャルティエ | でも…… !……いえ、了解です。無事でいてくださいよ ! |
| ルキウス ? | どっちも選ぶなんて欲張りだね。それが命とりになるかもしれないよ。 |
| ディムロス | 生憎だが、全員生きて帰るのが信条だ。――行くぞ ! |
| Character | 5話【6-5 ファンダリア領 研究施設】 |
| ディムロス | 炎牙昇脚 ! |
| 魔物 | グルルルル……。 |
| ディムロス | (どうしたことだ、魔物が引いて行く…… ?) |
| ディムロス | ――っ !あの少女たちはどこに行った ! ? |
| ディムロス | (転送魔法陣か。まだ完全に消えてはいないな。ならば――) |
| ディムロス | 逃しはせん ! |
| シャルティエ | やっぱり魔鏡通信が通じない……。なんでこんな時に ! |
| シャルティエ | ……考えている暇はない。砦へ向かおう。 |
| ヴィクトル | いたぞ、シャルティエだ。 |
| クラトス | すまぬ、待たせたようだな。 |
| シャルティエ | 救世軍の皆さん ! 連絡が取れなくて困ってたんです ! |
| ゼロス | 今は魔鏡通信が使えないんだよ。つーわけで、直接出向いてきぜ。 |
| シャルティエ | よかった ! 各陣営に伝えてください。今回の作戦、帝国側にばれているんです。 |
| ヴィクトル | なんだと ? |
| シャルティエ | 今も兵を増員して送り込んでいるとの話もあります。そうなるとこちらは数で敵いません。 |
| ゼロス | マジかよ ! 陽動部隊が押されてたのもそれが理由かもしれねえな。 |
| シャルティエ | 陽動部隊が ! ?あいつの話は嘘じゃなかったのか……。 |
| クラトス | わかった。イクスたちには私が報せに行こう。ゼロス、お前はケリュケイオンへの連絡を頼む。 |
| クラトス | それで、レンズと魔核は見つかったのか ?ディムロスがいないようだが。 |
| シャルティエ | すみません、報告が遅れました。レンズはほぼ使用されていて、魔核は別の場所へ運び込まれている最中です。ディムロスが奪還に当たっています。 |
| ヴィクトル | 一人でか。 |
| シャルティエ | ええ。僕は増員の情報を皆さんに伝えるために一時離脱しました。すぐにディムロスの所へ戻るつもりです。 |
| ヴィクトル | そうか。ならば私も共に行こう。 |
| シャルティエ | お願いします ! |
| アイフリード | 精霊たちは幾分か落ち着いたようだが……。この辺り……気配が……。 |
| グラスティン | ヒヒッ、何かお探しかな ? |
| アイフリード | ……誰だ。貴様も私の邪魔をするのか。 |
| グラスティン | とんでもない。これを渡そうと思ってな。 |
| アイフリード | それは……ダーナの心核 ! |
| グラスティン | そう、その欠片だ。大事なものだろう ? |
| アイフリード | なぜそんなものを !ダーナは心核を傷つけられているのか ! |
| グラスティン | まあまあ、まずはこれを返そう。ほら。 |
| アイフリード | …………。 |
| グラスティン | なんだ、いらないのか ? |
| アイフリード | ……何を企んでいる。 |
| グラスティン | そうだよなぁ。疑うのも無理はない。特別サービスだ。説明してやろう。話せば長くなるんだが――……っと、ここで終わりだ。 |
| グラスティン | もう、準備が整ったからなぁ ! ! |
| アイフリード | なっ ! うああああっ ! ? |
| グラスティン | お前のために作ったクロノスの【魔鏡陣】さ。よく味わってくれよ ? |
| グラスティン | 発動までに少々時間はかかったが……ダーナの心核の欠片がいい足止めになったな、ヒヒヒッ。 |
| ライラ | あれは……パティさん ! ? |
| グラスティン | あぁ ? なんだお前たちは ? |
| エドナ | 答える必要あるのかしら。 |
| グラスティン | ああ、お前たちは天族か。この一帯は精霊しか入れないようにした筈だがお前たちは精霊みたいなものだったなあ。 |
| ミラ=マクスウェル | グラスティン、何をするつもりだ ! |
| グラスティン | ほう ! これはこれは、異世界のマクスウェル。 |
| ミュゼ | なんなの、あなた。ミラに近づかないで ! |
| グラスティン | しかも、そこにいるのは『あの時』のお嬢さんじゃないかあ。ヒヒヒ、大盤振る舞いだな。 |
| シャーリィ | っ ! |
| グラスティン | 人間のお兄ちゃんは一緒に入れなかっただろう ?だが寂しがることはない。俺が相手をしてやる。 |
| ザビーダ | 俺の後ろに下がってな、お嬢ちゃん。こんなゲス野郎のツラ見てると目が腐っちまうぜ ? |
| シャーリィ | ありがとうございます。でも、それよりパティさんを ! |
| ルドガー | 兄さん、パティを捕らえている魔鏡陣……あの中に集まっている力は―― |
| ユリウス | ああ、感じる。クロノスの力だ。 |
| シャーリィ | それに、あの陣に配置されているのは聖核です。間違いありません。 |
| ユリウス | グラスティンは、ただアイフリードを捕らえているだけではないようだ。 |
| ミクリオ | だったら、あいつを倒すより魔鏡陣を消すのが先だな。解除するには―― |
| エドナ | ぐだぐだ言ってないで、ぶっ壊せばいいでしょ。――ロックランス ! |
| ミクリオ | 効いてない…… ? |
| グラスティン | この魔鏡陣はな、その程度の術でどうにかなるものじゃないんだよ。ヒヒヒ。 |
| グラスティン | さて、そろそろ頃合いのようだ。今回は特別に見物を許してやろう。 |
| ルドガー | クロノスの力が凝縮していく ! |
| ユリウス | これほどの力が集まるだと…… ! ?ルドガー、今は骸殻を使うなよ !……念のためだ。 |
| ルドガー | 兄さん ? |
| グラスティン | くくく、今までとは段違いの速さで吸収できるはずだ。いいぞ、どんどん食って成長しろ。 |
| ミクリオ | クロノスの力が聖核を包み込んでいるのか ! ? |
| ライラ | 『成長』と言っていました。もしこれが、これから生まれようとしている『恐ろしいモノ』なのだとしたら…… ! |
| ザビーダ | 冗談じゃねえ。んなもんお出しされたって受け取り拒否だっての !――おりゃあっ ! |
| グラスティン | くっ、ヒヒヒ……。いいぜ、今のうちだ。こいつが完全に完成したらそんな風に抵抗することもできなくなるだろうよ。 |
| グラスティン | 大人しくなった頃にお前たち全員『材料』として持ち帰ってやるよ。 |
| ミュゼ | 本当に嫌な人。あなたにだけは、死んでも使役されたくないわね。 |
| グラスティン | ヒヒヒ。さあ、一緒に祝ってくれ。【鏡の精霊】の誕生をなぁ ! |
| Character | 6話【6-6 ファンダリア領 街道1】 |
| セネル | ……まだか。遅いな。 |
| スレイ | シャーリィのこと、心配だよな。贄の紋章もあるし……。 |
| アルヴィン | 精霊様たちが勢ぞろいでご出陣なんだ。何かあったって、どうにかしてくれるだろ。 |
| ティポ | アルヴィンはイイカゲンだな~。 |
| アルヴィン | 『いい加減』か。お褒めの言葉、ありがとよ。 |
| エリーゼ | アルヴィン、自分に都合よく受け取りすぎです ! |
| アルヴィン | うは、おっかねぇ。とにかく、それくらいでいた方が落ち着いて行動できるぜ、セネル。 |
| セネル | そうだな。ありがとう、アルヴィン。 |
| スレイ | けどさ、クラースさんは、無理に出陣しないでアジトでサポートしてくれればいいって言ってたんだろ ? なのにシャーリィはなんで……。 |
| セネル | いつ滄我の声が聞こえるかわからないからなるべく精霊のみんなと一緒にいてすぐに言葉を伝えたいんだってさ。 |
| エリーゼ | シャーリィは責任感の強い人ですね。 |
| ティポ | マジメすぎて、ユーヅーきかないね~。 |
| セネル | ははっ、そうだよな。意外と頑固なんだよ。グリューネさんは、ちゃんと待機してくれてるのにさ。 |
| レイア | そういえば、エルは今回大人しかったね。いつもはルドガーにお留守番って言われると少し拗ねてたじゃない ? |
| ジュード | ミラさんが一緒に留守番してるからね。エルも安心できるんだと思う。 |
| ジュード | それよりも妙なのはユリウスさんだよ。ルドガーが一緒に行くことを渋ってたから。 |
| ガイアス | ……ユリウスにはクロノス絡みで気掛かりなことがあるのだろう。 |
| レイア | なんかルドガーたちって、ちょっと特別っぽいよね。わたしたちはこの先から入れなかったけどミラたちと一緒に進めちゃったし。 |
| 全員 | ! ! |
| ジュード | 今、何か変な感じが……。 |
| レイア | ねえ、みんな ! この先に進めるようになってるよ ! |
| スレイ | オレたちも近づけるようなったのか ! 行こう ! |
| スレイ | これ……どうなってるんだ ! ? |
| ミクリオ | スレイ ! 入れたのか ! |
| グラスティン | はぁ……はぁ……、結界が……弱まっちまったか……。だいぶやられたからな………。 |
| セネル | グラスティン ! 貴様 ! |
| グラスティン | だが……ここからだ……ヒヒヒ……。 |
| ルドガー | クロノスで回復する気だ ! |
| セネル | させるか ! うおぉおおおっ ! ! |
| グラスティン | ぐはっっ……、はは、これは効いた……。けどな……もうすぐ……もうすぐ……………… ? |
| 全員 | ? |
| グラスティン | なんでだ……クロノス……… !早くしないと…………本当に………… ! |
| ガイアス | もしや、クロノスの精霊装が作用してないのか ? |
| ユリウス | だとすれば回復はできない。こいつはこのまま―― |
| グラスティン | なぜ戻らない……いや………もう、いい……。これくらいの痛みならまだ………………。 |
| ジュード | 無理だよ。その傷ではもう……。 |
| グラスティン | 黒髪…… ! ? 俺のだ……俺のもの…… ! |
| ミラ=マクスウェル | お前のものじゃない。この世界の誰もがな。 |
| グラスティン | どけよぉ…………俺の……黒…………俺の……フィ……………………………。 |
| ユリウス | ……こいつも終わりか。 |
| ザビーダ | ちっ、しつっけえ奴だったぜ。 |
| シャーリィ | パティさん ! しっかりしてください ! |
| ジュード | あ、待って ! 今はそのままにして。目が覚めた時に、どうなるかわからないから。 |
| ラピード | ワン、ワンワン ! |
| ユーリ | おい、お前ら ! |
| ルドガー | ユーリたちだ ! みんな、早くこっちへ ! |
| ユーリ | 一体何を――って、こいつは…… ? |
| セネル | グラスティンだ。……死んだよ。 |
| フレン | どうなってるんだい ? ここで何があったんだ。 |
| カロル | ねえ、こっちにパティが来なかっ………パティ ! ? |
| エステル | パティ ! 良かった、無事だったんですね ! |
| フレン | エステリーゼ様、用心を。今のパティはアイフリードですから。 |
| ユリウス | そのことだが―― |
| シャーリィ | あっ、パティさんが目を開けました ! |
| ラピード | グルルルル……。 |
| ? ? ? | ――出でよ。 |
| 全員 | ! ? |
| カロル | 今地面から出てきたあれ……魔鏡 ! ? 凄くでっかい ! |
| ミラ=マクスウェル | なんだ……この感覚は…… ! |
| ミュゼ | 意識を強くもたないと……、頭が……。 |
| シャーリィ | あっ、パティさん ! |
| エステル | 待ってください、行っちゃ駄目です !パティー ! ! |
| Character | 7話【6-7 ファンダリア領 街道2】 |
| エリーゼ | 今の……何なんですか……。 |
| ティポ | パティがおっきな魔鏡を作ってその中に入って消えちゃったよー ! |
| アルヴィン | おい ! 精霊のお歴々、大丈夫か ! |
| エドナ | ええ……もう何ともないわ。あいつが消えたせいかも。 |
| ミクリオ | 嫌な感覚だったな……。心も体も囚われてしまうような……。 |
| ライラ | パティさんはどこへ消えたのでしょう。 |
| カロル | さっきの巨大魔鏡に景色が映ってたよ。あれは、ファンダリア領の帝国軍基地だったと思う。 |
| ジュディス | 単純に考えれば、そこに行ったんでしょうね。 |
| レイヴン | しかし何よあれ、アイフリードってのはあんなことまで出来ちゃうわけ ? |
| ルドガー | ……パティは今、アイフリードじゃないと思う。 |
| レイヴン | え ? んじゃ、どうなっちゃってんのよ ! |
| ユリウス | グラスティンは【鏡の精霊】と言っていたな。 |
| フレン | 鏡の精霊 ? 聞いたことがないな。 |
| リタ | ……ちょっと、この術式の跡なによ。 |
| ユリウス | あの男曰く【魔鏡陣】だそうだ。陣の中には聖核がいくつも配置されて、クロノスの力が集まっていた。パティ――アイフリードは、そこに囚われていたんだ。 |
| ユーリ | 聖核と精霊っていや……おいリタ。 |
| リタ | ……聖核が複数で、となるとこの術式は……。…………嘘でしょ、なんでこんなのが成立するのよ。 |
| リタ | だとしたら、この世界ではエンコードに関わらずマナもエアルも区別がないってことになるじゃない !循環がないから法則が無視できるっての ? |
| カロル | ちょ、リタ ! なに言ってるかわかんないよ。 |
| リタ | さっきの施設で研究資料を見つけたでしょ。パティは新たな精霊として創られたのよ。あいつのいう【鏡の精霊】にね。 |
| 全員 | っ ! ! |
| エステル | で、でも戻せますよね ?リタなら何か方法を見つけられるはずです ! |
| リタ | 何となくあたりはつくけど……。 |
| リタ | 多分、アイフリードの魂をベースに複数の聖核をキメラ結合させてるのよ。 |
| リタ | ざっと見たけど、精霊として生み出すためにリゾマータの公式も利用されてたわ。こんな使い方、メチャクチャよ ! |
| カロル | まさか不機嫌の理由って……。 |
| リタ | うっさい、黙ってて !多分、今パティに入っているのは、心核じゃなくて聖核なんだと思う。そこに色々くっついてんの。 |
| リタ | だから、パティの心核と、聖核を元の状態に戻せば状況は変わるはずよ。 |
| カロル | キメラ結合しちゃったのを戻すの ? |
| リタ | その方法も、この術式の跡を調べればわかるわ。 |
| リタ | あんたたちはそこで待ってて。今から全部解析するから。 |
| ラピード | ワウッ ! ワオーン ! |
| アーチェ | いたー ! みんなー、伝令ー ! |
| カロル | アーチェ ! どうしたの ? 伝令って、魔鏡通信使えばいいのに。 |
| アーチェ | うそ、カロルたちまだ気づいてないの ?魔鏡通信が使えないから空を飛べる組は伝令になってんの。 |
| ユーリ | マジかよ。原因はわかってんのか ? |
| アーチェ | えっと、複数の要素が絡んでるとか何とか ?とにかく、今はこの上のケリュケイオンを臨時拠点にして、情報集めてるところ。 |
| ユリウス | ご苦労さま。それで、伝令っていうのは ? |
| アーチェ | 陽動部隊がかなり押されちゃっててこの辺りも戦いに巻き込まれるみたい。今すぐ退避するようにって。 |
| フレン | 陽動って、イクスたちが ! ? |
| リタ | あっそ。じゃあこの術式の解析が終わったら行くわ。 |
| アーチェ | えー ! ? 今すぐって言ってるでしょ。ほら、早く~ ! |
| リタ | 術式が残っている今を逃したらパティは助けられない。――あんたらは先に行きなさい。 |
| ユーリ | はいはい。ってことだ。アーチェ、何かあったら伝令飛ばしてくれ。 |
| アーチェ | は ! ? |
| ミクリオ | はぁ……スレイもだよな。 |
| スレイ | もちろん ! |
| ミラ=マクスウェル | 恐らく、ここにいる全員、同じ答えだと思うぞ。 |
| アーチェ | もー……、わかったわよ ! みんなのことは報告しておくから。 |
| アーチェ | ただ、他のところの状況を聞いてると今はこっちを手伝える余裕はないと思う。だから、ぜーったい無理しないでよね ! |
| ユーリ | おう ! んじゃ耐久戦といくか。へばるんじゃねえぞ。 |
| フレン | 誰に言ってるんだい ? |
| ジュディス | ふふっ、面白くなってきたわ。不謹慎だけど。 |
| レイヴン | かーっ、これだから血の気の多い若者は。 |
| ルドガー | ――みんな、リタを囲め。来るぞ ! |
| Character | 8話【6-8 ファンダリア領 森3】 |
| イクス | はあっ……、はあっ……。 |
| マーク | イクス、一回、止まって休むか ? |
| イクス | 大丈夫。四大の攻撃を受けてこの程度で済んでるんだからまだマシだよ。 |
| マーク | まあな。アイフリードが万全じゃなくて助かった。 |
| イクス | それもあるだろうけど精霊が弱ってるようなことも言ってたよな。……どこかで何か起きてるのかもしれない。 |
| マーク | とにかく砦に帰るのが優先だ。……ふうっ。 |
| イクス | マークこそ平気なのか ?俺をかばったせいでモロに攻撃くらっただろ ?……ごめんな。 |
| マーク | 俺は鏡精だからいいんだよ。それにお前に何かあったらフィルが悲しむ。 |
| イクス | フィルさんが……。 |
| クラトス | イクス、マーク ! |
| イクス | クラトスさん ! |
| マーク | 連絡役お疲れさん。何かあったか ? |
| クラトス | ああ、問題が起きてな。お前たちの砦に行くところだった。……どうしたのだ、ひどい傷ではないか。 |
| イクス | さっきパティを――いえ、後で説明します。問題ってなんですか ? |
| クラトス | 今回の作戦だが、帝国側に知られているようだ。当初、我々が想定した以上の兵が投入されているらしい。早急に対策が必要だ。 |
| イクス | やっぱり !途中から帝国兵が増えてる気がしてたんです。 |
| クラトス | 他にもこちらの動きを想定して裏で事を進めているようだ。魔核も運び出されているらしい。 |
| イクス | わかりました。すぐに砦に戻って、対応策を取ります。 |
| クラトス | 無理をするな。臨時拠点のケリュケイオンでローエンが情報収集しながら指揮を執っている。今は任せておいていい。 |
| イクス | そうですか……。ローエンさんなら安心です。しばらく戦線は維持できそうですね。 |
| クラトス | ああ。そこから少しずつ撤退へと持ち込むといい。それにしても随分と酷くやられているな。何があった。 |
| イクス | パティ……いえ、アイフリードです。パティは心核を抜き取られ、体にはアイフリードが入っています。連れ戻そうとしたんですけど……。 |
| クラトス | アイフリードの件は承知している。なるほど、相手が悪かったようだな。 |
| クラトス | アイフリードのことは今もユーリたちが追っているはずだ。任せておけ。 |
| イクス | だったら、ユーリさんたちに伝えてもらえますか。パティの心核を手に入れたって。 |
| クラトス | 心核だと ? どういうことだ ? |
| イクス | エルレインさんが渡してくれました。ただ、今は休眠状態にあるとかで鏡士の力がないと心核を目覚めさせられないそうです。 |
| クラトス | エルレイン……。なるほど、帝国でもひずみが生じているようだな。 |
| イクス | 今、フィルさんがミリーナを治療してくれています。それが終わったら、すぐパティの心核を持ってユーリさんたちの下に向かいますから。 |
| クラトス | ……お前たちは無茶ばかりするな。伝言は確かに伝える。しかし無理をするなよ。 |
| ロミー | ――セールンドにおいて発動させた、フリンジによる転送魔法の生成は失敗。でも、エネルギーは十分に抽出できたそうよ。 |
| デミトリアス | そうか。残念だが、得たものがあるのなら十分だ。 |
| ロミー | そうかしら。あれだけ準備をしておいて術の一つも作れなかったなんて無駄な労力だったんじゃない ? |
| ロミー | 一番肝心なオリジンも捕獲できなかったんだから。 |
| デミトリアス | 確かにオリジンの件は残念だったがまだ機会はある。何しろ召喚士アイフリードの始祖でもあるナーザ神が目覚めたのだからね。 |
| デミトリアス | それにフリンジは、精霊同士を干渉させ新たな術を作り出すことができる素晴らしい技術だ。失敗とはいえ、試す価値はあったと思うよ。 |
| ロミー | ふうん、のんきな皇帝様なのね。それじゃ、私はこれで失礼するわ。 |
| デミトリアス | もうアレウーラに帰るのかい ? |
| ロミー | いいえ、ルキウスからの報告が途絶えているの。確認のために現地へ調査に向かうつもりよ。 |
| デミトリアス | 待て。きみにはアレウーラ領の領主としての仕事があるはずだ。 |
| ロミー | 領主の仕事なんて後回しでいいでしょ ? |
| デミトリアス | それはいけない。従騎士のフォレストも聖核の捜索に出ているのだろう ?鏡映点たちの襲撃も頻繁に起きている。 |
| デミトリアス | 私はアレウーラ領の治安が心配なのだよ。 |
| ロミー | 今さら治安の話 ? とんだ偽善者ね。 |
| デミトリアス | 愛する自国を心配することの、何が偽善なのかね ? |
| ロミー | あなたと問答する気はないわ。 |
| デミトリアス | ロミー、待て。 |
| ロミー | お断り。だいたい、なんでフォレストを聖核探しに派遣したと思っているの ? |
| ロミー | 聖核を使った人工精霊を創る計画は上手くいったのにあなたたちが欲張って、予備の聖核まで欲しがったからでしょ ? |
| ロミー | これ以上文句は聞かないわ。やることはやっているんだから。それじゃあね。 |
| デミトリアス | ……なるほど。適材適所とは中々に難しい。彼女は扱いを考えねばならないな。 |
| Character | 9話【6-9 ファンダリア領 街道3】 |
| フレン | みんな、大丈夫か ! |
| アルヴィン | こっちは順調 ! これ以上、敵が増えなきゃな。 |
| ザビーダ | とは言え、そろそろ見通しくらいは知りたいねぇ。 |
| ルドガー | リタ ! あとどれくらいだ ! ? |
| リタ | 邪魔 ! |
| ルドガー | わ、悪い ! |
| エステル | 気にしないでください。ルドガーは悪くありません。リタは今、必死なんです。 |
| ガイアス | 口を動かす前に手を動かせということだ。リタの方から声がかかるまで放っておけ。 |
| エドナ | 邪魔なルドガー、略してジャガー。……ちょっとカッコいいから却下ね。 |
| カロル | 良かったね、ルドガー……って !そっちから敵が来るよ ! 気を付けて ! |
| ユーリ | 余裕あんじゃねえか、エドナ。 |
| エドナ | そんなことないわ。その証拠にミボクラスの略し方が出てこないもの。 |
| ミクリオ | どういう基準なんだ ! |
| スレイ | いいからほら、集中集中 ! |
| ミラ=マクスウェル | ………… ? |
| ミュゼ | ミラ ! ? そっちに行ってはダメよ、敵が ! |
| アルヴィン | おいおい ! |
| ミラ=マクスウェル | ―― ! !アルヴィンか。すまない、助かった。 |
| アルヴィン | お仕事中にぼんやりしちゃダメだぜ。 |
| セネル | こっちは俺たちが引き受ける。シャーリィ、ミラの側に行って必要なら回復してやってくれ。 |
| シャーリィ | わかった ! |
| ジュード | 突然どうしたの、ミラ。 |
| ミラ=マクスウェル | たった今、四大が戻った。 |
| ジュード | えっ ! |
| セルシウス | ……どうにか抜け出せたわ……。 |
| シャーリィ | セルシウスさん ! |
| ミラ=マクスウェル | 何があった。四大もお前もかなり弱っているぞ。 |
| セルシウス | ええ。フリンジで力を奪われたから……。 |
| シャーリィ | フリンジ…… ?とにかく無事でよかったです。 |
| セルシウス | 無事かどうか、まだわからないわ。 |
| セルシウス | アイフリード……と言っていいのかしら。新しい精霊……あの存在が近くに来ると精霊は意識を支配されそうになるみたい。 |
| ジュード | 鏡の精霊だね。さっきミラたちにも同じような症状が出ていたよ。 |
| ? ? ? | ――え――ます――。聞こえ――か ? |
| ライラ | 魔鏡通信です !まだノイズ混じりですけど、誰かの声が聞こえます ! |
| ユリウス | そのまま繋げておいてくれ。はっきり聞こえるようになるかもしれない。 |
| エステル | セルシウス、鏡の精霊が使っている体は――パティは無事なんです ? |
| セルシウス | ……あの子は、何か恐ろしいものになりかけているわ。一刻も早く助けないと大変なことになる。パティも――私たち精霊も。 |
| エステル | そんな…… ! |
| リタ | ――そう、その通りよ !『なりかけている』だけなんだわ。 |
| ライラ | え ? ど、どうしたんですか ? |
| リタ | だからこの術式は……うん、間違いないわね。パティは、まだ鏡の精霊になりきっていないのよ。状態としてはリビングドールβだと思っていい。 |
| エステル | それってつまり―― |
| リタ | まだ間に合うってこと。今ならまだパティが恐ろしいモノ――鏡の精霊になる前に助けられる。 |
| エステル | リタ ! |
| リタ | さあ、終わったわ ! 大事なことは写したしデータも十分 !パティを助けに行くわよ。 |
| ミラ=マクスウェル | みな、聞こえたな。解析は終わった。撤退しよう ! |
| ユーリ | そうしたいところだが、ちっと、難しくなりそうだ。 |
| ジュード | どうしました ! ? |
| レイヴン | あれを見な。この距離で見積もっても今までの倍の兵士が来る。 |
| レイア | こっちからも ! もう囲まれちゃうよ ! |
| ガイアス | 今、我々が陣形を崩せばそのまま一気に畳みかけられるだろう。 |
| ローエン | 聞こえますか ? 応答して……さい。 |
| ガイアス | その声、ローエンか ! |
| ローエン | ガイアスさん、ご無事で何よりです。まだノイズは交じ……すがこの通り、魔鏡通信は回復しつつあります。 |
| ローエン | 皆さんの状況は確認しています。救世軍の兵をそちらへ向かわせているところです。もう少しだけ耐えてください。 |
| リタ | 少しってどれくらいよ !早くパティを追わないと間に合わなくなるわ ! |
| スレイ | ……わかった。ユーリたちは先に行ってくれ。今ならまだ、オレたちで退路を確保できる。 |
| フレン | スレイ ! でも今だって―― |
| セネル | 時間がないんだ。急げ ! |
| ルドガー | 心配するな。これだけ揃っているんだ。そうそうやられないよ。 |
| ジュード | うん、僕たちの力を信じて。行って ! |
| ミラ=マクスウェル | パティのあのような姿精霊としても仲間としても見るに堪えない。早く助けてやって欲しい。 |
| ユーリ | ……おう。んじゃ、頼むわ ! |
| フレン | ……ありがとう、みんな。 |
| フレン | ――行こう。手薄なところを突っ切って何があっても構わず走り抜く ! |
| 全員 | 了解 ! |
| Character | 10話【6-11 ファンダリア領 街道5】 |
| カロル | はぁ……何とか突破できた……。スレイやみんなのおかげだね。 |
| ジュディス | 彼らのところにも早く援軍が来てくれるといいのだけど。 |
| フレン | 大丈夫。ローエンさんの采配があるんだ。僕たちはパティを助けることに専念しよう。 |
| エステル | 鏡の精霊の魔鏡に映っていた帝国の基地ってこの先なんです ? |
| ユーリ | ああ、この森を突っ切るのが最短距離のはずだ。だよな、カロル。 |
| カロル | うん、ばっちり調べてあるよ !調査しながら、各地の地図を作ったりしてるからね。 |
| ラピード | グルルルル……。 |
| レイヴン | ちょい待ち ! あれって……。 |
| ジュディス | 増援の兵士が待機しているみたいね。このまま進むなら、戦わないといけなくなるわ。 |
| リタ | それじゃ最短距離の意味がないじゃない。別ルートは ? |
| ユーリ | ここまで来て迂回となると、相当時間がかかる。何とかすり抜けちまおうぜ。 |
| ジュディス | それもいいけど、彼らが何のためにいるのか調べておいた方がいいんじゃないかしら。 |
| フレン | そうだね。ユーリ。あそこに集められている兵士ってリビングドール兵じゃないよね ? |
| ユーリ | ああ。好き勝手にくっちゃべってるからな。リビングドール兵は人間味っつーのがねえから見てりゃわかる。 |
| フレン | なるほど。だったら情報収集しておこうか。 |
| ユーリ | へえ、お前から言い出すとは思わなかったぜ。 |
| レイヴン | んじゃ、早速お話しちゃいましょ。無理やり。 |
| 帝国兵 | くっ……くるし……。 |
| ユーリ | 大人しくしてろって。悪いようにはしねえよ。 |
| レイヴン | ほらほら、リラーックス。あんまり動くと、もっと締まっちゃうわよ ? |
| エステル | あの、ほどほどにしないとこの人もしゃべれませんから、ね ? |
| カロル | ユーリの締め技、エグいなぁ……。 |
| リタ | 絵面だけ見てると悪人そのものね……。 |
| ラピード | グルルルルルルゥ……。 |
| ジュディス | あら、ラピードもやる気満々ね。 |
| 帝国兵 | 待ってくれ ! 何でも話すから ! |
| フレン | そうか。では、まずは兵の手薄な箇所と―― |
| フレン | ――魔導砲 ? その兵器の最終テストというのはこの近くで行われるのか ? |
| 帝国兵 | は、はいっ ! そちらにも兵を割くことになるのでこの辺りの兵数も減るはずです……。 |
| 二人 | 魔導砲……。 |
| リタ | マナを高出力で撃ち出す、とんでもない威力の兵器よ。クラースたちから聞いたことがあるわ。 |
| エステル | マナというと、私たちの世界ではエアルと物質の間のようなものでしたよね ? |
| リタ | そうよ。これでわかったわね。帝国が魔核を集めていた理由が。 |
| エステル | 魔核はエアルが凝縮したものだから、ですね。 |
| フレン | 魔導砲のために、魔核は集められていたのか。 |
| カロル | ……ねえ、ユーリ。その魔導砲と似た話、どっかで聞いたよね。 |
| ユーリ | ああ、異世界の兵器を使って精霊を実弾に使用するって計画だろう ?オレもそれを思い出していたところだ。 |
| レイヴン | おいおい、それが魔導砲と同じ話なら、パティちゃんはその実弾として使われるんじゃ…… ! |
| ユーリ | おい ! 他に何か聞いてねえか ? |
| 帝国兵 | 他には――ぐはっ ! ! |
| 全員 | ! ! |
| ロミー | おしゃべりが過ぎると死んじゃうわよ ?そいつみたいに。 |
| ユーリ | お前がやったのか ! ? |
| ロミー | ええ、そうよ。仕事だもの。それともう一つ。 |
| ロミー | ――ここにネズミがいるわ ! 早く駆除しなさい !さて、これであなたたち、逃げられないわね。 |
| リタ | ちょっ、なにしてくれんのよ、あんた ! |
| ロミー | うふふ、仕事を楽しんでいるだけよ。 |
| ルキウス ? | ロミー、ここにいたのか。 |
| 全員 | ! ! |
| カロル | あの顔……カイウスとそっくりだ。 |
| エステル | じゃあ、あの人がルキウス ! ? |
| ロミー | ルキウス ! 連絡がないからわざわざ出向いてあげたのよ。 |
| ルキウス ? | ふーん、そう。そんなことよりこれからもっと面白いものが見られる。ついて来るといいよ。 |
| ロミー | なによ、いいところなのに。仕方ないわね。 |
| ロミー | ああ、そうそう。ネズミさんたちのことは雑兵共が相手をしてくれるから安心して。――ほら、もう来たわ。 |
| 帝国兵 | いたぞ ! こっちだ ! |
| ロミー | ふふふ、あなたたちも楽しんで。 |
| ユーリ | おい、待ちやがれ ! |
| Character | 11話【6-12 ファンダリア領 街道6】 |
| ユーリ | ったく ! これじゃ、あいつら追うどころじゃねえ。 |
| ジュディス | せめて意表をつく手があればこの場から抜け出せそうだけど。 |
| レイヴン | 意表ってったって、そうそう簡単には―― |
| ? ? ? | ジャッジメント・トライ ! |
| 帝国兵たち | ぎゃああああっ ! |
| エステル | クラトス ! ? |
| クラトス | この先へ向かって走れ ! 兵が少ないはずだ ! |
| ユーリ | 助かったぜ ! 行くぞ。 |
| レイヴン | はー、やれやれ。今日は逃げて走っての繰り返し !忙しいったらもう。 |
| クラトス | ローエンからお前たちの話を聞いてきた。こちらも苦戦を強いられているようだな。 |
| フレン | お陰で助かりました。ありがとうございます。 |
| レイヴン | それで何、そっちは何か連絡あって来たんでしょ ? |
| クラトス | ああ。イクスからお前たちに伝言がある。パティの心核を回収したそうだ。 |
| 全員 | ! ! |
| リタ | 驚いた……。いつの間に手に入れたのよ。 |
| エステル | ありがとうございます !これで一歩、パティを取り戻すのに近づきました ! |
| カロル | それで、パティの心核は ! ? |
| クラトス | 心核は休眠状態にあるという。それがどのような状態かはわからぬが、鏡士の力で目覚めさせることができるようだ。 |
| クラトス | イクスはあとで心核を持ってお前たちと合流すると言っていた。 |
| ユーリ | 大丈夫なのか ?陽動部隊が苦戦しているってのは聞いてるが。 |
| クラトス | 陽動部隊は救世軍が介入したことで徐々に立て直しに入っている。そちらは何とかなるだろう。 |
| クラトス | ただ、ミリーナが倒れて意識不明の状態だ。イクスはフィリップが治療していると言っていたがどうも、簡単にはいかないようだ。 |
| クラトス | 先程、魔鏡通信が回復した際にローエンから聞いた話ではカーリャの存在も観測できないらしい。 |
| エステル | ええっ、そんなことになっているんですか ! ? |
| ジュディス | それじゃあこっちに来るどころの話じゃなさそうね。 |
| クラトス | かもしれん。実際カーリャがいないことがミリーナを救うための弊害になっているようだ。 |
| レイヴン | それってつまり、カーリャちゃんが見つかればミリーナちゃんは目を覚ますってこと ? |
| クラトス | どうもそのようだな。ただ、事態がどのような形になるにせよイクスは約束を果たそうとする筈だ。 |
| カロル | 確かにそうかも……。イクスって真面目だし頑張り過ぎちゃうから心配だよ。 |
| フレン | 思っていたよりも状況は深刻ですね。 |
| クラトス | ああ、しかも魔鏡通信が使えなかったせいで皆、上手く連携がとれなかったからな。 |
| カロル | 魔鏡通信が直ったなら、クラトスも連絡役はおしまい ? |
| クラトス | いや、まだ通信が安定したわけではない。私はこのまま各陣営への連絡を続ける。 |
| クラトス | 先ほどのお前たちのように魔鏡通信が使えない状況に陥った者たちへの助けになることもあるからな。 |
| カロル | 本当だね。さっきみたいに敵がいっぱいだと通信なんてしてられないもん。 |
| クラトス | それともうひとつ、この先の丘に大規模な陣が張ってあった。お前たちが戦っていたのはそこへ投入される兵だったのだろう。 |
| クラトス | 気になるのは、その軍隊の側に、我々の世界にあった魔導砲によく似た塔が立っていたことだ。本物だとは思いたくないが……。 |
| リタ | 本物 ! それ、本物よ ! |
| クラトス | なんだと ! ? |
| ユーリ | しかもその魔導砲、精霊を使って撃ち出すもっとヤバイもんになってるかもしれねえ。 |
| フレン | パティを保護して魔導砲に近づけないようにしないと。 |
| カロル | ちょっと待って ! 地図地図…… ! |
| クラトス | 地図 ? |
| ユーリ | カロル調査室で独自に調べて作った地図さ。 |
| カロル | えっと……ここがパティが行ったはずの基地でこの丘が魔導砲があるっていう本陣。で、ボクたちはここ。 |
| カロル | 基地から魔導砲へパティが移動するとして……。この森に行けば、パティが本陣と合流する前に先回りして押さえられないかな ? |
| クラトス | なるほど……さすがカロル調査室の室長だな。この位置関係なら、十分間に合うだろう。ただし、相手が徒歩ならば、だが。 |
| リタ | 知ってるのね、あの鏡を使ったワープのこと。 |
| クラトス | ジュードたちから報告が入ったそうだ。話が事実なら、距離など何の意味もない。 |
| リタ | それなら問題ないわよ。 |
| リタ | 魔鏡陣に残ってた術式を見る限り精霊になりきれてない今のパティに同じ事をやってのける力は残ってない筈だから。 |
| クラトス | なるほど。ならばお前たちの方は時間の余裕が生まれそうだな。 |
| レイヴン | ここから逆転といきたいところよね。 |
| ユーリ | よし、んじゃカロル先生の案を採用だ。オレたちは森へ先回りしてパティを待ち伏せる。 |
| クラトス | では、私は魔導砲の偵察に向かおう。 |
| マーク | おいフィル、戻ったぞ !イクスに治療を――……。 |
| マーク | ……おい、なんだよこれ。 |
| イクス | ミリーナの周りに魔鏡結晶が…… ! ?どうしたんだよ、ミリーナ ! |
| カーリャ・N | イクス様、落ち着いてください。それに酷い傷です。無理をしては―― |
| イクス | フィルさん、何が起きたんですか ! ? |
| フィリップ | ミリーナの魔鏡の力がスタックされているんだ。魔鏡結晶も徐々に大きくなり始めている。 |
| イクス | それって、俺の時と同じ……。 |
| フィリップ | ああ。ミリーナの場合はゲフィオンの影響だ。この力のせいで、ミリーナの心にアクセスしようとしたら弾かれてしまった。 |
| イクス | カーリャは ! ? |
| カーリャ・N | いいえ、戻りません……。フィル様の話では、消えたか、どこかへ飛ばされたのか判断がつかないとかで。 |
| イクス | そんな……。まさか、このままじゃ俺と同じように魔鏡結晶に閉じ込められるんじゃないですか ! ? |
| イクス | 俺はミリーナにあんな辛い思いをさせたくない ! |
| フィリップ | イクス、まず治療を受けてくれ。きみが万全でなければ、ミリーナは救えない。 |
| イクス | え…… ? |
| カーリャ・N | 治癒術をかけます。その間に説明を。マークもこちらへ来て下さい。 |
| フィリップ | 聞いてくれ、イクス。確かに僕一人ではアクセスできなかった。 |
| フィリップ | だけどイクス、きみとなら……。ミリーナの心に触れられるかもしれない。 |
| イクス | 俺とフィルさんで、ですか ? |
| フィリップ | ああ。一緒にミリーナの心へアクセスするんだ。 |
| Character | 12話【6-13 ファンダリア領 街道7】 |
| スレイ | みんな無事 ! ? まだいけそう ! ? |
| ルドガー | ああ ! けど少しキツくなってきたな。 |
| セネル | 確かに。だが援軍が来るまでの我慢だ ! |
| ジュード | …………。 |
| ミラ=マクスウェル | どうしたジュード、疲れたか ? |
| ジュード | ……みんな、聞いて。このままじゃ持たない。方針を変えよう。 |
| アルヴィン | そうだな。こんな防戦一方じゃジリ貧間違いなしだ。 |
| エリーゼ | 援軍、待たないんですか ? |
| レイア | 待って、ローエンに連絡するね ! |
| ライラ | ではレイアさんの守りは私が。 |
| レイア | ありがとう、ライラ !――ローエン ? 急いでるの ! ジュードの話を聞いて。 |
| ジュード | 敵は今、僕たちが防戦一方だと思っているはずだ。だからこそ、こちらから攻撃に転じる。不意をついて怯んだところを突破。これ、どうかな ? |
| ザビーダ | 一点突破か。いいね、嫌いじゃないぜ。 |
| ローエン | 承知しました。援軍の到着にもまだかかります。危険は伴いますが、皆さんの呼吸さえ合えば可能でしょう。 |
| ユリウス | では、実行はこちらのタイミングで進める。問題はないな ? |
| ローエン | ええ。それと、近くに大きな川の堰があります。それを切ってください。 |
| ローエン | 皆さんへの追っ手を止められますし、救世軍としても敵を追い込めるので動きやすくなりますから。 |
| スレイ | わかった。その辺はオレたちで上手くやるよ。 |
| ルドガー | けど兄さん、タイミングって言っても今は―― |
| ? ? ? | ぁぁあああああああああっ ! |
| ユリウス | 何か落ちてくる ! 避けろ、ルドガー ! |
| ルドガー | いや、あれは――――痛いっ ! |
| カーリャ | きゅぅ……。 |
| 全員 | カーリャ ! ? |
| カーリャ | はっ ! ここは…… ? |
| ジュード | ちょっ、どうしたのカーリャ !ミリーナのところに居なくてていいの ? |
| カーリャ | そ、そうなんです !ミリーナさまを助けに行く途中なんです !カーリャは、コレットさまに運んでもらってて ! |
| カーリャ | でも、コレットさまの手がすべってカーリャは真っ逆さまに―― |
| ジュード | ま、待って、よくわからないよ !ここを抜けたら、ちゃんと聞くから。 |
| カーリャ | は……ミリーナさま…… ? |
| セネル | どうした、カーリャ。目の焦点が合ってないぞ ? |
| ルドガー | 俺の頭に落ちてきたときの影響か ? |
| カーリャ | ち、違うんです。今までミリーナさまの心からはじかれていたのに、急に声が聞こえて……。 |
| カーリャ | ――ミリーナさまが呼んでる…… !今なら、心の中に戻れます !ミリーナさま、今カーリャが助けに行きますからねっ ! |
| ジュード | カーリャ ! ? 消えちゃった……。 |
| エドナ | 考えても仕方ないでしょ。敵は休まず来てるのよ。こっちを手伝いなさい ! |
| コレット | え ! ? う、うん、わかったよ !ごめんね、エドナ。えっと――ジャッジメント ! ! |
| 帝国兵 | なっ、上 ! ? うわあああっ ! ! |
| ルドガー | 今度は空からコレットが ! ?けど、このタイミングなら ! |
| ユリウス | ああ。――全員、コレットと同じ場所を狙って攻撃だ !そのまま突破するぞ ! |
| カロル | ねえ、ユーリ。パティと会う前にみんなの状況を確認しておかない ?今、どうなってるか心配だし……。 |
| ユーリ | そうだな。イクスもこっちに来るとは言ってるが状況によっちゃ難しいかもしれねぇし。んじゃ…………。 |
| ユーリ | ――…………駄目だ、出ねぇ。 |
| カロル | それじゃ、スレイたちは ?駄目ならジュードかとにかく他にも連絡してみようよ。 |
| ユーリ | ああ。今、やってる…………やっぱ繋がらねえな。 |
| レイヴン | 魔鏡通信が不安定なのかそれとも出られない状況なのか……。 |
| エステル | どうなっているんでしょう。心配です……。 |
| ジュディス | 人の心配もいいけれど、もう目的地の森よ。 |
| フレン | そうだね。気を引き締めて―― |
| ラピード | グルルルルル……。 |
| フレン | どうしたんだい、ラピード。 |
| ラピード | ワンワンワン ! |
| 全員 | ! ! |
| リタ | なに、これ……。 |
| カロル | 倒れているの、みんな帝国兵だ。こんなにたくさん。 |
| 帝国兵A | ううっ……。 |
| 全員 | ! ! |
| 帝国兵A | 貴様らは……絶対に、逃がさん……。 |
| フレン | 警笛だ ! 兵士が来るぞ ! |
| カロル | これ、ボクたちがやったんじゃないのに ! |
| ユーリ | 今更通じねぇよ。逃げんぞ ! |
| フレン | このまま森の中に入って潜もう ! |
| フレン | みんな走れ ! 帝国兵を巻かなきゃパティの待ち伏せどころじゃない ! |
| ラピード | ワンワンワン ! |
| ユーリ | あ ? この先に誰かいるってのか ? |
| カロル | ねえ、あれって―― |
| 全員 | ! ! |
| デューク | お前たちか……。 |
| ユーリ | デューク ! |
| レイヴン | 具現化されてたのか……。 |
| ジュディス | さっき倒れていた兵士もあなたの仕業ね ? |
| 帝国兵B | いたぞ ! 銀髪の男だ ! |
| ユーリ | おいおい、お前も追われてるのかよ。 |
| デューク | いや、私は追っているのだ。 |
| エステル | 追っている…… ?あっ、待ってください ! デューク ! |
| 帝国兵B | あっちにいったぞ ! |
| リタ | まさかあいつ、敵を連れてってくれた ? |
| ジュディス | 彼、そこまで甘くないわよ。自分の敵は自分でってことじゃないかしら。 |
| レイヴン | だわな。らしいっちゃらしいけど。 |
| 帝国兵C | いました ! |
| カロル | こっちも来た ! |
| ユーリ | よし、だったらオレたちも自分で自分のケツをふくか ! |
| フレン | もう、追って来る兵士はいないな。 |
| ラピード | ワン、ワンワン ! |
| ユーリ | まだその辺にいるってよ。様子見に……お、イクスから魔鏡通信文が来てるぞ。 |
| カロル | 見せて見せて ! |
| イクス | イクスです。声が届けられないから通信文を送ります。パティの心核の休眠状態を解除できました。 |
| イクス | 事情はあとで説明します。場所は把握しているので三十分程度でそちらに着くと思います。 |
| エステル | イクス、やっぱり来てくれるんですね !心核の休眠状態も解除できたって ! |
| ジュディス | だったら私たちもパティを確実に連れ戻さないと。 |
| フレン | ユーリ、僕はこの辺りを偵察してくる。この先は見晴らしがよさそうだから、平原に残っているスレイたちの状況も確認できるかもしれない。 |
| カロル | あ、ボクも行く !イクスが来てるかもしれないしね。 |
| ユーリ | ああ、頼むわ。こっちは先に陣取りしとくぜ。……恐らく戦うことになるだろうからな。 |
| Character | 13話【6-14 ファンダリア領 森4】 |
| ジュディス | この辺、いいんじゃないかしら。 |
| ユーリ | ああ。隠れ場所もあるしそこそこ開けてて戦いやすそうだ。 |
| エステル | それじゃ、この場所のことフレンたちに連絡しておきますね。 |
| リタ | ガキんちょの思い付き、結構当たってたみたいね。これだけ兵士が多いってことは、パティが確実にここを通るってことだし……なかなかの読みだわ。 |
| ユーリ | それ、カロルに直接言ってやったらどうだ ?喜ぶぜ。 |
| レイヴン | いや~、珍しすぎて逆に怯えちゃうんじゃないの ? |
| リタ | そうね。あんたも怯えさせてあげましょうか ? |
| レイヴン | ちょっ、術の無駄撃ち禁止 ! |
| ジュディス | 静かに。誰か来るわ。 |
| サレ | ……本当にしつこいね。 |
| デューク | 友を取り返すまで私はどこまでもお前たちを追う。 |
| ユーリ | あいつ、鏡映点名簿で見た顔だな。 |
| レイヴン | 確かサレだったかね。ヴェイグの世界の奴だ。 |
| ユーリ | ああ。シングやカイウスは帝国で一緒だったらしいな。悪い噂しか聞かなかったらしいぜ。 |
| レイヴン | とりあえず加勢しとく ?恩を売るのも悪くないでしょ。 |
| デューク | ……。 |
| エステル | 今、デュークに睨まれました !こっちに気づいてます ! |
| ユーリ | 今のは出てくんなって意味か ? ったく……。 |
| サレ | そこ、出ておいでよ。不意打ちなんて無駄なこと考えてないでさ。 |
| ジュディス | ……あっちも気づいたみたいね。 |
| サレ | ……へえ、あいつが大喜びしそうな上玉の黒髪がいるじゃないか。まあ、別に持って帰ってやる義理もないけど。 |
| ユーリ | グラスティンか ? あいつは死んだぜ。 |
| サレ | 死んだ、ねえ……。そうなんだ。そういうことか。ははは……。 |
| サレ | まあ、どうでもいいけどね。 |
| リタ | ずいぶん余裕じゃない。けどこの辺の兵士、ほとんどいないわよ。 |
| ユーリ | どうやらデュークに倒されちまったみたいだな。今の戦力じゃ、オレらが上じゃねえの ? |
| サレ | ……なんだ、こいつのお仲間か。こいつ変だよねぇ。あんな石ころがお友達なんだって ?随分とご執心なことで。 |
| ユーリ | おいデューク、まさかあんたが追ってるのは……。 |
| デューク | …………。 |
| サレ | もう僕を追うのは無駄だから諦めてくれない ?だって、あの子に入っている聖核はもう元の状態じゃないんだよ ? |
| デューク | なんだと ? |
| サレ | 色々いじくりまわされてさぁ。いろんな物が混じって、くっついて。しかも今は精霊様になりつつある。もう戻らないね、あれは。 |
| デューク | 人間っ ! ! |
| サレ | っ ! ! ぐあああっっ ! |
| デューク | ……っ。致命傷ではないはずだ。答えろ。聖核を持ったあの娘は今どこにいる。 |
| サレ | ははっ……、思ったより手が早いね……。 |
| サレ | でも、これでどうにか操れそうだ。 |
| デューク | ! ! |
| リタ | ちょっと、何やってるのエステル ! |
| ユーリ | おい、エステル ! お前―― |
| デューク | 離れろ ! |
| ユーリ | デューク ! ? |
| レイヴン | ちょっと今の ! デュークが防がなきゃ青年の首がやばかったわよ ! |
| エステル | ……あなたたちは、敵……。 |
| サレ | 面白くなってきた……だろう……。 |
| ユーリ | てめぇ、エステルに何しやがった ! |
| サレ | ちょっとした暗示をかけたのさ。この子、色んな不安を抱えているみたいだからそこそこ簡単だったよ。 |
| リタ | やめてよ……これじゃあの時と同じじゃない !あんなのもう…… ! |
| レイヴン | ……嫌なこと思い出させてくれるじゃないの。 |
| サレ | そうか、嫌か ! はは、嬉しいなぁ !さあ、お嬢さん、僕のかわりに相手を頼むよ ! |
| ユーリ | てめぇ ! どこに行く ! |
| デューク | 待て ! |
| ユーリ | エステル、しっかりしろ ! |
| エステル | デューク……、ユーリ……、貴方たちを……。 |
| ユーリ | またお前と戦うのかよ……くそっ ! |
| エステル | …………。 |
| デューク | ! ! そうか、お前はまだ完全には……。魔物とは勝手が違うが……試す価値はあるか。 |
| リタ | なんなの、あんた ! エステルに何を―― ! |
| レイヴン | 待て、リタっち。 |
| デューク | …………。 |
| エステル | え……今の声……デューク…… ? わたし……。 |
| リタ | エステル ! ! 戻った、良かった…… ! |
| デューク | 暗示が浅かったようだ。あの男も焦っていたのだろう。 |
| エステル | あ、ありがとうございます……。わたし、操られていたんですね。 |
| ユーリ | あんた、さっき何したんだ ?エステルの前に手をかざしただけなのにさ。 |
| デューク | …………。 |
| ラピード | グルルル、ワンワンワン ! |
| レイヴン | おいおい、団体様が押し寄せてるわよ ! |
| ジュディス | あの男が呼んだのね。 |
| ユーリ | 礼は後でな、デューク。こっちを先に片付ける ! |
| Character | 14話【6-15 ファンダリア領 森5】 |
| ユーリ | デューク。またあんたに命、救われるとはな。さっきは助かった、礼を言わせてくれ。 |
| デューク | 私は友を救うため動いたまでだ。 |
| ユーリ | やっぱりダチの……エルシフルの聖核が目的だったか。 |
| レイヴン | つまりうちらと目的は同じ、と。 |
| リタ | 帝国はエルシフルの聖核から新たな精霊を生み出そうとしている。あたしたちとしても帝国に聖核を渡すわけにはいかない。 |
| デューク | 世界の危機……か。 |
| エステル | それだけじゃなくリビングドールβにされてしまったパティも今度こそ助けてあげないと……。 |
| ジュディス | もちろんよ。そのためにも私たちはここにいるのだから。 |
| レイヴン | カロル調査室の情報によるともう少ししたらパティちゃんは本陣と合流するためにこの先の森を抜ける。 |
| レイヴン | そこをうちらが抑えて、パティちゃんとパティちゃんが持ってるエルシフルの聖核も回収っと。 |
| リタ | けど、失敗すればどちらも失うことになる。それにリビングドールβにされたパティを連れ戻すには鏡士の力が必要不可欠なのよ。 |
| ジュディス | 戦力はこちらに分がある。けど私たちだけでは目的を完遂できない。 |
| レイヴン | 油断できないことに変わりはない、と。一石二鳥と簡単に片付きそうにはないわね。 |
| エステル | イクスたちも大丈夫でしょうか。まだ時間があるとはいえもう到着してもいい頃だと思いますが……。 |
| ユーリ | イクスたちだけじゃなくジュード、スレイたちとも魔鏡通信が繋がらねぇ。やっぱ何かあったんじゃ……。 |
| デューク | …………。 |
| カロル | みんな ! フレンと丘に登ってあたりの様子を見てきたよ ! |
| フレン | ジュードとスレイたちがいる方へ帝国兵たちが進行していた。敵本陣の一部が差し向けられたみたいだ。 |
| ユーリ | それじゃあジュードとスレイたちが危ねぇぞ。 |
| フレン | あっちは少人数……。僕たちと戦うことになった際に足元をすくわれないよう先に倒しておくのが帝国の考えなんじゃないかな。 |
| ユーリ | くそっ。ここは任せてくれって言葉に甘えてパティを追わせてもらったけどやっぱ何人か残るべきだったか。 |
| レイヴン | 兵が向かってるってことはこりゃイクスくんたちも巻き込まれてるな。 |
| エステル | 助けに行きましょう !まだパティが森を通るまで時間があります ! |
| ジュディス | 気が合うわね。パパっと片付けてこっちに戻ってきましょう。 |
| カロル | うん。いまのボクたちならできるよ。もちろんちょっと頑張る必要はありそうだけど。 |
| ラピード | ワオーン ! |
| ユーリ | さすがラピード。イクスたちの場所までしっかり案内してくれるみたいだぜ。 |
| リタ | ちょっと待ちなさいよ。もし何かあって戻ってこられなかったらどうするの ?パティも聖核も帝国に持っていかれることになるのよ。 |
| デューク | それは起こりえない事象だ。 |
| ユーリ | ……デューク。 |
| デューク | 友の聖核は、この私が必ず回収する。 |
| レイヴン | ま、あんたはうちらがどう動こうが関係ない。ここに残ってそうするわな。 |
| フレン | ですが今はとても心強い。 |
| ユーリ | デューク、1つだけいいか ? |
| デューク | 聞こう。 |
| ユーリ | オレたちは必ずここに戻ってくる。けど……もし遅れちまった場合あんたにパティのことを頼みたい。 |
| フレン | ……ユーリ。 |
| カロル | ボクからもお願い。少しでいいから戦いを引き伸ばして欲しいんだ。 |
| エステル | 図々しいかもしれませんが……どうかわたしからもお願いします ! |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | 頼む。 |
| デューク | 戦いになろうともあの娘の命を取るつもりはない。 |
| デューク | だが、私があの娘を救う道理もない。甘えるな。 |
| エステル | それはわかります。ですが今、わたしたちと貴方は―― |
| ユーリ | もういい、エステル。こいつの言ってることは筋が通ってる。 |
| ジュディス | そうね。それにいまはこの時間さえ惜しいわ。ここまでにしておきましょう。 |
| ユーリ | デューク、悪かった。さっきの言葉は忘れてくれ。 |
| フレン | それじゃあ僕たちは急ぎ出発を―― |
| デューク | またそれも見過ごせん。 |
| リタ | ちょっと。どきなさいよ。あたしたちが行こうとそれこそあんたには関係ないじゃない。 |
| ユーリ | さっきの話、聞こえてただろ。オレたちは仲間を助けに行かなくちゃならない。 |
| デューク | ……もしそれでも間違ったら。 |
| ユーリ | ? |
| デューク | やはり記憶にないか。 |
| リタ | 何がいいたいのよ。言いたいことがあればハッキリ言ってくれる ? |
| デューク | お前たちとどれだけ言葉を重ねようと螺旋のように交わらぬまま虚ろに時が過ぎてゆくのみ。 |
| レイヴン | おいおい、どういうつもり。まさかやるっていうんじゃないでしょうね。 |
| ユーリ | …………。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | わかった。あんたなりにオレたちに伝えたいことがあるわけだな。 |
| フレン | なら無下にはできないね。 |
| ジュディス | そうね。それに私こういう会話の仕方も好きよ。 |
| リタ | まったく……あんたたち戦闘バカは。 |
| エステル | けどせっかくデュークが話しかけてくれたんです。 |
| カロル | ちゃんと、わかりあいたいよね。 |
| | ワンワン ! |
| レイヴン | 若人だけじゃ物足りないっしょ。人魔戦争のよしみでおっさんも混ぜてよ。 |
| デューク | ひとりではなくひとつの強さ。それはひとつになる者たちによって変わりそして未来も変えてゆく……か。 |
| デューク | …………。 |
| ユーリ | デューク。あんた…………。 |
| ユーリ | いや。何でもねぇ。こいつで語り合うとしようぜ。 |
| デューク | いくぞ。 |
| ユーリ | おう ! 受けて立つぜ、デューク ! |
| Character | 15話【6-15 ファンダリア領 森5】 |
| ユーリ | まだ全然余裕みたいだな。さすがだぜ、デューク。 |
| デューク | …………。 |
| カロル | けどボクたちだってまだ大丈夫だよ。 |
| ユーリ | ああ、わかってるよ。 |
| デューク | ……やはり、か。 |
| デューク | お前たちが見るべきは私ではない。 |
| ユーリ | なに ? |
| デューク | ……未来は創り出すもの。 |
| ユーリ | ! |
| カロル | えっと……どういう意味 ? |
| ジュディス | 自分で選び、歩んでいく。それが大切ということじゃないかしら。 |
| デューク | それはお前たちに限った話だけではないはず。遥か彼方に双眸を向けねば暗闇を一人往くと同義だ。 |
| エステル | 遥か彼方に……双眸を……。 |
| レイヴン | もっと遠くを見ろ。そうしないと周りも見えなくなる……と。ご尤もな意見だわ。 |
| ユーリ | ああ。こりゃ痛いとこ突かれたな。 |
| エステル | 痛いとこ……です ? |
| ラピード | ワン ! |
| ユーリ | 来たみたいだな。 |
| ジュード | よかった ! みんな、無事だったんだね ! |
| カロル | えっ ! ? みんな、どうしてここに ! ? |
| スレイ | もちろん、助けにきたんだよ。な、ミクリオ ? |
| ミクリオ | まさか帝国軍を強行突破するとジュードが言い出したときは驚いたけどね。 |
| ミラ=マクスウェル | 敵は私たちが防戦にまわると考えていた。そこを逆に打って出ることで敵の不意を突く。私は見事な策だったと思っている。 |
| ミクリオ | ああ。敵は僕たちを逃さないように包囲してくる。だからこそ陣形が整う前に一点突破で切り抜ける。そんな咄嗟に出てくる策じゃない。 |
| スレイ | ミクリオが川の堰を切ってくれたから敵が追ってくる心配もないしな。ジュードのおかげで何とかなったよ。 |
| ジュード | そんな……僕は提案しただけだよ。みんながいてくれたから乗り越えられたんだ。 |
| ミラ=マクスウェル | 謙遜することはないと思うがな。君らしいといえばそうではあるが。 |
| フレン | みんな……自分たちも大変だったのに僕たちのことを助けに来てくれてたんだね。本当に感謝するよ。 |
| ジュード | 当然だよ。僕たちは仲間なんだから。 |
| スレイ | それに、先にパティを追ってくれって言ったのはオレたちなんだしさ。 |
| ジュード | イクスとミリーナももうじき到着するはずだよ。いまカーリャが助けに向かっているからね。 |
| エステル | カーリャが ! ? |
| ジュディス | なら心配することもなさそうね。 |
| カロル | ……ユーリ。 |
| ユーリ | うん ? |
| カロル | ボクもわかったよ。ボクたちは互いのことをわかっているし信じ合える。けれどそれだけでは足りないんだ。 |
| カロル | こっちには新しくできた仲間が大勢いてボクたちはその仲間と未来に向かって歩んでいる。その仲間、みんなのことをちゃんと信じないとだよね。 |
| エステル | そのために遠くを見る。そうしたら視野も広がってみんなとも足並みを揃えることができますしね。 |
| リタ | ま、言いたいことはわかるわ。当然の理屈よね。 |
| レイヴン | それが意外と難しいってことよ。 |
| エステル | ですね。今回のわたしたちがいい例です。 |
| ユーリ | デュークのおかげで頭冷やせたみたいだな。オレだけじゃなく、全員。 |
| カロル | うん ! ありがとう、デューク !またひとつ勉強になったよ ! |
| エステル | わたしもです ! |
| デューク | 私は役目を果たしたまで。 |
| ユーリ | ……未来は創り出すものってなかなかいい言葉だったな。 |
| デューク | ふっ……私の言葉ではないがな。 |
| スレイ | あれ ? そういえばその人は ? |
| ジュード | 鏡映点リストで見かけた気がする。確か元の世界ではユーリさんたちと―― |
| ユーリ | こいつはデューク。オレたちの、新しい仲間だ。 |
| デューク | ……・。 |
| ジュード | ……うん、わかった。よろしくお願いします、デュークさん。 |
| スレイ | よろしくね、デュークさん ! |
| デューク | 構えろ。 |
| ジュード | えっ ! ? |
| ラピード | ワン ! ワンワン ! |
| フレン | 来たみたいだね。 |
| ユーリ | 予定時刻より早い……。やっぱ残って正解だったみたいだ。 |
| パティ | …………。 |
| エステル | パティ ! ! |
| デューク | ……。 |
| ユーリ | いくぞ。 |
| | to be continued |