| Character | 1話【10-1 アジト】 |
| カーリャ | 最近平和ですね……。 |
| イクス | まあ……そうだな。正確には、何かが起きているけど動きようがないってだけなんだけど……。 |
| ミリーナ | 私たちが新たにわかったことと言ったら帝国の目的、贄の紋章の正体、バロールの力についてぐらいだものね。 |
| カーリャ・N | 全ては繋がっていると推測できましたね。帝国の目的は、ティル・ナ・ノーグを滅ぼして代わりにニーベルングを甦らせ、移住すること。 |
| カーリャ・N | その際、異世界からの具現化で生み出された人々も見捨てられる。 |
| イクス | 帝国が帝都に集めている【移民】って言葉もセネルの報告で何となく見えたよな。 |
| イクス | 帝国はティル・ナ・ノーグ生まれの人間を選別してニーベルングに連れて行こうとしているんだと思う。 |
| ミリーナ | その為に使われるのが【贄の紋章】。【贄の紋章】を刻まれた人は、【ルグの槍】と呼ばれるエネルギーの柱になって、ニーベルングの転送に利用される。 |
| ミリーナ | ニーベルングの転送……というのがまだはっきりしないけれど……。 |
| ミリーナ | ゲフィオンの記憶と照らし合わせるとこのティル・ナ・ノーグのある場所に、ニーベルングという星を丸ごと移動させるんだと思うわ。 |
| イクス | ただ、父さんたちの遺言だと、ティル・ナ・ノーグはセールンドが行っていた鏡精のエネルギーシステムのせいで、限界を迎えていたみたいだよな。 |
| イクス | それを救う為に【ルグの槍】を解放しろと言っていた。まだ【ルグの槍】そのものがよくわかってないからなんとも言えないけど―― |
| イクス | 【ルグの槍】の解放が帝国の目的を阻む対抗手段であってくれるならまだ状況を変えられるかも知れない。 |
| カーリャ・N | 【贄の紋章】を刻まれたのが、各地の領主と従騎士それにシャーリィ様とマオ様、でしたね。解除の方法はわからないままですが……。 |
| ミリーナ | ……そういえばサレの行方もわからないままだったわね。 |
| カーリャ・N | はい。ヴェイグ様たちが自警団に監視をお願いした後浮遊島警備部の皆様に連絡をとっている間に自警団の人たちが襲われ、サレも消えていたそうです。 |
| カーリャ・N | おびただしい量の血痕が残されていたそうですが……。 |
| ミリーナ | 今もヴェイグさんたちと警備部であの村周辺の捜索と調査を行っているわ。あそこには何かがある……。 |
| ミリーナ | それに各地の領主の奪還の準備も進めているけれど……上手くはいっていないわね。 |
| イクス | 領主たちが消えた地域もあるみたいだし……。そもそも領主の正体がはっきりしない地域もあるから……。 |
| カーリャ・N | ミッドガンド領ですね。領主はテレサという女性だ……と言われているそうですが、まだ裏が取れていないとカロル様も言っていました。 |
| カーリャ | あ、カロルさまといえば、ビフレストの皆さんには連絡がついたんですか ?情報共有しようって言ってましたよね ? |
| イクス | いや、まだだよ。こちらからの通信に応えてくれないんだ。 |
| イクス | 単にこっちの連絡を無視してるだけならいいんだけど。いや、それはそれで良くないか。もっとちゃんと協力できればそれに越したことはないんだし。 |
| ジェイド | まあ、あちらはあちらで感情の整理がつかないのかも知れませんねぇ。 |
| カーリャ | で、で、で、出たーーーーーーーっ ! ? 鬼畜眼鏡 ! ! |
| ジェイド | おや、カーリャ。相変わらず熱烈に歓迎していただけてとても嬉しいですよ ♪ |
| カーリャ | しっしっ ! |
| ミリーナ | カーリャ……。気持ちはわかるけれど、やめなさい。 |
| イクス | ジェイドさん、どうしたんですか ?何か新しいことがわかったんですか ? |
| ジェイド | ええ。まず墓守の街の件ですが候補が見つかりました。 |
| イクス | え ! ? 大した情報も無かったのに ! ? |
| ジェイド | 礼なら、この間ここにやってきたウィルに伝えて下さい。彼の話にそれらしき場所が出てきたんですよ。 |
| ジェイド | とはいえ、今は廃村になっているようなので海凶の爪の皆さんに調査を依頼しています。 |
| カーリャ・N | イエガー様はもう動けるんですか ? |
| ジェイド | ええ。まあ、それに次々と病人や怪我人が運ばれてくるので、気を遣って病床を空けて下さったようですね。 |
| ジェイド | それと、コーキスの姿が目撃されました。 |
| イクス | どこですか ! ? 俺、すぐに―― |
| ジェイド | イクス。コーキスとの関係をこれ以上こじらせないためにも今は、あなたが動いてはいけません。 |
| ジェイド | コーキスに関してはカロルに一任してあります。今はベルベットたちが向かっている筈です。 |
| イクス | ……はい。 |
| ジェイド | そして、これが最後のご報告になりますが……。オールドラント領の領主が動くようなので奪還したいと思います。構いませんね ? |
| ミリーナ | オールドラント領ってことは……ジェイドさんの……。 |
| ジェイド | まあ、これでも一応アレの部下ということになっていますので、善人の私としては異世界で見捨てるのも心苦しいのですよ。 |
| カーリャ | 今しれっと嘘をついてましたよ、この人 ! |
| イクス | ――わかりました。俺たちも一緒に行きます。 |
| ジェイド | そうですね。イクスとネヴァンには来ていただきましょうか。 |
| ミリーナ | イクスが行くなら私も行きます。 |
| ジェイド | いえ、今カーリャに来られるとつい解剖したい気持ちになってしまうのであなたはカーリャの為にも残って下さい。 |
| ジェイド | ここにいれば、あなたの中のゲフィオンの記憶をキール研究室の為に活用できますしね。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| ジェイド | では、イクス、ネヴァン。行きましょうか。 |
| イクス | は、はい ! |
| カーリャ・N | ……小さいミリーナ様、失礼します。カーリャ、後は頼みますよ。 |
| カーリャ | ……むむ。あの眼鏡、もしかしたら綺麗な方に入れ替わっているんじゃ……。 |
| ミリーナ | ………………。 |
| カーリャ | ……ミリーナさま。あの……ですね。カーリャが思うに、もっといい男は沢山いますよ ! |
| カーリャ | 例えばロイドさまとか、アスベルさまとかユリウスさまとか、フレンさまとか……。 |
| ミリーナ | それは全部カーリャの好みでしょう ?というか、カーリャに優しい人たちよね ? |
| カーリャ | はっ、バレましたか ! ? |
| ミリーナ | ふふ……。でも、ありがとう。大丈夫よ。 |
| ミリーナ | 大丈夫だけど、少しだけカーリャをぎゅっとさせてくれるかしら ? |
| カーリャ | もちろんですとも !カーリャはいつだって、ミリーナさまの味方です ! |
| Character | 2話【10-2 オールドラント領 街道】 |
| イクス | ………………。 |
| ジェイド | ――イクス、今の話、聞いていましたか ? |
| イクス | え ! ? あ、えっと……すみません。ちょっとボーッとしていて、聞き逃しました……。 |
| ジェイド | ……だ、そうです。ガイ、もう一度説明を。 |
| ガイ | なんだなんだ ? イクスらしくない。 |
| イクス | すみません……。 |
| ガイ | いや、別に構わないさ。 |
| ガイ | さて、俺たちの任務はピオニー陛下の奪還と心核の回収にある。どうやら帝国側は一部の領主や従騎士を帝都付近に集めているらしい。 |
| ガイ | 今回はピオニー陛下の番って訳だな。カロル調査室に集まった情報を総合すると、ここ数日のうちにピオニー陛下が帝都へ運ばれるのは間違いない。 |
| ガイ | 俺たちは二手に分かれて心核の捜索とピオニー陛下の奪還を行う。 |
| イクス | ピオニー陛下の心核はどこにあるかわかっているんでしょうか ? |
| ジェイド | 手がかりになりそうな情報はワルターから聞き出しています。 |
| イクス | え ! ? ジェイドさんワルターと話ができたんですか ! ?俺なんていまだに口をきいてもらえないのに。 |
| ルーク | いや、ジェイドがワルターと話してまともな会話になると思うか ? |
| イクス | ですよね ? |
| ナタリア | シャーリィとマウリッツさんのおかげですわ。ワルターが帝国にいた頃の情報を聞き出せたのは。 |
| ジェイド | 私とリオンでさっと話を聞き出すという形でも良かったのですが、後々のことを考えて穏便に済む方向でまとめました。 |
| カーリャ・N | 賢明な判断です。 |
| ティア | 領主や従騎士の心核は、養液に浸した状態で各地の【ルグの槍】起動地点に置かれているらしいの。 |
| ティア | 中々その場所が特定できなかったのだけれどピオニー陛下に関してはワルターが設置場所に繋がる情報を持っていたわ。 |
| アニス | あー、ティア、いいよ。その先は私が話すから。 |
| アニス | あのね、ヴァン総長――ティアのお兄さんの疑似心核が壊れたらしいんだ。 |
| アニス | それで他の疑似心核も受け付けないから一時的に本当の心核をヴァン総長に戻すことになったんだって。 |
| イオン | つまり、今現在ヴァンは、心核を取り戻している筈なんです。そしてセルシウスの予測では、ヴァンの中にローレライの本体が宿っているそうです。 |
| イオン | 僕なら、ヴァンの中のローレライと話ができる。ローレライなら、ヴァンの心核がどこに保管されていたかわかる筈です。 |
| イクス | つまりピオニー陛下の心核もヴァンさんの心核があった場所と同じ場所にあるという推測ですね。 |
| イオン | はい。ですから、心核捜索班はヴァンに接触する必要があります。僕がローレライを任意に呼び出せれば話は簡単だったのですが……。 |
| ガイ | まあ、アッシュと協力して呼び出すって方法もあるんだろうが危険な手段には変わりないからな。 |
| カーリャ・N | そういえばアッシュ様の姿がありませんが……。 |
| ナタリア | アッシュなら、先行してヴァンの捜索にあたっていますわ。 |
| イクス | わかりました。つまり、この作戦はヴァンさんの救出作戦でもある訳ですね。 |
| ジェイド | ええ。さすが、イクス。飲み込みが早いですね。 |
| ジェイド | ここからは二手に分かれますよ。 |
| ジェイド | ティアとアニスとイオン様はアッシュと合流して下さい。残りはピオニー陛下の方へ向かいます。 |
| ガイ | しかし、ヴァンの担当はアッシュも入れて四人だけだろ。俺もヴァンの方に向かった方がいいんじゃないか ? |
| ジェイド | いえ……まあ、恐らく戦力は十二分ですよ。 |
| デミトリアス | ……やっと姿を見せたね。グラスティン。心配していたよ。 |
| グラスティン | 悪いなあ。ちょっと気になることがあって帝都に戻れなかった。で、話ってのは、オリジンの件か ? |
| デミトリアス | ああ。オリジンを呼び出すための器をどうするかそろそろはっきりさせておきたいんだ。 |
| グラスティン | その件なら、前にも話しただろう。小さいフィリップで決まりだ。まあ……手違いが起きてはいるが、何とかなるだろう。 |
| デミトリアス | ……やはり、私では駄目だろうか。 |
| グラスティン | お前は駄目だ。アニマ汚染の回復のために他の精霊の力を使った。 |
| グラスティン | それとも、まだ下らん正義感に囚われているのか ?お前が生まれる前からセールンドは鏡精をエネルギーにしてきた。 |
| グラスティン | 揺り籠の崩壊がたまたま、お前の代だっただけだ。 |
| デミトリアス | ……グラスティン。今日は、いつもより苛ついているようだね。 |
| グラスティン | ああ、まあな。サレのせいで色々と計算が狂った。あいつ……一体何のつもりで……。 |
| デミトリアス | ………………。 |
| グラスティン | 話が以上なら、俺は行くぞ。 |
| デミトリアス | あ、ああ……。 |
| グラスティン | ――おっと、そうだ。 |
| グラスティン | デミトリアス。アルトリウスには気を付けろ。奴に鏡の精霊の心核を渡すなよ。 |
| グラスティン | 奴とお前はまったく正反対だがやろうとしていることは近しいものがある。 |
| グラスティン | 俺は、他でもないお前が、どんな風にこの世界で踊るのかを楽しみにしてるんだ。 |
| デミトリアス | そうだな……。いっそアルトリウスのようになれていたなら、私は悩みはしないよ……。 |
| Character | 3話【10-3 オールドラント領 浜辺1】 |
| アニス | あ、アッシュみっけ ! |
| アッシュ | ……見事にローレライ教団の関係者しかいないな。 |
| イオン | やはり、ガイにも来てもらうべきだったでしょうか。 |
| ティア | ナタリアにも来てもらった方がよかったのかも知れないわね。 |
| アッシュ | だ、誰もそんなことは言ってないだろう ! |
| アニス | ひっひっひっ、柄にもなく照れちゃって。うい奴よのう……。 |
| アッシュ | ええい、お前ら全員ここから帰れ ! |
| シンク | アッシュ。貴重な戦力だ。勝手に分散させないでよね。 |
| イオン | シンク…… ! どうしてここに……。 |
| リグレット | 導師イオン。シンクは私が協力を依頼した。お互い遺恨があるとは思うが、飲み込んでもらう。 |
| アリエッタ | 総長の為だから……アニスがいても……我慢する。 |
| アニス | はああああ ! ? |
| イオン | アニス、いけませんよ。 |
| イオン | アリエッタ、ありがとうございます。 |
| アリエッタ | ……あなたのことは……導師って呼ぶ、です。コンランする、です。 |
| イオン | はい、わかりました。あなたにとってのイオンは一人だけですしね。 |
| ティア | 教官、どういうことですか ?ビフレスト陣営とは連絡が取れないと聞いていました。 |
| リグレット | だろうな。今は……ジュニアを守るために仮想鏡界に通信が届かないようにしている。 |
| アニス | ほえ ? それってどういうこと ? |
| リグレット | サレという男に暗示を掛けられた。他にもグラスティンという男が何か仕掛けをしていたらしい。 |
| リグレット | 調査と保護のために外界からの接触を避けている。 |
| アリエッタ | グラスティン……。イオン様を殺して、ジュニアにも酷いことをした。絶対に許しません…… ! |
| アッシュ | 俺も、リグレットたちに連絡が取れなくてな。ヴァンの調査にシンクの手を借りようとしたところすでにリグレットがシンクと連携して動いていた。 |
| シンク | そこにアンタたちが便乗してきたって訳。つまりアンタたちはオマケなんだよ。付いてくるのは勝手だけど、足を引っ張らないでよね。 |
| ティア | 意外だわ。シンクが兄さんの救出に協力するなんて……。 |
| シンク | そう ? ボクからすれば、アンタたちよりヴァンの方がずっとマシだよ。いつまでも死なせてくれないしつこさ以外はね。 |
| リグレット | お前たちもこちらに来たからには戦力として利用させてもらう。わかっているな ? |
| ティア | も、もちろんです、教官 ! |
| アニス | アニスちゃんも了解。まあ、六神将と一緒の作戦なんて変な感じだけど……。 |
| イオン | 僕も精一杯頑張ります。 |
| ディスト | ハーッハッハッハッ ! 皆、安心なさい。この薔薇のディスト様が華麗なる勝利を約束して差し上げましょう ! |
| アニス | え ! ? こいつもいるの ? |
| アッシュ | 何の話だ、アニス。 |
| アニス | え ? だからこいつ―― |
| リグレット | そろそろ時間だ。移動するぞ。 |
| ディスト | ちょ、ちょっと待ちなさい !また私を無視するんですか ! ? |
| アッシュ | 船はどこだ ? |
| シンク | この先だ。救世軍から拝借してきた。 |
| アリエッタ | お友達……呼ぶ ? |
| シンク | 今はまだいい。 |
| ディスト | キィィィィィィ ! 私の話を聞きなさい ! |
| リグレット | アッシュ、ティア、導師イオン、こちらだ。 |
| リグレット | ディスト、話ならアニスが聞きたいそうだ。 |
| アニス | はあああああ ! ?ちょっと、なんでアニスちゃんがこいつの面倒を見ることになってんの ! ? |
| ディスト | そうでしたか ! 今回の計画は私の情報が無ければ始まらなかったのですよ。つまり、今作戦は私がいてこそ成り立つのです。 |
| ディスト | その私の世話係を命じられるとは……あなたも幸せ者ですねえ、アニス。 |
| アニス | さーいーあーくーなーんーでーすーけーどー ! ? |
| ルーク | 何度見ても飽きねーな、これ。 |
| ミュウ | はいですの ! ジェイドさん、格好いいですの ! |
| ナタリア | お土産も色々種類が増えていますわね。 |
| ガイ | けど、いいのかジェイド。こんなに堂々と領都に入っちまって。最近、かなり警戒が厳重だって話だが―― |
| 帝国兵 | 貴様ら !見慣れない顔だが、こんなところで何をしている ! |
| イクス | (ま、まずい……。俺の魔鏡を見られたら……) |
| 帝国兵 | ……おい、そこの銀髪の男。前に出ろ。 |
| イクス | ! |
| ジェイド | どうか、落ち着いて下さい。私は争いごとを避けるべきだと皆さんに訴えてきたつもりですよ ? |
| 帝国兵 | 何だ、お前は……ん ?お前……いや、あなたは……。 |
| ジェイド | 私はジェイド。旅の者です。最近私の名を騙る鏡士の一派の男が帝国に刃向かい悪事を働いていると聞きました。 |
| ジェイド | どうやら私の偽者というのは私によく似ているようですね。 |
| ジェイド | 私と同じ姿の人間が、皆さんに迷惑を掛けているとは……情けない限りですよ。 |
| 全員 | ! ? ! ? ! ? |
| 街の女性 | もしかして……聖人ジェイド様 ! ? |
| ジェイド | 聖人だなんて……とんでもない。私はただ、人としてよく生きる術を皆さんに伝えるべく世界中を旅しているしがない伝道師に過ぎません。 |
| 街の女性 | やっぱり聖人ジェイド様だわ ! |
| 街の男性 | 何 !ジェイド様がダアトに戻って来て下さったのか ! ? |
| 子供 | 僕、ジェイド様を見るの初めて ! |
| 街の人々 | ――ジェイド様 ! ジェイドさま ! ジェイさまーっ ! ―― |
| イクス | 知ってる……これ……知ってるぞ……。 |
| ルーク | マジかよ……やばい……また体が震えてきた……。 |
| カーリャ・N | な……いつもの黒いオーラが消えています ! ? |
| ナタリア | な、何なんですの ? 大佐が気持ち悪いですわ…… ? |
| ガイ | まさか、偽者の方に寄せていくとは……。いや、しかしこいつはマジで不気味だな。 |
| Character | 4話【10-4 オールドラント領 海上1】 |
| ティア | 教官、兄の行方をどうやって掴んだんですか ? |
| リグレット | ナーザとバルドが持っていた情報だ。あの二人はデミトリアス帝のことを調査していたらしくてな。その時に、閣下の話を聞きつけたらしい。 |
| リグレット | 内容はお前も知っている通りだ。だが、我々はお前たちより早く調査に入ったからな。閣下の足取りを掴むのは、そう難しくはなかった。 |
| ティア | 兄さんは……今、どんな状態なんでしょうか。 |
| リグレット | マルクトの皇帝を回収する役目を閣下が担ったという話だ。 |
| リグレット | しかし閣下が帝国に与するとは考えにくい。心核が戻されたことは間違いないようだから恐らくリビングドール化されているのだろう。 |
| ティア | 心核が戻されているのに、ですか ? |
| リグレット | ディストからは、疑似心核に入れ換えなくてもリビングドールにする手段があると聞いている。 |
| リグレット | ならば、そういった処置を施されていると考えるのが自然ではないか ? それともお前は閣下が帝国に賛同すると考えているのか ? |
| ティア | いえ……。違う、と思いたいです。でも帝国はこの世界を滅ぼし、ニーベルングという新たな世界に移住することを目的にしていると聞きました。 |
| ティア | 兄がオールドラントでしようとしていたことと……似ています。 |
| リグレット | 形は同じでも、信念は違う。 |
| ティア | ……そうだと思います。思いたいけれど私には兄がわからなくなってしまった。わからないまま、この世界に具現化されて……。 |
| リグレット | ……まあ、わかり合うことはできないだろうな。 |
| ティア | え ? |
| リグレット | わかり合えるならお前と閣下が対立することはなかった。 |
| リグレット | だが……ここはオールドラントではなく、預言もない。預言がなければ、お前も閣下もただの兄妹として話せるのではないか ? |
| ティア | ………………。 |
| アッシュ | ――おい、帝国の船影が見えてきた。決行だ。 |
| リグレット | 行くぞ、ティア。 |
| ティア | はいっ ! |
| シンク | 最終確認するよ。目的は帝国船の拿捕及びヴァンの回収だ。船は傷つけるなよ。計画が狂う。 |
| アッシュ | 気を付けろよ、死神。 |
| ディスト | フン、私に言うのはお門違いですよ。 |
| シンク | 手順はこうだ。まずはアリエッタに、飛行系の魔物を呼んでもらう。 |
| アリエッタ | うん……わかった。 |
| シンク | 帝国船が魔物の迎撃を行っている間にこっちの船を接舷させて、帝国船を拿捕する。 |
| シンク | 先陣を切るのはボクとアッシュだ。リグレットとティアは支援役を、ディストとアニスはイオンと一緒にヴァンの確保に向かう。 |
| アニス | え ! ? イオン様はともかくディストの面倒まで見てらんないよ~ ! ? |
| ディスト | 面倒を見るのは私の方ですよ ! |
| イオン | まあまあ、仲良く頑張りましょう。ところでシンク、ヴァンの状態次第では戦闘になりかねませんが……。 |
| シンク | ――というか、十中八九戦闘になるだろうね。だろ、ディスト。 |
| ディスト | そうですね。こちらに来る前にコーキスから得た情報ですが、帝国は研究中だった簡易型のリビングドールを完成させたようです。 |
| ディスト | リビングドールγと呼ばれていた代物ですがこれなら心核を抜かなくてもリビングドールにできます。 |
| イオン | 解除の方法は何かあるのでしょうか ? |
| ディスト | 最近施されたものであれば強い刺激ですぐに解除できます。強力な暗示のようなものですから。 |
| ディスト | ただ、長時間暗示に晒されていたとすれば厄介なことになるでしょうねぇ。 |
| アニス | そんな時のためのディストでしょ ?何かすごい音機関的なもの、用意してないの ? |
| ディスト | もちろん、抜かりはありません。せいぜい楽しみにしていなさい。 |
| シンク | ヴァンと遭遇したら、足止めしてボクたちを呼ぶんだ。ヴァンは内側にローレライを飼ってる。刺激しないでよね。面倒なことになるから。 |
| 帝国兵A | ――た、大変です !12時の方向から魔物の大群がやってきます ! |
| ヴァンγ | 慌てるな。砲撃の準備だ。蹴散らせ。 |
| 帝国兵A | 了解 ! |
| ヴァンγ | ――どうした ? |
| 帝国兵B | 敵襲 ! 敵襲です ! |
| アニス | よっしゃ、敵船侵入 ! |
| イオン | 帝国の兵士たちはアッシュたちが引きつけてくれていますね。 |
| ディスト | 当然です。彼らは神の使者たる薔薇のディスト様の露払いなのですからね。 |
| アリエッタ | イオ……導師、ディスト、アニス。こっち ! |
| イオン | アリエッタ ! |
| アリエッタ | ヴァン総長、いた。この先の……艦橋、です。 |
| ディスト | ご苦労様ですね、アリエッタ。さあ、アッシュたちに連絡しましょう。 |
| アニス | 待った ! 隠れて ! 艦橋から総長が出てくる ! |
| 三人 | ! ! |
| ヴァンγ | 魔物に気をとられて、船の接舷を許すとは愚か者が。 |
| 帝国兵B | 申し訳ありません ! |
| アニス | (総長が背中を向けた…… !) |
| アニス | アリエッタ。魔物に頼んでシンクたちに連絡して。 |
| アリエッタ | わかった……です。 |
| アニス | ディスト、総長に突っ込んで。 |
| ディスト | な、何を言っているのです。そういう役目は―― |
| アニス | ええい、いいから行けーっ ! |
| ディスト | ぎゃーっ ! ? |
| ヴァンγ | 後ろからかっ ! ? |
| アニス | アリエッタ ! イオン様 ! ヴァンを足止めするよ ! |
| アリエッタ | 総長……ごめんなさい ! |
| イオン | 行きましょう ! |
| Character | 5話【10-5 オールドラント領 海上2】 |
| アニス | ちょっ、まだ起き上がれるの ! ?アリエッタ、シンクたちは ! ? |
| アリエッタ | わかんない……けど……ちゃんと呼びに行ってくれた筈だもん……。 |
| アニス | はぅあ !魔物の言葉、通じてないのかな。 |
| アニス | ちょっと、ディストすごい音機関的なやつはどうなってんの ? |
| ディスト | ヴァンを気絶させてくれないと無理ですね。 |
| アニス | はああ ! ? |
| イオン | アニス、僕が何とかします ! |
| アニス | 駄目です !イオン様はすぐ無茶するんだから、絶対駄目ですよ ! |
| リグレット | バーストレーザー ! |
| ヴァンγ | ! ? |
| アッシュ | 紅蓮襲撃 ! |
| 二人 | そこだ ! /そこです ! |
| 二人 | ダアト式 ! 八卦硬衝 ! ! |
| ヴァンγ | ぐぅっ ! ? |
| ティア | 兄さんっ ! |
| シンク | ……余計なことを。ボク一人で十分だった。 |
| イオン | そうですね、すみません。 |
| リグレット | ティア、閣下は ? |
| ティア | 気絶しています。 |
| ディスト | よろしい。ならばこの【タルロウC・ケイジ】の出番ですね。さあ、くらいなさい、ローレライ ! |
| ? ? ? | ここは……一体……。 |
| ディスト | やりましたよ !私の作った仮想クレーメルケイジにローレライを捕らえました。 |
| アニス | 仮想クレーメルケイジ ? どういうこと ? |
| シンク | ローレライは、存在が不安定な精霊なんだよ。本来は精霊で無い物がエンコードされた存在だからね。 |
| シンク | ローレライは音の精霊であり未来への指向性を強く持ち時の精霊に似た側面がある。 |
| ディスト | それ以外にも第一から第六の音素の性質が混在しています。つまり音素の精霊とも言える訳です。 |
| ディスト | 様々な力が内包されているせいでローレライは誰かに寄生していないと存在が希薄になる。 |
| ディスト | ローレライを観測しやすくするために一時的にヴァンから切り離すための装置がこの仮想クレーメルケイジなのです。 |
| アニス | なるほど~、わからん。 |
| アリエッタ | アリエッタも……わかんない……。 |
| アッシュ | お前たちの頭はルーク並みか ? |
| リグレット | わからなくていい。要するにローレライを一時的に閣下の外へ引きずり出すための装置だ。 |
| アニス | なるほど~、今度はわかった。 |
| アッシュ | イオン、奴からヴァンの心核があった場所を聞き出してくれ。 |
| イオン | わかりました。 |
| シンク | この場はイオンとティアとディストに任せるよ。残りは雑魚どもの掃討だ。 |
| シンク | それと地図か海図があったら持ってきて。気になることがあるから。 |
| 帝国兵 | ――では、ジェイド様とお弟子の皆さんはこちらの部屋でお待ち下さい。今から上司に報告してきます。 |
| ジェイド | ありがとうございます。よろしくお願いしますね。 |
| ナタリア | まあ……いつの間にか大佐の弟子にされてしまいましたわ。 |
| ガイ | さて、旦那――いや、聖人ジェイド様。こいつはどういうことなのか、説明してもらえるかい ? |
| ジェイド | どういうつもりか、と言われましても。せっかく聖人ジェイドが厚い信頼を得ているのですからそれを利用した方がいいと考えたのですよ。 |
| ジェイド | 聖人ジェイドが悪の権化の鏡士を改心させて帝国に協力するように説得して連れてきたと聞けば帝国側も無碍には出来ないでしょう。 |
| ガイ | まあ、それで実際、こうして警備が厳重になって近寄れなかった領主の館にすんなり入れちまったからなあ……。 |
| カーリャ・N | ですが、罠ではないのでしょうか ? |
| ジェイド | 罠でも構わないんですよ。ピオニー陛下に会えればいいんですから。 |
| ジェイド | それに、上層部はこちらを疑うでしょうが末端の兵士たちは市民と同じように聖人ジェイドの信奉者です。 |
| ジェイド | あまり心配しなくても大丈夫でしょう。 |
| カーリャ・N | た、確かに……。 |
| ガイ | こんなに簡単に事が運ぶなら他の領地でも……と思ったがそもそもダアトが特別なのか。 |
| ジェイド | ええ。聖人ジェイドの存在があってこそ大胆な行動に出られるのです。 |
| ジェイド | 皆さん、日頃の行いは大事ですよ ?常に隣人には優しく、家族や友人を大切にして愛をもって接しましょう。 |
| ミュウ | 愛ですの ! |
| ルーク | ううう……じんましんが……っ ! |
| イクス | お、俺も、何か体中がかゆい……。 |
| ナタリア | まあ、二人ともさっきからどうしたのです ?いくら聖人のジェイドが不気味だからといってそこまで嫌がらなくても……。 |
| ジェイド | ルークはともかく、イクスまで聖人ジェイドに拒否反応を示すとは、驚きましたね。 |
| ジェイド | 以前は随分慕っていたではありませんか。私の振りをしていた光魔のことを。 |
| イクス | す、すみません……。長年ジェイドさんを見ている内にすっかり悪――手段を選ばないジェイドさんに慣れてしまって……。 |
| イクス | まあ、今回のも手段を選んでいないといえばそうですけど……。 |
| ルーク | な ! ? あの時、俺が気持ち悪いって言ったのわかるだろ ! ?綺麗なジェイドを見てると、ぞわぞわするんだよ ! |
| イクス | ああ、わかるよ、ルーク。すごくよくわかる。 |
| ジェイド | そうですか。もし、今この場にミリーナがいたら何と言ったでしょうねぇ。 |
| イクス | ……え ? |
| ジェイド | ――なーんて。どうです ? かゆみは治まりましたか ? |
| イクス | ………………ジェイドさん。あの……どこまでご存じなんですか ? |
| ジェイド | いえ。別に、何も。 |
| 二人 | ……………………。 |
| ナタリア | どうしたんですの ?ミリーナに何かありましたの ? |
| ジェイド | まあ、その話は置いておきましょうか。 |
| ジェイド | こちらに鏡士のイクスがいるのですから領主であるピオニーは、必ず何か動いてくる筈です。まずはあちらの出方を待ちましょう。 |
| ルーク | お、おう…… ? |
| ルーク | でもさ、もしいきなり兵士が踏み込んできたらどうするつもりなんだ ? |
| ジェイド | この部屋の広さなら、兵士が取り囲んできてもたかが知れていますよ。まあ、兵士を一人人質にとって領主の元に案内してもらえばいいのでは ? |
| ガイ | 聖人が聞いて呆れるな……。 |
| Character | 6話【10-6 オールドラント領 海上3】 |
| イオン | ローレライ、僕の声が聞こえますか ?あなたに聞きたいことがあるんです。 |
| ローレライ | 導師か……。私に何を問う ? |
| イオン | マルクト皇帝ピオニー・ウパラ・マルクト9世の心核のありかです。 |
| ローレライ | そうか……。核のありかだな。今、そなたに見せよう……。 |
| イオン | これは……地下神殿…… ? |
| ローレライ | だが、私の観測できる未来ではすでにこの場所に核はない。核は地下水脈に乗って運ばれる。 |
| イオン | え ! ? それは預言でしょうか。 |
| ローレライ | 否。私の観測できる範囲の確定せぬ未来の一つ。これまでも、そなたに見せてきた可能性の未来だ。 |
| ローレライ | この星は造られた星。星ならざる星。私とは違う理にある。 |
| イオン | それは僕たちが未来を変えられる――ということですね。 |
| ローレライ | だが、気を付けよ。クロノスによって、私の力が暴走する。未来を確定させ、強引に招こうとする力がある。 |
| イオン | それは一体どういうことです。 |
| ローレライ | この世界に上書きしようとしているもう一つの世界――あれは呪われた星だ。時が歪められている。クロノスを鎮めねばならぬ。 |
| ローレライ | 分かたれたクロノスを集めよ。 |
| ローレライ | ……ユリアの縁者が目覚める。私はまた彼の者の中に沈む。 |
| ローレライ | そうすることでこの世界への干渉を抑えられるだろう。導師よ、また会おう。 |
| ヴァン | ……く……。 |
| ティア | 兄さん ! |
| ディスト | ヴァンが目覚めましたか。導師イオン、仮想クレーメルケイジは効果を失ったのですね。 |
| イオン | ええ。この装置はヴァンが覚醒状態では作用しないんですね。 |
| ディスト | その通りです。ヴァンはローレライを内包した状態で具現化しました。切り離すことはできません。 |
| ディスト | ヴァンが心核を失っていた間、ローレライはあなたの存在を宿り木にすることで存在を安定させようとしていたんですよ。 |
| ディスト | ですが、ヴァンが目覚めれば話は違う。今まであなたが不規則に見せられていた未来も今後は違う形で訪れるでしょうね。 |
| ヴァン | ……そうか。そういうことか。 |
| 二人 | ! |
| ヴァン | ティア、世話を掛けたな。 |
| ティア | 兄さん…… ! 本当に……兄さんなの ? |
| ディスト | リビングドールγのことならもう大丈夫ですよ。仮想クレーメルケイジに入れたことで、ローレライはこの世界の精霊として、一時的に安定した。 |
| ディスト | ローレライが安定すればその力によってヴァンの暗示も解ける。こうなることは全て計算済みです。 |
| イオン | さすがディストですね。 |
| ディスト | 当然ですよ。 |
| ティア | 兄さん……。だったら、今の状況はわかるの ? |
| ヴァン | 私はローレライの記憶も内包している。忌々しいことだが、今は奴の記憶が助けになっている。 |
| ヴァン | 私に何が行われたか、どうしてここにいるのか全てははっきりしている。 |
| ヴァン | ティア、アッシュたちを呼びなさい。 |
| ティア | え ? でも、どうして……。 |
| ヴァン | どうやら、この絵を描いたのは死霊使い殿のようだ。ならば……礼をせねばなるまい。 |
| ヴァン | ――ディスト。預言に呪われた地での離反は水に流そう。今回は良くやってくれた。 |
| ディスト | 私は私の目的のためにローレライの性質を掴みたかっただけですよ。 |
| ヴァン | 知っている。貴様がこの地で何をしてきたかもローレライが見聞きした範囲で、全てな。 |
| ディスト | ! |
| ヴァン | 私に従え、ネイス博士。そうすれば、ローレライの観測も容易くなるぞ。 |
| ディスト | ……いいでしょう。 |
| ヴァン | 導師イオン。帝国はピオニー9世の心核を運ぶため別働隊を動かしている。 |
| ヴァン | あなたがローレライから教えられた場所と私が知っている作戦を付き合わせたいのだが構わないだろうか。 |
| イオン | もちろんです。 |
| アニス | はぅあ ! ヴァン総長……ホントに目が覚めてる ! |
| ヴァン | アニスか。まさかお前に助けられるとはな。アリエッタとリグレットが世話になった。 |
| アリエッタ | 総長 ! 総長、元気になったの ! ? |
| ヴァン | アリエッタ……。つらい思いをさせてしまったな。 |
| アリエッタ | 総長、力を貸して。アリエッタ……イオン様の仇をとる、です ! |
| ヴァン | 無論だ。私に任せておけ。 |
| シンク | 相変わらずだね、アンタは。 |
| ヴァン | シンク、良くやってくれた。お前こそ、相変わらず見事な働きぶりだ。 |
| アッシュ | ……ヴァン……。 |
| ヴァン | アッシュ、いい子だ。 |
| アッシュ | こ、子供扱いするなっ ! |
| ヴァン | フフ、そうだったな。助かったぞ。感謝する。 |
| アッシュ | ………………。 |
| リグレット | 閣下、ご命令を。 |
| ヴァン | 船をダアトの南に向けよ。これより、マルクト帝国ピオニー9世の心核を奪還する ! |
| Character | 7話【10-7 オールドラント領 地下】 |
| シンク | これ、帝国の船で見つけた地図だ。ローレライからイオンが聞いた地下神殿と水脈の位置が重なってる。 |
| ヴァン | ふむ。これは領都のすぐ脇を通っているな。ダアトの中で、地下水道と繋がっているのだろう。 |
| リグレット | やはり、閣下の見立て通り敵はこの進路で心核を運ぶと考えて間違いないかと。 |
| ディスト | 出発地点は間違いないのですか ?そこがずれていたら、全ての計算が狂います。 |
| ヴァン | 導師の話と私が持つローレライの記憶は合致している。この水路を遡った地下神殿に心核はあった筈だ。 |
| アリエッタ | 総長、お友達から連絡が来たよ。誰か来るって。いっぱい。えっと……八人。 |
| アッシュ | 当たりだな。どうする。ルークに連絡するか ? |
| シンク | いや、待て。確実に心核を入手するまで余計な報告をしない方がいい。 |
| ティア | ……すごい。 |
| ヴァン | どうした ? ティア。 |
| ティア | あ……。ううん。兄さんと六神将がそうやって作戦行動をしているのを初めてちゃんと見たから……。 |
| ヴァン | 元の世界では敵対していたからな。 |
| アニス | さすが、私のヴァンお兄ちゃん !私、やっぱりお兄ちゃんが好き !……みたいな~ ? |
| ティア | な ! ? |
| アニス | わかる~、わかるな~。普段と違う一面を見るとこうキュンってなるんだよねぇ。 |
| イオン | アニスもそうですよね。いつもはニコニコしてますけど時々ドスのきいた声で敵を威嚇してくれます。 |
| アニス | そ、それは違いますっ ! |
| ティア | わ、私も違うわよ ! |
| リグレット | 違うのか、ティア ? |
| ティア | 教官 ! ? |
| ヴァン | ……フ。違うのならば残念だな、ティア。 |
| ティア | 兄さん ! あ、違わないの ! あ、違うわ。アニスが言ってることが違うだけで私は兄さんのことが嫌いなわけじゃ……。 |
| アッシュ | 何を慌ててるんだ、貴様は。 |
| ティア | あ、慌ててなんていないわ。 |
| シンク | 良かったね、ヴァン。導師とアニスはともかく六神将とティアがいるのはアンタが望んだ『最期』の光景だろ。 |
| ヴァン | この地においては、もはや潰えた夢だ。それに、ここにはラルゴがいない。 |
| アリエッタ | ……お友達から、連絡。あと曲がり角二つのところまで来てる。 |
| シンク | さあ、馬鹿馬鹿しい馴れ合いは切り上げてくれる ?計画の総仕上げだ。 |
| ヴァン | ティア、支援を頼む。お前にはすでに十分な力があるはずだ。 |
| ティア | ――はい、兄さん ! |
| ヴァン | リグレット、アッシュとアリエッタを連れて後方から挟撃準備だ。一人も逃がすなよ。 |
| リグレット | お任せ下さい。アッシュ、アリエッタ、行くぞ。 |
| アッシュ | ……ヴァン、あんたは病み上がりみたいなもんだ。無理はするなよ。 |
| ヴァン | フ……。ここにはお前がいるのだ。私が本気を出すまでもなかろう。違うか ? |
| アッシュ | ……当然だ。 |
| アリエッタ | 待っててね、総長。いっぱい敵……倒してくるから。 |
| ヴァン | ディスト。お前は我々の頭脳であり切り札だ。前線を任せるのは厳しいかも知れないが――やってくれるな。 |
| ディスト | ま、まあ、今はコマとなる雑兵もいませんからね。特別に戦ってあげましょう。 |
| ヴァン | 導師、無理はしないように。アニス、導師守護役として存分に働け。期待している。 |
| アニス | はぅあ ! これか……これにみんなやられるのか……。人たらしだわ……。 |
| イオン | ふふ、そうですね。ヴァンは相変わらずです。 |
| ヴァン | シンク、指揮は任せたぞ。お前の分析が一番信頼できる。できるな ? |
| シンク | ……ホント、アニスじゃないけどさ。アンタのそういうところだよ。ボクが嫌いなのは。 |
| シンク | さあ、位置に付いて ! さっさと終わらせるよ ! |
| ピオニーβ | 聖人ジェイド殿とその弟子、か。 |
| ルーク | ピオニー陛下……。 |
| ピオニーβ | ……この体の知り合いか。なるほど、ではやはり貴様たちは鏡映点で銀髪の鏡士はイクス・ネーヴェだな。 |
| ピオニーβ | どういうつもりだ ? 何故のこのこと現れた。 |
| ジェイド | おや、話が伝わっていなかったようですね。この聖人ジェイドが、悪辣な鏡士たちを説得し帝国に忠誠を尽くすよう導いたのです。 |
| ピオニーβ | そんな戯言を信じるとでも思ったか ? |
| ジェイド | でも、あなたはこの部屋に入ってきた。あわよくばイクス・ネーヴェを捕らえるなり、彼の魔鏡を手に入れるなりできる……と考えたのでしょう ? |
| ピオニーβ | 私を捕まえたところで【ルグの槍】は止められないぞ。 |
| ジェイド | ええ、知っています。それどころか、恐らく【ルグの槍】の発動は、【贄の紋章】を刻まれた人間がどこにいようと関係が無いのでしょう。 |
| ジェイド | だから、領主たちが次々と我々に連れ去られても帝国はさして気にとめていなかった。 |
| ピオニーβ | そうだ。領主たちに心核を戻させないよう尽力していたのは、時間稼ぎに過ぎない。この体が欲しいのならくれてやるぞ ? |
| ジェイド | おや、いいのですか ?我々はフリーセルと手を結んでいるのですよ ? |
| 全員 | ! ? |
| ピオニーβ | な……んだと…… ? |
| ジェイド | もっとお話をしたいのですが人払いをお願いできませんか。 |
| ルーク | ……いってぇ……。まさか、これ……。 |
| ガイ | ルーク ! どうした ? あ、もしかして……。 |
| ルーク | ああ、アッシュだ……。……――え ? |
| 帝国兵 ? | 領主様 ! 心核の輸送隊が襲われました ! |
| ピオニーβ | やはり来たか。大方そんなところだろうと思っていた。だが、こちらも準備をしていた。聖人ジェイド、お前たちは袋のネズミだ。 |
| ピオニーβ | この部屋には―― |
| 帝国兵 ? | ――この部屋に仕掛けていた魔鏡陣ならとっくに無効化してあるよ。 |
| シンク | おい、死霊使い。全ては手筈通りだ。これで文句はないだろうな。 |
| ジェイド | 結構。では、皆さん、ピオニーを捕まえましょうか。 |
| カーリャ・N | え ? な、何が起こったんですか ! ? |
| ナタリア | 何でシンクがこんなところにいますの ! ? |
| ルーク | あ、それはアッシュだよ。さっき連絡が来たんだ。アッシュがシンクたちに協力を頼んで心核を取り戻して―― |
| ジェイド | 話は後です。さあ、日頃の恨み――いえいえ、友情のために、非常に心苦しいのですがピオニーを痛めつけましょう ♪ |
| イクス | な、なんか、綺麗なジェイドさんと戦ったときのルークみたいだな……。ていうか、相手は皇帝陛下で幼なじみなんですよね ! ? いいんですか ! ? |
| ガイ | まあ……何というかジェイドの気持ちもわからなくはない。 |
| ガイ | 俺もこの際だから、元の世界での『復讐』と『恩返し』をさせてもらうとするか。 |
| ルーク | はは……。ごめん、陛下 ! |
| Character | 8話【10-8 オールドラント領 領主の館】 |
| シンク | 終わったみたいだね。はい、これ。 |
| イクス | これ、ピオニーさんの心核 ! ? |
| シンク | 多分ね。確認できないから知らないけど。 |
| ジェイド | まあ、何でもいいですからとりあえず入れてしまって下さい。 |
| イクス | そんな ! ? ジェイドさん、雑すぎませんか ! ? |
| ジェイド | いえ、自分の作戦に自信があるだけです。それはピオニーの心核ですよ。まあ、別人でも面白いですが……。 |
| カーリャ・N | ジェイド様……。聖人のままでいてくれた方が……。いえ、アレはアレでやはりちょっと……。 |
| イクス | ……わかりました。とりあえず戻しますよ。 |
| シンク | 心核を戻したら脱出だ。皇帝は―― |
| ガイ | 俺とイクスで運ぼう。どうせジェイドはやらないだろうからな。 |
| ジェイド | 私がそんなに薄情な人間だとでも思っているのですか ? |
| ガイ | いやいや、意外と情には厚いが肉体労働が嫌いなだけだよな。知ってるよ。 |
| ナタリア | そうですわよね。今回、なんだかんだ言って大佐にしてはかなり積極的に動いていましたもの。 |
| ルーク | ここを出たら、そもそも何がどうなってたのかちゃんと教えてくれよ、ジェイド。 |
| ルーク | ……つまり、全部六神将組にやらせる手筈だったってことか ? |
| ジェイド | いやですね、人聞きの悪い。適材適所ですよ。こちらはワルターからの情報でヴァンの行方を追っていた。 |
| ジェイド | 同時にリグレットたちもヴァンの行方を追っていた。手を組めると考えるのは当然でしょう。 |
| アッシュ | ほとんどの仕事をこちらに押しつけておいて何だ、その言い種は。 |
| ナタリア | アッシュ ! ご無事で何よりですわ。大佐の話では、何もかもそちらにお任せだったようで……申し訳ないですわ。 |
| アッシュ | いや、お前の方は戦わなくて済んでよかった。 |
| ナタリア | あら ? 私、ピオニー陛下と戦いましたわよ ? |
| アッシュ | な……、話が違うぞ、死霊使い ! |
| シンク | こいつを信じるアンタが馬鹿なんじゃない、アッシュ。 |
| イクス | すみません、話を戻しますけど、ジェイドさんは結局どこまで状況を把握していたんですか ?フリーセルと繋がっているって話も……。 |
| ジェイド | そうですね……。わからなかったのはピオニー陛下の心核のありかだけです。 |
| ジェイド | ただ、それに関しては、ヴァンもしくはヴァンの中のローレライが知っているのは予想できましたからね。 |
| ジェイド | ですから、リグレットたちにまずヴァンを取り戻すよう焚きつけました。 |
| アッシュ | 俺たちは、ヴァンがピオニー9世の回収に動くという情報を仕入れた。それをジェイドに知らせたところジェイドはピオニー9世を足止めすると言ってきた。 |
| ジェイド | 帝国がピオニー陛下の心核を回収することは予測できました。ただ、タイミングまではわからない。 |
| ジェイド | ヴァンにやらせるのか、別働隊が行くのかピオニー陛下自身に行かせるのか。 |
| ジェイド | ただ、ピオニー陛下を領主の館に置いておけば最終的には心核もピオニーかヴァンに届けられると考えました。 |
| ジェイド | あとは……そうですね。ヴァン謡将のような方なら私に助けられたと察知すれば義理を果たしてくれるとも考えましたね。 |
| ガイ | 相変わらずとんでもない先読みの仕方をするなジェイドは。 |
| イクス | でも、フリーセルの件は……。 |
| ジェイド | あれは、でまかせです。 |
| 五人 | ! ? |
| ジェイド | さっき少し話しましたが、帝国は本来、我々に領主を奪われても痛くもかゆくもない。それが、最近になって領主たちを帝都に集めて保護するようになった。 |
| ジェイド | 何か状況が変わったのでしょうね。ユーリたちの話では、フリーセルらしき男が心核のある遺跡に姿を見せていた。 |
| ジェイド | 何か繋がりがあるかもと思い、あそこで足止めもかねてカマをかけてみたんですよ。 |
| カーリャ・N | なるほど……。 |
| ルーク | つーか、だったら最初からわざとピオニー陛下に捕まって時間稼ぎするって言っといてくれよ ! |
| ナタリア | そうですわ ! そうしたらもっと上手く立ち回れたかも知れませんのに。 |
| ガイ | ……まあ、ルークとナタリアなら、何も知らせない方が都合がいいと思ったんだな、旦那は。で、ついでに俺やイクスたちにも隠すことにした、と。 |
| ルーク | 何でだよ ! |
| ガイ | そりゃお前、嘘が下手だからだよ。 |
| ピオニー | ……うう……。 |
| ナタリア | まあ、陛下が目を覚ましましたわ。大丈夫ですか ? どこかお怪我は……。 |
| ピオニー | ナタリア……王女…… ? |
| ナタリア | ええ、そうですわ。どうやら、あの心核はピオニー陛下の物で間違いなかったようですわね。 |
| ピオニー | ……綺麗だ。 |
| ナタリア | え ? |
| ピオニー | ナタリア王女、成人したら結婚しよう。ピオくん……と呼んでほしい、さあ……。俺の耳元で ! |
| アッシュ | ジェイド ! 何なんだこいつは ! ? |
| ジェイド | ……目が覚めるなりこれですか。 |
| ピオニー | ……なんだ、いたのか。可愛くない方。 |
| ジェイド | ピオくん ♪ 元気を出して下さい ♪ |
| ピオニー | きも……。ああ……死ぬ。あまりの気持ち悪さに俺は今にも死にそうだー。ナタリア王女俺を抱きしめてこの世に引き止めてくれないか。 |
| アッシュ | ナタリア、離れろ ! ガイ、止めろ ! |
| ガイ | 陛下。そういう嫌がらせをやるようになったら人間終わりです。 |
| ピオニー | ガイ……。そんな冷たいこと言うなよ。マジで体が動かないんだって。 |
| ジェイド | 口は回るようですね。うるさいので心核を抜きましょう。 |
| イクス | ルーク、あれが皇帝陛下…… ? 本当に ? |
| ルーク | ははは……。だってジェイドの幼なじみで親友だぞ。 |
| カーリャ・N | そうですね。ジェイド様の親友がまともな訳がありませんね……。 |
| Character | 9話【10-9 オールドラント領 浜辺2】 |
| ティア | ……兄さん。これからどうするの ? |
| ヴァン | さて……どうするか。 |
| ティア | アスガルド帝国のやろうとしていることは……。 |
| ヴァン | ……私と同じ、か ? |
| ティア | ……違う。違うことはわかっているの。でも、起こそうとしている事象は同じよね。 |
| ヴァン | まあ、我々のやろうとしてきたことを利用されてはいるのだろうな。 |
| ティア | 兄さん……私、兄さんと戦いたい訳じゃなかった。未来は変えられるって兄さんに伝えたかった。 |
| ヴァン | いや、変えられない。変わらないと、私は知っているのだよメシュティアリカ。 |
| ティア | ……ルークは預言に詠まれていない存在よ。枝葉が違えば――少しずつ変えていけば大きなうねりだって変えられる。 |
| ヴァン | ……メシュティアリカ。すまなかったな。私はお前を傷つけることしかできなかった。 |
| ルーク | ヴァン師匠 ! |
| ヴァン | ルークか。ティアを頼むぞ。 |
| ルーク | 待ってくれよ、師匠 ! |
| ヴァン | 何を話すことがある ? |
| ルーク | あるよ ! 沢山ある !あなたになくても、俺には沢山あるんだ ! |
| アニス | ルーク……。 |
| アニス | ヴァン総長 !逃げないで、ちゃんとルークと向き合ってよ ! |
| ヴァン | ………………。 |
| アニス | ルークを作ったのは総長でしょ !ルークの話、ちゃんと聞いてよ ! |
| ティア | 兄さん ! |
| ヴァン | ……ルーク。 |
| ルーク | 師匠、俺……俺は……生きてる。ちゃんと生きてる。レプリカだけど……ちゃんと人間だ。 |
| ヴァン | ……私に認めて欲しいのか ? |
| ルーク | ! |
| ルーク | ……そうだよ。ずっとそうだったよ !俺には師匠しかいなかったから……。そう思い込んでたから。 |
| ルーク | ずっとアッシュが羨ましくて……俺だって……俺だってって。けど、もう……それはいい。 |
| ルーク | この世界に来て、記憶や感情だって他人に振り回されてる仲間がそれでも必死に立ち上がってくるのを見た。 |
| ルーク | だから、俺も思ったんだ。俺が俺であるためには他人の物差しで生きてちゃだめなんだって。 |
| ヴァン | ならば、私に言うべき言葉は一つだけだろう。 |
| ルーク | それは……。 |
| ヴァン | ためらいや迷いがあるならお前はまだ何もわかっていない。 |
| ルーク | ためらうよ ! ヴァン師匠は俺の師匠で……。 |
| アッシュ | おい、ヴァン。お前こそ、言うべき言葉がある筈だ。 |
| ルーク | アッシュ…… ? |
| ヴァン | ――ルーク。剣を抜け。 |
| ティア | 兄さん ! ? |
| ヴァン | 最後の稽古を付けてやろう。証明して見せろ、お前が自分を単なる模造品ではないと言うのならな。 |
| ルーク | ああ――やってやるっ ! |
| Character | 10話【10-10 オールドラント領 浜辺3】 |
| ルーク | ……か、勝った、のか ? |
| ヴァン | ……フ、二度もお前に負けるとはな、ルーク。見事だ……。 |
| ヴァン | ……ウッ……。 |
| リグレット | 閣下 ! |
| ヴァン | ……大丈夫だ。 |
| ヴァン | ルーク、私を憎めないのは、お前の甘さだ。だが……それがお前という存在の強さなのだろうな。 |
| ルーク | 師匠…… ! |
| ヴァン | 何故、まだ私を師と呼ぶのだ。それはお前の望みではないだろう。お前は私と決別するために来たのではないのか ? |
| ルーク | そうです……。 |
| ヴァン | ならば、告げよ。 |
| ルーク | ヴァン師匠……。さよう……なら……。 |
| ヴァン | ……さらばだ、ルーク。 |
| ヴァン | 次の機会には、お前の師のヴァンではなく同志たちを守る騎士ヴァンデスデルカとしてまみえよう。 |
| ルーク | ……はい、師匠。 |
| ヴァン | まだ言うか、愚か者が。 |
| ヴァン | ……ガイラルディア様。そろそろ姿をお見せになってはいかがですか ? |
| ガイ | ……おっと、気付かれてたか。 |
| ルーク | ガイ ! ?な、何だよ ! 付いてくるなって言ったじゃん ! |
| ガイ | いや、まあ、色々と気になっちまってな。悪かったよ。 |
| ガイ | ヴァン――いやヴァンデスデルカ。お前が騎士としての本分に立ち戻るのなら俺たちももう一度やり直せるよな。 |
| ガイ | この世界じゃ、ホドの生き残りはお前とティアだけだ。 |
| ヴァン | ……今はまだお約束はできかねます。私はまだ、この世界で何をなすか見つけられてはいない。 |
| ヴァン | 何より、私はあなたたちの仇だ。 |
| ガイ | そうさ。お前は俺たちの敵で仇だ。罪のない沢山の命を刈り取ってきた。 |
| ガイ | だが、互いに許し合えなくても、理解が及ばなくても同じ方向を向くことはできるんじゃないのか ? |
| ガイ | 何より、お前は俺の幼なじみだしな。だから、待つよ。 |
| ヴァン | ガイラルディア様……。あなたという人は……。 |
| リグレット | ……閣下、そろそろ行きましょう。お体に障ります。 |
| ガイ | ――リグレット、ジェイドから伝言だ。ナーザたちに連絡を寄越せとよ。 |
| リグレット | 承知した。――シンク、行くぞ。 |
| シンク | ボク、一応救世軍所属なんだけど。 |
| ヴァン | シンク、戻って構わんぞ。 |
| シンク | ……ビフレストの連中のところまでは付き合う。その後でケリュケイオンに戻るけどね。 |
| アニス | おおおおお……なんか、こう、盛り上がってた~ !海辺で仇敵との熱い会話か~ ! |
| アッシュ | 見世物じゃねぇんだぞ。それに、お前もヴァンに叫んでたじゃねぇか。 |
| アニス | いやいや、あれは、こうその場のノリっていうか。でも、いいものを見せてもらいましたー ! |
| イオン | アニス……。そういうところジェイドに影響されていませんか ? |
| アニス | ぶーぶー ! 心外ですぅ ! |
| ティア | ガイ……ありがとう。兄さんに歩み寄ってくれて。 |
| ガイ | 最初に歩み寄ったのは、あっちだぜ。 |
| ティア | え ? |
| ガイ | ヴァンの奴、ルークに歩み寄ってただろ。 |
| ティア | ええ……。そうね。 |
| ルーク | ……うん。屋敷にいた頃みたいな嘘……じゃないよな ?俺を利用するための、さ。 |
| ティア | ええ、きっと……。 |
| ルーク | ……なんか、ガイもティアもいいな。ヴァン師匠と繋がりがあって。 |
| ルーク | 俺も師匠と幼なじみだったら良かったな。それか師匠の弟とか……。 |
| ガイ | ……お前のヴァン贔屓も大概だなぁ。 |
| ルーク | だって……やっぱ、師匠だからさ。 |
| アッシュ | ……言っておくが、てめえだけの師匠じゃねぇからな。 |
| ルーク | な、なんだよ ! お前こそ、六神将だからって師匠と一緒に行動してズルいぞ ! |
| アニス | ルーク、ヴァン総長と決別したんじゃなかったの~ ? |
| イオン | そうですよ。師と弟子の関係にこだわるのではなく一人の戦士としてヴァンの横に立つというのもいいじゃないですか。 |
| ルーク | おお、そうだよな ! そっちのがカッケーよな ! ? |
| アッシュ | 馬鹿が……。下らんことを言ってないでさっさとアジトに引き上げるぞ。 |
| ルーク | お、余裕じゃん。今頃ナタリアがピオニー陛下に口説かれてるかも知れないのに。 |
| アッシュ | ! ! |
| ガイ | まったく、お前ら、本当に子供だなあ……。 |
| イクス | ……ジェイドさん。あの、ミリーナのことですけど。 |
| ジェイド | ああ、いえ、説明は結構。 |
| イクス | あ……はい……。 |
| ジェイド | まあ、ミリーナは今まで通りに振る舞っていますが―― |
| イクス | 俺も、そうしていたつもりなんですけど……。 |
| ジェイド | ああ、違います。周りは気付いていないと思いますよ。あなたもミリーナも、今まで通りに振る舞えています。 |
| ジェイド | 二人がそうしようと思ったのなら私が口出しすることではありません。 |
| ジェイド | ただ、ミリーナもあなたも、今より少しだけ一人になれる時間を作ってはどうかと思いましてね。 |
| イクス | え ? |
| ジェイド | ミリーナも一人で泣きたい時もあるでしょう。あなたも、ミリーナに気を使いすぎる必要はない。 |
| ジェイド | まあ、恋愛というのは脳の錯覚ですから深く考えすぎないことです。 |
| イクス | はは……。 |
| ナタリア | 大佐 ! イクス ! ピオニー陛下を何とかして下さい ! |
| ジェイド | おや、呼ばれてしまいました。まあ、そういうことです。 |
| イクス | はい……ありがとうございます。 |
| | to be continued |