Character1話【12-1 グリンウッド領 森1】
サイモン娘よ、知りたいか ? ならば、教えてやろう。この男と共に、真実をな。
アリーシャこれは…… !
ミクリオ幻術か…… ! スレイ、気をつけろ !
スレイ…… ? ロゼ、デゼル ! ?
アリーシャ二人が消えたぞ ! ?
エドナ不思議ちゃんもいないわ。まんまと分断されたみたいね。
ライラいけません ! 今のデゼルさんは冷静さを失っています。このままでは本気でサイモンさんを……。
ミクリオまさか ! だとしても、ロゼがついてるだろう。
ザビーダいや、あの馬鹿、頭に血がのぼってたからな。早く見つけねえと面倒なことになるぜ。
スレイけど、どこを探せば――
アリーシャっ ! ! スレイ、後ろ !
スレイ憑魔 ! ? いつの間に…… !助かったよ、アリーシャ。
エドナあの憑魔、不思議ちゃんが残した足止めってとこかしら。
アリーシャええ、恐らくは。私もあの方と初めて会った時にスレイの幻で惑わされました。
スレイ確かにあの時と似てる。だとしたら、あの憑魔を消せば術が解けるはずだ。
ザビーダなら、さっさと片付けようぜ。こちとら急いでんだ !
デゼルうおおおおおっ !
サイモンやはり怒りに身を任せるか。
ロゼデゼル、ストップ ! !
デゼルどけ ! お前は引っ込んでろ。
ロゼできるか ! あたしはまだ何も聞いて――
ロゼうっ !
デゼルっ ! ! てめえ、ロゼを離せ !
サイモンこうさせたのはお前であろう ?己が業に目を閉じた者よ。
デゼル何のことだ !
サイモンそれは己で確かめるがいい。では約束どおり娘と共にお前の『本当の過去』を見せてやるとしよう。
デゼル本当もクソもあるか。貴様が俺の仲間を――
サイモンその続きは真実を知った後に聞いてやる。果たして同じ言葉が吐けるかどうか、楽しみだ。
ロゼ(……えっ ? なんで風の傭兵団――あたしたちが ?それに……)
ラファーガあいつらとの旅は本当、楽しい……。
ラファーガ冥利に尽きるだろ ?
デゼルああ。感謝してる。
ロゼ(デゼルだ ! 隣にいる人は…… ?)
コナン皇子大陸一の風の傭兵団を是非ともローランスに連ねたいのです。
ロゼあたしがコナン皇子と婚約 ? 夢みたい !
ラファーガよかった。旅が終わっちまうのは残念だがな。
デゼル……イヤだ。
デゼル終わらないでくれ……。
デゼル(…… !)
ロゼコナン皇子 ! 団長が居ないんです。
コナン皇子…………。
デゼルその子に近づくんじゃねえ。
コナン皇子私に指図する貴様は何者か。
ラファーガこいつ……すでに憑魔に……。
デゼル(そうだ……すでに憑魔になっていた皇子がロゼたちを嵌めた。そして、あいつが……サイモンが現れた…… !)
サイモン(何故これほどの短期間で憑魔と化したのだろうな ?)
ロゼ(それって、どういう意味 ?)
コナン皇子衛兵 ! 逆賊がここに !
コナン皇子風の傭兵団、団長ブラドは第一皇子レオンを殺害。身柄をペンドラゴ守警隊によって拘束された。よって貴様ら全員も拘束する。
サイモン(わかるだろう ? コナン皇子が憑魔と化し我欲に従い、邪魔者を除こうと考えたからだ)
サイモン(そして……コナン皇子が憑魔になった原因もわかっていよう ?)
デゼル(…………)
サイモン(『彼』だ)
ロゼ(デゼル ! ? まさか……。もしかして、この過去はサイモンの幻術で作って……)
コナン皇子お前は私のものとなるなら特別に赦免しよう。
ロゼなっ !
ロゼ(……やっぱり、この記憶は間違ってない。この後あたしは思わずコナン皇子に切りかかって……)
ロゼこんのー !
ラファーガ間に合え !
ラファーガぐ、うぅぅああ !
ロゼ(―― ! !あの人、コナン皇子からあふれ出した穢れからあたしを守ってくれたんだ……)
サイモンすべて貴様の加護の賜物……人はその力を持つものを何というか知っているか ?
サイモン疫病神だ。
デゼル……俺のせい……だった ?
デゼル全て……俺の…… ?
サイモン――私への濡れ衣は晴れたようだ。さて、偽りの殻を破った感想はいかがかな ?
デゼル……俺……は……俺が……全部っ……。

Character2話【12-2 グリンウッド領 森2】
ロゼデゼルの友達ってあたしをかばったせいで……。
デゼルそうじゃねえ ! そもそもの原因は俺だ……。全部最初から……。
サイモン真実を知って、己の業とどう向き合う ?私と同じ業を背負う、哀れな天族よ。
デゼルお前と同じだと…… ?
サイモン『あの時』とは違う。『考える時間』がある『今のお前』がどんな答えを出すか教えてくれないか。
ロゼこいつ、何言って――
サイモン意図せずとも『悪』となり周囲を不幸へとおとしいれるお前は存在すべきか、否か。
デゼル…………俺は…………。
ロゼそんなの――
スレイロゼを離せ ! サイモン !
サイモン導師…… ! もう術を破ってきたか。
ライラデゼルさん ! よかった、間に合って。……デゼルさん ?
デゼル…………。
ザビーダデゼル、まさか、お前……。
ザビーダちっ……、おら立て ! 腑抜けてる暇ねえぞ。今のてめえが、一番大事なもんはなんだ !
デゼル俺の……。
デゼル……うるせぇ、そんなのは百も承知だ !サイモン、ロゼを返せ !
サイモン……邪魔が入ったか。まあいい。導師共々、しばらく遊んでいくといい。
アリーシャ分裂…… ! ? これも幻術か !
エドナ一人でもうっとうしいのに、何人増える気よ。
サイモンさあ、楽しんでくれたまえ !

Character3話【12-2 グリンウッド領 森2】
サイモン導師たちを食い止めるのは難しいか。だがあの男……。
デゼルはあっ、はあっ……、くそっ !
ザビーダおい、どうした、動きわりぃぞ !
アリーシャロゼ ! デゼル様に何かあったのか !
ロゼちょっとね。けど今はサイモンが先 !
サイモン……答えは聞けずじまいか。だがあの様子であれば、しばらくの足止めとなろう。
サイモンすぐに参じます。我が主 !
エドナなに…… ? 不思議ちゃんたちが消えてくわ。
ライラこれは……、どうやらサイモンさんはこの場を離れたようですね。
スレイそっか……。ひとまず、みんな無事で良かった。ロゼ、デゼル、怪我はない ?
ロゼ平気。サンキュー、みんな。
デゼルこっちも……何ともねえ。
エドナ何ともないって顔じゃないでしょ。ちゃんと説明しなさい。
エドナ仕掛けてきたのはあっちだけどあなた、復讐を優先して突っ走ろうとしたのよ。
デゼル……悪かった。
スレイそれで、デゼルの復讐相手ってやっぱりサイモンだったのか ?
デゼル………………俺だ。
スレイ『俺』って ?
ロゼあのさ、その話する前にちょっといい ?デゼルの復讐のこと、今まで知らなかったのってあたしだけ ?
スレイえっ ? あ……えっと、ごめん、黙ってて。
ロゼ違う違う。謝って欲しいわけじゃないんだ。ただ、知りたいだけだから。
ロゼ昔のあたし、風の傭兵団にデゼルやその友達も出てきてさ。あんなの突然見せられて、正直戸惑ってるんだ。
ザビーダなるほどね。あいつの術で記憶を見せられたのか。
ロゼうん。まあ、その辺の話はきちんと後でする。でさ、デゼルはずっとあたしと一緒にいたってことだよね ?
デゼル……ああ。俺は風の傭兵団と一緒に旅をしてた。それが終わろうとした時、願ってしまったんだ。……まだ、続けばいいってな。
デゼルそのせいで、風の傭兵団は崩壊した。
二人えっ ! ?
アリーシャデゼル様が願ったのは悪いことではないかと……。
デゼルそれが俺の呪われた加護だ。ロゼが不幸になったのも、あいつが死んだのも !
デゼルなのに俺は……その記憶を全部封じ込めて復讐という『嘘』に逃げこんだ…… !
デゼルロゼのことも、復讐のための器として育てた。スレイたちに俺の目的を口止めさせたのも都合よく使うためだ !
デゼル……全部俺が発端だ。
ロゼなるほどね、話はわかった。
デゼル……本当にわかってんのか ?俺がお前を不幸にした原因だって言ってんだぞ。
ロゼだから、何 ?
エドナ随分と軽く流すのね。
ロゼ今さら騒いだって仕方ないでしょ。それに軽く流してるわけじゃない。
ロゼ何も言ってくれなかったことや利用しようとしてたってのはムカついてる。
デゼル…………。
ロゼけど、それ以上に、今まで知らないところでずっとデゼルが助けてくれてたってわかったんだ。
ロゼ事件の後だって、風の骨として旅ができた。だからあたしは、デゼルが一緒にいてくれて感謝してる。
ロゼデゼルの友達だって命をかけてあたしを助けてくれた。だから……。
ロゼそういうの、全部わかってよかった。以上 !
デゼル以上って……それだけかよ !サイモンの言葉を忘れたわけじゃないだろう。
デゼル俺はあいつと同じ業を背負った天族、疫病神だ !存在することが『悪』になるんだぞ。
デゼルこれから先、一緒にいてどうなるかわかんねえ。なのにお前はそれでいいのかよ。
ロゼいいよ。今までだって、デゼルが側にいて不幸だなんて思ったことないし。昔のことも、ずっと引きずってらんないでしょ。
デゼルけどな……。
ザビーダなんだよ、煮え切らねえなぁ。このままじゃ全部許されちまったようで納得できねえってか ?
デゼル……うるせぇ。
ザビーダまあ、手酷く責めてくれた方が楽になるわな。お前の罪悪感が薄れてよ。
ザビーダけどな、ロゼの言葉をどう受け取るかはお前次第だ。これからの生き方も含めて自分でケジメつけなきゃなんねえことだろ。
デゼル……っ !
スレイえっと……あのさデゼル、ロゼの言ってること今はそのまま受け止めていいんじゃないか ?
スレイオレも、デゼルがどうするべきか他人が決めることじゃないと思う。
スレイけど、決めるのはデゼルでも、その結論を出すまでみんな一緒に悩むことはできるよ。『業』ってやつのことも。
デゼルスレイ……。
スレイそれにさ、このティル・ナ・ノーグには他の世界の人たちが集まってる。色んな知恵が集まってるんだ。
スレイオレたちの世界ではあり得ない新たな道を見つけられるかもしれない。そういう可能性だって、ゼロじゃないよな ?
デゼル可能性……か。
ザビーダおっ、ちょっとは腑に落ちたか ?さすがは導師様のお言葉だねぇ。ありがたい、ありがたい !
スレイザビーダ、何か馬鹿にしてない ?
エドナまったく、将来のことで悩むとかまだまだ子供の証拠ね。子供デゼル、略して子ゼル。
アリーシャ子ゼル……それは何とも可愛らし……い、いえ、失礼しました !
デゼルチッ……。
ミクリオみんな、調子が戻って来たみたいだな。
ライラええ。どんな時も希望を見出そうとするスレイさんの言葉が届いたようです。
ミクリオそれにしても……業を背負った天族か。
ライラアイゼンさんも死神と呼ばれる加護を持っていますがあの方は素晴らしい出会いを経てから割り切れたと聞いています。
ライラ願わくば、デゼルさんもそうあって欲しいのですが。そしてサイモンさんも……。
ザビーダサイモンはともかく、あいつは平気じゃないかね。全部知った上で付き合うって言うお人よし共が一緒だからな。
スレイあーあ、すっかり足止めくらっちゃったよ。
アリーシャそうだな。すぐにヘルダルフの捜索を再開しよう。またいつ、妨害が入るかわからない。
ロゼってかさ、サイモンって、ヘルダルフの仲間なのかな。助けるみたいなこと言ってたし。
エドナそれもひげネコを探し出せばはっきりするでしょ。――で、一応聞くけど、あなたはどうするの ?
デゼル俺はもう一度サイモンに会わなきゃならない。自分自身の落とし前をつけるためにもな。
デゼルお前たちについて行くぜ。
スレイよし、決まり ! それじゃ、出発しよう。
ロゼ行こう、デゼル !
デゼルああ。それとな、ロゼ……。
ロゼん ?
デゼル………………。
デゼル……すまなかった。
ロゼおう !

Character4話【12-4 静かな平原1】
アリエッタ待ち合わせ場所、もうすぐ、です。
メルクリアうむ…………。
アリエッタ……メルクリア、疲れたの ?アリエッタのお友達に、運んでもらう ?
メルクリア平気じゃ。
アリエッタでも、平気じゃない……です。さっきから歩くのが遅くなってる。
メルクリアう……、バレておったか。
アリエッタどうして ? 待ち合わせに来るのがウィルって人じゃないから ?
メルクリアいや、そうではない……わけでもないが当たらずとも遠からず……ううむ……。
アリエッタごめんなさい、何言ってるかわからない……。
メルクリアじゃな、すまぬ !実は、あちら側の連絡係として来ることになったのがカイウスという者なのじゃ……。
アリエッタカイウス ?
メルクリアアリエッタはルキウスを知っておるな。その兄弟じゃ。顔を見ればすぐわかる。
メルクリア以前、わらわは、カイウスたちに酷い仕打ちをしてしまった。
アリエッタそれじゃ、カイウスは怒ってるの ?
メルクリアそれが、カイウスとは最近魔鏡通信で連絡を取るようになったのじゃ。ありがたいことに和解にも応じてくれた。
メルクリアじゃが、直に会うのは久しぶりでな。どのような顔で会えばよいものか考えると気が重い……。
アリエッタ気が重い……のは嫌いってこと ?会いたくない、です ?
メルクリアまさか、むしろ大好きじゃ !わらわにとっては、大事な友。会いたいに決まっておる。
アリエッタそれなら、カイウスも同じかも……。
メルクリアそうかのぅ……。
アリエッタでも、メルクリアが今みたいな暗い顔で来たらカイウスは、会いたくなかったのかなって思って悲しくなるかも……です……。
メルクリアあ……。
アリエッタアリエッタ、好きな人に笑ってほしいもん……。
メルクリア……そうじゃな。わらわは自分のことばかりでカイウスの気持ちを忘れておった。
メルクリアありがとう、アリエッタ。心配をかけたな。
アリエッタよかった ! じゃあ、急いで――
アリエッタの魔物グルルルルゥ…… !
メルクリアアリエッタ、友人たちが騒いでおるが ?
アリエッタ……誰か来る、です !メルクリア、アリエッタの側にいるです !
ロミー見つけたわ。情報どおり。よくやったわね、チトセ。
チトセあなたに褒められたくてやってるわけじゃない。
ロミーマティウス様の為でしょ。わかってるわよ。さて……。
ロミー久しぶりね、アリエッタ。石ころイオンと一緒に消えちゃったけど元気にしてるみたいじゃない。
アリエッタお前……お前は……っ !
メルクリアアリエッタ…… ?なんじゃ貴様らは。
アリエッタこいつらは敵っ ! お前……許さないからっ !
チトセ……ロミー、あなたこの子に何かしたの ?
ロミー大事な人との再会をロマンチックに演出してあげただけよ ?
チトセ悪趣味ね……。
メルクリア落ち着くのじゃ、アリエッタ !
ロミーそうよ、大人しくしてて。用があるのは『鏡士』なんだから。――かかりなさい !
帝国兵β皇女を確保せよ !
メルクリアっ ! ?
アリエッタ駄目っ ! みんな、お願い !
帝国兵βぐはあっ !
チトセ魔物…… ! 厄介ね。
チトセねえ皇女さま、あなたが一緒に来てくれれば手荒なことはしないわ。
アリエッタうるさい !お前たちなんかに、メルクリアは渡さないから !
メルクリアわらわとて、大人しく捕まる気などさらさらないわ !
チトセまったく……。やるしかないようね。

Character5話【12-5 静かな平原2】
アリエッタクリムゾンライオット !
ロミーふふっ、あの時は廃人みたいだったのにずいぶんと元気じゃない。
アリエッタメルクリアに近づかないで !
ロミーそんなに皇女様が大事だなんてイオン様はもう、どうでもいいのね。
アリエッタっ ! そんなことないもん !
ロミー無理ないわ。あんな汚い石ころになっちゃったんだもの。もう捨てちゃった ?
アリエッタうるさい ! ここに、ちゃんといるっ !
ロミーそう……、――そこねっ !
アリエッタあっ !
ロミー本当ね。ちゃんと持ってた。
アリエッタあっ…… ! 返して、イオン様っ !
メルクリアアリエッタ !
ロミーいつまでも思い続けるのは辛いでしょう ?
ロミーこの石ころも消して未練を断ち切ってあげるわね。
アリエッタいやっ、やめてーーーーっ !
メルクリアミゼラブル・トーチャー ! !
ロミーきゃあっ !
メルクリア返してもらうぞ !受け取れ、アリエッタ !
アリエッタイオン様っ !
メルクリアよかった……――っ ! ?
ロミー――つかまえた。
メルクリアすまぬ、アリエッタ。そなたの責ではない。煽られているのはわかっていたがわらわが黙って見ておれなかった……。
カイウスメルクリア――――っ !
チトセ援軍 ?
ロミーカイウスだわ。他も懐かしい顔ばっかりね。
メルクリア――離せっ !カイウスーっ !
全員ロミー ! ?
ロミーふふっ、お久しぶりね。
チトセロミー、まだ戦うつもり ?
ロミーまさか。挨拶だけよ。鏡士は確保済みだもの。――転送魔法陣展開 !
メルクリア………………。
カイウスメルクリアを返せ ! 餓狼――
カイウスなっ……消えた ! ?
ルビア転送魔法陣よ !もう少し早く騒ぎに気付いてたら間に合ったのに…… !
アリエッタアリエッタのせい、です……どうしよう……。
アーリア大丈夫 ? 怪我はない ?
アリエッタごめんなさい……。メルクリア、攫われちゃった……。総長たちに連絡しないと……。
カイウス何があったか教えてくれ。どうしてメルクリアは連れていかれたんだ。
アリエッタわからない、です……。でも、ロミーは鏡士に用があるって……。
ティルキスだとすると、メルクリア個人でなく鏡士を狙ったということになるな。
カイウス嫌な予感がする……。すぐに助けに行こう !
アーリアでも、後を追うにも転送魔法陣は閉じてるわ。他の手がかりを探さないと。
ティルキス後を追えないとなると……。アリエッタ、君の魔物の嗅覚で敵の匂いを追うことはできるか ? 襲撃前のでいい。
フォレストなるほど、消えた先ではなく奴らがここへ来るまでの匂いをたどるということですね。
アリエッタ無理です……。みんな、ロミーの……あいつらの匂いはないって……。
ティルキスそうか。襲撃時も、転送魔法陣を使ったのかもしれない。
フォレストこの兵士たちもリビングドール兵のようでした。恐らく情報は得られないでしょう。
ティルキス参ったな……手詰まりか。
全員! !
カイウス今のは…… ?
ルビア転送魔法陣が起動してるわ。どうして……。
アーリアみんな、ここで待っていて。調べてみるから――あっ !
ルビアカイウス ! ? 何する気よ !
全員カイウス !
アリエッタカイウス、行っちゃった…… !
ティルキス俺たちも転送魔法陣へ ! カイウスを追うぞ !

Character6話【12-6 セールンド城内1】
フォレストここは…… ?
アリエッタ……この部屋、見覚え、ある……です。カレイドスコープの間…… ?
カイウスみんな、来たんだな。わっ、アリエッタの魔物も一緒か !
ルビアカイウスのバカっ ! 勝手に行動して !罠だったらどうする気よ ! ?
カイウスなんだよ、いきなり !
ティルキスルビア、もう少し静かに、な ?
アーリア気持ちはわかるけど落ち着いて。
ルビアごめんなさい……。でも、一人で飛び込むなんて……。
カイウスわかったわかった。気を付ける。けど、ちゃんと転送されたんだからいいだろ ?
フォレストカイウス、そういうことじゃない。どうしてルビアが怒っていると思う ?
カイウスそれは……オレが勝手に……。
ルビア…………。
カイウス……そうだよな。心配かけてごめん。ルビア、みんな。
ルビアいいの。あたしもカッとなっちゃって、ごめんなさい。
ルビア考えてみれば、カイウスの無茶はいつものことだもの。これくらいで怒ってたら身がもたないわよね。
カイウスいつものことって無茶するのはお前のほうだろ ?
ルビアあたしがいつ無茶したっていうのよ !
アーリアはいはい、いつもどおりね。よかったわ。
ティルキス喧嘩してると安心するっていうのも妙な話だな。
フォレストさて、では今のうちに状況を整理しましょう。
フォレストアリエッタ、先ほど言っていたがこの場所がカレイドスコープの間だというのは間違いないか ?
アリエッタ多分……です。でもメルクリアはここにいる。みんな――アリエッタのお友達が言ってる、です。匂いがするって。
ティルキスよし、ではこのままアリエッタの魔物に匂いをたどらせて捜索しよう。
アーリアこんなに上手くいくなんて、少し心配ね。やっぱり罠の可能性も捨てきれないわ。
カイウス大丈夫だよ、きっと。勘だけど、転送魔法陣が再起動したのはメルクリアがやったんじゃないかって思うんだ。
ルビアどうして ?
カイウスメルクリアがつかまってるとき、それまで抵抗してたのにさ、連れ去られる直前に大人しくなって何か唱えてたように見えたんだ。
カイウスだから転送魔法陣が再起動したときにメルクリアかもって。
フォレストそれが本当なら大したものだがな。あの状況でロミーの目を盗むのは簡単ではない。
アーリアロミー……スポットに乗っ取られたままなのね。可哀そうな子……。元に戻してあげられたらいいのに……。
ティルキス……メルクリアを探そう。アリエッタ、頼む。
アリエッタ待ってください。敵が…… !
帝国兵βたち侵入者発見。これより排除を開始する。
メルクリア(カイウスたち、転送魔法陣の再起動に気づいてくれたであろうか……)
ロミーお待たせ、ルキウス。
メルクリアルキウス ! ? 無事であったか !
ルキウスγ準備はできています。ロミー様。チトセ様。
メルクリアルキウス……そなた、また……。
ロミーそう、ご苦労様。では皇女様、こちらへ。
メルクリア離せ !お前たち、わらわに何をするつもりか !
ロミーあなたは何も知らなくていいわ。さて、始めましょうか。
メルクリア何を――あああああっ !
ロミーふふっ、ルキウスとおそろいになれるわよ ?喜んでもらえるかしら。
チトセリビングドールγ……本当に趣味の悪い術式ね。私はこれで失礼するわ。
ロミーせっかくいいところなのに、最後まで見ていかないの ?
チトセ生憎だけど興味ないの。それより、あなたの部隊が集めたクロノスの分霊を渡してちょうだい。
ロミーええ、もちろん。――ルキウス、持ってきて。
ルキウスγはい、こちらです。
チトセ確かに預かったわ。それじゃ。
ロミー……つれないわねぇ。この楽しみが分からないなんて、可哀そう。
ロミーさて、と。アルトリウスのほうは準備に手こずっているみたいだしこっちは先にやらせてもらいましょうか。
ロミーさあ、皇女様。その鏡士の力で新たな大地を具現化してちょうだい。

Character7話【12-8 アジト】
イクスそれじゃ、ベルベットさんたちはミッドガンド領でアルトリウスと会ったけど転送魔法陣で逃走された、ってわけか。
マークああ。そんで俺たちはベルベットたちを回収してグリンウッド領へ向かってるところだ。
カーリャグリンウッド領 ? アルトリウスを追ってるのになんでミッドガンド領で探さないんですか ?
フィリップロゼの報告や、ベルベットたちの話を総合するとヘルダルフを監禁していたのは帝国から離反寸前のアルトリウス一派だ。
フィリップ彼ら一派は、逃走中のヘルダルフを捕獲するためにグリンウッド領に現れるはず――ベルベットたちはそう考えているようだね。
ミリーナそれなら、目的が同じスレイさんたちと合流したほうがいいわ。
イクスああ。下手をしたら帝国、アルトリウス、ヘルダルフの三勢力と戦うことになるかもしれないしな。
ミリーナネヴァン、スレイさんたちと連絡はとれた ?
カーリャ・Nいいえ。やはり先ほどから途絶えたままです。何かあったのかもしれません。
マークそっちもゴタついてんな。とりあえず、合流の話は連絡が取れたらにしようぜ。こっちも動きがあったらすぐに連絡する。
マークそれとイクス、ベルベットたちが言ってたぜ。コーキスがお前のこと話してたってさ。
イクスえっ ?
マークイクスは心配性だから、ちゃんと連絡してから行動してくれって言ってたらしい。
カーリャはああっ ! ? どの口が言いやがってんですかぁ !
マークははっ、だよな ! こじらせすぎなんだよ、あいつ。
カーリャ・Nあなたたちも人のこと言えませんよ ?
二人どの口が……。
イクスそうか、コーキス……。
カーリャうっ ! !
ミリーナカーリャ、どうしたの ?
カーリャ何かが来ます ! この感覚……気持ち悪い……。
マーク俺も感じる……こいつは……。
フィリップマーク、大丈夫か ? 何が起きてるんだ ?
ガロウズビクエ様 ! 地上に大規模な揺れを観測中 !こいつは相当でかいですよ。
フィリップ地震 ? マーク、まさか……。
マークそのまさかだよ。これは地震じゃない。【鏡震】だ。
二人鏡震 ! ?
イクス異世界の大陸が具現化されたのか ! ?
マーク多分な。被害がないか、地上軍に連絡取らねえと。お互い浮遊島とケリュケイオンじゃ揺れの度合いもわからねえ。
フィリップガロウズ、今の震源地がどのあたりか調べて全ての観測データを過去の鏡震時と照合してくれ。
ガロウズ了解です。
ガロウズ――数値、ほぼ全て一致しました。間違いなく大陸具現化によるものです。
ミリーナそんな……誰が具現化したのかしら。帝国 ?
フィリップだとしても、今さら異世界を具現化する目的がわからない。まずは大陸そのものを調べてみないと。
イクス俺たちで調査に向かいます。何度も新大陸の確認に行ったことがあるし適任でしょう ?
イクスガロウズに新大陸の位置情報を送るよう伝えてください。
ガロウズ聞こえてるぜ。今、送った。
イクスありがとう !それじゃ、ケリュケイオンはそのままベルベットさんたちをお願いします。
フィリップああ、そちらは頼んだよ。何かあったらすぐに連絡してくれ。

Character8話【12-9 セールンド城内3】
メルクリアγ具現化……成功……しました……。
ロミー私たちの世界もこうして具現化されたのね。興味深いわ。
メルクリアγう……うっ……。
ロミーあら、倒れるほど大変だった ? ご苦労様。
ルキウスγ…………っ。
ロミーあとは、あの大陸のエネルギーを搾り取るだけね。
カイウスいたぞ ! メルクリアを返せ、ロミー !
ロミーあなたたち…… ! どうやってここを嗅ぎつけたのよ。
ルキウスγ…………。
カイウスなっ、ルキウス ! ? お前…… !
アリエッタ違う……きっとルキウスじゃない、です。
ティルキスリビングドール化されてるんだろう。
カイウスくそっ !
ルビア見て、あそこ ! メルクリアが倒れてるわ。
ティルキス彼女に何をした ! さっきの揺れも、お前の仕業か。
ロミー答える必要ある ?ルキウス、彼らを始末して。
ルキウスγ…………。
ロミー聞こえないの ? 始末なさい !
ルキウス……サンダーブレイド !
カイウスルキウスッ !
ロミーきゃあああっ ! !
全員! ?
ロミールキウス……まさか自力でリビングドール状態を解除したっていうの…… ! ?
ロミーくっ、まともに術をくらうなんて……。
ルキウス頼む、兄さ……、メルクリア……を……。
カイウスっ…… ! ルキウスを頼む !
アリエッタメルクリア、目を開けて ! 死なないで !
ルビア大丈夫、息はしてるわ。
カイウスよかった。ルキウスはどうだ ! ?
アーリアこっちも気を失ってるだけ。今のうちに二人を運び出しましょう。
ティルキスフォレスト、頼めるか。
フォレスト承知しました。
ロミーくっ……。
全員! !
ロミーグラスティンの技術は完璧に盗んだと思ってたのに……まだ術式が甘かったのね……。
アーリアロミー……。
ロミー――転送魔法陣、展開。
カイウスあいつ、逃げる気だ !
フォレストいや、待て。転送魔法陣に人影が…… !
フォレスト兵士を呼び出したのか !
ロミーふふ……あらかじめ仕込んでいればこういう使い方もできるのよ。――さあ、やって !
帝国兵βたち排除。排除。排除。
ティルキスできるだけ相手にするな。撤退を優先するぞ !

Character9話【12-11 セールンド 街道1】
フォレスト追っ手は来ていません。どうやら振り切ったようですね。
ティルキスそうか。さて、これからどうするか。ルキウスもメルクリアも、まだ目が覚めないしなぁ。
アーリアビフレスト側との連絡は取れないし……一旦、アジトへ連れていきましょうか。
メルクリアγうっ……私……は……。
カイウスあっ、目が覚めたぞ !
メルクリアγ ?……お前たち……何者……いや……違う…………。
ティルキス―― ? なんだか様子がおかしいぞ ?
フォレストまさか、この皇女もリビングドールなのでは ?
メルクリア ?私……いや、わらわは……一体……。くぅ……。体に力が……入らぬ……。
アリエッタメルクリア……だよね ?痛いの ? 大丈夫…… ?
カイウス……うん、今はちゃんとメルクリア、だと思う。どういうことなのかよくわからないけどリビングドールではなさそうだ。
ルビアメルクリア、気分はどう ?
メルクリアル、ビア…… ?
メルクリアルビア ! カイウス ! アリエッタ !そなたたちが助けてくれたのか。
カイウスああ。けど、一番頑張ったのは、こいつだよ。
メルクリアルキウス…… ! 気を失っておるのか ?
アーリアええ。ロミーを攻撃した後、倒れたの。
メルクリア何故じゃ……。ルキウスは、リビングドールになっておったはずじゃが。
ルビア自力で解除したみたい。ロミーも驚いてたわ。
ティルキス多分、リビングドールγだったんじゃないか ?
ティルキスあれは心核の入れ替えがなくてもリビングドール化できるんだろう ?強力な暗示を施すようなものだって聞いてるぜ。
メルクリアうむ、お主の言うとおりじゃ。わらわもリビングドールγにされたが今は我を取り戻しておる。
メルクリアリビングドールγは心核を抜かぬ故暗示が解けてしまえば、どうということはない。
アリエッタそれじゃ、今のルキウスは…… ?
メルクリアそうか ! 心核がある筈じゃな ! 調べてみよう。
メルクリア…………うむ、確かにきちんと戻っておるな。
ティルキスやっぱりそうか。ある意味、運が良かったかもしれないな。リビングドールγで。
アーリアメルクリア、あなたが捕まったことが切っ掛けになったのかもしれない。あれは強い刺激を受けると解除に至ると聞いてるわ。
アーリア捕まったあなたを見てどうしても助けたかったんでしょうね。
メルクリア…………。
アリエッタメルクリア、嬉しくない、です ?
メルクリア……嬉しいに決まっておる。じゃが、そこまでルキウスを追いつめたのかと思うとな。
カイウス違うよ。メルクリアがいてくれたからルキウスは元に戻れたんだ。きっとルキウスも安心してると思う。
メルクリアそうであれば、よいのじゃが……。
カイウスなあ、ルキウスが元気になったら会いに来てくれよ。
メルクリア……いや、その約束をする前に言わねばならぬことがある。
メルクリアカイウス、ルビア、そなたたちにはこれまで酷いことをしたな。そしてティルキスにもじゃ。
カイウスえっ…… ?
メルクリア帝国では、そなたたちの助言も聞き入れずルビアやルキウス、それにティルキスも巻き込んで辛い目にあわせた。
メルクリアすまぬ……。まこと、わらわは愚かであった。この償いは必ずする。
カイウスま、待ってくれよ。もういいって言っただろ ?魔鏡通信でさ。
メルクリアそれでも、きちんと顔を合わせて謝るべきことじゃ。
メルクリアそれから、フォレストであったか。そなたのことは……わらわもよく知らぬ。だがリビングドールになっていたことは知っている。
メルクリアわらわの浅慮が、そなたを巻き込む一因であったことは否めない。許してくれとは言わぬが償わせて欲しい。
フォレストい、いや……。そんなことを言われても……。
ルビアねえ、メルクリア。あなたがわかってくれたならもういいの。償いなんて言わないで。
ルビアそれに元々、この世界で最初に助けてくれたのはメルクリア、様……なんだし。それについては感謝してるの。
メルクリア様、などいらぬ。ルビアはわらわの家臣ではない。それに……――
カイウスわかった。なら、もう一度、出会い直そう。ここからスタートだ。
ルビアそうね !カイウスにしてはいいアイディアじゃない。
メルクリアそれは……どういうことじゃ ?
ルビア友達として出会いましょうってこと。よろしくね、メルクリア。
カイウスこれで、気軽に遊びに来られるよな ?そしたら、ルキウスにも会ってやってくれ。
メルクリア……お主らは……。
メルクリアありがとう…… !これから……よろしく頼む。
アリエッタ友達増えて、よかったね。
メルクリアうむ、よき出会いに感謝せねばな。
カイウスそれじゃティルキス、フォレストさんメルクリアたちをよろしく。
フォレストああ、そちらもな。アジトに帰ったらすぐにルキウスを診てもらうんだぞ。
メルクリアルキウスの回復を祈っておる。ウィルにも、よろしく伝えてくれ。もし……ウィルが嫌でなかったら、会いたい、と。
カイウスわかった。この浄玻璃鏡を渡してちゃんと伝言も伝えるよ。
ルビアじゃあね。メルクリア、アリエッタ !
アリエッタ私たちも帰ろう ? メルクリア、歩ける ?
メルクリア歩く程度ならば問題ない。しかし、なぜこんなにも力が入らぬのか……。
ロミーあなたは何も知らなくていいわ。
メルクリアわらわは何をした…… ?
デミトリアスそうか……。やはり、新たな大陸の出現はきみの計画ではなかったか。
グラスティンああ。目下調査中だ。さて、犯人はフィリップか、イクスかそれともビフレストの仕業か。
帝国兵申し上げます !調査隊からの報告です。
グラスティン来たか、どうなってる ?
帝国兵現在、新大陸への進軍は順調とのことです。それぞれの領からリビングドール兵を――
グラスティンあ ? 何の話だ ?
帝国兵ですから、アレウーラ領、レグヌム領、グリンウッド領ミッドガンド領から、新大陸へ向けてリビングドール兵が進軍しているとの報告です。
グラスティンそんな命令は出していない。デミトリアス、お前か ?
デミトリアスいや、私もだ。
帝国兵それでは、中止命令を出しますか。
グラスティン……今はいい。調査を続けろ。
帝国兵承知しました。失礼します。
グラスティン……糸を引いているのはアルトリウスに違いない。あいつは以前から妙な動きをしていた。
デミトリアス信念のある有能な人材だと思ったが裏切りもそれ故ということか。残念だよ……。
グラスティンとなると、腐った肉は削ぎ落とさないとな。すぐに蛆が湧いちまう。いいだろう ?
デミトリアス……………………。
デミトリアス仕方がないね……。アルトリウスへの【贄の紋章】の刻印を許可しよう。

Character10話【12-13 グリンウッド領 森4】
サイモン今の揺れは…… ?
サイモン……いや、些末なことに心を砕く暇はない。我が主を追うのが先だ。
サイモン感じる……この力は間違いなくヘルダルフ様のもの。しかも以前にも増して領域が強まっている。
サイモンもしや、魔導器とやらが影響しているのか ?
アルトリウスこれ以上は近づかぬ方がいいぞ。聖隷よ。
サイモン誰だ。
アルトリウスこの周辺には業魔が潜んでいる。会えば無事では済むまい。
サイモン……いらぬ世話だ。退け。
アルトリウス哀れな業魔の餌になりたくないだろう。
サイモン哀れと言ったか ? 我が主への侮辱、許さぬぞ !
アルトリウス主だと ?お前はヘルダルフに縁のある者か。
アルトリウスであれば、聖隷――いや天族の娘よ。一緒に来てもらう。
サイモンふざけたことを。我が行く手を阻んだこと夢幻の狭間で悔やむがいい !
アルトリウス小賢しい真似をする。
サイモン何っ !
アルトリウスこの程度の幻術で、私が惑うとでも ?
サイモン貴様は一体……。
アルトリウスこれ以上、付き合う気はない。クレーメルケイジにでも入っていてもらおう。
サイモンくっ…… !
アルトリウス逃がしはせん。
サイモンなっ、体が吸い込まれ――…… !
アルトリウス無事収まったか。思わぬ収穫だったな。
ロゼはぁ、びっくりした……。今の地震、結構大きかったね。
アリーシャああ。この揺れ、鏡震を思い出したよ。
ロゼまた大陸ができたとか ?なーんて……って、どうしたみんな ! 顔怖い !
デゼル妙だ……。風が乱れている。
ミクリオああ。さっきから様子がおかしい。揺れの後から精霊の力が強まってる。
ライラやはり、みなさんも異常を感じていたんですね。気のせいかと思ったのですが……。
エドナちなみに、ここにも様子のおかしいのがいるけど。
スレイ……うん、ちょっと待ってて。
エドナワタシのツンツンに動じないなんてホントに異常事態のようね。
スレイ感じたんだ、ヘルダルフの領域をさ。強い穢れが集まってる方向を探ってた。
ザビーダマジかよ。いよいよご対面か。
スレイ見つけた ! こっちだ。
スレイこの辺りに…… !
スレイ見つけたぞ、ヘルダルフ !

Character11話【12-14 グリンウッド領 山岳1】
スレイ見つけたぞ、ヘルダルフ !
ヘルダルフ誰だ、貴様は。
全員! ?
ミクリオ僕たちを知らないなんて……。まさか、リビングドールなのか ?
デゼルそんなはずねぇ。領主の館じゃヘルダルフ本人に見えたぜ。
ロゼうん。初期型ってヤツならともかく今のリビングドールじゃあそこまで明確な意志は現れないと思う。
ヘルダルフそうか。貴様たちはあの時の鼠だな。ワシの命を欲して、ここまで追ってきたか。
ロゼ確かにあの時はそうだったけど今はあたしの出番じゃない。あんたを止めたい奴がいるから。
ヘルダルフ止めるだと…… ?
スレイ穢れが増していく…… !
ヘルダルフ我が歩みを阻むか。貴様の連れ共々、相応の覚悟はできていような。
ザビーダスレイが『連れ』かよ。ヘルの野郎、本気で俺らの記憶が抜け落ちてやがる。
エドナ抜けてるんじゃなくて、『無い』んだとしたら ?あれは、ワタシたちの知ってるひげネコじゃないかもしれない。
エドナここはティル・ナ・ノーグ。具現化された存在が、どの時点のどんな存在なのかわかったものじゃないわ。
アリーシャでは、今のヘルダルフは災禍の顕主ではないと…… ?
スレイだとしても放っておけない。あいつの浄化は導師であるオレの役目だ。
ヘルダルフ導師と言ったか ? 貴様のような小童が ?笑わせてくれる。
ライラその言葉、必ず訂正する時が来ますわ。
ヘルダルフそうか。ならば、その導師の力をもって見事うち果たしてみせよ !
アリーシャくっ、なんという強さだ…… !
ライラアリーシャさん、気を付けて !かの者は、力も穢れの量も災禍の顕主であった時と変わりません。
エドナ変わらないどころか、少しづつ穢れが増してるわ。長引かせると厄介よ。
ザビーダ同感 ! おいスレイ、全力でいけ !
ミクリオ聞こえたな ?
スレイああ !
ロゼデゼル、あたしらも !
デゼルおう !
スレイルズローシヴ=レレイ !
ロゼルウィーユ=ユクム !
スレイヘルダルフ、お前はオレが浄化する !

Character12話【12-15 グリンウッド領 山岳2】
ヘルダルフ……くっ……。
スレイこれなら――いける !
ヘルダルフくっ……、くくく、はっはははは !
スレイ! ?
ヘルダルフこの程度か、導師。あの男に比べれば何とも可愛らしいものよ。
アリーシャ効いてないのか ! ?
エドナ効いてないどころかますます穢れが膨張していくわ !
ザビーダ領域の影響力も強まってやがる。
ヘルダルフくくく……魔導器とは素晴らしいな。力が溢れるようだ !
ロゼあっ、あの時の !
ライラやはり……穢れの増え方がおかしいと思っていたのです。
ライラあの魔導器のせいで、かの者の憎悪や野心までもが糧となり、穢れを永続的に増やしているのでしょう。このままでは……。
スレイうおおおおっ !
ヘルダルフ来い、導師 !
スレイ獅子戦吼 ! !
ヘルダルフそれが……獅子戦吼だと ? 笑わせるわ !
ヘルダルフこれが ! !
ヘルダルフ本当の ! !
ヘルダルフ獅子戦吼だ ! !
全員うわああああっ ! !
スレイこんな……こんなに力の差が……。
スレイ(やっぱり、今のオレじゃ災禍の顕主に匹敵する穢れは浄化できないのか…… ?)
ヘルダルフ貴様ら全員、己が無力を嘆いて死ぬがよい。
ザビーダくそっ、仕方ねえ。
ライラザビーダさん、何を !
ザビーダ大事にとっておいたが一発はお前のためにくれてやるぜ、ヘルダルフ。
ザビーダ憑魔は地獄へ連れてってやらねえとな !
ヘルダルフ! !
ライラ待ってください、ザビーダさん !かの者の領域が解かれていきます !
アリーシャどうして…… ! ?
ヘルダルフここまでだ。今回は見逃してやろう。
ザビーダへっ、殺されるとわかってビビったか ?
ヘルダルフ貴様ごときに殺せるものかよ。だが、その得体のしれぬ力は避けねばならぬ。
エドナ勘のいいひげネコね。
ヘルダルフ万が一この力を損なえば、我が身を呪いにかけたあの男への報復が叶わぬのでな。
ヘルダルフ導師よ、いずれ貴様とも雌雄を決するときが来よう。
デゼル満身創痍だな。
ロゼ……認めるよ。今回はこっちの負け。
ミクリオスレイ……。
スレイ…………。
テレサいけません、オスカー !傷が開いたらどうするのですか。
オスカー大丈夫、もう動けます……。一刻も早く、ヘルダルフを……っ !
テレサ痛むのですね。さあ、横になって。
オスカーすみません、姉上……。
テレサなぜ謝るのです。私をかばって負った怪我なのに。
テレサ謝らなければいけないのは私の方です。あなたに傷を増やしてしまった……。
オスカー姉上を守った証の傷です。これほど誇らしいものはありません。
テレサオスカー……。お願いだから、今は回復に専念して。あなたを失いたくないのです。
オスカー……わかりました。
テレサありがとう。言うことを聞いてくれて。ゆっくりお休みなさい。
テレサオスカー……、本当に無事でよかった。
アルトリウステレサ、領主の館での騒動は聞いた。その後どうなっている。
テレサアルトリウス様 !申し訳ございません。ヘルダルフの逃走を許してしまいました。
テレサ現在捜索を続けていますが未だに行方は掴めておりません。
テレサ今回の件、全て私の失態です。申し開きのしようもありません。
アルトリウスヘルダルフの件については咎めん。それよりも、オスカーはすぐに動けそうか ?
テレサしばらくの間はお役に立つのが難しいかと思います。
アルトリウスでは、次の計画はお前だけでも動いてもらおう。
テレサお任せください。それで、計画とはどのようなものでしょうか。
アルトリウス今回具現化した新大陸のエネルギーを使ってミッドガンド領の地脈を目覚めさせる。そして……。
アルトリウスこのティル・ナ・ノーグでカノヌシを復活させるのだ。
to be continued