| Character | 1話【12-1 グリンウッド領 森1】 |
| サイモン | 娘よ、知りたいか ? ならば、教えてやろう。この男と共に、真実をな。 |
| アリーシャ | これは…… ! |
| ミクリオ | 幻術か…… ! スレイ、気をつけろ ! |
| スレイ | …… ? ロゼ、デゼル ! ? |
| アリーシャ | 二人が消えたぞ ! ? |
| エドナ | 不思議ちゃんもいないわ。まんまと分断されたみたいね。 |
| ライラ | いけません ! 今のデゼルさんは冷静さを失っています。このままでは本気でサイモンさんを……。 |
| ミクリオ | まさか ! だとしても、ロゼがついてるだろう。 |
| ザビーダ | いや、あの馬鹿、頭に血がのぼってたからな。早く見つけねえと面倒なことになるぜ。 |
| スレイ | けど、どこを探せば―― |
| アリーシャ | っ ! ! スレイ、後ろ ! |
| スレイ | 憑魔 ! ? いつの間に…… !助かったよ、アリーシャ。 |
| エドナ | あの憑魔、不思議ちゃんが残した足止めってとこかしら。 |
| アリーシャ | ええ、恐らくは。私もあの方と初めて会った時にスレイの幻で惑わされました。 |
| スレイ | 確かにあの時と似てる。だとしたら、あの憑魔を消せば術が解けるはずだ。 |
| ザビーダ | なら、さっさと片付けようぜ。こちとら急いでんだ ! |
| デゼル | うおおおおおっ ! |
| サイモン | やはり怒りに身を任せるか。 |
| ロゼ | デゼル、ストップ ! ! |
| デゼル | どけ ! お前は引っ込んでろ。 |
| ロゼ | できるか ! あたしはまだ何も聞いて―― |
| ロゼ | うっ ! |
| デゼル | っ ! ! てめえ、ロゼを離せ ! |
| サイモン | こうさせたのはお前であろう ?己が業に目を閉じた者よ。 |
| デゼル | 何のことだ ! |
| サイモン | それは己で確かめるがいい。では約束どおり娘と共にお前の『本当の過去』を見せてやるとしよう。 |
| デゼル | 本当もクソもあるか。貴様が俺の仲間を―― |
| サイモン | その続きは真実を知った後に聞いてやる。果たして同じ言葉が吐けるかどうか、楽しみだ。 |
| ロゼ | (……えっ ? なんで風の傭兵団――あたしたちが ?それに……) |
| ラファーガ | あいつらとの旅は本当、楽しい……。 |
| ラファーガ | 冥利に尽きるだろ ? |
| デゼル | ああ。感謝してる。 |
| ロゼ | (デゼルだ ! 隣にいる人は…… ?) |
| コナン皇子 | 大陸一の風の傭兵団を是非ともローランスに連ねたいのです。 |
| ロゼ | あたしがコナン皇子と婚約 ? 夢みたい ! |
| ラファーガ | よかった。旅が終わっちまうのは残念だがな。 |
| デゼル | ……イヤだ。 |
| デゼル | 終わらないでくれ……。 |
| デゼル | (…… !) |
| ロゼ | コナン皇子 ! 団長が居ないんです。 |
| コナン皇子 | …………。 |
| デゼル | その子に近づくんじゃねえ。 |
| コナン皇子 | 私に指図する貴様は何者か。 |
| ラファーガ | こいつ……すでに憑魔に……。 |
| デゼル | (そうだ……すでに憑魔になっていた皇子がロゼたちを嵌めた。そして、あいつが……サイモンが現れた…… !) |
| サイモン | (何故これほどの短期間で憑魔と化したのだろうな ?) |
| ロゼ | (それって、どういう意味 ?) |
| コナン皇子 | 衛兵 ! 逆賊がここに ! |
| コナン皇子 | 風の傭兵団、団長ブラドは第一皇子レオンを殺害。身柄をペンドラゴ守警隊によって拘束された。よって貴様ら全員も拘束する。 |
| サイモン | (わかるだろう ? コナン皇子が憑魔と化し我欲に従い、邪魔者を除こうと考えたからだ) |
| サイモン | (そして……コナン皇子が憑魔になった原因もわかっていよう ?) |
| デゼル | (…………) |
| サイモン | (『彼』だ) |
| ロゼ | (デゼル ! ? まさか……。もしかして、この過去はサイモンの幻術で作って……) |
| コナン皇子 | お前は私のものとなるなら特別に赦免しよう。 |
| ロゼ | なっ ! |
| ロゼ | (……やっぱり、この記憶は間違ってない。この後あたしは思わずコナン皇子に切りかかって……) |
| ロゼ | こんのー ! |
| ラファーガ | 間に合え ! |
| ラファーガ | ぐ、うぅぅああ ! |
| ロゼ | (―― ! !あの人、コナン皇子からあふれ出した穢れからあたしを守ってくれたんだ……) |
| サイモン | すべて貴様の加護の賜物……人はその力を持つものを何というか知っているか ? |
| サイモン | 疫病神だ。 |
| デゼル | ……俺のせい……だった ? |
| デゼル | 全て……俺の…… ? |
| サイモン | ――私への濡れ衣は晴れたようだ。さて、偽りの殻を破った感想はいかがかな ? |
| デゼル | ……俺……は……俺が……全部っ……。 |
| Character | 3話【12-2 グリンウッド領 森2】 |
| サイモン | 導師たちを食い止めるのは難しいか。だがあの男……。 |
| デゼル | はあっ、はあっ……、くそっ ! |
| ザビーダ | おい、どうした、動きわりぃぞ ! |
| アリーシャ | ロゼ ! デゼル様に何かあったのか ! |
| ロゼ | ちょっとね。けど今はサイモンが先 ! |
| サイモン | ……答えは聞けずじまいか。だがあの様子であれば、しばらくの足止めとなろう。 |
| サイモン | すぐに参じます。我が主 ! |
| エドナ | なに…… ? 不思議ちゃんたちが消えてくわ。 |
| ライラ | これは……、どうやらサイモンさんはこの場を離れたようですね。 |
| スレイ | そっか……。ひとまず、みんな無事で良かった。ロゼ、デゼル、怪我はない ? |
| ロゼ | 平気。サンキュー、みんな。 |
| デゼル | こっちも……何ともねえ。 |
| エドナ | 何ともないって顔じゃないでしょ。ちゃんと説明しなさい。 |
| エドナ | 仕掛けてきたのはあっちだけどあなた、復讐を優先して突っ走ろうとしたのよ。 |
| デゼル | ……悪かった。 |
| スレイ | それで、デゼルの復讐相手ってやっぱりサイモンだったのか ? |
| デゼル | ………………俺だ。 |
| スレイ | 『俺』って ? |
| ロゼ | あのさ、その話する前にちょっといい ?デゼルの復讐のこと、今まで知らなかったのってあたしだけ ? |
| スレイ | えっ ? あ……えっと、ごめん、黙ってて。 |
| ロゼ | 違う違う。謝って欲しいわけじゃないんだ。ただ、知りたいだけだから。 |
| ロゼ | 昔のあたし、風の傭兵団にデゼルやその友達も出てきてさ。あんなの突然見せられて、正直戸惑ってるんだ。 |
| ザビーダ | なるほどね。あいつの術で記憶を見せられたのか。 |
| ロゼ | うん。まあ、その辺の話はきちんと後でする。でさ、デゼルはずっとあたしと一緒にいたってことだよね ? |
| デゼル | ……ああ。俺は風の傭兵団と一緒に旅をしてた。それが終わろうとした時、願ってしまったんだ。……まだ、続けばいいってな。 |
| デゼル | そのせいで、風の傭兵団は崩壊した。 |
| 二人 | えっ ! ? |
| アリーシャ | デゼル様が願ったのは悪いことではないかと……。 |
| デゼル | それが俺の呪われた加護だ。ロゼが不幸になったのも、あいつが死んだのも ! |
| デゼル | なのに俺は……その記憶を全部封じ込めて復讐という『嘘』に逃げこんだ…… ! |
| デゼル | ロゼのことも、復讐のための器として育てた。スレイたちに俺の目的を口止めさせたのも都合よく使うためだ ! |
| デゼル | ……全部俺が発端だ。 |
| ロゼ | なるほどね、話はわかった。 |
| デゼル | ……本当にわかってんのか ?俺がお前を不幸にした原因だって言ってんだぞ。 |
| ロゼ | だから、何 ? |
| エドナ | 随分と軽く流すのね。 |
| ロゼ | 今さら騒いだって仕方ないでしょ。それに軽く流してるわけじゃない。 |
| ロゼ | 何も言ってくれなかったことや利用しようとしてたってのはムカついてる。 |
| デゼル | …………。 |
| ロゼ | けど、それ以上に、今まで知らないところでずっとデゼルが助けてくれてたってわかったんだ。 |
| ロゼ | 事件の後だって、風の骨として旅ができた。だからあたしは、デゼルが一緒にいてくれて感謝してる。 |
| ロゼ | デゼルの友達だって命をかけてあたしを助けてくれた。だから……。 |
| ロゼ | そういうの、全部わかってよかった。以上 ! |
| デゼル | 以上って……それだけかよ !サイモンの言葉を忘れたわけじゃないだろう。 |
| デゼル | 俺はあいつと同じ業を背負った天族、疫病神だ !存在することが『悪』になるんだぞ。 |
| デゼル | これから先、一緒にいてどうなるかわかんねえ。なのにお前はそれでいいのかよ。 |
| ロゼ | いいよ。今までだって、デゼルが側にいて不幸だなんて思ったことないし。昔のことも、ずっと引きずってらんないでしょ。 |
| デゼル | けどな……。 |
| ザビーダ | なんだよ、煮え切らねえなぁ。このままじゃ全部許されちまったようで納得できねえってか ? |
| デゼル | ……うるせぇ。 |
| ザビーダ | まあ、手酷く責めてくれた方が楽になるわな。お前の罪悪感が薄れてよ。 |
| ザビーダ | けどな、ロゼの言葉をどう受け取るかはお前次第だ。これからの生き方も含めて自分でケジメつけなきゃなんねえことだろ。 |
| デゼル | ……っ ! |
| スレイ | えっと……あのさデゼル、ロゼの言ってること今はそのまま受け止めていいんじゃないか ? |
| スレイ | オレも、デゼルがどうするべきか他人が決めることじゃないと思う。 |
| スレイ | けど、決めるのはデゼルでも、その結論を出すまでみんな一緒に悩むことはできるよ。『業』ってやつのことも。 |
| デゼル | スレイ……。 |
| スレイ | それにさ、このティル・ナ・ノーグには他の世界の人たちが集まってる。色んな知恵が集まってるんだ。 |
| スレイ | オレたちの世界ではあり得ない新たな道を見つけられるかもしれない。そういう可能性だって、ゼロじゃないよな ? |
| デゼル | 可能性……か。 |
| ザビーダ | おっ、ちょっとは腑に落ちたか ?さすがは導師様のお言葉だねぇ。ありがたい、ありがたい ! |
| スレイ | ザビーダ、何か馬鹿にしてない ? |
| エドナ | まったく、将来のことで悩むとかまだまだ子供の証拠ね。子供デゼル、略して子ゼル。 |
| アリーシャ | 子ゼル……それは何とも可愛らし……い、いえ、失礼しました ! |
| デゼル | チッ……。 |
| ミクリオ | みんな、調子が戻って来たみたいだな。 |
| ライラ | ええ。どんな時も希望を見出そうとするスレイさんの言葉が届いたようです。 |
| ミクリオ | それにしても……業を背負った天族か。 |
| ライラ | アイゼンさんも死神と呼ばれる加護を持っていますがあの方は素晴らしい出会いを経てから割り切れたと聞いています。 |
| ライラ | 願わくば、デゼルさんもそうあって欲しいのですが。そしてサイモンさんも……。 |
| ザビーダ | サイモンはともかく、あいつは平気じゃないかね。全部知った上で付き合うって言うお人よし共が一緒だからな。 |
| スレイ | あーあ、すっかり足止めくらっちゃったよ。 |
| アリーシャ | そうだな。すぐにヘルダルフの捜索を再開しよう。またいつ、妨害が入るかわからない。 |
| ロゼ | ってかさ、サイモンって、ヘルダルフの仲間なのかな。助けるみたいなこと言ってたし。 |
| エドナ | それもひげネコを探し出せばはっきりするでしょ。――で、一応聞くけど、あなたはどうするの ? |
| デゼル | 俺はもう一度サイモンに会わなきゃならない。自分自身の落とし前をつけるためにもな。 |
| デゼル | お前たちについて行くぜ。 |
| スレイ | よし、決まり ! それじゃ、出発しよう。 |
| ロゼ | 行こう、デゼル ! |
| デゼル | ああ。それとな、ロゼ……。 |
| ロゼ | ん ? |
| デゼル | ………………。 |
| デゼル | ……すまなかった。 |
| ロゼ | おう ! |
| Character | 4話【12-4 静かな平原1】 |
| アリエッタ | 待ち合わせ場所、もうすぐ、です。 |
| メルクリア | うむ…………。 |
| アリエッタ | ……メルクリア、疲れたの ?アリエッタのお友達に、運んでもらう ? |
| メルクリア | 平気じゃ。 |
| アリエッタ | でも、平気じゃない……です。さっきから歩くのが遅くなってる。 |
| メルクリア | う……、バレておったか。 |
| アリエッタ | どうして ? 待ち合わせに来るのがウィルって人じゃないから ? |
| メルクリア | いや、そうではない……わけでもないが当たらずとも遠からず……ううむ……。 |
| アリエッタ | ごめんなさい、何言ってるかわからない……。 |
| メルクリア | じゃな、すまぬ !実は、あちら側の連絡係として来ることになったのがカイウスという者なのじゃ……。 |
| アリエッタ | カイウス ? |
| メルクリア | アリエッタはルキウスを知っておるな。その兄弟じゃ。顔を見ればすぐわかる。 |
| メルクリア | 以前、わらわは、カイウスたちに酷い仕打ちをしてしまった。 |
| アリエッタ | それじゃ、カイウスは怒ってるの ? |
| メルクリア | それが、カイウスとは最近魔鏡通信で連絡を取るようになったのじゃ。ありがたいことに和解にも応じてくれた。 |
| メルクリア | じゃが、直に会うのは久しぶりでな。どのような顔で会えばよいものか考えると気が重い……。 |
| アリエッタ | 気が重い……のは嫌いってこと ?会いたくない、です ? |
| メルクリア | まさか、むしろ大好きじゃ !わらわにとっては、大事な友。会いたいに決まっておる。 |
| アリエッタ | それなら、カイウスも同じかも……。 |
| メルクリア | そうかのぅ……。 |
| アリエッタ | でも、メルクリアが今みたいな暗い顔で来たらカイウスは、会いたくなかったのかなって思って悲しくなるかも……です……。 |
| メルクリア | あ……。 |
| アリエッタ | アリエッタ、好きな人に笑ってほしいもん……。 |
| メルクリア | ……そうじゃな。わらわは自分のことばかりでカイウスの気持ちを忘れておった。 |
| メルクリア | ありがとう、アリエッタ。心配をかけたな。 |
| アリエッタ | よかった ! じゃあ、急いで―― |
| アリエッタの魔物 | グルルルルゥ…… ! |
| メルクリア | アリエッタ、友人たちが騒いでおるが ? |
| アリエッタ | ……誰か来る、です !メルクリア、アリエッタの側にいるです ! |
| ロミー | 見つけたわ。情報どおり。よくやったわね、チトセ。 |
| チトセ | あなたに褒められたくてやってるわけじゃない。 |
| ロミー | マティウス様の為でしょ。わかってるわよ。さて……。 |
| ロミー | 久しぶりね、アリエッタ。石ころイオンと一緒に消えちゃったけど元気にしてるみたいじゃない。 |
| アリエッタ | お前……お前は……っ ! |
| メルクリア | アリエッタ…… ?なんじゃ貴様らは。 |
| アリエッタ | こいつらは敵っ ! お前……許さないからっ ! |
| チトセ | ……ロミー、あなたこの子に何かしたの ? |
| ロミー | 大事な人との再会をロマンチックに演出してあげただけよ ? |
| チトセ | 悪趣味ね……。 |
| メルクリア | 落ち着くのじゃ、アリエッタ ! |
| ロミー | そうよ、大人しくしてて。用があるのは『鏡士』なんだから。――かかりなさい ! |
| 帝国兵β | 皇女を確保せよ ! |
| メルクリア | っ ! ? |
| アリエッタ | 駄目っ ! みんな、お願い ! |
| 帝国兵β | ぐはあっ ! |
| チトセ | 魔物…… ! 厄介ね。 |
| チトセ | ねえ皇女さま、あなたが一緒に来てくれれば手荒なことはしないわ。 |
| アリエッタ | うるさい !お前たちなんかに、メルクリアは渡さないから ! |
| メルクリア | わらわとて、大人しく捕まる気などさらさらないわ ! |
| チトセ | まったく……。やるしかないようね。 |
| Character | 5話【12-5 静かな平原2】 |
| アリエッタ | クリムゾンライオット ! |
| ロミー | ふふっ、あの時は廃人みたいだったのにずいぶんと元気じゃない。 |
| アリエッタ | メルクリアに近づかないで ! |
| ロミー | そんなに皇女様が大事だなんてイオン様はもう、どうでもいいのね。 |
| アリエッタ | っ ! そんなことないもん ! |
| ロミー | 無理ないわ。あんな汚い石ころになっちゃったんだもの。もう捨てちゃった ? |
| アリエッタ | うるさい ! ここに、ちゃんといるっ ! |
| ロミー | そう……、――そこねっ ! |
| アリエッタ | あっ ! |
| ロミー | 本当ね。ちゃんと持ってた。 |
| アリエッタ | あっ…… ! 返して、イオン様っ ! |
| メルクリア | アリエッタ ! |
| ロミー | いつまでも思い続けるのは辛いでしょう ? |
| ロミー | この石ころも消して未練を断ち切ってあげるわね。 |
| アリエッタ | いやっ、やめてーーーーっ ! |
| メルクリア | ミゼラブル・トーチャー ! ! |
| ロミー | きゃあっ ! |
| メルクリア | 返してもらうぞ !受け取れ、アリエッタ ! |
| アリエッタ | イオン様っ ! |
| メルクリア | よかった……――っ ! ? |
| ロミー | ――つかまえた。 |
| メルクリア | すまぬ、アリエッタ。そなたの責ではない。煽られているのはわかっていたがわらわが黙って見ておれなかった……。 |
| カイウス | メルクリア――――っ ! |
| チトセ | 援軍 ? |
| ロミー | カイウスだわ。他も懐かしい顔ばっかりね。 |
| メルクリア | ――離せっ !カイウスーっ ! |
| 全員 | ロミー ! ? |
| ロミー | ふふっ、お久しぶりね。 |
| チトセ | ロミー、まだ戦うつもり ? |
| ロミー | まさか。挨拶だけよ。鏡士は確保済みだもの。――転送魔法陣展開 ! |
| メルクリア | ………………。 |
| カイウス | メルクリアを返せ ! 餓狼―― |
| カイウス | なっ……消えた ! ? |
| ルビア | 転送魔法陣よ !もう少し早く騒ぎに気付いてたら間に合ったのに…… ! |
| アリエッタ | アリエッタのせい、です……どうしよう……。 |
| アーリア | 大丈夫 ? 怪我はない ? |
| アリエッタ | ごめんなさい……。メルクリア、攫われちゃった……。総長たちに連絡しないと……。 |
| カイウス | 何があったか教えてくれ。どうしてメルクリアは連れていかれたんだ。 |
| アリエッタ | わからない、です……。でも、ロミーは鏡士に用があるって……。 |
| ティルキス | だとすると、メルクリア個人でなく鏡士を狙ったということになるな。 |
| カイウス | 嫌な予感がする……。すぐに助けに行こう ! |
| アーリア | でも、後を追うにも転送魔法陣は閉じてるわ。他の手がかりを探さないと。 |
| ティルキス | 後を追えないとなると……。アリエッタ、君の魔物の嗅覚で敵の匂いを追うことはできるか ? 襲撃前のでいい。 |
| フォレスト | なるほど、消えた先ではなく奴らがここへ来るまでの匂いをたどるということですね。 |
| アリエッタ | 無理です……。みんな、ロミーの……あいつらの匂いはないって……。 |
| ティルキス | そうか。襲撃時も、転送魔法陣を使ったのかもしれない。 |
| フォレスト | この兵士たちもリビングドール兵のようでした。恐らく情報は得られないでしょう。 |
| ティルキス | 参ったな……手詰まりか。 |
| 全員 | ! ! |
| カイウス | 今のは…… ? |
| ルビア | 転送魔法陣が起動してるわ。どうして……。 |
| アーリア | みんな、ここで待っていて。調べてみるから――あっ ! |
| ルビア | カイウス ! ? 何する気よ ! |
| 全員 | カイウス ! |
| アリエッタ | カイウス、行っちゃった…… ! |
| ティルキス | 俺たちも転送魔法陣へ ! カイウスを追うぞ ! |
| Character | 6話【12-6 セールンド城内1】 |
| フォレスト | ここは…… ? |
| アリエッタ | ……この部屋、見覚え、ある……です。カレイドスコープの間…… ? |
| カイウス | みんな、来たんだな。わっ、アリエッタの魔物も一緒か ! |
| ルビア | カイウスのバカっ ! 勝手に行動して !罠だったらどうする気よ ! ? |
| カイウス | なんだよ、いきなり ! |
| ティルキス | ルビア、もう少し静かに、な ? |
| アーリア | 気持ちはわかるけど落ち着いて。 |
| ルビア | ごめんなさい……。でも、一人で飛び込むなんて……。 |
| カイウス | わかったわかった。気を付ける。けど、ちゃんと転送されたんだからいいだろ ? |
| フォレスト | カイウス、そういうことじゃない。どうしてルビアが怒っていると思う ? |
| カイウス | それは……オレが勝手に……。 |
| ルビア | …………。 |
| カイウス | ……そうだよな。心配かけてごめん。ルビア、みんな。 |
| ルビア | いいの。あたしもカッとなっちゃって、ごめんなさい。 |
| ルビア | 考えてみれば、カイウスの無茶はいつものことだもの。これくらいで怒ってたら身がもたないわよね。 |
| カイウス | いつものことって無茶するのはお前のほうだろ ? |
| ルビア | あたしがいつ無茶したっていうのよ ! |
| アーリア | はいはい、いつもどおりね。よかったわ。 |
| ティルキス | 喧嘩してると安心するっていうのも妙な話だな。 |
| フォレスト | さて、では今のうちに状況を整理しましょう。 |
| フォレスト | アリエッタ、先ほど言っていたがこの場所がカレイドスコープの間だというのは間違いないか ? |
| アリエッタ | 多分……です。でもメルクリアはここにいる。みんな――アリエッタのお友達が言ってる、です。匂いがするって。 |
| ティルキス | よし、ではこのままアリエッタの魔物に匂いをたどらせて捜索しよう。 |
| アーリア | こんなに上手くいくなんて、少し心配ね。やっぱり罠の可能性も捨てきれないわ。 |
| カイウス | 大丈夫だよ、きっと。勘だけど、転送魔法陣が再起動したのはメルクリアがやったんじゃないかって思うんだ。 |
| ルビア | どうして ? |
| カイウス | メルクリアがつかまってるとき、それまで抵抗してたのにさ、連れ去られる直前に大人しくなって何か唱えてたように見えたんだ。 |
| カイウス | だから転送魔法陣が再起動したときにメルクリアかもって。 |
| フォレスト | それが本当なら大したものだがな。あの状況でロミーの目を盗むのは簡単ではない。 |
| アーリア | ロミー……スポットに乗っ取られたままなのね。可哀そうな子……。元に戻してあげられたらいいのに……。 |
| ティルキス | ……メルクリアを探そう。アリエッタ、頼む。 |
| アリエッタ | 待ってください。敵が…… ! |
| 帝国兵βたち | 侵入者発見。これより排除を開始する。 |
| メルクリア | (カイウスたち、転送魔法陣の再起動に気づいてくれたであろうか……) |
| ロミー | お待たせ、ルキウス。 |
| メルクリア | ルキウス ! ? 無事であったか ! |
| ルキウスγ | 準備はできています。ロミー様。チトセ様。 |
| メルクリア | ルキウス……そなた、また……。 |
| ロミー | そう、ご苦労様。では皇女様、こちらへ。 |
| メルクリア | 離せ !お前たち、わらわに何をするつもりか ! |
| ロミー | あなたは何も知らなくていいわ。さて、始めましょうか。 |
| メルクリア | 何を――あああああっ ! |
| ロミー | ふふっ、ルキウスとおそろいになれるわよ ?喜んでもらえるかしら。 |
| チトセ | リビングドールγ……本当に趣味の悪い術式ね。私はこれで失礼するわ。 |
| ロミー | せっかくいいところなのに、最後まで見ていかないの ? |
| チトセ | 生憎だけど興味ないの。それより、あなたの部隊が集めたクロノスの分霊を渡してちょうだい。 |
| ロミー | ええ、もちろん。――ルキウス、持ってきて。 |
| ルキウスγ | はい、こちらです。 |
| チトセ | 確かに預かったわ。それじゃ。 |
| ロミー | ……つれないわねぇ。この楽しみが分からないなんて、可哀そう。 |
| ロミー | さて、と。アルトリウスのほうは準備に手こずっているみたいだしこっちは先にやらせてもらいましょうか。 |
| ロミー | さあ、皇女様。その鏡士の力で新たな大地を具現化してちょうだい。 |
| Character | 7話【12-8 アジト】 |
| イクス | それじゃ、ベルベットさんたちはミッドガンド領でアルトリウスと会ったけど転送魔法陣で逃走された、ってわけか。 |
| マーク | ああ。そんで俺たちはベルベットたちを回収してグリンウッド領へ向かってるところだ。 |
| カーリャ | グリンウッド領 ? アルトリウスを追ってるのになんでミッドガンド領で探さないんですか ? |
| フィリップ | ロゼの報告や、ベルベットたちの話を総合するとヘルダルフを監禁していたのは帝国から離反寸前のアルトリウス一派だ。 |
| フィリップ | 彼ら一派は、逃走中のヘルダルフを捕獲するためにグリンウッド領に現れるはず――ベルベットたちはそう考えているようだね。 |
| ミリーナ | それなら、目的が同じスレイさんたちと合流したほうがいいわ。 |
| イクス | ああ。下手をしたら帝国、アルトリウス、ヘルダルフの三勢力と戦うことになるかもしれないしな。 |
| ミリーナ | ネヴァン、スレイさんたちと連絡はとれた ? |
| カーリャ・N | いいえ。やはり先ほどから途絶えたままです。何かあったのかもしれません。 |
| マーク | そっちもゴタついてんな。とりあえず、合流の話は連絡が取れたらにしようぜ。こっちも動きがあったらすぐに連絡する。 |
| マーク | それとイクス、ベルベットたちが言ってたぜ。コーキスがお前のこと話してたってさ。 |
| イクス | えっ ? |
| マーク | イクスは心配性だから、ちゃんと連絡してから行動してくれって言ってたらしい。 |
| カーリャ | はああっ ! ? どの口が言いやがってんですかぁ ! |
| マーク | ははっ、だよな ! こじらせすぎなんだよ、あいつ。 |
| カーリャ・N | あなたたちも人のこと言えませんよ ? |
| 二人 | どの口が……。 |
| イクス | そうか、コーキス……。 |
| カーリャ | うっ ! ! |
| ミリーナ | カーリャ、どうしたの ? |
| カーリャ | 何かが来ます ! この感覚……気持ち悪い……。 |
| マーク | 俺も感じる……こいつは……。 |
| フィリップ | マーク、大丈夫か ? 何が起きてるんだ ? |
| ガロウズ | ビクエ様 ! 地上に大規模な揺れを観測中 !こいつは相当でかいですよ。 |
| フィリップ | 地震 ? マーク、まさか……。 |
| マーク | そのまさかだよ。これは地震じゃない。【鏡震】だ。 |
| 二人 | 鏡震 ! ? |
| イクス | 異世界の大陸が具現化されたのか ! ? |
| マーク | 多分な。被害がないか、地上軍に連絡取らねえと。お互い浮遊島とケリュケイオンじゃ揺れの度合いもわからねえ。 |
| フィリップ | ガロウズ、今の震源地がどのあたりか調べて全ての観測データを過去の鏡震時と照合してくれ。 |
| ガロウズ | 了解です。 |
| ガロウズ | ――数値、ほぼ全て一致しました。間違いなく大陸具現化によるものです。 |
| ミリーナ | そんな……誰が具現化したのかしら。帝国 ? |
| フィリップ | だとしても、今さら異世界を具現化する目的がわからない。まずは大陸そのものを調べてみないと。 |
| イクス | 俺たちで調査に向かいます。何度も新大陸の確認に行ったことがあるし適任でしょう ? |
| イクス | ガロウズに新大陸の位置情報を送るよう伝えてください。 |
| ガロウズ | 聞こえてるぜ。今、送った。 |
| イクス | ありがとう !それじゃ、ケリュケイオンはそのままベルベットさんたちをお願いします。 |
| フィリップ | ああ、そちらは頼んだよ。何かあったらすぐに連絡してくれ。 |
| Character | 9話【12-11 セールンド 街道1】 |
| フォレスト | 追っ手は来ていません。どうやら振り切ったようですね。 |
| ティルキス | そうか。さて、これからどうするか。ルキウスもメルクリアも、まだ目が覚めないしなぁ。 |
| アーリア | ビフレスト側との連絡は取れないし……一旦、アジトへ連れていきましょうか。 |
| メルクリアγ | うっ……私……は……。 |
| カイウス | あっ、目が覚めたぞ ! |
| メルクリアγ ? | ……お前たち……何者……いや……違う…………。 |
| ティルキス | ―― ? なんだか様子がおかしいぞ ? |
| フォレスト | まさか、この皇女もリビングドールなのでは ? |
| メルクリア ? | 私……いや、わらわは……一体……。くぅ……。体に力が……入らぬ……。 |
| アリエッタ | メルクリア……だよね ?痛いの ? 大丈夫…… ? |
| カイウス | ……うん、今はちゃんとメルクリア、だと思う。どういうことなのかよくわからないけどリビングドールではなさそうだ。 |
| ルビア | メルクリア、気分はどう ? |
| メルクリア | ル、ビア…… ? |
| メルクリア | ルビア ! カイウス ! アリエッタ !そなたたちが助けてくれたのか。 |
| カイウス | ああ。けど、一番頑張ったのは、こいつだよ。 |
| メルクリア | ルキウス…… ! 気を失っておるのか ? |
| アーリア | ええ。ロミーを攻撃した後、倒れたの。 |
| メルクリア | 何故じゃ……。ルキウスは、リビングドールになっておったはずじゃが。 |
| ルビア | 自力で解除したみたい。ロミーも驚いてたわ。 |
| ティルキス | 多分、リビングドールγだったんじゃないか ? |
| ティルキス | あれは心核の入れ替えがなくてもリビングドール化できるんだろう ?強力な暗示を施すようなものだって聞いてるぜ。 |
| メルクリア | うむ、お主の言うとおりじゃ。わらわもリビングドールγにされたが今は我を取り戻しておる。 |
| メルクリア | リビングドールγは心核を抜かぬ故暗示が解けてしまえば、どうということはない。 |
| アリエッタ | それじゃ、今のルキウスは…… ? |
| メルクリア | そうか ! 心核がある筈じゃな ! 調べてみよう。 |
| メルクリア | …………うむ、確かにきちんと戻っておるな。 |
| ティルキス | やっぱりそうか。ある意味、運が良かったかもしれないな。リビングドールγで。 |
| アーリア | メルクリア、あなたが捕まったことが切っ掛けになったのかもしれない。あれは強い刺激を受けると解除に至ると聞いてるわ。 |
| アーリア | 捕まったあなたを見てどうしても助けたかったんでしょうね。 |
| メルクリア | …………。 |
| アリエッタ | メルクリア、嬉しくない、です ? |
| メルクリア | ……嬉しいに決まっておる。じゃが、そこまでルキウスを追いつめたのかと思うとな。 |
| カイウス | 違うよ。メルクリアがいてくれたからルキウスは元に戻れたんだ。きっとルキウスも安心してると思う。 |
| メルクリア | そうであれば、よいのじゃが……。 |
| カイウス | なあ、ルキウスが元気になったら会いに来てくれよ。 |
| メルクリア | ……いや、その約束をする前に言わねばならぬことがある。 |
| メルクリア | カイウス、ルビア、そなたたちにはこれまで酷いことをしたな。そしてティルキスにもじゃ。 |
| カイウス | えっ…… ? |
| メルクリア | 帝国では、そなたたちの助言も聞き入れずルビアやルキウス、それにティルキスも巻き込んで辛い目にあわせた。 |
| メルクリア | すまぬ……。まこと、わらわは愚かであった。この償いは必ずする。 |
| カイウス | ま、待ってくれよ。もういいって言っただろ ?魔鏡通信でさ。 |
| メルクリア | それでも、きちんと顔を合わせて謝るべきことじゃ。 |
| メルクリア | それから、フォレストであったか。そなたのことは……わらわもよく知らぬ。だがリビングドールになっていたことは知っている。 |
| メルクリア | わらわの浅慮が、そなたを巻き込む一因であったことは否めない。許してくれとは言わぬが償わせて欲しい。 |
| フォレスト | い、いや……。そんなことを言われても……。 |
| ルビア | ねえ、メルクリア。あなたがわかってくれたならもういいの。償いなんて言わないで。 |
| ルビア | それに元々、この世界で最初に助けてくれたのはメルクリア、様……なんだし。それについては感謝してるの。 |
| メルクリア | 様、などいらぬ。ルビアはわらわの家臣ではない。それに……―― |
| カイウス | わかった。なら、もう一度、出会い直そう。ここからスタートだ。 |
| ルビア | そうね !カイウスにしてはいいアイディアじゃない。 |
| メルクリア | それは……どういうことじゃ ? |
| ルビア | 友達として出会いましょうってこと。よろしくね、メルクリア。 |
| カイウス | これで、気軽に遊びに来られるよな ?そしたら、ルキウスにも会ってやってくれ。 |
| メルクリア | ……お主らは……。 |
| メルクリア | ありがとう…… !これから……よろしく頼む。 |
| アリエッタ | 友達増えて、よかったね。 |
| メルクリア | うむ、よき出会いに感謝せねばな。 |
| カイウス | それじゃティルキス、フォレストさんメルクリアたちをよろしく。 |
| フォレスト | ああ、そちらもな。アジトに帰ったらすぐにルキウスを診てもらうんだぞ。 |
| メルクリア | ルキウスの回復を祈っておる。ウィルにも、よろしく伝えてくれ。もし……ウィルが嫌でなかったら、会いたい、と。 |
| カイウス | わかった。この浄玻璃鏡を渡してちゃんと伝言も伝えるよ。 |
| ルビア | じゃあね。メルクリア、アリエッタ ! |
| アリエッタ | 私たちも帰ろう ? メルクリア、歩ける ? |
| メルクリア | 歩く程度ならば問題ない。しかし、なぜこんなにも力が入らぬのか……。 |
| ロミー | あなたは何も知らなくていいわ。 |
| メルクリア | わらわは何をした…… ? |
| デミトリアス | そうか……。やはり、新たな大陸の出現はきみの計画ではなかったか。 |
| グラスティン | ああ。目下調査中だ。さて、犯人はフィリップか、イクスかそれともビフレストの仕業か。 |
| 帝国兵 | 申し上げます !調査隊からの報告です。 |
| グラスティン | 来たか、どうなってる ? |
| 帝国兵 | 現在、新大陸への進軍は順調とのことです。それぞれの領からリビングドール兵を―― |
| グラスティン | あ ? 何の話だ ? |
| 帝国兵 | ですから、アレウーラ領、レグヌム領、グリンウッド領ミッドガンド領から、新大陸へ向けてリビングドール兵が進軍しているとの報告です。 |
| グラスティン | そんな命令は出していない。デミトリアス、お前か ? |
| デミトリアス | いや、私もだ。 |
| 帝国兵 | それでは、中止命令を出しますか。 |
| グラスティン | ……今はいい。調査を続けろ。 |
| 帝国兵 | 承知しました。失礼します。 |
| グラスティン | ……糸を引いているのはアルトリウスに違いない。あいつは以前から妙な動きをしていた。 |
| デミトリアス | 信念のある有能な人材だと思ったが裏切りもそれ故ということか。残念だよ……。 |
| グラスティン | となると、腐った肉は削ぎ落とさないとな。すぐに蛆が湧いちまう。いいだろう ? |
| デミトリアス | ……………………。 |
| デミトリアス | 仕方がないね……。アルトリウスへの【贄の紋章】の刻印を許可しよう。 |
| Character | 10話【12-13 グリンウッド領 森4】 |
| サイモン | 今の揺れは…… ? |
| サイモン | ……いや、些末なことに心を砕く暇はない。我が主を追うのが先だ。 |
| サイモン | 感じる……この力は間違いなくヘルダルフ様のもの。しかも以前にも増して領域が強まっている。 |
| サイモン | もしや、魔導器とやらが影響しているのか ? |
| アルトリウス | これ以上は近づかぬ方がいいぞ。聖隷よ。 |
| サイモン | 誰だ。 |
| アルトリウス | この周辺には業魔が潜んでいる。会えば無事では済むまい。 |
| サイモン | ……いらぬ世話だ。退け。 |
| アルトリウス | 哀れな業魔の餌になりたくないだろう。 |
| サイモン | 哀れと言ったか ? 我が主への侮辱、許さぬぞ ! |
| アルトリウス | 主だと ?お前はヘルダルフに縁のある者か。 |
| アルトリウス | であれば、聖隷――いや天族の娘よ。一緒に来てもらう。 |
| サイモン | ふざけたことを。我が行く手を阻んだこと夢幻の狭間で悔やむがいい ! |
| アルトリウス | 小賢しい真似をする。 |
| サイモン | 何っ ! |
| アルトリウス | この程度の幻術で、私が惑うとでも ? |
| サイモン | 貴様は一体……。 |
| アルトリウス | これ以上、付き合う気はない。クレーメルケイジにでも入っていてもらおう。 |
| サイモン | くっ…… ! |
| アルトリウス | 逃がしはせん。 |
| サイモン | なっ、体が吸い込まれ――…… ! |
| アルトリウス | 無事収まったか。思わぬ収穫だったな。 |
| ロゼ | はぁ、びっくりした……。今の地震、結構大きかったね。 |
| アリーシャ | ああ。この揺れ、鏡震を思い出したよ。 |
| ロゼ | また大陸ができたとか ?なーんて……って、どうしたみんな ! 顔怖い ! |
| デゼル | 妙だ……。風が乱れている。 |
| ミクリオ | ああ。さっきから様子がおかしい。揺れの後から精霊の力が強まってる。 |
| ライラ | やはり、みなさんも異常を感じていたんですね。気のせいかと思ったのですが……。 |
| エドナ | ちなみに、ここにも様子のおかしいのがいるけど。 |
| スレイ | ……うん、ちょっと待ってて。 |
| エドナ | ワタシのツンツンに動じないなんてホントに異常事態のようね。 |
| スレイ | 感じたんだ、ヘルダルフの領域をさ。強い穢れが集まってる方向を探ってた。 |
| ザビーダ | マジかよ。いよいよご対面か。 |
| スレイ | 見つけた ! こっちだ。 |
| スレイ | この辺りに…… ! |
| スレイ | 見つけたぞ、ヘルダルフ ! |
| Character | 11話【12-14 グリンウッド領 山岳1】 |
| スレイ | 見つけたぞ、ヘルダルフ ! |
| ヘルダルフ | 誰だ、貴様は。 |
| 全員 | ! ? |
| ミクリオ | 僕たちを知らないなんて……。まさか、リビングドールなのか ? |
| デゼル | そんなはずねぇ。領主の館じゃヘルダルフ本人に見えたぜ。 |
| ロゼ | うん。初期型ってヤツならともかく今のリビングドールじゃあそこまで明確な意志は現れないと思う。 |
| ヘルダルフ | そうか。貴様たちはあの時の鼠だな。ワシの命を欲して、ここまで追ってきたか。 |
| ロゼ | 確かにあの時はそうだったけど今はあたしの出番じゃない。あんたを止めたい奴がいるから。 |
| ヘルダルフ | 止めるだと…… ? |
| スレイ | 穢れが増していく…… ! |
| ヘルダルフ | 我が歩みを阻むか。貴様の連れ共々、相応の覚悟はできていような。 |
| ザビーダ | スレイが『連れ』かよ。ヘルの野郎、本気で俺らの記憶が抜け落ちてやがる。 |
| エドナ | 抜けてるんじゃなくて、『無い』んだとしたら ?あれは、ワタシたちの知ってるひげネコじゃないかもしれない。 |
| エドナ | ここはティル・ナ・ノーグ。具現化された存在が、どの時点のどんな存在なのかわかったものじゃないわ。 |
| アリーシャ | では、今のヘルダルフは災禍の顕主ではないと…… ? |
| スレイ | だとしても放っておけない。あいつの浄化は導師であるオレの役目だ。 |
| ヘルダルフ | 導師と言ったか ? 貴様のような小童が ?笑わせてくれる。 |
| ライラ | その言葉、必ず訂正する時が来ますわ。 |
| ヘルダルフ | そうか。ならば、その導師の力をもって見事うち果たしてみせよ ! |
| アリーシャ | くっ、なんという強さだ…… ! |
| ライラ | アリーシャさん、気を付けて !かの者は、力も穢れの量も災禍の顕主であった時と変わりません。 |
| エドナ | 変わらないどころか、少しづつ穢れが増してるわ。長引かせると厄介よ。 |
| ザビーダ | 同感 ! おいスレイ、全力でいけ ! |
| ミクリオ | 聞こえたな ? |
| スレイ | ああ ! |
| ロゼ | デゼル、あたしらも ! |
| デゼル | おう ! |
| スレイ | ルズローシヴ=レレイ ! |
| ロゼ | ルウィーユ=ユクム ! |
| スレイ | ヘルダルフ、お前はオレが浄化する ! |
| Character | 12話【12-15 グリンウッド領 山岳2】 |
| ヘルダルフ | ……くっ……。 |
| スレイ | これなら――いける ! |
| ヘルダルフ | くっ……、くくく、はっはははは ! |
| スレイ | ! ? |
| ヘルダルフ | この程度か、導師。あの男に比べれば何とも可愛らしいものよ。 |
| アリーシャ | 効いてないのか ! ? |
| エドナ | 効いてないどころかますます穢れが膨張していくわ ! |
| ザビーダ | 領域の影響力も強まってやがる。 |
| ヘルダルフ | くくく……魔導器とは素晴らしいな。力が溢れるようだ ! |
| ロゼ | あっ、あの時の ! |
| ライラ | やはり……穢れの増え方がおかしいと思っていたのです。 |
| ライラ | あの魔導器のせいで、かの者の憎悪や野心までもが糧となり、穢れを永続的に増やしているのでしょう。このままでは……。 |
| スレイ | うおおおおっ ! |
| ヘルダルフ | 来い、導師 ! |
| スレイ | 獅子戦吼 ! ! |
| ヘルダルフ | それが……獅子戦吼だと ? 笑わせるわ ! |
| ヘルダルフ | これが ! ! |
| ヘルダルフ | 本当の ! ! |
| ヘルダルフ | 獅子戦吼だ ! ! |
| 全員 | うわああああっ ! ! |
| スレイ | こんな……こんなに力の差が……。 |
| スレイ | (やっぱり、今のオレじゃ災禍の顕主に匹敵する穢れは浄化できないのか…… ?) |
| ヘルダルフ | 貴様ら全員、己が無力を嘆いて死ぬがよい。 |
| ザビーダ | くそっ、仕方ねえ。 |
| ライラ | ザビーダさん、何を ! |
| ザビーダ | 大事にとっておいたが一発はお前のためにくれてやるぜ、ヘルダルフ。 |
| ザビーダ | 憑魔は地獄へ連れてってやらねえとな ! |
| ヘルダルフ | ! ! |
| ライラ | 待ってください、ザビーダさん !かの者の領域が解かれていきます ! |
| アリーシャ | どうして…… ! ? |
| ヘルダルフ | ここまでだ。今回は見逃してやろう。 |
| ザビーダ | へっ、殺されるとわかってビビったか ? |
| ヘルダルフ | 貴様ごときに殺せるものかよ。だが、その得体のしれぬ力は避けねばならぬ。 |
| エドナ | 勘のいいひげネコね。 |
| ヘルダルフ | 万が一この力を損なえば、我が身を呪いにかけたあの男への報復が叶わぬのでな。 |
| ヘルダルフ | 導師よ、いずれ貴様とも雌雄を決するときが来よう。 |
| デゼル | 満身創痍だな。 |
| ロゼ | ……認めるよ。今回はこっちの負け。 |
| ミクリオ | スレイ……。 |
| スレイ | …………。 |
| テレサ | いけません、オスカー !傷が開いたらどうするのですか。 |
| オスカー | 大丈夫、もう動けます……。一刻も早く、ヘルダルフを……っ ! |
| テレサ | 痛むのですね。さあ、横になって。 |
| オスカー | すみません、姉上……。 |
| テレサ | なぜ謝るのです。私をかばって負った怪我なのに。 |
| テレサ | 謝らなければいけないのは私の方です。あなたに傷を増やしてしまった……。 |
| オスカー | 姉上を守った証の傷です。これほど誇らしいものはありません。 |
| テレサ | オスカー……。お願いだから、今は回復に専念して。あなたを失いたくないのです。 |
| オスカー | ……わかりました。 |
| テレサ | ありがとう。言うことを聞いてくれて。ゆっくりお休みなさい。 |
| テレサ | オスカー……、本当に無事でよかった。 |
| アルトリウス | テレサ、領主の館での騒動は聞いた。その後どうなっている。 |
| テレサ | アルトリウス様 !申し訳ございません。ヘルダルフの逃走を許してしまいました。 |
| テレサ | 現在捜索を続けていますが未だに行方は掴めておりません。 |
| テレサ | 今回の件、全て私の失態です。申し開きのしようもありません。 |
| アルトリウス | ヘルダルフの件については咎めん。それよりも、オスカーはすぐに動けそうか ? |
| テレサ | しばらくの間はお役に立つのが難しいかと思います。 |
| アルトリウス | では、次の計画はお前だけでも動いてもらおう。 |
| テレサ | お任せください。それで、計画とはどのようなものでしょうか。 |
| アルトリウス | 今回具現化した新大陸のエネルギーを使ってミッドガンド領の地脈を目覚めさせる。そして……。 |
| アルトリウス | このティル・ナ・ノーグでカノヌシを復活させるのだ。 |
| | to be continued |