| Character | 1話【16-1 アジト1】 |
| セルゲイ | ……く……。 |
| シャーリィ | セルゲイさん、大丈夫ですか ? |
| ジュード | 目が覚めたばかりですぐ移動させるのは体に良くないんだけれど……。 |
| アニー | 急に贄の紋章を刻まれた人たちを外に集めろだなんて一体何をするつもりなんですか ? |
| リフィル | 無茶をお願いしたことは謝るわ。ごめんなさい。けれど、帝国内が混乱している今がチャンスだと考えたの。 |
| マオ | チャンスって、何のコト ? |
| キール | 贄の紋章を無効化するための千載一遇の好機ってことさ。 |
| ワルター | メルネスを助けることができるのか ! ? |
| リフィル | そういうことね。 |
| アトワイト | 詳細を教えてくれるかしら。 |
| キール | その前に、今の状況を振り返っておきたい。目下のところ、ぼくたちに課せられているのは『帝国からティル・ナ・ノーグを守ること』だ。 |
| ユリウス | 帝国はティル・ナ・ノーグを滅ぼして滅びた世界ニーベルングを甦らせようとしている。 |
| ユリウス | 贄の紋章はニーベルングとティル・ナ・ノーグを繋ぐ橋……魂の橋のようなものだ。 |
| ユリウス | 起動したが最後、贄の紋章を刻まれた者のアニマを燃焼し、かつてニーベルングが存在していた空間とこの世界とを繋いでしまう。 |
| ルドガー | 魂の橋……。 |
| ユリウス | ……少なくとも、計測されているアニマの数値や位置情報から、帝国が分史世界を創るための準備に着手したことが見て取れた。 |
| ユリウス | アルトリウスの騒ぎが落ち着いたらすぐにでも奴らはニーベルングを甦らせるだろう。 |
| リフィル | これを防ぐために贄の紋章を無効化します。本当は消し去ることができればいいのだけれどそれは難しいの。 |
| リフィル | キール研究室では、時間を稼ぐためにも無効化を優先するべきだと考えました。 |
| キール | 無効化の手順は極めて簡単だ。 |
| キール | そもそも贄の紋章というのは、この世界の人間の中にあるアニマの指向性をキラル分子によって自在に変化させる仕組みを指す。心核の鏡像異性体を体内に作って―― |
| ルカ | ま、待ってよ、キール。何を言っているのかその……わからないというか……。 |
| リフィル | キール、あなたの話はとても重要なものだけれど今は誰にでも簡潔にわかることを優先しましょう。あなたならそれもできるわ。そうでしょう ? |
| キール | も、もちろんだ。 |
| キール | ――つまり、お前たちにもわかるように話すなら贄の紋章と逆の作用を持つ紋章を刻むことで贄の紋章の作用を打ち消すんだ。 |
| カルセドニー | そんなことができるのか。ならば、すぐにそれを行ってくれ ! |
| キール | そ、そうしたいのはやまやまなんだが打ち消すための逆しまの紋章がまだ未完成なんだ。 |
| マウリッツ | しかし、我々をこの浮遊島の広場に集めたということはまったくなす術がない、ということでもないのだろう。違うかね ? |
| リフィル | その通りです。逆しまの紋章は九割完成しています。残りの一割を埋めるために、今カイウスたちがビフレスト側にいるジュニアに接触しています。 |
| フォレスト | カイウスが……。それで、カイウスたちからの連絡はまだなのか ? |
| リフィル | ええ。本来は彼らからの連絡を待って、逆しまの紋章を完成させてから、個別に紋章を刻めばいいのだけれどそれとは別に、今好機が訪れつつあるのよ。 |
| レイス | 好機、か。それは今地上で帝国内部が混乱していることが関係しているのかな。 |
| フォッグ | アレだ。帝国のアレがアレを裏切ってベルベットとスレイがアレしてるやつだな。 |
| キール | そうさ。今、帝国の戦力は各地に分散して帝都の守りは手薄になっている。 |
| キール | 今なら帝都に集められた鏡映点も救い出せるしニーベルングを甦らせるための装置も止めることができる。 |
| キール | それどころかデミトリアスを叩くことだって可能だ。 |
| ピオニー | つまり、ベルベットたちをおとりにして帝都を急襲人質の確保を行い、大将の首も取ろうって魂胆か。 |
| ユリウス | そう簡単にことが運ぶかはわからないがそれが最善なのは間違いない。加えて逆しまの紋章を完成させ、刻む必要もある。 |
| リフィル | ですから、今回は戦力を四分割します。 |
| リフィル | 一つ目はスレイとベルベットたちのチーム。彼らはアルトリウスを撃破後救世軍と合流する筈。 |
| リフィル | そこで救世軍と共に、今浮遊島を離れているモリスンイエガー、アレクセイの保護に向かってもらいます。 |
| キール | 二つ目はカイウス、ルキウス、ガイ、ティアの四人のチーム。 |
| キール | 目的はジュニアの体内に残されている、贄の紋章のデータを解析することだ。これが逆しまの紋章の完成に繋がる。 |
| ジュード | 少し気になってたんだけど贄の紋章のデータっていうのはジュニアのものでないと駄目なの ? |
| リフィル | ハロルドの推測ではそのようね。ビフレスト側の話を聞く限り、ジュニアはグラスティンによってすでに贄の紋章を起動させられていたのだと思うわ。 |
| リフィル | ここにいるメンバーの贄の紋章はマオのもの以外まだ起動していない。 |
| マオ | ボクはサレに一回利用されてるからネ……。 |
| ユリウス | こんな言葉は慰めにはならないかもしれないが一度使われているからこそ他のみんなを救う手助けとなるんだ。 |
| ユリウス | マオのデータとジュニアのデータを参照することで逆しまの紋章が完成する。 |
| マオ | うん、ありがとう。みんなの役に立つのは大歓迎だヨ。 |
| キール | 話を戻すぞ。三つ目のチームはお前たち――つまり浮遊島にいる贄の紋章を刻まれたメンバーだ。 |
| キール | 逆しまの紋章はハロルドの開発した【逆しまの魔導砲】を使ってここにいる全員と帝都の鏡映点全員に刻み込む。 |
| カルセドニー | 帝都の鏡映点……それはパライバさまたちのことだな ? |
| キール | ああ。各領地の領主と従騎士たちのことだ。それぞれ手分けして刻むのでは効率が悪いし時間もかかる。 |
| キール | だからぼくたちは、帝国の魔導砲の技術を転用して逆しまの紋章を広範囲に打ち込む方法を思いついた。 |
| キール | この浮遊島の地下に逆しまの魔導砲を設置してある。この広場の下辺りだ。 |
| リフィル | みんなにはここで待機してもらいます。 |
| リフィル | 逆しまの紋章が完成したらすぐに逆しまの魔導砲を起動してみんなの贄の紋章を無効化するわ。 |
| リーガル | 先程も言っていたが、浮遊島にもおらず帝都にもいない鏡映点の贄の紋章はどうなるのだ ? |
| ユリウス | それは、個別に助けていくしかないな。 |
| ルカ | 今の話の流れからすると四つ目のチームが帝都への潜入班ってこと ? |
| ユリウス | その通りだ。今帝都には、領主や従騎士と彼らの心核が集まっている状態だ。可能な限り回収したい。 |
| リッド | 帝都へは誰が行くんだ ? |
| リフィル | 今は浮遊島を離れているメンバーも多いから残っている人員を二分するしかないわね。 |
| リフィル | ただ、ルカたちレグヌム領にゆかりのあるメンバーとユリウス、ルドガー、エルは浮遊島に残ってもらいます。 |
| ルドガー | ニーベルングの具現化に利用されるかも知れないからだな。 |
| アトワイト | 今がチャンスであるという話はわかったわ。まだ療養が必要な人たちがこの場所にいなければならないという理由も。 |
| アトワイト | けれど、今から帝都に向かうのならまだ焦る必要はなかったわよね。ゲートを使っても帝都まではかなり時間がかかる筈よ。 |
| リフィル | 普通に考えればその通りなんだけれど……。 |
| ユリウス | キール研究室は異世界の異能の集まりだからな……。 |
| キール | パスカルとハロルドがこの浮遊島に推進装置をつけたんだ。つまり―― |
| 二人 | 島が動く。 |
| アトワイト | ! ? |
| Character | 2話【16-2 アジト2】 |
| イクス | それにしても、妙な気分です。 |
| ジェイド | おや、浮遊島を動かすことがですか ?それとも――まだ何もわかっていないから、ですか ? |
| イクス | やっぱりジェイドさんは何でもお見通しなんですね。 |
| イクス | 帝国の目的はわかっています。けれどその為に手間暇を掛けている動機――いえ、そもそもデミトリアス陛下の動機がわからない。 |
| イクス | 何故ティル・ナ・ノーグを滅ぼしてしまうのか。ニーベルングを甦らせることに固執するのか。 |
| イクス | それに、帝国以外の思惑はさらにわかりません。バロールやダーナがどうしたいと思っているのか。フリーセルは何の目的を持って動いているのか。 |
| ミリーナ | フリーセルに関しては、想像がつくような気がするわ。 |
| イクス | ミリーナ、それは…… ? |
| ミリーナ | 復讐よ。以前のメルクリアと同じ。セールンドへの復讐とビフレストの再興。 |
| ミリーナ | フリーセルが具現化された存在だとしたらフリーセルの記憶は具現化された時代で止まっている。 |
| ミリーナ | そこに今現在のティル・ナ・ノーグの情報を入れたらセールンド王国――ゲフィオンとその仲間がこの世界を玩具にしているようにしか見えないでしょうね。 |
| ミリーナ | だからどう動くのか、までは読めないけれど……。 |
| ジェイド | ええ、そうですね。とはいえ、私はフリーセルの存在に関しては大勢に影響がないと考えています。 |
| ジェイド | ただ、些末な部分では問題になりえるでしょう。だからテネブラエを監視に向かわせました。 |
| イクス | そうですか……。 |
| ジェイド | おや、久々に心配性の虫が騒ぎ出しましたか ?ではもう少しだけ。デミトリアスの動機などわからなくても構いません。 |
| ジェイド | 人間はわからないものに不安や恐怖を感じる。だから動機を知って、理解したつもりになって安心したいのです。 |
| ジェイド | わからないものに囚われすぎる必要はない。動機がわかったところで理解できるとも限りません。 |
| イクス | つまり、今できることに最善を尽くせってことですか ? |
| カーリャ | むむ、ジェイドさまのくせにまともなことを言いますね。 |
| ミリーナ | カーリャったらすぐそうやってジェイドさんに突っかかって。本当はジェイドさんが好きなんじゃない ? |
| カーリャ | はああああああ ! ? |
| ジェイド | おや、それはそれは。光栄ですね。私もカーリャが好きですよ。ええ、もう、解剖したいぐらいに♪ |
| カーリャ | いやああああ ! ? ミリーナさま ! ?カーリャ、『鏡精のひらき』にされちゃいますよ ! ? |
| アトワイト | この浮遊島を飛空挺のように改造したということ ! ? |
| リッド | この島が動くのかよ ! ? |
| フォッグ | ぐわははは ! そいつはすげえな ! ? |
| アニー | 島が動く……。でも、確かにそれなら地上を移動するより遙かに早いです。 |
| リフィル | ええ。だから、すぐ帝都上空へつけることができるわ。もっとも現時点でこの浮遊島を動かせるのは魔鏡術が使える鏡士だけだけれど……。 |
| セルゲイ | ――ん…… ? な、何だ…… ? |
| シャーリィ | セルゲイさん ? どうしたんですか ? |
| ルカ | セルゲイさんの顔色が悪い……。まだ車椅子も負担なのかも……。 |
| ジュード | ここに待機しなければいけないならベッドを持ってこよう。テントか何かもあればいいんだけど。 |
| リーガル | ベッドは医務室のものを運べばいいだろう。テントはイクスたちに―― ! ? |
| リーガル | なん……だ…… ? 胸が…………ッ ! |
| マウリッツ | グゥ……。 |
| シャーリィ | マウリッツさん ! ? |
| レイス | ……っ、リッド……。 |
| リッド | おい、レイス、どうした ! ? |
| カルセドニー | これは……スピリアが……―― |
| フォレスト | 息が……カハッッ ! ? |
| アニー | カルセドニーさん ! フォレストさん ! |
| アニー | 駄目です ! 脈が速すぎて―― |
| ピオニー | まず……い……。ジェイドを……呼べ―― |
| フォッグ | ぐっ……。 |
| マオ | ピオニーとフォッグまで ! どういうこと ! ? |
| ワルター | メルネス……メル……ネス……ッ ! |
| シャーリィ | ワルターさん ! ? ワルターさ……―― |
| マオ | あ……ボクも……きゅうにねむく……―― |
| キール | な、なんだ…… ! ? 人体発火…… ! ? |
| リフィル | みんなが炎の柱に…… ! ?いえ、シャーリィとマオは気絶しているだけみたいだわ。 |
| リッド | 一体どうなってんだ ! ? |
| ジュード | ……この炎は熱くないみたいだ。ただの炎じゃない。 |
| イクス | ――な、何ですか ! ? 炎の柱がこんなに沢山 ! ? |
| ミリーナ | 熱を感じない……それにこの感覚……。アニマを放出しているんだわ。 |
| カーリャ | うう……ぶるるるるるるるるっ ! ? き、きまひた ! ?ひしゃびしゃにブルブル来てましゅよお ! ? |
| ジェイド | カーリャのこの反応は、光魔の鏡や鏡映点を発見した時と同じですね。しかもその時より激しく震えています。 |
| ジェイド | ……とすると、これがルグの槍なのでしょうね。 |
| 一同 | ! ? |
| ユリウス | 何故そう断言できる ? |
| ジェイド | 光魔の鏡は虚無とこの世界を繋ぐゲートでした。鏡映点も元の世界からアニマをこの世界に届ける存在です。 |
| ジェイド | つまりどちらも異世界や異次元との繋がりを持ち恐らく鏡精はそういうものに反応するのでしょう。 |
| ジェイド | ルグの槍もまた分史世界とティル・ナ・ノーグを繋ぐ存在ですから。 |
| ユリウス | 分史世界が創られたのか ? |
| ジェイド | それは観測機を見てみないことにはなんとも言えませんが―― |
| ジェイド | ルドガー、エルを捜してきて下さい。大至急です。 |
| ルドガー | え ? あ、ああ、わかった ! |
| ユリウス | 俺も行こう ! |
| アニー | あの ! みんなは大丈夫なんですか ! ? |
| ジェイド | こちらの計算通りであれば、まだ大丈夫な筈です。 |
| ジェイド | アトワイト、ルカ。管制棟へ向かって下さい。ハロルドがいる筈です。ルグの槍が起動したと伝えればあらかじめ準備していた観測器を渡してくれます。 |
| ジェイド | それを持ってきて下さい。 |
| アトワイト | 了解。――ルカ、行きましょう。 |
| ルカ | は、はい ! |
| リフィル | それにしても、帝国の動きが予測より遙かに早いわ。計画を前倒しするしかなさそうね。 |
| イクス | こっちの準備が終わる前にルグの槍が起動するなんて……。 |
| カーリャ | どうするんですか ! ?まだカイウスさまたちからの連絡はありませんよ ! ? |
| イクス | 見切り発車になるけど、やるしかない。 |
| イクス | 行くぞ、ミリーナ。 |
| ミリーナ | ええ !ジェイドさんたちの作戦通り【贄の紋章】を無効化して、ルグの槍を鎮めましょう ! |
| アニー | でも、本当にルグの槍が起動したんですか ?だとしたら、どうしてシャーリィさんとマオだけは無事なんでしょうか ? |
| ジェイド | ……想像は付きます。ですが、その話は後にしましょう。今は時間が惜しい。 |
| ジェイド | イクス。浮遊島を帝都上空へ !やり方は先程教えた通りです。 |
| イクス | はい、やってみます ! |
| イクス | ミリーナ。俺はしばらく操縦に集中する。何かあったら浮遊島の指示はミリーナに任せるよ。 |
| ミリーナ | 了解よ。ジェイドさん、イクスに付いていてあげて下さい。 |
| ジェイド | ええ、そのつもりですよ。 |
| Character | 3話【16-5 テルカ・リュミレース領 森】 |
| アレクセイ | なるほど、あの盗賊……フリーセルは新大陸にいたか。その後の足取りはどうなった。 |
| デクス | わからない。救世軍に回ってきたのは奴と遭遇したって話までだ。 |
| デクス | で、そっちは何か見つかったか ?イエガーって奴の一件からずっとフリーセルを追ってるんだろ。 |
| アレクセイ | 共有できるような情報は特にない。 |
| デクス | そりゃないだろ。色々動いているのはわかってるんだ。 |
| デクス | いつもオレたちの情報ばっか吸い上げて。お前らは一応救世軍と提携してるんだぞ。その辺、ちゃんとわかってるか ? |
| アレクセイ | ああ。きみたちには感謝しているよ。この領土で騒いでいた輩の正体がわかったことで我らが帝国に先手を打つ方法も見えてきたのだからな。 |
| アレクセイ | 定時連絡ご苦労だった。お引き取り願おう。 |
| デクス | ううっ……なんてことだ。手ぶらで帰ったらアリスちゃんをがっかりさせてしまうじゃないか ! |
| デクス | アリスちゃんにあんなことやこんなことをしてもらう計画がああああ ! |
| アレクセイ | 私の知ったことではない。せいぜいご機嫌をとってやりたまえ。 |
| デクス | 仕方ない。そろそろレイヴンが来るはずだしそっちから何か情報をもらうか……。 |
| アレクセイ | レイヴンだと ? |
| デクス | はっはっはっ ! 気になるのか騎士団長殿 !実はここで落ち合う約束をしてるんだ。あいつも各地の情報を集めて回ってるからな。 |
| アレクセイ | まったく、お前たちは……。私の拠点を勝手に―― |
| アレクセイ一派兵士A | 失礼します、アレクセイ様。 |
| アレクセイ | どうした。 |
| アレクセイ一派兵士A | 捜索中のフリーセルですがアジトと思われる場所を突き止めました。 |
| デクス | おおっ ! ? |
| アレクセイ | そうか、よくやった。 |
| アレクセイ一派兵士A | ついては、周辺の監視を強化したく―― |
| アレクセイ | 待て。――デクス、ここからは席を外してもら……。 |
| デクス | ……どうした、アレクセイ ?何だか急に顔色が……。 |
| アレクセイ | ……っ ! |
| レイヴン | だからぁ、ここで救世軍のデクスと待ち合わせしてんの !おたくの大将だって知ってるはずよ ? ……多分。 |
| アレクセイ一派兵士B | わかったから、もう少し待て。今は大事な報告を―― |
| レイヴン | なんだありゃ ! ? 火…… ! ? |
| アレクセイ一派兵士A | アレクセイ様っ ! アレクセイ様ーー ! ! |
| アレクセイ一派兵士B | あれは…… ! ? あ、貴様、待てっ ! |
| レイヴン | おい、どうした ! 何が起きた ! ? |
| レイヴン | ! ? |
| デクス | レイヴン ! ア、アレクセイが !アレクセイが突然火柱になった ! |
| レイヴン | これが……アレクセイ…… ? |
| | 同時刻 アレウーラ領 |
| ゴーシュ | いい仕入れができたな。この商品なら高値で取引ができそうだ。 |
| ドロワット | でも大量に買いすぎ~。すっごく重いのねん……。イエガー様は大丈夫 ? |
| イエガー | イエース。ノープロブレムね。 |
| ゴーシュ | ですが、まだお体が辛いでしょう ?ここからは私が預かります。 |
| ドロワット | あっ、ゴーシュちゃんずるい !イエガー様の荷物なら私が預かるのよん。 |
| ゴーシュ | さっきまで重いと愚痴を言っていたくせに。 |
| イエガー | フフフ……ユーたちとこうしているとまるで普通の商人のようですね。 |
| イエガー | こんなドリームのような日が――………………。 |
| ゴーシュ | イエガー様 ? |
| ドロワット | ……止まって、ゴーシュちゃん。あそこにいる人、見覚えあるぬん。鏡映点リストにあった、え~っと……ロミー ? |
| ゴーシュ | だとしたら敵だぞ。イエガー様を守れ ! |
| ロミー | くっ…… ! ? 間に合わない―― |
| 二人 | ! ? |
| ゴーシュ | イエガー様、見ましたか ! ?あの人、火の柱に ! |
| イエガー | っ ! ! |
| ゴーシュ | え…… ? あ……あああっ ! ! |
| ドロワット | イエガー様あああああっ ! ! |
| | 同時刻 アセリア領 |
| クレス | モリスンさん ! モリスンさん ! ?ミント、この火は術でどうにかならないのか ! ? |
| ミント | 術が効きません !火のようですが、何かが変です……。クレスさん、すぐにアジトへ連絡をお願いします ! |
| クレス | わかった ! |
| クレア | こちら浮遊島のクレアです。クレスさんですね ? |
| クレス | クレア、緊急なんだ。モリスンさんが突然火に包まれた !術ではどうにもならないらしい。 |
| クレア | モリスンさんも ! ?さっきから同じ報告をいくつも受けているの。 |
| クレス | 他にも火柱になった人がいるのか ! |
| クレア | ええ。少しだけ待ってて。――マリアンさん、そっちはどう ? |
| マリアン | はい。準備できました ! |
| マリアン | クレスさん、今から報告のあった方たちと通信回線を開きます。皆さんと状況の確認をお願いできますか。 |
| クレス | わかった。すぐに繋いでくれ ! |
| レイヴン | ――突然の発火、本人以外周囲に被害はなし、か。アレクセイと同じだな。 |
| ゴーシュ | イエガー様もだ。ロミーと思われる人物とほぼ同時に……っ。 |
| ドロワット | ううっ、イエガー様ぁ……。 |
| マーク | お前らの話だと、火柱化したのは全員領主か従騎士だった奴らみたいだな。 |
| マーク | ケリュケイオンでは帝都から上がる火柱を確認した。あっち側にいる領主たちかもしれねえ。 |
| マーク | とはいえ、ウチの聖女様は問題ないんだが……。 |
| クレス | エルレインさんか。他の領主との違いはなんだろう。 |
| マーク | 違い……そうか、【贄の紋章】だ。エルレインは紋章を入れられてないって話だぜ。 |
| キール | その通り。贄の紋章を入れられた者が火柱になっているんだ。 |
| マーク | キールか ! どうなってんだか説明しろ。通信は急に途絶えるわ、浮遊島は動いてるわ……。そっちにいる元領主や従騎士はどうした。 |
| キール | 同じだよ……。火柱になった。 |
| 全員 | ! ! |
| Character | 4話【16-6 アジト5】 |
| ファラ | レイス……フォッグ……。本当にこの火の柱が二人なの…… ? |
| メルディ | キールたち、すごく頑張ってるよ。きっと何とかしてくれる ! |
| チャット | そうですね……。今はキール研究室の指示を待つしかありません……。 |
| リッド | オレたちは何もできないのかよ ! |
| ? ? ? | ……頼む……助け……。 |
| リッド | えっ ! ? |
| ファラ | どうしたの ? |
| リッド | レイスの声がした。 |
| ファラ | レイス ! ? わたしには何も聞こえないよ ? |
| メルディ | メルディも。リッドにだけ聞こえてるか ? |
| チャット | フォッグさんは ! ?フォッグさんの声は聞こえるんですか ! ? |
| リッド | 悪ぃ、ちょっと静かにしててくれ。――おい、レイスだよな。返事してくれ ! |
| レイス | リッド……、私の声が届いているのか。 |
| リッド | ああ、聞こえてるぜ。オレだけみたいだけどな。 |
| レイス | そうか。だとすると極光術……セイファートの試練が関係しているのかもしれない。 |
| リッド | なんにしろ無事……じゃねえかもしんねえが意識はしっかりしてんだな。 |
| リッド | レイスも含めて、贄の紋章を付けられた奴は火柱になっちまったんだ。覚えてるか ? |
| レイス | ああ、朧気に。それに贄の紋章の者たちとは意識で――心の世界で繋がっているようだ。 |
| リッド | ってことは、フォッグや他の連中も ? |
| レイス | ああ。フォッグは側にいる。他にも何人か。今、姿が見えない者たちともすぐに出会えるだろう。 |
| レイス | 私を介せば、心の世界にいる他の者にも状況を伝えられる。そちらではどうなっているのか、教えてくれないか。 |
| リッド | わかった。さっきも言ったけどあの時集められた連中は突然火柱になったんだ。 |
| リッド | ん ? 違うな。シャーリィとマオは無事だった。 |
| レイス | シャーリィとマオ…… ?おかしいな。二人ともこちらにいるぞ。 |
| リッド | そんなはずねぇよ。気は失ったけど、火柱にはなってない。……あ、もしかして…… ! |
| リッド | レイス、ちょっと待っててくれ。 |
| ファラ | ちょ、ちょっと、リッド ! ? |
| メルディ | 一人でぶつぶつ言って、どうかしたか ? |
| リッド | ミリーナに話があるんだ ! |
| リッド | ソーマ使いをここに呼んでくれ !レイスたちを助けられるかもしんねぇ。 |
| リフィル | そう……。レイスの声が聞こえたのね。 |
| ミリーナ | 確かに、マオやシャーリィにスピルリンクすればその心の中で、火柱になった人たちと会えるかもしれないわ。 |
| リッド | まあ、オレの思い付きだから上手くいくかわかんねぇけど……。 |
| シング | 大丈夫、まかせて。オレも早くカルを助けたいんだ。 |
| シング | けど、いつもと状況が違うからイクスかミリーナも一緒に来てもらえるかな ? |
| ミリーナ | もちろんよ。イクスは今浮遊島を動かしているから私だけになるけど、いいかしら。 |
| シング | うん。じゃあ、まずはマオからリンクしてみよう。上手くできなかったら次はシャーリィってことで。 |
| ミリーナ | そうね、それで行きましょう。イクスと、それにヴェイグさんやセネルさんにも話を通さなくちゃね。 |
| カーリャ | それではカーリャはイクスさまに知らせてきますね ! |
| ミリーナ | ええ、お願い。 |
| ファラ | ミリーナ、わたしも一緒に心の中に行くよ。 |
| チャット | あっ、ボクも行きます ! カーリャさんは鏡精だから人数にカウントされないとして、あと二人は心の中に連れてってもらえますね ? |
| アニー | それなら、わたしも連れて行って下さい。マオと話ができるかも知れないんですよね。 |
| ミリーナ | みんな……ごめんなさい。正直、リスクがないとは言えないの。今回は私とシングだけで入るわ。 |
| ファラ | でも、ここでじっとしてるなんて……。 |
| チャット | ボクもです……。さっきは待つしかないって言いましたけど本当は、何もできない自分が悔しかったんです……。 |
| メルディ | 気持ちわかるよ。メルディも行きたい。 |
| チャット | そうですよね ! |
| メルディ | でも、ここで無茶して何かあったらレイスやフォッグは悲しむな。 |
| ジュード | アニーもだよ。僕たちはシャーリィとマオの体に異変がないか見ていてあげよう。そうすることがみんなの助けになる筈だよ。 |
| 三人 | …………。 |
| アニー | そうですね。ジュードさんの言うとおりです。こういう時こそ、何が大事なのかしっかり見極めないといけませんよね。 |
| チャット | すみません……。ボクとしたことが、冷静ではありませんでした。 |
| ファラ | わたしも、困らせてごめん。 |
| リッド | そう思うんならオレたちはこっちで、やれることをやろうぜ。 |
| ファラ | リッドは冷静で凄いね……。 |
| リッド | そうでもねぇって。オレは今、レイスと繋がってるからお前らより落ち着いてるってだけだ。 |
| リッド | 仲間を……誰かを失うかもって思うとさやっぱ怖ぇよ。 |
| ファラ | そうだよね。みんな同じなんだよね。 |
| リフィル | あら、私が説得するまでもなかったわね。偉いわ、みんな。今はあらゆる状況に対応できるよう、冷静でいなくてはね。 |
| ファラ | はい。 |
| ファラ | ミリーナ、シング、気を付けて行ってきて。みんなをお願い。 |
| ミリーナ | ええ、ファラたちも浮遊島の方を頼むわね。 |
| Character | 5話【16-9 仮想鏡界1】 |
| マークⅡ | じゃあ、お前らはこっちで待っててくれ。俺はジュニアの様子を見てくる。 |
| ガイ | なんだ、早かったな。メルクリアには会えたのか ? |
| ルキウス | うん。だけど、まだ体調がよくないみたいだから少しだけ話をして、あとは横にならせたんだ。また後で様子を見てくるよ。 |
| カイウス | なあ、リグレットさんの方はどうなってる ?治療は上手くいってるのかな。 |
| ガイ | まあ、心配ないだろ。ティアとヴァンもいるし。――っと、噂をすればだ。 |
| ティア | 待たせてごめんなさい。教官の傷はすっかりふさがったわ。 |
| ティア | 今、ナーザ将軍たちにバルドやコーキスたちのことを報告しているところよ。 |
| カイウス | そうか ! 安心したよ。 |
| ガイ | な、心配なかっただろ ? |
| ヴァン | ガイラルディア様、ご面倒をおかけしました。リグレットを連れてきて頂き、感謝申し上げる。 |
| ガイ | 別に面倒なんて思っちゃいないよ。ついでと言うと語弊はあるがこっちも用があって来てるからな。 |
| ジュニア | 皆さん、お待たせしてすみません。 |
| マークⅡ | おい、待てってジュニア。本当にもういいのかよ。 |
| ジュニア | 大丈夫だってば。さっきはおかしなアニマの動きで一瞬気持ち悪くなっただけ。 |
| ディスト | まったく、なんなんですか。忙しい私を呼び出すからには納得いく理由と、その対価が必要ですよ ! |
| ガイ | 理由も対価もあると思うぜ ? ま、とりあえずこの手紙を読んでくれ。 |
| ジュニア | キール研究室からですね。拝見します。 |
| ジュニア | これは……。 |
| ジュニア | ――本当に、こんなことが可能なんでしょうか。逆しまの紋章で贄の紋章の作用を相殺するなんて……。 |
| ガイ | 俺の知識じゃ可能かどうかを論じることはできないが少なくともジェイドは分の悪い賭けをするような人間じゃないぜ。 |
| ガイ | 今日はその計画のための計測装置も持ってきた。 |
| ジュニア | でも、扱うには相当の知識が必要ですよね ? |
| ガイ | そうなんだよ。そこで、だ。 |
| ガイ | ディスト、受け取れ。ジェイドからお前さん宛ての手紙だ。 |
| ディスト | ジェイドから……私に ! ? |
| ガイ | ああ。是非とも頼むだとさ。今回の件はお前に託したってことだろ。親友の、な。 |
| ディスト | 親友の私に……。そうですか ! そうでしょうとも ! ジェイドの思惑を理解し、成し遂げ得る頭脳の持ち主がこの薔薇のディスト様以外にいるものですか ! |
| ディスト | 仕方ありません、これほど私を欲するというのなら少しくらいは手伝ってあげましょう。――マーク、まずは手紙を飾る額縁を用意なさい ! |
| カイウス | なあ、なんかすげえ嬉しそうだけどあれって利用されてるだけなんじゃ……。 |
| ルキウス | 兄さん、しーっ。いいんだよ、これで。 |
| ガイ | まあ、今のところ誰も損しちゃいないからな。若干気が引けるが機嫌よくやってくれるなら何よりだ。 |
| ティア | そういえば、兄さんも贄の紋章が入っているでしょう ?この作戦の間だけでも、私たちのアジトにいた方がいいんじゃないかしら。 |
| ガイ | そうだな。ここじゃ魔鏡通信も繋がらないし。どうだ、ヴァン。 |
| ヴァン | 確かにここはジュニアの仮想鏡界――心の中だ。万一のことを考えると、外に出た方がいいのだろうな。だが、鏡士たちの下へ行く必要は―― |
| ヴァン | ! ? |
| ティア | どうしたの ? |
| ヴァン | 今……何かが私の精神に……心に触れてきた。 |
| ティア | 心って、ローレライ ? |
| ヴァン | いや、これは別の……。誰かが呼んで…………。 |
| ティア | 兄さん ! ? |
| ガイ | おい、ヴァン ! 目を開けろ、ヴァン ! |
| Character | 6話【16-10 心の世界1】 |
| ? ? ? | こっちだ。私たちのところへ早く―― |
| ヴァン | ここは…… ? |
| ? ? ? | おーい、おーい、やっほー ! |
| ? ? ? | 聞こえていたら返事をして ! |
| ヴァン | この声たちか、呼んでいたのは。――私はここだ。 |
| レイス | ああ、来たようだ。ミリーナ、こっちだ。 |
| ミリーナ | ヴァンさんだわ !やっぱりここにいたんですね。 |
| ヴァン | 鏡士のミリーナか。 |
| ミリーナ | そうです。直接お会いしたのは初めてなのによくおわかりですね。 |
| ヴァン | それはお前が初対面で私が『ヴァン』だと気付いたのと同じことだ。 |
| ヴァン | お前たちが用意した鏡映点リストとやらには一通り目を通してある。無論鏡士の情報にも、な。 |
| ヴァン | それで、「ここにいた」とはどういう意味だ。 |
| ミリーナ | 火柱になった贄の紋章の人たちはこの心の世界――スピルメイズで繋がっているんです。 |
| マオ | ヴァンも、気が付いたらここにいたんでしょ ? |
| ヴァン | いや、私はビフレストの拠点にいたのだが心の中で、お前たちの声が聞こえたのでな。その声を辿ってみたらここに着いたというわけだ。 |
| マオ | それじゃ、火柱にはならなかったの ? |
| ヴァン | 火柱 ? |
| ピオニー | そこにいるのは、ヴァン・グランツ……か…… ? |
| ヴァン | ピオニー陛下 ?そうか、あなたも領主でしたな。直接お目に掛かるのは何年ぶりか。 |
| ピオニー | はは……。これが直接かはわからんが……な……。 |
| シャーリィ | ミリーナさん、あっちにカルセドニーさんとセルゲイさんがいました !今、シングさんが連れてきてくれます。 |
| シャーリィ | まだ見つからない人もいますしシングさんが戻ったらわたし、もう少し先まで捜してきますね。 |
| ワルター | 待て、メルネス……これ以上は危険だ……。俺が……。 |
| シャーリィ | わたしは大丈夫ですから。ワルターさんこそ、無理はしないでください。 |
| シャーリィ | マウリッツさんも、ワルターさんと一緒にここにいてくださいね。 |
| マウリッツ | 力になれず……すまないな……。 |
| ヴァン | ……黒衣の鏡士。いや、ミリーナと呼ぶべきか。 |
| ヴァン | 一体何が起きている。 |
| ミリーナ | はい、わかる範囲で説明しますね。 |
| ヴァン | ――なるほど。そのソーマ使いの話どおりならばスピルーン……心核のある場所が、贄の紋章の者たち全員で繋がってしまっているわけだな。 |
| ミリーナ | はい。ですから多少のバラつきはあっても全員この付近にいる筈なんです。 |
| ヴァン | それで捜して回っていると。――貴公は外への連絡役を担っているのだな。 |
| レイス | ああ。だが、他の者よりは動けるもののやはり体の方は思うようではないんだ。そういう意味では、あまり役に立てそうもない。 |
| フォッグ | 何言ってんだぁ……。今は、お前がアレなんだぜ……。 |
| カーリャ | アレ ? 頼り、ですかね。 |
| フォッグ | おぅ……ソレだ……ソレ……。ぐあははっ……はは……。 |
| カーリャ | 大丈夫ですか ! ?カラ元気が過ぎますよ、フォッグさま。 |
| ヴァン | 事情はわかった。しかし、君たちも紋章付きの筈だが何事もなかったというのは不思議だな。 |
| マオ | ないわけじゃないヨ。火柱にはならなかったけどボクとシャーリィは気を失って倒れちゃったんだ。ヴァンは何も感じなかった ? |
| ヴァン | リグレットの治療に当たっている時にわずかに眩暈を感じたが……。特に変化はなかった。 |
| ヴァン | 私はジュニアの仮想鏡界の中にいたからな。外にいるのとは何か作用が違っているのかも知れない。 |
| シャーリィ | 不思議ですね。紋章を付けられたのは同じなのにわたしたち、他の人と何が違うんでしょう。 |
| マオ | それに、ヴァンの話だとジュニアの方も特に異変がないみたいだよね。でも、ジュニアにも贄の紋章があるんでしょ ? |
| ヴァン | 先程ガイたちが、ジュニアの贄の紋章のデータを求めて訪ねてきた。 |
| ヴァン | つまり、アジトの研究者たちは、ジュニアの贄の紋章が他の者とは違う状態だと察していたのだろう。 |
| ヴァン | ジュニアがこの場にいないことは不自然ではないのかも知れぬな。 |
| カーリャ | 違うといえば、シャーリィさまやマオさまは領主でも従騎士でもありませんよね。確か、グラスティンやサレに―― |
| 二人 | ……。 |
| カーリャ | す、すみません !嫌なことを思い出させちゃって。 |
| シャーリィ | ううん、大丈夫。あの時のことはもう……。 |
| シャーリィ | ……あっ ! そういえばグラスティンはわたしとウンディーネとの繋がりに気づいて紋章をいれたみたいだった。 |
| ミリーナ | そうだったわ。シャーリィはウンディーネと深く繋がっているのよね。確か、ヴァンさんも―― |
| ヴァン | ああ。私の中にはローレライがいる。 |
| マオ | じゃあ、きっとボクも精霊関係だヨ。こっちの世界でいう精霊がボクのお母さんなんだ。 |
| ミリーナ | そうか……そうだったのね。何らかの形で精霊の加護を受けた人が火柱にならなかったのかもしれない……。 |
| マオ | あれ、でもレイスは ? 火柱になっちゃったケド他の人よりは元気だし。やっぱり精霊に関係あるの ? |
| レイス | いや、ないな。だが、私は元の世界でセイファートの……神の試練を受けている最中だった。そのおかげか、リッドとも通じている。 |
| シャーリィ | じゃあ、それ以外の人たちはこのまま……。 |
| カーリャ | あっ、シングさまです ! |
| シング | カル、しっかり ! ミリーナたちの所までもうすぐだ。 |
| カルセドニー | シング……、僕より、セルゲイの様子が……。 |
| セルゲイ | …………。 |
| シング | セルゲイさん ? |
| 全員 | ! ? |
| マオ | セルゲイの姿が崩れて……消えちゃった ! |
| シング | セルゲイさん ! そんな……。 |
| カルセドニー | いや……消えた跡を……よく見ろ……。 |
| シング | 跡…… ? これ、心核だ ! |
| シャーリィ | ミリーナさん、どういうことでしょう……。 |
| マウリッツ | …………うう。 |
| ワルター | ………。 |
| シャーリィ | マウリッツさん、ワルターさん ! |
| カーリャ | ミリーナさま、みんなどんどん弱ってます……。 |
| レイス | 私も感じる。少しづつだが力が失われているんだ……。 |
| シング | それじゃ、みんなセルゲイさんみたいに姿が保てなくなるの ! ? |
| カーリャ | どうにかなりませんか、ミリーナさま ! |
| ミリーナ | ……隠していても仕方がないからはっきり言うわね。 |
| ミリーナ | ルグの槍を起動すると、贄の紋章を持った人は世界を創るエネルギーの柱として消費されるとジェイドさんも言っていたわ。 |
| ミリーナ | みんなの体から放たれていたあの炎はアニマの放出現象なの。 |
| ミリーナ | アニマは人の魂。精神エネルギーよ。これを放出しているということは徐々に精神的な死を迎えようとしている。 |
| ミリーナ | だからまず、心の世界で存在が保てなくなった。 |
| カーリャ | セルゲイさまは元々回復しきってなかったから最初に消えちゃったんですね。 |
| ミリーナ | ええ。やがてこれは心核に影響を及ぼすと考えられるわ。 |
| ヴァン | つまり、心核も消費され、消滅するということだな。 |
| ミリーナ | ええ。恐らくは心核が燃え尽きてしまうでしょうね。 |
| シャーリィ | そんな…… ! |
| レイス | 今の話をリッドに伝えよう。私の意識がはっきりしているうちに……。 |
| Character | 7話【16-12 アジト8】 |
| リッド | ――さっきレイスから届いた話は、これで全部だ。この通信でアジト全体に話は伝わると思うけど聞いてなさそうな奴には直接教えてやってくれ。 |
| ジーニアス | あんな状態だけどリーガルは心の世界の中にいるんだね。 |
| プレセア | ですが、弱っていると言ってました。一刻も早く元に戻さないと取り返しのつかないことになるかもしれません。 |
| しいな | ……試してみるか。 |
| ジーニアス | しいな ? 何する気。 |
| しいな | ヴェリウスを呼んでみるのサ。 |
| ジーニアス | ヴェリウスって心の精霊の ? |
| しいな | ああ。前にあいつと会った時あたしとは繋がりがあるって言ってたんだよ。手を貸してもらえないか頼んでみる。 |
| プレセア | お願いします。 |
| しいな | ……ヴェリウス、あたしだ、しいなだよ !答えとくれ。仲間が危ないんだ ! |
| しいな | ……………………。 |
| ? ? ? | ……………………。 |
| ジーニアス | どう ? ヴェリウスの声、聞こえた ? |
| しいな | …………駄目みたいだ。何か気配は感じる気がするんだけどね。ダメ元でもう少し声をかけ続けてみるよ。 |
| ジーニアス | うん、頑張ってね、しいな。 |
| しいな | ああ。大勢の仲間を目の前で失うのはごめんだからね。 |
| しいな | ヴェリウス……頼むよ…… ! |
| イクス | 帝都上空、停止します ! |
| ジェイド | お見事。ぴったり真上のようですね。 |
| ジェイド | ミリーナの補助がなかった分、キラル分子の不足による出力低下の恐れもありましたが問題なかったようで良かったです。 |
| リフィル | 浮遊島が停止したから、様子を見に来たわ。イクス、大丈夫 ? |
| イクス | はい、俺の方は全然。あの、みんなの様子はどうですか ? |
| リフィル | ええ。そのことも伝えなくてはと思って。 |
| イクス | そうですか……。早く贄の紋章を無効化しないと。ジュニアの方はどうですか ?何か連絡は来ましたか ? |
| リフィル | いいえ、残念ながらまだよ。本来はもう少し余裕のある中で進める計画だったから時間がかかるのは仕方がないわ。 |
| ジェイド | そうですね。あちらのアジトは外界を遮断していますし今の状況を知らない可能性も高い。 |
| ジェイド | まあ、それでもデータはすぐに来ると思いますよ。念のために手は打ってありますから。 |
| リフィル | 手 ? そういえばあなたガイたちに手紙を渡していたけれど、それのこと ? |
| ジェイド | ええ。作業が早まるおまじないです♪ |
| リフィル | では、ジュニアのデータが届いたらすぐに起動システムを解除できるように準備しておきましょう。 |
| イクス | それじゃあ、俺の方も始めますね。 |
| リフィル | ごめんなさいね。敵の動きが変わった以上本来は計画を練り直すべきなんでしょうけれど……。 |
| イクス | いえ、火柱になったみんなを助けるためにもできることをやらないと。 |
| ジェイド | 不本意ながら、やや確度の低い作戦になってしまいますが、これは仕方がありません。ただ、やることは同じです。 |
| ジェイド | イクスはバロールの血族ですからね。あなたの中にはバロールの残滓が存在している。今度はこちらがバロールの力を拝借します。 |
| イクス | はい。父や母の遺言が本当なら俺にはルグの槍に干渉する力があるはずですから。 |
| 女性の声 | 世界が崩壊する前に、ルグの槍を解放するのよ。それができるのは、バロールの魔眼を受け継ぐイクスとあなたが生み出す鏡精だけなの。 |
| イクス | バロールの力で、ルグの槍を起動する装置が帝都のどこにあるか感知して、装置を解除、破壊する。それでいいんですよね。 |
| リフィル | ええ。こちらはギリギリまでジュニアからの連絡を待つわ。 |
| リフィル | ルグの槍や分史世界の動向次第では、ジュニアのデータなしで、逆しまの魔導砲を撃つことになる。 |
| イクス | その前に、俺が起動装置をなんとかできれば危うい状態で、逆しまの紋章を打ち込む必要はありませんよね。 |
| リフィル | それはそうだけれど……無理をしては駄目よ。バロールの力を使うことも帝都へ潜入することも危険なんですからね。 |
| イクス | はい。みんなに迷惑は掛けませんし無茶も……なるべくしません。 |
| リフィル | 迷惑なんていくらだって掛けていいのよ。だからなるべくではなく、絶対に無茶はしないこと。よくって ? |
| イクス | はい、リフィル先生。 |
| ジェイド | あなたの生徒は問題児が多いですねぇ。 |
| リフィル | 素行で言えば、誰かさんよりは遥かに優秀です。 |
| イクス | あはは ! |
| イクス | それじゃあ、まず浮遊島周辺のアニマの流れを観測します。 |
| ジェイド | 浮遊島には、様々な観測装置が設置してあります。あなたの足下の魔鏡陣は、浮遊島の操縦だけでなく観測装置とも連携していますので、利用して下さい。 |
| ジェイド | 鏡士であるあなたなら、特別な装置がなくてもアニマの流れは感じ取れるでしょうが補助的にでも装置を使う方が負担が少ないでしょう。 |
| ジェイド | ちなみに少し前まで、リタやパスカルが改良を加えていましたから、性能の方もかなり上がっている筈ですよ。 |
| イクス | ありがとうございます。本当に、みんなには感謝だな。――さて、と。 |
| イクス | (火柱……アニマ……、浮遊島……帝国……。テルカ・リュミレース……アセリア……アレウーラと――) |
| イクス | (……ん ? 周りが発するアニマに比べて火柱から感じるアニマは『歪んで』いるみたいだ) |
| イクス | (どういうことだ ? これがルグの槍特有のアニマなのか ? だとしたらこれと同じようなアニマが帝都から出ていないか確認すれば――) |
| イクス | (――見えた ! ) |
| バロール | (――邪魔だ) |
| イクス | (この感じ……バロールか ! ? ) |
| バロール | (ルグの槍に手を伸ばしてきたか。これは俺の得物だ。気配を辿ることすら不敬である ! ) |
| バロール | (どけ ! ) |
| イクス | くっ ! ? |
| 二人 | イクス ! ? |
| Character | 8話【16-13 墓守の街】 |
| バロール | ――大人しくなったか。我が末裔にも拘わらず勝手をするからだ。 |
| バロール | さて……、聞こえるか、鏡精喰いの王よ。ルグの槍は起動した。 |
| バロール | その槍は、俺がルグと共にこの世界を創った時に振るった武器だ。返してもらう。 |
| バロール | 起動システムから、『槍の本体』を外せ。 |
| デミトリアス | それはできない。本体を外せばこれから創る分史世界とティル・ナ・ノーグを繋ぐ道がなくなってしまう。 |
| バロール | なぜ拒む。お前の望みは世界への贖罪ではないのか ? |
| デミトリアス | ……その通りだ。この世界は罪人の方舟だ。だからこそ、世界をあるべき姿に戻すしかない。 |
| イクス | あれ……、ここはスピルメイズか ?確か声がして……。 |
| イクス | そうだ、あの声 ! あれはバロール……。 |
| ? ? ? | 気が付いたな。 |
| イクス | えっ、ナーザ将軍 ? |
| ? ? ? | 違うよ。俺を覚えてないのか ? |
| イクス | っ ! まさかバロール ! ? |
| ? ? ? | だから違うって。もしかして久しぶり……なのかな ?また会えてうれしいよ、もう一人のイクス。 |
| イクス | あ…… ! 最初のイクス……さん ? |
| イクス1st | ああ。俺もさっき目が覚めたばっかりでさ。 |
| 二人 | 一体どうなって―― |
| 二人 | えっ? |
| イクス | もしかして、イクスさんもわからないんですか ? |
| イクス1st | ああ。きみの目が覚めたら聞こうと思ってた。俺も突然自我が回復して驚いてたんだ。 |
| イクス | イクスさんがいるってことはここは【アニマのるつぼ】ですか ?俺は死にかけてるのか……。 |
| イクス1st | いや、ここはきみの心の中だ。【アニマのるつぼ】で溶けていた俺がここにいる方が変なんだよ。 |
| イクス1st | 切っ掛けがあった筈だけどそっちでは何があったんだ ? |
| イクス | 切っ掛け……。ルグの槍の起動に干渉しようとしたらバロールの声が聞こえて……。 |
| イクス1st | やっぱりバロールか。よし、最初からきちんと説明してくれ。 |
| イクス1st | ――間違いなくルグの槍が原因だな。ルグの槍が起動したことで俺のいた集合的無意識も外側と繋がったんだ。 |
| イクス1st | それで【アニマのるつぼ】にいる筈の俺がきみの心と繋がって目が覚めたんだろう。 |
| イクス1st | それにしても、俺たちはバロールの子孫なんだろ ?邪魔だの何だのと……。そういう性格だからバロールもビフレストから疎まれていたのかもなあ。 |
| イクス | はは……。 |
| イクス | (あ、相変わらずだな……この人……) |
| イクス | 何にしろ、イクスさんと会えて良かったですよ。 |
| イクス1st | ああ。でも、こうなるとミリーナが心配だな。心の世界――贄たちのスピルメイズにいるんだろう ?きっとあっちも混乱してる筈だ。 |
| イクス | そう思います。でも、仲間がついていますから。あっちはミリーナに任せるつもりです。 |
| イクス1st | 任せる、か……。 |
| イクス | え ? まずかったですか……。 |
| イクス1st | いや、そうじゃないんだ。改めてきみたちは、俺とミリーナとは違う別の俺たちなんだなって思ってね。 |
| イクス | 別に、見えますか ? |
| イクス1st | ああ。俺はミリーナを守ることを第一にしてきた。フィルのこともだ。 |
| イクス1st | これ以上傷つけないようにとか危険な目にあわせないようにとか悲しい思いをさせないように……なんてね。 |
| イクス1st | でも、今のきみは――きみに絡みついたしがらみを断ち切ったんだなって。 |
| イクス | 俺もミリーナも、みんなと出会って、影響を受けて色んなことを教わりましたから。 |
| イクス1st | ああ。きみには自分だけの道が見えてきたんだな。 |
| イクス | 前にイクスさんも言ってくれましたからね。全部捨てたっていい。俺たちは自由なんだって。 |
| イクス1st | そうだったな。俺もきみも違って当然なんだ。だからこそ……。 |
| イクス | イクスさん ? |
| イクス1st | ……頼みがある。俺たちの『後始末』を手伝ってくれないか。 |
| イクス | 後始末 ? |
| イクス1st | こうして自我を取り戻しても俺はやっぱり死者なんだ。外界に影響を与えることはできない。 |
| イクス1st | でも、イクスに力を貸すことはできる。だから、しばらくここに居候させて欲しいんだ。 |
| イクス | ここって、俺の心の中に ? |
| イクス1st | ああ。色々と便利になると思う。例えば……、今、きみの鏡精がバロールのところへ向かってる。 |
| イクス | コーキスが ! ? 何でわかるんですか ! ? |
| イクス1st | 本当はきみもわかってる筈なんだ。バロールと『イクス』は繋がっている。感知していても気づいてないだけだよ。 |
| イクス | 俺にも……。本当に俺にもわかるのか……。 |
| イクス1st | それで居候の件は ? 家賃分は働くよ ? |
| イクス | はは……。もちろん、構いません。 |
| イクス1st | よし、決まりだ。となると、まずはきみに目覚めてもらわないとな。 |
| イクス1st | そうしたら、バロールの心を手繰ってルグの槍を譲ってもらおう ! |
| イクス | 譲って……はあ ! ? |
| イクス1st | 驚くことかな ? 父さんたちの遺言でもあるし君がやろうとしている計画にも必要なことだろ ?頑張ってくれよ、イクス ! |
| Character | 9話【16-14 心の世界3】 |
| カーリャ | モリスンさま ! アレクセイさま !カーリャの声、聞こえますか ? |
| モリスン | ……どう……にか……。 |
| アレクセイ | …………イエガー、は……。 |
| イエガー | …………。 |
| カーリャ | イエガーさまの姿さっきより薄れている気がします……。 |
| マオ | どんどん精神エネルギーが使われちゃってるんだ……。 |
| ミリーナ | とにかく心核の燃焼を防がないと。何か手はないかしら。 |
| マオ | 精霊が守ってくれればボクたちみたいに意識や姿を保っていられるのに……。 |
| ヴァン | ……精霊の力か。精霊の加護があれば、火柱にならず姿も保てる。 |
| ヴァン | ならば、今からでもその力を施せば心核の燃焼を防ぐか、できずとも遅らせる為の防御壁にはなるかもしれない。 |
| シャーリィ | それなら、わたしとマオさんとヴァンさんがこの場で精霊の力を使えば、その防御壁というものができるかもしれませんよね。 |
| マオ | ナイスアイディア ! やってみようヨ ! |
| ヴァン | だが、その効果がどれだけの範囲に及ぶかもわからん。心核がある筈だというこの場所を中心に術を展開するべきだ。 |
| カーリャ | では、急いで他の人たちも集めないとですね ! |
| シング | おーい、いたよー ! |
| ミリーナ | フォレストさん、リーガルさん、会えてよかったです。 |
| フォレスト | ミリーナ……これを預かってくれ……。 |
| ミリーナ | これは、心核だわ。 |
| フォレスト | 途中で……見つけた……。 |
| リーガル | 私もだ……。……この二つ……。 |
| ミリーナ | ありがとうございます。二人とも、ここで休んでいてください。 |
| シャーリィ | 全部で四つ……心核だけになってるということはこの人たちも弱っていたんでしょうね……。誰なんでしょう。 |
| カーリャ | ミリーナさま、わかりますか ? |
| ミリーナ | ええ。以前は難しかったけど今はゲフィオンの記憶があるから読み取ってみるわね。 |
| ミリーナ | これは……オスカーという人。確かミッドガンド領の従騎士ね。 |
| ミリーナ | こっちは……ロミーとチトセ。 |
| カーリャ | アレウーラ領とレグヌム領の方ですね。 |
| ミリーナ | それにこっちは……。何かしら、声が聞こえる。 |
| ミルハウスト | 私……は、ミルハウスト……。 |
| マオ | ミルハウスト ! ? |
| ミリーナ | ミルハウストさん、心核だけどまだ意識があるんだわ ! |
| ミルハウスト | ……陛下を……救い……心核を……取り戻して……。 |
| マオ | 陛下の心核ってアガーテ様のコト ! ? |
| ミルハウスト | ……アガーテ様……守って……どうか…………。…………………………………………………。 |
| マオ | ミルハウスト ! ねえ、ミルハウストってば ! |
| ミリーナ | マオ。落ち着いて。今ここでは姿を保てず心核になっているだけで彼はまだ生きているわ。 |
| マオ | ……わかってる。 |
| カーリャ | 心核の状態で伝えてくるなんて驚きました。こんなことができたのは心の中だからですかね。 |
| シャーリィ | ……ミルハウストさんのアガーテさんを思う気持ちが強かったからじゃないでしょうか。こんなに必死で訴えて……。 |
| マオ | ボクもそう思う。けど、こうなるってことはミルハウストは帝国で弱るような仕打ちを受けてたってコトだよね……。 |
| マオ | でも心核が見つかってよかったヨ。ここで守ってあげられるもん ! |
| ミリーナ | 後は帝国側にいる筈の領主や従騎士たちね。早く探さないと。 |
| シング | ……あのさ、少し気になるんだけどこれだけ集まってるのに、帝国でリビングドールになってる人って、まだ見つかってないよな ? |
| マオ | そうだね。アガーテ様は見つかってないし……。 |
| シング | オレ、ここにマリンさんがいるかと思ってたんだ……。 |
| ヴァン | 疑似心核を入れられたまま火柱となっているのなら本来の心核は体の外に置かれている筈だ。故にここには居ないのだろう。 |
| マオ | それじゃ帝国の人は保護できないってコト ! ? |
| カーリャ | あーもー、魂と体が別って本当にややこしいです !ちゃっちゃと元に戻せればいいのに ! |
| シング | そりゃ、心核さえあれば……あれ ? |
| カーリャ | どうしました ? |
| シング | ここはさ、スピリアの一番奥で、今は贄の紋章の人たちみんなが繋がってるんだけど……。 |
| シング | スピリアの一番奥はスピルーンの――心核の置き場所だ。ってことは……。 |
| シング | リビングドールにされた人たちの心核を持ってくれば今なら元に戻せるし保護できるかも……。 |
| 全員 | ! ! |
| シャーリィ | シングさん、すごいです ! |
| ミリーナ | 帝国から取り返した心核がいくつかアジトにあるわ。それをソーマ使いの誰かに持ってきてもらいましょう。 |
| ヴァン | だが、それ以外は物理的に心核を取り返さない限り救えないということになる。何か策を講じねばならんぞ。 |
| ミリーナ | ええ。それもわかっています……。 |
| ヴァン | 水を差してすまない。ともあれ、まずは外へ連絡をしてもらおう。レイス、体は問題ないかね ? |
| レイス | ああ。いい報せは伝えがいがあるよ。 |
| ヴァン | では、シャーリィ、マオ。私たちは精霊エネルギーによる防御壁の構築に取り掛かるとしよう。 |
| Character | 10話【16-15 仮想鏡界2】 |
| カイウス | ガイさん !ヴァンさんは気が付いた ? |
| ガイ | いや、まだだ。今はティアが付いてる。精霊絡みかも知れないからアステルも一緒だ。 |
| カイウス | リヒターとナーザは ? |
| ガイ | メルクリアの様子を見てから来るってさ。 |
| ジュニア | 心配だな……。何が起きてるんだろう……。 |
| マークⅡ | 心配もいいが、今はやることがあるだろう。お前はこっちに集中しろって。 |
| マークⅡ | ――で、その装置はどうなんだ。 |
| カイウス | 運んできてなんだけどさこんなに小さい機械で本当に計れるのか ?掌に収まるサイズだぞ。 |
| ディスト | 愚問です。ふむ……この計測装置はハロルドのものですね。 |
| ガイ | お、ご名答。さすがだな。 |
| ディスト | フン、当たり前でしょう。音機関でも機械でも、作り手の個性というものは案外隠しきれないものです。 |
| ガイ | 確かに、それは言えてるな。根性ねじ曲がった奴の音機関なんざ回路の繋がり方すら捻くれてることがあるしなあ。 |
| ルキウス | それで、計測装置のセットアップにはどれぐらい掛かりそうなの ? |
| ディスト | もう終わりました。始めますよ。 |
| カイウス | えっ ! ? いつの間に……。 |
| ディスト | ではジュニア、こちらへ。計測を開始しますよ。 |
| ディスト | これで、贄の紋章の構造と進行具合、それにルグの槍起動装置への通信信号が計測できました。 |
| ディスト | おや…… ? |
| マークⅡ | ……おい、どうした。失敗したなんて言うなよ ? |
| ディスト | 失礼な ! 私がこの程度の計測に失敗するはずがありませんよ !しかしこれは……。 |
| ジュニア | あの……、もしかして時間が掛かりそうとか ? |
| ディスト | いいえ、計測は成功です。こちらに情報を出しましょう。 |
| ガイ | こんなに早く済むとはな。情報が届いたらジェイドもきっと喜ぶぜ。 |
| ディスト | では、もう一つ伝えなさい。ジュニアに刻まれた贄の紋章ですが対になる紋章がもう一つある筈です。 |
| ジュニア | えっ ! ? |
| ディスト | 本来はもう一人別の人物に刻まれた紋章と共に発動することでルグの槍へと変化するようですね。 |
| ジュニア | 対になる紋章…… ? |
| ディスト | ええ。何故かあなたの贄の紋章は本来の半分の能力しか有していないようです。 |
| ディスト | どこかにもう半分の贄の紋章を刻まれた――あるいは、刻まれようとしている人物がいるということですよ。 |
| ジュニア | 半分……。どうして半分なんだ ?もう半分は誰が……。 |
| ガイ | もう半分の贄の紋章の持ち主が誰だか目星はつかないのか ? |
| ディスト | そんなことを私に聞かれても困りますね。 |
| ジュニア | 僕をルグの槍にする意味……。ニーベルングの具現化、かな。やっぱり。いや、でも、それならルグの槍にする必要はないのか。 |
| マークⅡ | まあ、言うことを聞かせるだけなら他にも色々と方法はありそうだからな。 |
| マークⅡ | わざわざお前をルグの槍にする意味と半分の贄の紋章には関連がありそうだ。 |
| ジュニア | ……そうだね。 |
| ジュニア | ――皆さん、今から仮想鏡界の封鎖を解除します。そうしたら、すぐにこの計測データを浮遊島へ送信してください。 |
| ガイ | いいのか ? これ以上グラスティンにつけ込まれないために外部との通信ができないようにしていたんだろう ? |
| ガイ | 俺たちはこの仮想鏡界を出てから通信をしても構わないんだぜ ? |
| ジュニア | ううん。こうなってくると、みんなと密に連絡を取れないことの方が問題だと思うから。 |
| カイウス | ありがとな、ジュニア。 |
| マークⅡ | とはいえ、ある程度の防御はしとかないとな。 |
| ジュニア | うん。もちろんそのつもり。それじゃ――行くよ。 |
| ガイ | よし、魔鏡通信が繋がった。 |
| ガイ | ――ジェイド、聞こえるか !データが取れた。今から送る。 |
| ジュニア | ……あれっ ? |
| マークⅡ | どうした、フィル。 |
| ジュニア | 仮想鏡界の防御を解除したときに、何か違和感が……。 |
| マークⅡ | まさか、もう帝国の連中が何かしてきたってのか ! ? |
| ジュニア | いや、外からの刺激じゃないよ。内側の方だったような……。 |
| ナーザ | (……上手く誤魔化したつもりだったがバレるのは時間の問題か。しかし、少しのあいだ時が稼げればいい) |
| ナーザ | ――待っていろ、バルド。 |
| ジェイド | ――なるほど。あなたの心の中に、最初のイクスがいる、と。全くこの世界のいびつさときたら、頭が痛いですね。 |
| イクス | まあ、そんな訳なのでもう一度あの歪んだアニマを辿ってみます。 |
| リフィル | そんなすぐに大丈夫なの ? |
| イクス | ええ。問題ありません。 |
| リフィル | でも、ほんの数分とはいえ気を失っていたのよ。本当にこのまま続けてよくて ? |
| イクス | 本当に大丈夫です。最初のイクスさんもいますし次はバロールが干渉してきても対抗できると思います。 |
| ジェイド | そうですね。どのみちこの計画はあなたの存在ありきのものです。よろしくお願いします。 |
| イクス | わかりました。 |
| ジェイド | まずは、何としてもルグの槍の起動装置の場所を特定する。それから帝都に降下してもらいます。 |
| イクス | 起動装置の破壊と、心核の回収ですね。それに可能なら鏡映点を救出する。優先順位もこの順序でいいですよね。 |
| ジェイド | ええ、大変結構です。あなたは地頭がいいので、話が早くて助かりますよ。 |
| リフィル | イクス、気を付けなさい。あなたの頭の良さと物わかりの良さは悪い大人に利用されてしまうこともあるのだから。 |
| イクス | そ、そうですね。あの……それ、ジェイドさんのことじゃないですよね ? |
| リフィル | ええ、ジェイドのことです。 |
| ジェイド | はっはっはっ。相変わらず手厳しいですねえ。 |
| イクス | ――っと、コハクだ。 |
| コハク | イクス、こっちの準備はできたよ。今から行ってくるね。ちゃんと保管庫の心核も持ってきたから ! |
| イクス | ああ、頼んだ。心核の交換になるだろうから大変だと思うけどよろしくな。 |
| コハク | まかせて ! みんなをガンドコ助けてくるね !イクスたちも頑張って ! |
| イクス | ……さて、俺たちも始めましょう ! |
| バロール | デミトリアス、これが最後の通告だ。起動装置から槍を外せ。 |
| デミトリアス | 断る ! 私には私の信念がある ! |
| バロール | そうか。お前の意志はそれなりに尊重するつもりだったが、肝心なところで我が意に逆らうのならば自由意志など邪魔なだけだな。 |
| バロール | 貴様は山ほど鏡精を喰らった。ならば此度は―― |
| デミトリアス | ! ? |
| バロール | お前が喰われろ。 |
| グラスティン | おい、デミトリアス、どういうことだ !何故ルグの槍が起動している !お前の命令か ! ? |
| デミトリアス | ああ、そうだ。 |
| グラスティン | 何を考えている ! これでは計画が台無しだろう !今からでも起動装置を止めろ ! |
| デミトリアス | できんな。あれは俺の槍だ。 |
| グラスティン | …………あ ? |
| デミトリアス | お前はこのまま見ていればいい。手出しは無用だ。 |
| グラスティン | ……………誰だ、お前。 |
| デミトリアス | ……………。 |
| グラスティン | ああ、そうか。『俺の槍』か。ヒヒヒ。お前、バロールだな。 |
| バロール | わかったか。ならば下がれ。 |
| グラスティン | ヒヒヒ…………ヒャハハハハッ !おいおい、それならデミトリアスはどうした、あ ? |
| バロール | 俺が喰った。 |
| グラスティン | ………………喰った ? |
| グラスティン | そうか……ヒヒッ……あいつを……。これはまた、ヒヒッ……。 |
| バロール | いらんだろう。あのような邪魔な意識など。 |
| グラスティン | …………貴様ァアアアアアア ! ! |
| バロール | 無駄なことを。 |
| グラスティン | 喰ったなら吐き出せ !デミトリアスを返してもらう ! |
| | to be continued |