| Character | 1話【18-1 アジト1】 |
| | 浮遊島アジト 会議室 |
| ルーングロム | 遅いぞ、エドワード。 |
| モリスン | なんだ、グロム。もう来ていたのか。 |
| ルーングロム | 私だけじゃない。もう全員揃っているよ。 |
| モリスン | これは申し訳ない。少し寄り道が過ぎたようだ。 |
| イクス | アセリア領内の視察でしたっけ。クレスたちはどうしてます ? |
| モリスン | 今はアルヴァニスタ領都から離れた街で小競り合いを収めているよ。じきに浮遊島へ戻るはずだ。 |
| マウリッツ | もしや、帝国兵たちかね ? |
| モリスン | いえ、住民同士のいざこざです。このところ街の雰囲気もピリピリしています。 |
| カーツ | 不安を募らせているのだろう。続けざまに異変が起きているからな。 |
| マウリッツ | 帝国兵と反帝国組織との争いが激化しているうえにあの『空』だ。仕方あるまい。 |
| パライバ | 虹の橋ですか……。事情を知らない方にとってはとても奇妙に映ることでしょう。 |
| イレーヌ | あの虹、私たちがイクス君に救出されてからずっと空に漂い続けていますからね。 |
| イクス | あれからもう、ひと月以上経つのか……。 |
| ミリーナ | ええ。あの時は本当に大変だったわね……。 |
| マオ | う……ううっ……。 |
| ヴェイグ | マオ ! 目が覚めたのか ! ? |
| ヴェイグ | 今のは ! ? |
| ガラド | 安心しろ。マオのスピリアからリンクアウトしたんだ。ミリーナたちが出て来るぞ。 |
| カーリャ | 浮遊島に戻れましたね……って、何ですかあの空 ! |
| ミリーナ | 本当だわ……。とにかく、先にみんなの無事を確認しましょう。マオはどう ? |
| イネス | 贄の紋章持ち以外、マオからリンクアウトしてるからこれで目は覚めるはずだけど……。 |
| マオ | あれ……みんな…… ? |
| アニー | マオ ! 良かった……。意識はしっかりしているわね。 |
| ヴェイグ | ユージーンたちにも知らせてこよう。 |
| シャーリィ | う……。 |
| クロエ | シャーリィ ! 私がわかるか ! ? |
| ノーマ | ねえ、こっち ! ワルちんも目が覚めそうだよ。 |
| ウィル | マウリッツもだ。 |
| ルカ | 医療班のみんな !贄の紋章の人たちの意識が戻ったよ ! |
| ジュード | 軽い治癒術だけで動かせそうならどんどん医務室に運んで ! |
| アトワイト | 重傷者は私がその場で診ますから申し出てください。 |
| エリーゼ | あ、あのっ ! |
| ティポ | セルゲイの顔が真っ青だよー ! 手伝ってー ! |
| ワルター | う……、メルネスは……。 |
| シェリア | 安心して。シャーリィも目が覚めてるわ。――誰か、ワルターを運んでもらえる ? |
| モーゼス | よっしゃ、力仕事ならワイに任せい !ヒョォォォォッ ! |
| グリューネ | ワルターちゃん手も足もぶーらぶらさせて楽しそうねぇ。 |
| ウィル | モーゼス ! 患者を肩に担ぐんじゃない ! |
| 五人 | (……扱いが雑っ ! ) |
| ルビア | フォレストさん、気分はどう ? |
| ナタリア | 陛下、ご無理をなさらないで。 |
| ガラド | 待て待て、いくら羽の兄さんとはいえそんなヘロヘロじゃ飛べねぇだろ。大人しく運ばれとけって。 |
| ミリーナ | みんな、意識が戻ってきているわね。よかった……。 |
| しいな | ミリーナ、お疲れさま。うちのリーガルも目が覚めたよ。 |
| リッド | フォッグとレイスもだ。 |
| ミリーナ | よかったわ。リッドさんも交信ありがとう。 |
| リッド | それだけど、防御壁はどうなったんだ ?レイスとの交信は途中で途絶えちまって。 |
| ミリーナ | 侵食はされていたけれどヴェリウスが力を貸してくれてどうにか耐えられたの。 |
| しいな | そうかい、頑張ってくれたんだね。……あのさ、ヴェリウスはあたしのこと、何か……。 |
| ミリーナ | しいな ? |
| しいな | ……いや、なんでもないよ。ミリーナもシャーリィもマオも大変だったろ。ゆっくり休んどくれ。 |
| シャーリィ | 大丈夫です。これくらい……あっ……。 |
| シャーリィ | 力が……入らない……。 |
| マオ | 実はボクも……。フォルスの大盤振る舞いだったもんネ……。 |
| アニー | 急いで医務室へ運びます ! 誰か手を―― |
| モーゼス | 次に運ぶのはどいつじゃ ! そいつか ! |
| ノーマ | 来んなモーすけ ! 犠牲者はワルちんで十分だっ ! |
| ジェイド | 逆しまの魔導砲は間に合ったようですね。 |
| ミリーナ | ジェイドさん、リフィルさんこの空はどうなってるんですか。イクスたちから連絡は―― |
| ジェイド | 失礼、ハロルドから連絡です。――ハロルド ? |
| ハロルド | 逆しまの魔導砲を発射完了よ。贄の紋章、無効化できたでしょ ? |
| ジェイド | ええ、今、その確認中です。贄たちの意識が戻り始めていますよ。今回は多くの無理を聞いて頂いて本当に助かりました。 |
| ハロルド | そう ? だったらお礼はあんたの解剖ってことでよ・ろ・し・く・ね☆ |
| カーリャ | きゃー ! やっちゃってください、ハロルドさま- ! |
| ジェイド | 私の中が見たいなんて、照れますねえ、ハロルド。まあ、贄の紋章が完全に消去できたらその時に改めてお礼をしますよ。 |
| ミリーナ | そうだったわ……。今回はあくまで贄の紋章を『無効化』しただけで完全に『消去』できたわけじゃない……。 |
| リフィル | ええ。これからもう一仕事必要になるわね。 |
| イクス | ――そういえば、イレーヌさんたちの紋章もキール研究室が解析したんですよね。何か聞いていますか ? |
| イレーヌ | 特には。贄の紋章は無効化できたけれど紋章自体が消えたわけではないし……。 |
| 全員 | …………。 |
| パライバ | ……この紋章を背負い続ける限りわたくしたちに不安はつきまとったままです。 |
| パライバ | ですが、不安に囚われ続けることが何より危険です。それはわたくしが身をもって知っています。 |
| パライバ | 贄の紋章の除去については信じて待ちましょう。他にも考えるべきことは山のようにあるのですから。 |
| カーツ | そうだな。今回の芙蓉離宮の一件にしても帝国側にとっては予想外だったはずだ。その証拠に、あれから帝国側に大きな動きはない。 |
| カーツ | 今のうちに、各大陸の反乱勢力と手を結んで反帝国の志を持つ地域を広めてはどうだろう。アセリア領の領都アルヴァニスタのように。 |
| ルーングロム | 確かに、あの都は民と反帝国兵が協力体制にある。反帝国組織を盛り立てて行く上で良い前例となるだろう。 |
| カーツ | ああ。だが、戦いが長引くほど国民は疲弊し追いつめられる。今日起こったという住民の小競り合いも、その始まりなのかもしれん。 |
| モリスン | なるほど。長期戦は組織の内部崩壊も引き起こしかねん。その前に決着をつけよう、というところか。 |
| マウリッツ | もしや、そういった経験がおありかね ? |
| カーツ | ……それなりに。 |
| モリスン | 結びつきを強くするなら、各地方組織の詳細が必要だ。カロル調査室の情報を元に、更に掘り下げてみよう。 |
| ルーングロム | そういえば、新大陸にも反帝国組織が存在したと聞いているが、そちらとは手を組めそうかな ? |
| イクス | はい。新大陸で出会った鏡映点のアルフェンさんとシオンさんが仲介してくれました。 |
| カーリャ | 新しい鏡映点が増えると心強いですよね !目が覚めない鏡映点の方々も早く元気になるといいんですけど……。 |
| ミリーナ | そうね。ミルハウストさんや、ブルートさんウィンガルさんにプレザさんにヴィクトリアさんも……。 |
| イレーヌ | 帝国派閥の鏡映点も眠ったままよね。今はともかく、あの人たちが目覚めたらどうするの ? |
| ミリーナ | ロミーたちへの対処は……正直な所、悩んでいるんです。話が通じるといいんですけど。 |
| カーリャ | 問題の種はつきませんねぇ……。 |
| イクス | ああ。他にネヴァンとゲフィオンの件もあるしな。あっちもどうにか―― |
| 二人 | …………。 |
| イクス | ……ごめん、話が逸れた。 |
| イクス | 改めて、俺もアセリア領を中心に反帝国の領土を広げることには賛成です。 |
| イクス | ここに集まっているのは、元の世界でも指揮を執る立場にあった方々だと聞いています。どうか皆さんの力を貸してください ! |
| Character | 2話【18-3 アジト3】 |
| | 浮遊島アジト 医務室にて |
| アガーテ | ……。 |
| セルゲイ | アガーテさん、少し休んだらどうだ。ミルハウスト殿は自分が見ておこう。 |
| アガーテ | お気遣いありがとうございます。でも、できる限りそばにいたいのです。 |
| セルゲイ | なんと健気な……。 |
| アガーテ | この程度、ミルハウストの献身に比べれば大したことではありません。 |
| マルタ | 失礼します。あ、やっぱりいた。アガーテさんにセルゲイさん。 |
| セルゲイ | 今日もブルート殿の見舞いか。 |
| マルタ | うん、相変わらず眠ったままだけどね。いつになったらパパと話せるんだろう……。 |
| セルゲイ | 気を落とすことはない。先ほどジュードが回診に来たが皆の容体は安定しているそうだ。 |
| マルタ | そっか。教えてくれてありがとう。そういえばセルゲイさんってずっと医務室周辺の警護をしてるけど、体は平気 ? |
| マルタ | 奥の部屋はロミーたちもいるし警戒するのもわかるけど……。 |
| セルゲイ | 心遣い、痛み入る。贄の紋章の無効化以来十分な休息のおかげか、体調はすこぶる良い。むしろ動かないと体がなまってしまう。 |
| セルゲイ | この警護も皆に世話をかけた分少しでも役に立ちたくて自ら申し出たことだ。どうか気にしないで欲しい。 |
| マルタ | 真面目だなぁ。でも無理は禁物だよ。アガーテさんもね。 |
| マルタ | ミリーナたちから聞いたけどミルハウストさんは心核だけになってもアガーテさんを助けて欲しいって訴えてきたんでしょ ? |
| マルタ | なのに、付きっきりで看病して体を壊しちゃったらミルハウストさん、悲しむんじゃないかな。 |
| アガーテ | ……以前、同じことを言われました。 |
| マルタ | 以前って ? |
| アガーテ | イクスさんが、わたくしたちを助けに来てくれた時です。 |
| イクス | ――はい。たった今、起動装置の停止を確認しました。逆しまの魔導砲の発射をお願いします。 |
| ジェイド | 承知しました。一度切ります。 |
| アスベル | イクス、起動装置が停止すれば上の階の魔鏡陣も解除できるんだよな。 |
| イクス | ああ、そのはずだ。――ですよね、フィルさん。 |
| ガロウズ | ビクエ様は席を外している。ついさっきだが、贄の紋章たちに異常が出たとかで呼び出されたんだ。 |
| イクス | 異常…… ! ? わかった。――みんな、急いで上に戻ろう ! |
| セネル | 見ろよ ! 贄の紋章のみんな、炎が消えてるぞ。 |
| スタン | 逆しまの魔導砲は大成功ってことか。やったぜ !これで近づくことができれば―― |
| 二人 | ……………っ。 |
| アスベル | 今、かすかに、カーツさんが…… ! |
| スタン | なあ、ルーティ !イレーヌさん、動いたぞ。今の見たよな ! ? |
| ルーティ | 見たってば !けど、起きたところでリビングドールのままなのよ ?心核が戻ってないんだから。 |
| マリク | ああ、用心しろ。下手をすれば戦闘になりかねん。そうなったとしても、手は抜くなよ。 |
| アスベル | ……わかっています。 |
| イクス | それじゃ、魔鏡陣を解除するぞ。 |
| イクス | よし、床の紋様が消えた。もう大丈夫だ ! |
| マリク | カーツ ! ヴィクトリア ! |
| スタン | イレーヌさん ! |
| ルーティ | レイア、先に自分の仲間のところに行って。他は、あたしが確認しておくから。 |
| レイア | ありがとう、ルーティ。――ウィンガル、プレザ ! |
| セネル | 俺たちはこっちだ。鏡映点リストのとおりならこっちはルーングロムでこの女の人はアガーテだよな ? |
| ジェイ | ええ、間違いありません。その隣の金髪の男性は、ミルハウストさんです。だいぶ怪我が目立ちますね。 |
| イクス | この人はブルートさん、それとパライバさんもいるな。後は……。 |
| ガロウズ | ケリュケイオンでも帝国側にいた奴らを保護してるぜ。マティウス、チトセ、オスカー、ロミーだ。 |
| スタン | イレーヌさん、しっかり ! |
| イレーヌ | …………スタン…………君………… ? |
| ルーティ | 今、スタン『君』って言った ! ? |
| スタン | 俺のことわかるんですか ! ?イレーヌさんなんですね ! ? |
| イレーヌ | わかるわ……。忘れるわけ……ない……。 |
| アスベル | だとしたら…… ! |
| マリク | カーツ ! しっかりしろ ! 目を覚ませ、カーツ ! |
| カーツ | っ…………マリク、か。 |
| マリク | カーツ……、お前、生きてるんだな。 |
| カーツ | 馬鹿を言え……。勝手に殺すな。 |
| マリク | すまん……。本当にすまなかった……カーツ……。オレは……。 |
| ジェイ | どういうことですか、イクスさん。あの人たちの心核、まだ戻していませんよね ? |
| イクス | ああ。――ヴェリウス、聞こえるか。心の世界で何があったんだ、ヴェリウス。 |
| イクス | …………応答なし、か。ざっと見たところ、意識があるのはカーツさんとイレーヌさんだけだな。 |
| イクス | ……仕方ない。さっき手に入れた心核を確認してこの場に肉体がある人は元に戻そう。 |
| セネル | ここで ? |
| ジェイ | あれですか、本人の肉体に近づけて心核の反応や光り具合で誰のものか判断するっていう。 |
| イクス | よく調べてるなぁ。さすが不可視のジェイだ。 |
| イクス | でも、それだとコハクの時みたいにシングのソーマに反応する例もあるからな。 |
| イクス | 今回はミリーナに教わったやり方でやってみるよ。ゲフィオンの知識から修得してるからより確実なはずだ。 |
| セネル | わかった。頼むぞ。 |
| イクス | ――ふぅ。終わった。全員分当てはまったな。 |
| ジェイ | これでわかりました。アジトで保管していた心核はカーツさんとイレーヌさんのものだったんですね。 |
| セネル | 何があったか知らないがシャーリィたちの方で心核が戻せたんだろうな。だから先に目が覚めたんだ。 |
| アスベル | イクス、ヴィクトリア教官は……今、心核を戻した人たちはいつ目覚めるんだ ? |
| イクス | ごめん、そこまでは。その人によるとしか―― |
| アガーテ | あ…………。ここは………… ? |
| イクス | アガーテさん、気がついたんですね ! |
| アガーテ | ……あなたは…… ? |
| イクス | 俺は鏡士のイクスです。あなたたちを助けに来ました。 |
| ルーティ | イクス、ミルハウストって人の治療、終わったわよ。まだ目は覚めないけどね。 |
| アガーテ | ミルハウスト…… ? ミルハウスト ! ! |
| ルーティ | ちょ、ちょっと何 ? 落ち着きなさいって。 |
| ジェイド | イクス、こちらは無事に逆しまの魔導砲を発射できました。そちらの状況は ? |
| イクス | 贄の紋章の鏡映点、十名を保護しました。手に入れた心核も、すでに戻してあります。 |
| ジェイド | となると、ケリュケイオンと合わせて全員保護したことになりますね。予想以上の成果ですが、連れ出せそうですか ? |
| イクス | これだけの人数ですし、意識のない人がほとんどです。奪還成功時のプランどおりに転送ゲートを使います。 |
| ジェイド | ……やはり、そうなりますか。イクス、転送ゲートを使用する前に外で何が起きているか、状況を伝えます。 |
| ジェイド | 逆しまの魔導砲の発射前、贄の紋章たちから虹のようなオーラが立ち昇り、空へと照射されました。 |
| ジェイド | これはルグの槍が生み出したものと考えています。そして現在、逆しまの魔導砲が発射された後もその虹は空に漂ったままです。 |
| イクス | (虹……バロールが言っていた虹の橋か ! でも……) |
| イクス | 消えないって、どういうことだろう。装置は停止させたのに。 |
| ガロウズ | すまん、割り込むぞ。虹はケリュケイオンでも確認している。 |
| ガロウズ | イクス、脱出する前に起動装置からデータを抜き出そう。何かわかるかもしれない。 |
| ジェイド | そうですね。出来る範囲でお願いします。 |
| ジェイド | 話を戻しますが、転送ゲートでの脱出の際この虹がどう影響するかは不明です。 |
| ジェイド | ただでさえ、個人で展開する転送ゲートは術者への負担が大きいうえに、それだけの人数です。失敗すれば二度目は難しいでしょう。 |
| ジェイド | その場合はわかっていますね ?行使する際には、万難を排して挑んでください。 |
| イクス | ……わかりました。 |
| ジェイド | こちらでも救出班を用意しています。ミリーナもつい先ほど戻りましたので、いざとなれば浮遊島を降下させて救出にいきますよ。 |
| イクス | それ……ぶつけてどうにかするとか言いませんよね ? |
| ジェイド | お望みであれば、物理的にそうしても構いませんが。 |
| ガロウズ | イクス、余計なこと言うな。この御仁、本気でやりそうだぞ。 |
| ジェイド | まあ、冗談はともかくとして。どうか無事の帰還を。 |
| イクス | はい、必ず戻ります。 |
| Character | 3話【18-5 芙蓉離宮2】 |
| イクス | ガロウズ、他に抜き出すデータは ? |
| ガロウズ | いや、いい。これ以上は危険だから脱出だ。それと、できれば転送ゲートは地上に出てから使ったほうがいい。 |
| イクス | どうして ? |
| ガロウズ | 起動装置のある周辺じゃ、なんのエネルギーが絡むかわからねぇ。ルグの槍の他に、台座にはマクスウェルの残滓も供給されてただろ ? |
| イクス | そうは言っても、中庭へ戻るには相当距離があるんだ。敵も多いし、今のみんなを連れてはいけないよ。 |
| ジェイ | イクスさん、地上にいけるかもしれませんよ。 |
| セネル | ジェイ、どこにいたんだ。ふっと消えちまって。 |
| ジェイ | グラスティンが逃走した経路を探っていたんです。そうしたら、奥の突き当りで隠し通路を見つけました。 |
| ジェイ | 軽く偵察しましたが上り坂になっていて、空気の流れも違います。外へ繋がっているかもしれません。 |
| イクス | わかった。ありがとう、ジェイ。 |
| イクス | レイア、みんなの容体は ? |
| レイア | ルーングロムさんと、パライバさんの目が覚めたよ。 |
| イクス | 意識が戻った人たちは歩けそうかな。 |
| レイア | 待ってて、聞いてみる。 |
| レイア | ――……みんな、なんとか歩けるって。もしかして移動するの ? |
| イクス | ああ。みんなに伝えてくれ。歩ける人には歩いてもらって、まずこの地下を出る。目覚めない五人は、俺たちで背負って運ぼう。 |
| レイア | わかった。準備しておくね。 |
| ジェイ | いいんですか ? 一か八かの賭けですけど。 |
| イクス | ジェイが俺に報告した時点で勝算はあると思ってるよ。 |
| セネル | へえ、信用されてるな、ジェイ。 |
| ジェイ | べ、別に……。今日のイクスさん、何か変ですよ。この地下への階段を作った時も、妙に明るかったし。 |
| イクス | えっ、そうだったか ? |
| イクス | (イクスさん、何を言ったんだ……) |
| セネル | ほら、いいからみんなの所へ行こうぜ。準備が出来しだい脱出だ。 |
| アガーテ | はぁ……はぁ……。 |
| アスベル | 大丈夫か ! |
| イクス | アスベルたちは先に行って、出口を確認してくれ。ジェイ、先導頼むぞ ! |
| レイア | アガーテさん、もう少し治癒術をかけてみるね。 |
| イクス | 元の身体に戻ったばかりなのに無理をさせてすみません。 |
| アガーテ | ……きっと、こんなことになったのも……わたくしが心と体を弄んだ報い……。 |
| レイア | えっ、なに ? |
| アガーテ | わたくしは置いていって……。足手まといになります。でも彼は……、ミルハウストだけは救って……。 |
| イクス | 俺が背負ってる人は、アガーテさんにとって大事な人なんですね。 |
| イクス | だったら、絶対に一緒に脱出しましょう。自分を助けるためにアガーテさんが犠牲になったらミルハウストさんは悲しむんじゃないですか ? |
| アガーテ | わからない……。悲しんでくれるのかしら……。 |
| レイア | お願い、諦めないで。わたしも頑張って回復させるから ! |
| アガーテ | あなたたち……。 |
| ジェイ | イクスさん、外へ出られましたよ !ここからほんの少し先です ! |
| アガーテ | まぶしい……。 |
| レイア | 出られた !けど、あの空なに…… ?オーロラみたいな、変なのが浮かんでる。 |
| イクス | あれが虹の橋か…… ! |
| アガーテ | ……あの異変の最中にも拘わらず、イクスさんたちはミルハウストが悲しむから諦めるなとずっと励ましてくれました。 |
| マルタ | すごいよね、イクス。誰一人残さずに、全員連れ帰ってくれたんだもん。おかげでパパを取り戻せた。 |
| マルタ | 後は、目が覚めてくれればなぁ……。 |
| ルキウス | 失礼します。アガーテさん、いますよね。 |
| アガーテ | ええ。何か ? |
| ルキウス | これ、クレアさんから差し入れです。きっと食べる暇も惜しんで付き添っているだろうからって。 |
| アガーテ | ピーチパイですね。ありがとうございます。 |
| マルタ | ルキウスは、ロミーのところ ?今朝も来てたよね。 |
| ルキウス | ロミーは問題を抱えているからなるべく目を離したくないんだ。後からアルヴィンさんやルカたちも来るよ。 |
| セルゲイ | そうか。では、ひと悶着始まる前に見舞いが来ると声をかけて来よう。 |
| マルタ | チトセとイリア、いっつも言い合いになるもんね。イリアも喧嘩するくせに、どういうわけか必ずルカと一緒にお見舞いに来るし。 |
| アガーテ | フフッ。結局、いつもの顔ぶれが揃ってしまいましたね。 |
| マルタ | けど、ちょっとほっとする。一人で目が覚めるのを待つのはやっぱり辛いもん……。 |
| ルキウス | そうだね……。 |
| アガーテ | このパイ、みんなで分けましょう。美味しそうな匂いにつられて目が覚める方がいるかもしれないわ。 |
| マルタ | 賛成 ! クレアのピーチパイ、大好き ! |
| Character | 4話【18-6 ケリュケイオン1】 |
| フィリップ | うん、顔色がいいね。体も心核の傷も、順調に回復しているようだ。食欲はどうだい ? |
| オスカー | おかげさまで、全て残さず頂いています。ここの料理人は良い腕をしていますね。特に今日出て来たシチュー、あれは絶品でした。 |
| テレサ | そうですね。私も気に入りました。さっぱりして、けれど食べ応えもあって。 |
| フィリップ | ああ、あれはね、ベル―― |
| マーク | そうかそうか ! そりゃ良かった !どんどん食って、体力つけないとな !フィル、お前もだぞ~ ? |
| フィリップ | ちょ、やめてよマーク !髪がグシャグシャ……ああ、もう……。 |
| マーク | 後で直してやるから黙ってろ。それにしても、よくここまで回復したもんだ。 |
| フィリップ | そうだね。ケリュケイオンに収容した中ではきみが一番危なかったから……。 |
| オスカー | あなた方や、鏡士のミリーナたちには感謝しています。 |
| テレサ | 本当に……あの時はどうなることかと……。 |
| マーク | ――そうか、わかった。連絡ありがとな、キール。 |
| マーク | フィル、お前の見立てどおりだったな。 |
| フィリップ | うん。――みんな、聞いて欲しい。先ほど逆しまの魔導砲が発射されたそうだ。 |
| シング | それじゃ、みんなから炎や虹色の光が消えたのも贄の紋章が無効化されたおかげなんだね ! |
| マーク | ああ。浮遊島じゃ目覚める奴も出てきてるって―― |
| モリスン | ううっ……。 |
| 二人 | モリスンさん ! |
| モリスン | 君たち……。そうか、私は生きているのか……。 |
| クレス | 当たり前です !モリスンさんを死なせたりしません。あんな思いは……。 |
| ミント | クレスさん……。 |
| ミント | モリスンさん、少しでも楽になるように術で体力を回復させますね。 |
| ドロワット | 羨ましいわん……。 |
| ゴーシュ | っ ! 見ろ、ドロワット ! |
| イエガー | …………ぅう。 |
| 二人 | イエガー様っ ! ? |
| イエガー | ゴーシュ……。ドロワット……。グッ…………モーニン。 |
| 二人 | イエガー様ぁ~~~~っ ! ! |
| レイヴン | やれやれ、どこまでも女泣かせな奴だねぇ。ったくアレクセイの旦那もさっさと起きてくれりゃ……。 |
| アレクセイ | ……起きていたら、なんだ ? |
| レイヴン | っ !……目が覚めてんなら、それらしい反応してよね。で、気分はどうよ。 |
| アレクセイ | 体は思うようではないが……、気分は悪くない。お前の情けない顔を見られて胸がすいた。 |
| レイヴン | 性格悪っ! |
| テレサ | (どうしよう……オスカーが目を覚まさなかったら……) |
| テレサ | オスカー、お願い……。私を置いていかないで……。あなたがいくのなら、一緒に……。 |
| オスカー | あね……うえ……。 |
| テレサ | ! |
| オスカー | 大丈夫……、あなたを一人にはしません……。 |
| テレサ | オスカー ! そうよ、一人にしないで……あなたがいない世界では、私は生きていられない……。 |
| シング | よかったね、テレサさん。 |
| テレサ | シング、でしたね。ありがとうございます。救けてくれたミリーナにもお礼を言わなくては。 |
| ベルベット | ちょっといいかしら。あっちの部屋でチトセって子が目を覚ましたんだけど。 |
| フィリップ | わかった。行ってくるよ。 |
| シング | 見てよ、ベルベット、ライフィセット !オスカーの目が覚めたよ ! |
| ライフィセット | 本当だ ! 良かったね、ベルベット。 |
| ベルベット | ……そうね。 |
| オスカー | ベルベット…… ! ? |
| テレサ | ……彼女たちが、あなたの救出にあたったのです。 |
| オスカー | 業魔が ? |
| テレサ | …………。 |
| ベルベット | ……戻るわよ、フィー。 |
| ライフィセット | あっ、…………うん。 |
| オスカー | 姉上、これはどういう……。うっ ! |
| テレサ | オスカー ! ? |
| ミント | 失礼します。これは……かなり衰弱していますね。 |
| シング | オスカーの心核には傷がついていたんだ。今は、ミリーナが何とかしてくれてるはずだけど。 |
| ミント | そうなのですね。だとすると、オスカーさんの治療は他の人よりも時間がかかるかもしれません。 |
| テレサ | わかっています。それでも、命さえあれば―― |
| テレサ | ……あの頃のオスカーを思うと今は見違えるようです。 |
| オスカー | ミントさんの見立てどおり医務室には最後まで居残ってしまいましたけどね。 |
| マーク | どん尻ってわけでもないぜ。マティウスとロミーは目が覚めないまんまで浮遊島に移されてるしな。 |
| マーク | イエガーやチトセも浮遊島で療養するっていうしアレクセイは回復そこそこで船を降りちまうし。 |
| フィリップ | 大丈夫かな、彼。自分の軍を放っておけないのはわかるけど……。 |
| マーク | 救世軍で派遣した奴らが様子を見てるし何か異常があるなら連絡くらい来るだろ。 |
| マーク | まあ、そういうわけだから、ここでちゃんと回復に努めているのは、元々オスカーくらいのもんだ。 |
| テレサ | そのことですけれど、オスカーも随分と動けるようになってきましたし私たちも船を降りようと思います。 |
| フィリップ | また急だね。こちらは居てもらっても構わないんだよ ? |
| テレサ | ありがたいお言葉ですが……。長居するには思うところもありますので。 |
| マーク | そういうことか……。確かに因縁を乗り越えるにしてもこの距離は近すぎるもんな。お互いのためにもいいだろう。 |
| フィリップ | それで、今後はどうする。帝国へ戻るつもりかい ? |
| テレサ | いいえ。それだけは決して。オスカーが危険にさらされるだけですから。 |
| オスカー | アルトリウス様の一件は聞きました。僕に仕掛けていた魔導器のこともです。ですが、あの方のお考えは僕ごときが及ぶべくもない。 |
| オスカー | アルトリウス様の崇高な目的の礎となるならばこの命など喜んで差し出す。何より姉……大事な人や人々の為にもなるのだと思っていました。 |
| オスカー | けれど、その計画が更なる苦しみを招いてしまった。それに気づいた今、僕たち二人が帝国へ戻ることはありません。 |
| マーク | だったら、俺たちと手を組まないか。 |
| テレサ | 救世軍とですか ? |
| マーク | ああ。あんたらの地上での暮らしを保障する代わりに各地で起き始めている、対帝国への包囲網としてその力を貸して欲しいんだ。 |
| テレサ | ……その話については、考えさせてください。 |
| マーク | そうか。無理強いはしないさ。まあ、最近まで帝国内部に通じてた奴がいると何かとありがたいってのが本音だけどな。 |
| テレサ | 帝国に通じている者……。そういえば、チトセは浮遊島でどうしていますか ? |
| フィリップ | チトセなら、目覚めないマティウスに付き添ったまま傍を離れないらしいよ。 |
| テレサ | そうですか……。チトセはマティウスを助けるためにアルトリウス様と共に行動していました。ある意味では、私と同じ境遇です。 |
| テレサ | 非情な行いにも割り切っているように見えますが根は優しい子だと感じました。ですから……。 |
| フィリップ | 大丈夫。あちらで酷い扱いを受けるようなことはないよ。 |
| マーク | チトセの出方次第だがな。さてと、こういう話になったならあれを渡しておいた方がいいだろう。フィル。 |
| フィリップ | そうだね。テレサ、オスカー。これはミリーナからだよ。魔鏡通信機器と、当面の資金だ。 |
| テレサ | え…… ? |
| フィリップ | ミリーナから預かっていたんだ。きみたちはきっと救世軍に協力はしないだろうからその時はこれを渡して欲しいって。 |
| マーク | あんたらが地上で落ち着けそうな場所もすでに見繕ってあるそうだ。これからは二人で静かに暮らせばいい。 |
| テレサ | ミリーナ……。私たちは敵だというのに、どうしてそこまで……。 |
| マーク | さあね。あんたにどこか同じものを感じたんじゃないか ?大事なもののために、なりふり構わないところとか。 |
| フィリップ | 理由はともかく、こうなったのはきみたちの幸せを心から願う人たちがいたからだよ。ミリーナや、僕たちや、それに他にもね。 |
| テレサ | 他…… ? まさか……。 |
| オスカー | ……姉上、僕たちは様々な認識を変えなければいけないようです。 |
| テレサ | ええ……。私たちに心を砕いてくださった方々に感謝申し上げます。 |
| マーク | 伝えとくよ。さて、地上に降りたらここの美味いメシともおさらばだ。今のうちに、たらふく食っておけよな。 |
| テレサ | そこは問題ありません。私、料理の腕には少々覚えがあるのです。ここの味にも負けませんよ。 |
| オスカー | ええ。姉上のキッシュは絶品です。ずっと食べたいと思っていました。下に降りたら作ってもらえますか ? |
| テレサ | ええ、毎日でも。 |
| Character | 5話【18-7 セールンド城1】 |
| カーリャ・N | ゲフィオン様……。 |
| ファントム | まだここに通っているんですか。こりない人ですね。 |
| ファントム | あなたはもう鏡精ではないのだから自由に生きればよいものを。いまだにゲフィオンに縛られて。 |
| カーリャ・N | それは、あなたも同じでは ? ファントム。 |
| ファントム | どういう意味でしょう。 |
| カーリャ・N | 私が新大陸の調査を終えてここへ戻ったときあなたがここにいたのには驚きました。 |
| カーリャ・N | ケリュケイオンで休んでいるように言われていた筈なのに勝手に抜け出して……。 |
| カーリャ・N | まだ体も本調子ではないというのにゲフィオン様の『壁』をどうにかしようとここに残り続けている……。 |
| ファントム | それは……私がヘルダルフの穢れを虚無に流し込んだことで、あなたが作ったゲフィオンの心の防御壁が壊れてしまったからです。 |
| ファントム | 自分がしでかした『事』の始末をつけている。それだけのことですよ。 |
| カーリャ・N | でも―― |
| ファントム | 勘違いしないでください。ゲフィオンを守っているのはあなたと同じ理由じゃない。 |
| ファントム | 確かに、ミリーナに飲み込まれて消滅しかけているゲフィオンの意識は私の対処によって、まだ多少は保っている。 |
| ファントム | けれど、ゲフィオンの意識が消えることはもう防ぎようがない。 |
| カーリャ・N | …………。 |
| ファントム | 私にとって重要なのは、バロールの干渉によって内側から崩壊しつつある『人体万華鏡であるゲフィオン』の対処です。 |
| ファントム | せめて人体万華鏡の崩壊だけでも遅らせなければ、死の砂嵐が再び吹き出してしまう。 |
| ファントム | 鏡精でもないあなたが食い止められることではない。いるだけ無駄ですから、さっさと帰りなさい。 |
| カーリャ・N | 嫌です。 |
| ファントム | では、はっきり言います。邪魔です。 |
| カーリャ・N | 切り離されたとはいえ、私はゲフィオン様の元鏡精。ゲフィオン様の心に干渉しやすい力を持っている筈です。 |
| カーリャ・N | お願いです、ファントム。ゲフィオン様の崩壊を食い止めるためにも協力させてください。 |
| ファントム | ……ここはバロールが付け狙う危険な場所です。しかもゲフィオンが死ねば真っ先に消滅します。 |
| ファントム | 鏡精じゃないあなたは、死んだら終わりなんですよ。わかっていますか ? |
| カーリャ・N | ええ。危険は元より承知です。 |
| カーリャ・N | でも、その危険をわかっていながらあなただってここにいるじゃないですか。 |
| カーリャ・N | 恐らく、この世界でまだゲフィオン様のことを本気で生かしたいと思っているのは、私とあなただけ。 |
| カーリャ・N | 違いますか ?ファントム……いいえ、『リーパ』。 |
| ファントム | …………。 |
| ファントム | フィルは……前を向くようになった。 |
| カーリャ・N | ええ。最近ではマークとの在り方にも腹を決めたようです。 |
| ファントム | もうフィルには……ゲフィオンがいなくてもいいんでしょうね。 |
| カーリャ・N | ええ。今のフィル様には必要ないのだと思います。 |
| ファントム | 私は生きている人間の過去からの具現化第一号でした。だからあらゆる意味で、他の具現化された存在とは違っていた。 |
| ファントム | フィルの記憶や感情を共有し、そこに自我が入り込み自分の考えや想いが、どこまでフィルのものなのかと区別を付けるのが大変だった。 |
| カーリャ・N | あなたの在り方は、鏡精に近いものでしたよね。フィル様はあなたの人格を保つために何度も狂化止めを施したと聞いています。 |
| ファントム | マークからですか ? 相変わらずお喋りな鏡精だ。 |
| ファントム | 私の人格などどうでもよかった。フィルが報われれば私も報われる――そう思っていましたから。 |
| ファントム | ですが、今はヨーランドとダーナによって私の人格が補強されている。記憶の共有も、今はいったん止められている。 |
| ファントム | こうなってくると……私はまるで抜け殻だ。もう私がフィルを救わなくてもフィルは……。 |
| カーリャ・N | 悲しい……のですか ? |
| ファントム | どうでしょう。ホッとしている自分もいます。フィルの希望を叶えたかったのは本当です。ただ―― |
| ファントム | それが私の望みだったのかフィルの望みだと感じていたのか今はもうわかりません。 |
| ファントム | 今の私は『終わり』が見たいと思っています。過去が過去として消え去るのを、見届けたい。その象徴がゲフィオンなのではと思うのです。 |
| ファントム | 狡くて卑怯で、フィルのことなど欠片ほども心に留め置かなかった最初のミリーナが消える。その時私の願いも消える……。 |
| ファントム | 或いは……私も……。 |
| ヨウ・ビクエ | ファントム、やっぱりここにいたのね。あら、ネヴァンも一緒 ? |
| カーリャ・N | ヨウ・ビクエ様 ! |
| ファントム | どうしました、また何か問題でも ? |
| ヨウ・ビクエ | そんな顔しないで。私がいつもトラブルしか伝えないみたいじゃない。 |
| ヨウ・ビクエ | 今回は朗報よ。ダーナ様の心核の修復が終わったわ。 |
| Character | 6話【18-9 ケリュケイオン2】 |
| ガロウズ | ユリウス、観測は一旦休止だ。ちょいとヤボ用でケリュケイオンを下へ降ろすことになった。 |
| ユリウス | わかった。すまないな。ブリッジを占拠してしまって。 |
| ガロウズ | こっちこそ悪い。調査に集中するためにここの鏡映点たちが出払うのを待って乗り込んだんだろ ? なのに結局中断させちまって。 |
| ユリウス | いや、それは……気にしないでくれ。 |
| ガロウズ | しかし、ケリュケイオンまで出張とはご苦労さんだな。虹の橋の観測なんて、浮遊島からでも十分なのに。 |
| ガロウズ | ま、あのジェイドの依頼だから何か考えがあるんだろうが。 |
| ユリウス | …………。 |
| ユリウス | 俺がケリュケイオンへ ? |
| ジェイド | ええ。あちらからも報告は入りますがあなたに実際に赴いてもらってあらゆる方面から調べて欲しいんですよ。 |
| ジェイド | これまでの観測で、あの虹の橋の幻影の向こうには何らかの空間があると予測されています。 |
| ジェイド | それがニーベルングの分史世界ではないかとの推論もされていますが今一歩、『決め手』に欠けて真実に近づけない。 |
| ジェイド | 私もほとほと困り果ててましてね。ユリウス。 |
| ユリウス | …………。 |
| ジェイド | そこで、分史世界に詳しいあなたに、機動力のあるケリュケイオンでの観測をと思ったのですがお忙しいようならルドガーにお願いしても―― |
| ユリウス | わかった。行って来よう。 |
| ユリウス | (奴の言うこともわかる。俺がクルスニク一族の全てを話さない限り推論で動くことはできない) |
| ユリウス | (だが、ルドガーやエルには……) |
| ガロウズ | どうした ?ジェイドのこと、聞いちゃまずかったか。 |
| ユリウス | いや、そんなことはないさ。あいつの魂胆もわかってるしな。 |
| ユリウス | (俺をここでヴィクトルと会わせて、揺さぶりをかけようとしているんだろうが、生憎とお見通しだ。ヴィクトルがいない事は確認している) |
| ユリウス | (あいつらを巻き込まない形で解決できる手掛かりをつかむまで、今はまだ……) |
| ガロウズ | お、いたいた。マークだ。下へ降りてあいつを回収したら調査を再開しても―― |
| ユリウス | すまない。通信が入った。――どうした、ルドガー。 |
| ルドガー | 兄さん ! 今、虹の橋の観測は ! ? |
| ユリウス | それなら一時中断している。何かあったか ? |
| ルドガー | 虹の橋が実体化し始めてるんだ ! |
| ユリウス | なんだって ! ?『橋』が実体化……まさか……。 |
| ルドガー | 何か知ってるのか ? |
| ユリウス | …………。 |
| マーク | ただいま。テレサとオスカー、送ってきたぜ。 |
| ヴィクトル | ! |
| ユリウス | ヴィクトル…… ! ? |
| マーク | ああ、途中で合流したんだ。ユリウスは虹の橋の調査だっけ ?……っておい、空気悪いぞ。どうした。 |
| ガロウズ | それが……。 |
| ハロルド | ユリウス、時間切れよ。 |
| ルドガー | ハロルド ! ? |
| ハロルド | クルスニク一族のことあんたから話してくれるの、ずっと待ってたわ。 |
| ハロルド | けどもう、そうも言ってられない状況なの。わかるでしょ。 |
| ユリウス | …………。 |
| ハロルド | ……そう。だったら、私の推論で語るわ。あんたが黙ってる理由って―― |
| ユリウス | 待ってくれ !……すまない……今だけは……。 |
| ルドガー | 兄さん ! |
| ヴィクトル | また黙るつもりか、兄さん ! |
| ユリウス | ! ! |
| ルドガー | 兄さん……って…… ? |
| ヴィクトル | そうやって……また『俺』には何も知らないでいろっていうのか ! |
| ヴィクトル | あんたはずっとそうだ。正史でも分史でも、この世界でも、何も変わらない ! |
| ヴィクトル | 以前、俺に聞いたよな。この世界で「どう生きるつもりだ」と。だったら兄さんはどうなんだ。 |
| ユリウス | ……ルドガー、俺は……。 |
| ルドガー | まさかヴィクトルさんは……。 |
| ヴィクトル | そうだ。私はルドガー・ウィル・クルスニク。分史世界の君だよ。数年ほど先の、だがね。 |
| ルドガー | ! |
| ヴィクトル | 退路は断たれたぞ。どうする、兄さん。 |
| ルドガー | 兄さん……。 |
| ユリウス | ……話すよ。元の世界で、俺たちに課せられていた呪いの全てを。 |
| ユリウス | ――これで、俺が知っていることは全部だ。 |
| マーク | ……ちょっと整理していいか ? 正史世界から分かれた【可能性の世界】が分史世界。で、それが存在すると正史世界のエネルギーが拡散して世界は死に絶える。 |
| マーク | あんたたちの骸殻能力で分史世界に入って、その世界が生まれた原因、【時歪の因子】(タイムファクター)ってのを壊せば、世界を消すことができるわけだな。 |
| ユリウス | ああ。そして増えすぎた分史世界を消滅させるためになんでも願いが叶う『カナンの地』にたどり着くのが元の世界での目的だった。 |
| マーク | けど、その骸殻の力を使い続けると【時歪の因子】(タイムファクター)になってまた新たな分史世界が作り出されると。 |
| ユリウス | そうだ。だがこの世界ではエルが特異鏡映点だったせいで、骸殻による負荷は虚無へと吸い込まれていたらしい。 |
| ユリウス | だから問題はないと、セシリィが……いや、シドニーが教えてくれた。 |
| ガロウズ | そうか、あいつが……。 |
| ルドガー | 【時歪の因子】化なんてそんな話……俺は全然……。 |
| ヴィクトル | だが、ルドガー君も気づいていることはあった筈だ。私のことや、エルのことで。 |
| ルドガー | ……ヴィクトルさんが分史世界の人間だろうってことは何となく。自分自身だとは思わなかったけど。 |
| ルドガー | それで、あなたの娘であるエルももしかしたらとは……思ってた。 |
| ガロウズ | そうか、ヴィクトルがそうならエルも分史世界の存在だよな。じゃあエルはルドガーの未来の娘でもあって―― |
| ヴィクトル | エルは私の娘だ ! |
| ガロウズ | わ、悪い ! つい考えなしに……。 |
| マーク | この世界にいる以上、ヴィクトルはヴィクトルルドガーはルドガーだ。そこはもう揺らがねえから安心しろ。 |
| マーク | っと、あんたら鏡映点にしてみれば勝手に具現化されて安心しろもねえか。俺も考えなしだったな。 |
| ヴィクトル | ……いや、むしろもっと早くにこうなっていれば……。 |
| ユリウス | …… ? |
| ヴィクトル | すまない……話を逸らしてしまった。 |
| マーク | そういや、エルがクルスニクの鍵なら分史世界から正史世界へ物質を持ち出せるんだろ。グラスティンたちは、それに気づいてるんだよな ? |
| ハロルド | ……なるほど。何を企んでるか見えてきたわ。 |
| ハロルド | あと気になるのは、ユリウスの世界でいう『魂の橋』ってやつね。カナンの地に渡るためのものらしいけど、どことなく虹の橋と似てて嫌な感じ。 |
| ヴィクトル | ああ。あれを架けるには、強い力を持つクルスニク一族の命が必要だ。それと似た物が今実体化しようとしている。 |
| ハロルド | ……クルスニクの鍵、魂の橋ジュニアの贄の紋章の数値……。 |
| ルドガー | ハロルド、何かわかったことでも――……ん ? |
| ユリウス | どうした。 |
| ルドガー | 物音がしたけど、気のせいかな。 |
| エル | (どうしよう……どうしよう……。エルもパパもニセ物で……、ルドガーとパパは……) |
| 二人 | きゃっ ! |
| チトセ | びっくりした……。前を見ないと危ないわよ ? |
| エル | ご、ごめんなさい……。エル、わかんなくて……。あたまの中、グチャグチャで……。 |
| チトセ | 大丈夫、落ち着いて。怪我はない ? |
| エル | うん……。 |
| チトセ | 何かあったのかしら ? |
| エル | エルは……………………。 |
| チトセ | ……ねえ、エルはきれいな物は好き ? |
| エル | きれいな……。貝とか、石とか、好きだけど。 |
| チトセ | 花はどう ? 私、これからマティウスさまの……大切な人のために花を探しに行くところだったの。 |
| エル | 花……。 |
| チトセ | ええ。美しい花がわずかでもマティウスさまの癒しになればと思って。 |
| チトセ | エルも見たらきっと元気になるわ。一緒に探しに行きましょう ? |
| Character | 7話【18-11 仮想鏡界】 |
| ナーザ | バルドか。首尾はどうだ。 |
| バルド | 本日をもって、フリーセルの拠点にいたビフレスト皇国の住民たちの移送が完了しました。 |
| バルド | 中には私の姿を見て驚かれる方もおられましたが……。 |
| ナーザ | だろうな。生前のバルドを知る者なら魔鏡戦争で戦死したことも知っているだろう。 |
| ナーザ | いや、知らなかったとしても微塵も歳を取っていないのではな……。 |
| バルド | ええ……そうですね。 |
| ナーザ | フリーセルはどうした ? |
| バルド | あれから動きがありません。 |
| ナーザ | 見失ってはいないのだな。 |
| バルド | アリエッタとテネブラエの監視網の中にいますので。 |
| ナーザ | そうか……。 |
| バルド | フリーセルも連れて来られればよかったのですが……。 |
| バロールの尖兵 | くっ……、ああああああっ ! ! |
| フリーセル | ! ? |
| バルド | …………くっ。……フリーセル、か…… ? |
| フリーセル | バルド様か ! ?バロールの尖兵とやらは消えたのですか ! ? |
| バルド | ……ああ……。ウォーデン様が……助けて下さったようだ。きみは……無事のようだね。 |
| フリーセル | よかった……。私を追ってきたせいでバルド様がバロールに乗っ取られたのではウォーデン殿下に顔向けができません。 |
| バルド | いや……。バロールが私を狙うのはきみを追ったせいではないよ。この体はバロールが作ったものだからね。 |
| バルド | 彼の者にとっては、私も作品の一つなんだろう。 |
| フリーセル | バルド様。お望みの港に船を着けます。どちらに向かえばよろしいですか ? |
| バルド | それは、私をきみの拠点に連れて行くことはできない……ということかな ? |
| フリーセル | ………………。 |
| バルド | バロールに体を奪われていたおかげできみがやろうとしていることにも気付くことができた。 |
| バルド | ビフレスト皇国の生き残りの民を帝国から匿っているんだね。 |
| フリーセル | ……はい。帝国は異世界から具現化された人間ではなくこのティル・ナ・ノーグで生まれた人々を集めています。共にニーベルングへと移り住むために。 |
| フリーセル | まだ虹の橋は架かっていないというのに……。 |
| バルド | どうしてそのことを私たちに話してくれなかったんだい ? |
| フリーセル | ウォーデン殿下の下には帝国の眼が入り込んでおります。 |
| フリーセル | ですから、そこにビフレストの民を連れて行くわけにはいきませんでした。 |
| バルド | それは間者がいるということかな ? |
| フリーセル | 間者……とは違うかも知れません。世界を壊すための鍵となる存在がそちらにいるようです。 |
| バルド | それは誰だ ? 情報の出所は ? |
| フリーセル | 私を具現化させた男――サレの残した情報です。鍵というのは三人目のフィリップのことを指しています。 |
| バルド | ジュニアか……。 |
| バルド | ――ならばこういうのはどうかな。ビフレストの生き残りに関しては、ジュニア――三人目のフィリップの耳には入らないように処理しよう。 |
| バルド | だからフリーセル。きみの持つ情報を私に共有して欲しい。ウォーデン様のためにも。 |
| フリーセル | ……わかりました。ですが、やはり合流することだけはできません。私は滅びたビフレスト皇国の亡霊のようなものです。 |
| フリーセル | 一人目の私ができなかったことを成すためだけに生み出された存在だ。 |
| バルド | それはフリーセルの考え方一つで変えられる筈だよ。私の周りには具現化によって生まれた存在が数多くいる。 |
| バルド | 彼らは一人目とは違う道を進もうとしているんだ。フリーセルだってそうできるんじゃないかな ? |
| ナーザ | ――それでも合流を拒み一人目の意志を継ぐと言うのなら奴の好きにさせるほかはあるまい。 |
| バルド | ……はい。 |
| ナーザ | しかも虹の橋は架かってしまったからな。俺の責任だが……。 |
| バルド | 誰も知らなかったことです。バロールが想像の魔鏡術の奥義を使いこなせるなどとは―― |
| ナーザ | 何であれ、俺は私情を優先した。その結果バロールは虹の橋の架け方を知ってしまった。 |
| ナーザ | たった一度、尖兵となったお前の心に虹の橋を架けただけで、奥義の全てを見切るなどと……俺がうかつであった。 |
| バルド | ……そうだね。きみは僕を切り捨てるべきだった。それが正解だったんだと思う。 |
| バルド | けれど虹の橋はまだ実体化していない。まだ橋が架かったとは言えないよ。 |
| ナーザ | イクス・ネーヴェに救われた。俺が殺した男にな。 |
| ? ? ? | ――あ、ええと、お帰り。 |
| ナーザ | ! ? 誰だ ! |
| イクス1st | あ、そうか。今はそっちがこの体を使ってるんだもんな。となると……、お邪魔してます、かな ? |
| ナーザ | なっ、まさかお前は…… ! |
| イクス1st | 俺はイクス・ネーヴェ。この体の本当の持ち主だ。初めましてだな。ナーザ将軍――ウォーデン・ロート・ニーベルング。 |
| ナーザ | 体を取り戻しに来たか。 |
| イクス1st | いや、もう戻れないのは知っているだろ。俺を殺して、体だけを残しておいたんだから。 |
| ナーザ | ならば何故ここにいる。 |
| イクス1st | やっぱり元々いた体だからなのかな。何故か引き寄せられちゃって。 |
| ナーザ | 【ギエラ・ビフレスト】のせいでアニマが引き寄せられたか……。 |
| イクス1st | けど、丁度よかったよ。きみと話がしたいと思ってたんだよね。 |
| ナーザ | 何を話すというのだ。 |
| イクス1st | 俺を殺した理由だよ、皇太子殿。 |
| ナーザ | ――まあいい。 |
| ナーザ | ビフレストの生き残りを匿っている村だが守りの方は万全なのか ? |
| バルド | ヴァンに任せています。手段は問わない、と。浮遊島で組織されたセキレイの羽に協力を仰いでいるようです。 |
| バルド | あそこのロゼという可愛らしいお嬢さんがアリエッタを気に掛けてくれていましたからその縁もあるのかも知れません。 |
| ナーザ | そうか。くれぐれもジュニアとマークには気取られるな。それと、不用意に異性に近寄る真似も慎め。 |
| バルド | フフ、承知しております。それでは失礼致します。 |
| バルド | (……いけないな、私は。また話を切り出せなかった) |
| バルド | 彼らは一人目とは違う道を進もうとしているんだ。フリーセルだってそうできるんじゃないかな ? |
| フリーセル | ですがバルド様、あなたも死ぬ前のご自身に囚われておいでなのではありませんか ? |
| バルド | ――それはどういう意味だい ? |
| フリーセル | 記憶を引き継いだ具現化と甦りにどれほどの差があるのでしょう。 |
| フリーセル | 私が二人目なら、一度亡くなったあなたも二人目のようなものではありませんか ? |
| バルド | (フリーセルの言う通りだ。私もまた、過去に縛られている) |
| バルド | (切り替えるべきなのか……。ビフレストの民として犯した過ちを受け止めるためにも) |
| アリエッタ | バルド。お友達から連絡……来た、です。 |
| バルド | アリエッタ。まさか、フリーセルが動き出したのですか? |
| アリエッタ | そう。あの人……また墓守の街に向かった、です ! |
| Character | 8話【18-12 墓守の街1】 |
| グラスティン | どうだ、バロールの影響は。 |
| デミトリアス | ありがとう。だいぶ回復したようだ。ほとんど影響はないと思う。 |
| グラスティン | 体は、だろう ?俺が言ってるのは『中身』の方だ。意識を喰われて廃人同然だったんだぞ。 |
| デミトリアス | この通り、きみとも会話できている。問題はないよ。 |
| グラスティン | どうだかなあ ? 俺としては、お前のフリをしたバロールって可能性もまだ捨てちゃいないぜえ。 |
| デミトリアス | 困ったね。どうすれば信用してもらえるのか。 |
| グラスティン | そうだなぁ。俺がフィリップに何をしようが口を出さないって言うなら信じてやってもいい。 |
| デミトリアス | それは、友であるフィリップときみを天秤にかけろということかい ? |
| グラスティン | ここまでやっておいて、まだフィリップの友人面か。なるほど、間違いなくお前はデミトリアスだよ。ヒヒヒッ ! |
| デミトリアス | だったらもういいだろう。分史世界の創造計画は後れを取ってるんだ。急いで進めよう。 |
| ハスタ | デミトリアスとグラスティンが話し始めたその時エルとチトセを捕らえたハスタがあらわれる。 |
| ハスタ | ト書きに呼ばれてジャジャジャジャーン !えんやっとっと、お届けものでごじゃるよ。 |
| 二人 | …………。 |
| デミトリアス | 彼女たちは ! |
| グラスティン | クルスニクの鍵 ! それに裏切者まで捕まえたか。ご苦労だったな。 |
| ハスタ | さて、ここでクイズです。ヒントは『窓辺のマーガレット』だぴょん。正解は……イッチバーン ! |
| グラスティン | 相変わらず何のことかわからんがこいつらの捕獲は丁度よかった。 |
| ハスタ | けどさぁ……足りねえんだよ……生鮮食品が。あんたもわかるだろ ?グラ……グラなんとか……グラたん ? |
| ハスタ | ワンパターンな仕事と食事は健康に悪いんだポン。体にはもっとビタミンや殺人が必要でありんす。わっちの欲望は、すくすく成長期でありんすゆえ~。 |
| グラスティン | そうだなぁ。だったらお前に丁度いい任務があるんだが……。いいか、デミトリアス。 |
| デミトリアス | ああ。遅れを取り戻すためにもすぐに分史世界の構築を始めよう。 |
| ハスタ | っ ! ?三十六計ホニャラララ ! |
| ハスタ | クソッ ! 体が動かねぇ…… ! |
| グラスティン | ヒヒヒ、逃げようとするとは勘がいいな。本能で悟ったか ? |
| グラスティン | まあ、聞けよ。お望みどおり新たな任務をくれてやる。お前はこれから【時歪の因子】化して世界を創るんだ。 |
| ハスタ | ……タイムなんだって ? |
| グラスティン | そうか、わからないか。俺もお前の話は大概わからなかったなぁ。話が通じてりゃ、肉のすばらしさを語り合えたのに。 |
| グラスティン | じゃあ、頑張って俺たちのために死んでくれ。ヒヒヒッ。 |
| ハスタ | 誰かのために死ぬ…… ? ありえねぇ……。 |
| ハスタ | でも、ボクは死にましぇん ! なぜならボクが、皆殺しにするからぁ !ハハハ ! ハハハハハ ! |
| エル | うっ……、あ……あれ ? |
| ハスタ | くそぉおおおおっ ! 動け、動けよ~~~ !お前ら殺すっ ! ガチ殺すっ ! コロス ! コロ……。 |
| グラスティン | ヒヒッ。 |
| チトセ | あ……。 |
| エル | チトセ ! おきた ! |
| チトセ | エル……大丈夫 ?あれってハスタなの…… ? |
| エル | うん……けどあの人目が赤くなって、体が黒くなってる……。エルの世界で見た、怖いのと同じ……。 |
| ハスタ | マタ……次……生マレ……。 |
| デミトリアス | ……グラスティン、どうだ ? |
| グラスティン | ああ、上手くいった。ハスタを中心に分史世界が誕生している。これで舞台は整った。 |
| エル | ブンシセカイ…… ! |
| デミトリアス | すまない、ハスタ……。 |
| グラスティン | 何を言ってるんだ。お前は相変わらずだな。いずれ特異点亜種を【時歪の因子】にする必要があった。 |
| グラスティン | 01たちが捕まらなかったときにはこいつを使うのが、最初からの取り決めだろう ? |
| デミトリアス | ……そうだな。 |
| グラスティン | ああ、それでいい。さて、本番はここからだ。 |
| デミトリアス | きみがエルだね。 |
| チトセ | エル、下がって ! |
| デミトリアス | エル、チトセも、怯えなくていいんだよ。私はエルに協力をお願いしたいだけなんだ。 |
| エル | エルに…… ? |
| デミトリアス | ああ。きみのクルスニクの力を使って私たちを分史世界へ連れて行って欲しい。 |
| エル | そんなの、エルには―― |
| フリーセル | 待て ! |
| デミトリアス | きみは…… ! ? |
| グラスティン | フリーセル…… ! |
| フリーセル | ……お前たち、どういうつもりだ。 |
| グラスティン | ヒヒヒヒッ、いいぞいいぞ !そっちから出向いてくれるとはなぁ ! |
| フリーセル | やはり、あの時きちんと始末しておけばよかった。 |
| グラスティン | ヒヒヒヒ、やっぱりあの事故はお前の仕組んだものだったか。 |
| グラスティン | あの時の恨み、今晴らしてやるぜえ ! |
| Character | 9話【18-14 アジト4】 |
| ルドガー | ――これが、俺たちの世界でいう分史世界の仕組みだ。 |
| 全員 | …………。 |
| イクス | 何て言っていいか……。 |
| イリア | け、けどアレでしょ ! ? 【時歪の因子】(タイムファクター)っての ? |
| イリア | ルドガーもユリウスも、そうなる前にこっちに具現化されてるし、問題ないわよね ! ね ? |
| ルドガー | ああ、俺も兄さんも何ともないよ。心配してくれてありがとう。 |
| コンウェイ | …………。 |
| スパーダ | へえ、お前、ちゃんと話についてきてたんだな。 |
| イリア | ふふん、当たり前よ。あんたこそ、わかってんでしょうね ? |
| コーダ | コーダもわかってるぞ。腹が減ってるということがな、しかし。 |
| ルドガー | じゃあ、後で何か作ろうか。 |
| コーダ | ルドガーはいい奴なんだな ! しかし ! |
| ミリーナ | ルドガーさん、大丈夫ですか ?その……ヴィクトルさんのこととか……。 |
| ルドガー | 正直、混乱はしてる。けど大丈夫だ。動揺してる暇もないしな。 |
| ルカ | 僕たちが呼ばれたのは、その分史世界の成り立ちに関係しているからですか ? |
| ルドガー | ああ。これで、兄さんやジェイドたちが前世のあるルカたちのことをずっと気にしていた理由がわかったよ。 |
| アンジュ | ティル・ナ・ノーグでの私たちはこの世界の前世ともいえるニーベルングの人間として定義されている。 |
| アンジュ | その私たちを核に――【時歪の因子】化させて分史世界を生み出すつもりなんでしょうね。 |
| キュキュ | でも、キュキュ不思議。あいつら、どやてルカたち【時歪の因子】にするか ? |
| エルマーナ | そうやで。骸殻はルドガー兄ちゃんたちしか使われへんのやろ ? |
| リカルド | 骸殻の代償、【時歪の因子】化の原因をどこから持ってくるかってことか。 |
| イクス | それなんですけど、グラスティンは骸殻の力の元であるクロノスの力を操ることができます。 |
| イクス | となると、グラスティンにも骸殻に似た負荷や制限があるはずなんです。そのマイナス面を利用してるとしたら……。 |
| コンウェイ | 自分への負荷を溜めておいて一気に対象にぶつけ【時歪の因子】化させることも可能かもね。 |
| イリア | それなら、あたしらが捕まらなきゃいいってだけの話よ。 |
| スパーダ | そうそう ! そんなヘマは……。……いや、帝国にいるじゃねえか、前世持ちが ! |
| ルカ | あ、ハスタ ! |
| イリア | そうだったわ ! キモすぎて記憶から消してた ! |
| アンジュ | そうね。ハスタを使えばいつでも分史世界のニーベルングを具現化できる。 |
| アンジュ | そして次に彼らが必要とするのはきっとクルスニクの鍵よ。 |
| ルカ | 本来持ち込めないはずの分史世界の物質を正史世界に持ってこられる存在、だよね ? |
| ルドガー | ああ。そうだ。 |
| アンジュ | きっと、分史世界のニーベルングから正史世界のティル・ナ・ノーグに持ち込みたいものがあるのね。 |
| リカルド | そうなると、むしろ危ないのは俺たちよりもお前たちクルスニク一族だろう。 |
| リカルド | 特にクルスニクの鍵だと断定されているエルは厳重に保護しておくべきだ。 |
| コンウェイ | ん ? 外に……ちょっと待ってくれ。 |
| コンウェイ | ――やあ、キミか。どうしたんだい ? |
| ルル | ナァ~……。 |
| ルドガー | ルル ? どうした、お腹がすいたのか ? |
| コーダ | コーダと同じなんだな ! しかし ! |
| ルル | ナァ ! ナァ~……。 |
| コンウェイ | ……ルドガーくん、エルは今どこ ? |
| ルドガー | どこって、ルルがいるなら一緒にその辺にいるはずだけど。エル。……エル ? |
| ルドガー | ――エル ! エル、そこにいるんだろ ! ? |
| ルル | ナァ~、ナァ~。 |
| コンウェイ | あそこ ? うん、確かに何か落ちてるね。これは……貝殻かな ? |
| エルマーナ | あーっ ! それ、変なキレイな貝殻やん ! |
| イリア | 何それ。変なのかキレイなのかはっきりしないわね。 |
| エルマーナ | 言うたのはエルやで ?あ、ウチやのうて、ルドガー兄ちゃんとこのエルな。 |
| リカルド | ややこしいな……。それで、その貝が何なんだ。 |
| エルマーナ | これな、前にエルと一緒に海辺で拾ってん。宝物にするいうて大事にしとったのに……。 |
| リカルド | 落としたことに気づかないほど動揺していたのかもしれん。 |
| イクス | まさか……ここでこっそりユリウスさんたちの話を聞いてたんじゃ……。 |
| ルドガー | ごめん、ちょっと探してくる ! |
| ルカ | 待ってください、ルドガーさん。僕たちも行きます。 |
| ミリーナ | そうね。浮遊島のみんなにも手分けして聞いて回りましょう。 |
| ジュード | ――それじゃ、目撃情報だとチトセさんも一緒なんだね。わかった。帰ってきたらすぐに連絡するよ。他の病室のみんなにも伝えてくるね。 |
| ルドガー | ああ、頼む ! |
| マティウス | ………チトセ。 |
| ルカ | ここだね。チトセさんがエルを連れて向かったって場所。 |
| カーリャ | きれいな花畑ですね。チトセさまが来たがるのもわかります。 |
| ミリーナ | ええ。でも、誰もいないわね。 |
| ルドガー | エル ! いたら返事をしてくれ ! 俺だ ! |
| ルドガー | くそっ、ここで見つからなきゃどこを探せば……。 |
| イリア | もう、なんなのよ、あの性悪女 !こんな所までエルを連れ出してやっぱり何か魂胆があるとしか思えないわ。 |
| エルマーナ | 魂胆いうても、チトセは浮遊島を出る時に出会った人らには行き先言うてたんやろ ?ホンマに花を探しに来ただけとちゃう ? |
| アンジュ | ……私も、そんな気がするのよね。マティウスのために花を探すと言ってたって話も本当なんじゃないかしら。 |
| イリア | 浮遊島にだって花はたくさん咲いてるじゃない。なのに、わざわざ地上にまで降りてさ。怪しいわよ ! |
| ルカ | い、言われてみればそうだけどでも、マティウスが目覚めるまでは敵対しないって言ってたし。 |
| スパーダ | 相変わらず甘いな、ルカは。あいつのイカれっぷりが直ったわけじゃねえんだぞ ? |
| イリア | そうそう ! あんた、たまにイイこと言うじゃない。 |
| アンジュ | でも、あれだけ執着してるルカくんやマティウスを使ってまで嘘はつかないと思うんだけどな。 |
| コンウェイ | ……一途だからね。不遇の花姫は。 |
| コーダ | フグがなんだ ?コーダもフグは好きだぞ。刺身も鍋も最高なんだな、しかし ! |
| カーリャ | そんなこと言ってる場合じゃないですよ、コーダさま !……じゅる。 |
| リカルド | おい、こっちに来てみろ ! |
| ルドガー | っ ! これは…… ! |
| リカルド | ああ。明らかに戦った跡だ。 |
| キュキュ | 足跡みる。男、女、子供。三人いた。 |
| イクス | それと、これが落ちてたんだ。 |
| ルドガー | 折り紙 ? 何か書いてあるけど……読みにくいな。 |
| アンジュ | 走り書きね。ええと……、ハスタ、墓守の街……、エル、チトセ。 |
| ルドガー | エルとチトセはハスタに襲われたのか ! ? |
| イクス | 墓守の街へ行こう。エルたちはそこに連れて行かれたかもしれない ! |
| マティウス | …………。 |
| Character | 10話【18-15 墓守の街3】 |
| イクス | こっちだ ! この森を抜ければ墓守の―― |
| ルドガー | 今のは ! ? |
| リカルド | 誰か戦っているようだな。もし『ヤツ』だとしても闇雲に飛び出したりするなよ。 |
| ルドガー | ……わかってる。 |
| グラスティン | 目障りな肉がぁっ !さっさとくたばれ ! ! |
| フリーセル | 俺は俺に課した役目を全うする ! それだけだ ! |
| グラスティン | デミトリアス ! こいつは俺が殺す !お前はさっさとそのガキに力を使わせろ !ジュニアとの連結はあとからやる ! |
| デミトリアス | ――わかった。やむを得まい。 |
| チトセ | エル、逃げて―― |
| デミトリアス | 邪魔だよ、お嬢さん ! |
| チトセ | きゃああっ ! |
| エル | チトセ ! やだーーーーっ ! ! |
| デミトリアス | うっ…… ! |
| イリア | ちっ、外した ! |
| ルドガー | エルーーーーッ ! |
| デミトリアス | ぐああっ ! |
| 二人 | ! ? |
| エル | え、ルドガー…… ? |
| ルドガー | エル、怪我はないか ! ? |
| アンジュ | もう、二人とも !リカルドさんが様子を見ろって言ってたのに。 |
| スパーダ | 突っ込んじまったもんは仕方ねえって !行くぞ、ルカ ! |
| ルカ | うん !アンジュ、チトセさんの怪我を頼むね。チトセさんは動けるまで後ろに下がってて。 |
| チトセ | ルカくん…… ! それに……。 |
| イリア | あーあ、外しちゃった。ま、エルやあんたに当たんなかっただけよしとしましょ。 |
| チトセ | なんで……、あなたになんか助けられたくなかった。 |
| イリア | こっちだってそうよ !けど、あんたがエルをかばったから……。 |
| チトセ | …………。 |
| グラスティン | くそっ、あいつら、デミトリアスから引き離さ―― |
| キュキュ | はーーーっ ! |
| フリーセル | なっ ! ? |
| グラスティン | どこまでも邪魔しやがって…… ! |
| イクス | やっぱりグラスティンもデミトリアス陛下も無事だったんだな。それにあの人は―― |
| ミリーナ | ええ、フリーセルだわ。 |
| フリーセル | イクス・ネーヴェと魔女ミリーナか…… ! |
| イクス | ま、待って下さい !俺たちとあなたが戦うことに意味があるんですか ! ? |
| バルド | 彼らは一人目とは違う道を進もうとしているんだ。フリーセルだってそうできるんじゃないかな ? |
| フリーセル | ………………ッ ! |
| エルマーナ | なあ、これどっちと戦えばええの ! ?ハスタはおらんし、わけわからん ! |
| コンウェイ | ボクたちの目的は最初から一つだよ。エルを連れ帰ることだけだ。 |
| リカルド | その通り。――ルドガー ! エルが無事なら速やかに撤退だ ! |
| グラスティン | あーあ、黒髪が二人もいるっていうのに。こんな時でなけりゃあなあ…… ! |
| フリーセル | 哀れだな。執着もそこまでになると呪いだ。 |
| グラスティン | 黙れよ、ビフレストの犬が。 |
| デミトリアス | ――グラスティン。立て直そう。残念だが、エルに配慮する時間も余力もない。少し強引だが、ジュニアは遠隔操作すればいい。 |
| グラスティン | ヒヒヒ、決心したか。なら、まかせろぉっ ! |
| グラスティン | 恨むなよお、クルスニクの鍵 !ヒャハハハ ! ! |
| ルドガー | 危ない、エルッ ! |
| エル | ルドガーーーーッ ! ! |
| イクス | …………あれ ? ここは ? |
| ルカ | 今の、なに ?景色が歪むような、変な感じだった。 |
| リカルド | ! !おい、デミトリアスは……、奴らはどこへ行った。 |
| エルマーナ | ホンマや。黒髪~言うてたヤバいのやムキムキも消えてしもた。 |
| イリア | キュキュやコンウェイ、コーダもいない。どうなってんの ? |
| アンジュ | ねえ、みんなよく見て。ここって……。 |
| スパーダ | おい……天上界じゃねえか ! どうなってんだよ ! |
| イクス | ルドガー、まさか……。 |
| ルドガー | ……ああ。さっき攻撃を受けて無意識に分史世界へ入ってしまったんだと思う。 |
| エル | うん。エルもさっきのヘンな感じ知ってるからわかるよ。 |
| アンジュ | ……だとしたら、帝国が創った分史世界ね。そして分史世界が天上界に似ているということは中心人物は一人しかいない。 |
| ルカ | じゃあ、この世界はハスタの分史世界なんだね。 |
| スパーダ | ってことは、ハスタの野郎は……。 |
| リカルド | おそらく、そういうことだろう。自業自得だ。 |
| エルマーナ | しかし、懐かしいなぁ !分史世界ゆうても本物とそっくりやん。あっちに行くとな、お気に入りの昼寝場所があるんよ。 |
| チトセ | 天上界……。アスラさま……。 |
| サクヤ | 私のこの想いは深く沈めねば……。 |
| サクヤ | 深く……。海よりも……奈落よりも……。この世のどこよりも……深く……。決して浮かばぬように……。 |
| エル | チトセ……。大丈夫 ? |
| チトセ | あ……。ええ、大丈夫よ。怪我はもう心配ないわ。 |
| エル | ケガも心配だけど、なんか……泣きそうだったから。 |
| チトセ | ありがとう……。エル。 |
| エル | エルも、助けてくれてありがとう ! |
| エル | ねえ、ルカー ! チトセのケガ、平気だって ! |
| チトセ | ルカくん……。 |
| ルカ | チトセさん、よかった……動けるみたいだね。けど、無理はしちゃだめだよ。 |
| チトセ | ありがとう。ルカくんはいつだって優しいね。 |
| ルカ | そんな……。 |
| イリア | はー ! ? なにイチャイチャしてんのよ !よくこの状況で、こっぱずかしい空気つくれるわね !ホント、どうかしてるわ ! |
| チトセ | 優しい人に、優しいって言うのはそんなに恥ずかしいことかしら。あなたの方がおかしいんじゃない ? |
| イリア | うっ…… !だ、だいたいね、あんたがエルを連れ出したりするからこんな面倒なことに―― |
| ミリーナ | 今の音は ! ? |
| イクス | 行こう、あっちだ ! |
| ? ? ? | ぐあああああっ ! |
| スパーダ | 悲鳴だ ! |
| リカルド | 気を付けろ。血の臭いが濃いぞ。 |
| ルカ | 見て、あの坂の上 !誰か戦って――え…… ? |
| ルドガー | エル ! 俺の後ろに ! 目をつぶってろ ! |
| イリア | あれ、坂じゃない……。この山みたいに積み上げられてるのって、人……。 |
| リカルド | ああ。全部死体だ。なりたてのな。 |
| ? ? ? | ぐはっ…… !やめ……そいつ……だけ……は…………。 |
| ? ? ? | さすが ! しぶとい !そんなアナタに、今ならもう一突きプレゼント !ご連絡は今すぐ ! テロリロリン ! |
| 分史スパーダ | にげ………ろ…………。ル…………カ…………。……………………。 |
| スパーダ | オレ…… ? |
| イクス | なあ……あっちのスパーダの足元 ! |
| イリア | ウソ、あたしがいる……死んでる……。 |
| エルマーナ | ウチもおる……。アンジュ姉ちゃんも……リカルドのおっちゃんも ! |
| アンジュ | ルカくんは ! ? |
| スパーダ | ルカ……、そうだよさっきのオレは「ルカ」って……。 |
| スパーダ | 助けねえと ! あの野郎はこれからルカを―― ! |
| ? ? ? | うああああああああっ ! |
| 分史ハスタ | ん~~~~素敵なホタルの断末魔 !閉店告知は数あれど、今日でホントに店じまい !ありやっとござました~~~~ ! |
| 分史ハスタ | ハーッハハハハッ ! ヒーッヒヒヒヒ ! |
| 分史ルカ | ごふっ…………。……………………。 |
| ルカ | 僕が、殺された……。 |
| イクス | あれが、【時歪の因子】化したハスタ…… ! |
| | to be continued |