| Character | 1話【21-1 セールンド城1】 |
| ファントム | (くっ……、ゲフィオンの崩壊が止まらない……) |
| ファントム | (私の作った防御壁も崩れた。このままでは死の砂嵐が溢れてしまう) |
| ゲフィオン | わ……たし……の……。 |
| ファントム | ゲフィオン ! ? |
| ゲフィオン | 私の力が……使われる…… ! |
| ファントム | 力だと ? |
| ゲフィオン | あああああああああっ ! ! |
| ファントム | (誰かがゲフィオンの力を使っている ?いや、それよりもゲフィオンを守るには――) |
| ファントム | ゲフィオン ! これからこの部屋ごとあなたを私の仮想鏡界に取り込みます ! |
| ゲフィオン | だめ、あなたが―― |
| ファントム | 黙って ! 行きますよ ! |
| | デミトリアス。 |
| デミトリアス | その声は……。 |
| 幼いグラスティン | デミトリアス、来たぞ。 |
| 幼いデミトリアス | グラスティン、その傷 !前より随分痩せてるし……。 |
| 幼いグラスティン | 騒ぐなよ。怪我なんていつものことだろ。 |
| 幼いデミトリアス | また、きみの母君の仕業か。しばらく会えなかったから心配してたんだよ。もしかして、今日は抜け出してきた ? そのせいで……。 |
| 幼いグラスティン | ……あいつが、簡単に俺を外に出すと思うか ? |
| 幼いデミトリアス | 無理しないでくれ。私だって、体調のせいで外に出られない時もある。 |
| 幼いデミトリアス | きみに会いたいのは、私のわがままだから。だから……。 |
| 幼いグラスティン | 違う。あのままだと……俺も変に……なりそうで……。 |
| 幼いデミトリアス | グラスティン、しっかりするんだ。どうにかならないのか……。 |
| 幼いグラスティン | 無理だろ。バロールの声か俺の声か、もうわからないくらいだし。 |
| 幼いデミトリアス | ……最近の巫女殿は、以前よりもバロールの声が聞こえるそうだね。そのせいか言動が怪しいと父上が言っていたよ。 |
| 幼いグラスティン | 最近? お前ら、今頃そんな話してるのか。もうずっと前から頭おかしいだろ、あいつ。 |
| 幼いグラスティン | 俺と勘違いして黒髪の子供追いかけたりさ。 |
| 幼いデミトリアス | でも、心が落ち着いている時は優しい母君なんだろう ?いつかきっと元に戻るはずだよ。そうすれば、きみが酷い扱いを受けることも―― |
| 幼いグラスティン | いつかって、いつ ? |
| 幼いデミトリアス | それは……。 |
| 幼いグラスティン | お前って口先だけで慰めて、いいこと言ってけどその場限りだよな。目の前のことしか見えてない。 |
| 幼いグラスティン | どうせ何もしないなら希望を持たせること言うなよ。 |
| 幼いデミトリアス | グラスティン、私は本当にきみが心配で……。 |
| 幼いグラスティン | くそっ……なんで俺の親がバロールの巫女なんだよ……。なんで……。 |
| デミトリアス | (――ああ。これは『過去の私たち』だ) |
| 幼いデミトリアス | これで自由だ。グラスティン。 |
| 幼いグラスティン | お前…………。 |
| 幼いグラスティン | こいつは……国にとって必要な巫女なんじゃないのか ?なのに……。 |
| 幼いデミトリアス | きみを助けたかったんだ。そして巫女殿も。 |
| 幼いデミトリアス | これでバロールの声を聞くこともない。 |
| 幼いグラスティン | ……本当に目先のことしか見ていないな。でも……。 |
| 幼いグラスティン。 | 死んだんだ。こいつ。やっと。 |
| 幼いグラスティン | ……ハハッ。ハハハハッ。確かにお前の言うとおりだなぁ。これならバロールの声に苦しむこともない。 |
| 幼いグラスティン | もう怒鳴らないし殴らない !静かで優しい、きれいな『ママ』だ ! |
| 幼いグラスティン | いいなぁ、死体って ! ヒヒヒヒッ ! |
| 幼いデミトリアス | ……早くどこかに隠さないと。 |
| 幼いグラスティン | いいところがある。バロールの巫女以外、誰も寄り付かない洞窟だ。 |
| 幼いデミトリアス | わかった。一緒に運ぼう。 |
| 幼いグラスティン | 俺は頭の方を持つから、お前は足を頼む。それから……。 |
| 幼いグラスティン | ありがとう、デミトリアス。 |
| デミトリアス | (グラスティンの言うとおり、死体は誰にも見つからずバロールの巫女は行方不明とされた) |
| デミトリアス | (鏡精エネルギー推進派だった父上は、反対していた巫女の失踪をこれ幸いと、エネルギー変換用の鏡精を大量に生み出させ、多くの鏡精が犠牲となった) |
| デミトリアス | (セールンドの動きを察知したビフレストから質問状が来ても、抗議が来ても、そして……) |
| 幼いデミトリアス | グラスティン ! バロールの巫女の行方についてビフレストからまた問い合わせが来たんだ。 |
| 幼いデミトリアス | どうしよう……私があんなことをしたから……。あれが見つかったら戦争に……。 |
| 幼いグラスティン | ヒヒッ、大丈夫。問題ないって。お前はそのまま――……。 |
| デミトリアス | ……またか。なぜこうも昔の夢ばかり……。 |
| デミトリアス | (父上は私を生かすためにさらに鏡精エネルギーを必要とした) |
| デミトリアス | (独善的ともいえる国策に歯止めをかけていたのがバロールの巫女であったのに、私は……) |
| デミトリアス | (思えば、この世界の惨状はバロールの巫女を殺したことから始まったのかもしれない) |
| デミトリアス | (いや、私の存在こそが……) |
| グラスティン | デミトリアス、例のスポットだが――……どうした、疲れた顔して。例の発作か ? |
| デミトリアス | いや。考え事をしていただけだよ。それで、上手くいったかい ? |
| グラスティン | ああ。【ゲイボルグの島】とアイフリードの墓への道が完成した。 |
| グラスティン | ロミーに寄生していたスポットのお陰だ。尊い犠牲だったなぁ。ヒヒヒッ。 |
| デミトリアス | そうか。『本来のティル・ナ・ノーグ』の民たちも移動を開始している。こちらも滞りなく進んでいるよ。 |
| グラスティン | もっと住民たちを急がせろ。【ゲイボルグの島】は、ゲフィオンの力で作ったんだからな。時間がない。 |
| グラスティン | 人体万華鏡は間もなく崩壊する。死の砂嵐が現れるぞ。 |
| Character | 2話【21-2 アジト1】 |
| キール | その本の封印はどうだ ?フィリップの魔鏡術で解除できそうか ? |
| フィリップ | これは…… ! でも間違いない……。 |
| パスカル | 見覚えあるの ? |
| フィリップ | この封印、旧型カレイドスコープに施されていたものと同じ種類だ。 |
| キール | 旧型 ? 兵器の方のカレイドスコープか ? |
| フィリップ | いや、さらにその前だよ。キラル分子を鏡写しにして増やす装置でイクスの両親が研究していたものだ。 |
| リタ | ツインミラーシステムね。修理したことあるけどあの辺のシステム周りを開発してたんだ。 |
| フィリップ | ああ。僕とゲフィオンは旧型カレイドスコープを魔鏡兵器に転用するためにイクスの両親がかけた封印を解いたんだ。 |
| キール | じゃあ、手順はわかるんだな ! 早速始めよう。 |
| フィリップ | それが……封印の解除にはイクスの魔鏡が必要なんだ。旧型カレイドスコープは、最初のイクスの形見の魔鏡で封印を解いたけど、これは……。 |
| ハロルド | ええ、変ね。ゲフィオンもその本を調べてたんでしょ ?なのに解除できてない。 |
| フィリップ | そのとおり。ゲフィオンだって気づくはずなのに。となると、イクスの形見の魔鏡だけでは本の封印は解けなかったことになる。 |
| フィリップ | とにかく、イクスのところに行こう。実際に魔鏡を…………あれ ? |
| キール | フィリップ ? |
| フィリップ | くっ……胸が……痛っ…………。 |
| 四人 | フィリップ ! ? |
| クレア | こちら管制室です。緊急連絡につき、全回線に通知します。帝都上空に島の具現化を―― |
| カーリャ・N | こちらでしたか !あの帝都の上に浮かんだ島はなんなのですか ? |
| イクス | まだ確認中なんだ。でもあの地形、セールンド城の周辺によく似てる。 |
| カーリャ・N | セールンド……。誰が具現化したのでしょう。 |
| ミリーナ | タイミング的にはファントムしかいないんだけど……。 |
| カーリャ・N | そんなはずは―― |
| マーク | イクス ! あの島見てるな ?すぐにケリュケイオンからの観測データを送る。 |
| マーク | それと、デクスから通信がきている。お前にも一緒に聞いて欲しいそうだ。――デクス、繫いだぞ。 |
| デクス | 人体万華鏡が崩壊した ! でっかいヒビが入ったんだ ! |
| カーリャ・N | そんな ! 崩壊はまだ内部に留めていたはずです ! |
| デクス | 知らん ! でもそのヒビの段階で留めるためにファントムが対処してる。 |
| イクス | ファントム ! ? まだゲフィオンの傍にいるのか ! ? |
| デクス | ああ。でもオレがカレイドスコープの間から出た後は部屋に近づけなくなった。今どうなってるかはわからない。 |
| デクス | 何とか助けたいんだが、どうにかならないか ?オレの名誉、ひいてはアリスちゃんのためにも ! |
| マーク | ファントム、何を考えて………………。 |
| カーリャ | マーク ? どうしたんです ? |
| マーク | っ…… ! 嘘だろ……フィル……。 |
| カーリャ・N | フィリップ様に何かあったのですか ! ? |
| マーク | ……俺の存在が一瞬消えかけた。今も少しづつ薄れている。フィルはどこだ。 |
| イクス | キール研究室だ !ミリーナ、俺たちもすぐにフィルさんのところへ―― |
| マーク | いい。お前らはやることがあるだろう。――ガロウズ、俺は浮遊島に降りる。ここは任せるぞ。 |
| ガロウズ | ああ。ビクエ様を頼む。お前も消えんじゃねえぞ。 |
| カーリャ | マーク……。 |
| イクス | ……話を進めよう。その方がマークもフィルさんに集中できる。 |
| ガロウズ | 了解。で、具現化されたあの島だが観測データを見ると数分前に異常値が出ている。 |
| デクス | 人体万華鏡が壊れたのも、そのくらいだった。 |
| ミリーナ | ほぼ同時ってことかしら。それなら具現化はファントムじゃないわ。 |
| イクス | ……もしかすると、具現化にはゲフィオンの力が使われているのかもしれない。 |
| イクス | ギリギリで耐えていたところを外部の干渉で力を使われたとしたら崩壊が早まったのも頷ける。 |
| カーリャ | だったらミリーナさまは ! ?ミリーナさまは大丈夫なんですか ! ? |
| ミリーナ | ええ、何ともないわ。私にはカーリャの防御壁があるもの。 |
| ミリーナ | それに、ゲフィオンは防御壁も壊れて意識も私に侵食されているから……。きっと私に影響を及ぼすほどの力が、もう……。 |
| カーリャ・N | セールンドへ降りて確認します。私がゲフィオン様とファントムの救出にあたります ! |
| アッシュ | おい、待て、ルーク ! |
| ルーク | 急げよ、アッシュ !――イクス、緊急連絡だ ! |
| イクス | 二人とも、丁度よかった。さっきナーザ将軍から、ヴァンさんが帝都に乗り込んでるって連絡が来たんだ。 |
| ルーク | それだよ ! 俺たちにもローレライが伝えてきたんだ。 |
| ルーク | ええと、ヴァン師匠からの伝言でレプリカを作るのに必要なのがキラル分子で世界を分解して手に入れてニーベルングを―― |
| カーリャ | すみませんルークさま、ものすごくわかりにくいです ! |
| アッシュ | 俺がついて来て正解だったな。イクス、ナーザからはどこまで聞いている ? |
| イクス | 帝国がカレイドスコープを使って分史ニーベルングのレプリカ情報を抜き取ったって話までだ。 |
| アッシュ | そうか。ヴァンからの伝言によるとニーベルングのレプリカ作成には大量のキラル分子が必要だそうだ。 |
| アッシュ | 奴らはそれを、ティル・ナ・ノーグを分解して調達する計画らしい。 |
| イクス | この世界を素材にする気か !そんなことをしたら自分たちだって無事じゃすまないのに。 |
| アッシュ | だろうな。そのための避難先として作られたのがさっき具現化された島というわけだ。 |
| アッシュ | あの浮島は、セールンド島とアイギスシステムを具現化している。死の砂嵐からの守りも兼ねているそうだぞ。 |
| ルーク | そう、そういうわけだ !ありがとな、アッシュ。やっぱついて来てもらってよかったぜ。 |
| アッシュ | ふん、ローレライから連絡受けた途端一人で駆け出しやがって。ヴァンのことだからといって焦りすぎだ、馬鹿が。 |
| ルーク | そういうお前だって―― |
| イクス | わかった。ありがとう、二人とも。今の話、すぐにみんなに知らせるよ。 |
| Character | 3話【21-3 アジト2】 |
| イクス | ――以上が、今の俺たちが置かれている状況だ。これを踏まえて今後の方針を聞いてもらいたい。 |
| イクス | まず、ゲフィオンのところにはケリュケイオンとネヴァンで向かってもらう。 |
| イクス | 精霊研究室のメンバーはマクスウェルの残滓の調査を続行。 |
| イクス | 同時蜂起作戦の領主たちは地上に降りて反乱計画を進めて欲しい。 |
| イクス | 他のみんなはそれぞれ、どの持ち場につくか申告してくれ。 |
| イクス | その上でだけど、俺たちと一緒に浮遊セールンド島へ向かう人員が欲しい。 |
| イクス | 目的は大きく二つある。分史ニーベルングのレプリカ作成の阻止と具現化されたアイギスシステムだ。 |
| イクス | あれをティル・ナ・ノーグ全体に利用できればゲフィオンの人体万華鏡が完全に崩壊しても死の砂嵐から守ることができるかもしれない。 |
| ジェイド | かもしれない、ですか ? |
| イクス | ……言いたいことはわかります。でももう、それに賭けるしかありません。 |
| イクス | こんな計画では、みんなが不安に思うのもわかります。それでも俺は―― |
| クレス | 了解だよ、イクス ! |
| イクス | クレス……。 |
| チェスター | よし ! となるとオレたちは反乱計画の協力だな。 |
| ミント | ええ。アセリア領は蜂起の要ですからね。 |
| スタン | じゃあ、俺たちも反乱組だな !カイルはどうする ? |
| カイル | ディムロスさんたちもいるしオレたちも反乱組で !みんな、とりあえず同じでいいよね ? |
| リオン | お前たち、食事の注文じゃないんだぞ。気軽に決めすぎだ ! |
| ルーティ | いいじゃない。あたしも反乱組一丁 ! |
| リアラ | わたしも、カイルと同じで ! |
| メルディ | イクスの方、まだ誰もいないな。なぁ、リッド ? |
| リッド | わかってるよ。オレたちはイクスと一緒に行く。アイギスシステムに関しちゃ確かに不安もあるけどまあ……。おいファラ、いつもの頼むぜ。 |
| ファラ | うん ! ――イクス、ミリーナ。イケる、イケる ! |
| ミリーナ | ファラ……、ありがとう。 |
| コレット | ねえロイド、イクスたちにも機動力が必要だよね ?私、飛べるし、力持ちだし。ね、カーリャ ? |
| カーリャ | はい。その節はお世話になりました ! |
| ロイド | こんな時こそ『ドワーフの誓い第1番』ってわけか。よし、俺たちも浮遊セールンド島にしよう。 |
| ジーニアス | 『平和な世界が生まれるようにみんなで努力しよう』だね。ボクも賛成 ! |
| マルタ | ええと、私たちはどっち ? |
| ラタトスク | 俺は精霊だからな。マクスウェルの残滓の調査に決まってる。お前たちもだったな ? |
| ヴェイグ | ああ。今度マオに何かあったら全員で立ち向かえるようにしたい。 |
| ティトレイ | そうだな。クレアもサポートで頑張ってるしおれたちだって――って、何笑ってんだよ、ヒルダ。 |
| ヒルダ | ふふっ、この状況で出来すぎだと思って。占い、『死の使い』の逆位置のカードが出たの。これ、覚えてる ? |
| ティトレイ | 縁起悪っ……くないんだよな。『大いなる転機、再生』――あの時のカードだ。忘れねぇよ。 |
| エミル | 再生か……。いい意味のカードなんだね。マルタ、お父さんのことも含まれてるかもしれないよ。 |
| マルタ | エミル……、ありがとう ! 大好き ! |
| 二人 | いいなぁ……。 |
| シャーリィ | わ、わたしたちもマクスウェルの調査頑張らないとね。 |
| クロエ | そ、そうだな !いいかクーリッジ、私たちも気を引き締めて任務にあたるぞ。 |
| セネル | あ、ああ……。やけに気合い入ってるな。他に精霊調査に行くのはどのチームだ ? |
| シング | セネル、オレたちもそっちに行くよ。ミラの時みたいに、マクスウェルの残滓がスピリアに影響するかもしれない。 |
| コハク | そういえば、マクスウェルの残滓が心の世界に広がるかもってヴェリウスが言ってたよね。 |
| ヒスイ | よし、今回できっちりケリつけてやろうぜ。 |
| ミクリオ | 僕たちは天族だから精霊調査だけどスレイはどうする ? |
| スレイ | もちろん、みんなと一緒に行くに決まってるだろ ! |
| ライラ | そうですね。スレイさんも『一緒』に『一所』懸命頑張りましょう ! |
| ルーク | ダジャレとか余裕あるよなぁ。俺なんかヴァン師匠のこと聞いただけで慌てちまったのに。 |
| ティア | ルーク、兄さんのことを気にしているのね。それなら私たちは浮遊セールンド島にしましょうか。 |
| ガイ | だな。ついでだからまとめて浮遊セールンド島希望者を確認しとこうぜ。何があるかわからないから、荒事覚悟の奴らで―― |
| 二人 | はい ! |
| フレン | 君たち……、魂胆が丸見えだよ。 |
| エステル | 大丈夫です。ユーリたちが無茶をしないようにわたしが頑張りますから。 |
| イリア | ねえ、見た ? ユーリたち。「お前が言うな」って顔してた。 |
| ルカ | あはは……そうだね。とにかく、僕たちも浮遊セールンド島で ! |
| スパーダ | お前、勢いで決めたろ。けどまあ、アイギスシステムっての逆手にとって帝国の奴らに吠え面かかせるのも面白そうだ ! |
| ルキウス | そうか……。浮遊セールンド島にはグラスティンたちがいるかもしれないんだ。ロミーを目覚めさせる手掛かりが掴めるかも……。 |
| カイウス | だったら、オレたちも浮遊セールンド島に行こう。ロミーのこと、ルキウスだけが背負うことないさ。 |
| ルビア | カイウスったら、お兄さんぶっちゃって。でも、あたしも同じ気持ちよ。やれるだけやりましょう ! |
| ルドガー | 兄さんも、ひとりで背負うことないからな。もう全部バレてるんだから。 |
| ユリウス | わかってる。『お前たち』には敵わないと思い知らされたしな。ところで俺たちはどうする。エルもいるが……。 |
| ミラ | 何度も帝国から狙われてるし下手に置いていくより一緒にいる方が安心じゃない ? |
| ルドガー | 決まりだ。俺たちも浮遊セールンド島に行く。 |
| マギルゥ | なるほど。もう人員は十分のようじゃな !ならば儂らは待機ということで―― |
| ライフィセット | 僕も浮遊セールンド島に行きたい。全勢力でしかけなきゃ、きっと手遅れになると思う。 |
| ベルベット | そうね。あたしたちは浮遊セールンド島で。そういうわけだから、よろしく、マギルゥ。 |
| ソフィ | あれ ? ビエンフーの声が聞こえるけど……気のせいかな ?それで、わたしたちはどうするの ? |
| ヒューバート | ここまでの勢力配分を見ると、反乱軍への参加が少ないように思えます。市民兵も多いでしょうし指揮を取れる者が必要でしょうね。 |
| アスベル | そうだな。お前も、マリク教官も、リチャードもいる。イクス、俺たちは地上反乱軍に加わるよ。残りのみんなもそうしてもらえると助かるんだが。 |
| ジュード | そうだね。僕たちも反乱軍に加わった方が勢力的にバランスが取れると思う。みんなも、それでいい ? |
| アルヴィン | ああ。あいつの目が覚める前に掃除は終わらせておきたいしな。けど、おたくは ? 精霊調査だから離ればなれだろう。 |
| ミラ=マクスウェル | 離れていても、ちゃんと繋がっている。たとえ触れ合えなくてもな。 |
| アルフェン | ……触れ合えなくても、か。なんだか、わかる気がする。 |
| シオン | 私は……まだよくわからないわ。それより、この流れだと最後の私たちも反乱軍に加わることになりそうね。 |
| アルフェン | そうだな。初めて顔を合わせる人も多いだろうけどみんな、よろしく頼む ! |
| カーリャ | 配置、難航するかと思いましたけどあっさり決まっちゃいましたね。さすが鏡映点たちです。 |
| ミリーナ | ええ。どんな困難があっても思いを力に変えて立ち向かえる人たち。それが鏡映点――世界を動かす人たちなのよ。 |
| イクス | ……だからこそ具現化対象として選ばれてしまったんだよな。 |
| イクス | ティル・ナ・ノーグに呼んでしまった俺たちは絶対にみんなの気持ちを無駄にしちゃいけない。 |
| イクス | みんな ! 聞いてのとおり、配置は決まった。これからすぐに持ち場へ向かって欲しい。 |
| イクス | その前に、一言だけ言わせて欲しいんだ。みんな……。 |
| イクス | この世界に来てくれて、本当にありがとう。 |
| イクス | それじゃ、作戦開始だ ! |
| Character | 4話【21-4 セールンド 浜辺】 |
| ナーザ | そうか。それでお前たちは具現化された浮遊セールンド島のアイギスシステムを目指しているんだな。 |
| イクス | はい、今は浮遊島を動かして接岸させるべく向かっているところです。 |
| ナーザ | わかった。俺たちはすでに帝都に上陸している。このまま先行して、ヴァンとの合流を目指すつもりだ。少しでも時間が惜しい。切るぞ。 |
| イクス | わかりました。気を付けて。 |
| バルド | 浮遊島を動かせるようになったとは聞いていましたが今回もまた大胆な作戦に出ましたね。 |
| コーキス | ふふん、鏡映点のみんなにかかれば朝飯前だぜ !マスターたちも来てくれるし俺たちも動きやすくなるな。 |
| ジュニア | うん。でも絶対に油断しないで。ゲフィオン……人体万華鏡にまで手を出したんだ。 |
| ジュニア | デミトリアス陛下やグラスティンはもう後戻りはできない。どんな手でも使ってくるよ。 |
| フリーセル | グラスティン……。 |
| フリーセル | (……微かに松明が燃える匂いがする。……やはりこのバロールの洞窟に誰かが出入りしているな) |
| フリーセル | (松明だけじゃない。なんだ、この……腐った脂のような匂いは……。奥の方から漂ってくる……) |
| グラスティン | ……やあ、ママ。今日も綺麗だね。 |
| フリーセル | (この声は……グラスティンか) |
| グラスティン | 昨日もまた俺を連れ去って閉じ込めようとしただろう ?俺にはわかるんだあ。俺の代わりに沢山家族を作ってやったじゃないか。それともまだ足りないのか ? |
| グラスティン | さあ、お引っ越しだよ。ママのことを知られた。それにあいつがママを殺したことに怯えてるんだ。 |
| フリーセル | (そうか……奴はバロールの巫女の息子だったな。前の調査の時、ここに奴の母親の遺体が隠されていた。やはり母親がここで死んでいるのを知っていたんだな) |
| フリーセル | ! ? |
| フリーセル | (何だ ! ? 死体の山が…… ! ?前に来た時はこんなものはなかったぞ ! ?) |
| グラスティン | ――誰だ。 |
| グラスティン | フリーセル…… ! やっぱりここを嗅ぎ回っていたか。 |
| フリーセル | グラスティン……。何だその死体の山は……。ここは一体……。 |
| グラスティン | ヒヒ……立ち聞きしていたんだろう ?しつけのなっていない鼠だな。さすがビフレストのスパイだ。 |
| フリーセル | 何の話だ。それよりここの死体はお前が集めたものか ?それともお前が手をかけたものか ? |
| フリーセル | くっ ! ? いきなり刃物を出してくるとはな ! ? |
| グラスティン | ヒヒヒ、安心しろ。お前の髪は黒くない。ママは黒髪がお気に入りなんだ。昔の俺みたいな黒髪がなあ。 |
| グラスティン | だからちゃーんとお前の死体は海に捨ててやるよお ! |
| グラスティン | 死ね ! 死ね ! |
| フリーセル | (こいつは、バロールの巫女がああなった経緯を知っている筈だ。何とか生け捕りに――) |
| グラスティン | な、何だ…… ! ? 何を打ち込んだ ! ? 魔鏡陣か ! ?貴様は……くっ……。 |
| フリーセル | 逃げても無駄だ ! |
| フリーセル | ――消えた ? いや、転送魔鏡陣か。だがあの刻印があれば居場所はすぐに突き止められる。 |
| フリーセル | (これは俺の記憶ではない。一人目の俺の記憶だ。そしてこの記憶に、グラスティン――お前は殺される) |
| バルド | フリーセル、どうしました ? |
| フリーセル | ……いいえ。 |
| メルクリア | して兄上、いかにしてヴァンを見つけるおつもりですか ? |
| ナーザ | 問題ない。手は打ってある。 |
| アステル | ナーザ将軍 ? どうです、帝都には着きましたか ? |
| ナーザ | ああ。それで、ヴァンにつけていた発信機はどうだ。 |
| リグレット | 閣下に発信機だと ? |
| ナーザ | リグレット、戻っていたか。 |
| リグレット | ついさっきな。私のあずかり知らぬところでそんなものをつけていたのか。 |
| ナーザ | ヴァンの目的が明確でなかった以上何かしらの保険は必要だったからな。 |
| バルド | ええ。それにあなたたち六神将は彼に与する可能性がありましたので。 |
| リグレット | ……確かに否定はできない。 |
| バルド | 互いに、想う主を持つゆえのこと。どうか悪しからず。 |
| リヒター | ……俺は六神将ではないが、知らなかったぞ。 |
| アステル | あれ ? リヒターに言ってなかったっけ。ごめんね ? |
| ディスト | 総長に発信器など無駄ではありませんかねえ。 |
| バルド | フフ、そうかもしれませんね……。 |
| アステル | っと、よし、拾えた !ここは……帝都……イ・ラプセル城の真上…… ?さっき具現化された島にいますね。 |
| ナーザ | 奴らに飛空艇はない。浮遊セールンド島に移動する入口のようなものが城内にあるはずだ。行くぞ。 |
| マークⅡ | 悪ぃ、ちょっとだけ待ってくれ。――ジュニア、お前も一緒に潜入するんだな ? |
| ジュニア | 帰って来いなんて、言わないよね。 |
| マークⅡ | ……だよな。逃げないって決めたんだもんな。 |
| マークⅡ | 引き留めて悪かった。仮想鏡界の維持は任せとけ。お前は、お前の思うとおり、好きにやって来い ! |
| ジュニア | うん ! 行ってきます ! |
| マークⅡ | ちょっと目を離すとすぐに逞しくなっちまうんだよなぁ。 |
| マークⅡ | ……死ぬなよ、フィル。 |
| マーク | フィル……。 |
| フィリップ | マ……ク…… ? |
| マーク | ここにいる。そのまま寝てていいぞ。 |
| フィリップ | 意識……保たないと……、マークが、消え……。 |
| マーク | 俺のことはいい !頼むから、もう自分のことだけ考えろよ ! |
| フィリップ | ごめ……マーク……。 |
| マーク | (おかしい……。なんなんだ、この焦燥感と不安。俺でもフィルでもない感情に気持ちが影響される……) |
| キール | おい、来たぞ ! |
| ヨーランド | フィリップ !マークもいるわね。話は聞いたわ。 |
| マーク | ヨウ・ビクエ ! 頼む ! |
| アトワイト | 呼吸が浅い……。まずいわ……。 |
| ヨーランド | これは……。マーク、あなたに変化はあった ? |
| マーク | 存在の希薄化はあった。それと、今も俺の中に不安と焦燥感が溢れている。けど、こいつがフィルのものとは思えないんだ。 |
| ヨーランド | やっぱり……。さすが鏡精ね。それはファントムの感情よ。 |
| マーク | ファントムだと ! ? |
| ヨーランド | 狂化止めを施して切り離した筈だけど彼の心に何らかの負荷が掛かってまたフィリップと繋がりかけているわ。 |
| マーク | じゃあ、どうすればいい ! |
| ヨーランド | いったんフィリップの心に防御を施すわ。――アトワイト、私が防御壁を作っている間フィリップの様子を見ておいて。 |
| アトワイト | ええ。準備できてるわ。いつでもどうぞ。 |
| フィリップ | ……あ……あれ ? 治った……。 |
| ヨーランド | 成功ね。これで動けるはずよ。 |
| フィリップ | なんか大げさになって、すみません……。 |
| マーク | 馬鹿野郎 ! いいんだよ大げさで !マジで一瞬覚悟しちまったくらいだぞ ! |
| ヨーランド | そうよ。あなた、本当に危険だったわ。それは今も変わらない。 |
| フィリップ | え…… ? |
| ヨーランド | 私が施した心の防御は長くはもたないわ。こうして動けているうちにゲフィオンとファントムのところへ行きましょう。 |
| フィリップ | ……わかりました。 |
| リタ | ゲフィオンのところへはネヴァンたちが行くって話よ。急げば一緒に行けるんじゃない ? |
| パスカル | でも、無茶しちゃダメだよ ? マークが泣いちゃうから。 |
| フィリップ | ふふっ、ありがとう。きみたちにも迷惑かけたね。本の封印も、解除に至らなくてすまない。 |
| フィリップ | それと、アトワイトにお願いしたいことがあるんだ。ええと……、これでよし。 |
| フィリップ | アトワイト、この本をイクスに。お願いします。 |
| アトワイト | わかりました。お預かりします。 |
| ハロルド | ってことは、本の封印に関してはお役御免ね。となると……。 |
| キール | ああ。しばらくは自分たちが所属しているチームで役目を果たすとしよう。 |
| ハロルド | 私は地上行きかぁ。久しぶりにディムロスたちでもおちょくろうかしら。 |
| パスカル | あ、あたしも地上組だよ。リタのとこは確か……。 |
| リタ | 浮遊セールンド島。アイギスシステムとかね。 |
| 二人 | うらやましいー ! |
| キール | ……この研究室も、少し静かになるな。 |
| Character | 5話【21-5 ケリュケイオン】 |
| ガロウズ | セールンド上空だ。準備してくれ。 |
| マーク | よし。みんな、よろしく頼む。目標は人体万華鏡があるカレイドスコープの間だ。――デクス、待機してるか ? |
| デクス | ちょっと待ってくれ。ケリュケイオンの着陸ポイントに移動中だ。 |
| アリス | 早くしなさい。デクスのくせに、アリスちゃんを待たせる気 ? |
| デクス | アリスちゃん ! ? アリスちゃんもいるのか !もしかして、頑張っているオレを応援に ! ? |
| アリス | 逆よ。文句言いに来たの。あんた「自分の命はアリスちゃんのものだ」って言ったくせに勝手に無駄遣いしそうだから。 |
| デクス | 大丈夫。オレはアリスちゃんのものだよ。アリスちゃんのためにしか死なないから ! |
| アリス | 本当に話の通じない奴ね。バカじゃない ? |
| アイゼン | ふっ、確かにバカだが芯の通ったバカは嫌いじゃない。 |
| カーリャ・N | ええ。アリス様は幸せな方です。 |
| クラトス | マーク、潜入メンバーにはローエンもいるのだろう ?姿が見えないようだが。 |
| マーク | さっき預かった奴らの様子を見てくるって言ってた。すぐに戻るはずだ。 |
| アイゼン | 浮遊島から受け入れた負傷者と、非戦闘員か。 |
| フィリップ | これから浮遊島のアジトを横付けして浮遊セールンド島に乗り込む手筈だからね。下手をすると戦場になる。 |
| フィリップ | そうなった場合、鏡士しか動かせない浮遊島よりはケリュケイオンの方が安全だろう ? |
| ローエン | 遅れて申し訳ありません。 |
| マーク | ローエン !……と、クレアにマリアンに、アミィもか ?どうしたんだ。 |
| ローエン | 少々……とは言えない問題が起きております。みなさん、まずは状況の説明をお願いします。 |
| マリアン | はい。ブルートさんとウィンガルさんとプレザさんヴィクトリアさん、ミルハウストさんの姿がどこにも見当たらないんです。 |
| フィリップ | そんなはずは……彼らは眠ったままなんだろう ? |
| クレア | ええ。浮遊島から運び出す際に確認をしています。 |
| フィリップ | まさか、このタイミングで目覚めたのか ?ありえないことじゃないけど……。 |
| アミィ | そう思って、艦内を捜しましたがどこにもいないんです。今も、セシリィとリベラが見回ってくれてるんですけど……。 |
| ヨーランド | もしかして、さっき私が診たせいで劇的に回復したのかしら。な~んて……。 |
| マーク | それ !ありえるんだよ、あんたの場合 ! |
| セシリィ | ボス ! ボス、大変 ! |
| ガロウズ | お前たち、誰か見つかったか ! ? |
| リベラ | ううん。見つからなかった……。それとバルバトスも見つからない。シンクも一緒に捜してくれたけど……。 |
| シンク | こっちのせいにされても困るからね。 |
| マーク | バルバトス ! ? あいつ、艦内にいないのか ! ? |
| セシリィ | ごめんなさい。バルバトスさんが船に居る時には行動に気をつけろってボスにもマークさんにも言われてたのに。 |
| マーク | いや、謝るのはこっちだ。エルレインと分けちまった俺の配置ミスだ。まさか、あいつが負傷者たちを……。 |
| ローエン | いえ、バルバトスさんが彼らを連れ出す理由がありません。この件は分けて考えるべきでしょう。 |
| クラトス | バルバトスが出て行ったのは先ほど浮遊島に停泊していた時だろう。 |
| アイゼン | ああ。それに負傷者たちが回復して出て行ったとすれば収容した後に船が発つまでのわずかな間だな。 |
| デクス | 着陸ポイントに到着したぞ ! アリスちゃーん ! |
| マーク | ……時間がない。イクスに伝えて、こっちは潜入を開始する。 |
| フィリップ | クレア、マリアン、アミィ、セシリィ、リベラ君たちは引き続き彼らの足取りを追って欲しい。ガロウズ、何かあればすぐに連絡を入れてくれ。 |
| フィリップ | それとシンク、艦内の守りは頼んだよ。 |
| シンク | いいから、死にたくないならさっさと行きなよ。 |
| フィリップ | では行こう。ゲフィオンとリーパのところへ。 |
| キール | そろそろ、浮遊セールンド島に接岸するぞ。 |
| フォッグ | おぅ。イクスの腕の見せ所だな。 |
| チャット | そうですね、ぶつからないようにでもボクたちが渡れるくらい近くに寄せてもらわないと―― |
| クィッキー | ! クィッキー ! |
| メルディ | バイバ ! どした、クィッキー ! |
| ファラ | しっ ! チャット。悲鳴だけはダメ。 |
| リッド | こらえろ。他の奴らも突入のタイミングを計って隠れてるんだ。ここで台無しにはできねぇ。 |
| メルディ | でも、クィッキー、へん。なに感じたか ? |
| ラピード、ノイシュ、ルル、ミュウ | ! ! |
| コーダ | ヘソがピリピリするんだな、しかし ! |
| バルバトス | ここだな ! なるほど、だいぶ近い。 |
| ルック | バルバトスさん、なんでこんなことを……。 |
| バルバトス | メルクリアはあの島へ来るんだろう ?復讐の機会がやっと訪れたというのに逃すわけないだろうが ! |
| ルック | なんでそれを…… ! |
| ルキウス | あいつ、またメルクリアを狙ってるのか ! |
| カイウス | ルキウス、今はだめだ ! |
| バルバトス | これまで小娘の情報を上手く隠していたんだろうが今回ばかりは、わきが甘かったようだな。 |
| バルバトス | マークめ、俺を飼いならせたと思ったら大間違いだ !腰ぎんちゃくも案内ご苦労。どこへでも失せろ。 |
| ルック | くそっ……行かせるか ! |
| バルバトス | 触るなウジ虫が !俺の誇りを汚したあの小娘は殺す !貴様はそこで、一生地べたを這っていろ ! |
| ロイド | あいつ ! |
| ジーニアス | まずいよ、バルバトスの奴浮遊セールンド島に飛び移っちゃった ! |
| ヴィクトル | しまった ! 遅かったか !ルック、大丈夫か ? |
| ルック | ヴィクトルさん……すみません。接岸場所まで連れていかないとケリュケイオンの連中を殺すと言われて……。 |
| エル | パパ ! ? |
| ユリウス | ル……ヴィクトル、どうなってる ! ? |
| ヴィクトル | 今回の作戦を進めるなかで、メルクリアたちの情報がバルバトスに漏れたのだ。奴は復讐を果たすために勝手にケリュケイオンを降りた。ルックを脅してな。 |
| ティア | 骨が折れてるみたい。すぐに治療するわ。 |
| ルビア | あたしも一緒に ! |
| ゼロス | ルック、ルビアちゃんとティアちゃんの二人がかりで治療してもらえるなんて幸せな奴め。 |
| ルーク | なあ、つい勢いで俺たちも飛び出しちまったけどこれ、どうすんだ ? |
| ユーリ | おい、先に突入するぞ ! |
| ガイ | ユーリ ! ? |
| ルカ | え ! ? タイミングを見てこっそり潜入って作戦は ! ? |
| ベルベット | さっきの見たでしょ。あいつが乗り込んで大人しくメルクリアを捜すと思う ? |
| ジュディス | そうよ。どうせバルバトスに大暴れされるんだもの。タイミングも何もないでしょう。 |
| ライフィセット | こういうの何て言うんだっけ。乗りかかった船 ? |
| パティ | なのじゃ ! さあ、みな続け !これだけの面子じゃぞ ?大船に乗った気で突入なのじゃーー ! |
| マギルゥ | ええい、もうどーでもいいわい ! マギンプイ ! |
| ビエンフー | ビエ~~~ン !姐さーん、置いてかないで欲しいでフー ! |
| カロル | あはは……もうめちゃくちゃだけど、そっちは大丈夫 ? |
| ロクロウ | 応 !できればバルバトスと斬り合いたいもんだ ! |
| エレノア | ロクロウ……、またそれですか。あなたは本当にぶれませんね。 |
| エステル | エレノア、みんなのブレーキ役、頑張りましょう ! |
| リタ | 言っとくけど、あんたもブレーキかけられる側よ ? |
| エステル | そうなんです ! ? |
| プレセア | ……行ってしまいました。 |
| エルマーナ | なんや、止めるヒマもあらへん。 |
| ヴィクトル | 私も引き続きバルバトスを追う。 |
| エル | パパ、エルも一緒に行く ! |
| ルドガー | 俺も行きます。俺たち全員でエルを守る ! |
| ユリウス | ああ。家族でこの子を守ることが何より安心だと思わないか ? |
| ヴィクトル | ……行こう。 |
| リーガル | こうなっては仕方あるまい。まずは指令室に連絡だな。 |
| リカルド | ああ。――こちら浮遊セールンド島潜入チーム。潜入直前にトラブルが起きた。 |
| ジェイド | 状況はわかりました。すでに突入したチームにはそのまま先行してもらいます。リフィル、そちらはどうです ? |
| リフィル | 目標への接岸を確認したわ。アンジュ、行ける ? |
| アンジュ | はい、すぐに。――コンウェイさん、キュキュさん。始めてください。 |
| コンウェイ | 了解。 |
| キュキュ | はい、わかた ! |
| アンジュ | みなさん、コンウェイさんとキュキュさんがアジトの防衛機構を起動しています。 |
| アンジュ | 現在待機しているチームは、起動が完了してから行動開始。独自の行動を控えてください。特にイリアとスパーダくん。 |
| イリア | スパーダはともかく、なんであたしなのよ。 |
| スパーダ | お前、自分のこと棚に上げすぎだろ……。 |
| アンジュ | この前の墓守の街ではどうだったかしら ?最初の一発、あなたが放った気がするんだけど。 |
| イリア | ……自重します。 |
| ジェイド | さすがアンジュ。この調子で、彼らの指揮をお願いしますよ。 |
| ミリーナ | さすがね、イクス !目標地点にぴったり横付けできてるわよ。 |
| イクス | はぁ……。船とは勝手が違うけどとりあえず漁師の面目躍如だな。 |
| アトワイト | イクスさん、フィリップさんからこの本を渡すよう言付かったわ。どうぞ。 |
| イクス | ありがとうございます。フィルさん、自分が大変な時に、こっちまで……。 |
| ミリーナ | 経過は聞いているけど、本当に大丈夫かしら。 |
| アトワイト | ヨーランドさんたちが動いているし何かあればすぐに連絡が来るはずよ。それと、フィリップさんが何かメモを挟んでいたわ。 |
| イクス | 本当だ。ええと……。「この本の封印が解けるのはイクスだけだろう。方法を以下に記す」か。 |
| アトワイト | それじゃ、何かあったら呼んでちょうだい。 |
| ミリーナ | ありがとうございました。――イクス、やってみましょうか。 |
| イクス | いや……ちょっと待ってくれ。腕の魔鏡を押し当てると反応……その後に解呪の文言を唱える…… ? |
| イクス | それなら、これまで俺が調べている最中に俺の魔鏡に反応してもいいはずだ……。 |
| イクス | ……そうか。そういうことか。だったら……。 |
| イクス1st | わかったよ、イクス。やってみる。 |
| ミリーナ | え ? イクス…… ? |
| イクス1st | やあ、ミリーナ。久しぶり……じゃないな。始めまして、最初のイクスだ。 |
| ミリーナ | あなたが……イクスさん。 |
| イクス1st | 本当はミリーナやカーリャともたくさん話したいよ。でも、今はフィルが届けてくれたこの本を優先させる。――イクス、始めるぞ。 |
| イクス1st | 本に、腕の魔鏡を近づける、と。 |
| カーリャ | あ、本がうっすら光ってます ! |
| イクス1st | よし。そして解呪の呪文……。『――――――』 |
| ミリーナ | 本が……書き代わっていくわ ! |
| イクス1st | 「本日、バロールとの交信にて、鏡士の……」これ、バロールの巫女の手記だ ! |
| ミリーナ | 大成功よ、イクス ! ……さん。 |
| リフィル | イクス ? いいかしら。作戦変更になりそうなの。 |
| イクス1st | これ、魔鏡通信だよな ? |
| ミリーナ | 私が話します。――こちら、ミリーナです。作戦変更って、何があったんですか ? |
| ミリーナ | ……わかりました。では計画はその方向で先に進めてください。お願いします。 |
| イクス | (バルバトスさん…… ! こんな時に) |
| イクス1st | イクスに代わるか ? |
| ミリーナ | いいえ。イクスさんのままじゃないとまた封印が復活するかもしれませんから。今はそのまま、手記を読み進めてください。 |
| Character | 6話【21-6 アジト3】 |
| カーリャ | どうですか ? なにが書いてあるんです ? |
| ミリーナ | しっ、今はイクスさんに集中させてあげて。 |
| イクス1st | ……いいよ。一通り目は通した。 |
| イクス1st | 書かれていたのはバロールとの交信記録だ。俺の一族と、俺が生まれた時のことも書いてある。 |
| ミリーナ | イクスの……。 |
| イクス1st | 順を追って話そう。 |
| イクス1st | 手記によると、俺たちの一族に子供ができるとその子がバロールの因子を受け継いでいるかどうかバロールの巫女に伺いを立てるんだ。 |
| ミリーナ | イクスの一族全員がバロールの因子を持つとは限らないんですね。 |
| イクス1st | ああ。その因子を調べる方法だけど、バロールの巫女が遠く離れた地にいる『鏡精ルグ』と交信して因子の有無を尋ねていたそうだ。 |
| イクス1st | 因子を継いだ子供だと確認できた場合その子供は鏡士になることを禁じられる。 |
| イクス1st | そして、その子は年に一度、バロールの巫女の元へ赴くことになっていた。 |
| イクス1st | 俺の両親も慣例に従い、俺を身ごもった時にバロールの巫女に会いにいってそこでルグに告げられた。 |
| イクス1st | 俺が、祖父以来のバロールの因子を受け継ぐ『バロールの血族』だって。 |
| ミリーナ | だからお祖父様は鏡士ではなく、漁師になっていたんですね。 |
| イクス1st | うん。けど俺は、何百年かぶりの極めてバロールに近い存在だったらしい。それを聞いた俺の両親はひどく怯えていたって書いてある。 |
| イクス1st | でも、ルグはこうも言ってくれている。 |
| イクス1st | 「極めてバロールに近いからこそ、鏡精をエネルギーとして使う今の状況に変革をもたらして、かつてのバロールのように鏡精を救ってくれるかもしれない」 |
| イクス1st | ルグからティル・ナ・ノーグの創世の経緯を聞かされたことで、不安がっていた両親も落ち着いたそうだ。 |
| イクス1st | それどころか、むしろバロールの力を使うことで鏡精を使わずにエネルギーを生み出せるのではと考えるようになった。 |
| ミリーナ | それが、イクスのご両親の研究……。 |
| イクス1st | ――で、この辺りまでは普通に読めた。 |
| カーリャ | 普通って、どういうことです ? |
| イクス1st | バロールの巫女の交信頻度がものすごく上がってるんだ。それに伴うように、内容が不明瞭になっている。 |
| イクス1st | どうやら、ルグとの交信のせいで鏡精との交信感受性が高まりすぎたらしいな。 |
| イクス1st | そのせいで、セールンドの凄まじい鏡精殺しで生まれた死鏡精に、度々心を奪われるようになった。 |
| イクス1st | 当初は本人も自覚はあったみたいだ。まともに交信できているか悩んでいると書いてある。でも、最後の方は何を書いているかも意味不明で……。 |
| ミリーナ | ……。 |
| イクス1st | けど、その辺りの状況は父さんたちが補足として書いている。 |
| ミリーナ | なぜイクスのご両親が…… ?あっ、ごめんなさい、続けてください。 |
| イクス1st | 俺が生まれて、慣例だった年に一度の訪問に行く頃にはバロールの巫女の精神状態は更に悪くなっていた。 |
| イクス1st | 幻聴、幻視、妄想に妄言。しまいには鏡精の子を孕んだとか言いふらしたりまともに話も通じなくなっていたらしい。 |
| イクス1st | でも、巫女がかろうじて正気を戻した時にルグとの最後の交信を記録したこの手記を父さんたちに託したそうだ。 |
| イクス1st | 父さんと母さんは手記を持ってセールンドに戻りルグから受けた言葉を信じて研究を続けていた。 |
| イクス1st | でも、いつも危機感を抱いていたらしい。バロールの因子を持つ俺は、王宮やビフレストから監視されるだろうって。 |
| イクス1st | それに、父さんたちは鏡精エネルギー反対派でセールンド王とは対立する立場だった。 |
| イクス1st | いつ命を狙われるかわからないし、そうでなくてもカレイドスコープ開発は危険な実験の繰り返しでこの先も無事でいられる保証がない。 |
| イクス1st | 俺を守れないかもしれないって……。 |
| イクス1st | それでも、カレイドスコープの最終起動には俺の力が必要になる。それで、遺言を残すことにしたそうだ。 |
| ミリーナ | それが、イクスの魔鏡に込められたメッセージ……。 |
| イクスの父 | お前に伝えなければならない。お前は鏡士になれ、と。 |
| イクスの母 | 私たちはいつも祈っているわ。あなたが健やかであることを。イクス、どうか、いつまでも元気で……。 |
| イクス、イクス1st | 父さん、母さん……。 |
| ミリーナ | この手記は、命の危険を感じていたご両親がイクスさんだけが読めるように封印をかけていたんですね。 |
| イクス1st | ああ。手記の内容は大体こんな感じだけど……。――イクスも一緒に読めてるよな ?……なあ、イクス ? |
| イクス | (俺とバロール……ルグの言葉を元に目指した形がカレイドスコープなら……ってことは……) |
| イクス1st | !イクス、代わろう。 |
| イクス | ……あれ、イクスさん ? どうして ? |
| イクス1st | (なにか考えついたんだろう ?ミリーナも一緒に聞かせてやりたいからさ) |
| ミリーナ | イクス……なのね ? |
| イクス | ああ。考え事してたらミリーナにも聞かせてやれって、代わられた。 |
| ミリーナ | そうだったの。ありがとう、イクスさん。 |
| ミリーナ | それで、イクスは何を考えていたの ? |
| イクス | 俺とバロールは近い存在なんだよな。死の砂嵐――フィンブルヴェトルに干渉できる。魔眼の鏡精を持ち、炎を燃やして命を生む……。 |
| イクス | それを知った父さんたちは俺の力を利用する装置――カレイドスコープを作っていた。 |
| イクス | 多分、命を生むってところをヒントにエネルギー問題と結びつけたのかもしれない。 |
| イクス | とすると、同時にセールンドに蔓延していた死鏡精の問題だって解決できる。バロールの力なら、死の砂嵐に対抗できるだろう。 |
| イクス | ってことはだ。父さんたちの理論がベースならカレイドスコープという装置にはバロールの力を使う『力』があるんじゃないか ? |
| カーリャ | ややこしいけど、言いたいことはわかります ! |
| ミリーナ | カレイドスコープで死の砂嵐に対抗……そうね、可能性は高いわ ! |
| イクス | バロールの力を持つ俺と、カレイドスコープを改造したゲフィオンの記憶を持つミリーナがいればカレイドスコープを本来の形に戻せるかもしれない。 |
| イクス | どうかな、バロール。これならあなたが力を貸してくれなくても俺たちの手で俺たちの世界を守れるんじゃないかな。 |
| バロール | (…………) |
| イクス1st | (否定しないってことは ?) |
| イクス | 肯定、ですね ! |
| ミリーナ | それなら、ニーベルングのレプリカ作成阻止と並行して帝国のカレイドスコープへ向かいましょう。それでも駄目だったときはアイギスを頼りましょう。 |
| カーリャ | でも、帝国のカレイドスコープはゲフィオンさまが改造したものとは違います。大丈夫でしょうか……。 |
| イクス | ファントムやグラスティンの手が入っていても基本設計と思想は本来のカレイドスコープと変わらない筈だ。 |
| イクス | 父さんと母さんは、きっと応えてくれるよ。 |
| Character | 7話【21-7 ゲイボルグの島1】 |
| デミトリアス | いよいよだ。ここから虹の橋を延ばしこのゲイボルグの島をアイフリードの墓と連結する。 |
| グラスティン | アイフリードの墓は惑星ニーベルングのある次元と繋がる唯一無二の場所だ。あの場所と繋がることで存在が安定する。 |
| グラスティン | ティル・ナ・ノーグが消えてもこのゲイボルグの島だけは存在が保たれるって訳だ。 |
| グラスティン | スポットもここまで待てばティル・ナ・ノーグを脱出できたのになあ。 |
| デミトリアス | ああ。あとは死の砂嵐が、アイギスで守られたこの島以外の全てを消してくれるのを待つだけでいい。 |
| グラスティン | やっと消えるなあ ?お前の望み通りに、偽物の世界が。 |
| デミトリアス | 長かった……。私がバロールの監視の目を解き放ってしまってから世界はあっという間に崩壊した。 |
| デミトリアス | 今思えば、崩壊してしまえばよかったのだ。偽りの世界を生み出すぐらいなら。 |
| グラスティン | だがお前はこのつぎはぎの世界を一度は許容したんだろう ? |
| デミトリアス | ……この世界が滅ぶ原因になった魔鏡戦争はイクス・ネーヴェが鏡士になろうとしたことがきっかけで始まった。 |
| デミトリアス | そしてイクス・ネーヴェが鏡士になるのを止められなかったのは、それを止めるはずのバロールの巫女が殺されたからだ。 |
| デミトリアス | その因果を、ウォーデン殿ときみからそれぞれ話を聞いて、私はやっと知ることができた。 |
| デミトリアス | 父の犯した過ち、そして自らの罪を贖うためには世界をあるべき形に戻すしかない。 |
| デミトリアス | 壊れた世界を延命するために偽りの存在を生み出しては、歪みが広がるばかりだ。 |
| グラスティン | ヒヒ……鏡映点共も可哀想になあ。 |
| デミトリアス | 彼らの元の世界には鏡士の力が関与しない『本物』がいて、唯一無二の歴史を生み出している。 |
| デミトリアス | 彼らこそが真なる存在であり、この世界の鏡映点などまやかしに過ぎない。本物を守るためにはまやかしの存在など消し去るしかないさ。 |
| グラスティン | 本物……本物かあ……ヒヒヒヒ。まあいいさ。デミトリアス、お前のいう本物の世界を守るためにハスタの魂を使ってやれ。 |
| デミトリアス | そうだな。ルグの槍の代わりにゲイボルグの槍を使って虹の橋を操る ! マクスウェルの精霊装の力でな ! |
| | 浮遊島アジト 観測室 |
| クラース | 虹の橋が動き出したぞ ! ? |
| スレイ | あれは……帝国の作った浮遊島に向かって延びている ? |
| ウィル | そのせいか。マクスウェルの残滓がものすごい勢いで増え始めているようだ。 |
| テネブラエ | はい。どうやらダーナの心核が隠されているアイフリードの墓へと延びているようです。虹の橋を動かすにはマクスウェルの力が必要です。 |
| ラタトスク | テネブラエ ! ? |
| テネブラエ | フリーセルさんの監視が終わりましたのでこちらに戻ってきました。 |
| しいな | ――そうか。今あたしにも声が届いたよ、テネブラエ。ヴェリウスが伝えてきた。虹の橋が延びてきたって。 |
| ロゼ | ごめん、遅くなった !あたしたちは、こっちでいいんだよね ? |
| スレイ | ロゼ、デゼル、待ってたよ ! |
| イネス | セキレイの羽のほうは大丈夫 ?地上はだいぶ混乱してるでしょ。 |
| ロゼ | まあね。けど、そのへんはアスターに頼んであるから。ヒルダにもよろしくってさ。 |
| ヒルダ | そう。さすがアスター様、頼りになるわ。 |
| ティトレイ | ヒルダが『様』づけで呼ぶとはねぇ……。そいつ、かなり怪しいって聞いてるけど本当に大丈夫かよ。 |
| ヴェイグ | ああ。いい奴だったぞ。ヒルダを大事にしてくれた。 |
| ティトレイ | 大事ねぇ。 |
| マオ | なになに ? ティトレイってばやきもち ? |
| ティトレイ | 焼くかそんなもん ! ただちょっと心配なだけで……。 |
| デゼル | 気持ちはわかる。 |
| ザビーダ | なになに ? デゼルくんもやきもち ? |
| デゼル | うるせぇ ! ロゼの警戒心がなさすぎるからだ。それより、マクスウェルの残滓調査はどうなってる。 |
| しいな | リチアたちの見立てだと、マクスウェルの残滓はマクスウェルの精霊片になって集合的無意識に広がってるそうだよ。 |
| ウィル | ちょうど君たちがこちらに到着する直前に虹の橋が動いた。 |
| セルシウス | それ以降、精霊片がさらに増えているの。誰かがマクスウェルの精霊装を使っているようね。 |
| ロゼ | 精霊装か……。その話って、ミラがマクスウェルの残滓に取り付かれそうになった時にヴェリウスが教えてくれたやつだっけ ? |
| ミラ=マクスウェル | ああ。帝国がマクスウェルの精霊装を使うたびにその残滓が心の世界に広がっていく。 |
| ミラ=マクスウェル | だが、その残滓が精霊輪具に帰る前に回収できれば帝国の精霊装の力を削ぐことができると言っていた。 |
| クンツァイト | ここまでの観測でも、残滓の増量と虹の橋の動きは連動している。マクスウェルの精霊装が作用していると見て、ほぼ間違いないだろう。 |
| ベリル | でね、精霊装の力を削げばあの虹の橋も存在を保てなくなるかもしれないってみんなで話してたとこなんだ。 |
| ロゼ | それで今は精霊片吸引器で精霊片を集めてるってわけか。収集率は ? |
| ミクリオ | 順調だよ。だけどこの程度で本当に帝国の精霊装の力を削れているかは疑問だな。 |
| スレイ | う~ん……もっと積極的に集めに行ったほうがいいかもしれない。 |
| セネル | 精霊装を作る時みたいに精霊片の多い場所まで行くってことか ? |
| モーゼス | なるほど、攻めに転じるっちゅうわけじゃな !スの字のアイディア、ワイも乗っちゃる ! |
| グリューネ | まあ、お出かけ ?それなら、お弁当と~、お茶と~デザートも欲しいわね~。 |
| ノーマ | グー姉さん、ストップ !話の腰がボッキボキに折れてる ! |
| エドナ | そのボキボキ、戻してあげるから一生恩に着なさい。 |
| エドナ | それで、集めに行くという話だけど精霊片が多い場所に当てはあるの ? |
| リチア | 心当たりはあります。わたくしたちであれば『そこ』に入れるはずです。 |
| 三人 | あっ ! ! |
| リチア | ええ、そうです。ヴェリウスの言葉どおりなら残滓が広がる集合的無意識はスピリア――心の世界と通じています。 |
| シング | そうだよ ! あの時は、ミラが戦った場所で傷ついたダーナの心核からマクスウェルの残滓が流れ込んでファントムを通じてミラさんに集まっちゃって…… ! |
| ミラ | わ、私が何 ! ?何言ってるのか全然わからないんだけど ! ? |
| ガラド | 簡単にいやぁ、スピリアの中にはマクスウェルの残滓がたんまり漂っている場所があるってことさ。 |
| ガラド | ただし、誰にスピルリンクするかが問題だ。もちろん帝国でマクスウェルの精霊装を使っている奴が一番なんだが……。 |
| コハク | 今、シングが言ってたよね。前は、ダーナの心核の傷からマクスウェルの残滓が流れ込んでミラに影響したって。つまり、ええと…… |
| ユージーン | つまりダーナの心核は、残滓が広がっている集合的無意識とも通じやすいということか。この世界自体も、ダーナの仮想鏡界だからな。 |
| アニー | ダーナの心核なら浮遊島にあります。以前、スレイさんたちが持ち帰った、鏡の精霊の心核のレプリカにはダーナの心核の一部が使われているんですよね ? |
| クラース | よし、それで行こう !ソーマを持っているメンバーはスピルリンクを頼む。残滓を探るのは……。 |
| クラース | ……君たちはやめた方がいいな。残滓の『おとり』としては持ってこいだが危険すぎる。 |
| ミラ=マクスウェル | 確かに、マクスウェルの残滓に囚われる可能性は否定できない。私も以前は自我を失いかけた。だが、やらせてもらえないだろうか。 |
| ミラ | そうよ、危険は承知の上。それに、マクスウェルの残滓が何をしようと私は『私』を手放さないわ。 |
| ミラ | あの子が待ってるって思えば……。 |
| ラタトスク | 同じ精霊として忠告するぜ。そいつは無謀だ。 |
| ミュゼ | そうよ、行っちゃダメよ !私の可愛いミラたちを危険な目に遭わせるわけにはいかないわ ! |
| キュッポ | 観測室はここだキュ ? 間に合ったキュ ! |
| ピッポ | ジェイ、皆さん、お届け物だキュ。 |
| ジェイ | キュッポにピッポにポッポ !地上の情報を集めに行ったんじゃなかった ? |
| キュッポ | その途中でハロルドさんから預かったキュ。 |
| ポッポ | これはクレーメルケイジを転用したミラさんたち専用の防御シールドだキュ。 |
| ポッポ | 何かあったときには、一時的にミラさんたちをマクスウェルの残滓から守ってくれるんだキュ。これで囚われずに済むらしいキュ ! |
| ライラ | さすがハロルドさんですわ !いつの間にか、こんな物を作っていたなんて。 |
| ピッポ | でも、精霊調査の話を聞いてチャチャッと作ったから効果が短時間なのが不本意らしいキュ。 |
| エミル | チャチャッと……。 |
| マルタ | あれで不本意なんだ……。 |
| ミラ=マクスウェル | ありがとう、モフモフたち。――さて、これでどうだ ? |
| クラース | まったく、なんてタイミングだ……。わかったよ。行ってもらえるか ? |
| ミラ | ええ、任せなさい。 |
| クラース | ただし、シールドは一時的なものという話だ。守りはいつも以上に、しっかり固めてくれよ。ちなみに、マオやシャーリィも……。 |
| 二人 | 「行きます ! 」「行くヨ !」 |
| ベリル | となると、かなりの人数だね。鏡士の協力もないし。 |
| ヒスイ | ヴェイグやセネルのとこはまるっと全員だろ ?スレイのとこも精霊関係ばっかだしな。よっし、今回はソーマ使い総出でやるか ! |
| クロエ | だが、そうなると外からの観測が手薄になってしまうな。 |
| クラース | 私がこちらに残ろう。それと、しいな、セルシウス、エミルたちにも手伝ってもらおうか。 |
| 三人 | 了解 ! |
| ジェイド | なるほど。では、死の砂嵐対抗策としてカレイドスコープを優先すべきだと。 |
| イクス | はい。具現化アイギスシステムを一から調べるより成功する可能性が高いと思います。 |
| ジェイド | わかりました。では、バルバトスについては先行して乗り込んだチームでそのまま追跡してください。 |
| リフィル | 現在待機中のロイド、ルークたちのチームはレプリカ装置の捜索リッドたちは虹の橋へ向かってちょうだい。 |
| アンジュ | ルカくん、カイウスくんたちはイクスさんと一緒にカレイドスコープに向かってね。 |
| イクス | ありがとうございます。それじゃ俺たちはルカやカイウスと合流でき次第、突入しますね。 |
| ジェイド | ああ、待ってください。こちらからも報告があります。先ほど、私たちをどうしても手伝いたいという方々がやってきましてね。 |
| ジェイド | 相手は回復しきっていない病人も同然でしたがかといって無下に断ると問題を起こしかねないので一部、仕事をお任せしておきました。 |
| イクス | はあ。それはつまり……どういうことですか ? |
| カーリャ | 鬼畜の臭いがします ! |
| ジェイド | 今、その件について関係者に連絡を入れています。ですが、この混乱です。報せを受け取れないチームは彼らが現れたら驚くでしょうねぇ……。 |
| Character | 8話【21-8 アセリア領】 |
| | ――アセリア領、A地点 |
| ナタリア | ……侵攻してくる兵の数が尋常ではありませんわ。このままでは、こちらの地上反乱軍の兵たちが危険です。 |
| アニス | あーもう ! なんで倒しても倒しても帝国兵が減らないわけ ! ? |
| イオン | おそらく、敵兵の殆どは人工心核を使ったレプリカリビングドールなのでしょう。 |
| ピオニー | どおりでこんな無茶苦茶な戦い方をするわけだ。奴らは全く怯むことなくこちらを攻撃してくる。自分たちの意思がない分、厄介だな。 |
| アッシュ | ちっ。どうせこの世界を捨てると決めてレプリカも大量製造しているんだろう。あいつらにとっては使い捨ての駒同然だ。 |
| イオン | こちらも、何か打開策を打ちたいところですが……。 |
| ピオニー | 状況はどこの部隊も同じだろう。増援を呼ぶとしても時間がかかる。今は俺たちだけでなんとかするしか―― |
| ? ? ? | ――いえ、すでに手は打っています。 |
| ピオニー | あんたは…… ! |
| アガーテ | 到着が遅くなって申し訳ありません。先ほど、救世軍の方々に送っていただきここまで来ました。 |
| アニス | えっ、救世軍の兵もこっちに来たの ? |
| アガーテ | はい。皆さんの戦況を知り、他の地点にいた兵たちをこちらに回すように手配いたしました。 |
| アガーテ | それに、敵の兵力の要であるフォミクリー装置の場所も特定できました。それを破壊さえできればこの状況を打破できるはずです。 |
| ピオニー | そいつは助かる。だが、いつの間にそんなことまで……。まさか、あんたが全部一人でやったわけじゃないよな ? |
| アガーテ | ええ、わたくしがここに来るまでにも多くの方々が手を貸してくださいました。 |
| アガーテ | そして、フォミクリー装置の捜索はわたくしが最も信頼している人物が担ってくれています。 |
| アガーテ | 彼ならば必ず、その責務を果たしてくれるはずです。 |
| | ――アセリア領、別地点。 |
| 帝国兵レプリカリビングドール | ――敵、発見。排除する。 |
| モリスン | しまった ! まだ兵が潜んでいたか ! |
| チェスター | どうする ? 囲まれちまったぞ ! ? |
| クレス | はぁはぁ…… ! みんな、怯んじゃ駄目だ !僕が先陣を切って……くっ ! |
| ミント | クレスさんっ ! |
| チェスター | おい、クレス ! お前、やっぱり無理してたのを隠してやがったな…… ! |
| ルーングロム | 君だけでも、倒した敵の兵は百人を超えている。それだけ戦い続けて立っていられるほうが不思議なくらいだ……。 |
| すず | 今度は私が前へ出ます !その間にクレスさんは体力の回復を―― |
| 帝国兵レプリカリビングドール | ――目標、殲滅開始。 |
| チェスター | 来るぞ ! ! |
| ? ? ? | ――ダオスレーザー ! ! |
| チェスター | なっ ! ? |
| モリスン | そんな…… ! この技は…… ! |
| ダオス | ……所詮、意思を持たぬ人形か。 |
| クレス | ダオス ! ? どうしてお前が ! ? |
| アーチェ | ……もしかして、あたしたちを助けてくれたの ? |
| チェスター | 馬鹿言うな。こいつがそんなことするはずねぇ ! |
| ミント | では、一体何故……。 |
| ミルハウスト | みんな ! 無事か ! ? |
| クレス | ミルハウストさん ! ? |
| ミルハウスト | よかった……どうやら間に合ったみたいだな。 |
| チェスター | なんであんたがここに……。いや、それよりも身体は大丈夫なのかよ ?心核がボロボロで動くのもやっとなんだろ ? |
| ミルハウスト | ……ああ、正直、まだ私自身は戦えない。だが、この状況でそんなことを言っている余裕がないのは、君たちも十分理解しているはずだ。 |
| ミント | では、ミルハウストさんは私たちを助けにこちらへ来たのですか ? |
| ミルハウスト | それもあるが、救世軍が掴んだフォミクリー装置の場所を特定し、その破壊の任務を担っていたんだ。 |
| ミルハウスト | ダオスと出会ったのもその道中だ。彼は私と共に、フォミクリー装置の破壊を手伝ってくれたのだ。 |
| ダオス | 勘違いするな。私はただ、あの下劣な装置を野放しに出来ぬだけだ。 |
| ダオス | そして、この星を破滅させようとしている帝国の連中も同じこと。 |
| ミルハウスト | 理由はどうであれ、私が助けてもらったのは事実だ。他にもファンダリア領にあるフォミクリー装置の場所も特定して、ディムロスたちに伝えることができた。 |
| モリスン | ……わかった。今はそれで納得しよう。他の領の状況はわかるかね ? |
| ミルハウスト | ああ、私が知っている限りだとウェルテス領、テルカ・リュミレース領エフィネア領、グリンウッド領に増援が送られた。 |
| ミルハウスト | 皆、この世界を守るために戦ってくれている。これ以上、帝国の思い通りにさせてなるものか。 |
| | ――ウェルテス領 |
| 水の民 | ここは俺たちが生きていく場所だ ! |
| 陸の民 | ああ ! 共に戦おう !我らが居場所を守るために ! |
| マウリッツ | 見えるか、ワルター。水の民と陸の民が、共に手を取り合う姿を……。 |
| ワルター | ……奴らは、俺たちの知る水の民と陸の民ではない。 |
| マウリッツ | わかっている。だが、我々が見ているのは可能性だと思わないか ? このような未来があったのかもしれないという可能性なのだ。 |
| レイア | ワルター、マウリッツさん !あの人たちが戦ってくれている間にわたしたちも早く怪我の治療をしなきゃ ! |
| エリーゼ | レイア、こっちはわたしたちに任せてください !悪い敵は全部やっつけちゃいます ! |
| ティポ | ぼくも本気出しちゃうぞー ! |
| アルヴィン | 助かったぜ。ここを抜けられるとファンダリア領まで侵攻されちまうからな。まさかお前たちに礼を言う日が来るとは思わなかった。 |
| プレザ | なに ? 文句なら受け付けないわよ、アル。 |
| アグリア | あははっ ! ババアたちにしちゃあ上出来だぜ !助けられたなんてこれっぽっちも思ってねえけどな ! |
| ウィンガル | お待たせしました、陛下。既に敵軍はこちらで包囲しております。なんなりとご命令を。 |
| ガイアス | お前たち……。いや、今は何も言うまい。よくやった。 |
| ジュード | ……うん、二人がこの領に住む人たちを説得して連れて来てくれたおかげで、状況は一変した。ここからは僕たちの役目だ。 |
| ガイアス | いくぞ !我らが道を阻む者は、何人たりとも容赦はせん ! |
| | ――テルカ・リュミレース領 |
| アレクセイ | この辺りのレプリカリビングドールは一掃した。我が兵がこの領を制圧するのも時間の問題だな。 |
| レイヴン | おたくがそんな台詞を言っちゃうとどうにも悪役感が拭えないわ。 |
| フレン | ……ですが、僕たちがこうして無事でいられるのも彼らの働きのお陰です。 |
| レイヴン | わかってるよ。一応、礼は言っとくわ。そちらさんにもね。 |
| デューク | 私は世界を乱す者を討つだけだ。 |
| シゼル | だが、まだ油断はできぬ。今の内に他の領の情報も入手しておくべきだろう。 |
| アーリア | ええ、シゼルさんの言う通りだと思うわ。気を緩めないようにしましょう。 |
| レイス | ところで、あなたはメルディと行動を共にしていると聞いていたんだが ? |
| シゼル | メルディにはあの者たちが付いている。心配は無用だろう。ならば、私も戦況を見て動くべきだと判断したのだ。 |
| ティルキス | 何はともあれ、心強い味方だ。 |
| フォレスト | はい、我々も後れを取らないようにしましょう。 |
| | ――エフィネア領 |
| ヴィクトリア | アスベル、ここは私たちが帝国軍の相手をするわ。その間にあなたたちはフォミクリー装置の破壊に向かいなさい。 |
| アスベル | ヴィクトリア教官、どうしてここに ! ? |
| ヴィクトリア | 救世軍の地上部隊を連れて来るためよ。私自身はまだ全力で戦えるまでの身体に戻っていないから、出来ることはこれが限界だけど。 |
| シェリア | そんな…… ! だったら尚更危険です ! |
| カーツ | では、私が残って彼女のサポートに回ろう。それで問題はないはずだ。 |
| リトルクイーン | だったら、まずはわたしたちが道を開く ! |
| ソフィ | うん ! いくよ ! |
| 二人 | ――ツイン・ディゾルヴァー ! ! |
| パスカル | おお~ ! ! 今のかっこいいー ! !いいなぁ~あたしも一緒にやりたいよ~ ! |
| ヒューバート | パスカルさん !今はふざけている場合じゃないですよ ! |
| リチャード | ……アスベル。ここは彼女たちのことを信じるんだ。 |
| アスベル | 教官……俺たちは行きます!どうか、ご無事で。 |
| ヴィクトリア | ええ、心配してもらわなくていいわ。それより、マリク。あなたがちゃんと、私たちの教え子を守ってね。 |
| マリク | ……ああ、任せておけ。 |
| | ――グリンウッド領 |
| セルゲイ | 獅子戦吼 ! ! |
| アリーシャ | ……なんという気迫だ。さすがはスレイに技を伝授した者の腕前だな。 |
| セルゲイ | まだ本調子ではないのが悔やまれるな。それに、頼りになるという賛辞ならばあの者たちに向けて送るべきだろう。 |
| オスカー | 姉上 ! こちらは任せてください ! |
| テレサ | ええ、お願いします ! オスカー ! |
| マティウス | いくぞ、チトセ。これ以上、奴らの好きにさせるのは癪だ。 |
| チトセ | はい、マティウスさま。私たちを利用した借りは今ここで返しましょう。 |
| セルゲイ | それぞれの思いがあるのだろうが今はこうして共に戦うことができている。自分はそれを嬉しく思う。 |
| アリーシャ | ああ、だからこそ、決して負けるわけにはいかない !私の全てをかけて、帝国の野望を止めてみせる ! |
| ディムロス | こちらディムロス。ファンダリア領A地区の制圧に成功した。 |
| シャルティエ | それと、ミルハウストさんの情報のお陰でフォミクリー装置の破壊も無事に完了しましたよ。 |
| エルレイン | 同じく、B地区の制圧、及び住民たちの安全は確保しています。 |
| イレーヌ | C地区も問題ありません。今は負傷した反乱軍の人たちの治療に当たっているところよ。 |
| シグレ | ったく、つまんねぇな。こっちに来りゃあ少しは面白れぇと思ったんだががっかりだぜ。 |
| ムルジム | ごめんなさい、血の気が多い子なの。だけど、あなたたちが望む結果にはなっていると思うわよ。 |
| リフィル | 報告ありがとう。他の部隊の状況はどうかしら ? |
| パライバ | はい、こちらももうじき制圧が完了するかと思います。 |
| カルセドニー | しかし、まさか物資の手配までしていたとはな。この戦禍の中で、よくここまで手を回せたものだ。 |
| イエガー | イエース。ミーたちはプロフェッショナル。どんなミッションも完璧にこなしてみせます。 |
| ゴーシュ | お前たちも、イエガー様にもっと感謝しろ。この戦果は、イエガー様の活躍なしでは成し遂げられなかったものだ。 |
| ドロワット | 私たちもしっかりお手伝いしたんだワン。 |
| ジェイド | ええ、助かりましたよ。皆さんには、引き続き持ち場をお任せします。 |
| リオン | 先ほど、アセリア領にオールドラント領それにカレギア領の制圧も無事に終わったと言っていたな ? |
| アンジュ | ええ、みんな順調に作戦を進めてくれているわ。 |
| コングマン | おう ! この俺様がいれば百人力よ !なんたって、チャンピオンだからな ! |
| チェルシー | いえいえ、確かにコングマンさんのご活躍もお見事でしたが、一番はなんといってもウッドロウさまです ! |
| ウッドロウ | チェルシーも見事な弓の腕前だったよ。先生が見たら、きっと褒めてくださることだろう。 |
| ジョニー | だが、勝利の歌を奏でるにはちょいと早いんじゃないか ? |
| フィリア | はい、イクスさんたち潜入組……それに、マクスウェルについて調べている方々の状況も気になりますね。 |
| ハロルド | そっちは専門にしてる奴らに任せましょう。私もちょ~~っとお邪魔したかったけど。 |
| ジューダス | お前がいたら場を乱すだけだ。何かを解剖したいのならロニだけにしておけ。 |
| ロニ | そうだそうだ ! ……って !なんで俺が解剖される前提になってんだよ ! ? |
| ナナリー | ちょっと、こんな時くらい静かに出来ないのかい ?馬鹿は死んでも直らないっていうけど限度ってものがあるよ。 |
| マリー | ははっ。だが、こっちのほうがわたしたちらしくていいと思うぞ。 |
| ルーティ | そうね、難しい顔して湿っぽくなるよりスタンの暢気な顔を見てるほうが落ち着くわ。 |
| スタン | ええ~、酷いなルーティ。けど、そうだな……全部終わったら俺腹いっぱいご飯食べて、ぐっすり寝たいよ。 |
| リリス | もう、お兄ちゃんてば……。でも、仕方ないから全部片付いたときにはエルロン家直伝のマーボーカレーを作ってあげる。 |
| カイル | あっ、それオレも食べたいです !リリスさんのマーボーカレーって何杯でも食べられますから ! |
| リムル | よくわかっているわね、カイル。かあさ……リリスさんの作るマーボーカレーはいつだって最高なんだから。 |
| リアラ | ふふっ、楽しみが増えてよかったわね、カイル。 |
| S・ディムロス | ……全く、緊張感のない奴らだ。 |
| S・クレメンテ | ディムロスよ、小言ばかり口にしておると年寄り扱いされてしまうぞ。 |
| S・シャルティエ | あはは、言われてますよ、ディムロス。 |
| S・アトワイト | もう……これじゃあ、私たちも似たり寄ったりね。 |
| S・イクティノス | だが、いざとなれば頼りになる者たちばかりさ。この世界の運命を託すには、十分なほどにな。 |
| Character | 9話【21-11 セールンド城2】 |
| ファントム | (……限界……かっ……) |
| ヨウ・ビクエ | 聞こえるかしら、ファントム。 |
| ファントム | お前は…………。 |
| ヨウ・ビクエ | 間に合ったみたいね。全く、仮想鏡界の中にゲフィオンを取り込むなんて……あなたの心が死の砂嵐によって崩壊するわよ。 |
| フィリップ | ファントム。これからきみの狂化止めを一時的に外す。 |
| ファントム | そんなことをすれば私とあなたの心が一つに―― |
| マーク | 俺がフィルの心に戻って防御壁を作る。死の砂嵐相手じゃそう長くは持たせられないがギリギリまでフィルの自我は俺が守る。 |
| カーリャ・N | フィリップ様の中にマークが戻りました。これで少し時間は稼げましたが……。 |
| デクス | この後はどうするんだ ? |
| ヨウ・ビクエ | 私とネヴァンもファントムの仮想鏡界に入るわ。そこで内側から死の砂嵐を食い止める。ギリギリまでね。 |
| 帝国兵 | 貴様たち。そこで何をしている。 |
| カーリャ・N | 帝国兵 ! |
| ヨウ・ビクエ | 時間がないわ。私とネヴァンはファントムの仮想鏡界に入るからここはよろしくね。 |
| アリス | ちょっと ! ? 二人で対処しろって言うの ! ?冗談でしょ ! ? |
| アリス | デクス ! ケリュケイオンの連中を呼んでちょうだい。アリスちゃんだけが働くなんておかしいでしょ ! |
| デクス | 了解だよ、アリスちゃん ! |
| コーキス | ……おかしいな。さっきから城内に兵士の姿がない。 |
| バルド | ナーザ様 ! これをご覧ください ! |
| メルクリア | これは……発信器の信号が壁の向こうから出ているようじゃが……。そこの壁の奥にヴァンがいるというのか ? |
| リヒター | いや、奴はこの城の上空に具現化された島にいる筈だ。発信器の最初の信号もそれを示していた。 |
| ジュニア | どういうことなんでしょうか。ここに移動してきた、とか ? |
| ナーザ | そういうことになるな。いや、正確に言えばヴァンはここへ来て、壁の向こう側に発信器を置いていった……のだろう。 |
| ナーザ | 壁の向こうに留まっているとは思えないからな。 |
| メルクリア | もしや、あの者は発信器に気付いていたのでしょうか ? |
| ナーザ | だろうな。しかもわざわざこの場所に置いていったということには意味があるはずだ。単に捨てるのならば『壁の向こう』などという妙な場所には置くまい。 |
| フリーセル | ……殿下。この壁、動きます。 |
| 5人 | ! |
| フリーセル | 装置を動かしてみます。 |
| メルクリア | 壁が……開いた ! ? |
| ジュニア | 魔鏡陣がある ! |
| リヒター | ヴァンに付けた発信器も見つけたぞ。この魔鏡陣へ案内したかったということか ? |
| バルド | 私が先に潜入して様子を見て参ります。 |
| | ゲイボルグの島 |
| ジーニアス | この辺りだよね。ジェイドさんと姉さんが調べろって言ってた場所は。 |
| ティア | ええ……。でも建物らしいものは何もないしフォミクリーの装置もないわ。 |
| コレット | 空を飛んで見てこようか ? |
| ガイ | いや、もしかして……地下、にあるんじゃないか ? |
| ヴァン | その通りです。ガイラルディア様。 |
| ティア | 兄さん ! ? どうしてここに ! ? |
| ヴァン | 死霊使い殿はいないようだな。直接島を見なくてもどこがフォミクリーの設置場所としてふさわしいかわかるのは、さすが生みの親と言うべきか。 |
| ルーク | 師匠 ! フォミクリー装置を無効化したいんです。入り口は何処にあるんですか ? |
| ヴァン | 無邪気なものだな、ルーク。私が味方だと思って疑いもしないとは。 |
| ガイ | ――おい、ヴァンデスデルカ。まさかお前……。 |
| ティア | 帝国に味方するつもりなの ? |
| ヴァン | いや、違う。私はこの世界に私とローレライが具現化された事による変化を調べていた。ずっとな。 |
| ルーク | ローレライの具現化……。もしかして第七音素の具現化を…… ? |
| ヴァン | 第七音素が本来の形で具現化された場合預言もまたこの世界に生まれることになる。この世界に預言が誕生したのなら―― |
| ティア | この世界も滅ぼすつもりなの ! ? |
| リーガル | ティアもルークも落ち着け。まずはヴァンの話を最後まで聞こう。 |
| プレセア | はい。この人から敵意は感じません。敵対するつもりなら接触してこないはず、です。 |
| ガイ | ああ、確かにそうだ。――ヴァン、どうなんだ ? |
| ヴァン | ローレライが未来を見せてきた。もうすぐこの世界は滅びニーベルングに書き換えられるとな。 |
| 全員 | ! ? |
| ロイド | そんなこと……あるはずがない !イクスも俺たちも負けない ! |
| ヴァン | ……もしもお前たちの敗北が確定したときは私を殺せ。 |
| ティア | 兄さん ! ? 何を言っているの ! ? |
| ヴァン | いざというときには私ごとローレライを消滅させるように、ディストに命じてある。 |
| ヴァン | だが――あれが中々素直に言うことを聞くとも限らない。だからお前たちにも頼んでおくのだ。 |
| ルーク | だからって、ティアに……実の妹にそんなことさせようとするな ! |
| ヴァン | ――この先の魔鏡陣から地下施設に辿り着く。封印は解いておいた。ローレライの見た未来を覆すために……頼んだぞ、ルーク。 |
| バルド | ――ナーザ様。妙な仕掛けはありません。こちらにお越しください。 |
| ナーザ | ご苦労だったな、バルド。ここは何処だ ? |
| バルド | はい。ここは帝国の上空に具現化された島のようです。 |
| リヒター | ここは居住区画か ? |
| コーキス | 沢山人がいるけど……兵士じゃないよな。みんな普通の人みたいだけど……。 |
| フリーセル | もしや、デミトリアスたちが集めていた『本来の』ティル・ナ・ノーグの住民ですか ? |
| バルド | ああ。そうみたいだ。 |
| バルバトス | うおおおおおおおおっ ! |
| メルクリア | ああっ ! ? |
| ナーザ | メルクリア ! ? |
| バルバトス | ――ククク……ハーッハッハッハッ ! 喜べ小娘 !この俺の手ずから命を刈り取られることをな ! |
| バルド | 貴様 ! ! |
| バルバトス | 邪魔だ ! そいつの首をねじ切るまで俺の復讐は終わらんぞ ! |
| リヒター | ちぃっ ! |
| リヒター | コーキス ! 俺とバルドがこいつを止める ! |
| コーキス | わ、わかった ! |
| ジュニア | 今、止血しました ! ナーザ将軍 ! |
| ナーザ | しかし逃げると言っても―― |
| フリーセル | ウォーデン様! あちらをご覧ください ! |
| ユーリ | 峻円翔華斬 ! ! |
| バルバトス | ぐぁっ ! ! ……貴様らっ ! ? |
| エステル | ナーザ将軍、こちらへ ! |
| ヴィクトル | 兄さん、ルドガー君、バルバトスを囲むぞ ! |
| ユリウス | 任せろ ! |
| ルドガー | エル ! リタとエステルの所に ! |
| エル | わかった ! パパもルドガーもユリウスも頑張って ! |
| ユーリ | おっと、オレのことも頭数に入れといてくれよ。 |
| ジュディス | あら、抜け駆けなんてずるいわ。私も暴れさせてもらうわよ。 |
| ロクロウ | 面白いじゃねぇか ! 俺も混ぜろ ! |
| リタ | あいつらが本気でやり合うと、周りが危ないわ ! |
| ベルベット | 仕方ないわね。フィー、マギルゥ、カロル。あたしたちは周りの人間を戦闘狂の連中から守りながら避難させるわよ。 |
| マギルゥ | ええい、次から次にやることを増やしおって !カロル ! 避難指示はお主に任せたぞ ! |
| カロル | わかった !みんな !ボクたちと一緒に、ここから離れて ! |
| | ゲイボルグの島 |
| イクス | ――結構、敵の兵士がいるな。皆が先に上陸して、進路を確保してくれたはずなのにそれでもまだいるのか……。 |
| カーリャ | お二人とも、コーキスたちです ! |
| コーキス | マスター ! みんな ! 助けてくれ !メルクリアが―― |
| ミリーナ | メルクリア ! ? ひどい傷だわ ! 今治療するわね ! |
| イクス | どうしたんですか ! ? |
| ナーザ | バルバトスに襲われた。鏡映点たちが助けてくれて事なきを得たが……。 |
| メルクリア | すみ……ません……兄上様……。 |
| ナーザ | 謝るのは俺の方だ。お前を守れなかった……。 |
| ミリーナ | 大丈夫。急所は外れているしすぐに止血したみたいだから……治癒術も効きがいいわ。 |
| ジュニア | よかった…… ! |
| バルド | イクスさんたちは―― |
| イクス | カレイドスコープを探しています。キラル分子の反応を見る限りこの島まで運び込まれたことは間違いないんですけど、反応が途切れてしまって。 |
| ヨウ・ビクエ | イクス、ミリーナ。聞こえてる ?あら、バルドもそこにいるのね。助かるわ。 |
| バルド | どういうことでしょうか ? |
| ヨウ・ビクエ | 単刀直入に伝えるわね。死の砂嵐が危険な状態なの。このままだとファントムの心を食い破ってこの世界を飲み込むわ。 |
| フィリップ | 今は僕らがファントムの仮想鏡界を何とかフォローしているが、それほど長くは持たない。 |
| カーリャ・N | 今のままではバロールであってもカレイドスコープであっても死の砂嵐を消せない可能性が高いそうです。 |
| バルド | ――そうか。『異物』か……。 |
| ヨウ・ビクエ | そうよ。かつてゲフィオンとフィルのカレイドスコープが消滅させた人々や世界の欠片が死の砂嵐に紛れ込んでいる。 |
| ヨウ・ビクエ | それらを全て集めてどかさなければならないの。その為に、バルドの力を――命を貸してちょうだい。 |
| ナーザ | バルドに何をさせようというのだ。 |
| フィリップ | 死の砂嵐の中に入ってもらいたい。それができるのはバロールの尖兵であり、死の砂嵐の中にいたことのあるきみだけだ。 |
| メルクリア | ならぬ ! そ、そんなことをしたらせっかく甦ったバルドがまた死んでしまうではないか ! |
| カーリャ・N | コーキスがあなたを守ります。そしてナーザ将軍も。 |
| ヨウ・ビクエ | あなたが知っている二つの秘伝魔鏡技がこの作戦には必要不可欠なのです。 |
| ヨウ・ビクエ | 【ギエラ・ビフレスト】であちらにいるシドニーと心を繋ぎ、そこからバルドとコーキスが死の砂嵐の中に飛び込みます。 |
| ヨウ・ビクエ | 【ギエラ・ビフレスト】による虹の橋が繋がっている間はバルドもコーキスも存在を保てる筈です。 |
| バルド | でもそこからどうやって世界の欠片を集めるというのです ? |
| ナーザ | 【アナム・セパレート】。最初のイクス・ネーヴェの体を保存するために使った術だな。 |
| ナーザ | あれはアニムスとアニマを切り分ける術。いわば魔鏡技版のカレイドスコープのようなものだ。 |
| ヨウ・ビクエ | そう。それでバルドの元に世界の欠片を集めるの。同じカレイドスコープによって破壊されたバルドには世界の欠片と同じ傷痕がある。 |
| ヨウ・ビクエ | 傷跡を辿って欠片たちが集まってくるはずよ。 |
| イクス | でも、その後は ? 世界の欠片ってとてつもなく膨大なんじゃありませんか ?それをどうやって死の砂嵐からどかすんですか ? |
| バロール | 俺にやらせようというのだろうヨーランド。いや、ダーナ。 |
| バルド | この声は…… ! ? バロールですか ! ? |
| バロール | ――お前たちが、それ相応の犠牲を覚悟するというのなら、集めた世界の欠片は俺の方で処理してやってもいい。 |
| バロール | だがそうなると、死の砂嵐を消すことはできないぞ。それはお前たちがカレイドスコープで行うんだ。 |
| バルド | わかりました。やりましょう。 |
| ナーザ | バルド ! ? 貴様、正気か ! ? |
| バルド | ナーザ様。私はずっと考えていたのです。私という存在が甦った意味を。 |
| バルド | 本来人間が死を超越するなどあり得ないこと。それがこの身に起きたのは生前の贖罪をせよということなのでは、と。 |
| フリーセル | ! ! |
| ナーザ | 贖罪、だと ? |
| バルド | セールンド王国の行為は正しいものではなかった。ですが、オーデンセに攻め入ったこともまた正しい行為ではなかった。 |
| バルド | 我らもまた、失われた世界と命に向き合わねばならないのでしょう。私はビフレスト皇室の為に生きると誓いました。でもそれだけでは駄目なのです。 |
| バルド | ウォーデン様やメルクリア様を正しく守るためにはそれ以外のものも守らねばならない。 |
| ナーザ | ……そんなこと、お前は受肉する前から行っていたではないか。俺を裏切って黒衣の鏡士に与した。 |
| ナーザ | お前はそれでいい。そのような部下を持ったことを誇りに思うぞ。 |
| バルド | ウォーデン様…… ! |
| ダーナ | イクス、ミリーナ。あなたたちはこの先へ進みなさい。目指すカレイドスコープは虹の橋を越えたところ――私の心核を封じたアイフリードの墓の中にあります。 |
| ダーナ | デミトリアスがそこでニーベルングのレプリカを作ろうとしています。 |
| 三人 | ! |
| コーキス | 行ってくれ、マスター。俺、マスターが死の砂嵐を消せるようちゃんと準備するから。 |
| イクス | ああ、わかった。頼んだぞ、コーキス !行こう、ミリーナ ! カーリャ ! |
| ナーザ | では、こちらも始めよう。ジュニア、フリーセル。メルクリアを頼むぞ。 |
| ジュニア | はい ! |
| フリーセル | 承知しました。 |
| ナーザ | コーキス。お前には【アナム・セパレート】のやり方を伝授する。練習する時間はない。なんとしても成功させよ。 |
| コーキス | わかってる。やってみせる ! |
| デミトリアス | ……遅いな。 |
| グラスティン | ああ。死の砂嵐が動かない。ゲフィオンはゲイボルグの島を作ったことで致命的一撃を食らったはずだが……。 |
| グラスティン | 様子を見てこよう。まだ人体万華鏡が壊れていないなら魔導砲で奴の体を破壊する。 |
| デミトリアス | そうか……。任せるよ、グラスティン。 |
| グラスティン | ああ、全て俺に任せておけ。お前の願いはなんでも叶えてやるさあ。 |
| Character | 10話【21-12 ???】 |
| シング | スピルリンクは無事成功したね。でも、ここって……。 |
| シャーリィ | はい……。ルグの槍を止めるために入った皆さんのスピルメイズとは少し感覚が違いますね。 |
| マオ | うん、ボクもそう思う。この広い空間が、ずっとずっと続いていくような……。 |
| リチア | はい、いわばここはティル・ナ・ノーグ全体のスピルメイズですから、どこまで続いているのかわたくしも完全には把握できません。 |
| ジェイ | なるほど。聞きましたか、モーゼスさん ?走り回って迷子にならないでくださいよ。 |
| モーゼス | なんでワイが迷子になる前提なんじゃ ! ?そがあなことするわけないじゃろ ! ? |
| クンツァイト | 測定。モーゼスの脈拍、体温が共に上昇。安全のためにも、すぐに正常に戻すことを推奨する。 |
| ノーマ | ちょっとモーすけ、みんな真剣なんだから真面目にやってよね ! |
| モーゼス | ワイが悪いんか ! ? |
| ウィル | いい加減にしろ ! !全く、こんなときまでお前たちは……。 |
| クロエ | だが、いつも通りだと不思議と落ち着くな。正直、現状に不安がないとは言えないからな。 |
| セネル | ああ。だが、その不安を取り除くためにもまずはマクスウェルの力が集まっている場所を探そう。 |
| ミラ=マクスウェル | そのことだが、予想通りこのスピルメイズにはマクスウェルの残滓が大量に溢れている。 |
| ミラ | ええ、私でも感じとれる程の量ね。 |
| ヒスイ | おい、それってお前らに問題はねえのか ?さっきのモフモフ三兄弟も防御がどうとか言ってただろ ? |
| ミラ=マクスウェル | ああ、その点は何も異常ない。彼らの装置が正常に作動してくれている証拠だな。 |
| ロゼ | けど、長居してると影響は出るだろうし仕事はささっと終わらせたほうがいいでしょ。 |
| デゼル | お前の口振りくらい、簡単なことならいいんだがな。 |
| ミラ=マクスウェル | 私からは何とも言えないが、マクスウェルの残滓がある一定の方向へ流れているのは確認できた。間違いなく、人為的なものだ。 |
| ユージーン | となると、その流れを追えばマクスウェルの精霊装を扱っている人物のところへ辿り着けるのだな。 |
| ザビーダ | オーケイ。んじゃ、気合い入れていこうぜ ! |
| | ゲイボルグの島 アジト接岸地点 |
| ラタトスク | おい、こっちの帝国兵たちは全員倒したぞ。浮遊島の防衛機能はまだ回復しねえのか ? |
| コンウェイ | 残念だけど、まだ原因は判明していないんだ。もしかしたら、帝国側から何か仕掛けられた可能性があるね。 |
| ユアン | こちらでも防衛に回っているが正直、あまり長くは持ちそうにない。 |
| ミトス | ……いいよ、ボクが全員倒してあげるから。雑魚がいくら集まっても無駄だってことを教えてあげる。 |
| マーテル | いけません、ミトス。あなたも相当疲弊しているはずです。これ以上の無茶は……。 |
| マルタ | ! ? ラタトスク ! ! 前 ! ? |
| ラタトスク | ……ちっ。また出やがったか。一旦通信を切るぞ。まずはこいつらを片付ける ! |
| 帝国兵レプリカリビングドールA | ――排除、開始。 |
| ラタトスク | やれるもんなら、やってみやがれ ! |
| マルタ | ラタトスク ! 私も ! |
| 帝国兵レプリカリビングドールB | ―――― ! ! |
| マルタ | これ以上、勝手なことはさせないんだから ! |
| ラタトスク | ……無理はすんじゃねえぞ、マルタ。 |
| マルタ | はぁはぁ……。ううん、平気。みんなも戦ってるんだから、私だって…… ! |
| 帝国兵レプリカリビングドールたち | ――増員、確認。殲滅対象二名を排除せよ。 |
| マルタ | そんな ! ? まだこんなにいたの ! ? |
| エミル | マルタ ! 逃げて !ここは僕たちが食い止めるからマルタだけでも…… ! |
| マルタ | 駄目 ! エミルたちを置いていくなんてできないよ ! |
| ラタトスク | 俺たちのことは気にするな !いいから逃げろ ! |
| 帝国兵レプリカリビングドールたち | 攻撃、開始 ! |
| ? ? ? | ……うるさい蠅どもが。消え失せろ ! ! |
| 二人 | ! ? |
| ロンドリーネ | ふぅ~、間一髪 !二人とも、平気 ? |
| マルタ | ロディ ! ?じゃあ、今の魔術って……。 |
| ロンドリーネ | あー、違う違う。君たちを助けてくれたのは、この人ね。 |
| クリード | ……助けたわけではない。邪魔な連中を消し飛ばしただけだ。 |
| エミル | あなたは……クリードさん ? |
| ディオ | くそ~ ! また先越されちまったぜ !今度こそオレがかっこよく登場できると思ったのに ! |
| メル | もう、ディオ ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ !でも、無事でよかったです。 |
| クルール | クルール ! クルール ! |
| ラタトスク | お前ら、どうしてここに……。地上軍に合流してたんじゃなかったのか ? |
| ディオ | そうなんだけどさ、なんかこっちもヤバイって聞いて急いで戻ってきたんだよ。あと、それから―― |
| メル | 待って。詳しいことはわたしたちよりあの人に説明してもらったほうがいいかも。クリードさん、魔鏡通信はまだ繋がっていますよね ? |
| クリード | ……勝手に使え。通信はそのままだ。 |
| ブルート | ――マルタ、そこにいるのか ? |
| マルタ | パパ ! ? ねえ、今どこにいるの ! ?ローエンたちの話だと、ケリュケイオンからいなくなったって……。 |
| ブルート | すまない……。だが、こんな身体でもお前たちに手を貸したかったのだ。幸い、兵を動かすことには慣れているからな。 |
| ブルート | だが、地上軍と合流した時にお前たちの浮遊島の防衛機能をジャミングする装置を帝国の地上基地で見つけたのだ。 |
| ロンドリーネ | 私と双子ちゃんたちも、その装置に気付いて動いていた時にブルートやクリードと合流できたってわけ。 |
| ブルート | だが、地上の装置を停止させても防衛機能が受けたダメージが戻るわけではない。機能の再起動にはそちら側で技術的な手を加える必要があった。 |
| フローラ | それなら、私たちが直せるんじゃないかと思って浮遊島に行くことにしたの。 |
| クリード | ……いいか。フローラのために私は動いているだけだ。わかったら、さっさと防衛機能がある場所まで案内しろ。 |
| ディオ | そんな偉そうにしなくても、ちゃんと案内するって。けど、あれはどうすんだ ? 防衛機能を戻すためにキラル分子ってヤツが必要なんだろ。 |
| P・カノンノ | それも問題ないよ。今から、私たちも戻ってすぐに届けるから。 |
| カノンノ・E | ジェイドさんが言ってた通り帝国軍の基地に少しだけキラル分子が残ってたの。それを使えば、多分大丈夫だと思う。 |
| カノンノ・G | だから心配しないで。それじゃあ、浮遊島に戻ったらまた連絡を入れるね。 |
| ブルート | マルタ、私が出来るのはここまでだ。他の者たちの手を借りることになってしまったがお前たちの無事を祈る。 |
| マルタ | ……うん、ありがとう、パパ。 |
| | ゲイボルグの島 虹の橋前 |
| イクス | ……くそっ、虹の橋はもうすぐそこなのに敵の数が全然減らない ! |
| リッド | このまま固まって戦っててもジリ貧か……。 |
| ファラ | ねえ、リッド―― |
| リッド | ああ、多分考えてることは一緒だぜ。 |
| イクス | リッド ? ファラ ? |
| リッド | なあ、イクス。このまま全員で戦ってても虹の橋まで辿り着くには時間がかかりすぎる。 |
| ファラ | 敵は全部わたしたちのほうに引き付けるよ。だから、その隙にイクスとミリーナは先に行って ! |
| メルディ | バイバ ! メルディも賛成 ! |
| キール | ああ、それがもっとも効率的で可能性が高い。ぼくたちの負担は大きくなるが、その分はリッドに働いてもらうさ。 |
| リッド | お前もやるんだよ、ったく。けど、ここまで来たら退けねぇよな。 |
| ミリーナ | みんな……。 |
| チャット | ご安心ください、ミリーナさん。キャプテンのボクがついていますからね ! |
| フォッグ | がははははっ ! よく言った、坊主 !ここはひとつ、景気づけに俺さまが派手に吹き飛ばしてやるぜ ! |
| フォッグ | ――くらいな ! エレメンタルマスター ! ! |
| リッド | 行け、イクス、ミリーナ !あとはオレたちに任せろ ! |
| イクス | リッド…… !ああ ! みんなの想いは決して無駄にはしない !行こう、ミリーナ ! |
| ミリーナ | ……ええ ! |
| グラスティン | おっと……。ゲフィオンの様子を見る前にお前らに鉢合わせするとはなあ……。 |
| イクス | ……グラスティン ! ? |
| グラスティン | ああ ? 何驚いた顔してんだよ ?俺がデミトリアスのところにいると思ったか ? |
| グラスティン | どうせお前らが余計なことをしたせいで死の砂嵐が動かないんだろうなあ。 |
| グラスティン | それにしても、ここに来たのはお前らだけか ?それなりにレプリカを配置しといた筈なんだがなあ。 |
| グラスティン | なぁ ? 一体どれだけの鏡映点たちを犠牲にしてここまで来たんだ ? |
| イクス | 犠牲になんてしていない…… !皆それぞれの場所で戦ってるんだ ! |
| グラスティン | ヒヒヒッ ! ものは言い様だなあ、イクス・ネーヴェ ! |
| カーリャ | そっちこそ、どれだけの命を犠牲にしているんですか ! ? |
| ミリーナ | あなたは、どうして非道なことをしてまで陛下のやろうとすることに協力しているの ?この世界を滅ぼしてまで。 |
| グラスティン | どうして ? ヒヒヒッ ! 面白いことを聞くな !そんなの、決まってるじゃねえか。 |
| グラスティン | デミトリアスがそれを望んでいるからだよ。だから俺は、あいつの願いを叶えてやってるのさ。 |
| グラスティン | 俺はな、あいつが望むならお前たちを殺すことや世界を壊すことだって手を貸してやる。 |
| グラスティン | あいつは俺を地獄から解放してくれた唯一の人間なんだからな。 |
| イクス | 地獄…… ? |
| グラスティン | ああ、そうだ。俺にとって、それ以上の理由はいらないんだよ。そして、お前たちは俺たちにとっては邪魔者だ。 |
| グラスティン | だから、さっさと死んでくれ。 |
| ミリーナ | イクス ! ? |
| イクス | ああ、凄い殺気だ…… !気を付けろ、ミリーナ。もしかしたら、まだ後ろに兵士たちがいるかもしれない ! |
| グラスティン | ヒヒヒッ ! 安心しろよ !ここにいるのは俺だけだ !だが―― |
| グラスティンレプリカ | 「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」 |
| カーリャ | な、なんですか ! ? |
| イクス | グラスティンのレプリカか ! ? |
| グラスティン | ヒヒヒッ ! ! さあ、来いよ鏡士共 ! !その身体を、ズタズタに切り裂いてやるからよぉ ! ! |
| Character | 11話【21-13 ゲイボルグの島2】 |
| イクス | はああああっっ ! ! |
| グラスティン | ヒヒヒッ ! 楽しませてくれるなぁ !だが、その程度のダメージじゃあ俺を殺すことはできねえぞ ! |
| カーリャ | そんな……あんなにイクスさまとミリーナさまの攻撃を受けているのに…… ! |
| ミリーナ | クロノスの力のせいよ……。それで私たちから受けたダメージを無効化してるんだわ。 |
| グラスティン | そういうことさ。だから、いくら俺を倒したって無駄なんだよ。わかったら、大人しく肉の塊になりな。 |
| イクス | ……いや、違う。無駄なんかじゃない。 |
| グラスティン | あぁ ? お前、今なんて言った ? |
| イクス | グラスティン……。本当に俺たちの攻撃が無駄ならどうして回復時間が遅くなっているんだ ? |
| グラスティン | ヒヒ…… ! |
| イクス | 図星か……。お前の力のことはルドガーさんやヴィクトルさんたちから聞いていた。 |
| イクス | けど、どんなエネルギーでも使えば必ず消耗する。回復が遅くなっているのは、クロノスの力が弱まっているからじゃないのか ? |
| グラスティン | 半分正解ってとこだな。だがな、俺がクロノスの力を完全に使えないのはその力をデミトリアスへ回しているからさ。 |
| イクス | なんだって ? |
| グラスティン | あいつ自身がオリジンの力を手に入れるために必要なことなんだよ。だが、もう一つ準備することがあってなあ。 |
| グラスティン | お前たちとの遊びも、ここまでだ ! |
| イクス1st | ! ? マズい ! イクス ! !すぐにここから離れろ !魔鏡陣が仕掛けられてる ! ! |
| イクス | そんな ! ? 動け……ない ! |
| グラスティン | ようやく捕まえたぞ !本当はもっと痛ぶってから始めようと思ったんだがこれ以上長引くと厄介だからなあ ! |
| ミリーナ | やめて ! イクスに近づかないで ! |
| グラスティン | 邪魔するな ! 今は貴様に 用はないんだよ ! ! |
| ミリーナ | きゃあああああ ! |
| イクス | ミリーナ ! ! |
| グラスティン | ああ、そうか。大事な幼なじみだったなあ。いや、お前たちは揃ってあの魔女に作られた可哀想な偽物かぁ。 |
| イクス | だま……れ ! |
| グラスティン | ヒヒヒッ、聞こえないなあ。さて、お前があのジュニアの代わりなのは不服だがより優秀な鏡士が必要なんだから仕方ない。 |
| イクス1st | ジュニアの代わり…… ! ? |
| グラスティン | お前に鏡の精霊の心核を埋め込めば新しい精霊王オリジンが誕生する。そうすれば、俺たちはニーベルングに辿り着く ! |
| カーリャ | イクスさま ! ? |
| グラスティン | じゃあな、イクス・ネーヴェ !俺たちのために死んでくれ ! |
| グラスティン | な、なんだ ! ? この揺れは ! ? |
| カーリャ | はっ…… ! イクスさまたちの頭上の空間に亀裂が入ってますよ ! ? |
| グラスティン | 死の砂嵐か ! ?しかし、ここに影響が出るわけが…… ! |
| コーキス | マスターから離れろ ! !グラスティン ! ! ! ! |
| 二人 | コーキス ! ? |
| イクス | コーキス……どうして…… ! ? |
| コーキス | 今は説明してる状況じゃないだろ ! ?とにかく、まずは魔眼の力で魔鏡陣を無力化する ! |
| コーキス | どうだ、マスター ? ちゃんと動けるか ! ? |
| イクス | あ、ああ……。けど……。 |
| バロール | イクス。コーキスの死の砂嵐での作業は終わった。故に、お前のために呼び寄せてやったのだ。感謝するのだな。 |
| グラスティン | ……鏡精の分際で俺の邪魔しやがって。そんなに死にたいなら、お前もまとめて殺してやるよ ! |
| イクス | コーキス ! |
| コーキス | 平気だ、マスター !こいつは俺が倒す ! |
| グラスティン | なんだ ? バロールの魔眼でも使うつもりか ?言っておくが、そんなものは俺には通用しないぞ ? |
| バロール | コーキス。この者の言う通りだ。魔眼だけではクロノスの力で無効化されるぞ。 |
| コーキス | わかってるよ。だから、ボスに教えてもらった『あの術』でクロノスの力を取り除く ! |
| カーリャ | こ、今度はなんですか ! ? |
| 死鏡精 | カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ ! |
| グラスティン | チッ ! ? 死鏡精の群れ共か !死の砂嵐の亀裂からこっちへ来やがったな ! ! |
| コーキス | マスター、ミリーナ様 !パイセンも早く俺の後ろに ! |
| カーリャ | コ、コーキス ! 平気なんですか ! ? |
| コーキス | ああ ! 俺の魔眼の炎で防御壁を作る !はああああっっ ! ! |
| イクス | 凄い……これが本来のコーキスの力、なのか……。 |
| 死鏡精 | カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ ! |
| グラスティン | ウザい羽虫共が…… ! !そんなに死にたきゃ、クロノスの檻の中にでも飼ってや………… ! ! ! ! |
| グラスティン | な、なんだ……これは…… ! !お、おい…… ! ! 一体どうなってやがる…… ! ! |
| イクス | グラスティンの身体が燃えてる!?いや、違う……あの炎は……。 |
| ミリーナ | ええ……贄の紋章を付けられた人たちが火柱になってしまったときと同じだわ……。でも、どうして……。 |
| グラスティン | 贄の紋章 ! ? 馬鹿な ! ? 俺の体に刻印されたのはビフレストが開発した追跡用の発信器の筈 ! ? |
| グラスティン | それにフリーセルに付けられた刻印は解除した筈だ。それが、何故今になって発動する…… ! ? |
| グラスティン | (これは……何だ。俺にこんな記憶はないぞ ! ?) |
| サレ | ……なるほどね。贄の紋章はビフレストの刻印が元になってたのか。やっぱりキミはグラスティンのアキレス腱だったんだね。 |
| サレ | キミを具現化して正解だったよ、フリーセル。 |
| サレ | じゃあ、この刻印をグラスティンのレプリカの一人に付けてこよう。そうすれば、ほかのレプリカに呪いの力は分散されて、奴は気付かない。 |
| フリーセル | だが、本当にいいのか ? もし、それがバレたらお前も帝国にはいられなくなるぞ。 |
| サレ | 平気だよ。刻印は殺したあとに付けてもいいんだろ ?だったら、僕が帝国を出て行くついでに一体くらいはあいつのレプリカを殺しておくさ。 |
| サレ | あとは、レプリカ同士で共有している力が分散するから呪いの力も他のレプリカに分散する。そのせいであいつはクロノスの力を使い続ける限り―― |
| フリーセル | ……いずれは本体の身体に刻印の力が蓄積されていく、というわけか。 |
| サレ | そう、少しずつ毒を盛られていると知らずに、ね。 |
| フリーセル | 確かに、理論上は可能だ。俺があいつを殺すのに失敗したときの保険にもなるだろう。 |
| サレ | そうさ、何事も準備を怠らないほうがいい。ああ、それと、この会話を呪いが発動したときに奴に見せられるようにできるかい ? |
| フリーセル | ……構わないが、それに何の意味がある ? |
| サレ | 意味なんてないさ。ただ、そうだね……意味があるんだとすれば……。 |
| サレ | ――僕はあいつのことが、大っ嫌いなんだよ。 |
| グラスティン | あのクソ野郎どもがああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ ! ! ! ! ! ! |
| 死鏡精 | カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ ! |
| コーキス | グラスティンの周りに死鏡精が…… ! |
| バロール | ……もう遅い。奴は死鏡精にアニマごと憑りつかれて終わりだ。 |
| グラスティン | ふざけるなあああああああああっ ! ! ! ! !オレハ……オレハ…… ! ! ! ! ! ! ! |
| カーリャ | な、なんですか ! ?今度は真っ黒な球体みたいなものになっちゃいましたけど ! ? |
| バロール | 自らクロノスの檻の中に閉じ籠ったか。血迷った真似を……。 |
| 死鏡精 | カガミシ、ニ、シヲ。カガミ、シニ、シヲ――。 |
| ミリーナ | ……死鏡精たちが球体ごと虚無に戻っていったわ。 |
| イクス | ……なあ、バロール。グラスティンは、いったいどうなったんだ ? |
| バロール | クロノスの檻ごと、虚無へと連れていかれた。もう戻ってくることはないだろう。 |
| バロール | クロノスの檻の中で流れる時間は『永遠』だ。たとえ檻の力が解除されても、もうその時にはアニマも形を保つことなく、虚無へと消えていく。 |
| バロール | 奴は死鏡精に精神を侵され肉体的にも刻印の激痛から逃れられず永遠に『死に続ける』ことになる。 |
| イクス | そんな……。 |
| バロール | 奴が本能的に生きようとした結果だ。たとえ、その意思が歪んだものへと変わってしまったとしてもな。 |
| ミリーナ | 行きましょう、イクス。私たちに立ち止まっている時間はないわ。 |
| イクス | ……ああ。まだ何も解決していないからな。 |
| イクス | ……そうか。じゃあ、コーキスは死の砂嵐を辿って俺たちのところまで駆けつけてくれたわけなんだな。 |
| コーキス | ああ、バロールに道案内されながらだったけどなんとか間に合ってよかったよ。 |
| カーリャ | ホントですよ ! あんなにギリギリに出て来るなんてカーリャはびっくりしましたよ ! |
| コーキス | わ、悪かったって ! けど、グラスティンが持ってた鏡の精霊の心核は、ちゃんと回収できてよかったよ。 |
| コーキス | ぶっちゃけ、死鏡精に虚無の中まで持っていかれてたら、また戻らないといけなくなっちまうからな。 |
| カーリャ | それじゃあ、コーキスはその鏡の精霊の心核を取り戻すためにこっちへ来たんですか ? |
| コーキス | いや、それは偶然でさ。マスターたちがデミトリアスを倒すために必要な術をボスから教えてもらって……。 |
| バロール | 待て、コーキス。その話は後だ。この先、誰かいるぞ。 |
| コーキス | 誰かって…… !あ、あれは…… ! |
| ヴァン | 来たか、鏡士諸君。 |
| コーキス | ヴァン様 ! ? こんなところにいたのかよ !ボスもみんなも心配してたんだぜ ! ? |
| ヴァン | ……そうか。だが、そのような気遣いは無用だ。 |
| イクス | ヴァンさん ! どうして剣を…… ! |
| カーリャ | も、もしかして、ヴァンさまはあっちに寝返っちゃったんですか ! ? |
| ヴァン | ……それが私の中にいるローレライが見せた未来だ。 |
| コーキス | な、なに言ってんだよヴァン様 ! ?ローレライってなんのことだ ! ? |
| ヴァン | お前たちも聞いているだろう。我々の世界では、預言と呼ばれる絶対的な未来が存在していた。 |
| ヴァン | そして、この世界にもローレライが存在し私に一つの星の結末を見せた。それが、新たなる星の誕生だ。 |
| イクス | それって……今のティル・ナ・ノーグが滅びて新生ニーベルングが誕生する未来ということですか ? |
| ヴァン | その通りだ。そして、お前たちはここで私に倒されデミトリアス帝の悲願は成就される。それが、この星の辿る未来だ。 |
| ヴァン | もし、それがこの星の惑星預言なのだとしたら覆すことは出来ない。我々人間が、どれだけ足掻こうともな。 |
| ミリーナ | そんな……。私たちは、本当に戦わないといけないんですか ? |
| ヴァン | それが預言ならば、避けられないことだ。 |
| ヴァン | ――だが、もしここで私がお前たちを通しデミトリアス帝を倒すことができれば、ローレライの未来予知は完全なものではないと証明できる。 |
| カーリャ | ……は、はい ?えっと……すみません、カーリャ、なんだか話がこんがらがってきちゃったんですけど……。 |
| イクス | ……つまり、俺たちがデミトリアス陛下を倒してニーベルングの誕生を阻止できればヴァンさんの望む結果が得られるんですね。 |
| ヴァン | そうだ。私が見た未来の結末は惑星預言に該当するものだろう。本来ならば、その預言を覆すことは不可能だ。 |
| イクス | だったら、俺たちは絶対にティル・ナ・ノーグを守ります。一緒に戦ってくれている、みんなの為にも。 |
| ヴァン | ああ、私もそう願いたいものだ。 |
| ミリーナ | ……ヴァンさん。もし、私たちが負けてしまってデミトリアス陛下を止められなかった場合はどうするつもりだったんですか ? |
| ヴァン | その時はローレライごと私を殺してもらう手筈を整えてある。 |
| コーキス | な、何言ってんだよ ! ? |
| ヴァン | とにかく、私が望む世界は預言のない世界。ただ、それだけだ。 |
| イクス | ……その理由を聞いてよかったです。尚更、俺たちは負けられなくなりましたから。 |
| コーキス | ああ、ヴァン様が死ぬなんて知ったらリグレット様やアリエッタ様が悲しむからな。 |
| ミリーナ | それにティアは絶対にそんなことを許さないと思うわ。ルークさんやアッシュさんだって……。 |
| ヴァン | ならば、私の望む結果を示してくれ。ここが、守るべき価値がある世界ということをな。 |
| イクス | ここは、アイフリードの墓なのか ? |
| バロール | ああ。元々はニーベルングが甦ったときに揺り籠から戻るため、虹の橋を架けるための島だったがこれを帝国の奴らが利用しているのだろう。 |
| ミリーナ | じゃあ、やっぱりここにデミトリアス陛下が―― |
| カーリャ | ミリーナさま ! あれ !あの中心に置いてあるものって…… ! |
| イクス | カレイドスコープ !こんな場所に運び出していたのか。 |
| デミトリアス | そうだよ。久々だね、ミリーナ。そして、イクスとその鏡精、コーキス。 |
| イクス | デミトリアス……陛下。 |
| デミトリアス | ここからティル・ナ・ノーグを分離させ新生ニーベルングを作るためのキラル分子を調達するつもりだからね。 |
| デミトリアス | そして、本来ならばここに君たちを通すつもりはなかったのだが、やはりヴァンは私の味方をしてくれなかったようだ。 |
| デミトリアス | 一つ、念のために君たちに聞いておこう。グラスティンは……死んだのか ? |
| イクス | ……死んだ、とは言えないけれど多分、もうここには戻って来られない。残っているのは、あなただけだ。 |
| デミトリアス | ……そうか。私は多くの友を失ってきたつもりだが本当に友と呼ぶべき相手は、あの男だったのかもしれない。 |
| デミトリアス | 思えば……ただ生きることしかできなかった私を『何者』かにしてくれたのも彼だったよ。 |
| イクス | デミトリアス陛下。だったら俺たちにも教えてください。そんな人を失ってまであなたは、この世界を滅ぼすつもりなのか ! ? |
| デミトリアス | そうだ。これは、私がやらなければならないことだ。 |
| ミリーナ | 待ってください ! もし、滅びから逃れる方法がないと思っているのなら、それは違います ! |
| イクス | そうです ! そのカレイドスコープにも本来のバロールの力が使える機能があるはずなんです ! それを俺とミリーナが使えば―― |
| デミトリアス | 使えば……フィンブルヴェトルを止められるのか ? |
| イクス | はい、だから―― |
| デミトリアス | ……イクス。それでは意味がないんだよ。私の望む結果ではない。 |
| イクス | どうしてですか ! ? 世界も守れて全員が助かる道があるのに……。 |
| デミトリアス | ならば教えてやろう、イクス。私が望んでいるのは、世界の救済などではない。 |
| デミトリアス | 君たちのような偽りの存在を私の手で終わらせてあげたいんだ。 |
| Character | 12話【21-14 ゲイボルグの島3】 |
| イクス | 偽りの存在を終わらせるって……。 |
| デミトリアス | そのままの意味だよ。君やミリーナ、そして鏡映点たちもそうだが本来、君たちは存在していない人間のはずだ。 |
| デミトリアス | それなのに、他人の都合で生まれてしまった君たちに世界の行く末までをも託す結果となった。果たして、これが健全な世界だと言えるのだろうか ? |
| デミトリアス | ――いや、それは本来のあるべき姿ではない。本当の彼らには、その者たちだけが持つ使命や人生そして最後があったはずなのに、歪められたのだ。 |
| デミトリアス | それは、本来の彼らの存在に対する冒とくだ。そして、このティル・ナ・ノーグという世界がある限り偽りの世界が続いてしまう。 |
| デミトリアス | だからこそ、この虚言にまみれた世界を誰かが終わらせなければならないのだ。 |
| コーキス | ふざけるなっ ! !だったら……その為ならマスターたちが死んだっていいって言うのかよ ! ? |
| デミトリアス | ……イクス・ネーヴェという男はもう死んでいる。そこにいるのは、ゲフィオンたちが生み出した幻影だ。 |
| コーキス | マスターを……俺の大事なマスターを侮辱するな ! ! |
| イクス | やめろ、コーキス ! ?むやみに突っ込むな ! ! |
| デミトリアス | ……理解してもらおうとは思っていない。だから、私が責任を持って終わらせるのだ。 |
| コーキス | うわああああああっ ! ! |
| カーリャ | コーキス ! ? |
| デミトリアス | よく見ておけ。私は、そのためにマクスウェルたちの力を手に入れたのだ ! ! |
| デミトリアス | ……流石はグラスティンだ。お前が残したクロノスの力のお陰でマクスウェルの力も最大限に引き出せる。 |
| カーリャ | ミリーナさま……カーリャでもわかります…… ! |
| ミリーナ | ……ええ。今まで感じたことのない力だわ。 |
| イクス | それでも、俺たちはあなたを止める !コーキス ! |
| コーキス | ああ ! 俺は大丈夫だ !さっきやられた分は、ここできっちり返す ! ! |
| 二人 | うおおおおおおおおおおおっっ ! ! |
| デミトリアス | ……無駄だよ。 |
| コーキス | ダメージがない ! ?もしかして、グラスティンの奴と一緒か ! ? |
| イクス | 違う…… !そもそも俺たちの攻撃が効いてない ! ? |
| ミリーナ | だったら、私の魔鏡術と精霊装の力で…… !――月鏡・継黒陣 ! ! |
| デミトリアス | ……同じ精霊装でも、力の差は歴然だよ。 |
| ミリーナ | そんな……。 |
| バロール | あの者の言う通りだ。イクス、コーキス、奴の纏う力はマクスウェル……いや、オリジンをも凌駕する力となっている。 |
| バロール | たとえ、我が魔眼を解放したところで奴の力を消すことはできない。秘伝魔鏡術でも打ち消されてしまう。 |
| イクス | ……そんな、だったらどうやって。 |
| デミトリアス | さあ、グラスティンから奪った鏡の精霊の心核は返してもらうぞ。イクス、君がオリジンとなり新生ニーベルングを誕生させるためにもな。 |
| ミラ=マクスウェル | 見つけたぞ ! ここがマクスウェルの残滓が集まっている場所だ。 |
| ? ? ? | ……お前は……そうか、別の世界に生きるマクスウェルなのだな。 |
| ロゼ | ひぃぃ ! な、なに ! ? 今の声 ! ?あたしの聞き間違い……じゃないよね ? |
| アニー | は、はい。わたしにも、はっきりと聞こえました…… ! |
| グリューネ | あらあら~、どこかに新しいお友達がいるのかしら ? |
| ミラ=マクスウェル | ……そこにいるのだな。マクスウェル。 |
| マクスウェル | ああ、よくここまで来れたものだ。そして、お前たちがここに来た理由もすでにわかっておる。 |
| ミラ=マクスウェル | ならば、単刀直入に用件を伝える。今、お前の力は帝国側で使われる精霊装に流れている筈だ。 |
| ミュゼ | ここに集まっているあなたの残滓を集めればその精霊装の力も解除される。違うかしら ? |
| マクスウェル | ……その通りだ。 |
| ティトレイ | よっしゃあ ! んじゃ、持ってきた精霊片吸引器で集めようぜ ! |
| マクスウェル | いや、その必要はない。既にここには私を新たに実体化させるほどの残滓が集まっている。そうすれば、力の流れも止めることができる。 |
| ヒルダ | だったら、それを早くやればよかったんじゃないの ? |
| マクスウェル | ……いや、私だけでは実体化は不可能だった。だからこそ、必要な物をお前たちから借りたい。 |
| ベリル | な、なんだって ! ?ここまで来て変なものを要求したら承知しないからな ! ? |
| イネス | そうね、できれば今の私たちで用意できるものだとありがたいんだけど。 |
| マクスウェル | 私が実体化するためには、ここにある残滓を繋ぎ合わせなくてはならない。そのために、お前たちの力を貸してほしい。 |
| ライラ | 具体的には、何をすればよいのですか ? |
| マクスウェル | お前たちが纏った精霊片そして、精霊自身の力が必要だ。 |
| スレイ | それって、つまり……。 |
| ミクリオ | 僕たちの力を、マクスウェルの残滓に取り込ませるということか。 |
| ウィル | 待ってくれ。纏っている精霊片はともかく精霊の力を持つ者たちに害はないのか ? |
| マクスウェル | ああ、少しずつお前たちの力を分けてもらうだけだ。問題はない。 |
| エドナ | じゃあ、ワタシの分はミボから取っておいて。 |
| ミクリオ | ちょっと待て ! 僕は納得しないぞ ! |
| ザビーダ | なんなら、このザビーダ様がエドナちゃんの分も引き受けるぜ ? |
| フェニックス | その必要はない !何故なら、エドナには我がいるからだ ! |
| フェニックス | そう ! 我は不死鳥 !我が名はフェニ―― |
| マクスウェル | では、始めるぞ。 |
| コハク | なに……下から光が……。 |
| シング | なんだろう……凄く温かくて、安心する。 |
| ガラド | まるでスピリア同士が繋がったときみたいだ。 |
| ミラ=マクスウェル | これが人間や精霊たちの想いなのだろう。さあ……応えてくれ。マクスウェル。 |
| マクスウェル | ――――無事、実体化に成功したようだな。 |
| スレイ | それじゃあ、帝国の精霊装の力も…… ! |
| マクスウェル | いずれ、私の力が費える時が来よう。だが、奪われた力まで取り戻すことはできん。 |
| マクスウェル | この世界の行く末は、やはり最後は人間たちの手に委ねられたのだ。 |
| コーキス | ――駄目だ ! 何度やっても攻撃が無効化される ! |
| デミトリアス | いや、よくここまで耐えたものだ。これだから、鏡士や鏡精は侮れない。 |
| イクス | うおおおおおっっ ! ! |
| デミトリアス | ……無駄だと言っているのが――ん ? |
| デミトリアス | くっ…… ! |
| ミリーナ | イクスの攻撃が……通じた ? |
| デミトリアス | 馬鹿な……何故マクスウェルの力が弱まっている。こんなことが起こるはずが…… ! |
| デミトリアス | いや、そうか……。君たちは鏡の精霊の心核のレプリカを所持していたね。そこからアプローチをかけてきたのか。見事だよ。 |
| コーキス | なんかよくわかんねえけどこれなら勝てる !それに、こっちにはまだ切り札があるんだ ! |
| デミトリアス | ……ふっ。この程度で形勢が逆転したつもりかね ?だったら少し、本気を出させてもらおう ! |
| ミリーナ | 嘘…… ! まだこんなに力が…… ! |
| デミトリアス | 私も出し渋っている訳ではなかったさ。強すぎる力は、時にコントロールが難しくてね。だが、もう充分身体は馴染んだ。 |
| デミトリアス | ――さて、一人くらいは、この辺りで退場してもらうとしようか。 |
| イクス | 消えた ! ? |
| デミトリアス | ……まずは君からだ、鏡精コーキス。 |
| コーキス | うわあああああああああああああああっっっっ ! ! |
| イクス | コーキスーーーーーーー ! ! ! ! |
| デミトリアス | 即死は避けたか。だが、致命傷であることには違いない。 |
| イクス | デミトリアスーーーーーーーー ! ! ! ! ! ! ! ! |
| イクス1st | 駄目だ、イクス ! ? 冷静になれ !このままじゃあ、相手の思うつぼだ ! |
| イクス | よくも……よくもコーキスを ! ! ! ! |
| デミトリアス | ……哀れだな。我を失う程の怒りに支配されるとは。やはり、お前はただの幻影だ。 |
| イクス | うおおおおおおおおおおっっっっ ! ! |
| イクス1st | (いや……違う ! イクスは咄嗟にデミトリアスをコーキスから遠ざけたんだ ! 何故なら――) |
| カーリャ | ミリーナさま !コーキスが…… ! コーキスが…… ! |
| ミリーナ | しっかりして、コーキス !お願い、目を覚まして…… ! |
| ミリーナ | (イクスは、私がコーキスに治癒術をかけられるようにしてくれたのに……それなのに、私はイクスのために何の力にもなれていない…… !) |
| ミリーナ | (私に力があれば、コーキスだって守れたかもしれないのに…… !) |
| ミリーナ | 結局……私はイクスに守られてばかり…… !どうして…… ! |
| ? ? ? | (泣くな、ミリーナ。お前には、イクスを守るための力があるはずだ) |
| ミリーナ | ……えっ、誰……なの ? |
| ? ? ? | (私の声に耳を傾けろ。そうすれば、私の力をお前も引き出せるようになる) |
| ミリーナ | まさか……あなたは…… ! |
| ヨーランド | 死の砂嵐の勢いが弱まったわ。バルドとコーキスが世界の欠片を集めてくれたおかげで死の砂嵐も凪いで、ゲフィオンも意識を取り戻せた。 |
| カーリャ・N | ミリーナ様……。 |
| ゲフィオン | 大丈夫よ。あと少し……あと少しだから……。なんとかこの仮想鏡界を守っていて……。 |
| ゲフィオン | それから……ありがとうフィル。上手くミリーナとの意識を繋げることができたわ。 |
| フィリップ | 本当によかったのかい ?こんなことをすれば、きみは……。 |
| ゲフィオン | ええ……私の意識ごとミリーナに取り込まれる。そうなれば、私のアニマは消滅するでしょうね。 |
| ゲフィオン | だけど、どの道、防御壁が壊れてしまえば私の存在は消滅するわ。だったら最後くらい責任を果たさないと。 |
| フィリップ | 責任……か。それは僕も背負わなければいけないことだよ。 |
| ゲフィオン | ……いいえ。あなたはもう充分よ、フィル。最後まで、あなたを巻き込んでごめんなさい。 |
| フィリップ | ……ずるいよ、ミリーナ。きみからそんな風に言われたら……僕は自分のことを許してしまうかもしれない。 |
| ゲフィオン | ……それでいいのよ。だって、それは私が望んでいることなのだから。 |
| フィリップ | いや、それじゃあ駄目なんだ。僕はこれからも自分を許すことはない。そうやって……生きていくって約束したんだ。 |
| ゲフィオン | ……ごめんなさい。何もかもあなたに押しつけてしまって。それから、ありがとう。 |
| ゲフィオン | それじゃあ、始めて……。 |
| カーリャ・N | ――待ってください、ミリーナ様 ! |
| ゲフィオン | ……ごめんなさい、カーリャ。だけど、私は……。 |
| カーリャ・N | ……わかっています。もう、今のカーリャにミリーナ様たちを止める術はありません。 |
| カーリャ・N | そして、それがミリーナ様の望んでいることだということもです…… ! |
| ゲフィオン | ……ありがとう、カーリャ。それじゃあ、最後にもう一度だけ私のわがままを聞いてくれるかしら ? |
| カーリャ・N | ……なんでしょうか ? |
| ゲフィオン | ミリーナを……彼女たちを助けてあげて。それが私の……最後のお願いよ。 |
| カーリャ・N | ……ええ、畏まりました。 |
| ゲフィオン | それじゃあ、フィル。今度こそ、お願い…… ! |
| フィリップ | ああ……さようなら、ミリーナ。 |
| カーリャ・N | ミリーナ様 ! カーリャは…… !カーリャはミリーナ様のことが大好きです ! !ずっとずっと…… ! カーリャは大好きです ! ! |
| ゲフィオン | ええ、私もよ。私の鏡精として生まれてきてくれて本当にありがとう、カーリャ。 |
| ゲフィオン | (ミリーナ。私の力は全てお前に託した。あとは、お前自身がこの力をどう使うかだ) |
| ゲフィオン | (お前たちは一人ではない。お前たち自身で繋ぎ育んできた時間があるのだ) |
| ミリーナ | ……ええ。私たちには仲間がいる。この世界で出会って、一緒に過ごしてきた仲間が。 |
| ミリーナ | ……お願い、みんな !私たちを、助けて ! ! |
| デミトリアス | 複数の巨大な鏡を具現化したのか ?だが、あれはいったいなんだ ? |
| ミリーナ | これが、私の望んだ力…… !みんなを守るための力よ ! |
| 全員 | イクス ! ミリーナ ! |
| イクス | みんな…… !どうして鏡の中から…… ! ? |
| カーリャ・N | ミリーナ様が具現化した鏡が鏡映点の皆様をここに呼んだのです。 |
| カーリャ・N | あの鏡は、鏡士だけが使える転送ゲートの力を具現化したものでした。お陰で、私たちはこうしてイクス様たちのところへ駆けつけることができました。 |
| スタン | いきなり目の前に鏡が出てきたときは正直、驚いたけど。 |
| リッド | けど、敵の罠って感じでもなかったしな。それに、イクスたちが戦ってる姿も写ってたぜ ? |
| カイル | あっ、それオレも見たよ !だから急いで鏡の中に入ったんだ。 |
| ロイド | なんだ、やっぱみんな考えることは一緒だったんだな。 |
| エミル | でも、他のみんなは来られなかったみたいだね。 |
| ミリーナ | それは……多分、私の力だと一つの鏡で一人を呼ぶのが精一杯だったからだと思うわ。 |
| スレイ | そっか。けど、オレたちだけでもこうして駆けつけられたんだからミリーナは凄いよ ! |
| ユーリ | ああ、これだけ集まれば十分だ。仲間を傷つけられた借りはきっちり返させてもらうぜ。 |
| デミトリアス | 仲間か……君たちは哀れな被害者だ。その者たちを助ける義理などない。 |
| セネル | おい、あんた。何か勘違いしてないか。俺たちは別に、被害者なんかじゃない。 |
| ヴェイグ | オレたちはイクスたちを助けたいと思ったからここに来た。 |
| ルカ | その絆が、僕たちの力になっているんだ。 |
| ルーク | ああ、それをお前に否定される理由はねえ ! |
| ベルベット | そうね、あと、散々迷惑をかけたのはあんたたちの方なんだけど。 |
| ミラ=マクスウェル | お前のやっていることが正しいというのなら私はそれを認めるわけにはいかないな。 |
| ジュード | 僕たちは、自分の為すべきことを為すだけだよ。 |
| ルドガー | それが、俺たちの選択だからな。 |
| デミトリアス | そうであったとしても、ここにいるのは本来の君たちではない。ただの偽物だ。 |
| カイウス | それでも、オレはイクスたちに出会えてよかったと思ってる。 |
| アルフェン | あんたの言っていることは、ただ自分の理解を相手に押し付けようとしているだけじゃないのか ? |
| シング | オレたちのスピリアは偽物なんかじゃない。それはオレたち自身がよくわかっている。 |
| アスベル | だからこそ、俺たちは一緒に戦ってこられたんだ。 |
| デミトリアス | ……私は、君たちのことを思って言っていたつもりだがそこまで偽物の世界が望ましいのか ? |
| クレス | そんなことは問題じゃない。このティル・ナ・ノーグは僕たちが守るべき場所なんだ ! |
| コーキス | ……へへっ、俺もクレス様たちに負けてられないや。 |
| カーリャ | コーキス ! ? 動いて平気なんですか ! ? |
| コーキス | ああ、ミリーナ様のおかげでバッチリだぜ ! |
| イクス | デミトリアス陛下。たとえ、あなたが俺たちの存在を否定したとしても俺たちはこうして生きているんだ。 |
| イクス | だから、俺は全てが嘘でもその真実と共に生きると決めた ! |
| イクス | それが――俺たちの答えだ ! |
| Character | 13話【21-15 ゲイボルグの島4】 |
| デミトリアス | ……まだだ ! まだ私は…… ! |
| イクス | くそっ……。これだけ押しててもデミトリアスが倒れない…… ! |
| バロール | マクスウェルの力がまだ残っているからだ。だが、勝機は見えた。お前たちの持つ秘伝魔鏡術があれば、奴を倒すことができる。 |
| イクス | 秘伝魔鏡術 ! ?でも『お前たち』って、秘伝魔鏡術は俺のスタック・オーバーレイしか……。 |
| コーキス | 大丈夫だ、マスター !俺も秘伝魔鏡術をボスから教えてもらってるだろ !そいつを叩き込んで、マクスウェルの力を切り離す ! |
| デミトリアス | そうか。ならば……またお前から倒すだけだ ! |
| イクス | コーキス ! ? |
| デミトリアス | なに ! ? これは…… ! |
| ミリーナ | あなたが攻撃をしたのは、私が作ったコーキスの幻よ。 |
| コーキス | サンキュー、ミリーナ様 !ようやく隙ができたぜ ! |
| デミトリアス | しまっ―― ! |
| コーキス | 秘伝魔鏡術 !【アナム・セパレート】 ! ! |
| デミトリアス | ば、馬鹿な…… ! マクスウェルの力が…… ! |
| イクス ? | 【アナム・セパレート】ビフレストに伝承される離魂術だ。まさか、お前にも使うことになるとはな。 |
| デミトリアス | お前は……イクスではないな ?まさか、ナーザ将軍なのか ! ? |
| ナーザ | ああ、最初のイクスのアニマを通して俺の意識を一時的に反映させた。そして、これが我が王家に伝わる秘伝魔鏡術―― ! |
| ナーザ | 【ギエラ・ビフレスト】 ! ! |
| デミトリアス | があああああああっっっっ ! ! |
| イクス1st | (イクス ! あとはお前の秘伝魔鏡術をデミトリアスにぶつけろ !) |
| イクス | はいっ ! |
| イクス | 秘伝魔鏡術――【スタック・オーバーレイ】 ! |
| デミトリアス | こんなところで…… ! !私は…… ! ! ! ! |
| イクス | うおおおおおおっ ! これで、終わりだぁぁぁっ ! |
| デミトリアス | ぐぁっ…… ! |
| コーキス | デミトリアスが、膝をついた…… !マスター ! |
| デミトリアス | どういう、ことだ…… ?体に、力が入らない……ゴホッ ! まさか……。 |
| ミリーナ | マクスウェルの力が完全に失われてその反動が体に返ってきたんだわ。 |
| デミトリアス | ……そうか。道理で、急に……手足が萎びるようだ。ここまで、なのか……。 |
| デミトリアス | これで……終わりか。何もかも……。 |
| イクス | ……デミトリアス。俺たちの勝ちだ。 |
| デミトリアス | どうやら、そのようだね……。偽りの、歪んだ世界が残り……真実の世界は戻らぬまま……か。 |
| デミトリアス | いや……こうして私が敗れたということはきみたちもまた、真実だということなのかな……。 |
| デミトリアス | ふ、ふふ……。私は、きみたちが羨ましいよ。 |
| イクス | ……羨ましい ? |
| デミトリアス | 結局、私には……自分の生まれや運命を受け入れられる強さが、なかったのだな……。 |
| デミトリアス | そうして、全てに否定を続け……目の前のものだけを救うことで自分を正当化しようとして……。 |
| デミトリアス | それが……私の『毒』だったということか。ナーザ将軍やメルクリアの言ったこと……理解を拒んでいたが、今はわかるような気がする。 |
| デミトリアス | ……イクス、ミリーナ。カレイドスコープを使うといい。 |
| ミリーナ | じゃあ、やっぱりこのカレイドスコープで死の砂嵐は消せるのね ! ? |
| デミトリアス | ……やってみなければ……わからないがな。だが……やらねばならないのだろう ?歪みから生み出された偽物が真実になるためには。 |
| イクス | ええ。俺はこの世界を、自分を、全ての嘘を真実に変える。それが歪んでいてもこの歪みが俺たちなんです。 |
| イクス | ……こんな終わり方になってしまって、残念です。デミトリアス陛下。 |
| デミトリアス | ……フフ……私にふさわしい末路だよ。私が良かれと思ってしてきたことは……いつも……誰かを、何かを、歪ませてしまった。 |
| デミトリアス | でも、今度だけは……違った……或いは君たちが……歪みから生み出されたものだからなのかもしれないな……フフ……。 |
| デミトリアス | ……私にも自分の歪みを真実だと言い抜けるふてぶてしさが……欲しかったものだ……。 |
| デミトリアス | グラスティン……私……も……。…………。 |
| ヴェイグ | ……逝ったか。 |
| ミリーナ | この人のこと、理解できたとは言い難いけど……この人なりに壊してしまった世界に向き合おうとしていたのかもしれないわね。 |
| イクス | ……急ごう。まだ死の砂嵐は残ってるんだ。 |
| スタン | うわ……っ ! なんだ ! ? |
| スレイ | アイフリードの墓が揺れている…… ?嫌な感じがするよ。 |
| フィリップ | イクス ! もう限界だ !ゲフィオンの意識は消えた。もう人体万華鏡が崩壊するのを止められない ! |
| イクス | フィルさん ! こちらのカレイドスコープが使えることはわかりました。 |
| イクス | あとはカレイドスコープを起動させて父さんたちが残した機能を使えば死の砂嵐は消せるはずです。 |
| ナーザ | まだだ、イクス ! バルドがまだ戻らない !【ギエラ・ビフレスト】はまだ維持しているのだが奴からの返事がない ! |
| コーキス | マスター ! だったら、俺が行くよ。俺が向こうに行って、バルドを助けてくる ! |
| ミリーナ | 駄目よ ! あなたはデミトリアスの槍で受けた傷がまだ治り切っていないのよ。そんな状態で入れば、身体が持たないわ。 |
| バロール | それに、お前の身体は秘伝魔鏡術を使ったことで体力が著しく低下しているはずだ。 |
| コーキス | バロール ! ? じゃあどうしろって言うんだよ ! |
| ルーク | また揺れた ! ? このままここにいるとまずいんじゃないか ? |
| ロイド | けど、カレイドスコープはここにあるんだろ ! ?逃げ出したら、死の砂嵐を消せなくなる ! |
| カーリャ | ! ? あれ…… ?ぶるぶるぶるぶるぶるぶる ! |
| カーリャ・N | どうしました、小さいカーリャ ?震えていますよ ? |
| カーリャ | な、なんだかおかしいんです。絶対あり得ないんですけど、でも、でも…… ! |
| ミリーナ | カーリャ、落ち着いて説明して。 |
| カーリャ | ミリーナさまの中から、ちょこっとだけですけど……光魔の鏡の……死の砂嵐の気配を感じるんです ! |
| イクス | そんな馬鹿な ! ? |
| フィリップ | ……おそらく、ゲフィオンがミリーナに吸収されてミリーナの心がゲフィオンの人体万華鏡に近いところにあるからじゃないかな。 |
| フィリップ | ミリーナの鏡精であるカーリャはそれを感じたんだ。鏡精は幼体の方が感受性が強いから――……ああ、そうか ! いや、でも……。 |
| ミリーナ | フィル、どういうことなの ? |
| フィリップ | ……今ならカーリャも、ミリーナの心から死の砂嵐の中に入れるかもしれない。 |
| フィリップ | ミリーナは今、ゲフィオンの助力を受けて力が強まっている。虚無の中でも加護を受けて身体を保てるはずだ。 |
| ミリーナ | カーリャが…… ! ? でも……。 |
| カーリャ | ミリーナさま ! 迷ってる時間はありません。カーリャはやりますよ ! |
| カーリャ | 私を信じてください、ミリーナさま。カーリャにしかできないことならカーリャがやらなきゃ駄目なんです ! |
| ミリーナ | ……わかったわ。私たち、待ってるから。 |
| カーリャ | ええ、どーんとお任せください !いざとなればミリーナさまの心に戻ればいいんですから ! |
| バロール | あの尖兵がそこまで大事か。俺は犠牲も覚悟しろと言った筈だ。 |
| カーリャ | 犠牲なんて出していい訳ありませんよ ! |
| バロール | ……面白い。では虚無へと向かうがいい。【ギエラ・ビフレスト】の虹色の輝きを辿れば死の砂嵐に取り込まれずにすむだろう。 |
| カーリャ | わかりました !では、行ってきます ! |
| カーリャ | (うう……ここが虚無……。すぐ手前までは、イクスさまと来たことがありますが中に入るのは初めてですね……) |
| バルド | …… ! ?そこにいるのは―― |
| カーリャ | バルドさま、見つけました !カーリャが助けに来ましたよ ! |
| バルド | これは……可愛らしい救援ですね。しかし、ご覧の通り私は、身動きがとれなくて―― |
| カーリャ | バルドさま ! ? |
| バルド | どうやら、何かの力に巻き込まれてしまったようなのです。このままでは、私も虚無に逆戻りかもしれません。 |
| カーリャ | そんな…… ! |
| バルド | 私の近くにある、重なった二つのアニマ……何があったか知りませんが、彼らには贄の紋章が刻まれているようです。 |
| バルド | おそらく、ぶつかり合う二つの紋章の力が周りに悪影響を及ぼしているのではないでしょうか。 |
| カーリャ | これは……。アニマが燃えているせいでわかりにくいですけど、これは心核です。 |
| カーリャ | 待ってください。今、これを【ギエラ・ビフレスト】の虹の橋に乗せて、ティル・ナ・ノーグに移します ! |
| バルド | ――ありがとうカーリャ。おかげで動けるようになりました。 |
| カーリャ | よかった……。これで、後は脱出するだけですね ! |
| バロール | ……待て。 |
| バロール | ミリーナの鏡精よ。お前はそこに留まらなければならん。 |
| カーリャ | ――え ! ? |
| カーリャ | ミリーナさま ! 聞こえますか ?今、バルドさまを【ギエラ・ビフレスト】の虹に乗せて救出しました。 |
| ミリーナ | よかった ! じゃあ、カーリャも早く戻っていらっしゃい。 |
| カーリャ | それが、駄目なんです。バロールに言われました。カレイドスコープの照準点を死の砂嵐の中に設ける必要があるって。 |
| カーリャ | 本当はコーキスの魔眼を目印にさせるつもりだったみたいですけど、イクスさまたちを助けるために外に出してしまったから、新しい目標が必要だって。 |
| カーリャ | だから、カーリャが目標になります。 |
| ミリーナ | 何を言っているの ! ? |
| カーリャ | 大丈夫です。カーリャは鏡精ですから……存在が消えてもちゃんとミリーナさまの元に戻れます。 |
| イクス | どうした、ミリーナ ! 顔が真っ青だぞ ! |
| ミリーナ | カーリャが……死の砂嵐の中に残るって。 |
| ミリーナ | カレイドスコープで死の砂嵐を消すためには照準となる的が必要だからカーリャがそれになるって言うのよ ! |
| ミリーナ | 鏡精だから、消えても大丈夫だって言って…… ! |
| バルド | いけません ! ミリーナさん !バロールは言っていました ! |
| バルド | 確かにミリーナさんの元には戻れるかもしれません。ですが、バロールの鏡精ではないカーリャでは本来残るはずの記憶すらも奪いかねないと ! |
| コーキス | それって……結局カーリャパイセンが消えちまうのと変わらねーじゃん ! ?だったら俺が行く ! 俺なら―― |
| バロール | 無理だ。今のお前では、虚無に入ったところですぐ死の砂嵐に取り込まれて死鏡精になるだろう。 |
| カーリャ | 時間がありません ! カーリャを目標にしてカレイドスコープを発動させてください !カーリャなら大丈夫ですから ! |
| ミリーナ | 大丈夫じゃないわよ !世界を救っても、あなたが消えてしまったら―― |
| カーリャ | でも、ミリーナさま。ここでカーリャが踏ん張らないとミリーナさまもみんなも消えちゃって……カーリャが帰る場所、なくなっちゃうじゃないですか。 |
| ミリーナ | …………。 |
| カーリャ | ……だから、今だけは戻れません。でも、その後はぜ~ったい、ミリーナさまのところへ戻ってきますから ! |
| カーリャ | えへへ……カーリャがいないと、コーキスやマークのことも心配ですからね ! |
| ミリーナ | カーリャ……。 |
| イクス | バロール ! 本当に、他に方法はないのか ! ?命を生み出せるほどの力を持つならカーリャの記憶も守れないなんてことがあるか ! ? |
| バロール | 俺とて万能ではない。だが、お前がミリーナと心を繋ぎカーリャを一時的に自分の鏡精にできるならカーリャの記憶は守れるだろう。 |
| ミリーナ | ! |
| イクス | それはどうすればいいんだ ! |
| バロール | 全てを――お前とミリーナの心の全てを深層まで一つにする。知られたくないことも知られるし知りたくないことも知るだろう。 |
| ミリーナ | イクス。私は構わないわ。カーリャを守るためなら ! |
| イクス | ――……わかった。やろう ! |
| バロール | イクス。お前は体験したはずだ。ナーザ――ウォーデンの意識がお前の体をもって発動した【ギエラ・ビフレスト】を。 |
| バロール | 【ギエラ・ビフレスト】でお前の心とミリーナの心を重ね、【スタック・オーバーレイ】で力を増幅しカレイドスコープを起動する。 |
| バロール | 全てが終わってから【アナム・セパレート】で重ねた心をまた二つに分ける。これはコーキスに頼むといいだろう。 |
| コーキス | わかった。全てが終わったら俺がマスターとミリーナ様の心を二つに分ける。 |
| イクス | うん、頼むぞ、コーキス。 |
| イクス | 行くぞミリーナ。俺の心をミリーナに預ける ! |
| ミリーナ | 受け止めるわ。イクス、お願い ! |
| 2人 | この世界を……守るために ! |
| Character | 13話【21-15 ゲイボルグの島4】 |
| リオン | ……各大陸、ほぼ全ての制圧が完了か。終わってみれば他愛もないな。 |
| ディムロス | まだ気を抜くには早いぞ。浮遊島の状況がわからない。 |
| シオン | ……待って。空を見て !光が―― |
| チェスター | うわっ ! ?なんだ、あの光…… ? |
| レイア | 空から落ちてくる…… ?流れ星……じゃないよね。 |
| ヒューバート | これは……少なくとも、帝国の仕業ではなさそうですね。ということは―― ! |
| カナタ | ミゼラ、見てよあの空 !あれってきっと、イクスたちが上手くやったんだよね ! |
| ミゼラ | うん、きっとそうだね。青空に銀色の月が現れるなんて……。でも……綺麗。 |
| サイモン | ……導師は、鏡士と共に帝国を滅したか。我が主よ、私は必ず見届けます。かの導師の行く末を……。 |
| フィリップ | ……なんとか、無事に脱出できたね。 |
| ナーザ | 礼を言わねばならんな。ケリュケイオンで脱出できなければ島の崩壊に巻き込まれるところだった。 |
| フィリップ | それは機転を利かせて皆を助けにいったガロウズたちに言ってあげて欲しい。 |
| マーク | ……フィル。ゲフィオンのこと……残念だったな。 |
| フィリップ | ああ……彼女を救うことはできなかった。おそらく、彼女のアニマはもう完全に消滅しただろう。跡形もなく……。 |
| マーク | 大丈夫か ? |
| フィリップ | ああ、うん……大丈夫だよ。心配いらない。ちゃんと別れは済ませたからね。大丈夫だって……。 |
| マーク | 大丈夫なら、泣くんじゃねえぞ。 |
| フィリップ | んっ……泣かないよ。今は、堪えてみせる。 |
| メルクリア | 浮遊島は、完全に崩壊してしもうたな……イクスたちは無事なのじゃろうか ?死の砂嵐はどうなったのじゃ…… ? |
| ナーザ | ……ここからは何もわからんな。だが、少なくともまだ世界は存続したようだ。それに、先ほどの光…… ? |
| バルド | 魔鏡通信で、イクスたちと連絡を取ってみま――! ? ナーザ様 ! |
| ? ? ? | 何だ…… ! ? これは―― |
| メルクリア | あ、兄上様 ! ?そのお姿…… ! ! |
| フリーセル | ウォーデン様 ! ? |
| ウォーデン | 俺の肉体が、戻ったのか…… ! ?これは……どういうことだ。 |
| バルド | お二人とも、周囲を見てください…… !光が…… ! ? |
| ガロウズ | …… ! おい、そこにいるのは……。まさか…… ! ! |
| ? ? ? | ガロウズ…… ? なの ? |
| ガロウズ | ……シドニー ! |
| シドニー | ガロウズ ! ! |
| ガロウズ | シドニー ! ああ、シドニー。こんな奇跡が起きるなんて……。 |
| バルド ? | 約束は果たしたぞ。世界の欠片――死の砂嵐の中の異物はまとめてティル・ナ・ノーグの隣に再具現化しておいた。 |
| ウォーデン | 貴様、バロールか ! ?再……具現化だと ! ? |
| メルクリア | こ、今度はなんじゃ…… ! !わらわが光っておる ! ? |
| ウォーデン | いや、違う。光っているのはお前の持っている人工心核だ。 |
| メルクリア | チーグルとローゲの…… ! ?あっ ! |
| メルクリア | 光が……空に消えた ?どういうことじゃ ! あの二人はどこへ―― |
| バロール | 慌てるな。あいつらは、自ら別の場所への具現化を望んでここを離れただけだ。 |
| バロール | 今起きていることを察知し、新たな大地に具現化した同胞たちに状況を説明するのだそうだ。 |
| メルクリア | いったい何が起こっているのじゃ……。 |
| ユリウス | ――どういうことだ ! ? 新しい衛星が発見された ! ? |
| ローエン | これは……確かに、ティル・ナ・ノーグに二つ目の月が出来ています ! |
| ウォーデン | まさか……バロール、貴様の仕業か ! ? |
| バロール | 集めた異物を虚無に捨て置くわけにもいかぬだろう。 |
| バロール | 死の砂嵐を消すためには、一時的にでもゲフィオンのカレイドスコープで命を絶たれた存在を再具現化せねばならなかった。 |
| バロール | アイフリードの墓を基礎として、もう一つのティル・ナ・ノーグを具現化した。ダーナも二つ目の大地を維持するため、再び眠りにつくことになる。 |
| ウォーデン | バロール。俺がこの肉体に戻ったということは――今まで借りていた一人目のイクスの体はどうなった ? |
| バロール | それなら、俺が処分しておいた。他ならぬ本人の望みだったのでな。 |
| ウォーデン | ……そうか。それで、俺の命はどれほど持つのだ ? |
| バロール | 聡い奴だな。貴様は人工心核に長く留まりすぎた。まあそれでも十年ほどは生きるだろう。精々後始末を付けておくのだな。 |
| メルクリア | ! ? |
| バロール | これが命を弄んだ代償だ、皇女よ。 |
| フリーセル | 命を弄んだ代償だというのならグラスティンはどうなった ! ?デミトリアスは―― |
| バロール | デミトリアスは時の力に飲み込まれ存在を消失することになった。 |
| バロール | グラスティンは、貴様が望んだようになったと言えばわかる筈だろう。 |
| フリーセル | そう……か……。サレの仕掛けは発動したんだな……。 |
| バロール | ……ダーナが呼んでいる。さらばだ、揺り籠の命たちよ。 |
| バルド | …………。 |
| ウォーデン | バルド、お前か ? |
| バルド | ……はい。バロールの意識はもう感じられません。彼の言った通り、本当に最後だったようですね。 |
| ウォーデン | そうか……。 |
| バルド | ウォーデン様……。 |
| メルクリア | 兄上様…… ! |
| ウォーデン | まだ時間は残されている。せめてその間に、俺は俺の為すべき事をせねばな。 |
| ウォーデン | バロールの言うことが事実ならゲフィオンの死の砂嵐によって滅びた世界が新しい月となって具現化したことになる。 |
| ウォーデン | 今度こそ……あの世界を滅ぼさぬよう俺は全ての命を使うつもりだ。 |
| イクス1st | ……ん ? ここは、どこだ ? |
| イクス1st | おーい、バロール ?てっきり死んだつもりだったんだけどな。 |
| ? ? ? | その声……イクス ?イクスなの…… ! ? |
| イクス1st | …………ミリーナ !これは……どういうことだ ? |
| ダーナ | 私たちからの、せめてもの餞別です。イクス・ネーヴェ。そして、ミリーナ・ヴァイス。 |
| ダーナ | 最期の時くらいは……あなたたちに話す時間を与えても許されるでしょう。 |
| イクス1st | 女神ダーナ……ありがとう。この上ない贈り物だよ。 |
| イクス1st | ……久しぶり、ミリーナ。 |
| ゲフィオン | ……イクス。やっと、また会えたのね。 |
| イクス1st | ああ。最期にこうして会えてよかった。……これで、俺たちの役目も終わりだな。 |
| ゲフィオン | ええ……そうね。ごめんなさい、イクス……何もかも。 |
| イクス1st | はは……驚いたよ。ミリーナがこんなに情熱的だったなんて。 |
| イクス1st | 確かに……許されないことだったと思う。世界中がミリーナを非難するだろう。でも―― |
| イクス1st | 俺のミリーナへの気持ちは変わらないよ。先に逝ってしまってごめんな。今度は……一緒だ。 |
| ゲフィオン | ええ、そうね……。行きましょう、イクス。 |
| イクス1st | ああ、ミリーナ。ありがとう―― |
| アルフェン | ふぅ……危なかったな。全員、無事か ? |
| カイル | あいたたた……うん。勢いで足をぶつけちゃったけど、なんとか。 |
| シング | みんなも大丈夫そうだね。さっきはびっくりしたよ。 |
| セネル | いつの間にか、マクスウェルが俺たちをここに転送してくれたんだな。ここは―― |
| ルドガー | 精霊の封印地、かな ?見たところ、世界の崩壊も起こってはいないし……ちゃんと世界は守れたわけだな。 |
| イクス | ああ。これで、全部終わった……んだよな。まだ、実感が湧かないな……。 |
| ユーリ | そりゃ、何も終わっちゃいねえからだろ。世界の復興、これからの生き方――まだまだ考えることは山ほどあるぜ。 |
| イクス | ……確かに、そうだな。何もかも、これからだ。むしろ、やっと始められるんだよな。 |
| ジュード | でも、今日ぐらいは休んでいいんじゃない ?ずっと辛い戦い続きだったんだから。 |
| ミラ=マクスウェル | ああ。休息を取ってから、また始めればいい。焦ることは何もない。 |
| クレス | その時は、僕たちもまたいくらでも手を貸すよ。 |
| イクス | ありがとう、みんな。…………。 |
| カイウス | ん ? どうしたんだよ、イクス ? |
| イクス | ……カーリャは、まだ戻って来ないんだな。 |
| エミル | そうだね……。周りを捜してみたけどやっぱり、見つからなかったよ。ごめん……。 |
| コーキス | パイセン……。 |
| ミリーナ | ……大丈夫。約束したもの。絶対に、帰ってくるって。 |
| ミリーナ | だから、だから……。 |
| イクス | ……ミリーナ。 |
| ミリーナ | 慰めてくれなくても大丈夫よ、イクス。私……。 |
| イクス | 違う、ミリーナ。あそこを見るんだ !湖の中心に―― |
| ミリーナ | ……え ? |
| ? ? ? | ミリーーーナさまぁぁぁぁぁっ ! ! |
| ミリーナ | カーリャ ! ! |
| カーリャ | うわぁぁーん ! ミリーナさま !ミリーナさまぁ ! カーリャ、帰ってきましたよぅ~ ! |
| ミリーナ | よかった……ぐすっ。おかえりなさい ! カーリャ ! |
| コーキス | パイセン…… !もうっ、心配させるなよな ! |
| イクス | カーリャ、言葉通りに戻ってきてくれたんだな。 |
| カーリャ | えへへ……。 |
| アスベル | イクスとミリーナが心を重ねたおかげだな。 |
| カーリャ | ですね。イクスさまって、なんか冴えない人だなーって思ってましたけど、カーリャの見る目がなかっただけみたいです。 |
| イクス | ひ、酷いなあ……。 |
| コーキス | やっとマスターの良さがわかるなんてパイセンもまだまだだな。 |
| カーリャ | むっ ! その言い方、カーリャを馬鹿にしてますね ! ?偉大な先輩に対して失礼ですよ ! |
| カーリャ・N | ふふ……。何事もなく戻ってきてくれて本当によかったです。 |
| コーキス | ――あっ ! そうだ、パイセンを危ない目に遭わせたこと、バロールの奴に文句言ってやる ! |
| ミリーナ | いいわね。私の分も伝えて欲しいわ。 |
| コーキス | ……あれ ? おかしいな。全然返事がない……。 |
| イクス | ……そういえば、俺もさっきからずっと最初のイクスさんの声が聞こえないんだ。 |
| イクス | いや、この感じ……もう、どこにも気配がない。俺の中から、完全に消えてしまったみたいだ。 |
| コーキス | ……バロールも、最初のマスターもこの世界にはもういないってことなのかな ? |
| イクス | ……かもしれないな。きっと、もう俺たちを手伝う必要がなくなったと思ってくれたんだろう。 |
| イクス | あとは俺たちの力だけで何とかしろって――そういうメッセージなんだと思う。 |
| コーキス | そっか……うん、なんかやる気湧いてきた !一緒に頑張ろうぜ、マスター ! |
| イクス | ……ああ。 |
| コーキス | ん ? どうしたんだよ、マスター ?俺の顔じっと見て。 |
| イクス | いや、今更だけど……そういえば、まだちゃんと言ってなかったな、と思ってさ。 |
| コーキス | …… ? |
| イクス | おかえり、コーキス。 |
| コーキス | ! ……ああ ! |
| コーキス | ただいま、マスター。 |
| カーリャ | ふふっ、長い反抗期でしたねぇ。 |
| イクス | ……そうだ。ミリーナ、ちょっといいかな。その……話したいことがあるんだ。 |
| ミリーナ | 私 ? ええ、いいけど―― |
| リッド | あー、オレたちはこの辺で行くとするか。 |
| ベルベット | そうみたいね。行きましょう。邪魔する気はないから。 |
| ルカ | あ、僕もイリアたちと連絡を取らなきゃ…… !イクス、また後でね。 |
| コーキス | ? なんで、みんな急に帰るんだ ? |
| カーリャ | いいから、コーキスもこっちに ! |
| カーリャ・N | ええ、私たちと一緒に来てください。 |
| コーキス | わ、わかったから引っ張るなよ…… !なんだ、なんだ ? |
| イクス | ……みんなに、変な気を遣わせちゃったかな。 |
| ミリーナ | それで、イクス――私に話、って ? |
| イクス | うん。今までのことと、これからのこと。俺の気持ちをミリーナに伝えたいんだ。 |
| イクス | 心を重ね合わせたとき、色んな感情が伝わってきたよ。ミリーナの喜びや悲しみ……怒りも。 |
| ミリーナ | ……私もよ、イクス。あなたの絶望や希望、それに私への……感情も。 |
| イクス | 俺……ミリーナを信頼してるよ。支えていきたいと思ってる。嘘偽りのない感情だよ。 |
| ミリーナ | ええ、知ってるわ。ちゃんと感じたもの。それがイクスの私に対する気持ちなんだって。 |
| イクス | 俺は……やっぱり、イクスさんとは違う人間だ。ミリーナも、ゲフィオンじゃない。 |
| イクス | 今の気持ちだって、永遠じゃない。きっと変わっていく。もっと俺たちらしく。心を重ねなくても重なっていけるよ。 |
| ミリーナ | イクス……。 |
| イクス | ……もう過去の俺たちに囚われたりしない。だから―― |
| イクス | 過去の自分たちとは違う関係をこれから新しく築いていきませんか。 |
| ミリーナ | ――ええ、イクス。喜んで。 |