Character1話【21-1 セールンド城1】
ファントム(くっ……、ゲフィオンの崩壊が止まらない……)
ファントム(私の作った防御壁も崩れた。このままでは死の砂嵐が溢れてしまう)
ゲフィオンわ……たし……の……。
ファントムゲフィオン ! ?
ゲフィオン私の力が……使われる…… !
ファントム力だと ?
ゲフィオンあああああああああっ ! !
ファントム(誰かがゲフィオンの力を使っている ?いや、それよりもゲフィオンを守るには――)
ファントムゲフィオン ! これからこの部屋ごとあなたを私の仮想鏡界に取り込みます !
ゲフィオンだめ、あなたが――
ファントム黙って ! 行きますよ !
デミトリアス。
デミトリアスその声は……。
幼いグラスティンデミトリアス、来たぞ。
幼いデミトリアスグラスティン、その傷 !前より随分痩せてるし……。
幼いグラスティン騒ぐなよ。怪我なんていつものことだろ。
幼いデミトリアスまた、きみの母君の仕業か。しばらく会えなかったから心配してたんだよ。もしかして、今日は抜け出してきた ? そのせいで……。
幼いグラスティン……あいつが、簡単に俺を外に出すと思うか ?
幼いデミトリアス無理しないでくれ。私だって、体調のせいで外に出られない時もある。
幼いデミトリアスきみに会いたいのは、私のわがままだから。だから……。
幼いグラスティン違う。あのままだと……俺も変に……なりそうで……。
幼いデミトリアスグラスティン、しっかりするんだ。どうにかならないのか……。
幼いグラスティン無理だろ。バロールの声か俺の声か、もうわからないくらいだし。
幼いデミトリアス……最近の巫女殿は、以前よりもバロールの声が聞こえるそうだね。そのせいか言動が怪しいと父上が言っていたよ。
幼いグラスティン最近? お前ら、今頃そんな話してるのか。もうずっと前から頭おかしいだろ、あいつ。
幼いグラスティン俺と勘違いして黒髪の子供追いかけたりさ。
幼いデミトリアスでも、心が落ち着いている時は優しい母君なんだろう ?いつかきっと元に戻るはずだよ。そうすれば、きみが酷い扱いを受けることも――
幼いグラスティンいつかって、いつ ?
幼いデミトリアスそれは……。
幼いグラスティンお前って口先だけで慰めて、いいこと言ってけどその場限りだよな。目の前のことしか見えてない。
幼いグラスティンどうせ何もしないなら希望を持たせること言うなよ。
幼いデミトリアスグラスティン、私は本当にきみが心配で……。
幼いグラスティンくそっ……なんで俺の親がバロールの巫女なんだよ……。なんで……。
デミトリアス(――ああ。これは『過去の私たち』だ)
幼いデミトリアスこれで自由だ。グラスティン。
幼いグラスティンお前…………。
幼いグラスティンこいつは……国にとって必要な巫女なんじゃないのか ?なのに……。
幼いデミトリアスきみを助けたかったんだ。そして巫女殿も。
幼いデミトリアスこれでバロールの声を聞くこともない。
幼いグラスティン……本当に目先のことしか見ていないな。でも……。
幼いグラスティン。死んだんだ。こいつ。やっと。
幼いグラスティン……ハハッ。ハハハハッ。確かにお前の言うとおりだなぁ。これならバロールの声に苦しむこともない。
幼いグラスティンもう怒鳴らないし殴らない !静かで優しい、きれいな『ママ』だ !
幼いグラスティンいいなぁ、死体って ! ヒヒヒヒッ !
幼いデミトリアス……早くどこかに隠さないと。
幼いグラスティンいいところがある。バロールの巫女以外、誰も寄り付かない洞窟だ。
幼いデミトリアスわかった。一緒に運ぼう。
幼いグラスティン俺は頭の方を持つから、お前は足を頼む。それから……。
幼いグラスティンありがとう、デミトリアス。
デミトリアス(グラスティンの言うとおり、死体は誰にも見つからずバロールの巫女は行方不明とされた)
デミトリアス(鏡精エネルギー推進派だった父上は、反対していた巫女の失踪をこれ幸いと、エネルギー変換用の鏡精を大量に生み出させ、多くの鏡精が犠牲となった)
デミトリアス(セールンドの動きを察知したビフレストから質問状が来ても、抗議が来ても、そして……)
幼いデミトリアスグラスティン ! バロールの巫女の行方についてビフレストからまた問い合わせが来たんだ。
幼いデミトリアスどうしよう……私があんなことをしたから……。あれが見つかったら戦争に……。
幼いグラスティンヒヒッ、大丈夫。問題ないって。お前はそのまま――……。
デミトリアス……またか。なぜこうも昔の夢ばかり……。
デミトリアス(父上は私を生かすためにさらに鏡精エネルギーを必要とした)
デミトリアス(独善的ともいえる国策に歯止めをかけていたのがバロールの巫女であったのに、私は……)
デミトリアス(思えば、この世界の惨状はバロールの巫女を殺したことから始まったのかもしれない)
デミトリアス(いや、私の存在こそが……)
グラスティンデミトリアス、例のスポットだが――……どうした、疲れた顔して。例の発作か ?
デミトリアスいや。考え事をしていただけだよ。それで、上手くいったかい ?
グラスティンああ。【ゲイボルグの島】とアイフリードの墓への道が完成した。
グラスティンロミーに寄生していたスポットのお陰だ。尊い犠牲だったなぁ。ヒヒヒッ。
デミトリアスそうか。『本来のティル・ナ・ノーグ』の民たちも移動を開始している。こちらも滞りなく進んでいるよ。
グラスティンもっと住民たちを急がせろ。【ゲイボルグの島】は、ゲフィオンの力で作ったんだからな。時間がない。
グラスティン人体万華鏡は間もなく崩壊する。死の砂嵐が現れるぞ。

Character2話【21-2 アジト1】
キールその本の封印はどうだ ?フィリップの魔鏡術で解除できそうか ?
フィリップこれは…… ! でも間違いない……。
パスカル見覚えあるの ?
フィリップこの封印、旧型カレイドスコープに施されていたものと同じ種類だ。
キール旧型 ? 兵器の方のカレイドスコープか ?
フィリップいや、さらにその前だよ。キラル分子を鏡写しにして増やす装置でイクスの両親が研究していたものだ。
リタツインミラーシステムね。修理したことあるけどあの辺のシステム周りを開発してたんだ。
フィリップああ。僕とゲフィオンは旧型カレイドスコープを魔鏡兵器に転用するためにイクスの両親がかけた封印を解いたんだ。
キールじゃあ、手順はわかるんだな ! 早速始めよう。
フィリップそれが……封印の解除にはイクスの魔鏡が必要なんだ。旧型カレイドスコープは、最初のイクスの形見の魔鏡で封印を解いたけど、これは……。
ハロルドええ、変ね。ゲフィオンもその本を調べてたんでしょ ?なのに解除できてない。
フィリップそのとおり。ゲフィオンだって気づくはずなのに。となると、イクスの形見の魔鏡だけでは本の封印は解けなかったことになる。
フィリップとにかく、イクスのところに行こう。実際に魔鏡を…………あれ ?
キールフィリップ ?
フィリップくっ……胸が……痛っ…………。
四人フィリップ ! ?
クレアこちら管制室です。緊急連絡につき、全回線に通知します。帝都上空に島の具現化を――
カーリャ・Nこちらでしたか !あの帝都の上に浮かんだ島はなんなのですか ?
イクスまだ確認中なんだ。でもあの地形、セールンド城の周辺によく似てる。
カーリャ・Nセールンド……。誰が具現化したのでしょう。
ミリーナタイミング的にはファントムしかいないんだけど……。
カーリャ・Nそんなはずは――
マークイクス ! あの島見てるな ?すぐにケリュケイオンからの観測データを送る。
マークそれと、デクスから通信がきている。お前にも一緒に聞いて欲しいそうだ。――デクス、繫いだぞ。
デクス人体万華鏡が崩壊した ! でっかいヒビが入ったんだ !
カーリャ・Nそんな ! 崩壊はまだ内部に留めていたはずです !
デクス知らん ! でもそのヒビの段階で留めるためにファントムが対処してる。
イクスファントム ! ? まだゲフィオンの傍にいるのか ! ?
デクスああ。でもオレがカレイドスコープの間から出た後は部屋に近づけなくなった。今どうなってるかはわからない。
デクス何とか助けたいんだが、どうにかならないか ?オレの名誉、ひいてはアリスちゃんのためにも !
マークファントム、何を考えて………………。
カーリャマーク ? どうしたんです ?
マークっ…… ! 嘘だろ……フィル……。
カーリャ・Nフィリップ様に何かあったのですか ! ?
マーク……俺の存在が一瞬消えかけた。今も少しづつ薄れている。フィルはどこだ。
イクスキール研究室だ !ミリーナ、俺たちもすぐにフィルさんのところへ――
マークいい。お前らはやることがあるだろう。――ガロウズ、俺は浮遊島に降りる。ここは任せるぞ。
ガロウズああ。ビクエ様を頼む。お前も消えんじゃねえぞ。
カーリャマーク……。
イクス……話を進めよう。その方がマークもフィルさんに集中できる。
ガロウズ了解。で、具現化されたあの島だが観測データを見ると数分前に異常値が出ている。
デクス人体万華鏡が壊れたのも、そのくらいだった。
ミリーナほぼ同時ってことかしら。それなら具現化はファントムじゃないわ。
イクス……もしかすると、具現化にはゲフィオンの力が使われているのかもしれない。
イクスギリギリで耐えていたところを外部の干渉で力を使われたとしたら崩壊が早まったのも頷ける。
カーリャだったらミリーナさまは ! ?ミリーナさまは大丈夫なんですか ! ?
ミリーナええ、何ともないわ。私にはカーリャの防御壁があるもの。
ミリーナそれに、ゲフィオンは防御壁も壊れて意識も私に侵食されているから……。きっと私に影響を及ぼすほどの力が、もう……。
カーリャ・Nセールンドへ降りて確認します。私がゲフィオン様とファントムの救出にあたります !
アッシュおい、待て、ルーク !
ルーク急げよ、アッシュ !――イクス、緊急連絡だ !
イクス二人とも、丁度よかった。さっきナーザ将軍から、ヴァンさんが帝都に乗り込んでるって連絡が来たんだ。
ルークそれだよ ! 俺たちにもローレライが伝えてきたんだ。
ルークええと、ヴァン師匠からの伝言でレプリカを作るのに必要なのがキラル分子で世界を分解して手に入れてニーベルングを――
カーリャすみませんルークさま、ものすごくわかりにくいです !
アッシュ俺がついて来て正解だったな。イクス、ナーザからはどこまで聞いている ?
イクス帝国がカレイドスコープを使って分史ニーベルングのレプリカ情報を抜き取ったって話までだ。
アッシュそうか。ヴァンからの伝言によるとニーベルングのレプリカ作成には大量のキラル分子が必要だそうだ。
アッシュ奴らはそれを、ティル・ナ・ノーグを分解して調達する計画らしい。
イクスこの世界を素材にする気か !そんなことをしたら自分たちだって無事じゃすまないのに。
アッシュだろうな。そのための避難先として作られたのがさっき具現化された島というわけだ。
アッシュあの浮島は、セールンド島とアイギスシステムを具現化している。死の砂嵐からの守りも兼ねているそうだぞ。
ルークそう、そういうわけだ !ありがとな、アッシュ。やっぱついて来てもらってよかったぜ。
アッシュふん、ローレライから連絡受けた途端一人で駆け出しやがって。ヴァンのことだからといって焦りすぎだ、馬鹿が。
ルークそういうお前だって――
イクスわかった。ありがとう、二人とも。今の話、すぐにみんなに知らせるよ。

Character3話【21-3 アジト2】
イクス――以上が、今の俺たちが置かれている状況だ。これを踏まえて今後の方針を聞いてもらいたい。
イクスまず、ゲフィオンのところにはケリュケイオンとネヴァンで向かってもらう。
イクス精霊研究室のメンバーはマクスウェルの残滓の調査を続行。
イクス同時蜂起作戦の領主たちは地上に降りて反乱計画を進めて欲しい。
イクス他のみんなはそれぞれ、どの持ち場につくか申告してくれ。
イクスその上でだけど、俺たちと一緒に浮遊セールンド島へ向かう人員が欲しい。
イクス目的は大きく二つある。分史ニーベルングのレプリカ作成の阻止と具現化されたアイギスシステムだ。
イクスあれをティル・ナ・ノーグ全体に利用できればゲフィオンの人体万華鏡が完全に崩壊しても死の砂嵐から守ることができるかもしれない。
ジェイドかもしれない、ですか ?
イクス……言いたいことはわかります。でももう、それに賭けるしかありません。
イクスこんな計画では、みんなが不安に思うのもわかります。それでも俺は――
クレス了解だよ、イクス !
イクスクレス……。
チェスターよし ! となるとオレたちは反乱計画の協力だな。
ミントええ。アセリア領は蜂起の要ですからね。
スタンじゃあ、俺たちも反乱組だな !カイルはどうする ?
カイルディムロスさんたちもいるしオレたちも反乱組で !みんな、とりあえず同じでいいよね ?
リオンお前たち、食事の注文じゃないんだぞ。気軽に決めすぎだ !
ルーティいいじゃない。あたしも反乱組一丁 !
リアラわたしも、カイルと同じで !
メルディイクスの方、まだ誰もいないな。なぁ、リッド ?
リッドわかってるよ。オレたちはイクスと一緒に行く。アイギスシステムに関しちゃ確かに不安もあるけどまあ……。おいファラ、いつもの頼むぜ。
ファラうん ! ――イクス、ミリーナ。イケる、イケる !
ミリーナファラ……、ありがとう。
コレットねえロイド、イクスたちにも機動力が必要だよね ?私、飛べるし、力持ちだし。ね、カーリャ ?
カーリャはい。その節はお世話になりました !
ロイドこんな時こそ『ドワーフの誓い第1番』ってわけか。よし、俺たちも浮遊セールンド島にしよう。
ジーニアス『平和な世界が生まれるようにみんなで努力しよう』だね。ボクも賛成 !
マルタええと、私たちはどっち ?
ラタトスク俺は精霊だからな。マクスウェルの残滓の調査に決まってる。お前たちもだったな ?
ヴェイグああ。今度マオに何かあったら全員で立ち向かえるようにしたい。
ティトレイそうだな。クレアもサポートで頑張ってるしおれたちだって――って、何笑ってんだよ、ヒルダ。
ヒルダふふっ、この状況で出来すぎだと思って。占い、『死の使い』の逆位置のカードが出たの。これ、覚えてる ?
ティトレイ縁起悪っ……くないんだよな。『大いなる転機、再生』――あの時のカードだ。忘れねぇよ。
エミル再生か……。いい意味のカードなんだね。マルタ、お父さんのことも含まれてるかもしれないよ。
マルタエミル……、ありがとう ! 大好き !
二人いいなぁ……。
シャーリィわ、わたしたちもマクスウェルの調査頑張らないとね。
クロエそ、そうだな !いいかクーリッジ、私たちも気を引き締めて任務にあたるぞ。
セネルあ、ああ……。やけに気合い入ってるな。他に精霊調査に行くのはどのチームだ ?
シングセネル、オレたちもそっちに行くよ。ミラの時みたいに、マクスウェルの残滓がスピリアに影響するかもしれない。
コハクそういえば、マクスウェルの残滓が心の世界に広がるかもってヴェリウスが言ってたよね。
ヒスイよし、今回できっちりケリつけてやろうぜ。
ミクリオ僕たちは天族だから精霊調査だけどスレイはどうする ?
スレイもちろん、みんなと一緒に行くに決まってるだろ !
ライラそうですね。スレイさんも『一緒』に『一所』懸命頑張りましょう !
ルークダジャレとか余裕あるよなぁ。俺なんかヴァン師匠のこと聞いただけで慌てちまったのに。
ティアルーク、兄さんのことを気にしているのね。それなら私たちは浮遊セールンド島にしましょうか。
ガイだな。ついでだからまとめて浮遊セールンド島希望者を確認しとこうぜ。何があるかわからないから、荒事覚悟の奴らで――
二人はい !
フレン君たち……、魂胆が丸見えだよ。
エステル大丈夫です。ユーリたちが無茶をしないようにわたしが頑張りますから。
イリアねえ、見た ? ユーリたち。「お前が言うな」って顔してた。
ルカあはは……そうだね。とにかく、僕たちも浮遊セールンド島で !
スパーダお前、勢いで決めたろ。けどまあ、アイギスシステムっての逆手にとって帝国の奴らに吠え面かかせるのも面白そうだ !
ルキウスそうか……。浮遊セールンド島にはグラスティンたちがいるかもしれないんだ。ロミーを目覚めさせる手掛かりが掴めるかも……。
カイウスだったら、オレたちも浮遊セールンド島に行こう。ロミーのこと、ルキウスだけが背負うことないさ。
ルビアカイウスったら、お兄さんぶっちゃって。でも、あたしも同じ気持ちよ。やれるだけやりましょう !
ルドガー兄さんも、ひとりで背負うことないからな。もう全部バレてるんだから。
ユリウスわかってる。『お前たち』には敵わないと思い知らされたしな。ところで俺たちはどうする。エルもいるが……。
ミラ何度も帝国から狙われてるし下手に置いていくより一緒にいる方が安心じゃない ?
ルドガー決まりだ。俺たちも浮遊セールンド島に行く。
マギルゥなるほど。もう人員は十分のようじゃな !ならば儂らは待機ということで――
ライフィセット僕も浮遊セールンド島に行きたい。全勢力でしかけなきゃ、きっと手遅れになると思う。
ベルベットそうね。あたしたちは浮遊セールンド島で。そういうわけだから、よろしく、マギルゥ。
ソフィあれ ? ビエンフーの声が聞こえるけど……気のせいかな ?それで、わたしたちはどうするの ?
ヒューバートここまでの勢力配分を見ると、反乱軍への参加が少ないように思えます。市民兵も多いでしょうし指揮を取れる者が必要でしょうね。
アスベルそうだな。お前も、マリク教官も、リチャードもいる。イクス、俺たちは地上反乱軍に加わるよ。残りのみんなもそうしてもらえると助かるんだが。
ジュードそうだね。僕たちも反乱軍に加わった方が勢力的にバランスが取れると思う。みんなも、それでいい ?
アルヴィンああ。あいつの目が覚める前に掃除は終わらせておきたいしな。けど、おたくは ? 精霊調査だから離ればなれだろう。
ミラ=マクスウェル離れていても、ちゃんと繋がっている。たとえ触れ合えなくてもな。
アルフェン……触れ合えなくても、か。なんだか、わかる気がする。
シオン私は……まだよくわからないわ。それより、この流れだと最後の私たちも反乱軍に加わることになりそうね。
アルフェンそうだな。初めて顔を合わせる人も多いだろうけどみんな、よろしく頼む !
カーリャ配置、難航するかと思いましたけどあっさり決まっちゃいましたね。さすが鏡映点たちです。
ミリーナええ。どんな困難があっても思いを力に変えて立ち向かえる人たち。それが鏡映点――世界を動かす人たちなのよ。
イクス……だからこそ具現化対象として選ばれてしまったんだよな。
イクスティル・ナ・ノーグに呼んでしまった俺たちは絶対にみんなの気持ちを無駄にしちゃいけない。
イクスみんな ! 聞いてのとおり、配置は決まった。これからすぐに持ち場へ向かって欲しい。
イクスその前に、一言だけ言わせて欲しいんだ。みんな……。
イクスこの世界に来てくれて、本当にありがとう。
イクスそれじゃ、作戦開始だ !

Character4話【21-4 セールンド 浜辺】
ナーザそうか。それでお前たちは具現化された浮遊セールンド島のアイギスシステムを目指しているんだな。
イクスはい、今は浮遊島を動かして接岸させるべく向かっているところです。
ナーザわかった。俺たちはすでに帝都に上陸している。このまま先行して、ヴァンとの合流を目指すつもりだ。少しでも時間が惜しい。切るぞ。
イクスわかりました。気を付けて。
バルド浮遊島を動かせるようになったとは聞いていましたが今回もまた大胆な作戦に出ましたね。
コーキスふふん、鏡映点のみんなにかかれば朝飯前だぜ !マスターたちも来てくれるし俺たちも動きやすくなるな。
ジュニアうん。でも絶対に油断しないで。ゲフィオン……人体万華鏡にまで手を出したんだ。
ジュニアデミトリアス陛下やグラスティンはもう後戻りはできない。どんな手でも使ってくるよ。
フリーセルグラスティン……。
フリーセル(……微かに松明が燃える匂いがする。……やはりこのバロールの洞窟に誰かが出入りしているな)
フリーセル(松明だけじゃない。なんだ、この……腐った脂のような匂いは……。奥の方から漂ってくる……)
グラスティン……やあ、ママ。今日も綺麗だね。
フリーセル(この声は……グラスティンか)
グラスティン昨日もまた俺を連れ去って閉じ込めようとしただろう ?俺にはわかるんだあ。俺の代わりに沢山家族を作ってやったじゃないか。それともまだ足りないのか ?
グラスティンさあ、お引っ越しだよ。ママのことを知られた。それにあいつがママを殺したことに怯えてるんだ。
フリーセル(そうか……奴はバロールの巫女の息子だったな。前の調査の時、ここに奴の母親の遺体が隠されていた。やはり母親がここで死んでいるのを知っていたんだな)
フリーセル! ?
フリーセル(何だ ! ? 死体の山が…… ! ?前に来た時はこんなものはなかったぞ ! ?)
グラスティン――誰だ。
グラスティンフリーセル…… ! やっぱりここを嗅ぎ回っていたか。
フリーセルグラスティン……。何だその死体の山は……。ここは一体……。
グラスティンヒヒ……立ち聞きしていたんだろう ?しつけのなっていない鼠だな。さすがビフレストのスパイだ。
フリーセル何の話だ。それよりここの死体はお前が集めたものか ?それともお前が手をかけたものか ?
フリーセルくっ ! ? いきなり刃物を出してくるとはな ! ?
グラスティンヒヒヒ、安心しろ。お前の髪は黒くない。ママは黒髪がお気に入りなんだ。昔の俺みたいな黒髪がなあ。
グラスティンだからちゃーんとお前の死体は海に捨ててやるよお !
グラスティン死ね ! 死ね !
フリーセル(こいつは、バロールの巫女がああなった経緯を知っている筈だ。何とか生け捕りに――)
グラスティンな、何だ…… ! ? 何を打ち込んだ ! ? 魔鏡陣か ! ?貴様は……くっ……。
フリーセル逃げても無駄だ !
フリーセル――消えた ? いや、転送魔鏡陣か。だがあの刻印があれば居場所はすぐに突き止められる。
フリーセル(これは俺の記憶ではない。一人目の俺の記憶だ。そしてこの記憶に、グラスティン――お前は殺される)
バルドフリーセル、どうしました ?
フリーセル……いいえ。
メルクリアして兄上、いかにしてヴァンを見つけるおつもりですか ?
ナーザ問題ない。手は打ってある。
アステルナーザ将軍 ? どうです、帝都には着きましたか ?
ナーザああ。それで、ヴァンにつけていた発信機はどうだ。
リグレット閣下に発信機だと ?
ナーザリグレット、戻っていたか。
リグレットついさっきな。私のあずかり知らぬところでそんなものをつけていたのか。
ナーザヴァンの目的が明確でなかった以上何かしらの保険は必要だったからな。
バルドええ。それにあなたたち六神将は彼に与する可能性がありましたので。
リグレット……確かに否定はできない。
バルド互いに、想う主を持つゆえのこと。どうか悪しからず。
リヒター……俺は六神将ではないが、知らなかったぞ。
アステルあれ ? リヒターに言ってなかったっけ。ごめんね ?
ディスト総長に発信器など無駄ではありませんかねえ。
バルドフフ、そうかもしれませんね……。
アステルっと、よし、拾えた !ここは……帝都……イ・ラプセル城の真上…… ?さっき具現化された島にいますね。
ナーザ奴らに飛空艇はない。浮遊セールンド島に移動する入口のようなものが城内にあるはずだ。行くぞ。
マークⅡ悪ぃ、ちょっとだけ待ってくれ。――ジュニア、お前も一緒に潜入するんだな ?
ジュニア帰って来いなんて、言わないよね。
マークⅡ……だよな。逃げないって決めたんだもんな。
マークⅡ引き留めて悪かった。仮想鏡界の維持は任せとけ。お前は、お前の思うとおり、好きにやって来い !
ジュニアうん ! 行ってきます !
マークⅡちょっと目を離すとすぐに逞しくなっちまうんだよなぁ。
マークⅡ……死ぬなよ、フィル。
マークフィル……。
フィリップマ……ク…… ?
マークここにいる。そのまま寝てていいぞ。
フィリップ意識……保たないと……、マークが、消え……。
マーク俺のことはいい !頼むから、もう自分のことだけ考えろよ !
フィリップごめ……マーク……。
マーク(おかしい……。なんなんだ、この焦燥感と不安。俺でもフィルでもない感情に気持ちが影響される……)
キールおい、来たぞ !
ヨーランドフィリップ !マークもいるわね。話は聞いたわ。
マークヨウ・ビクエ ! 頼む !
アトワイト呼吸が浅い……。まずいわ……。
ヨーランドこれは……。マーク、あなたに変化はあった ?
マーク存在の希薄化はあった。それと、今も俺の中に不安と焦燥感が溢れている。けど、こいつがフィルのものとは思えないんだ。
ヨーランドやっぱり……。さすが鏡精ね。それはファントムの感情よ。
マークファントムだと ! ?
ヨーランド狂化止めを施して切り離した筈だけど彼の心に何らかの負荷が掛かってまたフィリップと繋がりかけているわ。
マークじゃあ、どうすればいい !
ヨーランドいったんフィリップの心に防御を施すわ。――アトワイト、私が防御壁を作っている間フィリップの様子を見ておいて。
アトワイトええ。準備できてるわ。いつでもどうぞ。
フィリップ……あ……あれ ? 治った……。
ヨーランド成功ね。これで動けるはずよ。
フィリップなんか大げさになって、すみません……。
マーク馬鹿野郎 ! いいんだよ大げさで !マジで一瞬覚悟しちまったくらいだぞ !
ヨーランドそうよ。あなた、本当に危険だったわ。それは今も変わらない。
フィリップえ…… ?
ヨーランド私が施した心の防御は長くはもたないわ。こうして動けているうちにゲフィオンとファントムのところへ行きましょう。
フィリップ……わかりました。
リタゲフィオンのところへはネヴァンたちが行くって話よ。急げば一緒に行けるんじゃない ?
パスカルでも、無茶しちゃダメだよ ? マークが泣いちゃうから。
フィリップふふっ、ありがとう。きみたちにも迷惑かけたね。本の封印も、解除に至らなくてすまない。
フィリップそれと、アトワイトにお願いしたいことがあるんだ。ええと……、これでよし。
フィリップアトワイト、この本をイクスに。お願いします。
アトワイトわかりました。お預かりします。
ハロルドってことは、本の封印に関してはお役御免ね。となると……。
キールああ。しばらくは自分たちが所属しているチームで役目を果たすとしよう。
ハロルド私は地上行きかぁ。久しぶりにディムロスたちでもおちょくろうかしら。
パスカルあ、あたしも地上組だよ。リタのとこは確か……。
リタ浮遊セールンド島。アイギスシステムとかね。
二人うらやましいー !
キール……この研究室も、少し静かになるな。

Character5話【21-5 ケリュケイオン】
ガロウズセールンド上空だ。準備してくれ。
マークよし。みんな、よろしく頼む。目標は人体万華鏡があるカレイドスコープの間だ。――デクス、待機してるか ?
デクスちょっと待ってくれ。ケリュケイオンの着陸ポイントに移動中だ。
アリス早くしなさい。デクスのくせに、アリスちゃんを待たせる気 ?
デクスアリスちゃん ! ? アリスちゃんもいるのか !もしかして、頑張っているオレを応援に ! ?
アリス逆よ。文句言いに来たの。あんた「自分の命はアリスちゃんのものだ」って言ったくせに勝手に無駄遣いしそうだから。
デクス大丈夫。オレはアリスちゃんのものだよ。アリスちゃんのためにしか死なないから !
アリス本当に話の通じない奴ね。バカじゃない ?
アイゼンふっ、確かにバカだが芯の通ったバカは嫌いじゃない。
カーリャ・Nええ。アリス様は幸せな方です。
クラトスマーク、潜入メンバーにはローエンもいるのだろう ?姿が見えないようだが。
マークさっき預かった奴らの様子を見てくるって言ってた。すぐに戻るはずだ。
アイゼン浮遊島から受け入れた負傷者と、非戦闘員か。
フィリップこれから浮遊島のアジトを横付けして浮遊セールンド島に乗り込む手筈だからね。下手をすると戦場になる。
フィリップそうなった場合、鏡士しか動かせない浮遊島よりはケリュケイオンの方が安全だろう ?
ローエン遅れて申し訳ありません。
マークローエン !……と、クレアにマリアンに、アミィもか ?どうしたんだ。
ローエン少々……とは言えない問題が起きております。みなさん、まずは状況の説明をお願いします。
マリアンはい。ブルートさんとウィンガルさんとプレザさんヴィクトリアさん、ミルハウストさんの姿がどこにも見当たらないんです。
フィリップそんなはずは……彼らは眠ったままなんだろう ?
クレアええ。浮遊島から運び出す際に確認をしています。
フィリップまさか、このタイミングで目覚めたのか ?ありえないことじゃないけど……。
アミィそう思って、艦内を捜しましたがどこにもいないんです。今も、セシリィとリベラが見回ってくれてるんですけど……。
ヨーランドもしかして、さっき私が診たせいで劇的に回復したのかしら。な~んて……。
マークそれ !ありえるんだよ、あんたの場合 !
セシリィボス ! ボス、大変 !
ガロウズお前たち、誰か見つかったか ! ?
リベラううん。見つからなかった……。それとバルバトスも見つからない。シンクも一緒に捜してくれたけど……。
シンクこっちのせいにされても困るからね。
マークバルバトス ! ? あいつ、艦内にいないのか ! ?
セシリィごめんなさい。バルバトスさんが船に居る時には行動に気をつけろってボスにもマークさんにも言われてたのに。
マークいや、謝るのはこっちだ。エルレインと分けちまった俺の配置ミスだ。まさか、あいつが負傷者たちを……。
ローエンいえ、バルバトスさんが彼らを連れ出す理由がありません。この件は分けて考えるべきでしょう。
クラトスバルバトスが出て行ったのは先ほど浮遊島に停泊していた時だろう。
アイゼンああ。それに負傷者たちが回復して出て行ったとすれば収容した後に船が発つまでのわずかな間だな。
デクス着陸ポイントに到着したぞ ! アリスちゃーん !
マーク……時間がない。イクスに伝えて、こっちは潜入を開始する。
フィリップクレア、マリアン、アミィ、セシリィ、リベラ君たちは引き続き彼らの足取りを追って欲しい。ガロウズ、何かあればすぐに連絡を入れてくれ。
フィリップそれとシンク、艦内の守りは頼んだよ。
シンクいいから、死にたくないならさっさと行きなよ。
フィリップでは行こう。ゲフィオンとリーパのところへ。
キールそろそろ、浮遊セールンド島に接岸するぞ。
フォッグおぅ。イクスの腕の見せ所だな。
チャットそうですね、ぶつからないようにでもボクたちが渡れるくらい近くに寄せてもらわないと――
クィッキー! クィッキー !
メルディバイバ ! どした、クィッキー !
ファラしっ ! チャット。悲鳴だけはダメ。
リッドこらえろ。他の奴らも突入のタイミングを計って隠れてるんだ。ここで台無しにはできねぇ。
メルディでも、クィッキー、へん。なに感じたか ?
ラピード、ノイシュ、ルル、ミュウ! !
コーダヘソがピリピリするんだな、しかし !
バルバトスここだな ! なるほど、だいぶ近い。
ルックバルバトスさん、なんでこんなことを……。
バルバトスメルクリアはあの島へ来るんだろう ?復讐の機会がやっと訪れたというのに逃すわけないだろうが !
ルックなんでそれを…… !
ルキウスあいつ、またメルクリアを狙ってるのか !
カイウスルキウス、今はだめだ !
バルバトスこれまで小娘の情報を上手く隠していたんだろうが今回ばかりは、わきが甘かったようだな。
バルバトスマークめ、俺を飼いならせたと思ったら大間違いだ !腰ぎんちゃくも案内ご苦労。どこへでも失せろ。
ルックくそっ……行かせるか !
バルバトス触るなウジ虫が !俺の誇りを汚したあの小娘は殺す !貴様はそこで、一生地べたを這っていろ !
ロイドあいつ !
ジーニアスまずいよ、バルバトスの奴浮遊セールンド島に飛び移っちゃった !
ヴィクトルしまった ! 遅かったか !ルック、大丈夫か ?
ルックヴィクトルさん……すみません。接岸場所まで連れていかないとケリュケイオンの連中を殺すと言われて……。
エルパパ ! ?
ユリウスル……ヴィクトル、どうなってる ! ?
ヴィクトル今回の作戦を進めるなかで、メルクリアたちの情報がバルバトスに漏れたのだ。奴は復讐を果たすために勝手にケリュケイオンを降りた。ルックを脅してな。
ティア骨が折れてるみたい。すぐに治療するわ。
ルビアあたしも一緒に !
ゼロスルック、ルビアちゃんとティアちゃんの二人がかりで治療してもらえるなんて幸せな奴め。
ルークなあ、つい勢いで俺たちも飛び出しちまったけどこれ、どうすんだ ?
ユーリおい、先に突入するぞ !
ガイユーリ ! ?
ルカえ ! ? タイミングを見てこっそり潜入って作戦は ! ?
ベルベットさっきの見たでしょ。あいつが乗り込んで大人しくメルクリアを捜すと思う ?
ジュディスそうよ。どうせバルバトスに大暴れされるんだもの。タイミングも何もないでしょう。
ライフィセットこういうの何て言うんだっけ。乗りかかった船 ?
パティなのじゃ ! さあ、みな続け !これだけの面子じゃぞ ?大船に乗った気で突入なのじゃーー !
マギルゥええい、もうどーでもいいわい ! マギンプイ !
ビエンフービエ~~~ン !姐さーん、置いてかないで欲しいでフー !
カロルあはは……もうめちゃくちゃだけど、そっちは大丈夫 ?
ロクロウ応 !できればバルバトスと斬り合いたいもんだ !
エレノアロクロウ……、またそれですか。あなたは本当にぶれませんね。
エステルエレノア、みんなのブレーキ役、頑張りましょう !
リタ言っとくけど、あんたもブレーキかけられる側よ ?
エステルそうなんです ! ?
プレセア……行ってしまいました。
エルマーナなんや、止めるヒマもあらへん。
ヴィクトル私も引き続きバルバトスを追う。
エルパパ、エルも一緒に行く !
ルドガー俺も行きます。俺たち全員でエルを守る !
ユリウスああ。家族でこの子を守ることが何より安心だと思わないか ?
ヴィクトル……行こう。
リーガルこうなっては仕方あるまい。まずは指令室に連絡だな。
リカルドああ。――こちら浮遊セールンド島潜入チーム。潜入直前にトラブルが起きた。
ジェイド状況はわかりました。すでに突入したチームにはそのまま先行してもらいます。リフィル、そちらはどうです ?
リフィル目標への接岸を確認したわ。アンジュ、行ける ?
アンジュはい、すぐに。――コンウェイさん、キュキュさん。始めてください。
コンウェイ了解。
キュキュはい、わかた !
アンジュみなさん、コンウェイさんとキュキュさんがアジトの防衛機構を起動しています。
アンジュ現在待機しているチームは、起動が完了してから行動開始。独自の行動を控えてください。特にイリアとスパーダくん。
イリアスパーダはともかく、なんであたしなのよ。
スパーダお前、自分のこと棚に上げすぎだろ……。
アンジュこの前の墓守の街ではどうだったかしら ?最初の一発、あなたが放った気がするんだけど。
イリア……自重します。
ジェイドさすがアンジュ。この調子で、彼らの指揮をお願いしますよ。
ミリーナさすがね、イクス !目標地点にぴったり横付けできてるわよ。
イクスはぁ……。船とは勝手が違うけどとりあえず漁師の面目躍如だな。
アトワイトイクスさん、フィリップさんからこの本を渡すよう言付かったわ。どうぞ。
イクスありがとうございます。フィルさん、自分が大変な時に、こっちまで……。
ミリーナ経過は聞いているけど、本当に大丈夫かしら。
アトワイトヨーランドさんたちが動いているし何かあればすぐに連絡が来るはずよ。それと、フィリップさんが何かメモを挟んでいたわ。
イクス本当だ。ええと……。「この本の封印が解けるのはイクスだけだろう。方法を以下に記す」か。
アトワイトそれじゃ、何かあったら呼んでちょうだい。
ミリーナありがとうございました。――イクス、やってみましょうか。
イクスいや……ちょっと待ってくれ。腕の魔鏡を押し当てると反応……その後に解呪の文言を唱える…… ?
イクスそれなら、これまで俺が調べている最中に俺の魔鏡に反応してもいいはずだ……。
イクス……そうか。そういうことか。だったら……。
イクス1stわかったよ、イクス。やってみる。
ミリーナえ ? イクス…… ?
イクス1stやあ、ミリーナ。久しぶり……じゃないな。始めまして、最初のイクスだ。
ミリーナあなたが……イクスさん。
イクス1st本当はミリーナやカーリャともたくさん話したいよ。でも、今はフィルが届けてくれたこの本を優先させる。――イクス、始めるぞ。
イクス1st本に、腕の魔鏡を近づける、と。
カーリャあ、本がうっすら光ってます !
イクス1stよし。そして解呪の呪文……。『――――――』
ミリーナ本が……書き代わっていくわ !
イクス1st「本日、バロールとの交信にて、鏡士の……」これ、バロールの巫女の手記だ !
ミリーナ大成功よ、イクス ! ……さん。
リフィルイクス ? いいかしら。作戦変更になりそうなの。
イクス1stこれ、魔鏡通信だよな ?
ミリーナ私が話します。――こちら、ミリーナです。作戦変更って、何があったんですか ?
ミリーナ……わかりました。では計画はその方向で先に進めてください。お願いします。
イクス(バルバトスさん…… ! こんな時に)
イクス1stイクスに代わるか ?
ミリーナいいえ。イクスさんのままじゃないとまた封印が復活するかもしれませんから。今はそのまま、手記を読み進めてください。

Character6話【21-6 アジト3】
カーリャどうですか ? なにが書いてあるんです ?
ミリーナしっ、今はイクスさんに集中させてあげて。
イクス1st……いいよ。一通り目は通した。
イクス1st書かれていたのはバロールとの交信記録だ。俺の一族と、俺が生まれた時のことも書いてある。
ミリーナイクスの……。
イクス1st順を追って話そう。
イクス1st手記によると、俺たちの一族に子供ができるとその子がバロールの因子を受け継いでいるかどうかバロールの巫女に伺いを立てるんだ。
ミリーナイクスの一族全員がバロールの因子を持つとは限らないんですね。
イクス1stああ。その因子を調べる方法だけど、バロールの巫女が遠く離れた地にいる『鏡精ルグ』と交信して因子の有無を尋ねていたそうだ。
イクス1st因子を継いだ子供だと確認できた場合その子供は鏡士になることを禁じられる。
イクス1stそして、その子は年に一度、バロールの巫女の元へ赴くことになっていた。
イクス1st俺の両親も慣例に従い、俺を身ごもった時にバロールの巫女に会いにいってそこでルグに告げられた。
イクス1st俺が、祖父以来のバロールの因子を受け継ぐ『バロールの血族』だって。
ミリーナだからお祖父様は鏡士ではなく、漁師になっていたんですね。
イクス1stうん。けど俺は、何百年かぶりの極めてバロールに近い存在だったらしい。それを聞いた俺の両親はひどく怯えていたって書いてある。
イクス1stでも、ルグはこうも言ってくれている。
イクス1st「極めてバロールに近いからこそ、鏡精をエネルギーとして使う今の状況に変革をもたらして、かつてのバロールのように鏡精を救ってくれるかもしれない」
イクス1stルグからティル・ナ・ノーグの創世の経緯を聞かされたことで、不安がっていた両親も落ち着いたそうだ。
イクス1stそれどころか、むしろバロールの力を使うことで鏡精を使わずにエネルギーを生み出せるのではと考えるようになった。
ミリーナそれが、イクスのご両親の研究……。
イクス1st――で、この辺りまでは普通に読めた。
カーリャ普通って、どういうことです ?
イクス1stバロールの巫女の交信頻度がものすごく上がってるんだ。それに伴うように、内容が不明瞭になっている。
イクス1stどうやら、ルグとの交信のせいで鏡精との交信感受性が高まりすぎたらしいな。
イクス1stそのせいで、セールンドの凄まじい鏡精殺しで生まれた死鏡精に、度々心を奪われるようになった。
イクス1st当初は本人も自覚はあったみたいだ。まともに交信できているか悩んでいると書いてある。でも、最後の方は何を書いているかも意味不明で……。
ミリーナ……。
イクス1stけど、その辺りの状況は父さんたちが補足として書いている。
ミリーナなぜイクスのご両親が…… ?あっ、ごめんなさい、続けてください。
イクス1st俺が生まれて、慣例だった年に一度の訪問に行く頃にはバロールの巫女の精神状態は更に悪くなっていた。
イクス1st幻聴、幻視、妄想に妄言。しまいには鏡精の子を孕んだとか言いふらしたりまともに話も通じなくなっていたらしい。
イクス1stでも、巫女がかろうじて正気を戻した時にルグとの最後の交信を記録したこの手記を父さんたちに託したそうだ。
イクス1st父さんと母さんは手記を持ってセールンドに戻りルグから受けた言葉を信じて研究を続けていた。
イクス1stでも、いつも危機感を抱いていたらしい。バロールの因子を持つ俺は、王宮やビフレストから監視されるだろうって。
イクス1stそれに、父さんたちは鏡精エネルギー反対派でセールンド王とは対立する立場だった。
イクス1stいつ命を狙われるかわからないし、そうでなくてもカレイドスコープ開発は危険な実験の繰り返しでこの先も無事でいられる保証がない。
イクス1st俺を守れないかもしれないって……。
イクス1stそれでも、カレイドスコープの最終起動には俺の力が必要になる。それで、遺言を残すことにしたそうだ。
ミリーナそれが、イクスの魔鏡に込められたメッセージ……。
イクスの父お前に伝えなければならない。お前は鏡士になれ、と。
イクスの母私たちはいつも祈っているわ。あなたが健やかであることを。イクス、どうか、いつまでも元気で……。
イクス、イクス1st父さん、母さん……。
ミリーナこの手記は、命の危険を感じていたご両親がイクスさんだけが読めるように封印をかけていたんですね。
イクス1stああ。手記の内容は大体こんな感じだけど……。――イクスも一緒に読めてるよな ?……なあ、イクス ?
イクス(俺とバロール……ルグの言葉を元に目指した形がカレイドスコープなら……ってことは……)
イクス1st!イクス、代わろう。
イクス……あれ、イクスさん ? どうして ?
イクス1st(なにか考えついたんだろう ?ミリーナも一緒に聞かせてやりたいからさ)
ミリーナイクス……なのね ?
イクスああ。考え事してたらミリーナにも聞かせてやれって、代わられた。
ミリーナそうだったの。ありがとう、イクスさん。
ミリーナそれで、イクスは何を考えていたの ?
イクス俺とバロールは近い存在なんだよな。死の砂嵐――フィンブルヴェトルに干渉できる。魔眼の鏡精を持ち、炎を燃やして命を生む……。
イクスそれを知った父さんたちは俺の力を利用する装置――カレイドスコープを作っていた。
イクス多分、命を生むってところをヒントにエネルギー問題と結びつけたのかもしれない。
イクスとすると、同時にセールンドに蔓延していた死鏡精の問題だって解決できる。バロールの力なら、死の砂嵐に対抗できるだろう。
イクスってことはだ。父さんたちの理論がベースならカレイドスコープという装置にはバロールの力を使う『力』があるんじゃないか ?
カーリャややこしいけど、言いたいことはわかります !
ミリーナカレイドスコープで死の砂嵐に対抗……そうね、可能性は高いわ !
イクスバロールの力を持つ俺と、カレイドスコープを改造したゲフィオンの記憶を持つミリーナがいればカレイドスコープを本来の形に戻せるかもしれない。
イクスどうかな、バロール。これならあなたが力を貸してくれなくても俺たちの手で俺たちの世界を守れるんじゃないかな。
バロール(…………)
イクス1st(否定しないってことは ?)
イクス肯定、ですね !
ミリーナそれなら、ニーベルングのレプリカ作成阻止と並行して帝国のカレイドスコープへ向かいましょう。それでも駄目だったときはアイギスを頼りましょう。
カーリャでも、帝国のカレイドスコープはゲフィオンさまが改造したものとは違います。大丈夫でしょうか……。
イクスファントムやグラスティンの手が入っていても基本設計と思想は本来のカレイドスコープと変わらない筈だ。
イクス父さんと母さんは、きっと応えてくれるよ。

Character7話【21-7 ゲイボルグの島1】
デミトリアスいよいよだ。ここから虹の橋を延ばしこのゲイボルグの島をアイフリードの墓と連結する。
グラスティンアイフリードの墓は惑星ニーベルングのある次元と繋がる唯一無二の場所だ。あの場所と繋がることで存在が安定する。
グラスティンティル・ナ・ノーグが消えてもこのゲイボルグの島だけは存在が保たれるって訳だ。
グラスティンスポットもここまで待てばティル・ナ・ノーグを脱出できたのになあ。
デミトリアスああ。あとは死の砂嵐が、アイギスで守られたこの島以外の全てを消してくれるのを待つだけでいい。
グラスティンやっと消えるなあ ?お前の望み通りに、偽物の世界が。
デミトリアス長かった……。私がバロールの監視の目を解き放ってしまってから世界はあっという間に崩壊した。
デミトリアス今思えば、崩壊してしまえばよかったのだ。偽りの世界を生み出すぐらいなら。
グラスティンだがお前はこのつぎはぎの世界を一度は許容したんだろう ?
デミトリアス……この世界が滅ぶ原因になった魔鏡戦争はイクス・ネーヴェが鏡士になろうとしたことがきっかけで始まった。
デミトリアスそしてイクス・ネーヴェが鏡士になるのを止められなかったのは、それを止めるはずのバロールの巫女が殺されたからだ。
デミトリアスその因果を、ウォーデン殿ときみからそれぞれ話を聞いて、私はやっと知ることができた。
デミトリアス父の犯した過ち、そして自らの罪を贖うためには世界をあるべき形に戻すしかない。
デミトリアス壊れた世界を延命するために偽りの存在を生み出しては、歪みが広がるばかりだ。
グラスティンヒヒ……鏡映点共も可哀想になあ。
デミトリアス彼らの元の世界には鏡士の力が関与しない『本物』がいて、唯一無二の歴史を生み出している。
デミトリアス彼らこそが真なる存在であり、この世界の鏡映点などまやかしに過ぎない。本物を守るためにはまやかしの存在など消し去るしかないさ。
グラスティン本物……本物かあ……ヒヒヒヒ。まあいいさ。デミトリアス、お前のいう本物の世界を守るためにハスタの魂を使ってやれ。
デミトリアスそうだな。ルグの槍の代わりにゲイボルグの槍を使って虹の橋を操る ! マクスウェルの精霊装の力でな !
浮遊島アジト 観測室
クラース虹の橋が動き出したぞ ! ?
スレイあれは……帝国の作った浮遊島に向かって延びている ?
ウィルそのせいか。マクスウェルの残滓がものすごい勢いで増え始めているようだ。
テネブラエはい。どうやらダーナの心核が隠されているアイフリードの墓へと延びているようです。虹の橋を動かすにはマクスウェルの力が必要です。
ラタトスクテネブラエ ! ?
テネブラエフリーセルさんの監視が終わりましたのでこちらに戻ってきました。
しいな――そうか。今あたしにも声が届いたよ、テネブラエ。ヴェリウスが伝えてきた。虹の橋が延びてきたって。
ロゼごめん、遅くなった !あたしたちは、こっちでいいんだよね ?
スレイロゼ、デゼル、待ってたよ !
イネスセキレイの羽のほうは大丈夫 ?地上はだいぶ混乱してるでしょ。
ロゼまあね。けど、そのへんはアスターに頼んであるから。ヒルダにもよろしくってさ。
ヒルダそう。さすがアスター様、頼りになるわ。
ティトレイヒルダが『様』づけで呼ぶとはねぇ……。そいつ、かなり怪しいって聞いてるけど本当に大丈夫かよ。
ヴェイグああ。いい奴だったぞ。ヒルダを大事にしてくれた。
ティトレイ大事ねぇ。
マオなになに ? ティトレイってばやきもち ?
ティトレイ焼くかそんなもん ! ただちょっと心配なだけで……。
デゼル気持ちはわかる。
ザビーダなになに ? デゼルくんもやきもち ?
デゼルうるせぇ ! ロゼの警戒心がなさすぎるからだ。それより、マクスウェルの残滓調査はどうなってる。
しいなリチアたちの見立てだと、マクスウェルの残滓はマクスウェルの精霊片になって集合的無意識に広がってるそうだよ。
ウィルちょうど君たちがこちらに到着する直前に虹の橋が動いた。
セルシウスそれ以降、精霊片がさらに増えているの。誰かがマクスウェルの精霊装を使っているようね。
ロゼ精霊装か……。その話って、ミラがマクスウェルの残滓に取り付かれそうになった時にヴェリウスが教えてくれたやつだっけ ?
ミラ=マクスウェルああ。帝国がマクスウェルの精霊装を使うたびにその残滓が心の世界に広がっていく。
ミラ=マクスウェルだが、その残滓が精霊輪具に帰る前に回収できれば帝国の精霊装の力を削ぐことができると言っていた。
クンツァイトここまでの観測でも、残滓の増量と虹の橋の動きは連動している。マクスウェルの精霊装が作用していると見て、ほぼ間違いないだろう。
ベリルでね、精霊装の力を削げばあの虹の橋も存在を保てなくなるかもしれないってみんなで話してたとこなんだ。
ロゼそれで今は精霊片吸引器で精霊片を集めてるってわけか。収集率は ?
ミクリオ順調だよ。だけどこの程度で本当に帝国の精霊装の力を削れているかは疑問だな。
スレイう~ん……もっと積極的に集めに行ったほうがいいかもしれない。
セネル精霊装を作る時みたいに精霊片の多い場所まで行くってことか ?
モーゼスなるほど、攻めに転じるっちゅうわけじゃな !スの字のアイディア、ワイも乗っちゃる !
グリューネまあ、お出かけ ?それなら、お弁当と~、お茶と~デザートも欲しいわね~。
ノーマグー姉さん、ストップ !話の腰がボッキボキに折れてる !
エドナそのボキボキ、戻してあげるから一生恩に着なさい。
エドナそれで、集めに行くという話だけど精霊片が多い場所に当てはあるの ?
リチア心当たりはあります。わたくしたちであれば『そこ』に入れるはずです。
三人あっ ! !
リチアええ、そうです。ヴェリウスの言葉どおりなら残滓が広がる集合的無意識はスピリア――心の世界と通じています。
シングそうだよ ! あの時は、ミラが戦った場所で傷ついたダーナの心核からマクスウェルの残滓が流れ込んでファントムを通じてミラさんに集まっちゃって…… !
ミラわ、私が何 ! ?何言ってるのか全然わからないんだけど ! ?
ガラド簡単にいやぁ、スピリアの中にはマクスウェルの残滓がたんまり漂っている場所があるってことさ。
ガラドただし、誰にスピルリンクするかが問題だ。もちろん帝国でマクスウェルの精霊装を使っている奴が一番なんだが……。
コハク今、シングが言ってたよね。前は、ダーナの心核の傷からマクスウェルの残滓が流れ込んでミラに影響したって。つまり、ええと……
ユージーンつまりダーナの心核は、残滓が広がっている集合的無意識とも通じやすいということか。この世界自体も、ダーナの仮想鏡界だからな。
アニーダーナの心核なら浮遊島にあります。以前、スレイさんたちが持ち帰った、鏡の精霊の心核のレプリカにはダーナの心核の一部が使われているんですよね ?
クラースよし、それで行こう !ソーマを持っているメンバーはスピルリンクを頼む。残滓を探るのは……。
クラース……君たちはやめた方がいいな。残滓の『おとり』としては持ってこいだが危険すぎる。
ミラ=マクスウェル確かに、マクスウェルの残滓に囚われる可能性は否定できない。私も以前は自我を失いかけた。だが、やらせてもらえないだろうか。
ミラそうよ、危険は承知の上。それに、マクスウェルの残滓が何をしようと私は『私』を手放さないわ。
ミラあの子が待ってるって思えば……。
ラタトスク同じ精霊として忠告するぜ。そいつは無謀だ。
ミュゼそうよ、行っちゃダメよ !私の可愛いミラたちを危険な目に遭わせるわけにはいかないわ !
キュッポ観測室はここだキュ ? 間に合ったキュ !
ピッポジェイ、皆さん、お届け物だキュ。
ジェイキュッポにピッポにポッポ !地上の情報を集めに行ったんじゃなかった ?
キュッポその途中でハロルドさんから預かったキュ。
ポッポこれはクレーメルケイジを転用したミラさんたち専用の防御シールドだキュ。
ポッポ何かあったときには、一時的にミラさんたちをマクスウェルの残滓から守ってくれるんだキュ。これで囚われずに済むらしいキュ !
ライラさすがハロルドさんですわ !いつの間にか、こんな物を作っていたなんて。
ピッポでも、精霊調査の話を聞いてチャチャッと作ったから効果が短時間なのが不本意らしいキュ。
エミルチャチャッと……。
マルタあれで不本意なんだ……。
ミラ=マクスウェルありがとう、モフモフたち。――さて、これでどうだ ?
クラースまったく、なんてタイミングだ……。わかったよ。行ってもらえるか ?
ミラええ、任せなさい。
クラースただし、シールドは一時的なものという話だ。守りはいつも以上に、しっかり固めてくれよ。ちなみに、マオやシャーリィも……。
二人「行きます ! 」「行くヨ !」
ベリルとなると、かなりの人数だね。鏡士の協力もないし。
ヒスイヴェイグやセネルのとこはまるっと全員だろ ?スレイのとこも精霊関係ばっかだしな。よっし、今回はソーマ使い総出でやるか !
クロエだが、そうなると外からの観測が手薄になってしまうな。
クラース私がこちらに残ろう。それと、しいな、セルシウス、エミルたちにも手伝ってもらおうか。
三人了解 !
ジェイドなるほど。では、死の砂嵐対抗策としてカレイドスコープを優先すべきだと。
イクスはい。具現化アイギスシステムを一から調べるより成功する可能性が高いと思います。
ジェイドわかりました。では、バルバトスについては先行して乗り込んだチームでそのまま追跡してください。
リフィル現在待機中のロイド、ルークたちのチームはレプリカ装置の捜索リッドたちは虹の橋へ向かってちょうだい。
アンジュルカくん、カイウスくんたちはイクスさんと一緒にカレイドスコープに向かってね。
イクスありがとうございます。それじゃ俺たちはルカやカイウスと合流でき次第、突入しますね。
ジェイドああ、待ってください。こちらからも報告があります。先ほど、私たちをどうしても手伝いたいという方々がやってきましてね。
ジェイド相手は回復しきっていない病人も同然でしたがかといって無下に断ると問題を起こしかねないので一部、仕事をお任せしておきました。
イクスはあ。それはつまり……どういうことですか ?
カーリャ鬼畜の臭いがします !
ジェイド今、その件について関係者に連絡を入れています。ですが、この混乱です。報せを受け取れないチームは彼らが現れたら驚くでしょうねぇ……。

Character8話【21-8 アセリア領】
――アセリア領、A地点
ナタリア……侵攻してくる兵の数が尋常ではありませんわ。このままでは、こちらの地上反乱軍の兵たちが危険です。
アニスあーもう ! なんで倒しても倒しても帝国兵が減らないわけ ! ?
イオンおそらく、敵兵の殆どは人工心核を使ったレプリカリビングドールなのでしょう。
ピオニーどおりでこんな無茶苦茶な戦い方をするわけだ。奴らは全く怯むことなくこちらを攻撃してくる。自分たちの意思がない分、厄介だな。
アッシュちっ。どうせこの世界を捨てると決めてレプリカも大量製造しているんだろう。あいつらにとっては使い捨ての駒同然だ。
イオンこちらも、何か打開策を打ちたいところですが……。
ピオニー状況はどこの部隊も同じだろう。増援を呼ぶとしても時間がかかる。今は俺たちだけでなんとかするしか――
? ? ?――いえ、すでに手は打っています。
ピオニーあんたは…… !
アガーテ到着が遅くなって申し訳ありません。先ほど、救世軍の方々に送っていただきここまで来ました。
アニスえっ、救世軍の兵もこっちに来たの ?
アガーテはい。皆さんの戦況を知り、他の地点にいた兵たちをこちらに回すように手配いたしました。
アガーテそれに、敵の兵力の要であるフォミクリー装置の場所も特定できました。それを破壊さえできればこの状況を打破できるはずです。
ピオニーそいつは助かる。だが、いつの間にそんなことまで……。まさか、あんたが全部一人でやったわけじゃないよな ?
アガーテええ、わたくしがここに来るまでにも多くの方々が手を貸してくださいました。
アガーテそして、フォミクリー装置の捜索はわたくしが最も信頼している人物が担ってくれています。
アガーテ彼ならば必ず、その責務を果たしてくれるはずです。
――アセリア領、別地点。
帝国兵レプリカリビングドール――敵、発見。排除する。
モリスンしまった ! まだ兵が潜んでいたか !
チェスターどうする ? 囲まれちまったぞ ! ?
クレスはぁはぁ…… ! みんな、怯んじゃ駄目だ !僕が先陣を切って……くっ !
ミントクレスさんっ !
チェスターおい、クレス ! お前、やっぱり無理してたのを隠してやがったな…… !
ルーングロム君だけでも、倒した敵の兵は百人を超えている。それだけ戦い続けて立っていられるほうが不思議なくらいだ……。
すず今度は私が前へ出ます !その間にクレスさんは体力の回復を――
帝国兵レプリカリビングドール――目標、殲滅開始。
チェスター来るぞ ! !
? ? ?――ダオスレーザー ! !
チェスターなっ ! ?
モリスンそんな…… ! この技は…… !
ダオス……所詮、意思を持たぬ人形か。
クレスダオス ! ? どうしてお前が ! ?
アーチェ……もしかして、あたしたちを助けてくれたの ?
チェスター馬鹿言うな。こいつがそんなことするはずねぇ !
ミントでは、一体何故……。
ミルハウストみんな ! 無事か ! ?
クレスミルハウストさん ! ?
ミルハウストよかった……どうやら間に合ったみたいだな。
チェスターなんであんたがここに……。いや、それよりも身体は大丈夫なのかよ ?心核がボロボロで動くのもやっとなんだろ ?
ミルハウスト……ああ、正直、まだ私自身は戦えない。だが、この状況でそんなことを言っている余裕がないのは、君たちも十分理解しているはずだ。
ミントでは、ミルハウストさんは私たちを助けにこちらへ来たのですか ?
ミルハウストそれもあるが、救世軍が掴んだフォミクリー装置の場所を特定し、その破壊の任務を担っていたんだ。
ミルハウストダオスと出会ったのもその道中だ。彼は私と共に、フォミクリー装置の破壊を手伝ってくれたのだ。
ダオス勘違いするな。私はただ、あの下劣な装置を野放しに出来ぬだけだ。
ダオスそして、この星を破滅させようとしている帝国の連中も同じこと。
ミルハウスト理由はどうであれ、私が助けてもらったのは事実だ。他にもファンダリア領にあるフォミクリー装置の場所も特定して、ディムロスたちに伝えることができた。
モリスン……わかった。今はそれで納得しよう。他の領の状況はわかるかね ?
ミルハウストああ、私が知っている限りだとウェルテス領、テルカ・リュミレース領エフィネア領、グリンウッド領に増援が送られた。
ミルハウスト皆、この世界を守るために戦ってくれている。これ以上、帝国の思い通りにさせてなるものか。
――ウェルテス領
水の民ここは俺たちが生きていく場所だ !
陸の民ああ ! 共に戦おう !我らが居場所を守るために !
マウリッツ見えるか、ワルター。水の民と陸の民が、共に手を取り合う姿を……。
ワルター……奴らは、俺たちの知る水の民と陸の民ではない。
マウリッツわかっている。だが、我々が見ているのは可能性だと思わないか ? このような未来があったのかもしれないという可能性なのだ。
レイアワルター、マウリッツさん !あの人たちが戦ってくれている間にわたしたちも早く怪我の治療をしなきゃ !
エリーゼレイア、こっちはわたしたちに任せてください !悪い敵は全部やっつけちゃいます !
ティポぼくも本気出しちゃうぞー !
アルヴィン助かったぜ。ここを抜けられるとファンダリア領まで侵攻されちまうからな。まさかお前たちに礼を言う日が来るとは思わなかった。
プレザなに ? 文句なら受け付けないわよ、アル。
アグリアあははっ ! ババアたちにしちゃあ上出来だぜ !助けられたなんてこれっぽっちも思ってねえけどな !
ウィンガルお待たせしました、陛下。既に敵軍はこちらで包囲しております。なんなりとご命令を。
ガイアスお前たち……。いや、今は何も言うまい。よくやった。
ジュード……うん、二人がこの領に住む人たちを説得して連れて来てくれたおかげで、状況は一変した。ここからは僕たちの役目だ。
ガイアスいくぞ !我らが道を阻む者は、何人たりとも容赦はせん !
――テルカ・リュミレース領
アレクセイこの辺りのレプリカリビングドールは一掃した。我が兵がこの領を制圧するのも時間の問題だな。
レイヴンおたくがそんな台詞を言っちゃうとどうにも悪役感が拭えないわ。
フレン……ですが、僕たちがこうして無事でいられるのも彼らの働きのお陰です。
レイヴンわかってるよ。一応、礼は言っとくわ。そちらさんにもね。
デューク私は世界を乱す者を討つだけだ。
シゼルだが、まだ油断はできぬ。今の内に他の領の情報も入手しておくべきだろう。
アーリアええ、シゼルさんの言う通りだと思うわ。気を緩めないようにしましょう。
レイスところで、あなたはメルディと行動を共にしていると聞いていたんだが ?
シゼルメルディにはあの者たちが付いている。心配は無用だろう。ならば、私も戦況を見て動くべきだと判断したのだ。
ティルキス何はともあれ、心強い味方だ。
フォレストはい、我々も後れを取らないようにしましょう。
――エフィネア領
ヴィクトリアアスベル、ここは私たちが帝国軍の相手をするわ。その間にあなたたちはフォミクリー装置の破壊に向かいなさい。
アスベルヴィクトリア教官、どうしてここに ! ?
ヴィクトリア救世軍の地上部隊を連れて来るためよ。私自身はまだ全力で戦えるまでの身体に戻っていないから、出来ることはこれが限界だけど。
シェリアそんな…… ! だったら尚更危険です !
カーツでは、私が残って彼女のサポートに回ろう。それで問題はないはずだ。
リトルクイーンだったら、まずはわたしたちが道を開く !
ソフィうん ! いくよ !
二人――ツイン・ディゾルヴァー ! !
パスカルおお~ ! ! 今のかっこいいー ! !いいなぁ~あたしも一緒にやりたいよ~ !
ヒューバートパスカルさん !今はふざけている場合じゃないですよ !
リチャード……アスベル。ここは彼女たちのことを信じるんだ。
アスベル教官……俺たちは行きます!どうか、ご無事で。
ヴィクトリアええ、心配してもらわなくていいわ。それより、マリク。あなたがちゃんと、私たちの教え子を守ってね。
マリク……ああ、任せておけ。
――グリンウッド領
セルゲイ獅子戦吼 ! !
アリーシャ……なんという気迫だ。さすがはスレイに技を伝授した者の腕前だな。
セルゲイまだ本調子ではないのが悔やまれるな。それに、頼りになるという賛辞ならばあの者たちに向けて送るべきだろう。
オスカー姉上 ! こちらは任せてください !
テレサええ、お願いします ! オスカー !
マティウスいくぞ、チトセ。これ以上、奴らの好きにさせるのは癪だ。
チトセはい、マティウスさま。私たちを利用した借りは今ここで返しましょう。
セルゲイそれぞれの思いがあるのだろうが今はこうして共に戦うことができている。自分はそれを嬉しく思う。
アリーシャああ、だからこそ、決して負けるわけにはいかない !私の全てをかけて、帝国の野望を止めてみせる !
ディムロスこちらディムロス。ファンダリア領A地区の制圧に成功した。
シャルティエそれと、ミルハウストさんの情報のお陰でフォミクリー装置の破壊も無事に完了しましたよ。
エルレイン同じく、B地区の制圧、及び住民たちの安全は確保しています。
イレーヌC地区も問題ありません。今は負傷した反乱軍の人たちの治療に当たっているところよ。
シグレったく、つまんねぇな。こっちに来りゃあ少しは面白れぇと思ったんだががっかりだぜ。
ムルジムごめんなさい、血の気が多い子なの。だけど、あなたたちが望む結果にはなっていると思うわよ。
リフィル報告ありがとう。他の部隊の状況はどうかしら ?
パライバはい、こちらももうじき制圧が完了するかと思います。
カルセドニーしかし、まさか物資の手配までしていたとはな。この戦禍の中で、よくここまで手を回せたものだ。
イエガーイエース。ミーたちはプロフェッショナル。どんなミッションも完璧にこなしてみせます。
ゴーシュお前たちも、イエガー様にもっと感謝しろ。この戦果は、イエガー様の活躍なしでは成し遂げられなかったものだ。
ドロワット私たちもしっかりお手伝いしたんだワン。
ジェイドええ、助かりましたよ。皆さんには、引き続き持ち場をお任せします。
リオン先ほど、アセリア領にオールドラント領それにカレギア領の制圧も無事に終わったと言っていたな ?
アンジュええ、みんな順調に作戦を進めてくれているわ。
コングマンおう ! この俺様がいれば百人力よ !なんたって、チャンピオンだからな !
チェルシーいえいえ、確かにコングマンさんのご活躍もお見事でしたが、一番はなんといってもウッドロウさまです !
ウッドロウチェルシーも見事な弓の腕前だったよ。先生が見たら、きっと褒めてくださることだろう。
ジョニーだが、勝利の歌を奏でるにはちょいと早いんじゃないか ?
フィリアはい、イクスさんたち潜入組……それに、マクスウェルについて調べている方々の状況も気になりますね。
ハロルドそっちは専門にしてる奴らに任せましょう。私もちょ~~っとお邪魔したかったけど。
ジューダスお前がいたら場を乱すだけだ。何かを解剖したいのならロニだけにしておけ。
ロニそうだそうだ ! ……って !なんで俺が解剖される前提になってんだよ ! ?
ナナリーちょっと、こんな時くらい静かに出来ないのかい ?馬鹿は死んでも直らないっていうけど限度ってものがあるよ。
マリーははっ。だが、こっちのほうがわたしたちらしくていいと思うぞ。
ルーティそうね、難しい顔して湿っぽくなるよりスタンの暢気な顔を見てるほうが落ち着くわ。
スタンええ~、酷いなルーティ。けど、そうだな……全部終わったら俺腹いっぱいご飯食べて、ぐっすり寝たいよ。
リリスもう、お兄ちゃんてば……。でも、仕方ないから全部片付いたときにはエルロン家直伝のマーボーカレーを作ってあげる。
カイルあっ、それオレも食べたいです !リリスさんのマーボーカレーって何杯でも食べられますから !
リムルよくわかっているわね、カイル。かあさ……リリスさんの作るマーボーカレーはいつだって最高なんだから。
リアラふふっ、楽しみが増えてよかったわね、カイル。
S・ディムロス……全く、緊張感のない奴らだ。
S・クレメンテディムロスよ、小言ばかり口にしておると年寄り扱いされてしまうぞ。
S・シャルティエあはは、言われてますよ、ディムロス。
S・アトワイトもう……これじゃあ、私たちも似たり寄ったりね。
S・イクティノスだが、いざとなれば頼りになる者たちばかりさ。この世界の運命を託すには、十分なほどにな。

Character9話【21-11 セールンド城2】
ファントム(……限界……かっ……)
ヨウ・ビクエ聞こえるかしら、ファントム。
ファントムお前は…………。
ヨウ・ビクエ間に合ったみたいね。全く、仮想鏡界の中にゲフィオンを取り込むなんて……あなたの心が死の砂嵐によって崩壊するわよ。
フィリップファントム。これからきみの狂化止めを一時的に外す。
ファントムそんなことをすれば私とあなたの心が一つに――
マーク俺がフィルの心に戻って防御壁を作る。死の砂嵐相手じゃそう長くは持たせられないがギリギリまでフィルの自我は俺が守る。
カーリャ・Nフィリップ様の中にマークが戻りました。これで少し時間は稼げましたが……。
デクスこの後はどうするんだ ?
ヨウ・ビクエ私とネヴァンもファントムの仮想鏡界に入るわ。そこで内側から死の砂嵐を食い止める。ギリギリまでね。
帝国兵貴様たち。そこで何をしている。
カーリャ・N帝国兵 !
ヨウ・ビクエ時間がないわ。私とネヴァンはファントムの仮想鏡界に入るからここはよろしくね。
アリスちょっと ! ? 二人で対処しろって言うの ! ?冗談でしょ ! ?
アリスデクス ! ケリュケイオンの連中を呼んでちょうだい。アリスちゃんだけが働くなんておかしいでしょ !
デクス了解だよ、アリスちゃん !
コーキス……おかしいな。さっきから城内に兵士の姿がない。
バルドナーザ様 ! これをご覧ください !
メルクリアこれは……発信器の信号が壁の向こうから出ているようじゃが……。そこの壁の奥にヴァンがいるというのか ?
リヒターいや、奴はこの城の上空に具現化された島にいる筈だ。発信器の最初の信号もそれを示していた。
ジュニアどういうことなんでしょうか。ここに移動してきた、とか ?
ナーザそういうことになるな。いや、正確に言えばヴァンはここへ来て、壁の向こう側に発信器を置いていった……のだろう。
ナーザ壁の向こうに留まっているとは思えないからな。
メルクリアもしや、あの者は発信器に気付いていたのでしょうか ?
ナーザだろうな。しかもわざわざこの場所に置いていったということには意味があるはずだ。単に捨てるのならば『壁の向こう』などという妙な場所には置くまい。
フリーセル……殿下。この壁、動きます。
5人
フリーセル装置を動かしてみます。
メルクリア壁が……開いた ! ?
ジュニア魔鏡陣がある !
リヒターヴァンに付けた発信器も見つけたぞ。この魔鏡陣へ案内したかったということか ?
バルド私が先に潜入して様子を見て参ります。
ゲイボルグの島
ジーニアスこの辺りだよね。ジェイドさんと姉さんが調べろって言ってた場所は。
ティアええ……。でも建物らしいものは何もないしフォミクリーの装置もないわ。
コレット空を飛んで見てこようか ?
ガイいや、もしかして……地下、にあるんじゃないか ?
ヴァンその通りです。ガイラルディア様。
ティア兄さん ! ? どうしてここに ! ?
ヴァン死霊使い殿はいないようだな。直接島を見なくてもどこがフォミクリーの設置場所としてふさわしいかわかるのは、さすが生みの親と言うべきか。
ルーク師匠 ! フォミクリー装置を無効化したいんです。入り口は何処にあるんですか ?
ヴァン無邪気なものだな、ルーク。私が味方だと思って疑いもしないとは。
ガイ――おい、ヴァンデスデルカ。まさかお前……。
ティア帝国に味方するつもりなの ?
ヴァンいや、違う。私はこの世界に私とローレライが具現化された事による変化を調べていた。ずっとな。
ルークローレライの具現化……。もしかして第七音素の具現化を…… ?
ヴァン第七音素が本来の形で具現化された場合預言もまたこの世界に生まれることになる。この世界に預言が誕生したのなら――
ティアこの世界も滅ぼすつもりなの ! ?
リーガルティアもルークも落ち着け。まずはヴァンの話を最後まで聞こう。
プレセアはい。この人から敵意は感じません。敵対するつもりなら接触してこないはず、です。
ガイああ、確かにそうだ。――ヴァン、どうなんだ ?
ヴァンローレライが未来を見せてきた。もうすぐこの世界は滅びニーベルングに書き換えられるとな。
全員! ?
ロイドそんなこと……あるはずがない !イクスも俺たちも負けない !
ヴァン……もしもお前たちの敗北が確定したときは私を殺せ。
ティア兄さん ! ? 何を言っているの ! ?
ヴァンいざというときには私ごとローレライを消滅させるように、ディストに命じてある。
ヴァンだが――あれが中々素直に言うことを聞くとも限らない。だからお前たちにも頼んでおくのだ。
ルークだからって、ティアに……実の妹にそんなことさせようとするな !
ヴァン――この先の魔鏡陣から地下施設に辿り着く。封印は解いておいた。ローレライの見た未来を覆すために……頼んだぞ、ルーク。
バルド――ナーザ様。妙な仕掛けはありません。こちらにお越しください。
ナーザご苦労だったな、バルド。ここは何処だ ?
バルドはい。ここは帝国の上空に具現化された島のようです。
リヒターここは居住区画か ?
コーキス沢山人がいるけど……兵士じゃないよな。みんな普通の人みたいだけど……。
フリーセルもしや、デミトリアスたちが集めていた『本来の』ティル・ナ・ノーグの住民ですか ?
バルドああ。そうみたいだ。
バルバトスうおおおおおおおおっ !
メルクリアああっ ! ?
ナーザメルクリア ! ?
バルバトス――ククク……ハーッハッハッハッ ! 喜べ小娘 !この俺の手ずから命を刈り取られることをな !
バルド貴様 ! !
バルバトス邪魔だ ! そいつの首をねじ切るまで俺の復讐は終わらんぞ !
リヒターちぃっ !
リヒターコーキス ! 俺とバルドがこいつを止める !
コーキスわ、わかった !
ジュニア今、止血しました ! ナーザ将軍 !
ナーザしかし逃げると言っても――
フリーセルウォーデン様! あちらをご覧ください !
ユーリ峻円翔華斬 ! !
バルバトスぐぁっ ! ! ……貴様らっ ! ?
エステルナーザ将軍、こちらへ !
ヴィクトル兄さん、ルドガー君、バルバトスを囲むぞ !
ユリウス任せろ !
ルドガーエル ! リタとエステルの所に !
エルわかった ! パパもルドガーもユリウスも頑張って !
ユーリおっと、オレのことも頭数に入れといてくれよ。
ジュディスあら、抜け駆けなんてずるいわ。私も暴れさせてもらうわよ。
ロクロウ面白いじゃねぇか ! 俺も混ぜろ !
リタあいつらが本気でやり合うと、周りが危ないわ !
ベルベット仕方ないわね。フィー、マギルゥ、カロル。あたしたちは周りの人間を戦闘狂の連中から守りながら避難させるわよ。
マギルゥええい、次から次にやることを増やしおって !カロル ! 避難指示はお主に任せたぞ !
カロルわかった !みんな !ボクたちと一緒に、ここから離れて !
ゲイボルグの島
イクス――結構、敵の兵士がいるな。皆が先に上陸して、進路を確保してくれたはずなのにそれでもまだいるのか……。
カーリャお二人とも、コーキスたちです !
コーキスマスター ! みんな ! 助けてくれ !メルクリアが――
ミリーナメルクリア ! ? ひどい傷だわ ! 今治療するわね !
イクスどうしたんですか ! ?
ナーザバルバトスに襲われた。鏡映点たちが助けてくれて事なきを得たが……。
メルクリアすみ……ません……兄上様……。
ナーザ謝るのは俺の方だ。お前を守れなかった……。
ミリーナ大丈夫。急所は外れているしすぐに止血したみたいだから……治癒術も効きがいいわ。
ジュニアよかった…… !
バルドイクスさんたちは――
イクスカレイドスコープを探しています。キラル分子の反応を見る限りこの島まで運び込まれたことは間違いないんですけど、反応が途切れてしまって。
ヨウ・ビクエイクス、ミリーナ。聞こえてる ?あら、バルドもそこにいるのね。助かるわ。
バルドどういうことでしょうか ?
ヨウ・ビクエ単刀直入に伝えるわね。死の砂嵐が危険な状態なの。このままだとファントムの心を食い破ってこの世界を飲み込むわ。
フィリップ今は僕らがファントムの仮想鏡界を何とかフォローしているが、それほど長くは持たない。
カーリャ・N今のままではバロールであってもカレイドスコープであっても死の砂嵐を消せない可能性が高いそうです。
バルド――そうか。『異物』か……。
ヨウ・ビクエそうよ。かつてゲフィオンとフィルのカレイドスコープが消滅させた人々や世界の欠片が死の砂嵐に紛れ込んでいる。
ヨウ・ビクエそれらを全て集めてどかさなければならないの。その為に、バルドの力を――命を貸してちょうだい。
ナーザバルドに何をさせようというのだ。
フィリップ死の砂嵐の中に入ってもらいたい。それができるのはバロールの尖兵であり、死の砂嵐の中にいたことのあるきみだけだ。
メルクリアならぬ ! そ、そんなことをしたらせっかく甦ったバルドがまた死んでしまうではないか !
カーリャ・Nコーキスがあなたを守ります。そしてナーザ将軍も。
ヨウ・ビクエあなたが知っている二つの秘伝魔鏡技がこの作戦には必要不可欠なのです。
ヨウ・ビクエ【ギエラ・ビフレスト】であちらにいるシドニーと心を繋ぎ、そこからバルドとコーキスが死の砂嵐の中に飛び込みます。
ヨウ・ビクエ【ギエラ・ビフレスト】による虹の橋が繋がっている間はバルドもコーキスも存在を保てる筈です。
バルドでもそこからどうやって世界の欠片を集めるというのです ?
ナーザ【アナム・セパレート】。最初のイクス・ネーヴェの体を保存するために使った術だな。
ナーザあれはアニムスとアニマを切り分ける術。いわば魔鏡技版のカレイドスコープのようなものだ。
ヨウ・ビクエそう。それでバルドの元に世界の欠片を集めるの。同じカレイドスコープによって破壊されたバルドには世界の欠片と同じ傷痕がある。
ヨウ・ビクエ傷跡を辿って欠片たちが集まってくるはずよ。
イクスでも、その後は ? 世界の欠片ってとてつもなく膨大なんじゃありませんか ?それをどうやって死の砂嵐からどかすんですか ?
バロール俺にやらせようというのだろうヨーランド。いや、ダーナ。
バルドこの声は…… ! ? バロールですか ! ?
バロール――お前たちが、それ相応の犠牲を覚悟するというのなら、集めた世界の欠片は俺の方で処理してやってもいい。
バロールだがそうなると、死の砂嵐を消すことはできないぞ。それはお前たちがカレイドスコープで行うんだ。
バルドわかりました。やりましょう。
ナーザバルド ! ? 貴様、正気か ! ?
バルドナーザ様。私はずっと考えていたのです。私という存在が甦った意味を。
バルド本来人間が死を超越するなどあり得ないこと。それがこの身に起きたのは生前の贖罪をせよということなのでは、と。
フリーセル! !
ナーザ贖罪、だと ?
バルドセールンド王国の行為は正しいものではなかった。ですが、オーデンセに攻め入ったこともまた正しい行為ではなかった。
バルド我らもまた、失われた世界と命に向き合わねばならないのでしょう。私はビフレスト皇室の為に生きると誓いました。でもそれだけでは駄目なのです。
バルドウォーデン様やメルクリア様を正しく守るためにはそれ以外のものも守らねばならない。
ナーザ……そんなこと、お前は受肉する前から行っていたではないか。俺を裏切って黒衣の鏡士に与した。
ナーザお前はそれでいい。そのような部下を持ったことを誇りに思うぞ。
バルドウォーデン様…… !
ダーナイクス、ミリーナ。あなたたちはこの先へ進みなさい。目指すカレイドスコープは虹の橋を越えたところ――私の心核を封じたアイフリードの墓の中にあります。
ダーナデミトリアスがそこでニーベルングのレプリカを作ろうとしています。
三人
コーキス行ってくれ、マスター。俺、マスターが死の砂嵐を消せるようちゃんと準備するから。
イクスああ、わかった。頼んだぞ、コーキス !行こう、ミリーナ ! カーリャ !
ナーザでは、こちらも始めよう。ジュニア、フリーセル。メルクリアを頼むぞ。
ジュニアはい !
フリーセル承知しました。
ナーザコーキス。お前には【アナム・セパレート】のやり方を伝授する。練習する時間はない。なんとしても成功させよ。
コーキスわかってる。やってみせる !
デミトリアス……遅いな。
グラスティンああ。死の砂嵐が動かない。ゲフィオンはゲイボルグの島を作ったことで致命的一撃を食らったはずだが……。
グラスティン様子を見てこよう。まだ人体万華鏡が壊れていないなら魔導砲で奴の体を破壊する。
デミトリアスそうか……。任せるよ、グラスティン。
グラスティンああ、全て俺に任せておけ。お前の願いはなんでも叶えてやるさあ。

Character10話【21-12 ???】
シングスピルリンクは無事成功したね。でも、ここって……。
シャーリィはい……。ルグの槍を止めるために入った皆さんのスピルメイズとは少し感覚が違いますね。
マオうん、ボクもそう思う。この広い空間が、ずっとずっと続いていくような……。
リチアはい、いわばここはティル・ナ・ノーグ全体のスピルメイズですから、どこまで続いているのかわたくしも完全には把握できません。
ジェイなるほど。聞きましたか、モーゼスさん ?走り回って迷子にならないでくださいよ。
モーゼスなんでワイが迷子になる前提なんじゃ ! ?そがあなことするわけないじゃろ ! ?
クンツァイト測定。モーゼスの脈拍、体温が共に上昇。安全のためにも、すぐに正常に戻すことを推奨する。
ノーマちょっとモーすけ、みんな真剣なんだから真面目にやってよね !
モーゼスワイが悪いんか ! ?
ウィルいい加減にしろ ! !全く、こんなときまでお前たちは……。
クロエだが、いつも通りだと不思議と落ち着くな。正直、現状に不安がないとは言えないからな。
セネルああ。だが、その不安を取り除くためにもまずはマクスウェルの力が集まっている場所を探そう。
ミラ=マクスウェルそのことだが、予想通りこのスピルメイズにはマクスウェルの残滓が大量に溢れている。
ミラええ、私でも感じとれる程の量ね。
ヒスイおい、それってお前らに問題はねえのか ?さっきのモフモフ三兄弟も防御がどうとか言ってただろ ?
ミラ=マクスウェルああ、その点は何も異常ない。彼らの装置が正常に作動してくれている証拠だな。
ロゼけど、長居してると影響は出るだろうし仕事はささっと終わらせたほうがいいでしょ。
デゼルお前の口振りくらい、簡単なことならいいんだがな。
ミラ=マクスウェル私からは何とも言えないが、マクスウェルの残滓がある一定の方向へ流れているのは確認できた。間違いなく、人為的なものだ。
ユージーンとなると、その流れを追えばマクスウェルの精霊装を扱っている人物のところへ辿り着けるのだな。
ザビーダオーケイ。んじゃ、気合い入れていこうぜ !
ゲイボルグの島 アジト接岸地点
ラタトスクおい、こっちの帝国兵たちは全員倒したぞ。浮遊島の防衛機能はまだ回復しねえのか ?
コンウェイ残念だけど、まだ原因は判明していないんだ。もしかしたら、帝国側から何か仕掛けられた可能性があるね。
ユアンこちらでも防衛に回っているが正直、あまり長くは持ちそうにない。
ミトス……いいよ、ボクが全員倒してあげるから。雑魚がいくら集まっても無駄だってことを教えてあげる。
マーテルいけません、ミトス。あなたも相当疲弊しているはずです。これ以上の無茶は……。
マルタ! ? ラタトスク ! ! 前 ! ?
ラタトスク……ちっ。また出やがったか。一旦通信を切るぞ。まずはこいつらを片付ける !
帝国兵レプリカリビングドールA――排除、開始。
ラタトスクやれるもんなら、やってみやがれ !
マルタラタトスク ! 私も !
帝国兵レプリカリビングドールB―――― ! !
マルタこれ以上、勝手なことはさせないんだから !
ラタトスク……無理はすんじゃねえぞ、マルタ。
マルタはぁはぁ……。ううん、平気。みんなも戦ってるんだから、私だって…… !
帝国兵レプリカリビングドールたち――増員、確認。殲滅対象二名を排除せよ。
マルタそんな ! ? まだこんなにいたの ! ?
エミルマルタ ! 逃げて !ここは僕たちが食い止めるからマルタだけでも…… !
マルタ駄目 ! エミルたちを置いていくなんてできないよ !
ラタトスク俺たちのことは気にするな !いいから逃げろ !
帝国兵レプリカリビングドールたち攻撃、開始 !
? ? ?……うるさい蠅どもが。消え失せろ ! !
二人! ?
ロンドリーネふぅ~、間一髪 !二人とも、平気 ?
マルタロディ ! ?じゃあ、今の魔術って……。
ロンドリーネあー、違う違う。君たちを助けてくれたのは、この人ね。
クリード……助けたわけではない。邪魔な連中を消し飛ばしただけだ。
エミルあなたは……クリードさん ?
ディオくそ~ ! また先越されちまったぜ !今度こそオレがかっこよく登場できると思ったのに !
メルもう、ディオ ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ !でも、無事でよかったです。
クルールクルール ! クルール !
ラタトスクお前ら、どうしてここに……。地上軍に合流してたんじゃなかったのか ?
ディオそうなんだけどさ、なんかこっちもヤバイって聞いて急いで戻ってきたんだよ。あと、それから――
メル待って。詳しいことはわたしたちよりあの人に説明してもらったほうがいいかも。クリードさん、魔鏡通信はまだ繋がっていますよね ?
クリード……勝手に使え。通信はそのままだ。
ブルート――マルタ、そこにいるのか ?
マルタパパ ! ? ねえ、今どこにいるの ! ?ローエンたちの話だと、ケリュケイオンからいなくなったって……。
ブルートすまない……。だが、こんな身体でもお前たちに手を貸したかったのだ。幸い、兵を動かすことには慣れているからな。
ブルートだが、地上軍と合流した時にお前たちの浮遊島の防衛機能をジャミングする装置を帝国の地上基地で見つけたのだ。
ロンドリーネ私と双子ちゃんたちも、その装置に気付いて動いていた時にブルートやクリードと合流できたってわけ。
ブルートだが、地上の装置を停止させても防衛機能が受けたダメージが戻るわけではない。機能の再起動にはそちら側で技術的な手を加える必要があった。
フローラそれなら、私たちが直せるんじゃないかと思って浮遊島に行くことにしたの。
クリード……いいか。フローラのために私は動いているだけだ。わかったら、さっさと防衛機能がある場所まで案内しろ。
ディオそんな偉そうにしなくても、ちゃんと案内するって。けど、あれはどうすんだ ? 防衛機能を戻すためにキラル分子ってヤツが必要なんだろ。
P・カノンノそれも問題ないよ。今から、私たちも戻ってすぐに届けるから。
カノンノ・Eジェイドさんが言ってた通り帝国軍の基地に少しだけキラル分子が残ってたの。それを使えば、多分大丈夫だと思う。
カノンノ・Gだから心配しないで。それじゃあ、浮遊島に戻ったらまた連絡を入れるね。
ブルートマルタ、私が出来るのはここまでだ。他の者たちの手を借りることになってしまったがお前たちの無事を祈る。
マルタ……うん、ありがとう、パパ。
ゲイボルグの島 虹の橋前
イクス……くそっ、虹の橋はもうすぐそこなのに敵の数が全然減らない !
リッドこのまま固まって戦っててもジリ貧か……。
ファラねえ、リッド――
リッドああ、多分考えてることは一緒だぜ。
イクスリッド ? ファラ ?
リッドなあ、イクス。このまま全員で戦ってても虹の橋まで辿り着くには時間がかかりすぎる。
ファラ敵は全部わたしたちのほうに引き付けるよ。だから、その隙にイクスとミリーナは先に行って !
メルディバイバ ! メルディも賛成 !
キールああ、それがもっとも効率的で可能性が高い。ぼくたちの負担は大きくなるが、その分はリッドに働いてもらうさ。
リッドお前もやるんだよ、ったく。けど、ここまで来たら退けねぇよな。
ミリーナみんな……。
チャットご安心ください、ミリーナさん。キャプテンのボクがついていますからね !
フォッグがははははっ ! よく言った、坊主 !ここはひとつ、景気づけに俺さまが派手に吹き飛ばしてやるぜ !
フォッグ――くらいな ! エレメンタルマスター ! !
リッド行け、イクス、ミリーナ !あとはオレたちに任せろ !
イクスリッド…… !ああ ! みんなの想いは決して無駄にはしない !行こう、ミリーナ !
ミリーナ……ええ !
グラスティンおっと……。ゲフィオンの様子を見る前にお前らに鉢合わせするとはなあ……。
イクス……グラスティン ! ?
グラスティンああ ? 何驚いた顔してんだよ ?俺がデミトリアスのところにいると思ったか ?
グラスティンどうせお前らが余計なことをしたせいで死の砂嵐が動かないんだろうなあ。
グラスティンそれにしても、ここに来たのはお前らだけか ?それなりにレプリカを配置しといた筈なんだがなあ。
グラスティンなぁ ? 一体どれだけの鏡映点たちを犠牲にしてここまで来たんだ ?
イクス犠牲になんてしていない…… !皆それぞれの場所で戦ってるんだ !
グラスティンヒヒヒッ ! ものは言い様だなあ、イクス・ネーヴェ !
カーリャそっちこそ、どれだけの命を犠牲にしているんですか ! ?
ミリーナあなたは、どうして非道なことをしてまで陛下のやろうとすることに協力しているの ?この世界を滅ぼしてまで。
グラスティンどうして ? ヒヒヒッ ! 面白いことを聞くな !そんなの、決まってるじゃねえか。
グラスティンデミトリアスがそれを望んでいるからだよ。だから俺は、あいつの願いを叶えてやってるのさ。
グラスティン俺はな、あいつが望むならお前たちを殺すことや世界を壊すことだって手を貸してやる。
グラスティンあいつは俺を地獄から解放してくれた唯一の人間なんだからな。
イクス地獄…… ?
グラスティンああ、そうだ。俺にとって、それ以上の理由はいらないんだよ。そして、お前たちは俺たちにとっては邪魔者だ。
グラスティンだから、さっさと死んでくれ。
ミリーナイクス ! ?
イクスああ、凄い殺気だ…… !気を付けろ、ミリーナ。もしかしたら、まだ後ろに兵士たちがいるかもしれない !
グラスティンヒヒヒッ ! 安心しろよ !ここにいるのは俺だけだ !だが――
グラスティンレプリカ「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」「『俺』が一人とは限らねえけどな ! 」
カーリャな、なんですか ! ?
イクスグラスティンのレプリカか ! ?
グラスティンヒヒヒッ ! ! さあ、来いよ鏡士共 ! !その身体を、ズタズタに切り裂いてやるからよぉ ! !

Character11話【21-13 ゲイボルグの島2】
イクスはああああっっ ! !
グラスティンヒヒヒッ ! 楽しませてくれるなぁ !だが、その程度のダメージじゃあ俺を殺すことはできねえぞ !
カーリャそんな……あんなにイクスさまとミリーナさまの攻撃を受けているのに…… !
ミリーナクロノスの力のせいよ……。それで私たちから受けたダメージを無効化してるんだわ。
グラスティンそういうことさ。だから、いくら俺を倒したって無駄なんだよ。わかったら、大人しく肉の塊になりな。
イクス……いや、違う。無駄なんかじゃない。
グラスティンあぁ ? お前、今なんて言った ?
イクスグラスティン……。本当に俺たちの攻撃が無駄ならどうして回復時間が遅くなっているんだ ?
グラスティンヒヒ…… !
イクス図星か……。お前の力のことはルドガーさんやヴィクトルさんたちから聞いていた。
イクスけど、どんなエネルギーでも使えば必ず消耗する。回復が遅くなっているのは、クロノスの力が弱まっているからじゃないのか ?
グラスティン半分正解ってとこだな。だがな、俺がクロノスの力を完全に使えないのはその力をデミトリアスへ回しているからさ。
イクスなんだって ?
グラスティンあいつ自身がオリジンの力を手に入れるために必要なことなんだよ。だが、もう一つ準備することがあってなあ。
グラスティンお前たちとの遊びも、ここまでだ !
イクス1st! ? マズい ! イクス ! !すぐにここから離れろ !魔鏡陣が仕掛けられてる ! !
イクスそんな ! ? 動け……ない !
グラスティンようやく捕まえたぞ !本当はもっと痛ぶってから始めようと思ったんだがこれ以上長引くと厄介だからなあ !
ミリーナやめて ! イクスに近づかないで !
グラスティン邪魔するな ! 今は貴様に 用はないんだよ ! !
ミリーナきゃあああああ !
イクスミリーナ ! !
グラスティンああ、そうか。大事な幼なじみだったなあ。いや、お前たちは揃ってあの魔女に作られた可哀想な偽物かぁ。
イクスだま……れ !
グラスティンヒヒヒッ、聞こえないなあ。さて、お前があのジュニアの代わりなのは不服だがより優秀な鏡士が必要なんだから仕方ない。
イクス1stジュニアの代わり…… ! ?
グラスティンお前に鏡の精霊の心核を埋め込めば新しい精霊王オリジンが誕生する。そうすれば、俺たちはニーベルングに辿り着く !
カーリャイクスさま ! ?
グラスティンじゃあな、イクス・ネーヴェ !俺たちのために死んでくれ !
グラスティンな、なんだ ! ? この揺れは ! ?
カーリャはっ…… ! イクスさまたちの頭上の空間に亀裂が入ってますよ ! ?
グラスティン死の砂嵐か ! ?しかし、ここに影響が出るわけが…… !
コーキスマスターから離れろ ! !グラスティン ! ! ! !
二人コーキス ! ?
イクスコーキス……どうして…… ! ?
コーキス今は説明してる状況じゃないだろ ! ?とにかく、まずは魔眼の力で魔鏡陣を無力化する !
コーキスどうだ、マスター ? ちゃんと動けるか ! ?
イクスあ、ああ……。けど……。
バロールイクス。コーキスの死の砂嵐での作業は終わった。故に、お前のために呼び寄せてやったのだ。感謝するのだな。
グラスティン……鏡精の分際で俺の邪魔しやがって。そんなに死にたいなら、お前もまとめて殺してやるよ !
イクスコーキス !
コーキス平気だ、マスター !こいつは俺が倒す !
グラスティンなんだ ? バロールの魔眼でも使うつもりか ?言っておくが、そんなものは俺には通用しないぞ ?
バロールコーキス。この者の言う通りだ。魔眼だけではクロノスの力で無効化されるぞ。
コーキスわかってるよ。だから、ボスに教えてもらった『あの術』でクロノスの力を取り除く !
カーリャこ、今度はなんですか ! ?
死鏡精カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ !
グラスティンチッ ! ? 死鏡精の群れ共か !死の砂嵐の亀裂からこっちへ来やがったな ! !
コーキスマスター、ミリーナ様 !パイセンも早く俺の後ろに !
カーリャコ、コーキス ! 平気なんですか ! ?
コーキスああ ! 俺の魔眼の炎で防御壁を作る !はああああっっ ! !
イクス凄い……これが本来のコーキスの力、なのか……。
死鏡精カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ !
グラスティンウザい羽虫共が…… ! !そんなに死にたきゃ、クロノスの檻の中にでも飼ってや………… ! ! ! !
グラスティンな、なんだ……これは…… ! !お、おい…… ! ! 一体どうなってやがる…… ! !
イクスグラスティンの身体が燃えてる!?いや、違う……あの炎は……。
ミリーナええ……贄の紋章を付けられた人たちが火柱になってしまったときと同じだわ……。でも、どうして……。
グラスティン贄の紋章 ! ? 馬鹿な ! ? 俺の体に刻印されたのはビフレストが開発した追跡用の発信器の筈 ! ?
グラスティンそれにフリーセルに付けられた刻印は解除した筈だ。それが、何故今になって発動する…… ! ?
グラスティン(これは……何だ。俺にこんな記憶はないぞ ! ?)
サレ……なるほどね。贄の紋章はビフレストの刻印が元になってたのか。やっぱりキミはグラスティンのアキレス腱だったんだね。
サレキミを具現化して正解だったよ、フリーセル。
サレじゃあ、この刻印をグラスティンのレプリカの一人に付けてこよう。そうすれば、ほかのレプリカに呪いの力は分散されて、奴は気付かない。
フリーセルだが、本当にいいのか ? もし、それがバレたらお前も帝国にはいられなくなるぞ。
サレ平気だよ。刻印は殺したあとに付けてもいいんだろ ?だったら、僕が帝国を出て行くついでに一体くらいはあいつのレプリカを殺しておくさ。
サレあとは、レプリカ同士で共有している力が分散するから呪いの力も他のレプリカに分散する。そのせいであいつはクロノスの力を使い続ける限り――
フリーセル……いずれは本体の身体に刻印の力が蓄積されていく、というわけか。
サレそう、少しずつ毒を盛られていると知らずに、ね。
フリーセル確かに、理論上は可能だ。俺があいつを殺すのに失敗したときの保険にもなるだろう。
サレそうさ、何事も準備を怠らないほうがいい。ああ、それと、この会話を呪いが発動したときに奴に見せられるようにできるかい ?
フリーセル……構わないが、それに何の意味がある ?
サレ意味なんてないさ。ただ、そうだね……意味があるんだとすれば……。
サレ――僕はあいつのことが、大っ嫌いなんだよ。
グラスティンあのクソ野郎どもがああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ ! ! ! ! ! !
死鏡精カガミシニシヲ ! カガミシニシヲ !
コーキスグラスティンの周りに死鏡精が…… !
バロール……もう遅い。奴は死鏡精にアニマごと憑りつかれて終わりだ。
グラスティンふざけるなあああああああああっ ! ! ! ! !オレハ……オレハ…… ! ! ! ! ! ! !
カーリャな、なんですか ! ?今度は真っ黒な球体みたいなものになっちゃいましたけど ! ?
バロール自らクロノスの檻の中に閉じ籠ったか。血迷った真似を……。
死鏡精カガミシ、ニ、シヲ。カガミ、シニ、シヲ――。
ミリーナ……死鏡精たちが球体ごと虚無に戻っていったわ。
イクス……なあ、バロール。グラスティンは、いったいどうなったんだ ?
バロールクロノスの檻ごと、虚無へと連れていかれた。もう戻ってくることはないだろう。
バロールクロノスの檻の中で流れる時間は『永遠』だ。たとえ檻の力が解除されても、もうその時にはアニマも形を保つことなく、虚無へと消えていく。
バロール奴は死鏡精に精神を侵され肉体的にも刻印の激痛から逃れられず永遠に『死に続ける』ことになる。
イクスそんな……。
バロール奴が本能的に生きようとした結果だ。たとえ、その意思が歪んだものへと変わってしまったとしてもな。
ミリーナ行きましょう、イクス。私たちに立ち止まっている時間はないわ。
イクス……ああ。まだ何も解決していないからな。
イクス……そうか。じゃあ、コーキスは死の砂嵐を辿って俺たちのところまで駆けつけてくれたわけなんだな。
コーキスああ、バロールに道案内されながらだったけどなんとか間に合ってよかったよ。
カーリャホントですよ ! あんなにギリギリに出て来るなんてカーリャはびっくりしましたよ !
コーキスわ、悪かったって ! けど、グラスティンが持ってた鏡の精霊の心核は、ちゃんと回収できてよかったよ。
コーキスぶっちゃけ、死鏡精に虚無の中まで持っていかれてたら、また戻らないといけなくなっちまうからな。
カーリャそれじゃあ、コーキスはその鏡の精霊の心核を取り戻すためにこっちへ来たんですか ?
コーキスいや、それは偶然でさ。マスターたちがデミトリアスを倒すために必要な術をボスから教えてもらって……。
バロール待て、コーキス。その話は後だ。この先、誰かいるぞ。
コーキス誰かって…… !あ、あれは…… !
ヴァン来たか、鏡士諸君。
コーキスヴァン様 ! ? こんなところにいたのかよ !ボスもみんなも心配してたんだぜ ! ?
ヴァン……そうか。だが、そのような気遣いは無用だ。
イクスヴァンさん ! どうして剣を…… !
カーリャも、もしかして、ヴァンさまはあっちに寝返っちゃったんですか ! ?
ヴァン……それが私の中にいるローレライが見せた未来だ。
コーキスな、なに言ってんだよヴァン様 ! ?ローレライってなんのことだ ! ?
ヴァンお前たちも聞いているだろう。我々の世界では、預言と呼ばれる絶対的な未来が存在していた。
ヴァンそして、この世界にもローレライが存在し私に一つの星の結末を見せた。それが、新たなる星の誕生だ。
イクスそれって……今のティル・ナ・ノーグが滅びて新生ニーベルングが誕生する未来ということですか ?
ヴァンその通りだ。そして、お前たちはここで私に倒されデミトリアス帝の悲願は成就される。それが、この星の辿る未来だ。
ヴァンもし、それがこの星の惑星預言なのだとしたら覆すことは出来ない。我々人間が、どれだけ足掻こうともな。
ミリーナそんな……。私たちは、本当に戦わないといけないんですか ?
ヴァンそれが預言ならば、避けられないことだ。
ヴァン――だが、もしここで私がお前たちを通しデミトリアス帝を倒すことができれば、ローレライの未来予知は完全なものではないと証明できる。
カーリャ……は、はい ?えっと……すみません、カーリャ、なんだか話がこんがらがってきちゃったんですけど……。
イクス……つまり、俺たちがデミトリアス陛下を倒してニーベルングの誕生を阻止できればヴァンさんの望む結果が得られるんですね。
ヴァンそうだ。私が見た未来の結末は惑星預言に該当するものだろう。本来ならば、その預言を覆すことは不可能だ。
イクスだったら、俺たちは絶対にティル・ナ・ノーグを守ります。一緒に戦ってくれている、みんなの為にも。
ヴァンああ、私もそう願いたいものだ。
ミリーナ……ヴァンさん。もし、私たちが負けてしまってデミトリアス陛下を止められなかった場合はどうするつもりだったんですか ?
ヴァンその時はローレライごと私を殺してもらう手筈を整えてある。
コーキスな、何言ってんだよ ! ?
ヴァンとにかく、私が望む世界は預言のない世界。ただ、それだけだ。
イクス……その理由を聞いてよかったです。尚更、俺たちは負けられなくなりましたから。
コーキスああ、ヴァン様が死ぬなんて知ったらリグレット様やアリエッタ様が悲しむからな。
ミリーナそれにティアは絶対にそんなことを許さないと思うわ。ルークさんやアッシュさんだって……。
ヴァンならば、私の望む結果を示してくれ。ここが、守るべき価値がある世界ということをな。
イクスここは、アイフリードの墓なのか ?
バロールああ。元々はニーベルングが甦ったときに揺り籠から戻るため、虹の橋を架けるための島だったがこれを帝国の奴らが利用しているのだろう。
ミリーナじゃあ、やっぱりここにデミトリアス陛下が――
カーリャミリーナさま ! あれ !あの中心に置いてあるものって…… !
イクスカレイドスコープ !こんな場所に運び出していたのか。
デミトリアスそうだよ。久々だね、ミリーナ。そして、イクスとその鏡精、コーキス。
イクスデミトリアス……陛下。
デミトリアスここからティル・ナ・ノーグを分離させ新生ニーベルングを作るためのキラル分子を調達するつもりだからね。
デミトリアスそして、本来ならばここに君たちを通すつもりはなかったのだが、やはりヴァンは私の味方をしてくれなかったようだ。
デミトリアス一つ、念のために君たちに聞いておこう。グラスティンは……死んだのか ?
イクス……死んだ、とは言えないけれど多分、もうここには戻って来られない。残っているのは、あなただけだ。
デミトリアス……そうか。私は多くの友を失ってきたつもりだが本当に友と呼ぶべき相手は、あの男だったのかもしれない。
デミトリアス思えば……ただ生きることしかできなかった私を『何者』かにしてくれたのも彼だったよ。
イクスデミトリアス陛下。だったら俺たちにも教えてください。そんな人を失ってまであなたは、この世界を滅ぼすつもりなのか ! ?
デミトリアスそうだ。これは、私がやらなければならないことだ。
ミリーナ待ってください ! もし、滅びから逃れる方法がないと思っているのなら、それは違います !
イクスそうです ! そのカレイドスコープにも本来のバロールの力が使える機能があるはずなんです ! それを俺とミリーナが使えば――
デミトリアス使えば……フィンブルヴェトルを止められるのか ?
イクスはい、だから――
デミトリアス……イクス。それでは意味がないんだよ。私の望む結果ではない。
イクスどうしてですか ! ? 世界も守れて全員が助かる道があるのに……。
デミトリアスならば教えてやろう、イクス。私が望んでいるのは、世界の救済などではない。
デミトリアス君たちのような偽りの存在を私の手で終わらせてあげたいんだ。

Character12話【21-14 ゲイボルグの島3】
イクス偽りの存在を終わらせるって……。
デミトリアスそのままの意味だよ。君やミリーナ、そして鏡映点たちもそうだが本来、君たちは存在していない人間のはずだ。
デミトリアスそれなのに、他人の都合で生まれてしまった君たちに世界の行く末までをも託す結果となった。果たして、これが健全な世界だと言えるのだろうか ?
デミトリアス――いや、それは本来のあるべき姿ではない。本当の彼らには、その者たちだけが持つ使命や人生そして最後があったはずなのに、歪められたのだ。
デミトリアスそれは、本来の彼らの存在に対する冒とくだ。そして、このティル・ナ・ノーグという世界がある限り偽りの世界が続いてしまう。
デミトリアスだからこそ、この虚言にまみれた世界を誰かが終わらせなければならないのだ。
コーキスふざけるなっ ! !だったら……その為ならマスターたちが死んだっていいって言うのかよ ! ?
デミトリアス……イクス・ネーヴェという男はもう死んでいる。そこにいるのは、ゲフィオンたちが生み出した幻影だ。
コーキスマスターを……俺の大事なマスターを侮辱するな ! !
イクスやめろ、コーキス ! ?むやみに突っ込むな ! !
デミトリアス……理解してもらおうとは思っていない。だから、私が責任を持って終わらせるのだ。
コーキスうわああああああっ ! !
カーリャコーキス ! ?
デミトリアスよく見ておけ。私は、そのためにマクスウェルたちの力を手に入れたのだ ! !
デミトリアス……流石はグラスティンだ。お前が残したクロノスの力のお陰でマクスウェルの力も最大限に引き出せる。
カーリャミリーナさま……カーリャでもわかります…… !
ミリーナ……ええ。今まで感じたことのない力だわ。
イクスそれでも、俺たちはあなたを止める !コーキス !
コーキスああ ! 俺は大丈夫だ !さっきやられた分は、ここできっちり返す ! !
二人うおおおおおおおおおおおっっ ! !
デミトリアス……無駄だよ。
コーキスダメージがない ! ?もしかして、グラスティンの奴と一緒か ! ?
イクス違う…… !そもそも俺たちの攻撃が効いてない ! ?
ミリーナだったら、私の魔鏡術と精霊装の力で…… !――月鏡・継黒陣 ! !
デミトリアス……同じ精霊装でも、力の差は歴然だよ。
ミリーナそんな……。
バロールあの者の言う通りだ。イクス、コーキス、奴の纏う力はマクスウェル……いや、オリジンをも凌駕する力となっている。
バロールたとえ、我が魔眼を解放したところで奴の力を消すことはできない。秘伝魔鏡術でも打ち消されてしまう。
イクス……そんな、だったらどうやって。
デミトリアスさあ、グラスティンから奪った鏡の精霊の心核は返してもらうぞ。イクス、君がオリジンとなり新生ニーベルングを誕生させるためにもな。
ミラ=マクスウェル見つけたぞ ! ここがマクスウェルの残滓が集まっている場所だ。
? ? ?……お前は……そうか、別の世界に生きるマクスウェルなのだな。
ロゼひぃぃ ! な、なに ! ? 今の声 ! ?あたしの聞き間違い……じゃないよね ?
アニーは、はい。わたしにも、はっきりと聞こえました…… !
グリューネあらあら~、どこかに新しいお友達がいるのかしら ?
ミラ=マクスウェル……そこにいるのだな。マクスウェル。
マクスウェルああ、よくここまで来れたものだ。そして、お前たちがここに来た理由もすでにわかっておる。
ミラ=マクスウェルならば、単刀直入に用件を伝える。今、お前の力は帝国側で使われる精霊装に流れている筈だ。
ミュゼここに集まっているあなたの残滓を集めればその精霊装の力も解除される。違うかしら ?
マクスウェル……その通りだ。
ティトレイよっしゃあ ! んじゃ、持ってきた精霊片吸引器で集めようぜ !
マクスウェルいや、その必要はない。既にここには私を新たに実体化させるほどの残滓が集まっている。そうすれば、力の流れも止めることができる。
ヒルダだったら、それを早くやればよかったんじゃないの ?
マクスウェル……いや、私だけでは実体化は不可能だった。だからこそ、必要な物をお前たちから借りたい。
ベリルな、なんだって ! ?ここまで来て変なものを要求したら承知しないからな ! ?
イネスそうね、できれば今の私たちで用意できるものだとありがたいんだけど。
マクスウェル私が実体化するためには、ここにある残滓を繋ぎ合わせなくてはならない。そのために、お前たちの力を貸してほしい。
ライラ具体的には、何をすればよいのですか ?
マクスウェルお前たちが纏った精霊片そして、精霊自身の力が必要だ。
スレイそれって、つまり……。
ミクリオ僕たちの力を、マクスウェルの残滓に取り込ませるということか。
ウィル待ってくれ。纏っている精霊片はともかく精霊の力を持つ者たちに害はないのか ?
マクスウェルああ、少しずつお前たちの力を分けてもらうだけだ。問題はない。
エドナじゃあ、ワタシの分はミボから取っておいて。
ミクリオちょっと待て ! 僕は納得しないぞ !
ザビーダなんなら、このザビーダ様がエドナちゃんの分も引き受けるぜ ?
フェニックスその必要はない !何故なら、エドナには我がいるからだ !
フェニックスそう ! 我は不死鳥 !我が名はフェニ――
マクスウェルでは、始めるぞ。
コハクなに……下から光が……。
シングなんだろう……凄く温かくて、安心する。
ガラドまるでスピリア同士が繋がったときみたいだ。
ミラ=マクスウェルこれが人間や精霊たちの想いなのだろう。さあ……応えてくれ。マクスウェル。
マクスウェル――――無事、実体化に成功したようだな。
スレイそれじゃあ、帝国の精霊装の力も…… !
マクスウェルいずれ、私の力が費える時が来よう。だが、奪われた力まで取り戻すことはできん。
マクスウェルこの世界の行く末は、やはり最後は人間たちの手に委ねられたのだ。
コーキス――駄目だ ! 何度やっても攻撃が無効化される !
デミトリアスいや、よくここまで耐えたものだ。これだから、鏡士や鏡精は侮れない。
イクスうおおおおおっっ ! !
デミトリアス……無駄だと言っているのが――ん ?
デミトリアスくっ…… !
ミリーナイクスの攻撃が……通じた ?
デミトリアス馬鹿な……何故マクスウェルの力が弱まっている。こんなことが起こるはずが…… !
デミトリアスいや、そうか……。君たちは鏡の精霊の心核のレプリカを所持していたね。そこからアプローチをかけてきたのか。見事だよ。
コーキスなんかよくわかんねえけどこれなら勝てる !それに、こっちにはまだ切り札があるんだ !
デミトリアス……ふっ。この程度で形勢が逆転したつもりかね ?だったら少し、本気を出させてもらおう !
ミリーナ嘘…… ! まだこんなに力が…… !
デミトリアス私も出し渋っている訳ではなかったさ。強すぎる力は、時にコントロールが難しくてね。だが、もう充分身体は馴染んだ。
デミトリアス――さて、一人くらいは、この辺りで退場してもらうとしようか。
イクス消えた ! ?
デミトリアス……まずは君からだ、鏡精コーキス。
コーキスうわあああああああああああああああっっっっ ! !
イクスコーキスーーーーーーー ! ! ! !
デミトリアス即死は避けたか。だが、致命傷であることには違いない。
イクスデミトリアスーーーーーーーー ! ! ! ! ! ! ! !
イクス1st駄目だ、イクス ! ? 冷静になれ !このままじゃあ、相手の思うつぼだ !
イクスよくも……よくもコーキスを ! ! ! !
デミトリアス……哀れだな。我を失う程の怒りに支配されるとは。やはり、お前はただの幻影だ。
イクスうおおおおおおおおおおっっっっ ! !
イクス1st(いや……違う ! イクスは咄嗟にデミトリアスをコーキスから遠ざけたんだ ! 何故なら――)
カーリャミリーナさま !コーキスが…… ! コーキスが…… !
ミリーナしっかりして、コーキス !お願い、目を覚まして…… !
ミリーナ(イクスは、私がコーキスに治癒術をかけられるようにしてくれたのに……それなのに、私はイクスのために何の力にもなれていない…… !)
ミリーナ(私に力があれば、コーキスだって守れたかもしれないのに…… !)
ミリーナ結局……私はイクスに守られてばかり…… !どうして…… !
? ? ?(泣くな、ミリーナ。お前には、イクスを守るための力があるはずだ)
ミリーナ……えっ、誰……なの ?
? ? ?(私の声に耳を傾けろ。そうすれば、私の力をお前も引き出せるようになる)
ミリーナまさか……あなたは…… !
ヨーランド死の砂嵐の勢いが弱まったわ。バルドとコーキスが世界の欠片を集めてくれたおかげで死の砂嵐も凪いで、ゲフィオンも意識を取り戻せた。
カーリャ・Nミリーナ様……。
ゲフィオン大丈夫よ。あと少し……あと少しだから……。なんとかこの仮想鏡界を守っていて……。
ゲフィオンそれから……ありがとうフィル。上手くミリーナとの意識を繋げることができたわ。
フィリップ本当によかったのかい ?こんなことをすれば、きみは……。
ゲフィオンええ……私の意識ごとミリーナに取り込まれる。そうなれば、私のアニマは消滅するでしょうね。
ゲフィオンだけど、どの道、防御壁が壊れてしまえば私の存在は消滅するわ。だったら最後くらい責任を果たさないと。
フィリップ責任……か。それは僕も背負わなければいけないことだよ。
ゲフィオン……いいえ。あなたはもう充分よ、フィル。最後まで、あなたを巻き込んでごめんなさい。
フィリップ……ずるいよ、ミリーナ。きみからそんな風に言われたら……僕は自分のことを許してしまうかもしれない。
ゲフィオン……それでいいのよ。だって、それは私が望んでいることなのだから。
フィリップいや、それじゃあ駄目なんだ。僕はこれからも自分を許すことはない。そうやって……生きていくって約束したんだ。
ゲフィオン……ごめんなさい。何もかもあなたに押しつけてしまって。それから、ありがとう。
ゲフィオンそれじゃあ、始めて……。
カーリャ・N――待ってください、ミリーナ様 !
ゲフィオン……ごめんなさい、カーリャ。だけど、私は……。
カーリャ・N……わかっています。もう、今のカーリャにミリーナ様たちを止める術はありません。
カーリャ・Nそして、それがミリーナ様の望んでいることだということもです…… !
ゲフィオン……ありがとう、カーリャ。それじゃあ、最後にもう一度だけ私のわがままを聞いてくれるかしら ?
カーリャ・N……なんでしょうか ?
ゲフィオンミリーナを……彼女たちを助けてあげて。それが私の……最後のお願いよ。
カーリャ・N……ええ、畏まりました。
ゲフィオンそれじゃあ、フィル。今度こそ、お願い…… !
フィリップああ……さようなら、ミリーナ。
カーリャ・Nミリーナ様 ! カーリャは…… !カーリャはミリーナ様のことが大好きです ! !ずっとずっと…… ! カーリャは大好きです ! !
ゲフィオンええ、私もよ。私の鏡精として生まれてきてくれて本当にありがとう、カーリャ。
ゲフィオン(ミリーナ。私の力は全てお前に託した。あとは、お前自身がこの力をどう使うかだ)
ゲフィオン(お前たちは一人ではない。お前たち自身で繋ぎ育んできた時間があるのだ)
ミリーナ……ええ。私たちには仲間がいる。この世界で出会って、一緒に過ごしてきた仲間が。
ミリーナ……お願い、みんな !私たちを、助けて ! !
デミトリアス複数の巨大な鏡を具現化したのか ?だが、あれはいったいなんだ ?
ミリーナこれが、私の望んだ力…… !みんなを守るための力よ !
全員イクス ! ミリーナ !
イクスみんな…… !どうして鏡の中から…… ! ?
カーリャ・Nミリーナ様が具現化した鏡が鏡映点の皆様をここに呼んだのです。
カーリャ・Nあの鏡は、鏡士だけが使える転送ゲートの力を具現化したものでした。お陰で、私たちはこうしてイクス様たちのところへ駆けつけることができました。
スタンいきなり目の前に鏡が出てきたときは正直、驚いたけど。
リッドけど、敵の罠って感じでもなかったしな。それに、イクスたちが戦ってる姿も写ってたぜ ?
カイルあっ、それオレも見たよ !だから急いで鏡の中に入ったんだ。
ロイドなんだ、やっぱみんな考えることは一緒だったんだな。
エミルでも、他のみんなは来られなかったみたいだね。
ミリーナそれは……多分、私の力だと一つの鏡で一人を呼ぶのが精一杯だったからだと思うわ。
スレイそっか。けど、オレたちだけでもこうして駆けつけられたんだからミリーナは凄いよ !
ユーリああ、これだけ集まれば十分だ。仲間を傷つけられた借りはきっちり返させてもらうぜ。
デミトリアス仲間か……君たちは哀れな被害者だ。その者たちを助ける義理などない。
セネルおい、あんた。何か勘違いしてないか。俺たちは別に、被害者なんかじゃない。
ヴェイグオレたちはイクスたちを助けたいと思ったからここに来た。
ルカその絆が、僕たちの力になっているんだ。
ルークああ、それをお前に否定される理由はねえ !
ベルベットそうね、あと、散々迷惑をかけたのはあんたたちの方なんだけど。
ミラ=マクスウェルお前のやっていることが正しいというのなら私はそれを認めるわけにはいかないな。
ジュード僕たちは、自分の為すべきことを為すだけだよ。
ルドガーそれが、俺たちの選択だからな。
デミトリアスそうであったとしても、ここにいるのは本来の君たちではない。ただの偽物だ。
カイウスそれでも、オレはイクスたちに出会えてよかったと思ってる。
アルフェンあんたの言っていることは、ただ自分の理解を相手に押し付けようとしているだけじゃないのか ?
シングオレたちのスピリアは偽物なんかじゃない。それはオレたち自身がよくわかっている。
アスベルだからこそ、俺たちは一緒に戦ってこられたんだ。
デミトリアス……私は、君たちのことを思って言っていたつもりだがそこまで偽物の世界が望ましいのか ?
クレスそんなことは問題じゃない。このティル・ナ・ノーグは僕たちが守るべき場所なんだ !
コーキス……へへっ、俺もクレス様たちに負けてられないや。
カーリャコーキス ! ? 動いて平気なんですか ! ?
コーキスああ、ミリーナ様のおかげでバッチリだぜ !
イクスデミトリアス陛下。たとえ、あなたが俺たちの存在を否定したとしても俺たちはこうして生きているんだ。
イクスだから、俺は全てが嘘でもその真実と共に生きると決めた !
イクスそれが――俺たちの答えだ !

Character13話【21-15 ゲイボルグの島4】
デミトリアス……まだだ ! まだ私は…… !
イクスくそっ……。これだけ押しててもデミトリアスが倒れない…… !
バロールマクスウェルの力がまだ残っているからだ。だが、勝機は見えた。お前たちの持つ秘伝魔鏡術があれば、奴を倒すことができる。
イクス秘伝魔鏡術 ! ?でも『お前たち』って、秘伝魔鏡術は俺のスタック・オーバーレイしか……。
コーキス大丈夫だ、マスター !俺も秘伝魔鏡術をボスから教えてもらってるだろ !そいつを叩き込んで、マクスウェルの力を切り離す !
デミトリアスそうか。ならば……またお前から倒すだけだ !
イクスコーキス ! ?
デミトリアスなに ! ? これは…… !
ミリーナあなたが攻撃をしたのは、私が作ったコーキスの幻よ。
コーキスサンキュー、ミリーナ様 !ようやく隙ができたぜ !
デミトリアスしまっ―― !
コーキス秘伝魔鏡術 !【アナム・セパレート】 ! !
デミトリアスば、馬鹿な…… ! マクスウェルの力が…… !
イクス ?【アナム・セパレート】ビフレストに伝承される離魂術だ。まさか、お前にも使うことになるとはな。
デミトリアスお前は……イクスではないな ?まさか、ナーザ将軍なのか ! ?
ナーザああ、最初のイクスのアニマを通して俺の意識を一時的に反映させた。そして、これが我が王家に伝わる秘伝魔鏡術―― !
ナーザ【ギエラ・ビフレスト】 ! !
デミトリアスがあああああああっっっっ ! !
イクス1st(イクス ! あとはお前の秘伝魔鏡術をデミトリアスにぶつけろ !)
イクスはいっ !
イクス秘伝魔鏡術――【スタック・オーバーレイ】 !
デミトリアスこんなところで…… ! !私は…… ! ! ! !
イクスうおおおおおおっ ! これで、終わりだぁぁぁっ !
デミトリアスぐぁっ…… !
コーキスデミトリアスが、膝をついた…… !マスター !
デミトリアスどういう、ことだ…… ?体に、力が入らない……ゴホッ ! まさか……。
ミリーナマクスウェルの力が完全に失われてその反動が体に返ってきたんだわ。
デミトリアス……そうか。道理で、急に……手足が萎びるようだ。ここまで、なのか……。
デミトリアスこれで……終わりか。何もかも……。
イクス……デミトリアス。俺たちの勝ちだ。
デミトリアスどうやら、そのようだね……。偽りの、歪んだ世界が残り……真実の世界は戻らぬまま……か。
デミトリアスいや……こうして私が敗れたということはきみたちもまた、真実だということなのかな……。
デミトリアスふ、ふふ……。私は、きみたちが羨ましいよ。
イクス……羨ましい ?
デミトリアス結局、私には……自分の生まれや運命を受け入れられる強さが、なかったのだな……。
デミトリアスそうして、全てに否定を続け……目の前のものだけを救うことで自分を正当化しようとして……。
デミトリアスそれが……私の『毒』だったということか。ナーザ将軍やメルクリアの言ったこと……理解を拒んでいたが、今はわかるような気がする。
デミトリアス……イクス、ミリーナ。カレイドスコープを使うといい。
ミリーナじゃあ、やっぱりこのカレイドスコープで死の砂嵐は消せるのね ! ?
デミトリアス……やってみなければ……わからないがな。だが……やらねばならないのだろう ?歪みから生み出された偽物が真実になるためには。
イクスええ。俺はこの世界を、自分を、全ての嘘を真実に変える。それが歪んでいてもこの歪みが俺たちなんです。
イクス……こんな終わり方になってしまって、残念です。デミトリアス陛下。
デミトリアス……フフ……私にふさわしい末路だよ。私が良かれと思ってしてきたことは……いつも……誰かを、何かを、歪ませてしまった。
デミトリアスでも、今度だけは……違った……或いは君たちが……歪みから生み出されたものだからなのかもしれないな……フフ……。
デミトリアス……私にも自分の歪みを真実だと言い抜けるふてぶてしさが……欲しかったものだ……。
デミトリアスグラスティン……私……も……。…………。
ヴェイグ……逝ったか。
ミリーナこの人のこと、理解できたとは言い難いけど……この人なりに壊してしまった世界に向き合おうとしていたのかもしれないわね。
イクス……急ごう。まだ死の砂嵐は残ってるんだ。
スタンうわ……っ ! なんだ ! ?
スレイアイフリードの墓が揺れている…… ?嫌な感じがするよ。
フィリップイクス ! もう限界だ !ゲフィオンの意識は消えた。もう人体万華鏡が崩壊するのを止められない !
イクスフィルさん ! こちらのカレイドスコープが使えることはわかりました。
イクスあとはカレイドスコープを起動させて父さんたちが残した機能を使えば死の砂嵐は消せるはずです。
ナーザまだだ、イクス ! バルドがまだ戻らない !【ギエラ・ビフレスト】はまだ維持しているのだが奴からの返事がない !
コーキスマスター ! だったら、俺が行くよ。俺が向こうに行って、バルドを助けてくる !
ミリーナ駄目よ ! あなたはデミトリアスの槍で受けた傷がまだ治り切っていないのよ。そんな状態で入れば、身体が持たないわ。
バロールそれに、お前の身体は秘伝魔鏡術を使ったことで体力が著しく低下しているはずだ。
コーキスバロール ! ? じゃあどうしろって言うんだよ !
ルークまた揺れた ! ? このままここにいるとまずいんじゃないか ?
ロイドけど、カレイドスコープはここにあるんだろ ! ?逃げ出したら、死の砂嵐を消せなくなる !
カーリャ! ? あれ…… ?ぶるぶるぶるぶるぶるぶる !
カーリャ・Nどうしました、小さいカーリャ ?震えていますよ ?
カーリャな、なんだかおかしいんです。絶対あり得ないんですけど、でも、でも…… !
ミリーナカーリャ、落ち着いて説明して。
カーリャミリーナさまの中から、ちょこっとだけですけど……光魔の鏡の……死の砂嵐の気配を感じるんです !
イクスそんな馬鹿な ! ?
フィリップ……おそらく、ゲフィオンがミリーナに吸収されてミリーナの心がゲフィオンの人体万華鏡に近いところにあるからじゃないかな。
フィリップミリーナの鏡精であるカーリャはそれを感じたんだ。鏡精は幼体の方が感受性が強いから――……ああ、そうか ! いや、でも……。
ミリーナフィル、どういうことなの ?
フィリップ……今ならカーリャも、ミリーナの心から死の砂嵐の中に入れるかもしれない。
フィリップミリーナは今、ゲフィオンの助力を受けて力が強まっている。虚無の中でも加護を受けて身体を保てるはずだ。
ミリーナカーリャが…… ! ? でも……。
カーリャミリーナさま ! 迷ってる時間はありません。カーリャはやりますよ !
カーリャ私を信じてください、ミリーナさま。カーリャにしかできないことならカーリャがやらなきゃ駄目なんです !
ミリーナ……わかったわ。私たち、待ってるから。
カーリャええ、どーんとお任せください !いざとなればミリーナさまの心に戻ればいいんですから !
バロールあの尖兵がそこまで大事か。俺は犠牲も覚悟しろと言った筈だ。
カーリャ犠牲なんて出していい訳ありませんよ !
バロール……面白い。では虚無へと向かうがいい。【ギエラ・ビフレスト】の虹色の輝きを辿れば死の砂嵐に取り込まれずにすむだろう。
カーリャわかりました !では、行ってきます !
カーリャ(うう……ここが虚無……。すぐ手前までは、イクスさまと来たことがありますが中に入るのは初めてですね……)
バルド…… ! ?そこにいるのは――
カーリャバルドさま、見つけました !カーリャが助けに来ましたよ !
バルドこれは……可愛らしい救援ですね。しかし、ご覧の通り私は、身動きがとれなくて――
カーリャバルドさま ! ?
バルドどうやら、何かの力に巻き込まれてしまったようなのです。このままでは、私も虚無に逆戻りかもしれません。
カーリャそんな…… !
バルド私の近くにある、重なった二つのアニマ……何があったか知りませんが、彼らには贄の紋章が刻まれているようです。
バルドおそらく、ぶつかり合う二つの紋章の力が周りに悪影響を及ぼしているのではないでしょうか。
カーリャこれは……。アニマが燃えているせいでわかりにくいですけど、これは心核です。
カーリャ待ってください。今、これを【ギエラ・ビフレスト】の虹の橋に乗せて、ティル・ナ・ノーグに移します !
バルド――ありがとうカーリャ。おかげで動けるようになりました。
カーリャよかった……。これで、後は脱出するだけですね !
バロール……待て。
バロールミリーナの鏡精よ。お前はそこに留まらなければならん。
カーリャ――え ! ?
カーリャミリーナさま ! 聞こえますか ?今、バルドさまを【ギエラ・ビフレスト】の虹に乗せて救出しました。
ミリーナよかった ! じゃあ、カーリャも早く戻っていらっしゃい。
カーリャそれが、駄目なんです。バロールに言われました。カレイドスコープの照準点を死の砂嵐の中に設ける必要があるって。
カーリャ本当はコーキスの魔眼を目印にさせるつもりだったみたいですけど、イクスさまたちを助けるために外に出してしまったから、新しい目標が必要だって。
カーリャだから、カーリャが目標になります。
ミリーナ何を言っているの ! ?
カーリャ大丈夫です。カーリャは鏡精ですから……存在が消えてもちゃんとミリーナさまの元に戻れます。
イクスどうした、ミリーナ ! 顔が真っ青だぞ !
ミリーナカーリャが……死の砂嵐の中に残るって。
ミリーナカレイドスコープで死の砂嵐を消すためには照準となる的が必要だからカーリャがそれになるって言うのよ !
ミリーナ鏡精だから、消えても大丈夫だって言って…… !
バルドいけません ! ミリーナさん !バロールは言っていました !
バルド確かにミリーナさんの元には戻れるかもしれません。ですが、バロールの鏡精ではないカーリャでは本来残るはずの記憶すらも奪いかねないと !
コーキスそれって……結局カーリャパイセンが消えちまうのと変わらねーじゃん ! ?だったら俺が行く ! 俺なら――
バロール無理だ。今のお前では、虚無に入ったところですぐ死の砂嵐に取り込まれて死鏡精になるだろう。
カーリャ時間がありません ! カーリャを目標にしてカレイドスコープを発動させてください !カーリャなら大丈夫ですから !
ミリーナ大丈夫じゃないわよ !世界を救っても、あなたが消えてしまったら――
カーリャでも、ミリーナさま。ここでカーリャが踏ん張らないとミリーナさまもみんなも消えちゃって……カーリャが帰る場所、なくなっちゃうじゃないですか。
ミリーナ…………。
カーリャ……だから、今だけは戻れません。でも、その後はぜ~ったい、ミリーナさまのところへ戻ってきますから !
カーリャえへへ……カーリャがいないと、コーキスやマークのことも心配ですからね !
ミリーナカーリャ……。
イクスバロール ! 本当に、他に方法はないのか ! ?命を生み出せるほどの力を持つならカーリャの記憶も守れないなんてことがあるか ! ?
バロール俺とて万能ではない。だが、お前がミリーナと心を繋ぎカーリャを一時的に自分の鏡精にできるならカーリャの記憶は守れるだろう。
ミリーナ
イクスそれはどうすればいいんだ !
バロール全てを――お前とミリーナの心の全てを深層まで一つにする。知られたくないことも知られるし知りたくないことも知るだろう。
ミリーナイクス。私は構わないわ。カーリャを守るためなら !
イクス――……わかった。やろう !
バロールイクス。お前は体験したはずだ。ナーザ――ウォーデンの意識がお前の体をもって発動した【ギエラ・ビフレスト】を。
バロール【ギエラ・ビフレスト】でお前の心とミリーナの心を重ね、【スタック・オーバーレイ】で力を増幅しカレイドスコープを起動する。
バロール全てが終わってから【アナム・セパレート】で重ねた心をまた二つに分ける。これはコーキスに頼むといいだろう。
コーキスわかった。全てが終わったら俺がマスターとミリーナ様の心を二つに分ける。
イクスうん、頼むぞ、コーキス。
イクス行くぞミリーナ。俺の心をミリーナに預ける !
ミリーナ受け止めるわ。イクス、お願い !
2人この世界を……守るために !

Character13話【21-15 ゲイボルグの島4】
リオン……各大陸、ほぼ全ての制圧が完了か。終わってみれば他愛もないな。
ディムロスまだ気を抜くには早いぞ。浮遊島の状況がわからない。
シオン……待って。空を見て !光が――
チェスターうわっ ! ?なんだ、あの光…… ?
レイア空から落ちてくる…… ?流れ星……じゃないよね。
ヒューバートこれは……少なくとも、帝国の仕業ではなさそうですね。ということは―― !
カナタミゼラ、見てよあの空 !あれってきっと、イクスたちが上手くやったんだよね !
ミゼラうん、きっとそうだね。青空に銀色の月が現れるなんて……。でも……綺麗。
サイモン……導師は、鏡士と共に帝国を滅したか。我が主よ、私は必ず見届けます。かの導師の行く末を……。
フィリップ……なんとか、無事に脱出できたね。
ナーザ礼を言わねばならんな。ケリュケイオンで脱出できなければ島の崩壊に巻き込まれるところだった。
フィリップそれは機転を利かせて皆を助けにいったガロウズたちに言ってあげて欲しい。
マーク……フィル。ゲフィオンのこと……残念だったな。
フィリップああ……彼女を救うことはできなかった。おそらく、彼女のアニマはもう完全に消滅しただろう。跡形もなく……。
マーク大丈夫か ?
フィリップああ、うん……大丈夫だよ。心配いらない。ちゃんと別れは済ませたからね。大丈夫だって……。
マーク大丈夫なら、泣くんじゃねえぞ。
フィリップんっ……泣かないよ。今は、堪えてみせる。
メルクリア浮遊島は、完全に崩壊してしもうたな……イクスたちは無事なのじゃろうか ?死の砂嵐はどうなったのじゃ…… ?
ナーザ……ここからは何もわからんな。だが、少なくともまだ世界は存続したようだ。それに、先ほどの光…… ?
バルド魔鏡通信で、イクスたちと連絡を取ってみま――! ? ナーザ様 !
? ? ?何だ…… ! ? これは――
メルクリアあ、兄上様 ! ?そのお姿…… ! !
フリーセルウォーデン様 ! ?
ウォーデン俺の肉体が、戻ったのか…… ! ?これは……どういうことだ。
バルドお二人とも、周囲を見てください…… !光が…… ! ?
ガロウズ…… ! おい、そこにいるのは……。まさか…… ! !
? ? ?ガロウズ…… ? なの ?
ガロウズ……シドニー !
シドニーガロウズ ! !
ガロウズシドニー ! ああ、シドニー。こんな奇跡が起きるなんて……。
バルド ?約束は果たしたぞ。世界の欠片――死の砂嵐の中の異物はまとめてティル・ナ・ノーグの隣に再具現化しておいた。
ウォーデン貴様、バロールか ! ?再……具現化だと ! ?
メルクリアこ、今度はなんじゃ…… ! !わらわが光っておる ! ?
ウォーデンいや、違う。光っているのはお前の持っている人工心核だ。
メルクリアチーグルとローゲの…… ! ?あっ !
メルクリア光が……空に消えた ?どういうことじゃ ! あの二人はどこへ――
バロール慌てるな。あいつらは、自ら別の場所への具現化を望んでここを離れただけだ。
バロール今起きていることを察知し、新たな大地に具現化した同胞たちに状況を説明するのだそうだ。
メルクリアいったい何が起こっているのじゃ……。
ユリウス――どういうことだ ! ? 新しい衛星が発見された ! ?
ローエンこれは……確かに、ティル・ナ・ノーグに二つ目の月が出来ています !
ウォーデンまさか……バロール、貴様の仕業か ! ?
バロール集めた異物を虚無に捨て置くわけにもいかぬだろう。
バロール死の砂嵐を消すためには、一時的にでもゲフィオンのカレイドスコープで命を絶たれた存在を再具現化せねばならなかった。
バロールアイフリードの墓を基礎として、もう一つのティル・ナ・ノーグを具現化した。ダーナも二つ目の大地を維持するため、再び眠りにつくことになる。
ウォーデンバロール。俺がこの肉体に戻ったということは――今まで借りていた一人目のイクスの体はどうなった ?
バロールそれなら、俺が処分しておいた。他ならぬ本人の望みだったのでな。
ウォーデン……そうか。それで、俺の命はどれほど持つのだ ?
バロール聡い奴だな。貴様は人工心核に長く留まりすぎた。まあそれでも十年ほどは生きるだろう。精々後始末を付けておくのだな。
メルクリア! ?
バロールこれが命を弄んだ代償だ、皇女よ。
フリーセル命を弄んだ代償だというのならグラスティンはどうなった ! ?デミトリアスは――
バロールデミトリアスは時の力に飲み込まれ存在を消失することになった。
バロールグラスティンは、貴様が望んだようになったと言えばわかる筈だろう。
フリーセルそう……か……。サレの仕掛けは発動したんだな……。
バロール……ダーナが呼んでいる。さらばだ、揺り籠の命たちよ。
バルド…………。
ウォーデンバルド、お前か ?
バルド……はい。バロールの意識はもう感じられません。彼の言った通り、本当に最後だったようですね。
ウォーデンそうか……。
バルドウォーデン様……。
メルクリア兄上様…… !
ウォーデンまだ時間は残されている。せめてその間に、俺は俺の為すべき事をせねばな。
ウォーデンバロールの言うことが事実ならゲフィオンの死の砂嵐によって滅びた世界が新しい月となって具現化したことになる。
ウォーデン今度こそ……あの世界を滅ぼさぬよう俺は全ての命を使うつもりだ。
イクス1st……ん ? ここは、どこだ ?
イクス1stおーい、バロール ?てっきり死んだつもりだったんだけどな。
? ? ?その声……イクス ?イクスなの…… ! ?
イクス1st…………ミリーナ !これは……どういうことだ ?
ダーナ私たちからの、せめてもの餞別です。イクス・ネーヴェ。そして、ミリーナ・ヴァイス。
ダーナ最期の時くらいは……あなたたちに話す時間を与えても許されるでしょう。
イクス1st女神ダーナ……ありがとう。この上ない贈り物だよ。
イクス1st……久しぶり、ミリーナ。
ゲフィオン……イクス。やっと、また会えたのね。
イクス1stああ。最期にこうして会えてよかった。……これで、俺たちの役目も終わりだな。
ゲフィオンええ……そうね。ごめんなさい、イクス……何もかも。
イクス1stはは……驚いたよ。ミリーナがこんなに情熱的だったなんて。
イクス1st確かに……許されないことだったと思う。世界中がミリーナを非難するだろう。でも――
イクス1st俺のミリーナへの気持ちは変わらないよ。先に逝ってしまってごめんな。今度は……一緒だ。
ゲフィオンええ、そうね……。行きましょう、イクス。
イクス1stああ、ミリーナ。ありがとう――
アルフェンふぅ……危なかったな。全員、無事か ?
カイルあいたたた……うん。勢いで足をぶつけちゃったけど、なんとか。
シングみんなも大丈夫そうだね。さっきはびっくりしたよ。
セネルいつの間にか、マクスウェルが俺たちをここに転送してくれたんだな。ここは――
ルドガー精霊の封印地、かな ?見たところ、世界の崩壊も起こってはいないし……ちゃんと世界は守れたわけだな。
イクスああ。これで、全部終わった……んだよな。まだ、実感が湧かないな……。
ユーリそりゃ、何も終わっちゃいねえからだろ。世界の復興、これからの生き方――まだまだ考えることは山ほどあるぜ。
イクス……確かに、そうだな。何もかも、これからだ。むしろ、やっと始められるんだよな。
ジュードでも、今日ぐらいは休んでいいんじゃない ?ずっと辛い戦い続きだったんだから。
ミラ=マクスウェルああ。休息を取ってから、また始めればいい。焦ることは何もない。
クレスその時は、僕たちもまたいくらでも手を貸すよ。
イクスありがとう、みんな。…………。
カイウスん ? どうしたんだよ、イクス ?
イクス……カーリャは、まだ戻って来ないんだな。
エミルそうだね……。周りを捜してみたけどやっぱり、見つからなかったよ。ごめん……。
コーキスパイセン……。
ミリーナ……大丈夫。約束したもの。絶対に、帰ってくるって。
ミリーナだから、だから……。
イクス……ミリーナ。
ミリーナ慰めてくれなくても大丈夫よ、イクス。私……。
イクス違う、ミリーナ。あそこを見るんだ !湖の中心に――
ミリーナ……え ?
? ? ?ミリーーーナさまぁぁぁぁぁっ ! !
ミリーナカーリャ ! !
カーリャうわぁぁーん ! ミリーナさま !ミリーナさまぁ ! カーリャ、帰ってきましたよぅ~ !
ミリーナよかった……ぐすっ。おかえりなさい ! カーリャ !
コーキスパイセン…… !もうっ、心配させるなよな !
イクスカーリャ、言葉通りに戻ってきてくれたんだな。
カーリャえへへ……。
アスベルイクスとミリーナが心を重ねたおかげだな。
カーリャですね。イクスさまって、なんか冴えない人だなーって思ってましたけど、カーリャの見る目がなかっただけみたいです。
イクスひ、酷いなあ……。
コーキスやっとマスターの良さがわかるなんてパイセンもまだまだだな。
カーリャむっ ! その言い方、カーリャを馬鹿にしてますね ! ?偉大な先輩に対して失礼ですよ !
カーリャ・Nふふ……。何事もなく戻ってきてくれて本当によかったです。
コーキス――あっ ! そうだ、パイセンを危ない目に遭わせたこと、バロールの奴に文句言ってやる !
ミリーナいいわね。私の分も伝えて欲しいわ。
コーキス……あれ ? おかしいな。全然返事がない……。
イクス……そういえば、俺もさっきからずっと最初のイクスさんの声が聞こえないんだ。
イクスいや、この感じ……もう、どこにも気配がない。俺の中から、完全に消えてしまったみたいだ。
コーキス……バロールも、最初のマスターもこの世界にはもういないってことなのかな ?
イクス……かもしれないな。きっと、もう俺たちを手伝う必要がなくなったと思ってくれたんだろう。
イクスあとは俺たちの力だけで何とかしろって――そういうメッセージなんだと思う。
コーキスそっか……うん、なんかやる気湧いてきた !一緒に頑張ろうぜ、マスター !
イクス……ああ。
コーキスん ? どうしたんだよ、マスター ?俺の顔じっと見て。
イクスいや、今更だけど……そういえば、まだちゃんと言ってなかったな、と思ってさ。
コーキス…… ?
イクスおかえり、コーキス。
コーキス! ……ああ !
コーキスただいま、マスター。
カーリャふふっ、長い反抗期でしたねぇ。
イクス……そうだ。ミリーナ、ちょっといいかな。その……話したいことがあるんだ。
ミリーナ私 ? ええ、いいけど――
リッドあー、オレたちはこの辺で行くとするか。
ベルベットそうみたいね。行きましょう。邪魔する気はないから。
ルカあ、僕もイリアたちと連絡を取らなきゃ…… !イクス、また後でね。
コーキス? なんで、みんな急に帰るんだ ?
カーリャいいから、コーキスもこっちに !
カーリャ・Nええ、私たちと一緒に来てください。
コーキスわ、わかったから引っ張るなよ…… !なんだ、なんだ ?
イクス……みんなに、変な気を遣わせちゃったかな。
ミリーナそれで、イクス――私に話、って ?
イクスうん。今までのことと、これからのこと。俺の気持ちをミリーナに伝えたいんだ。
イクス心を重ね合わせたとき、色んな感情が伝わってきたよ。ミリーナの喜びや悲しみ……怒りも。
ミリーナ……私もよ、イクス。あなたの絶望や希望、それに私への……感情も。
イクス俺……ミリーナを信頼してるよ。支えていきたいと思ってる。嘘偽りのない感情だよ。
ミリーナええ、知ってるわ。ちゃんと感じたもの。それがイクスの私に対する気持ちなんだって。
イクス俺は……やっぱり、イクスさんとは違う人間だ。ミリーナも、ゲフィオンじゃない。
イクス今の気持ちだって、永遠じゃない。きっと変わっていく。もっと俺たちらしく。心を重ねなくても重なっていけるよ。
ミリーナイクス……。
イクス……もう過去の俺たちに囚われたりしない。だから――
イクス過去の自分たちとは違う関係をこれから新しく築いていきませんか。
ミリーナ――ええ、イクス。喜んで。