| Character | 1話【Ep3-1 アジト1】 |
| カーリャ・N | ……マーク、落ち着いてください。 |
| マーク | 落ち着く ? そりゃあ、パイセンは落ち着いていられるだろうさ。いつだってそうだった。一人で何でも決めて、さっさと実行しちまう。 |
| マーク | セールンド軍に入るって決めた時もゲフィオンの前から姿を消すって決めた時もイクスたちと合流するって決めた時も。 |
| マーク | 今回だって ! |
| マーク | 俺はいつも置いてけぼりだ。俺は世間には『作られていないことになっている』鏡精だったからな。 |
| カーリャ・N | でもマーク、私はマークを忘れたことは一度もありませんよ。 |
| マーク | 俺だってそうだよ ! |
| カーリャ・N | もう、そんな幼体のように駄々をこねないでください。でも……あなたがそんな風に接してくるのはカーリャにだけですものね。 |
| マーク | ……なあ、行くなよ、パイセン。こっちのティル・ナ・ノーグで一緒に暮らそう。 |
| カーリャ・N | フィル様の面倒を見るのはマークの仕事でしょう。 |
| マーク | 同じ家で暮らそうなんて言ってねえよ。わかってるだろ。 |
| カーリャ・N | ……すぐに月に行くわけじゃありませんし戻ろうと思えばいつだって戻って来られます。マークにだっていつでも会えます。 |
| マーク | 会えねえよ。俺は死ぬ。フィルの寿命が尽きたときに消えちまう。 |
| マーク | パイセンと会える時間はもうほんの少ししか残ってないんだよ。 |
| カーリャ・N | 鏡精は……死んだらどうなるのでしょうね。普通の人と同じように消えるのでしょうか。それとも……。 |
| マーク | パイセン……――カーリャ ! |
| カーリャ・N | ねえ、マーク。カーリャはマークのことが大好きです。一番はミリーナ様ですけれどマスターを除けば一番好きなのはマークですよ。 |
| マーク | 『イクス』に似てるからか ? |
| カーリャ・N | それを言うなら、あなただってミリーナ様が好きでしょう ? でもそれはカーリャたちがマスターから受け継いでいるマスターの感情に過ぎません。 |
| カーリャ・N | それに、あなたは自分が気にしているほど最初のイクス様には似ていませんよ。 |
| カーリャ・N | 似ていないから、きっとカーリャはマークのことが可愛いんです。 |
| カーリャ・N | 約束しますよ、マーク。あなたが消えるときはすぐにあなたの傍へ駆けつけます。だから、あなたもカーリャが来るまで頑張りなさい。 |
| カーリャ・N | カーリャがきっとフィル様もマークも看取ってあげますから。 |
| マーク | 結局行くのかよ……。俺がこんなにかっこわりい姿を見せて頼んだのに……。 |
| カーリャ・N | ここでほだされて残るようなカーリャはマークの先輩として失格ですからね。 |
| マーク | ……そうだよな。勝手じゃないカーリャは俺のパイセンじゃねえ、か。 |
| カーリャ・N | マ、マーク ! ?どうしたんですか、急にしがみついてきて。 |
| マーク | 抱きついてんだよ、馬鹿。 |
| マーク | ……ちゃんと連絡くれよ ?困ったことが起きたら呼んでくれ。フィルを引きずってそっちに行くから。 |
| マーク | あと、変な虫に気を付けろよ。特にビフレスト産のタチの悪い奴にはな。 |
| カーリャ・N | ビフレストにそんな怖い虫がいたでしょうか…… ?まあ、マークがそこまで言うのなら虫除けスプレーを持ち歩くようにします。 |
| カーリャ | ……あれ ? ミリーナさま。休むんじゃないんですか ? |
| ミリーナ | ええ……ちょっと。フィルと話がしておきたくて。まだイクスには知られたくないから今が丁度いいと思うの。 |
| フィリップ | ど、どうしたんだい ?ミリーナが僕を訪ねて来てくれるなんて。 |
| フィリップ | あ、いや、変な意味じゃないよ。ごめん……気持ち悪いおじさんで……。 |
| ミリーナ | だ、大丈夫よ、フィル。あ……私の方こそ、やっぱり節度を持ってフィリップさんって呼んだ方がいいのかしら……。 |
| フィリップ | い、いいよ ! えっと……ミリーナの好きなように呼んでくれていい。それで、どうしたんだい ? |
| ミリーナ | あの……私、ゲフィオンの記憶を完全に受け継いだでしょう ? |
| フィリップ | ああ……そうだね。何か気になることがあったのかな。 |
| ミリーナ | ええ……。あの……イクスのことなの。 |
| ミリーナ | ……本当なら二人目の私が愛して守るようにゲフィオンに仕組まれていた、二人目のイクスのこと。 |
| フィリップ | それは……。 |
| カーリャ | ああ……そ、そうでした……。カーリャが港で挨拶したあのイクスさまは本当は二人目……。 |
| ミリーナ | あのイクスが、私をアイギスの崩壊による火球から助けてくれたから、私は生きている。 |
| ミリーナ | 全てが終わった今だから改めてあのイクスにお礼が言いたいの。 |
| フィリップ | でも、彼はもう亡くなっているよ。 |
| ミリーナ | ええ。でもゲフィオンは彼の遺体を回収して荼毘に付した。セールンドに彼のお墓があるの。 |
| 二人 | ! ? |
| ミリーナ | フィル、今度一緒にお墓参りに行って欲しいの。私の記憶が確かなら二人目はあなたが最初に具現化したイクスよね。 |
| ミリーナ | 三人目のイクスは、アイギスの事故の後に急遽具現化して、海から引き上げたことにした。 |
| ミリーナ | 私たち……二人目のイクスにもちゃんと謝罪して向き合わないと。 |
| フィリップ | そうだね……。ああ、そうしよう。このことをイクスは……。 |
| ミリーナ | 今はコーキスのことがあるから……。でもきちんと話すつもりよ。そうしたら三人で……いいえ、カーリャとコーキスとマークも一緒に。 |
| ミリーナ | それまでは私とフィルでお墓を守ってあげられたらって思うの。 |
| フィリップ | ……話してくれてありがとう。そうだね、是非そうしよう。 |
| コーキス | ――よし。スレイ様も送り届けたし急いで浮遊島に戻らなきゃな。 |
| コーキス | ん、魔鏡通信だ。 |
| コーキス | はい――って……え ! ? 誰 ! ? |
| ウォーデン | たわけが。ウォーデンだ。 |
| コーキス | あ、そうか、ボスか。顔が違うからうっかりしてた……。 |
| ウォーデン | 少し話がある。こちらに来てもらえぬか。 |
| コーキス | えー ! ?俺、早くマスターのところに帰りたいんだけど。 |
| ウォーデン | 俺もイクス・ネーヴェに用がある。 |
| ウォーデン | 浮遊島に繋がる転送ゲートの位置さえ共有してもらえれば、別に貴様が来ずとも構わぬがそれでは失礼にあたろうと思ってな。 |
| コーキス | え……。まさかボス、マスターと喧嘩するつもりじゃ……。 |
| ウォーデン | ……もういい。こちらで勝手に調べて勝手に向かわせてもらおう。 |
| コーキス | わー ! ? わかったよ、迎えに行くよ ! |
| Character | 2話【Ep3-2 アジト2】 |
| イクス | ……ん……もう朝か……。 |
| イクス | (コーキスのベッド、綺麗なままだ。まだ帰ってないのか……) |
| イクス | はあ……。やらなきゃいけないことは山盛りなのに……。何だか力が出ないや。 |
| イクス | 何なんだろう……。なんでこんなに気持ちが沈むんだ……。 |
| イクス | ……ん ? 庭の方からミリーナの声がする…… ? |
| ミリーナ | ……ここのお花はね、クレアさんやマリアンさんやアミィちゃんや、主に後方支援を請け負ってくれていた皆が育てていたの。 |
| ミリーナ | 小さい子たちはここに来るのが好きでね。何故かいつも一緒にアルヴィンさんまでいたけれどアルヴィンさんは心が少年だからかも知れないわね。 |
| メルクリア | ……う、うむ。 |
| カーリャ | いいんじゃないですかあ ?お花は大人にも子供にも平等に綺麗ですし食べられるお花は美味しいです。 |
| イクス | (どうしてメルクリアがここに…… ?) |
| イクス | とにかく着替えてから、状況を聞かないと……。 |
| イクス | おはよう ! |
| ウォーデン | 邪魔しているぞ、イクス。 |
| イクス | ええ ! ? ウォーデンさん ! ?あ、いや、様 ? 殿下 ? |
| バルド | フフ、イクスさん。落ち着いてください。こちらが勝手にお邪魔しているのです。 |
| ウォーデン | コーキスに連れて来てもらった。 |
| イクス | あ、そういえばコーキスは……。 |
| バルド | シャワーを浴びて来るそうですよ。 |
| マーク | で、何故か俺が茶を出してるって訳だ。 |
| イクス | わあ ! ? ごめん、マーク ! |
| ウォーデン | こちらのマークの茶もなかなか美味い。まあ、ジュニアのマークの方がより繊細な味を出すが……。 |
| マーク | 大味で悪かったな。 |
| バルド | イクスさんも目を覚まされましたしメルクリア様とミリーナさんを呼びに行きましょうか。 |
| バルド | じきにカーリャ――ネヴァンがフィリップさんを連れて来るでしょうし。 |
| マーク | 悪いな。うちのご主人様は朝が苦手でね……。 |
| バルド | でしたらあなたが起こしに行けばよかったのでは……。 |
| マーク | いやいや。ここにパイセンを一人残す訳にはいかないからな。 |
| イクス | な、なんか、微妙に空気が尖っているような……。 |
| ウォーデン | バルドのくだらん悪癖のせいだろう。放っておけ。 |
| イクス | そ、そうですか…… ? |
| イクス | ところでミリーナたちなら俺の部屋の近くの庭にいたんで呼んできますよ。 |
| ミリーナ | ……ごめんなさい、メルクリア。 |
| メルクリア | な……っ。 |
| ミリーナ | 私はゲフィオンではないわ。二人目のミリーナ・ヴァイス。 |
| ミリーナ | でも……ゲフィオンの記憶は私の中にある。私のあり得た未来がゲフィオンでもある。 |
| ミリーナ | 別人だと罪を切り捨てるには近すぎてでも彼女の罪は私の罪だと言い切るには遠すぎる。 |
| メルクリア | ならば……何故謝るのじゃ。 |
| ミリーナ | 近くて遠い私がそう望んでいて、私もそうしたいから。それから……あなたと友達になりたいから、かしら。 |
| メルクリア | わ、わらわはそんなことは望んでおらぬ ! |
| ミリーナ | なら、メルクリアの気が変わるまで待つわ。いつまでも。 |
| メルクリア | ………………。 |
| メルクリア | ……黒衣の鏡士よ。おぬしの記憶の中には義父上のことも残っているのか。 |
| ミリーナ | もちろん。 |
| メルクリア | あの者は……わらわをどう思っていたのじゃろうか。 |
| ミリーナ | 魔鏡戦争の終戦を迎えて、エルダ皇后とあなたを人質として預かることになったとき、デミトリアス陛下の側近は、あなたたちを監獄に幽閉するよう進言した。 |
| ミリーナ | けれど陛下は、まだ小さなあなたをそのように扱うのは不憫だと、離宮を与えるよう命じられたわ。そして成人まではご自身の娘として育てるとおっしゃった。 |
| ミリーナ | もしも死の砂嵐が発生しなかったら……いいえせめてアイギスの崩壊がなければ、成人したあなたにビフレストを返還するつもりだったんじゃないかしら。 |
| ミリーナ | だって……そういう方だったもの。その優しさが為政者として正しかったかはまた別の話なのでしょうけれど。 |
| メルクリア | そうか……。わらわに向けられていた優しさも……偽りではなかったのじゃな。 |
| メルクリア | ……わらわには実の父の記憶がない。二つの頃にはもうセールンドにいた故、わらわにとってはデミトリアスが父親であった。 |
| メルクリア | 母上様を失ってからは……世界の全てであったとも言える。故に、デミトリアスが理解できなくなったときわらわは世界を失ったように感じた。 |
| メルクリア | あれが……孤独というものだったのであろうな。 |
| イクス | (孤独……。そうだよな……。俺にもわかる気がする) |
| イクス | (俺は三人目で、イクスさんの両親は俺の両親とは言えなくて……。俺に繋がるものはこの世界には何一つ無くて……) |
| イクス | ……繋がり……。 |
| メルクリア | ミリーナよ。わらわは……――わらわもまた罪人じゃ。それに子供でもある。何故なら……わらわはまだ心からおぬしを受け入れられるとは思えぬからじゃ。 |
| メルクリア | なれど、それは他の鏡映点たちも同じであろう。リチャード、バルバトス、フレン……他にも大勢の者たちを苦しめてきた。 |
| メルクリア | 故に、わらわはここで区切りを付けようと思う。我、メルクリアはこの世界に生きる者たちの良き友良き隣人となれるよう努力する。 |
| メルクリア | まずはおぬしに謝りたい。 |
| メルクリア | ……今までの数々の無礼、そして非道大変申し訳ございませぬ。 |
| ミリーナ | もう二度と争いにならないよう一緒に手を取り合っていきましょう、メルクリア。 |
| イクス | ……あの……。そろそろいいかな。 |
| メルクリア | あ、兄上様――ではなかった……。イクスか……。 |
| メルクリア | ええい、どうもその顔を見ると兄上様と呼ぶ癖がついてしまった……。 |
| メルクリア | それにしても人が悪いの。ずっと見ておったのか。 |
| イクス | はは……。ご、ごめん……。えっと、ウォーデンさんが呼んでるよ。 |
| メルクリア | そ、そうか。 |
| ミリーナ | イクス、おはよう。呼びに来てくれてありがとうね。ふふ、驚いたでしょう ?起きたらウォーデンさんたちがいて。 |
| イクス | ああ。何が起きたのかと思った。 |
| ミリーナ | ウォーデンさんから、まだお話は聞いていないの ? |
| イクス | え ? 何が ? |
| ミリーナ | ウォーデンさん、あなたに話があるんですってよ ? |
| イクス | 俺に…… ? |
| Character | 3話【Ep3-3 アジト3】 |
| イクス | ただいま帰りました。 |
| メルクリア | 兄上様、お待たせ致しました。 |
| ミリーナ | ……あら ? フィルはまだなの ? |
| マーク | あいつ……。起きないときはとことん起きないからな。ちょっと見てくるわ。 |
| コーキス | ふー、さっぱりした ! |
| コーキス | ――あ、マスター。ただいま ! おはよう ! |
| イクス | コーキス……。 |
| コーキス | ……マスター。やっぱ、俺の言ったこと、まだ……。 |
| ウォーデン | コーキス。先に俺の方から話をさせてもらう。 |
| ウォーデン | イクス・ネーヴェ。今日は貴公に頼みがあって来た。しかし、その前に一つ確認したい。 |
| ウォーデン | 貴公は最初のイクス・ネーヴェがこの俺と共にお前について話した会話を知っているか ? |
| イクス | え ? ウォーデンさんいつの間にイクスさんと話をしたんですか ? |
| ウォーデン | なるほど……。あの者はあの場で話したことをイクスにも共有すると言っていたが……。 |
| イクス | あ……。もしかして帝都に潜入したあの時のことかな…… ?詳しいことは記憶を見てくれって言われたような……。 |
| ウォーデン | うん ? ならば何故見ていないのだ ? |
| イクス | いや、それは……人の記憶をのぞき見しちゃいけないと思って……。 |
| ウォーデン | この愚か者 !何か重要な伝達事項があったかも知れないではないか ! |
| イクス | え ! ? 何かあったんですか ! ?も、もしかしてそれで致命的な問題が発生してこの世界の存続に影響が出たとか…… ? |
| イクス | まさか、また死の砂嵐が―― |
| ミリーナ | イクス、落ち着いて。そんな騒ぎだったらウォーデンさんたちもこんなにのんびりしていないと思うわ。 |
| コーキス | ボス ! マスターは繊細なんだから脅すなよ ! |
| ウォーデン | ……む……まさかここまで先回りして心配するタイプとは思わなかった。貴様……いや貴公は一人目とは全く違うな。 |
| イクス | (……はは、あの人に似た人がゴロゴロいたら大変だよ……。俺の一人目だけど……) |
| ウォーデン | ……だが、わかった気がする。仲間を尊重するというお前の心の在り方が。 |
| イクス | な、何を話したんですか…… ? |
| ウォーデン | 気になるなら自分であの者の記憶を見るといい。だが、そんな貴公が、何故コーキスの気持ちを察することができないのだ。 |
| ウォーデン | コーキスは貴公の鏡精――心の具現化であろう。 |
| コーキス | ボス ! ? |
| ウォーデン | 余計な口出しとはわかっている。しかしコーキスの決心はそこまで貴公の心を揺らすものだったのか ? |
| イクス | ……ウォーデンさん。コーキスと話をしてもいいですか。 |
| ウォーデン | 当然だ。むしろせよ。 |
| イクス | コーキス……ごめん。 |
| コーキス | え ? それはどういう意味だ ?嫌な意味……じゃないよな。マスターから感じる感情がなんか複雑で……。 |
| イクス | 俺が切り離すと、そういう俺の感情もコーキスには届かなくなる。 |
| コーキス | ! |
| イクス | ……でも、それが人間同士なんだよな。他人の気持ちなんて誰もわからない。わからないから、大切にしたいと思う。 |
| イクス | 俺は……怖かったんだ。きっと。 |
| ファントム | な、何故私まで連れて来るのだ。 |
| カーリャ・N | 当事者意識を持ってもらうためです。 |
| フィリップ | み、みんな、おまたせ……って―― |
| マーク | しっ。フィル、ここは控えたほうがよさそうだぜ。 |
| イクス | 俺は具現化された存在で自分であることも何度も疑い続けた……。 |
| イクス | そんな中で俺を三人目の俺だから特別だと言ってくれたミリーナがいて |
| イクス | 何人目かなんて気にしないいつも明るいカーリャがいて |
| イクス | 敵だなんて言いながらたくさん助けてくれたマークがいて |
| イクス | 俺たちの知らないゲフィオンのことを伝えてくれたネヴァンがいて |
| イクス | 俺をこの世に生み出してくれたフィルさんがいて |
| イクス | 俺はこの仲間たちがいる世界でなら俺という嘘が生きていてもいいんだって思えた。 |
| イクス | けどコーキスは違うんだ。コーキスは俺の心の具現化で嘘の存在の俺にとって唯一の真実だった。 |
| イクス | 俺の家族で友達で、俺が俺である証だったから……それが失われるのが怖いと思ってしまった。 |
| コーキス | 俺は消えるんじゃないぞ !ずっとずっとマスターを守るために―― |
| イクス | わかってるよ。大丈夫。これは俺の心の問題なんだ。確かに俺は自分の存在を疑ってきた。でもいつまでもその存在証明をコーキスに求めていちゃ駄目なんだ。 |
| イクス | それを突きつけられた。 |
| イクス | だから――コーキスを切り離すよ。コーキスと生きるために。 |
| コーキス | マスター ! ! ! |
| コーキス | ああ、ああ ! 俺、マスターを守る !マスターが守りたいって思ってるミリーナ様のこともカーリャパイセンのことも ! |
| コーキス | 独立しても、俺はマスターの鏡精だ ! |
| ミリーナ | よかった……。イクス、さすがだわ。やっぱり格好いい。 |
| カーリャ | まあ、今のは中々よかったと思います。 |
| フィリップ | うう……うううう……。イクス……凄いよ……なんて立派になって…… ! |
| マーク | おいおい、何でお前が泣くんだよ。しかもなんで子供の成長を見守る親目線なんだよ……。 |
| カーリャ・N | ふふ、コーキスは私と同じ道を進むのですね。後輩として厳しく指導してあげますよ。 |
| バルド | イクスさん、やはりあなたは強い人ですね。私はあなたを尊敬します。私もあなたのようにありたいものです。 |
| メルクリア | かくも鏡精とマスターの繋がりは強いのじゃな……。わらわにはもう鏡精はおらぬがわらわの中のモリアンを決して忘れまいぞ。 |
| ウォーデン | ……切り離しはいつ行うのだ ? |
| イクス | 俺の心の修復を待ってからになるので一ヶ月ぐらい先かなと思います。 |
| ウォーデン | ならば、まだ我らはこの星にいるな。切り離しの際は立ち会わせて欲しい。 |
| イクス | はい ! |
| コーキス | その時はパーッと派手にお祝いしようぜ、マスター ! |
| イクス | ええ…… ?なんか泣いちゃいそうだからやだなあ……。 |
| フィリップ | うう……そうだよね……泣いてしまうよね……。 |
| ウォーデン | ビクエよ……。俺は貴公にも用があったのだが……。 |
| フィリップ | うう……。ご、ごめん。 |
| フィリップ | ――ええっと……もう大丈夫。あの……何かな ?もしかしてフリーセルに託した手紙の件かな。 |
| ウォーデン | まあ、広義の意味ではそうなるな。ビクエ殿の提案は興味深い。同時に我らは月へ行くため様々な準備が必要だ。ビクエ殿の知識も必要になろう。 |
| ウォーデン | ついては……イクスよ、月に行くまでこの浮遊島に我らビフレスト聖騎士団を受け入れてもらいたい。 |
| ウォーデン | そしてこの場を月へ向かうための拠点としてはどうかと思っているのだ。どうだろう、イクス、そしてビクエ殿。 |
| フィリップ | 僕が協力できることなら何でもしますよ。ただこの場所はイクスたちの場所だから―― |
| イクス | いえ、いいと思います。鏡映点のみんなはいずれはそれぞれの大陸へ降りていくだろうからこの場所は空いてしまいますし。 |
| イクス | それに、俺たちもきっとセールンドへ降りると思うから……だからむしろ月への拠点になるのは大歓迎です。 |
| ウォーデン | 心より感謝する。バロールの血を引きし鏡士、イクス・ネーヴェよ。 |
| バルド | ジュニア、マーク。交渉は上手く行きましたよ。 |
| ジュニア | わ、よかった !大きいフィルの力も借りられれば助かるよ ! |
| マークⅡ | じゃあ、荷物をまとめて移動の準備をしておくわ。フリーセル、あんたも手伝ってくれ。 |
| フリーセル | 承知した。 |
| ヨウ・ビクエ | ……あら、皆楽しそう。私も仲間に入れて欲しいわ。 |
| ミリーナ | あなたは…… ! |
| ヨウ・ビクエ | ごめんなさいね。フィリップに提案があって来たんだけれど凄くワクワクすることを話していたから。 |
| ヨウ・ビクエ | ねえ、あなたたちのこれからの悪巧み私も混ぜてもらえないかしら。 |
| イクス | 相変わらずですね……。でも、もちろんかまいません。鏡士の始祖であるヨウ・ビクエが俺たちに力を貸してくれるなら、心強いですから。 |
| コーキス | なんかさ、みんなマスターのところに集まってくるな。鏡映点のみんなだって、ここを離れてもきっとまたふらっと連絡くれそうな気がするし。 |
| ミリーナ | だって、イクスが最高だから当然だわ。 |
| カーリャ | でた、ミリーナさまのイクスさま上げ……。 |
| イクス | はは……。これからも皆と手を取り合っていけるように俺、頑張るよ。 |
| イクス | (これからも世界には色々なことが起こるだろうけど……俺は俺という嘘を真実にすると決めたから) |
| ミリーナ | ……クス。……イクス ? |
| ミリーナ | イクス聞こえてる ? |
| イクス | ……あ、ああ。聞こえてるよ。ごめん、ちょっと考え事してた。 |
| ミリーナ | 考え事 ? |
| イクス | 真実ってとても揺らぎやすいものなんだなって。あらゆるものにいくつもの真実がある。誰かの真実は誰かの嘘なのかも知れない。 |
| イクス | でも俺は自分を信じる。俺っていう嘘を真実に変えてその真実を信じてみんなと繋がっていければきっとこの先も大丈夫だって思えるんだ。 |
| イクス | みんな、これからもよろしく ! |