Character1話【香り1 香水を求めて】
シェリアう~ん、いい香りねぇ。
ソフィシェリア、何してるの ?
シェリアロゼが仕入れてきてくれた香水を試しているのよ。ソフィも嗅いでみる ?
ソフィ……すんっ。シェリアから甘い香りする……。
シェリアあははっ……。ちょっとソフィ、くすぐったいわよ。
ミリーナソフィも興味があるならフレグランス・ショップに行ってみたら ?
ミリーナ色んな種類の香水があるから自分にぴったりの香りがみつかるかもしれないわよ。
ソフィうん、わたしも行ってみたい。シェリア、いい ?
シェリアええ、いいわよ。
ソフィミリーナも一緒に行かない ?
シェリア確かフレグランス・ショップのある街は警戒も緩かったわよね。
ミリーナ……そうね。せっかくのソフィのお誘いだもの。私もご一緒させてもらうわ。
アスベルおっ。三人揃って楽しそうだな。
コーキス外出ですか ?
ミリーナええ。ソフィたちと街のフレグランス・ショップに行くの。
シェリアソフィ、香水に興味があるんですって。
アスベル香水か……。そういえば教官もつけていたな。
ソフィアスベルとコーキスも一緒に行こうよ。
ミリーナ二人とも時間はある ?
コーキス俺は大丈夫ですよ。さっきキール研究室の手伝いも終わったところなんで。
ソフィアスベルは ?
アスベルああ、俺も行くことにする。鏡殻変動で光魔も増えてるみたいだし護衛役もいた方がいいだろうからな。
コーキスそれじゃあさっそく出発しようぜ。
ミリーナカーリャ。ゲートを開いてくれる ?
カーリャお任せあれ~♪
カーリャコーキス、頼みましたよ。
コーキス心配すんなって、カーリャ先輩。それじゃあ、いってきます。

Character2話【香り2 捜索】
コーキスはぁ ! ?フレグランス・ショップ閉まってるぞ ! ?
ソフィ張り紙がでてるよ。
シェリア原料調達の旅に出るため臨時休業中って書かれてるわ。再開も未定みたいよ。
ソフィ……残念。
アスベルそう気落ちするな。店が開いたらまた来よう。そのときはきっと品揃えも更によくなってるはずだ。
コーキスアスベル様は前向きだなぁ。俺なんて、欲しいときに店が開いてないと余計にイライラしちまうけどな。
コーキスあっちでイライラしているメガネみたいにさ。
ソフィメガネ ?
コーキスほら。見えるだろ。短髪で軍服みたいのを着てる奴。
アスベル短髪で軍服…… ?
ヒューバートまったく。事前告知もなしに臨時休業など職務怠慢も甚だしいです。この街で香水を扱っている唯一の店だと言うのに。
アスベルちょ、ちょっと待て !おい、ヒューバートじゃないか !
ヒューバートえっ……に、兄さん ! ?
コーキス兄さんってことは……このメガネがアスベル様の弟だったのか ! ?
ソフィヒューバートにも会えてよかった。
ヒューバートソフィにシェリアまで。それと……その方たちは ?
シェリア紹介するわね。いま一緒に行動しているコーキスとミリーナよ。
コーキスあ、どうも。コーキスです。
ミリーナはじめまして。
ヒューバートヒューバート・オズウェルです。以後お見知りおきを。
コーキスオズウェル ?ラントじゃなくてか ?
ヒューバートぼくは小さい頃に養子に出されたんですよ。
アスベルだが大切な弟であるのに変わりない。また会えて安心した。
ヒューバートま、まぁ……元気そうでなによりです。ですがそれより……。
ミリーナ何かしら ?
ヒューバートミリーナさん、あなた指名手配犯、ですよね ?
ミリーナええ、その通りよ。手配書に似ているかしら ?
ヒューバート誤魔化すつもりはない、と。
コーキス俺たちはあんたと敵対するつもりはない。けど、もしミリーナ様に手を出したら――
シェリアちょ、ちょっと。みんな落ち着いてよ。
アスベルヒューバート。ミリーナとコーキスは仲間なんだ。だからまずは――
ヒューバートわかっていますよ。いきなり疑ってかかったりはしません。
ヒューバートとはいえ、疑っていないかといえば嘘になります。ぼくは人は疑うものだと教わりましたから。
ヒューバートですが兄さんたちがそれを承知の上で行動を共にしているというのなら……何か理由があるんでしょう。
ヒューバートあとでちゃんと聞かせてもらいますからね。
アスベル……ヒューバート。
ミリーナありがとう。ヒューバートさん。
シェリアこれもパスカルの影響かしらね。
ヒューバートパ、パスカルさんは関係ないですっ !
ヒューバート……うん ?そういえばパスカルさんは……。
ヒューバートいない ! ? どこ行ったんですか ! ?
ソフィパスカルも一緒だったの ?
ヒューバートは、はい。まったく、あの人はまた迷子に。
シェリア迷子になったのはヒューバートの方なんじゃ……。
アスベル話は後だ ! いまはパスカルを探そう !

Character3話【香り2 捜索】
シェリアパスカル、どこにいるのかしら。見つからないわね。
ヒューバートまったく、あの人は……。
ソフィアスベル、あっちで人が集まってるよ。何をしてるの ?
アスベル何だろうな。中心に誰かいるみたいだが……。
パスカルはいっ。修理完了。これで使えるはずだよ。
アスベルあれって……パスカルじゃないか !
ヒューバートパスカルさん ! ?見つかったんですか ! ?
パスカルあれ、弟くん !どこ行ってたの……って、アスベル ! ?ソフィとシェリアも一緒にいる ! ?
ヒューバートさっき偶然再会したんですよ。
ヒューバートそれから先に紹介しておきます。こちらが兄さんたちと行動を共にしてきたコーキスさんとミリーナさんです。
コーキスはじめまして。よろしくお願いします。
パスカルおぉ、こちらこそ ! よろしく~ !あと二人とも、普通に話していいからね。あたし、堅苦しいの苦手でさ~。
ミリーナえぇ、わかったわ。ありがとう、パスカル。
ソフィパスカル。さっきは何をしていたの ?
パスカル古い魔鏡機器の修理だよ。さっきのはなかなか複雑で手強かったけどぶわーってやったら何とかなったんだ。
ミリーナパスカル、魔鏡機器が扱えるの ! ?
パスカル簡単な修理ぐらいならね。ちゃんとした研究施設があればもっとできることも増えるんだけどさ。
ミリーナそれでもすごいことよ。構造を理解するだけでも大変なのに。
シェリアパスカルはこう見えても凄い知識を持っている技術者なのよ。
コーキスそうだったのか ! ?正直、全然そんな風に見えねぇな ! ?
ミリーナコーキス。そんな言い方は良くないわよ。
ミリーナそれよりアジトに戻ったら、キール研究室のみんなにパスカルのことを紹介した方がよさそうね。
パスカルアジト ! ? キール研究室 ! ?もしかして魔鏡の研究もできるの ! ?やっほーい ! すごい楽しみ !
シェリアパスカル。あなたその前に、することがあるでしょう。
パスカルえっ。なに ?
シェリアすんっ…………うっ。やっぱりちょっと変な匂いがするわ。またお風呂入らなかったのね。
パスカルあははっ。魔鏡機器をいじってるのが楽しくて、夢中になっちゃってさ。かれこれ……あれ、何日入ってないっけ ?
コーキス……マジかよ。なんで学者とか頭いい奴って変な奴が多いんだ。
シェリアとにかく、アジトについたら、まずお風呂に入ってもらいます。
パスカルえぇぇ、キール研究室に行きたいんだけど。面倒だし、あと数日入らなくても変わらないって。
シェリアダメです ! 絶対入ってもらうわよ !
パスカルえー時間がもったいないよ !研究がさいゆうせ~ん♪
シェリア逃さないわよ !ソフィ、ミリーナ ! 捕まえて !力尽くでもお風呂にいれるわよ。
ソフィうん。わかった。
ミリーナパスカル、一緒にお風呂に入りましょう。面倒なら私が身体を洗ってあげるから。
パスカルちょ、ちょっと ! 三対一はずるいよ !弟くん、助けて ! !
ヒューバートなんでぼくに振るんですか ! ?
パスカル弟くん ! いいからこっち !
ヒューバートちょ、ちょっと ! パスカルさん ! ?だからぼくを巻き込まないでくださいよ !
シェリアたとえヒューバートでも邪魔はさせないわ !二人を倒してパスカルをお風呂にいれる !みんな、いくわよ !

Character4話【香り3 お風呂に入ろう】
ソフィいいお湯だったね。
シェリアそうね。パスカルもちゃんとお風呂に入ってくれたし私は満足よ。
パスカルみんながあまりにも必死なんだもん。でもこれで研究に没頭できるね~ !
ヒューバートはぁ……ようやく肩の荷がおりましたよ。ぼくが何度言っても聞いてくれなくて困っていたんです。
パスカルそうだったの ? 弟くんはそこまで気にしてないのかと思ったよ。シェリアみたいに力尽くじゃなかったから。
ヒューバートち、力尽くって……できるわけないじゃないですか !
コーキスヒューバート様ってティル・ナ・ノーグに来てからずっとパスカル様の面倒を見てたのか ?
ヒューバートはい。放っておくと食事も睡眠も取らず魔鏡の研究に没頭しているので口に食べ物を放り込んだり大変でしたよ。
ミリーナもしかして香水もパスカルのために ?
ヒューバートええ。ティル・ナ・ノーグの文献によるとかつて水不足で入浴できなかった時代があったそうです。
ヒューバートその際、香水で体の匂いを誤魔化したと記載されていましたのでこの世界ではそういった用途もあるのかと。
パスカル待って。ということは、香水があればお風呂に入らなくてもいいってこと ! ?研究し放題じゃん ! 香水最高 !
ヒューバート誰も入らなくていいとは言ってないですよ !
コーキスそれに水不足ってわけでもないし風呂には毎日入ったほうがいいぞ。
パスカルあはは~ !コーキスにも言われちゃったや !
シェリア笑い事じゃないでしょう !
コーキスパスカル様って元の世界でもずっとこんな調子だったのか ?
ソフィそうだよ。
ミリーナ研究に没頭したい気持ちもわかるけどやっぱりお風呂には毎日入った方がリラックスもできていいと思うんだけど。
ミリーナ健康にも関わることだから心配だわ。
パスカル大丈夫大丈夫 ! 死にはしないって !
シェリア大丈夫じゃないわ !それにパスカルだけの問題じゃないのよ ! ?
ミリーナパスカルにはできる限り毎日ちゃんとお風呂に入ってもらえるよう私たちも頑張りましょう。
シェリアありがとう。心強いわ。けど……今までのことを考えると実際問題厳しいとは思うから……。
シェリア……いちおう、香水も準備しておきましょう。
パスカルえっ ! 香水くれるの ! ?
ヒューバート言っておきますがちゃんとお風呂には入ってくださいよ。
パスカルわかってるってー !
シェリア私はさっそく倉庫に行ってパスカル用に香水を取ってくるわね。
ミリーナ待って。確かもう香水は残ってなかったはずよ。
シェリアそうなの ! ?
ソフィフレグランス・ショップもいまはやってないよね。
ヒューバートですが、鏡士であるミリーナさんなら香水を具現化することも可能ではないですか ?
ミリーナ簡単なものならできるわよ。パスカル、どんな香りがいい ?
パスカルそうだな~ !せっかくだからバナナの香りを~~と思ったけど、やっぱりいいや。
パスカル香水調合用の装置を開発するから実験がてらそれで作ってみたいな。ちょっと閃いたことがあるんだ。
ミリーナ閃いたこと ?
パスカル後で説明するよー !それよりいまは早くキール研究室で研究や開発がやりたい !
アスベルまさか香水調合用の機械もキール研究室で開発する気じゃないだろうな ?
パスカルそうだよー。
コーキス研究予算が足りないってわめいてたから許可されるかわからないぞ。
パスカルけど、とりあえず話してみようよ !それにキール研究室の様子も見たいしさ !
ミリーナわかったわ。それじゃあ行きましょうか。

Character5話【香り4 学園に向かおう】
パスカルうーん。この魔鏡機器は内部構造が独特なのが原因でエネルギーの循環効率が落ちちゃってるのかな。どう思う、リタ?
リタそれは一理あるわね。この子、繊細なところあるし。
キール晶霊学の知識を元にこの現象を捉えるなら物質と非物質の境界を再定義する必要がありそうだな。
キールちなみにレオノア大百科の第一巻の97ページによると――
メルディティル・ナ・ノーグの古い遺跡、ダーナ神が壁画も参考になるよ !
リフィル遺跡だと ! ? ダーナ神の遺跡と言えばこの世界にかろうじて残されたあのアイフリードの遺跡のことか ! ?
ユリウス――始まったようだ。ジェイド大佐。相手を頼むよ。
ジェイド放っておきましょう。暴れ馬は疲れるのを待つに限ります。
パスカルふんふん、そっか ! みんな、ありがとね~ !ここをこうして~ちゃかちゃか、ぽんぽんっ !
アスベルキール研究室の中にちゃんと入るのは俺、初めてなんだが……すごいな。
キール何がすごいんだ ?パスカルが加わっていつもより少し賑やかな気はするが。
ヒューバートこれがキール研究室では日常ということですか ?
キールああ。そうだ。
パスカルおぉぉ ! ちゃんと循環効率が上昇したよ !
キールなんだと ! ? みせてくれ !
コーキス……キール研究室ってやっぱり変人たちの巣窟だな。
シェリア私たちには理解できない世界というか……とにかく凄い場所なのね……。
アスベルああ。会話の内容が難しすぎてさっぱり理解できなかった。
ヒューバートあれは理解できる方がおかしいと思いますよ。
キールすまない。話がだいぶ逸れたな。香水調合用装置の研究開発だが所長であるこの僕が許可しよう。
コーキスキール様、本当にいいのか ! ?そんな真面目なもんじゃねーぞ ! ?
キール何を言っているんだ。話を聞いたところ香水があれば更に研究に集中できるんだろう ?
キールそれに装置の開発が上手くいけば香水に特殊な効能を付け加えることもできるらしいじゃないか。
アスベルそうなのか ! ?
パスカルあー、ごめん ! 伝え忘れてた !これがさっき閃いたこと !
パスカルこれから開発する装置で調合した香水は記憶力向上から疲労回復や精神安定までちょっとした効能がプラスされるんだ。
パスカルそこまで大きな影響はでないだろうけどせっかくなんだしお洒落なだけじゃなくちょっとでも実用的な方がいいでしょう ?
キールそういうことだ。キール研究室のためにも香水を作るべきだと判断したまでさ。
シェリアそ、そう……。けど、なんだか大事になってきて申し訳ないわね……。
ソフィ私たちに何か手伝えることはある ?
キール原料となる植物や果物を採取してきてくれ。好きなもので構わない。
ソフィ自分の好きな香りが作れるの ?
キールそういうことだ。
シェリアソフィ、もしかして興味あるの ?
ソフィうん。やってみたい。
アスベル採取なら人手が多い方がいいかもしれないな。俺も手伝おう。
コーキスせっかくだからみんなで行こうぜ。ミリーナ様もいいですよね ?
ミリーナええ。わかったわ。
ヒューバートパスカルさんはどんな香水がいいかイメージはありますか ?
ヒューバート言ってくれれば相応しい原料を調達してきますよ。
パスカル……あぁ、ごめん !ちょっといま手が離せなくて……。ん~、そうだな……弟くんに任せるよ !
ヒューバートぼくに……ですか。
ヒューバートそ、それなら仕方ありませんね。わかりました。ぼくに任せてください。
アスベルよし。それじゃあ準備を整えたら原料の採取に向かうとしよう。
リフィルあら。外出するならついでに届け物を頼めるかしら。
キールこの機材を地図に示した学園に届けてきて欲しい。
コーキス機材 ? 学園 ?どういう事情なんだ ?
キール言っていなかったか ?現在、キール研究室とこの学園の間で一時的に研究技術の交流を行っているんだ。
キールこの機材は共同開発中のロボに必要なものというわけさ。
コーキスそうだったのか ! ?全然知らなかった !
アスベルどうしてそんなことを始めたんだ ?
キールたまには外の意見を取り入れるのも悪くはないだろうと思ったからさ。
キールもちろん、ぼくらの素性は隠しているし一般には公開できない研究データは厳重に保管してある。
ユリウスああ。こちらの情報は俺が厳重に管理をしている。安心して欲しい。
ミリーナ私も承知していることなのよ。不便な生活を強いているからみんなの研究ぐらいは支援したくて。
コーキスまぁ、そういうことならいいんですけど。
パスカルそれじゃー、よろしくね~♪
アスベル学園まで少し距離があるみたいだな。ついでに原料を採取しつつ向かおう。
シェリア途中、草花がたくさんある森を通ることになるから丁度いいわね。
ヒューバートまったく、仕方ないですね。それでは準備ができ次第、出発しましょう。

Character6話【香り6 学園にて】
コーキスアスベル様たち、資材を届けに行ったきりなかなか帰ってこないですね。どっかで寄り道でもしてるのかな。
ミリーナきっとソフィに学園について色々説明しているんじゃないかしら。
コーキスああ、学園見学してるのか。楽しそうですけど、大丈夫ですかね ?
ミリーナヒューバートさんもついているし大丈夫よ。制服を着て紛れ込んでもらったから部外者や不審者だと疑われる心配もないわ。
コーキスミリーナ様も制服あるじゃないですか。学園内は自由に行動できるし一緒に行ったらよかったのに。
ミリーナ万が一のことも考えると目立たないに越したことはないわ。
コーキス授業中のせいかすごく静かですね。俺、こういう雰囲気苦手だなぁ。
コーキスまぁ、おかげで制服がない俺も人目を気にしなくて済むし、ミリーナ様も一緒にいてくれるからいいんですけど。
ヒューバートお待たせしました。資材は届けてきましたよ。
コーキスおっ ! やっと戻ってきたな。
アスベルすまない。ソフィに学園生活について教えていたら、騎士学校の思い出話にまで発展してしまった。
ミリーナいいのよ。気にしないで。
コーキスどうせそんなことだろうなってミリーナ様と話してたところだったんだ。
ミリーナソフィ、学園はどうだった ?
ソフィリフィル先生の授業も楽しいけど学園生活も面白そうだったよ。
シェリア気に入ったみたいね。
コーキスそういえば……ソフィ様、その手に持ってる花はなんだ ?
ソフィクロソフィだよ。私の名前の由来になった大切な花。
ソフィ学園にクロソフィの花壇があったの。眺めてたら緑化委員の人がくれたんだ。
ミリーナ見た目も綺麗だけど香りもいいわよね。
アスベルさっきまで俺たちも同じことを話していたんだ。それで、ソフィはもらったクロソフィを香水の原料にするって決めたらしい。
ソフィうん。せっかくだから。アスベルは決まったの ?
アスベル俺は……実はまだなんだ。好きな香りと言われても難しくてな。
コーキスヒューバート様は ?
ヒューバート事前に原料とするものくらい決めてあります。だいたい採取も終わりましたよ。
アスベルだいたい ? 外の馬車にある花やハーブ全部ヒューバートのだろ。まだ集める気なのか ?
ヒューバート当然です。
ヒューバート香水は時間と共に香りが変化していきます。それを見越して、複数の原料をブレンドする必要があるんですよ。
コーキスへぇ、そうなのか。香水ってなんか複雑なんだな。
アスベルヒューバート、いつのまにそこまで香水に詳しくなったんだ ! ?
ヒューバートたいしたことはありません。専門書を数冊読んだだけです。
ミリーナふふ……。ヒューバートさん、熱心ね。
ヒューバートな、なんですか。その微笑ましい視線は。適当なものを作ってはぼくの名誉に傷がつくと思っただけですよ。
コーキスあぁ、パスカル様のためか。そういや色々面倒みてたもんな !
ヒューバートな、何の話ですかね。パスカルさんは嫌いじゃありませんが変な勘ぐりはやめてください。
ソフィ変な勘ぐり ?
ヒューバートそれは……。
シェリアふふふっ。もういいじゃない。白状しちゃいなさいよ。
ヒューバートほ、放っておいてください !まだ採取しなくてはいけない花が残っているんです。
アスベル待ってくれ。ヒューバート。
ヒューバートな、なんですか ! ? 兄さんまで !
シェリアあのアスベルが気づいたっていうの…… ! ?
アスベルその先にある洞窟は急に水が噴き出してきたりする。魔物も出るから気をつけろよ。
二人あぁぁ~~。
ヒューバート何を言い出すかと思えば。まぁ、兄さんらしいですけどね。
ヒューバート洞窟については事前に調査済みです。忠告されるまでもありませんでしたが……いちおう礼は言っておきますよ。
アスベルお前が怪我でもしたら大変だからな。そうだ、俺も一緒についていく。手伝わせてくれ。
ヒューバート結構です。まずは自分の分の原料を確保したらどうですか ?
アスベルそれは……洞窟の中で見つかるかもしれないだろ。
ヒューバートまったく。なら勝手にしてください。余計なお節介は無用ですからね。
アスベルああ。わかっているよ。
ソフィわたしも勝手にヒューバートについていくね。
コーキスダチのために香水作りを頑張るなんてヒューバート様も超いい奴じゃん。俺も勝手に後ろから応援させてもらうぜ。
ヒューバートはぁ……。貴方たちという人は。わかりましたよ。
ヒューバート洞窟に向かいます。皆さん、ついてきてください。

Character7話【香り7 材料を探して洞窟へ】
ヒューバートこのあたりに生えているはずなのですが……。
ソフィなかなか見つからないね。
アスベル……あれは。
コーキスアスベル様、どうかしたのか ?
アスベルいや、あの岩陰に……。ヒューバート、ちょっと来てくれ。
ヒューバート何ですか ?
アスベルあの岩陰に咲いている花、お前が探していたやつじゃないか ?
ヒューバートまったく。洞窟に入る前に言ったはずですよ。余計なお節介は……。
アスベル……ど、どうした ?
ヒューバート兄さん ! そこをどいてください !
アスベル……っ。なんだよ。いきなり押すことな……うん ?ヒューバート、ずぶ濡れじゃないか !
ヒューバートこの洞窟では水が急に噴き出すことがある。自分で言っていましたよね ?
アスベルすまない。俺の不注意だった。大丈夫か ?
ヒューバート平気ですよ。それに兄さんのおかげで目的の花は手に入りましたから。ぼくとしては貸し借りはなしです。
ヒューバートだから変に気にしたりしないでくださいよ。たかが水をかぶっただけなんですから。
アスベルヒューバート……。
コーキスヒューバート様…… !アニキのために自分を犠牲にするなんてすげぇ、兄弟愛だぜ ! ゲキカンだよ ! !
ミリーナふふ、本当にそうね。とっても素敵な関係だと思うわ。
ヒューバートな、なんですか。いちおう兄弟なわけですし心配くらいはぼくだってしますよ。
シェリアはいはい。濡れたままだと身体が冷えるわよ。ひとまず、このハンカチを使って。
ヒューバート……ええ。ありがとうございます。
パスカル弟くん、びしょびしょじゃない !大丈夫なの ! ?
ヒューバートパスカルさん ! ? どうしてここに ! ?
パスカルみんなの帰りが遅いんだもん。こっちは香水調合用装置を小型化して量産化可能な設計に変更まで終わったよー。
パスカルそんなことより弟くん、すぐアジトに帰ってお風呂に入った方がいいよ。
ヒューバートあなたにお風呂に入るよう言われる日がくるなんて……。
アスベル俺は一足先に行って湯を沸かせておく。
コーキス採取した花やハーブは俺がヒューバート様の部屋に運んでおくぜ。
ヒューバート皆さん、大げさすぎですよ。自分で何とかできますから。
パスカルいいから、ほらほら ! 行くよ !
ヒューバート……わかりました。

Character8話【香り8 アジトに帰ろう】
ソフィアスベル、シェリア。クロソフィの香水できたよ。
シェリアソフィ、偉いわ。よく頑張ったわね。
アスベルいい香りだな。故郷のことを思い出すよ。
ソフィくんくん、シェリアのもいい香り。
シェリアふふ、色々な花をブレンドしてみたのよ。
コーキス俺のはさっぱり爽やかに柑橘系だ。自分でも結構気に入っているんだよな。
カーリャなんですか~、コーキス。最近妙に色気づきはじめた気がしますよ。
コーキスうるっせーな、カーリャパイセンは。
カーリャうるさいとはなんですか !それにパイセンじゃなくて先輩です !
コーキス――ほら、カーリャパイセンの分。俺のよりちょっと甘めの香りにしてみた。
カーリャコーキス ! さすが !たまにはパイセンでも許しますよ。ありがとう~ !
ソフィミリーナのはなんだか海みたいだね。
ミリーナ私も故郷を思い出しながら作ってみたのよ。
コーキスアスベル様はどういう香水にしたんですか ?
アスベル俺はヒューバートと同じものだ。余った原料をわけてもらっただけだからな。
アスベルでも、ヒューバートの作った香水の方ができがいいと思う。もの凄く集中して作ってたからな。
ソフィヒューバートは ?
アスベルいまパスカルに香水を届けに行ってるはずだぞ。
ヒューバートパスカルさん。約束通り、香水を作ってきましたよ。
パスカルうわぁ~ ! ! 弟くん、ありがと ! !感謝感激雨あられだよ ! !これで研究し放題だ~ ! !
ヒューバートですがお風呂にはちゃんと入るようにしてくださいよ。
パスカルわかってるって~♪それでそれで、その手に持ってるのが弟くんが作ってくれた香水 ?
ヒューバートええ、どうぞ。受け取ってください。
パスカルおぉぉ ! ありがと~ ! !昨日お風呂入ったばっかりだけどさっそく試してもいい ! ?
ヒューバートもちろんですよ。あなた好みに調合をしたつもりですがいちおう感想も聞きたかったので。
パスカルおっ、じゃあさっそく弟くんのセンスをチェックしちゃうよ~♪ほーい……シュッシュッシュ~っと !
ヒューバート……。
パスカル…………。
ヒューバートあの……もしかして気に入りませんでしたか ?もしそうなら作り直しますが。
パスカルそんなことないって !すっっごく気に入ったよ ! !さすが弟くんって感じだよ~♪
キールパスカル。研究結果のデータについて意見を聞きたいんだが構わないか ?
パスカルほいほーい。いま行くよ~。それじゃあまた後でね、弟くん。
ヒューバートは、はい……。
ヒューバート……パスカルさん、どうしたんだ。香水には何も問題ないはずですが……。
ジュードヒューバート。ここにいたんだね。
ヒューバートジュードさん、何か用ですか ?
ジュードこの薬、よければ使って。
ヒューバート……薬 ?ぼくはどこも悪くは…
ヒューバート…くしゅっ。
ジュード風邪とも言えないくらい病状も軽度だし自覚症状もないと思うけど、少し鼻の調子が悪そうだったから作ってきたんだよ。
ジュード放っておいてもすぐ治ると思うけどいちおう渡しておくね。
ヒューバートは、はい。ありがとうございます。たぶん水をかぶった影、響で……。
ヒューバートまさか、パスカルさん……。

Character9話【香り9 学園でトラブル?】
ヒューバート…………。
アスベルヒューバート、どうかしたのか ?オムライスはお前の好物なのに全然手をつけていないじゃないか。
ヒューバートゆっくり味わって食べているだけです。それとオムライスがぼくの好物というわけではありません。それは勘違いです。
コーキスそれにしても食の進みが遅いだろ。
シェリアもしかしてパスカルが最近ずっとキール研究室に籠もってて会えていないことが原因かしら ?
ヒューバートごほっ ! ごほっ ! !オム、ライスが……喉にっ ! !
ソフィヒューバート、お水だよ。
ヒューバートごくっごくっ……ぷはぁっ !あ、ありがとうございます……。
アスベルヒューバート、何か悩みがあるなら話してくれないか ?
ミリーナ力になれることもあるかもしれないわよ。
ヒューバート相変わらず兄さんはお人好しですね。
ヒューバートミリーナさんにしてもそうだ。初対面のときぼくはあなたを指名手配と言ったことを忘れましたか ?
コーキス……そういや、そうだったな。でも――
ミリーナ――ええ、私もコーキスももうわかっているつもりよ。
ミリーナこれがヒューバートさんなりの優しさなんだって。
コーキスへへ、ヒューバート様って超いい奴だよな !
アスベルヒューバート。別に無理に話さなくてもいいんだ。
アスベルけどな、世界に関することとか国に関することとか大きさなんて関係ない。どんな些細なことでも相談してくれよ。
ヒューバート……兄さん。
アスベル俺だって馬鹿じゃない。ちゃんと気づいてるさ。ヒューバート。お前、パスカルのこと……。
ヒューバート……えっ ! ?
シェリアウソ ! ? アスベル ! ?
アスベルお前もパスカルのこと、本当に大切な仲間だと思ってるんだろ。働き過ぎてないか心配だよな。
二人あぁぁぁ……。
ヒューバートふっ……ふふっ。
ソフィヒューバートが笑った。
アスベルお、おい。俺は真面目に話してるんだぞ。
ヒューバートわかっていますよ。本当に兄さんって人は……。
ヒューバートいいですか。だから……ぼくの話も笑って聞いてください。
パスカルここをこうして……ひょい、ひょいっと !だいぶ順調でいい感じ~♪
メルディパスカル、そろそろ休むがいいよ。
パスカルう~ん……あと、もうちょい !誰か、ここ押さえてくんない ! ?
リタ……うっ。あんた、その匂い。それ終わったらすぐお風呂入りなさいよ。
メルディそういえば香水、使わないか ?
パスカル使わないよー……ふふっ♪よしよし、こっちもぴょぴょいっと !
キールパスカル。ヒューバートからお前宛に手紙を預かったぞ。
パスカル弟くんから ?そういえば最近会ってなかったや !なになに、あたしに何のようかな~ !
パスカル……うん ?
リタどうかしたの ?
パスカル『気を遣わせてしまって申し訳ありません。あの香水は処分してください』……だって。
パスカルあれって弟くんが一生懸命作ってくれた香水のはずなのにどういうこと ! ?
アスベルキール研究室の皆さん。失礼します。
ソフィあっ、パスカルだ !
パスカルあれ ! ? アスベルたちじゃない !
アスベルヒューバート、いいからこっちに来い。お前が出したっていう手紙じゃ何にも解決にはならない。ちゃんと話そう。
ヒューバートちょ、ちょっと。兄さん。
パスカル弟くん ! ?
パスカルあ、あれ ! ? どういうこと ! ?学園で共同研究開発中だったロボから想定外のアラートが……。
シェリアパスカルが珍しいわね。大丈夫なの ?
パスカルえっと、ここをこうして……。
パスカルあれ ! ? おかしいよ !さっきまで遠隔操作できてたのに制御不能になっちゃった ! ?
ミリーナロボが制御不能に ! ?学園は大丈夫なの ! ?
パスカル休校日だから被害はないと思うけどこのままじゃ学園が滅茶苦茶になっちゃうよ~ !
ソフィクロソフィの花壇もあるのに。
コーキス学園に誰もいないなら構わないだろ。みんなで乗り込もう。暴走ロボもちょっとぶっ叩けば収まるだろ !
ソフィわかった。わたしたちで止めよう !

Character10話【香り10 暴走したロボ】
ソフィじーー。
アスベルよし。暴走したロボも収まったな。
ソフィうん。もう大丈夫だね。
シェリアヒューバートとパスカルは ?
コーキスあっちで話してるみたいだぜ。
ヒューバートそ、それじゃあ……あのときの反応は使うのがもったいないと思ったから……だったんですか ?
パスカルだってすっごくいい香りだしあたしの匂いを消すために使うって考えたらそりゃもったいないって思うでしょ !
ヒューバートそれじゃあ……。
パスカル100億点満点だよ~ !最っ高に気に入ってるよ !
パスカルそれに、弟くんが頑張って作ってくれたものだからね。あたしにとっても大切だよ。
ヒューバートそ、そうですか。それならぼくとしても、その……満足です。
ヒューバートですが使わないのももったいないです。また作ればいいだけですし遠慮せず好きに使ってください。
パスカルホントに ! ? また作ってくれるの ! ?
ヒューバートティル・ナ・ノーグに来てからどれだけあなたの世話をしてきたと思っているんですか。
ヒューバート香水の一つや二つ、今更ですよ。ぼくにとっては造作もないことです。欲しいだけ言ってくれて構いませんよ。
パスカルあははっ。ありがとう♪弟くんは本当に気が利くいい子だね !
ヒューバート子ども扱いしないでください。ぼくは気が利くわけでもいい子でもないです。
ヒューバートこれも……あなたのことが……
パスカル……えっ ?
ヒューバートな、何でもありません。
パスカル弟くん、もしかして……。
ヒューバートな、なんですか ! ?
パスカル確認させて。本当に……いいの ?その気持ちに嘘はない ?
ヒューバートい、いや……その……。
ヒューバートはい。もちろんありません。
パスカルそっかぁ……よかった。あたしも嬉しいよ。弟くんの気持ち、知ることができて。
ヒューバート……パスカルさん。
パスカル弟くん、そこまで香水作りにハマってたんだね。
ヒューバート……えっ ?
パスカル実は弟くんの香水、すっごく評判よくてさ~♪欲しいっていう人いっぱいいるんだよ~ !
パスカル偶然知り合いになったフレグランス・ショップの店長さんもぜひ仕入れたいんだって !
ヒューバートえっ……あ、あの ?
パスカルだから、弟くん、香水作り頼める ?あたしは研究がいい感じだから今だけはそっちに集中したくてさ~。
ヒューバート…………。
ヒューバートふんっ。お安いご用です。
パスカルさっすが ! ! 頼んだよ~ ! !
シェリアヒューバート……。
ミリーナヒューバートさん……。
ヒューバートは、ははは……。
ソフィ……ヒューバートが壊れた ?
コーキスヒューバート様、大丈夫か ?
ヒューバートぼくは大丈夫ですよ。
アスベルヒューバート、よかったな。ちゃんとパスカルと誤解が解けて。
ヒューバート兄さん……その鈍さ、今のぼくにとっては救いです。
アスベルうん ? よくわからないがお前の支えになれているのなら嬉しい。また俺たちも原料集め手伝うからな。
ヒューバート……ええ、こうなったらとことんやってやりますよ ! !皆さん、行きますよ ! !
アスベルおっ――
四人おぉぉっ ! !
アスベル……お、俺がズレてるのか。
パスカルふりゃ……ばびっとこうして……ここがこうなって……。リタ、この部分どう思う?
リタそれは……うっ。ちょっと、パスカル。あんた結局、その香水使わないわけ ?
パスカルあー……うん、なんかね !やっぱりこれは大切だからさ♪