| Character | 1話【1枚 掴んだ手がかり】 |
| マギルゥ | 暇じゃー。暇で忙殺されそうじゃー。コーキスや、退屈しのぎに何か一発ギャグでもしてくれんかのう ? |
| コーキス | よし。じゃあいくぜ。 |
| コーキス | キール様が木をきーる ! |
| マギルゥ | 馬鹿者 ! 人のネタを使う奴があるか ! |
| コーキス | ダメか。俺、けっこう気に入ってたんだけどな。 |
| マギルゥ | はぁ……。こんなときビエンフーがおったら延々と早口言葉を言わせ続ける遊びで暇つぶしもできるのにのう。 |
| マギルゥ | それに奴がおらんと聖隷術も使えぬゆえ不便極まりないわ。 |
| ミリーナ | マギルゥが契約してるノルミン聖隷のビエンフーさん、どこにいるのかしらね。 |
| マギルゥ | あの見た目のせいでノル様人形と間違われ、出荷されてしもうたからのう。 |
| マギルゥ | 儂も奴の手がかりを求めて東へ西へ鞄の中も机の中も捜したけれど見つからなんだ。 |
| ミント | ただいま戻りました。買い物終わりましたよ。 |
| マギルゥ | おぉ、ミントたちではないか。ずいぶんとご機嫌な様子じゃが何か面白いことでもあったかえ ? |
| メルディ | 街で結婚式やってたよ。 |
| エステル | 眺めているだけでわたしたちも幸せな気分になってしまいました。 |
| ミント | あちこちでやっていましたが結婚ブームなのでしょうか ? |
| ミリーナ | ジューンブライドの季節だからよ。この時期に結婚した花嫁は幸せになると言われているの。 |
| ミリーナ | だから多くの人はこの時期に挙式をするのよ。 |
| エステル | そうなんですね。とっても素敵です。 |
| マギルゥ | こんな世の中じゃというのに世間様はお気楽なものじゃのう。 |
| メルディ | マギルゥ、結婚式興味ないか ? |
| マギルゥ | 小指の先ほどもないのう。つかの間の幸せに歓喜する花嫁の様子を見て腹がふくれるのなら別じゃがな。 |
| マギルゥ | 覚えておくといい。結婚式に浮かれるのは若いうちだけなのじゃよ。 |
| ミリーナ | 若いってマギルゥも私たちと同年代じゃないですか。 |
| マギルゥ | ギクッ ! |
| 一同 | ……えっ。 |
| マギルゥ | い、言っておくが儂のことを人の幸せも素直に喜べぬ寂しい三十路と思ったら大間違いじゃからな ! |
| マギルゥ | 儂のココロは14歳ぐらいじゃもの♪ |
| ミリーナ | そうよね。大切なのは中身だもの。マギルゥは面白いしとっても素敵よ。 |
| メルディ | メルディより若いな ! |
| マギルゥ | なんじゃこれは ! ?今までになかった暖かすぎるフォローが逆にしんどいのじゃがー ! ? |
| コーキス | マギルゥパイセン。ちーっす。 |
| マギルゥ | そうそう、その感じが儂には合って……って、傷口抉るようないじりもやめいっ ! ! |
| アリーシャ | みんな、聞いてくれ !街を歩いていたらノルミン天族を見かけたんだ ! |
| マギルゥ | おぉっ。アリーシャではないか。丁度いいところに関係ない話題をぶち込んできてくれて助かったわ。 |
| マギルゥ | 相変わらず天族大好きなようで何よりじゃぞ。その話、どんどん膨らましてくれ。 |
| アリーシャ | いや、すまない。天族ではなかった。その方は自分はノルミン聖隷だと名乗っていたからな。 |
| ミリーナ | ということはマギルゥたちの時代から具現化されたノルミンよね。 |
| コーキス | それってビエンフー様 ? |
| アリーシャ | お名前は聞きそびれてしまったがリボンのついたシルクハットでお顔を隠していらっしゃったな。 |
| マギルゥ | なんじゃと ! ?ほ、他に特徴は ! ? |
| アリーシャ | そうだな……息を荒げながら私のことを舐めるように見回していた。ずいぶんと熱い眼差しだったな。 |
| コーキス | うわっ。それって変態―― |
| マギルゥ | 間違いない ! ビエンフーじゃ ! ! |
| Character | 2話【3枚 変わらない関係】 |
| ライフィセット | ビエンフーがこの街にいるかもしれないんだね ? |
| マギルゥ | すまぬが坊よ、捜すのを手伝ってくれぬか ? |
| ライフィセット | もちろんだよ。みんなで手分けして捜そう。 |
| エレノア | 私も協力しますよ。これでも元主ですからね。 |
| コーキス | そうだったのか ? |
| エレノア | ええ。色々ありまして。いまはライフィセットの器ですが。 |
| ベルベット | 話は後にしなさい。まだ街からは出てないはず。急いで捜すわよ。 |
| アイゼン | 待て。あの人だかりは何だ ? |
| ミリーナ | 女の人たちに囲まれて誰かいるみたいね。 |
| ? ? ? | それじゃあボクは大事なミーティングに出席してくるでフ。スケジュール調整は頼んだでフよ。 |
| 美女 | かしこまりました。ディナーとマッサージの予約も済ませておきます。 |
| ? ? ? | マッサージはいつもの娘で頼んだでフよ~。 |
| ライフィセット | 中心にいるの……あれビエンフーだよ ! |
| ビエンフー | この世界は可愛い子ばかりで最高でフなぁ !しかも姐さんとは違って優しくて素直でおまけにメロンってやつでフし ! ! |
| マギルゥ | ビエンフー。呼んだかえ ? |
| ビエンフー | ね、ねねね……姐さん ! ? |
| エレノア | はぁ……あなたという人は。あんなに鼻の下を伸ばして……不潔です。 |
| ビエンフー | エレノア様 ! ? 皆さんも ! !え、えっと……それは誤解でフよ ! ?ボクはやましいことなんて―― |
| ビエンフー | ブフッ ! ! |
| マギルゥ | 何をしておるかと思えば。まずはお仕置きが必要じゃな。 |
| ビエンフー | ね、姐さん…… ! 話を聞いてくだ……あぁぁっ ! ! それはやめっ…… ! !ビ、ビエーーーーーン ! ! |
| コーキス | ビエンフー様、大丈夫か ?あの扱い、さすがに酷すぎて直視できねぇ。 |
| ベルベット | 気にすることないわ。いつものことよ。 |
| ミリーナ | ビエンフーさん、初めまして。マギルゥからあなたのことは聞いてるわ。私はミリーナ、こっちはコーキスよ。 |
| ビエンフー | どうもでフ。いやぁ、お見苦しい光景を見せてしまい恐縮でフ。 |
| ライフィセット | それよりビエンフー、今まで何してたの ?ずっと心配してたんだよ。 |
| マギルゥ | 理由次第ではわかっておろうな ?お主がいないおかげで儂は一部の者に穀潰し扱いされておったのじゃぞ ? |
| マギルゥ | 戦いもしない。手伝いもしない。周りからどれだけ冷たい視線を浴びせられてきたかわかっておるのか ! ? |
| コーキス | それ全部、ビエンフー様のせいだとは言い切れないような……。 |
| ビエンフー | と、とにかく話を聞いて欲しいでフ !あの女の人たちはただの秘書なんでフ !それ以上でも以下でもないでフ ! |
| アイゼン | 秘書だと ?なぜお前が秘書を雇っている ? |
| ビエンフー | 実はボク、ブライダルコーディネーターという仕事をしているんでフよ。 |
| ライフィセット | ブライダルコーディネーター ?どうしてまたそんな仕事してるの ? |
| ビエンフー | 出荷されて神殿に飾られていたんでフが人形ではないとバレたのがきっかけでフよ。雑用から出世したんでフ。 |
| エレノア | ジューンブライドの季節のときブライダル関連のお仕事は人手不足になると聞きましたが……。 |
| ベルベット | あんたがねぇ……。 |
| ビエンフー | 聞いて欲しいでフ。ノル様人形に間違われ出荷されてから波瀾万丈だったんでフから。 |
| ビエンフー | 大変だったでフよ……。けど、姐さんも苦しい生活を送ってるかもしれないと考えボクは前に進もうと決意したんでフ。 |
| ビエンフー | そう……ボクは姐さんと必ず再会し、そして二人でリッチな生活を送るため働くことにしたんでフ ! |
| ミリーナ | ビエンフーさん、マギルゥ思いで優しいのね。 |
| ビエンフー | えー。そんなことでも……あるでフけど~~。ミリーナさんも優しいでフね~。 |
| コーキス | おい。ミリーナ様に変な視線送んな。 |
| マギルゥ | コーキスよ、お仕置きは儂に任せておけ。 |
| ビエンフー | ちょ、ちょっと !まだ話は終わってないでフよ ! |
| ビエンフー | ともかくブライダルの仕事が順調にいって自慢じゃないでフがいまはリッチな生活ができてるというわけでフ。 |
| アイゼン | 美人秘書たちをはべらせたりなかなか羽振りがいいようだな。 |
| ビエンフー | まぁまぁでフかねー。ちなみに、あそこの家がいまボクが住んでるところでフ。 |
| エレノア | 豪邸じゃないですか ! ? |
| ライフィセット | ビエンフー、本当に頑張って働いたんだね。 |
| マギルゥ | じゃが儂のことを放っておいてメロンどもにうつつを抜かしていたという事実は変わらぬぞ。 |
| ビエンフー | そ、そんなことないでフ !あと少ししたら姐さんを捜しに行こうと思ってたんでフよ ! |
| マギルゥ | ならば手間が省けたな。ミリーナよ、無事労働力を確保した。アジトに戻るぞ。 |
| ビエンフー | ま、待って欲しいでフ !ボクも姐さんと会えて嬉しいでフけどもう少しだけこの生活を満喫したいでフ ! ! |
| マギルゥ | なんじゃと ? |
| ライフィセット | 確かに、このまま問答無用で連れて行くのは可哀想かも……。 |
| コーキス | 俺もそれには同感だな。せっかく自分で頑張って手に入れた生活には違いないし。 |
| ビエンフー | お願いしますでフ !大切な仕事も残ってるんでフ !それが終わったら一緒に行きまフから ! |
| ベルベット | って、言ってるけど ? |
| アイゼン | いま抜け出すことはお前の仕事仲間たちを裏切ることにも等しい。ならばどうするか、答えは一つだ。 |
| エレノア | マギルゥ。 |
| マギルゥ | はぁ……仕方ないのう。 |
| ビエンフー | ありがとうございますでフ ! !感謝感激雨あられでフよ ! ! |
| ミリーナ | マギルゥもビエンフーさんと同じように優しいわね。 |
| マギルゥ | ふんっ。笑えん冗談はやめい。 |
| ビエンフー | ふふっ。しめしめ。ひとまずこの場はやりすごせたでフ。 |
| ライフィセット | ビエンフー、何か言った ? |
| ビエンフー | な、なんでもないでフよ~。 |
| ビエンフー | そうでフ ! せっかくでフから皆さんにお礼させて欲しいでフ ! |
| マギルゥ | 礼じゃと ? |
| Character | 3話【4枚 写真を撮ろう】 |
| コーキス | す、すっげぇ。なんだよこの豪華料理……。 |
| ビエンフー | 専属のシェフに急ぎ用意してもらったありあわせでフよ。 |
| エレノア | どれだけいい生活を送っていたんですか。 |
| アイゼン | それにこの料理……。 |
| マギルゥ | く、悔しいが……美味いのう。 |
| ビエンフー | 姐さんが気に入ってくれたのならボクとしても嬉しいでフよ。 |
| ライフィセット | ビエンフーは食べないの ? |
| ビエンフー | ボクは少し仕事が残ってるでフから。稼いでる分、仕事もそれなりに忙しいんでフよ。 |
| ベルベット | 具体的にはどういうことをしてるわけ ? |
| ビエンフー | そうでフね。いまは新しいウェディングドレスのデザインとその販売計画を考えてるんでフよ。 |
| ビエンフー | これがなかなか難しくてでフね~。 |
| | ――パシャ |
| ミリーナ | ふふっ。いい写真が撮れたわ。 |
| エレノア | ミリーナ、料理を撮影していたんですか ? |
| ミリーナ | ええ。以前、魔鏡の技術を用いて現実の光景を紙に転写する魔鏡器機を開発したでしょう ? |
| エレノア | アークでの感謝祭で使っていましたね。ルドガーたちの世界ではそのような装置をカメラと呼ぶと言っていました。 |
| ミリーナ | せっかくだからたまに使っているのよ。こんなことがあったんだよ……って、いつか伝えたいから。 |
| コーキス | ミリーナ様……。 |
| ビエンフー | ……そ、それでフ。 |
| ミリーナ | えっ ? |
| ビエンフー | ミリーナさん ! そのカメラという装置、貸してもらえないでフか ! ? |
| ミリーナ | えっと。このカメラを使うのには具現化の力が必要だから鏡士である私じゃないと使えないわよ。 |
| ビエンフー | それなら少しだけ仕事を手伝って欲しいでフ ! |
| コーキス | ビエンフー様、何考えてるんだよ。 |
| ビエンフー | ウェディングドレスを着たモデルを撮影してその写真を展示するんでフよ ! |
| ビエンフー | ドレスを買おうか迷っている人も写真を見れば具体的なイメージが持ちやすいでフし確実に売れるでフ ! |
| ミリーナ | 私は別に構わないわよ。けど、ドレスとモデルはどうするの ? |
| ビエンフー | ドレスはもうイメージできてるでフ。後はそれに似合う清楚で可憐な乙女が三人いれば……。 |
| ベルベット | エレノア、あんたやってみたら ? |
| エレノア | 私ですか ! ? |
| ミリーナ | 似合うと思うわよ。 |
| エレノア | そう言って頂けるのは嬉しいですし興味がないと言ったら嘘になりますが……遠慮しておきます。 |
| エレノア | モデルになるからには花嫁らしく振る舞わねばいけないと思います。 |
| エレノア | ですが私は自分が結婚をしている姿をイメージができなくてですね。 |
| ベルベット | 誰もそこまで求めてないでしょ。相変わらず真面目ね。 |
| アイゼン | そういうお前はどうなんだ ? |
| ベルベット | あ、あたし ? |
| ライフィセット | 花嫁衣装のベルベット、僕、見てみたいな。 |
| ベルベット | け、けど……撮影したウェディングドレス姿って不特定多数に見られるんでしょ……。 |
| アイゼン | この世界でお前は指名手配されてるわけでもないだろう。気にすることはない。 |
| ベルベット | そういう問題じゃないでしょう。 |
| コーキス | ベルベット様、顔が赤いぞ。もしかして恥ずかしがってんのか ?へへ、ちょっと意外な反応だな。 |
| ベルベット | なに面白がってるのよ !恥ずかしいに決まってるでしょ ! |
| マギルゥ | ベルベットは人前に立つと借りてきた猫のようになってしまうからのう。 |
| ミリーナ | ふふっ。普段のベルベットも素敵だけど乙女なベルベットも可愛いわね。 |
| ベルベット | ミリーナ、もう黙ってて。とにかくあたしはやらないから。 |
| ライフィセット | そっかぁ。残念だな……。 |
| コーキス | マギルゥ様はどうなんだ ? |
| マギルゥ | おっ。とうとう儂に白羽の矢が立てられたか。 |
| ビエンフー | 姐さんは清楚でも可憐でも乙女でもないでフから厳しいでフね~。 |
| マギルゥ | うんうん、そうじゃのう……って、儂は書類選考落ちか ! ? |
| アイゼン | ビエンフーの指摘自体は否定しないんだな。 |
| マギルゥ | わ、儂は魔女じゃし~。いまさら花嫁に転職をするつもりはないだけじゃし~。 |
| ビエンフー | はぁ……。誰かモデルに相応しい人はいないものでフかねぇ……。 |
| エステル | ミント、メルディ。見てください。デザートがありますよ。 |
| メルディ | バイバ ! おいしー ! |
| ミント | ふふっ。慌てて食べると喉につかえてしまいますよ。 |
| ビエンフー | あ、あぁ……。 |
| 三人 | …… ? |
| ビエンフー | 見つけたでフーー ! ! |
| Character | 4話【5枚 撮影会開始】 |
| マギルゥ | ミント、メルディ、エステルの三人とも、まさか本当にモデルを引き受けるとはのう。 |
| コーキス | 俺もビックリしたぜ。事情を説明したら快諾してくれたんだったか ? |
| ビエンフー | そうでフよ。本当にいい人たちでフ。あまりの優しさに少し泣きそうになったでフ。 |
| コーキス | よくわかんねぇけど、ビエンフー様も今まで大変だったんだな。 |
| ミリーナ | お待たせ。ドレスアップ終わったわよ。 |
| エステル | お待たせしました ! |
| リタ | もう、エステル。もっとゆっくり歩きなさいよ。転んだりしたら危ないでしょ。 |
| カロル | 早く見せたかった気持ちはわかるけどね。 |
| エステル | あはは……気をつけます。 |
| エステル | それで……どう、ですか ? |
| ユーリ | 似合ってるぜ。さすがお姫様だ。 |
| エステル | そういえばユーリと初めて会ったときもドレスを着ていましたよね。 |
| エステル | けどウェディングドレスは普通のドレスと違うように感じます。とても特別な感じがするんです。 |
| ユーリ | リタ、さっきから固まってるけど何か感想はないのか ?同性の意見の方が参考になるだろ。 |
| リタ | と、当然……か、かわい……。 |
| エステル | えっ ? なんて言いました ? |
| リタ | ま、まぁまぁねって言ったのよ。 |
| レイヴン | とか何とか言っちゃって。ホントは可愛いとか綺麗だとか思ってるくせに。 |
| カロル | 素直じゃないんだから。 |
| リタ | あんたたち、覚えときなさいよ…… |
| エステル | まぁまぁ……ですか ? |
| リタ | ……き、綺麗よ。すごく似合ってるわ。 |
| エステル | 本当ですか ! ?リタ、ありがとうございます !何だか自信が湧いてきました ! |
| ユーリ | モデルの仕事だったな。お前なら大丈夫だ。胸張っていってこい。 |
| エステル | ……それじゃあ、行ってきますよ ? |
| ユーリ | おう。頑張れよ。 |
| エステル | ……はい ! ありがとうございます ! |
| エステル | ユーリにも応援してもらったことですし精一杯頑張りますね ! |
| ファラ | メルディ ! すごく可愛い ! |
| メルディ | ありがとな !メルディもこのドレス、好きよ♪ |
| リッド | んじゃまあ、話を聞きつけて研究室からぶっ飛んできた奴にも感想を聞いてみようじゃないか。 |
| リッド | なぁ、キール ? |
| キール | …………。 |
| リッド | おーい、どうした ?起きてるか ? |
| メルディ | そんな見られると、メルディ照れるよ。 |
| キール | ……夢みたいだ。 |
| メルディ | えっ ? |
| キール | あっ、いや……。 |
| メルディ | 夢じゃないよ。 |
| キール | わ、わかってるさ。 |
| ファラ | それで、感想は ?似合ってるとか可愛いとか。 |
| キール | まあ、悪くはない……んじゃないか ? |
| メルディ | キール、メルディがこと褒めたよ !いつも怒ってばっかなのに今日のキール、さっきから変だな ! |
| キール | お、お前がそんな服を着てるからだ !もういいだろう、ぼくは研究室に戻るからな ! |
| メルディ | バイバ ! いつものキールだよ !研究、頑張ってなー ! |
| クレス | いやぁ、ミントがそのドレスを着てると本当の花嫁に見えてくるよ。 |
| ミント | ありがとうございます。でも、私にはまだ決まった相手もいませんから。 |
| アーチェ | ミントなら引く手あまたでしょ。どっかの国の王様とか大金持ちのイケメンとか狙い放題だって。 |
| ミント | そ、そんなことありませんよ。 |
| クレス | けど、きっとミントはいいお嫁さんになるよ。僕が保証する。 |
| ミント | ……クレスさん。 |
| アーチェ | じゃあ、もしミントがお嫁に行き遅れたらクレスが責任取らないとね~。なんせそこまで言ったんだから。 |
| クレス | ちょ、ちょっと待ってくれ。どうしてそうなるんだ。 |
| アーチェ | なに ? ミントじゃ嫌だっていうの ? |
| クレス | そんなわけないだろ。もちろん僕は構わないがミントにだって選ぶ権利が―― |
| ミント | あの、クレスさん。それってつまり……。 |
| クレス | あっ……。いや、その……深い意味は……。 |
| アーチェ | あははっ。二人とも顔が真っ赤。ホント、面白いんだから♪ |
| ミリーナ | 三人とも、すごく綺麗ね !見とれちゃうわ…… ! |
| ビエンフー | やはりボクの目に狂いはなかったでフね。 |
| マギルゥ | それはよかったのー。はやく撮影してしまいにしようぞ。 |
| ビエンフー | ダメでフよ。せっかくでフから撮影場所にもこだわっていい写真を撮るでフ。 |
| ミリーナ | そうよね。あの三人のいい写真が撮れるよう私も頑張るわ。 |
| コーキス | 俺も手伝います ! |
| マギルゥ | ずいぶんやる気になっておるのー。……まあ、座興に付きあってやるとするか。では、さっさと行くとしようぞえ。 |
| Character | 5話【6枚 撮影会(街)】 |
| ビエンフー | まずは街で撮影でフ。準備はいいでフね~。 |
| ミリーナ | メルディ、それじゃあ撮るわよ。 |
| ミリーナ | はい、ポーズ。 |
| クィッキー | クィッキー ! |
| ミリーナ | ええ。クィッキーも一緒にどうぞ。 |
| クィッキー | クィッキー ! クィッキー ! |
| メルディ | あははっ。クィッキー、一緒に撮れて嬉しいか ?メルディもだよ。 |
| ミリーナ | 大切な友達とのツーショットね。 |
| ミリーナ | 横顔も一枚。 |
| エステル | メルディ、楽しそうですね。カメラの前でも自然体ですごいです。 |
| ミント | そうですよね。私はいざ撮影となるとつい顔がこわばってしまって。 |
| エステル | ミント、そうだったんですね。実はわたしもだったんですよ。緊張しますよね。 |
| ミント | エステルさんもそうだったんですか ?よかった、私だけかと思っていたのでホッとしました。 |
| ミリーナ | 二人とも、今みたいに自然にしていればバッチリよ。 |
| 二人 | はい。 |
| コーキス | 何だか順調そうだな。 |
| マギルゥ | それはわからんぞ。何が起こるかわからぬのが人生じゃ。まぁ、どーでもいいがの。 |
| コーキス | 待て、だいたいわかってきたぞ。マギルゥ様がどーでもいいって言うときって何かあるときなんだ。 |
| マギルゥ | そんなことはないぞー ?どーでもいいからどーでもいいのじゃ。 |
| コーキス | いいから。何考えてるか教えてくれ。 |
| マギルゥ | わかったわかった。そうせっつくでない。 |
| マギルゥ | よいか。芸人は二種類に分類できるのじゃ。人前で緊張してハトマネをするのが精一杯の芸人と、儂のように場慣れした芸人じゃ。 |
| コーキス | なんだそれ。要するに緊張するタイプと、緊張しないタイプがいるってことか ? |
| マギルゥ | タコにも ! ベルベットほどではないがミントも恥ずかしがりなのやもしれん。 |
| コーキス | まぁ確かにそうかもしれないな。じゃあリラックスするよう伝えてくる。 |
| マギルゥ | ばっかもーん ! それでは逆効果じゃ !お主はまったくわかっとらん !それでもアシスタントか ! ? |
| コーキス | じゃあどうすりゃいいんだよ。 |
| マギルゥ | 決まっておろう。お主が場を和やかにしミントの緊張を解けば良いのじゃ。 |
| コーキス | 俺が ? |
| マギルゥ | まぁ、無理か。お主も一見するとアイゼンのように人相が微妙に悪く取っつきにくいからのう。 |
| コーキス | ちぇっ……悪かったな。たぶん眼帯の印象がデカいんだろうけどこればっかりはしょうがないだろ。 |
| マギルゥ | そうじゃな。なので儂が暇つぶしがてらお主を助けてしんぜよう。笑いのイロハをたたき込んでやる。 |
| コーキス | 笑いのイロハって……全然話が見えねぇ。何するつもりなんだよ。 |
| マギルゥ | 決まっておる。漫才じゃよ。 |
| Character | 6話【7枚 撮影会(海岸)】 |
| ミリーナ | ふふっ。エステルのドレス姿も素敵ね。気品も感じられるし、さすがお姫さまよ。 |
| エステル | ありがとうございます。撮影にも慣れてきました。 |
| ミリーナ | それじゃあもう一枚。ポーズ、お願い。 |
| エステル | こうでしょうか ? |
| ミリーナ | バッチリよ。 |
| メルディ | 次はミントな ! |
| ミント | は、はい。わかりました。 |
| コーキス | ちょっと待った !ミント様、休憩がてら見て欲しいものがある。 |
| ミント | な、なんですか ? |
| マギルゥ | さぁ、いくぞよ、コーキス ! |
| マギルゥ | はい。どーもー。漫才コンビ眼帯バッドウィッチーズじゃよ。 |
| マギルゥ | マギンプイ♪ |
| コーキス | えー、新人だけど頑張っていくんでよろしくお願いします。 |
| マギルゥ | 楽しんでいっておくれよ。 |
| コーキス | 笑わなかったら校舎裏に来てもらうけどな。 |
| マギルゥ | ヤンキーかっ ! ?お客さんに失礼じゃろ ! |
| コーキス | すいませんでした。 |
| マギルゥ | まったく、お客を脅す芸人がおるか。 |
| コーキス | ガン飛ばされた気がしてつい。 |
| マギルゥ | だからヤンキーかっ ! ?なぜ目が合っただけで好戦的になる ! ? |
| マギルゥ | はぁ、これだから最近の若手は。いったいどういう育ち方してきたんじゃ。 |
| コーキス | あぁ ? ちょっと待てよ、マギルゥ様。 |
| マギルゥ | な、なんじゃ急にキレだして。 |
| コーキス | 俺の育ち方が悪いって……つまり、マスターのことディスってんのか ? |
| マギルゥ | 待てーい、待つのじゃ、コーキス。さっきのはただのアドリブじゃぞ ?誰もイクスのことは悪く言っとらん ! |
| コーキス | じゃあミリーナ様のことかっ ! ? |
| マギルゥ | どうしてそうなる ! ?お主はどれだけ二人が大切なんじゃ ! ? |
| コーキス | コンビ愛が霞んで見えるほどには。 |
| マギルゥ | 素直でよろしい。もうお主とはやっとれんわ ! |
| マギルゥ | どんなもんじゃっただろう ? |
| ミント | 二人とも……。 |
| ミント | 喧嘩はよくありませんよ ? |
| コーキス | おーい ! 違うぞ、ミント様 !あれは台本だからな ! ? |
| マギルゥ | かーっ、ここにきて天然ボケをかまされるとは~ ! ! |
| ビエンフー | まだ荒削りだったでフからねぇ。ボクと姐さんの「イズチのカミナリ様」なら確実にイケたと思うでフが。 |
| マギルゥ | えぇいっ、黙らんか !偉そうに評論家ぶりおって ! ! |
| ビエンフー | ビエーン !ボクに八つ当たりしないででフ~ ! |
| ミント | ふふっ。大丈夫ですよ。ちゃんと皆さん、仲が良いのはわかっています。 |
| ミント | 私のこと、心配してくれたんですよね ? |
| コーキス | 緊張を解くには笑いが一番かなって思ったんだ。 |
| マギルゥ | ミントには効かなかったようじゃがな。 |
| ミント | いいえ、面白かったですよ。ありがとうございます。 |
| ミント | それに私でもどうしたらいいか少しわかった気がします。 |
| エステル | ミント、大丈夫そうです ? |
| ミント | はい。ですがお願いがあって……ビエンフーさん、撮影場所を変えてもいいですか ? |
| ビエンフー | いいでフけど、他にお洒落な場所ってあったでフか ? |
| ミント | 案内しますね。 |
| Character | 7話【8枚 撮影会(雪山)】 |
| メルディ | ミント、ここで撮影したかったか ? |
| ミント | はい。皆さん、ついてきてくださってありがとうございます。 |
| ビエンフー | けど何でここなんでフか ? |
| マギルゥ | 雪以外に何もないのう。神殿や花畑などもっとお主にふさわしい場所はあるじゃろうに。 |
| ミント | 雪景色には少し思い入れがあるんです。 |
| エステル | もしかしてクレスさんと ? |
| ミント | えっ……どうしてそのことを ? |
| エステル | やっぱりそうだったんですね ! |
| エステル | シェリアが言っていたんですよ、二人は運命の赤い糸で結ばれたかけがえのない特別な関係だって ! |
| ミント | あ、赤い糸ですか…… ? |
| エステル | 二人の思い出……ありそうなことで言えば、雪の中、二人でダンスをした、などでしょうか。 |
| エステル | 月明かりで輝く銀のダンスフロア、二人きりの舞踏会……。 |
| エステル | はぁ……素敵です。 |
| メルディ | ミント ! 正解聞かせてよ ! |
| ミント | 皆さんの想像とは違うかもしれませんが……以前、クレスさんと雪の降る町の中、二人きりでお話したことがあったんです。 |
| ミント | そのとき、悲しい事実を知って私は泣いてしまいましたが、クレスさんはずっと隣にいてくれました。 |
| ミント | だから、雪景色を見るとそのときの記憶が蘇ってきて少しだけ落ち着くんです。 |
| エステル | ミント……。わたし、うるっときてしまいました。 |
| エステル | 側に居てくれるという安心感ほど、心強いものはありませんよね。 |
| メルディ | メルディもわかるよ。それ、ミントが大切なおもいでなんだな ? |
| ミント | はい。 |
| ミント | ミリーナさん ? |
| ミリーナ | ふふっ、ごめんなさい。今までで一番の笑顔だったから。 |
| ビエンフー | それはボクも同感でフよ !ぜひこの写真、使わせて欲しいでフ ! |
| ミント | はい、私は構いませんよ。お役に立てたなら嬉しい限りです。 |
| マギルゥ | …………。 |
| コーキス | マギルゥ様、どうかしたのか ? |
| マギルゥ | いやぁ、三人娘の純真さにあてられてしまってのー。 |
| ミント | そうですか ?私はマギルゥさんも同じだと思っていました。 |
| マギルゥ | 儂も ? |
| ミント | だって漫才で場を和やかにしようとしたのは私だけのためではないですよね ? |
| ミント | ビエンフーさんのお仕事の成功を思って。私はそう感じましたよ。 |
| コーキス | マギルゥ様、そうだったのか ! ?やべぇ、ゲキカンじゃん !なぁ、ビエンフー様 ! |
| ビエンフー | ね、姐さん……ボクのために……。 |
| マギルゥ | 何を言っておる ?儂は早うこの仕事を終わらせお主を連れ戻したいだけじゃぞ。 |
| ビエンフー | って、完全に自分のためじゃないでフか~ !ソーバッド ! ! |
| マギルゥ | オチもついたところで撮影再開じゃ。もうこんな幸せオーラ全開の小話は腹いっぱいじゃて。 |
| ミント | ふふっ、私のまわりには素直になれない人が多いみたいですね。 |
| マギルゥ | ミントよ、そろそろ口を閉じぬと悪い魔女が何かしでかすやもしれんぞー ? |
| マギルゥ | たとえば、このようになっ―― ! ! |
| メルディ | バイバ ! |
| エステル | 綺麗です……。 |
| ミリーナ | 三人とも並んで !これは絶対に撮らないと ! |
| ミント | 魔女さんからの贈り物ですからね。メルディさん、エステルさん……こちらに。 |
| メルディ | はいな ! |
| エステル | はい ! |
| Character | 8話【9枚 写真展】 |
| エレノア | 聞きましたよ。ビエンフーの企画したウェディングドレスの写真展、とても好評なようじゃないですか。 |
| コーキス | ドレスの注文も殺到してるみたいだぜ。 |
| ミリーナ | ミントたち三人のおかげね。写真を見て改めて思ったけどすごくドレスが似合ってたもの。 |
| ベルベット | あんたの撮影の腕もね。 |
| コーキス | そうですよ。クレス様やキール様、それからリタ様たちも写真を渡したら見入ってたくらいですから。 |
| ミリーナ | 二人とも、ありがとう。 |
| ライフィセット | ビエンフーの仕事ももう少しで終わるみたいだよ。順調にいってるみたい。 |
| アイゼン | それはどうかな。 |
| コーキス | アイゼン様、どうかしたのか ? |
| ベルベット | まさか……死神の呪い ? |
| アイゼン | 忘れていないようでなによりだ。俺の勘ではそろそろ―― |
| ビエンフー | ビエーーーンッ !皆さん、助けてくださいでフーー ! ! |
| コーキス | う、うそだろ……。死神の呪い、慣れてきたと思ったけどやっぱりすげえな……。 |
| ライフィセット | それはそうと、ビエンフー何があったの ? |
| ビエンフー | 聞いて欲しいでフ !実は企画出資者があのドレスでは全然満足できないと怒ってしまったでフよ ! |
| アイゼン | 重要な取引相手の機嫌を損ねてしまったというわけか。 |
| エレノア | けれどどうしてですか ! ?どのウェディングドレスも素敵だと思いましたよ ! ? |
| ビエンフー | そうでフよね ! ?ボクもそう思ってデザインを考案したんでフよ ! |
| ビエンフー | 別案を提出しても没にされもうボクにはどうしていいかわからないでフ。 |
| ビエンフー | このままじゃ責任問題になって仕事はクビになってしまうでフ !それだけは阻止せねばでフ ! |
| ベルベット | うん ? 確かにクビになるのは嫌な最後かもしれないけどこの仕事が終わったら戻ってくるんでしょ ? |
| コーキス | そういう約束だったもんな。なら気にすることもないように思うけど。 |
| ビエンフー | そ、それは……。 |
| アイゼン | 現在の生活を捨てたくないというわけか。 |
| ライフィセット | 約束を守るつもりはなかったってこと ! ? |
| ビエンフー | ち、違いまフよ !当然姐さんの元には帰るつもりでフ ! |
| ビエンフー | けど……あと少しだけ !あと少しだけリッチな生活がしたいんでフ ! |
| エレノア | 気持ちはわからないでもないですが……。 |
| ベルベット | 正直な話、あたしたちに言われてもね。 |
| ライフィセット | けど、ビエンフーが裏でこんなこと考えていたってもしマギルゥが知ったら……。 |
| ビエンフー | お、お願いでフ !姐さんには秘密にして欲しいでフ ! |
| 一同 | …………。 |
| ビエンフー | な、なんでフか ?みんな急に黙って。 |
| ミリーナ | ビエンフーさん、後ろ。 |
| ビエンフー | ま、まさか……。 |
| マギルゥ | ビエンフー、話は聞かせてもらったぞ。 |
| Character | 9話【10枚 最高の一枚を】 |
| マギルゥ | なるほどのう。お主の言い分はよーくわかった。 |
| ビエンフー | 本当にちょっとしたらすぐに戻るつもりだったんでフよ ! |
| ビエンフー | もしくは一緒に暮らすのはどうでフか ?二人でなら食べるものも住む場所も何も心配せず気ままに生活できるでフよ。 |
| マギルゥ | 今までとは正反対の生活というわけか。じゃがベルベットは鏡士と共にあることを選んだようじゃからの。 |
| マギルゥ | たとえこの世界であってもあやつの行く末を見届けるため儂はあやつと離れるわけにはいかんのじゃ。 |
| ベルベット | あんたが珍しいわね。 |
| マギルゥ | ちとお主たちとの旅でこの儂にもどーでもよくないことが少なからずできてしまったんじゃよ……。 |
| ビエンフー | 姐さん……。 |
| ビエンフー | すいませんでした。やっぱりボク、姐さんと―― |
| マギルゥ | 待て。早まるでない。お主にはいま自分の手で掴んだ理想の生活があるのじゃろう。 |
| マギルゥ | 目の前の幸福には逆らえん……とは言い切れなんだがお主にはやはり未練もあるようじゃ。 |
| マギルゥ | どうするかは無事仕事をやり遂げた後、決めるのでも遅くはなかろう。儂でもお主のココロは縛れんのじゃから。 |
| ビエンフー | うっううっ……姐さん……。まさかそんなにボクのことを想ってくれていたなんて……。 |
| マギルゥ | まったく情けないのう。まだ仕事が残っておるじゃろうに。 |
| ビエンフー | そうでフね……。けど、ボクにはもうドレスの新しい案は思い浮かばないでフよ……。 |
| アイゼン | マギルゥ、何か策があるのか ? |
| マギルゥ | 当たり前じゃ。負けるとわかって賭けにでる愚か者がいったいどこにおる。 |
| ビエンフー | 姐さん、その策とはなんでフか ? |
| マギルゥ | よいか、ビエンフーよ。花嫁が清楚で可憐でなくてはないといったい誰が決めた ? |
| マギルゥ | ミントが雪景色に思いを馳せたようにそして……お師さんが花を愛でたように人の価値観は人それぞれであろう ? |
| マギルゥ | その新しいウェディングドレスのデザイン、この儂に任せておけ。斬新なドレスでウケを取ってやるわい。 |
| エレノア | ですが時間もないのでは ?私もお裁縫には自信があります。加勢しましょうか ? |
| マギルゥ | 必要ないのう。業魔も対魔士も聖隷も鏡士も鏡精も全員すっこんどれ。これは儂とビエンフーでオチをつけるでな。 |
| ビエンフー | そうでフね !裁縫はボクに任せるでフ ! ! |
| マギルゥ | ではゆくぞ !さっそく作業に取りかかるのじゃ ! |
| ビエンフー | 了解でフ ! ! |
| ミリーナ | ふふっ。マギルゥったら。やっぱりミントの言ったとおりね。 |
| コーキス | 俺、ちょっと誤解してました。マギルゥ様にも何だかんだ優しいところがあるんですね。 |
| エレノア | はい。あの二人は二人にしかわからない目に見えない深い絆があるんです。そうですよね、皆さん ? |
| 一同 | …………。 |
| コーキス | みんな、どうしたんだ ?さっきから黙ってるけど。 |
| アイゼン | いや、さっきから妙な違和感を覚えていてな……。 |
| ライフィセット | マギルゥ、ビエンフーに対して優しすぎなように感じた。 |
| ベルベット | 裏がありそうね……。 |
| コーキス | 何言ってるんだよ。考えすぎだって。 |
| エレノア | そ、そうですよ。 |
| ベルベット | まぁいいわ。放っておきましょう。 |
| コーキス | それじゃああの二人がスムーズに会場にたどり着けるよう俺は光魔の討伐をしておくことにする。 |
| エレノア | 私も手伝いますよ。それくらいなら手を出しても邪魔にならないでしょうから。 |
| ミリーナ | 二人ならきっと素敵なドレスを作ってくるはずよ。 |
| ライフィセット | それを信じていまは僕たちができることをやろう。 |
| ベルベット | あたしたちはあたしたちで勝手にね。 |
| Character | 10話【10枚 最高の一枚を】 |
| マギルゥ | ふっふっふ。儂のセンスを見たか。どうやら笑いの次には服飾を極めてしまったようじゃのう。 |
| コーキス | いまマギルゥ様が着ている華やかで豪勢なウェディングドレスを求める人たちも大勢いたんだな。 |
| エレノア | 清楚で可憐なものだけがウェディングドレスではない。そういうわけですね。 |
| アイゼン | 出資者の娘が派手なもの好きだったらしい。ビエンフーのドレスに否定的な意見があがったのもそれが理由だろうな。 |
| ビエンフー | そのご令嬢、見かけたでフが自分勝手で我が儘な態度だったでフ。まったく、勘弁して欲しいものでフよ。 |
| ミリーナ | けど、ビエンフーさんはそういう人の相手をするの嫌いではなさそうよね。 |
| エレノア | それは鋭い指摘ですね。 |
| ビエンフー | エレノア様まで !ボクをどういう目で見てるでフか ! ? |
| ベルベット | だってねぇ。 |
| マギルゥ | なぜそこで儂を見るのかのう ? |
| ライフィセット | ビエンフー、これでお仕事も完了なんだよね。 |
| ビエンフー | そうでフよ。皆さん、手伝ってくれてありがとうございましたでフ。 |
| マギルゥ | ……どうするのか決めたかえ ? |
| ビエンフー | 当然、決まっているでフよ。ボクは姐さんについていきまフ。 |
| ビエンフー | リッチな生活よりもボクは姐さんと一緒にいる方が幸せでフから。 |
| マギルゥ | ふっ。勝手にせい。それではゆくぞ。 |
| ビエンフー | はい、姐さん ! |
| ビエンフー | あっ、けど本当にあと少しだけ待って欲しいでフ。退職願の提出と資産の整理をしたいでフ。 |
| マギルゥ | 安心せい。もう儂がとっっくの昔に処理しておいたからのう。 |
| ビエンフー | どういうことでフ ? |
| マギルゥ | 察しが悪いのう。お主の退職届は儂がちょちょいと代筆して提出しておいた。その場できっちり受理させたぞ。 |
| ビエンフー | ……えっ ? |
| マギルゥ | 豪邸も売り払い、資産はルーティを経由して慈善団体に寄付された後じゃろうな。じゃのでもう一銭も残っとらんぞ。 |
| ビエンフー | あ、あの……マギルゥ姐さん ? |
| マギルゥ | 安心せい。メロン秘書どもも全員解雇した。これで晴れてお主は無一文じゃ。 |
| ビエンフー | ボクの返事を聞く前に全部勝手にやったんでフか ! ? |
| マギルゥ | ご名答♪ |
| コーキス | マ、マギルゥ様……。やることがえげつねぇ。 |
| ベルベット | ほら、やっぱり裏があった。 |
| アイゼン | いつものマギルゥだな。 |
| ライフィセット | うん。そうだね。 |
| エレノア | はぁ……確かにこれがマギルゥの平常運転ではありますが……。同じ世界からきた者として恥ずかしいです。 |
| ビエンフー | ビエーンッ !ボクの豪邸が……メロン秘書が……リッチな生活が ! ! |
| マギルゥ | 儂についてくるには荷物が多すぎじゃろう。荷物が多いと迷いも増えるものじゃ。これで、すっきりするわい。 |
| ビエンフー | ……わかったでフよ。ボクは姐さんから逃れられない運命なんでフね。 |
| マギルゥ | そういうことじゃ。まずは儂に面倒をかけたぶんのお仕置きをた~っぷりせねばじゃの。 |
| ビエンフー | またまたバッドな日々が戻ってきてしまったでフよ~~~ ! ! |
| マギルゥ | これからもよろしく頼むのう♪ |
| マギルゥ | な、なんじゃいきなり撮影しおってからに。 |
| コーキス | そりゃあ撮影しますよね。 |
| ミリーナ | 今までで一番の笑顔だったんだもの。とってもかわいいわ。 |
| マギルゥ | な……かわいい……じゃと ! ?魔女に対してなんという褒め言葉を ! !不名誉毀損じゃぞっ ! ! |
| ベルベット | ミリーナ。せっかくだしマギルゥのことバンバン撮ってあげて。 |
| ミリーナ | ええ、ベルベット。任せて。 |
| マギルゥ | なんじゃ、ベルベット。儂に対する嫌がらせのつもりか ? |
| マギルゥ | 残念じゃが儂はお主とは違うのじゃ。ほれ、ミリーナよ。どんどん撮るがいいぞー♪ |
| コーキス | マギルゥパイセン、かわいいっすねー ! |
| マギルゥ | あーっ ! じゃからそのいじりはやめい ! ! |
| アイゼン | こいつをいじるネタがたくさんできそうだ。 |
| ベルベット | ちゃんと見届けなくちゃね。 |
| ライフィセット | うん。 |
| エレノア | ふふ、そうですね。 |
| マギルゥ | こ、こやつら !ここぞとばかりに儂をいじりおって ! ! |
| ミリーナ | マギルゥ、それじゃあ撮るわよ。一番自然な笑顔でね。 |
| ミリーナ | 3……。 |
| マギルゥ | い、いきなり無茶ぶりしおって !まだ儂はネタの準備が。 |
| ミリーナ | 2……。 |
| マギルゥ | あぁ、もう !ビエンフー、こっちへこい ! |
| ビエンフー | はいでフ ! |
| ミリーナ | 1……。 |