| Character | 1話【納涼1 異常気象】 |
| セネル | これでアジトは一通り案内できたぞシャーリィ。 |
| シャーリィ | うん、ありがとうお兄ちゃん。おかげでここにすぐ馴染めそう。 |
| セネル | もしわからなければ後で……ん ?あれは、ミリーナと…… ? |
| ミリーナ | ……そうね。一度調査をすべきだと思うわ。 |
| キール | わかった。じゃあぼくが行こう。 |
| クラース | 助かるよ。キール。私一人ではまだ戦うこともできんからな。 |
| キール | かまわないさ。クラースの精霊調査はとても役立っているんだ。持ちつ持たれつという奴だろう ? |
| セネル | ……どうしたんだ ? 何かあったのか ? |
| ミリーナ | あ、セネル、シャーリィ。聞いていたのね。 |
| キール | 実は、ロゼから気になる連絡があったんだ。 |
| シャーリィ | ロゼさん ?確か、外で商売をされてる方ですよね ? |
| ミリーナ | ええ。彼女が外で活動して、情報を流してくれてるおかげで、私たちも助かっているのよ。 |
| ミリーナ | そのロゼが、新規事業として海水浴場で休憩所を兼ねた食事処を経営し始めたそうなの。 |
| クラース | ところが、その海水浴場に、現在異常現象が起きているらしい。 |
| セネル | 異常現象 ? |
| ミリーナ | ええ。波打ち際にもかかわらず渦潮が発生しているんですって。 |
| キール | この現象も突然のことで、今までに同じような事例はないらしい。 |
| クラース | それで、ロゼから我々へ、大事になる前に調査をして欲しいと依頼が来たんだよ。 |
| キール | 前にもこういった謎の自然現象が起きたが精霊が目を覚ましていたのが原因だった。今回もそうじゃないかと話をしていた所さ。 |
| セネル | そうなのか……。 |
| クラース | 今は実際に調査に赴くメンバーの選定をしていたんだ。 |
| ミリーナ | それと調査の合間でいいから、ロゼのお店を手伝ってくれる人も欲しいんですって。誰か手の空いてる人を探さないとね。 |
| シャーリィ | え ? お店も、ですか ? |
| ミリーナ | ええ。まずは調査が先だけれどいつも情報をくれているロゼを少しでも手伝ってあげたいの。 |
| セネル | 確かに、ロゼは色々働いてくれるよな。 |
| シャーリィ | ……あの、その調査って、わたしもお手伝いできませんか ? |
| セネル | シャーリィ ? |
| シャーリィ | これからお世話になりますし……少しはお役に立ちたいなって。 |
| ミリーナ | でも……体は大丈夫 ? |
| シャーリィ | はい、元気ですから ! |
| セネル | シャーリィ、本当に大丈夫なのか ?海の側だし、体調を崩すかもしれないぞ ? |
| シャーリィ | ふふ、大丈夫だよ。 |
| クラース | シャーリィは海の近くが苦手なのか ?ならば、無理をして参加する必要はないが……。 |
| シャーリィ | 無理はしてないですよ。以前は海がダメだったので、お兄ちゃん、心配してくれてるだけなんです。 |
| ミリーナ | それならいいけど……。少しでも調子が悪いと思ったらすぐに休んでね。 |
| ミリーナ | マークたちから聞いた話だと心核を傷つけられていたそうだし無理だけはしないで。 |
| シャーリィ | お気遣い、ありがとうございます。 |
| ミリーナ | 手伝ってもらうのはこちらの方だもの。むしろ気遣わせてちょうだい。可愛いシャーリィが倒れたら大変だわ。 |
| セネル | シャーリィを一人で行かせられない。俺もついていく。 |
| キール | 人手が多いに越したことはないから、それは助かるけどな。 |
| シャーリィ | いいの ? お兄ちゃん。 |
| セネル | 当たり前だろ。 |
| シャーリィ | ありがとう ! |
| ミリーナ | それじゃあ、今いる五人と……念のために、コーキスにもついてきてもらいましょう。 |
| Character | 2話【納涼3 導きの先】 |
| コーキス | うーん。話に出てた渦潮ってのは見当たらないな……。 |
| ミリーナ | そうね……。――ロゼ、渦潮が発生しやすい時間帯はあるの ? |
| ロゼ | 特にないかな~。全くわかんない。場所もまちまちだからめっちゃ困ってんの。 |
| セネル | 法則性も何もないのか。厄介だな…。 |
| シャーリィ | 海の中に何かあるんでしょうか…… ? |
| クラース | まだ何ともいえないな。渦潮とはいえ、原因が海の中とは限らない。 |
| ミリーナ | 普通は潮位の違いで発生するってイクスは言ってたわ。どこかにそれを生み出す物があるのかもしれないわね。 |
| クラース | 魔術的な物か、何らかの仕掛けか……。いや、精霊の影響なら仕掛けはいらないか。 |
| セネル | とにかく周辺を調べてみよう。 |
| コーキス | 当てもないししらみ潰しで行くしかないか~。 |
| ロゼ | ……ならさ、ここから少し先に神殿みたいな遺跡があるって話だよ。そことか調べてみたら ? |
| コーキス | ロゼ様、それはどういう根拠なんだ ?いつもの勘 ? |
| ロゼ | そ、いつもの勘。それにその遺跡に魔物が集まってきてるって噂もあるしね。 |
| クラース | 悪くないかもしれん。今回の事態に精霊が絡んでいるのならな。 |
| コーキス | え ? そうなのか、クラース様 ? |
| クラース | 遺跡と精霊はまったくの無縁ではない。私の世界では12星座の塔という遺跡に精霊ルナが居た。 |
| クラース | リフィルによると、彼女の世界では遺跡の深部で試練を与える精霊もいたそうだ。闇雲に探すよりは幾分マシだろう。 |
| コーキス | そっか ! それじゃ、手始めにその遺跡を調べてみようぜ。 |
| クラース | ああ。まず遺跡を調査し、何もなければ海を調べてみよう。 |
| コーキス | ああ、わかったぜ。 |
| シャーリィ | ねえ、お兄ちゃん。クラースさんって、なんだかウィルさんみたいだったね。 |
| セネル | ああ、そうだな。ウィルがここに居たら、年長者同士で馬が合いそうだ。 |
| シャーリィ | ねえ、お兄ちゃん。クロエや、ウィルさんたちもこの世界にいたりするのかな…… ? |
| セネル | わからない。ここに来るってことは元の世界の生活を失うってことだ。いない方がいいのかもしれない。 |
| セネル | ただ、もしもうここに来てしまっているなら……一緒に来てくれるといいんだがな。 |
| シャーリィ | みんなのことだから、きっと一緒に来てくれるよ ! |
| シャーリィ | あ、みんな先に行っちゃったね。わたしたちも早く行こう。 |
| セネル | ああ。 |
| キール | ……ん ? なんだ、この足跡は…… ? |
| コーキス | ミリーナ様この足跡は戦闘の痕跡です ! |
| ミリーナ | ――ええ、みんな、注意して ! |
| ? ? ? | キュキュ~ ! |
| シャーリィ | え、この声って……まさか…… |
| セネル | シャーリィ…… ? |
| ? ? ? | キュキュ~ ! |
| キール | ……確かに何か聞こえる……がこれは声、なのか ? |
| ? ? ? | キュキュ~ ! |
| シャーリィ | 間違いないわ !キュッポたちだよ、お兄ちゃん ! |
| セネル | 待て ! シャーリィ ! |
| シャーリィ | キュッポ、ピッポ、ポッポ !いるの ? |
| ピッポ | その声は、シャーリィさんだキュ !お~い、お~い ! |
| シャーリィ | ピッポ ! みんな ! |
| ピッポ | シャーリィさん~――って !再会を祝っている場合じゃないキュ !こっちキュ~っ ! |
| シャーリィ | え、何 ? どうしたの ? |
| ? ? ? | う……っ。 |
| シャーリィ | えっ ! ? お、お兄ちゃん !あそこで倒れているの、クロエだよ ! |
| セネル | なんだって ! ?おい、大丈夫か ! ? |
| シャーリィ | クロエ、しっかりして ! |
| クラース | シャーリィ、セネル。ひとまずその人をロゼの店に運ぼう。 |
| セネル | わかった ! |
| Character | 3話【納涼4 休息】 |
| ? ? ? | う……ここ、は……。 |
| シャーリィ | クロエ ! 気が付いたのね、よかった……。 |
| セネル | どこか痛むところはないか ? |
| クロエ | シャーリィ……、クーリッジ……。ああ、頭が少しくらくらする位だ。痛みなどは特にない。 |
| クロエ | ……はっ !そうだ、魔物 ! あいつはどうなったんだ ! ? |
| セネル | 俺たちがお前を見つけた時には周りに魔物の姿は見当たらなかった。 |
| クロエ | そうか、では討つことができたのだな……。だが、その後疲労で意識を失うとは……。やはり未熟だな、私は……。 |
| セネル | クロエ……。 |
| クロエ | ところで二人とも、ここはどこなんだ ?気が付いたら、いつのまにかこの海水浴場にいたんだが。 |
| クロエ | ライフセーバーをしながら、情報を集めたが手がかりが全くないんだ。 |
| クロエ | ようやく出会えた知り合いはモフモフ族の三人だけ。彼らもここがどこかはわからないと言っていた。 |
| クロエ | シャーリィ、クーリッジ、二人も情報を集めているのか ?何か手がかりは ? |
| シャーリィ | クロエ、とにかく少し落ち着こう ? |
| クロエ | え、あ、ああ…。ようやく仲間に会えて気が昂っていたようだ。すまない……。 |
| シャーリィ | ねぇ、クロエ。聞いていい ?どうしてあんなところにいたの ? |
| クロエ | ライフセーバーの仕事の一環だったんだ。モフモフ族は海を、私は陸を、な。 |
| セネル | あいつらもライフセーバーの仕事をしてたのか。……適材適所だな。 |
| クロエ | それで、最近この近くの遺跡で魔物が集まっているという噂を耳にしてな。被害が出る前に調査に向かったんだ。 |
| シャーリィ | 困っている人を放っておけないクロエらしいね。 |
| クロエ | そこで、奴に出会ってしまったんだ……長長悪魔に…… ! |
| シャーリィ | 長長悪魔 ! ? |
| シャーリィ | 地中を素早く縦横無尽に動き回りその巨体が生みだす圧倒的な力でモフモフのみんなを恐怖に陥れた、あの…… ! |
| セネル | つまりディノワームな……。前に出会った時はしつこすぎて洞窟を駆け回った記憶が……。 |
| シャーリィ | あの時は大変だったよね……。 |
| クロエ | 奴は相変わらず手強かった……。何とか奴の苦手な日光の元へ誘導して……。そのあとは無我夢中だった。 |
| セネル | 相変わらず無茶ばかりするな……。 |
| シャーリィ | けどよかった。クロエが無事で。 |
| クロエ | だが早々に長長悪魔に遭遇してしまって、遺跡の調査はまだできていない。すぐに向かわないと…… ! |
| セネル | お前、まだふらついてるじゃないか。そんな状態じゃ行かせられない。 |
| クロエ | いや、しかし……。 |
| シャーリィ | クロエの気持ちも分かるけど、今はしっかり休もう ? |
| クロエ | ……シャーリィたちの言うとおりだな……。わかったよ。 |
| セネル | なら、今度は俺たちの話を聞いてくれ。俺たちに何が起きているか、新しい仲間に話してもらおう。呼んでくるよ |
| クロエ | 新しい…仲間…… ? |
| Character | 4話【納涼5 モフモフな訪問者】 |
| クロエ | ……そうだったのか。クーリッジはもちろんだが、シャーリィも大変だったな……。 |
| クロエ | 駆け付けることができなかったのが悔やまれるばかりだ……すまない。 |
| セネル | お前はお前で、異世界で一人だったんだ。クロエが悔やむ必要はないだろ。 |
| シャーリィ | そうだよ。クロエのその気持ちが、わたしは嬉しいよ。 |
| クロエ | ……クーリッジ、シャーリィ。ありがとう、二人とも。 |
| クラース | ふむ、セネル、シャーリィ。二人は彼女についているといい。君たちが傍にいる方が心強いだろう。 |
| ミリーナ | そうね。つもる話もあるでしょうし。セネル、シャーリィ、クロエをお願いね。 |
| シャーリィ | はい ! |
| クロエ | え、いや、しかし……。 |
| ミリーナ | それじゃあ私たちは遺跡を調べに行ってくるわね。コーキス、行きましょう。 |
| クロエ | クーリッジ、シャーリィ、私は平気だ。彼らと調査のために来たんだろう ? |
| セネル | 仲間が倒れてるときに放っておけるわけないだろう ? |
| シャーリィ | そうだよ。クロエはちゃんと休んで体調を整えてね。 |
| クロエ | ……ああ、わかったよ。 |
| ? ? ? | お邪魔するキュ。 |
| ? ? ? | クロエさんのお見舞いにきたキュ。 |
| ? ? ? | クロエさんの容体はどうキュ ? |
| シャーリィ | キュッポ ! ピッポ、ポッポも ! |
| セネル | ああ。クロエならもう起きてるぞ。 |
| キュッポ | よかったキュ !倒れた時はとても心配したキュ。 |
| クロエ | 三人とも、心配かけてすまなかった。もう少しすれば仕事にも戻れる。 |
| ピッポ | でも、無理はしないでほしいキュ。 |
| シャーリィ | ピッポたちにも言われちゃったね。 |
| クロエ | ふふ、仕方ないな。 |
| セネル | それにしても……。クロエがライフセーバー、か。 |
| クロエ | ……なんだ、その目は。 |
| セネル | いや、大丈夫だったのかと思ってな。 |
| シャーリィ | え ? クロエって正義感も強いし、ピッタリじゃないのかな ? |
| クロエ | う、それは……。 |
| ポッポ | クロエさんは凄かったキュ ! |
| キュッポ | お店に絡んできたゴロツキを伸し。 |
| ピッポ | 女性に絡んできたガラの悪い男を伸し。 |
| ポッポ | 痴話ゲンカしてた彼氏も伸してたっキュ ! |
| クロエ | ああああ、最後は言わなくてもいいじゃないか ! ! |
| セネル | ……前にも聞いたことあるな。最後の話。 |
| シャーリィ | そうなの ?でも、正義感の強いクロエらしいエピソードだね。 |
| ロゼ | ごめん、ミリーナ。今ちょっと……ってやっぱいないかぁ。 |
| シャーリィ | どうかしましたか、ロゼさん。ミリーナさんなら、クラースさんたちと調査に出てしまいましたよ ? |
| ロゼ | やっぱそっかぁ。まいったなぁ……。 |
| シャーリィ | ロゼさん、ずいぶんと汗をかいていますけど、何かありましたか ? |
| ロゼ | 実はさ、店が混んでて人手が足りないのよ。だから、ミリーナにって思ってさ……。 |
| セネル | ……なら、俺が手伝うよ。クロエを休ませる場所を借りてるしな。 |
| シャーリィ | それならわたしも !少しくらいなら、調理もできますし。 |
| ロゼ | ホント ! ? 助かるよ ! |
| クロエ | 私も手伝わせてもらえないだろうか。 |
| シャーリィ | クロエはだめだよ !さっき気が付いたばっかりだよ ? |
| クロエ | 大分回復しているから問題ない。 |
| セネル | だけどな……。 |
| クロエ | 頼む、みんな。 |
| ロゼ | そうだねえ。無理しない程度で、ヤバかったらすぐ言ってよ ? |
| クロエ | もちろんだ。 |
| ロゼ | それじゃ、セネルには配膳、シャーリィとクロエは調理場の方を手伝ってもらえるかな ? |
| シャーリィ | はい。 |
| 二人 | わかった。 |
| キュッポ | なら、キュッポたちは仕事に戻るキュ。 |
| ピッポ | クロエさんが元気そうでよかったキュ ! |
| Character | 5話【納涼6 アクシデントは突然に】 |
| シャーリィ | ロゼさん、野菜の皮むきと下ごしらえ終わりました ! |
| ロゼ | シャーリィはそのまま続けて肉の下処理に入って ! |
| シャーリィ | わかりました ! |
| クロエ | ロゼ、三番テーブルのホットドックとサイダー飯が上がったぞ ! |
| ロゼ | クロエ、そのまま次の調理に移って !セネル、三番テーブルお願い ! |
| クロエ | 了解だ。 |
| セネル | わかった ! |
| ロゼ | ……ふぅ。客足が少し落ち着いたね。みんなありがと ! |
| セネル | 気にするな。ロゼにはいつも世話になってるからな。 |
| クロエ | 私も役に立てたようで何よりだ。しかし、動いたせいか暑くなってきたな。ぬぐっても汗が乾きそうにない。 |
| シャーリィ | うん。くらくらしちゃいそうだね。 |
| ロゼ | あー、このままだと倒れてもおかしくないね。みんな水分とってよ。 |
| セネル | わかった。 |
| シャーリィ | じゃあ、これでいいかな ?お兄ちゃんたちも、はい。 |
| クロエ | ありがとう、シャーリィ。ああ、ロゼにも…… |
| クロエ | あっ ! |
| 二人 | クロエ ! ? |
| クロエ | うわっ ! |
| ロゼ | あちゃー。三人とも大丈夫 ? |
| クロエ | ……冷たい。 |
| シャーリィ | うう、べたべたする……。 |
| セネル | 見事なまでにドリンクを被ったな……。シャーリィもクロエも、ケガはないか ? |
| クロエ | 問題ない。シャーリィは ? |
| シャーリィ | わたしもケガはないよ。でも、服が濡れちゃった……。 |
| ロゼ | ねえ、水着でよければ着替えとして出せるよ。売り物でいっぱい用意してあるからね。 |
| クロエ | 水着 ! ?え、あ……女性が、肌を見せるのは……。 |
| セネル | 水着か。いいんじゃないか ? 服は乾かせるし、涼しいし、動きやすいだろうし。 |
| シャーリィ | お兄ちゃんが言うなら、そうしようかな。 |
| クロエ | うっ……二人が着替えるなら、仕方ない。 |
| ロゼ | よし、サイズ出すよ。こっちに来て。 |
| セネル | ああ、涼しくなった。 |
| シャーリィ | すっきりしたね。 |
| ロゼ | おー、ずいぶん涼しげになったねー。 |
| クロエ | あ、あの、ロゼ ?ちょっと、その、布地が少なすぎやしないか…… ? |
| ロゼ | ゴメンね。それしかサイズが合うのが無かったんだ。 |
| クロエ | だ、だが……いくら何でも、肌が露出しすぎている……っ ! |
| クロエ | ……うう、いくら何でもこれは破廉恥ではないか……。 |
| シャーリィ | やっぱりいいなぁ……。 |
| クロエ | ……シャーリィ ? |
| シャーリィ | クロエってば、あのスタイル……。わたしももうちょっと……。 |
| クロエ | ……聞こえていないみたいだな……。 |
| ロゼ | うん ?シャーリィも細身で綺麗なスタイルじゃない ? |
| シャーリィ | わたしなんて、まだまだで…… ! |
| クロエ | 私ではなくグリューネさんを目指せというのに……。 |
| ロゼ | ま、なんでもいいけど、クロエもシャーリィも調理場の中にいたら外からはほとんど見えないからさ。 |
| ロゼ | あんまり気にしない気にしない。ま、その代わり肌は露出してるんだから、やけどやなんかには気を付けてね。 |
| ロゼ | よーし、みんな仕事に戻るよー ! |
| クロエ | だがしかし、だな……。 |
| ロゼ | 折角似合ってるんだし、涼しいからいいでしょ ? |
| ロゼ | ね、セネル ? |
| セネル | は ? 俺 ? |
| ロゼ | さっきからクロエ見てたでしょ ? |
| シャーリィ | ……お兄ちゃん ? |
| セネル | はぁ ! ?いや、見てない、見てないぞ ! |
| クロエ | ……それは私の姿が見たくもないほど見苦しいという意味か…… ? |
| セネル | ち、ちがっ ! そうじゃなくて、普段と違うから、その、目のやり場にだな ? |
| ロゼ | はっは~ん、男の子だねぇ。 |
| クロエ | クーリッジのひとでなし。 |
| セネル | なんでそうなる ! ? |
| Character | 6話【納涼7 遺跡での発見】 |
| コーキス | あー、くそっ ! あっちぃ !何なんだよ遺跡から出た途端に暑くなりやがって……。 |
| ミリーナ | ふふ、そうね。コーキスのその格好じゃ余計に暑くて大変よね。それにこの辺りは日差しも強いから……。 |
| キール | あの遺跡の中が……、涼しかったのも……原因の、ひとつだろ……。 |
| シャーリィ | あ、みなさん !お帰りなさい、暑かったでしょう ?こちらをどうぞ。 |
| クラース | ああ、ただいま。飲み物とは気が利くな、助かるよ。 |
| コーキス | ……ぷはーっ !冷たくて生き返るぜ ! |
| ミリーナ | 本当、冷たくておいしいわ !ありがとう、シャーリィ。 |
| シャーリィ | いいえ、どういたしまして。……キールさん、お水、飲めそうですか ? |
| キール | ……もらう……。 |
| セネル | ああ、お疲れ。戻ってたんだな。遺跡の方はどうだった ? |
| ミリーナ | 遺跡にいた魔物はだいたい討伐してきたわ。 |
| クラース | 魔物が遺跡に集まっている原因と思われるものも発見した。これだ。 |
| シャーリィ | これは宝石…… ? |
| ミリーナ | ええ。遺跡の祭壇にあったの。魔物はこれに引き寄せられていたみたい。 |
| シャーリィ | そうなんですね。けど、大丈夫なんでしょうか ?そんなものを持ち出したりして……。 |
| クラース | わからない……だが、この宝石に明鏡四水が少しだけ反応を示したんだ。調べる必要がある。 |
| シャーリィ | 明鏡四水……たしか、精霊と関わりのあるものに反応する……。 |
| ミリーナ | ええ、そうよ。それが魔物を引き寄せてるかもしれないなんて放っておくわけにはいかないでしょう ? |
| キール | ……ここからはぼくの仮説だが、この宝石は精霊の封印に関わるものだと思う。 |
| キール | 本来この世界の精霊はダーナの巫女の復活と同時に目覚めるはずだったんだ。 |
| キール | けど具現化の影響で精霊は想定外の目覚めを迎えようとしている。それが、様々な事態を起こしているんだと思う。 |
| キール | この宝石も、元々は魔物を引き寄せるなんてことはなかったんだろう。 |
| キール | 予期せぬ精霊の目覚めで宝石から漏れ出た精霊の力がそうさせたんじゃないだろうか。 |
| シャーリィ | 今まで契約した精霊の付近も魔物が集まっていたんですか ? |
| キール | いや、今までにそういった報告はなかった。今回はいつもとは違う要因がある。そう考えるべきだろう。 |
| クラース | この宝石はあの遺跡の遺物ではない。何者かが後に供えた痕跡があった。それが影響したとも考えられる。 |
| セネル | つまり、宝石が本来あるべき所になかった、それが原因かもしれない、そういうことか。 |
| シャーリィ | すごいです ! 少ない情報からそこまで考えられるなんて ! |
| キール | こ、この程度は普通だろ。それにこれはあくまで仮説だ。 |
| ミリーナ | ふふっ、キールったら照れちゃって。 |
| キール | ぼ、ぼくのことはいい !とにかく仮説を証明するためにもっと情報を集めないと。 |
| クラース | そうだな。私は次に調査すべきはやはり海だと思うが、どうだろうか。 |
| ミリーナ | ええ、そうね。そうしましょう。 |
| シャーリィ | あの……。それならわたしとお兄ちゃんで海を調べてみましょうか ? |
| セネル | シャーリィ……そうだな。それがいい。 |
| キール | いいのか ? 調査中にだって渦潮が発生するかもしれない。危険な仕事だぞ。 |
| セネル | ああ。他の奴らより俺たちのほうが海の探索に向いている。 |
| セネル | 俺は元々海難救助の仕事をしてたしシャーリィも水の民……えっと、水の中でも自由が利くんだ。 |
| ミリーナ | ありがとう、二人とも。それじゃあお願いするわ。けど無理はしないでね。 |
| ミリーナ | 特にシャーリィは、やっと元気になったばかりなんだから。 |
| シャーリィ | はい !ねえ、クロエ、一緒に行かない ? |
| セネル | えっ ! ? |
| クロエ | ひょぇっ ! ? |
| クロエ | え、えっ ? う、海の、調査 ? |
| シャーリィ | な、なに ? 二人ともどうかした ? |
| セネル | あ、いや、なんでもないさ。けど、クロエには……そう ! ロゼの店を手伝ってもらわないと ! |
| セネル | 俺もシャーリィも調査に向かうなら人手が足りなくなるかもしれないだろ ? |
| シャーリィ | そっか……。ライフセーバーの仕事でこの辺りの海をわかってるクロエがいたら心強いかなって思ったんだけど……。 |
| クロエ | ……行こう。海の調査に。 |
| セネル | クロエ、けどお前…… |
| クロエ | ……いいんだ、クーリッジ人々に被害が出る前に事態を究明しなければ。そうだろう ? |
| セネル | …そうだな。じゃあ来てくれるか ? |
| クロエ | ああ ! 任せてくれ ! |
| ミリーナ | ……クロエ、無理してない ? 大丈夫 ? |
| クロエ | なにももんだいない。そうだ、だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。 |
| クロエ | だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。 |
| コーキス | クロエ様、明らかに様子がおかしいぜ……ミリーナ様の声も聞こえて――っ ! ? |
| コーキス | ミリーナ様、気を付けてください !渦潮です ! |
| ミリーナ | 私は大丈夫よ !それよりもクロエが ! |
| クロエ | だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。だいじょうぶ、こわくない、おちつけ。 |
| コーキス | やべえ ! 渦潮に気づいてないのか ! ? |
| セネル | クロエ ! |
| クロエ | はっ !……クーリッジ、どうしたんだ ? |
| セネル | どうしたもこうしたもないだろ。顔上げて海をよく見てみろ ! |
| クロエ | ! ! 渦潮 ! ! |
| セネル | こんな海に入ったら、泳げるとかどうとかって話じゃない |
| クロエ | ……本当にすまない……。 |
| セネル | 気にするな。俺も前にシャーリィのことで周りが見えなかった時に迷惑をかけたからな。 |
| クロエ | ……そうだったな。ふふっ。 |
| クロエ | 私はもう大丈夫だ。それよりもあの渦潮だが…。 |
| クラース | ――むっ ! ?明鏡四水が輝きだしたぞ ! |
| キール | 明鏡四水だけじゃない !遺跡で見つけた宝石も輝きだしてる ! |
| Character | 7話【納涼9 VSウンディーネ】 |
| ウンディーネ | あなたたちは……。 |
| クラース | 久しいなウンディーネ。と、言っても問題ないだろうか。 |
| ウンディーネ | ええ、そうですね。そういった記憶もあるようです。そして―― |
| クロエ | 渦潮が一瞬で消えた……。これがミリーナたちの言う精霊の力なのか ? |
| セネル | ああ、俺もよくは知らないが、人間とも滄我ともまた違う存在らしい。 |
| シャーリィ | ……精霊……。一瞬、滄我が人の形をとったのかと思っちゃった……。 |
| ピッポ | 雄々しきものみたいに威厳があるキュ。 |
| ポッポ | 凄いキュ……。 |
| キュッポ | 恰好いいっキュ。 |
| クロエ | ……そうだな。って、キュッポたちいつの間に ? |
| キュッポ | 渦潮が発生したから駆けつけたキュ。 |
| ポッポ | 何かお役に立てるかと思って助けに来たキュ ! |
| ピッポ | そしたらすごいことになっていたキュ ! |
| キール | ……初めて精霊を見て興奮する気持ちはわかる。――けど……。 |
| キール | ――静かにしろ !ウンディーネがしゃべれないだろ ! |
| 六人 | ごめんなさい…… |
| キール | さぁ、ウンディーネ。話してくれ。 |
| ウンディーネ | あ、はい。では……。 |
| ウンディーネ | あなたたちが契約の宝石を持ってきてくれたおかげで私は目覚めることができました。 |
| クラース | 契約の宝石……。例の遺跡で見つけたもののことだな。 |
| ウンディーネ | はい。あれはアイフリードが残した精霊の封印に関わるものなのです。 |
| ウンディーネ | 世界が消滅しかけたときに、契約の宝石は本来あるべき処から離れてしまった。 |
| ウンディーネ | そしてその後、大陸の具現化後に誕生した住民が海難除けとして遺跡に祀ったのでしょう。 |
| ウンディーネ | その結果、封印が緩んでしまい力が漏れ出たのです。 |
| クラース | そしてその漏れ出た力が暴走し渦潮を発生させたり魔物を引き寄せていたんだな。 |
| キール | 要たる宝石がその場所を移しただけでこれほどに影響するのか……。 |
| キール | 精霊ほどの力のある者を封じるというのは色々と複雑な要素が絡み合っているんだな。 |
| ウンディーネ | はい、その通りです。ですが契約の宝石もこうしてあるべき処へ戻りました。もう大丈夫です。 |
| キール | え ? あ ! 宝石がない !いつのまに……。 |
| コーキス | すげーな、キール様 !仮説、ほとんど正解だったじゃん。 |
| ミリーナ | さすがキール研究室の室長ね。ひとまずこの浜辺で起こっていた現象は解決できてよかったわ。 |
| クラース | ウンディーネ。おそらく、大体のことは、貴女には伝わっているのだと思うが貴女と契約を交わしたい。 |
| クラース | 貴女と契約するための指輪ならここにある。 |
| ウンディーネ | ええ、もちろん構いませんよ。ですが……おわかりですね ? |
| クラース | ああ、力試し、ということだろう ? |
| ウンディーネ | 力なきものに、協力することは出来ませんからね。 |
| キュッポ | なんだかよくわからないけど勝負するっキュ ? |
| ピッポ | なんだかすごそうだキュ。 |
| ポッポ | ポッポたちはセネルさんたちを応援するっキュ。 |
| 三人 | キュ、キュ、キュ~ ! |
| ウンディーネ | あらあら、可愛らしい声援ですね。 |
| クラース | ……気が抜ける……。 |
| コーキス | へへっ ! いいじゃん !クラース様も一緒に応援して待っててくれよな ! |
| コーキス | 行くぞ ! |
| Character | 8話【納涼9 VSウンディーネ】 |
| ウンディーネ | お見事です。これだけの力と意思の強さがあるのならば、私も手を貸しましょう。 |
| ウンディーネ | さあ、指輪を……。 |
| クラース | 我、今、水の精に願い奉る指輪の盟約のもと我に精霊を従わせたまえ……。 |
| クラース | 我が名はクラース……。 |
| クロエ | ……精霊……ひどく手強い相手だった。なあ、クーリッジ。この世界には精霊のような存在がまだ居るのか ? |
| セネル | ん ? ああ、確かまだ何体かいるって話じゃなかったかな。 |
| クロエ | 私はまだまだ未熟だ。仲間のため、今よりもっと研鑽に励まねばならん。 |
| クロエ | クーリッジ。私もお前たちについて行ってもいいだろうか。 |
| セネル | もちろんだ。これからもよろしくな、クロエ。 |
| シャーリィ | それなら、わたしも一緒に戦うよ ! |
| セネル | シャーリィ ? |
| シャーリィ | わたしだって、戦える。クロエほどの力はないかもしれないけど、大切な人を守りたいのは、同じだから。 |
| クロエ | わ、私だってそうだぞ !大切な人を守りたいんだ ! |
| セネル | ……二人共、なんで俺を見て言うんだ ? |
| キュッポ | セネルさんは相変わらずだキュ~。 |
| セネル | キュッポか。 |
| ピッポ | ピッポたちも居るキュ ! |
| クロエ | ……ん ?何やら旅支度を整えて、どうしたんだ ? |
| ポッポ | ポッポたちは、ジェイを探す旅に戻るキュ ! |
| キュッポ | ここの海で異常現象があって、みんなが大変そうだったからお手伝いをしていたキュ。 |
| ピッポ | もう大丈夫みたいキュ。それなら、ジェイを探しに行くキュ。 |
| ポッポ | きっと、ジェイはポッポたちがいなくて寂しい思いをしてるキュ。家族を探しに行くキュ ! |
| シャーリィ | ……そっか、クロエみたいにはぐれ鏡映点として、どこかにジェイさんもいるかもしれないんだよね……。 |
| セネル | それなら、キュッポたちも俺たちといかないか ? |
| キュッポ | キュ ? |
| セネル | この世界は、遺跡船の何倍も広い。三人だけで、その広い世界の中たった一人を探すなんて、すごく難しいと思う。 |
| セネル | ジェイは、俺たちにとっても大切な仲間だ。俺たちにも、ジェイを探す手伝いをさせてくれ。 |
| ピッポ | ジェイを、一緒に探してくれるキュ ? |
| クロエ | そうだな。ミリーナたちにも手伝ってもらおう。そうすれば、何倍も速い。 |
| ポッポ | わかったキュ !ポッポたちも、セネルさんたちと一緒に行くキュ ! |
| シャーリィ | うん !キュッポたちも、よろしくね ! |
| クラース | ふう、それにしてもこれでようやく四大属性の半数と契約か。 |
| キール | まだ封印が緩んで目覚めかけている精霊がいるかも知れない。 |
| キール | 拠点に戻ったら、早速残りの精霊についても調べよう。 |
| クラース | ああ、そうだな。まぁ、その前に少し休みたいが……。 |
| シャーリィ | あの、ちょっと待ってください。 |
| セネル | どうした、シャーリィ。 |
| シャーリィ | あのね、お兄ちゃん。今日お手伝いしてて思ったんだけど、ロゼさんのお店、凄く忙しかったでしょう ? |
| セネル | ああ、確かにな。 |
| クロエ | 店があんなに忙しいとは、私も予想だにしてなかった。 |
| シャーリィ | うん。わたしもそう思ったの。それでね、明日からももうしばらく、お店のお手伝いができないかなって。 |
| ミリーナ | そうね。ロゼが大変なのは見過ごせないわ。私もカーリャに連絡を取って、他にも手の空いている人がいないか捜すわね。 |
| セネル | シャーリィが手伝うなら、俺も手伝うぞ。 |
| シャーリィ | …… !お兄ちゃん ! |
| クロエ | 私も手伝おう。厨房の中での動きは、今日で大分頭に入っているしな。 |
| コーキス | よっし ! 俺も手伝うぜ ! |
| キュッポ | それなら、キュッポたちはお店の看板になってみせるキュ ! |
| ピッポ | きっとお客さんたちがいっぱい来てくれるキュ ! |
| ポッポ | モフモフ族と間近で触れ合える、名付けて『モフモフ族カフェ』だキュ ! |
| セネル | ……そのまんまだな。 |
| シャーリィ | あ、あはは……三人とも、お店のお手伝いよろしくね ? |
| 三人 | まかせるキュ ! |
| クラース | ……私はそういった方面は……。 |
| キール | ぼくも、肉体労働は、ちょっと……。 |
| ミリーナ | カーリャと連絡がついたわよ。明日からはレイアたちも手伝ってくれるみたい。 |
| セネル | たち、ってことは何人か来るのか ? |
| ミリーナ | レイアが他の人にも声をかけてくれるそうだから、一人の負担は軽くなるはずよ。 |
| ミリーナ | たまには肉体労働もいいと思うし、みんなでロゼのお店の手伝い張り切っていきましょう ! |
| 全員 | おー ! |