Character1話【プラン1 ホワイトデー前日】
キール考えろ。考えろ。考えろ。ぼくなら必ず論理的結論にたどり着けるはずだ。できる。ぼくならできる。落ち着いて考えるんだ。
アッシュ……あいつは何をそんなに悩んでいるんだ。目が血走ってるぞ。
イクスホワイトデーのお返しが決まらないみたいなんだ。
ローエンいやぁ。青春ですね。私も若い頃は意中の女性に喜んでもらおうとどんなプレゼントを贈るか徹夜で悩んだものですよ。
アッシュ悩むにしたってホワイトデーはもう明日だぞ。
リッドキール、難しく考えすぎなんじゃねぇか。クッキーでもケーキでも別に何だってそこまで変わらないだろ。
キール腹に入ればどれも同じだと言うお前と一緒にしないでくれ。そんな簡単に決められるか。
キールそれに……メルディはわざわざ手作りのチョコをプレゼントしてくれたんだぞ。ちゃんとお返しがしたい。
リッドそうかよ。ま、そんなにメルディからチョコもらえたのが嬉しかったってのはよく分かったよ。
キールち、ちがっ………………。
イクス……キール ?
キールああ ! そうだよ !だから絶対に失敗したくないんだ !何か文句があるなら言ってみろ !
リッドちょ、ちょっと落ち着けよ !茶化したオレが悪かった !
イクス……相談に乗れたらいいんだけど俺はほぼ毎年決まったプレゼントだからな。
アッシュ俺も参考にはならんだろうからな。失礼させてもらうぞ。
ローエンアッシュさん、どちらに行かれるのですか ?
アッシュちょっとした用事だ。
イクスアッシュ、このところよく外出するよな。どこ行ってるんだろう。
リッドさあな。それよりもキールのことを……って、あいつどこに行ったんだ ?
キールはぁ……あいつらと一緒だと気が散って考えがまとまらない。はやく計画をたてないと……。
キールって、ん ? あの三人は……。
アルヴィンおい。ゼロス。そろそろケリュケイオンに帰らなくていいのか ?もう用事は済んだだろ。
ゼロスうっせぇ。ちょっとくらい長居したっていいだろうが。あっちはむさ苦しくてしょーがないのよ。俺さまもアジト島で可愛い子ちゃんたちに癒されたいわけ。
レイヴンけんども明日はホワイトデーよ。仲良しカップル共のイチャイチャをみせつけられておっさん、むしろダメージくらっちゃいそう。
キール…………関わらないでおくか。
レイヴンおや。キール君じゃないのほらほら。こっち来なさいって。
キールな、なんだよ。いきなり肩を組んできて。
レイヴンおっさん、知ってるわよ。青春してるみたいじゃないの ?メルディちゃんとは……最近どうなの ?
キールはぁ ! ?
アルヴィンおっさん。去年のホワイトデーからちっとも変わってないのな。そういうダルい絡みやめろって。
キールそ、そうだ。それにメルディとは……って、ぼくはこんなことしてる場合じゃないんだ。いいから放してくれ。
ゼロスずいぶん切羽詰まってるみたいだな。ま、ホワイトデーの前日に未だお返しが決まってなけりゃあそうなるのも無理ないか。
キールな、なぜそれを ! ?
ゼロス普段は野郎のことなんてどーでもいいけど最近、ジーニアスの相談にも乗ってなかったからな。暇つぶしがてら、代わりに話を聞いてやるよ。
ゼロスてことで、この愛の伝道師ゼロスさまを頼るといいぜ。モテのテクから口説き方まで何でも教えてやるよ。でひゃひゃひゃひゃっ。
キールモ、モテのテク ! ?そそ、そんな軽薄で破廉恥そうなものにぼくは興味などないぞ !
ゼロスなに想像してんだよ。ちゃんとお前みたいなウブな奴のためのテクもあるぜ。
ゼロスたとえば女の子に何を贈るかやデートのエスコートの仕方、とかな。
レイヴンふっ……。アルヴィン君はどうなのよ ?
アルヴィンまぁ、俺もないってわけじゃあないぜ。仕事柄、女心を利用させてもらうことがあるからな。
キール……す、住む世界が違いすぎる。
ゼロスまぁ話だけでも聞いていけって。メルディちゃんに格好いいとこみせたいだろ ?
キール………。
キールき、聞くだけだぞ……。

Character2話【プラン1 ホワイトデー前日】
カイウスガイアスさん。このクッキーはどうだった ?オレ、甘い物苦手だから美味しいか自信なくてさ。正直に感想を言ってくれ。
ガイアス焼き加減や風味はなかなかのものだった。しかし甘みが足りない。まだ改善の余地がある、と言ったところだな。
カイウスえぇ……あれでもかなり甘いと思ったんだけどな。
ガイアス人は苦手なものに対して過敏に反応してしまうものだ。その気持ちはわからんでもないがな。
カイウスそれは確かにそうかもしれない。はぁ……なかなか上手くいかないもんだな。もうホワイトデーの前日だっていうのに。
ガイアス「まだ」ホワイトデーの前日だ。諦めるのは早計だぞ。俺も引き続き味見役として付き合おう。
カイウスガイアスさん……。ああ、そうだよな !ありがとう !オレ、絶対に美味しいクッキー作ってやる !
ルビアあら。カイウスじゃない。こんなところで何してるのよ。
カイウスなんでもねぇよ。目に物見せてやるから覚悟しとけよ。行こうぜ、ガイアスさん。
ルビアあっ ! ちょっと……。もう、一体何なのよ。
ミリーナきっとホワイトデーのことよ。みんな明日のために準備しているもの。カイウスも同じだと思うわ。
ルビア……ちゃんとホワイトデーのこと覚えてたってことね。なら、走って行っちゃったのは許すことにするわ。
メルディホワイトデーたのしみだな !キール、なにくれるかワクワクするよ !
ナタリアそれは当日のお楽しみですわね。
マギルゥはやく明日にならんかのう。儂もいまから待ちきれんわ。
ビエンフー姐さん。バレンタインデーのときとは打って変わってずいぶんご機嫌でフね。
マギルゥ当然じゃ。お主と過ごすホワイトデーが今から楽しみで仕方ないからのう。
ビエンフー……ね、姐さん。
ビエンフー任せてくださいでフ。姐さんのほっぺたが落ちるような最高のお菓子をプレゼントするでフよ。
マギルゥうむ。では甘味作りも加えておくとするかのう。
ビエンフー加えておく ? どういう意味でフか ?
マギルゥ明日はお主がホワイトに燃え尽きるまで働くデーじゃ。掃除、洗濯、魔道導の写本から魔法薬の治験までた~~っぷり可愛がってやるからの。
ビエンフーそ、そんなのあんまりでフよ ! !ビエーーーン ! !
マギルゥ今日は逃がしても明日は逃がさんからな。覚悟しておくのじゃぞ。
ミリーナふふっ。マギルゥったら。本当にビエンフーが大好きなのね。
ナタリアやっていることと想っていることがここまで違う方も珍しいですわね……。
ジュードよし。あとはここにあるカルテを運べば今日の仕事はおしまい――
ビエンフービエーン ! !
ルビアジュード ! 危ないわ !ビエンフーとぶつかっちゃう !
ジュード―― !
ジュードよっと。
ミリーナすごい身のこなし。さすがジュードさんね。
ジュードそれほどでも……って、カルテが散乱しちゃった。
ルビア拾うの手伝うわ。
ナタリア私も………。
ナタリアこれはアッシュのカルテ……。
ナタリア! ?
ジュードナタリア ? どうかしたの ?
ナタリアい、いえ。何でもありませんわ。

Character3話【プラン2 イクスのお返し】
マギルゥ今日は待ちに待ったホワイトデーじゃ !ビエンフー、準備はよいな ?まずは儂にお菓子を献上するがよい。
ビエンフーそう言うと思ってマシュマロを持ってきたでフよ。ボクからの気持ち、受け取ってでフ。
マギルゥ良い心構えじゃ。さすが儂の使役聖隷じゃの。
イクス……あれ ?マシュマロって確か「あなたが嫌い」って意味だったような……。
イクスまぁいいか。お返しのお菓子の意味もお菓子業界が勝手に言い出したことだしな。
ミリーナイクス ! お待たせ !約束の時間よりまだ早いけど待ちきれずに来ちゃった !
イクスミリーナ。俺も遅れたらまずいと思って今来たところだったんだ。ちょうどよかった。
イクスえっと、バレンタインのチョコありがとう。とっても美味しかったよ。俺からのプレゼント、受け取ってくれ。
ミリーナありがとう ! さっそく開けてもいいかしら ?
イクスもちろん。喜んでくれるかわからないけど。
ミリーナふふっ。今年は大きめのカステラね。それと……歯磨きセット ?
イクスホワイトデーには甘いお菓子を渡すのが一般的だろ。けど、もし俺のプレゼントしたお菓子でミリーナが虫歯になったら悪いなと思ってさ。
ミリーナ…………イクス。
ミリーナお菓子も歯磨きセットもどっちもすごく嬉しいわ !こんなに素敵な贈り物、人生で初めてよ !カステラを食べた後、ずっと歯磨きしてたいくらい ! !
イクス磨きすぎも歯のエナメル質が剥がれたりしてよくないからほどほどにな。
ローエン相変わらず仲がよろしいですね。羨ましい限りです。
イクスローエンさんにメルディ。なんか見られちゃって恥ずかしいな。
メルディミリーナ、プレゼントよかったな。
ミリーナありがとう。メルディはキールからもうもらった ?
メルディううん。キールいない。
ローエンそういえば昨日から姿がみえませんね。
ゼロスいいか。俺さまの言った通りにやればバッチリだ。ドーンっと行って派手に砕け散ってこい。
キールあ、ああ。わかってる……って、砕け散ったらダメだろうが !
ゼロス細かいこと気にすんなって。
アルヴィンまあ骨は拾ってやるよ。
レイヴンいってらっしゃい……っと !
キールちょ、いきなり押すな―― !
キールぐはっ……いたた………。
メルディあっ ! キールいたよぅ !
キールよ、よう……メルディ。きょきょ、今日は一段と……。
キールかわいい、な。
メルディえっ。
四人! ?
ゼロスよしよし。まずは戦訓その1「褒めろ」だ。褒められて嬉しくない人間はいない。一部のひねくれ者を除いてな。
アルヴィンやっすい戦訓だな。お前の軽薄さが滲み出てるぜ。
レイヴンでも効果はあるみたいよ。あの二人、見てみ。
メルディキール、なんかいつもと雰囲気ちがうよ ?
キールべっ、別にぼくはいつも通りだ !
メルディそうか ? でも褒められるのは嬉しいよ。ありがとな。
メルディそれにキールもかっこいいよぅ。その服、とっても似合ってるな。
キールぼ、ぼくがかっこいい……って、そんなわけあるか !あまりからかわないでくれ !
ゼロス人がいちゃついてるのを観察するのも馬鹿馬鹿しい話だが……お前ら、みたか ?俺さまの戦訓、そのすさまじさを。
レイヴンおっさんの見立てだとそれだけじゃないわね。メルディちゃん……スーツフェチと見た。
アルヴィンおっさんじゃないんだからそんなマニアックな趣味あるかよ。
レイヴンまあ、戦訓も服装も効果はバッチリだったってことで。
アルヴィンだがキールの奴、カウンターをくらっちまってるぜ。逆にツンデレちまった。まだまだ油断はできないぞ。
ゼロスまだ余裕で巻き返せるっての。ここから流れを戻してリード、デートに誘うんだよ。
キールと、とにかく……バレンタインデーのお返しがしたいからその……これから出かけないか ?
メルディワイール ! キールとお出かけ !いくいくぅ ! はよぅ出発 !
キールま、待て ! 袖を引っ張るな !
二人……い、いってらっしゃい。
ローエン少々伺いたいのですがキールさん、ああいう人でしたか ?
カーリャ全然違いますよ。イクスさまが傍にいるときのミリーナさまといないときのミリーナさまぐらい違います。
ローエンそれは相当ですね。
イクス何か悪いものでも食べたのかな……。
リッドよくわからねぇけど誰かに変なこと吹きこまれたんだろ。キールの奴、大丈夫なのか……。
イクスリッド !
ミリーナリッドさんもキールのこと心配よね。
リッドまあな。けど、いまのあいつはオレの話を聞きゃしないだろうしファラだと余計酷い展開になりかねない。
リッドだから悪いけどキールたちのこと頼めねぇかな。オレが後をつけて万が一見つかったらあいつ、また意地になりそうだからな。
ローエンそういうことでしたら私に任せてください。
イクス俺にも出来ることがあれば手伝わせてくれ。
ミリーナ私も協力するわ。
カーリャカーリャはアジト島でお留守番していますね。いつバレンタインのお返しがもらえるかわかりませんから。
カーリャ遠出するときは呼びだして下さい !
ローエンではさっそく二人の後を追ってしばらくは様子を見守るとしましょう。
リッドよろしく頼むわ。

Character4話【プラン3 カイウスのお返し】
カイウスやべっ。もうこんな時間だ。ルビアとの待ち合わせに遅れないよう急がないと……って、アッシュじゃないか。
アッシュうん ? カイウス……ふっ。
カイウスな、なんだよ。人の顔を見るなり笑い出して。
アッシュ何でもない。悪いが俺も急いでいるので失礼する。プレゼントのクッキー、気に入ってもらえるよう祈っているぞ。
カイウスお、おう。ありがとう……。あれ ? どうしてオレのプレゼントがクッキーってアッシュは知ってるんだ。
カイウスいやいや。それよりも急がないと。遅刻したらルビア、絶対怒るもんな。
ルビア……も、もうすぐね。
ルビアすぅ…………はぁ…………。
カイウスルビア !
ルビアカイウス……ふふっ。
カイウスな、なんだよ。いきなり笑い出して。
ルビア何でもないわよ。それよりホワイトデーがいつかはちゃんと覚えていたみたいね。
カイウス当たり前だろ。だって……ルビアがくれたチョコのお返しを、うっかり忘れるわけない。
ルビアあたしがあげたんじゃないわよ。あたしはカイウスがどうしても欲しいっていうからプレゼントしてあげただけ。
カイウスわかったわかった。そうだったよ。とにかく、お返しにクッキーを作ったんだ。受け取ってくれ。
ルビアこのクッキー、カイウスが作ってくれたのよね ?
カイウスオレだけの力じゃないけどな。ガイアスさんに手伝ってもらったんだ。だから美味しさは保証する。
ルビアそうなんだ。でも、カイウスもちゃんと味見してくれたのよね。
カイウスそりゃあ当然だろ。オレのプレゼントなわけだし最後は確認して責任を取らないとだし――
カイウス……あれ ? どうしてそのこと知ってるんだ ?
ルビア口元。クッキーの食べかすがついてる。
カイウスえっ ! ?
ルビアもう。責任とか男らしいこと言ってもこういうところはまだまだね。とってあげるからジッとしてて。
カイウス悪かったな――ん、んんっ。
ルビア…………ありがとう、カイウス。
ゼロスく~~っ。カイウスの野郎め。ルビアちゃんの母性本能くすぐりまくりじゃんか。あんなのってありかよ。
レイヴン……羨ましい。ああいうホワイトデーを過ごしたかった。おっさんもクッキーのカス、口元につけておこうかな。
アルヴィンファイアボールくらってヒゲごと燃えカスにされるのがオチだろ。
レイヴンそういうこと言わないでよ !
アルヴィン静かに。二人が来たぜ。いよいよデート開始、こっからが本番だ。うまくエスコートしてけよ、キール君。
キール……落ち着け、落ち着け。まずはお洒落なカフェでお茶をしそのあとは公園、そしたらディナーで……。
キール………よ、よし、大丈夫だ。そもそもぼくが考えた完璧なプランに狂いがあるわけないじゃないか。
メルディキール ?さっきから何ブツブツいってるか ?
キールな、なんでもないぞ !なんでも……あ、あははっ。
メルディそうか。キール笑顔なら問題ないな。
メルディそれよりこの街すごいな ! 人いっぱい !みんな楽しそう !あっちにお店もたくさんあるよぅ !
キールあっ…………。い、いまか…………っ !
キールメルディ !
レイヴンキール君、自分からメルディちゃんの手を取るとは。なかなかやるじゃないの。これ、誰の入れ知恵 ?
アルヴィン俺だ。戦訓その2「ボディタッチ」。言葉のコミュニケーションと同じくらい身体のコミュニケーションも大切だからな。
ゼロス心理的距離が近づいたように相手を錯覚させられるもんな。そうやって女から情報を仕入れてきたんだろ。
アルヴィンちょっとおたく。自分の戦訓を俺が否定したからって痛いとこついてくるのやめてくれる ?そういうところシンくんに似てきたんじゃないの。
ゼロスなんだと三重ヴィン。言っておくけどシンくんの切れ味はこんなレベルじゃねぇんだぞ。
レイヴンうっさい ! いまいいとこなの !黙ってろって !
メルディ……キール ?
キールこ、これで……はぐれることはないだろう。
メルディうん。そうだな。
メルディけどキール、手冷たいよ。メルディがあったかプレゼント !
キールバ、バカァ !いきなり両手で握ってくるやつがあるか !
メルディ手を握ってきたはキールだよ。
キールぼ、ぼくは片手だしそもそもお前がはぐれかねないと思って……いやいや、そういう話がしたいんじゃなくて――
メルディあっ ! パティスリーあるよ !キール、いってみよぉ !
キールちょ、ちょっと !袖……じゃなくて手を引っ張るなぁ ! !
イクスあの二人、お店に入って行ったぞ。どうする ?
ローエン……あの店は。
ミリーナローエンさん。知っているお店ですか ?
ローエンええ。ここは私にお任せください。
キール……はぁ。本当はカフェでお茶する予定だったのに。どうしてこうなるんだ。
メルディキール、見てよ !おまんじゅう、いっぱい !
キールおまんじゅう ?ってこれ……。
ガイアスいらっしゃいませ。ガイアスまんじゅうはいかがでしょう ?
キールガイアス ! ?

Character5話【プラン4 ガイアスのお返し】
キールガイアス ! ?こんな場所で何をしてるんだ ! ?
ガイアス否。今の俺はガイアスではない。パティシエのアーストだ。
メルディパティシエ ?
ガイアスこのパティスリーの店長と知り合いでな。重度の虫歯で倒れてしまった店長の代わりに1日代理店長を務めることになったのだ。
ローエン無事一段落したようですね。代理店長を務めてみて何かご感想は ?
キールローエン !
ガイアスさすがは繁忙期だな。想像以上の忙しさだ。ミュゼとミラにも手伝ってもらっているがそれでも人手が足りない。
ガイアスしかしながらこの世界の民の生活を直に感じることが出来るいい機会だ。やはり市井の現状は肌で感じてこそだと痛感している。
キールその意見にはぼくも同意だ。書物や伝聞ではわからないことがこの世にはたくさんあるからな。
ミュゼキール、騙されちゃだめよ。ガイアスったら最もらしいこと言ってるけど本当はただの道楽なんだから。
ガイアスアーストだ。
ミュゼええ、そうだったわね。アースト。
ミラ=マクスウェルしかし店長の頼みを引き受けたのもまた事実。案外、人が良いところもあるのだな。
ガイアス何を言う。店長の友人としては当然のことだ。
メルディミラとミュゼも優しいな。お手伝い偉いよ。
ミラ=マクスウェルガイアスまんじゅうをご馳走してもらえるとあっては断る理由がない。
ミラ=マクスウェルそれにミュゼのためにもなるというなら私としても喜ばしいことだからな。
ミュゼ私の ?
ミラ=マクスウェルミュゼが私と姉妹のような一日を経験したがっている……と、ガイアスから聞いていたのだが。
ガイアス…………。
ローエンミラさんにはちゃんと口止めも含めて伝えておかないといけませんでしたね。
ガイアス…………そのようだな。
ミュゼ……ガイアス。
ミュゼええ。今日はミラと一緒にお菓子作りができて本当に嬉しいわ。なんだか仲良し姉妹っぽいわよね。
ミュゼミラ。そしてガイアスも。素敵なホワイトデーのお返し、ありがとう。
ガイアスいいや。ちゃんとお菓子も贈らせてもらう。ガイアスまんじゅうだ。食べてくれ。
ミラ=マクスウェル私もマクスウェルまんじゅうを作ってみた。まだ試作品だが、よければ食べてくれ。
ミュゼミラ ! ガイアス !私のために…… !
ローエンよかったですね、ミュゼさん。
ガイアスキールとメルディ。お前たちももらってくれ。
メルディワイール ! ありがとな !キール、外で食べよう !
キールあ、ああ。そうだな。食べ終わったら……えっと、次は……そう ! ショッピングだ !
ミラ=マクスウェルうん ? 外を見てみろ。また客が集まってきたな。
ガイアス休憩は終わりだ。
ミュゼええ。どんどんお菓子を作りましょう。
ガイアスローエン。時間があるようなら手伝ってはくれないか ?
ローエンそう言われると思っていましたよ。待たせている人たちがいるのであまり長居はできませんが。
ガイアス構わん。よろしく頼む。
キールそれじゃあぼくたちは行くよ。
ローエンええ。ファイトですよ、キールさん。
キールよし。そ、それじゃあ二人で買い物に――
メルディキール ! イクスとミリーナだよぉ !
イクスあっ ! ふ、二人とも……。
メルディ二人、ここで何してるか ?
ミリーナえっと……これから買い物に行くところなのよ。
メルディならみんなで行こうよ !みんな一緒の方が楽しい !
イクスえっ……けど……。
メルディキールもそうだな ?
キールぼ、ぼくは……。
メルディ……キール ?
キール……ああ。そうだな。みんなで一緒に行こう。

Character6話【プラン5 アッシュのお返し】
キール待たせた。無事買い物も終わったぞ。
メルディキール。何買ってきたか ?
キール食べ物……とだけ言っておこう。詳細は秘密だ。
ミリーナそれじゃあ私たちはここまでね。イクス、二人で食事でもしましょう。
イクスあ、ああ。そうだな。またな、キール。メルディ。
メルディはいな !キール。メルディもお腹空いたよ。食事するか ?
キールいいや。食事の予定は当然、考えているがその前に――
キール山に登るぞ !
レイヴン戦訓その3「ロマンチックなシチュエーション」。山を登る過程で、疲れた女の子を格好良くエスコートすることも狙える合わせ技よ。
アルヴィン馬鹿野郎。キールはもやしなんだぞ。メルディより先にへばっちまったらどうすんだよ。
レイヴンそのときは、おっさんが華麗に参上。主役交代。ダンディにエスコートしてみせるわよ。未来への投資もかねて、ね。
アルヴィン子どもには興味ねぇとか言ってたけどそういうとこは、ぬかりないのな。
ゼロス大人になったメルディちゃんとの、大人の恋か。俺さまロマンチッカーだからそういうの嫌いじゃないぜ、おっさん !
アルヴィン…………。
ゼロスおい。アルヴィン、どうした。そこはお前もノッてくる流れだろうが。
アルヴィン……どうやら俺たちはここまでのようだぜ。
二人
イクスキールとメルディと別れてから少し時間が経ったけどローエンさん、なかなか来ないな。迎えに行った方がいいか ?
ミリーナ! 待って。今出て行ったら邪魔になっちゃうわ。
イクス邪魔って……うん ?あそこにいるのって――
アッシュバレンタインのお返しだ。受け取って欲しい。
ナタリア…………。
アッシュナタリア、どうした ?具合でも悪いのか ?
ナタリアアッシュ。プレゼントを受け取る前に聞きたいことがありますの。正直に答えると約束してくれます ?
アッシュ……ああ。
ナタリア私のチョコレートは本当に美味しかった…… ?
二人
アッシュ……いきなりどうしたんだ。
ナタリア偶然、あなたのカルテを見てしまいましたの。バレンタインデーの日に急患で運び込まれたとありましたわ。
ナタリアアッシュ。カルテの内容は……。
アッシュ……事実だ。
ナタリアやっぱり……。ということはあのカカオも……。
アッシュあいつらを責めるな。すべて俺が望んだことだ。
ナタリアええ。それはわかっています。私のためを想っての優しい嘘だったと。
ナタリアですがそれとこれとは話は別。やはり私はあなたからプレゼントをもらう資格はありませんわ。
アッシュ待て。そんなことはない。
アッシュ確かに俺はお前のチョコで……倒れた。だが嬉しかったのも偽りのない事実だ。それが一番大切なことじゃないか ?
ナタリア……アッシュ。
アッシュ俺の感謝の気持ちを込めたプレゼントだ。受け取ってくれ。
ナタリア……これは指輪 ?しかもこれは手作りですわよね ?
アッシュ街の教室に通って仕上げた。世界に一つしかない指輪だ。
アッシュ周りにあわせて菓子など贈りあわなくたっていい。俺たちはこれからも互いに贈りたいものを贈り合おう。
ナタリア……わかりましたわ。私たちだけの約束ですわね。
アッシュ約束で縛るつもりはない。これは……誓いだ。
ナタリアでしたら……私も誓いますわ。今日の日のことを決して忘れないと。
ミリーナ二人ともいい雰囲気ね。
イクス結局、カカオの嘘はバレちゃったけどな。いや……もしかしてローエンさん、ここまで予想してたんじゃ……。
ローエンさすがに買いかぶりすぎですよ、イクスさん。あれは紛れもなくアッシュさんのお手柄です。
イクスローエンさん ! 戻られてたんですね。
ローエンさあ。いたずらっ子たちの処遇についてもしかるべき方々にお願いしましたから私たちは引き続きキールさんたちを追いましょう。
イクスいたずらっ子 ?
ローエン気にすることはありませんよ。
ゼロスちょ、ちょっと。落ち着けって。俺さまたちはよかれと思って――
しいな何言ってんだい ! このアホ神子 !キールのためにもメルディのためにも全くなってないじゃないか !
エリーゼアルヴィン。大人なんですから言い訳したりはしませんよね ?
アルヴィンああ。潔くお縄につくよ。
リタ…………。
レイヴンリタっち ? 一人だけ無言なのが怖すぎるんだけど。ほらほら。何か話そうよ。
リタファイアーボール ! !
レイヴンやっぱりこうなるのね~~っ ! !

Character7話【プラン9 キャリー】
キールはぁ……はぁ……。そ、そこそこ険しい山道だな……。……メルディ、大丈夫か ?
メルディはいな。メルディ元気。それよりキール、息切れすごいよ。休むがいいな。
キールダ、ダメだ。急がないと夜景が……うわっ !
メルディキール、足元ふらふら。ここ魔物も多い。油断たいてき。強がりよくないよ。
キールそ、そんなこと……。
メルディメルディ、お水くんでくる。待っててな。いこ、クィッキー。
クィッキークィッキー !
キール……はぁ。どうしてこんなにうまくいかないんだろうな……。
キール……茂みに隠れているお前たちもそう思うだろう。
ローエンおや、バレていましたか。
キール少し前から気配を感じていた。ファラ……いや、リッドの差し金といったところか ?
イクスそ、そこまで気付いてるなんて。さすが幼馴染みだな。
キール腐れ縁さ。リッドがぼくに差し金を向けた理由がお前たちにもよく分かっただろ ?散々やってこの結果、とんだ笑いの種だよ。
ローエンまさかそんなこと。少しばかり迷走しているようでしたがあなたの努力を笑ったりなどしませんよ。
ローエン何かお困りのようならお手伝いしたいと思っています。
キール……いや。結構だ。放っておいてくれ。ぼくにそういった気遣いは不要だ。
キールゼロスたちからも色々とアドバイスをもらったが結局ぼくはダメだったんだからな……。お前たちとは違うんだ。
ローエン……キールさん。
クィッキークィッキ ! ククク、クィッキー !
ミリーナクィッキー ? どうかしたの ?
キールたぶん付いてこいって言ってるんだ !もしかしてメルディに何か……行くぞ !
クィッキークィッキー !
キールメルディ ! 大丈夫か ! ?
メルディキール ! クィッキー !それに……みんなも一緒なのか ! ?
イクス事情は後で話す。いまは魔物を倒そう。
メルディあっち ! 女の人、倒れてる !助けるよ !
ローエンあ、あの人は……。
ローエンキャリー ! ? キャリーではないですか ! ?
ミリーナローエンさんの知り合いですか ! ?
ローエンえ、えぇ……とにかく私も加勢します。だいぶ回復したので精霊術も使えるはず。皆さん、いきますよ。

Character8話【プラン9 キャリー】
イクスジュード。駆けつけてくれてありがとう。キャリーさんは大丈夫か ?
ジュードうん。怪我の治療も終わって意識もちゃんと取り戻したよ。けど、もうしばらくは宿で休んでもらう必要があるね。
ミリーナ他に何か問題があるのね ?
ジュード魔物に襲われたときのショックが原因で記憶が少し曖昧みたいなんだ。安静にしていればじきに思い出すはずだけど。
メルディローエン。悲しそうにしてたよ。
ジュードキャリーさんはローエンを忘れてしまっている……。いや、そもそも知らない可能性だってあるかも。現状、鏡映点かどうか判断できないからね。
キール非鏡映点として具現化された存在はこの世界の住人としてエンコードされるからな。
ジュードうん。ロイドがこの世界で出会ったイセリアのポールのように。
イクス確かにキャリーさんが鏡映点かどうか不明な以上今の状態では、元世界の記憶の欠落が記憶障害のせいか、エンコードのせいなのか分からないのか……。
ミリーナカーリャがこの場にいればキャリーさんが鏡映点かどうかわかるけど呼び出しましょうか ?
ジュードそれは……ちょっと無理かな。カーリャは今、虫歯がひどくて鎮静剤と痛み止めを飲んで眠ってるんだ。
ジュード今はルカとコーキスが付き添ってくれてるよ。
ミリーナ今朝までは元気にしてたのに ! ?
イクスそういえばカーリャ、バレンタインデーのときチョコレート食べまくってたからな……。
キール……それじゃあ、キャリーさんが鏡映点かどうかを調べるのには、今のところ記憶障害が回復するのを待つしかないということか。
ジュード……ローエン。
イクスローエンさんとキャリーさんってどういう関係なんだ ?ただの知り合いではなさそうだったけど。
ジュード……キャリーさんはローエンと恋仲だった人なんだ。
キール恋仲 ! ?
ミリーナ待って。過去形なのは、もしかして……。
ジュードそうだね……。厳密に説明すると複雑だからかいつまんで簡単に説明すると――
ジュードキャリーさんは元々暮らしていたリーゼ・マクシアとは違う別の世界、エレンピオスに飛ばされてしまったんだ。
ジュードローエンはそれを知らずキャリーさんは死んだとずっと思っていた。
ジュードそして二つの世界を行き来することが可能になって僕たちがエレンピオスに行った時、キャリーさんと再会したんだ。
ジュードけどキャリーさんは飛ばされたときのショックで記憶を失っていた。おまけにエレンピオスの男性と結婚して、仲の良い娘さんまでいて……。
キールそんなことがあったのか…………離ればなれになったうえ、自分のことを忘れてしまっていたなんて……。
メルディメルディたちの世界もインフェリアとセレスティア、二つの世界ある。似たような話も知ってるよ。
キール……他人事とは思えないな。
イクス結局、元の世界でローエンさんとキャリーさんはどうなったんだ ?
ジュードローエンからは特になにも言われなかったよ。たわいのない雑談をしただけで、二人は別れたんだ。
ジュードきっと、キャリーさんが幸せに暮らしているのならそれでいい……ってローエンは思ったんだろうね。
メルディ……切ないな。
キールなぁ……もし仮にキャリーさんが鏡映点でなかったとしたら……ローエンは……。
キールローエンは2回も大切な人に自分のことを忘れ去られたことになるよな……。非鏡映点は、元の世界の人間とは別人とは言え、さ。
五人…………。
ジュードまだ鏡映点ではないと確定したわけじゃないよ。それにローエンならきっと大丈夫。
イクス今はとにかく二人だけにしてあげた方がいいよな……。
ローエン……キャリー。

Character9話【プラン10 キールのお返し】
ローエン入ってもよろしいですか ?
キャリーええ。もちろん。
ローエン具合の方はどうですか ?
キャリーおかげさまで、だいぶよくなったわ。魔物から助けてもらったうえに看病までしてくださってなんとお礼を言ったらいいか。
キャリーただ……まだ記憶がちょっと曖昧で……。
ローエン焦る必要はありませんよ。気楽にたわいのない話でもしていればふとした拍子に思い出したりするものです。
キャリーそうね。それじゃあせっかくですしお話を再開しましょうよ。貴方がする話はどれも、とても面白いわ。
ローエンジジイの昔話をここまで楽しそうに聞いてくれるのは貴女ぐらいなもの。楽しんでいただけているようで何よりです。
キャリー特に詩を書いていたなんて素敵だわ。貴方の詩集『くるおしき愛の叫び』についてもっと聞かせてくれない ?
ローエンそ、それは秘密です。さっきはつい口を滑らせてしまいましたが。
キャリーそう ? 残念だわ。
ローエンではお詫びにこれを。焼きたてのバームクーヘンです。
キャリーまぁ。ありがとう。ちょうど少しお腹がすいていたの。よいしょっと――
ローエンまぁまぁ。どうか楽にしてください。無理にベッドから起き上がらなくても大丈夫です。
キャリーそれじゃあお言葉に甘えて。ふふっ、ちょっとお行儀が悪くて恥ずかしいわ。
ローエン……懐かしいですね。
キャリーえっ ?
ローエンいいえ。何でもありません。
ローエンおっと。飲み物を忘れていました。アールグレイをご用意しますね。
キャリーあっ…………。
ローエンどうかされましたか ?
キャリー……思い出した。
ジュードキャリーさん。無事記憶が戻ってよかったですね。
キャリーええ。おかげさまで。見ず知らずの他人にも関わらず助けてくれて本当にありがとう。
キャリーそうだ。この近くの街で夫と娘の三人で暮らしているの。お礼がしたいから今度よければ遊びにきてね。
四人…………。
ローエンジュードさん。このあたりは魔物が多い。キャリーさんを街まで送っていってもらえますか ?
ジュード……うん。けど、ローエンは ?
ローエン……私はここで。
キャリーローエン ? 貴方、ローエンって言うの ! ?この指輪に刻まれてる名前と同じよ。ほら、みて !
ローエン……その指輪は !
ジュード
ミリーナ……結婚指輪、かしら。
キャリーわからない……けど、ずっと前からつけているの。とても大切なもののはずなのに誰に、いつもらったかも全然覚えていなくて……。
キャリーもしかして……これは貴方が……。
ローエン…………。
ジュードローエン……。
キャリー貴方がくれたものなの ?
ローエン…………違います。
ジュードえっ…………。
キャリー貴方がくれた指輪じゃ……ないの ?
ローエンはい。確かに私はローエンですがおそらく別人でしょう。
キャリー……そう、なのね。
ローエンローエンなんてきっとよくいる名前なのでしょうね。
キャリー…………ええ。どうやらそうみたいですね。
ローエンお元気で。
キャリー貴方も元気で。
ジュード……送りますね。
キャリーありがとう。お願いするわ。
キャリーそれじゃあ……ローエンさん、さようなら。
ローエンさようなら。…………キャリーさん。
五人…………。
キールジュードから話は聞いた。……あの結婚指輪、本当はローエンが贈ったんだろ。
ローエン…………ええ。具現化とは、ここまで再現されてしまうものなんですね。
イクス……つらいですよね。
ローエンどうでしょう。以前再会したときと同じようにやはり嬉しいか悲しいか……自分の気持ちがよくわからないのです。
キール……また一からやり直したいと思わないのか ?
ローエンご安心を。いまの選択に後悔はしていませんから。
キール……そうなのか ?
ローエン人生、上手くいかないときもあります。自分なりに最善を尽くし生きていても辛い出来事に巻き込まれることもある。
ローエンですが辛いことも悲しいことも時間が癒してくれます。当然です。人生は良いこともたくさんありますから。
ローエンですが後悔だけは……ずっと胸の中に残り続ける。消えてくれないものが後悔なのです。だから大切なのは最善を尽くして生きていくこと。
キール最善を尽くして……。
ローエンさっきジジイは最善を尽くしましたよ。頑張ったと褒めていただけると嬉しいですね。
メルディうん ! ローエンすごいよ !がんばったな !
ミリーナローエンさん ! 格好良かったですよ !
ローエンありがとうございます。美女二人にチヤホヤされると年甲斐もなく浮かれてしまいますね。
イクスもうローエンさんってば。けど、本当に……そういう生き方、格好いいなって尊敬します。
キール…………そうだな。
ローエンさてジジイの話はこれくらいにしましょう。皆さんは青春真っ只中の男女。楽しいホワイトデーが終わってしまいますよ。
メルディキール ! また山登るか ?
キールいや。山登りは中止だ。
キール本当は夜景をみながらさっき買ってきた高級スイーツを食べようと思っていたが……こんな王道のような選択、ぼくたちにとっては最悪だ。
キールよし、メルディ ! アジトに戻るぞ !

Character10話【プラン10 キールのお返し】
キール急げ……ホワイトデーが終わるまえに完成させるぞ……。あと少し、あともう少しで……。
キールよしっ ! できた ! !
メルディキール。何やってるか~ ?もう深夜。眠いよぅ。
キールな、なに勝手に入ってきてるんだ !部屋で待ってろっていっただろ !
メルディわぁ ! それクッキーだな !クィッキーが形してるよ !かわいいなっ !
キールお、おい ! 勝手に見るなよ !
メルディクィッキークッキー、キールが作ってくれたんだな。
キールいや……。そこらへんで売っていたから買っただけだ。なんでぼくがわざわざお前のために――
メルディじーーーー。
キール……わ、わかったよ。正直に言えばいいんだろ。見ての通り、手作りだ。
キール……ホワイトデーのプレゼントだ。味わって食べろよ。
メルディワイール ! ありがとな !キールがクィッキークッキー嬉しいよ !
メルディいただきまーす♪ ぱくっ……。
メルディうーんっ ! とっても美味しいな !
キール当然だ。美味しくないわけがない。ガイアスまんじゅうのデコレーション技術を応用しソディを使ったぼくの特別製クッキーだからな。
キールというより一口で食べるな。もっと味わって食べろ。どれだけ苦労して作ったと思ってるんだ。
キールそれに喉につかえたらどうするんだ。いまお茶を用意してやるから待ってろ。
メルディやっぱりいつものキールがいちばん好きだな。
クィッキークィッキー !
イクスキールとメルディはなんとか楽しいホワイトデーを過ごせたみたいだな。
リッド一時はどうなるかと思ったけどな。まぁなんとかなってよかったわ。これもイクスたちのおかげだ。
ミリーナ私たちというよりローエンさんのおかげだと思うわよ。
イクスやっぱりローエンさんって美味しいところをもっていくよな。キールへの最後の一押しとかさ。
ローエンそれほどでもありませんよ。
ローエンおっと。もうそろそろ時間です。私はゼロスさんと一緒にケリュケイオンに戻りますね。
イクスまたこっちにも来てくださいね。
ローエンはい。せっかくこうして体を動かすことができるようになりましたから色々とご協力できることも増えるでしょう。
ローエン問題児ばかりなのでしばらく残って欲しいとクラトスさんに頼まれていますがお呼び頂ければはせ参じます。
ローエンそれではまた。今度会うときは皆さんの仲がどう進展しているか楽しみにしていますよ。