Character1話【カジノ1 資金難】
ルックそれとですね、ビクエ様から先月分の領収書を出し忘れていたと連絡がありまして……。
マーク……………………。
ルックマークさん ? 聞いてますか ?
マーク……聞いてる聞いてる。聞きたくなかったけど聞いてるよ。
マークさっき帳簿をまとめ終わったのにまたどこかの生活能力皆無なおっさんがため込んでた領収書を出してきたんだろ。
ゼロス何、救世軍の帳簿つけなんて地味な仕事までやらされてるの、マーくん。
マーク愚問だねぇ、ゼロスくん。他にやれそうな奴がいると思うか ?
ゼロスこりゃ失敬。んで、どうなのよ収支の方は……っておやおや、この数字の先頭に付いているおぞましき△印は……。
マーク神子様が帳簿を読めるたぁ驚きだ。そう、お察しの通り今月の救世軍の財政は赤字ってこと。
ルック付け加えますと、先月も先々月もです、ゼロス様。
ゼロスマジかよ。世知辛いな、おい。
マークこのところ急に食い扶持が増えたしな。イクスのとこみたいに、金儲けが得意な奴でもいれば助かるんだが、なんたってこっちの筆頭がフィルだろ。
マーククラトスは指揮官としては頼りになるが金儲けって柄じゃねぇし、シンクは論外。あんたは……。
ゼロス一応、ハニー達から俺さまへの愛のプレゼントの数々を寄付してるけど ?
マークまぁ、な。頼まなくても、女性の方からプレゼント押しつけてくるゼロスの才能には感心するが焼け石に水でな。
マークローエンもヴィクトルも色々節約のアイデアを出してくれて助かってるんだが病み上がりの二人を働かせる訳にもいかねぇだろ。
シンク……ちょっと。この二人が押しかけてきてるんだけど何とかしてくれる。
ゼロスげ……。ミトス……。
ミトスアホ神子といい、仮面の坊やといい、相変わらず態度がなってない奴らばかりだね、マーク。
マークミトス ! どうしたんだ、マーテルを連れてケリュケイオンに来るなんて。
マーテルお邪魔しています、マークさん。
マークいや、気軽に呼び捨ててくれ。
マーテルありがとう。ではそうさせてもらうわね、マーク。それから、シンク。ここまで案内してくれてありがとう。
マーテル道中ミトスがひどいことを言ったけれどどうか許して下さい。
シンク――だってさ、甘ったれ坊や。ママ代わりの姉貴のドレスの後ろに隠れて代わりに謝ってもらうなんていいご身分だね。
ミトスフフ、そんなに突っかからないでよ。君が寂しいのは君の問題。
ミトス誰彼構わず辛辣にこき下ろして、それで自分を保ってるつもりなんて、子供だね。そんなに「生きる」のが怖いのかい、シンくん。
マーテルミトス。どうしてそんな言い方をするの。シンクはああして世界と自分の間の溝を埋めようとしているの。わかるでしょう。
シンク勝手にボクの分析をしないでくれる ?ホント、最悪の無神経姉弟だよ。
マーテル……ごめんなさい、気を悪くさせてしまって。
ミトスほっとけばいいよ、姉さま。生まれてきたことを呪うばかりでその先に進めない坊やなんだから。
シンク……何、喧嘩売ってるの ?
ミトスそう聞こえた ? 売って欲しいなら売ってあげてもいいけど、高くつくよ。
ゼロスおいおい、マーク。止めなくていいのか。
マーク……………………。
ルック駄目ですね。マークさん、領収書を睨み付けてます。聞いてないですよ、これ。
ゼロスマジかよ。俺さまミトスとはどうもソリが合わなくて――
クラトス――何の騒ぎかと思えばミトスとマーテルが来ていたのか。
ゼロスああ、もっとソリが合わない奴が来た !でも天の助け ! マーテル様に感謝。あ、女神の方のマーテル様。……ややこしいな、これ。
シンクあんたの弟子だろ。クラトス。しつけが悪いにも程があるんじゃない。
ミトスクラトスを悪く言うな。
シンクへぇ、こいつはアンタの大嫌いなニンゲンなのにそうやってかばうんだ。じゃあこっちはアンタのパパなんだね、ミトス坊や。
クラトス……またか。お前達は寄ると触るとそれだ。精神の修練が足りない証拠だぞ。
マーテルまぁ、クラトス。相変わらず、クールに熱いわね♪ミトスとの特訓の日々を思い出すわ。懐かしい !
クラトス……マーテル。その……お……あなたも変わらないな。
マーテルまぁ、あなただなんて、他人行儀ね。お前でいいのに。
シンク……へぇ。
ゼロスシンくんさぁ、人の弱点見つけて嬉しそうに笑うのやめてあげて。
マーテルそうそう、今日はね、あなたに話を聞きたくてミトスに無理矢理連れてきてもらったのよ。
クラトスわ、私に話……だと ?
マーテルええ ! その……私とあなたたちは違う時間から具現化されたんでしょう ? だからあなたたちの時代のユアンのことを聞きたくて…… !
シンクユアン ? 何 ?
ミトス砂漠で干からびた電気クラゲのこと。
ゼロスうわ。なんでお前、ユアンに辛辣なの。裏切られたから ?
ゼロスあ ! ? まさか姉ちゃんの恋人が気に入らないとかいうアレ――
ミトス死にたいの ? アホ神子。お前のことばらすよ。ロイド達に。まだバレてないんでしょ。裏切り者だって。
ゼロスアーアーアー失礼しましたーっと。
クラトスユアンか……。そうだな。奴は……以前の子供じみたところはなくなったが――
マーク――あんのクソロン毛中年引きこもり !何してくれてんだ ! ?
マーテルえ ? ユアンが引きこもりになったの ! ?どうして ! ?
クラトスま、待て、マーテル。あれはユアンのことではない。
ミトスユアンもクソロン毛だけどね。
クラトスミトス ! 話をややこしくするな。実際お前はユアンと一番仲がよかったではないか。どうしてそんなものの言い方をするのだ。
ミトス……色々あるの。クラトスには関係ないでしょ !
ゼロス……おいおいおい、あっちもこっちも空気悪くなってきたぞ。なぁ、マーク……。
マークったく、何なんだ、この訳わかんない領収書は !どうして一晩の食事に15万ガルド掛かってるんだ ! ?
マークこっちはテイラーの領収書 ! ? ケリュケイオンでパーティーでもするつもりか、フィルは !もう我慢ならねぇ、今日こそはビシッと言うぞ !
ミトス……修羅場の予感。
シンクむかつくけど同意だね。
ミトス行くでしょ、もちろん。
シンクは ! ? どうしてボクが !
ミトスいいから、行くんだよ !
ゼロス俺さまも !
マーテルあ、ミトス、待って !ほらクラトス。私たちも行きましょう ?
クラトスマーテル、その野次馬根性でどれだけ事件に巻き込まれてきたか――
ルック……はぁ、鏡映点ってのは口の悪い人たちの集まりなのかねぇ。まぁ、いいや。領収書の整理やっとくか。

Character2話【カジノ2 フィル】
マークここは……確か、ロイドの世界の大陸だったな。テセアラ大陸って名付けられたんだっけか。
ゼロス自分のいた世界が、異世界で大陸になってるってのも妙な感覚だな。で、フィルは何処に行くって置き手紙を残してたんだ ?
マークテセアラ大陸のアルタミラって街に行くって書いてあるな。
ミトスアルタミラって、リゾート都市だったよね。
クラトスああ。もっとも名前が同じなだけでこの世界のアルタミラがリゾート都市であるかはわからぬが……。
マーテルほら、シンク。早くいらっしゃい。迷子になるわよ。
シンク……子供扱いするのはやめてくれない ?
マーク……なぁ、何でお前らノコノコついてきてるんだ ?しかもマーテルも一緒って、大丈夫なのかよ ?
マーテルあら、私もそれなりに戦いの心得はあるのよ。
ミトス姉さまはクラトスと話がしたいんだよ。
ゼロスマーテル様ぁ ! 俺さまとお話ししちゃいましょーよ !ユアンのことなら俺さまでも――
ミトスお前は姉さまの半径10メートル以内に入るな。
ゼロスああ、なるほど。俺さまの色香は10メートル先でも女性を惑わせる程に魅惑的だと――
クラトス丁度いい。そこの街の入り口で何かもめ事が起きているようだ。
ゼロス丁度いいとはなんだ、丁度いいとは !
マーテルあら、ゼロスってユアンみたいなのね。
シンクじゃあ、そのユアンってのも相当な色ボケなんだね。
ゼロスそれ、どういう扱いなの ! ? 喜んでいいのか悲しんでいいのかわからないんだけど ! ?
マーク――ちょっと待て。街の入り口で絡まれてるのはフィルだぞ ! ? 何やってんだ、あいつは ! ?
マークオラァッ ! てめぇら、うちのフィルに何してやがる !
シンク……完全に子供の喧嘩を止めに行く親になってるね。
マーテルまぁ……。面倒見がいいのね、マークは。
ミトスフィリップの方が手が掛かり過ぎなだけじゃない ?
フィリップ……本当にごめん。みんなに迷惑をかけてしまって。
マーク全くだ。一人でフラフラ出ていくな。せめて置き手紙じゃなくて、ちゃんと俺とかクラトスに声をかけてから外出しろって。
フィリップ……だけど――
マークだけどじゃねぇだろ !
フィリップう、うん。ごめん……。あの、でも、マークは忙しそうだったから……。
マークそれは帳簿をつけてたから――あ ! ?そうだフィル、何なんだ、あの高額な領収書は !
フィリップあ、そうか……。まだみんなには話していなかったね。えっと……実は最近、一人でアルタミラの街の内偵調査をしていたんだ。
クラトスアルタミラに何かあるのか ?
フィリップ前に偶然この街に立ち寄ったことがあるんだけどその時、妙な話を聞いたんだ。
フィリップ救世軍残党――ああ、僕らは今でも救世軍だから……そうだな、ファントム救世軍とでも呼ぼうか。
フィリップとにかくそのファントム救世軍がこの街に集まってきていると言うんだ。
マーク……鏡殻変動の時期に、俺たちにも付かず帝国にも行かなかった連中ってことか……。
マークまぁ、確かにそんな奴らもいたな。主にフリーセルのシンパだった連中だ。
フィリップああ。しかもアルタミラ集合の大号令をかけているのが【フリーセル】だって言うんだよ。
ミトス……フリーセルって、フィリップと一緒に最初の救世軍を作った人だっけ。死んだんでしょ ? そう聞いてたけど、違うの ?
マークああ。確かにフリーセルは……もう亡くなってる。
シンクまさか過去からの具現化 ?だとしたら帝国にしかできないことだよね。
フィリップその辺りがよくわからないんだ。確かに帝国の連中がウロウロしているらしいとも聞くし。それで調査を始めたんだけど……。
マークで、それと高額領収書はどう繋がるんだ ?
フィリップアルタミラは娯楽の街らしくて、物価が高いんだよ。それにドレスコードに厳しい店も多くて……。
マークそ、それであんな無駄遣いを……。
謎の男………………。
フィリップあれ…… ? 何だか視線を感じるけど……。
マークしっ。気付いてないふりをしろ。
シンクあのマントの男だろ。街に入ったときからずっとこっちを見てるよね。
ゼロスこっちっつーか、フィルを見てるな。
フィリップええ ! ?
ミトスだから反応しないで。気付いてなかったのはフィリップだけだよ。
マーテルええ。嫌な視線だわ。ハーフエルフ狩りをしていた人たちの視線に似ている。気を付けて。
シンク後をつける ? 始末する ?
クラトス泳がせよう。
ミトスボクが脅しをかける。シンク――
シンク――命令しないでくれる ?まぁ、この中じゃボクが適任なのは認めるけどね。
マーク悪いな、シンク、ミトス。始めてくれ。
ミトス何者だ ! ?
謎の男! ?
クラトス今のうちにフィリップとマーテルはケリュケイオンに戻れ。ゼロス、エスコートは任せたぞ。
ゼロスお、いい役をくれるじゃねーの。マーテル様のナイトなら、喜んで任されてやるぜ。
フィリップでも、ファントム救世軍の件は……。
マークそっちは俺らがやっとく。それでいいだろ。もし長距離移動することになりそうならまた連絡する。
フィリップ……マーク。ごめん。
マーク謝るぐらいなら、単独行動なんてするな。お前の単独行動は危なっかしいんだから。
フィリップ………………。

Character3話【カジノ3 活動資金稼ぎ】
マークお、シンク。お疲れさん。どうだった ?なんて聞くだけ野暮か。当然、何処に逃げ込んだか突き止めたんだろ ?
シンク愚問だね。街の中心部にある高級カジノの通用口に逃げ込んだ。
クラトスミトスはどうした ?
シンクこの話をしたら、近くのテーラーに飛び込んだよ。
クラトス……カジノに入るつもりなのか。
マークおい、ちょっと待て。テーラーって……まさかスーツでも仕立てるつもりか ! ?
シンク仕立てたって間に合うはずないでしょ。吊るしでも買うんじゃない ?
マークそういう問題じゃねぇんだよなぁ。はぁ……。その金はどこから出ると思ってるんだ。
ミトス――大丈夫。カジノで倍にして返すよ。はい、これ、みんなの分。
シンク……ちょっと。
クラトスミトス……。どうしてそう行動力がありすぎるのだ。
マーク四着も買ったのか ! ?
ミトスだって、あのカジノ、ドレスコードがあるんだよ。ボクとシンクはこの外見だからそれぞれ保護者がいるしね。
マーク保護者ならクラトスだけでいいだろ。
ミトステーラーで情報を仕入れたんだ。あのカジノのオーナーの名前フリーセルっていうんだってさ。
マーク! !
クラトス……という事はあのカジノはファントム救世軍の根城か。
マークだとしたら、あの怪しいマントの男がフィルを見てたのも頷けるな。
マーク見た目はファントムそのものだし俺やミトスのことも知ってる可能性がある。
シンクああ、だから保護者が二人いるのか。面が割れてるのとそうでないのと。
クラトスここで一緒にいたのを目撃されているのだ。二手に分かれたところで、無意味かも知れんがまぁ、念には念を入れてという事か。
クラトス仕方がない。カジノに向かうぞ。
マーク悪いな、三人とも。……おっと、シンク。お前、その仮面は取れよ。さすがにカジノでそれは悪目立ちする。
シンク……チッ。
ミトス目元を隠すのは気が弱いからなんだって ?シンくん ?
シンクアンタも同じ顔がゾロゾロいる環境に生まれたらそんな考え吹き飛ぶよ。
ミトス………………。
カジノの店員いらっしゃ……いま……せ ! ?
マークどうした ? 俺の顔に何か付いてるか ?
カジノの店員い、いえ……。どうぞ、中にお入り下さい、お客様。
ミトス……やっぱり顔バレしてるね。
マークまぁ、当然か……。元救世軍で俺たちの顔を知らなきゃモグリだわな。
シンクそろそろいいんじゃない。
クラトスああ。ミトスとマークは先行して中に入った筈だな。
カジノの客また、ロイヤルストレートフラッシュだ ! ?
カジノの客あの子これで3回連続よ ! ? どうなってるの ! ?
マークおい、ミトス……。お前なんだってそんなにポーカー強いんだよ……。
ミトス単なる運だよ。昔から勝負事には強いんだ。カード切ってるのはディーラーだしボクは何もできないよ。
マーク……カード切るのが自分ならイカサマするって聞こえるな。まぁ、いいか。マジでスーツ代、倍にして返してもらえそうだしな。
シンク……悪目立ちしてるんじゃない ? あの二人。
クラトス丁度いい。あの二人を隠れ蓑にして情報を集めよう。私は……バーに向かう。一緒に来るか ?
シンク冗談でしょ。手分けした方がいい。とはいえ、子供が一人でテーブルに付いても相手にされないだろうから、ダーツの方へ行くよ。
クラトスよし、では始めようか。
カジノの店員大変です !マークさんと飛天のミトスがカジノに来ました !
支配人何 ! ? 見間違いじゃないのか ! ?
カジノの店員いえ、間違いないです。今ポーカーテーブルで荒稼ぎしています !
謎の男支配人 !
支配人その声は……グラスティン様、ですか ! ?何故そんなマントを……。
グラスティン顔を見せられないからだ。俺の醜い顔を晒してフィリップの気を害したくない……。
支配人フィリップ……さん ?
グラスティンビクエだ ! フィリップと言えばビクエフィリップ・ビクエ・レストンしかいないだろう !
支配人は、はい ! 失礼しました !
グラスティン支配人。すぐに人を集めろ。これは千載一遇の好機だ。やっとフィリップを標本にできる機会がやってきたんだからな !

Character4話【カジノ4 誘拐1】
フィリップ………………。
マーテルマークたちならきっと大丈夫。
フィリップえ ! ? あ、ああ、ご、ごめん。心配そうな顔をしていたかな ?
マーテルふふ……。そうですね。少しそう見えました。
ゼロスマーテル様 ! 俺さまのことも心配して !
マーテル心配しているわ、もちろん。ミトスが……あなたにひどい仕打ちをしてしまったと聞いているし。
ゼロス――あー……それ、知ってるのか。
マーテルええ。とても許されないことを……あの子はしてしまった。
マーテルでもあの子がそうなってしまった責任は周りにいた私たち大人にもある。ごめんなさい、ゼロス。
マーテルただ、勝手なことを言うけれど、せめてこの世界ではあなたもミトスやその呪縛から解き放たれていいのではないかと思うの。
ゼロスそれは……俺さまがロイド達にしてきたことを都合よく忘れて生きろってことか ?
マーテル忘れるのではなく、真実を話してみたらどうかしら。ロイドとはよく話をするけれどとてもまっすぐないい子よ。
マーテル……そんなことはあなたの方が知っているわよね。でもだからこそ、ロイドならきっとあなたの話を受け止めてくれると思うわ。
フィリップゼロスさんは、ロイド達に何を隠しているんですか ?あ、いえ、立ち入ったことを聞いてすみません。
フィリップ僕も……イクス――最初のイクスにもミリーナにも隠していたことがあって……。
フィリップとうとうイクスに本当のことを告げられないまま永遠に別れることになってしまったから。
ゼロス……ご忠告どうも。ま、もう少し考えてみるわ。
フィリップいや……。忠告なんてできる立場じゃないんだ。僕は色々なことに踏ん切りがつけられなくて……。マークにも申し訳ないと思ってる。
ゼロスなんつーか……。あんた、自己評価低いなぁ。まぁ、俺さまも人のことは言えないがそれにしたってあんたよりはマシだと思うわ。
ゼロスどうしてそんなになっちゃってるのよ。マークはそんな風に思って欲しくない筈だぜ。
フィリップ……僕は……最低の人間なんだ。あの……そんなことはないって言って欲しいとかじゃなくて、事実としてそうなんだ。
マーテル………………。
マーテル……ここはいい風が吹いているわね。鳥の声も聞こえるわ。あの綺麗な鳴き声を聞いていたら他の全ての言葉を忘れてしまいそう。
フィリップ
ゼロス……なぁ、フィル。こちらのお姉様は俺たちの世界じゃ女神様だって言われてたんだ。んで、俺さまは麗しの神子様。
ゼロスあなたの罪は女神が共に背負い、またその罪に赦しを与えるであろう、なんてな。ま、こういうのはコレットちゃんの方が向いてるんだけどよ。
ゼロス神子としての俺さまは意外と口が硬いんだぜ ?
マーテル私はもちろん女神ではないけれどとっても忘れっぽいんですよ。それに……他人の方が気安く話せることもあるんじゃないかと思って。
マーテルあ、無理に言葉にしなくてもいいんですよ。よければ、少しここで休んでいきませんか ?
フィリップ二人より僕の方が年上なのに……情けないな、僕は。でも……そうだね。僕は……幼い頃、罪を犯したんだ。
フィリップ僕はイクスに憧れていて……イクスが本当にうらやましくて……。彼みたいになりたいと……いっそ彼になりたいと思って……。
フィリップ……イクスを……殺そうとしたんだ。
フィリップ未遂だったけれど……僕はあの日のことを一生忘れない。僕は……自分が許せないんだ。
ゼロス……生きるってつらいよな。
フィリップ……そうだね。
マーテルきっと今の告白は、風と鳥が遠くへ届けてくれるわ。誰にも聞こえないように。
フィリップ……二人とも、ありがとう。不思議だね。今までこのことはほとんど誰にも話さなかったのに。
マーテルこのこと ? 何のことかしら ?
ゼロスさて、何だったかね。それより早いとこケリュケイオンに戻ろうぜ。
フィリップ……本当に、ありがとう。
街の男性おーい ! そこの人たち ! ちょっと待ってくれ !
ゼロスん ? 何だ ?
街の男性この先で馬車が脱輪しちまって子供が怪我をしてるんだ。手を貸してくれないか ?
マーテルそれは大変だわ。何処ですか ?
街の男性案内するよ。こっちだ。

Character5話【カジノ7 情報】
ミトス……フォールド。
マークやめるのか ?
ミトスうん、疲れてきたし、負けが込んできたからね。喉が渇いたから、何か飲もうよ。
マーク……途中から、明らかに回ってくるカードが悪くなってたな。
ミトスああ、気付いてた ? 確かにあのテーブルのディーラー途中からカードを操作してた。
マーク本来ギャンブルの胴元ってのは小細工しなくても儲かるんだがな。
ミトスうん。つまり……ここはイカサマカジノってこと。ファントム救世軍の資金源なんじゃないかな。
マーククラトスとシンクもカジノの中にいる筈だよな。話を聞きたいが……。
ミトス――クラトスがバーカウンターにいる。
マークよし、俺たちもバーに行くか。
クラトスおかえり。
シンク……ただいま。……って、何、この会話。まぁ、いいけどさ。
マークさてと、ミトス。色々盛りだくさんだったな。
ミトスそうだね。お土産話がたくさん。
クラトスダーツはどうだった、シンク。
シンク簡単すぎて退屈だったよ。――ああ、でも変なおばさんに声をかけられたかな。この辺りは最近物騒だから、子供一人になるなって。
クラトスそういえば近くの町や村で子供や女性が次々行方不明になっているそうだな。
マークとミトス
シンクねぇ、スロットコーナーの奥にある鏡、見た ?掃除が行き届いて綺麗に磨かれてて「まるで入れそう」だったよ。
マーク――ミトス。後ろのリボンが曲がってるんじゃないか ?
ミトスそう ? じゃあ、鏡を見ながら直そうかな。スロットコーナーの方にあったよね。
マーク……ここは隠し通路、か ?本当に鏡が隠し扉になってるとは。よく気付いたな、シンク。
シンク綺麗に磨いてある割に枠の1箇所だけが人の皮脂で薄汚れてたからね。
ミトスへぇ、やるじゃない。
シンク……フン。
クラトスお前達の話ではここはイカサマが横行しているそうだな。
ミトスうん。まず間違いないよ。
マークそっちの行方不明になった人たちってのはどうなんだ。
クラトス身なりのいい男たちが最近のチップは質が下がってきた、と言っていた。
クラトス巧みに隠してはいたが、恐らく違法な人身売買が行われているのだろう。
シンクそういう表に出せないものは、隠し通路を使うよね。ここからくまなく内部を探せば色々証拠が見つかりそうだけど。
クラトスどうする ?元はといえば、フィリップが始めた調査だ。
クラトスフリーセルの件はまだ見えないがここがファントム救世軍の資金源であることは疑いようがない。
マーク一旦、フィルに連絡してみる。
ミトス……魔鏡通信に出ないね。
マークまた研究に熱中してるのか ?……仕方ない。あとでもう一回連絡するとしてこのまま調査を進めよう。
マーク人間がさらわれて売買されてるなんてのを見過ごすのは、寝覚めが悪ぃからな。
シンクで、具体的に何を探せばいいの ?
クラトスこのカジノには、VIPルームがあるようだ。まずはそこを目指すのがいいだろう。
マーク了解だ。
シンク……人のいい奴らだな。ほっとけばいいのに、馬鹿馬鹿しい。
ミトス待って、シンク。
シンク……何 ?
ミトス……顔。
シンクはぁ ?
ミトス隠さない方がいい。
シンク頭でも打った ?
ミトス人は同じ顔に生まれても育った環境で微妙に違う顔になるんだって。
シンク………………。
ミトス元が何もかも同じだったとしても……同じじゃない。
シンクああ、そうか。ディストから聞いてるんだったな。ボクがレプリカだって。
ミトス当然でしょ。
シンクへぇ、それで同情でもしてくれるのかい、元勇者サマ。
シンクやっと死ねたと思ったのに、また生きることを押しつけられて、異世界までつれてこられたと思ったら今度は元勇者サマのお説教か。
シンクそれともボクがニンゲンじゃないから優しくしたくなったのかい ?
ミトスああ、そうだよ。ボクは人間が嫌いだからね。それとも人間扱いして欲しいの ?
シンク――最悪だね、アンタ。退路を断った。
ミトスそうさ。ボクに構われたくなかったら人間だと認めて生きるしかない。
ミトスレプリカが人間じゃないって言うならボクに優しくされても仕方がない。どっちにしても地獄だね、キミにとっては。
シンク殺してやる。
ミトスでも自分から死のうとはしないんだね。
シンク………………。
マーク――ついてこないと思ったら、またやり合ってたのか。
シンク……別に。
マーク抉られる側の気持ち、少しはわかったか ?
シンク……そんなもの、最初から知ってるよ。
クラトスミトス……。
ミトスクラトス。お説教なら聞きたくないよ。もうクラトスはボクの騎士じゃない。
クラトス……いや。やり方は決して褒められないがお前なりにシンクに歩み寄ろうとしたことは評価している。
ミトス……そういうのは息子に言ってやれば。
クラトス言ってやりたいが、中々会える機会がなくてな。
ミトス会いに行けばいいんだよ。姉さまみたいに。
クラトス……そうだな。

Character6話【カジノ8 VIPルーム】
フィリップ――あの……。重ね重ねすみません……。
ゼロスいやー……。こればっかりはフィリップが悪い訳じゃないけどよ。
ゼロスまぁ、強いて言うなら、もうちょっと運動した方がいいかもしれねぇな。ウチのジーニアス並の運動神経だったぞ。
フィリップ……そうだよね。子供の頃から体が弱くて親から過保護にされていたから――あ、これも言い訳か……。
マーテルいえ、子供が怪我をしているという言葉にまんまと引っかかってしまった私も考えが足りませんでした。
フィリップ逃げようとしたときに、僕が転んでしまって人質になってしまったから、二人までこんな牢屋に閉じ込められることになってしまって……。面目ない。
ゼロス魔鏡通信機も取り上げられちまったしなぁ。さて、どうやって脱出するか。大方、アルタミラの街でフィルを見てたあの変なマント野郎の差し金だろ。
フィリップ馬車での移動時間や、外の物音を聞いた限りではアルタミラの街に戻ったことは間違いないよ。
フィリップ断定するのは早計かも知れないけど、あの街でこんな大がかりな牢屋がある建物なんてカジノぐらいしか思い当たらない。
ゼロスお、調子出てきたな。ま、頭脳労働者は頭脳労働者らしく頭働かせて貢献してくれればいいってことよ。
マーテル狙いがフィリップさんだったとしても敵が帝国軍なのかファントム救世軍なのかは定かではないわね。
ゼロスそうだな。まぁ、ここに長く閉じ込めておくつもりはないだろ。どこかに移される筈だ。その時が狙い目だな。それまでは体力温存しとこうや。
マーク……何だよ、まだ怒ってるのかシンク。
シンク怒ってる ?
マーク苦虫をかみつぶしたようなすげぇ顔してるぞ。仮面がないからモロわかりだ。
シンク元々こういう顔なんだよ。ほっといてくれない ?
マークはいはい。……まぁ、こういうのはお前が一番嫌いな物言いだと思うけど、俺は何となくシンクの気持ちがわかるぜ。
シンク本当だね。勝手に人の心を読まないでくれる ?アンタまでそんなこと言いだすなんて、呆れるよ。
マークまぁ、そう言うなって。この際だから聞いてくれよ。鏡精の戯言だ。
マーク望んで生まれた訳じゃねぇからこそ運命に爪痕残してぇんだよ。存在を生み出した事象そのものに復讐するっつーか。
シンクアンタはあの自己中な片眼鏡中年の忠実な犬だろ。
マーク誰がフィルに爪痕残したいなんて言ったよ。そうじゃねぇよ、俺が不満ぶちまけてやりたいのは俺をこういう仕組みに作り上げた【何か】だ。
マーク正体も存在もわからないそんなものはないかも知れないでも俺っていうものを生み出すに至った
マーク――強いて言うなら【世界】って奴かね。
シンク……それでもアンタには価値がある。望んで創り出され、生まれたことに価値がある。必要とされてる鏡精だ。ボクとは違う。
マーク元の世界のことは知らねぇが俺らには――俺にはシンクが必要だぜ。
シンク虫酸が走るね。仲良しごっこはごめんだよ。
ミトス……荒れてる。
クラトスだろうな。
ミトスちょっと反省してるよ。あんな追い詰め方をして。子供時代がない子供ってのもつらいんだろうね。ルークもそうだけど、ちょっと放っておけない感じ。
クラトスお前もかつては――四千年前のあの頃は大人になることを強いられた子供だったな。
ミトス……そうだったかな。でもボクには姉さまもクラトスもユアンもいた。子供でいられる時間があったよ。まぁ、シンクには大きなお世話なんだろうけど。
ミトス……って、変だよね、こんなの。ボクは星の数ほどの命を葬り去ってきた。
ミトス今更シンクが生まれたことを呪って、価値や意味に囚われていようと、ボクにしてみればその辺の肉塊がくだらないことを喋ってるってだけなのに。
クラトスミトス。ことさらに露悪的な言い方をするのはやめなさい。確かに我らのしてきたことは非道だ。
クラトスそれがわかっていて――それでもこの世界で生きるのなら、もっと違う過去の認め方と償い方があるのではないか。
クラトスそのことを知っている――いや、気付いたからこそマーテルに全てを話したのだろう ?
クラトス今まで曖昧にしてごまかしていたであろう元の世界でのことを全て。マーテルとの関係が壊れることも覚悟の上で。
ミトス……何で知ってるの ?
クラトス私にユアンの話を聞きたいと言っていた。マーテルが私と話をしたがるときはいつもミトスのことを案じていたときだ。
クラトスもちろんユアンのことも聞きたいのだろうが口実でもあったのだろう。
ミトス……クラトスは本当に変わったね。ううん。昔のクラトスに戻ったのかな。ロイドの影響で。
クラトスどうかな。少なくとも間違いは正せると……起こしてしまったことは変えられずとも、考え方を生き方を変えることはできるのだと教わった。
ミトス……ロイドなら、シンクをどうするんだろう。
クラトスお前はロイドではない。ミトスとしてできることをすればいい。
ミトス………………。

Character7話【カジノ9 ミトスとマーテル】
クラトス……誰か来るな。
マークそこの部屋、物置みたいで誰もいない。
カジノの店員Aさっきの綺麗な人が今度のVIPルームの景品なのか。あの人がもらえるなら、俺も勝負してぇな。
カジノの店員B馬鹿言うな。ベットが100万ガルドからだぞ。
カジノの店員Aけど、フリーセルさんも変わっちまったよな。こんな阿漕な真似してまで金を稼ごうなんて。
カジノの店員Aこれだったら今更フリーセルさんのところに来ない方がよかったって思うよ。全然顔も見せてくれねぇし。
カジノの店員Bよせよせ。誰に聞かれてるかわからないぞ。セールンドは崩壊しちまったし帝国にはディストがいるから行きたくないし。
カジノの店員Bマークさんたちには今更顔向けできないし……。俺たち、もう行き場がねぇんだからさ。
カジノの店員A……そうだな。
ミトス相変わらず慕われてるね、マーク。
マーク何だかなぁ。気にせずに合流してくればいいのによ。
シンクそのノリで、今財政難なんでしょ。
マークだが、元とはいえ、困ってる仲間を助けられないような甲斐性無しじゃねぇぞ。
シンクその性格の何処にフィリップの要素が入ってるんだろうね。
クラトス……今の店員達が出てきた扉が、VIPルームへの通用口か。フリーセルの名前も出たし中ではいかがわしい賭けが行われているようだな。
二人さっさと中に入って潰そう。
マークそういう物騒なところだけ意見の一致をみせないでくれって。
マークそれより、本当に人間が賭けの対象にされてるならこのカジノの中にまだ囚われてる人間がいるはずだ。そっちを助け出した方がいい。
ミトス……だったらこういうのはどう ? 面の割れてる二人でVIPルームに入って勝負するんだ。その間にクラトスとシンクが、囚われてる人を助ける。
クラトス救世軍のマークとミトスが乗り込んできたとなればフリーセルも動く可能性があるな。
シンクいいんじゃない。派手なことは派手好きの二人に任せるさ。
マーク別に派手好きってこともないが……。まぁ、それで行ってみるか。
マーク――邪魔するぜ !
カジノの店員Cマークさん ! ? それに四幻将の……。
カジノの客Aな、何だ、あいつらは……。
カジノの客B下のフロアで馬鹿勝ちしてた子供だ。ここに入れるような客だったのか……。
ミトス下のフロアが退屈だったから遊びに来させてもらったよ。
? ? ?ミトス ! ?
ミトス姉さま ! ?
ミトス! !
ミトス――そういうことかっ !
ミトスジャッジ……ごほぉっ ! ?
マークストップストップ ! 話が違うだろ。落ち着け !
ミトスうるさい ! 放せっ !
カジノの支配人当カジノの支配人です。困りますね、マーク様。勝手にVIPルームに入り込んで騒ぎ立てるなんて。
マークああ、悪い悪い。連れが熱くなりやすいタイプでね。
カジノの支配人元四幻将、飛天のミトス様ですね。
ミトスお前達、殺してやる !
マークわかったわかった。落ち着いてくれよ、ミトス。
マークで、支配人よ。そこの綺麗なお姉さんも俺たちの連れなんだがどうしてこんなことになってるんだ ?
カジノの支配人どうもこうも。あの方のお連れ様が、高価な調度品を次々壊してしまいまして。弁償のために身売りして頂くことになっただけですよ。
ミトス連れ…… ? まさかゼロスとフィリップ ! ?
マーク……クソが。
カジノの支配人暴れても結構ですがこちらの手には人質がいることをお忘れなく。
マークわかった。だったらこうしよう。俺たちをマーテル獲得の勝負に混ぜてくれ。
カジノの支配人面白いですね。しかし掛け金はあるのですか ?
マーク――金の代わりに新生救世軍全てを。ここまで落ちぶれたフリーセルなら喜んで受け取るんじゃないか ?
ミトス! ?
マーク俺が勝ったら配当金と交換でマーテルとゼロスとフィルを返してもらう。もちろんイカサマはナシだ。お互いにな。
カジノの支配人いいでしょう。ただし、ミトス様がプレイヤーになるのは認められませんよ。下での辣腕ぶりを見せて頂きましたから。
マークすると俺がプレイヤーか。後悔することになるぜ ?
ディーラーそれでは参加者六名でのマーテル・ユグドラシル嬢争奪テキサス・ホールデムポーカーを行います。
マークお手柔らかに頼むぜ。イカサマ無しでな。
ディーラー……も、もちろんです。ま、まずはプリフロップ。
マーク(俺の手札二枚が来た。――まずはハートの10、か。テーブルの位置が悪いからな。スーテッドかギャッパーで始められればいいんだが。もう一枚はどうかな……)
マーク(……くそ。ついてねぇな。まさか【コイツ】が来ちまうとは)
マークチェック。
ミトス(チェックか。表情からは弱気なのか強気なのかはわからない)
ミトス(マークを知らない参加者は弱腰とみるだろうけどここのカジノの店員はほとんどが元救世軍。マークなら敢えてのブラフだと読む)
ミトス(その空気感を悟る客はチェックかコールわからない間抜けは手札次第でまんまとレイズする筈)
ディーラーフロップ――ハートのA、ダイヤのQ、クラブの6。
マーク………………。
マークコール。
ミトス(表情は変わらない。さすがだね、マーク。ポジションはアンダー・ザ・ガンで不利だけど自分のパーソナリティを上手く利用してる)
ミトス(これなら相手は役が出来たのかブラフなのか読み切れない)
ディーラーターン――ハートのK。
カジノの客……おい、こいつはもしかしたらストレートが出るかも知れないぞ。
ディーラーしっ。お客様。プレイヤーの邪魔になりますのでお静かに。
プレイヤー1コール。
プレイヤー2フォールド。
マークレイズ。
プレイヤー3……フォールド。
プレイヤー4コ、コールで。
プレイヤー5レイズ。
ミトス(二人脱落か。手札次第で既にストレートやフラッシュが作れる状況だ。ワンペア程度じゃ勝負にならない)
ミトス―― !
? ? ?こっちだ。
ミトスどうしてここに……。
ゼロスマーテルがおとりになってくれて俺さまを逃がしてくれたんだ。助けを呼ぶためにな。
ゼロスで、俺さまはお金持ちのマダムに頼んで同伴でVIPルームにいれてもらったって訳。
ミトス状況はわかってるの ?
ゼロス少なくともお前らの状況はな。さっきクラトスと連絡を取った。あっちは首尾よくやってる。
ゼロス支配人は俺さまに気付いたみたいだが上客と一緒なんで手が出せないみたいだな。
ゼロス俺さまが支配人の気を引いてる間にクラトスとシンクが諸々片付けてくれるといいんだが。
ミトス……ポーカー勝負、少し引き延ばした方がいいね。

Character8話【カジノ9 ミトスとマーテル】
フィリップ(結局僕だけになってしまった。それはいいんだけどゼロスさんやマーテルさんは大丈夫かな……)
フィリップ――誰だ ! ?
謎の男……やっと会えた。
フィリップ……その声は――まさか、グラスティンか ?
グラスティンヒヒヒヒ、声だけで俺だとわかるのか。さすがだなフィリップ。
グラスティンお前はいつだって四人の中の誰よりも優れていて美しく、俺と同じように歪んでいた。人生で初めて見つけた同志がお前だった。
グラスティンあんな女にたぶらかされていなければお前はもっともっと輝いたはずだ。
フィリップゲフィオンをあんな女呼ばわりするのはやめてくれ。
フィリップそれよりどうしてそんな格好をしているんだ。それにどうしてここにいる ?きみはアニマ汚染で入院していたはずだろう。
グラスティンそうだ。おかげで髪の色は抜け落ち、目は落ちくぼみ痩せこけて、これ以上なく醜い姿になってしまった。お前にこんな姿を見せたくない。
グラスティン完璧なフィリップの目には完璧なものだけを映して欲しい。
フィリップ………………。
グラスティンヒィィィァアア、汚物を見るようなその瞳たまらないなぁ…… !
グラスティンけれどその美しい瞳に、この俺を映すのはあまりにも忍びない。でも、ここで再会できたことには本当に感謝しているんだ。
グラスティン俺はお前が欲しい。その全てを美しく飾り立て標本として大切にするよ。ヒヒヒ。
グラスティン愛しいものを手にかけようとした同志なんだからこの気持ちがわかるだろう ?
フィリップすまないが、きみが勝手に同志だと言ってるだけで僕にはきみがまったく理解できないよ。標本になるのもごめんだ。
グラスティンフィリップ。我が儘は言わないでくれ。お前のその素晴らしい才能が、頭脳が、髪が、瞳が……全てそのまま残されるんだ。永遠に。最高だろう。
フィリップそんなことより、 きみはどうしてここにいるんだ。
グラスティンここは俺が作らせたカジノだからだ。活動資金を集めるのには丁度よかったしお前を呼び寄せることもできた。素晴らしいだろう ?
フィリップ僕を呼び寄せる…… ? まさか、このカジノが元救世軍を集めるための拠点だったのか !だとしたら、フリーセルも――
グラスティンフリーセルは死んだよ。それはお前が一番よく知ってるじゃないか。
グラスティン救世軍を作るためにフリーセルを巻き込み具現化したもう一人のお前が殺したんだから。
グラスティンヒヒ……ヒヒヒ、フリーセルがうらやましいよ。フィリップと同じ姿の人間に殺してもらえるなんて。ゾクゾクするよぉ !
フィリップ救世軍の残党を集めるためにフリーセルの名前を利用したのか ! ?
グラスティンそうだ。あいつもやっと人の役に立つことをしてくれた。
グラスティン昔からクソ生意気なエセ活動家で大嫌いだったが死んでから俺の役に立ってくれるなんてなぁ !
グラスティンヒヒヒヒヒ ! フィリップ。一緒にいた女はもうすぐ売り飛ばされるしもう一人の男は逃げ出しちまったよぉ !
グラスティン二人の時間をゆっくり楽しもう。まずは筋弛緩剤の注入からだ……。ふぅぅぅ……興奮が収まらないよ。ヒヒヒヒヒヒ。
フィリップ僕を呼び寄せるための蜘蛛の糸に僕はまんまと引っかかったのか……。
シンクシークレット・ドクトリン !
グラスティンな……牢屋の扉が壊された ! ?――くそっ !
クラトス待て !
グラスティン来るなっ ! ここには他にも人質がたくさんいる !俺の命令で奴らの命は――
クラトスここに囚われていた子供や女性なら、全て助け出した。
グラスティン! ?
シンク残念だったね。
クラトスお前も逃がす訳には行かない。
グラスティン……捕まってたまるか !
クラトス今のは転送魔法陣……。帝国の関係者なのか。
フィリップ……ああ。彼の名はグラスティン・ライサンダー。デミトリアスや僕の学友だ。
フィリップデミトリアスはグラスティンを気に入っていたみたいだから……きっと……。
クラトスなるほど……。この件はイクス達に共有する必要が出てきたな。
クラトスそれとこのカジノの帳簿や書類を見つけた。これで既に下衆な賭けで人間を物のように扱った連中も一網打尽に出来る。
クラトスさらわれた者も家に帰してやれるだろう。
フィリップありがとうございます。僕が調べ始めたことなのに結局何もかも任せることになってしまって……。情けないな……。
クラトスいや、フィリップが調べ始めなければこの件は明るみに出なかった可能性が高い。卑下することもあるまい。
フィリップ………………はい。
シンク――ゼロスに知らせるよ。こっちは片付いたって。

Character9話【カジノ10 新生救世軍】
ミトスねぇ。このカジノ、イカサマしてるって噂があるんだけど、そこのディーラー本当に公平にカードを配ってるの ?
ディーラー……お客様。私どもには後ろ暗いところなど何一つございませんよ。
ゼロス人間を賭けの景品にするような後ろ暗さはあるのにな。
カジノの支配人ミトス様、勝負の妨害はやめて頂きたい。気に入らないなら、降りて頂いて構わないんですよ。
ミトスへぇ、マークが勝ちそうだから降りて欲しいってこと ?
カジノの支配人観客がプレイヤーの判断を鈍らせるようなことを言うのは問題ですね。出ていってもらいましょうか。
ゼロス
ゼロス――支配人。悪かった。この坊やは俺さまが責任もって黙らせるから勝負を続けてくれ。
ミトス……いいの ? ゼロス。
ゼロスああ。成り行きを見守ろうや。
ディーラー……で、では、再開します。
ミトス(最後のカード。このカードで、勝負が決まる)
ディーラーリバー――ハートのQ !
カジノの客たちおお…… ! ?
ミトス(やっぱりカードを操作しているんじゃないか ?強いカードばかり場に出てくる)
ミトス(けど、客とカジノは繋がってない筈だ。特定の客に【商品】を売るつもりならこんな面倒な商売の仕方はしない)
ミトス(だったら、カードの手が何であれ心理の読み合いで――)
プレイヤー1フォールド。
ゼロス一人脱落したな。あとマークを除いて二人か。
ミトスマークはどう出るか。
マーク………………。
マークオールイン !
カジノの客Aオールイン ! ? 正気か ! ?
カジノの店員マークさん……あれは本気の目だ。
カジノの客Bあっちは勝負を降りた段階で負けなんだ。絶対アレはブラフさ。
カジノの客Cけど、場に出てるカードを見る限りじゃ相当強い役をもってる可能性だって――
カジノの支配人お静かに !
プレイヤー4……………………。
プレイヤー4……………………。
プレイヤー4……くそ。フォールドだ。この橋を渡るのは危なすぎる。
ミトスこれで、テーブルに残ってるのはマークともう一人のプレイヤーだけだね。あのおじいさん、中々強気だったけど……。
プレイヤー5……小僧。マークと言ったか。中々いい目をしている。それにいいブラフだった。
プレイヤー5わしが相手でなければ、痺れる勝ち方だったろうな。ハイカード――役なしで一人テーブルに残るというのは。
マーク! ?
プレイヤー5あのお嬢さんはわしの後添えとして頂いていくよ。オールイン。
ゼロス……おいおい、マークの奴あの強気はマジでブラフだったのか ! ?
プレイヤー5こちらはクイーンのフォーカードだ。
マーク
プレイヤー5……残念だよ、マーク。最初の手札が配られたとき、きみは無意識のうちに自嘲した。それで手札がわかってしまったよ。きみにとって最悪なカードが来たんだとね。
マークそうか……。隠してたつもりだが思わず顔に出ちまってたか。そうさ。あれは俺がこの世で一番嫌いなカードだったからな。
マーク――だが、勝負とは何の関係もねぇよ。ロイヤルストレートフラッシュだ。
プレイヤー5! ?
ミトスマーク !
ゼロスクールー ! 俺さま惚れちゃいそー !
マーク悪いな、爺さん。俺はハートのジャックがこの世で一番嫌いなカードなんだ。で、つい顔に出ちまったって訳。
マークさ、マーテルとフィルは返してもらうぜ、支配人。
マーテルマーク…… !
カジノの支配人く……。そんな馬鹿な……。ディーラー !何故こうなった !マークは必ずハイカードにしろと伝えただろう !
カジノの客たち! !
マーク馬脚を現したな。次からディーラーにはもっと肝の据わった奴を用意しろよ。俺の睨みで手元が狂うような奴じゃなくてな。
カジノの支配人警備員 ! こいつらを捕まえろ !グラスティン様のご命令だ !
マークグラスティン…… ! ?グラスティンってあのグラスティン・ライサンダーか ! ?
カジノの支配人……お、おい、警備員 ! ?どうして出てこない ! ?
シンク警備員なら熟睡中だよ。
クラトスこちらは増援を呼んだ。このカジノは完全に包囲されている。大人しく我らに従うんだな。
シンクここにいるお偉いさんたちも、覚悟しておくんだね。あんたたちがこのVIPルームで何をしてきたかはすぐに広まる。逃げ出しても無駄だよ。
カジノの客たち! ! !
カジノの支配人ビクエ…… ! ?
フィリップやぁ、きみがこのカジノの責任者か。……よくも、フリーセルの名を汚してくれたな。
フィリップきみが死んだフリーセルの名前を利用して救世軍の残党を集めていた証拠は入手した。
フィリップこの事実が知れ渡ればフリーセルの信奉者も黙っていないだろうね。
クラトス頼みのグラスティンも逃げ出した。大人しく捕まった方が身のためだ。
カジノの支配人くっ、冗談じゃない ! ディーラー ! 例の奴を出せ !
マーク――おっと。この期に及んで魔物なんか出してきてまだ抵抗するつもりかよ。
ミトス……丁度いい。姉さまを傷つけたんだ。それ相応の罰は受けてもらうよ !

Character10話【カジノ10 新生救世軍】
ゼロス例の支配人は街の自警団に引き渡してきたぜ。
マークありがとな、ゼロス。それにしても、とんだ騒ぎになっちまったな。
シンクまだ全て終わった訳じゃないんだけど。手分けして、景品にされた奴らを助けるんでしょ。はー、メンドクサ。
マーテルみんなでやればすぐに終わるわ。一緒に頑張りましょうね、ミトス、シンク。
シンク……ちょっと。いちいちボクに構わないで欲しいんだけど。
マーテルあら、シンクは丁度反抗期なのね。ふふ、可愛らしいわ。
シンクほんとに最悪の姉弟だよ、アンタたちは。
ミトス……そういえば、まさかゼロスが姉さまたちを守り切れないとは思わなかったよ。
ゼロスそこ突っ込む ! ? 俺さま結構頑張ってたのよ ! ?お前らの見てなかったところで !
フィリップ……そうだよ。それにゼロスさんは何も悪くないんだ。
フィリップそもそも僕が足を引っ張ってしまったんだよ。石に躓いたり、ぬかるみで滑ったり……。足がもつれたり……。それで囲まれてしまって……。
ゼロスかなり焦って、魔鏡術の詠唱も噛んでたけどな。
マークはぁ……。フィル。やっぱり少し運動した方がいいぞ。メニュー考えてやるから。
フィリップそうだね。最近手に入れた本があんまり面白くてつい寝る間も惜しんで読んでしまったんだ。そのせいなのかな。頭も体も上手く働かなくて……。
マーク……………… ?
ゼロスそういや、グラスティンってのはデミトリアスとも知り合いなんだろ。
ゼロスってことは、このカジノ騒ぎも帝国に関係があるのかも知れないのか ?
フィリップどうだろう。グラスティンはその……研究に没頭しすぎるところがあるから、その資金を個人的に集めていただけのような気がするんだ。
フィリップデミトリアスは資金集めにこんなやり方はしないと思う。
ルックビクエ様 ! 大変です !
ルックカジノに集まってた元救世軍の連中が行き場がなくなったってケリュケイオンに押しかけてきてます !
フィリップどうしてそれが大変なんだい ?みんな今更フリーセルの名前で集められてこんなことになってしまって困ってるんだろう。
フィリップ僕たちの考えに賛同してくれるならうちで引き受けてあげればいいじゃないか。
マーク簡単に言うなって。金はどうするんだよ。人間は霞を食って生きてる訳じゃねぇんだぞ。
シンク宗教でもやれば ? 軌道に乗れば儲かるよ。
ミトス確かに。
マーテル……ミトス。それにシンクも。いけないわ、そんなことを言っては。
クラトス人の心のよりどころである信仰をそのように扱うな。特にミトスや私は、信仰の力を利用してきた立場だ。
ミトス……そうだね。ごめんなさい。
シンク……へぇ、珍しく素直じゃない。
ミトス………………。
シンク何 ? 黙り込んで、薄気味悪い。
ゼロス……なぁ、この街のカジノはどうなるんだ ?
フィリップそれは……閉めるしかないんじゃないかな。悪評も広まるだろうし。
ゼロス経営者が変わりましたってことで新生救世軍で経営するって訳にはいかねーの ?
五人! !
マークそうか……。そうすりゃ、ケリュケイオンに乗り切れない連中はここで働けばいいんだ。
ミトスギャンブルが一番儲かるのは胴元だしね。
クラトス地上に拠点があれば、補給が助かるな。
フィリップそれなら今後も頻繁にこの街へ来ることができるね。よかった。取り寄せてる本が届くのにまだしばらく掛かりそうだったから――
マーク――やっぱりか、フィル ! !
フィリップ…… !
マークあの不審な領収書、ファントム救世軍の調査だなんて言ってたけど、どうもおかしいと思ってたんだ。
マーク本当は古書を集めてたんだろ !前に予算を出して欲しいって頼まれて却下したからな !
フィリップち、ち、ちが……う……と……思う……。
マークはぁ ! ?
フィリップそ、そうだよ ! !
フィリップ……ごめん。本当は古書を探してたんだ。ミリーナとイクスが読みたがってた本がこの街の書店ならあるらしいって聞いて……。
フィリップただ、そこで救世軍の残党の話を聞いたのも本当なんだよ !
マーク何が「偶然立ち寄って」だ。おかしいと思ってたんだ。大体ミリーナとイクスだと ?そんなものは奴らの予算で買わせろ !
フィリップ……そ、そうだよね。ごめん……マーク。
マーク………………はぁ。そんな顔すんなよ。
マークわかった。今回は特別に許してやる。
マークこれからはちゃんと俺に相談しろよ。グラスティンがウロウロしてるとなると俺も色々心配だ。ヤバい奴だったからな。あいつ。
ルックじゃあ、新生救世軍の志願者は一旦カジノに集まってもらいます。
マーク頼む。俺もすぐ行く。クラトス、今回の件、ヴィクトル達とイクス達に情報共有しておいてくれるか。
クラトスもちろんだ。
マーテル忙しくなりそうね。クラトス、お話はまた今度にさせてもらうわ。
マーテルミトス、私たちは賭けの景品にされてしまった人たちのリストを当たっていきましょう。
ミトスうん。でもちょっと待って。
ミトスシンク。せいぜい感謝してよね。ボク、シンクの友達になってあげるから。
シンクは ! ? 誰がアンタと ! ?大体、トモダチだなんて反吐が出る。勘弁してよね。
ミトスボクに逆らうんじゃないよ、三下。ボクが友達になってあげるって決めたんだ。お前の意見なんてどうでもいいんだよ。
シンク気が合うね。ボクもお前の命令なんて聞く気はないよ墜ちた勇者サマ。
ミトスなんとでも言えば。――行こう、姉さま。
マーテルシンク、ごめんなさいね。ミトスがひどいことを言って。でもよかったらミトスとお友達になってあげて。
ミトス姉さま !
マーテル――それじゃあ、また後で。
シンク……何なの、アレ。
ゼロスさぁ……。まぁ、よかったんじゃね。シンくんにもいいお友達ができて。
シンク殺すよ、バカ神子。
クラトス――フフ。そう来たか、ミトス。
マークあれはあんたの入れ知恵かい、クラトス ?
クラトスいや、ミトスがミトスなりに考えた結果だ。上手いとは言えないが、な。
マークそうか……。まぁ、いいんじゃねぇか。あの二人が上手くいくかは知らないが……一人ってのは意外と寂しいもんだからな。
フィリップ……マーク。カーリャのこと、まだ……。
マークはは。……柄にもなく俺のパイセンのことを思い出しちまった。パイセン、生きてるのかね……。
フィリップ……捜しに行きたいんだろ ?だったらやっぱり僕から離れて自由に――
マークいや、何度も言ってるだろ。自由に動けるようになりたいかって話ならお断りだって。俺はパイセンみたいになりたい訳じゃない。
フィリップでも……そうなっても、マークには……僕がいる。僕はマークのことを忘れたりしないよ。
マーク
マーク……ハハ、いつもとは逆だな。悪いな、フィル。ありがとよ。
フィリップいや、僕こそ、いつもごめん。それから今回もありがとうマーク。これからも頼りにしてるよ。
マーク……まぁ、そう言われちまったら張り切らない訳には行かねぇよな。
マークまぁ、マーク様に任せておけって。フィルの願いはどんなことだって必ず叶えてやるよ。