| Character | 1話【宝探し1 海のおでん屋さん】 |
| コーキス | ――いい波が来てるぞ。絶好のサーフィン日和だ !マスター、ミリーナ様、早く早く ! |
| カーリャ | コーキス、はしゃぎすぎですよ。 |
| コーキス | だって、みんなそろって海だぜ ?しかも事件や調査でもないなんてテンション上がるに決まってんだろ ! |
| ミリーナ | そういえば、遊びのためだけに海に来るのってコーキスにとっては初めてかもね。 |
| イクス | そういえばそうか……。……よし。コーキス、一緒にサーフィンするか ! |
| コーキス | やった ! じゃあ、どっちが長く波に乗れるか勝負しようぜ。そんで俺が勝ったらパイセンと俺に、何でもおごるってのは ? |
| イクス | そんなことしなくても買ってやるけど……まあいいか。その勝負受けて立つ。俺だって、元は海の男だからな。 |
| ミリーナ | 素敵よイクス ! さすが元漁師 ! |
| カーリャ | コーキス、カーリャは信じてますからね !……アイスに、スイカに、かき氷にそれとしょっぱい系は……。 |
| レイヴン | 待て待てーい ! その賭け、俺様ものった ! |
| カーリャ | レイヴンさま ? |
| レイヴン | さあ行け、少年。勝利と栄誉と、何より賞品をもぎ取って来い ! |
| カロル | レイヴン……おなか減ってるんだね。 |
| ユーリ | よお、おたくらもこれから繰り出すところか。 |
| ミリーナ | ええ。せっかくのお休みですからユーリさんたちも目いっぱい楽しんでくださいね。 |
| ジュディス | もちろん、そうさせてもらうわ。手始めに、そのサーフィン勝負にでも参加させてもらおうかしら。 |
| コーキス | ……ジュディス様が出たら俺とマスターなんてボロ負けだぜ ? |
| イクス | 確かに……あれだけ飛び回るバウルを見事に乗りこなしてるしなぁ。 |
| ジュディス | あら、波とバウルじゃ勝手が違うわよ。でも、二人の勝負に水を差すのも無粋よね。 |
| ジュディス | この辺りには珊瑚礁があるみたいだし私はダイビングでもしようかしら。 |
| レイヴン | 俺様としては、目の保養的なイベントを期待してるんだけどね~、ムフフ♪ |
| リタ | エステル、あっち行くわよ。 |
| エステル | あっちって、どっちです ? |
| リタ | どこだっていいわよ。アホがうつる前に避難するの。それと、あんたの後ろにいるのに言ってやれば ? |
| フレン | 僕がなんだい ? |
| リタ | その鎧よ。普通、海にまで着てくる ? |
| フレン | そうだね。でも、いつ敵や魔物が現れるかわからないだろう ? 僕くらいはいつでも戦えるようにしておかないと。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| クィッキー | クィクィ、クィッキー ! |
| エステル | ふふふ、ラピードとクィッキーはフレンの味方ですね !って……え ? クィッキー ? |
| メルディ | クィッキー、ここにいたか。クィッキーとラピード、仲よしだなー♪ |
| ファラ | エステル、ミリーナたちも !もしかしてみんな【海のおでん屋】さんに行くの ? |
| ミリーナ | なに ? 海のおでん屋さんって。 |
| リッド | 巷で話題の店なんだってよ。ファラがどうしてもっていうから連れてくところだ。 |
| キール | 嘘つけ。ファラをダシにして自分が食べたいだけだろう。まったく、食べることだけには意欲的な奴だ。 |
| リッド | お前こそ、最初は興味ないって言ってたくせに。どうせメルディが行くって言い出したからついてきたんだろ ? |
| キール | そっ、それは違うぞ !メルディがどうしてもっていうから……。 |
| メルディ | キール、リッドとおなじこと言ってる。でも嬉しいよー。メルディがために来てくれたんだな ! |
| キール | だからぼくは、その……。 |
| ファラ | まあまあ、なんだっていいじゃない。ねえ、みんなも一緒に、おでん食べに行かない ?すぐそこのお店だから。 |
| 二人 | 行くーー ! ! |
| カーリャ | ちょうどしょっぱい系のものを探してたんです。海で食べるおでんもオツですよね ! |
| レイヴン | うんうん。味の染みたおでんにかぶりついてキンキンに冷えたのをグビッと……これぞ大人の海 ! |
| ユーリ | んじゃまあ、先に腹ごしらえといくか。けどオレたち、おでんにゃちょっとうるさいぜ ? |
| カロル | 最高のおでんを知ってるもんね。……なんだか懐かしくなっちゃったな。 |
| ジュディス | そんなこと言うとまたひょっこり出てくるかもしれないわよ ? |
| ユーリ | んなわけ―― |
| ? ? ? | おでん~、おでん~、しみしみの~おでんじゃよ~。海のおでん屋~もうすぐ開店~。 |
| | …………………。 |
| ? ? ? | なんと ! ユーリなのじゃーーーーーー ! ! |
| ユーリ | おいおい、マジかよ ! ? |
| 全員 | パティ ! ? |
| パティ | ユーリ、こんなところにおったのか !ずっとずっと会いたかったのじゃ ! |
| ユーリ | ったく、ホント神出鬼没だな、お前は。 |
| パティ | むぅ、そこはギュッと抱きしめて「オレも会いたかった ! 」じゃろ ?ま、そんなつれないところも魅力じゃがな。 |
| ユーリ | そりゃどうも。んで、海のおでん屋ってのはお前の店か ? |
| パティ | なのじゃ ! |
| ラピード | ワオン ! |
| パティ | ラピード ! エステル、リタ姐、ジュディ姐にフレン !おまけにカロルとおっさんもおったか。みんな勢ぞろいなんて、久しぶりなのじゃ ! |
| カロル | なんでボクとレイヴンはおまけなのさ……。 |
| パティ | すまんの。うちのワンピに免じて許してくれ。 |
| カロル | ワンピに免じるって、意味が分かんないよ……。だいたい、おでん屋なのになんでそんな恰好してるの ? |
| パティ | カロルはお子様じゃな。これは経営戦略、つまりサービスなのじゃ♪――で、どうじゃ、おっさん ? |
| レイヴン | ある意味90点+ティル・ナ・ノーグ加点10がついて合計100点。許す !リタっちだったら許されなかった。 |
| リタ | ぶっ飛べ ! ファイア…… |
| エステル | お、落ち着いてください、リタ !わたしたちも加点をもらえるように頑張りましょう。 |
| リタ | 頑張らないで ! あんたは自分を大切にして ! |
| イクス | なんかもう収拾が……。あの、ユーリさん。もしかしてこの子は……。 |
| ユーリ | ああ。オレたちの仲間のパティだ。 |
| パティ | ユーリの友人かの ? ユーリの嫁のパティなのじゃ。うちの旦那がお世話になっておりますのじゃ ! |
| イクス | よ、嫁 ! ? だってまだ子供……ユーリさん……。 |
| ミリーナ | 確かにパティはすっごく可愛いけど……その……。 |
| フレン | ……ぷっ。 |
| ユーリ | フレン……笑ってんじゃねえよ。パティ、とりあえずお前の店に連れてってくれ。まず事情を説明しねぇと。お前にも、こいつらにもな。 |
| パティ | もちろん大歓迎なのじゃ。秘伝のおでんでみんなを精一杯おもてなしするのじゃ ! |
| Character | 2話【宝探し2 大海賊の曾孫】 |
| パティ | ――やはり別の世界じゃったか。どうりで海の様子も景色も違っていたはずじゃ。 |
| パティ | 戦っていても、どうにも今までと勝手がちがっての。これでようやく腑に落ちたのじゃ。ほい、リタ姐、大根。 |
| リタ | ん。で、あんたは今までどうしてたの ? |
| ミリーナ | ずっと一人だったなんて……心細かったわよね。 |
| パティ | うんにゃ、こういう状況は慣れておる。今までは現地調査を兼ねてお宝の情報やら集めて回っておったのじゃ。 |
| パティ | そういうわけで、何をしていたかというのなら冒険家兼海賊というやつじゃな ! |
| ファラ | その話、改めて聞いてもびっくりだよ。パティが海賊で、しかもアイフリードだなんて。すごいよねぇ。 |
| パティ | すごいとか言われると照れるのー。ファラ姐には、おすすめの白はんぺんをあげるのじゃ。 |
| リッド | オレもオレも。このおでん、すっげえ美味いぜ ! |
| パティ | リッドの食べっぷりはジンベエザメのようじゃ。気持ちがいいのじゃ ! |
| パティ | キールもリッドを見習って、もっと食べるのじゃ。そんなにひょろっこくては立派な海の漢にはなれぬぞ。ほれほれほれほれ。 |
| キール | ぼくは海の漢になんか……ああっ、どんどん盛るな ! |
| リッド | しかし、そのちっこいナリで海賊か。どっかの誰かさんを思い出すぜ。あいつも具現化されてたりして。 |
| ファラ | だとしたら会いたいけど本当は具現化されてない方がいいわけだし…………複雑だよね。 |
| メルディ | でもきっと、クィッキーは喜ぶよ。な ? |
| クィッキー | クィッキー ! |
| イクス | パティはこれからどうする ?一緒に来てくれると嬉しいんだけど。 |
| パティ | もちろん、うちはユーリのいる所に行く。狙った獲物は逃さぬのが、うちの信条じゃ ! |
| ユーリ | だったら今から鍛えておけよ ?オレ、逃げ足にゃかなり自信あっから。 |
| パティ | なるほど……。つまりユーリは「待つのじゃユーリ ! 」「ははは。捕まえてごらん」というシチュがお好みか。乙女チックでよいの ! |
| ミリーナ | ふふっ。この分だと本当に逃げられなくなりそうね。ユーリさん。 |
| ユーリ | 勘弁してくれよ……。やっと妙な誤解が解けたってのに。 |
| イクス | すみませんでした。なんか勢いに流されて、あらぬ疑いを……。 |
| フレン | 仕方ないさ。ユーリだってパティの勢いにはペースを乱されるくらいだからね。 |
| ミリーナ | 海賊で、アイフリードで、恋する乙女なんてパティは本当に、情熱的よね。可愛いわ。 |
| イクス | 旅の途中でユーリさんに一目ぼれしたって話だけどずっとこうしてアプローチし続けてるのか ? |
| パティ | そうなのじゃ。いつか本当の嫁になってみせるのじゃ。 |
| ユーリ | ま、その勢いだけはオレも評価するけどな。 |
| パティ | イルカのジャンプと同じ、何事も勢いが大切なのじゃ。このおでん屋もそんな感じで作ったのじゃ。 |
| エステル | パティにぴったりのお店ですよね。おでんの良さを布教しつつ、冒険の資金稼ぎだなんて。軍資金ができたらまたお宝探しにいくつもりだったんです ? |
| パティ | もちろん。冒険とお宝探しはうちの人生なのじゃ。ほら、おっさん。玉子食え。 |
| レイヴン | これこれ、待ってました !しかしまあ、異世界に来ても宝さがしとはね。さすが大海賊アイフリードだわ。 |
| ? ? ? | アイフリードですって ! ? |
| パティ | ん ? 誰か呼んだか ? |
| ジュディス | 浜辺の方からね。子供の声のようだったけど。 |
| 子供たち | ――おい、どこいくんだよー。スイカ割り、おまえの番だぞ。 |
| ? ? ? | そんなのは後です !ボクはアイフリードの話を聞きに……もう、離してくださいよー ! |
| レイヴン | なるほど、声の主はあの元気なボウズ――いやありゃ女の子だね。かーいらしー水着着てるわ。ふむ、ある意味枠で……。 |
| フレン | レイヴンさん。 |
| レイヴン | はい、自重。 |
| リッド | おい……あれチャットじゃねえか ? |
| キール | 本当だ ! こっちに来るぞ。 |
| チャット | はぁ、はぁ、まったく、子供というのは……。あの、ここでアイフリードの―― |
| メルディ | ワイール ! チャット、メルディだよ !おぼえてるか ! ? |
| ファラ | チャット、会えて良かった !今までどうしてたの ! ? それにその格好 ! |
| チャット | あ、どうもみなさん、お久しぶりです。そんなことより―― |
| 全員 | そんなことより ! ? |
| チャット | アイフリードの話をしていたのはあなたたちですか ? |
| パティ | そうじゃ。うちがアイフリードなのじゃ。 |
| チャット | あなたが ? 冗談はやめてください。アイフリードはボクのひいおじいさんです。つまり、男なんですよ ? |
| パティ | うちは女じゃが『海の漢』でもあるのじゃ。 |
| チャット | なるほど、話しが通じないと。それじゃわかりやすく言いますよ。あなたとアイフリードでは性別も年齢も違い過ぎます。 |
| ファラ | チャット、パティは本物のアイフリードなの。実はね―― |
| チャット | だから、そんなはずないんですって。それじゃあなた氷の山でパンツいっちょになったことありますか ?本物のアイフリードなら答えられるはずです。 |
| パティ | うーむ、パンツいっちょか。なったかもしれんし、ならなかったかもしれん。うち、記憶には少々難ありじゃからのー。 |
| キール | お前たち、パンツパンツ言うな !恥じらいのない ! |
| ファラ | キール、パンツのことよりチャットに状況を説明してあげないと。 |
| メルディ | そだよ。それともキールそんなにパンツの話したいか ? |
| キール | おっ、お前らなーー ! |
| エステル | あの、少し落ち着きませんか ?ここはお店ですし、他のお客様も来ますから。ね、リッド。 |
| カロル | リッドは班長でしょ。なんとかならない ? |
| リッド | はぁ……こういう時はいっつもオレだよ……。――おいチャット、ここで騒ぐと迷惑だ。いったん浜辺の方へ行くぞ。 |
| チャット | お断りします。真相をはっきりさせなきゃいけませんから。 |
| クィッキー | クィッキー ! ! |
| チャット | おっ、お前は…… ! 来るな……来ちゃやだああーー ! |
| リッド | いいぞクィッキー ! チャットが浜辺へ逃げた。このまま丸めこんで説明へ持ちこもう !ほらいくぞ、キール。 |
| キール | なんなんだ一体……。くそっ、こうなったら、とことん説明してやるからな ! |
| リタ | ……バカっぽい……。 |
| カロル | 嵐みたいな騒ぎだったね。ボクたちも人のこと言えないけど……。 |
| イクス | え、えーと……チャットが一緒にいたのってこの辺の村の子だよな。俺たちで、村長さんに事情を聞きに行ってみるか。 |
| ミリーナ | そうね。私たちが戻るころにはきっとキールの説明も終わってるだろうし。それじゃカーリャ、行きま―― |
| カーリャ | パティさま、次はちくわをお願いします ! |
| コーキス | あの騒ぎの中でひたすら食い続けるとかパイセン強ぇ……。 |
| Character | 3話【宝探し3 宝の地図】 |
| イクス | ――村長さんのところに長居しすぎたかな。もうチャットへの説明も終わってる頃だろ。 |
| ミリーナ | ……大丈夫かしら。具現化のことを知ってショックを受けてるんじゃ……。 |
| チャット | もう……もういやだ……。 |
| ミリーナ | チャット……やっぱり…… ! |
| キール | ――で、ぼくら鏡映点たちとは別に、ストレンジャーのような存在もいる。これは具現化大陸とは関連のない特殊な例なんだが、他にもシャドウという形で―― |
| チャット | もう、その辺でいいですから終わりにしてくださいよぉ……。 |
| コーキス | 説明が終わってない……だと ? |
| カーリャ | みんな、目が死んでますよ……。 |
| メルディ | あ、イクスたち来たよ ! キール、おはなし終わりな。 |
| キール | なにを言ってる。まだ精霊の説明もしてないぞ。いいか、この世界では晶霊は精霊と呼ばれていて―― |
| リッド | いや、もう勘弁してやれ、つーかしてくれ……。 |
| ミリーナ | チャット、どう ? 混乱してない ? |
| チャット | はい……。正直、キールさんの説明では余計な情報が多すぎて理解が追いつきませんね。でも、ここが異世界だということはわかりました。 |
| チャット | だからボクの船……バンエルティア号がどこにもなかったんですね。はぁ……アイフリードの血の証が……。 |
| ファラ | でも、別世界だけどアイフリードに会えたんだよ ?これってすごい出会いじゃない ! |
| チャット | そうですね。このティル・ナ・ノーグや、他の世界にもアイフリードが存在すると聞いて驚きました。パティさんとは、後でゆっくり話をしてみたいです。 |
| リッド | そういやキールの話ばっかで聞いてなかったけどさお前、今までどうしてたんだ ? |
| チャット | 近くの村でお世話になってました。村長さんがとてもいい人で、状況がわからずに途方に暮れてたボクを保護してくれたんです。 |
| ミリーナ | そのことだけど、私たち村長さんに会って来たの。チャットが仲間と出会えたことを話したらすごく喜んでたわ。 |
| イクス | 今後は村に残っても、仲間の所に行ってもチャットの好きにしていいって話だ。 |
| メルディ | ……村に残るのか ?メルディ、チャットと一緒がいいよ。 |
| チャット | ボクは、そちらのアジトでお世話になるつもりです。この世界のことを、もっと知らなければいけませんからね。 |
| チャット | ……村のみんなに、何のお礼もできないままなのは心苦しい限りですが。 |
| コーキス | そうだ。これ、子供たちがチャット様にって。手紙みたいだぜ。 |
| チャット | 手紙…… ? ちょっと失礼。………………。そうだった。お宝がまだ……。 |
| リッド | お宝、なんのことだ ? |
| チャット | アイフリードのお宝です。ボクが子孫だと言ったら、村の子供たちが拾ったという【アイフリードの宝の地図】を渡されたんですよ。 |
| チャット | 手紙には、お宝を探し当てるのを楽しみにしていると書かれていました。 |
| コーキス | すげえ ! 宝の地図か。いかにも海賊っぽいよな。 |
| キール | 子供が拾った地図だろう ?そんなの偽物に決まってる。 |
| チャット | そうやって頭から決めつけるのはよくありませんね。それに―― |
| 村の子供1 | ぼくたちだけじゃ無理だったけどチャットならきっと……お願い !憧れのアイフリードのお宝、見てみたいんだ。 |
| 村の子供2 | なあ、頼む ! チャットは頭もいいしあの大英雄アイフリードの子孫っていうすげえヤツなんだからさ ! |
| 村の子供3 | いいなぁ。おれもアイフリードの子孫に生まれたかったよ。 |
| チャット | アイフリードが英雄…… !しかもこんな風に言われるなんて……初めてです ! |
| チャット | わかりました。子孫であるボクに任せてください。必ずやアイフリードの宝を見つけてみせますよ ! |
| チャット | ――というわけなんです。これほど懇願されては足蹴にできないでしょう。 |
| リッド | ……いや、それさ、褒められていい気になって引き受けただけじゃねえの ? |
| チャット | ちがいます。子孫としての責任感です !……まあ、確かに、あんな風に褒められるのはちょっと気持ちよかったですけど。 |
| チャット | とにかく、ボクは今から宝探しに出発します。この地図でお宝を探し当てればみんなへの恩返しにもなるはずですから。 |
| ファラ | 今からって、このまますぐ ? |
| チャット | はい。宝の地図は肌身離さず持ってますのでこのまま出発です。さあ、まずは下調べから行きましょう ! |
| 二人 | ……え~……。 |
| チャット | 「え~」とはなんですか ? 忘れているようですがボクはキャプテンで、あなたたちは子分なんですよ。返事は「アイアイサー」一択ですからね。 |
| 二人 | アイアイサー ! ! |
| イクス | コーキス、カーリャ ! ? |
| コーキス | お宝探しなんてすげえ面白そうじゃん !なあ、マスターチャット様と一緒に行ってもいいだろ ? |
| カーリャ | カーリャも興味あります !だって、アイフリードですよ ?明鏡四水みたいな、すっごいお宝かもしれません。 |
| ミリーナ | う~ん……そうねぇ。 |
| チャット | 困りましたね。本来は厳しい審査を経て子分になれるかどうか、合否を出すのですが……。 |
| チャット | コーキスさん。カーリャさん。あなたたちの熱意にこたえて今回は特別に子分となることを許可しましょう。 |
| 二人 | やったー ! |
| キール | あいつ、あんなこと言ってるぞ。ぼくたちの時は、半ば強引に子分にしたくせに。 |
| メルディ | でもチャット、すごく嬉しそう。きっと二人が子分になるの、喜んでるよ。 |
| チャット | それではまず、この三人で行きましょうか。やる気のある者で編成した方がスムーズに動けそうですから。 |
| ファラ | でも……ねえミリーナ、カーリャはどれくらい離れられるの ? |
| ミリーナ | お正月の時から範囲を広げて試しているけど今はかなり離れても平気なはずよ。 |
| イクス | それなら遠出しても安心だな。――コーキス、カーリャ、行っておいで。サーフィン勝負は、また今度な。 |
| コーキス | ああ !すげえお宝見つけて、マスターを驚かせてやるよ ! |
| カーリャ | ミリーナさまも、楽しみにしててくださいね。 |
| ファラ | みんな頑張って。お宝、きっと見つけられるよ。イケるイケる ! |
| リッド | おいチャット、落ちてるもの食ったりすんなよ。 |
| チャット | メルディさんじゃあるまいし、そんなことしませんよ。 |
| キール | うん……。だろうな。何かあったら連絡をいれるんだぞ。 |
| メルディ | キール優しい。メルディ、そういうの好きだなー ! |
| キール | ……みんなに迷惑にならないようにってだけだ。 |
| ミリーナ | それじゃ三人とも、行ってらっしゃい。気を付けてね ! |
| 三人 | アイアイサー ! |
| Character | 4話【宝探し4 金策】 |
| コーキス | 嘘だろ……こんなことって……。 |
| カーリャ | 地図が……地図が……。 |
| 二人 | ぜんっぜん読めない ! ! |
| チャット | やっぱり駄目ですか……。この地図、とにかく意味不明なんですよ。ボクでもいまだに解読できません。 |
| コーキス | マスターやミリーナ様なら何かわかるかもしれないけど……。チャット様、一旦戻るか ? |
| チャット | ……チャット様 ? |
| カーリャ | コーキス、子分として行動している時はキャプテンと呼ぶ約束ですよ。 |
| コーキス | そうだった。なあキャプテン誰かに相談した方がよくないか ?このままじゃ、出発もできないしさ。 |
| カーリャ | 相談するならピッタリの人がいますよね ! |
| チャット | ……そうですね。アイフリードのことは、アイフリードに聞きましょう。 |
| ジュディス | ――いらっしゃいませ。ただいま海のおでん屋、満席となっております。 |
| フレン | お待たせして申し訳ありません。ご婦人がた、こちらのお席へどうぞ。 |
| チャット | ……なんですかこれ ? すごい行列ですよ。 |
| カーリャ | ジュディスさまとフレンさまの呼び込み効果ですね。しかも水着を着せるとは……パティさま、恐るべし。 |
| ジュディス | あら、どうしたのあなたたち。 |
| チャット | パティさんにお聞きしたいことがあって来たんです。ずいぶんと忙しそうですね。 |
| ジュディス | ええ。でも、この行列が捌ければ休憩時間になるの。もう少し待っていてもらえるかしら。 |
| コーキス | けど、この人数……店の方はパティ様一人で平気なのか ? |
| ジュディス | ほら、あれを見て。可愛いウェイトレスがいるでしょ。あの子たちがいるから心配ないわ。 |
| カーリャ | ウェイトレス ? あ、エステルさまとリタさま !レイヴンさまも厨房に入ってますね。……ユーリさまとカロルさまは ? |
| フレン | ユーリはカロルを連れて泳ぎに行ったんだ。うまく逃げられたよ。 |
| ジュディス | まあ、彼向きの仕事ではないしいつも頑張ってるカロルをねぎらうっていう名目もあったから、仕方ないわね。 |
| チャット | なるほど。とりあえず状況はわかりました。では、お店が落ち着くまで待たせてもらいます。 |
| リタ | はぁ……さすがに疲れたわ……。 |
| エステル | すごかったです、リタ !わたしの倍以上、お客様を捌いていましたよ ! |
| レイヴン | おっさんもねぎらって~。行きたかったイベントも蹴って手伝ったのよぉ……。 |
| パティ | みんなご苦労様なのじゃ。チャットも待たせてすまんの。 |
| チャット | いいえ。先程は失礼しました。あなたは、別世界のアイフリードなんですね。 |
| パティ | じゃな。お互いなんとも不思議な気分なのじゃ。……ん ? その地図は……。 |
| チャット | ご存じですか ?これはアイフリードの地図と言われているんです。まだ真偽がはっきりしない代物ですが―― |
| パティ | ちょっと待つのじゃ。えーと、ここに……。…………これじゃ !この地図を見てみるのじゃ。 |
| コーキス | これ、キャプテンの地図と同じだぜ ! |
| チャット | いいえ、書かれているものは少し違います。でも、この特徴のある印は確かに同じですね。 |
| カーリャ | どっちかが偽物なんですか ? |
| パティ | 結論から言うと、チャットの地図は本物なのじゃ。そして、うちの地図もな。同じ印が入ってるじゃろ ?この印を重ねて光に透かすと―― |
| カーリャ | あっ、何か浮かび上がりましたよ !この部分は海……この線は道に見えますね。 |
| チャット | ここに書かれてるのは文字でしょうか。ただの落書きみたいにしか見えなかったのに……。 |
| パティ | この印が入った宝の地図が、もう一枚あるのじゃ。全部で三枚そろえて、同じように重ねれば宝の場所が解読できるという仕組みじゃな。 |
| チャット | すごいですよ、パティさん !そこまで突き止めていたとは。さすが大海賊アイフリードですね。 |
| パティ | うちもこの世界に来てからずっとアイフリードの宝を追ってたからの。 |
| パティ | それを、別の世界のアイフリードの子孫が持ってきてくれるとは……。なにやら不思議な縁を感じるのじゃ。 |
| パティ | ……よし、決めた !うちもその宝探し、協力するのじゃ。 |
| チャット | 本当ですか !それで、もう一枚の地図はどこに ? |
| パティ | 古物商が手に入れて、売っているという話は掴んだのじゃが……。 |
| パティ | それがまた、べらぼうに高くてのう。亀になるしかなかった。 |
| チャット | なるほど。手も足も出なかった、と。 |
| パティ | うむ。このおでん屋くらいではそう一気に大金は転がり込まんのじゃ。 |
| レイヴン | ……あのさ、お金、欲しいのよね ? |
| リタ | なに、おっさん。あてでもあるの ? |
| レイヴン | あるある ! ほら見て !俺様がどーしても行きたかったイベントのチラシ ! |
| リタ | チラシ ? 「アイフリードコンテスト・我こそはアイフリードという方、男女問わず参加募集」賞金は……って、すごい額じゃない ! |
| パティ | 本当じゃ ! これなら、あの地図も手に入るぞ。 |
| レイヴン | でしょ ?しかもイベントの飛び入り参加もOKときた。どうよ、俺様のおかげで―― |
| ジュディス | ねえ、おじさま。参加条件に水着って書いてあるのだけれど。 |
| レイヴン | …………まあ、海だし ? |
| リタ | どうりで大事にチラシ持ってるわけだわ。 |
| チャット | 水着だろうと何だろうと、アイフリードコンテストならパティさんかボクが優勝に決まってます。なんたって、本人とひ孫ですからね ! |
| ジュディス | 他にも参加条件があるわよ。参加規程、年齢18歳以上、ですって。 |
| チャット | 屈辱です……戦わずして負けるなんて……。 |
| パティ | うち、ある意味成人済みなのにのう……。賞金は儚い蜃気楼なのじゃ。 |
| レイヴン | いや、あきらめんな !いるだろうここに。圧倒的優勝候補が。 |
| コーキス | 候補って誰だ ? |
| レイヴン | おいおい、コーキスくーん。ここでピンと来ないようじゃ、まだまだよ ?ジュディスちゃんに決まってるでしょーが。 |
| コーキス | そうか ! ジュディス様、強いしかっこいいもんな。確かに海賊アイフリードコンテストにピッタリだぜ ! |
| レイヴン | けんぜん……。おっさん、汚れてる気がしてきた……。 |
| リタ | 気がついてよかったじゃない。手遅れだけど。 |
| ジュディス | ふふ、ありがと、コーキス。そんな風にいわれたら、優勝を目指すしかないわよね。 |
| カーリャ | それなら、フレンさまだって優勝候補ですよ。アイフリードのような英雄オーラにバリバリの戦闘力。これはもう賞金待ったなしです ! |
| フレン | ありがとう、カーリャ。でも僕は―― |
| ジュディス | あら、パティやチャットに協力しないの ?あなたはもっと仲間思いだと思ってたわ。 |
| エステル | フレン……残念です。 |
| チャット | フレンさん。お気になさらず。ボクは体は強くありませんが自分で作った機械を売ればお金も―― |
| フレン | 僕なりに精一杯やらせてもらうよ ! |
| パティ | では、急いで会場へ行くのじゃ !イベントはもう始まっているようじゃからな。 |
| Character | 5話【宝探し5 アイフリードコンテスト】 |
| 司会 | ――さあ、次は飛び入り参加 !凛々しくも美しきアイフリード、ジュディスさーん ! |
| レイヴン | うおおおお ! ジュディスちゃん、2兆点 ! |
| コーキス | ジュディス様、すげえ人気だ ! |
| リタ | そうじゃなきゃ困るでしょ。賞金がかかってるんだから。 |
| 司会 | 続いても飛び入り参加 !爽やか騎士系アイフリード、フレンさーん ! |
| カーリャ | きゃー ! フレンさまも2兆点 ! |
| チャット | うわっ、会場の声援が一気に変わりましたね。耳が痛いくらいです。 |
| レイヴン | きゃー、フレンちゃーん ! 野郎で一番よー ! |
| パティ | おっさんの茶色い声援、目立っとるのー。 |
| チャット | 会場の反応も審査の対象ですからね。同性からの支持があるのは効果的です。これなら、どちらかはきっと―― |
| 司会 | ――では結果発表です。審査は大変難航しましたが優勝は……ジュディスさん !アーンド……フレンさんの同点優勝となりました ! |
| 観客たち | おおおおおおっ ! |
| 全員 | やったーーーー ! |
| 司会 | お二人には賞金が贈られます。フレンさん、ジュディスさん、おめでとう ! |
| 司会 | さて、コンテストは終了となりますがこの後も楽しいイベントが盛りだくさん !皆様こぞって参加を――…… |
| パティ | ジュディ姐 ! フレン !まさかの同点優勝とは、さすがなのじゃ ! |
| ジュディス | お役に立てて何よりだわ。 |
| フレン | これが賞金だよ。主催者が太っ腹でね。僕とジュディス、二人分くれたんだ。 |
| カーリャ | これだけあれば、地図も余裕で買えますね。 |
| パティ | なのじゃ ! |
| チャット | お二人とも、ありがとうございます !では、すぐに古物商の所へ向かいましょう。地図が売られてしまっていたら大変ですから。 |
| パティ | あの古物商、なかなかの商売上手だったの。 |
| カーリャ | 賞金が二人分あってよかったですね。一人分だったら、ぎりぎり足りないところでした。 |
| チャット | 本当に、フレンさんとジュディスさんには感謝してもしきれません。何かお礼をしなければいけませんね。 |
| ジュディス | それじゃ、この後も同行してもいいかしら ? |
| チャット | それがお礼でいいんですか ?ボクたちばかり、得をしているみたいですけど。 |
| ジュディス | 十分よ。宝探し……ふふ、とても楽しそうだわ。 |
| パティ | さすがジュディ姐 ! 海賊魂への理解が深いのじゃ。チャットはどうじゃ ? |
| チャット | もちろん歓迎しますよ。これほど優秀な人材はいませんからね。 |
| カーリャ | 人材……子分にする気満々ですね……。 |
| コーキス | なあなあ、キャプテン。これで地図は三枚そろったんだろ ?早速地図を重ねてみようぜ。 |
| チャット | そうですね。では早速―― |
| パティ | これは…… ! |
| チャット | 島……ですね。位置と海岸線を見るに海のおでん屋のある場所からそう遠くはないと思います。 |
| カーリャ | この辺りなら、カーリャも余裕でついていけますよ。 |
| パティ | 多分、その辺りの島は無人島のはずなのじゃ。 |
| コーキス | 無人島か。お宝探しに島探検なんてますます面白くなってきたな ! |
| パティ | 待つのじゃ、この島には魔物が出るとの噂もある。探検もよいが、それなりの覚悟が必要なのじゃ。 |
| エステル | わたしも行きたいです ! |
| フレン | エステリーゼ様 ? ! |
| エステル | それに危険な場所なら、戦える人は多い方がいいですよね ? |
| パティ | 確かに、もう一人くらいいると心強いがの。 |
| フレン | だったら、僕が行くよ。小さい頃、ユーリと探検をしていたから足は引っ張らないと思う。 |
| エステル | ええっ、フレン、ずるいです……。 |
| レイヴン | そう言いなさんな。エステル嬢ちゃんはパティちゃんの店をおっさんたちと回しましょ。 |
| リタ | 適材適所よ、エステル。フレンが店の厨房に立つのと、お宝探しに付いてくののどっちが適してるか、わかるでしょ ? |
| エステル | けど……わたしもお宝探ししたいです……。 |
| リタ | エステル、命に係わるかもしれないのよ。聞き分けなさい ! |
| エステル | は、はぁい……。 |
| パティ | 決まったの。んじゃリタ姐、エステル、おっさん、うちの店をよろしくなのじゃ。 |
| チャット | では改めて、お宝探しに出発しますよ ! |
| Character | 6話【宝探し8 無人島の遺跡】 |
| パティ | ワクワクするの !この無人島に、遺跡への入り口があったとは。 |
| チャット | …………。 |
| コーキス | 宝の地図がなかったら、絶対に見つからなかったよな。それにしてもこの遺跡……なんか寒気が……。 |
| カーリャ | 薄暗いし、気味が悪いですね……。 |
| フレン | みんな、周囲に注意して進んでくれ。遺跡にも魔物が入り込んでるようだからね。 |
| コーキス | また魔物か……さすがにもう勘弁して欲しいよ。島に上陸してから、かなり戦ってんのに。なぁ、キャプテン。 |
| チャット | ひっ ! |
| 二人 | ひいぃっ ! ? |
| チャット | とっ、突然肩なんて叩かないでくださいよ。驚くじゃありませんか ! |
| コーキス | こっちだって驚いたぜ。そうじゃなくても、遺跡の雰囲気に圧倒されてんのに。 |
| チャット | あなたたちもですか……なんだ……。 |
| カーリャ | ということは、キャプテンも怖かったんですね。 |
| フレン | そんなに不安なら僕が手をつなごうか ? |
| チャット | 子供扱いしないで下さい。……ただ、フレンさんがどうしてもというのなら仕方ありませんが。 |
| カーリャ | ふぁー ! ミリーナさまがいたら大変でしたよー !可愛い可愛いでキャプテンの頭をワシワシでした。 |
| チャット | ……それってボクが子供っぽいって意味ですか ? |
| カーリャ | 違いますよー。ミリーナさまは基本的に女の子が大好きなんです。妹が欲しかったっていつも言ってますから。 |
| チャット | そうですか……。だったらいいんですけど。何だかパティさんと比べると、ボクは……。 |
| チャット | ――パティさんは、この不気味な遺跡にも全く躊躇していませんが、怖いとは思わないんですか ? |
| パティ | 怖いよりもワクワクするのじゃ。「わからない」は「ロマン」じゃからな ! |
| チャット | ロマン……アイフリードであればそう考えるものなのでしょうか。 |
| パティ | うちの場合はな。そうじゃ、チャットに良いことを教えるのじゃ。 |
| パティ | ――海の教え、その18 ! 『海の上は危険がいっぱい。しかし未知なるものに出会うことを恐れるな』じゃ。 |
| パティ | 海の教えはすごいぞ。恋路にも応用可能なのじゃ。うちはこれで ユーリをゲットしました、なのじゃ。 |
| 二人 | してない、してない。 |
| チャット | 海の教えとは興味深いですね。もっと教えてください !あ、応用のほうは結構です。 |
| パティ | むしろ応用編の話をしたかったのにのぉ……。まあいいのじゃ。先に進みながら教えるのじゃ。 |
| チャット | パティさん。そちらは道が違います。地図では―― |
| パティ | じゃが、こっちからお宝のにおいがするのじゃ。 |
| チャット | お宝のにおいがわかるんですか ?まさか、これもアイフリードの特殊能力なのでは……。 |
| パティ | においといっても、これはうちの勘なのじゃ。さ、行くぞ !寄り道も冒険の醍醐味なのじゃーーーー ! |
| チャット | 待ってくださいよ。もう、落ち着きのない人ですね ! |
| ジュディス | ふふ、楽しそう。あなたが手を取るまでもないみたいね。 |
| フレン | ああ。チャットのことは、パティが十分引っ張ってくれる。心配なさそうだよ。 |
| パティ | ……ふむ、この部屋はかなり広いのじゃ。お宝のにおいもするが、妙な気配も……。 |
| | ――カチッ―― |
| コーキス | なんだ、今の音 ? |
| ジュディス | 閉じ込められたみたいね。ほら、いつの間にか入り口がなくなってる。 |
| カーリャ | えーーっ ! ! ってジュディスさま落ち着きすぎですよ ! |
| パティ | 参ったのじゃ。この壁の向こうにお宝の気配がするんじゃがの。 |
| チャット | まあ、アイフリードの宝に挑むならこれくらいは想定済みです。トラップなんてボクの子分になる試験では、クリア必須要素ですしね。 |
| コーキス | じゃあ、どうやって出るんだ ?なんか仕掛けがあるのか ? |
| チャット | 当然ですよ。いいですか、さっき音のした辺りを調べると―― |
| ジュディス | ……待って。部屋の奥に何かいるわ。 |
| 魔物 | グルルルルル……。 |
| チャット | 魔物 ! ? もふもふのふさふさ……いやだーー ! うわーーん ! |
| フレン | 落ち着くんだ。とにかく、こいつを倒そう ! |
| Character | 7話【宝探し9 遺跡の奥へ】 |
| コーキス | ……どうだ、キャプテン。罠は解除できそうか ? |
| チャット | ええ。少々複雑ですが、この程度―― |
| | ――カチッ―― |
| チャット | ボクにかかれば、こんなものです。 |
| パティ | おお ! 入って来た方向と、反対側が開いたのじゃ。 |
| コーキス | すげえ。あっと言う間だったな ! |
| フレン | 機械に関する知識と高い技能、感心するよ、チャット。 |
| ジュディス | さっきまで泣いていたのが嘘のようね。 |
| チャット | あ、あれは突然の魔物に動揺しただけです。普段はそれなりに対処できますよ。それにさっきのは……毛が多かったから……。 |
| チャット | だいたい、ああいう生き物はボクの愛する機械たちに悪影響でしかないんです ! |
| ジュディス | つまり、動物が苦手なのね ? |
| チャット | 苦手じゃありません !ただ、ちょっと生理的に受け付けないというか……。 |
| パティ | なるほど。だからあの時クィッキーから逃げ出したんじゃな。 |
| チャット | クィッキーは、予測できない動きでなおさら恐怖をあおるんですよ。まったく……思い出しただけでも……うう……。 |
| カーリャ | あのぉ、キャプテンもこんな状態ですしどこかで休みませんか ? |
| フレン | そうだね。安全な場所をみつけて休憩しよう。 |
| チャット | パティさんは、元の世界でどんな冒険をしてきたんですか ? |
| パティ | 冒険 ? う~む……。でっかい虫と戯れたり魚人の腹に入ったまま海をただよったり砂漠で砂にうもれたり……ま、色々なのじゃ ! |
| カーリャ | マジですか……。ハードモードですね……。 |
| パティ | なかなか愉快な体験なのじゃ。もし魚人に呑まれた場合は参考に―― |
| チャット | しませんよ ! 普通死にます ! ……とはいえ、そのタフさには驚きました。確かに、大変な経験をされているようですね。 |
| チャット | こうなると、他の世界のアイフリードの話も聞きたいところですが……。 |
| コーキス | 本人が具現化した例はパティ様だけだよ。他の世界のアイフリードの話はみんな伝説みたいになってるからなぁ。 |
| カーリャ | あ、関係者ならアイゼンさまがいますよ。アイフリードが船長を務めたバンエルティア号の副長さんでしたから。 |
| チャット | バンエルティア号ですか ! ? 他の世界にもアイフリードの船として存在するんですね。 |
| コーキス | ああ。そういえば、キャプテンのバンエルティア号ってどんな船なんだ ? |
| チャット | ボクの故郷、セレスティアに伝わる7大秘宝のひとつです。とても美しい船なんですよ。 |
| チャット | アイゼンさんという方のバンエルティア号はどんな船なのでしょう。ああ、語り合いたい…… ! |
| コーキス | 今はケリュケイオンっていう飛空艇に乗ってるんだ。今度、会いに行けるようにマスターたちに言ってみるよ。 |
| チャット | 飛空艇ですか ! 楽しみが増えました。是非よろしくお願いします。 |
| パティ | その時は、うちも一緒にいくのじゃ ! |
| チャット | いいですね。アイフリードとそれに繋がる者同士是非じっくりと語り合いましょう。 |
| フレン | アイフリードの会、だね。 |
| パティ | フレンはネーミングも真っ直ぐすぎじゃの。今は、アイフリードの会(仮)とでもしておくのじゃ。 |
| ジュディス | ふふ、あの副長さんの苦い顔が目に浮かぶわね。 |
| チャット | もしや、アイゼンさんは気難しい方なんですか ? |
| ジュディス | さぁ ? |
| コーキス | マスターは、すげぇ信念のある人だみたいに言ってたぜ。 |
| フレン | そんな彼が慕っていたんだったらむこうの世界のアイフリードもかなりの人物なんじゃないかな。 |
| チャット | やはり、アイフリードの名はどの世界でも偉大な人物の証なのですね。……ボクもこんなところでヘバってられません。 |
| パティ | お、気力が湧いたようじゃな。では、お宝探しのラストスパートと行くかの !帰ったらみんなで仲良くおでんを―― |
| コーキス | カ、カニ ! ? ……っぽい魔物 ! ?これから気合いを入れようって時に空気読まないやつだな ! |
| パティ | いや、逆に読み過ぎなのじゃ。お前を倒して、おでんの具にしてやるのじゃ。 |
| カーリャ | よっしゃー ! 今夜はカニ入りおでん……ってこれ食べるんですか ! ? |
| パティ | なせばなるのじゃ ! いざ、勝負なのじゃ ! |
| Character | 8話【宝探し9 遺跡の奥へ】 |
| コーキス | ――痛って ! なんだこいつ、めちゃめちゃ堅い ! |
| パティ | 関節じゃ ! 関節を狙うのじゃ ! |
| コーキス | 関節 ! ? ここか ! |
| パティ | よいぞ !フレン、ジュディ姐。奴の腹側の三角形部分をズバッと攻撃じゃ ! |
| フレン | ここだな ! |
| パティ | 上手いぞ ! そこからグッと力を入れて奴の甲羅から足を外すのじゃーー ! |
| ジュディス | こうね ! |
| パティ | 美味い ! いや、上手いのじゃ ! |
| パティ | チャット、最後はピコハンで――いかん……前に出過ぎじゃ ! 奴の爪が―― |
| チャット | ピコハン――うわああっ ! |
| パティ | 危ない ! リトルビッグシェフ ! |
| パティ | ふぅ、何とか上手にさばけたのじゃ♪ |
| チャット | 助かりました……。ありがとうございます。 |
| フレン | それにしても見事な手際だね。 |
| ジュディス | ええ。戦いと調理の下準備を同時にするなんてさすがね、パティ。 |
| パティ | うむ ! 魚介料理の腕では負けんぞ。ジュディ姐 ! |
| コーキス | でもこれ……魔物だよな。本当に美味いのか ? |
| パティ | ……そうじゃった。カニは鮮度が命なのじゃ。ここで倒してしまったら今夜、最高に美味しく食べられないのじゃ。 |
| パティ | みんな、すまんのう。カニおでんは諦めて、お宝探しに励むとするのじゃ。 |
| 3人 | (……助かった……) |
| チャット | ――ここですね。地図に記されたお宝の場所は。 |
| コーキス | 寄り道したけど、無事に辿りつけて良かったぜ。 |
| チャット | トラップの部屋を通り抜けたのは正解でしたね。正規ルートよりも、かなり近道になりました。 |
| パティ | あれは抜け道のような役割をしとったんじゃな。なかなか面白い造りじゃのう。 |
| コーキス | スレイ様やミクリオ様がいたらこういう話で盛り上がるんだろうな。 |
| カーリャ | リフィルさまの暴走も目に浮かびます……。 |
| チャット | さあ、探しましょう。どこかにアイフリードのお宝があるはずです。 |
| チャット | あった ! 宝箱 ! |
| パティ | 地図と同じ印が入っとるのじゃ。間違いないのじゃ ! |
| チャット | ついに……ついに手に入れました。アイフリードの宝を ! |
| パティ | さあさあ、もったいぶらずに開けてみるのじゃ。 |
| チャット | はい、では―― |
| カーリャ | あっ、中でなにかピカっと……。 |
| チャット | これは――……鏡 ? |
| フレン | 鏡というと、何かの魔鏡かな ?明鏡四水とか、浄玻璃鏡みたいな。 |
| チャット | ……ボクには、何の変哲もない古い鏡にしか見えませんが……。確認してもらえますか ? |
| コーキス | うん……やっぱり……。 |
| カーリャ | ……特には、何も感じませんね……。 |
| ジュディス | つまり、ただの鏡ね。 |
| チャット | そんな馬鹿な……アイフリードの宝がただの鏡一枚だっていうんですか !ほかには――何かほかに入ってるはずです ! |
| パティ | チャット、何度見ても宝箱の中は空じゃ。その鏡が正真正銘、アイフリードの宝ということじゃ。 |
| チャット | そんな……。 |
| Character | 9話【宝探し10 アイフリードの宝】 |
| チャット | …………はぁ。 |
| コーキス | キャプテン、元気出してくれよ。そうだ ! また新しい地図を手にいれようぜ。そんで今度はもっとすげえお宝を―― |
| チャット | ……いいえ、この地図だからこそ村のみんなが喜ぶようなお宝を持って帰りたかったんですよ。 |
| カーリャ | ……そうでしたね。この地図は、村の子供たちが拾ったものだから……。 |
| チャット | これをアイフリードの宝だと言って持ち帰ったらみんなはどんな顔をするでしょう……。 |
| ジュディス | 期待を裏切ったと思われて、失望されるのが怖い ? |
| チャット | …………。 |
| パティ | では、この鏡はいらんのか ?古ぼけてはおるが、きれいに映るぞ ? ほれ。 |
| チャット | ―― !やめてください……今は見たくありません。 |
| パティ | なんでじゃ。そんなにこの鏡が嫌なのか ? |
| チャット | ……嫌なのは、そこに映っているボクですよ。 |
| チャット | ボクは、アイフリードの子孫であることが誇りでした。そしていつか自分もアイフリードのようになるのだと。 |
| チャット | でも、その鏡に映る本当の自分は、痩せっぽちでみんなの期待にも応えられない、ただの子供……。アイフリードに、そう言われてる気分になります……。 |
| コーキス | チャット様……。 |
| フレン | チャット。何故アイフリードはその鏡を宝箱に入れたんだと思う ? |
| チャット | そんなの……わかりませんよ。 |
| フレン | 君はさっき、鏡に映った未熟な自分を恥じていたね。けれど、こうは考えられないかな。 |
| フレン | その鏡に映った自分自身こそが、宝物なんだって。 |
| チャット | 自分が宝物……。アイフリードはそう考えていたというんですか ? |
| フレン | 本当のところはわからない。事実は『宝箱には鏡が入っていた』それだけだ。 |
| フレン | でも、人によってはガラクタの鏡でも、アイフリードにとっては特別なものだったんだろう。宝箱に入れるほどにね。 |
| ジュディス | そうね。大事なものなんて、人それぞれだもの。 |
| フレン | ああ。それは僕たちだって同じじゃないか ?みんなと苦労して手に入れたこの鏡は特別な物――宝物だって僕は思う。 |
| ジュディス | どう、チャット ? ちょっとロマンチックすぎるけど、私は嫌いじゃないわ。 |
| チャット | ……詭弁ですね。でも……悪くはないですね。そんな考え方も。 |
| パティ | じゃな ! それにこういう話は海賊にはありありのエピソードなのじゃ。そんなものが積み重なって、伝説となるのじゃ。 |
| チャット | そうですね。ボクのひいおじいさんも色々と伝説が残ってますから。 |
| パティ | パンツじゃな ! |
| チャット | あ、改めて大きい声で言わないでくださいよ。でも……確かにカッコイイ話じゃありませんね。あっははは ! |
| パティ | ほれ、今回手に入れたお宝じゃ。 |
| チャット | あ……。 |
| チャット | ……ええ。最高の宝物ですね ! |
| Character | 10話【宝探し10 アイフリードの宝】 |
| コーキス | ――ってわけだ。めちゃくちゃ楽しかったぜ。な、パイセン ! |
| カーリャ | はい ! またチャットさまの子分をやってみたいです。 |
| イクス | そうか。いい冒険だったんだな。俺も実際に遺跡を見てみたかったよ。 |
| ミリーナ | 私も一緒に行けばよかったわ。話を聞いただけでも、パティとチャットがどれだけ可愛かったかわかるもの。 |
| リッド | ミリーナもイクスも物好きだなぁ。オレは巻き込まれなくてホッとしてるってのに。 |
| リッド | あ、でもそのカニの魔物ってのはやり方によっちゃ食えそうな気もするな。 |
| パティ | ふむ。では試食の時にはリッドを呼ぶのじゃ。一番に食べてもらうから、楽しみにしてるのじゃ ! |
| パティ | ……それと、リカバーを使える奴を一緒に連れてくるといいのじゃ。 |
| リッド | 完全に毒見じゃねーか !ったく、期待して損したぜ……。 |
| ファラ | しょうがないなぁ。リッドには代わりに今度カニ料理いっぱい作ってあげるね。 |
| エステル | フレンもご苦労様でした。楽しかったですか ? |
| フレン | ええ。エステリーゼ様のおかげです。 |
| エステル | 今度はわたしも行きますからね ?フレンが心配しないように、ちゃんと準備をしてから。 |
| ジュディス | あら、わかってるじゃない。 |
| メルディ | フレン、エステルがために代わったんだな。とてもいい人。 |
| リタ | そう ? 過保護ってだけじゃない。 |
| レイヴン | えー、リタっちがそれ言うー ? |
| リタ | うっさい。代わりにおっさんを厳しめにしてバランスとってるからいいでしょ。 |
| レイヴン | バランスじゃなくて差別っていいません ! ?学士のあんちゃん、なんとか言ってやってよ。 |
| キール | イヤだ ! 絶対にイヤだ ! |
| レイヴン | 全力で拒否……。リタっち、日ごろ研究室でどんな仕打ちを……。 |
| リタ | 人聞き悪いこと言わないで !それより、あのチビっ子はまだ戻らないの ? |
| メルディ | チャット、村の子たちに報告行ったままだな。クィッキーも早く遊びたくて、マチワビてるよ。 |
| クィッキー | クィッキー……クィッキー ! |
| チャット | ただいま戻りました。 |
| クィッキー | クィ―― ! |
| ジュディス | ちょっとだけ待ってて。ね ? |
| クィッキー | クィ、クィッキー。 |
| ファラ | お帰りなさい、チャット ! |
| メルディ | みんなに宝の話したか ? どうだった ? |
| チャット | 予想どおりですね。鏡を見せたら、非常にがっかりされました。 |
| ファラ | ……そう。残念だったね。 |
| リッド | 仕方ねえさ。アイフリードの宝っていったらものすげえのを想像してただろうし。 |
| キール | 現実はそう甘くないってことを子供に話して聞かせてやればいいんだ。 |
| チャット | ええ、キールさんの言う通り、そうしましたよ。 |
| メルディ | どういうことか。 |
| チャット | がっかりしていた子供たちに、鏡を手に入れるまでの出来事を、こと細かに話して聞かせたんです。 |
| チャット | そうしたら、どんどん目が輝いていって……驚くほど盛り上がったんですよ ! |
| チャット | ボクの話を聞きながら笑ったり、怖がったりしてとても面白いと言ってくれました。最後には、鏡を取り合ってる子もいたくらいです。 |
| ファラ | そっか。子供たちにとってはチャットの冒険話が宝物になったんだね。 |
| キール | 何がお宝になるかわからないな。 |
| チャット | ボクの話が宝かどうかはわかりませんがこの冒険で色々と学んだことは確かですね。 |
| リッド | へえ、頼もしくなったじゃねえか。キャプテン ! |
| ファラ | うん。さすがアイフリードの子孫だよ。これからもよろしくね、キャプテン ! |
| チャット | 自ら子分であることを認めましたね ?まったく、遅いんですよ。あなたたち。 |
| メルディ | チャット、照れてるか ? もっと喜ぶがいいよ ! |
| ラピード | ワンワン ! |
| カロル | ただいまー……はぁ……疲れた……。 |
| ユーリ | ほら、頑張れカロル先生。おでんが待ってるぜ。 |
| パティ | ユーリ、お帰りなのじゃ ! カロルはどうしたのじゃ ? |
| ユーリ | オレに泳ぎで挑んで、結果全敗。ま、その根性は認めるぜ。 |
| カロル | 悔しいーー !最後のはあとちょっとだったのに……。あ、まさか手を抜いたりしてないよね ? |
| ユーリ | オレを本気にさせるなら、もちっと練習が必要だな。 |
| カロル | うわーハンデつきでも勝てないのに……。ユーリを倒すなら、フレンくらい強くならないとなぁ。 |
| ユーリ | は ? フレンならオレに勝てるってか。面白いこと言うな、カロル先生。 |
| フレン | ユーリ、それは僕はユーリに勝てないってことかい ? |
| ユーリ | だったら証明してみるか ?言っとくが、この辺に魚人はいねぇぞ。 |
| レイヴン | まーまー、そんな野郎だらけの水着大会よりさちょっと面白そうな企画を見っけたのよね。はいこれ ! |
| リタ | またチラシ ? 『集めろ ! 見つけろ !アイフリードのお宝は君のもの……』なにこれ。 |
| レイヴン | ほら、アイフリードコンテストの最後に他にもイベントがあるって司会者がいってたでしょ ?それが、この『男女別宝探し大会』ってわけ。 |
| エステル | 面白そうです。これならわたしも参加できますよね。 |
| ジュディス | そうね。じゃあみんなで勝負なんてどうかしら ? |
| ユーリ | やれやれ……。いつの間にかオレたちも参加決定だぜ ? |
| フレン | いいさ。水泳勝負は後でもできるよ。けどジュディス、やるからには本気でいかせてもらうよ ? |
| ジュディス | ふふ。それは楽しみね。 |
| エステル | 頑張りましょうね、リタ ! |
| リタ | はいはい。 |
| イクス | じゃあ俺、アジトにいるみんなにも参加するかどうか聞いてみるよ。大勢のほうが楽しいもんな ! |
| ミリーナ | 私は女性陣に声をかけてみるわね。 |
| パティ | よいの ! これで人が集まればまたしてもおでんが売れるのじゃ。商売繁盛なのじゃ♪ |
| チャット | 本当に逞しい人ですね……。では、みなさん。準備を始めましょう。宝探しの始まりです ! |
| 全員 | アイアイサー ! ! |