Character1話【一回戦】
カイル……いよいよ次が決勝戦。ようやくここまで来たんだ。絶対にチャンピオンになって……そしてオレは――
ロニおおっ。今回はいつにもましてすげぇ盛り上がりだな。期間限定ビフレスト式の闘技場。そしてこの場に集った美女たちにロニさまの勇姿を刻めないのが残念だぜ。
カイルロニ ! ? どうしてここに ! ?厨房で仕事があるんじゃなかったの ! ?
ロニちょいと抜けてきたのさ。ったく、闘技場に合わせた期間限定メニューが大人気で客と注文の嵐。おかげで着替える暇すらなかったぜ。
カイルそんなに忙しかったんだ。けどさ、その厨房の制服、よく似合ってるよね !すごく格好いいよ !
ロニおっと。まさかカイルに見初められちまうとはな。だがご指名の注文なら断れねぇ。ご主人様のお望み通りこの給仕姿で甲斐甲斐しくご奉仕をさせて頂き――
カイル近寄らないでってば ! 気持ち悪い !まったく。こっちは決勝戦直前で集中してるのにロニはオレを邪魔しに来たわけ ?
ロニははっ。悪ぃ悪ぃ。ついからかいたくなっちまってな。けど普段と変わらないやり取りもいいもんだろ ?
カイルそれは……うん。そうだね。おかげでちょっと緊張がほぐれたよ。
ロニカイル。おまえがどうしてもチャンピオンになりたいことそしてその理由もよくわかってる。だから緊張して前のめりになって、つい下ばっか見ちまうのもな。
ロニだが、そういうときこそ上を見ろ。
カイル上を…………あれ ?ちょっと待って、あそこの観客席にいるのって――
リアラカイル ! 頑張って ! !
ナナリー負けたら承知しないよ !
ジューダス……ふっ。
カイル…………みんな。
ロニスタンさんは仕事で決勝戦の観戦には来られない。だからこそ、チャンピオンになったという結果を見てもらうしかない。そりゃプレッシャーだよな。
ロニだが忘れるな。俺たちだってついてるってこと。
カイル……ロニ。
ロニ最前列で見てるぜ。本当はスタンさん用のチケットだが来られなかった時は使ってくれって言われてるんだ。まぁ、スタンさんの代わりは務まらねぇと思うがな。
カイルずっと側にいてくれたロニほど心強い人はいないよ。ありがとう、ロニ。だから頼むよ……オレの戦いをその目で見ていてくれ !
ロニ……カイル。ああ、任せとけ !おまえなら勝てる ! 自信持って行って来い ! !
ジョニーこのステージではゴングを響かせるぜ。司会進行役のジョニー・シデンだ。サンキュー♪
イクス同じく司会進行役のイクス・ネーヴェです。さあて、挑戦者カイル・デュナミス選手が入場 !もうまもなく決勝戦がはじまります !
ジョニーおっ、いいアナウンスじゃないかイクス。司会進行役もすっかり様になってきたな。
イクスはい、今回は調査で忙しいエミルたちに代わって俺たちが闘技場を盛り上げるって約束しましたから。
イクスそれに、カイルの戦う姿を見てたら自然と言葉に熱が入っちゃうんですよね。
ジョニーおっと、イクス。その気持ちはわかるがたとえ仲間でも、試合中のアナウンスは公平に頼むぜ。
ジョニーしかしカイルはアウェイにも関わらず堂々としてるな。なかなかロックだぜ。ええっと、迎え撃つ現チャンピオンは……こほっ。
イクスジョ、ジョニーさん。無理しないでくださいね。進行は俺がメインで引っ張りますから。
ジョニー悪いな。それじゃあバトンタッチだ。こいつがチャンピオンの資料……うん ?この男は……まさか……。
リアラねぇ。そういえば現チャンピオンってどんな人なのかしら ?
ナナリー噂で聞いた限りではチャンピオンになってから無敗。今まで挑戦者たちを秒殺してきたみたいだね。
リアラ無敗なうえ秒殺 ! ?
ナナリーおまけに街の治安を守り、子どもたちにも大人気の男らしいよ。この決勝戦さすがに一筋縄ではいかないだろうね。
ジューダス……カイル。
カイル誰が相手であろうと、オレが勝ってみせる !さあ、出てこい !
イクス――チャンピオンの入場です !
? ? ?ふっ……待たせたな。
カイルえっ……あなたは…… ! ?
歓声マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ !マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ !マイティ ! マイティ ! マイティ ! マイティ !
コングマン俺様がチャンピオン ! マイティ・コングマンだ ! !
歓声うおおおおおおおおおおおおおおお ! ! ! !
イクスあ、あれ ? あのチャンピオンの人確か鏡映点リストに載っていたジョニーさんたちの仲間ですよね ?
ジョニーこれは面白くなってきたな。どんなビートが刻まれるか楽しみだ。さあ、イクス。このライブ、ノンストップで進めるぜ。
イクスは、はい……。
カイルそ、そんな……。あなたは確か……ノイシュタットの闘技場にいた元チャンピオンのマイティ・コングマン ! ?
コングマンも、元チャンピオン……だと ?誰だか知らねぇがこのチャンピオンである俺様を小馬鹿にしてくるとは随分なガキじゃねぇか。
カイルえっ、オレのことを知らない ? あっ……わかったぞ !これはあれだ……えっと、具現化時間軸が違うんだ !だからまだ元チャンピオンじゃないんだな !
コングマン…………てめぇ、また同じことを。
カイルちょっと待ってくださいね。あなたはこの世界では鏡映点という存在なんです。今詳しく説明します。えっとマニュアルはこっちのポッケにあったはず……。
コングマンその態度、気に食わねぇな。
カイルえっ ?
コングマン世界だか鏡映点だかなんだか知らねぇがリングの上の世界にはチャンピオンか挑戦者しかいねぇんだよ。
コングマンそれにてめぇのツラも気に食わねぇ。そのどっかのスカタン野郎に似た立ったまま居眠りでも始めそうな間抜け面がな。
カイルそれって……お前 ! 父さんのことをッ ! !
コングマン父さん ? ハハハッ !何を言い出すかと思えばこれは傑作だぜ !
コングマン急にビビってパパに助けを乞いたくなったか ?だったら即刻、リングの上の世界から立ち去りな !
カイルならリングの世界に挑んでやる。けど後悔するなよ !この戦いでお前は、また間抜け面の挑戦者のせいで元チャンピオンになってしまうんだからな ! !
コングマン寝言は寝てから言うもんだぜ !今から俺様がこの拳で寝かしつけてやるから感謝しな !さあ、ゴングを鳴らせ ! !
イクスレディ――ファイトッ ! !
二人うおおおおおおおおおおおおおおお ! ! ! !
? ? ?待ちなさーーーーーいっ ! !
二人――ぐはっ ! !
ナナリーそんな ! あの二人を一瞬で投げ払った ! ?いったい誰だい、あの乱入者は ! ?
? ? ?さてと。さっそくだけど家族会議をはじめよっか。
コングマンくそっ。誰だか知らねぇがふざけやがって。この神聖なリングの上の世界を汚す野郎は俺様が許さな――
? ? ?うるさい ! 私は野郎じゃないし今は家族会議中なの !決勝戦だか知らないけど邪魔するっていうなら―― ! !
コングマンぐへっぐほっぐはっげほっぼこっぐほっ。
? ? ?容赦しないからね ?
コングマンつ、強ぇ…………。
イクスコ、コングマン選手がノックダウン !まさかのチャンピオン交代だ !
カイルあのコングマンを一瞬で倒した ! ?それも……おたまとフライパンで ! ?だ、誰なんだ、いったい ! ?
? ? ?誰だなんて酷いなぁ。もしかして遊び呆けていて妹の顔も忘れちゃったのかなぁ、お兄ちゃ……ん ?
カイルえっ…………ああああ !もしかしてリリスおばさん ! ?
リリスちょっ……誰がおばさんよ !私は確かにリリス、リリス・エルロン !けどおばさんじゃなく天下無敵の17歳なんだからね !
二人リリスさん ! ?
カイル17歳って……わかった !おばさんも具現化時間軸が――
リリスま、またおばさんって言ったわね ! ?
コングマンなんだかてめぇも気に入らねぇツラしてるが……嬢ちゃん……気持ちはわかるぜ。今は嬢ちゃんがチャンピオンだ……やっちまいな。
リリスそうね。お兄ちゃんかと思ったら人違いで申し訳ないことしたと思ったけど、やっぱりなし !それにまだ試合終了のゴングは鳴っていないもの !
カイルウソ ! ? このまま続けるの ! ?
リリス当たり前でしょう !覚悟なさい ! いざ、尋常に勝負よ ! !

Character2話【二回戦】
リリスふっ……なかなかやるじゃない。具現化について難しいことはよくわからないけどあなたの腕がそれなりなのはよくわかったわよ。
カイルへへっ……それはどうもっ !リリスおば……リリスさんにそう言ってもらえるのはオレとしても嬉しいよ !
リリスけど気になることがあるわ。私とあなた……ううんまずお兄ちゃんとあなた……一体どういう関係なの ?これは勘だけど、どうも他人とは思えない。
カイルそれは……。
コングマン試合が終わったらでいいだろ。俺様もよくわからねぇことや気になることはあるがリングの上の世界ではどれも些末な問題よ。
リリスそれもそうね。けど気になることも事実よ。だから……そろそろ終わりにしましょ ! !
カイルくっ……おたまの威力が増した ! ?まだそんな力を残していたなんてっ ! !
ナナリーおいおい。これはマズいんじゃないかい。唸るおたま、鉄壁のフライパン。カイルの奴完全にペースを持っていかれちまってるよ。
ロニいいや……大丈夫さ。
リアラロニ ?
ロニ心配することはねぇよ。あいつも俺もおたまとフライパンの怖さならよく知ってんだ。そしてもうすぐ、身体が思い出すはずだぜ。
ジューダスカイルが動き始めた。ここから逆転するぞ。
カイル(……恐ろしい。けど懐かしい。やっぱりこのおたまとフライパン捌き、どこか母さんらしさを感じる。すごく怖いけど、温かいものがこもってるんだ)
カイルわかったよ、リリスさん。オレはそのおたまもフライパンも恐れない。まっすぐ受け止めて、そしてオレもまっすぐに挑む ! !
リリス望むところよ ! このおたまに全てを込めるわ !
二人てやぁああああ ! ! ! !
イクスど、どっちだ……勝ったのは……………。
リリス…………くっ。
ジョニー勝負ありだ ! このゴングを勝者に捧げるぜ。勝者カイル・デュナミスに !
カイルオレが……オレが……勝った ?
リリスええ、そうよ。お兄ちゃんにも劣らないぐらい見事な一撃だったわ。おめでとう、カイル。あなたがチャンピオンよ。そしてこれがその証。
カイルこれは…… ?
コングマンチャンピオンのバッジだ。なかなか似合ってるじゃねぇか。俺様もてめぇをチャンピオンと認めざるを得ねぇな。
カイル……コングマン。
コングマン今この場はお前のものだ。俺様と嬢ちゃんはさがらせてもらうぜ。せいぜい勝利の一時に酔いしれな。
ロニさすが俺の可愛いカイル ! やっぱりおまえは最高だ !カーイール ! カーイール ! カーイール !あっそれ……カイル ! カイル ! カイル ! カイル !
一同カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル !
カイルロニってば。なんだか恥ずかしいよ。けど、オレ……やったんだな。オレ、チャンピオンになったんだ !
スタンはぁ……はぁ……ようやく着いた。ごめん、困っている人を助けていたら遅れちゃって。
カイルスタンさん ! !
スタンカイル ! おめでとう !外までカイルを呼ぶ歓声が聞こえてきたよ !チャンピオンになったんだな !
カイルちょ、恥ずかしいですよ。
スタンあははっ。ごめんごめん。なんだか俺もすごく嬉しくてさ。カイル、よくやったな。本当におめでとう。
カイル……スタンさん。
スタンそうだ。せっかくだし何かプレゼントを買わなきゃな。お祝いってことでさ。
カイルいえ……オレはこう……今みたいに抱きしめてもらえれば……それだけで……。
スタン……カイル。お前、泣い――
カイル泣いてませんから !だってオレは最強のチャンピオンですよ ?この闘技場で一番強いんですから !
ロニカイル……強がりやがって。ここぞというときにガキになりきれねぇんだよな。
ナナリーいいや。カイルはもうガキじゃないってだけさ。
ロニ……そうかもしれねぇな。
カイルおーい ! みんなもチャンピオンバッジ見てよ !金細工も入っていてすごく高そうなんだ !これってオレのおやつ何日分ぐらいするんだろうね ?
リアラふふっ。カイルってばあんなにはしゃいじゃって。
ジューダス子供だな。
二人ああ。やっぱまだガキだ。
? ? ?チャンピオンになったぐらいで……悲しいわね。やはり期待しすぎたかしら。
カイルうわっと。いてて……。
? ? ?……失礼、カイル。
カイル君……オレを、知っているのか ?
? ? ?さあ、どうかしら。
スタン二人とも大丈夫か ! ?
カイルえっ……は、はい。ちょっと転んだだけです。
? ? ?もちろん、わたしも平気です。この程度で転んだりなどしませんから。
カイル……この程度で、か。オレはチャンピオンのカイル・デュナミス。君は ?
リムルわたしはリムル。最強を目指すただの剣士。そして、さっきスタン・エルロンの弟子になった者よ。
カイルスタンさんの弟子 ! ? ど、どういうことだ ! ?
スタンえっと……実は困っていた人っていうのは彼女、リムルのことでさ。どうして師弟になったかと言うと――
リムル知る必要はないわ。あなたには関係ないもの。
カイル…… ! !
ロニあぁ ? なんだあいつは ? せっかくのカイルの記念すべき場に乗り込んで来たうえ上から目線で偉そうに言ってくれるじゃねぇか。
ジューダスおい ! やめないか !もしカイルが焚きつけられたら――
カイルリムルさん。オレと勝負しようよ。
リムルチャンピオンの方から挑戦状を叩きつけてくるとはね。
スタンお、おい。二人とも……。
カイルリムルさん。断ったっていいんだよ。師匠の前で負けるのが嫌ならね。
リムル今の実力さもわからない、か……。まあいいわ、カイル。その安い挑発に乗ってあげる。
リムル色々と気になることはあるけどリングの上ではどうでもいいわ。今は全て後回し。さあ、早くはじめましょう。
イクスえ、えっと……突然ですが只今よりチャンピオンのカイル選手と挑戦者リムル選手の試合が行われることになりました !
ロニいけぇ ! カイル ! やっちまえ ! !
ジューダス…………。
カイルもしオレが勝ったら、さっきの質問に答えてもらうよ。
リムル勝ったら、ね。
ジョニーこいつは燃えてきた。みんなも付いてこいよ。さあ、いくぜ、レディー……ファイトッ ! !
リムルいくわよ、カイル ! いざ、尋常に勝負 ! !

Character3話【二回戦】
カイル爆炎剣 ! 爆炎剣 !まだまだいくぞ……爆炎剣 ! !
リムル炎を纏った剣技……やるわね。けど、これ以上はさせないっ――瞬雷刃 ! !
カイル早いけど見切れないわけじゃない !いくぞ、雷をも追い越す旋風……空破絶風撃 ! ! ! !
リムル! !
ロニよっしゃ ! カイルが追い詰めたぞ ! !いっけぇ、そこだ ! 遠慮するこたねぇ ! !チャンピオンの強さを見せつけてやれ ! !
リアラカイル ! ! 頑張って ! !
ナナリー驚いたね。カイルがあそこまで強くなってるとは。一方であのリムルって子は後手に回ってばかり。もう勝負は決まったも同然ってやつか。
ジューダスああ……すでに雌雄は決している。残念ではあるがな……。
リアラジューダス ?
カイルはぁはぁ……よし、このまま押し切る ! !これでトドメだ、全力でいくぞ ! !
リムル…………そう、終わりなのね。わかったわ。なら試合のお礼として最後にわたしの本気も少しだけ見せてあげる。
ロニ追い込まれたのに攻めの構え ! ?あの女剣士、何を考えてるんだ ! ?
カイル強がりもそこまでだ !この剣で全てを焼き切る……爆炎閃業波 ! !
リムル……かわしてみなさい。ただ最強を求め振り続けた名もなきこの一振り……わたしにとっての切り札を ! !
ジューダスマズい ! ! カイル、さがれ ! !
カイルえっ………… ?
リムル雌雄は決した。
カイルぐはぁぁああああ ! ! ! ! !
一同カイル ! ! ! ! ! !
ジョニーこ、こいつはたまげた……。
イクス何が起こったんだ……。早すぎて目で追えなかった……。
カイルくっ……オ、オレは……まだ負けて……。
リムルまだ続けるというの ?
ジューダスカイル、もうやめろ。試合は終了だ。
カイルジューダス……。
ジューダス審判も何をしている。早くゴングを鳴らせ。
イクスえっ……あ、ああ ! これにて試合終了です !勝者は挑戦者リムル !彼女がこの闘技場の新たなチャンピオンです ! !
リムル……ダメね。まだまだだわ。
カイルなん、だと…… ?
リムルいえ、違うの。今のはキミのことじゃない。さっきわたしが放った一振りのことよ。あれはダメ、まだ完成には程遠い……悔しいわ。
リアラそ、そんな……さっきの一振りはまだ技として未完成だっていうの……。
ナナリーチャンピオンもどうでも良いって態度だね。けど、そうか……ジューダスが言っていたすでに雌雄は決しているっていうのは……。
ロニああ。あの女剣士は勝利を確信していたんだろうよ。後手に回っていたのはカイルの実力を測るため。くそっ、いけすかねぇ奴だぜ。
カイルそんな……ようやくチャンピオンになれたと思ったのに……。スタンさんの前だって言うのに……オレは……。
リアラ……カイル。
カイル……リムルさん、お願いします。もう一度、もう一度オレと戦ってください。
ジューダスカイル、冷静になれ。おまえは戦える状況じゃない。
リムル同感だわ。それに今のわたしにはキミと戦う意味も見出だせない。悪いけど、お断りよ。
カイル……お願いします。
リムル情けないわね。チャンピオンなんて肩書きがそんなに大事 ?
カイルそれは違います ! チャンピオンなんてどうでもいい !だってオレがチャンピオンになりたかったのは……スタンさんと戦うためだから !
リムルスタンさんと……どういうこと ?
カイルオレはスタンさんみたいに強くなりたい……。そのためにもスタンさんの強さをこの身で感じたい。
カイルけど……スタンさんはオレと本気で戦ってくれたことはまだ一度もないんだ。
カイルオレにはわかる。スタンさんがオレに向ける剣はまだどこかに遠慮が宿っている。だからオレは――
リムル――強さを示したかった。遠慮なくぶつかってきても自分は大丈夫であるという証として、このチャンピオンバッジを求めたのね。
カイルそれは ! いつのまに !
リムルそこに落ちていたわ。さっきキミが倒れた時に取れたのでしょうね。
カイル……もう、あなたのものだ。
リムルならもらっておくわ。それじゃあね。
カイル待ってください !お願いです、もう一度オレと戦ってください !
リムルふっ……粘るわね。そういうところは嫌いじゃないわ。
カイルそれじゃあ―― !
リムル勘違いしないで。試合はお断り。最強を目指しているわたしにとって今のキミは戦う価値がない弱者。
リムルけど、それは今の弱いキミのままだったらの話。だからチャンスをあげるわ。そうね……何がいいかしら。
ジョニーなら俺から提案だ。
リムル……ジョニー・シデン。その提案とはなんですか ?
ジョニーこの資料に目を通してくれ。お前たちも観客も誰もが胸を熱くする最高のセットリストを用意したぜ。
リムルこれは…… ! ふふっ……面白いわね ! !いいわ、乗ってあげる !
リムル皆のもの、聞きなさい ! チャンピオン権限を以て「ビフレスト式武闘会」開催を宣言するわ ! !
一同「ビフレスト式武闘会」 ! ?
リムルカイル ! わたしと戦いたければ「ビフレスト式武闘会」の四天王を全て倒しわたしとのチャンピオン戦まで勝ち上がってきなさい !
カイルああ、やってやる !四天王が誰だか知らないけど全員倒してやるぞ !
リムルふっ……そう簡単にいくかしらね ?ジョニーさん、頼むわ !
ジョニーカモン ! 四天王たち !
? ? ?まさかチャンピオン権限が発令されるとはね。闘技場のチャンピオンはまさに一国の王に等しい存在。これは私たちも招集に応じなければならないな。
? ? ?私なんかが四天王で良いのでしょうか。スタンさんの方がふさわしい気が……。
? ? ?どうでもいいけど、これってちゃんとギャラは支払われるんでしょうね ?
? ? ?チッ……これも仕事とはいえどうして僕がこんなことを。
カイルそ、その声は ! ?
カイルウッドロウさん ! フィリアさん !ルーティさん ! リオンさん !ソーディアンマスターが四天王だったのか ! ?
リムルあら、怖気づいたのかしら。あなたの強さを求める覚悟はそんなものだったの ?
リムルそんな腑抜けた根性でスタンさんと本気で戦いたいなど笑止千万 ! !やはりあなたは弱いわね、カイル ! !
カイルくそっ……言わせておけば ! ! いいよ、やってやる !四天王全員を倒して、リムルさんあなたの元にたどり着いてみせる ! !
カイルそしてチャンピオンバッジを取り戻したときにはあなたは一体何者で、どうしてオレを知っているのかスタンさんとの師弟関係についても答えてもらうぞ !
リムル約束するわ ! 勝つことができたらの話ではあるけど !せいぜいあがきなさい、カイル・デュナミス ! !
イクスそれじゃあさっそく試合を――
リリスもういい加減にしなさーーい ! !さっきは間違って乱入しちゃった手前ずっと黙っておとなしくしていたけど我慢の限界よ !
カイルうわっと ! リ、リリスさん ! ?
リリスまったく。さっきからずっと戦いっぱなしで聞きたいことも聞けやしない !
スタンえっ、リリス ! ? そこにいたのか ! ?
リリスい・た・の・か……ですってぇ ?
リリス闘技場にお兄ちゃんらしき人がいるって聞いて見つけたと思ったら人違い。
リリスどこにいるのかと思ったらリムルと一緒に遊んでいたお兄ちゃんに私の気持ちはわからないかぁ……。
スタンち、違うぞ ! 遊んでいたわけじゃない !俺たちは一緒に修行をしていたんだ !
リリスそんなのどうでもいいわよ !お兄ちゃんのバカ~~~~ ! !
スタンお、落ち着いてくれ !
リムルそ、そうです ! 師匠は悪くありません !
リリスリムルも酷いじゃない ! 勝手に出ていくなんて !
リムルそ、それは……。
スタンえっ、リムルってリリスと知り合いだったのか ?
リムル………はい。
リリスこの世界に来て知り合ったの。リムルとの出会いは――
ジューダス腹の虫の大合唱だな。
カイルしょうがないだろ。ずっと戦いっぱなしでもうお腹ペコペコなんだ。
スタン俺も腹が減ったなぁ。
リムル……面目ない。
リリスふふっ、仕方ないな。それじゃあ厨房に行こっか。料理を作ってあげるね。食事を取りながらみんなで一度ゆっくりお話しましょう。

Character4話【三回戦】
イクスえっ……ということは、鏡映点リストにはなかったけどリムルもカイルたちと同じ世界かつ時間軸から具現化された鏡映点だったのか ! ?
リムルわたしはただの武芸者でしかないけれど元の世界の記憶があるということはそうみたいね。
リアラ鏡映点リストになかったのは、わたしたち全員がリムルさんを知らなかったのだから無理もないわ。
ロニだが、あんたほどの強者がただの武芸者ねぇ……。本当は俺たちの命を狙っていた闇の組織の手先だったり何か言えないことがあって隠してるとかじゃねぇよな ?
リムルどのように想像していただいても結構。わたしは自分の身の上を語るつもりはないわ。
カイルロニ。リムルさんは絶対に悪い人じゃないよ。一緒に戦ったオレにはわかるんだ。だってリムルさんの剣はすごく真っ直ぐなんだもん。
ロニそうかよ。まあ、人を見る目は俺よりお前の方が上だろうから悪人じゃないのは間違いないんだろうよ。
ジューダス…………。
ナナリーリムル。この世界はただでさえややこしい状況なうえあたしたちは特に複雑な状況に置かれている鏡映点だ。ここまでで不明点や聞いておきたいことはあるかい ?
リムルいえ。この世界のことや具現化については概ね理解したつもりだから大丈夫よ。それに四英雄の方々との時間軸の違いも。
リアラそれにしても過去のコングマンさんやリリスさんまで具現化されていたなんて驚いたわよね。
カイルオレなんて試合中だったしパニック寸前だったよ。コングマンまではなんとか状況を整理できてたけどリリスさんが現れたときは頭が真っ白になりかけた。
ロニカイル。今後リリスさんの前で頭が真っ白になったとしても今から言うことだけは忘れないでいろよ。
ロニそれはな……人妻のリリスさんも、美少女のリリスさんもどっちも最高ってことだ♪
ナナリー最低なあんたはリリスさんに謝罪を忘れないようにねー。
ロニギャーーーー ! ! リリスさん、ごめんなさい ! !
リムル………………。
ジューダススタンやカイルだけでなくリリス・エルロンの存在も気になるようだな。
リムルそれは…………。
リリスなになに ? リムルってば私のこと気にかけてくれていたの ?もう、やっぱり可愛いところあるじゃない♪
リムルひゃっ ! ! かあ……リリスさん ! ?
リリス本当は勝手に修行に出ていったこと叱り飛ばしたかったけどその反応に免じて許してあげる。
リムル…………それよりもそちらの話し合いは終わったのですか ?
リリスうん。ウッドロウさんから事情は聞いたよ。私もコングマンさんも難しいことはよくわからなかったけどね。
リリスまぁ……ちょっと驚く話もあったけど……。
カイル驚く話って……もしかして……。
リリスでもいいの。今はお兄ちゃんと一緒にいられるしここではリムルって言う可愛い妹もできたことだしね ♪
一同妹 ! ?
リムル言っておくけど本当の妹ではないわよ。この闘技場の街で暮らしていくのに女一人では何かと物騒だから、姉妹と名乗っているだけよ。
リリス広場で女性につきまとっていた賊を一緒に懲らしめたのがきっかけで一緒に暮らすようになったのよね。
リリスあれ……私は具現化されてからは料理人として生活してきたし……よく考えてみたらリムルと出会ってからまだあまり日は経ってないわね。
リムル言われてみれば……。わたしは各地を武者修行していましたから。そもそもお互い闘技場の街にやってきたのが最近のことです。
リリスなのにずっと一緒にいた気がする。きっと私たち相性がいいのね。
カイルリリスさんとリムルさん、外見もどことなく似ているし本当に血の繋がった姉妹って言われても何も違和感ないですよ。
リムル血の繋がった姉妹……ではないわ。
リリスけど、もう家族みたいなものよ。私のことはリリスお姉ちゃんもしくはリリスお姉様って呼んでくれていいからね。
リムル遠慮しておきます。リリスさん。
リリスもう。自分の身の上だけじゃなく私と同じ具現化された存在だったこともずっと黙っていたり、妙につれないんだから。
リリスまあ、そういうのは勝手に家を出たうえ手紙すらよこさないお兄ちゃんで慣れているけどね。
リリスそういえばお兄ちゃんとリムルは一時的だけど師弟関係になったのよね。はぁ……これ以上リムルがお兄ちゃんに似ないといいけど。
スタンえっ ? 俺のこと呼んだか ?
リリスあっ、お兄ちゃんたちも来たんだ !皆さん、もうお話は終わったんですか ?
コングマンおうよ。共に再会を熱く喜びあったぜ。
ジョニーコングマンは相変わらずだよな。まさかこっちの世界でも闘技場のチャンピオンをやっているとは思わなかったぜ。
コングマン馬鹿言ってんじゃねぇ。たとえ世界が違っても俺様がチャンピオンであることに変わりはねぇのよ。
コングマンそしてフィリアさん……あなたの美しさも変わらない。いや、ますます可憐になられた……。
フィリアえ、えぇっ……私ですか ! ?
ロニおい、コングマン ! てめぇなにしてやがる !偉大なる英雄フィリアさんを口説こうって気ならその暴挙、黙って見過ごすことはできねぇな !
コングマンあぁ ? なんだてめぇ ?まさかてめぇもフィリアさん狙いか ?
ロニそんなんじゃねぇ !ただアリかナシかで言えば全然アリだ ! !
ナナリーこのバカかい ? 話をややこしくしてるのは ?
ロニギャーーー ! ! ごめんなさいごめんなさい ! !
コングマン今更謝ったって遅すぎるぜ。ちょうどいい、フィリアさんにふさわしい男は誰か今この場で決めようじゃねぇか。
スタンおい、コングマン。そういうのはやめろよ。フィリアが困ってるじゃないか。
フィリアスタンさん…………。
コングマンて、てめぇ ! スタン ! !なにひとり抜け駆けしようとしてんだ !汚ねぇぞ ! !
スタンいや、俺はそんなつもりじゃ――
コングマンもう面倒くせぇ ! 全員まとめてかかってきやがれ ! !

Character5話【四回戦】
カイルこのショウロンポウ、うっまいなぁ ! !肉汁がジュワッと口の中に広がって……もう、たまらないよ !
リムルこっちのチャーハンもイケるわ !このパラパラ感もくせになるしなんといってもこの焼き豚がいい味を出しているわ !
リアラふふっ。二人ともよく食べるわね。
カイルずっと戦いっぱなしだったのもあるけどこの料理、すごく美味しいんだもん !
リムルさすがリリスさんよね。
イクスけど、こんな美味しい料理を食べられなかったコングマンさんを思うと可哀想になってくるな。かといって医務室に持っていくわけにもいかないし。
ジョニーあいつはフィリアのために戦い、そして散った。奴としても何も思い残すことはないだろうさ。
フィリア私としてはやはり心配なのですが……。
ウッドロウなに。私が後で杏仁豆腐でも差し入れするとしよう。だから今はこの目の前の御馳走を満喫しようではないか。
スタンそれもそうですね。よし、どんどん食べるぞ。店員さん、すみませーん !追加の注文お願いします !
ロニはい ! 今お伺いしまーす !
リリスロニさん ! ついでにこの料理も運んで !
ロニあいよ ! 電光石火の配膳技をみせてやるぜ !
カイルロニ。お仕事お疲れ様。チャーハンとショウロンポウを追加でお願い !
ロニそう言われると思ってリリスさんが用意してくれていたぜ……はいよっと !
スタンおーい、リリス ! ありがとな ! !どの料理もすっごく美味しいよ !
リリスありがとう、お兄ちゃん ♪けど今忙しいから感想は後で聞かせてね。
カイルなんだか忙しそうだな。
ロニもう少ししたら団体が来店予定なんだよ。他の厨房スタッフは疲れてバテちまってるし……ホールは俺一人でもなんとかなるが……。
ナナリーなるほどね。ならあたしが手を貸すよ。
ロニこいつは正直助かるぜ。
リアラロニ、ナナリー、私も手伝うわ。
ナナリーいや、厨房の広さから考えてあまり大勢だとかえって効率が落ちちまう。今回はあたしだけで十分さ。
ロニ気持ちだけもらっとくよ。ありがとな、リアラ。
ナナリーというわけだ。悪いがお暇させてもらうよ。
ウッドロウそれでは私たちもそろそろ行こうか、フィリア君。
フィリアそうですね。お腹も満たされましたから。
カイルウッドロウさんとフィリアさんも行っちゃうんですか ?
フィリア私たちは四天王という立場なので挑戦者よりも一足先に闘技場について試合の準備をしなくてはならないのです。
カイル……そうか。もうすぐ……試合がはじまるのか。
ウッドロウカイル君。君と戦えることを楽しみにしているよ。それでは、闘技場で。
イクスジョニーさん。俺たちも審判の仕事がありますしそろそろ闘技場に戻りますか ?
ジョニーそうだな。だが焦ることもないだろう。このお茶を飲み終わった後でもいいんじゃないか ?
イクスそれもそうですね。なら最後にデザートでも食べて行こうかな。
リムルわたしはこのゴマ団子だけもらっていくわね。あとで食べるおやつとして。
スタンそれじゃあ俺も二つほど……。よし、リムル。行くとするか。
カイルえっ ? 二人ともどこに ?
スタン修行だよ。リムルは切り札となる一撃を――
ソーディアン・ディムロススタン。それはお前とリムルが師弟関係になった理由とも関係している。黙っておくと決めたのではなかったか ?
リムル……いえ、もう師弟関係になった理由を隠しておく必要はなくなったわ。未完成とはいえ、あの一振りを見せたんだもの。
カイルあの一振り……って、もしかして ! ?
リムルええ。あなたを倒したあの一振りよ。
リムル今のわたしには切り札がない。どんな不利な状況をも、跳ね返せる強力な切り札が。
リムルその切り札を手に入れたくて修行をしていたの。けれどうまくいかず……難儀していた。その時、スタンさんと出会い、師弟関係になったのよ。
リムル……スタン・エルロン ?そ、それがあなたの名であると……。
スタンああ。そうだけど、何か気になることでもあるのか ?
リムルいえ……。
スタンそれより何か困っているみたいだったけどどうかしたのか ? 俺でよければ相談に乗るよ。
リムル……自分が未熟なだけですので、お気になさらず。
スタンそうはいかないよ。「困っている人を見過ごすな」っていうのがエルロン家の家訓なんだ。
スタンそれに誰かの力を借りることは恥ずかしいことじゃない。リムル、俺でよければ何でも言ってくれ。
リムルスタンさん…………。
カイルそういう経緯で二人は師弟になったのか……。
スタンまあ、師匠って言っても、俺は何もせずにずっとリムルの横にいるだけなんだけどな。
リムルそれもわたしが頼んだことです。ただ、師匠として側にいて欲しいと。それだけでも……わたしにとっては……。
スタンそっか。まあよくわからないけどリムルの役に立っているならよかったよ。
カイル…………。
スタンカイル。俺は一度リムルを助けると決めた以上リムルの力になる。だけどカイルのことも応援しているからな。
カイル……スタンさん。
リムルわたしは必ず、あの切り札となる技を完成させそしてまた闘技場に戻ってくるわ。より強くなってね。
リムルだからカイル、不安なんて感じている暇ないわよ !四天王を全て倒し、死に物狂いで這い上がってきなさい !そして、わたしを倒してみせるのよ !
カイル……ああ、そうだよな。単純な話さ。リムルさんが強くなるなら、オレも強くなればいい。それだけだよな……。
カイルやってやる ! 絶対にチャンピオン戦までたどり着いてみせる ! だから次会う時は――
二人――闘技場のリングの上で ! !
ジョニーいやぁ、これが若さか。最高だぜ。身体が本調子なら一曲披露したいくらいだ。
イクスけど……四天王は全員ソーディアンマスターですよね……。それって冷静に考えれば……。
カイルうん……オレは勝てない。
リアラ……カイル。
カイルけど諦めるつもりはないよ。普通に戦ったら勝てないのならば頭を使え。そうだろう、ジューダ……ス ?
カイルあれ ! ? ジューダスはどこ ! ?相談しようと思っていたのに ! ?
イクスジューダスは…………。
ジョニーやめろ、イクス。約束しただろ。
カイル二人とも何か知ってるの ? もしかして……ジューダスの身に何かあったんじゃないよね ! ?頼む、教えてくれ !
イクスお、落ち着いてくれ !わかった……今、話すから !
ジョニー今回の闘技場は、古のビフレストの形式を採用した特別な武闘会になっている。つまり今回はルールも何もかも、全てがビフレスト式なんだ。
ジョニージューダスはビフレスト式闘技場の掟に従い地獄の修練場……通称【愚者の館】に連行された。
カイル地獄の修練場……だって ?そんな、なんでだよ ! ジューダスがいったい何をしたっていうんだよ ! ?
イクスジューダスはカイルとリムルの戦いを止めに入った。あれはチャンピオン戦への乱入行為とみなされるんだ。
ジョニーチャンピオンに挑んだ乱入者は勝たねばならない。だが乱入しておきながら破れた愚か者には地獄のような罰がくだされる。その裁きの場が……。
二人……愚者の館。
カイルジョニーさん ! 愚者の館はどこにあるんですか ! ?今すぐジューダスを助けに行かないと !
ジョニー教えてもいいが、無事に帰って来られる保証はない。それに、試合の方はどうする ?
カイルそれはそうだけど……だってジューダスが連行されたのはオレのせいってことだろ !なのにジューダスを放っておくなんて――
リアラカイル。闘技場に向かいましょう。
カイルリアラ ! ?
リアラジューダスはカイルを思い、黙って去ったのよ。
リアラジューダスを思うのなら今カイルがやるべきことジューダスが望むことはなに ?
カイル……闘技場で、勝ち進むこと。
カイルけど……今のオレにいったいどうやってソーディアンマスター四天王を倒せっていうんだ……。
イクス俺もできれば力を貸したいけど……。
ジョニーダメだ。審判である以上特定の選手に肩入れはご法度だぜ。
カイル……ジューダス。
リアラカイル、大丈夫よ。わたしに考えがあるわ。
カイル……リアラに ?
ウッドロウ一対一での勝利は絶望的。だから複数人での戦いを選ぶ。ここまでは賢い策といえよう。
フィリアですがそれはソーディアンマスターを同時に複数人相手にするという意味でもあります。
ウッドロウさて、いったいどのような手で我々を倒すつもりなのかな。
リアラカイル !
カイルああ、わかってる。
ウッドロウ……お手並み拝見といこう。
ジョニーいくぜ……レディ・ファイトッ ! !
二人いざ、尋常に勝負 ! !

Character6話【四回戦】
カイルくっ……さすがウッドロウさんとフィリアさん。これだけ攻め込んでるのに一瞬の隙すらも見せないなんて……。
リアラカイル ! 諦めないで !援護するからわたしにあわせて !
カイルありがとう、リアラ !よしっ、今度こそキメてやる ! !
ウッドロウカイル君。君たちの連携は大したものだ。共に多くの困難を乗り越えてきた絆が垣間見える。そしてどれをとっても最善手だ。
ウッドロウだが、だからこそ読めてしまうのだよ。君たちが取りうる攻撃……君たちの次の一手が。
フィリアリアラさん ! 申し訳ありませんがこの晶術で妨害させてもらいます !
リアラ――キャッ ! !
カイルリアラ ! !
ウッドロウ体勢が崩れた。もうどのような策を講じようとこの攻撃を防げまい。いくぞ、カイル君……リミッターを外させてもらうぞ !
カイルくっ、さすが賢王ウッドロウ。オレたちが打つ手は全て想定済みか……ここでオレを確実に討ち取る狙いだったのか。
リアラ言ったでしょう。わたしたちの考えていることは二人には全てお見通しだろうって。けど、だからこそ、そこに勝機もある ! それが今よ !
カイルリアラ…………頼む ! !
リアラ任せて ! ここまで近づけばフィリアさんの動きを止められる !
フィリアっ、……眩しいっ ! !
クレメンテ晶術による目潰しじゃと ! ?
イクティノスだが一番の想定外は……。
ウッドロウリアラ君が前に出た、か。私の攻撃を受ければただではすまない。危険な賭けと知りながらも。
リアラそうよ……カイルの勝利のために ! !
ウッドロウ覚悟の上ならば良し。
カイル……リアラ。
リアラカイル。あなたに未来を託したわ――
カイルリアラァアアアアアア ! ! ! ! ! ! ! !
ジョニーウッドロウの一撃でリアラはダウン。だがそのリアラによりカイルの活路が開かれた、と。
ウッドロウうっ……反動、が……。
カイル二人からしたらこんなやり方は賢くないかもしれない。もっと良策だってあったのかもしれない。けど……これがオレとリアラが共に出した答えなんだ。
カイルだからこの愚策を最善策とし、あなたたちを討つ ! !いくぞっ――――――――爆炎閃業波 ! ! ! !
ウッドロウ見事…………。
フィリア……ですっ――――。
イクスそんな……まさか本当に……。
ジョニーふっ……会場からざわめきが聞こえるな。だがこれが現実だぜ――勝者はカイル !四天王の二人を討ち取ったのは挑戦者カイルだ ! !
観客カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル !カイル ! カイル ! カイル ! カイル ! カイル !
カイル…………っ。
リアラここ、は……。
カイルリアラ ! よかった !目を覚ましたんだね !
リアラふふっ……カイルったら。確かにウッドロウさんの一撃は堪えはしたけどおおげさね。ちょっと気を失っていただけなのに。
カイル…………ごめん……オレのせいでジューダスに続いてリアラまで――
リアラ――犠牲にはなってないわよ。それはジューダスも同じ。
カイル…………リアラ。
リアラもうそろそろ次の試合がはじまるわよ。わたしはしばらく医務室から出られないけどここで応援してるわ。
カイルリアラ……うん、ありがとう !絶対……絶対に、次の四天王も倒してみせるよ !
カイル……とは言ったものの今はロニとナナリーは仕事で手がいっぱいだしリアラもジューダスもいない……。
カイルなのに、次の対戦相手の四天王は現役バリバリの母さんとリオンさんなんだよな……。
カイルくそっ……あの二人をオレ一人で相手にしないといけないなんていったいどうしたらいいのか検討もつかな――
カイルうわっと ! !
リリス……あっ、カイル。ごめんなさい、気が付かなくて。
カイルい、いえ。オレは大丈夫ですけど……リリスさん、何かありました ?そんな風にボーッとして……。
リリスえっ……あ、ああ。ちょっと考え事していただけよ。また私に黙ってどこかにいなくなったお兄ちゃんとリムルをどうしてやろうかしらってね。
リリスまったくもう。帰ってきたらただじゃおかないわ。
カイル…………リリスさん。
リリスそういえばカイルこそどうしたの ?困っているなら私が助けになるわよ。
カイルえっ ! ? いいんですか ! ?
リリスもちろん。カイルも知っているでしょう ?「困っている人がいたら見過ごすな」って言うのがエルロン家の家訓ですもの。
カイルよっし ! これで首の皮が一枚繋がったぞ !リリスさん、お願いします。どうかそのおたまとフライパンでオレを助けてください !
リリスええ ! 任せなさい ! !

Character7話【五回戦】
カイルえっと……リリスさん。そのおたまとフライパンをオレのために振るってはくれないんですか ?
リリスなに言ってるのよ。疲労が一発で吹き飛んじゃうと評判のエルロン家特製スタミナ料理を作ってあげたじゃない。
カイルいや、確かにおかげで身体は絶好調なんですが……えっと、一緒に戦ってくれることを期待していたというか……。
リリスごめんなさい。もう厨房に戻らなきゃなのよ。それに私、戦いは専門じゃないから。
カイルあんなに強いのに ! ?
リリス私を倒したカイルなら大丈夫よ !それじゃあ、頑張ってね !
カイルあっ、ちょっと待って ! リリスさん ! !えっ……どうしよう。二対二で試合申請してるんだけど ! ?
イクスそれでは次の試合がはじまります !挑戦者カイルの入場です ! !
カイルああっ、もうこうなれば気合だ ! !一人でだってオレなら大丈夫 !やってやる、やってやる、やってやる。
リオンわざわざ負けに来るとは物好きな奴だな。
カイル…………リオンさん。
リオンふんっ。
カイルあれ……けど、リオンさんも一人 ?ルーティさんは……。
リオンあいつは僕が棄権させた。心が乱れれば自ずと剣も乱れる。味方の足手まといほど厄介なものはないからな。
リオンそれにお前のような雑魚が誰と組もうがさしたる違いはないからな。僕一人で十分だ。
カイル随分と言ってくれるじゃないですか。
リオン貴様と無駄話をするつもりはない。はじめるぞ。
カイル臨むところだ !
イクス一対一ながらこれがカイルの四天王最終戦だ !果たして勝利なるか……レディ・ファイトッ ! !
リオンいくぞ、シャル ! !
ソーディアン・シャルティエはい、坊ちゃん ! !

Character8話【五回戦】
リオンディアボロス・ティア。
カイルうっ……ぐ…………。くそっ……こんな、ところで……。
リオンもう立ち上がることすらできないのにまだ続けるつもりか。
カイルオレは……絶対に、諦めない……。
リオン往生際の悪い奴だ。だがそれもここまで。シャル、終わりにするぞ。
ソーディアン・シャルティエはい ! 坊ちゃん !
リオン――トドメだ ! !
? ? ?そう勝負を急ぐこともないだろう。
カイルえっ ! ? まさか…… ! ?
リオン……どういうつもりだ。
ジューダス僕が相手をしてやる。さっさとかかって来い !
カイルジューダス ! どうしてここに ! ?地獄の修練場「愚者の館」に連行されたはずじゃ ! ?
イクスまさか……課せられた特訓という名の罰を全てこなし地獄の底から舞い戻ってきたのか ! ?
ジューダスちょうどいいウォーミングアップだとは思ったがまさかあれが地獄の特訓だったとはな。
カイルジューダス ! 無事に戻ってきてくれて本当によかった !ずっと心配していたんだ !
ジューダスまったく。僕のことよりも少しは自分の置かれているこの状況を心配したらどうだ ?
カイルこの状況、オレには何も心配することなんてないよ。
ジューダスそれもそうか。カイル、後は任せろ。
リオンこの僕に挑むというのか ?
ジューダスその通りだっ ! !
リオンふん……無駄だ。お前がどう来るのかなど手に取るようにわかる。
ジューダスだろうな。それは僕も同じだ。
リオンなら同じ技がぶつかれば僕とお前のどちらが競り勝つかもわかっているはず、だっ ! !
ジューダスくっ……。
リオンそんなナマクラで僕たちに勝てると思っているなら間違いだ。この一撃で沈めてやる ! !
ジューダスふっ……思ってなどいないさ。代わりなんていないからな。
ジューダス――シャルの。
ソーディアン・シャルティエ―― !
リオンシャル ! 集中しろ ! !
ソーディアン・シャルティエす、すみません ! 坊ちゃん !
ジューダス心が乱れれば剣も乱れる。それはソーディアンでも同じ……もらった ! !
リオン――甘い ! !
イクスリオンが防いだ ! ?
ジョニーおっと。ジューダスは剣を弾かれて丸腰になっちまった。こいつは勝負ありか。
リオン……なぜ剣をなくしても動じない。
ジューダス今にわかるさ。
カイルジューダス ! 受け取れ ! ! ! !
ソーディアン・シャルティエ坊ちゃん ! カイルが剣を投げて――
リオンわかっている ! 先に切り捨てるぞ !
ジューダスいくぞ……いざ、勝負 ! !
二人――ハァッ ! ! ! !
イクス……ど、どっちだ。どっちが先に相手を討ったんだ ?
ジョニーこいつは……。
リオン & ジューダス……………っ。
ジョニー両者は完全に同時の相打ち !よってこの試合はリングに残っているこの男挑戦者カイルの勝利だ ! !
ソーディアン・シャルティエ坊ちゃん。申し訳ありません。僕が気を取られることがなければ……。
リオンいや、気にすることはない。それよりも気になるのは……。
ジューダスやはりお前もシャルのマスターだったのか ?そう尋ねたければ尋ねればいい。
リオンお前に興味などない。僕は行かせてもらう。
ジューダスカイル。助かった。
カイルオレも今と同じように助けてもらったからね。借りを返しただけだよ。
ジューダスお前もなかなか言うようになったな。
ジューダスだが僕が共に戦えるのはここまでだ。あとは観客席で見守っている。
カイル……ああ、わかったよ。けどリアラだけじゃなくジューダスにも誓わせてくれ。
カイルオレ、絶対に、リムルさんに勝ってみせる。絶対に。
ジューダスその意気だ。リムルは修行を終え更に強くなって帰ってくるだろう。だからカイルも最後の最後まで修行に励め。
ジューダスチャンピオン戦、僕も楽しみにしている。

Character9話【決勝戦】
ロニはぁはぁ……なんとか仕事を片付けてきたぜ。
ナナリー間に合ったみたいだね。まだチャンピオン戦ははじまってないみたいだよ。
ジューダスこれからはじまるようだな。
リアラみんな、見て ! 出てきたわよ !
ジョニーさあて、いよいよチャンピオン戦だ !四天王を倒しここまで這い上がってきたカイル修行を終えたリムル、両者の入場だぜ !
二人………………………。
カイルリムルさん。切り札、完成させたんだね。
リムルわかるの ?
カイルああ。その澄んだ瞳を見てピンときたよ。
リムル嬉しいこと言ってくれるじゃない。カイルもいい目つきになったわね。出会った頃よりもずっと強さを感じる。
カイルそれはどうだろ……。ここまで来られたのはオレだけの力じゃない。だから強くなってるかと言われると――
リムルなっているわ。出会ったときよりもカイルは強くなってる。
カイルわかるの ?
リムルええ。キミがここまで来られたのは仲間の助けがあったおかげなのは知っている。けど、大切な点は別にあるわ。
リムルそれは仲間に助けられたことでキミには仲間のためにも勝つ必要が生まれたってことよ。
リムルキミは大切な人のために戦うとき一番強くなれる人間。だから、今のキミはどんなキミよりも最強よ !わたしにはわかるわ !
カイル今のオレがどんなオレよりも最強……か。なんだかそれ面白いね。
リムルカイル。わたしは今すぐにでもキミと戦いたい。けど、その前に聞いて欲しいことがあるの。わたしの正体について。
カイルリムルさんの……正体 ?
リムルわたしね、リリスさんの……うんんあなたの知っているリリスおばさんの娘なの。つまり、あなたとは従兄妹なのよ。
カイルえぇ ! ? そうだったの ! ?
カイルでも、そうか……だからオレのことも知っていたのか。けど身の上は話さないって言っていたよね。今になってどうして ?
リムルキミが変わったからよ。とても強くなったから。この事実を知っても気持ちが揺らいだりましてわたしに手加減なんてしないでしょう ?
リムルそれにわたしも変わった。英雄スタンの血を引いているからじゃない。あなただから、戦いたいの。
カイル……オレ、だから。
カイルありがとう、リムルさん。オレも、リムルさんだから戦いたい。
リムルリムル。そう呼んで。
カイル……わかったよ、リムル !オレと戦おう !
リムルもちろんよ、カイル !それじゃあはじめましょう !
二人いざ、尋常に――
リリスちょっと待ちなさい !その前に家族会議よ ! !
スタンいたたっ。リリス、引っ張らないでくれよ。
二人リリスさんにスタンさん ! ?
リリスさあてと。どういうことなのかな。また私に黙って修行に出かけるなんて。
リムルそ、それは……強くなるために必要で……。
スタンそうなんだよ。だからリリス、怒らないでくれよ。
リリス私は怒ってないわよ !私は……私は……。
カイル寂しかったし、心配だったんだよね。
リリス…………。
スタンリリス。そうだったのか……。
リリス……二人のことはわかってるつもりよ。けどもうちょっと、気を遣ってくれてもいいじゃない。どうして勝手にいなくなっちゃうのよ。
スタンリリス…………。
リムルリリスさん。ごめんなさい。自分の身勝手さはよくわかっています。
リムルけど……最強を目指すことはやめられない。そして自分でも危険な道だとわかっているからこそあなたの優しさに甘えてしまうと思った。
リムルだから……黙って出ていきました。
リムルけどこれだけは本当です。最強を目指すのはあなたを傷つけるためじゃない。あなたが大切だからでもあるのだと。
リリス……リムル。
スタンああ。俺も似たような感じだ。リリスや家族が大切なのは本当だよ。
リリスお兄ちゃんも……。
リリスもう……わかったわよ。これからは二人とも好きにしていいわ。
リリスけど……お兄ちゃんは、最後にお仕置きさせて。そうじゃないと腹の虫がおさまらないわ。
スタンえ、なんで俺 ! ?
リリス当たり前でしょう ! リムルはまだしもお兄ちゃんは何度目だと思ってるの ! ?
リリスリムル。私のことを思っていてくれたならその強さ、今だけ私に貸して。
リムルわかりました。困っている人がいたら見過ごすな。母からの教えでもありますから。
リリスそれじゃあせっかくだしこのおそろいの――
二人ドレスで ! !
スタンちょ、ちょっと待てよ !
カイルスタンさんが困っている。ならオレはスタンさん側につきます。
リムルそれは好都合。一対一もいいけどカイルとスタンさん、戦いたい人と一度に戦えるこの状況も面白いわ。
リリスそれじゃあ家族会議の延長線上ということで――
一同いざ、尋常に勝負 ! !

Character10話【決勝戦】
ジョニー勝負あり ! 勝者はスタン&カイルチームだ !
リリスあーあ。また負けちゃった。
リムルこれが私の実力。まだまだ修行が足りないみたいね。もっともっと、精進していかないと。
スタンカイル。お疲れ様。俺たちがチャンピオンみたいだぞ。
カイルやりましたね ! スタンさん !
スタンそれにしてもカイルすごく強くなったよな。
カイルえっ……そうですか ?
スタンああ。こうして一緒に戦って感じたよ。俺もカイルと本気で戦いたくなった。
カイルスタンさん……。
コングマン良い試合をみせてもらったぜ。さすがの俺様も見入っちまった。
スタンコングマン !よかった、治療が終わったんだな。それならアジトまでついて来てくれ。
コングマン悪いがそいつはごめんだ。俺様は修行のため山に籠もる。
スタン修行 ! ? 大丈夫なのか ! ?
コングマン舐めるんじゃねぇ。俺様はより強くなって帰ってくる。今回のチャンピオンは譲ってやるが次はそうはいかねぇから覚悟しておけ……あばよ !
スタンあっ……コングマン !まったく、相変わらず豪快だな。
カイル……修行か。
カイルスタンさん。オレと戦いたいって言ってくれたことすごく嬉しかったです。けど、今のオレはやっぱりまだまだです。まだ自分自身が納得できない。
カイルだから、勝負はもうしばらくしてからでも大丈夫ですか ?
スタンああ。もちろんだよ。いつでも勝負は受けるからな。
リムルやっぱりカイル……成長したわね。
スタンそうだ。カイルもリムルも修行したいみたいだし俺たち三人でやろうよ。大勢のほうがきっと楽しいしさ。
二人はい !
リリスけどその前に……。
リムルはい。わかっています。
スタンみんなで食事だよな ?
リリスうん♪
ロニとなることを予想して厨房は貸し切りにしておいたぜ !
ナナリー食材も確保しておいたよ。
ジューダスただ闇雲に修行をしてもしっかり食事を取らなければバテてしまうからな。
リアラ早く行きましょう、カイル !
カイルみんな ! ありがとう ! !
カイルよしっ、しっかり食べてしっかり修行してまだまだ頑張ろうね、リムル !
リムルもちろんよ !
二人最強の自分を目指して ! !