Character1話【大樹の精霊1 アセリア領の樹】
ラタトスクここは……どこだ…… ? 寒気がする……。
? ? ?ユアン……どこ…… ?
ラタトスク誰だ ! ?
? ? ?……あなたは……ラタトスク…… ?
ラタトスク何だ、お前は…… ?
? ? ?私…… ? 私は……何…… ?
ラタトスク俺が聞いてるんだ ! お前は――
ラタトスクうわぁっ ! ?
? ? ?また失敗か……。今度こそ上手くいくと思ったのに……。
ラタトスク何だ……この声は…… ?
? ? ?いや……いや……死にたくない…… !死にたくな――
ラタトスクうわああああああああっ ! ?
ユアンこれが世界樹……ユグドラシル…… ?
ダオス……貴様は、アスガルド帝国の者……ではないようだな。ならば立ち去るがいい。
ユアン何者だ ?
ダオス………………。
ユアン失礼した。私はユアン・カーフェイ。この大陸にもう一つの大樹があると聞いてここへ来た。貴公はこの樹に詳しいのだろうか。
ダオスもう一つの大樹……。カーラーンと呼ばれている方の大樹か。
ユアンそうだ。その……私の故郷にも同じような大樹があった。私は故郷に帰るための手がかりを探している。
ダオス――この樹はユグドラシルでありカーラーンだ。私はこの樹をカーラーンと呼んでいる。もう一つの大樹のことは知らぬ。
ユアンそれは、この樹に二つの名前があるという意味だろうか。ユグドラシルとカーラーンと……。
ダオスユアンとやら。貴様が求める答えは黒衣の鏡士とその郎等共が知っているだろう。
ユアン黒衣の……鏡士…… ?この世界――国を混乱に陥れている魔女か。
ダオス我が名はダオス。あの者たちに出会ったら、私の名を告げるといい。
ユアン貴公は黒衣の鏡士の仲間か ?
ダオス違う。しかしまるで知らぬと言うこともない。
ユアン
ダオス大樹カーラーン――ユグドラシルがざわめいた。故にここへ来た。
ダオスしかし大樹に変わりはないようだ。であれば……もしや……。
ユアンな、何だ ? 何を言っている ?
ユアン―― ! ?
ユアン……どうやら招かれざる客のようだ。貴公、心当たりはあるか ?
ダオス……アスガルド帝国の愚か者共だろう。このところ大樹の周りをうろついていた。
帝国兵Aそこをどけ !ただいまより、この樹の周辺一帯の土地はアスガルド帝国軍が接収する !
ダオスこの世界でも大樹を枯らそうとするつもりか醜い人間共 !
ユアン! !
帝国兵A邪魔立てするなら捕らえるまでだ !
ダオスフ、愚かな……。
ユアン話は見えぬが、大樹を枯らすというならば見過ごすわけにはいかない。助太刀しよう !
帝国兵Aたかだか二人で帝国軍に逆らうか !後悔することになるぞ !

Character2話【大樹の精霊3 大樹の元へ】
? ? ?お前なんか……生まなければ……よかった……。
ゼロス―― ! ?
マーク……お ? 起こす前に起きたな。うなされてたから心配したぞ。
ゼロス……あー。可愛いハニーたちに襲われる夢を見ちまってな。そうか、通信当番だったのに寝ちまったのか。
マーク昼飯食いすぎたんじゃないか ?
ゼロス毎度のことながらヴィクトルのメシは美味いからな。ちっと食べ過ぎて胸焼けしちまったのかも……。
マーク……ということにしておくから、悩みがあるなら解決した方がいいんじゃねぇの ?バレンタインの辺りから、考え込むことが増えてるぜ。
ゼロスドキ☆ マーくん鋭い !
マークあー、はいはい。踏み込まれたくねぇのな。わかったわかった。
ダオス鏡精、いるか。
マークおっと、ダオス陛下から連絡とは珍しいな。どうされたんです ?
ダオス鏡映点らしき男を見つけた。拾いに来るがいい。
二人! ?
フィリップこの奥だったよね。世界樹ユグドラシルがあるのは。
マークああ。しかし帝国の連中が世界樹に手を伸ばしてくるとはな。どういうつもりなんだ。
クラトスクレスたちの世界でも、大樹――世界樹はマナを生む樹だという話であった。
クラトスこの世界ではエンコードによってキラル分子を生み出しているのだろう。だとすればそれが狙いではないか ?
フィリップ帝国がその気なら、キラル分子の獲得方法は他にいくらでもある。世界樹を狙うとしたら別の理由じゃないかな……。
ゼロスなあ、マジでこの先にいるのって『あの』ユアンなのか ?
クラトスわからぬが、世界樹に興味を持つユアンという名の鏡映点と聞けば『あの』ユアンだと思うのは当然ではないか ?
マーク少なくともダオスがユアンって名前を出したのはゼロスも聞いてただろ ? それとも何か ?クラトスだけじゃなくてユアンって奴も苦手なのか ?
マーク確か砂漠で干からびた電気クラゲとか言ってたよな ?
ゼロスそう呼んでたのはミトスの方でしょーよ。まあ、苦手って言うか……。
クラトスバツが悪いか。
ゼロス……あんたに言われたくねぇな。
クラトスこの際、はっきりさせてはどうだ。
ゼロスうるせーな。ほっといてくれ。
フィリップあ、あの、クラトスさんもゼロスさんも仲良くとは言いませんがその……争うことはないのではと……。
クラトス……すまない。気を遣わせてしまった。
ゼロスあー……。悪かったよ。俺さまも色々とナーバスなんでな。
マーク――おっと、そろそろ世界樹ユグドラシルに着くぞ。
マークしかし不思議な偶然だよな。ミトスやマーテルのファミリーネームと同じ名前の樹だなんてよ。
クラトスクレスたちの世界と我々の世界は極めて近しい距離にある並行宇宙なのではないかとリフィルは推測していたな。
ゼロスクレスの世界には、マーテルって名前の精霊もいたんだろ ? 妙な符合もあるもんだよな。
ゼロスつーか、だとしたら、マーテルって精霊も具現化されてるんじゃねぇのか ?
フィリップ……もしかしたら、それが帝国の狙いなのかな。
クラトス精霊マーテルの捜索……或いは確保、か。
マーク……なあ、木の根元に倒れ込んでる男がいるけどあれがユアン、か ?
クラトス……どうやらそのようだ。
ゼロスつーか、あいつ、何であんなところで倒れてんの ?
クラトス怪我をしているようだ。それで気を失っているのかも知れぬ。
マークダオスの奴、「ユアンという鏡映点を回収しろ」としか言わなかったからな……。
マークとりあえずあいつはクラトスとゼロスに任せる。ケリュケイオンに運んでくれ。
マーク俺とフィルは、救世軍を派遣するための手筈を整える。帝国が精霊を狙ってるなら放置するわけにはいかねぇからな。
クラトス了解した。
ゼロスやれやれ、眠れる森のユアン様ってか。

Character3話【大樹の精霊4 テセアラ領の樹】
ミトスねぇ……。やっぱり姉さまは帰らない ?これだけ人数がいれば、戦力は十分だよ。
マーテル確かに戦力という考え方をすればその通りだけれど私はラタトスクの役に立ちたいの。彼には元の世界で助けてもらったわ。その恩返しがしたいのよ。
ミトス……その上、弟が手ひどく裏切ったしね。
マーテル……ミトス。私はあなたを今でも愛しているし何があっても守ると決めているわ。でも、あなたの過ちはあなたにしか償えない。
マーテル私がラタトスクを助けたいのはあくまで私個人の思いからよ。
ミトス姉さま……。
ロイドマーテルさんって厳しいなあ。リフィル先生みたいだ。
リフィルあら、どういう意味かしら。
ロイド別に悪い意味じゃないぞ。ちょっと怖いけど……。
マーテルまあ……。
ロイドでも、よかったな、ミトス。悪くないなんて言われるよりずっといいって俺は思うぜ。
ミトス………………。
しいな話は変わるけど……ラタトスクの奴どうしちまったんだろうね。眠ったまま目覚めないなんて……。
コレットうん……。それにすごく苦しそうな息づかいだった。アニーたちは身体に異常はないって言ってたけど……。
プレセア……やはり精霊、だからでしょうか。でもミラさんもセルシウスさんも、天族や聖隷の皆さんも何も……変わったところはないようでした。
リフィルそうね。だからこそ、クラースが指摘した通り大樹カーラーンとの繋がりが関係していると考えるのが自然だわ。
リフィル大樹カーラーンは死鏡精に巣くわれていたりエンコードでカノンノたちの世界の世界樹の要素が加えられたりして、元の樹からは変質している。
リフィルもしかしたらそういったことが関係しているのかも知れないわね……
ジーニアスマルタも心配してたからボクたちで何とかしてあげないとね。そうでしょ、ミトス ?
ミトスあ……うん……。そうだね。
しいななあ、ミトスって……ジーニアスとあたしたちとじゃ全然態度が違わないかい ?
ミトス……しいなだってロイドとゼロスとでは全然態度が違うでしょ。
しいな! ?
プレセア人には……受け入れられること受け入れられないこと……。許せることと……許せないことがあります。
プレセア私もそうだし、ミトス……さんもそう。だからみんなに同じ態度をとるなんて……きっと無理なんです。
プレセアそれでも……同じ世界で生きられる……。そうですよね、ロイドさん。
ロイドうん。俺は、世界ってそういうものなんじゃないかって思ってるよ。嫌いな奴もむかつく奴も、お互いに共存するっていうか……。
ロイドだって俺が嫌いだからって、嫌いな奴を追い出すなんてなんか気持ち悪いだろ。俺が嫌いな奴のことを好きだって思う奴だっているかも知れないんだし。
マーテルふふ……。ロイド。あなたは不思議な子ね。それは当たり前のことで、でも人はその当たり前を自分の都合で簡単に曲げてしまえる。
マーテルやっぱりあなたはどことなくミトスに似ているわ。
ミトス似てないよ。ボクはそんな偽善ぶった考えは捨てたんだから。
マーテル捨てたということは持っていたという事よ。それに捨てたものはまた拾えるんじゃないかしら。
ミトス………………。
ロイド………………。
リフィル……みんな、そろそろ大樹カーラーンにつくわよ。まずは何をするんだったかしら ?
ジーニアス二人一組で、樹の周辺を調査するんだよね。
リフィルええ。それぞれの視点で気になったことを調べて持ち寄るのよ。ラタトスクとエミルのために頑張りましょう。
ロイド……なあ、ミトスもやっぱり姉さんには甘えるんだな。
ミトス……何 ?
ロイドだって、マーテルさんの言うことに一々反抗したりありがとうって言えなくて、文句言ったりさ。
ミトスいつ、ボクが姉さまに文句を言ったんだよ。
ロイドえーと、弟が手ひどく裏切った……とか何とか。あれって結局、マーテルさんに迷惑かけてごめんありがとうって言いたかったんだろ。
ロイドジーニアスもそういうところがあるから弟ってそんな感じなのかなって。
ミトス……ボク、本当にお前が嫌いだ。
ロイド俺だってそうだぞ。元の世界でお前がやったことは絶対に許せないからな。でも……許せないけど……いつか同じ方向を見られればいいなとは思うよ。
リフィルロイド、ミトス !すぐに戻ってきて。マーテルが倒れたの !
二人! !

Character4話【大樹の精霊5 合流】
ユアン…………ここ……は……。
クラトス……目が覚めたか。
ユアン――ク、クラトス ! ? 貴様、何故ここにいる ! ?いや、待て。ここはどこだ ?まさかここはデリス・カーラーンなのか ?
クラトスここはケリュケイオンという、空を飛ぶ乗り物の中だ。少し長い話になるが、我々の状況を説明しよう。
ユアン………………何を……言っている ?
クラトス……ありのままを話したつもりだが。
ユアンここが異世界で、我々が具現化なる技術で写し身として存在していることはわかった。
ユアンしかし……ここにはマーテルもミトスもいるというのか ?
クラトス……その口ぶり。お前はどうやら我々より未来の時間軸――恐らくミトスが死んだ後から来たようだな。
ユアン! !
クラトスいや、ミトスだけではない。その時間軸には私もいないのだろう。私は……死んだか。オリジンの封印を解いて。
ユアン……そうではない。お前は死ななかった。
ユアン――いや、この話はやめよう。写し身が元の世界の未来を話して何になる。だが……。
ゼロス――おっさん二人で深刻そうな顔して話してるとこ悪ぃけどミトスからヘルプが来てるぜ。クラトス宛に。
二人! !
ゼロスマークたちを置いたままケリュケイオンを動かすわけにはいかねぇし自力で飛んでいくしかねぇかもな。
ユアンどこへ行くというのだ。ミトスは……何故助けを求めている ?
ゼロスマーテル様が倒れたらしくてな。その前にはラタトスクも倒れたとかで、樹の精霊に何か問題が起きてるんじゃないかって言うんだよ。
ユアン! !
クラトスミトスたちはどこにいる。
ゼロステセアラ領の大樹カーラーンにいるらしい。行くなら、俺さまも同行させてもらうわ。ロイドくんたちも一緒にいるらしいんでな。
クラトスユアン、お前はどうする。
ユアンもちろん共に行く。……そうするしかあるまい。
ミトス姉さま……大丈夫 ?
マーテルええ、大丈夫。みんなもごめんなさいね。急に倒れてしまって、驚いたでしょう ?
ロイドそんなのいいけど、どうしたんだ ?どこか具合でも悪いんじゃ……。
マーテルいいえ、そうじゃないの……。でも、不思議な体験をしたのよ。私……精霊の声を聞いたの。
一同! ?
リフィル精霊の声 ? どんな精霊 ?なんて言っていたのかしら。
リフィル矢継ぎ早にごめんなさい。でも、なんだか気になるわ。
マーテルはっきりとはわからないけれど、私と同じ名前だと言っていたから、精霊マーテルじゃないかしら。確か、ミントの世界の精霊よね。
ユアン……それは、本当か ?
二人! ?
マーテルユア……ン…… ? ユアンなの…… ?
ユアン……マーテル……。本当に……君なのか……。
ミトス……どういうこと、クラトス。いつユアンを見つけたの ?
クラトスお前から連絡をもらう直前だ。世界樹ユグドラシルの前で見つかった。
ユアンマーテル……。再会してすぐにこんな話をするのは気が引けるが、聞かせて欲しい。君は、精霊マーテルの声を聞いたんだな ?
マーテルえ ? ええ……。私と同じ名前を持つ者と呼びかけられたから、そうだと思ったの。だから正確には精霊かどうかはっきりとはしないわ。
ユアン………………。
しいななあ、その精霊だかなんだかは他に何か言ってなかったのかい ?
マーテル助けて欲しい、と言っていたわ。宿り木を失ってさまよっていると。
ミトス……少なくとも以前の帝国では、精霊マーテルの存在を感知できていなかった。具現化されているのかいないのか定かじゃなかったんだ。
ミトスそれに、仮に精霊マーテルが具現化されていたとしてもマーテルの宿り木はアセリア領にあるのに……。
ジーニアスねぇ、ラタトスクも本来は樹の精霊なんでしょ ?ラタトスクの不調と、精霊マーテルが助けを求めてきたことって、関わりがあるんじゃない ?
マーテル……わからない。でも私、精霊マーテルに会ってみたいわ。
マーテルなんだか……不思議な感覚なの。懐かしいような苦しいような……。会わなければいけない……そんな気がするのよ。
クラトスマーテル。あてはあるのか ?精霊マーテル……らしき者がいる場所に。
マーテルええ。
クラトスならば行こう。
ミトスクラトス ! ?
クラトス実はアスガルド帝国が、精霊マーテルを捕らえようと動いている気配がある。このまま手をこまねいていては何か良からぬことが起きるかも知れぬ。
コレット――待って。何か聞こえる。
ミトスああ、コレットが今聞いているのは帝国軍の近づいてくる足音だよ。天使の聴覚でしか捉えられないぐらいの距離だけど。
ユアンあの連中か……。アセリア領と同じようにこの大樹も押さえようというのか。
ゼロス救世軍に連絡をつけて、こっちも守ってもらうか ?つっても、今こっちに近づいてる帝国兵は片付けなきゃいけないけどな。
二人二手に分かれよう !
二人! ?
ミトス……同じことを思いついたなら、片方はお前に任せる。
ロイドってことは、俺の方が帝国兵を引きつけてミトスの方がマーテルさんを連れて精霊マーテルに会いに行くってことだな。
クラトスよかろう。戦力の振り分けはどうする ?
ミトス神子以外の天使はこっち。天使だけでまとまればいざというときに飛んで逃げられる。
ミトス神子二人を引き取ってもいいけど天使の能力は便利だから一人はロイドの方に残しておいた方がいい。
ロイド了解だ。
ゼロスえ ! ? てことは、俺さまもロイドくん側 ! ?
ロイド何だよ、嫌なのか ?
ゼロスあ……いや……。そういう訳じゃねぇんだけどよ……。
ミトスクラトス、ユアン、姉さま。一旦ここを離れるよ。
ミトス帝国の連中は、ロイドたちに任せる。精霊マーテルを捜すのに、帝国の連中を引き連れていくわけにはいかないからね。
ユアン……仕方あるまい。ロイド、後は頼むぞ。
ロイドおう、任せとけ !

Character5話【大樹の精霊6 大樹防衛】
ジーニアス……これで、帝国軍の尖兵は蹴散らしたかな。
プレセア次は救世軍が来るまで帝国からこの辺りを守りながら待つ……のでしょうか。
ゼロス……あー、じゃあ、俺さまが救世軍に連絡しといてやるわ。
ロイドゼロスの奴、どうしたんだ ?なんか、あんまり元気が無いような……。
しいな………………。
コレット色んなことがあったから驚いてるのかな。マーテルさんが倒れたり、ユアンが現れたり。
ジーニアスユアンも具現化されてたんだね。……ミトスと一緒にいて大丈夫なのかな。
プレセアユアンはレネゲードでミトスはクルシスなんですよね。
しいなユアンはミトスと対立してたからね。でも、そもそもは昔の仲間なんだろ ?
しいなそれにユアンにしてみれば、マーテルが生きてるってこともショックなんじゃないかねぇ……。
しいな状況こそ違うけど、生き返らせないようにって色々動いてた訳だろ ?
リフィル――あ、ちょっと待って。マルタから魔鏡通信だわ。
マルタリフィルさん ! エミルが目を覚ましたの。
ロイドよかった ! 今はどんな状態なんだ ?
エミル……みんな、心配かけてごめん。今は僕だけが目覚めてる状態でラタトスクは僕の中で戦ってるって感じなんだ。
リフィルどういうこと ?何か精神的な攻撃を受けているということかしら ?
エミル僕らも上手く表現できないんだけど大樹カーラーンから何かが忍び込もうとしている……っていう感じなんだ。
エミルラタトスクは今まで、大樹カーラーンを自分の住処だと思っていたのに、突然そこに何か得体の知れないものが取り憑いて、ラインを切られた……というか。
リフィル死鏡精…… ?それともカノンノたちの世界の何かが関係している…… ?
エミル僕もラタトスクに加勢してくるからまた少し眠ってしまうけどもし何かあったらマルタに伝えて下さい。
ローエン状況はわかりました。それではそちらの樹にはアルタミラ地上部隊を派遣しましょう。
ローエンそれまでにも敵の増援があるかも知れませんからくれぐれも油断なさらないで下さい。
ゼロスおーけーおーけー ! 任されちゃって !
ローエンそれからこれは爺の戯言ですが……戦いは時宜を掴むことが肝要です。人生もまた、同じかと。
ゼロスあー……シンくんの気持ちがわかってきた。かまわれるのがつらい時もあるんだよなあ……。
ローエンホッホッホッ。それを口にできるぐらいにはゼロスさんは大人ということですね。それでは失礼致します。
ゼロス(時宜ね……。わかっちゃいるんだが切り出し方がわからねぇんだよな)
ゼロスあ ? クラトス ? 何だよ、俺さまに何の用 ?
ユアンクラトスでなくて悪かったな。魔鏡通信機とやらを借りたのだ。
ゼロス……おっと、あんたか。何だよ。そっちでなんかあったのか ?
ユアンいや……。少し気になることがあってな。
ユアンとはいえ、私はこの世界のこともここで具現化されたマーテルやミトスたちがどのように生きてきたのかもわからぬ。
ユアンだが……あのマーテルたちが知らないことを私は知っている。
ゼロスああ……。あんた具現化されたタイミングが俺さまたちと違うんだったな。
ユアン神子。指輪を捜してくれ。
ゼロス……は ? あんた、また指輪を無くしたのか ! ?
ユアンま、またとは何だ ! ?私のものではないっ !マーテルが持っていた指輪だ。
ユアン彼女が無くしたと落ち込んでいる。恐らく気を失った時の騒ぎで……落としたのだろう。頼んだぞ。
ゼロス単なる彼女のフォローかよ ! ?あいつ何考えてるんだっつーの ! ?
ミトス神子。ユアンと何か妙な話をしてないだろうね。
ゼロス……は ? なんでお前まで連絡してくる訳 ?
ミトス……ユアンは、ボクや姉さまとは具現化されたタイミングが違う。それに、ユアンは姉さまを……助けることに反対していた。
ミトスここに具現化された姉さまをどうこうするとは思えないけど姉さまを傷つけるかも知れない。
ミトスいい ? これからユアンが連絡してきたらその内容を包み隠さずボクに伝えて。
ゼロス何で俺さまがそんな真似を――
ミトスそういうの得意でしょ ?それとも三重スパイだったことロイドにばらされたいの ?
ゼロスお前 ! ? 性根が全然変わらないな ! ?
ミトス変わるわけないでしょ。いいね。
ゼロスあのクソ天使共――
クラトス神子、相談なのだが――
ゼロスは ! ? うるせえな ! ?そっちの問題はそっちで何とかしやがれ ! ?
クラトス……何を怒っている ?
ゼロスはー ! ? 全然怒ってねえけどな ! ?ロイドくんが来るから切るぞ ! ?
クラトス神子――
ロイドゼロス ! 救世軍の方、どうだった ?
ゼロス――え ? ああ。その辺りはばっちりOKよ !
ロイド………………。
ゼロスさーて、救世軍が来るまで、大樹を守り切らないとな !

Character6話【大樹の精霊7 精霊を探して】
ユアン……マーテル。身体は大丈夫なのか ?
マーテルユアン……。心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫なのよ。
マーテル確かに突然気を失ってしまったけれどどこも痛くないし……。
ユアン君が永続天使性無機結晶症を発症した時のことを思い出した。あの時も、君は私の見ていないところで倒れて……。
マーテルでも、あなたやみんなが私を助けてくれたわ。
マーテルそれより……ごめんなさい。あなたからもらった婚約指輪を無くしてしまって……。
ユアンいや、それは別に……。君が無事なら……。
マーテルこの世界に来てからも肌身離さず大切にしてきたのに……。どうして指から抜け落ちてしまったのかしら……。
ユアン………………。
マーテル……ユアン。私と再会しない方がよかった…… ?
ユアンな……何を言っている ?
マーテルあなた、再会してから一度もちゃんと私の目を見ていないわ。
マーテル……私が……亡くなった後のことはミトスやクラトスから聞いているの。あなたが私の意志を守ろうとしてくれたことも。
マーテルけれどあなた自身が何を思って生きてきたのか私は知らない。四千年ですものね……。あなたに他に好きな人ができたとしても――
ユアンな ! ?
ミトス――ユアン……どういうこと。
ユアンミ、ミトス ! ?
ミトスレネゲードのネズミとして動いていたことは――それはすごく腹が立ったけど、ユアンなりに姉さまを想ってのことだろうと我慢してきたのに……。
ミトスお前、姉さまを裏切っていたのか ! ?
マーテルミトス ! それは自然なことよ。それにあなたがユアンを責めるのは筋違いでしょう ?
ミトスわかってるよ ! ボクが……ボクがしてきたことを考えれば、ユアンにどうこう言える立場じゃないって。
ミトス姉さまこそどうしてそうやってボクを責めるの ! ?ボクは……ボクは…… !
マーテル待って。私はあなたを責めてなんていないわ。
ミトス責めてるよ !姉さまはボクがやってきたことを責めてる !ボクは……ボクだって…… !
クラトス……こちらも荒れているのか。
ミトスこちらもって、何 ! ?
クラトスミトス、落ち着きなさい。よく状況がわからぬが、少なくともここにいる者は誰もお前を責めてなどいない。
クラトスお前を責めているとすれば、それはお前自身だ。
ミトス! !
クラトス……お前が我らの故郷でやってきたことは確かに責められても仕方のないことだろう。それをお前もわかっている。
クラトスだから、誰もがお前を責めていると思うしお前はそれでいいと考えているのだろう。
ミトスそうさ。ボクはどんな手段を使っても姉さまを――姉さまも世界も助けたかった !
クラトスそれは、私も同じなのだ、ミトス。
ミトス! !
クラトス私もユアンも、お前と同じ思いだったからこそ修羅の道に足を踏み入れた。そのことの是非をここで問うつもりはない。
クラトスただ、皆、お前と同じ気持ちだった。その後、道を違えたとしても、同じであった我らがこの異世界でお前を責めるわけがない。
クラトスそんなことは無意味だ。
ミトス無意味…… ?
クラトスここでやるべきことは、同じ轍を踏まぬこと。少なくとも私はそう思っている。
マーテルミトス……。私は自分が死ぬ未来のことを知らないわ。けれど、あなたが私を救おうとしてくれたこと自体はとても嬉しいのよ。
マーテル私だって……死にたいわけではないもの。きっとその瞬間には、後悔や絶望や……生き続けたいという気持ちを抱いていたと思うの。
マーテル確かに……あなたがやってきたこと全てを受け入れることはできないわ。
マーテルそれを責めていると言われれば返す言葉はないけれどあなたが私を救いたいと思ってくれたことには感謝しているのよ。
マーテル逆の立場なら、私もミトスを救おうとしたはずだもの。
ミトス…………ボクが……人間に殺されたら……姉さまは……ボクを助けようとしてくれた ?
マーテルあなたの命を奪おうとする全てに、きっと抗ったわ。あなたは私の大切な弟ですもの。
? ? ?(――いいえ。そんなことは許さない。私は……私たちはミトスを許さない……)
マーテル
マーテル(何…… ? 今、私の中から聞こえた声は…… ?)
ミトス……ごめんなさい、姉さま。それから……クラトスも。
クラトスミトス。お前の中に生まれたその感情はお前の持つ闇――深淵なのだ。この世で一番恐ろしく、制御の難しい敵といえる。
クラトス私もユアンもそれに抗えず、過ちを犯した。私たちは今一度共に手を取り合いそれを制御せねばならない。
クラトス一人ではないのだ、ミトス。お前にはマーテルがいて私がいて、この世界で出会った大勢の仲間がいて……今はユアンもいる。
ミトス……ユアン。
ユアン……ミトス。私も、お前がこの世界でやり直すというなら――
ミトスボクは許さないからな。姉さまを弄んで捨てるなんて !
ユアン! ?
クラトス……どういうことだ、ユアン。お前はそのような不埒な男だったのか ! ?
ユアンだから、なんでそうなるのだ ! ?少しは人の話を聞け ! ?

Character7話【大樹の精霊8 違和感】
マーテルあの……ごめんなさい。私が変な話をしたせいで……。
ユアンいや……私が悪かったのだ。マーテルが……生きて私の目の前にいるという事実が、まだ消化できていない。どう捉えていいのか……わからないのだ。本当に。
ユアンだが私は、他の女にうつつを抜かしたことなどない。それだけは信じて欲しい。
クラトスなるほど……。そういう行き違いであったか。悪かったな、ユアン。
ユアンいや……。私もマーテルに要らぬ心配をさせてしまった。すまない。
マーテルそんな……。いいのよ。私が余計な気を回してしまったから。
マーテル――それより早く行きましょう。待っているわ。
ミトス待ってる ? 精霊マーテルが ?
マーテルえ ? ええ……。精霊マーテル……。多分そう……。声が聞こえるの。助けを求めているの。だから早く行かないと……。
? ? ?(……そう……。早く来て……。私たちを……助けて……。私を取り戻させて……)
マーテル(また……聞こえたわ。これは精霊マーテルの声なの ? だとしたら……どうして私の内側から聞こえるような気がするの…… ? )
三人………………。
クラトス――わかった。では、その場所へ案内してもらえるだろうか ?
マーテルええ……。
ミトス……ユアン。どう思う ? 姉さまの様子。
ユアンマーテルが、私の知っている四千年前から変わっていないのならば……何かがおかしい。それは間違いない。だが、確定的なことはまだ……。
ミトスそう……。ユアンでもそうなのか。何だかんだいって、ユアンは姉さまのことをよく見てるから、何かわかるかと思ったけど……。
ユアン………………。
ミトス……何 ? 変な顔して。
ユアンお前は……ミトスなのだな。
ミトス当たり前でしょ ? まさか具現化された時に脳みそまで電気クラゲにでもされたの ?
ユアンで、電気クラゲ ! ? 人を変なものに例えるな。私は……――
ユアンいや、何でもない。ただ、こんな風にお前と話せるのも悪くないと思っただけだ。もう二度とこんな時が訪れるとは思わなかったからな。
ミトス……これは夢だよ。幻想と言ってもいい。
ユアンどちらが夢でどちらが現なのかを判別するのは理の外にいる観測者だけだ。ならば、理の中にいる私たちがどちらを現と定めようが問題はなかろう。
ミトスそう……なのかもね。
しいなマーテルが指輪を落とした ! ?
ジーニアスなんか……前にもそんなことあったよね。ユアンが指輪を失くしたとかで……。
プレセアマーテルさん……ドジです……。
コレット探してあげようよ。だって、マーテルさんにとっては大切な指輪でしょ ?
リフィルまあ……見回りの時に気を付けて見るぐらいなら問題ないと思うわ。ただ、それで帝国兵の接近に気付くのが遅れたなんてことはないようにしないとね。
ゼロスはー、みんなお人好しだねえ。それじゃあ、てけとーに探してみますか。
ロイドそしたら、ジーニアスとプレセア、先生としいなゼロスとコレットでコンビを組んで周りを探してみてくれ。
コレットえ ? ロイドは ?
ロイドちょっと……ラタトスクのこととか気になることがあるから、ここに残って樹を調べながらみんなの連絡を待つ係をやるよ。
リフィル……そう。たまには頭を使うことも大事よね。
ロイドたまにってことはないだろ。俺だって、一応色々考えて生きてるんだぞ !
リフィルフフ……。そうよね、ごめんなさい。それじゃあみんな、二十分ごとにロイドに連絡を入れること。いいわね。
コレットマーテルさんの指輪って、多分前に拾ったユアンと同じデザインだよね。
ゼロス……まあ、そうだろうな。つーか、コレットちゃん。俺さまと一緒でいいのか ?
コレット何が ?
ゼロスいや……ロイドくんと一緒の方が安心するんじゃないのかと思ってよ。
コレットゼロスといても安心だよ。だって、同じ神子同士だもん。
ゼロス……元の世界で、俺がコレットちゃんのことを酷い目にあわせようとしてたとしても ?
コレットえ ?
ゼロス……悪い。何でもないわ。
コレットゼロス、そんなことしないよね ?
ゼロス………………。
コレットもしかしたら……私が何か迷惑をかけてた、とか ?
ゼロス――は ?
コレットだって、いっぱい思い当たる節があるもん……。ゼロスに頼まれた買い物間違えちゃったり人にぶつかりそうになったのを助けてくれたり……。
ゼロスはは……。そんなの迷惑に入らないでしょーよ。
コレットでも、ゼロスが本当に私を酷い目にあわせたいって思ってたんだとしたら、きっと理由がある筈でしょ ?
コレットゼロスは何の理由もなしに酷いことする人じゃないから――
ゼロスあー……ごめんごめん。俺さまが悪かった。たとえ話みたいなもんだったんだわ。忘れてくれ。
コレット……嘘。
ゼロスえ…… ?
コレットさっきゼロス、『俺さま』って言わなかったよ。何か、私のことで悩ませてることがあるんでしょ ?
コレット話して。力になるよ。私だけで解決できなさそうならロイドや先生だって、きっと助けてくれるから !
ゼロスあー…………。マジかよ……。
コレットゼロス ?
ゼロス俺さま……あのタイミングで具現化されてよかった……。その先のこと想像したらぞっとしちまう……。
コレット何 ? どういうこと ?
ゼロスコレットちゃん、一つ頼みを聞いてくれる ?
コレットう、うん。
ゼロス俺さまに力を分けて欲しいんだわ。
ゼロスコレットちゃんが勇気を分けてくれたら、俺さまが隠してきたことを、ロイドやコレットちゃんやみんなに話せると思うんだよ。
コレットもちろんだよ。ゼロス、手を出して。
ゼロスこうか ?
コレットえーと……。女神マーテル様、ゼロスにマーテル様のご加護をお与え下さい。
コレットそして、私とロイドとしいなとリフィル先生とジーニアスとプレセアとリーガルさんとクラトスさんの勇気が分け与えられますように。
コレット――はい ! これで、少しは勇気の足しになる ?
ゼロス……ああ。ありがとな、コレットちゃん。

Character8話【大樹の精霊9 大樹の守人】
クラトス――マーテル。この先は海だが、どこか別の大陸へ行くつもりか ?
マーテル……何もない土地があるの。私たち……が、生み出した島が……。
ユアンマーテルが生み出した ? どういう意味だ ?そのようなことがあったのか ? ミトス、クラトス。
ミトス大陸を生み出すなんて真似は鏡士でもないとできないよ。ここではエターナルソードの力も限定的だし――
マーテルエターナルソード…… ! ? いやよ……。それは……。
ミトスどうしたの、姉さま ?
マーテル――こないで ! 助けて、ユアン !
ミトス! ?
ユアンあ、ああ……。
クラトス……ミトス。あれはマーテルではない。落ち着け。様子を見るぞ。
クラトスマーテル。ミトスは私が引き受けよう。先にユアンと共に、精霊マーテルのいる場所へ向かってくれ。
ユアン……行こう、マーテル。
マーテルええ、行きましょう。……私の守人よ。
クラトスミトス。ロイドたちに連絡を取ろう。
ミトス――いや、アジトに連絡を取る。
ミトスラタトスクかテネブラエかマルタ……。とにかくボクらより未来の時間軸を知っている奴の話が聞きたい。
クラトス何か心当たりがあるのか ? マーテルの症状に。
ミトス姉さまがいつも一番信頼していたのはクラトスだ。こんな時にクラトスを頼らないでユアンを頼るなんておかしい。
クラトスマーテルはユアンの婚約者なのだぞ。別におかしなことは――
ミトスユアンへの差し入れの相談までクラトスにしてたのに ?
クラトスいや、それはユアンに相談するわけにはいかぬものだろう。私に相談された時は面食らったが……。
ミトスボクの知ってる姉さまなら、いつだって「クラトスはどう思う ?」って聞いてた。
ミトスなのに、姉さまは途中から、クラトスやボクから無意識に距離をとって歩いてたんだよ。あれは……姉さまにそっくりの何か。恐らく――
テネブラエ――精霊マーテルですか ?クレスさんたちの世界ではなく、私たちの世界の ?
ロイドああ。エミルたちならどんな奴なのか知らないかと思って。
ミトスねぇ、ラタトスクが倒れたままならテネブラエでもいいから精霊マーテルの話を聞かせてくれない ?
マルタえ ! ? ロイドもミトスもどうしたの ! ?二人そろって精霊マーテルの話を聞かせろだなんて。
二人! ?
ミトスロイド、どういうつもり ?
ロイドどういうつもりって……。精霊マーテルってマーテルさんと関係あるのかなって思ったんだよ。
ミトス名前が同じだから ?
ロイドそれもあるけどマーテルさん、婚約指輪落としたんだろ ?
ミトスああ。ユアンがお前たちに知らせた筈だけど。
ロイドマーテルさん、具現化されてから、特に痩せた感じもしないのに、ぴったりだった指輪が落ちるなんて考えられないからさ。
ロイド何か理由があって外したとしか思えないんだ。でもそれなら「指輪を忘れた」って言うだろ?もしかして指輪を捨てたのかな……って。
ミトスロイド ! !
ロイドな、何だよ ?
ミトスお前、普段からそれぐらい頭を使えばクラトスもリフィル先生からテストの点数を聞いて落ち込まないんだからな !
ロイドは ! ?クラトス、俺のテストの点数知ってるのか ! ?
クラトス……今はダイク殿の分まで私がお前の保護者としてしっかり監督せねばと。
ミトスだったら、息子と一緒に暮らせばいいでしょ ?あー、もう、それは後にする !
ミトスでもロイド、お前の言う通りだ。姉さまは指輪を捨てた。一つ腑に落ちないことはあるけど、やっぱりあれは姉さまじゃない。
ロイドじゃあ何なんだ ?
ミトス歴代の神子の魂、だよ。
ユアンここはどこだ ?
マーテルここは……私たちが私であったときに宿っていた宿り木が、狭間の者の望みを叶えて生み出した島。
ユアン……ジルディア、か。こことはまた異なる世界の世界樹が生み出した、無機生命体のための島。
マーテル知っていたの ? やっぱりあなたは守人なのね。待っていたわ。私たちを助けて欲しいの。
ユアンお前はマーテルではないな ? 何者なのだ ?
マーテル私はマーテル。そして大いなる実りに吸い込まれ命を落とした神子たちの残滓。
ユアン! !
神子たちの魂私たちは宿り木からはじかれてしまった……。突然……何の前触れもなく……。このままでは消えてしまう……。
神子たちの魂消えるのは怖い……。私たちは世界を救うために、樹を守るために姿無き存在となって樹と共にあったのに……。
神子たちの魂でも、もう大丈夫。私たちを私たちたらしめる大いなる器が来たから。
ユアンマーテルのことか ! ?貴様ら、マーテルの身体を奪おうというのか ! ?
神子たちの魂それは違う。私たちと彼女は一つの存在だった。それなのに……少しずつ私たちの樹が変質していって私たちの居場所は失われてしまった。
神子たちの魂後は消えるしかない。その時……あなたが現れた…… !
神子たちの魂……マーテル……いない……。もう一人の精霊マーテルなら……。私たちをこの樹の中に受け入れてくれると思ったのに。
神子たちの魂……気を付けないと……また来るわ……。精霊の檻をもった恐ろしい兵士たちが……。助けて……誰か……。
ユアン……ようやく辿り着いたか。
ユアンこれが世界樹……ユグドラシル…… ?
神子たちの魂守人…… ! 私たちを見守り助けてくれる人……。こんな所にいた…… !
ユアン守人……私が ?
神子たちの魂あなたは私たちを守ると誓ってくれた……。ここに私たちの樹を造りましょう。そして二人で樹を守りましょう !

Character9話【大樹の精霊10 精霊マーテル】
ユアンマーテル…… ! ? マーテル ! ! 正気を取り戻せ ! !
ゼロス――おっと、こいつはまずいな。俺が飛んでいってフォローできるか…… ?
ロイドゼロス、ちょっといいか ?
ゼロス――おっと、どうした ?ロイドくん。そんな難しい顔しちゃって。
ロイド………………。
ゼロス……ロイド ?
ロイドゼロス、もう隠し事はやめようぜ。
ゼロスはあ ? 何を言い出すかと思えば……。俺さまがいつロイドくんに隠し事をしたっつーのよ。あ、してるか。秘密のある男は魅惑的だしな。
ロイドじゃあ、今回、何をしにここへ来てどうしてここに残ったんだ ?
ゼロス! ?
ロイドこの世界に来てからのゼロスは、なんやかんや理由つけて、クラトスと一緒に行動してたろ。それが、すんなり俺たちと行動するのを納得してた。
ロイド俺たちに……何か話があるんじゃないのか ?
ゼロスお前、ほんっとよく見てるなあ……。さすがだわ。
ゼロスけど、今、ユアンとマーテル様がマジでヤバそうなんだわ。だから俺さまの話は後回しにして――
ロイド後回しにはしない。ユアンたちを助けたかったらゼロスが隠してることを打ち明けてくれ。
ゼロスおい ! ? ユアンたちがヤバいのはマジなんだぞ ! ?
ロイドだったら早くしないといけないよな。
ゼロス……マジかよ。ロイドくんがこういう手を使ってくるとは思わなかったぜ。俺さまも甘いというかなんというか。
ゼロス………………。
ゼロス――ええい、くそっ !俺は裏切り者なんだよ ! お前らの動きをクルシスやレネゲードに流してたスパイなんだ !
しいな……そういうことかい。言い出しにくいわけだよ。
ゼロスしいな ! ? みんなも…… ?
リフィルユアンたちなら、今ミトスとクラトスとラタトスクたちが救出に向かっているわ。
ゼロス――騙された……。
ロイドおあいこだろ ? ゼロスの話が本当なら。
ゼロスそれにしたって人が悪いだろうが !
ロイド悪い。けど、こうでもしないと話してくれないかなって。それに……何となくそうなんじゃないかなと思ってたから。
ゼロスは ! ?
ロイドだって、ゼロス、天使化してただろ。繁栄世界の神子が天使化してるなんて、おかしいなって思ってたんだよ。
ロイド何度も問い詰めようかと思ったけど、リフィル先生がゼロスから話してくれるまで待ってろって。
リフィルロイドがしびれを切らして、私に相談してきたの。ほら、みんなで分担して指輪を探していたときよ。
ロイドなあ、先生。やっぱり俺、ゼロスからちゃんと話を聞きたい。あいつ、魔鏡通信で誰かと連絡とってるみたいなんだ。
ロイドでもそのことを俺には話してくれないし……。俺、心配なんだよ。俺たちはゼロスのことを仲間だと思ってるって言ってやらないと。
ロイドあいつ、自分は裏切り者だからって離れて行くんじゃないかって。
しいな何やってんだい、あの馬鹿は……。
リフィル……そうね。そろそろきっかけを作ってあげる方がいいかもしれないわね。
ゼロスはは……俺さま一人空回りって訳か……。
コレットそんなことないよ。私、ゼロスがそうだったなんて全然気がついてなかったから、さっきロイドたちに話を聞いて驚いたの。
コレットでもだから勇気が欲しかったんだって気付いて……。ゼロス、すごいよ。自分からちゃんと言おうとしてたんだもん。すごく格好いいよ。
プレセアゼロスくんは……いつでも私たちを助けてくれました。私たちの大切な仲間……です。
ジーニアスいつもみたいにもっとふてぶてしくしてた方がいいよ。その方がゼロスらしいからさ。
ロイド一つ聞いていいか ? 何か理由があってそういうことをさせられてたんだろ ?
ゼロス……まあ、それはいいじゃねえの。それを言うとそのことに責任を全て押しつけるみたいであんまりいい気分じゃねーしな。
ゼロスとにかく、俺は俺自身のために、お前らを裏切ってた。だから……気まずくてな。
ゼロスこっちの世界でたまたまクラトスと出会ったから何となくそっちに居着いたって言うか……。ま、そういうことだ。悪かったよ。マジでさ。
ロイド……わかった。じゃあ、それ以上は聞かないよ。
プレセアそういえば、指輪……見つかりませんでしたね。
ロイドそれなら大丈夫。もう見つかったんだ。
四人
ユアンマーテル…… ! ? マーテル ! ! 正気を取り戻せ ! !
神子たちの魂何を言っているの、ユアン。私たちはマーテル。精霊マーテル……。
ラタトスクお前らは、まだ精霊なんかじゃない !偉そうに樹の精霊を名乗るな !
ユアンお前たち ! ?
クラトスゼロスから逐一報告は受けていた。
ミトスボクも。ユアンがどのタイミングで具現化されたユアンかわからなかったから、念のため神子にユアンの行動を知らせてもらおうと思ってね。
ユアン元の世界と同じではないか、お前たちは……。
ミトスでもそのおかげで謎は全て解けたよ。どうして姉さまがこんな……神子たちの魂に意識をのっとられてしまったか。
神子たちの魂近寄らないで…… !ユグドラシル……。私たちを呼び寄せ、捨て去った天使……。
ミトスユアンもボクの仲間の天使だよ。お前たちを殺してきた天使だ。でもユアンは特別なんだよね。ラタトスクから聞いたよ。ユアンは世界樹の守人になったって。
神子たちの魂………………。
クラトスマーテル。思い出せ。お前は神子たちの悲しみに取り込まれている。我々はお前をお前たらしめる物を見つけてきた。
神子たちの魂その指輪は……私たちが生命の場に捨てたもの…… !私たちに、精霊ではないマーテルを呼び起こさせようとするもの……!
ラタトスクああ。俺がこいつを拾って持ち帰ってきてやった。俺もお前と同じように大樹から切り離されちまったがこっちは正真正銘精霊だったんでな。
ラタトスクもう一度大樹と縁を結び直したんだよ。
テネブラエあなたにはそれができなかった。何故なら、帝国が精霊マーテルを具現化しようとしたからです。
ミトス帝国は今回ユアンを具現化したんじゃなくて精霊マーテルを具現化した。
ミトスボクたちの世界は、ボクたちの時代とラタトスクたちの時代がキメラ結合して具現化されたから、他の大陸とは状況が違う。
ミトスそのせいで、本来ならラタトスクの時代には誕生していた精霊マーテルも、正しい形で具現化されなかったんだ。
ミトスそれがお前たち神子の魂の残滓の正体だよ。精霊マーテルになれなかったなれの果て。
クラトス帝国は精霊を求めていた。アセリア大陸の精霊マーテルはいずこかに消えており、テセアラ大陸の精霊マーテルは精霊になる前の魂の群れであった。
クラトスだから改めて我らの世界の精霊マーテルを具現化しようとしたのだ。そしてその時に側にいた世界樹の守人ユアンも具現化されてしまった。
ラタトスクだが、そのことで大樹カーラーンの条件が書き換わっちまった。大樹カーラーンの樹の精霊は精霊マーテルのみだと。
ラタトスクそれで俺は昏睡状態に陥った。大樹との繋がりを取り戻すまでな。そしてお前らも大樹との繋がりを失い、さまようことになった。
神子たちの魂……いいえ……精霊マーテルは生まれた……。私がそう……。この器と私たちが和合すれば……精霊マーテルになる。
ユアン……そうか……彼女の中に巣くっているのは……私たちによる四千年の過ちと犠牲そのものか……。
クラトスユアン。まずはマーテルを取り戻す。あの指輪があれば、神子たちの魂は力を失う。嘆く魂たちをどうするかはその後だ。
神子たちの魂やらせない――
ユアン――くっ ! ?
ミトス気を付けて ! 精霊になりかけた魂だ。それに姉さまの力が加わっているから――
神子たちの魂ミトス……私はずっとあなたを見てきました。動かぬ体で、ただなすすべなくあなたがしてきた愚かな行為を……。
ミトス! ?
神子たちの魂ミトス。お願いです。私の言葉を聞いて。あなたのしてきたことは間違っている。
ミトス……間違っているって ?姉さまが……ボクを否定するの ?
神子たちの魂そうよ……。あなたは間違っている……。
ロイドミトス ! そいつはマーテルさんじゃない ! !
ゼロスよっしゃ、間に合ったな。そっちのやりとりは魔鏡通信でばっちり聞いてたぜ。
コレットマーテルさんの中にいる皆さん、どうか聞いて下さい。あなたたちがやろうとしていることは、あなたたちが世界を救うためと信じてやられたことと同じです。
コレット自分を失うことはつらかったでしょう ?それをマーテルさんにも強いるのはやめて !
神子たちの魂……自分を失う……。
ロイドミトス ! お前は俺に変わらないって言ったよな。俺は変わらなくてもやり直せるって言った筈だ。
ロイド変わらなくたっていい !ミトスとして、クルシスのユグドラシルとして今起きてるこの現象に落とし前をつけて見せろ !
ミトス! ?
ロイドクラトス ! クラトスならできる筈だ !ミトスを前に進ませることが !クラトスは――父さんはミトスの師匠なんだから !
クラトス――わかっている。
クラトスミトス ! 思い出せ ! マーテルが何と言っていたか !
マーテル確かに……あなたがやってきたこと全てを受け入れることはできないわ。
マーテルそれを責めていると言われれば返す言葉はないけれどあなたが私を救いたいと思ってくれたことには感謝しているのよ。
マーテル逆の立場なら、私もミトスを救おうとしたはずだもの。
ミトス……そうだ。確かにボクのしたことを姉さまは受け入れてくれないかも知れない。
ミトスそれでもボクが姉さまを助けたいと思った気持ちだけは姉さまもわかってくれていたから……。
クラトスそうだ、ミトス。マーテルもユアンも私もお前のマーテルを救いたいという優しさを否定しようと思ったことはない。
クラトスその優しさはお前の強さでもあるのだ !
ユアンな、何だ ? この光は ! ?
ミトス……そう……忘れてたよ。こういう気持ち。
ミトス……ボクはボクであることをやめない。それでいいね、クラトス。
クラトスそれでいい。変わらずとも違う道は選べるのだ。それを成長という。
ミトスいくよ、クラトス、ユアン、ラタトスク。それにロイドと神子二人も。力を貸して。姉さまを取り戻す !

Character10話【大樹の精霊10 精霊マーテル】
マーテルうぅ……。
ユアンマーテル ! !
ミトス……ユアン !
ユアンな、何だ ! ?
ミトス何だじゃないよ ! 姉さまを助けるのは姉さまと結婚の約束をしたお前の役目だ !
ユアン! ?
ミトス今度こそ、姉さまを助けてよ ! ユアンのやり方で !
ユアンマーテル !
マーテルユア……ン……。離れて……。私……また……正気を失ってしまう……。
ユアン失わせなどしない ! 私はもう二度と君を失わない !
ユアン覚えているか、マーテル。君が無機結晶症で苦しみ死を覚悟した時に、私は君を守ると誓った。そして……この指輪を君に贈った。
マーテルその指輪……。どうして……あなたが…… ?
ユアンマーテル。君が何に蝕まれようとその美しい心は誰にも侵されない。いや、侵させまいといつも張り詰めている。
ユアンそんな君を、私は守りたい。この世界でも――君だけを愛すると誓う。
マーテルユアン……その言葉……まさか……。
ユアンずっと伝えられなかった誓いの言葉だ。私はあの時、愛を誓うこの言葉を伝えられなかった。
ユアンそしてそのまま……あまりに長い月日が過ぎ去っていってしまった。やっと……やっと言えた。やっと……。
マーテルありがとうユアン……。私もあなたを愛しているわ。
クラトスな、何だ……この光は――
マーテル(…………離れていく……。悲鳴……怨嗟……悲しみ……苦しみ……。感情の嵐が……)
神子たちの魂それは……あなたが満たされたから……。あなたは私たちを統合する器となるべき存在だった。
神子たちの魂けれど……あなたは、実ることの無かった愛を受け入れてしまったから……。
神子たちの魂私たちは……あなたの中にとどまる糸を見失ってしまった……。
マーテルごめんなさい……。私たち姉弟があなたたちの人生を狂わせてしまった……。こうして、異世界ですら、あなたたちを苦しめている。
神子たちの魂わからない……。そうではない……。私たちは……救いたかった。愛する人を……世界を。けれど救えなかった……。
神子たちの魂救いたいと願った気持ちが……私たちを導いたの。憎しみも恨みもないと言えば嘘になる……。それでも私たちは……何かを救いたくて旅に出た。
マーテルええ……わかるわ。愛しているのよね。つらいと思う気持ちと同じくらいそれでも生まれた世界を愛している。
マーテル私もそう。裏切られても、失望しても世界が滅べばいいとすら思っても……私は世界を憎みきれなかった。
マーテル私を生んでくれた世界……私に愛する人々を与えてくれた世界……。
神子たちの魂もう宿る樹はない……この世界にいるはずのもう一人のマーテルもどこかで眠りについたまま……。せめて彼女が目覚めれば私たちは……一つになれる。
神子たちの魂けれど……私たちはそこまで……存在できない……。消えていくだけ……。
マーテルアセリアの精霊マーテルが目覚めるまで時を稼げればいずれは融合できるということね。だったら……私の心の中で時を待ちましょう。
神子たちの魂あなたは、もう私たちの器じゃない……。とどまることはできない。
マーテルそんなことはないわ。私は世界を憎み……愛している。その気持ちはあなたたちと同じ筈よ。
神子たちの魂……私たちの苦しみを飲み込むことになっても…… ?
マーテルかまわないわ。ただお願いよ。どうか、私の愛する者を傷つけようとはしないで。
神子たちの魂マーテル……ありが……と……う……――
ロイド……マーテルさん歴代の神子の魂を受け入れたんだな。
クラトス……ああ。彼女は情の深い女性だ。神子たちの味わってきた苦しみを放ってはおけなかったんだろう。
ロイド……ミトス、大丈夫かな。
クラトスロイド…… ?
ロイド世界を変えてまで守りたかった姉さんを異世界で苦しめることになった原因はミトス自身が作ったものじゃないか。
クラトスミトスだけではない。私もユアンも同じだ。……ミトスはそのことを一生背負っていかねばならぬ。無論、我々もな。
ロイド……じゃあ、大丈夫だな。
クラトスどういうことだ ?
ロイドミトスの苦しみを、クラトスもユアンも……多分マーテルさんも一緒に背負ってくれるってことだろ ?
ロイド一人じゃ耐えられないことでも仲間がいれば耐えられると思うからさ。
クラトスそうだな。私はミトスの仲間だ。今度こそミトスの苦しみを共に背負い贖罪と祈りの道へ導くつもりだ。
クラトスユアンやマーテルと共にな。
クラトスそれにこの世界では、ミトスにも友ができた。それがミトスを変えてくれる……。
ロイド……けどさ。クラトスは俺たちの仲間でもあるってこと忘れないでくれよな。
クラトス忘れる筈がない。以前なら……そうは言い切れなかったかも知れぬがな。
ロイドならいいんだ……父さん。
クラトス………… !
ロイドそんな顔するなよ。父さんは父さんだろ。
ロイドなんか……クラトスが俺の親父だって言うのが中々ピンとこなくて、どう接すればいいのか悩んだりしたこともあったけど。
ロイド昔コレットに言ったことを思いだしたんだ。父親が二人いて得したと思っとけばいいって。
ロイド俺にもさ、ダイク親父がいて……父さんがいる。すげえよな。最高の親父が二人もいるんだからさ。
クラトス……私も、最高の息子を持てたことを誇りに思う。
ミトス……クラトス。ちゃんとロイドと話せてるかな。父親として。
ユアン無理だろう。奴は不器用な男だからな。しかし偉いではないか、ミトス。クラトスとロイドに時間を作ってやるとは。
ミトス……子供扱いしないでくれる ?
ユアン……フ。マーテル、身体はもう大丈夫か ?
マーテルええ。ごめんなさいね。自分が自分でなくなっている感覚にもっと早く気付いてみんなに相談できていれば……。
ミトス……ボクこそ、ごめんなさい。ボクが元の世界でやったことの不始末が、姉さまにも降りかかって……。
ミトスボク、姉さまを守りたかったのに姉さまを傷つけてばかりだ。
ユアンそれは私とて同じだ。私たちは皆過ちを犯しそしてそれでも自分の道が正しいと信じて……またこの異世界で顔を揃えることになった。
ユアンせめてこの世界では手を取り合って元の世界とは違う別の道を切り開こう。
ミトス……その言い方。ユアンは元の世界での顛末をすべて見てきたんだね。
ユアン……独り残されるというのも中々つまらぬものだぞ。
マーテルええ……。そうよね、ユアン。
ミトス……けど、今はこうして姉さまに再会できたんだから嬉しいでしょう ? 昔、姉さまに言おうとして言えなかったプロポーズの言葉もちゃんと言えたし。
ユアンあ、あれは貴様が――
ミトスだから――この世界では、姉さまを守る役目はユアンに譲ってあげる。
ユアン! ?
ミトス姉さまを幸せにしてあげて――ううん。二人で幸せになってよね。
マーテルミトス…… ! ありがとう……。
ユアン――任せておけ。