Character1話【物語1 一人旅】
ロンドリーネあっつい……水……飲みたい……。
ロンドリーネ街……どこ……。
ロンドリーネこんなことなら、みんなにもついてきてもらえばよかった……。
クレスオアシスの街に、知り合いを捜しに行く ?
ロンドリーネうん。ちょっと気になる噂を聞いてね。実際にこの目で確かめたくって。
クラースしかし、女性一人では何かと大変だろう。
ミントそうですよ。よかったら私たちもご一緒に……。
ロンドリーネ大丈夫だってば。これでも一人旅には慣れてるから。
ロンドリーネうう……せめて、馬車か何か借りればよかった……。
商人おーい、お嬢ちゃん。いい加減に起きてくれないかね。
ロンドリーネうう……行き倒れに無茶言わないでよ。
商人長いこと砂漠で暮らしてるがオアシスの目の前でそんなことを言うやつは初めてだ。
ロンドリーネオアシス……オアシス ! ?
ロンドリーネやったー ! いつの間にか辿り着いてた !私、結構やるじゃん !
商人いや、うちらの隊商が行き倒れてたあんたをここまで運んでやったんだがな。
ロンドリーネあ、はは……そうだっけ ?
商人もちろん、お代はいただくがね。
ロンドリーネお、おいくらかしら ?
ロンドリーネうう……かなりふんだくられちゃった。
ロンドリーネま、無事辿り着けたんだからそれでよし。さっそくあの子たちを捜しに……。
ロンドリーネと、その前にお水、お水。もうノドがカラカラ。
水売りお ! 嬢ちゃん、水がほしいのかい !だったらこいつを飲みな !
ロンドリーネお、ありがとね。ゴクゴク……。
水売り五千な。
ロンドリーネぶはっ ! ?
水売りおいおい、勿体ねーなー。
ロンドリーネご、ごごご、ごせん ! ?いくらなんでも高すぎでしょ ! ?
水売りだけどなあ、飲んじまったもんは払ってもらわねーと。
ロンドリーネうう……しょうがないか……。
水売りまいどありー。
ロンドリーネはぁ……なんてトコなの。到着してすぐにお財布がすっからかん。
ロンドリーネこんな調子で、あの子たちを見つけられるのかね ?
ロンドリーネいたっ !
弟分いってえええええっ !いてえええよおおおあにきいいいっ !
あにきおうおうおう、こいつはひでぇ。大事な弟分の腕が折れちまってらあ。
ロンドリーネな、なに ? 腕 ?
弟分いてえええいてえええよおおおっ !怖い嬢ちゃんに怒鳴られてよけいいてええええ !
ロンドリーネあー、これはアレか。いわゆるアレってやつだね。
役人こんな往来で何を騒いでいる。
あにき聞いてくれよ、お役人さん。この嬢ちゃんが弟分に乱暴を。
ロンドリーネはいはい、そんなわけ――
役人詳しい話は地主様の屋敷で聞く。おい、娘を連行しろ。
ロンドリーネってちょっとちょっと、問答無用 ! ?
役人この地を治める地主様がお前の話を聞きたいとおっしゃっておられる。
ロンドリーネ地主様 ?
地主娘よ。お前は魔術は使えるか ?
ロンドリーネなんなの急に ? ま、自分の身を守る程度には使えるよ。
地主どんな魔術だ ?こう、相手を操ったり服従させたりできるか ?
ロンドリーネそういうのはないね。私が得意なのは風で切り裂いたり、浮かせて叩きつけたり……。
地主なるほど……。
役人いかがいたしましょう ?
地主まあ、とりあえずキープだ。
役人はっ ! 娘、お前がぶつかった者たちだが治療費さえ出せば訴えはしないとのことだ。
ロンドリーネだからさ、ぶつかって来たのはあっち。私が出すものなんてないよ。
役人黙れ ! 判決は被害者への治療費と街への損害賠償だ !おい、この娘の荷物を取りあげろ !
ロンドリーネちょっと、触るなって !あっ、それは…… !
衛士この娘、指輪を身につけております。見たところ、かなり高価そうです。
役人ちょうどいい。それを預かろう。
ロンドリーネ返して ! それは大事な指輪なんだから !
役人返してほしくば金を稼ぐことだな。お前ならいくらでも働き口があるだろう……。
ロンドリーネやれやれ……。
ロンドリーネどうしてこうなっちゃったかな~。まったくツイてないね。
ロンドリーネ……なんて、愚痴ってても仕方ないか。指輪はなんとかするにしてもひとまず今日のご飯代くらい稼がないと。
オーナーお嬢ちゃん、そういうことならうちで働かないかね ?
ロンドリーネうわっと ! だ、誰 ?
オーナーなに、この街でちょっとした店を営んでるもんさ。お嬢ちゃんならうちの仕事はピッタリだと思うがね。
オーナーどうせ、役人どもに金を絞り盗られたんだろう ?
ロンドリーネどうしてそれを ?
オーナーこの街に来る旅人は二つに一つだ。借金背負って居着くか、さっさと通り過ぎるか。
オーナーお嬢ちゃんは前者だろう ?うちで働けばすぐに借金返済できる。
オーナーいや、もしかしたらそれ以上に大儲けできるかも。お嬢ちゃんはなかなかの美人だからな。
ロンドリーネなんだか、いかがわしいな~。
オーナーそんなことはない。うちは健全な店だ。試しに働いてみればいい。はい、一名様体験入店~ !
ロンドリーネちょっと、私は働くなんて一言も──
ディオおうよ ! 体験入店のごあんなーい !
メル最初は戸惑うかもしれないですけど働いてみたら意外と楽しい……あれ ?
ロンドリーネえ……。
三人あああああああああっ !

Character2話【物語2 頼もしい二人】
ロンドリーネじゃあ、ディオくんとメルちゃんはかなり前にこっちに来たんだ。
ディオほんと、あの時はビックリしたぜ。いきなり目の前の景色が変わるんだからなー。
メル最初はまた時間を飛び越えたのかと思ったよね。
メルしばらく旅してみて、どうもそうじゃないって分かったんですけど……。
ディオ具現化かあ……。元の世界にもオレがいるって変な感じだ。
メルじゃあ、今のわたしたちは偽物ってことになるのかな ?
ロンドリーネあまり深く考えちゃダメよ。私たちは私たちなんだから。それでじゅーぶん。
ディオだな ! オレたち、こっちの世界でもけっこー頑張ってきたもんな !
メル最初は大変だったけどね。
メルしばらく旅をして、このオアシスに辿り着いてオーナーさんのお店で働かせてもらうことになったんです。
ロンドリーネそれって、大丈夫なの ?ていうか、どういうお店なのここ……。
ディオどういうお店って言われてもなー。
メル夜だけやってるよね。
ディオオーナー以外、働いてるのはほとんど女の人だな。
メルいろんなショーを見せるお店 ?
ディオあと、お客さんとおしゃべりしたりな。オレたち、そっちはほとんどやらないけど。
ロンドリーネやっぱり、いかがわしい……。双子ちゃんたちを働かせてて大丈夫なの ?
ロンドリーネっていうか、私もここで働くのか……。
ディオ心配すんなって !オレたちがいろいろ教えるからさ !
メルお店のことだけじゃなくてこの街のこととかもね。
ディオまずはあれだ。お水は店で買わない、だな。
メルここではお水は貴重でとっても高いんです。だからノドが渇いたら果物を食べるんです。
ディオ大人は、お酒を飲むって人も多いけどな。
ロンドリーネふむふむ。
ディオそれと、街の入り口近くの店には近づかない。あそこは旅人からふんだくる店が多い。
メル当たり屋なんかもいるから気をつけてください。
ロンドリーネは、はい。気をつけます !
メル買い物だったら、バザールに行くといいですよ。一日中やってるけど、朝と夕方は混むから注意です。
ロンドリーネ朝と夕方は避ける……と。
メル他にもいろいろあるけど、少しずつ教えますね。
ディオ店のことでも街のことでも、なんでも聞いてくれよな !
ロンドリーネありがと。ほんと、二人が元気で逞しくなっててお姉さんなんだか嬉しいような寂しいような……。
ロンドリーネなんて、湿っぽいのはなしだね。とにかく ! 二人に会えてよかったよ !

Character3話【物語3 人気の三人】
オーナーさあ、開店だ。みんな、今夜も稼いで稼いで稼ぎまくるぞ !
店員たちおー !
ディオさーて、お立ち会い !ここにおりますのは、珍しき東洋の剣士にございます !
ディオいくぞ……なりきりっ ! クロスシフト !
ディオ見よ ! 我が刀の切れ味を !
客たちおおおーっ !
ロンドリーネやるね、ディオくん !
メルよーし、わたしだって !
メルはーい、皆さんのご注文はわたしが箒に乗ってお届けしまーす。
客Aメルちゃん、おかわりくれよ !
客Bこっちはフルーツ盛り合わせ !
客Cならこっちはシャンパンのボトルだ !
メルはいはーい、順番にお伺いしますね。
ロンドリーネ双子ちゃんたち、がんばってるね。お姉さんもちょ~っと張り切っちゃおうかな !
ロンドリーネはーい、お代は見てのお帰り……じゃないけどもらった分はきっちりサービスしちゃうからね~。
客Aいいぞー ! ロンドリーネちゃーん !
客Bロンドリーネちゃんこっちむいてー !
メルはいはいうちは健全なお店でーす。踊り子さんにはお手を触れないでくださーい。
ディオ悪いお客さんは、刀の錆にしちまうぞー。
メルさすが、ロディさんあっという間に大人気ですね。
ディオちぇー、今日はオレだって張り切ったのになー。お客さんみーんな、ロディに持ってかれちゃったよ。
ロンドリーネふふん。お姉さんが本気を出せばざっとこんなものよ。
ロンドリーネ最初はどんないかがわしいお店かと思ったけど本当にショーを見せるだけの健全な店でよかった。こういうショーなら私の腕の見せ所ってね。
ロンドリーネでも、二人ともほんとにすごいよ。
ロンドリーネ右も左も分からない世界でずっとこんな風に働いてたんでしょ。
メル最初は、すごく不安でした。でもディオが『オレがなんとかする ! 』って。
メルそしたらわたしもなんだか勇気が出てきたんです。
ディオあー、オレ、そんなこと言ったっけ ?
ロンドリーネまたまた照れちゃって。やっぱりディオくんは良い子だね~。
ディオあ、頭撫でんなって !子供じゃねーんだしっ。
ロンドリーネいいんだよー、二人はこれからもずーっと私の弟と妹みたいなものなんだから。
メルあの……ロディさん。聞きたいことがあるんですけど。
ロンドリーネん ? なになに ? なんでも聞いちゃって。
メルこの世界に、エトは……。
ロンドリーネあ……そっか、当然気になるよね。ごめんね、少なくとも私は会ってないんだ。
メルそう、ですか……。
ディオ心配すんなって !いつかどっかで会えるよ !
メルディオ……うん。そうだね。
ロンドリーネあ、でも、クレスたちには会ったよ。
ディオほんとか ! ?
ディオ時空戦士たちもこっちに来てるってことはもしかしてこの世界も何かピンチなのか ! ?
ロンドリーネまあ、ピンチといえばピンチかな。帝国っていうところが、いろいろ暗躍してるし。
ロンドリーネだからね、私たちみたいな別の世界から具現化した人間が集まって対抗してるわけ。
ディオすっげー ! 悪と戦う正義の組織ってわけか !
ロンドリーネま、そんなとこ。
ロンドリーネ二人の噂を聞いて捜しに来たのも私たちと来てくれないかな~って。
ロンドリーネもちろん、二人が心配だったのもあるけどね。
ディオなる ! オレ、仲間になるよ !なっ、メル !
メルもう、そんなに簡単に決められないでしょ。オーナーさんにだって、説明しないといけないし。
ディオあ、そうだった。
ロンドリーネねえねえ、もしかして二人も借金とかあるの ?あのオーナーに騙されてない ?
メル大丈夫ですよ。オーナーさんとっても良い人ですから。
ロンドリーネほんとに ? なんか、このオアシスに来てから騙されてばかりで大人が信用できなくなりそう。
ディオオーナーは、お金にはうるさいけどけっこう優しいよな。
ディオそれより悪いのは地主だよ !あいつ、オアシスの水をひとり占めしてんだ !
メル地主さんを怒らせると、水を売ってもらえないから誰も逆らえないんです。
ロンドリーネなるほどね~。だからあんなに偉そうだったんだ。
ディオおまけに、あいつメルのこと狙ってるんだぜ !何度も店に来ちゃ、メルを寄越せって !
ロンドリーネげっ、あいつそんな趣味なの ?
メル少し前に、地主さんが魔物に襲われていたところを魔術で助けたら、それ以来……。
ディオメルだけじゃねーよ。魔術の使える女の子を何人も屋敷に呼んでるって噂だ。
ロンドリーネそういえば、私にも魔術が使えるかどうか聞いてたわねう~ん、世の中にはいろんな好みがあるのねえ。
ロンドリーネでも、可愛いメルちゃんに手を出そうなんてそんなのお姉さんが許さないわ !
オーナーおまえら、なにくっちゃべってんだ。いつまでたっても店仕舞いできねえじゃねえか。
メルオーナーさん、ごめんなさい。すぐに掃除しますね。
ディオんだよ、今ちょうどオーナーのこと褒めてたのに。地主に比べて、オーナーは良い人だって。
オーナーやめろやめろケツが痒くなる。
オーナーそれと、地主様を悪く言うのはやめろって前々から言ってるだろうが。
ディオなんであんな嫌なやつかばうんだよ !あいつが水をひとり占めしなきゃ、もっと──
オーナーオアシスにはオアシスのやり方がある。いいから、さっさと掃除終わらせろ。
ディオくそっ……どうして、みんな怒らないんだ。悪いのは地主のやつなのに。
メルディオ……。

Character4話【物語4 守りたいもの】
ディオやっぱり納得いかねえ !
メルディオ、もうその話は終わったでしょ。
ディオだけどさ、みんな水が足りなくて困ってるんだぜ !
ディオなのに地主のやつはぜんぜん売ってくれないんだ。売ってくれたとしてもすっげー高いし。
ディオおまけに、ちょっとの水を盗んだだけで捕まえられて街の広場で鞭打ちの刑にされちゃうんだ。
メルひどい時には、殺されることもあるって……。
ディオ地主は悪いやつだ。みんなでやっつけた方がいい。なあ、ロディもそう思うだろ ?
ロンドリーネうーん……私は、ちょっと違う意見かな。
ディオな、なんでだよ !
ロンドリーネあのね、私は二人の話を聞いてダオスの故郷のことを思い出したんだ。
ディオダオスの……故郷…… ?
メルデリス・カーラーンのことですか ?
ロンドリーネうん。そう。
ロンドリーネデリス・カーラーンはマナが枯渇して滅びに瀕していた。
ロンドリーネあいつは故郷を救うため、私たちの星に来たんだ。
ディオ……覚えてるよ。
ディオ魔王だと思ってたダオスにも理由があったんだって。なんだか、すごくショックだった。
メルあのまま知らないでいたらただの悪い人としか思えなかった。
ディオで、でもよ ! ダオスがやったことは悪いことだろ !人間を襲うなんて…… !
ロンドリーネうん、その通りだよ。ダオスは、許されないことをした。
ロンドリーネじゃあこのオアシスの水とデリス・カーラーンのマナ。入れ替えて考えてみたらどうかな ?
ロンドリーネマナが枯渇した詳しい理由はわからない。けど、もしも誰かがマナを厳しく管理してたら――
ロンドリーネ今もデリス・カーラーンにマナが残っていてダオスは魔王にならなかったかもしれない。
ロンドリーネぜんぶがぜんぶ、上手くいく方法なんてなかなかない。誰かが、どこかで我慢や苦労をしないといけないんだ。
ロンドリーネオーナーもこの街の人たちも、それが分かってるから地主のやり方に従ってるのかもしれないよ。
ディオ…………。
メル自分が悪者になっても守りたいもの……。そんなのわたし、ぜんぜん考えてませんでした。
ロンドリーネ仕方ないよ。きっとそれは、もの凄く苦しんでそれでもって思って選ぶ道だと思うから。
ロンドリーネ大人はね、子供にそんな苦しみを味わわせないようにがんばるものなのさ。
ロンドリーネ知らなかった、考えたことなかったってことはエトちゃんが二人を守ってくれてた証拠だね。
ディオエト……。
メル会いたい、ね……。

Character5話【物語5 時空戦士たち】
ディオオーナーも人使い荒いよなー。
ディオ夕べもあんなに働かせてそのうえ買い出しまでさせるなんてさー。
メルもう、文句言わないの。ちゃんとお給料はもらってるんだから。
ロンドリーネ意外と給料いいんだよねー。借金返しても、このまま働いちゃおうかなー。なんて……ん ?
ロンドリーネ今日は、なんだかいつもより人が多いね。
メルあ、そうか。今日は隊商が来る日なんですよ。
ロンドリーネ隊商って、私が乗せてもらったやつ ?
メルそれは定期便ですね。隊商は月に一度。たくさんの商品を持ってくるんです。
メルいろんな取り引きがあったりして隊商がいる間は街が賑やかになるんです。
メルお店も、いつもより忙しくなりますよ。
ロンドリーネほほう、それはつまりこのロディさんのファンがまた増えちゃうってことね。
ディオなにをー、オレだって負けねえからな !
メルふふ。買い出し、多めにしておかなきゃね。
? ? ?信じられないな !
ロンドリーネん…… ? この声は……。
クラースこれだけの酒が、こんな値段で売られているとは。ユークリッドでは考えられん。
クラースここで買いだめしておくべきか。どれ、レイヴンとアルヴィンにも土産を……。
ロンドリーネクラース ! ?
クラースむ……ロディか。ちょうどいいこの街はどうなってるんだ。
クラース水が貴重だというのはわかるがまさか酒がここまで安いとはな。
ロディいやいやいや ! そんなことよりどうしてこんなところにいるのよ ! ?
クラースそんなこととは、聞き捨てならんな。いいか ? 一日あたりの晩酌を今の額で考えると……
ロンドリーネああー ! なんか変なスイッチ入っちゃった !
商人お嬢ちゃんみたいな可愛い子が宝石の一つも身につけてないなんて、そりゃあ勿体ないってもんだ !
アーチェええー、可愛いだなんてー。そんなほんとのこと言われてもー。
商人ほら、これなんかお嬢ちゃんにピッタリだ !
アーチェどうしよっかなー、買っちゃおっかなー。
チェスターなーに、口車にのせられてんだよ。んな石ころつけても大して変わらねーよ。
アーチェひっどーい !そういうこと言っちゃうんだ !
アーチェあー、傷ついたなー。傷ついたから罰としてチェスターが買ってよ。
チェスターはあ ! ? なんでオレが ! ?
弟分いってえええええっ !いてえええよおおおあにきいいいっ !
あにきおうおうおう、こいつはひでぇ。大事な弟分の腕が折れちまってらあ。
ミントこ、骨折ですか ! ? それは大変です !すぐに法術で治します !
弟分え……あの……。
あにきべ、別にいいって !おれは治療費さえ払ってくれりゃ……。
ミントいいえ、一刻も早く治療しないと !いきます。セイントエンブレイ──
弟分ああー ! よく見たら折れてないかも !
あにきおお ! そいつはよかった !というわけで、あばよ~。
ミントあ、あのっ、せめて消毒を !
すずあなた、なぜ私の背後をとろうとしたのです。もしや刺客ですか。
スリち、違うって。俺はその……あだだだっ !
すずこの右手、明らかに私に向けられていました。毒かそれとも刺殺か……。
すず降りかかる火の粉は払わなければなりません。お覚悟…… !
スリひいいいいいっ !
ロンドリーネはいはい、すずちゃんストップ。ただのスリだから。そこまですることないから。
ロンドリーネていうか、みんな何でここにいるのよ……。
クレスミント、お待たせ。まいったよ。隊商の人たちがこのまま護衛として雇われてくれって放してくれなくて……
クレス護衛がいればこえーものはないって……あれ ?
ロンドリーネやっぱりクレスもいるんだね。
すずむしろ、ロディさんを捜しに行こうと言い出したのはクレスさんです。
クレスずっとロディからの連絡がなくて心配だったんだ。でも、無事でよかったよ。
クレスそれで、捜していた相手は見つかったのかい ?
ロンドリーネうん、ちゃんとね。この子たちなんだけど……。
ディオクレスさん ! 久しぶり !うわぁ ! この世界でも会えるなんて !
クレス君は……誰だい ?
ディオオレだよ、ディオだよ。一緒に戦っただろ ?忘れちまったのか ?
ロンドリーネあーそういえば、そこまで説明してなかったかー。
ロンドリーネあのね、ディオくん。このクレスは君の知ってるクレスじゃないんだ。
ディオえ……ど、どういうことだ ?
メルあの……よかったらお店で話しませんか ?このままだと大騒ぎになりそうなので。
ロンドリーネうん、そうだね。みんな、一緒に来て。

Character6話【物語6 訪問者】
ディオじゃあ、ここにいるクレスさんたちはオレやメルの世界とは別の世界から来たのか ?
ロンドリーネうーん、まあだいたいそんな感じ。
ロンドリーネクレスたちはディオくんやメルちゃんとは一度も会ったことがない。それは確実。
ディオそっか……。
メルちょっと寂しいね。あんなに一緒に旅したのに。
ディオうん……。
チェスター良かったら今度聞かせてくれよ。お前たちと冒険したオレの勇姿をさ。
アーチェ勇姿~ ? そんなのあるのかね~ ?
ディオ面倒見のいい、頼れる兄貴だったぜ。妹さんのために、ちょっと変な服作ってたけど……。
チェスターぬぐっ…… ! ?
ミントディオくんとメルちゃんは、私たちより百年後の世界に生まれたんですよね ? どんな世界でしたか ?
メルいろいろあったけど、今はとても平和な世界ですよ。
ディオぜんぶ、時空戦士のおかげだぜ !クレスさんたちは伝説の英雄だからな !
チェスター英雄なんて、なんか照れるな。
クレス今の僕たちのことじゃないだろ。
アーチェねえねえ、それよりあたしは ?あたしの伝説って何かないの ?
アーチェ世界を魅了した超絶美少女とか !
ディオあー……えーっと……。
メルアーチェさんは、なんていうかその……。変わっていないというか……。
ディオ街でイタズラばっかしてたよな。訪ねていったら意地悪されたし。
アーチェええー ! なにそれ !
チェスターお前、それだけ経ったらもう少し成長しろよ。
アーチェそういうのは未来のあたしに言ってよ !
クレス僕たちが英雄で、平和な世界、か……。
ロンドリーネクレス……。
ディオヴァルハラの街なんか、すっげえ大きくなってんだぜ。
クラースヴァルハラが、街だと ?ずいぶん変わったものだな。
ディオとにかく話したいことも聞きたいこともいっぱいあるんだ !
地主おや、昼間だというのにずいぶんと賑やかだな。
メル地主さん、どうされたんですか ?
地主おお、メルちゃん。もちろん君に会いに来たんだよ
ディオおい、メルに近寄るな !
地主ちっ……双子だというのに片割れの方は相変わらず礼儀知らずなことだ。
クラースあの人は ?
ロンドリーネここのオアシスの地主。
ロンドリーネ若くて可愛い女の子──それも魔術が使える子に目が無いんだって。
アーチェうわ、なにそれ。あたしなんか思いっきりターゲットじゃん。
地主ん…… ? むむむ…… !
アーチェえ ? なに ? やっぱりあたし ?いやー、正直ちょっと無理って──
地主おおっ、そなた見ない顔だがなかなか可愛いのう。旅の者か ? 魔術は使えるのか ?
ミントえ……あ、はい。法術ですけど……。
アーチェちょっとそこはあたしじゃないの ! ?
地主ん? そなたも魔術が使えるのか ? うーむ……。背に腹は代えられんか……。
アーチェなんなの、その扱い ! ?
チェスターまさか、選ばれたかったのかよ。
アーチェぜんぜんそんなんじゃないけど !なんか悔しいの !
地主ほうほう、よく見ればそっちにも小さくて可愛らしい子がおるではないか。
すずひっ…… ! ?
クレスど、どうしたんだい ?急に僕の後ろに隠れて。
すずす、すみません……。背筋に寒気が走ったので。
オーナーこれはこれは地主様。今日はいったいどのようなご用件で ?
地主ふん、わかっておるだろう。いい加減、メルちゃんをうちに寄越せ。
地主何日もとは言わん。今夜一晩でもかまわんのだ。
オーナーその話は前々からお断りしているはず。
オーナーメルはうちの店の稼ぎ頭ですから。一晩でもいなくなられると困るのですよ。
役人おい、地主様に逆らうつもりか。こんな店すぐにでも潰せるんだぞ。
オーナーそう言われましてもですね……。
地主ええい、待っておれん !力づくでも連れていくぞ !
ディオやれるもんならやってみろ !お前なんかにメルは渡さないからな !
クレスそういうことなら、僕たちも加勢するよ。
チェスター袖にされたアーチェのかたきもとってやらないといけないしな。
アーチェ袖になんてされてなーい !
役人地主様、こいつらとんでもない強さです !
地主ええい、情けないことを言うな !しかし、おかげで確信ができた。
地主その不思議な衣装に着替えた時の魔術の力……儂の望みを叶えられるのはメルちゃんしかおらん !なんとしても連れ帰るんだ !
チェスター懲りない連中だな。まだやる気か。
すずこのしつこさ、後々、禍根を残しかねません。いっそこの場で……。
ロンドリーネはいはい、物騒なこと考えないの。地主さんもいい加減諦めてかえ……って……。
メルロディさん ? どうしたんですか ?急に固まって……。
ダオス貴様らもいたのか。
ロンドリーネダオス……どうしてここに……。

Character7話【物語7 解決策】
クレスダオス !
ディオダオス、だって…… ! ?あいつもこっちの世界に来てたのかよ !
ダオスここに、この地の長がいるはずだ。
地主な、なんだ儂になんの用だ !
ダオス貴様が長か。聞きたいことがある。
地主聞きたいことだと……そうだ !お前のその態度、雰囲気、きっと腕が立つのだろう !
地主こいつらを痛めつけてやれ !そうしたらなんでも聞いてやるぞ !
チェスターこのやろっ、往生際が悪すぎるぞ !
アーチェで、でもダオスが相手ならさすがにやばいよ…… !
ダオスふっ、手を貸せだと ?
地主な、何を笑っている ! ?儂に聞きたいことがあるんじゃないのか !
ダオス口を割らせる方法などいくらでもある。お前が死んでいようがな……。
地主ひいいぃっ !
クレスやめろ ! ダオス !
ダオス……貴様か。私の邪魔をするなと言ったはずだ。
クレスこっちも言ったはずだ。誰も傷つけるなと。
チェスターこっちはお前を許したつもりはねえ。今ここで決着をつけてやってもいいんだぞ。
ロンドリーネちょっとやめてよ !こんなところで争ってどうするの !
メルそうです !今、戦う理由はないと思います !
アーチェていうか、あんたたちがにらみ合ってる間にさっきのスケベ親父逃げちゃったよ ?
ディオあ、ほんとだ !あの野郎 !
ダオス……ならば、もうここに用はない。
ロンドリーネま、待って ! ダオス──
ロンドリーネダオス……。
アーチェなんだか大変なことになっちゃったね。
チェスターダオスはともかく、あの地主。あれで諦めるとは思えないが。
ロンドリーネ逆らっちゃったから、水を売ってくれなくなるかも。オーナーは心配するなって言ってたけど……。
メルやっぱり、わたしが地主さんのお屋敷に行った方が……。
ディオなに言ってんだよ !あんなやつの言うこと聞く必要ない !
アーチェディオの言う通りだよ !
アーチェそれに、あんなスケベ親父のところにいったらなにされるか……ああっ ! 考えただけで鳥肌が !
メルでも……。
ミント大丈夫、メルちゃんは心配しなくていいんですよ。
アーチェそうそう。オーナーだって行く必要ないって言ってたじゃん。
クラースしかし、ダオスは何をしに来たのだろうな。地主に聞きたいことがあると言っていたが。
ロンドリーネまだ探してるんだよ。デリス・カーラーンを救う方法を……。
メル…………。
メル……みんな、ごめんなさい。
ディオなにやってんだよ、メル。
メルディオ ! どうして……。
ディオばか ! わかるに決まってんだろ !双子なんだから !
ディオどーせ、自分が行けば全部解決するとか思ってたんだろ !
メルだって、こうしないとみんなやオーナーさんに迷惑かけちゃうんだよ。
ディオお前はそれでいいのかよ。怖くて泣きそうになってるくせに。
メル怖いよ ! 怖いけど、わたしが行かないと !
ディオだから、そうじゃないんだって !
メルえ……。
ディオああ、もう ! なんでわかんないかな !オレも一緒に行くって言ってんだよ !
メルディオ……。
ディオか、勘違いすんなよな。お前のためじゃないんだからな。
ディオオレは、あの地主をぶっ飛ばしに行くんだ。
メル……ありがとう、ディオ。一緒に来てくれて嬉しいよ。
ディオまあ、怖いなら手を繋いでやってもいいけど。
メルうん !
役人お前たちは……。
メル地主さんに会いに来ました。
ディオこっちからわざわざ来てやったんだ。早く地主に会わせろよな !
役人娘の方だけでよかったものを……まあいい。こっちだ、ついてこい。
メルほっ……。
ディオ意外とあっさりオレも通してくれたな。ていうか、どこに連れてくつもりなんだ ?
メルすごい……地主さんの屋敷の地下にこんな洞窟があったなんて。
ディオ見ろよ、メル !水がこんなにたくさん !
メルほんとだ……そっか、ここが水源なんだ。
地主その通り。ここは秘密の場所。街の人間はほとんど知らん。
ディオ出たな……おい ! こんなに水があるのにどうしてみんなに分けてあげないんだ !
地主なぜ小僧までついてきておるのだ。
役人申し訳ありません、一緒に来たもので……。
地主まあいい。もう時間がないからな。この際、小僧にも見せてやろう。
ディオ見せてやるって、なにを……。
地主あれだ。
二人かにー ! ?

Character8話【物語8 地下に眠るもの】
ディオなんでこんな大きなかにの魔物が街の地下にいるんだ ! ?
地主こいつは、この水源の主だ。
地主この辺りが水のない砂漠になったのはこいつが水源に居座っていたからだ。
地主それに気づいた儂は、こいつを薬で眠らせて地上に水が流れるようにした。
メルここにオアシスが出来たのはそんな理由だったんだ……。
地主だが、だんだんと薬も効かなくなってきた。そこで、今度は魔術で眠らせることにしたのだ。
ディオだからメルを……。でも、今のうちにやっつければいいだろ。
地主こいつにはとてつもない数の眷属がおるのだ。仮に倒せたとしてもそいつらが街に押し寄せてしまう。
メルそんなことになったら、オーナーさんや街の人たちが……。
ディオくそっ…… !
ダオスこの地に水と緑が蘇ったのはそういうことだったか。
ディオダオス ! どうしてここに ! ?
ダオス何か手がかりがあるやもと思ったが無駄足だったようだ。
ダオス砂漠に湧いた泉など所詮はこんなものか。
メル待ってください !
メルこの魔物を倒すのに、力を貸してください !
ディオおい、メルなに言ってんだ ! ?
メルロディさんが言ってました。ダオスさんは、本当は優しい人だって。
メルこの街は、少ない水をみんなで大切に分け合って一生懸命生きてるんです。
メルこのままじゃ、そんな人たちがたくさんの魔物に襲われちゃう。
メルお願いです。手を、貸してください…… !
ダオス……………………。
ダオス……私には関係のないことだ。
メルそんな……。
ディオあいつ…… !やっぱり嫌なやつだ。
地主い、いかん。やつが目覚める !早く魔術で眠らせるんだ !
役人だ、ダメです地主様 !もう手遅れ──
魔物キシャアアアアアアアアッ !
メルくっ、わたしの魔術で…… !
魔物キシャアアアアアアアアッ !
メルきゃあああっ !
ディオメルッ ! !
メルディオ……ごめん。わたしの魔術じゃ、あいつを止められない。
ディオ謝るなよ。メルのせいじゃないだろ。それに、まだ終わったわけじゃない。
メル……うん。そうだね。諦めちゃダメだよね。
地主ああああ……なんてことだ。ついに目覚めてしまった。もうおしまいだ !
ディオおい ! 地主のおっさん !泣いてる場合じゃねーだろ !
メル戻って、みんなに知らせるんです !それから、街の外に避難してもらいます !
地主だ、だが、それでどうなる ! ?魔物はすぐに地下から上がってくる !
地主そ、そしたら街はもう終わりだ !
ディオ全然だいじょーぶ !街には、すっげー強い人たちがいるから !
メルあの人たちと一緒ならできないことなんて、ない !

Character9話【物語10 本当にやりたいこと】
ディオなんだ……街が騒がしいぞ。
メルディオ見て ! あれって、地下にいた魔物だよ !
ディオほんとだ ! ? あいつより小さいけど、あんなにたくさん……。
メルきっとあれが眷属ってやつなんだよ。急いでみんなのところに戻らないと !
ロンドリーネディオくん ! メルちゃん ! よかった、無事だったんだね。
ディオロディ、街に何があったんだ ! ?
ロンドリーネ地面の下から魔物が這い出してきて街の人を襲いはじめたんだ。
ロンドリーネ今はクレスたちが魔物と戦ってくれててその間に私とオーナーで街の人を避難させてる。
ディオくそっ、魔物のやつもう出て来やがったのか !
ロンドリーネディオくんたち何か知ってるの ?
メルそれは、この人が知っています。
地主う、うう……。
ロンドリーネスケベ親父……じゃなかった !地主のおじさんじゃない ! ?
ディオ街の下には魔物が棲みついてたんだ。そいつが起きて、地上に出てこようとしてる。
メル地下にはまだ大きい魔物がいるんです。それが出てくる前に避難をさせないと。
ロンドリーネなるほど……事情はだいたいわかったわ。よーするに、私たちの出番ってわけね !
ロンドリーネよし、二人はクレスたちに合流してこのことを伝えて。
ロンドリーネ私は、君たちが心おきなく戦えるように引き続き街の人たちを避難させるから。
ロンドリーネついでに、このおじさんたちもね。
地主うう……た、助かる。
ディオありがとう、ロディ !
メル必ず、クレスさんたちに伝えます !
ロンドリーネうん、任せたぜ。
ロンドリーネさてと、お姉さんもいっちょ張り切りますかねっ。
メルディオ、見て。魔物の数が多いよ。
ディオだけど、遠回りしてるヒマはないぞ。なんとしてもここを突破するんだ !
メル……うん、わかった。
ディオいくぞ ! なりきりクロスシフト !
メルえええい !
ディオいっけー !
ディオよし…… ! なんとか突破できたぞ !
メルはぁはぁ……っ
ディオ大丈夫か ? メル。
メルこのくらい、平気……だって、わたしたち一緒にいろんなことを乗り越えてきたんだもん。
ディオだな !
メルあ、見て ! あそこ、クレスさんたち !
ディオほんとだ、おーい ! クレスさーん !
クレス君たちは…… ! よかった、無事だったんだね。
ディオクレスさん ! 聞いてくれ !魔物はこいつらだけじゃない !
メルもっと大きなのが、地下にいるんです !
クラースなるほど……それが、こいつらの親玉だな。倒してもキリがないわけだ。
チェスター雑魚をいくら倒しても無駄ってことか ?
すず悪いものは元から断つべし。道理ですね。
ミントそんなのが出て来たら街の被害が大変なことに……。
ディオだから、ここで食い止めたいんだ !一緒に戦ってくれよ !
メルお願いします ! 街を守りたいんです !
クレスもちろん。僕たちも同じ気持ちだ。一緒に親玉を倒そう !
ディオクレスさん !
ディオくぅ〜っ、また時空戦士と一緒に戦えるなんて !
メル良かったね、ディオ !
アーチェそれにしても、このかになんなのよー。アッパーとかタックルとかしてきちゃってぇ !
ディオかには、アッパーするよな ?
メルうん。タックルも。
アーチェえ ?
二人ん ?
チェスター妙な話をしてる場合じゃない !でかいのが来るぞ !
クレスディオ、準備はいいか ?
ディオいつでもいいぜ !
アーチェメルちゃん、いくよ !魔女っ娘たちの力を見せてあげるんだから !
メルはいっ !

Character10話【物語10 本当にやりたいこと】
クラース倒したか……。
ロンドリーネあらら、もうやっつけちゃってたか。さすが、クレス !
クレスロディ、住人たちは無事かい ?
ロンドリーネ安全なところに集まってるよ。ケガ人がいるみたいだからミントに来てもらえるかな。
ミントええ。わかりました。
チェスターさて、残った雑魚を掃除したら戻れそうだな。
アーチェあともうひと仕事か~。
ディオそれにしてもこいつ、でっけえよなー。
すずっ ! いけません ! それはまだ──
魔物キシャ……アアアアアアアアッ !
ディオうわあああっ ! ?
メルディオ !
ディオあ、あれ ? 動かなくなった…… ?
クレス今の魔術は……。
アーチェえ ? え ? あたしじゃないよ ! ?
チェスターいったい誰が……。
ロンドリーネまさか……。
オーナー街の人間はみんな無事だ。魔物も片付いた。
オーナー地主様も、今後は水の値を下げると言ってる。ぜんぶ、あんたらのおかげだよ。
クレスいえ、お礼なら彼らに。
クレス二人が行動を起こしていなければ僕たちも後手に回っていたと思います。
オーナーそうか……ありがとな、ディオ、メル。
ディオへへっ、まあな !けっこー、見直しただろ !
メルもう、調子にのりすぎ。
オーナーはははっ、いや、ほんとに見直したよ。
オーナーだからよ、お前らはこんなとこでくすぶってちゃいけねえ。
ディオオーナー ? なに言ってんだよ。
オーナー行きたいんだろ。この人たちと。
ディオで、でも、オレたちがいなくなったら店はどーすんだよ !
オーナーガキが気を遣うんじゃない。うちの店なら大丈夫だ。
ディオオーナー……。
メルディオ、オーナーさんの言う通りだよ。わたしたち、もっといろんなこと学ばないと。
ディオ……うん。そうだな。
ロンドリーネそれじゃあ改めて……よろしくね、双子ちゃん ! !
クレスきっとイクスたちも歓迎してくれるよ。
チェスターまーたアジトにちびっ子が増えるのか。ま、アミィも喜ぶかな。
ミント賑やかになりそうですね。
ディオ子供扱いすんなよ !オレたちだって戦えるんだからな !
すずなりきり士でしたか。衣装を変えるだけで能力も変わるとか。
クラースなかなか興味深い力だ。キールと共にじっくりと研究してみたいものだな。
ディオげっ……オレたちもしかして研究対象として誘われた ! ?
アーチェあー、クラースがいじわるしてるー。
メルふふっ、楽しくなりそうだねディオ。
ディオへへ……そうだなメル。
オーナーともかく、今日は祝いだ。ディオとメルの送別会もかねてな !
ロンドリーネふふ。みんな盛り上がっちゃって。
ロンドリーネあれは……。
ロンドリーネダオス……やっぱり、あなただったんだ。
ダオス……なんのことだ。
ロンドリーネディオくんを魔物から助けてくれたのあなたでしょう ?
ダオスあの魔物が目障りだっただけだ。
ロンドリーネうん、じゃあそういうことにしておく。
ロンドリーネダオスは、これからもそうやって故郷を救う方法を探し続けるんだね。
ロンドリーネ元の世界に帰れるかどうかもわからないのに。
ダオスどこであろうと関係ない。
ダオスこうして水面に映る星であれば地上からでも手が届く。可能性などそれで十分だ。
ダオス私には『大いなる実り』が必要なのだ。私を待ち望んでいる、民の為にも……
ロンドリーネやっぱりすごいね、ダオスは。そんな重い責任を背負っていけるなんて。
ダオス王たる者の務めを果たしているだけだ。それより……
ロンドリーネこれ……あなたにもらった指輪…… !
ダオス屋敷に転がっていた。
ロンドリーネ勝手に持って来ちゃったの ?それって泥棒じゃ……。
ダオスもともと私のものだ。
ロンドリーネ私がもらっていいの ?
ダオス今は貴様のものなのだろう。何の力も残っていない指輪など不要だ。
ロンドリーネじゃ、遠慮なくもらっておくね。ふふっ、二度目の誕生日プレゼントだね。
ダオス妙なことを……。まあいい、好きにするがいい。
ロンドリーネ……またね、ダオス。