| Character | 1話【ナイトプール1 充実の休暇】 |
| コハク | みんな、スペシャルフルーツかき氷パフェは持ったね。それじゃあお願い、ミリーナ。 |
| ミリーナ | いくわよ ! はいっ、ちーず♪ |
| 一同 | いえいっ ! ! |
| リチア | さきほどのクレープ屋さんも可愛らしくて素敵なお店でしたがこのオープンテラスのカフェもお洒落ですわね。 |
| カーリャ | お店よりパフェですよ ! クリームとかき氷の山にフルーツを隙間なくトッピングした、このパフェ !量や見た目だけじゃなく、味も最高すぎますっ♪ |
| コハク | このカフェにも、みんなと一緒に絶対に来ようってミリーナと計画してたんだ。行列に並んだかいもあったでしょう ? |
| シング | うん ! それに、並んで待っている時間なんてみんなと一緒にいればあっという間だしさ ! |
| イクス | 写真係のミリーナはわかるけどなんだか俺までついてきちゃって悪いな。 |
| クンツァイト | 遠慮などは無用だ。イクスがスケジュールを調整してくれたおかげで自分たちは同じ日に休暇を取得できた。 |
| ヒスイ | そうだぜ。なら、こっちとしても礼をするのが筋ってもんだからな。 |
| リチア | なにより、イクスの写真を撮れてミリーナも楽しそうですからね。 |
| ミリーナ | イクスは何度撮っても飽きないわ。ちなみに、今日のオススメ写真はこれよ。 |
| シング | あははっ、前のお店で撮った写真だね。イクスがアイスクリームのトッピングみたいになってて、何度みても面白いな。 |
| カーリャ | 名付けてイクスクリームですね ! |
| イクス | なんだろ……その呼び名はちょっと……。まぁ、俺もこの写真については遠近法をうまく使っていて面白いとは思うけどさ。 |
| ミリーナ | このイクスクリームが撮れたのもベリルが構図のアドバイスをしてくれたからよ。おかげでコハクたちの写真も面白いものが撮れたわ。 |
| イクス | それにしても芸術家はすごいよな。絵だけじゃなく写真のセンスまであるなんてさ。 |
| ベリル | そんなたいしたことじゃないってば。絵も写真もイメージをフレームに収めるっていうのは同じってだけさ。 |
| ベリル | まぁ、いくら構図が面白くてもただ現実をそっくりそのまま映しただけである写真という芸術を、ボクは面白いと思わないけどね。 |
| ヒスイ | またベリルの屁理屈がはじまりやがったな。どうせ画家として写真は認められないとかいいつつ本当はただ撮られるのが恥ずかしいだけのくせによ。 |
| ベリル | ち、違うよ ! これだから芸術のナンたるかを知らない素人は ! |
| コハク | けど、わたしはベリルと一緒に撮りたかったなぁ。 |
| シング | 一枚だけでも記念に撮ろうよ。 |
| ベリル | 別にいいってば。ボクはスピリアというキャンバスに思い出を刻んでいるからね。 |
| コハク | 残念だなぁ。ベリルと一緒に写真を撮りたいと思っていた場所、まだまだたくさんあったのに。風鈴屋さんや絶景ビーチ、それから―― |
| ヒスイ | 言っておくが、ナイトプールだけは認めねぇぞ。そんな危険な場所にコハクを行かせるわけにはいかねぇからな。 |
| コハク | それはお兄ちゃんの偏見だよ !わたしたちが行きたいナイトプールは高級ホテルが運営してるちゃんとした所 ! |
| シング | オレからも頼むよ、ヒスイ。せっかく抽選で当たったってロゼが渡してくれたんだ。それからオレたち、ずっと楽しみにしてたんだよ。 |
| ヒスイ | じゃあもしコハクに何かあったらてめぇが責任取るっていうのか ? |
| ヒスイ | コハクがよからぬ奴らにつけられたら ?企業の陰謀や殺人事件に巻き込まれてもてめぇが責任を取るっていうんだな ? |
| コハク | 普通そんなこと起こるはずないでしょう !ナイトプールを何だと思ってるの ! ? |
| イクス | そ、そうだよな。さすがに陰謀やら事件やらが起こるわけが…………あれ ? |
| ミリーナ | イクス、どうかしたの ? |
| イクス | みんな、広場で撮ったこの写真を見てくれ。ピントがズレてボケちゃってるから見えづらいと思うけど、ここの箇所。 |
| クンツァイト | 画像データの解析完了。イクスが指摘した該当箇所には制服姿の女と黒い服で帽子を目深にかぶった男が写っている。 |
| イクス | この男性……いや、人違いか。決めつけるのもよくないしな。 |
| ミリーナ | イクス ? |
| イクス | いや、なんでもない。話を戻すとこの写真の男性がすれ違いざま女性に何か包みを渡しているみたいなんだ。 |
| クンツァイト | この制服はナイトプールがあるホテルのものだ。つまりこの女性はホテルの従業員である可能性が高い。 |
| イクス | そんなホテルの従業員が怪しい男からこっそり何かを受け取っている。何か……事件の香りがしないか ? |
| カーリャ | イクスさま、なんでちょっと嬉しそうなんですか。 |
| ベリル | さ、さすがに考えすぎじゃない ? |
| ヒスイ | いいや ! 火のないところに煙は立たねぇ !そしてこのホテルの従業員が怪しいなら、このホテルもそのナイトプールも危ねぇに決まってる ! |
| ヒスイ | やっぱりナイトプールはナシだ !きっとろくでもねぇ社長が裏で何かやってんだよ。 |
| シング | 社長かぁ……こういうときイネスかガラドがいてくれれば色々と意見を聞けるんだけどね。 |
| コハク | そうだね……えっ、ちょっと待って。みんな、ホテルの裏口をみて ! |
| イネス | さてと。お仕事といきますか。 |
| ヒスイ | うそだろ ! ? イネスじゃねぇか !なんでホテルの裏口から出てきてんだよ。 |
| クンツァイト | イネスは路地裏に進入。このままでは追跡不可能になる。 |
| シング | なら急がなくちゃ !みんな、イネスを追いかけよう ! |
| Character | 2話【ナイトプール2 女社長と秘書】 |
| シング | イネスはどこだろう。こっちの道に入っていったと思うんだけど。 |
| ミリーナ | 静かに。こっちに誰かいるわ。何か取引をしているみたい。薄暗くてよく見えないけど……。 |
| イネス | ……中身は確認したわ。ありがとう、売人さん。ちなみに、そっちも問題ないわよね ? |
| 売人 | 愚問だ。それじゃあ俺はもういくぜ。じゃあな。 |
| イネス | はいはーい。 |
| クンツァイト | 解析、記憶データと照合完了。間違いなくイネスだ。だがもう一人の男性は詳細不明。 |
| ヒスイ | すぐに立ち去りやがったな。なにもんだ、あいつ。 |
| コハク | それより、どうするの ?このまま盗み聞きしているつもり ? |
| ヒスイ | おっと、そうだった。イネスがどっかいっちまう前に……うん ?イネスはどこだ ? |
| イクス | そんな。さっきまで目の前にいたはずなのに。いったいどこにいったんだ。 |
| イクス | とにかく追いかけよう―― |
| ミリーナ | イクス ! 伏せて ! ! |
| イクス | えっ ! ! |
| イネス | ふふっ、よく避けたわね。だけどこれ以上は無駄な抵抗しない方がいいわよ。でないとボコメキョどころじゃすまないから。 |
| シング | ちょ、ちょ、ちょっとイネス !武器をおろしてよ !オレだよ ! シングだよ ! |
| イネス | その声…………シングなの ! ? |
| シング | 本当だってば。ほら、よく見てよ。コハク、ヒスイ、ベリル、クンツァイトとリチアもいるからさ。 |
| ヒスイ | はぁ……ビビったぜ。相変わらず油断もすきもあったもんじゃねぇ。やっぱり特務部隊少佐は伊達じゃねえな。 |
| イネス | 元特務部隊少佐よ。けど、驚いたわ。シングたちが鏡士の二人と一緒に行動しているなんて。 |
| イクス | 俺たちのことも知ってるんですか ! ? |
| イネス | もちろん。一部の界隈では有名人だもの。お近づきになれて嬉しいわ。気軽にイネスって呼んでくれていいわよ。 |
| イクス | わ、わかったよ。よろしく、イネス。 |
| ベリル | イクスもミリーナも気をつけなよ。うっかりしてると借金まみれにされて一生ただ働きの目にあわされちゃうから。 |
| イネス | 人を悪徳商人みたいに言わないでくれるかしら。とにかく、立ち話もなんだし、場所を移しましょう。さあ、ついて来て。近道を使うわ。 |
| コハク | えっ、イネス。そっちは行き止まりだよ。 |
| イネス | 行き止まり……とみせかけて、この木箱をどかすと高級ホテルに繋がっているヒミツの地下通路の入り口があるのよ。 |
| シング | 本当だ ! よく知ってるなぁ。けどホテルに繋がっているってことはホテルで話をするってこと ? |
| イネス | 安心して。私がホテルの経営者だから。 |
| 一同 | ホテルの経営者 ! ? |
| イネス | さあ、スイートルームでお茶をしながら色々話をするとしましょう。 |
| イクス | ……と、言うわけなんだ。 |
| イネス | なるほど。やっぱりここは原界でもなければ結晶界でもない全く別の世界だったわけね。 |
| イネス | まぁ、運び屋としてあちこち巡りながら情報を仕入れていたからおおよその見当はついていたけど。 |
| シング | それにしても驚いたよ。まさかイネスがこの高級ホテルの社長だったなんてさ。 |
| イネス | 具現化されてからしばらくは運び屋「日々寧日」として気楽にやっていたんだけど成り行きでホテルビジネスをやることになったのよ。 |
| リチア | 成り行きでここまで成功させるなんてさすが商売上手ですね。 |
| ベリル | どっかの誰かは悪徳社長って言っていた気がするけどね。ヒスイ、誰が言ってたか覚えてるぅ ? |
| ヒスイ | し、仕方ねぇだろ。あんな写真を見たら疑っちまうもんだ。 |
| イネス | 写真 ? |
| ミリーナ | これよ。ホテルの従業員の女性と怪しい男性が何か荷物の受け渡しをしているのが偶然写っていたの。 |
| イネス | ああ……これのことだったのね。 |
| シング | イネス、知ってたの ? |
| イネス | 彼女は私の秘書のネジュワ。怪しむ気持ちはわかるけど彼女はただ買い物中ってだけよ。 |
| ベリル | なんだか怪しいなぁ。イネスも、黒服黒帽子の顔がよく見えない男から何か受け取ってるしさ。 |
| イネス | そんなに気になるなら包の中をみてくれていいわよ。 |
| ベリル | どれどれ……えっ ! ?な、なんだよこれ ! ?白い粉がいっぱいつまってるよ ! ? |
| 一同 | 白い粉 ! ? |
| ヒスイ | お、おい、イネス。これ危ないものじゃねぇよな ? |
| イネス | そうね……ただの元気になれる素、ってところかしら ? |
| カーリャ | 明らかに怪しいのですが ! ? |
| イネス | ふふっ。いやねぇ、冗談よ。これはただの小麦粉。まあ、特注品ではあるけどね。 |
| ヒスイ | 特注品の小麦粉だぁ ? 本当かよ。 |
| イネス | 本当よ。三色ピザを作るのにぴったりなの。この小麦粉なら料理が下手な私でもそこそこ美味しく仕上がるのよ。 |
| イネス | ただ普通のルートだと仕入れるのが大変でね。コネを使ってこっそり入手させてもらってるの。 |
| イネス | 秘書のネジュワには小さい娘がいてね。美味しい料理を作ってやりたがってたからこの男を紹介してあげたってわけ。 |
| シング | なんだ。そういうことだったのか。てっきり危ないことに関わってるのかと思って心配したよ。 |
| イネス | ちょっぴりグレーなのは認めるわ。だから私のこともネジュワのこともここだけのヒミツにしてね ? |
| ヒスイ | わかったよ。口外すればイネスに何されるかわからねぇからな。 |
| イネス | 私だけじゃなくネジュワも怒らせると怖いわよ。 |
| ? ? ? | 社長。よろしいでしょうか ? |
| イネス | ちょうどいいところに来たわね。いいわよ、ネジュワ。入ってきて。 |
| ネジュワ | ご歓談中のところ失礼します。例の書類をお届けにあがりました。 |
| イネス | 相変わらず仕事が早くて助かるわ。ありがとう。そこに置いておいて。 |
| ネジュワ | わかりました。それと、こちらは今日の分のお薬です。では、失礼します。 |
| クンツァイト | 薬 ? イネス、具合が悪いのか ? |
| イネス | ちょっと疲れがたまっているだけよ。ホテルの社長なんかやっていると仕事が多くてね。 |
| ベリル | うわぁ……すごい書類の束……。贅沢三昧の暮らしかと思ったけどイネスも大変だったんだねぇ。 |
| イネス | ええ。けどネジュワがいてくれるおかげでなんとかやっているわ。 |
| シング | ネジュワさんかぁ。キビキビした人だね。なんだかエカイユさんに雰囲気が似てる気がするよ。 |
| イネス | だから赤の他人とも思えなくてね。色々あって生活に困っているみたいだったから一緒にホテル事業を立ち上げたのよ。 |
| リチア | つまりイネスの右腕ということですね。よほど優秀な方なのでしょう。 |
| イネス | 当然。けど難しい話も具現化の話もいったんおしまい。せっかくだし遊びに行きましょう。 |
| コハク | 遊びにってもしかして…… ! ! |
| イネス | 屋上のナイトプールに招待するわ。 |
| Character | 3話【ナイトプール3 絢爛のナイトプール】 |
| ベリル | ここがナイトプール ! ?まるで別世界みたいだよ ! |
| リチア | あちこちに光が溢れている……。なんて幻想的な光景なのでしょう。フルエーレの光とはまた違った趣がありますわ。 |
| コハク | とっても綺麗だよね ! |
| シング | ヒスイも来てよかったでしょう ? |
| ヒスイ | まぁ、悪くはねぇな。 |
| イクス | やっぱり殺人事件や企業の陰謀とかは起こらないか。そりゃそうだよな。 |
| カーリャ | もしかしてちょっと期待してたんですか ? |
| ミリーナ | そんなイクスも可愛いわ !記念に一枚いただきまーす !みんなも集まって。はい、ちーず♪ |
| 一同 | にっ ! |
| イネス | みんな、気に入ってくれてよかったわ。けど……シング。ちょっと聞きたいことがあるのだけど。 |
| シング | どうかした ? |
| イネス | なんでフィンをつけてるの ?おまけにゴーグルまで。 |
| シング | もちろん、みんなと水泳大会をするためさ !ここにカルがいないのが残念だよ。また対決したかったのに。 |
| ベリル | バカだねぇ。ナイトプールはこの芸術的な空間を楽しむ場なんだよ。そんなに泳ぎたければ一人でやってれば ? |
| ヒスイ | ここまで無知な野郎だとはな。一緒にいるのが恥ずかしくなってくるぜ。 |
| コハク | 恥ずかしいのはお兄ちゃんもでしょう !さっきからずっと気になっていたけどその格好はなんなのよ ! ? |
| ヒスイ | コハクに悪い虫がつかねぇように兄である俺がいかにコハクを大切に思ってるか周囲にアピールしてやろうと思ってな。 |
| コハク | やめて ! そのシャツもすぐ脱いで !わたしの顔までシャツの背中に描かれててさすがに恥ずかし過ぎる ! |
| シング | けど、シャツに描かれたコハクも可愛いよね。もちろん現実のコハクの方が可愛いし水着姿のコハクはもっともーっと可愛いけどさ。 |
| コハク | か、可愛い ?もうっ、シングったら……。 |
| ヒスイ | おっと、一番近くに害虫がいやがったな。うっかり見落としてたぜ。 |
| シング | ちょ、ちょっとヒスイ !なにソーマを構えてるの ! ?落ち着いてよ ! |
| ヒスイ | 落ち着いてなんかいられるか !さっきからコハクの水着姿をジロジロ見やがって !このケダモノ野郎が ! |
| シング | ジロジロは見てないけどちょっと見ちゃうのは仕方ないだろ !ヒスイだってリチアの水着姿が気になってるくせに ! |
| ヒスイ | な、何を言ってやがる !お前と一緒にするな !俺は別にリチアの水着がどうのとかは……。 |
| リチア | そうですか……。つまり、わたくしの水着姿には魅力がないと……。 |
| ヒスイ | ちょ、ちょっと待て、リチア。誰も魅力がないとまでは言ってねぇだろ。 |
| クンツァイト | ヒスイ、我が主への侮辱は許さん。即時撤回を要求する。 |
| ヒスイ | だから誤解……って、クンツァイト !てめぇ、いきなり出てくるんじゃねぇ !しかもなんて格好してやがるんだ ! |
| リチア | クンツァイト !どうしてスーツを着ているのですか ! ? |
| イネス | 従業員に欠員がでたからバーテンダー兼シェフ兼プール監視員をお願いしたの。人件費が二人分も浮いたからこっちは大助かりよ。 |
| ベリル | うわぁ……相変わらず人使いが荒いなぁ。 |
| イネス | というのは半分冗談で半分本当。とにかく頼んだわよ、クンツァイト。 |
| クンツァイト | 自分はリチアさまの守護騎士。ここではプールスタッフとしてリチアさまをお守りします。 |
| リチア | それは心強いです。頼りにしていますよ、クンツァイト。 |
| コハク | それじゃあ、みんな揃ったわけだしそろそろプールに入ろうよ。 |
| イネス | こほっ……。 |
| コハク | イネス ? 大丈夫 ? |
| イネス | ごめんなさい。私はちょっと休むわ。ネジュワ、薬と水を取ってくれる ? |
| ネジュワ | かしこまりました。 |
| シング | イネス、あんまり無理しないでね。 |
| イネス | ええ。心配かけてごめんなさいね。私のことは気にせず楽しんで。オススメはウォータースライダーよ。 |
| シング | ウォータースライダー ! ! |
| コハク | ありがとう、イネス。ウォータースライダーに行ってみるよ。 |
| イネス | どういたしました。それじゃあ、またあとで。 |
| コハク | それじゃあ出発だね !念願のナイトプールだよ ! |
| ミリーナ | ウォータースライダーだけじゃなくて流れるプール、波のプール、ジャグジープール色々種類があるみたいね。 |
| シング | せっかくだし全部回ろうよ !みんなで遊びつくそう ! |
| Character | 4話【ナイトプール4 怪しい人影】 |
| シング | うおぉぉっ ! すごいスピードだ ! !コハク、見てる ! ? |
| コハク | 見てるよ ! |
| シング | いくよっ ! ! いえーい ! ! ! ! |
| シング | ぷはーっ。どうどう ?今までで一番速かったよね ? |
| コハク | うん。水しぶきも今までで一番大きかったよ。 |
| シング | オレも身体の傾け方とかコツが掴めてきたよ。次はもっと速く滑るぞ。 |
| コハク | けど、あんなに高い場所から猛スピードで滑るのは、ちょっと怖いかも……。 |
| シング | 大丈夫 ! むしろすっごく楽しいよ !だからコハクもウォータースライダーやってみない ? |
| コハク | ……よし、わかった ! 今までの旅や浮遊島での暮らしのおかげで高い所も慣れてきたし、挑戦してみるよ ! |
| シング | さすがコハク !それじゃあ二人用の浮き輪を持ってくるね ! |
| コハク | 二人用の浮き輪もあるんだね。それならシングと一緒に滑れるのかな ? |
| シング | うん。もしコハクが怖くなったらオレが後ろからギュッてやるから安心してね。 |
| コハク | ふふっ。シングがいてくれるなら心配ないね。滑る時は全速力でお願い。 |
| シング | オッケー、任せてよ ! |
| コハク | それじゃあ浮き輪も一緒に借りに行こう。リチア、悪いけどお兄ちゃんのこと頼める ? |
| リチア | はい。任せてください。 |
| シング | それじゃあまた後でね ! |
| ヒスイ | ぷはっ…… ! !リチア、タイムは ? |
| リチア | 最長記録更新です。もう立派に泳げるようになっていますね。 |
| ヒスイ | 褒めるほどのことじゃねぇだろ。なんか俺のことガキ扱いしてねぇか ? |
| リチア | あら、気に障ってしまいましたか。わたくしは二千歳のおばあちゃんですから若者であるヒスイとは感性にズレがあるようですね。 |
| ヒスイ | なぁ、もしかして水着のことまだひきずってるのか ? |
| リチア | さあ。なんのことでしょう。ヒスイの考えていることはわたくしにはさっぱりわかりませんわ。 |
| ヒスイ | わかったから機嫌直してくれ。正直に言うからよぉ。 |
| リチア | 正直に、ですか。それならわかりましたわ。さあ、どうぞ。 |
| ヒスイ | …………よく似合って、ました。 |
| リチア | それから ? |
| ヒスイ | それから ! ? え、えっと……なんつーんだ。まぁ……結構、綺麗だなぁとかも……思ったり……。 |
| リチア | そして ? |
| ヒスイ | そ、そして……。まぁ、年齢的には年上だけどなんつーか……シングみてぇにはっきり言うならか、かわ……………つめたっ ! ! |
| リチア | いいでしょう。許してさしあげます。 |
| ヒスイ | このっ、リチア ! やりやがったな ! |
| リチア | 顔が熱くなっているようだったので。 |
| ヒスイ | くそっ、余裕ぶりやがって。……おら、くらえっ ! ! |
| リチア | きゃっ ! ! ヒスイもやりましたわね。 |
| ヒスイ | ったく、子どもみてーにはしゃぐなっつーの。 |
| リチア | ……そうですね。あなたたちと一緒にいるとこんな楽しい時間がずっと続くような気がして……。 |
| ヒスイ | リチア……おめぇ……。 |
| リチア | ふふっ、隙ありですわよ ! それっ ! ! |
| ヒスイ | ぶはっ……ずりぃぞ、リチア ! |
| リチア | はい、わたくしはずるい女ですよ ?それは、あなたもよく知ってるはずです。 |
| ヒスイ | つまんねぇ冗談抜かしやがって。まあ、お前が楽しそうに笑ってりゃ他はどーでもいいがな。 |
| リチア | えっ。 |
| ヒスイ | なんてなっ ! おら、くらえっ ! ! |
| リチア | んぅっ…‥……なかなかやりますわね。では、これならどうですか ?クンツァイト ! あれを ! |
| ヒスイ | クンツァイトだぁ ! ?だって、あの野郎は今……。 |
| クンツァイト | 了解。主の命により水鉄砲モードに移行。バーカウンターより遠距離射撃を実行する。 |
| ヒスイ | マジかよ ! !まだそんな機能を隠し持ってやがったのか ! ?というより、二対一はひきょ――ぶはっ ! |
| ミリーナ | ふふっ、みんな楽しそうね。いい写真がいっぱい撮れたわ。 |
| イクス | 気になっていたところは回ったし俺たちはちょっと一休みするか。どこか空いてる席は…………。 |
| ベリル | あれ……これって…………。 |
| イクス | あれ ? ベリルじゃないか。 |
| ベリル | あ、二人とも。もしかして席を探してるの ?ここ、空いてるから使っていいよ。いま画材をどかすから。 |
| ミリーナ | ありがとう。その絵……コハクたちを描いていたの ? |
| ベリル | コハクたちだけじゃないよ。目に入った人を適当にスケッチしてたのさ。 |
| ベリル | ナイトプールっていう場所に芸術家としての創作意欲を刺激されたってわけ。 |
| ミリーナ | ベリル。何か相談したいことがあるなら私でよければ話を聞くわよ。 |
| ベリル | な、なんだよ、いきなり。別にボクは絵が描きたいから描いてるだけだよ。 |
| ミリーナ | けど、さっき何か思い悩んでいるようだったから。 |
| ベリル | さっき ? ああ、それなら特に深い意味はないよ。ただちょっと気になることがあってさ。 |
| ミリーナ | 気になること ? |
| ベリル | このスケッチの人と、それからこっちの人。他にもさっきから同じ場所をずっとウロウロしてる人が何人かいるみたいなんだよ。 |
| イクス | 一人だけじゃなく複数人……。それはちょっと奇妙だな。 |
| イネス | さすがは画家なだけあるわね。なかなかの観察眼だわ。 |
| ミリーナ | イネス、もう大丈夫なの ? |
| イネス | ええ。薬のおかげでね。 |
| ベリル | それで、この怪しい人たちは誰 ?その口ぶりだと何か知ってるんだよね ? |
| イネス | 本当は楽しいひとときを邪魔したくなかったから私だけで処理しちゃいたかったんだけど気づかれちゃったなら言うしかないわね。 |
| イネス | その人たちは、産業スパイよ。 |
| 三人 | 産業スパイ ! ? |
| ネジュワ | お静かに。 |
| イクス | あっ、ネジュワさん。す、すみません……。けど……産業スパイってまさかそんな……。 |
| ベリル | それも驚きだけどなんでイクスはちょっとワクワクしてるんだよ……。 |
| ネジュワ | こほんっ……ローレンツ社長。頼まれていた調査が完了しました。ご報告したいのですが。 |
| イネス | わかったわ。ついでだし、あなたたちも来て。せっかくだし巻き込まれてもらうわよ。 |
| イクス | わかった。協力するよ。 |
| イネス | もちろん、こっそり退散しようとしているベリルも来てもらうからね。 |
| ベリル | ギクッ……。 |
| イネス | さあ、こっちよ。 |
| Character | 5話【ナイトプール5 潜り込んだ工作員】 |
| イクス | 競合ホテルの産業スパイによる業務妨害工作 ! ? |
| イネス | 簡単にまとめるとそうよ。このホテルの評判を落とすことで奪われた顧客を取り戻そうという算段みたい。 |
| ベリル | その計画のために工作員たちがナイトプールに紛れ込んで集団食中毒を起こそうとしているの ? |
| イネス | ……あそこを見て。 |
| 少年二人 | うぅぅ……腹が痛い……。 |
| 青年 | ったく、なんか悪いもんでも食ったか ?ほら、とりあえず医務室に行くぞ。 |
| イクス | もしかして、すでに計画ははじまっているのか ? |
| イネス | そのとおりよ。 |
| イネス | 料理やドリンクの提供スタッフにはクンツァイトが配置されているから大事にはならないと思いたいけど……はあっ。 |
| ベリル | ちょっとイネス、本当に大丈夫なの ?さっきより顔色が悪くなってない ? |
| イネス | ええ、気にしないで。それよりこの事態をなんとかしないといけないわ。 |
| イクス | けど、すごい手際の良さだな。現時点で敵対組織の計画はおおよそ把握していてしかもすでに最低限の対処も済んでいるのか。 |
| イネス | 優秀な秘書のおかげよ。実は今までもちょっかい程度の妨害があったの。けど、ネジュワのおかげで全部未然に潰してやれたわ。 |
| ネジュワ | ローレンツ社長。ですが油断は禁物です。 |
| イネス | わかっているわよ。けど、あとのことは私たちに任せてあなたはもう帰りなさい。 |
| ネジュワ | いえ。まだ仕事が残っていますので。 |
| イネス | 社長命令であってもお構いなし。そういうところは嫌いじゃないけど可愛い一人娘が寂しがるわよ。 |
| イネス | あなたも母親なのだから。 |
| ネジュワ | ……わかっています。 |
| ベリル | あっ……行っちゃった。 |
| イクス | あ、あの……イネス。さっき「あなた『も』母親」って言ったのか ? |
| イネス | ええ、そうよ。つまり私も母親。こう見えてもラピスっていう娘が一人いるのよ。 |
| ミリーナ | そうだったの ! ? |
| イクス | 戦闘、経営、戦略の立案だけじゃなく子育てまでできるってことか。イネスはどれだけ多才なんだ。 |
| ベリル | ちょっとイネス。面白がって話をややこしくしないでよ。二人が誤解してるじゃないか。 |
| イクス | えっ ? |
| イネス | ふふっ、ごめんなさい。あなたたちって、からかいがいがあるから。 |
| イネス | ラピスはね、血の繋がった娘じゃないのよ。士官学校時代の先輩と同級生の娘。だけど二人とも亡くなってしまったから引き取ったの。 |
| イネス | だから戦闘も商売もそれなりにできても子育てと料理に関してはまだまだよ。 |
| イネス | 今は宿屋を経営している夫婦の方に預かってもらっているけどラピス、元気にしているかしら……。 |
| ミリーナ | イネスは心からラピスのことを大切に思っているのね……。 |
| イクス | ……会いたい、ですよね。 |
| イネス | まあね。けどラピスが鏡映点としてこの世界に具現化している可能性は低い……。寂しいけど仕方のないことよ。 |
| イネス | でも、たとえラピスに会えなくても私が母親であることに変わりはない。 |
| イネス | このアクアマリン……ラピスがくれたお守りがその証だから。 |
| ベリル | なら、こっちの世界でも料理の練習は続けないとね。 |
| イネス | 当然よ。美味しい三色ピザを母親として作れるようになりたいからね。 |
| ミリーナ | 私、料理ならそれなりにできるからいつでも協力するわ。 |
| イクス | お、俺も……魚料理とかなら教えられると思う。 |
| イネス | ふふっ、ありがとう。あなたたちも、なかなかのお人好しみたいね。 |
| イネス | でも、その前にやることをやっておかないと。まずは工作員たちを捕まえましょう。 |
| Character | 6話【ナイトプール6 宿泊客の異変】 |
| イネス | これで潜伏していた工作員たちは全員確保したわ。 |
| イネス | さあ、そろそろ白状した方が身のためよ。あなたの雇い主は誰 ?正直に吐けば、悪いようにはしないわ。 |
| 工作員 | 俺って保身のためならそんなペラペラ情報しゃべる奴に見える ?なんかちょっと傷つくなぁ。 |
| イネス | 言うつもりはないと。 |
| カーリャ | 鬼畜眼鏡か拷問剣士でも呼びましょうか~ ? |
| ミリーナ | カーリャ。そんなこと言ってるとまたジェイドさんとリオンさんに怒られるわよ。 |
| イクス | とはいえ……どうしようか。 |
| イネス | どうやら、彼らは腐ってもプロのようね。拷問したって吐きはしない。最悪、自害してでも情報は守るでしょうね。 |
| ネジュワ | 試してみましょうか ? |
| イネス | やめなさい。間接的ながら殺したとなってはこっちが被害者とはいえ寝覚めが悪い。これ以上はやめておきましょう。 |
| ネジュワ | わかりました。では自警団に引き渡してきます。 |
| イクス | 敵対組織、なかなか狡猾だな。どこのホテルの差し金か見当はつくけど決定的な証拠は残さないよう動いてる。 |
| イネス | とはいえ、いつかはボロがでるものよ。今回も事件は未然に阻止できたし、良しとしましょう。ずっと仕事のことばかり考えてると肩が凝ってくるわ。 |
| イネス | さあ、シングたちのところに戻って私たちもパーっと遊びましょう。再会のお祝いもしたいわ。 |
| ミリーナ | 賛成 ! イクスとベリルも行きましょう ! |
| ベリル | 悪いけどボクはパス。プールサイドで絵を描いてるよ。もうちょっとで完成するから早く仕上げたいんだ。 |
| イネス | 絵なんていつでも描けるでしょ。さあ、行くわよ。 |
| ベリル | うわあっ、ちょっとイネス ! おろせ~ !ボクをポーチみたいに脇で抱えるな !この怪力 ! ぷにぷに ! 銭ゲバ~ ! ! |
| イネス | あら~♪ せっかく人が助け舟を出してあげてるのにその言い方は何かしらぁ ? |
| ベリル | うがぁ~~っ ! し、締まる~~ ! !わかった、わかったから、やめて ! ! |
| イクス | あはは………………あれ ?二人とも、ちょっと待ってくれ。プールサイドに人だかりができているぞ。 |
| ミリーナ | 何かあったのかしら。 |
| アニキ | そこの銀髪男子。ちょっといいかい ? |
| イクス | えっ、俺ですか ? |
| アニキ | おうよ。これから一緒にディナーでもどうだ ?俺様が最高の気分にさせてやるよ。さあ、エスコートさせてくれ。 |
| イクス | うわあぁっ ! ! ! !な、な、なんで腰に手を回すんですか ! ?ちょ、や、や……やめてくださいよっ。 |
| カーリャ | ミリーナさま ! イクスさまが強引に迫られてますよ ! ! |
| イネス | ミリーナ。手加減しなさいよ。 |
| ミリーナ | 翡翠割殺 ! |
| アニキ | ぐはっ ! ! ! ! ! ! |
| イクス | あ、ありがとう、ミリーナ。まさか俺がナンパされるなんて……。 |
| ミリーナ | イクスは格好良くて可愛いから、ナンパされて当然よ。でも嫌がる人を無理に誘うのは駄目、絶対 ! |
| ベリル | ちょっと ! そんなことより周りを見てよ !周りも妙なことになってるみたいなんだけど ! |
| イネス | 男性同士に女性同士。同性同士で親密になってるわね。さっきまで男女で親しげにしていた人たちまで……。いったい、どういうこと……。 |
| ベリル | ちょっと待って。あそこにいるのは……。 |
| コハク | う、う~ん…………。 |
| シング | コハク、大丈夫 ! ? |
| リチア | しっかりしてください ! |
| ベリル | シングとリチアじゃないか ! ?えっ、コハクはどうしたの ! ?なんだか視線がふわふわしてるけど。 |
| シング | よかった。ベリルたちは無事だったんだね。実は、ちょっと前から一部のお客さんたちの様子がおかしくなりだしてさ。 |
| リチア | そうしたらコハクとヒスイ、クンツァイトまでも……。 |
| イネス | ヒスイとクンツァイトも ! ?二人はどこ ! ? |
| リチア | それぞれ別々の部屋に隔離しましたわ。互いの胸板を褒め合ったり、いつもとは様子が違っていたので、念のために。 |
| シング | 二人を引き離すのも大変だったよ。 |
| ベリル | あれ……ちょっと待って。なんだろう、ボクの気のせいかな。似たような光景に覚えがあるような、ないような……。 |
| コハク | その……声は…………。 |
| ベリル | コハク ! ? よかった意識がはっきりしてきたんだね ! |
| リチア | 待ってください。やはりどこかコハクの様子も……。 |
| コハク | ベリル ! ! ベリル、ベリル、ベリル ! !も~、どこにいってたの ! ? |
| ベリル | コ、コハク ! ?どうしたのさ、いきなり抱きついてきて。 |
| コハク | 原因はベリルだよ。ベリルがいないからわたし、ずっとずーっと寂しかったんだからね。もうどこにもいっちゃイヤだよ ? |
| ベリル | わかった ! わかったから落ち着いて ! |
| コハク | それじゃあ約束 !ずっと、ずっと一緒だよ。世界で一番大好きなベリル♪ |
| ベリル | せ、世界で一番…… ?ボクが世界で一番なの ? |
| コハク | うん♪ わたし、もうベリル以外いらない ! |
| シング | コハク、オレは ? |
| コハク | ベリルじゃないからいらない ! |
| シング | がーん……。 |
| ベリル | そ、そっかぁ……。コハクにとってボクが世界で一番かぁ……って、イタッ ! ! |
| イネス | 何ちょっと嬉しくなってるの !こんなコハク、どう考えてもおかしいでしょ ! |
| シング | イネス、どうすればいい ? |
| イネス | ひとまず、様子のおかしい人たちを全員ホテルの医務室に連れて行くわよ !力づくでも隔離して ! |
| Character | 7話【ナイトプール7 仕組まれた罠】 |
| ベリル | コハク、ごめんね。ボクもコハクが一番だけどどうしてもやらなきゃけいないことがあるんだ。だから、ちょっとだけ部屋で待っていてくれる ? |
| コハク | ……わかった。けど、すぐ戻ってきてくれなきゃイヤだよ ?わたしもベリルが一番なんだから。 |
| ベリル | うん。すぐ戻ってくる。約束するよ。そして戻ってきたら、また一緒に写真を撮ろう。それじゃあ、またあとでね。 |
| イネス | ベリル、お疲れ様。コハクの様子は ? |
| ベリル | ボクにメロメロ。ちょっと離れるのすら嫌がって大変だったよ。そっちは、今どんな感じ ? |
| イネス | こっちは様子がおかしかった人たちの隔離が全員完了したわ。 |
| ミリーナ | けど、どうしてこんなことに……。 |
| イネス | 調査したところ、隔離した人たちは全員ナイトプールのバーで買った飲み物を直前に飲んでいたことがわかったわ。 |
| イネス | その飲み物を調べた結果今回の騒動の原因は、飲み物内に混入されていたとある魔物素材由来のホレ薬だとわかった。 |
| 二人 | ホレ薬 ! ? |
| ベリル | あっ……もしかして、その魔物素材ってボクたちが元の世界で魔物ナベを作るのに使ったやつ ! ? |
| イネス | そのとおりよ。あの同性にしか効果がないホレ薬ね。 |
| ベリル | どおりで既視感があったわけだよ。あの時は、シングとヒスイが……タイヘンなことになったなぁ。 |
| シング | ちょ、ちょっと待ってよ。オレ、ヒスイと一緒に魔物ナベの肉を食べたあたりから記憶が曖昧なんだけど……もしかしてヒスイと……。 |
| リチア | それ以上はいけません !今は目の前の事態への対処に専念しましょう ! |
| シング | う、うん……わかった。オレもそれがいい気がしてるよ。 |
| ベリル | それにしても、ホレ薬による騒動結構、宿泊客や来場者の人たちの間でもすごい問題になってるみたいだよ。 |
| ミリーナ | ナイトプールでの妨害工作と、集団食中毒の計画は大事になる前になんとか防げたのに……。 |
| イクス | いや、待て。妨害工作も集団食中毒計画も全てはホレ薬騒動を仕掛けるための陽動だったんじゃないか ! ? |
| イネス | その可能性は高いわ。工作員の摘発だけじゃなく提供する料理や使用素材に毒物が混入されていないかのチェックやら、こっちはてんやわんやだった。 |
| イネス | だから、迂闊にも見逃してしまったのよ。氷の中に仕込まれていたホレ薬を……。 |
| イネス | 私としたことが今回は後手後手に回ってばかりだわ。なんとかしないと…………こほっ。 |
| リチア | イネス。これ以上の無理はいけません。今はとにかく休んでください。 |
| イネス | ホテルの宿泊客やナイトプールの利用者たちから事情説明の要求がたくさん届いているのよ。社長として責任を果たさないと。 |
| ミリーナ | けど、顔色がよくないわよ。症状も悪くなってきてるし……。 |
| イネス | あと一踏ん張りだから心配しないで。特製の風邪薬で、乗り切ってみせるから。 |
| ネジュワ | ローレンツ社長。ここは、ホテルとナイトプール自体も休業にするべきです。脅迫状が届いているのをお忘れですか ? |
| 一同 | 脅迫状 ! ? |
| イネス | 『即時、無期限の休業をしなければ次は私自身にとんでもないことをする』っていうあの猛烈なラブレターのこと ? |
| リチア | イネス。ふざけている場合ではありません !あなたの身が危険にさらされているのですよ。 |
| イクス | イネス、ここはひとまず数時間だけでもちゃんと休んだほうがいいよ。睡眠不足や体調不良は判断を狂わせる。 |
| イネス | いいえ。私は休まないしホテルもナイトプールも休業には絶対にしない。相手の言いなりになってたまるものですか。 |
| リチア | イネス、どうしてしまったのですか。落ち着いてください。やはり今のイネスは変です。 |
| イネス | 失礼しちゃうわね。私は社長としての責任を果たそうとしているだけ。そして、これは社長である私がやるしかないことなの。 |
| イネス | それにね、私にはとっておきの秘策がある。正直に言うとあまり使いたくないけどこの秘策さえあれば、確実に相手を潰せる。 |
| ネジュワ | ……秘策、ですか。 |
| イネス | ええ。これはネジュワであっても言えないわ。相手に知られてしまったら、逆に利用されてしまう。そうなれば、こちらが確実に潰されるから。 |
| ネジュワ | 諸刃の剣、ということですか。 |
| イネス | そういうこと。さあ、はやく会見を開かないと。ネジュワ、薬箱を取ってくれる ? |
| ネジュワ | ……はい、こちらです。 |
| イネス | ありがとう。さっそく……風邪薬を飲んでっと♪ |
| リチア | イネス。立ったまま薬を飲むのは行儀が悪いですよ。 |
| イネス | そういう細かいことはいいの。 |
| シング | イネス、本当に大丈夫なんだよね ? |
| イネス | 当然よ。みんな、心配しすぎ。さっそく仕事、にかかるわ、よ…………。 |
| ベリル | イネス ? なんだかフラフラしているけどどうしたの……って、うわぁ ! !イネスが倒れちゃうよ ! ! |
| シング | っ ! ! |
| リチア | シング ! ナイスキャッチです ! |
| イネス | …………。 |
| シング | イネス ! ? 大丈夫 ! ?どうしたんだ ! ? |
| ネジュワ | …………返事が、ない ? |
| ミリーナ | 見せて ! ! |
| イクス | ミリーナ、イネスの様子は ? |
| ミリーナ | えっ……そ、そんな…………。 |
| ミリーナ | 息を、していない……わ。 |
| ネジュワ | そんな馬鹿な ! ? |
| イクス | はやく医務室に ! |
| カーリャ | ミ、ミリーナさま ! 大変です ! ! |
| ミリーナ | カーリャ、どうしたの ! ? |
| カーリャ | お客さんたちが責任者を出せって集まってきているんですよ ! |
| カーリャ | おまけに自警団がナイトプールが公序良俗に反する疑いがあるって社長であるイネスさまを捕まえに来てるみたいです ! |
| 青年 | 権力持ってる責任者はとんずらってか ! ?隠れてねぇででてきやがれ ! |
| 自警団 | これ以上待たせるようなら強行突入をさせてもらうぞ ! |
| ベリル | うわぁ ! ! とんでもないことになってるよ !これいったいどうするの ! ? |
| ネジュワ | わ、私がなんとかします。皆さんは隠し通路からローレンツ社長を医務室まで運んでください ! |
| イクス | は、はい ! わかりました ! |
| Character | 8話【ナイトプール8 露呈する計画】 |
| ネジュワ | どういうことだ ! ?これでは話と違う ! ! |
| 売人 | 話 ? いったい何のことだ ? |
| ネジュワ | とぼけるな ! 計画ではイネスから「秘策」を聞き出すだけのハズだっただろ ! ? |
| ネジュワ | だから私は指示どおりにあなたから受け取った自白剤をイネスの常備薬と入れ替えた ! |
| ネジュワ | けど、あれは自白剤じゃなかった……イネスを殺してしまったんだぞ ! ! |
| 工作員 | 落ち着けって。そいつを責めるのは筋違いってもんだぜ。 |
| ネジュワ | ……どういう意味 ? |
| 工作員 | まだわかんない ?おたくに自白剤ではなく、毒物を渡すようにそこの売人に命じたのは誰かって。 |
| ? ? ? | よくやってくれた。さすがはローレンツ社長の右腕といったところか。今後は私の秘書として、ぜひ働いてくれ。 |
| ネジュワ | お前は ? |
| ホテルマン | ただのしがないホテルマンさ。 |
| 工作員 | ご謙遜を。観光地での競合ホテルを根こそぎ潰し利益を独占しようと画策する飽くなき向上心。まさに悪徳社長の鏡ってもんだぜ、ボス。 |
| ホテルマン | 相変わらず、腕はいいが口の減らない男だ。私のポケットマネーで自警団から保釈してやったのだ。そのぶん、きっちりと働いてもらうぞ。 |
| ネジュワ | そうか……貴様が諸悪の根源か。ずっとその姿を表すのを待っていた。 |
| 売人 | やめておけ。お前の娘が死ぬことになる。 |
| ネジュワ | っ…………。 |
| ホテルマン | 安心したまえ。私は契約を守る男だ。このままおとなしく従っていれば娘の命も莫大な成功報酬も君のものだ。 |
| ネジュワ | だが……命の恩人であるイネスは……。 |
| ホテルマン | まったく。ただの雇用主と被雇用者。つまり、ただ金づるの相手がローレンツから私に代わっただけだろうに。 |
| ネジュワ | …………。 |
| ホテルマン | ふん、まあいい。ここまでは全て計画どおりだ。そろそろ仕上げに移るとしよう。おい、わかっているな ? |
| 工作員 | 当然でしょ。不祥事の連続で大混乱のお客にローレンツ社長が服毒自殺をしたという情報を流す。これでホテルの信用はガタ落ち。 |
| 工作員 | そこで、あんたが颯爽と現れ、助け舟を出す。ローレンツ社長の職務怠慢によって、休暇を台無しにされた客全員を、我が社のホテルに無料で招待する、と。 |
| 工作員 | これで、あんたの評判はうなぎ登り。そしてトドメにこう言うわけだ。 |
| ホテルマン | この不祥事に満ちたホテルを私が立て直してみせる。応援してくださる方、どうか署名をお願いします。 |
| 工作員 | ははっ。俺からみても完璧な営業スマイルだぜ。 |
| ホテルマン | では、チェックインしようじゃないか。落ちぶれたローレンツ社のホテル……に ! ? |
| アニキ | ナイトプールってのはいいもんだな。綺麗なねーちゃんがわんさかいやがるぜ。 |
| 青年 | まあ、目の保養にはなりそうだな。 |
| 赤髪の少年 | なぁなぁ ! 次は渦潮プールに行こうぜ ! |
| 金髪の少年 | オッケー ! どっちが長く潜っていられるか勝負だ ! |
| 警備員 | そこの二人 !プールサイドを走るのは危険だ !潜水行為も当ナイトプールでは禁止だぞ ! |
| ホテルマン | なっ……ど、どういうことだ ! ?さっきまで客は暴動を起こす寸前だったはず !自警団まで出動する事態になっていたのだぞ ! |
| ホテルマン | なのに……なのになぜ何事もなかったかのように営業しているんだ ! ? |
| ネジュワ | これは……いったい…………。 |
| イネス | ようこそ、当ホテルに。悪徳ホテル社長様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました♪ |
| ネジュワ | ローレンツ社長 ! ? |
| ホテルマン | き、き、貴様……なぜ生きている ! ?貴様は確かに死んだはずだ ! ! |
| イネス | さあ、なんのことかしら。私、死んだ覚えはないわよ。仮死状態にならなったけどね。 |
| ホテルマン | 仮死状態 ! ? |
| イネス | ありがとう、黒いジャケットと帽子の似合う売人さん。自白剤でも毒薬でもなく、あの不味い「睡命湯」をネジュワに渡しておいてくれて。 |
| ネジュワ | ま、まさか……。 |
| デゼル | チッ、誰が売人だ。こんなガキの使いみてぇなことお断りだぜ。 |
| ホテルマン | 貴様ら、グルだったのか ! ? |
| イクス | そりゃあ驚きますよね。人違いかと思ったけど、写真に写っていたのがデゼルさん本人だったのは俺も驚いたし。 |
| ベリル | まあ、デゼルだけじゃないけどね。 |
| ホテルマン | お前たちか……いったい何が言いたい ? |
| アルヴィン | あんまり言いたかないけどあんた、雇うやつを選んだ方がいいぜ ? |
| ホテルマン | チッ……お前も裏切り者だったとはな。 |
| アルヴィン | それは違うな。俺は最初からこいつらの味方ってだけさ。 |
| イネス | 罪を認めて降伏した方が身のためよ ? |
| ホテルマン | ふんっ。毒殺は逃れたようだが貴様はここまでというのは変わりないぞ。 |
| ホテルマン | 暴徒化寸前だった客、そして自警団をどう丸め込んだか知らないが、今日起きた不祥事はこのホテルの悪評となって確実に広がっていく。 |
| イネス | そうなったら、私は不祥事の責任を取って最悪の場合、投獄されることになるわね。ただし、不祥事が起きていたならばの話だけど。 |
| ホテルマン | なに ? |
| ? ? ? | 楽しそうだな。俺様たちも混ぜてくれよ。 |
| ネジュワ | あなたたちは ! ? |
| アニキ | そこの銀髪男子。ちょっといいかい ? |
| 青年 | 権力持ってる責任者はとんずらってか ! ?隠れてねぇででてきやがれ ! |
| 自警団 | これ以上待たせるようなら強行突入をさせてもらうぞ ! |
| 少年二人組 | うぅぅ……腹が痛い……。 |
| ザビーダ | いやぁ、ミリーナちゃんの愛の一撃は効いたぜ。まあエドナちゃんの傘突きに比べたら可愛いもんだったけどな。 |
| リオン | まったく、何事かと思えば。こんな茶番に浮遊島警備隊は二度と付き合わんぞ。 |
| ユーリ | その割に、いい芝居してたけどな。そこの二人もそう思うよな ? |
| カイル | うん ! |
| ルーク | 思う思う ! |
| ネジュワ | ま、待ってください。この方たちもローレンツ社長の協力者だったとすると……。 |
| ホテルマン | ナイトプールでの妨害工作だけではない……食中毒事件、ホレ薬による騒動客の暴徒化や自警団の乱入……その全てが……。 |
| イネス | ここにいる仲間たちに協力してもらって私がでっちあげたことでした~♪ |
| ネジュワ | まさか惚れ薬の騒動も ! ?いや、ですがコハク様は……。 |
| イネス | 全員が演技ではバレてしまう可能性がある。コハクは計画のため、自ら薬を飲んでくれたのよ。私たちを信じてね。 |
| ヒスイ | そこまでする必要はねぇって言ったがコハクは言い出したら聞かねぇからな……。けど、結果的にコハクに助けられたぜ。 |
| ホテルマン | くそっ……クソクソクソ ! !それでは全てがお前の策略だったと言うのか ! ?イネス・ローレンツ ! ! |
| イネス | 御名答♪ 私の体調不良からぜーんぶね。あなたを表舞台にひっぱり出すために筋書きどおりに、進めてあげていたの。 |
| シング | いやぁ、ここまで大変だったよね。 |
| イネス | ええ。優秀な秘書というのも困りものだわ。全く証拠を残してくれないんだもの。こんな小物だけど、ひっぱり出すのが大変だったわ。 |
| ネジュワ | ……ローレンツ社長。 |
| ネジュワ | いえ……ですが私はあなたを常に監視していた。ここまで大規模な連携作戦を私の目をかいくぐり執り行うなど不可能なはず……。 |
| イネス | そう……残念だわ。今のあなたにはわからないのね。私とシングたちは―― |
| ホテルマン | 黙れ ! ここまでくれば実力行使だ !全員、こいつらを始末しろ ! |
| ベリル | うわぁ ! ホテルスタッフに紛れてまだこんなに工作員が潜んでいたの ! ? |
| イネス | ちょうどいいわ !さあ、ここでかたをつけましょう ! |
| Character | 9話【ナイトプール10 繋がる心】 |
| イネス | さあ、追い詰めたわよ。 |
| ホテルマン | わ、私に手を出してみろ !この秘書の娘がどうなってもいいのか ! ? |
| ロゼ | 残念。ネジュワの娘はあんたたちのホテルからもうチェックアウト済みなんだ。 |
| ホテルマン | なん、だと……。 |
| イネス | さすがセキレイの羽。相変わらず仕事が早いわね。 |
| イクス | まさかイネスがロゼとも繋がっていたとはな。まあ、優秀な情報通の商人同士だし考えてみれば自然なことだけど。 |
| ミリーナ | 宿泊券のチケットが当選したのもイネスとロゼが計画したことだったのよね。 |
| ロゼ | もっと早く気がつくと思ったよ。超人気高級ホテルの宿泊券がそう何枚も当たるわけないじゃん。 |
| イネス | ただ、その再会計画は失敗だったわね。本当はこんな騒動に巻き込むつもりはなかったんだけど。 |
| シング | そんなことないさ。オレは困っているイネスの力になれてよかったって思ってるよ。 |
| イネス | シング……。 |
| ベリル | さあさあ。早くこいつを本物の自警団に引き渡そう。せっかくの休暇がもったいないよ。 |
| ホテルマン | チッ……。 |
| ネジュワ | ………………。 |
| イネス | ネジュワ。手に隠し持っているナイフをしまいなさい。この男を殺して、自分も死ぬつもりならそれほど愚かなことはないわよ。 |
| ネジュワ | ……わかり、ました。 |
| ホテルマン | なら、お前を道連れにしてやる ! くらえ ! |
| イネス | 目くらまし ! ? |
| ホテルマン | 死ね ! イネス・ローレンツ ! ! |
| ネジュワ | ローレンツ社長 ! ! くっ……やはり私が―― |
| イネス | なーんて、こういう卑怯な奴との戦いには慣れてるのよね。リチア ! ! |
| リチア | はい !ヒスイ、クンツァイト ! !今です ! ! |
| ヒスイ | 任せとけ !いくぜ、クンツァイト ! ! |
| クンツァイト | 了解 ! |
| ホテルマン | ぐはっ ! !こ、この二人……いったい……どこから……。 |
| リチア | ヒスイとクンツァイトは、いざというときに備えわたくしにスピルリンクをして身を潜めておく。イネスの読みがあたりましたわね。 |
| ホテルマン | おぼえて、いろ…‥……。 |
| イネス | よし、気絶したみたいね。ひとまずここに縛っておいてあとは本物の自警団に任せましょう。 |
| ネジュワ | リチア様の中からヒスイ様とクンツァイト様が飛び出してきた ?もしや、今のは……。 |
| イネス | スピルリンク。以前あなたにチラッと話したソーマ使いしか使えない特別な技みたいなものよ。 |
| ネジュワ | そうか……ナイトプールでスーツ姿のクンツァイト様がいきなりその場に姿を表したのはローレンツ社長にスピルリンクをしていたから。 |
| クンツァイト | そうだ。自分はイネスにスピルリンクしスピルメイズ内で、今回の事態と作戦内容について説明を受けていた。 |
| ロゼ | で、元々裏で動いてたあたし、デゼルアルヴィンとも協力することになったんだ。 |
| アルヴィン | そこからはアジトとケリュケイオンに連絡を取ったりして、もう大急ぎ。 |
| デゼル | なんせ浮遊島のアジトの連中とケリュケイオンの救世軍の連中総勢何百人をつかった大芝居だったからな。 |
| ネジュワ | なるほど。シング様たちもローレンツ社長と同じソーマ使いだった可能性は見落としていました。 |
| ネジュワ | ……ソーマ使い同士のスピルリンク。これが私の監視をかいくぐり大規模な連携作戦を実現できた理由だったのですね。 |
| イネス | いいえ。それが本質じゃないわ。ここまで大きなことが実現できたのは私たちのスピリアが繋がっているからよ。 |
| ベリル | イネスが何かに巻き込まれているってボクたちはすぐ気がついたもんね。 |
| クンツァイト | 機械人の自分でも容易に推察できた。 |
| ヒスイ | だな。しかも、怪しげな薬を持っている言い訳が、特製の小麦粉だぜ。見え透いた嘘つきやがってよ。 |
| リチア | ソーマがなくても、互いのスピリアを感じ助け合うことはできるのです。 |
| ロゼ | ま、あたしはソーマ使いじゃないからスピリアうんぬんはわかんないけどイネスと気が合うのは間違いないしね。 |
| シング | うん。そういうこと。大切なのは、絆の力なんだよ。 |
| ネジュワ | 絆の力……ですか。 |
| イネス | ネジュワ。あなたの打つ手はどれもなかなかだったわ。氷の中にホレ薬を仕込んだりね。 |
| イネス | けど、あなたは自分のスピリア自身も氷の中に閉じ込めてしまったのよ。かつての私のようにね。 |
| イネス | 自分の愛する娘を助けたい。けど、こんなことはしたくない。それはどっちも正しい想いよ。 |
| イネス | だから、そういう時は誰かに助けを求めなさい。少なくとも私はあなたを絶対に見捨てたりはしないから。 |
| ネジュワ | ローレンツ社長…………。 |
| イネス | ただ、事情があったとはいえ会社に背いた責任は背負ってもらうわよ。 |
| ネジュワ | ……はい。 |
| イネス | ということで、あなたは、保育施設で働いてもらうわ ! |
| 一同 | 保育施設 ! ? |
| イネス | ええ。今回のようなことが再発しないよう経営資金で保育施設を設立することにしようと思って。で、ネジュワはそこで働いてもらうわ。 |
| イネス | わかっていると思うけど、仕事なんかより子育ての方がよっぽど大変なんだから。覚悟しておくことね。 |
| ネジュワ | ありがとうございます……ローレンツ社長。 |
| シング | それじゃあ、一件落着ってことで一度ホテルに戻ろう。 |
| ヒスイ | そうだな。そろそろコハクのホレ薬の効果が切れるころだ。 |
| ベリル | コハク……。 |
| イネス | さあ、今日は貸し切りなんだから !仕切り直してパーッといくわよ ! ! |
| Character | 10話【ナイトプール10 繋がる心】 |
| リチア | アルヴィンが持ってきてくれたクレア特製のピーチパイですよ。 |
| イネス | あら、美味しそう♪ いただきまーす。 |
| ミリーナ | それにしても、イネスはよく食べるわね。 |
| イクス | ああ。見ていて気持ちがいいよ。 |
| シング | これが本当のイネスだよ !それに、イネスの胃袋の大きさはまだまだこんなものじゃないんだ ! |
| ベリル | けど、ぷにぷにになっても知らないよ~。 |
| イネス | うるさいわね。こっちは体調悪いふりをしていたからずっと食べていなかったのよ。 |
| クンツァイト | イネス。その表現は適切ではない。おにぎり7つは一食の食事量としては十分過ぎるほどだ。 |
| イネス | クンツァイト。細かいことをいちいち気にしないの。 |
| カーリャ | そうですよ。7つぐらい普通です! |
| コハク | まあ、今ぐらいはいいじゃない。せっかくだし思う存分楽しもうよ。 |
| ヒスイ | なぁ、コハク。もう本当に大丈夫なんだよな ?どこも悪くはねぇんだよな ? |
| コハク | お兄ちゃんってば心配しすぎ。大丈夫だって言ってるでしょ。 |
| ヒスイ | そうか……ならいいんだが……。ったく、お前はいつも無茶しすぎなんだよ。 |
| シング | コハクもホレ薬が効いているときのことは覚えていないんだよね ? |
| コハク | うん。全然覚えてないよ。わたしがベリルにメロメロになってたときどんな感じだった ? |
| ベリル | ボクと写真が撮りたいってずっと言ってたよ。もう何枚撮ったかわからないくらい。 |
| ミリーナ | これがその時の写真よ。 |
| コハク | えっ ! ? いつもは撮ってくれないのにホレ薬のわたしの時はこんなに撮ってくれたの ! ? |
| ベリル | だ、だってすごい頼み込んでくるんだもん。腕に抱きついたりとかして一緒に撮ってくれるまで放さないぞって。 |
| コハク | 腕に抱きついて、かぁ……。 |
| ベリル | コハク ? |
| コハク | ならこうすれば一緒に撮ってくれるのかな ? えいっ♪ |
| ベリル | ちょ、ちょっとコハク ! ? |
| コハク | わたし、この写真をみて確信したよ。ベリルは写真が嫌いなんじゃないって。だって、ここに写ってるベリル、嬉しそうだもん。 |
| コハク | ベリルはわたしとシングが二人で楽しく休暇を過ごせるよう気を使ってくれてたんだよね ? |
| ベリル | べ、別にそういうわけじゃ……。 |
| イネス | ベリル。スピリアは繋げるためにあるのよ。 |
| ベリル | わ、わかってるよ……。 |
| コハク | ベリル ? |
| ベリル | コハクはさ、ボクのはじめてできた……親友で……だから、幸せでいて欲しいんだよ。 |
| ベリル | けど、ボクと一緒にいることが一番かって考えたら、そうとは限らないでしょ……。 |
| ベリル | ボクだってこんなウジウジ悩むのはよくないってわかってるよ……。けど……どうしても考えちゃうんだよ……。 |
| コハク | そっか……ありがとう、ベリル。 |
| ベリル | えっ ? |
| コハク | だってベリルはそれだけわたしのことを考えてくれてるんだもん。 |
| ベリル | コハクは本当にいい子だよね……。 |
| コハク | ベリルの方がいい子だよ。だから、そんなベリルの気持ちをちゃんと教えて欲しいな。 |
| ベリル | ボ、ボクだって……コハクと一緒に撮りたいよ ? |
| コハク | 本当に ? |
| ベリル | 本当だよ。いっぱいいーっぱいこの休暇の思い出を作りたい。いまさらだけど……。 |
| コハク | 遅くなんかないよ !ミリーナ、お願い ! |
| ミリーナ | いつでも大丈夫よ ! |
| コハク | いくよ、ベリル ? |
| ベリル | う、うん ! |
| ミリーナ | それじゃあいくわよ。はい、ちーず♪ |
| 二人 | イエーイ♪ |