Character1話【Vol.1 Awakening】
ハセヲここは……なんだ。
ハセヲ俺は……誰だ。
ハセヲ俺は……………………ハセヲ。それが俺の名前……。
ハセヲ俺は……ここに、いる……。
ミリーナイクス、そっちはどうだった ?
イクスいや、近くには誰もいないみたいだ。エミルたち……どこにいるんだろう。
ミリーナええ……困ったわね。私たち、どうすればいいのかしら。
イクスカーリャはまだ戻ってないのか ?空からなら何か見つかるかもしれない。
ミリーナそうね。そんなに遠くには行っていないと思うんだけど……。
カーリャミリーナさま~ ! 大変です !
ミリーナカーリャ ! お帰りなさい !
カーリャはい ! ――じゃなかった。大変なんですよう !あっちでモンスターに襲われてる人が !
イクス大変だ ! 助けに行こう !
ハセヲくそ ! なんだこのモンスターは !『The World』にこんなのいなかったぞ !
アトリハセヲさんっ、後ろ !
ハセヲンなもんにやられるかよ !
アトリよかった……。
ハセヲアトリ ! 俺の心配なんかしなくていい !お前は自分の心配だけしてろ !
アトリは、はい……ごめんなさい。
ハセヲチッ、ザコだけど数が多いな。このままじゃ俺はともかく、アトリは……。
ハセヲくそっ ! 余計なこと考えんな !とにかく一匹残らずやっちまえばいいんだよ !
イクスなら、俺たちも手を貸します !
ハセヲなに ! ?
ハセヲお前ら、誰だ ! ?
ミリーナそういう話は落ち着いてからにしましょう。カーリャ、その子と一緒に下がっていて。
カーリャかしこまりました !さあさあ、カーリャたちは後ろでサポートしましょう。
アトリは、はい。
ハセヲ誰だか知らねえけど、加勢なんていらねえんだよ。
イクスえ ! ? いや、でもそんなこと言ってる場合じゃ……。
ミリーナだったら、私たちは私たちで勝手に戦わせて貰うわね。それより、来るわよ !
ハセヲ上等だ ! 巻き込まれても文句言うなよ !

Character2話【Vol.2 Search】
アトリありがとうございます。おかげで助かりました。
ミリーナいいのよ。気にしないで。
イクスうん。むしろ俺たちの助けなんていらなかったかもしれない。
ハセヲああ、そうだ。
ハセヲいくら数が集まってもザコはザコだ。てめーらなんていなくても──
アトリハセヲさん ! そんな言い方したらダメですよ。こちらのお二人は私たちを心配して手助けしてくれたんですよ。
アトリその気持ちにお礼を言うべきです。
ハセヲわ、わかったって !……ありがとよ。これでいいか。
アトリもう、私に言ってどうするんですか。
カーリャなんだか、面白い方々ですね。
ミリーナふふ、そうね。少なくとも悪い人たちじゃなさそう。
ハセヲそうだ。おい、お前らここはどこのサーバーだ ?新しく追加されたのか ?
アトリそうですね。こんなエリア見たことないです。
イクスサーバー ? えっと……何だろう。何かの機械の話 ?サーバーって情報を集めておく場所のことだっけ ?
イクスあれ ? でも、ここがどこのサーバーかって聞かれたよな ?つまりここはサーバーの中ってことなのか ?
ミリーナ……ごめんなさい。あなたたちの言うサーバーが正直何を指しているのかよくわからないけれど実は私たちもここがどこなのかよくわからないんです。
アトリそれじゃ、私たちと同じ……。
ハセヲくそっ、どうなってんだいったい……。
ハセヲ仲間を捜していることだけは覚えてるがその前後は記憶が曖昧……か。
イクスワイズマン、という人の協力でここに来たということまでは覚えてるんだけど。
ミリーナアトリさんは、何か覚えてることはない ?
アトリ私は……その、ハセヲさんと同じです。気づいたらここにいて名前以外のことはほとんど……。
ハセヲだが、一つだけわかったことがある。
ハセヲこんな風に、プレイしてるはずの俺たちがキャラの姿になって世界にいる現象──
アトリAIDA !
ハセヲそうだ。あの時と同じだ。ここはAIDAサーバーの中なんだ。
イクスアイダ……サーバー ?それは、どういうものなんだ ?
ハセヲサーバーはサーバーだよ。お前らだって『The World』のプレイヤーならわかんだろ。
イクスごめん。その『The World』って言うのも俺たちには聞き覚えがないんだ。
ミリーナでも……思い出したわ。確かワイズマンさんはここが人の手で作られた仮の世界って言っていたの。
ミリーナ肉体を持って立ち入ることができない──そう、スピルメイズのような場所だって。
イクス言われてみれば……そうだ。どうして忘れてたんだろう……。何が起きてるんだ…… ?
ハセヲスピルナントカってのはよくわかんねーけどとにかくゲームの中だってことは伝わったのか ?
アトリどうでしょう……。なんだか、根本的に私たちと違う気がします。
イクス……二人が言ってることは正直、全く理解できてないんだ。でも、協力し合えばきっと道は開けると思う。
イクス俺たちの仲間には異世界から来た人たちが沢山いるんだけど、それでも、同じ目的や理想や色々なものをきっかけに、手を取り合ってきたんだ。
カーリャ目的 ! そうです ! 忘れてました !
ミリーナ急にどうしたのカーリャ ?
カーリャさっき、空から確認したらこの森を抜けた先に街があったんです !
カーリャその後すぐにハセヲさまたちを見つけたのですっかりお伝えするのを忘れてました。
イクス街か……ひとまずの目的地はそこかな。他に手がかりもないことだし。
ハセヲま、街で情報収集はRPGの基本だな。つーか、そこならマク・アヌへ移動できるかもしれねえ。
ミリーナさっそく出発しましょう。カーリャ、案内してちょうだい。
カーリャお任せ下さい !

Character3話【Vol.3 Discovery】
ミリーナここがカーリャが見つけた街ね……。
ハセヲ誰もいねえじゃねえか。どうなってんだこの街は。
アトリすごく静かですね。なんだか少し怖いです……。
カーリャ何か理由があって街の人たちはどこか余所へ行ってしまったんでしょうか。
イクス……やっぱり、変だ。
イクス露店の商品は出しっぱなしだし窓や扉も開いたまま。
イクスついさっきまでそこに人がいたみたいだ。なのに少しも生活をしていたような跡がない。
ミリーナ言われてみれば、イクスの言う通りよね。この街はまるで作りものみたいだわ。
ハセヲゲームの街なんてそんなもんだろ。
アトリでも、NPCの一人もいないなんてやっぱり変じゃないですか ?
アトリそれに、誰もいないんじゃお話を聞くことができませんよ。
イクス何か手がかりがないか、みんなで街を見て回ろう。
ハセヲチッ……面倒だがそうするしかねえか。
カーリャそういえば、街の奥の方に大きな建物が見えましたよ。
イクス大きな建物か……。よし、まずはそこに行って見よう
ミリーナ本当に……随分大きな建物ね。こんな小さな街にあるのが不自然なくらい。
イクスこれは聖堂なのかな。俺たちの知ってるものとはモチーフが違うけど。
ハセヲ……似てる。
アトリはい。グリーマ・レーヴ大聖堂によく似ています。やっぱりここは『The World』なんでしょうか……。
ハセヲグリーマ・レーヴ大聖堂……ぐああああっ !
カーリャハセヲさま、どうされたんですか ! ?
ハセヲ知ってる ! この場所を、この痛みを !ここは、俺が…… ! 志乃が…… !
ハセヲ
アトリハセヲさんっ、待って !
イクス俺たちも行こう !
ミリーナええっ !
ハセヲやっぱり、ここは…… !そうだ、ここなんだ !
アトリハセヲさん、どうしたんですか ?さっきからそればっかり……。
ハセヲうるせえ ! 黙ってろ !今、何か思い出せそうなところなんだよ !
アトリっ…… !
ミリーナハセヲさん、気持ちはわかるけれどそんな言い方をしたら、アトリが傷つくわ。
カーリャそうですよ。アトリさまだってハセヲさまと同じく記憶がなくて不安なんですよ。
ハセヲうっ……いや、俺は……。
アトリあ、あの、みなさん。いいんです。ハセヲさんは口は悪いけど本当は優しい──
イクスすまないけど、話は後にした方がいいかもしれない。何か、来る。
カーリャあれは……エミルさま、じゃなくてラタトスクさまですかね ?
ミリーナええ……。でもあの衣装はいったい……。
ハセヲあれは……あいつは……あの野郎は !三爪痕(トライエッジ) !
イクストライエッジ…… ?
三爪痕ラタトスク…………。
イクスラタトスク ! 捜してたんだよ。ラタトスクとエミルを助けに来たんだ。無事でよかった !
三爪痕ラタトスク拒絶する……。
イクス――え…… ?
三爪痕ラタトスク拒絶する……。
イクスどうしたんだ、ラタトスク ?なんだか様子が……。
ハセヲああああああああああっ !
アトリハセヲさん !
ハセヲ三爪痕 ! てめえだ !てめえが志乃を !
三爪痕ラタトスク拒絶する……拒絶する…… !
ハセヲやっとその気になりやがったかよ !いいぜ、やってやる ! 来いよ、俺はここだ !
三爪痕ラタトスク敵対コード。確認。拒絶する……。
カーリャあわわ…… !私たちも敵だと思われてるみたいです !
イクスくっ……やるしかないのか ! ?

Character4話【VS三爪痕ラタトスク】
三爪痕ラタトスクう……ぐ……。
カーリャラタトスクさま !
イクス――ハセヲ ! もういいだろ !これ以上戦えば、ラタトスクが死ぬかも知れない。今は様子がおかしいけど、正気に返ってくれれば……。
ハセヲンなのどっちでもいいんだよ !死ぬまで殺すだけだ !
カーリャはあああああ ! ?
ミリーナやめて、ハセヲさん !ラタトスクは私たちの仲間なの !
ハセヲうるせえ ! 何が仲間だ !こいつは志乃を…… !
アトリハセヲさん !落ち着いてください !
ハセヲアトリ…… !
アトリその志乃さんって誰ですか ?なぜ、ハセヲさんはそんなに怒ってるんですか ?
ハセヲそれは、志乃があいつに──
ハセヲあいつに……なんだ ? どうなった ?いや、そもそも志乃って……誰だ。
ハセヲ思い出せない ! くそっ !絶対に忘れるわけない !忘れていいわけがない !
ハセヲくそおおおおおおおっ !
イクスハセヲ、いったいどうしたんだ…… ?
ワイズマンおそらく記憶と感情がリンクしていないからでしょう。
イクスワイズマン !
ワイズマン遅くなってすみません。ずっと、アクセスが拒否されていたので。
ワイズマンみなさんが、『拒絶』の管理者を停止させてくれたおかげで連絡をとることができるようになりました。
イクス管理者…… ?それじゃあ、彼はラタトスクとエミルじゃないのか ?
ハセヲいや、こいつは三爪痕だ !
ワイズマンそのどちらでもない……というのがおそらく一番正解に近いでしょう。
ワイズマンここに横たわっているのはこの世界でラタトスクさんとエミルさんが活動するために私が用意した仮初めの肉体。
ワイズマンですがその肉体は、ラタトスクさんたちではなくこの世界の管理者に利用されていた。
ハセヲ待てよ ! それじゃあ、こいつは三爪痕じゃねーってのか !
ワイズマン三爪痕という方がどういった存在か私にはわかりませんが、少なくとも肉体は仮のもの中身はサーバー管理者ということです。
ハセヲくそっ ! だったら俺はなんのために…… !
ワイズマン私は、アーク――私の住む場所に接触してきた【この世界】を調査するため、ラタトスクさんたちに協力をお願いしました。
ワイズマンしかし、何者かがそれを邪魔──いえ、利用して仮の肉体を奪った。その結果、このような事態が起きてしまったのです。
ワイズマンラタトスクさんと同じように仮の肉体ごと管理者に囚われているイクスさんたちのお仲間を解放しなければ。
ワイズマンそのためには、この世界をよく知るハセヲさんやアトリさんの協力が必要です。その意味、おわかりでしょう ?
ハセヲはあ ? どういう意味だよ。
アトリオペレーションフォルダ、ですね。
ワイズマン名称は、私もあずかり知らぬところですがそれが、みなさんをこの世界からサルベージする唯一の方法でしょう。
ワイズマンしかし、それを実行するには残る三体の管理者要素を停止させねばなりません。
ハセヲ回りくどい言い方ばっかしてるんじゃねえ。要するに、俺たちは何すりゃいいんだよ !
イクスうーん……。今回のラタトスクと同じように戦って動きを止めるってことかな ?
ワイズマンその通りです。見ていてください。
カーリャわわっ !? ラタトスクさまが消えちゃいました !
イクスワイズマン ! どういうことなんだ ! ?
ミリーナ待って、イクス。また何か──
エミルう……あれ ? ここは……。
イクスラタトスク――じゃなくて、エミルか ?今度こそ正気なんだよな ?
エミルえ ? ど、どうしたの ?もしかして、またラタトスクが何かしたの ?
エミル最近はちゃんとラタトスクと記憶を共有してるはずなんだけどちょっと思い当たることがないな……。
カーリャいえ、ラタトスクさまというか……この世界の管理者が……みたいですけど。
エミル? ? ?
ワイズマンご覧の通り、この世界では仮の肉体は一度死んでもしばらくすれば復活します。
ワイズマン復活すれば管理者の支配を逃れ本来の使用者の手に戻るでしょう。
ハセヲ何かと思えば、要するに死に戻りじゃねえか。デスペナもねえ、デバフの類いも消える。『The World』と一緒だな。
カーリャまたハセヲさまがよくわからない言葉を使ってます……。
アトリただのゲーム用語だから気にしないでください。
アトリでも、そういう単語がわからないということはやっぱりみなさんは『The World』のプレイヤーじゃないんですね。
ミリーナさっきハセヲさんも言ってたけれどその『The World』、一体何なの ?
アトリそれは、ゲームの──いいえ、私たちの世界の名前です。
ワイズマンすみませんが、そういったお話は道すがらでお願いします。
ワイズマンどうやら残る管理者要素が我々を敵性存在と認識し、活動を開始したようです。次のエリアへ急ぎましょう。
ハセヲ次のエリアって、そんなのどうやって行くんだよ。
ワイズマンここのエリアワードを元に解析しました。すぐに転送しますよ。
アトリエリアワード……あっ。さっき、エミルさんが言ってました !
エミルえ ? ぼ、僕が ?
ワイズマン──拒絶する 孤影の 焦熱
ワイズマンこれがここのエリアワード。そこから判明した次のエリアは──
ワイズマン隔絶せし 異形の 黒縄

Character5話【VSマリク・オーヴァン】
ハセヲ……はあ ! ?
ハセヲじゃあ、マジでお前ら剣と魔法の世界の住人なのかよ !
イクスえ ! ? そりゃ、確かに剣も魔法もある世界だけどそんなに驚くようなことかな ?
ハセヲ驚くに決まってんだろ !正直、ぜんぜん信じられねえ。
アトリゲームじゃない、本物のファンタジー世界があったなんて ! 素敵です !
エミルそ、そうかな……。僕たちの仲間にもオンラインゲームのある世界から来た人がいるけど遊びのために世界を作るってことの方がすごくない ?
イクスそうだよな。でも……そうか。オンラインゲームか。話がかみ合わなかった訳がわかってきたよ。
イクス異世界の遊びは大がかりだよな。
ハセヲ遊び……遊びか。
ハセヲそうだな。最初はただの遊びだった。だけど志乃が未帰還者になってからは……。
アトリハセヲさん、思い出したんですか。志乃さんのこと……。
ハセヲああ、ジワジワと記憶が戻ってきた。
ハセヲどうやら俺たちは転送に失敗したかなんかでAIDAサーバーに取り残されちまったらしいな。
アトリそうですね……。みなさん、心配してるでしょうか。
ワイズマンご安心ください。私が管理者権限を掌握すれば元の世界に戻してさしあげることも可能でしょう。
ハセヲそんなことまでできんのかよ。あんたいったい何者だ ?
ワイズマン私はワイズマン。あなた方とは少しばかり違う存在です。
ハセヲ違う存在ねえ。まあ、なんでもいいけどよ。そこまでできるんなら、いちいち歩かせねえで目的地までパパッと転送してくれりゃいいのに。
ワイズマンゲームシステムの範囲外の干渉はできません。不可能という意味ではなく、それをするとこの世界を私の力が上書きしてしまうからです。
ワイズマン私自身の情報量を含め、根本的に概念が違う。ハセヲさんたちにわかりやすく言えばOSが違うというイメージでしょうか。
ワイズマン今こうして話をしている私は仮の姿。基本的に話をする以外のことはできません。
ハセヲ……なるほどな。にしても、あんた俺たちの世界にも詳しいんだな。それに、意外と話もはっきりしてわかりやすい。
カーリャ意外、ですか ?
ハセヲ自分からワイズマンなんて名乗ってるくらいだ。知識をひけらかすだけの嫌な野郎かと思ってた。
アトリハセヲさん、ダメですよ。見た目や名前で人を判断しちゃ。
ハセヲうるせえな、俺に説教するな。
アトリハセヲさん……。
ハセヲ……ああ、もうわかったよ !気をつけりゃいいんだろ !
カーリャなんだか元の世界でもアトリさまのご苦労が察せられるような会話ですね。
ハセヲおいこら、チビッコ。羽むしるぞ。
カーリャひゃあああっ ! ? ハセヲさまも鬼畜なんですかあ ! ?
アトリハセヲさん !
イクス少しは、打ち解けられたのかな。
ミリーナそうね。お互いの世界について話したのがよかったのかもしれないわね。
ワイズマン皆さん、そろそろ到着しますよ。
ハセヲ闘技場か……。ルミナ・クロスみたいだな。
アトリルミナ・クロス……。
ミリーナアトリ ? どうかしたの ?
アトリい、いえ……なんでも、ありません。
ハセヲで、その管理者ってやつはどこだ ?さっさと出てこいよ !
イクスあれは……マリクさん ! ?
マリク・オーヴァン……せよ……隔絶……せよ……。
ミリーナやっぱりこっちの声は聞こえてないみたい。
エミル僕と同じだ。そもそもあの身体は抜け殻なんだよ。本物のマリクさんの魂は眠っているんだと思う。
イクス心核を交換されている状態、みたいなものかな。
イクスハセヲ、あの姿はなんだかわかるか ?とくにあの巨大な左腕は……。
ハセヲそんな……なんで、オーヴァンの姿なんだ……。
ハセヲオーヴァンは……あいつは……。そうだ、志乃は本当はあいつに……。なんだ、この記憶は……。
イクスハセヲ、どうしたんだ ! ?
マリク・オーヴァン隔絶せよ……隔絶せよ……。
ミリーナ仲間を呼ぶの ! ?まずいわ、このままじゃ囲まれてしまう !
カーリャハセヲさま、しっかりしてください !
アトリハセヲさん ! 逃げましょう !
ハセヲ俺は……俺は……。
ラタトスクチッ……仕方ねえな。露払いはしてやる。そこのフヌケた野郎を連れて行け !
イクスラタトスク…… ! 助かる。みんな、ここはいったん引くぞ !立て直してから、マリクさんの抜け殻を取り戻そう !

Character6話【VSマリク・オーヴァン】
マリク・オーヴァンう……あ……あ……。
カーリャマリクさま !
ワイズマン大丈夫です。すぐにリスタートしますよ。
マリクむ……ここは……。
イクスよかった、無事に戻って来た…… !マリクさん、身体に異常はありませんか ?
マリク問題ない……と思うが、いったいどうなっている ?オレは確かアークにいたはずだが……。
ミリーナやっぱり、記憶が抜け落ちてるのね。事情は後で説明します。今は……。
ハセヲ思い出した……思い出した !俺はオーヴァンと戦った !あいつが三爪痕だった !
ハセヲくそっ、なんなんだよこれは !俺の記憶なのに、俺のものじゃない…… !
ハセヲ俺は……俺は……誰だ ! ?
アトリハセヲさんはハセヲさんです !
ハセヲアト、リ……。
アトリ口が悪くて乱暴で、だけどほんとは優しい……。それが私のハセヲさんです。
ハセヲアトリの知っている……俺……。
ワイズマン時間を差し上げたいところですが管理者の追撃が来る前に次のエリアに向かいましょう。
エミルハセヲ…………。
イクスハセヲ。行けそうか ?
ハセヲあ……ああ……。
イクスよし。――ワイズマン、次のエリアワードは ?
ワイズマン解析は完了しています。次は──
ワイズマン哀絶たる 憐憫の 衆合
カーリャ見渡す限りの荒れ地……ですね。
ワイズマン残念ながら私がお送りできるのはここまでです。管理者要素はここを真っ直ぐ進んだところにいます。
エミルしばらくは歩きってことだね。
イクスちょうどいい。マリクさんに説明しながら歩こう。
マリクああ、頼む。どうにも記憶が曖昧で据わりが悪い。知らない顔もいるようだしな。
イクスだいぶ歩いたな……。まだ管理者は見つからないのか。
カーリャあれ ? ワイズマンさまがいらっしゃいませんね。
ミリーナいったんアークに戻ったのかしら。
アトリ……はぁ、はぁ……。
ハセヲアトリ ! おい、どうしたんだ ! ?
アトリすみません……ちょっと躓いただけですから。
ハセヲウソつけ。息が上がってんじゃねえか。疲れたなら疲れたって言え。
ミリーナそうよ。無理はいけないわ。少し休んでいきましょう。
アトリだ、大丈夫です !
ハセヲあんま無理するな。まだ、体調が戻ってないんだろ……。
ハセヲん ? なんか、前にもこんなことなかったか ?
アトリ前にも…… ?
ハセヲほら、俺とアトリと……そうだ、揺光 !三人でレベル上げに行った時に。
アトリ揺光さん…… !う……ああっ…… !
ハセヲおい、アトリ ! ?
ミリーナアトリ、どうしたの ?そのヨウコウって人と何か……。
ハセヲわかんねえ。わかんねえよ俺には !
イクスやっぱり、少し休憩しよう。今は無理させない方がいい。
ハセヲあ、ああ、そうだな……。
マリクいや……そうもいかないようだぞ。
エミルロゼだ ! でも、あの格好は……。
ハセヲありゃ……揺光の装備じゃねえか !
アトリ揺光さん……ううっ。
ロゼ・揺光ずるい……憎い……妬ましい……。私は……私の……。
カーリャなんだか、今までの相手と様子が違います。
ロゼ・揺光ずるいずるいずるい…… !
ハセヲアトリいいいいっ !
ハセヲぐはっ…… !
ロゼ・揺光ずるい……ずるい……。
ミリーナどうして、アトリだけを狙うの ! ?
マリク理由は後回しだ !ハセヲを連れて逃げるぞ !
イクスロゼは俺が食い止めます !その間に、二人を !
エミルハァハァ……追っては、来ないみたい。
マリク管理者というからには、管理すべき場所をあまり離れられないのかもしれんな。それで、ハセヲの傷は ?
ミリーナ命に別状はないわ。アトリの術で傷も塞がってるから。
アトリハセヲさん……。
ミリーナアトリ……。ハセヲさんなら大丈夫よ。元気を出して。
ワイズマン皆さん、どうされたんですか ?
イクスワイズマン ! 今までどこに行ってたんだ ?
ワイズマン少し、やることがあったのです。それよりこのエリアの管理者要素は ?
エミル遭遇はしたよ。だけど、ケガ人が出たからいったん離れたんだ。
ワイズマンなるほど。しかし、あまり時間がありません。こうしている間にも管理者は皆さんへの対抗手段を準備しているはずです。
イクス………………。
イクス……わかった。ハセヲが目を覚ましたら、もう一度挑む。それでいいな ?
ワイズマンはい。

Character7話【VSロゼ・揺光】
ロゼ・揺光あ……あ……。
ミリーナなんとか終わったわね……。これでロゼも元通りに――
ハセヲああああああっ !
ハセヲ揺光は、俺の目の前で…… !未帰還者になったんだ !
アトリハセヲさん……思い出したんですね。
ハセヲ思い出した…… ? アトリ、お前は知ってた……。いや、覚えてたのか ! ?
アトリ…………。
ハセヲ答えろよ ! アトリ !
アトリごめんな、さい……私……。
ミリーナアトリ !
カーリャしっかりしてください、アトリさまっ !
マリク落ち着け。呼吸はしっかりしている。おそらく疲れが出たんだろう。
エミルこんなところで寝かせるのは可哀想だな……。せめて、ベッドのあるところへ連れていってあげたいけど……。
イクスベッドがありそうなのは……最初の街か。ワイズマン、俺たちを転送してもらえるか ?
ワイズマンわかりました。こちらも、次の解析に少し時間がかかりそうなのでちょうどいいでしょう。
イクスアトリの様子はどうだった ?
カーリャ眠っていらっしゃいます。今夜は、ミリーナさまとカーリャでお側についているつもりですよ。
イクスそうか……。状況次第で、三人にはここに残って待っていてもらった方がいいかもしれないな。
ロゼあたしが知らない間になんか大変なことになってるね。すっかり取り残された気分。
マリクそれはオレもだ。以前のエミルがラタトスクモードになった後というのはこんな気分だったのかもしれんな。
エミルあはは。確かに、気づいたら終わってるってことはよくあったかも……。
エミルあれ ? そういえばハセヲは ?
マリクさっきから姿を見ていないな。……まあ、少し一人になりたいんだろう。
アトリん……あれ……ここは……。
ミリーナ目が覚めた ? 安心して。ここは最初に立ち寄った街よ。
アトリ街……そうか、私、倒れて……。ごめんなさい、すぐに起きますっ。
ミリーナいいのよ。少し休憩をとることにしたから。今夜はゆっくり休みましょう。
アトリすみません……。あの、ハセヲさんは…… ?
ミリーナ外にいるわ。アトリのこと、心配してたわよ。
アトリ心配してもらう資格なんて、私にはありません。
ミリーナそんなことないわ。誰にだって調子の悪い時はあるもの。
アトリいいえ、違うんです。そうじゃないんです。
ミリーナアトリ……。どうしてそう思うの ?なにか悩んでるなら力になるわ。
アトリ……思い出したんです。いろんなことを。
アトリ揺光さんに、ずっと嫉妬していました。
ミリーナ揺光というのは、ロゼがしていたあの格好の元の主……よね ?
アトリそうです。だからあれは私の醜い嫉妬の象徴なんです。
アトリハセヲさんと揺光さんは、すごく息が合ってました。私の方が先にハセヲさんと出会ったのに……。
アトリ志乃さんのこともそうです。私と同じ姿をした人。
アトリハセヲさんの記憶の中にその人がいる限り私は“よく似た誰か”以外にはなれない……。
アトリ私は、他の人に嫉妬してばかり。そして、そんな嫉妬を抱く自分が嫌いで許せなくて……いなくなってしまえって。
アトリだからロゼさんは私を狙ったんだと思います。
ミリーナ……そんな風に自分ばかりを責めないで。
アトリハセヲさんはつらい記憶を取り戻してもそれでも前に進もうとした。
アトリでも私は、自分の暗くて醜い感情を思い出していっそ何もかも忘れていた方が良かったって…… !
ミリーナ暗い感情を抱かない人なんてどこにもいない。それに向き合えるかが大事なのよ。きっと……。
ミリーナアトリはちゃんと自覚しているじゃない。自覚して、悔やんでる。それはとても勇気のいることだわ。
ミリーナほら、もう少し横になって。ゆっくり休んで、次にハセヲさんに見せるのはアトリの一番良い顔にしましょう。
アトリミリーナさん……ありがとうございます。
ハセヲ…………。
マリク立ち聞きとはあまり感心せんな。
ハセヲた、たまたま通りかかったら聞こえちまったんだよ !
マリク冗談だ。そう焦るな。アトリが心配で見に来たんだろう。
マリクだが、聞いてしまったからには受け止めろ。そしていずれきちんと答えてやれ。
ハセヲわかってる。わかってる、けど……。
マリクなんだ、彼女に幻滅でもしたか。
ハセヲ違う ! そんなわけねえ !ただ……どうして俺なんだって思っただけだ。
マリク理由など、本人にすらわからんものだ。お前も心に従えばいい。
ハセヲくそっ、わかった風なことばっか言いやがって。あんたやっぱオーヴァンみたいだぜ。
マリクふっ……褒められたと受け取っておこう。
? ? ?ア……リ…………アト……リ……。
アトリ誰…… ?
アトリ誰が、私を呼んでるんですか ?ミリーナさん ? カーリャちゃん…… ?
アトリ……違う。ここじゃない。もっと、別の場所……。
? ? ?アトリ……アトリ……。
アトリ誰、誰なの ?どうして私を呼ぶんですか…… ?
アトリここは……。
アトリどうして、私はここに……。
アトリこれは……。
アトリあ、ああ……そんな……。私は……ハセヲさんは……。

Character7話【VSロゼ・揺光】
ワイズマン皆さん、起きてください !
イクスワイズマン……どうしたんだ。そんなに慌てて。
ワイズマン最後の管理者がわかったのです。しかし、それは……。
カーリャた、たたた、大変です !アトリさまがいなくなってしまいました !
マリクなんだと、ミリーナと一緒だったのではないのか。
ミリーナそれが、夜中のうちに抜け出したみたいなの。ごめんなさい……。
ロゼ最後の管理者も見つかったと思ったらアトリがいなくなって、いっぺんにいろいろ起こりすぎじゃない ?
ハセヲ俺はアトリを探す !管理者とやらはお前らに任せた !
エミル待ってよハセヲ !僕らもアトリのことは心配なんだ。
ハセヲだけど、時間がねえんだろうが !
ワイズマンいえ、アトリさんを見つけましょう。それが最善です。
イクスワイズマン、どういうことなんだ ?
ワイズマン詳しいお話は、アトリさんを見つけてからいたします。さあ、皆さん急いで。
ハセヲアトリー ! どこだ ! どこにいる !
マリク待て、ハセヲ。闇雲に探し回っても意味がない。どこかアトリが行きそうな場所はないのか ?
ハセヲアトリが行きそうな場所……。
アトリはい。グリーマ・レーヴ大聖堂によく似ています。やっぱりここは『The World』なんでしょうか……。
ハセヲ聖堂だ !
ハセヲあいつは『The World』の景色が好きだった。ただフィールドを歩くだけでも楽しいとか言ってた。
ハセヲだったら『The World』を思い出せる場所にいる !
イクスわかった。みんな、聖堂へ向かおう !
ハセヲアトリ !
アトリハセヲ……さん……。
ハセヲなにやってんだ、お前。こんな時に勝手にいなくなって。
アトリう……放っておいてください !
アトリ私は、みなさんと一緒にいてはいけないんです。だって私は……。
ハセヲおい、何を言ってる。なんで一緒にいちゃいけないなんて……。
ワイズマン思い出したのですね。
イクスワイズマン…… ?
ワイズマン彼女……アトリさんが、最後の管理者要素。そして、皆さんをこの世界に閉じ込めた張本人です。
イクスなっ…… ! ?
ミリーナそんな……アトリが…… ?
アトリごめんなさい。ずっと騙していて。
ハセヲおい、待てよ。んなことアトリにできるわけねーだろ !俺もアトリも、ただのプレイヤーだぞ !
アトリ……違うんです。ハセヲさん。
アトリ私は、アトリだけどアトリじゃない。AIDAサーバーが複製したアトリの偽者なんです !
ハセヲ偽者……だと……。
アトリプレイヤーが脱出した後もAIDAサーバーは稼働し続けていました。
アトリでも、本来の目的であるプレイヤーの観察ができない。みんないなくなってしまったから。
アトリだから、自分でプレイヤーを生み出すことにしたのです。私は、そうやってこの世界に生まれました。
アトリけど、私はひとりぼっちだった。寂しくて、それで私は願ったんです。
アトリハセヲさんに会いたいって。
ハセヲま、待てよ……じゃあ、俺は……。
アトリそうです。私が願って、生まれた、もう一人のハセヲさん。
ワイズマンアトリさんは唯一にして最初の一人。おそらく管理者権限へのアクセスに制限がなかったのでしょう。
ワイズマン彼女はこの世界の女神も同然。人を一人生み出すことなど造作もなかったはずです。
ハセヲ御託はいい ! つまり俺は偽者でお前が寂しくないよう生まれた人形ってことかよ !
アトリっ…… !
ロゼちょっとハセヲ ! そんな言い方 !
ハセヲうるせえ !
ハセヲ偽者だと ? 三爪痕への怒りも『The World』で経験したことも全部がただのコピーだってのかよ !
ハセヲ本物の俺は今も元の世界で生きている。もしかすると目的を果たして三爪痕も倒し、志乃も取り戻してるかもしれねえ。
ハセヲじゃあ俺はどこに帰ればいい !俺がいるべき場所はどこだ ! ?
アトリハセヲさん……ごめんなさい……。
ハセヲもういい……どうでもいい。
エミルハセヲ、どこへ行くの ! ?
ハセヲ知るか。さっさと終わらせろ。どうせ、何もかも偽者なんだ。
ワイズマンアトリさんから管理者権限を回収しなければ元の世界へ戻ることはできません。つまりそれはアトリさんを……。
マリクわざわざ言わなくてもいい。オレたちの時とは事情が違うということはわかる。
ワイズマン皆さんにも少し時間が必要でしょう。考える時間が。

Character8話【Resurrection】
マリクまさか、こんな選択を迫られるとはな。
ロゼ選択ってか決断だよね。あたしたちが元の世界に戻るにはアトリを倒すしか道はないんだから。
カーリャワイズマンさまにもどうにもできないんでしょうか。いつもならシャドウっていうので皆さんをもう一度呼んでくれるじゃないですか。
ミリーナでも、それは今ここにいるアトリたちにとっては別の人間なのよ。
ロゼシャドウは、世界に留まりたいという本人の意思を叶えるもの……でも、アトリたちにその選択はない。
イクス……そのことなんだけど、変じゃないかな。
ミリーナイクス、どういうこと ?
イクス本当に、あのワイズマンにもどうにもできないんだろうか。
イクスそもそもアトリが管理者だってことに、今の今まで気づかなかったってのも、らしくないように思う。
ロゼワイズマンが嘘をついてるってこと ?
イクスそこまでは言わない。でも、何かを隠してる気がするんだ。
マリクなら、問いただしてみるか。あれに口を割らせるのは至難の業だろうが……。
イクス……いや、ごめん。全部、ただの憶測だ。確かに、今回のワイズマンはちょっとおかしいけどワイズマンにも何か考えがあるのかもしれない。
イクスそれより、今はハセヲたちの気持ちの方が気になるよ。……そういえば、ハセヲは ?エミルもいないみたいだけど。
カーリャエミルさま……というか、ラタトスクさまならハセヲさまを捜しに行きましたよ。
ハセヲくそっ ! くそっ !
ラタトスク八つ当たりか。みっともねえな。
ハセヲうるせえ ! なに付いてきてんだ !俺のことは放っておけよ !
ラタトスクそうするつもりだったんだがてめえが甘えたことぬかしてるからついイラついちまったんだよ。
ハセヲ俺が、甘えてるだと……。
ハセヲていうかお前、エミル……じゃないな。ラタトスクって奴の方か……。
ラタトスク俺から言わせれば、貴様は贅沢なんだよ。
ハセヲ俺のどこが贅沢だってんだ !偽者って言われて、居場所もねえ俺のどこが !
ラタトスク居場所ならあるじゃねえか。アトリに心から望まれて生まれたお前にはな。
ラタトスク望まれない本物と望まれた偽者──望まれなくても本物でありたいって奴もいるが俺は……望まれたかった。
ラタトスクまあ、せいぜい考えることだな。恵まれたお坊ちゃま。偽者は本物にだってなれるが望まれなかった奴が望まれることはねえんだ。
ハセヲ望まれない本物だと……あいつは……。
ワイズマンハセヲさんは、本物になれますよ。
ハセヲてめえ、ワイズマン…… !
ワイズマンそう、シャドウという技術を用いればあなたを私たちの世界に具現化できます。
ハセヲ俺が、お前らの世界に…… ?
ワイズマンしかしそのためには、アトリさんから管理者権限を回収せねばなりません。
ハセヲアトリを殺して、俺だけ助かるってのか !
ワイズマン確かに今ここにいるアトリさんは死ぬことになりますがふたたび複製することは可能です。
ワイズマンそのためには、ハセヲさん……。あなたの協力が必要なのです。
ハセヲ………………。

Character8話【Resurrection】
アトリみなさん……。
アトリ準備ができたみたいですね。私ならいつでも大丈夫です。
アトリさあ、どうか私を止めてください。
ミリーナアトリ……。
エミルねえ、ワイズマン。本当にこれしか方法はないの ?
ワイズマン残念ながら。
イクスやるしかないのか……。
ハセヲお前ら、今さら躊躇ってんのか。だったら俺がやってやるよ…… !
イクスハセヲ ! ? なにをするんだ !
ハセヲなにをする ?ンなのてめえらをぶっ殺すに決まってんだろ !
ロゼハセヲ ! あんたおかしくなっちゃったの ! ?
ハセヲおかしくなんかなってねえよ !
ハセヲアトリを殺して、俺だけ助かる ?別のアトリで我慢しろ ?
ハセヲふざけんな !
ハセヲだったら俺は、ここにいるアトリを選ぶ !何度でもお前らをぶっ殺してこの世界とアトリを守る !
アトリハセヲさん…… !
ハセヲ心に従えって言ったよな、おっさん !これが俺の答えだ !
マリクふっ……。余計なアドバイスをしてしまったな。
ロゼ笑ってる場合じゃないでしょ。こっちも覚悟を決めるよ !
イクスハセヲ……だけど……。
エミルイクス。ラタトスクが言ってる。ハセヲたちもイクスと同じだって。
エミル他人から見たら偽物でしかない世界を自分たちの意志で守ろうとしてるんだ。ハセヲたちの世界に負けていいの ?
イクス……いや、俺だって俺たちの世界を守るためにもここで死ぬ訳には行かない。
ミリーナまるで鏡に映った自分たちを見ているみたいね。でも、それならなおさら負けられない。
ミリーナごめんなさい、アトリ。私たちのこと、恨んでくれてかまわないわ。
アトリ……いいえ。恨んだりなんてしません。だってもう──
ハセヲいくぜええええっ !
アトリだってもう、充分だから……。
ハセヲアトリ ! ? お前、なんで…… !
アトリハセヲさんが、私を選んでくれた……。それだけで、私は幸せです。
ハセヲアトリー ! ?
エミルアトリは、自分よりもハセヲを選んだんだね……。
マリクああ……。
カーリャアトリさま……。
ワイズマンこれでこのイベントはクリアとなります。皆さん、どうもお疲れ様でした。
ハセヲクリア……だと。てめえ、何言ってやがる。
ロゼいくらなんでも空気読めなさすぎでしょ。
ミリーナそうよ、ワイズマンさんらしくないわ。
イクス……いや、違う。やっぱりこれはワイズマンじゃない。
? ? ?その通りです。これはワイズマンを模倣した複製ですらない疑似的な人格。
ワイズマン・フォルス本来、このサーバーの管理者だった者。
ハセヲてめえは……AIDAなのか !
ワイズマン・フォルス管理者権限を奪われ、私にはアトリさんや他の管理者要素を攻撃することができなかった。
ワイズマン・フォルスなので、皆さんにご協力いただいたのです。
ラタトスク協力だと……騙したっていうんだよそれは !
ラタトスクぐあっ !
マリク攻撃が見えない壁に阻まれた ! ?
ワイズマン・フォルス無駄です。管理者権限を取り戻した私にこの世界の存在は干渉することはできない。
ワイズマン・フォルスしかしご安心を。私には皆さんを害するつもりはありません。
ワイズマン・フォルスむしろ、皆さんにはこの世界で自由に生きていただきたい。私はそれを観察し続けたいのです。
ワイズマン・フォルス今は皆さんだけですがいずれはもっとプレイヤーを増やします。イベントやクエストも用意しましょう。
ワイズマン・フォルスプレイヤーの皆さんを退屈はさせませんよ。
イクス何を、言ってるんだ……。
ミリーナ世界は、人は、遊びなんかじゃないわ。退屈しないために生きているんじゃない !
ワイズマン・フォルス他にも必要なものがあると ?
ワイズマン・フォルスなるほど、それは先ほどアトリさんが見せたようなあの不合理な感情のことですね。確か、愛と言うのでしたか。
ワイズマン・フォルスでは、そこも考慮して世界を設計し直さなければなりませんね。
ハセヲ黙れよ……。
ワイズマン・フォルスもう少しアトリさんを観察し有効なデータを集めるべきでした。
ハセヲ黙れ……。
ワイズマン・フォルスもう一度、アトリさんを複製することにしましょう。
ハセヲ黙れって言ってるだろうがあああああっ !
マリクハセヲの剣が、通った…… !
ロゼあいつには攻撃できないんじゃなかったの ! ?
ワイズマン・フォルスこれは……いったいなぜ ?私には、管理者権限が……。
ハセヲなにが管理者だ。てめえがアトリの名前を口にするだけで虫酸が走るんだよ !
ワイズマン・フォルスハセヲさん、あなたにも管理者権限が ?
ハセヲ権限とか知るか !俺はてめえをぶっ殺すって決めた !
ラタトスク上等だ ! この胸くそ悪い野郎を潰すなら手を貸してやるぜ !
ロゼだね。ハセヲだけなんてずるいっしょ !
マリクオレもこいつを腹立たしく思っていたところだ。
カーリャみなさんの姿が変わっちゃいましたよ ! ?
イクス……それだけじゃない。俺の中に何か力を感じる。マリクさんたちやハセヲから感じるような何かを……。
ミリーナええ。それに、どうしてかしら。アトリがすぐ側にいるような気がするの。
ワイズマン・フォルスこれは……私への攻撃権利が付与された ?なぜ、そんなことができるのです。キャラクターデータへのアクセスは──
ワイズマン・フォルスそうか、アトリさんが直前に権限の一部を移譲していたのですね。
ハセヲ理屈なんざどうでもいいんだよ !てめえが人の命を好き放題するなら俺はてめえの敵だ !
ハセヲ俺はPKK『死の恐怖』ハセヲだ !俺は……ここにいる !
ワイズマン・フォルス皆さんには私の世界で生きていただきたかったのですが仕方ありません。
ワイズマン・フォルスシステムに反する行為を検知しました。デバッグモードを起動します。

Character9話【Resurrection】
ワイズマン・フォルスお、おお……システム、ダウン……。再起動……失敗……リトライ……失敗……。
ハセヲ最後までゴチャゴチャうるせえんだよ !
マリク終わったのか……これで。
イクスあのワイズマンは偽物だったんだ。これで良かった……はずだと思うけど……。
ワイズマン皆さん、ご無事ですか !
エミルワイズマン !
ロゼえっと……今度は本物だよね ?
ワイズマンご安心ください。私は本物ですよ。と言っても、それを証明している時間はないのです。
ワイズマンこの世界を維持していたAIDAが消滅したためすぐに崩壊が始まります。
ワイズマンその前に、皆さんをサルベージします。
カーリャよかったあ、これで元の世界に帰れますね !
イクスワイズマン ! ハセヲはどうなるんだ ! ?
ワイズマンAIDAは私のシャドウを真似てアトリさんを生み出したようです。それはハセヲさんも同様です。
ワイズマンお二人はAIDAが作り出した存在ですからこのままでは世界と共に消えてしまいます。
ワイズマンですが、シャドウと構造が同じならイクスさんたちの世界にサルベージすることで救えるでしょう。
エミル聞いた ? ハセヲ !助かるって !
ハセヲ俺は……行かない。
エミルハセヲ ! どうして !
ハセヲ俺がいなくなったらアトリはまたひとりぼっちだ。あいつを残して行くわけにはいかねえ。
エミルでも、アトリは──
マリクエミル、やめろ。
エミルでも…… !
ハセヲそんな顔すんなって。これは俺が望んで選択したんだ。
ハセヲそうだ。もう一人のお前にも伝えておいてくれ。本物も偽者も関係ねえ。俺は俺だって。
エミル大丈夫。聞こえてるよ。
ラタトスク……せいぜい満足して消えろ。馬鹿野郎が。
ハセヲじゃあな ! お前らとの旅も悪くなかったぜ !
ワイズマンサルベージを開始します。
ハセヲ……やっと行ったか。
ハセヲ剣と魔法の世界ね。ちょっと見てみたかったな。なあ、アトリ。お前もそうだろ ?
ハセヲこことは違う別の世界で冒険する……。
ハセヲオンラインRPGなんかにハマるやつはみんなそういうのに憧れてる。
ハセヲ現実逃避かもしれねえ。でも、ゲームの中にだって自分はいるんだ。
ハセヲこれは……この感じは…… !
ハセヲアトリ ! お前、いるんだな !俺の中にまだ、お前のカケラが残ってる !
ハセヲ言え ! 自分はここにいるんだって !俺がお前を必ず見つけてやる !
ハセヲアトリいいいいいいいいいっ !
アトリん……ここ、は……。
ミリーナアトリ ! よかった……ほんとに見つけられた……。
ワイズマンハセヲさんがギリギリまでアトリさんを捜し続けてくれました。そのおかげで、お二人をシャドウとしてイクスさんたちの世界に連れてこられたんですよ。
アトリハセヲさんが……私を……。
ハセヲふん、お前の方が勝手に俺にくっついて来たんだ。
ロゼな~に言ってんだか。ほんとは嬉しいくせに。
カーリャ素直じゃないですねえ。
ハセヲうるせえ ! 羽むしるぞ !
カーリャひゃあっ、鬼畜ハセヲです~ ! ?ミリーナさま助けてください~。
ミリーナカーリャったら、一言多いんだから。
エミルでも本当に良かったよ。二人一緒に無事で……。
マリクしっかりしろエミル。お前が泣いてどうする。
エミルな、泣いてないですよ !ちょっとこみ上げて来ちゃったけど……。
イクスわかるよ、その気持ち。でもこういう時はきっと笑ったほうがいいよな。
アトリハセヲさん……。
ハセヲンだよ。
アトリハセヲさんの声、聞こえました。私、ここにいます。ハセヲさんの隣に。
ハセヲ……好きにしろ。
アトリはい。好きにします !