Character1話【狩猟対決1 村の使者】
アルヴィンそろそろ待ち合わせの時間だな。狩場を管理している村から使いが来るはずだぜ。いやぁ、久しぶりの狩り。腕が鳴るねぇ。
ヒルダ冗談もほどほどにしなさい。お遊びで狩りに行くわけじゃないのよ。
アルヴィンわかってるさ。大富豪様との狩猟対決という名の接待。これも融資を受けるための取引だってことぐらいな。ただ、緊張しすぎるよりはマシだろ ?
ナナリーあたしはもう大丈夫さ。まあ、あんたたちの話を聞いた時はさすがに心臓が止まるかと思ったけどね。
ヒルダファンダリア領内での新規交易ルート開発にあれくらいの費用が必要なのは理解できるけど莫大な金額を扱うことに変わりはないものね。
ウッドロウ国家事業の予算に匹敵する金額だからね。ナナリー君が驚くのも無理はない。
アルヴィンウッドロウは全く動じないよな。さすがは元の世界で国王だっただけある。ガイアス同様、肝が据わってるぜ。
ウッドロウいや、私も緊張しているよ。今回の計画は必ず成功させなければならない。仲間を救うためにもね。
ナナリー仲間を救う ? 新規交易ルートの開発は資金集めのためにやるって話じゃないのかい ?
ヒルダあんた、ナナリーに話してなかったの ?
アルヴィン付いてきたいって言うカイルたちを躱すのに精一杯でそこまで説明している時間がなかったんだよ。あいつらグイグイくるからな。
ウッドロウでは私からナナリー君に話をしよう。実は、今回の計画は資金集めが目的ではない。新生対帝国部隊を守ることが真の目的なんだ。
ナナリーディムロスさんたちが率いている部隊を守るってことかい ?
ウッドロウああ。まだ公にはなっていないようだが帝国はファンダリア領の各地に軍事基地の配備を進めているようでね。
ナナリーそうなのかい ! ?
アルヴィン今、アジトの連中で手分けして新しい領主と従騎士のことを探ってるだろ ?そこで発覚したんだと。
ナナリー各地に基地が配備されることになれば対帝国部隊の拠点が見つかるのも時間の問題じゃないか !
ウッドロウああ。拠点が包囲されればディムロスさんたちでもタダではすまない。
ウッドロウこの危機を未然に防ぐためにも緊急時の脱出や支援物資の供給に使用できる安全なルートの確保が必要不可欠というわけだ。
ナナリーそいつは責任重大だね……。計画を実現するためにもまずは融資を受ける必要があるってわけかい。
アルヴィンそういうこと。アジトにも商売上手や体力自慢の連中はいるがそれでも財源や人材は足りないからな。
ウッドロウとはいえ融資可能な財力を持つ人物も限られている。いや、ファンダリア領の中では一人しかいない。
ヒルダそれがこれから会う大富豪だと言うわけね。手紙だけでの印象では判断が難しいと思うけど融資を承諾してくれる可能性は高そうなの ?
ウッドロウああ。だが噂では、気難しい人のようでね。印象を損ねないよう注意する必要がありそうだ。
アルヴィンま、あっちから狩りの誘いをしてきたところを見るとウッドロウのことは気に入ってるみたいだしそこまで心配する必要もないと思うけどな。
ナナリーそりゃあ賢王と称えられたウッドロウさんだからね。あたしもそこらへんは心配しちゃいないよ。
ヒルダまぁ、それには同意するけど………………。
ウッドロウヒルダ君は何か気がかりがあるようだね。どんなことでも構わない。よければ話してくれないかな ?
ヒルダ……実はさっき占いをしたのよ。そうしたら結果が……いえ、やっぱりやめておくわ。
ヒルダあいつがいるならまだしもこの四人でトラブルが起こるはずが――
? ? ?おっ ! ここにもキノコが生えてるぜ ! !こいつは大収穫だな ! !お偉いさんへのご馳走はキノコ鍋にするか !
アルヴィン村から使いが来たみたいだな。随分と賑やかな奴を寄越したもんだ。
ヒルダ待って。この声……そんなまさか……。
ティトレイお、そこにいるあんたがウッドロウとお供たちだな !おれの名前はティトレイ・クロウ ! !あんたたちを迎えに来たぜ……って、なっ ! !
ヒルダティトレイ、やっぱりあんただったのね。
ティトレイヒルダじゃねぇか ! 久しぶりだな !まさかこんなところで会うとは思わなかったぜ !お前、ウッドロウの付き人やってんのか ! ?
ティトレイいや、そんなことより今は再会を喜び合うときだ !ヒルダも照れずにもっと嬉しそうにしろよ。ま、無愛想なのもヒルダらしくていいけどな !
ヒルダぶつよ ?
アルヴィンま、まあ落ち着けよ。
ナナリーヒルダの知り合いなのかい ?ならあたしたちと同じ鏡映点ってことか。
ティトレイ知り合いじゃなく『仲間』な !というより、鏡映点ってなんだよ ?フォルス使いみたいなもんか ?
ウッドロウ彼にも事情を説明する必要があるようだね。
ヒルダティトレイ。あんたが村の使者なのね。ならひとまず村まで案内して。歩きながら事情を説明するわ。
ティトレイ何か知ってるみたいだな。なら、わかったぜ。村はこっちだ、ついて来な !

Character2話【狩猟対決3 小さな訪問者】
ティトレイそうか。ヴェイグたちは浮遊島で暮らしてるのか。どうりでカレギア領を捜しても見つからないわけだ。みんなは元気でやってるか ?
ヒルダええ。あんたも具現化されているはずだってみんな気にかけていたわよ。
ナナリーマオは、やっぱりティトレイがいないと間が持たないとかよく言ってたね。
ティトレイそうかそうか。つまり、おれがいなくてみんな寂しがっていたってわけだな。
ヒルダいや、そこまでは言ってないわよ。
ティトレイきっとヴェイグもおれと会えず寂しかっただろう。なぁ、ここだけの話、おれについてヴェイグは何か言ってなかったか ?
アルヴィンそういや、賑やかなやつだとは話してたな。
ティトレイうんうん。他には ?
ウッドロウスタン君……私と同じ世界から具現化された仲間に似ているところがあると言っていたね。
ティトレイそれから ?
ヒルダアジトにおしゃべりな人はたくさんいるけどやっぱりティトレイが一番騒がしいってマオたちと話していたわよ。
ティトレイおおい ! 砂浜で本気で殴り合った親友だとかそういうことは言ってなかったのか ! ?もっとおれのこと語ってくれていると思ってたのによ !
ウッドロウあまり周りに公言しないのがヴェイグ君らしいとも言えるがね。
ナナリーけど、ちょっと面白い組み合わせだね。あんたとヴェイグ、正反対の性格に見えるのに親友ってのはさ。
アルヴィン本気で殴り合った仲ってわけか……。
ティトレイアルヴィン、おれたちの関係が気になるみたいだな。よし、ならヴェイグに代わりおれが話して――
ヒルダちょっと。話を脱線させ過ぎよ。まだあんたに説明しなくちゃいけないことが山ほど残ってるんだから。
ティトレイまだ小難しい話を続けるのか ! ?もうおれたちが仲間だってわかったんだしこれだけで十分だろ。
ナナリーそれは一理あるね。小難しい話より仲間の顔と名前を覚える方がよっぽど大切さ。
ティトレイだよな ! さすがナナリーあんたとは気が合いそうだぜ !
ティトレイというわけで、改めて自己紹介だ。おれはティトレイ・クロウ。ウッドロウもアルヴィンもよろしくな。
ウッドロウああ。こちらこそよろしく頼む。
アルヴィンホント、噂に違わぬ快活っぷりだな。さすが具現化されたカレギア領を飛び出してファンダリア領まで冒険にやってきただけある。
ヒルダカレギア領から勢いよく飛び出したはいいもののファンダリア領で空腹のあまり行き倒れになりかけたのもあんたらしいわ。
ティトレイ仕方ねぇだろ。樹のフォルスは使えるけどまわりのヒトたちの様子がどうもおかしいと思って居ても立ってもいられなかったんだ。
ティトレイまあ、ヒルダから説明を受けてなんとなくは理解できたけどよ。とはいえここが異世界だったとは正直驚いたぜ。
ティトレイそのうえ、大陸ごとに元になった世界が違うんだろ。
ウッドロウカレギア領はティトレイ君たちの世界ファンダリア領は私やナナリー君の世界が元になって具現化された大陸だ。
ティトレイなるほどなぁ。ファンダリア領にはカレギア領にはない植物とかもたくさんあって不思議だったんだ。けど、元になった世界が違うんだから当然だよな。
アルヴィンおっと。立ち話をしてたらもういい時間だ。ウッドロウ、狩りの前に俺たちは取引内容の詳細を詰めようぜ。
ウッドロウそうだな。それに腹ごしらえもしておきたいところだ。ティトレイ君が料理を振る舞ってくれるんだったね ?
ティトレイおう ! 任せてくれ !こう見えても料理にはちとうるさいんだ !
ナナリー言ったね ? なら楽しみにしてるよ。
ウッドロウそれではまたあとで。
ティトレイよし、ならさっそく料理に取り掛かるとするか !とっておきのキノコ鍋を振る舞うぜ !
ヒルダねぇ。こんなこと聞くのはさすがに失礼かもしれないけど確認させて。このキノコ、本当に大丈夫よね ?
ティトレイ当たり前だろ。どれも水玉模様がしっかりある。また同じ失敗するかよ。
ヒルダ同じ失敗 ?
ティトレイい、いや。なんでもない。別に気にしないでくれ。
ヒルダ……やけに動揺しているわね。そういえば以前、ヴェイグが毒キノコがなんだとか言っていたような……。
ティトレイわぁぁぁぁ ! !なんでもない、なんでもない !余計なことは思い出さなくていい ! !
? ? ?あの、すみません。ちょっとよろしいでしょうか ?
ティトレイお、どうしたちびっ子。迷子にでもなったか ?
チェルシー私はちびっ子ではなく、チェルシー・トーン !迷子でもなく、人を捜しているんです !
チェルシーまったく、子供扱いは困ります。それに私は今まで一度だって迷子になったことなんてないんですから。
ティトレイそいつはすげぇな !迷子にならないコツとかあったら教えてくれよ !
チェルシーな、なんだか調子が狂いますね……。まぁ、いいですけど。
ヒルダ………………。
チェルシーな、なんですか ?本当に迷子なんかじゃありません !
ヒルダ……あなた、チェルシー・トーンと言ったわね ?それにその顔……どこかで見かけたような……。
ティトレイなんだかマオみたいで可愛いヤツだよな。おっ、ということは……本当は腹が減って厨房にきたんじゃねぇか ?
チェルシーはぁ……もういいです。あなたたちに聞いても、何も収穫はなさそうなのでこれで失礼させていただきます。
ヒルダ風のように去っていったわね。誰を捜していたのか知らないけどやっぱりあの子、どこかで見たような……。
ティトレイ別にいいだろ。細かいこと気にするなよ。それよりはやく特製キノコ鍋を作らねぇと出発する時間になっちまう。
ティトレイ今回の狩りは大切な接待でもあるって話だったししっかり食べて精をつけてもらうぞ。

Character3話【狩猟対決4 不幸な事故】
アルヴィンそろそろ俺たちも戻るとするか。狩場の下調べも終わったことだしウッドロウに報告しようぜ。
ナナリー事前に狩場の地形を把握しておこうってあんたもけっこうマメだねぇ。
アルヴィンおっと、俺の魅力に気づいちゃった ?やっぱマメな男はモテるよな。
ナナリーそういう冗談だけは勘弁しとくれ。軽薄な男は一人だけで十分だよ。
アルヴィンははっ。そうだろうな。関節技を決められる前にやめとくよ。それに、ひと仕事して胃袋の方はもうスカスカだ。
ナナリーティトレイの料理がもうできてる頃だろうね。もしかしたらウッドロウさんは先に食べてるかもしれないよ。
アルヴィンここらへんは山の幸が豊富だからな。採れたてのキノコをたくさん使った熱々具だくさんのキノコ鍋が楽しみだぜ。
ナナリーあたしもついさっきキノコを採っちまったよ。ティトレイの話だと、この水玉模様のキノコがアカダマダケって言ってすごく美味いんだってさ。
アルヴィン……ちょっと待て。俺がさっき村人から聞いた話だとこっちの水玉模様のないキノコがアカダマダケって聞いたぞ。
ナナリーそうなのかい ? 水玉模様のないキノコはバクショウダケっていう、ひとくち食べたら笑いが止まらなくなる毒キノコだって聞いたけど。
アルヴィン俺は水玉模様のキノコがバクショウダケって言われたぞ。どういうことだよ、これじゃああべこべじゃねーか。
ナナリーティトレイも自信満々で話していたから間違ったこと言ってるようにも思えなかったけどこのあたりの村人が間違うとも考えづらいね。
アルヴィン……なぁ、カレギア領とファンダリア領では生態系も微妙に違うんだよな ?
アルヴィンだったら。カレギア領とファンダリア領でアカダマダケとバクショウダケの特徴が違うってことも考えられねーか。
ナナリーそいつは一理あるね。てなると…………まさか ! !
ウッドロウふ、ふふ……。っははははははははは ! !
ヒルダウッドロウ ! しっかりして ! !
ティトレイそ、そんな ! ! どういうことだよ ! ?今度はバクショウダケと間違わないようにちゃんと注意したのに ! !
ヒルダ「今度はバクショウダケと間違わないように」…… ?
ティトレイえっ……い、いや……それは…………。
ヒルダなるほど。「毒キノコを拾ったりするなよ」とヴェイグが話してたのはこういうことだったのね。
ティトレイあぁぁ ! ! ついにバレちまった ! !ヒルダだけには知られたくなかったのによ ! !
ヒルダ同じ過ちを繰り返す奴を愚か者というのよ。よりにもよって大事な接待の前にまたやらかすなんて、よくやってくれたわね。
ティトレイうぐっ……け、けど今回はちゃんと確認したんだ !このキノコ鍋にバクショウダケが入っていたとしても少しだけの筈で、ここまで酷い症状になるはずが――
アルヴィン今回はその確認が仇になっちまったみたいだぜ。くそっ、やっぱり間に合わなかったか。
ヒルダアルヴィン ? どういうこと ?
アルヴィンカレギア領とファンダリア領ではアカダマダケとバクショウダケの特徴が反対なんだよ。
ヒルダなんですって ! ?
ティトレイつまり、おれがウッドロウに食わせちまったのはバクショウダケ山盛りのキノコ鍋だったのか ! ?お、おれはなんてことを……すまねぇ、ウッドロウ !
ウッドロウくく…っ、はははは !な、なに……ふははは、気にすることは……はははははははっ ! ! !
アルヴィン笑い転げてて何言ってるのかわからねぇ ! !ウッドロウ、無理せず今はおとなしくしててくれ !
ナナリー大爆笑しているウッドロウさん……。な、なんか見ちゃいけないものを見ている気分だよ。
ティトレイウッドロウ、本当にすまねぇ ! !
ナナリーティトレイ、頭をあげなよ。ウッドロウさんもあんたに悪気がなかったことはちゃんとわかってるさ。
アルヴィンウッドロウだけじゃなく、俺たち全員な。
ティトレイみんな……。
ヒルダまぁ、あんたが正直に罪を告白していてくれれば私ももっと気をつけていただろうしそうすればこの事態も防げていたとは思うけど。
ティトレイや、やめろぉ ! もう毒を吐かないでくれ !いまのおれにヒルダのイヤミはバクショウダケよりキツイんだ ! !
ウッドロウふははははははははは ! ! ! ! ! !
ナナリーけ、けど、どうするんだい。この状態のウッドロウさんを狩りに連れて行くわけにはいかないよ。
アルヴィンおいおい ! 当日いきなり予定をキャンセルは大富豪様のご機嫌を損ねちまうぞ ! ?そうなりゃ、ほぼ確実に、計画が水の泡だ !
ヒルダ対帝国部隊も危険にさらされるわ。いったいどうすれば……。
ティトレイ……………お、おれに考えがある。
一同
ティトレイおれがウッドロウをやる ! !
ウッドロウふははははははははは ! ! ! ! ! !

Character4話【狩猟対決5 大富豪の使い】
ティトレイ見てろよ…………百発百中だ ! それっ ! !
ナナリーおっ ! また当たりだね。なかなかいい腕を持ってるじゃないかい。
ティトレイ料理……は置いておくとして実は狩りの腕にも自信があるんだよ。
ティトレイヒルダに看病されているウッドロウの代わりにおれがきっちり交渉してやるぜ。
アルヴィンはぁ…………胃がいてぇ。
ティトレイお、おい。大丈夫かよ ! ?まさかお前も毒キノコにあたったのか ! ?
アルヴィンちげーよ ! お前がウッドロウのフリをしてるのがバレないかどうか心配なんだよ !
ティトレイおいおい。ウッドロウにも劣らない狩りの腕とこの立派な貴族風の服があるんだぞ。バレるはずねぇって。
アルヴィン……確かに、狩りの腕に関しては心配してない。それにパッと見ての印象もな。その狩猟衣装もよく似合ってる。
ナナリーまぁ、黙って立っているぶんには熱い心を胸に秘めた新進気鋭の若手起業家と見えなくもないからね。
ティトレイ嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。二人も上流階級の人間って感じだぜ。
ティトレイナナリーのイメージは……颯爽と軍馬を操り、百発百中の弓の腕を持つ凄腕女騎士って感じだな !
ナナリーあはは、そんな風に褒めても、何も出ないよ。
ティトレイそしてアルヴィンは……………。
アルヴィンな、なんだよ。
ティトレイ……いや。イメージってよりまさにお貴族様って感じだと思ってな。
ナナリーそう言われてみればそうだね。そのゴテゴテ服もパパっと着替え終わってなんだか慣れてたような。
アルヴィン別にいいだろ。俺のことは。
ティトレイなんだよ、アルヴィン。隠し事なんて寂しいじゃねぇか。もっと腹を割って話そうぜ。
アルヴィン――お前の人の良さは認める。けど頼むから大富豪様の前では余計なことを話さないでくれよな。
アルヴィンいや、むしろ極力話さなくていい。喉の調子が悪いとかでごまかしてくれ。基本は俺が話すことにするから。
ナナリー確かにあんたなら適任だね。あたしたちのなかで一番年長者だし。
ティトレイそうだな。よし、わかった。おれは基本は黙っていることにする。
アルヴィン頼んだぞ。ヴェイグを見習って静かにしていてくれ。何かあれば俺がフォローする。
ナナリーん ? 誰かが走ってこっちに来るようだよ。
アルヴィンあの格好……大富豪様の使いか。
チェルシーお、お待たせしました !ウッドロウさま御一行ですね !ウッドロウさまはどちらですか ! ?
ティトレイよくぞ聞いてくれた ! おれさま……じゃなくて我こそが賢王ウッドロウ・ケルヴィンだ ! !頭が高い ! ひかえおろぉぉ ! !
アルヴィンおい ! さっき話してたこともう忘れちまったのか ! ?
チェルシーあなたは……さっきキノコ鍋を作ってた人じゃないですか !
ティトレイあっ ! そういうお前はさっき誰かを捜していたちびっ子 !
チェルシーちびっ子じゃなくチェルシー・トーンです !また会うとは思ってませんでしたが……いえそれより、ウッドロウさまはどこですか ?
ティトレイおれが……こほん。私がウッドロウ・ケルヴィンであーる。
チェルシーあなたがウッドロウさまですって ! ?冗談はほどほどにしてください !それ以上の不敬は許しませんよ !
ティトレイや、やめろ ! ! 弓を向けるな !わかった、ウソをついたのはあやまる !けど今のおれはウッドロウってことにしてくれ !
アルヴィンそんな言い方があるか !もう正体バレちまったようなもんだろ !
チェルシー怪しいですね。あなたたち何者ですか。
ティトレイそ、それは……。
ナナリーちょ、ちょっと待っとくれ !さっきあんた、チェルシー・トーンって名乗ったかい ?
チェルシー……はい、そうです。あなたも私に見覚えがあるんですか ?
ナナリーあたしを知らないのも無理はないか。まだ子供なところをみると、スタンさんたちと同じあたりの時間軸から具現化されたみたいだしね。
チェルシー私は子供では……えっ ! ?スタンさんを知っているんですか ! ?
アルヴィンなるほど……思い出したぜ。鏡映点リストにあったチェルシー・トーンか。
ティトレイ待ってくれよ。つまりこいつはおれたちと同じ鏡映点ってことか ?
チェルシーいったい何の話をしているんですか ?いえ、それよりウッドロウさまやスタンさんのことを知っているのなら居場所を教えてください !
ナナリーわかったから落ち着きな。ひとまずあんたが仕えてる大富豪のところに案内を頼むよ。歩きながら事情を説明するからさ。

Character5話【狩猟対決6 いざ狩場へ】
ナナリーなるほどね。チェルシーははぐれ鏡映点として具現化されたあと、大富豪に保護されてずっと使用人として働いていたってわけかい。
ティトレイさっきの村では、本当にウッドロウ本人なのかを少しでも早く確かめたくて捜していたって訳か。
チェルシーウッドロウさまの名前を聞いたら居ても立ってもいられなくて。
チェルシーですが、驚きました。まさかナナリーさん……未来の時間軸から具現化された人とお会いすることになるなんて。
ナナリー戸惑うのも無理はないさ。あたしも具現化時間軸の差について知ったときは頭がこんがらがりそうになったからね。
チェルシーもしかして……ウッドロウさまも数十年後から具現化されたりしてませんよね ! ?
ナナリー安心しな。ウッドロウさんだけじゃなくスタンさんたちもあんたと同じ時間軸から具現化されてるよ。まぁ、多少の差はあるみたいだけどね。
チェルシー多少の差 ?
アルヴィンそこらへんは結構複雑な話なんだろ。俺たちじゃなくスタンたちとあったときに本人たち同士で話したほうがいいんじゃないか ?
ナナリー……それもそうだね。というわけであたしたちからの説明はこんなところだ。改めてよろしく、チェルシー。
チェルシーはい。こちらこそです。みなさん、よろしくお願いしますね。それで、ウッドロウさまはどちらですか。
ティトレイあ、あぁ……ウッドロウは…………。
チェルシーその反応……何を隠しているんですか ?まさかウッドロウさまの身に何かあったんじゃ ! ?
ティトレイそ、そうじゃねぇよ。ただ……バクショウダケっていう毒キノコにあたっちまってな……。
チェルシー毒キノコに ! ?大丈夫なんですか ! ?
アルヴィンいまはベッドの中で大笑いしながら横になってるぜ。おとなしくしてれば治るからそこまで心配する必要はないけどな。
ティトレイおれが間違ってキノコ鍋にいれちまったんだ。悪気がなかったとはいえ原因を作ったのはおれだ。だから、ウッドロウの代わりに取引に臨むことにした。
チェルシーウッドロウさまを名乗っていたのはそういうことだったんですね。
アルヴィン速攻でバレちまってたけどな。
ティトレイそれはチェルシーがウッドロウのことを知っていたからだろ。どこぞのセレブぐらいには見えたはずだぜ。
チェルシーいえ、全く。
ティトレイ即答かよ ! そんなにおれには気品がないか ! ?
アルヴィンチェルシー。もしよければなんだが取引がうまくいくよう協力してくれないか ?大富豪様について情報を共有して欲しい。
チェルシーウッドロウさまが心配で今すぐに駆け付けたい所ですが……分かりました。このまま取引がうまくいかなければウッドロウさまも悲しむと思いますので。
アルヴィンスパイみたいなこと頼んで悪いな。もし嫌になったり、身の危険を感じたらすぐに言ってくれ。無理強いはしないからさ。
ナナリーなんだい、アルヴィン。あんた、結構優しいところがあるじゃないか。
アルヴィン別にそんなんじゃねーよ。照れくさいこと言うなよな。
ナナリーははっ。そういう素直じゃない反応をみるとなんだか村の子たちや弟のルーを思い出すねぇ。
アルヴィンおい……俺はこの中では年長者だぞ。そういう扱いはやめてくれよな。
ナナリーはいはい。わかったよ。あんたの扱いはエリーゼに任せておくよ。
ティトレイというかナナリーは弟がいるのか。どうりで姉貴っぽい感じすると思ったぜ。まぁ、おれの姉貴と似てるってわけじゃないけど。
アルヴィンそういうティトレイは弟か。まぁ、そんな感じするけどさ。
ティトレイそれは姉貴の教育の賜物だな。弟のおれが言うのもなんだが姉貴はものすごく美人なうえに性格も最高で――
ナナリーおっと、話はそこまで。ヒルダからあんたが姉の話をはじめたら長くなるんで止めるよう言われてるからね。
ティトレイヒルダ ! ! 余計なことを ! !
ナナリーもうすぐ大富豪様御一行とご対面なんだ。姉貴語りは諸々片付いたあとにしとくれ。
アルヴィン第一印象は大切だ。全員、さっき話した流れは覚えているな ?
チェルシーはい。不請不請ではありますがティトレイさんをウッドロウさまということで私の方から紹介させてもらいます。
アルヴィンウッドロウ様ことティトレイは大丈夫か ?
ティトレイわかってるよ。諸々のやり取りはお前に任せておれとナナリーは挨拶とか最低限しか話さない、だろ ?なんだか退屈だよなぁ。
ナナリーあたしらは話し過ぎるとすぐボロが出そうだからね。ま、お互い黙ってるぶんには問題ないみたいだしこればかりは我慢するしかないさ。
アルヴィンその不満は狩りで存分に発散してくれ。挨拶のあと、すぐに試合だからな。
ナナリー両陣営それぞれの代表一人が狩りに向かい制限時間内により多くの獲物を得られた方が勝ち。確かそんなルールだったね。
アルヴィンああ。その三番勝負だ。順番はナナリー、俺、ティトレイでいく。
ティトレイおれは一番最後かよ。おれもはやく狩りで暴れたいぜ。
アルヴィン大将なんだから、お前が最後は当然だろ。それまでは辛抱してくれよな。
チェルシーみなさん、到着しましたよ。
大富豪チェルシー。戻ったか。
チェルシーお待たせしました。ウッドロウさま御一行をお連れしました。ご紹介しますね。
ティトレイはじめまして。おれがウッドロ――
アルヴィンこほん !
ティトレイあ、あぁ…………こほん。失礼。狩りを前に気が高ぶってしまってね。私がウッドロウだ。よろしく頼む。
大富豪さあ、どうぞこちらに。
ティトレイあ、あぁ。
アルヴィン(さてと……\"狩り\"のはじまりだ)

Character6話【狩猟対決7 駆け引き】
ナナリーさあ、これで仕上げだよ ! !
チェルシー第一試合終了です !乗馬での狩猟勝負の勝者は……ナナリーさん !ウッドロウさま陣営の勝利です ! !
ナナリーまずは一勝だね。馬に乗って狩りをするのもなかなか悪くなかったよ。
ティトレイいやぁ、大猟大猟 !初戦はこっちの大勝利だな !さすがナナリー、頼りになるぜ ! !
チェルシーこほんっ。
アルヴィンおい。あんまりはしゃぐな。もっとウッドロウらしくしてくれ。……って、チェルシーが視線送ってるぞ。
ティトレイわ、わりぃ、そうだったな。こほん……。
ティトレイよくやってくれたね、ナナリーくん。君の弓の腕は、私の誇りだよ。
ナナリー……ま、まだ付き合い短いけどものすごい違和感だね。
ティトレイそういうこと言わないでくれよ。おれだってむず痒くて仕方ないんだ。
ティトレイはぁ……仲間が大勝利を収めてくれたってのに祝えないのもなんだかもどかしいな。
アルヴィンま、大勝利には違いないがそう祝ってもいられない状況だな。
ティトレイどういう意味だよ ?
アルヴィン大富豪様は狩り好きだろ。自分自身だけではなく連れの腕にも当然ながら自信を持っているはずだ。
アルヴィンそれなのにこっちが圧勝したとなるとあっちは面白くはないだろ。取引の前に気分を損ねるのは得策じゃないってこと。
ティトレイなんだそりゃ ! 面倒くせぇな ! !
チェルシーこほんっ。
ティトレイ……う、うむ。そうであったか。
アルヴィンいいか、大富豪様を見てみろ。負けた家来にも寛容に振る舞っているが、目が笑ってねえ。次はご機嫌取らなきゃだな。
ナナリーわざと負けるってことかい ?
アルヴィン御名答。次は俺とチェルシーの対決だ。レディに勝利をプレゼントしてくるよ。
ティトレイ真剣勝負もやっちゃいけねぇのかよ。わかっちゃいたけどモヤモヤするな……。
アルヴィンこれが上流階級の社交術ってやつさ。
ナナリーあんたはよく慣れてるみたいだね。相手の表情を読む観察眼もなかなかのもんみたいだ。あたしらにはさっぱりだよ。
アルヴィンあんたらはそれでいいんだよ。あ、もちろん皮肉じゃなくてな。
チェルシーアルヴィンさん。そろそろ第二試合をはじめますが準備はよろしいですか ?
アルヴィンこっちはいつでも大丈夫だぜ。けど次の第二試合、猟犬を使っての勝負は猫派の俺にとっては分が悪そうだ。
チェルシー冗談言っている場合じゃないですよ。負けるつもりなんでしょうけどあまり不自然に手を抜くと怪しまれますからね。
アルヴィンわかってる。任せてくれって。そういうのも慣れてるからな。
ナナリーそれじゃあ両者位置についたね ?さっそく第二試合をはじめるよ。
ティトレイアルヴィン。頼んだぜ。
アルヴィンそれじゃあ、お仕事開始としますか !

Character7話【狩猟対決8 小休止】
ナナリー第二試合、終了 !勝者はチェルシー・トーン!
アルヴィンいやぁ、負けちまったか。やっぱり大富豪様陣営は手強いな。
ティトレイアルヴィン、お前も器用だな。最後の最後まで接戦でつい見入っちまった。
アルヴィンチェルシーが思いの外に腕がよくてな。負けなきゃいけないのに、本気を出しかけたぜ。相手が子供だからって侮れるもんじゃないな。
ナナリーひとまず、アルヴィンのおかげで大富豪もご機嫌みたいだよ。
大富豪チェルシー。よくやってくれたね。
チェルシーこれでも弓の達人と名高いアルバの孫ですからね !それにウッドロウさまとも弓の修行のためによく狩りに出かけていましたのでこれぐらいは――
アルヴィンこ、こほんっ。
チェルシーあああ、今のは忘れてください !えっと……夢の中での話です !
ティトレイあ、あぶねぇ……。いまウッドロウはおれなんだしチェルシーと知り合いなのはおかしいもんな。
ナナリーチェルシーのウッドロウさんへの慕いっぷりはマリーさんから聞いていたけどこいつは想像していた以上だったよ……。
アルヴィンとんだ落とし穴だな……。頼むから、俺にもう咳払いさせないで欲しいぜ。
ナナリーけど、まだあんたは休んでられないんだろ。
アルヴィンそうだな。むしろこっからが本番だ。今までは社交辞令的な話ばかりだったがそろそろ本題……融資の話を切り出すときだ。
ティトレイい、いよいよか……。
大富豪チェルシー。
チェルシーはい。軽食の準備はできています。ウッドロウさまもよければご一緒に。もちろんお連れの方たちも。
ティトレイあ、ああ。では喜んで。
大富豪ウッドロウ殿。楽しんでいただけていますかな ?
ティトレイもちろんですとも。えー……本日はお誘いいただきこ、こ……こう…………。
アルヴィン幸甚の至りと、我が主は申しておりました。それはもう言葉に詰まるほどにこうしてお目にかかれたことを喜んでおります。
ティトレイそう ! それが言いたかった !
大富豪やはりウッドロウ殿は面白いお方だ。確か狩りだけでなく、クイズも趣味でしたな。
ティトレイクイズ ! ? え、ええ !私はクイズも大好きですよ !
大富豪あの手紙でのクイズ合戦も楽しかった。そういえば、先日のクイズの答えを教えてもらえませんかな。
ティトレイ……クイズの答え、ですか ?
大富豪どうしても解けなくてですな。チェルシー、問題は覚えているかな ?
チェルシーウッドロウさまからの問題はこちらです。「35,77,□,221,323,437」□に入る数はなんでしょうか。
ティトレイあー……えっと、なんだったかなぁ……。いやぁ、ど忘れしてしまったなぁ……。何かの暗号だったか……。
アルヴィン答えは「143」。それぞれを積の形にしてみれば解けますよ。
アルヴィン「35=5×7」「77=7×11」空欄を飛ばして「221=13×17」「323=17×19」「437=19×23」
アルヴィンこのように隣り合う素数同士の積が並んでいたのだと気がつけば空欄に入るのは「11×13」の積、つまり「143」。
大富豪なるほど。これはしてやられましたな。
アルヴィン私も主に答えを教えてもらうまで気づきませんでした。
ティトレイそ、そう ! ソスウの積 !気がついちまえば誰でも解ける問題なのですよ !
ナナリー(さっきど忘れとか言ってたのはどの口だい ! ?)
チェルシー(ナナリーさん ! いまは我慢してください ! !)
大富豪やはりウッドロウ殿とは狩りやクイズに限らずうまくやっていけそうだ。チェルシー、あの書類を。
チェルシーウッドロウさま。こちらをご確認ください。
ティトレイこ、細かい文字がいっぱいだな……。
アルヴィン主は目が疲れているようなので私が代わりに拝見します。
ナナリー一部事業予算枠に関する提案書 ?
アルヴィンこれは…………。
ティトレイアルヴィン、どうかしたか ?
アルヴィン…………いえ。
大富豪ではそろそろ狩りを再開しましょう。
アルヴィンわかりました。話の続きはその後で。

Character8話【狩猟対決9 ほころび】
ティトレイいやぁ、正体がバレるかとヒヤヒヤしたぜ。クイズの答えを聞かれたときは冷や汗が止まらなかったな。
ナナリーアルヴィンのおかげであの場は乗り切れたようなもんだね。
アルヴィンそうだと良いんだがな……。
ティトレイ今のところは順調なんだし心配すんなって。それより次の狩りについてなんだが――
チェルシーみ、皆さん ! 大変です !ティトレイさんの正体がウッドロウさまでないと感づかれたかもしれません !
ティトレイなんだと ! ? それは本当か ! ?さっきまで怪しんでいる素振りは全然なかっただろ !
チェルシー本当ですよ。私、さっきティトレイさんのことを調べてくるように指示されたんです。どうも言動が気になっているようでした。
アルヴィンくそっ……やっぱり相手も馬鹿じゃないってか。あの場では平静を装っていただけだったみたいだな。狩りを嗜むだけあってしたたかな大富豪様だぜ。
チェルシー身分を偽っていたとバレたらティトレイさんはもちろん、アルヴィンさんもナナリーさんもどんなひどい目に遭うか……。
ナナリーだいぶ人が良さそうだったけどさすがに貸し付けの話もなくなっちまうだろうね。
アルヴィンいや、むしろあの大富豪様は相当な腹黒かもしれないぜ。
ナナリーそうなのかい ?
アルヴィン書類には現場の作業員の安全面においてけっこう無茶な提案が書かれていた。
アルヴィン俺たちや大富豪様にとっちゃコストカットできて賢い選択だが、内心では下々の人間のことなんざどうでもいいと思ってるのかもしれない。
ナナリーとなると、チェルシーの言う通りむしろ酷い目に遭わされる可能性が高そうだね。
アルヴィン今のうちに逃げるのが本来なら得策だが……。
ティトレイ待てよ ! 取引が白紙になっちまったら対帝国部隊の人たちが危ないんだろ !それを放って逃げろっていうのかよ ! ?
ティトレイおれはそんなことしたくねぇ !それにな、その書類に書かれてた内容についてもちゃんと指摘して、文句を言ってやった方がいい !
チェルシーそ、そんなことしたら余計に揉めてしまいます……。
ティトレイだからってもう言いたいことも言えずに黙ってるなんてまっぴらごめんだ。
ティトレイもう正体がバレたっていい !ひどい目に遭わせるって言うなら受けて立つ !
ティトレイそれに上流階級だかなんだかしらねぇがそのせいで誰も文句が言えないならせめておれだけはガツンと言ってやる !
チェルシーティトレイさん……。
ナナリーあたしはティトレイの意見に賛成だね。アルヴィン、あんたはどうだい ?
アルヴィンそうだな……。昔の俺なら今頃は手のひら返してただろう。けど、もうそういうことはしないって決めたんだ。
アルヴィン正直……どうなるかはわからないがもしかしてティトレイなら何か変えられるかもな。
ティトレイアルヴィン…………。
アルヴィン実はさ、俺も前に……とある相手と本気で殴り合ったことがあるんだ。どちらかと言えば殴られる側だったけど。
アルヴィン戦略でも何でもなく本気でぶつかるってことを恐れないお前をちょっと信じてみようと思うよ。
ティトレイああ ! 任せてくれ !
ナナリー待ちな。誰か来たみたいだよ。
大富豪ウッドロウ殿。こちらにいらっしゃいましたか。
チェルシーえっ、まだ狩りの開始時間には早いですが……。
大富豪大切な話があって来たのだよ。ウッドロウ殿、よろしいですかな。
ティトレイああ。もちろんだ。

Character9話【狩猟対決10 誠心誠意】
チェルシー急用ができたので帰る……ですか ?
大富豪ウッドロウ殿には申し訳ないがね。
ナナリーそれで契約書の内容に問題がなければ今サインして欲しいってわけかい。
ティトレイどういう風の吹き回し――
アルヴィン失礼。突然の話で混乱してしまい。まさかここで契約をすることになるとは思っていませんでしたので。
大富豪ウッドロウ殿は信頼できると判断できましたから。さあ、よければサインを。
ティトレイいや、それはできねぇ ! !おれはウッドロウじゃないしこんな契約内容を黙って受け入れることもできねぇ !
大富豪…………。
ティトレイもう本当は気づいていたんだろ。おれの名はティトレイ・クロウ。正体を偽ったのは悪いと思ってる。
ティトレイけど、仲間を守るためにどうしても必要だったんだ。
大富豪仲間を守る ?
アルヴィンそれは………いや、続けてくれ。
ティトレイ――ああ。帝国から仲間を守りたいんだよ。今からどういうことかちゃんと話す。だから聞いてくれ。
大富豪………………なるほど。
ティトレイこのままじゃ、平和を願って帝国と戦ってきた仲間が危険だ。
ティトレイそれに大きな戦争でも始まれば普通に暮らしてる無関係の人たちまで争いに巻き込まれちまうかもしれねぇんだ。
ティトレイだから頼む、おれたちに協力してくれ。それに契約内容も金のためじゃなく皆の安全をちゃんと考えて欲しい。
ティトレイ自分たちだけ得すりゃいいってのはおれは間違ってると思うんだ。
ティトレイ身分や地位なんて関係なく皆で助け合っていくことが大切だろ !
大富豪……………。
ナナリーそうは思わないってかい ?
チェルシーま、まさか帝国に通報する気じゃ……。
二人…………。
大富豪合格です !
ティトレイ…………は ?
大富豪もう少し本音を語らせるのに苦労しそうだと思っていましたがこれでようやく心からあなたたちを信頼できる。
大富豪チェルシー。例の封筒と手紙を。
チェルシーえ、あっ。はい……。
大富豪それでは、私はこれで失礼します。
ナナリーちょっと。どこに行くんだい ! ?
大富豪あとのことは任せました。本物のウッドロウ殿によろしくお伝えください。

Character10話【狩猟対決10 誠心誠意】
ウッドロウふふっ。
チェルシーウッドロウさま ! ?まさかまだバクショウダケの中毒症状が治っていないのですか ! ?
ウッドロウいや、私はもう大丈夫だよ。ただことの顛末が面白くてね。
アルヴィン大富豪様には、俺たちが偽者だって始めからバレててウッドロウが何をするつもりか、それと人柄を知るため関係者である俺たちは観察されていた、と。
ティトレイなんだかしてやられた気分だぞ ! !
ウッドロウだがティトレイ君たちのおかげで無事に取引も成立したよ。
ウッドロウチェルシーもよく頑張ってくれたね。
チェルシーはい ! ウッドロウさまのために頑張りました !またお会いできただけでも幸せなのにこうしてお褒めの言葉までいただけて恐悦至極です ! !
ナナリーさあ、一段落したわけだしお祝いもかねてみんなでバーベキューだよ !
ヒルダアジトにも声をかけておいたわよ。そろそろ村にやって来る頃ね。
ヴェイグティトレイ。ここにいたか。
ティトレイおぉぉ ! ヴェイグじゃねぇか !それにマオたちも ! !
マオティトレイったらキノコでまたやらかしたらしいネ。
アニー大事にならなくてよかったですよ。今回のキノコがわたしたちが食べたものと同じ中毒症状を引き起こすとは限らないんですから。
ユージーンどこにいてもティトレイは相変わらずということだな。
ティトレイははっ。なんだか面目ないな。けど、こうして再会できて嬉しいぜ。
スタンおっ ! チェルシーじゃないか !久しぶり。元気そうで良かったよ。
チェルシースタンさん…… ! それに皆さんも !
フィリア今回のお話は伺っています。ウッドロウさんを捜すために一生懸命になって……やはりチェルシーさんは変わりませんね。
マリーこれも一つの愛の形だな。
カイルナナリー ! オレたちも一緒に来たよ !
リアラバーベキューなんて、楽しみだわ。
ロニさあ、メシだメシだ !どんどん肉を食うぞ !
ナナリー騒がしい奴らも来たね。それじゃあさっそくはじめるとするか。
一同おーっ ! ! ! !