| Character | 1話【矮星1 復活】 |
| 帝国兵A | ついにこの時を迎えることができる……。 |
| アレクセイ | ふっ、ふははっ……計画通りだ。よくやった。 |
| 帝国兵たち | おおぉっ ! お目覚めになられたぞ ! |
| 帝国兵A | お身体になにか変わったところは ?すぐに動けるよう、心核を戻してから数日間は治療にあたらせておりました。 |
| アレクセイ | それも私の指示通りだな。おかげで、問題なく身体は動きそうだ。これであれば……。 |
| 帝国兵A | はっ ! 我々も行動に移す準備は出来ております、アレクセイ様 ! |
| アレクセイ | そうか。……ん、なにやら客のようだ。 |
| 帝国兵A | 申し訳ありません。すぐに対処いたします。 |
| アレクセイ | 待て。ひさびさに楽しもうではないか。私の意思をもった『会話』をな。 |
| 帝国兵B | お、お前たち、ここでいったい何をして……。 |
| 帝国兵B | それになぜ領主さまが…… ! ? |
| アレクセイ | 領主 ? 違うな。私はこの世界を新たに救う者だ。断じて、帝国の駒などではない。 |
| 帝国兵B | 心核が戻されているのか ! ?しかし、どうやって ?……まさか、ここにいる兵士たちが ! |
| アレクセイ | よくも我が心を踏みにじり弄んでくれた。私は怒りに満ちている。 |
| アレクセイ | だが、信念を検めよう。我の下に集うのであれば生かしてやる。 |
| 帝国兵B | な、なにを言ってるんだ ? |
| アレクセイ | 俗物か……。始末しろ。 |
| 帝国兵たち | はっ ! |
| 帝国兵B | き、貴様ら ! やめっ…… ! |
| アレクセイ派帝国兵 | アレクセイ様。これからですが……。 |
| アレクセイ | ……ふっ。 |
| アレクセイ派帝国兵 | 何か気にかかることでも ? |
| アレクセイ | 心を踏みにじる。それが許せないか……。この私がよく口にしたものだ。そう思うと笑える。 |
| アレクセイ派帝国兵 | は、はぁ……。 |
| アレクセイ | 気にするな。 |
| アレクセイ | さて、例の切り札の首尾はどうなっている。 |
| アレクセイ派帝国兵 | あの兵器については―― |
| サレ | へえ……。これは帝国とのお別れ前に面白いものが見られそうだね。 |
| サレ | ふふ、興味深い……。 |
| ユーリ | なんだか、微妙な空模様だ。こりゃ、ひと降り来るかもな。 |
| エステル | あの、ユーリ。レイヴンを知りませんか ? |
| ユーリ | おっさん ? いや、見てねえな。どうかしたのか。 |
| リタ | 姿が見えないから気になってんのよ。ちょっと、余計なこと言っちゃったかもしんないし。 |
| ユーリ | おっさんも年なんだから、あんまいじめてやんなよ ? |
| リタ | そうじゃないわよ ! テルカ・リュミレース領で何か動きがあったみたいなの。それを話してから見てなくて……。 |
| ユーリ | テルカ・リュミレース領……。 |
| エステル | はい。実は……。 |
| ユーリ | 待った。話は歩きながら聞く。おっさんがいそうなところは知ってるからな。ひとまず向かおうぜ。 |
| ラピード | ワフッ。 |
| エステル | ラピードも来るんです ?って、あれ ? |
| ユーリ | 行くってさ。 |
| Character | 2話【矮星2 出立】 |
| カロル | ねえ、ユーリ。ここによくレイヴンがいるの ? |
| ユーリ | ああ、そうだ。 |
| リタ | なんでガキんちょとジュディスまで付いてきてんのよ。 |
| ジュディス | あら、いいじゃない。大切な仲間を捜しているんでしょ ? |
| リタ | 面白半分で付いてきたように見えるんだけど。 |
| ジュディス | 失礼ね、私だって心配しているのよ。 |
| カロル | 情報の元はカロル調査室だからね。ボクにだって責任があるよ ! |
| ユーリ | その情報ってのは領主……アレクセイ絡みか ? |
| カロル | うん。実は、帝国兵同士で揉めた……っていうか身内を斬りつける事件があったみたいなんだ。 |
| カロル | 必死に情報が漏れるのを防いでいたみたいだけど間違いないよ。なにかトラブルがあったんだと思う。 |
| ジュディス | それに領主のアレクセイが関係しているのね ? |
| カロル | うん。その直後に領主が不在になったみたいだから何か関わっていると思うんだ。 |
| ユーリ | そいつをレイヴンに話したって訳か。ま、あとは本人に聞いてみるしかねえな。ラピード、中にいそうか ? |
| ラピード | ワン ! |
| エステル | ひとまず、いなくなったわけではなくて良かったです。 |
| レイヴン | ……あれま、見つかっちゃった ?おっさんの秘密基地。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| レイヴン | はは~ん、犯人はおたくかい ? |
| リタ | ちょっと ! あたしたちの話を聞いてからいなくなったと思ったら、こそこそと何してんのよ ! |
| リタ | 理由、話してもらうわよ。 |
| レイヴン | う〜ん、参ったなぁ。 |
| エステル | レイヴン、お願いします。アレクセイの話を聞いて、なにか思うところがあったのですか ? |
| ユーリ | 念入りに装備の手入れしてるとこ見るとごろごろしてたわけじゃねえだろ ? |
| レイヴン | ……いや実はね、アレクセイから連絡が来たんだわ。シュヴァーンってやつ宛てに、ね。 |
| カロル | アレクセイから ! ?どうして帝国の領主が連絡なんてしてくるの ? |
| レイヴン | 俺も不思議に思ったわけよ。ただ、どうやらやっこさんリビングドールじゃないみたいなんだわ。 |
| エステル | 心核を抜かれていないんです…… ? |
| カロル | 何か理由があって帝国はアレクセイの心核を抜いていないのかな ? |
| レイヴン | そうかもしれないね。けど、そうじゃないかもしれない。 |
| カロル | どういうこと ? |
| レイヴン | 連絡して来た内容だよ。 |
| レイヴン | どうもやっこさんこの世界でなにか仕掛けようとしてるらしい。それが帝国の指示とは思えないんだわ。 |
| カロル | 独断で動いてるの ! ? |
| ユーリ | アレクセイの野郎だ。誰かの下につく柄じゃねえだろ。そもそもリビングドールじゃないってこと自体が帝国の想定外なのかもしれねえ。 |
| レイヴン | そこにリタっちから聞いた情報でしょ。これはいよいよ本物かな、と。 |
| レイヴン | で、あいつはシュヴァーンに力を貸せって言ってきてるわけ。 |
| カロル | レイヴン、力を貸すつもりじゃないよね…… ? |
| レイヴン | そんなつもりはない。ただ、シュヴァーンってやつはこう思ってる。 |
| レイヴン | 決着をつけてくるってな。 |
| エステル | そんな……。なら、わたしたちも行きます ! |
| レイヴン | 嬢ちゃんの気持ちはありがたいがこいつはシュヴァーンとアレクセイの問題だ。 |
| レイヴン | もともと昔の話。レイヴンとも関係ない話だ。わかってくれよ、な。 |
| カロル | レイヴン……。 |
| リタ | はぁ、バカっぽい ! けどま、いいんじゃない。 |
| エステル | リタ…… ! ? |
| ジュディス | ええ、そうね。背中を押してあげましょう。 |
| ユーリ | って、ことだ。行ってこいってシュヴァーンに伝えてくれ。 |
| ラピード | ワンワン ! |
| レイヴン | ははっ、恩に着る……ってシュヴァーンも言うだろうさ。 |
| レイヴン | さてと、おっさんもちょっとやることあるから、ここいらで失礼させてもらうわ。んじゃ、あとよろしくー。 |
| エステル | みんな、ひどいです…… !レイヴンのこと、心配じゃないんですか…… ! ? |
| ユーリ | シュヴァーンの話だろ ?おっさんも見つかったことだしオレは散歩でも行ってくるわ。 |
| ラピード | ワフッ ! |
| ジュディス | ふふ。ひと雨来そうだけど絶好の散歩日和ね。私もお出かけしようかしら。 |
| カロル | あ、ぼ、ボクは調査室の仕事があるんだった。イクスとも話があるし……。じゃあね、みんな。また ! |
| エステル | み、みんな……。 |
| リタ | はぁ……、バカっぽい。行くわよ、エステル。 |
| エステル | え……行くって、どこにです ? |
| リタ | 決まってんでしょ。ほら、準備なさい ! |
| Character | 3話【矮星3 調査】 |
| ユーリ | 散歩ってわりにはずいぶんと遠くまで来ちまったな。 |
| カロル | ホント、テルカ・リュミレース領まで来ちゃうなんてやりすぎだよ、ユーリ。 |
| ユーリ | へっ、結局こーなっちまうのな。 |
| リタ | うるさいわね !あんたら、いちいちまどろっこしいのよ。 |
| エステル | ふふ。みんな、気持ちは一緒なんですね。 |
| ジュディス | それじゃあ、まずは領内で起きたという事件を調べましょうか。 |
| カロル | あ、待って ! その前に―― |
| ユーリ | なるほど。調査の必要はないってか。 |
| エステル | フレン !フレンもここに来ていたんですね。 |
| フレン | はい。アレクセイが動いた可能性を聞き情報収集に来ていました。 |
| フレン | もちろん、ユーリが来ることもカロル調査室から聞いていたよ。 |
| ユーリ | ま、そりゃそうなるか。 |
| フレン | 領内の事件についてはすでにできる限りの情報を集めておいた。 |
| カロル | さっすがフレン ! |
| リタ | で、なにがわかったのよ ? |
| フレン | どうやらアレクセイは一部の帝国兵を引き連れて帝国へ反旗を翻したらしい。 |
| ユーリ | ……マジかよ。 |
| エステル | アレクセイ……。 |
| ユーリ | リビングドールじゃねえってのも帝国を出し抜いたってことか ? |
| フレン | そのあたりの経緯はわかっていない。けど、あの方のことだ。綿密な計画と人心を取り込む術を発揮したと想像するのは難しくない。 |
| ユーリ | ……前は騎士団のほとんどがやつの口車に乗っちまったからな。 |
| フレン | アレクセイはやはりすごい人だよ……。しかし、それでも法の下で罰しなければならない。 |
| ユーリ | その法とやらはどこにあんだよ。 |
| フレン | それは……。 |
| フレン | ユーリ、君の言う通りかもしれない。しかし……。 |
| ユーリ | しかし、なんだよ ? |
| カロル | ま、まあまあ、今はアレクセイじゃなくてレイヴンの心配をしなくちゃ ! |
| ジュディス | そうね、カロルの言う通りよ。 |
| フレン | ……すまない。僕たちは騎士団長……アレクセイに対する感情とレイヴンさんのことを切り離して考えるべきだった。 |
| フレン | ユーリ、君もいいね。 |
| ユーリ | そのつもりだ。 |
| エステル | あ、あの、ユーリ。ラピードの姿が見えませんがどうしたんです ? |
| ユーリ | レイヴンの行方を追ってもらってる。オレはアレクセイの情報を街で集めるつもりだったからな。 |
| リタ | アレクセイはシュヴァーンになにか世界に仕掛けるつもりだって伝えてたのよね。 |
| ユーリ | そっちの方は何か知ってるか ? |
| フレン | すまないが、まだ掴めていない。 |
| ユーリ | じゃ、そっから始めるか。 |
| フレン | ああ。僕も一緒に行くよ。 |
| Character | 4話【矮星4 攻勢】 |
| アレクセイ派帝国兵 | アレクセイ様、準備が整いました。 |
| アレクセイ | 時は来たか。皆、集まっているな。 |
| アレクセイ派帝国兵 | はっ !アレクセイ様のお言葉を待っています。 |
| アレクセイ | 諸君、我がもとに集ってくれたことまずは感謝を述べよう。 |
| アレクセイ | ついに時は来た。我々が帝国からなんと呼ばれているか知っているか ?『アレクセイ派』だ、そうだ。 |
| アレクセイ | だが、この作戦が終わった時、我々は力を手にする。そうなれば、我々が『本流』となろう。 |
| アレクセイ | 世界を破滅させるほどの力をもつ『魔導砲』は完成した。 |
| アレクセイ | 我々は帝国の手から、これを奪う。これがあれば世界の構図は変わる。帝国は黙り込むだろう。 |
| アレクセイ | この世界を取り巻く混乱の中苦難に喘ぎ、泥水を啜った者もいるだろう。友や家族を失い、心砕かれた者もいるだろう。 |
| アレクセイ | そのとき、国は何をしていた ! ? |
| アレクセイ | 私欲のため、さらなる混乱を巻き起こし君たちの心を踏みにじるばかりか道具のごとく使い捨ててきたのだ ! |
| アレクセイ | そんな世界は終わる。今こそ変革の時だ !諸君 ! ともに戦おうではないか ! ! |
| アレクセイ派帝国兵たち | おおおおぉーーーーっ ! ! ! |
| アレクセイ派帝国兵 | アレクセイ様、魔導砲に必要とおっしゃっていたアイテムはどうするのですか ? |
| アレクセイ | それならすでにこちらに呼び出した。安心しろ。 |
| アレクセイ派帝国兵 | 呼び出した…… ? |
| アレクセイ | あの魔導砲は『ヘルメス式魔導器』。だが、真価を発揮するにはもうひとつ魔導器が必要なのだ。 |
| アレクセイ | かつて私が与えた、『やつの魔導器』がな。 |
| シュヴァーン | この先は帝国兵の索敵範囲に入る。迂回して進むか。 |
| シュヴァーン | それにしても―― |
| シュヴァーン | やつが欲しがっているのは俺ではなく、『これ』だろうな。 |
| シュヴァーン | 左胸の『心臓魔導器』。 |
| シュヴァーン | だが、ただでは転ばんぞ。アレクセイ…… ! |
| Character | 5話【矮星5 追跡】 |
| ユーリ | そんじゃ、集めた情報を整理しておこうぜ。 |
| フレン | アレクセイは魔導砲を使って帝国の支配体制を一気に変えようとしている。 |
| リタ | 相変わらずとんでもないやつね。帝国の連中を出し抜いて、そんな大事をやってのけようとするなんて。 |
| エステル | 騎士団の団長を務めながらギルドも裏で操っていた人ですから……。造作もない……のかもしれません。 |
| カロル | で、アレクセイが魔導砲のある要塞に向かって進攻を始めたのは間違いなさそうだね。 |
| ジュディス | その魔導砲というのは国を覆せるほどの威力があるのかしら。 |
| リタ | 多分ね……。クラースたちの話だとたった一発でも、街一つが簡単に消し飛ぶくらいの威力を持ってるそうよ。 |
| エステル | そんなものを使ったら、この世界は…… ! |
| フレン | 戦いに使うというより抑止力にするつもりかもしれません。 |
| ユーリ | まあ、世界を焼け野原にするのが目的じゃないだろうからな。黙らせて従わせるって腹だろ。 |
| カロル | 大胆な作戦だよね。だけど、恐いくらい冷静に計画したように思えるよ。 |
| ユーリ | やつのやろうとしていることを考えるとおっさん一人の問題じゃねえな。 |
| カロル | うん。それに、昔のことっていってもレイヴンの問題はボクたちギルドみんなの問題だもんね ! |
| エステル | はい、みんなで解決しましょう ! |
| リタ | …………。 |
| ジュディス | また一人で考え事 ?よくないわよ、そうやって口にしないのは。 |
| カロル | リタ、魔導砲のことで気になるところでもあるの ? |
| リタ | ん、そっちも気にはなってるけどおっさんのことよ。 |
| リタ | シュヴァーンはレイヴンという人間の影でしょ。 |
| リタ | その影まであたしたちに背負わせたくなかったのかもしれない。なんとなく、そう思っただけ。 |
| ジュディス | そうね。それに気づくなんてリタは優しいのね。 |
| リタ | そ、それくらい誰だって気づくでしょ ! |
| ユーリ | 本当にそれだけか……。 |
| カロル | どうしたのユーリ ? |
| ユーリ | いや。とにかく、思っていたよりも話の規模がでけえ。こりゃ早いとこおっさんに合流しないとな。 |
| フレン | 問題は、アレクセイ派の軍だ。帝国の要塞を攻めるだけあってかなりの数になっている。 |
| リタ | 援軍でも呼ぶしかないんじゃない ? |
| フレン | そうだね。アレクセイの動きに対して間に合うか。そこがポイントになりそうだ。 |
| カロル | あ、ちょっと待って。魔鏡通信だ。 |
| マーク | よう、カロル室長。イクスたちから助っ人を頼まれたぜ。あっちも別件抱えてバタバタしてるからな。 |
| カロル | マーク !そうか、イクスたち救世軍に声を掛けてくれたんだ。 |
| マーク | こっちはたまたまテルカ・リュミレース領の近くを飛んでたからな。それで ? 今どんな具合だ ? |
| マーク | 俺たちで動けそうなことがあれば手伝うし浮遊島の方でも動けるメンバーを集めてくれてるみたいだぜ。 |
| カロル | ちょうど困ってたんだ。実は―― |
| マーク | なるほどな。魔導砲にアレクセイの軍、か。そいつはたしかに面倒だ。放置するわけにはいかない、か。 |
| マーク | ――よし、わかった。そっちにいる救世軍を手配する。アジトの連中が行くより早いだろ。 |
| カロル | ホント ! ? 助かるよ !今、アレクセイの向かった要塞の位置を送るね。 |
| マーク | 了解。俺も向かうから、後で合流しよう。 |
| フレン | 救世軍が協力してくれるのはありがたい。 |
| カロル | うん ! これでアレクセイの元まで行けそうだね。 |
| リタ | あ、ラピードが戻って来たわよ。 |
| ラピード | ワフッ。 |
| ユーリ | ラピード、レイヴンも要塞に向かったんだな ? |
| ラピード | ワンッ ! |
| カロル | それじゃ、ボクたちも要塞を目指そう ! |
| Character | 6話【矮星7 対峙】 |
| アレクセイ派帝国兵A | アレクセイ様、要塞を完全に制圧しました。 |
| アレクセイ | 魔導砲はどうか ? |
| アレクセイ派帝国兵A | はっ、無傷で押さえております。 |
| アレクセイ | うむ、よくやった。 |
| アレクセイ派帝国兵B | アレクセイ様、おっしゃっていたシュヴァーン様がいらっしゃいました。 |
| シュヴァーン | 来たぞ。 |
| アレクセイ | ん ? その風体、何を企んでいる。まあいい、役に立ってもらうぞシュヴァーン。 |
| シュヴァーン | 魔導砲とやらを制圧して何をしようとしている。 |
| アレクセイ | お前の想像している通りのことだ。わかっているだろう ? |
| シュヴァーン | それは愚かな考えと言わざるを得ない。 |
| アレクセイ | 言ってくれるな。だが、正直に物を言うお前は嫌いではない。むしろ、私には心地よい関係であった。 |
| シュヴァーン | では正直に聞こう。何のために俺を呼び出した。 |
| アレクセイ | 私はここでも自分の組織を築き上げた。お前には部隊を率いてもらいたい。受けてくれるな ? |
| シュヴァーン | 俺に隊を率いる素養はない。ならば……。 |
| シュヴァーン | 単刀直入に聞こう。この心臓、つまりヘルメス式魔導器が必要なのかと。 |
| アレクセイ | ふっ、話が早い。 |
| アレクセイ | シュヴァーンよ、問おう。お前はこの世界に来て、何を感じた。 |
| シュヴァーン | 何も。レイヴンってやつは案外気に入っているようだがな。 |
| アレクセイ | それは本心かな――まあ、いい。 |
| アレクセイ | この世界の者たちは我が意志に関係なく私を具現化し、思うがままに支配した !……それを許すことはできない。 |
| シュヴァーン | どこかの誰かとやっていることは同じだな。 |
| アレクセイ | 皮肉か。それも結構―― |
| アレクセイ | だが、私が道化となることなど許さない ! ! |
| シュヴァーン | そうやってお前は失敗したんだ。 |
| アレクセイ | 失敗だと ?私は失敗などしていない。あちらでも、こちらでもな。 |
| シュヴァーン | いいや、お前は俺たちの世界でザウデで取り返しのつかない失態を犯した。 |
| アレクセイ | なに…… ? |
| シュヴァーン | 世界を変えられると思っていたザウデの力はお前の大きな勘違いだった。それは世界に絶望をもたらしただけだった。 |
| シュヴァーン | そしてお前は何もできないまま表舞台から下ろされたんだ。 |
| シュヴァーン | それが俺たちの見た未来の真実だ ! |
| アレクセイ | バカな……、戯れ言を……。 |
| シュヴァーン | お前はここでも過ちを繰り返すのか ? |
| アレクセイ | ……ならば。私が失態を犯したとするならばそれを正せるこの機会に感謝しようではないか ! ! |
| アレクセイ | 見せてやろう。この力が本物だということを ! |
| シュヴァーン | 何をするつもりだ ! |
| アレクセイ | 魔導砲を起動せよ ! |
| アレクセイ派帝国兵 | はっ ! |
| アレクセイ | 手向けのデモンストレーションだ。貴様が真の力を見ることは叶わんからな。 |
| シュヴァーン | ――させるか ! |
| Character | 8話【矮星9 決着】 |
| フレン | ここが最上階だ ! |
| カロル | 見て、レイヴンが ! ! |
| シュヴァーン | くっ…… ! |
| アレクセイ | シュヴァーンよ。お前がいくら抵抗しようと多勢に無勢。大人しく従ってはどうだ ? |
| シュヴァーン | ふっ、約束しちまったからな……。 |
| アレクセイ | 約束 ? |
| シュヴァーン | 決着をつけるとな。だから、従うという選択肢はない…… ! |
| アレクセイ | 強情な。 |
| ユーリ | アレクセイ ! |
| アレクセイ | ローウェル君。君もなかなかに使える駒だったがまだその用済みの姫を世話しているのか ? |
| フレン | アレクセイ……。本当に心核を取り戻しているんですね……。 |
| アレクセイ | フレンもいるのか。シュヴァーンが欠けても必要な手は揃いそうだな。 |
| エステル | レイヴン ! 今、治療します…… ! |
| シュヴァーン | 世話をかける……。だが、俺はレイヴンではない……。 |
| リタ | あ〜もう、こっちのおっさんもほんとバカ ! |
| シュヴァーン | 何…… ? |
| カロル | リタの言う通りだよ ! |
| カロル | 相手はアレクセイ一人じゃなかったんだ。自分だけで突っ込むなんて無茶だよ ! |
| シュヴァーン | 好き勝手言ってくれる……。 |
| ジュディス | それはそうよ。真面目な顔したって、中身は同じなんだから。 |
| シュヴァーン | ……手厳しいな。 |
| ユーリ | おっさんはアレクセイを『止めたかった』んだろ。だから一人で来たんだ。 |
| カロル | どういうこと ? |
| ユーリ | オレたち……いや、オレがいたら『アレクセイを救う選択肢が残されない』そう思ったんじゃねーか ? |
| フレン | ユーリ……。 |
| エステル | そうなんですか、レイヴン ? |
| シュヴァーン | なんのことやら。さて……と。 |
| リタ | ちょっと、あんたまだやる気なの ! ? |
| シュヴァーン | 決着はついていない。アレクセイは俺がやる。 |
| ユーリ | ……リタ、魔導砲の様子はどうだ ? |
| リタ | ここからじゃ正確にはわからないけど外で見た時から大きな変化はないみたい……。 |
| ユーリ | そうか……。おっさん、手下はオレたちが引き受ける。 |
| シュヴァーン | 感謝する。 |
| シュヴァーン | アレクセイ……お前は結局、この世界で何がしたいんだ。 |
| アレクセイ | 決まっている。変革と救済だ。 |
| アレクセイ | 私は見た。この世界のあり様を。寄せ集めの歪な世界。無能で民を顧みぬ帝国……。 |
| アレクセイ | その下にありながら、私は『力』を蓄えていたのだ。今日というこの日のために。 |
| フレン | そんな人間を、あの帝国が見過ごすとは思えない。 |
| アレクセイ | そのとおりだ。だから私は心核を抜かれた。愚者でも予想できることだ。 |
| カロル | 予想って、まさか…… ! |
| アレクセイ | 私の『力』、兵たちに仕込んでおいたのだ。心核を盗み、戻すように。魔導砲が完成した暁にな。 |
| シュヴァーン | ……つくづく恐ろしい人だ。 |
| アレクセイ | 褒め言葉と受け取っておこう。 |
| アレクセイ | 貴様たちもわかっているだろう。ここはテルカ・リュミレースと同じ……いや、それ以上に歪んでいる。 |
| アレクセイ | だから私が正すのだ ! |
| ユーリ | ……ったく、歪んでるのはどっちだよ。 |
| シュヴァーン | ……わかった。やはり俺はお前を止める。 |
| シュヴァーン | もし俺が負けたなら魔導器でもなんでも好きにすればいい。 |
| シュヴァーン | ……かつて同じ理想を目指した部下からの餞別だ。 |
| アレクセイ | ……いいだろう。では、お前とこの世界の未来を我が手に収めるとしよう ! |
| シュヴァーン | もらった命だが、今はお前のものじゃない。足掻かせてもらうぞ、アレクセイ ! ! |
| Character | 9話【矮星9 決着】 |
| シュヴァーン | はぁ、はぁ……。終わりだ、アレクセイ…… ! |
| アレクセイ | くっ……だが…… ! |
| リタ | なに ! ? 急に魔導砲が…… ! |
| ユーリ | てめえ、何をしやがった ! ? |
| アレクセイ | これは……どういうことだ…… ! ? |
| リタ | エネルギーが溢れる ! ? |
| エステル | きゃーーー ! |
| カロル | あいたたた……。 |
| フレン | くっ…… !みんな……無事か ! ? |
| ジュディス | まだ揺れが収まらない…… !このままじゃ、崩れるわよ ! |
| シュヴァーン | 止めろ ! アレクセイ ! ! |
| アレクセイ | …………。 |
| シュヴァーン | 聞いてるのか、アレクセイ ! ! |
| リタ | どいて !あたしがなんとかする ! ! |
| リタ | ……これが、魔導砲 ?何か勘違いしてない…… ? |
| フレン | どういう意味だ ! ? |
| リタ | ヘルメス式魔導器の一種なのは間違いない。でも、これは兵器なんかじゃなくて……。 |
| フレン | アレクセイ、あなたならわかるはずだ ! |
| サレ | 彼にもわからないんじゃないかな ? |
| ユーリ | てめえは…… ! |
| アレクセイ | サレ ? なぜここにいる…… ? |
| シュヴァーン | アレクセイにもわからないってのはどういう意味だ ? |
| サレ | 質問攻めにされても困っちゃうなぁ。ふふふ……。実に面白い見世物だったよ。 |
| サレ | これはね、魔導砲なんかじゃない。カレイドスコープを転用したニーベルングの復活に必要なもの―― |
| サレ | のレプリカ。 |
| アレクセイ | バカな ! そんなはずは…… ! ! |
| サレ | じゃあ今の状況をどう説明するんだい ?出力を上げると、こうやってすぐ壊れるからねえ。大量に複製していたのさ。 |
| サレ | キミは無数にある粗悪品をかすめ取ったにすぎないんだよ。入念に綿密で壮大な計画を立てて、ね…… ! |
| アレクセイ | ……っ ! |
| サレ | アハハハッ ! イイねぇ !そういう顔も好きだよ、僕 ! |
| サレ | さあ、諦めて帝国に帰りなよ。また黒髪集めでもして楽しんだらいいじゃない。 |
| アレクセイ | 黒髪…… ? |
| シュヴァーン | まさか…… ! |
| サレ | あぁ、覚えてないか。心核を抜かれてたんだもんね。楽しかったなぁ~、善良で無垢で純真な人間を狩って。黒髪は解剖されちゃうんだけど、おこぼれもあってね。 |
| アレクセイ | ……私が ? |
| サレ | そう。キ・ミ・が。 |
| サレ | ククク、最後に同僚のイイ顔が見られて満足したよ。ここもそろそろ限界だね。それじゃ、ごきげんよう。 |
| ユーリ | あいつ、好き勝手言いやがって。けど、逃げないとまずいのはマジだぜ…… ! |
| リタ | ダメ ! エネルギーの漏洩が止まらない ! |
| フレン | いよいよ崩れ始めた…… !すぐに脱出を ! ! |
| ユーリ | みんな、急げっ ! ! |
| フレン | アレクセイ ! |
| アレクセイ | …………。 |
| ユーリ | フレン、よせ ! 間に合わない ! ! |
| フレン | くっ…… ! |
| シュヴァーン | …………っ ! |
| アレクセイ | 最も愚かな道化……いや、それ以下か……。 |
| ? ? ? | 今度は俺が―― |
| シュヴァーン | 俺があんたを助ける番だ。 |
| アレクセイ | シュヴァーン……。 |
| アレクセイ | やめろ……潰されるのがオチだ…… ! |
| シュヴァーン | おおおおおぉぉぉっ ! ! |
| シュヴァーン | はぁっ、はぁっ…… ! これで、貸し借りなしだ…… !さあ、脱出するぞ ! ! |
| シュヴァーン | あんたの兵……あんたを信じる仲間にも撤退命令を出せ ! ! |
| シュヴァーン | あんたがここにいる限り、彼らは動かない。どうあっても一緒の道を選ぶようだ。 |
| アレクセイ | 私と……同じ道を。 |
| アレクセイ | …………聞け ! !全員、命を最優先に全力で撤退しろ !必ず生き延びろ ! |
| アレクセイ派帝国兵たち | おおぉーーーーー ! |
| シュヴァーン | …………ふっ。 |
| Character | 10話【矮星10 別離】 |
| シュヴァーン | はぁ、はぁ、はぁ……っ ! |
| アレクセイ | なんとか生き延びた、か……。 |
| シュヴァーン | あんたとこんなに駆けたのは……あの戦争以来だな……。 |
| アレクセイ | つい昨日のようであり……遠い昔のようだ……。 |
| シュヴァーン | あれからずいぶん経っておまけに違う世界で生きることになっちまった。 |
| シュヴァーン | これからどうするんだ ? |
| アレクセイ | 私は……。 |
| アレクセイ | 私は部下たちを連れて、組織を立て直す。帝国を野放しにすることはできん。まずはこの領から狼煙をあげよう。 |
| シュヴァーン | もうザウデや魔導砲は勘弁してくれよ ? |
| アレクセイ | 黙れ。 |
| シュヴァーン | ……そうか。立ち直りが早いな。 |
| アレクセイ | まずはイエガーを取り戻す。 |
| シュヴァーン | …… !あいつもいるのか。 |
| アレクセイ | この領の従騎士となっている。心核を取り戻し、正気に戻す。 |
| シュヴァーン | 再び自分の手駒にするためか ? |
| アレクセイ | それ以外の何がある。 |
| シュヴァーン | いーや。ただ、それなら心核は必要なのかと思ってね。 |
| アレクセイ | ……黙れ。 |
| シュヴァーン | はいはい。最後にひとつ訊かせてくれ。 |
| シュヴァーン | 本当のところ、俺を前にした時迷いがあっただろう。 |
| シュヴァーン | 以前のあんたなら、俺を迷わず殺して『こいつ』を奪ったはずだ。 |
| アレクセイ | さてな……。もしもの話に意味などない。 |
| アレクセイ | ただ、ひとつはっきりしたことがある。 |
| アレクセイ | 私の中でシュヴァーンは死んだ。お前は好きにしろ『レイヴン』。 |
| シュヴァーン | あんた……。 |
| アレクセイ | ではな。再び会うともかぎらない。最後の挨拶をしておこう。 |
| シュヴァーン | もしもの話に意味はないんだろ。 |
| アレクセイ | そうだったな。さらばだ。 |
| シュヴァーン | あいつ、少し……。 |
| マーク | ……お疲れさん。こっちの部隊も引き上げさせた。幸い、どっちも大きな被害はなかったみたいだ。 |
| マーク | ウチのバーサーカーたちも暴れられてそれなりに満足したみたいだしまあ、手を貸してやった甲斐はあったかな。 |
| マーク | てなわけで、まあ厄介者引き受け係としてはお節介の焼きどころじゃないかと思うんだわ。 |
| シュヴァーン | ! |
| マーク | あいつの組織は俺たちが様子を見ておくよ。面倒な奴らの扱いは慣れてるからな。 |
| シュヴァーン | はは、そうか。あんたんとこも動いてくれてたんだな。感謝する。いろいろありがとうよ。 |
| マーク | そんな素直に礼を言われるとは意外だな。……いや、あんたも案外苦労人ってことか。じゃあ、他の連中にも伝えておいてくれ。 |
| カロル | レイヴン……こっちでは見つからなかったよ……。 |
| エステル | まさかアレクセイと一緒に崩落に巻き込まれたんじゃ……。 |
| リタ | バカ言わないで !ほら、まだあっち捜してないでしょ。 |
| リタ | バカ犬も ! あんたこういうの得意でしょ ! |
| ラピード | ワン ! |
| ジュディス | バウルを呼んで空から捜そうかしら。 |
| フレン | まだ諦めるのは早い。あの人が……。 |
| ユーリ | ああ、くたばるわけがねえ。あんな悪人面したやつはしぶといって相場が決まってんだ。 |
| レイヴン | どんな悪人面なんだろうなぁ。よっぽど非道い顔したやつなのね ? |
| 全員 | …… ! ! |
| カロル | レイヴン…… ! |
| レイヴン | なになに ? 感動の再会に心いっぱい胸がどきどき ? |
| ユーリ | おっさん、何しに来た ? |
| ジュディス | 私たちが捜してるのはシュヴァーンという素敵な男性よ。そんな野暮ったいお顔じゃないわね。 |
| レイヴン | 冷たいお言葉ね……。 |
| ユーリ | ケジメをつけて元鞘に戻るつもりだから、そう感じるんだろ ? |
| レイヴン | あちゃ、こりゃ一本取られたわね。でも、ギルドの掟って嫌いなのよね〜。 |
| カロル | レイヴンの命はボクたちギルド次第。ってことで、また一発ずつ殴らせてもらおうかな。 |
| リタ | いいこと言うわね。それじゃあ、早速…… ! |
| レイヴン | わーっ ! ちょっと、ちょーっと ! !その流れはもう勘弁してよ〜 ! |
| ユーリ | ったく。にしても、いつの間に着替えたんだよ。そんな暇あったらシュヴァーンのまま戻って来いっての。 |
| レイヴン | だからシュヴァーンって誰よ ?そいつ、死んだんじゃない ? |
| エステル | ふふふっ。 |
| ユーリ | ま、あんたらしいさ。よく帰って来たな。 |
| カロル | おかえり、レイヴン。 |
| リタ | 帰ってこなくてもよかったけどね。 |
| ジュディス | 今回『は』、素直におかえりと言ってあげようかしら。 |
| レイヴン | ちょっとちょっと。女性陣からの扱い、ひどくない ? |
| エステル | おかえりなさい、レイヴン。これからもよろしくお願いしますね。 |
| レイヴン | そうやって素直に喜んでくれるのって嬢ちゃんだけよ……。おっさん、感謝感激雨インヴェルノ ! |
| フレン | レイヴンさん、よくぞご無事で……。 |
| レイヴン | おう。若人たちの行く末きっちり見させてもらうわよ。 |
| ユーリ | さあ、長居は無用だ。ちゃっちゃと帰ろうぜ。 |
| カロル | うん ! 凛々の明星、撤収~~ ! ! |
| レイヴン | おたくは口が固そうだからな。ちょっと本音言っておくか。 |
| ラピード | ワン ! |
| レイヴン | ここは、俺の居場所だ。ただいま、みんな。 |