Character1話【リゾート1 観光都市アルタミラ】
カーリャアルタミラにとうちゃ~く !んー、やっぱりここは賑やかな場所ですね !
マルタうんっ ! たくさん人がいるよね。こっちの世界のアルタミラにもカジノがあるんだっけ ? そのおかげなのかな。
イクスそれもあるんだろうけど、今は更に観光都市として開発を続けてるらしいよ。
イクス最近、ビーチリゾートとテーマパークが新しく開園したって、フィルさんから連絡があったんだ。
リフィル救世軍が資金を稼ぐため、と言っていたわね。今は帝国の支配下にある土地で、こんな大胆なことをするなんて。色々誤魔化して国に申請しているのね。
マークはは、蛇の道は蛇って言うだろ。
ミリーナマーク ! 迎えに来てくれたのね。
マークああ。フィルに頼まれたんでね。こっちが招待した以上、きちんとおもてなしをしなけりゃいけないからってさ。
ジーニアスえへへ、わざわざありがとう !
イクスそれで、フィルさんはどうしたんだ ?招待券を送ってくれたお礼を言いたかったんだけど。
ロイドゼロスとクラトスも来てないのか ?
マークあー、それが三人とも、今日に限って面倒な仕事ができちまってな。まあ、惰眠をむさぼっていた俺にお鉢が回ってきたって訳だ。
ミリーナそうだったの。フィルたちにも会えると思っていたのに残念だわ……。
コレットうん。ゼロスやクラトスさんも一緒に遊びたかっただろうから残念だね……。
カーリャゼロスさまはともかく、クラトスさまはあんまりはしゃいでる姿とか想像できませんけどね……。
しいなむしろゼロスはいなくて正解だよ。特にあいつがビーチリゾートに行くとろくなことにならないからね。
マルタあー、大騒ぎしそう……。
テネブラエ無用なトラブルを避ける意味でもいらっしゃらないのは正解かもしれませんね。
エミルあはは……。ゼロスには可哀想だけどね。
カーリャ・Nマーク、リーガル様とプレセア様はどちらですか ?こちらにいらっしゃると聞いていますけど。
マークああ、二人ともテーマパークの方だぜ、パイセン。二人にはアルタミラの観光都市計画の中でも主にテーマパーク関連を担当してもらってるんだ。
リフィルリーガルは元々レザレノグループの会長ですもの。こういう仕事はお手の物でしょうね。
マークああ。こっちとしても大助かりだ。餅は餅屋……っつーか、まあ、そもそもうちは宗教には強いんだが、エンタメが得意な奴がいなくてな。
テネブラエエルレインさんやシンクさんやクラトスさん辺りはそもそも元の世界のこともありますしその辺り、お得意でしょうからねえ。
マークバランスが悪いんだよなあ。ま、そいつはともかくリーガルたちなら、今もテーマパークにいる筈だから向こうへ行けば会えると思うぜ。
ロイド本当か ! ?よし、だったら早速テーマパークに行くか !
コレットそだね ! たくさん乗り物があるだろうしみんなと一緒ならきっと楽しいよね !
ジーニアスここのテーマパークって、アルタミラにあった遊園地みたいなものだよね ?一日で回りきれるかなぁ !
ロイドわかんねーけど、とにかく乗れるだけ乗ってみようぜ !
マルタ……う……乗り物かぁ……。
カーリャ・Nマルタ様、どうかなさいましたか ?
マルタあ、ううん。何でもない。
エミル……あ、あのさ。今日ってビーチの方も行けるの ?
マークああ、もちろん行けるぜ。併設してるから、どっちでも好きな方を選んでくれ。
エミル一日で両方回るのは大変そうな気もするから僕は、ビーチリゾートの方を見に行こうかなって思うんだけど……マルタも、どうかな ?
マルタ! う、うん !私も、ビーチリゾートの方に行きたい。
テネブラエマルタ様は乗り物は苦手ですからね。
マルタちょっと ! せっかくエミルが気を遣ってくれたのにテネブラエってば、すぐそういう余計なこと言うんだから !
しいなあはは、なるほどそういうことかい。けど、ビーチの方も楽しそうだしそれぞれ興味のあるところへ行くでいいじゃないか。
コレットそうだね ! 帰ってきたらビーチがどんな感じだったか教えて。楽しそうだったら明日帰る前にちょっと遊びに行きたいな。
マルタうん ! どんな感じの場所か、しっかり見てくるね !
ロイドじゃあ、エミルとマルタとテネブラエはビーチか。イクスたちはどうする ?
イクスそうだな……。テーマパークも楽しそうだけどそっちは人数が多そうだし……。
イクス俺はエミルたちと一緒にビーチリゾートの方へ行くことにしようかな。
ミリーナそうね。一緒に行ってもいいかしら ?
マルタもちろん !ミリーナたちも来てくれるならますます楽しくなるし !
カーリャカーリャももちろんいきますよ !ネヴァン先輩も行きますよね ?
カーリャ・N……いえ、私は、ロイドさんたちとテーマパークの方にご一緒しても構わないでしょうか ?
カーリャええっ ! ?
ロイド俺たちはもちろん構わないけど……。
カーリャ・N今日のビーチは日差しも強そうですし私はあまり暑いのが得意ではありませんので。
ミリーナ………………。
イクスそうか。熱中症には気をつけないといけないな。ビーチに行く前に水分をちゃんと調達して塩分も取りつつ、日陰でこまめに休息して……。
テネブラエ日陰 ! 闇の出番ですね。お任せ下さい。闇が皆さんを守りますよ。
リフィルネヴァンがそうしたいのなら、一緒にいらっしゃい。
リフィルミリーナ、大丈夫よ。あなたもビーチで楽しんでいらっしゃい。
ミリーナそうですね……。今回は羽を伸ばすのが目的だし、それぞれが一番楽しめると思う場所に行くのが一番ですよね。
ミリーナ楽しんできてね、ネヴァン。
カーリャ・Nはい、ありがとうございます、小さいミリーナ様。
カーリャ・N…………。
コレット…………。
ジーニアスミトスも一緒に来ればよかったのにな。ラタトスクもいるんだし。
ラタトスク……ほっとけ。あいつなりに色々思うところもあるんだろうよ。
ジーニアス……そりゃ、そうなんだろうけどさ。仕方ない、せめてお土産は買っていこっと。
イクスよし、それじゃあ、それぞれアルタミラ観光を思いきり楽しもう !
全員おー !

Character2話【リゾート2 ビーチでの出会い】
マルタうわぁ~ !綺麗な海~ !
テネブラエ闇属性の私としては、この眩しい砂浜は少々明るすぎるように感じます。砂まで光を反射していますからね。
エミルテネブラエって、とことん闇属性だよね……。
マルタあーあ、こんなに素敵なビーチがあるって知ってたら水着を持って来たのになぁ……。
ミリーナあら、だったら私が水着を具現化して――いいえ、せっかくだからお店でエミルやラタトスクに選んでもらったらどうかしら ?
エミルえ、えええっ ! ?
マルタナイスアイデアだよ、ミリーナ !エミル、お互い選びっこしよ ?
エミルでも……僕、どんな水着を選んであげたらいいのかわからないよ……。
ラタトスク俺は水着なんぞいらんし、選ぶ気もないぞ。大体マルタは買い物が長くて付き合いきれねえ。
マルタえー ! 酷いよ、ラタトスク !
ラタトスクう……。……エ、エミルが代わりに全部付き合う筈だ。それでいいだろう !
エミルあ、ラタトスク、ズルいよ ! ?
マルタ――あ、待って待ってエミル !ほら、あそこを歩いてる人が着てる水着 !ああいうの、エミルに似合いそうじゃない ?
ミリーナ本当だわ ! 着ている人も背格好がエミルに似てるから、すごくイメージしやすいわね。
イクス……ん ? あれ ? エミルに似てるっていうかあの人って……。
アステル……あれ、イクスたちだ ! ?
エミルリヒターさんに……アステルさん……。
イクスどうして二人がこんなところに…… ?
リヒターこの辺りに精霊の気配があるという情報を掴んで調査をしにきただけだ。
アステルもし精霊の力が活性化しているんだとしたら災害に繋がっちゃう可能性もあるからね。
カーリャ災害…… ! ?それは穏やかじゃないですけど……なんで、水着なんですか ?
イクスそうか ! 海の中の調査をしていたんですね !
リヒターいや、周辺の土地を調査していただけだ。
マルタえ ? じゃあ何でそんな格好してるの ?
アステルそれはもちろん、ビーチに来たからだよ !せっかく海に来たんだからちょっとぐらい遊んでいきたいじゃない。
リヒター……俺は、この馬鹿に付き合わされているだけだ。
テネブラエなんとも呑気な理由ですね。
イクスあ、けど、大丈夫だったんですか ?災害に繋がる異変が起きているんだとしたら……。
アステルああ、それは大丈夫だったんだ。ウンディーネとシルフの力が活性化している気配はあったけど、天災が起こるほどじゃなかった。
テネブラエええ、そうでしょうね。そこまでの威力は感じられません。ラタトスク様もそうお感じになるのでは ?
ラタトスク……あ、ああ、まあな。この程度なら問題はない。
アステルラタトスクのお墨付きなら間違いないね !
二人………………。
エミル――あ、ラタトスクが引っ込んじゃった。
二人………………。
アステルえ ! ? せっかく話ができそうだったのに。ラタトスクってばシャイだなあ。
エミル………………。
アステルところで、さっきの精霊の力の件だけどこのビーチにとっては有益になってるみたいなんだよ。ほら、あっちを見て。
マルタあ、ウインドサーフィン !
アステルうん。波や風がほどよく起こるおかげで観光資源として活用できてるみたいなんだ。
イクスすごいなぁ、あんなにアクロバティックな波乗りができるなんて…… !
エミルう、うん……いくら波や風がいいからってそれだけじゃあんな動きは無理だよね。
カーリャあの人すごいですよ !ビーチにいる人がみんな注目してます !
ミリーナ本当だわ…… !もしかしてプロのサーファーなのかしら ?
リヒター――いや、あれは、まさか……。
マルタ……ああああっ ! あれって、デクス ! ?
アリスその通りよ、マルタちゃん。
マルタあんた、アリス ! ?なんであんたたちがこんなところに…… ! ?
アリス仕方ないじゃない。マーくんに働かざる者食うべからずって言われてるんだもの。
エミル遊んでるようにしか見えないけど……。
アリスそれでいいのよ、ペットちゃん。デクスはあれで運動神経だけはいいから観光客の目を集めさせてるところなの。
女の子きゃー ! デクスさんが上がってきたわよ !
デクスアリスちゃーん ! どうだった ?オレの華麗なテクニックは ! ?これも全てアリスちゃんのために――
デクス……って、お ? 何だ何だ、大勢集まって。さてはみんな、このデクス様のテクニックに見とれてたんだな ?
デクス駄目だ駄目だ、オレの全てはアリスちゃんのもの。頭の先から爪の先、吐き出す息も全てが、アリスちゃんのために捧げられた物なんだ。アリスちゃーん !
リヒターおい、アリス。何が目的だ。
アリス何よ、人が何か良からぬことを企んでるみたいに。明日、ここで『ウインドサーフィンレース』を開催するから、その準備のために盛り上げてるだけよ。
アステルへえ ! 面白そうじゃない !リヒター、見ていこうよ !
アリスあら、あなたマルタちゃんのペットちゃんに殺されたのに、よく平気な顔で一緒にいられるわね ?
二人! !
リヒターアリス ! 貴様――
アステル………………。
アステル……あー、そういうことか。元の世界で死んだってことはわかってたけど、謎が解けたよ。なるほどね。だからエミルもラタトスクも、困った感じだったのか。
エミルあの……すみま……せん……。
ラタトスクおい、エミル ! 謝ってどうする !
エミルだけど――
アステルいいよいいよ。少なくとも、今ここにいる僕は誰にも殺されていないからね。
アステルこれから殺されるとかだったら、目一杯抵抗するけど流石にそれはないでしょ ?
リヒターアステル !
アステルリヒター、ちょっと黙ってて。
アステルエミル、それにラタトスクも聞いて。少なくとも僕は体験してないことで謝られても困るよ。元の世界の未来の話は、今の僕には関係ないからね。
アステルあと、僕、割と聖人だし、心が広いから !
カーリャあわわわわ……ほ、本気でしたら本当に聖人なんですけど……。
アリスですって。よかったわね、マルペちゃん♪
エミル…………え ? マル……ペ ?
アリスだって、ペットちゃんが二人いるからわかりにくいんだもの。
アリスこっちがミリーナのペットちゃん。
アリスこっちがマルタちゃんのペットちゃん。だから、ミリペちゃんとマルペちゃん。
イクスへ、変な呼び方しないでくれ !
ミリーナミリペ……新しい概念だわ……。
カーリャ何言ってるんです、ミリーナさま ! ?
マルタアリス、あんたって本当に変わらないよね。人のことペット扱いするなんて失礼じゃない !
アリスそうよねぇ。マルタちゃんなんか、鏡士一派のペットにすらなれない役立たずのお荷物なのにペットに失礼よね ?
エミルアリス、今の言葉取り消して !
アリスイ・ヤ・よ♪ だって、本当のことだし。
エミルそんなことない。マルタはいつだって僕やラタトスクを助けてくれてる。マルタは役立たずなんかじゃない。マルタに謝ってよ。
アリス……ふーん。相変わらず忠誠心の高いペットちゃんね。
アリスそうだ、マルタちゃん。お互い、ペットと下僕を勝負させましょうよ。
マルタはあ ! ?
アリス明日のウインドサーフィンレースでペットちゃんとデクスに勝負させるの。
アリスもしもペットちゃんがデクスに勝ったらペットのしつけが行き届いてるってことで役立たずを撤回して謝ってあげてもいいわ。
マルタちょっと ! あんたのところのデクスと違ってエミルはペットなんかじゃない !私の大事な……大事な存在なの !
マルタそんなくだらないことさせられないよ !
エミルいいよ、マルタ。
エミルその勝負――受けてやる !
デクス面白い ! アリスちゃんの愛を一身に背負ったこのオレに、死角はない !少年、胸を借りるつもりで挑んでこい !
ラタトスク人間風情が偉そうに ! この勝負俺とエミルが勝つ !
マルタ二人とも……。
全員……………………。

Character3話【リゾート3 複雑な胸中】
ロイドはー、楽しかったな、ティーカップ !
ジーニアスちょっと回転させすぎちゃってふらふらするけど。
コレットぐるぐるだよ~……。
カーリャ・N大丈夫ですか、コレット様 ?
コレットうん。だいじょぶだいじょぶ。
リフィルしいな……。あなたもムキになってロイドに対抗して。ロイドたちと私たちのカップだけ悪目立ちしていたわよ。
しいなあはははは、もしかして酔っちまったかい ?まあ、あたしの本気はこんなもんじゃないけどね。
ロイドお、言ったな、しいな !
マークはは、こんなに無邪気に楽しんでもらえるとは思わなかったぜ。さて、そろそろリーガルとプレセアも来ると思うんだが……。
リーガル――皆、遅くなってすまなかった。
プレセアお待たせしました。
マーク噂をすれば、なんとやらだな。
リーガルどうだろう。異世界のアルタミラを楽しんでもらえているだろうか ?
ジーニアスうん、すっごくね !
ロイド今、ティーカップに乗ってきたところなんだ !
リフィルこちらの世界でも、コーヒーカップではなくティーカップなのね。
リーガルああ。やはり――
二人紅茶のほうが好きだから !
リーガルフッ。その通りだ。
しいなそのこだわりは、やっぱり活かすんだね。
リーガル救世軍がデザインまで私に一任してくれたからな。まだ長時間動けない私が役に立てるのはこういうことぐらいだ。納得いく仕事をしたい。
プレセアリーガルさんのこだわりは……ティーカップだけでなく様々な場所で発揮されています。
プレセアあちらのコースターもそうですし向こうにある観覧車も……です。
コレット観覧車……。
ロイドうおお、すごいなあのコースター !めちゃくちゃ速いぞ !
ジーニアスあっちのシューティングゲームみたいのも楽しそうだよ !
しいな色んな乗り物があって目移りしちまうね。
リフィルせっかく羽を伸ばしに来たのだし興味のあるものはすべて乗ってみたら ?
ロイドああ、そうだな !
ジーニアスだね ! ねえねえ、どこから回る ?右から行くか、左から行くか !
リーガル乗ったら是非感想も聞かせて欲しい。今後の改善に向けての参考にさせてもらうつもりだ。
マークパイセン。そんな離れたところで何してんだよ ?
カーリャ・N……マーク。いえ……何でもありません。
マーク――意地っ張り。
カーリャ・Nな、何ですか ! マークのくせに !
マークハハ、そうそう、その意気その意気。俺は……クールなフリしてるパイセンより昔みたいに暴れてる方がいいと思うぜ。
カーリャ・N相変わらずマークは先輩に対して敬意が足りませんね。
マーク言っとくけど、具現化された日数で言えば大して変わらないんだからな ?
カーリャ・N……私は、もう鏡精ではありませんけれどね。
マーク……けど、俺にとってパイセンはパイセンだ。もう、一人でどこかに行かないでくれよ。パイセンは無鉄砲だから、心配になっちまう。
カーリャ・N無鉄砲はお互い様です。マークだって、フィル様のためならどんな無茶でもするじゃないですか。
マークまあ、お互い、困ったご主人持ちだからなあ……。
コレットねえ、ネヴァン。今からみんな、ローラーコースターのほうに行くんだって。
カーリャ・Nコレット様……。そうですか。では、私は――
コレットでもね、私は観覧車に行きたいなって思って。よかったら、ネヴァンも一緒に行こうよ。
コレットあ、マークも――
マークいいや、俺はロイドたちの方をアテンドするわ。パイセン、コレットと二人で行ってこいよ。
コレット観覧車、すっごく景色が綺麗なんだって !だから、ネヴァンと一緒に見たいなって。あ、でも、嫌だったら無理しないでね。
カーリャ・N……私と……ですか ? わかりました。私でよろしければ……。
マークじゃあ、コレット。パイセンを頼むわ。二人が別行動することは俺から伝えておく。気を付けてな。
コレットうん、ありがとう、マーク !
マーク(流石、神子様ってところか。ゼロスから聞いてた通りだな。パイセンのこと、頼むぜ……)
コレットうわぁ……見てみて、ネヴァン !どんどん高く上がっていくよ~。
カーリャ・Nええ。綺麗ですね……。
コレットあ、ビーチリゾートってあそこかな ?ヨットみたいなのがたくさん浮いてる !
カーリャ・Nあれは、ウインドサーフィンだと思います。先ほど見た案内の中に記述がありましたから。
コレットへぇ、そうなんだ !帆の部分が色とりどりで綺麗だね~。イクスやミリーナもあの中にいるかな ?
カーリャ・N……どうでしょうか。この高さでは、判別は難しいかと……。
コレットそっか……。ちょっと残念だね。
コレット私、いつも自分の羽で飛んでるでしょ ?でも自分で飛ぶのと、乗り物から見る景色ってやっぱり違うように感じる。
カーリャ・Nああ……そうかもしれませんね。私も、昔は空を飛べましたから。
コレットあ、そうだよね。なんだか嬉しいな。空を飛んだことのあるお友達が増えて。
カーリャ・Nそ、そんな……。私なんかが友達だなんて……。
コレット友達だよ。お友達で大事な仲間。だから……やっぱり心配なんだ。
カーリャ・N
コレットあのね、ネヴァン。もし言いたくなかったら、言わなくてもいいんだけど……。
コレットどうしてミリーナたちのところに行かなかったの ?
カーリャ・Nそれは……。
コレットなんとなく、なんだけどね。ネヴァンは本当はミリーナたちと一緒にいたいけど我慢して離れたんじゃないかなって思ったの。
カーリャ・N…………。
コレット……ごめんね、変なこと言って。
カーリャ・Nいえ……少し、驚いただけなんです。気づかれるとは思わなかったので。
コレットあの……どうして ? 何か訳があるんだよね ?
カーリャ・N……我慢しているという訳ではないんです。ただ……怖くなってしまって……。
コレット怖い ?
カーリャ・Nイクス様や小さいミリーナ様と一緒にいるのは楽しくてお二人が仲良くなさっている様子を見ているのも微笑ましく思います。
カーリャ・Nですが……もしかしたら私は、無意識のうちにオリジナルのイクス様やミリーナ様のことを今のお二人に重ねてしまっているのではないか、と。
カーリャ・N自分の知っている過去の記憶に囚われて今のお二人に押しつけてしまうことになってしまうかもしれないのが、怖いんです。
カーリャ・Nその不安を、お二人の前で隠せる気もしなくて……。
コレットそっか……だから二人から離れようって思ったんだね。
カーリャ・Nはい……。今日はお二人にゆっくり楽しんでいただきたかったですから。
コレットネヴァンは優しいんだね。
カーリャ・Nそうでしょうか……。お二人が、最初のお二人に囚われず、前に進もうとしていらっしゃるのに私は……。
コレット……ネヴァンがそんな風に思うのは、ネヴァン自身が今のミリーナたちとネヴァンの知ってるミリーナたちが別の存在だって、わかってるからじゃないかな ?
カーリャ・Nえ…… ?
コレット二人が別の存在だってわかってるから押しつけないように、重ねてしまわないようにって苦しんでる。
コレット苦しむぐらいなんだから、心配しなくてもネヴァンは二人が違うミリーナとイクスなんだってちゃんとわかってるんだと思うよ。
コレットわかってて、違う二人のことが好きなんだよ。きっと。
カーリャ・N
コレットネヴァンが今のミリーナたちのことを大事に思っても最初のミリーナたちのことを忘れちゃう訳じゃないよ。好きって気持ちが増えただけじゃないかな。
コレットだから、そんな風に自分の気持ちを我慢して押し込めなくていいと思う。
カーリャ・Nコレット様……。
コレット私もね、昔は色々我慢してたの……。だから、ネヴァンの気持ち、少しはわかる気がする。自分が我慢すれば、みんなが幸せになれるって……。
コレットでもね、そうじゃなかったんだ。仲間のみんながそうじゃないって教えてくれたの。
コレットネヴァンも、思いきって正直になってみて。きっと、だいじょぶだから。本当は、どうしたいの ?
カーリャ・N……思い出を、作りたいです。今のイクス様や、小さいミリーナ様と。カーリャ……私は、今のお二人も大好きなんです。
コレットうん…… ! 作ろうよ、思い出 !ミリーナたちもきっとネヴァンと一緒に遊びたい筈だよ !
カーリャ・N……はい。明日は、小さいミリーナ様たちと一緒にリゾートを回りたいと思います。
コレットうん、それがいいよ !でもせっかくだから、今は私との思い出を作らせてね !
カーリャ・Nもちろんです…… !

Character4話【リゾート4 練習開始!】
マルタうわぁ、エミル !その水着似合ってる、カッコイイ…… !
エミルそ、そうかな ?
マルタうんっ ! エミルは何でも着こなしちゃうからきっとどんな水着でも似合うと思ったけど今回は一番似合う色を選べたかも !
エミルちょっと恥ずかしいけど……その、選んでくれて、ありがとう。
エミルマルタはよかったの ?
マルタあ……うん ! 私の水着のことより今はエミルの特訓に集中しなきゃ。私のせいで……ごめんね。
エミルマルタのせいじゃないよ !
マルタう、うん……。
テネブラエ……お二人とも。ミリーナさんたちが戻ってこられましたよ。
ミリーナウインドサーフィンの道具を借りてきたわよ !
イクス俺たちも協力するよ。一緒に頑張ろう !
エミルありがとう…… !一応、簡単なやり方は教わったけど意外と難しそうで、心配だったんだ……。
カーリャ言葉で聞くのと実際にやってみるのとじゃ全然違いますもんねぇ……。
ミリーナイクス、サーフィンはやったことあるわよね ?ウインドサーフィンにも応用出来ないかしら ?
イクスうーん、名前は似てるんだけど、サーフィンとウインドサーフィンだと結構コツが違うんだ。
イクス特に風を読まないといけないウインドサーフィンはちょっと難しくて……バランスの取り方は共通してると思うけど、全部は教えられないかもな。
エミルそうなんだ……。
カーリャできる範囲はイクスさまに教えてもらってあとは独学って感じなんですかねぇ ?
ラタトスクちっ、この世界にも風のセンチュリオンがいれば簡単な話だったんだけどな。いや……シルフの力の気配を探れば何とかなるか ?
マルタえ ! ? ラタトスク、本当 ! ?
ラタトスクやってみなけりゃわからねえな。そもそも俺もエミルもこんなスポーツは初めてだ。思った通りに体が反応できるかもわからねえ。
エミル………………。
アステルそれなら、リヒターが教えてあげれば ?
カーリャひゃっ ! び、びっくりした……。アステルさまとリヒターさまじゃないですか !
テネブラエおや、まだいらっしゃったんですね。
リヒター俺は帰るつもりだったんだがな……。
アステルまたそんなこと言って。リヒター、エミルのこと心配してたじゃない。
リヒター別に心配など――
エミル………………。
リヒター……いや、アリスたちが迷惑を掛けてすまない。
エミルあ、いや、そんな !リヒターさんが悪いわけじゃないですよ !
アステル大会にも興味あるし、どうせ観戦するならエミルとラタトスクを応援したいしね。
ラタトスク………………おう。
アステルそれに、リヒターはウインドサーフィン経験者だよ。
イクスえ ! ? そうなんですか ! ?
リヒターそんな大した物じゃない。調査の合間に無理矢理アステルにやらされただけだ。
アステルけど、めちゃくちゃ上手かったよ !リヒターって無駄に運動神経いいよね……。羨ましい……。
エミル無駄って……。でも、流石リヒターさん !
カーリャちなみにアステルさまはどうなんですか ?
アステル僕は全然 ! 運動は全部苦手だからね !
テネブラエ朗らかにおっしゃいますね……。
マルタ――リヒター、お願い。エミルにウインドサーフィンを教えて。
リヒターそれは………………。
マルタお願い ! 私のせいでエミルは大会に出なきゃならなくなって……。悔しいけど、アリスの言う通り今の私は役立たずになっちゃってる。
エミルマルタ……。
マルタリヒターの気持ちも知ってるし遺恨があることもわかってるけど……。
マルタ今の私にできることはリヒターに頭を下げることぐらいだから……。――お願いします !
エミルあ、あの ! リヒターさん、僕からもお願いします !僕たちがしたことを思うと図々しいレベルを超えているのは承知してます。
エミルでも、どうしても、デクスに勝ちたいんです !アリスの言葉、取り消してもらわないと。
アステルリヒター ?
リヒター――……わかった。
マルタリヒター…… ! ありがとう !
エミルよ、よろしくお願いします !
ミリーナよかったわね、エミル、マルタ !
アステルエミル、頑張ってね !
テネブラエ………………。
リヒターエミル、そこで思いきって身体を倒せ !帆が風を受けるからバランスがとれる !
エミルはい…… !
イクス膝を柔らかく使って !その方が安定するはずだから !
エミルはい ! こ、こうかな…… !
リヒター上手いぞ。そのまま波に逆らわず、ボードと一体化したつもりで滑るように進め !
エミルよし、慣れてきたぞ…… !波と風に乗って、どこまでも…… !
イクスすごい ! こんなに早く上達するなんてエミルはセンスがあるんだな !
リヒターああ……正直、驚いた。ここまでとはな。
イクスあ、戻って来た !
エミルリヒターさん ! 上手く出来てましたか ! ?
リヒターそれは、お前が一番良くわかっているだろう ?風を捕らえた感覚を掴んだんじゃないのか ?
エミルはい…… !波と風が身体の一部になったみたいな感じがしてスーッと滑りました !
リヒターああ、それでいい。あとはその感覚を身体に覚え込ませれば自在に操れるようになるはずだ。
イクスエミル、センスがあるよ。こんな短時間で真っ直ぐに進めるようになるなんて。
エミルそ、そうかな…… ?
リヒターだが、まだ覚えなければならないテクニックはたくさんある。それを身に付けなければレースに勝つことはできないぞ。
リヒターもっとも、連続でやっても疲れて効率が落ちるだけだ。一度休憩を挟もう。
エミルで、でも、時間がないし……。
リヒター急いては事をし損じる、と言うだろう。適度に休憩することは重要だ。
イクスそうだな。ミリーナたちがお茶を用意して待ってるって言ってたから、少し身体を休めよう。
エミルそう……ですね。わかりました。
マルタあ、エミルたちが帰ってきた !おかえりなさい、すごかったよエミル !
マルタあんなにカッコ良く乗りこなしちゃうなんてやっぱりすごいね、エミルは。
エミルリヒターさんとイクスの教え方が上手いからだよ。僕だけだったらこんな風には……。
マルタそんなことないよ。アドバイスがあっても、それが上手くできるかはエミルの頑張り次第だもん。
ミリーナそうよ、エミル。自信を持って !はい、お茶を入れたからゆっくり休んでね。
カーリャお菓子もありますよ~ !腹ごしらえして、体力回復してください !
エミルうん。みんな、ありがとう !
アステルあ、リヒター、お疲れ様。無理してない ? 大丈夫 ?
リヒターたまには水中で身体を動かすのも悪くない。……俺も何か食べるか。
アステルやきそば美味しいよ !
リヒターお前、昨日も焼きそばだっただろう……。よく飽きないな。
アステル美味しいものなら三食同じでも飽きないよ。あー、海の家って最高 ! ジャンクフード最高 !フィールドワークって楽しいよね。
リヒター……フッ。
アステル――あ、そうだ。
アステル明日のレースに向けて、過去にデクスが参加したレースレコードを調べてたんだけど、見てくれる ?
リヒター……これは……相当速いな。
アステル……うん、正直、厳しい戦いだね。デクスは僕たちが思っている以上に上手いよ。ファンがついているのもわかる。
リヒターそうか……。
アステルこのこと、エミルには――
リヒター言っても自信を失うだけだろう。負けると思ってしまった瞬間、身体は硬くなる。
リヒター無事にレースを終えるためにも何も知らないほうがいい。
アステルそうだね。それに勝負は下駄を履くまでわからないよ。エミル……頑張って。

Character5話【リゾート5 対決は明日】
マークお、帰ってきた。
カーリャ・Nお帰りなさい、皆さん。
イクスマーク ! それに、ネヴァンも。もしかして、待っててくれたのか ?
マークああ、いつまで経っても帰って来ないから何かあったのかと思ってな。ずいぶん遅かったじゃねぇか。
イクスあー、うん。それが――
マークなるほど、そういうことかよ。ったく、エンタメ関係なら、揉め事起こさずにやれるかと思ったんだが、甘すぎたな。悪い。
カーリャホントですよ。アリスさまは口が悪すぎます !まあ、デクスさまがイベントを盛り上げてたのは確かなんですけど。
ミリーナウインドサーフィンの腕は間違いなかったものね。でも、エミルだってとっても上手だったのよ !
マルタうんっ ! 私も見せてもらったんだけどね初めてだったのにすごく上手に乗りこなしてたの !さすがはエミルだよね !
テネブラエエミル様も見守るマルタ様も楽しそうでまさにウインドサーフィンでウィンウィンですね。
カーリャ・Nなるほど……。ウインドとウィンを掛けているんですね。
マークパイセンも、どうでもいいことに真顔で突っ込むなって……。
エミルリヒターさんも協力してくれたから……それなりに上達したと思うんだ。まだまだではあるんだけど……。
マルタそんなことないよ !エミルだったら絶対にデクスに勝てると思う !あんなに上手なんだもん。
リヒター…………。
マークまあ、あまり連中が悪ノリするようなら言ってくれ。こっちで引き取る。
マルタそういえば、ロイドたちは ?
マークもうチェックインしてそれぞれ部屋に行ってるよ。エミルたちの部屋の鍵ももう受け取ってあるぜ。ほら。
エミルありがとう、マーク。
マークで、リヒターとアステルは――
リヒターこれから手配するつもりだ。本来は今日帰る予定だったからな。
マークおっと、そうか。だったら俺が引き受けるよ。うちのもんが迷惑かけたせめてもの詫びだ。ちょっと待っててくれ。
リヒター助かる。
アステルあー、よかった ! もうくたくただったんだよ。早くシャワー浴びて寝たいなー。
リヒター……お前は焼きそばを食ってただけだろう。
マルタよーし、それじゃあ今日はゆっくり休んで明日のレースに備えて――
アリス――負けた後に「アリス様の仰る通りでした」って額に砂をこすりつける練習をしとかなきゃね。マルタちゃん。
マルタアリス !
アリスふふっ、ペットちゃん、今日一日ずいぶん頑張って練習してたみたいじゃない ?
マルタそ、そうよ !エミル、すっごく上手になったんだから。いくら相手がデクスだからって――
アリスあら、ちゃんと教えてあげてないの ?リヒターってば、ちょっと冷たいんじゃない ♪
マルタは ? 何の話よ ?
アリスペットちゃんの実力じゃ、デクスには勝てないって話に決まってるでしょ ?
マルタそっ、そんなのやってみないとわからないじゃない !
カーリャそうですよ ! ?エミルさま、すっごく上手だったんですから !
アリス確かに、初心者にしては頑張ってたってアリスちゃんの下僕たちからは聞いてるわよ。そこは褒めてあげる。
アリスでも、あんなんじゃ勝つなんてム・リ。リヒターはそのこと、知ってるでしょ ?
アリスデクスのレースレコードをアステルに探らせてぜーんぶチェックしてるんだから。
エミルえっ ?
アステルあ、バレてた……。まあ、リヒターに言われたんじゃなくて僕が趣味でやったんだけどね。
エミル……リヒターさん。デクスはそんなに速いんですか ?
リヒター……そうだな。
カーリャで、でもっ !だからってやっぱりやってみないとわからないこともあるじゃないですか !
アリスどうかしらね~ ?そんな希望が持てる実力差ならいいんだけど。
デクス悪いな、少年 ! 俺に憧れて練習に明け暮れたその努力は評価しよう。だがオレにはアリスちゃんへの溢れる愛が――
アリスうるさいわよ、2Kデクス。それじゃ、せいぜい頑張ってね~。
デクスあ、待ってよ、アリスちゃん~ !
エミルそっか……デクス、確かに上手かったもんね……。
カーリャ・N私には、エミル様とデクス様の実力差はわかりませんがカーリャも言っていた通り、勝負はやってみなければわかりませんよ。
ミリーナそうよ、エミル。始まる前から負けた気になっていたら勝てるものも勝てないわ。
イクスうん。それにウインドサーフィンの敵は競争相手だけじゃない。自然そのものだ。それはデクスも同じだろ。冷静に行こう。
エミル……そうだね。ありがとう。
エミル…………。
マルタエミル……。

Character6話【リゾート6 信頼】
エミルえっと……確か、道具はこっちにしまってあるはず……。
リヒター何をしている、エミル。
エミルうわぁ !りっ、リヒターさん ! ?
リヒター……今から練習をするつもりだな ?
エミルえ、っと。そうです……。
リヒターやはり、そうか。だが夜の海は危険だ。それはお前も理解しているだろう。
エミルそ、それは……。
リヒター夜中にウインドサーフィンをやるなど非常識だ。命を落とすぞ。
リヒターもしここで事故を起こせば救世軍にも迷惑を掛ける。
エミル……確かにその通りです。それでも、今のままだと僕はデクスに勝てません。
エミルだから、少しでも可能性を上げるために練習をしたいんです。
リヒター馬鹿が ! 無謀は勇気じゃない !
ラタトスクフン。精霊を人間風情と一緒にするなよ。海で溺れて死ぬとでも思うか ?
ラタトスクそれともエミルをただの人間だとでも思っていないと腹が立って面倒なんて見られねぇってか ?
リヒターラタトスクか。
ラタトスクてめえはエミルの保護者気取りか ?大方、こうなることを予測して、エミルがホテルを抜け出さないように見張ってたんだろう。
ラタトスクエミルに無茶させたくねえならさっさとこのままじゃ勝てねぇって教えてやればよかっただろうが。
ラタトスク手遅れの状態になってから言うからギリギリまで粘るなんて言い出すんだ。こいつの諦めの悪さは知ってるだろう。
エミルラタトスク、やめてよ。リヒターさんはきっと、僕がショックを受けないように黙っててくれたんだ。
ラタトスクショックを受けないように、な。バカバカしい。
ラタトスクリヒター、お前はエミルを信じてなかっただけだ。昔と同じように、ちょっと萎えることがあればやる気をなくすと思い込んでたんだ。違うか ?
リヒター…………。
エミルリヒターさん……。
ラタトスク確かに昔のこいつは臆病だった。自分に自信がねぇって、ウジウジウジウジしてキツいことは全部俺に押しつけてる時期もあった。
ラタトスクけど今回は違う。一度も俺の力を使おうとしなかった。それだけ真剣にやろうとしてるってことだろ。お前はそれをバカにしてんじゃねぇか !
エミルや、やめてよ、ラタトスク !
リヒターそうか……。だから貴様は、昼間の練習の間一度も顔を出さなかったのか。
エミルえ ? あ……ラタトスクのこと、ですか ?
リヒターああ。こいつだってアリスに腹を立てていた筈だ。だが練習の時は一切顔を出さなかった。
リヒター何を考えているのかと思ったが貴様はエミルを信じて託すつもりだったのか。
ラタトスクはっ。何を言い出すかと思えば。エミルは俺だ。俺が俺を信じるのは当たり前だろうが。
ラタトスクそれに昼間、こいつに言われたんだよ。
ラタトスクちっ、この世界にも風のセンチュリオンがいれば簡単な話だったんだけどな。いや……シルフの力の気配を探れば何とかなるか ?
マルタえ ! ? ラタトスク、本当 ! ?
ラタトスクやってみなけりゃわからねえな。そもそも俺もエミルもこんなスポーツは初めてだ。思った通りに体が反応できるかもわからねえ。
エミル………………。
エミルねえ、ラタトスク。今回の勝負だけどなるべく精霊の力を使わないでやりたいんだ。どうかな ?
ラタトスクは ? 何を言ってるんだ、お前は。
エミル……なんとなく、自分の力だけで勝たなきゃいけない気がして。
ラタトスク精霊なんだから、精霊の力は自分の力だろうが。
エミルそれはそうなんだけど――
ラタトスク――人間との競争に精霊の力を使うのはフェアじゃないってな。
リヒター……すまなかった、エミル。
エミルえ…… ?
リヒターラタトスクの言う通りだ。俺は、出会ったばかりの頃のお前のイメージに囚われてしまっていたんだろう。
リヒターお前を信用していない訳ではなかった。だが……結果的にそうなってしまった。
リヒターお前は……自分の力で勝とうと思うほど強くなっていたんだな。
エミル……はい。それに、元々この勝負を受けるって言ったのは僕の方です。
エミルだから、勝ちたかったんです。僕の力で……マルタのために。
リヒター……そうか。
リヒターだが、こんな時間から練習をするのが危険だという事実は変わらない。だからせめて朝まで待て。
エミルで、でも…… !
リヒター上手くなりたいと思うならば、安全を確保すべきだ。それに、体力を回復させることも重要だというのはお前もわかっているだろう ?
エミルそう……ですね。
リヒターその代わり、明日は早朝から練習に付き合ってやる。寝坊しないと約束出来るならな。
エミルリヒターさん…… !ありがとうございます !
アステルあはは、やっぱりリヒターって世話焼きだよね。
テネブラエええ、全くです。
リヒター! お前たち……。
エミルアステルさん !それに、マルタとテネブラエも……。
テネブラエエミル様がこっそり出て行くのを見かけたのでマルタ様と共に追いかけてきたんですよ。
アステル僕は、リヒターが出て行ったのを見かけたから。きっとエミルのところに行ったんだろうなって思ってたんだけど。
マルタやっぱり、予想通りだったね。もしもこのまま行っちゃうつもりだったら私も止めようかなって思ってたけど……。
マルタ……ありがとう、エミル。
エミルえ…… ?
マルタさっきの話、全部聞いちゃった。私のために、自分で頑張ろうって決めて一生懸命練習してくれて……。
マルタでも……私のせいで無理させちゃってるね。ごめんね。
エミル違うよ、マルタ。確かにきっかけはマルタだったかもしれないけど決めたのは僕なんだ。
エミルマルタが酷いことを言われるのはどうしても我慢できなくって……。
エミル頼りないかも知れないけど、僕精一杯やるよ。デクスに勝てるように。
マルタ……頼りなくなんかないよ !私、信じてる !エミルなら絶対に勝てるよ !
アステル何だか、自分と同じ顔の子が女の子と仲良くしてるのってちょっと羨ましいな。
アステル……リリーナ……元気にしてるといいんだけど。
リヒター………………。
テネブラエリヒター。一つ、付け加えておきます。ラタトスク様はあなたに譲歩したんです。アステルさんに免じて。
リヒター譲歩、だと。
テネブラエ癇に障ったら失礼。ラタトスク様がアステルさんにしたことは、あなたにとって許しがたいことでしょう。
テネブラエですが、魔物を統べる王であり大樹の精霊である誇り高いラタトスク様が、自らの行いを悔いてあなたを気遣ったのです。
テネブラエ自分が顔を見せれば不愉快になる。だからあなたがエミル様に力を貸してくれる間はむやみに顔を出すまいと。
テネブラエ許せとは言いません。ですが、知っておいて下さい。
リヒター……知ったことか。
リヒターエミル。もう寝ろ。後は全て朝になってからだ。俺も確実にデクスに勝てるような作戦がないか考えておく。
アステルあ……そのことなんだけど。
アステル一つ作戦があるんだ。さっき、今回の調査の結果を纏めていたときに気づいたことがあって。
アステル少し難しいかもしれないけどそれが上手く行けばエミルに勝機が生まれると思うんだ。
二人! !
エミルそ、それはなんですか ! ?教えてください…… !
アステルうん。あのね――

Character7話【リゾート7 レース当日】
イクスいい天気だなー !絶好のレース日和だ !
カーリャはいっ ! もう受付は始まってるみたいですよ。エミルさま、もうエントリーしてきました ?
エミルううん、これからだよ。ギリギリまで練習してたから。
マルタ朝から練習して、完璧な状態にしてきたから !だから絶対に勝てるよ !
ロイドおー ! すげー自信だな !それに、すごくいい顔してるぜ。これは期待できそうだな !
エミルうん ! 出来ることは全部やったから。リヒターさんやアステルさんも手伝ってくれたしきっと大丈夫。
マルタうん、エミルなら絶対大丈夫 !
しいな覚悟を決めたって感じだね。頼もしいじゃないか。
リフィル勝負に勝つためには、技術や経験はもちろんだけれど心を強く持つということが重要ですものね。
コレット頑張ってね、エミル !私たちも精一杯応援するからね !
リーガル平常心を忘れないことだ。熱くなりそうなときこそ、冷静にな。
エミルはい、リーガルさん !
プレセアこれ、私が作ったお守りです……。トンガリマダラトビネズミのブローチ……。海の中には持って行けなくても、荷物に付けて下さい。
エミルありがとう、プレセア !
テネブラエエミル様、そろそろ受付に参りましょう。エントリーに間に合わなくなってしまいます。
エミルあ、そうだね。
ジーニアスあれ、マルタとテネブラエはこっちで応援するんじゃないの ?
マルタ私たちはエミルのチームのスタッフとして参加するんだ。リヒターとアステルも一緒に来てくれるって !
イクスそれは心強いな !リヒターさんたちも、エミルのことをよろしくお願いします。
リヒターああ、心配するな。
アステルビーチのことは色々調べてきたしその知識を役立てるように頑張るよ。
エミルそれじゃあ、行ってきます !
リーガル私はエミルのことをまだよく知らないが……今日のエミルは、いつもより気合いが入っているように見えるな。
プレセアはい……。きっと、マルタさんのために強くなろうと……心に決めているんだと思います。
カーリャ・N……誰かのために、強く……。
カーリャ・N………………。
カーリャ・Nあの……ミリーナ様。今日はミリーナ様たちとご一緒しても構わないでしょうか ?
ミリーナええ ! もちろんよ !昨日はネヴァンがいなくて寂しかったわ。今日は一緒にエミルの応援をしましょう !
カーリャ・Nは、はい…… !
コレットよかったね、ネヴァン !
カーリャ・Nあ、ありがとうございます、コレット様。
イクスそれじゃあ、俺たちは観客席に移動するか !
ロイドだな ! 早く行って一番いい席確保しねーと !
マークあ、悪いけど俺はパスだ。行きたいのはやまやまなんだが、この後カジノの様子を見に行かなきゃならないんで。
イクスそうなのか ? 残念だな……。
マークま、俺の分の応援はお前らに任せるから思いっきりやっといてくれや。
カーリャわかりました ! カーリャがマークのお面を作って席においておきますね !
マーク被るんじゃないのかよ ! ?
イクスあはは ! それじゃあマーク、仕事頑張って。
マークああ、それじゃあな。
リーガルふむ、あちらの方にいい席が空いているようだ。
ロイドお、本当だ ! とられる前に行こうぜ !
コレットそだね !
コレット……あれ ?
プレセアコレットさん……どうしたんですか ?
コレットあれ、あれ…… ?私の魔鏡通信機がない……。
リフィルえ ? 荷物の中にもポケットの中にも見当たらないの ?
コレットう、うん……。どうしよう、部屋に置いて来ちゃったのかな ?
しいなあ、もしかしたら落としたんじゃないのかい ?
ジーニアスそういえば、今朝部屋を出るときに廊下でつまずいてたよね。
ミリーナもしそうなら、ホテルの受付で聞いてみたらどうかしら。落とし物なら届けられているかもしれないし。
コレットそだね。今からならレースに間に合うだろうし私、ちょっと行ってくる !
ロイド俺も一緒に行こうか ?
コレットううん、大丈夫だよ。ホテルはすぐそこだし、みんなは先に行って席をとっておいて !
ロイドそうか ?
コレットうん ! 一番いい席を見つけておいてね。
ロイドはは、そうだな !じゃあ、コレットには一番見やすいところを確保しとくから !
コレット楽しみにしてるね。それじゃあ、行ってきます !
イクスでも、なんか珍しいな。コレットのドジが幸運に繋がらないなんて。
カーリャいえいえ、まだわかりませんよ ?今までずっとそうでしたからね !
リフィルそんな非科学的な……と言いたいところだけれど確かにコレットはとても運がいいのよね。
リフィルこれは……きちんと統計を取ってみたらもっとはっきりするかも知れないわ……。
ジーニアス姉さん……まさかそんなことまで研究するつもりなの ?
カーリャ・N………………。
コレットはぁ、魔鏡通信機、ちゃんと届いててよかった~。どうもありがとうございました。
カーリャ・Nコレット様 ! 大丈夫でしたか ?
コレットネヴァン ! もしかして心配してきてくれたの ?
カーリャ・Nはい。……その、友達ですので。
コレットうん…… ! ありがと、ネヴァン !ほら、見つかったよ。
カーリャ・Nそれはよかったです。では、お席まで案内します。もうすぐレースの時間ですし。
コレットあ、そうだよね。レースが始まる前に急いで会場に――
母親メアリー ! ジョー ! ベス ! ダイアナ !みんな、どこに行ったの !
コレット! あれって……。
カーリャ・Nもしかして、人捜しでしょうか…… ?
コレットネヴァン、ちょっと待っててもらえるかな。
コレット――あの、どうかしたんですか ?
母親子供たちが迷子になったようですの。困りましたわ。
コレットやっぱり、迷子だったんだ……。ねえネヴァン、捜してあげてもいいかな ?
カーリャ・Nはい、もちろんです。アルタミラの街からは出ていないんでしょうか ?
母親はい、それは間違いありませんわ。
コレットじゃあ、街中で迷子捜しだね !あれ ? こういうこと、昔もあったような……。
バルドコレットさんにカーリャ !まさかこんなところでお会いできるとは。
二人! !
カーリャ・Nバルド ! ?あなたこそどうしてここに……。
バルドナーザ様に頼まれて、レイカー博士たちの様子を見に来たんです。
バルドところで……何かお困りの様子ですがどうなさったのですか ?
コレットあ、はい。それが――
バルドなるほど、そういうことでしたか。それでは微力ながらこのバルドにもお手伝いさせて下さい。
カーリャ・Nそれは……。
コレットわあ、ありがとうございます !助かります !
バルド困っている時はお互い様です。
バルドそれに、あなた方がそんな風に困った顔をしていると心が痛みます。早くお二人にも、あちらのご婦人にも笑顔を取り戻して頂きたいですから。
カーリャ・N……バルド、あなたは相変わらずですね。
バルドお褒めにあずかり光栄です、カーリャ。
カーリャ・N今はネヴァンです。それにあなたを褒めたわけではありません。
カーリャ・Nでは、コレット様、バルド。子供たちを捜しに行きましょう。

Character8話【リゾート8 迷子を捜して】
コレットメアリー、ジョー、ベス……これで三人はお母さんのところに連れて行けたね !
カーリャ・Nはい。残るはダイアナだけですが……。
バルドコレットさん、ネヴァン。
コレットバルドさん !そっちにダイアナはいましたか ?
バルドいえ、見当たらないので一度戻ってきました。他の三人はこの付近で見つかったんですよね ?
コレットはい。みんな、お母さんのところに帰して後はダイアナだけなんですけど……。
カーリャ・N一体どこに行ってしまったんでしょうか……。
バルド可能性のある場所は全て見たつもりでしたが子供は小さいですから、思いがけない場所に入り込んでしまった可能性もありますね。
カーリャ・N確かにありえますね。では、もう一度手分けして捜しましょう。私は右から見て回ります。
コレットじゃあ、私は左の方から――
コレットきゃっ !
カーリャ・Nコレット様 !
いかつい男チッ、ぼさっとしてんじゃねえ、気をつけろ !こっちは急いでんだ !
カーリャ・N待ちなさい ! そちらからぶつかっておいて謝りもしないとは !
カーリャ・N――行ってしまいましたか。
コレットネヴァン、だいじょぶだよ。私がもっと気を付けてればぶつからなかったんだし……。
バルド……妙ですね。
二人
バルドあちらから女性にぶつかってきておいて暴言まで吐くとは許しがたい所業、と思ったのですが――
バルドあの焦り方、何かありますね。
カーリャ・Nどういうことですか ?
いかつい男の声…… ! ………… !
コレットあ……待って !何か聞こえる。さっきの人だと思うんだけど……。
いかつい男の声おい、カジノ襲撃の準備は整ったんだろうな ?
ダミ声の男の声ああ、こっちはもう全員集まっている。お前で最後だ。行くぞ。
コレット……カジノ襲撃…… ?
カーリャ・Nえ ! ?
バルドあの男が言っているのですか ?
コレットはい。さっきの人と、もう一人別の人が話している声が聞こえました。あっちです !
バルド行きましょう !
カーリャ・Nええ !
コレット確かこの辺から聞こえてきたんだけど……。
カーリャ・Nいませんね……。でも、ここは行き止まりですし、空でも飛ばない限りはいなくなるなんてことは……。
バルド……いえ。どうやら空ではなく地下の方ではないでしょうか。そこに、地下通路への入り口があります。
カーリャ・N……なるほど。下水道を利用して侵入するつもりですね。
バルドそうでしょうね。コレットさん、男たちはカジノを襲撃すると言っていたんですね ?
コレットはい ! 襲撃の準備は整った、とかもう全員集まってる、とか……。
バルドつまり、襲撃まで秒読みということですね。であれば、放っておくわけにはいきません。
コレットはい、急いで追いかけましょう !
コレットうわ、真っ暗だね……。
カーリャ・Nそうですね。今、魔鏡術で明かりを点けます。コレット様、足元に気をつけて――
コレット――きゃっ ! ?
バルドおっと、お怪我はありませんか ?
コレットす、すみません ! つまずいちゃって……。支えてもらってすみません……。
バルドいえ、どういたしまして。――おや ?
カーリャ・Nどうしましたか ?
バルドコレットさんの足元に、何かが落ちていますね……。
カーリャ・N……これは、髪留めですね。そういえば、先ほどメアリーがこれと同じものをつけていました。
コレットあ、それ……ベスもつけてたよ。
カーリャ・N……まさか、この近くに迷子のダイアナが――
バルド……シッ。人の気配があります。
コレット
バルド……あちらですね。物音を立てずに行きましょう。
いかつい男よし、揃ってるな !ん ? なんでこんなところにガキがいる ?
ダミ声の男ここに入るところを見てくっついて来ちまったんだよ。
いかつい男ガキなんざほっときゃいいだろ。
ダミ声の男いや、念のためだ。どっから情報が漏れるかわかんねぇからな。
コレットあ ! ねえ見て、あそこにいる女の子……。
カーリャ・Nはい。恐らくあの子がダイアナです。
コレットどうしよう、捕まっちゃってる……。助けないと !
バルド私が切り込んで、ダイアナを確保します。お二人にはフォローをお願いしたいのですがよろしいですか ?
カーリャ・Nあなたは昔から敵陣に切り込んでばかりですね。いいでしょう。
コレット任せて下さい。
バルド――では、行きます。
バルド失礼。このお嬢さんは返していただきますよ。
いかつい男な、なんだ ! ? てめえはっ ! ?
ダミ声の男つ、捕まえろ !
コレットレイシレーゼ !
カーリャ・Nミラージュピラー !
ダミ声の男ぐあっ !
コレットやらせない !
ダイアナわ、私……助かったの…… ?
バルドお嬢さん、少しお待ち下さい。今、奴らを片付けてしまいます。
いかつい男お前ら、さっき地上でぶつかった連中か ! ?
カーリャ・Nカジノを襲うなど、言語道断 !
コレットそうだよ ! 救世軍のみんなお金がなくて大変だって言ってるのに !
バルドあなた方は幸運ですよ。犯罪に手を染める前に捕まえてもらえるのですから。
カーリャ・N覚悟なさい !

Character9話【リゾート9 勝負の行方】
マークいやー、まさかカジノの襲撃が計画されていたとはな。
バルドええ。以前このカジノの経営側だった人間がカジノを奪われた復讐のために人を集めていたようですね。
マーク確かにそういう動きがあるとは聞いていたがあのときの支配人はまだ自警団の牢の中にいるんで当分動かないと思っていたんだよな。
マーク助かったぜ。
コレットあれ、バルドさんはいつそのことを知ったんですか ?
バルドああ、先ほど捕らえた襲撃者たちとちょっと『お話』をさせていただきました。
マークあのゴロツキ共も可哀想に。まあ、後はこっちで処理するわ。手を煩わせて悪かったな。
バルドいえ、私はカーリャ――ネヴァンとコレットさんのお力になりたかっただけですから。
マーク……パイセンの、ね。
マークつーか、さすが俺のパイセンだぜ。白昼堂々カジノが襲われたりしたら救世軍にとっては大ダメージだ。
マーク帝国の連中を上手いこと誤魔化しながら資金集めの拠点にしてたってのに全て無駄になっちまう。
カーリャ・Nいえ、私は何もしていません。コレット様とバルドが――
マーク俺のパイセンは、謙虚だなあ !
バルドええ、ネヴァンはそういうところがとても好ましいです。
マークああ、まったくな。
バルドええ、本当に。
二人? ? ?
カーリャ・N……あの二人は何を睨み合っているのでしょう。
コレットうーん、お友達になろうとしてるんじゃないかな ?
カーリャ・Nそう、でしょうか ?
カーリャ・Nそれにしても、ダイアナも無事見つかってホッとしました。今回の事件が無事解決できたのは全てコレット様のおかげです。
コレットそんなことないよ。みんなで頑張ったからだよ。
カーリャ・N……コレット様。
コレット――あ ! ? そうだ ! エミルの応援 !
カーリャ・Nそ、そうでした !きっともう、レースが始まっていますね !
コレットうん、急ごう !
コレットマーク ! バルドさん !私たち、エミルの応援に行きます !
カーリャ・Nバルド……ありがとうございました。マーク、後はよろしく頼みますよ !
バルド――おや、行ってしまいました。エミルのレースというのは…… ?
マーク……ああウインドサーフィンの大会に出てるんだよ。
マーク……つーか、よく平気な顔でミリーナやカーリャの前にいられるな。
バルド平気……というのとは、ちょっと違いますね。ミリーナさんはゲフィオンとは違いますしカーリャのことは……以前から案じていましたから。
バルドそれに戦争による個人の憎しみを抱き続けるのは不幸な結果を招くのではありませんか。
バルド憎しみを優先するなら、私はあなたのマスターも殺さなければなりません。
マークフィルやカーリャを傷つけるような真似をしたら俺はあんたを許さない。
バルド誓って、そんなことはしません。あなた方が、ウォーデン様の敵にならない限りはね。
コレットよかった、まだレースやってるよ !
ミリーナあ、コレット ! ネヴァン ! どうしたの ?ずいぶん遅かったけど……。
カーリャ・N色々あったんですが……詳しい話は後ほど。今、レースはどのような状況ですか ?
カーリャ今のところは接戦ですよ !エミルさまはいいスタートを切って結構前の方をキープしてる感じです !
イクスでも、まだまだデクスには追いつけそうになくてこのままじゃ、ちょっと厳しそうなんだ。
カーリャ・Nそんな、エミル様……。
コレットううん、まだだよ、まだ終わってないから……きっとエミルは勝てるよ !
コレット頑張って、エミル…… !
デクスははははは ! オレは今一陣の風 ! !このままどこまでも駆け抜け、鮮やかに届けオレの愛よ、アリスちゃんの元へ…… !
エミルくっ…… !
エミル(やっぱり速いな、デクス。あともうちょっとなのに、差が全く縮まらなくなっちゃった……)
エミル(でも、あとちょっと……アステルさんが言ってたポイントまでは、この差が開かないように耐えぬかなくっちゃ…… ! )
デクスはははははっ ! もうゴールが見えた !今回のレースも勝者はオレだ~ ! !
エミル……あ。
ラタトスク(おい、そろそろだぞ。俺は力を貸さない。自分で風を掴め)
エミル(うんっ ! )
テネブラエそろそろ例のポイントです。……あと三、二、一 !
マルタ風が――
リヒター――来た。
デクスおわっ ! なんだこの風 ! ?
エミルよし、この風に……乗るっ !
デクスなっ ! ?な、なんであいつだけ風を掴んで……うわぁ !
アリスもー ! ?デクスったら、何ひっくり返ってるのよ !ペットちゃんに抜かれちゃったじゃない !
テネブラエエミル様、お見事です !
マルタエミルー !その調子で頑張って !
アステル読み通りだったね。
リヒターああ。その風を捕まえて一気にゴールまで行け !
エミルはあああああっ !
エミルあと少し…… !絶対……絶対に――
マルタエミル―― ! !
エミル――勝つ !
実況者ゴーーーーーーーール ! !
実況者突然の突風に選手が次々と落下する中見事に優勝を決めたのはエミル・キャスタニエ選手だーっ !
会場の人々うおおおおおおお !
エミルやった……やったあ !優勝だ…… !

Character10話【リゾート10 楽しいひととき】
マルタエミル~ !
マルタエミル、お帰りなさい ! 優勝おめでとう !すっごく、すっごくカッコよかったよ !
エミルありがとう、マルタ !ゴール直前、マルタの声が聞こえた気がしてすごく力になった !
マルタ本当 ! ?私はエミルを応援することしかできないからもし本当に、その声が届いてたなら嬉しいな !
テネブラエいやはや、作戦通りにいってよかったです。
アリスもぉ~、なんでなの ! ?なんであのペットちゃんに負けちゃったのよデクス ! !
デクスうっ、ご、ごめんよアリスちゃん……。俺にも読み切れない突風が吹いて……。
アリス言い訳なんていらないわ。相手がどんなズルをしたって負けは負けじゃない !
マルタはぁ ! ? 何でズルしてる前提なの ! ?言いがかりはやめてよね !
マルタエミルは昨日からずーっと練習してちゃーんと作戦通りに勝ったんだから !
デクス作戦 ? マルタ、教えてくれ。どうして少年はあの突風を耐えられたんだ ?不意打ちであんな風に吹かれて耐えられるなんて……。
アステルそれは僕が説明するよ。元々、この作戦を思いついたのは僕だからね。
アステル僕とリヒターは、この付近の土地の調査をしてたんだ。そのときに、決まった周期で海上に突風が吹くことに気づいたんだよ。
デクスそういえば、毎日風が強い時間帯があったな……。
アステルうん、多分それ。一日の中のどのタイミングになるかは日ごとに少しずつ違ってて、今日はちょうどレースの時間と重なることまではわかった。
アステル精霊の力が影響して起きているものだから単なる自然現象とはちょっと違ってポイントを予測しやすかったんだ。
アリスつまり、精霊の力を使って勝ったってこと ?
アステルううん、その逆。エミルは、風の発生する可能性のあるポイントを、頭に叩き込んで自分で風のタイミングに合わせたんだよ。
デクスそうか……そういうことだったのか。少年……大きくなったな。憧れのデクス様を倒すとは……恐れ入ったぜ……。
エミル……え ? いや、別に憧れた覚えは――
デクスだが、これはオレの負けであってアリスちゃんの負けじゃない !
アリスはあ ? しもべの不手際はご主人様の責任に決まってるでしょ。マルタちゃん、今回は私の負けよ。悪かったわね。
マルタアリス…… !
リヒターお前が大人しく負けを認めるとはな。
アリスいいのよ。今回の勝負は単なる余興。
アリスアリスちゃん、今日の大会でしっかり要求以上の儲けを出して、お仕事を終わらせたからとっても機嫌がいいの ♪ さ、デクス、帰るわよ。
デクスごめんよ、アリスちゃん !今度こそアリスちゃんに華麗な勝利を捧げる !オレはもう二度と負けたりしない !
デクス愛してるよ、アリスちゃ~んっ !
マルタアリスが謝るなんて……。これもエミルのおかげだよ、ありがとう !
エミルううん、マルタやみんなの応援のおかげだよ。こっちこそ本当にありがとう。
バルド――フフ、やはりここにいましたか。
リヒターバルド……。
バルドエミルさんがレースに出ていると聞いてお二人も観戦していると思っていました。ナーザ様が心配していますよ。
アステルあははは……。ごめん。
バルドそれと、コレットさん、ネヴァン。先ほどの子供たちの母君からプレゼントを預かって来ました。
カーリャ・Nこれは……水着ですか…… ?
バルド子供たちを無事に見つけてくれたお礼だそうです。確かにお渡ししましたよ。
コレットあれ、バルドさんの分は……。
バルドああ、確かに私も水着を頂きましたがナーザ様を置いてバカンスを楽しむ訳には行きませんので。
バルド――さあ、リヒター。レイカー博士。行きましょうか。
アステルえええ、せっかくならコレットとネヴァンの水着姿を見ていきたいよ。
バルドそうですね。きっとお似合いでしょうから私も拝見したいところですが……。ナーザ様に叱られてしまいます。
リヒターアステル、わがままを言うな。行くぞ。
アステルはーい。
エミルあ、あの、リヒターさん ! アステルさん !ありがとうございました !
リヒター……元気でな、エミル。
エミルは、はいっ !
アステル……ねえ、リヒター。昨日はごめんね。
リヒター何だ、急に。
アステル僕が死んだ後のリヒターの怒りや悲しみを無視したこと。
リヒター………………。
アステルちゃんと、わかってるよ。一人にしてごめんね。
リヒター馬鹿が……。
マルタ……行っちゃったね。
エミル……うん。
マルタねえ、私たちもまだ帰るまで時間があるでしょ ?私、エミルと観覧車に乗りたい !あれなら酔わないし、ロマンチックだし……。
エミルええ ! ?
マルタ嫌なの ?
エミルいや、そういうわけじゃ……。
イクスはは、行っておいでよ。エミルは練習練習でずっと海だったしマルタとゆっくり過ごすのもいいと思うよ。
エミルそうだね。……じゃあ、行こうか、マルタ。
マルタうん !
テネブラエ私はイクスさんたちと一緒にいますので、ごゆっくり。
ジーニアスプ、プ、プレ……プレセア !ぼ、ボクもプレセアと……か、か、観覧車に……。
プレセア観覧車……ですか ? はい、かまいません。
ジーニアスホント ! ?ロイド、ボク、プレセアと行ってくるね !
ロイドおう、気を付けて行けよ !
リフィル私は海の家で休もうかしら。
しいなあたしも ! 日焼けするのは嫌だしね。
リーガルでは私も同行させてもらおう。この海の家で出されるアイスティーは私のこだわりの逸品だ。
リフィルリーガル、今日こそあなたには本当に美味しいコーヒーについて知ってもらいたいわね。
リーガルふむ……。まあ、リフィルがそう言うのであれば話だけは聞くとしようか。
ミリーナそれじゃあ、私たちは水着に着替えましょうか !
コレットみんな、着替えてきたよー !
カーリャ・Nあ、あの……おかしくは、ないでしょうか…… ?
ロイドうん、二人ともよく似合ってるぜ !
ミリーナ本当…… ! なんて可愛いの…… !抱きしめたくなっちゃう !
イクス何だか、水着のネヴァンって新鮮だな。でもすごく綺麗だよ。
カーリャ・Nあ、ありがとうございます…… !
カーリャいいですね、いいですね !それじゃあ早速浜辺ではしゃぎましょうネヴァン先輩 !
カーリャ・N浜辺ではしゃぐ、って、どうやって…… ?
カーリャそれは……こうです !
カーリャ・Nきゃっ !もう、カーリャ、やめてください !
カーリャあはは、やめませんよー !ビーチと言えば、水のかけっこって決まってます !
カーリャ・Nやりましたね、カーリャ !私もただでやられる先輩ではありませんよっ !
カーリャむむむ、サイズ的に不利ですね !ミリーナさまぁ、加勢してください~ !
ミリーナふふ、わかったわ。イクス、行きましょう !
イクスそうだな !
コレットよかった…… ! ネヴァン楽しそう。
ロイドああ、初日は寂しそうにしてたから心配だったけど……。
コレットロイドも気付いてたの ?
ロイドまあな。けど、コレットがネヴァンを誘い出したから大丈夫だって思ってた。ありがとな、コレット。
コレット……ううん、ネヴァンが元気になってくれてよかった。
ロイドそれにしても綺麗な海だよな。ゼロスもクラトスも参加出来ればよかったのに。
コレットうん。今度はゼロスやクラトスさんも一緒がいいね。
コレット――ねえ、ロイド。私たちも海に入ろうよ !
ロイドコレット……。ああ、そうだな。
コレットえへへ、今日はとっても楽しみにしてたんだ。早く行こ ?
ロイドああ !帰る時間まで目一杯遊ぶぞ !
コレットうん !