| Character | 1話【魔術1 アセリア領からの報せ】 |
| | このお話は今から少し未来のお話です。 |
| クレス | イクス、話があるって聞いたけど、何かあったのかい ? |
| チェスター | もしかして、また何か問題が起こったのか…… ? |
| イクス | あ、クレスたち、来てくれたんだな。えっと……半分はいい話で、半分は心配な話……みたいな感じなんだけど―― |
| クラース | なんだ、歯切れが悪いな。 |
| アーチェ | なーんか怖いよね、そういうの。ってわけで、まずはサクッといい話から教えてよ。 |
| チェスター | いい話が先かよ。 |
| アーチェ | そのほうが覚悟を決めて悪い話を聞けるでしょ。 |
| すず | 私もそれがいいと思います。悪い話を聞いてしまったら、そのまま解決策を考えようということになるかもしれませんし。 |
| ミント | そうですね。イクスさん、教えていただけますか ? |
| イクス | ああ。実はアセリア領の今の状況についてカロル調査室から連絡が入ったんだ。 |
| イクス | どうやら帝国兵の一部が帝国に反旗を翻したみたいで内部分裂を起こして争いが起きているらしいんだ。それで反乱兵たちが、従騎士の心核を取り戻したって。 |
| チェスター | マジか ! すごいな。じゃあ、従騎士は元に戻ってるのか ? |
| イクス | ああ、そうらしい。名前もはっきりわかったよ。エドワード・D・モリスンさんだって。 |
| 二人 | ! ! |
| ミント | モリスンさんが従騎士となっているのは聞いていましたが、エドワードさんだったんですね。 |
| クレス | トリニクスさんかエドワードさんかわからなかったからね。でも、元通りになっているのならよかった。 |
| アーチェ | だね !ねえ、時間があればだけど、会いに行けないかな ?もしかしたら困ってることもあるかもだし。 |
| クラース | まてまて。その前に、イクスから悪い話のほうを聞かなければならないだろう ? |
| アーチェ | あ、そっか。 |
| すず | イクスさん、悪い話というのはモリスンさんのことと関係があるんでしょうか ? |
| イクス | うん……そうなんだ。 |
| クレス | ……聞かせてくれ、イクス。 |
| イクス | 結局反乱勢力は、領都アルヴァニスタを制圧してアセリア領全体の制圧を進めているみたいなんだ。でもそれと同時期に異変が起こるようになったらしい。 |
| イクス | アルヴァニスタ近くの村で、魔物が急に力を持って暴れ出したみたいなんだ。被害もかなり出ている。心核を取り戻したこととの関係性は不明だけど……。 |
| イクス | いずれにしても、困っている領民を見捨てることは出来ないと、従騎士のモリスンさんが異変の調査のために森へ向かったって。 |
| イクス | それから、しばらく帰らないらしい……。 |
| ミント | そんな、モリスンさん……。 |
| アーチェ | モリスンさんってば、領民を助けたいからって一人で行くなんて無茶だよ……。 |
| すず | 魔物が力を持っているのだとしたら場合によっては危険な状況に置かれているのではないでしょうか ? |
| クラース | 十中八九、そうなっていると考えていいだろうな。だが……彼らしいとは思う。 |
| クレス | そうだね。困っている人がいると放っておけなくて自分で動いてしまうんだ。 |
| イクス | すごいな。そのモリスンさんって。異世界に具現化されて戸惑うことばかりだろうに。 |
| クレス | ああ。なにしろ、僕たちの世界で出会ったモリスンさんは、ダオスにも果敢に立ち向かおうとしていた人だからね。 |
| イクス | あのダオスに ! ? すごいな……。 |
| クレス | だから、モリスンさんが領民のために危険を冒してでも調査に行くことは不思議ではないんだ。 |
| クレス | でも……放ってはおけない。 |
| ミント | ええ。モリスンさんの手助けをしに行きたいです。 |
| クレス | どうかな、イクス。行っても構わないだろうか。 |
| イクス | もちろん。そのつもりでクレスたちを呼んだんだ。ただ、現地の詳しい情報が少ないからくれぐれも気を付けて欲しい。 |
| クレス | ああ、もちろんだよ。必ず全員無事で帰ってくる。 |
| イクス | うん、待ってるよ。 |
| クレス | よし、それじゃあ、みんな。モリスンさんを助けにアセリア領へ行こう ! |
| Character | 2話【魔術2 村の惨状】 |
| チェスター | なっ……なんだこりゃ !おい、モリスンさんが向かったっていうのはこの村で間違いないんだよな…… ? |
| クレス | うん……アルヴァニスタで聞いた話ではそういうことだったけど……。 |
| アーチェ | そんな……村、ボロボロじゃん…… ! |
| ミント | それに、この気配……瘴気が漂っていますね。 |
| クラース | 恐らく、この瘴気にあてられて魔物が凶暴化したのだろう。そして村の中で暴れて破壊の限りを尽くしたと……。 |
| クレス | …………。 |
| すず | 私、村の奥の様子を探ってきます。何かわかるかもしれません。 |
| アーチェ | あたしも行くよ !何があるかわかんないし、一人じゃないほうがいいでしょ ? |
| クレス | そうだね。その間に僕たちもここでわかることを調べておくから。 |
| すず | では、よろしくお願いします。 |
| アーチェ | うん、行こう ! |
| クラース | さて、こちらもできる限り情報を集めておきたいところだが……。 |
| チェスター | 見渡す限り、人の姿もないからな。考えたくはないが、この村の人は……。 |
| クレス | …………。 |
| クラース | ……この村に漂っている瘴気は、既に薄まっている。瘴気を放つ本体がこの場にいなくなっているからだと考えて構わないだろう。 |
| クラース | よって、今後この村が凶暴な魔物に襲われる可能性は低いと想定できる。 |
| チェスター | だったら、もし無事な人を見つけたらそのことは伝えてやらねえとな。 |
| クレス | そうだね。どこかに避難しているかもしれないから、まずは無事な人がいないか確かめて―― |
| アーチェ | おーい、みんなー ! |
| アーチェ | ちょっとこっちに来て !奥の建物に人がいたんだけど怪我してる人もいるみたいなの ! |
| クレス | 本当に ! ? |
| チェスター | よかった !逃げ切れた人もいたんだな ! |
| すず | ミントさん、皆さんの治療をお願いできませんか ? |
| ミント | ええ、もちろんです !すずちゃん、アーチェさん、案内してください。 |
| クラース | 住民が残っているなら、詳しい状況も聞けそうだな。 |
| クレス | そうですね。これで何が起きたのかわかればいいんだけど……。 |
| ミント | ファーストエイド。 |
| 村人A | ああ……怪我が、治っていく……。本当にありがとう、助かったよ。 |
| ミント | いえ、無事な方がいらっしゃってよかったです。なんとか避難出来たんですね。 |
| 村人B | ああ。エドワード……とかいったか ?あのすごい人がやってきて、俺たちにこの建物に隠れてろって言ってさ。 |
| 村人C | で、その間に一気に魔物を倒して……魔物の親玉みたいのが「まだ力が足りない」とか言って村を出てったから、追ってっちまってよ。 |
| クレス | 親玉 ?そんな魔物までいたのか……。 |
| クラース | どんな魔物だったかは覚えているか ? |
| 村人D | そうだな……なんかドロドロした雰囲気でマントみたいなのをつけてるやつだったよ。『魔界の王』とか名乗ってたかな。 |
| チェスター | 魔界の王なぁ……。それが本当なんだとしたら、さっきクラースが言ってた瘴気を放つ本体ってのが、そいつか ? |
| クラース | ああ、そう考えて間違いないだろう。それを追っていった『エドワード』もモリスンさんのはずだ。 |
| すず | モリスンさんがこの村に来たことで、被害を最小限に抑えることは出来たようです。 |
| すず | ですが……それでも、救えなかった人もいます。もしも私たちがもっと早くここに来ることが出来ていれば……。 |
| 村人E | いや……君たちが来てくれてありがたいよ。来てくれなければ怪我をした連中は助からなかった。縁もゆかりもないのに……感謝する。 |
| ミント | いえ……。少しでもお役に立てたのなら、よかったです。 |
| ミント | もうこの村が襲われる可能性は低いと思いますが念のため、しばらくは皆さんで一カ所にいて身を守るようになさってくださいね。 |
| クレス | 僕たちは、モリスンさんを追いかけよう。魔界の王とかいう奴の元へ向かったのならモリスンさんも危険かもしれない。 |
| チェスター | そうだな。なあ、どこに向かったか、わかるか ? |
| 村人F | 山のほうだと思う。あの森の奥へ行くと、鉱山があるんだ。魔物が棲み着いていてもおかしくない。 |
| クレス | 鉱山だね、ありがとう。 |
| チェスター | あっちに見える山だな。あの距離ならすぐに追いつけるか。 |
| アーチェ | だったら早く行こ !これ以上の犠牲が出たら大変でしょ。 |
| チェスター | 急かすなよ !……と言いたいところだけど、今回に限ってはアーチェの言う通りだな。 |
| アーチェ | ちょっとぉ ! 今回に限っては、ってどういうこと ! ? |
| クラース | 今はじゃれついている場合じゃないだろう。ほら、行くぞ。 |
| チェスター | じゃ、じゃれついてるって……。 |
| すず | ふふ。少し肩の力が抜けた気がします。ありがとうございます。 |
| アーチェ | えぇ…… ?お礼言われるのも複雑なんだけど……。 |
| クレス | はは、こういう雰囲気のほうが、僕たちにはいいのかもしれないね。 |
| クレス | 気負いすぎても周りが見えなくなって、大切な痕跡を見逃してしまうかもしれない。 |
| クレス | モリスンさんを助けるためにも最短で追いつけるように注意して進もう。 |
| ミント | ええ。待っていてくださいね、モリスンさん……。 |
| Character | 3話【魔術4 魔界の痕跡】 |
| アーチェ | なんか……嫌な気配がずっとしてるね……。 |
| ミント | ええ……。山の木々に瘴気がまとわりついています。息苦しいくらい重く……。 |
| クラース | ……この気配から考えると、現れたのはプルートだろうな。 |
| クレス | プルート……それが、魔界の王……。 |
| クラース | そうだ。闇に潜む魔界の王。精霊と同様に契約することも可能だが当然ながらそれは容易ではない。 |
| クラース | ここはティル・ナ・ノーグだ。エンコードによって、プルートもまた精霊として定義されている可能性が高い。 |
| クラース | 元の世界よりは契約しやすいのではないかと思うがそれでも強大な相手であることは間違いないだろうな。 |
| すず | ……恐ろしい相手なんですね。それでは、一人で倒そうというのは無謀なことなんでしょうか……。 |
| クラース | 私の持っている情報がこの世界でも有効なのだとすれば全員の力を合わせることでようやく倒せるかどうかというところだろうな。 |
| ミント | モリスンさんもそのことはきっとわかっていたのでしょうね……。 |
| クレス | そうだね……。それでも、放っておくことは出来なかったんだろう。 |
| アーチェ | なーんか、ホントに別の世界にいても変わらないよね。元の世界でもダオスを倒すために奔走してたしみんなを救うためにって命を賭けて……。 |
| すず | 人々のためならどんな苦難にも立ち向かうんですね。素敵な方です。 |
| チェスター | そのモリスンさんは、エドワード・D・モリスンって名前なんだよな…… ? |
| クレス | そうだよ。……ああ、そうか。チェスターは過去のモリスンさんには会っていないんだったな。 |
| アーチェ | あ、そういえばそうだっけ。チェスターが会ったことがあるのは―― |
| チェスター | ああ、トリニクス・D・モリスンさんだ。エドワードさんはトリニクスさんの先祖なんだよな ? |
| クラース | そうだ。ヴァルハラ戦役でダオス討伐のために先陣を切って戦おうとしていた。 |
| チェスター | で、オレが会ったトリニクスさんのほうもダオスと戦って封印することに成功したのか……。 |
| チェスター | 先祖からの因縁っていうのもあるけど……。 |
| チェスター | どっちにしろそういう性格なのかもな。モリスンさんの一族は。 |
| クレス | はは、そうだね。正義感があって、困っている人を放っておけない。誰かを守るために先陣を切って戦う……。 |
| クレス | そういうところは、きっと脈々と受け継がれたんだ。エドワードさんから、トリニクスさんへ。 |
| クレス | 人を守ろうとする強い想いが、あの人にはあるんだ。だからこそ……。 |
| クレス | ……もう、失いたくない。 |
| ミント | ええ……必ず、助けましょう。 |
| アーチェ | せっかくまたこの世界で会えたんだもん。今度こそ、一緒に戦わなきゃ。ね ! |
| チェスター | オレも会ってみたいしな !そのためにも、絶対に見つけて助ける ! |
| チェスター | ……とはいえ、山のほうっていってもこれだけ広いとどこから探していいかわかんねぇな……。 |
| クレス | 瘴気の濃さで、ある程度範囲を絞ることは出来ないかな…… ? |
| クラース | 向かった方くらいは特定出来るだろう。……あちらの方向だ。 |
| ミント | はい……あちらから濃い瘴気を感じます。ただ、気配があまりにも濃すぎて、正確な場所までは逆にわからなくて……。 |
| クラース | 私も同じ意見だ。もう少し他の痕跡が残っていないか探したほうがいいだろうな。 |
| アーチェ | それなら、あたしがひとっ飛びして上から見て来ようか ? |
| すず | なるほど、空からならば異変がわかるかもしれません。 |
| クレス | そうだな、頼む、アーチェ。 |
| アーチェ | オッケー !方向はあっちのほうだったよね ? |
| クラース | そうだ。何か見つかったらすぐに教えてくれ。 |
| アーチェ | 了解 ! ちょっと待っててね~ ! |
| すず | これで何か手がかりが掴めるといいですが……。 |
| チェスター | そうだな。万一ダメだったら……。 |
| チェスター | っ ! これは…… ! |
| クレス | 地震だ、大きい…… !みんな、伏せろ ! |
| ミント | きゃあっ ! |
| クラース | くっ……なんて揺れだ…… ! |
| すず | 自然現象でしょうか ?それとも……。 |
| クレス | わからない。だけど―― |
| チェスター | ……おさまった、か…… ? |
| アーチェ | おーい、みんな大丈夫 ! ? |
| すず | アーチェさん。ご無事でしたか。 |
| アーチェ | うん、あたしは空にいたから……。それより、大変だよ ! |
| ミント | 何かあったんですか ? |
| アーチェ | うん ! 山頂の山肌が崩れて、大きな穴が空いたの !それで……ああ、説明するより見てもらったほうが早いと思う ! |
| アーチェ | ついてきて、こっち ! |
| Character | 4話【魔術5 暗き洞穴へ】 |
| アーチェ | ここ、ここだよ !見て…… ! |
| クレス | ! !山肌が崩れて洞窟が…… ! |
| クラース | それにすごい瘴気だ……この中からか。 |
| ミント | はい……禍々しい気配がどんどん溢れてきます。プルートがこの中にいるのは間違いないかと……。 |
| すず | この穴、本当に先ほどの地震で空いたのでしょうか ? |
| チェスター | ……確かに、急に出来たにしてはしっかりしてるし人工的に作られた洞窟って感じだよな。 |
| クラース | 確かこちらには鉱山があるという話だったな。ならば、ここは鉱山の坑道だろう。入り口が何かで塞がれていたのが地震で崩れた……というところか。 |
| クラース | っ ! これは……。 |
| アーチェ | あっ、足跡 !これってモリスンさんの ? それともプルート…… ? |
| すず | 靴の形状なので、モリスンさんのものかと思います。 |
| チェスター | ってことは、この中に入っていったんだよな。 |
| クレス | 足跡の向きと瘴気の漂ってくる方向を考えるとそれで間違いないと思うよ。 |
| ミント | …………。 |
| アーチェ | どうしたの、ミント ? 怖い顔して。 |
| ミント | いえ……モリスンさんが、一人でこの中に入っていったのだとしたら、早く行かなければと思うのに……。 |
| ミント | 恐ろしい魔物の気配に威圧されてしまった自分が情けなくて……。 |
| アーチェ | ……それは、仕方ないよ。あたしだって正直、同じ気持ちになったもん。 |
| クラース | この瘴気を前にして平然としているほうが危険だろう。恐怖を感じるというのは、危機管理が正しく出来ているということでもある。 |
| クレス | それに、怖いと感じてもミントはここで足を止めようとは思っていないんだろ ? |
| ミント | ええ、もちろんです。少しでも早くモリスンさんを見つけなければとあらためて思いました。 |
| クレス | だったら、大丈夫。僕たち全員で協力すれば必ず助け出せる。 |
| ミント | そうですね…… ! |
| クレス | それじゃあ、行こうか !この中で何が起こるかはわからない。十分に注意して進むんだ。 |
| アーチェ | オッケー ! |
| チェスター | 早くモリスンさんに追いつかないとな ! |
| クラース | 瘴気はあちらの方向で強くなっている。道を間違えないよう、慎重に進もう。 |
| クレス | そうだね、みんな、気をつけて。 |
| ミント | …………。 |
| ミント | どうか、全員で無事に戻れますように……。 |
| すず | 薄暗いですね……。みなさん、くれぐれも足元にお気を付けて。 |
| チェスター | だな。ところどころ地面に穴も空いてるしうっかり足を滑らせたら―― |
| チェスター | おわあっ ! っと、っとっと……あ、あぶねえ……。 |
| アーチェ | あーあ、言ったそばからぁ~。 |
| チェスター | う、うるせえな ! |
| ミント | この地面の穴も先ほどの地震で空いたものなんでしょうか ? |
| クラース | 薄暗いから断言は出来ないが、その可能性は高いな。崩落し、露出した部分が真新しい。 |
| クラース | 全ての穴がそうだとは言えないがまた同じような地震が起これば危険かもしれない。 |
| チェスター | マジかよ……。 |
| クレス | それだけ慎重に進まないといけないということだね。……それにしてもこの洞窟、どこかで見たような気がするけれど……。 |
| ミント | モーリア坑道ではないでしょうか ?なんとなくですが、地形が似ているような気がします。 |
| クラース | モーリア坑道か……なるほど、だとしたら合点がいく。 |
| すず | どういうことですか ? |
| クラース | 村の人が、魔界の王は「まだ力が足りない」と言って山のほうへ向かったと言っていただろう ? |
| クラース | 元の世界ではモーリア坑道は底知れぬ地だった。この世界にエンコードされたばかりでまだ不安定な状態に置かれているのだとしたら……。 |
| クラース | 自らの力を回復させるための場としてこの場所を選ぶということは十分に考えられる。 |
| アーチェ | なるほどー ! 魔界の王らしく深くて暗ーい場所で身体を休めて元気になろう !ってわけね。 |
| チェスター | 呑気な言い方だな……。これで出てくんのが呑気な魔物だったらよかったんだけどな。 |
| ミント | ですが、あまりのんびりしているとプルートが力をつけてしまって取り返しの付かないことになるかも……。 |
| クレス | ……そうだね。モリスンさんのことも心配だしとにかく奥に進んで―― |
| 全員 | ! ! |
| クレス | まずい、みんな身をかがめて !できるだけ道の中央に ! |
| クラース | 頭上からの落下物にも気をつけろ ! |
| チェスター | くそっ、気をつけなきゃなんねぇことばっかだな ! |
| すず | これもプルートがこの坑道に入った影響なのでしょうか ? |
| クラース | 強大な力を持つ存在が干渉しているのだとしたら十分にあり得ることだな。 |
| ミント | あ……おさまった、でしょうか…… ? |
| クレス | みたいだね。ひとまず、辺りに亀裂が入った場所がないか気をつけて―― |
| ミント | えっ ?きゃああっ ! |
| アーチェ | 地面が崩れた ! ? |
| クレス | ミント、手を ! |
| ミント | クレスさん…… ! |
| クレス | すぐに引っ張り上げるから……ッ !よしっ ! |
| クレス | クラースさん、ミントを支えてください ! |
| クラース | ああ ! |
| クレス | ッ ! まずい、こっちの足元も亀裂が…… ! |
| チェスター | クレス ! ? |
| アーチェ | クレス ! 今ほうきでそっちに―― |
| クレス | ……ッ ! ! |
| チェスター | クレス――ッ ! ! |
| すず | クレスさんが裂け目に…… ! |
| ミント | クレスさん ! クレスさーん ! ! |
| Character | 5話【魔術6 坑道の深奥】 |
| チェスター | クレス ! クレスー !聞こえてたら返事しろ ! |
| アーチェ | クレスーッ ! おーい、クレスーッ ! |
| チェスター | ……くそっ、ダメか。 |
| クラース | 相当深いところまで落下してしまったのか何かが邪魔をしていて声が届かないのか……。 |
| クラース | いずれにしろ、ここから叫んでいるばかりでは何の進展もなさそうだな。 |
| アーチェ | あたしが下に行って見てくるよ !ほうきがあれば飛べるしね ! |
| チェスター | いや、待てアーチェ。こんなとこで飛んだら……。 |
| アーチェ | あっ ! |
| アーチェ | あ、たたぁ……頭ぶつけた ! |
| チェスター | いや、当たり前だろ……。こんな狭いとこで飛ぼうとするなよ。 |
| アーチェ | うるさいなぁ !なんとかなるかも ! って思ったら試してみたくなるじゃん ! |
| チェスター | けど今の衝撃で坑道が崩れるかもな ? |
| アーチェ | えっ、ウソ ! ? |
| チェスター | 冗談に決まってんだろ……。 |
| アーチェ | もー ! |
| クラース | やれやれ……しかし、この狭ささえなければアーチェの案は悪くなかったんだが。 |
| すず | でしたら、私が下に降りてみます。こういった場所での身のこなしには慣れていますから。 |
| すず | 幸い、これだけの幅があれば私の身体は十分に通れます。 |
| クラース | その申し出はありがたい……が、やはりやめておこう。 |
| クラース | どこまで続いているかわからない状態で降りるのはリスクが大きい。 |
| チェスター | だったらどうすれば…… ! |
| クラース | 焦るな。こういうときこそ「急がば回れ」の精神で動くべきだろう。 |
| クラース | この坑道の構造から考えて、このまま私たちが真っ直ぐ進めば地下へと降りていくことになる。 |
| クラース | なら、クレスが落下した地点へたどり着ける可能性は十分にあるだろう。 |
| チェスター | ……なるほどな。それが一番安全か。 |
| ミント | …………。 |
| チェスター | ……ま、大丈夫だろ !あのクレスだからな。あいつがそう簡単にくたばるはずがねえ。 |
| チェスター | 戻れねえってわかった時点でモリスンさんを捜すことに集中してるんじゃないか ? |
| アーチェ | だね ! つまり、あたしたちもモリスンさんを捜せばクレスのもとにたどり着けるってわけだ ! |
| すず | むしろ早く追いつかなければクレスさんとモリスンさんお二人だけでプルートに挑んでしまうかもしれません。 |
| クラース | それはないだろう……と言い切れないのが困ったところだな。 |
| チェスター | 困った人を放っておけないってところはモリスンさんもクレスもいっしょみたいだからな。 |
| アーチェ | あはは、確かに ! |
| クラース | では、私たちも先を急ぐことにしよう。ミント、君もそれでいいね ? |
| ミント | ……はい。私たちは引き続きモリスンさんを追いかけましょう。 |
| ミント | (クレスさんならきっと無事……ですよね……) |
| クレス | うっ……ここ、は……。 |
| クレス | ……そうだ、さっきの地震で裂け目が出来てその下に……。 |
| クレス | ……身体は、大丈夫か。ひとまず動けそうだ。 |
| クレス | おーい、みんな ! 聞こえるかー ! ? |
| クレス | …………。声も届かないか……。 |
| クレス | 登れるような場所もない、けど……下に続く道はあるみたいだな。 |
| クレス | このままモリスンさんを捜して下に向かったほうがみんなと合流出来るかもしれない。だったら―― |
| クレス | ? なんだ、今、何か聞こえたような……。 |
| ? ? ? | ……に……るな……。 |
| クレス | ! やっぱり聞こえる…… ! |
| ? ? ? | ……に……るな…… ! |
| クレス | 何の声だ…… ?誰か近くにいるのか ? モリスンさん ?それとも……プルートか ? |
| ? ? ? | ……せ……ひ……せ…… ! ! |
| クレス | ……どちらにしても、確認しておいたほうがいいな。この声の聞こえるほうに行ってみよう。 |
| クレス | モリスンさん……みんな……。どうか、無事で…… ! |
| Character | 6話【魔術7 地底の声】 |
| チェスター | ッ ! ……はぁ。地震、収まったか…… ? |
| クラース | ああ、そのようだな。……地震が起こるたびに瘴気も濃くなっている。 |
| クラース | 裂け目が出来て瘴気が吹き出しているようだ……。みんな、注意して歩くように。 |
| アーチェ | だね。何が起こるかわかんないし。 |
| チェスター | はぁ……。にしても、だんだん呼吸がしづらくなってきたな。空気が薄くなってるのか…… ? |
| クラース | だいぶ地下まで潜ってきたからな。だが……それだけで説明出来るような息苦しさではないようにも感じる。 |
| アーチェ | え ? そんなに息苦しい……かな ?狭苦しいなーとは思うけど……。 |
| チェスター | お前、本当に鈍感だな……。 |
| アーチェ | ちょっとぉ、失礼なこと言わないでよ ! |
| チェスター | 本当のこと言ってるだけだろ !……って、マジで息苦しいな……。お前、なんで大丈夫なんだよ ? |
| すず | ……はぁ……はぁ……。 |
| ミント | ……す、すみません……。少しだけ、休憩しても……構わない、でしょうか……。 |
| 三人 | ! ! |
| アーチェ | ごめん、気づかなくって !大丈夫 ? |
| ミント | すずちゃんが……すごく、苦しそうで……。少しだけ、休憩を……。 |
| アーチェ | すずちゃんだけじゃなくてミントもだよ !二人とも顔が真っ青になってる ! |
| チェスター | おいおいおい……これ、本当に空気が薄いってだけの話じゃなさそうだぜ ? |
| クラース | ああ、恐らく空気の問題ではない。だが、瘴気が原因とも言いきれない気がするが……。 |
| ミント | ……確かに、何か、違う気配を感じます……。胸が苦しくなるような……不安感に、押しつぶされるような……。 |
| すず | ……はい……なんだか、胸が、苦しくて……もう、何もかもだめに、なって、しまうのではと不安で……。 |
| クラース | 感情を支配されているということか…… ?だとすれば、一体何が作用して……。 |
| ミント | はぁ……はぁ……。 |
| アーチェ | ミント ! 大丈夫、ミント、しっかりして ! |
| ミント | …………。 |
| アーチェ | 気を失ってる……どうしよう ! |
| チェスター | 落ち着けって、アーチェ。騒いだって何にもならねぇだろ。 |
| アーチェ | でも…… ! |
| クラース | とにかく二人を休ませるのが先だ。一度戻ることも考えて―― |
| アーチェ | ! !ねえ、今変な声したの、聞こえた ! ? |
| チェスター | あ、ああ……聞こえたぜ……。チッ、不愉快な声だな。 |
| すず | ……これ、です……。 |
| アーチェ | すずちゃん、これ、ってどういうこと ? |
| すず | この、声……です……。先ほど、から、ずっと……聞こえていて……。 |
| すず | 甲高い、音波のような、何かが……。聞こえるたびに、胸が、苦しくて……。 |
| クラース | なるほど……この妙な息苦しさは、魔物のせいか。 |
| アーチェ | えっ ? でもあたし、なんともないよ ? |
| クラース | アーチェに流れているエルフの血が関係しているのかもしれない。影響を受けづらいのだろう。 |
| アーチェ | エルフの血……そっか。あたしだけ効果がないのは、そういうことなんだ……。 |
| 魔物 | グオオオオオッ ! |
| アーチェ | ! !もしかして、この魔物が ! ? |
| チェスター | どうやらそうみたいだな ! |
| クラース | ミントとすずは動けない。私もどれくらい保つかはわからないが……とにかく、動けるメンバーで倒すぞ ! |
| チェスター | ああ ! |
| アーチェ | 絶対に止めるんだから ! |
| チェスター | これで……終わりだ ! |
| 魔物 | グオオオオオ……。 |
| チェスター | はぁ……はぁ……くそっ。数が、多い……きりが、ねぇな……。 |
| クラース | ああ……それに、だんだん、意識が、朦朧と……。 |
| アーチェ | クラース ! しっかりして、クラース ! |
| チェスター | く、そ……クラースも、かよ……。これで、オレまで、倒れるわけには……。 |
| アーチェ | チェスター……。 |
| チェスター | ……はは……そんな、顔、すんなって……。何もかも、お前に押しつけて、気を失うとかそんなことは……。 |
| アーチェ | ……ううん。チェスターも、無理はしないで。そこで休んでて。 |
| チェスター | けど…… ! |
| アーチェ | 他のみんなのこと、守ってて。あの魔物は、あたしが倒す ! |
| チェスター | ! ?いくらなんでも、一人じゃ…… ! |
| アーチェ | そんなことない ! |
| アーチェ | いつもはみんなに助けてもらうことのほうが多いと思うんだ。でも、今日は違う。 |
| アーチェ | あたしだけが自由に動ける。それなら、あたしが踏ん張らないでどうすんのよ ! |
| チェスター | …………。 |
| アーチェ | 絶対に、みんなのことを守るから !誰一人傷つけさせたりしない ! |
| アーチェ | ! !この光は…… ! |
| チェスター | これは……浄玻璃鏡か…… ! |
| アーチェ | ……すごい。力が溢れてくる……。この力があれば…… ! |
| チェスター | ……アーチェ。 |
| アーチェ | なによ、止めないで ! |
| チェスター | はは……止めねえよ。お前に、全部託す…… ! |
| チェスター | 絶対、負けんじゃねえぞ…… ! |
| アーチェ | ! ! うん、まかせて ! |
| アーチェ | 絶対にみんなを守ってみせる……いくよっ ! |
| Character | 7話【魔術8 神聖なる槍】 |
| アーチェ | はぁ……はぁ……勝てた…… ! |
| チェスター | はは……マジでやっちまったぜ…… ! |
| クラース | ……ぅ……。 |
| アーチェ | ! クラース、気がついた ! ? |
| クラース | あ、ああ……。魔物は…… ? |
| アーチェ | 大丈夫、全部倒したよ。もうどこにもいないのは確認したから。 |
| クラース | そうか……まさか、アーチェが一人で ? |
| チェスター | そのまさかだよ……ったく、無茶しやがるぜ。 |
| アーチェ | ふふん、あたしはやるときはやる女なのよ ! |
| チェスター | ま、確かにな。ところで、ミントとすずの様子はどうだ ? |
| ミント | ……ん……あ……皆さん……。 |
| すず | ……気を、失っていたんですか、私は……。 |
| アーチェ | よかった、二人とももう大丈夫だよ !魔物は倒したから。気分は、どう ? |
| ミント | すみません、皆さんにご心配おかけしてしまって……。 |
| アーチェ | ううん、あの魔物が相手じゃ仕方ないよ。音波なんて防ぎようがないし……。 |
| ミント | ありがとうございます……。気分は、だいぶよくなってきました。すぐに出発しても問題ありません。 |
| すず | 私も、大丈夫です。動けます。 |
| クラース | いや、ここで休憩しておいた方がいい。私たちの身体の様子を見たいというのもあるんだが……。 |
| クラース | 一人で戦ったアーチェも休んでおかないとな。とはいえ、長い時間を取れるわけではない。少し様子を見たら出発するとしよう。 |
| チェスター | 了解。その間にここまでの行程を確認しておくか。 |
| クラース | そうだな。それと――ん ? |
| チェスター | なんだ、そりゃ。指輪か ? |
| クラース | ああ。エメラルドの指輪だ。 |
| ミント | 指輪……元の世界では、精霊との契約を結ぶのに使っていましたよね ? |
| クラース | そうだ。契約の指輪……もしかしたら魔界の王との契約にも使えるかもしれんな。 |
| アーチェ | えっ ! プルートと ! ? |
| クラース | 可能性の話だ。だが、何かの役には立つだろう。 |
| クラース | これがあれば……。 |
| クレス | 声が聞こえるのは、こっちか…… ? |
| ? ? ? | ……ちらに……るな…… ! |
| クレス | ! 聞こえた ! さっきよりも大きくなっている。 |
| ? ? ? | こちらに……なと……えないのか…… ! |
| クレス | どんどんはっきりしてくる…… !この穴をくぐった向こう側からだな ! |
| ? ? ? | やめろ ! その先に進むことは―― |
| クレス | ! ! なんだあれは。槍…… ? |
| クレス | 槍だ……それも、これはグーングニル !ということは、もしかしてさっきから聞こえていたこの声は…… ! |
| ? ? ? | こちらに来るなというのに、なぜ来たのだ人間よ。 |
| クレス | やっぱり、あなたはヴァルキリーですね ! ? |
| ヴァルキリー | いかにも。私はオーディーンに忠誠を誓う者、ヴァルキリー。神具グーングニルを守護している。 |
| クレス | 神具グーングニル……これもこの世界に具現化されていたのか ! |
| ヴァルキリー | 何を言っているのか知らぬが、私の結論は同じ。下賎な者がこの神具に触れることは許さん。即刻ここから立ち去れ。 |
| クレス | ……グーングニルの強大な力があればプルートにも勝つ事が出来るかもしれない。 |
| ヴァルキリー | 話を聞いているのか ?即刻立ち去れと言っているのだ ! |
| クレス | ……ヴァルキリー、頼みがあります。このグーングニルの力を僕に使わせてください ! |
| ヴァルキリー | そのようなこと、認めるわけがない。勝手を言うのであれば、神の怒りに触れるだろう。 |
| クレス | いえ、認めてください !僕は……僕には力が必要なんです ! |
| クレス | プルートが現れたことで、この世界の村がひとつ壊滅してしまった。たくさんの人の命も失われた。 |
| クレス | その悲劇を終わらせるために、僕の仲間がプルートを追っていきました ! ですが、プルートが一人で倒せる相手ではないことは十分想像できます。 |
| クレス | だからこそ、僕は力が欲しいんです !仲間を守れる力が……もう二度と、モリスンさんを失いたくない ! |
| ヴァルキリー | …………。 |
| クレス | グーングニルが神聖なものだということはわかっています。その力がどれだけ強大なのかも。 |
| クレス | 人間が容易に手を出してはいけないものだとは思います。それでも……それでも僕は今、その力を手にしたい ! |
| クレス | 同じ絶望を繰り返したくはないんです ! |
| ヴァルキリー | ……いいだろう。 |
| クレス | ! ! |
| ヴァルキリー | お前がグーングニルを使うことを許可する。ただし……。 |
| ヴァルキリー | 私に力を示すことが出来ればだ ! |
| 魔物 | グオオオオオオッ ! |
| クレス | ! すごい数の魔物だ…… ! でも、僕は諦めない !必ずあなたに力を示してみせます ! |
| ヴァルキリー | いい覚悟だ。それが口だけではないか、見せてもらうぞ ! |
| Character | 8話【魔術9 魔術師と召喚士】 |
| クレス | はぁ……はぁ……全部、倒した…… ! |
| ヴァルキリー | ……見事だ。お前の力と覚悟、見させてもらった。 |
| クレス | それじゃあ…… ! |
| ヴァルキリー | グーングニルを扱うに相応しいと認めよう。 |
| クレス | ! ありがとうございます ! |
| ヴァルキリー | だが、その力を扱いきれるかはお前次第だ。 |
| ヴァルキリー | 使いこなすことが出来なければ、お前は命を落とす。それだけ危険な力なのだと理解せよ。 |
| クレス | わかっています。たとえこの力を手に入れたとしても、僕は鍛錬を怠るつもりはありません。 |
| クレス | みんなを守るために !この力を最大限引き出せるように僕は自らを鍛え続けます ! |
| ヴァルキリー | ……ならば、グーングニルを手に取れ。 |
| クレス | はい ! |
| クレス | ! ! 眩しい……この光は…… !この力は―― |
| アーチェ | みんな、身体は大丈夫 ?結局少ししか休めてないけど……。 |
| すず | もう平気です、アーチェさん。ご心配おかけしてすみません。 |
| ミント | あの魔物がいなくなってからは、すっかり楽になりました。本当にありがとうございますアーチェさん。 |
| アーチェ | ならよかった !戦いはまだ続くっていうか、これからが本番なんだからね。 |
| チェスター | だな。進んでいくほど空気も重苦しくなってるし、いよいよって感じはするな。 |
| クラース | ああ。あとはモリスンさんと無事に合流できればいいんだが……。 |
| すず | ! みなさん、見てください !あそこに人が倒れています ! |
| チェスター | ! モリスンさんか ! ? |
| クラース | そうかもしれない、行こう ! |
| クラース | おい、大丈夫か ! |
| モリスン | ……ぅ……君たちは……。 |
| ミント | モリスンさん ! ご無事ですか…… ! ? |
| モリスン | ミント君……それに、他にも見知った顔があるな……。はは、まさか、こんなところで出会うとは……。 |
| クラース | あなたがここに向かったと聞いて捜しに来たんです。しかし……傷が深いな。 |
| ミント | すぐに治療します ! |
| クラース | ああ、頼む。 |
| ミント | ファーストエイド ! |
| モリスン | ……助かった。致命傷ではなかったんだが、身動きがとれなかったからな……。 |
| アーチェ | それ、フツーに危なかったんじゃないの ! ? |
| ミント | 無事に追いつくことが出来てよかったです。……どうしても、あなたを助けたかったので。 |
| ミント | きっと、クレスさんも安心してくれるはずです。 |
| モリスン | ん ? そういえば、クレス君はどうした ? |
| クラース | ここに来るまでに、色々あったんです。だがクレスのことだ、恐らく奥へと進んでいるはず。目的が達成できれば合流も可能だと。 |
| モリスン | 目的、というのは……。 |
| クラース | あなたを見つけること。そして、この坑道の奥にいる魔物の元にたどり着くことです。 |
| モリスン | なるほど……みんな、プルートを追ってきたのか。 |
| アーチェ | モリスンさんがプルートと戦おうとしてるのを追ってきた、っていうのが正しいんだけどね~。 |
| クラース | やはり、あなたが追ってきた魔物はプルートで間違いないんですね。 |
| モリスン | ああ、そうだ。あれほど禍々しい気を放つ者など魔界の王の他にいないだろう。 |
| モリスン | 一度は追いつくことが出来たんだが、このザマだ。坑道に入ってから、プルートは着々と力を回復している。 |
| すず | では、この先プルートはますます強力になっていくと……。 |
| チェスター | そういうことだよな。早く見つけねぇと……なあ、プルートはこの奥に向かったのか ? |
| モリスン | ああ。さほど遠くには行っていないと思う。 |
| モリスン | 初めて会う者もいるし、私の持っている情報や領主であるルーングロムのことも共有したいところだが……。 |
| モリスン | それをのんびりとしていられる状況ではないな。 |
| 全員 | ! ! |
| チェスター | 言ってる間にお出ましかよ ! |
| すず | あれが、プルート……。 |
| ミント | 凍てつくようなオーラが漂っています…… ! |
| プルート | 私は魔界を統べる存在、プルートなり……。早々に立ち去れと、何度も言ったはずだ、人間。 |
| モリスン | そういうわけにはいかない。お前は麓の村を壊滅させた。今後も同じようなことをしないとは限らない。 |
| モリスン | その危機を取り除くためにも、今ここでお前を倒す ! |
| プルート | 愚かな……。ならば、ここで散れ。 |
| モリスン | 散るのはお前だ ! うおおおおおおっ ! |
| プルート | 甘い。 |
| モリスン | ぐあっ ! |
| ミント | モリスンさん ! |
| クラース | イフリート ! |
| プルート | …………。 |
| チェスター | 大丈夫か、モリスンさん ! ? |
| モリスン | ああ、すまない……回復してもらったとはいえすぐには動けなかったか。 |
| アーチェ | 無茶しないで !そのためにあたしたちが来たんだから ! |
| すず | モリスンさんは、村の人たちのために戦ってくださいました。次は私たちがあなたのために戦います ! |
| モリスン | 君たち……。 |
| クラース | プルート……あなたの力は厄介だ。このまま放置すれば、再び大きな犠牲が出るかもしれない。 |
| クラース | だが、私たちは今大きな戦いの最中にある。あなたの強大な力を得ることが出来ればその戦いに胸を張って挑めるだろう。 |
| プルート | ……何が言いたい ? |
| クラース | 私たちに力を貸してもらえないだろうか。精霊のように、私と契約して共に戦って欲しい。 |
| プルート | 冥界の主たるこのプルートに、人間ごときの命に従えと言うか。 |
| クラース | 従えとは言っていない。力を貸して欲しいと言ったんだ。 |
| プルート | 同じことだ。 |
| プルート | 弱き人間が私の力を扱うなど笑止千万 !戯れ言を口にする暇があるならば早々にここから立ち去れ ! |
| クラース | 戯れ言ではない ! |
| クラース | 私たちは幾度も危機に対峙してきた。その度に力を合わせ乗り越えてはきた。が……次も必ず乗り越えられると胸を張れる力が必要だ。 |
| クラース | 先ほどもそうだ !私は何も出来ず、仲間に全てを託すこととなった。もう二度とそんなことにならないためには力が必要だ ! |
| アーチェ | クラース……。 |
| クラース | あなたが弱き人間に力を貸せぬと言うのなら私の力を証明してみせよう !それが叶った暁には私と契約してもらう ! |
| プルート | ……よかろう。証明してみせよ、その力を。 |
| プルート | 貴様らが私の力を得るに値する人間かこのプルート自身が見極めてやるわ ! |
| Character | 9話【魔術10 冥府の主】 |
| プルート | くっ…… ! |
| クラース | ……倒した、か ? |
| アーチェ | すご……すっごいよ、クラース !プルートに勝っちゃった ! |
| すず | クラースさんの強い意志が、プルートを倒すことにつながったのでしょうか…… ? |
| クラース | ……いや。 |
| すず | え ? |
| クラース | まだ、終わっていない。 |
| チェスター | ! ! また地震か ! ? |
| ミント | いえ、これは……瘴気が集まって来ています !その全てがプルートに…… ! |
| プルート | ……その力、悪くはない。だが、私を従えるにはまだ弱い ! |
| クラース | ならば、もう一度挑むだけだ !あなたを納得させるまで、私は何度でも勝負を申し込ませてもらう ! |
| チェスター | フッ……カッコイイじゃねえか、クラース。その覚悟、オレも付き合わせてもらうぜ ! |
| すず | はい ! 私も何度でも挑みます。 |
| プルート | ……よかろう。来い。 |
| クラース | ああ ! ウンディーネ ! |
| プルート | 甘い。 |
| すず | 鎌鼬 ! |
| チェスター | こっちもだ ! 衝破 ! |
| プルート | 効かぬ。 |
| クラース | ならば―― |
| クラース | はぁ……はぁ……。 |
| アーチェ | やっぱり、強い…… !クラースの攻撃も確実に入ってるはずなのに ! |
| ミント | ですが、プルートも必ずしも余裕というわけではないように感じます。 |
| プルート | …………。 |
| ミント | あと一歩……何か、決め手になるものがあれば…… ! |
| プルート | ……もはや、ここまでだろう。貴様らがそれなりの使い手であることはわかった。だが、私の力を扱うには弱い。 |
| プルート | これで終わりとしよう。 |
| ミント | ッ ! きゃああ ! |
| クラース | ! ミント ! !くっ、術が間に合わん…… ! |
| クレス | させない ! ! |
| ミント | ! クレスさん…… ! |
| クレス | よかった、間に合ったみたいだね ! |
| クラース | クレス、無事だったのか ! |
| アーチェ | もー、合流出来なかったらどうしようかと思ったよ ! |
| クレス | ごめん、思ったよりも入り組んだところに落ちてしまっていたんだ。 |
| クレス | でも、追いつけてよかった。モリスンさんも、合流出来ていたんですね。 |
| モリスン | ああ。おかげ様でな。だが、積もる話は今というわけにはいかないようだ。 |
| クレス | そうですね……とにかく、無事でよかった。それだけを祈っていましたから。 |
| モリスン | フッ……大げさだな。 |
| クレス | ……はは。そうかもしれませんね。でも、僕はあなたと共に戦いたかった。その気持ちは確かなんです。 |
| モリスン | そうか。ならば、早速の共闘といこうか。 |
| クレス | はい ! |
| チェスター | ところで、クレス。その槍は ? |
| クレス | 坑道の奥で見つけたんだ。僕の力を示して認めてもらった。 |
| チェスター | 力を……認める ? |
| クレス | ああ ! |
| チェスター | ! ! なんだ、その格好 ! |
| ミント | クレスさんから、神聖なる力を感じます…… ! |
| プルート | ……オーディーンの力か。 |
| クレス | そうだ。僕は仲間を守るため、力を示してグーングニルを扱うことを認めてもらった。 |
| クラース | そういうことか……。ならば、次はやはり私の番だな。 |
| プルート | こしゃくな。 |
| クラース | クレス、力を貸してくれ !プルートを打ち倒し、契約を交わす ! |
| クレス | はい ! 僕たちはまだまだ強くなれる。強くなった !その無限の可能性を、プルート、お前に示す ! |
| プルート | よかろう……。これが最後の戦いだ ! |
| クレス | いこう、みんな !僕たちの力を示すんだ ! ! |
| Character | 10話【魔術10 冥府の主】 |
| プルート | くっ……この力……。 |
| クレス | ……僕たちの勝ちだ、プルート。 |
| プルート | …………。 |
| クラース | 私たちの力を、あなたに示すことは出来ただろうか。 |
| プルート | ……そうだな。見事だ。 |
| クラース | では…… ! |
| プルート | うむ、よかろう。汝の命に従おう。しかし、人間に魔界の住人を召還する術などあるのか。 |
| クラース | 契約の指輪がある。 |
| クラース | この指輪を媒介に契約を結べばあなたを召還することも出来るようになるはずだ。 |
| プルート | 承知した。それでは、エメラルドの指輪を。 |
| クラース | ああ。 |
| クラース | 我、今、魔界の精に願い奉る。指環の盟約のもと、我に精霊を従わせたまえ。我が名はクラース ! |
| ミント | この輝きは…… ! ? |
| すず | 浄玻璃鏡……でしょうか ? |
| アーチェ | え ! ? こんなタイミングで ! ? |
| クレス | いや、今だからこそ、なんじゃないかな。クラースさんの想いがプルートに認められて契約を結べた今だから。 |
| クラース | ……そうだな。浄玻璃鏡にプルートの力が刻み込まれたんだろう。 |
| クラース | 本来の契約の形とは少し違うがプルートの力を借りられることには違いない。 |
| チェスター | マジかよ、すごいな…… ! |
| クラース | だが、私の想いだけが認められたわけじゃない。これはみんなのおかげで得られた力だ。 |
| クラース | 力を合わせなければ、プルートに認めてもらうことは出来なかっただろう。みんな、ありがとう。 |
| ミント | いいえ、やはりクラースさんの強い意志がプルートの心を動かしたんだと思います。 |
| アーチェ | だよね !粘ってるクラース、カッコよかったよ ! |
| すず | その背中を頼もしく思いました。 |
| クラース | はは、これだけ褒められるのも悪くはないな。 |
| クレス | これでプルートの問題は解決した。モリスンさんとも再会できたし……。 |
| クレス | いつまでもこの坑道にいる理由はないね。みんな、外に出よう。 |
| アーチェ | うーん ! やっぱり外の空気って気持ちいい ! |
| すず | はい。やっと安心できます。 |
| モリスン | 無事に外に出られるとはな……。君たちのおかげだ。改めて、感謝する。 |
| クレス | いえ、モリスンさんに再会できてこうしてみんなで戻ってこられて本当によかったです。 |
| モリスン | ああ、私もだ。それで、君たちは今何をしているんだ ? |
| クレス | 目的を同じくする仲間たちと共に行動しています。帝国とは敵対する形になっていて……。 |
| モリスン | なるほど……だとしたら、私と同じだな。 |
| チェスター | モリスンさんが心核を取り戻して帝国と敵対してるってことは、領主も同じように行動してるのか ? |
| モリスン | いや、領主は今、領都には不在だ。……ルーングロムは、帝都に連れて行かれてしまった。 |
| ミント | そうなのですか……。 |
| アーチェ | ってことは、領主不在のまま帝国に抵抗してるの ? |
| モリスン | そうだ。いや、領主が不在だからこそという面もあるかもしれない。 |
| モリスン | アセリア領では領民や帝国から離脱した兵が反帝国ののろしを上げたことがきっかけとなり現在の状況になった。 |
| モリスン | その中で私の心核を取り戻してくれたのが反帝国兵たちだ。その時点で既にルーングロムはいなくなっていた……。 |
| クレス | そうだったんですね……。 |
| モリスン | 帝国の行動に疑問を持つ者は多い。帝国兵ですら、離脱を考えるようになっているほどだ。反帝国組織は各地に存在しているとも聞いている。 |
| モリスン | アセリア領の反帝国組織はこれからも抵抗を続けると言っていた。私は、彼らと共にアセリア領を守ろうと思っている。 |
| モリスン | 私の心核を取り戻してくれた仲間だからな。出来る限り、その力になりたい。 |
| クレス | ……わかりました。ですが、もしよければ僕たちとも協力体勢を敷くことは出来ないでしょうか ? |
| モリスン | 私も今それを提案しようと思っていたところだ。最近心核を取り戻した私よりも、君たちのほうがこの世界には詳しいだろう。 |
| モリスン | こちらも、各地の反帝国組織とのネットワークがある。それを互いに利用すればこれまで以上に情報を得ることが出来るはずだ。 |
| クラース | これは実に心強い味方が出来たな。 |
| アーチェ | だね !そのネットワークっていうのも役立ちそうだし ! |
| クレス | 今はどこを拠点にしているんですか ? |
| モリスン | アルヴァニスタの領主の館をそのまま利用しているよ。帝国の襲撃に備えて領都全体の改修にも着手している。 |
| モリスン | まだまだやらなければならないことは多いが人手も戦力も足らなくてな。 |
| クレス | なるほど。では、こちらも一度戻って相談する必要があるとは思うんですが、僕たちが交代でモリスンさんたちの拠点に詰めるというのはどうでしょうか ? |
| クラース | いい案かもしれないな。浮遊島との連携も取りやすくなる。 |
| モリスン | こちらも人手が足りない状況が続いている。そうしてもらえるならありがたい。 |
| クレス | それじゃあ、その方向でイクスたちに相談しよう。 |
| ミント | ですが、その前に一度落ち着ける場所に向かいませんか ? |
| ミント | 皆さん、お疲れだと思うんです。まずは身体を休めましょう。 |
| すず | そうですね。 |
| モリスン | では、領都に案内しよう。その前に、村の様子を見るために立ち寄らせてもらえたらとは思うが。 |
| チェスター | これからオレたちも詰めることになるんだしな。領都の周辺も色々見ておきたいぜ。 |
| クレス | それじゃあ、まずは村に向かおう !モリスンさん、改めて。今後ともよろしくお願いします ! |
| モリスン | ああ。君たちとまた共に戦えることを嬉しく思う。これからもよろしく。 |